運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-12-12 第57回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年十二月十二日(火曜日)    午前十時八分開議  出席委員    委員長 植木庚子郎君    理事 小川 半次君 理事 正示啓次郎君    理事 二階堂 進君 理事 藤枝 泉介君    理事 古川 丈吉君 理事 加藤 清二君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 伏木 和雄君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    有田 喜一君       井出一太郎君    池田正之輔君       江崎 真澄君    川崎 秀二君       北澤 直吉君    久野 忠治君       重政 誠之君    鈴木 善幸君       中野 四郎君    西村 直己君       野田 卯一君    野原 正勝君       船田  中君    古井 喜實君       松浦周太郎君    松野 頼三君       山崎  巖君    猪俣 浩三君       大原  亨君    角屋堅次郎君       北山 愛郎君    阪上安太郎君       島上善五郎君    楯 兼次郎君       成田 知巳君    西宮  弘君       芳賀  貢君    畑   和君       八木 一男君    山中 吾郎君       横山 利秋君    麻生 良方君       春日 一幸君    浅井 美幸君       広沢 直樹君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 赤間 文三君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 園田  直君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 中曽根康弘君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 小川 平二君         建 設 大 臣 保利  茂君         自 治 大 臣         国家公安委員長 赤澤 正道君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田中 龍夫君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官・北海道開発         局庁長官)   木村 武雄君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増田甲子七君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      鍋島 直紹君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房審議室長   橋口  收君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         総理府特別地域         連絡局長    山野 幸吉君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         経済企画庁総合         開発局長    宮崎  仁君         法務省刑事局長 川井 英良君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         外務省経済協力         局長      廣田しげる君         外務省条約局長 藤崎 萬里君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         大蔵省主税局長 吉國 二郎君         大蔵省理財局長 鳩山威一郎君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         大蔵省国際金融         局長      柏木 雄介君         厚生省保険局長 梅本 純正君         農林大臣官房長 檜垣徳太郎君         農林省農林経済         局長      大和田啓気君         農林省畜産局長 岡田 覚夫君         食糧庁長官   大口 駿一君         通商産業省通商         局長      宮沢 鉄蔵君         通商産業省鉱山         局長      両角 良彦君         郵政大臣官房長 溝呂木 繁君         建設大臣官房長 志村 清一君         建設省計画局長 川島  博君         建設省都市局長 竹内 藤男君         自治省選挙局長 降矢 敬義君         自治省財政局長 細郷 道一君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 十二月十二日  委員猪俣浩三君、芳賀貢君及び折小野良一君辞  任につき、その補欠として八木一男君、島上善  五郎君及び春日一幸君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員島上善五郎君及び八木一男君辞任につき、  その補欠として芳賀貢君及び猪俣浩三君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十二年度一般会計補正予算(第1号)  昭和四十二年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和四十二年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    植木委員長 これより会議を開きます。  昭和四十二年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十二年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括議題とし、総括質疑を行ないます。北山愛郎君。
  3. 北山愛郎

    北山委員 私は、日本社会党を代表して、当面の経済の問題について質疑をいたしたいのでありますが、その前に、昨日の成田委員との質疑応答の際に、政府中期債券を購入しない、円の外貨準備流動性を弱めるような中期債券は購入しないということをはっきりと総理は言明されたわけであります。ところが、本日の新聞等で報道されておりますように、その後において木村官房長官が、場合によれば購入することもある、そういう可能性もあるようなふうな記者会見における発言をされておるわけであります。ですから新聞記事は、大見し出で「中期債購入に応ず」と、こういうふうに書いてある。そういうふうな印象を与えて、せっかくの総理の明快な答弁をあいまいにするような注釈を加えておるのであります。この点、私どもとしては何としても納得ができないし、その点を重ねて総理の態度を——昨日の速記録を見ましても、はっきり流動性を弱めるような、中期債券を買えば流動性を弱めるから、だから買わないんだと、こういうふうに言われておりますので、その点を再度明らかにしていただきたいと思うわけであります。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の昨日申しましたのは、流動性を弱めるようなことはこの際しないと——現実の問題でございます、この際しない、もしことばが足らないとすれば、この際ということをはっきり申し上げておきます。
  5. 北山愛郎

    北山委員 この際というようなことばはないんですね。しかしもちろん未来永劫に買わないかどうかなんということを、わが党の成田委員がそんなやぼなことを質問するわけがないわけであります。いま問題になっているのは、日本外貨事情の問題とかあるいはアメリカドル防衛の問題、当面の問題でありますから、その関連においては、アメリカからドル防衛について中期債券を買えという要望があっても買わないんだ、こういう趣旨で、この際買わないなんというような注釈をつけるということは、どうも私は納得ができないわけであります。総理は最近、私はうそは言いませんというようなことばを言っておる。この際なんというようなあいまいな注釈をこの際くっつけるということは、そういうごまかしなことではわれわれは納得できないわけであります。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま申し上げたとおりですよ。昨日それはそのとおりのことを言わなかった。しかし昨日の質疑応答のしぶりから、いま北山君も言われるように、この際買うか買わないかということだ、かように思いますので、私はこの際買わないということを申したんだ、こういうことを申し上げている。未来永却買わないというようなことを言ったわけじゃございません。だからその辺は、いま私が申し上げたこと、間違いはないんです。だからそれは速記とはなるほど違いますよ。昨日は確かにこの際ということはなかったと思います。しかしこの趣旨説明すればそういう意味でございます。いま重ねて申し上げておるのです。間違いないように……。
  7. 北山愛郎

    北山委員 しかし総理は、ある条件が整えばとか、そういうことは言われなかったんです。要するに、中期債券を買うということは、これは流動性を弱めることなんです。これは一年後でも二年後でも三年後でも流動性を弱めることに変わりはないわけです。ですから流動性を弱めるようなことはしないというのでありますから、何もある条件が整えば買うというような趣旨説明はされておらぬ。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 あのとき申し上げましたのは、わが国保有外貨は非常に少ない。この少ない状況のもとにおいて流動性をそこなうようなことは私はしないと、かようなことを申し上げた。だからこのことを、全体をお考えになれば、そのことばだけつかまえてそんなこと言わなかったとかなんとか言っておしかりになりますが、これはしかしちょっと実情に合わないんじゃないですか。ぼくは、北山君もそこまでは全体の話の筋道でお考えになるだろうと思う。当時、私は日本保有外貨でも非常に多ければさようなことは申さないですね。これはたいへん少ない状況だから、そういう際の流動性をそこなうようなことは私できないんだ、それこそ円が弱くなるんだ、こういうことを申し上げた。だからこの点は、ことばそのものが不十分だと言われても、おそらく私のことは北山君は十分御理解をいただいておると、かように私は思っております。
  9. 北山愛郎

    北山委員 これはわれわれみんなが承知しておるように、日本外貨事情というのはもうずっと非常にぎりぎりのところにきておるわけです。少ない外貨でもってこれをやりくりをしているのが現状だし、長い間そういう状態である。だからもしも適正な外貨事情にするというのには、これはよほど何年も何年もかかるわけなんです。ですから総理がこの際とかなんとかというんではなくて、日本の現在の弱い外貨事情考えるならば、これを弱めてアメリカドルを防衛するに協力するようなことはできないはずなんだ。そんなことはもうこの際もヘチマもない。永久にとは言わなくても、もう当然できないはずなんです。これは総理としての当然の、日本外貨の実態なりそういうものを知っているならば言えないはずで、この際もヘチマもないと思うのですが、重ねてお伺いします。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうもこの際もヘチマもないというのは、ちょっと言い過ぎじゃないだろうかと思います。私はその点はもう少しお話しができ合うんだろう、かように思います。とにかく私も、北山君も言っておられること、その点に合致してないものがあるわけじゃございません。私は非常に円の——いま外貨保有も少ない、こういう際にただいまやるという、これはやらないことだと、かように申しておるので、だからこの際もヘチマもないんだというような、そこまで言われると、これはどうしてもちょっと言い過ぎかと思いますが、とにかく円を弱めないように気をつけましょう。
  11. 植木庚子郎

    植木委員長 加藤委員関連質問を許します。加藤君。
  12. 加藤清二

    加藤(清)委員 私どもがこの問題を取り上げて再質問に立っておりまするのは、決して総理のあげ足をとろうとか、ことばじりをひねろうという、そんなよこしまな考えからではございません。すなわち、あくまで本委員会権威を高めるためでございます。権威を保持するためでございます。なぜかならば、総理がここで前書記長質問に対して答えられましたことが、数時間後において官房長官の手によって修正されるとかひっくり返させられるとかというようなことは、これは本委員会権威にかかわると同時に、総理発言の今後の信頼性を失うからでございます。すなわち、本委員会権威を高めると同時に、一国の総理答弁権威を持たせるためでございます。  したがって、もう一度お尋ねいたします。私は総理お答えはよく聞いておりました。それはこうなんです。「わが国ドル保有は少ない。わが国の保有するドル流動性をなくし、円を弱くするようなことは、絶対にやらない」かようでございます。新聞もそう書いております。記録にもそうなっております。同様に、大蔵大臣もまた同じようにお答えでございました。ところがけさの新聞を見まするというと、その数時間後において官房長官は、補足説明ならばこれは任務でございましょう、しかし官房長官補足説明ではなくして、その趣旨を変えて期限つきにしておる。あるいは新聞によれば、「中期債券購入しないとはいえぬ」と、こうゴシックの大見出しが出ておるのです。またの新聞におきましては、「中期債購入に応ず」と出ておる。これは一体前言取り消しどころか、総理発言官房長官が数時間後において訂正したということでございます。そんな権限が官房長官に与えられておりますか、お尋ねしたい。
  13. 木村俊夫

    木村(俊)国務大臣 いろいろ新聞記事に相違がございますので、最も正確に伝えた新聞記事を私手元に持っております。私はもちろんそういう質問に対して補足的にあるいは解説的にお答えしたものでございます。「米国の中期債券の買入れは、わが国国際収支余裕があればともかく、いまは絶対に困るというのが首相考え方だ。」とはっきり言っております。そこで、「ただ首相答弁も今後絶対に買入れないといいきったわけではない。三年とか五年後にわが国国際収支余裕ができれば、額は別としてドル防衛への協力考えなければならぬだろう。」こういう点を解説的にお答えしたのです。
  14. 加藤清二

    加藤(清)委員 わが党の受け取り方も、だれも未来永却に買わないなどと、そんな受け取り方はいたしておりません。しかし、数時間後においてこれを補足説明ではなくして、訂正していらっしゃるところに疑いが差しはさまれるわけなんです。何ゆえにそんなことを言わなければならないのか、言う勇気があったらこの場で言うてもらいたい。  特に申し上げておきたいことは、総理の一年とか二年ということばは、これは因縁が実はあるのです。いまはなき横路君に、この席で公債は発行しない、しません、当分いたしません、一年はいたしません、こう答えておきながら、一年たたぬうちにちゃんと発行して、君子明らかに豹変をしていらっしゃる過去の因縁があるからでございます。したがって、この際もう一度総理官房長官統一見解をここで明らかにしていただきたい。
  15. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、先ほどの官房長官お答え、私の本来の説明、食い違っておるように思いません。また、私の説明官房長官が変えるようなことはございませんから、その点は御安心をいただきます。私が最高責任者として答弁した、かように御理解いただきます。
  16. 加藤清二

    加藤(清)委員 それではきのうの総理答弁、これが統一見解である、かように受け取ってよろしゅうございますか。
  17. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申したとおりであります。
  18. 北山愛郎

    北山委員 質問を続けますが、それならば、今度日米貿易経済合同委員会の小委員会が開かれる。その中で、もしもアメリカ側から中期債券を買うような要請があっても、これは断わる、こういうことはいまのようなお話の結論として当然出てくると思うのですが、それははっきりと確認をしていただきたいのであります。
  19. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 未来永劫とは申しませんが、ただいまの状況では買わないと、はっきり申し上げます。
  20. 北山愛郎

    北山委員 そういたしますと、いま官房長官からお話がありましたような、まあ三年か五年先、そして日本外貨事情が改善をされた場合にはともかく、それまでは買わないし、あるいは要請があっても断わる、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  21. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま言われますとおり、将来外貨事情が変わればこれは別でございます。ただいまの状況で、いまむしろ私どもは心配している、外貨は悪くなるだろう、かような状態のもとで買うということはございません。
  22. 北山愛郎

    北山委員 そこで、これに関連をしてお尋ねするのですが、日本外貨準備は一体どれぐらいあるのか、そしてそのポジションといいますか、その内容はどういうかっこうになっておるのか。これは外部に発表されておらない。おかしいのでありますが、その内容大蔵大臣から説明していただく。  と同時に、外貨準備が多い、少ないというのは何かめどがなければならぬはずです。一体、日本の現在の状況における適正な外貨事情外貨準備というものがどの程度あればいいのか、その基準についてはどのようにお考えですか。  これは、私がお伺いするのは、実は政府の決定しました経済社会発展計画の中にあるわけです。適正な外貨準備を持つまでに外貨をふやすのだという方針がこの計画の中に入ってある。したがって、適正な外貨準備とは何であるか。これをひとつ、大蔵大臣でも経企長官でもいいのですが、はっきりお示しを願いたいと思うのであります。
  23. 水田三喜男

    水田国務大臣 しばしば問題になることでございますが、適正外貨がどのくらいかという標準というものは、遺憾ながらこうだというきまった説というものも現在ございませんし、まあ三、四ヵ月の輸入にたえられるものが適正だというようなことをしばしばいわれておりますが、要するにこれは余裕のあるに増したことはございませんが、幾らなければならぬという基準というものは別に現在のところないと言って差しつかえなかろうと思います。
  24. 北山愛郎

    北山委員 そうすると、政府の決定した経済社会発展計画の中の適正な外貨準備というものは何です。やはり書いた以上は意味がある。ちゃんと書いてあるのですから………。
  25. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国内財政経済政策をやってまいります上に、国際収支の天井につかえて方針を変えなければならないといったようなことがしばしば起こらない程度の額をさしておるものと思います。
  26. 北山愛郎

    北山委員 まことに何と言いますか、抽象的というか、ただことばの上だけでありまして、計画の中に適正な外貨準備、そのために外貨をふやすのだということが書いてあるのは、ただことばだけの、文句だけのもので、さっぱり意味がないということなんです。事実は、日本外貨準備というのは貿易高に比べましても二割、五分の一あるいは以内でしょう。ところがヨーロッパその他の国々を見ましても、外貨準備はその国の輸入高の半分あるいは三分の一ぐらいになっておる。そういう点から考えまして、やはりいまのような事情ではこれは非常に少ない。運営から見ても、あるいは異常な危険、不時の事故、そういうものに備えるという意味からして、まことに外貨準備は不足をしている。ですから当面相当な目標までふやさなければならぬ、たとえば三分の一なら三分の一まで、そう私は思っているのです。  これは実は企画庁長官御存じかわかりませんが、昭和三十四年ごろに企画庁で検討されたことがあるわけです。その数字を見ると、昭和三十四年にその当時の輸入額が三十億ドルぐらいです。そしてその当時の適正な外貨として計算されたものは約二十億ドルです。三分の二なんです。まあ、いろいろな項目があげられてありますが、その当時は多少企画庁の中でも検討したはずなんです。その後すっかり不勉強で、外貨などはドルへ依存して短期債でも長期債でも外国から金を借りて運営していく、自転車操業をやっていくというようなやり方を、実は佐藤内閣ばかりじゃありません、池田内閣当時からやってきた。それがそういうドルに対する、甘いドル依存運営というものが今日のこの壁にぶつかって日本経済ポンド危機ドル危機の前に冷や水をぶっかけられた、私はそう思うのであります。これは池田内閣以来、昭和三十五年あるいは三十七年、私、二回にわたって本会議日本外貨事情金保有の少ないこと、これを指摘したのであります。いままで甘い考えで、ドル不安というものを甘く考えておった、これが今日ポンド切り下げになり、ドル不安にあって日本経済が一番ショックを受けている。史上最大の株の暴落であります。世界じゅう、ヨーロッパ国々を見ても、そんなショックを受けた国はないのです。私は、自民党の政府の第一の失政は、このドル依存というものを長い間続けて、ドル不安というものを甘く考えておった、こういうことにあると思うのでありますが、総理はこの点についてどのような見解を持っておるか、反省をしておるのか、ここでお示しを願いたい。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあ、いろいろの批判もありましょうが、私はいまの状態でいいんだ、かように実は思っております。御承知のようにドル国際決済通貨としての果たしておる役割りは、これは非常に大きいのであります。そうしてこれに依存しておる国は非常に多い、かように考えておりますから、この状態が間違ったとは私は思いません。しかし、最近問題になっておりますのは、いわゆる国際基軸通貨としてのポンド、そのポンドがただいまのような状態になった、それでやはり基軸通貨であるドルが影響を受ける、これは当然だろうと私は思います。しかし、いままで言われておりますように、ドルポンド、こういうもの以外で、それでは国際基軸通貨として非常な信用のあるものがあるかというと、いままではそういうものはなかったように私は思います。したがいまして、いろいろのそれぞれの国とそれぞれの関係を持っておりますけれども、それはもちろんフランも、またマルクも私どもも持っておりますし、ときにはルーブルも持っておると思います。しかしながら、それにいたしましても中心はやはりドルだ、その点が別に私は間違っておるとは思いませんし、また今日、このポンド切り下げをした、ドルが動揺した、かように言われるけれども、しからば円自身が一体どうなのか、円自身はしゃんと、これは大蔵大臣も申しておりますように、わが国内の経済事情にささえられておりますから、そういう意味では円はたいへん強いということでありまして、私は別にその点で円が弱くなったとか、また、いままでの国際決済通貨ドルを選んだことが間違いであったとか、あるいはまたリンクしていることが間違いであった、かように私は思っておりません。
  28. 北山愛郎

    北山委員 私はドルにリンクしておることが間違いであったとは言っていないのです。ドルにリンクしておっても、やはり日本外貨準備というものを豊かにして、基礎をかたくしておる、しかもドルというものが、御承知のようにアメリカ国際収支の赤字が慢性化して、そして金がどんどん減っていく。一九四九年に百四十六億ドルあった金がいま半分しかない。しかもアメリカ外国に対して対外的に短期債務を三百億トル以上持っているのです。そういうものが金にかえてくれと言われればそれに引き当てる準備がない。そこで当然ドル信用が落ちるわけなんです。ですから、それがすなわちドル不安なわけです。そういうような傾向がずっと続いてきている情勢に合わせて、やはりヨーロッパの国と同じように、金準備をふやしていく、これが正しい、いままでのとるべき政策ではなかったのか。それを——ただドルにリンクしていることが悪いと言うのじゃないですよ。そういうようないわゆる日本経済の自立のために、円の価値を維持する日本外貨準備というものをかたくしていく、固めていくことが、この数年来の正しい政策ではなかったのか。それを怠ったために、いまドル不安、ポンド切り下げ日本が非常な動揺を来たしている。総理は、円は非常にその基礎かかたいと言っておりますが、それならいま何もあわてる必要はないでしょう。日本国際収支が悪いから、しかも、それに備える外貨準備が少ないから、不安でもって、やれ引き締めだの何だのと言っているでしょう。その不安がなかったら、準備がそれだけあったならば、そういう心配はしないでも済むはずだったということを私は言っているのです。そういう点で、いままで長い間の政府の財政政策、そういうふうな外貨準備についての考え方に間違いがなかったのか、私はそれを聞いているのです。重ねてそれを……。
  29. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私がやや北山君の質問を取り違えたかと思いますが、ただいま言われるように、もっと外貨保有があったらよかったじゃないかとか、あるいはもっと金の保有高が多いことが望ましいのじゃないか、かように仰せになるのであったら、私もそのとおりだと思います。いままでも外貨が二十億ドル、それをまた切る、こういうような状態で、これは満足だ、かように私は申してはおりません。しかし、この外貨保有が減るから、そこで直ちに円があぶないんだ、かように言われるけれども、まだそんなところじゃございませんということを申し上げた。また日本金保有、これももうしばしば指摘されておるように、これは全体から見まして少ない。これがもっと持てればたいへんしあわせだと思います。しかし、そういう意味で、そこらにしからば不安があるのか、こう言われると、それは不安はございませんということを申し上げているので、ただいまの点で別にあえて反対のことを申しておるわけじゃありません。  先ほど来言われるように適正外貨保有高、それは一体幾らなのか。これは先ほど議論でございましたけれども、これは動揺しないようなものが適正だという、その数字ではどのくらいのものが適正かというと、これはそれぞれ常識的に考えるだろうと思うが、それが御指摘になりましたように、あるいは三分の二あるいは三分の一、少なくとも三分の一くらい持ちたいというのが、これは普通の言い方だろうと思います。したがって、いまの二十億ではとにかく少ないのだ、こういうことは言える、かように思いますが、それはそういう意味でいろいろ努力はしているけれども、なかなか集まってこない。ここらに一つの問題があるわけです。それが貿易の収支だけでは、これは黒字になっておりましても、日本が海外援助その他で相当貿易収支外の問題でやはり出している、あるいは資本が出ていく、こういうようなことがございますから、これは一がいには言えない。  しかしいま問題なのは、円が非常に動揺して非常に弱いのか、こういうと、そうじゃございませんしかし、いまのままでいいとは私は思いませんから、やっぱり利子の引き上げだとか、あるいはまたこれから貿易収支にどういうような影響をするか、このままやはり輸入がふえ、輸出が伸びないというようなことだと、一そう悪化してくる。こういうことでございますから、今日のポンド異変に対して、いまもうこれで安心です、何にもいたしません、かようなことを申すわけじゃありません。御指摘になりましたように、もっと外貨保有があって、そしてもっと潤沢であって、そこらに余裕のあるとり方ができれば、それに越したことはございません。
  30. 北山愛郎

    北山委員 これは非常に重大な問題で、単にこの委員会ことばの上でおさまればいいということじゃないと思うのです。すでに数字的に見ましても、日本の約二十億ドル外貨準備の中で、一体流動性の資金というものはどの程度あるか、動かせる金が。これを大蔵大臣からお伺いしたい。  それからもう一つ、日本のいわゆる債権債務、しかも短期のものをたくさん借りて、おそらくユーロダラーを十三億ドルぐらい借りているだろうと思う。これはいつ何どき逃げ出すかわからぬ金ですよ。それが金利関係あるいは日本に対する円の信用とか経済信用とか、そういうことでヨーロッパその他に逃げ出したら、一挙に日本の乏しい外貨準備の基礎がゆらいでしまうわけです。そういう危険な状態だから私は聞いているので、ただことばの上で安心ですなどと総理が言えるような状態ではないと思う。ですから、私はその点を大蔵大臣から数字をあげて、これこれこういうように日本流動性がある、短期の債務がこれだけあるけれども、これに対してはこういう手を打つから安心だというようなことをはっきり政策の裏づけのある答弁をしてもらいたい。
  31. 水田三喜男

    水田国務大臣 保有の金とIMFのゴールドトランシュで大体五億ドルでございますので、それを除いた十五億ドルが大体流動性を持ったものというふうに考えられると思います。ユーロダラーといわれるユーロマネーは百三十億ドルくらいといわれておりまして、日本が取り入れているのは大体この一割、十分の一前後というふうに思っておりますが、これが今度のポンド切り下げアメリカ、カナダの公定歩合引き上げによってどれだけ流出するかというようなことは、私どもにとって重大な関心事でございましたが、十一月中は異常な流出というものは避けられたという現状になっております。  それから、そのほかの短期債務、いわゆるユーザンスというものの債務は大体二十億ドルぐらい、ポンドは三億ドル、あとドル債務が十七億ドルという数字になっていようかと思います。
  32. 北山愛郎

    北山委員 ポンド切り下げドル不安という情勢ですね。そういうものの不安、動揺というものはまだ続いておるわけです。きょうあたりの新聞を見ても、ポンドはまた安い、金は高くなっていると、こういう情勢で、しかもアメリカ筋でも、おそらくまた公定歩合を上げるのじゃないかと、こういわれておるのですが、もしもアメリカが公定歩合を上げれば、日本も上げざるを得なくなるでしょう。そうでなかったら、いまお話があったような短期資金が流出してしまうでしょう。そういうような事態なんで、私はただことばの上でだいじょうぶなんだというようなことでごまかしてもらいたくないわけです。  そういう点、いろいろ考えてまいりますと、やはり先ほど申したように、何かしら、ドルを借りて、何でもかんでも借りまくって、そうして経済成長をどんどんやっていくというような、そういう一貫したこの数年来の政策というものは、ここでひとつ転換しなければならぬじゃないかと私は思うのですが、そういう点について企画庁長官、お考えがあれば承りたい。
  33. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 お話を伺っておりますと、どうも私ども考えておりますことと多少違う点があるかと思いますので、申し上げさせていただきます。  わが国外貨準備が少ないということは確かでありますし、総理が言われましたように、もう少し金があったほうがいいということも確かであります。しかし、いまかりにもう二十億ドル外貨がございましたら、そうして金が買えたら、それで金を買うかということになれば、私はたぶんそうしないだろうと思います。ある部分は買うと思いますが、そういう余裕のある外貨があったら、私ならば預けたり運用したりしてもうけるほうがほんとうだと思いますので、私は金というものをそれほど大事なものだとは考えておりません。
  34. 北山愛郎

    北山委員 長官のお話は、それは、社会主義の世の中になれば、金なんというものは役に立たないかもしれない。レーニンが、社会主義の社会では、金でもっておまるをつくるのだ、便器をつくるのだと、こういうことを言ったのでありますけれども、しかし現在は、金が値打ちが出てきているいまの情勢ですね。アメリカが世界じゅうの金の七割を持っておった当時においては、ドルが金にかわるものとして、むしろ金よりも力強いものになっておった。しかし、現在アメリカの金が少なくなった、そういう事態においては、ドルの値打ちが下がって、金のほうへ移っていく。ドル信用が落ちて、金でなければならぬようになってきて、民間でも金の退蔵が始まるとかなんとかいろいろな傾向が出ているわけですから、どうも社会主義の世の中で、ずっと先のことであれば格別ですが、現在の、いわゆる当面の情勢とは食い違ったお考えだと思う。  その点はさらに御検討願いたいと思うのですが、私はこの際企画庁——先ほど申し上げたように、昭和三十四年ごろには企画庁の中でも、あるいは外部でも、適正外貨は幾らかという研究があった。これはあってしかるべきなんです。その後これを怠っておったということは、これは間違っておる。したがって、企画庁の中でいろいろな条件を検討して、日本の貿易その他の準備に充てるための外貨準備は幾ら、理論的にどのくらいあればいいかということを、これは企画庁の当然やらなければならぬ仕事ですよ。これをやらなかったというのはなまけているのです。これをやるかどうか、その辺のお考えを聞きたいのです。
  35. 水田三喜男

    水田国務大臣 御意見でございましたが、私どもはそのとおりには考えておりません。と申しますのは、この何年間か外貨の保有量が変わっていないということは、保有外貨の量が少ないということのようでございますが、しかし私どもは、最近の国際収支がよくなったときに、過去の債務をどんどん返済しておりますので、外貨の保有高はふえませんが、日本の債権債務のポジションというものは、この数年の間に非常によくなっておるということでございます。で、いま企画庁長官からもお話しございましたが、この外貨の運用で、金で運用したほうがよかったかどうかというのですが、私はそう思いません。日本はこの数年間、ドルの借り入れによって日本経済をここまで拡大させてきた。そうして最近の輸出増によってこれをどんどん返済しているということでございまして、もし金で運用するということでしたら、これだけの経済拡大をやるドル借り入れというものはなかなかむずかしかった。これをドルで運用しておったからこそこれが日本信用になって、いままで経済拡大の借り入れができたということで、金に運用しなかったことが現在の日本経済を伸ばすことに相当役立っておったというふうにも考えますので、私は、これを全部金にしないことは間違いであったという御意見には賛成できません。  と同時に、きのうもお答えしましたように、いま世界が、どうせ貿易の拡大に金の生産が伴わないのですから、したがって金と結びつかない新しい流動性をどう得て解決しようかというのが世界の方向でございまして、金を持つこと、その方向へいくことが、世界の流動性の解決だというふうにも考えませんし、今後の方針で、できるだけこの流動性をなくしても、みんな利子を生まない金そのものを保有しようという方向へ運用することが正しいか間違いであるかということはこれからの問題でございまして、私はその点、あなたの御意見とは少し違うというふうに考えています。
  36. 北山愛郎

    北山委員 私は、経済のことですから、そんな極端なことを言っているんじゃないのですよ。確かにドルにして運用した面のプラスもある。しかし、マイナスもあったでしょう。ヨーロッパのEECの国は、やはり経済の成長について考えると同時に、自国の経済の安定ということも考えて用意してきたということなんで、いまになるとその差が出てくるわけなんですね。私はこれ以上大蔵大臣とその問題は議論しませんけれども企画庁長官に、先ほど申し上げた適正外貨の問題の検討を企画庁でやるかどうか、これをひとつお考えを承りたい。
  37. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう研究はいたしてみたいと思います。
  38. 北山愛郎

    北山委員 それで私は、先ほど申し上げたようにドル不安、国際通貨不安というものを甘く見てきたのが第一の罪だと思うのです。第一の失敗だと思うのです。第二の失敗は、そういう国際環境の中で、ドル危機というものあるいはポンド切り下げというものの見通しを誤って、そして本年度の財政経済政策の運用を誤った。これが第二の罪ですよ。経済見通しも今度改定になりますけれども、当初の経済見通しが大幅に変わっている。そして心配された経済が過熱をして、まあ大蔵大臣国際収支外貨には心配がないと言うけれども国際収支が、収支とんとんであった予定が、改定試算によりましても総合収支で五億九千万ドル、六億ドル近い赤字が出るという試算が出ている。伝えられるところによりますと、それだけでもまだ足りない。それ以上さらに一億ドルぐらいは上積みをしないといけない情勢だ、こう言われておるのですが、これこそ明らかにことしの財政経済の運用を誤った結果ではないのですか。その点について総理大臣のお考えを聞きたいのであります。
  39. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ことしの経済見通しと現実の経済を見ておりまして、私が自分で一番誤ったと思っておりますのは、設備投資が前年に比べて三割近く伸びた、このことを見通せなかった点であると思っております。そういうふうに伸びました理由は、本会議でも申し上げましたように、やはり国際的な競争に対処して、いわゆる規模の利益を追わなければならないというようなこと、あるいは大企業、中小企業を通じまして人手不足に対処しなければならない、十分な理由があったと思うのでございますが、しかし、この三割近い伸びは昭和三十六年以来のことでありまして、四十年代にそういうことはもうないのではないかと一般にいわれておった。私もそう思っておりました。その点は明らかに誤りでありました。
  40. 北山愛郎

    北山委員 総理大臣のお考えを聞きたい。
  41. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、四十二年度の予算を編成いたしました際に、この予算編成には二つの目的がある、一つは不況克服だ、もう一つは経済の安定成長、それを招来して、そして物価の安定をすることだ、かように実は申しました。  第一の目的は、これは達した。ところが、ただいまも経済企画庁長官が申しますように、経済の安定成長ということについては、これを実現することはできなかった。しかし、最初から申しましたように、経済変動については、これは適時適切な対策を立てるということを申してまいりましたので、私どもは、ある程度流動する経済情勢だということは一応予想していたのでございますから、途中において対策を立てなければならないだろう、かように思った。これが七月以来のいわゆる引き締めの政策でありますし、また九月になりましてもさらにそれを強化した、かような状態で今日まで推移している。とにかく、それは相当の見通しの相違はございます。そういう百味においては、適切なる対策を立てておるというのが現状でございます。
  42. 北山愛郎

    北山委員 どうも総理の頭が少し変になっているのじゃないかと思うのです。本年度の予算編成のときの方針の中に、不況克服なんということはないのですよ。昨年はあったでしょう、四十一年は。ことしはなかったのです。むしろ嫌気過熱のおそれがあるから、適当に弾力的な運営をやっていくということはあったけれども、四十二年度の予算に、不況を克服するなんというような編成方針はどこにもないのですよ。四十一年のやっと四十二年を重ねて混同して言っているじゃないですか。そんなことだから経済運営を誤るのですよ。それを訂正しなさい。
  43. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 四十一年、四十二年、そういう際の問題の推移、それについてはただいま私が申し上げたとおりでございます。これは、いわゆる四十二年で直ちに不況克服、そういうことは出ないかしりません、しりませんが、経済の継続性というか、予算の継続性から申しまして、そこがねらいでございます。
  44. 北山愛郎

    北山委員 これは、ただことばでちょっと言い誤ったというものじゃなくて、参議院の本会議でも、あなたはそういうふうな間違った答弁をしているのです。わが党の小林武議員に対して、そういうような同じ答弁をしていますよ。おかしいと思うのです。これは二年分一貫してというわけじゃない。これは経済の推移を見ればわかるとおりなんです。四十一年のときには、不況脱却のために、景気刺激のために、公債を発行したりなんかしたんだ、しかし景気は回復したんだ。したがって、フィスカルポリシーからするならば、ことしの予算の性格というものは当然違うはずだし、また当初においても、編成方針としてはそんなことは言っていない。要するに、四十一年とはまるっきり違うんですよ。私は、ことしの経済運営を言っているのであって、この点は率直に訂正をされたらいいと思うのです。思い違いをしているか、頭の中で四十一年からずっとのべつまくなしにものを考えているから、このように経済がおかしくなっちゃうのです。総理大臣がそんなことでどうするのです。
  45. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どこまでも安定成長ということを基調にして考えております。安定成長は、ただいま申し上げるように、不況の克服でもございます。だから、その辺の点は十分御理解をいただきたい。その安定成長、これがなかなか持続できない、こういうことで、私どもが、途中において経済情勢の変化に対応することはあるということを申したのです。これは、予想以上の成長でございますから、それに対する対策はとっております。もしもこれが予想以下の成長ならば、それに対する、いわゆる不況対策をもちろん立てなければならない、そういうものでございますから。これは経済のあり方というものが、ただいま申し上げるような状態でございます。ここで私どもがねらったのが、安定成長ということであります。ところが、なかなかその安定成長ができない、予想以上の成長を来たした、だからこれをいま引き締めにかかっておる、こういうことでございますから、私の考え方は一貫しておるのです。
  46. 北山愛郎

    北山委員 四十一年度と四十二年度をごっちゃにして、一貫しておる、こういうことなんですね。これは違うんです。経済の情勢が違うから、各年度の編成方針経済政策も、まるっきりこれは去年とは逆でなければならぬはずなんです。ところが、ことしの予算の編成方針は、なるほど景気過熱を抑制する腹づもりを持ちながらの編成方針であったけれども、そのとおり運営が行なわれなかったから、景気が過熱したでしょう。  そこで、次の問題ですが、七月以来いわゆる景気調整策をとったと言われるのですけれども、その七月にとりました、例の国債七百億と政保債五百億を減額をしましたね。これはむしろ景気刺激策になるのではないのですか。なるほど一昨年あたりは、財界でも国債を一兆円も出せといったけれども、ことしになってくると、むしろ迷惑がって、そして民間資金需要というものを押えるような、じゃまになるような国債はもうごめんだ、減らしてくれということになる。その要望に応じて、千二百億の国債と政保債を減らしたんです。したがって、それだけ市中銀行には資金の余裕が出て、これがいわゆる設備投資のほうへ回る資金の余裕が出たのですから、これは景気刺激じゃないのですか。景気調整とは逆の措置ではないのですか。大蔵大臣どうなんです。
  47. 水田三喜男

    水田国務大臣 私どもは、さっき企画庁長官が言われましたように、ことしの見通しに若干の見込み違いがあったと思います。特に設備投資は、最初は非常に旺盛であっても、後半期にいってこれは落ちつくだろうということを考えていましたが、なかなかそうではなかった。そうすれば、当然これに対するいろいろな措置をとらなければなりませんが、幸いといいますか、不幸といいますか、今年度暫定予算を組まなければいけないというところに追い込められましたので、暫定予算というものを編成すると、どうしても四月から発足すべき予算の執行が、これはやはりある程度ずれるということになりますので、これとの見合いにおいて、七月ござからいろいろな過熱を防ぐ、そして総需要についての調整をする策をとれば大体タイミングもいいじゃないかというような、一連のスケジュールを立ててやってまいったのでございますが、そのときに国債の消化ということから、市中の金融状態考えましてああいう措置をとると同時に、その次には、これによってやはり日本銀行におけるいろいろな金融政策というものを考えられておることも承知しておりますし、同時に、それに対応する国の繰り延べ措置というようなものも頭に描いておりましたので、ああいう出発をしましたが、全体の計画のうちの一つとして、まず金融情勢に対応した公債の出し方というところがら、この措置の出発をしたというようなことでございまして、あの措置がかえって設備投資や何かを刺激するということに役立っているとは、私は思っておりません。
  48. 北山愛郎

    北山委員 とにかく国債、政保債を減額したことが景気調整だ、——調整だという以上は、民間私企業に余裕を与えるのは、調整じゃないじゃないですか、あの事態においては。だらか私は、大蔵大臣は率直に骨だけ答えていただけばいいのです。とにかく民間資金に余裕を千億以上も与えるような措置が景気調整じゃないでしょう。もちろん九月には金利を上げた。そしてひどいことには、当時大蔵大臣記者会見をしてこんなことを言っているのです。七兆円くらいの設備投資を五年ぐらい続けなければ二百億ドルくらいの輸出をするような状態になれない、いざとなったら自分が出かけて二、三億ドルの借金をしてきてもいいのだというような放言をしているのです。七兆円くらいの設備投資を五年間くらい続ける、そのくらいのことでなければならぬ、金が足りなくなったらおれが外国へ行って二、三億ドルは借りてくるのだ。そんな、むしろ民間の設備投資を刺激するようなことを記者会見で言っているじゃないですか。そんなことで一体景気調整とか、ほんとうの正しい経済運営ができるのですか。そんなことが景気調整なんですか。大蔵大臣方針の演説の中には、そんなことも——そもそも景気調整の措置をとったようなことを言っている。しかし、実際はまるっきり違うことをやっているんじゃないですか。どうなんです。
  49. 水田三喜男

    水田国務大臣 そういうふうに言ったわけじゃございません。いま百億の輸出のできる基礎というものは、この何年間の間に私どもがつくったのですが、これにどれくらいの設備投資をやっておるかと計算しますと、やはり三十兆円前後のものを投じて百億輸出の基礎をつくっている。これからさらに日本の貿易を伸ばして二百億ドル台の貿易規模をつくろうというのでしたら、やはり七兆円程度の設備投資を四、五年続けるということをしなければならぬ、だから設備投資が悪い悪いという一つの風潮がございましたが、過去三年間において、五兆前後で設備投資が非常に停滞しておったので、ことしある程度設備投資の意欲というものが出てくることはやむを得ない、設備投資それ自身が悪いことじゃないのだという説明をしたときのことばだと思いますが、この際、たくさん設備投資をして、足らなければ自分が借りに行っても、民間はもっと設備投資をやってくれというようなことを言った覚えはございません。
  50. 北山愛郎

    北山委員 とにかく七兆円くらいの設備投資を、五年くらい続けてもかまわないのだ、金が足りなければ借りてくればいいのだということは言ったでしょう。ところが、大蔵大臣が言うとおり、ことしの設備投資は七兆円台をオーバーした。だから、大蔵大臣から言えばこれは好ましき形で、来年も七兆円以上そうなればいいということになるのです。そうなれば、先ほど企画庁長官が言った、ことしの大きな間違い、見込み違いは、設備投資が去年に比べて三割もふえたということだ、これは見込み違いだったということを言うのと、話がまるっきり違うのです。まるででたらめですよ。そして、しかも大蔵大臣が財政演説をするときには、それをもって景気調整を七月からやったなんてことを言っている。そんな演説、うそじゃないですか、どうです。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私が申し上げておりますのは、悪かったのは私のほうであって、設備投資のほうではないという意味でございます、概して申しますと。
  52. 北山愛郎

    北山委員 そんな、ことばの上でごまかす問題ではないですよ。それほど設備投資がふえたから、国際収支が赤字になって困っておるじゃないですか。そんなふざけた問題ではないですよ。非常に大事な七月ごろに、大蔵大臣がそんな楽観論をぶっておる。そんな姿勢だから景気が過熱をしたんですよ。壁にぶち当たったんですよ。  そこで私は、次にお伺いしたい。まあ、いろいろと問題がありますけれども、時間がありませんから先を急ぎますが、この設備投資がふえたということは、確かに直接の動機は、いろいろな動機は、貿易、資本の自由化に備えるための国際競争力をつけるとか、合理化投資をやるとか、そういうこともあるでしょう。しかし企業ですから、もうからないことはやらないわけです。また、金がないことはやらないわけですよ。昨年以来企業はものすごく収益があがった。もうかったのです。手元に資金があった。ですから通産省の調査によっても、そのような膨大な設備投資の資金を、自己資金だとか、株式だとか、そういうふうなもので大半まかなえるだけの力があったから設備投資をしたのでしょう。金がなければ設備投資はできないのだから。それが直接の動因だと思うのです。それをむしろブレーキをかけるのが景気調整策だと思うのです。その一つとして、これはささやかではありましても、ことしの四十二年度の際に、春の国会で、いわゆる景気調整減税という制度を設けた。これをどのように活用いたしましたか、大蔵大臣
  53. 水田三喜男

    水田国務大臣 延納利子を公定歩合の引き上げに伴って上げるという、自動的に発動する部面はもう発動しておりますが、もう一つの重要産業機械の償却についての問題は、これはいろいろむずかしい問題がございます。御承知のように、自由化を前に控えて国際競争力をつけるために必要だという要請から、税の特別措置をとっておる。それによって据えつけられた機械というようなものがございますし、それをいまこれから設備投資を押えるというために、この優遇措置をここで停止をしてしまうということが産業政策の上でどういう意味を持つかというような、産業政策全体の面から考えるべきいろいろな問題がございますので、この発動については、いま慎重を期しているというところでございます。  それから先ほどのお答えで、少しことばが足りませんでしたが、設備投資というものについての考え方でございますが、イギリスが年じゅう国際収支の問題にぶつかって、そのつど引き締め政策をやっておる。この引き締め政策の連続によって、設備投資というものがほんとうに抑圧されてしまったということが、イギリスの今日の問題の根源であるし、またドイツの例を見ましても、財政が硬直化してしまうと金融政策だけによらなければいかぬ。したがって、この締め方にしても、産業界に影響を与えて、設備投資が押えられて、経済成長がないというところにいろいろな問題が出てくるということを考えますと、日本政策は、幸いにして引き締めはしておりますが、国際競争に必要な近代投資というものは、日本はできるだけやらせながら、国際収支の天井にぶつかるすれすれなところでも、この問題を私どもが気をつけておったということがいま日本経済の強みになっており、最近世界の貿易で伸びた国は、ほとんど、あまりございません。六一年から六六年、五年間くらいで五割くらいしか貿易は伸びてない。日本は二倍以上伸びておるということは、日本は適当に引き締めを、適宜に財政運営をやっておって、外国に負けない体質改善の合理化を続けておったというところがいま日本の特徴でございますので、私どもはそういう意味で、角をためて産業自身を陳腐化してしまわないという努力は、この引き締め中においても必要だという考えで、産業に犠牲を負わせないような運営をやっておる、ここに私どもの苦心があるのでございまして、設備投資が、いまの日本経済から見て、一定の大きさがあるということは、そうえらく悲観すべきことではないと私は考えております。
  54. 北山愛郎

    北山委員 いままで何とか通ったことが、今後も通るというわけじゃないのですよ。歴史というものは変わるのですからね。いままでは、なるほど景気が過熱をする、高度成長をやってそうして国際収支の壁にぶつかる、そのときには外国から金を借りて、そして何とかつじつまを合わした。そういうことを繰り返してきたわけです。いままではそういうことができたかもしれない。しかし、先ほどお話し申し上げたように、世界の金融事情というものは変わってきているのですよ。日本アメリカからドル防衛協力を求められるような情勢なんです。金が借りられるどころじゃなくて、日本が借りておる資金が流れ出すかもしれない、逃げ出すかもしれないという危険性のある情勢なんです。一体、ことしの長期、短期の資本収支のバランスは幾らになっているか、みないずれも赤字じゃないですか。マイナスじゃないですか。金を借りられないじゃないですか。そういうような情勢になってきたら、いままでは何とかこのやり方でよかったから、今後もそれでやろうなんというものではなくて、むしろことしは一つの転換点になっている。ですから、ことしの経済運営というのは、よほど国際環境というものを考えながら慎重にやらなければならなかったものを、いま大蔵大臣の言ったように大ざっぱな考え方で、景気調整といいながら、実はむしろ金融を緩和してみたり、あるいは楽観論をぶったり、せっかくつくった景気調整減税を発動しなかったり、そんなことをしているから設備投資の行き過ぎが起こるわけなんです。  そこで、それだけではなくて、一体日本の高度成長ですね、超高度成長というか、そういうふうなものが、実はいままでの三十年代のものだった、四十年代は変わるんだ、いわゆる安定成長に移行するんだ、こう言ってきた。ところが、これが今年度裏切られたわけですね。相変わらず高度成長になっている、一二%。そういうような高度成長になっている原因はどこにあるのか。ですから、財政の規模だとかそういうことじゃないのです。その設備投資を一番過熱さした根因というのは、日本の税制の中にある。二十八年から始まっておる租税特別措置を中心とした法人企業に対する優遇、金持ち減税にある。どこの資本主義国でもやっておらぬような至れり尽くせりの資本蓄積減税をやっているから、そこにやはり、財政面で公共投資を減らしてみたり、いろいろなことをしても、やはり企業はもうかるから、設備投資をすればそれだけ税金を安くしてくれるから、どんどん投資をするのですよ。それじゃ安定成長にはならぬじゃないですか。ですから、四十年代はこれから安定成長にするというなら、その根本の租税特別措置並びに金持ち減税から、企業優遇の過大な、あるいは特別償却であるとかいろいろなものがありますよ。もうたくさんある。外国でやっていないことをやっている。それを、ここで整理をしなければならぬ。それがある限りはことしのような暴走を続けて、そして国際収支の壁へぶち当たる。こういう点についての反省をひとつしてもらいたい。大蔵大臣あるいは企画庁長官から承りたい。
  55. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはお説のとおりでございまして、経済成長に寄与しているしかたを見ますと、やはり個人消費というようなものが一番大きく寄与する。設備投資も同様でございます。そういう一連の需要というものを、ある程度ここで調整しなかったら、国際収支の問題には耐えられないというときにきましたので、御承知のようないま引き締め政策をとっておるわけでございますが、この効果は、来年度に入ってから必ず相当強く出てくるものと私は思っています。  そこで、そういう効果が出てきたときに、その裏打ちをする予算の編成とか、そういうものに抜けるところがあったら、せっかくの効果をむだにしてしまいますので、この裏打ちをする来年度の予算編成というものは、私は非常に大切だといま思っておりますので、そういう経済を不当に伸ばさない、ほどほどにするという調整策を来年度においてとるためには、予算の規模の問題もございましょうし、税制の問題もございましょうし、また国債の出し方とか、あらゆる問題が関係すると思いますので、そういう一連のことについて十分考慮するつもりでございます。
  56. 北山愛郎

    北山委員 要するに、ことしの景気の行き過ぎというか、そういうものは、設備投資が行き過ぎたのであって個人消費ではない。これは企画庁経済見通しの試算を見てもわかるのです。個人消費は、当初見通しよりそう伸びていないのです。設備投資が伸びているのです。これは数字を言いましょうか。一兆六千五百億の、当初見積もりよりも国民総生産がふえたその中の大部分というものは、民間の投資なんです。しかも企業投資なんです。いわゆる当初見積もりよりもそれだけ食い違った、その分は設備投資なんです。だから、過熱をした分というものは、過熱の原因になったものは設備投資であって、個人消費ではない。もちろん、そういうものが個人消費にも若干はね返るでしょう。そういう点からするならば、総理が消費というものを何か犯人にして、消費を抑制するということはちょっと的はずれじゃないのですか。むしろ企業の設備投資を刺激する要因、その原因となっておる税制とか、そういうものを直すのが本筋じゃないのですか。それは消費も多少は伸びたかもしれぬが、主犯ではない。ところが、これを犯人に仕立てて消費抑制の政策をとろうとしておる。ここに間違いがあるのじゃないですか、総理大臣。
  57. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 やはり消費のほうも私ども見方が少なかったわけでございます。結果としては二ポイントほど違いました。御承知のように消費は国民総生産のほぼ半分を占めておりますので、二%違いますと相当大きな違いでございます。ただ、私ども健全な消費というものを決して悪いと思っておりませんで、企業にとってもそうであるように、やはり個人にとっても資本蓄積が必要でございますから、消費に向けるものはそれとして、やはり自分のための資本蓄積ということを考えるべきである。そのためには、やはり私どもそういう政策努力をしなければいけない、そう思っておるわけでございます。
  58. 北山愛郎

    北山委員 企業が設備投資をやったのは、いま申し上げたように資本蓄積を援助するようなそういう税制、それからことしの予算の中で大きいのはやはり第三次防です。これから一兆円を使おう、そういうような兵器を国産にするという、これが刺激をしたに違いない。それからもう一つ、海外の経済協力ですね。何しろ総理が東南アジアを回ってくると、至るところで何か借款の申し込みを受けて、それに応ずるような、借金の注文を受けてくるような、そういうふうな姿勢で、ことしの輸出入銀行のワクを見ても三千億、その三千億をさらに今度の補正予算でプラスをして三千二百五十億。これは金を取らないで物を売るのです。それだけやはりインフレの原因になり、設備投資を刺激するのじゃないですか。東南アジアなり、いわゆる開発途上国に協力するということは、これは当然私も賛成ですよ。しかし、少なくともそれは計画的であり、その援助というものは、その地域の住民の利益になっていなければならぬ。政府のてこ入れをするというような政治的な借金ではいけないのです。やはりその地域のほんとうの経済の発展なり、住民の福祉に役立つような援助、協力でなければならぬ。そういう点からして、政府のやっておる経済協力に私は疑問を持っておるのですが、私どもが聞いておるところでは韓国なり台湾なり、あるいはタイなりマレーシアなり回ってこられたのですが、一体どの程度どのくらい約束してこられましたか。
  59. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 海外援助、協力、どのくらいやってきたかということですが、まだそういうものは固まっていないものが大部分でございます。したがいまして、そういう意味からいえば、まだきまっておらないということでございます。  ただ、立ったついでと申してはなんですが、先ほど来大蔵大臣並び、に企画庁長官からお答えしておるように、経済の安定成長、これに消費を私がやり玉に上げた。消費が罪人じゃないのだ、設備投資だ、こういうふうにお話が出ております。私はいずれが罪人だとか、その原因だとか実は申すわけじゃございません。とにかく経済の過熱に対して、やはり総需要を押えるという、そういう方向でありたいと思います。また、いまの設備投資にいたしましても、設備投資は必ず将来におきまして報いられるものがある、貿易拡大に必ず役立つだろう、かように私は思います。だから、いたずらに設備投資を縮小することが経済のために役立つとは私は思いません。もちろん過度の設備投資は避けなければなりませんが、やはり設備投資を拡大するということは、将来の経済発展に必ず役立つ。大体、いわゆるイギリスあたり、あるいはドイツの不況等を考えましても、こういうところに一つの問題があったように思います。したがいまして、いま安定成長、こういう点から過大な設備投資は避けなければならないと思うし、また、それが片寄ってはいけない。ことに中小企業等、生産性の低い部分についても、近代化はうんと進めなければなりませんから、そういう点が私どもはやや見通しが甘かったのだ、なかなか強かった、だからそういう点を直していくということを申しております。  でありますが、同時に消費という問題を見ますと、消費そのものは、最近の年来の消費の状況は、しばしば新聞に伝えられておりますが、確かにそれだけ国民生活が向上するとか、あるいはお互いの生活が豊かになる、そういう意味でたいへんいいことだと思いますが、これもやはりほどほどにして、総需要をやはり適正に押えていく、貿易拡大の方向で、輸出振興の方向でいきますならば、私はたいへんけっこうだと思います。国内で消費されることは、なるほど国民の生活向上、こういう意味でしあわせだとは思いますけれども、これもやはりほどほどにしていただきたい、かように思いますので、そういう意味の国民の協力も求めたいというのが私の主張であります。  したがいまして、消費だけを原因、悪人にしてそれを責めておる、こういうものでもありませんし、また、設備投資そのものも、非常に偏重した設備投資、これの悪いことは、先ほど来北山君の御指摘のとおりでありますから、この設備投資がどういう方向に向かっておるかという実情もよく勘案して、そして将来の経済の発展に役立つもの、これもやはり適当にしたいものだ、かように思います。  立ったついでに、在来の説明に補足しておきます。
  60. 北山愛郎

    北山委員 ほんとうはインドネシアに対する借款とか、そういうものをいろいろ聞きたかったのでありますか、時間がないので——インドネシアの借款については、この前の春の国会のときにお伺いしたわけです。すでに交換公文ができておるわけです。なぜ一体国会に出さないのです。これは一種の政治的な借款ですよ。ほんとうは輸出入銀行あたりで扱う問題じゃないのです。別な経済協力基金とか、そういうふうなやはりその国の経済を立て直す、政府をささえてやるというような趣旨のものでありますから。しかも、それだからこそ政府間の交換公文でやるのでしょう。そういうふうな政治的な意味を持つものですから——単に金融上のベースでもってやるようなことは、それは輸出入銀行でいいでしょう。しかし、こういうものまで輸出入銀行にやらせるというのはおかしいじゃないですか。  またお伺いしますが、これは条約です。しかも、日本がインドネシアに一千万ドルの贈与をやる。それから五千万ドルの円借款にしても、結局日本が危険を負担しなければならぬわけです、向こうが払えなければ。しかも、いままで焦げついて払えなかったものがたくさんある。そういうものはみんな国の財政で負担しているじゃないですか。ことしの輸出保険の特別会計のあれを見ても、相当な金をインドネシアの焦げつき債権の補てんに使っているじゃないですか。みんなの負担になるのですから、そういうものはやはり国会の議決を経るというのが当然じゃないですか。どうですか、外務大臣。
  61. 三木武夫

    ○三木国務大臣 インドネシアに対する六千万ドル、一千万ドルが贈与になるわけで、五千万ドルについては、金利五分、七年据え置き期間の後十三年、二十年というこういう期間ですれば、やはり支払い得るという前提で、これは輸出入銀行と民間銀行との借款で適当であるということで処理をしたのであります。インドネシアが安定するということはアジアの安定のためにきわめて重要である、しかもこれだけの金利、年限等を見込めば、やはりインドネシアは立ち直るものである、こういう前提で輸出入銀行をして処理せしめたのであります。  一千万ドルについては、御承知のようにこれは贈与でありますが、政府が予備費の中から緊急やむを得ないとして、国会中でもありませんのでこれを処理いたしたのでございます。両方合わせて、金利負担も三%に軽減になるという、いろいろな配慮を加えてこれだけの借款、贈与を決定して、インドネシアの安定に資したいということでございます。
  62. 北山愛郎

    北山委員 この円借款あるいは贈与とか、そういうふうな国の間に権利義務の関係を設定するような条約、これは憲法の規定の上から、国会の承認を受けるというのが当然だと思う。このことは春の国会でも議論して、まだもの別れになっておる問題ですが、きょうは時間がありませんからまたあとの機会に譲りますけれども、私は、その点は政府として考えてもらいたいと思うのです。たとえば、一千万ドルの贈与にしても、これを予備費から出す。国会が開会されてないからというのですけれども、あれは六月ごろに話はきまった問題ですよ。国会の開会中ですよ。あるいはこの臨時国会にかけてもいいのです。むしろ国会をよけて、そして予備費あたりで処理をしよう。これは南ベトナムのこの前の援助もそうだったでしょう。ぼくはそういう政府の姿勢に、何か国民の前に問題を明らかにしないで問題を処理しよう、こういう姿勢が見える。この点はまことに私は遺憾だと思うのです。  この際大蔵大臣にお尋ねしますが、今度輸出入銀行のワクを三千二百五十億に二百五十億ふやしたですね。これは特別会計のほうの予算措置は必要としないのですか。
  63. 水田三喜男

    水田国務大臣 あの二百五十億のうち五十億は産投会計の出資でございますので、この補正をやっております。
  64. 北山愛郎

    北山委員 その受けるほうの五十億以外に、財投のほうから二百億、資金運用部のほうから出るわけです。しかしそれにしても、すなわち一般財源、いわゆる産投を通した五十億と、それから財投からの二百億で二百五十億を、いわゆる輸出入銀行の予算総則にある三千億を、やはり広げるべく訂正すべきじゃないかと思うのです。そんなことを怠っているのはどういうわけです。三十億と書いてあるでしょう。
  65. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 御答弁申し上げます。  輸出入銀行のほうは、産投からの五十億円の出資と、二百億円の財投からの融資を受けまして、資金計画が変わるだけでございますので、これにつきましては予算の補正をいたしておりません。
  66. 北山愛郎

    北山委員 資金計画ですが、予算総則には三千億とあるでしょう。それを訂正すべきじゃないですか。
  67. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 いま本予算の予算総則を取り寄せておりますので、ちょっとお待ちください。
  68. 北山愛郎

    北山委員 ではその点は保留して先へ進みます。時間が迫ってまいりましたから先へ進みますが、明年度の予算、財政硬直化の問題です。  これについては、いわめる宮澤構想なるものが出まして、非常な論議を巻き起こしておるわけなんですが、一々その点を詳しく宮澤さんから聞けばいいのですけれども、時間がありませんので、この宮澤構想の考え方に対して、大蔵大臣は一体どのように考えているのか、来年度予算には、そのうちどういう点を取り上げようとしているのか、そういう点を明らかにしていただきたい。
  69. 水田三喜男

    水田国務大臣 宮澤構想というお話がございましたが、この構想のうちの一つは、たとえば、補正予算というものを前提としない予算が組めないかということも一つの構想だったと思いますが、これは、これからの経済の見通しから見まして、また本年度の補正予算の経験から見まして、もう年度中途で大きい自然増を期待するということは事実上困難になると思われますので、したがって、大きい補正要因を残した予算の組み方というものは望ましいものではないということは確かでございますので、そういうことを避ける予算の組み方をやろうとしたらどうできるかというようなものは、いま研究中でございます。できればそういう方向にいくべきものだというふうに考えています。  それから、構想の中には税の問題がございましたが、こういうときには減税というものを、従来どおりの惰性によったような形の減税というものについて考慮する余地はないかということだと思いますが、この税については、税は非常にむずかしい問題でございまして、経済情勢に応じてやはり税制によってこれを調整するという必要から、増税になってしかるべき部門と、しかし、依然としてやはり減税しなければならぬ部面もございますので、こういう問題についての検討も必要だと思って、現在、税制調査会にもお願いして検討中でございまして、まだ結論は出ておりません。
  70. 北山愛郎

    北山委員 最初の、補正を避けるような、年度当初でもって、当初予算でたいがい組んでしまうというようなやり方、これは私は反対です。なぜなら、ことしの経済を見ても当初の経済見通しがまるっきり狂うような、非常に変動要因の多い状態、これをそのままにして、財政だけ固定化しようとしたってそれはできないですよ。年度当初の見通しがまるっきり狂っているんだから、正しい年度を見通した歳入だとか、そんなものは組めないはずですよ。これは常識的に考えてそうなんです。そんなむだな努力はしないほうがいい。むだな検討はしないほうがいい。むしろどんどん補正をして、実態に合わせるような財政運営をしていくほうが正しいのです、いまの情勢では。だから実際は、先ほど来の話でも、設備投資も押えられない、景気調整もできない、そういうかいしょうのない政府が、財政だけを押えることができますか。これはだれだって考えればわかることですよ。そんな無理なことはやめたほうがいい。どうですか、大蔵大臣
  71. 水田三喜男

    水田国務大臣 そうすれば、行き当たりばったりの予算を組んでもいいというふうにも受け取れますが、そうはいきません。従来は、年度途中においてやはり若干の増収というものは期待された。三十年代の成長期においてはそうでございましたから、やはりそれを頭に入れた予算編成をしたことは、私は相当間違いであって、現にことしの補正予算におきましては、はたしてこれだけの財源が確保できるかどうか、私どもも非常に財源の捻出に骨を折ったのは事実でございますが、今後は、もう年度途中においてこういう大きい財政の補正はできないというふうに思っています。したがって、やはり来年度の経済成長を予定し、それによって一年間全体の財政収入というものをできるだけ正確に予測して、そうしてその財源内で必要な財政需要を満たすということを、当初において比較検討して、そうして優先順位も十分に検討して予算を編成するということをしないというと、補正要因を残してやった以上、年度途中でこの補正ができなくなるというような事態が起こらぬとも限らないと思いますので、やはり年度の初めにおいて収入の全体を予定して、そうしてこの予算を編成するということは、やはりこれは改善すべき方向だというふうに私は考えております。
  72. 北山愛郎

    北山委員 先ほども言ったとおりですよ。いまのお話のようだと、何も毎年度と変わらないですよ。ことしだって去年だっていつだってやはり年度を通して必要額、必要収入を見通してやっているのですよ。それが変わってくる。変わってきているのが現状なんです。だから、それを安定できるような状況ができておればそれは考えられるけれども、初めからきちっと財政のほうのワクで実態を押えようといったって、それはちょうど犬のしっぽのほうを動かして頭を向けようとするのと同じことですよ。ものごとが逆ですよ。だから、本年度どおりの、いままでどおりの編成方針ですらっとすなおにいったほうがよろしい、私はそう思います。  それから税の問題ですが、いままでの惰性のような——惰性のようなというのは、私はちょっとおかしいと思うのですけれども、いまの日本の税の大きな問題はやはり不公平だということですよ。勤労所得者が非常に重い税金を負っている。そして資産所得あるいは大きな企業とか、そういうものは非常に恵まれている。そこに問題があるわけです。これがすなわち資本蓄積型の、経済成長推進型の、促進型の税制です。ですから、所得減税はもちろん公約どおりやるべきです。そしてその財源は、物品税だとか消費税なんかに求めないで、そしていま申し上げたような高度成長の原因をなしておるところの、しかも諸外国に例を見ないところの金持ち減税、大企業減税、これを整理する。これは何千億も出ますよ。交際費だけでも六千億でしょう。いままでの経過を見ても、六千億の中で損金不算入というか、課税の対象になっているのはほんの一部なんです。もっとこれは上げてよろしいのですよ。そういうことをやれば数千億出ますよ。それでもって、ほんとうに働いて所得を得て生活をしている、日本経済をささえておる、そういう人たちの減税をすべきですよ。そういうふうな減税をやりなさい。どうですか。
  73. 水田三喜男

    水田国務大臣 さっき惰性的と言ったのは語弊があるかもしれません。こういう意味でございます。  もうサービスは厚く、とにかく負担は少なくというのがこれまでの一つの気風でございまして、いかなる部門にわたっても全部減税ということでこの何年かやってまいりましたが、そういう考え方ではもういけない。やはり政策的に見ましても、この経済情勢に応じて増税さるべき部門もあってしかるべきでございますし、同時に、いまおっしゃられたような方向は、まだ減税を続けてもいいと言われるものでございましょうし、こういう問題はそれぞれ——ただ過去のように、もう何でも全部を減税、いかなる項目も全部減税という頭で検討するということをやめるべきときだというふうに考えて、いまそれぞれの税について検討しているというところでございます。
  74. 北山愛郎

    北山委員 私は、いまのような税制そのものが財政硬直化の一つの原因だと思うのです。ということは、もう税金も全部十分たっぷり取って——外国よりも日本の税負担がずっと重いという状態にはないわけです。日本アメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス、イタリアを見ても、国民所得に対する税負担の割合は、日本は低いのですから。問題は、勤労者のほうに重くかけて、税金を負える者に、金持ちに減税している。それだから税金が少ないのです。外国並みにまともにかければ、まだまだ財源が出るのです。そういう点を私は指摘したいのであります。  それから次に、国債発行についてはどういうふうな方針をとるか、これを承りたい。
  75. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは先般本会議のときの質問でもお答えしましたように、公債については、依存率を下げるだけじゃなくて、発行額そのものについてもできるだけの圧縮をしたいという方針でおります。
  76. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 先ほどの御答弁を申し上げますが、本年度の予算総則を精査いたしましたけれども北山委員のおっしゃるような条項はございません。ただ、おっしゃる意味は、参考書についております事業計画書の中の数字であろうかと思うのでありますけれども、従来例年のごとく輸出入銀行の事業計画は変更いたしておりますけれども、参考書の事業計画の数字の変更につきましては、予算の補正をいたさないことにいたしております。
  77. 北山愛郎

    北山委員 実はここに資料を持ってきておりませんので、もしも私の予算書の見違いであれば、これは改めます。  ですが、いまの国債については、なるほど四十一年度の国債は、一つの意味があったと思う。けれども、本年の国債は、依存度が低くなったとかなんとかいうけれども、これは明らかに赤字公債、インフレをあふるという公債に転化していると思うのであります。これは公債発行の原則である市中消化を原則としていますが、一年たてば市中消化のものも日銀が買いオペで買ってしまう。ですから、いままでも一年たったものの中で大半は日銀が買い上げておると思うのです。日銀が保有している。その数字を明らかにしてもらいたい。
  78. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 お答え申し上げます。  現在までに国債の買いオペは五回行なわれておりまして、第一回は、今年の二月から始まったわけでございます。この国債の買いオペの対象は四回債まで行なっておりまして、総発行額が七千百億円でございます。これに対しまして、現在までに買いオペをいたしました金額は四千七百九十四億円、こういうことになっております。
  79. 北山愛郎

    北山委員 そのような状態で、市中消化の原則であっても、一年たてば一年前のものは、前年度のものは日銀で引き受けてしまう。ことしの分は来年ということであれば、これは市中消化じゃなくて、実質上は、結果的には日銀引き受けと同じなんです。日銀引き受けをいけないとする趣旨は、いわゆる通貨を公債によって増発をしてインフレになるからであるが、そういうことが守れぬのです。実質的に原則にそむいておる。そういう点で破綻をしていると同時に、もうある人は、公債、国債というのはたなから落ちた偶像のようなものだ。もう歓迎されないのです。市中消化ができないのです。国債発行そのものが矛盾を来たしておる。ですから私は、一挙にとは言えなくとも、年次計画を立てて、そうしてなしにする、こういう方向にいくべきだ。少なくともいまのように一般会計のワクの中で、これは公共事業費と見合いであると言いながら、実質は赤字公債になっておる。そういうような現在の国債の発行のやり方、これはやめるべきである。たとえば住宅なり道路なり、そういうふうにちゃんと結びついた、いまやっておる政保債のようなもの、そういうものは別です。そういうものはほんとうの建設債券でしょう。いまのやつはごまかしなんです。いまのような制度はなるべく早い年次にこれをなくする。私はそれが正しいと思うのですが、大蔵大臣のお考えをお聞きしたい。
  80. 水田三喜男

    水田国務大臣 国債につきましては、市中消化そのものにもいろいろ問題があることは御承知のとおりでございます。したがって、国債の条件を変更しなければ消化が円満にいかないというようなことまで言われておりますが、本会議で申しましたように、この条件の改定というものは金利体系に大きい変動を与えるので、私はこれは避けたいと思います。そうしますと、必然に国債の発行量というものが今後問題になってきますし、そういう観点からも、私は来年度において国債の発行額については思い切った縮減をしたいということをいま考えて作業中でございます。
  81. 北山愛郎

    北山委員 それでは先にまいりまして、まあ宮澤構想にもあるんですけれども、生活保護とかあるいは失業保険とか社会保障がふえるのを押えよう、そういう考え方があるわけです。あるいはいわゆる受益者負担と称して、本人の払い込む保険料をふやそうというような考え方もある。私はこの点は断じて許せないと思うのです。日本の社会保障がどの程度にとどまっておるか、これからどんどんこれはふやしていかなければならぬ状態にあるわけです。総理は、日本は世界第三位の工業国だと言われた。しかし、国民所得一人平均は二十一、二番目、社会保障に至っては二十七番目だ、ILOの報告によると。アメリカの次です。アメリカも社会保障は非常におくれておる。その次なんです。そういうような事態で、いろいろな数字がありますけれども、とにかく日本の社会保障はこれからどうしても伸ばしていかなければならぬような事態にある。そのときに財政硬直化を理由にして社会保障を削るということは、私は許されないと思う。こういう点について厚生大臣のお考えをお聞きしたい。
  82. 園田直

    ○園田国務大臣 御指摘のとおり、わが国の社会保障の現状は、西欧諸国に比べて水準は低くて、今後強化充実しなければならぬ点が多々ございます。ただいま御指摘の経済社会発展計画においても、その推進力として社会開発を一大支柱といたしております。したがって、その中に示された長期構想の線に従って社会保障の制度は引き上げをしなければならぬし、なおまた今後拡充、充実をしなければならぬ点がたくさんございまするので、そういう点を考慮しつつ、特に社会保障制度の予算は、これを財政硬直の名において押えることになりますると、人命、人権に関する問題ばかりでございますから、その点、人命尊重は佐藤内閣の一枚看板でありますから、十分注意をして必要な経費を確保したいと考えております。
  83. 北山愛郎

    北山委員 厚生大臣は私と同意見であります。来年度の予算獲得についても、ひとつその意気でもって財政硬直化に負けないようにがんばってもらいたいと思うのです。  その次に、建設大臣にお尋ねをしたいのですが、公共投資を抑制しようという考え方がある。これは社会資本のいわゆる道路、住宅とかその他いろいろな施設、これは当然高度成長の結果として社会資本の充実の要求がふえてくる。最近におけるいわゆる生産資本といいますか、生産設備の投資に比べて社会資本はどうしても立ちおくれている。そういう点から考えるならば、私は、いろいろないわゆる社会開発、佐藤内閣が言っておる社会開発というふうなものを中心として、公共投資は決して抑制をするという方向へ持っていくべきじゃない。いろいろなくふうをして——いろいろくふうはあると思うのです。一般会計から出さなくてもいいような方法、いろいろな方法を講じて、やはり必要な社会資本の充実なりそういうものは拡充していくという点で、私は建設大臣のひとつがんばりを要求したいと思うのですが、どうですか。
  84. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答え申します。  仰せのように、社会資本の立ちおくれというものは、これはもうみんなが認めているところでありまして、したがって、道路、河川、下水道、住宅、こういったようなものにつきましては、それぞれ五ヵ年計画を立てまして、大急ぎでその充実に取りかかって進行いたしておるわけでございますけれども、この五ヵ年計画をもっていたしましても、これはほんのちょっぴりの問題だろう。とにかく非常にばく大な投資を必要としているんじゃないかと思います。今年度の建設投資は、官民を通じますと七兆五、千億にのぼるというような状態でございますけれども、依然としてその充実の立ちおくれは痛感いたしておるわけでございます。したがいまして、財政の許す限りこの立ちおくれを取り戻すということは、国民の生活環境を充実していきます上において非常に大事だと思いますけれども、同時にまた財政は必ずしもそればかりというわけにもいかないんじゃないかと思います。私も、仰せに従いまして御鞭撻をいただいて、がんばるだけはひとつがんばらしていただきますから、御協力をお願いいたしたいと思います。
  85. 北山愛郎

    北山委員 まあ自治大臣その他激励をいたしたいと思いましたけれども、時間がございませんので結論のほうを急ぎますが、私がいままでいろいろとお尋ねをしたこと、あるいは御要望をしたこと、これは私ども社会党ですから、いまの資本主義のベースで基本的にはものは考えない。しかし、現在の日本経済が非常なひずみができたり、あるいは国家の経済、国民経済が破産状態になったりするようなことは、国民としてこれは防がなければならぬ。いまの国民というベースでもって政府の正しい経済運営というものを私どもは要求したい、そういう気持ちで言っておるのです。したがって、これを集約いたしますと、私はやはり佐藤内閣には三つの反省してもらわなければならぬ点があると思うのです。  一つは、第一番目に申しましたところの国際経済の新たな大きな動向、IMF体制が動揺しているというようなこと、ドル不安のこと、これはやはり真剣に考えていままでのやり方を反省して、そうして日本経済の自立ができるような方向でやっていかなければならぬ。たとえば貿易にしても、ドルを使わなくても済むような、円でも済むような貿易を拡大する。中国の貿易についても、もしポンドが不適当であるならば、円決済をやるような道を開くというようなことをやはり積極的に考えて、日本経済が自立になるような方向に運営していかなければならぬと思うのです。イギリスの労働党内閣が、せっかく労働党の内閣でありながらアメリカのベトナム戦争に追随せざるを得ないということは、やはりポンドが弱いからなんですね。そういう点を考えた場合に、私どもは、いままではあるいはこのドルに依存してそれで済んだかもしれない。あるいは大蔵大臣が言うように、そのほうがある程度得だったかもしれない。しかしそのやり方が今後とも有効だということは言えない。そういう情勢になってきているということをよく考えていただきたい。  それから、先ほども指摘しましたように、ことしの経済運営については、実はやったはずの景気調整策がさっぱり有効ではなかった。そこにしり抜きがあった。いわゆる資本蓄積型の日本の税制あるいは財政の中に問題があるということ、これを改めてもらわなければ同じようなあやまちをまたまた繰り返す。  第三点は、やはりそういう非常に最悪の状態の中で日本ドル防衛協力をしいられる。日本アメリカドルに手伝いをしなければならぬような、そんな状態じゃない。そういう際に、向こうから要望されて、何か中期債券の問題にもありましたように、何かしら総理答弁したことはあとで緩和しなければならぬような、そういう姿勢の中に、私は政治、外交を含めて一つの問題があると思うのであります。こういう点をひとつ反省していただきたい。  それから、これはお答えは要りませんが、私は実は経済問題だけを質問しようと思いましたけれども、この数日来の沖繩問題あるいは小笠原問題、その他防衛問題を私聞いておりまして、一言私としても自分の考えの一端をここで申し上げて注意を喚起したい、こう思うのであります。  それは、総理は非常な自信たっぷりでもって、アメリカとの安保条約を堅持することが日本の安全を守る道である、過去においてもそうであったごとく将来もそうだというふうに断定しておられる。そしてそういう自分の意見に賛成しろというふうな口ぶりに聞こえるわけであります。ところが、私のみならず、国民の相当数の人たちと私は思うのですが、相当数の人は、素直に言いますけれども、そのことに、はたしてそうかという疑念を持っている。それはなぜかというと、肝心のアメリカがほんとうに平和愛好の国であるかどうか。戦争を外国にしかけたり侵略などをしないような国かどうかということについて、深い疑念を持っているということであります。それはベトナム戦争でもって現実に進行している。ベトナムの戦争は明らかにだれから見ても不正な戦争であり、非人道的な戦争であります。たとえばあの一九五四年のジュネーブ協定、これに基づいて五六年、昭和三十一年にあのジュネーブ協定のとおりに南北の統一選挙が行なわれておったならば、今日の悲劇は起こらなかった。そのジュネーブ協定をぶちこわしたのはアメリカなんですよ。そういうことは歴然としておる。また何かいわゆるベトコン、南ベトナム解放民族戦線がアメリカに攻撃をするからというようなふうに聞こえますけれどもアメリカが出ていって、そのあとで、これに抵抗する組織として、民族解放の組織として一九六〇年の暮れごろに組織されたのが南ベトナムの解放民族戦線なんです。アメリカが行ったからベトナムの民衆がこれに抵抗しているわけですよ。それはもう全体を考えたって、ベトナムがアメリカを攻撃し、アメリカを侵略していますか。しかも、アメリカは何らの正当性がないばかりではなくて、その戦争のやり方は、その残酷さはまことに言語に絶する。私は、朝日新聞の現地へ行った特派員の記事を読んで実は驚いておる一人でありますけれども、あの中で特に私は切り抜いておいたものは、アメリカの兵隊がベトナム人の死体から耳を切り取って記念品に持ち帰るという。私が思い起こすのには、あの蒙古のジンギスカン時代に、ある国を攻めて、そして何十万も全部殺戮をして、その何十万の耳を切り取って、これをじゅずつなぎにして持ち帰る、こういうようなジンギスカン時代以来の残酷な戦争だと思うんです。私だけが言うんじゃない。せんだってアメリカのフルブライト上院外交委員長が、上院の本会議でもって演説しているじゃないですか。ベトナム戦争は非道徳的であり、かつ不必要な戦争で、ベトナムを納骨堂に変えてしまうものだ、こういうふうにアメリカの上院で外交委員長が演説しているじゃないですか。私だけが言っているんじゃない。国民の多数がそう思っている。そういうふうなことに抗議をして由比さんが自殺をされ、また四人の米兵が脱走したんです。全世界に、ワシントンにおいてすら、あのような激しい反戦運動が起こっている。そういう戦争なんです。そういう戦争をアメリカがしておる。ですから、そのようなアメリカと手を組んで、はたして日本の平和と安全が守られるか。総理が言われるように、私どもは自由と平和をどこまでも徹底的に守りますと言っておるけれども、肝心のアメリカそのものがそのようなことでは、これは不安心ではないかというのが率直な意見です。そういうことがある限りは、どんなに総理が声を大にして言っても国民は納得しない、そういう点を十分私は考えていただきたい。  それから、この際、三木外務大臣にお尋ねをしたいのでありますが、これに関連をして例の下田発言であります。下田大使のあの日米協会における演説、この発言に対して私ども社会党は非常に憤慨しておるわけであります。なぜかというと、その中に特に大使が、日本政府政策としてアメリカのベトナム戦争を支持しているとか、そういうことを言うならまだこれはいいでしょう。ところが、日本国民の大多数は静かにアメリカ政策を支持している——自分で当ってもみないで、調べもしないで、日本国民の意思はアメリカのそういう戦争を支持しているなんということを言う、これが私どもは許せないのです。世論を調べないで、一部少数のまわりの人の意見を聞いて、そしてものを言っている。アメリカに追随する、あるいはおべっかを使う態度であります。私ども日本人として、やはり人間として、正しくない戦争は正しくない、残虐な戦争は反対だ、こういうことを言うのが私ども日本人だと思うのであります。それを日本の大使が、外国でもって公開の席上で、日本人の大多数はアメリカのそういう戦争を支持している、とんでもない話ですよ。しかも、総理が言われるように、日本がベトナムの和平のために努力するというならば、けんかを仲裁するならば、片一方を支持したり片一方を励ましたり、そういうことをしちゃならぬはずでしょう、外交的に見ても。どの点から見ても、私は下田発言は許せない。私どもはそのために、下田大使を召喚をしてほんとうの真意をただしたい、こういうことを要望するんですが、三木外務大臣のこれに対するお考えを聞きたい。
  86. 三木武夫

    ○三木国務大臣 下田大使の発言、外務大臣が責任を負うべきだ。——私もあの発言をテキスト読んでみまして、いま御指摘の点はベトナム紛争に対してアメリカが達成しようとするものに対して日本国民が理解し支持しておる。トライング・トゥ・アコンプリッシュということばを使っている。この達成しようとするものというものをわれわれ一体どう考えておるかというと、端的には、アメリカのベトナム和平に対する十四カ条、日本にも佐藤総理に、ハリマン無任所大使から、この和平に対するアメリカの基本的な考え方、これは通告を受けている。世界にも発表している。その骨子は、やはりアメリカは南ベトナムの平和と独立を希望して、そういう形の平和が回復するならば、アメリカは基地を求めない、基地を置かない、また軍隊は撤退する、こういうことで、アメリカが領土的な野心を持っておるものではない。大統領が三代にわたって独立と平和を約束したから、それを履行するまでで、それが達成するならば、軍隊も撤退すれば、基地も求めない、ジュネーブ協定の精神によってベトナムの平和的解決をはかる。こういうふうな——まあいろいろほかにもありますけれども、主たるアメリカの意図はそういう意図である。したがって、ベトナムの紛争すべてに対してわれわれは支持を与えることはできない。しかし、アメリカが達成しようとしておるベトナムの紛争の目的に対して、日本政府は理解し、そういう目的が達成されて、アメリカの軍隊が一日も早く撤退して平和が来ることを希望しておるということが、私は、日本国民が願っておる、大部分の国民もそういう形の平和が一日も早く来ることを望んでいるのではないか。そういう点で、下田発言が非常に不都合な発言であるとは私は思っていないのでございます。
  87. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは私に対する質問ではなくて、御意見であったかと思いますけれども、だいぶん誤解もあるようですから、それらの点について二、三の点について私の、政府の所信も説明しておきたいと思います。  国際経済の問題について、ただIMFあるいはドルだけの考え方じゃなしに、円で貿易のできることも考えろという、この前半の注意といいますか、国際経済の今後の動向について注意しろと言われることについては、私も賛成でございます。ただしかし、ただいま国際的の機関としてIMF機関があり、そうしてこのIMFを中心にしての一つの国際経済金融機関というものがございますから、それを無視するという考え方には賛成はできません。そうして円で何か決済が特別できるようなものを考えろということですが、これは一面から申すとたいへんけっこうなことでもあるが、円自身がそれだけの力があるとか、あるいはまた円ブロックをつくれ、こういうことだと、私は、それが特別な地域であるということで、これはむしろ国際協調というような意味から申してあまり好ましいことではないのではないだろうかと思います。  いま、またポンドが弱いから米国のベトナム政策はイギリスは協調したんだ、こういうお話でありますが、大体英国がベトナム政策協力しているというか、同じような考え方で和平への道をさがしておることは、ポンドが弱化した今明日の問題ではない。ずっと以前から、労働党内閣も、米国の自由を守り平和に徹する政策、これに協力をしておりますから、この点は誤解のないように願いたい。  また、ポンド自身がただいま中共貿易の決済通貨でもあること、これにも一つ思いをいたされて、やはり国際の協力通貨というか基軸通貨については、強くならないとお互いに困りますから、そういう意味でもポンドドル、こういうようなものはやはり協力してこれを強めるようにぜひしたいものだと思います。今回も、このポンドが中共貿易、広州におけるいわめるLT貿易その他の出来高等を見ましても、ポンドが決済通貨であるというようなところにいろいろの困難性もあるようでございますが、やはり国際的に目を開いて、そうしてお互いに協力していくということであってほしいと思います。  また、国内経済の問題についていろいろ御注意がございました。私どもは、先ほど来、経済企画庁長官または大蔵大臣等も言うように、いろいろ国際問題の経済国内問題の経済の動向についてはこの上とも注意するつもりでございます。特にそのうちに税制においてくふうしろという御注意でございます。税の問題については税制調査会においていろいろ審議いたしておりますが、ただいま御指摘になりましたような点をも含めて検討しておるということには変わりはございません。その点もあわせて申し上げておきます。  しかし、必ずしもお話のような結果に全部がなるとは、私はいまの情勢では考えておりませんけれども、しかし公約した事項もございますし、また減税はどういう範囲においてやられるか、これはやはり公債等の発行とも、いわゆる国内財政需要、その要望からも、こういうものが簡単に圧縮はできないだろうと思います。  一方で、各大臣を御鞭撻賜わりまして、硬直性に負けるなというようなお話もございますが、こうなると、やはり経済の動向を今後見通していくと、私どもは、来年度は圧縮協力、そういうような予算を編成せざるを得ないのじゃないかと思っておりますが、その辺でも、ただいたずらに声をかけられただけでも実は困りますから、その辺も御了解を得たいと思っております。  また、ドル防衛について、ときにわが国のあり方、国益に反するようなことまでするのじゃないか、こういうような御心配でございましたが、私は、たびたび申し上げましたように、わが国の国益を増進するのが私の役目でございます。したがいまして、わが国の国益を守る、こういう立場でいきたいと思っております。  ただ、私は、一つ申し上げておきたいのは、あまりに利己的な国の主張は、これは差し控えるべきだ、どうも利己的な国の主張がいままでしばしば行なわれて、それがときに平和を害したり、あるいは本来の正常なる国際繁栄、これに協力しない、こういうこともございましたから、こういう点は十分注意してまいりたいと思います。  また、もう一つは、その協力の問題として、アメリカ自身が真に平和を愛好する国なりやいなや、こういうような疑念を差し投げられました。しかし、私は、これはもう社会党のかねての主張でございまして、米国は、米帝国主義は日中共同の敵だという、有名なことばが数年前に出ております。今日まさかそういうようなお考えであろうとは思いません。私どもは、アメリカとの友好関係において、アメリカが平和愛好国である、また自由主義の国である、いわゆる独裁の国ではない、権力主義の国ではない、こういうことははっきりしておりますので、在来からいわれております米帝国主義は日中共同の敵という考え方ではないことを、これまた申し上げておきます。  私自身に対しまして、国防、安全保障、こういうような点で少し自信を持ち過ぎていないか、自信過剰ではないか、こういうことで御注意がございました。私はこれは自信過剰ではない、私は、やはりこの国の安全を確保するために、声を大にして申し上げておるように、いまの状況では核の谷間にある日本として、やはり自由を守り、平和に徹するその国柄から、在来の方針を堅持していくということを重ねて申し上げておきます。
  88. 北山愛郎

    北山委員 時間が十分ありませんので、経済問題にしてもその他の問題にしても不十分でございましたが、私は、最後に申した問題は、来年は明治百年というのですけれども日本というものは開国以来国際社会に出て、そしていろいろな外部の事情から西欧の帝国主義の路線をまねしたり、あるいは競争をしたり、そうして来たと思うのです。しかし、太平洋戦争のあと新しい日本となって、戦後においては、私は断じて、もちろん帝国主義の路線をとるべきでなく、またそういうあやまちを再びおかしてはならないし、同時にまた、外国の帝国主義の手先になってはなおさらよくない。これは四十年前に、中国の孫文が日本へ来たときに演説をして、日本の皆さんはこれから先西洋の覇道の番犬になるのか、あるいは東洋王道の牙城になるか、どちらかの道を選ぶ、それを慎重にお選びくださいというような演説をしたことを聞いておりますけれども、西洋覇道というのは要するに帝国主義の道、こういう道をこの前の戦争を契機として私どもは捨てなければならぬ、平和主義、民主主義になると同時にですね。したがって、過去においてはイギリスの手先のようなかっこうにもなったことがありますけれども日米関係がそういう関係になったらいかぬ。これは日本の百年、これから先にとって、長い将来にとって非常な不幸だ、こういう気持ちから言っているわけであります。率直に、ベトナム戦争に対しても、国民の中にも、アメリカの中にも、アメリカの議会の有力者の中にも、先ほど申し上げたような疑念があるわけですから、そういう点を十分お考えいただかなければならない、こういう点を御指摘を申し上げたわけでありまして、不十分でございましたが、これでもって私の質問を終わります。(拍手)
  89. 植木庚子郎

    植木委員長 これにて北山君の質疑は終了いたしました。  午後の会議は本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十二分休憩      ————◇—————    午後三時二十五分開議
  90. 植木庚子郎

    植木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。春日一幸君。
  91. 春日一幸

    春日委員 私は、民社党を代表いたしまして、質問を沖繩問題に集約し、特に佐藤・ジョンソン共同声明に重点を置いてその疑義をただしたいと思います。  まず冒頭にお願いを申し上げたいことがございますが、今次この臨時国会は、沖繩国会の使命、性格を有するものとして強く期待をされておりました。特に沖繩県民の諸君は、日本国民でありながら日本国会にその議席を有しておりません。したがいまして、彼ら沖繩県民は、今次この沖繩国会においてどのような質疑応答がされるものであるか、まさにまなじりを決する思いでこの質疑応答を見詰められておると思うのでございます。したがいまして、総理の御答弁は、ひとり私ども議員側に対する御回答、御答弁ということではなくして、ここに日本国民でありながら日本国会に議席を有せざる遠き沖繩の県民に答えるという、このようなお心配り、お心がまえをもって御答弁を願いたいと存じ上げます。なお、私どもの持ち時間はまことに僅少でございますので、私も論旨を集約して質問をいたしまするが、御答弁もなるたけ問題を御整理願って、簡明率直に御答弁を願いたいと思います。  そこで、まず最初にお伺いをいたしたいことは、総理は、沖繩返還について、ジョンソン大統領に対し、いかなる観点に立って交渉を行なわれたかというこの一点でございます。すなわち、佐藤総理訪米に際しまして、琉球の立法院は、沖繩施政権返還を要求するの決議を行なって、異民族の統治下にある百万県民の苦痛を訴えたはずでございます。同時にまた、沖繩県祖国復帰協議会は、あの三十四号台風とその豪雨をついて祖国復帰の悲壮な県民大行進を続け、そうしてその代表団はその足を本土に進めて、総理大臣に切々たる直訴を行なったはずでございます。同時にまた、あの当時沖繩並びに本土の各政党は、その党首がそれぞれ党の要望をひっさげて、その交渉の主要眼目について総理大臣に進言を行なってまいりました。このような民族的悲願の盛り上がりの中で、総理が御出発の当日には老エスペランチストの由比忠之進氏があわれ焼身自殺をもって総理に不退転の決意を求められたのでございますが、総理は、このような沖繩返還を求める国民の願望にこたえるために、いかなる観点に立ち、またいかなる態度でジョンソン大統領との交渉に臨まれたのでありますか。すなわち、沖繩における米国の施政権行使は、政治的に、法的に不当なりとの観点に立ち、ゆえに日本政府は、権利としてこの施政権の返還を要求するもの、このようなき然たる主張をひっさげてその交渉に当たられたか、または友好親善とか相互理解などといういわゆる抽象的な政治ワクの甲で、ただ米国の好意に期待する態度、こういうようなものでその会談を進められたものでありまするのか、まず最初に総理より、日米会談に臨まれた態度の基本について、この際ありのままその模様をお述べいただきたいと思います。
  92. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が渡米いたしますに際して、野党三派をはじめ党首諸君、さらにまた、立法院の十月の決議、さらに復帰協の方々、あるいはまた沖繩問題等懇談会の中間報告、それぞれの立場でそれぞれの御意見を伺いました。私は、その方法はともかくとして、これは一億国民の願望である、沖繩百万の同胞はもちろんのこと、一億国民の願望である、これを背景にして最善を尽くさなければならない、これが私の決意でございました。しかして、ただいま御指摘になりましたように、私はこの願望を達成するために最善を尽くすが、その場合に、アメリカの友好親善関係、その理解、協力のもとにこれを実現すべきだ、かように私は考えて、私の最善を尽くしたつもりであります。これは後になりましていろいろな批判を受けるだろうと思います。また、現在も受けております。しかしながら、私自身がみずから省みて最善を尽くした、かような考え方でございますので、私はその御批判は甘んじて受けるような次第であります。
  93. 春日一幸

    春日委員 私は、一国の内閣総理大臣たるものの責務が、ただ単に、その最善が尽くされたというだけで自己満足にふけっては相ならぬと思うのでございます。すなわち、総理大臣の責務は、国民の運命、安危をになうものでありまするだけに、その努力を通じて効果をおさめていただかなければ相ならぬと思うのでございます。  そこで、私は問題を本筋に戻したいと思うのでありまするが、わが党は、この返還交渉は、ただにアメリカの好意にすがるべき筋合いのものではなくして、むしろ正々堂々と返還を求める根拠を明示して、アメリカの沖繩統治に正当性のないことを反省せしめるべきではないかと考うるものでございます。総理は、きのうから、本問題の解決を日米両国の相互理解と信頼でと申されてまいりました。しかし、そのためには、まず日本の主張を米国が正当に理解してくれるのでなければ、われわれがアメリカを信頼しようと思っても信頼のしょうがないではございませんか。すなわち、現在の沖繩の地位を規定した平和条約第三条が、国連憲章の諸条項に照らして不当なりという当方の確固たる法的確信、これを相手に理解せしめて、しかる後政治折衝をするのでなければ、とうていその要求を遂げることはできないと思いまするが、総理の平和条約第三条に対しまするところの見解はどのようなものであるのか、この際端的に伺っておきたいと思います。
  94. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただ友好親善というだけでは、これはなかなか納得さされないでしょうし、また、そういうもとで交渉したって、それは話がつくものではございません。しかし、一億国民の願望、それこそは、戦後二十年もたって、異国民族、異国の施政権下にあるという、こういう不自然な状態を早く解消してくれという、この意味の願望だと私は思っております。その意味において、ただいま第三条の不法、不当とか、こういうことで法律論はいたしませんでしたが、この不自然な状態をぜひ解消してくれろ、これが私の最善の努力を払った、その意味の理由でございます。
  95. 春日一幸

    春日委員 この点を明らかにして進まなければならぬと思うのでありまするが、わが党は、わが国に沖繩施政権の返還をアメリカに要求する権利があると確信をするものでございます。およそ返還要求の権利がないのに要求するのでありまするならば、無理難題を相手に吹っかける、ゆすり、たかりのたぐいにとられる心配がある。アメリカがなびくはずはございません。また、権利があるのに要求しないのであるならば、それは国家と国民に対する佐藤内閣のサボタージュではございませんか。私は、問題は沖繩の返還をアメリカに要求する当然の権利が日本にあるという確固たる信念を政府と国民とが堅持することなくしては、この要求は達成し得るものではないと思うが、これに対する政府の所信のほどを明らかにせられたい。
  96. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、いままで潜在主権を認めている、こういう不自然な状態を潜在主権というだけでほうっておくわけにいかない。もうすでに二十二年たっておる。ここに私どもが返還を要求しておる、これは当然の根拠だ、かように私は思っております。
  97. 春日一幸

    春日委員 それで、昨日から野党側の質問に対して、不当であるというその認識をことさらに避けられまして、不自然不自然というようなことばで問題の核心をそらされております。  そこで伺いまするが、一体、この不自然と不当とはその本質においてどう違うのでございますか。自然でないということは当を得ていないということと同じじゃないですか。自然でないということ、当を得ていないということは、ともに道理、条理にもとる点においては同じことである。不自然なものはおおむね不当なものであり、不当なものは大体において不法なものである。だから、不自然も不当も不法もその実態は同じではないか。ことさらに不自然というような詭弁を弄して、問題の核心をそらすというがごときは、私は日本国の、しかも返還を求める立場に立つ内閣総理大臣としては、上適当な認識ではないと思うが、この点いかがでありますか。
  98. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はあえて法律論をしようとはいたしません。私は、政治家として、こういう事態が不自然だ、だが、そういう意味でこれは政治的に問題を解決する、その政治的解決の態度は、これは法律的な議論ではございません、というのが私の主張でございます。
  99. 春日一幸

    春日委員 それでは一つ一つ具体的に法律の根拠に基づいて御判断を求めたいと思います。  社会の秩序は、法律によって秩序が保たれておるのでございまするから、かくのごとき大問題について、法律論をことさらに避けるということは問題を解決することには相ならぬでございましょう。  そこで私は、平和条約第三条について伺いまするが、これは国連害一章の各条章及び世界人権宣言の精神、その他国際的に確立されておりまする法の一般原則から見て、たとえば主権、平等、領土保全、民族統一、民族自決などの点において、強い疑問があるとはお考えになりませんか。というのは、米国は、あのカイロ宣言で戦勝国側が領土不拡大を約束いたしましたたてまえ上、沖繩を自国領土に組み入れられない立場にありながら、当時平和条約締結のころには、冷戦が激化しておりました。中国においては共産政権が成立する。朝鮮戦争などがさまざま激しく行なわれておった。そのような極東情勢を踏んまえて、何とか沖繩を持ち続けようとした、そうした米国が苦しまぎれに考え出したものがあの条約テクニック——あのようなテクニックによってつくり出されたものがあの第三条である。だからフランスの国際法学者のローシェー氏が、これは国際法の怪物だと別途酷評を加えておること、かねて御承知のとおりであられると思う。この第三条の不当性は、米国が信託統治制度の提案をしない限り、米国が無期限に施政権を行使し、全く領土の割譲と異ならない効果をおさめておるのでございます。しかも、いつ提案をするかしないかについても、何ら客観条件の保障というものがございません。これアメリカの一方的な恣意にゆだねられておるのである。これはまさしく領土不拡大を約束したカイロ宣言の脱法行為である。国際信義上許せない背信行為を規定の内容としたものであると思うが、これでも不当だとはお考えになりませんか。
  100. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 サンフランシスコ条約の第三条のこの規定、これはいろいろの解釈があると思います。現在でも、第三条を設けたからこそ今日私どもアメリカに返還を要求しておる、かようにも私は言えると思っております。したがいまして、この三条を苦心してつくられた当時の吉田総理並びにダレスのくふうというものは、これはすばらしいもんじゃないか、おそらく今後そういう評価がきっと出るだろうと私は思います。そうしてあの第三条の規定を見ると、とにかく信託統治を要求する権利を持っておる、それに対して日本は、そういう場合には何ら反対しないというアメリカの専属的な一つの条件が認められておる。しかし、その信託統治になるまでは、アメリカがそこの施政権を持つというこの状況でございますね。そうして、いままではこの信託統治を要求しないというような話もしばしばございますが、——とにかくそれじゃそこまでお話をしておきます。さように私は思います。
  101. 春日一幸

    春日委員 総理は、吉田全権がみずからの恩師であられたから、これはすばらしいものであるといま称賛をなされておりますが、私どもは赤の他人だから、そんなものはえらいものだとも何とも考えてはいない。よろしいか。  法制局長官に伺いたいのでございまするが、あの平和条約第三条を、民間の契約になぞらえてこれを置きかえてみるならばこういう内容になりませんか。私があなたの家の一部を使用するという申し出をした場合、あなたはそれを承認せなければならない。よって、私が君にその由を申し出るまで、そして君がそれを承諾するまで、とりあえず私は君の家の一部を使用する、いっそのような申し出を私がするか、それは私の秘密であるからいえない。また、それを君が拒絶しても、また、だれが何といおうとも、私は君が承諾をするまで君の家の一部を使用する。そんなばかげた契約がございますか。——まだ私は続いております。この平和条約第三条を、民間契約のそれになぞらえていうならばこういうことです。私があんたの家の一部を使用するといってあんたに申し出たときは、あんたは承認せなければならない。それをいつ私が申し出るか、それは私の秘密だからいえない。申し出たとき、君がノーといっても、私は前段において承認を得ているから平気である。こんなばかな公序良俗に反する民間の契約というものが許されるはずがないと思う。民間でこういう契約が許されますか。国際間においても、主権平等の立場に立つならば、このような一般的通念の外にある荒唐無稽な契約というものは無効である、認められないものであると私は思うが、この点に対する一般理解はいかがでありますか。
  102. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま法制局長官が法律的にはお答えをいたしますが、私ども忘れてならないことは、敗戦の結果、私どもが完全に占領下にあったという、そのもとにおけるサンフランシスコ条約である、これを忘れてはならないのでございます。
  103. 春日一幸

    春日委員 われわれは、あのカイロ宣言あるいは大西洋憲章、ポツダム宣言、そういうものの条件のもとにおいてあの終戦を受諾したものである。その中には明らかに領土不拡大の宣言というものがあったではございませんか。そういう条件のもとにわれわれはポツダム宣言を受諾したのである。だから、約束したとおり実行せなければ背信行為だといって文句を言う、一体何をかためらうか。当然の事柄ではございませんか。いかがです。
  104. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答えを申し上げます。  ただいま先生は、私法上の行為になぞらえて、こういうことになるのではないかというお話がございました。その中身についてどこが違うということを申し上げることもないと思いますが、いずれにしても、私法自治の原則で大体契約というのは自由になされますが、いまお話がありましたような契約が通常行なわれるかどうか、それは別問題といたしまして、もう一つ別に公序良俗に反する契約は無効である、法律行為は無効であるという規定も確かにございます。しかし、それとこれと同じであるとか、あるいは違うとかいうことを申し上げても、この場合のこの規定の効力を左右する類推的な法律論というものが必ずしも出てまいらないと私は思います。  三条は、先ほどもお話がありましたように、とにかくこの平和条約というのは締結されることによりまして、初めてわが国の憲法も実際的な実効力をそのままの姿で発現したようなかっこうの平和条約に置かれている規定でございます。それは敗戦の結果といえばそうでございますが、いずれにいたしましても、三条の規定そのものを読みました場合に、なるほど「信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。」そのあとで、「このような提案が行われ且つ可決されるまで、合衆国は、」云々と申しておりますが、このような行為がいつまでに、また合衆国として義務として行なわれなければならぬというような規定に相なっておりませんので、確かにこれからさらに御発展になる法理であるかもしれませんけれども、この三条の法律論としては、決定的にこれが無効であるという立論をすることは、良心をもって考えてみますが、決定的にこれが無効であるということを申し上げるのは、専門の立場から見ましていかがかと思っております。この点は、国際連合憲章との関係についての諸条文の関係につきましても、実はいままでにも何べんとなく申し上げておりますが、おっしゃるような論というものが世の中にある。しかし、そうでない考え方もむろんある。要するに、決定的にこれが無効であると政府当局として申し上げるのはいかがかと考えております。
  105. 春日一幸

    春日委員 私どもはこれは不法であると確信をいたしておりまするが、しかし、ベースを下げて、われわれはそうは言っていない。これは不当なものである。だから無効であるとかなんとかいう前に、不当なことが行なわれておるならば、被害者の立場に立ってこれの是正、救済を求めるということは当然の事柄ではないか。いま国際法、国際条約といえども、それぞれ私法上の原理に基づいて類推されて判断されるということは、いまやこれは国際通念になっておる事柄であって、何も珍らしいことではない。公序良俗に反することや、契約自由の原則ありといえども相手方の弱味につけ込んだり、能力のないことにつけ込んだり何かして、いま相手が無条件降伏の状態にあるから、どんな無理難題を吹っかけても言うことを聞くであろうといって、そのような態度でのしかかるということは、国内法において、公序良俗をじゅうりんしたところの契約は無効であると、民法九十何条でありまするか、これを規定しておることである。このような国内法のアナロジーというものは、国際法に向かってもこれは普遍的に解釈されてもいいのであって、いわんや日本の立場においては、日本に有利な判断をして相手に立ち向かうこと、一体どこが悪いのですか。相手の有利な判断をして臨まなければならぬというのであるならば、その性格は日本国の総理大臣かアメリカのレプリゼンタティブかわからなくなってしまうではありませんか。冒頭申しましたように、沖繩の諸君が、全く二十二年間、異民族の統治のもとにおいて日々ほうろくでいられるような苦難に満ちた生活をしておることを思えば、私は相手の思惑がいかがであろうと、厳然として、法はこの第三条をそのままに読みこなして、権利ありとの確信をひっさげて相手に当たる。しこうして、それを第一段階として、それから政治折衝とかいろいろと話し合いとか、相手のあることですから妥結妥協、このことあってしかるべし。初めから、権利を主張することなくしてひたすらに相手の好意にすがる、そのような事柄で問題の解決はつかないのではないか。現に三十一年に、あなたの兄さんの岸さんがいらしてからずっと今日まで、このことをしばしば口に出してアメリカに交渉したが、何ら実際効果をおさめていないではないか。確信がないからである。いかがですか、この問題。
  106. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 共同コミュニケをよく読んでいただいて、私が、ただいまのように不自然であろうが、不当であろうが、とにかく国民の願望を率直に訴えた、このことははっきり出ておるわけです。だから………。(春日委員「それはあとで言う」と呼ぶ)ただいまその点はあとで言うとおっしゃるけれども、ただいま話はそこへきているのだと思います。  そこで、私は、こういうようにいまの私のやり方が悪いとかなんとかいう、不法を認めないからけしからぬとおっしゃるけれども、そうではなくて、問題はやはり返還じゃないですか。どうしたら返還が実現するかという、その最善、最短の方法、それが私は最善を尽くしてこの方法をとった、かように先ほどから申しておるのです。だから、それは私自身のとったことが不都合だ、おまえもうだめだ、こういうような御批判は別として、ただいまのようなここで議論していることではなくて、やはり返還、それを実現さすことがわれわれの目的でなければならない、かように思います。
  107. 春日一幸

    春日委員 この問題については、私はずいぶん論及した資料を持っております。当然政府にも豊富な資料がおありでございましょう。ただ、私がここで申し上げたいことは、当時ダレス特使があなたの恩師吉田茂全権に申されておりますのは、これは和解の条約であるというこのことでございます。このサンフランシスコ講和条約が和解の条約であったとするならば、この三条というものがはたして和解の精神に合致するようなものであったかどうか、あの当時あの時点においてはやむを得なかったといたしましても、三十一年十二月十八日でありまするか、われわれが国連に加盟して国際社会の一員となった以上、この沖繩の現状を持続することは、これが和解の条約であったならば、この条約自体が日米の友好関係の基本を阻害することにならないか、このことをアメリカに訴えて、そうしてとっくりとアメリカの判断を求めるべきではないかということです。すなわち、サンフランシスコ講和条約の原始的な意義ですね。これは日本をおこらしたり、ほんとうに不平、不満の中に彼らを置いておくというのではない、日本と手を握るんだ、これが平和条約の目的であった。すなわち、極東の安全とか日本の安全とかいうようなことのために平和条約第三条は結ばれたものではない。そのような文言は、三条の中にもどこにも一言半句も入ってはいないのである、ひたすらに今後仲よくやって平和を保っていこうぞと、こういうことであった。そのような原始的意義に立ち返って判断するならば、このような三条があるということは、これはむしろ日米の親善と友好と結合とを阻害する、平和条約の本旨に相もとるものである。だからこれを直せ、早く返せ、こういう態度で迫っていくべきではございませんでしたか。その点について、平和条約第三条の法律論、あるいはその立場からする要求する権利——あなたは不自然とおっしゃったが、不自然ならばこれを自然なものに直す、そういう強い要求を、要求としての確信を持って相手に立ち向かわれたかどうか、この点を伺って先へ進みましょう。
  108. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまサンフランシスコ条約、これは和解の条約だということであります。同時に、そのときに締結されたものが日米安全保障条約、この二つの条約がサンフランシスコで同時に締結されている。これを忘れてはいけない。そこにただいまの安全確保の問題が同時にひっかかってきておる。これは全然別の問題じゃございません。これはもう当時の経過からそういうことになっております。この二つを考えてみて今日私が交渉した、そういうことでございます。
  109. 春日一幸

    春日委員 いずれにいたしましても、ここで明確に整理していきたいことは、不自然な状態であると言われております。けれども、そのような回りくどい、オブラートで包んだようなものの言い方をなさらずに、あなたは、百万の沖繩県民がいま異民族の治政のもとに苦難に満ちた日々の生活をしておることをおもんばかられて、鮮烈に日本国民感情を相手に反映せしむべきである。そのことは、不自然だなんと言わぬと、少なくともこれは妥当ではない、不当なものである、だからこれを友好、親善を将来にまたがって固めるために早く返してほしい、返すべきである、このことを今後の継続協議の中で十分強調願いたい。  そこで、私はお伺いをいたしたいのでありまするが、何といっても、現在の政党と政治家に課せられておる最大の使命は、まず沖繩復帰をなし遂げること、このことにありと確信をいたします。かつて総理は、四十年六月沖繩を訪問されまして、沖繩の返還なくんば戦後は終わらない、こういう所信のほどを勇断をもって当時述べられたのでございます。私どもは、日本国の総理としてこれは当然のことであるとは考えましたけれども、しかし、事あらためて感動を深くしてこの総理のおことばを拝聴いたしました。初心忘るべからずということがあるが、総理のこの御決意はいまでもお変わりはございませんか、この点をお伺いをいたしたい。
  110. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今日もなお変わりございません。
  111. 春日一幸

    春日委員 ならば伺いますが、自来二年有半という相当の年月を経過いたしました。この時点においても、沖繩県民の本土復帰の悲願は、実質的にはいまだに凍結されて何らの解決を見てはおりません。そこで、日本政府は、沖繩県民の願望にこたえて、かつは戦争のあと始末という政府最大の職責を果たしまするために、総理のあの宣言に基づいて、この二年有半対米折衝を進められてまいりましたが、それははたして日本国民の良心を満足せしめるほどのものであったかどうか、全くその折衝は日々これ充実した努力がそこに傾注されてきたものであるかどうか。このことは、ただひとり総理大臣一人の責任ではございません。われわれ政治に携わる者は、ひとしく反省をもって過去を振り返ってみなければならぬと思うのでございまするが、いままでの努力のあり方とその成果を、ここにありのままに想起するならば、必ずしも可能の限界を尽くして全力をもって取り組んだとは言いがたいと思う。この際、政府は決意を改めて今後にその補いをせなければならぬと思うが、総理の御決意はいかがでありますか。
  112. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 なかなか成果があがっておりません。私は、必ずしも努力が足らない、かようには思いませんが、成果としては十分なものは今日まで得ておりません。この上とも政府は、さらに心を新たにして、この問題と真剣に取り組むべきだ、かように思います。ただいまのお説のとおりでございますから、御鞭撻のほどお願いします。
  113. 春日一幸

    春日委員 これはもとより御鞭撻などというようなものではなくして、ほんとうに超党派的に、全国民的規模でこの大大事をなし遂げなければならぬと思います。したがいまして、過去を振り返って、これが万全なものであったと思うならば別でありまするが、現在、肝心の施政権そのものが何ら解決をされてはいない、あるいは経済においても、また一般社会のそれにおいても格段の格差がある。生活水準は本土の六二%のそれにしか当たらないというではございませんか。だとすれば、この際決意を新たにして、一段の努力を傾注してまいらなければならぬと思う。  そこで、私は、この際総理大臣に特に申し上げておきたいことは、沖繩の県民諸君がいろいろと嘆いておりまする重大な二つの問題がございます。その第一は、われわれ沖繩県民は今日まで本土政府の暴政によって、暴政のいけにえによって、この二十二年間塗炭の苦しみを受けてきた。その第一は、沖繩を戦場にしたあのむざんな終戦直前の本土防衛作戦のそれである。沖繩であの戦いで十九万二千人が戦死され、その財産の九八%が失われたという。暴政の第二は、平和条約第三条によって、本土政府は、沖繩県民に何ら事前の了解を取りつけることなく、冷酷にも沖繩県民を異化族の支配下に投げやったというのであります。白米、自由も人権の尊厳も無視されて、この二十二年間忍苦の日々を送ってきたというのですけれども、しかし現在沖繩県民の諸君は、あれは戦争だったんだ、そうしてまた戦争の結末をつけるためだったんだ、だから本土一億の諸君の安全を確保するためにはこれはやむを得なかったこととして、いまことさらに本土を恨んでいるわけではないという。しかしながら問題はきょうのことなんでございます。きょう以後のことだと彼らは主張するのでございますね。すなわち、沖繩県民はあの日米共同声明によって、本土復帰の悲願の時期がこの上さらにおくらされるようなことにはならないか、この不平と不満におびえておるというのでございます。すなわち、あの共同声明によって、この上三たび重ねて沖繩県民が復帰をさらにさらに先へずらされるようなことになるならば、もうそれはしんぼうたまらないというのでございますね。総理はこの沖繩県民の衷情がおわかりでございましょうか。前二回、そのような本土政府政策の結果としていけにえに供せられた。その諸君がいまここであの共同声明、今後の日米折衝によって、へたをするとさらにさらに長く異民族の支配下に置かれなければならないかと心配、おびえておるのである。この問題についてどうお考えでございましょうか。御心証のほどを承りたい。
  114. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは御承知のように共同コミュニケで今後継続的に協議する、こういうのが結論でございます。その前に中間的な経過といたしまして、私が、先ほど春日君からお尋ねになりましたように、日本国民一億の願望を率直に伝えました。そうして早く問題が解決するように、めどがつけられるように、そういうことを申しました。またアメリカ側はそれを理解し、同時にまた軍基地として果たしておる役割りの重大性もよく私ども説明した、こういうことでございますから、それらのことを含め、沖繩の地位については今後継続的に協議する、こういうことに合意を実は見たのでございます。私はいままでの経過から、必ずや二、三年のうちに合意に達し得る、めどがつく、かような私は確信を持っておるということをしばしば申し上げておるのであります。
  115. 春日一幸

    春日委員 それでは問題をそこに移して御質問を進めてまいりたいと思いますが、総理は今回の日米会談において「ここ両三年内に双方の満足しうる返還の時期につき合意すべきであることを強調した。」と共同声明にございます。この返還の時期の合意と返還の合意とは基本的に違ったものである。だから佐藤総理か強調したと言われる両三年間に返還の時期について合意するとは、両三年内に返還の合意を行なうこととは全く違うと思いますが、そのとおりでございますか。
  116. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 両三年ということについては、アメリカ側ではっきり明示的に申してはおりません。また両三年内に返還が実現するとも実は申しておりません。その点は明らかに違う。私は両三年内に必ずや返還のめどがつく、かように考えておる、またそういう確信を持っておる、かように申したのであります。しかしそれもアメリカ側でそれを明示的に約束しておるというものではございません。
  117. 春日一幸

    春日委員 いまの総理の御答弁によりますると、佐藤総理が強調された主張は、一九七〇年前の沖繩返還実現ではなく、極論すれば、返還する時期はいかがあれ、米国か合意できる予定時期だけを両三年内にとりあえず取りきめてほしい、こういう御提案であったと解すべきでございますか。いかがでありますか。
  118. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはここにはっきり書いておりますように、「両三年内に双方の満足しうる返還の時期につき合意すべきであることを強調した。」これは私が強調したということであります。そうして両者が合意できたのは、「討議の結果、総理大臣と大統領は、日米両国政府が、沖繩の施政権を日本に返還するとの方針の下に、かつ、以上の討議を考慮しつつ、沖繩の地位について共同かつ継続的な検討を行なうことに合意した。」ということでございます。したがいまして、これは二重にも三重にも考えられることですが、両三年内に返還が実現する、こういうことを申しておるわけじゃありません。
  119. 春日一幸

    春日委員 そういたしますると、いまの御説明で私が返還の時期を判断すれば、両三年内に返還の時期がかりに合意をされたといたしまして、さて返還される時期はその一年先か五年先か、十年先か、あるいは極東の地域に不安がなくなってしまったときなのか、この共同声明を踏んまえて返還そのものの時期を打ちながむれば、まさにそれは雲煙万里のかなたにあると言ってもこれは間違いではございません。そんなたよりないものならば、一体何のためにそんな合意を取りつけることにそう力こぶを入れなければならぬのか。問題は返還の時期なんです。返還そのものなんです。この点はいかがでございますか。
  120. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 返還の時期が雲煙万里のかなたにあるとは思いません。また私もさような長い時期を考えるわけではないと思います。しかしこの返還のめどがつくというその際には、おそらく数年ならずしてという、そういうものが出てくるだろうと思います。この二、三年の間にそういうような合意ができて、いついつ返す、その返す時期はそんな十年とか二十年とかいうような先ではない、私はかように考えております。
  121. 春日一幸

    春日委員 そうすると伺いますが、われわれ野党側の党首があなたに御要請をいたしましたのも、一九七〇年までに施政権の返還が行なわれるように、この点を談判してほしいと言った。立法院もまた同様のことを決議いたしております。それに対して総理大臣がジョンソン大統領に提案をされたことは、返還そのものの時期ではなかったのでございますね。返還そのものの時期の合意の時期、まるでこれはことばがけつまずいてしまって出てこないくらいのものですね。返還の時期の合意の時期、これを申し出られたのでございますか。返還の時期について申し出られたので、早く返してくれというのではなくして、早く返す時期を相談して妥結できるようにしてくれというようなことなんですか。要するに返還の時期ではなくして返還の時期の合意の時期、こういうものなんですか。
  122. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 問題は返すことですね。返還、返還が実現することだ。それが実現することがはっきりすれば今度は時期の問題になってくる。そんなものはいつか、それじゃ困る、こういうわけです。だからこの合意ができたのは返還の方針のもとに協議をするというところへ合意をしようというわけであります。だからまず返還だ。これを取りつけることがたいへんなことなんです。これは雲煙万里のかなたに返還する、そういうようなものでないことは、私どもが政治家であります限り言えるのじゃないかと思います。だからそこのところをよく御理解いただく。まず返還なんだ。返還ということがきまらなければ、ただいま言われるようにこれはいつになるやらわからぬことだ。それは何をきめてきたかわからぬ、こう言われておしかりを受けてもしかたありません。だけれども、とにかく返還するという方針のもとに話をする。これは返還ということはきまった、かように考えればいいと思う。
  123. 春日一幸

    春日委員 それではここにホノルルにおける記者会見、お帰りになってからの記者会見、この記事がみんな載せられておりまするが、そういたしますると、総理がその確信を持たれた返還の時期というものは、これは返還の時期そのものについてはいまだ全然めどがついていない、ただ返還時期の合意の時期が両三年以内に取りつけられるであろうということについて確信を持ったと、こういうことですか。そういうことならそういうことのようにこれを訂正しないと、全部違ってますぞ。いままでの記者会見でのお話は、返還の時期について確信を持ったと述べられておる。返還の時期については全然めどがついてない。めどがついてないから確信をお持ちになるはずはない。ここに確信をお持ちになったのは、返還時期の合意の時期についてだけ御確信をお持ちになった、こういうことならば、そういうことのように直しませんと問題を……。(「雲煙万里だ」と呼ぶ者あり)これも雲煙万里かもしれないが、実際問題としてこの問題は本質につながる大問題でございます。
  124. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはたいへんな問題ですし、またよくお尋ねをいただいたと思います。ただいま申しますように、返還ということについて相手方もこれについては日本の国民の願望をよく理解した、フリ・アンダースタンドということばを使っていますが、十分理解できる、かような立場において今後合意をしよう、協議しようと、かように申しているわけです。私はそういう意味でこれは二、三年のうちに返還の時期についての合意に達することができるだろう、かように実は申しております。だからただいま言われるように、これは返還そのものがすぐきまるという、まあ論理的にやや飛躍がありますが、ただいま合意——返還の時期についてのめどがつけば、これでまあ返還の時期がきまるということにもなりますから、やや論理的な飛躍ですね、そういう点があって、私は必ずしもうそを言っているとは思いませんけれども、しかし最も忠実な説明としては、ただいま春日君の言われるとおりであります。
  125. 春日一幸

    春日委員 そんな中身のない確信なんというようなものはナンセンスではございませんか。返還の時期は両三年以内に合意できる。しかし、その合意条件というものはその後に、三年後かあるいは五年後か、政治家の常識として十年先というようなことはないであろうと言われますけれども、あとで基地の問題とからんでいきまするが、総理はただひとり日本の安全のためではなくして、極東の安全のために沖繩基地は重要なる役割りを果たしおるものと認定された。極東に不安の存する限り沖繩の基地が必要なりと認定されるということは、返還の時期を雲煙万里のかなたに追いやることにならないか。だからそういうようなことは何にも意味のないものである。私は何も、総理大臣が一生懸命に御努力をなすった、ほんとうに真剣になすったと思う、その結果何にもなかったんだと言ってあなたを攻撃しておるのではない。ただ実態をお互いに認識して今後の対策にあやまちなきを期せねばならぬという、その立場からこの真相の究明を行なっておるのでございます。実態の究明を行なっておるのでございます。だとすれば、返還の時期というものについては全然めどがついていないんだと、こういうぐあいに整理しておいてよろしゅうございますね。
  126. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 返還の時期に全然めどがついてないのだ、ナンセンスな確信だと、こう言われることは私には当たらないのであります。これは何度も申しますが、いままで返還について合議をしようというようなことは一度もございませんでした。なるほど過去においては潜在主権は認めてくれた。しかしながら、今回の共同声明ではこれは前進でございます。明らかに前進でございます。だからこの前進に基づいて私が確信を持ったのであります。いま御意見のようなら、在来どおりの表現なら、これはもう雲煙万里のかなたと言われましてもこれはしかたないと思います。しかしながら、今回の共同声明と過去の共同声明、この書き方の表現の相違、また中身の相違、これに十分ひとつ思いをいたしていただきたい。そうすれば私が確信を持ったことが御理解できると、かように思います。
  127. 春日一幸

    春日委員 あなたが確信を持たれるにあたりましては、ジョンソン大統領から何らかの言質あるいは示唆、あるいは何か含蓄というような意味合いの事柄を含むことが、あなたに確信を持たせるために何らか述べられましたか、ジョンソン大統領から。どうかひとつ、これは総理もおっしゃっておるように国民の合意を取りつけて、全国民的規模で沖繩を返してもらおうではないかと国民に呼びかけられておられる。だから、総理が確信を持たれておるならば、われわれも確信を持ちたい。総理だけがひとり確信を持っておって、だけが疑惑の中に捨てられておっては全然ピントが合わない。国民と総理大臣とがピントが合わなくては問題の解決にはならない。はかることにはなり得ないと思うんですね。だからあなたほどの方が確信を持たれた以上は何らかの示唆があったのであろうか。秘密外交、独善外交を排して、国民の前にあなたが得られた心証を——外交に秘密がありましょうから、そのものずばりでおっしゃってくださいとは申さない。われわれ沖繩の現地の住民諸君が、県民諸君が希望を持ち得るように、われわれも希望を持ってアメリカとこの問題についてじっくりと相談のできるように、あなたの確信の根拠を、あるならばある、何らか与えられたものがあるならばある、くみとったものもあるものならある、実は何にもないならばないと、これをひとつはっきりしてください。あなただけが確信で国民は全然疑惑では、これは何とも話にならぬ。
  128. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この確信の根拠を、また共同コミュニケを読みますが、ただいま御指摘いたしましたとおり………。
  129. 春日一幸

    春日委員 それはいいです。そんなこと、さっき読んでもらったから。
  130. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これが一番大事なことです。「大統領は、これら諸島の本土復帰に対する日本国民の要望は、十分理解しているところであると述べた。」大統領が十分理解していると言ってこれを述べた以上、大統領自身もこの願望の達成に私どもが努力する、またその努力をすることは当然だ、かように大統領も考えるに違いございません。ただ私が願望だけを述べっぱなしで、そして大統領がそれについて何ら答えなかったというなら、それこそ何らの確信を持つわけじゃございません。しかしながら、その願望を十分理解したという、これはやはりそこに私ども政治家がお互いに相談するものがあるんじゃございませんか。これはもうあなた方と、野党の諸君と私どもが話をいたしましても、それはそれぞれの立場があって違ってはおりますけれども、しかしそれについてお互いにその主張はよくわかった、理解した、さような表現はしばしばございます。
  131. 春日一幸

    春日委員 これは総理、あなたはそういうふうに申されまするけれども、あなたがおっしゃったことは、合意すべきであるとあなたは強調なすった。言っただけではなく強くこれを主張された。強調である。強調したら向こうがイエスと言うかノーと言うか、二つでしょう。それで向こうがあなたの強調されたことをよく理解したということであるならば、イエスとなぜ言わないんですか。そのことは耳に入った、大体わかった。わかったということはイエスということではございませんぞ。黙殺をも含んでおる。黙殺は否認という場合もございます。だから、この文言どおりこれを読んで、あなたの強調されたことを相手が承諾したなどと読めますか。承諾したならば承諾した。これは承諾にならなければならない。柳に風と吹き流しておるかもしれない。だからその点はありのままに言わなければいかぬ。だから、何もない、ジョンソン大統領からは何もない、あるいは「ロンドンタイムス」に報道されておるがごとき何らの密約も何もない、表にあらわれておるだけだ、こういうふうに理解してよろしいんでございますか。
  132. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは英文でフリ・アンダースタンドということばを使っております。十分に理解した。十分に大統領が理解しておる限り、これについて今後継続的に協議するという、これはもう返還の方針のもとにそれをやるのでございますから、ただいま私が当然確信を持つのは、これはもう理由があるわけです。
  133. 春日一幸

    春日委員 そういうことを要求したときに、わかったというようなことは、これはすれ違いですよ。よろしいと言ったら、フリ・アクセプトなんだ。フリ・アンダースタンドというようなことは、君の気持ちはよくわかると軽くいなしておる姿である。その辺の理解ができませんか。その点をはっきりしておかないといけませんぞ。だからその点——論旨を先へ進めていかなければなりませんが、だとすれば、これはアクセプトではない、アンダースタンド、君の気持ちはよくわかる、この程度のことなんだ。したがってそのことは、これはもうあなたが何か確信を持ったなんというような大じかけのものではないのである。これは単なる一つの印象もしくは感じ程度のものであって、なおなおアメリカの壁は厚いものであると理解すべきか。今後われわれが運動に取り組む上において、あなたに確信があるならばあなたにたよっておければそれでよろしい。けれども、問題は、ただ向こうは、日本人の気打ちはよくわかっておるんだぞ、という限界ならば、さらにわれわれ野党の側もまなじりを決して立ち上がらなければならぬのである。ありのままのことを国民に知らしてほしい。あなただけは確信で国民は不安では、これはいかぬでございましょう。単なる印象か、単なる感じか。何かほかに確信あるものならば、いやしくも一国の内閣総理大臣がそのような首脳会談で確信を持たれた以上、確信の裏づけとなる担保がなければならぬと思うが、あらば述べられよ。
  134. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そこでただいまのフリ・アンダースタンドは、これで御理解をいただいたと思います。そこであとで今度は返還の方針のもとに継続的な協議をするということに、これは合意をしたのです。両国がこれは話が一致したのです。これはイエスと言ったんです。だからこれは、十分理解しておると申しておる限り、このあとの合議、継続的な合議は必ず成功すると、かように私は申しているのです。
  135. 春日一幸

    春日委員 あなたはそういうふうにおとといから述べられておりまするけれども、あなたとジョンソンさんとのこのふびんな共同声明は、私は十一月十六日の十時ごろから、これをもうすでに五十回も読んで、ほとんど暗唱しておる。あなたの言われておるこの第七項目にはフリ・アンダースタンド、その次に大いなる障害物件が入っておるのです。基地に対するあなたの重要性の認識ですね。そういうものもからめて、あなたは今後継続的な検討を行なおうということについて合意されておるのである。だから、そこにいろいろな問題がからみ合って問題を複雑にしておるのです。この問題は質問を先へ進めていけば明らかになります。  そこで、もう一つだけ伺っておきまするが、ジョンソン大統領は、沖繩返還の条件として、日本の防備力の増強ないしは日本独自の力をこの沖繩の防衛に何らかの形で要求したようなことはございまするか、ありませんですか。
  136. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 結論だけ申しますが、そういうものはございません。
  137. 春日一幸

    春日委員 では、基地論に入ってまいりたいと思います。  共同声明第七項には、「同時に、総理大臣と大統領は、これら諸島にある米国の軍事施設が極東における日本その他の自由諸国の安全を保障するため重要な役割りを果していることを認めた。」とありますね。このことは、佐藤総理もジョンソン大統領もそれぞれの立場で、めいめいがかってにそのように認めたのか。それとも共通の立場で、共同行為としてそのように認めたのか、この点の御説明を願いたい。
  138. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本は、日米安全保障条約を締結したときのその考え方で認めた、これは間違いございません。
  139. 春日一幸

    春日委員 それでは、これは日本独自の、内閣総理大臣の独自の見解としてこのような評価をしたのではなくして、沖繩にある軍事施設を日米両首脳がさまざまの角度から検討して、その結果、共通の意識として、言うならば共同行為的性格を持って、そうしてそのような評価を、共同の評価として行なったのでありますか。この点はいかがですか。
  140. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現時点においてどういう状況であるかということ、これは現時点において沖繩の基地が果たしておるこの状況を、私と大統領が認めた、こういうことでございます。これはもうそのまま、そのとおりおとりくだされば……。
  141. 春日一幸

    春日委員 わかりました。  では、重ねてお伺いをいたしますが、この重要な役割りの評価というものは、読みかえるならば、沖繩基地は日本及び極東の安全に必要なものである、こういうぐあいになりますけれども総理はジョンソン大統領とともにそのように認めたものでありますか。御答弁願います。
  142. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 問題は、どこまでも現時点における客観的事実、こういう状況でございますから、誤解のないように願っておきます。
  143. 春日一幸

    春日委員 だといたしますると、現時点といったって、にわかにこんなものは撤去できるものではございませんから、その点は重要な責務を日本国が将来にまたがってアメリカに負うことにならないか。この点はひとつ疑義をただしてみたいと思います。総理と大統領が共同してこの意思を表明したということは、これは将来一種の共同宣言にひとしい拘束力をからませることにはならないかとおもんばかられる節がある。だとすれば、今後沖繩の返還について日米間で継続協議が行なわれる場合、当然基地問題についていろいろと話し合いがなされるでございましょうが、その場合相手方は、基地の問題については、これは重要な役割りを果たしておる、ということは基地は必要なものであるということが、ジョンソン大統領と佐藤総理大臣との間で、すでに共同に合意して認められておるのだから、基地の問題については継続協議機関でとやかく論ずることはない。討論終結の事柄であると、かくのごとくに取り扱われる心配はないか。いかがですか。
  144. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖繩の地位について共同して継続的に協議するということでございますから、これがもう今日そう認めたから、いつまでも未来永劫、その状態に変わらない、こういうものではございません。もちろん継続して協議する、そのことにもそういうものが入るわけでございます。
  145. 春日一幸

    春日委員 いや、私の伺っておるのは——ちょっと正確にお答えを願いたいと思う。  では、三木外務大臣に伺いましょうか。こういうことではございませんか。いま私の質問は、沖繩の軍事施設を日米両首脳がさまざまな角度から検討をして、これは重要な役割りを果たしておる——重要な役割りを果たしておるということは、必要なものであるということを、共同行為としてここに評価、認定、承認をした以上は、今後日米継続協議において施政権返還に伴う基地のあり方について、もしも日本が現状のそれを大きく変更を求めんとする場合、そのとき相手方は、この基地の問題については共同声明に明らかなとおり、両首脳において、これはこれで必要なんだ、こういうことをすでに評価済みである、確認済みである。だから、討論終結であって、議題たり得ない。もしも重大な変更を必要とするのであらば、総理並びにジョンソン大統領がもう一ぺん会って、情勢変更の原則に基づいてあの共同声明の中における共同評価というものを御破算にしてからでなければ議題に供し得ない、こういうようなことにはなりませんか、三木さん。
  146. 三木武夫

    ○三木国務大臣 それはやはりいま総理が言われるように、現時点において沖繩の果たしておる軍事的な役割り、現時点の認識が、大統領と総理とが一致した。将来において、それは春日君の言われるように、きょう一致しておるものが、あしたは全然——これは今日の役割りがあるものが、あしたはもう全然役割りがない、そういうものではないと私は思う。しかしながら、日本を含む極東の安全ということは日米両国の共通の関心事ですから、これをたてにとって、そしてアメリカ考え方を日本に押しつけるという性質のものではない、日米ともに共通の関心事でありますから。また、われわれは一方的にアメリカ考え方で押しつけられるような協議が、日米共同の協議だとは思わない。アメリカ考え方をそのまま押しつけるなら、共同して継続的に協議するという性質のものではない。だから、春日君の御心配は、あまり御心配になる必要がない事項ではないかと考えます。
  147. 春日一幸

    春日委員 何を言っているのか、ちんぷんかんぷんでわかりませんな。私の質問したとおりにお答えを願いたいと思うのです。というのは、この第七項目の中で、総理大臣とそれから大統領とが同時にこの基地の重要性について評価されておる、必要なものであるということを。必要なものであるということは、要るものであるといって両方が共同声明でこれをうたったのですよ。必要なものである。後日二木さん段階か何かで継続して協議することになって、さて、返還してもらうについては基地の問題をどうしよう、核基地の問題、自由基地の問題をどうしよう、こういうことが話題になったとき、議題になったときに、日本側が、これは核基地を撤去してもらいたい、あるいは自由基地、これもだめだ、憲法のもと、安保体制の制約のもと、ぴしゃっとしてもらわなければいかぬと言ったときに、そのときアメリカの言い分は、日米共同声明、首脳会談の結果、共同の責任においてこれは必要なものであると両方が言い切っておるのだ、そんなことを君のほうが言うんだったら、もう一ぺん佐藤さんとジョンソンさんと話し合いをしなければ、出直してこなければ議題にならぬぞ、こういうことを言うことにはならないかと聞いておるのです。論理としてはいかがですか。
  148. 三木武夫

    ○三木国務大臣 実際問題としてお話ししたほうがわかりやすい。(春日委員「道理として、論理として。」と呼ぶ)論理としては、そういうことに必ずしも私はならぬ。論理でなく、実際問題として、沖繩の基地というものがこれは全然必要がなくなるようなことが、共同の継続的協議の中になる、そういうことになると私は思わない。どういう形の基地かということに問題はあっても、沖繩の基地が全然必要がない、こういう事態には私は実際問題としてならないと考えておるのであります。したがって、論理として、こういうことで、こういう話、こういう大統領と総理との合意があったから、これは基地という問題に対して日米間に大きな意見が違うような事態にはならない。ただ基地がどういうタイプの基地かということには、問題が私はある。しかし、沖繩の基地そのものが、この両方の合意によってアメリカは要ると言うし、日本は要らぬと言うような、そういう日米間の意見の相違は、これは何十年も先はともかく、このただいま両三年という期間を限って日米が協議する間に、そんなに大きな食い違いが私はあるとは思ってないのであります。
  149. 春日一幸

    春日委員 私の質問にすなおにお答えをいただいていない。私も幾たびか質疑応答に立ちましたけれども、わかることは大体わかる、わからないことはわからないのです、実際問題として。  こういうような重要な共同声明の中に明示されておりまする事柄です。しかも、両国の最高の責任者がそういう意思表示を行なったこと、それを今度は継続協議の段階で基地問題を論ずる。返還に伴う一番重要案件は、何といっても基地の問題です。だから、現在の核基地、自由使用の基地、これをかりに本土並みのものにしてもらいたい、憲法のもと、安保体制のもと、そのものにしてもらいたい、こういう要求をかりに行なった場合、向こうの足場は、いや、その問題は共同声明で現状のものが必要だということにもうなっているんだ、両国首脳がそういうことを言っておるものを、君ら何をとやかく言う、こういう口実を相手に与えたことにならないか、あるいは与えることにならないか。これ、どういうことです。
  150. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、もう先ほど申したように、現時点においての認識でございます。両者の認識でございます。したがいまして、これを変えないとか、将来長きにわたってそういうものを約束したとか、こういうものではございません。それでおわかりだろうと思います。
  151. 春日一幸

    春日委員 じゃ、この問題は、見る人が、聞く人、か判断をするということにいたしまして、後日私は何らかの大きな禍根を植えたことにならないか、何か相手に口実を与えたことにならないかを心配しておるのでございまして、そういうものを何にも与えていないというのであるならば、与えていないと、こういうぐあいにここであらためて日本総理大臣としてアメリカに向かって言明を願いたい。
  152. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現状認識の問題をそこに書いたと、かようにはっきり申し上げておきます。
  153. 春日一幸

    春日委員 それでは、現状をということは、きょう、あした、そんな短時間のものではございませんでしょうけれども、とにかく両三年内に返還のめどをつける、その時期について合意を取りつける、その時間の前後期には、あなたは現在の核基地の必要を認めた、そういうぐあいに理解をするわけでございますね。
  154. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は核基地を持っているかどうか、それは知りません。したがって私は、(春日委員「あります、見てきました」と呼ぶ)私は知らないです。(春日委員「あなた行ったでしょう」と呼ぶ)核基地を見ていないのです。だから、私はそれは知りません。それは知りませんが、沖繩の果たしておる基地、軍基地、これの現状はこういうものだ、これを認めたということでございます。
  155. 春日一幸

    春日委員 私は、これは真実を語らないにもほどがあると思うのですね。あなたは二年有半前に沖繩現地に参られた。そのときに、現地において何らかの抗議デモが行なわれましたね。そのときあなた方は核基地の中に退避されたこともある。一国の総理大臣が来られたときに——われわれのごとき野党の者が参りましてすら、どうぞありのままごらんくださいと言って核基地をみんな見せてくれますわいな。こんなことは何も秘密でも何でもない。沖繩に核基地があるかどうかすらあなたは御存じないのでございますか。それはほんとうのことですか。お互いに単なるあげ足を取ったり、ことばのやりとりで何かそんなことをやりとりするということならば、こんなものは何にも意義のないことです。お互いに論じ合って問題を建設的に前向きに解決をしていこう、そして沖繩返還のことを達成しよう、この気持ちでお互いに論じ合っておるときに、いまや核基地の問題が、沖繩施政権返還可能なるか不可能なるか、この重大なキーポイントになっておる。その核基地があるかないかわしは知らぬ、そんなばかなことをおっしゃっては、それは佐藤さんのために惜しみます。ほんとうに誠実に答えて、問題の解決に取り組もうではございませんか。
  156. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は知っていることは知っていると言うし、知らぬことは知らぬと言っている。だから、ここの四万五千程度兵力があるということは、もうすでにこの席でも申しました。しかし私は、核基地があるということは知りません。
  157. 春日一幸

    春日委員 防衛庁長官にお伺いをいたします。  沖繩の米軍施設、これは総理大臣は重要な役割りを果たしておるものと評価されました。どのような軍事施設の規模であるかということをお知りにならずしてその評価をなすったということも異様なことであるが、しかし私は、あげ足をとることが質問の本旨ではない。防衛庁長官として、お伺いをするが、わが国に潜在主権のある沖繩の地域において、核兵器というもの、すなわち俗に言う核基地というもの、これがあるかないか、防衛庁長官より御答弁を願いたい。
  158. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 お答え申し上げます。  これはしかとは総理大臣に申し上げていないことでございますが、ことしの一月二十三日のアメリカの上院の軍事委員会におきまして、マクナマラ国防長官が沖繩にメースBが展開されておる、とりあえず一九六八年から一九七二年までの間、メースBに関する現役部隊が残されておるということを申しておるということを私は知っておりますが、現地について知ったわけでもなし、総理大臣にしかと申し上げたわけでもございません。
  159. 春日一幸

    春日委員 総理、実際由比さんが総理がんばってくださいと言って焼身自殺をされた。沖繩九十六万の県民の諸君は、あの大行進をして、大豪雨、大暴風雨の中を辺戸岬からあなたに切々の直訴までなすって、全国民的規模で佐藤さんよ、がんばってくれというて、その交渉をひたすらに心から念じてきた。交渉の眼目になるものは核基地の問題ではございませんか。きのうから野党の諸君、社会党の諸君とも、核基地の存置を認めるか認めざるかということが質疑応答の中心的な、眼目的な課題であった。私の質問に答えて、沖繩に核基地があるかないか知らない、そんなばかな無責任な御答弁というものは、許されないと思う。いま防衛庁長官からも御答弁がございました。メースBがあるということは、天下周知の事柄である。なお御存じないのですか。いまやいかがです。
  160. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまや——いま防衛庁長官が申しております。その程度はいま伺ったということ、であります。私はいままで、知らないものは知らないと言って——私がそれを知らないことが不都合だと言われても、知らないものはどうもしかたがない。どうもそれで私はあなたにおしかりを受けても、これは当たらないと思います。よく勉強して、これからよく実情がわかるようにいたしたいと思います。ただいま申し上げていること、私は真実を申しておる。
  161. 春日一幸

    春日委員 私は、佐藤さんのような責任感の強い方がこのような御答弁をされたということは、大失敗であったと思う。また御本旨ではなかったと思う、実際問題として。そのようなおことばはお取り消しを願っておいたほうがいいと思う。少なくともアメリカに向かって返還交渉——みんなが手に汗を握る思いで、あなたの共同声明がどういうふうかというので、各政党ともその晩は朝の九時ごろから待機して、それを待っておった。その交渉の中心眼目は、何といっても核基地の問題なんだ。核基地があそこにあるかないか知らずして、どうして交渉することができるか。そんな無責任なことがありますか。ばかなことはありません。言い直してください。おしかりじゃありません。そんな無責任な答弁はありません。そんなことで交渉ができますか。
  162. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 幾らおしかりを受けましても、また私が無責任な答弁だというおしかりを受けても、知らないものは知らないのです。それを私が知らないのを知っていると言えば、それこそ無責任です。またそんなことを、私が知っていて知らないと言えるような男じゃございません。私はそんなことはないのです。知らないから知らないと言っている。(「怠慢だよ」と呼ぶ者あり)それは怠慢だといっておしかりを受けるのは、それは私がそういう意味ではおしかりに当たりますが、しかし、いわゆる知らないものをけしからぬから取り消せと言われても、それは私はそういうことはできません。だから、先ほど申しますように、いま防衛庁長官がこの席においてさように申しておりますから、今日からそんなことは知らないというか、そんなことはもう申しませんが、それはよくまた防衛庁長官に事実を聞いて、そうしてその説明を求めます。
  163. 春日一幸

    春日委員 それでは総理質問を続けます。私はまことに慨嘆にたえない。総理がこのような眼目的、中心的な問題を御存じなくして交渉に当たられたはずはございません。にもかかわらず、ただその場の答弁さえ切り抜けていけばというような御判断があってか、あるいは総理のようにすでに国際間において幾多の交渉に当たられた方が、私の答弁に窮せられるはずはないと思う。何らかの私は思慮の狂いと申しますか、御判断の狂いがあって、そのようなとんでもない御答弁をなすったと思う。沖繩県民のためにも、どうかそれはことばのあやであった——沖繩にメース基地かあることを知らずして交渉に臨んだと言われては、私は申し開きが立たないと思う。適当にこれは御調整願って、問題を明らかにして前へ進みたいと思いますが、いかがでありますか。私は、何もあげ足を拾おうという問題ではない。問題の重大性をおもんばかりみれば、そのような御答弁を、はい、さようでございますかといって前へ進めるはずがないではございませんか。私がいま尋ねておりまする問題がなぜ重要であるかと申しますると、あのコミュニケの原文は、コンティニュー ツープレイ ア バイタル ロール とありますね。このことは、すなわち将来に向かってこれを継続していくということなんでございますね。だといたしますると、現在の核基地があるのかないのか、現在の状態を将来に続けていくということなのでございまするから、その問題が中心的な問題の眼目になってくる、当然の事柄であります。だから、この問題については、いまの御答弁は何らかのはずみでそのような御答弁があったと思う。少なくとも東南アジア十数カ国を歴訪されて、そうして国際認識を新たにされて、そうしてそのような認識をひっさげてアメリカに立ち向かわれた佐藤内閣総理大臣が、沖繩に核基地があるかないかお知りにならないでアメリカに行かれたはずは断じてない。だから、この問題については、交渉というものがそのような全然認識不足というか、ちゃらんぽらんで交渉に臨まれたものでないという、われわれの確信を深めることのために、その御答弁だけは御訂正を願わなければならぬ。  話を先へ進めます。質問を先へ進めます。共同声明での沖繩基地の評価の問題についてでございまするが、沖繩の返還が基地問題と重要なつながりを持つ問題であることは論をまたない。佐藤総理はこの共同声明で、特に日本の立場として沖繩基地の重要性を大胆に評価されましたが、そこで問題は、この項に意味しておることを分析をいたしますると、第一には、沖繩の米軍基地は日本の安全保障に重要な役割りを果たしておる。第二には、沖繩基地は極東における日本以外の自由諸国の安全保障にも重要な役割りを果たしておる。この二点を佐藤総理はお認めになった、こういうぐあいに理解いたしまするが、はたしてしかるか。
  164. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  165. 春日一幸

    春日委員 じゃ、そのような前提の上に立ちますると、総理は、沖繩の現状の基地の重要性がなくならない限り沖繩返還は無理であると思われまするか、いかがでありまするか。
  166. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この基地に対する考え方というものは、これはいろいろ国際情勢の変化もありますし、また時間的にいろいろそれも変わってくる、科学技術の進歩もございます。またそういうことがございましても、国論あるいは世論の動きによりましても、これはまた必要でありましてもなくしなければならない、こういうようなもので、基地の評価というのは、それぞれ時期によりまして変わってくる、かように私は思っております。
  167. 春日一幸

    春日委員 ならば、基地と施政権の問題は分離可能だと、そのような展望の上に立たれてお思いでございまするか。
  168. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は分離可能だ、かように考えております。
  169. 春日一幸

    春日委員 いま沖繩では、現に軍司令官と高等弁務官とが、同一人格によって一体不可分の方式でその権限を行使しておること、総理承知のとおり。いま沖繩には百十七カ所の広大な軍事施設がございます。きのう川崎君の御質問の中にも述べられておりましたけれども、道路からすべてのものがこれは基地化しておると言っても過言ではない。電気から水道からことごとく。これは施政権の裏づけなくして、その基地の運営、管理ができるとは考えられない。のみならず、米国は施政権があったからあの基地を設けたものではなくして、初めにこれは進駐によって軍政のもとに基地があった。その基地のためにこそ、無理な手段を尽くして、あの平和条約の発効とともに、軍政の終止符を打つとともにあの施政権を獲得するに至ったものであることは、これは実態である。すなわち、沖繩基地の戦略的性格とその規模は、施政権と基地とを実際上分離することは不可能であると思うが、これを可能と見る総理から、その可能性の御説明を申し受けたい。私は先般、この臨時国会に先がけて現地へ参りまして、その基地の状態、数万の基地労働者のその実態、いろいろとみずから見聞を広めてまいりました。はたしてこの基地と施政権とを分離することができるかどうか、はなはだしき疑問がある。電気から水道からすべてのもの、分離可能論に立つ、その可能の理由、御説明を願いたい。
  170. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は外国の例なども考えてみると、施政権と基地は分離可能ではないか。ただいま言われますように、道路あるいは水道、電気、みんな軍でも使っておる。しかし、そういうものも別に分離のできることだろうと思いますし、外国の例なぞは、これは明らかに分離可能だということを証明しております。
  171. 春日一幸

    春日委員 しからばお伺いをいたしまするが、基地と施政権とを分離して沖繩の本土復帰が達成されまする場合、その基地の態様は、当然それはわが国憲法と安保体制のもと、現に本土並みのものたらざるを得ないと思うが、この点について総理の御見解はいかがでありますか。
  172. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま本土並みということが要望されることは、これは当然だと私も思います。
  173. 春日一幸

    春日委員 それで、分離して沖繩の本土復帰が達成される場合は、本土並みで返されるべきものである、こういうぐあいにあなたは御理解される、そういうぐあいに御主張される御方針かどうか。
  174. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現状においては、私はそれ以外に方法はない、かように考えております。
  175. 春日一幸

    春日委員 そういたしますると、この際、佐藤内閣総理大臣並びに佐藤自由民主党総裁にお伺いをいたしまするが、内閣のこの沖繩施政権返還に伴う基地のパターンというものは、これは私ども民社党がかねがね唱えておりまする本土並みのもの、これでなければならぬ、こういうぐあいにこれも御支持といいまするか、同じような御意見をお持ちであるとわれわれは理解してよろしいか。それが内閣の方針であり、自民党の方針とわれわれは受け取ってよろしいか。
  176. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はこの点について、いままで非常に歯切れの悪い答弁をしたはずです。まずこれが返還が実現する、そのときにそういう問題について考えればいいということを申し上げた。だが、いまお尋ねになりますものは、施政権が返ってきたらどうなるのかというお尋ねでございますから、そういう場合には、私ども憲法のもとにおいて、また在来の政策のもとにおいて、それがやられるのだということを実は申しております。しかし、本来、たびたび申し上げますように、まず返ってくることが先でありますから、返る前に問題を非常にこじらかすようなことはしないほうがいい。だから、明確にするのはけっこうですが、とにかく返るという、その実現のために最善を尽くす、こういうことでありたい、私はかように考えております。
  177. 春日一幸

    春日委員 明確にいたしたいと思いまするけれども、これから継続協議が開始されると思うのでございます。返還に対する継続協議が開始されると思う。そのときに、不可分の関係にありといわれる基地の問題ですね、こういうものについて、われわれはかくのごときパターンにおいて返還を求める、こう切り出していくのでなければ返還交渉は前へ進まない。そのとき案を提示しなければならぬ。内閣の案、これを示さなければならぬ、わが国の案を示さなければならぬが、その案たるものは、すなわち本土並みの基地にして返してくれ、これが継続協議の自由民主党内閣、佐藤内閣の原案たるものでありまするか、この際お伺いをいたしておきたい。
  178. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政治問題といたしまして、ただいまそういう問題をきめておりません。
  179. 春日一幸

    春日委員 さきに御答弁を願いましたときには、本土並みのものたらざるを得ないと思うと述べられたのでありまするが、たらざるを得ないと思われながら、なおかつ、きまっていない理由は何でありまするか。
  180. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどのは一般的なステータスのお話でございましたので、私はそれでお答えした。いまの具体的な問題、これは政治的な問題、政策的な問題でございますから、ただいま政策的な問題を決定していないということを申し上げたのであります。
  181. 春日一幸

    春日委員 総理、私はお伺いをいたしたいと思いまするけれども、この問題は、総理記者会見で国民に訴えられておりまするように、国民の合意を取りつけて、そうしてアメリカに反省と理解を求めて返還のことを達成したいと述べられておる。きのうも質問の中に述べられておりましたけれども、国民が合意をしようと思えば、合意すべき原案を国民の前に御明示願うのでなければ、国民の側としては、賛成しようにも反対しようにも、合意しようにも合意のしようがないではございませんか。ここに、自由民主党以外のあらゆる政党ですね、現地沖繩立法院申すに及ばず、社会党も民社党も公明党も、ことごとくの政党が、かくのごとき様式、方式によって返還せらるべきであると、それぞれ党の責任において広く国民にこれを訴えておる。このとき、外交権を国民から信託を受けておるその政府が、国民に向かって示すものが何もないということは、どういうことでございますか。どうしてあなたが期待される国民の合意を取りつけることができるのでございますか。
  182. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 きのうもたびたび申しますように、少し結論を時間をかけて出さしてください。非常に急いでいらっしゃるようですが、なかなか急いで結論が出ません。
  183. 春日一幸

    春日委員 私は、決して決して攻撃をしたりあげ足をとったりする気持ちはないことを前から申し上げておりますが、お互いにいま国論はわいております。沖繩の政党の代表は、ほんとうに現地にとどまって新聞の報道を待っておれないとして、新聞に報道されておりまするとおり、きのうからはるばる本土へ参られてこの国会を傍聴されておると思う。そういうような全国民的願望がたぎりたっておるときに、政府方針いまだ決しかねておる。こういうことでは、ほんとうにその民主的体制のもとにおける政府のあり方としてはいかがなものでありましょうか。厳然としてみずから信ずるところに基づいて政策を固め、その政策の実現をはかること、これが政治家の真骨頂である。内閣総理大臣は一日先見の明あって国政の進路を国民の前に明らかにする、これが内閣総理大臣の最大の使命ではないか。いま国内がわきたっておるときに、政府考え方はいまだし、定まってはいない。このような無責任なことが許されますか。許されるとかりにしてです、いつまでだ。いつごろまでに政府方針は固まるのか。ほんとうに早くおきめにならなければ、国論はさらにいろいろと紛糾するばかり、問題を混迷の中におとしいれるばかりである。どうかひとつそういう意味で、最もすみやかに自民党の案、内閣の案、それをお示しになるべきであると思う。
  184. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの御意見を十分伺って、謙虚に伺って、拝聴いたしました。ありがとうございます。
  185. 春日一幸

    春日委員 大体のめどをおっしゃっていただきたい。伺えば、この継続協議の開始時期はもう明春早々と三木外務大臣は述べられておる。さすれば、何らかの政府の案というものは固まらざるを得ない。案なくして協議に参加することは、これは交渉をまとめることにはならないと思う。大体いつごろでございますか。すなおにひとつお答えをいただいて、沖繩の願望に報いよう、じゃございませんか。いかがでございますか。
  186. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは今後同国で共同して協議をするわけでありますから、いま春日さんも御指摘のように、重大ないろいろな問題を含んでおります。それは単に基地の問題ばかりでなしに、二十年余りも日本経済、行政を離れておったわけでありますから、これが本土に復帰するということになれば大混乱が起こる。これをどのようにして混乱が起こらぬようにするかということも問題の一つである。また……(「焦点をそらすな」と呼ぶ者あり)焦点をそらすわけではない。軍事基地の問題もこれは大問題である。したがって、いまここで何年という年限を切ることは私は適当でない。非常に重大な問題でありますので、できるだけ結論を——何かの意見が煮詰まるような努力はわれわれとしてしなければならぬ。沖繩の人たちの願望にもこたえるためにも努力はしなければならぬが、まだ交渉をやってないときに何年というようなことをこの国会の席上において申し上げることは、非常に私は適当でないと考えます。
  187. 春日一幸

    春日委員 私が申し上げておるのは、もう間もなく交渉に入らねばならず、その交渉の妥結は早いほうがいい。特に現地ではこれをことさらにせかれておる。このような情勢を踏んまえて交渉に入るとすれば、内閣としてわが国方針、その条件、返還を整える条件、これが固められなければ交渉に入ることはできないし、しかもそれについてナショナル・コンセンサス、これを求めていかなければならぬのである。だとすれば、もはやこの段階において、自民党だけではございませんか、佐藤内閣だけではございませんか。現地において復帰協、あるいは沖繩立法院も、社会党も民社党も公明党も、ことごとくがかくあるべしと示しておるときに、ひとりあなたのほうだけ全然それをお示しにならない。しかも、交渉には来年早々入るのだと言われておって、総理は国民の合意を取りつけて一億一心になってアメリカの説得に当たろう、こう言われておるではございませんか。やはり筋道の立ったようにものごとを取り運び願わなければ、国民が納得できないばかりじゃなくして、ものごとが成就しないではないか。あなた方がやりたいことをやっておればそれでいいという筋合いのものではない。国民から外交権を専属固有の権限としてあなた方は信託されておるのでございますよ。ほかの者がやろうと思ってもやれないのである。唯一者である。その唯一者であるあなた方が、こういう条件でと、国民よついてこい、理解せよ、これをお示しにならなくして、この問題の解決がいかにして推進できますか。
  188. 三木武夫

    ○三木国務大臣 二つの行き方が私はあると思う。春日さんの言われるように、政府方針をきめて国民よついてこいという行き方も確かにあり得るでしょう。そういう指導性も民主主義には要るのかもしれぬ。けれども、これだけの重大問題ですから、日本の安全確保という問題についていろいろ国民の世論が起こってくるでしょう。この国会においても、安全保障の問題というものはたいへんな意見を巻き起こしておるわけです。こういう世論、国民の世論というものがある程度成熟したその動向を見て、政府方針をきめるという行き方もあり得る。だから、必ずしも、方針をきめてついてこいということだけが国民的合意を達成する唯一の道だとわれわれは考えていないのであります。
  189. 春日一幸

    春日委員 昨日、佐藤総理大臣は、私は日本国の安全、国民の福祉に対して至大の責任をにのうておる、断じてこの責任を果たすのだ、こういうことを確信を持って述べられておった。私はただいま申し上げたとおり、政治家というもの、わけて内閣総理大臣の使命というものは、やはり自分の信条に基づいて政策を固め、その政策の実現をはかることにあるではないか。私は皆さんの意見を聞いてそれから、いまこの段階においてもそのようなものであるのか、それとも昨日述べられたあのかたい信念ある態度、それがほんとのものであるのか、一体どちらが佐藤内閣総理大臣の真意でありますか。
  190. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいま沖繩の問題はまだ結論を急がないでくださいということを申しました。また、昨日申したことと今日申したことは、別に矛盾をしておると私は思っておりません。御承知のように、ただいますぐ交渉しようと申しましても、ベトナム問題は進行しておりますし、国際情勢には何らの変化がない、そういう際でございますだけに、こういう問題といますぐに取り組むというのは、これはあまり適当な処置ではないような気もいたします。それかといって、この共同コミュニケをしゃんとつくってまいって帰ったばかりでありますから、そこで継続的な合議をこれからしよう、沖繩の地位についての合議をしよう、かように申しておるのであります。その際に、これこれの方針のもとに交渉を始めます、こういうことを私にいま言えとおっしゃっても、それは無理だ。また、それをいま直ちに考えておらない、もう少し時間をかしてください、かように実は申しておるのであります。
  191. 春日一幸

    春日委員 それまた実態に触れての御答弁ではございません。安保条約の改定期はいまから三年先の将来のことである。これに対して総理の、佐藤内閣方針は固まっておるではございませんか。無条件延長論を堂々と述べられておるのである。重要な政策案件については堂々と方針を述べられておる佐藤総理が、ただひとり沖繩返還並びに基地に関する問題だけは、ことさらにその意見を述べることを避けられておる。私は、このことは、単に無責任であるというばかりでなく、一体政府は沖繩をどうしようと考えておるのか、また、アメリカとの間に沖繩の将来についてどのような相談を進めておるのであろうか、このような不安と疑惑を新らしく植えつけることにはならないか。現地の諸君並びに本土の一億の国民も、早く返すべきである、手段を尽くしてその目的を達成すべきであると言うておるのでございまするから、したがって、どうかすべからく政府の真意を国民の前に明らかに示して、そうして、国民と政府とが確信を持って前向きの形で問題の解決と取り組んでいくという、これをお示しになる必要があると思う。  すでに何間か質問いたしましたけれども、御答弁がございません。けれども、私は、総理並びに閣僚諸君の心にはこたえるものがあったと思いまするので、また、自局党の領袖諸君も私の言うことが無理か無理でないかがおわかりであると思いますので、最もすみやかな機会に、自由化主党の方針佐藤内閣方針、これを国民の前に明示されることを強く御要望申し上げます。  質問を前に進めます。  次は制度一体化の問題についてでありますけれども、この共同声明にいう制度一体化は、これは経済、社会福祉の二点に限定されるものでありますかどうか。この点三木さんから御答弁願います。
  192. 三木武夫

    ○三木国務大臣 三者の諮問委員会は、勧告も調査もできるわけでありますから、必ずしもこれはある問題ばかり以外はできないというものでもございますまい。もう少しやはり弾力性を持って運営したらいいと思いますが、しかし、共同コミュニケで予定しておるものは主として経済、社会の福祉でございます。
  193. 春日一幸

    春日委員 私は、この問題は、ジョンソン大統領と直接に交渉された佐藤総理大臣からお伺いをしたいと思うのでございまするが、われわれが当初情報で承知をいたしました範囲では、すなわち、政治問題も含む、主席公選の問題、沖繩県民の国政参加の問題、こういう問題も諮問委員会に含む、こういうぐあいにわれわれは承知をいたしておりました。それが去る十一月三十日に行なわれた三木・ジョンソン会議に基づいて、政治問題は諮問委員会のワク外にする、このような確認は、私は共同声明にうたわれた制度の一体化のあり方を不当に狭めたことにならないかと思う。いま三木外務大臣からの御答弁の中にも若干そのニュアンスのある御答弁がございましたけれども、必ずしも限定するものじゃないと言われたが、その当時某大新聞が中継されて、そうして諮問委員会の中にこの主席公選や国政参加の問題を含むかという問いに対して、三木さんは含むと答えられた。それがことさらに三十日の三木・ジョンソン大使の会談でこれが省かれた。これは私は、特に会談をして省いたということは、含むか含まないか、そこに疑義があった。疑義があったから、会談をしてそのような意思統一をはかられたのではないかとも思う。一体これは現実的にはどういうふうでございましたか。総理並びにジョンソン大統領の会談の中で、政治問題を含むものとされたかされていなかったか、伺いたい。
  194. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ジョンソン大統領と私との間では、そのこまかなことは実は考えておりませんでした。そういう話し合いをしておらない。とにかく一体化を進めるために日米琉三者で一つの諮問委員会を設けようじゃないか、こういうことは合意をいたしましたが、どういうものを取り扱うというところまではきめなかった。  そこで、さらに説明をつけ加えますが、御承知のように、ただいま日米間には協議委員会がございます。これは随時に開くところの協議委員会、そしてその結果は、これは両国政府をしばるものだ、これはもうすでに御承知のとおりであります。  それから、もう一つありますのは、外交チャネルでいつでも交渉を持つということ、この外交チャネルで持ちますかわりに、特別な返還の継続的な合議をする協議委員会を設けろという主張が一つございました。これは与党の中にもありましたが、この点は、そういう協議委員会を設けるよりも、外交チャネルでやるがいいだろうというので、これは外交チャネルということで意見を統一いたしました。だから、ただいまの返還問題については、これは共同的に継続的に合議するものは外交チャネルということでございます。しかし、在来の日米協議委員会はそのままある。  今度できるところの日米琉三者の諮問委員会、これはただいま言われますように何々をしてはならないということはございません。したがいまして、ただいま言われるような点もそれぞれの立場から必ず出てくるだろうと私は思いますよ。思いますが、主としてこれは高等弁務官の所管範囲ということがまず常識的に考えられる、かように理解しておるわけであります。
  195. 春日一幸

    春日委員 そこで、この問題について、私は特に総理の御善処を願いたいと思うのでございます。というのは、高等弁務官は大統領行政命令を受けて沖繩施政の全的権力者である。この施政権者と第一義的に合意を取りつけることなくして、主席公選の問題、国政参加の問題等が解決できるはずはない筋合いは、そこにあると思うのです。両国政府間の継続協議というこの機関は、これは施政権の返還、このことが議題である。でございまするから、私は、いま日米協議委員会でやるというような三木外相の御答弁でございまするけれども日米協議委員会というものは、これは常設機関でもない。わけて、過去の実績をながむれば、きわめてこれは低調である。したがいまして、諮問委員会は常設機関であり、特に一体化推進の特命をになうところの機関でございまするから、したがって、本土との一体化の主柱をなすものは、何といっても主席公選であり、国政参加であると思います。この問題をここにこの諮問委員会に所掌せしめることは、私は一体化をはかるために必要不可欠な要件であると思う。これは、ただいまの総理答弁によりますると、その諮問委員会で扱うこと別に妨げないということでございまして、ことさらに三木さんとジョンソン大使との十一月三十日の会談によって狭められたの観がある。だから、これは、やはりそのような常設機関でもない機関、思い出してときどき開いてみるという機関にこんな重大な問題を取り扱わしめるというがごときことでは、本土との一体化をはかることはできないと思う。だから、外務大臣とジョンソン大使との間でもう一ぺん交渉をやり直して、そうして諮問委員会においてこの問題を取り扱うことのできるように——そのことは、ジョンソン・総理の会談の中においても別の制約があったわけのものでもない。そのことをひとつおやりになってはいかがであろうか。現地の要望は、この一点にも大いなるウェートを置いておる。総理の御見解はいかがでございますか。
  196. 三木武夫

    ○三木国務大臣 特に私とジョンソン大使とで諮問委員会役割りを狭めようという意味ではないのですが、いきなり、初めてできるわけですから、これがもう窓広く、政治も社会問題も経済問題もということで、一時にそういう広範な問題を取り扱うよりかは、共同コミュニケにも言われておるような経済問題、社会問題、むろん教育なども含むわけですが、こういう問題で、施政権返還なったときに障害にならぬような問題というのはたくさんある。あり過ぎるくらいたくさん問題があるから、間口を一ぺんに広げないで、社会、経済諸問題に、これを主として勧告をしたり、調査をしたり、諮問に応じたりするほうが実際的ではないかということで、話がそういうことにしようではないかということになったわけです。いま、日米の協議委員会春日さん非常に権威のないものに言われますけれども、これは両国の政府の代表でありますから、しかも定期的にではなくして、必要があったらいつでも開かれるということは、定期的よりも、時によったならばこれは非常に便宜な点もございます。両国の政府の代表がいろいろ相談をするわけでありますから、政治的諸問題をやるのには協議委員会のほうが適しているということは、私は言えると思う。だから、この問題を逃げて通ろうという考えはないのですよ。沖繩の施政権返還なった場合における混乱を少なくするような処置をとるために、どちらの機関でそういう問題を扱ったことが実際的であり、能率的であるかという見地からしたのであって、特になるべく諮問委員会の権限を小さくしようというものではなくして、これを実際運用をやってみれば、いろいろ一番有効な運用をすれば、非常に役立つ機関になる可能性を持っておるので、にわかに間口を広げないで、そういう問題を主としてやるほうが実際的ではないかという見地で、この問題をみな逃げて、そしてやろうというような意図は全然ないというわれわれの善意というものを御理解願っておきたいと思います。
  197. 春日一幸

    春日委員 善意のほどはわかりました。なお、両国首脳会談では、諮問委員会で一般の制度問題を取り上げることを妨げてはいないということも、総理の御答弁で明らかになりました。  そこで、私は総理に対する進言でございまするが、ただいま申し上げましたように、この主席公選の問題と国政参加の問題は、本土との格差是正のための二大主柱でございます。したがいまして、この問題を最優先的に解決をしてほしいというのが、何はともあれ現地諸君の願望でございます。強い要望でございます。したがいまして、アンガー高等弁務官も述べておりましたけれども、現実の問題として、全的な行政権を一身に掌握しておりますこの高等弁務官、この人の合意を取りつけることなくしてこのことを解決するということは、これは事実上不可能ではございませんか。外務大臣と大使、総務長官からなるところのこの協議委員会というものは、いずれか一方から申し出て会を開くことができるといわれておりますけれども、実際の機能というものは、それは常設機関ではございません。しかも、外務大臣には果てしもない多くのお仕事がたくさんございます。この諮問委員会は一体化のための専任機関である。しかも常設機関である。そうして、これは高等弁務官との密接な関係の上に立って、しかも琉球とアメリカ日本政府の代表とがこういう問題を合議しよう。だから、もしそれ現地の各政党の諸君が、また現地の輿望が、諮問委員会でこの二つの問題その他の制度問題も取り扱っていただいたほうが望ましい、取り扱ってほしいという願望であるならば、そのような願望にこたえて、首脳会談で別に制限を付してはいないとするならば、事情によっては再交渉をして、そうして所掌事務について再取りきめを行なう、こういうことをやってみる御意思はございませんか。
  198. 三木武夫

    ○三木国務大臣 共同コミュニケにも、春日さん御承知のように、社会、経済というものを中心にしてやるということになっておりますので、これは今後そういう問題が起これば、日米の協議委員会においても、私も忙しいといっても、これは重大な問題でありますから、こういうために日米の協議委員会を開くことをいとうものではございませんので、そういう点で、まずこの諮問委員会はコミュニケにあるような精神で出発をする。その間、いろいろな問題が実際問題として起こってくるでしょうが、初めからもう政治問題も何もここでやるんだと言わないで、この運営を、実際施政権返還と国政参加が二大主柱じゃと言われますけれども、しかし、沖繩の施政権返還には社会、経済上の諸問題、本土との間にいろいろな格差があるのですから、これはたいへんな問題であります。この問題は、施政権返還に伴う大きな柱であることは間違いないのですから、新しく開かれる諮問委員会にそんなに間口を広げないで、こういうことを中心にして、一方においては、主席公選の問題等は、これは協議委員会等において取り扱ってもいいのではないかというふうに考えるのでありますが、最初に言ったように、この問題を逃げて通る意思はない。どちらがやったほうが便利かという、そういう角度からこの問題を検討していこうというわれわれの考え方は、これは先ほど申し上げておるとおりでございます。
  199. 春日一幸

    春日委員 くどいようでありますが、この委員会には現地琉球の代表も、琉球政府の代表も参加することになっております。この間三木さんとジョンソン大使との会談は、琉球政府代表を加えないでお話が進んでおると思う。だから三者構成になるところのこの機関というものは、そのような問題をどの機関に取り扱わしめたほうがよいであろうかということについては、琉球政府は琉球政府としての独自の主張も希望もあると思う。だからそのような意見をも後日おとりになって、その結果諮問委員会で扱ったほうがいいと思われたら、またこれについてはそのような再取りきめを行なわれることは首脳会談の制約を何ら踏みはずすものではないと、こう考えますが、総理大臣の御見解はいかがでありますか。
  200. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 外務大臣のお答えでおわかりいただいたと思います。  いま主席公選、国政参加が二つの柱だ、かように言われますが、主席公選はなるほどわかります、沖繩の問題ですから。しかし、施政権をアメリカが持っていて、日本の国政に直ちに参加しようといっても、これはちょっと無理なような話だ。しかし、いろいろこれを、どんな形がいいのか、いろんな議論が出ている。いまの、どうせ返還ができるものだから、それを前提に考えれば、いまのうちからこの国会に、あるいは議決権は別としても、何か参加する方法はないかとか、いろいろな方法がありますから、そういうような意味で、この問題も、どこでやるかにしても、これはいろいろ議論したらいいだろうと私は思います。  とにかく返還、それを実現さすためにやることで、そしてそれがおくれないような方法、この返還がおくれないような方法で、やはりこの目的を達するようにしたいものだ、かように私思っておりますから、いま言われますように、そんなものを取り扱ってはいかぬといっても、これはどうもそういうわけにもいかないし、発言されれば出てくるだろうが、しかし、いずれがどういう事柄をやっていくのが一番一体化を進めていく上に、また返還を実現する上に役立つか、そういうことをいま考えておる。これが先ほど来の外務大臣の方針でございます。ただいまの春日君の御意見は、御意見として伺っておきます。
  201. 植木庚子郎

    植木委員長 春日君に申し上げます。時間が来ておりますから、この一問で取りまとめを願います。
  202. 春日一幸

    春日委員 わかりました。  そこで私は総理に申し上げておきますが、ただいまの御答弁の中に、アメリカが施政権を掌握しておるもとにおいて沖繩県民が日本国政に参加することはなはだ困難なりというような意味合いの御答弁がございましたが、それは絶対そういうものではございません。先般、私ども民社党の第四次調査団が、アンガー高等弁務官とこの問題について約二時間論じ合いました。そのとき、アンガー高等弁務官は彼の所見を述べておりましたが、それは別に条約あるいは協定またそれに至らざるところのアグリーメントだけでも交換されれば、西ベルリンの例にならって、西ベルリンの諸君がボンの国会に参加しておる例にならって、アグリーメントなり、両国政府間の了解が取りつけられるならば、沖繩県民の国政参加は可能なりと、これはもう明快に断言いたしておりました。これは三木さんが御調査になればすぐわかることでございまして、われわれもその点は重要な内容を含むものと考えましたので、再確認をして、コンファームしてまいったわけでございますから、それも御調査を願いたい。そういうことで、私がいまここにことさらくどく、国政参加、主席公選の問題を諮問委員会に取り扱わしめられるようにすることが問題解決のこれは推進に役立つ、こう申し上げておりますること、これも十分ひとつ御銘記願って、御善処を願いたいと思います。  いろいろとお伺いをせなければなりませんことがたくさんございまするけれども、これは私ども残余の質問者によって質問を続けることに願いまして、私の質問はこれで終わりまするが、先ほどの沖繩の核基地の有無についての問題は、後刻理事会においてその扱いを御協議願うことになっておるようでございまするので、この問題につきましてはいずれしかるべき機会に発言のチャンスを与えられて質問を行なうことにいたしまして、以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
  203. 植木庚子郎

    植木委員長 春日君の質疑中、沖繩における核基地の有無に関する問題の取り扱いについては、理事会において協議することといたします。  これにて春日君の質疑は終了いたしました。次に、畑和君。
  204. 畑和

    ○畑委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、現下最も国民の注目の的となっておりまする大阪タクシー汚職事件、この問題は、たまたま国会開会中のことでもありますし、国民が非常に注目を払っておるところであります。したがって、この問題について事実をできるだけこの国会の場において究明をして、国民の前に明らかにするということが必要であろうと思うのでありまして、そういう観点から、まず大阪タクシー汚職事件、LPガス汚職事件とも申しましょうが、この問題について若干掘り下げて質問をまずいたしたい。そして政府の所見等をただしてみたいと思います。  続きまして、それに関連をいたしまして、政治資金の問題が非常に大きな問題となっておるわけでありまして、この問題もこれにからめて、私の意見等も申し上げ、そして総理はじめ政府の御所見を承りたいと思うのであります。  この二つの問題が中心でございまして、その余は、時間によって若干申し上げることもあろうかと思いまするけれども、そういう順序でこれから質問を続けたいと思う次第でございます。  まず、私、総理にお伺いいたしたいのです。新聞紙上等におきましても、この大阪タクシーの事件をめぐっていろいろ報道されております。また、検察当局が捜査に乗り出しましてもう相当長くなりますけれども、この間におきまして、残念なことには、もとの国会議員が一名逮捕されました。それからさらには、また、現職の国会議員が、事実上被疑者としての扱い——形の上では参考人だそうでありますけれども——事実上の被疑者といたしまして捜査を受けておる。こういう事実であります。これは私は非常に重大だと思うのであります。政府の政治姿勢に関連して大きな問題だと私は思うのでありまして、この点をぜひとも国民の前にひとつ解明をしてまいりたい、かように思います。  御承知のように、どうも不名誉な話でございますけれども、われわれの、日本の戦後の国会の歴史というものは、汚職の歴史だということが言えると思うのです。初めからずっと考えてみましても、いろんな事件がございました。炭鉱国管問題をめぐる汚職の事件、あるいはさらには昭電事件、また、さらには造船疑獄事件、近くは吹原事件とかあるいは田中彰治元代議士の事件とか、そして最近には例の共和製糖の事件があるわけでありまして、まさにこれ国会の歴史は反面汚職の歴史だったということが私は言えないことはないと思うのであります。  ところで、今度またしても大阪タクシーの汚職事件が起こったわけであります。しかも、それがまた前の代議士が関係をし、また、しかも運輸政務次官もつとめたような、当選九回もの古つわものがこれに関係をいたしておるというような疑いが持たれて、いま捜査の対象になっておる。しかも、この事件は、起きた時間的な関係からいたしましても、総理がすでに内閣を担当されてからあとのことでありまして、しかも、今度明らかになった時期も、また同様に佐藤総理の内閣の時代でございます。こういう点から考えてみましても、よほだひとつ政治の次勢を正してもらわなければならぬと私は思う。そうでなければ国民は政治に対して非常な不信を抱くであろう、かように考えるのでありまして、佐藤総理は、たまたまこのお二人の方々が自民党に所属をされておる、総理は自民党の総裁でもある、こういう点から考えてみまして、今度の事件に対して総理はいかなる政治的な責任を感じておられるか、その心境のほどをまずお伺いいたしたいと思うのです。
  205. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この種の事件が起きたことは、まことに私遺憾に思っております。申すまでもなく、政治、これは国民の信頼を高めるようにあらゆる努力をしなければなりません。私は組閣以来絶えずその点に思いをいたしてまいりました。しかしながら、ただいま御指摘になりましたように、私が総理になってこの問題が起きたと言われると、そのとおり、時間的にもさように思います。しかし、摘発したこと、これはこういう不正を見のがさないという、そういう意味において厳正なる処置は、これは私、でき上がった以上はそうあるべきではないだろうか、かように思います。厳正にこういうものが摘発され、そうして処断がされるということが望ましいことだ。何にいたしましても、ただいま捜査中でございますから、その全貌を明らかにすることはできませんけれども、私はかようなものが起きましたことは、まことに遺憾に思っておる次第でございます。
  206. 畑和

    ○畑委員 総理は、私の質問に対しまして、非常に遺憾なことである、ただ、現在捜査中であるからその辺については何とも言えないけれども、ともかくこうした問題になったことはきわめて遺憾である、こういうことを言われておりますけれども、こう次々とこうした問題が起きたんでは、私は国民が承知しないと思う。一体いまの内閣の姿勢はどうなんだということに対して非常に深刻な疑問を持つだけではなくて、われわれ議員全体がこうした目で国民から見られるというような意味におきましても、非常に私は重大だと思うのです。ただ口頭だけで遺憾であったということでは私はならぬと思うのです。この辺は私が申し上げるまでもなく総理もよく御承知だと思うのでありまするが、今後質問を展開をしてまいりまするけれども、ひとつ十分にその辺を慎重に聞いて処置をしてもらいたいと思うのです。  続きまして、この事件に関しまして、順序といたしまして、LPガス法案、この法案の審議の経過について私は申し述べてみたいと思うのです。   〔委員長退席、二階堂委員長代理着席〕  私の調べたところによりますると、このLPガス法案は、その当時、特に大阪が一番早かったようでありますけれども、いままでの揮発油にかわってLPガスを使うということになると値段が半分以下で済むというようなことから、大阪がまず最初になってタクシー業者が特にこのLPガスを使用した。そうすることによって逐次揮発油税の上がりが少なくなった。こういうことから、この揮発油税の減収を埋めるというような観点から、同じようなものであるのに税金がかからないというのは不当だというようなことから、それにかわっての税金を課税する法案であったようであります。  それで、まず三十九年の六月に大蔵省で立案をした。総理府の税制調査会の答申に基づいて、大蔵省でこの課税の方針を決定したそうであります。これが三十九年の六月でございまして、そのときの原案としては、キロ当たり二十六円、これを四十年の四月から実施をする、こういう案であったようであります。その後、自民党の党議で、三十九年の十二月十五日に、実施時期は四十一年の一月からということで九カ月延長した。さらに一キロ当たり二十六円から一キロ十七円五十銭にする、こういうようにきまったようであります。それでその結果、昭和四十年の二月十一日に、四十八国会にその大蔵省のきまった原案、党議の結果きまった原案が提案をされた模様であります。その四十八国会は六月一日に継続審議ときまった。それから続いて七月二十二日から八月十一日まで開かれた次の四十九国会で、これまた継続審議になった。   〔二階堂委員長代理退席、委員長着席〕 それから、さらに五十国会、十月五日から十二月十三日、これは日韓国会だったと思いまするが、この国会で、結局十二月十三日に一たん廃案となった。その後、さらにまた続いて開かれました五十一国会、年末でございましたが、十二月二十日から六月二十七日までの会期でありました五十一国会に、今度は廃案になったものがさらに再提案をされ、その結果、会期末の二十七日に修正可決ということになっております。さらにまた越えて五十五国会、ことしの七月におきましてさらに再々修正がされたのでありまして、その結果、いま現在の法律があるわけです。  それで、その内容からいたしますると、最初の一たん廃案になってから、提案をされて、それで修正が行なわれた、その結果というものは、二段階の課税になった模様であります。四十一年中がキロ五円、四十二年中がキロ十円、こういう段階、さらに四十三年一月から十七円五十銭ということにきまったようであります。さらにまた最後の再再修正でございますけれども、ことしの七月、この十円という料金を一カ年でなくて、さらに延ばした。四十四年中までは十円と延長して、四十五年の一月から初めて政府原案である一キロ十七円五十銭ということに、最終的に修正をした模様でありまするから、初めの総理府の税制調査会の答申とはえらく次々と再修正がなされておりまして、確かに業者に有利になった事実は間違いございません。  これの可否の問題についてはいろいろ議論があろうと思います。われわれ社会党のほうでも早くから党議を決定をいたしました。このLPガスへの課税は結局は料金値上げにつながるというような見解から、国対でも早くから反対ということをきめておったのであります。たまたま先ほど申し上げましたような修正の話が持ち上がり、再々修正の話等もお互いに各党で話し合ったと思いますけれども、最初の修正のときには三党共同の提案だったようであります。最後の再々修正は、共産党までが一緒に、全部でそれに賛成をいたしまして再修正をした、こういう経過になっておるようでありますけれども、ともかくわれわれ社会党のほうの態度は、そういう立場から、大衆課税につながるというような見解から、早くからこの課税には原則的には反対、したがって、できるだけ安く、しかも施行期日をおくらせるということについて、結局は自民党さんと妥協をいたした。自民党さんがそこまでおりてこられた、こういうことでこういう結果になったと思うのであります。われわれ社会党のほうは筋が一応通っておると私は思うのです。ところで、自民党のほうは政府と一体ですから、本来は政府の提案というものについてこれを動かすということは、なかなか容易なことではなかったろうと思うのです。ところが結果的にはこういうことになりましたが、そこで問題は、金がまつわっておらなければ問題ではないわけです。ところが捜査の結果は、相当金がまつわっておるというようなことが明らかになりかけておるから問題なんです。  ここで大蔵大臣に承りたいのですが、参考のために、一体政府の最初の原案がそのまま通っておって現在まで至っておるといたしました場合、それとの差額ですね、こうして再々修正等がありましたその差額、見込みの減収と申しますか、そうした数字的なことをひとつ参考に教えてもらいたいと思う。
  207. 水田三喜男

    水田国務大臣 先ほどのお話でございましたが、政府が四十年の二月十一日に初めて国会へ出したときの原案は一キログラム当たり十七円五十銭でございました。もし政府原案のとおりに実施されておったとすれば、減収額がどのくらいかというのですが、きわめて大ざっぱな計算でございますが、昭和四十年度の減収が十六億円、昭和四十一年度が九十七億円、昭和四十二年度が六十億円、それから今回の延長による減収は、大体一年の延長による減収額が六十七億円というふうに主計局で計算されております。
  208. 畑和

    ○畑委員 合計いたしますと幾らになりますか。全部の合計、これを計算すればわかるわけだが。
  209. 水田三喜男

    水田国務大臣 大体二百二十億円です。
  210. 畑和

    ○畑委員 ただいま大蔵省から出ました数字によりますれば、総額で、計数的には推定で二百二十億の見込み減収になる、こういうような計算のようであります。われわれ党のほうの立場といたしますならば、そういったことが本来のねらいでありましたから、そのとおりになったわけでありますけれども、自民党政府のほうとしては、これだけ政府の見込みの額が少なくなった、こういうことで大きな影響が、政府のほうの財政からするとあったと思うのであります。  次に申し上げたいことは、この事件によっていろいろ明らかになった運輸行政のあり方の問題、この問題について、私いろいろ調べてもみたのでありますけれども、運輸行政はいま交通上の関係もありまして許認可の事項が非常に多い。したがってその間にいろいろ公務員、役人の特権と申しますか、特権であってはならぬのでありますけれども、それがそういったような形になる、こういうようなおそれがあるわけであります。それに対しまして、また、政治家が圧力をかけるというような機会が非常に多いと思うのであります。その結果が今度の事件になったものだと思う。寿原前代議士は、たまたま御自分でもタクシー業をやっておられたようであります。そういう意味で、業界代表であったようであります。また關谷代議士の際にも、非常に古い運輸関係理事等もされておりまして、陸運関係には非常に詳しい人であったようです。新聞にも書いてありますが、陰の運輸大臣、こういうように陰口も言われたとかなんとかいわれておりますが、その新聞の報道等によりますると、いろいろのこともいわれております。結局その辺で左するも右するもおれの胸三寸といったようなポーズがとられがちである、そういうような危険が非常に私はこの運輸行政には多いと思う。したがって今後ともひとつ十分にこの辺に特に気をつけてもらわなければならぬのでありますけれども、この点について、たまたま新しく内閣に入られました中曽根運輸大臣がおられます。党内左派をもって聞こえた中曽根さん、大いにひとつ閣内から、閣内粛正というか、こうした綱紀粛正——閣内粛正はちょっと語弊があるかもしらぬ。まず運輸省内の綱紀粛正をひとつはかってもらいたいと思う。この間、冷房料金の問題がございましたね。二十万円の現金をせんべつにもらったとかもらわぬとか、こういうような問題等があって、綱紀がいろいろ問題になっていると思う。まず庁内の綱紀を粛正するということ、それから同時に、こうした圧力をかけるような政治家が圧力がかけ得られないように、やはりそういったことで庁内をしっかりさせていかなければならぬと思う。これはもうどっちも悪いと思う。この辺について、ひとつどういう決意であるか、運輸行政のあり方について、担当の中曽根運輸大臣から、簡単でよろしゅうございますが、御決意を承りたい。
  211. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 運輸省の末端等におきまして不祥事件が起きましたことは、まことに国民の皆さま方に申しわけない次第であると思っております。私、着任以来、一番大事なことはやはり政治の悪い排気ガスが行政のほうへ当たるという点にあるとも思いまして、全職員を集めまして、政治の悪い排気ガスを当てるようなことは絶対しない、もし万一そういうようなことがあったら私のところに申し出ろ、私が責任を持って処理すると、そういうようにも示達をいたしました。  今回の事件は、運輸省に関しては官紀の弛緩、それから末端の業者はまだ非常に封建的でありまして、近代的な合理主義を持っていないところもあると思います。その点につきましては、本省並びに地方の局部長全部集めまして、厳重なる示達をまた行ないまして、たとえば、宴会であるとかあるいはせんべつであるとか、そういうこまかい点に至るまで厳重な示達をいたしました。なお、業者等と接触しておりまする係長あるいは課長補佐等につきまして、百三名の配置転換をいま実施しております。海運局関係で八十八名、陸運局関係で百五名、一番接触の多い部面は、二年以上の者はもう配置転換をする、そのようにいま実施しておる最中であります。
  212. 畑和

    ○畑委員 ところで、これに関連して法務大臣に聞きたい。  本件のこの汚職事件の端緒になりました、先ほど出ました大阪タクシーの冷房料金の問題ですね、この冷房料金の問題は、刑事問題としては、その後どうなったのか。単なる端緒にすぎない、あるいは慣例だ、儀礼だというようなことで、そのままにするつもりなのかどうか、この辺はどうなっておるか、ひとつ法務大臣から承りたい。
  213. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  冷房料金の問題はあわせて目下取り調べ中でございます。御了承願いたい。
  214. 畑和

    ○畑委員 あわせて取り調べ中という答弁でございますが、一番最終的に本件のこの汚職事件と一緒に処分をきめる、こういう考えかもしれませんけれども、この点一体どうなったんだろうといったような大阪の地元の非常な不満があるやに聞いています。あのままケムトロになったんじゃないか、単なる儀礼にすぎないというようなことで、そのまま不起訴ということでもうきまったんじゃないか、やはりこういったような不満があるようであります。その辺、そういった、どうせならまとめてという配慮もあろうかと思いまするが、しかし、こうした問題にもはっきりとした回答を与えていただきたい、かように要望するわけです。  それから次にまた法務大臣に承りたい。  いよいよ本事件のことでありますけれども、この捜査の経過は一体どうなっているか。これはあまり長く述べられますと、また時間の関係で迷惑いたしますけれども、ひとつ要領よく本件の捜査の経過を答えてもらいたい。
  215. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 タクシー事件の経過を簡単に御報告を申し上げます。  大阪陸運局職員にかかる汚職の疑いがあったのでございまして、本年八月に大阪タクシー協会、相互タクシー株式会社等十数カ所の捜索を行ないました。一方また、関係者を取り調べましたところ、大阪タクシー協会の多島会長など同協会の幹部が、昭和四十年の二月、国会に提出をせられました石油ガス税法案の審議に際して、タクシー業者に有利な取り扱いを受けるために、現衆議院議員の某氏並びに前衆議院議員の某氏の両氏に対しまして、そのころ金員を提供したとの容疑が生じました。そこで、今年十一月下旬、多島協会長など協会幹部五人を逮捕いたしまして取り調べを行ないました結果、某前代議士について現金を受け取った疑いが濃厚となったので、同氏を去る六日逮捕して、目下引き続き調査をいたしておるような次第でございます。また某現議員につきましては、去る十二月九日に参考人として事情を調査いたしました。  なお、捜査中の案件につきましては、御承知のとおり、従来から捜査の内容並びに捜査の見通しにつきましては、捜査に支障を及ぼすおそれがありまするのでお答えをしないことになっておりますので、私も前例に従いまして答弁を差し控えたいと考えておりますので、御了承願いたい。   〔「某とはだれだ」「そんなことではだめだ」と呼び、その他発言する者あり〕
  216. 畑和

    ○畑委員 赤間さん、法務大臣、いま盛んにうしろからもう不満の声があるようです。某、某って何ですか。もう大体名前が出ているじゃありませんか。新聞でも出ているし、もう逮捕されたのか、はっきりしている。捕逮されないほうの關谷さんのことについては、何というんですか、同僚ですかられんびんの情もあるかもしれませんけれども、こういう席で某、某というやつはどうもあまり聞こえないですな。やはりそれじゃいかぬですわ。やはりはっきりと、だれということは明示していいんですよ。だれも知っているんだから……。しいて——あなただれかに原稿を書いてもらってそのまま読んだかもしれないが、それにしては、あまりにも法務大臣としては権威がなさ過ぎる。たとえ某と書いてあっても、法務大臣、やはりこれだけはっきりしているんだから、したがって、名前ははっきり申してもらいたい。これは一々聞かぬでもまあわかっていますから……。だけれども、うしろのほうも私と一緒に非常な不満です。その点ひとつ御注意を申し上げる。  さらにまた、例によって捜査中というようなことでまことに簡明であったのですけれども、捜査中ということで事件の全貌はほとんど触れられておらぬ。もう新聞読んだって、それ以上のことが新聞には書いてあるぐらいだ。したがって、どうも私らがここで国民の前に明らかにしたいというような要望とはほど遠い答弁がいま法務大臣からなされたのは非常に残念です。もっとしゃべりましても捜査には差しつかえないと思う。もっとひとつ誠意を持った答弁をしてもらいたい。それは捜査当局を結局つかさどる法務大臣でありまするから、捜査に影響してはという配慮はわかります。配慮はわかりますが、あまりにも木で鼻をくくったような答弁では、どうも非常に不満足です。しかし、幾ら押し問答いたしておりましても解決にはなりませんから、その前へ進んでまいりたい、かように思います。  ところで、私が一つ大きな疑問を持っておるのは、その捜査の過程におきまして最高検が捜査にストップをかけた疑いがある、そういう事実はないか、こういうことです。それは前の検事総長の馬場さん、馬場さんは最近とみに政治性を発揮しておられた人だと聞いておるのです。もとはなかなか硬骨漢だったが、なかなかえらくなると、どうもその辺政治性を発揮しやすいというようなうわさを聞いておったのでありまするけれども、この検事総長がやめられる前に捜査にストップをかけた疑いがある。この点について聞きたいのですが、その証拠には、新聞紙が報道いたしておるタクシー協会捜査経過とうたってある中に、明らかに捜査ストップということも書いてございます。またある新聞紙にもそういうことの疑いが投げかけられておるのでありまして、そこで私はお尋ねするのですけれども、そういう事実が前の検事総長時代にあったかどうか、そういうことを聞いているかどうか、ひとつ承りたい、法務大臣。
  217. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 ただいまお尋ねになりましたような捜査をストップするとかいうような事実は全然ありません。あくまで不偏に正しく明るくやるべき仕事をやっていく、こういうことに考えておりまして、そういうお話のような事実はありません。
  218. 畑和

    ○畑委員 そういう事実はありませんと、はたして言い切れるかどうか、私は大きな疑問を持っています。赤間さんはつい最近法務大臣になられた方でもございまするし、そういうことがありましたという報告をする人もなかろうからそういう答弁になったかもしれませんが、私としては聞いておりません、こういうことならばまだしも、そういう事実はないという御答弁です。まあしかしこれでまた押し問答しても同じことでございますので先に進もうと思います。  いまもそれに関連して申しましたが、もし万一こういったことがあってはならぬという、これは法務大臣の言われるとおりです。したがって、そういった点は今後ともひとつ十分に気をつけてもらいたい。検察行政をつかさどっている法務大臣、先ほどそう明言もされましたのですから、国民は公正な処置を期待いたしておりますので、そのことばどおりに、今後とも一切政治的な配慮等を加えないということをひとつここでもう一度明言してもらいたい。
  219. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  検察当局としましては公平に正しく、いかなる力にも災いされず、ほんとうにこの目的を達するように全力を尽くしていきたい。不偏不党、あくまで正義の味方として、今後明るい気持ちで働いていくということをお誓いを申し上げていいと考えております。御了承を願います。
  220. 畑和

    ○畑委員 続いて質問を続けたいと思います。ところで、本事件の捜査の見通しはどうかということであります。これに対しましてもおそらく捜査中だから一切言えぬということかもわからぬ。しかしながら国民はこれを期待いたしております。したがってこの点についてひとつ答弁をしてもらいたいのでありますが、關谷さんの問題は一体どうなるのか。それから現在参考人というような形で調べておられるようでありますけれども、これはあまりにも遠慮し過ぎたポーズではないかと私思うのです。もうこうして明らかに疑われておる以上は、事実上は被疑者だと思う。ところが参考人という形で調べておられる。一体将来ずっと参考人として調べるのか、途中から被疑者となるのか、または強制捜査すなわち逮捕をする用意があるのかどうか。まあ事件の進展を見なければわからぬ、こういう答弁をおそらくなさろうと思うけれども、この辺の将来の見通しをどういうふうに考えておられるか。こういうこともあり得るというところでもよろしい。ひとつ答弁をもらいたい。
  221. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  捜査の内容並びに捜査の見通しは、さきに申し上げましたように、捜査の上に支障を来たすおそれがありまするので、はなはだ残念ながら申し上げるわけにはまいらぬ、かように御了承を願いたいと思います。
  222. 畑和

    ○畑委員 きわめて誠意のない答弁だと私は思うのです。通り一ぺんのまことにどうも誠意のない答弁だと思う。とにかくここはわれわれ国民の代表なんだから、だからもっと親切な答弁をしてもらいたい、かように思う。一体どうなんです。せめて逮捕することもあり得る、こういった程度の答弁があろうと思ったら、そういう答弁もない。非常にこの答弁には私は不満であります。新聞等におきましても、逮捕請求をすることもあり得る、こういうようなことが書かれてありまするが、この点どうなんです。これを聞きたい。逮捕請求をしないことによって、すなわち逮捕をしないことによって、強制捜査をしないことによって長蛇を逸するというようなことが往々にしてあり得る。もしそういうことになったらどうするか。こういう問題が私はあると思う。これをひとつ配慮をいたしまして御答弁を願いたいのです。逮捕請求いたしましても、いろいろ手続に時間がかかります。許諾請求というものがありますから時間がかかります。そういう点からいたしましても、早くこれに踏み切るなら踏み切る、こういうことが必要だと思う。そうでなければ実際が明らかにならぬというようなことになって、取り返しがつかないということになろうと思いますが、そうしたことの判断は検察当局でひとつばりっとやってもらいたい。どうですか。
  223. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 ただいまも申し上げましたように、捜査の見通しというものは申し上げるわけにはまいらないのであります。これはいままで捜査の内容並びに見通しを申し上げた例はありません。そういう意味からいたしまして、その点御了承願いたいと考えております。
  224. 畑和

    ○畑委員 この点はいままで田中法務大臣もなかなか慎重だったけれども、しかし、なかなか率直に語ってくれました。まあ、赤間さんは法律問題のほうにはしろうとだけに、あまりしゃべらぬほうがいいということかもしらぬけれども、これはまあ非常に不満です。  ただ議論しててもしかたありませんから、さらに進みますが、捜査の年内終結ということを最高検でも申しておりますし、新聞記事にも書いてあります。それに対しまして、また大阪地検のほうでもそれを再確認するようなことを記者団にも語っておるようでありまするが、しかし、そこにはニュアンスがちょっと違うような気がいたします。模様によっては大阪地検のほうでは年内捜査に必ずしもこだわらぬというようなニュアンスがあるような感じがいたしまするけれども、これは一体——年内捜査終結ということで最高の上部のほうでこれを押しつけて、それによって捜査が粗漏になる、間に合わないというようなことが、私はあり得ると思うのです。そういうことをも拘束するような年内終結であるかどうか、この点ひとつ法務大臣に承りたいと思います。
  225. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 現在のところ、年内で終了するというようなことは、われわれといたしましては考えておりません。十分目的を達すればいつでもやめる、目的を達しなければこれが長引いてもやむを得ない、こういうような考え方を持っております。ただ、捜査事件でありまするから、できればなるべく早くこの捜査を終わりたいという希望は持っておりまするから、御参考までに申し上げます。
  226. 畑和

    ○畑委員 よろしい。  それではその次、本件の事件は大阪タクシーの事件がもとでありますが、最近大阪地検のほうから東京へ出張して調べておられる。私は、これでは非常に能率が下がるのではないかと思うのです。もうすでに事件は大阪だけではない、中央の問題になっていることは、だれが見ても明らかです。そういう意味からも、事件の捜査を能率的にやるというような観点からいたしましても、東京地検の特捜あたりと一緒に、合同して捜査を急速に早く能率的にやらせる。いろいろ、なわ張りあるいはその他もあると思います。そういう点もあろうかと思いまするけれども、合同捜査本部等をつくって、中央で直接指揮をしてやるような考えはないか、これを承りたい。
  227. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  いまのところ、東京と大阪と合同して捜査に当たるという考えはないようであります。ただ、事件はできれば完全になるべく早く目的を達するようにせいぜい努力をいたすことになっておりまするので、その点御了承を願いたいと思います。
  228. 畑和

    ○畑委員 現在、業者の関係も強制捜査は大阪タクシーに限られておりますけれども、あの陳情を執拗に続けたのは、必ずしも大阪だけではない。イニシアチブをとったのは大阪だけれども、全国の自動車業者があそこのヒルトンホテルに一室をちゃんと長い間借りて——いまでもあるでしょう——そこを中心として議会にいろいろ陳情活動を続けた。相当の金額を使ってやったわけです。その点は、全乗連関係の捜査は、ただ家宅捜索を事務所がやられたということの報道があっただけで、その後そうした関係のものについての強制捜査は進めておらぬというように感ずるのでありますが、この点は全乗連関係はどうか、東京の旅客自動車協会等の関係はどうか、この辺簡単に承りたい。
  229. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 業界の個々の捜査等につきましては、ここで一々申し上げるわけにはまいらない、かように考えますので、御了承願いたいと思います。
  230. 畑和

    ○畑委員 それでは次に進みますが、いま捜査の対象になっておる人は、御承知のように運輸関係の方であります。ところで、法案の審議をし、さらにこれを修正可決をした人たちは、場所は大蔵委員会です。ところで、大蔵委員会関係のほうにもいろいろ事情聴取その他捜査の参考になることをやっておられるかどうか、その辺を承りたい。
  231. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 たびたびお答えをいたしましたように、捜査の内容に関するものは、残念でございますがお答えするわけにはまいりませんので、その点御了承願いたいと思います。
  232. 畑和

    ○畑委員 まあいろいろ参考人等でもう聞いておられることが新聞にも出ておるのですから、その辺の関係はもっと率直に答えてもらわなければならぬと思うのです。何でもかんでも捜査中だということで逃げられる、きわめて不満であります。  それでは、次に聞きますけれども新聞等にも報ぜられておりまするが、この二名のほかに捜査線上にのぼっておる国会議員がおるのかどうか。十数名の国会議員が関連があるということでいわれております。寄金の総額は五千万にも達する。そのうち、まあ職務に関するものは二千万ぐらいというような新聞記事等もありまするけれども、これはどうでしょうか。
  233. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 新聞その他でうわさにのぼっておる方につきましても、その者の名誉の問題もありまするし、捜査に属する問題もありまするので、申し上げるわけにはいかないのであります。あしからず御了承を願いたいと思います。
  234. 畑和

    ○畑委員 ところで、本件の事件は、あれだけ大がかりな運動を続け、そしてまた相当な金がそれに使われておる。直接の運動費だけではなくて、一億五千万以上にも達するというばく大な金が集められて、それが政治献金という名のもとにほとんど使われておるということは、もう隠すことができない事実でありますけれども、このことが非常に問題です。しかも、職務権限とどう結びつくかというような法律的な問題が多いことは、承知をいたしております。  ところで、この二人の場合について考えてみますと、身分は国会議員でございますけれども、大蔵委員会のメンバーではない。直接この法案を取り扱ったのは大蔵委員会でございます。そこで、法案の審議にからんで収賄をしたというようなことであるとすると、この職務権限との結びつきぐあいはどうなのか、どういうふうに当局は考えておられるか、その点の法律的な見解、これをひとつ、おそらく法務大臣じゃわからぬと思うから、ほかの局長でもよろしいが、できたら答えてください。
  235. 川井英良

    ○川井政府委員 本件は、その辺を含めて目下大阪地検において証拠との関係において鋭意取り調べ中でございますので、具体的な要件についての職務権限につきましても、ここでこまかくお答えをすることをお許しいただきたいと思います。
  236. 畑和

    ○畑委員 何でも捜査の途中だからというので答弁を逃げられる。法律的見解くらいは言われてもよろしいんだと思う。  まあしかし、いたし方がないから次に進みますが、この事件については、政治献金が非常に多い。寿原さんの場合等も、問題となっている百万円のほかに、合計二百数十万円の献金がなされておる。また關谷さんの場合にも、百万円のほかに五百数十万円の政治献金を受けておる。ただ、この二件の場合が、政治献金の届けが一応形がなかったというようなことで、この二件だけをとりあえず突破口でやっているように見受けられますけれども、しかし、政治献金が必ずしもわいろではない、こういうことは言えないわけです。われわれいろいろ調べてみましたけれども、非常にばく大な金額が、この当時各派閥、あるいは政党、それから個人、後援会、これに使われておるわけです。集中的に、特に四十年、四十一年ごろに非常に使われておる。これが非常に問題だ。これはあとで申します政治資金の問題とからみ合わして、非常に問題だと思うのです。この点をひとつ捜査当局におきましても——政治献金というベールに隠れての私は事実上のわいろが相当多いと思う、こういう点をやはり糾明してもらわぬといかぬと思う。この点をひとつ、あとで政治資金について触れますけれども、このタクシー事件につきまして、同僚の西宮議員から関連がありますので、西宮君に発言をしてもらいます。
  237. 西宮弘

    ○西宮委員 それでは、私は、ただいま畑委員はいわゆる単なる政治献金であるか、あるいは今度のLPガスに対する税金引き下げに対する運動費であるか、こういう点が法律的には問題である、こういうことを指摘をしたと思います。なお、このことは私ども新聞等でしばしば見ておるのでありまして、これが単なる政治献金として終末を告げるものであるかどうか、この点が問題の焦点であると思いますので、私は、先ほど畑委員があげました具体例につきまして、若干それに関連いたしましたことを申し上げまして、当局の御見解を聞きたいと思うのであります。  先ほど畑委員は、こういう点を指摘をいたしました。最初キロ当たり二十六円の税金であったのを、三十九年の十二月の十八日、自民党は党議をもちまして十七円五十銭に切り下げた。そして実施の時期を九カ月延ばした、こういうことを言ったのでありまするが、それが十二月の十八日でありまして、越えて十二月の二十二日、大阪のタクシー協会におきましては理事会を開いて、その席で多島会長から、われわれは一年延長の目標で運動をしたけれども、九カ月の延長でとどまった。それをわれわれは成功と見るべきであるかどうか、こういうことを提案をいたしまして、それは結局、九カ月の延長を見たのは成功である、こういうふうに認定をいたしまして、評価をいたしまして、それではそれに対してわれわれは運動費を集めなければならぬ、こういうことでタクシー一台当たり、大阪市内の業者は一万五百円、郡部の業者は六千五百円、こういうことで徴収をして献金をすることになったのであります。同時に、多田社長は運動資金として即座に一千万円を提供しているわけでありますが、これなどは明らかに、もう論議の余地なしに、今回のいわゆるたくさんの金の献金は、単なる政治献金ではなしに、この税制を有利に扱ってもらうということに対する運動費であったということは明々白々だと思うのであります。  私はもう一つ、この期間中にたくさんのいわゆる政治献金が行なわれておるわけでありますが、それをながめてみますと、たくさんありますが、その中でちょっと目を引きますのは、新生政治経済研究会という、こういう団体に対する寄付金であります。これは私の承知をいたしております範囲では、いわゆる自民党の俗に申します派閥で、福田派の系統に属しますところに事務所を持っておる団体である、こういうことだけは私は知ったのでございます。この団体におきましては、三十八年の上期に二つの会社から五十万円、下期に二百十万円、三十九年の上期に二つの会社で百五十万円余り、下期に四つの会社で五十三万円、こういうふうに寄付を受けておるのでありますけれども、特に私がここで指摘をいたしたいのは、昭和四十年、要するにこの問題が問題になった時期であります。その時期におきまして、ほかと違いまして、この団体はたくさんの会社から、個々の会社から直接献金を受けておるのでございます。それが昭和四十年の上期においては四十一会社、七つの団体、合計四十八の団体から五百五十七万の献金を受けておるのでありますが、それがちょっと変わっておりますのは、それぞれの会社から受けておりますので、これを試みに——一つの団体は必ずしもそう多い金額ではありません。——それでこれを試みに十二カ月で割ってみますと、全部はんぱの数字が二十五円単位なのであります。七十五円、二十五円、五十円というような、そういう答えが出てくるわけであります。したがって、これは私の想像でございますけれども、おそらくはその一つの所有する台数等に応じまして、一台当たり二十五円、こういうことで割り振りをしたのではないかと思うのであります。そこで、その当時の——その当時と申しますか、現在のこのタクシー会社の所有台数を調べてみますと、全部具体的にもちろん固有名詞があるわけでありますが、かりにA、B、Cと申しますならば、Aは一カ月に千二百七十五円、これは現在五十三台の台数を持っておるわけでございます。Bは千三百円で五十五台の台数を持っておる。ただし、その当時はこれよりも若干少なかったので、これらをそれぞれ割ってみますと、きわめて明快に出てまいりますのは、一台当たり二十五円というので割り振りをしている、こういうことであります。私は想像いたしますのに、二十五円というのは、つまり十七円五十銭ときめたやつが初年度五円におさまりましたので、その差額十二円五十銭、これは一キロでありますから、これを二キロ分出そうじゃないか、こういうことで割り振ったのではないかと思うのであります。そういうことになりますと、これまたきわめて明瞭に、この今度の税金を安くしてもらった、そういうことに対する謝礼というか、運動費というか、そういう金額であるということが私は十分に想像できるわけでありまして、私は非常にこの点興味を持ちましたので、特にこれを指摘をいたしたわけであります。  いま問題になっておりますのは、最大の論議の焦点は、これは単なる政治献金であるか、あるいはその税金の審議に関連をいたしましての献金であるか、こういう点が問題でありますので、この点に関しまして、法務大臣でもよろしいし、刑事局長でもけっこうでございますが、法的な見解をお聞きをいたしたいと思います。
  238. 川井英良

    ○川井政府委員 本件につきましては、その政治献金といわれておるものの中にわいろ性を持ったものがあるのではなかろうか、こういうふうな疑問を検察庁が抱きましたので、若干の内偵をいたしました結果、その容疑が濃いということになりまして、捜査に踏み切った、こういう事情になっておりますので、すべての政治献金がわいろだということにはならないと思いまするけれども、本件の中の若干のものの中にそういうふうな疑いのものがあった、こういうことだと思います。
  239. 西宮弘

    ○西宮委員 先ほど畑委員も指摘をいたしましたけれども、業者の代表は、あのヒルトンホテルの二百十五号室と聞いておりまするけれども、そこに陣どりまして、昭和四十年の夏から本年まで事務所を設けて、ここでいわゆる政治工作の本拠を設けておったわけであります。業者の中にも存外正義派がおりまして、私どもにこういう問題を徹底的にやってくれ、こういうことで、われわれを鞭撻する者があるのでありますが、それによりますと、その間に払った部屋代が百六十万円、それから本年だけの、本年二月の二十日から八月の九日まででありますが、宴会の経費が百十二万七千四百六十五円、こういうことを聞いておるのでありますが、こういうことがいかに政治を災いしているかということが明瞭だと思うのであります。私は、ぜひともこういう問題と関連いたしまして——先ほど畑委員が指摘をしたように、この問題は当然に舞台は東京に移ってくるとわれわれは確信をいたしております。したがって、検察当局等もそういう点に十分留意をされまして、問題の根源をついていただきたいと思います。  なお、最後に一つ、ついでながら申し上げたいと思うのでありまするが、去る三月の二十三日に陸運議員懇談会というのが自民党の中に設けられまして、これが闘谷勝利さんが会長でありまして、副会長が三名、常任世話人が十二名、監事が一名、全体合わせて五十六名ともいい、五十七名とも申しておりますが、私は五十六名だけの名前は承知をいたしております。こういう団体ができまして、いわゆる陸運行政を論議をされる。たいへんけっこうでありまするけれども、これなども、その最初の発会式の開会式、ホテルニューオータニで行なわれましたが、この際も、案内をしたのが全乗連の会長の波多野さんの名前でございます。したがって、その後の会合も同様でありまして、これでは、私はどう考えてみても、全くタクシー業者おかかえの議員集団だと言わざるを得ないのでありまして、これが当局に対して非常に強い圧力をかけておるということは、私どももそのいわゆる当局側からいろいろ話を聞いております。私はかつて運輸委員会に所属をいたしておりましたので、その当時、その委員会の中におけるこれらの方々の、いま問題になっておりますお二人でありますが、こういう万が委員会において当局を責める責め方、私どもは実は目に余るものがあったわけであります。しかし、これはとにかく公の場所でありまするから、おのずから限度があったと思うのでありますが、公の場所でないところで行なわれます当局に対する非常識な圧力、これはすでにその関係者はよく知っておることなんでありますから、こういうことが続いたのでは、これはとうていたまらないと思う。私は、こういうようないわゆる業界おかかえ、まるがかえの議員集団、こういう人に対して十分なる反省を促さなければならぬと思うのでありますが、この問題について佐藤総理の所見をお聞きをいたしまして、私は終わりにいたします。
  240. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 るる説明されましたが、私自身も運輸省の出身であります。私は、私の在職中はさような意味で圧力を感じたことは全然ございません。今日そういうような点もいろいろ御注意がございましたので、この上とも注意するつもりでございます。先ほど中曽根大臣が、新しく就任いたしまして、その決意のほどを披瀝いたしております。私もこれをバックアップして、十分ひとつ粛正する、かようにいたしたいと思います。綱紀を維持する。御承知願いたい。
  241. 畑和

    ○畑委員 先ほど、捜査の進展によっては逮捕請求、したがって許諾請求、こういったこともあり得るかどうかということで質問をし、それは捜査中だからというような御答弁が法務大臣からなされましたけれども、若干仮定の問題になろうと思います。仮定の問題になろうと思いますけれども、いままで許諾請求があって、それを許諾しなかった例というのは、二件しかなかったという話です。荒木さんの事件がありましたそうです。もう一つは高石幸三郎氏の事件があった。選挙違反、このときだけは許諾請求を与えなかった、こういうことでありますけれども、少なくとも逮捕請求があるような事件は私は重大な事件だと思う。したがって、もし万一この許諾請求があったといたしますならば、われわれの見解は、逮捕に対して許諾を国会として与えるべきだ、かように考えております。ところで、この場合に、多数党であられる自民党におきましては、この逮捕請求に対して許諾を与えるというようなことで賛成をするかどうか。これは、自民党の総裁で総理はあられるのだから、その決意はひとつはっきりできると思う。仮定の問題と言わずに、はっきりやはり答えてもらいたい。総裁としてどうか。これはもし許諾を与えなければたいへんですよ。
  242. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 総裁として、また仮定の問題としてはお答えをしない、するな、こういう注文つきでございます。しかし、私は申し上げますが、これは国会で処理される問題です。そのときに国民から疑惑を受けないような処置をとる、これは当然のことでございます。
  243. 畑和

    ○畑委員 はっきり許諾に対して賛成をするというようなことまではおっしゃらぬけれどもことばのあやで、大体総理もそういった考えでおられるように思いますので、この点につきましては、以上でとどめたいと思います。  次に、政治資金の問題について触れたいと思います。先ほど来西宮委員からもいろいろ政治資金の問題について、今度の問題について、こまかい数字等があげられましたけれども、こうした汚職については、政治資金がつきものなんです。政治資金というベールをかぶって堂々とまかり通っておる、こういうのが現状であります。その政治資金のうちから、どれがわいろであるかということを選別するのは容易じゃない。大体公然性というようなことで見のがされる場合が非常に多いのでありますが、そういう意味からいたしましても、国民からこうした疑惑を受けないで済むように、政治資金を規制をする必要はあることは言うまでもありません。  そこで、その議論に入る前に、総理にちょっと承りたいことがございます。総理の部下の大臣であって、公務上の大臣としての国会での答弁のうちで、職務上の立場で発言する場合に、総理考えと違った個人的見解だというようなことで、国会で意見が表明されるというようなこと、一体こういったことがあり得ることでありましょうか。総理はどうお考えでございますか。
  244. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほども法務大臣が名前を言わないので、だいぶおしかりを受けたのでありますが、今度はまたお尋ねになります畑君から、どうも名前をささないでお話しでございます。私は、むしろはっきりなすったらいかがか、また、そういう方がどういうような考え方で話をされたか、それを直接お聞きになることが望ましい、かように私思います。
  245. 畑和

    ○畑委員 それでは申します。実は、きょうの参議院の公職選挙法の委員会において、あなたの部下であられる自治大臣の赤澤さんはこういうことを言っておられるのです。個人的な見解としては、政治資金については、政党については無制限にすべきである、制限をするということは好ましくない、無制限にすべきである、かような発言をきょう参議院で明白にされておる。個人的見解ということが一体許されるかどうかと私は思うのです。その点で、総理はかねてから答申を尊重すると言われて今日までまいりました。その答申の重要な部分は、総理、この政党への献金について制限をどうしても設けなきゃならぬというのが基本的な答申の考えです。それに対してまっこうから違うような案、考え方、それを当の自治大臣がおっしゃったということに至っては、私は、もう個人的見解ということでは許されないと思うのです。そういう点で、私は、実は前置きの質問をしたのでありますか、そういう意味でのことであります。
  246. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政治資金規正法案、これは前国会でたいへん苦い経験を私どもなめております。この次の国会にはぜひ出したい、かように申しておりますが、この過去の審議も十分生かして、そして今回は必ず成立ができるような成案ができる、そういう法律を提案しよう、かように実は申しておる際でございます。したがいまして、まだただいまのところ最終案というものはもちろんできておりません。おそらくその最終案ができてないその時点において個人的な見解を述べられたものではないか、私かように理解いたします。いま赤澤君自身が、この案が一番いい、最終的だ、かように申したわけではないだろう。、だから、そこに特に断わって、個人的見解というようなことを言われたと思いますが、私自身、よく過去の審議の経過にもかんがみて、ひとつ必ず成立する案をつくろうじゃないかといって、ただいま話がされている最中でございます。これはもう政府部内におきましてももちろんでありますが、党におきましても、そういう意味で成立する案をひとつ考えようというところでございますから、御了承いただきたいと思います。
  247. 畑和

    ○畑委員 総理も、先ほども言いましたように、再三等申を尊重するというふうに言われております。答申のおもなる筋は、政党への献金の点につきましては、先ほど私が申したとおり、総理もその線をいままで支持しておられたと、私はかように思うのです。前のあなたが出された政治資金規正法の改正案の骨子も、その点がやはり骨子になっておるので、そういう点からいたしますと、先ほどの赤澤自治大臣の個人的見解は、あなたの考えとはだいぶ違う、かように思うのですが、いかがですか。
  248. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも現段階で私申し上げるのは、ややそれだけの案を持っておりませんから、申し上げかねます。  前回におきまして、選挙制度審議会、これを尊重しなければならないということを申しました。しかし、あの案はなかなか通りかねた、かような状態でございます。だから、何らかのくふうはしなければならないのだと思っております。ことに、党に対する政治活動、これは制限されては困りますが、同時に、あの骨子であるものは、おそらく多数のところから政治資金を集めろ、一カ所に片寄らないようにしろというところが一つのねらいではなかろうか、かように私は思っております。ここらにも認識上の問題がございますから、いわゆる二千万円という限界などはいろいろ議論されるのでございます。だから、この辺のところが、またこれから先に党の活動を制限する、このようなものであってはいかないのじゃないだろうか。政党としての活動にやはり事欠かないように、そうすべきであろう、かように私は思います。ただいま幾らがいいとか、かようなことを申しておるわけじゃありません。したがいまして、赤澤君が発言いたしましたのも、おそらく私がただいま申しますような意味から、政党としての活動は活発にやるべきだろう、そういう意味で、事欠かないようにという、そういうような配慮から出た意見じゃないだろうかと思います。しかし、ただいままだ最終的な結論を得ておりませんから、どういうことになりますか、さらに審議をしたい、かように思っております。
  249. 畑和

    ○畑委員 総理、制限をしないという意味は、総理はどういう意味で言われたか知らぬけれども、大体政党へ献金する側のほうから制限しよう、そして団体、会社等は一年間二千万円以上、個人のほうは一千万円以下と、こういうふうにしよう、ただ、受けるほうの政党のほうは別に規制はしない、どんどん歓迎をする、できるだけ広範に集める、それは制限をしないが、政党へ出すほうの側から制限しようと、こういうのですから、そういう点で総理が制限しないというのならわかるのです。そうじゃなくて、いま言ったような、外からするほうを制限するというのはいかぬ、こういうのか赤澤さんの意見だ、そうだとするなら——どちらなんですか、総理のお考えは。赤澤さんの意見に同感ということになるとすれば、総理としては、いままでの話と食い違ってえらい食言をされたというようなことになりますが、その点はどうですか。
  250. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、とにかく、前国会における苦い経験、成案を得なかったという点から、やはり成立することをまず第一に考えるべきだ、かように思って、いろいろ案を議しておる最中でございます。ただいまの赤澤君のも一案だろう、かように思っておりますし、私がただいま申し上げるのも一案だろう、これから成案を得るのでございます。御了承いただきたい。
  251. 畑和

    ○畑委員 だいぶ総理はどうも赤澤大臣をかばっておられる発言でありますが、ロジックがちょっと合わぬようですね。そうだとすれば、どうも総理自身が、いままでの累次のあなたの発言、公約、こういうものからだいぶ後退をしてきたような感じがする。これじゃわれわれも承知ができないし、また国民も承知いたしませんよ。総理が、この前の国会におきまして、政府が提案したその政治資金の規正、しかもそれも答申からだいぶまたゆるめたものを出した。それに対して、総理と同じ党の人たちの自民党の方々がまっこうから反対をされて、野党そこのけの審議の引き延ばしをしたことは御承知でしょう。ああした結果、とうとう廃案に追い込んだ、こういうことであります。それで、総理は、できるだけ政府の原案で通したい、こういうことを申されました。答申は尊重する、こういうことを言うておられたのですが、その辺のほうにだいぶ引きずられてまいると、どうもわれわれも承知ができない。そういう点、自民党、要するに国会で通りやすいような案と言われるところが、私は非常に危険だと思う。われわれの立場からすれば、また国民の立場からすれば、非常に危険だと思うのです。やはり選挙制度審議会の答申というのは権威があるんだ。しかもその設置法に、政府はこれを尊重しなければならぬという一条項が書いてある。それだから、総理も常日ごろさようにいままで公約をされてきたと思う。そうだとすれば、あなた、総裁なんですから、ひとつ自民党の方々の党議をそっちのほうへ持っていってもらって、そしてやはりリーダーシップを発揮してもらいたい。これはもうぜひお願いいたしたい。どうもそちらへ片寄っているような感じがするのですが、それはいかがですか。
  252. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ御注意いただきましてありがとうございました。よく伺っておきます。
  253. 植木庚子郎

    植木委員長 島上善五郎君。関連質問を許します。
  254. 島上善五郎

    ○島上委員 関連して二、三御質問申し上げます。  総理が、答申が出たら勇断をもって実行する、これは名言ですね。それから私の質問に対して、大骨どころか小骨一本抜きません、こう申しましたね。これは御記憶に新たなるところだろうと思いますが、これほど国民にそらぞらしい感じを与えていることばはないと思う。あなたは多言実行だということを申しました。少なくとも現時点ではこのことばは何ら実行に移されていないばかりか、実行をしようとする熱意が全然なかったということもこれまた事実です。この心境は今日も変わりありませんか。
  255. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま畑君にお答えしたとおりでございます。
  256. 島上善五郎

    ○島上委員 それでは申しますが、いま畑君に対する御答弁の中で、政党に対する規制をさらにやめるか、大幅に緩和しようという考えが自治大臣を中心にして党内にあるようです。答申をごらんになったと思いますが、この答申は御承知のように、政党の政治資金は個人献金と党費によってまかなわれることが本来の姿である、だからおおむね五年を目途として個人献金と党費によってまかなうようにすべきである、これが答申の大骨というよりはむしろ背骨です。もしこれを抜くようなことがありましたならば、政治資金規正法の改正をするという意味が九五%失われてしまいます。どうお考えでしょうか。
  257. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほども申しましたように、ただいま検討中でございますから、御意見をよく伺っておきます。
  258. 島上善五郎

    ○島上委員 そうしますると、この前四月七日に答申がございました。この答申は、御承知のように選挙制度審議会は十一月前には区制を含めた、運動面を含めた答申をするのであるけれども、緊急に措置をすべき事項として四月七日に答申したことは御承知のとおり。そして答申後二カ月余り、自民党との調整に名をかりて時間を要したわけですね。その二カ月余り自民党と調整をした、その意見をさらに今日は大きく変更しよう、こういうお考えに立っているわけでしょうね。そうでないとすれば、もっとはっきりと今度の臨時国会へも出せるわけですし、もっとはっきりした御答弁がいただけるわけですけれども、二ヵ月余り自民党と話し合ったその内容を、さらに大きく変更しようというお考えに今日立っておるかどうか。
  259. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 区制に対して明確な答申が出てくる、まあ区制と一緒に資金の問題も片づければ非常に片づけやすい問題であると思います。ところが今回、区制については一つのまとまった意見は出ておらない。御承知のように、まあ多数意見というものはありますが、いわゆる多数決、過半数というものはございませんから……。ただ、それにいたしましても小選挙区の考え方でまあやや、それぞれは違いますけれども、その考え方は大体多数の意見のように思います。しかしそういうような状態でありますから、区制に関する選挙法改正は、なかなか困難なことだと思います。またしたがって、政治資金規正法の考え方は、区制以前に実は出たものであります。おそらく審議会自身も、そのうちに区制の問題も取り組むから一緒にできると、かような期待をされたことだとは思います。ことにその点では、この特別委員でもあられたことでございますから、よく事情は御存じだと思う。しかし、いずれにいたしてもこの政治資金規正は非常に急ぐことだから、これだけでも早く通さなければならない。今日それに迫られておる。区制とは私ども別にしてでも、これを次の国会に出そうとただいま考えておるのであります。  ところで、それが非常に後退するかどうか、そういうところはまだ成案を得ておりませんから、いま申し上げかねます。理想的な案は、これは望ましいことには違いありませんけれども、しかし今日の状態で、やはり何らかの政治資金規正をしなければならない段階だ、かように私は思いますので、成立する案、そういうものをやはりつくらなければならないことだ、これが政治の現実の問題として、さような取り組み方をすべきじゃないだろうか、これは苦い経験、とにかく過去の苦い経験がございますので、この点をひとつ考えておるような次第でございます。
  260. 島上善五郎

    ○島上委員 言葉じりをとらえるわけではありませんけれども、勇断をもって実行する、大骨どころか小骨一本も抜きません、こうおっしゃった。私どもは、この前の案は、小骨から相当の中骨、大骨まで抜いた案だと思いますけれども、それをさらに後退させるということになれば、これはもういま言ったように背骨を抜くことになるのです。九五%も政治資金規正の意味がなくなってしまう。私どもは、国民の強い監視の中にある佐藤内閣の政治資金規正法に対する態度を、十分ひとつ総理考えてもらいたいと思う、そこで、この背骨を抜くことは私ども野党は断じて許しません。国民も許さないと思い、ます。  伺いますが、タクシー汚職事件等、いま質問された事件がありまして、政治資金規正の必要は一そう強まっておると思います。その必要が強まっており、かつ参議院選挙前にこの規正を実施する必要も強まっておる、私はそう考えますが、いかがでしょうか。
  261. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいま参議院選挙の前だとか、あるいはいまのタクシー事件が起きたから早まっている、こういうように、ぜひ必要だというようにも、必ずしもそれと結びつける必要はないんじゃないのか。政界の粛正、また政界が絶えず清らかであって、そうして政治不信を招かないようにという、これはもう国民からの政界に対する希望というか熱望、期待であります。これに、期待にこたえるということが、これはもういまの選挙だとかなんとかというような問題よりも、もっと第一に考うべきことである、私は国民の期待にこたえるということでありたい、かように思っております。
  262. 植木庚子郎

    植木委員長 島上君に申し上げますが、関連質問でございますから、簡単にお願いいたします。
  263. 島上善五郎

    ○島上委員 これ一つ……。この前の特別国会に提案した際に、ぜひこの国会で成立させる、こう言明されました。提案した以上はこの国会で成立させる、強い決意を持っている、そう言明されました。そうして、審議が自民党の反対によって怪しくなってきたしまいごろの段階では、何としてもこれはせめて継続審議にはしなければならぬ、こういう命令をいま大臣の、当時公職選挙法の理事をしておった赤澤君に命じられたはずです。ところがその両方ともだめになった。緊急に措置すべきということは二年、三年先のことではないと思うのです。これは沖繩の問題じゃないけれども、両三年光にめどをつけるといったようなゆうちょうな問題ではないと思う。今度の、この次の通常国会に提案するということは、この次の通常国会で成立させるということを前提としての提案だと私は善意に解釈しますが、そうであるかどうかということと、もう一つは、この次の国会に提案されましても——どもは今度の臨時国会に明日提案しますが——提案されましても、二月末か三月ころに提案したんでは、これはせいぜい継続審議が関の山です。早期に、年内にでも提案するというくらいの熱意がなければ、この次の国会で成立を期するといっても、ことばだけになってしまいます。その二点について御答弁をいただきたい。
  264. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、前国会におきましてできなかったことについてはたいへん残念に思っております。私また総理、総裁でありますだけに、ただいまのように責められましても、これはもうお返しすることばもない。さように私自身たいへん残念に思っております。しかし、いま申し上げますように、これらの苦い経験からも、今度は政治資金規正法案を出して、そうしてそれを成立を得る、かようなもとに案を練るのでございます。いまその案が一体何なのか、こう言っていろいろ聞かれますが、ただいま申し上げるような段階ではない、とにかく成立することを考えて案を提案いたします。かように申し上げております。また、それについてはできるだけ早く出さないと審議の期間がないぞという御注意までいただきましたが、これなどはありがたくちょうだいしておきます。
  265. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 誤解が誤解を呼んでおるような状態でございますので、私から一言、発言内容並びに立場について申し上げておきたいと思います。  事の起こりは、私が先般、四月ばかり前に与党代表の質疑をいたしまして、これが非常になまなましくて皆さんの御記憶にあるわけでございます。その中でいろいろ私が指摘いたしましたことは、決してこの政治資金規正法に反対ではない。ただ、島上さんも御承知のとおりに、私はやはり委員をいたしまして、同じことを一貫してこの委員会で述べてまいりましたけれども、しかしながら御採用にならなかった。政治資金を規制いたします上において、やはり別の角度からの考え方があるということを私はいまでも捨てておりません。そのことの一つに、いまの政党は規制せず——規制せずということは少し誇張されておりますが、私が委員会を通じて申し上げましたことは、確認された政党も派閥も個人も一緒くちゃにして規制するということはやっぱり正しくない。派閥、個人というものはまあしばらくはきびしく制限するけれども、将来はなくすべきものである。禁止するといえばことばは悪いが、こういう派閥や個人に対する献金などというものはあってはならぬものだ、しかも一面、確認された政党の場合は、もっと自由濶達にこの政治活動を行なえるような姿にするというのが正しいという認識を持っておったものですから、そのことが演説の際に少し強調された感はありますけれども、ただ、私はそうは考えておりますが、参議院で先ほど申し上げましたことも、よく速記録をごらん願いたいと思う。私は閣僚になりました。そのときに総理が言われましたことは、とにかく赤澤君、この問題だけは必ず形をつけなさいということでありました。ただそれに加えて総理が、君はいろんなことを発言して記録に残っているから気になるが、と言われたことも私記憶しております。  そこで、私はそういう立場でございまして、やはり言うまでもなく議院内閣制ですから、私見がございましても、まずそれは党にもはかりまして、与党にはかって、そうして御了承を得なければなりませんし、私見が押し通せるものではない。そういうことで現実を踏まえた形で、あるいはまた案ができますれば、さらに皆さんにお目にかけて十分御審議を願った上で成立をはかりたいというつもりがあるわけでございまして、私にしてみれば、単に提案すれば済むというわけのものではありませんので、やはりそれは最後決定して法律にならなければならぬという決意を持っておりますので、そのことを申し上げて、だんだん誤解もあるようでございますので、立場を申し上げた次第でございます。
  266. 畑和

    ○畑委員 いま自治大臣から島上さんに対する答弁があったのですが、赤澤さんはついこの間まで自民党の中の政治資金通ということで、選挙制度関係のほうの審議会の委員もしておりました。また、この前の政府案について一番熱心に反対というか、最後までやってこられた人なんです。その人が今度は大臣になった。藤枝さんが前には大臣だった。私の高等学校や大学の先輩であるからほめるわけではないけれども、藤枝さん、なかなかえらい苦労したと私は思う。同じ同僚の自民党の議員から相当つるし上げられた。それに比べて、今度は赤澤さんが大臣になって、逆に、いままで攻撃してきた急先鋒だ。それが急に変われるわけはないかもしれぬけれども、しかしそれでは困る。個人的見解というものを簡単に記者会見で、言うたる、その辺はまだいい、まだ許されるとして、しかしまた重ねてきょうの参議院の公選法の委員会でそれをはっきりさせた。しかもこの席でも、ちょうど同じようなことを言われておるんですよ。これは、これから先いろいろ党と協議しなければわからぬとは言いながら、個人的見解をはっきり出してしまえば、やはりそれが中心にならざるを得ないじゃないですか。やはりそれによって自治大臣の姿勢、政府の姿勢ということがわかる。あまりにもどうも前の藤枝大臣の場合とはっきり違う、百八十度私は違うと思う。政党への制限は全然なしにしろ、これは答申の案と全然違うし、かつまたこの間の政府案とも全然違う。それからさらに、個人の場合にこれはいかぬといっておるけれども、しかしあなたは、適当な実情に合うようにということを言っておる。その実情が大体おかしい。その実情ということがおかしい。そういう中で非常な後退を示しておる。だから、私は総理にも聞いたんだが、総理は、あなたをかばうような、そうでないような、また後退しているような、いないような、どうも感じではしておると私は思う。これでは許しませんよ。  そこで赤澤さん、その点先ほど私が言ったことを、あなたは一体基本的な考えはどういう考えを持っておるのですか。
  267. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 私は、政治の姿勢だとかあるいは政治のモラルを高めるということについては、人一倍きびしい考え方を持っておる一人と考えております。ただ個人的と申しますことは、さっき申しましたとおりに、事の起こりが、この間の国会での代表質問に端を発しているわけでございまして、それをいまも君はどう考えておるか、あれは全部うそでございますと言うわけにまいりませんから、やはりああいうことを私は胸に持っております。しかし、さっき申し上げましたとおりに、私の我意を通すわけではございませんので、やはり党にもはかり、皆さんの審議をわずらわしてこの法案をきめるわけでございますので、その点を御理解して、よろしくお願いいたします。
  268. 畑和

    ○畑委員 いまのはどうも……。前のあれは個人的見解でした、しかし、これからは大臣でありますから、党の全部の意向に従います、こういうような答弁のようでした。しかし、どうもそうとは受け取れないですね。これから先のあなたのやり方を見てみましょう。われわれ重大関心を持っておる。しかも、こうしたタクシー汚職があった時期ですから、さっき島上さんの言われたとおりであります。  それでは、以上をもって政治資金規正の問題についての質問を終わります。  続いて、時間がなくなりましたので、質問通告を出しておりましたところの国会周辺におけるデモ規制の問題、これについては簡単に一つだけ触れておきます。  あの国会周辺のデモの規制の問題は、ずっともうしばらくたな上げになっておりましたが、最近どうも自民党の内部でそうした動きがあるようであります。このことが新聞に報道されておる。その一つは、再三例の行政事件訴訟法によって、護憲連合あるいは総評のデモ禁止が裁判所の見解によって執行停止になりかけた、そうしたら総理がこれに対して異議を出したというようなことで、いろいろ世論がやかましくなった。それに関連して、いつまでこのままでは政府の負けになる、世論に対して負けになる、こういうようなことからでありましょう、そこで法律をつくろうというのが今度の企図だと思います。さらに、それに刺激されたというか、それをいい材料に使っておるのが今度の羽田事件の学生の暴走、こういうことが理由になって、この際ひとつ一九七〇年を目ざして国会周辺のデモを禁止しよう、表現の自由を奪おう、国会は聖域だ、こういうことでの企図だと思うのでありますが、この企図に対して、国家公安委員長である自治大臣はどういう考えを持っておられるか、簡単にそれだけ承って次に進みます。
  269. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 国家公安委員長としてその責任の立場にあるわけでございますが、私はやはりこの間のような羽田の事件みたいなことが始終起こることになりますと、やはり私たちは憂慮せざるを得ぬのでございまして、ただ国会は御案内のとおりに立法府でありまして、諸外国の例を見ましても、やはりこの周辺でたくさん無秩序な騒ぎがあるということはたいへん困る。ですから、規制してしかるべきものであると考えておりますが、しかし、いまのところ、私のほうで積極的に提案をするという考えはございません。
  270. 畑和

    ○畑委員 もう一つ、それじゃ同和対策だけ。どうしてもこれをやらぬとしかられますから、最後に、同和対策のことについて特に総理質問をいたしたい。  この同和問題の完全解決ということにつきましては、私はいままで総理の累次にわたる答弁、そういったものに対してわれわれは正直のところ満足をしております。ほかの政策ではだいぶわれわれは批判を持っておりますけれども、この点だけは敬意を表して今日までまいったところであります。同和対策審議会の重大な答申が一昨年の八月、政府の諮問として出さたれのでありますけれども、同答申の述べておるごとく「同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権」の問題だ。したがって、これを未解決のままで放置をすることは断じて許されないことであり、その早急な解決こそが国の責務であり、同時にまた国民的な課題でもある、かように答申でもいうておる。本答申の趣旨を尊重して、有効適切な施策を実施して、問題を抜本的に解決して、恥ずべき社会悪を払拭して、あるべからざる差別の長い歴史に一日も早く終止符を打つ、これが必要だと思う。  ところで総理は、本委員会におきまして、答申の急速かつ完全な実施をすることを積極的に答弁をこの前されております。そのとおり考え方に変わりないかどうか、この点承りたい。
  271. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 同和問題につきまして、私のほうの所管事項でございますので、お答えをいたします。  まず同和問題につきましては、ただいま御承知の協議会がございまして、全国基礎調査と、それから抜き取り精密調査、これをいたしておる次第でございまして、その協議会の答申を待ちまして善処いたしたい、かように考えております。
  272. 畑和

    ○畑委員 いま私は総理質問をしたのだがね。まず総理に再確認をしてもらいたい。その点で総理にお聞きしたい。
  273. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 特に担当大臣のほうがいいかと思って、担当大臣にお答えさしたのでございます。ただいまの田中大臣のお答えしたとおり私も考えております。
  274. 畑和

    ○畑委員 前に答弁されておるけれども、そのとおり同和対策について考えておられるかということです。
  275. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの審議会で、いろいろ基本的な調査をするようにということがきめられております。年内に大体それをきめる。そうしてその調査が終了しますと、その上で具体的な対策を立てよう、こういう状況でございます。それでただいま申し上げた。いわゆる基本法をつくれという話がございましたが、私もその当時、基本法は賛成しない。これは八木君にもよくお話ししたとおりでございます。いまの調査を終えて、そうして具体策を立てる、こういうような状況であります。これも来年はたいへん予算の面で苦しい状況でございますが、できるだけのことをしたい、かように考えております。
  276. 畑和

    ○畑委員 あとは八木一男君が関連をいたします。ひとつ……。
  277. 植木庚子郎

    植木委員長 八木一男君の関連質問を許します。八木君。
  278. 八木一男

    八木(一)委員 いまの問題に関連をしまして、内閣総理大臣や各大臣にできるだけ簡潔に、一生懸命に御質問をいたしたいと思います。  いま内閣総理大臣は、同和対策基本法と言われましたけれども、これはちょっと言い違いで、同和対策特別措置法の間違いではないかと思います。その意味でひとつお答えをいただきたいと思うのです。  実は同和対策全体について積極的な姿勢を示していただきまして、それについて各閣僚を督励しておられる点については私どもも敬意を表しておるわけであります。同和対策特別措置法について、実は昨年の二月の本会議で多賀谷真稔君の質問に対して、多賀谷君は昨年の二月中に出していただきたいという御質問をいたしましたところ、二月中という日にちを切ってのお約束はできないけれども、至急に出すという御答弁がありました。それから昨年の二月十七日の予算委員会総括質問で、私がその問題についてさらに詳しく御質問を申し上げましたところ、至急によいものを出すという御答弁があったわけであります。そこで、総理大臣はそのときに総務長官の安井さんを非常に督励をされました。そのことは正直に、私どもも知っておりますから、認めたいと思います。ところで、安井総務長官はその成案のためにかなり努力をせられました。努力をせられましたけれども、その間で各党の折衝をいたしておりますときに、与党のほうの一部の方に少し考え方か——気持ちは同じでございますが、少し解釈のしかたが違う方がございまして、その間の調整でひまどっておったわけであります。ひまどっておったところが、安井総務長官がその後ILOの問題と祝日法の問題で非常に忙しくなって、その問題がネックになりまして、昨年の国会では流れてしまったわけであります。それが流れました日に、この部屋で総理大臣が私のところに歩み寄ってこられまして、これが今度提出ができなかったことは非常に残念である、次期国会においては必ずよいものを出したいということを総理大臣からおっしゃっていただきました。それを期待を持って私どもは待っておりました。ところが、解散がありまして、特別国会になりました。いろんなことでおくれておりまして——総理大臣、御答弁のときにまた聞いていただきます。本年の四月の六日に御質問を申し上げまして、いろいろ前回のことを申し上げましたところ、総理大臣は至急に出したいという御答弁をいただきました。ただ、日限を何月何日と限れないけれども、私の要望に対しまして、この特別国会中に成立するように成案を十二分のものを出したいという御答弁をいただいたわけであります。速記録に載っておりますから、あとでお目にかけます。はっきりあるのです。別にそれをいま、返ったことをなじろうという気持らはありませんが、そういう御答弁をいただきました。そこで、塚原総務長官も相当努力をせられましてやってこられましたけれども、健康保険特例法の問題で非常に与野党の対立が激しくなりまして、その問題が原因となって特別国会でも流産になったわけであります。その後塚原総務長官に、団体の代表や私どもが二回、この臨時国会冒頭に提出をしていただきたいということを申し上げました。塚原総務長官は二回とも確約をされたわけであります。そういうことで今国会の冒頭に提出できなかったことについてはいろいろな理由もわかりますから、そのことを、返ったことを申し上げてもしようがないと思うのです。今度の通常国会の実質の冒頭におそくとも御提出をいただきたい。これは再三のお約束でございまして、総理大臣の善意と熱意を私は信じたいと思います。国民が待望をいたしておりますし、国会と政府との約束の問題でございますから、ぜひその点で、通常国会の実質再開の冒頭と譲歩をいたしますので、その点に御提出をいただくことをぜひこの予算委員会を通じて明らかにしていただきたいことと、それから一問一答さしていただきたいのですが、非常に時間を急いでおられますので、私申し上げたいことを一括して申し上げます。  その内容の問題であります。内容の問題については、この前の四月の六日の日に十二分に総理大臣はじめ各大臣に申し上げました。そこで、総理大臣は十分わかった、各閣僚もわかると思う、そのような実効のある法律をぜひ出すようにしたい、その問題で関係の当局を督励したいということを四月の六日におっしゃっていただいたわけであります。具体的に申し上げますと、非常に恥ずかしい気持ちもしますのですが、私の名前を名ざしをしていただきまして、君の意見を十分にいれて成案をつくりたいということを、この場でおっしゃっていただいたわけであります。そのことは、私を通じてそれを要望している国民の方々の意向をいれてという気持ちだと私は理解をいたしておりまするけれども、そういうことでぜひ私も、総務長官にも各関係者にも十二分の意見を申し上げたいと思いますので、私どもの意見をいれた形で、十二分に精神もはっきりし、国の責務をはっきりうたわれ、実効のある各条文、特に補助率、補助対象、それから実質単価あるいは特別交付税というような、実際に実効のあるものを入れたそのようなりっぱなものを、ぜひ通常国会再開冒頭にお出しをいただくように、国民が待望いたしておりますし、四百年の問題であり、明治以後百年の問題であり、政治の課題になってから十年間の問題でございますので、内閣の中で一番熱意を示しておられる総理大臣の強固な、熱心な御意思でぜひそれを、ほんとうに実現をしていただきますようにお願いをしたい。その点ではっきりとひとつ、前向きの御答弁要請をしたいと思います。
  279. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん私が安受け合いをしたようになりまして、この問題をいろいろそれぞれの党内の審議会等ではかってみますると、なかなか意見があるわけでございます。まあ、いまさら同和ということばでもないじゃないか、もっと適当なことばがないか、かようなことを言われますと、どうもさような気持ちも実は私もするのでございます。そういう点で話が、せっかく必要な部落対策ができないという、まことに私は残念に思うのです。したがいまして、こういう問題をとにかく前向きで、もっと前進して解決するように、ぜひとも私も努力したいと思います。八木君もひとつまた御協力願うようにして、そうしてりっぱな案をつくるようにいたしましょう。
  280. 八木一男

    八木(一)委員 いま、総理大臣の御答弁は、私の御質問申し上げましたことに、ことばのニュアンスがありますが、申し上げたとおりにやっていただけるということと私理解さしていただきたいと思います。もし間違っておりましたら、ひとつおっしゃっていただきたい。そのとおりにやっていただける、ひとつそのことだけ、一言お答えをいただきたいと思います。
  281. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 よくわかりましたので、よく話をして、そうしてりっぱな案をつくるようにいたしましょう。
  282. 植木庚子郎

    植木委員長 これにて畑君の質疑は終了いたしました。  明十三日は参議院本会議関係で、午前十時三十分より開会し、総括質疑を続行することといたします。本日は、これにて散会いたします。   午後七時三十六分散会