○阪上
委員 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました
昭和四十二年度補正予算に対し、反対の態度を明らかにすると同時に、
佐藤総理及び
政府閣僚に対し、その政治の姿勢と政治の硬直化傾向について深く反省を求めたいと存ずるものであります。
今日わが国の政治は重大な曲がり角に立っておる、あるいは危機にさらされているともいわれておるのであります。このことは、わが国の社会、経済の諸情勢がきわめてきびしい上に、国際的にもポンド切り下げあるいは国際通貨不安の局面を迎え、日本の進路の
決定が迫られているということであります。さらには今日、
国民の中に高まりつつある政治不信を断ち切って、わが国の政治が真に
国民の信頼を得ることができるかどうかの岐路に立たされているということができるのであります。
この
意味において、本
予算委員会は、単に補正予算の
審議にのみ終始することを許されず、今日、日本の当面する緊急課題について、
国民注視の中で開催されたのであります。ところが、
審議の過程を振り返ってみまするとき、はたして
国民が真実こいねがっている問題について答えることができたかどうか。この点、私どもの
国民の願いに立った
質問に対し、
政府はあまりにも表面のみをつくろった誠意のない
答弁に終始いたしておったのであります。この点、私の深く遺憾とするところであります。そこで、
佐藤総理及び閣僚は、いま
国民の願いがどの辺にあるのか、そのためいま政治の取り組まなければならない課題は何か、いま一度深く反省をしていただきたいと思うのであります。
今回の補正予算の編成にあたって、私どもがきびしく考慮しなければならない問題点は、何よりも今日の深刻化している経済、物価危機に対処し、
国民生活の保障と長期安定成長をいかに達成するかということであります。
昭和四十二年度当初予算は、わが党を中心とする全野党、これの強い反対にもかかわりませず、御案内のように強行成立したのでありますが、その結果は、わが党がその際強く指摘いたしておきましたとおり、
政府の経済見通しに大幅に食い違い、社会、経済のあらゆる分野において矛盾を激化いたしておるのであります。経済成長率は名目一七%に達し、
政府見通しがいかにずさんであったかを暴露いたしております。また、個人消費や
政府支出は当初見通しとほとんど変わらないのに、民間設備投資は七兆二千億に及ぼうといたしております。しかも、この結果もたらされた景気の過熱の波というものは、卸売り物価を含めた物価の上昇を招き、国際収支の急速な悪化、中小企業の記録的な倒産など、経済のひずみを激化し、さらにいわゆる財政硬直化問題を引き起こしてまいったわけであります。特に国際収支の悪化は深刻な危機に直面して、総合収支において六億ドルの赤字は必至の情勢となっております。しかもこの悪
条件の中で十一月十八日以来のポンドの切り下げ、ドル不安という世界経済の重大な局面を迎えておる次第であります。
こうした経済と財政の危機は、単なる
政府の見込み違いということだけでは説明がつかないのであります。明らかに
政府の経済、財政政策の運営の誤りであります。私どもが本年度当初予算の
審議にあたって口をすっぱくして申し上げたことは、景気過熱含みの経済に対処するのに、フィスカルポリシー導入の時期を誤り、公債発行を軸とした景気刺激予算を組んで、相変わらず民間設備投資をあおり続けようとする態度をとるならば、必ずや今日の危機を招くに違いないということであったわけであります。今日の事態は、したがって初めからわかっていたことであり、
政府当局においても当然予想できたはずであります。しかるに、
政府は安易な態度をとり続け、景気中立とか、あるいは宣伝的な粉飾した経済見通しを発表する無責任なやり方に終始しておるのであります。経済、財政の破綻と景気過熱の主犯は相変わらず民間設備投資にあり、しかも
政府みずから物価上昇を刺激し、大企業優先の政策を続けた責任は、まことに重大であるといわなければなりません。また歴代自民党
政府が安易なドル依存、無計画な外資取り入れ政策等をとり、何ら外貨準備対策をとろうとしなかったために国際収支の危機を招いた責任、これはまたきわめて重大であります。現在の国内、国際経済の大きな変動と危機に対処する道は、内には大企業偏重の成長政策の転換であり、外にはドル依存を脱却して、自主経済の基礎を固めることでなければならないのであります。にもかかわらず、
佐藤内閣のとろらうとしている道は、この情勢に逆行いたしまして、かえって矛盾を拡大する方向に進んでおるのであります。私は、この危険な方向への歩みに対しまして、この際重大な警告を発したいのであります。
今回の補正
予算編成にあたって避けて通ることのできない重要問題は、
昭和四十二年度当初予算のもたらしたこれらの欠陥を補正して、今日の深刻化している物価と財政の危機、国際収支危機に対処し、さらにその日暮らしの財政経済政策というものを根本的に転換して、
国民生活の保障と、それから
昭和四十三年度以降の財政再建に対処する足がかりをつくらなければならないということであります。しかるに
政府は、これらの失政に対し何らの反省をすることなく、その根本対策を怠り、かえって財源難を口実といたしまして人事院
勧告をじゅうりんいたしまして、あるいはまた失業対策、生活保護費の計上におきましても、物価調整すら十分行なうことなく、年の瀬を旬日に控えて資金難、経営難に苦しんでいる中小企業に対しても、何らあたたかい措置をとることなく、さらには地方自治体に対する運用部貸し付け金の繰り上げ償還を強要してみたり、地方財政を圧迫するなど、
国民生活に緊急な最低限度、この最低限度の支出すら削減して
国民生活へのしわ寄せを強めているのであります。
さらに、国際収支の著しい悪化の中で、しかもポンド切り下げがドル不安に波及し、国際通貨不安を高めているにもかかわりませず、産投会計への繰り入れを行ない、輸出入銀行出資金を拡大し、一そう長期資本収支の悪化に拍車をかけ、インドネシアの経済援助など、外交、軍事面でアメリカ従属の道をとるだけでなく、経済的にもドルと心中する道を歩もうといたしているのであります。こうした態度は明らかに
国民の期待に反し、
国民生活を無視するものであって、断じてこれは許されないのであります。
特に公務員労働者の生活や要求を無視いたしまして、今回の人事院
勧告の完全実施すら怠り、実施期日を足切りしようとする態度は、
政府の誠意を疑うものであります。人事院の
勧告内容それ自体、必ずしも今日の民間給与水準に比べて十分なものとは申すことはできません。それにもかかわらず、公務員労働者の労働基本権の制限の代償として設けられたこの人事院
制度の趣旨に照らし、
勧告の完全実施は最小限度の
政府の義務であります。しかもこのことは、衆参両院の内閣
委員会の全会一致の決議が行なわれているところでもあります。
政府の態度はまさにこの院の決議にそむき、
国会を軽視するものであって、きわめて遺憾にたえないところであります。
以上、私は、この予算案を貫く基本的な欠陥と、とるべき方向について申し上げたのでありますが、
政府はこれらの諸点に深く思いをいたし、わが党が本
委員会におきまして一貫して要求してまいりました、すなわち次のことを具体的に補正予算に盛り込むこと、これこそが急務であると信ずるものであります。
すなわち、歳出面におきましては、少なくとも公務員給与改善については
国会の
議決どおり人事院
勧告の完全実施を行ない、七百四十億円を計上すべきであります。また、これに伴う義務教育費国庫負担などの義務的経費、これについて二百五十億円を計上すべきであります。さらに生活保護費及び失対賃金につきましては、これら底辺階層の生活の実情を考慮いたしまして、
米価その他物価値上がりを補正するため、基準の引き上げを実施すべきであります。その他義務的経費を合わせて二百五十億円を追加し、医療費引き上げに伴う医療保険の国庫負担を九十億円追加すべきであります。
また、今回の補正の大きな柱となっております災害対策につきましては、単なる公共施設等の災害の復旧にとどまることなく、被災者の生活保障、生活再建を基本とする被災者援護法を制定いたしまして、個人災害の補償に踏み切るべきであります。これによる援助、融資活動を強化するため、少なくとも三百五十億円程度は確保すべきであると
考えます。
地方交付税交付金につきましては、地方財政が国家財政よりも一歩先に硬直化しているこの現状を重視し、その強化とあわせて、地方公務員給与改定の五月実施の財源を補てんするためにも、九百七十億円の追加を行なうべきであると
考える次第であります。
また、本年度当初予算の
審議にあたり、本
委員会で決議いたしましたところの附帯決議を推進するために、物価対策、住宅、交通安全対策、公害対策を強化するため、それらの財源として所要の経費を計上すべきであり、少なくとも三百五十億円程度の追加が必要と
考えるわけであります。
これらに要する財源は、本年度の税の自然増収及び日銀納付金、専売納付金等の収入によって少なくとも四千億円の収入増が見込まれますとき、既定経典の節減三百億円、防衛関係費の削減、不用額の減額等によりまして三百五十億円、既定の予備費減額二百五十億円等を行なうことによって十分にまかなうことができると
考えるわけであります。
以上の措置とあわせて、重化学工業を中心とした無計画な設備投資を抑制し、法人税法によるところの景気調整
制度の発動等の措置をとり、また財政投融資計画を組み直し、
国民生活に直接影響する交通、公害対策等あるいは中小企業金融対策あるいは住宅対策、地方公営企業対策などに重点的に振り分けるべきであると
考えるわけであります。また、住宅、治水等の財政支出繰り延べ、この措置はやはりいま一度調整をすべきであろうと
考えるわけであります。これにより、財政と経済・運営は一体化され、単に景気過熱の犠牲を
一般会計にしわ寄せすることなく、経済の安定的な成長と
国民生活の保障を実現できると信ずるものであります。
以上、私は、今回の補正予算に対するわが党の基本的な態度と今後の経済財政運営のとるべき方向を簡潔に申し上げ、本予算が
国民の願いに反するものであることを明らかにいたしまして、反対の討論を終わる次第であります。(拍手)