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国務大臣(
佐藤榮作君)
国民が聞きたいことは、その点だろうと思います。しかし、限られた時間に全部なかなか尽くしがたいものもございますので、この辺は御推量賜わりたいと思います。
私が出かけましたその問題、これは、申すまでもなく、
国民的輿望にこたえる、
国民の輿望は
一体何か、沖縄百万の同胞、これを一日も早く、できるだけ早く祖国復帰と、こういう問題でございます。これをとっております。同時にまた、たびたび私が申し上げておりますように、その訪米以前に歴訪をいたしました東南アジア諸国等々、国際情勢下において日本の安全確保の道、また、沖縄が果たしておる安全確保上の軍基地、その点も十分考慮に入れ、そうしてこの願望をいかにして達成するかということで、これと取り組んだのであります。この二つの目的を同時に達するというのが今回の使命であった、かように私はいまなお思っております。そうして、もう一つ、この問題と取り組む
姿勢でありますが、いままでも、日米友好親善関係のもとにおいてこの問題を解決していこう、この親善関係を深めるような方法において、損なうことなしにこの問題を解決しようというのが私の基本
態度でもあります。
御
承知のように、アメリカが施政権を持っておるその根拠、これは
一体何なんだ、日本が無条件降伏をした前戦争の結果とはいえ、アメリカが領土的野心を持ってこれらの島々を占有しておる、そういう
状態なのか、かように申しますと、これは、前戦争で私どもは無条件降伏をいたしましたが、サンフランシスコ条約を締結した際に第三条によってアメリカがこれらの地域に施政権を持つことになったのであります。また、いままでもしばしば表現しておりますように、これらの地域は日本が潜在主権を持っておるという言い方をしております。また、そこに住んでおるものは、小笠原は特別な人に限っておりますが、沖縄は明らかに日本人てあり、われらの同胞てあります。したがいまして、小学校の教育にいたしましてもわが国の教科書を使っておる、こういう関係にある。いわゆる領土的野心を持って施政権を行使しているというものではない。このことは非常にはっきりいたしております。同時にまた、アメリカ自身が日本との間に日米安全保障条約を結んでおりますが、その観点に立ってのけさほどの議論で、日本の安全の確保にアメリカ自身が積極的に協力しておる、これは申すまでもないのであります。なお、日本の安全確保のために見のがすことのできない極東の範囲にある諸国に対しましても、それぞれ条約を結んで、そうしてこれらの安全確保にアメリカが寄与しておるのであります。米韓、米華、米比条約等はそれでございます。そのアメリカがこれらの諸国の安全確保に果たしておりますその場合に、沖縄が軍基地としてまた大きな役割りを果たしておるのであります。私どもは、日本の安全繁栄は極東の安全繁栄とこれはつながる、こういうことをかねてから申しておりますので、この
意味におきましては日米間に利害は相一致しておる、こういう
立場であります。したがいまして、私は、アメリカに出かけて話をするにしても、この友好親善関係に立って相互の理解と協力の上でこの問題を解決しよう、戦後二十二年にわたって異民族の統治下にある同胞のことを
考えますと、これはほんとうに一日も早くという、そういう気持ちになるのが日本の
総理として当然のことだと思います。また、その点では私も人後に落ちない、日本
国民と同様の関心を持ってこれと取り組んでおるのでございます。しかし、同時にまた、わが国の安全、この安全の確保のためにあらゆる考慮を払うというのが
総理に課せられた責任でありますし、私の仕事でもあります。したがいまして、私はこの二つの問題を、ただいま申しますような基本的な関係において日米両国の共通の問題とし、また親善友好の関係において解決しようとして出かけていったのであります。その結果、自画自賛と言われるかもわかりませんが、私は今回夜あて共同コミュニケで沖縄については返還するという方針のもとに共同して継続的に協議をする、こういうことに同意ができたことは、これは明らかに前進でございます。自画自賛だと言われるかもわかりませんが、これは大きな前進だと思います。しかも、日本の
防衛力をさらにこの際に変更することなく、在来の
防衛方針、
防衛政策を維持しながらただいまのような沖縄の問題について共同して継続的に協議をしよう、これは明らかに前進だと言っていいと思います。もちろん私がしばしば申します両三年内にというような、そういうことをアメリカ大統領が確認したわけではございません。しかし
国民の要望である即時返還ができないまでも両三年内に返還のめどをつけるというこの要望にこたえて私自身が最善を尽くして交渉を持ったのであります。その
意味におきましては、ジョンソン大統領も十分日本
国民、日本民族の願望を率直に了解してくれたのでございます。したがって、これらの討議の結果、いまの共同かつ継続的な協議をするということに同意をしたのでありますから、私が両三年内に返還のめどをつける確信を得た、かように申すのも御理解が賜われるのではないかと思います。そればかりではありません。その返還の実現するまでに本土との
一体化を進めるために——ただいまいろいろお示しになりましたが、いますぐ返れば非常なショッキングを各方面にも与えるだろうと言われますが、そういうような事柄もございますので、
一体化を進め、本土への復帰を円滑ならしめる、こういう
意味で日米琉三者による諮問
委員会が設置されることになりました。いままでも沖縄問題についてはいろいろ日米両国間で随時に協議を開くとか、あるいはわが国が財政的援助をするについては技術的な援助をするために技術
委員会とか、いろいろの
委員会が設けられました。しかし、いずれもそれらのものは恒常的な機関ではございません。しかし今回の日米琉諮問
委員会なるものは、那覇に常置をいたしまして、相手は高等弁務官とはいえ、日本政府の
考え方を——高等弁務官の諮問に答えたり、あるいは
意見を
答申するということができるのでありまして、琉球の最高の責任者に対して日本政府の
考え方を率直に表現することができる、かように私は思っております。これは在来にないことであります。さらにまた、この問題を裏書きするように、今回は小笠原諸島の返還が決定されたのであります。これは一年以内には必ず実現する、かように申しましたら、一年以内と言わないでもっと早い機会にできるだけ両者で完全に話し合いがつくようにしたい、こうまで向こうで申しているのであります。私は、これらの事実を
考えてみまして、今日の友好親善を破壊することなしに、いまその相互の信頼を増進しながら、このむずかしい問題と取り組みたい、かように私は思っております。しかも非常な前進をみたと、わが国の
国民に対しまして私が微力ながら最善を尽くした、かように言い得るのであります。もちろんこの成果につきましては、今回の日米共同コミュニケについて、そのものは条約でも協定でもない。ただ最高責任者がその意向を、その方針を明示しただけだということで、なお不満もあるだろうと思いますが、また即時返還ができなかった、無条件返還ができなかったと、いろいろの批判もあることだろうと思います。しかし私自身は、私の最善を尽くして、そうして得た成果だと、ただいま沖縄問題について大きな前進をみたと、小笠原の問題の解決がもうできるようになったということは、この二つを
国民に率直に御披露いたしまして、自画自賛にならないで、この問題についての正しい評価を賜わりたいと、かように私は思っている次第でございます。