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1968-03-15 第58回国会 衆議院 運輸委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月十五日(金曜日)    午後二時三分開議  出席委員    委員長 大野 市郎君    理事 木部 佳昭君 理事 砂田 重民君    理事 山村新治郎君 理事 小川 三男君    理事 野間千代三君       阿部 喜元君    大竹 太郎君       小渕 恵三君    加藤 六月君       川野 芳滿君    菅  太郎君       菅波  茂君    中川 一郎君       水野  清君    井上  泉君       板川 正吾君    神門至馬夫君       内藤 良平君    米田 東吾君       渡辺 芳男君    沖本 泰幸君       松本 忠助君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 中曽根康弘君  出席政府委員         運輸省船員局長 河毛 一郎君         運輸省鉄道監督         局長      増川 遼三君  委員外出席者         日本国有鉄道副         総裁      磯崎  叡君         日本国有鉄道常         務理事     林  武次君         専  門  員 小西 真一君     ————————————— 三月九日  委員岡本富夫辞任につき、その補欠として沖  本泰幸君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員加藤六月辞任につき、その補欠として野  田卯一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員野田卯一辞任につき、その補欠として加  藤六月君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員神門至馬夫君辞任につき、その補欠とし  て大原亨君が議長指名委員に選任された。 同日  委員大原亨辞任につき、その補欠として神門  至馬夫君議長指名委員に選任された。 同月十五日  委員板川正吾君、神門至馬夫君及び内藤良平君  辞任につき、その補欠として阪上安太郎君、久  保三郎君及び北山愛郎君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員北山愛郎君、久保三郎君及び阪上安太郎君  辞任につき、その補欠として内藤良平君、神門  至馬夫君及び板川正吾君が議長指名委員に  選任された。     ————————————— 三月十二日  日本開発銀行に関する外航船舶建造融資利子補  給臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一七号) 同日  千葉県に個人タクシー免許に関する請願(始関  伊平君紹介)(第二四二三号)  同(木原実君外十二名紹介)(第二四二四号)  同(木原実紹介)(第二六〇〇号)  同(實川清之紹介)(第二六〇一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国有鉄道経営に関する件(国鉄合理化  に関する問題等)  海運に関する件(船員に関する問題)      ————◇—————
  2. 大野市郎

    大野委員長 これより会議を開きます。  日本国有鉄道経営に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。野間千代三君。
  3. 野間千代三

    野間委員 副総裁見えのようですが、総裁のお見えにならない事情を伺いたい。
  4. 磯崎叡

    磯崎説明員 総裁は、実はきのうもずっと予算分科会に出ておりますし、きょうも出ておりますが、非常に疲れておりまして、たいへん申しわけございませんが……。どうしても総裁でなければいけない問題は、また別に……。まことに申しわけございません。
  5. 野間千代三

    野間委員 定期の問題ですが、まず最初に、旅客収入が四十三年の予算で見ると六千五百十四億、つまり昨年度よりも六百七億伸びを見ているということですね。その中で二百九十九億六千万円の定期を見込んでいるわけですね。それで、まず第一に、旅客収入の六百七億の増というのは、はたしてこれだけ見込めるのかどうかということが一つ。それから二百九十九億六千万円という定期旅客収入増——これは運輸大臣がこの前私鉄定期は上げないと言っておられたが、もし私鉄定期は上げないということになると、これは多少不便でも私鉄のほうに乗りかえる、ハスに乗りかえるということが出てくる。今度の場合に、相当大幅な値上げになりますから、当然そういうことが予想される。これはだれが考えてもそうだと思うのですが、そういうことがあります。  もう一つは、これはこういう意見があったことをほかでも聞いたのですが、きょう新聞あたりで見ても、ポンドの暴落、したがってドル防衛の強化ということがだいぶ強まってくる。これは例のポンド引き下げ、公定歩合引き上げ等の問題のときから、日本経済に与える影響、また日本経済がとらなければならぬ事情、そういうものを考えると、今年度以降、当然これは政府としても引き締めなければならぬというふうになってまいりますと、旅客輸送あるいは貨物輸送——貨物はまたあとで触れますが、旅客輸送も必ずしも楽観は許せないということになってまいります。こういう事情が複合をされる。したがって、そういう経済情勢の中で、これは毎年問題になりますいわゆる特別債政府が引き受けていない特別債が今年は千二百三十億円、昨年と同じですが、市中に売らなければならぬ。したがって、この売れぐあいがどうなるかということですね。この千二百三十億円の売れぐあいはどうであるのかということと、今年の見込み、大体この二点について、四十三年の見込みについて最初総裁から、次に大臣のほうから伺いたいと思います。
  6. 磯崎叡

    磯崎説明員 予算に計上いたしております来年度旅客収入でございますが、その旅客収入の基礎になります旅客輸送量につきましては、これを人員だけでなしに人キロで見ております。定期外一般客人キロ伸びを約六・一%、それから定期伸びを四・二%、平均いたしまして旅客におきます人キロ伸びを五・二%と見ております。これはことしの見込みに対する数字でございます。今年度の、四十二年度決算見込みに対する数字でございまして、予算予算で申し上げますと三・一%、ですからわりあいにかた目に見たつもりでございます。これは先ほど先生おっしゃったように、やはり必ずしもいままでどおりに旅客輸送も順調に伸びないのじゃないかというので、多少この辺で伸び方を縮める必要があるということで、予算予算で申し上げますと三・一%でございました。実績から申し上げますと約五%でございますが、大体いまの見込みから申しますれば、その程度輸送量はあげ得るというふうに考えております。  これに対しまして、今度は一人当たり賃率でございますが、一人のお客から幾らもらえるかということでありますが、これは結局、たとえば新幹線のように非常に料金の高いお客がふえますれば、一人当たり収入がふえるわけでございますので、それら来年度における新幹線増発等も考えまして、輸送の量に比べまして、収入伸びにつきましては定期定期外を含めまして五・八%と見ております。あと貨物が出ると思いますが、貨物と合わせて大体実額的には約一〇・九%、このくらいは伸ばさなければいけないという気持ちもございまして計上したわけでございますが、いままでとかく収入増を少し見積もり過ぎたきらいがございます。そのために昨年度のごとく、年度途中に補正予算でもって収入を減らすというような特殊な補正予算を組んでいただいたこともございましたので、ああいうことをなるべくいたしたくないということもありまして、少しかた目見込みまして、それから少しふえた分は工事費に回すなり何なり弾力条項で使いたい、こういうふうに考えております。  それから特別債消化状況でございますが、ことしは御承知のとおり、去る九月の閣議決定によりまして、いわゆる公共事業費の繰り延べということで約二百五十億の継り延べがございます。したがいまして、ことしの千二百三十億の予算からみますと、それから二百五十億引きまして約千億弱、九百八十億程度のものを消化すればいいことになっておりますが、現時点では四十二年度末におきまして約二百億くらいの消化未了でございます。これは四、五月の両月に消化いたしますれば金の支払いには間に合うということになりますので、実際金の要る時期を見まして四、五月の二カ月で完全消化できるというつもりでございます。したがって、来年度におきましては、千二百三十億の予算プラス二百五十億で約千五百億になりますけれども、やはりある程度繰り越しもありますので、大体ことしと同額程度消化見込みを立てておりますが、ただ問題なのは、お話しのごとく、金利が上がってまいりますと、一番たよりにいたしております農林関係の金の中央への集まり方が悪くなります。コールが高くなると、どうしてもコールに行っちまってこちらへ来ないというようなこともございますので、いま農林中金その他農林関係金融機関といろいろお話いたしまして、できるだけ事前に国鉄特別債を買っていただくような手配を講じておる実情でございます。いま、もちろん的確なことを、ことにきょうあたりドル防衛のいろいろな措置によって、それがどういうふうに金融機関に響くか私どもよくわかりませんけれども、いまのところでは大体去年、四十二年度同額程度消化ができるというふうに考えておるわけであります。
  7. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国鉄予算の収支はわりあいに、数字的にはいまお話しのように、手がたく見積もりをやっておるように私も思います。しかし昭和四十二年度日本経済という基本条件を考えてみますと、御指摘のとおり、なかなか予測を許さないものがあるように思います。一つはいまのお話のように、金利の問題でございます。きょうすでに、アメリカ公定歩合を五厘上げて五分になった。カナダ七分、イギリス八分、アメリカ五分という情勢を見ますと、日本の現在の六分二厘何毛というものがどういう影響を受けているか、非常に大事な、大きな問題でもありますし、ベトナム戦争の行くえや、そういういろいろな情勢を見ると、必然的に日本経済の引き締めという問題は必至のように思われるわけです。そういういろいろな国内経済予測等を見てみますと、やはり、定期関係はそう減らないでしょうけれども、貨物とかあるいはレジャー関係というものは、すでに危険性がかなりあると私は思います。そういう将来出てくる経済的予測というものを見ると、必ずしも予断を許さない情勢があると思いまして、その点はわれわれは十分検討していく必要があると思っております。
  8. 野間千代三

    野間委員 いままで国鉄傾向としては、言われるように手がたくやってきておるようなんですが、四十二年から三年に移っていくいまの情勢ですね、これは四十三年度予算を策定した当時から見ると、急速な違いだと思う。したがって、これはただ単に国鉄努力だけではどうにもならぬ問題でありますから、したがって、努力をお願いするにしても、やはりいま大臣の言うような、また、われわれが心配するようなことなしとしないと思います。そこで大臣国鉄が組んでいる三千七百八十億円という工事経費は、これは現時点における輸送の拡張あるいは通勤輸送、そういう時代の要請であるわけですね。これは収入が減ったからこれを減らすというぐあいにいけるのかどうか。これを国民的な立場から見ても、当然この工事規模くらいはやはり確保しておいて、諸施策を国鉄をしてせしめなければならぬじゃないかというふうに思うのです。そうすると、多少の収入減であればそれは問題ないのですか。いまの状況を見ると、日本経済に対して四、五月ごろに危機があるとか、あるいは六、七月ごろに危機があるとか言われておる。これは前半ですから後半はもう、というふうに一年の半分があぶないというくらいですから、したがって収入見込みどおりにいかなかった場合に、これはどういうふうにするのか、それは大臣いかがですか。
  9. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国鉄は第三次長期計画を遂行中でありまして、ことしの三千七百億という程度工事量は、どうしても維持しなければならぬ限界であるようにも思います。したがいまして、年度途中でいろいろ影響を受けるようなことがある場合でも、できるだけその量を維持するように私たちはいろいろな努力をつけ加えてやっていきたいと思っております。
  10. 野間千代三

    野間委員 それでは基本的にこの工事規模は守っていってもらうということで、もし収入減のときにはまた御相談をしていただくというように理解をすることにいたします。  その次に定期の問題ですが、いま言ったような状況定期問題に当然からんでくるわけですね。定期運賃の改定の状況を見ると、大体通勤平均キロは十六キロくらいというふうにいわれておるようですね。これはだんだん延びる傾向にあると思います。あると思いますけれども、これは大体現在のところ十六キロくらいである。その十六キロくらいのところが今日では五〇%の法定割引率に至っているわけですね。法定割引率はたしか十九キロくらいまでですか、に至っているというふうになってくると、将来、多少延びるにしても、すでに平均のところはもはや法定であって、これ以上は割引率をいじくることができないというふうになっております。そうして今年二百九十九億六千万円の収入を得られるというふうになっておるわけですね。問題はあと残されている分ですね。法定割引に達しておって、あと法定割引率まで——石田総裁の話によると、法定割引率まで調整していくのだということを言っておられますけれども、実際問題としてはそれはそう簡単にいかない。そうすると、今日の二百九十九億値上げあと残されている分、法定との間に残されている分はたした六十億か七十億くらいだったというふうに思うが、あとで伺うことにしておきます。では最初に、法定としてあと残されている分、その分はどのくらいまでですか。
  11. 磯崎叡

    磯崎説明員 通勤定期におきましては、いま先生のおっしゃったとおり、十九キロが法定で、残されております分が百三十億でございます。今年度予算計算上そうなっております。通学定期のほうは三百十二億。ですから合計いたしますればまだ四百四十億ぐらいございますが、とてもそれは一気にできませんので、計算上まだ四百四、五十億残る。ことに大部分通学でございます。通勤は百三十億でございますので、もうそう大きな金額とは申せません。今度のが一番大きいというふうに思っております。
  12. 野間千代三

    野間委員 副総裁が言われたように、学生さんの定期の三百十二億というのがあるということだけで、今回四十五億ですか上げた分くらいが精いっぱいじゃないか。あと文教政策なりということで本格的に内閣全体の問題としないと、国鉄でかってにするということには問題があるというふうに思います。これは副総裁が言われますので、それはそういうことであると思います。お客さんのほう、一般通勤のほうですが、百三十億。今年がたしか二百五十四億のものが通勤ですね。それから比較をすると半分くらいですから、いわば問題になっておった分から見ると、かねてから総裁あるいは国鉄が問題にしておった、通勤はひどいのです、割り引きし過ぎておるのですと言っておったときのあれから全体を見ると、そのうちの三分の二は今年使ってしまう、このまま実施すれば使ってしまうということになる。そうすればあと残っているのは百億少しだということになっておる。このあと百二十億の部分は、これはもう社会情勢から見てもそう簡単に手をつけるべき問題じゃないのではないか。私はきのう予算分科会で、毎年毎年定期を上げていくのかというふうに言ったのですが、そういうことは実際問題としてでき得ない。それを考えると今年の二百五十億足らずの通勤定期という部分は、これは副総裁通勤者から見て、あるいは社会的に見て、実は相当重要な問題だったのだというふうに言わざるを得ないと思うのですね。そういう性格を持っている。したがってぼくらは、そう軽々に上げるべきではない、きのう申しましたように、国鉄の基本問題の中の一環として考えるべき問題だというふうに思っているわけですね。そこで大臣、実は今回の通勤定期値上げというのはそういう性格を持っているというふうに考えますと、これは社会政策的な、生活保護家庭をどうするかとか、あるいは小中学生をどうするとかという程度の問題ではなくて、政府全体として、国鉄経営の問題の一環として、あるいはそれが政府から見た政策一つとして、重要な課題としてこれは検討しておくべき問題だったんじゃないか。当初国鉄総裁から大臣に申請があったときに、これはそう簡単には上げませんというふうに言っておられました。それはやはり大臣もそういうふうに考えておったからそういうおことばが出たのではないかというふうに思うのですが、したがってもし、たとえば市町村納付金であるとか、あるいは政府の出資であるとか、そういう問題が前進をしておれば、あるいはこの部分の問題も多少変わっておったかもしれないけれども、それが全然ゼロであったということからこうなったのでしょうが、しかし、それはそれとしてやはりきわめて重要な、いまや社会的な問題、国鉄経営一つの焦点として問題になっておるとすれば、今回の定期値上げの問題はやはり認可をする前にもう一考あってしかるべきではないか。そうして収入減の問題として考えて、いま申しましたようなドル防衛問題等と考え合わせて検討してもいい問題、検討すべき問題ではなかったんだろうかというふうに思うのです。きょうも運輸省定期問題でたしか公聴会が行なわれ、公聴会が終わればやがて運輸省として認可をするかしないかをきめなければならぬというきわめて切迫した時期にあるのでありますけれども、いま申しましたようなことで、ひとつ大臣のお考えを承りたい。
  13. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 定期割引率を改訂するということは、お説のとおり非常に大事な仕事であるように私も考えました。近ごろは少しなれてきましたけれども、正直に言って、上げなくちゃならぬと決意をしたときには、あまりいい気持ちはしませんでした。そういう感じも実は正直に言っていたしたのでありまして、それはやはり国民生活に及ぼす影響というものを考え、私はまた議会で言明したことばというものも考えまして、責任を感じておったのであります。しかし今度の予算編成が想像以上に非常にきびしい予算編成でありまして、利子補給あるいは財投の資金、あるいは国鉄納付金、こういう問題が自分が考えているとおり思うようにいかなかったためにこういう結果になりましたことは、まことに残念であります。そういう気持ちを持って今後とも定期問題というものには処していきたいと思っておるのであります。
  14. 野間千代三

    野間委員 大臣大臣のいいところは——おだてるわけじゃないけれども、大臣のいいところは、いつもそういうふうに気にしている、清新であるというところに魅力があるわけですよね。
  15. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 どうもおそれ入ります。
  16. 野間千代三

    野間委員 いや、ほんとうです。この間、何か破防法の問題ですか、新聞報道ですからわかりませんが、破防法の問題で——ぼくら別全学連三派を支持するのじゃないんですよ。これは別問題です。ただ、これはよけいなことだけれども、破防法をやたらに適用するということは、これは慎重でなければならぬと大臣の言っていることはいいと思うのです。ですから、定期問題でもいまいみじくも告白されたように、おそらく大臣の言われるとおりであったろうと思うのです。ですからやはり、最初そういうふうに大臣が直観されたら、それが大事なんです。そこが政治の重要なところなんですね。大臣がそういう直観をされる、それが政治センスなんです。だから、やはりそのセンスを大事にして国民要望にこたえる。国民要望にこたえるというところに、実は他の大臣とは違うところがある。(「それじゃ、質問やめろよ。」と呼ぶ者あり)定期を上げなければ、すぐやめちゃうよ。せっかくそう思っていたにもかかわらず、心中じくじたるものがあるとかなんとか言って結局上げちゃうから、そこで新聞なんかでも、あの人はすぐぽきっと折れちゃうというようなことになる。大臣は、遺憾なものだから何とかしますということでなければならない。これはさっきもぼくが言ったように、そんなものが出てはいけないからぼくが言った。これからはそんな余地はないのですよ。これからは大臣がもう定期は上げませんよと言ってもあまり信用しません。そこで、まだ上げる余地がありそうないまの時期、その時期に初志を貫徹する。中曽根運輸大臣らしく勇往邁進するというふうでなければならぬのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  17. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私はまた一面、一たん決心したらてこでも動かぬというところがあるのであります。
  18. 野間千代三

    野間委員 あまりそれはうまくない。まあしかし、また、一たん決心するといっても、運輸審議会審議をしている段階で、運輸審議会の答申もあるわけです。ですから、そう早く百八十度転換の決心をしなくてもいいですよ。  これは余談にして、定期問題について、実は大臣にもう一回再考してもらいたい。認可の際に、慎重な検討をした結果の結論としての認可の方法をとってもらいたいものだ。いま国鉄なりでは、大企業というか、企業負担が多い、したがって、国民全体の負担は少ない、こういう論理でおりますが、私も実は調べてみました。上がってまいるのですから、各方面をかけ回って、大企業中小企業、私の承知している企業もだいぶありますから、それぞれ経理担当なりに尋ねてみました。しかし、企業のほうで持ち得る定期代はすでに限界だということなんですね。したがって、いままでの分については持っていってもいいけれども、今度上がった分については、これは別です、これは御本人負担をしていただきますという会社がだいぶあります。中にはやむを得ませんというところもありますけれども、これは全国的の比率になるかどうかわかりませんが、今回の分については、これは本人負担をしていただきますというふうに答えているところが大部分ですね。それから中小企業になると、現在すでに負担をしておらないのですから、特に零細企業など、あるいは美容院であるとか、相当な人員を使いながら個人営業というところは、ほとんどそれぞれに負担させていますからね。ですから、副総裁、これは総裁の持論のとおりには今度の場合にはいかないのです。結局これは生活費の、交通費負担の増加ということになってまいります。ですから、そういう方面からいってもだいぶ問題になるので、これは大臣、きのう伺いましたら、政務次官からのお答えで、生活保護世帯あるいはいろいろなそういう家庭からの通勤については現行どおり据え置くということがあったのですが、これらは上げ得ない。特に零細企業中小企業などは、なかなか選定がむずかしいでしょうけれども、そういう方面のこともやはり考慮をした政策を織りまぜる必要があるのではないか。私は、別にやっていいというのではなくて、定期値上げはすべきではないが、もしやるとすればそういう方面の配慮も必要じゃな  いかと思うのですが、いかがでしょう。
  19. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は実は拓大の総長をしておりまして、拓大の来年度予算をいま作成しておるのです。そこでやっぱり問題になりましたのは、定期値上げで職員や教授通勤料を上げてやるかやらぬかという、当面の問題でそういうものがきているわけなんです。そこで、いろいろ財政関係を調べると、どうも拓大のようなところでは必ずしも上げるわけにいかぬ。そうすると教授事務員負担になる、これもかわいそうだと、いまとつおいつ悩んでおる状況なんです。結局私は、この間水田大蔵大臣予算委員会で、二千四百円の免税点を上げるということ、あれを何とか努力してことし実現したいと実は思っておるのであります。身につまされておりますから……。
  20. 野間千代三

    野間委員 それは何も身につまされることも、心配することもないですよ。大臣の権限なんだから、拓大に行って、だいじょうぶだ、おれが引き受けたと言えばいいのですよ。まあいろいろ余談であれですが、そこで、大臣も言われるように免税点引き上げとかいろいろありますね。いろいろあって、総合的な方法によって支出部分を減らすという方法もある。しかし、それはやっぱり必ずしも定期に直接あるいは必ずそれが全部該当するとも言えないのですね。したがって、できれば直接定期値上げをしばらくおくということがいいのだが、きょうぼくがここで質疑をしたからこれがしなくなったというぐあいにはなかなかいきそうにないようだから、一応質疑としては、そういう状況にあるという——いまの定期問題は、割引率を引き下げればいい。いま問題の割引率というのは、実はその背景にある問題は、いままでとは違った様相になっていることだけは十分に承知をしておいていただきたい。その上に立って、認可をする場合には認可をする、そのためにもし収入減になるとすれば、それは政府としてどう措置するかという方向を考えながら、なお慎重な検討をしながら、最後の決断を下してもらいたいということでございます。これはひとつお願いをして、定期問題については以上で終わります。  次に、国鉄経営の基本の問題なんですが、きのうも少し触れたのですが、いま論議になっておりますように、国鉄経営がきわめて危険な状態にある、そうしてこの危険な状態を何とかしなければならぬというので、物価安定推進会議であるとか、あるいは運輸大臣がいま考えておられるいろいろなブレーンを通じてこの解決を求めたいという状態にあるわけですね。そこで、まず、きょう大蔵省のおえらい方がいらっしゃらないので大蔵省の意見が聞けないのですが、国鉄がいまそういう危機の状態にあるのは、ひとり国鉄だけの責任の問題でなくて、日本の第二次世界大戦後の経済の伸張、都市化等、激しい変化によって起きてきた問題ですね。しかも建設をしなければならぬ。そういうふうにいろいろな問題があって、それを解決するために、いま合理化であるとか、あるいは定期運賃値上げであるとかいうふうなことが問題になっておるわけですが、しかしこれだけでは当然解決がつかないというので、これは少し真剣に取り組んでもらいたい問題としては、きのうもちょっと触れましたが、フランスでは一九三七年に制定をして、一昨年改正をして、フランスの場合には、たしか収入の二一%ぐらいが国からの支出。西独の場合には一九五一年に法律を制定をして、これもやはり一七%ぐらいが政府からの支出であります。つまり、国鉄が運営する際に、政府と国会と国鉄との間に一つの基本を置いて、この部分は国としてやるべきである、この部分国鉄がやるべきであるということで、いわば双務的な関係をつくって、そこで有無相通ずるような措置をしているわけですね。これは大臣も御承知のとおりだろうと思います。これがすでに諸外国では十年から十五、六年前にこういうふうに行なわれておるわけですが、これはなかなか合理的な方法じゃないかというふうに私は思うのです。  そこでひとつ例として二、三質疑をしたいのですが、たとえば赤字線の問題です。最近各機関で国鉄の赤字線の問題がだいぶ問題になっておるのですが、最初に副総裁から、四十三年度に見込まれる赤字線と黒字線の比率といいますか、割合といいますか、そういうことをお答えいただいて、そうして大臣、この赤字線は廃止をしなければならぬ、廃止をする以外、あるいはひっぺがしてバスにかえる、代替輸送といいますか、そういうものにするとか、いずれにしても、赤字線問題というものは解決しなければならぬと思いますね。  そこで、たとえば西ドイツあるいはフランスの場合には、国鉄がこの赤字線は撤去しますというふうに申請をする、その申請について政府でもって検討をした結果、たとえば日本の国でもあると思うのですが、国有鉄道が持っている性格からすると、直ちにそれはひっぱずしていいというふうにはならぬのですね。政府のほうではそれはまずいですというふうに出た場合には、その赤字線からくる赤字の部分政府負担をするというふうになっている。これは大臣もきのう、そういう問題も検討しますと言っていますが、ただ単に検討ではなくて、一つの例として、たとえば赤字線の場合にはどうするのか、これは国鉄のほうでも赤字線対策委員会ですか、副総裁委員長ですかね、設置をして、赤字線をはずそうとしているのかどうか、まずその二つをお答えいただいて、次に大臣から御答弁いただきたい。
  21. 磯崎叡

    磯崎説明員 四十三年度の線別の数字はまだ詳しく出ておりませんが、四十二年度から大体推定いたしますとー番問題は、四十三年度でいわゆる職員のベースアップがどれくらいかということが、実は赤字線の赤の一番大きな原因であります。と申しますことは、赤字線におきましては、実は収入がほとんどふえる見込みがないわけです。したがって、経費の膨張がどの程度でとまるかによってきまると思いますが、一応それらをいままでどおりといたしますと、大体全体の黒字線が二八%、線数で申しますと約十四線、これは一線ぐらい赤字に転落するかもしれません、黒字線が十四です。約一六%であります。キロ程で申しますと三千三百キロでございます。これは推定でございますが、赤字線に転落する面があると思います。したがって、逆に赤字線が八四%で約一万七千五百キロということになるわけでございます。この赤字線のうちで、さっき申しましたとおり収入のふえる見込みのない線、たとえば人口がどんどん減っている、工場もほとんどないという線が相当ございます。これが一時問題になりました六千キロくらいでございますが、これらは一々どの線を当たってみましても、ほとんどもう収入がふえる——収入と申しますよりも輸送量がふえる見込みがない、旅客貨物も減っていくという線が約六千キロございます。これはネットに、いま申しました人件費の上昇がそのまま赤になってはね返ってまいります。それからその次に同じ赤字線でございましても、たとえばどんどん機械化するとか、あるいはCTC化などによりまして人を減らして、そうして本線筋に人を持っていって赤字線の経費を減らす。逆に国内全体の輸送量がふえてまいりますと、そういう幹線の赤字線、たとえば北陸線とかあるいは山陰線とかいら、いわゆる幹線の赤字線は通過する輸送量がふえてまいります。それはしたがって、ある程度見合いでいける。ですから合理化、機械化、近代化を進めれば、黒字にはならないけれども、ある程度赤字の絶対額を減らすことはできると私ども考えております。しかしそれを総合いたしましても、赤字線といたしましてはやはり全体の八四、五%、キロ数で申しまして、さっき申しました一万七千五百キロくらいが、どうしても赤字じゃないかというふうに考えられるわけでございます。  二番目の御質問の、それをすぐはがしてしまうかどうかというお話でございますが、これは昨日から大臣予算分科会でいろいろお話しのとおり、現在地方の方々が、幾ら人口が減ろうが、工場がなくなろうが、とにかく利用しておられることは事実でございます。したがって、これを無条件で無制限に撤廃するということは、これは実際問題として非常にむずかしいことだと思いますし、また、たとえば北海道の鉄道についていえば、これは明治何年、開闢以来ずっと赤字でございます。したがって、赤字になるがゆえにやめるという単純な考え方は間違いだと思います。よく線別に産業需要、経済需要を見た上で、しかもほかの輸送機関の状況、道路状況等も十分見た上で、その線路をどうするかということを考えるべきだと思います。一時、数年前に、赤字だからすぐはがすんだという非常に単純な議論をして世間を騒がせましたが、いまはもう少し研究を、いたしまして、そういう単純な議論はいたさないつもりでおります。しかし、最終的にはやはり鉄道の守備範囲でないものは、鉄道からほかのものに譲るという時節が遠くないうちに来るのではないかというふうに思っております。一線一線非常にやり方が違ってこなければいけないというふうに考えております。
  22. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いま国鉄総裁からお答えしたとおりと思います。現にいまある線をひっぱずすということは、社会的影響も非常に大でありまして、これは非常に慎重にやらなければならぬと思います。国鉄の使命自体が公共輸送という面を持っておりますので、必ずしも経済的合理性だけを追求できない面があると思います。しかし、といって赤字を放置するわけにもまいりませんので、将来出てくる赤字の新線は極力これは防ぐようにしなければならぬ。また、現在出ている赤字線は健全化あるいはそれを改革していくという点について、いろいろ考慮して措置を講じていかなければならぬ、そういうふうに思います。現在の措置につきましては、バスに代替できるものとかいろいろな点も考えていきまして、あまり過激でない手段をとりながら改革していく必要があると思います。
  23. 野間千代三

    野間委員 大臣、いま国鉄は制度的に独算制になっているわけですね。ただ、国鉄の人たちは公共性ということを負わされておるもので、いま副総裁の言うように、単純にひっぺがしません、こう言っているわけだ。しかし、今年度予算のように、いま国鉄がきわめて危機的な状態に置かれていて予算を組んであるということですよ。たとえば四十年に第三次計画が終わるころには、借金が三兆円になるということなんです。だから、そのときにはもうすでに償却前赤字や何かになって借金の能力もないということになる可能性があるわけですね。それを何とかせねばということになってきたわけでしょう。したがって、今年あたりは、去年もそうだったんだが、国鉄経営を何とかしなければならぬ。そうなってくれば、私は国鉄の立場では少なくとも見込みがなさそうだ——そこは人件費に責任があるようなことをおっしゃるけれども、人件費の責任じゃなくて、そこに線を引かした者の責任です。それはやっぱり政治だ。公共性という政治見込みがあっても、いま当分はどうも赤字であるということであれば、バス輸送にかえられれば黒字になるかもしれないと考えれば、国鉄のほうではさっぱりと——何も変なおとなになることはないと思うのですね、ばんばんはずすというふうに言って差しつかえない。これははずさなければ経営が成り立ちませんと言ってはずせばいい。何も副総裁、わざわざおとなになることはない。二、三年前のとおりでいいんです。ひっぺがすひっぺがすと言って、あとはどうしてくれるのかということは大臣の責任、政府の責任でしょう。政府の責任までやらせることはないでしょう。大臣、そういうことでしょう、問題の性質は。
  24. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 かってにひっぺがすというわけにはいかぬと思うのですが、赤字線の処理という問題はやはり一つの当面する大きな問題で、逃げるわけじゃありませんが、運輸省の財政再建確立の委員会あるいは今度物価安定推進会議で提唱しておる国鉄財政に関する委員会等で真剣に究明していただきまして、その答申を得て、そういう世論をバックにして解決策を推進していきたいと思っておるのであります。
  25. 野間千代三

    野間委員 これは赤字線の問題が一つの特徴点だけれども、ほかにも御承知のように公共負担の問題であるとか、あるいは貨物の暫定割引の問題であるとか、あるいは重要貨物がわりあいに低率で輸送されておるとか、国鉄がいま負わされている問題がたくさんある。そこで、四十三年度はこれからで、次の予算の時期まで多少時期があるけれども、少なくとも四十四年度予算を策定するころまでには、国鉄問題は決定を見なければならぬですね。それはやはり六月ごろでしょう、七月から次の予算が始まるわけですから。しかもさっきの話で、七月ごろには日本経済情勢も大体わかってくる。そこで、これはいろいろな審議会あるいは物価安定推進会議等の機関で論議をしてもらうことよりも——最近審議会等いろいろな機関が多過ぎる——大臣なら大臣が、つまり政治家が確信を持ってこうすべきだというふうに考えて、それを政策に移していくようにすべきだと思うのです。そういう立場に立って、国鉄問題は早急のうちに解決する必要があると思うのです。  そこでいまのような問題で、たとえば国鉄政府との間に、赤字線の廃止の問題であるとか、あるいは公共負担政府負担すべき問題とかが起きた場合に、それは政府のほうで当然負担する、つまり政府国鉄負担区分を明確にしておいて、これは政府のほうの負担すべきことだと思うことは、大臣のほうで政府負担として決定をしていく。問題は多少微妙な点もあるから、争いになる部分もあると思うのです。聞くところによると、西ドイツのような場合には、そういう紛争が起きた場合には裁定者というか調停者というのですか、そういう機関もちゃんとつくって、そこが最終的に裁定をしていくという手続がされているそうであります。そういうふうな構成で国鉄の公共負担、赤字問題等も解決をしていくという政策を出していくというお考えはございませんか。
  26. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう点も含めまして、いろいろ委員会審議して答申を出してもらいたいと思っております。
  27. 野間千代三

    野間委員 簡単なお答えなんですが、含めてということなんですけれども、どうですか、大臣、これから検討しようとすることを指導するという意味で、指導的な立場に立って、運輸委員会大臣がこれこれこういうことはぜひしたいというふうに考えをはっきりして、そして審議会なら審議会に聞くというのがいまの時期じゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  28. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あまり言い過ぎますと、またラッパだとかスタンドプレーだとか言われまして、私は大いに自粛しなければならぬと思っておるのであります。しかし、国鉄につきましては監査委員会の報告の指摘の各項目がございました。あれもなかなかよくできておると思いますが、それ以外にもう少し広い社会的分野から洗い直してみて、国鉄財政というものを考えてみる必要はないかどうか。たとえば、国鉄は非常に手足を縛られておる。そのために、もっと収益率を上げたり仕事がやれるのじゃないかという部面もあります。極端な例かもしれませんが、私が例で申し上げたのは、かりに民鉄みたいにやらしたら、北九州と博多の間は、昔ペンペン草が生えていましたが、あんなところはなくなってみんな住宅団地になったりなんかして、国鉄ももうかるし、地元も繁栄しているというところがあるかもしれません。しかし国鉄なるがゆえにそういうことはできません。縛られておる部面が、ほかの面でもいろいろありますね。そういう部面を少しほぐしてやったらどうかということも、長期的に考えてみていい部面であります。  あるいはさらに、思いつきみたいなことですが、国鉄納付金なんかの問題も、あれをとられると市町村がすぐ困る。自治省や市町村を背景にする議員さんが非常に圧力をかけるもので、せっかくできかけたものまでもできなくなる。そういうこともあるわけです。しからば、そういう関係の市町村に、利用債か特別債か知りませんが、納付金の分だけ買ってもらったらどうか、これも一つのアイデアですが、そうすれば、向こうはともかく減らしたのじゃなくて、その分だけ買わされたということですから、権利は持っているわけです。少なくとも黒字の市町村くらいはそういうことをやってもらったらどらかとか、そういうふうにいろいろのアイデアはあるのです。ありますけれども、そういう幾つかのことを基本的に自分で考えてみて、こういうことは御検討願ったらどうですかというようなことも委員に申し上げて検討もしてもらおう、そう思っているのです。決して、委員にまかせっぱなしで、その答申を隠れみのに使ってやろうというようなさもしい考えはございません。
  29. 野間千代三

    野間委員 それでは、さもしい考えでないようにしてやっていただくようにしたいと思います。ことしあたりに、きちんと国鉄問題の方向を示しておかなければならぬと思うのです。きょうはこの程度にしておきますが、今後国鉄の財政の危機をどう打開するかという問題は、運輸委員会の重大な問題だろうと思いますから、今後も引き続いて討議を進めていきたいと思います。  次に貨物の問題ですが、副総裁貨物のシェアがだいぶ減ってきているのですね。四十一年度には国鉄のほうが二七%で、トラックのほうが三一%くらいになったのですが、そういうふうに四十年ごろから逆転をしております。これは基本的には、よくいわれている貨物輸送の担当部分をきちんとするという方向も一つあるだろうと思います。しかし、それは、言ってそう簡単にできるものではない。実情を見ると、たとえば鋼材が七十六億、石炭が二百億、砂利や砂が二十一億、化学肥料が七十三億、セメントが百十二億というふうに、大口の主要貨物といわれているものがある。これを見ると、鋼材は賃率が基準のところ、つまりとんとんのところになっている。大口である石炭あるいはセメント等が基準のところで、あまり収入としてはふえない。そして、砂利、石灰石、化学肥料、こういう方面賃率の種別が四のところでありますから、安いほうとなっている。したがって、この国鉄の大量輸送しておる部分が基準ないしはそれよりも安いというところにも、やはり問題があるのじゃないか。私は貨物引き上げろとは言っていませんが、そういう構成そのものに問題がありはしないか。多少、これは政府の重要産物の輸送という方面からくる政策的な問題があるかもしれませんけれども、しかしこれはやはり貨物輸送として問題がありゃしないかというふうに思いますが、その点。それから最近そういうこともあって、地域的な特別急行ですか、そういう方式も使われている。これは生鮮食品がおもですが、使われている。いま申しましたような重要産物についても直結輸送、一貫輸送ということで、だいぶ検討をされておるようです。運輸省のほうで貨物輸送の一貫体制についていま試案が検討されておるようですが、これは国鉄のほうでも御承知と思いますけれども、しかしこれは相当な設備も必要であります。この基地をつくったりしますから、相当なことが必要でありましょう。しかし、少なくともこういうくらいのところまでやっていかないと、国鉄貨物輸送伸びていかないというふうに思うのですが、貨物輸送の今後の方式、あるいは具体的にどういう資金的なことも考えながら検討されておるのか。
  30. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいまの御質問非常に広範にわたりますので、多少長くなるかもしれませんが、最近の国鉄貨物輸送の現状をまず申し上げまして、それから今後の考え方を申し上げてみたいと思います。  まず何と申しましても、国鉄貨物輸送が最近急激に伸びがとまったという一番大きな原因は、石炭でございます。毎年石炭が三百万トンくらいずつ減送してまいります。石炭のトン当たり運賃が、約五百円でございます。ほうっておきましても十五億から二十億くらい、貨物収入が減ってまいります。これが石炭が一トン減炭いたしますと、国鉄輸送量としては二トンないし二トン半の減送になります。すなわち、山元で一トン減送し、京浜なり阪神へ揚がってまいりましてまた一トン落ちて、また中間で半トン落ちるということで、約二トン半くらい減送いたしますので、ここ数年間で国鉄の石炭輸送量はついに三千万トンを割るだろうというふうに考えられております。この石炭の減送による穴をどう埋めるかということが、一つの大問題です。  もう一つは、先ほど先生のお話しの運賃の問題でございます。御承知のとおり、昭和二十三年にできました国鉄の現在の運賃法は、財政法第三条に基づく法律でございまして、いわゆる国鉄の運賃を税金と同じような形でながめたときにできた、全く国鉄が、電電公社などと同じように、陸上交通を独占していた時代の法律でございます。したがって、財政法からいまの運賃法ができている。非常に企業的に見たら、これほど奇形な形がないというほど、いまの運賃法の根拠法が財政法でございます。したがいまして、貨物運賃もいまおっしゃるとおり四等級に分かれておりまして、値段の高いものほど運賃をよけいに払うという制度になっておりますので、一、二、三、四等の一等のほうが高いわけでございますが、一等級と申しますのは、たとえば綿製品だとか絹製品だとか、酒のいいやつだとか、こういう運賃の負担力があるように見えても、非常に足の早い貨物で、ぐずぐずしていてはだめだ。それからトラックのほうがずっと運賃が安い貨物。それから二等級は、先ほどおっしゃった鋼材なんかは大体二等級でございますけれども、二等級が基準等級の一五%くらいであります。この一、二等級で大体全体の輸送量の約二割でございます。問題は、石炭を含めた三等級、これが大体四五%くらいでございます。この三等級の基準になる貨物の運賃が一番問題でございまして、これが全体の貨物収入を左右するわけでございますが、いま申しました通り、運賃自体がいわゆるコスト主義でなしに、その貨物負担力でやっておりますので、非常に三等級のところの、基準になる貨物運賃が全体のコストをカバーできないようにできているということでございます。もちろん、これは距離の関係がございますので簡単に一がいには申し上げられませんが、大体二等級の貨物で申しますと、たとえばくだもの、これがトンキロ当たり三円三十二銭になっておりますが、現行で昭和四十一年度で三円八十銭から三円九十銭くらいでございます。したがって、三等級貨物においてすでに足を出すということになっておりまして、したがって、三等級運賃がコストをカバーできない限り、この鉄道の貨物運賃というのはどうしても原価が償えない。まして四等級貨物のたとえば米、麦、それから肥料、木材といったほんとうの国民の生活必需品につきましては、これはコストから一応割り引きなしで、運賃率の上だけから一割引いておりまして、これからさらにいろいろ政策的な割引がございますが、そういう政策割引なしにいたしましても、基準等級から申しましても一割の減になっておりますので、これらは当然コストを償わないわけでございます。ところがトラックは大体御承知のとおり、貨物の性質によらずに、容積とか重さだとか一本でまいりますので、結局鉄道の一、二等級のいい貨物は自然にトラックに流れて、三等級ないし四等級の貨物が鉄道に残る。したがって四級貨物と申しますのは、ほとんど非常に足の長い、魚だとか野菜だとかあるいは木材だとか、こういうものがいつまでたっても鉄道に残る。結局鉄道として非常にほしい高級貨物は、ほうっておいてはトラックにいってしまう。黒でもって赤のほうをカバーしていたその黒がだんだんなくなってしまいますので、自然に貨物輸送としては赤字がふえてくるということでございまして、結局これはトラックの発達と、ことに同じ運輸省の中でございますが、最近の港湾の非常な整備によりまして、いわゆる三級貨物も徐々に海に流れつつあるというふうなことで、鉄道の貨物輸送につきましてちょうどいま、ここ一、二年の間に根本的に考え方を変えませんと、日本の国有鉄道はむしろ貨物輸送のほうから参ってくるということが、実は目に見えておるような気がするわけでございまして、先ほどおっしゃったとおり、今度の計画におきましては、貨物輸送の近代化と申しますか、そういうことにつきましては相当金をかけまして、約五千億くらいの金を入れたい、こういうふうに思っております。  こまかいことは省略いたしまして、これでいたしますことは大体三つございまして、一つは何といっても鉄道ではドア・ツー・ドアの輸送ができない。どうしても両端の輸送がなければいけない。したがって、自動車と結合した輸送をぜひやっていきたい。われわれのほうでは結合輸送といっておりますが、自動車とどうしたらタイアップして輸送ができるかということで、これらの典型的なのが例のコンテナでございます。これは積みかえなしで、自動車でもってドア・ツー・ドアでできるというコンテナ輸送、あるいはいろいろ新しい方法がございますが、結合輸送一つ。これによって、一番鉄道の欠点であるドアまでいけないということをカバーする。これが一つ。  もう一つは物資別に——いままでは何でも、みそもくそも一緒にして有蓋車か無蓋車にたたき込んだというサービスの悪い輸送をしておりましたが、最近は物資別に、たとえば自動車を輸送する場合にはこういう車を使う、あるいは食糧、小麦粉を輸送する場合にはこういう車を使うとか、特殊の車を使いまして、なるべく積みかえの費用がかからないようにする、また荷づくりも要らないようにするということによりまして、物資別に適合輸送をする。これにはどうしても、発着における相当な貨物施設が必要でございます。たとえば、ホッパーをつくるとか、あるいは自動車なら自分で自動車が走って貨車に乗れるような設備をつくるとか、いろいろな設備がございます。こういう物資別の適合輸送をやる。もう一つは、さっきおっしゃったスピードの問題でございます。国鉄輸送は操車場の中で非常に時間がかかっておりますので、これをなるべく短くする。そうしてある貨物の拠点駅から拠点駅へなるべく早い速度で送るということによって、荷主に発着時間を明確にする。いままでの鉄道輸送は、お恥ずかしながら、発駅を出たらいつになったら着駅に着くかわからないというような状態でございました。これでは現在の商取引ではとても間に合いませんので、最近は大体三分の一くらいはちゃんと着時刻が明確になって、それが取引に乗るという形になりました。そういった三つの方向を考えまして、主として貨物の拠点駅の整備、あるいはコンテナの整備、あるいは特殊貨車の整備ということに全力を注いで、現在作業をしておる最中でございます。
  31. 野間千代三

    野間委員 大体いま国鉄努力されておる貨物輸送の問題は理解がつきますが、いま副総裁の御説明のようにいっても、実際には国鉄のほうに貨物が大幅に移ってくるということにはなかなかなりかねるような状態でございますね。そうなってくると、そこで大臣、いつもこれは問題になるのですけれども、国鉄貨物の減収の分が旅客輸送で償われていくというような状態です。しかも、運賃値上げ状況を見ても、いつも、旅客のほうの圧力はわりあいに少ないので、運賃値上げが、旅客のほうに重点になって、貨物のほうはときどき国鉄が申請をしたよりも実際には率が下がるというのがいままでの傾向のようです。したがって、せっかく国鉄努力をしても、貨物は低い料金でやっていて、しかも自動車のほうにシェアをとられるという実態のようです。これはいつでも問題になるのですが、国鉄経営一つの重要な問題として、国鉄が分担をすべき貨物の分野と、長距離トラックあるいは地場運送というようなトラックが受け持つべき貨物の分野というものが、おのずからあらわれてくるのじゃないか。いろいろの調査をしてみると、国鉄危機を奪回するために、そういう方面のことも手を加えながら、財政問題とあわせて国鉄の運営の問題として、そういう方面を国の力で樹立をしながら、国鉄貨物輸送を助けていくという政策がとられておるようですが、大臣、これからの国鉄の運営の問題としてどうお考えになりますか。
  32. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 昨年初めて貨物の陸上道路輸送というものが鉄道輸送をオーバーしたという現象が出まして、欧米にあるような現象が日本国鉄にも出現したわけであります。  国鉄経済、財政を健全化するためには、貨物の面におきましてもやはりめんどうを見てやらなければいけないと思います。陸上トラック輸送のみにたよるのは簡便ではありますけれども、国全体として見た場合に適当であるかどうかは、検討すべき余地も多々あるように思います。そういう面から、国鉄が常に貨物に関して一定量の輸送を引き受けるようにある程度配慮してやることは、国としても必要であると思いますので、そういう点は検討していきたいと思います。
  33. 野間千代三

    野間委員 これもなかなかむずかしい問題ですから、運輸省のほうでも試案があるようですから、それができ上がってまいりまして正確になりますと、また論議をする機会があると思いますので、これはぜひいま大臣が言われたようなことで十分に検討していただきたいということを申し上げて、時間もありませんので、そういう本格的な問題については、いずれまた機会を見てそれぞれ十分に論議を進めてまいります。  最後に、いま進めている合理化の問題について少し御質問申し上げたいのですが、いま世にいわれているいわゆる五万人の合理化ということが行なわれております。これはたくさんありますから、その中で、これはあるいは労働組合との間の交渉のことにもなるでありましょうが、どうもかつて行なわれておりました合理化は、国鉄の機械化であるとかいわゆる近代化であるとかいうようなことが主になって行なわれておったようですが、今度行なわれるこの五万人合理化の中にはたいへん無理な問題があるような気がするのです。たとえば、二人乗務の問題にしても、長距離の乗務員は、機関士と助士がそれぞれ二名乗って、左右の状況を見ながら機関車の運転に従事している、そこで初めて安全が確保できる、私もたまたま、「雲仙」であるとかその他の急行の運転台の近くに乗ってみて、特にそういうふうな感じがするのですが、そういう運転の中枢部分国鉄の安全輸送の中枢部分に、いま、合理化という名目で人員の削減が行なわれるという傾向が、今度の五万人合理化の場合には相当大きいというふうに私には見れるのです。それでいろいろたくさんございますけれども、特徴的な問題の一つとして、全国にある、千人ばかりの職員がおります電修場の問題なんです。林常務が担当のようですから、副総裁なりあるいは林常務のほうからでけっこうですが、信号機あるいは踏切警報機、これは国鉄の安全のためにきわめて重要な部分ですね。これはだれが考えてもそうであります。これは国鉄の責任で信号機あるいは警報機が保守されておるところに運転士さんにしてもあるいは国民にしても、それをきちっと守って安全を確認しながら国鉄の運営が行なわれているという部分であることは、間違いないと思うのです。それが今度は、保守の部分あるいは検査、修繕部分まで民間に委託をするという政策がとられようとしておると伺っておるのですが、(「むちゃくちゃだ」と呼ぶ者あり)これは、私は、いまことばがあったように、国鉄の安全輸送の面から見るときわめて重要な問題じゃないか、むしろ危険な問題じゃないかと思うのです。これは、千人の問題なんです。私も実は名古屋の電修場へ一日行ってみて、継電器あるいは警報機の制御子等の部分についていろいろ見てまいりました。たとえば問題になりますのは、本社のほうで出しております「信号の保守情報」という情報活動があります。これは部内で出している冊子ですが、「信号の保守情報」というものが毎月出されております。そのうちの四十一年一月に発行した「信号の保守情報」本社電気局発行の書面を見ても、きょうは持ってまいりませんでしたけれども、それの四八ページに第四表という表がついております。その第四表を見ると、検査をした結果不良であって、それを修繕をしなければならぬという件数が、総件数として年間累績が三百六十九件というふうに出ております。この三百六十九件の内訳なんですが、信号の、これは継電器でありますけれども、継電器は四年に一回検査をするわけですね。四年に一回が検査の周期になっております。ところが三百六十九件のうち、新しく入ってきて四年の周期になっていないにもかかわらず修繕をしなければならなかった不良個所が生まれてきた件数が二百四十五件であります。周期が回ってきたので検査をした結果直した部分が、百二十四件というふうに発表をしております。これ一事を見てもいかに——別に私は民間の技術を云々するのではないのでありますけれども、しかし、それだけ精密を要する信号の継電器、装置なんですね。そういう精密さがあって初めてあれだけの過密ダイヤに対処できるということなんだろうと思うのです。したがって、こういうふうに新品ですら二百四十五件も不良部分が起きてくる、これを全部民間のほうに委託をしてしまう、国鉄の技術者がそれを点検をしないということになるのは、だいぶ問題がありはしないか。エロクトロニクスというふうに電子でやるきわめて精巧な継電器にいま移りつつあるということでございまして、私は、それも調べてまいりました。これがいわゆる無接点断続継電器というやつですね。つまり接触をしないというのでございますけれども、きわめて精巧であると考えたものでも、四十二年の四月から四十二年の一月までの間に、どのくらいの総数の中からかはわかりませんけれども、少なくとも七十台、これは設計がまずくて直さなければならぬというので、国鉄の電修場が改造をした。それから部分が悪くなったというのが三十一台あるということですね。ですから、いかに最新式な継電器になった部分でも、これだけの不良部分が起きているということであります。したがって、こういう状態で、この電修場を廃止して一切民間に委託してしまうということは、私は国鉄の安全輸送の中枢部分を、もちろん民間の技術が悪いというのじゃありませんけれども、国鉄の安全を担当するものとしては、やはり国鉄そのものが担当して、もう工場の修繕部分もそうたくさんは要らぬようですから、ちゃんと整理をして、建物も集結をしてきれいな工場にして、国鉄がやはり担当していくべきものじゃないか、かように思っておるのですか、いかがでしょう。
  34. 林武次

    ○林説明員 いまお話のございました電修場は、電気機器の解体検査並びに修繕を行なうことを目的としまして設置されたのでございますが、最近の電気技術の進歩に伴いまして、現在では電力関係の機器あるいは通信関係の機器及び一部の信号機器は、その解体検査並びに修繕業務をすでに外部の技術力を活用してやっております。現在電修場に残っております業務は、継電器それからモーターポイント等の信号機器の解体検査でございます。それから東海道新幹線におきましては、すでにこれらの信号機は全部外部の技術力によって解体検査をやっておりまして、最近の実績を見ましても、この件数は一時に比べますと五分の一くらいに減っております。そういうことでございますので、外部にこれを出しましても、技術的に見て、あるいは保安的に見まして何らの心配もないと思います。いま御指摘のように、新品の信号機器はすべて信号メーカーから購入しておりますので、その購入したところにアフターケアという形で解体検査に出す。しかも、その受け取りの場合には責任を持って国鉄の職員がその検収をやるという体制は、もちろん残しておくつもりでございますので、保安的に見て心配はない、こう思いますし、いま先生のお話のございましたように、これらの信号機器が相当エレクトロニクス化されておりますので、非常に新しい機械になっておりますので、従来の機器のように解体検査の必要はほとんどございません。むしろ故障探知装置というものをつくりまして、故障が起きたら直す。それで、電子機器は、大体うちにおいては二重系、三重系をもって使っておりまして、片方がこわれますと自動的にこわれていないほうへ切りかわるという装置でございますので、こわれたものを取りかえるという方式をとりまして、こわれたものはメーカーに送ってこれを直してもらうということであれば、十分安全は確保できるというふうに私どもは考えております。
  35. 野間千代三

    野間委員 いま御答弁があったのですが、そういう取りかえですね、それから故障が、信号機の事故だけで、やはり信号の保守情報という書面によると、これは一カ月に四千八百七十分も遅延があるわけですね。そのうち、風や何かで信号機が痛んだために遅延をした部分と、それから機器が悪くて遅延をした部分とを比較してみると、四千八百七十分のうち、件数でいくと半々です。つまり、他の条件から生まれてきた信号機の故障によるのが四十七件、信号機器そのもののことから起きてきた事故が四十三件、大体半々ですね。こういうのがいまのところの実態なんですよ。これが、いま林さんの言うように急速に装置を取りかえる、あるいは故障が自然に探知できるということに、それは体制としてなり得るのですか。いまエレクトロニクスのほうもまだそうたくさんじゃないでしょう。古いほうがまだたくさんついているわけですね。したがって、そういう体制はいつごろとれる予定なんですか。
  36. 林武次

    ○林説明員 エレクトロニクス化は、いまかなり急速に進めておりますが、すぐあした、あさってにできるというものではもちろんございません。したがいまして、もとのいわゆる接点を持っておりますリレーがまだ相当数残っております。これは各信号メーカーで製作をしますので、そこへ解体検査をたのむという形でやっております。しかし、先ほど申し上げましたように、でき上がったものの受け取り検査につきましては、国鉄職員がやるという形をとっております。
  37. 野間千代三

    野間委員 そういうことだから、常務が言うようにそう直ちにはいかないのですよ。ところが廃止するのは、たしか四十二年に廃止になっていくわけでしょう。したがって、民間の工場でいま電修場がやっているような精密な作業をやらなければならぬというふうになるわけでしょう。そうすると、民間のほうではいま新しくつくっているだけですよね。新製をしているわけです。新製をしている技術と修繕をする技術とでは、これは本格的に違うわけですよ。しかも民間のほうでは修繕なんというものはどこでもやりたがらぬですよ。したがって、はたして民間の工場がいま電修場が受け持っているような検修部分を正確にやれるかどうか、そういう体制がはたしてとれるのかどうかという点は、これは相当疑問がある。しかも、おたくのほうの試算によると、この電修場をなくしたことによって生まれてくる利益は、とりあえず一億だ。経済効果は四十四年度で一億三百万円であるというふうに、ちゃんと資料としてお出しになっている。たった一億三百万円を四十四年度にようやく何とかなりそうだということであって、これほど危険な——国民が信頼をしている信号あるいは踏切の基本になっている継電器、これを民間に委託をする。それでは、民間のほうの工場の体制はどうですか。
  38. 林武次

    ○林説明員 いま先生のお話のございました一億三百万円という数字は、私のほうの計算とちょっと違うと思いますが、私のほうでは二億五千六百万円という数字でございます。現在直営の費用が十四億九千五百万円、約十五億でございますので、大体一五%ぐらいの経済効果を見込んでおります。  それから外注する先は、いま私のほうで出しております信号メーカーは三社でございます。いま先生のお話では新製と修繕とは違うではないかというお話でございますが、新製のものをつくっておりますので、十分こちらでも指導はいたしますが、検修はできるものと確信をいたします。
  39. 野間千代三

    野間委員 二億五千万なのか一億三百万なのか——一億三百万というのは私実はおたくのほうの交渉上の資料としてとってきておるので、これは照らし合わせてもいいのですけれども、しかし二億にしても一億にしても、金額は安全という視点に立って見れば、そう重要ではないのですよね。私もこの製作工場におったこともあるし、国鉄の修繕工場にもおったのですけれども、修繕の技術あるいは会社側から見た修繕という体制と、それから、いまコンベヤーシステムによって自動的に進んでいく製造過程とは、全くこれは経営上から見て違うはずであります。それは違います。したがって、これは信号機をつくっている京三なら京三という会社が新製を出していく技術と、それから製作の流れの中にはたして修繕が入れられるかどうか、これは入れられないでしょうね。全然別の部門として修繕部門をつくらなければならぬということになるのは当然じゃないですか。もし国鉄が二億何千万の利益があればあるほど、民間のほうはその分だけ利益が減るわけですね。そういうものをはたして利益を追求すべき民間がやるかどうか。したがって、想定できるのは、何年分か何カ月分か、周期の来たものを修繕をしないでためておいて、いつか修繕をするという程度のことじゃなかろうか。しかも、会社のほうでも効率を見なければならないから、新しく人間は雇えない。そうすると、それはやはり新製種、新しい品物をつくっている技術の一部をさいてその部分にときどき回すという程度のものではなかろうか。これは、だれでも民間の企業経営している者にすればそういうことになろうと思うのです。もし事故が起きれば、その会社の責任というよりも国鉄の責任なんです。列車がおくれても脱線をしても国鉄の責任なんですから、そこに問題があると思うのです。ですから、まだほかにもたくさんあるけれども、時間がないのできょうはこの一点だけにしておきますが、副総裁、いま十数分の話だけでも、電修場という問題はたいへんな問題だと私は思います。しかも、それがどこかの部分の問題ではなくて、国鉄の走っている、しかも重要な信号機であり、あるいは踏切警報機なんです。そこの根元についている継電器というきわめて重要な問題です。国鉄経営に苦しんでいらっしゃるから、そういうこともお考えになるでしょう。なるでしょうけれども、少なくとも国民の負託にこたえておる安全輸送の面での部分は、これはもう少し慎重にお考えをいただきたいというふうに思うのですね。いかがですか。
  40. 磯崎叡

    磯崎説明員 昨日も総裁が申しましたように、国鉄の機械化、近代化につきまして、安全輸送というものはそういう施策をする当然以前の問題だと考えております。したがって、われわれももちろん輸送関係の責任者でございますので、安全を犠牲にして政策を考えるということは、これは全くあり得ないことだというふうに私ども自分で確信いたしておる次第でございます。電修場の例をとりましても、大体国鉄というところは歴史がそろそろ百年になりまして、昔、まだ日本の産業があまり発達しないで、外国品を輸入してやっておった時分の実はくせが抜けない面が相当ございます。何でもかんでも自分でやらなければ気が済まない。ほかの技術はだめなんだというふうな点がなきにしもあらずでございます。しかし御承知のとおり、たとえば大事な車両、車自体は全部外の人がつくって、そしてらちはそれを動かすという形になっております。また修繕はうちでやっておりますが、その他のたとえば東海道新幹線につきましても、これは全部国鉄自身がつくったのではなしに、うちの技術者と民間技術者とが協力してできたというふうにも考えていいと思います。日本の産業の力をそう軽視してはいけないし、また軽視すべきでないと私どもは思います。しかし、いろいろこういった問題につきましては、十分安全という点を考えてやるつもりでございます。この問題につきましては私ども責任を持って、外に出すということは安全上問題ないというふうに確信しておる次第でございますが、先生の御注意も十分考えました上でこの問題を進めてまいりたい、こういうふうに思います。
  41. 野間千代三

    野間委員 これで終わります。  副総裁、大体いまのお答えでいろいろお考えをいただけるというふうに思いますが、最後にもう一回申し上げますと、これは会社の名前は差しつかえますから申し上げませんが、たとえば二つの会社があって、その二つの会社の継電器あるいは踏切制御子、そういうものの電修場に入ってきたものを一〇〇とすると、そのうち定期検査で見たものは一〇〇のうちの二〇%、他は全部——たとえば三十八年のものは三十九、四十、四十一、四十二、四年ですね、したがって定期であります。そうでなくて、三十九年のものが二六%、四十年のものが三八%もあるのであります。これがA、BのうちのたとえばAの会社を見ると——この会社は多少問題があると思いますが、そこでこれは会社を少し御監督いただきたいのだが、Aという会社を見ると、三十八年度分は十三%にすぎません。そうして四十年度分が実に四六%あるのであります。四十年までが入るということはおかしいですね、そう思います。そういう実態ですから、ひとつ電修場だけでなくて、国鉄の安全にきわめて関係のあるものについては、そういう方面も実は詳細にお調べをいただいた上で、たとえば民託に移す場合でもその時期を考えるとか、あるいはいま継電器でいけば、エレクトロニクスの継電器に全部移った場合は別でしょうけれども、そういう国鉄の作業の機器の移りぐあいなども見ながら検討していくべきではないか。もちろん検討されていると思いますけれども、十分にひとつお考えをいただくことが必要ではないかと私は思います。それだけひとつお答えください。
  42. 磯崎叡

    磯崎説明員 国鉄の業務の外部委託につきましては、ことに技術的に非常に精度を要するものにつきましては、ただいまおっしゃったとおり、必ずしも国内メーカーの技術的レベルが一致しているとは思いません。したがって私どもといたしましては、決して一社だけでなしに、数社に競争さしてお互いに切瑳琢磨させるということによって技術を上げていきたいというふうにも思っておりますが、いずれにいたしましても、保安に直接つながる問題でございますので、外注の能力、ことに技術的レベルの問題につきましては十分検討いたした上で仕事を進めてまいりたい、こういうふうに思います。      ————◇—————
  43. 大野市郎

    大野委員長 次に、海運に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。久保三郎君。
  44. 久保三郎

    ○久保委員 大臣はお疲れのようでもありますので、簡潔にお話を申し上げたいと思います。  この前予算委員会の席で手短にお話を申し上げたいわゆるILO百十四号条約、すなわち漁船員の雇い入れ契約に関する条約の問題でございます。本件については政府部内において、今国会に現状のままで批准を進めよう、こういう計画がおありだそうであります。現状のまま批准をするということは、いうならば船員法第一条に規定しているように、船員法から適用除外になる二十トン未満の漁船の船員については、本条約適用なしというようなことで進めようとしているようでありますが、少しく問題を船員法に移して申し上げますと、船員法では御承知のように五トン未満の船あるいは沼あるいは湖、川、港の中、そういうところを航行する船はまず第一に除く。それから、これは三十八年かと思いますが、漁船については三十トン原則であるが、政令できめるものについては二十トンまでは適用する。言うならば、定置漁業とかいうような移動性のない漁法による漁船は、三十トン以上でなければ適用しないということになっております。その他の漁船は二十トンまでは船員法の適用をしようということであります。いま問題にしようとするのは二十トン未満の漁船についてであります。一般の船は五トン以上はすべて船員法の適用で、これはできるわけであります。ところが、漁船なるがゆえに二十トン未満はすべて船員法の適用外である。これは従来、この船員法ができた当初のそれらの区別は、言うまでもなく、日本の漁業というか漁船の行動半径は、俗っぽい言い方でありますが、おかが見える範囲で漁労していたものが非常に多い。特殊なもの、捕鯨船とかあるいはサケ・マス漁業というか、そういう大きい船団を組んでいくようなものは別として、小さい船はおかの見える沿岸で漁労をしていた。ところが最近というか、終戦後今日までの間に、日本の漁業の形態は変わってまいりました。沿岸漁業は沖合いに、沖合い漁業は遠洋へというふうに、漁業のやり方というか魚族資源をうんと求めて、外延的に発展してきていることは御案内のとおりであります。そういうことが一つあると同時に、船員法は当初、日帰りで仕事をして帰るような者は、一般の労働者と同じように、労働基準法によって規律するんだという原則が一つあったようであります。ところがすでに昨年なども、北洋において七トンないし八トン漁船が、百海里以上五百海里近くのところで漁労していて遭難にあった。遭難のことをここでとやかく言うわけではございませんが、七、八トンの船が御承知のようにそういう遠いところまで行くわけでありますから、漁場に到達するのにも二日ないし三日かかる。漁労して帰れば、短くて一週間かかる。そうなりますと、当初考えていた船員法から三十トン未満の漁船を適用除外するという一つの理由としての日帰り操業というのは、当たらなくなってきたわけであります。  それからもう一つは、比較的なものでありますが、現行の船員法ひとつとっても、一般の船は五トンであり、それじゃその五トンの船は日帰りの作業をしていないのかというと、そういう小さい一般貨物船、あるいは客船も入っているかもしれませんが、そういうものこそ日帰りにひとしいような行動半径で作業しているのであります。そうなりますと、その面からも均衡を失しているということになります。  なお、この船員法の中身であります。中身にも漁船船員にとっては不平等なものがございます。たとえば一番大事な労働条件の制定については、この漁船船員には新たな条項を設けて、この船員法に定めるところから適用を除外すると書いてある。いわゆる漁船船員船員法の適用を全くの全部受けているかというと、三十トンあるいは二十トン以上の船員にしても、いま申し上げたような適用除外の条項が、かなり重要な部分がそのままになっています。そういうことで、いま問題になっているのは、二十トン以下の漁船船員をどうするかという問題であります。たびたび国会の問題にもなりまして、今日まで運輸省並びに水産庁共同の通達、指導要綱で、労働条件の改善その他について関係業者等に指示を与えているわけでありますが、残念ながら、いまだに小さい漁船船員の労働条件はなかなか改善されないのが実態であります。そうでなくても、漁船船員の労働の実態は、魚がいればとるというのでありますから、そこには、おかで考えられるような、いわゆるきめられた労働時間はなかなか守り得ない。いれば、とらなければなりませんから。さらにもう一つは、賃金は水揚げによって歩合給として支払われる。そのために、命を的に働かなければならぬという矛盾も出てくるわけであります。行くときには目一ぱいの漁具と燃料をかかえていく。帰りには乾舷ゼロというような形で、とれた魚は全部持って帰る。だから、遠くとも、危険な海域も通る。それで全損転覆というようなことが間々あるわけでございます。そういうことを考えますと、この際考えてもらわなければならぬのは、二十トン未満の漁船を少なくとも船員法の適用の範囲に入れるというのが、いまの大きな課題だと思うのであります。  そういうさなかにありながら、いまLIO百十四号をそのままの形で批准することは、われわれとしてはILOの精神にももとるではないか、こういうふうに考えておる。と申しますのは、もちろんこの百十四号条約の第一条第二項には、船主団体あるいは漁船員の団体とあらかじめ協議の上、ある一定の型、大きさについて除外してもいいという条項があるわけであります。しかしながら、この協議がととのったかどうかは別にして、少なくともこういう条項があるからいまのままでいいという理屈には、私はならぬと思う。批准についてわれわれは、原則的には賛成であります。だけれども、毒にも薬にもならないというよりは、むしろそういう形のままで批准することは、二十トン以下の漁船船員船員法の中に入れないで締め出す、それを一そうコンクリートするような形になりはしないかというふうに、われわれは思っているわけであります。でありますから、多少の問題はあろうとも、百十四号批准という立場からいって、少なくとも一般汽船、船舶と同様に五トンまで基準を下げていくことを、この際、要請するわけなんでありますが、お考えはいかがでしょうか。
  45. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 漁労に従事する船舶の乗り組み員の労働の特殊性及び一般船員法の適用を受ける船員の労働の特殊性というものも考えてみまして、一応本条約によりまして船主団体、船員団体と協議の上、一定の了解に達した場合は、漁船については適用しないことができるとなっているので、その両団体の協議が成立いたしましたので、その状態で批准手続を進めるということにしておるのが現状でございますが、お話のように、遠洋航海とか、あるいは最近は漁船が大型化してきまして、お示しのような事態も私は否定できないところがあると思います。そこで一応この状態で批准をして、そして今後の情勢をよく見てその実態を把握いたしまして、もし必要あらばそのような措置を考えたいと思うのであります。詳細につきましては船員局長から答弁させます。
  46. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 ただいま大臣から御答弁のございましたとおりでございますが、なお、御質問の点につきまして私から補足して御答弁をさしていただきたいと考える次第でございます。  一応、ILOの関係はそのような考えでございます。  国内法といたしましての船員法の考え方でございますが、これはただいま先生の御質問にもございましたように、船員に対する労働保護規定に基つきまして、労働基準法と異なりました特別法をつくりまして海上労働者の実態的な保護を行なっておりますゆえんのものは、先ほどもお話のございましたように、海上の特殊性からそのほうがより実情に即しておるという趣旨に基づくものでございます。したがいまして、先ほどもお話ございましたように、湖、川あるいは港内の船につきましては、同じ船員でございましても、労働基準法を適用することがむしろ実情に適しておるということで適用除外になっております。また船員法は同じような考え方から、商船につきましては、御指摘ございましたように五トン未満の船につきまして、また漁船につきましては原則として二十トン未満のものを除外しておるわけでございます。ただ、御指摘がございましたように、二十トン未満の漁船につきましては、御説明のございましたような船で、沿岸を離れて遠く出て活動しておるという実例があることは間違いないわけでございます。ただ、一般的に申し上げまして、たとえば水産庁の統計でわれわれが平均的に見ますと、やはり二十トン未満の漁船の平均の航海は一日ないし二日でございまして、大体日帰りというものであろうかと存じております。ただその全体的な活動並びに就労の実態はきわめて複雑でございまして、運輸省といたしましても現在必ずしも十分にこれを把握していると申し上げるわけにはいかないわけでございますが、先ほどお話のございましたような、非常に小さな船で遠いところへ魚をとりに行く、また、それが原因になって遭難しておるという事例も、ここ一年以内に起こっておることでございますので、やはり船員法の本来の立法趣旨でございます海上の特殊性から特殊な労働保護を加えていくという面から検討いたしましても、やはり二十トン未満の漁船についてもその適用を検討すべき面が多々あります。したがいまして私どもは、ただいま大臣からお話がございましたように、労働基準法によりまして、現在これらの二十トン未満の漁船船員についての労働行政を行なっておられます労働省、あるいは水産業一般を所管いたしております水産庁、あるいはまた保険関係を御担当になっております厚生省とも今後よく協議いたしまして、また協同いたしまして、二十トン未満の漁船の活動並びにその就労実態を十分調査いたしまして、船員法の適用範囲というものを今後どのように拡大していくかということを、御趣旨の方向で検討してまいりたい。ILOにつきましては、現在の条約の規定に基づきまして、とりあえず批准は進めさしていただきたいと考える次第でございます。
  47. 久保三郎

    ○久保委員 お話がございましたが、いまの御説明では私の質問に答えてもらったとは思っていないのであります。条約だけは批准しようというのですが、大体ILOの条約等は一応の基準でありますから、そういうものをものさしとして、あるいは国内法を改正するということは、そういう水準に労働者の立場を上げていくというのがILOの根幹だと私らは思っているわけです。そこできめられた百十四号、これはたしか約十年前になりますね。十年間何をなさっていたのか。どうして急に目がさめたように、現状のまま百十四号批准ということになったのか。これはどこからかそういう話でもあったのですか。百十四号をこのままで批准しないと何か支障がございますか。  それから大臣からお話がございましたが、関係団体等の承諾を得たというが、関係団体等はたくさんあると思いますが、全部に承諾を——特に漁船船員の団体に承諾を求めたのではなくて、一部の団体に求めたのでなかろうかと考えているわけです。その団体は団体の考えがあって、いわゆる現状のまま批准に同意を与えたのだろうと思いますが、少なくとも二十トン未満の漁船船員船員であるということになれば、しかも同じ漁場で同じ漁法で同じ魚をとっている立場に立てば、どうして二十トンに境界を設けるか、ふしぎに思わない者はないと思うんです。それをふしぎに思わないで同意を与えたというならば、それはいかなる観点かわかりませんが、いずれ条約批准という手続があるときにはそれは正式にお話も聞かなければなりませんが、この際は、全部の団体が同意を与えたとは私はまだ思っていません。  それからもう一つは、あとからやるようなお話なんですが、船員局長局長になってから十年とは言いませんけれども、まあ十年もたってからどうして何もやらぬで批准するのですか、それを聞きたい。いろいろあるけれども、もう時間がないから一つだけ聞きたいが、どうして十年も眠っていて急に目がさめたように、いまのままでというのはどういう理屈なんですか、それを説明してください。
  48. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 ただいまこの条約を、だいぶ前に成立しておる条約についてなぜいま批准するかという御質問でございますが、これにつきましては一般的にILOの関係の批准を促進することが望ましいというお話が、実は数年前から、国会でもしばしば御指摘がございました。私どももその線に従いまして一応批准促進のための研究会を設けまして、数年来検討を重ねてまいったわけでございますが、このほどようやくその結論が出まして、その具体的な百十四号につきましては関係省庁とも具体的な話し合いが進められ、また条約自身、解釈上不明確な点も数点ございましたのですが、このような点も今回解釈が確定されまして、また、この条約の規定に基づきまして国内法の適用についての関係の船員団体あるいは船主団体との話し合いも、先ほどから申し上げておりますようにつきましたので、やはり国際労働慣行にわが国が合致するという点からこの批准を進めるということに相なった次第でございます。
  49. 久保三郎

    ○久保委員 労働慣行が国際水準になったというが、もしも労働代表が行って、二十トン未満の漁船船員はちっとも救われませんという訴えがあったら、これはどうなりますかな。
  50. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 この点につきましては、この百十四号に関しまするILOの委員会または総会におけるいろいろな審議経過があるわけでございますが、結論的に申し上げますと、どのような型の船からこれを適用していくかということは、各国それぞれ事情があるであろうということに相なりまして一先ほど御指摘がございましたような第二項が入ったわけでございます。したがいまして、第二項は各国が国内的にこれを検討してその範囲を定める。ただ条約といたしましては関係ある当事者団体及び船員団体があります場合には、それと協議の上やるということを条件にいたしておりますので、まさにILOの条約の考え方に従って私どもは批准を進めておる、こういうふうに考える次第でございます。
  51. 久保三郎

    ○久保委員 考え方には沿ってないのですよ。この条約の文言に従って批准をしているというだけの話です。文言に従って批准の方法を進めているのです。これは間違いないですね。第一条第二項によって漁船団体とかいうような同意があれば適用除外をしてもいい、そうして批准をしてもよろしい、これは文言に従っての話なんです。精神というものはばくが言ったとおり。そうでしょう。これは、ILOというものは何のためにあるのか。こんな形で条約を批准するためにあるんじゃないのですよ、これは。そうでしょう。だからここでは時間をかけて論争してもどうかと思うのですが、こういう批准のしかたはけしからぬと思っているわけなんです。何の苦労もない。こんなものだったらだれでもできますよ、いまのままで。何のあれもありませんよ。水産庁も賛成でしょう。労働省もいいでしょう。これはOKを与えるほかないですよ、いまのままだから。この条約を批准するにあたって国内法をつくるとか、制度を改めるとかいうことならばたいへんということですよ。そうでなくとも船員法の範囲を拡大するのは、あなたから御指摘があったとおり、厚生省の保険の関係も出てくる、水産庁は業者団体の関係も出てくる。それを破らなければ、この前近代的な労働慣行にあるところの漁船船員は救い得ないのが実態なんですよ。あなたならば、船員法から適用除外になっているから、これは労働省の管轄だから、それ以外のものはわかりませんと言うかもしれぬ。それであっていいのかどうか。それも考えてもらいたい。だから船員法の適用除外をこの際ははずせ、そういうことをやって初めてりっぱな批准だと私は思うのであります。最小限私が譲るにしても、船員法全体を改正するというのには百十四号だけではまずいというならば、少なくとも百十四号に関係のある船員法第四章雇入契約等に関する条項一、少なくともこの四章だけは二十トン未満までのものも含めて適用するというふうになるべきだと私は思うのです。いま一番ひどいのは、漁業にとって幾多の問題があるが、その一つの労働力の問題に関係します。御存じのとおり若い優秀な、質のいい労働力というのは漁業の中には入ってこないのです。これをどうして投入するかというのが新しい漁業の問題になっていることは、これは御案内のとおりなんです。そういう中には、まず第一に、投入するからには投入する手段がなければならぬ。前近代的な労働環境や労働慣行の中で、どうして質のいい新しい労働力が入ってくるか。入ってきませんよ。だから漁業者団体にもこれは十分説得させなければいかぬ。そしてそういう二十トン未満の制限を撤廃することこそ、ほんとうに漁業を振興させる道だとも、かたがた私は思うのです。特にこの雇入契約等の第四章には、結局契約の条件はいろいろ明示しなければならぬ。ところが、明示なんかされないで漁労長が一人でかき集めてきて判こを押せと言って判こを押させる、そういうのが一つある。あるいは雇い入れの契約の公認、いま公認されていませんから何をやってもいいのです。そんなことを形式的にとるところもない。そういう中で若い質のいい労働力が漁業に入ってこないのは、当然であります。だからむしろこの際は、百十四号批准というのはそういう漁業振興のためにも、国内法を改正して批准するのが当然だ。ILOの精神は私がさっき言ったとおりで、局長の言うのはそれは条約の文言に従ってこれを批准するということ、文言だけの話です。精神は違う。だから少なくとも船員法第四章だけには、一項目設ける考えはないのかどうか。そういうことにしなければおかしい。船員法を全部改正しろとは言わないから、百歩譲っても、第四章だけにただし書きを一項目つくる。そうすれば大義名分は立つ、どうでしょう。
  52. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 ただいま二十トン未満の漁船に関する船員法適用につきまして、お話がございましたわけでございます。おことばを返すようでたいへん恐縮でございますが、私どもはいまのやり方で第二項を考慮に入れて批准を進めるということも、やはり文言だけはなしに、ILO条約の考え方に従ったものであると固く信じて進めておる次第でございます。  その次に船員法の適用範囲の拡大、ことに二十トン未満の漁船の問題でございますが、これにつきましては先ほど申し上げましたように、現在運輸省が直接この行政をやっておりませんので、やはり前提としまして二十トン未満の就労実態を正確につかみまして、船員法の本来の立法趣旨から見てどの程度にこれを適用すべきであるかということを、私どもといたしましてはぜひ検討いたしたい、こう考える次第でございます。したがいまして今後、そういう点につきましては最大の努力を払っていきたい、こう考える次第でございます。もちろん漁船関係の労働条件が一般の商船に比べて立ちおくれておるということも、私どもは十分承知いたしております。この点につきましては単に法的な問題のみならず、労働条件の一般的な問題といたしまして、いろいろな面で私どもといたしましては努力いたしておりますが、今後さらにそういった点についても努力を続けてまいりたいと考える次第でございます。そこでそういったことによりまして、私どもは具体的に船員法の適用範囲を二十トン未満の漁船について今後検討してまいりたいと考えるわけでございますが、直ちに、たとえばいま御指摘がございましたように、船員法の四章だけをこれに適用するということにつきましてはいろいろな点で問題があるのではないか、こういうふうに考えます。一つの例といたしましては、四章の中心的な規定は雇い入れ契約を公認するということでございます。これによりまして労使当事者双方の合意が明確になるということがございますが、現状におきましては、この公認を通じまして労働部門に関します諸規定の順守についてこれを監督する手段にしておる、こういうことでございます。したがいまして実質的な労働保護は、この公認の手段を通じまして、たとえば安全衛生はどうなっておるか、災害補償はどうなっておるかということに及ぶわけでございますので、船員法のその他の章でこれらに関する規定がこれに伴いませんと、実質的には非常に中身のない規定に相なるおそれがあると考えます。  それからまた百十四号につきましては、食料の問題が一つの問題でございますが、食料の問題につきましてもやはり同じように適用をしていかなければならぬという問題がございますので、私どもといたしましてはむしろ船員法を二十トン未満の漁船の必要な範囲に適用するという判断をしました以上は、やはり船員法を一般的にそれに適用していくということがはるかに合理的かつ適当ではなかろうか、こういうふうに考える次第でございます。
  53. 久保三郎

    ○久保委員 後半の理屈はりっぱに聞こえますが、自分の主張をまげて通そうとする何か理屈みたいにもとれます。あなたがおっしゃるとおり——ぼくが第四章だけは適用しろと言うのは、大事だからやれというのです。あなたが言われる契約の公認を通してすべてやるのですよ。監督権者はここから出てくるのですから。だから、いま二十トン未満というような漁船船員なんかの場合は、指導要綱であなたのほうでもってやっておるわけですか。指導要綱でやっておるならば、やはりこういう公認の手続というものは、そういうものを通してそういうものの指導をしていくということが、やっぱり一番正しい。  それからもう一つは、あなたに聞きますが、あまり時間もないですから簡単に切り上げますが、同じ漁場で同じ漁法で同じ魚をとっていて、こちらは運輸省船員局長が監督というか保護をする労働者、こっちは労働省基準局長かなんかがやる労働者、こういう見方をした場合に、あなたふしぎに思いませんか。
  54. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 確かにいま御指摘のような現象はおかしいというふうに考えます。現にサケ・マス等につきましては、そういう現象が起こっておるわけでございます。したがいまして、少なくともそのような範囲のものについて船員法の適用を拡張する必要があることは、具体的には私もこれを認めておるわけでございます。ただ一般的に二十トン未満全般につきまして、どの範囲にこれを適用してまいるかということについては、今後さらに実態を正確かつ十分に把握したい、その上で船員法の適用範囲をきめたい、こういうふうに考える次第でございます。
  55. 久保三郎

    ○久保委員 大臣、御用があるそうでありますから、またお疲れでしょうから、御退席を願ってけっこうでありますが、この問題はきょうここで片づくという問題じゃないのですけれども、私の意見も多少はお聞きになったと思うのですが、私は再考を求めたいのです。いずれまた、おりを見てお話を申し上げたいと思います。きょうはどうぞ御退席けっこうです。
  56. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私はしろうとでよくわからないのでありますが、久保さんのお話を聞いていると、非常に説得力があって、しろうとの私は非常にごもっともと返事をしたいような衝動にかられる要素が、正直に言うと多いわけであります。しかしまた、漁船というと、いろいろな格差のものがあって、それを一律に全部ここで網をかけるのはどうかというのが、こちらのほうの心配のもとになっておるように思う。ですから、サケ・マスその他のようなものについては、久保さんのお考えごもっともであると局長は答弁しているのであろうと思うのであります。その辺の点等もよく見きわめて、私もよく考えてみることにいたします。
  57. 久保三郎

    ○久保委員 局長、あなたばかりいじめるようになって恐縮なんだが、これはやむを得ない。立場を変えれば同じようなことだから当分がまんしてもらう。それで、あなたも自分のおやりになっている仕事にもっと自信を持ってもらいたい。ということは、何か船員法を拡大することがうまくないような気持ちでおられるようだが、役人で、漁船船員の労働の実態を見て、これでは前近代的だというふうにわかっているのは、あなただけだろうと思う。労働省の人には、これはわからぬ、わからぬですよ。労働省はそこまで手が届かないと言っているんだから。そうすると、船員局長のほうも、これはぼくのほうの範囲ではないからというと、海とおかの谷間にさまよう二十トン未満漁船。だから、全損で死んでしまっても、それでも行くえ不明手当などの適用がないわけですよ。そうでしょう。同じ漁場でやっていて、片方は二十トン未満で死んでいったが、行くえ不明の手当もない。片方はもらえる、いやな話ですが。そういうことも考えると、これはもう理屈じゃない。理屈はお互いにわかっておる。私の言うことだって十分わかって、あなたは否定しないのです。逐次あとから船員法の改正を検討してみます、こういうのです。何で十年間運輸省は検討しないできたのか。漁船船員の立場になれば、そうでしょう。法律というものは国民を守るためなんです。はじいてどこへでも行ってしまえというものではない。法律で処罰するのは守るために処罰するのですから。ようございますか。法学士であるあなたに無法学である私が説教するのはちょっとおかしいが、そういうことだ。それから考えれば、船員法を改正することについては確かに抵抗もある、容易でないことは十分わかっておる。だから言っておる。そういう難関を避けて通るがごとき態度は、ひきょうである。ILO百十四号はそんなものではない。精神に合致しておるなんて、とんでもない話だ。文言にだけ、条文のことばにだけ合致しておるだけの話だ。それであってはいけない。だから、きょうはこの辺でやめておくことにして、いずれもうちょっと考えてもらいましょう。お互いに前向きでやりましょう。私は船員法の改正を主張したいのですけれども、二十トン未満は撤廃しろ。だが、それもなかなかできないとするならば、第四章のほうだけはどうだ。これは決してむずかしいことではない。また、これを通じてさらに拡大するほうが容易である、こういうふうに思う。そうでなかったならば、これは別な観点から考えてほしい。漁船船員はすでにさっき言ったように、適用除外の条項もたくさんある。船員法の中に、漁船なるがゆえに。だからこの際は、漁業労働法を運輸省がつくるかどうか、そこまで発展するならば百十四号の批准はぼくらはそのままでもけっこうだ。ところが、そういうことも考えていないで。ただ現状のままでは否認します。あなたは御苦労なさっておるかもしれませんが、はたから見た場合には何にもやってない。どこに話すこともできない。船員法そのままでは百十四号は否認します。電話一本かければ、どこの省庁でもそんなことは同意してくれますよ。百十四号を否認されたのでは、零細な漁船に乗っておるところ漁民は救われない。どうしよう、どこへ行ってすがればいいかということであります。どうかそういう点を御考慮いただいて、この次にはもうちょっと何かうまい方法、理屈を考えてほしいと思う。大体、漁船船員の団体が同意したというが、全部同意しなければだめだ。二十トン未満の団体が特にそうだ。大洋とか極洋とか、そういう会社の大きな船に乗っておる団体の同意を得たってどうにもならぬ。二十トン未満に乗っておる船員の団体に聞きなさいよ。そうでなければ何にもならぬ。
  58. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 ただいまお話しの点でございますが、実は協議団体でございます。これは私どももずいぶん苦労いたしましていろいろ取り調べたわけでございますが、現在まず船員団体で申し上げますと、十六の船員団体に正式に協議をいたしております。これ以外にあるかないかという問題でございますが、私どもが調べた範囲においてはないということでございます。特に二十トン未満の漁船船員につきましては、いわゆる組合というものがほとんどないというのが実情でございます。したがいまして、このような点につきましては、全国漁業協同組合連合会その他を通じまして調べる以外に方法がないということで、そのルートを通じまして御協議を申し上げておる、こういうことでございます。十五日までに御返事をいただくことになっておるわけでございますが、現在までのところ、三、四カ所を除きまして、全部差しつかえがないという御返事をいただいておるという実情でございます。
  59. 久保三郎

    ○久保委員 三、四カ所を除いて差しつかえないという御返事があったというんだが、批准に対する態度と中身について詳細に言っておらないのではないか。もちろん漁船同盟とか全日海等は、これは十分知っています。知っていますが、それ以外の団体には、大体言うこともはばかるようだが、ILOの何号というのはどんなやつかもよくわからない。そういう団体も中にはかなりたくさんあるのではなかろうかと私は思う。一般の労働者においてはなおさらのこと。ほかの労働者だって、ILO幾つといっても、すぐにその中身がわかっているような労働者は、指導者だって数多くはいない。そういう中で、親切に紹介をしたかどうか、私には疑問があります。いずれこれはその中身について、私どもは別途にそういうものについて聞いてみようと思っております。これは大事なことでありますから、われわれも国民の権利を代表して国会に来ておるのでありますから、やはり軽々にこういうものに——わからないで承諾を与えたのか、ほんとにわかって与えたのか、よく聞いてみて、彼らの考えも織りまぜて、この次にはまたお話し申し上げたいと思います。  本日はこれでやめておきましょう。
  60. 大野市郎

    大野委員長 次回は、来たる十九日午前十時より委員会委員会散会後理事会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十三分散会