○
河野(正)
委員 そこで私は、今日までの
厚生省の指導方針等について——多くの時間がございません。私に与えられた時間がございませんから、いろいろ多くを申し上げませんが、一例をあげますると、今日まで基準寝具——患者に提供する寝具ですよ。これらのいわゆる洗たくですね。基準寝具になりますと、寝具を患者に提供する。そうすると一週間に一ぺんかえなければならぬ。それらについて民間に洗たくを発注するのですね。ところが、この基準寝具というのはこの医療費の中に入っておるわけですよ。ですから、そういう医療費の一部を機関外に出すことは望ましくない、できるだけ
病院でやりなさいというのが
厚生省の指導方針です。それは医療費の一部ですから、医療費の一部がどんどんよそに食われると、結局
病院内の質というものは低下する。こういうことで、医療費として払われたものは全部
病院で消化しなさい、こういう指導方針というものが今日までやられたと思うのです。
そういう指導と、これは一例ですけれども、今度の場合は、当然、もし患者の給食が民間で委託をされてやられるというような事態があったならば、
病院直営でやりなさい。極端に言いますと、これは下請に出せば、下請は当然利潤追求をしなければなりませんから、そこで、おそらく献立表その他は
病院の栄養士が提出するでしょう。しかし、今度やるほうは当然利潤を追求しなければならぬから、たとえばカロリー等については算術計算で出てくるわけですから、鮮度の低いもの——それは腐って中毒すれば悪いですけれども、中毒する一歩手前の鮮度の落ちたものを使えば安上がりだ。これは労働省にも聞きますけれども、たとえば労働者の賃金なんかも安くする。これは労働者の権利というものが非常に押えられていく。要するに、金を浮かそうということでやろうというわけですからね。極端に言えば安上がり医療行政ですよ。そういう金のことを考えなければ、何も民間に委託する必要はない。直営でやっておっていいわけです。とにかく何とか安く仕上げようということで考えられておることは明らかであると思うのです。そうすれば、医療の質が低下するということは明らかですね。
しかも、先ほど申し上げておるように、給食というものは治療の一環だ。給食というものは治療の一環だから、結局医療費の中に入っておるわけです。それが入らなければ所得の二重取りということになりまして、食べることは自分で食べるのがあたりまえで、それを
病院で食べるのは所得の二重取りということで、生活保護その他の患者については問題が出てくるわけですね。ですけれども、どこまでも
病院で提供する給食というものは治療の一環である。具体的に例をあげますと、じん臓の場合はじん臓食にしなければならぬ、肝臓の場合は肝臓食をやる、かっけの場合はかっけ食をやるということで、
病院が提供する食事というものは治療の一環であるというたてまえであるから、給食というものは保険給付の内容になっているわけですね。そういうことが考えられなければ、生活保護のごときは当然所得の二重取りなんです。食事と生活保護をもらっておるわけです。
病院で給食をもらっておる。そういう意味で所得の二重取りになる。ところが、そういうことが許されておるのは、
病院で提供する給食というものは治療の一環である。じん臓の場合のじん臓食、肝臓の場合の肝臓食、あるいはかっけの場合のかっけ食ということで、治療の一環だということでそういうことが今日は認められたという経過がございますことは、大臣も常識的に御判断いただけると思うのです。そういう意味で、治療の一環である給食というものを、機関として
指定されていない、人格のないものがやるということについて、これは医療法上問題があるということは当然だと思うのです。
ところが、どうも大臣におそらく事務当局が入れ知恵したと思うんです。私は前からいろいろやってきたいきさつがありますから、そういうことで実はきょうは十分あれば事足りるというふうに理解しておったわけですけれども、いまの状態じゃ持ち時間を超過するような結果になって、非常に残念だと思うのです。特に、これは医療法の施行規則十九条には、
病院にはこれこれの職員配置をしなければならぬという規定があるわけですね。もちろんその中には明確に栄養士一人を置かなければならぬという条項もございます。それから必ずしもそういうふうな職名をあげていないところもございます。たとえばレントゲン技術者、事務員、雑仕婦、その他の従業者については、
病院の実情に応じて適当数置かなければならぬ、こういうふうになっておる。だから炊事婦は適当数置かなければならないということです。その他だから。これは炊事婦と書いていないから。少なくとも給食業務をやっておる以上は——これは給食業務をやっていないところもありますからね。ですから、私はおそらくこの給食ということがはずれておると思うけれども、それは給食をやらないところもありますから、あると思うのです。そうしますと、その
病院の実情に応じて適当数置かなければならぬ。ところがこの北九州市の場合にはゼロになるわけですね、給食は全部委託するわけですから。他人になるわけですから、ゼロになるわけです。ですから、これは明らかに医療法施行規則第十九条にも抵触する問題ではないかというふうな判断をするわけです。ですから、この辺は、私は正直いって大臣と問答しようと思っておらなかったから、あるいはお聞き及びでなかったかもしれぬ。もうその前にこの問題はさっと解決すると判断しておったから。ところが、なかなかすっきりせぬものだから、とうとうここまで深入りしてしまったわけですけれども、どうもそういう点からも、これは単に財政上の問題だけでなくて、医療行政の各
法律に抵触するかなり重大な問題だと私は思う。
もしこういうことが許されますと、今後みんな——いま医療費がなかなか上がりませんからね。これはこの前、耳鼻科医が
厚生大臣に何とかしてくれという要求があったけれども、やはり一般的に医療費を上げてほしいが、これはなかなか財政上の問題で上がらない。そうしますと、物件費は上がっていきますから、
病院経営者としては何とかして経費を押さえなければならぬということで、もしこういうような民間委託というようなことが許されると、これは一般の開業医までもどんどん委託するようになりますよ、安上がりということで。それのほうが労務管理費も要らぬし、しかし初めから何点なら何点以内で請け負わせるということになれば、例の競輪や競馬のように、初めから
病院はもうかることになっておる。ですから、こういうことが許されるならば、保険医療の大混乱が起こってくると私は思う。これはたいへんなことですから、そういう意味からも、やはりこの際
園田厚生大臣は折り目正しく解決されることを、私どもは特に要望をするわけでございます。その点について大臣から率直な御意見をお聞かせいただきたい。