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板川委員 去る十一月十日当
委員会で取り上げました、福島交通の織田社長の会社解散を前提とする事業全面休止問題、これは十一月十二日に実際に半日行なわれたのでありますが、私は、これは交通運輸業者として、公益性を忘却した、許すことのできない、いわば反社会的な行為であろうと思うのであります。織田社長の社会的
責任を追及するという立場から、私は若干質問をいたしたいと思います。
質問に入ります前に、
大臣もかわったことでありますし、事実
関係について申し上げてみたいと思うのであります。
私は、
内藤委員長を団長とする衆議院の福島交通現地
調査団の一員として、現地
調査に参加した一人であります。しかもまた、問題の十二日の前日から現地に先行しておりまして、第一組合の加盟しておる私鉄総連の顧問議員という立場からも、組合の重要な
会議に参加しております。
〔
委員長退席、
福井委員長代理着席〕
また、面識ある木村福島県知事やあるいは福島検察庁の担当検事、県警本部の
責任者とも意見を交換いたしております。したがって、事件の渦中にいた者として、事実
関係をよく
承知しておる一人だと思うのでございます。そうした立場から、事実をまず粉飾なく述べさしていただいて、その上で
関係者に質問をいたしたいと思います。
事実
関係を日時順に申し上げてみます。
十一月八日、福島交通織田社長は、朝日
新聞の記者を招きまして、会社を解散する、十二日より電車、バスの全面的休止をする、こういう言明をしました。十一月九日にそれが朝日
新聞紙上に報道され、また織田社長は福島テレビにも同様の趣旨でテレビを通じて言明しました。また、仙台
陸運局にも同様の趣旨を通告をいたしました。九日の午後に東北
電力福島営業所に文書で、十二日以降電車運転用の変電所をとめるという通知をいたしました。それから十一月十日には地元紙の
新聞を通じまして社告を出しまして、十二日以降全従業員を解雇する解雇通知を掲載しました。さらに、当
委員会で本問題を取り上げてこのことが報道されましたのに対して、
新聞記者に織田社長は、許可なく運休をするのは刑罰覚悟の上であるということを言明しております。また
陸運局長から運休をとりやめるように、
運行を
確保するようにという警告が出されたと伝えられております。
次に、
運輸大臣は
——これは前
運輸大臣大橋さんですが、十日の午後記者会見で、組合の自主
運行を
期待すると言明いたしました。次は、
組合側も、国会での審議の過程において、組合従業員として自主
運行を
確保するということは合法的であるという法制局
見解が当
委員会において示され、
運輸大臣の自主
運行を
期待するという言明が
新聞に報道され、そういった背景を基礎といたしまして、労働組合も十二日以降は自主
運行をして県民の足を
確保するという声明を十日に出したのであります。
翌十一月十一日午後二時、裁判所より、お手元に差し上げてあります資料1にありますように仮処分が出されました。これは福島交通織田大蔵社長に対して、列車あるいはバスの
運行を妨害するなという趣旨の仮処分であります。これは三時ごろ福島交通社長に手渡されたようであります。そのころ織田社長は知事と会見をしまして、知事より運休を取りやめるように要請しましたが、織田社長はこれを拒否してもの別れしたというのであります。その後、織田社長は
新聞記者会見で、断固として刑罰を覚悟してやるということを強調し、大橋
運輸大臣は法律を知らぬばか者である、
大臣は組合の自主
運行を
期待すると言っておるが、では燃料も従業員の給料も
運輸大臣が全部払うのだな、そういうような自主
運行、
業務管理といわれる性質のものをいまの財界が認めるはずはない、これは憲法違反である、こういうようなことを織田社長は
新聞記者会見で言明いたしております。さらに、午後九時半ころ福島交通稲田
調査役という者が社長の命令だとしまして、各営業所長に、資料2にありますような趣旨、これは会社は十二日以降
基本方針どおり休止する方針だ、しかし組合が車を
運行するという場合には、仮処分が出たのであるから妨害はするな、燃料は
確保するな、
運行して集めてきた金はちょうだいしておけ、持ってこないときは違法行為としてその後摘発をする、こういう趣旨のことを稲田
調査役を通じて現場の所長に伝えておるのであります。
ここでわれわれ
関係者は
——ここで
関係者というのは
新聞記者を
中心とした
関係者ですが、会社側が仮処分によって組合の自主
運行を妨害するなという指示をしたこと、
組合側は自主
運行して県民の足を
確保すると言明したこと、国会における合法性が保証されたこと、
大臣の自主
運行期待の言明があったこと、こういう条件の中で、十二日以降全面休止は回避されたというニュースが一般に伝わったのであります。しかしその中でも、問題の燃料を
確保するということだけは解決をされておらなかったのであります。福島交通バスの燃料は、織田大蔵氏が社長をしておりまする太陽商事という会社から納入をされております。織田社長はすでに太陽商事に、十二日以降の燃料を納入しないように指示をしておりまして、会社の燃料スタンドには十二日からの燃料はありません。しかし境目でありますから多少残っておったところもありますが、十二日以降の燃料の
確保は保証されていなかったのであります。
そこで、
組合側は市内のガソリン店に掛け売りで売れるかということを交渉しましたところが、商工
会議所では協議して、商業道徳に反する、紛争の渦中に巻き込まれたくないという理由から掛け売りはしないと決議しました。ただし現金で買いに来るならしかたがありません、あるだけ売ります。燃料
確保には木村知事も心配してくれましたが、
結論的には解決しません。ごらんになればわかりますが、この仮処分は太陽商事に、福島交通に燃料を納入せよということまでうたってないのであります。会社はまた、組合が自主
運行をするのを妨害するなという指示はしましたが、積極的に燃料も
確保して
運行するようにという
内容の指示はしていなかったのであります。自主
運行が可能かいなかということは、燃料を合法的に
確保できるかいなかということにかかっておりました。そこで十一月十一日午後十時から十一時過ぎにかけまして、私と弁護士三人が福島検察庁及び県警本部を訪問して、バスの
収入金の中から燃料代を一般の価格で購入したら、この場合も、織田社長がやる不法行為によるものであっても生産管理として違法性を問われるかどうかという質問をしましたところ、検察庁の安田次席検事は、今回の問題では司法部内において統一
見解はまだできていないから確答はできない、しかしすでにその質問は最高裁の判例が示すように、先生方も百も
承知ではないでしょうかという趣旨のことを言っておりますが、これは最高裁の判例にありまするように、
業務管理として違法であるということを言外に強調したことになると思うのであります。また私が、
運輸大臣、法制局の
見解について向こうに言ったところ、安田検事は、
運輸大臣が何を言おうと、法制局の
見解がどうであろうと、この問題は私の良心が法の命ずるところによって判断し行動します、
業務管理となれば当然捜査が行なわれるでしょうという言外に示唆をしました。またその際、織田大蔵社長の行為はさしたる問題はない、生産管理は資本主義のプリンシプルに触れる問題であるから重要だという
見解もあったようであります。県警本部では鈴木警備
課長というのが主として答弁をしましたが、これは、営業所長の指示に従って燃料を買うならばよいけれども、営業所長が指示もしないのに
収入金の中から燃料を買えば、それは違法となるでしょう、そうなれば、これまた私どもも捜査を開始することになるでしょう、こういうことを言明いたしました。以上、検察庁と県警の
見解は、すでに弁護士には前日より大体わかっておったようでありますが、私を立ち会い人として正式に質問し
——正式といいましょうか、立ち会い人として答弁を求めて、これに以上のような答弁があったわけであります。
そこで、そういう
状況に基づきまして
組合側としては、織田社長の自主
運行を妨害するなという指示は、組合が自主
運行をするのを妨害するなという指示であって、自主
運行を強調しておる点に問題があるということを感じました。次に二として、法制局、
運輸大臣の
見解がどうあろうとも、検察、県警
当局は独自の判断をしていく。これは当然のことでありますが、そういう本件について独自な
見解を持つということを強調されておったし、したがって
業務管理として刑事
責任を追及されるおそれがある。三として、そうなれば、それを機会に無法者の織田社長は、かねて
計画どおり大量の首切りをする。違法者の首切りをすればいいということで、首切りをすれば退職金を払わなくて済みます。いま福島交通で一番負債として問題なのは退職金であります。何とか違法な行為にこじつけて首を切り、そして退職金を払わないで済むという方法を
考えたのではないか。しかもそれが救済されるためには長期の裁判となりましょう。現在の法律では、いかに相手方が違法行為であろうとも、正当防衛や緊急避難以外では自力による救済は認められておりません。だからそうなれば、
組合側は
業務管理、違法、こういうことになる可能性が強いのであります。結果的に、そうなれば組合が切りくずしをされ、組織の崩壊を招くだろう、こういうような
見解に立ちまして、
組合側は資料3にありますように、織田社長の巧妙な網にかからないように手続をとることにしたのであります。これは資料3「指令」という中にありますが、ここでは、まず各職場で、所長に対しまして、十二日以降の勤務者は平常どおり勤務していいかどうか、それから所定の
業務に従事してよいかどうか尋ねなさい。したがってその場合に、所定の
業務に平常どおり就業していいということであれば、燃料、乗車券、納金、キー、車両検査証、そういったものを会社の
責任において充足してくれるかどうか、こういう質問をしなさい。そして、それに応ずる、よろしいということであれば、確認をして、協定した場合に文書でとっておきなさい、こういうような指示をしたのであります。これは
組合側としてはやむを得ない行為だと思うのであります。これに従って小野町営業所の所長は、全面的に組合の
要求をこのとおりのみまして、確認の協定をいたしましたために、当日はその営業所は全部
運行を続けております。欠便、欠行がなかったのであります。しかしその他の営業所、二十三くらいあるそうでありますが、そこでは所長が、燃料だけは会社から指示がされないから用意はできない、あるいは一たん全部オーケーという調印をしながら、あとになって燃料だけは取り消し、こういうようなことがありましたために、そういう確認協定ができなかったところでは、第一組合が全面的に就業することは危険なりということで就業をしなかったのでありますが、そのことは十一月十二日の午前五時四十分ごろ、組合が
新聞記者を集め、資料4にありまするような声明を発したのであります。そうしてその後は、十二日の午前九時十五分ごろ、織田社長がテレビを通じて、平常どおり就業するようにという指示をしたようであります。このときに織田社長は、組合が自主
運行するものと思っていたということを平然と言っております。しかし十三日の記者会見でも、織田社長は記者の質問に答えて、自主
運行は憲法違反であるということをまた強調いたしておるのでありまして、組合が自主
運行すると思ったからそれを
期待しておったのだ、自主
運行しなかったためにやめた、運休になったことは、あたかも組合の
責任かのごとく言っておるのはまことにけしからぬと思うのでありますが、そういう声明をいたしております。
最後に、この事実問題の最後ですが、当日、平常
業務に復帰するのが十二時ごろになりました。なぜおくれたかということで、一部
運輸省等の中では、これは
組合側がストライキをやったのじゃないか、九時にテレビで社長の放送等があれば、すぐ九時半ごろは自動車、電車は動いてもいいじゃないか、こういうようなことで、
組合側のサボによって半日運休が行なわれたかのごとく言う方がありましたが、これは間違いであります。織田社長から本社を通じ、職場長を通じて組合に話がある、組合員が全部テレビを見ているわけじゃありません。常にペテンにかかるから、なかなか信用いたしません。そうしてこの指示のとおりに、燃料も全部所長側で用意をいたします、こういう約束をとったところは動き始めました。しかしそういう約束をしないところは、その交渉でおくれたのでありまして、所長が全面的に平常
業務に復するのだという指示を全員にし、燃料も
確保するのだということを言えば、すぐ動いたわけでありまして、十二時までおくれたのは、したがって
組合側の
責任ではない、こういうふうに私は
考えます。
以上が私の知り得た背後の事実でありまして、決して粉飾をしたつもりはありません。ただし時間に若干の誤差がある感じがいたしますが、以上が事実
関係であります。この事実
関係に従って私は質問をいたしたいと思います。
まず労働省に……。簡単に答えてください。時間がありません。この福島交通の
業務停止は労働法上の争議行為かどうか、この一点だけ答えてください。