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1967-12-21 第57回国会 衆議院 文教委員会文化財保護に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    本小委員会昭和四十二年十二月十三日(水曜 日)委員会において、設置することに決した。 十二月十三日  本小委員委員会において、次の通り選任され  た。       久保田藤麿君    河野 洋平君       竹下  登君    谷川 和穗君       中村庸一郎君   三ツ林弥太郎君       小林 信一君    斉藤 正男君       長谷川正三君    吉田 賢一君       有島 重武君 十二月十三日  中村庸一郎君が委員会において、小委員長に選  任された。 ————————————————————— 昭和四十二年十二月二十一日(木曜日)    午前十時十四分開議  出席小委員    小委員長 中村庸一郎君       河野 洋平君    谷川 和穗君       葉梨 信行君   三ツ林弥太郎君       小林 信一君    長谷川正三君       有島 重武君  小委員外出席者         文化財保護委員         会委員長    稲田 清助君         文化財保護委員         会事務局長   福原 匡彦君         文化財保護委員         会事務局記念物         課長      中西 貞夫君         専  門  員 田中  彰君     ————————————— 十二月二十一日  小委員吉田賢一君同月十四日委員辞任につき、  その補欠として吉田賢一君が委員長指名で小  委員に選任された。 同日  小委員河野洋平君及び竹下登君同月十九日委員  辞任につき、その補欠として河野洋平君及び葉  梨信行君が委員長指名で小委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  文化財保護に関する件      ————◇—————
  2. 中村庸一郎

    ○中村小委員長 これより文教委員会文化財保護に関する小委員会を開会いたします。  文化財保護に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。長谷川正三君。
  3. 長谷川正三

    長谷川(正)小委員 私は、文化財保護行政の対象となる案件が、今日全国方々に問題が起こっておると思いますが、そのうち自分で実地に見てまいった範囲に限りまして、いずれも非常に憂慮すべき事態にあると判断される問題につきまして御質問を申し上げまして、文化財保護委員会の責任ある御答弁をいただき、また適切な処置をお進めいただくように要望したいと思います。  大臣が参議院の予算委員会関係でおいでになれませんので、本日は文化財保護委員会関係の皆さんだけに御質問申し上げたいと思います。  第一は、これは三年ほど前に、私が本委員会あるいは文教委員会におきまして取り上げた問題でございますが、東京都下国分寺市の国分寺遺跡保存についてでございます。これは当時私が問題にいたしました端緒は、明瞭に史跡に指定されておる部分宅地造成され、そして住宅がどんどん建ち始まった、こういう事態が起こりまして、それが動機でこの問題について御質問申し上げ、当時直接管理責任のある国分寺の、当時はまだ町であったと思いましたが、町長あるいは教育委員会関係関係係員が、一応行政処分を受けるというような事態にも発展をいたしまして、急遽それ以降の宅地造成等については、これをとどめる措置をとっていただき、またその後国の大幅な補助によりまして、国分寺当局と力を合わせて、これを史跡公園として、将来該当地区を、土地買収をし、公園化しようというような方向もきまって、そのように進んでおると承知しておりました。ところが、予算関係等もあって、この買収も遅々として進まない状態にあり、最近またまた住宅がさらにその地区に建ち始まっておるということを地元の方から伺いまして、これはたいへんなことだと考えまして、きょう御質問申し上げるわけですが、この経過、現状、今後の方針、そういうものについて、ひとつ端的にお聞かせいただきたいと思います。
  4. 福原匡彦

    福原説明員 お答え申し上げます。長谷川委員には、かねがね国分寺遺跡について非常に御配慮賜わっておりまして、ありがたく存じております。  私ども国分寺跡史跡公園にいたしますために、ただいまお話のございましたように、予算の十分ない点もございまして、非常に時間はかかっているのでございますけれども土地公有化の問題を進めておりまして、数字で申し上げますと、史跡指定地が約三万坪ございますが、その中で二万二千坪ばかりが民有地というような状態でございますので、その民有地公有化するということから始めているわけでございます。一昨年、四十年度から国庫補助——これは相当高額になりますので、特に八〇%の補助率ということで、国庫補助を進めてまいりました。特に僧寺尼寺でございますが、緊急を要します尼寺地区から買い上げを始めるということで、本年度までに尼寺地区買い上げ必要地域が五千三百坪あるわけでございますが、そのうちの二千三百坪を大体本年度内に買収する予定でございます。今後の計画といたしましては、尼寺を早急に、これも予算との関係もございますけれども、できるだけ早く尼寺地区買い上げまして、それから僧寺地区買い上げに入りたい、こういうふうに考えております。それとともに尼寺地区環境整備、これはまだ手がついておりませんけれども、できるだけ早く環境整備を並行して進めてまいりたい。そうすることによりまして史跡公園的な環境整備による国分寺跡保存ということを考えてまいりたいと考えております。そのやさきに、最近住宅建設の話を聞きますので、さっそく文化財保護委員といたしましては、地元の市のほうと連絡をとりまして、なかなか困難な模様でございますけれども、最善の手を尽くしまして、何とか住宅撤去というようなことを進めてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  5. 長谷川正三

    長谷川(正)小委員 ただいま建ち始まっているものについては早急に撤去を命ずる、こういうふうに承りましたが、そう確認してよろしゅうございますか。
  6. 福原匡彦

    福原説明員 ただいま申し上げましたように、私どもといたしましては市のほうと相談をいたしまして、撤去ということを目標にいたしまして十分話を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  7. 長谷川正三

    長谷川(正)小委員 この前の問題を指摘しまして、いまお話しの史跡公園として民有地は逐次買収をしていく、そして史跡公園にしていくという方針が立ちました以降、私の聞いたところでは二軒がすでにでき上がってしまっており、さらに二軒がまた建築にかかっているというふうに伺っております。その前にたしか二十戸近くが、私が問題にしたときにすでに建っておったと思うのですけれども、いままで建っておった部分についても今後どうされるのか。いまの撤去という意味は、その史跡指定地内の住居全体をお考えになってのお話であるかどうか、そこをひとつ明確にお尋ねしたいと思います。
  8. 福原匡彦

    福原説明員 従来建っておりましたものについて私十分承知しておりませんので、課長から答弁させていただきます。
  9. 中西貞夫

    中西説明員 従来、三十九年の時点におきまして相当家が建っておりまして、これの取り扱いにつきましてはいろいろと検討したわけでございますが、そのままになっておるわけでございます。その後、いまお話がございましたように、二軒建っております。一軒は僧寺部分でございますが、これにつきましても買収交渉を始め、建築をしては困るというようなことをずいぶん折衝いたしましたけれども現状変更の申請も出さないというような状況でございまして、何回も交渉しているのでありますけれども、そのままになっております。  それから尼寺のほうにつきましては、これも建築計画がございましたので、買収交渉をやりましたけれども不調に終わっておりますし、委員会のほうでも、建築をしようという方に来ていただきまして、そこは大事な場所だから建築しては困るということでいろいろ折衝をしてきたわけであります。しかしながら、遺憾ながら現状のような状態になっておるわけでございます。  そこで、これをどうするかという問題でございますけれども遺構のございます重要な地域につきましては、これは将来ここを買い上げとかの方法を講じまして、撤去いたしまして整備していきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  10. 長谷川正三

    長谷川(正)小委員 現在の法律でも、現状変更の許可がなしに建物を建てたり、そういう現状変更に類することをすることはできないことになっていると思います。にもかかわらず、それが強硬に進行してしまうということは、どこに不備があってそういうことが起こり、これをとどめることができないような結果が起こっているのか。これは非常に重要な問題だと思いますので、端的にいえば、これは当局も非常にお困りだろうと思うのです。これは法的な不備と申しますか、罰則規定がないということなのか、その辺のところをどういうふうにお考えになり、どうしなければならないとお考えになっておりますか。これはもし委員長さんのほうからでも最高方針をお聞かせいただければと思います。
  11. 稲田清助

    稲田説明員 御配慮願っております史跡保存の問題でございますが、申すまでもなく最近宅地造成あるいは道路開さく等公共事業史跡保存との衝突、こういうことが全国的に問題になってまいりました。文化財保護の非常に重要な問題であり、また文化財保護の従来の行政方針をここでかなり根本的に検討しなければならない時期であるように考えられるのでございます。  もともと文化財保護法所有権尊重の上に立っております。それに対しまして国なり公共団体あとからこれを援助するという行き方でございます。ただ史跡等の場合におきましては、所有者利益文化財保護利益、これはかなり食い違う場合が多いのでございます。そうした点を補うためにおいて、一面土地買い上げであるとか、そうした財政援助ももっと根本的に、単なる予算の年々の多少の増でなく、基本的に考えなければならない時期が来ているようにも考えますし、一面また、そういう法規がありながらこれを犯そうとする者も相当多いのでありまして、ただいまおことばのありましたように、監督法規なりあるいは罰則なり、そうした法規整備等考えるべき時期でもある。また、その管理に当たります者の配慮、人手というようなものも考えなければならない。こうした問題は、文化財保護法全体について検討を要すべき時期に到達しておりますが、そのうち特に重点として緊急なものと考えております。いろいろ各方面の意見を集めながら機を得てこうした問題について措置すべきものだと考えております。
  12. 長谷川正三

    長谷川(正)小委員 委員長の御答弁は、それとして論理的によくわかりますが、きわめて概括的な問題の指摘というにとどまっておりまして、具体的にこういう立法をしなければならない、あるいはどうしてもこういう予算を組まなければならない、そういう点についてもう少し大胆率直に腹をきめてかからなければ、当然いまの国情から見まして、文化財保護という、一歩誤れば後世に長く悔いを残すような事態を防ぐことができないことになりはしないかという気がしてならないのであります。再度で恐縮でありますけれども、ここは小委員会という内輪の会でもありますから、委員長個人願望でも、そういう断わり書きをしておっしゃっていただいてもけっこうだと思います。こういうふうにしなければならないのじゃないかというようなことをもう少し明確にお聞かせいただければと思います。
  13. 稲田清助

    稲田説明員 非常に重要な問題でありまして、一言でいろんな問題を尽くすわけにいきませんけれども、ただいまも申し上げましたように、文化財保護法のできました時点一般の空気と申しますか、所有権を極力尊重する、これに対する干渉監督を極力控えたい、たいへん遠慮がちな立法である点が一つ性格であると思うのであります。ことに文化立法でありますので、そういう点については所有者なり関係者良識にまつ、そういう点でありまして、ある意味においては非常にこれは進歩した法律であるようにも思うのであります。ただ、最近の経済変動から、たとえば美術品等移転等がひんぱんに行なわれまするし、あるいはまたほかの種類の公益との衝突も行なわれますので、やはりある程度これに対しての監督なり干渉を強化する。しかしながら、それに対して所有者関係者利益保護回復というような点も十分考える。つまり罰則罰則として相当明らかにする、ただいまの罰則の点からいえば、罰則のない規定相当ありまするし、ありましても非常に軽い罰則でありますために時効がすぐくるというようなこと等もございます。罰則を強くするということは、文化立法からいえばはなはだ好ましくないことでございますが、いろいろなことと見合いまして、適当な程度は用意してかからなければならない、こういう気がいたします。  それからいま一つは、経済的の助成の問題であります。よく最近は何かいたしますとすぐ土地買い上げてくれ——調査するにしてもあるいは何か要求するにしても、それはいま土地多角多面に利用される時期でございますので、所有者のそういう経済願望はよくわかるのでございますけれども、やはりそれに対しては公費、国費をもって援助することが必要ではないかと思います。ただ、ともすると直接国費をもってという話が多いのでございますけれども、将来はそれは緑地となり、公園となりあるいは史跡地方公共の施設になるのでありますから、やはりたてまえとしては地方公共団体買い上げて、それに対して国が助成する、このたてまえはたてまえとしていきたいと思います。その場合に、たとえば地方の財源なり起債なり、そうした点についての配慮も必要だと思っております。さしあたりはそんなことを考えたいのでございます。
  14. 長谷川正三

    長谷川(正)小委員 ただいまの御答弁は、問題をもうちょっと深く究明した御答弁ではあったと思いますが、なお憲法に保障する私有権保護というものと、文化を守るという、あるいは文化保存するというものとの矛盾と申しますか、これが所有者良識にまつといういまの弱さといいますか、確かにおっしゃるように、文化立法としては望ましい形で、国民全体の文化財保護に対する認識というものが高まって、その結果守れるということは一番理想でありましょうけれども、最近のは、むしろ直接所有者利益を守るという問題よりも、非常に途中から介入している全く営利目的業者の食いものにされており、そういうものがあらゆる警告を排除して、法的に罰金を払えばいいのだ、あるいはこれには罰則がないからという形で暴れ回っているという状況ではないか。やはりそういうものについては、これに対応する措置というものを一方にはとらなければならぬ。むしろ文化財をお持ちの方あるいはそういう土地を直接個人で持っている方というのは、いまの段階では、いまおっしゃったような良識を持っておられて、ずいぶん不便をされたり迷惑だと思ったりしながら、私財を投じても、国でもう少しめんどうを見てくれてもいいのではないかと思いながらも、やはり文化財保護ということについて、一般的には協力をしていただいているというのが現状ではないか。ですから、そういう方々について、不当な不利益を与えてはなりませんし、所有者に持たしたまま保護する場合には、それ相当の手当が必要でありましょうし、場合によっては国が直接やるか、市町村との合作、協力によってやるかは、それぞれの土地場所性格によってきめられると思いますけれども、ともかくそういう公共の力でこれを正当な補償買い上げて、そして史跡公園なりその他のいろいろの方法があると思いますが、保存するというのが私は望ましい、こう思うのでありますけれども、それについて再度委員長のお考えを伺いたいと思います。
  15. 稲田清助

    稲田説明員 長谷川委員のお考えと私ども全く同感でございます。同じことを繰り返すようなことでございますけれども、一面何と申しますか、文化財保護の観念というものを十分徹底する行政方途を講じますとともに、すでに立法以来十数年たっておりますこの文化財保護法を全面的に検討いたしまして、これを改正する機会に将来考えるべき問題だと考えております。
  16. 長谷川正三

    長谷川(正)小委員 そこで一般論から再び具体的な問題へ戻りまして、先般問題になった以降また二軒建ち、さらに二軒進んでおる。この問題について具体的に移転等考えるというのですが、予算裏づけあるいはその方法、たとえばまだあの付近にはいろいろ国有地公有地もあると思いますが、そういうようなところを代替地にして問題を解決するとか、あるいは直接正当な価格買い上げるとか、そういうことだと思いますが、いままでの御答弁では単なる方針ですが、実際予算裏づけをもって、これを時間的にもいつごろをめどに、こういうようなことについてもう少し具体的な御答弁がいただきたい。
  17. 中西貞夫

    中西説明員 お答え申し上げます。  尼寺のところに最近建てかけております家につきまして、これはしばしば国分寺市のほうで折衝いたして、土地買い上げということで交渉したわけでございますけれども、御承知のようにあの場所買い上げにつきましては、平均が大体三万三千円でございまして、最高が四万円というふうな状態になっているわけでございます。ところが建築をしようとしております方が不動産業者から買いました値段が五万円というような値段でございまして、そしてそれにいろいろな手続でありますとかそういう費用がかかるというふうなことがございまして、七万円というふうな値段をつけてきたのでございます。そこでそれではとても適正な値段でないというようなことでいろいろ交渉いたしまして、それを下げるということで折衝いたしましたけれども、市のほうで買い取りができる価格にはまだ非常にほど遠いということで、交渉が進んでいないわけでございます。予算といたしましては、市のほうでも買うに必要な予算は用意してございますけれども、そこらの適正な値段で買うということにいたしませんと、あとあとまだたくさん土地購入等がございますので、そういう点で難航しておるわけでございます。  それからもう一方の僧寺のほうにつきましては、現在一軒建っておるわけでございますけれども、これも交渉が非常に難航いたしまして、いまのところあまり進んでいないというような状況でございます。  それからあと二カ所、土地造成をして、そこに家を建てたいという希望がございますが、僧寺のほうにつきましては大体話がつきまして、これは建築を取りやめるというようなことになっております。それから尼寺のほうにつきましても大体買収の話がついておるようでございますけれどもあといろいろな関係所有者のほうにございまして、しばらく待ってもらいたいというふうな状況になっているわけでございます。
  18. 長谷川正三

    長谷川(正)小委員 いま問題になっている件がうやむやうちにまた建つということになると、今度はもうせきを切ったようにまた広がっていくということが心配されるのです。ですから、やはりどうしてもこの新しい部分については、多少——いま三万三千円と七万円という差のようですけれども、こういうことでまた不当な利得をさせるようなことは許せないことでありますけれども、そうかといって、まあ常識で考えてその程度ならと思われるところ、あるいは他の方面で、たとえば住宅公団買い上げる、道路公団買い上げる、防衛庁が買い上げる、いろいろな場合がありますが、そういうのと比較して、極端に文化財の場合には低いというようなことがあってはならないと思う。そういう点で正当な評価をできるだけ急いで、小さなところというか、わずかの差のためにじんぜん日を送って、結局うやむやうちに無法者がまかり通る、こういうかっこうにならないように、これはぜひひとつすみやかに解決をしていただきたい。と同時に、いままでに私が問題にいたしましたまでに建ってしまったところの人々も、これはまだ非常に不安があると思うのです。史跡であることはそのままなのですから、いつかこれは撤去しなければならないものなのか。そのためにいろいろ買収なり補償なり代替地なりをお世話してもらえるものなのかどうか。それともその部分史跡を解除するという方向にいって、そこを切ってしまうというようなお考えなのか。しかし、史跡公園の構想からいえば、ちょっとそれも許されないんじゃないか。私はごく専門的なことはわかりませんけれども、そうも考えますけれども、このいままで建ったほうの問題について、これは一体今後どうするつもりなのか、これをひとつ明確にお答えをいただきたいと思います。
  19. 福原匡彦

    福原説明員 ただいまお話のございました不法に史跡内に家屋を新築しております場合、これに対して、私ども国分寺地内といわず、建て始めますと事が非常にむずかしくなりますので、事前に予防するように公共団体とよく連絡をしているのでございますけれども、にもかかわらず、こういうふうにして建て始める、あるいは建て終わるというようなケースがございます。その場合には、ただいま御指摘のように、そのことによって、あとせきを切ったようにその例にならう者が出てくることを非常に心配いたしまして、しんぼう強く、これは地方公共団体にもたいへん御協力を願っているわけでございますけれども、よく連絡をとりながら話を進めております。この国分寺地区につきましても、何とかそういう形で、将来に禍根を残さないような形で解決してまいりたいと存じております。  それと、先生からお話のございます前にすでに存在した——先ほどのお話では二十戸というお話でございますけれども、私まだちょっと土地の事情に暗いので個々には存じませんけれども一般的に申しまして、遺構の存在する地域というものは、これはぜひ家屋補償金を払いましても移転してもらうというつもりであります。遺構の存在しない地域につきましては、今後の問題としてまだ残しておりますけれども遺構の存在するものにつきましては、順次そういう形で取り除いてまいりたい、こういうように考えておる次第でございます。
  20. 長谷川正三

    長谷川(正)小委員 その遺構の存在しているところに何軒あるかということがわかっていますか。それとも、そこを発掘調査でもしなければわからないのですか。
  21. 中西貞夫

    中西説明員 僧寺につきましては発掘調査をいたしまして、どの部分遺構があるかということはわかっておりますが、尼寺につきましてはまだそういう調査は進んでおりませんので、ここのところはちょっとよくわからない実態でございます。
  22. 長谷川正三

    長谷川(正)小委員 ただいまの事務局長の御答弁といまの御答弁とでは、厳密にいうとちょっと食い違いがあると思うのです。食い違いということは当たらないかもしれませんが、事実上事務局長の御答弁は実行がむずかしいのじゃないかと思うのです。というのは、遺構があるところに建っているものは、これはどうしても正当な補償によってどかして、ほかに移ってもらう。そしてそこは保存したい。ところが、うちが建っているところは、発掘調査しなければ遺構があるかないかちょっとわからないのではないかと、私たちしろうと考えでは思うのです。そうすると、発掘調査するには、そのうちがあっては調査ができないのではないか。うちのないところをまわりだけうまく掘ると大体見当がつくということなんですか。その点はどういうふうになっておりますか。
  23. 福原匡彦

    福原説明員 御指摘のとおり、現状においては、ただいま記念物課長から申し上げましたように、尼寺地区につきましては、調査不十分のために、その遺構があるかないかということが不明のところがあるわけでございます。これはその近くの発掘調査というようなことが進みますと、それから推定というようなことで今後わかってくるという地区もございます。それについてはやや不安な状態のままに残るわけでございますけれども、私ども方針としてはそういうふうにきめておきますれば、その線に沿いまして一応住宅をお買いの方も心がまえをお持ちいただけるのではないかという気はしておるわけでございます。
  24. 長谷川正三

    長谷川(正)小委員 再度質問しますが、尼寺の跡のうちの建ってない部分発掘調査は済みましたか。
  25. 中西貞夫

    中西説明員 金堂の部分は前からわかっておるわけでございますが、そこから北のほうの部分につきましては済んでおります。南のほうの部分につきましてはまだ済んでおりません。
  26. 長谷川正三

    長谷川(正)小委員 そのいままでの調査で、調査に当たられた学者の方々の推定というものは出ていますか。そのうちの建っている部分にもこういうものがありそうだとか、この部分はこういう部分に含まれていそうだとか、そういう推定は立っていますか。
  27. 中西貞夫

    中西説明員 大体のところ推定がついております。寺の範囲はこういう範囲であるとかということだと思います。
  28. 長谷川正三

    長谷川(正)小委員 一問一答みたいになって恐縮なんですが、その推定の中に、いま建っているうちの下にどうも遺構がありそうだという推定ですか、残すべき遺構がありそうだという推定ですか、なさそうだという推定ですか、それはわかりませんか。
  29. 中西貞夫

    中西説明員 金堂の上に建っている家もございますし、それで、ある家もあります。
  30. 長谷川正三

    長谷川(正)小委員 そうすると、最近の四軒の問題以前の問題のうちにつきましては、これが正式にいよいよ保存を全面的にするということになれば、代替地をお世話するなり、正当な補償で移っていただかなければならないうちも、全部か一部かわかりませんけれども、ある、こう判断してよろしゅうございますか。
  31. 福原匡彦

    福原説明員 おっしゃるとおりでありまして、ただその場合、全体の整備計画というのが、いまのところ予算関係もありまして、やや遅々としておりますので、いま直ちにということではございません。この買収どもう少し進んでまいりますれば、全体の整備計画というものがもう少し明らかになってくると考えます。
  32. 長谷川正三

    長谷川(正)小委員 これは基本的には、この文教委員会に本小委員会が置かれたという意義を必ず来国会中には十分生かして、画期的な国の予算編成ができるような方向にどうしても持っていかなければ、いまのような問題があとを断たないと思いますが、それにしても、具体的にもう明らかになって、しかも三年越し問題になっているこの武蔵国分寺跡などは、もうちょっとピッチをあげて、完全にこういうふうにしたという形を出して、ひとつ代表的な例をつくっていただきたいのです。これは全国至るところたいへんでしょうけれども、しかし、特にいま具体的になった問題からまずひとつ解決をしてみせる。そういうところから突破口をだんだん開いていただきたい。すでに平城宮の問題はかなりの前進を見せておりますし、先般視察したところで、藤原宮についても積極的な方向が出ておるようでありますし、それは大いに推進していただきたいのですけれども、この武蔵国分寺の問題は、私が問題にしてから約三年たちますので、もう相当進んだころだと思うのですが、どうも遅々として進まないどころか、逆にまたうちが建ち始まっているというような事態では、まことに文化財保護行政の前途が思いやられるわけです。したがって、住民の方々にも不安のないように、ひとつすみやかにその私有財産の保護ということとも十分関連しながら、これを尊重しつつも文化財保護するという形においては遺漏のないように進めていただきたい、こう思うわけです。  そこで、この買収計画について、一体いつごろ完了できるのか、いまの御予定といいますか、これをひとつ聞かしていただきたい。
  33. 福原匡彦

    福原説明員 買収につきましては、前提として予算を充実しなければならないわけでございます。予算の点につきまして、買い上げ費は実はこ三二年、一昨年たしか五、六千万円くらいのものが、昨年一億五千万円に上がりまして、本年度三億円近くということで、ほかの予算に比べましては非常な速度で上昇しておるわけでございますけれども、それにいたしましても、全国の開発の状況は、そうした二倍、三倍くらいの程度ではございません。そのためにどうしてもその予算の中で割り振りをするというようなことでございまして、武蔵国分寺につきましても、たしか本年度の予算の一割くらいはここに投じているという状態でございますけれども、先ほど申し上げましたように、なお尼寺部分のまだ半分にも至っていないというような状態でございまして、来年度予算につきまして、数倍の予算を計上しておりますけれども、ただいまの財政状況の中でどのくらい見込めますか、私どもだけでかってに計画を立てるならば計画できるわけでございますけれども、実際の予算の具体化ということと相まちませんと、机上の空論になりますので、ちょっといまこれを五年なり十年なりと申し上げても、これは私どもだけのことになりまして、その点は明確なお答えができませんので、たいへん私残念に思う次第でございます。
  34. 長谷川正三

    長谷川(正)小委員 ごもっともといえばごもっともかもしれませんが、どうも五年になるか十年になるかわからないというのでは、これはどうもせっかく文教委員会で取り上げ、小委員会までつくって扱っている問題としては、ちょっと少し心細いと思うのです。これは特に東京の周辺地区でいま非常に人口も激増する地帯でございますことは御承知のとおりでありまして、これは遷延すればするほど、予算も非常に多くかかるし、また、つくったものをこわしたりということでは非常なロスを起こすことでもありますし、やはり取りかかったことは重点的にきちっとやらないといけないと思うのです。国分寺当局も非常に財政は楽でない状況にあると思いますけれども、この二、三年前までは国分寺市というのは、そんなに極端に貧乏ということではなかったようです。これは土地を小さく売る方が多かったので、固定資産税が入る時期がございましたので、最も貧困ということではなかったようですけれども、最近は御承知のように駅前の学校を売って、そうしてへんぴなほうというわけでもないでしょうけれども、二つの学校にするというようなことで新聞をにぎわすような問題も起こっている自治体ですから、それで国も特別の措置で八割援助ということに踏み切っていただいたと思う。この点は非常に御英断であると敬意を表しますけれども、それにしましてもテンポをもうちょっと早くしていただかなければならないのではないか。これについてひとつ保護委員長の御決意を承りたい。
  35. 稲田清助

    稲田説明員 私どもの念願もただいまのお説と全く同じでございまして、私どもといたしましては、文化財保護行政全般の予算の中で特に史跡に関しまする土地買い上げ費というものを最重点に考えておるわけでございます。年々ここまで伸ばしてまいりましたけれども、さしあたり十億余りもございますれば、もう少しいろいろな配慮ができると思います。明年度予算につきましても、いろいろ皆様方の御支援も得つつ努力いたしたいと考えております。
  36. 長谷川正三

    長谷川(正)小委員 ぜひひとつその御決意で——われわれおそらくこれは超党派でこの小委員会に属する、あるいは文教委員の皆さんも、いまの委員長の御決意を応援する体制をとることができると思いますから、ひとつがんばっていただきたいと思います。  そこでもう一つ伺いたいのですが、市当局からこの保存に関して、市当局なりの努力はするけれども、国にはこうしてもらいたいという要望もあろうかと思いますが、そういうものを受けておりますか。ありましたら、具体的にどういう要求が出ておるのか、それをお知らせいただきたい。
  37. 中西貞夫

    中西説明員 先週でございましたか、国分寺市の議長はじめ市会の方が見えまして、買い上げについて三年計画があるが、それを計画どおり実施してもらいたいというような要望、あるいは起債を認めるようにするという要望、あるいは先ほど先生おっしゃいましたように、他の国有地との交換というようなことで保護してもらいたいというような点について、配慮をするようにというような要望をいただいております。
  38. 長谷川正三

    長谷川(正)小委員 その要望について文化財保護委員会あるいは事務局としては、どういうふうにお考えですか。
  39. 福原匡彦

    福原説明員 ただいまの三年以内に買い上げるということにつきましては、先ほど御答弁申し上げたような次第で、私ども全力をあげてなるべく短い期間にということは考えたいと思います。その際起こります問題は、市の財政負担の関係で起債を認めてほしいという要望を初めて承ったわけでございますけれども、これまで地方公共団体史跡買い上げる場合、起債ということは具体的に行なわれておりません。ただ、地方財政法によりますと、史跡買い上げる場合に起債を認められ得るという条項がございますので、今後具体的に市町村におきまして起債を要望する事例が起こりました場合には、文化財保護委員会としては、そのように自治省と折衝いたしたいと思います。
  40. 長谷川正三

    長谷川(正)小委員 地方自治体としては非常に苦しいので、起債というような方向考えたと思うのですが、私は、その方法もひとつ十分研究していただいて、それがより文化財保護事業を促進できるということであれば進めていただきたいと思います。ただ心配になりますのは、起債というほうがいいじゃないかということにだんだんなって、国の援助を逆に少なくして起債におぶさる、そして結局は市町村の負担を大きくしていく、こういうふうに、むしろすりかえられていくようなことになれば、これはまたたいへんなことじゃないか、こう思います。ですから、国の援助というものをできるだけやった上に、なお地方自治体がこのわずかの部分を受け持つのでも、苦しい部分を起債でというならば了解できますけれども、その辺をやはり、前向きでなしにうしろ向きにならないように十分に御配慮願いたいと思いますが、それについてのお考えをもう一度聞かしていただきたいと思います。
  41. 福原匡彦

    福原説明員 長谷川先生のおっしゃるとおりでございまして、起債というのは、そのときの解決には非常にしやすいという便宜はございますけれども、これはあと市町村に負担を残すことになります。それで、現実問題といたしましても、相当高額の場合でないと起債を認め得ないということもございますし、その点は慎重に考えてまいりたい、こういうふうに考えます。
  42. 長谷川正三

    長谷川(正)小委員 国分寺の問題を中心に御注文申し上げました。きょう私は、質問の通告といたしましては、そのほかにたくさん——先般、関西地区特に大阪、奈良方面あるいは京都方面に、文化財保護の立場から見ますと、まだ非常に重要な文化財が危殆に瀕しているという地元の学者の方だの、あるいは考古学関係の町の有志の方だのからの話を聞きましたので、閉会中でありましたが、日帰りでしたが行って、大急ぎで、それらをずっと一べつしてまいりまして、りっぱなはっきりした古墳のあとがむざんにもう半分以上掘りくずされてしまって、大阪市の文化財保護関係の方が残った部分発掘調査をしておりますけれども、これもほんとに係員の方と、あとは人夫あるいは学生アルバイトというようなことでやっておる現状等を見まして、これは何とかしなければたいへんだなということを非常に感じました。その案件の資料を私いろいろいただいてきまして、たくさんございますけれども、きょうはあと帝国ホテルの問題等について小林委員のほうからも御質問があるようでありますし、三ツ林委員のほうからも御質問があるようでありますから、きょうは国分寺だけにとどめまして、次の機会に譲りたいと思います。  以上で終わります。
  43. 中村庸一郎

    ○中村小委員長 小林信一君。
  44. 小林信一

    小林委員 私は、問題になっております帝国ホテルの問題について、その後文化財保護委員会としてはこれにどう対処するか。決定的なものがもう出ておると思うのですが、きょうはそれをお聞きしたく質問をいたすものですが、委員長からお願いいたします。
  45. 稲田清助

    稲田説明員 先般来、小林委員から帝国ホテルの保存につきまして、非常に御熱心な御質疑、御意見を承り、また文化財保護委員会当局に対して御鞭撻をいただきました。私ども基本的には全く同じ念願を持っておりましたし、御鞭撻をありがたく思っておりましたが、はなはだ遺憾な結果といたしまして、帝国ホテルの現地保存ができなくなったわけでございます。その後の問題でございますが、帝国ホテル側と専門の建築家の間におきまして、帝国ホテルにつきまして詳細な調査を夏以来行ないました。それが一応でき上がっております。また、もちろん帝国ホテルの設計図はございます。現地保存ができなくなりました今後におきましては、こうした設計図あるいは調査書類をもとにいたしまして、いずれかの場所に、いずれかの手によって再建するという基礎は残っておるわけでございます。そこで、私どもといたしましては、こうした問題について、国自身が助成できないことは前から申し上げた次第でございますので、何とかこうした再現と申しますか、移築というか、そうしたことをすみやかに現実の問題にいたしたい。その間において文化財保護委員会がいろいろあっせんいたしましたり、技術的な援助をするというようなことで何かできないか、こういう念願を持って対処してまいったわけでございます。  現実の問題といたしましては、先般帝国ホテル側と、名古屋に近い犬山にございます例の明治村当事者との間に話し合いが始まりまして、何か明治村において、一部ではありますけれども、再建してはどうかという点について、両当事君の話し合いが開始されたことを聞きまして、その後両者に接触しながらその話し合いの進展を見守っている状態でございます。これにはまた相当金もかかることでございますし、はっきりした結論は出ていないのでございますけれども、私どもは、一応この間に希望をつなぎながら両者の間を見守っております。  一面また、「守る会」におきましては、帝国ホテルが従来使用してまいりました建築材料のうち記念すべき部分、これをまた新たに再建するものに移して構築したいと考えまするものを調査して調べ上げたいということで、そうした調査につきましても、「守る会」と帝国ホテルの間に介在いたしまして、いろいろ話し合いなり便宜をはかってまいりました。こうした調査資料もおいおいでき上がっているようでございますので、いまの現実の問題と関連いたしまして、これらの希望を結びつける点について、私ども何かお役に立つのじゃないかと考えております。現状はそうした次第でございます。  一応お答えいたします。
  46. 小林信一

    小林委員 私どもが大臣に御意見を聞いたり、それから文化財の御意向をお聞きするときには、もう少し責任を文化財が持って仕事をしてくれるように思っておったんですよ。私は少なくともそういうふうに感じておりました。しかし、この小委員会文化財の御答弁等をよく調べてみると、文化財が責任を持つような答弁がないですね。なるほど、現状の推移はやはりその線から出ておるなというふうに判断をせざるを得ないわけで、それでは、私どもだけでなく、帝国ホテルに関心を持つ人たちのお考えに沿わないじゃないかというところから、私も実はきょう質問を申し上げるようなわけですが、現に取りこわしが進んでおって、一月の半ばごろには取りこわしが完了する。だが、その中から、保存するとか、移築するとか、何とかこれを将来に残すというような仕事が少しも見られぬものですからお伺いしたら、委員長のいまおっしゃるところが、私どもが非常に心配しておったところとやはり一致するわけなんです。私は、どういう基本的な態度をお持ちになられるかということをお聞きしたわけですが、いまのお話からしましても、国が助成できないということは文化財としては認めることはできない。それはいろいろな理由があるのかもしれませんが、結論的にはそうだというふうにお聞きしていいわけですか。
  47. 稲田清助

    稲田説明員 当初帝国ホテルを現地で保存するという問題が論議せられておりました。私どももできるならばこれを希望いたしました。かりにもしそれができますなら、そして所有者、経営者の同意が得られますなら、そして将来それを現地において保存確保する見込みがありますれば、これを文化財として指定することも可能であろうと考えたのです。指定いたすこととなりますれば、それに関しまして、これは予算の問題でございますけれども、筋合いとして国の援助というものも考え得るということになったわけでございます。しかしながら、これにつきましては、一面ホテル経営者の企業者としての企業意欲というものもございます。これに対しまして、私ども文化財の立場において保存をただ要望することはできます。しかしながら、私どもがよりどころとして、たてとして、武器として使いまする文化財保護法は、先ほど長谷川委員にも申し上げましたように、あくまでも所有者の意思尊重、所有権尊重主義でございますので、これはただ念願として希望するだけにとどまるわけでございます。  一面また、私どもは、かなり早くから帝国ホテルの現状について専門家が調査いたしておりますので、その調査の点について伺ったのでありますが、これは技術的に見まして現地において保存をいたしますことが非常に困難である、経費も時日も、また技術としても非常に困難である。しかもまた当初から、地下工作の不備から不同沈下による亀裂あるいは傾斜等が非常に進んでおります。それを直すことの困難もございますし、また、御承知のように戦災で六割は焼けて材料を補っておったり、あるいはホテルの使用便宜から当初の様子が非常に変わっておったり、結局当初のものがあそこに残っておりますのは玄関なり、ロビーなりあるいは宴会場の廊下くらいであって、むしろ当初からのものが残り少なくなっているといったような技術的の点から、これはしょせんあの土地において保存することは困難であり、またそうした意義等も考えまして、これに対して悲観的な見方をいたしたわけでございます。そこで、かりに設計図により、調査書により別のところに再築するとなれば、当時「守る会」も申しておりますように、ただいままた小林委員のおことばにもありましたように、なるべく記念すべき材料は確保して再建に用いたい。この点で私どもは帝国ホテルとも折衝いたしまして、こわす期間をできるだけ延ばしてもらいたい、また、こわす方法をそうした貴重材料を保存するような方法でこわしてもらいたい。これはその希望が達成されて、いまそのように進行中だと思います。あとはただ設計図及び調査書によってだれがどこに再築をするか、それにいまの貴重な材料を渡すか、こういう問題をなるべくすみやかに解決したいというのが私どもの念願であって、私どもが接触し得る、また考え得られるそうした関係者といままで接触してまいっている。こういうわけでございまして、私どもの権限なり、いろいろな点においてできるだけのことはいたしておるつもりでございます。  かりに全面再築なりあるいは部分再築なり、これを指定し得るかという問題になりますと、これは私どもはかなり消極に考えざるを得ない。そうなりますると、同じ規模、同じ形でたとえば平等院をつくった、あるいは金閣寺をつくった、これだって指定していいじゃないか、極端にはそういうことになります。そこまでは私どもは指定しにくい。指定しないものは一体補助できないか。これは別に法律にあるわけではございませんけれども、行政の一つのけじめとして順序、先後、軽重を考えましたときに、指定物件の保存修理につきましても予算がまだ十分でないという時期に、指定もしないものに直ちにそれがいま世間の問題になっているからといって私ども補助に踏み切るということも、これは踏み切りにくい。この点も御了承願いたいと思います。そういうことで、私どものできます限りにおいていまいろいろ頭を使っているわけでございます。どうぞ御了承いただきたいと思います。
  48. 小林信一

    小林委員 いまの御説明をお聞きすれば、何か文化財としてはこの問題には手をつけておるというように話されるのですが、私どもの見るところでは全然放置されておるような感がしてならないのですよ。いまの委員長お話の、これの現地保存はいろいろな点から見て不可能である、これも心からそう言っているのか。予算を捻出する点から、あるいは相手を説得する上から、「困難があるから」。そういうふうにきめつけてしまうほうが一番簡単だ、それをきわめて美しいことばで表現をされておるような印象があるのですよ。専門家は、いまの技術をもってすれば現地保存をやろうという気持ちがあればできないことはない、こういう意見も私どもは聞いているわけなんで、必ずしも私どもは一方的に判断はしておらぬのですが、しかし、いままでの経緯を見ておりますと、何かそういうふうに逃げる道を文化財はいまさがしつつあるのではないか、しかもそれがもう来るところに来てしまったというように私どもは印象づけられるわけです。だから文化財としては、こうすることはできない、ああすることはできないということを言うのでなくて、この帝国ホテルに対しては、審議会等もあることですが、そういうものにはかってこういう決定を見た、しかし、それがこういうわけで実現できないというようなことなら——何か根本的に基本的になる文化財保護委員会の態度というものがどうも明白でないような気がするのです。いまの委員長のおことばが全部であるというならやむを得ないのですが、私どもは放棄せざるを得ないと思うのです。と申しますのは、いま何らかの形でもって残したい、それについては設計図も残っている、それからいろいろな調査資料もある、こういうふうにおっしゃって、いつでもこれは何らかの形で残すことができる、進行中であるというふうに言われているのですが、いま鹿島組が取りこわしておりますね。取りこわしたものを、いまのところこれだけは保存をしておきたいというようなものが「守る会」のほうからは出ましても、一体それをどこに置くのだ、この東京の中にはそんなあき地はないわけですね。そのあき地を見つけること、あるいはそこにこれだけは残したいという品物を運ぶには、やはり運賃もかかりますよ。そういうものが「守る会」のほうから一応鹿島組には折衝があって、鹿島組はこれを了承したのです。了承したけれども、いつになってもその主体が一体だれであるか、それから経費はどうして出してくれるかというふうなことが明確にならぬから、二十三日、もうあさってですね。あさってを期限にして私のほうでかってに処理いたしますよ。帝国ホテルは帝国ホテルで、もう鹿島組に一切移管してしまって、どうしようとこうしようとかまわないというような態度をとっておる。取りこわす鹿島組においては、いまのような二十三日の期限が来れば、これは海の中に捨てようがどこに持っていって埋めようがしかたがない。こういうような状態を見れば、どこにその委員長の言われる進行中というものがあるのか私にはわからないのですが、何かこれをこうしておりますよと、私どもを安心させるものがあったらお聞かせ願いたいと思います。
  49. 稲田清助

    稲田説明員 ただいまのお話のその前段は、確かに私どももそのように伺っております。「守る会」あたりで残すべき幾つかの部分調査指摘して特定しまして、それについて帝国ホテルなりあるいはその解体工事を請け負っております業者が心得て、その残すべき部分を傷つけないようなこわし方をしているということ、お話の前段はそのとおりでございます。ただ、その後段の、もう海へ捨ててしまうとか、知りませんよという話は、私ども聞いておりません。私どもは昨日までもいろいろ関係者と話しておりますのは、やはりその残すべき部分を特定して、それをだれがだれの経費でどこへ運ぶか、これを先日来いろいろ帝国ホテルなりあるいは先ほど申しました幾つかの、まだはっきり確然と引き受けたというところにはいっておりませんけれども、引き受けそうに思われる方との間の話が継続していて、その間に私どもも介在しておる、これが昨日までの事実でございます。おことばの最後の、もうだめだということは、私ども聞いておりませんし、そうしないように今後もつとめたいと思っております。
  50. 小林信一

    小林委員 私の申した二十三日ということも、これも聞いたことなんです。それから、捨てられてもしかたがない状態にあるということは、いろいろな点を総合して判断をすればそういうことにもなるし、鹿島組だって、来月の十五日までという期限を切られればそういうふうに処理するということが想定できるわけなんですよ。いま委員長もおっしゃった、あっせんをしておる——先ほどのことばは見守っておる、というようなものでは、だれがその責任者になり、経費はだれが捻出するかというような、第三者をねらっておるような政府あるいは文化財保護委員会の態度からすれば、残念ながらそういうふうに私ども一つの不安を感じなければならぬわけなんです。委員長がいまのようなお話をなされても、やはりわれわれとしては最悪の事態を想像しなければならぬわけで、そういうことばが出てくるのは私は当然だと思うのです。やはりそれは何らかの文化財保護委員会としての確たる基本方針がきめらるべきじゃないか。だれか金を捻出する者を探したり、あるいはこれに対して関心を持つ人間を探して、そして総理大臣がアメリカまで行って何か約束してきたそういうものを実現させようというには非常になまぬるいような気がいたします。委員長はそうお考えにならないのですか。
  51. 稲田清助

    稲田説明員 この保存、再現についての念願は全く小林委員と同じでございますが、先ほど来申しましたように、文化財保護委員会の手において、国費によって、国営においてこれを再現するという点については、私ども今日考えてないのでございます。これはやはり文化財行政全体から見まして、また与えられました予算の全体の配慮から見て、順序、先後、軽重を考えますときには、やはり国が国費をもっていろいろ営みますものは、指定物件というものを中心に考えていくべきものだと私ども考えております。したがいまして、これを部分なり全部再築するという問題は、これは将来それを何かに利用、運営しようという方、あるいは博物館的にこれを再築保存しようという方、そういう方を私どもとしてできるだけすみやかにあっせんするというか、お願いするというか、そうした第三者の手によってやっていただく以外に、さしあたり私どもとしてはできないという心得をもって従来やってまいったわけでございます。また、帝国ホテル側といえども、また、いま解体に従事しております業者といえども、いままでいろいろな解体についての容易さを捨てて、古材保存というむずかしさをとって、今日までその解体工事を進めてまいりました次第でございますから、急にここで気が変わって古材を海へ捨ててしまうというようなことは、私どもあり得ないことだと考えておるわけでございます。帝国ホテルも、あるいは解体業者も、いずれも帝国ホテルの文化的価値ということを知らない方ではないので、そうした方の良識を私ども信用しながら、今後も折衝してまいりたいと思っております。
  52. 小林信一

    小林委員 そうすると、いまの委員長お話——私も区切って前段と後段と言いますが、前段のほうは、簡単にいえば、帝国ホテルは文化財としてこれを国が責任を持って保存するとか残すとか、何かそれを記念するとかいうような資格はない、いわゆる価値評価は、文化財保護委員会としてはその程度考えておる、こういうふうに了承していいかどうか。
  53. 稲田清助

    稲田説明員 これはもう過去のことでございますけれども、もし現地において保存が可能であり、その将来の運営の見通しがございますれば、これはもう委員会と相談することでございまして、指定し得る物件であろうと思いますし、そうでありますれば国費をもってそれを援助すべき性質だと思いますけれども、もうそれが不幸にしてできなくなりまして、他に部分的なり、あるいは全面的なり再築という問題になりますれば、国費をもって国営の建築といたすべき性質のものではないように考えられます。ただし、そういうことは文化的に、文化財保護保存的に意義のあることでございますから、かりに直接国営、国費を投じての仕事でないにいたしましても、極力そういうことが現実の問題となりますように骨折ることは私どものいたすべきことだと思って、あらゆる方面と接触しながらその努力を継続しておる。しかし、これはとにかく自分でいたすことではないのでありますから、あちらこちらにお願いいたしましたり、いろいろその間の便宜をはかったり、そうした限度にとどまることは遺憾ながらいたしかたないことだと思っております。
  54. 小林信一

    小林委員 念を押して申しわけないのですが、国費をもって保存をするということは不可能と委員長のおっしゃったその不可能というのは、いろいろ事情があって不可能であるのか、そのものを残す価値がないから保存することに努力する必要ないのか、そこを私は聞きたいのですよ。
  55. 稲田清助

    稲田説明員 正直に申します。価値がないとは申しません。そうした同種同型のものが日本のどこかに残るということは、現物を現地において維持できなくなったときに、次善、三善の策として決してこれは無価値なことではないと思います。われわれもそれは希望することでございます。ただ、それを今日国費において国営でいたすかということになりますと、それはさっき申しましたように、順序、先後、軽重から見まして——大体文化財保存の修理費というものは五億しか持っておらないのでございます。そんなつまらない予算をかかえていることが責任上けしからぬとおっしゃればそれきりでございますけれども、これが正直、現実のところ、指定物件の維持、保存、修理にも十分でない。何とか予算の増額を念願いたしておるわけでございます。そこにもってきて、いま十数億かかりますか、なおかかるかわかりませんけれども、直ちに帝国ホテルのイミテーションをどこかにつくるということをいたしますことは、私ども現実において言いかねるということを申し上げておるわけであります。
  56. 小林信一

    小林委員 いまの委員長のおっしゃるのは、全面的にですか、部分的にもですか。
  57. 稲田清助

    稲田説明員 やはり全面的にも、部分的にもでございます。それから、もう一つでございます。やはりこういう大きな建造物になりますと、将来の維持、保存ということを考えずに、ただ建ててしまうわけにはまいらないと思います。かりに全面的にああいうホテル的建築をいたしますれば、やはりホテル的に使うか、あるいは何か大きな博物館的に使うか、そういう事業主体、事業を考えなければならない。そういう事業は文化財保護委員会のいたすことじゃございません。お寺ならお寺、民家なら民家、いろいろそこに目的的に運営いたすので建物は保存できるのだと思います。したがいまして、私どもはやはりこれを部分的にも、全面的にも保存維持を考えます場合には、そうした将来これを何に使うのか、何に使おうという人が出てくることが一番いいんじゃないかと思います。かつて東京都もあるお考えを持っておられたようですけれども、それは東京都が何かあることに使おうとしてこれをお考えになったんだろうと思います。それから、あるいは明治村あたりはこれを博物館、標本的にお考えになるのだろうと思います。そうなってくると、自然これは部分的、象徴的な部分を標本として残すということになるんじゃないかと考えられるのでございます。そこまで考えた場合、文化財保護だからといって、文化財保護の私どもがただ建物を建てっぱなしにしていくということもいかがかと思う次第でございます。
  58. 小林信一

    小林委員 ごもっとものような気がいたしますが、しかし順序、年代、そういうふうなものがある。こればかりにこだわっておったら、いまのように、建物にすればどんどんいまの高層建築を建ててもうけてやろうという社会情勢がありますね。そういう場合には、やがてはこれは保存もしなければならないものであるが、きょうの段階では順序がある、年代の一つの限定があるというふうなことで、残念ながらそういうふうなものを日本は次々と失っていかなければならないような状態がありますね。その問題が一つ。それから、それを保存する場合に、目的がなければ保存をすることは云々というようなお話がありましたが、これも私はよく知りません。知らぬけれども、しろうと考え考えてみて、そればかり言ったら、木造建築の多い日本の国では、文化財を、委員長のような考えがあれば次から次にやはり失って、やがてまことに残念だったというようなことも考えられる。それからいま委員長は金がないということをおっしゃったのですが、確かにいま文化財保護委員会の持っている金は少ないでしょう。しかし、日本がほんとうに古代文化というものを、民族文化というものを残すというふうな、そういう大きな使命を達するためには、特に金がなくとも、政府の中のいろんな操作で出せないことはないと私は思うのです。そうすると、委員長の非常にりっぱな理路整然たるお答えなんですが、何かそこには矛盾があるような気がいたします。これは私はもうお聞きいたしません。  結局、帝国ホテルに対する態度というものは、国は、だれかが心配するならば、その人たちによって何とか保存してもらいたい、移築なりあるいはその一部をどこかに建てるなり、そういうふうな形でもってだれかにまかせる、国はその心配をするだけだ、見守るだけだというふうに判断していいと思うのですが、そこで委員長が先ほど、決してそれも無責任な言い方じゃない。いろんな方面からこれを何らかの形でもって残す人たちがある。私たちが伺ったところでは、「守る会」の方たちが、いま鹿島組と折衝する。実際折衝するのに、文化財保護委員会と折衝するわけじゃない。帝国ホテルと折衝するわけじゃない。鹿島組という——それは何か文化財保護委員会のほうに話はしたかもしれませんよ。しかし、とどのつまりは、いま「帝国ホテルを守る会」の人たちは、鹿島組と折衝する以外にないわけなんです。ところが、この「帝国ホテルを守る会」の人たちも、これだけはというのでもって、百カ所くらいを一応写真にもとり、記録にもとどめて、これだけはというふうに鹿島組に頼んでおるそうなんですが、しかし、これを運搬してどこかに保存するためには、その運賃と、そうしてもう一つあき地をさがさなければならない。ところが、いま「守る会」の人たちには、いろいろいままで資金等を集めようとしたのですが、その金がまだ見つからないということをお聞きすれば、守る会の人たちもいま苦境に立っておるわけなんです。だが、それよりも委員長はもっと有力な、確実な何かこれを心配する人があるというのか、あるというならばお聞かせ願いたいと思います。
  59. 稲田清助

    稲田説明員 ただいま冒頭お話しになりました年代順によって考えているのかというお話でございますが、先ほど私が、順序、先後、軽重と申しましたのは、年代順を申したわけじゃございません。指定物件について、何を先に処置すべきかという順序、先後、軽重、これを考えましたときに、やはり五億の予算をもっていたします場合は、すでに指定されておる建造物の修理、保存ということを、順序、先後、軽重から先だというわけでありまして、必ずしも明治、大正はあと回しで、時の流れに従って古いほうが大事だと考えているのじゃない、これは御了承いただきたいと思っております。  それから、さしあたり設計書があり、調査資料がありますから、非常に——こう申すとのんきなことを言うというおしかりがあるかもしれませんけれども、適当な時期に、適当な方法を見出すならば、将来いつでもこれは再現できるわけでございます。ただ急ぐのは、いまの一部分の古材をどこにどう保管するか、これだけきまりますれば、あとは早いほどいいので、そう急いだことはないとは申しませんけれども、そんなにあわてて騒ぎ回らないでも、一番いい条件で建てることを見出したほうがいいんじゃないかと私ども考えております。  いまの順序、先後、軽重から見て、かりに——こういう過分なことを申してはいけませんけれども、国宝その他の修理費が非常に潤沢で、あらゆるそれより先順位である物件が片づいた場合に、これはまた国で建てるということも全然いけないということを私申しているわけじゃございません。それから、かりにまたあとの使用方法等で、国費補助してしかるべき使用方法建築というものも、これはないじゃないと思っております。決してのんきなことを申しているわけじゃございませんけれども、そう何も帝国ホテルの解体までに再築の方法をきめなければならぬとまであわてて私ども考える必要はないと思っております。  それから最後に御質問がありました「守る会」と帝国ホテルの間につきましては、両者の要望によって私どもが介在してまいりました。介在した結果、これから先は鹿島とよく折衝なさいということで折衝しておられるのだと思います。必要があればまた私どもいつでも口をききます。これはホテル側から言われて口をきいたこともあり、「守る会」側から言われて、調査に応じろということでホテルに申したこともある。この点、私どもいつでも中に介在して、「守る会」なりホテル側の御不便のないようにはいたしておるつもりでございます。
  60. 小林信一

    小林委員 「守る会」以外に、これを保存するような好意を持っておる人たちがあるように私は聞いたから、ほかにあるのかと聞いたのです。それも聞かしていただきたいのです。そしていまのお話一つ一つに、私はそう言われれば、もっと積極的になれないかという点で文句を言いたいのです。だが、その中でも一つだけ申しますが、「守る会」と、そしてホテルあるいは鹿島組との間で何か折衝の点で文化財に用があればいつでも出ていきますよなど、積極的にあなた方は考えておるような気持ちでおっしゃるかもしれませんが、私どもは、もうその点から、いまのおことばからして、すでに文化財保護委員会は帝国ホテルを見放しているんだ、守る会の人たちは、ただ五千万円の運搬の問題ですらも困っている。もちろん東京の中に、あの帝国ホテルを中心として二キロ以内に持っていって保存をする場所を見つける、こんなことはとても不可能だ。いま「守る会」の人たちは、ほんとうに手放さなければならぬような状態におちいっているような事態です。そのときに、何か話があればまた行ってお話をしてあげます、それがいま帝国ホテルに対する文化財保護委員会の関心とすれば、もうあきらめざるを得ない、こう私は考えていかざるを得ないのですよ。  その点で私はひとつお聞きいたしますが、総理大臣が、先般の予算委員会でも、何らかの形でもって私は善処すると言明いたしました。それからアメリカでの記者会見の中でも、アメリカのほうからの要請で、これは国際的な話がなされたわけですが、その場合にも、これは何らかの形でもって残すというふうなことを言われたし、剱木前文部大臣も、このことではこの委員会相当強い態度を見せてくれましたが、それは、総理大臣をはじめとして、いま文化財保護委員会考えておる程度の関心だったのか、どういうふうに総理大臣や文部大臣の考え方を掌握しておるか、同じだというならば同じ、われわれの考えは間違っているというなら間違っているというふうにここで言明してもらいたいと思うのです。
  61. 稲田清助

    稲田説明員 総理大臣とは直接この点についてはお話しいたしておりませんけれども、文部大臣には常に情勢を御報告申し上げております。私ども、決して別の行き方をいたしておるとは心得ていない次第でございます。  それから、いまの古材の運搬なり確保等の問題につきましては、実は昨日も私どもいろいろ関係者と相談なんかいたしておりまして、決してその点について手をつかねて成り行きをながめているという状態ではない次第でございます。
  62. 小林信一

    小林委員 それじゃ、最後にお聞きいたしますが、いまの手をこまねいてはいない、それなら一体見通しは——少なくともこの程度のものはこうなるというものをお聞きしたいのですが、最悪の場合の事態でいいですよ。
  63. 稲田清助

    稲田説明員 冒頭申し上げましたように、まだ結論は出ていないのでございます。
  64. 小林信一

    小林委員 それが、こっちはせっかちであり、あるいはそういうことに対しての内容というのが何にもわかっていないから、このままではこれはもうお手あげかというふうに判断をして申し上げたわけですが、委員長の多年の経験で何とかなるというならば、その点で私は一応きょうはおきたいと思います。  ここで特にお聞きしたいのは、私どもにとってはまことに手ぬるい、不満な、あるいは無責任な仕事をするなかでも、運ぶことはなかなか運んでおるという面があるのですよ。それは大蔵省のほうから文化財保護委員会にホテルの借地権の延長許可の文書が渡されて、そして一応文化財保護委員会の同意が求められている、これは事実ですか。
  65. 福原匡彦

    福原説明員 ちょっと日時は正確に覚えておりませんが、十二月一日の取りこわし直前にそういう文書が参りました。文化財保護委員会のほうはどう考えるかという問い合わせでございます。
  66. 小林信一

    小林委員 その内容をお聞かせ願いたいのですが……。
  67. 福原匡彦

    福原説明員 これは、その前から私ども大蔵省の国有財産局と国有財産の取り扱いとして話し合いはしておりました。国有財産局の意向といたしまして、これは改築にあたりまして地主としての了承を求めてくる、こういう手続があるということでございました。その際、私どもとして一たん期待いたしましたのは、そのときに大蔵省としてその改築をとめ得る方法があるかということを期待したわけでございますが、これは話し合っておりますうちに、民法上の措置でございまして、地主として特別な不都合がない限りは承認せざるを得ないということで、政府としてこれに対してどうするというような手続ではないということを聞いております。私どもといたしましては、その中でせいぜいでき得ることといたしまして、大蔵省がその改築の承認をいたしますにあたりまして、同じ政府部内のことでございますので、文化財的な配慮をそこでしてもらうように帝国ホテルに申し入れてもらう、この程度が私どもは精一ぱいと思っておりました。正式に、それが取りこわしの前日でしたか前々日でしたか、そのくらいに私どものほうに照会がございましたときに、そういうことを私ども申し入れまして、この点は大蔵省のほうから帝国ホテルに、文化財保護委員会の指示と申しますか、文化財保護委員会からもよく話を聞いて取りこわしていくように、そういうことを、おそらく口頭だと思いますが、申し入れた。こういうふうに承知しております。
  68. 小林信一

    小林委員 その金額、契約の内容、そういうふうなものは聞いていないのですか。
  69. 福原匡彦

    福原説明員 私ども伺いましたのは、文化財的な配慮の問題について聞きましたので、その点大蔵省のほうに正確に聞いておりません。
  70. 小林信一

    小林委員 力のない文化財保護委員会が何か仕事をしようとする場合に、いまのようなきっかけをつかんで、何もそれでおどかすわけじゃないのですが、それをたよりに交渉を深めていくというようなことは絶好の機会だと私は思います。大体この委員会の中でも、この問題につきましては話をしたはずです。大蔵省が来ましてはっきり言ったのは、改築をするというような場合には、大体原則として買い上げるか、さもなければ土地を返してもらうということが原則である。この委員会で私ども答弁しましたよ。したがって、帝国ホテルの問題については今後そういう方針でいくんだ、もちろんその中に所有者の地上権というようなものがあるし、いろいろな慣例もあるし、民法的な力もありますから、それは簡単にそうはいかぬかもしれぬけれども、そういうことができる一応の契約でもって建っておるわけなんです。だから、もっと政府全体が——総理大臣がそういう意向であるならば、大蔵大臣も文部大臣も文化財保護委員会委員長も話し合いをして、何らかそこに対策を講ずれば道が開けていくのではないか、私はこう考えて、その経緯に対して非常に残念なものがあるわけです。もっとそれを深く突きとめていけば、ここでもって契約更新のために大蔵省が取った金がありますね、御存じですか。——それは知っているけれども、知らぬと言っているにすぎぬと思うのです。七億五千万円の更新料を取っていますね。そして地代は幾らです。私どもが知って、文化財保護委員会がいまの委員長のような考えを持って誠意を持って努力をしていますと言うならば、どういうふうにそれが工作されるか、そういう点は御存じなければならぬと思うのです。一千八百万円のいままでの借地料が今度は二・五倍になった。まだこれだけじゃいいのですよ。十一月二日の朝日新聞に「敷地払下げに待った」という大きな見出しでもって、総理大臣が何か帝国ホテルに対する関心を示している記事が出ているわけです。これが十一月二日ですよ。取りこわしになるときですよ。新聞に出ていますよ。だから、帝国ホテルに関心を持っておる人たちは「敷地払下げに待った」——これはやっぱり総理大臣がアメリカでもってあんなことをしゃべってきているし、文部大臣が非常に意欲を示しておるというふうなことから、この問題は何とかひとつ一般が期待をしておるような方向に好転するのじゃないかと思っていたのですが、あとでこの話を総合してみますと、そうじゃない。払い下げなんかしなくてもいいのだ、安い賃貸料でもって貸してやるからいいのだというふうな、そういう内容ではなかったかというふうに、いまさらながら総理大臣や文部大臣に何か不満を感ずるようなそういう経緯もあったわけです。そういう中からいろいろ探索をしてみますと、総理大臣が犬丸社長とも会っております。あるいはこれはそうだと想像されるので確認をしたわけじゃないのですが、何か犬丸社長と姻戚関係の有力な人が総理大臣に会っている。そういう者が敷き地払い下げに待ったをかけたというのは、帝国ホテルを何とか保存をする、あるいは移築をする、そういうことにかけて待ったでなくて、そんな高い金を出さなくても安い賃貸料でもって借りていけるのだというふうなものがあったのではないかという憶測まで出ているわけなんですよ。こういうことについて御存じであるかどうか、委員長にお答え願いたいと思います。
  71. 稲田清助

    稲田説明員 ただいまの国有財産の財務的の点につきましては、はなはだ遺憾ながら私承知をいたしておりません。
  72. 小林信一

    小林委員 私がそれにつけ加えて申し上げましたのは、そういう機会というものは、七億五千万円——これは大蔵省の問題であって、政府はそれをどうこうすることはできないかもしれぬけれども、金がない財政の中でそんな七億五千万に文化財は何とかしてかじりつかなければならぬものだと私は思うのです。したがって、そういう取引の中に文化財保護委員会の努力というものは何か手がかりをつけることが必要じゃないか、すべきじゃないか、その点をしなかったのは残念だったと私が言っているわけですが、それに対しての委員長のお考えを私は聞きたいのですよ。
  73. 稲田清助

    稲田説明員 遺憾ながら、全くその点気がつきませんでした。
  74. 小林信一

    小林委員 そうすると、もうこれで文化財保護委員会の帝国ホテルに対するお考えは大体わかったような気がいたします。残念ながら非常に見通しの暗い気持ちの中でわかったような気がするわけですが、しかし、何とかなるというそういう政治的な手腕もすぐれておる委員長のことですから、一つの期待を持ちたいわけなんですが、当面しておりますこの問題について善処してもらいたいと思うのですよ。というのは、ほかの方たちは口では言っておりますが、実際衝に当たって手を下して帝国ホテルの問題に取りかかっている人たちは、私は「守る会」以外にないと思うのですよ。あるいは財閥がぽんと金を出す、そういう人はあるかもしれない。しかし、日本の建築、日本の美術工芸、そういう文化財に関心を持って、そうして毎日毎日のように努力をしている人は、やはり「守る会」以外にないと思うのです。その方たちが期限を切ってあなた方に言うものを、委員長は、記録がある、設計図がある、調査資料がある、だからいつでも建てようとすれば建てられる、こう言われますけれども、アメリカからきのうあたり来た人がありますね、何という人か名前は忘れましたが、その人も、何かアメリカへ一部持っていって保存をしたいということを言っているそうですか、これも委員長式にいえば、何もここから石を持っていく必要はないじゃないか、調査資料と写真か何かとっていって向こうへ行ってやればいいわけですが、やはりそれは保存をする人たちには満足ができないものだと思うのですよ。たとえその一部でも現物を入れたものでなければならぬと思うのですよ。だから委員長のお考えはどこにどうあるのか知らぬけれども、この「守る会」の人たちは、いま百カ所にわたって、ここはぜひとも、何か将来金を見つけるか、あるいはそういうことに理解のある人をさがしてどこかに保存をしたいという気持ちでもって折衝しているわけですが、さっき申しましたように、その保存をする場所をきめてくれ、そうして費用は大体五千万円かかるのだけれども、その五千万円をだれが出してくれるか明確にしてほしいということを言われているそうです。私が聞いたところでは、委員長はその点は非常に安心しているようですが、そういう最低の問題について心配するなと言えるかどうか、この際お聞きしたいと思うのです。
  75. 稲田清助

    稲田説明員 私どもその点非常に心配いたしております。心配というのは、できないという見込みは持っておりませんけれども、何らかすみやかにそうした必要古材をいずれかに確保するという方針をきめたい。これは急ぐ問題でありますので、その点いろいろ心配いたしまして、昨日等も関係者ともいろいろ折衝なんかもいたしておるわけであります。今後ともその点についていろいろ配慮をめぐらしたいと思っております。
  76. 小林信一

    小林委員 さっき委員長は、話を持っていけば努力することにはやぶさかでないというお話があったのですが、そういう問題を持っていったらこれに対して善処してくれるかどうか、もう端的に率直なお答えを願いたいと思うのです。いまの委員長のおことばですと、何だかやってくれそうですか、いざということになると逃げられそうな逃げ道をつくっての御答弁のような気がしてならないのです。
  77. 稲田清助

    稲田説明員 「守る会」の方とは、私決して遠く離れているわけではなくて、いままでもしょっちゅう一緒に会合いたしましたり、お電話等の御要求を関係者に伝えたりいたしております。今後ともそうした心得で「守る会」の方々のお志の達成するように、私どもといたしましては極力力を用いたいと思っております。
  78. 小林信一

    小林委員 最初は現地保存というふうなそういうちまたの声を聞いて、私ども何かそういうふうに政府あるいは文化財保護委員会に動いてもらえるのではないかと一生懸命やってみたのですが、いま非常に望みは薄くなって、その一部を残すことすら何となく不安を感ずる気持ちでもってお伺いしたのですが、委員長に敬意を表せば、私の心配は杞憂であって、今後ひとつ善処していただきたい、こういうふうに申し上げたいのですが、私のきょうのお話し合いの中では、まだまだその暗いものは払拭されません。しかし、総理大臣が外国でもってあれだけの言明をし、先般の予算委員会の中でもあれだけのことばを出して、見ていろというようなことを言い、それから文部大臣も非常に熱意を示されておったわけです。いままでの文化財保護委員会との話し合いの中でも、私どもは期待が持たれておったわけなんですが、しかし、そういう大きな夢はなくなってしまって、いまかろうじて一民間の、ほんとうにそのことについて勉強されている人たちの力によって守られるかどうかというような状態に入っておりますが、私は、委員長がそこで気長く待っておるというふうなお話がありましたから気長く待つつもりでありますが、どうかそういう世間一般の期待を裏切らないようにお願いしたいと思います。
  79. 中村庸一郎

    ○中村小委員長 三ツ林弥太郎君。
  80. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林小委員 時間もまいりましたので、簡単に御質問申し上げますが、平城宮跡に関してでございます。先般、私ども現地を見まして、平城宮跡そのものを、国民の歴史的感覚を養成するために日本国民としては絶対的に保存すべきものだというふうに感じておるところでございますが、前の小委員会におきましても、この問題につきましては論議をされました。平城宮跡の保存で、国道二十四号線のバイパス路線変更について、さきの小委員会におきましては、路線を変更するというふうに言われたと思っておるのですが、その後の状況で、まだそれはきまっていないのじゃないかというふうなことが流れておりますので、いまは少なくとも大事なときだろう、かように感じまして、この際、路線変更についての経過と建設省との折衝の状況についてひとつお伺いをいたしたいと思います。
  81. 稲田清助

    稲田説明員 平城宮跡に関連いたしまして、東一坊大路を、予定いたしました国道二十四号線の建設の問題につきまして、いろいろ皆さま方から御心配をいただき、特に現地まで御視察いただきましたことは、まことに私どもありがたく存じております。  先般、剱木文部大臣がこの委員会の席においてお答え申し上げましたとおり、当時におきましては、この東一坊大路を予定せられまして、道路建設予定地を事前に発掘調査をいたしましたところ、井戸であるとか、あるいは宮殿跡ではなかろうかと想像せられまするようないろいろな埋蔵物を発掘いたしました。東一坊大路と考えられました部分が、東のほうの法華寺のほうに相当延びているというようなことを発見いたしましたので、新しい事実に基づきまして、建設省当局に対して、この二十四号線の位置について一応文化財側では了承いたしましたが、さらにこれをあらためて別の計画を立ててもらえないかと折衝中であるということを大臣が御答弁申し上げたと思うのであります。それはそのとおりでありますが、その後奈良県知事、奈良市長、その他地元方々が多数お見えになりまして、万博までにこのバイパスを完了するためには、どうしても路線変更をするわけにはいかない、ぜひ当初承諾したように東一坊大路の再現という計画において了承してくれという御陳述がありました。さらに建設省方面にも、そうした要望が強く申し述べられておるのがその後の状況でございます。私どもといたしましては、なお建設当局に、われわれとしてはこういう重要な事情の変更であり、史跡中最も大事な平城宮跡を傷つけるというようなことがあっては、百年、千年の悔いであるから、ぜひ路線変更を考えてもらいたいということを頼んでおります。頼んでおる状況でございますが、まだ今日までのところ、建設省当局において路線を変更するという御決定はございませんし、なお地元知事等はしきりに従来の計画を要望しておる、こういうことで、私どもとしては、これから先もなお建設当局に要求して、お考えを願いたい、こう思っているのが現状でございます。
  82. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林小委員 いまの経過でわかったのですが、現地の状況で、奈良県のほうは、いわゆる万博との関連で、いままでのところで折り合いをつけたいというような意向が相当強いのじゃないかと私どもは思っているのです。そこで建設省のほうも、いまのところ路線を変更するという考え方は少ないような気がいたすのですが、そういうことについて、現在建設省と折衝中であるから何とも言えませんが、文化財保護のほうも、文部省としても、何とかひとつ新たな決意でこれはどうしても保存整備しなければならぬところだと思うのです。そういうことで進めてもらいたいと思うのですが、さらに文化財保護のほうの当局の決意について所信を伺っておきたい。
  83. 稲田清助

    稲田説明員 平城宮跡は、あらゆる史跡中の最も重要なものであり、従来非常に多くの国費を投じまして整備してまいったものでありますので、これを将来きずものとして残すというようなことがあってはならぬと非常に心配いたしております。ただいまお話しのように、私どもとしても極力この路線変更は要望いたしたいと思うのでございますが、諸先生におかれましても、その点について十分御配慮をいただきたいとお願いをいたす次第でございます。
  84. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林小委員 それから前の委員会でも出ましたが、問題は文化財予算確保の問題です。いま御説明があって、ことしは六十八億で、当然な要求をされたということでありますけれども、何といっても予算がないということになると、保存整備というのがなかなか困難になってくると思うのです。それで、いま財政硬直化とかいろいろ言われておりますが、現時点においての予算要求は一体どういうふうになっているのか、お答えを願いたいと思います。
  85. 福原匡彦

    福原説明員 ちょうどいま予算編成の直前でございますので、私どもまだ大蔵省の考え方を聞いておりませんので、大蔵省の考え方を聞きました上で、個々具体的にそれぞれ復活折衝その他をいたしたいと思っておりますが、大まかに申しまして、何と申しましても、先ほど御質問がございました国分寺史跡等の問題、こういう全国にわたりまして史跡、埋蔵文化財の破壊が行なわれようとしておりますので、これを、この破壊から保護するというのが、いまの文化財保護行政での一番重点でもあり、予算的にも、これを何とか保護し通すためには買い上げ予算並びにその環境整備予算というものを十分に用意しておきませんと、手おくれになるという事態がございます。そういう点から考えまして、その買い上げ並びに環境整備につきましては、本年度の予算の数倍にのぼるものを予算要求しております。数倍というものが、現在の財政硬直化といわれております中にあって、どの程度の伸びを認めてもらえますか、この辺が私ども一番の関心事だと思っております。あといろいろな点がございますけれども、第一位として一つと言われればその点でございます。
  86. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林小委員 最後に一つ史跡保存についてですが、私、先般災害対策特別委員として新潟の災害を実は見に行ったわけですが、史跡が土砂で非常に荒れていて、これはたいへんなことだと実は心配をいたしておったわけですけれども、そういうような災害を受けた史跡保存についてはどういうふうな措置といいますか、何かやられているかどうか。
  87. 福原匡彦

    福原説明員 本年度豪雨の災害が二回ございました。三ツ林委員のいらっしゃった新潟のほうでございますが、最近予備費の中からそれを捻出することがきまりまして、渡邊家の住宅のほうも、庭園のほうにつきましても、予算的な措置ができたわけでございます。
  88. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林小委員 ありがとうございました。
  89. 中村庸一郎

    ○中村小委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後零時十分散会