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国務大臣(
佐藤榮作君) いまの核のかさというか、この点について、私は先ほど来静かに聞いておりまして、矢山君の御議論にも、これはまあ全部社会党の御議論を代表しておられるかどうか、それは私にはわかりませんが、なかなか危険な御議論ではないかと実は聞いたのです。ただいまも同じように核のかさの話が出てますが、この私
どもが、言われておりますように、現実に
アメリカ、ソ連、中共、さらにフランス、イギリス、これらが核を持っている、
日本は核開発の
技術的能力ありといえ
ども持たないという、これは
国民と誓ったと、かように申しておりますが、しかしとにかくそばに核を開発しておる国があるのは、これは御
指摘のとおりであります。そういう場合に、これらの国がよもや私は
日本を攻めてくるとは思いません。思いませんが、万一のことがあるとこれはたいへんだと思います。そこで私
どもは日米安全保障条約のもとで
アメリカと話し合って、あらゆる攻撃に対して
日本を守る、これが
アメリカの言ってくれたことばであります。このことばに対して、まあ先ほどの矢山君の話では、
アメリカは自分の危険をもおかしながら
日本をはたして守ってくれるだろうか、こういう疑問を投げかけられました。
日本を守るならば
アメリカ自身が攻撃を受けるということを考えざるを得ないじゃないか、こういうようなお話であります。私はかつてドゴールに会いました際に、ドゴールがそれと同じことを言っておる。フランスを愛する者はこのドゴール、おれより以上の者はだれもいないのだ、 このドゴールが、おれが考えるときに、隣国が核を持っておる、自分は核を持たない、そしてフランスの安全は外国の
大統領のポケットにあるそのキーで初めて安全が確保される、こういうようなことが愛国者ドゴールとしてはどうも納得がいかない、ドゴールより以上にフランスを愛する人がどこかにおればそれも言える、そのまま賛成ができるが。だからおれは核開発に踏み切ったのだと、こういうことをドゴールが申しました。これは私直接ドゴールから聞いた話でありますからこの際に申し上げる。よもや矢山君の話はその方向であろうとは思っておりません。むしろ何にも持つなと、こういうことを言われたんだと思いますが、私は何にも持つなということは、それこそ危険にさらすんだと、これが私
どもと基本的に違うものだと。私
どもはやっぱりこの国を無防備中立論、そういう
状態ではこの国はあぶないというのです。この国の安全を確保するためにはその説はとらない。しかし、それかといってみずから核を製造するかというと、この製造はしない、持ち込みも、持ちもしない、いわゆる核三
原則を立てたものだと。私
どもは
アメリカをただいま信頼している。
アメリカに信頼する。このことは、最近の国際連合等におきましても、やっぱり相互援助条約あるいは集団保障、これが
一つの行き方であります。
私はそういう
意味で、
日本の安全を確保する道は、その方向をたどるべきだと思います。私はいま中共
自身を非難するつもりで申すわけではありません。先ほど来
皆さん方もみんな言われるのに、核があれば攻撃を受けるのだ、核がなければ攻撃は受けないのだと言われた。その口の下から、中共
自身が核開発をしておるじゃありませんか。持たなければ絶対に攻撃されない国、この中共、それがなぜ核を開発するのか。私は
皆さん方がよく中共を引き合いに出されますから事情をよく御存じだと思う。私はそういうことを考えると、これはそういうことでなしに、やっぱり核開発というものについて、各国が、先ほど来議論しておりますように、もしもこれを使えば、これは人類を破滅に導くおそろしいものなのだ、だから核不拡散条約、その方向で、さらにまた持っているものも、どうかそれを使わないように、またそれをやめるように、そういう方向へ、一歩も二歩も踏み出すべきじゃないかと思います。まあそういう際に、核開発、核兵器の開発、これは私はとんでもないことだ、こういう
意味でしばしば中共の核開発、核爆発実験については、
日本政府は遺憾の意を表し、たびたび申し上げてきたのです。こういうことを考えると、核兵器の議論が、この際に激しくなればなるほど、また
皆さん方が言われるように、核兵器を持たなければ安全なんだ、かく考えれば考えるほど、ただいまの隣の国の核兵器を持つこと、私はそれをたいへん残念に思うのです。
また
核基地そのものにつきましても、先ほど来のような
皆さん方の御議論をすれば、なぜ世界が全部そういう方向に向かわないのか、これをよく考えていただきたい。私は
日本自身が、いま頼りにならないといわれる
アメリカー社会党はそう言われますが、私
どもは頼りになる、いわゆるパートナーとして選ぶべき
アメリカだ、かように考えておりますが、この
アメリカが、あらゆる攻撃の場合に
日本を助けてやる、守ってやる、かように言ってくれておる。今回もその話をしております。私はこれをそのまま信用したらいい、かように思っております。