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1967-11-09 第56回国会 参議院 文教委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年十一月九日(木曜日)    午前十時二十一分開会     —————————————    委員異動  十月十三日     辞任         補欠選任      鈴木  力君     稲葉 誠一君  十月十六日     辞任         補欠選任      稲葉 誠一君     鈴木  力君  十月二十日     辞任         補欠選任      鈴木  力君     稲葉 誠一君  十月二十四日     辞任         補欠選任      稲葉 誠一君     鈴木  力君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大谷藤之助君     理 事                 楠  正俊君                 中野 文門君                 秋山 長造君                 鈴木  力君     委 員                 北畠 教真君                 久保 勘一君                 近藤 鶴代君                 小野  明君                 千葉千代世君                 市川 房枝君    国務大臣        文 部 大 臣  剱木 亨弘君    事務局側        常任委員会専門        員        渡辺  猛君    説明員        文部省初等中等        教育局審議官   佐藤  薫君        文部省初等中等        教育局審議官   今村 武俊君        文部省初等中等        教育局財務課長  岩田 俊一君        文部省大学学術        局長       宮地  茂君        文化財保護委員        会事務局長    福原 匡彦君        建設省道路局国        道第一課長    伊藤 直行君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○派遣委員報告教育文化及び学術に関する調査  (教員超過勤務手当支給に関する件)  (大学学生寮管理等当面の諸問題に関する  件)     —————————————
  2. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  理事互選についておはかりいたします。  委員異動に伴い理事欠員が生じておりますので、その補欠互選を行ないたいと存じます。互選は投票の方法によらないで委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 御異議ないと認め、理事鈴木力君を指名いたします。     —————————————
  4. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 派遣委員報告に関する件を議題といたします。  先般当委員会が行ないました教育文化学術及び文化財保存に関する実情調査のための委員派遣について、それぞれ派遣委員から御報告願います。  まず、第一班の御報告を願います。楠君。
  5. 楠正俊

    楠正俊君 去る九月二十八日から八日間にわたり、大谷委員長小野委員、私の一行が、熊本県及び大分県の教育状況調査を行ないましたので、以下その主要な点につき御報告を申し上げたいと思います。  最初に、国立教育機関関係について申し上げます。  第一に、国立大学でありますが、私たち熊本大学及び大分大学を調査いたしました。両大学では学長、各学部長などと十分懇談をいたし、施設ども拝見しました。  熊本大学は、法文、教育、理学、医学、薬学、工学の各学部のほか、教養部大学院、付属病院体質医学研究所養護教諭養成所、付属の小・中学校養護学校などを持つ総合大学でありまして、現在年次計画をもつて各種の施設整備が進められております。ただ、残念なことには、他の大学と同様、旧制の各学校が寄せ集められて大学となった関係から、施設が分散しており、将来はこれを一カ所に集中することを理想としながらも、分散した形のままでの施設整備計画を一方で進めつつある関係から、大学当局も苦慮しているようでありました。  私たちは、時間の制約もあり、主として教育学部医学部を見ましたが、それに先立ち、学長はじめ全学の各学部長研究所長学生部長図書館長の方々と懇談をいたしました。その席上、各学部長から強い要請があったのは、教官定員不足の問題でありました。たとえば、教養部教官定員三十七名に対してあと二十名増員してほしいとか、理学部は、十七講座に対して助手がわずか九名であり、最低二倍にしてもらいたいとか、図書館は、過去十年間に書籍数が十二倍になったのに定員増は一・五倍であるため運営に支障を来たしているなどの陳情を受けました。  そのあと質疑を重ねた結果、私どもが気づいた問題としては、第一に、医学関係を除いては、助手不足が著しく目についたことであります。本来ならば、実験部門の一講座定員は、教授一、助教授助手二の割合であるべきですが、本学の場合は一、一、〇・五の割合であり、助手定員は本来の姿の四分の一という状況であります。また、一般教育を担当する教養部には助手が一名も配当されておりません。これでは実験実習教育も十分に行なえるはずもなく、将来の後継者養成の面からも問題があると思うのであります。  第二には、教授定員百八十八名に対して四十八名の欠員があることも問題として指摘されなければなりません。一方では教養部教官定員不足しているとか、全体として助手が非常に足りないといいながら、二割五分以上の教授欠員があることはいささかふに落ちかねる点であります。その原因としては、地方大学によい教授を迎えにくいとか、助教授からの昇格を待つために空席にしてあるとか、いろいろありましょうが、年間を通じての平均欠員率程度不足のほうに流用するようくふうがあってしかるべきではないかと考えるのであります。文部省当局並びに大学当局に人事の弾力的運用を希望したいと思います。このような教授の多数の欠員状況は、熊本大学のみならず、大分大学大分工業高専でも見られるのであります。  いずれにしても、教授陣充実助手定員の増員に努力して不完全な講座を完全なものにすることが、地方大学充実につながることですから、文部省及び大学当局に一段の努力を促す次第であります。  なお、学生のための図書館保健センター体育館運動場などの施設整備費は、大学側要請どおり来年度の予算で確保したいものであります。  それから、養護教諭養成所昭和四十一年度から発足しておりますが、目下校舎寄宿舎など新築中であり、志願者も六・五倍という盛況ぶりで、優秀な学生が来ており、意を強くしました。しかしながら、反面において、同時に発足した高等学校衛生看護科教員養成のための看護教員養成課程については、入学定員二十名に対して、昨年は志願者二十名、合格者九名、本年は志願者十三名、合格者六名という状況であり、専任教官もわずか一名で、あとはすべて非常勤講師でまかなっているとのことであります。一般教養科目医学関係科目教職科目など四年間にわたる修得単位はたいへんなもので、医学部の応援も相当借りなければならないことは当然でありますが、専任教官をもっとふやす必要があります。力の入れ方が足りないことが大学当局にも反映し、志願者も少ないという結果になっているように思われます。全国各地局等学校衛生看護科が設けられつつありますが、このような教員養成実情では先が思いやられます。本学当局者は、他の国立大学から衛生看護課程設置についての意見を問われているものの、どう答えるべきか迷っていると述べておりました。  次に、教育学部附属精薄児のための養護学校を見ましたが、校長以下全職員が実によくやっておられました。ただ、施設があまりにも貧弱であり、隣接の付属小学校鉄筋校舎、広い運動場に比べて、あまりに気の毒でありました。文部省は早くよい施設建設すべきであると思いました。  次に、医学部からの要望として、一講座定員編成基準を現在の一、一、三から、基礎部門では、教授一、助教授一、講師一、助手三の四段階制に、また臨床部門では、さらに一、一、一、四の基準にしてほしいとの陳情を受けました。なお、無給医局員やインターンに対する給与の支給と医療保険制度にも加入できない保健管理現状改善についても強い要望がありました。そのほか、医療技術短期大学新設要望があり、また体質医学研究所は独自の建物もなく、特徴ある研究だけに施設の必要を感じました。  次に、大分大学でありますが、本学は経済、教育の二学部編成最小規模大学であります。目下市の郊外の丘陵地帯に実にすばらしい施設建設中であります。自然の地形を最大限に利用して、校舎学生会館運動場図書館、講堂、寄宿舎などすべての施設が完備された雄大なながめは、美しい風景をおのずから形成しております。来年から移転を始める由でありますが、こうした恵まれた環境で勉学できる青年こそが将来の日本を背負って立つのではないかと思うのであります。他の大学でも大いにモデルにしてよい施設であります。  なお、本学では、鶴崎地区臨海工業地帯建設が進みつつあるので、ぜひとも理工学部を新設してほしい旨、学長県知事から強い要望がありました。敷地も、建設中の十五万坪に加えて、なお隣接地区に十万坪を予定しているとのことでありました。  第二は、高専の問題でありますが、まず高専昇格を希望している国立電波高等学校から申し上げたいと思います。  本校は、戦前には無線電信講習所として逓信省所管でありましたが、戦後の学制改革により、国立職業高等学校として文部省に移管されたもので、三年制度本科の上に一カ年の専攻科があるほか、一カ年の第一別科、第二別科が設けられております。  本科は、高等普通教育並びに二級無線通信士程度に関する専門教育を施す課程であり、専攻科はさらに高度の専門教育を施す課程であります。別科は、それぞれ二級ないし三級の通信士程度教育を行なうものであります。  本校卒業生は、その技術をもって海運界航空界新聞放送界電電公社、商社、電機メーカーなどから引っぱりだこであり、求人倍率は五倍ないし八倍に達しております。  しかしながら、近年の電波科学の進展が著しいこと、また昭和三十三年に改正された無線従事者国家試験内容程度が高くなったことにより、一級大学卒、二級は短大卒、三級は高校卒程度となり、本校の目標とする一級もしくは二級の資格を卒業時に取得することが困難になったこと、さらにまた本年八月からは改正された電波法及び船舶職員法の施行により、外航船舶には一級無線通信士一名を必置することとなり、求人数の最も多い海運界要請にこたえるためにも、現行本科三年、専攻科一年では要求を満たし得ないということであります。ちなみに昨年の卒業生八十一名の実績は、一級通信士受験者四十九名に対し合格者六名、二級通信士受験者四十七名に対し合格者七名であり、そのほか二級技術士合格者七名、専攻科大学への進学者二十八名となっております。通信士合格者が少ないことに比べ、上級学校進学者がかなり多いことがうかがわれるとともに、資格なしで就職した人々は将来一級資格を取るために再教育を受けねばならず、本人たちの苦痛はもとより、会社などでもその間大きな犠牲を払うことになります。  こうした事情から、現在の三カ年の過程を二カ年さらに延長し、本年から発足した国立商船高専と同様に、電波高専昇格することを強く希望しております。  私ども本校を訪れた際にも、本校の同窓、父兄関係者はもとより、遠く仙台、詫間からも同窓会、昇格期成会代表者が多数参集され、熱心な陳情を受けました。本委員会においてはさき通常国会における国立学校設置法一部改正案可決の際、電波高校昇格のことを決議しておりますので、文部省にもあらためて早急検討方希望しておきたいと思うのであります。  なお、熊本県知事からは、農業高専設置要望を受けました。熊本県は九州第一の農業県であり、米、牧牛、ミカン、ノリ等全国的にも屈指の農産物が多数あり、県民収入の七割を農業に仰いでいるが、大学には農学部もない、せめて農協指導者農業改良普及員など中堅指導者養成のための農業高専だけでも設けてほしいとのことでありました。北海道や宮城県にもその種の要請がありますが、さき電波高専の問題ともあわせて、早急に検討を行なうべき課題であると思います。  次に、大分工業高専でありますが、本校設置基準どおり三万三千坪敷地を保有していることになっていますが、実際は使用不可能ながけ地約六千坪を含んでいる上に、地形に凹凸が多く、非常に狭いものとなっております。これがため、本年度から土木工学科が増設され、三学科となりましたが、今後校舎寄宿舎等の増設が困難となるので、敷地の拡張が最大の課題であるとのことでありました。これは発足当初の土地買収において、係官が——文部省の係官がいささか安易に調査したのではないかと思われます。ともかく、がけ地の埋め立ては谷が深いので不可能でありますから、隣接地が県の開発公社所有地でもあり、早急に土地交換方法等により拡張する必要があると思いました。  なお、これは他の工業高専にも共通する問題だと思いますが、本校松尾校長は、みずからの教育経験に照らして、「現在の高専教育は、大学コース七年間の修得内容を五年間で詰め込もうとしている。そのため、教えられたことを消化するのに精一ぱいで、自由に本を読んだり、ものをじっくり考える時間がなく、運動クラブ活動を行なうひまもない。これでは創造力のある人間性豊かな技術者は養成できない。したがって、五年制度をもう一年延長するか、さもなくば思い切って専門科目を減らし、自由な時間を持たせるべきである」との詰め込み教育反省論を開陳されました。  このような学生状況は、教官についても同様で、高校週当たり授業時数三十六に対して、高専は三十八、教師の受け持ち時間数は高校週当たり十八程度に対して、高専は二十から二十四という激務であり、したがって研究国内留学など思いもよらない。もう少し教官定員を増員するか授業時数を減らすかして、教官研修充実してほしいとのことでありました。これらは現在の工業高専制度について改善を要する重要な問題であると思います。  第三は、国立青年の家についてでありますが、私ども国立阿蘇青年の家を視察しました。本施設は実に恵まれた環境にあるりっぱなもので、勤労青年のためのすぐれた社会教育施設であります。若い青年男女のグループがそれぞれの指導者のもとに、ここへ集まり、自主、自律的相互研修によって、わずか一泊、二泊の生活を通じて顔つきまで変わってくるとのことでありました。ホテルのような豪華な設備、清潔なベッド、真剣に勉強できる研修室、広い運動場体育館、それを囲む大自然の美しさが、青年たちの心を洗うのだと思われます。費用は、三食実費程度の一日三百円とのことで、四百人定員に対して一〇〇%近い利用率であります。したがって、所長はじめ専門指導官、その他の係員も張り切ってやっておられますが、重労働であります。日曜日も交代出勤であります。  本施設からの要望としては、発足当初忘れていた女子宿泊者が漸次多くなり、四割程度もあるので、音楽室やいけ花、茶の湯のための和室を設けた特別研修棟の増設と、専門職員会計事務員電話交換手ボイラーマン洗たく婦人員増など予算上の問題が第一にあげられました。第二には、これが若い人々のための重要な教育の場であるだけに、本省からは優秀な人材が派遣され、一定期間の後は本省に戻すなど、人事交流についても十分配慮してほしい旨、所長から特に希望が表明されました。  次に、地方教育関係に移ります。  まず、熊本県では、寺本知事はじめ多数の県当局者懇談いたしました。知事及び県教育委員会からの要望事項としては、さき農業高専設置問題のほか、研修人事交流を円滑に行なうための義務教育教職員の旅費の増額とこれが全額国庫負担制への切りかえ、及び公立文教施設費に対する国庫負担率引き上げ学校用地取得費に対する財源措置の確立の三点でありました。特に、小学校危険校舎改築屋内体操場の新設、改築などに要する費用は、財政力の弱い市町村で大きな悩みの種となっております。現行の三分の一国庫負担制を二分の一に引き上げることのほか、構造比率改善基準原価引き上げを来年度予算で実現してほしいとの強い要望でありました。このほか、知事からは、人事委員会マンモス審理で国会にも御迷惑をかけている教員の給与問題については、ぜひとも中央で根本的に解決してほしいとの意向が漏らされました。  なお、天草に参りました際には、本渡市教育長からも末端教育行政責任者として多岐にわたる要望を受けましたが、その中で幾つかを御紹介いたしますと、一、現在の市町村教育行政事務員は相当なものであり、退職校長などの従事できるような隠居仕事ではない。ぜひとも現職の人がつき、待遇も県費負担にするとかの方法を考慮してほしい。二、現在の学校給食を義務制化して、もっと普及に努力してほしい。三、特殊学級設置に対する国の補助を大幅に増額してほしい。四、学校運営基準経費を明確化し、PTA負担の限界を示せるようにしてほしい。五、中央での青少年問題行政を統合化し、市町村教委の任務、施設を円滑に行なえるようにしてほしい。六、市町村教委文化財保護行政、特に埋蔵文化財などに対する施策についても財政上の措置を十分考慮してほしいなど、傾聴すべき意見が述べられました。  次に、視察いたしました熊本市立城東小学校では、学校給食特殊学級状況を特に見ました。城東小学校は六十年前からこの種の教育を行なってきたいわば熊本特殊教育の草分けの伝統を持つ学校で、三学級三十三名の児童に対し、四名の教諭が担当されております。教師自身の手になる創意くふうをこらした教材、教具等が数多く目につきましたが、何といってもまだまだ研究研修その他の会合も多く、もう一人教員がほしいとのことでありました。教室も転用建物であり、施設設備など考慮すべき問題があると思いました。学校給食教育の一環として、食物の内容とか栄養、作法、食後のうがい、歯ブラシの使い方等に至るまで、なかなか行き届いた教育が行なわれており、虫歯の児童がほとんどいないそうで、これは特筆すべきことのように思われます。  本渡市立志柿小学校老朽校舎も見ましたが、これは予算も決定したとのことで、省略します。  次に、大分県では木下知事はじめ県会議長など県当局者と前後二回にわたる懇談を重ねました。  本県で現在最も問題となっているのは、来年度の教職員定数の問題でありました。来年度は、御承知のとおり、小・中学校の一学級編制基準が四十五人になりますが、本県では児童生徒数減少率がさらにはなはだしいので、定数標準法附則三項の経過措置の延長に関する規定に基づく政令により、四十三年度も引き続いて従来どおり急減緩和措置を講じてほしいとのことでありました。これを具体的に申せば、四十三年度の小・中学校教職員定数については、四十二年度の百分の九十八・五を最低保障数として確保し、一・五%減にとどめてほしいということで、このことは県教育委員会のみならず、県議会の議長、文教委員長からも強く要請されました。また、現行法における事務職員定数算定標準は、四百人以上の学校に一人という学校規模基準になっておりますが、本県のように小規模学校の多いところでは定数配当が非常に少なくなるので、児童生徒の総数を基準とするよう法改正陳情を受けました。  公立文教施設整備に関しても、熊本県同様の要望があったほか、日本学校給食会の存続についての陳情がありました。実地に施薬した個所としては、まず県立別府養護学校でありますが、本校は、教員結核療養施設を転用したもので、施設としても老朽化しており、適切なものではありませんでした。特に近所にある社会福祉法人整肢園に設けられている分教場は、カーテンの間仕切り教室を使っており、子供たちの寮もまことに粗末きわまるもので、気の毒に思いました。寮については、これは厚生省所管の問題でありましょうが、分教場施設についての監督責任官庁はどこなのか、こうした行政上の境界線にある問題が放置されているように見受けられます。今後、究明すべき課題であると考えます。なお、本校では重複障害児の一学級定員十人を五人に切り下げてほしいとの要望がありました。教師が一人一人の子供にほとんどつきっきりの状態のように見受けましたが、この要望も首肯できるのであります。  また、一部改築が決定している県立森高校については、その前身が旧制女学校であったため、高校設置基準に比較すると、運動場は三分の一、校舎は二分の一という状態であり、就職する者が半数に及んでいるのに、普通科のみ設けられていることなど、職業教育充実と、これに関連しての施設設備の早急な改善が望まれます。  最後に、文化財関係につきまして申し上げますと、大分県の富貴寺、宇佐神宮など重要な国宝建造物について消火設備がまだないのであります。消防法政令改正で一両年じゅうにその整備が義務づけられた段階でもあり、文部省明年度予算でこれらの防災施設を完成すべきものと考えます。  以上で御報告を終わります。
  6. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 次に、第二班の御報告を願います。中野君。
  7. 中野文門

    中野文門君 鈴木理事と私中野の両名は、去る十月二日から八日まで七日間、愛知、三重及び奈良の三県における教育学術及び文化財保護実情について調査してまいりましたので、その結果を簡単に御報告申し上げます。  まず、愛知県におきましては、主として中学校及び同等学校における職業教育文化財保護及び大学の統合の実情について調査いたしました。  最初に、愛知県における中学校及び高等学校産業教育一般的状況を申し上げますと、中学校における職業教科選択状況は、公立中学校二百九十八校中延べ四十九校で約一六%、履修生徒数は千二百二十四名で、全生徒数の〇・六%強でありまして、それぞれ全国平均の二七%、一・五%に比べてきわめて低い状況にあります。  中学校における職業教科選択状況が、全国的に就職希望者に対してきわめて低い状況にあるのは、現在の選択教科としての職業教科のあり方に問題があるのではないかと存じます。  高等学校職業教育状況を見ますと、公立高等学校における普通科職業科生徒数割合は、ほぼ半々の比率であり、全国平均に比べて職業科生徒数がやや高い比率を示しており、この県の性格をあらわしております。  次に、産業教育に関する施設設備充実状況を見ますと、中学校技術家庭科設備充実率も、高等学校産業教育施設設備充実率も、全国平均よりはかなり高いとはいえ、基準の大体五〇%程度と低い現状であります。産業教育振興法昭和二十六年に制定されて以来、産業教育施設設備充実がはかられてきたところでありますが、いまだこのような現状であります。申すまでもなく、産業教育実験実習施設設備の完備なくしてその効果を十分に発揮することはできません。今後一そうの振興策必要性を感じた次第であります。  愛知県庁において、一般的状況の説明を聴取した後、瀬戸市の学校における窯業に関する職業教育実情を調査いたしました。  まず、瀬戸市立品野中学校でありますが、本校昭和三十四年に瀬戸市と合併した瀬戸市の東北部に位する生徒数三百八十八名の八学級編成中学校であります。愛知県には、選択教科として工業科履修校が十七校ありますが、そのうち本校のみが窯業科設置しております。この地域は、かま屋が人口の三分の一もあり、いわゆる窯業人口は三分の二の多数を占めております。高校進学率は六九%、就職者のうち約二割が窯業関係に進んでおります。したがいまして、本校としても、中学校教育の中に地域産業である窯業に関する教育に積極的に取り組みたいとの意欲を持っているとのことでしたが、現在の教育課程のもとでは十分に取り組むことができないとの悩みが述べられました。  では、どのように現在窯業に関する教育が行なわれているかを申し上げますと、外国語にかわる選択科目の工業科として、三年生についてのみ週五時間、原料、工程、焼成等陶磁器ができるまでの知識と技能を習得させており、履修生徒数はわずかに三名とのことであります。このほかクラブ活動として、自由な創作活動を行なわせており、現在十八名が参加しておるとのことであります。このように本校教育の中に、地域産業である窯業が取り上げられている面は、きわめて少ない実情にあります。  技術家庭科の中で積極的に取り上げることができないとの疑問を提出いたしましたところ、「技術家庭科教育課程は学習指導要領によって内容がきまっており、窯業関係を自由に取り入れることができないため、上述のような実情にとどまらざるを得ない。地域の実情をもう少し加味できる方法が望ましい」との意見が述べられました。  地域の特殊性を加味した教育を行なうことは、生きた教育を行なうためにきわめて必要なことであり、そのような教育が行なわれるようにしなければならないと感じた次第であります。また、さきにも述べたことでありますが、現在の外国語と組みとなった職業教科のあり方もまた検討の要があると存じます。また、本校技術家庭科施設もきわめて貧弱であり、その設備充実率も四九%の低率でありました。  なお、本校校舎は、六三制発足時の資材の最も乏しい時期に建設されたいわゆる六三建築でありまして、その老朽ぶりには生徒、教職員に同情の念を禁じ得ないありさまでありました。瀬戸市にはこのような学校が二十数校あり、毎年一校ずつ改築されているとのことであります。どこに参りましても、県、市町村等の庁舎はいずれもきわめてりっぱなものが新築されている反面、このような義務教育施設が数多く放置されている現状を見、抜本的対策の必要性を痛感した次第であります。  次に、愛知県立瀬戸窯業高等学校でありますが、本校は明治二十八年に創立された全国でも数少ない窯業高校の一つであります。現在は窯業科のほかにデザイン科及び商業科が設置されており、年々商業科の生徒が増加しつつあるとのことであります。このように窯業科生徒の減少傾向の中で窯業科が沈滞していく傾向がありはしないかが危惧されたところでありましたが、校長からは、伝統のある窯業科充実発展に一そう努力したいとの決意が述べられました。  卒業生の進路につきましては、一般大学への進学者がふえると同時に、名古屋等他の地域へ就職する者が年々増加して、地元の窯業関係へ就職する者が減少の傾向にあり、地元窯業界としては地元への就職を強く希望しているとのことですが、地元との関係がだんだん遊離しつつあるとのことでありました。これは産業構造、すなわち企業格差等にもよるものですが、また生徒の一般学習の負担が大きいため技術的に中途はんぱで、業界との接続が円滑にいかないことも理由であるとのことであります。いずれにいたしましても、現在本校の窯業教育は転換期にあり、高専制度等についても検討中とのことでありました。現在高校教育の多様化が強く言われておりますが、単に窯業教育のみならず、産業教育のあり方、具体的進め方等については今後研究すべきことの多いことを感じた次第であります。  次に、文化財保護について申し上げます。  愛知県には現在国の指定文化財が二百九十三件、県の指定文化財が三百五十七件、遺跡が六千二百九十九件あり、全国都道府県の中で十指に数えられる文化財の保有県であります。  文化財の管理、保護対策としては、文化財所有者に対する計画的管理指導の実施、指定文化財の修理、文化財防災施設整備等を実施しており、特に防災施設整備はいまだ緒についたばかりで、必要件数の一五%程度にすぎないとのことで、国の援助について要望がありました。また、埋蔵文化財保護については、遺跡台帳の整備、開発者との事前協議、事前発掘調査等の対策を講じているとのことであります。  以上一般状況の説明を聴取した後、国宝犬山城を視察いたしましたが、昭和三十三年本文教委員会が現地調査を行ないました際にはひどい破損が見られ、その早急な修理の必要性報告されたところでありますが、その後三十六年から四十年にかけて解体修理が行なわれ、すっかり復元がなって、再び四百二十余年の歴史を秘めたわが国最古の美しい犬山城を見ることができましたことは大きな喜びでありました。また、自動消火器等防災施設が完備されており、心強く感じた次第であります。  次に、大学施設統合の状況についてでありますが、まず名古屋大学を訪れましたが、かつてタコの足大学と称せられた本大学がみごとに統合が完成して、学問の府として偉容を誇っている姿を目のあたり見て、きわめて心強く感じました。今後の課題は内容の充実整備でありますが、大学当局もその決意であり、成果を期待するものであります。なお、今後の研究所、薬学部等の建設予定地も確保されていましたが、拡張の望ましい地域も見られ、その点、今後の努力が望ましいところであります。なお、環境医学研究所を訪れた際、欠員不補充措置に最も困っており、その救済策について強い要望がありました。  次に、愛知教育大学でありますが、長い間実現を見るに至らなかった統合問題も、ようやく昨年刈谷市に移転統合することに決定し、一応用地の買収が行なわれているところでありますが、ほぼ順調に進んでいるとのことであります。大学関係者から長年の懸案が解決して希望に満ちた統合計画を聞くことができ、喜びにたえないところでありました。大学当局からは土地値上がり等のため、不動産購入費の増額と教育大学学部の建物基準引き上げについて要望がありました。特に、建物基準につきましては、せっかく新しいものをつくる以上、十分将来を見通した内容のものであることが望ましいと思います。  なお、愛知県当局からは、政令県に対する教職員給与費の最高限度額の引き上げについて一そうの配慮を要望されました。  次に、三重県について申し上げます。  三重県におきましては、四日市市における公害の教育に与える影響、三重大学学部の建設計画及び鳥羽商船高等学校実情を調査いたしました。  まず、四日市市におきましては、市当局から一般状況の説明を聴取した後、小・中学校実情を視察いたしました。御承知のとおり、四日市市は工場と市街地が隣接しているため、早くから公害問題を惹起して全国的に注目を集めておるところであります。現在でも亜硫酸ガス等の大気汚染による健康阻害や、悪臭、騒音等による生活妨害があり、最近は特に悪臭の問題が深刻とのことであります。しかし、公害の児童生徒に与えている影響については、今後の調査にまたなければならないとのことであります。公害の状況は必ずしも目に見えるものではなく、そのときどきで様相を異にするものでありますので、私どもの訪れました日は煙の排出も少なく、特に目立った特徴は見られませんでしたが、やはり多少の臭気と軽い頭痛に襲われ、公害問題の深刻さがある程度感ぜられた次第であります。  四日市市が現在行なっている教育関係の公害対策を紹介いたしますと、まず第一に、県と協力して市内すべての学校に一名以上の養護教員を配置しております。第二には、空気清浄装置を四小学校、三幼稚園に設置するとともに、一体育館に空気清浄施設設置しております。特に最近、外気導入型清浄装置を開発せしめて一そうの効果をあげているとのことであります。第三には、うがいを励行させていることであります。  さらに、四日市市公害医療審査会による認定患者に対しては医療費を四日市市が負担しておりますが、うち児童生徒は八〇名とのことであります。  市当局からは、公害のため移転する学校に対する移転費の国庫補助率の引き上げ、公害防御施設費に対する大幅な国庫補助、公害学校に勤務する教職員の増員と待遇改善について要望がありました。  説明聴取の後、市当局と公害対策の充実等について懇談したのでありますが、市当局からは、四日市市の公害問題がマスコミによって過大に報道されるため、中小企業への求人等にも多大の支障を来たしており、また問題となった当初よりも好転しつつあって、四日市市の公害問題は報道されるほどひどいものではないとの熱心な発言がありました。この発言にはある程度同情できる点があるのでありますが、このことが今後の公害対策への取り組み方、充実への熱意の不足にならねばと危惧の念を抱いた次第であります。  四日市市が公害対策のパイオニアとして空気清浄装直の設置等他地区に先んじて行なわれたことには多大の敬意を表するものでありますが、精密な公害調査の実施、今後の公害対策の充実等については遺憾ながらまだ十分とは感ぜられませんでした。また、市当局にのみこれを期待することは無理でありましょう。文部省も来年度から積極的に公害対策に取り組むようでありますから、今後は国が積極的に調査を実施して対策を講ずべきものと存じます。  なお、四日市市では全国で初めて学校教育の中に公害教育を取り上げることに着手いたしましたが、種々の事情からまだ実施するに至っていないとのことであります。国が今後検討すべき課題と思います。  小・中学校の視察につきましては、まず幹線道路に面した納屋小学校を訪れ、防音、換気を視察いたしましたが、基地周辺における防音施設と同様、排気装直が不十分なため、炭酸ガスの増加と、夏季における暑さの悩みが述べられ、その対策が要望されました。また、防音設備も道路に面した教室にのみ設置されているにすぎませんでした。  三浜小学校においては、亜硫酸ガス等の自動記録装置と空気清浄装置及び冷房装置を施した保健室を視察いたしました。このような施設は当然すべての公害学校設置することが望ましいわけでありますが、経費の関係上、本校だけにしか設置されていないとのことでありました。  塩浜中学校は、重油タンクに八十五メートル、プロパンガスタンクに百三十五メートルと接近しているため、新潟地震を契機として、その危険性が認識され、他の公害の心配のない地域に国の援助のもとに移転が行なわれつつあります。  塩浜小学校では、こうがい場と空気清浄設備を施した体育館を視察いたしました。この体育館は、緊急の場合には地域住民の避難場所としての役割りを持って建設されたものであります。この体育館の空気清浄施設設置及び維持運営については、きわめて多額の経費を要するため、本校にのみ設置されているとのことでありました。  以上申し述べましたように、種々の設備が設けられておりますが、公害学校すべてに行き渡るに至っていない実情であります。市だけの努力では限界があることを示しているものと言えると思います。  三重大学学部の建設計画につきましては、その建設予定地を視察した後、三重大学及び三重県当局から昭和四十三年度設立について強い要望を受けました。三重大学は現在大学の統合計画が進められており、その一環として工学部建設予定地も確保されておりまして、その完成が期待されているところであります。工学部建設の必要性につきましては、本県が工業県として飛躍的な発展を遂げつつあるため、高度の若手技術者の需要が年々増加しつつあるが、本県には大学学部がないため県外にその需要を求めなければならないと同時に、県下の工学部進学希望者は年々増加しつつあるが、県外へ進学するしか方法がないため、いろいろ支障を来たしているとのことであります。その熱意はきわめて強いものがあり、早急な実現を期待するものであります。  このほか、県当局から水産学部及び医学部を擁する三重県立大学国立移管、学校施設の公害対策に対する国庫助成、僻地教育の推進及び僻地教員の待遇改善、人事院勧告の完全実施と地方財源の配慮について要望がありました。次に、本年高等専門学校に昇格いたしました鳥羽商船高等専門学校を視察いたしましたが、施設設備とも不十分で、土地については現在買収の予定とのことでありますが、高専昇格を機会にその充実をはかり、早急に高専にふさわしい内容にすべきであると感じました。  学校当局から、次のような要望が行なわれました。第一は、全寮制で、中学校卒業者を入寮させるものであるから、その運営には困難な問題が多く、現在は教官の兼任でその運営に当たっているため、種々支障を来たしているので、定員増をはかられたい。第二、今後研究面を加える必要があるから、教官充実をはかられたい。なお、現在の高校教官の円滑な移行をはかられたい。第三には、運輸省所管の航海訓練所は文部省関係に移して、一貫教育が可能な体制をつくられたいというものであります。  最後に、奈良県におきましては、主として埋蔵文化財保護状況と奈良女子大学及び奈良国立博物館の実情を調査いたしました。  まず、奈良県における埋蔵文化財状況を申し述べますと、最も重要度の高いAクラスのものが三百二十件で全国一位、Bクラスのものが四百十五件で全国六位、Cクラスのものが四千二百九十四件で第八位、合わせて五千二十九件で、全国第八番目の多きを数えております。そのうち九五%は古墳で、民有地が大半であり、調査済みのものは一〇%に満たない現状であります。したがいまして、史跡に指定されているものもきわめて少ないのであります。  県当局から一般説明を聴取した後、唐古遺跡、特別史跡石舞台古墳、飛鳥遺跡、安倍寺あと、文殊院西古墳、大和歴史館、藤原宮跡、平城宮跡等の埋蔵文化財を視察いたしましたが、特に本委員会でも取り上げられ、目下問題となっております藤原宮跡と平城宮跡の問題について申し述べます。  まず、藤原宮跡の問題について申し述べますと、現在特別史跡に指定されておりますのは、戦前日本古代文化研究所が発掘調査を行なって明らかになった部分、つまり大極殿を正殿とする朝堂院の部分のみでありましたが、最近桜井市と大和高田市を結ぶ道路の交通緩和のため、宮跡の指定地の北部を東北から南西に通過する国道百六十五号線橿原バイパスの建設が計画され、用地の買収が行なわれるに至りました。しかし、さきの平城宮跡の発掘の経緯にかんがみ、バイパス建設予定地には内裏が存在するのではないかと考えられたため、奈良県教育委員会が発掘調査をいたしましたところ、藤原宮跡の一部、すなわち内裏跡であることがほぼ確実となり、その保存が問題となっているものであります。現在バイパスの建設計画は一応中止され、発掘調査が行なわれつつありますが、その結果を待って最終的決定が行なわれることになっております。県当局も、すでに先行投資が行なわれており、その対策に苦慮しているとのことですが、平城宮跡に劣らないその文化的重要性にかんがみ、調査結果を待ってバイパス路線の変更等を行ない、本宮跡の保存をはかりたい方針のようであります。貴重な文化遺産が保存される見通しに意を強くした次第であります。しかし、県当局からは、保存の抜本的対策としては、やはり平城宮跡と同様、要保存地区を国有地化する以外に方法がないから、全額国庫で買い上げる方策を早急に立てられたいとの要望がありました。この点、早急に検討すべきものと考えます。なお、このような問題が生じた原因としましては、当初バイパス建設計画の決定にあたって十分な事前協議が行なわれなかったことがあげられます。  次に、平城宮跡の問題について申し述べますと、奈良市内の交通混雑の緩和と奈良周辺の開発をはかるための国道二十四号線バイパスが、種々検討の結果、平城宮跡に東接して、旧東一坊大路を復元する形で建設することが決定され、その結果、近畿地方建設局長と奈良県知事の事前調査を行なう協議に基づいて、奈良国立文化財研究所が発掘調査を行なったところ、ある時期に東一坊大路が他に転用されていたことや、宮城が指定地よりさらに東に広がっていること、すなわちバイパス建設予定地が宮跡の一部であることが予想されるに至り、現在問題となっているところであります。調査は四十四年三月までに終わることになっております。県当局は、四十五年の万博を控え、現バイパス予定地への建設を強く希望しておりますが、これに対して奈良国立文化財研究所等関係者は、宮跡の一部であることが予想されるので強く保存を要望しておりました。しかも、両者の間には十分な意思の疎通が行なわれていないように見え、今後の円満な解決の困難さが予想されるところであります。したがいまして、今後十分な発掘調査を急ぐとともに、関係機関の間で連絡協議を密にして円満な解決をはかられるよう切望するものであります。調査が終わるまで早急な判断はできませんが、調査の結果、宿跡の一部として重要な文化的価値があるものと決定された場合には、従来の行きがかりを捨てて万全の保存対策が講ぜられることを希望するものであります。  なお、現地視察の際、路線の変更も必ずしも無理ではないのではないかとの印象を持ったことをつけ加えておきます。いずれにいたしましても、この問題が生じました原因の一つとしては、当初路線決定のための事前協議において、文化財関係者も加わりながら、事前発掘調査を行なう前に、旧東一坊大路と推定して路線を決定したことにあると考えられます。埋蔵文化財の場合、発掘調査前に推定によってその内容を決定することはきわめて危険であり、その点遺憾に思う次第であります。今後、このような場合には、慎重な態度こそ必要でありましょう。  以上、藤原宮跡及び平城宮跡の問題について申し上げましたが、今回の視察にあたっても、至るところに古墳が存在するのを目のあたり見て、保存と開発の調和の困難性を痛感いたしました。今後一そうの開発の進展に伴って、以上述べましたような問題はますます増加することが予想されます。このような問題の発生を避けるための方策を早急に確立する必要があろうと存じます。少なくともまず第一に、埋蔵文化財状況とその価値を十分に調査して、その青写真を早急に作成し、その表示の徹底をはかることが最も重要と思われます。さきに述べましたように、奈良県でも調査済みは一〇%に満たない現状であります。また、そのためには、調査のための専門家の養成確保につとめなければならないことは当然であります。次に、十分な事前協議が行なわれることがきわめて重要であります。事前協議の義務制等についても、早急に研究すべきであると思います。そのほか、現在の文化財保護行政のあり方等についても、多くの検討すべき課題があることを感じた次第であります。  奈良県当局からも、文化財保護行政の強化について、次のような要望がありました。第一に、特に記念物指定対策、未指定埋蔵文化財保護の徹底を期するため、文化財保護法の改正を早急に推進すること。第二は、特に地方公共団体の発掘調査国庫補助率の引き上げ、要保存地区の買収費等関係予算の増額に必要な財源措置を講ずること。第三に、関係行政機関の組織機構を再検討すること。第四は、文化財の修理、調査等に必要な技術者の養成、確保のための対策を講ずること。第五には、文化財の普及、啓蒙を期するため、関係諸機関の協力を配慮することであります。このほか、平城宮跡を平城史跡公園として、そこに国立歴史博物館を建設されたいとの強い要望がありました。  次に、奈良女子大学を訪れましたが、建物の老朽化ははなはだしいものであります。その七〇%は明治時代の木造建築で、教育、研究に種々支障を来たしているとのことでありました。火災等災害の場合が思いやられる状況であります。学内でも数年来他地域に移転するか現在地に改築するかを含めて検討が続けられておりましたが、近くほぼ現在地に改築するように結論が出されるとのことであります。早急に結論を出すべきであることを強調した次第でありますが、一日も早く改築が実現することを願うものであります。  最後に、奈良国立博物館を訪れましたが、現存の建物は古くかつ狭いため新館の建設が計画され、すでに調査費も計上されているとのことでありましたが、これまたすみやかな実現を望むものであります。  以上御報告申し上げます。
  8. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまの御報告に関し御質疑のある方は順次御発言願います。  なお、政府側より剱木文部大臣、佐藤初中局審議官、福原文化財保護委員会事務局長、伊藤建設省国道第一課長、今村初中局審議官が出席いたしております。
  9. 千葉千代世

    千葉千代世君 たいへん綿密に御調査になっておりますが、その中で私非常に緊急な問題がございますので、あとの審議の状況もありますから差し控えたいと思いましたが、一言だけちょっと要望を兼ねて質問してみたいと思うのです。  それはいままでずいぶん正式な文教委員会の視察がございましたが、養護教員養成所の視察をしたのは今回が初めてでございますように伺ったのです。その調査報告の中にはいまお聞きのとおりいろいろな問題を含んでおりますけれども、やっぱり志願者がこれだけ多くていながら、こんなに各県でずいぶん要望しているのに、文部省としてはことしの概算要求の中にはゼロであるということ、この一点でございます。で、三十七年のお約束の中に三十八年から五カ年計画、それが終わったらば一校一名にしていくという、こういう構想のもとに増員計画がなされたわけですが、その一環としての養成所の問題ですが、私、突然で資料がありませんけれども、現在までに大体国立養成所が十六カ所できているわけなんです。ことしは予算の概算要求見ていきますと一つもないのです。各県で要求がないかというと、東京をはじめたいへん要望しています。しかも、内容の中には四年制の養護教員養成課程、これがほしい、こういう御要望もあるわけです。そうしてみますというと、それにこたえていくという姿勢が足りないのじゃないか。  それから、衛生看護料高等学校のこの教員不足している。しかも、増設希望されている。高等学校の多様化の問題とからんで、これにも幾つかの問題点がありますが、きょうはそれは省略いたします。  私はいまなぜ急に申し上げなければならないかというと、概算要求がいま大蔵省へ出ておって、これが日を過ぎていきますというと、だんだん査定段階に入っていって、いま審議しているようですけれども、ずっと査定段階にいって、そうして政府の予算原案ができていくというとだんだんおそくなるわけですが、文部大臣としては、ことしゼロになったんですね。それで、ゼロになったのをやっぱり要望をいれて、そうして要求の中に加えていただくということ、これができるかどうかということ、そういう決意があるかどうかということ。これが一年おくれますと、ずっとおくれてしまうのです。そういう意味で、私たいへん急でしたけれども、一言伺っておきたいと思います。この調査報告については、本委員会あとの議題にもなりましょうし、政府で取り入れるべき問題が政策の中に組み入れられるでしょうけれども、これ非常に私急いでおるので、重ねて申し上げます。
  10. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 養護教員養成所の予算関係につきましては、もう少し詳しく私調査してお答えしたいと存じますが、実は予算編成にあたりましては、大体文部省として各大学要望をできるだけ取り入れて編成いたすことにいたしておりますが、各大学要望を全部いれるわけにもまいりませんから、大学での全体としての要望順位を取り上げて、最も緊要と考えるものから予算のほうに組み入れると、こういう従来の形になっておりまして、おそらく、そういう関係から大学要望の順位の問題でこれは取り上げることができなかったのじゃないかと思います。しかし、お説のとおり、これは一面また国の施策の面から、大学要望度のいかんにかかわりませず、国が必要とするものはある程度これは充実してまいらなければならぬと思います。その点、予算をもう一回十分調べまして、後にお答えする機会を得たいと思います。
  11. 千葉千代世

    千葉千代世君 大臣、大学要望順位というお説でしたけれども、私はそうでないように聞いておるんですけれども。これはここで押し問答する余裕はございませんが、どうかひとつ担当と御相談なさっていただいて、早急に予算の中に組み入れられるような方途を講じていただきたい、こういうことを申し上げておきます。
  12. 鈴木力

    鈴木力君 いまの問題に関連して。いま伺うと、あとで調べて善処するというから善処してもらいたいのですけれども、大臣は記憶がはっきりしていらっしゃると思うのです。養護教員の配置の問題は、従来文教委員会で議論した中で、いわゆる学校教育法ですか、全校必置という、置かなければならないということがたてまえです。それがいま完全に配置をされていないというその理由には、養護教員の有資格者が足りないということが一つ。もう一つは、もちろん財政上の都合もあったと思うのですけれども、しかし、これは年次的に逐次全校必置をしなければならないという方針だけは確認をしているはずだと思うんですね。そうして、しかもいままであった五カ年計画は、これは私もいま資料を持ってきませんけれども、あの五カ年計画それ自体が計画どおりに養護教員充実されていない。このこともこの委員会でもかつて確認をしておったはずだと思うのです。ですから、これは大学要望とは別個の問題だと思うのです。つまり、学校に対する養護教員の定数の問題でありますから、しかもいまの定数法が来年度で切れるわけです。あと新しい定数法をつくらなければならない。理想をいえば、そのときに養護教員の全校必置になればいいんだけれども、いまとても全校必置にならぬようなことで、養護教員資格もないし養成計画もないのです。財政の都合があることはわかるのですけれども、しかし、ゼロということでは、およそいままでの教員定数、学校定数ということから考えると、私は大体常識的だとは思われない。ですから、十分これは調査してくださいまして、必ず逐次前進している姿にだけは置いてもらわないと、私どもはちょっと承知できないのですが、いずれ定数の問題その他であとでいろいろと私どもも詳しく伺ったり意見を申し上げたりする機会があると思いますけれども、いま時期が時期ですから、ぜひいまの千葉委員の御要望を重視されて取り上げていただくように、私からも重ねて要望を申し上げます。
  13. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) ごもっともだと思いますので、十分調査しまして、後ほどまた御答弁いたします。
  14. 小野明

    小野明君 私も、この間一班のほうで視察をいたしたのでありますが、報告書の中にありますように、教職員の定数という問題につきましては、大学をはじめ義務制すべての面で非常に強い要望が述べられておるのであります。そこで、この場では義務制の問題を取り上げてまいりたいと思うのでありますが、最初に大臣にお尋ねをしたいと思うのですが、来年の三月三十一日でもって一応五カ年計画が終わるわけですね。四十五名という計画が完成をするわけであります。ところが、一学級児童生徒数を四十五で終わらしていいのかどうか、それが理想であるかといいますと、なかなかそうではない。一学級の収容児童生徒数の問題についても、この本委員会ではいろいろ議論があったところであります。そこで、標準定数法を四十五からさらに一歩前進をさせる定数法の改正ということをお考えになっていらっしゃるのかどうか、この点をまず伺いたいと思います。
  15. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 御説のとおり、今回の定数の計画が一応完了する年次におきまして、あらためて定数の問題を考えなければならぬと思っておりますが、現在私どもの基本的な考え方は、これは今後の問題でございますから、ぜひひとつ御批判をいただきたいと思いますが、四十五名が最高限でございますが、実際上一学級の数は全国平均三十三名くらいになっております。そういうことでこの際定数を考えますときに、一クラスの最高限を四十五名とすることを下げていくべきか、あるいはクラスの最高限は四十五名にいたしておきまして、その他の理由によりますところの標準定数を増加していくという方向で現在ではいくべきではなかろうか。たとえば小学校におきまして、いま申しますように、ある課程につきまして専科教員をおきますとか、あるいはいまの養護教諭定員を増しますとか、そういったようなふうにしまして、いままでの算定の基礎になりましたこの定員と違う考え方で教員の数を増すというほうに研究をすべきではなかろうか、いま大体考え方としましては、そういう考えを持っておるわけでありますが、この点につきましては、いろいろ御批判もいただきまして、十分研究してまいりたいと思っております。
  16. 小野明

    小野明君 初めてそういった大臣のお考えをお聞きするわけでありますが、小学校における専科制の拡充という方向で検討されておるというのですが、その問題をいま少し詳しくひとつ御説明をいただきたい。どういう学科に、教科に専科制を置くようにされておるのかですね。
  17. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) まだ具体的にどういう学科にどうするというところまでは考えておりません。しかし、たとえば音楽でございますとか体育でございますとか、あるいは特殊の教科につきましては専科教員というようなものを考えていったらどうか、こういう考え方で研究を進めておることは事実でございますが、具体的にどういう教科について専科を置くべきかという確定的なところまではまいっておりません。
  18. 小野明

    小野明君 私どもはやっぱり四十五でも高過ぎる。少なくとも一番大きな柱として考えなければならぬのは、一学級収容児童数の問題である、こう考えているわけです。そこで、これをさらに四十名まで下げていただくように要求をいたしておることは大臣も御承知のとおりであります。世界各国の最も進んでおるというところを見ましても、大体二十五、六名、教育学的に見ましても大体そういったところが理想的ではないかということが言われておるように私も聞いておるわけなんです。ですから、専科制の問題も十分に検討する必要ももちろんありますけれども、さらに四十五を五名落としていくという方向も十分御検討を願いたいと思うのであります。  それで、問題を進めてまいりたいと思いますが、急減緩和策を附則によってとってこられておるのであります。附則三項によりますと、これは審議官になると思いますが、四十三年で終わるものですから、あとの四十五年まで二年間は政令で急減緩和策をとっていくというようになっております。そこで、大分県では、いま報告書にもありましたように、県会議長文教委員長から非常な熱意でもって、児童生徒の急減緩和策を処置してもらいたいという強い要求があるのであります。そこで、この政令によって救済しようとしている県がどれくらいあるのか、まずその問題をお伺いしたいと思います。
  19. 今村武俊

    説明員(今村武俊君) 公立の小学校中学校教職員定数の標準に関する経過措置昭和四十三年三月三十一日をもって終わるというのは、いま御指摘のとおりでございますが、法律の附則にもございますように、政令で定める特別の事情がある都道府県については、これをなお二年間、昭和四十五年三月三十一日まで経過措置を講ずることができるようになっております。そこで、児童生徒数の減少が著しい都道府県については、それに対応する教職員定数上の措置を講じたいと考えて、目下大蔵省と予算折衝中でございます。私どもの来年度の見通しによれば、およそ十県が該当するのではないかと考えております。  なお、大分につきましては、県の教育長と一時間余りにわたりまして私どものところで懇談をしまして、多少大分県の計算に錯誤も少しあったようだというようなことも明らかになりましたし、それから明年度の対策につきまして特段の措置を講ずれば、あまり困るような事態も起らないのではないかというようなこまかなことについていろいろ打ち合わせもいたしました。
  20. 小野明

    小野明君 それで、まあ強い要望のありました大分県と打ち合わせをされておるということは、大体けっこうなのでありますが、そのほかの県も、これは、大分と同様政令で律する以上は、同様のことになるわけなんですが、従来措置をしてまいりましたいわゆる校長教諭最低保障数、これが九八・五に小中はなっておるのでありますが、大体この線で各県とも予想を立てておったようであります。そこで、これはそれでやらなければならぬというのは、この条文からはうかがえないのでありますが、これが既得権として各県の頭の中にあると思うのであります。そこで、この九八・五というものを下回ってはたいへん困る。そこで、いまお考えになっていらっしゃる政令内容、計算の方式はいろいろあるかと思うのですけれども、これが実質九八・五を下回っては非常に大きな犠牲が出る、なま首が飛んでいくということになるわけなんで、この政令内容がもしきまっておれば、御説明をいただきたいと思うのです。
  21. 今村武俊

    説明員(今村武俊君) 政令内容はまだ確定はいたしておりません。予算折衝が終わったあとで、それを勘案しながら政令内容をきめますのでございますから、まだ確定はいたしておりません。
  22. 小野明

    小野明君 そうしますと、大分県からも言われておるのですが、九七・五ぐらいの数で文部省は考えておるようである、こういう心配が聞かれたわけなんです。そういうことはございませんか。
  23. 今村武俊

    説明員(今村武俊君) お答えいたします。九八・五%が各県の通念であるような先ほどの御説明でございましたが、そうではございませんで、各県の教育委員会文部省初中局財務課関係の間では、早くから詳細な計数上の問題については相談しながら進めておるわけでございまして、大分で特に九八・五を確保してもらいたいという強い要望があるということでございます。文部省では九七・五%という線で考えておるのではないかと県からお聞きになったと思います。そういうことで、打ち合わせをしながら作業を進めてきておるわけでございます。
  24. 小野明

    小野明君 どうもいまの御答弁ではわからぬわけですよ。ですから、いろいろな計算方式はあるにしましても、従来何年間か校長教諭最低保障数で救われてきておるわけですから、これを下回らない内容で確定をするお考えであるのかどうか、その点を一つ尋ねておるわけです。
  25. 今村武俊

    説明員(今村武俊君) 従来は、五年間のいろいろな経過措置を設けて、毎年毎年度の定数をきめてまいりました。来年度は法の本則に返るとしてございますから、ものの考え方としては、よほど特別な事情のない限り本則へ落ちつけていけるというのが筋だと思うのです。それにしましても、児童生徒の減少の状況が著しい等特別な事情がございますと、直ちに本則定数に返すというような措置をしますと、いわゆる首切りが起こるところがあるので、それらの県については、県の実態を見ながらなお政令で特別の定めをする。その場合に、多くの県においては、本則定数に乗って軌道に乗るんだということを一方念頭に置きながら、それとの均衡を考慮いたしまして具体的な計数をはじき、しかも各県の人事担当者の人事の裁量のかげんと考え合わせてみて、実際支障のない線を求めてまいりますと、九七・五%くらいでよろしいのではないかということで、九七・五%という線で調子をそろえて、意見をまとめて大蔵省に予算要求をしておるという段階でございます。
  26. 小野明

    小野明君 それじゃ、結局大分県の心配しておるような結果ではないですかね。結局いま最初に私が大臣に御資問を申し上げましたように、やっぱり四十五でも理想とは言いがたい。私どもは四十名にせよと。あるいは専科教員を置くという問題についても、これはやはり急減緩和なり教育効率をよくしていくというねらいのためにやられておる問題なんです。ところが、過去何年かはいろいろな施行令のとり方はありましたにいたしましても、九八・五というのがいわば既得権みたいなもんですね、このほうをとっていえば。校長教諭最低保障数をとるということが有利な場合には、これが既得権の事実みたいなものです。それを一%下回った数で大蔵省と折衝するというのは、これは先ほど大臣が御説明になった趣旨と異なるんではないですか。
  27. 今村武俊

    説明員(今村武俊君) 大臣が御説明いたしましたのは、法律の改正の方向でございます。立法論でございます。私が御説明いたしておりますのは、法律のことではなしに、政令内容でございます。その政令は四十三年度だけの問題でございます。で、四十四年度以降につきましては、大臣が言われたような法律の改正を私どもも念頭に置きながら目下考えておるということであり、そして現在の法律を法律として運用していくとすれば、四十五年度までには政令の施行期限も切れてくるわけでございまして、法の本則に乗せていくということを念頭に置いてものごとを考えていくのが筋だと思います、現行法を基礎とする限りにおいては。そこで、その範囲内において、先ほどから申し上げるような種々の条件を考慮して計算をいたしますと、九七・五%という線が来年度納得のいく線だと。これは各県教育委員会も了承できる線だ。しかも、法の本則へ、少なくとも四十五年度といいますか、現行法を基礎とする限りは、四十五年度に戻っていくという前提で筋道を立てて考えると、九七・五%という線が出てくるというお話を申し上げておるわけでございまして、大臣が言われる内容と矛盾するものではないと思います。  なお、大分につきましては、県の教育委員会教育長十分懇談をいたしまして、この標準法のワク外にあります特殊学級増設、これはワク外で計算いたしますし、特に大分特殊学級学級数が他の府県に比べて相対的に少ないものでございますから、そういうところをワク外に措置していただけば、それに対して義務教育国庫負担金の措置もできますし、現実問題としては支障のないような御相談をしつつあるところでございます。
  28. 岩田俊一

    説明員(岩田俊一君) ただいまの審議官の説明、若干補足して説明させていただきたいと思うのでありますが、ただいま大分県が例に引かれまして御審議が進められておるのでございますが、調査に行かれました時点よりも、その後の新しい、実は昨日大分県から直接報告を聞きましたから、これは最も新しい大分県の推計見込みでございますが、当初の推計におきましては大分県は九七・五%の最低保障に該当する見込みでありましたけれども、その後の計数の整理の結果、と申しますのは、予算の計数より若干過大見積もり等がありましたためにそうなったのでありますが、その後の計数整理の結果によりますと、九七・五%すらかけぬでもいいくらいな来年度の減少の状況があるということであります。その数字をいまから申しますと……
  29. 小野明

    小野明君 それは地元の大分県が納得しておるということであれば、それでいいです。  そうしますと、今度つくる政令というのは、一律のものではなくて、各県でそれぞれの事情を見て当てはめるような幅のあるものなんですか。
  30. 今村武俊

    説明員(今村武俊君) 政令内容でございますから、一定の計算方式を規定するつもりでございます。その計算方式は、一口で申せば、前年度の実行定数の九七・五%の定数を明年度においても保障する、こういうことでございますが、各県それぞれバラエティーはあると申しますものの、児童生徒の減少の傾向には共通性もございますので、その共通性をつかまえまして一定の方程式を政令内容とする、こういう考え方でございます。
  31. 小野明

    小野明君 あまりこれで長くなってもあとのほうが差しつかえますから、これ以上尋ねるのをやめたいと思うのですが、最後に、たとえば福岡県などはとても九七・五で納得する定員事情ではないと思うのですが、この点はどうですか。あなたのほうはこれで了解させたと、こうおっしゃるのですか。
  32. 今村武俊

    説明員(今村武俊君) 福岡の人事担当の課長とも相談をいたしまして、九七・五で納得をいたしております。
  33. 小野明

    小野明君 この現行法基準にする限りという審議官の御答弁でありますが、私は、現行法をいつ変えるのか、四十五でとどまってしまって、そのままこれを基礎に政令等を考えておったんでは、いつまでたってもよい教育が行なわれるような標準法にならぬではないか、こういう気持ちを持っておるわけなんです。ですから、この定数法の改正に早急にひとつ取り組んでいただきたい、こういう要望を申し上げておきたいと思うのです。  そこで、大臣に、この標準法の改正に取り組む時期といいますか、これはもう四十三年で切れるわけですから、四十四年から実は新たな標準法で施行してもらうのが一番いいわけで、この点をひとつお聞かせ願いたい。
  34. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) お説のとおり、定数の関係教育を実質的に向上させる意味においてきわめて重要な課題だと思います。しかし、これが一足飛びに理想の形にはなかなかなり得ないので、順を追っていくという方針をとるよりしかたがないと思います。そういう意味で、四十四年度から定数をどういうようにするかということにつきましては、だいぶ前から研究は続けておりまして、必ず四十四年度からは新しい定数でまいりたい、そのために極力いま研究、検討をいたしておる現状でございます。     —————————————
  35. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 派遣委員報告に関する質疑は、この程度で一たん中断しまして、  教育文化及び学術に関する調査中、教員超過勤務手当支給に関する件を議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言願います。
  36. 秋山長造

    ○秋山長造君 教職員の超勤手当の問題について、端的に大臣の御所見を伺いたいと思います。もうこの問題は過去長い経緯のあることですから、こまかいことは申しません。  最近予算編成がだんだんと押し詰まってきたり、また内閣改造というようなうわさがだいぶ出てきておるような情勢の中で、われわれお互い文教行政上の最大の重要な懸案として取り組んできた超勤手当というものが、どうも最近影が薄くなってしまって、一体超勤手当というものはどうなるんだろう、どうされるおつもりなのかということについて、非常に大きい疑惑といいますか、不安といいますか、そういうものを感ぜざるを得ない。そこで、この重大懸案である超勤手当の問題が一体いまどうなっておるのか、この問題について文部大臣として一体どういう態度と方針を持っておられるのか、それを明確にお示し願いたい。
  37. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 御承知のように、これは申すまでもないことでございますが、文部省のこれまでの国会審議その他実態調査、これらの一連の関係から申しまして、結論として超勤を出すということに一応文部省としては決定したわけでございますが、同時にまた、教職員の給与は一般公務員と異なる別個の給与体系であるべきだという意見もまた相当あることは事実でございます。で、四十三年度予算編成にあたりまして、この際、教員の給与体系につきまして基本的に考えられる方法があるかどうかということをいま探求をしておる段階でございまして、超勤を出すべきかあるいは給与体系を根本的に改定するか、この二つにつきましては予算編成の時期までには必ず解決するということで、そのいずれかは必ずいくという形でいま検討を進めておるわけでございますから、超勤を私ども影が薄いとか捨てたとか、そういう問題ではございません。
  38. 秋山長造

    ○秋山長造君 この点につきましては、前回の委員会でもわれわれのほうからいろいろな角度から御質問をしたわけで、私も関連で一言いまと同じような趣旨の質問をしたんですが、それに対して、やはりそのときも大臣は同じようなことをお答えになったにもかかわらず、大臣のこの御言明にもかかわらず、さらにこの一カ月間のこの問題をめぐる政府部内、また与党の部内の動向をいろいろ見ておりますと、これはもう大臣の御言明のいかんにかかわらず、これはもう非常にあぶなくなったという印象を受けざるを得ないわけですね。これは一々具体的なことを申し上げなくても、大臣御自身もよく私は御存じだと思う。  いまおっしゃるように、給与体系の抜本的な改正という問題は、これはもちろんいまに始まったことじゃありませんで、前々からの、十年——古くして新しい問題であり、またぜひやらなければならない問題でありながら、また歴代の文部大臣が必ず就任当初には一応御発言になるけれども、やめていかれるときには何にも手つかずでやめていかれたという問題。誠意があるなしということは別にいたしましても、やはり事ほどむずかしい問題だということだろうと思うのです。ところが、超勤の問題というものは、その給与体系、本来教員の給与体系はどうあるべきかという根本問題とは、いささか私は次元が違うと思うのですね。それから、性格も違うと思うのです。ですから、この点を文部大臣は実態調査をやられ、その結果に基づいて来年度から実施すると。事情がどうであろうとも、実態調査をやって、相当な予算をかけて実態調査をやって、そうしてこの教員についても超過勤務の事実があると認定されたわけです。それが出た以上は、労働基準法に基づいて、これに対してこの時間外手当というものを支給するのは、これは当然だという立場で割り切られて出発されたはずだと思うのです。文部当局もそうだと思うのです。私どももそうだろうと確信をして、文部当局の今後の予算措置に対しても大きな期待をかけておったわけです。ところが、最近はそれが少し何かぼやけて、どっちも同じ給与問題だから、あれかこれかというような形になってきておるのですが、それがそもそもこの問題が、口ではどう言っても、事実上混乱しておる一番根本の間違いだと思うのですがね。私はこれは次元が違うと思うのです。だから、給与、しかも年末、もう二カ月ないのですね。十二月三十一日に新年度予算をまとめるとしても、もう二カ月ない。しかも、その間に内閣改造というような大きな政治的行事が予定されておるというような中で、いま相当長期間かかって各方面の知能をすぐって、根本的に慎重に検討しなければならぬ教員の給与は本来どうあるべきかというような問題と、それから来年から事務的にやらなければならない、現行法制のもとでは義務的にやらなければならない超勤の問題とを一緒にしてしまってやられることは、これは善意は信じますけれども、大臣の善意は信ずるけれども、しかし、これは扱いとしても非常に間違いじゃないかと思うし、それから善意にかかわらず、へたをすると情勢が情勢ですから、私はアブハチ取らずの結果に終わるおそれが出てきたのではないか、はなはだ失礼ですけれども。そういうような憂いを感ぜざるを得ないのですが、どっちつかずになってしまって、結局、二週間や三週間すぐたってしまって、宙ぶらりんになって、どっちもものにならぬままでパーになってしまう、また新規振り出しに戻るというようなことになるおそれが、私はほんとうにひしひしと感ぜざるを得ないのですが、この点についていまおっしゃったことについて、大臣は責任をもっておやりになりますか。
  39. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 私は、私自身が予算編成の最終段階まで当たり得るやいなやということはわかりません。しかしながら、私が議員であることはやめるわけではありませんから、私の責任は議員の際に皆さんに対しましても十分負うつもりでございます。言えますことは、今後の予算編成までにこの問題、超勤を含めて解決しなければ、いかなる方が文部大臣になっても、これは私は文部大臣はつとまらないと考えます。ですから、これは責任をもって解決するということは深く覚悟しておりますし、必ずできると私は考えております。
  40. 秋山長造

    ○秋山長造君 大臣がそこまで言い切られておることに対して、さらにとやかく申し上げることも失礼だと思いますけれども、これは私も善意で御質問しておるんですから、ひとつ御了承願いたいと思います。もしこれが、いま大臣がおっしゃるように重大な責任問題だと。この前にもそういう重大責任だという御発言が二回繰り返されてあったわけです。ただいまもそういうふうにおっしゃっております。もし万一この問題が何かこれからのいろんな政治情勢の経過の中で、口でどう言おうとも、事実上あやふやになってしまうというようなことになりましたら、これはただ剱木さんに対する不信感というような個人的な問題じゃないと思うんですよ。文部当局に対するあらゆる意味の不信感というものは非常に私は深刻になると思うんですね。ただ関係の教職員のみならず、われわれ自身だって、これだけ何年来この席でお互いに協力してこの問題を手がけてきて、そしてこの超勤の問題に関する限りは、全く、文部当局の考え方も、われわれこの席につらなっておる者の考え方も一致しておるわけなんです。しばしばいろんなものの考え方で対立することも多いわけですけれども、この問題に関する限りは全く一致しているわけなんですね。一致して推進してきた問題です。約束されてきた問題です。これがもしどうこうというようなことがあるとしたら、これはもう今後の文部行政というものはわれわれ信用することできぬですわ、われわれ自身が。だから、そういう重大な問題であることは、もう私がくどくど申し上げなくても、大臣にしても文部当局の皆さんにしてもよくおわかりになっておるところでございます。ひとついまの大臣の言明どおりに必ずけじめをつけていただきたいということを重ねて申し上げておきますと同時に、やはり先ほど大臣の御答弁でも、どっちかというようなお話なんですね。どっちかという御見解に立たれておるんですから、私がそれは間違いだと幾ら言っても、これは見解の相違ということになるかもしれぬですけれども、それが私はこういうように問題が低迷混乱を続けておる一つのもとになっておるんじゃないかということをさっきも申し上げました。大臣のほうでは、とにかく給与改善措置分として六十三億円という概算要求を出しておるんだが、これで超勤手当が認められるということになればそっちでいく、それが認められないということになれば、これはさらに三十七億ですか上積みをして百億にして、そして本俸の一号俸引き上げのほうへ持っていく、どっちかというようにあるいはお考えになっている節があるんじゃないかと思うんですけれども、その銭金の使い方の問題とは、本来本質的には、超勤手当を出すか出さぬかという問題とは私は違うんじゃないかと思うんですが、現行の法制に立つ限り。現行の労働基準法を否定しない限り私は問題が違うんじゃないかという気がしてならない。そこがやっぱりこの問題がはっきりせぬ一番大きい要素になっているんだということを思うんですが、抜本改正の問題は抜本改正の問題として推進していただくとして、剱木さん一代でできなければさらに次の代、さらに次の代と、これは真剣な努力を続けていただくことにして、超勤の問題だけは本来性質の違う問題だと私は思うんですから。どうか大臣の責任において早急にこれはけじめをつけていただきたい。多少大臣のお考えと食い違うかもしれませんけれども、もし私の考えが食い違っておれば、労働基準法に基づいて超勤という事実があるにもかかわらず、そしてそれには手当を払わなきゃならぬということが労働基準法にきめられておるにもかかわらず、おれはそれは反対だとおっしゃるなら、それをおっしゃっていただきたいと思います。その点をはっきり……。
  41. 小野明

    小野明君 関連。私も、先ほどの大臣のお話なり、前回の委員会での御言明なりをお聞きいたしますと、超勤か一号アップか、こういうどっちかということに、やはりこのどちらも消えてしまうという心配を感ずるわけなんです。というのは、いまのところ一番実現の可能性のあるのは、ここ何年か文部省が取り組まれてきた超勤の問題なんですね。ところが、これが実現の段階になったときに、片や聖職論というものが自民党の部内に出てきておる。この背景というのは、労働基準法の適用を除外する、こういう思想になっておるわけなんです。いわば聖職論というものが超勤を消しておる。だから、本俸のアップのほうにいけば、必ず超勤が消える。当然消える。ところが、本俸アップが実現するかといえば、これはまあ超勤でさえここ数年間かかってきた問題なんです。でありますから、やはりこの教員も、基準法にいうように、賃金でもって生活を立てている以上、労働基準法の適用はあってしかるべきです。しからば、超勤があるという現実から超勤手当という問題が具体的な日程にのぼってきたのでありますから、大臣も片一方のほうに迷うのでなくて、先ほど御所信の表明がありましたように、まず超勤を確定する、制度としてこれは確定をするのだという固い決意でひとつ臨んでいただきたい、こう思うわけなんです。
  42. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 労働基準法との関係の解釈につきましては、先ほど秋山委員の言われたのと全く同じ考えを持っております。でございますから、この問題につきましては、労働基準法を含めた意味において超勤問題なり給与の問題を解決しなければ納得いく線は出てこないと思う。でございますが、いままでいろいろな議論があることだけは率直な事実でございますが、私はそれらの中に伍しまして、心ずこれは解決するという方向に向かって最善のいま努力をいたしております。私は予算編成までには必ずこの問題は解決できると確信をもって努力いたしておりますから、いまのところ、ひとつそれで御了承願いたいと思います。
  43. 千葉千代世

    千葉千代世君 ちょっと関連。この件については、去る十月六日でございましたけれども人事院の勧告の完全実施をめぐって、私ども衆参の文教委員を中心として、ここにおります秋山委員以下十名ばかりで文部大臣にお会いして、いろいろお話し合いをしたことがございます。そのときに、文部大臣もたいへん大きな決意をもって、人事院勧告については完全実施、五月から実施ということについて極力努力をする、都市手当については異論がある、超勤については、いまお答えになったように、確信をもってあらゆる方面に働きかけてまとめてみせる、このようにおっしゃったわけです。私どもは、日ごろ剱木文部大臣が誠実な方でありますために、つい鋭鋒が鈍りまして、よし、あれくらいの顔色ならきっとやるのだろうというような気持ちが先にいってしまったものですから、そのときに、当面人事院の勧告の完全実施と、こういうことで、具体的に反対の大蔵大臣、あるいは宮澤企画庁長官、これらの方々が反対しているならば、あなたは具体的にいつ幾日どういう交渉をして、その展望はどうですかと言ったらば、あさって具体的に話をしようということであったわけです。そのときに大臣のほうから、一生懸命やるから、十月二十六日についてはこれは取りやめてほしいというようなことを言われたわけなんです。それで、内容は省略いたしますけれども、私どもとしては、それはたいへん本末転倒ではないか、完全実施、五月ということ、この最小限の、最小の要求ということに対して、大臣がもっと具体的な展望をもっていくと。大臣がそれだけの決意であるならば、大蔵大臣のところに行って交渉をして、そうして閣内の給与担当をまとめていく、それでどうしても要求がいれられなかったならば、すわり込んでいただきたい、六十万の教員はそのあとに続きますよと言って、ほんとうに私はそう思ったのです。ちっとも違法な要求ではないから、ほんとうにそう思ったわけだったんですよ。続くんですよ。そういう意味で、超勤とかね合わせた中でおっしゃったのです。  私、いまここで伺いたいのは、その後続いて持たれました衆議院と参議院の文教委員会で、超勤の問題で質疑をいたしておりますが、そのことも私は詳細に伺いました。しかし、その後の前進のことについて、あなたは大蔵省あるいは与党内で、これについて聖職意識をいまだに持っている前世紀時代の遺物の方々に対しまして、どのような説得を試みられて、そうしてどのような話し合いができたのか、あるいはそれまで教員給与のアップについてごまかされようとしたことに対して、どういう抵抗の線を敷いたかということを、具体的に私は聞かしていただいて、秋山委員の質問のほうに回していただきたいと思います。
  44. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 私は、閣僚の六人委員会の中に私も入らしてもらいまして、私としましては具体的にどうこうということを申し上げる必要はないと思いますが、完全実施について努力いたしましたことは、私自身も何ら偽りを申しているつもりはありません。ただ、私の微力のいたすところで、わずかに一カ月、八月実施ということに一カ月繰り上げるのが私の力では精一ぱいでございまして、それだけはまことに申しわけないと思っております。  ただ、いま大蔵省に予算を出している段階でございまして、内容面において給与改善費という名称でやっておりますけれども、この問題の解決を私ども断念しているということは絶対ございません。これは最後まで解決するために努力をしてまいるつもりでございます。ただ、私、千葉委員からお尋ねがあったから言う、言わないでいいかもしれませんが。
  45. 千葉千代世

    千葉千代世君 何でも言ってください。
  46. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 私といたしましては、やはり私どもの努力している段階で、一面において日教組のほうではああいう実力行使を決定された態度に対して、私どもは非常に不満を持っております。これはやはり私は教育者として、聖職でないとお考えかもしれませんが、私は子供に対しまして、教師としてのやはり自覚と、教育上の立場というものはぜひ持っていただきたい。そういう意味から、聖職ということでなしに、教育者に対しましては特別の給与体系があってしかるべきだということにつきましては、私自身もやはり考えているのでございまして、文部省の案といたしましては、超勤は国会関係で出すようにいたすべき筋でありますから、その超勤を出すとしましても、給与体系につきましては、基本的な給与体系については、四十三年度から正式に審議会等を設けまして十分な検討を開始しよう、こういう組織をつくりたいということで、これもまた予算要求をいたしておりますことも事実でございます。私はやはりこういう問題につきましてのいろいろな今日検討が行なわれていることは事実でございますが、必ず予算編成期までにはうやむやの態度にはいたしません。必ず決定すると、こう確信をもって努力してまいりたいと思っております。
  47. 秋山長造

    ○秋山長造君 私は大臣の再三の御答弁を聞いておって、もう大臣の善意はこれは疑いませんがね、ただ、どうもそこに混乱されている点が一つあるのではないかと思うのですが、教職員の給与体系の抜本的な再検討ということは、もうそれはけっこうです。これはぜひやっていただきたい。われわれも長年要望してきたところですからわかるのですが、それはやらなければいかぬが、来年度審議会を設けて教職員の給与体系はいかにあるべきかという抜本的な検討をされると、こうおっしゃるのですね。一方ではそうおっしゃりながら、その審議会は来年度から発足させるとおっしゃりながら、その前でしょう、いま。まだその前に給与体系の抜本的な改正だといって、何かいまこの期に及んで、それを何かのぞかせておられるわけですね、一方で。そしてそれが超勤手当の問題とこんがらがって、何か融通無碍、どっちかに取りつけるほうに取りつくというようなかっこうになっていますのでね。そこをやっぱりせつ然と分けて、超勤手当の問題もこれはもう過去のいきさつからここで当然事務的にも制度として、別な制度としてきりをつけなければいかぬ。また、抜本的な給与体系の問題は、来年度から審議会を設けて、そこでじっくり衆知を集めて検討してしかるべき結論を出す。こういうようにせつ然と分けていただけぬところに、私は非常にこの問題が何かわかったようでわからぬあいまいな点がある。私個人としては、教職は聖職である、いわゆるいまの聖職観ということ自体を私はどうこう言うつもりはありません。それはそれで、そういう考えの方がおありになることは、私はそれは別にけしからぬとも何とも思わない。それはそういう人はそういう人でいいが、しかし、聖職観ということをいまこの問題の中に持ち込むから混乱が起こっていると思うのです。それは聖職観は聖職観として、それで十分お考えになったらいいと思うけれども、その問題とは私は次元が違うと思うのです。超勤の問題は。  何か新聞で見ますと、労働の切り売りに金を払うというようなやり方は聖職にあるまじきことだというような議論が与党の内部でも相当強力なように聞くのですけれども、それは持って行き場が違うと思うのです。そんなことを言っておったら、大体教員に俸給を払うことがそもそも労働に対する切り売りの対価じゃないか。教員には俸給表なんか全部廃止して、お布施か何か金一封を渡すだけでいい。それはそうでしょう。極端にいって、突き詰めていくとそうでしょう。大体、先生に教わるから授業料を払うということも、先生の労働の切り売りに対して対価を払うという理屈になれば、それもおもしろくない。だから、授業料なんか廃止して、各自が思うだけのものを金一封包んで、昔の寺小屋時代のような、持っていくような制度にしない限りは、それは聖職観というものは徹底しませんよ。だから、私は次元が違うと思うのです。超勤手当の問題に聖職観なんかを持ち込むことは——それはそれ自体で意味があるでしょうけれども、超勤手当という制度にそれを持ち込んでくることは混乱をさせるもとだと思うのです。そうしてまた政治的に考えれば、まあ非常に無責任なやり方だと思うのです。  その点をもう一度、くどいようですけれども、私の考えを念を押しておきますから、先ほどの御言明のとおり、責任を持って必ずこれをやっていただきたい。もう一度大臣に御決意を伺いたい。
  48. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) やはり政治の場におきましては、社会党さんのほうでも一つのことを決定するのにはいろいろな意見もあるかと思います。私ども党内におきましてもいろいろな意見があることは、率直に事実でございます。しかし、これはやはり政治をやるためには国民に対しまして責任を持ってやってまいらなければならぬことは事実でございまして、必ずこの問題の終結は私は決定し得るという結論をもちまして、その決定し得る方向に向かいまして全力を注いで努力いたしておる段階でございます。必ずこれは予算編成期までには解決をいたすという考えをもってやっております。
  49. 鈴木力

    鈴木力君 ちょっと関連して。いまの秋山委員に対する御答弁で、大体その筋は私は賛成なんですから、ぜひ大臣にいまのような筋で実現してもらいたいと思うのですが、多少気にかかることを私は二つ三つ御質問申し上げたい。  それはあとのほうから申し上げますが、大臣、この一〇・二六について、一生懸命やるから一〇・二六はやめてほしいということをおっしゃった。私はこういう大臣の考え方に賛成なんです。つまり、いまの教師の給与という問題、あるいは給与だけじゃなしに待遇問題、あるいは勤務条件等については、教師は、まあいまの義務制の教員は地方公務員だから、地方公務員は国家公務員に準ずるとかなんとかいう議論はございますけれども、法律を調べてみますと、どこにも準ずるということばは書いていません。教育公務員特例法に、国家公務員を基準とするという、だいぶやかましいことが書いてありますから、当然この地方公務員である教育職員の給与については文部大臣と交渉でものをきめていくという行き方が原則だと思います。私はそういう意味で、大臣が自分も一生懸命やるのだ、要求実現のために一生懸命やるのだ、だからおまえたちもストライキとかなんとかをやめろ、私はこういう態度は基本的には正しいと思います。ただ、一生懸命やっているのにストライキかまえるのは不快だとおっしゃる。これは気持ちの問題ですから別でありますけれども、私は特にこの超過勤務手当についてはそういう角度からも大臣は忘れないでほしいということをお願い申し上げたい。これは、まあ日教組のことを、さっき一生懸命やっているのにストライキをかまえたということでおっしゃいましたけれども、この超勤に関しては大臣は直接は日教組の幹部とは会わなかったかもしれませんけれども、少なくとも日教組と文部省との間に調査段階から超過勤務等についてはいろいろな形での交渉はあったはずなんです。そのときにも日教組は実は闘争をかまえておった。しかし、文部省のほうから文部省の所見とかいろいろな形で誠意が示された。これは文部省が非常に誠意をもってやってくれているということから、そのパーセンテージの見方は不満であっても、日教組は闘争をやめている。私は非常にこういう関係は大事なものだと思う。そういう立場から、一つの側面からいうと、国家公務員の給与を基準とする、そういう法的根拠に基づいているのですから、少なくとも給与はその担当大臣である文部大臣と日教組との間でいろいろ折衝をされた上でものがきまるべきで、事実そういう経過でこの超勤がきているのでありますから、いまそれをいろいろな理由で、それがまたなくなるというようなことになれば、一〇・二六みたいに、それは八年間も努力をしていると言われても、努力の成果が実らなかったということでは、努力中では心配だから、実らなければやりますぞという考え方に変わってくる。これは文部省のためにもあまりプラスにならない。教師のためにもあまりプラスにならないと思いますから、そういう角度からひとつ大臣のいまおっしゃった、まず超勤制度をつくるのだ、その上に抜本的な給与体系を検討するのだというこの決意を、ひとつますます固めてもらいたいということを私は一つだけ申し上げておきたい。  それからもう一つ、私は最近の超過勤務手当なり教員の待遇なりについての、これは決して大臣がどう言ったという意味ではありません。そういう政府なり与党なり、あるいはわれわれも含むのかもしれませんけれども関係者の発言の中に、何か超過勤務手当というのは教師の待遇改善であるというところが非常に大きく出てまいりまして、基本的なところがどうも抜けているような気がするので、私は質問というよりか、むしろ御要望を申し上げたいのですが、忘れてもらって困るのは、いまの義務制の教員学校という一つの、職場ということばは文部省は好きかきらいかわかりませんけれども、一つの職場ですね、これが近代的な職場になっているのか、非近代的な職場になっているのかという点は、これは文部省としては見落とさずに検討してもらいたいということなんです。その問題と、いまの超勤という制度があるかないか。さっきは聖職論ということばが出ましたけれども、私は聖職ということばはあまり使いませんが、この超勤という制度があるかないかということと、職場が近代化されているかどうかということが直結をしておると私は思うんです。そういたしますと、たとえば、これは私が現実に去年見た学校があるんですけれども、午後五時から職員会議をやる。午後五時から職員会議をやらないと、昼間職員会議なんかやっておったんでは学力テストのいい成績がとれないから、午後五時からやるという、そういう学校がだいぶある。少なくとも職員会議という一つの会議というのは、学校長という管理職が命令をしてやる会議でありますから、そういうような職場で、おまえたちはもう二十四時間勤務だからということで、学校長なり管理職の配慮なり、あるいは教育行政の末端機関の配慮によって幾らでも拘束できるというような職場が、労働基準法があるにもかかわらずまだ生きておるということですね。そういう職場で近代的ないまの社会の教育ができるかどうかということは、私は決してできないと思う。学力テストをやれば統計上はどういう数字が出るかわかりません。しかし、少なくとも文部省がねらっておる教育の方向とはだいぶ違った姿がそこにあるんじゃないかと思うんです。そういう意味からも、この超勤という問題はやはり確立をする根拠にぜひしてもらいたいと思うんです。いまの職員の勤務態様という問題、このことは私は粗末にできない問題だと思うんです。そういう角度からも、いまおっしゃったような待遇改善というものではなしに、職員の勤務態様を近代的に確立をするという、そういう意図でこの超勤制度というのを今度は確立をすべきだ。  だから、私は少し極論をいたしますと、いまの教師は反対かもしれませんけれども、たとえばいま六十三億の予算要求をしておる。これが何らかの都合で、かりに十億削られて五十三億になったにしても、やはり超勤という制度をもって教師の働く場所を近代的な勤務態様の場所にしてやるということがいま必要なことではなかろうかと、こう思うんです。ですから、長くなって恐縮ですが、ついでに申し上げますと、抜本的な勤務条件あるいは給与体系の改善をなさる、こういう場合には、たとえばいまの裁判官のように、何時から何時までどこの職場にいるというような、そういう拘束のない二十四時間が教師であるという、そういう職場をつくらなければなりませんから、相当準備もかかると思うんです。そういう形での検討なり、あるいは超勤をつくった上でのさらに専門職としての検討なりということについては私どもも賛成であります。  いまどうもおわかりになっていることをくどく申し上げたんですけれども、この二つの側面のことが、私はこれからの教師の社会を近代化していくためにきわめて重要なことだと思うんです。そういうことを生かしながら、ぜひ先ほどの御答弁をなさった御決意を必ず実現されるように要望申し上げたいと思います。
  50. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 他に御発言がなければ、教員の超過勤務手当の支給に関する件に対する本日の質疑はこの程度にいたします。     —————————————
  51. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 先ほど中断いたしました派遣委員報告に関する質疑を続行いたします。  御質疑のある方は御発言願います。
  52. 鈴木力

    鈴木力君 時間がだいぶ過ぎておりますから、できるだけ端的に、あまり外——外といいますか、わき道にそれないようにお伺いいたしたいと思いますので、御答弁もそのようにひとつお願いしたいのですが、問題は、先ほど質問がありました平城京の問題です。平城京の跡をいま保存しようとして、これは政府も土地を買い上げて、いろいろ研究、発掘調査、それらの対策ができておられる。これはわれわれも調査をして拝見をいたしました。それからまた、今日に至るまでの過程では、それぞれの関係者があそこの近所にある航空自衛隊も含めて協議してずっと進めておいでになった。このことも私どもも見せてももらえば聞かせてももらったのですが、どうもいまの出ている問題は、それとまた少し違った新たな段階だと思います。つまり、いまの東一坊大路ですか、あそこにバイパスを通すということを、文化財関係を含めて意見が一致をしたのは昭和三十七年です。昭和三十七年の段階では、あそこが適当なバイパスの位置である、こういうことが決定をしたのですけれども、これはいま私が申し上げるまでもなく、皆さん御存じのとおりでありますが、東一坊のところに新たな史跡が出てきた。しかも、これが平城京を保存する上にきわめて重要な価値のあるものが出てきた。そこで、いまここにバイパスをどうしようかという問題、それから発掘調査がどうなるかという問題なんですけれども、これは特に資間申し上げません、私伺ってまいりましたから。四十四年までは発掘の時間がかかる、どんなに金をつぎ込んでもそれだけの時間がかかる、バイパスの期限は四十五年だか、こういう問題がありますから、私どもが見た限りにおいては、視察をした限りにおいては、あの平城京の保存という立場に立ちますと、どうしてもバイパス計画を変更すべきではないかというふうに私どもは見てまいりました。報告にもございましたように、第二案、第三案というものも考えられるのではないかとさえ思われたのでありますが、そう見てまいったのですが、いま文化財保護委員会なり、それから建設省が担当でありましょうが、道路のほうは。その政府間でのこれに対する協議はどういう状態に進んでいられるのか、そのことをお伺いいたしたい、こう思います。
  53. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) これはお説のとおり、当初は東一坊大路を復元するというので、文化財保護委員会もあそこに路線を通すことを承諾したことは事実でございますが、その後の発掘調査等によりまして、これが非常に重要な地点になってまいりまして、これは先ほど中野委員からありましたように、事前協議の際において、十分事前に発掘調査した上でやるべき問題であったと思いますが、前後になりました今日におきまして、いろいろな案を考えておりましたが、やはり文化財保護委員会としては、御承知のとおり路線を変えるべきではないかという結論に達しまして、ただいま建設省と具体的に、変えるとすればどう変えるか、そういう問題につきましていま建設省と話し合いを進めておる途中でございまして、保護委員会といたしましては、やはり路線を変更すべきだという結論に達しておるようでございます。
  54. 鈴木力

    鈴木力君 建設省の方……。
  55. 福原匡彦

    説明員(福原匡彦君) ただいま剱木大臣から申し上げましたことにつきまして、文化財保護委員会の考え、あるいはその後の進め方について補足をさしていただきます。  ことしの二月ごろになりまして、平城宮跡の東側、東一坊大路の地点に、まあこれがただいま事前協議と申しますか、事前調査が十分でなかったというお話がございました。これは明治の初めから平城宮跡というのは八町四方というのが定説になっておりまして、ほとんど疑いを差しはさむ学者もいなかったということでございましたので、私どもといたしましても、東一坊大路の復元ということは完全に宮跡をはずれている、こういう判断に立ちまして建設省からの申し入れに——これは私聞いておりますのは、これは三十七年ではなくて、三十九年ごろ申し出があって、私どもとして具体的には昨年の三月、まだその東一坊大路の若干の調査は進めていたのでございますけれども、もう信じ切っておりまして、これはもう道路が通っていたのだ。ところが、道路のあとが見つからないのでございますけれども、しかし、これは何かの事情でもって道路のあとにまたいろいろな遺構ができたのではないか、そのために道路がわからなくなった、こういうふうに考えまして、その道路の上の発掘調査は進んでいたのでございますけれども、まだそこは依然として宮域の一部とは考えていなかった。こういうことで、昨年の三月でございましたか、文化財保護委員会といたしましては、建設省のこの東一坊大路にバイパスを通すという案に同意をいたしたわけであります。  ちょっと前後いたしましたが、昨年の暮れから始まりました東一坊大路の中で、これが大体八町、一キロでございますけれども、その中に大体四分の一ずつのところに門がある。大体宮跡の四方には門があるわけでございます。その一番南側に門がある。南端から二町のところに門があるはずなんでございますが、それが東側でございますから、それが東に向いて門がなければならないという門が、南を向いて門のあとがあるということがわかりました。そこで、私ども、それまで定説として考えられておりました方八町の宮跡というものにここで初めて疑念を抱くに至ったということでございます。そこで、その後、その東側につきまして、一時これは夏の間は発掘調査を中止していたわけでございますけれども、学者等の意見を聞きましても、どうしても東側にはこれは宮跡が広がっていたと申しますか、ということを確実に推定されるに至りました。そのために、この参議院の国政調査の御結果も十分お聞きしたわけでございますけれども、そういうこともしんしゃくいたしまして、私どもといたしましては、これは宮跡が東側に広がっていたならばその宮跡の一体性というものは尊重しなければならない。そうしますと、いまのバイパスはまさにその中を縦断する形になります。これは文化財保護委員会といたしましては、一たん建設省の案に同意はいたしましたけれども、そのときと事情が違ってまいりまして、この重要性というものをこれは私ども判断いたしまして、何とかできるならば——まあ昨年までの時点ではいろいろな案があって、その東一坊大路の復元ということが一番遺構をこわすことが少ないということで同意をいたしましたのでございますけれども、ほかのほうにそれを移すことによって、あるいは若干遺構等にぶつかることがあるかもしれません。まあそういうことも判断の中に含めまして、しかし、ここだけはどうしても上げていただきたい、こういう気持ちにごく最近まとまったわけであります。  実は十日ばかり前に、平城宮跡で発掘調査の指導委員会というものがございまして、私そこに出まして学者の先生方ともいろいろお話し合いをいたしました。初め私ども条坊復元という形で、条坊復元といいますか、道が通っているところに道をつければ一番遺構がこわれないで済むということであったわけでありますけれども、そうも言っていられない、あるいは斜めに道が通ることまで含めて、いまの案よりはそうした案に変えていただく。前に幾つかあった案を含めて、そういう形で建設省からお申し出があり、一度私どもが同意いたしました案を、あらためて建設省にもう一回検討し直していただく、こういうことで、事務的には、昨年の三月私ども記念物課長から奈良の国道工事事務所長あてに同意をしたわけでございますが、それにつきましてこういう事情でもう一回検討し直してほしいという文書を、実はこれはまだきのうきょう発送ぐらいの段階でございます。  それから、私がその集まりから帰りまして、建設省の道路局長にお話をいたしいと思いましたが、ちょうど今週から国際道路会議が始まっておりまして、建設省とまだ私は折衝できないでおるのでございますが、間接にはお話が通じておりますけれども、直接私もお会いしてよく事情を申し上げたい、こういう段階でございまして、まだ事務的に十分進んでいるとは申し上げられませんけれども文化財保護委員会としては、ぜひ変えていただきたい、こういう気持ちでおるわけでございます。
  56. 伊藤直行

    説明員(伊藤直行君) ただいまもお話し——実はいまおっしゃったように、私のほうは直接まだ聞いておりません。しかしながら、このルートをきめます際に、何本かの線を検討したのでございます。その当時、明白な遺跡にどの線もぶつかるわけでございます。したがって、この線が一番比較的遺跡にぶつかる率が少ないであろうということで同意をいただいたものとわれわれのほうは解釈しております。しかしながら、いまのように非常に重要なものであるということになれば、当然その他の路線の重要度との関連において考えるべきことだろうとは思います。
  57. 鈴木力

    鈴木力君 いまお話を伺いまして、わかりました。わかったというのは、文化財保護委員会の意思決定が最近であって、建設省に話し合いを申し入れているが、まだ話し合いは、事実はあまり折衝がやられていない。そういうことですと、伺ってもそれだけの話でありますから……。これは私どもがやっぱり視察をいたしますと、いま大臣のおっしゃった、あるいは局長のおっしゃったように、やっぱりどうしても路線を変えないと無理ではないかと、そういうふうに私ども見て取れたのでありまして、建設省としても、私どもも一案、二案、三案というのをそれぞれ現地も見てまいりました。で、いまきまっておりますのは三案でありますけれども、われわれしろうとですから決定的なことは申し上げられませんけれども、しろうとが見ると、第二案でそう無理がないのじゃないかと、そういうことも……。まあちょっと言えば、自衛隊がじゃまになるくらいなんでして、自衛隊は動かさないでも、何か下を通すかすればがまんできる。これはしろうと考えでありますけれども、これは建設省のほうにお願いだけしておきます。時間もありませんから……。  そういうわれわれの視察した結論は、やっぱりいま新しく発掘をされて出てまいったこれは非常に重要な価値があるものだ。そういたしますと、建設省としても、期限がきめられているところにバイパスをつくらなければならない任務があるから、これは非常につらい立場にあることは私どももよく理解できますけれども、そういう角度からできるだけ早く検討をしてもらいまして、この文化財保護の意図——意図といいますか、役目を果たすようにひとつお願いをしておきたい。これは私どものほうから要望をしておきます。あとで進行状況を伺ったりなんかしたいと思います。この件は終わります。  時間がありませんから、簡単にもう一つだけ調査について伺いたいのですが、それは技術家庭科の品野中学校実情、先ほど御報告にありました。これはいまの教育課程論をやりますと、私はいろいろ意見を持っておりますので、たいへん時間が長くなると思いますから、教育課程そのものなり編成がどうとかいうことはいま申し上げません。いずれいつか時間をちょうだいして詳しく伺える時期があると思いますが、きょうは簡単にこれだけ伺いたいのですが、先ほど報告にありましたように、品野中学校は工業科として窯業をやっておる。ところが、それが技術家庭科の中でやることができないで選択科目でやっておる。ところが、選択科目というのは英語と振りかえておる。そういたしますと、あすこの地域は高等学校窯業高校だ。したがって、将来窯業をやりたい、あるいは窯業をもう少し深めたいという子弟の数が非常に多いのですが、窯業高校に入るためには英語を捨てるわけにいかない。そうすると、中学校窯業課程を選ぶわけにいかない。そういうような事情がいろいろ込み入ってまいりまして、わずかに三人という状態でやっておる、こういうことなんです。これが地域の父母の人たちも、それからあそこの教育長さんも、できれば技術科の中で一つの教科として——教科といいますか、教材としてあれを取り上げたいといっているのですが、あそこの先生たちも、教育長さんも、どうもかたくなに解釈し過ぎているのじゃないかと思うのです。何か指導要領というのは、だれかが反対したときに、これは文部省基準として守らなければならないのだと言い過ぎたものですから、教育委員会関係にまでその基準性というものが硬直になってしまって幅がなくなっている。  もう一つ申し上げますと、あそこではお茶をつくっている。しかも、茶園というのがあるのです、学校用地としては。しかも、これも指導要領の中に茶というのは出てこないからということで、放課後のクラブ活動等でそれの実習をやっている。あそこはお茶も農業課程では非常に重要な作物なんです。私どもが考えまして、かりに文部省のいう教育課程基準性というものを認めたとしても、栽培という一つのあれがあるのですから、栽培の中でお茶をやって悪いということはどうも考えられない。  それから、窯業にしても、技術家庭科というのは一に職人を養成する目的の技術科ではないわけですから、基礎を教えるのですけれども、それにしても、しかし機械の学習なりそういう課程の中に窯業を取り入れて悪いということはどうしても私は常識としては考えられないのですが、こういう点を一体責任者として文部省はどう考えているのですか。  時間の節約のためにもう一つ重ねて聞きますと、指導要領の総則の中にははっきりと、「地域や学校の実態を考慮し、生徒の発達段階や経験に即応して、適切な教育課程を編成するものとする。」とある。それからもう一つ、これも総則の中に、「第二章に示す各教科の内容に関する事項は、特に示す場合を除き、」とあって、いろいろありますけれども、ここにやはり地域のそういう実情等は取り入れてやるように配慮すべきだ、こう書いてある。各論の中にそれがないから、いまの教育が非常に硬直性ということで窮屈にとられているのじゃないか、こう感じましたので、いまの教育課程のあり方をどう指導しているのか、いろいろなことは要らないですから、時間がありませんから、品野中学の場合に学校でカリキュラムの編成の過程の中で窯業を取り入れることがいけないのかどうか、栽培という一つの教育の科目があるから、そういう中でお茶を取り上げることはいけないのかどうか、そのことをひとつはっきり伺いたい。
  58. 佐藤薫

    説明員(佐藤薫君) 御意見の趣旨はよくわかるのでございます。ただ、現行の法令下におきましても、窯業を正規の授業として指導することはもちろん可能でありまして、ただその場合二つあるわけであります。一つの方法は、技術家庭科として指導する場合でございますが、これは一応技術家庭科は必修でございますので、内容が一応最低基準になっております。したがって、それは全生徒が履修すべきものですけれども、一応所定の内容をやりましてプラス窯業をやる。その場合には当然一時間、二時間というふうな時間の増加も必要と思いますが、現行でも十分できるわけであります。第二の方法は、選択教科で工業がございますが、この工業の内容は標準でございますので、したがって、一応定めておりますものを窯業と入れかえましてやるということも可能でございます。現在では一応二つの方法があります。  それから、お茶の話も栽培の中でやることは可能でございまして、学校長がもう少し弾力的にやっていただけば、そう問題はないと思います。  ただ、結論的に申し上げたいのは、先ほどもお話がございましたように、地域の実態だとか学校の実態に基づいてもっと弾力性あるものにすべきである、あるいは外国語とうらはらの職業選択ということは無理があるというような御注文がございました。その点につきましてわれわれは非常に強く意識しております。現在教育課程審議会はこの問題を審議しておりまするが、審議会におかれましてもこの問題を非常に強く意識しておりまして、もっと弾力的な運用ができるようにしたいというふうな考えを持っていますので、将来とも十分連絡して、十分いい方法を考えたいと思っております。
  59. 鈴木力

    鈴木力君 もう少し弾力性を持てというのですけれども、いままでの指導は、やっぱり弾力性を持っちゃいけないという文部省のほうからの指導のほうが強過ぎているのです。私はそう思うのです。これは教育課程のいまの指導要領をつくる過程のことを皆さん思い出してみれば、ひしひしと思い当たる節があるだろうと思うのです。そういうところに問題があって、いまの指導要領をつくるときにいろいろの意見があり、やがて学校教育はこういう硬直したものになるぞということを指摘したことを聞き入れなかったからこういうことになったのです。そのことだけはあなたに聞いておいていただきたいと思うのです。  しかも、工業と取りかえることができるというのは制度上なんです。実際に学校に行ってみると、振りかえることができないことになっている。それはさっき品野中学で申し上げたとおり、英語と工業を振りかえて、工業科の中で窯業をやっていることはやっているのです。これは完全に高校進学をあきらめた人です。高校に入ってさらに窯業を深めようとする人は、工業科で窯業をやってはならない。英語をやらないと高校教育を受けられない。そういう一つの、どっかの狭いところの理屈は成り立つにしても、いまの六三教育のシステムの中での教育課程がどうかということは——皆さんは、総則にそう書いておったのに学校が窮屈に考え過ぎるというようなのんびりしたことを言っていられるかもしれないが、そうではない。そういう硬直したように教えてしまったのは文部省なんだから、その点についての始末を、早急に文部省は手を打つべきだと思う。いま審議会にかけたら審議会はそれを意識してやっていますなんと言ったって、それは審議会が結論を得てあとでやるのは、あと子供なんです。いま教育を受けている子供は救われない。ですから、この総則の解釈をあなたのいまのような解釈でもっと弾力的に扱えるのだ、これは時間をふやすこともあれば、機械のところで、いろいろな機械の中にろくろを入れてやってできないことはない。地域の実情を勘案してということはそういうことだろうと思う。そうすれば、品野中学校愛知県の教育長も心配し、市の教育長も心配していますから、それを文部省のほうから、それほどかたく考えないでもう少しくふうしてやっていいんですということを、ぜひ指導してやっていただきたいと思う。それをつけ加えておきます。
  60. 佐藤薫

    説明員(佐藤薫君) そういう指導をしたいと思います。
  61. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 他に御発言もなければ、派遣委員報告はこれをもって終了いたします。     —————————————
  62. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 次に、教育文化及び学術に関する調査中、大学学生寮管理等当面の諸問題に関する件を議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。  なお、政府側から宮地大学学術局長、渋谷大学学術局審議官、梅沢科学技術研究調整局長、川島警察庁警備局長が出席いたしております。
  63. 小野明

    小野明君 大臣がおられれば非常によかったと思うのですが、大学局長にお尋ねしたいと思います。  最近、佐賀大学におきまして紛争があったことは、またありつつあるということは、局長も御承知のとおりであります。で、この事件というのは、現在退学十四名を含みまして二十九名の処分者を出すという悲惨な事態を招いておるのであります。  この紛争の発端といいますのは、いわゆる寮の管理の問題であります。この事件をずっとこう検討してまいりますと、この学寮管理に関しまして、非常に多くの大学で紛争が起こっておるのであります。これは、まあ宮地さんは最近局長になられたばかりでありますし、あなたの時代ではないのでありますが、この寮管理に伴う学園紛争というのは、山形大、あるいは東京学芸大、静岡大、宇都宮大、一橋大、弘前大、お茶の水女子大、いずれも昭和四十年ごろに、大体以上申し上げたような大学におきまして、寮の管理ということから大きな紛争を起こしてまいっておるのであります。さらにこれを調べてまいりましたときに、三十九年二月にいわゆるこの学寮における経費の負担区分についてという大学学術局長通達が行なわれております。これが一つの原因でもある。いま一つの問題は、同じくこの三十九年の七月に、学寮管理運営規則参考案というものが各大学に指示されておるわけであります。それで、私が申し上げたいのは、学寮管理運営規則参考案なるものでありますが、これは二項が骨子になっておりまして、一項というのは、学寮の管理運営責任者学生部長とすると、二項は、学生の入退寮決定は管理運営責任者が行なう、こういう二項から成り立っておるのであります。  で、聞くところによりますと、この学寮管理運営規則参考案なるものを各大学に押しつけてまいっておりまして、ちょうどいま学寮がほとんど古くなっておりまして、建てかわる時期になっておるんですが、この建てかえる条件として、この学寮管理運営規則参考案なるものを採用しない場合は寮を建てかえてやらないというような指導が行なわれておるやに聞いておるのであります。結局、いま申し上げた多くの大学における紛争の原因というのは、この参考案によって起こされたと言っても過言ではない、こう見ざるを得ないのであります。  そこで、私がお尋ねをいたしたいのは、この学寮管理運営規則参考案ですか、この参考案に沿った規則でなければ寮の新設は認めない、こういう方針で指導をなさったことがあるのかどうか。この点をまずお尋ねをしたいと思うんであります。
  64. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) 文部省におきまして、国立大学学生寮が各大学にあるわけでございますが、この寮の管理につきましては、学生大学生であるといったようなことから、大学教育的な見地からまあある程度の自治も認めておる。それが各大学においていろいろまばらにもなっておる。そういうことから、むしろ国立大学の協会のほうでも、何か大学としてそのような扱いが、教育内容としての問題なら別といたしまして、寮の管理運営についてあまりまちまちでもおかしいのではないかといったような考え方が大学側にもございました。また、これは寮の管理につきましては、管理責任者もさることながら、やはりちょっと学校教室とか実験室の使用と違いまして、一部の学生、しかも寮は教育的な施設ではございますが、それにしましても、そこで生活が行なわれるといったような観点から、一般の教室と違っている。また、一般の学生教育を受けるために支払う授業料というものと違って、この寮に居住する学生のいろいろな経費の問題、こういうようなことも関連いたしまして、文部省におきましてはかねてからその問題を——現在はもう廃止になってございませんが、かつて学徒厚生審議会というのがございました。そこで御審議いただいておりましたが、三十七年七月に御答申をいただきまして、それに基づきまして、先ほど来先生が御指摘になられました文部省大学局長と会計課長との連名の通達を国立大学に出しましたり、また御指摘の大学学生寮管理運営規則作成例というものをつくりまして、参考までに国立大学に配付いたしたわけでございます。  ただ、そういう前提で、お尋ねのこの作成例そのままでなければ文部省のほうで寮の改築等をしてやらないのか、あるいは新築をしないのかというお尋ねでございますが、これはいわゆる例でございまして、一条一条このとおりでなければ認めないというものではもちろんございません。しかしながら、以上申しましたような趣旨から、文部省にあります審議会の答申も尊重いたしますと同時に、大学関係者からも御要望のあった、あまりまちまちではない一つのあり方という御要望にも沿っておりますので、大体こうした趣旨のものがきめられるということが望ましいわけでございますし、また大学で、現在ある寮もそのとおり運営していただく必要がありますが、特にこれから新しく建てるとか改築するという場合は、よい例でございますのでそれによる、こういう関係になっておる次第でございます。
  65. 小野明

    小野明君 そうしますと、参考例というものを採用しなければ寮の新設等は認めない、こういう方針で指導したことはない、こうおっしゃるわけですか。
  66. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) この作成例そのまま——これは作成例、先生も御存じと思いますが、これは法律とか省令とかというものではございませんが、一条からずっと条文を追って法令のように書いておりますが、これはまあ学内での規則をつくる場合の例でございますので、条文で示しておりますが、要するに規則は、何らこの学寮の管理運営について学内ではっきりした規則を持っていないということは、これは寮の管理上も困りますので、全然そういう規則がないということは、どのようにその寮が管理運営されるかということもわかりませんから、これはまあ激しい例ですが、そういったようなことでありますると、学寮をつくりましても、それが大学でうまく管理運営されないであろうということは言えると思うのです。しかしながら、まあ全然この管理規則を持たないというようなところは最近ございませんが、まあいろいろ従来からの慣例で、特にはっきりしたものがないというような学校であれば、新しくつくるというときにはそれを契機にやはり規則等をつくってもらう必要があろうかと思います。  したがいまして、結論を申しますと、この作成例そのままを丸写しにする必要はこれはないと思います。しかしながら、全然こういう規則を持たないということはもちろんですが、規則を持っておっても、あまり他の大学と違って、その大学で、言うならばかってにやっておるといったような内容のものであると、これは望ましいことではなかろう、まあそういうことでございまして、この作成例を一カ条文に照らし合わしてみて、そのとおりにできていなければ、あるいはそのとおりの規則がつくられた後に、それでは寮を文部省のほうでつくってやろうといったような関係ではございません。また、そういうような意味のことを言ったこともないようでございます。
  67. 小野明

    小野明君 この例の中に、先ほど申し上げた学寮の管理運営責任者学生部長とする、こういう一項がございますか。あるとすれば、このことはいかなる法的根拠に基づくものであるか。
  68. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) 先生の御質問の管理運営責任者学生部長であるという条文はございません。ただ、学寮を管理運営いたします場合に、その管理運営に関していろんな、学校としての具体的な方策を審議したり、あるいはその円滑な運営をはかるために、学長の諮問機関として学寮委員会を学内に置くということは、その事例の内容にございます。で、その中にいろいろ学寮委員会委員には学生部長とか次長とかあるいは各学部教授等、その構成委員の例が述べられております。で、その中にも、それから委員会議長学生部長がなるというふうに書いております。したがいまして、管理運営責任者学生部長でなければならないというものではございません。運営委員会議長学生部長がなる、そういうことでございます。  で、管理運営責任者というのは、いろいろ大学で各部の部長をしたり、教養部長をしたり、あるいは分校の寮でございますと、学生部長は本部にしかおりませんので、分校の寮ですと分校主事がなったり、管理運営責任者はそのようにいろいろな方がなっておるわけでございます。
  69. 小野明

    小野明君 これが現実的には非常に強く各大学に作用いたしまして、そうしていわゆる従来の寮における学生の自治の慣行といったものを根底からくつがえした効果を発揮したわけですね。その結果、先ほど申し上げたような各大学で紛争が起こっておるのであります。まあ佐賀大学もその例に漏れないのであります。この寮の問題は、これはもう国有財産法でぴしゃっときまっておるわけです。そのほか、いろいろつけたりというのは、ただ、何といいますか、いわゆる従来の慣行というものを破壊するにしかすぎない。  ただ、おっしゃるように、例である、こういうふうに言えば話もわかるわけなんですが、そこで、いわゆる各大学には寮における自治の慣行というものがあるわけですね。これは大学の自治というものを非常にわれわれもこれは慎重を要する問題だと、このように考えなければならぬのですが、その中に、あるいは現実的な運用の中に、各大学における従来の慣行を尊重していく、こういう方針はお持ちになっておられるのかどうか。こう申し上げるのは、お茶の水の女子大で四十年に非常に大きな紛争が起こったのであります。その一週間ばかり全学ストというような紛争であったわけですが、このために、聞くところによると、新しい寮には現在も入り手がない。そういった寮管理の規則をつけられるよりも、私どもは自由を望むのだ、いまの従来の自治を守っていくんだというようなことで、総すかんをくらっておる。このお茶の水の紛争にいたしましても、従来の自治の慣行を尊重するということでこの紛争がおさまった、こういうふうに私は聞いておるのでありますが、この寮における従来の自治の慣行というものを尊重するということについて、どのようにお考えになっておるのか、お尋ねします。
  70. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) 御趣旨のように、これは私どものほうも、大学がそれぞれ学生に与えております自治のよい慣行は、これは意味もありますし、そのよい慣行はあくまでも育てていくべきであるというふうに考えております。それには異存はございません。  ただ、学校によりまして、またその学生によりまして、端的に申しまして、何といいますか、学寮の管理等について、いわゆる学生のいう自治と、大学の考える管理権、これがよく表面的には衝突すると申しますか、ということでトラブルが起こっておるようでございますが、私どもは、大学もそのように考えておりますが、よい慣行はなるべく育てていく。しかしながら、学生は寮の管理運営を本来自分らが運営するという権限を持っておるわけではないと思います。大学学生の将来社会人となる場合に備えての自治をいろいろ訓練させるといったような点で意義があるので、自治を許しておるのであって、学生が本来持っておる固有の権利ではないというふうに考えております。したがって、学生が、そうではなくて、あたかも天賦人権論でもあるかのごとく、学生固有の権利であるというふうに考えるところに大学の管理権を衝突する根本的な原因があるんではないか。まあこれは一般論でございますが、そのように考えますので、よい自治の慣行はあくまでも育てる必要がありますが、何でもかんでも学生がやるのがよいのである、もともとそうあるべきなんだという考え方には、遺憾ながら組みしがたいわけでございます。
  71. 小野明

    小野明君 私が申し上げておるのは、大学では学生といってももうおとなですね。まあ非常に良識ある成人と、こういうふうに見ていいと思うのです。こういった学生の諸君が、いわゆるあなたの言われるところの財産法にいう寮管理と、こういう問題と、実質的な寮の運用という問題を混同されておるように思うのです、私は。そこにこの紛争の起こってくる原因があるのです。そのようにしか私は考えられぬと思うのです。何も国有財産法に基づく寮のそういう本質的な管理権というものまでも学生が全部おれのものだと、こういうふうに思っているというふうには私は解さないのです。学生が寮を自主的に運営しておる、運用しておる、それまでも全部取り上げていく、ここに私は問題があるんではないか、こう考えるのであります。  そこで、そこまでお話が、答弁が来ておりますので、大学の自治というものは一体どういうものなのか、局長にお尋ねしておきます。
  72. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) これはまあ、私どものほうといたしましては、寄宿舎学生が居住する、その場合に、家主である大学、その家を借りる学生、いわゆる大家と借家人という関係ではないというふうに考えております。あくまでもこれは、学生は居住させますけれども、家主が家を家賃を取って他人に貸して、そこの貸した家をどのようにやっていこうと、これは借家人の自由であるといった関係ではないと思います。したがいまして、やはり寮費はもちろん取りますが、寮費はこれは家賃ではないというふうに考えられます。したがいまして、学生を寮に入れる、それから後には学生がすべて自治で運営していくのだということではなくて、やはり管理運営の責任は大学にある。寄宿舎からかりに火が出た、その場合は、学生だけが責任を負うものではなくて、やはり管理責任者としての大学当局者が責任を負わなければいけないと思います。で、それは一面大学とは全然無関係学生がかってにそこで火遊びして火事になったという場合でも、そういうことをしでかさしたという点において、管理者としての大学は責任を負わなければならぬ。そういう関係にあろうかと思います。したがいまして、要するに国有財産の関係で、ただ寮費だけ取っておれば、あと学生が自由なんだという関係ではないというふうに考えます。  それから、大学学生に与えます自治でございますが、これは学生生活における自律性の涵養とか、社会性の陶冶、あるいは学生相互の啓発等の教育的な意義、こういったようなことにかんがみて、大学学生に与えた自治である、このように考えております。
  73. 小野明

    小野明君 あなたの言われるのは、何か中教審なり国大協の出しておる話と少しも変わらぬわけですよ。あなたのような考え方で、従来の学寮処理に当たったところから、今日の学園紛争というものが起こってきたということが、いまのお話できわめて明確に出てきたと思うのです。  そこで、私は、先ほどこれは参考案であると、こういうふうにあなたは言われましたけれども、いまの御答弁を聞きまして、これでやはり従来の大学を全部規制していって、それが結局大学の紛争というものを起こしてきた、こういうふうに考えざるを得ない、見ざるを得ないのである。そこで、私は、そういったこの何といいますか、大学の自治が教授会にある、教える側にのみある、こういう考え方に多少、何といいますか、反省をしてもらわなければならぬのではないか。大学の自治というのは、教授会と学生の自治が相まって私は大学の自治というものが成り立つと一思うのです。ですから、寮の実質的な管理権というものは、当然これは総長にあるでしょうね。法律に基づいてあるでしょう。しかし、その運用という問題は、やはりこの従来の慣行も尊重しながら、大幅に学生の側にも認め、慣行を尊重していくという態度であってほしいと、こう思うわけです。この点はいかがですか。
  74. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) 先生もいまおっしゃっておられますように、その寮の最終の責任というのですか、大学にもその管理権はあるというふうに言っておられるようですが、私が答えておるのも同じだと思うのですけれども、どうもちょっと先生のおっしゃる意味がよく理解しかねるのですが、端的に申しますと、寮は下宿屋ではないと思うのです。ですから、学生が下宿屋でどのようなことをしようと、そこで火事を起こしても大学は責任はないと思います。しかし、寄宿舎で火事を起こした場合に、適正な管理がなされていなかったという点で、大学は責任をのがれることはできないと思います。全部学生の自治にまかせておったんだから、大学の責任はないとは言えないと思うのです。ですから、そこのところが、先生のおっしゃる、すべて学生の自治にまかせて、あまり大学は差し出がましいことを言うなとおっしゃる、そこのかね合いがむずかしいと思うのですが、ですから、学生も、それは高等学校以下とは違いまして、ある程度おとなにもなっていますが、しかし、やはりこれは未完成な、要するに大学に入ってりっぱな人間になるための教育を受けておるから、その関係においては、やはり学校の監督に服すべきものであろうと思います。それから、寮はやはり単なる下宿屋じゃなくて、国有財産上の問題は別としても、やはり教育的な施設で、単なる住居ではない、こういうようなことから、いろいろ先生のおっしゃることに、どうも私の答弁がはっきりしないかと思いますが、そういう関係にあろうかと思います。しかしながら、だからといって、大学子供に対すると同じように、小学校中学校生徒に対すると同じように、何でもかんでも大学がやるんだというようなことではなくて、できる限り教育的であるという範囲内で、大幅な自治を許すということは、これは当然されていいことだと思います。しかし、最近の学生が言っておりますことは、管理者としての責任までも、あたかも自分たちにその責任があり、権利があるかのごとく言っておる。そのあたりが問題ではないかというふうに考えております。
  75. 小野明

    小野明君 コンニャク問答みたいで、私もいやですがね。あなたのお話を聞いてみると、何ですかね、私は大学学術局としての御答弁をお願いしておるわけです。大学の自治を尊重しなければならぬ大学学術局としての、局長としての答弁を伺っておるわけですから、何も国大協で学生とけんかしておる大学側の答弁を聞いておるわけじゃないのですよ。大学の自治を尊重しなければならぬ局長としての御見解はいかがですかと。だから、私の言うのは、寮のいわゆる純粋の管理という問題ですね、それは国有財産法で明確である、これははっきりしておるんだと。学生だってそれを否定する者はないと思うんです。であれば、やはり従来の慣行を尊重していくほうが、大学の自治を尊重していくほうがこれだけの紛争を起こさないでも済むんではないか。ですから、今後もそういった大学の自治を守らなければならぬ、そういった立場からの大学学術局長としての答弁をお願いしておるわけです。
  76. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) 私は答弁にあたりましてメモを読んだりしておりますが、別に国大協の書かれたそのままをお伝えしておるわけではございませんで、文部省としての考え方を申しておるつもりでございますので、その点御了承いただきたいと思います。  どうも先生のおっしゃることが抽象的でございまして、まことに失礼ですが、国有財産の管理と大幅な大学の自治とおっしゃる。私の言っているのもあまり違わないと思うんですが、具体的に、たとえば佐賀大学学生が、佐賀大学の寮の運営は全部学生がやるんだ、入寮者にしろ退寮者にしろすべてそれは学生が全部やっていくんだと。それから、いろいろ大学当局学生側との経費の負担区分についても、自分からいままでやってきておったようなのがよいんだという前提に立ってやっておるようでございますが、私がお答えしておるのも先生の御質問にお答えしておるつもりですが、私自身も何か多少すれ違っておるような感じもいたしますので、恐縮ですが、具体的にこれはどうだというふうにお示しいただきますと私も答えよいかと思うんでございますが、まことに恐縮ですが、具体的に、こうしておることは大学にまかせるべきで、大学がすべきでなくて学生にやらせるべきだとか、そのように御質問いただければお答えもしやすいと思いますが、恐縮ですが……。
  77. 小野明

    小野明君 少しも食い違ってはおらぬですよ。あなたの考え方は明確にわかるわけですよ、私には。それで、佐賀大学における従来の慣行というのは、御承知のとおり、あなたも知っておるとおり、それより以前の四十年にたくさん紛争のありました大学においても大体同様なんですよ。従来は佐賀大学においても、どの大学においてもそうでしょうが、寮の火災の責任とか、あるいは寮の建物の維持とか、そういう問題まで学生側にあるなんという見解はとっておらぬと思う。だから、たとえば佐賀大学の寮をあなたが例にとったから、それを例に引けば、従来やっておった佐賀大学の寮管理の問題を——私は管理と言いたくない、運用と言いたいんですが、この運用の問題を一挙に大学側が全部引き上げてしまうと、そういうふうにあなたのほうで指導なさった、それがこの紛争の原因である。だから、そこではやはりそういったように一挙に何もかも従来の慣行を無視して大学側が取り上げると、こういうふうにあなたが指導するのではなくて、従来の慣行を尊重する、いわば大学の自治を尊重するというたてまえから、たとえば教授会あるいは学生側とが相寄って両方から委員を出して話し合っていく、こういった紛争を避ける方法というものが考えられなかっただろうか、こういうように私は言っておるし、そのことが大学の自治を尊重することになるのではないか。私はあなたと見解を異にして、教える側だけに、教授会のほうばかりに大学の自治があるのだと、こういうふうには考えておらないのです。やっぱり教える者と教えられる者とが、教育の場ですから、一体になって大学の自治を守っていくのでなければ大学の自治というものは成立はしない。事は大学の問題ですから、私は慎重にものを言っておるわけですよ。むしろ大学側に非常に強力なあなたが指導をなさる、そのこと自体が紛争を起こして、あるいは警察権力が入る、あるいは他の権力が入るなど大学の自治を破壊をさしておる、こういうことを私は申し上げたいわけなんです。
  78. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) 私が事例を出してお答えさしていただきたいと思いますが、御趣旨でなければお許しいただきたいと思いますが、佐賀大学では、たとえば光熱水料費、これは学生が自分の部屋でいろいろ使う——いわゆる寄宿舎教育施設ではございますが、私生活を行なう住居でございますので、そういう観点で、学生が当然負担すべき光熱水料費、これを従来はあいまいで、すべて学校が持つというような関係にあったようでございます。それではよろしくないので、やはり学生が当然持たなければならない光熱水料費については学生が支払うべきであるという考え方に大学側が立った。これに対して学生は、いや、それはいけないのだ、いままでどおり寮費百円なり三百円なりでよいのだ、それがいままでの慣行なんだということでがんばる。それを従来の慣行、従来の自治、それと今度は違っておるから、まあ争いを起こすまいとすれば、やはりいままでどおりにわけのわからない金までも大学が払うというようなことになろうかと思いますが、私はやはりその大学としては、親から学生を預かって、一人前の人間にすべく教育をしておる立場で、私は学生大学当局者は対等ではない。特にそういう関係においては大学がはっきりして、生徒が間違っておれば、おまえの考えは間違っておるのだということを教え、へたに妥協しないほうが、むしろよい自治がつくられ、よい慣行が長続きをしていくんではないか。もちろん、一時妥協することによってトラブルは避けられるかもしれませんが、それはむしろ将来大きい禍根を残こすので、一時のトラブルを避けるためにあまり筋の通らないことをするのはいかがかというふうに考えます。  また、一列をあげますと、佐賀大学では、学生の入寮にあたって、先ほど申しました寮の運営委員会、そこで寮制を決定するようでございますが、佐賀大学学生は、従来は自分らでかってに入寮者をきめておったのだ。だから、従来どおりにやらすべきであるという主張をして、そこで問題を起こしておるというふうに承知いたしておりますが、これも従来どおりにやらせば、もちろんその面では争いがないかもしれませんが、やはり教育的な施設でありますので、大学が責任を持って入寮者を選考すべきである。佐賀大学学生がそれに対しまして、自分らがかってに入寮願書をつくって大学側が行なうことに立ち向かっておるという事態は、学生としては反省をしてもらいたい、このように私は考えております。
  79. 鈴木力

    鈴木力君 ちょっと関連。いまの局長の答弁で、どうも私は気にかかることが一つあるので、それをはっきりしておきたいのです。いろいろと管理権が大学にあるとか、そんなことはもう議論しなくても、国立ですから、国のものだし、大学が責任を持つことはあたりまえな話です。私が聞きたいのは、大学教育という立場から学生を一体学校がどう見るのが正しいかということなんです。これは、われわれが戦前に学校に入って寄宿舎に入っておったときに、やっぱり寮の運営委員会というものをつくって、ある程度はそういうことをまかされた。われわれはそういう生活をしてきておる。その寮の運営委員会学生がつくってやっていくことを、学生がかってにやるのだという言い方でものをきめつけてしまう、大学生くらいの年になって、教育を受けておるあの青年たちを、何でも大学が直接やらなければ、学生がやることはかってなんだという言い方を局長がここで答えられるということにすれば、これは私は、いままで大学自治でいろいろ口では言うけれども、たいへんな問題だと思うのです。学生がやっておることがかってなことだということにはならないはずです。これはやっている現象面については見解が違うことがあります。しかし、学生が寮の運営委員会をやっておるのはかってだから、運営委員会から取り上げなければいけない。まるで幼稚園の子供たちにまかしてはあぶないと。さっきは火事になる火事になるという話をしておったけれども、まさか放火犯人が学生だというような言い方、そういう前提で学生というものを見ておるということで、それでいまの佐賀大学なら佐賀大学、どこの大学でも同じだけれども大学の問題を局長が考えておるということにすれば、これは私はたいへんな問題だと思うのですが、その辺、いまのことばはことばじりであればよいと思うのです。そうでなしに信念であるということであれば、またあとで議論をしなければなりませんけれども、どっちかはっきりしておきたいと思います。
  80. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) 私も、どうもことばがあまり懇切丁寧なことばでしゃべっていなかったかと思いますので、もしそのかってということばがいかにも悪い意味でとられましたら真意でございませんので、お許しいただきたいと思いますが、まあ大学で規則をつくって、入寮生は大学の規則に従って大学当局へ入寮の許可申請をしなさいという規則があるといたします。そういうものを認めないで、学生側のほうで入寮規則を自分らでつくって、自分らのほうへ申し込みなさい、それによって選考するというような事例があったとすれば、それをかってにという意味で私は言ったと思いますので、もしその先生の受け取られたかってなということばにいま私が言ったことと違ったような意味に取られたとしますれば、訂正さしていただきたいと思います。
  81. 鈴木力

    鈴木力君 ますますぐあいが悪く聞こえてきたのですがね。いままでは佐賀大学学生運営規則をつくってやってきておる。ところが、学校が規則をつくったから、その運営規則でやるのはかってだ、こうなってくると、私はぐあいが悪いのでして、いままで学校運営規則でやっていたものを新しく学生運営規則をつくってやるからかってだというなら別です。そういうことがすべて学校当局が何かやり出すことに学生の行動なり意見なりが食い違ったものはすべてかってだという、そういう言い方でいまの事例を引かれるとすれば、私は承知できないのです。
  82. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) 私は、大学がいろいろ学内問題について大学としての規則をつくっておる、その場合には、その規則をつくる前提としていろいろ学生意見を聞くなり、あるいは教授会で議するなり、手続はいろいろあろうかと思いますが、少なくとも大学としてきめた規則、これに伴わないで学生だけでそれとは別の規則を持つという関係学生がつくるとすれば、これは私はかってなことを学生がやっておるというふうに解さざるを得ないのではないか、こういうふうに考えております。
  83. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  84. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記を始めて。
  85. 小野明

    小野明君 局長、あなたは、いまお聞きしておりますと、そういったお考えで佐賀大学学長なり教授会を指導なさってきたわけですか。
  86. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) 私も大学局長になりましてまだ一カ月ばかりでございますので、いま言ったようなことで指導をするということは私個人としてはまだいたしておりません。ただ、いままで文部省がとってきた態度を私の置かれた現在のポストでお答えしておったのが大部分でございます。  ただ一点、いつか小野先生から、今回の紛争について大学当局も、学生の気持ちもくんで、しかるべく善処するように大学局長として大学当局に話しをしてやったらどうだという御忠告を先生からいただきました。その限りにおきましては、さっそく大学へ連絡をいたしまして、学長学生部長も、いろいろ学生との間に紛争を起こしておりますので上京することができないということで、事務局長が上京してまいりました。事務局長にはいろいろ事情をただしました。具体的にこうしろああしろという指導はいたしませんが、事務局長に事情をただしました。事務局長としては、学長以下大学として、この問題は学内問題だから大学で解決をしたいから、しばらく大学にまかしておいてもらいたいという答弁でございました。ですから、先ほど来申し上げましたのは、そういうことで直接私自身が佐賀大学をまだ指導いたしてはおりません。
  87. 小野明

    小野明君 時間がないようですから。どうもあなたの考えで各大学をみな同じように全部指導しますと、とんでもないことになりそうな気がするわけですよ。多少の犠牲があっても、この際あなたは一挙に是正するというような勇ましい考え方をお持ちのようですが、それでは私は、大学のそれぞれ特色がある自治というものは全部破壊されてしまう、非常にファッショ的な大学管理、大学運営というものがやられるのではないかということを心配をするわけです。それは佐賀大の田中学長自身があなたに、しばらく干渉をしないでもらいたい、こういうお話があったというのですが、私はそれが正しいと思うんですよ。田中学長自身もどう言っておるかといいますと、学内における教授教授との対話が足りなかった、あるいは教授学生との対話が足りなかった、学生相互の間にも対話が足りなかった、こういういわば教育者としての述懐をされておるぐらいです。学長というのは、総長も同じでありましょうが、それぞれの大学をだれからも干渉を受けずに自治を守りながら特色を伸ばしていきたいというのが念願であろうか思うんですがね。それで、あなたのように、多少の犠牲を払っても、紛争があっても、全部やってしまうんだ。管理権も全部従来の慣行を無視して取り上げてしまうんだ、こういうふうなお考えだと、私は非常に危険だ、こう言わざるを得ない。  それで、この点を、きょうは時間もないようですから、次期に引き続いて再度私は取り上げてもう少し究明をしてまいりたいと思うのですが、最後に私が申し上げたそういった意見というものをあなたはどういうふうにお考えですか。各大学を全部ばたばたとあなたの考えのようにやってしまう、従来の慣行も何もない、これは全部やるんだ、多少の紛争があってもこれは問題じゃない、筋を正すんだというふうな思想でおやりになると、これは大学の自治も何にもない。これはもうファッショの、どこかこの辺にあるような大学学長みたいな考え方なんですよ。私はたいへん危険だと思うのですがね。最後にこの点をお尋ねしておきます。
  88. 宮地茂

    説明員(宮地茂君) どうも私の舌足らずで、十分意を御理解いただけなかったかと思いますが、何でもかんでもばたばたとやれといったような気持ちは毛頭ございませんで、文部省としましては、良識ある学長その他大学当局を信頼いたしておりますので、あまりこうしろああしろというようなことはほとんどいたしておりません。大学の良識ある判断を待つという態度でやっておりますので、特に佐賀大学の場合も、学長以下大学自身が従来のいろいろないきさつも一番よく知っておるわけですから、学内で一刻も早く問題解決に努力されることを期待いたしております。
  89. 小野明

    小野明君 最後はややまともな——最後だけだ、まともな御答弁というのは。  それで、私が最後に要望申し上げたいのは、やはり各大学にはそれぞれの慣習がある。大学のよりよい自治を目ざして努力をされておるんです。ですから、そういう大学の自治というものについてはっきりした御答弁がない。あなたの御見解がないわけです。そういった問題を含めて、大学の自治をやはりあなたのほうで干渉するんではなくて、大学の自治というものはやはり教授の自治、学生の自治、こういったものと合わさって成り立つものだという観点から、私はよりよい大学の自治を育てるように、あなたは大学局長ですから、次回やるということで待っておっても、業務はすぐ始まっておるわけですから、ひとつよりよい大学の自治を育てるということで御配慮をいただくことをお願いしまして、要望申し上げて、本日のところ質問を終わっておきます。
  90. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 他に御発言がなければ、本件に対する本日の質疑はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十四分散会