○佐々木良作君 私は、民社党を代表して、
総理の所信表明に対して、若干の質問を行なわんとするものであります。
まず、外交、防衛の問題、特に沖縄返還を中心とする先般の佐藤・ジョンソン
日米会談でありますが、質問に先立って御要望を申し上げたいと思います。
わが党は、先月末、日米共同声明にわき立っておる現地沖縄に対して、第四次調査団を派遣いたしました。この報告によりますれば、沖縄住民は、共同声明に対してはなはだしい不満を示しております。
総理の、両三年中に返還についてのめどがつくとの言明に対して、大きな疑いを持っているからだけではありません。むしろ会談に際して、
総理が沖縄住民の民族的意思を率直に
アメリカにぶつけてくれなかったのではなかろうかとの疑いからであります。ある意味では、沖縄返還についての成果よりは、むしろ成果はなくとも率直な主張をこそ望んでいたのであります。これを裏切られたふんまんが、いま全島を支配しておる住民の感情であります。
総理は、一昨年夏、沖縄を訪れられ、「沖縄の返還が実現しない限り
わが国の戦後は終わらない」と、感情を込めた名言を吐かれました。この気持ちがいまなお変わらないのでありまするならば、
総理は右の反省に立って、直ちに万障を繰り合わせて沖縄におもむかれ、沖縄に在住する日本同胞に対して、会談の真相をつぶさに説明され、かつ
総理みずからの決意を披瀝されて、沖縄住民の理解獲得につとめられ、同時にまた激励の労をとられるべきであると存じます。(
拍手)われわれでさえ難解な、一片の、どう読んでもよくわからないような、そのような共同声明をもって、遠い東京から、高圧的に自画自賛の成果を押しつけられるだけでは、決して沖縄住民の民意を獲得することはできません。
佐藤総理に沖縄訪問の勇気ありやいなや、私の願望を込めてお伺いをする次第であります。(
拍手)
沖縄返還についての質問に移ります。
総理はたびたび、確信に満ちて、沖縄返還が両三年のうちに日米の合意に達すべき旨の言明を行なわれました。しかるに、そのことは共同声明に明記されていないばかりでなく、米当局も十一月十五日の共同声明の説明に際して、これはあくまでも
佐藤総理の希望であると述べて、このことを否定いたしておるのでありますが、
佐藤総理の確信は何に基づくものであるのか、その根拠を
国民の前に明らかにしていただきたいと思うのであります。
これが質問の第一でありますが、しかしこの問題につきましては、昨日の勝間田氏の質問に対しまして、
総理は秘密協定説も否定され、共同声明の文句を適当につなぎ合わせて、これにこじつけ的解釈を付することによって答弁とされました。まことに牽強付会といわざるを得ません。しかし、私は重ねてお尋ねすることのむだを感ずるものでありますがゆえに、むしろ明確なる根拠を要求するかわりに、
佐藤総理が、ジョンソン氏との会談において探り得た沖縄返還のための条件と背景について、御所見の明確なる御披瀝をお願いいたしたいと存ずるのであります。いかなる条件と背景が整うならば沖縄の返還は実現されるものであるのか、明確な御説明をお願いいたしたいのであります。あわせて、その条件の充足は、両三年の間に行なわれることとなっておるのでありますから、その手順と方法を丁寧に御説明をいただきたいのであります。それは当然に、野党のみならず、
国民の理解と協力を得て初めてなし得るはずのものであると信ずるからであります。もし
佐藤総理が、この点をさえごまかして、納得のいく答弁を回避されるようでありまするならば、沖縄返還に関する
佐藤総理の言明は完全にでたらめであるか、あるいは民主主義者の資格を完全に放棄した権力主義者のらく印を押さざるを得ないと存ずるのであります。誠意ある御答弁をお願いいたします。(
拍手)
第二の質問は、沖縄返還に関する再交渉——再び交渉をすることが予定されておるかどうかということについてであります。共同声明は、御承知のように、沖縄がいつ返還されるかの時期についての日米合意をここ両三年のうちに達成するように
佐藤総理が強調されたのに対しまして、ジョンソン大統領は、その日本側の要望を理解したと述べたにとどまり、したがいまして、返還についての基本的合意は何ら行なわれておらないと解するものであります。そこで私の質問は、今後条件が熟したと考えられる時点において、今回の
日米会談と同程度か、あるいはそれに類するハイクラスの会談、交渉が行なわれて初めて返還が確定することになると思うのでありますが、そのような再交渉が予想されておるものかどうか、
お答えをいただきたいと思うのであります。
同時に、これと関連いたしまして、いわゆる沖縄の主席公選の問題と日本への国政参加の問題について、共同声明は一言も触れていないのでありますけれども、今回の
日米会談において話し合いが行なわれたのか、行なわれなかったのか、行なわれたとするならば、その内容について、行なわれなかったとするならば、なぜ行なわれなかったのか、その理由を明確にされたいと思うのであります。
さて、沖縄返還についての質問を終わるにあたりまして、私はあえて
総理に一言いたします。
沖縄、小笠原の返還交渉にあたって何ら取引や交換条件的約束のなかったことを
総理は繰り返し言明されました。当然のことだと存じます。沖縄、小笠原の返還要求は、北方領土のそれと同様に、
わが国の正当なる主張でありまして、これに対する反対給付的条件のあり得べからざる性格のものであるからであります。(
拍手)しかるに一部世人は、今回の返還交渉に際して、いわゆる安全保障の問題とともに、日本は
ドル防衛に対する協力という重大なる重荷を背負わされ、二重払いの高価な代償が約束せられたのではないかと疑っておるのであります。ドル問題については後ほど具体的にお伺いいたしまするが、このような疑いは、
佐藤総理の自画自賛的押しつけがましい態度にその根本の原因があることを強く反省されんことを望むものであります。(
拍手)
日米会談についての第二の質問は、今後の
わが国の外交防衛の進路と共同声明との関係についてであります。
共同声明によりますと、
総理は、第一に、北爆を含むジョンソン政権のベトナム
政策を支持し、第二に、中共問題に関して、その脅威を強調することによって、いかにも
アメリカの中共封じ込め
政策に同調するかのごとき態度を示され、そして第三に、一九七〇年の
重要課題でありますところの日米安保について、きわめて安易に無条件継続の方針を確認されたようであります。もしそうであるとしまするならば、
佐藤総理は、沖縄と日本本土との一体化をはかるための交渉にあたって、その前にまずジョンソン外交との日米一体化を先行せしめたことになります。そして。パートナーシップという美名のもとに、
わが国の自主独立たるべき外交路線をまたまた大きく向米一辺倒に傾斜せしめたことに相なります。(
拍手)まことに重大といわざるを得ません。
さらに
総理は、昨日の質問に答えられまして、自主防衛という立場を打ち出されました。私は、わが党の同志とともに、自主防衛というのは、第一に、防衛に対する
国民意思の合致、
政府だけではなくて、
国民意思の合致、第二に、平和的国際環境を積極的につくり出していくための平和外交の展開、そして第三には、純粋防衛たる専守防御、もっぱら守る立場の貫徹、以上三点がその根本でなければならぬと確信をいたしております。したがって、日米安保については、あくまでもこの自主防衛を補完するためのものとして位置づけられなければならないと存じます。(
拍手)
しかるに、
佐藤総理のいわゆる自主防衛論は、現行日米安保の存続を通じて、
アメリカの軍事力による日本防衛を考え、かつ
アメリカ防衛のための軍事力の一部肩がわりとして
わが国の防衛力を配置せんとする
構想のようでありまして、それは、まさに自主防衛をさかさまにした他力防衛、
アメリカ側に立つ米主防衛ともいうべき議論ではなかろうかと存じます。(
拍手)日米安保の無原則な継続は、明らかに自主防衛とは相矛盾するものであると信じます。自主防衛を口にし、国防に対する
国民の自覚を求められるのならば、
総理はまずその前に、日米安保を改定する方針をこそ明らかにさるべきであります。(
拍手)
総理の明確なる御答弁をお願いいたします。
さらに、第二の課題は、日本外交の任務、
わが国の安全と、アジアの平和建設に対する日本外交の使命についてであります。
今日のアジアの緊張が、米中の対立に根源を有することは、すでに周知の事実であります。安全保障の第一が、平和的国際環境の確立にあることにかんがみまするとき、日本の平和と安全の基礎は、この米中の対立を緩和し、その平和共存を一日も早く実現することでなければならないと信じます。(
拍手)その
出発点は、言うまでもなく、日本と中国、日中関係の改善であります。
佐藤総理が自主防衛を叫び、アジアの平和を唱えられるならば、
アメリカの中国
政策を全面的に支持される前に、日本としての自主的な日中関係改善策をまず打ち出されなければならぬと存じます。(
拍手)
佐藤総理にその決意ありやいなや、日中改善の方策を含めて、
総理の御所見を伺いたいと存じます。(
拍手)
この問題に対しまして、私は昨日の愛知質問が、まことに私と同様なる意味の内容を
総理に対して押しつけようとしたのに対しまして、まことにすれ違いの答弁を
総理はなされました。どうか、明確なる御答弁をお願いいたします。
次は、
経済問題であります。
核のかさのかわりにドルのかさのもとに、あまりにも深く、あまりにも巧妙に織り込まれまして、
日本経済はいまや完全に自主性を失い、あまつさえ、ドル転落の巻き添えを食わんとする状況に追い込まれております。私は、まず
わが国経済危機のポイントをこの点に強く指摘するものなのであります。かつて七つの海を支配したイギリスの
ポンドは、その
硬直化した政治支配層と、陳腐化した産業設備と、何よりもドルに縛られて、自主性と機動性を失ったがゆえに、ついに今日の悲劇を見るに至りました。自由国家群の国際金融市場が、いままでドルと
ポンドという二本の柱によってささえられておりましたことは申すに及びません。その一本の柱がいまやくずれ去らんといたしておるのであります。先般の
ポンド切り下げ以降も、なお動揺はなはだしき状態は、皆さんよく御承知のことだと存じます。その
ポンドをささえることのできなかったドル、ベトナムにおける力のエスカレーション
政策での
財政赤字百六十億ドル、
国際収支の赤字約二十億ドル、さらに加えて百四十億ドルにのぼる対外債務、こうした内部的な矛盾に悩み果てているドル、このドルには世界資本主義
経済のすべての矛盾と
アメリカ経済のすべての困難が集約されておると存ずるのであります。このドルのかさのもとに安逸をむさぼっておるもの、それが
日本経済であります。(
拍手)
まず、
佐藤総理にお尋ねをいたします。このドルに不安ありやいなや。
ポンド切り下げによって裸で防衛の第一線に立たしめられ、すでに第二次のドル売り金買いの白兵攻撃を受けておると伝えられておるこのドルに対して、絶対の信頼感を持ち続けられるやいなや、
宮澤経済企画庁長官の御所見をもあわせて承りたいと存じます。よもや不安なしと言い切れないと思うのでありますが、しからば、その不安に対していかなる対策を用意しておられるのか、具体的にその対策を含めて御説明願いたいのであります。大蔵大臣もぜひ御所見をお述べいただきたいと思います。
ポンド切り下げ直後、世界じゅうがドル不安におののいてこれを売ったとき、日本はこれを買ったのであります。世界がゴールドラッシュで、金を求めて狂奔いたしましたとき、日本は金への交換は自重するといって動きませんでした。さらに今度は、
アメリカに請わるるままに、数億ドルの
ドル防衛協力を約束せしめられようといたしております。これは一体深刻なるドル不安に対する基本認識を持たなかったためなのでありましょうか。それとも、ドルと生死をともにせんとする自己喪失の
日本経済必然の姿なのでありましょうか。しからざれば、わずか三億ドルの金をもって、世界第三位の
日本経済の物的基礎は守り得るとでも認識されておるのでありましょうか、とくと承りたいのであります。
ドイツの金保有は四十二億ドルです。フランスは実に五十二億ドルです。イタリアでも二十四億ドルです。しかるに、金を持たず、ドルに全面依存してきたのが、
わが国の外貨準備の実態であります。しかも、それはそのまま対米追随、自主性を持たざる
自民党政治の姿であるといわざるを得ません。(
拍手)もし、私の言ったことが言い過ぎであるとお考えになりますならば、どうか
佐藤総理、その具体的な事情を含めて、十分にひとつ御反駁をお願いいたしたいと存じます。しかしながら、私はこの段階において、ツー・レートな、おそ過ぎる金購入を要求するものではありません、もう買えませんから。また、
ドル防衛への協力を決して否定しようとするものでもありません。ただ、ドル一辺倒
政策に関する過去を率直に反省され、冷静に現状を認識されんことを切望するものなのであります。(
拍手)
今回の
ポンド切り下げは、何よりも輸出を困難化いたします。資本取引の動向も注目を要します。かくして、本年の
わが国の
国際収支は、当初の均衡
見通しを大幅に変更せしめて、ついに
政府においても、五億九千万ドルの赤字を予想せざるを得ない状態と相なりました。来年の状態の困難さは、いまも
経済企画庁長官がつけ加えられたとおりであります。
わが国の外貨準備は約二十億ドル弱、このうち、自由に使えるドルは五、六億ドル程度でありまするとか、もしそうであるとしまするならば、この赤字は外貨準備の危険ラインに明らかに食い込んでくることに相なります。ドル協力等の形で、国際協力の名において、伝えられておりまするところのスワップ協定の
拡大は、こういう場合には確かに
わが国の側の一つの救済の手段となり得ましょう。しかしながら、中期債券の
引き受けは、逆に
わが国の外貨をそれだけ固定化するものでありますことは、御案内のとおりであります。
いずれにいたしましても、
ドル防衛への協力は政治論だけではなくて、
経済問題なのであります。このような
わが国の
国際収支と外貨準備の現状において、
わが国の
経済を危険ならしめずして、
ドル防衛に何ほどの効果的協力がなし得るというのでありましょうか。私があえて警告いたしたいところのものは、安易にドル協力を口にすることによって、
わが国経済の自立への努力を放てきせんとする危険なる態度についてであります。
ドル防衛もさることながら、いまやむしろ、円の価値の実質的確保とその流通に対して特殊の考慮をなすべき段階ではありますまいか。
総理並びに、特に宮澤企画庁長官、さらに大蔵大臣の御答弁をお願いいたしたいと存じます。(
拍手)
私は第二に、計画性を持たない
日本経済の特徴的矛盾を指摘いたしまして、同町にまた、
経済政策に対する政治
責任の問題についてお伺いいたしたいと存じます。
先ほどの平林君もまさに触れたところであります。それは、いわゆる
財政硬直化の問題を生んだものでありまするし、自主性喪失の問題と一緒になりまして、いよいよ
日本経済の危機的様相を深めつつあると考えるからであります。確かに、敗戦直後は、高度に成長することこそが、
経済安定のかぎでありました。しかし、いまや安定と福祉こそが
経済成長のかぎであると存じます。しかるに、歴代
自民党内閣は、無原則なる成長一本やりの
政策をとり、
財政またこれを主導し続けてまいりました。
昭和三十年以降年平均一〇%という高度成長は、
日本経済の体質の中に
物価上昇と
インフレの慢性化を定着いたさせました。同時に、
圧力団体に屈し、
予算ぶんどりに狂奔した党利党略の安易な
自民党の
財政運営の態度が、
財政膨張を慢性化いたしたのであります。(
拍手)昨日の愛知質問は、この点を逆に
自民党の自画自賛にすりかえようとしたようでありますけれども、
水田大蔵大臣自身、
財政演説におきまして、その非を認め、これが改善を訴えられておるのが今回の実態なのであります。愛知君のあげられました
自民党政権の功績の一つ一つが、そのまま
水田大蔵大臣が指摘されるところの
財政硬直化の原因であります。そしてそれはそのまま、歴代
自民党内閣の失政を物語る以外の何ものでもありません。(
拍手)
公債八千億を含む今年度の大型
予算編成のとがめは、直ちに九月、引き締め措置の必要となってあらわれました。その浸透効果のいまだ不十分にして、
国際収支の悪化現象に悩んでおりまするときに、突如として今回の
ポンド切り下げとドル不安が訪れたのであります。備えを怠り、
見通しを誤り、
日本経済を最大の困難におとしいれようといたしております。この
責任は一体だれが負うべきものでありましょうか。すべてが不可抗力として、政治に
責任なしとでも言われるのでありましょうか。かつて、政友、民政などの保守政党間で政権が争われていた当時、引き締めと膨張、均衡と
拡大は、政権の運命をかけて争われた
経済政策の根幹でありましたことを
総理は十分に想起されながら、明確なる御所見を承りたいと存じます。(
拍手)
経済質問の結論に入ります。
公定歩合の再
引き上げを含む引き締め強化と、
中小企業の倒産新記録、
ポンド切り下げと相次ぐ動揺、フランスの金ドル戦争の強行とドル不安、さらに資本自由化と
特恵関税のあらし、一連の
経済環境はまことに史上空前のきびしさであります。しかも、国内的には、こうした国際
経済の激変と新たな潮流に対処しまするため、産業、
企業の国際競争力の増強と、いまだ前時代の中にありまする
中小企業、農業の近代化が強く強く要請されております。(
拍手)他方、とどまるところを知らない高
物価の抑制は、まさに急務であります。異常なる決意と、強力なる施策のみが、この難関を突破し得るものであります。
私は、昨日の——また引き合いに出して恐縮でございますけれども、昨日の愛知質問中、
経済問題に対する質疑応答を通じて、
佐藤内閣及び
自民党のこの問題に対する取り組み方の安易さに、むしろ驚きをさえ感じておるのであります。(
拍手)
佐藤内閣の事態認識に欠くるところなきや、
宮澤長官に対し、あとになって悔いを残すことのない答弁を要求いたしますると同時に、
佐藤総理に難関突破の覚悟ありや、その決意のほどを承りたいのであります。
同時に、私は、わが民社党を代表し、現下の
経済危機突破、自主
経済建設への当面の緊急施策といたしまして、次の八大項目を提案し、
責任ある野党としての責めを果たさんとするものであります。
佐藤総理並びに
関係閣僚のこれに対する
責任ある御所見を承りたいと存じます。
第一に、海外市場
拡大方策の一つといたしまして、豪州、ニュージーランド、東南アジアの諸地域を包含するアジア太平洋貿易市場の飛躍的
拡大を提案いたします。これによって、対米
依存度の高い
わが国の
貿易構造そのものの変革をも期待いたしておるのであります。
第二に、
わが国の
景気変動を左右しておる大
企業の
設備投資と原材料輸入についての計画化を提案いたします。輸入量の行き過ぎの調整を兼ねて、産業資金の投資そのものについての直接的な計画化をはかるため、官民合同の強力なる機関として資金計画委員会とも称すべきものを設置され、その
構想を進められんことを望むものであります。(
拍手)かくして、いまこそ
経済の計画化へ大幅なる一歩を踏み出すべきであると存じます。ただ、先ほどの平林君への答弁を拝聴いたしますと、
総理の周辺におきましては、計画
経済、
統制経済という戦時中のみずから行なった実績だけが頭の中にありまして、官民合同の計画性ある
経済の目標に対しては、何と私は遠いのかという感を持ったのであります。
総理、御承知の、ドイツに行ってごらんになりますと、ドイツの、
経済のいまの難関を切り抜けますと同時に、新しい技術革新に対する取り組み方、格別私の専門でありまするところの原子力等の取り組み方に対しまして、まさに完全に官民一体の状態を呈しておるわけであります。どうかその辺も十分参考にしていただきたいと思います。
第三は、資金計画委員会の設置と並行いたしまして、この委員会の企画を実施に移していく実行機関として、重要産業と金融機関の双方が国の計画に沿った活動を展開いたしまするように、重要産業基本法とも称すべき産業と、これに対する金融のあり方についての新しい秩序づくりが当然に必要であります。
第四に、
政府は積年の病弊を一掃し、
財政の弾力性を回復するため、国の歳出
予算の一割天引きを断行すべきであると思うのでありまするが、どうか。
政府各省、地方公共団体、公社、公団、公庫はいずれも謙虚に既定経費を洗い直し、行政能率、行政の生産性の向上を実現すべきであります。数度にわたる言明に従って、
佐藤総理は臨時行政調査会の答申を実施に移すべきであります。一省一局の形式的整理など、まさに欺瞞というべきであります。
第五に、税制改革の断行であります。それは勤労者標準世帯年収百万円までの免税を目標とする大衆減税と、さらに、高額所得並びに高率収益に対する累進課税の強化とを中心とするものでありましょう。
第六は、大幅な国債の減額であります。かって福田大蔵大臣時代に、フィスカルポリシーの手段として創設された
国債発行は、先ほども指摘されましたように、二年目からは実質的な
赤字公債と化し、いまや
わが国の
財政はこれに安易に寄りかかっております。このような放漫
財政からの脱却は、さきに提案した歳出
予算の一割天引きと並んで、
財政硬直化対策として絶対に不可欠のものだと信じます。
第七は、当面の
物価抑制の焦点を、一切の
公共料金の
値上げストップに置くよう提案いたします。これと並行して、この際、はなはだしく立ちおくれておる流通機構の抜本的改革を断行し、同時に、大
企業製品など、いわゆる
管理価格、再販価格等についての公取委員会の監督機能を飛躍的に強化すべきであります。
そして、最後に、第八に福祉
政策の最重点
政策として、住宅建設を取りあげ、これを今後の
経済拡大の基本
政策とするよう提案いたします。(
拍手)住宅の大量建設と、これに基づく勤労者の
消費購買力の増大とを、今後の最も安定した新しい国内需要の二大支柱とすべきであると確信するからであります。
以上、私は、現下緊急の外交、防衛並びに
経済問題につきまして、特に代案を提示しながら
政府の見解をただしたのでありまするが、最後に、佐藤
自民党内閣の政治の姿勢について一言いたしたいと存じます。
近年、政治、
経済、外交の
重要課題は申すに及ばず、
国民生活のすみずみに至りまするまで、政治のウエートはますます高まるばかりでございます。しかるに、これに反比例して、
国民の政治への関心はますます遠く、ますます薄く、離れいくばかりであります。まことに憂うべき現象といわざるを得ません。(
拍手)
その原因は何か。一言にしてこれを言えば、政治への不信であります。為政者並びに政治への
国民の不信は、いまや日本政治にとって最大の問題であります。政治をする者の側の、上からの押しつけ的態度、対話なき
国民への権力的姿勢こそ、
国民不満、
政治不信の第一の原因かと考えます。事態が困難になればなるほど、
国民との対話は一そう多く、一そうきめこまかくならなければならぬものかと存じます。転換期に差しかかっておりまするいまの防衛論議のごとき、まことにその最たるもの、いささかも権力的、独善的態度があっては相ならぬと信じます。
総理みずから、その反省の先頭に立たれんことを強く強く要望いたします。
政治不信の原因の第二は、政治腐敗に対する
国民の不満であります。昨年の黒い霧事件以来、とみに高まってまいりました政治腐敗に対する
国民の憤りは、政治に対する期待を失わしめ、
政治不信の最大の原因となっておるばかりでなく、法秩序の尊厳をすら否定する、おそるべき傾向を生み出しつつあります。(
拍手)失礼ながら、多言不実行とは、
佐藤総理に対する一部世人の痛烈なる批判でございます。
総理みずから政界粛正の陣頭に立ち、
政治不信に対する世論に対して、身をもってこたえられんことを切望するものであります。
この際、せめて、後退を伝えられておりまするところの政治資金規正法に対する
総理自身の明確なる態度表明を要求いたしまして、質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕