運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-09-29 第56回国会 参議院 農林水産委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年九月二十九日(金曜日)    午前十時三十五分開会     —————————————    委員の異動  九月四日     辞任         補欠選任      鶴園 哲夫君     中村 英男君  九月五日     辞任         補欠選任      中村 英男君     鶴園 哲夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     理 事                 任田 新治君                 山崎  斉君                 川村 清一君                 中村 波男君     委 員                 青田源太郎君                 岡村文四郎君                 櫻井 志郎君                 園田 清充君                 高橋雄之助君                 八木 一郎君                 武内 五郎君                 達田 龍彦君                 鶴園 哲夫君                 村田 秀三君                 矢山 有作君                 渡辺 勘吉君                 北條 雋八君    国務大臣        農 林 大 臣  倉石 忠雄君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君    説明員        農林政務次官   久保 勘一君        農林大臣官房長  檜垣徳太郎君        農林省農政局長  森本  修君        農林省農地局長  和田 正明君        農林省農地局管        理部長      中野 和仁君        農林省畜産局衛        生課長      信藤 謙藏君        農林省園芸局長  八塚 陽介君        食糧庁長官    大口 駿一君        食糧庁業務第二        部長       荒勝  巖君        水産庁長官    久宗  高君        通商産業省鉱山        局石油計画課長  平松 守彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告に関する件 ○農林水産政策に関する調査  (長崎干拓事業等に関する件)  (イルカ対策に関する件)  (干ばつ対策に関する件)  (甘味資源に関する件)  (北東北におけるてん菜に関する決議の件)  (沿岸漁業の振興に関する決議の件)  (イモ類でん粉価格に関する件)  (農業構造政策基本方針に関する件)     —————————————   〔理事山崎斉委員長席に着く〕
  2. 山崎斉

    理事山崎斉君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  派遣委員報告に関する件を議題といたします。  先般、福岡長崎両県及び長野・山梨両県に委員を派遣し、農林水産業実情について調査いたしましたが、本件の調査報告については、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山崎斉

    理事山崎斉君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 山崎斉

    理事山崎斉君) 農林水産政策に関する調査として、長崎干拓事業等に関する件を議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言願います。
  5. 達田龍彦

    達田龍彦君 大長崎干拓の問題につきまして若干御質問を申し上げておきたいと思うのであります。  それは、先般、野知委員長以下五名が八月の二十七日から九月の二日まで長崎県並びに福岡県の農林水産業実情調査に参ったのでありますが、その際、ただいま陳情がございました大長崎干拓問題について、長崎県をはじめ関係方々からいろいろ陳情やらあるいは御意見を承ってまいりましたし、また、調査団はつぶさに現地を見てまいったのであります。その結果、私どもがいままで認識しておった認識とは違った問題も出てまいっておりますし、さらに、また、干拓行政というものは一体どうなければならぬかという基本的な問題等もその中からいろいろ見受けることができたのであります。当該地元やあるいは長崎県においては、関係皆さんが、長崎干拓というのは、四十年から今日まで農林省工事予算をつけながら、その予算が今日思うように使われておらない、不十分であるという実情の上に立って、将来これはどうなるのであるかという非常な危惧と不安を持っているのも現状事実であるのであります。   〔理事山崎斉君退席、理事任田新治君着席〕 こういう実情の中で、一体この問題に対してどう対処していくのか、この段階における農林省の御見解を私はまず承らなければならぬと思っておるのでありますけれども、過般、私が三月の三十日にこの問題を当委員会でとり上げましたそのときに、農地局長は、話し合い前提として反対する漁業者皆さん納得をいただくよう十分なる努力をいたしますということを当委員会態度として表明をいたしておるのでありますけれども一体、その後、この長崎干拓に対する実情はどういうふうに進展をいたしておるのか、まず実情をお伺いをいたしたいと思うのであります。
  6. 和田正明

    説明員和田正明君) 三月三十日の当委員会達田委員からの御質問お答えをいたしました際に、それに関連をいたしまして、達田さんから、地元推進協議会というのがあるけれども、単に推進ということだけの側がそういう組織として集まるのではなくて、将来の生活不安を含めてやや県との間が感情的になっておる漁民関係者をも一丸として、その人たち干拓後の生活のかてその他の事後対策も含めて話し合うような機構にすることが適当なのではないかという御提案がございまして、まことにごもっともな御意見だと私どもも考えましたので、現地にございます農林省出先等を通じて、県庁のほうに、そういうふうな考え方で今後対処するようにということで指導をいたしてまいりましたのでございます。  ただ、当時も私からお答えを申し上げましたように、県庁と一部反対漁民との間に多分に感情的な対立が当時ありましたことも事実でございまして、その後も、県庁側から、たとえば関係者を戸別に訪問をいたしまして、この干拓地域開発として持っております意義、あるいは県庁干拓後の漁業者に対し考えておりますいろいろな考え方等についてるると説明を繰り返す等、県庁としては相当の努力をいたしてまいったようでございます。なお残念ながら一部に反対者がございまする等のこともありまして、一時、県知事は、その努力を打ち切って、法律制度に基づきまして強硬手段をもってでもこの工事を進めたいという考え方に傾いたやの時期があったように見受けられるわけであります。しかし、その連絡を受けまして、私としてはやはりもう少し努力をすべき状態であると考えましたので、そういう県の考え方を一応含めまして、その後も引き続き努力を継続をさせておるわけでございますが、今月初めに佐藤知事が上京いたしました際に、私のもとへも参りまして、知事としては、やはり反対をしておるといえども漁業者県民であり、また、あの地域地域開発としてこの干拓事業を進めることは県行政としても大きな行政であるという立場から、これは知事のお立場としては当然のことかと思いますが、適当な機会に当然自分としては漁業者立場に立って対農林省との間に入って、補償条件なり干拓完了後の漁民生活あり方等について十分の配慮をした上で、漁業者立場に立って農林省との話し合いの調整をするつもりであるので、よろしく事業推進について協力を得たいという申し出もあり、その後は、副知事あるいは担当部長等を通じまして、非常にひんぱんにその後の県庁側努力なり地元経過なりが繰り返し私どものところに報告をされてまいっております。ということは、従来、県庁が、前回お答えをいたしましたように、やや一人だけで走っておったきらいがありました態度がすっかり変わりまして、とにかく説得努力を続けながら国営事業としての農林省との連絡を密接にとりつつこの仕事を進めていきたいという考え方をとにかく明確に打ち出してまいりました事情もございますので、私どもとしては、個別に県庁を通しての説得工作を引き続き続けてもらう一方、個別の農協との間にそれぞれの条件をきめていくということも困難な事情もございますので、現在、今後の補償をいたします場合の条件、あるいは干拓に対します根本的な意見をも含めまして、関係者の間から交渉委員等を選んでもらいまして、そういう交渉の筋を一本化をして話を詰めてまいりたいというふうに考えておりまして、県庁も現在せっかく関係者に対してそういう交渉の相手となるような母体組織化について努力をいたしておられる段階でございます。  私どもといたしましても、すでに着工を決意いたして以来二年以上の期間もたっておることでございますので、それから地域開発的視野に立った事業でもございますので、ごく一部の反対者がありますが、前回農林大臣からお答えをいたしましたとおり、今後も引き続き説得努力をいたしながら、できるだけ早い機会現実着工ができるように進めてまいりたい。また、そのように県側考え方も以前の高圧的な立場とは変わってまいりましたので、そういう意味では近いうちに見通しを立て得るのではないかというふうに考えておりますので、達田委員地元の御出身でございますし、ぜひ早期着工ができますように御協力をお願いをいたしたいというふうに考えております。
  7. 達田龍彦

    達田龍彦君 私は、いまの局長答弁では、現状認識がきわめて甘いという気がいたすのであります。あとで具体的にお聞きいたしたいと思うのでありますけれども。  そこで、いま御説明になられました、また、前回委員会で私が提案をいたしておきました推進協議会の設置について、一体現状ではどう進んでおるのか、それをもう少し具体的に御説明願いたいと思うのであります。
  8. 和田正明

    説明員和田正明君) 達田委員があのとき御提案になりましたような形では、まだ現地にそういう組織が残念ながらできあがっておりません。ただ、先ほど申し上げましたように、そういう意味も含めて、関係者の間から、今後話し合いを進めていくために、また、その話し合いを一本のルートを通してしてまいりますために、関係者代表者を出した組織づくりということをまず当面の課題として現に指導指示をいたしており、県もその方向努力をいたしておりますので、おっしゃるとおりのものではないかもしれませんが、御趣旨に沿うた方向で今後の話し合いをまとめていく組織は近くできるものというふうに確信をいたしておるのであります。
  9. 達田龍彦

    達田龍彦君 それでは、さらにお尋ねをいたしておきますけれども、すでに工事着工予算がつけられまして三カ年の経過をいたしております。なぜできないのかという質問に答えて、この前、局長は、沿岸漁業者反対があるために実はまだ着工できないという説明をいたしております。当時の御説明によると、沿岸十二組合の中で三組合反対であって、あと九つ組合条件つき賛成であるということを言っておったのでありましたけれども現状沿岸漁業者態度一体どうなのか、その点の御説明を願いたいと思うのであります。
  10. 和田正明

    説明員和田正明君) きょうまで着工がおくれております理由の一つとして、ただいまお話のございましたように、一部の組合反対と、それから県庁態度と申しますか、県と漁民との間の感情の対立という、二つの点を申し上げたわけであります。  前段の御質問のときにお答えしましたように、あとのほうの部分につきましては、ともかく、県政の問題として、また、県民である漁民立場に立って、農林省との間の話を詰めたいということを知事自身が私のところに参りまして言明をいたしまして、その後漁民に対して再三知事が会見の申し入れをいたしておるようでございますが、漁民側はかたくなにその会合を拒否しているという実情のようでございます。私としては、県側が少なくとも漁民側立場に立ってものを考えたい、漁民の目から見ればなお必ずしも満足ではないのかもしれませんが、少なくともそういう気持ちに変わってまいりましたという意味において、前回申し上げました二つの問題のうちの県側態度については、従来より好転していると思っております。引き続いて県知事を督促しまして、漁民側の間の折衝、説得機会を得られるように努力を続けております。  九組合条件つき賛成であり、三組合反対であるというふうに申し上げましたが、現状におきましても、質的にはそういう事情にいろいろいきさつはございますが、変化があるというふうには基本的には判断をいたしておりません。ただ、反対の三組合の中にも、個別に当たればいろいろと数多くの意見に分かれているというような現状かと思います。
  11. 達田龍彦

    達田龍彦君 もう少しはっきり御答弁をいただかないと、聞き取れない個所が非常に多いので困っておりますが、ひとつはっきり御答弁いただきたいと思います。  今回私ども調査に参りまして、実は現地で今回の干拓に対して反対する漁業者方々から陳情書をいただきまして、この陳情書あと報告書の中で添付をいたしておりますけれども沿岸漁業十二組合長崎干拓に対して反対という立場での陳情であります。これは、先般、農林省に対しても、そういう陳情があったはずであります。また、今回は、ただいま陳情もございましたように、長崎県の漁業者母体でありますところの県漁連干拓に対して反対という立場表明をいたしておるのであります。いま農地局長説明では、本質的には質的な問題としては全然従来と変化をしていないという説明であると同時に、長崎県の態度はきわめて好転をしておるという判断に立っての御説明でありますけれども、だとするならば、なぜ漁業者の三組合から沿岸すべての漁業者反対するようになるのか、漁連が加えてこの干拓に対して反対という立場をとるのか、この点は非常に矛盾があると思うのであります。県の立場が非常に前向きになり、そうして漁民立場に立って問題を解決するという姿勢に変わり、話し合いというものを前提にして納得のいくやり方をやるという方向に立つ限り、問題は好転しなければならぬと思う。ところが、今日の実情は、私ども陳情を受けた限りにおいては、あるいは現地実情を見る限りにおいては、漁民反対はいま申し上げたように沿岸関係漁業者の全部にわたり、しかも長崎県全部の漁業者の意思として反対立場をきめるという段階に至ったということは、一体どういうふうに理解をするのか、もう少し具体的に御説明をいただきたいのであります。
  12. 和田正明

    説明員和田正明君) 前回、三月三十一日の委員会の際に、この問題に関連をして御質問をなさいました。どなたでございましたかよく記憶がございませんが、陳情を受けたりいたします場合にはその質の中身までよく見きわめよという御趣旨もございましたのですが、私どもとしてはいろいろ陳情にも何回か直接皆さんにお会いして伺っておりますが、いろいろ話をとっくり時間をかけて伺いましても、お話の中にはいろいろなニュアンスがございまして、絶対反対というふうに表面に出てきておるという形どおりではないという御趣旨に受け取っておるわけでございます。そこで、先ほど来、質的には従前と変化がないというふうにお答えを申し上げたのでございます。
  13. 達田龍彦

    達田龍彦君 質的には変化がない、具体的には絶対反対という立場表明されておるけれどもそれはそうではない、それはどういうところにそういう確信があってそういう判断をされているのか、そこをもう少し具体的に御説明願いたいと思うのであります。
  14. 和田正明

    説明員和田正明君) 私、現地には参りませんが、非常にたびたび漁業関係者が東京へ参りました機会に、相当長時間をさきまして前後三回か四回皆さんにお会いをいたしておりますが、そういうお話し合いの席で個別に皆さんのお顔を見ながらそれぞれのお話を伺っておりますと、先ほどから申し上げたように、質的に変化がないと判断できる自信があるわけでございます。
  15. 達田龍彦

    達田龍彦君 あなたはいつお医者になったのか知りませんが、顔色でもって問題のいい悪いを判断するというのは、まことに非科学的な、(笑声)しかも、そういう衝にある方の国会答弁としてはきわめて適当でない判断のしかただと私は考えるのであります。私は、この問題に対しては農林省見解いわゆる認識のしかたというものはきわめて甘い、現状認識が甘いがゆえに問題がなかなか進展もしないという原因をつくっているような一面もあると考えざるを得ないのであります。  そこで、いまの農林省見解では全然問題にならないと思うのでありますけれども、私の判断では、先ほど局長が触れましたように、従来までは三つの組合がきわめて強い反対立場をとっておったことはそのとおりであります。ところが、最近、九つ組合がそれに同調をしたという見方が正しいかどうかは別にいたしまして、とにかく干拓に対してはもう補償の問題ではない、反対なんだ、こういう立場に変わったこともこれまた事実であります。なぜそういうように変わったかというと、先ほど局長が若干説明しましたように、長崎県が公有水面埋立法に基づいて強権的に強制的に埋め立てを強行しようという意図のもとに、各市町村議会に対して議会決議をとるという挙に出たため、問答無用方式のこのやり方に対する反発として沿岸漁業者反対という立場を強くとると同時に、県のこういう態度に対して反発を強く示しておるのであります。私は、先般の委員会でも、話し合い前提にして問題の解決をはかれ、一人一人の納得を得るまで努力をせよということを強く委員会でも申し上げたわけでありますが、そういう公有水面埋め立てについて地方議会決議をとるというこの方針に対して、これは単なる長崎県の判断でやったわけではなくて、農林省がこれを認めたから長崎県がそういう挙に出たのじゃないかと思いますが、この点のいきさつはどうなっておりますか。
  16. 和田正明

    説明員和田正明君) 干拓でございますから、公有水面埋め立てという手続をしなければなりませんが、その手続をいたしますために知事許可を必要といたします。知事許可いたします前には、当然関係町村意見を聞いた上で許可手続をしなければなりませんという意味におきまして、いずれ円満に漁民との話し合いがまとまり、現実着工段階にまいりますれば、農林省——国営でございますから、県知事農林省に対して公有水面埋め立て免許申請を出す、そのためには関係町村の議決を経て意見を聞くという手続が要るわけでございますから、関係町村意見を徴する手続は、いずれはしなければならない手続であります。私どものほうとしては、国営として採択をし、また、地元地域総合開発という立場からの強い要望もあって採択に踏み切りました以上、当然に公有水面埋め立て免許を受ける手続は書面上いたしておりますから、それで、将来であれ、いつの時期かに、必要な手続県知事がとったということであろうと思います。  ただ、私は、先ほども申し上げましたように、説得にはできるだけあらゆる手を尽くすべきものは尽くすという考え方はいまも変えておりませんが、ただ、尽くし得る手を尽くしてもなおかつごく限られた一部の人が反対であるということであれば、それは諸種の公共事業の実施の場合と同様に法的な手続をとる、そういう段階も当然予想しなければならぬというふうには思っておりますが、現段階におきましては、そういう強硬手段県知事がとるということについては差しとめをいたして、現段階においてもなお引き続き十分説得努力しているという、そういう実情でございます。
  17. 達田龍彦

    達田龍彦君 これはどうなんですか、いまの埋立法に関するところの埋め立て決議の問題は、農林省でとめたわけですか、それとも、農林省がそういうことを長崎県から要請があってそれを認めてやらせたのですか、その辺のいきさつをもう少し詳しく知りたいのですが。
  18. 和田正明

    説明員和田正明君) 埋め立て免許申請は、いずれ国営事業として実施いたしますから、県庁では当然手続はいたしております。その手続に伴う免許をいたしますまでの過程で必要な手続をいつ県庁がとるかということは、別に農林省がそうしてくれと言ったとかなんとかということとは関係なしに、県内の問題であるというふうに私は思っております。
  19. 達田龍彦

    達田龍彦君 あなたの説明では、先ほどから、問題はなかなかうまく進展をしている、好転をしているという判断にお立ちのようであります。ところが、過般の長崎県の県議会におきまして、この問題がたいへん大きな問題として提起をされておるのであります。当時、長崎県知事は、この問題に対して将来の見通しについて態度表明いたしておりますけれども、将来の見通し立たずという意味での回答を県議会の中で行なっておるのであります。あなたの判断と、県知事それ自体が県議会の中で表明している態度というのは、まさに百八十度の違いがあるのであります。また、先ほど私が指摘をいたしましたように、三月の段階と今日の段階では、質的にも量的にも内容的にも反対立場が非常に強化をされ、拡大をされているという事実があるのであります。にもかかわらず、なおかつ、事態好転をしたとして何らかの形で解決見通しを立てておるようでありますけれども、こういう事態は、先ほど私が指摘いたしておりますように、あまりにも問題を表面的に見過ぎておるのではないか、もう少し実情というものを深く調査をして、その上に立った干拓の諸施策というものを考えるべきではないかと思うのでありますけれども、こういう状態に対して再度農地局長の御判断を聞きたいのであります。
  20. 和田正明

    説明員和田正明君) 県議会知事見通しがないという答弁をしたというお話でございますが、それがいつの時期であるか、私は全く承知をいたしておりませんが、先ほど申し上げましたように、少なくとも知事自分で上京いたしまして、私に対して、地域開発立場からこの事業早期着工をしてほしい、したがって、県民である漁民に対しては、当然にその人たち立場に立って、農林省との間に自分が調整役に立ちたいということを知事自身が私に申しておるということは、やはりなみなみならぬ決意と将来に対する見通しを持って知事としては私にそういうことを申されたのだと思います。また、その後も、先ほどもちょっと触れましたが、県の関係責任者からはそのつど現地の模様なりその後の状況なりを逐一報告を受けております。いろいろと経過の中には千変万化があるかとは思いますが、私としては、これは見通しも立ち得るし、また、国営事業として着工を決意し地元開発のために県知事以下関係市町村長があげて早期着工推進してほしいというふうにしばしば私のところにも来ております実情から考えまして、また、反対と言っております漁民ともしばしばお会いをいたしました経過等から考えまして、私の見通しとしては、また、県庁見通しも同様のように思いますが、国営事業とはいいながら、こういうことは国と県とが心を合わせて一体となって処理すべき事項だと思いますが、そういう意味においては、最近における県庁連絡はきわめて円滑でもございますので、私としては確信を持って近い機会解決して着工ができるし、また、そうあらねばならないと考えております。
  21. 達田龍彦

    達田龍彦君 ほんとうにそういう判断をし、自信を持っておられるのかどうか、私も非常に疑問でありますけれども、まあこの問題に対して立場上そういう態度をおとりにならなければしょうがないという立場答弁されているのかどうか、非常にこれまた私は疑問を持つのであります。それで、先ほど来、長崎県の県知事のこの問題に対する姿勢態度に言及をされておりますけれども長崎県知事のいまとっておる態度、特に漁民反発をしておりますのは、官僚的な権力的な長崎県知事姿勢態度に強い反発をしておる面があるのでありますけれども一体農林省は、こういう知事態度に対して、もう少しきちんとした指導をする気持ちがあるのかどうか、また、指導した経過があるのかどうか、ひとつ御説明願いたいと思います。
  22. 和田正明

    説明員和田正明君) 知事は、御承知のように、現在、民選の知事でもございまして、それぞれの四十六の都道府県を通じてそれぞれ強い個性をお持ちだろうと思いますし、りっぱな方でございますので、その方の性格にまで触れて私ごとき若造が指導するというようなことはできませんが、先ほど来申し上げておりますように、従来、約二年にわたりまして、県庁側農林省との間に十分意思の疏通を欠いていたという遺憾な点がありましたことは前回お答えを申し上げたのでございますが、少なくとも最近におきます県庁側考え方は、すでに私ども一体となってものごとに処そうということが、単に口先だけではなしに、実行の面においてもいろいろあらわれておりますので、私は、国と県とが一体になって処理するという体制ができました現段階においては、先ほど来申し上げたような自信見通しを持っておるということでございます。
  23. 達田龍彦

    達田龍彦君 非常に自信見通しをお持ちのようでありますけれども、もしこの問題が最終的に話し合いがまとまらない、そういう段階になりますと、農地局長の話では、法の裏づけをもって強権の発動をせざるを得ない、こういう事態もあり得るという意味の発言があっておりますけれども、こういう事態が来ることを私は非常に憂慮をいたすのでありますけれども、そういう事態というのは最終的にいつごろ判断をして発動しようというお考えなのか、お伺いをしておきたいと思います。
  24. 和田正明

    説明員和田正明君) まあ法律手続としては方法がありますということを申し上げたのでございますが、現段階で、それは何月何日ごろにはそういう判断をしますよというふうなことを予測的に申し上げることはちょっとできかねますが、私としても伝家の宝刀をそうやたらと抜くつもりはありませんから、とにかく説得努力を国なり県なりの立場としてもはやし尽くしたといつ判断し得るかということであろうかと思います。手段を尽くして説得して、なおかつごく限られた少数の人が反対であるということであるならば、私は法手続で処理することもあり得るというふうに申し上げたわけでございますが、現段階はその最後の手段を尽くして説得をする努力をいたしておる段階でございますので、それがいつ完了し、いっそう判断するかということは、いま申し上げることはちょっとできないと思います。
  25. 達田龍彦

    達田龍彦君 現地でこれは聞いた話でありますけれども、この補償の方式等につきまして、長崎県は、個別補償の方式を農林省が認めてないから話し合いがなかなか進展をしないと、こう言っておるのであります。一体農林省見解方針はどうでございますか、お聞きをしておきたいと思います。
  26. 和田正明

    説明員和田正明君) 関係組合がたしか十二という多数でございますので、Aの組合とまず話をし、次にBの組合と話をするということになりますと、基準があるとはいいながら、いろいろな話し合いの中でバランスがくずれたり、シーソーゲームになったりするおそれが多分にございますので、でき得べくんば私どもとしては県一本で額の話をつけまして、それを組合ごとに配分をすることは県政の問題として処理する、組合の内部で個人に配分することは漁協の内部の問題として処理することが最も公正な補償を片づける方法ではないかというふうに考えております。そういう意味を含めまして、最初の御質問のときにお答えをいたしましたように、交渉話し合いを一本にいたしますために、関係組合から代表者を選んでその組織話し合いをしていきたいということで、そういう交渉の相手となるべき一本の交渉団体の組織を県に現在指導をいたしておるわけでございます。
  27. 達田龍彦

    達田龍彦君 来年度の予算要求ですけれども、すでに農林省は大蔵省に予算要求をしておると思いますが、しているのかどうかということが一つと、要求した以上、前回委員会でも本年度の一ぱいの中で解決見通しを持ちたいという答弁をいたしておるわけでありますけれども、その見通しに立っての要求であろうと思いますが、先ほど来、努力をします、解決の方途はだんだん明るくなっている、こういう説明でありますけれども、もしこの問題が今年度じゆうに見通しが立たないという場合については、大蔵省に対する予算の要求はすべきではないと私は判断をいたします。今年度じゆうに見通しが立てばこれは要求をすべきであるという考えであるわけでありますけれども、その点はどういう判断に立って要求をされておるのか、お尋ねをしておきたいと思います。
  28. 和田正明

    説明員和田正明君) 先ほどお答えをしておりますことでおよそ御推察をいただけるかと思いますが、私どもとしては、地元長崎県なり関係市町村が地域の総合開発という立場であの干拓事業に手をつけてほしいという非常に強い要望があり、また、私ども調査をし設計をいたしました結果として、経済効果の測定等を十分いたしまして、国営事業として実施することが適当であると判断をいたして、昭和四十年に着工に踏み切ったわけでございますので、先ほど来申し上げておりますような見通しの上に立って来年度の予算の要求もいたしておるわけでございます。今年度じゆうに解決のおよその方向ができないという場合というようなことは、私としては想定をいたしておりません。
  29. 達田龍彦

    達田龍彦君 全く、私の現地判断実情認識、それから農地局長の将来の見通し現状認識というものは、百八十度食い違いをいたしておるのであります。これはまあ同じものを見て百八十度違うというのはどこに原因があるのか、私は非常に不思議でならないのでありますけれども、いずれにしてもこれは事実の経過によってこの問題は明らかになってくると私は判断をいたしておるのであります。その上に立っていま農地局長説明されているような経過と状況になってくれば非常に幸いだと思うのでありますけれども、そうでない逆の面が出てきた場合に一体どうなるかということを憂慮するがゆえに、問題を提起し、もう少し実情認識を改めるべきではないかということを強くあなたに申し上げたいのであります。  さらにまた、干拓行政の中で、将来、長崎干拓だけじゃなくて、全体の干拓行政の中で問題が出てくるのは、何といっても今日の日本の農政に根本があると私は考えております。それば、漁民皆さん反発の一つには、いま、農地を工場やあるいは宅地にどんどん転用をいたしておるのであります。そういうことで、農地は一方では減らしておきながら、一方では漁民がいままで育ててきた先祖伝来の漁場を奪って農地に転換をするという、そういう行政を行なっておる。こういう行政をする限り、何のために漁業者が犠牲にならなければならないのかという気持ちが出ることは、これは当然であります。ここに一つは干拓行政漁業者反対を大きく受ける理由があると私は考えておるのであります。  さらにまた、今日の農業の実態を見てまいりましても、漁業から農業に転換をしてみても、今日の農業ではなかなか生活見通しが立たない、不安定である。それよりも漁業のほうが安定をしておる。とりわけ浅水海におけるノリ、貝等の養殖漁業は、今日、相当安定した生産高をあげておるわけでありまして、そういう比較において考えたときに、農業よりも漁業がよいという判断が立つのであります。  さらにもう一つは、かりに長崎干拓の場合にいたしましても、三百億程度の投資を農業にするとするならば、これを漁業にしたならば農業との比較において経済効果がどうかという問題についても、漁業者漁業者なりの見通し判断を持っておるのであります。こういうところに、干拓行政というものに対して、いま国営事業としてやろうとしておるけれども、ほんとうに納得してこれを理解をしながらやろうという気持にならない大きな原因がある、私はこういうふうに考えておるのであります。  そこで、問題は、こういう問題の根本的な解決なしに、干拓行政を権力であるいは法の裏づけでこれを強行することについては、私は、生活権の問題であり、漁民の既得権である限り、これを強行すべきではないという見解をとっておるのであります。また、今日の実情から考えてまいりましても、長崎干拓の場合については、県当局あるいは農林省指導が適切であるかどうかという判断をしてまいりますときに、必ずしも適切であったとは判断できないのであります。そういう面についても、ひとつ農林省としても、いま農地局長説明では、打てるだけの手を打ったとこう言っておりますけれども、私の判断では、打てるだけの手を打ったという実情ではないのであります。長崎県もまた手を尽くして説得につとめたと言っておるけれども、ほとんど説得に当たっていないというのが実情であります。話し合いもほとんど行なわれておりません。また、知事みずからが反対する漁民方々にお会いをして説得するというようなことは、これまた一回も行なわれていないのであります。そういう実情の中に今日までこれが推移しておるのでありますから、そういう実情も十分認識をして、そういう上に立った適切な指導を行なわなければいけないのではないかという気がしてならないのであります。  そこで、私は、これは農林省見解をただしておきたいのは、先ほど私が指摘しておりますように、農林省判断と私の判断では百八十度の違いがあるので、その私の判断に立つ限り、このまま長崎干拓の問題を長崎県にまかしておったんでは、事態は悪化こそすれ、好転することはないと実は判断をいたしておる。したがって、この際、農林省が責任を持って全面的に直接にこの問題の解決のために努力をする気持ちはないのかどうか、この点をお伺いをしておきたいと思うのであります。
  30. 和田正明

    説明員和田正明君) ただいまの御質問に直接お答えをする前に、ちょっとふえんをさしていただきますが、私としては、漁民に対する説得努力はなすべきことのすべての手は打ったというふうに申し上げたのではないんで、すべて終わったと判断をしたときにはごく一部に反対者があっても一般公共事業の処理と同様の法的手段をとることもあり得るということを申し上げたわけでございますが、現段階においてはまだその説得努力が万全であるという判断はいまなおいたしておらないのでございます。で、先般来、県知事と直接お話しをし、また、その後、県の担当者とも十分話し合いをいたしておりますが、農林省補償の金額なり条件なりを具体的に処理をいたしていきますのは、これは直接にはやはり農林省自身の責任で処理をすべきであり、その過程で県民である漁民立場に立った知事との間の政治的調整を要する段階があろうと思ううのでありますが、農林省が直接当たります前に県内行政の問題として県庁側に処理してもらうべき幾つかの事項がございますので、それらについて県に具体的に指示をし、県庁の態勢を支援をしておる、そういう段階でございます。県庁側として打つべき手が打たれたあとで、私としては農林省の責任において事に当たってまいりたいというふうに思っております。  それからただいまの御質問の前段で、干拓行政全体に対する姿勢について幾つかの御見解があったわけでございますが、前回三月三十日のこの委員会の席でもお答えを申し上げましたように、なるほど御指摘のように単位面積当たりの所得という点で比較をいたしますると、漁業をやるほうが多いとか、あるいはたんぼにするほうが多いとか、土地の事情によっていろいろ差はあろうと思いますが、私どもとしては単純に漁民の犠牲において水田にしたほうがいいとかいうふうに考えておるのでもございませんし、また、漁業として残すのが水田より経済効果が高いから残すのだというふうに考えておるわけでもないのでございます。  一般に、干拓を手がけますのには、第一には、背後の河川から長年月にわたりまして土砂等が流出してまいりまする結果、相当海面が遠浅になり、堆積の砂等が出てまいりまして、その結果が背後地の排水を不良にするという事実がございますので、そういう自然的条件が出てまいりますると、漁場としての価値も下落するというのが普通の事実でございます。まあそういう場所が主として干拓の候補地として考えられるということが一つと、それからもう一つ、水田にして使うのがいいか、漁業として使うのがいいのかというような判断は、私も長いこと水産庁に勤めておりましたが、それぞれの立場立場でものの言い方があろうと思います。そういう経済的な単位当たりの所得の比較というような問題だけでなしに、やはりそう地方の総合的な地域開発という視野での地元の計画、要望というようなものがものごとの判断をする大切な材料ではないかというふうに考えております。  いつかも先生に申し上げましたが、たとえば今回考えております長崎干拓について申し上げますならば、浅水海の湾口を堤防で締め切ることをやめるといたしますならば、諫早を含めたあの背後地の今後の高潮等の災害に対応いたしまするために、相当程度海岸堤防を全体にわたってかさ上げをしなければならないという実情にございます。いずれをとることがあの地域の今後の経済開発のためにプラスであるか、マイナスであるかということを現地としてはいろいろ判断をした上で、地域総合開発立場で湾口を締め切る、その結果として湾内にできる水面に水田をつくりたいということで問題が出てきておるわけでございまして、単に単位当たりの所得がいずれが高いかというような、そういうことだけで干拓行政を進めるつもりは今後ともございませんし、いままでもそういう立場だけで干拓地を採択をいたしておるのではないのでございますので、その点、御了承をいただきたいと思います。
  31. 達田龍彦

    達田龍彦君 では、最後に一点だけ御質問して終わりたいと思いますけれども、私どもの今回の調査に基づいて、関係漁業者方々、あるいは県の漁連方々、あるいは多くの直接の漁民皆さんともお会いをしてまいりましたけれども干拓に対する反対という意思はきわめてかたいと私どもは承知をし、そういう把握をしておるのであります。この考え方というのは、どういう条件があろうとも反対だという考え方でございまして、今後も変わらないのではないかと判断をいたしております。そこで、この絶対に変わらないという判断に立つ限り、農林省説得長崎県を通じて行なってみても、最終的に話し合いがつかないということが想定をされる。その場合に、一体農林省としてはどういうふうにしていくのかぎりぎりのところ。先ほど来、局長は、最終的には法のたてまえ上強制的にできるということを言っておられるのでありますけれども、私の判断では、いま申し上げたように、もう漁場を手放すことについては絶対反対なんだ、これは絶対許すわけにはまいらんというのがもうぎりぎりの気持ちです。私も、何回も漁業者皆さん漁業団体の皆さん等々とお会いをして、そうしてひざを突き合わせて話をしたのであります。私となら漁民皆さんが会ってくれる。ところが、長崎県知事長崎県のおえら方が行きましても、漁民皆さんは会ってくれません。なぜか。不信感があるからであります。漁業者の気持ちを偽ったり、こそくな手段で説得をしたりごまかそうとすることがあるがゆえに、漁業者は会おうとしないのであります。しかし、私が行きますと全部会ってくれてほんとうのことを申しますけれども、そのほんとうの気持ちというのは、絶対に補償の問題ではなくて、私どもは漁場を手放すわけにはいかんと、こう言っているのであります。これはまあほんとうの気持ちだろうと思うのであります。でありますから、そういう状態になったときに一体どうなるかということをぎりぎりまあ考えておかないといかん。長崎県の説得を期待しております、長崎県の説得がうまくいっておりますでは、問題の解決にはなりません。これをどんどん引き延ばしていきますと、いま、漁業者の中ではあそこの沿岸投資を非常に旺盛にやっておりますし、また、新しい船もつくりたい、新しい養殖場もつくりたい、漁業投資を拡大をしたいという気持ちがあるにもかかわらず、見通しが不安なために、これをちゅうちょしなければならんという状態漁業者の中に出ておるのであります。そのために生活が困るという状態が出ておるのであります。いま、長崎県あたりの説得によりますと、来年度の漁業許可の更新の際にあたってこれを認めないぞというようなことをほのめかすような状態現地実情として徐々に出ておるのであります。そういう状態では、なかなか不安で、漁業者漁業活動ができません。したがって、私は、この問題の決着としては、いずれにしても実情の上に立って、やるのかやらないのかを早目に決断をすることが一番今日必要ではないかという気がしてなりません。したがって、そういう意味において、私の判断ではおそらく十二組合は全部絶対この問題に対する反対態度は変わりないとまあ判断をいたしておりますけれども、そういう事態になったときに農林省一体どうするのか、このぎりぎりの判断の上に立っての御回答を最後に求めておきたいと思うのであります。——政務次官にお願いいたします。
  32. 久保勘一

    説明員(久保勘一君) 先ほど局長よりいろいろと御説明を申し上げておりますような経緯でございます。現時点に対する認識達田議員と私どもとの間に百八十度の開きがあるということがまあ最後の判断の結論のようにお聞きするわけでございますが、私も地元でありまする関係から、多少この問題につきましては必要以上に深入りをしましていろいろと検討いたしておるつもりでございます。私の現時点に対しまする判断も、先ほど局長からお話し申し上げておりますように、それほどそう安易にこのことが解決するとは考えておりませんけれども、だからといって必ずしも絶対説得不可能であるということにも判断をいたしておりません。私どもの今後の熱意、努力、あるいは県並びに関係者の熱意によりましては、あるいは漁民方々の御理解と協力を受け得るのではないかという希望を捨てておらんわけであります。特に、最近、ノリの養殖に対する技術の改良等もございまして、従来にないノリ漁業好転と申しまするか、好況を迎えておりまして、漁民にとりましてはほんとうに命を取られる思いであろうということは、私どもよく理解いたしております。したがいまして、問題は、この漁民の切実なる心情をよく私どもがとらえまして、それに応ずるところの、それに対応できるところの補償を誠意を持って解決していくということでなければならんと考えておるわけであります。  そういうことでありまするから、漁民方々の御理解を得るために、今後最終的な努力をいたしてみたい、そして必ずこれは成功できると、こういうように私ども判断をいたしまして、努力を傾けていきたい、かように考えておりますことを申し上げます。
  33. 達田龍彦

    達田龍彦君 判断をし、努力をするというのはいいんだけれども、ぎりぎり決着のところ、補償条件では解決しないという判断を私はしているのであります。その場合にどうするのか、これが現時点で判断する段階だと私は思っているのであります。ただ、農林省は違った見解のようでありますけれども、私はそう思っているのであります。そうしていかないと、いま申し上げたように、延び延びになることは、県をはじめ関係者方々はたいへん大きな犠牲を払うのであります。でありますから、その場合に先ほど農地局長は法的にできる措置はあると言うけれども、そういう方法をおとりになるならば、一つの解決の方法でしょう。そうでなくて、あくまでも説得話し合いという形をとる限り、いま申し上げたように、問題は漁場を手放すことに対して反対でございますから、これはいかなる条件を持とうと、いかなる誠意で話し合おうと、問題の解決にならぬのであります。でありますから、そういう状態認識に立つ限り、一体その場合にどうするのか、それを明確に聞かしてほしいと思うのであります。
  34. 久保勘一

    説明員(久保勘一君) 先ほど局長よりお話申し上げましたように、どうしても話のつかぬ場合の手段、方法というのは、御了承のように、法で定められております。しかし、私どもは、そういう手続があるからといって、それを前に押し出しましてそういうことによって最終的に話のつかぬ場合は強行するんだ、こういうことをきめておるわけじゃないのであります。あくまでも話し合いによって解決をする、また、解決できると、また、解決してもらいたいと、こういうことで話し合いを続けていきたいと、かように考えておるわけであります。特に達田委員漁民方々の信頼も厚いしいたしますので、どうかひとつ側面的にこの話し合い進展についてはひとつ特に御努力をお願い申し上げたいと思うわけでございます。
  35. 達田龍彦

    達田龍彦君 では、干拓問題はこれで終わりたいと思います。  石油備蓄基地の問題につきまして今回調査をいたしましたところが、関係漁業者や農業者及び農業団体、漁業団体から、備蓄基地を設置することについて反対陳情を実は受けたのであります。そこで、私どもまだ具体的なものを承知をいたしておりませんので、まず、通産省のほうから、こういうように農漁民の強い反対が備蓄基地の問題についてございますので、その構想についてお伺いをしておきたいと思うのであります。
  36. 平松守彦

    説明員(平松守彦君) 大型輸入基地の構想につきまして御説明申し上げます。  御存じのように、日本の石油製品の需要は今後非常に大幅に増加することが予想されておりまして、四十二年度におきます石油製品の消費量は一億一千万キロでございます。昭和六十年にはこれが四億七千六百万キロ、大体四七倍になるわけでございます。エネルギー全体における石油製品の比率は非常に大きくなってまいるわけでございます。  これをいかに安く供給するかということがこれから大きな問題になってまいるわけですが、このためには原油の代金を安くしていく、そのためには日本の油は中東から運んでまいりますのでその運賃を下げていかなきゃならない、このためにはタンカーを大型化いたしまして大量輸送をしてコストを下げるということが考えられるわけでございます。したがいまして、タンカーが、だんだん二万トンぐらいから、最近は一番大きな船で二十万トンという船になってまいりますが、将来は三十万トン、五十万トンというような船が出てまいることも予想されるわけでございまして、こういった大型タンカーをそれぞれの製油所に横づけにするということでは、これは非常にお金もかかりますので、ある地点に大型タンカーを受け入れまして、そこで一たん小型の船に積みかえて、それからそれぞれの製油所に持ってまいる方法が考えられるわけでございます。こういった方式は、ヨーロッパにおいても、最近、構想として出されておるところでございます。  そこで、こういった大型タンカー受け入れの基地とあわせて日本の備蓄をそこにするということも含めまして、そういった大型輸入基地の調査ということで四十二年度に六百万円の委託調査費を通産省としては持ちまして、これを財団法人の工業立地センターというところに委託調査をいたしまして、そこでいろいろな専門家の方々に集まっていただきまして、そういった輸入基地をつくる際のコスト、レイアウト、そういった理論的、実証的な研究をやっていただくことで現在調査をいたしております。したがいまして、現在までのところ、そういった経済計算なり、どういう場所が大型基地としてはいいのかというような勉強をいたしております段階でございまして、私ども見通しでは、そういった大型基地が今後日本にできるとしてもまあ四十五年以降でございますし、どこにいまきめておるということでもまずございません。そういった経済計算なり立地地点の勉強をいまやっておる段階でございます。  なお、参考に申し上げますが、こういった基地が日本に幾つかできるにいたしましても、これは国が直接ないしは県が直接そういった基地をつくるのではございませんで、日本にございます多くの石油企業が共同投資、グループ投資ということで、まあ最後は企業が採算をはじいてそこにつくるということになるのでございますので、いまのところ、どこどこにやるとか、何がなんでも一まあ長崎というところも伊万里湾はいい地点ではございますが、そこだけにしかないというものでもございませんし、いまのところそういった調査を現在進めておる、こういう段階でございます。
  37. 達田龍彦

    達田龍彦君 それで大体構想はわかりましたけれども、現在の進行状況もわかりました。長崎県の松浦市と崎戸町が候補地になっておるのかどうか、陳情がありましたのでお伺いしておきたいと思います。
  38. 平松守彦

    説明員(平松守彦君) 長崎県のほうからは、そういった通産省の構想の際には、伊万里湾の長崎県側つまり松浦市それから崎戸につきましては、地域開発の観点からぜひこの際そういった委員会ができたならば調査をしてほしいという要望はございましたし、私どもとしても、立地条件はいいと思いますので、その候補地点の一つにはいま考えておりますが、それが最終的にきまるかどうかということは、これから調査をいたしますし、また、その際の県全体として漁民方々及び地域振興との話し合いの十分ついたことを前提といたしまして、その上でそういったことをきめていきたいと、こう考えております。
  39. 達田龍彦

    達田龍彦君 そうしますと、候補地を最終的に基地として指定するまでの過程というのは、どういう過程を踏むのですか、それを説明してください。
  40. 平松守彦

    説明員(平松守彦君) 現在、委員方々で、一体そういう基地の経済計算がどうなるのかと、コストが高くなれば意味はございませんので、そういう経済班と、それからそういう大型輸入基地の立地班というもので、両方で検討をいたしておりまして、その検討に並行いたしまして、ほかの県からもいろいろ要望地点が出ておりますので、事前に年内にはそういった要望地点をまず見よう。見た上で、またそれぞれ持ち帰りまして、どの辺がまあ一番いいかということを、最終的には、この調査が今年度中でございますので、三月末にはそういう地点というものをきめたい。ただ、そういう委員会がきめましても、先ほどから申し上げますように、すぐこれは着工するとか国がやるというものではございませんで、一応の候補地点についてまた企業がその地点について研究した上で別の建設計画に入る、それも四十五年以降ではあるまいか、こういうことになっております。
  41. 達田龍彦

    達田龍彦君 そうしますと、これは各地で起こっておると思うのでありますけれども反対をする農漁民の方がたいへんに多いのですね。長崎県の崎戸の場合、そういう発表というのかそういう情報が流れますと、漁業者が全部集まって、反対だ、こういう態度漁業団体全体がきめている。松浦の場合も、平戸・松浦を含めた漁業者が全部反対だ、こう言っておる。松浦の場合は農業者も反対だと言っている。この反対の理由はどういうことなのか、通産省はどう理解しておりますか。なぜ農漁民皆さんが備蓄基地の設置に対して反対するのか、反対の内容というものを内容的にどう理解しておりますか。
  42. 平松守彦

    説明員(平松守彦君) 現在までのところ、長崎県の松浦の漁業方々お話を聞いておる段階で、ほかの地区にまだそういうこと聞いておりませんが、お話を承りますれば、このタンク基地をつくる際には三十万坪程度の土地がまず海岸部に要るわけでございます。したがって、埋め立てをすることになるわけでございます。そのために、漁業権という問題があります。それで、松浦及び伊万里湾周辺にはいろいろな漁獲物もございますので、そういった意味の問題があろうかと思います。  第二点は、大型タンカーが入ってそういう油の荷役をやれば海面が油でよごれるのではないかというような意味での御心配ということであろうかと思います。
  43. 達田龍彦

    達田龍彦君 それから、もし地元漁業者や農業者の強い反対があっても、通産省は、県や市から強くこれに対する要請があった場合は、基地に指定するという方針をおとりになるのか、それとも、そういう反対がある場合にはそれをやめるのか、そこら辺の方針はどうでございますか。
  44. 平松守彦

    説明員(平松守彦君) 先ほどから申し上げますように、これは、国が法律で指定するとか、通産省が指定してそれを国の費用でやるというものではございませんで、日本の将来五十年、六十年を見通して石油の低廉供給のためにはそういう大型基地というものが必要になってくる、その際どのくらいの計算であれは成り立つのか、もしこれが成り立ったと仮定した場合、どういう立地条件が必要なのか、その場合にかりにつくるとすればどういう場所が一番適切かという研究報告をこの研究会からいただくのみでございまして、それに基づいてまたそういうところに各企業が共同投資をする際の話し合いと、こういうことになるわけでございます。したがいまして、これが四十五年以後、五十年の段階の建設になるのか、四十六年以降に完成するのか、その辺のところははっきりしておりませんが、そういう地点ということになりました場合には、あくまでも、これは県なり地元漁民方々話し合いがなければでき上がらないわけでございます。そういうことでございます。
  45. 達田龍彦

    達田龍彦君 最後に、私は、この種問題は、必ず賛成と反対対立する問題であろうと思うのであります。これをやる上においては、被害を受けたりあるいは犠牲を受けたりするのは、大体農業者か漁業者であります。したがいまして、候補地の選定にあたりましては、特に農漁業者意見と意思を十分尊重して、一方的な押しつけにならないように十分なる配慮をしてもらいたいと思うのであります。同時に、農漁業者納得が得られない限り指定をしない、こういう方針を堅持してこの問題に対処してもらいたいと思いますが、どうですか。
  46. 平松守彦

    説明員(平松守彦君) 地元にいろいろな問題が起こることは御説のとおりでございまして、そういった点につきましては地域開発とそういった農漁業方々との調整ということで十分に県なり地元の御意見を承って今後とも調査を続けてまいりたいと、こう考えております。
  47. 任田新治

    理事任田新治君) 本件については、この程度にとどめます。     —————————————
  48. 任田新治

    理事任田新治君) イルカ対策に関する件を議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言願います。
  49. 達田龍彦

    達田龍彦君 これも今回の調査の対象として現地を見てまいったのでありますが、前回五月二十五日の当委員会で私はイルカの食害問題を取り上げました。委員会としては、その食害の実情、あるいは生息状況、こういうものをさっそく調査をしようということで、今回現地に出向いてまいったのであります。水産庁からも、あるいは農林省からも、農林政務次官の久保先生をはじめおいでをいただきまして、現地をつぶさに見ていただいたわけでありますけれども現地実情は、私たちが予想した以上に非常に食害は大きく、しかも漁業者の犠牲が非常に甚大である。また、関係漁業者をはじめ県当局も、今日まで、乏しい財政と資力の中からこの食害対策に対して努力してまいっておりますけれども、ほとんど不十分な状態のまま今日まで推移をしておるという状態にあったのであります。  地元漁業者のいろいろな体験談をお聞きをいたしたわけでありますけれども、何としてもこれは早急に抜本的な対策を立てて、日本の沿岸漁業の振興と生産の拡大のための方策を見出さなければならぬという気持ちを深く持ったのでありますけれども、そういう観点から、この問題に対する当委員会で取り上げた意向——水産庁も、この前、久保政務次官のほうから、誠意をもって具体的な方策を検討して樹立をしたい、こういう前向きの御答弁もなされておるのでありまして、その後水産庁として具体的にどういう対策をお立ていただいたのか、その具体策についてひとつお伺いをしておきたいと考えておる次第でございます。
  50. 久宗高

    説明員(久宗高君) お答えいたします前に、一言お礼を申し上げておきたいと思います。  前国会におきまして各地の水産問題が出まして、その際、それと関連いたしまして、今日のイルカの問題を含めまして、先ほど干拓の問題も含めまして、当委員会におかれまして非常に詳細な御調査現地についてなさっていただきましたことにつきまして、厚くお礼を申し上げる次第でございます。  なお、特に非常に困難な状態で取り締まりに当たっております取り締まり船にお乗りいただきましてつぶさに実情を見ていただきましたことにつきまして、船の関係者から特にお礼を申し上げてくれということでございましたので、この機会をかりまして、厚くお礼を申し上げる次第でございます。  さて、イルカの問題でございますが、先般、本委員会におきまして、イルカの食害問題という形でやりとりがあったのであります。当時、私どもははなはだ不勉強でありましたのと、また、食害という形でのお話でありましたために、私から御答弁申し上げました点も、若干それにひっかかりまして、歯切れの悪い御答弁をいたしたことはまことに申しわけなく思っておるわけであります。  その後、御指摘もございましたので、私どもといたしましては、どうも、食害もさることながら、イルカ群が参りますことによりまして魚群が散逸すると申しますか、漁民の側から見て、行ってみたけれどもとれないという形のほうが実は問題ではないかというふうにも思いまして、さような意味におきまして、学界でも非常に問題になっておりましたので、当委員会の御慫慂もありまして、ただいま達田委員からお話がございましたように、相当勉強の準備をいたしまして、九月七日に、たまたま本委員会から御出張なさいました時期に合わせまして、長崎県下におきまして、日本におきます現在の段階で最も高い水準のイルカのシンポジウムという形をとったわけでございます。また、関係漁民方々からも詳しく実情をお聞き取りするような段取りをいたしたわけでございます。私どもの準備をいたしました気持ちといたしましては、非常にその害がひどいということでございますが、対策ということになりますと、対象をやはり明確にとらえておく必要があるのじゃないかと、こういうことでございまして、たまたま達田委員におかれましては、その研究会に御出席いただきまして、つぶさに学者の御意見もあるいは関係者意見もお聞き取りいただいたと思うのであります。私も、帰った者から、詳細に当時のやりとりを聞いたわけでございます。  そこで、いま、私ども判断といたしましては、漁民の方からも御指摘がございましたように、いろいろ研究されまして、技術方面におきます経験その他から見まして打てるだけの手を打っておるようでございますが、たとえば音波を発信してイルカの群を散らすということにおきまして、当初それをやってみて効果があったけれどもその後うまくいかない、こういったようなお話を聞いてみますと、これはやはりイルカの種類によりまして音波が違いますので、つまりレシーバーが違いますので、種類を的確につかまえませんと、いかなる音波を発してそれを除くかということも実はできないわけでございます。それは一例でございまして、先生にはお話を全部聞いておられますので釈迦に説法になりますが、一例を申し上げますと、そういうようなことでございます。そこで、私どもといたしましては、これはもちろん応急にいろいろな措置をとることも必要でございますけれども、問題が問題だけにまた影響する範囲が非常に大きゅうございますので、やはりしっかりまず対象をつかまえることによりましておのずから有効な対策もそれによってきまってくるというふうにも考えますので、今回の九月七日におきますシンポジウムと申しますか討論会の結果を総合いたしまして、当面、とりあえずといたしましては、本年度に実は予定はいたしておりませんでしたけれども、試験研究関係で調整費というのがございますので、それから約百万近いものをこちらにさきまして、イルカの種類なりその分布なりというものにつきましてまず実態をいわば科学的につかまえる、これを早期にやりたいということで、現在、九月末を目標にその調査要綱を固めておるわけでございます。南海区水研が中心になりましてそのような調査に直ちに入りたいと考えておるわけでございます。  なお、あるいはあとで御質問の中で出るのかもしれませんが、駆除の対策、これはいま触れてよろしゅうございますか。
  51. 達田龍彦

    達田龍彦君 けっこうでございます。
  52. 久宗高

    説明員(久宗高君) 一応そこまででとどめておきたいと思います。
  53. 達田龍彦

    達田龍彦君 いまの説明で、水産庁がとろうとしている考え方はほぼわかりました。ただ、私は、予算の半ばでイルカ問題をどう処理していくかということは、確かに水産庁としてもやりにくい問題だろうと思うのでございますけれども現地実情からいいますと、何としても県や一漁協や市町村にたよっておったんでは問題の解決にならぬと、だから日本の漁業資源全体を守るという立場から、ひとつ国の力によって問題の解決をしてもらいたい、対策を立ててもらいたいというのは一致した念願であるのであります。でありますから、そういう意味において、緊急応急対策としてまず生息状況とか食害状況というものを調査することは第一段階であるわけでありますけれども、同時に、応急対策の中で、今日、毎日操業に困っているわけでありますから、散らす方法を応急対策の中で加えていただけないだろうか。それから将来の恒久対策の問題になりますと、来年度の予算の中でイルカ問題に対する予算もきちんと組んでいただきまして、そうして恒久的な対策としてのイルカ対策というものをオットセイあるいはトド等のいわゆる海獣によるところの食害対策全体として問題の解決をはかるような予算措置と対策を講じてもらわなければならぬと思っておりますけれども、当面の応急対策の中で、とりあえず、単に飛行機を飛ばすとかあるいは船を出して調査をするとかの程度だろうと思うのでありますけれども、同時に、イルカ群が十月から四月にかけてきわめて活発に回遊するわけでありますけれども、この時期に応急対策の一環として散らす方法も同時に考えることができないだろうか、こう思うのでありますが、その点はどうでしょうか。
  54. 久宗高

    説明員(久宗高君) 九月七日におきますいろいろな御討議の中で、散らす方法につきましてもいろいろな御提案があり、また、海上保安庁のほうからも見えましてそれについての御意見ども出ておったわけであります。  先ほど途中で切りましたけれども、一応私どもとしましては、御指摘のように、当面早急につまり相手を知る必要がございますので、対策の方法もそれによって導き出されますので、種類なり分布の把握にすぐ踏み切っているわけであります。  なお、応急、恒久の考え方といたしましては、いままでの経験から申しますと、音波を発信いたしますことが魚種によりましてはきわめて有効のようにも思いますので、それにいかなる波長がよろしいのかという問題をきわめる必要があろうという問題あるいは、爆雷の問題もお話に出ておったのであります。また、高速艇によります追い込みの問題等、いろいろあるわけでありますが、長期的にはやはりイルカの利用の方法を開発することによりまして、イルカをとること自体がまた漁業として成立するようなこともこれはもちろん考えなければならぬと思うのでありまして、御質問の当面すぐ追っ払うことについて何らかの措置がとれぬかというお話でございますが、それは主としてあのときの会議におきましても機銃掃射というお話が出ました。これは専門家の方から見て必ずしも有効でないというお話のように聞いております。それから爆雷の問題でございますが、これもその際にお話が出ておりますが、現在のは主として対潜関係のものでございますので、非常に大型のものでありまして、それをやりました場合に、イルカ以外の一般の魚族についても相当な影響がありますし、非常な危険も伴いますので、もしやるといたしますれば非常に小型な何らかそういうものを開発して使用する必要があるのじゃないか、こう思うのでありますけれども、いま、あの会議以後、直ちにこれなら見当がつくというそこまで詰めかねているわけであります。しかしながら、これはもちろん検討をしてみる必要があると思いますが、ただ御承知のように非常に危険が伴います。漁民方々に直接お渡しして使用するような形が適当かどうか、何らか別途の措置が必要なのではないかと思うわけであります。何ぶん、私どもにも初めての問題でありますので、吟味はいたしますけれども、いままだこの段階で早急には結論を持っておりません。  なお、この調査をいたします過程におきまして、相当なベテランも参加いたしますので、調査過程におきまして応急の何らか駆除の有効な手段が部分的にでも見つかれば、それについても考えてまいりたいと思うわけでありますが、いずれにいたしましても相当これは方法を吟味しなければならぬ問題でございますので、当委員会で取り上げられましてから私どもといたしましても実は大馬力で勉強いたしておりますが、もう若干時間をかしていただきたいと思います。  なお、委員会の進捗状況といたしましては、調査方法と関連いたしまして駆除の問題も頭に置いて調査いたしますが、大体私どもの予定では、今月から来月の初めにかけてまず調査要綱のめどをつけてしまって、直ちに実行に入りたい、こういうふうに思っております。
  55. 達田龍彦

    達田龍彦君 たいへん前向きにこの問題の解決をはかろうという熱意をお示しいただいて、私も非常に感謝をいたしておるわけでありますけれども、私は、このイルカの問題を調査してまいりましてもう一つ感じたのは、水産庁全体として、調査研究に携わっている機関の方々に対する予算の裏づけの問題、それから機構体制の問題、それから調査研究機関の整備の問題が、他の調査研究機関に比較して非常に不十分さが今日まであるのではないか、言うなれば水産庁は何か陰に置かれたような存在の取り扱いをされているんじゃないかという気がしてならないのであります。世界の水産国といわれる日本の水産庁が、それをあずかっておる農林省の水産庁がそういうことでは、きわめてさみしい限りでありまして、これは私ども議員としても認識を新たにして、農林省における水産庁の位置づけと立場、さらには、特に今後の水産行政というのは、資源の保護と確保、そのための調査研究というものはたいへん重要な水産行政の中における問題であり、そういう問題の位置づけをしていかなければならぬと思うのであります。それに比較して、仕事が多いわりに、機構体制というのが非常にお粗末であるような気がしてなりません。今回のイルカの問題もそうでありますし、赤潮の問題もそうであります。それから今後外国とのいわゆる資源を中心にする漁業交渉につきましても、資源の状況をどう把握をしていくのか、そういう問題についても、意欲があり、それだけのスタッフがおるにもかかわらず、予算の問題や機構の問題でそれができないというような実情も私は今回の調査を通じて知ることができたのであります。したがいまして、ぜひともこれらの問題を中心にして将来研究調査機関というものの充実について、水産庁、農林省も御努力をいただくし、われわれ議会側としても今後十分配意をして問題の解決をはかるようにしていかなければならぬと思います。  それで、当面の措置としていろいろ御研究をいただきまして適切な措置をおとりいただくと思うのでありますけれども、いずれにしても、現地実情というのは、毎日が生活に続いておりますし、体を張って漁業操業をやっておる実情でありますので、あすにでも実効の伴う措置を現地の人々は期待をいたしておるのであります。そう言ってみても、いまから調査をして何カ月後に結論が出次第その措置をするというのでは、やはり現場の人々にしてみればなまぬるい気持ちがするわけでございますので、長官からいま御説明のあったその委員会の中で、私がいま申し上げているような実情も含めて、当面の措置の中にできるだけ調査だけではなくて、直接駆除することができるようなことも含めた対策をひとつ検討いただいて、いい具体策を立ててもらいたい、こういうふうに考えておるわけでありまして、御理解をいただいておきたいと思うのであります。  それからもう一点は、将来の恒久対策でありますけれども、これは予算の伴わない恒久対策というのはあり得ないと私は考えるのでありまして、ぜひとも来年度の予算の中に、このイルカ、あるいはトド、オットセイ等の食害対策を中心にした、資源保護の立場からの食害対策を中心にした予算を水産庁としては要求をしていただいて、そうして、その裏づけをとりながら体制の確立をはかってもらいたいと思いますが、その点、水産庁のお考えを承っておきたいと思うのであります。
  56. 久宗高

    説明員(久宗高君) 前回委員会のときもちょっと申し上げたわけでありますが、食害という取り上げ方をいたしました場合には、実は、予算化あるいは学界におきます論議におきましても、ちょっとひっかかるわけでございます。私も専門家でないのでよくわかりませんが、御存じのとおり、プランクトンからいろいろな段階があって、それが一つの生物社会を構成しているわけでございますので、また、一群を全部締めさせるということもテクニカルにできませんので、食害をそれぞれの魚種につきましてそういう形で取り上げようといたしますと、実は理論的にも相当問題がございまして、また、かつてやったことがあるのでございますけれども、どうも予算的にもはなはだ結果がはっきりしないような形で失敗いたしておるわけでございます。もちろんそういう問題があることは十分わかっておりますけれども、扱いといたしましては食害である魚種を追いかけるという形ではなくて、根本的には、先生のおっしゃるように、そういう群の構成も含めました資源の保護ということになりますので、食害予算が必ず組めるかということになりますと、この際ははっきりとお約束は実はできないわけでございます。ただ、御指摘の意味は、たまたま食害という形で漁民関係しておりますものを、また特に地域的にはこれは放置できない問題でございますので、そういう問題の御提起に対しまして何らかお答えできるような形のものを考えてまいりたいということでございます。  なお、方法につきましては、今回の調査を早急にやるつもりでございますけれども、それによりましてその中から駆除対策で具体的なものが裏づけられればそれを組んでまいりますし、また、あるいは、やってみますともう少し大がかりな取り組みが必要かもしれませんので、その辺のところはいまの専門家を督励いたしましてできるだけ早急にめどをつけさせたいと思いますので、もうしばらく見ていただきたいと思うわけでございます。
  57. 達田龍彦

    達田龍彦君 では、最後ですけれども、端的にお伺いたしますけれども、来年度の予算に水産庁はもうすでに大蔵省に予算の要求をしていると思うんですね、来年度の。その中に、これを含めて御要求になっているのかどうか。なっていないとするならば、私はこの結論がおそらく来年の三月ごろまでには出ると思います。それが出たときに、予算の裏づけがなければ、これは実行できません、恒久対策の問題としては。私は、研究機関の充実を含めて問題を予算化したいという気持ちなんです、単なる食害の問題や漁業資源の確保という問題ではなくて。それをするためには、それだけの研究機関や調査機関がなければならぬわけです。そういうものを含めた予算化ということを今回考えるべきだ、そうして研究調査機関の充実をはかるべきだという、こういう点を私は考えておるのであります。でありますから、そういう意味において、この際来年度予算に入れるためには——いくら調査してみたって、予算がなければどうにもなりませんから、入れるためには今年度すでに要求されている中に含めないといけないと思いますけれども、もし含めていないとするならば、議会側として、私は、あとで、委員長・理事会等におはかりいただいてでも来年度予算の中に含めてもらうように御相談をしてみたいと思っておるわけでありますけれども、その点、水産庁としてどういうふうな取り扱いをされておるのか、最後に承っておきたいと思うのであります。
  58. 久宗高

    説明員(久宗高君) 調査研究そのものにつきましては、今年も、ああいうお話が出ましてから、若干調整費を組み直しまして、早急な調査に入るという実行に入っておるわけであります。したがいまして、そのようなものは、来年度におきましても、もし結論ができない場合には、現在の予算の中で融通をいたしまして緊急なものに回していくということはできるわけであります。何か補助とかそういう問題を伴いますような施策ということになりますと、おっしゃるように予算に組み入れなきゃならぬわけでございます。したがいまして、私どもは一応予算をすでに出しておりますけれども、今回の調査のあれを進めてまいりまして、予算に組み込むぎりぎりのところで少なくともこれとこれはやれるという見当がつけば、私としては組み入れたいと考えておるわけでございます。  ただ、この前の会合でもお聞き及びいただきまして大体感じはおわかりだと思うのでございますけれども、データそのものにつきましても、感じではとっておりますけれども、実は非常に不整備でございますので、ほんとうに予算に組んでこれを持ち出していくということにつきましては、予算技術上も若干の問題があるわけでございます。まあこの点は私は乗り越えられると思うのですが、問題は、方法自体につきまして、やや雲をつかむような感じもございますので、あまりとっぴなことをいいかげんな形でやってみるというようなことではいかぬと思いますので、もちろん緊急な問題でございますから、遅疑逡巡していてはいけないということは重々わかりますけれども、やはりそれなりの準備ができたものを組み入れてまいりたいという気持ちがございますので、予算との関係は非常に微妙でございますが、ぎりぎりの段階まで私としては努力したいと考えております。
  59. 任田新治

    理事任田新治君) 干ばつ対策に関する件を議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言願います。
  60. 達田龍彦

    達田龍彦君 九州それから四国、山口等の干ばつの問題について、農林省の対策と御見解を若干承っておきたいと思うのですが、今回の干ばつは、御承知のとおり、数十年ぶりの干害だといわれておりまして、特に西日本の被害はますます拡大をしておる状況にありまして、枯死寸前の農作物、あるいは飲み水の不足、工業用水のピンチ等、きわめて憂慮する状態に今日立ち至っておるのであります。また、気象庁が予報するところによりましても、ここ当分は雨の見込みがないという予報でございまして、これまた一体どういうふうにすべきかということについてひとしく心を痛めている状況にあろうかと思うのであります。この原因等については、いろいろいわれておりますけれども、要は、今日、県・市町村・国を通じて、こういう干ばつに対する場当たり的な農政、場当たり的な施策が大きな原因ではないかという気がいたすのであります。ひでりに不作なしといわれながら、現実にはひでりのためにこういう大きな被害を受けるということは、まことにもって、われわれは、その衝にある立場といたしまして、国民に対しましてもその責任を強く痛感をいたすわけでありますけれども一体、こういう状況に対して、現状まで農林省としてどういう対策をおとりになったのか、その被害の状況と対策について御説明をいただきたいと思います。
  61. 檜垣徳太郎

    説明員檜垣徳太郎君) 本年の七月以降の干ばつの被害の状況と、当面農林省として措置をいたしました対策、並びに現在とろうとしております対策等について御説明を申し上げます。  ことしは、年初以来、気象が非常に異常な年であると予想されておったのでございまして、御承知のように、春は、東日本に干ばつが起こりました。幸いに七月上旬の降雨でこの干ばつの被害はおおむね解消いたしましたのでございますが、七、八月にかけまして局部的な集中豪雨というようなことで、これまた相当な大きな被害が発生をいたしたのであります。その間に、西日本におきましては、七月中旬以降深刻な干ばつに見舞われており、現在干ばつの状況はなお進行中であるのでございます。  大体、この干ばつの時期が、ちょうど水陸稲については乳熟期前後の段階の大事なときであり、カンショもまた肥大充実期でございまして、ミカンは玉伸びの最も大きな時期に相当いたしましたため、深刻な打撃を農家に与えておる状況でございます。  農林省が九月二十五日現在で県から報告を受けました被害発生総面積を集計いたしますと、約三十八万五千ヘクタール、このうち、水田が二十一万三千ヘクタール、畑八万ヘクタール、樹園地九万二千ヘクタール、ということに相なっております。農作物の被害の金額合計は約七百三十四億円、このうち、水稲が二百九十二億、カンショ五十九億、果樹二百二十一億、野菜六十六億、に及んでおるのであります。  被害の状況を若干分解してみますと、植えつけ後の用水不足といわれます面積が約三十三万二千ヘクタール、植えつけ後用水不足で枯死寸前となっておりますものが四万九千ヘクタール、このうち、水田が三万二千ヘクタール、畑が一万三千ヘクタール、樹園地四千ヘクタール、植えつけの遅延等がございましたものが二千六十ヘクタールということに相なっております。  各県におきましては、応急対策事業として、水路の掘さくでありますとか、あるいは井戸の掘さく、瀬替え、揚水機等の設置等が報告されております。その報告によりますと、これらの措置によって救済された面積が約七万三千ヘクタールということに相なっております。現在まで、農林省といたしましては、この干ばつ被害に対しまして、かねて省内に設置をいたしておりました災害対策本部を引き続き存続をさせることにいたしまして、干害の対策に対処することにいたしたのでございますが、なお干害の激しい中・四国農政局及び九州農政局の管内の実情に対しまして、それぞれ災害対策本部を設置して対策の万全を期してまいっておるのでございます。  次に、干ばつの被害の増大に伴いまして、農林両政務次官、園芸局長、官房参事官、その他関係各局課長現地に派遣をいたしまして、その実態の調査並びに応急対策の指導を行なってまいったのでございます。  それから被害各県の要請によりまして、各地方農政局も手持ちのポンプを九月十八日現在で五十八台貸し出ししまして、用水の確保利用につとめておるのでございますが、なお若干の貸し出し余裕もございますので、県からの要請があれば、可能な限り貸し出すよう準備をいたしておる次第でございます。  次に、米麦及び蚕繭の共済に関します措置といたしましては、九月二十日付で、農林経済局長名をもちまして、共済金または保険金の仮渡しの実施につきまして該当県知事あてに、傘下農業共済団体の指導に遺憾なきよう依頼文書を出しております。  なお、災害の実情からかんがみまして、等外米並びに規格外米の政府買い入れの問題がございますが、これはさきに羽越災害に措置いたしました農林省の告示によりまして、干害地域についてもこれを適用するということにいたしております。また、天災融資法の発動までの間のつなぎの資金手当てとして、農林経済局長名をもって、関係金融機関に対し、経営資金の円滑な貸し付け並びに既貸し付け金の償還猶予など、貸し付け条件の緩和について所要の措置を講ずるよう要請をいたしております。  なお、米穀の政府に対する売り渡し予約の関係につきましては、予約米を出荷できなくなった農家につきましては、予約概算金の返還の納期までの利子加算につきましては、被害の程度によっては減免措置を講ずることといたしております。また、生産者が概算金返納期までに返納ができなくなったものにつきましては、指定集荷業者が代位弁済をするということにいたしております。  次に、当然問題になってまいります天災融資法の発動につきましては、元来災害につきましては災害の終えんを待ちまして、農林省の統計調査部の調査による被害金額に基づいて天災融資法の発動をするということにいたしておりますが、御案内のように、干害が進行中であり、かつ、これはいつ終えんするか必ずしも明確でないという段階におきましては、災害の進行の停止の時期を待つわけにはまいりません。そういうことで九月二十五日現在の中間被害調査を統計調査部をして行なわしめるということにいたしまして、おおむね十月七日までにはその調査の取りまとめが可能と考えられますので、その調査の結果に基づきまして発動の手続を進めたいということに考えております。なお、その際、現状から考えますれば、まず天災融資法の適用について激甚災の指定ということが考えられると思われますので、これらもあわせ措置をするようにいたしたいというふうに思っております。また、天災融資法の発動を待ちまして、自作農資金の災害特別ワクの設定の手続を進めてまいるよう準備をいたしております。  その他、干ばつにつきまして従来とりました助成の措置、たとえば干ばつの応急対策工事等につきましては、従前の助成の例等もございますので、これについては激甚災としての確定をいたした上で高率助成の措置も考えていくようにいたしたいというように考えております。  果樹の苗木対策等についても、被害の実態等を十分把握いたしました上で、共同育苗圃の設置等については助成を考えて、その実現に努力をいたしたいというふうに思っております。  また、種子対策についても、農林省としては、過去の例により助成の対象とするように考えてまいりたいと思っております。  今回の一つの特徴として、南九州等に干ばつに伴いますマツクイムシの被害が増加をいたしておるようでございますので、これらにつきましても、今後の被害の推移に応じまして防除措置について万全を期するようにいたしたいと思っております。  なお、干ばつ被害の地方公共団体に対する特別地方交付税交付金の増額配分等につきまして、自治省の善処方を要請をいたしたい、こういうふうに考えているのでございます。
  62. 達田龍彦

    達田龍彦君 時間がもうたいへん私の予定の時間を超過いたしておりますので、質問を時間の関係から割愛をしたいと思いますが、最後に一点だけお尋ねをしておきたいのは、いま御説明がありましたように、激甚災あるいは天災融資法の適用等は行なわれると思うのであります。それから災害に対しては、共済金支払い等ということで、これまた不十分ではあろうと思いますけれども、何らかの措置がとられると思うのであります。ただ、こういうものはきわめて適切に緊急に手を打っていかないと、非常におくれてやったんではその効果が半減ないし全然ないということになりますので、緊急な問題でございますから、できるだけ適切に早急に手を打つということに配慮をいただくと同時に、もう一つは、各地を回ってまいりまして要望されることは、とにかく入るべき収入がないので生活に困るということを各農業者の方々から訴えられる。でありますから、この際私は、一つの方法として、過去にもそういうことが行なわれたということを聞いておりますけれども、いわゆる救農土木事業ですね、こういうものを被害のきわめて激甚なところに対して農林省が責任をもって行なうということをしてもらってはどうだろうか、すべきではないか、こういうふうに考えているのであります。単なる一般的な公共土木事業ではなくて、救農土木事業というものを起こしてみてはどうか、起こすべきではないかというふうに、こういうふうに考えておりますけれども農林省の御見解を承りたいと思うのであります。
  63. 檜垣徳太郎

    説明員檜垣徳太郎君) いわゆる救農土木事業等による被災地域における就労機会の確保並びに労賃を得させるというようなことについて関係県からの要請等を受けているのでございますが、過去にも救農土木事業などの措置をとった例もあるのでございますが、この問題は、一見非常に有効なように見えるのでございますけれども、被害地域実情なりあるいは対象とする事業の内容いかんによりましては必ずしも効果的ではなかったという経験もあるのでございます。私は、今回の場合、しかるがゆえにそういうことに配慮しないというような態度農林省がとるわけにはまいらないと思うのでございますが、現段階におきましては、農業関係の土木事業並びに建設関係の土木事業等で被災地域の救済という意味を十分に持たせて、これらの予算の運営に十分配慮をしていくということが少なくとも必要であると思うのでございますけれども、それ以上の問題につきましては、政府内部におきましても、また関係各県とも十分協議をいたした上で慎重にきめるべき問題であろう。と申しますことは、いずれにいたしましても土木建設事業でございますから、事業の準備その他も整いませんでやりますれば、これはあとでその効果等にいろいろな問題が起こってくるわけでもございますので、この段階でいわゆる救農土木を農林省として取り上げてやっていくという結論まで達していないという状況でございます。
  64. 達田龍彦

    達田龍彦君 まだこの干ばつ問題については質問することがたくさん残っておりますけれども、時間が非常に経過しておりますので、これで終わりたいと思います。
  65. 任田新治

    理事任田新治君) 本件については、この程度にとどめます。  速記をとめてください。   〔速記中止〕
  66. 任田新治

    理事任田新治君) 速記を起こして。  これにて暫時休憩いたします。    午後零時三十一分休憩      —————・—————    午後一時十七分開会   〔理事山崎斉委員長席に着く〕
  67. 山崎斉

    理事山崎斉君) ただいまから委員会を再開いたします。  甘味資源に関する件を議題といたします。  本件について質疑のある方は、順次御発言願います。
  68. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 私は、過般の国会が終わりましてからただいままで、もっぱら岩手県下のビート栽培地帯を文字どおりくまなく回って歩きました。あるいは農家の縁側で、役場の町長室で、そして農協の営農指導員に、あるいはまた県の農業改良普及員に、どの村でも、そして夜は必ずといってもいいほどビート問題に焦点をしぼった座談会を持ちまして、ビート生産農家のなまの声を率直に聞く機会を持ってただいままでまいったわけです。  その中の一、二の例を拾って申し上げますと、九戸郡に大野村という村がありますが、この村に柏木畑という部落がありまして、岩手県でもかなりビートの栽培面積の大きい農家があると聞きましたので、その農家まで行ってまいりました。これは奥寺誠人という青年でありまして、おととしも去年も、そしてことしも、政府の施策を信じてビートを一ヘクタール栽培をしている農家を私は実際に学んだわけであります。この奥寺君は、いよいよ政府が無責任にもビートに見切りをつけたということで、来年からどうするんだという意見を聞きましたら、再び大正時代の畑作経営に戻って、ヒエと麦と大豆の二年三毛作に返るほかがないといって、非常に政府に対する不信を嘆いておりました。この農家はもとより、これらはビートパルプと結びつけた、短角を六頭持っておる有畜農家の一つの例であります。また、今月の二十三日に岩手県の葛巻町という町の町長に会いましたが、この町長は、どうも最近政府や県の間で話が進められておるあの考え方ははなはだけしからぬ、何としても、圃場で見舞い金を出すならば、北海道の実勢価格に従来の地域加算を入れた七千三百八十円をトン当たり補償すべきであるし、その上に、従来の正常な圃場が再開されてあればもらうであろういろいろな奨励金、その中にはビートバルブの還元に伴う奨励金等も含めて上積みをして、これは補償をかちとってもらうように国会で働いてくれ、ついては、二十八日に岩手県下の町村長会議があるので、この会議で私の意見を堂々と動議として出して採決をするつもりである、というのが葛巻町長のことばであります。  私は、ここまる二カ月の間、岩手県下のビートを中心にして行脚をして得た結論というものは、生産農民の政府に対する憎しみに燃えている憤りであります。国民一般の政治不信の高まりであります。倉石農林大臣、政治には、これはいささかも国民を欺くことは許されません。私は、これから大臣に対して政治責任を追及せざるを得ないことをきわめて遺憾に思います。  大体このビートのそもそもの北東北における経過を回顧いたしますと、大臣もすでに御承知のように、農林省がビートについてにしきの御旗を掲げたのは、昭和三十四年二月の甘味資源自給力総合対策をきめた省議の内容であります。そのときの農林大臣は三浦一雄、そして事務当局の実質的な旗振り役が当時の食糧庁長官の渡部伍良、振興局長の増田盛等がこのにしきの御旗を掲げる主体的な役割りを果たしておった。そのときに技術陣容はきわめてこれに異論を持っていたことは、大臣は御承知のとおりでありましょう。北東北に適する品種を定着せしめないで、行政が思い上がったこういう措置をすることは、将来に大きな問題を残すであろうという技術陣容の問題点、これも時の勢いというものは、吹けば飛ぶようなこういう良心など、センチメンタリズムとしてもみつぶす例はかなりあるわけです。ビートがその典型だったわけです。  このときの総合対策の内容というものは、昭和四十三年を目途に国内の必要とする甘味資源の五〇%を自給をするということであって、それから、これを省議から立法措置に訴えて、甘味資源特別措置法案を国会に政府が出したのは、忘れもしない昭和三十八年の三月であります。私はこの法案を審議して、非常に抵抗を感じましたのは、政府の法案の中に盛っている最低生産者価格の告示する内容と、当時すでに取崩されておる実勢価格との開き、これがやがて今日のような大きな問題を胚胎するであろうとは私も想像しませんでしたが、少なくとも実勢価格を下回るような最低生産者価格を告示するという法律の明文の中には、問題が起こったときには政府は責任からのがれるという落とし穴があったことを、私はいまにしてこれは指摘せざるを得ないわけであります。そのときに国会では、これを審議未了に二回し、継続審議にし、ついに矢折れ刀尽きて参議院の本院で成立しましたのは、忘れもしない昭和三十九年の三月三十一日であります。時の赤城農林大臣に私は午後十一時過ぎにお尋ねをいたしました。この自給度を高めるということについて、政府はいかなる成算があるのか。それに対して赤城農林大臣は、昭和四十三年には青森には五千ヘクタール、岩手には四千ヘクタール、秋田には二百ヘクタール、これだけを栽培を増強させるのだと。そのためにあらゆる奨励施策を講ずるということを私は信じて、この法律に賛成をして、この三十一日にこの本会議で成立した経過があるわけであります。しかるに、事態はむしろ岩手の四千ヘクタール。青森の五千ヘクタールは軽く消し飛んで、すでにもう無に帰そうとしている。私は、政治の責任というものは、これほど具体的で顕著なものはかつてなかったと思うのであります。いろいろこれには原因があるでありましょう。  それは、たとえばこの法案の審議中に起こった昭和三十八年八月末の砂糖の自由化の強行でありましょう。これは申すまでもなく、自民党内部の派閥の一つの具に供された理由もあったわけです。いずれにいたしましても、砂糖を生産する国で、世界広しといえども、完全に自由化をやっているような勇気のある国は、世界広しといえどもモナコ一国を除いては他にありません。したがって、この完全自由化の大きな影響と、それから農民がビートに積極的に取り組みかねている第二の理由というものは、申し上げるまでもなく、これは実勢取引価格があまりに生産費を下回っているということです。また、行政の不一致ということもこれはあげなければならない。  いまの園芸局では、その立場からビートの生産増強の旗を振ります。しかしながら、一方では水田についてのいろいろなやはり行政指導をやる。青森の例が具体的でしょう。ビートをつくるよりは畑を水田化したほうがよりこれは所得がはっきりと向上するのでありますから、何度ビート、ビートと申しましても、農家は実利に重点を置きますから、農業水利さえ解決すれば、これは従来の畑作から水田に転換することは当然である。行政の一貫性というものが一体どこにあるのか。ほんとうにビートを四十三年の展望に立って国内の甘味資源の五〇%の自給力を高めるという高度の政策意欲を盛るなら、それにふさわしいような背景をなぜ政府は樹立をして、その政策の上に着々としてビートの増産を進めなかったか。まさにこれは行政のセクショナリズムのやはり犠牲の産物であるとも言わなければならない。  冒頭に申しましたように、試験研究のまだ十分できていない北海道に導入された、月寒でやった北海道の品種をそのまま入れますから、青森あるいは岩手では葉腐れに弱い、反当収量が低い。こういう一つの技術的なものを克服するのに一体何年かかると思いますか。それらをやらないで、単純にこれを押しつけたところに今日の悲劇を生む理由がまたあったと思うのであります。私は、それらをあげれば切りがありません。限られた時間に大臣に具体的にお尋ねをするわけであります。  ここに持ってきましたが、「地上」という雑誌があります。これは家の光協会が毎月百三十六万部を農協を通じて配給をしている協会の雑誌でありますが、この八月号に出ているが、農林官僚が責任をもって坊主になれと書いてある。私の意見ではないですよ。大臣、読んだですか。食糧庁長官、読んだですか。それだけの責任をもって私のこれからの質問に答えてもらいたい。三月三十日にこの農林水産委員会であなた方は私の質問に答えた、その答弁と寸分違わない、私の尋ねたその基本精神を尊重して、これからの私の質問に答えてもらいたい。政治家はうそはいささかもあっては許されない。こういうことを私はまず冒頭に注意をしておく。  それで、具体的にお尋ねいたしますが、地方の新聞には、今月の二十七日に農林大臣は、青森県の知事と岩手県の副知事のようですが、昭和四十二年産の北東北てん菜の処理について、明確な大臣の意思表示がされたようであります。それは一体どういう内容のものですか、正式にこの機会お答えを願いたい。
  69. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) ただいまお話がございましたように、二十七日に青森県知事及び岩手県の副知事さんが見えまして、もちろんその前々から渡辺さんも御存じのように、ビートの問題につきましては、本省からそれぞれの班を編成いたしまして、現地調査にもおもむき、それから本年産のビート並びにこれから先に転換するならばどういうことがいいかというふうなことについて、いろいろな角度で検討する調査団を派遣をいたしました。その間にいろいろ意見の交換が行なわれたわけでありますが、ただいまお話しの北東北のビートにつきましては、私ども農政を扱うものとしては心の痛む一つの問題であります。最近は羽越の豪雨の災害、またはきわめて最近の中国、四国の干ばつ等、そういうことと同じように、私どもといたしましては、現実に先行きを考えられてビートに専念してこられた農家の方々のことを考えますと、できるだけのことをしなければならないと考えておるわけでありますが、御承知のように、北東北における四十二年産ビートにつきましては、工場の再開、活用の方向でいろいろな努力をしてまいったわけでありますが、種々の事情によりまして現地の工場の活用を断念せざるを得なくなった。また、北海道へ移送して砂糖原料として活用することにつきましても、いろいろ問題があります。結局、製糖原料とすることについては断念をいたし、飼料用またはアルコール用等に転用することもやむを得ないであろうという結論に達したわけであります。このため農林省といたしましては、関係生産農家の所得を極力確保いたすということに努力をいたしまして、方針を定めた次第でありますが、いまお話しの二十七日の会見には、この当方の方針をお示しをいたしたわけであります。  それは、第一に国は、北東北の四十二年産てん菜の生産量、これは御存じのように、まだ量として明確ではありませんから、その書きました文書には六万五千トンないし七万一千トンと書いて差し出してありますが、これに対し最低生産者価格、トン当たり六千九百七十円に見合う金額を財政的に負担することといたしまして、おおむね四億五千万ないし五億を県に対して補助いたすと、これが第一であります。第二は、県はこの金額を生産量に応じて市町村経由で生産農家に交付するものとする。まあこの場合、やむを得ない場合は作付面積に応じて交付することもあり得るということをカッコして加えておきました。第三は、県は生産農家に対して、てん菜の飼料用、アルコール用等への転用について指導するとともに、自家用以外のものにつきましては、従来の慣行取引価格、すなわちトン当たり七千三百八十円と最低生産者価格との差、すなわちトン当たり四百十円が充足されるように努力するものとする。こういうことで当日の会見には両県の知事及び副知事さんにこの意向をお示しいたしたわけでありますが、青森県知事はやむを得ないという旨を答えられましたが、岩手県の副知事さんは返事を保留いたされました。しかし、基本的に反対態度であるとは私どもは了解いたしておりません。二十七日の会見につきましてはそういう次第であります。
  70. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 いま御披露になった、提示された処理の構想は、仄聞しますと、もう一項あったそうでありますが、それが御披露にはないから……。聞いた思いますが、それはどういうことであって、どういう経過ですか。
  71. 大口駿一

    説明員(大口駿一君) 実は私ども正式にその会合で大臣から知事さん並びに副知事さんにお示しした文書は、いま大臣が申されました三項目だけでございますが、あるいは渡辺先生がもう一項とおっしゃっておられるのは、事前にいろいろ事務的に御折衝している段階のものにこれと違う内容のものが入っておったということをさしておられるのかと思いますが、そういうことでございますか。——事務的に御相談をしておりまする段階では、県がおとりになる措措置についてもいろいろお話し合いをしたのでございますが、県が自主的におとりになることについて国があれこれと差し出がましく申し上げることはいかがという趣旨で、文書の中に掲示をしないこととしたものがございます。
  72. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 何か奥歯に物のはさまったような答弁ですが、それはいいでしょう。何となく私もわかる気持ちで、その程度にしておきます、それは。  それで、大臣、私は大臣に、いささかもうそがあってはならぬと申し上げて、これから伺うのですが、三月三十日に私はあなたに伺いましたのは、当時は北海道の実勢価格が決定されないときでありました。したがって、私は抽象的な表現でお尋ねをしたんです。毎年毎年ビートの値段というものは北海道で団交できまるわけです、四十一年までは。したがって、四十二年もそれできまったわけです、その後。それで、四十二年もきまるであろう、きまった場合は、それに当然地域加算を、トン当たり五十円を青森、岩手、秋田はしておるのだから、それに五十円を加算したものとして、農民に迷惑をかけないというように、まず第一の問題は理解していいか。それで、大臣は、そのとおりだという答弁をしておる。しかるに六千九百七十円というものをここで打ち出したということは、ここで非常に私は大臣の食言を追及せざるを得ないんで、いろいろまあその答弁を伺ってからさらに伺いますが、大体農民はフジ製糖が普通の操業をしておれば、ことしもこの十月に掘り出す大根について七千三百八十円のこれは支払いを受けるわけです。——時間の関係上続けて言いますよ。そのほかにペーパーポットとか農薬代とか肥料代というものの補助も受けておる。従来も受けておるし、ことしも三月にそういうものを約束をして、約束を受けて農民は種をまいて栽培をしておる。これは一トン当たり九十円相当です。これも農民にいささかも迷惑をかけないという対象と理解していいか。基本的精神はまさにそのとおりだ、大口食糧庁長官も補足的にそういう答弁をしておる。第三点は、いろいろな奨励の中に、金額が多少上回りますから私は分離して言うのですが、ビートパルプの還元という問題がある。これが時価よりも安くこれを還元廃棄をしておる。六十キロ六百五十円。時価をどのくらいに見るかということがことしのその差額になるわけですが、まあ北海道、北東北は別してことしは大豊作でありますから、したがって、ビートパルプの時価も去年よりは下回ると見なきゃならぬと思います。かりにことしのビートパルプの時価を千二円円とします。そうしますと、これを一トン当たりの換算をしますと四百七円になるわけです。これも農林省は計算済みのはずだ。これも当然農家としては期待して栽培しておる。換金作物としてビートを植えつけておる農家は、現金でこの奨励金を期待して栽培しておる。  この三つをあわせて、当然のこれは農民の期待する金額、これを大臣は三月三十日の私の質問に明確に、迷惑をかけないという内容として答弁をされておる。しかるに、いま御披露になったこの四十二年の処理の内容は六千九百七十円でしょう。そしてきらに、畑にそのままくれてやると称するもので資金化をするものは、処分をして差額を生み出せ、これはそれでいいでしょう。そうすると、残った問題は、九十円のペーパーポット等の奨励金とビートパルプの奨励金については、これでいいと言った竹内知事の感覚もぼくは疑わしい。知事がそう言ったところで、生産農民はこれは了承するはずはない。断じてない、青森県といえども、岩手県といえども。幸いにして岩手県の副知事は返事を保留して帰ったそうですから、まだしもなんです。これは一体どこにどうするつもりですか。これでは一体、農民にいささかも迷惑をかけないとあなたがこの委員会で私の質問答弁したものと食い違いもはなはだしいじゃないですか。
  73. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) ビートにつきましては、国は、私がいま申し上げておりますように、最低生産者価格トン当たり六千九百七十円に見合う金額の財政負担を行なうわけであります。県に対しましては、ただいまお話しの慣行取引価格トン当たり七千三百八十円との差額の四百十円に見合う金額につきましては、てん菜を飼料用、アルコール用等に転用して充足する等の措置を指導するようにいたしたい、こういうことも知事との間に話をいたしたわけであります。そのこともただいまお話しのとおりであります。  本件につきましては、国としては生産農家に対して糖価安定法に基づいて最低生産者価格を補償されるように財政負担を行なうことといたしたのでありまして、ただいまお話しのその他のものにつきましては、これはビートとして工場に渡され、工場がそれを引き取って製糖するという最終の段階を経るその途中で、工場から、会社側からビート生産者にそういう名目で手交されている金額を含むわけでありますから、私どもといたしましては、先ほども申し上げましたように、生産量、やむを得ない場合には作付面積で計算をして、そしてその価格を国が財政負担をするということでありますので、私が農村の人々に迷惑をかけないと申し上げました財政負担といたしましては、私は少しもうそを言っているつもりはないのでありまして、てん菜を、六千九百七十円を国が支出するということは、それによっててん菜を買い上げるというわけではありませんで、てん菜の利用につきましては農家がひとつ自由に処分しなさいと、こういう考え方でございますからして、生産農家に対してそのために国が不当な迷惑をかけるというつもりは毛頭ないのであります。その辺はひとつ御了承願いたいと思います。
  74. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 それは三百代言的答弁ですよ。農家は砂糖原料として栽培しているんですよ。国から、県から、市町村の指導を受けて、毎年のように、ことしもビート糖の原料として栽培をしている。ところが、一私企業であるフジ製糖が、バンクラプトしたか何か知らぬが、手をあげた。これだって、もうくろうと筋では去年から、いっそういうような休業宣言をするか、年が明ければ時期の問題だと、ちゃんと言うてるんじゃないですか。そういう場合に、私が大臣に伺いたいのは、政府というものは法律に違反しないことにはきゅうきゅう如としていますけれども、政治責任なり、行政責任なり、道徳的な責任なり、倫理的な責任というものは何ら顧みないということを私は指摘せざるを得ない。私が三月三十日にお尋ねをしましたのは、ここに速記録を持ってきておりますが、現実に実勢価格というものを期待して栽培をしているんだと。現実にこれを従来どおりに販売をするということを前提として、奨励金を期待しているんだと。相手がたまたま休業したということで受けるであろう損害は、大臣の答弁によれば、いささかも農民には迷惑をかけないという答弁を受けておる。そのいささかも迷惑をかけないという農林大臣答弁では、はなはだ心もとないから、私は三月三十日のこの委員会で具体的に、いまでいえば七千三百八十円というものと、いまでいえば九十円という補助金と、いまでいえば四百七円という、最低でありますが、そのビートパルプの奨励金というものを農家が期待して栽培しているのだから、それを現実的に政府が行政的な責任でこれは補償の責めに任ずるのであるという内容として具体的にお尋ねをして、大臣の確約を得ているわけです。その総額は、これは七千八百七十七円になる。七千八百七十七円というものは、当然農家としてあたりまえなことなんです。相手がどう変わろうとも、当然これは期待していいものでしょう。欲の皮の厚いものじゃないでしょう。あたりまえのことでしょう。それをこまかく刻んで、最低生産者価格、告示したものを補償金額にする。見舞い金と最低生産者価格というものは、何のつながりがありますか。補償金でしょう。お見舞いするのでしょう。お見舞いをするなら、もっと端数を切り上げて、八千円とか、一万円ならわかるけれども、六千九百七十円なんて歯切れの悪い数字を、農民はだれひとりわかっていませんよ。わかっているのは官僚だけですよ。農民は現実に会社と取引している相場しか知らない。あなた方が突如として告示価格をここで活用するのでしょう。おわびをするのでしょう、農家に。そこで、大根は植えつけたままで、畑に見舞い金を出す。見舞い金だから、これは行政庁を通じて、市町村を通じて支払うのでしょう。それが最低生産者価格を何も援用する必要はないでしょう。もっと端的にいうならば、私が計算したような七千八百七十七円なんというような、それにとらわれないで、もう一けた上げて八千円とか、何ぼにして、せめてもの罪滅ぼしをしたらいいじゃないか、全部つっくるめて。私は全部これが政府の財政支出によるべきであるなどとは申しません、そんなしろうとじみたことは。その中で会社自体で出すものがある。しかし、さかさにしても鼻血も出ない会社ですから、出す能力には限界がある。私の調査した限りでは、およそこのペ−パーポット等の機械等を入れて、まあ大体百円前後のものは出せるでしょう。また出さずにはおかぬでしょう、行政指導としても。あとのものは出せぬでしょう。出せなければ、大臣の本委員会で約束したとおり、行政責任上これは善処すべきものじゃないですか。  以上が三月三十日の私の質問に対する大臣の答弁の内容ですよ。まあこれからいろいろ時間があればこまかい質問をしますよ。しかし、大局的に私は大臣のその方針というものをここではっきりしてもらいたい。いま北東北の農民はあなたの答弁を一言漏らさずにやっぱり注目して聞いているはずですよ。やがて新聞等を通じてこれが報道されるでしょう。誤りなく伝えてください。三月三十日にこの委員会で大臣が私の質問に答えたものと、二十七日にあなたが大臣の意思として青森県知事に申し伝えたものと、この内容ははなはだしく食い違いがある。これを訂正しなさい。
  75. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 渡辺さんもすでによく御存じのように、政府が財政支出としてまかなえる限界というものは御存じのとおりであります。われわれはやっぱりそういう範囲内でできる限りのことをしてあげたい、こういうことで、畑でつくりましたビートをいまの法律に定めておる生産費を補償してあげるということで六千九百七十円が出てきた。そこでこれを、これから先はいま申しましたように飼料またはアルコール用に御自由に処分されて計算上出てくるであろう四百十円分は、それによって十分にまかなえるようにいたしてもらいたい、自家用を除いて。そこで、そのほかのことにつきましては、これは私どもがこういう席で言及すべきかどうかは別といたしまして、こういうときには、先ほど来ビートの歴史につきましてもお話がございましたが、当時の記録によれば、地元県知事等も熱心にこれを農林省に推薦をし、また熱心に彼らも指導いたしてまいりまました。両々相まって、北東北農業の発展のためによかろうということで、だれも悪意ではなくて始まった仕事でありますが、客観的情勢が御承知のようなことになりましたり、また当該会社がああいう状態になりましたので、われわれといたしましては作付をやっておられる農家に対してはできるだけのめんどうを見たい、こういう趣旨を繰り返し繰り返しお答えをいたしておりましたわけで、今日になりまして、およそ作付数も出てまいりましたし、結局これを処分するということをせざるを得ないというときに、われわれが政府部内でできることの第一は、六千九百七十円、それに四百十円分はいま申し上げましたとおりでひとつ確保するように努力をしてもらいたい。県もそれに協力してもらいたい。おそらく各県におきましても、これに県は知らぬ顔をしておるようなことはありますまい。結局、県も何ぶんかの御協力をなさるでありましょう。渡辺さんのおことばの中にもありました会社自体が支出すべき奨励金というようなものは、これはおそらくこういう事態になりましたときに生産者も計算にはあまり入れておいでにならないでありましょう。そこで、私どもといたしましては、このたび青森県知事に申し上げました政府の考え方は、できるだけのことの努力をいたしました最終結論でありまして、政府といたしましてはこれ以上に動かすことは不可能であります。
  76. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 いまの大臣の答弁で私は二つどうもひっかかりを感ずるのですよ。一つはですね、財政には限界があるという説です。なぜ三月三十日にそういうことをおっしゃらないんですか。あなたは、素朴な農民の声を私が代表して申し上げたときに、素朴に大臣として答弁をされたはずだ。そのときに財政云々ということはいささかもなかった。大臣の責任でこれは善処するということを約束されておる。財政とは何だ。私がいま指摘するものは財政上どれだけの金額と大臣は確認されて答弁されていますか。  大体財政上負担するのは、ここに書いてあるように大体五億でしょう。五億に対して、そのわずかな差額の問題ですけれども、農民にとってはそれは一円、二円を争う問題ですよね。トン当り四百円もこえるというのは大問題ですよ。これを全体で見たら、大ざっぱに見て二千八百万でしょう。五億に対して五%程度のものが、あなたのような閣僚の中でも最右翼の実力者倉石農林大臣が、二千数百万でこんなにあぶら汗をたらすような愚劣なことをなさらぬでいいじゃないですか。もう少し、なるほど佐藤内閣は、倉石農政は血の通った、この四十二年の処理については農民に一応とにかく素朴な期待を満足さしてくれたという、そういう処理をなさるべきじゃないですか。四十三年以降はこれから私は伺いますが、四十三年以降はこの問題に決着をつけぬと進まぬのですよ。そこで私は、倉石農林大臣ともあろうものが三千万にも満たないような金額で財政上の理由云々を仰せられるのは、これは私は聞こえませんぞ。五億に対して、あとなぜ二千数百万を出せないか。それはやはり六千九百七十円と七万一千トンにこだわるからでしょう。作柄がいいから八万トンくらいに見込めば、それでも出るでしょう。それは大臣のやっぱり高い次元でのこれは姿勢で処理をされることじゃないですか。まあ大蔵当局もおるだろう。私はそういうこまかなことは申しませんが、少なくとも財政的な限界があるがとかなんとかいう答弁を三月三十日におっしゃるならわかりますよ。あのときは何もおっしゃらない。  私が言うように、その当時は農林省の最低生産者価格の告示は、四十一年に比べて大体トン当たり二百六十円アップとすることはわかっておった。団体交渉ではそのアップした金額の半分の百三十円を上積みにするということもわかっておった、あの当時。したがって、ことしの北海道の団交の取引価格が七千三百三十円というのは私はわかっておった。それに五十円加算することはわかっておった、七千三百八十円、それにいろいろな奨励金を足して七千八百九十九円か、そういうものが当然これは——七千八百七十七円ですね。これは当時からわかっておった。これを財政上の理由というその一つの歯どめになるのは、トン数を低く見るかあるいは単価の六千九百七十円か、どちらかにあまりにとらわれるから一これは掘ってみなければわからぬでしょう、七万トンになるか八万トンになるか。  私は青森県には行きませんが、岩手県に、同じ村に三回くらい行きましたよ、この二カ月間に。高冷地帯では非常な増産です。来年からやめるというこの年に限って、非常な増産。まあ大体政府の見方では三・二八トンくらいに見ておられるようですが、私は三・五トンを上回ると見ております。ここでも違いますよ。財政上のそういう限界を越えますよ、そういう場合は実収は。だから、そういうもので頭を押えたのでは、これはまた六千九百七十円が、金額も下がるでしょう。そういうことじゃないでしょう。問題は、あくまでも普通の状態であれば農家が取得したであろう、期待する金額を全面的に政府が補償することでしょう。その内容は、まあ県の責任も云々されました。それはあるでしょう。  私は、農業改良普及所その他も、何回も行きました。彼らは、勤務評定までせられて、栽培の奨励をやったのですよ。上のほうから、この村に何ヘクタールをやらせろ、やらせたかと、勤務評定で追いかけられて、その改良普及所がフルに動員させられた。そういう責任も、私は県当局にある、ないとは言わぬ。しかし、基本は、県も、やらせろと言ったそのもとは——だから、私は冒頭に言うことには、昭和三十四年の省議決定ですよ。甘味資源自給力強化総合対策、このにしきの御旗が農林省の政治的な責任のこれは一つの大きな基点になっておる。その政府が掲げた省議決定のにしきの御旗をかついで下請をやったにすぎない、県当局は。こういう歴史の展望の上に立ったら、県は微々たる一つの位置づけにすぎないでしょう。何としてもその責任の中心は農林省です。それは農林大臣はその後数代もかわりました。倉石さんとしては迷惑な話でしょう、個人としては。だけれども農林大臣というその責任ある立場に私は追及せざるを得ないわけです。  財政上の責任は、これは撤回してください。撤回して、財政的にこれは負担してください。あなたの答弁によれば、内容は財政上の理由であります。財政上の理由は、あなたの政治的な手腕をもってこれを解決していただきたい。県の責任は、これは私は従たるもので、この場は、全面的に、まず政府の三月三十日の答弁を全面的に具体的な施策の中に生かしていただきたい。それによって、さらに付随的な責任は県当局も持つでしょう。県が持つ場合に、国が三月三十日の答弁にもかかわらず、十分にその責任を果たさなかった場合に、われわれはどうして県当局を責めることができますか。まず、国自体がその範を示すべきだと思います。だから、財政上の負担という理由は、この際撤回して、三月三十日の私の質問に対する答弁に率直に答えて、去る二十七日に二県の知事ですかに申し渡した事項をこれは訂正していただきたい。
  77. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 財政上のということばを用いましたのは、金額の額について私が申し上げたわけではないわけでありまして、私ども政府部内で財政当局と今般の処理を話し合いますにも、やはりこれだけの生産者に対する金額というものは法律に定めておる最低価格である、これは政府が負担してあげるべきではないか、こういうように、つまり財政当局を納得せしめるに足りる数字の基礎をそういうことで出しました。渡辺さんはおそらくおなかの中では、人さんのおなかをそんたくして相すみませんが、財政当局としてはよくやったと、こう考えてくださることだろうと思いますし、農林、食糧庁当局が財政当局と折衝いたしました過程において、私は実は心配いたしておったのでありますが、よく踏み切ってくれました。そこでこれは当然われわれが負担すべきであると。  そこで、あとはまあ繰り返すことになりますからやめますが、四百十円分は、先ほど申し上げましたようなことで十分これはまかなえますし、あとあとでこれから県当局ともいろいろ話をして、先々のこともあるからして、まず大体において生産者には迷惑にならないようになるのではないだろうか。  私が三月申しましたあの当時は、今日と事情が変わっておりまして、まだ実は会社、工場に立てこもっております労働組合の諸君も、ざっくばらんに私の気持ちを申し上げますならば、あんなことをやって立てこもっておって、労働者の利益にも生産者の利益にもならないのでありますから、当時は自由民主党の議員さんも社会党の議員さんもそれぞれの角度でいろいろに説得していただきまして、私はおそらくその説得が成功するだろうと心ひそかに期待いたしておりました。あれがたとえ今年だけでも操業されるということになりますならば、当然七千三百八十円はペイされたわけでありますからして、何も生産者に御迷惑をかけることはありませんでした。ところが、御存じのような結果になってまいりまして、今日になったわけでありますが、私が生産者に迷惑をかけないと申し上げましたその精神はいまでも変わりはありませんで、政府部内としてはできるだけのことをいたしたのが今回の措置でございます。したがって、いろいろ相談をいたしまして決定した方針でございますので、これを動かすことは今日はできません、こういうことを申し上げておるわけであります。  それからもう一つ、ここのところ、まあ渡辺さん、私がさっき申し上げました回答を熟読玩味していただければよくおわかり願えると思うのですが、県はこの金額を、生産量(やむを得ない場合は作付面積)に応じて市町村経由で生産農家に交付するものとすると、こうなっているわけでありますから、いま生産量というものは確実にはっきりしておるわけでもありませんし、これからそういう取り扱いにつきましては十分に慎重いたしまして、できるだけ生産者に御迷惑をかけないようにいたしたいものだ、こういうことが私の念願しておるところであります。
  78. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 どうも大臣の言うことは、この前の速記録を見ると、言いのがれなんですね。まさか会社側が操業停止になるとは思わない前提で三月三十日の答弁をしたというような前段のお話でありましたが、しかし非常に頭悩明敏な大口食糧庁長官はこういうふうに言っておる。「会社がかりに操業を停止しなかった場合に生産農民が期待し得たであろう価格というものを、かりに会社が操業停止をした場合といえども農家に期待できるような措置を講ずるというのが大臣の御答弁の基本的の考え方でございます」、こういう補足答弁をしておられる。その基本的な答弁とは何か。私の質問は何回も同じことを言うておるのですが、きょうもそういうことなんですが、四十二年度の実取引をそのまま踏まえて四十一年度と同じように政府は責任をもって処理する、その他各種奨励金というものトン当たり五十円を加算する、こういうものを全部政府は、大臣は約束をするか、こういうことです。私がきょういままで言うたことと同じようなことを言っておる。それに対して国務大臣倉石忠雄君はこう言っておる。「多くの農民に不安を持たせることはいけませんから、先ほどお話しのように、四県知事が上京いたしましたときにも先ほど申しましたように答えたわけでありますが、いまお話しのように、北東北のてん菜は、北海道のてん菜といままで同一の価格でございました。したがって、本年も、御指摘のように四十二年度産につきましても、同様なやり方でその実現をいたしますように、それを目途として私どもが責任をもって対処いたしてまいるつもりであります。」、こういうことをあらゆる機会答弁しておる。だから、基本価格七千三百八十円、ペーパーポット奨励金九十円、ビートパルプ奨励金四百七円というものを北海道の取引と同じようにやる、これは会社がかりに操業しなかった場合でもやるということを大口長官が補足説明まで加えておる。そういう前提であれは答弁したのじゃないという言いのがれは許しませんよ、きょうは。あなたはそういうことを言うておる。そういうものじゃない。操業停止をした場合でも、停止しなかった場合と同じような期待を農民が持っているものにこたえるのが大臣の基本的な精神である、こういうことであります。  だから、これを続んでみればそういうものはどこにもない。七千三百八十円にこれを直して、そうして各種奨励金はそれに加算をする。その奨励金をどうしても生み出せなければ、畑にある大根でそれをまかなって、足りなければ、さらにその差額を持つとか、そういう具体的な話ならわかるのですよ。ただこれ以上は財政的にもできない。読めば含蓄があるが、作付面積で補償をする。一体これがいいかどうかは、私はいままでの政府の態度から見たら、まゆつばだと思う。非常なくすぐりだと感ずるけれども、反面に不安を感ずる。悪平等になるかもしれない。ほんとうに増産というものを現実に作付の中に十分見ることができるかどうか、そういうプラス・アルファのようなにおいよりは、適正にやはりこれは約束した価格を確実に補償するというガラス張りの補償というものが私はまじめな態度でなければならぬと思う。だから、何としても、どこから聞いても、あなたのきょうの答弁は三月三十日の答弁を食言するものだ、ことごとく。納得できませんよ。
  79. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 私は少しも食言をしているつもりはございません。政府は不断のできるだけの努力をいたして今回の態度を決定いたした、こういうふうに思っております。
  80. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 私は、努力をしたとかしないとかいうことじゃなくて、努力されておられるのは、これは大臣として当然の責任でしょう。努力しなかったら、これは一日も内閣に列席する資格はないわけでしょう。私だって努力をして、積み重ねて、農民の声をここに反映している。そこら辺へちょっちょっと出かけてやっているのじゃない。朝は六時から起きて、夜は十二時前に帰ったことはない。きょう傍聴に来ている岩手の諸君はよくわかっているはずだ。そういう実態の中から客観的な声というものを集約して私は言うておるのですよ。もう少しまじめに答弁したらどうですか。まじめにやってこれ以上何ともならないというのなら、なぜ三月三十日の答弁をあなたはしましたか。それと食い違うから、ぼくは食言だと言うのです。食い違わないためには七千三百八十円にしたらいいじゃないか。
  81. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 七千三百八十円というのは、生産者が自分の労力で工場に持ってきて、それが原料として確保されるように持ってまいるということで七千三百八十円が出ておるわけでありましょうが、今回のは単に畑に植えたままで、それに対する補償先ほど申し述べましたような手続で生産者に渡すわけではありますから、それから先は自家用あるいはアルコール用、飼料用、それぞれにお使いになることは御自由である、そういう処置をいたすわけでありますから、私は生産者に迷惑をかけないと言っておる最大限度の処置は政府としてはやったものである、このように理解をいたすわけであります。
  82. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 それでは、話が少し具体的になったから、大臣に具体的に伺います。それだけおっしゃるなら、大臣に伺いますが、六千九百七十円というのはどこで保証されている価格ですか。これはやはり受け渡し場所です。受け渡し場所のその建て値を圃場で約束するなら、受け渡し場所の建て値の七千三百八十円を圃場で約束しても同じじゃないですか。この点はどうですか。
  83. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 七千三百八十円の中には、先ほどお話しのように会社の奨励費も含まれております。その他の四百十円、それから四百円、そういうものも含まれておるわけでありますが、私どもやはり圃場でこれをそのまま受けておるとすれば、やはり法律に定めた最低生産者価格で査定をするということが当然なことではないか、こういうふうに理解をいたします。
  84. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 とんでもないことをおっしゃりなさんな。七千三百八十円は会社の奨励金は含んでいませんよ。だから、あなたの頭が混乱するのだ。七千三百八十円のほかに奨励金がある。そこら辺を、ここら辺でもやもや大臣が言うのじゃ、これはまず思想を整理してかからぬと、ぼくの一時間半が三時間あっても足りぬじゃないか。そんなとぼけた答弁をしちゃだめですよ。七千三百八十円は奨励金の外です。これはもう答弁無用。  それで、運賃という話が出ましたが、六千九百七十円の運賃は原価計算上幾らになっていますか。
  85. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) ちょっといま調べまして……。
  86. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 時間がないから、いいです。ぼくは二時半まで、大臣が退席するというのでもう時間がないから、それはいいというより、これは従来しばしば生産者の告示価格の原価計算に、圃場から集荷場所までの持ち込み運賃はいかなるものであるかということを聞いておるが、ただの一度もその原価計算の内容を政府では明らかにしたためしなし。きょうそういう質問があるだろうと思って、ゆうべ一夜づけにあるいはつくってきたかもしらぬが、いままで一度も、いかなる機会にも、いかなる場所でも明示したことはなし。そういうときに、いまに至ってそういう圃場から掘り出して運賃をかけて、労力をかけて——運賃に恩を着せることは非常におためごかしのこれは作為的な説明ですよ。いいですか。告示価格が受け渡し場所であるのを圃場で払うなら、私の主張は受け渡し場所で実勢価格で約束したものを圃場でやるのと同じじゃないですか。もう何回言ったって、それは反論する余地がないほど明らかですよ。素朴なこれは考え方ですよ。  それから、一体掘り起こして泥を落として車に積んで持っていく、これが特別かかるようなことをおっしゃいますが、えさにするといったって、これは共通労働部分なんですよ。畑の中に大根を植えたままでは、豚も牛も食えませんよ。自給飼料にしようとしても、掘り起こす労力が要りますよ。土を落とす労力が要りますよ。サイロに切り込むカッティングの労力が要りますよ。共通の労力が要る。何もこれは特別に恩恵を与える部分的な問題じゃない。トップはこれはえさにしようと換金しようと、これは共通なものなんです、栽培農家にとっては。だから、何らこれで特殊的な恩恵で、六千九百七十円を圃場で見舞い金を出すという理由にはいささかもならない。かりにえさにしないで現金にかえるとしても、この農家がトラックの入る場所まで運搬する作業を伴うから、従来の集荷場所に持ち込む労力とこれは似たような労力を必要とするわけです。だから、何としても政府の考えるようなその理由にはこれはなってこないわけです。  大臣はどうしてもこれは何ともならないとおっしゃるけれども、何ともならなければ、三月三十日の答弁は取り消すのですか。それとも、政府としてはここで少しく政治責任を感じて——私は法律的に責める手がないわけだ。法律的には、最低価格で補償せよなんということはどこにもうたっていませんよ。こんなケースは法律にもどこにもない。どれだけお見舞いをするかという、そのお見舞いだけでしょう。それをはばむものは財政的な制約だけでしょう。それならば、もっと大臣の立場で、農家が期待し、三月三十日にあなたがこの委員会を通じて国民に公約した、そういう政治責任をとらなければならぬじゃないですか。道義的責任を感じなければならぬのじゃないですか。そんな責任はとらなくていいんですか。いまこのビートを中心として青森、岩手では政治に対する不信感は想像以上ですよ。これを払拭するのがわれわれ政治家の任務じゃないですか。あなたは官僚じゃないでしょう。官僚の上に立った大臣でしょう。大臣の立場で大所高所から善処すべきものじゃないですか。この点について再考を促したい。金額にして、私と大臣との間の食い違いは三千万足らずです。これを何とかひとつ農林大臣の御努力によってこれは善処をしてもらいたい。北東北のこのビートがこういう状態でなければ、ビートの振興対策の費用が四十二年の予算に八千三百万計上しているでしょう。この金をただむだに遊ばせぬわけにはいかぬだろう。もっとこの四十二年の処理をあたたかく措置するために、大臣は大局的に善処すべきじゃないですか。八千三百万は別個に使用するのですか。いろいろあるでしょう。私は、農林省内部のそういうこまごましたことはわかりませんが、要するに、この農家が素朴に期待しているものにこたえるために二、三千万というものを出し惜しみするかどうかということにかかっているのですよ。検討していただけますね。
  87. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 私の気持ちは、当初この北東北のビートの問題が起こりましたとき以来、今日も少しも変わっておらないわけでありまして、その後いろいろ努力し、調査し、検討いたしましたことは、渡辺さんもよく御存じのとおりであります。その結果、政府部内で相談をいたしまして取りきめました方針が本日申し上げましたとおりでありまして、したがって、最大限の努力をいたしました結果こういう措置をいたすことに決意をいたしました、このように申し上げておるわけでありますか、これから先いろいろ——この間も知事さんたちもお話をなさっておられましたが、作付の転換等について政府はやはり知事、県当局と協力をしてお手伝いをいたさなければなりません。そういう方面には特殊な事情もあってこうなったんでありますから、できる限り四十三年度の予算ではひとつあたたかい手を伸べてまいりたいと、このように考えておるわけであります。
  88. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 四十三年は、転換についてあたたかい施策を講じるというお話でありますが、まずこの問題を片づけませんと、何しろ切りかえがきかないわけですよ。たとえば、七千三百八十円というものを国がいろいろ御苦労をして捻出される、私はこれを期待します。また、本院も、三月三十日の大臣の答弁を踏まえて、あなたの六千九百七十円、それでいいという意思表示はしないはずです。本院の決意を表明します。ただ、それ以外の奨励金に対する措置も、この基本的な七千三百八十円で、圃場で見舞い金として、総体でいろいろ御苦労があっても措置をされて、国が中心となって——国だけになるかどうかは別として、国が中心となって措置されて、その線が明らかになれば、これは現物をさらに資金化をして、奨励金にかわるものを換金をするということを、生産者団体も政府に協力するにやぶさかじゃないでしょうし、われわれも政治家としてそういう協力をさせなければならないと思います。この点があいまいな限りは、それすらできないですよ。そういうときに大根は国の責任で処分しますか。農家は要らないというのがかなりある。金をくれという農家もある。この条件ではのまないという農家もある。そういうときには国はどうしますか。農業団体もこの基本的な条件がのめなければ、そういう集荷共同販売の責任は持てないという。いささかも農民に迷惑をかけないと言った農林大臣は、大臣の責任でどう処理しますか。
  89. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 先ほど来申し上げておりますように、三月お答えした当時、その前から四県知事に申し上げております当時の気持ちと今日少しも変わっておりません。したがって、そういう趣旨で今日の処置がとられた、私はそのように理解をいたしておるわけでありまして、先のこともあることでありますから、私の気持ちとしては事務的にはあとう限りの努力をいたしました。これから先もなおお手伝いをしなければならぬのでありますから、これから先、転換等については大いに努力を傾けてまいりたい、こういうことでみんなの人にひとつ政府の立場も理解していただきたい、かように申しておるわけであります。
  90. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 与えられた時間ももう残り少なくなりましたので、もう少し大臣のお気持ちを聞きたいのでありますが、大体あれですか、あなたはもう四十三年はテンカン、テンカンとおっしゃるが、かじ屋の金たたきのように、転換にきまったのですか。現地では、まだかたくなに工場再開をはばんでおった労組等が、また農民の切実な気持ちが、工場を再開して来年もビートの生産を継続したい、工場再開したいという動きがありますが、農林省は、こういう最近の動きをキャッチしていますか。
  91. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 純朴な農家の人々が、精魂を込めてつくられてきましたものに愛着を持たれる気持ちは、われわれもよくわかるのでありますが、加工作物としてつくられているビートが、すでに工場はああいう状態、今日の客観的情勢で、これ以上そういうことは無理であろうということも、この社会の指導立場に立たれておる政治家諸君も、また県当局も、そういうことで私はむしろ前進していただいて、転換について県とも十分に打ち合わせて、ひとつ進めてまいるようにいたしたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  92. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 それはひとつ最近の動向というものもやはりもう一度客観的に把握をしていただきたいということだけを申し上げます。そうしてそれを把握した上の結果、どうしても転換に踏み切らざるを得ないという事態になった場合は、農林省現地調査団を派遣して、その調査団というのも、従来の農林省の担当者だけじゃなく、人数はどうこうということは言いませんが、学識経験者等も入れた、より権威ある調査団を編成して現地に行かれ、長期の展望に立つ北東北の畑作振興の科学的な調査というものをおやりになる責任があると思うのだが、まずこの点について大臣の腹はどうですか。
  93. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 先日青森県知事が見えましたときも、それからその前に、たしか米価審議会の最中だと思いますが、四県知事が来られ、あの当時大体今日のような方向考え方について概略の話し合いをいたしたのでありますが、われわれはよくその農林省側の言われることはわかるが、本日ここでいろいろな返事をいたしてまいることは遠慮いたしたい、十分地元でさらに検討してまいりたい、そういうわけでありまして、それがまあその後去る二十七日にお目にかかったそのときには、すでに将来の転換等について農林省からも十分なひとつ協力をお願いしたい、こういうお話でありました。したがって、私どもといたしましては、北東北地域のようなああいう比較的寒冷地の畑作につきましては、これからどういうふうにやるべきであるかということについては最善の努力を尽くして研究を続けてまいるよう万遺漏なきを期したい、このように思っております。
  94. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 時間がないから、これで最後の質問にしますが、とにかくこれだけの大芝居をぶって、そうして国民をだましたのですから、この政治に対する責任というものはこれはきわめて重大だと思う。さかのぼれば、これは昭和三十一年からで、省議を決定したのが昭和三十四年です。法律を制定し、次々とノルマをかけて農民をおだてて、やっと農民もその気になってビートの作付に自信を持って総合経営の中に定着して、そうして長期の営農計画の中に精進してこれからという矢先に、突如として来年はやめるとは一体何たることだ。この責任をどう果たすか。これは単に口頭禅では済まされない重大な責任がある。  そこで、私は、単に大臣を責めるつもりで言うわけではない。この問題を積極的に——やはり従来の地域格差、岩手県にも地域格差があります。所得格差もあります。農業と他産業の格差があります。農業は他産業よりも所得が低い。同じ農業でも、岩手の県南と県北は農業の所得格差がさらに低い。そういう二重の所得格差の苦しみ、政治の光から全然見放されておる地帯ですよ、このビートをつくっておる地帯は。サルの通るようなところで生活しているんですよ。シラミのようにひだに密着して生きているんですよ。南部の人間ですから、もうそれはものを言う方法もへただし、言う勇気もない。しかし、彼らの裏切られた憤りというものはだんだん話をしてくれば、ほんとうにもう身ぶるいのするような憤りをもって迎えておる。これではいかぬと思う。この連中を、信頼させて、政治の光を当てなければならない。それには倉石農林大臣の、私は、政策転換に対する積極的な施策というものをもってこたえてもらう以外にはない。大幅な国家資本を投入して、立地的な精密な調査をして、道路網を整備して、地元に直結するようなそういう流通機構を整備して、国土を高度に利用するように従来の荒蕪地を開拓していく。この機会にこの二重の責め苦にあっておる北東北の畑作地帯をふるい起こすということに、私は政府の政治責任を十全に発揮すべきだと思うのです。大臣はこれに対してかなり積極的な構想をお持ちだと期待するのですが、その所見を伺って、私の質問を終わります。
  95. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 政府が、農林省が、構造政策というようなものにつきまして時間をかけて勉強をいたしましたその結論の中にも、それからその論議の間にも、地域的な構造について特殊な事情を加味して考えなければならないということをわれわれも強調いたしておるわけであります。したがって、御趣旨のようなことは当然われわれが努力をいたすべきことでありますし、また今回特に客観的情勢が災いいたしたとは申しながら、やはり一時推奨いたしましたものが今日のような段階になりましたというようなことにかんがみまして、災いを転じて福となすために最善の努力を払ってまいりたい、このように思っております。
  96. 山崎斉

    理事山崎斉君) 本件についての質疑は、この程度にとどめます。     —————————————
  97. 山崎斉

    理事山崎斉君) この際、便宜、私から、北東北におけるてん菜に関する決議案を提案いたします。本決議案は、自由民主党、日本社会党、公明党、三党の共同提案によるものでございます。  、案文を朗読いたします。    北東北におけるてん菜に関する決議(案)   北東北におけるてん菜の処理加工を担当して  いるフジ製糖株式会社の操業休止の発表以来、  てん菜栽培農家に与えた不安と影響はまことに  深刻なものがある。   政府は、去る三月三十日の当委員会における  農林大臣の言明にもかかわらず、いまだその具  体策が示されていないため、てん菜栽培農家は  収穫時期の切迫に伴い、さらに不安焦燥感を強  め、大きく動揺していることは、きわめて遺憾  である。   よって政府は、速かに左記事項に努力すべき  である。      記  一、本年産てん菜については、政府の責任にお   いて補償等の措置を講ずることとし、その補   償額は一トン当り七、三八〇円とするととも   に、さらに各種奨励事項についても、その完   全実施を図るよう努めること。  二、本年十月中に学識経験者を含めた調査団を   編成し、北東北畑作地帯の今後のあり方を科   学的に調査すること。  三、政府は、北東北畑作地帯振興に関する総合   的対策を推進するため、所要の措置を講ずる   こと。  四、てん菜転換対策の長期計画を作定し、政府   の責任において強力に実施すること。    右決議する。  それでは、おはかりいたします。北東北におけるてん菜に関する決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  98. 山崎斉

    理事山崎斉君) 全会一致と認めます。よって、本決議案は、全会一致をもって本委員会決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、倉石農林大臣から発言を求められておりますので、これを許します。倉石農林大臣
  99. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) ただいま拝見いたしましたこの決議趣旨は、十分に検討いたしまして、善処してまいりたいと存じます。     —————————————
  100. 山崎斉

    理事山崎斉君) 次に、沿岸漁業の振興に関する決議案を議題といたします。  本決議案は、自由民主党、日本社会党、公明党、三党の共同提案によるものでございます。  案文を朗読いたします。    沿岸漁業の振興に関する決議(案)   最近におけるわが国の沿岸漁業ば、昭和三十  七年より実施された沿岸漁業構造改善事業がそ  のなかばに達している現在においても、なお、  埋立、汚濁水等による漁場の喪失、海獣による  被害等もあって、生産の伸びなやみ傾向が顕著  である。   特に、北海道におけるとど等、壱岐、対馬、  五島列島におけるいるか等の海獣による被害  は、極めて大なるものがあり、これらの海域で  は、関係漁業者の生産意欲をいちじるしく阻害  している。   政府は、沿岸漁業構造改善事業及び同補足事  業を強力に推進せしめるとともに、早急に、海  獣による被害を排除するための予算措置等を講  じ、もって沿岸漁業生産の確保と漁業者生活  安定に努むべきである。   右決議する。  それでは、おはかりいたします。沿岸漁業の振興に関する決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  101. 山崎斉

    理事山崎斉君) 全会一致と認めます。よって、本決議案は、全会一致をもって本委員会決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、倉石農林大臣から発言を求められておりますので、これを許します。倉石農林大臣
  102. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) ただいま御決定になりました決議につきましては、その趣旨を尊重して対処いたしてまいりたいと存じます。     —————————————
  103. 山崎斉

    理事山崎斉君) 次に、イモ類でん粉価格に関する件を議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言願います。
  104. 川村清一

    ○川村清一君 私は、昭和四十二年度イモ原料の基準価格でん粉買い入れ基準価格、カンショ生切干買い入れ基準価格について質問をいたしますが、与えられた時間がごくわずかでございますので、要点にしぼって具体的にお聞きをしますので、御答弁も簡単にしかも要点を明瞭にお答えをいただきたいと思います。  まず、第一にお尋ねすることは、農安法第五条第三項及び同法施行令第三条の定めによりまして、価格の決定、公表は十月二十日までとなっておりますが、ことしは十月の何日に公表する予定で現在作業を進めているのか、また、現在における見通し及び今年度のこの価格決定について問題になっておる問題点は何か、こういうような点について御説明を願いたいと思います。
  105. 大口駿一

    説明員(大口駿一君) 本年産のカンショその他ただいま御質問の農産物の価格につきましては、まだカンショについて予想収穫量が公表されておらないという事情がございまするので、現在まだ検討の段階でございまするが、制度にきめられております期限よりもできるだけ早く決定いたすつもりで事務的な検討を進めておる段階でございます。  それから本年の問題として特に問題はないかということでございまするが、私ども法律の定めるところに従って決定すべく作業をいたしておるわけでありますが、本年の問題としては、各方面からコーンスターチの問題について、この際あわせて検討を行なうべきであるという御意見も出ておりまするので、私どももそのような関連も頭に置きつつ検討をいたしておる次第でございます。
  106. 川村清一

    ○川村清一君 公表の期日でございますが、政令では十月二十日といういうふうになっております。それで、できるだけ早く作業を進めているというような御答弁でございますが、御承知のようにすでに収穫は始まっておりまして、特にバレイショ等は出荷が始まっておるといったような状態でございます。ただいまの御答弁によると、カンショの今年度の予想収穫量がまだきまっておらない、出ておらない、そこでできないといったような御答弁でございますけれども、これはもう農民のほうはできるだけ早く、八月、おそくとも九月中には公表してもらいたい。われわれも、実態から考えて、それが当然であり、そうすることをかねて主張しているわけでありますが、農林省方針としまして、今年度はいたし方ないとしましても、明年度ぐらいから予想収穫量調べをもっと早く出させるというようなことで作業を早く進めまして、農民が希望するように十月二十日までには、これは規定された期日でございますけれども、これをもっと繰り上げて、でき得れば九月中にも、もう出荷している実態でございますから、これを早く価格を決定して公表する、こういう措置をとらなければならないと思うのでありますが、これに対する御見解をお尋ねいたします。
  107. 大口駿一

    説明員(大口駿一君) カンショの予想収穫量の公表時期は十月五日でございまするが、その五日にとらわれることなく、一日ぐらいは早く私どもはつかんで作業に使いたいと思っております。ただいまのような御要望は実は昨年も伺っておるのでございますけれども、やはりカンショの予想収穫量というものを統計調査部として正確に把握する一つの技術的な限界もあるようでございますので、御要望としては十分私ども統計調査部のほうにも従来から申し入れておるのでございますが、やはりある程度の技術的な限界もあるようでございますので、私どもはできるだけ部内で数字をある程度把握が可能になった段階で、公表を待たずともその数字を事務的な検討の基礎として私どものほうの価格の決定作業を急ぎたい、かように考えております。
  108. 川村清一

    ○川村清一君 技術的な限界があろうかとも存じます。しかし、農林省がほんとうに米価に対するようないまのそういう態度を持っているならば、私はもっと早くできると思う。米価の決定は、七月生産者米価が決定され、イモ類につきましては、私が先ほども言いましたように、御承知のように、バレイショの主産地の北海道においては、もう収穫どころか出荷しておるのでありますが、この段階においてまだ基準価格が幾らになるかわからない、こういう時期に出すわけであります。そのことは、結局、生産農民に対して価格的に不利益を与える一つの要素にもなると私は考えるわけであります。したがって、カンショの予想収穫量というものの調べがただいまのお話でありますと、十月三日ですか、それ以後、しかしながら技術的な限界があるとも思いますけれども、私がいま申し上げましたような理由がありますので、これは毎年毎年この点は強く要望されておることでありますから、ひとつさらに前向きの姿勢で御検討をいただきたい。この点を重ねて御要望申し上げたいと思うわけであります。  次にお尋ねしますことは、原料イモの基準価格の算出についてお尋ねしたいのであります。これは農安法施行令第二条に、附録第一の算式によって算出される価格を基準として出すということが規定してあるわけであります。そこで、この附録第一の算式でございますが、この算式は昨年農安法を一部改正されました後に規定されたものと、私はこういうふうに理解しております。それ以前は内容は違うのですが、あてはめる数字、意味が違ってきますけれども、附録第二の算式がありますね、その算式によって昨年までは算出されておった。昨年法が改正されて以後、施行令第二条にうたっているような附録第一の算出方法に変えられたその理由ですね、その理由は何か、これをひとつお尋ねしたいと思います。
  109. 大口駿一

    説明員(大口駿一君) これは、農安法の法律の改正で、農業パリティ指数に基づき算出した価格を基準とするというふうに改められたことに基づく改正であるというふうに承知をいたしております。
  110. 川村清一

    ○川村清一君 それでは、私は、この価格を決定する附録第一のこの算式についてお尋ねをしたいと思うのでありますが、附録第一の算式P1=P0カI1分のI1、この式の内容でございますが、P1は「甘しょ又は馬鈴しょにつき算出される価格」でございます。そこで、P0でありますが、これは「価格を定めようとする年の前年に定められた甘しょ又は馬鈴しょの原料基準価格」であります。したがって、これは昨年度の四十一年度産のバレイショ並びにカンショの原料基準価格、それに掛けるI0分のI1、分子のI1は、「価格決定年の農林大臣の定める月における農業パリティ指数」、それから分母のI0は、「価格決定年の前年の九月から価格決定年の農林大臣の定める月までの各月の農業パリティ指数の平均値」である。そこで、ちょっとお尋ねしますが、I1のこの「農林大臣の定める月における」という「月」は、これは八月かと思いますが、それに間違いないかどうか。
  111. 大口駿一

    説明員(大口駿一君) そのとおりでございます。
  112. 川村清一

    ○川村清一君 それでは、分母のI0、これは「価格決定年の前年の九月から価格決定年の農林大臣の定める月までの各月の農業パリティ指数の平均値」である。そうしますと、これは昨年の九月から今年の八月までの農業パリティ指数の平均値である、それから分子のI1は、今年の八月の農業パリティ指数である、こういう理解で間違いございませんか。
  113. 大口駿一

    説明員(大口駿一君) そのとおりでございます。
  114. 川村清一

    ○川村清一君 そうしますと、この分母のI0というのは、昨年の九月から今年の八月までの農業パリティ指数の平均値でございますから、したがって、先のほうと終わりのほうは削られてくると思うのであります。そうしますと、平均値といえば大体何月ごろのパリティ指数になるか。それはわざわざ長官がお答えにならなくても、こういうことでございますから、だれでもよろしゅうございます。
  115. 大口駿一

    説明員(大口駿一君) どうも、答弁をしようと思っておりましたら、お断わりになられましたが、パリティ指数というのは、必ずしも全く平均的に直線で上がってくるとは限りませんので、ただいまの御指摘のように九月から八月までの平均は一体どこかということは、ちょっと正確にお答えすることが技術的に困難かと思います。おそらく、お尋ねになっている趣旨は、九月よりも最近に近い月になるはずであるということでお尋ねになっているとすれば、そのとおりであると申し上げざるを得ないのであります。
  116. 川村清一

    ○川村清一君 原則的にはパリティ指数は直線的に上がってこないということは、私も長官の言うとおりわかるわけであります。しかし、現在の物価情勢からいいまして、これは直線的に上がっていると、こう理解しても、私の理解は間違いではないと、私はそう考えるのであります。そこで、昨年の価格に対して、昨年から現在までの物価の情勢の中において、しかも農民がいろいろなものを購入する、そういう物価の情勢の中において、どこに平均値が出るかということは、これはやはり問題だと思います。私はむしろ昨年の九月から現在の八月までやってきますと、平均のところは、いまの長官のお話では八月に近いほう、こういうふうに言われましたが、私は、近いところよりも、何といいますか、去年の九月から今年の八月までの中の平均をとれば、むしろ三月、四月くらいではないかと思うのですが、そうじゃございませんか。
  117. 大口駿一

    説明員(大口駿一君) 私は、さっき、八月に近いほうと申し上げたのじゃなくて、昨年の九月よりも少なくとも現時点に近い月ということを申し上げたのであります。全く直線であるという仮定をすれば、あるいはいま先生のおっしゃったようになるかと思いますけれども、その点は必ずしも正確ではないと思います。
  118. 川村清一

    ○川村清一君 私は、その附録第一の算式をきのうからいろいろながめて考えたのですが、どうもこれはぴたりとこない、合理的でない、不合理であると思います。といいますことは、結局、冒頭に長官は、どうしてこういう算式に変わったのかという私の質問に対しましては、農安法の改正によってパリティ指数というものを基準にして価格を決定するということになったからこういうふうに変わったと。しからば、私に言わしめますならば、昨年の九月から今年の八月までの平均値というものは、決して昨年の九月のものではないわけです。少なくとも昨年の一番終わりの月の十二月よりももっと今年に入ってくると思う。一番早くてもせいぜい二月、そうして分子のところのI1というのは、これは今年の八月の指数であります。そうしますと、今年の早くても二月か三月のパリティ指数と今年の八月の間のいわゆるパリティ指数の変動、変化率、これを昨年の以後の基準価格にかけてことしの価格を算出するということは、これは私は合理的でないとこう思うのですが、いかがなものでしょう。
  119. 大口駿一

    説明員(大口駿一君) この附録算式第一の意味するところは、価格の連続性を保つという意味から、基礎としては今回きめようとする年の前の年の基準価格をベースにするということになっておるわけです。その点はそれで差しつかえないと思いまするが、ただいま川村先生が御指摘になりました理論をさらに発展をさせるとしますと、本来ならば、ことしの八月から来年の九月までのパリティの動きを予測をしまして、この平均をつかむ方法があれば、これを分子に使うというのが先生のおっしゃる趣旨に一番合致するのではないかと思います。現実の問題として、パリティ指数というものは先ほど申しましたように、必ずしも規則的な動きを示しておるものでもございませんので、価格を決定をいたしまする作業をいたします際にわかっておる最も新しい月のパリティ指数を使う以外に方法がないので、やむを得ずこういうふうな形になっておるものと私は理解をいたしております。
  120. 川村清一

    ○川村清一君 私はことしのこの九月から来年の八月までのものを出してやれと、こう言うのではないのであります。私の言うのは、昨年の価格があって、昨年の価格から今年度の価格をいまきめるにあたっては、パリティがどう変動してきたかということを考えるならば、むしろこういう方式をとるべきでなくして、この分母のI0というのは、これはおととしの九月から去年の八月までのパリティ指数の平均をとり、分子のI1は昨年の九月からことしの八月まで、そうすると、おととしの九月から去年の八月までのこのパリティ指数の変化、それから昨年の九月からことしの八月までの変化、この変化率というものを昨年の基準価格にかけてことしの価格を出すということが、当然最も合理的な方法だと思うのでありますが、これに対してどうですか、少なくともこの方式よりはずっと私は合理的だと思う。私の言っていることが、おまえは非常に不合理だというのであったら、ひとつ不合理だという、ぼくの言ったのはあやまちだということをひとつここで明確にしていただきたい。
  121. 大口駿一

    説明員(大口駿一君) 現在の政令で定まっておりまする方式は、先ほど私が申しましたように、昨年の価格を基準価格にとっているわけでありまするから、分母はこれで私は差しつかえないのではないか思いまするが、分子が、本来ならばことしから来年の八月までをとるべきのをとれないので、八月ということを申し上げておるわけでありまして、それがだめならば、ただいま川村先生のおっしゃるようにおととしの価格、おととしの一年間、一昨年のイモ年度のパリティの平均と去年の分の平均をとれという仰せでございまするが、そのほうが現在のこの式より、より合理的であると仰せられますが、残念ながら私は先生と若干見解を異にいたしまして、それのほうがより合理的であるとは思っておりません。
  122. 川村清一

    ○川村清一君 だから、合理的なら、どの点が合理的なのか、私の言うほうがもっと合理的ではないですか。去年の価格というものはおととしの、いいですか、この価格を決定する年次のパリティとその前の年次のパリティのいわゆる変化率をおととしの価格にかけて昨年の価格が出るというのが当然でしょう。パリティによる価格を決定するというならば、パリティの変化率をかけてスライドしていくのがパリティの算出の方法でしょう。去年の価格がある、二百二十五円という価格がある。そうしたら、この価格に、これを出した年次であるところのおととしの九月から去年の八月までのこの一年間のパリティの平均をとる、これを分子とし、去年の九月からことしの八月までの指数の平均をとる。そうすると、これをきめた去年から今日までのパリティがどういうふうに変動したかという、結局変動率を昨年きめた価格にかけてことしの価格とするのがこれは当然じゃないですか。現にこういう方法でやっているでしょう、食糧庁は。そういう方法で消費者価格はきめているでしょう。麦の買い入れ価格もこういうような計算できめているのじゃないですか。イモだけこういう方法をとるのは私はわからないのですが、どうですか、これは。
  123. 大口駿一

    説明員(大口駿一君) 消費者米価を改定いたしまする際のいわゆる家計米価の算出にあたりましては、前回の価格が決定をされました月を含みまして、家計可処分所得というのが一年間の非常に季節変動を多く持っておりまするので、それぞれ一年間の平均をとりまして変化率を見いだすようにしてやっております。で、この考え方というのは、むしろパリティも若干不規則な変動をいたしまするが、家計可処分所得の月ごとの変化のほうがはるかに季節的要素が多くて不規則——不規則というのは適当ではございませんが、季節的に一定のパターンを持っておりまするので、この季節変動の要素を除去するための手法として一年間の平均をとっておるのでございます。  それからいま御指摘になっておりますイモのこの価格の算式の問題は、私はやはり最も最近時点のパリティの変化を反映させるという趣旨でこういう式がとられておると思います。そこで先ほど私が先生の申されたことをさしまして、不合理だというふうに申したように申されまするが、不合理だというふうに失礼な言い方をしたつもりはございませんで、先生の申されるほうがこの政令の式よりもより合理的であるというふうには思いませんと申し上げたわけです。
  124. 川村清一

    ○川村清一君 長官ね、政令の式をとやかく言っているのじゃない。政令の式はこれはこのとおりでいいのですよ。同じような式はたくさんあるのですよ。   〔理事山崎斉君退席、理事任田新治君着席〕 ただ式のこの基礎を何にするか、Pを何にするとかあるいはPを何にするとか、1を何にするとか一を何にするとか、内容があるのです。その内容が違っているのです。ただ式はいいのです。私の言うのは、この一というのはことしの八月の指数である。それから一というのは昨年の九月からことしの八月までの指数の平均値であると、そうしますと、平均値ですから、これは月にもしかりに——今度は理論的でないかもしれないが、かりに合わせた場合、三月か四月になると思うのですよ。そうすると実際は三月か四月のこのパリティと八月のパリティと、このわずかの期間の変動率を昨年の価格にかけて決定するというよりも、私の言うのは、おととしの九月から去年の八月までのパリティの平均値を分母とし、昨年の九月からことしの八月までの平均値を分子として、その変動率を昨年の価格にかけたほうがより合理的な価格ができるのじゃないですかということを申し上げておる。長官はおまえの言うよりは私の言うほうがむしろ合理的だとおっしっゃいますけれども、私は長官の言われるより私の言うほうが合理的だと思っております。その議論はちょっと時間がないのでこれ以上やりませんが、これは問題ですよ。  それからこの附録第一で出てきた、これは第二条に「附録第一の算式によって算出される価格を基準とし、毎年農林大臣の行なう生産費調査の結果による生産費、附録第二の算式によって算出される価格及び経済事情を参酌し、再生産を確保することを旨として定めるものとする。」と、こうなっておりますが、そこでこの附録第一で出てきた数値に対して、附録第二で出てくるものによってこれを調整する、補正する作業になってくるわけでございますが、この附録第二には、一つには生産量というものの要素が加わってくるわけであります。一つには物価の指数というものを、物価の状況といいますか、物価情勢といいますか、そういうものが一つの要素になってこの数値の中に入っているわけですね。そこで、P1=P0カI0分のI1という附録第一の算式と同じですよ。同じですけれども内容が違うのであって、I1’は「価格決定年の農林大臣の定める月における物価指数」だ、I0’は「価格決定年の三年前の年の九月から価格決定年の農林大臣の定める月までの各月の物価指数の平均値」だ、こうあるのです。そこで物価指数とは何か。そうすると、最後の「備考」のところに、物価指数というのは、「日本銀行の卸売物価指数の調査によるものとする。」と、こうなっておる。そうすると、ここにわざわざ日本銀行の卸売り物価指数を持ってきて、このイモの価格を調整するということばどういうことですか。日本銀行の卸売り物価指数を持ってこなければこれはできないんですか。最も客観的だということでこういうことをするのですか。農民の実態——いわゆるイモの価格を決定するのですから、パリティ指数ともっと関係のある数字を持ってきたほうが私はいいんじゃないかと思うのですが、これはどうですか。
  125. 大口駿一

    説明員(大口駿一君) 附録算式の第一のほうは、いわゆる農業パリティ指数の変化率をもって推算をする式であり、附録算式の第二のほうは、これは物価の変動と需給情勢というものを反映をさして一定のめどをつけるための式であろうと思っております。そこで、イモは加工原料が大部分でありまするので、卸売り価格をとるということになろうかと思いまするが、この卸売り価格指数というものは、現在あらゆる行政の基礎になっておりまするのがこの日銀の卸売り物価指数を使っておりまするので、私はこの附録算式第二で物価の動向をにらむのにこの日本銀行の卸売り物価指数を使うということは、それ相応の意味があることではないかと私は思っております。
  126. 川村清一

    ○川村清一君 それ相応の意味のないものがわざわざ出てくるわけはないのであって、政令に意味のないものが出てくる、そんなばかな話はないでしょう。十分意味はあると私は尊重しているのですよ。尊重しておりますけれども、日本銀行の卸売り物価指数を持ってこなければ、一体ほんとうに客観的な意味のあるものが出てこないかどうかということをお尋ねしているのであって、第一のそれはいわゆるパリティ指数であるのでありますから、そうしますと、物価というものも日本銀行の物価指数ということになれば、これはもう広範なものが入ってくる。農民の生活に何にも関係のないものも入ってくる。いわゆるイモ農民の生産をするために必要な資材やその他いろんなものですね、これに何にも関係のないものまで日本銀行の物価指数の中には入るわけであります。したがって、私は物価指数を考えるのはいいけれども、日本銀行の卸売り物価指数をここに持ってこなくても、農民に一番関係のある、生産農民がどうしても生産のために必要な購入するものの物価指数、そういったようなものをここに持ってくるのが当然でないかと、こう考えるのです。  その御答弁はまたといたしまして、次にお聞きしますが、昨年本院は農安法の改正をいたしたわけであります。時限立法の形でいたしたわけでありますが、この農安法改正の大きな要点といたしまして、何といいましても再生産を確保するということを文章で明確にこの法律の中に規定した、このことが農安法改正の最大の私は要素である、かように考えております。そこで、この法改正の趣旨行政当局である政府が尊重するならば、当然この改正の趣旨が盛り込まれるような、それが具体的にあらわれるような施行令の改正がなされなければならないのであります。施行令の改正の要点は、基準価格を決定するところの算出する附録算式というものが全面的に変わったということです。この変えたことが法律の改正の最大の要点である再生産を確保するということとどう関連があるのか。再生産を確保するためにこう変えたのだ、こう変えたことによってこれだけ農民の価格が上がって再生産を確保することにつながるのだということをはっきりひとつお答えいただきたいと思う。
  127. 大口駿一

    説明員(大口駿一君) 農産物価格安定法施行令の価格をきめまする際には、附録算式の第一の算式を基準とし、第二の算式は参酌をいたしまするが、そのほかに毎年農林大臣の行なう生産費調査の結果による生産費も参酌をすることにいたしておりまするので、法律の趣旨が政令で生かされておらないということにはならないのではないかと思っております。
  128. 川村清一

    ○川村清一君 ところが、長官、附録第一の算式のことで議論いたしまして、時間の関係で結論を出しませんけれども、長官が合理的だと言われるこの出し方よりも、私が合理的だと言うこういう出し方で出したほうが基準価格がむしろ高くなるのです。そうして、このことのほうが再生産につながるのです。それから附録第二のいわゆる物価指数の問題にしても、日本銀行の卸売り物価指数よりも私の言う農民の生産に必要な購入すべきものの物価指数を持ってきたほうが、これは価格的にも再生産を確保する、そういうものにつながる価格がむしろ出てくるのです。ですから、私にあえて言わしめるならば、法律ではこういうふうにはっきりうたっている、しかしながら、政府が政令で出すところの施行令においては、再生産を確保するために具体的にこうしたというそういう姿勢をもって政令は出しておらない。むしろ価格の足を引っ張る、ひた押えに押える、こういう傾向につながる、現にそうなっておる、私はそう判断せざるを得ないのでありますが、それはそうじゃない、こういう点でもって去年はこういうふうに法律が改正されたので、その趣旨を生かすためにこういうふうに政令を改正したのだ、この政令を改正したことによってこれだけ農民に利益を与え、再生産に直接つながるということを、それならばもっと具体的に私にもはっきりわかるように御説明をいただきたい。
  129. 大口駿一

    説明員(大口駿一君) 先ほどお答えいたしましたように、価格の決定をいたしまする政令の規定では、附録算式の第一及び第二はもちろん参酌をした上でにらんできめるわけでありまするが、やはり農林大臣が調べておりまする生産費調査の結果に基づく生産費、これは法律で再生産の確保を旨としてと書いてありますことにもかんがみまして、この生産費調査の結果による生産費を下回らないような、価格をきめる際には下回るべきではないということで決定をいたしておりまするので、具体的に昨年決定をいたしました手続なり結果というものが改正をされました法律の規定に抵触をしておらないというふうに私は思っております。
  130. 川村清一

    ○川村清一君 どうも議論がかみ合わないのですが、もちろん政府で出されておるこの施行令が昨年の法律改正と抵触するなんということは、私はちっとも考えておりませんし、そんなことをちっとも申し上げておらないのであります。そんなことはありません。しかしながら、私の言うのは、この施行令改正というものが法律改正の趣旨を十分尊重して、そうしてそれをより具体的にあらわすという姿勢でなされてはおらないのではないか、やや足りないのではないか、こういうことを申し上げているのです。もちろん農林大臣が行なっておる生産費とかそういったような調査によってこれが調整されることは私も十分承知しておりますけれども、しかし、まだ何といいましても、まず政府が附録算式第一によって基準価格を出すわけでありますから、この基準価格を附録第二算式によるいろいろな数値によって調整したり、あるいは農林大臣調査する生産費、そういったものによって調整していくとは思いますけれども、こういう点においてもろもろの具体的の問題を考えてみましても、どうもそういう姿勢が足りない、十分にその精神が生かされておらないと私は考えておるわけであります。  そこで、議論をもう一つ進めますが、今度は基準価格が決定いたしますれば、それに対しまして原料運賃、あるいは加工に要する費用、こういう費用を加えた額をもってカンショでん粉、バレイショでん粉、カンショ生切干の政府の買い入れ価格を決定するわけであります。このことも昨年の法改正によって、原料運賃、加工に要する費用——加工費用を加えるということを明確に法にうたった。これも改正の大事な要点でございまして、したがって政府の買い入れ価格決定につきましても、この趣旨は十分に尊重されて価格が決定されなければならないことはこれは当然でございます。そこで原料運賃を幾らにするか、加工費をどう見るかということは、重大なやはりこれは一つの問題になってきます。で、聞くところによりますると、食糧庁並びに系統農協によりまして、この原料運賃、加工費用、これらについて共通の調査がなされたということを聞いておるのでありますが、その調査の結果、両者の間に食い違いがないかどうか、その経緯、実情、こういうものについてひとつ御説明願います。
  131. 荒勝巖

    説明員荒勝巖君) 長官にかわりまして答弁いたします。  ただいま先生から御指摘のように、昨年から系統農業協同組合と共同で、原料運賃並びに加工経費の点につきましては共同調査をいたしております。それでまあ私のほうでもまだ最終的な整理は終わっておりませんが、現在の段階で系統農協からいただきましたもろもろの資料を拝見いたしますと、それほど私のほうの調査と、いわゆる共同調査でございました関係もありまして、大きな食い違いはないものと大体了解いたしております。ただ、これはまあ多少見解の相違にあたる面はある程度あるのじゃなかろうか。と申しますのは、たとえば借り入れ金利をどう見るか、片方は一年間見るとか、片方私のほうは製造期間中の金利を見るとか、あるいはまた金利の利率につきましても、自己資金金利を何分に見たらよいか、こういうことにつきましても多少見解の相違もあるかとも思います。それからまた、操業度等につきましても、まあ多少食い違いが出てくるのではなかろうかという感じもいたしております。それからそのほか、歩どまり等につきましても、多少の見解の相違というか、調査の実態によって違ってくる。こういうふうに理解しておりまして、結果論としましては、多少言い過ぎかとも思いますが、売り方と買い方との間の見解の相違、こういったものは当然出てきておるのではないかとこう思っております。
  132. 川村清一

    ○川村清一君 農安法第五条に、政府の買い入れ価格は、「生産者団体にはかり、その意見を尊重して農林大臣が定める。」と、こういうふうにはっきりきまっております。そこで政府は今年度の価格決定にあたっては、この規定どおり生産者団体の意見を十分聞かなければならないのでございますが、そうすると、その生産団体との話し合いの中には、ただいま御答弁のありました原料運賃であるとか加工経費であるとか、こういうものが話し合いの対象になるだろうと私は理解するのでありますが、そういう点につきましても、生産者団体と十分話し合う用意があるのかどうか、この際ひとつ明らかにしていただきたい。
  133. 大口駿一

    説明員(大口駿一君) 生産者団体の意見を聞きますることは、昨年の価格決定の際にもいたしましたし、また本年もそのような手続を経た上で最終的に決定をいたしたいと思っております。
  134. 川村清一

    ○川村清一君 くどいようですが、重ねてお伺いいたしますが、その話し合いの中にはただいま共通調査をされましたいわゆる原料運賃、それから加工費、こういうものについても、ただいまの御答弁では大体食い違いはないけれども、やはり若干あるらしいのでありますから、したがって、それらのものが基準価格に加わって、そうしてこの買い入れ価格がきまるのでありますから、どういう数字をとるかということが、これを出すときの大きな問題になってくるわけであります。したがって、その運賃なり加工経費を幾らにするかといったようなことも、これは生産団体の意見も十分聞いて、そしてきめられると私はそう理解するのですが、それでよろしいのかどうか、この点を明らかにしていただきたいわけです。
  135. 大口駿一

    説明員(大口駿一君) いまおっしゃったようなことが、意見を聞く段階では、やはり議論の対象になると思います。そこで先ほど部長も申しましたように、共同調査をした結果の内容は、それほど大きく食い違っておりませんが、若干の見解の相違があるということを申しましたが、これはやはりできるだけ高きを望むものと、こちらは何も安きを望むということではございませんけれども、公正にきめようと思うことの若干の見解の食い違いはあると思います。そこでそれらの意見の食い違いをできるだけ調整をしてきめるということを考えておりますので、一から十までこっちの意見を押し通すということは考えておりませんが、一から十まで相手の言うとおりになるということもございません。
  136. 川村清一

    ○川村清一君 私は、そのきめる場合において、何といいましても再生産を確保する、昨年の法改正で出てまいりました最大の要点である再生産を確保する、こういうことがそれをきめるまず考えの重点にならなければならない。だから、そういう意味で話し合ってひとつきめていただきたいと思っております。どうも長官の御答弁を聞いていると、どこに重点を置いてやろうとなさるのか、ちょっと私には不明確でありますので、そういう点をぜひやってもらいたいということを私は考えるわけです。  問題をもう一つ進めますが、歩どまりについてお尋ねします。この基準の歩どまりは、カンショの場合は昨年二四%、バソイショの場合は一六・五%、これはやはりことしもこの線でやられるのですか。
  137. 大口駿一

    説明員(大口駿一君) 歩どまりにつきましては、できるだけ実態を反映した歩どまりを計算の基礎に採用したいと思っております。
  138. 川村清一

    ○川村清一君 昨年の二四%、一六・五%、 これを変える意思もあるんですか。このままいくんですか。実態に沿って変えるかもしれないのですか。
  139. 大口駿一

    説明員(大口駿一君) 何ぶんにも現在検討作業のまつ最中でございまするので、いまここであまり決定的なことを申し上げることは御容赦いただきたいと思いまするが、実態にできるだけ合うような歩どまりにしたい、という趣旨は同じこともあり得るし、変えることもあり得るというふうに御理解をいただきたいと思います。
  140. 川村清一

    ○川村清一君 実態に合うようにしていきたい、こういうことであれば、いま私が申し上げることは一体実態に合うかどうか、これに対する御見解を承りたいと思うのですが、基準が二四%、一六・五%、これで価格が決定するものとすれば、実態からいうと、もしそれ以上のもの、すなわち二四%が二五%、二六%と、こう上がってきた場合に、バレイショの場合も一六・五%が一七%あるいは一七・五%と上がってきた場合に、当然価格もスライドされる、これが実態に合うものであると私は判断するわけであります。しかるに実態はそれ以上歩どまりがあっても、基準歩どまりで打ち切られる、基準以下の場合は〇・五%下がるごとに五円ずつ引き下げられる、こういうやり方というものは、それじゃ実態に合うのかどうか、私は実態に合わないと思うのですが、きわめて不合理ではないか、かように考えるものであります。そこで実態に合うようにひとつ歩どまりもきめる、こういうお考えであるとするならば、ぜひその歩どまりの点についても下がるほうだけを実態に合わせないで、歩どまりが上がったほうもひとつ実態に合わせてスライドしてもらいたい、こう考えるのでありますが、これに対してお考えをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  141. 大口駿一

    説明員(大口駿一君) 価格の計算の際の基準となる歩どまりをどうするかという問題と、それから価格を決定いたしました際に歩どまりの差によってスライド制をどうするかという問題と、二つの問題を御指摘になったようでございまするが、基礎となる歩どまりは、先ほどから申し上げておりまするように、できるだけ実態に合うような歩どまりを算出の基礎にいたしたいというふうに申し上げたとおりでございます。  それからこのでん粉の価格というのは、本来が自由流通を前提といたしておるものでございまするので、高歩どまりのものは当然高く流通し、低歩どまりのものは低く流通する、自由の流通の過程において歩どまりに応じた価格が形成をされるということが本来ではなかろうかと思います。しかしながら、一定の基準以下の低歩どまりのものについては、とかく不当に買いたたかれるおそれがあるということから、そういうようなことによって農民が不利をこうむらないように、政府が一定の基準以下の歩どまりのものについてはあらかじめ格差をきめまして、それ以上に買いたたかれるおそれがないように配慮しておるのでありまするが、基準以上の歩どまりのものについては当然自由流通の過程において歩どまりが価格に反映をされて取引をされるというふうに私どもは考えておりまするので、スライド制を採用いたしまする際に、基準歩どまり以下のものについてのスライド制を採用しておるものはいま申しましたような趣旨でございます。
  142. 川村清一

    ○川村清一君 食糧庁長官のそのお考えはお考えとして一応私も承っておきます。  それでは時間もなくなりましたので観点を変えて、私は園芸局長に若干お尋ねしたい。  でん粉の需給事情とカンショ、バレイショの生産事情についてでございますが、まあこれは私が詳しく申し上げるまでもなく、御承知のようにでん粉の需要はどんどんふえてきておるわけであります。昭和三十年五十三万五千トンが昭和四十一年には百二十万トンまでふえてきております。しかしながらその供給のほうは、これはカンでん、バでん国内産でん粉というのはふえていかない、むしろ減ってきておる状態でございます。したがって需要と供給の差は、外国産のでん粉あるいはコーンスターチの原料になるトウモロコシ、これは輸入がどんどんふえていっておる。こういうようなことがカンでん、バでんとも生産量、供給量は減ってまいりまして、コンスターチはどんどんふえていって、昭和三十年わずか九千トン、三十五年二万八千トン、これが四十一年には三十六万トン、こういうようなな膨大なふえ方をしてきておるわけです。これはこういう形のまま推移していっていいのかどうか、いわゆるでん粉につきましても国内の自給体制を高めていくというのが基本方針ではないかと思うのでありますが、こういう基本方針から見るならば、こういう現在の需給の関係は全く逆行しておると、かように言わざるを得ないと思うのであります。そこで自給体制を高めるためにはどうしてもカンショ、バレイショいわゆる原料イモの増産をはかっていかなければならないと思うわけでありますが、バレイショにつきましても作付面積も減っていっておるし、それから生産量も減ってきておる、こういう状態でございます。そこでこれに対して園芸局としてはどういうような見解を持たれておるのか。これは園芸局特産課から出された資料でございますが、これを見ますと、カンショ、バレイショとも昭和四十六年度におきましては、大体四十一年に対しまして一四〇%の増、カンショにつきましては、作付面積におきまして一一六%、反収において一二一%、生産量において一四〇%、バレイショにつきましては、面積におきましては一〇八%、反収におきましては一一六%、生産量におきましては一二五%、こういう生産目標を立てておるようでございます。しかしながら、昭和三十五、六年ごろからずっと四十一年に至るこの生産の事情の推移を見ますと、いまの段階におきましては、増産するけれども、ふえていくといったようなそういう予想は常識的に私どもはとれないと思うのであります。こういう情勢の中でこういう生産目標を立てられておりますが、これは実際こういうことをやる自信があるのかどうか、この目標を達成するためには、これは放置しておってもいかぬと思うのでありますが、どういうような具体的な方法によってこの目標を達成しようとしておるのか、その具体的な方策をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  143. 八塚陽介

    説明員(八塚陽介君) ただいまお話しになりましたような状況で、バレイショあるいはカンショを原料といたしますでん粉の需要は、現在の段階できわめて強いわけでございます。それに対応いたしまして、国内産のでん粉原料として十分に供給ができていないという状況でございます。ただいま先生のお話しになりました生産の長期見通しにつきましては、これは三十七年に出したものであろうかと存じますが、いずれにいたしましても、現在の段階ではそういう方向へ順調に進んでおるということには相なっておりません。まことに残念でございます。ただ、私どもといたしましては、カンショにつきましては、これはいわゆる食用といたしましては急激に需要が減っておりますが、でん粉原料としてのカンショは、これはいまのような状況でございますから、需要ははなはだ強いわけでございます。特に原料用のカンショを産する地域においては、それほど顕著に減ってはいない。傾向といたしましては、いわば産地が特化するということでございますので、私どもといたしましては、従来ともカンショにつきまして種々の生産奨励の施策を講じてまいっておりますが、さらに今後高でん粉価のイモ等を研究いたしまして、その栽培技術あるいは新種の普及等に力を入れていきたいというふうに考えております。  それからバレイショにつきましては、これは御承知のように秋作もこれは主として食用として内地府県にあるわけでございますが、大部分はいわば北海道あるいは寒冷地の春作のバレイショでございます。これも確かに顕著にふえておる、あるいは増加の趨勢にあるということでは、いささか言い過ぎになるという残念ながら状態でございます。私どもといたしましては、北海道におけるバレイショというものは、特に営農上あるいは輪作の中での地位に着目いたしますならば、やはり欠くべからざる作物であるということで、今後とも力を入れていきたい。まあ催芽、育芽技術の普及であるとか、あるいは適期作業の実施等、今後とも力を入れてまいりたいと思っております。まあそういう意味でカンショあるいはバレイショにつきましては、残念ながら供給のほうが追っつきませんが、需要のほうはいま御指摘になりましたような状況でございますので、今後とも大いに力を入れてやっていい作物でございます。一方、その地域における必要な作物でもあるわけでございますので、四十二年度以降たとえば特産地振興推進事業というようなもので、今後とも生産の合理化につとめて、生産の合理化を踏まえて生産量の増加をはかってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  144. 川村清一

    ○川村清一君 そうしますと、この園芸局特産課から出ておる資料ですね、これの生産目標というのは、昭和三十七年に出したのであるから、現在はもうこれは達成の見込みはない、したがって、これはもうこの目標は放てきしたのだということでございますか、これが一点。  それからいまのお話によりますと、バレイショ、カンショともにでん粉のほうは需要が非常に多くて供給が追っつかないから、したがって非常に見通しの明るい作物である、したがって今後とも生産性の向上のために十分つとめて増産対策をとる、こういうようなきわめて抽象的な御答弁でございますが、そういう抽象的なものではなくして、増産対策としてもっと具体的に、たとえば価格対策なんというものは考えておらないのかどうか、こういうこともあわせてひとつお答えいただきたいと思います。
  145. 八塚陽介

    説明員(八塚陽介君) ただいまも申し上げましたように、これは三十七年のときのイモ類だけではなくて、その他の農作物を含めました生産の長期の見通しということでございますが、そういう意味におきましては、現在、端的に申しますならば、アップ・ツゥ・デートではございません。したがいまして、私どもといたしましては、現在に近い時点を頭に置きまして、なおやや具体的な生産目標、生産の見通しというものを作業いたしてみたいというふうに考えております。  それから第二点の問題といたしましては、ただいまきわめて抽象的に申し上げましたが、生産の対策といたしましては、これはもうちょうちょうするまでもなく、従来ともバレイショにつきましては、特に原々種農場等の施設も持ってやっておりまするし、四十二年度以降特産地振興推進事業というようなことで、さらに一そう力を入れていくという体制をとっておるわけでございます。しからば価格についてはどうかということでございますが、価格につきましても、先ほど食糧庁長官が申しておりますように、農林省といたしましては、生産費を償う価格ということを絶えず頭に置いての価格政策であろうと思います。私ども立場からいたしますならば、かつまた、従来こういうふうに需要があるにもかかわらず、増産がなかなか思わしくないということの重要な理由といたしまして、やはり生産費の合理化、生産体制の不十分さというところに問題があるわけでございますから、その点についての努力を今後続けていくべきであろう。私ども立場から言いますならば、価格政策云々と並行いたしまして、生産の合理化ということについて力を入れていく必要があるというふうに考えておるのでございます。
  146. 川村清一

    ○川村清一君 最後に、食糧庁長官にお尋ねします。食糧庁長官がいらっしゃって、いろいろ価格の問題が出ますが、園芸局長は遠慮されてあまり価格のほうは触れられないで生産性を向上するとか何とかいうような御答弁をされておるわけです。そこで、これは、増産ということと価格というものは、いまの日本の農業の中においては離すことのできないものであります。したがって、米の増産をはかるためには生産者米価を上げろというので、全国の農民のああいうような大きな騒ぎにもなり、もう国会がゆり動かされるようなああいう騒ぎになってきます。稲作農民の政治力というものはまことに強いものであって、国会を動かしているような状態である。だからして、政府もどうしてもこの価格の問題に真剣に取っ組まざるを得ないし、どんどん価格が上がっているというような実態であります。ところが、イモのほうは、これは残念というかなんといいますか、バレイショの主産地は北海道、それからカンショは鹿児島、宮崎、あるいは関東の一部といったごく少数の県であります。したがって、そこの農民の数も少ないし、政治力も弱い。そこでどうしても価格問題を幾ら要求してもなかなか通らないし、騒いだところで騒ぎがとても政府を動かすようなそういう力にまで発展しない、こういう実態であります。しかしながら、それじゃバレイショもカンショもどうでもいいかというふうには相ならぬと思うわけであります。  そこで、食糧庁の長官に最後にお尋ねしますが、私が言うまでもなく十分御承知のように、まことにでん粉の国内自給度というものが低いと、そして外国産のでん粉あるいはコーンスターチがどんどん増産されていっている。このことは、ひいてはまた農民の生産意欲を減退させ、生産が上がらない一つの原因にもなっておる。生産が上がらぬからますます外国の輸入品がふえていくと、こういうようなことで、いわゆる国内のイモとそれから外国の輸入量というものが悪循環を来たしておると私は考えるのであります。したがって、やはり増産をするためには、価格問題を真剣に考えなければならないのが一つ。もう一つは、この外国輸入のでん粉あるいはトウモロコシによるコーンスターチ、これに対しては何らかの規制をとらなければならない、こう考えるのであります。現在もっともコーンスターチについては一つの規制はとっております。関税において二重関税制をとって、一〇%関税の輸入トウモロコシによってつくられるコーンスターチに対しましては、製造面においてもいろいろな行政的な規制を行なっておる。しかしながら二五%関税の分に対しては、全く野方図にこれは放置されておるのが現状でございます。これらのコーンスターチの問題にも真剣に取り組んでまいらなければ、イモの増産も考えられないし、そしてまた、そのことによって国内のでん粉の自給体制というものがますます低下していく、今後は輸入コーンスターチがますますふえていくと、こういうことになると思うのでありますが、どこかでこの悪循環を断ち切って、そうしてやはり国内産でん粉の自給度を少しでも高める方向にでん粉行政を持っていかなければならない、イモ行政を持っていかなければならないと思うのでございますけれども、これに対する長官の基本的なお考えをひとつお聞かせいただきたい。
  147. 大口駿一

    説明員(大口駿一君) 米価並びにイモの価格に言及をされまして、イモの価格が、農民の数が少数であるからないがしろにしているのではないかと思われる趣旨のことを申されましたが、私どもは、やはり法律に基づいた趣旨を十分尊重した態度で価格を決定をしてまいっておりますし、また、今後もその態度でまいりたいと思っております。ただ、農産物価格全体を通ずる問題であろうかと思いまするが、すべての問題を価格だけで受け持つということは、現状においてある程度やむを得ない面はあるかと思いますけれども、やはり構造政策なり生産政策というものの効果が緒につくに従って、価格政策というものはこれの補完的な役割りを果たすというところを最終的な目標にすべきではないかということが、先ほど来の園芸局長お答え趣旨ではなかろうかと思いまするが、しかし、少なくとも現時点においては、法律に基づいた価格決定の基本条件というものを忠実に尊重してきめてまいるという基本的な態度でございます。  それから外国産のでん粉の輸入の問題につきましては、やはり国内のイモ作農家に深刻な影響が及ばないようにということで従来もやっておりますし、ただいま御指摘のコーンスターチの問題も、先ほどの御質問の冒頭に申し上げましたように、本年産のでん粉、イモの価格を決定いたします際に、一番大きな問題としてコーンスターチの問題があるのであろうということを特に私お答えいたしましたのも、国内のイモ作農家なり甘味資源に悪影響が及ばないような配慮を加えるべきだということで申し上げたのでございまして、私どもの基本的に考えておりまする点は十分御理解をいただきたいと思います。
  148. 高橋雄之助

    高橋雄之助君 川村委員質問について、関連質問ということで多少時間を割愛していただいておったのでございますが、もうすでに時間も過ぎているような状態でございますので、川村委員がいろいろ質問されました内容についても、また具体的にお伺いしたいと思っておったわけであります。特にいまお話のありましたコーンスターチの問題についても、もう少し掘り下げていろいろお伺いしたい点もございましたが、時間がございませんので、また別な機会に別な場所でいろいろお伺いいたしたい、かように考えます。したがいまして、せっかく政務次官がおられますので、政務次官に対して多少お尋ねしておきたいと、かように思います。  先ほどからいろいろ御意見がありましたように、農産物の価格安定法は昭和二十八年に制定せられまして、米麦に次ぐ重要な農産物でございまするところのイモ類について、生産者団体が行なう自主調整と相まって、これらの農産物等が正常な価格水準から低落することを防止し、農業経営の安定をはかるために行なわれてまいったのでございまして、昨年七月、法の制定後十三年間を経過し、イモ類及びでん粉等の生産需給事情等がかなり変化し、本法は実情に沿わない面があらわれてまいりましたので、過去における本法の運用状況等から勘案いたしまして、農業基本法の趣旨のもとに本法の所要の改正を加えまして、農産物などの生産の確保と農家所得の安定に寄与することといたしたことは十分御承知のとおりでございます。その結果、昭和四十一年産イモ類及びでん粉について、政府の買入れ価格並びに原料基準価格は、従来よりもかなり上がったことは事実でございまして、生産者もその点はある程度了解したような次第でございます。しかし私は、特に政府の基本的態度について明確にしていただきたいのでございますが、そのことは、農産物などの生産の確保と農家所得の安定をはかるための法律は米麦をはじめとしてそれぞれあるわけでありますが、法律の制定当初においては、法律の精神とその趣旨を体しまして、実施面においてもあるいはまた予算の裏づけ等についても、相当これにつとめてまいられるわけでございますけれども、年を経ずして、法並びに政省令であってなきがごとき感を非常に深くするわけでございます。たとえばでん粉等においても、この法律ができて、実施の面においては政府は相当数買い上げをしました。たとえば丸ビルの建物に二つも収容しなければならないほど政府は買い上げている、あるいはまたこれに対して相当の予算をつけてまいった、こういう状態でございまするが、それが年々年を過ぎてまいりますと、その法の精神が何かしらん忘れられたような感を非常に深くし、不信感を抱くわけでございます。したがいまして、大臣がかわり、あるいは次官がかわり、役人がかわりましても、法は生きている限り一貫してこの法律を施行していかなければならぬことは論を待たないところでございます。したがいまして、このたびきめようとするところのイモ類及びでん粉の買い入れ価格あるいは原料の基準価格等についても、農林省の政令の改正に基づいて、生産者の生産意欲を失わせざるよう、特段の配慮を願いたいのでございます。政務次官は、米麦に次ぐ重要農産物に対する基本的施策についてどのように行なっていくかということについて、はっきりしたひとつ御所見を伺っておきたい、かように思うわけでございます。
  149. 久保勘一

    説明員(久保勘一君) お答えいたします。  先ほど来議論がかわされておりまするように、今日、でん粉は、国内の需要を満たすに足らない生産の状況でございます。特にでん粉、いわゆるカンショは、従来格差の多い畑作地帯の生産物でありますだけに、私どもは従来とも非常に関心を寄せておる問題でございます。したがいまして、政府といたしましては、従来も価格政策を堅持いたしまして、この増産に対しては対応し、かつまた、従来一時でん粉が非常に過剰でございまして、かなりの手持ちをかかえるという時代が数年続いたのでありますが、その間もやはり政府は予算措置をいたしまして、全量これを買い上げて操作をいたしました。幸いに、昨年のごときは団体等の協力もありまして、ほとんど手持ちのないという状態にまで操作をいたすことができておるわけであります。かかる努力をいたしておりまするけれども、依然としてやはりこのカンショの生産は停滞ぎみでございまして、一部地方におきましては、年々反別が減っておるというような実情にあるわけであります。一方申し上げますように、でん粉に対する需要は非常に高まりつつありますというような事態でございまするから、特に畑作振興という立場からも、今後一そうこのカンショ作については関心を持ちまして、努力をいたしてまいらなければならぬと思うわけであります。それにつきましては、先ほど長官並びに局長からお話を申し上げておりますように、やはり何と申しましても、生産政策を重点としまして、いろいろと生産性を高めてまいることはもちろんでございますけれども、さしあたり、やはり生産意欲を刺激し、増産体制を整えてまいりますためには、どうしてもやはり価格政策というものをこの際は強く考えていかざるを得ない実情ではないかと思います。もちろん価格政策については、政府としてこれを補完的な意味にとっておることは御説明申し上げておるような事態でございますけれども、しかし、カンショの置かれております今日の時点、でん粉の置かれております今日の実情から見まして、やはり価格政策というものをかなりウエートを置いて私どもは考えてまいらなければいかぬ、こういうふうに理解をいたしておるということを申し上げまして、大体のお答えにかえさせていただきたいと思います。
  150. 任田新治

    理事任田新治君) 本件については、この程度にとどめます。     —————————————
  151. 任田新治

    理事任田新治君) 農業構造政策基本方針に関する件を議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言願います。
  152. 北條雋八

    ○北條雋八君 私は、構造政策の基本方針について、若干の質問をいたします。  農業基本法制定後六年になっても、構造改善が進展しないため、自立経営も全体のわずか九%よりふえない。また、協業も、離合、集散をしておりまして、一こうに定着していない。ただ請負耕作のみが各地で各様に拡大している程度であります。また、他方では、若い労働力の流出と兼業農家の増大が予想以上にそのテンポと広がりを早めまして、食糧自給度の低下、後継者問題など、わが国農業はますます深刻な危機に追い詰められてまいりました。そこで、政府も、ようやく昨年十二月に構造政策の推進会議というものを設けまして、農林省の全局長と長官が知恵をしぼってでき上がった「構造政策の基本方針」というものが八月に正式に決定されたのであります。ところが、その内容を通読しました率直の感想は、あまり目新しい革新的なものはなく、具体的政策推進方向もきわめて明確を欠いておるので、はなはだ失望しております。  まず第一点は、農業基本法と今回発表された基本方針との関係であります。常識的に考えてみても、この基本方針は、農業基本法に基づいて実施する構造政策を中心とする具体的の施策の基本方針であるはずであります。しかるに、私が読んでみて感ずることは、ある面では、基本法に束縛されて思うことが言えない。また、ある面では、基本法でほとんど想定しておらなかった問題を取り上げて、さらに基本法が想定したテーマを無視しておるということであります。それをたとえるならば、基本方針の第三の構造政策の考え方、その第一の構造政策の目標においては、基本法の一枚看板であります自立農家の育成しかうたっておりませんで、選択的拡大、あるいは兼業の問題、あるいは協業については一切触れていないのであります。また、さらに、基本法の第十六条の相続の場合の細分化の防止であるとか、また、第二十一条の構造改善事業の助成の方針といったようなものはほとんど触れていないのであります。また、自立農家の育成をうたっていながら、一方では兼業農家の存在もやむを得ないとしている点は、どうも不可解なのであります。兼業農家が脱農していくからこそ自立農家の育成が可能であるというならわかるのでありますが、一方の育成は必要だが他方の存在もやむを得ないというのでは、一体何を方針にしていいか、理解に苦しむ次第であります。  そこで、まず、今度の基本方針と農業基本法との関係について、政府の御見解をお伺いしたいと思います。
  153. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) ただいま御指摘の政府が方向を発表いたしました基本方針考え方は、農業基本法に差し示しております方向をもちろん尊重いたし、また、その趣旨を実現いたしていきたい考え方を持っているわけであります。そこで、北條さんも御存じのように、六年前に基本法が制定されました当時から今日になっていろいろ振り返ってみますというと、わが国の産業構造がわれわれが予想いたしたよりも違う角度で跛行的に成長いたしておる面があります。したがって、そういう事態に即応して、われわれは、現実に即して、基本法の差し示しております自立経営農家を育成し、経営規模の拡大をするにはどうしたらいいか、こういうことを慎重に考慮いたしたわけでございます。したがって、われわれが考えております方向は、どこまでもやはり農業基本法が差し示しております方向をとっていく、それに至る段階においては、若干現実の問題に触れてまいりますので、その現実面をも取り入れながら逐次その方向を実現に移してまいりたいと、こう考えておるわけであります。  そこで、ただいまお話のございましたような自立経営農家を育成していくということを基本法も指向いたしておりますし、われわれも指向いたしておるわけでありますけれども、これは、現実に、御存じのように、大体八〇%が兼業農家である。そこで、この兼業の農家にいたしましても、いわゆる第一種、第二種を区別いたしてみますというと、その中には、多くの部分を農業経営に依存しておる兼業農家と、それから他産業からの所得を家計の中心にいたしておる兼業農家とありますけれども、それぞれそういうものに対して、たとえば主として他産業の所得に依存しておるような人々で、もしわれわれが指向しておる経営規模拡大に協力を願えるような方がございましても、現実の姿は農地法その他のものが障害になっておりまして、なかなか思うようにまいりませんので、そういう目的を達成するために、まず農地法改正に第一は踏み切るべきである、同時にまた、農地を移譲いたします場合の税法等についても考慮しなければならない、まあこういうことで規模拡大に向かってまいろう。それからまた、もう一つは、そういう農家ができ得べくんば先祖代々の土地を相続をして所有いたしておりたいが、自分はそれを耕作することが好ましくない、しかし持っていたいというような人々の農耕面積を、どのようにしてか農業生産のために活用することが必要ではないだろうかということを考えまして、自立経営をいたす農家が、それを賃借をいたして耕作することもできるようにしたり、それから協業を全然考えておらないというお話もございましたが、実は農協等の活用を考えまして、農協等においてそういう委託経営をやれるようにひとつ制度を改めたらどうか。同時にまた、そういう諸般のことをやってまいりますためには、いままでのような金融制度で拘束されておっては障害になるからして、これはひとつ総合的な金融制度に改めてまいろう。まあいろいろお話あとでございますかもしれませんが、概略私どもがねらっておりますのは、どこまでもやはり国際競争に太刀打ちのできるような強靱な日本の農業というものを育成してまいるために、やはり基本法が差し示しておる方向をとって経営規模を拡大していくのがいいだろう、こういう目標でああいう基本方針を制定いたしたわけでございます。
  154. 北條雋八

    ○北條雋八君 そうしますと、自立農家の育成ということに重点をいままで置いてあったのですが、実際がなかなか思うようにいかない、将来はやはり協業のほうにも力を入れて、そうして何も土地の所有権を広げないで、賃借権あるいは集団的の農業でやっていかなければ規模拡大はなかなかできないということになれば、今度基本法の方針も自然に変わってくるわけじゃないかと思う。場合によれば、基本法を改正する必要も出てくるのじゃないかと思うのであります。そういう点で、いま束縛をされて、思い切って言いたいことも言えないというような点もあるんじゃないかと思うので、伺ったわけでございます。  時間がありませんので、なおさらにそれに関連して伺いたいと思うのは、基本法を受けて三十七年度から構造改善事業が実施されて、そうして四十三年でこの指定が一応終わります。それからあと三年やりまして、ちょうど十年で一ラウンド済むわけでありますが、今回の基本方針を見ますと、初めの十年以降、つまり将来の構造政策の基本方針というものについては少しも述べられていない。その点はどういうのか、伺いたいと思います。  本来、基本法によって発足した構造改善事業は、将来の日本の農業の動向を規定するかぎともいうべき農業の体質改善、近代化対策でありまして、全国の農民の大きな期待と、また一方不安の中で施行されまして、そうして三十七年以来四十一年までに補助事業として総額七百八十億円、また、四十一年までを大体概算しますと、一千数百億円というばく大な資金が投下されておるのであります。ゆえに、どれだけ体質改善にいままでやった事業が役立ち、また、わが国農業の構造をどの程度転換できたか、その結果にかんがみまして、少なくとも第二ラウンドの構造改善をいかにして進展せしめるかという基本方針をこの際当然盛り込んで明示さるべきものじゃないかというふうに考えますが、この点につきまして、大臣の御所信を伺いたい。
  155. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のように、私ども、基本法の方向に従って、日本農業の全体の構造について、かくあるべきであると、このような方向に農業政策を進めてまいるつもりであるという基本の方針を発表いたしましたのが、ただいまお話のございました農林省基本方針でございますが、いま申しましたように、基本法の方向に従って規模拡大をいたし、そのためには、協業その他集団栽培等、あらゆることの努力をしてわれわれのねらっている方向に持っていく。その中には、もちろん、さっき申しましたように、総合的金融制度、あるいは土壌の改良その他のものも自然に出てくるわけでございますが、このたび発表しております基本方針の中では、主として一番主たるものである稲作等を中心にしてものの考え方方向を出しておるわけでありますが、いわゆる選択的拡大にふさわしい他のほうの、たとえば畜産その他についても、実際にこれを実行いたしていく面においては、この基本方針の中に加味して考えておるわけであります。同時に、また、基本法の中にも示しておりますように、やっぱり農山村というものが取り残されていったんではだめでありますからして、そういうことで考慮いたしますというと、農業構造の改善をするからには、やはり農村にあります道路を整備しなければならぬ。同時に、また、一定の食糧を確保していく、自給度を維持していくというたてまえから見ますというと、いまのようにでたらめにこの狭い国土を勝手に使うようなことを放置いたしておいてはだめだ。これは農林省だけの仕事ではございませんけれども、政府全体として土地利用区分についてこの際ひとつ方向を検討しようというようなところまでまいっております。  そのようにいたしまして、日本の農業を魅力あるものにいたす諸般の努力行政としてやる半面においては、そういうことに対応して、農業を守っていただく人人には、いわゆる農民年金制度というような制度を設け、あるいは生活改善等にも協力をすることによって、農業者自身もわれわれの考え方に立って農業に精進していただくようにいたしたい、これが基本の考え方でございますが、その中で、ただいま御指摘のありました従来長期にわたって計画してやってまいりましたいわゆる構造改善事業については、あと三年で切れるわけでありますが、最近になりましてこの構造改善事業について非常な要望が各地から殺到いたしてきております。これは、やってみました経過を見て、その地方の人々が、この成績のあがっておる構造改善事業というものをひとつ自分地域にも拡大いたしたい、こういう要望のようであります。そこで、私どもは、一応政府の計画として十年間でございましたけれども、これが切れる前に、地方もそのように要望いたしておることでございますし、これをどのように継続すべきであるかということについては慎重に検討して、なるべくわれわれの目的に沿うように続けてまいることに努力をいたしたいと、こういうことを考えておるわけであります。
  156. 北條雋八

    ○北條雋八君 その点が一般にはお考えがわからないから、あと三年たってしまった暁にはどうなるのかというふうに見通しを立ててもらいたいという希望は非常に多いわけであります。また、実際現在やっている人も、今後どうなるのかということに対しては非常に不安に思っている者もあるわけであります。その大体の見通しでもこの基本方針の中に盛り込んでおくべきじゃないかということであります。なぜごく大体の見通しだけでもいいから書かなかったのか、あるいは書くのを忘れたのか、そのお考えはいま伺って大体わかりましたが、むしろ避けて書かなかったんでないと思いますが、一体全部済んだらどうするかということは、これは調査しないでもいままでの長い間に見当はつくはずだと思うのです。また、それを見通しをつけないということは、非常に怠慢じゃないかと思う。本年ようやく予算に二千七百万円の要求をせられて、これから調査をして、そして遠い将来の方針をきめるという一つの手順だと思うのです。これは私は怠慢じゃないかと思うのですが、その点はどうお考えになりますか。
  157. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) まだ終わりますまでに三年ございますから、いまから予算をとりましてただいま申し上げましたように全国から要望のありますものをどのようにいたすべきかということについて検討をいたしまして、そして三年の期限の切れる前に対処してまいりたい。それから構造政策の基本方針のたてまえの中には構造改善というふうな考え方というものは当然含まれておるとわれわれは理解いたしておるものでありますから、特にそういうことについて基本方針だもんですから書いてはございませんけれども、これはたいへん農民の要望いたしておる事業でありますから、緊急にそういうことについてわれわれの態度をきめるようにいたしたいと思っております。
  158. 北條雋八

    ○北條雋八君 この第一ラウンドが済んでも、これは面積的には点みたいなものであります。全部の地域にわたってやることはできない。やはりそのいい結果を見て、パイロット式にそれにならって、そしてやりたい者には指定地と同じような金融その他の措置をされるお見込みがあるかどうか、その点を伺います。
  159. 森本修

    説明員(森本修君) 御指摘がございましたように、現在の構造改善事業は、実施市町村の中でもある二、三部落というようなことでやっておりますので、全体をおおいつくすというような形ではございません。これはある意味ではパイロット的な事業ということで取り組んでおりますが、その次に続くべき事業はもちろんやや同じような性格を帯びると思いますけれども、やられる地域としてはおそらくそれ以外の地域についても地方の要望が出てまいりますので、漸次二次対策、三次対策を進めてまいりますと、点から面へというような形で実施地域が拡大するというふうに私どもは見ております。
  160. 北條雋八

    ○北條雋八君 時間がございませんから、次に移りますが、農地の流動化政策の考え方について伺います。  この基本方針でも触れておりますように、構造政策の最も重要な今日の課題は、規模拡大につながる農地の流動化であることは申し上げるまでもありません。そして、この問題は、大きく見ますと、三つに問題が分かれると思うのです。すなわち、農地を提供する側の問題と、また農地を受け取る側の問題、並びに農地法等の制度的な問題というふうに分かれると思います。  まず、農地を提供する側の問題については、離農後の不安定な雇用条件、また、不十分な社会保障制度等の問題、それから農地の先ほどお話がありました財産的な保持の問題とあるわけでありますが、このうち、雇用条件、社会保障等については、基一本方針にも、農民年金、経営移譲年金、離農年金、転職円滑化措置なども一応うたっております。しかし、農地の財産的保持の問題については、小作制度の改正をうたっているだけでありまして、農地制度の改正は農地を提供する側にとって非常に有利になるわけであります。その他の面についてはあまり触れていないのです。御承知のとおり、農地制度の改正というのは、いわゆる農地を提供する側にとって有利になることだけを目的にして実施することは非常に不公正でありますし、これは誤りだと思うのでありまして、農地を提供する側としても、受け取る側としても、互いに均衡のとれた制度にしなければいけないと思います。そういう意味で、いままで二度まで廃案になった管理事業団のごとき考えは、あれは農地を受け取る側だけを有利にする不合理な政策であったのであります。ゆえに、今度の流動化を促進する農地制度の改正は、どこまでも中立的でなければならない。そういうふうに考えますときに思うことは、農地を提供する側に見られる農地の財産的保持という性格をチェックする積極的な政策は基本方針にはないのであります。これは非常に物足りないと思うのでありますが、その点についてまず伺いたいと思います。
  161. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のように、農地につきましては、先ほどお話のありましたように、財産価値としての土地というそういう考え方が出てまいりまして、耕作することよりもそのほうにウエートを置くというふうな状態がわが国ではとにかく出てきております。これは、ひとり農業関係の問題だけでなくて、国全体の重大な問題でありますが、私どもといたしましては、経営規模を拡大いたすということの前提に立って、お譲り願える方々がお譲りをいたすときに、できるだけ有利に、また、移譲しやすいようにするためにはどういうふうにしてあげたらいいか。これは先ほど私ちょっと口にいたしました税法等も一つの重大な問題でありますが、そういうことについては私どもは強制力をもっていたすというふうな国柄ではないのでありますからして、そういう点について十分に検討いたしまして、そのために、移譲される希望はないが賃貸しはよかろう、したがって、これをひとつ収穫をあげるためにお貸ししょうというふうなことができるように法改正をいたしてまいりたい、こういうことでただいま鋭意実行に移す段階においてはどのような措置がとられるべきであるかということについて部内で鋭意検討を続けている最中であります。
  162. 北條雋八

    ○北條雋八君 財産的保持というこの問題は、地価に関係があることであります。地価の値上がりということがおもな原因でありますが、基本方針としてこの問題を取り上げなければならないのは、国全体の大きい課題であります。地価問題であるから農林省としてはこれに触れなかったのだというのじゃないかと思うのですが、しかし、これは、欧米各国の例もありますけれども、土地問題は都市問題の一環として近年非常にやかましく言われるようになりましたし、注目されて、わが国でも、土地収用法の強化とか、あるいは都市計画法等、次々に立法を見ているわけであります。そういうことを考えますと、大事な土地の流動化を促進する上に、農政はこの面では非常に受け身の形をとっているように思います。非常に消極的ではないかと思うので、やはりもっと積極的にそういう面にも改革をどんどん加えていくべきじゃないかと思うのであります。  こういうふうで、農地を提供する側の問題さえなかなか解決できないということを考えますと、ほんとうにいつまでたっても解決ができないんじゃないか。机上の空論に終わってしまう感じがあるのですが、まあ土地の利用区分を明確にすることは、この点において財産的保持性を解消するのには非常に役立つと思うのみならず、第一、土地の利用区分を明確にすることは、食糧自給率の確保上からいってもきわめて肝要であると思うのであります。そういうようなことも考えられておるとは思いますが、この貴重な国土資源である農地が、現在は、経済成長で、都市の発展、あるいは工場、住宅用地の拡張につれまして、無秩序に蚕食されておりますが、そういうような市街地地域とはっきり区別して、将来農業で農地として確保する区域ははっきり区別することが非常に大事であり、一刻も早くそれをやられることが必要じゃないかというふうに思います。この農業地域としまして、聞くところによると、次の国会には農業地域法案というようなものを出してそれをきめるということも聞いておりますけれども、そういう点について大臣からお話を伺いたいと思います。
  163. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) ただいまるるお述べいただきました御趣旨は、私ども構造政策推進考え方と全く同じでありまして、そういう趣旨に沿うて進めてまいりたいと思っております。ただ、ただいまお話しのような利用区分を目標といたしました法律を提案するというふうなことにつきましては、まだ私どもは考えておりませんが、いずれこれは政府全体の大きな問題でございますので、部内においても寄り寄りそういうことについて各省との間に御相談はいたしておるわけであります。
  164. 北條雋八

    ○北條雋八君 いままでは農地を提供する側の問題でありましたが、次に、農地を受け取る側の問題について言いますと、基本方針は、特に省力技術体系の確立について、機械化、協業化、基盤整備、金融等、いろいろの面から述べております。しかし、問題は、これらをどう具体化するかであります。また、労働力や機械の有効ないわゆる周年的な活用についての方針は何も示されておりません。政府においてもほとんど手がつけられないと思うのではないかと思うのですが、これらの問題について政府の所見を政府委員からお願いいたします。
  165. 森本修

    説明員(森本修君) 農地を受け取る側といいますか、農地を取得して経営規模を拡大するという場合の必要な条件を整備するということは、構造政策を進めてまいります上できわめて重要なことだということでございまして、お説のとおりであります。私どもの書き物の中にも、そういう観点から技術的な条件を整備する意味で、機械化でありますとか、あるいは基盤整備でありますとか、それから総合的な金融制度をつくるとかいったようなことで、それに対応する抱負が諸種書かれております。  特に機械化についてお尋ねがございましたようでありますが、現在の機械化の関係で一番重要であると思われますことは、各種の作業についてそれぞれ機械化をされておる部面がございますが、たとえば稲作等におきまして、必ずしも全体の作業について機械化をされる、つまり一貫的な機械化の体系が十分そろっていないということが一つの機械化のネックになっておるということでございます。この書き物でも、現在機械化が十分進んでいない田植え段階あるいは収穫段階について、試験研究、普及等の諸方面でそういった機械化のおくれておる作業部門について十分今後力を尽くしていくということを書いております。そういうことで、一貫的な機械化体系が早くでき上がるように各般の措置をしていきたいということが中心になっておるのであります。
  166. 北條雋八

    ○北條雋八君 時間がありませんから、次に農地制度の改正について伺います。  この問題は、基本法の中で最も具体的な部分であります。また、私は、先ほども述べたとおり、制度改正は、農地を受け取る側にも、また、提供する側にも、双方に均衡を得た制度にするという立場から、若干立ち入って数点項目別に伺いたいと思います。  まず、小作料についてでありますが、小作料は、九月の一日に、田は四倍、畑は二倍半引き上げましたけれども基本方針においてはこれを廃止するとなっております。不当な小作料が発生しないように必要な措置を講ずるとありますけれども、その措置というのは、どういう措置をとられるのか。これは、あまり小作料が高くなれば、零細な小作人はますます困窮するのではないかという点、その点を私は非常に心配するのであります。その点はどうであるか、また、この小作統制を撤廃してしまえば、従来の請負耕作との関係がどうなのかというような点も伺いたいと思います。政府委員でけっこうです。
  167. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) いまお尋ねがございました第一点の小作料の統制撤廃の問題であります。基本方針に、現行の一筆ごとに最高額を統制しております制度は廃止するということになっておるわけでありますが、その場合に、いま先生御指摘のように、不当な水準の小作料があちこち発生するということになりますと、いろいろの問題が起きてこようかと思います。そこで、われわれとしましては、当事者の契約をしました小作料の額が、その農地の収穫量、あるいは収穫の値段といいますか、特に生産費、その中でも労賃をどう見るかと、いろいろな問題があろうかと思いますが、そういうものから見まして、その小作料の額が著しく高くなるような場合には、農業委員会あるいは知事がその小作料の額を引き下げるように命令を出せるというような考え方で、いまその具体案を研究をしておる最中でございます。  それから第二番目の請負耕作の問題は、現行の農地法が、俗に、一ぺん貸すと返してもらうのはなかなか容易じゃないということがいわれるわけであります。現に、小作契約の解約をいたします場合に、必ず知事許可を得る。その場合も、解約をし得る場合というのは非常に限定をされておるわけであります。その点は、現在、借りておるものにつきましては、小作料と耕作権が安定しておるわけでありますけれども基本方針にありますように、農地の賃貸借の面から流動化していく場合には、やはり規制を緩和するという面も必要だろうというふうに考えておるわけであります。そういうことになりますと、やはり貸すほうと借りるほうとのバランスをとるというような考え方をする必要があろうかと思います。ところが、先ほど申し上げましたように、現行農地法は非常に強く規制をしておるものですから、そこで、請負耕作というようないろいろなものが出てきておるわけであります。そこで、私たちといたしましては、ただいま申し上げましたように、非常に厳重な規制をしております賃貸借の解約につきまして、基本方針にもありますように、たとえば十年以上の契約ならそのときはもう返してくれといえば返すとか、あるいは話し合いができておれば一々許可をとらなくてもいいとかいうような緩和をいたしまして、そういうことの結果、できるだけ現行発生しておりますような請負耕作は正規の賃貸借というものに追い込んでいきたいというふうに考えておるわけであります。
  168. 北條雋八

    ○北條雋八君 いまのお話だと、ともかく不当に高くなれば調停して上がらないようにすると言われますけれども、不当に高くなるというその不当の根拠というものがわからないわけであります。そういう点がもっと伺いたいのですが、時間がありませんから、その点は次回に譲ることにいたしまして、最後に大臣に伺いたいのは、規模の拡大につきまして、自立農家が幸いに規模を拡大したとしまするけれども、これは農基法の十六条にもあるとおり、後継者が相続の場合にまた分散してしまうということを、いまからどうしたらそれが防げるかということを方針としてしっかり考えておく必要があると思うのです。そういう点がいままでのお考えではどういうふうにされるつもりか、これは大事なことだと思うので、最後にこれを伺って私の質問を終わります。
  169. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) これも、規模を拡大いたしまして自立経営を増強いたしてまいるためには、大事な問題でございます。そこで、税制面等においてもそういう点について十分考慮して、われわれは、さっき申しましたように全部移転されるものばかりではございませんで、賃貸借の場合もございますし、いろいろございますので、慎重に検討いたしまして、目的が達成されるように私どもそういう点について検討を加えてやってまいりたいと思います。
  170. 北條雋八

    ○北條雋八君 現在、何か考えておられる方法としてあれば、政府委員から伺いたいと思います。
  171. 森本修

    説明員(森本修君) この問題はかなり長い経過を経てきた問題でございまして、経過的にはいろいろな企てが行なわれてまいりました。そういうことでございますので、私どもとしても、過去二回、相続あるいは制限贈与による農地の分散状況がどうなっているかということを調査いたしたわけでございますが、そういった調査の時点におきましては、相続による分散の状況は事実問題としてはかなり少ない。あらゆる検討のもとにおきましても、事実問題としてはほぼ心配のない現状であるというふうな調査の結論になっております。しかし、今後の問題としては、そういうことを懸念する向きもございますし、また、当然そういったことを配慮しなければならないということで、とりあえずは、先ほど申しましたような税制面で措置をとっておるわけでございます。  なお、その後の状況につきましても、もう少し実態を調査をして、そういった傾向に変わりないかどうかということを確かめてみたい、その上で実態に即した必要な措置があれば検討をいたしてまいりたい、そういうふうに考えております。
  172. 北條雋八

    ○北條雋八君 この規模拡大の阻害要因として一番いままで問題になったのは農地法でありますから、これが改正に踏み切られたことは私も非常にけっこうだと思うのですが、先ほども申し上げましたとおり、提供する側とまた受け取る側と双方が均衡するような法改正をしっかりやっていただきたいことを希望しまして、私の質問を終わります。
  173. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大臣、これは私一回しか読んでいないんですけれども、一回読んでおいて文句をつけるのもいささか恐縮なんですけれども、あえて言わしていただきますと、農地法改正の付録版みたいなものですね。無理してこういうのができたんじゃないかという気がするんですね。農地法改正をやるから、ついでにこういうものがくっついたんでしょうね。無理やりこういう体裁をとったような気がしますね。これはお粗末です。同じようなところが何回も何回もくどくど出てくるという私は感想なんです。ですが、四十分の時間がありますから——いずれこれはこれからも時間のあることですし、さらに具体化されてまいりましょうし、法律案にもなってきましょうから、十分一つ一つ時間をかけて論議できると思いますから、きょうは、政策の内容は七項目あるんですが、七本の柱が立っているわけですが、この七本の柱の中で一番目の農地の流動化、これがもう中心ですね。核心ですね。あとはっけ足しみたいなものだと思うんです。一番最後の七番目のやつは、少し実ができそうな気がしますけれども、これからですね。ですから、中心は一の流動化だと思うんですね。ですから、核心の流動化につきまして若干大臣の考え方を伺いたいと思います。  それは、農地管理事業団法を四十年、四十一年と二年にわたって出したわけです。そのときの農地の流動化の考え方と、今度の基本方針の中の農地の流動化についての考え方とは、違いますですね。考え方によれば非常に違うというふうに思うんですけれどもね。つまり、農地管理事業団法の法案を出しましたときには、農地の流動化というのは、農地の所有権の流動化だったですね。これが中心だったですね。今度の場分は、そうではなくて、中心は、耕作権というのですか、賃借権というのですか、賃貸というのですか、そういうものが基本方針の中の流動化の焦点のように思うのです。どういうわけでこういう変化が来たのか。農地管理事業団法のときの農地流動化の考え方と、この基本方針の中における農地の流動化の考え方、この基本的な差、何ゆえにこういう差が出てきたのか、それをまず承りたいと思います。
  174. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) この基本方針が、いま鶴園さんのお話によれば、農地法を改正するのが目的で、あとは付録だと。私はそうではないのであって、農地法改正というのは、基本方針を貫いてまいる一つの目的を到達する手段であると思います。これは、いま、七つの項目を一度しかお読みにならないとおっしゃるけれども、七つの項目を御指摘になるのですから、よほど十分お読みいただいたのだと理解するのです。七つの項目をごらんくだされば、これを総合してわれわれの考えておる方向を御理解願えると思うのです。  そこで、農地管理事業団法案は二回にわたって廃案になっておりますので、ただいまのような国会制度が行なわれている以上は、やはりそういうことについては政府としても考え直す必要があると思うのでございます。それからまた、もう一つは、時期もだいぶ変わってまいりました。ひとり農業問題だけじゃありませんで、わが国の経済全体の中で地価の高騰ということは、諸外国にあまり例を見ないほど特異な現象であります。われわれは、こういう地価の高騰ということが一つの大きな障害になっていろいろな問題が頭打になっていることがあるわけでありますが、私どもが農業政策を推進してまいるためにも、このことは非常に大きな障害であります。  このことは別といたしまして、私どもは、先ほど概略の御説明を申し上げたときにも申したのでありますが、本来ならば、農地が移譲されればそれにこしたことはないのでありますが、そういうようなことは、よその国の歴史にありますように強権を発動して農地を取り上げるようなことのできないわが国でございますからして、したがって、それぞれの立場に立って耕作をしておいでになる方のすべての権利を尊重して民主的にやるということを考えてみますというと、農地の移譲だけでなくて、いまさっきのお話にもありましたように、八〇%がすでに兼業農家であるこの現実を見のがすことはできないのであります。したがって、そういう方々の土地を、経営規模を拡大するために協力していただく方法について、いろいろ考究をいたしてみたわけであります。そういうことで、農地法を改正し、あるいはその他の手段を講じて、協業、あるいは請負、賃貸借、そういうような制度を設けることによって、まず経営の主体を広げていくことが必要だ、そういうことで今度の考え方が出てまいったわけであります。
  175. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 農地法の改正をやるというふうに書いてあるわけですが、内容も相当具体的に出ているわけです。戦後、農地改革が行なわれて、日本の農業の中核というか、中心というか、それは自作農主義であったわけです。高度成長の中で、三十六年に農業基本法が成立をして、その中で自立経営というようなものが農政の中心にすわるような印象を非常に強く与えた。その自立経営農家というのも、自作農主義の上に立っているというふうにぼくは見ているわけであります。しかし、今度の基本方針の中に出てくる考え方というものは、農地法の基本というものを否定する、さらに基本法に示している自立経営農家というものもやはり否定したような、そういう自立経営農家というのがこの中に出てくると私は解釈をするわけです。この中には、農業基本法の自立経営農家ということばを至るところにくどくどしく述べて、農業基本法の自立経営農家、自立経営農家ということを述べてあるけれども、内容はそうではなくなってきているというふうに私は思うのです。その点について、大臣はどのように考えておられますか。自作農主義ということがとにかく否定をされつつある、その上に立った基本法の自立経営農家というものは今度この基本方針で否定をされつつあるのではないかという印象を受けるわけであります。そうなっていくのではないかというふうに思うのですが、その点についてはどういうふうにお考えになっておりますか。つまり、もう少し言わせてもらいますと、あとで議論してみないとわからないのですけれども、どうもこの自立経営農家というものは、確かに経営規模は拡大するが、それは名目にすぎない、借地農という方向に大きく前進するのじゃないか。確かに、アメリカにおいても、欧州諸国においても、農業が近代化をする過程においては、そういう明確な体制をとっていたことは私も十分承知しております。これは非常に大きな問題だと思うのですが、そういう点はどういうふうに考えておられますか。
  176. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のように、全体のわが国の農業生産を維持してまいりたいと、われわれはまず第一にそういうことを考えます。そういうことで、生産を維持し、農業の所得が他産業に比べてひけをとらないような所得を得せしめるように競争力を維持していくことに考えなければならぬ。自作農の考え方は、もちろんこれは必要なことであります。しかし、今日の産業構造全体の中で、零細な農業で効率の悪い農業をかりに維持してまいるといたしましても、これはコスト高になって、競争力というものはだんだん弱くなってまいります。そういうことになれば、いくら農業を維持しろといっても、その農業を維持してまいるためには特段な保護政策を与えていかなければ維持できないと思う。したがって、農業それ自体が強靱な力を持ち、同時にまた、消費者が納得のできるような一定の妥当な価格で生産を維持していかれるというのには、国際的競争力もやはり十分に備えなければなりません。したがって、私どもは、農業生産全体がそういう意味で強靱な経営力、経済力のもとに生存していくためには、経営規模を広げていくということがどうしても必要だと、こういうことでございますので、故意に自作を否定するわけではありませんので、したがって、農業それ自体の体質を強靱にしてやってまいるためには、それぞれの環境に応じて経営規模を広げていくことが大事ではないか、こういう点に立っておるわけであります。
  177. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大臣の答弁は、確かに、自立経営農家として他の勤労者と均衡のとれたような農家をつくっていかなければならない、あるいは、国際農業とある程度太刀打ちできるようなそういう方向へ持っていかなければならない、こういうことはわかるんですよ。それを私は聞いているのではなくて、私の伺っているのは、農地法の改正によっての自作農主義というものでは困りますよと、その上に立っておった農業基本法の自立経営農家というものは、この基本方針でいきますというと内容の変わったものになりますよと、こういうことを聞いているんですよ。変わるというふうに私は思うから、そうではないかと聞くというと、大臣の答弁の中にうかがえることは、どうも私の説を肯定しておられるようにも思う。一がいに自作農主義にいつまでもというふうなお話もありますし。だから、自作農主義、自立経営農家と基本法で言っているものと違ってきたというふうに考えなきゃならぬのですよ。経営規模の拡大にはならないですよ、これは。言うなら、これは形を変えた兼業農家をつくるようなものですよ。御承知のように、いま、農家の中には、農村の中には、潜在過剰労働というのがいっぱいありますよ。それは、機械を入れますから、機械を入れた限りにおいては過剰の労働となる。それが兼業になって通勤労働者になっていると逆にも言えますけれども、一方においては、機械を入れたから、労働力が余るから、おまえの土地を貸せということになる。貸そうというんです、今度。だから、これは、ほんとうならば兼業農家になるものを、施策によって兼業させようというものにすぎないんじゃないか。だから、自立経営農家とうるさくおっしゃっておるけれども、内容は違ってきておるのじゃないですか。そういう方向に発展するのじゃないですかということを私は聞いているんです。大臣が答弁できなければ、だれでもいいんですよ、違うなら違うと。
  178. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) どうも、少し誤解があるんじゃないかと思うんです。私どもの発表いたしております基本方針をお読みくださっても、自作的経営者を中心に規模を拡大していくんだと。自作農主義を否定しているわけでは決してないのであります。われわれとしては、そういう規模の大きい、もちろん家族経営を中心にいたしました自作農の経営規模を広げて、それを中核にしてやっていきたいと。したがって、移譲してくださるのもよし、賃貸借でおやりになるのもよし、そういう自作農が中心になって広げてまいりたいと、こういうことでありますからして、自作農主義というか、そういうものを決して否定している精神ではないのでありまして、そういうふうに御理解を願いたいと思います。鶴園哲夫君 それは、大臣も私の見解に似ておるんですけれども、言い回しがちょっと違うようですね。大臣がおっしゃるように、農地価格というものが非常に高騰してきたと、これは世界に例を見ない状況だということですね。そういう中で農地を取得した経営規模の拡大というものは困難である、むずかしい面があるという点をさっきおっしゃっているわけですよ。そこで、借地を——簡単に言えば借地です、借地というものをもっと大々的に円滑に運営する必要がある。ところが、実は、農地法というものがあってそれが縛られておる。それを解きほぐすということになるわけでしょう。日本の自作農主義というものは、これは農地法があって守られておる。それは耕作権を中心にしたいわゆる保護であった。ところが、耕作権は今度は困るということで、耕作権というものはぐっと弱まりますよ。そして所有権が非常に偏重されてくる。農地の所有権が偏重されて、つまり貸す側の立場というものが非常に強化されているということですね。農地局長はいないですか。残念ですな。どうですか、その点は。ぼくは、この考え方というのは、ほんとうに現場から積み上げていないと思うんですよ。つまり、自作農という現場から積み上がっていないですよ。あなた、農地課長ですか。
  179. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) 管理部長です。ただいまの自作農主義を今度の農地法の改正の考え方は放棄するものではないかというお話でございました。いま大臣からお話がございましたように、現在、日本の農業経営の中身を見てみますと、面積で言えば九五%は自作農地でございます。それから戸数のほうで見ましても、純粋の小作農というものは約十万戸程度で、大部分自作地的な家族経営になっていると思うわけでございます。ところが、経営規模の拡大ということを考えました場合に、先生も御指摘になりましたように、所有権を移動しまして規模を大きくするという考え方と、それから賃借権を獲得して規模を拡大するという考え方があると思います。その場合に、われわれとしましては、もちろん望ましいのは所有権での規模拡大だと思います。その点につきましては、御承知のように土地取得資金の制度を設けておりまして、それの需要も年々ふえてまいりまして、大体三百億の公庫資金を融資するというふうになってきております。その辺は、おそらく、農地法を改正するかどうかということを別にしましても、変わっていかないのではないかというふうに考えております。ただ、先ほどからも御指摘がありますように、農地価格が非常に高いというような問題が出てまいりまして、所有権だけでの移動ということを考えておりますと、なかなか農地の流動化はいろいろな事情からいたしませんし、規模の拡大ということをこの際考えるとすれば、先ほど先生も御指摘がありましたが、おそらく、今後農地を貸していくのは、農業で見れば零細な農業、同時に、ほかの面から見れば、通勤的な兼業農家が多いのじゃないか。その方々の別の面で離農対策その他はあろうかと思いますが、農地のほうから見ますると、その方々にも貸しやすくするということもあわせてやったほうが、より規模拡大に寄与するのではないかというふうに考えておるわけであります。  したがいまして、先ほどから大臣もお話しになりましたように、やはり今後とも日本の農業経営というのは家族的な経営が中核をなす、その中で部分的ではありますけれども賃借権も緩和いたしまして、より規模拡大に寄与をいたしたいというふうに考えておるわけであります。
  180. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 部長の考えは、それはやむを得ないと思う。農地局だから、そういう感じがあると思う。私も農地局の出身なんですよ、本来は。農地局の小作官なんかやっておった。ですから、こういう問題について関心があるわけです。それはやむを得ない答弁だと思うんですね。おっしゃるように、確かに小作地は少ない。しかし、国が強制的に買い上げて約二百万町歩の自作農をつくった。その売却後二十年たったら、禁止を解くんでしょう。今度、貸し付けについての禁止を解くというんでしょう。さらに、本来あった自作地を貸すということもできるわけでしょう。ですから、今度の農地法の改正というものは、非常に大きな問題があると思うんですよ。それで、この目標の中に、経営規模の問題も何も出ていない。しかし、これは五町歩とか十町歩とかになっていかなければならぬわけです。それは、経営としては、あるいは農林省の考えているようにいけば、九十町歩ぐらいの経営になっていかなければならぬでしょう。その場合に、圧倒的に借地農業だということになっていきますよ。これでいったら、借地農業にならざるを得ないと私は思うのです。しかし、日本においては、借地農業というのはいま非常に大きな問題があると私は思うわけなんです。というのは、請負耕作というのは、いま、反当どのくらいになっておりますか。佐賀あたりの調査によるというと、佐賀あたりじゃ二万円ぐらいになっているようですね。新潟の西蒲原郡あたりになりますと、半分ぐらいですね。まあ二万円ぐらいということなんですが、二万円前後ということでしょうな。二万円ということは、今度、小作料を大幅に引き上げましたね。田んぼを四倍に引き上げ、畑を二・五倍に引き上げ、一挙に十三年ぶりにたいへんな引き上げをやったわけです。そのことはどうしても農地の価格にはね返らざるを得ないというふうに思うし、これからの日本の農地というものは、七番目の柱の中にも若干出ておりますけれども、いま都市近傍農家といわれるが、その都市は五百三十くらいありますね。その都市近傍農家というものは待機農家になっているでしょう。都市から大体五十キロ、東京あたりから百キロというあたりは、もうそういう傾向におおわれているわけですよ。この間も、山梨へ行きまして、山梨の酪農を見てきました。酪農を見ますと、観光事業の進出でもうがたがたになっている、水の問題で。観光業者がそこへ入ってくる、別荘ができる、何ができる、学校ができるということで、水で盛んに争いになっている。土地は広げられない、高くなっちゃうという状況でしょう。そういう中で、いま、小作料の統制を解いて、最高限度額も解くというのでしょう。そうなりますれば、小作料なんというものは二万円ぐらいに上がると思います。経営の規模が拡大したように見えるけれども、実はその大部分は借地だ。その中で上がった利潤というものは——経営規模を拡大すれば、幾らか上がるでしょう。それはほとんど全部借地に吸収されるということにならないんですか。経営拡大じゃないですよ。これは形を変えた兼業農家をつくるものだと私は思う。これは農地局の関係者もわかると思う。だから、そこら辺をはっきりしてもらいたいですね。大臣、これは小作料は上がりますよ。最高限度額も取りはずすというんだから、すぐ二万円ぐらいになるでしょう。二万円という金額は、米で言えば十日か十二日です。それは、出かせぎに行くと、土建労働者の賃金と同じなんです。出かせぎに行って土建の作業をやるよりも農地請負をしてやったほうがいいという、これは賃金と同じですよ。二万円というのは、それよりも幾らかいいというところでこれはやっているんですよ。本来ならば兼業に出るところです。だから、結局、形を変えた兼業にすぎないじゃないですか。経営は確かに拡大するでしょう。ですが、それは借地だ。しかも、小作料はうんと上がっていくから、生産のメリットというものはみなそっちへ持っていかれてしまう。何が自立経営農家で、これから何とか他の産業の所得に見合ったようなということになりますか。ならないでしょう。これはとんでもない話だと私は思うんですが、もっと議論してみなければわからぬから、最初からあまり私がおこると、あとであやまらなければならぬかもしれぬから、穏やかにやっておきますが、おかしいですよ、大臣。  ですから、これは、基本的に言って、さっきも悪口を言ったのだけれども、この基本方針というのは、農地法を改正するおっかぶせにすぎないのじゃないかという印象を持っているのです。局長連中がおっかぶせてしまったのじゃないかという感じがしてならないんですね。農地法の改正というのは、何といっても、もっと慎重に検討すべきだと思うんですよ。これは、先ほど冒頭に言ったように、七項目出ているけれども、その中で、具体的なものは、第一項目の、第一の柱の、農地の流動化だけですね。あとはぼわっとしたものですよ。いままで言われたようにぼわっとしたものです。その中で少し変わっているのは七番目の柱ですね。これも大臣の答弁でぼわっとしている。はっきりしているのは第一番目の問題ですよ。それが構造政策の中心になってきちゃっている。焦点になってきているから、これは非常に私は問題だと思う。しかも、小作料の統制を最高額を撤廃するというのですね。これは私はえらいと思うんですね。ただ、二五%というのは残しておくのだそうですね。ですから、二五%でいきますと、やはり二万円から三万円になりますよ。二万円から三万円ということになるんです。そうすると、どういうことになるんですか、一体、この自立経営農家というのは。だから、私は、最初から言っているでしょう。自立経営農家と盛んに言っているけれども、内容は相当質的に変わったものなのじゃないですかということを言っている。答弁を頼みますよ。
  181. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) ただいまの佐賀あるいは新潟の例、私たちも、いわばやみ小作といいますか、請負の例を、いろいろ聞いております。ただ、私いま申し上げることは農地法と直接関連しないわけですけれども、そういうものが成立した実態と申しますと、おそらく、その地帯では、俵で言ってはおかしいのですけれども、十俵ないし十二俵とれている地帯だと思います。その場合に、農家の感覚でございますが、そういう農家にいろいろ聞いてみたら、肥料代あるいは農機具の償却代を入れまして大体二俵と見ております。それからさらに労賃は幾ら見ているかというと、その周辺の農村の日雇い労賃で言いますと大体二俵。そうすると、十俵とれたあと、六俵が、いわば利潤といいますか、利益といいますか、所得になってきます。その場合に、どうも小さい農家が大きな農家に貸して——大きな農家も、そんなに大きな経営じゃございませんから、いま自分の持っております機械装備ではもう少し土地がほしいというようなところから、どうもその残りを半分分けにしておるというようなことから、たとえば先生おっしゃいました二万円というものは、大体三俵に当たるというようなところではないかというふうに考えておるわけであります。その点を農地法の精神その他から厳密な計算をしてまいりますと違ってまいりますけれども、どうもいま行なわれているやみ小作というのはその辺に経済的に成立しているゆえんがあるのではないかというふうにも思うわけであります。  そういうことがございますものですから、確かに二万円は高いと言えば高いと思います、いまの統制額から比べまして。ただ、流動化を賃借権の面からはかるという点になりますと、その点を少しゆるめて、多少地代として高くなって、そっちのほうに行くかもしれないけれども、やはり第一段階としてはそういうこともやむを得ないのじゃないかというふうな気も、これは私の私見でございますけれども、気がしているわけでございます。
  182. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは、大臣、そういう意味で、基本方針は、農地法の改正については慎重に検討してもらいたいと思います。これは、やってみても、いまのままでやったら、やみ小作といいますか、そういうものはどうしても二万円前後になります。そうすれば、経営は確かに広がった、かえって広がった、それで経営全体として見ると上がりますが、しかし、そこから得られる収入というものは持っていかれてしまう。ですから、今度は、耕作権というのじゃなくて所有権というのに貸す側に重点が置かれ過ぎた、借りる側がいわゆる耕作権というのが非常に弱くなっている、それが今度の問題点じゃないかというように思うのですよ。  時間の関係もありますからこの点は、この程度にして、私、こいねがわくは、自立経営農家のためにいわゆる経営規模を拡大するというような意味合いにおいて、農地法の検討については慎重に、ほんとうに慎重に検討してもらいたいという点を申し上げて、大臣が何かカナダ大使との関係があるというお話ですから、あと一つ伺っておきますが、それは、この基本方針の七項目のところに出てくるやつですね。これは、私は、こういうふうに思うのですけれどもね。七項目の中に出てくるやつは、農林大臣は何か農業の領土宣言だというふうにお話しになっておられるそうですが、領土宣言もよろしいけれども、その領土に農民がいなくちゃ話にならぬわけですが、農民がいなくなっちゃって、いま、全国的にいいまして、過疎問題ですね、過疎地帯、部落そのものの運営がむずかしくなってきているという状況ですね。まあそういう中で、この七番目にもっと具体的にそういうものについてどういう政策をやるのか。自立経営農家、自立経営農家と言ったって、部落そのものが非常に貧弱な状態になって運営できないというような状況になりますと、これは意欲なんか出てこないですよ。そこら辺の問題について、この七番目が、七項目が、非常にふわっとしちゃっているのですが、その点についてはどういうぐあいに考えておられますか。これは意欲は出てこないですよ。おそらく、いまの状態では、これからまだ進んでいきますよ。ですから、自作農なりあるいは農業者が農村に残って農業をやるための社会環境というものをはっきり打ち立てていく、そういう方針を立てないというと、基本法時代とまた変わった状況になっていますからね、農民というものははなはだ意欲が出てこないのじゃないかと思うのですがね。その点について一つ。  もう一つは、これははしょりまして急ぎますから恐縮なんですが、先ほどでん粉の問題についての質疑があったわけなんです、食糧庁長官との間に。でん粉の問題で来年の二月にインドのニューデリーで開かれますね、後進国の貿易開発の国際会議が。その場合に、でん粉もそうですが、紅茶もそうでしょう。インドは紅茶の産地ですね。セイロンに近いわけですね。ですが、ここではでん粉について、これはもう最も大きな焦点になると思うのですが、どういうふうに対処される予定なのか。大臣のこの基本方針を発表されるときの談話がありますよね。この談話の中に、まん中あたりから下のほうに、今後討議が取り進められる予定の後進国貿易拡大問題などを見ても、国内農業に悪影響を与えるようなことは断固として排除していく考えだということが書いてあるのですが、でん粉の自由化問題について関税の引き下げ等についてどういうふうに考えておられるのか。まだ聞かなけばれならぬ点が残っておりますけれども、時間の点がありますから、その二点ですね。
  183. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) ただいまお話しの第一の問題につきましては、私どもも非常にむずかしい問題であることはよく自覚をいたしております。しかし、食糧生産をある程度の自給度を維持していく、そして農業を守っていくというからには、それの生産地たるべき土地の必要量というものを一定の確保をするということは当然のことだと思います。われわれが考えるだけでなく、農村民自身が非常に最近の状況を憂えてわれわれにも感想を訴えてきております。識者はみなそういうことについて心配をいたしておるわけでありますから、そういう意味で、やはり国土の利用区分というものは政府としてはある程度確立すべきである、こういうことを申しておるわけであります。したがって、政府部内においても、こういう問題について真剣に協力を求め、対処いたしてまいりたい。ただ、しかし、いま鶴園さんのおっしゃいましたように、それをやろうとしても、それはあるいは可能であるとしても、農業を捨てる者が出てくる傾向では意味ないではないかと。全くそのとおりだと思います。それで、私どもは、近代産業の傾向である労働力が農村から他産業に流動する傾向、したがって、これについては、省力、機械化等、全力をあげてやるわけでありますが、そのほかにも、先ほどもちょっと申しましたように、いま選択的拡大と言われておる中で最も欠乏いたしております畜産あるいは酪農等について考えてみましても、やはりもっともっと計画的に、遊んでおる土地を活用する、あるいは国有林の活用、そういうようなことについて草地の造成をいたして、いま申しましたような畜産、酪農等の積極的な生産増強をはかってまいりたいと、そういうことを考えますと、まず農山村にあります道路の整備が必要であります。私は、先般、閣僚会議でアメリカへ行ってみましたけれども、ああいう状態では一ああいう状態と申しますのは、いまわが国の農業従事者の持っております車の数は、全体の八%くらいであろうといわれておりますが、もう十年もたてば半分くらいになるのではないかと想定されます。そればかりではありません。肥料その他のものを輸送いたしますにも、いまのような道路では不十分であります。御存じのように、スイスであるとかオーストリアなどへ行ってみまして、びっくりするほど高原の地に放牧がされて、りっぱな草地が造成されておる。いろいろあるでありましょうが、われわれが考えて一番びっくりするのは、道路のいいことであります。したがって、われわれは、農山村に対する道路を整備して、そして畜産、酪農に力を入れなければならぬといったような、一つの例を申しますならばそういうことでありますが、その他生活環境の改善等に努力をいたしまして、農業というものに——あの鉱工業のほうで、比較的不衛生な、しかも人口稠密な中にあって、ああいう生活をいたしておられる一般の勤労者に比べて、空気のよい天然を相手にして、しかもだれにも拘束を受けない、自分の計画のもとに進められる農業というものは、ある意味において非常に魅力のあるものでありますから、これを経済的に魅力あるものに仕向けることが必要である。そういう観点に立って諸般の施策を進めてまいって、少なくともいまのような全産業就業者の二〇%そこそこを占めております日本の農業就業人口ももっと減っていく傾向にあると思いますし、もっと減っても生産を増強させるような努力をいたさなければならないと思います。そういう意味で、集約的にそういう目標に向かって農政を進めてまいりたいと、そういうことを考えておるわけであります。その基礎になる経営規模の拡大ということで構造政策の基本方針というものを考えたわけでありますが、いまお話しの幾つかの中で、たとえば農地法等につきましては、これから法律を立案するわけでありますから、農政審議会その他いろいろ学識経験の人々にも十分相談をいたしまして、御趣意のあるようなところについては考慮いたして素案をつくってまいりたいと思っております。  それからアンクタットの問題がございました。アンクタットのことにつきましては、御指摘のように、早晩でん粉の自由化が問題になるとも考えられます。お話のとおりであります。しかし、国内産のでん粉は、農産物価格安定法によりまして価格支持政策を行なっておることでもございますし、現在の段階ではでん粉の自由化をするということは政府は考えておりません。しかし、最近の国内産イモでん粉の減産傾向とでん粉需給の不足基調にかんがみまして、でん粉の総合需要に支障をきたさない範囲において、再発途上国からのでん粉の買い付けにつきましては十分に検討いたさなければならないかと考えておりますが、このことは、先般、ほかの問題で、たとえばケネディ・ラウンドとか、あるいは日米経済合同委員会等においても、低開発国のわれわれの産物と競合するものについてのいろいろな要望がありましたけれども、私どものたてまえといたしましては、イモでん粉につきましては、いま申し上げましたような態度を堅持いたしてまいりたいと、こう思っております。
  184. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いまのでん粉については、私は、もう一つ、関税を引き下げるという考えがあるのかどうかということも伺っておるのですけれども、リンクしたものは一〇%ですか、リンクしないものは、いま、五〇%ですか三五%ですか。リンクしたやつは、一〇%かかっているでしょう。だから、関税を下げるということにはならないかどうかということを聞いているわけです。
  185. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 政府委員からちょっと……。
  186. 大口駿一

    説明員(大口駿一君) 外国から輸入するでん粉についての関税は二五%でございます。それからいま鶴園先生がおっしゃっておられるのは、コーンスターチをつくるためのトウモロコシの関税が、現在、一次税率が一〇%、二次税率が二五%、この問題は、今回のでん粉の価格を決定することに関連をしまして今後の検討課題になると思いますけれども、外国からのでん粉そのものの輸入関税を現時点で検討いたしている事実はございません。
  187. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これからもしない……。
  188. 大口駿一

    説明員(大口駿一君) 検討している事実はございません。
  189. 任田新治

    理事任田新治君) 本件については、この程度にとどめます。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  190. 任田新治

    理事任田新治君) 速記をつけて。     —————————————
  191. 任田新治

    理事任田新治君) 次に、資料要求について川村君から発言を求められておりますので、これを許します。
  192. 川村清一

    ○川村清一君 資料をお願いします。実は、先般の委員会で私が質問したことなんですが、鼻腔鼻肺炎ウイルスによる流産馬の問題についてでございます。その後、農林省の措置等を見守っているのですが、どうも具体的に私が納得するような方向にも進んでおりませんので、この問題をもう少し掘り下げてみたいと思いまして、その意味でお願いをするわけであります。問題は、アメリカからの輸入馬が横浜の動物検疫所に入りましてから検疫所でとられた処置について、いまこれから申し上げる事項についてどういうような処置をしたか、できるだけ詳しく、報告書といえば語弊がありますが、そういうような意味のものをぜひひとつ資料として提出いただきたいということであります。  第一番目は、船中で流産しました胎児の取り扱いをどうしたか。胎児を収容した容器の取り扱い等について御報告願いたいと思うわけであります。  次には、流産いたしました母体でありますが、母体の処置をどうしたかということであります。  次には、馬の輸送は輸送箱に入れて輸送されたと思うのでありますが、輸送箱並びに寝わらでございますが、この寝わらの消毒処置をいかようにしたかということであります。  次に、流産いたしました胎児は解剖なされたと思うのでありますが、解剖上の所見をひとつお知らせいただきたいことと、並びに、その消毒、その後の処置、これについてひとつお知らせいただきたい。  最後に、馬を入れました馬房でありますが、馬房の消毒についてはどのような処置をなされたか。  以上申し上げました事項についてとられた処置を資料として、次の委員会が始まるころまででよろしいのですが、でき得れば委員会の日にちの三日か四日前に出していただければなおけっこうだと思います。ひとつお願いします。
  193. 信藤謙藏

    説明員信藤謙藏君) 調査いたしまして提出いたします。
  194. 任田新治

    理事任田新治君) 次回委員会の開会については、一応十月中旬を予定しておりますが、具体的な日時の決定については、委員長・理事に御一任願いたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十八分散会      —————・—————