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磯崎説明員 ただいまの御質問非常に広範にわたりますので、多少長くなるかもしれませんが、最近の
国鉄の
貨物輸送の現状をまず申し上げまして、それから今後の考え方を申し上げてみたいと思います。
まず何と申しましても、
国鉄の
貨物輸送が最近急激に
伸びがとまったという一番大きな原因は、石炭でございます。毎年石炭が三百万トンくらいずつ減送してまいります。石炭のトン
当たり運賃が、約五百円でございます。ほうっておきましても十五億から二十億くらい、
貨物の
収入が減ってまいります。これが石炭が一トン減炭いたしますと、
国鉄の
輸送量としては二トンないし二トン半の減送になります。すなわち、山元で一トン減送し、京浜なり阪神へ揚がってまいりましてまた一トン落ちて、また中間で半トン落ちるということで、約二トン半くらい減送いたしますので、ここ数年間で
国鉄の石炭
輸送量はついに三千万トンを割るだろうというふうに考えられております。この石炭の減送による穴をどう埋めるかということが、
一つの大問題です。
もう
一つは、先ほど先生の
お話しの運賃の問題でございます。御承知のとおり、
昭和二十三年にできました
国鉄の現在の運賃法は、財政法第三条に基づく法律でございまして、いわゆる
国鉄の運賃を税金と同じような形でながめたときにできた、全く
国鉄が、電電公社などと同じように、陸上交通を独占していた時代の法律でございます。したがって、財政法からいまの運賃法ができている。非常に
企業的に見たら、これほど奇形な形がないというほど、いまの運賃法の根拠法が財政法でございます。したがいまして、
貨物運賃もいまおっしゃるとおり四等級に分かれておりまして、値段の高いものほど運賃をよけいに払うという制度になっておりますので、一、二、三、四等の一等のほうが高いわけでございますが、一等級と申しますのは、たとえば綿製品だとか絹製品だとか、酒のいいやつだとか、こういう運賃の
負担力があるように
見えても、非常に足の早い
貨物で、ぐずぐずしていてはだめだ。それからトラックのほうがずっと運賃が安い
貨物。それから二等級は、先ほどおっしゃった鋼材なんかは大体二等級でございますけれども、二等級が基準等級の一五%くらいであります。この一、二等級で大体全体の
輸送量の約二割でございます。問題は、石炭を含めた三等級、これが大体四五%くらいでございます。この三等級の基準になる
貨物の運賃が一番問題でございまして、これが全体の
貨物収入を左右するわけでございますが、いま申しました通り、運賃自体がいわゆるコスト主義でなしに、その
貨物の
負担力でやっておりますので、非常に三等級のところの、基準になる
貨物運賃が全体のコストをカバーできないようにできているということでございます。もちろん、これは距離の関係がございますので簡単に一がいには申し上げられませんが、大体二等級の
貨物で申しますと、たとえばくだもの、これがトンキロ
当たり三円三十二銭になっておりますが、現行で
昭和四十一
年度で三円八十銭から三円九十銭くらいでございます。したがって、三等級
貨物においてすでに足を出すということになっておりまして、したがって、三等級運賃がコストをカバーできない限り、この鉄道の
貨物運賃というのはどうしても原価が償えない。まして四等級
貨物のたとえば米、麦、それから肥料、木材といったほんとうの
国民の生活必需品につきましては、これはコストから一応割り引きなしで、運
賃率の上だけから一割引いておりまして、これからさらにいろいろ
政策的な割引がございますが、そういう
政策割引なしにいたしましても、基準等級から申しましても一割の減になっておりますので、これらは当然コストを償わないわけでございます。ところがトラックは大体御承知のとおり、
貨物の性質によらずに、容積とか重さだとか一本でまいりますので、結局鉄道の一、二等級のいい
貨物は自然にトラックに流れて、三等級ないし四等級の
貨物が鉄道に残る。したがって四級
貨物と申しますのは、ほとんど非常に足の長い、魚だとか野菜だとかあるいは木材だとか、こういうものがいつまでたっても鉄道に残る。結局鉄道として非常にほしい高級
貨物は、ほうっておいてはトラックにいってしまう。黒でもって赤のほうをカバーしていたその黒がだんだんなくなってしまいますので、自然に
貨物輸送としては赤字がふえてくるということでございまして、結局これはトラックの発達と、ことに同じ
運輸省の中でございますが、最近の港湾の非常な整備によりまして、いわゆる三級
貨物も徐々に海に流れつつあるというふうなことで、鉄道の
貨物輸送につきましてちょうどいま、ここ一、二年の間に根本的に考え方を変えませんと、
日本の国有鉄道はむしろ
貨物輸送のほうから参ってくるということが、実は目に
見えておるような気がするわけでございまして、先ほどおっしゃったとおり、今度の計画におきましては、
貨物輸送の近代化と申しますか、そういうことにつきましては相当金をかけまして、約五千億くらいの金を入れたい、こういうふうに思っております。
こまかいことは省略いたしまして、これでいたしますことは大体三つございまして、
一つは何といっても鉄道ではドア・ツー・ドアの
輸送ができない。どうしても両端の
輸送がなければいけない。したがって、自動車と結合した
輸送をぜひやっていきたい。われわれのほうでは結合
輸送といっておりますが、自動車とどうしたらタイアップして
輸送ができるかということで、これらの典型的なのが例のコンテナでございます。これは積みかえなしで、自動車でもってドア・ツー・ドアでできるというコンテナ
輸送、あるいはいろいろ新しい方法がございますが、結合
輸送が
一つ。これによって、一番鉄道の欠点であるドアまでいけないということをカバーする。これが
一つ。
もう
一つは物資別に
——いままでは何でも、みそもくそも一緒にして有蓋車か無蓋車にたたき込んだというサービスの悪い
輸送をしておりましたが、最近は物資別に、たとえば自動車を
輸送する場合にはこういう車を使う、あるいは食糧、小麦粉を
輸送する場合にはこういう車を使うとか、特殊の車を使いまして、なるべく積みかえの費用がかからないようにする、また荷づくりも要らないようにするということによりまして、物資別に適合
輸送をする。これにはどうしても、発着における相当な
貨物施設が必要でございます。たとえば、ホッパーをつくるとか、あるいは自動車なら自分で自動車が走って貨車に乗れるような設備をつくるとか、いろいろな設備がございます。こういう物資別の適合
輸送をやる。もう
一つは、さっきおっしゃったスピードの問題でございます。
国鉄の
輸送は操車場の中で非常に時間がかかっておりますので、これをなるべく短くする。そうしてある
貨物の拠点駅から拠点駅へなるべく早い速度で送るということによって、荷主に発着時間を明確にする。いままでの鉄道
輸送は、お恥ずかしながら、発駅を出たらいつになったら着駅に着くかわからないというような状態でございました。これでは現在の商取引ではとても間に合いませんので、最近は大体三分の一くらいはちゃんと着時刻が明確になって、それが取引に乗るという形になりました。そういった三つの方向を考えまして、主として
貨物の拠点駅の整備、あるいはコンテナの整備、あるいは特殊貨車の整備ということに全力を注いで、現在作業をしておる最中でございます。