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中村喜四郎君 いまの
計画を聞いていますと、この遺骨収集の最終的に仕上げできるのは何年くらいになりますか。というのは、私
どもは現地を見てまいりまして、骨がすでに腐って、頭蓋骨が風雨にさらされてくずれかかっており、遺骸が、骨全体が断崖絶壁にひっかかったままになっている。サイパン島の地獄谷等に行ってみましても、約七十体の遺骨が累々として横たわったままになっております。さびついた銃、みけんに親指大の穴のあいた頭蓋骨がそのまま、おそらく最後の一弾を足の親指でみずからの命を断ったであろうその姿、壕の中には、まっ黒けに火炎放射器で焼けただれて、苦しんだであろうつめのあとまで残ったその姿そのままにいまだに残って風化されておるわけです。壕のそばには、でんでん虫のからが、かつて食物がなくてそれだけで生きたであろうその姿そのままに残っているのです。いまの
厚生省の
計画でいったならば、あのうち、サイパンだけじゃありません。テニアンでもどこでもそうです。至るところにそういう遺骨累々としている。しかも工事が、公共事業等が向こうで進められるところでは、骨がブルドーザーで掘り起こされて、しゃれこうべが道ばたに飾られて、こういうめがねがかけられて飾りものにされているところもある。こういう
事態のままで私たちは見過ごすわけにはいかないと思う。いまの
厚生省が一生懸命やっていることは私たちもよくわかります。遺族の立場に立って遺族の代表等を現地に送る姿もわかります。しかし、いまの姿でいったのでは、五年たっても十年たってもあの遺骨を迎えることはできない。しかも、今度の八百万、千万の予算をもって遺骨収集に行くのも、
厚生省から七人、外務省からと、現地に行って、現地の人を頼んで遺骨収集する。おそらくここに大きな問題があるわけです。フィリッピンへ参りましても、今度のテニアン、サイパンの場合も、問題はそういうところにあるわけでありまして、私が言わんとするのは、遺骨収集の国の予算がきまったから、現地民に対して、遺骨一体について幾らで
日本政府に売りましょう、こういう
計画で見られているんです。だれがそういうことをやったか。
日本人が行って、
日本の政府はこういう予算をつくったから、あなた方は骨をただ渡すんではなくて、この骨を売りなさいよ、売って島の開発にこれを使いなさいよ、こういうことを
日本の人がやっているのです。しかも、それは
厚生省の役人と称して名刺を使ってやっているのです。そして
日本に連れてきて、サイパンのマリアナの議会の議員さんを三名連れてきて、
厚生省の役人と会わせて、そして島へ帰って議長に
報告し、
日本政府もこれを了承して一ポンド一万一千円というわけで取引が成立したからと、こういうふうなことを議会に議長を通じ
報告し、議会もこれを了承してやろうと、そういう策略をしたのでございますが、市長はそんなことはできないと、遺骨を売るというようなことはできない、と、その中に入った人の名前を申しましょう、中島文彦という
日本人です。この中島文彦というのは、サイパンの市長、メイヤーに対して、あなた方はこういう
計画でサイパンの開発をやりなさい、遺骨千三百万、これでジャングルを切り開きなさい、こういうことをしている。あなたはそれでも
日本人かとメイヤーにきびしく追い詰められた事例もある。そのメイヤーはいま
日本に来ています。
日本のことをよく理解した人です。この奥さんはサイパンの全員玉砕の中で生き残った栃木県出身のみつ子さんという
日本の人です。このメイヤーが一部始終そういうふうなことを私たちに語ってくれているわけです。だから、私たちの
考えているのは、単に政府で予算をつくって、役人と一緒に、
厚生省の人と一緒に行って、現地の人を使って遺骨収集をやるというとき、これではほんとうの遺骨収集には私はなっていかないと思うのであります。やはり
国民的な立場で、遺族の代表等を交えて、そこで現地でねんごろに弔って遺骨を埋めてこなければならない。おそらく全部とってくるわけにはいかぬでしょう。これは遺骨収集という国際的ないろいろな問題になったらば、きのうも私
ども話し合ったが、現地の人が反対したんです。
日本人のほんとうの骨か、アメリカ人の骨か、われわれ島民の骨じゃないか、骨の選別まで問題になるはずです、感情がこじれてしまったとするならば。幸いにしてテニアンにしても、サイパンにしても、島民の人たちが
日本のかつての居留民たちがまいた善意の種が実を結んでおって、
日本人に対して非常に好感を持っている。私
ども参りました十一月十一日、この日はサイパンの人たちはお盆で、全島民が民集まって、
日本の兵隊さんの慰霊祭をやっている。毎年やってくれている。こういうふうなところですから、
日本の中島文彦なるものが
厚生省の名刺を使って行ったが、成功しなかったからよかったようなものの――ここで私は、中島の名前が出ましたから、援護
局長さんか係の人に、村岡課長と中島文彦なる者は会っているのかどうか、そして、マリアナの議会の三人の人が
厚生省にたずねてきてそういう相談をしたか、遺骨払い下げとか、売買の相談をしたかどうか、これを
お尋ねしたいのです。