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芳田参考人 ただいま御
紹介にあずかりました、私、
芳田でございます。
私は
大阪で
はしけの単独
業種、いわゆる
法律上第三種
業種を営んでおる者でございますが、今日この
機会を与えてくださいましてまことに感謝いたします。
時間がございませんので、直ちに端的に、現在第三種
業者が、
改正法令のとおりに
実施されますと、全部港から追放されなければならないという
立場に追いやられておるということについてお訴え申し上げたいと存じます。
一つは、今度の
改正法令で、九月三十日までに、いわゆる元請
業者はそれぞれの一種、二種、三種、四種について、みずから七〇%の直営を行なわなければならないということを示されております。この七〇%が行なわれると、われわれ三種
業者にどういうことが起こるかということについて具体的に申し上げます。
まず、元請
業者が七〇%の仕事を実際にできるかということを申し上げますと、決して七〇%の仕事はできない。なぜできないのだ。
はしけは船内、沿岸の作業と違いまして、少なくとも一航海に五日間の日数を要します。本船が港へ入港してきまして、荷物の積みおろしあるいは積み込みをやるまでの間に日数を限られまして、ランディングを切られますと、その日数が大体五日間から七日間でございます。その間に
はしけは一回荷物を積んだら、その本船がおる間にもう一回使用することができないというのが
実情でございます。しかも、
はしけの
性格から申しまして、A点からB点までの海上輸送をやるということはもちろんでございますが、副次的な使用として倉ばしけと称しまして、工場の滞貨あるいは倉庫の滞貨等を一応
はしけへ取っておいていわゆる倉ばしけ、倉庫代用とする使命を持っておるわけでございます。
それから本船が非常にふくそうしてまいりますと、
労働力、沿岸荷役能力あるいは船内作業というふうなものが不足いたしまして、しばらく
はしけは滞船せなければならない、あるいは
貨物によって、スクラップあるいはばらものの油糧種実のコットンシード、そういうものを積みますと、多いときは一カ月以上あるいは少なくても二十日ぐらい、
はしけは滞船せなければいけない、こういうふうな
性格から考えますと、
はしけの直営を、引き受ける
貨物の七〇%を元請でやれということは言うべくして決して行なわれない。それをやろうとするならば、少なくとも一五〇%あるいは状況によって二〇〇%の
施設及び
労働者が要るということでございます。例をとりますと、スクラップが一万トン入ってきた。自分のところの
はしけで五千トン取った、これは二十日間あかないんだ、
あとから入ってくる荷物は
はしけがないから仕事ができないのだ、手をあげて、うちはもう
施設がないからやれないんだ、直営しろということになっておるのだから、
はしけがないからもう仕事ができないのだということになりますと、これを
施設のある会社にまかさなければならない。ところが、現在の
港湾運送事業の
実情を申し上げますと、住友倉庫なら住友倉庫は、たとえばドッドウエルだとかロイドの汽船会社とエージェントの
関係を結んでおります。それから、三菱倉庫はマースクラインならマースクラインとエージェントの
関係を結んでおります。住友倉庫に入ってくるドッドウエルの
貨物を、住友倉庫は、うちはもう
はしけ全部積んでおりますから、
施設がございませんので三菱倉庫へやっていただきます。ドッドウエルのエージェントをやっておる住友の仕事をマースクラインのエージェントの三菱倉庫へやるかどうか、また、こういうエージェント
関係で外国商社あるいは外国船会社が、相手の会社が、そういうことが、たとえ
港湾調整協議会ができましても、事実上できるかどうかということになりますと、これは決してできない。そうなりますと、少なくとも元請が直営を七〇%やれということは、法令で定められておるだけでございまして、現実には全く実現できない。こういう政令が現にできておるわけであります。
企業でございますので、少なくとも
企業の採算制の
立場から申し上げますと、そういう
過剰施設を持つということは
企業としては全く成り立たない、こういうことがはっきりわかっておるわけでございます。いま、かりに、そういうことを政令で示されますと、大手筋の
業者は、たとえ赤字であろうと何であろうと、これはこさえなければ
免許がもらえないんだということになりますと、一応踏み切ってそういう
施設をこしらえられますと、今度はその
過剰施設を
企業採算のためにお互い同士が交流し合う。元請同士で、足らない
はしけはうちのを使ってくれということになりますと、私
どもがいまやっておる元請の下請を主体とする第三種
業者は、事実上
免許はもらって残りますけれ
ども、大手同士の交流によってわれわれは仕事がなくなってくる。しかも、その大手もそういう不要不急の
過剰施設をかかえて
企業としては成り立たない、こういう結果も当然生まれてくるわけでございます。
企業にはおのずから適限
経営線がございまして、赤字が出ない線で
企業をやっていく、小さければ小さいなりに
企業をやっていくということでなければ
企業として存続ができない。こういう点ははっきりいたしておりまして、元請が七〇%は絶対に直営できない。
しからば、現在三種
業者はどのくらいのシェアを占めておるか、こういうことを申し上げますと、全国の
五大港の各港において現在三種の、下請を専業としておる私
どもが占めておるシェアは五〇%以上である。実質的に考えますと七〇%くらいじゃないか。数字の上では五〇%でございますけれ
ども、これをしさいに
検討してみますと、
はしけが夜荷役をやらなければいけない、オールナイトの仕事をして代日の休暇を与えなければならないような仕事は全部下請にやらす。あるいは積みおろして積み込むときに、スクラップは一カ月滞船しなければいけない、あるいは綿の実は二十日間寝なければいけない、こういうふうな荷物はほとんど下請にやらしております。運んだ数量から申し上げますと、数字は五〇%強でございますけれ
ども、これをしさいに
検討してみますと、実際に
貨物の輸送の
内容は五〇%じゃなしに、むしろ七〇%下請のほうでやっておる。これをいま急に元請のほうに七〇%やれ、下請は三〇%しか下請することができないのだというふうになりますと、これはもう第三種の下請
業者はそれだけ仕事がなくなって、港から出ていきなさい——
免許はもらえることはもらえるのでございますけれ
ども、仕事がなくなれば、どれほど
集約しても、あるいは三千トンのいま
免許を一万トンの大きさにしたって、仕事がなくなりますので、これはもう
集約以前の問題である。私
ども第三種
業者は決して
近代化、
合理化ということに反対いたしておるものではございません。体質を
改善すること、あるいは
企業規模を大きくしなさいということもけっこうでございます。あるいは
一貫責任体制をとりなさい、けっこうでございます。
一貫責任体制の中に入れてください。それから、
企業経営の
責任をとるために経理的な基盤を強化しなさい、これもけっこうでございます。しかしそういうことで
企業規模を拡大し、そういうことで
免許をもらっても、いま申し上げたような事情で港から仕事を取り上げられて追放される。事実上追放されるにひとしい法令が
実施されるということになりますと、せっかく
免許をもらっても何にもならない、こういう結果で、しかもこれが現に
法律八十四号で、昭和四十三年九月三十日にはこの政令とこの法令が
実施されるというまことに苦しい
立場に追い込められていま全国
五大港の
業者は全く生きた気持ちもなく、まことに不安の念で、過去二年間にわたって日本港
運協会のかさの下で、このことについて一応運輸
審議会の
答申の線内で、あるいは
専門委員会の
会議の中でこの点を
解決していただくように、私
ども二年間にわたって苦労してきたわけでございますが、港
運協会の代表の運輸
審議会の方や、
専門委員会の方がいろいろ骨を折っていただいたこととは思いますけれ
ども、
答申には一向にそういうものがあらわれてこない。しからばわれわれは九月三十日をもって仕事の分野を取り上げられて消えていくのかということになりますと、ここで現在
はしけの第三種
事業をやっておる者の存在価値ということを
先生方にあらためて御認識いただきたいと思います。
一つは、
はしけの回漕
事業の
経営ということは、だれでもできることではないわけでございます。非常に専門的な知識が要ります。たとえばその港のどこの岸壁の水の深浅状況、あるいは潮流の
関係、河川の橋の高さ、あるいは指定港域間の潮流の
関係で何月何日の天候は、あるいは潮の干満はどういうことであるかというふうな非常に専門的な知識が要ることでございます。
いま
一つは、深い体験がないとできない。
はしけの修理個所にいたしましても、どこの
部分をどれだけ強度を増せばこれに耐え得るか、あるいはコンテナ化された場合に直ちにコンテナに対応できる
はしけにはどういう構造にしたらいいか、そういう体験と深い知識を
要請されております。その上に日曜祝日を返上して——もうすでに御
承知のとおりと思いますけれ
ども、海運
関係で日曜祝日をそのとおり励行いたしておったのでは、船の運航はできぬわけでございます。私
どもは日曜祝日を返上して、夜中に雨戸の鳴る音を聞いても、あああの何番ブイの
はしけはだいじょうぶだろうか、あの岸壁におる
はしけはだいじょうぶだろうかと直ちに床をけって立ち上がってそのまま岸壁へ行き、あるいは本船に行って
はしけの
実情を確かめる、こういうふうに非常にたゆまざる努力がなければ、
はしけの
経営ということは許されぬわけでございます。しかも、われわれが存在することによって、たとえば
港湾の暴力事件が起きたことがあるでしょうか。われわれは元請の手足となって、いわば元請の船差しになりあるいは元請の船舶の管理人となって、いわゆる唯々諾々として、元請がどうやったら、元請の
はしけとわれわれの
はしけとで効率的な
運営ができるだろうか、あるいは
港湾のふくそう時あるいは荷物の停滞時に、このいわゆるふくそう時を解消できるだろうかということで、一日に少なくとも、朝昼晩はもちろんのこと、五、六回は元請のところへ連絡に参りまして、真に元請の意図をそのまま受けてわれわれは港の仕事につとめてきておるわけです。
このわれわれが、すでに御
承知のとおり、昭和十七年十二月に、あの戦争当時に銃後の輸送が大事だということでございまして、
企業統合令によりまして一応
企業を返上したことがございます。これは時節柄まことに当然のことでございまして、私
どももきん然としてこの統合に参加したのですが、終戦時には全く
施設が荒廃いたしまして、当時
大阪港で、
港湾関係のみで三十八万トンあった
はしけが、沈没船も入れまして四万七千トンになっておる。その四万七千トンを昭和二十四年三月に
企業再開ということで、われわれは郷里から家、屋敷を売り払って、もう一回あの仕事ができるのだということで今日まで、まことに血のにじむような努力で仕事をやってきたわけでございます。
われわれのこの
労働力を、私はあえて
経営労働力と称します。と申し上げますことは、われわれの範囲は
合理化できるだけやっておる。親子で四千トンぐらいな船を何とか
経営している。あるいは兄弟、親族で五千トンぐらいな船を何とかまかなっている。これ以上省力、
合理化はできないのだというところまで
合理化はできておるわけでございます。この
経営労働力を一たん港から追放したら、私は、これから港が大混乱におちいるということをあえて
先生方に申し上げておきたいと思います。
しかもその上に、
法律は一見まことに公平に、
一貫責任体制として
はしけのほうも、みなし規定によってこの七〇%の
解決に当たられるようにできていますけれ
ども、現実の問題は、
免許を受けるのにそのいずれか
一つを七〇%やれ——大
部分の元請が
はしけを基盤に
免許を受けておるわけでございます。だから
はしけにはみなし規定の適用がないのだ、現実には
はしけはみなし規定を適用して七〇%の
直営率の中に参加して、
一貫責任体制の一翼をにないたいのですけれ
ども、になうという
法律的な裏づけがないわけでございます。船内と沿岸と
はしけを同様に、一律に律すること自体がもうすでに、いままで申し上げたことではっきり御了承願えたことと存じます。せっかく
一貫体制のうちに私
ども入りたいのにかかわらず、入れない。だから非常に極端な変則的な事項が起きています。
たとえば、具体的な例を申し上げますと、
大阪港で住友倉庫が一〇〇%出資会社の大成海連株式会社という子会社を持っています。いずれも
はしけの仕事をしています。一〇〇%出資会社の子会社のこの大成海運の持った仕事が、住友倉庫がした
直営率の中に入らない。一方船内や沿岸は、住友倉庫が
はしけ基盤で
免許をもらっておるので、何ら
関係ないのがたった一〇%の資本提携で、住友倉庫がやったとみなすという
直営率の適用が受けられる、こういう矛盾があるわけでございます。
で、この一〇〇%出資会社とかあるいは過半数の出資会社、こういう会社がやった仕事は親会社がやったことだという実績のうちに当然入れられなければ、これはもう
経済界から見たら変則的な事項だと断ぜざるを得ぬわけです。しかもわれわれ三種
業者の今度のこの政令の受け取り方は、これはいわゆる
法律をこしらえて
企業統制をやっているのである。この
企業統制で大手筋の寡占経済、いわゆるシェアの寡占時代を招来して、大手筋だけで経済を支配しようとしておる、われわれは
企業統制によって追放されるんだというふうな、まことに情けない
考え方を抱かざるを得ないような
状態へ現在追い込まれておるわけであります。
法律で一見いかにも公平に、みなし規定という適用があるように書いていますけれ
ども、
はしけが基盤であるためにわれわれは
一貫体制の中へ入れられないというふうなことがあるわけであります。この点をひとつ
先生方にぜひ
お願いしまして……。
しかも、かような
状態が押し進められまして、港から仕事をなげうってわれわれが立ちのかなければならないという場合にも何ら補償の
方法もない、援助の
方法も
一つもございません。
近代化業種に指定されて
近代化設備資金の借用ということはできますけれ
ども、設備資金の借用だとか、あるいは登録税の軽減とか、あるいは所得税の減免ということは残った
業者に対する恩典でございまして、やめていこうとする人については何らの恩典がここにない。だからせめて財政資金で、あるいは
政府資金で補償ということが不可能なら、残った
業者のメリットで、たとえば厚生分担金、そういう制度で、
荷主にも原価計算のほかに何とか取り扱いトン当たり一円でも二円でも別に負担していただいて、これを転廃業資金の
補助金にするとか、私は考えればいろいろな
方法があると思うのです。
こういう点をよく御認識くださいまして、とりあえず
お願い申し上げたいのは、九月三十日に追っておりますこの
直営率の七〇%の緩和策、それから兼用を禁止されております。第六条の二号の
関係で、元請が一種と三種の
免許をとる場合は一種と三種の
施設及び
労働力が二つとも要る、こういう
考え方自体が私はおかしいと思う。この二つを何とか御緩和願いたい。迫ってくる九月三十日までに何とか手を打っていただきたいということと、万一やめていかなければならない、転廃業する者に対しては補償の
方法を考えていただきたい。あるいは
集約統合するという場合には、直接援助の手を延べていただきたい。こういう点を、こういう
機会をつくっていただいたことを感謝いたしますとともに、衷心
お願いいたす次第であります。
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