○井上(亮)
政府委員 ただいま御
指摘のありました電気の主任
技術者の制度は、先生も御承知のように、電気
事業法の七十二条で、自家用工作物を
設置いたします者は、やはり
保安を強化するために、試験を受けました主任
技術者を
選任しなければならないということが法的に義務づけられておるわけでございます。その場合に、通産省令で定めるところにより
選任しなければならないということに相なっております。ところで、通産省令におきましては、さらに
実情によりまして——御承知のように、自家用工作物を持っておるものは全国に無数にございます。したがいまして、この法律の
規定は非常にシビアなことを要求しておりまして、通産省令で定めるところによりとは書いてありますけれ
ども、必ず主任
技術者を置かなければいかぬということでございます。ところが大
企業、
中小企業程度でございますと、この自家用工作物を使います
事業者は、主任
技術者を置くだけの経営的なあるいは経済的な力を持っておるわけでございますが、きわめて零細な
企業等におきましては、なかなか電気の主任
技術者を雇い入れて
選任するということが困難な場合が多いわけでございます。そういう実態を踏まえまして、この通産省令では、通産
局長が認めます場合には置かないことができる、つまり雇い入れなくてもいい。しかし、雇い入れなくてもいいけれ
ども、やはり
消費者といいますか、あるいは周辺の住民のために
保安は強化しなければいけませんので、便法としまして、
保安協会——
保安協会と申しますものは、各九電力がいろいろ
技術上の
基準を守りますために検査をするわけですが、その
指定機関になっております
保安協会か、あるいは
保安協会でなくても通産
局長が認めます場合には、かけ持ちでもいい、つまり
選任しなくてもいい、特別に認めましたものについては
中小企業はかけ持ちでも認めてもよろしいというように、法律では非常にシビアな要件を課してございますが、実態面からやや弾力的な
運用を認めているわけでございます。したがいまして、その場合に、
保安協会に入っておる主任
技術者は問題はありませんけれ
ども、
保安協会にも所属しない、いわゆる個人でフリーな立場で何社かをかけ持って、当該自家用工作物を持っておられる
中小企業等の
保安を見てあげるというようなものが、いわゆる先生ただいま御
指摘の斉藤さんのような方、つまりこれは通称専業者と称しておりますが、そういう存在を法律では一応許しておるわけでございます。
ところで、ただいま斉藤さんのお話が出ましたが、私
ども、
新聞に出ました当時、その事情を
調査したわけでございますが、斉藤さん非常にお気の毒だと私は個人的には思います。ただしかし、斉藤さん自身ちょっと誤解をしておられたきらいがあるのではないか。と申しますのは、電気の主任
技術者の資格試験に合格された、つまり免状をもらわれた。免状をもらわれればすぐに自家用工作物の、法律でいっております主任
技術者の
業務に携われるというふうに誤解されたわけでございまして、これは一般の方がそういう誤解をされるのも私は一面において無理はないと思います。こういうこまかいいろいろな法律
事項でございますから、無理はないと思いますが、ただ、私
どもはあくまでも、法律的に申しますと、主任
技術者の資格試験に合格されて免状を持たれた方は、これはやはり資格試験でございまして、資格試験に合格された方が必ずその
業務に従事できなければならないとは考えておりません。あくまでも資格試験でございます。法が要求している本来の趣旨からいたしますと、自家用電気工作物を持っているような
企業におきましては、やはりそういうかけ持ちでなくて、雇い入れて常時
保安の
業務に携わってもらうことが必要だ。これは法で要求していますが、先ほど申しましたように、そういう無数の零細
企業者も自家用工作物を持っているというような実態から、便法として認めた。その場合に、特にかけ持ちというようなことになりますと、相当豊富な知識、
経験が必要ではないかというような意味合いから、通産省令におきまして、さらにこまかい
選任規定で、通産
局長に委任をしております。その考え方は、やはり相当な
経験年数を必要とするというような考え方をとっておるわけでございます。斉藤さんが不幸にしてその
選任基準に入れなかったというのが
実情でございます。