○林
委員 私は、
日本共産党を代表して、ただいま議題となっておる
昭和四十二年度分の
地方交付税の
単位費用の特例に関する
法律案に対して反対の討論をいたします。
その
理由は次のとおりであります。
第一に、本法案は、このたびの人事院勧告に基づく
公務員給与引き上げにつき、
地方公務員の給与引き上げ分を基準
財政需要額に算入し、
単位費用を
改正することを主たる
内容とするものであります。しかし、この基本になっておる人事院勧告並びにそれを立法化した
公務員給与
改正法案は、はなはだ上に厚く下に薄いという重大な欠陥を持っております。そして、
公務員の切実な要求である一律月額八千円の賃金引き上げ、住宅手当の支給、
交通費の実費支給等は、ほとんど無視されております。そして平均の引き上げ額は、一般職の
公務員においてもわずか三千百十一円にすぎません。しかも、この平均引き上げ額に至らない者は、行政職の第一表
職員で五六%、行政職の第二表の
職員に至っては実に八〇%であります。これだけの多くの者が、平均の引き上げ額にも達しないような賃金体系であります。しかも政府案は、この人事院勧告の五月
実施を八月
実施に引き下げる等の
内容を持ったものであります。本法案は、これをそのまま
地方公務員に適用するものであります。
もちろん、わが党は、法律できめられた所定の
手続によって給与
改定の財源や
交通安全
対策費等を基準
財政需要額に算入して、
地方交付税を交付すること自体に反対するものではありませんけれ
ども、その
内容が以上のようなものであり、かつ府県または
大都市の
地方公務員を除く多くの
地方公務員労働者の賃金が、
国家公務員労働者の賃金と比べると、さらに約三〇%も低いという
現状のもとでは、この法案を認めるわけにはいかないのであります。
第二は、本法案の
内容である
単位費用は、実情に合っておらないということであります。そして、常に超過
負担をもたらす一つの要因になっておるということであります。
いまや、
地方自治体の超過
負担の総計は、自治省の内輪の計算から見ても、四十一年度までの残存分は、これは自治省の発表でありますが、千百十二億に達し、
地方交付税総額の約一五%に達しております。これが今日の
地方自治体の
財政に大きな
負担となって、憲法で規定されておる
地方自治の権限を
財政の面で破壊しておるわけであります。この根源の一つは、実にこのたびの計算の基礎になっておる
単位費用なるものが実情に合わないことによるものであります。われわれはこの点からも本法案を認めるわけにいかないわけであります。
第三は、この法案に
関連して、政府はこの際、
地方財政に若干の余裕が生じたという口実のもとに、
昭和三十九年、四十年度における
地方交付税特別会計借り入れ金の残、三百億円のうちから二百億円を繰り上げ返済をさせる、そういう措置をとっておるわけであります。そもそもこの借り入れ金は、三十九、四十年度における
地方公務員の給与引き上げ分の一部をまかなうために、国の一般会計から特別に措置したものであります。この返済は、四十四年ないし四十七年度までに既定の返済
計画に基づき返済すればよいように法律できめられておるところであります。しかるに、このたび、
地方財政に若干の余裕があるからとして、この分割返済の既定の権利を剥奪して繰り上げ返済させることは、積年の
地方財政の赤字の累積、
地方債の増大、超過
負担の累増、公営企業のばく大な赤字などを考えるならば、とうてい許すわけにいかないのであります。政府は一方において、第三次防衛力増強
計画二兆三千四百億円、高速自動車道路建設
計画六兆六千億円、海外援助五カ年
計画一兆八千億円等、軍国主義復活、独占資本のためには無制限に政府の
財政支出を許しております。一方、租税特別措置法によっては、独占資本に対して年間約一兆円の減税免税を許しております。この
財政硬直化の根本的な原因はそのままにして、大事に、むしろ保護してやりながら、一方、
財政硬直化を
理由にして
地方交付税率の引き下げまでも
計画し、その犠牲を一方的に
地方自治体と地域住民に押しつけようとしております。また、四十年度において税収見積もりが過大であったというこの誤りから
発生したことに対する措置として、
地方交付税交付金が当初
計画に満たず、
地方財政に不足を生じたというこの際に、特別措置として行なった四百八十二億円の
地方自治体への
財政措置を、いわゆるこれは出世払いだということで、実際は返済する必要がないにもかかわらず、四十三年度においてその返済を一挙に迫ろうとしております。また今回は、経費節減九十億円を押しつけ、さらに
財政の繰り延べ等をして、
財政硬直化の逃げ道を、より一そう地域住民の収奪と
地方財政の圧迫を強行することによって見出そうとしております。このあらわれがこのたびの借り入れ金二百億円の繰り上げ返済の強行であります。わが党は、このような政府の
地方財政破壊の措置をとうてい認めるわけにはいきません。
なお、本法案には通学路の
交通安全施設の
費用として九十八億円を
財政需要額に算入する措置がとられておりますが、これではわが党やあるいは一般の人民が要求している緊急提案に照らして全く不十分であり、激増する
交通災害を防止する、ことに
地方における最近とみに激増してくる
交通災害を防止するための措置としては、全く不十分と言わざるを得ないのであります。
わが党は、
財政需要額の計算を
地方自治体の実情に見合ったように改め、累積する超過
負担を国の
財政によってすみやかに解消し、
地方債を長期、低利の政府資金に借りかえさせるような措置をし、
地方財政擁護の積極的な措置をとるとともに、さらに、余裕があるならば
地方税の公正な減税を断行しなければならないと思います。
このようにして、
地方自治体が、地域住民の福祉のために憲法で規定されている民主主義的な固有の自治体の権限が行使できるよう、政府が保障することを要求いたしまして、この本法案に反対するものであります。
以上が私の反対の
理由であります。