○愛知揆一君 私は、自由民主党を代表して、
佐藤内閣総理大臣の
所信表明と、水田大蔵大臣の
演説につきまして、特に重要と思われる数点につきまして
質問を行ないたいと思います。(
拍手)
佐藤総理大臣が先般来数回にわたって、隣邦大韓民国、中華民国をはじめ
東南アジア、大洋州等に及ぶ十数カ国を
歴訪され、最後に
米国を訪問して、多大の成果をあげられ、とりわけ
ジョンソン大統領との間の最高
会談において、
沖縄、
小笠原問題につき、いわば体当たりの
努力を傾けられましたことは、私は深甚な敬意を表するものであります。(
拍手)
沖縄、
小笠原の
返還問題につきまして、
総理は
所信表明の中でいろいろと説明されておりますが、私は、以下
質問申し上げ、
総理からさらに詳細に、そして率直に御答弁をお聞かせ願い、この議場を通じて、
国民をあげて、この問題の今後の進め方についての心がまえを、建設的につくり上げるようにいたしたいと存じます。(
拍手)
戦後二十二年にわたって異
民族の統治下に置かれた
沖縄、
小笠原の状態はまことに不自然であり、そのすみやかな
返還を求めることは、これら同胞の悲願であり、
日本本土全
国民をあげての熱願でありまして、最近においてその願いは頂点に達しました。これは、戦後国力の充実に伴う
わが国の
民族的自覚の表現とも申すべきであって、
佐藤総理が、「
沖縄の
返還なくして戦後は終わらない」と言われたことは、
国民の胸を打つものでありました。それだけに、今回の
訪米に全
国民の
期待がかかっておったことは申すまでもありません。と同時に、
沖縄を含む
わが国の独立と安全を
確保し、これを
維持することは、一国の存立の基礎条件であります。
わが国は、戦後今日に至るまでの間、
世界のどこかでいつも
戦争が行なわれ、また
戦争の恐怖に
現実にさらされていたのに反して、
わが国のみひとり平和であり得た。その最大の基盤が
日米安保条約にあったことは何人も否定できない事実だと思いますが、それは、いかなる種類の攻撃に対しても
わが国を
防衛するという
アメリカの異常な
決意と
約束によって、
戦争勃発の危機を抑止する作用が十分に発揮されているからであり、その
体制下において
沖縄が占めてきた地位を思うとき、
沖縄の
返還と関連して、国の平和と安全を
確保していかなければならないということを、真剣に考えなければならないと存ずるのであります。(
拍手)
沖縄の
返還と
安全保障、この二つを二律背反として取り上げる向きもありますが、私は、そのようには考えません。安全を
確保しつつ
沖縄の主権を取り戻す、この調和をはかることは本来きわめてむずかしいことではおりますけれども、その間の調整をはかって、二つの大きな目的を全うしなければならない、それこそは、
日米両国の心からの
相互信頼と理解によってのみ可能になし得るのであります。(
拍手)その
ゆえに、これこそは
日米の最高
会談でなければ解決を
期待することはできなかったのであります。
かくして、まず
小笠原の
返還が決定せられました。平和時における領土問題の解決、
世界史にも例のない近来の快挙であります。(
拍手)喜びにたえません。そして、
沖縄については、施政権を
返還するとの方針のもとに、その地位について、共同かつ継続的な検討を行なうことの
合意が成立いたしたのであります。
共同声明において、両三年内に
返還の時期に
合意ができるようにとの
総理の強い願望が、
大統領において
十分理解され、かつ、考慮されることが
約束されたのであります。
佐藤総理は、その願望が
合意に達し得るものとの
確信を、本議場において、ただいまも披瀝せられておるのであります。かくして、快挙第二号のスタートは切られたのであります。
私は、ここで、
総理大臣にまず伺いたいのは、
返還と安全の問題に関してであります。
一部の論議において、
沖縄の
領土返還と
防衛問題とは次元の違う問題であるとして、即時無条件
返還を
主張する向きがあります。すでに
日米共同声明で基本線が確定した以上、このような論議に一顧も与える必要はないとは考えまするものの、従来から本土において一部に唱えられておる安保廃棄、無防備中立論を、
沖縄返還の
国民的願望の上に利用して、本土におけるこうした論争を
沖縄問題を舞台として展開しようとし、あるいは、少なくとも結果においてこの論議を
沖縄に結びつけることになる危険性を、私はここに指摘したいのであります。(
拍手)
日米安保条約は、すでに実績においてその効果を十分に発揮しておることは、
国民の大多数が承認しておるところであり、また、今回の
共同声明においても、明らかにその堅持が
約束されております。いま
沖縄の
返還問題に際して、またしても、かつての安保論争を再び蒸し返すことは、せっかくの
沖縄返還の時期をはるかかなたへ押しやる結果になり、
返還に逆行する。そして、
沖縄の平和と安全もそこなわれるおそれがあるということを、私は、賢明な
沖縄の同胞の方々にも訴えたいのであります。(
拍手)
そもそも、私は、
アメリカを敵とし、
沖縄は対米闘争によって奪い返すべきものであるとか、
アメリカの占有の
根拠である平和条約第三条は空文であるというような発想や
態度はとるべきでないとかねがね
主張しておったのであります。また、
社会党の
質疑にありますがごとく、いわゆるすりかえ論、たとえば
小笠原の
返還で、
沖縄問題は将来に
引き延ばしたというようなことは、断じてあり得ないと考えておりまするし、これは
共同声明に、
施政権返還を前提として、本土との一体化を促進するため、那覇に
日米琉諮問委員会を設置することになっておることを見ましても、なお一そう明らかであると信ずるのであります。
こうしたすりかえ論、さらにまた、
総理が
アメリカに対し何らかの代償を支払ったとか、取引をしたとか、
秘密協定があるはずだというようなことを、ことさらにせんさくする向きがありますが、この点も念のため、私はそのしからざることを、いま一度
総理から明確にしておいていただきたいと存じます。(
拍手)
そうした観念論やあげ足とりではなく、実質的なことはほかにあります。思うに、私は、今回の
会談で明らかになった最も重要な点は、
アメリカ側の意向が、
沖縄に対して領土的な野心のごときことは全く持っていないこと、
日本及び
沖縄を含む
極東の
安全保障に、従来にも増してかたい
決意を有するが、
沖縄の施政権保持をその絶対的要件とは考えていないこと、ただ、
沖縄の地位が重要であるので、
返還に際しては、将来とも安全の目的が十分に達成できるように、あるいは
アメリカ側が
軍事的行動等の自由を持ち、あるいは
日本側の積極的
協力によってその目的が達成され、あるいはその目的が阻害されないような方法、
日米双方が安心できる、そして可能な方法を共同で検討しようということが基本であることが、浮き彫りにされているということがきわめて大切なことでございます。(
拍手)この点は基本的な問題でございますから、特に
総理の御
意見を伺いたいと思いまするが、私はそうした
考え方を前提にして、以下
質問を続けたいと思います。
私は、
沖縄の
返還問題は、まず当面、この
共同声明にあらわれたことが着実に、このまますなおに、かつすみやかに、そして具体的に実現されることをひたすらにこいねがい、進めてまいりたいと思います。しこうして、
返還の最終的な方式、たとえば
基地問題の取り扱い方、核の問題等については、時間的な要素、科学技術の進歩、
国際情勢の変化等、いろいろの要素を将来に考えながら対処すべきものであって、早計に断定的な
考え方を固定化することは当を得ないと思うのでありますが、この点について
総理はいかがお考えでありましょうか。(
拍手)
他面、
国民全体が、この際、心を新たにして、祖国の安全と平和を確立するため、みずから、いかに対処すべきであるか、真剣に取り上げるべき時期はまさに来たと思うのでありまして、
防衛問題をタブーとせずに、論議が展開されることが望ましいと思うのであります。(
拍手)
総理が、さきの
記者会見において、
国民が
防衛についての
考え方が固まってくれば、
沖縄は三年ならずして
返還されるであろうという趣旨のことを言われたのも、こうした気持ちがおありになったからではないかと想像されますが、このような点、すなわち、
返還と安全に関する
総理大臣の基本的な御見解をこの際明らかにしていただきたいと存ずる次第であります。
次に、
沖縄返還をめぐる具体的問題について伺いたいと思います。
この点は、細部にわたるところは、
総理から基本的なお
考え方を伺うことでけっこうでございますが、まず
沖縄の地位について、
日米両国間で共同かつ継続的な検討を進めていくことになったことは、まことに喜ばしいことでありますが、このための特別の協議機関が設けられればさらに上々の首尾であったと思いますが、これが設けられなかった理由は何でありましょうか。また、設けられないのでありますれば、これらは
外交チャンネルで行なうこととなると思いますが、その検討はいつから開始せられますか。また、その検討の内容は、いかなる事項になりましょうか。この
返還の問題について、施政権の問題に関するあらゆる事項ということになりますると、
返還の時期、
わが国を含む
極東の
安全保障との関連のある事項、
沖縄にある
米軍施設区域の整理、行政、財政の本土との一本化、財政、
経済の
援助、司法、人権、裁判権の問題、布告、布令撤廃の問題、本土との人事交流、
日本国籍の公務員の採用、渡航の自由化、通貨問題、そして主席公選国政参加等を含むものと思うのでありますが、私は、これら広範にわたる問題が順序よく解決されることを、心から望むものであります。
次に、
日米琉三者の諮問委員会は直ちに設けられるものと理解いたしますが、これは
沖縄同胞の復帰にいわば復帰ショックを与えることなく、安心して復帰できるようにとのかねてのわれわれの願いが具現するもので、けっこうなことでございますが、その性格が
共同声明によりますと、
沖縄同胞の
経済的及び社会的障壁を除去する勧告を
アメリカの高等弁務官に対して行なう諮問機関となっておるのであります。これは
日本側が
沖縄の行政そのものの中に入り込んで、その施政に直接
日本側の
考え方を生かしていき得る仕組みになるのでありましょうか、念を押しておきたいと思うのであります。
なお、この諮問委員会と従来の
日米協議委員会との
関係、あるいはわがほうの南連事務所の機能拡大との関連はいかがになるのでありましょうか。
ここに、私が重大であると思いますのは、通貨の問題でございます。現に
沖縄で使用せられておるドルが円に切りかえられますのには慎重な事前準備が必要でありますが、その実現は非常に望まれる大切な問題であります。どのように検討、措置されるのでありましょうか、お伺いをいたします。
次に、
小笠原についてであります。二十有余年にわたり帰島を待ちわびていた島民の喜びはいかばかりかと察するにつけ、
小笠原の
開発、復興についての具体的な施策について、すみやかに詳細を明らかにすべきであると存じます。
ところで、
総理はこの地域の
防衛の
責任を徐々に
引き受けると述べておられますが、この地域とは
小笠原諸島及びその領海のみをさすのか、あるいは
小笠原周辺の太平洋水域をもさすのでありましょうか。また、これら領域の
防衛について安保条約を前提としてどのような措置が考えられるのでありましょうか。さらにまたこれらに関連いたしまして、
わが国の自主
防衛体制の整備について積極的な御構想をお持ちならば、お聞かせいただきたいと存ずるのであります。
さて、私は、今回の
日米共同声明で取り上げられておる幾つかの重要問題について御所見を伺いたいと存じます。
その第一は、
ベトナム問題であります。そもそも、
ベトナム問題については、そのよってきたった経緯にことさら目をおおい、
アメリカが侵略者であるという一方的な断定のもとに、
アメリカに対してだけ片務的に
責任と
義務を負わせようとする発想は、私のとらざるところであります。(
拍手)また、現に戦闘
行為が起こっておる以上、
北爆の停止を求めるためには、相手方のこれに対応した措置が必要であって、
戦争に不介入の
態度をとりつつ、仲介者たらんとしてきたわが
佐藤総理大臣としては、当然、かつ、堂々たる
立場をここに明らかにしたものであると思いますが、これに対する
総理の御所見をあらためて明確にしていただきたいと存じます。同時に、和平の探求につきましては、いかなる措置をとられつつありますか、また見通しはいかがでありますか、あわせてお尋ねをいたします。
第二は、
中共の問題であります。この問題についての今回の声明を一九五五年のそれと対比して見る場合、そこには大きな違いを見出すのであります。前回のそれは、
総理と
大統領はそれぞれの対
中共観を披瀝し合って、いわば一方通行でありました。今回のそれは、
中共が
核兵器の
開発を進めている事実に着目して、
アジア諸国がこうした
脅威に影響されないような環境をつくることが重要であるということに
意見が一致しているのでありますが、同時に、
アジアにおける持続的な平和確立の見地からすれば、
中共が非妥協的
態度を捨てて、
国際社会において共存共栄をはかるに至るようにとの希望を両者が
合意しておるのであります。いわゆる封じ込め、敵視政策、いわんや
軍事協力の
約束に巻き込まれたなどというのは、錯覚もはなはだしいと思います。(
拍手)むしろ、今回の場合は、
わが国の
中共観に
アメリカが同調したと私は理解したいのでありますが、
総理の率直な御見解を承りたいのであります。(
拍手)また、政経分離の
原則に基づく
中共との民間ベースの貿易についての
総理の御方針を承りたいのであります。
その三として、私が特に強調したいのは、今回の
共同声明において、
佐藤総理が、発展途上の国、後進地域の民衆の安定が
アジアの平和のために一番大切であること、そのため特に東南
アジア諸国に対する
経済援助を
強化する必要を説き、
アメリカの一そうの
協力を得ることで
大統領の同意を取りつけていることであります。これは、
佐藤総理の就任以来力説されている
平和共存外交の精神の発露でありまして、高く評価さるべきことであります。これらの点について、新たに実施される
援助計画があれば、そのおおよその見通しが承りたいのであります。
共同声明は、核の拡散防止条約の
早期締結にも触れております。
わが国が核の拡散防止の構想そのものについてこれを支持することは当然でありますが、同時に、
わが国が核を持たざる国である
立場から、原子力の平和利用等については将来とも障害がないよう、公正なものにすることを
主張すべき
立場にありますが、その点も十分に認められる見通しができたものであろうと私は理解いたしております。
ここに私は一言いたしたいのでありますが、実は私は、核については、日ごろかように思っております。いまの
わが国の力をもってすれば、
核武装はやろうと思えばやれる国である。いわゆる持とうと思えば持てる国、グッド・ハブ・カントリーズの中でも最も有力な国の一つにあげられているのであります。かりに
核武装の
開発をするということになれば、
わが国の
国際的
発言力はきわめて強いものにもなりましょう。こうしたことは、知ってはおるけれども、
核武装だけはやるまいねと、われとわが身に言い聞かしておる、誓っているというのが、
わが国民の感情ではないであろうか、私はこういうふうに考えております。(
拍手)
総理のお考えも、このようなところにあるのではなかろうかと推測いたしますが、率直な御
意見を伺いたいものであります。
さて、領土の問題といえば、北方領土の問題は、ソ連側は全く理不尽な
態度に終始しておるものでありまして、
沖縄、
小笠原問題とは性質の異なるものであります。
政府としては、この際、さらに一そう強力な
態度をもってその
返還実現に当たるべきであると思いますが、
総理の御
決意のほどを承りたいと存じます。(
拍手)
さて、近時
わが国の財政は、
昭和三十年代と異なる幾つかの重要な基調の変化に直面しております。
政府は、すでにこうした転換期に備えて、公債発行予定額の減額、公定歩合の
引き上げ、公共事業費の繰り延べ等、適切な対応策を行なってまいりましたが、いまだに本年度
国民総生産は実質一二%増と見通され、行き過ぎと思われるところへ、ポンド切り下げ、
各国の金利
引き上げ、その他の海外
要因はますますきびしくなってまいったのであります。あえて財政硬直というまでもなく、総合的な転換策が望まれるのであります。
私は、本来、公債発行を伴う財政政策は、景気調節がやりやすい政策のはずであり、特に公債というものは、民間と公共部門との資金源の適正な配分を可能とする潤滑油でもあるので、財政政策は、特に民間との協調を保って推進するところに、重点と妙味があると思うのであります。換言すれば、今日のような転換期には、財政の側からも、一般
経済社会への要請があってしかるべきではないかと思うのであります。もしそれ、民間の投資需要が、今年度のごとく、六兆二千億の見通しをはるかにこえる七兆一千五百億にもなる場合、設備投資拡張はそのままで、財政のみがきびしい自己批判に悩むのも、いささか受け取れない気もするのでありますが、(
拍手)この場合、
経済、産業、金融あるいは所得等の各政策を総合し、また、ややもすれば行き過ぎがちな企業マインドとの
相互協調
体制が、一段とうまく総合的に整えられぬものでありましょうか。
総理の御指導のもとに、全閣僚の格段の御
努力をわずらわしたいところであります。私は、各界の権威者をもって、利益代表の
立場を離れた最高の総合
経済政策の審議の機構をつくるのも一案と思われますが、いかがでありましょうか。
かくして、
国際収支の
改善と物価安定に全力を傾けることとし、輸出の増進に拍車をかけ、財政の膨張を押え、公債の発行を削減するとともに、設備投資の大幅な増加を避け、賃金と物価の上昇の悪循環を断ち切ることを政策の支柱とすべきものと思うのであります。しこうして、これら設備投資の抑制、消費、外貨、その他公共料金、地価、再販売価格制度をいかにするか等、個々の具体的な問題につきまして、もし御
意見が熟しておれば承りたいのであります。
そうして四十三年度の成長率はいかにするか、物価をどの程度に押えるか、
国際収支をいかにするか、これらの点をお伺いいたしたいのでありますが、もう一つ重要な点は、財政硬直化の一大
要因となっておる年度途中の給与
引き上げや米価の決定について、根本的な
改善をする御
決意があるかどうか。四十三年度予算については、あらかじめ予測し得る要素をすべて織り込んで、補正を前提としないいわゆるのみ込み予算の編成をされる
決意を固められたかどうかという点をお伺いできればしあわせであります。
私は、過般のポンド切り下げを見ましても、その近因はいろいろあげられますが、そのよって来たるところは遠く、広く、かつ深い。企業家が技術革新や近代化を怠り、自由競争をとかく軽視して、輸出不振を激化し、一方、労働者は、生産性を上回る賃上げを要求して、社会福祉政策にたより過ぎ、勤労意欲を欠くうらみがあったことに思いをいたさなければならないと思います。(
拍手)また、西ドイツの財政硬直化がその崩壊に至る過程を見ると、労働需給の逼迫から、超完全雇用となり、勤勉なドイツ人が働く意欲を減殺し、「金と財産とよい暮らし」という人生観が財政に重圧をかけ、物価騰貴、
国際収支の悪化をもたらしたものであることを、私は他山の石といたしたいと思うのであります。(
拍手)いまこそ
わが国においては、英国の例にならわぬためには、円価値の
維持に
努力し、西独の轍を踏まぬためには、財政の弾力性の回復につとめ、ころばぬ先のつえを用意する必要があると思うのであります。あえて
政府の
決意のほどをあらためて伺いたいのであります。
私は、さらに、
国際経済の変動と先行きに重大な関心を持たざるを得ないのであります。私は、かねがね、ポンドが切り下げられればドルも弱くなると見ておりましたが、はたして
世界市場で金の相場は上昇いたしました。これに対して、いま金の価格を
引き上げることは、
各国の物価問題から見ても、通貨準備をふやす方法としても、
世界的に賢明な策とは思われません。私は、
国際通貨問題については、
国際的な舞台において、
ドル防衛と新準備資産の創設などを通じての
国際通貨の安定に、
わが国は積極的、
全面的に
協力することが必要であると思うのであります。一方、
各国の金利
引き上げ競争を抑止すること等について、
日本はあらゆる
努力を傾けるべきであると思うのでございます。
これに関連し、今回の
共同声明で、
国際収支関係の小委員会を設置することが
合意されました
関係から、たまたま十二月一日、
日本銀行と連邦準備銀行とのスワップ取りきめが拡大されたことを結びつけ、ドル追随政策などという向きがありますが、そもそもスワップとは、
国際的に中央銀行が
相互間に自国通貨を預け合って、短期な
国際収支、通貨安定の
対策とする、
国際協力の近代的な手法でありまして、この場合は、ドルの支援にも役立つでありましょうが、
わが国の外貨準備の補強策でもあり、また、短期資本の流出が生ずるおそれのある中での
わが国としても、適切な
対策であったと思うのであります。伝えられる
中期債券の買い入れの申し入れというようなことも、かくのごとく高い
立場において、また、
日本の自信を持った
立場において、
国際協力による
経済の安定策にむしろこの小委員会を活用して、私は邁進すべきものであると思います。(
拍手)
以上、財政等の問題につきましては、大蔵大臣、企画庁長官からも御答弁をいただきたいと思います。
さて、私は、以上
総理大臣に対する
沖縄問題をはじめとする総括的な
質問、また財政問題に対する若干の
質問をいたしたのでありますが、思えばわれわれは、いよいよ間近に明治百年を迎えようとしております。過ぎし百年を正しく評価し、その上に新しい前進を堂々と行なわなければならないと思います。(
拍手)二十一世紀もわれわれを呼びかけております。幸いにして今日、
わが国はきわめて平和のうちに
国民総生産は千億ドル、
世界第一流の地位を占むるに至りました。内外の
情勢いよいよ多端なりとは言え、これまでに処してくることができたわが歴代自由民主党内閣の実績の上に誇りと自信を持って、さらには今回
訪米において一大事績をなし遂げられた
佐藤総理大臣が、いよいよ勇健にして風格のあるステーツマンとして邁進、国運の隆盛に力をいたされることを心から祈念いたしまして、私の
質問を終わりたいと思います。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕