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政府委員(川井
英良君)
検察庁というのは少しほかの役所と機構上違ったところがございますので、最初にその違った点をちょっと申し上げてみたいと思うのですが、
最高検察庁が一つございまして、その下に御承知のとおり八つの高等
検察庁がございます。それから四十九の地方
検察庁があるわけでございますが、高等
検察庁に認証官の検事長を置きまして、具体的
事件の処理につきましては、同時にまた
検察官の人事につきましては検事長に責任を持たせまして、そしてほとんどの
事件が検事長の指揮命令によってとり行なわれておるというのが
実情でございます。よほど大きな
事件であり、また技術上、
法律上の大きな問題点がない限り、
最高検察庁の指揮を受けないというふうなやり方になっております。実はこのやり方には大きな意味がございまして、戦前は
法務大臣が憲兵をも指揮いたしまして、もちろん
警察をも指揮いたしまして、昔は司法大臣と言っておりましたが、私ども司法大臣の時代から仕えておったわけですが、その司法大臣なる者は、巡査に至るまで具体的な
事件について指揮ができたわけでございます。戦後になりまして、御承知のように
警察と
検察との
関係を立ち初りまして、両者の
関係は単なる
協力関係ということになりましたので、
法律に定められた特別な事情がない限りは
検察官は
警察官を指揮できません。したがいまして、今度のような
事件につきまして、全く
大阪地方
検察庁特捜部は
警察と
関係なしに、独自の立場で
捜査をいたしておりますので、当初問題になりましたように、
検察ではなくて
警察当局に献金にあたって
意見を求めにいったというようなことは、本日の新聞に報道されておりますけれども、これを見て一番びっくりしたのは、
大阪の地方
検察庁の特捜部の
検察官だろうと、私はけさそう思ったわけでございます。
そのような事情に相なっておりまして、戦後におきましては、
法務大臣は具体的な
事件につきましては、
警察官を指揮することができません。ただ検事総長のみを指揮することができるというふうに、
検察庁法第十四条に規定があるわけでございます。したがいまして、具体的な
事件につきまして、検事総長を長とする
最高検察庁は、早くから一々の
事件について行動を開始するということは、外目には
法務大臣の政治的な考え方が、ある場合には、具体的な
事件に反映するという誤解を招くおそれもあると思うのでございます。さような観点から
検察庁法十四条ができた後におきまして、
検察庁の運営におきましては、でき得る限り
国民に独立した
検察庁の立場で、独立した刑事司法に奉仕するという
検察庁の独立性を認めるために、先ほど申し上げましたとおり、高等
検察庁の検事長にかなりの権限をまかせて実際の
事件を運営してまいっていく、
事件を処理してまいっていくと、こういうのが
実情であるわけでございます。
したがいまして、
本件におきましても、
大阪地方
検察庁は
大阪高等
検察庁の指揮を受けまして
捜査にタッチしたわけでございますけれども、
事件の内容、大きさは、本日この
国会においても慎重に議論がなされておりますように、重大な影響を持った
事件でございますので、これはかなり早い
機会から
最高検察庁の指揮を受けて
捜査をしているということを申し上げておきたいと思うわけでございます。そこで、
新聞等におきましては、十一月の何日かに
最高検察庁において、高等
検察庁並びに地方
検察庁の係官が上京いたしまして、今後の
事件の処理というようなことについて打ち合わせをしたことに相なっておりますけれども、それが最初ではございません。実は前にもすでに二、三回、同じような打ち合わせが開かれているわけでございまして、それは外部にはそういう会があったということは出ていないわけでございまして、
最高検察庁はいついかなる場合においても、いかなる
事件につきましても、全
検察官を指揮監督する権限を
法律上認められておりますので、下のほうから指示を求めてまいりませんでも、上のほうから見ておりまして、適当でない、あるいは少しもたもたしているというふうな場合には、職権をもっていち早くその担当者に適当な指示、注意を与える、こういうようなことは、具体的な
事件におきましては常時これをいたしておるわけであります。以上は形の上から見た
検察の機構の特殊性を御
理解いただくために、よけいなことではありますが、ちょっと触れたのでございます。
それから、この
事件をごらんいただきまして、かなり時間がかかっておるではないか、どうもふに落ちない点がある、こういう仰せでございますが、この点につきましては、冒頭に大臣からも御
説明がありましたように、こういうような
事件が起きますと、世上、一億何千万使途
不明金があるとか、二億何千万の使途
不明金があるとかいうふうなことがたやすく人の口にのぼりますけれども、こういうふうなものは、会社の会計帳簿を持ってきましても、ちゃんと帳尻が合っておりまして、一見いたしましたところ、さような使途
不明金が出る余地はないわけでございます。そこで
検察権という非常に大きく人権に影響のある権力を発動いたしまして、人を司直の手によってあるいは逮捕し、あるいはその自宅に踏み込んで、プライバシーを侵すというような大きな権限を行使するにあたりましては、世上言われておりますような、常識的な使途
不明金をもってしては、権力を発動できるわけはないのでございます。そこで、まず当初に情報によりまして内定の結果、非常に疑いが濃いという、こういう段階になりまして、八月十二日から集中的に、四回にわたりまして、先ほど申し上げましたように、非常に大きな家宅捜索を実施いたしまして、多くの会計書類、その他
関係書類を押収いたしまして、何十人の
検察官あるいは
検察事務官がこれにかかりきりにかかりまして、そして一々伝票と帳簿を照らし合わせまして、いわゆる使途
不明金の確定に努力したわけであります。
検察庁は
検察事務官の中に、今日数十名、税務大学校を卒業いたしましたこの
関係のベテランを養成いたしまして、東京地検及び
大阪地検の特捜部にこれを配属しておりまして、かようなエキスパートを使いまして、約二カ月間にわたりまして会計帳簿を全部洗いまして、その結果相当金額の疑いの濃い使途
不明金が出ておるということを、ようやく突きとめましたのは十月の終わりないしは十一月の初めごろに相なるわけであります。
この間の
捜査を一々御
説明するわけにはまいりませんけれども、これを何とか早く短くならぬかという仰せでございますが、私どももう少し人手と、またこの道に関する専門家の養成ということを心がけまして、さらにこの次、あるいはそういう
事件が起こらないことを希望するわけでございますけれども、何とか早くやることに、今後におきましては
法務行政の上にさらに一そう注意はいたしたいと思いますけれども、弁解になりますけれども、この種の
事件につきましては、使途
不明金の確定には非常に何と言いますか、時間がかかるということを何とぞひとつ御了承を賜わりたいと思います。
さきの共和グループのときにおきましても、東京地検は
大阪地検の約五倍ぐらいの世帯を持っております。ちょうどこれも二カ月、使途
不明金の発見にかかったわけで、今度のときは前の
事件に比べてその分量、複雑性は倍加されており、私の専門的な立場を言わせていただくならば、
大阪地検というような、東京を離れたそう大きな世帯ではございませんけれども、たった十一人の特捜検事でございますが、その特捜検事でよくぞ
事件に手をつけた、よくぞここまでこの
事件をやってくたたというふうに、私どもの立場からは非常によくやってくれている、内輪で内輪をほめてはまことに申しわけない話でございますが、そういうふうな気持ちでおるわけでございます。全然手をつけないならばおしかりを受け、叱咤激励を受けても、まことにこれを甘んじて受けますけれども非常な困難と非常な隘路を克服しながら、今日
全力をあげて、日曜も一日も休んでおりません。一生懸命にこの努力しておる
検察庁のために、いま大臣が申しておりますように、中身についてとやかくここでもって法務
当局から先を明らかにしてしまうということは、せっかく努力しておるこの
事件が有終の美を飾ることができなくなるというおそれが多分にありますので、いろいろな重要なところをことばを濁すようなことが間々ありますけれども、それはどうか
検察当局が一生懸命
事件をやっておる、そうしてこれをものにしたいと、こういう努力のために、法務
当局としてそこに触れることができないのを、同じことを重ねて申し上げるわけでございますけれども、何とぞ御了承を賜わりたいと思います。
長くなって失礼でございますが、もう一点、この職務に対する対価として使用されるものはわいろであると、私も
法務大臣も予算
委員会で申し上げましたけれども、これは素朴な純
法律的なわいろの概念でございまして、公務員の職務に関する対価としての不法な利益ということに相なっておりますので、先ほど図面で御
説明いただきましたように、何億というような金が流れておるというようなこと、私どもも
報告を受けて承知いたしておりますけれども、その何億という金は、公務員でない政党に対して献金されたものか、あるいは
国会議員ないしは
委員会の
委員としての特別公務員としての職務権限に関して献金されたものかどうかということによって、これは犯罪になるかならないかということがおのずから分かれてくるわけでございます。常識的、通俗的には対価
関係を目当てにして多額な金銭を政党に献金されたということの当否は、私は
国民が判断することだろうと思います。私ども
検察官というような役人が判断するのは、個々のやりとりされました金額が、個々のその特別公務員の職務権限に
関係して、具体的に対価
関係になっているかどうかという点がわいろになるかならないかという境目でございますので、非常にたくさんある金銭のやりとりの中から、最もわいろ性の濃いものに限定いたしまして、一、二の線を一生懸命に証拠づけをしておる、こういうのが今日の現状でございますので、たいへん長くなりまして申しわけございませんけれども、やや
実情に関しまして御
説明を申し上げたわけでございます。