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1967-12-21 第57回国会 衆議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年十二月二十一日(木曜日)    午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 本名  武君    理事 草野一郎平君 理事 熊谷 義雄君    理事 高見 三郎君 理事 森田重次郎君    理事 赤路 友藏君 理事 石田 宥全君    理事 中村 時雄君       小沢佐重喜君    坂村 吉正君       田澤 吉郎君    田中 正巳君       丹羽 兵助君    西村 英一君       野呂 恭一君    藤田 義光君       湊  徹郎君    粟山  秀君       伊賀 定盛君    角屋堅次郎君       兒玉 末男君    佐々栄三郎君       柴田 健治君    島口重次郎君       美濃 政市君    神田 大作君       斎藤  実君    樋上 新一君  出席政府委員         農林政務次官  安倍晋太郎君         農林省農林経済 大和田啓気君         局長         農林省農政局長 森本  修君         農林省畜産局長 岡田 覚夫君         水産庁長官   久宗  高君  委員外出席者         総理府特別地域         連絡局参事官  加藤 泰守君         外務省アジア局         外務参事官   吉良 秀通君         農林大臣官房企         画室長     小沼  勇君         農林省農地局管         理部長     中野 和仁君         水産庁生産部長 三善 信二君        専  門  員 松任谷健太郎君     ――――――――――――― 十二月二十一日  委員矢尾喜三郎辞任につき、その補欠として  角屋堅次郎君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員角屋堅次郎辞任につき、その補欠として  矢尾喜三郎君が議長指名委員に選任され  た。     ――――――――――――― 十二月二十日  飯田営林署本谷製品事業所存続等に関する請  願外一件(原茂紹介)(第一三五三号)  土地改良職員給及び事務費に対する財政措置  に関する請願植木庚子郎君紹介)(第一四五五  号)  同(世耕政隆紹介)(第一六五七号)  愛知用水公団労働者処遇に関する請願赤路  友藏紹介)(第一四五六号)  同(太田一夫紹介)(第一四五七号)  同(加藤清二紹介)(第一四五八号)  同(穗積七郎紹介)(第一四五九号)  鹿児島藺牟田漁港整備に関する請願池田  清志紹介)(第一四七六号)  農業者年金制度確立に関する請願山内広君  紹介)(第一四八一号)  生鮮食料品等流通近代化資金制度樹立に関する  請願池田清志紹介)(第一六三〇号)  同(田原春次紹介)(第一六三一号)  同(多賀谷真稔紹介)(第一六三二号)  同(楢崎弥之助紹介)(第一六三三号)  同(山本弥之助紹介)(第一六三四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十二月二十日  と畜場の統合整備促進に関する陳情書  (第二五九号)  土地改良事業促進に関する陳情書  (第二六〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  農林水産業振興に関する件  請 願  一 生鮮食料品等流通近代化資金制度樹立に関    する請願上村千一郎紹介)(第七七号)  二 同(野田卯一紹介)(第七八号)  三 同(大柴滋夫紹介)(第二二三号)  四 同外二件(岡田利春紹介)(第二二四号)  五 同(小峯柳多君紹介)(第二二五号)  六 同(武藤嘉文紹介)(第二二六号)  七 土地改良職員給及び事務費に対する財政    措置に関する請願森田重次郎紹介)(第    七九号)  八 鹿児島茅屋漁港施設整備に関する請願    (池田清志紹介)(第二三〇号)  九 中小企業を圧迫する農協事業是正に関す    る請願佐々木秀世紹介)(第三二六号) 一〇 生鮮食料品等流通近代化資金制度樹立に関    する請願佐々木秀世紹介)(第三二七号) 一一 同(篠田弘作紹介)(第三二八号) 一二 同(中川一郎紹介)(第四四四号) 一三 土地改良職員給及び事務費に対する財政    措置に関する請願瀬戸山三男紹介)(第    四四二号) 一四 公立文教施設に対する国有林野貸付料減免    に関する請願阿部昭吾紹介)(第四四三    号) 一五 土地改良職員給及び事務費に対する財政    措置に関する請願渡海元三郎紹介)(第    五一二号) 一六 同(田村元紹介)(第七五六号) 一七 公立文教施設に対する国有林野貸付料減免    に関する請願松澤雄藏紹介)(第五一三    号) 一八 中小企業を圧迫する農協事業是正に関す    る請願松前重義紹介)(第五一四号) 一九 直江津港植物検疫業務拡充に関する請願    (井出一太郎紹介)(第六二二号) 二〇 同(小川平二紹介)(第六二三号) 二一 同(小沢貞孝紹介)(第六二四号) 二二 同(吉川久衛紹介)(第六二五号) 二三 同(中澤茂一紹介)(第六二六号) 二四 同(羽田武嗣郎紹介)(第六二七号) 二五 同(林百郎君紹介)(第六二八号) 二六 同(原茂紹介)(第六二九号) 二七 同(平等文成紹介)(第六三〇号) 二八 同(増田甲子七君紹介)(第六三一号) 二九 乳製品輸入差益金による酪農振興特別助成    事業に関する請願井出一太郎紹介)(第    六三二号) 三〇 同(小川平二紹介)(第六三三号) 三一 同(小沢貞孝紹介)(第六三四号) 三二 同(吉川久衛紹介)(第六三五号) 三三 同(中澤茂一紹介)(第六三六号) 三四 同(羽田武嗣郎紹介)(第六三七号) 三五 同(原茂紹介)(第六三八号) 三六 同(平等文成紹介)(第六三九号) 三七 同(増田甲子七君紹介)(第六四〇号) 三八 生鮮食料品等流通近代化資金制度樹立に関    する請願池田清志紹介)(第七五四号)三九 同(南條徳男紹介)(第七五五号) 四〇 鹿児島北伊佐かんがい排水事業促進に関    する請願池田清志紹介)(第七七三号) 四一 大口市園田地区農免道路建設に関する請    願(池田清志紹介)(第七七四号) 四二 鹿児島県姶良郡の農業対策に関する請願    (池田清志紹介)(第七七五号) 四三 生鮮食料品等流通近代化資金制度樹立に関    する請願金子岩三紹介)(第八五〇号) 四四 同(小泉純也君紹介)(第八五一号) 四五 同(進藤一馬紹介)(第八五二号) 四六 同(鈴木善幸紹介)(第八五三号) 四七 同(田川誠一紹介)(第八五四号) 四八 同(田中六助紹介)(第八五五号) 四九 同(三原朝雄紹介)(第八五六号) 五〇 同(山崎巖紹介)(第八五七号) 五一 同(神田博紹介)(第九三六号) 五二 (松野頼三君紹介)(第一〇九九号) 五三 同(西岡武夫紹介)(第一一〇〇号) 五四 同(愛知揆一君紹介)(第一三一一号) 五五 同(荒木萬壽夫紹介)(第一三一二号) 五六 土地改良職員給及び事務費に対する財政    措置に関する請願秋田大助紹介)(第九    三七号) 五七 同(坊秀男紹介)(第九三八号) 五八 同(早川崇紹介)(第一三〇八号) 五九 同(笹山茂太郎紹介)(第一三〇九号) 六〇 同(中谷鉄也紹介)(第一三一〇号) 六一 飯田営林署本谷製品事業所存続等に関す    る請願原茂紹介)(第九三九号) 六二 食糧管理制度堅持に関する請願谷口善太    郎君紹介)(第一二五三号) 六三 東京営林署猿江貯木場の移転に関する請願    (有島重武君外四名紹介)(第一二五四号) 六四 中国産食肉の輸入禁止解除に関する請願外    十一件(藏内修治紹介)(第一二五五号) 六五 直江律港の植物検疫業務拡充に関する請願    (下平正一紹介)(第一二七五号) 六六 乳製品輸入差益金による酪農振興特別助成    事業に関する請願下平正一紹介)(第一    二七六号) 六七 飯田営林署本谷製品事業所存続等に関す    る請願外一件(原茂紹介)(第一三五三号) 六八 土地改良職員給及び事務費に対する財政    措置に関する請願植木庚子郎君紹介)(第    一四五五号) 六九 同(世耕政隆紹介)(第一六五七号) 七〇 愛知用水公団労働者処遇に関する請願    (赤路友藏紹介)(第一四五六号) 七一 同(太田一夫紹介)(第一四五七号) 七二 同(加藤清二紹介)(第一四五八号) 七三 同(穗積七郎紹介)(第一四五九号) 七四 鹿児島藺牟田漁港整備に関する請願    (池田清志紹介)(第一四七六号) 七五 農業者年金制度確立に関する請願山内    広君紹介)(第一四八一号) 七六 生鮮食料品等流通近代化資金制度樹立に関    する請願池田清志紹介)(第一六三〇号) 七七 同(田原春次紹介)(第一六三一号) 七八 同(多賀谷真稔紹介)(第一六三二号) 七九 同(楢崎弥之助紹介)(第一六三三号) 八〇 同(山本弥之助紹介)(第一六三四号)      ――――◇―――――
  2. 本名武

    本名委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。美濃政市君。
  3. 美濃政市

    美濃委員 ことしの八月、農業構造政策基本方針というものを出したわけですが、これを昭和四十三年度において、予算的にあるいは法律的に進めようとしておるわけです。   〔委員長退席高見委員長代理着席〕 現時点において、地帯別経営規模所得目標、あるいはその他七つ政策を出しておりますが、この政策に対して、予算的、法律的に大体どのように進めておるか、一応状況の御説明をお聞きいたしたいと思います。
  4. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 自立経営育成協業等集団的生産組織育成助長を総合的に推進しまして、農業経営近代化をはかるということが農政中心課題でありますが、そのために、経営規模拡大をねらいといたしまして、農地賃貸借規制緩和農地制度の改善を行なう。さらにまた、上向発展を目ざしております農業者資金需要を包括的に充足しまして、融資の円滑化をはかるための総合資金制度創設、あるいは協業等集団的生産組織育成助長転職円滑化措置充実年金制度活用、あるいはまた農業振興地域制度創設等、各般にわたる政策を、目下総合的にかつ強力に推進したいと考えておるわけでございます。  このため、現在大蔵省に対しまして必要な予算要求しております一方、制度面につきましては、おおむね昭和四十三年度共体化目標にいたしまして、学識経験者をはじめ関係者の意見を聞くとともに、次期国会にこれに関連する諸法案提出する予定になっております。  詳細につきましては、事務当局から御説明を申し上げさしていただきます。
  5. 小沼勇

    小沼説明員 御説明申し上げます。  ただいま政務次官から御説明ございましたように、構造政策につきまして各局がそれぞれ担当し、七本の柱につきまして制度の作成あるいは予算作業等を進めておるわけでございます。  第一の柱の農地流動化促進につきましては、農地局におきまして、過般来学者、学識経験者を集めまして研究会を開催し、基本的な考え方について検討を進めてまいっておるわけでございまして、目下その成案を急いでおるという状況でございます。  また、第二の柱でございます資金融通制度充実につきましては、経済局におきまして、総合資金制度を作成すべく現在作業を進めておるという状況でございますが、なお、関連いたしまして予算措置も講じて、大蔵省要求をしておるという状況でございます。  それから、第三の柱でございます協業等集団的生産組織助長につきましては、制度面農協法改正等の問題も検討しておりますが、なお、集団的な技術を共同で導入する等のやり方につきまして、また中核農民を養成するということも含めまして予算要求しておる状況でございます。  それから、第四の柱の農用地の整備及び開発造成につきましては、基盤整備は、従来の土地改良事業圃場整備事業あるいは草地改良事業、それぞれの分野にわたりまして予算要求しておるわけでございますが、特に、今後の畜産の問題もございますので、草地造成あるいは建て売り牧場方式拡充等についても予算要求していくという態勢でおるわけでございます。  それから、第五の柱でございます年金制度活用転職円滑化制度充実につきましては、年金制度につきましては、現在研究会を持ちまして研究を続けておる状況でございますが、できるだけ早くこれの結論を得たいということで、農政局でその作業を進めておる状況でございます。  なお、厚生省との調整問題等も今後残っておるわけでございます。なお、転職円滑化措置につきましては、労働省と打ち合わせをしておるわけでございますが、農民農業をやめていく場合の職業訓練なりあるいは転換給付の場合の条件といたしまして、土地を若干持っていてもよろしいという自留地問題等がございますが、これらにつきましても、労働省調整をしておるという状況でございます。第六の柱でございます機械化促進経営技術普及指導については、機械化促進についての予算要求、あるいは、特に今後の田植え機、それから稲作を含めまして種々の刈り取りの段階機械化されることがきわめて重要でございますので、その段階研究開発普及を急ぐべきであるということで、試験研究について予算要求するとともに、また農業改良普及事業が、今後の技術経営の進展に伴います高度化に従いまして、それを十分指導し得るような実力を持つ必要がございますので、これにつきまして改良普及事業充実をはかるべく、地方専技室設置等につきまして予算要求しておるという状況でございます。それから農村の青年の研修につきましても、従来も国内留学等制度がございますが、さらに特別にもっと充実した研修をし、能力の開発をし  ていきたいということで、これも予算要求をしておるという状況でございます。  第七の柱でございますが、これは農業振興地域整備ということで今後——片方都市計画法案等が出ておりますけれども、農村地域農業振興とその地域の保全をはかるという考え方で、目下それを制度としてつくるように作業を進めておるという状況でございます。  簡単でございますが、以上、進捗状況をお話し申し上げました。
  6. 美濃政市

    美濃委員 ただいま状況の御説明を願ったわけですが、どうもちょっと抽象的なので、もうすでに時点も通常国会開会直前でありますし、これらの政策を進めると、農地法改正以下かなり法律改正あるいは新たな法律というものがこの中に予定されておるわけです。たとえば、農地法あるいは農協法改正も出ておるわけですね。それから年金法……。こういうものを大別して、大体準備できて、次の通常国会にどれどれの法律が出せる、どれどれは出せない、はっきり出せないと言わなくてもいいが、困難なら困難だろう、全部出すなら出す、これをあまり長くなくていいですから、簡単にお聞かせ願いたいと思います。
  7. 小沼勇

    小沼説明員 簡単に申し上げますが、農地流動化につきましては、農地法改正を主として、賃貸借の諸条件規制緩和という考え方中心にいたしまして、通常国会提出をいたしたいという考え方でおるわけでございます。  それから資金融通制度につきましては、これは公庫法改正が当然必要でございますが、これも次期通常国会提出をいたしたい、かように考えておるわけでございます。  それから農協法改正も、経営管理を受託するという問題に関連して必要かと思いますが、これにつきましては、なお省内で調整中でございます。  それから年金制度につきましては、まだ研究会結論が出ておりませんので、次期に出し得るかいなか、これについては未決定でございます。  それから、地域振興整備関係法律案につきましては、現在内容を固めつつございますので、これも次期通常国会提出いたしたい、かように考えて進めておるわけでございます。
  8. 美濃政市

    美濃委員 それでは一、二この制度についてお尋ねいたしたいと思いますが、まず第一に、この制度は一その前に、この政策所得目標あるいは地域別経営規模、これが大体煮詰まっておると思うのですが、その概要を簡単でよろしゅうございますから……。
  9. 小沼勇

    小沼説明員 お答え申し上げます。  構造政策の推進につきまして検討してまいりました過程で、いろいろと今後どういうふうに農業経営が進展するであろうかということの検討も進めてまいりまして、それを基礎にいたしまして構造政策としての方向を詰めてまいったわけでございますが、さきに国会にも報告いたしました「農業の動向に関する年次報告」がございましたが、その中で、現在約九%の自立経営、それから協業組織なり協業経営、これは部門協業経営もございますし、全面協業経営もございますし、また、生産組織といわれるかなり協業経営以前の段階のものもございますけれども、そういうものがかなり多く発生をしておるわけでございますが、それらを含めまして今後の農業の展開のしかたということをくふうしてまいったわけでございます。その場合に、九%の自立経営農家約四十万戸というふうに考えられますが、今後の考え方としては、やはりその自立経営農家中心になりまして、農業生産の中での相当多くの割合を占めるように持っていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。  なお、地域別にどうかという問題もございますが、これらにつきましては、それぞれ年次報告で、地域的にどういうふうに自立経営が伸びてきておるかということは実績が出ておるわけでございますが、それを足場にいたしまして、今後、それぞれの地域に応じてそれぞれの制度を円滑に運用していくという考え方で進めたい、かように考えておるわけでございます。
  10. 美濃政市

    美濃委員 所得目標ですね。所得目標を出したときにある程度——アウトラインは八十四万ですか、そう表現しておったわけですが、煮詰まりは八十四万そのままで煮詰めてきておるのですか。
  11. 小沼勇

    小沼説明員 年次報告の際には、自立経営の最下限が八十三万円でございましたのですが、現在計算してみますと、四十一年になりますと大体九十二万円ぐらいに下限が上がってきております。今後十年後、二十年後にどういうふうになるかということは、にわかに算定はしがたいのでございますけれども、経済成長の度合いを考えていきますと、相当やはりその所得下限は上がってくる。自立経営というものもやはり他産業経済成長率に合わせて、他の産業従事者と均等するという考え方になりますと、たとえば十年間で年率七%ずつ上がっていきますと、大体百六十一万円ぐらいになるというふうに見ておるわけでございます。
  12. 美濃政市

    美濃委員 次にお尋ねをいたしたいわけですが、現在の経済状況を見ておりますと、農業部門構造政策だけで、先ほどお話のありました所得目標に達するとは考えられないわけですね。ということは、非常に国際経済流動化しておりまして、一つの例ですが、おとといの夜ですか、NHKテレビカンボジア状況というのが出ておりましたが、国内生産の米はキロ九十円ぐらいである。しかしながら、外国製品となると石けん一つが千五百円だ。だから、石けんだとか衣料だとかいうものは、カンボジア国内では高ねの花なんです。なぜこうなるのかということなんですが、レート固定レートとして据え置いて、国際間の通貨変動かなり激しくなってきておりますね。こういう現象を見ますと、外国から入る農産物が安いこの裏には、単にコストだけの問題ではなしに、そういうレート固定レートとしておく、国際間の通貨かなり変動しておる、過熱して行き過ぎたポンドは切り下げをやったというような、こういう国際間の流動化の中で農業の位置づけというのは、ただいま打ち出したこの七つ政策を強力に進めるだけでは、とても農家経営安定あるいは所得目標確保ということが、この流動化の波の中で輸入政策とり方のいかんによっては、国内農業は全部崩壊してしまう。輸入対象にならない農産物は別ですけれども、輸入対象になる農産物はもう全面的に崩壊する。かなりつくっておりました大豆、なたね等崩壊寸前ですね。  こう考えますと、やはり国内農業維持の中で、国際収支の最近の悪化とあわせて自給化ということ、たとえば農安法等改正して、需給事情を勘案しというようなことを除いて、主要農産物は再生産確保一本の内政政策確立しないと、この七つ政策だけを進めても、これは最終的には強いものがうんと大きくなって、少数の農家が生き残るということは可能であろうけれども、こういう政策を進めるということに、私は疑義を感ずるわけです。ただ政策だけで進めていこうというのは疑義を感ずる。もちろん、価格政策をとらないという考えではないということも私どもは了承しておりますけれども、そのとり方ですね。とり方が、財政硬直や何かを理由にして、たとえば米の価格でもスライド制を考えるとか、いろいろの状況がいま出てきております。いわゆる国内農産物価格支持政策後退という傾向が出てきておるわけですね。これを後退させれば、この七つ政策だけを進めて、そうして所得目標確保をはかる、あるいは他産業との所得均衡をはかるということは、国際情勢流動化の中で、輸入対象農産物についてはそういうことになっていかない。やはりこれにもう一本価格政策をとらなければ、今回いろいろいわれておりますが、後退意味するようなこの政策だけではいけないと思うのです。この点の考え方をお聞きしたいのであります。
  13. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 おっしゃるように、構造政策だけでは農政の基本的な確立はできないと思います。やはり価格政策というものも農政基本目標一つでなければならないと思うわけであります。   〔高見委員長代理退席草野委員長代理着席〕 ただ、構造政策あるいは生産政策を推進することによって、農業所得積極的拡大をはかっていくというところに大きな意味があるわけですけれども、構造政策につきましては、相当やはり時間もかかるわけでございます。そこで農業者、非農業者のそうしたいままでの格差を是正していくという意味からいきましても、価格政策を推進していくということはどうしても必要なことではないかと私たちは考えております。
  14. 美濃政市

    美濃委員 そうすると、ただいまの政務次官の御答弁は、いまのいろいろ出ております諸情勢の中でも、そういういわゆる価格政策に対する生産確保けじめをつけていく、四十三年度においても勇気を持ってけじめをつけていくのだ、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  15. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 そういうふうに考えております。
  16. 美濃政市

    美濃委員 次に、農地法につきまして、これはいずれ法案提出されてからこまかい問題は質疑の中でできるわけでありますが、その煮詰め、あるいは提出前にちょっとお尋ねしておきたいわけです。  まず、第一番に打ち出した政策を見ると、非常に賃借流動に力を入れておるようでありますが、賃借流動というのは、私は全国的に見て、こういう構造政策を進める上のウエートは、ここに表現しておるほど、現実に起きてくるであろう可能な状況が高くないと思う。もう一つ小作料の統制を撤廃する、そうしてそういう耕作権、いわゆる賃借の規定をゆるめる、そういう不安定構造の上に立って、設備投資をして、そういう不安定構造の上に立って、私は農業振興できないと思うのです。そういう法律改正をしても、起きる面積も少ないであろうし、またかなり面積があったとしても、そういう不安定な構造の上に立って長期的な自立経営の計画が立たないのではないか、こう思うわけです。これが第一点。  それから第二点は、この出された文書を見ますと、そういうふうに法律をゆるめて、農業委員会等の紛争調停制度創設するというのでありますが、私も農地委員会発足のときから、解放当時から村の農業委員長を十八年勤続してやってきたわけです。この農地紛争というのは、非常に利害相反する熾烈な条件が当該者に起きるわけでありまして、法律の裏づけがあって調停は可能でありますけれども、今回計画しておるように、法律をゆるめて農業委員会の調停制度創設するといっても、裏づけになる法律の根拠がゆるんでしまっておって、市町村農業委員会が調停するといっても、私はこれは調停にならないと思います。これは調停する能力を失ってしまいます。バックする法律があって初めて調停はできるのであります。バックする法律を、今回計画しておるようにゆるめてしまって、市町村農業委員会等に紛争調停制度創設するんだ、これは現実には気休め政策でありまして、私はできないと思います。私の経験から言うと、こういう法律をつくっても現実はそうならない。気休めになるのではないか。  それから、第三点としては農業法人の関係でございますが、農業法人は積極的に進めるといいますが、一つの事例を申し上げますけれども、この間も北海道の中で問題になっております例として、これは一つの具体的問題です。北海道にいなせ農園というのがあります。これは私ども、観光事業の背景をつくる農業であって、まじめな生産法人ではないのだ、まじめな農業生産を企図するものではないのだということを指摘しておるわけですね。それを、法律上はやはり農業生産法人として認めて、農林漁業の長期資金も一部入っておる。近代化資金も入っておる。今回、何か聞くところによると、破産宣告を受けていま整理中だということを聞いております。どうしてああいうものを農業法人と認めて、そうして多額の補助金を投入しているのか。そうしてまじめな農業法人が申請してもなかなか許可しない。国立公園の中をあのように貸し付けて開放し、そうして擬装農業法人を、正当な、まじめな農業法人以上に優遇するような政策が行なわれておるわけです。これは、今後ああいうものが農業法人なんだという位置づけになれば、いろいろのものが出てくると思うのですね、農業法人をめぐって。しかし、農地法改正の中で一体農業法人というものは、真の農業振興に、私は農業の協同化あるいは生産法人というものは、これからの近代的農業をつくる上の大切なことだと思うのです。しかし、ああいうふまじめな、でたらめなものが、まじめな農業生産法人以上に優遇される。しかし、これは農業生産じゃないのでありますから、主体をなしておる観光事業が、企図したようにうまくいかぬければ倒産するわけですね。まじめな農業法人であれば、観光事業のいなせらんどというものがうまくいかなかったからといって、農業法人も倒産するというものじゃないわけですね。どうしてああいうものに国の資金を入れたりなんかしておるか。私は、この問題はその経過等をもう少し具体的に調べたいと思っておりますが、しかし、きょうの場合極端にこの事象をどうこうというのでなくて、これは後日の問題にいたしますけれども、ああいうふまじめなものを農業法人として、金融公庫資金など政府資金を貸し付けたり、助成の対象にしたりするという行為、こういうものをなぜやったかと私は言いたいですね。政治の中で、行政の中で、なぜああいうものを取り上げたのか。今後ともああいうものをああいうふうな形で農業法人として取り上げていくのか。それが農業法人の姿だというのであれば、いろいろの法人が出てくると思います。私も、やれるのであればひとつやってみようかと思いますが、どうしてああいうものを農業法人として政治の上で取り上げたのか。そのけじめをどうつけようとするか。今後ああいうふまじめなものが起きないようにするため、そうしてまじめなものを真に育成する姿勢というものはどうなければならないか、これをひとつお聞きしておきたい。
  17. 小沼勇

    小沼説明員 三点の御質問並びに御意見でございますが、農地法改正につきましては、先ほど御説明申し上げましたように、農地局中心検討して法案の作成を急いでおる状況でございますが、基本方針で考えましたところは、賃貸借規制緩和がすべてというふうに考えておりませんで、やはり土地所有権の移動による規模拡大ということが非常に重要なことであろう。しかし、それのみではなくて、現在の地価の情勢あるいは一方におきますいわゆる請負耕作というふうな形で出ておるいろいろの賃貸借に近い形のものがございますけれども、そういうものを含めて、全体の情勢を勘案いたしますと、やはり土地の所有権の移動とあわせてこの賃貸借による流動化もはかっていく必要がある。それについては、現在農地法があまりにきびしく規制をしておるという点がございますので、このところを条件緩和しようという考え方でございます。  それから農業委員会につきましても、いろいろと農地の移動につきましてあっせん等の事業を、従来もやり得る体制にあるわけでございますけれども、今後も農業委員会で、この農地流動化について役割りを持っていただきたいということで、この方針では考えております。それにつきまして、現在農地法改正の中で、どういうふうに農業委員会に活動してもらうかということについて検討を進めておるという状況でございます。  法人につきましては、これは具体的な問題ではなくて、一般的な問題でお答え申し上げますが、法人制度ができたときに、これは自作農主義のワク内で大体考えていくという基本線がございまして、従事制限要件とか出資要件とかいろいろございます。そういうことについて、現在の実際に動いておる法人の状況は必ずしも実態とマッチしないという面も出てきておりますので、これはやはりやや緩和をして、もっと法人自体が活発に活動できるようにいたしたいというふうに考えまして、これにつきましても、現在農政局検討を進めておるという状況でございます。
  18. 美濃政市

    美濃委員 時間の関係で、先ほど申し上げたいなせ農園等の問題は、起きておる事象については、またさらに精密に調査して次の機会にしたいと思いますが、この時点における一つの見解を聞いておきたいと思います。いなせ農園のような性格のものが、正しい農業生産法人であるといまでも認定しておるのかどうかというこの一点だけ聞いておきたいと思います。私どもは、架空の農業法人であって生産法人でないと考えておるのですが。
  19. 小沼勇

    小沼説明員 お答え申し上げます。  私は、いなせ農園の実態についてよく承知をしておりませんので、後ほど調べまして、関係局のほうからお答え申し上げます。
  20. 美濃政市

    美濃委員 では、次に資金融通制度について、お尋ねをいたしたいと思います。  資金融通制度についてまず第一点としてお尋ねしたいことは、いろいろの状態で開拓者、あるいは連年災害が起きた北海道、東北等に、特に北海道ですが、この固定化負債がかなり多いわけです。これは構造政策の前提処理として負債整理をやらなければ、構造政策に乗ってこないのであります。また、これを整理して乗せれば乗るという見通しも私どもあるわけですが、しかし、どうもこの構造政策の前提条件である負債整理というものに対して、うしろ向きだという解釈で、それを処理して次の態勢に向かわすという負債整理の制度的な意識が非常に低いわけですが、これはやはり国の制度資金で長期低利のもので一応たな上げをしてやらないと、次の段階へ進めないという状況にあるものがかなりあるわけですが、この政策を、こめ構造政策の前提条件としなければならぬと思うのです。一応北海道の負債整理は、連年災害等についても一部政策的に発生をしておるのでありますが、どうも非常に硬直をして、最終決定を見るときには、起きておる現象の四〇%救済できるのか、あるいは五〇%救済できるのか、非常に後退して、だんだんと事務段階で審議しておる過程で縮んでくるのですが、これは一体どういうことなのか、これをお尋ねしておきたいと思います。
  21. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 北海道の負債の額が内地の農家に比べて相当多額であって、その負債の整理をうまくやらないと、北海道の農業が次の段階に伸びがたいということは、私もそのとおりであろうと思います。したがいまして、これは相当時間をかけて議論をいたしたことでございますけれども、北海道の負債整理につきましては、すでに数年前に自作農維持資金を使いまして一度整理をしたわけでございますが、連年の災害に基づいてまた新しい事態が起こってまいりましたので、いままでの負債整理の規模に比べますれば、北海道の負債が個々の農家について相当多額にわたっているという事実の上に立って、一農家当たりの自作農維持資金の融通額につきましても相当多額のものを貸すことができるように、現在考えておるわけでございます。何せ北海道の農業の特殊性あるいは北海道の農家の負債の特殊性、いわばこれにさきますところの公庫資金の額も多額にわたりますので、最終的な詰めにおいて多少の時間がかかっておりますけれども、ごく近いうちに最終的な取りまとめが済んで、これを通達をいたすことができるというふうに考えております。いまお述べになりましたように、だんだん事務当局で折衝している間に、実態に合わないように縮小されていくというお話がございましたけれども、私どもは縮小して、北海道の農業の負債整理にとって非常にマイナスになるような形で、この問題を終わらすつもりは決してございません。
  22. 美濃政市

    美濃委員 仮定の質疑でございますから、縮小するような現象が出てくればそのときにいたしますから、きょうはあまり深追いをしないつもりです。  次に、開拓者のほうですが、開拓者の状態を見ますと、どうしても開拓者負債整理法というような考え方で新たな法律をつくるか、どの制度でやるか、これは別としても、全国の、二十年間苦労を続けてきた開拓の現況を調査してみますと、どうしても既存農家よりも平均して負債の額は多い。したがって、この状況から立ち上がらすということは、相当やはり思い切った負債整理を要する。まず前提作業を要する。総体は、大体生産性においても、やはり二十年経過しておるけれども、私の調査した範囲では、構造の劣悪条件という点は別といたしまして、十アール当たりの生産性の比較をしてみても、まだ若干落ちる。しかし、いま全国で、二十年間苦労してきた現在の開拓者の人は、いずれも農業に定着したいという意識で一生懸命にやっておる。これをやはり自立経営に持っていくには、思い切った特別の負債整理を必要とする。それから、新振興計画なんていうものを立てておりますが、ほんとうにそういう政策を立てても、初めは、少し思い切ってやるようなアイデアで意識的に事務当局は取っ組んでおっても、ああでもないこうでもないと言っておるうちに、財政関係や何かに縛られて、でき上がったものを見ると、帯に短したすきに長し、やっても中間措置みたいなもので、抜本的にこれでやれるんだという位置づけをするだけの基本政策が立たないところに、私は問題があると思うわけであります。これらの政策はどうしても四十三年度においてすみやかに立ててやらないと、二年も三年もずらしていくと、さらに困難になっていくと思うのです。どのように取っ組もうとしておるか、お聞かせ願いたいと思います。
  23. 中野和仁

    ○中野説明員 お答え申し上げます。  負債整理の問題と開拓農家の営農振興の問題でございますが、負債整理の問題につきましては、北海道につきましては、先ほど経済局のほうからもお話がございましたように、一応開拓農家も含めまして手を打つということになっておるわけでありますが、政府資金を終戦後かなり融資しておりまして、その額も、おそらくどの開拓農家も半分以上を越えておると思います。これにつきましては、かつて開拓農家の営農振興上非常に問題があるということで、条件緩和のための法律を出して一斉にその条件緩和したことがあるわけでございます。その後、地域によりましては冷害等もありまして、かなり問題があるということで、われわれといたしましては北海道につきましては、先ほど申し上げましたような負債整理の進め方を一方でやりながら、全国的に旧制度の開拓についてもだんだん最終の段階になってきておりますので、一体負債の状況がどういうようになっておるかということを、来年度予算要求をいたしまして一斉に調査をいたしてみたい。その結果によりまして、どういうふうにそれを持っていったらいいかということを現在考えております。  それから営農振興の問題につきましては、先ほどお話がございましたように、政府の何らかの手を差し伸べれば営農が振興できるという農家につきまして、昭和三十八年度から五ヵ年計画をもちまして、中庸農家の水準に達することをまず第一段階目標としてやってまいったわけであります。それが四十二年度で全体の農家、たしか五万八千戸だと思いますが、開拓農家につきまして認定を終わりまして、終わったあと数年をかけまして融資をやっていくということでございます。ただ、五年の間にいろいろ問題が出てきておりまして、すでに一部農林省といたしましても当初の計画につきまして、たとえば、当時、家計の事情あるいは基幹になる労働力であります主人が病気だというような農家につきましては、新しく計画を立てさせるとか、あるいは負債があるためにできないものにつきましては自創資金でめんどうを見るとか、若干の手直しをやってきたわけであります。これにつきましても、先ほど申し上げました予算要求をなるべく通しまして、それによりましてその実態がどうなっているかということも、あわせて調査をいたしてみたいというふうに考えております。
  24. 美濃政市

    美濃委員 いままでのやり方を見ると、開拓政策その他負債整理を見ても、例を申し上げると、こういう政策というのはやはり根治する切開手術でありますから、起きておる現象をきちっと切開して、化膿部分を摘出してしまうような、手術にたとえますとそういうことをやらなければだめだと思うのです。いままでの開拓の振興対策でも、あるいは開拓に限らず災害等による負債の補完措置等についても、先ほどの手術にたとえれば、ちょっとメスを入れてうみをしぼって、そのまま薬をつけて包帯をしておく。だから全部をやらないわけですから、きちっと摘出手術をしてしまわぬから、根源を残してしまっておりますから、それがすぐまた雪だるまのようになってふくれ上がってくる。いわゆる化膿してくる。何年かたって化膿したら、またちょっとメスを入れて根源を残したままおざなりの始末をつけていく。そのおざなりの始末でかなりのところまでいくわけです。少なくとも六割くらいは始末するが、やはり四割の根源を残す。それが雪だるまになってもう回復できないという問題がある。どうしてこれに思い切って切開手術をやるだけの勇気を持った措置をやらないのか。いままでやってこられた経過は、私の言うとおりで、私の見ておるところは間違いないと思うのです。ああいう思い切ったことをどうして根治するまでやらないのか。政策の手を伸べないのか。それが財政や何かの限界から見て不可能なものだとすれば、これは別でありますけれども、やる気があれば、農林漁業金融公庫全体の中でそこへ重点を置いて、単年度できちっと切開手術をしてしまうべきだ。手に負えぬほどの負債ではないのですからやれることです。  先ほど経済局長の答弁も、そうならないようにやりますと言うけれども、事務処理要領なんかをきめていよいよ最終の段階になると、初め言っておった政策よりも最終の煮詰めが後退してしまう。この後退は、おおよそ事務局段階の煮詰めで後退してくるわけですね、三割も四割も。全然役に立たぬとは私は申し上げませんが、かなり後退したところで、切開手術という意図でなしに、おざなりに理屈をつけて押しつけてしまう。ですから、根源は残っておるからまた再発してくる、化膿してくる。こういうことを繰り返しておるのです。今後の政策としては完全な切開手術、するだけのことをやらなければならぬ。前段にも申し上げたように、国際経済もこれほど流動化してきた。この政策を出したときも、ケネディラウンドや何かで保護政策緩和が問題とされておるという農林大臣の談話要旨をつけてこれを出してきたわけですね。  これは政務次官にお尋ねしたいのですが、切開手術をやるかやらぬか。勇気を持ってこれをやらなければならぬ。それがやれぬようなことだったら、特に開拓者あるいは連年災害をこうむっておる農民、また、私は今回の新潟災害を、この委員会の国政調査に参画をして見てまいりました。御存じのように一年の農作災害でなしに、あのような激甚な打撃を受けた被害地域では、あと三年ぐらい必ず減収することがはっきりしておるわけですね。これを見る資金ということになれば、私は自作農維持資金にもう一つつくらなければならないと思うのです。一年の災害で次には回復できるというものは、現行の自創資金の制度で大体救済されると思います。他の関連金融との均衡もあるでしょうし、まあまあと言えると思いますけれども、今回の新潟被害、あるいは三年、四年の連年災害で大幅な減収を来たす場合の補完資金というものは、三分、三十年くらいの条件で補完措置をする。これは現行制度の自創資金では救済できない。さっき言ったいわゆる切開手術の効果を果たさない。切開手術の効果を果たす資金の条件は、やはり三分、三十年ぐらいでなければならぬと思います。そういうふうに自創資金にもう一本、単年度被害の補完の措置と、連年災害もしくは今回の新潟被害のような状況が起きた場合の補完の措置とが要る。いまの自創資金制度そのものが私は不十分だと思う。あれを二本にすべきだと思うのです。現行は現行制度で残す。一年被害で回復できると認定されるものは、現行制度でもいいのではないかと思うのです。十万戸以上あります全国開拓者のいわゆる切開手術を一直やらないと、こういう構造政策を立ててもそれに乗ることができない。乗れなくてもたもたしておる農家が、それをしてやれば自立経営でいけるものを、しないことによってやっていけない。これは食糧の需給確保の上から見ても、農業生産の上から見ても大切なことだと思うのです。これは政務次官から、構造政策に合わせる負債の断ち切り対策、あるいは先ほど申し上げたように、現実に新潟被害等においてはいまの自創資金では不十分でありますから、これを補完する制度確立についてどう考えておられるかを承りたい。
  25. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 負債整理等に関連をいたしまして、切開手術を思い切ってやれという御意見でございまして、私も同感な点がたくさんあるわけでございます。負債整理は、農業の再生産確保し、構造政策を進めていく上において思い切った措置をとる必要もあると思います。いろいろと制度あるいは財政等の制約もあると思いますが、少なくとも先生のおっしゃいました北海道の負債整理につきましては、思い切ってこれをやりたいと思います。また同時に、自創資金その他の法律等につきましても、これらの方向のためにひとつ検討を進めてみたいと思います。
  26. 美濃政市

    美濃委員 次の問題は、資金の融通制度について、時間も制約されておりますから、あと一点お伺いしておきたいと思います。  この資金融通制度につきまして、私は日本農政の中で、農業経営の実態というもの、これは大切ですから率直に申し上げますが、真の農業経営論、農業経営学といいますか、真の農業経営の実態ということを承知してない中間における論争、中間におけるものの考え方−学識経験けっこうでございますけれども、この考え方制度が立てられ、あるいは制度をつくって運用しておるところに一つの問題がある。なぜかと申し上げますと、たとえば構造改善事業を進めてきました。しかし、この構造改善事業を進めてみても、あの対象事業条件というものが、それぞれの農業経営を華の自立経営として、農業収支にかけてやろうとする農業経営実態にどうしても合わないということであります。全部合わないとは言いません。私の予測は大体三〇%であります。皆さんの手でつくったあの制度の締め上げ要綱は、七〇%は合っております。でたらめとは言わぬが、ほんとうのところが合っていないのですよ。  ですから、たとえば北海道地域のマル寒資金の審査にいたしましても、改良普及員の人やなんかが、制度に合わせるようにでっち上げるわけです。真の農民がやりたいという方向にいかぬ。それで三〇%くらいはどうしてもでっち上げになるのです。農民はそういうことをやれないのです。やれないことをでっち上げて計画をつくる。その資金なり制度を受けるためにはどうしてもでっち上げなければならない。三〇%くらい実態とずれておるわけです。七〇%は合致しております。掘り下げて検討しておりますから、ああいう融資条件とか対象事業条件というものは、私は決してでたらめとは言いません。七〇%くらいは合致しておるわけです。だけれども、あまりこまかいところまで、いわゆる悪女の深情けのように余分な取り越し苦労をして心配をして、こまかいところまで条件をつけて、こうなければならぬときめつけるところに、農業経営実態と合わない条件で押しつけられる。どうしてもその制度を受けようとすれば、三〇%くらいずれた架空計画をでっち上げて制度を受けておる。あとには会計検査院が来るから、ある程度そのとおりやっていなければ、繰り上げ償還をせいとかなんとか言われる。せっかく制度をつくって国費を導入しながら、あるいは政府資金を貸し付けしながら、生産性は二〇%、三〇%ゆがめられたことしかできないというのが現実の姿だと私は思うのです。これを知っておるかどうか、皆さん方は悪女の深情けということを知っておるかどうか、余分なおせっかいをやき過ぎるということを知っておるかどうか、これをお尋ねいたしたいと思います。少し行き過ぎであると私は思うのですが、私の主観ですから……。
  27. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 制度資金の利子というのは、構造改善推進資金で非補助のものが三分五厘でございますから、一般の農協に金を預ければ、一年の定期で五分六厘でございますから、一般の預金金利よりも低い水準の政府資金を出す場合には、やはりその使途を相当明確に洗わなければならないという問題があるわけです。何とかの深情けというお話がございましたが、率直に申しまして、制度金融というのはある意味では補助金の典型でございますから、補助金を扱うごとく行政当局が扱うという心理的な問題もあるだろうと思います。それから預金金利よりも安い金利で流用かって次第であるということでは、制度資金は成り立ちませんから、その面からも締める必要があるわけでございます。  ただ私は、そういうことがあるけれども、同時に農家の創意くふうといいますか、現地に合った金の使い方、営農の改善のやり方を進めたいという気持ちも強く働くわけで、その調和が一番むずかしい問題でございます。私どもこれから制度資金をいろいろな形で組み直していくわけですけれども、いま申し上げましたように、金利が安ければ安いだけの政府資金としての厳重な使途の制限という問題を持ちながら、できるだけ農家の創意くふうを生かすということをあわせて、あまり行き過ぎた干渉はできるだけ避けるようにしたい、気持ちとしてはそういう気持ちでやっておるわけでございます。
  28. 美濃政市

    美濃委員 もう一点お尋ねしておきたいのですが、いま経済局長の御説明で、預金金利より安いと言われておりますけれども、片や総合資金制度を考えるにあたっても、農産物価格には、御存じのように地代、資本利子、償却、この設備投資関係は、特にこれから生産の方向として進めなければならない酪農関係設備投資を必要とするわけですね。農作関係は、設備投資といっても、基盤を拡大する土地取得と、あとは機械導入があれば機械導入だけでありますが、酪農というものは、基本的に設備投資を高額に必要とするものである、この資金関係が、特に私は酪農に必要だと思うのです。保証乳価の中にある設備償却、資本利子、この積算額と融資条件が合致していなければ、限度額だけ引き上げても、その限度額を全部借り入れた場合には、理論計算上償還できないという問題が出てくるわけです。それを合致するまで煮詰めてもらわなければならぬと思うのです。乳価で高額のそういうものを保証すると、いわゆる消費者乳価が高くなる。それともう一つは、現実にやっておる乳価試算というのは、統調の抽出農家の資料によっておりまして、実勢の平均試算価値というものも、私は統調の資料というものと実際と当てはめてみて大きな矛盾を感じていないわけです。新設する場合には、平均の評価価値のような安いものではできませんから、新設をする場合にはやはり現在価格の新設をするわけです。それを進める制度資金というものは、少なくとも保証乳価体系と合った、償還できる体制のものでなければならぬ。そこが、保証乳価と制度資金が精神分裂するわけですね。これは私は農政の中で非常にいけないことだと思うのです。精神分裂症状を起こして、乳価は乳価で、それを進める制度資金は制度資金だという分裂症状の中で政策が仕組まれていくということは、私は許せないと思う。合致をしてもらわなければならぬと思う。この考えについてお伺いしておきたいと思います。
  29. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 乳価との関連については、あるいは畜産局長からお話があると思いますけれども、私ども、いま総合資金制度という新しい制度をつくるように努力をいたしておるわけでございますが、この総合資金制度は、金融の面から自立経営育成ということをできるだけ促進したいということで考えたものでございます。金額につきましては限度を設けないで、経営規模拡大に応じて必要な資金を、施設資金については公庫からまとめて、運転資金については単協あるいは信連からこれにくっつけてということで考えておるわけですが、償還期間は二十五年、うち据え置き期間は、これは稲作、酪農、果樹等三年ないし十年の間で据え置き期間をきめることにいたしまして、酪農につきましては、私は据え置き期間はできるだけ長いことが望ましいというふうに考えます。これは、幾らの金利であれば引き合うかということはなかなかむずかしい議論で、設定するモデルのあり方によっても違いますし、どれだけの資金を蓄積したところからスタートするかということによっても違うわけでございますから、一がいにそれで引き合うか引き合わないかということも言えないわけでございますが、私どもが考えております総合資金の金利は、公庫資金の中でもできるだけ低いところにきめたいということでやっておるわけで、現在畜産経営拡大資金は五分五厘でございますから、それに比べれば相当低いところできめるので、まずまずこれで酪農の経営拡大ができるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  30. 美濃政市

    美濃委員 私の質問の趣旨から見ると、いまの局長の答弁はやはり精神分裂を起こしておるわけですね。そういう考え方制度資金をつくろうとする姿勢が精神分裂だと、私はこう言っておるのです。  きょうは時間がありませんのでこの程度にしておきますが、どうか精神分裂を起こさないようにしてもらいたい。そういう制度資金について、もし原案が精神分裂を起こしたとしたならば、私は、これから先はやはり修正する努力をしなければならぬ、精神分裂にならぬまで修正する努力をしなければならぬと考えておりますので、そういう煩瑣な事象が起きないように諸般のこの対策につきまして一い、ずれも答弁は検討する、努力をするということでありますから、努力に期待をいたして本日は終わりますが、あとのこれを煮詰める段階で、修正とかそういう問題が起きないように、精神分裂を排除して、悪女の深情けをやめて、きちっとしたものをつくってもらいたいことを要望いたしまして終わります。
  31. 草野一郎平

    ○草野委員長代理 樋上新一君。
  32. 樋上新一

    ○樋上委員 今回小笠原諸島が復帰されることは、国民の一人としてまことに喜ばしいことであります。そこで、復帰に関連して漁業権の問題について若干の質問をいたしたいと存じます。  まず、昭和十九年、小笠原島民が内地に強制送還された当時、この方面に漁業権が幾つあったのかお教え願いたい。
  33. 久宗高

    ○久宗政府委員 専用漁業権が五、区画漁業権が一つというふうになっております。
  34. 樋上新一

    ○樋上委員 共同漁業権が七つじゃないですか。
  35. 久宗高

    ○久宗政府委員 失礼いたしました。間違えました。専用漁業権は七つでございます。
  36. 樋上新一

    ○樋上委員 これらの漁業権を行使していた漁民の数及び年間の水揚げ量、その金額は幾らくらいあったのでしょうか。
  37. 久宗高

    ○久宗政府委員 漁民の数でございますが、会員は五百三十程度というふうになっております。それから漁獲高でございますが、私どもの手元に持っております正式の資料といたしましては、十六年の資料があるわけでございます。その十六年の資料によりますと、貫数にいたしまして二十六万貫。それから金額にいたしまして、当時の金にいたしまして百万ちょっとでございます。
  38. 樋上新一

    ○樋上委員 その漁業権についてお尋ねいたしますが、施政権がアメリカに移ったとき、いわゆる漁業権が停止したと思うのですが、まずこの点をはっきりしておいていただきたいと思うのですが、どうですか。
  39. 久宗高

    ○久宗政府委員 小笠原におきます漁業権の問題につきましては、御承知のとおり戦時中、それから戦後、また講和発効後と幾つかの段階を経まして、それらの各段階を通じまして、この権利関係がどうなるかというむずかしい問題があるわけでございまして、漁業権のみならず他の諸権利との関連もございまして、ただいま政府部内におきまして総合的な検討をいたしているわけでございます。
  40. 樋上新一

    ○樋上委員 漁業権はそのときは停止した、それは間違いないですね。そう判断していいですね。漁業権は停止しておる、それは確かでしょう。
  41. 久宗高

    ○久宗政府委員 ただいま申し上げましたように、小笠原におきます諸権利につきましては、漁業権も含めまして、その権利の諸関係につきまして統一的な検討が必要でございますので、ただいま政府部内におきまして鋭意検討中でございますので、この段階において、決定的なお答えは差し控えさしていただきたいと思います。
  42. 樋上新一

    ○樋上委員 漁業権が停止しておるということははっきり出ておるのですよ。ところが、今度日本にその行政権が戻ってきたとき、この停止の時点にさかのぼって漁業権を復活するか、それを私は聞きたい。
  43. 久宗高

    ○久宗政府委員 いまのお尋ねのその停止したかどうかという問題と存否の問題も含めまして、他の諸権利との関連がございますので、ただいま政府部内におきまして検討中でございますので、この段階での決定的なお答えは差し控えさしていただきたいということでございます。
  44. 樋上新一

    ○樋上委員 昭和二十四年に漁業制度改革が行なわれ、国内の漁業権は漁業法施行法第一条で、昭和二十七年三月十四日に全面的に消滅したと聞いておるのですが、この点はどうです。
  45. 久宗高

    ○久宗政府委員 さようでございます。
  46. 樋上新一

    ○樋上委員 そのときに、政府は約二百八十億円の補償金を出しておる。ところが、さきに述べたように、小笠原は特殊事情のあったためにこの法律が適用されておりません。よって、復帰後にそのときと同様の補償をするのかどうですか、そのお考えを聞きたい。
  47. 久宗高

    ○久宗政府委員 たびたびお答えいたしますように、小笠原の漁業権並びにその他の諸権利を含めまして、権利関係あるいは施政権の関係が二転、三転いたしております関係もございますので、その点をきわめて慎重に検討する必要がございますので、補償云々の問題も含めましていま検討をいたしているわけでございます。したがいまして、この段階でのお答えは差し控えさしていただきたいと思います。
  48. 樋上新一

    ○樋上委員 なかなか慎重に答えられるのですが、おかしいですね。  ではお尋ねいたしますが、昭和二十七年の十月十三日、当時の水産庁長官より東京都知事あての通達があるのです。それは御存じですか。
  49. 久宗高

    ○久宗政府委員 よく存じております。
  50. 樋上新一

    ○樋上委員 それだったら、その補償はするということをはっきりうたってあるのです。いまあなたがなかなか慎重に考えて、その問題は答えができぬ、慎重にいろいろ協議しているとおっしゃいますけれども、当時の水産庁長官の東京都知事にあてられた写しがあるのですが、一ぺんお読みしますよ。  二七水第八、三九三号   昭和二十七年十月十三日             水産庁長官    東京都知事殿     小笠原諸島の漁業権について   この件について八月二十日付で宮川竜之助の陳情の進達があったが、陳情の趣旨については、左記の通りの所存であるから御了知の上、同人に御伝え願いたい。        記   一、小笠原諸島は現在日本の行政権が及ばないので、当該地域における漁業権の期間更新は不可能である。   二、将来同島に日本の行政権が及ぶようになった場合には、漁業法施行法の規定により、昭和二十七年三月十四日に消滅したものとして、補償ができるような立法措置を講じたい。こう出ております。これはあなた御存じですか。
  51. 久宗高

    ○久宗政府委員 よく存じております。  この陳情に対する回答でございますが、ただいまお読みいただきましたようなことでございまして、当時講和がああいう形できまりまして、まあ小笠原関係では島民の方に漁業関係者が非常に多いわけでございまして、非常に将来について不安をお持ちになっております際のお尋ねでございました。役所が出しました文書といたしましては、私は破格のものであり、きわめて血の通ったものと思うわけでございます。また、そのような事態におきましては、このような御回答を申し上げたことによりまして、帰還についての希望を非常に高めたものというふうに評価してよろしいと思うのです。  ただ、再々申し上げておりますように、漁業権そのものにつきましての法律関係につきましては、その後にもいろいろな事情がございまするので、また、漁業権のみならず他の一般的な財産権も含めました詳細な検討が必要でございますので、ただいま政府部内におきましてさようなものの処理につきまして、またそれの厳密な法律解釈につきまして、鋭意検討いたしておりますので、それらの検討の結果によって処置を考えざるを得ないわけでございますので、そのようにお答えをいたしたわけでございます。
  52. 樋上新一

    ○樋上委員 その後のいろいろの事情ということは一体どういうことなんですか。こういうぐあいに東京都知事にあてたように、この問題がはっきり出ておるのにかかわらず、その後の漁業権その他の問題について鋭意考えておるから、いまその段階でないと言われますが、はっきりこういうものが出ておるときは、この漁業権の問題のみにしぼって聞いておるのですから、   〔草野委員長代理退席、熊谷委員長代理着席〕 こういう問題が出ておるのだったら、これに対するあなたの見解を承りたい、あなたもこれを御存じなんだから。ところが、その後いろいろな事情があって、たびたび申しますけれども、というようなことを言って、その答弁を避けられるようにされておりますが、私は、他に農地の問題とかいろいろ問題もありますけれども、いま聞いておりますのは、漁業権を復活さしてそしてこの立法措置を講じてやる、こういっているのですから、これははっきりあなたはここで、前に出ているこのとおり、これは生きてそして復活するのだ、こうお答えになってもいいと私は思うのですが、どうですか。それは答えられないですか。それも何べんも申し上げますけれども……。
  53. 久宗高

    ○久宗政府委員 個別にお尋ねになりますので、それについてお答えしたわけでございますが、ただいま申しましたように、漁業権の問題につきましては、漁業権そのものの存否も含めまして吟味が要るわけでございまして、さような意味におきまして目下検討中でございますので、この段階でのお答えを留保したわけでございますが。ただ、お聞きになっておられまするお気持ちもよくわかりますので、私どもといたしまして、小笠原の漁業関係につきまして、水産庁といたしましての基本的な考え方を申し上げますれば、何と申しましても小笠原が返ってまいりましたということはたいへんけっこうなことでございますし、また、関係の方の中に漁民が相当多いわけでございます。おそらく、いままでの一連の経緯がございまするので、帰りまして漁業ができるかどうか、その間にまたいろいろよそからじゃまされやしないかといったような御懸念が、いよいよ現実に返ってくるということになりますと、関係漁民の中にそういう不安が渦巻いておると思うのです。  しかしながら、私どもといたしましては、とにもかくにもあそこにおられました漁民の方たちがお帰りになって、そしてあそこで漁業ができるようにすること、これをまず第一義に考えるべきだというふうに考えますので、特にその場合に、いまの漁業権の問題でございますとか、あるいは組合の問題でございますとか、いろいろむずかしい問題がございます。また法律、現行法と先方の現在の実情といったものがどうなるかといったようなことにつきまして、解釈をめぐっていろいろ御不安があると思うのです。しかし、私どもは、そういう問題を処理をいたしまする基本的な考え方といたしましては、とにかく向こうにおられました漁業者の方が、帰って、そしてずいぶん事情が違っておりますけれども、とにかくそれを克服して漁業が安心しておできになるような措置をまずもって考えたい。それに伴ういろいろな経過的な措置が必要だろうと思うのでございますが、基本的にはさように考えておりますので、おそらくあとで御質問も、組合その他の問題にも及ぶと思うのでございますけれども、基本的な考え方を申し上げれば、さようなことで対処いたしたいと思うわけでございます。
  54. 樋上新一

    ○樋上委員 その答弁はわかるのですけれども、いまあなたがおっしゃいましたように、強制送還されたところの漁民は、内地でなれないいろいろな仕事についておりまして、非常にかわいそうな人たちばかりですよ、漁業を主にしていたのですから。その間いろいろな職業についておるのですよ。今度小笠原が返るということについて、その島民は非常に喜んでおる。そして一日も早く帰ってもとの島民としてあの漁業につきたい。そういったときに、いろいろの心配がその他にもあるのですよ。いわゆる共同漁業権、つまり水産業協同組合法は、第十八条で組合員たる資格を規定しておるのですが、これには御承知のとおり、年間九十日以上漁業に従事している者、また二十人以上で協同組合が設立できることになっているのであります。ところが、引き揚げ島民が帰島してもすぐにその協同組合員たる資格がとれるか、その間小笠原方面の漁業の管理運営はどうなるのだろう、こういうような問題が当然出てくると思うのです。  聞くところによりますと、向こうは豊富なる資源がある。その豊富なる資源は、この間の新聞報道によりますと、「父島のこのごろ」としましてこの新聞に出ておりますとおり、イセエビをつかみどりできるというぐあいに、いろいろ豊富な資源がそこにある。ですから引き揚げた島民が、漁業権が一日も早く返って、そして自分のところに帰っていままでの苦労を取り戻して、楽しい生活に入ろうと思っているのですけれども、こういう法律をかりに適用されるとするならば、その間九十日という間はどうすることもできない。ところが、その漁業権がその間九十日という間とれなかった場合は、これは日本国民であるならばだれでも、その間そこへ行ってとれるということじゃないのですか。それはどうですか。
  55. 久宗高

    ○久宗政府委員 いまのような御心配が当然あると思うのでございます。ただ、はっきり申し上げられますことは、そういう心配があるから、いまから何かばたばたしなければならぬかどうか、その心配は全くないということでございます。私どもといたしましては、繰り返し申しますように、とにかくあそこにおられた方たちが帰って漁業ができるようにするということ、これが第一義だ、こう思いますので、それができるような処置を考えたいと思うのでございます。いきなり行って、まだやってもいないのに資格があるかどうかといったような問題も、こまかに議論いたしますといろいろございますけれども、事柄といたしましては、とにかく行けなかったのでございますから、帰ってそしてほんとうに漁業をやろうという方たちが、公正な、不公平のないような形で実際に漁業ができますような経過的な措置なり判断なりというものが、私はぜひ必要だろうと思うのです。  また、この際、ちょうど御質問が出ましたので申し上げておきたいと思うのでありますが、やはり小笠原諸島というのは確かにいい漁業の宝庫でございますので、あれが返ってくるということになりますれば、内地の関係でも、そこへ行きたい、相当魚が豊富になっているだろう、こういった気持ちがございます。また、事実そういうような申し出が若干ずつ各県からあるわけでございますが、やはり何と申しましても、これは長い間空白があったわけでございますし、その間島民があすこにいられなかったというような事情がございますので、まずもって昔の方々が帰って、ちゃんと落ちついて漁業ができるような体制になってから、ほぼ内地並みになったところで、実際の漁場を独占させるわけにいきませんので、普通の体制に移していく。しかし、その間におきまして、返ったどさくさまぎれによそ者が入ってきて、せっかく返ったのに漁場が荒らされてしまうというようなことは幾らでも防止する方法がございますし、また、そういうことは当然やるべきことだと思いますので、さような考え方で処理に当たりたいと考えておるわけでございます。さような意味の心配はないわけでございまして、その点は特にはっきり申し上げておきたいと思うわけでございます。
  56. 樋上新一

    ○樋上委員 その点をはっきりしておかなかったら、この島民が帰る前に、いまあなたも御心配になり、私も心配しておるところが現実になる。現在漁具を持っている人たちは、小笠原が返ればすぐに飛んでいって、そしてだあっとその期間にとってしまおうとしている。そうすると、イセエビというようなものは、一ぺんとってしまうと十年間も枯渇してしまう。資源がなくなってしまう。そういうものを、いま内地におるところの、申し込んでいるそういう人たちは、この島民の帰るその期間に、政府が管理運営をどうするのか、そこのところはいまはっきりしておらぬと私は言うておるが、そのときにだあっと行ってしまって、こっちが協同組合をこしらえて、そういうことを島民が帰ってやろうという、その先に全部なくなってしまう。エビなんか、とられたら資源は枯渇してしまう。そこを私は島民のために、政府がその間は、この行政権が日本に移ったその間、漁業権というものを新しく立法するまでは、絶対とめられるところの何があなたのほうにあるのか。ちゃんとできるまでにそういう漁介が荒らされないか、漁場が荒らされないかということを私は心配するあまり聞いておるのです。そしてこれに対しての対策、また島民の不安をなくするために、政府の責任ある具体策を示してもらわなければならない。  これは農地の問題も関連すると思うのですよ、漁業だけではなしに。戦後二十年間、日本国内においては漁業復興のためにあらゆる施策が講じられてきておる。ところが、小笠原方面は米軍施政下におるために、何らその措置が講ぜられていない。そういう実情である。ここにおいて非常に内地との格差がある。その大きな開きを持っていることはだれもが認めるところなんです。政府はこの点について緊急かつ重点的な保護助成を講じると同時に、この漁業施設の拡充をはかるべきだと私は思うのですが、この点水産庁長官並びに農林省当局の所見を最後に承りたいと思います。
  57. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 小笠原が帰ってまいることにたりまして、たいへん喜ばしい事情でございますが、先ほどから御質問がありました漁業権を含めまして、農地あるいはその他いろいろの権利関係につきましては、ただいま政府部内におきまして、統一的な解釈をはっきりするために検討しておるのであります。その他、ただいま水産庁長官がいろいろ述べましたように、農林省といたしましては、小笠原に帰られるところの漁民の方あるいは農民の方々が安んじてそれぞれ仕事ができますように、あらゆる配慮を払っていかなければならぬ、そういう方向でこれからも小笠原の問題と取り組んでいきたいと思っております。
  58. 樋上新一

    ○樋上委員 最後にもう一言お聞きしておきたいのですけれども、引き揚げてきた島民の人たちは純朴なんですね。純情そのものなんですよ。ですから、前にもあったことですけれども、政府から出されました見舞い金ですか、アメリカから出しました見舞い金がございましたね。それを何かの方法で共同して使っていくようにというぐあいに、いわゆる六百万ドル、二十二億という金が漁民のために見舞い金として出された。ところが、その見舞い金をもって島民らが共同出資いたしました漁業会社はできたのですけれども、その会社の幹部のほうの経営のずさんさか、それともいろいろ不正が行なわれたように聞きますが、その買った船も、二そうも売りさばいてしまって、そしてその会社がどうにもならなくなってしまった。そうしたいろいろな問題が、当時の問題を語っておるのですけれども、せっかくもらった島民の見舞い金をそれに出資して、その出資金も一文もなくなってしまったというような漁業会社の不正、小笠原の漁業問題についてこういうことがあったということは、御存じでしょう。その当時にこういうことがあったということは、ここにずっと出ておるのです。時間がありませんので申し上げる余裕もないのですけれども、これは政府の当時の人たち、あなた方も御存じだと思う。それほどまでに島民は自分の出資した金も一文なしになってしまっておる。そういう純情な漁民のためを考えれば、今度の小笠原復帰については、ほんとうにあたたかい政府の施策をもって、これら島民のために尽くしてあげなければならないと思うのです。  そこで、心配になるのは、現在現住しておるところの欧米系島民、それと強制送還されていて帰島した人たちの間に、今度帰るときに、漁業権の問題、また農地の問題なんかによってトラブルが起こりはしないだろうか。それが起こった場合、その措置をどうするつもりか。先ほど申しましたように、農地の問題でも同様でございますが、そのトラブルの起こる、紛争があると想定した場合、政府はどういう処置を講じられるのか、お答え願いたい。
  59. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 いまおっしゃるような、いわゆる現在小笠原諸島に住んでおる島民とこれから帰られる方々との間にトラブルの起こる可能性は、ないとはいえないと思います。しかし、現在政府ではまだ小笠原諸島の実情がよくわかっておりません。そこで、一月に調査団を編成いたしまして、詳細にこれら諸島の実情を調査して帰ることになっております。その報告を待ちまして、さらにこれからいろいろと農林当局としても漁業関係あるいは農林関係で施策を進める上におきまして、そうした実情を十分把握をして、トラブルといったようなものが起こらないように、これは全力をあげて政府としてもあらゆる努力をしなければならないと私どもは考えております。
  60. 樋上新一

    ○樋上委員 水産庁長官、どうですか。
  61. 久宗高

    ○久宗政府委員 ただいま政務次官からお答えいたしましたとおりと考えております。
  62. 樋上新一

    ○樋上委員 時間の関係上これで質問を終わりたいと思いますが、先ほど来から何回も申し上げておりますとおり、この小笠原の復帰について、政府はあたたかい気持ちで、この引き揚げ島民のために、ほんとうによかったといわれるような施策を講じていただきたい。これを強く要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  63. 赤路友藏

    赤路委員 関連して。いままで樋上君の質問を聞いておったのですが、ここでの一番の焦点は、いま長官がおっしゃられたように、漁民が漁業を安全にできるようにする、このことがまず第一だ。これは当然なんですね。小笠原が復帰すれば、それは当然の措置としてとらなきゃならぬ。しかし、それでなしに、焦点は、かつて内地で漁業権が補償された。二百八十億補償された。そういうような措置を、施政権が復帰した場合は補償できるような措置をとるということを、当時の水産庁長官から都の知事あてにいっておるが、そういったことをする意思はあるのかないのか、こういうことだと思うのですよ。だから、その意思があるかないかということですね。当時の内地の漁民がやってもらったようなことを小笠原が復帰したときはやってほしい、ここが私は焦点だと思うのだ。漁民が漁業を安全にできるようにするということは当然のことです。それに対する何かありますか。いま私の言ったように、漁業権を補償する措置をかつてはとった、それと同じようなことをする意思があるかないか、こういうことです。どうですか。
  64. 久宗高

    ○久宗政府委員 いずれ向こうへ帰られまして漁業の実態ができてまいりますと、新しい漁業権を付与する必要が出てまいると思います、漁業秩序を維持いたしますために。さような場合に、内地におきましては旧漁業権をある段階で切りかえいたしましたので、あのような措置が必要だったわけでございますが、今回の場合に、漁業権の存否の問題も法律上は問題になり得るわけでございますので、さような意味で、政府部内におきまして、他の権利とも関連いたしまして検討いたしておると言っておるわけでございます。
  65. 赤路友藏

    赤路委員 そのときに、一言だけ言っておきますが、すでにその当時は、もう小笠原はアメリカの施政権のもとにあった。だから、漁業権というものはないのです。それは小笠原の漁民が好んでやったことじゃないんだ。そうなったのは、敗戦という結果でそうなったのであって、何も漁民が好んでやったことじゃないんだ。その点をちょっと踏み違えますと、どうも筋が違ってくると思いますので、これはよく検討するようにしてもらいたい。それだけです。
  66. 熊谷義雄

    ○熊谷委員長代理 角屋君。
  67. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、ことしは予算委員会に席を置いておりますので、農林委員会のほうはそれぞれ担当の方でやられるのが本筋でございますが、当面、国際漁業の問題で二、三緊急の問題がございますので、それを取り上げてやるということでお願いをしたわけでございます。一つは、インドネシア、フィリピン海域におけるところの安全操業の問題でありますし、さらにまた、きのう北京放送でもって、日中の民間漁業協定が二十二日をもって終わる段階で、どうなるかということで、関係者はもちろんでありますけれど、われわれも非常に憂慮しておりましたが、とりあえず一年間暫定延長という報道が平塚会長あてに参る、そういうこともありまして、この問題についても、それと関連して少しくお伺いをいたしておきたい。  まず冒頭に、インドネシア、フィリピン海域におけるところの安全操業問題でありますが、最初に水産庁の長官にお伺いしたいのですけれども、インドネシアが例の内水宣言を、これは昭和三十二年の十二月に閣議決定をして、三十五年の二月に政令を制定して実施に移したのですが、これは国際漁業の常識から見ましても、非常に不法、不当なものだというふうに思っておるわけですが、これが実施せられてから、インドネシア海域における漁業の安全操業というのが、特に日本側から見れば、非常な迷惑を及ぼしておるわけです。この実態についてはあとに回しますけれども、最初に、インドネシアの内水宣言というものについて、日本側としてどういうふうに見ておるかという、その点から簡潔にお伺いしたいと思います。
  68. 久宗高

    ○久宗政府委員 インドネシアの内水宣言は、御承知のとおり非常に広大な水域にわたる宣言でございまして、私どもは、たびたび国会でも申し上げておりますように、基本的な考え方といたしまして、さようなものが国際法上許容されるとは考えられないわけでございます。常々その問題につきましては、そういうものは私どもは認められたいという立場を堅持いたしておるわけでございます。
  69. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 外務省もこの点は同じ見解だと思うのですが、いかがですか。
  70. 吉良秀通

    吉良説明員 お答えいたします。  ただいま水産庁長官の申されたとおり、外務省も、インドネシアのごとき内水宣言は認めないという立場であります。
  71. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 昭和三十五年二月に政令が制定されて以降、三十五年の拿捕件数三隻をはじめとして、今日まで、四十二年の段階までに十七隻の拿捕が起こっておる。これは単に拿捕が十七隻という事態だけではなしに、あの方面で漁業をやっておる日本漁船としては、やはり非常な不安の中で操業をやらざるを得ない。またいろいろな制約等も受ける。こういうなかなか困難な、しかもきびしい苦労をして操業をやっておるわけですけれども、水産庁としては、内水宣言以降、これら関係漁業者のあの方面における水域の操業について、どういうふうな指導をやってこられたか、さらに、こういう歴年拿捕件数というものが出てくる段階において、インドネシアとどういう折衝をしてこられたのか、この点についても簡潔にお伺いしたいと思います。
  72. 久宗高

    ○久宗政府委員 御指摘のような拿捕がたびたびございまして、そのつど外務省を通じまして抗議をしてまいったわけでございます。また、私どもといたしましても内水宣言そのものは了承できないわけでございますけれども、先方にはさような事情もあるのかということも考えられるわけでございますので、漁業関係者におきましては、なるべくさような紛争が起きないような配慮をするように話し合いをいたしまして、今日に至っておるわけでございます。
  73. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 あそこのインドネシア海域における出漁漁船数の問題、あるいは最近までの漁獲量の実態がどうなっておるか、この点簡潔に……。
  74. 久宗高

    ○久宗政府委員 トン数の問題でございますが、三十六年が四千七百六十二トン、三十七年が一万二千八百四十三トン、三十八年、三十九年は六千トン、七千トン未満というところでございます。
  75. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 漁獲高は、最盛期大体一万三千トンでしょう。
  76. 久宗高

    ○久宗政府委員 最盛期のトン数を申し上げますと、一万三千トン程度であったわけでございますが、最近のところでは、いま申しましたように五、六千トンのところにとどまっておるわけでございます。
  77. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 隻数は……。
  78. 久宗高

    ○久宗政府委員 隻数は、最盛期が七百五十隻程度でございます。
  79. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 したがって、インドネシア周辺海域の出漁漁船数というのは、最盛期七百五十隻、最近は若干減少等もあろうと判断しておりますが、それにしても相当数の日本漁船がインドネシア周辺海域で操業しておる。したがって、国際漁業の舞台からいえば、この方面は日本漁業にとって非常に重要な海域だということは間違いございません。三十五年以降、非常にこういう拿捕件数等があって、また紛争が現実に起こってくるというふうなことから、関係方面の強い要請に基づいて、佐藤総理が第二次東南アジア訪問の際に——たしかインドネシアに総理が参られたのは本年の十月の八日だと判断をしておりますが、そこで総理自身がこの問題についても触れて、インドネシアと話し合いをして、今後の問題の処理についての基本的見解について一致をした、こういうふうにわれわれは承知をしておるわけですが、特にインドネシア海域における安全操業の問題についてどういう話し合いが成り立ったのか、こういう点、あるいは現実にその話し合いに基づいて、外務省あるいは水産庁も含めて、今後どういう段取りでやっていこうという段階にあるのか、この点ひとつお話をいただきたいと思う。
  80. 吉良秀通

    吉良説明員 お答えいたします。  ただいま先生がおっしゃいましたとおり、ことしの十月に佐藤総理が東南アジア訪問の一環としてインドネシアを訪問されました際、スハルト大統領代理と会談を持たれたわけでございます。いろいろ問題があります中で、特に総理は、この安全操業問題を重視されまして、スハルト大統領代理に対しまして、日本漁船だけでなく沖繩の漁船も含めまして、この近海における安全操業について善処方を強く申し入れられた次第でございます。  それにつきましてスハルト大統領代理は、インドネシアの国内法のたてまえからいうと非常にむずかしい問題があると自分は承知しているけれども、佐藤総理の強い御要望もあることであるから、何とか日本とインドネシア双方で、今後ともこの問題を話していこうではありませんかということになりまして、特別な組織というものをこしらえようということになりました。この特別な組織と申しますのは、日イ特別委員会、安全操業に関する特別委員会というふうなものと御了解なすってけっこうでございますが、いずれにしても、特別な組織をこしらえようということに合意が成り立ちまして、総理も了承されてお帰りになったわけでございます。   〔熊谷委員長代理退席、委員長着席〕 それで外務省といたしましても、水産庁当局と緊密な連絡をとりながら、この両首脳によってできました特別な組織をどうやって利用して解決していくかということについて、目下先方の当局と交渉している次第でございます。
  81. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 インドネシアの場合は、政府組織は詳細には知りませんけれども、漁業関係のこの問題に関連するものでも、外務省、あるいは海事省、あるいは海軍省、少なくともこの三つくらいは直接関連がある。それがまたインドネシアの場合、中央政府と出先とでいろいろ取り扱いに相違があったりしてかえってトラブルを拡大する、こういうふうなこともいわれておるわけですけれども、実際に特別委員会というようなものをつくる場合には、相手側は外務省、こちら側は農林省なりあるいは特に外交折衝の場合には外務省、こういう形になるのですか。向こうの場合も、外務省、海事省あるいは海軍省等が特別委員会の中に入ってくるという情勢なんですか。その辺のところは、一対一の場合に窓口はどういうふうになるのですか。
  82. 吉良秀通

    吉良説明員 ただいま先生御指摘のとおり、インドネシア側の直接の関係当局は海事省だと思います。しかし、関連の省といたしましては海軍省もございますし、また外務省も窓口としては関連してくるわけでございまして、特別委員会をつくる場合に、インドネシア側がどこから代表が出てくるかといいますと、たぶん外務省、海事省、海軍省の三つだと思われます。それで現状を申し上げますと、インドネシア側で内部の組織を急いでおるという段階でございます。つまり、この三省からいかなる人を代表にするかということで、インドネシア内部における折衝が進んでいるものと了解いたします。ただ、窓口ということになりますれば、先方はまず外務省だろうと思います。しかし、実際の会合が開かれます場合に、いま申しました関係の三つの省から代表が出てくるものとわれわれは了解しております。
  83. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 インドネシア海域における安全操業問題というものは、これは先ほど来申し上げておりますように、昭和三十五年以降の問題でありまして、したがって、総理が行かれて窓口をつけられたという段階でありますので、関係業界としても、すみやかに安全操業の問題について双方の話し合いが確定をする、そして業界側の要望からすれば、来年の二月末までにそれらの安全操業の問題についての話し合いが確立するということを怖く望んでおるわけですけれども、総理がこの十月の段階で行かれてから、どうもその後の段取りというのは遅々として進まない、こういう現状のようにもとれるのであって、そういう点では非常に怠慢ではないかという感じが、率直に言ってしないわけではない。今後の話し合いの段取り、あるいは話し合いに基づいての安全操業の双方の合意というものが、来年の二月段階、あるいはおそくとも本年の年度末までにそういうものが成立する条件、あるいはそのための努力という方針で臨んでおられるのかどうかという点についてお伺いしておきたい。
  84. 久宗高

    ○久宗政府委員 御指摘のようなことでございまして、私どもも実は非常に憂慮しているわけでございまして、たびたび外務省のほうとよく御連絡をとりながら、促進方を交渉いたしておるわけでございます。多少先方のいろいろな御事情もございまして、延び延びになっておるわけでございます。また、いまの二月までにぜひというお話でございますが、私どもも全くそのように思いますし、二月というまでもなく、一日も早くいまの特別委員会で正式のお話し合いができるような場面がつくられますよう、外務省ともよく協力いたしまして努力をいたしたい、こう考えておるわけでございます。
  85. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 そこで、特別委員会をつくって双方で話し合う場合の日本側の、インドネシア海域における安全操業に臨む基本方針というものが明確でなければならない。冒頭にお伺いしましたように、内水宣言はこれは日本として認めるわけにいかない、これが一つの問題点である。それから、インドネシアの場合には外資法というのがあって、いずれああいう軍事ファッショ政権だからして、日本に、こういうものを機会に、無理難題とは言わぬけれども、外資法に基づいて合弁会社その他で、とれるものはできるだけふんだくろう、こういう意図がないとは断じていえない。そういう外資法の問題も当然出てくるし、合弁会社の要請も出てくるだろう、そういう場合に、政府が相手側と交渉する基本方針はどこに置いて臨まれるのか、この点ひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  86. 久宗高

    ○久宗政府委員 この点は、先般の国会でもたしか申し上げたと思うのでありますが、私どもはいかなる国と交渉いたします場合にも態度は同じでございまして、ただ相手側の事情によりまして、法律問題が非常にまつ正面に出る場合と、それをたな上げにいたしまして実際的な話し合いをする場合と、いろいろあるわけでございます。インドネシアとのお話し合いの場合に、ただいま御指摘のございましたような、先方が外資法の問題を非常に重視しておられる事情もよくわかるわけでございまして、私どもといたしましては内水宣言を基本的に認めるような形、これはとれないわけでございますが、その問題はその問題といたしまして、きわめて実際的なお話し合いを弾力的にする必要があるだろうというふうに考えておるわけでございます。またその際、御指摘のございましたような漁民に過当な負担がかかることのないような配慮は、当然しなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  87. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 合弁会社問題というので、日本の国内の新聞等で伝えるところを見てまいりますと、インドネシア開発の問題で、特に漁業開発の問題についていろいろな会社がいま乗り出してきておる。そして現地に支社のある商社関係では、すでに合弁申請を出しておる。新聞の報道からいきますと、三井、三菱等その系列の商社はもちろんのこと、東食などの大手貿易商社の関係でも約六社とか、東洋物産など中小商社の関係でも約四社とか、あるいは大洋、日水の大手水産会社の関係でむ三社とか、いずれにしてもインドネシアにあらゆる商社あるいは資本の関係の目が向いてまいりまして、特に漁業開発の問題についてこの動きは非常に顕著である、あるいはすでにインドネシアにそういうものの申請を出すものさえ出てきておる。  かつて、日本が大東亜戦争中に、東南アジアの諸国に対して非常な迷惑をかけた。そういう古い記憶というのは年配の人からまだ去らない。そういう際に、インドネシア海域で漁業紛争の問題が現実に出てきておる。そこへもってきて漁場開発等で資本がどんどん先を争って、出先でも争そうという情勢がくるというと、また再びかつての植民地的な政策を日本がやろうとするのじゃないか、そういう懸念さえ現実に現地には出てまいる。そういうことで、せっかくまとめなければならぬ焦点であるインドネシアにおけるところの安全操業問題というものに、支障がくるということであってはいけないのじゃないか。そういう点について、現実にいまこういうような動きが顕著に出てきておるということに対して、特にインドネシアの海域における漁業の安全操業をまとめなければならぬ水産庁として、どういうふうにこの問題を考えておるのかという点についてもお話し願いたいと思います。
  88. 久宗高

    ○久宗政府委員 漁業の発展につきまして、個々の企業者がみずからの発意で活躍するということは、私はけっこうなことだと思うのであります。御指摘のようにインドネシアの関係におきましては、もちろんこれはインドネシアのみならず、どこの国との関連でもさようでございますが、特にインドネシアの関係におきましては、前の関係もございますし、また現在よその国もいろいろ動いておる関係もございますので、きわめて慎重な態度が必要であろうと思うのでございます。  そこで、段階といたしましては政府間におきまして、すでに総理からもああいう申し入れがありまして、特別な委員会でこの問題は検討しようという段階でございますので、それらの促進と関連いたしまして処理を考えたいというふうに思っておるわけでございますが、関係しておられますいろいろな動きがございまして、私どもも関係者に、この問題の処理につきましては、個別の企業の利害得失のほかに基本的な問題がございますので、きわめて慎重な扱いが必要だということは、おりに触れ必要に即しまして申し上げておるわけでございまして、御指摘のような混乱のないような調整をぜひはかりたいというふうに考えておるわけでございます。
  89. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これはフィリピン海域の問題とも関係いたしますけれども、インドネシア問題にしぼってお話を申し上げておるわけですが、このインドネシア海域の安全操業の問題は、いまの総理の訪問を口火として、これから特別委員会を設置して話し合いをしていく。政府としてはどのころをめどにしてまとめたいという、そのまとまる時期はいつか。さらに、あくまでも政府の責任において話し合いの結着をつける、こういう方針で臨まれていくのか。その場合に懸念をされますのは、金を出す段になると、これを関係業界のほうにさっと肩がわりしてしまって、あの方面でこれからさらに漁業を続けていく場合に、採算ベースから見て非常に困難に追い込まれるというふうなことは、国際漁業の立場からいって断じてあっちゃいけない。  そういうふうな問題も含めて、まず第一点は、妥結の時期をなるべく急がなければならない。大体いつごろにめどを置いてやるのか、あるいはいつごろ結着するという判断をしておるのか、その場合に、最後まで政府交渉ということで貫いていくということであるのか、また政府交渉をやって話し合いが妥結する場合に、業界に不当な負担の転嫁というものを考えているのか考えていないのか、こういう点についてさらに答弁を願いたいと思います。
  90. 久宗高

    ○久宗政府委員 妥結のめどといたしましては、相手国もございますので非常に申しにくいわけでございますが、私どもといたしましては、これは非常に急いで大筋をきめていく必要があるだろう、これは先方のためにもその必要があるのではないかという態度で、できるだけ急ごうと考えておるわけでございます。  それから、政府間交渉云々というお話があったわけでございますが、他の国と交渉しておりますいろいろな形を御想像いただけばわかると思うのでございますが、政府間交渉で何もかも完結するという形がよろしいかどうかという問題もございます。法律問題に固執するあまり、実際問題としてわき道にそれていってもいけないという問題もございます。したがいまして、政府間交渉だけではなしに、民間の交渉もあり得ると思うのでございますけれども、基本的なラインは、もちろん政府間交渉におきまして大筋がきまりました中で、それとそごのないような調整は当然はかっていかなければならぬというふうに思っておるわけでございます。
  91. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時期の問題がまだ出ていない。
  92. 久宗高

    ○久宗政府委員 時期の問題は、私どもとしてはできるだけ急ぎたいと考えておるわけでございます。経過期間が長ければ長いほど、いろいろ不測の問題が起こってもまずいと考えますので、私どもはできるだけ急ぎたい。何と申しましても正式のお話といたしましては、例の特別委員会においてこの問題を処理するということになっておりますので、これは外務省も努力をされまして再三督促もしておるわけでございますが、若干先方の御事情がありますのか、残念ながら今日まだ一回も開かれていないという実情でございます。これの打開につきましては、外務省、水産庁一体となりまして鋭意努力をいたしておりますので、もう少しお時間をいただきたいと思っております。
  93. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 インドネシア海域の安全操業問題というのは、だいぶ長い経過がございまして、私どもの県だって直接関係のある漁業者があるわけです。それは別といたしましても、佐藤総理の訪問で口火を切られたこれを契機に、なるべく早い機会にこの安全操業が、国際漁業の常識からしてだれしもが首肯し得る方向において正しく解決するように、強く要請をしておきたいと思いますが、このインドネシア海域の安全操業問題について、最後に政務次官の見解を伺いたい。
  94. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 ただいま水産庁並びに外務省からお答えをいたしましたように、この安全操業を確保するということ、さらに、日本の漁民の立場を守るという意味におきまして、インドネシア側と特別委員会をつくって、日本の立場をはっきりさせながら交渉を成立させるということは、非常に必要なことではないかと思っておるわけであります。  時期につきましては、いまもお話がありましたように、なるべく早い機会に解決ができるような方向に、これからも外務省と交渉の打ち合わせをしながら早急に進めていきたい、こういうふうに考えております。
  95. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 日中の民間漁業協定の問題については、幸いにいたしまして、ということでしょうか、きのう中国側から、中国の漁業協会の楊会長から、日中漁業協議会の平塚会長あてに、一年暫定的に延長する、こういう電報が届いており、北京放送もそのことが報道されるということを通じて、最悪の事態にいくのではないかというふうに憂慮されましたが、とりあえず一年間は継続していく段階になった。これは日中の、あの地域で漁業を営んでおる関係者から見れば、非常に喜ぶべきことだと思うのですが、政府もこの点については、そういうふうになったということを確認しておられるのですか。
  96. 久宗高

    ○久宗政府委員 確認いたしております。
  97. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 そこで黄海、東海方面におけるところの日本側の漁船の操業状態あるいは年間の漁獲、水揚げ高等が、最近どういう実態にあったかということについて、簡潔にお答え願いたいと思います。私の承知しておるところでは、最近、年間大体三十四万トン、二百六十億円程度の水揚げではないかと思いますし、また、この方面の稼働隻数は、底びきで六百九十隻、トロールで十六隻、こういう状態だと判断をしておるわけですが、この辺のところの今日の実態について御説明を願いたいと思います。
  98. 三善信二

    ○三善説明員 私から御説明申し上げます。  東海、黄海のいわゆる以西底びき漁業の実態でございますけれども、まず隻数から申し上げますと、ただいま先生が言われましたように、全体は七百十隻でございます。二そうびきと一そうびきということで、合計して七百十隻で操業をいたしております。それから漁獲量につきましては、ただいま先生がこの点についても言われましたように、約三十四万トン程度の漁獲量をあげております。  以上でございます。
  99. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 日中の漁業協定と簡単にいっておるわけですけれども、御承知のように、日中の漁業協定は正式にいうならば、「日中漁業協議会と中国漁業協会による黄海・東海の漁業に関する協定」、これが条約本文でありまして、それにさらに付属書第一号、「漁区の呼称、位置、定めた期間および漁船の数に関する規定」、第二号、「幼魚の保護に関する規定」、第三号、「漁船の操業秩序維持に関する規定」、第四号、「漁船が緊急事故により寄港する際および海難救助後の処理方法に関する規定」、第五号、「漁業資料の交換および技術の交流に関する規定」、こういうように条約本文と付属書が第五号まで、御承知のようにあるわけでございまして、この中では、たとえば付属書の第四号の「漁船が緊急事故により寄港する際および海難救助後の処理方法に関する規定」ということからいきますと、中国漁船が事故によって緊急に日本に寄港しなければならぬという段階があるわけでございますが、その場合には、たとえば長崎であるとか、あるいはまた鹿児島の山川漁港であるとか、あるいは五島の玉之浦漁港であるとかいうところに寄港する。あるいは中国の場合には、呉淞港とか連雲に寄港する。それで、民間協定とはいいながら、政府も当然こういう協定の中身については、協定が結ばれ、あるいは付属文書は協定と同様に取り扱うという確認になっておりますけれども、この点の実施についても、政府は、民間協定の話し合いのまとまった点を尊重して、従来もやりこれからもやっていくという精神に変わりがないかどうか、この点ひとつお伺いしたいと思います。
  100. 久宗高

    ○久宗政府委員 変わりはございません。
  101. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、この日中の漁業協定の問題が、非常にぎりぎりのところまでどうなるかということが憂慮されて、期限切れの段階でやっとこういうふうに一年暫定延長になったという背景、そういうことで、こういうスケールの段階でかんかんがくがく議論しようとは思いませんけれども、特に政務次官は山口でありますから、日中民間漁業協定の関係では、山口、長崎、福岡、これが大部分で、あと数県関係県がありますけれども、十三日の日に、日中友好促進漁民大会が開かれたときには、新聞を見ておりますと、安倍さんも激励電報というのをやっておられて、これには重大関心を持っておられるわけですけれども、今日、日中の民間漁業協定に基づく日本側の関係漁船あるいは関係業界、あるいは中国側の関係業界、関係漁船の間では、例の長崎の国旗事件以降の一時無協約状態、あるいは民間の第一次協定のできる以前の、朝鮮戦争以降拿捕が相当続いた状態から見ると、双方ともに非常に誠意を持ってやって、比較的円満にいっているのですね。にもかかわらず、最悪事態に突入かという懸念の中には、日本の対中国政策というものに対する中国側の非常な反発といいますか、懸念といいますか、そういうものが底流に非常に強くあるのですね。そういうふうに判断をされませんか。政務次官どうです。
  102. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 ただいま私の名前が出ましたけれども、私も山口県から国会議員として出ておりまして、日中漁業にはたいへん深い関係を持っております。また、農林省に入りましても、この日中漁業協定が打ち切りになって無協約状態になる、こういうふうなことで、農林省としての立場からもたいへん憂慮しておったわけでございます。しかし、幸いにいたしまして期限切れの昨日の段階で、暫定的に延長されるということで安心をいたしたわけでございます。  これまでに至る経緯につきましては、いろいろあると思いますし、また、客観情勢の変化等もあることは、先生十分御存じのとおりであります。しかし、私は、政府としても政経分離という立場でやっておるわけで、この日中漁業協定はあくまでも民間の協定としてこれからも存続していくことが、西日本関係の漁業に従事しておる人々にとっても非常に大事なことではないか、こういうふうに考えております。
  103. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私が質問を予定した段階ときょうの時点では、日中の民間漁業協定の点は、とりあえず一年暫定ということで延長されたという情勢の好転がございました。これは一時的な段階でありましょうけれども、根本的な問題は、やはり中国に対する日本の外交姿勢、政治全体の姿勢ということだと思いますが、喜ぶべきことだと思いますので、多くの点を予定してきておりましたけれども、それはやめます。今後の問題としては、やはり民間協定から政府協定へという前進を前提にした、もっと基本的な考え方を政府自身としても持ってもらいたいというのが、われわれの率直な気持ちでございます。  時間の関係もありますので、最後に、国内の水産の関係で一点だけちょっとお伺いをしておきたいと思いますが、私の県の三重県あたりは、沿岸漁業の関係では、真珠がある意味で生命線のような役割りを果たしておる。単に三重県ばかりでなしに、今日二十数県にまたがって、戦後ずっと伸びていったわけでありまして、それが昨年の六月ごろから、真珠不況という事態に追い込まれてまいりました。現実にわれわれ自分の地域を回りますと、海岸の漁業地帯に行けば、口を開けば真珠の不況対策をどうしてくれるのだ、いろいろこちらからは注文しておるけれども、どうも政府の腰が重い、あるいは水産庁の腰が重い、何とかこの機会に緊急の必要な対策、あるいは長期展望に立った恒久対策というものを真剣に考えてもらいたい、こういうことを強く望まれるわけであります。その点については、私どもも実態をよく承知しておりますし、その点に基づいて、政府にもまた水産庁にもいろいろ申し上げておるわけですけれども、どうもやはり対策それ自身が積極的に進まない。この点については、残念ながら、真珠といえば大手筋の一部の存在だけに幻惑されて、多くの経営実態を調べて見れば、零細経営のものが相当数を占めておるという実態が案外閑却視されている。したがって、力があるのだからいいだろうという、非常に実態を知らざる者の暴論も出てくる。戦後、農林水産業外国へ輸出するという中においては、最近ちょっと減少しましたが、それでも二百二十九億くらいの輸出を、本年度でも予定されておると思います。  そういうふうに見てくると、非常な外貨獲得にもなっておりますし、しかも、国際的にはいわば独占産業である。そういう点で、当面の深刻な不況対策に対する緊急の問題、あるいは長期展望に立った問題というものを、やはり真剣に考えてもらいたいと思う。私は、もう詳細な点には触れませんけれども、そういう点について、水産庁として当面緊急の対策にはいかなる手を打とうとしておるのか、あるいは長期の対策についてはどういうことを考えておるのか、この点ひとつお伺いしておきたいと思います。
  104. 久宗高

    ○久宗政府委員 真珠につきましては、ただいま先生から御指摘のございましたような、相当やっかいな事態になってきておるわけでございます。農林省といたしましては、戦後真珠の産業がスタートいたします前に、占領下におきましていろいろなハンディキャップがございました点も頭に入れまして、この産業を評価する必要があるだろう、こう考えておるわけでございますが、国会におかれましても真珠の振興法という形で、そのギャップを取り戻すような形で立法をしていただきまして、その波に乗りまして、過去数年にわたりまして非常な伸長を遂げたわけでございますが、この段階まで参りますと、やはり根本的に、ただ増産という形ではなくて、真珠産業の実態に即しました体制が必要ではないかということで、振興法の抜本的な改正をいたしたいということで、いま鋭意検討をいたしておるわけでございます。  さような長期展望の中で、緊急の措置といたしましては、このような事態に急激になりまして、業界も非常に動転しておったわけでございますし、また業界そのものは、先生の御指摘のように、非常に大きな産業から全く零細な漁民まで含みます、きわめて段階が多いむずかしい産業構造になっておるわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、どうもこれは役所側にも非常に手落ちがあったように思うわけでございますが、若干ブームに乗って安易な運営があったように反省をいたしておりますし、また業界も、今日の事態では相当な反省をしておられるように思いますけれども、若干その点甘く問題を見ておったような点もなしとはいえないというふうに思うわけでございます。  そこで、かりに真珠産業につきまして、体系的な恒久策を打ち出すといたしましても、どうしてもこの段階で、一回その産業を背負って立つ方たち自身が根本的に反省していただく必要もあろうと思いますし、また、自分たちでどの程度までの努力ができるかという段階を経て処置すべきではないか、こう考えまして、真珠審議会にもおはかりをいたしました上で、本年当初から一連の自主的な措置を打って今日に至ったわけでございます。急激な措置でございますので、必ずしも所期のとおりにはいっておりませんけれども、少なくとも今日までまいりました真珠業界といたしましては、相当心を入れかえまして、自主的なできるだけの措置をいたしたように思うわけでございます。  私どもといたしましては、いまの恒久策のほうの方向づけをはっきりいたしませんと、緊急な措置につきましても、関係者だけの主観では、第三者の御理解が、今日までの経過から見まして十分得られないのではないか。さような観点に立ちまして、若干きついようではございますけれども、きわめて自主的な措置をまずとらして、それの盛り上がりを見まして、恒久対策をその上に乗っけていきたいという考え方で対処いたそうと考えておるわけでございます。
  105. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、水産庁のこの問題に対する姿勢が、非常に消極的だというふうに見ておるのです。一昨年以来の現地の非常に深刻な事態というものを、十分承知しておるかどうかという点を疑うのです。私どもは、そういう地帯におりますから身にしみて感ずる。場合によると、中手筋でも倒産が出て、自殺者が出るというような深刻な事態を、私どもはしばしば経験しておるのです。やはりこれは生産体制の問題もありましょう。さらに、輸出を含めた販売といいますか、そういう体制の問題もありましょう。同時に、真珠養殖業者の資金の内容というものを見てみると、自己資金はあまり十分なくて、市中銀行に相当大量にたよる。農中とかあるいは政府資金の、特に農林漁業金融公庫なんというものは、ごく一部であるというような内容についても、もっとやはり政府自身が実態に即した手を打っていくことを、われわれも強く要請してきておるわけですけれども、遅々として必ずしもそれが進まない。だから、自主的にやれ、自主的にやれというのにもおのずから限界がある。やはり政府として、今日の時点で緊急にやらなければならぬ点については積極的に手を打つべきである。それは調整保管の問題もありましょう。粗悪品の保管に対する助成の問題もありましょう。そういう問題はやはり数年で済むわけであります。  かつて私は、当選早々でありましたが、木炭の問題について、木炭の調整保管ということで、あの当時の事態に処するということもやりましたし、その他、農林省関係産業は第一次産業でございますから、長期展望は別として、緊急に手を打たなければならぬ点は、その時点時点で政府みずからが積極的に手を打たなければならぬ。そして、政府がやはり積極的な姿勢を示すということが、輸出産業であるこの産業においては、いわゆる価格安定あるいはバイヤーとの関係でも、市況が安定するという一つのてこ入れになる。だから、自主的にやれ、自主的にやれだけではやはりとどまらないので、そういう点について関係方面からの要請、真珠産業の今日の実態、将来の安定的な発展という前提に立って、真剣に取り組んでもらいたいというふうに思うのです。政務次官どうです。
  106. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 真珠事業がこうした暗礁に乗り上げました経緯につきましては、先生も十分御承知のとおりであります。外的なもの、内的なものいろいろあると思いますが、国内の対策としてこれから推進すべきことについては、積極的にやらなければならぬと思います。そのために、いま水産庁の長官が説明いたしましたように、真珠養殖事業法の改正等とも積極的に取り組んで、次期通常国会に出したいとも考えておりますし、あるいはまた、ただいまお話しのような融資関係の問題も、これからの真珠養殖事業を発展させる上におきましてきわめて大切なことであろう、こういうふうに思っております。私も実情を多少知っておりますが、ひとつ積極的に取り組んで、これが安定のために努力していきたいと思います。
  107. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 以上で、時間の関係もありますから終わります。      ————◇—————
  108. 本名武

    本名委員長 請願の審査に入ります。  今国会において本委員会に付託になりました請願は、全部で八十件であります。  本日の請願日程第一から第八〇までの各請願を一括して議題といたします。  まず、審査の方法についておはかりいたします。  各請願の内容につきましては、請願文書表等によりましてすでに御承知のことと存じます。また、先刻の理事会におきまして慎重に御検討いただきましたので、この際、各請願についての紹介議員からの説明等は省略し、直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 本名武

    本名委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  本日の請願日程中、第一ないし第八、第一〇ないし第一七、第一九ないし第六〇、第六主ないし第六六及び第六八ないし第八〇の各請願は、いずれも採択の上内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  110. 本名武

    本名委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、ただいま議決いたしました各請願に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  111. 本名武

    本名委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。〔報告書は附録に掲載〕
  112. 本名武

    本名委員長 また、本委員会に参考送付されました陳情書は、日本蚕糸事業団の整理統合反対に関する陳情書外三十二件であります。  以上、御報告申し上げます。      ————◇—————
  113. 本名武

    本名委員長 次に、閉会中審査に関する件についておはかりいたします。  すなわち、  森林法の一部を改正する法律案  農林水産業振興に関する件  農林水産物に関する件  農林水産業団体に関する件  農林水産金融に関する件  農林漁業災害補償制度に関する件 以上の各案件につきまして、閉会中もなお審査を行ないたい旨議長に対し申し出たいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  114. 本名武

    本名委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、議長への申し出に関する手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 本名武

    本名委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時四分散会