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岡田宗司君 私は、
日本社会党を代表して、
佐藤総理の
所信表明演説に対し、質問を行なわんとするものであります。与えられた時間が短いので、内政、
経済等の問題は
同僚小林議員に譲り、私は佐藤・
ジョンソン会談の結果、発表されました
共同声明に盛られている
沖縄・
小笠原返還の問題並びにそれに関連する外交、
防衛の問題に限定して、質問いたしたいと存じます。
総理は、
ジョンソン大統領との
会談を終え、
共同声明を発表して意気揚々と帰国されたのであります。しかし、実際には、今回の訪米の最大の焦点となっていた
沖縄の
返還については、「
総理大臣は、
両国政府がここ両三年内に双方の満足し得る
返還の時期につき合意すべきであることを強調した。」にもかかわらず、その合意はついに得られず、
返還そのものの時期のめどはおろか、両三年内に
返還の時期について合意するというめどさえつけることができなかったのであります。あなたが胸を張って帰国されたその日、
会談に多大の希望を託していた
沖縄の同胞は、那覇市において七万人の抗議大集会を開き、日章旗に喪章をつけて、失望と
悲しみと憤りとを表明し、彼らみずからの手で新たな決意をもって
民族的復帰運動を展開することを誓ったのであります。われわれは、戦後二十二年間異民族の
支配下に置かれ、その鎖を断ち切ろうと懸命に努力し、復帰を待ち望んでいた
沖縄の同胞の心情を思うとき、まことに暗然たらざるを得ないのであります。
しかるに、
総理は、各地における
記者会見において、また一日に行なわれた
野党各党との
党首会談において、ここ両三年のうちに
沖縄返還の時期について合意に達することにつき
大統領が了解を与えたがごとき発言をしているのであります。また、五日の
所信表明演説においては、今後日米の間で行なわれる
沖縄の地位について共同かつ継続的な協議を通じて、両三年内に米国との間に
返還の時期について合意に達し得るものと確信しているとも言っているのであります。しかし、
共同声明では、
大統領は同意しているとは言っていないのであります。あなたのこの発言には、それを裏づける確証ははたして存在するものでありましょうか。もし
大統領がそれを了解したものとすれば、そのことは当然
共同声明に盛り込まれておらなければならないはずであります。あるいは、
アメリカ側の事情でそれに盛り込まれなかったとすれば、それにかわるものとして公表されない覚え書きでも取りかわされているのでありましょうか。
総理の確信は、はたしてそれに基づいて述べられているものでありましょうか。それとも、以心伝心、
総理の感触によるだけのものでありましょうか。
沖縄返還という重大な外交問題の具体的な第一歩であるこの点に関して、これを裏づけるものがないとすれば、私どもは、あなたのこの確信を根拠あるものとして信ずるわけにはまいらないのであります。(拍手)
ジョンソン大統領は、国の内外においてその人気がはなはだしく低下しているのであります。もし来年の
大統領選挙において、
ジョンソン氏にかわって他の人物が
大統領に選ばれた場合、あなたが
ジョンソン大統領との
会談で了解を得たかのごとく言われていること、あるいはあなたの確信なるものは、両者の合意を確認した
両国政府間の公式の文書がない限り、新
大統領に対して何らの
拘束力も持たないのであります。その場合、あなたの言う両三年中に必ず
返還の時期のめどをつけるという確信は、砂上の楼閣のごとくくずれ去るでありましょう。したがって、確信ありというあなたの発言は、これは
国民の失望と憤りをかわそうとするための一時のがれとしか考えられないのであります。
共同声明中、
沖縄の問題に関して具体的に述べられている点は、
琉球列島高等弁務官のもとに置かれる
日米琉諮問委員会の設置と、
南方連絡事務所の機能の拡大についてのみであります。この
諮問委員会は、「
施政権が
日本に
返還されることとなるときに起こるであろう摩擦を最小限にするために、
沖縄の住民とその制度と
日本本土との一体化を進め、
沖縄住民の経済的、
社会的福祉を増進するための措置をとっていくこと」のために設けられるもので、
沖縄の
返還そのものについて協議するためのものでないことは明らかであります。たとえこの
諮問委員会に
公使級、
大使級の人物が充てられようと、
高等弁務官の諮問に答申するだけでなく、みずから勧告する権限を与えられようと、その本質には何ら変わりはないのでありまして、現在存在する
日米協議委員会及び
日米琉技術委員会の上に
屋上屋を重ねるものにすぎないのであります。これを何か、
返還そのものを促進する機構のごとく見せかけるようにすることは、羊頭を掲げて狗肉を売り、
沖縄の同胞及び
国民の目をくらまそうとするものと断定せざるを得ないのであります。(拍手)そこで私は、
外務大臣にこの
諮問委員会の性格、構成、権限、機能、この
委員会と従来から存在する二つの
委員会との関係、
両国政府との関係はいかなるものであるかをお尋ねしたいのであります。
次に、
日本政府の
南方連絡事務所の機能の拡大の点でありますが、これとても、その設置の根拠が変わらない限り、それは国と国との関係を処理する権限、すなわち
外交交渉を行なう権限は持たされないのでありまして、何ら
沖縄返還問題の本質には触れ得ないのであります。私どもは、これまた見せかけの粉飾と見るのでありますが、この権限の拡大とは、一九五二年の
極東軍最高司令官の設置の招請及び五三年の
南連事務所の
所管業務についての
規定そのものを変更するものであるかどうか、すなわちその性格を変えるものであるかどうか、また、その具体的な内容は何であるかを
外務大臣からお示しを願いたいのであります。
さらにこの第七項には、われわれが重大な関心を払わなければならない問題が取り上げられているのであります。「
総理大臣と
大統領は、これら諸島にある米国の
軍事施設が
日本および極東の
自由諸国の安全を保障するため重要な役割を果たしていることを認めた。討議の結果、
総理大臣と
大統領は、
日米両国政府が、
沖縄の
施政権を
日本に
返還するとの方針の下に、かつ、以上の討議を考慮しつつ、
沖縄の地位について共同かつ継続的な検討を行なうことに合意した。」という個所であります。
返還については
大統領は「
日本国民の要望を十分に理解している」と、ただばく然と述べているだけなのに、
沖縄の
軍事施設の問題については、
返還される場合を予想して、共同かつ継続的な検討を行なうということを約束しているのであります。これは全く本末転倒と言わなければなりません。これについて思い出されるのは
下田駐米大使のたび重なる発言であります。彼はしばしば
沖縄における
核基地の存在を認め、基地の
自由使用を認めるのでなければ
沖縄の
返還はむずかしいと言っておるのであります。
総理及び
外務大臣はこの発言を政府の見解ではないと否認しておりますけれども、彼自身は、政府の言えないことを自分が言っておるのだとも公言しているのでありまして、単なる
個人的見解とは思えないのであります。
また
総理は、去る四日、
プレスクラブにおきまして
外人記者の質問に対して、「この国の
安全確保は同時に極東の
安全確保と一致する。このことも十分考えなければならないし、
沖縄と
安全保障を同時に考えていきたい。
日本が
核武装するかどうかは将来
沖縄返還のときにきめればよい」と答えているのであります。さきの
下田発言と
総理のこの発言とをあわせて検討しました場合、明らかに
沖縄返還の際における
核基地を認めること、
軍事基地の
自由使用を認めることについて、
総理と
大統領の間に討議が行なわれ、さらに
日本の
核武装の問題にまで及んだのではないかと推測されるのであります。これを裏書きするように、七日のイギリスの
タイムス紙は、
総理と
大統領の間に、
核つき返還の合意または暗黙の了解があった模様だと、すっぱ抜いているのであります。これらの問題について、いかなる
話し合いが行なわれたのか、また、かかる合意または暗黙の了解が成立したのであるかどうか、さらに、
総理は、
日本の
核武装、
沖縄返還後の
核基地の問題、
核武装と
日本憲法との関係の問題に関する従来の考え方を変えたのではないかどうか、その点をお伺いしたいのであります。
また、
総理は、
アメリカの
西太平洋防衛体制に
日本が積極的に参加し、責任を分担することが、
沖縄返還の
前提条件であると考えておられるのかどうか、明らかにしていただきたいのであります。
私どもが
沖縄を返せと主張するのは、第一に、百万の同胞が外国の
支配下に置かれているということは、
独立国家として、
統一民族国家として断じて耐え忍ぶことができないという
民族的要求からであります。第二に、
平和条約第三条は、
日本の
国連加盟によってすでに無効となり、
アメリカは
沖縄に
施政権を保持する根拠を失ったと考えるからであります。第三に、
アメリカによる
沖縄の
軍事植民地化は
国連憲章、
世界人権宣言に反するものだからであります。
アメリカが
先進国、
文明国であると自認し、
日本を対等の
友朋国と見るならば、直ちに
無条件に
沖縄を
日本に
返還すべきであります。われわれは、堂々と
アメリカに向かって、
即時無条件全面返還を要求することが、
日本国民の立場であると確信しているのであります。(拍手)しかるに、
総理は、
国民の要求と極東における
安全保障とをどう調和させるかが問題であるとして、現在
アメリカが
沖縄を軍事的に保有していることを全面的に認め、その上に
返還を求めているのであります。わが方が
アメリカの
沖縄保持の理由を一〇〇%是認するならば、討議において
アメリカの論理が貫徹し、
日本側の
返還の
理論的根拠は押しまくられざるを得ないのであります。
会談が
アメリカ側のペースで進められたことは、
共同声明そのものからも明らかであり、
総理がインフェリオリティ・ーコンプレックスを持って
会談に臨んだ姿が、まざまざと想像されるのであります。(拍手)
総理は、今後の
沖縄返還を進めていく上に、いかなる
基本方針に基づいて具体化していこうとしているのでありますか、
アメリカの軍事上の要求を検討することを最大の眼目として交渉を進めていくつもりであるかどうか、お伺いしたいのであります。
次にお尋ねしたいのは、
共同声明第三項に盛られている最近の
国際情勢、特に極東における事態の発展に関する部分であります。「両者は、中共が核兵器の開発を進めている事実に注目し、
アジア諸国が中共からの脅威に影響されないような状況をつくることが重要であることに合意した」とあります。これは明らかに
中国封じ込め政策に合意したことを示すものであり、いま
日本が
中国封じ込め政策に公然と参加する姿勢を打ち出したことを意味するものであります。これは
アジアにおける
国際緊張を一そう激化させ、
日中関係をさらに悪化させるものであって、
アジアの政局の安定と
日中関係の打開と
正常化を求めようとする
日本としては、断じてとってはならない政策なのであります。これはさきに、
三木外務大臣が
ASPACを反共の性格を持たせないために努力するというのと明らかに食い違っているのであります。
日本のかかる
態度表明によって、
ASPACは
中国封じ込めの機構に転化せざるを得ないのであります。
外務大臣、この項はあなたのいままでの主張と食い違っているではありませんか。あなたは
中国封じ込め政策をとることに方針を変更したのであるかどうか、この点をお伺いしたいのであります。また
総理は、
アメリカの対
中国封じ込め政策に参加することを、この
会談においてはっきりコミットしたのかどうかをお伺いしたいのであります。
次に、第四項の
ベトナム関係の問題についてお伺いをいたします。ここには「
総理大臣は、
北爆の停止にはハノイによるそれに対応した措置が期待されるべきであるとの見解を表明した。」としるされてあります。これは、明らかに
北爆に関する
アメリカの言い分をそのまま認め、支持することを宣言したものであり、
アメリカのおつき合いをして
ベトナムへ出兵をしている国々の立場と全く同じであります。あなたは、
所信表明演説において、
ベトナムの
平和達成を強く念願していることを強調されているのでありますが、同時に、史上まれに見る不法残虐な
北爆支持を公然と表明していることは、口に念仏を唱えながら人殺しの手伝いをしておるにひとしいと言わなければなりません。(拍手)
日本国民の圧倒的多数は、一日も早く
ベトナムに平和が回復されることを念願しており、そのために
アメリカの
北爆が直ちに停止され、
話し合いが始められることを望んでおるのであります。
ウ・タント国連事務総長をはじめ、
社会主義国、
中立国はもちろんのこと、
アメリカの
同盟国の政府や
国民、
アメリカの国内においてさえ、
話し合いが行なわれるために、まず
アメリカは
北爆を停止せよという主張が日に月に強まっているのであります。
下田大使がいかに否定しようと、
北爆停止は
日本の世論であり、世界の世論であります。あなたの訪米の直前に、
由比忠之進さんが
焼身自殺を遂げられたのは、
国民大多数の声を代表して、あなたが
日本国民の願望、世界の世論に反する態度をとることを死をもって押しとどめようとした信念からであります。
総理の
アメリカの
ベトナム戦争政策の支持は、
アメリカの
残虐行為を勢いづけ、
日本を
ベトナム戦争へ一そう近づけ、
日本国民を非常な不安におとしいれ、
国民の熱望に逆行する危険な政策と言わなければなりません。(拍手)あなたの
アメリカの
ベトナム戦争政策と
北爆の支持は、あなたの言われる平和の探究とは両立し得ないのであります。
総理は、
アメリカの
ベトナム政策、ことに
北爆が平和を招来するための唯一の道であるとして、本気で支持されるのかどうか、承わりたいのであります。
次に、
小笠原諸島の
返還について二、三質問をいたします、
小笠原諸島が一年以内に
返還されることは、われわれもまた歓迎するところでありますが、しかしこれには、われわれが懸念し、警戒しなければならない問題が付随しているのであります。
共同声明にある「この協議は、この地域の
防衛の責任の多くを徐々に引き受けるという
総理大臣が表明した
日本政府の意図を考慮に入れるであろう。
総理大臣と
大統領は、米国が
小笠原諸島において
両国共通の
安全保障上必要な
軍事施設及び区域を
日米両国の間の
相互協力及び
安全保障条約に基づいて保持すべきことに合意した。」というくだりがそれであります。現在、
アメリカは
小笠原諸島を軍事上重要視しておらず、軍の施設もわずかであり、駐とん部隊も少ないのであります。
日本がこの地域の
防衛の責任の多くを徐々に引き受けると約束したことは、
日本が、これらの島々が
返還された場合、この島々の地域を
日本の領土として
防衛する責任を引き受けるだけではなく、
アメリカが
西太平洋の
防衛計画の一環としてこの地域で行なっている
防衛の
役割りの多くを
日本が
肩がわりをするということを意味するものであります。そうだとすれば、これは明らかに
日本憲法に定められたところを逸脱するものと言わなければなりません。この
肩がわりとは具体的にいかなる性質のものであり、またその範囲はいかなるものであるかを
総理にお伺いしたいのであります。
次に、
小笠原返還の方式については、昭和二十八年十二月二十四日に締結された「
奄美群島に関する
日本国と
アメリカ合衆国との間の協定」の方式にならい、二
国間協定でよいと言われておるのであります。
アメリカに
沖縄、
小笠原の
施政権を与えておる
平和条約第三条に手をつけずに
小笠原諸島の
施政権返還を実現するために、かかる方式がとられるのでありましょうが、このいわゆる
奄美方式には、一つの危険な問題が隠されていることを指摘せざるを得ないのであります。すなわち、この協定に付せられた
交換公文がそれであります。「
奄美群島及びその領水は、
日本本土と
南西諸島のその他の島々」、これは
沖縄群島のことをさすのでありますが、この「島々における
アメリカ合衆国の
軍事施設との双方に近接しているため、極東の
防衛及び安全と特異の関係を有する。
日本国政府は、との特異の関係を認め、
南西諸島のその他の島々の
防衛を保全し、強化し、及び容易にするため、
アメリカ合衆国が必要と認める要求を考慮に入れるものと了解される。」という点であります。
日本政府が、
アメリカが
南西諸島、すなわち
沖縄群島と特異の関係を持っていることを認め、
アメリカが必要とする要求を考慮に入れるということを約束したことは、まさに注目に値する点であります。
小笠原返還について
奄美方式がとられるとすれば、同様に
小笠原諸島もまた、
アメリカの
軍事施設のある
マリアナ群島、
沖縄群島と近接していて特異の関係があるゆえに、
日本は、
アメリカが必要と認めるものを考慮に入れなければならないという条件が付せられることになるではありませんか。
奄美大島の場合には、いままでこの
交換公文に基づいて特別の要求はなかったのでありますが、
小笠原の
返還にあたって同じような条件がつけられるならば、将来
アメリカは、これに基づいて、現在
アメリカが
小笠原諸島に持っている
軍事施設以上に、いろいろな軍事上の要求を
日本に持ち込んでくることが懸念されるのであります。この
アメリカの必要とするものは、現在の
日米安保条約の規定、運用に限定されておらず、事実上、これらの島々をそのまま
アメリカの
西太平洋防衛体制に組み込んでしまう道が開かれるのであります。これは
沖縄返還の際にも生ずると予想される重大な問題であります。
奄美方式によって
小笠原返還が行なわれる場合、これと同じような条件が
交換公文などの形でつけられることを、われわれは断じて認めることはできないのであります。
総理並びに
外務大臣は、
小笠原返還の
協定締結にあたって、かような条件がつけられることをすでに約束されているのかどうか、お伺いしたいのであります。
共同声明に盛られた内容について、なお幾多の問題がありますが、時間がございませんので、詳細な論議はさらに
委員会において行ないたいと存じます。
最後に、
沖縄、
小笠原の
返還、それと関連する外交、
防衛の問題についての
会談の結果のバランスシートを、私なりにつくってみますと、
アメリカ側は、
一、
日本が
中国封じ込め政策に加わること。
二、
アメリカの
ベトナム戦争政策へ同調し、特に
北爆を支持すること。
三、早々と
日米安保条約堅持の約束をしたこと。
四、
日米協力による
東南アジア諸国への
開発援助、すなわち、
アメリカの
アジア・
太平洋諸国支配のためにその片棒をかついで、一部
肩がわりをすること。
五、
小笠原の
返還にあたり、
日本領土としての
防衛の責任のみならず、
アメリカの
西太平洋防衛体制に参加し、責任を引き受けることを約束したこと。
六、
沖縄における
米軍事施設の
重要性を確認し、
日本が将来
沖縄の
返還にあたり、
軍事施設の機能の維持、
肩がわりを検討することを認めたこと。
七、
ドル防衛に協力を約束したこと。
アメリカ側は、かようなものを
日本側から取りつけたのであります。
これに対して
日本側は、最大の眼目であった
沖縄返還については、
ジョンソン大統領から、「
日本国民の要望を理解している。」というおことばをちょうだいしただけでございまして、(拍手)何ら
具体的返還のめどを得ることなく、わずかに
アメリカが経済的にも、軍事的にも重きを置いていない
小笠原諸島の
返還を取りつけたにすぎないのであります。
外交は、ギブ・アンド・テイクによって行なわれるといわれておりますが、
日本は
アメリカに十を与え、将来多くの重荷を背負わされ、わずかに一を得たにとどまっておるのであります。これは
日本にとりましてまことに不利なバーゲンでありました。
会談が終わったあと、
ジョンソン大統領は非常なごきげんで、いままでに会った八十何カ国の元首、
総理などとの
会談のあとに、これくらい上きげんな顔を見せたことはないとも伝えられているのであります。この取引が
アメリカの思うつぼにはまったものであったことは、それによっても明らかであります。
ニューヨークタイムズは、
アメリカはもっと
日本に譲ってもよかったのではないかとさえ評しているのであります。
佐藤総理は、この
会談の成果を大成功であると誇示しているのでありますが、われわれは
日本にとってまことに不利、失敗であったと断定せざるを得ないのであります。(拍手)
沖縄の同胞が、この結果に失望し、
悲しみ、憤り、
佐藤内閣退陣を叫び出したのは当然のことといわなければなりません。われわれもまた、この失敗についてあなたの責任を徹底的に追及しなければなりません。いまから
沖縄、本土を通じて従来とは全く異なった立場から、異なった形の
沖縄返還の
民族的闘争が展開されるでありましょう。わが党は、今後、
沖縄返還並びにそれに関連する外交、
防衛、政治、経済の諸問題に関し、国会において政府並びに与党と徹底的に討議を行ない、
民族的国民運動を力強く、大規模に展開することを、ここに声明をいたしまして、私の質問を終えることといたします。(拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕