運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-12-15 第57回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年十二月十五日(金曜日)    午前十時十分開議  出席委員    委員長 植木庚子郎君    理事 小川 半次君 理事 正示啓次郎君    理事 二階堂 進君 理事 藤枝 泉介君    理事 古川 丈吉君 理事 加藤 清二君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 伏木 和雄君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    有田 喜一君       井出一太郎君    池田正之輔君       江崎 真澄君    川崎 秀二君       北澤 直吉君    久野 忠治君       重政 誠之君    周東 英雄君       鈴木 善幸君    中野 四郎君       西村 直己君    野田 卯一君       野原 正勝君    福田  一君       船田  中君    古井 喜實君       松浦周太郎君    松野 頼三君       山崎  巖君    安宅 常彦君       猪俣 浩三君    大出  俊君       大原  享君    角屋堅次郎君       北山 愛郎君    阪上安太郎君       楯 兼次郎君    成田 知巳君       西宮  弘君    芳賀  貢君       畑   和君    八木  昇君       山中 吾郎君    横山 利秋君       麻生 良方君    田畑 金光君       渡部 一郎君    広沢 直樹君       谷口善太郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 赤間 文三君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 園田  直君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 中曽根康弘君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 小川 平二君         建 設 大 臣 保利  茂君         自 治 大 臣         国家公安委員長 赤澤 正道君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田中 龍夫君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官・北海道開発         庁長官)    木村 武雄君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増田甲子七君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      鍋島 直紹君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         総理府総務副長         官       八木 徹雄君         総理府特別地域         連絡局長    山野 幸吉君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省条約局長 藤崎 萬里君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         文部大臣官房長 岩間英太郎君         文部省初等中等         教育局長    天城  勲君         文部省管理局長 村山 松雄君         農林大臣官房長 檜垣徳太郎君         食糧庁長官   大口 駿一君         水産庁長官   久宗  高君         建設省河川局長 坂野 重信君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 十二月十五日  委員安宅常彦君、大原亨君、成田知巳君、麻生  良方君及び田畑金光辞任につき、その補欠と  して八木昇君、大出俊君、猪俣浩三君、永江一  夫君及び西村榮一君が議長指名委員に選任  された。 同日  委員大出俊君及び八木昇辞任につき、その補  欠として大原亨君及び成田知巳君が議長指名  で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  昭和四十二年度一般会計補正予算(第1号)  昭和四十二年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和四十二年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    植木委員長 これにより会議を開きます。  昭和四十二年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十二年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、締めくくり質疑を行ないます。山中吾郎君。
  3. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、第一に、前特別国会における私の質問に対する政府の御答弁、その御答弁についてのその後の経過について、並びに今国会の数日の予算委員会における議員質問に対する政府答弁の中で、不明確なものは明確に、あるいは矛盾のあるものは整理をしてお答えを願って、この国会から通常国会にわたって一致点を見出せれば、その点においてさらに発展をする方向に、あるいは対決をしなければならない問題はさらに深めて国民に明らかにする、そういう考えで御質問を申し上げて、実り多き審議通常国会にかけて発展するように期待をして御質問をいたしますので、簡明率直にお答えを願いたいと存じます。
  4. 植木庚子郎

    植木委員長 安宅常彦君より関連質問の申し出があります。これを許します。安宅君。
  5. 安宅常彦

    安宅委員 ただいま山中委員発言したことについて関連でありますが、きのう私が農林大臣質問をしたことについて、やはりいままでのいきさつ答弁とについてたいへん不明確なものがあるので、ぜひこれをただしたい。いろいろとわが党内農林大臣答弁について検討をいたしましたところ、これは非常に重大な発言をなさっておるのでありまして、私どもはこのまま看過することはできない、こういう立場にあるのであります。  といいますのは、米価審議会委員から国会議員をいわゆる締め出す、こういうことについて、ことしの五月から六月、七月にかけてたいへん問題に相なりました。したがって、いままで国会法三十九条のただし書きによって、両院が一致して議決した場合、こういう条項がありますが、このことによって国会議員米価審議会の中に入る。農林大臣国会に向かって六名の国会議員推薦してもらいたい、それを任命したい、こういうことになっておったのを、都合が悪くなったからといって、いままで礼を尽くして推薦を願ってきたものが、今度は一方的に締め出す、こういうことは、院の権威に関することだからそういうことをしないでもらいたいという、議長諮問機関である議院運営委員会も満場一致の決定で、議長が中に入りましていろいろと農林大臣と話した結果、無条件でそういうことはしない、こういうふうになったのでありますが、聞くところによりますと、どうもそういう話し合いの途中で農林省側が、これは政令でありますから、権限があるのですから文句は言いませんけれども、六月あたりに米価審議会委員を任命するとごたごたになるからという理由を表面に出して、十二月三十一日の歴年ごと任期交代させる、こういうふうになったために、すでに任期が近いわけであります。どうもくさいと思っておったところが、やはりいわゆる締め出しをする、こういう方針らしいといううわさがひんぴんと耳に入ってくるものですから、そういうことをしないだろうなと言ったら、しないとは言いませんけれども、除外するとも言わない、非常に微妙な発言、その言い方はまことにいんぎん無礼といいますか、小さな審議会国会議員の皆さんのようなりっぱな方の御配慮をわずらわせるのはたいへん失礼に当たるかと存じまして御遠慮を願うような気持ちになったわけであります、こういう話なんだ。  こういうことを言ったかどうかということについて、ひとつ倉石さんからもう一回確認をしてみたいと思うのですが、倉石さんどうぞ。
  6. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私が申し上げております趣旨は、ただいま……(安宅委員「いやいや、そう言ったかどうかさえ言ってもらえばいいんだ」と呼ぶ)そういういまお話しのようなことを考えているかどうかというお尋ねでありますから、私は、国会議員審議会にはお願いしないほうがいいだろうというのがいままでの考え方でありしたという経過を申し上げた。現在はどうしようかと思って検討中でございます。小さななんという意思はありません。これはなかなか大事な米価審議会でありますから……。
  7. 安宅常彦

    安宅委員 これは重大ですね。私どもちょっと簡単にいま言いましたけれども、きょうは総理がおられますから、もう一回やっぱり少し言わなければならない。  米価審議会というものが昭和二十六年にできた。その政令によって——国会議員電信電話料金だとか郵便料金だとか、こういうものまで国会議決できまる。ところが、国民の主食である米、麦、こういう主要農産物価格決定する場に全然国会がタッチしないのはおかしいじゃないかということになる。  なぜそうなったかといいますと、食糧管理法自体が戦前の法律ですから、そのころは民主主義の一片のかけらもない、こういう法律では今日の民主主義の時代に間に合わない。したがって、先ほど申し上げました料金類のように、国会でやるのが当然じゃないかと議論は起きたけれども、まあそこまでいかないで、この米価審議会という諮問機関国会議員を入れることによってという話し合いがついて、それから国会法三十九条ただし書き条項によって農林大臣が院に国会議員の選出を要請してきておるわけですよ。そういういきさつになっておるのです。  それを、一つ理由としては、臨時行政何とかから勧告があったとか、審議会委員をどんどん削っていけという勧告があったとか言いますが、そんなこと言ったら、皇室会議皇室経済会議から検察官適格審査会から地方制度調査会から国土総合開発から東北四国九州中国開発審議会から豪雪から離島から国土開発自動車道から、ありとあらゆるものがある。これがいわゆる行管で出したものなんだ。ところが、国会法三十九条ただし書き国会議員を兼務させる問題、これとは別なんですよ。それを勘違いをして、都合の悪い国会議員米価をきめるにあたっていられては困るというので、筋違いのことを農林大臣考えておる。そこが問題なんです。小さい委員会とは言わないなんて——しかもこれは議長が中に入って、院の権威を維持するために、そういうことは、たとえば倉石さんはそのときいろいろな提案をしてきましたよ、締め出すために。農林水産委員会に小委員会閉会中といえども置くからこれでいいじゃないか、落選した国会議員の中から選ぶからそれに準ずるものとして認めてくれとか、それからこのたびだけは顔を立てるけれども、この次からは任命しない方針だからそれも了承してくれとか条件を出したけれども、それは全部否決になって、院の権威を維持するためにこれは今後ともそういうふうにする、無条件でそういうことは今後農林大臣は言わない、こういうふうになったのがいきさつになっておるのです。そういうことを私が主張したところが、農林大臣は、小さな審議会に偉い国会議員を御推薦申し上げるのはかえって失礼に当るたみたいな——きょうの朝日新聞に小さなとちゃんと書いてある。あなた言わないなんて言ったけれども、言ったじゃないか。何が小さいのです。東北開発四国開発よりも小さいのですか。一兆何千億の金を扱う、国民の米を買い上げるその金額が一兆円をこしているじゃありませんか。対象人員は七千五百万人に達しておる。こういうような米価審議会を小さな審議会とは何です、小さな審議会とは。農林大臣がそういう考え方でおるとするならば、これは重大問題だ。どうですか、農林大臣答弁のしかたによっては、われわれこれはこのまま進行するわけにはいかないよ。
  8. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いま申し上げましたように、私はこの前の国会で申し上げたと同じ心境にただいまあるわけでありますが、私がたぶん申したとすれば、いまの私の気持ちに違うことが出ておれば、これは私は…(「出ておれば、じゃない、言ったじゃないか」と呼ぶ者あり)いまのお話のようなことを申し上げたとすれば、これは取り消します。しかし、先ほど来お話しの中に、私が、これからは無条件議員をわずらわすことにいたしたというお話がありましたけれども、そのようなことは一ぺんも申しておりません。  繰り返します。これからは議長のあっせんで無条件国会議員をわずらわすということに私が賛意を表したというお話がいまありましたけれども、きのうも申し上げましたように、そういうことは言っておりません。
  9. 安宅常彦

    安宅委員 小さな委員会ということがあったとすれば、とは何ですか、自分で言っておいて。どうなんです、それは。訂正するのですか。発言を訂正するのですか。それが一つ。  それから、きのうは未来——まあ未来とは言わないが、永久国会議員を入れるとは言わない、こういう御答弁をなさったですね。永久——こんな極端なことばを言ってはいけませんよ。永久にといったら、米価審議会はなくなるかもしれないですよ、将来。あるいは、もっと大きなものになるかもしれぬ。国会でこういう値段をきめるということになるかもしらぬ。そうしたら米価審議会はなくなるかもしらぬですよ。永久になんということばでごまかしてはいけませんですよ。つまり、私が言った妥協案をあなたは出してきたけれども、それらは否決されて、そういうことはないということになってあのときにきまったということだけは、それではあなたお認めになりますか。
  10. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ただいまの安宅君のお話は少し私の知っておることと事情が違います。  私は行政府として、つまり農林省として米価審議会委員を任命するのでありますから、議院運営委員会に御了承を得るべき必要はありません、御存じのとおり。けれども、議院運営委員会でそのことについて各党の間にお話し合いが出たそうでありますから、やはり国会側のほうの議運委員長お話も尊重すべきであろうということで、いろいろな経過があったようでありますけれども、私は直接議院運営委員長にいろいろな条件を出したというようなお話でありますが、そういう条件なぞは私からは何も申しておりません。
  11. 安宅常彦

    安宅委員 わかりました。——あなたが言ったことはわかりました。議院運営委員会に相談することはない、こう言いましたね。これは国会議員をあなたがいままでどおり推薦をするということになれば、議長が、こういうものが農林省から来ているがどうかというふうに、議運にこれは諮問があるわけですから当然そうなるので、議運でやってきたわけです。あなたのほうではやる必要がない——やっぱり小さな審議会だからでしょうね。  小さな審議会というものを取り消すのか取り消さないのか、はっきりしてください。
  12. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 きのう私が申し上げました中に小さな云々ということがあればここで取り消しをいたしますと、先ほど申し上げました。
  13. 安宅常彦

    安宅委員 それでは率直に申し上げますが、あなたは、国会議員を、このたびの任期切れによって、今度は国会議員を入れない、こういう方針なのか、あのときの話し合いに基づいて十二月三十一日限りで何とか顔を立ててくれなんというのじゃなくて、それも撤回したあなたですから、その撤回した方針に基づいて、今後も国会議員を任命するのか。どっちかそれははっきりしてください、その方針を。
  14. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 米価審議会につきましては、きのうも申し上げましたように、これは生産者米価消費者米価をきめる直前にがたがたすることは成果があがらないのでありますから、これは不断に勉強、努力していただく必要がありますので、これはぜひ一年じゅう随時に開催をして、われわれに貴重な答申をしていただけるようにしたいという考え方であるものですから、毎年七月ごろあわただしく任命し直すことよりは、今回は暦年でひとつ一月からもお願いをして、そうしてすぐにそういう問題に取り組んでいただきたい、こういう考えであるから、前回は政令を直して任期を十二月三十一日といたしましたわけであります。そういうことであります。  そこで、いま申し上げましたようなことで、いま新聞にも出ておりますように、来年度予算編成について米価をどうするかというようなこともありますので、われわれといたしましては、米価審議会をどのようにしたらいいかということについていま考えているところでありますが、お願いをいたしました委員さんの任期中にそんなことを言い出すことは失礼千万であるというので、いまは何も申しておりませんし、まだ考えがきまっていないわけであります。
  15. 安宅常彦

    安宅委員 それじゃ総理に聞きますが、小さな審議会に偉い国会議員をわずらわすのは、ときのうは言った。きょうは取り消したから問題ないようなものですが、「農林省は、小さな審議会からは議員さんをわずらわすことを御遠慮申し上げたという歴史であります。」とかあなたは言っているのですよ。きょうは取り消したからまあいいでしょう。いいですが、総理に聞きますが、それでは、そういう審議会国会議員を入れるのはあまり上等でないという意味答弁はそのままになっているわけですよ。  それで私はお聞きいたしますが、先ほどずらずらっと述べましたが、皇室会議皇室経済会議、あるいは検察官適格審査会、あるいは社会保障制度審議会地方制度調査会選挙制度審議会国土総合開発審議会東北開発九州開発四国開発中国開発首都圏整備審議会北海道開発米審——米審国会法三十九条ですが、あとは商品取引所だとかあるいは日本学術会議だとか、鉄道建設審議会地方財政審議会などがありますが、われわれの感覚で言いますと、総理、たとえば鉄道建設審議会なんというと、あなたのほうの幹事長がかわるたびに、いままでの幹事長が入っていたのがすぐかわるのですよ。これは重要な部門だとあなたのほうでは思っておるのだ。それから、たとえば国土総合開発審議会なんというものも大体そういうやり方をやっておる。あるいはさらに幹事長が入っているのはもう一つありますね。国土開発幹線自動車道、こういうやつにはあなた御自身も、総裁としてという意味でしょうが、これは内閣総理大臣はここに入って悪いという法律はないから問題はありませんけれども、何か建設だとか、開発だとか、鉄道だとかいうところになると幹事長が必ず交代で入ってくるのですよ。これはどういう意味とは言いませんが、いまはやりのスモッグみたいなこともいまたくさん起こっていますが、そこは言いませんけれども——言いませんよ。言いませんが、重要なそういうものに目をつけられた審議会には幹事長交代で入ってくる。こういうところまで力を入れておられるのです、あなたの党は。そうして国会議員が入るようなしかけになっておる。倉石さんのきのうの発言によれば、より重要なことで、小さな審議会からは全部こういうことをはずせという——小さなというのじゃない、そういう審議会からははずすという勧告もございましたから、こういうことも一つ——農林省としては考えます、こういう発言なんです。御遠慮申し上げたい、こういうことを言っているのです。  しからば総理、こういうものからも全部はずしてもらわなければだめなんです。あなたのほうではずす勇気がありますか、どうなんですか。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 米価審議会は、ただいま言われるように、小さな審議会でないこと、これはもうはっきりしております。小さな審議会ではございません。だから、いまそれはもう農林大臣がその点は取り消している。だから、もうそのことはおっしゃらないように願いたい。  そこで、基本的なものの考え方なんですが、三権分立といいますか、この立法司法行政、その三権のこのそれぞれの担当はひとつ守っていこうじゃないか、これが一つ考え方、ことにその中でも価格決定というようなことは、これは行政に関することではないのか、行政のものは行政にまかしたらどうかというのが臨調でこの答申をよこした骨子になっています。かって私は、参議院に……(「そんなことはないよ」と呼ぶ者あり)ちょっと聞いてください。参議院におきまして、米価をひとつ国会審議しないか、国会の承認を得るような、あるいは議決を得るような制度に変えないかという質問を受けましたが、私は、これは行政で処理することが望ましい、したがってそういうことはいたしません、こういうことを実は申しました。これはよほど議論もあるだろうと思いますが、いま読み上げられましたもの、これが全部が全部いわゆる行政に関するようなものではない。(安宅委員みな行政だよ」と呼ぶ)いや、これはもうはっきり臨時調査会答申は区別しております。一般立法司法行政、この三権をやはり分けること、ことにそのうちでも価格決定のような問題については議員が参画しないほうがいいんだ、こういうことをはっきり言っている。これはただいまの臨調答申をもう一度ひとつよく読んでいただく、私はそういうことは考えるべきではないか、かように思います。決して制度から、米価決定が非常に小さな事柄だ、かように私は思っておりません。その点ははっきりしている。
  17. 安宅常彦

    安宅委員 私はそういうことを聞いているのではない。じゃ鉄道建設審議会というのは、これは行政じゃないのですか。それから、あなたはとんでもないことを言い出しているのですよ。価格決定の中に国会議員は入らないほうがいい。こういう重大な価格決定することを。さっき言ったように、郵便料金からはがきのはてまでそれは国会でやるのがあたりまえだと言っていながら、料金決定のときから国会議員をはずすといったら、国会議員発言をするところはどこにあるのですか。そんな、一国の首相としてそういう不見識な答弁をされては困る。したがって、小さな審議会とは、あなたのほうでも取り消したから言わないけれども、この米価審議会からもし国会議員をはずすとするならば、こういう鉄道審議会とか、あるいは自動車道とか、国土総合開発とか、そういうあなたのほうでは重要な部門として認定して、幹事長交代してまで入り込んでおるそういうものも全部はずすという勇気があるかどうか、こういうことを聞いておるのですよ。はずす気があるかどうかを聞いておるのです。法理論を聞いておるのではない。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのはひとつ取り消しますが、臨調決定ではないそうです。わが党の決定だそうです。わが党の決定、それが先ほど言うような方針です。  そこで、いまこれは全部はずす考えがあるか。はずす考えはございません。ただいまのような政策決定に密接に関係する問題、地方開発に密接に関係する鉄道線路の設定、あるいは道路建設の基本的な問題、これはもちろん国会議員が多大の関心を持つ問題であります。それははずす考えはございません。
  19. 安宅常彦

    安宅委員 それははずす考えはないと言っておる。これは重要な審議会だと、米価も、そう言った。それから料金の問題の決定などからは国会議員をはずすべきだというのは、臨調の問題ではなくて党の問題だと言う。党内でそういう議論があった場合に、総裁は、今度はこの国会でそういうものからはずす意思はないと言った以上、しかも料金決定などからは、価格決定を議事するようなところからははずすべきだという方針は誤りであって、そういうものにこそ国会議員が参加すべきだということが正しいと私は思いますが、そういう観点からいまのあなたの答弁がなされたと、こう確認してようございますか。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまその結論になられると、私、必ずしも賛成しません。なるほどいま鉄道運賃や電話料金その他を国会できめております。(安宅委員「正しいことでしょう」と呼ぶ)これが正しいことかどうか、いろいろ議論はございます。これは現に、ただいまのように公社公団になると、そういうような場合にはなぜ公社公団にまかせられないのか、こういう議論のあることも御承知だと思います。したがって私は、これはやはりそういう意味でこの問題が全部正しいと、こういって決定されることには必ずしも賛成しない。確かにこれは重大な…(「国会軽視だ」と呼ぶ者あり)国会軽視じゃございません。それこそ国会三権分立のたてまえから、本来の仕事として、これはもう当然なことです。
  21. 安宅常彦

    安宅委員 これは重大な発言ですよ。鉄道運賃やら郵便料金やら、そういうものを国会できめるのは正しいかどうかわからぬという話。そういう答弁ではたいへんな、これは重大な問題ですよ。いままでそういう民主主義の政治でなかった場合には、あるいは政府がかってにきめたかもしれないけれども、それは国会議員というのは国民の代表であるし、主権在民という今日の世の中になったから、すべて国会で討議をしてきめることになった。それを否定するようなあなたの答弁ですよ。  じゃ、そういう料金はどこできめるという方針ですか。総理、はっきり聞いてくださいよ。どこできめるのですか、そういう価格は、料金は。
  22. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの法律ではちゃんといまおっしゃるようになっております。しかし、そのことを根本的に基本的な問題として正せと、こういうお話になるといろいろ議論がございますということを申し上げておる。これは必ずしも私が、この考え方が間違っていると、かように実は申しておるわけじゃございません。いろいろな御議論があるということを実は申しておる。だから、そういう点で、こう簡単に、いまの制度制度だから、それをずっと続けていく、こういうことにはなかなかなりかねる。だから、それは先ほどのような御議論は御議論として私が尊重するということ、現在の法規のもとにおいても、現状のものを尊重しろとおっしゃれば、それはもちろん尊重しなければなりません。それはそのとおりです。しかし、私が申し上げますように、いろいろな議論があるということも、これは御承知のとおりなんです。それを率直にそのまま私が発言したのです。しかし、私がそれを正しいと、こう申したわけじゃございません。そこは誤解のないように願います。
  23. 安宅常彦

    安宅委員 これは重要ですよ。現在の制度は尊重するが、いろいろな意見がある、こう言っているのですが、これは正しいものとは思わないということはたいへんなことだから——じゃ総理はそういう場合に一国の総理大臣として、こういう公共料金とか、そういう価格決定をするのは、国会でやるのは必ずしも正しいものとは思わない。いろいろな意見があるというならば、あなたはどこでそういう価格決定すべきだと思うか、あなたの所見をはっきり言ってください。
  24. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現状においては法規できめたとおりを守るのが当然でございます。(安宅委員「何ですか。」と呼ぶ)現状においては法規できまったとおりに処理するのであります。
  25. 安宅常彦

    安宅委員 現状とかなんとか……。
  26. 植木庚子郎

    植木委員長 安宅君に申し上げます。関連質問でございますから、山中君の持ち時間に影響もございまするし、なるべく簡明にお願いいたします。
  27. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 委員長、一問だけ……。
  28. 植木庚子郎

    植木委員長 加藤君。
  29. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 一間だけ。山中君の持ち時間でございます。したがって、それも制限されておりまするので、簡潔にお尋ねしますから、総理も簡潔にお願いしたい。  いままでの話し合いでわかったことは、米審は小さな委員会ではない。予てこから議員を除外はしない。次、公共料金国会できめるという方針かいなか、これだけをお聞きしたいのです。総理発言の中に、公共料金は、これは行政であるからと、こういうおことばがありましたが、公共料金国会できめるのが正しいか、そうでないか、これだけ。
  30. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 公共料金は、現在法律でちゃんときまったとおり実施する。ただいまきめると、この法律できまったとおりきめると、これが今日の状況においては正しいことだと思います。
  31. 山中吾郎

    山中(吾)委員 前回の通常国会における総理大臣に対する私の質問の中で、文化行政についてお聞きをしたことがございます。総理大臣が本会議において風格のある社会の建設を主張されたので、それに伴って日本の文化行政というものをもっと充実をする、そういう実質的な政策がないとうそになるのではないか、そういう意味において、かって総裁選挙に出られる前に文化省構想を出されておったのに関連をして、現在責任所在の不明である文化財保護委員会、あるいは文部省の芸術振興行政、あるいは運輸省の観光行政、厚生省の公園行政などを一つにした、そういう統一的行政機構をつくってはどうか、しかし、それがなかなかむずかしいならば、少なくとも現在の文化財保護委員会委員長を国務大臣にして、責任のある文化行政体制をつくるべきではないか、それについては人員を多くするとか、そういうことではなくて、責任を明らかにする機構にしなければ、利潤追求の企業のために京都、奈良その他は文化財が荒廃に帰する現状、こういうことに施策をしなければ、風格のある社会ということを本会議で堂々と一国の総理大臣が言明をした責任を果たすゆえんではない、これについてどうかということをお聞きいたしましたら、総理大臣は、文化財保護委員長の問題はひとつ政府においても研究しましょう、山中君の御提案、これはしごく私どもも検討すべき問題だ、かように思います云々と明確に答弁をされております。それについて、その後総理大臣としてどういう御処置をされたか、そういう経緯があるかをお聞きいたしたいと思います。
  32. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 山中君のりっぱな御提言に対して、私賛意を表しました。今回の一省一局整理、こういう機会に、ただいまの文化財保護委員会、さらに文部省内の局、これを一緒にしまして、そうして直接文部大臣が指揮監督することに変えます。
  33. 山中吾郎

    山中(吾)委員 一省一局削減の行政改革の中で、その線に沿いながら、文部省の案としては、文化局と保護委員会一つにして文化庁設置の案を出しておることは承知をいたしております。これは偶然の一致か、総理大臣の指導理念が入っておるかは不明でありますが、いまの御答弁では、その趣旨の延長であるということを一応私は確認をいたしたいと思います。  そこで、文部大臣にお聞きいたしますが、この文化庁の設置の方向は、文部省の管轄の中にだんだん吸収していく意図なのか、あるいは日本の文化行政の自主独立性を認めて、やがて国家財政の許す範囲——私はむちゃは言いません。その線において統一された文化行政の方向に持っていく意図を含んであの案を出されたのか、灘尾文部大臣にお聞きしておきたいと思います。
  34. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回の文化行政に関する機構の改革につきましては、ただいま総理大臣がお答え申し上げましたとおりでございます。文部省といたしましては、かねてから問題となっております文化行政の一元化ということをまず考えましてこのような案をつくったわけでございますが、この一元化せられました機構を通じまして、将来文化行政がますます進展するように努力してまいるつもりでございます。いつのことかわかりませんけれども、もっともっと大きな文化的な、文化に関する行政機構ができてよろしいもの、このように私は考えております。
  35. 山中吾郎

    山中(吾)委員 お答えで大体その方向を確認をしましたので、この問題については今後の推移を見ていきたいと思います。ただ、一省一局削減というのは電気ショックを与えるという意味があるが、実際は科学的に分析をすると、無理が入れば、無理に押えたゴムまりがまたふくれてくるので、やがていろいろな矛盾が出ると思いますので、その中でこういう問題を行くえ不明にしないように特に切望いたしておきたいと思います。  これに関連して総理大臣にお聞きいたしたいのでありますが、最近帝国ホテルの保存問題について世論を巻き起こしておるのでありますけれども、帝国ホテルという世界的な建築の文化財価値というのが、高く評価されておる。国際的に評価されておるものを保存する会、そういう識者の会もございます。私は、金もうけにつながる文化からはやはり精神が退廃をするが、こういう資本主義の金もうけ文化の中で、金もうけに関係のない文化運動、これは少数であるといえども貴重なものとして、総理大臣はこれを援助してやる必要がある。私は、こういう社会の中で健全な精神の生まれてくるのは、金もうけに関係のない文化運動だと思う。少数であるけれども、非常に貴重である。そこで、こういう帝国ホテルという問題をもっと真剣にお考えになる必要があると思います。ところが、幸いに、お聞きいたしますと、総理大臣がアメリカに行かれてジョンソン大統領と会見をされたあとにおいて、アメリカのワシントン・ナショナル・プレスクラブにおける記者会見で、向こうのほうから、このライトの設計をした帝国ホテルの保存についての質問があったのに対して、偉大なる建築家の作品を後世に残すように私も努力すると、あの国際の舞台でお答えになっておる。これを私お聞きしたときに、総理大臣の文化的識見の高いことに敬意を表すると同時に、一たん言ったならば、やはり国際的信用の問題もあるのであるから、総理大臣が先頭を切って保存をしてやる援助を差し向けるべきであると思います。この点について、いままで日本の国内でなくて、しかも、文化協力というものも含んだ共同声明を出しておる総理大臣であるので、その後どういう努力をされておるか、そうして現在どうなっておるかをお聞きしたいと思うのです。
  36. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この帝国ホテルの建築物につきましては、私が出かけます前に、実はライトさんのたいへんな傑作だ、その一つだというので、これは何とかひとつ残したらいいじゃないか、幸いに明治村というのがあるから、そこへ移築したらどうか、こういうような考え方を持ったのであります。ちょうどまたあそこは国有地でございますから、犬丸君とも会う機会があるし、ただいまのようなことを率直に申しました。ところが、これはたいへんな金額がかかる、全部そのまま移築するということは、これはたいへんなことだ、そういうことで、まずそれはできないことのようです。  それからもう一つは、どうやら明治村は明治時代のものなら引き受けるけれども、この帝国ホテルは大正の時代のものだ、こういうような話もありました。しかし、とにかく一応明治村あたりが帝国ホテルの一部を保存するのにも適当なところではないだろうかと、私自身は考えていた。そうして向こうへ出かけた。ところが、向こうで、プレスクラブでさっそくその質問を受けた。また、私はその質問に答えた、そういうことも影響したのでありましょう。米人のある者からは、さらにその移築費の一部に自分は献金してもよろしい、こういうような手紙も実はもらったような次第であります。  ただいま文部省におきまして、その後この問題をどういうように取り扱うかということでいろいろ研究しているというのが現状でございます。したがいまして、全然無責任あるいは場当たり的な答弁をしたつもりではございません。しかし、ただいま申し上げますように、いわゆる明治村にその一部を移築するということもなかなか困難な実情にいまあるのではないか、私はかように思っております。一応文部大臣からもお聞き取りをいただきたいと思います。
  37. 山中吾郎

    山中(吾)委員 この問題については、アメリカのほうから、むしろわれわれが買い取るというような申し出まであると聞いておるのです。それから、これは鉄筋コンクリートであるから、木造と違って移築をするのは不適当。保存するなら、そのままで保存するのが理想的である。また、あの地域に保存することによって、いわゆる国際的な意味を持った文化財として残るのであり、そういう関係があるので私はあのまま残すのが理想であると思うのです。同時に、聞いておりますと国有財産である。もとは帝室関係のものとして迎賓的な意味をもってあのものを保存をしておったことについて経緯も歴史的経過もあるのであるから、そういう方向で、大蔵省においても国有財産を活用して保存の方向に協力をする体制をとるべきだ。この点について、元の劔木文部大臣についてはそういう方向で努力をしておったのでありますが、現在の灘尾文部大臣のほうにそういう申し送りがあってどういう意向でおるか、これをお聞きしておきたいと思うのです。
  38. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お答えいたします。  帝国ホテルの建物が大正期における記念すべき建造物であるということにつきましてはいまさら申し上げる必要もないことで、これの保存についていろいろな話が出ておるわけでございますが、文部省といたしましては、文化財保護委員会が中心となりまして、いろいろ関係者の間のあっせんにつとめてまいっておるわけでございますが、いまだ結論には到達していない、こういう状況でございます。
  39. 山中吾郎

    山中(吾)委員 一月付近から取りこわしが始まるそうでありますので、その辺に至るまでに、総理大臣が国際的に表明した問題で、小さいと言うが、私はそうは思っていない。責任を持ってそういう保存の措置のできるような最善の、総理大臣の責任のある処理を私は切望したいと思います。よろしゅうございますか。
  40. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 すでに私の考え方は発表してございますから、それに努力することは当然でございます。私も言うだけではなくして、それの実現を期するように努力したいと思います。
  41. 山中吾郎

    山中(吾)委員 次に、前国会において教育問題の一つとして御質問を申し上げた事項の中で、僻地教育振興について大体二分の一補助というものは一律に行なっておるが、総理大臣が学校給食において特別の措置を表明した思想を延長して、僻地におけるところの施設その他について三分の二の方向に持っていくことが、貧乏市町村に対する公平なる処理であり、そういう方向に持っていくべきではないか。あるいは六・三建築の中で、中学校の補助は二分の一で小学校は三分の一という不公平な補助制度をとっておるが、同じ義務教育であるから、小学校においても二分の一に引き上げるべきではないか。これに対して総理大臣は今後検討することにいたしたいと答えておるのでありますが、その後の処理について、来年度の予算に関係があるのでお聞きしておきたいと思います。
  42. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この僻地の学校給食その他については交付税でいろいろめんどうを見ておること、これは御承知のとおりでございます。交付税だけではいかないので、もっと積極的に直接的な補助を出せ、これが山中君の御意見だと思います。ところで来年度の予算編成にあたりまして幾つも問題をかかえておりますが、一省一局整理ということに踏み切った、こういう際でありますので、いわゆる補助率を高めるような変更は、この予算編成に際しては望ましくないのじゃないだろうか、実はかように思っております。ただいま御指摘になりますことはよく私どもわかっておりますから、在来のような交付税その他でめんどうの見れるものはめんどうを見たらどうかと思っておりますが、いわゆる補助率にさわるというところには来年度の予算編成に際してはやや不適当な時期だ、かように考えておりますので、残念ながらただいまいわゆる増加案は考えられないような状況でございます。
  43. 山中吾郎

    山中(吾)委員 不適当ということばはおかしいと思うのです。適当であるというからこそお互い検討するということになっておるのであって、やむを得ず、財政困難というふうなことからというお話ならわかるが、不適当というのはおかしいのじゃないですか。文部省のほうでは大蔵省に予算要求はされておるはずでありますが、その後どうなっておりますか。
  44. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 補助率の引き上げに関するお尋ねのように伺ったのでありますが、文部省といたしまして、文部省の立場から申せば、補助率の引き上げは希望するところでありますけれども、しかし国の財政全般、そういう点を勘案いたしまして、この問題については全体的に慎重に検討をせられつつある問題であると御承知願いたいと思います。
  45. 山中吾郎

    山中(吾)委員 要求はされたんですね。文部大臣、予算要求はされておるのでしょう。
  46. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 僻地関係の問題につきましては、補助率の引き上げを要求いたしております。また、六・三制の補助の問題につきましても要求はいたしておりますけれども、予算については御承知のようにまだこれからいろいろ折衝する問題でございます。総理お答えになりましたように、全体の財政ということを考えつつ問題の結論を得なければならぬと思います。そのように御了承願いたいと思います。
  47. 山中吾郎

    山中(吾)委員 財政困難であるからというので、おのおのの要求を、評価をそれに応じてしないで、ただ一律に押えるなんというのはそれこそ不適当で、いま総理大臣は何だか変なことばを言われた。いま一度言い直してもらわなければ困る。適当だけれども何とかというならまだわかるけれども、あの僻地——あなたは盛岡に来てその実態を見て、学校給食に全部、それだけ言っておって、あまり答弁は便宜主義じゃないか。
  48. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は上げたいという気持ちはございますし、また盛岡に参りましたときの処置は一応できたと思っております。そこでいま山中君は、制度としてこれを交付税じゃなしに直接の方向で考えろということを言われるのですが、在来からの交付税その他で援助しておりますものをいま変えようというわけではありません。しかし私は、こういう財政が窮屈な際に補助率を引き上げるということは財政上から許せない、たいへんむずかしい問題だ、こういうことを実は申し上げたのでございます。そのことばじりが適当であったか適当でなかったか、それは判断にまかせますが、とにかくただいま予算編成という重大な時期にかかり、その予算の編成の方針といたしまして、ただいまそういう問題は積極的に取り組めない事柄である。どうぞそれらの実情についても、財政状況を云々、これも御理解をいただきたい、かような答弁でございます。
  49. 山中吾郎

    山中(吾)委員 その次に家計における教育支出についての減税問題を取り上げたのですが、その最後に総理大臣は、先ほどから私も静かに聞いておりましたが、この問題は検討さすことにいたします、こういう答弁をされておる。企業の交際費を年々六千億程度のものを減税にしておって、家計を圧迫しておる教育費を所得税の対象にしておることはまことに不公平であるという立場から私は訴えたのでありますが、この点について新聞紙上では、ある程度の検討をしたけれども、これも財政の硬直化の美名に隠れて、またどこかに行くえ不明にしそうにしておる。まことに私は遺憾に思うのでありまして、現在の家計を圧迫をしておるのは教育費なんです。もう、食事を減らしても何しても、子供の教育だけはと言って、それに家計の中から支出をするのが日本の親の心境であり、生まれた限りは教育をしたい、こういう精神を保存をしなければ民族の将来はないと思うのです。最近のアンケートを見ますと、子供の教育に圧迫を感ずるので、子供は何人がいいかという点について、二人がいいというのが六〇%にもなっている。これではだんだん人口は減るのです。そういうときに、せめて教育のための積み立て金などは、飲み食いをする交際費を税金の対象にしても——これを減免するということは、これこそ不適当である。総理大臣は、消費の抑制を言っているけれども、住宅と教育の積み立てに対して制度的に便宜をはからえば、これは積み立てするのです、強制しないでも。そういう政策的見地においても、こういうものをすぐあと回し、圧力団体のないものは全部あとへ回すというふうな便宜主義はまことに遺憾だと思うのです。大蔵大臣のいままでの経過と、あなたのいまのこれについての考えをお聞きしておきたい。大体、答弁は言いっぱなしで、言ったことが少しも実現しないと政治不信が出ますからね。これは政治姿勢を含んで大きい問題として私はお聞きしているのですよ。
  50. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 お答えします。  総理がそういう答弁をされたことも承知しておりますし、ことしの夏に税制調査会に私どもは御相談をかけております。で、いまの討議の大体の様子を申し上げますと、こういうことでございます。  義務教育費についてこうせよという御趣旨は十分わかりますが、どういうふうにそれをやったらいいかといいますと、まだ国民所得税負担が非常に重いので、この課税最低限度を上げることが先であるという考えが非常に委員会に強いということと、それから、じゃ、そのためにはやはり基礎控除というようなものをもっと上げることが先だという、基本控除の問題と、この義務教育費の父兄の負担を助けるというために、特別に教育費だけを限定した控除制度を新たにつくるのがいいのか、それともお子さんに対する扶養控除の額を思い切って上げるということのほうがいいかということについていろいろ議論が出ております。で、文部省の試算でございますが、小学教育については父兄の負担が、いろいろ分担金などが一万五千数百円、それから中学が二万円というような一つの試算が出ておりますが、文部省方面の意見によりますと、義務教育費の父兄負担を軽くすることも必要だが、現実の父兄はやはり高等学校の生徒の負担というものに相当困っておる。そういうことを考えますと、義務教育費というだけを特定した控除制度をつくるのがいいのか、あるいは基礎控除とそれから扶養控除というものを——いま扶養控除は七万円でございますが、この七万円の限度を上げるという方向で解決することが父兄にとってはいいか、こういう問題が非常に議論になって、いまむずかしい問題になっておるところでございますが、いまのところではやはり百万円までの課税最低限をなるだけ早く上げるということに骨を折って、別の控除制度をここに入れ込まないほうがいいのじゃないかというのが、大体調査会の意向ということになっております。
  51. 山中吾郎

    山中(吾)委員 結局、何もしないで押えるということになると思うのですよね。私は最低限の引き上げということと関係なく、むしろただ企業の交際費の免税と比較すべきだ。交際費の免税を取って、その分教育支出に免税をやるというふうな、その中で解決すべきです。それを捨てておいて、企業に対して弱い政府が、その辺は触れないで、所得税の最低限の引き上げと引き比べて、そして教育費の免税をあと回しにするということは、これはやはり便宜主義の言いのがれでしょう。その点について文部省の統計にしても、あれは全国の子供がある、ないにかかわらず世帯平均を出しておるので、子供を持っておる世帯からいうとあれはまださらに多いのです。あの統計のしかたは、そういう意味においては正確でない。小学校、中学校においては普通の場合は、貯蓄を目的として実際にそういうものを真剣に調べておる各銀行の調査などを見ますと、大体七千五百円ぐらいは月々これ要っているのです。そういう大きい負担というものに対して処理するということは、私は単なるヒューマニズムとかそういうものでなくて、日本のような貿易依存度の高い国においては、やはり教育というものによって科学技術の振興というものを徹底的にせなければ、この日本の立国なんて成り立たない。また外国人を相手に観光地帯になったときに、外国語の一つぐらいは義務教育の中で全部を会得せしめるような教育でなければ、私は日本の国は長期的には成り立たないのだ。この人間の能力の開発ということが、国土が狭くて、しかも貿易依存度の多い場合については生産的なんだ。そういう意味において、教育という問題は非生産的事業であるとか、あるいは文化的なものはあと回しにするというふうな考え方はもっと科学的に分析し直して、私は政策の基本、姿勢というものを考え直すべきである。一体、企業の交際費なんというのは、七〇%は飲み食いである。しかもあの課税のしくみを見ると、資本金の千分の二・五を免税にしておる。大資本の場合については十億ぐらいも交際に使っておる。百億の資本の場合には、二千五百万プラス四百万は無税なんです。そして小さな企業は基礎免税額四百万プラス千分の二・五ですから、それ以上について税金がかかるが、大企業は飲み食いは自由自在、その金の半分はうかうかすると私は政治汚職に通ずる使い方ではないか。そういうものに、特別措置法に基づいて交際費を財政の硬直化のときにまず手をつけるという識見を持たないで、教育というものをあと回しにするという思想、一体どこからそういうものが出ておるのか。私は独占資本に弱いそういう体制の中から出ておるので、これは、重大な問題だと思うのですよ。総理大臣は適当に弁解すればそれで済むと思っておられる。もっと日本のような貿易依存度の高い国の産業立国の場合における税制、それも考える。それから交際費の中から何が生まれてくるのか。交際費というものは、銀座あたりで会社の金でただ飲みをする。ただ食い、ただ飲みの中からどういう精神が生まれてくるか。これは民族の退廃の道でしょう。そうして現代の教育、サラリーマンの所得税に対する重圧感、その中でも、飲み食いを捨てても教育だけはという親の心理の中で、一番圧迫しておるのは教育支出なんだ。減らすことはできない。それに堂々と一〇〇%の課税をしておる現実を、ただ機械的に財政の硬直化の美名の中に隠れてそれをあと回しにする。そして文部大臣だって、財政の関係だって、そういう深刻な考えを持たないで、強硬に主張する意図がひとつもない。そんなところから、何が日本のほんとうの大衆のための政治が生まれてくるのですか。いまのようなおざなりの答弁を繰り返して何になるか。しかも、前に検討すると総理大臣が答えた問題である。総理大臣の言うことは全部、たいてい行なわないのだ。初めにことばあり、終わりに行ないあること少なしというのが、大体佐藤総理大臣に対する世論の評価ですよ。せめてこのぐらい、一つぐらいは断行すべきじゃないですか。総理大臣の御意見を聞きたいと思います。私は観念論を言っておるのではないのです。
  52. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど大蔵大臣がお答えしたとおりでございます。なお、山中君の御高説はつつしんで拝聴いたしました。
  53. 山中吾郎

    山中(吾)委員 いま一度聞きたい。
  54. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この問題については、先ほど大蔵大臣がお答えしたとおりでございます。なお、山中君の御高説については、つつしんで拝聴いたしました。
  55. 山中吾郎

    山中(吾)委員 つつしんで拝聴されただけでは困るので、所得最低限の問題より、交際費の分を取った分だけ財源に関係なくやるくらいのことはできるのじゃないですか。大蔵大臣、私はあなたの思想に基本的に異議があるのは、来年度の予算編成で受益者負担ということを盛んに言われている。おそらくこういう問題でも、親が自分の子供を教育するのであるから、受益者負担の原則に従って、税金を課するが当然だという素朴な思想を持っておられる。しかし、いまのような自由経済の中で、自然に捨てておけば所得拡大になることの上に立てば、政策の中で公平の原則が一番大事だと思うのです、受益者負担でなくて。受益者負担をやれば全部不公平になりますよ。もしそれを主張するならば、予算編成方針の中に、受益者負担と被害者保護と加害者負担を三つ並べなければ、税制にしてもあらゆる政策にしても、私は所得拡大不公平の政策になると思う。あなたは一つ覚えに——何々の一つ覚えだ、その上は言わないが、受益者負担ばかりを言われておる。それを説明していただきたい。受益者負担というものは、どこにいわゆる公平な税制その他予算編成のできる原理があるのか、実態を調べて言われておるのか、お教えいただきたいと思う。
  56. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 国の提供するサービスに関する経費というものは、一般の税で国民が負担するか、あるいは料金というもので負担するか、保険料というようなもので負担するか、いずれにしろサービスは国民負担において究極的には行なわれるものだと思います。そうしますと、一般国民に全部利益が均てんする経費というようなものは税の負担によってなさるべきで、国の財政によってなさるべきものでありますし、そうでなくて、いろいろ国民負担の形もいま言ったように違いますので、特定の受益者が受けるサービスというようなものについてはできるだけ特定の受益者がこれを負担する、これを一般国民の負担にするということは非常に不公平を起こすということになりますので、そこでやはり財政原則としましては、これは財政でなければ、財政の支出によらなければいけないという経費と、そうでなくて、特定の受益者にも若干負担してもらうべきであるというものはやはりはっきり負担させるという受益者負担というものの原則がなかったら、国の財政というものは非常に乱れてしまう、こういうことでございますので、この点をやはり今後の予算編成においてはしっかりと画然と区別して、全額受益者が負担すべきものと、そうじゃなくて、やはり公共性質を持っておって、一定の国費の負担もやむを得ないものというものと、全額国費で負担すべきものと、そういうものは厳格にこれはやはり区別した予算措置をとるべきだというふうに私どもは考えております。いまさっきおっしゃられた教育費のようなものは、これは受益者負担というような頭からやっているわけじゃございません。いかにして教育に対する国民の負担を軽くするかというこの税のやり方から見て、どういう形であるのが適当か。お子さんを持てば、病気の問題もございますし、それを、これは教育分、これは何分という特定な控除制度をしくがいいか、全体として基礎控除とそれから扶養控除を上げて、少なくとも百万円ぐらいまでには、課税最低限をそれくらいにするというようなところまで税制として早く持っていくのがいいかという、国民負担をどういう形で軽くするのが不公平にならないかということを考えた措置でございまして、財政硬直化のために教育費負担をわれわれがどうこうするというような考えでいるわけじゃございません。いまのは純然たる税制の一つの技術的な問題だというふうに考えております。
  57. 山中吾郎

    山中(吾)委員 受益者負担ということを盛んに新聞に載せられておるので、それが財政原則の第一原理だとお考えになっていることは、私はこういう自由経済の中に最も不適当な思想だと思うのですよ。大体大企業の交際費なんというのは、これは加害者保護ですよ。加害者保護じゃないですか、そういうものにさらに便宜を与えるということは。そういう住宅難とかあるいは教育に非常に苦労をしている一般の庶民に対して特別の税法の措置をするとかいうふうなことは、受益者負担から出ない、公平の原則から出るので、一番大事なのは公平の原則だと思う。物品税についても、問題になるのは、一般の庶民が金持ちと同じようにたばこ、酒を飲むというふうなことは、受益者負担からいったら正しいけれども、公平の原則からいえば不適当だから問題になっているのでしょう。あなたは受益者負担を盛んに、新聞に、予算編成の中に言っておるから、それはまことに現在のような社会の中では最も不適当なことを言っておる。それを何か公共料金の値上げの問題の口実にしておられるようだけれども、庶民からいえば、現在のラッシュアワーで命がけで乗っておる、あるいは着物は破られる、ボタンははずされる、そうしてだんだんとラッシュアワーでひどい目にありておるその利用者からいえば、これは受益者じゃなくて被害者ですよ。料金を下げてやるのがほんとうである、これだけ現状を見れば。公共料金の値上げに受益者負担の原理をもって上げようという理由にされておるあの新聞記事を私は見て、まことに遺憾である。もう少しそういう交通事情を改善をして、それまでは国が金を出して、一定の基準にサービスというものが向上したときに引き上げるのならわかる。そんな素朴に、ただ単に予算編成だけでそういうものを出されては困るので、もう少し慎重に原則というものを検討すべきである。教育問題についても同じことなんだ。そういうことで、いまのようなお話の中では、これを先にせなければならぬからというて、大事なものは一つもしないで、しかもこの委員会総理大臣が責任を持って答弁をしたことは一つもやらない。私のほうに三つも四つも言って一つもやらない。一つぐらいやったらいい、一つぐらい。一つぐらいどれか実施をするぐらいのことを示さなければ、国会のこの審議意味もないし、国民はそれに対して政治不信になりますよ。国会軽視になる。そのうちの一つぐらいは、総理大臣、一つぐらいは実施するというぐらいの決意を示していただかなければ、私は何のために質問をやっているかわからない。
  58. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 山中君は何のために質問をしているかわからぬと言われる。私も何のために答弁しているかわからないような気がしますが、とにかくいいことは進めてやらなければなりません。  ただ、いま教育の問題についてお触れになりましたが、私は簡単な受益者負担とは申しませんが、やっぱり金持ちは自分のところで負担する、それにまた税を引く、こういうわけのものでもないだろう。また、しかし、それじゃ貧乏人はりっぱな教育は受けられないのか、こういう疑問も出ますから、いや、そういうのについては奨学資金という制度があります。だから、たとえば奨学資金あるいは義務教育の国家的な施設、それともあわせて考えていただいて、ただいまの教育減税というものが、これは普遍的なものになかなかならない。他の税とお比べになりまして、他の税はこういう欠陥がある、教育減税にはこれだけの利益がある、こうおっしゃいましても、それでは大蔵当局はなかなか納得しないと思います。私はむしろ、いま教育に力を入れる、こういう考え方なら、もっと奨学資金その他のほうで、現実に負担に困るような人、しかもそういう人にりっぱな教育、教育の自由というか、進んで教育が受けられるような、そういう施設を政府がすることが望ましいんじゃないだろうか。だから、いま非常に限られた減税の案でございますから、いろいろ研究した結果、これはどうも採用されない。  また、どれも一つもできないと言われますが、大きい文化財の問題は、これはりっぱに御高説どおり実施……(山中(吾)委員「あれは金がかからない」と呼ぶ)いや、金がかからないにしても、御高説どおり実施したのでありますから、その辺もひとつ、やってくれたことはいいとやっぱりほめていただかぬと、何一つやらないといっておしかりを受けるだけでは、私もお答えをしたようにならないような気がします。
  59. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大蔵大臣、教育減税、住宅減税というのが論議になっていることは私も見ておるのですが、それはやはりできる限りその実現の方向に努力するのかどうか。それだけ聞いておいて次に移りたいと思います。
  60. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 その趣旨は十分わかっておりますし、その方向へ努力しますが、やり方につきましては、いま言ったように、これをやりたくないための理屈じゃなくて、やろうとしても問題のある、そういう技術的な問題がありますから、それを申しただけでございまして、趣旨はもう十分賛成でございます。
  61. 山中吾郎

    山中(吾)委員 次に移りたいと思いますが、公務員の賃金問題であります。  これは本会議、きのうの予算委員会を通じて、人事院勧告については大きい政治問題になって論議をされておるのでありますが、ここでちょうちょうと私が申し上げる必要もない。この勧告制度は、いわゆる公務員の団体交渉権の代償制度として生まれてきた歴史的沿革のあることは間違いないので、この人事院勧告を、実施の時期を含んで完全に実施をすることができなければ、もとに戻して公務員に団体交渉権を認めて交渉にまかすか、二者択一の問題であると私は思うので、こういう原則的な考えはしっかり持ったあとでこの問題を処理すべきである。総理大臣は、本会議においても、実施時期についてもずらしておるのでまことに遺憾である、これは完全実施すべきものであるという思想は表明されておる。これをいつまでも年々続けるということは、やはり公務員——これは税金の重圧感を感じておる一番大きいサラリーマンでもある。また国の行政にタッチをしておる重要なものであり、精神衛生上非常に悪い影響を私は与えておると思うのです、年々これは。またストだ何だ、そこにまた処分だ、裁判だ、まことに私はそういう意味において、二百億、三百億の金以上の行政上の損失があると思うのです。やはりこれは時間を含んで完全実施するということに最大の努力を払う決意をもうお示しになるべきじゃないか。どういうことか御所見を聞いておきたいと思うのです。
  62. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国家公務員の問題をいわゆる団体交渉できめる、こういうことであってはならないと思います。そこで中立的な人事院制度を設けて、その勧告に従うということであります。政府はあらゆる機会に、誠意を持って人事院勧告を尊重すると、かように言い続けてまいりました。今回の財政事情にもかかわらず、一カ月早めたということ、これはもうその誠意の一つのあらわれでございます。ささやかなるあらわれでございます。これをひとつ御了承いただきたいと思います。しかし、これで十分だと私は思っておりません。だから来年度予算編成にあたっては、特別なくふうをひとつしてみようじゃないか、ただいまいろいろ考えられている、この点に政府も誠意のある考え方をしているんだ、これをひとつバックアップしてやろう、こういうお気持ちでひとつこの上とも十分見守っていただきたいと思います。とにかく、人事院勧告が年度の途中でなされるという、そういうところに非常に困った問題があるので、しかも人事院勧告をするという場合には非常に多額な財源を必要とするのでありますから、それが年度の途中においてその財源に対応できるか、これはたいへんむずかしいことであります。しかし政府は、もちろん団体交渉によってきめるべきではない、中立のこの機関を尊重して、公務員との間に摩擦、また国民に迷惑を及ぼすようなことのないようにしたい、かように思っておりますから、この上とも誠意でこれが実現に期します。
  63. 山中吾郎

    山中(吾)委員 きのう佐藤人事院総裁答弁は、当初予算にたとえば五%予備費に計上する、ところが八月、九月になって民間との給与の差額が七%になって、あと二%はなお給与の改定を必要とする場合には、その二%分といえども、これは政府及び国会勧告をしなければならぬし、する、こういう答弁をしておるわけです。制度の上からいって当然のことでありますが、当初予算に計上する精神は、一度に財源を出すことはたいへんであるから、一応過去の実績をにらみ合わせて何ぼか計上しておいて、なお途中に人事院勧告の必要があり、それが出た場合には、さらに補正予算を計上して、そして完全実施をする方向にこの当初予算の計上を考えている。これはそういう意味において大蔵大臣も考えて間違いないですか。
  64. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 人事院の勧告権を牽制するとか制約するというような考えはございません。いまおっしゃられたように、年度途中でああいう勧告に対処する財源というものは、今後もう私どもは得られぬと考えておりますので、当初予算においてやはりある程度の準備をしておく必要がありはせぬかということを考えるのですが、これもやり方とすれば非常にむずかしい問題で、一応そういう方針をもって研究はしておりますが、なかなかむずかしくて、まだ結論を得ておりません。山中(吾)委員 実態を考えてみますと、公務員が時期の完全実施を要求する切実な気持ちは私は実によくわかるのです。たとえば、高等学校を出て役所につとめておる三十五歳の公務員は、現在の給与表によると本俸が四万九百円なんです。扶養家族、妻、子供二人いて、合わせて、調整手当を今度出されたものを含んで四万五千二百円、健康保険その他の掛け金は大体給与の一〇%引かれておる。手取りが大体四万円切れるのです。夫婦、子供二人で四人、そして五歳、六歳で幼稚園に行っている。幼稚園は月三千五百円は必ず要る。そういう中で三万円程度で四人の生活をし、ここに住宅がない場合には、そこから七、八千円から一万円引かれる。そういう生活が実態である。三十五歳になってですよ、子供二人の場合。だから、私は教育問題も切実に考えるのであります。  そして、八月実施というものをかりに五月実施にいたしますと、この人たちは、五月繰り上げによって手取りは大体一万五千円ずつよけいいただけるわけなんです。これは物価騰貴の出てきた差額なんですから。そのときに一体このサラリーマンは何に使うか。子供の服一着か、いままでの借金を返すか、何かほしくてしかたがない生活必要品、その程度のものなんです。そういうものに対しても、世間からはかれこれいわれるような抵抗してまで政府に要求しておるのが実態なんですから、それくらいのことは政府が責任を持って考えてやるべき最低の問題である。しかもこのサラリーマンからいつも欲求不満として出すのは、お医者は必要生活費として無条件で七二%は課税対象から差っ引かれるが、サラリーマンは一つも差っ引かれていない。この欲求不満というものはおそるべきものがあると思うのです。こういうものがあるから、やはり空出張するとか、中央の役人がいなかへ行けば、地方に宿泊料を出させて二重旅費を取るとか、こういうふうなやむにやまれざる必要悪が生まれてきておるので、こういう問題だけは、一人一人の実態を考えたならば、最大の努力を払ってやるべきものである。八月から五月にさかのぼって支給すれば、やはり五百億くらい要するでしょう。それならもっとぜいたくな人々からのいわゆる増税をやればいいじゃないですか。そうして、もっと能率的な、行政能率をあげるような方向で、もっと前向きにこの問題を解決すべきである。私は、年々これを出ししぶって、二、三カ月出ししぶって、こういう暗い気持ちを与えるよりは、数百億の金を年々——それは臨時支出なんですから、勧告の内容は一〇〇%実施をすることですから、国家財政の規模については、これはもう変わらない。二百億出すとかなんとか、それはその一時金なんです、時期をずらすということは。それはくふうのできる問題であると私は思うんですよ。そういう意味において、その一部を当初予算に計上し、残りを勧告のときに出して、勧告の実施時期に沿うようにするという方向に、もう来年くらいからは、それくらいの決断をすべきである、そういう時期に達しておると私は思うのですが、総理大臣、その点を、一カ月ずつ延ばすというふうなことではなくて、完全に時期も含んで、もう来年から考えていくという意味で最大の努力をしてもらわなければ困ると思うのです。これはいまのように税の不公平制度がたくさんあるので、欲求不満より、その不公平というのは最も人間が憤りを発するものだ、そういうものは、目に見えない現在の行政能率その他に出ているのですから、その点を考えて、完全実施というものを段階的じゃなくて、もう来年度から考えるという方向で努力をする、考えてみる、そうでなければならぬと思うのですが、いかがですか。
  65. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は御意見ごもっともだと思います。大きい補正要因を残して予算を組むということは、非常に好ましいことではございませんので、そういう方向でやりたいと存じておりますが、そうしますと、いま御提言にありましたように、やはり相当の増税というような問題も含まないと解決できない問題がたくさんございますので、こういう点との見合いで、真剣に私どもはこの問題を検討している最中でございます。
  66. 山中吾郎

    山中(吾)委員 特別措置法などに大きいメスを入れて、私は、国民の精神衛生上、悪影響を与えているようなことについてはどんどんとやる、それが総理大臣の決断、勇気ある政治の要諦だと思う。いま大蔵大臣のことばをすなおに聞いて、今後の推移を見たいと思う。  次に、この問題に関連して、教員の超勤手当の問題について触れたいと思うのですが、これについて、これは総理大臣はあまり聞いてないと思うので、少し説明を要すると思う。文教委員会のほうで、二年前にすでに現在の教員の定員不足、その他からいって、いわゆる拘束八時間労働という立場からいいますと、非常な過重労働になっておる、ことに文部省が教育課程の改正、その他いろいろなことをあとで出してくるものですから、絶えず研究会、その他のものが持たれておるので、この給与については、超過勤務手当というものを支給することによって、現在のいろいろな給与の悪条件を改定する必要があるということが出てきた。文部省もそれを大体認めて、調査費を計上して二カ年間調査をした。その調査をした結果、最近この実態調査をしたことによって、小学校は二時間三十分、中学校は三時間五十分、高等学校は三時間三十五分、これは最小限に考えてそれくらいの超過労働をしている。これに超勤手当を出すべきだという思想を文部省の事務当局も大蔵省の事務当局も大体了解していったところが、一部素朴な政党の政治家の中で、教員は、そういうやり方をするのは不適当だというので、途中でいま宙ぶらりんになっている。そこに教師観という問題が出ているのですが、それは教師観とは関係がないのです、聖職と言おうが。これはいわゆる現在の労働というものについての給与の算出の仕方なんであって、教師の主観的な態度というものには関係がない。教師はそんなことで、一時間だからどうだという、そんなかっこうで授業ができるものではない。その教えるという職業の性格から、教壇に立った場合には、子供に対して、月給を考えながら、これは一時間何ぼだと考えて授業する人はだれもいない。そういうようなことを考えて、こういう問題は教師観と関係がない。教師観というものをもっと確立するのには、これは教育全体の問題としてあるものですよ。そいつを何か錯覚を起こして、こういうものを支給することは教育の切り売りの観念ができるからというふうな素朴な、ある意味において、幼稚な考えの中で、とんざしておると思うのです。大体現実に時間講師というような制度までつくっておるので、そういう時間講師が、それならば責任のない授業をしておるか、そうではない。そこまで二年かかって積み重ねてきて、超勤手当というふうなものが出てきたときに、その途中から、いろいろと考えて、そういう方向に行ったものを、そういういろいろなことにおいて押えつけてしまって不愉快な感じがするような行き方は間違いである。これはすでに六十三億という計算の中で、また実態調査をして、当然出す実態が生まれてきた中でありますから、こういうものは、いままでの既定方針どおりやっていただきたい。根本的な教員の給与体系の改正は、これは将来の問題として幾らでもできる。そういうことで途中で宙ぶらりんになるような性格のものではない。大体おわかりになったと思うのですが、そういうことは、総理大臣から、それはやれ、あとは根本的に改正するくらいを言って、始末をしていただきたいと思うのです、簡単に。御答弁願います。総理大臣から先に……。
  67. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは最近詳しく文部大臣から伺っております。文部大臣もいろいろと検討しておるということだけ申し上げておきます。
  68. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お答えします。  教師の時間外勤務、これに対する給与の問題につきまして、これまでいろいろな経過がありましたことは、むしろ山中さんがよく御承知のとおりであります。またこれに関連いたしまして超過勤務手当を出すか出さないか、この問題についても積極、消極両方の議論があり、意見があるということもよく御承知のとおりでございます。文部省といたしましては、この問題について何らかの結論を得たいと考えております。  ただ、いま申しましたように、いろいろな議論、またいろいろな問題点もあるわけでございますので、私といたしましては、政府並びに与党の間におきましても、意見の調整をはかりまして、何らかの結論を得て、でき得るならば教員の処遇改善の一環として、次の通常国会にも出したいものと、こういう心持を持っていまいろいろ検討いたしているところであります。ただ、教員の給与の問題につきましては、現在のような給与体系が一体いいのかどうか、こういう根本的な問題もあろうかと思うのであります。そういうふうな問題につきましては、これはいまの問題とは切り離しまして、将来十分に衆知を集めて検討してみたい、かように考えておる次第でございます。
  69. 山中吾郎

    山中(吾)委員 もう一度答弁の中身を確認したいと思うのですが、教員の給与体系の基本的な根本的な検討は私は必要だと思うのです。これはやはり優秀な者を教壇に集めて、そうして安心をして教育できるという体制をつくらなければ、これはとうてい、いまの世界の科学技術の発展に適応するような日本の人間育成はできないので、いまのようではとてもいけない、それはもうそのとおり。それができるときに超勤手当というものは問題になるので、いまは、それも将来の問題でというので、超勤手当というものは現実において、現在の給与制度そのものからいって出さざるを得ないし、各地方裁判所においては全部超勤手当を出すべきだという判決が例外なく出ている。地方の人事委員会決定もそのとおりなんです。これは、そういう現状の裁判の認定に例外なくそれを支給すべきだという判定があるのに、ちょっと政治家が何か言ったからというので、そういうものを曲げてしまうというようなことでは、大体文部省の順法精神からいっても、そういう便宜主義なことでときどきに変えていけば、これはどうにもならぬと思うのです。これはまず実施をして、そうして、そのあとで御検討願って、日本の教師のあり方そのほか、私も参加して大いに論じますよ。そういうことを、現在の政治に基づいた法律の線——しかも裁判に例外がないんだ。そういうようなものを無視するようなことを政治のほうでして、教師に順法精神を説き、あるいは正常化を説くなんていうようなことができますか。私は、予算の額とかそういうものでなくて、そしてまた二カ年間責任を持って調査して、実施するという実態が出ておる。そうしてわれわれ委員会においても、実施することをもう万人が認めてきておるのですね。そういうふうな便宜主義を幾ら何でもすることは、こういう職場を暗くすることである。一番大事なことは、こういうものと教師観と関係ないのです。教師観に絶対関係ない。そんなことで教師の気持ちが変わるというふうな問題ではないのです。これは給与の算出の基礎の問題にすぎないのです。その点を間違いのないように、そういう変な考えでマイナスになるようなことのないように、超勤手当はとにかくごく簡単に実施をするのだ、根本問題はその後に検討すると言うべきであると思うのですが、その点明確に文部大臣のほうから御答弁願いたいと思うのです。
  70. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今日の段階におきまして、その点について右とか左とか明確にお答えし得る段階にまだ至っておりません。私は十分にこれを検討したいと考えておる、こういうことを申し上げるにとどめたいと思うのでございます。
  71. 山中吾郎

    山中(吾)委員 この程度にとどめたいという答弁は、超勤手当というものを、やはりいままでの経過もあり、実施をする方向で考えておるけれども、ここではこの程度という意味なのですか。その辺を明確にしてください。「とどめたい」ということを取り消せとは言いません。
  72. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 どちらの方向で行くかということを——どちらの方向と申しますか、大体御想像がつくと思いますが、超勤手当として出すか出さないか、この問題について慎重に検討をいたしておるというわけでございます。いま、明確に出すとか、その方向でやるということは申し上げる段階ではない。ただ、私としましては、何らかこの時間外勤務の問題と関連をいたしまして、所遇の改善をこの際はかっていきたいという気持ち検討をしておるということを御承知を願いたいと思うのであります。
  73. 山中吾郎

    山中(吾)委員 文部大臣のいまの答弁は、ほんとうはそういう答弁はできないのですよ。二年前に、文部大臣が責任を持って、超勤の調査費を要求し、計上し、そして必要と見て調査をし、結果が、出さなければならぬ時間超過が出てきておる。そしてそれに基づいて給与改定の要求をしておる。ほんとうはいまのようなことは言えないのです。しかしこれ以上時間がないので言えませんが、大蔵省においても、これは十二月の来年の予算編成だと思いますが、いままでの経過からいって、私は、超勤手当についてはすなおに出すべきだと思う。そうして、それは日本の教育界に悪い影響は一つもありません。これは断言をします。そうして文部大臣がちょっとかわったからといって、いまのような無責任なことをあなたは言えるはずはないのですよ。その意味において、財政関係の大蔵省においてはすなおに受けるつもりでおられると思うのですが、なお念を押してお聞きしておきたいと思うのです。
  74. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 文部省との相談によって、何らかの結論を得たいと思っております。
  75. 山中吾郎

    山中(吾)委員 最後に、総理大臣に、この問題はいま申し上げたので、お聞き願ったと思いますが、平地に変な乱を起こさして、そうして暗い空気を残したり、あるいは政治不信を与えたり、途中で、現在の給与制度、労働基準法、あらゆる点からいって、また地方裁判の判決があり、人事委員会、二十数県全部そうなんです。そういうものについて、それを無視するようなことは、私は日本全体の政治のあり方からいっても不可能に近い問題だと思うのですが、善処をされたいと思うので、最後に総理大臣の所見を聞いておきたいと思います。
  76. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 むしろお尋ねというよりも御要望だと、私はかようにとったのでございます。政治をやります者として、無用な摘擦を起こしたり、あるいは混乱を生ずるようなことは当然避けるべき事柄でございます。これは一般的に抽象的に言えることでございます。これだけ御了承をいただきたいと思います。
  77. 山中吾郎

    山中(吾)委員 いろいろ問題があって、時間が足らないために、全体的な質問ができないのでまことに遺憾でありますが、最後に共同声明に関連をしまして、この数日間、両三年のめどの問題から、あるいは中共に対する総理大臣の考え方、あるいは経済協力の中身に対する疑問、たくさんあります。その中で私は科学技術の進歩を見通して、あのことば、あの中で実は総理大臣の見通す科学技術とは何をきしておるのだろうか、いわゆる核兵器がだんだん小型になって防御兵器になれば、そういう意味においては持ち込むことについても可能になるようなことを考えてとかいろいろなことがあるとすれば大間違いで、だんだん兵器が巨大化して、ABMあるいはソ連の軌道兵器その他、もう兵器ばかりはあらゆるものが巨大化しておる。そんな防御と攻撃と区別できない逆な方向に行っておるし、いわゆる抑止力としての論理が破綻しつつあるというときで、その点についてはいろいろともう少し見通しの誤りのない総理大臣であるかをお聞きしたいと思ったが、それは省きます。  ただ一つ、私が非常に遺憾に思うのは、記者会見の中で、社会党は平和憲法さえ守っておれば国は守れておると考えておるがという社会党を軽べつしたような、実に子供だましのようなことをおっしゃっておりますが、私は非常に遺憾なんですよ。あなたは、この防衛関係だけは、挙党体制で、国民の地盤の上でつくらなければ、それはどんなことをしたって、どんなものをつくったってだめなんだ。戦争前の軍隊だって、天皇には結びついたけれども、国民の地盤に立っていないから、一つの失敗があったらもう壊滅でしょう。あるいは現在の自衛隊でも、国民の地盤でなくてアメリカの地盤に立っておるので、大きい問題があるわけですよ。そこで、そういうときにもっと謙虚で、そうしてしかもある一つのしっかりした見通しを持った一つの自分の方向をお示しになる。お示しになるに従ってさらに謙虚でなければならぬと思うのですが、一体社会党は平和憲法を守っておれば国を守れると思っておるからということは、どういう意味なんですか。
  78. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私がしばしば声を大にして申しましたのは、日本の国の安全を確保する方法、それは一体どうしたらいいのか、ところが、この安全確保にはいろいろの考え方がある。わが党のように、今日のような国力、国情に応じた自衛力を持って、それだけでは不十分だ、したがって日米安全保障体制、そのもとではじめて国の安全を確保するという、そういう考え方がございます。同時にまた社会党のように、平和憲法のもとで無防備中立論を堂々とやっておる。安全保障条約は戦争への道だとはっきり言っておられる。これほど実は安全確保についての考え方に相違がある。ここに私は問題があるということをしばしば申したのであります。私は社会党を別に軽べつしたわけじゃありません。わが国の安全を確保するのにその方法では困る、それでは私は総理としての責任が果たせません。そこで私は、私のような考え方にぜひ国民も御賛成願いたい、こういうことをたびたび声を大にして申したのです。
  79. 山中吾郎

    山中(吾)委員 総理大臣のその防衛論について私は何か言っておるのじゃない。ただし、無防備中立という論も、これはそんな観念論でなくて、ある意味では、現実ということを直視して真剣に考えた結論でもあるのだ。平和憲法を守っておりさえすればいいというふうに——社会党の全国民防衛かもしれない、一つの軍備を持たないで国を守る場合は。もっと熾烈に個々の国民を強い者にするとか、科学技術の振興をはかるとか、原子力の平和利用を徹底するとか、何かを考えておるかもしれない。それをいまのような簡単なことばで最初から無視をするような表現は軽べつですよ。総理大臣は平和に徹するということばを盛んに便っている。一国の総理大臣が平和に徹するというならば、少なくとも私は次の三つくらいの内容を持っていなければならぬと思う。やはり現在の平和憲法を忠実に守る基本的な姿勢がまず必要でしょう。第二には、経済政策も教育政策もそういう線に置いて、平和というものは最高の政治価値だという政治哲学をお持ちになって、それに基づいて、経済でも、兵器の輸出などしないで、平和経済体制をつくるとか、平和思想の普及を国民教育の方向で推進するだけの努力をするとか、あるいは外交において、世界が二つに分かれておるのに一方だけと安全保障を結んで、それが安全だというのは観念論だと思うのですよ。そういうことも論議は成り立つ。それを、一方に平和に徹する、平和に徹すると言いながら——それはそれでいい。しかし何も社会党に対して、こういうことを、これは書いているじゃないか。社会党のように平和憲法があるから安心だ、これはどういう意味なんです。こういうことばは取り消しなさい。
  80. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は憲法を守ると言っております。平和憲法は日本国民を縛る、しかしながら外国は縛らない、このことを言っておる。ただ日本国に平和憲法があるからもうだいじょうぶだ、こういうことで無防備中立論は私は困る。安全保障条約は戦争への道だ、この説には私は絶対に賛成できない。これははっきり申し上げておきます。
  81. 植木庚子郎

    植木委員長 山中君、時間が参りましたから……。
  82. 山中吾郎

    山中(吾)委員 平和憲法を守るだけでは守れないと言うのに社会党を入れる必要はないでしょう。そうでしょう。一応書いてある。社会党とは何ですか。これは第一、わが国の野党の第一党ですから、そんなことを言いながら、日本の防衛体制を挙党体制に持っていくなんということは、できっこないでしょう。こういう軽べつ的なことば——あなたはアメリカへ行ったら劣等感を持って、中国には優越感を感じたり、そうしてどこか日本の国民の優越感と劣等感の重なり合ったものを自分で持っておる。(「この程度でいいじゃないか」と呼ぶ者あり)こういうことばをなぜお使いになるのですか。
  83. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあこの程度でいいという不規則発言もございますが、社会党の考え方もやはり国民には明確にしておくことが必要ではないかと思う。私は、社会党が引き合いに出されることは困る、そういう考え方でないとおっしゃるなら、たいへんけっこうです。私はもし社会党の考え方が無防備中立論ではございませんとおっしゃるなら、それは私の前言も取り消します。
  84. 山中吾郎

    山中(吾)委員 無防備中立ではなくて、戦力を持たないがゆえに、最も真剣に日本の防衛を論議すべき立場というものをわれわれは確認しておるのであって、総理大臣は、核兵器を持たなければ、アメリカの核のかさの下にいなければならない、そうでなければ核を持たなければならぬ、その二つの道しかないと思っておられるのでしょう。もう少しそういう意味において——もし公の席上で言うならば、社会党の責任者にもっと実際的な防衛の方法について聞いてそういうことを言うべきであって、公の席上でそういうことを軽率に言うということの中に、私は日本の防衛についてやはり国民のものにならないものがあると思う。アンケートをとっても、日本の現在の国民は、いまのような自衛隊を増強するよりも、やはり最も永世的な中立的な国家の中で、ある意味において別な角度で行ったほうがいいという考えだって、アンケートには多いのですよ。そういうことを考えて、そういう軽率なことは私は言うべきでないと思います。  いろいろの具体的な問題については、この数日の間にわけのわからぬ答弁があって、疑惑というものが国民にたくさんあると思う。あるときにそういうふうなことで何か政党的な偏見を明らかにするようなことを言うべきでない、そういう問題は慎んで、もっと謙虚に、次の通常国会に延長してこの問題を論議をすべきであると私は思うので、その点は十分に戒心をしていただきたい。  以上私は申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  85. 植木庚子郎

    植木委員長 これにて山中君の質疑は終了いたしました。  次に、田畑金光君。
  86. 田畑金光

    田畑委員 私は、民主社会党を代表して、最初に財政問題、次に沖縄問題について若干質問をしたいと思います。  昭和四十三年の予算編成関連して、この夏以来、財政硬直化という問題がクローズアップされております。九月十四日には、大蔵省の幹部が総理大臣に直訴をする、こういう事態もあったし、いわゆる宮澤構想というようなことも発表されたわけであります。財政硬直化ということば自体がかたくてなかなか理解しにくいし、大蔵大臣を象徴しているようなことばでありますが、財政硬直化というのは一体どういうことなのか、その内容と実体、定義をひとつ示してもらいたいと思います。
  87. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まずいまの予算の内容を見ますと、いわゆる義務費もしくはそれに準ずる経費で九割近くを占めておるのが実情でございます。しかもそれらの経費の膨張圧力というものは非常に強くて、経済のいかんにかかわらず、増収のいかんというものにかかわらず、捨てておけばそれだけの義務的な経費が予算に対して圧力を加える。来年度の予算膨張を刺激するものがそれだけで一三%以上あるというのが実情でございます。それと同時に、また新しい制度が次々に出てきまして、そのために法律ができる。法律制度上のためにこれを直さなければどうにもならないという、手を加えられない経費というものが非常にふえております。したがって、そういうものでもう予算の調整力ということが及ばない固定的な支出がふえて、全体の弾力性を欠いてきているというのがいわゆる財政硬直化というものの定義だというふうに考えております。
  88. 田畑金光

    田畑委員 大臣のお答えにもありましたように、法律上、制度上、出さねばならないいわゆる義務費というのがあるわけです。一体それはどの程度の額にのぼるのか。また、御承知のように準義務的な経費というものもあるわけです。あるいはまた、いろいろ年度計画に基づく計画費というのもあるわけです。あるいはまた、準計画的な費用と見られるような支出もあるわけです。こういうそれぞれの硬直の要因を出しておると、いま大臣の指摘した費目について、大体来年度はどの程度そのような費目をそれぞれ出さねばならぬのか、これを明らかにしてもらいたい。
  89. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 大体いわゆる当然増といわれている義務的な経費の増を現状に基づいて計算しましても、来年ざっと七千億円はあろうと思います。それから、いまおっしゃられましたように、たとえば公共事業費とか、そのほか計画によって経費が年々ふえていくもの、また、物価高あるいは国民所得の水準が上がるに従ってふえなければならぬもの、生活保護費とか失対事業費とかいろいろなものがございますが、こういうようなもの、準当然増といわれるべき経費もざっと千億円前後は計算されますので、もう財政にわれわれが手を加えなくて自然にふえるものが八千億円前後というのが来年の実情ではなかろうかと思っております。
  90. 田畑金光

    田畑委員 大体八千億がどうしても義務的に出さねばならぬ支出であるということが明らかになりましたが、そうしますと、まだ政府方針がきまったという段階ではございませんが、今日のような経済の動きを見たときに、政府は来年度の経済の成長率をどの程度と見ているのか。したがって、来年の税収の伸びについてはどのような考え方をとっておるのか。同時にまた、硬直化の大きな原因をつくっておる国債について、政府はこれを漸減するという約束をしておるわけでありますが、国債についてはどの程度の規模を考えておるのか、明らかにしていただきたい。
  91. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 来年度の経済見通しについては、まだ政府の見解が確定しておりません。したがって、税収の見込みについても確定的なことは申せませんが、来年度は税収が、われわれが想像したよりも非常に少ない。あらゆる角度からいま検討しておりますが、相当税収が少ないというのが見込みでございます。したがって、そういう時期に国債の発行高をどうするかということはむずかしゅうございますが、しかし来年は、日本の国際収支にとって重要なときでございますので、国債は思い切ってこれを縮小するという方針をどうしてもとりたいと思います。そうなりますというと、財源との問題において相当の覚悟をしないと、来年度予算は編成できないんじゃないかというむずかしいところにいま私どもは逢着しておりますので、せっかくいまいろいろ勉強中でございます。
  92. 田畑金光

    田畑委員 大蔵大臣、あなたのお話のように、経済の伸び率についてまだはっきりしためどがついていないということは、冒頭申し上げたようにそのとおりでありますが、わが国の経済をめぐる動きを考えたときに、おおよそどの程度の税収を政府考えておるのか。特に国債の問題については、四十一年度が一六・九%、四十二年度は一六・二%の依存率を一般会計の中で占めておるということ、これについては、今日までしばしば大蔵大臣は、もっと国債の依存率を低くしたい、できれば一〇%前後にしたいということなどは、大蔵省筋から明らかにされておるわけでありますが、こういう大どころについては、私はこの際、大蔵大臣のおおよその考え方を明らかにしてもらいたい。なぜなれば、四十三年度の予算編成というのは、もうその着手の中にきておるわけでありまするから、この際ひとつ明らかにしていただきたい。
  93. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 税収との関係できまりますので、これは非常にむずかしい問題でございますが、少なくともいまおっしゃられたような依存度は一〇%——私は依存度を下げるということは当然ですが、依存度だけじゃなくて、絶対額そのものについても来年は考えたいというのがいまの気持ちでございます。
  94. 田畑金光

    田畑委員 私は、総理大臣にお尋ねしたいわけでありますが、いま見てきたように、わが国の財政は非常に窮屈になってきたわけです。したがって、財政の果たさねばならぬ資源の配分機能であるとか、あるいはまた、景気に対する調整機能であるとかいうようなことは、まさに失われようとしておるわけであります。来年の経済の先行きを見ると、まことに楽観ができない。また一方、経済事情の中においては、労働力は不足ぎみになってくる。完全雇用の上に立って福祉国家の建設ということをめどにするならば、当然需要はますますふえていく、支出はますますふえていく、こういうようなことになってくるわけでありますが、今日唱えられておる財政硬直化というのが、あるいは大蔵省の毎年の予算要求に対する一つの牽制気球であるという、一部見方もあるかもしれませんが、しかし、硬直化が実際財政を包んでおるという事実も、これは否定できないと思うわけで、こういうような財政状況になったということは、一体何が大きな原因であるかということを、私は佐藤総理からじかに承りたい。
  95. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 財政硬直化、これは別に大蔵省が予算編成前に牽制気球をやったわけではございません。これはもう確かに財政硬直化の現象があらわれておる。そこで、これは原因を究明するまでもなく、もう非常にはっきりしております。過去の予算編成に占むる人件費あるいは教育費あるいは社会保障費等々を考えてみれば、この予算の大部分はそういうところで編成される。したがいまして、新しいものがなかなか要求はできない、盛り込めない、ここに政策的な新しいものの取り入れが困難だ、だから財政硬直化をひとつ打破しょう、これは当然われわれ政治家として考えるべき事柄でございます。これをもっと端的に表現いたしますと、どうも財政に安易に依存しておる、そういうことが言えるんじゃないだろうか。この程度で財政が負担するもの、これはやっぱり厳密にもっとお互いが考えるということが必要なんではないだろうかと思います。  過去におきましても、その一つの例で補助金の整理というようなことがしばしば言われております。いわゆる少額補助金、これはもう整理すべき当然のものでございますが、同時に、額の多いものについてもそういうことが言えるだろう。また、お話を伺いましても、もっと政府のサービスは拡大しなければいかぬという、そういう意味の補助の増額などもしばしば議論されております。先ほどもちょっとその片りんを出したのでございますが、来年度予算編成にあたりましては、この硬直化を避けるために、とにかく相当また経済情勢にも対応するという意味から縮減せざるを得ないだろう。そこで、公債発行の額についてもいろいろくふうをする。いまも言っているように、依存率だけじゃない、総額自身においてやはり減らしていくように考えよう。さらにはまた、補助率の増加なども、よほどこの際は考えないようにすることが望ましいんじゃないか。一省一局削減、これもいまだかってやらなかったことに取り組んだのもそういう意味でございます。これは、まだしかし、一省一局整理いたしましたからといって、それで直ちに人員整理に踏み切ったわけでもありません。今後仕事の中身について、いわゆる民間に移し得るものは民間に、また、もう統制経済はほとんど廃止しておりますから、そういうことで大きくわれわれの行政のあり方、その姿も変えていこう。そういうところで新たにこの硬直化を突き破っていく。そうして国民がしんから要望するところの国の政策を進めていこう、こういうことでなければならぬ、かように思います。  硬直化の原因についてさらにお聞き取りがもし必要ならば、事務当局から説明させます。
  96. 田畑金光

    田畑委員 総理大臣の答弁の中にありましたいわゆる補助金等合理化審議会というのがかつてあったことを私も記憶いたしておりますが、財政硬直化の問題というのはいまに始まったことではない。ずっと前からこれは出ておるわけです。補助金等を合理化するというために特別の審議会なども設けられたはずだが、一体それはどのような実効をあげてきたのか、これを明らかにしてもらいたい。
  97. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは、本年度の予算におきましても、項目を統合したり、廃止したりする項目だけでも四百項目をこえる整理をいままでにいたしております。小さいものの整理は大体これで終わったと思いますが、いま総理が言われましたように、補助金というものも、順々に積み上げられて今日まできましたので、補助率も千差万別になっておりますし、もはやこの補助はそう必要でもないと思われるものでございましても、一ぺん制度化したらこれをやめるということはできませんので、これが累積していま一兆三千億以上になるというようなことになって、いまの法律制度に基づいたら、自然に計算しても来年これが膨大な数字になるというような趨勢でございますので、やはり補助金のあり方についても再検討すべき時期に私はきているんじゃないかというふうに考えております。
  98. 田畑金光

    田畑委員 私が要望したいのは、すでに過去にも補助金等の合理化審議会というものができて、政府の中では検討してまいっておるわけです。しかし、何一つその実効があがらざるままに、かけ声だけに終わってきておる。その集積がやはり今日の財政硬直化をもたらした一つ理由だと、こう思うのです。  私は、この際、十月の十一日に宮澤経企長官が、明年度予算編成に関しいわゆる宮澤構想なるものを出されたわけで、宮澤構想については各界、各層、いろいろな反響が出たわけです。質問の時間もございますので、私は簡潔に、長官があの時期どういうねらいであの構想を発表されたのか、それを端的に承っておきたいと思う。
  99. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国は過去十数年の間に急速に変化いたしましたし、これからも変化していくと思います。したがって、そこから財政に対して新しい需要があるのは当然でございますけれども、新しい需要を満たすためには、古い用済みのものはやはり切っていかなければならないと思います。先ほど総理が補助金の例を言われましたが、これなどはいい例でございますが、しかし古いものを切るといたしますと、そこにいろいろな既成概念あるいは既得権といったようなものがついておりまして、簡単にこれを切ることができない場合が多い。したがって、そういう問題を検討するために、明年度一年、これ以上事態を悪くさせないようにするくふうはないであろうか。何をどう改めるかということは、国民のコンセンサスによってきまることでありますが、そういうことを考える場を来年度に持ちたい、こう考えたわけであります。
  100. 田畑金光

    田畑委員 私は、この際、総理並びに大蔵大臣に、宮澤構想について総理大臣はどのように受け取っておられるのか、あわせて大蔵大臣の御所見も承っておきたい。
  101. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まだ最終的に内閣の政策として決定したわけではございません。ただいまその中のもの一部についていろいろ論議もかわしております。順次固まっていくようであります。ことに、私、宮澤構想で国民の非常に支持を得ておる点は、物価の安定のために財政はいかにあるべきか、また予算の編成の場合に、物価安定を念頭に置いていかにくふうすべきか、いわゆる年度途中の大きな財源の変更等を要するような補正予算をつくらないように考えろ、こういうような点が特に関心を持たれておるのでありまして、そういう意味で、ただいまちょうど予算化の時期でもありますし、こういうものが国民の支持を得ておる、そういう点について深く思いをいたして実現に努力するつもりであります。
  102. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 宮澤構想もやはり財政硬直化と関連のある一つの構想でございますし、また、この問題については、現在与党の政調会においても硬直化打開の研究をしておりますし、また、われわれ財政当局もこの検討をしておるということでございますので、政府与党が意思統一をして、来年度の予算編成までにはこの問題についてのはっきりした結論を得たい、ただいま検討中でございます。
  103. 田畑金光

    田畑委員 総理大臣のお答えの中に明確に出ておりますが、私も宮澤構想を私なりに検討してみると、個人所得税の減税を来年度一年限り取りやめる。生産者米価並びに消費者米価とも、来年度一年間凍結する。国鉄の定期運賃、大学授業料、電信電話料金など公共料金の引き上げや、たばこ値上げなど間接税の引き上げも一年間ストップする。これらは要するに財政硬直化の真の原因が物価上昇にあり、公務員給与の引き上げも、社会保障費の増額も、公共事業費の膨張も、そのかなりの部分が物価上昇に基因しておる。物価上昇を押えることが財政硬直化を打開する道だということを私は宮澤構想の中からくみ取るわけであります。  その他宮澤構想についてもろもろの反対意見を私は後ほど述べますが、ありますけれども、今日の財政硬直化をもたらした一番大きな理由は、要するに物価上昇にあり、佐藤総理みずからが、先ほどの御答弁の中で、宮澤構想が国民の関心を呼んだのは、物価の問題を指摘している点にある、こういうことを総理自身がお認めになったわけであります。要するに私は、今日の財政硬直化の最大の原因は、佐藤内閣までに至る保守党内閣の物価政策の欠如が、実は財政硬直化の最大のものだと、こう指摘したいのです。総理の見解をいま一度承っておきたい。
  104. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そこになりますと、あなたと私と必ずしも全部意見が一致するわけではありません。私は、申しましたように、宮澤構想のねらい、それは物価の点を取り上げた、それがたいへん国民の関心を引いているということを申しました。しかし、その項目、いま読み上げられました項目の一つ一つをそのまま閣議決定しているわけじゃございません。現にそのうちで私どもが——いま大蔵大臣から答えるでしょうが、所得減税というようなはっきりした公約事項、これを踏みにじるわけにもいきません。また、特殊の料金なども、安易に引き上げるというような考え方はもちろん持っておりません。公共料金である限りにおいては、これは安易に引き上げるということであってはならない。しかし、いろいろくふうしても、しかも必要やむ得ないもの、こういうものについては、いわゆる全部一年間ストップと、こういうようなかけ声だけできまるものでもない。あるいはまた、これは一部からしばしば批判されておりますが、給与もストップだ、そういう意味で所得政策に触れたものだと、こういうような誤解もあるようでありますが、そういうようなことではございません。でありますから、私が申し上げたことと、田畑君が認識されておる宮澤構想というものの間には相当の開きのあること、これはひとつ御了承いただきたい。私は物価の問題に触れたから関心があるというので、ただいまのような田畑君の意見を私が全部賛成しているわけじゃありません。認識は相違しております。
  105. 田畑金光

    田畑委員 私も、宮澤構想の個々の内容について全面的に賛成しておるということではないわけです。ただ、宮澤構想が指摘しようとするのは、今日の財政硬直化の大きな原因が物価の値上がりだということを指摘しているところに、私は問題を取り上げているわけです。経済企画庁の国民所得統計年報四十二年度版を見ますと、たとえば、政府の財貨サービス経常購入は四十年度は三兆八百六十一億、これは三十五年度の一兆三千九百七十五億に比べますと二・二倍の伸びです。物価値上がり分を実質に引き直してみますと、三十五暦年価格を基準としますならば、三十五年度の一兆三千三百四十八億に対し、四十年度は一兆九千百九億になるわけです。実質的な伸びは一・四三倍にすぎません。結局、差し引き一兆一千七百五十二億は物価上昇によってもたらされた経費の膨張だ。政府の財貨サービス経常購入だけでなく、政府の固定資本の形成や政府企業の在庫増加についても同様なことが言えるわけで、私は、日本経済の体質の中に定着した物価上昇という問題こそ、財政硬直化の一番大きな原因ではないかと考えるわけです。私は特にこの点をひとつ総理に御検討いただきたいと思うのでありますが、この点、総理の見解をいま一度承りたい。
  106. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 財政硬直化は、もっと基本的には制度上、法律上からきておる。それにさらに物価の値上がり、それで積み重ねがただふえたというだけで、物価の問題はそういうふうに考えるべきだ。硬直化の問題としては制度上、法律上からきている、かように考えます。
  107. 田畑金光

    田畑委員 法律上、制度上の問題については後ほどまた伺うことにいたしまして、佐藤総理は、この間、物価安定推進会議で消費の抑制ということをよく言われましたね。今日の経済成長の過熱が——国際収支の赤字は設備投資が主たる原因であるということは、過般来本委員会において明らかにされたわけです。ところで、総理が今日この時期に消費の抑制を唱えられておるということは、どうも総理は、過熱の原因を消費需要の増大に置いておるんじゃないか、私はこのような感じがするわけです。  総理お話のように、なるほど今日の国民の消費の内容には、あるいはもっと考えてもらいたいという点もないでもないと私も考えます。しかしながら、幾ら貯蓄をやっても、その貯蓄の利子が物価の値上がりで全部食われてしまうというような今日の国民生活の実態を見るときに、総理がもっと、3Cなどというようなほうの消費でなくして、全部が住宅を持つような、そんな健全な消費の方向に国民は行くべきだなどと言われておるが、土地値上がりの抑制とか、宅地供給とか、土地利用計画などという、政府のやるべきことをやらないで国民に消費が行き過ぎるぞと言われても、国民の立場から見ると、これはぴんと来ないと思うのです。一番大事な、政府の手の及ぶ公共料金その他の物価の問題についても、政府は解決の確たる方策を国民に示さない。こういう中で国民にのみ消費抑制を唱えられるというのは、どうも国民の側からすると、いかがかなあという感じがするわけですが、総理大臣の見解を承りたい。
  108. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いまや、消費は美徳なりという時代は過ぎた、かように考えております。ことに、ただいま当面する問題として最も必要なのは、国際収支を改善すること、健全化することでございます。国際収支の健全化のために、いまのわが国経済が一体どんなことで支えられているか。半分以上、五〇%以上は国内消費で使われている。そうして輸出は、国内消費とバランスがとれない程度に——あらゆる政策を実施しておりましても、なかなか伸びておりません。こういうことを考えると、端的に消費節約を国民に呼びかけるのはあたりまえだと思う。ただいま、物価が上がるから、金利より以上のものがあるから、こういうようなお話でございますが、けさほどの新聞を見ると、佐藤さん、御安心なさい、ボーナスは四割は貯蓄されております、という新聞記事も出ております。私は実はたいへんうれしく思ったのです。だから、田畑君のいま言われるような、消費節約を呼びかけることは間違いだ、これに私は賛成いたしません。また、社会党の方からもこの席で言われましたが、消費の総額が二十三兆円、設備投資の総額が八兆円にもならない。しかも、その設備投資の中には、大企業の投資もございますが、生産性のおくれた中小企業の設備投資もあるわけなんです。しかも、輸出には中小企業の設備投資、近代化が役立っておる。したがいまして、私はこういう点も十分考えなければならないと思います。設備投資がどんどん出ていけば、必ずいっかは輸出増強に役立つものだと思います。  何といいましても、やはり蓄積が大事であります。私は、そういう意味で、国会で建築貯蓄といいますか、住宅奨励の意味で、貯蓄については特例を設けろと言われたこと、これはたいへん時宜を得た方法であったと思います。衣食住という三つの問題がございますが、今日大事なのは住居の問題だ。そういう意味で、いま田畑君からも、土地の提供、土地の価格を下げないことが不都合じゃないかといっておしかりを受けました。確かに住宅についてわれわれがもっと関心を深め、そうして国民に安い、また住みいい住宅を提供するように、政治の方向を向けなければならぬと思います。  私の消費節約、これはただいま申し上げるような方向で国民の協力を願っておるのでありまして、いたずらに、いわゆる高級品だけ、そういうものをやめろとか、あるいは外国の酒を飲むなとか、外国の化粧品を使うなとか、こういうようなことを実は言うのではございません。わが国の資源は不足がらでございますから。かつてドイツで言われたことがありますが、ドイツ人は、何とかもう少し輸入を押える方法はないだろうか、そのためにはやはり消費を節約するんだ、こういうことをある者が言うと——それは対話的に、話として載せられたものです。そんなに外国からすべてのものを輸入しているだろうか、こう言ったら、君は朝めしに一体何をどういうようにしたんだ、おれはまずコーヒーを飲むんだ。そのコーヒーはどこから来るんだ、外国だろう。そのとき使った砂糖、これは外国だろう。しかし、おれは牛乳を飲むんだ、この牛乳こそはドイツの牛からとったんだ、こう言ったら、その牛の飼料は一体どうしているんだ。卵、鳥が食べる飼料、これも外国じゃないのか。日本と同じです。着ているもの全部がそういうことでありましょう。かように考えると、私どもはやはり消費節約をし、そうして健全な消費のもとに日本の国の国際収支に寄与する、これを国民に呼びかけるのは私の仕事でもあります。この辺をひとつ御理解いただきたいと思います。
  109. 田畑金光

    田畑委員 総理大臣、私は一時間の持ち時間で、財政だけでなくて、沖縄の問題も取り上げなければなりませんので、総理大臣からあまり長い答弁をされると、私の質問する時間がなくなるので、ひとつ答弁を簡潔にしていただきたいと思います。  総理大臣の先ほどの答えの中で、貯蓄がふえているということは、現にそうなんです。わが国の経済はインフレ傾向であるけれども、国民の貯蓄率は高いのです。これは、私は、やはりそうしなければならぬようないまのわが国の社会保障の貧弱さを意味すると思う。国民総生産はすでに世界第二位、工業生産においては世界第三位、そういうものの、分配国民所得、平均所得というものは二十何番目でしょう。そういうことを考えてみるならば、まだ実は分配所得というものはヨーロッパの先進国に比べてわが国は低いのですよ。そういうようなこともよくお考えいただきたいと思うのです。  時間がありませんので、私は、ここでこの際、宮澤構想が打ち出されてから、特に経営者団体は、所得政策の一つの突破口としてこれを利用する傾向が出てきておるわけです。日経連にしても、政府に対して、毎年のベースアップについて一つのガイディングラインを提示してくれなどと、こういうことがいわれておるが、宮澤構想は一体所得政策とどんな関係を持つのか、この際、長官から簡潔にひとつ見解を承っておきたいと思うわけです。
  110. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私は、いま所得政策ということを行なうことは可能でもありませんし、また好ましくもないと考えております。したがって、私が試案として申しましたことは、所得政策と関係がございません。
  111. 田畑金光

    田畑委員 私も宮澤長官のいまの答弁で安心しますが、やはり私は、いまの日本で所得政策などが取り入れられる社会、経済情勢ではないと思うのですね。所得政策というのは、やはり生産性の向上ということが一つ条件であること、また第二としては、財産所得と物価の安定という問題だと思うのです。わが国における所得政策というと、ともすれば賃金所得を押えることだけが所得政策のごとく誤り伝えられておるが、より大切なことは、配当利子所得等財産所得全般についての規制ということが当然考えらるべき問題だし、その根底には物価の安定ということがなければならぬと思うのです。第三の問題として、経済の民主化、産業民主主義の確立ということで、所得政策の成功のためには、労使並びに一般国民を代表する立場の政府、この三者が緊密一体となる関係にあって、初めて私は所得政策なるものが成功すると思う。私は、今日の佐藤内閣の政策のもとにおいて、そのようなことを期待するといってもなかなかこれは無理なんで、したがって、所得政策などということは、これはいまの段階で考えるべき問題ではない、そう思うわけで、佐藤総理は頭を振られておるが、私はそう思うのです。  そこで、私は、第二に、財政硬直化をもたらした理由は、財政インフレの問題だ、こう思うのです。私が調べたところによれば、昭和三十年以降高度成長を続けてきている。この間日本の経済の体質も非常に変わってきておる。ことに予算編成に臨む政府の政治の態度に私は問題があると思うのです。三十二年度以降四十一年度までの国税の自然増収額は二兆八千八百億の巨額に達しております。このうち、減税に振り向けられたのがわずかに七千五百八十九億、二六%程度です。残余の二兆千二百十九億は食い荒されて雲散霧消しておる。政府は圧力団体の金権と票田に屈服し、党利党略予算を編成し、たとえば、よく五兆円で食いとめたなぞというごろ合わせで満足して自画自賛してきたという、今日までの安易な政府予算編成の態度。予算編成期に入ってくると、赤坂かいわいは車の置き場所もないようなにぎやかさを呈するというような状況。予算編成権は一体どこにあるのか、政府なのか、与党なのか、私は、こういうところにけじめをつけない限り、財政インフレに伴う政府予算編成なぞの姿勢を改めない限り、財政硬直化の打開はできない、こう考えておるわけでありまするが、ひとつ総理大臣の率直な見解を承っておきたい。
  112. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど、安易に政府にたより過ぎる、そういうことに欠陥があるということを申しました。裏を返せば、ただいま言われますように、政府がそういういわゆる要望をまかり通したところにも責任があるのじゃないか、これは御指摘のとおりであります。私は、財政をあずかるものとして、やはり勇気を持って通すべきは通す、また差し控えるべきは差し控える、こういうことであらねばならない、かように思います。御指摘のとおりでございます。
  113. 田畑金光

    田畑委員 総理、私の見解に御同感のようでありまするから、ひとつそういう面における政治の姿勢を正してもらいたい。  財政硬直化の問題については、いろんな角度から取り上げられてきて、いわば百家争鳴の観を呈しておるわけです。総論については、もはや問題がおおよそ取り上げられたような感じがいたしますが、いよいよしからばその硬直化をどのように具体的に打開するかという、これから各論の段階に入ってきようと思うのです。  水田大蔵大臣にお尋ねしたいのは、財政硬直化の打開について、どのような手法によってこれをなされようとするのか、何年計画によってやり遂げようとするのか。四十三年度予算編成においては、少なくともこれこれはやるという計画をもうすでに立てなければおそ過ぎると私は思っておるが、四十三年度予算編成の中においてはどの程度取り上げようとされるのか、これを明らかにしてもらいたい。
  114. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この硬直化のよってくる原因は非常に深いものがございますので、これを一挙に解決するということはできないと思います。ですから、これはまず来年度においてその解決の第一歩を踏み出す、糸口をつくっていくということについては、各予算の項目について全部を吟味して、相当広範にこの第一歩を踏み出すという仕事を来年からやっておかないと、先にいって間に合わないというふうにも考えますので、私は、来年ここをこうするというのじゃなくて、いままでの既定経費についても全面的な検討をここで加えて、来年度においてまずなし得ることだけは糸口をつけるという方針で、来年はやってみたいというふうに考えております。
  115. 田畑金光

    田畑委員 来年度予算はいつごろまでに編成される予定ですか、年内に編成を終わるのですか、また年を越すのですか。  それから、第二にお尋ねしたいことは、補正予算は来年からやらない、当初予算でやるということは、必ず来年から実行されるのかどうか。  第三の問題としてお尋ねしたいのは、たとえば公務員の給与であるとかあるいは食管の問題等については、いろいろ世上伝えられておるが、予算編成の段階において、公務員給与についても、生産者米価等々についても、同時に取り上げる方針であるのかどうか。  それから、先ほど行政機構の問題について、総理からすでに問われないうちに政府方針を承ったわけで、これはやめまするが、行政機構の改革、あるいは国家公務員の総定員制を取り入れる問題、あるいはまた計画的な人員整理の問題等々について、私もいろいろ意見はありまするが、ただ私はこの際はっきりお尋ねしておきたいことは、すでに来年予算要求に関連して、各省からは二つの庁、八つの局、六つの部の新設、四つの特殊法人の増設要求がなされておると聞いておるが、これは総理大臣に承ります。来年は一切新しい部局や公社公団は認めない、こういうリーダーシップであるのかどうか、これを総理から承っておきます。
  116. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この国会が終了したら、直ちに予算編成の仕事に私どもは取りかかる。したがって、できるならば今年度中にこの予算編成を終わりたいという考えで、いま急いで検討しておるところでございます。  それから、やはり大きい補正要因を残して当初予算を組むということは好ましくない。したがって、なるたけ大きい補正なしに済ませるという予算を組みたいと思います。  そこで、お尋ねの件ですが、公務員の問題にしましても、食管の特別会計の問題にしましても、これを結論をつけないでこのままにするということは、大きい補正要因をあとへ残すということでございますので、これも来年の予算編成のときには私は結論をつけたいというつもりで、いま関係当局と相談をしているところでございます。  それから、総理への御質問でございましたが、行政管理庁で来年度の行政機構の取り扱いについての一応の方針が示されておりますが、それによりますというと、やはり新規のそういう部局の増設とか特殊法人というようなものはつくらない、来年はつくらないという方針を一応政府では行政管理庁の方針に沿ってきめてはおりますが、ただ、一つ、二つ法律によってこういうものをつくれと前国会で通ったものがあるそうで、これをつくらないのが法律違反になるのかどうか、それをつくらなくて済むというような話し合いができれば、ほんとうに全部来年はつくらないという方針が守れると思いますが、そういう点については、いま政府部内でも研究中でございます。
  117. 田畑金光

    田畑委員 私は、特に厚生大臣に一点だけお尋ねしておきたいと思うのですが、御承知のように、去る特別国会で成立を見ないで、臨時国会をわざわざ政府が開いて成立を見たのが健保特例法案、これはわが国の医療制度の現状を最も端的に示しておる問題だと考えておるわけです。しかもまた、財政硬直化の一つの原因として、政府自身が社会保険費等を中心とする諸制度の合理化ということを政策に掲げておるようでありまするが、私が特にこの際ただしておきたいと思うことは、健保特例法案については、幸い当時わが党の修正によりあの法律は二年の時限立法ということになったわけです。これについては、当時の副議長として厚生大臣があっせんの労をとられたこと等も聞いておるわけでありまするが、二年の時限立法にしたということは、要するに、二年のうちには、わが国の医療制度の根本的なあり方について、政府国民に対し国民の生命と健康を守るこの制度の将来にわたる制度改革をはかるんだ、こういう約束で二年の時限立法ということになったわけでありまするが、国会における、しかも法律事項としての約束を達成される準備と用意と今後の見通しについて、この際、厚生大臣から承っておきたいと思います。
  118. 園田直

    ○園田国務大臣 抜本改正は、社会福祉行政の中の根幹にもなりまするので、慎重に検討しなければなりませんが、御指摘のとおりに、特例法の期限等もありまするので、早急に準備をいたしております。去る十一月に事務局試案なるものを出しておりますが、これは事務局試案のことばのとおりに、省内における最後の案でもなく、政府部内の調整もいたしておりません。これを基礎にして各政党、各方面、各団体等の御意見も十分承って、さらに私の手元で検討した上で、政府部内の調整をはかり、明年度には法律案として御審議を願う所存でおります。
  119. 田畑金光

    田畑委員 私は、こういう大きな問題については、やはり総理大臣の強い協力がなければできないと思うのです。一番複雑にして困難な医療制度の問題を見ても、毎年厚生大臣がかわって、案ができたかと思うと、また別の大臣が登場する、こういうことではなかなか大きな根本的な大改革などということはできない、こう思う。別に新厚生大臣の応援をするわけではありませんが、やはりじっくりこういう問題については取り組むような政治の姿勢が必要ではないか。このことだけを強く私は要望しておきたいと思うのです。  政府は、わが国の今日の財政硬直化の一つの教訓として、西独によく習え、こういうふうなことを言われておるわけです。なるほど西独のいろいろの歴史をひもどいてみますると、一九五〇年代は高度成長、そうして歳入も相当余剰があった。ところが、一九六〇年代に入ると、経済の動きが悪くなって、したがって、自然増もずいぶんずっと減ってきた。こういうようなことが手伝って、ついに一九六七年の予算編成関連して、エアハルト首相が退陣のやむなきに至った。これはわれわれにいろいろ教訓として教えるものが多々あると考えておりまするが、これについて大蔵大臣も、大蔵省の幹部の人方も、西独に習わぬとたいへんだぞ、こういうようなことをよく言っておるわけでありまするが、今後西独の教訓についてどのように学び、これを今後の財政運営においてどのように反映させようとするのか、これを大蔵大臣から承っておきたいと思う。
  120. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 西独に学ぶべきものは何かということでございますが、西独は御承知のとおり非常な放漫財政をやっておりまして、ことに地方財政を中心にして、私どもが見て少しやはり放漫だと思う財政が行なわれておりましたために、財政が日本以上に硬直してしまっている。そこで、西独は財政硬直があったために、今度は国際収支の問題が出てきましたときに、これをどう調整するかというときに、財政による調整力を失って、全部金融政策によらざるを得なかった。金融政策によってこういう問題の片づけをしようとしたら、相当大きい影響を国内経済に与えて、したがって、あれだけのドイツが、ついに設備投資がほとんど国内でなくなってしまうというくらいの結果を来たしましたために、ドイツは不景気にもなりますし、国の経済成長力がなくなってしまった。そのために、今度は逆に国の歳入減というものが起こってきて、公債を出し、いろいろのことをしても追いつかなくなって、財政破綻を来たした。これがドイツの今日までたどってきている道でございますので、考え方によると、ちょっと似ているところもございますので、これは財政を硬直させて、将来金融政策だけでこの国際収支の問題に対処しようとしたら、日本も非常にあぶないということをいま私どもは非常に心配しておる、こういうことでございます。
  121. 田畑金光

    田畑委員 大臣の答弁は、最初はドイツは放漫過ぎたと言って、他山の石として学ぶような姿勢でなかったが、最後はだいぶん学んでいるような答弁で、まあ了としますが、御承知のように、いまお話があったように、西独政府は一九六七年六月経済安定促進法をつくり、新しい経済運営に乗り出すとともに、財政的には本年七月、一九七一年までの連邦中期財政計画をつくり、連邦財政の立て直しにいま懸命の努力を払っておるわけです。連邦財政計画は、総合的な経済見通しに基づいてつくられたもので、歳入歳出の両面にわたり年次別の数字と、これを裏づける政策措置を具体化しておるわけです。私は、これが成功するかどうかは今後に待つといたしましても、とにかく一つの中期財政計画をつくって、予算の運用においても、あるいは財政、経済の運営についても、その計画に基づいて立て直しをやっていこうとするこの決意と努力というものは、われわれとしても大いに学ぶ点があると考えるわけでありまするが、私は特に佐藤総理にただしたいのは、真に財政の直て立しを実現して、財政が資源の配分という機能と景気調整の機能という本来の姿に戻すためには、これはよっぽど佐藤総理自身がリーダーシップをとらぬとむずかしい問題だ、こう考えておるが、佐藤総理考え方をあらためてお聞きして、財政問題についての質問を終わりたい、こう思うのです。
  122. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来の御意見、また当方からの答弁などもあわせてお考えいただきたいと思いますが、国内の経済というものも、財政だけでどうこうできるものでもございません。やはり、総需要の問題 これは官民、政府と産業界の協力によって、はじめて適正なる経済拡大が可能だと、かように考えます。しかし、どうも日本の場合におきましては、財政に依存する度合いが非常に強い。ここを実はやはり私ども部内において戒めると同時に、国民にもその点に思いをいたしてもらいたい。また、民間の産業界の問題ですが、これは金融政策として処理される場合が多いのであります。したがいまして、その金融政策が適正であること、それについての十分の理解を得て、そして経済がもうかるときにもうけるとか、もう拡大し得るときに拡大するというような考え方でなしに、やはり安定成長への道を歩むということに努力される、これが両々相まってそういう効果ができるのではないだろうかと思います。いままでは、とかく財政に経済、景気調整の機能、これが多分にあるような言い方をされておりまして、財政需要、いわゆる予算編成、その態度、さらにまた中間におきましても経済がやや過熱する、直ちに財政を引き締めるとかいうようなことでございました。しかし、この一方的な処置では私は不適当だと思います。そういう意味で、政府も、また産業界も一体となって経済の安定成長へ協力する、いわゆる総需要を絶えず見きわめつつ、その経済発展をはかっていく、こういうことが望ましい姿ではないだろうかと思います。今日最も力を入れるべき事柄は、先ほど来しばしば申しましたように、国際収支の健全化、国際収支の改善、これに一そうの努力を払うということだ、かように私は考えております。幸いにして、ただいままでのところでは、貿易の収支においては五億以上の黒字になっておる。しかし、貿易外収支をこれに加味してみまして、いわゆる総合収支という点になりますと、遺憾ながら赤字でございます。それらの原因も、ただいまのところ、運賃などが負担する部分が非常に多いようだ、かように考えますと、政策的にもそういう面がもっと増強されること、さらにまた、最近の傾向から見れば、各国とも国際収支を改善するために輸入を制限して、輸出を伸ばしていくという、そういう意味で、わが国にとっても、わが国の輸出はなかなか困難だろうと思います。そういうことで競争も苛烈になるだろう。これに耐えるだけの力を持たなければならない。また、輸入自身をそういう意味でも、強化健全化する意味でも、やはり押えざるを得ないだろう。でありますから、先ほど、消費を特に私が言っておりますのは、国民がぜいたくをしておるという、そういう意味にとられて、消費節約を叫んでいるとお考えになると、やや的はずれでございます。やはり国際収支の健全化について、わが国の消費が輸入に依存しておるその度合いから、やはり消費をひとつ節約しよう。そうしてやはり蓄積の方向に向かおう。その蓄積が、もちろんいま最も不足しておる住居、その方向に蓄積が向けられるということなら、私は望ましい経済の発展の姿ではないだろうか、かように実は思う次第でございます。
  123. 田畑金光

    田畑委員 私の持ち時間も少なくなりましたが、残念でありますけれども、その限られた時間で、沖縄の問題について、若干私たちの思想を統一するという意味総理にお尋ねしてみたいと思うのです。率直にお尋ねいたしますが、総理大臣からも簡潔にお答え願うことにして……。  日米首脳会談は、総理は、成功であったかどうか、あるいはまあまあという成果であったか、どう評価されておられますか。
  124. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私がやってきて、私が評価する、ちょっとそれほどずうずうしくございません。しかし、いま私の耳に入りますものは、沖縄問題について非常な前進があった、また小笠原は返ってくる、この点では、この平和時においてかような前進的な効果をもたらした、これは成功というべきではないか、かように他人が評価しております。
  125. 田畑金光

    田畑委員 他人の名において自画自賛をされた、こういうわけですね。  日米首脳会談の最大の目的は、私は、施政権返還の時期を明示してもらいたい、これが国民の悲願であり、百万同胞の血の叫びであったと思う。それができなかったということは、私は、佐藤総理は残念ながらこれはほめられたものじゃない、こう思うのですが、その点どうですか。
  126. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは私さように思います。いま国民の悲願、これは達成ができなかった。その点はまことに残念だ。いま田畑君の御指摘のとおりであります。しかし、現状において私は最善を尽くした。また、だれにも私が最善を尽くしたということを明言し得る、かように私考えておりますので、最善を尽くして報いられたもの、その成果があの共同コミュニケでありますから、私個人としては、現状においてはやむを得ない状態ではないか、かように思っております。
  127. 田畑金光

    田畑委員 最善を尽くしたが、アメリカの壁が厚過ぎてという面も、私も認めないでもないわけです。そこで、総理は、こういう結果になったことについて、特に沖繩の県民に対しても遺憾であったとか、あるいは内容の真相はこうであったということを報告するためにも、沖縄を訪問したらどうかというわが党の春日書記長の質問に対しまして、真剣に検討してみるというような答弁であったかと思いますが、そのようなことを検討されておられますかどうか。
  128. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま私が直接行くという結論を得ておりません。沖縄からいろいろ立法院の方やまた主席やその他の方が見えて、いろいろ直接にもお話を聞かれております。また、もう一つ幸いなことには、私はこの前訪問した際にテレビの開局を約束いたしましたが、近く宮古のテレビ局、放送局が開局になります。こういう際に、この放送を通じまして、私の今回の日米会談の報告をするつもりでおります。これが先島一帯にも——これは開局でございますので、たいへん効果があるのではないだろうか、かように思いまして、そういう処置をとるつもりでおります。
  129. 田畑金光

    田畑委員 首相の答弁の中でわれわれとして非常に理解ができないのは、共同声明にもあるのも事実でありますが、三年をめどにして返還の見通しがたつということでありますが、ちょうどそれは一九七〇年前後になるわけです。この安保改定との関連で両三年ということが言われておるのか、実際沖縄が返ってくるというのは、その三年のめどがついたあとなお数年要する、数年先ということになるのかどうか、このことをもう一度明確に答えていただきたいと思うのです。
  130. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 両三年内に返還のめどをつける、さような確信を持っておるということを実はたびたび申したのであります。これはあの共同コミュニケをごらんになっても、アメリカが両三年内にめどをつけるということの明示のなかったこと、これは明らかに明示はございません。しかし、私は、国民の願望を率直に伝え、しかも両三年内に返還のめどをつけるべきだという、これを非常に強調をいたしましたことをアメリカの大統領も十分親身にアンダースタンドする、わかった、理解した、こういうことを申しております。また、沖縄の基地等についても、十分その果たしておる重要性を承認した、認めたということで合致いたしております。これらの討議の結果、返還の方針のもとに今後継続的な協議をする、これに合意をしたのでございます。返還の方針のもとに協議をするということはいまだかつてないのであります。今回初めてそれに取りつけた。返還の方針のもとに継続的に協議をする。その前に私が両三年内にめどをつけようじゃないか、これについても理解を与えてくれております。でありますから、全体として考えまして、私が両三年内に返還のめどがつけ得る、かように私は確信した、かように申し上げます。これは、ほんとうに私はその確信を得ておる、かように明言できる、その立場にあるように思っております。したがって、ただいま田畑君御指摘のように、両三年のうちに返還のめどがついて、返還が実際に実現するまでにはそれからあとかかるんだろうな、また、それが二、三年かかるか五年かかるか、そこらのところは明確でございません。まず第一に返還、これをひとつそのめどをつけること、これが目下の急務だ、かように私は思っております。
  131. 田畑金光

    田畑委員 返還のめどをつけるということは両三年、それまでに沖縄の基地問題の処理も、この両三年のうちには日米の話し合いによって結論を出す、そういうことに理解してよろしいわけですね。
  132. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 継続して協議する。協議の事項として非常に範囲が広い。その中にはいまの返還の時期の問題もありましょうし、沖縄の地位の問題もあるだろうし、あるいは沖縄の施設、それをどう考えるか等々、いろいろあると私は思います。それらのものを全部検討して、しかる上で返還、そういうめどがつく、かように御理解をいただきます。
  133. 田畑金光

    田畑委員 特に私が念を押しておきたいのは、総理のいままでのいろいろな質疑応答を聞いておりますと、非常に抽象的で、理解しにくい点がいろいろ出ておるわけですが、たとえば基地問題の処理、言うならば返還の問題についても、国際情勢の問題あるいは世論の問題あるいは科学技術の進歩の問題等々、いろいろ取り上げられておるわけで、一体そういうもろもろの問題の内容がどうであるか、これを私は一つ一つ実はお尋ねしたいわけでありますが、もう時間がきたので、残念ながらお尋ねできないわけです。  もう一つ、この際お尋ねしておきたいことは、これは十二月五日、下田駐米大使が記者会見して、米側が返還時期を明確にできなかった最大の理由は、任期満了を前にして、次期大統領を拘束するような外交上の約束をすべきでないという米国憲法上の慣習からであるというようなことを言っておりまするが、こういうようなことで米国大統領としては返還の時期の約束ができなかったのか、あるいは佐藤総理が言われるように、わが国の防衛体制とか国民の防衛意識とかあるいは日米安保条約に対する国民の評価とか、こういうものができ上がらない、まだ米側からいうと満足できないという事情のために、返還の時期の約束ができなかったのかどうか、こういうことを承りたいと思います。  さらに、ついでにお尋ねしておきますが、今度の共同声明の内容と、それから前回昭和四十年の一月佐藤総理が行かれたときの共同声明の内容と比べてみますと、沖縄については、前回は極東の平和と安全に寄与すると、こうなっております。ところが、今回の声明を見ますと、日本と極東ということで、日本ということが今度の共同声明の中に明確に出ておるわけです。どういうわけで前回と今回の声明の中にこのような違いが出ておるのか、この点については、すでにわが党の春日書記長からいろいろな角度から追及をされてまいったわけでありますが、別の面から言うと、私は今度の共同声明全体をながめますと、日本がアメリカの極東戦略体制の中にますます強く足を踏み入れた、踏み入れざるを得ないような状況に入ってきた。言うならば、その意味において、私は、ますます安保体制を強化して、アメリカに依存するという体制が今度の共同声明の中に露骨に出ておるということを実は不安に感じておるわけです。この点について総理大臣の見解いかん。  それから、もう一つ総理にお尋ねしておきたいことは、特に私は、今度の総理の日米会談の中で、せめて主席公選であるとかあるいは沖縄の国政参加の問題であるとかいうくらいは、今後の協議にまつことなく、明確な約束が取りつけられるものと期待していたにかかわらず、こういう問題は今後の日米協議にまかされた。ようやく沖縄の現地においては司法自治の確立が裁判所法の改正で実現を見ようとしておるわけでありますけれども、新聞によると、御承知のように、沖縄の軍労働者の代表が参りまして、特に布令百十六号の廃止を強く訴えて一おるということなどを見ますと、まだまだ沖縄における自由と人権はあらゆる面で侵害を受けておるわけです。こういうときに、これまたどういう意図であるか知りませんが、佐藤総理は訪米される直前、沖縄の警察力の強化を指示されておるわけです。そうして、いま警察庁には対策委員会を設けて、沖縄の警察力強化に指示と援助と指導をなしておるということが新聞で御承知のとおりでありまするが、私は、沖縄県民の最も希望する施政権返還の時期を明示してもらいたい。  そしてまた、今日沖縄住民の自由と人権が侵害されておる現実に即して、少なくとも主席公選、そしてまた、日本の国政に参加できる体制をつくってもらいたい。  同時にまた、沖縄住民の一般的な人権の保障について強く要望しておるこの時期に、そのような問題は今後の協議などということで先に延ばされて、先に警察力強化などという権力主義的な姿勢が出てきたということは、まことに遺憾であり、いろいろな誤解も生じておるわけでありまして、一体これはどういうことなのか、このことを明確にひとつ承っておきたいと思うわけです。
  134. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま四つばかりお尋ねがございました。  まず第一は、沖縄の軍基地に対する政府の最終的態度は何なのか、これはどうも明確でないというおしかりを受けております。私はしばしば申し上げますように、この沖縄の軍基地のあり方、その態度については、これは最終的に返還そのときにきまるのだということを申し上げて、今日一つの固定した考え方でこれに臨むことが間違いだ、こういうことをしばしば申してまいりました。私はそのとおりでございます。今日も私どもは平和憲法のもとでわが国の安全の確保、これをするのでございます。そうして、その立場に立っていろいろ考えてまいりますと、いま憲法の制約はもちろん受けますが、それ以外の事柄について、国内の問題についてはすでにきめたものもございますけれども、それを変えようというのではありませんが、これからの問題として、さらにその点にはもっと白紙の状態でこの安全確保の問題と取り組んで考えるべきではないか、そういうことでございますから、沖繩の基地についてどういう態度で臨むのか、ただいま核兵器を持っておると想像されるこの沖縄の基地、これに対する態度が不明確だ、かようにおしかりを受けますが、私は、両三年のうちにめどをつける、その際にそういう事柄が明確になるというように御理解いただくのが、これは当然ではないだろうか。私は、最初から、国際情勢等により、また科学技術等の進歩によりこういうことは左右されるのでございますから、安全確保、この点を念頭に置きつつこの交渉をすべきである、かように私考えております。  次は、下田大使の発言の中に、大統領が来年選挙だということを言っている。アメリカではそういう際にはあまり次の大統領を拘束するような約束はできないのだと、こういうことを言ったという。大体共同コミュニケそのものは、私が申し上げるまでもなく、御承知のように、条約だとか協約ではございません。しかし、首脳者、責任のある立場の人が、その基本的なものの考え方、ものの方針を申し合わせをした、それが共同コミュニケとして出るのであります。ジョンソン大統領がどうあろうと、また私がどうあろうと、これはやはり将来に関係する部分については、もちろんそれらの点について両国政府首脳が約束したことでございますから、両国政府が尊重するのは当然だと思います。これはジョンソン大統領の場合ばかりではございません。私が今後どういう状態になろうが、そういうことにはおかまいなしに、それはもう両国最高首脳の約束だと、かように国民としてひとつ主張していただきたいと思います。  次に、今回の共同コミュニケを読んで、どうも日本はアメリカの極東軍事体制に協力、さらに協力以上に足を踏み込んだ、かように見ると、かようなお話でございます。しかし、私は何度も繰り返して申しますが、私は憲法を無視するようなことはいたしませんし、また自衛隊法も無視するようなことはいたしません。したがいまして、私どもの可能なことというその範囲は、最初に申したように制約があるのでございます。したがいまして、この極東体制、軍事体制、戦略体制に足を踏み込んだ、こういうことは絶対にないのですから、また国民にもさような疑いを持たれるような発言はひとつ遠慮していただきたい。私は、日本政府は忠実に憲法を守り、その他の法律を守るのだ、だからさような危険はないということで、これは皆さん方もぜひとも考え方をひとつ一定していただいて、国民にあまり不安を与えないように、田畑君がこういう危険があると言った、だから確かに危険なんだろう、あるいは云々というようなことにならないように、この点はひとつ明確にしていただきたいと思います。  その次の問題といたしましては、共同コミュニケの書き方が、前回と今回ではだいぶん書き方が違っておる、これは確かに違っております。前回は、沖縄の軍基地が果たしておるこの役割りを高く評価して、国際情勢が復帰を許すような情勢ができることを念願するというようなことでございました。何を言っているかわからなかった。しかし、今回は、とにかく返還の方針のもとに継続的に協議をしようという、これはたいへんな前進でございます。これでたいへん不十分だというおしかりも受けましたが、私は、共同声明をごらんになって前回と違うんだから、そういう意味で非常な前進だ。また、その前進を裏書きするように小笠原は現に返った。現にこれは一年以内に返すと言っておる。来年の五月を待たずして返ってくるだろう、これが裏書きでもございます。したがって、どうか沖縄の方々も、また日本国民も、沖繩の復帰、それに今日から備えていただきたいと思います。また、そういう意味で期待を持ち、希望を持ち、そうして一体化を今日進めていただく。そのための諮問委員会もできたということ、これは在来の協議委員会やあるいは技術委員会等とは事変わって、常時日本政府が那覇に常駐して、そして高等弁務官に日本政府考え方を述べようというのでありますから、これはたいへんな前進であります。これらの点もひとつ十分御理解をいただきたいと思ます。また、その書き方も、極東の平和と安全というのが前回の書き方だ。今回は日本と極東というように、今度は日本という字が入っておった。これは日本のやり得ること、もう当然いわゆる日本の憲法や日本の自衛隊法などを前提に置いて、日本のやり得ることが明確になった、むしろ喜ぶべきことでございます。私はしばしば申し上げておりますように、日本の安全と繁栄、これは極東の安全と平和、平和と繁栄、これにつながっているんだ、これは一体のものだということをしばしば申してまいりました。そういう観点で今回の共同コミュニケを読んでいただきたいと思います。  最後に、国政参加の問題や主席公選の問題、これが明確にならなかったことがまことに残念だと言われます。私は、いま祖国復帰、これを実現する大目的を達成することがまず何よりも第一の必要なことだと思います。すでに復帰を基本方針として協議を続けていこう、こういう立場でございますから、主席公選の話も私は今後発展を見るだろう、かように思います。国政参加の問題なども、これは日米琉の諮問委員会で直接取り上げる問題ではございませんが、両国の持っております協議委員会を通じまして、これらの点も一そうよく話し合っていくということでありたいと思います。復帰が前提となります以上、これらの事柄も、私は、今後は在来とは事変わって、復帰をするというその前提でございますから、たいへん話が進みいいんじゃないだろうか、かように思って期待しております。  また、今日警察権を強化するという、それこそは復帰も実現しない前にとんでもないことだ、この土地における沖縄同胞、自由が奪われ、しかも人権が無視されておる、そういう際に警察を強化する、これなどはとんでもない行き方だ、たいへん権力的な措置だ、こういって御非難になりました。しかし、田畑君も御承知のように、沖縄の警察の装備、これはたいへん不十分であります。パトカーもおそらく同じような、県と比べてみるとその三分の一程度でありましょう。こういうようなパトカーあるいは電話、無線の使用だとか、こういうようなことが非常におくれておる。私は、こういうような装備をよくする、そうして警察の目的を果たすこと、それはひいてはわが同胞の自由、人権を守るゆえんではないか、かように思うのでありまして、ただいま権力的な行き方をする、とんでもないことだというおしかりは、ひとつこれは引っ込めていただきたいと思います。  以上お答えをいたしました。たいへん長かったというのでしかられておりますが、これは大事なことでございますので、お許しをいただきたいと思います。
  135. 植木庚子郎

    植木委員長 これにて田畑君の質疑は終了いたしました。  午後一時四十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時二十二分休憩      ————◇—————    午後二時八分開議
  136. 植木庚子郎

    植木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡部一郎君。
  137. 渡部一郎

    ○渡部委員 私は、小笠原諸島の返還の問題につきまして、まずお伺いをしたいと思うものでございます。  沖縄返還の問題と小笠原返還の問題とは、重大な関連性があり、現在小笠原諸島の返還方式につきましては、沖縄返還の重大なる前提条件になるものと考えるものでございます。したがいまして、私は、小笠原諸島の返還方式、現在のあり方等につきまして、政府内閣総理大臣並びに関係閣僚の方に御質問を申し上げたいと思うものであります。  まず、十一月の二十九日、三木・ジョンソン会談におきまして、小笠原諸島の返還に対しましては、奄美群島を返還した際に行なわれた方式をそのまま小笠原諸島の返還方式に採用しようということが確認されたということでありますが、この点について総理に再確認を求めたいと思います。
  138. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私とジョンソン大使との話し合いによって原則的に合意を見たので、私が答えることが適当だと思います。  それは、奄美大島の方式によるということは、平和条約三条によってアメリカの持っておる施政権をアメリカは放棄する、そしてその責任、権限というものを日本が引き継ぐ、こういう形で返還協定を結ぶという原則が合意に達したということでございます。
  139. 渡部一郎

    ○渡部委員 そうしますと、これは総理大臣も同意でございますね。  それでは次へ移りまして、奄美群島の返還のこの協定を拝見いたしますと、その中におきましては、米軍の基地は、当時の安保条約によりまして、何らの制約も設けず米軍に使用することを認めているようでありますが、このような基地の自由使用のごときものを小笠原の米軍基地に対して認められるのかどうか。またあるいは現在の安保条約における諸規定を援用しまして、自由使用でない、日本の現在の本土並みの使用規定にするのか。その両者のいずれであるか、御返答賜わりたいと思います。
  140. 三木武夫

    ○三木国務大臣 小笠原の基地は、本土並みの基地であるということでございます。
  141. 渡部一郎

    ○渡部委員 そういたしますと、当然事前協議の対象になってくると思うのであります。現在の新安保の協定によりますと、事前協議の項がございまして、核の持ち込みのようなものは装備の重大な変更としてチェックをされておりますし、また重大な配置の変更、直接的な戦闘作戦行動の基地としての使用の二つも、小笠原に適用されるかどうか。この点につきましては、社会党の成田さんの御質問に対しまして、核の持ち込みはさせないし、核がある場合は撤去させるという総理の言明がございましたが、さらに事前協議条項全体につきまして、これが小笠原諸島に適用されるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。総理お願いします。
  142. 三木武夫

    ○三木国務大臣 本土並みになるわけですから、事前協議条項が適用になることは当然でございます。政府方針として総理が答えられたように、アメリカも核の持ち込みのような意向はございませんし、日本の政府もそういう政策はとらぬということでございますが、事前協議の条項が適用のあることは当然であります。
  143. 渡部一郎

    ○渡部委員 今度はちょっと別な話になりますので、総理お答え願いたいと思います。  事前協議の対象にこの小笠原の米軍基地がなるといたしますと、今度は現実に硫黄島にはアメリカ軍がおるわけでありますが、このアメリカ軍の対潜哨戒機というようなものが戦闘任務を帯びまして直接戦闘行動に参加するというような場合は、当然事前協議の対象とすると見てよろしゅうございますか。
  144. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が外務大臣にお答えいたさせましたのは、ションソン大使と直接交渉していると、そういう便宜もございますから、実はお答えさしたのでございます。しかして私が別に答弁を拒否したわけではございませんから、御了承をいただきたいと思います。  ただいまのお話でございますが、今度小笠原が日本に返還される場合に、これは順次、徐々に日本がかわるという、そういう態度で臨んでおります。ただいま御指摘になりましたように、ただいまのところ米軍が施政権を持ち、同時にまた軍の施設その他も全部管理しております。したがいまして、日本で直ちにかわり得る部分と、直ちに技術的にはかわり得ない部分、こういうものがございますから、それらの点を十分分けて、そして遺漏のないようにいたしたいと思います。ただいま御指摘になりました点が、技術的に日本が引き継げない、かように申すのではございませんが、全体として抽象的に私がただいまお答えしておるのでございます。御了承を得たいと思います。
  145. 渡部一郎

    ○渡部委員 それでは、いまの総理お話しになりましたことを、今度は防衛庁長官に具体的事項としてお答えを願いたいと思うのでございます。  すなわち、こういう場合、いままでの場合、日本の国内におきましては、ベトナム戦闘等に日本の国内から飛行機が飛んでいくことは事前協議の対象になる、こういうふうなのが政府のいままでの一貫した態度ではなかったかと思いますが、どうでしょうか。お願いします。
  146. 三木武夫

    ○三木国務大臣 作戦行動は、当然に小笠原からやっても事前協議の対象になる、こういうふうに判断いたします。
  147. 渡部一郎

    ○渡部委員 そういたしますと、事前協議の対象になるといたしますと、このような協定におきまして、いままで事前協議の内容が実際問題といたしまして日本国内の米軍基地に関しましては一回も用いられたことがない。また、原子力空母の寄港、原子力潜水艦の寄港等の、きわめて濃厚に核兵器を所持していると思われるところの艦艇の入港に対しても、事前協議事項は発動されていないで、事実上空文と化しているのではないか、そういう疑いを持っているのでありますが、この辺の御返答を賜わりたい。
  148. 三木武夫

    ○三木国務大臣 事前協議の条項は、空文になっておるわけはありません。これは重大な安保条約上の条項であります。ただ、原子力の潜水艦などで、それはただ推進力を原子力によっておるということで、それが核兵器の持ち込みということとは別個の問題であると御承知を願いたい。
  149. 渡部一郎

    ○渡部委員 そういうことを聞いておるのではなくて、原子力空母のごときものは原子力で走っているからというお話でありますが、こういうものが核装備をして常時走っているのは、あたりまえの話なんです。そんなことをまさか御存じないわけはないと思う。ですから、そういうものもチェックしなくなっている。実際においては、この条項は空文と化しているのではないか。その辺、小笠原諸島が返還された時点において、そういうような事前協議の事項を空洞化する方式がますますひどくなるのではないか。それを憂えて、私は確たるお約束を取りつけようとしていま質問しておるのです。
  150. 三木武夫

    ○三木国務大臣 それは推進力に原子力を使うばかりでなしに、この核兵器の持ち込みというものは、重大な装備の変更になるわけでありますが、ただ核兵器を、核弾頭などをつけ得るという兵器、そういうものを持っておることと、いわゆる核装備をしたということとは区別をして考える必要がある。それはミサイルなんかでも、みんなつけようと思えば核弾頭をつけ得る場合がある。だから、そういう装備と核兵器を持ち込んだということの間には、区別があると思うのでございます。したがって、核兵器を持ち込んでおるというようなことに対して、日本が何も黙って事前協議の条項を空文に化しておるということはございません。
  151. 渡部一郎

    ○渡部委員 そうすると、核兵器をそういうものが持っていないということを一々チェックができないでいるのか。それは単なる想像でそうおっしゃっているのか。そういう艦艇が入ってくるたびに、外務大臣は一々出張して調べるわけにもいかないと思うのです。ところが、それを保証する何かの法がなければ、事実上において日本の体制というものは、この条約を実施することによって得る利益というものを全部失うことになるのではないか。だから、そこの点がどういうおつもりなのか。これほどまでにこの安保条約の事前協議の条項を無視している方向を今後もお続けになるつもりかどうか、それを聞いておるわけであります。そうでない、といまの総理の御答弁の中に、直ちに変わり得るものというようなきわめて微妙な御表現があったようでありますが、これが何を意味するか、私はわからない。総理にはその直ちに変わり得るものの内容を説明していただきたいし、外務大臣にはこの事前協議の内容というものについて、これほどまでに核兵器を濃厚に持っているようなものに対しても、私は中身を見ない以上はアメリカの善意を信じているというなら、それほどまでにアメリカに対しては何でもかんでも信用するアメリカ式外務大臣なのかどうか、御返答賜わりたい。
  152. 三木武夫

    ○三木国務大臣 アメリカ式の外務大臣でありません。日本の外務大臣、れっきとした日本の外務大臣。ただ、その場合に一々われわれが行って調べるわけでありませんが、事前協議の条項というものがきわめてきびしい条項であるということは、アメリカは百も承知であります。この上に立ってアメリカが、核の持ち込みを認めないというのに、この日本の事前協議条項を裏切ってアメリカが持つことはあるまい、こういう両国の信頼関係の上に立っている。一々われわれが行って調べることはないけれども、これだけのやはり事前協議条項があって、アメリカがそれを知りながらそれを破るようなことはないという両国の信頼関係の上に立つ確信である。これ以外にないのでございます。
  153. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 渡部君御承知のように、直ちに日本の自衛隊を常駐さすとか、あるいはヘリコプター部隊を置くとか、そういうことは、なかなかすぐにはできません。そういうものがいましばらくありましても、そういう点ではあまり問題を起こさないんじゃないだろうか。私どもが守ること、これは領土、領空、領海、これはたびたび申し上げたとおりでございますが、現在そういう装備があるからそのとおりやれとか、またその装備を今後いつまでも続けていくとか、こういうようなものでなくて、私どもは領土、領空、領海を守る、これで十分だ、かように考えれば、そういうものは自然になくなる、かように御了承いただきたい。
  154. 渡部一郎

    ○渡部委員 それでは、領土、領海、領空ということが、この間から佐藤さんのお口からしばしば語られているようであります。ところが、それに対して私は非常に疑問を感じている一人であります。  この質問はあとに譲ることにいたしまして、奄美群島の返還方式によりますと、この奄美群島の返還というものは、従来のこういうようなものと非常に違う面がある。すなわち、領土割譲のときの方程式がもうほとんど援用されているように思うのであります。すなわち、国籍の問題を除くと、通貨にしても、裁判権にいたしましても、財産権にいたしましても、債権請求権等の規定につきましても、ことごとく同一の方程式で行なわれております。ところが、こういうような方程式におきまして、奄美大島において、現在の小笠原におきまして、終戦後内地から欧米系の人々が引き揚げ、内地からこの地域に対する入域を許されたわけであります。ところが、内地にはそれ以外の方々が一万人から現場にとどまっているわけであります。そういたしますと、今後、この小笠原にもと居住されておって、現在日本に居住されている人々が小笠原に戻りました場合に、権利が競合することは当然考えられるわけであります。たとえば先日の新聞報道によりましても、現在の欧米系の住民たちが、自分の住んでいるところの土地については一体、いままでは、戦前においては自分の土地でなかったけれども、小笠原のもとの島民が帰ってきた場合に追い出されるのではないかという恐怖心のあまりから、さまざまな騒動が巻き起こっております。これはもはやすでに人道問題でありますし、法律のきらいで政治のお好きな総理大臣のお答えになる絶好の話題ではなかろうかと、私は感ずるのであります。  また、私は漁業権の問題につきましても、これはひどい問題が起こっておりまして、漁業権を売り渡そうという動きがあったことを確信いたしました。これは沖縄の漁業会社に対して、グアム島の司令部からの指導によりまして、これを一括して売ってしまおうという動きがございました。そういうような動きが起こった場合に、これが現実のものとなった場合に、今度帰島される島民の権利はどういうふうに対処するべきか。時効の中断というような法律的な一方的な処置をとるべきなのかどうなのか。また、沖繩の住民は、このやり方を見ながら、自分たちが今度本土へ復帰した場合にどういう処置がとられるか、欧米側の住民と似た権利利益関係のもとにこの問題を見ているわけであります。したがいまして、この問題に対しては、特に人情あふるるところの御返答を賜わりたいと思うのであります。お願いします。
  155. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどのお尋ねは、軍の基地、そういう意味でございました。ただいまは民生の面からのお尋ねでございます。これはたいへんな実情にあるだろう。私どもも実情を明らかにしない。だから、何といっても早く現地を調査して実情を把握する、これは来年早々やろうと、いま申しているわけであります。それで、これは総理府にただいま小笠原返還対策本部、それを設けて、そこで実情を調査して、そうして再建復興その他について万遺漏なきを期していく、こういう考え方でこれと取り組むのであります。ただいまだいぶん先ばしった——御心配のあまりとはいえ、先ばしったお尋ねでございますが、私ども何といってもまだ実情を十分把握しておりませんので、これをまずすることが必要なことのように思います。
  156. 渡部一郎

    ○渡部委員 先ばしったお尋ねというのは、私の質問がですね。非常に失礼な言い方じゃないかと思いますよ。これは現実問題として漁業権の売却問題が起こっているのだし、財産問題に対しては、新聞紙上でもはや騒がれている問題ではございませんか。それに対して先ばしったというのは、ちょっとおかしいのではございませんか。ぼくはまじめに伺っているのですよ。
  157. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私もまじめに答えておるのです。それはいま申しましたように、御心配のあまりとはいえ、まだ実情を把握していないから、それで私は先ばしったと言ったのです。この点は御了承はいただけるのではないですか。
  158. 渡部一郎

    ○渡部委員 先ばしった質問ですか。
  159. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 とにかくもう返ってきた、そういうことから次々にお尋ねがございますけれども、実情をまず把握しろとおっしゃるのが、私は順序だろうと思います。
  160. 渡部一郎

    ○渡部委員 私は、総理がきっと口がおすべりになったのだと思うのです。無理もないことだと思うのです、連日でお疲れですから。ですから、私はあえてそのことを追撃するつもりはございません。  次へまいりまして、小笠原返還について、今度は奄美大島の、奄美群島関係の返還の際の協定の交換公文を用いない、こういうようなことが言明されたようでございますが、このことは事実でございますかどうか。交換公文の方式については、米軍の基地がほんとうに自由に、この地域に対してまた米軍の基地の拡張が、あるいは戦闘行動が、かなり自由に使われるような立場のものでございまして、私たちは小笠原返還にこういう方式が用いられるということは、非常に危険だと思っております。幸いにして交換公文の方式は用いないと言明されたようでありますけれども、これはほんとかどうか、確認をしておきたいと思います。お願いします。
  161. 三木武夫

    ○三木国務大臣 今度の場合は交換公文をつくる必要はないと考えております。
  162. 渡部一郎

    ○渡部委員 公換公文をつくる必要がなければ、私は、いままでの間、交換公文のかわりに同趣旨のものを条約本文に入れたり、あるいは議定書という形で入れてしまったり、あるいは往復書簡にして入れたり、あるいは合意議事録にしてみたり、あるいは暗黙の了解にしてみたり、そういうやり口がしばしば使われておるのでありますが、そういうことも、そういう方式もとらないと了解してよろしいでしょうか。確たる御返事を伺っておきたい。
  163. 三木武夫

    ○三木国務大臣 今度の協定は、ごく簡単なものにしたい。だから、いろんなそういうふうな複雑なことはいま予定しておりません。そういうものを複雑に、交換公文とかその他いろいろなものをつける必要はない、簡単な協定にしたいと考えております。
  164. 渡部一郎

    ○渡部委員 暗黙の合意もないと見てよろしいのですね、そういう問題については。今度の交換公文と同趣旨のものは、本文中にも暗黙の了解にもないと見てよろしいのでしょうか。
  165. 三木武夫

    ○三木国務大臣 何にも協定以外に暗黙の了解など必要とは考えておりません。
  166. 渡部一郎

    ○渡部委員 それではくどいようでありますが、そうしますと、小笠原に関しては、基地の自由使用ではない、本土基地並みになる、交換公文方式もとらないし、同趣旨のものを本文やその他の形でつけ加えることもしない、こういうわけでございますね。  それでは次へ参りまして、日米共同声明に申しておりますが、この中におきまして、「この地域の防衛の責任の多くを徐々に引受けるという総理大臣が表明した日本政府の意図を考慮に入れるであろう。」というような文章がございます。また「日米両国共通の安全保障上の利益はこれら諸島の施政権を日本に返還するための取決めにおいて満たしうることに」合意した、という約束がございます。この件からまいりますと、要するにこの地域の日米の安全保障上の責任というものは、この地域の防衛の責任というものは、日本が徐々に引き受けるものであって、そうして徐々に引き受け、そうしてだんだんと要するに肩がわりをしていく、そういう意味であると思いますけれどもどうでしょうか。
  167. 三木武夫

    ○三木国務大臣 返還のときにすぐに引き受けるものもありますし、すぐに引き受けられないものは徐々に日本の責任を拡大していこうという意図でございます。
  168. 渡部一郎

    ○渡部委員 もう一度お伺いしますが、この小笠原諸島の、返還になるといわれるところの地域というものは、沖ノ鳥島等の諸島も含むのかどうか、その範囲についてもう一回明確にしていただきたいと思います。   〔委員長退席、藤枝委員長代理着席〕
  169. 三木武夫

    ○三木国務大臣 沖ノ鳥島も含みます。小笠原列島、火山列島、南のほうにある徳之島も入ります。
  170. 渡部一郎

    ○渡部委員 もうちょっと正確に答えていただけますか。
  171. 三木武夫

    ○三木国務大臣 小笠原列島、火山列島、それから南にある南鳥島、これも入ります。
  172. 渡部一郎

    ○渡部委員 それから……。
  173. 三木武夫

    ○三木国務大臣 沖ノ鳥島も入ります。
  174. 渡部一郎

    ○渡部委員 じゃ次に参ります。  しからば、この地域の防衛をだんだん肩がわりするのでありますが、アメリカは一体この地域のどこを守っていたのであるか、それを総理ひとつお願いします。
  175. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 硫黄島あるいは父島等に基地があったようでございます。
  176. 渡部一郎

    ○渡部委員 が然寡黙におなりでございますので、もうちょっと御説明をお願いしたいです。つまり、そこにいたのではなくて、どこを担当していたかという防衛範囲を私は御質問申し上げております。
  177. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはしばしば言われておりますように、日本を含む極東の範囲、そういうところの役割りをしておる、かように思います。しかしながら、小笠原で果たしておる範囲は、そう強力なものではございません。御承知のように、硫黄島に飛行場はあると申しましても、たいへん簡易な飛行場でございますし、また父島、これはやはり海軍の一つの要港的なものでしょうが、そうたいしたものではないように聞いております。
  178. 渡部一郎

    ○渡部委員 そういたしますと、総理大臣は、日本を含む極東を全部この地域が守る一環になる。こういう意味でございますか。
  179. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アメリカはおそらくそういう意味でいままでやっていたと思います。しかし、私どもが今度この地位をアメリカにとってかわる場合には、日本は申し上げるまでもなく日本の領土、領空、領海、それより以上のことは考えない。いわゆる守るにしても範囲は非常に限定されている。しばしば申しますように、極東の平和と繁栄の中に日本の平和と繁栄もある、かように思いますが、しかし私どもは、この日本の領土から外へ出ていくことは考えておりませんから、そこに誤解のないようにお願いしたい。
  180. 渡部一郎

    ○渡部委員 私は大いに誤解しておるのです。それは総理、先ほどは極東、日本を含む極東とも申されました。米軍がこの地域を守っておる。極東及び日本を守っておるのだ。そうしたら、それを除々に肩がわりするのだ。それは先ほどお認めになりました。そうするならば、それを肩がわりするということは、その全域を除々に引き受けてくることだろうと思うのでありますが、領海、領空、領土のごとき小さいものではなくて、総理は言わず語らずのうちにその事実をお認めになったのと違いますか。
  181. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それはもちろん違いますし、渡部君も誤解ないだろうと思います。私はもう何度も申し上げておるように、日本の憲法を守る、また日本の各種法律を守る、これは前提でございますから、その範囲に限られておる、これはもう御承知のとおりであります。
  182. 渡部一郎

    ○渡部委員 私は、いま総理がはからずも日本を含む極東の範囲を米軍が守っていてと言われて、その肩がわりをするということになりますと、この地域全般にわたりまして非常な海外派兵の感じも深いのでありますし、従来の日本の憲法に規定されている条項から、防衛庁の守備範囲を広く広げた行き方ではないかと思うのです。私は、この間の成田さんが少しおやりになりましたけれども、この共同声明の中には「これら諸島の施政権を日本に返還」とか、「これら諸島の日本への早期復帰」というふうに、諸島ということばが使われております。これは施政権と返るべき領土について諸島ということばが使われておるわけであります。ところが、防衛義務のほうは、「この地域の安全をそこなうことなく」と、地域ということばが使われております。成田さんに応答されましたとき、総理はにこにこお笑いになりながら、そんなにきびしいもんじゃございませんというふうなふんわりした御返事で逃げられようといたしました。私は日本の政府がそれほどまでにことばにいいかげんであるとは思いませんし、こういうようなコミュニケの一つに至るまで外務官僚の皆さん方がどんなに辛苦してつくられたかは、よく了知している一人であります。もし総理がそういうことをお言いになるのだったら、私は違うのじゃないか。この諸島とこの地域というのは、この地域というのは、要するにこの諸島そのものの領海、領空あるいは領土をさすものではなくて、この地域というのは、南鳥島あるいは沖ノ鳥島等を底辺とするところの、八丈島を三角形の頂点にする広大な地域に対して、あるいは先ほどの佐藤総理の言明によれば、日本を含む極東という地域に関しての防衛のこの地域というのがこれの正解ではなかろうかと私は思うのですけれども、総理の御答弁お願いします。
  183. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどお答えしたとおりであります。
  184. 渡部一郎

    ○渡部委員 ますます疑わしい御返事になってまいりましたので、私はさらに申し上げますと、この「諸島」ということばと、「地域」ということばを全く同じだと了解されるのか、違うと了解されるのか、そこについてお伺いします。
  185. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 そのコミュニケにございます「この地域」というのは、小笠原諸島の領土、領海、領空でございます。
  186. 渡部一郎

    ○渡部委員 地域ということばは、そういうふうに使われた前例がございますでしょうか。
  187. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 ちょっといま前例と申されましても頭に浮かびませんが、ともかくこのコミュニケのこの場所にございます「この地域」と申しますのは小笠原諸島、いま申し上げたとおりでございます。
  188. 渡部一郎

    ○渡部委員 私は申し上げたいのですが、そういうのはございません。そしてこのように使い分けた理由は明らかでありません。どうしてこういうふうに諸島ということばと、地域ということばを分けて使われたのか、それを説明していただきたい。
  189. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 コミュニケの小笠原に関します第一節でございますが、その最初の文章には、返還に関する取りきめによって、両国共通の安全保障上の利益をそこなうことなく返還の取りきめを結ぶことができると、こういう趣旨のことがまず書いてあります。その場合の「両国共通の安全保障上の利益」と申しますのは、これは地域的に申せば、まさに日本を含む極東全部にわたる問題でございます。次に文章二つございまして、二度この地域という字が出てまいりますが、その場合の「この地域」は、わが国が防衛の責任をとる地域でございますから、これは申すまでもなく小笠原の領土、領海、領空ということになります。それからさらに四番目の文章がございまして、日米安保条約、地位協定の規定に従って、必要な施設区域を残すということがございますが、この目的は、日本を含む極東地域の安全保障、こういうことになるわけでございます。
  190. 渡部一郎

    ○渡部委員 私はいまの御説明では、だれもがおそらくは納得しないのではないかと思うのでございます。そしてこの地域ということばに含まれる広大な防衛責任分担範囲というものに対して、日本国民は不安の目を向けるしかないのではなかろうか、こう思うのであります。もしこれらの諸島が、言われるようなまことに小さいものであるとするならば、領土、領海、領空のごときものであるとするならば、領海は日本政府の場合三海里説をとっておると思うのであります。そうすると、日本の防衛庁は、この地域の防衛に関しては、島の回り三海里の小さいワクの中だけ、そしてその回りの小さい水だけ、そしてそれから空へ伸びるところの、およそ成層圏に達するところの細長い円筒だけをお守りになるのか、その点を私はお伺いしたいのであります。
  191. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 返還された場合は、お説のごとく領空といえばずっと高いところまでいきます。それから領海は三海里説と十二海里説とがございまするが、いずれも領土よりはそう広くない地域でございます。すなわち、総理のいつもおっしゃっているように、領土、領海、領空、これが、協定ができればわれわれの防衛する地域になるのでございまして、まだならないのでございます。
  192. 渡部一郎

    ○渡部委員 そうすると、アメリカはいままで日本を含む極東地域を総理の言われるように防衛しておった。今度日本がそれを引き受けるにあたっては、日本の防衛庁においてはその約四十の細長い針のような諸島、四十本の針の柱だけを守る、こういう意味が条文に盛られる、こういう意味でございますね。どうでしょうか、そういうわけですね。
  193. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 たとえば島根県と、同じ島根県の中の隠岐島、この間は八十キロございます。その間に公海がございまするが、その公海は守らないのでございます。われわれが守るのは隠岐島の領土、領空、領海である。奄美大島と鹿児島県についても同様でございます。今度の日本本土と小笠原諸島との関係は、従来例がたくさんあるのでございまして、その例によって、賢明なる渡部君にも御了解願いたいと思います。
  194. 渡部一郎

    ○渡部委員 賢明に理解をいたしまして、そういうことになりますと、先ほどお話がございましたところの日米共同声明において、「この地域の防衛の責任の多くを徐々に引き受ける」という、この共同声明が空文になる。そして「これらの諸島の施政権を日本に返還するための取決めにおいて満たし得る」。この日米の安全保障の利益はこの条約によって満たし得るというのが満たされなくなってくる。したがって、この日米共同コミュニケはうそだ。こんなものは廃棄しちゃって別のものをつくるのだ、こういう意味でございますね。
  195. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これはうそではありません。それはなぜかといえば、徐々に防衛の責任を引き受けるというのは、小笠原に軍事施設があるわけですから、それを一ぺんに日本が引き受ける場合もあるし、それから徐々に日本の責任に返ってくるものもある。それは小笠原の領土内における軍事施設、あるいは領海における軍事施設、これをすぐに引き受けるものと、徐々に引き受けるものとがあるということをこれは書いてある。それからむろん日本の直接の防衛の範囲はいま言った範囲でありますから、それ以外のことは防衛の責任の範囲外である。だから、コミュニケは全く正しいことを書いてあるということでございます。
  196. 渡部一郎

    ○渡部委員 私はこの問題につきましては全く納得いたしかねるのであります。ただいまのように、共同コミュニケの文を重んじれば、自衛隊は、あるいは日本は、この地域全体にわたるところの防衛を引き受けなければならない。また針の柱のような細い領土、領海、領空だけを認めると総理が言明されましたのが騒動の始まりなんですけれども、そういうようにいうのならば、この共同コミュニケの文章は空文になってしまう。要するに、総理が申されておられましたことがこの矛盾の始まりなのであります。ということは、私どもがかねてから主張するように、この地域の防衛問題については非常に問題がある。すなわち、アメリカとの間で協定ならざる暗黙の合意のもとに、日本がアメリカの極東の防衛に関する責任を肩がわりしていくところの道である。そういうことがこの協定の背景にありながら、協定の文章上の解釈でのがれようとするところにこの失敗がある。私はこのようないいかげんな弁明と説明と協定文の積み重ねでは、日本国民の合意も、日本国民政府に対する信頼も、何物もがここからは生まれない、私はかように感ずるのであります。
  197. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 共同コミュニケ、たいへん信頼が置けないというお話でございます。しかし、私どもはしばしば申し上げましたように、私は憲法を守ります。また各法律も守ります。したがいまして実際に今後どうなるか、そして共同コミュニケがいま渡部君が言われるような心配が現実に出たら、それは私も頭を下げるというか、私は、責任をとります。それまでは時日を待ってください。  ただいまの私のことばじりからいろいろなことに発展して、共同コミュニケ自身信用がないんだ、また、日本政府が何をするかわからないんだ、憲法も、ときに拡大、拡張解釈する、こういうような御批判のようでありますが、現実にそういう事態が起きてからやってください。お願いします。
  198. 渡部一郎

    ○渡部委員 総理、そうおおこりになり、ませんで、私の論議を聞いていただきたいのです。  それでは、私は総理のおっしゃることを再確認いたします。  この地域に事前協議事項は適用される。——よろしゅうございますね。この地域に交換公文の方式は、交換公文にあってもなくても、そういう方式はとらない。それから、基地は自由使用にはならない。それから、日本の防衛というものは、この地域においては、総理が先ほどからたびたび弁明されたように、領土、領海、領空、こういうものである、これは今度結ばれるところの協定に盛られてくる、こういうことでございますか。
  199. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどから申しておりますように、本土並みになる、それを前提にしてお考えになれば、ただいまのような具体的な個々の問題、これはみんな御了解がつくだろうと思います。本土と別なようなことにはなりません。
  200. 渡部一郎

    ○渡部委員 いまのはよろしゅうございますね。  それでは……(「首相うなずくと書かなければだめだぞ」と呼ぶ者あり)それは、総理は、いま私の言ったことは確認されましたですね。よろしいですね。「総理はそこでうなずかれた」と書いていただきます。(笑声)  それでは、私は次に移りたいと思います。  今度の日米共同コミュニケを振り返ってみますと、私どもは非常な心配をさらに感ずるわけであります。それは、この共同コミュニケの文章の中にいろいろな問題があるからであります。それは一言にして申しますと、日本外交の姿勢というものと、それから、アメリカの極東外交の姿勢というものの両方のどっちがここにあらわれているかという問題であります。ここにあらわれているのは、明らかにアメリカの対アジア政策、対極東政策そのままが認めさせられて、佐藤さんの同意されたお姿が痛ましくもあらわれているのではなかろうかと私は思うのであります。ちなみに一つずつ申し上げますと、第二項のところにございますが、核不拡散条約の早期締結を含め、とございます。核拡散防止条約のことだろうと思うのでありますが、これは、日本の核エネルギー時代の興廃を決する重大な条約であると思います。したがいまして、核の平和利用が安全に確保されるかどうかが、日本国内の大問題であったわけであります。ところが、そのような保留が何らなく、いきなり「早期締結を含め、」というのは、かねてからアメリカが日本核平和エネルギーの開発に対して重大な疑惑を持っておった、そういう事実をそのままここのところに書いてしまったのではなかろうか。佐藤さんは、後世において、核エネルギー時代に日本が立ちおくれをする重大な機運をつくった総理大臣として記録されるところの歴史的な条約になるのではなかろうかと私は心配するのであります。  また、この中にはこんなこともあります。総理大臣は、この北爆の問題については米軍の立場に対する支持を表明なさいました。このようなことというものは、いままでの私ども日本国民にとってはきわめてショッキングなことであります。下田大使が、北爆の問題について、日本国民の大多数は北爆を支持していると申されたことがございます。私どもはそれを聞いておこりました。日本国民の大多数は北爆なんか支持しておりません。そうして、こういうようなばかばかしい行為がなぜ早くやまないか。そのために日本政府は何かやってくれないかという、これこそ日本国民のほんとうの願いじゃなかろうか。私はそう思うのであります。また、したがって、これもまたアメリカの言うとおりの条項じゃないのか。  また、次の項目にこういうことがございます。その国力に応じて日本がアジアの平和と安定のために積極的に貢献する。要するに、アジア問題に対しては、アメリカのかわりに、今後いよいよその経済的な、軍事的な貢献をするという内容がこれは含まれているやに思うのでありまして、これまた、わが国の政策とは違って、私は、大きな心配を感ずるのであります。  また、第七項におきましては、総理大臣と大統領は、沖縄におけるところの軍事施設が、日本及び極東の自由諸国の安全を保障するために重要な役割りを果たしているということに合意されてまいりました。これまた、日本国民の多大な異論のあるところではなかろうかと思うのであります。  また、第八項目におきましては、いわゆるドル防衛の問題に及びまして、両国それぞれの国際収支の全般的な均衡を回復することが大事だというような項目がございます。つまり、ドルを防衛することが大事だということでありますが、いま、国際収支の均衡を失しているのはむしろアメリカのほうであり、ベトナム戦争の余波を受けているのは向こうのほうであります。私は、このときにこういう条項を結ぶということが、貧弱な日本の経済力をもってして、アメリカ経済の奴隷となる行き方になるのではなかろうかという、日本国民の意見を代弁したいと思うのであります。  私たちは、こういうことを見てまいりますと、今回の日米共同コミュニケのどこに日本外交の基本方針があったのか。日本外交の基礎方針として言うべきは平和であり、自主外交であり、そして、いずれの戦闘グループにも将来は入らないような完全中立の路線を目ざして鋭意努力を続けていくことこそ、歴代の内閣の最高の任務ではなかろうかと思うのであります。そういう観点から見ますと、言々句々たる末梢のことばではなく、総理は、本格的に日本の方向を歩もうとしておられるのか、やむなくジョンソン大統領の前にあえなくも屈せられて、このような協定を結んで、残念ながら帰ってこられたのか、沖縄返還のために、十を捨て、百を捨ててこの協定を結ばれたのか、私は、それを日本国民の前に明らかにしていただきたいと存ずるのであります。
  201. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ御批判をいただきまして、私も謙虚に御批判を伺ったのでございます。しかし、公明党を代表しての御意見としては、私、どうも納得がいかないことが多い。私は日本の総理大臣でございます。したがいまして、日本の国益、これを守るために、それが私の責務であります。また、その立場においてアメリカに参りました。アメリカから呼びつけられたのじゃございません。私のほうから出かけたのです。そして、私のほうから沖縄問題も提案し、そして、その他の問題にも積極的な意見を述べたのであります。まるっきり、私がアメリカの一高等弁務官であるような説は、これはとんでもないお話であります。もし、そういうことでないならば、いまの最初の点で、日本の外務大臣はアメリカの外務大臣かとか、総理は一体何を考えて行ったんだというような、こういうことばだけは、私はややオーバーな表現ではないかと、かように思いますので、お願いしたいと思います。  そこで、ただいま、この第二の項目について、核の問題についてのお話が出ました。核不拡散条約については、これは皆さんも賛成され、しばしば外務大臣が中心になりまして、わが国論の統一もはかってきたと思います。これはよもや、公明党の方も、その精神に賛成であることはお忘れはないだろうと思います。私どももその精神に賛成しておる。そういう意味からは、これが早く締結されることが望ましいのではないか。それが、いわゆる精神に賛成なものを具体化するゆえんではないかと思います。しこうして、いまあげられました平和利用については、これはもちろん、われわれもおくれてはならないと思う。したがって、その点については、この核不拡散条約の締結に際しましても、それらについても十分主張するという、これはもうかねての問題でございますし、この点では、よもや誤解があろうとは思いません。  また、その次に、アメリカの極東政策に対して私どもが賛成しているという、これは、いわゆる自由主義国、そういう立場に立ってものを考えておる。ものの考え方は、そういう意味では同一だということであります。したがいまして、このベトナムの問題につきましても、この中に「米国が南ヴィエトナム人民の自由と独立を擁護するため、」云々、こういう事柄については私どもも賛成でありますし、したがいまして、おあげになりました北爆を支持する、こういうことは書いてはございません。ただ「紛争の正当かつ公正な解決を求めるという米国の立場に対する支持を表明するとともに、」こういうようにはっきりなっております。私どもも正当かつ公正な解決を求めること、これは望ましいことであります。しかし、私どもがアメリカに軍事協力してないことは、これはもう事実ではっきりしておりますから、よもや日本国民の間にわが政府が軍事協力をしている、かように考える者はないだろうと思います。また、中共に対するいわゆる封じ込め政策というものも日本の場合は明らかに違う。御承知のように、私どもは平和共存のもと、いわゆる政経分離の形においてこれと交渉しておる、こういうことでございますから、これまた違う。全部が同一ではございませんし、隷属するものではない。  以上のことを考えますと、第八についても何かお話しになりましたが、私は一々反駁はいたしませんけれども、私は国益増進のために使いをしたのでございます。私自身、これは国民の要望にこたえた、かように思っております。いま国内にいろいろの意見があるということを仰せになりました。これはそのとおりです。公明党のような御主張もございますし、共産党のような御主張もございます。それぞれの主張はみなあります。しかし大多数は私どもの政策を支持してくれる、かように私は確信をしております。今日までも日米安全保障条約のもとにわが国の安全は確保され、そのもとで今日の経済的繁栄があるのであります。またドルと円との協力体制、これは望ましい姿であります。私はそれらのことを率直に申し上げまして、そうしてこれが国民大多数の意見だ、絶対の支持を得ておるものであるということも重ねてつけ加えさせていただきます。
  202. 渡部一郎

    ○渡部委員 総理から御丁寧な御返答を賜わりましてまことにありがとうございました。この問題につきましては、私は追って他の委員会におきましてさらに詳細の議論をするべきであろうと思います。ただ申し上げておきますが、どろ舟に乗っている場合には浮き袋が必要であります。いつでもそうなのでありますが、米韓条約、米比条約、米タイ条約あるいはSEATO等の条約の中に非常に関係性を持つ日本といたしましては、国益を増進する立場からいつ戦争に巻き込まれるかもしれないという問題については考慮を払うのが当然ではなかろうか、したがって、私はその考慮を払う問題については、どう考えてみましても、この問題については日本の立場というものをさらに進んでアメリカとべったりくっついていく行き方ではなく、ある場合にはアメリカの行動をたしなめていく、ある場合にはアメリカのやり方からは離れていく、そうして東南アジアあるいは東洋の平和を目ざして、あるいは世界の非武装化を目ざして努力を払うのが正しいのであろう、それがより根本的な国益の増進の道であろうということを私は申し上げたかったわけであります。これについては御返答は要りません。  次に、私は内政問題に移りたいと思います。時間が非常に経過いたしましたので、あとは簡単に御返答賜わりますようお願いいたします。  まず、小笠原の返還にあたりまして、島民の引き揚げ者の皆さま方、現在日本におられる方々が非常に困難をされておるようでございます。その問題はいろいろございますけれども、政府からいろいろ補助、東京都から補助等が行なわれましたが、そのお金をもちまして、島民の共同事業として樹立されておりますところの小笠原漁業なる会社がございますが、その会社につきましてとかくのうわさと騒動と紛争が絶えないようでございます。少なくとも政府の出資金であります以上は、島民の平和と福祉をはかってつくられた会社である以上は、この問題について、できましたら総務長官か、どなたかに内容の御説明をいただきたいと思います。
  203. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 お答えいたします。  ただいまの小笠原漁業という会社のことにつきましては、詳細承知いたしておりませんから、担当官からお答えいたさせます。
  204. 山野幸吉

    ○山野政府委員 お答えいたします。  昭和二十九年に平和条約発効前の帰還分の見舞い金としまして、千七百六十五万円という金を引き揚げ島民に交付したのでございますが、東京都からも同年及び翌年に何がしかの金が出ておるわけでございます。これらをどのように使うかという問題で、当時政府部内におきましても、個人にそれぞれささいな金を配分しないで、まとめて何か事業をやって島民の福祉に資したらどうだというサゼストもあったかと思いますが、したがいまして、この小笠原島帰郷促進連盟が中心になりまして、農林漁業金融公庫等から借り入れしまして、漁船を建造いたしまして、二隻の漁船をもって漁業を営んでいた、このように聞いておるわけでございます。ただいまお話に出資金とございましたが、出資金ではなく、政府としましては、見舞い金を交付したわけでございまして、その後どのように運営されておるかということについては、詳細はつまびらかにしておりません。
  205. 渡部一郎

    ○渡部委員 これは十分お調べになって、指導をお願いしたいと思います。と申しますのは、この引き揚げ島民がなけなしのお金をはたいてつくったようなこの会社が、せっかくできました会社から船が——二そう買ったわけでありますか、それが消えてなくなってしまったわけであります。それは要するに放漫経営、もしくは会計上のいろいろな問題、島民間の争い等が問題になっているようであります。  また、次にアメリカ政府から引き揚げの方々に対して六百万ドル見当の見舞い金があったようであります。これの分配には総理府がこれに関与せられたようでございますが、この帰郷促進連盟もしくはその他の四団体が島民から五%ないし六%の費用を経費その他として受領しているようでありまして、しかも私の関知するところでは総理府からの示唆によりまして、こういうお金を集めるようにヒントが与えられたようであります。そういたしまして、そのお金の、経費がどうなったかについての報告がどうやら行なわれていないようであり、したがいまして、その問題は今日に至るまで長い間そういうような未決済の状態というものは決して好ましい状態ではない。したがいまして、配分金のところまでおやりになった総理府としては、この問題について適切な処置を打たれて、島民間の紛争の根源をなくすようにしていただきたい、こう希望するものであります。ひとつお願いします。
  206. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 ただいまの六百万ドルの米国からの資金の問題につきましては、詳細はたぶん御承知であろうと存じますので、もし必要がございますれば、配分の問題を申し上げます。なお、その間におきまする御質問の詳しい点は詳細私、存じません。担当官をしてお答えいたさせます。また、そういうことがございませんように、われわれのほうでは今後ともに十分注意もいたし、警戒もいたしてまいります。
  207. 山野幸吉

    ○山野政府委員 お答えいたします。  御指摘のとおり、六百万ドルを配分するにあたりまして、当時小笠原関係の三団体からこの配分にあたってあらかじめ立てかえておいた旧島民の越年資金及び団体の運営費等について、それを差っ引いて交付していただけないかという要請が三団体からございまして、そこで、政府といたしましては、簡単に差っ引くわけにはいかないので、各個人に、それぞれの人に承諾書あるいは委任状をもらいまして、まさに越年資金及び団体運営費としてこれこれの金額を三団体に渡してもらってけっこうでございますという委任状をとりまして、その委任状をとった人だけにつきまして、交付にあたって、当該金額を差っ引いて三団体に交付したものでございます。したがいまして、その三団体がそれぞれその金額をどのように処理されておるかは私どももしさいには承知しておりません。島民の受領すべき方々が、みなそれぞれの経費について承諾をしておられるわけでございます。
  208. 渡部一郎

    ○渡部委員 総理お願いいたします。  この小笠原問題につきましては、小笠原協会におきまして、島民の人々を財団法人といたして掌握をせられ、そしてこの小笠原協会につきましては、総理の認可によって、あるいは経理の報告等が行なわれる団体になっているようであります。この首脳部が、こういうようないろいろな問題が起こっております関係上、適切な処置をおとりいただきまして、島民間の紛争の処理あるいは適切な帰島に至るまでの住民福祉という問題について御検討賜わりたい、これをひとつお願いしたいと思います。
  209. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど田中国務大臣からもお答えしたと思いますが、対策本部を至急つくる、その本部の中に、東京都あるいは引き揚げ者の団体等からも本部にやはり参画していただいて、そうして実情をとにかくできるだけ早く実際に踏査しまして、調査を終えて、しかる後に、今度はそれぞれにどういうように帰っていくか、またどういうように開発していくか、これをじっくりと取り組まなければならない、かように思います。おそらく全部の方が全部お帰りになるとも実は思いませんが、おそらくよほど変化がございますから、いままで帰っておるのが、わずか三百名、おそらく五百名以内だと思っております。また全体で一万名というような言い方もしますが、大体七千名前後ではないかと思います。そのうちに、よほど変わっておりますし、若い連中から見ると、遠い島に帰るという、そういうこともよほど事情が変わっておりますから、これらが帰島ができる、帰島希望者について、また帰島する者が安定ができるような開発計画も立てなければならないし、過去の権利義務の話も、渡部君先ほど御指摘になりましたように、その後非常な変化があるだろう。しかし、それにいたしましても、これらのものも明確にする方法はどこかにあるかわかりませんから、そういう点で過去の権利も明確にし、今後いかにこれらの島々を開拓していくか、それらとも合わして、そうして積極的に政府が力をかす。そうしてこの帰っていく人たちがしあわせであるような、そういうことを積極的に政府も努力するつもりでございます。いましばらく時間をかしてください、お願いします。
  210. 渡部一郎

    ○渡部委員 それでは次に、財政についてお伺いしたいと思います。時間がございませんために恐縮でございますが、質問を全部、財政、災害、中小企業の問題につきまして通してお伺いさしていただきますので、総理及び関係大臣に御返答賜わりたいと思います。  財政について、経済の見通し等につきましてはすでに論議されておりますので、直接的に公務員給与の問題についてお伺いいたします。一省一局削減等の種々の措置を行なえば、公務員の労働力を効率的にしなければならないと思いますけれども、その点についてどういう考えをお持ちでありましょうか。  第二に、給与が人事院の勧告を無視するようでは、行政上に大きな支障になると思いますが、この点についていかがでありましょうか。  また、勧告の実施というものは、今年度あるいは来年度等において完全実施を行なう決意があるかないかをお伺いしたい。  次に、第四番目、災害対策でありますが、現在は災害の復旧に対して、原状復旧がもう第一番にあげられておるようでありますが、原状復旧よりも改良復旧としなければならないという点について考えれば、予算があまりにも少ないのではないか、こう考えられるのでありますが、このような改良復旧の実現に対してどう努力をせられるおつもりであるか。  それから第五番目でありますが、最近の中小企業の倒産であります。日銀の公定歩合引き上げ、窓口規制の強化等によりまして、おそらくはその勢いをますます増すことになり、年末資金をはじめ中小企業金融の行き詰まりから、よほどの事件が起こると想像されるのでありますが、このような中小企業に対する金融措置の拡大を行なうおつもりはあるかどうか。また、零細企業向け国民金融公庫の増資を行なうつもりがおありであるかどうか。  以上につきまして、総理及び関係大臣のお答えをいただきたいと存じます。  以上をもちまして、私の質問とさしていただきます。
  211. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 お答えします。  公務員の給与の問題に関しては、従来の欠陥を除去して、できるだけ人事院の勧告に従い得るような予算編成方針考えたいと思っております。  それから、災害につきましては、これは災害費は決していまのところ少ないとは私どもは思っておりません。災害復旧も、単なる災害復旧ではなくて、改良復旧という部分も相当に取り入れられておりまして、今年度災害の復旧につきましては、五百六、七十億の処置をいたすことになっておりますし、また今年以前の災害についての経費は、御承知のように、当初予算に八百億以上を計上してございますので、今年度の災害関係予算は千三百億円をこす予算でございまして、災害復旧費としては決して過小なものではないというふうに思っております。  それから、金融政策につきましては、御承知のように公定歩合が引き上げられ、日銀の窓口規制が行なわれておりますが、まだ全般の引き締め政策の効果というものがあらわれてまいりません。おそらく、いつも申しますように、一月から三月にこの効果が相当きつくあらわれてくるのじゃないかと私は思っております。それに先立って、この年末金融において中小企業に多くしわが寄るということは私どもも好みませんし、そういうことのないように今回の引き締め政策には気をつけてまいったのでございますから、したがって、そういう全般的な金融引き締めをやっておる際ではございますが、政府関係の中小金融機関三機関には御承知のように、下半期の資金千六十億円を新たに追加するということをいたしておりますし、それから民間金融機関の第三・四半期における貸し出し目標額ということも一兆九百億円、昨年度の一割五分の増加を目標としてこの年末金融を遺憾ないようにということに努力しておることでございますので、引き締めのときではございますが、中小企業に対しては特別の配慮をしておるつもりでございます。
  212. 藤枝泉介

    ○藤枝委員長代理 これにて渡部君の質疑は終了いたしました。  次に、谷口善太郎君。   〔「谷口君、三十分で頼むよ」と呼ぶ者あり〕
  213. 谷口善太郎

    ○谷口委員 私は、日本共産党を代表して二、三の質問をするのでありますが、時間がいまお聞きのとおり三十分ということになっております。簡単直截に私は聞きますから、政府の側もどうか簡単にお願いしたい。これは御協力を願っておきます。  最初に確認事項でありますが、この国会での総理の御答弁あるいは日米共同声明などを総合しまして、沖縄の返還の問題では、返還の時期が一つもきまらなかった、こう確認してよろしゅうございますか。
  214. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 返還の時期はまだきまっておりません。   〔藤枝委員長代理退席、委員長着席〕
  215. 谷口善太郎

    ○谷口委員 次に、小笠原が返った場合に自衛隊を派遣されるということは、先ほどの渡部委員質問の中に明らかにされましたが、沖縄が返った場合はどうなりますか。
  216. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まだちょっとその辺は早い。沖縄が返ってくるときに明確にいたします。
  217. 谷口善太郎

    ○谷口委員 そうしますと、沖縄が返ってくる時期にこの問題が考えられる、こういうふうな御答弁のようでありますが、すでに新聞にも報道されておりますように、防衛庁のほうでは、沖縄に対する自衛隊派遣のいろいろ準備をなさっているという報道が出ております。あれは虚報でしょうか。
  218. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 防衛庁はどういうことをするか、ただいま、もちろん責任がある役所ですから、いろいろなことを考えるだろうと思います。新聞に出ているのが全然虚報とは思いませんが、しかし私ども政府としてたびたびこの席で申し上げましたように、これについてはただいま白紙の状態だ、かように御了承いただきたいと思います。
  219. 谷口善太郎

    ○谷口委員 白紙という名の準備がなされているということが明らかになりました。  それでは沖縄の返還前についてはどういうことになりましょう。
  220. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 返還前はアメリカが施政権者でございます。私どもは本土との一体化をはかる、こういう意味で日米琉諮問委員会を設置して、そうして一体化に努力する、こういう態度でございます。
  221. 谷口善太郎

    ○谷口委員 絶対に返還前には日本の自衛隊の派遣ということはない、こう断言されますか。
  222. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いわゆる自衛隊派遣、こういうことは、隊派遣というようなことは私考えておりません。
  223. 谷口善太郎

    ○谷口委員 この点も明確に承っておきます。総理は、核持ち込みは絶対に認めないと繰り返しきょうまで言ってこられておりましたが、私どももよく承知しております。沖縄の施政権が返還された場合を含めて、今後もその原則を堅持されますか。
  224. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 本土についての現時点における考え方、これはもう非常に明確です。また沖縄が返還された返還の時期にどういう形にするか、これは先ほど来申し上げておりますけれども、ただいま白紙でございます。
  225. 谷口善太郎

    ○谷口委員 昨日の衆議院内閣委員会で増田防衛庁長官は、やや総理に似たおことばですが、若干ニュアンスが違っている御答弁をなさっていらっしゃる。それは、本土はもちろん三原則は堅持する、しかし沖縄の場合は目下検討中だというような、そういう趣旨の御答弁をしていらっしゃいますが、これはいかがでしょうか。
  226. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 おそらく防衛庁長官も私と同じように、本土においての現時点では、はっきりした態度がございます。沖繩については研究中ということは、ただいま結論を得ておらないのですから、言いかえればこれは白紙の状態だと、かように思います。
  227. 谷口善太郎

    ○谷口委員 検討中ということは、まだ結果は得られないにしましても、本土で現在行なわれております三原則以外の方法を考えるから検討中なのであって、非常に重大なことであります。この点については、これは防衛庁長官いらっしゃいますか。——それじゃ総理、ひとつよろしく。
  228. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお答えしたとおりでございます。防衛庁長官は、おそらく国の安全確保、それに最善を尽くさなければならない立場にございますから、絶えずいろんなことを研究しているだろうと思います。しかしそれが国策として取り上げられるまでには、もう一段階ございます。その段階になったときに、初めて積極的に外にも発表され批判されることになるのでございますから、いましばらく研究していることは、これは防衛庁の役目柄もうあらゆる研究をするだろう、かように私は理解をしていただきたいと思います。
  229. 谷口善太郎

    ○谷口委員 防衛庁長官はこうおっしゃっているのです。本土と沖縄とを分けて答弁する。本土については三原則を将来も貫くが、沖縄についてはそこが問題で検討課題だ、こう言っている。このことは、現在はっきり分けていらっしゃるわけですね、将来ではなく、いま。そうしますと、検討中であるか白紙であるかはそれは皆さんの巧妙なおことばで御表現なさったらよろしいと思いますが、現在の三原則を実行している本土とは違って、分けて考えるということを言っていらっしゃるのですから、これは核政策に対する佐藤内閣の重大な政策変更になる、こう認めざるを得ないのでありますが、これはどうでしょう。
  230. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどから私の態度、内閣の態度ははっきり申し上げました。
  231. 谷口善太郎

    ○谷口委員 国民は、こういう御答弁をいただきますと、きのうの防衛庁長官の御答弁その他を総合して、やはり沖縄は重大な変更があるものと受け取ります。私どももそうだというふうに見ておるのです。私どもはすでに日米会談が開かれる前から、この会談は核安保体制への日本の積極的な参加についての協議がなされるものだということを言ってきましたが、こういうふうに、どんなに巧妙な御答弁をなさいましても、本土と分けて考えるという考え方政府の中に公然と国会発言される以上、これはそういう変更があり、私どもの指摘したとおりだというふうに考えるわけであります。  そこで次に移りますが、一九六一年十一月の国連総会で、核兵器使用を国連憲章違反と宣言する決議案が上程されましたときに、当時の日本政府代表は、アメリカがこの決議案に反対したにもかかわらず、正しい立場を守って、敢然とこれに賛成投票をしております。そのときの投票の日本政府の代表の趣旨の原文がございます。長いから私、摘出して読みますが、こういうことを言っております。「あらゆる手段を用いて核戦争の惨禍が人類にふりかかるのを阻止することが必要であると信じ、この決議案が採択されるならば、核軍縮の分野における現実的かつ具体的進展のために好影響を与えるであろう。」これがこの趣旨です。これはある程度日本国民、つまり核戦争、核の被害を受けております日本国民の核戦争をやめろ、核兵器をやめろというこの願望を反映していると思うのであります。ところが去る十二月四日、国連政治委員会で開かれました同趣旨の決議案、これは核兵器使用禁止条約の成立促進を要望する決議案という決議案でありますが、これには日本政府代表は反対はしなかったけれども賛成せず、アメリカに追従して棄権をしております。どういう意味で棄権されたかを伺いたい。
  232. 三木武夫

    ○三木国務大臣 十二月四日の国連決議は、御指摘のように棄権をしたわけであります。その決議案は核兵器を使用しないという決議案、日本の主張はただ単に使用しないという、膨大な核兵器を持っておって、持っておる国の一方的意思で使用しないということでは不徹底である。有効な国際的な管理のもとに核軍縮を行ない、核兵器の貯蔵を削減し、そうして将来は核兵器を破棄する、こういうふうな核軍縮ということが伴わなければ、持つことはほうっておいて一方的に使わぬということだけでは不徹底である。もう少しやはり核軍縮、核兵器をなくしていこうということが伴わなければ、これはやはり大きな意義を持たないということで、これはしかし核兵器を使わないようにしようというのですから反対はいたしませんでしたけれども、決議の内容が不徹底である、こういうことで棄権をいたしたのでございます。
  233. 谷口善太郎

    ○谷口委員 その一方に、これも先ほど話題に出ましたが、核拡散防止条約につきましては、政府は積極的に賛成するということ、今度の共同声明にもその点が出ておるわけでありますが、これは非常な大きな矛盾ではないでしょうか。なるほど私どももこの決議案は徹底したものだとは思いません。これは当然核戦争を全面的に禁止するように、核の製造、貯蔵、実験、使用はもちろん、これは全面的に禁止すべきだと思うのです。ただその使用禁止だけでは、これは不徹底であります。しかし使用を禁止するということそれ自体、現在、核でもって世界に脅威を与えているアメリカのやり方に対しては大きな制約になります。それに賛成しない。一方に核拡散防止条約には積極的に賛成するというこの点はどうしてもわからない。これはいかがでしょう。
  234. 三木武夫

    ○三木国務大臣 核不拡散条約には、その精神に賛成である。しかし、条約に賛成ではあるけれども、核兵器を保有しておる国は核軍縮の意図を本文中に明確にすべし。ただこれから核兵器を持ってない国が新しく核兵器を持つことを防ぐということでは不徹底である。持っている国は核軍縮をすべし、この核軍縮の義務が伴わなければ一方的な条約である。賛成はできない。したがって、核保有国もやはり公平にこの義務、責任というものを負うべし、こういうのが日本の主張でありますから、国連の決議に棄権をしたということと核不拡散条約に対する日本の主張は、首尾一貫したものだと考えております。
  235. 谷口善太郎

    ○谷口委員 たいへん重大な御答弁をいただきました。核軍縮をやらないようなものであれば、核拡散防止条約には賛成せぬ、これは日本政府の態度ですな。
  236. 三木武夫

    ○三木国務大臣 やはり核拡散防止条約が締結される機会に核保有国が核軍縮の意図を明らかにすべし、これはもう強い主張であります。その意図も明らかにしないで、新たに核を持たない国が核兵器を、核開発をやろうということを押えるというだけの条約ならば、その条約は道義的基盤を失う、これは明らかな日本の主張であります。
  237. 谷口善太郎

    ○谷口委員 核拡散防止条約につきましては、春の五十五国会で私どもはあなたから御答弁をいただきまして、あれに対する態度をきめた。あなたはあのときこうおっしゃっております。この条約は、軍縮の問題は、大臣はそのときはおっしゃらなかったが、この条約の中身はこれは核を、たとえばアメリカならアメリカがよその国へ自由に持ち込むことは自由である。そういう持ち込みの自由があるということをあなたはおっしゃっています。これは重大なことでありまして、私どもは、これはアメリカが核を各国へ持ち込むことによって世界制覇をもくろむひとつの陰謀がある、こういうふうに見ましたので、日本がそういうことになってはたいへんだということで、御存じのとおり核持ち込み禁止法案というのをここへ提起したことがあります。これは覚えていられると思います、総理は反対なさいましたから。したがって、これには賛成してはならないというのが私どもの立場です。核拡散防止条約は、実際にあなたのおっしゃることを信じておれば、つまりアメリカが自由によその国へ持ち込める。あなたそのときにはこうおっしゃった。これはNATOなんかは自由に持ち込めるということにすでになっているから、そういう国際条約があるから、したがってこれを持ち込めないということにはなり得ないのだ、そういうことにはできないのだ。だから核拡散防止条約は、核持ち込みは自由だということを、ただ引き金だけが管理をされるということだけおっしゃった。これは非常に重大なことであるというので、私どもは反対の立場からああいう提起をしたのです。これは絶対に反対しなければならぬと思います。ところがやはり依然として一方では、国連でこういう有効な決議案が出たときにこれに賛成しない。そうしていまあなたは、核軍縮をやらないということになれば、これに賛成せぬとおっしゃいましたが、しかしそこらは非常にあいまいであります。この防止条約については、やはり日本政府としては共同声明の中でいっているのですから、はっきり賛成するということをいっているのですから、こういうことではもうほんとうに事態が明らかになってきたのではないかと私どもは思うのです。  実は、いま私はずいぶんいろいろ考えてきたのでありますが、時間がございませんから飛ばしますが、いま私がここに出席している間でも、また質問している範囲内でもわかりましたことは、つまり政府はもう返還後の小笠原に自衛隊を送り込む。そうして皆さんは何か領空、領海、領土、それだけを守るといっておりますけれども、ああいう御答弁総理国民はだれも信用しません。私は実に比喩的におもしろい話を聞きましたが、針を何十本か、その上を飛び歩くというようなことはできません。これは全部西太平洋のアメリカの防衛に共同体制をとるということになるということを知っておる。だから、そういうこともはっきりしました。また沖縄の返還のめどは全くついていない。それから、これもけさの地方行政委員会で明らかになったのですけれども、警察がすでに一体化と称して沖縄へ行っているという問題も明らかになっている。それから返還後の核基地を事実上認めるという態度を政府は示していらっしゃるということが非常に明らかになった。わずかの時間でありますけれども明らかになりました。これを確認して、さらに次に進んでいきたいと思います。  総理はたいへんあいまいな言い回し方ですけれども、終始一貫、沖縄返還の条件としてこういうふうに言っております。沖縄の軍事基地の重要性を認めること、安保体制を長期堅持すること、自主防衛力を増強すること、この三条件国民が合意する、これが必要であるという意味のことを終始一貫言っていらっしゃいます。これは返還交渉にあたっての前提条件ですか。
  238. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いわゆる返還の前提条件というのは、これはちょっと私も理解しかねますが、沖縄を返せ、また祖国に復帰、それを実現しろという、これはもう日本国民一億の、また沖縄百万住民の念願でございます。これはもう非常にはっきりしておる。これを実現することが私の責務でもある。同時にまた、私自身はわが国の安全を確保するという、こういう問題に取り組まなければならない。だから、沖縄が返ってくれば安全はどうなってもいいんだというわけにはいかないということをしばしば申し上げておる。だからいまの前提条件だ。どうも選択的に野党の方はこの問題を見られますけれども、私は、選択的な問題じゃないのです。二者択一ではなくて、二者を同時に実現する、これが私に課せられた責任であります。私は、そういう立場でこの問題と取り組んでおります。したがって、ただいまのところ、この沖縄が軍事基地として果たしておる役割り、また、想像するところ、おそらく核基地もあるだろう、こういうことをこの前も申しましたとおりでございますから、そういうことを前提にして今後この問題と取り組んでいくというのでございます。ただいまのところこの沖縄問題についてどういうようにしていくのか、いろいろ皆さん方から聞かれるが、一国の安全確保という問題は一つの行き方があるわけではございません。もうそれにとらわれると、これはとんでもないことになると思います。ただ、私どもはどうしてもワクをはめられる、そのワクをはめられるのはただいまの憲法でございます。その憲法の範囲内であれば、私どもはいろいろにくふうし、いろいろに考えること、これは当然の私どもの責務だ、かように実は思っておるのであります。その意味において、一部で非常に懸念されるような憲法のワクを踏みはずすとか、あるいは憲法を改正するとか、あるいは自衛隊法を無視する、こういうことは、もうはっきり申し上げてそんなことは絶対にいたしません。これは間違いのないことなんです。だが、この憲法ではおのずから限度がある。また、現実の問題としても、私どもが自衛力を持つということ、これは国力、国情に応じて自衛力を持つということを申しております。幾ら国民に奮起を促しましても、これは国力、国情を無視する、こういうものではございません。  たいへん時間がかかるようですが、もうちょっとお待ちください。でありますから、ここにも一つの限度があるということ、だから、いわゆる非常な危険を感じておられるようですが、これも絶対に危険なものではないということをつけ加えておきます。そうして、私どもが平和憲法のもとに、自衛隊法のもとに、ただいまの返還と、この国の安全と、その確保、その二つをやる。だから、核の谷間にある日本としては、日米安全保障条約が必要だ、こういうことにもなるのでございます。その辺御了承いただきたい。
  239. 谷口善太郎

    ○谷口委員 長々と時間をとっていただきまして感謝にたえませんが、私はそういうことを聞いたんじゃないのです。私が聞いたのは、これが条件になるかどうかということです。どうですか。
  240. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま長々と説明いたしましたが、前提条件というようなものを考えてはおりません。
  241. 谷口善太郎

    ○谷口委員 そうとしますと、沖縄返還についてこの点を総理は非常に強調していらっしゃる。その強調のしかたは、この三条件、つまり、あなたが言ういわゆる自衛力あるいは国の安全、防衛、これを達成するためには、おれは世間の世論がどうであろうと断固としてこれをやる、こう言っておられる。その決意には変わりはないんだ、こう言っておられます。返還条件としては、これは何もいまおっしゃったように必ずしも前提条件とかなんとかというものじゃないということになりますと、これほどあなたが高飛車に、おれはそういう決意を持って、国民の世論がどうであろうとやるのだ、こう言っていられるのは、いま長々と御答弁になったいわゆる日本の安全の問題で、安保条約を堅持する、あるいは沖縄の基地の重要性を認める、あるいは自衛力を増強するという、このことに全力を尽くしてやると、こういうことですな。これはそうであるかないかを、イエスかノーかで答えてもらえばよろしい。
  242. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ちょっと聞き捨てにならないのは、世論がどうあろうと、さようなことを引き合いに出されると、これは困ります。私はやはり世論の支持を得て今日政局を担当しておるのであります。また、私がいま申し上げるようなこと、この国の安全を確保する、これは世論の支持を得て初めてできることなんです。でありますから、世論がどうあろうと高飛車に出ているという、そういうような非民主的な考え方は持っておりませんから御安心をいただきます。
  243. 谷口善太郎

    ○谷口委員 ことばじりをとって恐縮ですが、あなたはそうおっしゃっている。そうだといまおっしゃったじゃないか。こうおっしゃった。この目的のためにはおれはあくまでもやる、これはあるいは世論無視というおしかりを受けるかもしれぬけれども、おれの決意は変わらぬと、こう言っている。世論無視です。これは日本の軍国主義と帝国主義の復活を公然と宣言したことになると私どもは見るわけです。(「オーバーだ」と呼ぶ者あり)いや、オーバーじゃ決してありません。今度の共同声明を読めば非常にはっきりしております。私どもはこういうふうな態度を総理がとって、つまり、いわば私どもの表現をすれば、オーバーな表現をするとあなた方はおっしゃるかもしれませんが、これははっきり、国民の意向はどこにあろうとこれをねじ伏せてやるということの態度表明だと思う。これは実に、もういわゆる民主主義に対する攻撃でありまして、許すことのできないことだと思うのです。ただ私は、総理は大きな思い違い、あるいは考え違いをしていられると思うのです。あなたがどんなに声を大きくして国会から——国民よ立ち上がれということを言っているのですが、幾らそういうことを言われましても、国民は違うのです。国民の多数は違うのです。沖縄の問題に関連して言えば、安保条約の破棄です。サンフランシスコ平和条約三条の破棄です。沖縄の即時無条件全面返還なんです。これは多数です。多数がこの意見を持っている。したがって、この多数の意見を基本にして、私ども共産党、社会党、公明党が、この沖縄問題では院の内外で戦うということを申し合わせている。総理はこの人民の力についての見通しを誤っていられる。あなたは必ず、一九七〇年に向けての日本のこの安保改定の時期における状態の中で人民の大きな反抗を受けるだろう。これは私、ここに明言しておきたいと思います。  ただ私は、実は時間がございませんから、最後に、委員長、今度の予算案の討論には私の発言理事会は許可しませんでしたので、この際に補正予算案三案に対する共産党の態度をはっきりしておきたいと思います。  これも時間がございませんから簡単に言います。共産党はこの案に反対です。これは反対です。  その理由は幾つかございます。第一に、公務員賃金を公務員の要求どおりにやってないこと。  第二、米価を、消費者に対して生産者米価を転嫁するような、つまり食管会計の本質を全く無視するような方向で予算を組んでいる。それから、何よりも大切な災害に対する予算が、これは災害の実情から見て全く十分の一にも足りない。これは認めるわけにいかない。しかもその反面、こういう補正予算に便乗して独占に対する援助とアメリカの戦争への経済協力の意味を持つ、そういう費目をたくさん計上している。これは許すわけにいかない。そういう立場から、私どもこれに反対することを明らかにして、これで終わります。
  244. 植木庚子郎

    植木委員長 谷口君の質疑は終了いたしました。  以上で、補正予算三案に対する質疑は全部終了いたしました。     —————————————
  245. 植木庚子郎

    植木委員長 引き続き、これより昭和四十二年度補正予算三案を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。阪上安太郎君。
  246. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和四十二年度補正予算に対し、反対の態度を明らかにすると同時に、佐藤総理及び政府閣僚に対し、その政治の姿勢と政治の硬直化傾向について深く反省を求めたいと存ずるものであります。  今日わが国の政治は重大な曲がり角に立っておる、あるいは危機にさらされているともいわれておるのであります。このことは、わが国の社会、経済の諸情勢がきわめてきびしい上に、国際的にもポンド切り下げあるいは国際通貨不安の局面を迎え、日本の進路の決定が迫られているということであります。さらには今日、国民の中に高まりつつある政治不信を断ち切って、わが国の政治が真に国民の信頼を得ることができるかどうかの岐路に立たされているということができるのであります。  この意味において、本予算委員会は、単に補正予算の審議にのみ終始することを許されず、今日、日本の当面する緊急課題について、国民注視の中で開催されたのであります。ところが、審議の過程を振り返ってみまするとき、はたして国民が真実こいねがっている問題について答えることができたかどうか。この点、私どもの国民の願いに立った質問に対し、政府はあまりにも表面のみをつくろった誠意のない答弁に終始いたしておったのであります。この点、私の深く遺憾とするところであります。そこで、佐藤総理及び閣僚は、いま国民の願いがどの辺にあるのか、そのためいま政治の取り組まなければならない課題は何か、いま一度深く反省をしていただきたいと思うのであります。  今回の補正予算の編成にあたって、私どもがきびしく考慮しなければならない問題点は、何よりも今日の深刻化している経済、物価危機に対処し、国民生活の保障と長期安定成長をいかに達成するかということであります。昭和四十二年度当初予算は、わが党を中心とする全野党、これの強い反対にもかかわりませず、御案内のように強行成立したのでありますが、その結果は、わが党がその際強く指摘いたしておきましたとおり、政府の経済見通しに大幅に食い違い、社会、経済のあらゆる分野において矛盾を激化いたしておるのであります。経済成長率は名目一七%に達し、政府見通しがいかにずさんであったかを暴露いたしております。また、個人消費や政府支出は当初見通しとほとんど変わらないのに、民間設備投資は七兆二千億に及ぼうといたしております。しかも、この結果もたらされた景気の過熱の波というものは、卸売り物価を含めた物価の上昇を招き、国際収支の急速な悪化、中小企業の記録的な倒産など、経済のひずみを激化し、さらにいわゆる財政硬直化問題を引き起こしてまいったわけであります。特に国際収支の悪化は深刻な危機に直面して、総合収支において六億ドルの赤字は必至の情勢となっております。しかもこの悪条件の中で十一月十八日以来のポンドの切り下げ、ドル不安という世界経済の重大な局面を迎えておる次第であります。  こうした経済と財政の危機は、単なる政府の見込み違いということだけでは説明がつかないのであります。明らかに政府の経済、財政政策の運営の誤りであります。私どもが本年度当初予算の審議にあたって口をすっぱくして申し上げたことは、景気過熱含みの経済に対処するのに、フィスカルポリシー導入の時期を誤り、公債発行を軸とした景気刺激予算を組んで、相変わらず民間設備投資をあおり続けようとする態度をとるならば、必ずや今日の危機を招くに違いないということであったわけであります。今日の事態は、したがって初めからわかっていたことであり、政府当局においても当然予想できたはずであります。しかるに、政府は安易な態度をとり続け、景気中立とか、あるいは宣伝的な粉飾した経済見通しを発表する無責任なやり方に終始しておるのであります。経済、財政の破綻と景気過熱の主犯は相変わらず民間設備投資にあり、しかも政府みずから物価上昇を刺激し、大企業優先の政策を続けた責任は、まことに重大であるといわなければなりません。また歴代自民党政府が安易なドル依存、無計画な外資取り入れ政策等をとり、何ら外貨準備対策をとろうとしなかったために国際収支の危機を招いた責任、これはまたきわめて重大であります。現在の国内、国際経済の大きな変動と危機に対処する道は、内には大企業偏重の成長政策の転換であり、外にはドル依存を脱却して、自主経済の基礎を固めることでなければならないのであります。にもかかわらず、佐藤内閣のとろらうとしている道は、この情勢に逆行いたしまして、かえって矛盾を拡大する方向に進んでおるのであります。私は、この危険な方向への歩みに対しまして、この際重大な警告を発したいのであります。  今回の補正予算編成にあたって避けて通ることのできない重要問題は、昭和四十二年度当初予算のもたらしたこれらの欠陥を補正して、今日の深刻化している物価と財政の危機、国際収支危機に対処し、さらにその日暮らしの財政経済政策というものを根本的に転換して、国民生活の保障と、それから昭和四十三年度以降の財政再建に対処する足がかりをつくらなければならないということであります。しかるに政府は、これらの失政に対し何らの反省をすることなく、その根本対策を怠り、かえって財源難を口実といたしまして人事院勧告をじゅうりんいたしまして、あるいはまた失業対策、生活保護費の計上におきましても、物価調整すら十分行なうことなく、年の瀬を旬日に控えて資金難、経営難に苦しんでいる中小企業に対しても、何らあたたかい措置をとることなく、さらには地方自治体に対する運用部貸し付け金の繰り上げ償還を強要してみたり、地方財政を圧迫するなど、国民生活に緊急な最低限度、この最低限度の支出すら削減して国民生活へのしわ寄せを強めているのであります。  さらに、国際収支の著しい悪化の中で、しかもポンド切り下げがドル不安に波及し、国際通貨不安を高めているにもかかわりませず、産投会計への繰り入れを行ない、輸出入銀行出資金を拡大し、一そう長期資本収支の悪化に拍車をかけ、インドネシアの経済援助など、外交、軍事面でアメリカ従属の道をとるだけでなく、経済的にもドルと心中する道を歩もうといたしているのであります。こうした態度は明らかに国民の期待に反し、国民生活を無視するものであって、断じてこれは許されないのであります。  特に公務員労働者の生活や要求を無視いたしまして、今回の人事院勧告の完全実施すら怠り、実施期日を足切りしようとする態度は、政府の誠意を疑うものであります。人事院の勧告内容それ自体、必ずしも今日の民間給与水準に比べて十分なものとは申すことはできません。それにもかかわらず、公務員労働者の労働基本権の制限の代償として設けられたこの人事院制度の趣旨に照らし、勧告の完全実施は最小限度の政府の義務であります。しかもこのことは、衆参両院の内閣委員会の全会一致の決議が行なわれているところでもあります。政府の態度はまさにこの院の決議にそむき、国会を軽視するものであって、きわめて遺憾にたえないところであります。  以上、私は、この予算案を貫く基本的な欠陥と、とるべき方向について申し上げたのでありますが、政府はこれらの諸点に深く思いをいたし、わが党が本委員会におきまして一貫して要求してまいりました、すなわち次のことを具体的に補正予算に盛り込むこと、これこそが急務であると信ずるものであります。  すなわち、歳出面におきましては、少なくとも公務員給与改善については国会議決どおり人事院勧告の完全実施を行ない、七百四十億円を計上すべきであります。また、これに伴う義務教育費国庫負担などの義務的経費、これについて二百五十億円を計上すべきであります。さらに生活保護費及び失対賃金につきましては、これら底辺階層の生活の実情を考慮いたしまして、米価その他物価値上がりを補正するため、基準の引き上げを実施すべきであります。その他義務的経費を合わせて二百五十億円を追加し、医療費引き上げに伴う医療保険の国庫負担を九十億円追加すべきであります。  また、今回の補正の大きな柱となっております災害対策につきましては、単なる公共施設等の災害の復旧にとどまることなく、被災者の生活保障、生活再建を基本とする被災者援護法を制定いたしまして、個人災害の補償に踏み切るべきであります。これによる援助、融資活動を強化するため、少なくとも三百五十億円程度は確保すべきであると考えます。  地方交付税交付金につきましては、地方財政が国家財政よりも一歩先に硬直化しているこの現状を重視し、その強化とあわせて、地方公務員給与改定の五月実施の財源を補てんするためにも、九百七十億円の追加を行なうべきであると考える次第であります。  また、本年度当初予算の審議にあたり、本委員会で決議いたしましたところの附帯決議を推進するために、物価対策、住宅、交通安全対策、公害対策を強化するため、それらの財源として所要の経費を計上すべきであり、少なくとも三百五十億円程度の追加が必要と考えるわけであります。  これらに要する財源は、本年度の税の自然増収及び日銀納付金、専売納付金等の収入によって少なくとも四千億円の収入増が見込まれますとき、既定経典の節減三百億円、防衛関係費の削減、不用額の減額等によりまして三百五十億円、既定の予備費減額二百五十億円等を行なうことによって十分にまかなうことができると考えるわけであります。  以上の措置とあわせて、重化学工業を中心とした無計画な設備投資を抑制し、法人税法によるところの景気調整制度の発動等の措置をとり、また財政投融資計画を組み直し、国民生活に直接影響する交通、公害対策等あるいは中小企業金融対策あるいは住宅対策、地方公営企業対策などに重点的に振り分けるべきであると考えるわけであります。また、住宅、治水等の財政支出繰り延べ、この措置はやはりいま一度調整をすべきであろうと考えるわけであります。これにより、財政と経済・運営は一体化され、単に景気過熱の犠牲を一般会計にしわ寄せすることなく、経済の安定的な成長と国民生活の保障を実現できると信ずるものであります。  以上、私は、今回の補正予算に対するわが党の基本的な態度と今後の経済財政運営のとるべき方向を簡潔に申し上げ、本予算が国民の願いに反するものであることを明らかにいたしまして、反対の討論を終わる次第であります。(拍手)
  247. 植木庚子郎

    植木委員長 次に、古川丈吉君。
  248. 古川丈吉

    ○古川(丈)委員 私は、自由民主党を代表して、昭和四十二年度一般会計補正予算(第1号)外二案に対し、賛成の討論をいたします。  一般会計における歳出の追加の要因は給与改善費災害復旧等事業費、食糧管理特別会計への繰り入れ、義務的経費の追加、交通安全対策費、産業投資特別会計への繰り入れ、輸出保険特別会計への繰り入れ、診療報酬等改定に伴う増加の経費、国際分担金その他諸費、地方交付税交付金の増加であります。歳入につきましては、租税及び印紙税、税外収入の増加三千二百十五億円、公債金六百九十億円の減額、歳入歳出いずれも二千五百二十五億円の追加補正であります。  特別会計補正予算一般会計の予算補正、公務員給与の改善、既定経費の節減等に伴い、産業投資特別会計をはじめ十四特別会計について、所要の補正を行なうものであります。  政府関係機関としては、日本国有鉄道について、仲裁裁定の実施により不足する財源補てんのため、補正するものであります。  なお、予算の補正とともに、財政投融資計画において日本国有鉄道百六十五億円、日本開発銀行八十八億円、日本輸出入銀行二百五十億円、石炭鉱業合理化事業団に四億円、地方公共団体に百三十六億円、合計六百四十三億円を追加いたしております。  予算の補正と財投の追加によって、現下緊急を要する財政措置について十分の考慮を払われているものといわなければなりません。  特に二、三の点について所見を述べ、諸君の御賛同を得たいと思います。  まず第一に、公務員給与の問題でありますが、民間給与の上昇に伴い、毎年人事院より勧告せられ、これに基づき、政府はできるだけ勧告を尊重する方針で、毎年対策を講じてまいりましたが、本年は御承知のとおり特に財源の乏しいおりからではありますが、昨年より一カ月繰り上げ、八月より実施することにしましたことは、政府の努力と熱意を十分買わなければならないと思います。特に、その内容を検討しますと、今日までいつも問題となっておりました医師、大学助手、刑務官等の初任給については格段の引き上げを行ない、研究職、教育職、看護婦等についても大幅の改善をなされていることは、まことに当を得た処置といわなければなりません。今後もなお一そう公務員待遇の改善を政府に期待するとともに、公務員諸君においても綱紀の粛正と職務能率の増進に努力せられることを切に望むものであります。  なお、従来は事務の増加する部門の定員増加のみが問題とされ、他の部門についての反省が行なわれなかったので、定員はただ増加の一途をたどり、今日の膨大な組織となったのであります。この際、臨時行政調査会の答申の精神を尊重し、行政機構の改革を断行し、局、課、公社、公団を減少するのみならず、各省各局に分散する事務の統合を行ない、いわゆる事務のセクショナリズムの弊を打破し、事務能率の向上をはかられるよう強く要望いたします。  なお、形式的機構改革にとどまらず、新しい政策に基づき、事務量の増加する部門については増員は当然でありますが、不要不急部門の人員を思い切って縮小し、全体として人員を大幅に縮減することが必要と思います。  次に、災害復旧費でありますが、本年の集中豪雨、台風等による公共土木、農林水産業施設等の被害報告額は千九百七十億円で、これが復旧のためすでに予算費二百二十億円を支出し、今回さらに所要額の確定したものについて七十六億円を補正計上し、さらに過年発生災害復旧に七十一億円を追加計上し、なお、本年災害で所要額の確定していないものについては、確定し次第予備費をもって措置することといたしております。さらに、地方公共団体に百三十六億円追加融資をすることとし、地方公共団体の負担増に対処いたしております。政府の災害対策としてまことに適切なものと、心から賛意を表したいと思います。  次に、食糧管理特別会計への繰り入れでありますが、昭和四十二年産国内米の政府買い入れ価格が、前年に比し九・二%引き上げられ、買い入れ数量が、史上最高の豊作のため、当初見込み七百七十五万トンが九百五十二万トンに増加し、消費者米価は本年十月より一四・四%の値上げにとどめたために、生産者米価消費者米価との間に百五十キロ当たり五百十五円の逆ざやとなりましたので、千百八十億円の食糧管理特別会計への繰り入れが必要となったのであります。  生産者米価を九・二%引き上げ、消費者米価を一四・四%の引き上げにとどめたことは、農民所得を考慮するとともに、消費者の立場も十分考慮し、なお物価への影響を考えた適宜な処置と言わなければなりません。  食管制度について、また生産者米価消費者米価との関係について、根本的に検討を必要とする時期となっていますが、本補正の段階では結論を得ることができませんので、今回の補正は、今日において最も妥当なものと考えるのであります。  次は交通安全対策費でありますが、政府はかねて交通安全対策を重視し、昭和四十一年度より交通安全施設等整備事業三カ年計画を定め、本年はその第二年目となるわけでありますが、本年度当初予算においても、その二年目の計画を実施できるような十分の予算を計上しているのでありますが、最近の交通事故の頻発にかんがみ、先般の国会において、通学路に係る交通安全施設等の整備及び踏切道の構造改良等に関する緊急措置法が成立し、この法律に基づき、市町村、都道府県の要望もいれ、交通安全施設等整備事業三カ年計画を拡大変更し、去る十二月一日、新しい事業計画を閣議決定いたしたのであります。本補正は、この新しい事業計画に基づく昭和四十二年度施行事業中、道路に関する国の経費であります。踏切道に関するものについては予備費をもってまかなうことになっております。地方単独事業についても、その事業が十分実施できるよう、別途財政措置をせられることになっております。本補正について特に注意すべき点は、市町村の実施するこれらの事業について、補助対象を拡大し、補助率を従来の二分の一から三分の二に引き上げたことであります。来年度の事業もすでに閣議決定せられ、またその負担率も決定せられましたので、来年度の事業も計画どおり完全に実施せらるる見通しとなりましたことは、交通事故問題が緊急重要なおりから、国民の要望にこたえることができ、まことに欣快に存ずる次第であります。  このほか、日本輸出入銀行への出資金の増額、東南アジア漁業開発センターに対する拠出金等、いずれも時宜に適した措置であり、生活保護費、国民健康保険助成費等、義務的経費の不足補てん等は、当然の補正として賛意を表する次第であります。  歳入につきましては、租税及び印紙収入、租税外収入の自然増の一部六百九十億円を公債金の減額に充てられましたことは、景気調整の立場からも適切な処置と考えます。  本補正予算は、緊急やむを得ざるものを計上せられ、前に申し上げましたとおり、そのおのおのに賛意を表するものでありますが、補正予算としてはかって見ない大型なものとなっております。わが国は本年初めより、経済成長による輸入の激増、貿易外収支の赤字等により国際収支の悪化を招き、その不均衡是正のため、本年九月以降、財政支出三千百十二億円の繰り延べ、公定歩合の引き上げ等、財政金融一体の景気調整対策を講ぜられていますが、まだ十分効果があがっておるとは申せません。今後とも金融面とともに財政運用に重点を置いて景気調整に努力せられるよう希望いたします。国際的にはポンド切り下げ、ドル防衛の問題があり、わが国としては国際収支の悪化、外貨保有の減少、景気調整、予算硬直化等の難問題がありますので、政府昭和四十三年度予算編成にあたりては、慎重にしてかつ果敢な態度をもってこの難関を突破できるよう最大の努力をせられるよう期待して、本補正予算案の賛成討論を終わります。(拍手)
  249. 植木庚子郎

    植木委員長 次に小平忠君。
  250. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は、民社党を代表し、ただいま提案されております昭和四十二年度一般会計補正予算案、特別会計補正予算案、政府関係機関補正予算案の三案に対し、一括して反対するものであります。  現下の日本経済を取り巻く環境は、内外ともにまことに多事多難であります。景気過熱による金融引き締めの措置、依然として高騰する消費者物価、顕在化した財政硬直化問題、さらにはイギリスのポンド切り下げ、世界的高金利時代の到来などがそれであります。これらが対処の方向を万一誤るならば、わが国経済、ひいては国民生活に与える悪影響は、きわめて大きいと断言せざるを得ないのであります。しかるに、本臨時国会を通じて明らかにされた政府の経済運営方針は、重大な環境の変化にもかかわらず、従来の政策に固執し、意欲的な経済改革案と対策を持たず、いたずらに当面を糊塗することにきゅうきゅうとしているのであります。  その第一は、景気調整問題であります。政府は、国際収支の赤字に直面して、この九月に公定歩合の一厘引き上げ、予算の三千億繰り延べなど、一連の景気引き締め政策を打ち出しました。これはかって昭和三十二年三月、三十六年七月、三十九年三月の三回にわたって繰り返してきた道であり、まさにいつか来た道、不況の道であります。  資本主義経済の最大の欠陥は、その無計画性、無政府性にありますが、今回の国際収支赤字を招いた最大の原因も、また従来の例に漏れず、民間設備投資の行き過ぎであります。民間設備投資は、政府の当初見通し一四・八%の伸びに対して、実に三〇%近い伸びが予想されているのであります。この設備投資の合理的、計画的調整こそ、わが国経済の最大の課題と言わざるを得ません。ところが、政府は、景気過熱のしわ寄せを公共事業の繰り延べ手段をもって社会資本に加え、金融引き締めによって結果的には中小企業に加え、さらには、先進国中最もわが国が比率において低いといわれる消費支出に対してさえ、その抑制をはかろうとしているのであります。ここに明らかに政府の大企業重視、国民生活軽視の姿勢を読み取ることができるのであります。  わが党は、過去数回の、そしていままた、激しい景気変動を引き起こさざるを得ない資本主義の無政府性、民間設備投資の無計画性にこそ、根本的なメスを入れなければならないと考えるのであります。このため、法律に基づいた設備投資計画会議の設置、新しい設備投資調整税制の導入などを早急に確立すべきであります。  第二は、依然として解決を見ない物価上昇問題であります。  われわれがこの席において物価上昇の原因とその解決策を政府に追及して以来、すでに六年有余を経過しているにもかかわらず、何ら効果的な対策が持たれず、物価は上昇し続けてきたのであります。これほど政府の無為無策を示すものは他にありません。それどころか、本年初頭においては比較的安定してきた物価を、八月、九月、十月のわずか三カ月間に四・五%も高騰させた原因は、政府による一連の公共料金値上げ措置であります。政府主導型の物価上昇こそ、現在の物価問題の基本的性格であると言わなければなりません。  健康保険料は八月から値上げし、消費者米価は三年連続して引き上げられたことは御承知のとおりであります。また、来年度には電報電話料、国鉄定期、たばこ、酒、消費者米価などの値上げがすでに既定の事実のごとく報ぜられているのであります。これら公共料金の値上げが物価上昇ムードをかき立て、その政策的波及が一般物価の便乗値上げを誘発せしめていることは明らかであります。物価抑制の衝に当たらなければならない政府が、みずから物価を引き上げて、どうして物価を安定させることができるでありましょうか。矛盾撞着もはなはだしいと言わなければなりません。  現在、最も必要なことは、政府の断固たる物価抑制の政策を国民に示すことであります。そのためには、公共料金の一年間値上げストップと、消費者基本法をすみやかに制定すべきであります。異常事態に対しては異常措置をもって対処することはけだし当然であります。  わが党が政府に対してきびしく反省を求める第三の問題は、財政硬直化対策についてであります。  政府は、財政硬直化があたかも突如としてあらわれた問題であるかに見せ、国民に対し、増税、公共料金値上げか、さもなければ民主的支出の削減かという二者択一の道しかないと主張しているのであります。これは政府の責任回避もはなはだしいと言わなければなりません。財政硬直化のもとをただせば、歴代保守党による総花的放漫財政と、無計画にしてかつ安易な国債政策の導入にその原因があることは、いまや国民の常識的理解となっております。また、数年来の物価上昇が、名目的な財政の膨張をもたらしていることも明らかであります。まさに政府の無為無策を天下に暴露したものと言うべきでありましょう。  しかるに、これが対策の犠牲を公共事業費、公務員給与費、社会保障費、地方交付税交付金などの削減、公共料金の引き上げなどに転嫁せしめんとする政府の意図は、断じてわが党の容認せざるところであります。  まず政府が手をつけるべきことは、現在のむだと非能率が充満している行政機構を徹底的に改革することであります。ところが、今回の補正予算案におきましては、わずかに二百九十二億円の既定経費削減が行なわれているにすぎません。わが党は、行政改革緊急三カ年計画を作成し、計画的な人員配置公社、公団の整理統合、零細補助金の統廃合などを行なうならば、約五千億円の新規財源を確保できると確信しているのであります。  次に、政府は、税の公平の原則を犯し、一部階級の利益だけに奉仕している租税特別措置を大幅に整理しなければなりません。これら改革を放置した政府の財政硬直化対策は、国民に苦痛をしいる何ものでもないと言わなければならないのであります。  第四に、政府は、今回の補正予算案において、公務員の当然の権利である人事院勧告の完全実施をまた見送ったことであります。  これに関連して、政府は、国家公務員の給与引き上げを物価上昇率に見合って当初予算で見込むことを検討しているのでありますが、これは人事院勧告制度を根本からくつがえし、ひいては公務員給与を抑制しようとするものでありまして、このような措置は、われわれの断じて認め得ないところであります。  最後に、私は、新しい目的意識とそれを実現する新しい経済制度の必要性を強調したいと思います。  硬直化したものは、財政のみならず、政治、経済、社会の制度もまた、戦後二十二年の間に硬直化してしまったのであります。生産力、経済成長第一主義の全般的風潮こそ、この二十年間国民の意識を支配し、硬直化してしまったものであります。しかるに、政治家が昨日解決した問題は、新しい情勢を生み、それがあすの問題をつくり出すのであります。  それでは、政治家の新しい課題は何でありましょうか。国民福祉中心の政治と、それを可能にする経済の計画化であります。国民福祉を忘れた経済の計画化は統制経済であり、経済の計画化を忘れた国民の福祉は画餅にしかすぎません。二者相まって初めて現在の内外の諸情勢によく対処し、新しい目的を達成できるものと確信するものであります。  これをもちまして私の反対討論を終わります。(拍手)
  251. 植木庚子郎

    植木委員長 次に伏木和雄君。
  252. 伏木和雄

    ○伏木委員 私は、公明党を代表いたしまして、昭和四十二年度補正予算三案に対し、反対の意見を申し上げます。  反対の理由の第一点は、予算の性格についてであります。今回の一般会計補正予算は、歳入歳出とも二千五百二十五億円を追加するものでありまして当初予算と合わせると、実に五兆二千三十四億円の巨額に達し、前年度当初予算四兆三千百四十三億円に対し二〇・七%の増加であり、補正後予算四兆四千七百七十一億円に対しても一六・二%の増加であります。こうした、膨大な予算を編成することは、ただでさえ景気過熱が叫ばれている際、これに拍車をかけるものでありまして、わが党としまして、これに賛成することはできないのであります。しかして、こうした膨大な予算規模となりましたことは、今回の補正にその要因があるというよりも、むしろ当初予算にその萌芽があるのでありまして、前々国会における当初予算議決の際、当委員会の討論においてわが党が声を大にして述べたごとく、財界や各種圧力団体に押されて、総花的な予算編成方針をとったことが累を及ぼしているのであります。政府は、いまさら財政硬直化を叫んでおりますが、それは政府みずからがまいた悪い種が実ったのでありまして、その責任はもっぱら政府にあると言わなければなりません。政府がこうした態度を改めない限り、今後においても予算規模の膨張、財政硬直化の傾向は停止することなく、インフレーションによる国民生活への圧迫が加わってくることは必至でありまして、政府の猛省を促したいと思います。  次に、反対の理由の第二点は、公務員給与改善に関する人事院勧告が完全に実施されない点であります。政府は、前年度よりも一カ月繰り上げたことにより一歩前進したと得意になっているようでありますが、公務員法の性格、人事院の存在理由から見て、勧告を完全実施すべきは当然でありまして、勧告実施時期より三カ月も実施をおくらせることは、絶対に承認することはできないのであります。しかして、その財源は前に述べましたように当初予算編成の際に、圧力に屈した総花的態度をとらずまた既定経費をさらに検討し、節減したならば、十分生み出されるものと思います。  そして反対の理由の第三点は、災害復旧費が十分でないという点であります。本年度の公共土木、農林水産施設の災害は、当委員会における主計局長の補足説明によりましても千九百七十億円の巨額に達しています。これに対して、いままでに予備費で二百二十億円支出し、今回の補正で七十六億円を計上しているのにとどまりまして、残余の予備費で多少支出されたとしましても、とても十分なものとは言えないのであります。被災住民のことを考えるとき、災害復旧費を増額することを要求します。しかして、その財源については、反対理由の第二点で述べたと同様であります。  以上、三点の理由から、わが党は、今回の補正予算三案に対して反対せざるを得ないのであります。  なお、中小企業対策でありますが、本年の中小企業の倒産は実に八千件を数えるに及んでおります。特に公定歩合引き上げ及び窓口規制は、中小企業に大きな打撃となっているのであります。一般会計においてはやむなしとしても財投において増額し中小企業年末資金融資をはじめ中小企業金融緩和措置を強力に行なうことを強く要望いたしまして、反対討論を終わります。(拍手)
  253. 植木庚子郎

    植木委員長 これにて討論は終局いたしました。  よって、採決に入ります。  この際、昭和四十二年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十二年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  254. 植木庚子郎

    植木委員長 起立多数。よって、昭和四十二年度補正予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)     —————————————
  255. 植木庚子郎

    植木委員長 この際、ただいま議決いたしました昭和四十二年度一般会計補正予算及び同特別会計補正予算に対し、二階堂進君外八名より、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党四派の共同をもって附帯決議を付すべしとの動議が提出されました。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。二階堂進君。
  256. 二階堂進

    ○二階堂委員 私は、自由民主党、日本社会党、民主社会党、公明党の四派を代表し、昭和四十二年度一般会計補正予算及び同特別会計補正予算に対する附帯決議について、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。   公務員給与については、漸次改善されつつあるが、政府は今後とも人事院勧告を完全実施するよう最善の努力をすべきである。  右決議する。  政府は、公務員給与につきましては従来人事院勧告を尊重し、これが実施に努力をいたしておりますが、今後とも一そう努力をすべきであるという趣旨であります。  何とぞ御賛成あらんことをお願いいたします。
  257. 植木庚子郎

    植木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  直ちに採決いたします。  二階堂進君外八名提出の附帯決議を付すべしとの動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  258. 植木庚子郎

    植木委員長 起立総員。よって、動議は可決せられました。  ただいまの附帯決議に対し、大蔵大臣より発言を求められております。この際、これを許します。水田大蔵大臣。
  259. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ただいまの附帯決議の御趣旨につきましては、財政事情の許す限り努力いたす所存でございます。     —————————————
  260. 植木庚子郎

    植木委員長 なお、おはかりいたします。  委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  261. 植木庚子郎

    植木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  262. 植木庚子郎

    植木委員長 これにて昭和四十二年度補正予算に対する議事は全部終了いたしました。      ————◇—————
  263. 植木庚子郎

    植木委員長 閉会審査に関する件につきましておはかりいたします。  予算の実施状況に関する件につきまして、必要ある場合は議長に対し閉会審査の申し出をいたしたいと存じます。その手続等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  264. 植木庚子郎

    植木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定しました。      ————◇—————
  265. 植木庚子郎

    植木委員長 この際、一言ごあさつ申し上げます。  補正予算三案は、慎重審議を尽くし、円満に審査を終了いたしました。ここに、連日審査に精励され、かつまた委員会の正常な運営に御尽力くださいました委員各位の御労苦に対し、敬意を表しますとともに、委員長に対し賜わりました御協力につきましては、衷心より感謝の意を表する次第であります。(拍手)  本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十六分散会