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1967-12-15 第57回国会 参議院 決算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年十二月十五日(金曜日)    午前十時五分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         亀田 得治君     理 事                 黒木 利克君                 中村喜四郎君                 温水 三郎君                 岡  三郎君                 竹田 現照君     委 員                 木内 四郎君                 佐藤  隆君                 菅野 儀作君                 高橋雄之助君                 山崎  斉君                 山本茂一郎君                 小野  明君                 大橋 和孝君                 大森 創造君                 沢田 政治君                 達田 龍彦君                 瓜生  清君                 須藤 五郎君    政府委員        大蔵政務次官   二木 謙吾君        文部政務次官   久保田円次君        厚生省医務局長  若松 栄一君        通商産業政務次        官        熊谷太三郎君        中小企業庁長官  乙竹 虔三君        運輸政務次官   金子 岩三君        運輸省鉄道監督        局長       増川 遼三君        労働政務次官   井村 重雄君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君        建設政務次官   仮谷 忠男君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        大蔵省理財局資        金課長      大蔵 公雄君        文部省大学学術        局審議官     清水 成之君        文化財保護委員        会事務局長    福原 匡彦君        会計検査院事務        総局第一局長   斉藤  実君        会計検査院事務        総局第二局長   石川 達郎君        会計検査院事務        総局第五局長   小熊 孝次君    参考人        日本住宅公団総        裁        林  敬三君        日本住宅公団理        事        稗田  治君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和四十年度一般会計歳入歳出決算昭和四十  年度特別会計歳入歳出決算昭和四十年度国税  収納金整理資金受払計算書昭和四十年度政府  関係機関決算書(第五十四回国会内閣提出)(継  続案件) ○昭和四十年度国有財産増減及び現在額総計算書  (第五十五回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和四十年度国有財産無償貸付状況計算書  (第五十五回国会内閣提出)(継続案件)     —————————————
  2. 亀田得治

    委員長亀田得治君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  これより昭和四十年度決算外二件を議題といたします。  本日は、昨日に引き続き締めくくり総括質疑を行ないます。  質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  3. 大森創造

    大森創造君 住宅公団にずっと私や岡さんが質問してまいりましたけれども、公団側林総裁その他の方々の答弁を吟味をしましたが、どうも私の調査のほうとは違うわけです。具体的な問題について私のほうでお尋ねしている。それについて、皆さん方のほうでは、こうあるべきだというザインでなくて、ゾルレンのほうばかりお答えになっているような気がしますので、きょうは、具体的な事実についてひとつはっきりしたいと思うのです。私のあとからきっと岡委員が同様の問題について質問をされると思いますから。  で、しばしば問題になっている調整金というものですね。これは私なりに理解していますが、あらためて、公団用地買収に伴う調整金というもの、千葉県の花見川団地調整金というものの性格をもう一回簡単にお答えいただきたいと思うわけであります。
  4. 稗田治

    参考人稗田治君) 調整金と申しておりますのは、一応相手側の俗称でございまして、公団といたしましては、調整金という費目はないわけでございます。大体契約以前に、この土地はどのくらいで買える、大体これでまとまる、こういうようなことで一応進んでまいりましたときに、契約前に、それではどうしても契約できないというようなことを地元側から申し出がありまして、それに若干の土地費増額して公団買収しなくちゃならない。その了解点に達したときに、相手側のほうがそれを調整金というような言い方をしている場合があるわけでございます。
  5. 大森創造

    大森創造君 そういう調整金という性格は私もわかります。そこで、こういうことなんでしょう、具体的に言えば。花見川の場合には、平均価格が坪一万一千円、取り扱い業者手数料が三百円、合計坪一万一千三百円で総坪数に乗じた金額を算出して、そして売買の契約金額としたものだけれども、その後個々増額の要求などもあって、最終的には、この場合には一万一千四百二十七円の坪単価になった。個々地主買却価格は、立地条件その他によって、あるいは坪六千八百円であったり、七千五百円であったり、一万円とか、一万数千円というのもある。これは当然だろうと思うのです。これは理解できますけれども、画一的に平均一万一千三百円にならす。そうするというと、いま私が申し上げたことはきっと皆さん方お認めになるだろうと思うのですよ。そうすると、一万一千三百円なり、あるいは一万一千四百二十七円なりの坪単価というものに総面積をかけたものが、この花見川についての買収の総価格ということになりますわな。これはそうですね。その中でさらに実際に当たってみるというとでこぼこが出てくるということも私はわかるのです。それからいろいろな事情もありましょう。ですから総ワクの中において調整をする。そういうものを業者のほうで調整金と言うているわけでしょうね。そういう意味ですね。すなわち、換言すれば、総じて言えば、土地買収に要した金であると、こういうことですね。
  6. 稗田治

    参考人稗田治君) 全部土地買収に要した金ということでございます。
  7. 大森創造

    大森創造君 それは、その意味調整金は非常に困難な用地買収にあたってはぼくは必要だと思うんです、これは必要だと思うんです。だけど、私が調査した限りでは、そうでないんですよ。繰り返し繰り返し申し上げてみまするというと、いま私とあなたのほうで問答した意味調整金ならばいいけれども、いわゆる調整金と称するものの中に、全然土地とは別個に払われたやみ手数料があるわけですよ。全然やみ不当支出、それ以外には絶対に考えられない。具体的に申し上げます。すでに幹部が背任容疑で起訴されている第一明和——重政誠之さんだって起訴されなかったですからね、共和製糖の。いまLPガスの問題でもどういう帰趨になるかわかりませんけれども、私が扱った共和製糖重政誠之さんだって起訴されておりませんからね。すでにこれは起訴されておりますからね、第一明和。きょうは新聞を持ってきておりませんけれども、千葉版にはじゃかじゃか出ているんですね。そこで必ず不正がある。ないものをやりゃせぬ。そこで、こういうことを私はお伺いしたいと思う。調整金ということを稗田さんがお答えになり、林総裁お答えになるその調整金は、私は問題にしたくない。それはわかるんだけれども、全然調整金と称してやみ手数料不当支出のものがある。そこで地主代表川口氏に当たってみるというと、千四百九十万円、これは新聞にも出ておりますが、一千四百九十万円余り使途不明金があるんです。皆さんお答えになったような事情ならば、私は使途不明金というものは存在しなかったはずだと思うんです。調整金ならば調整金としてちゃんと行く末がわかっている金でしょう。ところが、この千四百九十万円余り使途不明金、これは新聞をごらんになったらおわかりになりましょうが、これはどうしてこういう使途不明金ができたのであろうか、具体的にひとつお尋ねいたします。
  8. 稗田治

    参考人稗田治君) 公団といたしましては、すべて地主から代理権限を委任された川口幹さんと契約をいたしまして、それで土地を取得しておるわけでございます。で、あと川口幹さんのほうと、あるいは手下に使った第一明和なり秋山さんなり、そういうところへ手数料等を払い、あるいは地主さんにそれぞれ対応する対価を払ったと、そういうような場合に、第一明和等からまとめてまた地主さんに個々に渡すというような方式をあるいはとっておるかもしれないわけでございます。したがいまして、その千四百万何がしかについて、私は想像でございますけれども、それは第一明和が全部証憑をそろえることができなかった、あるいはそういうような点につきまして若干の事務の粗漏があったというようなことで、これは地主さんと川口さん、あるいは地主さんと第一明和という、そこの間の経理上の問題じゃないか。したがいまして、公団としましては、全権を委任された地主代表と正当な価格であると信じて契約して取得したのでございますので、その点につきまして公団が詳しく解明するということは不可能ではないかと思うのでございます。
  9. 大森創造

    大森創造君 そういうお答えになるだろうと思うんですが、私は、そのお答えの段階でとどまっているならば、この問題の真相の解明は絶対にできないんですよ。私は、花見川団地について背任横領とか、その他いかがわしい問題が必ずあると断言いたします。だけれども、この委員会質疑応答していても、それ以上にはきわめられないわけです。問題は簡単なんです。ですから、この花見川団地の問題について特別調査会でもつくって事実に当たってごらんなさい、はっきりしてきますから、あとから申し上げますけれども。そこで、この使途不明金というのは、この配分をきめたのは公団東京支所青井課長なんです。青井課長がきめているんですよ。いままでのあなた方のお答えとは違うんです。何なら青井課長をここに参考人にしてごらんなさい、事実を言いますよ。柏井の仮事務所の説明会の席上で、青井課長がばっちりこうきめちゃっているんです。これ上司と相談しないはずはないと思うんです。千五百万円の使途不明金があって——きょうは川口さんお見えですよ、そこに。そうして第一明和のほうではこれこれ、これこれだということを言いますけれども、地主に当たってみるというと、地主の一部にしかいっていないんですよ。これはどういうことなんでしょうね。これは林総裁稗田さんも御存じない使途不明金——使途不明ということはないでしょう、これは。金が要るから、これこれに支払いますからという具体的なものがなければいかぬですよ。ところが、いまもってこれは使途不明金なんです。そこで、土地代金増額分ということなら私はわかる。私の言うのは、調整金の中にやみ手数料が含まれていると断言するんです。あなた方のお答え調整金意味はわかる。ところが、その調整金という名前を借りて実際は不当の支出をしてやみ手数料業者が受け取るべからざるやみ手数料を受け取っているという事実が私はいままでの調査で判明した。すれ違いばっかりしていますからね、これは当たってみたらわかるんですよ。そこで、どうして私の質問とあなた方の答弁すれ違いになるかといえば、理由は簡単だ。きょうは川口さん来ているんですよ。理由は簡単だ。それは林総裁稗田さんも御存じないんです。事実は御存じない。きのう私は浜原ダムのことを質問いたしましたけれども、それと同じ。あなたの部下の人の悪いことをした人と相談をして国会答弁をしているにすぎないんですよ。ここが私は国会審議盲点であり、あなた方の盲点だと思うんです。それはつじつま合うような答弁になるんですよ。あなたの部下は、絶対こういうことをやりました、私はこんなことは悪いと思っておりますなんていうことをあなた方に報告するはずがないです。そうしてね、どうして第一明和——よそは言いません、第一明和に対して、坪三百円の手数料、坪三百円の手数料というものは正規の手数料です。それ以外に不当な手段を講じてやみ手数料を支払わなければならなかったのか。私はきめつけますよ、これ。私はやみ手数料を支払ったと断言しますよ。そのやみ手数料をどうして支払わなければならなかったのか。調整金というものは、いままでのあなた方の御説明では、土地代金の一部であるならば、地主が受け取っているはずだ。受け取ってないんですよ、実地に当たってみるというと。しかも、その支出業者が、第一明和のほうが川口さん——地主代表と何にも連絡なしに、あなた方の部下のほうの東京支所なり、関東支所というところにちゃんと明細を出して——それから業者のほうに実際に払った金額は全然違っているんですよ。これは地主代表は看板なんです。その差額をやみ手数料としてこれはだれかがかすめている。私は全部の公団用地買収についてこういうことがあるとは申し上げませんよ。断言できるのは、ここの花見川団地については明らかにこれがある。業者は第一明和、だから警察が出入りしたのです。いいですか、林総裁。あなた自身はわからないけれども、厳然たる犯罪である、これは。約一千五百万円の金は地主のだれも受け取っていないのです。いまもって、これを請求する地主がいない、川口さんのところへ。どういうことでしょうか、あらためてお答えいただきたい。
  10. 稗田治

    参考人稗田治君) 先ほど土地代増額と私申しておりますけれども、これは公団がその全体の土地を取得するのに、正当な価格だと認定できる範囲内においての増額を言っておるのでございまして、一人一人の地主さんへの増額というのとは若干違うのではないか。いろいろ穴あきでばらばらの土地というのは、公団としては団地形成商品価値はないわけでございます。全部それをまとめる。まとめて公団としましては二十一万何千坪という一つ穴あきもない土地になって、そこに初めて公団としての一万一千四千二十七円というような商品価値が生まれてきているわけでございます。ですから、いわばめいめいの地主さんの土地を、もちろん地理学的には続いておるわけでございますけれども、権利上は続いていない。それを一括にまとめるという一つ政策過程というものがあると思うのです。そういうようなことにあるいは地元で費用がかかっておるかもしれない。そういうふうにわれわれは理解しておるわけでございます。
  11. 大森創造

    大森創造君 それならば、その一千五百万円という使途不明金は、使途不明金であってはいけないのです。わかるはずです。こういうものに使った、こういうものに使ったという明細が出てきているでしょう、そうですね。明細が出てこないのはどういうわけですか。
  12. 稗田治

    参考人稗田治君) そういった明細をそろえるとか、あるいは使途を明らかにとらえて支出をするとかいうことは、それは総代表のお仕事になるかと思います。
  13. 大森創造

    大森創造君 それは総代表のお仕事になるかもしらぬけれども、総代表のお仕事としてできないのはどういうことですか。その明細が、第一明和に聞いても絶対に明らかにされない、口頭で言うというと。そこへ行ってみると地主は受け取っておらない。所管としてはあなたのほうの所管外かもしれないが、金は税金ですよ、国民の。住宅を安く建てるというのは住宅公団の使命です。その場合に、一千五百万円はどこへ使ったかということを、扱った第一明和自身がうそ八百を言った場合にどうですか、これは。所管外かもしれないが、一千五百万円という金はどこどこという明細は出てきていいはずですよ。それが出てこないのはどういうことですか。
  14. 稗田治

    参考人稗田治君) 公団買収しましたことにつきまして申し上げますと、たとえて申しますとあれでございますけれども、たとえば自動車一台、これが二百万円の価値があるということで一台買うたと、ちゃんと販売店には二百万払った、こういうことでございまして、その販売店からさらにタイヤに幾らとか、そういうようなことについての経理のところまで公団深入りはできないということを申し上げておるわけでございます。
  15. 大森創造

    大森創造君 深入りはできなくても、いま再三申し上げているように、この金がどこにいったかということについては、これは国会決算委員会の問題になりますよ。一千五百万円の使途不明金が一億五千万円あるいは十五億であっても問題の性質は同じですよ。公団が直接関係しなくても、業者やみ手数料を受けた、そう断定せざるを得ないのですよ。使途がわからないのですから、だれに聞いても、この金は宙に浮いているのですからね。さらに申し上げますと、この決算委員会調整金が問題化したことによって、第一明和に支払うことができなくなった調整金があるわけです。現在、川口さんの手元にこのやみ手数料、この残額があるわけです。八百九十三万九千二百六十三円、これは四年間も受け取り人がないのですよ。いいですか、四年になるわけです。これは川口さんのところにいまもってある。八百九十三万九千二百六十三円、これはなぜかというと、第一明和のほうで持っていっちゃうのですよ。これはやみ手数料としてもうけるべき金なんです。もうけるべき金というのはおかしいが、持っていくべき性質の金であったのです。その証拠はあるのです。ところが、国会決算委員会で問題になったので、これは地主代表川口さんの手元にいま残っているのですよ。これは公団のほうもよく御承知ですよ。なぜ御承知かというと、この残っている調整金について、第一明和が再三再四にわたって川口さんのところに支払いを請求してきている。ところが、川口さんは、第一明和使途不明金の、前に申し上げました一千五百万円のこの明細書を提出するよう——明細書が出るはずですから、どこへ使った、どこへ使ったという明細書は出るはずですから、公団のほうではわからなくても、第一明和という業者はわかっているはずですからね。ところがそれが出ないのですよ、どうしても。明細書をつくることは、あなた方はできなくても、扱い業者の第一明和はできるはずですよ。それができないような第一明和であったら、これはたいへんなものですよ。それで出ない。そこで、しかしまあ残りの八百九十三万何がしかの金というのは惜しいので、さればと言うて川口さんのところにほんとうのことを言って要求するわけにいかないので、どういうことをやったかというと、第一明和の会社の顧問であった根岸順という人をことしの九月十六日に、国会で問題になったそのあとです。公団東京支所熊埜御堂所長をたずねさせて、公団より川口氏に指示してくれ、第一明和に支払うように。そういう要請をしたけれども、熊埜御堂支所長はこう言っている。現在国会で問題になっているから、公団からは川口さんに支払うことを指示することはできないので、第一明和が直接川口氏に請求して受け取るようにせよと言った。これは重大な内容ですよ。続いて九月十八日、いまの根岸順という使いの者は——第一明和使いの者は再び公団東京支所——私は具体的に名前申し上げます。細井課長石渡係長をたずねて、幾ら川口氏に請求しても、使途不明金明細書——前に申し上げました一千五百万円、その明細書を提出しないことには支払ってくれないからどうすればいいかと相談したところ、細井課長石渡係長は、使途不明金は、第一明和土地買収における交際費工作費として使ってしまったということにしろと言われた、こう言うのです。これは録音とっております。いいですか、交際費工作費として使ってしまったことにして受け取りなさい、こういう指示を与えている、あなたの部下は。だから、私の解釈は、すでに一千五百万円のやみ手数料は第一明和に支払われていて、私どもが国会で追及しなかったならば、まだこの上に上積みして、いま申し上げました七百万円、八百万円とかいう金が支払われようとしていたわけです。いまもって受取人がないのですよ、四年間。川口さんは困っている。この金は、これはどういう事情なんでしょうか。
  16. 稗田治

    参考人稗田治君) 先ほどからたびたび申しておりますように、川口さんに公団としましては代金はお支払いしたと、こちらは対価として土地を取得した、こういうことになっておるわけでございます。ただお手元に、いまお話しのような八百何万というお金が要らないということでございますれば、川口さんが地主方全部と御相談の上減額契約更改をしたいということでございますれば、公団としてはそれに応ずるつもりでございます。
  17. 大森創造

    大森創造君 どういうことなんですか。もう一回要約して言ってください。
  18. 稗田治

    参考人稗田治君) 公団といたしましては、二十一万幾らにつきまして、総平均一万一千四百二十七円、これが公団住宅経営としても適正であるという認定のもとにお金地主代表にお支払いしたわけでございます。ただ地主代表のほうでいろいろそれを振り分けたところが、どうしてもそれだけ残が出るというので、これを公団に返したいというのであれば、そういう地主皆さんと御相談の上、代表として減額更改契約をしたいというのであれば、公団とすればこれに応じます。
  19. 大森創造

    大森創造君 そういう性質のものと全然金が違うのですね。公団に返すなどというのではないのですね。いいですか、私が先ほど申し上げたのは、これは公団東京支所のほうに第一明和のほうは受け取りたくて相談に行ったのだから。そうしたら、交際費か何かそういうことの名目にして第一明和のほうで直接受け取りなさい。国会で問題になったからいまさら公団のほうは直接川口さんに言うわけにいかない、あなたのほうで直接やりなさい、というのですからね。だから稗田さんがおっしゃるような意味での、総体の価格があってその中での土地代金を含めた調整料であるということであるならば、私も理解できるのだけれども、私がさっきから問題にしているこの金はやみ手数料であって、やみ手数料を捻出した方法というものがあるわけですよ。時間がありませんから私はその詳細に触れませんが、これはあなたのほうで、いま稗田さんがお答えのように、土地代金で余ったのであるならば、地主代表のほうで適当にこれはお返ししなさいという性質のものじゃないのですよ。これは業者公団のほうでこの金はよこしなさいというやみ手数料なんですから。第一明和のほうでおこりますよ、そんなことを言ったら。そこで、その点は押し問答しても始まりませんから、この金はどういう金かということをしさいに検討してみるというと、稗田さんのお答えのような公式論とは違うのですよ、これは全然。この残金の処置に困惑しているのです、実をいえば。その残金は出るべくして出たのではないのですよ、わざわざ出したのですよ、ひねり出したのですよ。川口さんが悪いわけじゃないのですよ。公団の職員とそれから第一明和の人が結託をしてインチキをしてひねり出した金なんですよ、これは。そういうやみの金が出てきたというのは、八千代台の取りつけ道路、それから斉藤勤さんの土地買収公団が水増し契約して支払った代金、こういうところから出ているのです。これは前回私と岡さんが問答した中であなたのほうで答弁しておりますが、事実と違う。これは私のほうで現地に行って調べてみたらば、答弁内容が違うわけです。ちょっと申し上げますよ。これは一例をあげます。私の質問に対してこういうふうに稗田さんお答えになってる。「お尋ねの八千代台の取りつけ道路契約でございますが、第十次の契約にあたっての分でございまして、総額四千三百五十九万八千二百五十円でございます。この実際の配分その他につきましては、最終的なことについては、公団としては了知していないわけでございます。各地主の申し出の要求額は、いま御質問にごさいましたように、一万円ないし一万三千五百円でございますけれども、したがいまして、それに近い金額で妥結したいということで、公団側は当初からいろいろと努力したのでございますが、地元側のほうでは第九次までの不足分がある、赤字の補てんをしなければならぬ、大体それが千八百万円ほどある、こういうことで、もしそれを了承しなければ、道路用地等の売却はしないというここを主張されたわけでございます。」という御答弁がございます。これはどなたからの報告でございますか。  〔委員長退席、理事竹出現照君着席〕
  20. 稗田治

    参考人稗田治君) その点につきまして実際申し上げましたのは、本所の計画部が東京の支所の川地関係を調査しまして、御報告申し上げたわけでございます。
  21. 大森創造

    大森創造君 その後私のほうで現地に出向いたわけですよ、実際に。稗田さんや林総裁と違うのです。そうして関係者が全部集まった。地元側のだれがこういうことを主張したのか。すなわち、地元側のほうでは第九次までの不足分がある。赤字の補てんをしなければならぬ。それで大体千八百万円ほどあるということをお答えになっておりまするけれども、私のほうで調べた範囲ではこうなんだ。こんな主張をした人は地元側にはないわけだ。事実はだれもしていないのです。公団細井課長個々地主と折衝して価格を取りきめられて、公団側がかってに価格を水増しして、地主代表契約を押しつけたのです、真相は。これは現地全体に当たって得た結論なんです、私の。そういうことで事実に立脚しない抽象問答をしていますというと、これはわからないですよ。現地は警察のほうで動いている。そこで調整金について、公団側は、業者側の俗称費目であって云々ということを言いましたけれども、これは全然違う。一例をあげますよ。四十一年五月十一日に、公団東京支所の山田係長が第一明和取り扱い分の調整金の支払いを地主代表川口幹さんに要請すべく川口さん宅に来訪したことは事実。これは新聞にも書いてある。そうして三菱銀行千葉支店に川口さんの同行を求めて、その支払いを要請したけれども、川口さんは、公団からの支払い明細書がまだ手元に送られてきていないので支払いを断わったところ、山田係長は、支払いの確認方法として、東京支所青井課長に電話で支払いの可否の確認をしてほしいと述べた。川口さんと銀行の牧支店長代理がこもごも電話で青井課長にただしたところ、支払ってやってほしいという指示があったので、牧支店長代理と山田係長立ち会いのもとに、川口さんは、第一明和に一千五百二十一万八千五百円の調整金を支払ったわけです。本年十一月の二十五日に、この用地買収にからむ不正事件を捜査している千葉県警捜査二課は、公団青井課長と上野計画部長の二人を参考人として事情聴取したわけですが、はっきり事実を認めたと、これは新聞にも報道されている。調整金という費目はない、それは業者の俗称である、土地代金地主代表に一括して支払うので、それから先のことは関係ない、知らぬ存ぜぬという御答弁をしておりますけれども、公団調整金配分を知っていることが明らかなんです。知らないのは、総裁と稗田理事だけであって、下のほうは全部知っている。これは率直にひとつお認めくださったらどうですか。公団の設立目的達成のために、健全な姿勢で取り組むべきを、知らないというたてまえにはなっているが、事実はあなたの部下の方は知っているわけです、全部。積極的に介入しているわけですから。   〔理事竹田現照君退席、委員長着席〕  そこで私は、いいですか。一千五百万円という使途不明金地主にいっていない。いっている部分があるが、大部分いっていない。第一明和やみ手数料、あなた方の不当支出であるということを私はここに申し上げます。同時に、いま川口さんの手元に残っている八百何万円のお金、この行くえがさだかでないということ、そこで第一明和はくれくれと言ってきている。川口さんは出さない。もうすでに四年経過している。うちのほうはもらい分が少ないからよこしてくれという地主もだれ一人あらわれていない。だから稗田さんがお答えのように、総体としてのその土地代金の中ならば、私は一億残ろうが二億残ろうがそんなことはいいんです。私の言うのは、こういう金はやみ手数料であり、不当支出であるということを断定してはばからないんです。これは押し問答しませんよ。これは調べてみればわかるんだ、事実を。これは皆さん方御存じないが、私は責任持って申し上げてもこれはいい。そのからくりは、そういう金を生み出すからくりというものの中にインチキがあるわけですよ。この段階で質問してもこれはだめです。本決算委員会で二、三人超党的に委員を出せば、二日間ぐらいでわかる。そこで、第一明和公団の関係を調べてみたんです、どういうことなんだろうと。そうすると、花見川団地が初めてではなくて、第一明和会長の内田保雄さん、いまこの人は起訴されていますね。内田保雄氏が公団用地買収仕事を手がけたまず最初は、昭和三十五年の埼玉県草加市にあった高梨産業につとめたときに、公団の草加の用地買収をしたのが始まりであります。内田の仲間の話では、こう言っている、これは私の話ではないから。しかし、これはもっぱらのうわさですね。当時は連日公団職員を接待して酒と芸者遊びに明け暮れた。ここで内田は公団用地買収のもうけのからくりを覚えた。まず、高梨産業が三十七年に他の事業に失敗して倒産したわけです。そこで、残った内田が第一明和の前身であるところの明和興業というものを設立して社長になったわけです。会社の事務所を永田町のホテル・ニュージャパンの中に置いて、埼玉県の春日部市の武里団地の用地買収には主として東武電鉄の下請として働いた。で、昭和三十八年に明和興業を計画倒産させ、そして明和を設立した。事務所は明和興業時代と同じホテルニュージャパン内である。そして神奈川県の茅ケ崎市の甘沼地区の川地買収にかかったけれども、これは失敗に終わった。この地区の地主数名より内田と当時明和の常務理事であった菊池喜一という人は約三千万円をうまいこと言うて借り出して、現在に至っても言を左右にして返済していない、その金は。いいですか、これはよく聞いてくださいよ。詐欺市同様の行為なんです。この茅ケ崎市の地主より借り入れた資金でもって花見川団地用地買収に着手したんです。公団と内田との関係を深くしたのは——ここが問題なんです。だから、これを不当にもうけさせている。やみ手数料というものをやっているわけだ。その内田と公団の関係を深くしたのは、元公団東京支所の用地課長であった寺井次郎という人、いいですか、寺井次郎という人ですよ。この元公団東京支所の用地課長ですよ。これは名前書いておいてくださいよ、稗田さん、用地課長なんだから。これは現在第一明和の顧問をやっているんだから。それで寺井次郎が明和の顧問になってからであるが、この寺井元課長と相前後して元建設政務次官であった某代議士に接近して、その知己を得るようになって、この代議士から公団の幹部に紹介してもらって、ますます公団との関係が深くなった。当時この代議士はホテル・ニュージャパンの明和事務所によく出入りして顔を出していた。何ぼ顔を出してもかまわないですが、その代議士の紹介によって公団に出入りしていた。これはあとで岡さんがやると思いますが、公団に出入りした業者明和だけでなくて、左近山団地、片倉町団地の用地買収公団と三十二億円の取引をした五城産業社長の大作惣一氏がいる。この前、岡さんと問答がありました大作氏、この大作氏は四十年五月まで明和の総務部長であった人物であります。このようにして明和の内田と公団と着々結びつきを深いものにしていった。すでに新聞に書いてあるとおり、内田ら明和の幹部は、三十九年秋から四十年にかけて公団関東支所の当時庶務課長であった川口氏を大塚三業地の料亭で女を世話してじゃんすかじゃんすかやっておりましたね。お金の受け取りもあるわけです。このようにして明和の幹部が酒と女で公団職員をろうらくした。そこで公団の元担当課長、しかも、これは担当課長というのは用地課長です。その用地課長を顧問に迎えた。そこでこれを見るというと、さらにおもしろい。これは東京支所の用地課長をやった寺井次郎という人ですよ。この人がやめて——これはどうなんですかね、第一明和という公団と密接不可分にある、その用地課長です。用地を買う課長が、当時の東京支所の用地課長をやめて入ったのが、第一明和の顧問に迎えられた。これは私は公務員法上違反じゃないかと思うのですが、こういうことはいいんでしょうか。これは私はちょっと疑問なんです。  そこでまたふしぎな物語りがある。その第一明和に用地課長の寺井氏というのを顧問に迎えたという話をいたしました。そこでこの用地課長は第一明和の顧問に就任して一年ぐらいたってから、この人は用地買収について顔をきかせただけであります、担当の用地課長なんですから。それが第一明和の顧問に迎えられてからどの程度の仕事をやったかわからないと言っている、地主代表川口さんが。そこで私がここに持ってきましたのは、顧問に迎えられた寺井次郎さんという人は、いま言いました株式会社第一明和代表取締役会長の内田保雄さん、これは起訴されておりますね。この人とこういう契約書をかわしている。どういうことかというと、「手数料配分契約書」、「株式会社第一明和代表取締役会長内田保雄を甲とし、」、会長の内田保雄さんを甲として、同じ会社の中ですよ、この顧問の寺井不動産代表——寺井次郎というのは顧問ですけれども、こういう契約を取りかわす関係上、寺井不動産代表という名前をわざわざやったのだろうと私は想像いたします。取締役会長の内田さんと顧問との間に手数料配分契約書というものを取りかわしている。「寺井次郎を乙とし、甲、乙間に於て、千葉市花島町、柏井町、天戸町地先における」、これはいま問題になっている花島地区の用地買収にからむ問題で、「日本住宅公団所要用地売買の斡旋手数料(以下手数料という)の配分について、次の通り契約する。」「第一条甲名義にて日本住宅公団より支払いを受ける手数料の内、乙の取得すべき配分額は」、いわゆる寺井さんという一年前まであなた方の下の東京支所の用地課長をやった人ですよ、この顧問に迎えられた第一明和の寺井次郎さん、これに「総額最低金六百万円也、最高金壱阡万円也とする。」、これをやらなければならないということになっている。うまい商売ですよ、これは。用地課長をやって、その縁故で顧問に迎えられてわずか一年の間に六百万円から最高一千万円をちょうだいいたします。片方は出すことにいたします。ところが、出さないのでいまもんちゃくが起こっている。そこで今度は、川口幹さんあての寺井さんの手紙、拝啓から始まっていろんなことが書いてあります。これを見るというと一目りょう然なんです、からくりが。これはどういうことなんでしょうか。こういうことをしていいんでしょうか。
  22. 稗田治

    参考人稗田治君) 寺井次郎氏が公団を退職いたしましたのは三十五年の十二月三十一日でございます。  それから先ほどからいろいろのお尋ねでございまするが、公団が不動産業者契約しておるのではないわけでございます。これは公団といたしましては、今日まで計画部で取得しております用地と申しますのは、そういった不動産業者を不動産業者としての扱いはしてないわけでございます。したがって、公団からは手数料は払っていないわけでございます。みんな地主代表という形で契約される場合があるわけでございます。この場合は、花見川の場合は、地主代表にもなっていないわけでございます。花島地区とか、あるいは天戸地区とか、そういうところの地主さんたちとの話で、それぞれ下働きをしたということになっておるわけでございます。
  23. 大森創造

    大森創造君 私は、稗田さん、林総裁の御答弁、それはけっこうでございますけれども、ちょっと次元が違うようですから、幾らやってもこれはすれ違いになります。私は勇気を持って具体的な事実を、名前を一々あげているのですからね。これは一般論じゃないですからね。  そこで、私は調べたんだけれども、私が不当な言いがかりをつけているというふうにおぼしめしならば、本委員会が責任を持って調べたらいいのですよ。そうすると、あなた方が抽象論で私とすれ違い答弁をしていることが、どっちが真実かということがわかるわけですよ。こういう問答幾らやったって切りがありません。だから、あとの記録のために私は一方的なことを申し上げますよ。答弁を求めたってこの事実を認めないんだから、いままで何回やっても。こういう不経済なことも公団はやっているのですよ。用地買収ばかりではなくて、造成工事にもむだ使いしているわけです。その例の一つ。どっかに証拠が出てくるわけです。花見川団地の排水路の建設において、当初は合理的というか、経済的な路線を計画立てたわけです、ここひとつやろうということで。ところが、用地買収をめぐっての疑惑の追及がこの決算委員会で始まった。うその答弁を重ねることになりました。さすがに厚顔の公団職員も、地主代表の、そこにおられる川口さんのほうに顔を合わせることができなくなった、気がさして。これは思い切った発言なんですよ、あなた方より。気がさした。この排水路の当初の計画路線のうちに川口さんの土地が六坪あったわけです。この買収川口さんと当然交渉すべきところ、川口さんが一番事情に明るいわけなんですから。ところが、川口さんと交渉することを故意に避けて、川口さんはおこっているだろう、公団には売ってくれないだろう、そこで、全然交渉をしないで、買収を放棄して、当初の計画路線より約百メートルほど延長して、川口さんの土地を避けて建設に着手しようとしているわけです。川口さんのほうは、公団から交渉があれば協力するつもりで、この六坪を分筆していたと聞くのですが、どうして交渉に行かずして、かかるむだな工事費の増加をみるようなことをしているのかわからない。これも現地に行って調べますというと、あなたの部下の方は私と違う報告をするかもしれません。どうもしかし私のほうのこれがほんとうのようだ。私の言うのはあげ足とりではなくて、親方日の丸、用地買収費や工事費のコストアップは家賃のアップで入居者に負担させればという、国民に背を向けた安易な意識が流れているからだと思うが、これが悪いということなんです。これが問題なんです。住宅に困窮している勤労者に、住宅に苦しんでいる入居者にとっては痛憤を押えることができないわけです。  そこで次に移ります。  この前、岡さんが問題にしましたあれですね、これは時間がありませんから岡さんのほうにあと譲りますけれども、左近山団地の問題でいろいろなやりとりがございましたが、この五城産業の代表、さっきも私が申しましたけれども、大作惣一という人物について、どういうふうに認識をされておるのか。林総裁は、不動産業者契約代理人となるときは、その身元を厳重に調査して、信用のある業者でないと契約しないと、ずっと答弁しているわけです。この五城産業会社というものは、信用のある業者という判断をどのような調査で確認をされたか、代表者のその大作惣一氏の身元調査を厳重にされたことがあるのかどうか、お伺いいたします。
  24. 稗田治

    参考人稗田治君) その前に、先ほどのことにつきましてお答え申したいと思います。排水敷に川口中丸さんの土地七坪がかかっておったということは事実でございます。同氏は一ぺん売却することを承諾されておったのでございますが、契約段階に至りまして、公団に関係することは一切お断わりするというお申し出があったわけでございます。したがって、やむなく他のところに、団地に至近の距離で、川口中丸さんに御関係のないところに排水路を確保するようなことを努力いたしておるわけでございます。  次に、五城産業の社長の大作惣一氏が左近山の用地買収にいろいろ交渉に参っておりました段階では、当時は明和の総務部長という肩書きでございましたけれども、途中で、大作惣一個人ということで最終的には用地をまとめたということで申し入れをしてきたわけでございます。公団といたしますと、そういった不動産業者の個人の扱いは、地主の依頼を受けた代表者としても困りますので、それで五城産業という会社になったのであるかと思います。五城産業は当然宅地建物取引業としての免許を得ておるわけでございます。免許関係におきましては、この間総裁からもお答えになりましたように、宅地建物取引業の免許にあたりましては、二年間に禁錮以上の刑を受けたとか、あるいは宅地建物取引業法による罰金刑を受けたというような者は、免許を受けられないことに禁止条項でなっておるわけでございます。
  25. 大森創造

    大森創造君 また時間がなくなりましたから次回に引っぱりますけれども、この大作惣一という人物は、甲州屋一家の大幹部なんですよ、これはばく徒の。そうして私が調べた限りではこうなんです。昭和二十二年の十二月贓物運搬によって起訴されております。二十三年九月すりで起訴されております。二十四年一月窃盗犯で起訴されております。それから二十四年の十二月窃盗未遂で起訴、二十八年の五月恐喝で起訴されております。二十八年の十一月詐欺で起訴されております。三十二年の十二月麻薬の問題で起訴されております。三十二年十二月故買、これで起訴、三十四年十月また恐喝で起訴されております。そのほかに不起訴三件、合わせて十二犯罪件数、以上が履歴書じゃありません、犯罪歴。いいですか、これは十二あるのですよ、これで。どうなんですかね、贓物運搬、すり、窃盗、窃盗未遂、恐喝、詐欺、麻薬、故買、恐喝そのほか不起訴三件、甲州屋一家の大幹部、ぐぐんとふくらんじゃっている、この五城産業というものは。こういう人物であるということを調査したのでしょうか。それから、この前、岡さんの質問に対して、不動産業の資格があるとかなんとか言っておりますけれども、いまのお答えにもあったように、何か刑事的な問題が云々ということを言うたはずですよ。私は一般社会の常識では理解できないのです、こういう契約をするということは。社長がばく徒の大幹部で、会社の設立後日も浅い、地元業者でもない会社に、どうしてこれだけの土地を取りまとめて、三十二億何がしの扱いをさせたのか、私はわからない。身元調査しましたか、これは。これは赤坂のレストランミカドの前にお伺いいたします。
  26. 稗田治

    参考人稗田治君) 昭和二十二年十一月十二日、内務省発の地方長官あての達が出ておりまして、「犯罪人名簿の取り扱いについて」というものが出ております。各町役場等にそういう名簿がございますけれども、われわれのほうの調査では見せてくれないことになっております。
  27. 大森創造

    大森創造君 時間がありませんからなんですが、見せてくれなくても、私が読み上げた事実には変わりはないようだ。そこで、これはだんだんいろいろ出てまいりましょけれども、私が申し上げたのは、要するに、すれ違い答弁が多いけれども、私が具体的な数字、金額をあげて名前をあげましたことのほうが信憑性ががあるから、それならば住宅公団設立の趣旨にもとる。住宅不足のおりから、それからまた勤労者の住宅不足でもあるし、また家賃も高くて困るというおりから、そういうことをやっているということは一番問題だから、私は再三再四公団の姿勢をただしている。だけれども、あなた方のほうは、事実についてはお知りにならないようであって、一番最初に申し上げましたように、こうあるべきだというふうなことを部下の方からお聞きになった。その答弁をこの国会で繰り返しているだけですから、願わくは、私は客観的な立場から少し調べられたらいいと思うのです。全部が全部というわけじゃないですよ、これは。花見川の問題についてですよ、やみ手数料不当支出ということを申し上げたのは。それから、林総裁にしても稗田さんにしても、ことに林さんなとは大元帥——大元帥という、何か最高の軍人の位におられた方でございますし、稗田さんもりっぱな人格者であると思いますけれども、わからないのだろうと思うのです。とてもこれは目が通りませんよ。私は、五十万や百万のことはいいと思っているのだ、めんどうくさいから。だけれども、いかぬですよ、下のほうで何が行なわれているかということをもう少しはっきりつかんで、そうして、もう少し——五十万、これは失言でございますが、いまお互いに月給安いのだから、五万でも三万でもゆるがせにできませんけれども、調べているうちに、ほんとうに私は五十万や百万のことを言っているのじゃない。 もっとちゃんとしたことをやらないと、国民のために相済まぬと思う。林さん、稗田さんの御意思と違うことが行なわれている。そのために、私がここで問題にするというと、みんな締まるだろうと思うのだが、悪い人が、こいつは悪いことをしようかなと思っても、ちょっと手を控えるということがありますからね。自慢じゃありませんけれども、共和製糖事件があったから、今度はLPガスに踏み込んだと思う。あれやらないと、政治家、ずいぶん膨大になるからね。政治資金規正なんということやなんかもあるから。それと同じように、私はこれより悪いことがあるかもしれないと思う。ただ、住宅公団の中に、私が指摘したような事実があるのだから、その一つを指摘することによって全体が締まるだろうという、建設的な意味で私は申し上げているわけです。これ以上は時間もないし、依然としてすれ違いですから、あとの段階ではひとつ別途調査をするということにしていただきたいと思います。  以上で終わります。
  28. 林敬三

    参考人(林敬三君) 大森議員からいろいろと具体的事例をあげてお尋ねがあり、また、いろいろな御所見をとくと承った次第でございます。この問題につきまして、私どもも、これは一年近くずっと引き続いての問題でございますし、部内でいろいろな方法を講じまして調べもいたしましたし、また戒めて、今後の手続上一そう遺憾のないようにという努力をいたしております。  で、お話のように、住宅公団は大切な公共のための機関でございますし、まずそれに携わる者が公正なかつ能率ある姿勢というものを持たなければならないのは当然でございます。ただお尋ねの点で、いままで私どもが携わってまいりまして、知りまして、調べました認識の限りにおきましては、これは土地代金として地主代表にお支払いをしたあと、それを土地代金として地主にお渡しになるものもあれば、手数料として手伝った人に払う分もある。こういうことは向こう側の配分の問題になってくると思うのでございます。しかしながら、その場合でも、いろいろとこちらも、こちらが取得する土地のことでありますし、こちらはまたそこで穴あきがあったりしては困るものですから、それは両方からの委嘱を受けて、いろいろ公団が中に入る場合があると思います。しかしながら、このやみ手数料を、公団の支所の課長が配分まできめる、そんなことはあり得ないし、絶対にやってないと私は信ずるのでございます。また、いろいろ配分の上で、証憑がなければ、総代表がまた使った業者に払わないのも当然だと思うのでありますし、そこの点のところは、どうなってそういうふうになっているのかと思いますが、公団としては、それを指図して、払へとか払っちゃいけないとか言うべき性格のものでもないし、それで、この支所長や細井君や石渡君のところに、いろいろ業者が聞きに来た。業者、来たようでございます。しかしながら、いま問題になっているからぐあいが悪いが、問題が済んだらば、交際費か何かでつくっておけと、そんなことを言うことは、これは絶対にないと、これはやはりお渡ししたもうお金で決済をして、そのかわり登記をもって、こちらは取得した土地であるから、それだからその土地についてお払いしたお金の中の指図までできないから、川口さんの判断でやってくれと、当然こう答えるべきだと思うので、そんなことを言っているはずはないのだと思うわけでございます。また、いわんや川口さんに、これを支払ってやってくれとか、公団の責任ある職員が、そういうことを言うということはないと思いますが、何ぶんにもいろいろと意見の食い違いがありましたし、それからこの前お尋ねがありました、全然公団が出してもいなければまた受け取ってもいないものが、公団の支所長あての受け取りみたいになって、そちらから御提示になる。全然そういうことないし、また常識で考えたって、そんなものに金を払う必要もなければ費目もないものに、公団が金を払って、受け取ったことになっている。それからおそらくさっき酒と女とかいろいろお話がございましたが、これまた受け取りというものを、いろいろにつくる場合が、一般の方方の中で例外の方おありかと思いますが、そんなにこちらは姿勢が乱れているとは私ども信じられないのです。しかし、こういういろいろな御質問がありますこと自体、まことに遺憾なことでございまして、一そうこれは御指摘のように調べもいたします。また、いわゆる第三者的なひとつ立場でも、こういうことはきちっとしていきたいと、私思っております。  また、もう一つ、大作氏のことでございますが、これはこちらでは、地主がお選びになったいわゆる代理人なんですね。で、その地主が代理人を選んできて、これを代理人にしているということになりました場合、こちらとしては、確かに、かつて答弁申し上げたように、できるだけその身元というものは見て、そして疑わしきは相手にしないという方向でいままでもいっておると思うんでありますが、何ぶんいまおっしゃったような問題になりますと、さっき稗田理事から申し上げましたように、公団というものは、やることは公益事業でありますけれども、立場は全く民間の立場で、私ども警察に行きましても、以前とまるで違いまして、それは秘密だから言えぬと、こういうことでございます。それで、興信所とかなんとかを使ったりして、疑わしきは調べるということでやっておりますので、そういうことで、いろいろなことがあったということは存じなかったわけでございます。それから現在の信用といいそれから各種取引業法のいろいろなぐあいというものを主として見て、ときには相手としたわけでございますが、今後特にいろいろ気をつけていきたいと思います。
  29. 大森創造

    大森創造君 簡単に申し上げますが、林総裁が言われることは、いままで何回も聞きました。何も悪いことがなければ気をつける必要もないわけです。私の言っておることは具体的なことを言っておるわけですよ。あなた方の御答弁の限りにおいては、そういう一般論はわかりますよ。だけれど、私が勇断をもってこれをこの委員会の席上で言うておるのは、何も住宅公団全体が悪いというのじゃありません。林さんや稗田さんがどうのこうのというのではない。どなたが公団の総裁になってもあるいは理事になっても、こういう現象は日本全国のうち一つぐらい起こるだろうと思う。その場合に、一回ばんとやると、全体が締まるという立場から申し上げているんであって、それで、花見川団地についてはインチキがあるということです、結論は。やみ手数料が何と言おうとあるということです。そのことをやっぱりきわめるということは、国の住宅公団の明朗な運営ということになります。次回には必要となるべき証人を申請しましょう、関係者の証人、川口さんはじめ、あるいはその他の住宅公団の方をここへ証人に出して私とここで問答しましょう、そのことのほうがはっきりする、あなた方のほうも事実はそれ以上はわからないのですから。以上で終わります。
  30. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 総裁にちょっとお伺いしますが、ともかくきょうもこれ一時間やったが、次元の違った質問答弁と、こうなっているわけです。公団のほうは一括して自分たちは土地代金を払ったので、その先についてはかれこれ言う筋合いじゃないんだと、そういう立場からずうっと前回からも続けてやっておられるわけです。だから、もう一般にたいした問題も起こっていない場合にはそのとおりでいいと思うんですよ。ただ花見川団地については、いろいろ御指摘があるように、公団から支払われたお金、その一部についていろいろ問題が出ておるわけですね。そうして最後には八百万円という金が受け取り手がない、ほしい者もおるのかもしれないが、ともかく宙に浮いたかっこうになっておる。公団としちや減額契約をしようというならしますというふうに先ほど稗田理事お答えになっておりますが、そういうことじゃ私はどうも済まぬように思う。これは公金ですからね。公金だから、私は一括して払ったのだからもうあとは知らぬ、そういうことじゃなしに、その公金について、そのような紛争が起きておれば、一体自分らの支払った大事な公金が実際はどうなったのだろうということを、私は現実にやっぱり調べる義務があるように思うのです。法律的な義務かどうかは別として、公金ですから、そういうふうに第三者としてこうやっぱり質疑を附いておって思うのです。だから、その点はその気になって調べれば、私はある程度公団としてもわかるものだと思うのです。だから、できたら公団のほうで積極的にやっぱり調べてもらって、公団から支払ったお金が、そのうち地主にはこれこれだけ行っておる。そのほかはこういう方面にこれだけ、こういう方面にこれだけ、わからないものがこれだけ、宙に浮いておるのがこれだけとか、何かそこら辺のところは、やっぱり公金の性格上明らかにする必要があるように思いますが、どうでしょうか。林さん、できたら、だからそういうふうに調べてもらって、委員会に出してほしいのですな。そうすれば非常にわれわれの参考になると思うのですが、どうでしょう。
  31. 林敬三

    参考人(林敬三君) いろいろと、たいへん私は筋の通ったお話だと存じます。で、できるだけの努力をひとつその線に沿っていたしてみたいと、かように考えております。ただ、いささか言いわけになりますが、一たんお金を支払ってしまった、それが百何十人かの関係者の手に渡って行ってしまっているという場合、そちら側のまた協力というものがございませんと、強制捜査権とか喚問権とか、何も持っていない全くの普通の国民の立場にある公団でございますから、そこで十分にその効果をあげ得るかどうかということについては、非常なまた——事はお金でございまして、行ってしまったお金でございますから——疑問を持っております。しかし仰せのように、やはり公団が支払った金で問題が出ておるものですから、支払った先のことは一切知らぬということは申すべきではないと存じますので、公団の能力としてでき得る限りの追跡調査と申しますか、そういうことはいたしてみた上で、いい成果が出れば……。また、どうにも手も足も出ないというとき、ひとつまた委員長に申し上げて処置をいたしたいと思います。
  32. 亀田得治

    委員長亀田得治君) じゃできるだけの努力をしてください。
  33. 岡三郎

    ○岡三郎君 いまの質問の中で、いま林総裁がいろいろと御答弁があったわけですが、大森君の質問は具体的なんですよ。具体的だから具体的な点について——これは委員長もお聞きになっていると思うのだが、地主代表契約代表の方もおられる、そういう人を参考人として呼んで、この問題を明確にしてほしいということを言っておるわけなんです。したがって調査されるということ自体は、公団のほうでやられることもけっこうですが、やはりここまでくれば、もっと具体的に当委員会参考人としてお招きして、これを聞きただすところの義務があると思う。だからそういう点で、ただ単なるやりとりということではなくして、端的に人名をあげてそうして具体的にこういう事実があったという形の中でこれは究明されておるわけですから、十分速記録を取って、やはりこの問題について、われわれ決算委員会としては善処する私は必要があると思うのです。これは何かというと、基本的には、いま土地の対策という問題が政府にあってなきがごときものなんです。土地政策がない。したがって物価の中で何が一番上がっておるかといえば土地なんです。そのために都市開発も住宅建設も全部おくれておる。思うにまかせない。そこで、公団も建設予定数というものもあるから、かなり無理して土地を求めなければならぬ。この苦労は私は公団にあるし、その苦労はよくわかると思う。ただそのような、国に土地政策なり土地対策というものがないということから、しかしどんなことがあっても住宅をつくらなければいかぬ、いま国民が困っておるということになると、かなり無理しても土地を取得しなければ住宅公団は家が建てられない。そうしますというと、そこに無理というものがあるから、いろいろとブローカーというものが暗躍する余地が私は出てくるのではないか、そういうふうに言わざるを得ない。しかし、これはようやく最近においてはそういう方法では、当座、焼け石に水の形で何とか押っつけていくような形であっても、もういまのところはぎりぎりになってきている。これは政務次官、建設省の責任者としてよく聞いてもらいたいと思う。結局間に合わせるための緊急仕事という形になって、そうするというと住宅公団のほうとしては、あっちこっち数多くの建設予定地というものをさがさなきゃいけない。そういう中において情報聞き込みというふうなものが先行するということは当然あることですし、新幹線が設けられるときに、神奈川県の新横浜駅が出るところのことが情報に漏れて、先買いをしてばく大なもうけをして、これはアメリカへ逃げちゃった、つかまる寸前に。これは国鉄なり運輸省の情報漏れという形になって、一時大きな問題になった。いま指摘されている事項の中で、いま言われていることで、寺井次郎さんという方が昭和三十五年にやめられているというふうに稗田さんが言われましたが、この人は用地課長であったんですか、なかったんですか、その点言われないんですがね。
  34. 稗田治

    参考人稗田治君) 関東支所土地課長でございます。
  35. 岡三郎

    ○岡三郎君 関東支所土地課長。その人が後に明和仕事をするというようなことについても、これは御存じであったわけですか。
  36. 稗田治

    参考人稗田治君) 先ほど大森委員からの、第一明和の顧問という御発言ございましたけれども、顧問というようには私たちは聞いておりませんでした。自分で自営の不動産業を始めたというように聞いておりました。
  37. 岡三郎

    ○岡三郎君 その顧問というのではなくて、自営の寺井不動産というのをやっていたかどうかは別にして、具体的に先ほど指摘されたように、第一明和の社長と契約というものを取りかわしているということになっておるわけですから、やはり情報漏れというのはどういう形になってくるか。これは私はほんとうはもう少し調査しなきゃいけないと思って慎重にしておるわけですが、左近山団地の買収という問題について情報漏れがあったということを、私のほうへ情報がきているわけです。これはまだ明確に調査が済んでおりませんので、いま明確に言いませんが、第一明和の取締役総務部長が、にわかに昭和四十年に五城産業というものをつくった。それで、そこへ乗り込んで、地元にも不動産業者は一ぱいあるわけです。数多くあるわけです。ところが、「はるばる来たぜ函館」じゃないけれども、はるばると神奈川県、六郷川を渡って、とにかく神奈川県へ乗り込んでくるということになっている、その実態ですね。私はこういう点について、やはり公団の用地課長というふうな方々が、そういうふうなブローカーなり業者なりという間にあってどういうことをするかということについては、やはり公団当局としてもやっぱり慎重にやってもらわなきゃいかぬというふうな気がするわけです。私はそういうふうな点で後刻また述べますが、左近山団地の、これは五城産業がこちらの税務署に提出した収支総括表というものがありますが、これは左近山第一です。この中に書いてあることは、総額十三億七千四百三十三万五千二十円、この中で手数料が、これは数字よくわかりませんが、八千一百九十四万七千二百四十円、これは五城手数料という数字が出ています、八千一百九十四万。これは十三億のうちですね。この左近山団地は三十一億九千万円、三十一億有余ですね、三つ合わせると大体。さっきの稗田さんの答弁の数字を合わせてみるとですね。そうするというと、これから、十三億について八千有余の手数料が出ているわけです。これから推定するというと、三十一億何がしということからいえば、二億以上の金が手数料という形で出たということが見られる。これは推定ですから断定はいたしません。二億有余の金が五城手数料としてなっているというふうに見られるわけです。そうするというと、公団は一銭も手数料払っていない。用地を取る者が一銭の手数料も払わないで地主にみんな手数料払わせているというこの横着なやり方ですな、私はこれは横着だと。どんな人間でも土地を取得する者が手数料払わないで、その手数料を全部地主に出させているというこのやり方、これいいと思いますか、悪いと思いますか。これはいいとか悪いというよりも、正当な行き方でしょうかどうでしょうか、総裁。
  38. 林敬三

    参考人(林敬三君) いまお述べになりましたように、公団土地を取得する場合は、この地方公共団体のような公的機関が間に入ってもらいます場合は、それに対する事務費ということで手数料的なといいますか、事務費的なものをお支払いをしておる。しかし、その他の一般の民間からのものにつきましては、手数料は一切支払わないというたてまえでいままでずっとやってまいったのです。これはまあやはり公団が十二年たちますが、初めは土地を持ってくる人がどんどん多かったので、それで、私のやや私見になりますが、殿さま買いといいますか、受けて立つと、こういうところがずっと最近まであって現在に至っていると思うのです。そこで、すでに東京都では、ことしからでございますか、都もそういう場合に手数料払うということにまあ条例が変わってきたというふうにも聞いております。公団としても、これは建設省とよく相談いたしまして、これは住宅公団だけというわけにもまいりませんので、よく相談をいたしまして、やはり私は改善していくべきものだと、かように考えています。
  39. 岡三郎

    ○岡三郎君 やはり土地を取得する場合に、明朗にするためには、やはりそういう点が、いま改善されると言ったので、ひとつ検討してもらいたいと思いますが、この前回の答弁に、土地の評価で一万一千四百二十七円に坪数を掛けたものを出した。評価というものはこういうふうにこまかく出るとは思いませんが、一万一千円という形で出たのですが、これはこういう四百二十七円というようなものを鑑定人が出したのですが、これちょっと中を説明してください。時間がありませんからひとつ簡単に明瞭にお願いします。
  40. 稗田治

    参考人稗田治君) 土地の評価は、不動産関係とか近傍類地価格とか、そういうようないろいろの資料を整えまして、土地等評価審議会という公団の内部の機関でございますけれども、そこでそれらのことを勘案して幾らまでということをきめるわけでございます。ただ、支所におきましてはやはり若干の余裕を持って交渉したいというので、まあ契約締結されたものは若干それより低めに出るかと思いますが、一万一千四百二十七円と申しましたのは、十一次までの総平均が実績そうなる、こういうことでございます。
  41. 岡三郎

    ○岡三郎君 私はまた一万一千円というのが出て、あと四百二十七円ぐらいが手数料分として中に入っているのじゃないかと、これは私は即断しておったのですが、これは別にいたしまして、たいした問題じゃございませんが、手数料を今度はいろいろな形で言っておりますが、土地支払い分として十二億七千二百万有余という形の中でずっと見てきますというと、測量費、登記費というのはわかるが、一千三百五万ですか、人件費というものが支出されている。税務署に出すのだからいろいろ税金の関係もあると思うのですが、その中に渉外費が二百九十四万、約三百万。交際接待費が三百六十二万。渉外、交際接待費というものを合わせると六百五十万以上になっているのです。これが先ほど大森君が指摘したものに私は該当してくるのではないかと思うのですが、土地を取得する場合において、交際接待費が三百六十二万一千一百五十五円、こういうふうに戸塚の税務署に届け出ている。渉外費というのが別項にあって二百九十四万四千円、渉外費あるいは交際接待費ですか、合わせてこれが三百六十万有余。一体どういうふうに交際接待費を使っているのか、渉外費というものをどこへ使っているのか、憶測すると、この接待費の中には公団の職員も入っているとも思われる。先ほどの大森さんの話じゃないけれども、見てみるというと、そう長い期間じゃないのです、二年ぐらいですか。とにかく六百五十万以上の金がそういう形で出ております。それから、この中で諸費という形で、これもどういうものか知りませんが一千九百七十一万出ている。こういうことをいわれるというと、公団お答えは、私のほうは単価に坪数をかけたものを払ったわけですから、あとはどうなっているか、私のほうの責任ではございません。こういう逃げ方をする。なかなか公団は頭のいいやり方を私はやっていると思うのです。なかなかあとの余地がだいぶあるようですが、そこにブローカーが私はやはり飛び歩くところのうまみがあるのではないかということが出てくると思うのです。公団土地を鑑定して坪数をかけて買って、もうそれは登記しているんだから私のほうは関係ございません。その金はそっくりいきました。その先の金がどうなろうと私のほうは存じません。ところが公金が出て、それがどこまでいっているのかということになってくると、先ほどの花見川団地の問題、あるいはこっちの左近山もいま調査中ですが、その内訳表を見るというと、奇々怪々で、なかなかこれはおもしろい。非常に興味をもって私は見ていたのですけれども、こういうことを考えるというと、これも一つの問題点としていろいろと地主から委任を受けるために接待したり、あるいは交際したり、そういう費用をどんどん使って、またその諸費として、これはわからないのですが、調整金というのがおもだった地主にくれているのか、くれていないのか、内訳はわからぬけれども、いろいろなことをやっている。そうなるというと、どうしても私はここで公団に……。ブローカーという人々を、地主がこの人がいいといって言ってきたと、こう言っているわけです。そういう逃げ方をするわけです。地主が五城産業を連れてきたんだから、私のほうはこれとやらなければなりません、こう言っているわけです。まことにこれも理路整然で、まことに筋が通っているようだけれども、そうでない感じが非常に強くするわけですが、結局いろいろな名目の中において、いろいろと税金対策もあるでしょうけれども、手数料と称するようなものが、膨大な金が地主からブローカーのふところに入っていく仕組みになっていく。それは地主承知してやったんだからしかたがないというけれども、お百姓さんはよくわからない面もあるかもわかりません。私はこれ以上言いませんが、だから私は先ほど言ったように、問題点がいろいろと花見川でも起こっているが、公団はここで一歩前進して、総契約人と金銭の授受をやるにしても、どういうふうに総契約人が土地を取得して公団に持ってきているのか、こういう点について、支出された金がどうなっているかということがわからぬでは、私はやはり公団は困ると思います。そういうふうなものも明確にして、土地を売った人に対して、こういうふうに地主の人には金がいっておりますよというふうに、はっきり出していけば、これはある程度もやもやというものが解消するのではないかと私は思うのです。それが、だれに幾らいっているかわからない。しかし、いっていることになっているけれども、まだもらってない人があるのかもしれない。私はそういうふうな点で公団のブローカーを使ってやるやり方についても、一歩前進してもらわなければいかぬと思うのです。この点どうですか。
  42. 稗田治

    参考人稗田治君) 五城産業の手数料の件について申し上げますと、神奈川県の規定では、売り渡し人と買い受け側と両方から三%ずつというのが限度になっているわけでございます。一方が、つまり公団の場合は支払っておりませんから、そういう場合は六%までということになっているわけでございます。左近山第一の場合は六%の手数料を取っているものだと、かように私は理解しているわけでございます。第二のほうはそれより少ないように聞いております。いま公団を通じまして税務署のほうに出しましたのは、いろいろの法人課税とかあるいは譲渡所得税の軽減というようなことがありますので、公団を経由して所轄の税務署に届けることになっているわけでございます。その六%の内訳を会社のほうでそういうふうにあげたのであろう、これを税務署がどう査定するかということは、また別でございます。そういうような性質のものでございます。それからあとのお尋ねでございますが、住宅公団といたしましては、できるだけいろいろ誤解の生じないようにしたいということで、この左近山の場合は用地の契約のとき、代金の支払いのとき、いずれも地主の立ち会いはもちろんございます。それから契約しましてから、地主の一人一人に公団は左近山第一なら第一につきまして、これだけの面積で総価格幾ら、したがって、平均価格はこれでということを各地主ごとに全部最後の契約までには出しているわけでございます。
  43. 岡三郎

    ○岡三郎君 花見川のほうの団地もそうやったのですか。
  44. 稗田治

    参考人稗田治君) 花見川の場合は、立ち会いは全部いたしておりますけれども、その契約の通知、これが若干漏れておったようでございます。
  45. 岡三郎

    ○岡三郎君 漏れておったというのはどういうことなんだ。つまり私の言っているのは、地主幾ら幾ら、全体がどうなっているかということが地主にいけば、地主のほうはよくわかってトラブルが少なくなると私は思うのですが、それが花見川ではやっておるのかどうかということを私は聞いているわけです。
  46. 稗田治

    参考人稗田治君) 立ち会いはやっておりますが、地主への通知がなかったということでございます。
  47. 岡三郎

    ○岡三郎君 だから、稗田さんまことにいい人だけれども、ときどきずるいですよ、あなたの答弁は。さっきは漏れていたと、こう言ったでしょう。漏れているというのは、やったけれどもその中に幾つかないというのが漏れている。いまはやっていないと言う。漏れているということとやっていないというのはずいぶん違うのですよ。日本語少し勉強してもらわにゃいかぬ。だから、こんな点で改善されているということを自信をもって言ったらいいと思う。こういうふうになっていたからこういうふうにやっているというふうに。左近山の地主には全部いっているわけですね。それを私はちゅうちょなく言ってもらわなければ解明できぬと思うのですよ。だから、花見川の場合については、どこの地主幾らということが地主のほうにいっていないのです。どうもそこのところがはっきりしない。そういうふうな形の中で問題が提起されていると私は思うわけですよ。だから、そういう点について改善するなら改善するように、明確に言ってもらいたい。  総裁、いまの点、これからそういう点について、もことしたいろいろな黒い霧がかかったような問題になってくるので、そういう点は公団としてこういうふうに改善する方向でやっているのだということを言ってもらいたいのです。
  48. 林敬三

    参考人(林敬三君) 一括代理契約人を立てて土地の売買をします場合に、やはり地主の立場というものをできるだけ擁護する。また不当なことのないように、また、あとで不平なことのないようにということで、特に最近ここ一年ほどの間にしばしば内部の会議をやりまして、また通達を出しまして、通牒を出しまして、その点、今後一そう遺憾のないようにいたしつつあるところでございます。  で、いま稗田理事から申しましたように、契約のとき、それから契約代金の支払いのときは、必ず全土地所有者に対して買収の面積と、それから買収平均価格というものを必ず通知する。これはもう漏れがあってはいけないということに、励行をさせることにいたしました。  それから、この契約をしたとき及び代金を支払うときは、土地代表者を必ず立ち会わせる。ところが、いままでを見ますと、初めは立ち会うのです。何回目かになりますと、もうマンネリになりまして出てこない。それでやってしまうということがありますので、今度は立ち会い人が来ない場合は金は支払わない。あるいは契約は締結しない。立ち会い人が必ず出てくるまでは待っていて、その上でやるということにいたしました。  それから、このさっきの代理人の信用調査でございます。これも、私のほうとしてできる限りの、たとえ地主が推薦してこようと、選んでこようと、やはりこちらとしてはもうできるだけの調査をして、こういう大きなお金を扱う代理人として、またこちらが相手として、公益機関であるという立場から考えましても、疑わしきは排除していくという努力をするようにということをいたしました。かつ、これは全部まず土地を申し込んでくる、あるいは買おうというときは、全部の関係者にこういうふうなことで売買をいたしますが、それで御納得の上であればひとつ応じていただきたいというようなことでいたしております。それで、お話しのように土地は非常にほしい、もう実にほしいし、努力をして獲得をするわけでありますが、しかし、信用ということをもっと大事だと思いまして、場合によれば土地が買えなくても信用は保っていきたい、こういう態度で今後引き締めてまいりたいと思います。
  49. 岡三郎

    ○岡三郎君 そこで、この前私のほうはだいぶ含みを持って、五城産業というものについて、どうなっておりますかということをお聞きしたときに、総裁は、それは不動産業者として認可を受けている、そういう説明を、ここにずっと速記録にあるのですが、しかしこの冒頭に、やはり信用ということを総裁は強調しているわけです。そこで私のほうは、どういうふうにこれから調査してくれますかということで言って、これは大森さんのほうで先ほど言われたのですが、その後住宅公団として調査した点はどうなっておりますか。住宅公団として調査すると言われておって、そのことについて大森さんのほうから言われたから、それでそのとおりですという答弁もあるかもわからぬけれども、公団としてなかなか一般的に調査はできない。そういう事情もわかるような気がいたしますが、しかし興信所等を通してやればある程度はわかるというふうにも思われます。そういうふうな点で、この前、私もその点言っているわけですが、どういうふうに御調査になったわけですか。
  50. 稗田治

    参考人稗田治君) 五城産業につきましては、東京都の免許を受けておったものでございますから、東京都の審査の過程を東京都に問い合わせをしたわけでございます。東京都としましては、地方公共団体にくる申請書に基づきまして——地方公共団体と申しますのは、東京都のことでございますが——該当の市町村に犯歴等の照会の文書を送り、これに対して市町村長は、二週間ないし三週間で文書によってその有無を回答する。その結果によって免許を出している、こういうことでございます。その実体につきましては、法令によりまして警察、検察あるいは裁判所等の照会のほかは一切秘扱いということで、お見せすることができないというので、それ以上の調査はできなかったわけでございます。
  51. 岡三郎

    ○岡三郎君 あれだけ私のほうで言って、そんな調査だけで終わっているのですか。東京都にいって、東京都のほうからこうでございますからこうでございます——あきれた答弁だな、ほんとに通り一ぺんな。これはもう住宅公団としての、非常に典型的なスタイルの答弁だと私は思うのです。あの程度の調査ならば、これはもう日常だれも知っていますから。そんなことを聞いているわけじゃない。特別に何かあるかもわからぬから、私のほうで念を入れて林総裁に、十分ひとつ御調査願いたいと言ったところが、十分な調査というのは、東京都にお伺いしたというだけか。  では、私が言いましょう。きょうの読売新聞に「知事認可の業者蒸発」と、こう書いてある。大体不動産業者は、前には届け出制でしたが、今度登録制になった。大体これ、政務次官、聞いておいてもらわなければいかぬ、いいですか。登録制にして、今度認可制にしたでしょう。ところが意味ないですよ、これ、たいして。これはむずかしい点があると思うのですが、蒸発してしまっているのだ。これは業者はさんざっぱら善良なる市民を泣かせて……。誇大広告とかインチキ広告で、公取もずいぶんやっている。もうこれは日常茶飯的に——いま世の中のいろいろな紛争とか、こまかしということが、土地にからんだものが非常に多いんですね。しかし、これはある一つのワクをきめてやるのだから、これはしかたがないとしても、住宅公団に登録をしている業者は、少なくともこれは信用調査というものをやはり十分やってもらわなければ困ると思う。私は、いろいろと犯罪を犯した——二年以内に犯さなければいい、それもわかります。それから犯罪を犯した者が立ち直るということによって業をするということもよくわかる。わかりますけれども、第一明和とか、そういう役員の中でいろいろな事件が起きている中で、われわれがこの問題を考えるときに、やはり東京都の知事が認可しているのだから、住宅公団はそれでいいのだということだけでは、慎重さが足りないのではないかというふうに私は考えます。じゃ、すべての官庁なんかにおいて、県においても国においても登録制度がありますね、そういうときに、すべての不動産業者に、知事の認可があるからといって登録させますか。これはすべての官庁においても十分信用調査、実績調査、そういうものを全部してやっておりますね。だから知事の認可があったからそれでよろしいんだということではないと思うんですよ。これは政務次官どうです。
  52. 仮谷忠男

    政府委員(仮谷忠男君) おっしゃるとおりです。そういう点は十分に調査をして遺憾なきを期さなければならぬと思いますが、たとえば建設業の登録業者にしても、実際に仕事を請け負わす場合に、さらに工事完成保証人までつけてやっておるという現実を考えてみると、単なる登録があるからそれでいいんだという考え方で、こういう大きな問題をさすためには、これはよほど慎重に考えなければならないことはお説のとおりでありまして、十分注意してやらなければいかぬものだと思います。
  53. 大森創造

    大森創造君 お答えはいいんですけれども、先ほど私が申し上げたように、はしなくも岡さんから五城産業の問題が出ましたけれども、この社長の犯罪歴をさっき私言ったでしょう。贓物運搬、すり、窃盗、窃盗未遂、恐喝、詐欺、麻薬故買、恐喝その他不起訴三件。これは三十二億の、しかも権威のある国民の税金を使う、しかもあぶなっかしい用地買収という問題について、すり、窃盗、窃盗未遂、贓物運搬、恐喝、詐欺、麻薬、故買、恐喝その他不起訴三件、こういう者をあれするというのはいかがでしょうかな、私はわからないんですよ。これはだれにでも聞いてごらんなさい、こんな人を契約代理人にするという神経が私わからぬです。三軍の統合参謀本部長のあなたの神経が私にはわからない。こういうことを聞くと、何か五城産業の大作惣一社長には、そういう犯罪歴があるにもかかわらず、この人を総代理人にするような裏のことがあるんですよ、これは。社会常識上私は考えられないんです。これがやみ、窃盗の仲間の契約ならいいんですよ。相手は公団ですよ、総裁は林さんですよ。いかぬですよ、こんなことは。私は事実を申し上げている。起訴の九件も暴力ならまだいいが、詐欺、窃盗、すり、贓物運搬、窃盗未遂、麻薬、故買、恐喝ですよ。さっき岡さんが読み上げられたのは税務署への報告です。こういう接待費、旅費云々の中からと言われましたことは、大森君が言った云々の、やみ手数料も入っておると言いましたけれども、私の言っておるのはそれとは違うんです。こんなものは届け出たほうではなく、やみの別の手数料があるということですよ。私がいま申し上げたのは、岡さんとのやりとりの中にも、政務次官のお答えもあるけれども、こういうことはすぐわかるんです。五城産業に行ったら、近ごろえらくもうけている。急にふくれ上がった、何だろう。それでちょっと経歴を見ると、すぐわかるんですよ。こういうことを私は疑うんですよ。その裏に何かあったに違いないと想像されてもしかたないでしょう。
  54. 岡三郎

    ○岡三郎君 そこで、私は先ほど言うように、これは詳細にたださなければいかぬけれども、知事の認可があればいいんだということでは困る。知事の認可の業者が読売新聞で、蒸発してしまって、十人の社員もろとも他人の土地を売りまくっている。これは知事の認可業者ですよ。これは美濃部さんのときにやったんじゃないから知らぬというわけにはいかぬだろうと思うけれども、これは各県でいろいろ認可していますが、これも通り一ぺんのことですね。だから善良なる市民が泣いてしまっておる。そこで私は先ほど言うように、政府の出資の公団なり公庫なりというものは、そういう形式的なものではなくて、やっぱり信用調査——信用というものを重視してやってもらうためにお考えを願いたいということを言っておるわけです。それは一般的に言って犯罪を犯した者が、すぐそれが永久的にそういうものをやってはいかぬとかいいとかいうことではなくて、端的に言うて三十億とか四十億とか五十億という金を取り扱う総契約代理人というものを選ぶときには、やっぱり慎重を要するのではないかということを私は言っておるわけです。そのためにひとつどういうふうにやってもらえるのかということを、きょうは総括で、締めくくりとして言っておるわけですよ。その点を総裁に御答弁願いたいんです。
  55. 林敬三

    参考人(林敬三君) いろいろとお尋ねの点、まことに深刻な問題でございまして恐縮に存じます。信用が第一であることはもう申すまでもないことでありますが、なかなか信用というもの、これは尺度のあるようなないような、その資力とかいろいろなことだけでは判断できないむずかしい点がございます。一つのよりどころを知事の認可と、知事の認可にいろいろ過去二年間にどういうことをやらなかったという証明がございますので、一応現在の時点というものに中心を置きまして、あと悪い聞き込みや何かがあれば排除するが、そうでないと地主から委託を受けて、そうして代表になってくるというものを一応社会常識から見てやれるという見通しがある場合に、これを相手方とするということをいたしてまいってきているのでございます。しかし、いまの御指摘のようなのは現段階においてその信用というか、一応平穏無事にまいりましても、やはりこれはもっと慎重であるべきであったかということを反省いたす次第でございます。しかしながら、同時に一般論としまして、ただ前科があったからといって、御質問の中にも加えていただきましたけれども、みだりにまた排除して相手方にしないということも、これはまたいけないことだと思うのでございます。そこいらをよく勘案いたしまして、そうして最善を尽くして信用調査して遺憾のないように今後つとめてまいりたいと思います。
  56. 岡三郎

    ○岡三郎君 林総裁もなかなか人情味がある方で、一般的に言うてということで、その点私もその答弁で一般的に言えばいいと思う。ただ、国あるいは国と同じ資格のあるものが何十億という仕事をやったときに、地主が、この人がいいからと、言いなりに、公団は何でも土地が取得されればいいんだということであってはならぬのではないかということを言っておるわけです。やっぱり国に準ずる機関として、一般的にはいいけれども、それは何も仕事をしてはいかぬとか、そんなことを言っているわけじゃない。やっぱり国として契約をする場合においては、やはりその点について、そういうものがあってはならぬという法律はないからいいんだというふうなことではなくて、慎重にお取り扱い願いたいということを言っているにすぎない。だからこの点は、大体まあいまの答弁の中で、信用というものを重視してやらにゃならぬということで、今後こういうことが適正に、厳格に信用というものを。やはり第一にして公団がやられるということを私は信じまして、これ以上これは触れませんけれども、最終的に、私はもう時間がありませんので、これは土地の取得の問題について、やっぱり自治体ですね、建設省自体も、国自体も、住宅公団土地取得、これは国家的な事業ですからね、これはあるいは土地開発の中における道路なりあるいは橋梁なりあるいは鉄道の敷設なり、こういうふうな問題をひっくるめていろいろと考えられておるけれども、実行しておらぬ。いまここでしぼって、住宅公団の場合の土地取得については、やっぱり国が積極的に——公団自体も、各地域における県の住宅供給公社も、土地の取得にはいまお手あげの状態に近づいてきておる、こういうふうな点について、総合開発のような形で大規模なものをやっぱり自治体と十分相談して先行していくという形の土地に対する対策というものをもっともっと積極果敢にやってもらわぬというと、末端にいる公団の下の用地課長さんなりあるいはそれに類するところの人々が悪戦苦闘に終わっていると思うのですよ。しかし、いままで何とかかんとかやってきた。しかし、これは抜本的に国の住宅建設に伴う土地の取得という問題について、総体的に知恵をめぐらして、そうしてこれは何とかしなければならぬ問題は法律で行なうということで、いま先買い権というものがあるようだけれども、ほとんど用をなしておらぬ、だから私はそういう点について、建設省なり国が、抜本的に用地取得についてよく公団と話をして、そしてでき得る限りブローカーというものが暗躍できないような形で、もっと大々的ないわゆる土地取得政策というものを立ててもらわにゃ困ると思う。その中に初めて私はやはり国民が納得するところの問題がここに出てくるのじゃないかというふうに考えます。この点について総裁と政務次官から最終的に御答弁をいただいて終わります。
  57. 林敬三

    参考人(林敬三君) いまのお話、全面的に私はごもっともだと思います。方向としては、これは一歩でも二歩でもそういう方向へ進めていただきたい。そうしてむしろある壁へいけば、抜本的な政策として方法を講じていただきたいものということを、実施を担当する機関の責任者としては痛感をいたしております。まあ公団といたしまして、お話のように極力ブローカーの暗躍ということのないように、またいろいろな権利の調整というものはありましょうけれども、何とかして先行取得ということが、もう少し容易に、またタイムリーにできるという制度ができましたら、また、そういう時期が相当迫ってきておるんじゃないかという感じがいたします。しかし公団といたしましては、現行の法制のもとにおいて、もとより最善を尽くしてまいりますが、実施を担当しておる者の気持ち、希望としては、さように存じます。
  58. 仮谷忠男

    政府委員(仮谷忠男君) 特に建設大臣も、建設行政の中で住宅問題を特別にひとつ考えようという姿勢を示しておることはすでに御理解いただいておる問題だと思うのです。そのためには、やはり宅地を提供するということがこれが第一条件でありまして、そういう意味の宅地の新しい開発の問題、そういった問題について、制度化あるいは税制の問題等、さらに前進したものを何らかつかもうということで、いま検討いたしておりますことは、けさの新聞等てもごらんをいただいたことだと思うのでありまして、そういう意味で、公団、公営住宅の問題については、十分に御趣旨を体して全力をあげて努力いたしてまいりたい、かように存じております。
  59. 岡三郎

    ○岡三郎君 以上で終わります。
  60. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 私は岡委員質疑、非常に建設的なことで、いま公団がこれから改めていかなくちゃならない問題を一つ一つつまみ出してやっていると思う。どうかひとつ公団のほうでも、いまの趣旨を十分理解して、新しい用地買収の問題点をひとつつかみ出していただきたい。特に自治体関係と相互協力関係の中で用地買収をしていきたいというのは、これは公団としてはいままでやってきたことであるが、しかし、自治体でも用地買収が困難であるために住宅公団の要請に応じられない、こういう事態もあるわけです。したがいまして、いろいろ公団の悩みとする点を、ひとつ私ども決算委員会等にまとめて聞かせていただく機会をぜひつくっていただきたい。先ほどから大森委員あるいは岡委員と、こういう場合にも住宅公団の考え方と議員の質問とがかみ合わない場合が幾つかある。かみ合わないまでもスタンドポイントが違っている場合がある。用地買収等になかなかむずかしい問題点がありまして、私ども筑波の場合とか各地の状況を見た場合でも、公団の考え方、地主の考え方、地方自治体の考え方、おのおの違う場合があるわけですから、どうぞひとつ新しいテクニックを案出してもらって、私どもに聞かしていただきたい。同時に、悩みもまた聞かしていただきたい。以上要望します。
  61. 大森創造

    大森創造君 いまの中村君の発言ですが、私はスタンドポイントが違うわけじゃないですからね。非常に積極的に国民の立場に立っての明朗な住宅公団ということを、岡さん以上に、中村さん以上に私願っているのですから。そのためには、スタンドポイントの違いではなくて、事実こういうことがあっては困るという事実を指摘しているのですから、誤解のないようにお願いいたします。
  62. 林敬三

    参考人(林敬三君) ただいまの御発言まことにありがたいと存じます。また、必要なことであると私ども痛感しているのでございまして、ぜひなるべくすみやかに、適当な機会に、そういうことをやっていただくようにお願いを申し上げるような運びを進めたいと存じます。また、地方公共団体のお話がありましたが、それはもう土地を買いますのに、一番健全でかつ割り安によく買えるのは、地方公共団体が中に入ってもらった場合でございます。しかしながら、いまお話のように、なかなか公共団体といえどもいろいろな利害関係もあれば立場もありまして、いまの制度のままでは、そうやすやすと入れないというような事情もあって、やむを得ず直接地主から買う、あるいは契約人とやるというようなことに入っていく点もあるわけでございまして、現状の悩み、問題点及び新しくどういう方向にいくべきであると実施当事者としては考えるかというようなことについてまとめまして、適当な機会にまた御教示を仰ぐようなことにさせていただければ非常にしあわせだと思っておりますし、建設省ともこの点よく打ち合わせをいたしたいと存じます。
  63. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時十分休憩      —————・—————    午後一時二十一分開会
  64. 亀田得治

    委員長亀田得治君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、昭和四十年度決算外二件を議題といたします。質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  65. 小野明

    ○小野明君 前回、文化財保護行政につきまして、特に太宰府の史跡指定の問題についてお尋ねをいたしたわけであります。で前回のお尋ねというのは、わりあい一般的な問題に多く触れておりましたので、今回は焦点を若干しぼりまして、お尋ねをいたしたいと思うのであります。  局長御存じのように、この史跡指定の拡大につきましては、百五十ヘクタールという膨大な地域が指定をされておるのでありまして、そして地元のほうでは、町なりあるいは県のほうといたしましては、この内定について大体ABCの三段階に分けまして指定を受ける、こういった意図であるわけであります。この点については、前回原則的には文化財保護委員会としては了承できるんだという御答弁であったと思うのであります。で、その後御検討をいただいておると思うのでありますが、地元としてもだんだんこの意向が固まりつつあるやに承っておるのでありますが、まずこのABCの三段階に分けることが文化財保護委員会としてはどうなのか、この御見解を承りたいと思います。
  66. 福原匡彦

    説明員(福原匡彦君) ただいま小野先生からお話のございました、太宰府の史跡指定地域の拡大につきまして、拡大地域が非常に広範囲な地域にわたります。それでこれを一律にきびしい規制をすることはいかがかということでございまして、これは一年前から地元の方々の強い御意向もございまして、文化財保護委員会といたしましては、福岡県教育委員会相談をいたしまして、福岡県教育委員会が現地におきまして地元との折衝を重ねているわけでございます。たしか前回お答えいたしましたときには、その地元の方のお入りいただいた協議会を三回重ねてきているとお答え申し上げたのでございますが、その後また二回にわたりまして、計五回にわたりまして県と町、それに地元の区の代表の方もお入りいただいて協議を重ねてまいっております。それでその間出ております、県の教育委員会として出しております意見が、ただいま小野先生のお話のございましたABCの三地域に分けまして、地区によりまして規制の度合いを異にする、こういうことによりまして、地元の方の御了解を得ようとしているわけであります。A地域につきましては、前回にもたびたび申し上げましたが、これは史跡の中の一番重要な部分と申しますか、これは遺構その他非常に重要なものが予想されますので、現状変更につきましてもきびしい、一般的な規制を受ける地域をA地区とする。それからB地区と申しますのが、現在十分な発掘調査が進んでおりませんので、そういった関係でその現状変更等をいたしますときに調査をいたしまして、その結果重要な遺構などが出てまいりました場合には、これはA地区に準ずる扱いになる。しかしそうでない場合には、これは後ほど申し上げますC地区の扱いにするという、まあやや中間的な扱いをこのB地区の場合にはいたす、C地区と申しますのが、現在すでにうちが建っているような部分でございまして、これは現在の家屋を改造をするといったようなときに、これに強い規制をかけるのは、地元の方に対するたいへん御迷惑なことでございますので、そうした現在うちの建っている地域につきましてはC地区として、これは現状変更を一般的には認めていく。ただその際、歴史的景観と申しますか、その後背の山等との関係で、これも前回出ました屋根の色等について御配慮いただく。まだこれでも改築等にあたりまして、また遺構が出た場合には、これはまた検討しなければなりませんが、とりあえずはC地区ということで規制をゆるくする。この三段階に分けて、地元で県の教育委員会のほうがお話し合いをしているわけであります。その線につきましては、前回私お答え申し上げたこととは、現在の段階でも、同じ状態において県のほうは地元とお話を進めている、こういう状態です。
  67. 小野明

    ○小野明君 そうしますと大体地元の意向というものは、中央の文化財保護委員会としては、大体了承をしているやり方である、こういうふうに受け取ってよろしいわけですか。
  68. 福原匡彦

    説明員(福原匡彦君) そのとおりでございます。地元と福岡県との話し合いを尊重しているということでございます。
  69. 小野明

    ○小野明君 その場合に、私もこの前御質問を申し上げましてから現地、いわゆるA地域というものを歩いてみたわけなんです。もちろんB、Cというのも見せていただいたのでありますが、このA地域というのが非常に広いわけですね。全体百五十ヘクタールでありますから、広大な地域であるということは、まあ推測するにかたくないわけですけれども、実際歩いてみますとA地域が非常に広い。いま局長が言われますように、もし発掘調査をやりまして、重要な遺構あるいは遺跡等が出ました場合にはA地域に、あるいはC地域にと、こういうふうに分けられる、こういうお話でありますが、まだその発掘調査といったものも、それぞれまだ精密に行なわれていない。そういった場合に、A地域の縮小というようなことは考えられないのか、あるいはこの発掘調査をやりまして重要な遺構、遺跡が出た場合にはもちろんA地域にやらなければなりませんが、そうでない現状の場合A地域を縮小し、B、Cを白紙にする、こういうことはできないものであるかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  70. 福原匡彦

    説明員(福原匡彦君) ただいま小野先生お話のA地区にしても、相当広範な地域にわたるのではないかというお話でございます。A地域は全体の十分の三ぐらいになりますので、坪数で十二万坪ぐらいになろうかと思います。ただA地域として現在考えておりますのは、太宰府の都府楼跡、現在その都府楼跡は、ある程度特別史跡として指定されているわけでございますけれども、これは学問的に四町四方、方四町として通説きまっておりますので、それは方四町を指定をしたい、方四町に広げたい。それからその隣に学校院跡がございます。これは二町四方、方二町という通説でございます。そのさらに東側に観世音寺がございます。これは方三町ということでございます。この太宰府の政庁跡と学校院跡と観世音寺、これがいわば政治と教育と宗教の中心ということでございますので、これが太宰府としては一番重要な部分になるというふうに考えまして、純学問的にこの地域だけはどうしてもA地域に考えたいということでございます。それこもう一ところ飛び地でございますが、観世音寺の子院で金光寺跡という部分がございます。これは礎石がはっきり遺存しておりますので、その部分が若干入りますが、大体A地域の考え方は、そうした政庁跡、学校院跡、観世音寺、こういう部分に集中をいたしまして、これは発掘調査いたしますれば、必ず遺構が出てまいりますし、そこには平城宮跡のような木簡等の出土も期待できます。これが調査が進みますれば、おそらくまた平城宮跡と違いまして、当時の大陸と申しますか、朝鮮等との交通の要衝でもございますので、いろいろ新しい資料の出土も期待できますので、この辺だけはぜひA地域ということで厳格に規制してまいりたい。こういうことで、いまのところ私どもとしてはこの地域はぜひA地域にお願いしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  それから、あわせてBC地区ははずしてもいいのではないか、こういう御質問でございますが、BC地区につきましては、前回も申し上げましたが、これは十分学問的な調査が進んでおりませんので、いまでは何とも言えないのでございますけれども、しかしおそらく調査が進みますと、何か出てくるのではないかということが考えられるわけでございます。で、そうした場合に現在の住宅その他の開発の様子を見ておりますと、ここを指定しておきませんと、将来に禍根を残すおそれがあるということで、たいへんこの区域に入ります所有者の方々には、御迷惑をかけるわけでございますけれども、私ども文化財を保護する立場から申しますと、一応指定の中には入れておいて、調査の結果によりまして、あるいは解除するということもあろうかと思いますけれども、現在のところ何とか地元のほうの御了解を得まして、ここを指定の中には入れたいと考えている次第でございます。
  71. 小野明

    ○小野明君 まあおっしゃられるようにA地区の指定につきましては、委員会のほうでも御検討の上だと思われるわけでありますけれども、現地といたしましては学問上のそういったお話はありますけれども実際には遺構、遺跡というものがあるかないか、あるいは方三町、方二町といいますけれども、それがはたして正確であるかどうか。まあこの政庁跡の問題は、これはいたし方がないと思うということで、地元民にもこれは了解がいっているわけですね。その他のいわゆる学校院あるいは観世音寺の跡というものについては、やはり問題があるというふうに受けとめているわけですね。その点を縮小できないかという、まあお尋ねをしてみたいと思うのですが、再度ひとつ御答弁をいただきたい。
  72. 福原匡彦

    説明員(福原匡彦君) 御説のように、政庁跡に比べますと、学校院あるいは観世音寺と申しますのは、直接の政治の中心というわけではございません。ただ、当時の九州における政治の中心が太宰府に置かれまして、それに関連しまして観世音寺につきましては、西日本の僧侶に授戒を授ける戒壇院というものが、観世音寺に置かれたわけでございますし、それからその当時の役人の教育その他、学校院において法律とか算術とか薬学とかを教えたという記録がございます。したがいましてそうした歴史的に記録に残っておりますものにつきましては、実は歴史的な記録文献だけではなくて、何かこれがそこの発掘調査によりまして、新しい史実が出るということもございますので、そうした研究の余地を残しておきたいというのが私どもの気持ちでございます。その点につきましては、地元の方々には非常におわかりにくい問題もございますので、現在県、町入りまして、いろいろその中に学者もお入りいただきまして、地元の方とお話を進めているわけで、私どものところにも先般町長並びに三人の区長さんがお見えになりまして、そういったことについては、私どももお話申し上げているわけでございます。何らかそういうお話し合いの間にお互いの了解というものが進めばと、こういうふうに期待しているわけでございます。
  73. 小野明

    ○小野明君 なおこの問題についてはAなりBCという点については、なお検討の余地があるやに承るのでありますが、さらに地元の方たちが了解ができるような調査なり検討をお進めいただきたいと思います。  次の問題は、こういった広い地域なんでありまして、いままでの国のやり方というのを見てみますときに、地元の人が地域を縮小してもらいたいという願いが出てくるというのは、当然であるというふうに考えられるのは、指定がありまして四十五年間にわずか二町歩しか買い上げていない。しかも今回は百五十町歩の指定である。こういったいままでの国の文化財保護行政が遅々として進まない。こういった点から不安を持っているのだということを、私は痛感をいたしておるのであります。それでやはりこういった広大な百五十ヘクタールという地域でありますから、この全体についてはやはり国が買い上げるということが、最も私は文化財保護行政については適切なやり方ではないか。適正な値段が国が買うのだと、これが最もいい方法ではないかということを感じておるのでありますが、この点についてはいかがですか。
  74. 福原匡彦

    説明員(福原匡彦君) 小野先生の御指摘のように、文化財の保護のためには、文化財と申しますか、ことに史跡等の保護につきましては、最終的にはこれを公有地にする、国が直接買うというようなことは、きわめて例外的にしか行なっておりませんが、国が補助をいたしまして町村あるいは府県等に買っていただくというのが、最終的には必要なことだと考えております。まあその用意がございませんと、地元としては開発の業者等に売りたい、売りたいけれども、それは文化財の保護の規制でとめてしまう。しかも、それを公の機関は買ってくれないというような形では、たいへん不安を与えるかと思いますので、私どもといたしましては、予算の中でこの買い上げ費の補助を十分用意をいたしまして、いまのような点、小野先生の御指摘のようにだんだん買い上げの分をふやしてまいりたい。まあ太宰府につきましては、四十五年間に二町というお話でございました。四十五年間買い続けてきたわけではなく、最近三年間にようやく買い始めたわけでございますが、それもだんだんとこちらの予算の伸びの中で買い上げの範囲を広げております。全体予算との関係がございますので、これも十分とはまいりませんけれども、今後買い上げの範囲は広げてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  75. 小野明

    ○小野明君 それで、結局国が買い上げないと、非常に大きな私権の制限をやるわけでありますから、他に転売をしますと、またそこで大きな問題が起こってくる。こういうことが考えられるわけですね。ですから、いまのこの文化財保護に対する投資というのが、将来にいまの価値以上のものを残してくるということがはっきりいたしておるのでありまして、この点は局長も十分御承知のとおりであろうと思うんです。それで、四十年の評価を見ますと、坪八千円でございますね、当時二年前で。昭和四十年で評価をしておるのが坪八千円である。そうしますと、実際に八千円で、この買い上げにかかるのが二年後の昭和四十二年であります——四十三年になるんですかね。そういたしますと、二年間というものに御承知のように土地の値段がどんどん上がるものですから、いま二年前の評価で土地を売ってくれ、国が買うぞと言っても、非常に大きな不満が残るわけです。現にこの太宰府の左側ですね、左側というと西になりますが、この辺は指定地域外ですけれども、三万円でどんどんまあ買い手があるというわけです。一方右手の中になりますと、指定地域の中でも大体民間でも二万円ぐらいの評価であるらしいんです。国が買いますと八千円ぐらいである。ここにやはり大きな問題があるのではないか。評価が低過ぎる。この点は評価をやはりその時の時価というものを勘案をいたしまして、あるいは物価の値上がり、土地の値上がりというようなものも計算できるわけでありますから、実際に買い上げが発動する時点での評価というものに変えられないものであるかどうか、この点をお尋ねしたいと思います。
  76. 福原匡彦

    説明員(福原匡彦君) 買い上げの場合の評価でございますが、これはただいま御指摘のように、四十年度は八千円だったと聞いておりますが、これはそれにくぎづけしておるわけではございません。たとえば本年度は、私ども聞いておりますのは、農地につきましては九千円、宅地につきましては一万七千円というふうに伺っておりますが、これはお話のように時価と申しますか、近傍類地の価格を参考にいたしましてきめておりますので、当然その値上がりというものは見込むわけでございます。ただ、そのいまの三万円というようなお話でございましたが、私ども買収いたしますときには、個々に評価が違いますと、地元の方でかえってお困りになる点があるものですから、平均価格というような形でたしかお支払いしていると思います。そのために道路沿いの土地などでもっと高いはずだというようなところから見れば低いところもあろうかと思いますが、平均としては、値上がり等もしんしゃくいたしまして、いまのようにスライドした価格をきめておるわけでございます。
  77. 小野明

    ○小野明君 それはことしから来年にかけてなるべく早くこれを買っていただくということが一番いいわけでありますから、なるべく時価に沿った値段をおきめいただくようにお願いをしておきたいと思うんであります。  それからこの土地は、文化財保護法によりますと、申し出によって国が買うことになっていますね。それからいきますと、こういった私権の制限される土地でありますから、この税の減免についての何らか考慮がされないものであるかどうか。いまおっしゃられた値段にいたしましても、やはり時価よりも低いんではないか、私はこういうふうに感ずるわけなんですが、この税の減免というのにも考慮が払えないものであるかどうか。聞くところによりますと、平城京の場合は四分の一課税、譲渡所得税ですかね、四分の一課税であったという話も聞くわけであります。そこで平城京の場合は減免をされて、そうしていまの太宰府の場合は減免がされない、そのまま課税をされてくると、こういった点についてはいかがなものですか。
  78. 福原匡彦

    説明員(福原匡彦君) ただいまの小野先生おっしゃいますように、時価で買うと申しましても、役所が買います場合には、まあ最低といいますか、評価がきびしゅうございます。それに比べますと、民間はどうしても買いたいということで買いにかかります場合には、それに積んだ額で買うという形になりますので、地元にいたしますれば、こうした場合税制上の減免措置ということを期待されるのは当然だと思います。私どもそうしたことを全国的にも伺っておりますので、現在地方公共団体が史跡を買収いたしました場合、土地所有者にかかります譲渡所得の非課税措置につきまして、これは税制改正を要望しております。ただ、これはまだ現在実現していない状態でございますので今後努力してまいりたいと、まあこれは一般的にはそういう努力を重ねてまいりたいと思っておりますが、ただいまお話のございました平城宮跡の場合は、これは平城宮跡が土地収用法の規定にかかります事業でございましたので、これはその関係で租税特別措置法の規定の適用がございました。これは若干そういった例があり得るわけでございます。平城宮跡の場合は、したがいまして一般の場合よりも大体半額程度の減税がなされたというふうに聞いておりますが、これはすべての地域には、この土地収用法の規定に該当する事項がございませんと、かかりませんので、太宰府の場合も、ちょっとそれには適用されないのでございますが、私どもとしては、そうした非常に特殊な場合だけこれがかかるというのもぐあいが悪うございますので、全国的に何か一般的な措置としてそういった面を考えていきたい、こういうふうに存じております。
  79. 小野明

    ○小野明君 大蔵省に来ていただいておればよかったのですが、平城京の場合には、どうして土地収用法に引っかかるのか、その根拠を伺いたいんです。そうしてなぜ太宰府は土地収用法に引っかからないのか、そこまでお調べであったらお聞かせいただきたいと思います。
  80. 福原匡彦

    説明員(福原匡彦君) いまの御質問は、大蔵省への質問……。
  81. 小野明

    ○小野明君 いや、まああなたに、なぜ平城京の場合には土地収用法にかけられるのか、まあ私、どの条項に引っかかっているのか調べているのですけれどもわからぬわけです。御検討されておれば、その点を伺いたいのであります。
  82. 福原匡彦

    説明員(福原匡彦君) では私からお答え申し上げます。  土地収用法の第三条の第三十一号というのがございまして、この中に「国又は地方公共団体が設置する庁舎、工場、研究所」というのがございます。そのあと書いてございまして、「その他直接その事務又は事業の用に供する施設」というふうになっておりまして、平城宮跡の場合には、国立の文化財研究所が発掘調査をするということが目的になっております。それで、これは土地収用法の事業の対象になり得る。実際は土地収用法によって収用したのではございませんけれども、その要件を満たしているということで、この土地収用法の第三条の第三十一号を受けまして、租税特別措置法の第三十三条第一項というのに該当いたしたわけでございます。
  83. 小野明

    ○小野明君 たとえば平城京の場合は、そういった研究所が、これは同時につくられたのか、前もってあったのかしりませんが、あったから適用された。しかし、文化財保護ということで太宰府が指定をされる。まあ歴史的ないままでの経過からいきますと、平城京、平安京に劣らない太宰府設置の価値があると言われているのでありますが、これがやはり平城京の場合には適用されてこの太宰府の場合には適用されないというのには、何か私は不合理な、結果としては同じでありますから、たまたま小さな研究所というようなものが掘っ立て小屋でもいいから建てられておったから適用されたのだと、こういうことでもないでありましょうけれども、何かそういった減免措置がさるべきではなかろうかと、こう考えられるのですが、何か研究されないものですかね、そこは。
  84. 福原匡彦

    説明員(福原匡彦君) ただいまのは、たまたまと申しますか、その研究所の発掘調査ということを、大々的に平城宮跡の場合には実施するという予定がございまして、その計画に基づいてこの規定をかぶったわけでございますけれども、これは一般的になりません。たとえばほかの規定でも、私、伺っておりますのは、都市公園法によりまして都市公園になっていくということがはっきりいたしております場合には、これがやはり土地収用法のその次の号でございますけれども、第三条の第三十二号に「国又は地方公共団体が設置する公園、緑地」「その他」となっております。その「公園」というのに都市公園法のほうからここへ引っぱっていかれまして、その減免措置がとれるというふうに聞いておりますが、そうしたやや部分的に、何とか現在ございます法律の条文の中で処理できるものだけが減免措置されている、こういう状態なんです。  それで私、そういった非常に特殊なケースだけが減免されるというのでも不都合かとも存じまして、一般的に何か非課税の措置というものをお願いできないかということで、政府部内で相談し合っている状況でございます。
  85. 小野明

    ○小野明君 それではなお御検討いただくといたしまして、ぜひひとつ税の減免措置を適用するようにお願いをしたい。そのことが、結局やはり国が買いやすくなる、国のほうに買ってもらいやすくなるという文化財保護の趣旨にも合うわけですからね。  それから地元の町の負担というものが、買い上げが進めば進むほど大きくなるわけです、一割ということですからね。わずか二万人くらいの町で非常に大きな負担になっている。一千万円いけば百万とこうなる、一億いけば一千万、二万人くらいの町では、そのたびに一割という負担金を出すのは非常に私は酷だと思うのです。その点で何か前回は、管理団体としてちょっと適当なものを県あたりにしてはどうかと、こういうふうな意見も申し上げておったのですが、この点の地元負担の解消ということに何かお考えがありましたら、ひとつ伺っておきたいと思います。
  86. 福原匡彦

    説明員(福原匡彦君) ただいまの地元負担の軽減の問題でございますが、前回申し上げましたように、太宰府の町として、この指定地域が増大してまいりますと、買い上げがふえてまいりまして、それに対する一割という負担率をしょうのに困難だということは、私どもその事情よくわかります。それで前回の御質問あと、県の教育委員会のほうとも再三話をしております。県の教育委員会といたしましても、私ども伺っておりますのは、来年度の太宰府の保護の予算につきまして、相当増額したものを見込んでおるというふうに伺っております。本年度につきましても、県と町とが一割——一割ということでなくて、県のほうが若干持ち分を多くというふうな操作をしておるというふうに伺っております。来年度以降、予算総額が増大をしてまいります点につきましては、県のほうにさらにお願いをして、太宰府町のほうの負担は軽減したいと、こういうふうに考えておる次第であります。
  87. 小野明

    ○小野明君 それではこの問題は終わりまして、次の問題を一点だけお伺いしておきたいと思うのですが、同じく県内の嘉穂郡桂川町に装飾古墳であります王塚古墳というのがございますが、これは昭和四十年度に私もこの中の装飾が保存が行き届いていないために非常に荒らされつつある、消えつつあるのだ、こういうことを指摘申し上げておったのです。それで、この点の保護がどのようになされておるのか、お尋ねをしたいと思うのです。
  88. 福原匡彦

    説明員(福原匡彦君) 王塚古墳その他装飾古墳一般に、口を開きますとやはり退色をしてまいっておりまして、この点私ども非常に心配をしているところでございますが、それにつきましては、昨年度熊本にございます千金甲古墳、釜尾古墳につきまして、国庫補助事業といたしまして、樹脂加工をこの彩色の部分にいたしたわけでございます。それでこれは東京の文化財研究所が中心になりまして、保存科学的な立場から、その効果を検討しておるわけでございます。まあ現在は、その昨年度の実施した処置につきまして経過を観察中のところでございます。その他専門家の意見を十分聞いてまいりまして、せっかくのこの保存されてまいりました装飾古墳でございますので、何とかこれを現在以上には退色してまいらないように心がけてまいりたい、こういうふうに考えております。
  89. 小野明

    ○小野明君 今年度、大体王塚古墳には予算はどれくらい充てて、どういう保存措置をなさるのか、それをお尋ねしたい。
  90. 福原匡彦

    説明員(福原匡彦君) 実は王塚古墳につきましては、その退色するという問題のほかに、石室の石材に亀裂が入ったということがございまして、このためにその崩壊を防ぐという措置を現在やっておりまして、本年度は特に被害のはなはだしい玄門部を応急的に補強するというので、総額二十万円、国庫補助十万円でございますが、これは完了いたしまして、来年度以降その本格的な保存工事に入ろう、こういうふうに考えております。
  91. 小野明

    ○小野明君 最後に政務次官にお尋ねをしたいと思います。  やはり太宰府に限らず、文化財保護行政というのを、現在非常に大きく取り上げていただかなければならないわけであります。というのが、宅地開発、社会開発あるいは大きな道路の建設というようなことから、非常に文化財が荒らされつつあるわけであります。こういった点で、大きなこの文化財保護の手をこの際やはり差し伸べていただかなければなりませんし、それにはかなり大きな予算を必要とする積極的な姿勢というものが必要であります。同時に、この地元民の協力というものなくしては、この所有主の協力ということなくしては、この文化財保護行政というものは進められないと思うのであります。で、太宰府の場合を例にとりますと、百五十ヘクタールというものを買い上げる。そうすると、その土地を、買い上げるのではなくて指定をいたしますと、非常に大きな私権の制限を受けるわけです、国が買いました場合にも、先ほど事務局長説明をされましたように、平城京の場合には税の減免がありますけれども、太宰府の場合には税の減免がない、しかも私権の制限というのは同様に受けてくる、こういう矛盾がある。で、太宰府の場合、今後発掘調査もしていただかなければならないわけでありますが、これには、法を変えるか——法を変えるというよりも、土地収用法なり特定公共事業の用地買収等の場合の特例といったような税減免の措置があるわけでありますが、この中に挿入をするか、あるいは発掘研究所みたいなものをつくるか、何かくふうをしていただいて、地元民がやはり喜んで協力できるような措置というものが、政府の手によって私はなされなければならぬと思うのであります。そういった点について、最後に政務次官の御見解をいただいて終わりたいと思うのです。
  92. 久保田円次

    政府委員久保田円次君) 小野先生も御存じのとおりに、文化財保護につきましては、これは、国家といたしましても国民といたしましても、重大に考えなければならないと思うわけであります。  まず私どもは、一体文化とはどういうものであろうか。その定義は私はわかりませんけれども、おそらく文明を推し進める力とでも申しましょうか。特にその文化に対しましていろいろ保護を加えるその内容におきましては、まあ有形無形と二つに大別されると思いますけれども、先祖のつくった文化を、われわれがその文化を守って後世に残すということは、これはどうしても必要だと。しかしながら小野先生の御指摘のように、たとえば全国的に見た中で太宰府というようなものを取り上げたときには、非常に広大な地域になってくる。地元の負担が非常に、一割といたしましてもたいへんなことになります。それを、その文化を残すためには、国だけの考え方では、これはならないと思うわけです。地元がまず協力体制をつくるためには、一体国がどうしたらいいか、そこに問題が私は出てくると思います、したがって第一点といたしましては、何といいましても地元の協力がなければ、これは無理押しをしてやるということは、これはどうか。この一点が考えられるわけであります。それをつくるためには、いま御質問のありました数々の点、たとえば単価の点におきましても、またこういう時期でありますから、つとめて、国のほうといたしましても、その規模もできるならば私は小さいほうがけっこうだろうと思います。しかし先ほど申し上げました、せっかく祖先のつくった文化を後世に残すためには、国のほうといたしましても幅広くとりたい、再びなかなか手に入れることができない、こういうふうな点から考えましたときに、一体その土地を手放したときに、しからばその税金というものはどんなぐあいにかかるかというようなことは、これは相当検討しなければならない点であろうと思います。したがって、かような点から推しましたときには、少なくも公共用地として提供するにおいては、特別な立法を考えて、そうして原則としては、私は非課税にするということが、最も好ましい時点ではないかというぐあいに考える次第でございます。
  93. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 関連して。  文化財保護の問題でいま質疑がありましたが、私、京都のほうで、今度若狭の近くに、そうした史跡を保存するために、いろいろそうした丘というふうな名前をつけて京都府でいまやって、おそらくそちらのほうへ申請が出ていると思うのですが、あれにつきましても、私は、あの計画を見て非常に驚いたことには、非常に国から出る補助率が少ないのですね。率は一定になっているのでございましょうが、いざそれをつくるためには、やはり建築すれば建築、あるいは土地が要れば、やはり政府のほうで考えておられるところの基準では、全然ものにならない。私はああいう計画を見て非常にさみしい気持ちを持ったのでありますが、あれは何とか、そういう古文化財を保護する意味において、もう少し国のほうでは考えられないものか。特に私は、京都あたりは至るところがそういう史跡がありますので、このごろの開発の上では、非常ないろいろなところに支障が出てまいりまして、あるいは小さなものであれば、そのものを取り出して、そうしたところへ一定の地域に集めて、そうして、そこへ行けばいろいろなものが見られるような形につくるのも、これは非常に私はいいことだろうと考えておりますが、そういうことに対して、もう少し積極的な国からの施策はできないものかということをわれわれは思って、私は感じておるのですが、その点についてちょっと、一言だけ……。
  94. 福原匡彦

    説明員(福原匡彦君) お答えいたします。  ただいまお話のことは、風土記の丘という名前で、実は文化財保護委員会といたしましては昨年度から始めまして、昨年は宮崎県、ことしは埼玉県で、二年計画でございますのでまだ最初のが完成していないくらいの段階でございますが、来年度第三年目に入りますにつきまして、京都府からも強く要望が出ているものでございます。これは、御指摘のとおり、私どもといたしましては、史跡を、ああいう風土記の丘のように整備をいたしまして、国民からも親しまれるというような施設にしてまいりたいわけでございますので、十分予算も用意しなければなりません。まあ補助率は一応二分の一ということになっておりますけれども補助以外の事業が非常に多くなっているというのが現状でございます。この点につきましては、私どもよく検討いたしまして、予算全体が乏しいものでございますから、なかなか十分にはまいりませんけれども、将来は発展させてまいりたいと、こういうふうに考えておるのでございます。
  95. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 最近話を聞きますと、ほかからも何か要望があるというような話を聞いておりますが、京都は、そういうような形で非常にそういう古文化財が多いわけでありますから、特に来年度にはそれを組み込んでもらいたいという要望が非常に大きいわけですね。   〔委員長退席、理事竹田現照君着席〕 これはひとつどうぞ局長のほうでも十分それを把握して、そうしてこれを実現していただくように、ひとつ要望しておきたいと思います。
  96. 小野明

    ○小野明君 いまの政務次官のお話を聞きまして、非常に積極的な姿勢がうかがわれるので喜んでおるのですが、もう一点だけ念を押したい点は、前劔木文部大臣が、地元との話し合いがつかない限り、太宰府の史蹟指定はやらぬのだと、現在はもちろん内定なのですけれども、こういう御答弁になっておるわけなのです。それで地元なり、文化財保護委員会の事務局長の御努力によって、地元との話が漸次だんだんつきつつあると私は見ておるのであります。したがって、前文部大臣の御答弁の趣旨はひとつ、そのまま生かされておるものと、このように私は解釈をいたしておるのでありますが、次官においても、この点は同様だと思うのですが、いかがですか。
  97. 久保田円次

    政府委員久保田円次君) ただいま小野先生のおっしゃるとおり、そう理解していただいてけっこうでございます。
  98. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それでは中小企業庁のほうにちょっとお尋ねをしたいと思うわけでありますが、この前中小企業の問題については質問をさしていただいたのでありますが、年末もだいぶこう押し迫ってまいりまして、いま中小企業の人たちのことを考えてみますと、非常に私は、十月がいままででは最高の倒産のようであります。それからまた同時に東京の興信所の調査なんかを新聞なんかで見てみますと、八百六十五件が十月になっておって、しかも負債の金額が非常に大きい。そしてまたいろいろいままで倒産することについては論じられながらも、相変わらずどんどんとふえてまいります。こういうようなことを耳にしまして、私はいつもそういう観点から、私はこの経済のことは至ってうといわけでありまして、何にもわかりません。わかりませんが、はだに感ずる何かこう素朴な質問をさしていただきたいということで、あるいはその局に立っておられる方に対しては、ぴったりといかぬところがあるかもしれませんが、私は素朴な感情からこのような状態でいっていいのかということを、非常に私は身の回りに感ずるわけです。特に京都というところは、中小企業が多いところでありまして、私の知っているところが、あちらでもこちらでも、どんどんと倒産をしているというのを見まして、必ずしも彼らはプレイでやっているわけではないのです。何やら大蔵省や中小企業庁のおえらい方々は、何か倒産していく人はかってに倒産しているような、一つのそこらの演劇を見ているような気でいるのではないかというような、そういう憤りを感ずるわけです。どんどん倒産していっているのに、これをとめる方法がないのですか。私は中小企業庁という庁があって、そして中小企業を育成していくという立場にあるならば、少なくとも倒産だけはとめることができないのか、私はそういうふうに思うわけであります。まあいろいろ考えてみましても、中小企業庁のほうでは、新聞なんか見ておりますと、いろいろそういう問題について研究をされて、そして中小企業の立て直しのために中小企業の対策審議会か何かというのをつくられて、そこで対策を練られる。それができてから法制化をして、あるいは統廃合とか、あるいはまたこれに対する設備の近代化とか、いろいろなことを考えて、そしてそこで予算をつけようじゃないか、始めるのは四十四年ごろにしようじゃないか。新聞で見て私はこれも非常に驚いたわけです。どんどんどんどん毎日毎日倒産しているのに、政府は審議会にかけて、審議会の答申を待って法制化する、そして今度は何とか政策を立てようじゃないか。それをやるのは四十四年度ぐらいからだ、四十四年度はまだ再来年になるわけですね。こういうことを考えてみますと、私は中小企業に対する取り組み方というのは、この前やはりこの問題でことばは少しあらわだったかもしれませんが、申し上げたと思いますが、非常に私はさびしいような感じがいたします。ほんとうに私ども同じような状態に置かれておる者もたくさんある。最近では福島交通とか何とかというところも問題となっている。中小企業が倒れるために従業員全部を首切りにするということで、問題になっているのが十二、十幾つかあるということです。私は社会労働委員会でそういう話を聞いてびっくりしてしまったわけです。中小企業がうまくいかないから、そこに働いている労働者にしわ寄せされて、年末になってやめてボーナスももらえない、退職金ももらえない、パーになってしまう労働者がおる工場、会社が十二もあると聞いておるわけです。私はそれが三百人から五百人の従業員を持っておってそういうことをするとすれば、私は大きな問題になってくると思うわけです。そういう観点から言って、私はほんとうに中小企業に対するやり方は、いま中小企業庁ではどういうふうに取り組んでおられるか。  私はこの問題点で聞かしていただきたいのは、年末融資の問題です。あれも聞いていろいろ調べてみますと、九月ごろ、十月ごろから財政硬直化のため、あるいは自由化、特恵国の問題というふうなことで、中小企業に対しては相当きびしくなるという情勢もある。財政金融の引き締めあるいは利ざやの改定なんかによって、非常な金融面の引き締めがあるからというので、中小企業対策としては、中小企業のほうに年末融資というものもずいぶん考えられておるように聞いております。しかし、私はその表面づらでは二倍にした、何億何千万円ふえたということであっても、それが直接倒れていくような人に対して救済にならなければ意味をなさぬと思うわけです。おそらく、私はこの十月、十一月の統計を聞いておるだけで、年末あるいは年を明けてからの統計は聞いておらぬのでありますが、おそらく前年度に比べて非常に大きな倒産がくるのではないかと考えるわけでありますが、それに対して中小企業庁は一体どう考えられて、どう受けとめられて、どういう政策を持ち、どういう見通しがあるかということを、ひとつ聞かしていただきたいと思います。
  99. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) お答え申し上げます。  中小企業庁は基本政策をいまやっておるので、それが再来年度の施策に反映するというふうなことではもうどうにもならぬ、非常に差し迫った問題ではないかということと、いろいろやっておると言うけれども、しかし特に倒れそうな中小企業に対してきいておらぬではないかというお尋ね、というよりむしろおしかりだと思うのです。私は、実は大橋先生にこの前私たちがやっておりますことを詳細に申し上げました。したがいまして、本日新たに申し上げることはほとんどないのでございまするが、ただわかっていただきたいのは、私たちが必死になって仕事をしておるということは、ぜひわかっていただきたい。年末の金融問題につきまして、本年度の財政投融資は、昨年度に比べまして五割以上の大きなものをほうり込み、貸し出し規模で千六十億というような増をいたしましたが、これが確かに十二分にきかないという、ほんとうに倒れそうな人にきかないというふうな面があることを、非常にわれわれは心配をしておるわけであります。私たちといたしましては、この前先生にお話申し上げましたあとで、大蔵省及び日銀に参りまして、何をいうても、差し迫っては金融機関の問題でございます。話は前後いたしますけれども、倒産の問題は二つに分かれまして、一つは差し迫っての問題、すなわち金融をとにかく潤沢に流すという問題。しかし、これは病人のようなものでございますので、カンフル注射だけでは体はもちろんなおらぬ。したがって、根本的な体質改善という二つの問題に分かれまするが、さしあたってのこの年末の金融問題につきましては、十二月の六日でございますが、銀行局長及び日銀副総裁に会いまして以下の申し入れをしたわけでございます。それはまず第一に、この民間側すなわち全国銀行、それから相互銀行、それから信用金庫、信用組合、こういう地方銀行、これが中小企業に対する金融を扱っておるわけでございまするが、このいわゆる民間金融機関が毎年行ないます中小企業向けの貸し出し目標額というものをつくります。貸し出し目標額をつくってその目標額の達成に努力をするというわけでございまするが、これを今年は一兆九百億という目標をこうつくったわけてあります、ところがこの目標額をつくっただけで実行されなければ何にもならぬものでございますので、この一兆九百億の目標額をぜひ達成をしてほしい、ぜひ達成をするように大蔵省なり日銀なりは市中の金融機関を強力に指導してほしい、これが第一点でございます。昨年も実は目標額がきめられたのでございまするが、これは一〇〇%いっておりませんのでございまして、ことしはぜひこの目標額は達成してほしい。これを一点申し入れをいたしました。ちなみに、若干補足いたしますと、市中の金融で政府系の三機関の金融はこれは九%弱でございまして、九〇%以上がこの市中金融機関に依存いたしまするので、市中金融機関の貸し出しの態度というのは非常に大事なことであると思うわけであります。これが第一点であります。  それから第二点でございまするが、この貸し出し比率を完全に達成してもらえればまあまあ一応ということでございまするが、重ねて私たちぜひ留意してもらわなければいけないと思いますのは、市中銀行なり、また地方銀行なりが中小企業に対します貸し出しの比率と申しますか、これがあるわけでございまして、先生も御承知のように、市中銀行は大体大企業向けにたくさん貸しておったのでございまするが、逐年中小企業向けの比率が増大をしております。特に昨年から今年当初におきまして、全国銀行の中小企業向け貸し出しの比率は増大をしておるわけでございます。問題はこの金融が締まってまいりますると、とかく中小企業向けの金融を引き揚げまして大企業に回すということが行なわれまして、これがいわゆる金融引き締めの中小企業へのしわ寄せの端的な話になるわけでございます。で、昭和三十六年なり三十九年なりの引き締め時におきましてそういうことが行なわれたわけでございます。今回はそれを行なってもらっては困るということが第二点でございます。ぜひこの中小企業向けの貸し出しのシェアと申しますか比率、これを守ってほしいということの要請をいたしました。  それからなお第三点といたしまして、これも三十六年、三十九年の引き締め時に行なわれまして非常に中小企業は泣いたのでございまするが、中小企業に主として金を供給するのは地方銀行それから信用組合、信用金庫等でございまするが、こういう銀行、こういう金融機関が、不況になりますととかくコールレートが上がるものでございますので、コール市場に金を回すということが三十六年、三十九年には多く行なわれましたが、今回まだコールレートはそうは上がっておりませんけれども、しかし、ぼつぼつ年利に直して八分をこえるということにもなっておりまするので、コールレートがかりに上がってもぜひひとつ中小企業向けの金融は確保してほしい、コール市場に金があまり回らぬように、この点ひとつ金融当局は十分監視監督してもらいたいというような点を要請したわけでございます。   〔理事竹田現照君退席、委員長着席〕 さらに大事な点は、健全なというか中身のある企業が金詰まりであるということでもって倒産する、黒字倒産というふうなことがかつてあったものでございますから、これはぜひ今度は絶対にないように見ていただきたいという要請をいたしまして、大蔵省及び日銀も全力をあげて、そういう方向で金融機関の指導をいたすということをいっておるわけであります。これでもなかなかしかし倒産は減りませんので、先生御指摘のように、実は十一月の数字はさらに大きな数字、九百件こすと、前年比率五割以上の増ということで、非常に私たち頭を痛めておるのでございまするが、できるだけ、あの手この手はやっておるつもりではおります。
  100. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 私、これはほんとうに素朴な質問で、十分やっておられるというのに、何言っているのだということになるかもしれませんが、私は中小企業に対する施策というものが、非常におくれているのじゃないかというふうに思うわけです。たとえばこれ、ちょっと調べてみても驚いたわけでありますが、たとえば農業に従事している人口なんかは千二百万ぐらい、中小企業に従事している人は千九百万である。しかし、これが全体を見てみますと、約六〇%も多いのにかかわらず、やはり国家規模、そういうふうなものを見てみましたら、約十分の一ぐらいだ。しかも今度は税金なんか見てみますと、農業のほうが納めておる税金は三十六億ぐらい、中小企業は四千億とっているというわけですね。そうしてみますと、ここらの数字で見てみましたならば、私は中小企業に対してはずいぶんほっちゃらかしというか、しわ寄せがされている。農業のほうも困っておられるのです。実際私たち回ってみまして、農業の状態はよくないと思っておりますが、それよりひどくほっちゃられているということが、私はこういう数字からもいえると思います。こういうふうなことから考えてみて、過去のことを振り返ってみて云々をするわけじゃありませんが、いまになって、じゃ一体どうしたらこういうものが、まだ十一月もふえますということであっては、私たちも、特にそういう中小企業の多いところに住んでおりまして、周囲がそういう状態であるときに、何か体に迫ってくるような、非常な苦しいものを感ずるわけです。これを一体、私は率直に、素朴にいって、どういうふうにしてもらうから、あなた方はもう少しがまんせよとか、あるいはこうこうせよとかいうことが言えるか、私にも多少そういうことが言えるような、何らかの示唆を与えてもらいたい。率直に言って、私は素朴な気持ちなんです。別に経済情勢がこうなるから、見通しがこうだからという説明する大きなものは何も持っておりませんが、それだけにそういうものに対して、できるだけあさって読んで、自分では勉強していこうという気持ちは一ぱい持っております。持っておりますけれども、いまこうした状態を何ぼ聞いても、じゃああんたたちはこうしなさい、しばらくお待ちなさい、こういうふうにしたらこれからよくなっていくのだ、あなたたちはこういうところに努力していかなければなりませんよというには、あまりにも施策がなさ過ぎる、そういう観点から一体どういうふうにこれを考えておられて、見通しはどうで、今後年末のこの差し迫ってきた非常に金詰まりの状態、あるいはいまさっき私も触れましたが、資本の自由化、あるいはまた特恵国の問題が出てきます。しかし、これも読んでみましたところが、外国に輸出する品物も中小企業は四五%ぐらいつくっているはずなんです。そうして外国に輸出すると、外貨を獲得するという役割りは、中小企業は約半分ぐらい持っている。そういうような状態を考えてみたら、どうしてもこの大きな矛盾はいまさらほっておいてはいけない。四十四年度になったらやりますということではとてもいけないと思うわけであります。年末差し迫っていろいろなところから聞いてくるはだで受ける感じから、この問題に対して十分に配慮してもらって、大蔵省に対しても考えてもらわなければいけないし、あるいはまた中小企業庁にも考えてもらって手を打たなければならない、私はそう思います。京都府では百万円の無担保の融資をやっております。それに対して私ども一生懸命あっせんしてやっております。貸し倒れは一億や二億見ておる、京都府として。私は、国はそれくらいのものを見て、貸し倒れなるものを見て、どんどん金をそういうところにつぎ込んでやるという考えがなかったら、そういう気持ちがなかったら私は中小企業をカバーすることにはならないと思う。いまになっていろいろ法律はあります。貸し出しは中小企業金融公庫を通すにしても、市中銀行を通すにしても、市中銀行では全部調査しておりますから、みなそのランクがあるわけですね、金を借りるにしても。そういうふうなものではなくて、ほってしまうということになるかもしれん金でもこれを出さなかったら救済できないと思うのですが、どうでしょうか。
  101. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 御指摘のように、非常に倒産がふえてきておるわけでございまして、その原因は、私は先ほど申し上げましたが、一つは金融上の原因。したがって、これに対しましてできるだけのことはやらなければいけないということで、できるだけのことは——まあ十二分でこれでもうやる手はないかと言われれば、もっとわれわれは考えなければいかぬということであって、これはもちろん努力をいたしまして考えます。しかし、そういう金融上の手では、これはたとえ話で恐縮でございますが、病人にカンフル注射でございまして、どうしてもやはり体質を改善せざるを得ない、体質改善の努力をせざるを得ないということであると思いますので、こっちのほうにつきましては、これは中小企業庁として人に頼むのではなくて、中小企業庁が中小企業に対する基本施策としてどうしても考えて立てていかなければならぬという態度で勉強しており、また指導しておるわけでございますが、何といいましても、一番大きな原因は中小企業の立っております地盤が大きく変わりつつあるということだと思います。くどくど申し上げるまでもなく、労働力の状況がすっかり変わってきておる。それから消費の中身がすっかり変わってきておる。それから外国の事情も違うし、後進国の追い上げも始まっておる。こういうことでございますので、中小企業者が従来のような営業の態度を、経営の態度を続けておったのでは耐えられないような業者が次々出てくる。それに対しまして、私たち政府といたしましては、世の中が非常に大きく変わりつつあるのだということをまず知らせる必要があるということで、経営指導等のいろいろ諸制度があるものでありますから、これで、いろいろ世の中は非常に急速に変わっているから、ひとつ考え直してくださいというふうな手は打っておるわけでございますけれども、さらに従来の経営の態度を改めて、たとえば労働を節約して、設備を入れるというふうな場合に、さらにまたいまの商品をやめて別の商品をつくるというふうな場合、さらにいまの業種からほかのものに転換をするという場合には、最優先して政府系金融機関でお世話をするというようなことも実はきめて発足をしておるわけでございます。そういうふうにいろいろやっておりますけれども、何しろ世の中の変わり方は非常に激しい、いわゆる構造変化をしておると思いますので、この辺のところをさらに重ねて勉強して、より有効な強い手を考え出さなければいかぬということで、最初に先生が御指摘になりましたようないわゆる中小企業の政策審議会を開いて、強力な手をさらに考えていこう、こういう態度をとっておるわけであります。  なお、農業に対する政府の態度と、中小企業に対する政府の力の入れ方、こういうふうに数字が示すようにおかしいのじゃないかという話で、実は私中小企業庁長官といたしましては、ぜひひとつ政府がもっと中小企業に大きく力を入れてほしいということで関係省にも一生懸命頼んでおりますし、やっておるわけでありますけれども、ただ中小企業は何を言うても経営企業でございまするので、先ほど先生がお示しになりました数字はああいうことでございますが、いわゆる財政投融資の面におきましても、農業よりも約倍の金はほおり込んでおる、こういう状態でございます。しかし、これでは決して十分ではないんで、このような中小企業の転換期でございまするので、ぜひひとつ政府としてはもうほんとうに強い手を中小企業部分にほおり込んでもらいたい。私たちはそれに対して知恵をかしていい案をつくっていかなければならぬというふうに思っております。
  102. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 その財投の方面についてはあとでちょっと触れさせていただきたいと思うのですが、私はそこのところで、大体長官からお話を聞いて、その線でよりやむを得ないというふうな感じはいたしますが、しかし、いま申したように、いろいろ体質改善もありましょう。今度の融資の問題でも非常に引き締めた。先ほど長官もお触れになって、三十九年のあれを繰り返さないようにするのだとおっしゃっていますが、これだけ急激に一方では引き締めて、また今度は少しあれするということで、そのテンポが非常に早いために、やっぱりその影響を受けるのは、大企業、有力な企業のほうはそういうことが少々ありましてもこたえないと思いますが、中小企業なんかはほんとうに身近かにそれが迫ってくるわけでありますから、今度の金融の操作あたりでももうどんどんと出血するわけであります。だからして、そういうことを考えてみて、まあ国全体のことを中央で考えておられる場合は、やはりそう短兵急にはいかないかもしれませんけれども、私ども末端におってそういう人たちと接しておる私どもから言わせれば、もっともっと、何といいますか、血の出るところに血とめのこう薬を張る——カンフルをうち過ぎ、薬がきき過ぎて中毒する場合もありましょう。ありましょうけれども、そうではなくて、血をとめるだけのばんそうこうを張るだけの措置をしなければならない、いまとめなければ出血多量になるという状態もあるのではなかろうか。そういう点から考えまして、長官のお話、長期的にも、あるいはまたほんとうの筋からいえば、政策的にいえば、それはそのとおりであると思っています。私はそれでいいわけだと思っておりますが、しかし、いまさしあたりの急務として何か特別の措置をする必要はないか。またその措置をするためには、いわゆる出血しているところにばんそうこうを張るという程度のことでもやってあげなければかわいそうではないかという考えを持っておるわけであります。そういう観点から、いろいろむずかしい点はあろうと思いますけれども、ひとつ十分考えていただいて、長官のほうからもお願いをしてもらいたいし、大蔵省のほうも、こういう時期には出せる金があったらひとつ出してやって助けるべきではないかと思うのですが、どうでありましょうか。
  103. 二木謙吾

    政府委員(二木謙吾君) ただいま大橋先生から、中小企業は非常に行き詰まっておる、しかも倒産者が十月、十一月とふえておる、こういうことでございますが、まことにそのとおりで、私どももこの点は非常に遺憾に思っておる次第でございます。全く大橋先生と同感でございます。で、この倒産の原因がどこにあるかということは、まあ中小企業庁長官からもいろいろ話がありましたが、私どももその原因をひとつ探求して、そうしてそれに合うた措置をとらなければならない、かように考えるのであります。申すまでもございませんが、わが国の産業上においても、また貿易の上からいたしましても、中小企業の占める役割りがたいへん大きいのでございます。政府といたしましても、私は、中小企業に対してできる限りのひとつ手厚い対策を講ぜねばならない、かように考えておる次第でございますが、大蔵省といたしましてもまた中小企業庁その他とよく相談をいたしまして御期待に沿うように努力をしたい、かように考えておる次第であります。
  104. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それじゃ、ちょっと資金運用部のほうについて少しお尋ねしたいと思います。これもひいては中小企業のいまの金融の問題にも関係を持ってくるだろうと思うわけでありますが、特に六兆円というようなばく大なものが資金運用部資金としていろいろ扱われておるわけでありますが、これについてはいろいろな議論がいままであったように聞いております。その中でも特に私は余裕金の額が非常に国民の前に明らかにされてない、こういうことを非常に不快に思うわけであります。大蔵省の中でもごく一部の人だけしかわかってないといわれておるんでありますが、これは一体どういうふうなわけでありましょう。むしろガラス張りにして国民の前に明らかにすべきじゃないかと思うわけでありますが、この余裕金なるものが出てくる理由とか、あるいはまたその額、成果、運用方法についてひとつ明らかにしていただけたらお願いしたいと思います。
  105. 大蔵公雄

    説明員大蔵公雄君) ただいまの大橋先生の御質問に対しまして、私ども資金運用部資金の資産の内容に関しましては、毎月毎月「資金運用部月報」というものを出しておりまして、常に資金運用部の総資産は月末残高におきまして幾らあるかということを明らかにしておるわけでございます。ただいま大橋先生の御質問で余裕金というような表現をお使いになりましたわけでございますけれども、私どもの持っております資産と申しますのは、決していわゆる余裕金という名称で呼ぶべき性格のものではございませんて、いわゆる流動資産、資金運用部が持っております流動資産ということでございます。これが四十一年度の末におきまして、この「資金運用部月報」におきましても、私どもの持っております流動資産というものは約九千億というような数字が出ておりますが、このうち約二千五百億円と申しますものは、例の健康保険会計の赤字であるとか、あるいは日雇い健保に対する赤字のための貸し付けであるとか、こういった方面にすでに一時的に貸し出されておるものでございますし、それから若干その他手元に残っておりますものの金の性質と申しますのは、御承知のようにいわゆる毎年毎年の財政投融資計画というものによりまして、その年に幾ら金を運用をするということがきめられているわけでございます。四十二年度を例にとりますと、いわゆる二兆三千八百八十四億円という全体の財政投融資計画のうち政府保証債、その他民間のお金の力も拝借をしているわけでございますけれども、資金運用部から約一兆九千億ぐらいのお金がそれに対して出ているわけでございます。そういうものはすでに各財政投融資計画の上におきまして、お金は四十二年度中に貸しますと、こういう約束をすでにいたして約束済みのお金があるわけでございます。それが各機関の、たとえば道路公団なら道路公団というものが事業の進行度合いに応じて、金利のつくお金でございますものですから、必要なときに各機関が借りにくる。必要がくるまでは私どもの手元にそのお金を留保しておかなくてはならないと、そういったような意味の、いわゆる運用がすでにきまっているけれども、ズレている、そのために手元にあるという種類のお金が約三千億円あるわけでございます。その他各特別会計であるとか、そういうところから私どものほうに、資金運用部のほうに預託がなされるわけでございますけれども、これは大体一年以下のいわゆる一カ月ものからございまして、一カ月、三カ月、六カ月、一年、三年七年というような種類の預託がなされているわけでございますけれども、いわゆる長期運用に充てられるものは少なくとも三年もの以上の預託でなければ長期運用には充てられない。短い期間の預託でございますと、これをかりに、たとえばいまの中小のほうにお金を貸してしまいますと、これが返ってまいりますのは三年先、五年先であると、したがいまして預託をいたしましたものの立場から申しますと、いっでも必要なときには資金運用部から引き出してまいると、そういうための資産を私どものほうとしては用意をしておかなくてはならない、こういったことで、一年以下の短期預託金が約三千二百億くらいございまして、こういったものに対する支払い準備金を手元に置いておかなくてはならない、こういった事情がございまして、数字の上から申しますと、いかにも何か余裕が非常にあるというふうにお感じの面もあるかとも思いますが、実態的に申しますと、私ども今年度の場合におきましても、長期に運用し得るお金と申しますのは、すべて長期運用に回しているわけでございまして、今度の年末のいわゆる中小に対する財投の追加の際にもいろいろ私どもできるだけ中小対策というもののためにお金を用意したいと思いまして、現在、先般の財投の追加の際に全体で千二百二十八億円というものが資金運用部から長期運用として追加されたわけでございますが、そのちょうど半額にあたりますところの六百三十億というものをいわゆる中小三機関の方面に回したわけでございまして、短期のお金でございましたら私どものほうの手元にございますので、短期のお金でよろしければできるだけ必要な限り私どもも出しましょうと、こういうことで、こういうことを考えたわけでございます。短期、すぐ年度内に返すようなお金ではあまりそう必要がないというような面もございまして、そこらあたり、できるだけ私どもといたしましては長期のお金をお回ししていきたい。  それから先ほど大橋先生の御質問の中に、政府といたしまして、金を捨てるつもりであっても中小のほうのために少し考えたらどうかというお話がございましたけれども、この点に関しましては、実は資金運用部資金と申しますのは、いわゆる、一般国民の方々の零細な預金から成り立っておるわけでございまして、預金に対して金利をつけて御必要なときにお返しをする、こういう性格のものでございまして、どうも税金と違いまして捨て金、いわゆる、資金運用部資金は財投の場合には回収が安全確実に運用する責任を私ども負わされているわけでございまして、その点どうも捨て金でもいいから、返ってこなくてもいいから中小企業のために振り向けるべきだという御要望に関しましては、少なくとも財投に関する限りは御要望に沿いかねるのではないかと考えております。
  106. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 では、資金運用部からこの金を出してくれというのは無理なようなんですが、しかし、いま、なかなかどうも、さもそのとおりのような御説明を承りましたが、事実、私もそうだろうと思います。しかし、私は、ずっと見てとってみましても、三月にはあなたのおっしゃるように九千百五十億あるわけですね。そういうようなものは私は、三千億は——いま御説明になったように七百億くらいは、この間ちょっとおたくの側から来てもらって説明を聞いたわけですが、それは七百億が興銀とか商工中金あたりに、あるいはまた専売公社あたりに五百六十億とか、あるいは三百十億が中小、国民金融公庫、三公庫あたりに出ていることは、これは出ている三千億ほどの内訳ですね。あとの六千億近くは短期国債とか長期国債を買っているわけです。これは資金運用部でいまのように利益を上げておくために短期にこれを買っておく。私はそのとおりだと思うのですが、私はつぶさによく考えてみたら、六千億のうち一千億くらいは考えられたようですが、六千億の半分くらいは私は、長期のものに出したら出せるのじゃないか。実際から言えばやはり、資金運用部のほうでも、ふところ金を持っていないと、いざというときに困るというお気持ちはわかるが、私は逆に原資を考えて見ると、郵便年金やらあのようなことを考えてみると当然私は、ふえなければならぬ。ふえてくるやつを過小に見積もって、そうしてこれだけ余ったのだといってふところ金にしている、そういうふうにこれは解釈せざるを得ないような、へそまがりな解釈のしかたかもしらぬけれども、こういうのをくろうとでないしろうとから見ますと、私はそういうふうに見えるわけです。ですから、いまほんとうに中小企業は困っている。たとえば、あんたのように捨て金にしてもらわなくてもいいから、中小企業金融公庫のほうに回してもらえば、またそこでそのあれができる。そういうことになるわけでありますから、私は捨て金にせよと大蔵省に言っているのは、別な意味で考えてほしいと思うのです。何かその辺は私は、経済的なことのやりくりは知らないけれども、私は何かできるのじゃないかということを、何かはかの方法はありませんかということを先ほど質問申し上げたわけです。どうぞひとつ、財投と離れて資金のほうのことを考えておられる大蔵省のほうでは、何かそういう手を打てるものか打てぬものかということを真剣に考えてほしいと、私は別の意味で思います。しかし、いま申したようなぐあいに、原資を得る場合の年金あたりの見積もりなんか私は過小評価に見積っているように思うのですが、その点はどうですか。またこの六千億の中でこれはもう少し長期に回し得ると思うのですが、何で回されないか、その点をもう少し詳しく説明してください。
  107. 大蔵公雄

    説明員大蔵公雄君) ただいまもう少し詳しくというお話でございましたけれども、ただいま申し上げましたように、約二千五百億以上というものは、先ほど先生もおっしゃいましたように、健康保険であるとか、そういったようなものに一時貸し付けという形で回っているわけでございます。これは形は一時貸し付けになっておりますけれども、実体問題といたしまして、健康保険の料率アップ、その他行なわれませんと、なかなか資金運用部のほうに返ってくるのは相当先になる。こういうふうに私どもはまあ考えているわけでございまして、すでに貸し付けが、これは行なわれておるものでございますが、この分は要するに使おうにも使えない。それから約三千億円と申しますものは、これは今年度の財政投融資計画が最初に、年度当初におきまして作成をされまして、たとえば輸出入銀行に幾ら、開銀に幾ら道路公団幾らというふうに、約五十七のいわゆる財投機関に対しまして、各金額が張りつけられているわけでございます。これはいつでも各機関が必要なときには資金運用部にやってまいりまして、金を出してくださいと言われた場合には即刻これは出さなくてはならない種類のお金でございまして、これは常に私どもといたしましては手元に用意しておかなければいけない、かような性格お金でございますし、それからその残りに関しましては短期預託、いわゆる機関の各特別会計等から私どもに預託されております預託が、いわゆる一年未満の短期預託でございまして、これは各機関の必要に応じていつ払い戻しを必要とするかわからない種類の預託金でございまして、これを長期の運用に私どものほうでかってに回すことのできない種類のものでございます。先生が先ほど言われた原資の、年金であるとか、その他原資の見積りに関していわゆる過少評価をして資金運用部ため込んでおるのじゃないかというふうな御指摘がございましたけれども、決して私どもそういう、特に明年度等の場合におきまして、私ども非常に原資に実は難渋をいたしておるわけで、現実に郵便貯金にしろ、年金にしろ、集まるか、集まらないかわからないようなところまで、原資が集まるという見込みを立てませんと、なかなか皆さんの御要望に沿えるような財投計画の規模も、中小三機関も含めまして、財投計画の原資に難渋をしている最中でございまして、決してわれわれが、使えるにもかかわらず使えませんということを申し上げているわけではないことは、ひとつ御了承いただきたいと思います。
  108. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 このような金が、実際は私どもの考えではだぶついているように思うわけですが、民間の銀行、得に都市銀行が金が詰まっておる。そういうようなことで窓口規制が非常に強化されておるから、中小企業も非常に資金難で困っておる。こういう状態にずっとなっておるわけですが、この間宇佐美日銀総裁も、政府に金が余っているならもう少し国債を減額すべきだというようなことも言っておられたように聞いております。そういう点から考えまして、政府は非常に国債を民間市中銀行に引き受けさせて、民間からかなり金を吸い上げたわけでありますが、そういう観点からいって、もう少し市中銀行のほうの国債を、こういうふうな金がもしあったとすればそういう金でそれを買うべきじゃないか。あるいはまた、地方債なんかあったら、これをこういうものでやったならば、地方のほうに対してある程度金を出すことになるわけでありますから、そういうふうなことはどうだということを私は考えたわけですが、それはどうですか。
  109. 大蔵公雄

    説明員大蔵公雄君) 大橋先生の御指摘のように、それが私どもの現在手持ちでございますところのいわゆる流動資産の短期運用として市中から国債を買い上げたり、あるいは地方債等を買い上げるということは確かに可能であると思います。ただし、ただいま御説明をいたしましたように、私どもの手元にございます金というのは、いつ必要になるか、すでに出すことを約束している種類の金であるとか、あるいは短期預託の金であるとか、こういう性質のものでございまして、いつ必要になるかわからない。したがいまして、これが売り戻し条件つきで、そのいまの国債なり政保債なりを売り戻し条件つきで買うことができますのであれば、これは私どもいわゆる市中の金融調節という意味において、その金を使うということに私どもの立場からすると決してやぶさかではないわけでございますが、これは実は日銀の立場からいたしますと、金融の引き締めの総本山である日銀という立場からいたしますと、日銀が金融調節を一元的に行なうのであるということで、これは若干そういった面におきまして金融の二元化という問題におきまして、私どもの立場からいえばやろうと思えばやれることであっても、私どももそういうあたり日銀と意見を調節する必要がございますと同時に、私どもの立場といたしましては、いわゆるいつでも私どもが必要なときにはそれを売り戻すことができるという条件がつくことが前提になる御議論であろうかと考えております。
  110. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 時間が非常になくて、もう少しお聞きしないとぼく自身もよくわからぬところがあるわけですが、時間がないのでちょっとまとめて聞かしていただきますが、特にこのこうした余裕金の内訳がもう少し、私はいま申したように納得ができぬわけですが、それは別としまして、こうした金を、こういうようなものにいま中小企業も非常に困っているところでありますから、もう少し精査をして、たとえここでわずかでも中小企業金融公庫なり特別の融資のものとしての原資として与えるということは非常な大きな意味を持つわけですが、そういう観点からもう少しいろいろな配慮が、この中からできないかもしれませんが、資金運用部として何とかひとつここらで配慮する。少しここらから出すことができるものならやってもらいたいという希望があるわけでありますから、特にそういう点を考えていただきたいというのと、同時にまた、私は財政硬直化とかいろいろな問題で、先ほど申し上げたような中小企業に対する圧迫というものが非常に大きい時期であるから、大蔵省としては、今度はもう一つ大きい観点から、こうしたところに対しての何とか救済する資源というものを考えてもらう。そういうことに対しては何とかできないものであるかということを感じますので、ひとつ大蔵省のほうからもそうしたこと、あるいは資金運用部のほうからもそうした観点についてちょっとお考えを知らしていただきたい、こう思います。
  111. 二木謙吾

    政府委員(二木謙吾君) いま大橋先生の御説はもっともなことであると思うのであります。いまの倒産者の急場を救うということは、いま資金を出してやらなければ、もう倒れるにきまっております。それでまあ私は中小企業に対しては、恒久的な対策と、それから現場すぐやらなければいけない問題があろうかと考えておる次第でございまして、いま資金運用部の金をすぐひとつこれの救済に出す、こういうお話もございましたが、この問題は先ほど資金課長申し上げましたようになかなか困難性もある問題でありますから、ひとつ大蔵省といたしましても検討をしてみたい、かように考えておる次第であります。
  112. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 非常に時間がないところで御無理を言って、一つだけ質問さしていただきたいと思いますが、文部省の学術局からも、あるいは厚生省の医務局からも、またちょうど大蔵省もおられますから、一言だけ私は聞いておきたいと思うのでありますが、最近はインターンの問題が非常にやかましくなっております。したがいまして、何か聞くところによると、厚生省のほうでは医師法の改正も出したいというふうなお気持ちもあるように聞いております。私ちょっとそこらにおられる方に聞きたいと思うのは、一番そこの問題で一つの中心となるのは二つだけある。このインターン生に対していわゆる身分を保障するという意味で、何か話を聞きますと三万一千円くらいはみようじゃないかという話があるというふうに聞いております。こういうことに対してはやはりある程度厚生省あるいはまた文部省としては資金の裏づけを考えた上で、こういう医師法の改正云々というものを考えられるかどうかということが私はたいへんな問題であると思う。ですから、ちょうど大蔵省の方もおられますから、こういう問題に対しては、将来は考えてやろうという傾向にあるものかどうかということもちょっと伺っておきたいと思います。  それから、もう一つ文部省のほうに伺いたいのは、いまインターンの問題は非常に大きな問題でありまして、早くこれは解決しなきゃならないと思うことは、私も同じでありますが、ほんとうにかれら若い人たちが勉強したいという気持ち、ことにわれわれ国民の健康というものを考えた場合には、そうした若い人たちがほんとうに勉強できるような状態をつくらなければ、国民の健康を守る医者の素質向上ということにはならないと思うわけでありまして、そういう観点から、私は、ほんとうにいま教育ができるような体制ができておるかどうか。そういうことのもとに今度の制度を改正することに向かっておられるのかどうか。私はやはり教育の場が完全にできるということと、それからまた、資金的な裏づけができるということ、また、その教育の場をつくるためにはやはり予算が要ると思うのでありますが、そういうものの上に立脚していま医師法の改正というものを考えていこうとされているかどうか、先にそのお気持ちをお伺いしておきたい。これはたいへんな資金の問題もありましょう。あるいはまた決算の側から見ましても、いままで大学の教育の場においては、予算があまりにも小さかった、だからそういうことが十分行なわれていなかったと私は思うわけでありますからして、そういうものがあるいは製薬会社のほうからいろいろな現金をもらって研究をされておったということは、私も前にこの決算の場で御質問申し上げたわけでありますが、そういうところから考えてみても、私は将来は大きな予算額をつけてもらうということが医者の教育の問題に対しては非常に大事でないか。これがやはり教育の場ができるということ、いわゆるそういう観点からも非常に大きな問題だと思いますので、その一点だけを伺って、私時間がありませんからあとの詳しい話は別な機会にしようと思います。
  113. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) お話のような、インターン制度を改正するための医師法一部改正の提案をただいま考慮中でございます。医師法の改正におきましては、御指摘がありましたように、従来のインターン制度それ自体に対する不満というものは、卒業後の医師の研修の場が十分に確立されていなかったということと、研修する医師自体の生活の基盤が安定してなかったということが二つの大きな難関でございました。そういう意味で、このたび医師法の改正をいたしますと同時に、両方の面の改善をはかっていきたいという考えで、現に私どもの明年度予算についてもそういう構想で立案をいたしております。何ぶんにもこの制度が発足するにあたりまして、環境が完全にでき上がってから発足するか、あるいはまず制度を変えて発足してから徐々にでも改正していくかと両方あるわけでございますけれども、現在のところ、事態が非常に急迫いたしておることは御承知のとおりでございますので、数年かかって条件を整備してからゆっくり発足するということを待てない状況でございます。そういう意味で、急いで環境の整備並びに研修生の身分の安定ということをはかりつつ新制度を発足させたいと、そのような趣旨で努力していくつもりでございます。
  114. 清水成之

    説明員(清水成之君) ただいま厚生省からお話があったとおりでございまして、私どもといたしましては、厚生省とともども相談をいたしてまいったのでございます。一つは、教育内容基準の問題でございますが、学部段階における臨床実習の基準をどうするか。それから大学院で引き受けました場合の、たとえば二年間の教育基準についてどういうようにするかというところを鋭意いま大学基準分科会の専門委員会で御検討願っておりまして、ある程度学部段階につきましては太い線ができ、今後研修基準につきましてさらに検討を続けてまいりたい。こういう太い線は一応出ているわけでございますが、なお厚生省と相談する面が残っております。  それから予算につきましては、厚生省と同様の考え方でただいま大蔵省へお願いをしている段階でございます。
  115. 二木謙吾

    政府委員(二木謙吾君) いまの問題は、私は大事な問題であろうと思うのであります。インターンを無報酬でこれをいつまでもやらせるということは、本人も非常な迷惑があるわけでございます。かように考えて、この問題につきましては、厚生省から出ておりますが、大臣ともよく相談をいたしておりませんので、御趣旨の点を含んで、大臣ともまたよく相談をして決定をいたしたい、かように考えております。
  116. 亀田得治

    委員長亀田得治君) それじゃ大橋君の質問を終わりますから、中小企業庁長官だけでいいです。
  117. 黒木利克

    ○黒木利克君 中小企業庁長官に特に御質問をしますが、前回私は、昭和四十年度の通産省の決算報告書の中から高度化資金、近代化資金が六割余りしか活用されていない、四割近くが不用額に計上されているということに端を発しまして、政府の中小企業対策について概論的な御質問をして答弁を承ったんでありますが、先ほどは大橋委員から中小企業対策についてのいろいろな激励というか、非常に不十分な点は多々ある、しかし、中小企業庁として真剣に取り組んでいることはお認めになったようでございますが、実は私もいろいろ勉強したのでありますが、考えてみますと、中小企業の従業員及びその家族というものは国民の半分以上を占める。その国民の過半数の人たちに対して、中小企業庁だけで、あるいは財政だけで問題を解決しようというところに非常な私は困難さ、むずかしさがあるんではないかということに気がついたわけであります。  それから第二に、諸外国の中小企業と違って、日本の産業構造から申して、大企業を上辺、中小企業を下辺とすると、アメリカはほとんど矩形のようで、大企業と中小企業の数が大体同じ、ヨーロッパがはしご型になるわけですが、日本は底辺がだだっ広くて、それがたえず拡大している特殊の三角形のような気がしたのであります。そういうことがわかりましたが、日本には日本の中小企業の特有の型があって、なかなかそういうことでむずかしいのだということもわかります。またこういう中小企業対策を進めていく、あるいは充実していく上においてどうしてもやはり学問的根拠が必要なんですけれども、中小企業の専門家というか、学者というものがほとんど見当らない。実は私、役人になるときに商工政策というのを高文で選んだわけなんですが、上田貞次郎先生の著作も読んだことがあります。その後私の専門の社会保障と中小企業ということで論文をまとめようと思いまして、いろいろ中小企業の専門学者を探し、また本を探したのだけれども、ほとんどといっていいくらいりっぱな本がない、専門学者もこれはという人が見当らない。私は、ここに中小企業対策の貧困の一大原因があることに気がつきました。これも考えてみれば、マルキストというか、マルキスト学者が、百年前のマルクスの予言によると中小企業は大企業に食われて、従業員は大企業にとられてしまっていずれは消滅するであろうというような消滅論を唱えておったんでありますが、予言が結局当らない。日本においては中小企業はつぶれるどころかますます増加しつつあるということで、予言がはずれた。そこで例の二重構造論というか、賃金の二重構造でいろいろ論戦はしたものの、このごろじゃ大企業も中小企業も労働力が足らぬということで、学者がめしの食い上げになっているような感じもせぬでもない。しかし、こういうことで中小企業のほんとうの専門学者が育たないということは、これはやっぱり政策樹立について学問的根拠がないために、非常に私は手おくれになっておるんではないか。先般も答弁にありましたが、資本の自由化とか、あるいは後進国の追い上げとか、あるいは労働力不足とかいうことで、中小企業がほんとうに大事な時期にこういう科学的な学問的なバックアップが、理論的なその研究というものが進んでいないということが非常に気にかかるのでありますが、まあしかし、そういう問題はともかくとして、私はせっかく中小企業庁ががんばって予算もとり、また財投のワクもとっておられるのに、第一線におけるその運用に大きな問題が欠陥があるんではなかろうかと思うんであります。これはそういう学問的な根拠がなくとも行政上の措置で、あるいは長官の努力一つで私は解決できる問題だと思いますから、特に長官に質問をしまして、これからのやり方を改正なさるおつもりかどうか、どういうことをお考えになっておるかをお聞きしたいのであります。  それは中小企業の第一線の団体というか、これが非常にばらばらであります。商工組合、商工会議所の系統あるいは協同組合の系統、しかもこの協同組合も各単行法ごとに、法律ごとにいろんな協同組合があるわけなんですね。それがどうもばらばらで反発し合っておるような感じもいたします。たとえば商工会と商工会議所の関係、これは中小企業のうちでも大きなほうの企業と零細企業の関係にもなってまいると思うんでありますが、例の中小企業の育成会社がこの問題でも国際的に対抗するためには、資本金は少なくとも二億くらいなければならぬ。いまは何か五千万円くらいを対象になさっておるようですが、外国の中小企業と比べると、たとえばアメリカの中小企業的取り扱いを受けておる自動車会社でもクライスラーというのは従業員が百五十万なんです。これに対して官公需の優先配分というようなことで、これを中小企業対策とアメリカでは称しておるようでありますが、そういうことから言うと、五千万や一億じゃ国際的には太刀打ちできない。ただ、これが二億円くらいになる、つまり二億円になるまで株を買ってやって国際的に対抗できるようになったら株を売るというような目的で中小企業育成会社ができたはずでありますが、しかし、その資本金を上げるとすると、今度商工会の人たちはこれは絶対反対だ。そんな大きな中企業だけを擁護するのはけしからぬというようなことになる。というようなことで、これは一例にすぎませんけれども、いろんな商工組合連合会や商工会議所、協同組合連合会がそれがばらばらで、しかも反発し合っておるというようなかっこうでは、これはなかなか中小企業対策を第一線において進行する上において障害になるんではなかろうか。しかも補助金なり、あるいは融資の流し方から、たとえば補助金は通産省から直接都道府県に流していく。ところが、この中小企業というのは、地域性というものは私はあまり問題でない。問題はその業種ということが大切ですからね。業種別に指導をしなくちゃならぬので、通産省のいまのやり方で都道府県に補助金を流して、地域性というものを主にせざるを得ません。これはしかし中小企業がこういう業種という面から言うと、どうもこれは矛盾をしておるんではなかろうか。しかも高度化資金にしてもいろいろ調べてみますと、地方の議員さんなんかが中に入って、確か三十万とか五十万の金を世話して上げるのにいろいろ血道を上げておられる。こういう三十万、五十万ではもう話にならぬ。せめて百万くらいなければならぬという要望もよく聞くのでありますけれども、そういうような地方の高度化資金なり近代化資金の運用においてもだいぶ問題があるのじゃないかと思う。しかも先ほど中小企業に対する金融機関の名前をたくさんあげられ私もその名前を覚え切れぬのですが、しかもそれがまたばらばらで、先ほど大橋委員から御指摘がありましたが、中小企業でも上のほうを対象にして、零細企業は担保もなければ償還能力もないということで相手にされない。だから倒産は中小企業や零細企業に多い。そういう意味で中小企業対策の恩典をほとんど受けていないといってもいいような現状である。しかもその各種の金融機関が商工団体なり、あるいは都道府県の商工系統の部局とうまく連絡がとれているかというと、とれていないといっていいと思います。お互いの調整も行なわれていない、しかも行政能率からいっても相当問題がある。せっかく補助金を取り、あるいは年末の資金を努力なさって獲得したのにかかわらず、どうも第一線の末端においてはそういうような行政的な欠陥があるのじゃないかと私には思えてしょうがないわけですが、どう見ておられるか、どう解決しようとしておるのですか。これは振興事業団の構想にはこれを解決するという意図も確かにあったと思いますが、一体いつそれが解決されるのか、その辺の見通しなり、その場合にいま言った行政の欠陥を、あるいはそういう組織の欠陥をどんなふうに解決しようとしておるのか、中小企業振興事業団の解決とからんでお答え願いたい。それに先ほど申しました中小企業対策がなかなか伸展しない日本特有の事情もあり、また学問的にもそういうような理論的な究明というものがしっかりなされていないということも私は感ぜられてしようがないわけでありますが、それに対して長官はどう考えておられるか。先般私は大いに長官を激励いたしまして、中小企業対策を洗い直さなくちゃならない、これが非常に大事だから真剣に取り組まなければならぬということで、私も感銘を受け大いに激励いたしましたが、先ほど大橋委員も、とにかく予算をたくさん取り財投のワクをたくさん取るのだという激励だと私はとりましたが、せっかくそういう努力をなさっているのに大蔵省がなかなかうんと言わぬのは、学問的にちょっとそういう点の研究も足りなかったのじゃないかという感じもするのですけれども、その辺についてのお答えをいただきたいと思います。私は時間がありませんからこの質問だけにしますが、ぜひ十分にお答えになれるようにお願いいたします。
  118. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 非常に大きな根本的なしかも幅の広い問題の御質問と申しますより、むしろ非常にあたたかいお心こめてのお話がございました。これは急なことで十分にお答えできるかどうか心配でございますが、私中小企業庁に着任いたしまして部下の者と一緒に勉強いたしましてつくづく思いましたのは、これはこの前お話いたしました基本的態度でございますので、もう一ぺん申し上げますが、どうも戦後の日本の中小企業行政というものは、やむを得なかったとは申せ、産業政策のいわば中心課題としての地位を占めていなかったのではなかろうか。主として、いわば傾斜生産と申しますか、基幹産業中心と申しますか、これに国のエネルギーの重点が向けられて、その際に当然ひずみが起こるわけであります。また泣く人も出るのであります。このひずみ、泣く人を一時的に慰めるという点が中小企業政策には残念ながちあったのじゃないか、こう思うわけであります。それが一つ。  それから、もう一つ中小企業政策を貫く根本的な思想は何かということでございますが、これは格差の是正と申しますか、不利の補正という考え方が貫いております。この格差の是正と不利の補正というものの前提になる市場といいますか、経済マーケットといいますか、これは何かというと、日本という経済の中に閉じこもった日本というもののマーケットを前提にしておったのではなかろうかというふうに思うわけでございます。  さらにまた中小企業問題というものは、過当競争論というものが必ずこれに結びついておったわけでありまするけれども、過当競争論を前提とした中小企業論というもの、これは結局、いわゆる二重構造を前提にし、非常に労働力を前提にした考え方でございまして、そういうものを前提にしていろいろ施策が立てられておったのではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。ところが、戦後日本の経済も成長してまいったわけで、成長したあげく——何か私たち中小企業屋になったからかもしれませんけれども——日本の経済の成長がちょっといま壁にぶつかりつつあるのではなかろうかという感じがするわけでございます。  時間の関係もありますので、結論を先に急ぎますと、すなわち日本の経済のウィークなポイントがあって、このウィークなポイントを日本経済の構造問題として取り上げていき、これを直すのでなければならないのではなかろうか。それは何かというと、その一つの大きな問題が中小企業問題だ。中小企業部分の近代化というものがはかられなければいけない、こういうふうに思います。したがいまして、日本の経済の産業構造をほんとうの意味で近代化いたしますためには、中小企業問題をむしろ第一の問題として取り組んでいくということが必要であるし、そういうことにならなければならない時期になったというふうに思うわけであります。  で、一方、中小企業政策というものが、封鎖的な日本経済を前提にして行なわれておりました。それが開放経済になった。先ほど先生御指摘のような競争力を考えまする場合にも、日本のマーケットが前提ではもういけないので、世界的規模を前提にしてものを考えていかなければならないという時期になったというふうに思うわけであります。この辺から、根本的にものを考え直さなければいけない。たとえば投資育成会社のお話はそのとおりでございます。それから過当競争ないしその基礎にある労働力過剰ということは、根本的に変わってきた、こういうことでもあると思うわけであります。  したがいまして、以上まだいろいろ大きな問題があると思いますけれども、要するに中小企業を取り巻く環境、地盤がすっかり変わってきた。したがいまして、中小企業政策の、国の政治の中において占めるべき比重がすっかり変わってきたというふうに考えて、それに対する措置をわれわれ役人はしなければならない、こういう覚悟をしておるわけでございますけれども、そういう目で見ますると、いま御指摘のような諸点が非常に目につくわけであります。当然役人が行政をいたします場合に、その指針となる学問分野でございまするが、これは御指摘のとおりでございます。ただ、この場合に、私考えまするのは、私たち行政屋といたしまして、ほしいのは中小企業の専門家の学者よりも、むしろ日本の経済、日本の構造の中で、中小企業がいかなる地位を占めていくべきであるかという、日本構造論の全般の立場に立った学問的な御指導をいただければ、非常に私たちはありがたいと思うわけでありまするが、幸いにそういうふうな学者の御関心は、このごろだいぶ高くなっているというふうに私は考えるわけであります。  次に、中小企業がそういう非常に重要な行政であるといたしましても、御指摘のように、中小企業行政の一つのむずかしさというものは、対象が非常に広い、数が多いということであります。事業所の数にしまして四百万をこすということでございまして、なおその点、先ほど日本の中小企業は非常に外国と違ってすそ野が広いという御指摘がございましたが、三十八年の日本の事業所数が三百八十万。それに対しまして非常に多くの倒産、廃止が出ておるのでございまするけれども、四十一年現在におきましては、四百十万をこえている事業所ということでございまして、差し引きそれだけの中小企業が発生をしておるわけでございます。こういうふうな非常に多数の中小企業者に対して、かりに行政方向がきまるといたしましても、いかに浸透をはかっていくべきかという行政テクニックの問題が一つはむずかしい問題でありまして、とかく通産省が従来手がけておりましたような大企業でございますと、リーダー会社の指導者の方にお集まりいただいてお話をする、相談をするということで方向もきまるのでございまするけれども、四百万ともなりますと、方向がきまっても今度は浸透をはかることがむずかしいということになるわけでございまして、その方法としてとられましたのが、産業団体と申しますか、業種別組合を通ずる方向と、それから商工会議所を通ずる方向であったわけでございまするけれども、商工会議所は都市部だけでございまするので、郡部に対しまする施策浸透をはかる手段といたしまして商工会制度が創設されて、そういうふうな、国でつくりました機構で浸透をはかるということが第二に考えられておるわけでございまするが、この組合なり、それからまた国でつくりました機構なりの間に、御指摘のようになかなか有機的な連絡、連関がとれにくい。これは考えますると非常に数が多い。業種別組合でも、組合員のまとまりがなかなかうまくいかない。私たち非常に役所で苦労する点でございますけれども、組合のまとまりが悪いのみならず、組合と組合との間の連関がうまくとれないということでございまして、それをつなぐものとして中小企業の団体の連合会制度ということも法律できまっておりまするけれども、なかなかうまくいかない。その一つの原因は、私はやはり中小企業者のビヘービアと申しますか性格と、それから、それはともかくといたしましてむずかしいのは人の問題だと思います。中小企業はどうしても団体なり組織なりを通じて行政浸透をはかっていかなければいけない、ないしは行政需要をそういう団体組織を通じてくみ上げていかなければいけないと思うのでありまするけれども、そのパイプの役であります人が非常に得がたい。なかなか得がたいという点が非常にむずかしい問題でございまして、その辺の人的な補給と申しますか、これは絶対必要でありますとともに、御指摘のように人間を充実して、それから各種の団体組織の有機的連絡をはかって、仕事を進めていくということが、どうしても数多い中小業者を相手にいたします場合に、必要な行政テクニックであると思うわけでございます。  なお府県との関係でございまするが、確かに中小企業は業種別に分けられますものの、一面には中小企業の中には、地場産業的な性格のものが非常に多うございます。産地産業として栄えておるものが多いということが、一つと、それから各地方の自治団体からいたしますると、地方の産業振興ということはイコールこれは中小企業振興というふうにつながるわけでございまして、縦の面でまいりますると、中小企業の業種別のおのおの団体というものが直接国民経済につながるのでありまするが、横の面では、からみ合ってその他方振興、地域振興ということになるわけでございますので、私たちは中小企業行政をやる場合に、まずまっ先に考えまするのは、府県と密接な連絡をとっていくということであって、府県との関係はもう絶対に中央官庁としては常に頭から離さないと申しますか、一番有機的な関連を考えていく必要があるというふうに思うわけであります。  そういうふうな基本的ないろいろ考え方によりまして、ただいま中小企業諸政策を見直す基礎的な勉強にとっかかっておるのでありますが、その中に、すでに御指摘のように改善に着手されたものもございまして、高度化、近代化資金、特に高度化資金の運用におきましては、これは指導行政、指導が非常に大事でございまするので、指導センターとあわせまして振興事業団を本年から発足させたわけでございまするが、この振興事業団の運用につきましては、昨日、実はこの評議員会があったわけでございますが、この評議員会の構成は、府県とそれから業種別団体と、それから中小企業金融機関と、それから学識経験者と、こういうふうなことで構成されておりまして、評議員会は事業団運用の最高の機関でございまするので、この辺で有機的な連絡をとって事業団を運用してまいりたいというふうに考えまするのであります。  それから金融機関の問題を御指摘ございましたが、これは、実は中小企業の近代化の道具としていろいろございますけれども、一番重要なのは、やはり具体的には金だと思います。方向をつくるのは行政でございまするけれども、その方向によって効果をあげるのは金でございまするので、金の流し方が非常に問題であるということで、この点につきましては、金融機関の審議会におきましていまいろいろ検討もございまして、一応第一次答申が出たわけでございまするが、それをもとにしてさらに勉強をしておる、こういう段階でございます。  しかしいずれにいたしましても、最初に申し上げましたような非常に大ぶろしきで、お聞き苦しかったかと思うのでありまするが、非常に大事な時期であり、ほんとうに産業政策の中心的な地位としてのというか、重さとしての中小企業政策としては、まことにまだ貧困だと思いまして、せっかくまあ勉強をしておる次第でございますので、よろしく御指導を願いたいと思う次第であります。
  119. 亀田得治

    委員長亀田得治君) どうも丁寧な御答弁をいただきましてありがとうございました。
  120. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 さきの当委員会におきまして、私は徳島市の職安に起こりました同和地区出身者に対する差別問題並びに認定取り消しに関しまして質問をしましたのに対しまして、調査官を現地に派遣して事実を調査する、こういう約束をされたわけです。  きょうは、まずその調査の結果を、ここに報告をしていただきたいと思います。  時間が短いですから、簡潔にひとつ……。
  121. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 先月の十六日の当委員会で先生から御指摘がございました徳島安定所の事件につきまして、その直後、先月二十日から二十四日まで、篠原監察官を現地に派遣いたしまして、実情を調査いたしましたのですが、その結果は、概略次に申し上げるとおりでございます。  第一の近藤清子さんにつきまして、紹介先で差別を受けたという御指摘でございますが、当該事業所では、過去においても同和出身者を雇用したことがございまして、現在でも数名雇用しておる状況でございまして、請願者の言うような、同和なるがゆえに差別を受けたということは、そういう差別的な意図を持っていたというふうなことは、全然考えられない状況にございます。したがって、そういう差別はなかったというふうに私ども判断をいたしておるのでございます。  第二点は、船越徳太郎氏についてでございますが、身体障害者であるにもかかわらず、不向きな職場を紹介され、それを断わったところ、意欲がないとして認定を取り消されたという御指摘でございますが、今回の調査において、請願者は身体障害者ではなく、常人と変わらないと述べているにもかかわらず、安定所での相談や紹介先での面接では、身体の不自由を強調し、不採用を希望するなどの事実がございました。就職する意欲がないと認定をいたしまして、認定を取り消しました安定所の処分はやむを得なかったというふうに、まあ私ども考えておるわけでございます。  第三のケースでございますが、松岡岩雄氏の件でございます。就職指導の過程で、夜警と守衛の紹介相談を受けましたが、高年齢その他を理由に、ほかの職場をさがしてほしいと頼んだところ、その後意欲がないとして認定を取り消されたという事案でございますが、請願者は安定所の行なった相談におきまして、バスの乗りかえは不便である、徳島駅まででバスをおりられるところを希望するとして、相談に応じていないのでございます。徳島市内においては、通勤のためバスの乗りかえをすることはごく普通のことでございまして、このような理由でたびたび紹介相談を断わるのは、請願者みずからが就職の門戸を閉ざすものであり、就職する意欲が見られないとして認定を取り消した安定所の処分は、これまたやむを得なかったというふうに考えておる次第でございます。
  122. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まあそういう調査をして帰って見えるだろうということは、私も実は予測しておったのでありますが、私が、行く前にもう少し実情を見て、そして民の声に耳を傾けて帰って来なければ、法ばかりにらみつけて、そういう一方的なことをしていちゃいかぬということを、私はそのとき申し上げたわけなんですが、きょうの調査結果を見ましても、やはりそういう結果が出ておるわけなんですね。  まず、近藤清子君のことですが、職安に差別はない、こう申しますが、職安で差別されているのは近藤清子君だけじゃないのです。ほかにもたくさん例があるのです。私は、一例として近藤清子君の問題を出しました。それから調査官がそういう報告を、私のところに見えて報告なさいましたから、私も不審に思ってすぐ徳島へ電話をして、現地を私も電話で調べてみました。確かに近藤清子君が断わられた万代という製材所には、数名の、二、三名の青年が、いわゆる解放部落からの出身者、同和地区と申しますか、この出身者が確かに若い者が二、三人働いているそうです。青年は解放部落の人でも雇われる場合があるそうです。ところが、中高年者になりますと、条件が違ってきまして、どうしても部落の方はいやがられて使ってもらえない、こういう私は報告を受けました。万代製材所が絶対そういう差別をしたことがない、こう主人は言っておる。主人が差別をしましたと言ったら、これはたいへんなことです。だから、そういう答弁をするのは当然なことです。そうして理由として、何でああいうわび状を書いたかということに対しまして、まあ全日自労の連中が二十人ほど押しかけて来て、そうして事務所でわいわい騒ぐ。お客さんも来ているし仕事のじゃまになって困るから、早く帰ってもらいたいと思ってあのわび状を書いたということだそうです。これは調査官のほうから、あなたのほうから聞いたことですが、そういうことは、どうせおっしゃるだろうと予測しておりましたが、予測どおりの答えなんです。しかし、私は差別しましたというわび状を書くということ、これは重大なことですよ。重大なことです。だから、仕事に差しつかえるから書くとか、そんな軽々しくやるべきことじゃないのです。やはりそういうわび状を書いた、その万代の社長の腹の中には、やはり差別をしたという気持ちがあるから、そういうわび状を書くのです。何もないなら書く必要はないし、書かなかったろうと思う。だから、そういうことで絶対差別待遇がなかったという、これは言いわけにならないと思うのです。またここにも一つ、そういうことがありますがね。この近藤清子君が監察官と話し合っているところへ同じ出身者の福山さんという方が、田宮町荒川ベニヤ工場への就職の模様を馬島課長という人に訴えていますが、ここでは福山さんはこういうことを言っているのです。これまで何回も差別されたことがあるので、もう初めにはっきりと、私は部落出身者です、と言ったほうがいいと思って、それでベニヤ工場で、「部落のものでも雇ってくれますね」と、こう言ったそうです。そうしたら急に顔色を変えてしまった。それからことばが変わってしまって、うちの工場はきたないとか、仕事が困難ですよとか、何とかかんとかいろいろなけちを自分の工場につけて、そしてとうとう、もう本人がいや気をさすようなやり方で、ちゃんとこれを追っ払っているんですね。こういうこともあるわけなんです。ですから、いま部落を差別したことはないと局長はおっしゃいますけれども、そんな答弁では私どもも承認できませんし、部落出身者は、そんな子供だましのような答弁じゃ、とても承知しませんよ。私が電話をかけてもそうです。  それから、ます第一には、この調査官、篠原君というんですか、何の必要があってこの人たちに対しまして——この請願書は一体だれが書いたんだとか、須藤議員に書くように教えられたのか、こういうことを一々聞いているんですよ。一体これは何の必要があって、こんなばかなことを聞くんですか。時間がありませんからかためて私は質問しますからね。  それから問題は、近藤清子さんに対する問題は、近藤清子さんが——申請してから認定までは大体原則として、一カ月たったら認定するということになっているんでしょう。この人は失業しているんですよ。失業保険の期限ももう切れてしまって、失業保険ももらえないような状態なんです。それで申請しているんです。ところが、いつまでたっても認定がこない。そういう状態。これも私は、少し法に反しているんじゃないだろうかと思うのです。  それから船越徳太郎さん、この人は、あなたの言い分だと足の長さが普通人とあまり変わっていないのに、変わっているように書いておるということを、うそを言っているというふうに言っているんですが、しかしこれは、事実足の長さは短いんですよ、片足が。そして重い物を持ったりすることは困難なんですよ。それを製材所のようなところへばかり紹介しているんですよ。これでは本人は実際、行きたくてもやっていけないんです。それでこの人に対しましても、やはり同じように、請願書は須藤さんに教えられたろう、こういう質問をしているんです。それでこの人はこう答えているんですよ。「あんなえらい人とは話もした事ない」、会ったこともない、こういうことを答えている。それから、この人は調査官でしょう。「高木建設で雇ってくれんのは、そう云う風にしてくれと頼んだのと違うか」、「そんなに疑うんだったら、今から一緒に行こう、そして実際を確かめてくれ」と、こういうふうに船越君は言っている。そうしたら監察官が、「今日帰るから時間がない」というふうに答えているんですね。  それから松岡さん、松岡君は、監察官がこう言っておるのです。「貴方は年齢もいっているし、就職に安定所も困っている、あなたの方で探してくれ」と、こういうふうに監察官が言っておるのです。これは監察官と本人との会話をたんねんに速記して私のところに送ってきたのです。それで本人は、「探しているが条件が合わんで困っている、私も今までは一、三〇〇円貰っていた」、監察官が、「貴方がじかに就職してくれたら一番良い、なるべく少うし安うても我慢してやって欲しい」、本人が、「出来る限り辛抱しているが、私の家庭も、八〇〇円や九〇〇円要る。」、こういうふうに答えた。この人は、とにかく紹介先は非常に賃金が安いために、それでは生活ができないということで、まあ就職することができない。それを就労の意思がないということで、一方的に首を切ってしまった、こういう事例だと思うのです。私がいま述べたことに対して何か意見がありますか。私は事実を申し上げておるのですが、これではあなたの言うことと少し違う——少しじゃない、非常に違う。あなた方はやはり自分たちの都合のいい解釈であの人たちを首切っておると思うのです。
  123. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 三人の方につきまして、御反論があったのですが、私ども監察官を派遣して現地を調査した結果が、先ほど申し上げたとおりでございまして、たとえば近藤清子さんに対する万代製材所のわび状の問題、これもまあいろいろ見方があろうかと思いますけれども、要するに本人の申し立てば、書かなければ騒ぎがおさまらない、そういう状態であったので書かされたのだ、こういう陳述で、私どもも状況判断から、そういうこともあり得るというふうに判断をいたしておるのでございます。
  124. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その判断が一方的なんですよ。あなた方は調査官の立場に立ってものを考えるから、役所の立場に立って判断するから、そういう間違いが起こってくるのだ。
  125. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) この万代製材所の事業主は土地の人でもございませんし、まあ現在は同和出身者三名程度しか在籍いたしておりませんが、かつては十五名の従業員のうちに七、八名部落出身の方がおったときもございます。徳島市の一宮の西丁という地名と、それから同和地域という結びつきの認識すらあまり持っていなかったというふうな事情もございまして、この万代製材所の事業主が意識的に差別意識を持っておるというふうには判断できないのでございます。  それから第二の船越徳太郎さんのケースでございますが、まあ、足の不自由さの問題、これはいろいろこの事件については判断の分かれるところかと思いますが、現地からの報告によりますと、多少足の片方が短いということでございましたけれども、実際には左足は右足より六ミリ程度短いという報告がございまして、この程度であれば健常な方と足の点ではそう変わらぬのじゃないかという情勢判断をいたしておるのであります。  それから第三の松岡さんの場合におきましても、具体的には平山木工所にあっせんをしたわけでございますが、徳島市の通勤の状態からいいますと、バスの乗りかえというのはあたりまえのことだということは周囲の方々も言っておりますので、私どもとしてはやはり特別の手当を支給する措置対象としては不向きなんではないか。  いずれもこの三人の方々について今後また求職申請がございました場合には、一般の求職者として積極的な紹介あっせんをいたすつもりでございますが、特別の手当を支給する対象者としては、申し上げたような処分で妥当であったというふうに判断せざるを得ないのでございます。
  126. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 いまの判断を見ましても、私はやはりあなたたちの調査報告が、やはり自分たちの立場に立った報告であって、ほんとうに相手方の立場に立ってものを見てないし、その立場に立っての報告でないということは言えると思う。あなたが万代社長のその一片の答えを聞いてきて、それで差別はないものと認定するというような、そんな軽はずみな調査というのはないですよ、だれしも万代社長に会えば、そういうふうに答えるんですよ。それは私もちゃんと予測していましたよ。そのとおりです。そういう一方的な答弁で、この問題解決しないですよ。それから、足が六ミリメートル短いんだと、これも私は自分でよく調べなければすぐ納得はできませんが、しかし、なんでしょう。やっぱり職業安定法の原則というのは適職ということが原則なんでしょう。だから、はたして船越さんにそういう製材所の仕事が適しておるのかどうか、これをまず考えなきゃならぬですね。ただ足が六ミリメートル短いだけだから、それに適しておるというふうにすぐ判定することも、これも私は問題がある。やはり本人には、製材所の重い材木をかつぐことが非常に苦痛で困難だという事情もあるんだろうと思うんですね。そういうことを、足の六ミリメートルで、それで判断するということは、私やっぱり不適切だと思うんですね。ですから、あなたのそういう報告を、私、そのままああそうですかと聞きのがすことはできないんですよ。  で、中高年就職希望者が紹介を断わってもいいという場合は、一体どんな場合なんですか。紹介はすべて絶対的に断わってはならぬという法律はないんですか。どういう場合は断わってもいいというふうになっておるんですか。
  127. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 職業紹介の原則は、あくまで本人の職業選択の自由と、それから適格紹介の原則と、こういう柱の上に展開されておるわけでございますが、特別措置といたしまして、手当を支給しながら、中高年の方々に対する、あるいは部落出身の方々に対する特別指導措置の場合には、これは普通の一般の職業紹介の場合以上にケースワーク的に、職業指導なり、相談、あっせんをやっておるわけでございます。したがって、一般の求職者よりも就職のあっせん回数も頻度が高い場合がよけいございます。しかし、あくまで適格紹介の原則は一般の場合と同じで、決して労働条件が不当に低いところにがまんをして行けというふうな紹介はやっておらないのでございます。ただ、あまりにも、その土地事情を離れて求職条件を固執する場合には、それは結局、ほんとうに就職する意図があるのかどうかという点に疑点が出てまいります。そこで、ほんとうに就職する意図を持たずに、ただ手当を受ける、あるいは六カ月なり一年なりたてば失対事業に入れてもらう、まあそのことのためにのみ求職活動をしておるというケースにつきましては、これはやはり認定の取り消しということをやらざるを得ないということで指導をしておりますので、具体的なケースにつきましては、私どもも非常に慎重に第一線を指揮しながらやらせておりますが、さらに不服があれば不服申し立て、あるいは行政訴訟というふうなケースもございますので、私どもとしては、もう認定の取り消しなりあるいは不認定の処分ということについては慎重の上にも慎重に、事実関係をはっきり記録に残した上で処分をやるというふうにやっておるつもりでございます。
  128. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 中央職業安定審議会の答申にも、そういう意味のことが書いてあるのですね。「安定的雇用への紹介について」の条項に、「紹介された就職先が相当期間以上雇用される見込がない場合、あるいは各種社会保険が適用されるべきでありながら適用もれとなっている事業所である場合等は、これを拒否しても正当な理由あるものとすること。」「公共職業安定所は、原則として失業者が正当な理由あるものとして拒否しうるような就職先に紹介を行なわないようにすること。」、それから「その他公共職業安定所の事務処理について」という条項には「要綱第二の四の認定の要件としての誠実かつ熱心な就職活動を行なう意欲を有していることの判断については、担当者の主観によることなく、」、「担当者の主観によることなく」です。「公共職業安定所への出頭の状況等客観的に明白な事由によるべきであること。」、こういうふうな審議会の答申があるのですね。そうしてこの失対法が国会で審議されましたときに、大橋労働大臣は、この審議会の答申を尊重しますと、こういうふうに答えているのですね。そうすると、ここで言っていることと、あなたの言っていることと違うんですよね。「公共職業安定所は、原則として失業者が正当な理由あるものとして拒否しうるような就職先に紹介を行なわないようにすること。」ということがある。ところが、徳島職業安定所の例を見ますと、正当な理由ありとして拒否できるようなところばかり紹介しているのです。安い、生活のできないようなところばかり紹介している。徳島の全日自労といえば、私は全日自労のいわゆる失対就労者というものは国内で一番賃金が安いということになると思うのです。これは最低生活だと思っている、失対事業は。ところが、徳島の紹介しているところをずっと調べますと、もうずいぶんひどいですよ。もっともっと下回る。きょうのこの紹介状でも四百円、五百円もらっている。それから交通費をかけて働きに行って、そればかりの金で家族暮らせますか。そういうような暮らせないところばかかりやっている。だから、これは拒否する条件がそろっているわけです。それを断わったからといって、就労の熱意がないといって一方的に首を切ってしまう。これも審議会の答申の精神と違反しているじゃないですか。こういうことはやってはいけないですね。「担当者の主観によることなく、公共職業安定所への出頭の状況等客観的に明白な事由によるべきであること。」こういうふうにはっきり書いている。ところが、すべて担当者の主観でこういう処理がなされているのです。だから、そこに問題があるわけです。だから、私はこういう法律ばかりじゃなしに、あなたたちが実際を見て、その人たちの立場に、生活困難な人たちの立場に立って判断しないと行政官として間違えますよと、私はこの前申し上げたわけなんです。ところが、少しもそれが直っていない、全く私は不満でしょうがないのです。どうですか、こういう条項があるのに。
  129. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) この認定取り消しの処分は非常に重要な処分でございますので、決して担当官の一存でそういう処分をやるわけではございません。所長を中心に必ず担当の課長を加えた合議によってその処分を決定するという内部指導をやっておりますのみならず、所長としては一たん認定の取り消しというような処分が、不服審査の結果さらにくつがえるということもあり得るわけでございまして、このことについては、所長としては非常に不名誉といいますか、責任の問題になりますので、非常に慎重に処分をいたしております。決して担当官の主観で云々ということはございません。  それから地場賃金が失対賃金よりも若干下回っておるというケースは、今日のいなかの地域においては相当ございます。逆に失対賃金が上がり過ぎているんじゃないかという非難があるわけでございますが、私どもとしては、できるだけこの失対賃金をよくすることによって、民間の賃金水準も、いなかにおいては引き上げられるというふうな実際上の効果もございますので、地場賃金より失対賃金が若干上回ったということ自体について、けしからぬという非難がございまするけれども、これはそういう意味ではやむを得ない。しかし具体的な紹介職場につきましては、やはりその土地には土地の地場賃金がございますから、そういうところには、紹介、あっせんとしては、やはりあっせんをするというケースがございます。その場合に、失対賃金よりも低いからいやだというふうな拒否をする場合が相当ございまするけれども、紹介したこと自体は、適格紹介といいますか、決してわれわれの紹介の原則からはずれたというものではないというふうに御理解いただきたいと思います。
  130. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ずっともっと私は質問を深めたいと思うのですが、時間が切れてきましたので少し先を急ぎますが、失対の賃金が地場賃金より上回っているのはけしからぬというようなものの考え方政、務次官、どうですか、おかしいじゃないですか、そういうものの考え方自体は。失対の賃金というのは日本の生活の最低ですよ。失対の賃金というものがそれが地場賃金より高いのがけしからぬというものの考え方、そんなものの考え方からすべて判断するから誤ってくるのですよ。失対の賃金より地場賃金が低いならば、その地場賃金を上げなければならぬという、こういう観点に立ってものをやっていかなかったら、政治をやっていかなかったら、とんでもないことになってしまうのです、政治自体が。失対の賃金は全国平均七百二十円です、今日。それも失対の労働者が毎年寒いさなかに寒風をついて東京へ全国から集まってきて労働省とやっさもっさの交渉の結果がやっと平均七百二十円までこぎつけたのです。ところが職安の中古年者の紹介では全国平均幾らだと思っていますか。局長知っていますか。知っておったら答えてください。
  131. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 中高年者だけの、何といいますか、あっせん職場における平均賃金の調査がございませんので、金額はちょっと申し上げられません。
  132. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 知らなきゃ私が教えましょう。全国平均四百円から五百五十円なんですよ。これはちゃんとこちらで調査してあるのです。全日自労、ここで全国的に調査した結果です、これは。四百円から五百五十円ですよ。全日自労の給与が七百二十円で地場賃金、いわゆる中古年者の職安から紹介されている賃金というものは四百円から五百五十円。政務次官、この物価高で四百円や五百五十円で家族を養ってめしを食っていけますか。政務次官、政治的な答弁をしてくださいよ。こんなことでいいんですか。
  133. 井村重雄

    政府委員(井村重雄君) 先ほど失対賃金が高いというふうにお受け取りになりましたが、これはわれわれは別に高いというふうな、そういう考え方は持っておりません。ただ、地場産業の賃金の低賃金を出しておる人たちから、失対賃金のほうが高いとさえ批評があると批判を受けておると、こういう意見を申したのでありまして、われわれはできるだけ失対賃金を適正な賃金にいたしまして、これを標準にして地場賃金もこれへついて値を上げてくれることを期待をいたしておるわけでございまして、決してこれが高いから地場産業のもっと安いところへ拒否を予想してあっせんするというふうな考えは毛頭持っておりません。また、先ほど来からいろいろ質疑を聞いておりましたが、ことばのニュアンスにはいろいろな問題が生じるであろうと思いますけれども、要は信頼感の問題でありまして、やはりそこに一つの信頼感を持っていただいて、あくまでとにかく話を詰めてもらう。私どもは、これは職安行政といたしましては、できるだけ最後まで熱心に就職をあっせんしてその人に定職を与えるというのが、これが職安行政の本旨でございまするから、どうか信頼感を持ってやっていただきたいということでございます。
  134. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 さすが政務次官は政治家だ。だから政治家らしい答弁をしている。先ほどの事務当局の答弁を聞いていたら、ぼくはむかついてきますよ。誠意も人情も何もないのです。ほんとうに人間を法のまま子扱いにしている。法律だけで、人間を扱うことを知らないのですよ。だから、政務次官、やはり職安は丁寧に、根気強く——それは貧乏しておれば反抗心も起こりますよ、それが人情じゃないですか。それは職安の事務員に憎まれ口をたたいたとか、たまには寒い日には職安に行くことを休むこともあるでしょう。それを不熱心だと、その現象面だけをとらえてその人を職安からおっぽり出すと、こんなやり方、人情もない涙もない政治というのは、やってはいけない。私はそこを言うのですよ。彼たちは反省がないからぼくは復が立ってきておこるわけですよ。
  135. 井村重雄

    政府委員(井村重雄君) お説のような考え方になられる場面も、また御事情も、あるいは場合によってあるかとも存じますが、私は全国の出先の職安行政をやっておる連中は、ほんとうに誠意を持ってやっておると信じております。今日もう労働力の不足ということはよく皆さん承知のとおりであります。ネコの手でも借りたいという時期でございまするから、職安といたしましても、それはもう一生懸命に労働力をどこかへ落ち着けようという誠意は持っております。しかし、いまあなたの御指摘のように、やはり困っている人はいろいろとひがみもございましょう、いろいろなコンプレックスもございましょう。そういうことでございまするから、信頼感を持ってどうかひとつやっていただきたい。私ども手落ちがあれば、出先に対して十分より以上親切にやってくれということを示達することにやぶさかではございません。
  136. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 どうぞ失業者に信頼されるような職安になってくださいよ。あんな簡単に首を切るようなそういう職安になるのじゃなしに、もっと信頼されるような職安になってくれることを私は要望しますよ。ところがここにその一つの冷い例があるわけなんです。その実例はあとで申しますが、福岡県の県の労働部が六月に出しましたパンフレット「福岡県における失業対策事業の現状」というパンフレットの中でこういうことがある。失対事業が、その労働時間、労働の内容、手当を含めた実収入、身分の確かさなどから、きわめて魅力ある職場になっている、こういうふうに述べている。あの失対の仕事が魅力ある職場になっているというのですね。いかに日本の労働者がみじめであるかということがこの福岡県の労働部のパンフレットではっきりすると思うのです。労働条件を改め、憲法にいう文化的生活の保障された、憲法の精神によるそういう最低賃金を制定しないと、いつまでたっても失対労働者をうらやまなければならぬような、そういうところに中古年者が追い込まれていくのですよ。現に事実そうなんですね。全国平均四百円から五百五十円、そういうところに追い込まれているのです、中古年者が。  そこで、これは質問しますが、中古年者が職安に求職の申し込みをしてからどれだけ経過したら、常雇いの仕事がない場合、失対に入れてもらえるのかという質問です。失対にはいれるには一つの条件があるはずです。
  137. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 申請をいたしまして適格要件に該当するかどうかという認定が次の段階にございます。認定はなるたけ一カ月くらいの間にやるようにという指導はいたしておりますが、個々事情で少し時間がかかる場合もございます。そこで、認定を受けますと指導手当を受けながら民間の正常雇用に就職のあっせんをする、こういう段階が大体六カ月程度でございます。それでもなおかつ民間に就職ができないというような場合に初めて失対に入る、こういう段取りになるわけでございますので、申請をしてから現実に失対に入るまでには相当日時がかかるわけでございます。
  138. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 相当ってどれだけですか。
  139. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) いまの手続ずっと通算いたしますと、最短コースでいった場合に七カ月から八カ月、その間に認定に多少ひまどれば九カ月ないし十カ月というふうなケースもあろうかと思います。
  140. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 職安法では、中高年の措置という法律によりますと、求職の申し込みをしてから八カ月職安に通った結果、常雇いの仕事がなかった場合には失対に就労できると、こういうことになっているでしょう。ところが、福岡で気の毒な事例が一つ出たわけなんです。渋田広吉さんという方七十一歳です。この方は、中高年の措置を申請して八カ月職安に通い続けた結果、それでも雇ってもらえないのです。失対に入れてもらえないのです。そうして、ある日自転車に乗って公共事業の角田組というところへ働きに行くときに、はねられて死んでしまったわけなんですね。先ほど政務次官おっしゃったように、職安がほんとうに人情のある、人情の通った行政をやったら、こういう七十一才の人を八カ月もたってなお職安に入れないで、おっぽり出して、そうして、自動車事故で殺してしまうというような、こういうことはなくても済んだはずなんです。ところが、現実にこういう問題が起こっておるわけなんですね。実際は、田川、飯塚の炭鉱地帯、あそこは、こういう条件で、もう当然失対に入れてもらえる条件をちゃんとそろえておりながら、なお今日失対にも入れてもらえないし、職業はなしで、生活の困難をしている人が田川で三百三十七人、飯塚で四百人、こういう数があるわけなんです。こういう人たちを、何百人もの人間を失業にほっぽり出して、そうして、生活の保障も何もしないでほっぽり出しておくというような、そういうむごい政治というものはないじゃないですか。こういうことは即刻解決すべきです。そんな八カ月も通うということはたいへんなことですよ。それをやってもなお入れてもらえぬ。こういうことはやめて、できるだけ早く六カ月の最短距離、これをやらなければだめです。その六カ月の最短距離が徳島でくるというので、あわててその六カ月の前に二十七人首切ってしまったのです。それが今度の事件なんです。こういうことはやるべきでない、こう思います。大体支配者というものは、自分たちに都合のよい法律をつくるものですよ。自分たちに都合のよい法律をつくっておいて、そうして人民の生活をその法律に合わそうとするわけなんですね。だから無理が起こる、抵抗が起こる。これは私当然のことだと思う。私は、この間の委員会におきましてもそういう意味のことを述べたのです。行政官というものは、法に目を向けるのみならず、事実に目を向けて、そうしてりっぱな行政をやらなければいかぬ。法ばかり見ておったら、りっぱな行政はできないよと私は言ったのです。そのとき労働大臣——列席の労働大臣も、彼もうなずいて私の言うことを了承したのです。だから、もっと私はりっぱな血の通った調査がされると思ったのです。ところが調査報告を見ると、全く血も何にもないのですね。法ばかり見ておって、自分の出世ばかり見ておってですよ、人民の生活というものに対して何ら血の通わない報告がされた。あなた方は、実際、この不合理な社会制度のために、困難な生活に苦しんでいる人民大衆に対しまして、政府に都合のいいようにつくられた法をたてにとりまして、それを不法に運営し、人民の苦しい生活の実態に目を向けようとしていない。こんなことで、あなた、問題が解決できると思ったら、大間違いですよ。絶対に私はこういう困難な社会情勢は解決できない、もっとあなたたちが考え直さないと解決できないと私は思います。だから、どうか先ほど政務次官がちょっとおっしゃいましたが、ほんとうにこの人民の生活に目を向けて、困難な生活をどうしたらいいか、どうしたら解決——いまのようなことでは政務次官、解決できないのですよ。いまのような職安のやり方では解決できないです、この問題は。職安の人は法を守っておれば、それで自分の首はつなげるかもしれないけれども、職安の人が自分の首をつないでいる間に、多数の貧困民層は首をつらなければならない、生活ができない。そんなばかなことはないじゃないですか。だからそういうことによく留意をして、そうしてりっぱな行政をやってくださること、これが私の願いなんですね。聞くところによりますとね、職安は、組合に入っている人は、この就労の認定すらもしない、あっせんすらもしない、こういうこともいわれている。これも私はね、非常な大間違いで、職安法の第三条には、「何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として、職業紹介、職業指導等について、差別的取扱を受けることがない。」と書いてあるのです。ところが聞くところによりますと、全日自労組合員になりますと、職安は、「お前らもうあっせんしないのだと言ってあっせんしないのだそうです。これもまことに不当なことではないか。どうかそういう不当なことのないように、私はきょうもっと追及したいと思いましたけれども、委員長から紙きれが回ってきて、時間がないのだとおっしゃいますから、まことに残念ながらここでやめますが、政務次官、私の気持ちはよくおわかりのことと思いますので、どうかりっぱな職安行政をやっていただいて、失業者が困らないようにやってくださることをお願いします。最後の決を意ひとつ述べてください。
  141. 井村重雄

    政府委員(井村重雄君) 私は議論をいたしませんが、いろいろ御意見を拝聴いたしました。われわれは決して権力的な支配者的な考えは持っておりません。やはり人民の上に立った政府であるということだけは事実でありまして、人民の上に立っての法律でありまして、厳正に法律を施行するつもりでおります。また、御意見は御意見として十分拝聴いたしまして、人民のしあわせのために、失業者、労働者のために、ごく親切な職安行政をやることについては、決意を新たにして、さらに手落ちのないように進めてまいりたいと存じます。
  142. 黒木利克

    ○黒木利克君 ただいまは差別事情を含んだ失対事業法の適用の問題について、御論議がございましたが、私、聞いておりまして、いささか心配になった点がありましたので、一体どちらがほんとうに、こういうような失業対策事業に従事している人たちのためになるかという観点から考えを申し述べ、御意見を承りたいと思います。  私もこの道二十五年の専門の学者の一人のつもりでございますが、そもそもこの緊急失対というのが、第一次大戦後、経済恐慌がありまして、それに対して世界の国々で、アメリカ等で行なわれたわけなんでありますが、非常な弊害が発生をして、とうとう廃止になってしまったわけですね。そうして社会保障法に吸収されていったのでありますが、私は、こんなことで各地でこんな問題で角突き合わせておるなら、同じようなことで、これを緊急失対法を廃止したらどうかという意見が出ることをおそれるのであります。  それから第二次大戦後、世界的に有名なプエルトリコ人の失対事業法あるいは失業保険法、社会保障の適用の有名な事例がありまして、これもわれわれ社会保障の専門家は心しなければならぬ事件になっているのですけれども、これはプエルトリコとアメリカが合併になりまして、プエルトリコ人はアメリカ人になった。それでかってにニューヨークに入国するわけですが、若干、生活の程度が一対十くらい違う。そこで、ここで失対事業に従事する、あるいは失業保険にかかる。そうすると、失業保険は大体賃金の三分の一くらいが相場てございますから、三分の一の賃金をもらっても、プエルトリコにおるよりも数倍の生活ができるというので、結局プエルトリコ人にとっては、失業保険法なり失対事業法が悪事奨励法になっていった。相手の人格を非常にスポイルしていったという弊害が出てきたわけであります。これは決して金が惜しいんじゃない。民主社会においては、普通なら、健全なら自分で働いてやっていくということを、そういう精神なり意欲のあることを前提にして社会保障法が成立しているんですから、先ほど福岡の民生部の何か通達の御紹介がございましたが、おそらくそれはそういう失対で生産性が上がらぬで、だらだらやっておって、はたして一体これで相手の人間としての生活に満足がいくであろうか。こういうような意図からああいうような表現になったのではないか。表現はまずいと思いますけれども、思うのでありますが、そういう社会保障の適用には非常な弊害の面も実はあるわけでございます。  そこで問題があるんですが、それをさらに複雑にしているのが——本来職安あるいは生活保護法を適用する福祉事務所というのは、そこにおる職員が、これは本人のためを一生懸命考えるんですけれども、同時にまた納税者——適用するのは国民のほんとうの血と汗の税金ですから、だから納税者のことを考えて、厳正にしかも相手の人格をスポイルしないように、人間らしい生活を保障できるようにできるだけ御協力しようという立場にあるわけですけれども、だから先ほど政務次官がおっしゃったように、その二人の間の信頼関係、ラポーといっておりますが、それが前提でなければならない。ところがそれを第三者の圧力、妙な団体がそこに介入をして、それを困難ならしめている。信頼関係を失わしめているという事象が外国においてもあったのであります。そういうことで、かえって一体どっちが本人のためになるかという疑問すら、私は持つのでございますが、実は先ほどからのお話を聞いておりますと、どうもやはり日本でも、そういうような事象がだんだんあらわれてきて、お互いがテンションで、こういうことで論議を激しくすれば、これは失対法律そのものの運命にもかかわるんじゃないか。私は大体こういう緊急失対法、これは戦後日本でもレリーフワークといって、これは社会保障の新しい観点からいくと古い考え方なんです。またいまのような失対法の適用を見ておりますと、一体、実際ほんとうに働いて収入を得ておるというお気持ちを本人が持たれるかどうか。いろいろの団体のそういうような力を、彼らの団結の力によって、とにかく月給をもらっておるとすれば、働くだけ損だという気になったら、これは相手の人格をそこなうことになるのでありますから、社会保障の本旨から逸脱するわけでありますから、私は職安の職員は、厳然たる態度で、納税者のためにも、究極には相手の人格を尊重し、人格をそこなわないという運営をするような心がまえをひとつしてもらいたいと思うのであります。しかし私は、日本の職安なり福祉事務所において一番欠けておるのは、これは須藤委員の御質問もそういう点に触れておられると思うので、そういう点についてだけは私は了解いたします。それは人間心理において、そういう差別的な残念ながらコンプレックスを持っておる人たち、そういうような人たちの心情をほんとうに考えて面接に当たる、訓練に当たるという気持ちが必要であります。これは心がまえだけの問題じゃないのであります。ケースワーカーの——、そういう社会学上の大学までできておるのでありますから、これはせめて職安のそういう研修所なり大学で、そういうような観点からも大いに訓練をしてもらいたい。こういう事象があるというのは、私はそういう訓練が足りない点にも大きな原因があるのではなかろうか。と同時に、そういうような訓練というか、そういう訓練をされた人が、人間の、相手の申請者と失対の事業の関係者のラポーというか、人間関係をほんとうによく保つというか雰囲気をつくることに、だからいろいろな団体がそういうことにじゃますることは非常に私は残念に思うのでありますが、しかしなぜ一体そういう団体を組んで介入してくるかということは、いま言ったような賃金の問題もありましょう。もっと労働省も努力をして予算をとってほしい、人間らしい生活のできるような制度にし、それを運営をしなければならぬというふうに思いますが、そういう点で注文をいたしておきます。そういう点で、一番大事な職安の職員のそういうような再訓練というか、あるいはもっとケースワーカーとしての素養を持てるような努力をなさるおつもりかどうか、それをお伺いしたい。
  143. 井村重雄

    政府委員(井村重雄君) お答え申し上げますが、なるほど今日の失対事業に対して多少の批判がそろそろ出てきておることも事実でございます。また発足当時の、これはあくまで失業者に対して定職につくまでの緊急の失対事業であるということで出たということも事実でございます。したがいまして、先ほど私のこれは聞き違いかも存じませんけれども、失対事業が魅力ある職業になってはこれは困るのであります。魅力ある温床になっては困るのでありまして、すみやかにこれによって非常に不満であるけれども、救われて定着さしたい。そこに職安行政に当たるいわゆる職員もできるだけ少々安くても定着できる民間事業あるいはその他の中小企業へあっせんしたいというあせりがあるだろうと思うのであります。そういうことが、あるいは、言動の端々に不親切なことばになりはしないかどうか。何かしらん失対事業へ入れたくないような言動となってあらわれるのじゃないか。そこに議論も誤解も生じ、またすれ違いの議論も出てくるのじゃないかと思うのであります。今日の時代に、同和地区の方々であるから差別をするとか、そういうふうなことはもう前時代的なことでありまして、近代的にはそういう考えはいささかも私は持っておらぬと思います。またあってならぬことでございます。と同時に、いろいろ職安行政の第一線に立っておる諸君も、いろいろ親切な心は持っておるだろうけれども、これまた人間でありまするから、先ほどの監察官の問題でありまするが、言った、言わない、ああ言った、こう言ったという議論もなかなかこれは判定のむずかしいことであります。しかし、ケースワーカー的の態度で今後やろうということを、事実われわれはまた組合自体の存立ということをよく尊重して、予算をできるだけ獲得して、先ほど言うふうな日本の低賃金をまず政府みずからが率先してこれを解消する、その標準を示すという意味合いにおいて、今後は予算折衝にも十分あたたかい心を持って考えて、この何といいますか、失対事業の賃金に対してもわれわれはできるだけ適正にやりたい、また厳重にこの失対事業を適正にやるべきときはやってもらう。したがって、これに就業する方々もできるだけ品位のある行動をとってもらいたいということは、十分徹底をいたしたいと存じております。
  144. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 一言、失対に対する誤解をしていらっしゃる向きもあるようでございますから、私も申し上げますが、失対は、決してよその職場へ行って働くことをきらっているのじゃないのです。失対ができたそのいきさつは御存じのとおり、その状態が今日なお解消されてないのです。失対よりいい職場があるならば、食える職場があるなら、みな失対に出ないですよ。ちゃんとりっぱな職業について、定職について常雇いの職場に行こうという気持ちはみんな持っているのです。しかし、それがないのです。特に失対に働いている人、徳島へ行きましても、高知へ行きましても、あなたは差別がないとさっきおっしゃいましたけれども、差別はりっぱにあるのです。りっぱにあるから同和地区、解放部落の人たちは定職につくことができないのです。むずかしいのです。だから失対に働く人は、五〇%は失対ですよ、同和地区の人たち。高知へ行きましても、徳島へ行きましても、何よりもこれは事実が示していると思うのです。いかに同和地区の人たちが就職困難であるか。就職困難であるということは、同じ人間でありながら差別されるということです。今日、明治百年を迎えまして、次官もおっしゃいましたが、なお、今日そういうふうな理不尽な、非人道的な差別が絶えずあるということです。これはわれわれどうも容認できない、許すことができない。しかし、現実にあるということは事実なんです。そういうことがある。だから、失対で働けなくなっても、同和地区の人たちは失対以外に働く場所がないのですよ。ないから、行くのですよ。もしもあるならば、みんな堂々として、一人前の生活のできる給料を払ってくれるところがあるなら行きますよ。失対はなまけてもいい、働く時間が少ないとか、収入がわりといい、そういうことで失対におるのじゃないのですよ。そういうことで、ものを見たら大きな間違いですよ。決してそうじゃない。私は、長く失対を知っておりますから、一応失対に働く労働者諸君の名誉のためにぼくははっきり申し上げておかなければならない。
  145. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 私は、先ほども黒木委員の質問と、考え方にほぼ同じ考え方を持っておるわけでございますが、いまの失対事業関係のこの事業というのは、非常にいま求職状況や、経済状況、こういうことから見て、もっと失対事業というものの就労者が減っていくべきだ。ところが、これが定職化して、ずっと同じような傾向がある。どうしたことだろう。しかも、また私どもが耳にし、聞いたところ、そしてまた実際に体験しているところでも、就職される条件があるのに、何か故意に就職をしないような傾向もなきにしもあらず、こういうところが、各所に見受けられる。特にこの安定所の関係から、私の県なんかでもそうですけれども、安定所に集団陳情が繰り返されておる。二十人、三十人という陳情が毎日毎日繰り返されておる。ある県であったと思うのです。これは私どもも統計を持っておりますけれども、四十日間に二十四日間の集団陳情があったわけです。しかも、毎日五百人、四百人、こういう陳情が繰り返されておる。二十四日間で十日間も警察官が出動せざるを得ない。安定所の内部には、あらゆるところにいろいろのビラがある。そのビラの内容も私はこれでいいのか、これがほんとうに就職する意欲を持っている方なのだろうか、こういうことも考えさせられるものがあるわけでございます。こういう点で、なお、全日自労から紹介されたいろいろ手紙を持ってくる。その手紙の内容の一部を私は紹介してみます。前文は省略しますが、「現在求職している多くの者は全日自由労働組合の組合員ですので万一お宅で採用の場合は求職者の意志を充分尊重して頂きたいと思います。次に安定した仕事で一家が憲法に保障された賃金を支給され、社会保険や退職金制度、昇給制度の確立等あらゆる条件を保障して頂き度いと云う方針を組合はもっております。その節は採用後のゴタゴタをさける意味からもよろしくお願い申し上げます。」もう一つの文章の中で、前のほうを読みますと、盆と年末には手当はどのくらいいただけますか、組合があるかないか、つくってもよいか、組合員だから約束が違ったら交渉にくるからと、全日自労印を押して、そしてあて名のところに出している。こういうふうな事例を私どもは考えるときに、お互いに雇う者と雇われる者の間の中に意思の疎通が常に完全に行なわれていない形で進められている。こういう点を考えますと、私は黒木委員がお話しのように、もう少し安定所の方々が就労される人の気持ちになると同時に、なぜそうなっているのか、なぜこの人たちはこういう気持ちになっているのか、より積極的に人間開発、職業開発という立場で指導もしてしかるべきものと思います。したがって、そういう点ではき然たる立場をとることも必要である、こういう考え方を常に認識しているわけでございますが、次官の考え方をお聞きしたいと思う。
  146. 井村重雄

    政府委員(井村重雄君) 貴重なる御意見を拝聴いたしまして、答弁申し上げるというよりは御意見として拝聴いたしておいたほうがけっこうかとも存じます。仰せのとおりの事実も私ども耳にいたしております。また、さような事実もあるいは時と場合によってあったであろうことも想像いたしております。しかし、いま最後におっしゃった、ほんとうにあたたかい、人間としてそれらの人たちの苦しみをよく察して、血の通った行政をやれという督励のようでございました。私ども十分その点は察してまいりたいと存じます。特に、先ほど例にございました七十一歳、七十歳以上の高齢者がほんとうにどうするかというふうな問題は大問題でございまして、これらの人を一様にとにかく今日の失対事業の中へ就職をせしめるということははたして妥当なのか、むしろ社会保障として、国家が最低生活でも保障申し上げたほうがいいのか、これらの点もいろいろな問題を投げかけておると存じます。十分心にいたしまして、今後血の通った職安行政につとめるよう労働省としては今後とも一そう努力いたしたいと存じます。何とぞ御指導賜わりたいと存じます。
  147. 亀田得治

    委員長亀田得治君) この程度でひとつ……。これはまあいつまでやっても討論会のようにだんだんなりますので、まあこういうことも国会の審議としてはいいことだと思いますが、この程度にして……。  他に御質疑のおありの方はございませんか。——別に御発言もなければ、昭和四十年度決算外二件に対する質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  148. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 御異議ないと認めます。よって、質疑は終局いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十七分散会