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佐藤(達)
政府委員 ただいま
お話に出ましたように、私
どもの
勧告は、八月という
年度半ばの中途はんぱな時期に例年なっておりまして、しかもそれが五月にさかのぼってということになりますので、たいへん各方面に御心配、御迷惑をおかけしておるということはよくわかります。したがいまして、これも御
承知のように、
勧告の時期その他について再検討すべきではないかという話が数年前からありまして、私
どももこの
勧告の円滑なる実現を念願するものであります以上は、謙虚に根本に立ち返って検討してみよう、また、
政府側でも
閣僚小委員会等でその研究の場をおつくりいただきまして、私自身も
閣僚小委員会に出していただいて、
閣僚諸公と一緒になり、何か
名案はないかということで、数回にわたって知恵をしぼってまいりましたのですけれ
ども、遺憾ながらいままでのところ確たる
名案はないということで、やむを得ず今回従来
どおりの
やり方をやっておるわけであります。
ただ、ここで、一応私
どもがなぜ八月という妙なときに
勧告を申し上げておるか、何も好きこのんでやっておるわけではございませんということだけは御了承をいただきたいと思いますので、その点を一応ここで説明させていただきたいと思いますけれ
ども、御
承知のように、最近は非常に
賃金の
上昇傾向が毎年著しくございまして、これがある程度安定しておりますと話が非常に楽なんでありますが、そうはいかないので、
相当の率が毎年上昇しておるという事実が一方においてあります。
それから、
公務員の
給与をきめますについて、とうも急に
白紙にこれを
考えて
——実は昔、戦争前に私はやはり
公務員の
給与のことを
法制局でやっておったわけですが、そのころは
民間の
給与がどうのこうのということはすっかり超越いたしまして、
官吏としての体面を保つためにはどのくらいの
給与をやるべきか、生活を維持するためにはどのくらいの
給与をやるべきか、あるいは
職務に応じてどのくらいの
給与をやるべきかということで、一本やりで
白紙に立って
給与の盛りつけをやっておったわけです。そしてまた、
給与改定というようなこともほとんどなかったと申し上げてよろしい、そのくらいに安定しておったわけでございますけれ
ども、働
承知のように、昨今の
経済情勢は先ほど申しましたとおりでございます。また一方、天皇の
官吏といわれておりました
公務員の身分は、全体の
奉仕者ということになってしまいまして、一面においては一種の
勤労者としての性格が非常に強く出ておるという面もございます。したがいまして、私
どもが昔とっておりましたような
白紙に絵をかくようなことでは今日の事態はいかない、何かはっきり確固たる手がかりを求めまして、そこに根拠を置いて
公務員の
給与というものをきめていただく、そのためには、やはり
民間の
給与水準というものを的確にとらえまして、そして、せめて
民間の
給与水準には合わしていただきたいということが、当面においては一番手がたい
支給方法であるということで、数年来それをやっておるわけでございます。
さて、その
民間の
給与というものの動きを見ますと、御
承知のように、外国では各
企業ばらばらに、時期を選ばず年間を通じて
ばらばらに賃上げをやっておりますが、
日本の場合は、これは
日本の
特殊性ではないかと思いますけれ
ども、いわゆる春闘という名前がございますように、春に大体
賃金の変化というものが集中しておる。そこで、私
どもとしても、その時期をとらえるのが最も適切であろうということから、四月をとらえまして
調査の時期とする、そうして六千数百の
事業所、それから
従業員で申しますと四十五、六万人の
民間従業員を個別に当たってこまかく調べまして、それを
集計をして、そうして
公務員の四月における
給与と引き合わしてみようということでやっております。したがいまして、その
集計が非常に緻密な
集計になりますものですから、
統計局の最
新鋭機を総動員しましてなおかつ八月に入ったころにその
集計の結果が出るわけであります。そこで、われわれとしては、
公務員給与と突き合わして、ことしの場合でいえば何%、七・九とか六・何とかいう
パーセンテージの
格差をつかまえまして、そしてその
格差を埋めていただきたいということで段取りを進めておりますために、心ならずも八月の時期に
勧告せざるを得ない。
ただ、いままでの私
どものとっておりますこの作業の長所と
考えますのは、これは手がたいという表現で申しましたけれ
ども、
給与問題についてはもう
使用者側、それから雇われておる者は、いずれにせよ御満足ということはあり得ない、あらゆる
批判が集中するわけです。
公務員の場合には
経済界からもまた
批判がくるわけです。そういう場合に、いま申しましたように、六千数百の
民間の
事業所をつかまえて、それだけせっかくの精密な
調査の結果の
数字でございます。したがって、そこまでは合わしていただきたいというよほどはっきりしたデータを持ちませんと、これは
批判の
受けっぱなしで、
人事院としては何とも弁明できない。いまのような
やり方では、それは
政府側にも御不満はありましょうし、
労働組合の側にも常に
批判はありましょうけれ
ども、それだけの大規模な
調査をやった結果なったということで、しぶしぶながらも納得していただいておるわけです。先ほど申しましたように、
経済が非常に安定いたしまして、
給与水準もずっと高ければ、もう
パーセンテージの一%、二%はおそらく問題にならないということでしょうけれ
ども、いまの時期はまだそこまでいかぬということで、当面この手がたい
方法をとってまいりますために、いま御
指摘のような問題になる。
そこで、しからば
改善方法はないかという検討の問題になって、先ほど申しましたように、いまのところ
名案なしということでまいりましたけれ
ども、つらつら
考えてみますと、私
どもの
立場から率直に言わしていただけば、たとえば
公労委の
仲裁裁定が、あれは新
年度に入って五月の下旬になります。そのころ、やはり数百億のお金を要する
裁定が下るわけです。ところがここ十年以上この
仲裁裁定は全部当初
予算の
やりくりでまかなわれまして、補正もなしに四月にさかのぼって完全に
実施されておるという事実が一方においてございます。私
どものお預かりしております
一般職の
公務員でありますけれ
ども、その中には、たとえば郵政省の
屋根の下には私
どものお預かりしております
一般職の
公務員の方がおられるとともに、
現業の方々がおる。すなわち、
公労委の
仲裁裁定に従わぬ
一般職の
公務員の人も同じ
屋根の下におられるわけです。片一方の
現業のほうは、いまの
仲裁裁定が七月ごろあっても、完全に四月にさかのぼって
裁定を
実施してもらっておるわけです。私
どものお預かりしておる
一般職の
公務員のほうは、幸いにしてことしは八月になったということはたいへんうれしいことでありますけれ
ども、九月とか十月とか八月というのは、実質的には一応引き下げられた形である。
そこで、どういう原因でこういうことになるのかという点に焦点を合わしてみますと、はなはだ私
どものかってな
言い方かもしれませんけれ
ども、それは当初
予算のほうで
相当含みがあればこそ、その
公労委の
仲裁裁定が
やりくりができる。とすれば、われわれのほうのお預かりしておる
一般職の
公務員の
給与のためにも、やはり
賃金上昇の
傾向というものが翌
年度についてあらかじめ
見通しができるならば、多少その分を
含みとして
財源を当初
予算でとっておいていただければ、洗いざらい八月になって
財源をおさがしになるということもなくて済むのじゃないかということをかねがね申し上げておるわけです。幸いにして、最近の新聞の伝えるところによると、来
年度の
予算の
編成についてそういう御議論が
相当出ておるようで、その限りにおいて私
ども非常にうれしいことに思っておるわけでございます。
非常に長くなって、ポイントとずれたお答えになったかしれませんけれ
ども、そういうことが当面の処置ではなかろうか。
それから、当
内閣委員会におきましても、たびたびこの
給与法案の採決の際に、
完全実施のために
財源上あるいは
予算上の
措置を十分に考慮せよという
政府に対する
附帯決議もございます。私も、ただいま申し上げました私
どもの念願も、いまの
附帯決議の
趣旨にも沿っておるのではないかという
気持ちもいたしまして、当面はそういうところでとりあえず何とかお
手当ていただけないかという
気持ちでおるわけでございます。