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1967-11-16 第56回国会 参議院 決算委員会 閉会後第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年十一月十六日(木曜日)    午前十時十一分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         亀田 得治君     理 事                 黒木 利克君                 中村喜四郎君                 岡  三郎君                 竹田 現照君                 黒柳  明君     委 員                 木内 四郎君                 佐田 一郎君                 高橋文五郎君                 山本茂一郎君                 小野  明君                 大橋 和孝君                 大森 創造君                 柴谷  要君                 瓜生  清君                 須藤 五郎君    国務大臣        厚 生 大 臣  坊  秀男君        労 働 大 臣  早川  崇君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        外務省アジア局        外務参事官    根本  博君        外務省北米局北        米課外務事務官  佐藤 行雄君        文部省大学学術        局長       宮地  茂君        厚生省医務局長  若松 栄一君        厚生省薬務局長  坂元貞一郎君        厚生省社会局長  今村  譲君        厚生省援護局長  實本 博次君        郵政省郵務局長  曽山 克巳君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省安全衛生        局長       大野雄二郎君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君        労働省職業訓練        局長       和田 勝美君        自治省財政局長  細郷 道一君        会計検査院事務        総局第三局長   増山 辰夫君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件昭和四十年度一般会計歳入歳出決算昭和四十  年度特別会計歳入歳出決算昭和四十年度国税  収納金整理資金受払計算書昭和四十年度政府  関係機関決算書(第五十四回国会内閣提出)  (継続案件) ○昭和四十年度国有財産増減及び現在額総計算書  (第五十五回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和四十年度国有財産無償貸付状況計算書  (第五十五回国会内閣提出)(継続案件)     ―――――――――――――
  2. 亀田得治

    委員長亀田得治君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  これより昭和四十年度決算外二件を議題といたします。  本日は、厚生省及び労働省決算について審査を行ないます。  この際、おはかりいたします。  当委員会に提出されております厚生省及び労働省決算の概要につきましては、口頭による説明を省略し、これを本日の会議録末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、会計検査院検査報告についても説明を省略し、文書をもって提出願うことといたし、これらの報告につきましても、本日の会議録末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  これより質疑に入ります。質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  5. 竹田現照

    竹田現照君 最初に、辺地医師の問題についてお尋ねをいたします。  この医師不足は全国的な問題でありますが、とりわけ、最近は都市部に集中をして、僻地と言われないような地方都市でも医師がたいへん不足をし、公立病院等開店休業、あるいは医者がいても一人か二人しかおらぬというので、たいへんかけ持ち診療というようなことでもって、病院の機能が十分に果たされておらない。そういうようなことが慢性化しておりますが、こういう医者分布状況について、厚生省は一体どういうふうに把握をされておりますか。医者全体の分布状況です、都市部地方部に分けまして。最初にそのことをちょっとお尋ねをしておきます。
  6. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 医師が今日非常に払底といいますか、数が少のうございまして、国民保険がしかれておりながら、医師が足りないために、これが十分皆保険が行なわれていないということは御指摘のとおりでございまして、その中でも、特に僻地におきましては、医師が足りないために、病気の治療がそのために十分行なわれないというような事態に相なっておりますことは、これは私どもといたしましても、否定できがたい、認めざるを得ない事実でございまして、これにつきましては、できるだけすみやかにこういったような事態解消するようにつとめてまいっておるのでございますが、大体、その僻地医師確保できにくいというようなことを調べてみまするというと、僻地生活環境が非常に不良である、それから医師がみずから研究の機会に恵まれないといったようなことだとか、それから将来の地位が、いなかにくすぶっておりますと不安定であるというようなことだとか、あるいは勤務の態様が非常に不規則であって、自分の子弟の教育といったようなことについても非常に不便であるというような事情が重なり合って、今日の事態が起こっているということでございますが、こういったような悪い条件を克服いたしまして、医師確保をはかるために、厚生省といたしましては、昭和四十二年度におきまして国立病院僻地勤務医師増員を行ないましたが、来年度においてもこの定員ワクをさらに広げるとともに、国立療養所僻地勤務医師増員を行なう考えでございます。また、僻地を担当する一般親元病院に対しまして、僻地医師派遣協力費を補助するといったようなことも予定しているのでございますが、さらに、僻地勤務医師確保のためには、もっと根本的な対策を講ずる必要があると考えまして、さしあたり文部省に要請いたしまして、大学医学部定員増加をはかりまして、医師の絶対数をふやしたいということとか、地方公共団体などが行なっておりまする医学生に対する奨学金の貸与、僻地勤務医師派遣に協力した医科大学への研究費の補助などの施策を参考にし、さらに効果的な医師確保対策につきまして、目下鋭意研究中でございます。  なお、厚生省といたしましては、僻地住民医療確保するために、これはさしあたっての対策でございますけれども昭和三十一年度以来僻地医療対策を推進してきたところでございまして、当初は僻地診療所整備をはかることを主眼とした対策の推進をはかってまいりましたが、さらにこれらの地域僻地性解消をはかるため、診療所整備と並行して、巡回診療所患者輸送車といったような機動力の強化を進め、各種の施策を総合的に講じてまいったところでありますが、今後におきましても、その方向でより効果的な僻地医療対策を進めてまいりたい所存でございます。  いずれにいたしましても、今日、僻地はそういったような医師が足りないために十分でないということは痛感していることでございまして、でき得るだけ解消をはかりたい、かように考えている次第でございます。
  7. 竹田現照

    竹田現照君 大臣お答えは、大体ここ数年来同じようなことで、対策の前進というものが具体的に見られないと私は思うのです。  それで具体的にお聞きいたしますが、いまの厚生省医者免許関係、あるいは医者教育、これが文部省等にゆだねられている関係で、そのパイプがどうもうまくいかないのじゃないか。端的に言うと、大学権限医局権限がばかに強過ぎて、厚生省もどうも歯が立たない。そのほうが適切な表現じゃないかと思うのですが、その点で、医者確保する面で、厚生省文部省との間に何らかの解決策というものを具体的に進めていく、あるいは医師免許方法とか、あるいは医者免許をとったあとに僻地勤務を義務づけるとか――学校先生が、とりあえず辺地学校勤務しなければ将来都市部に転勤させられないとか、そういうようなことをいろいろと各府県でやっているようでありますけれども、何らかの医者に対するそういう免許その他の方法を通して医師の充足をはかるという方法をとっていかない限り、いま大臣お答えになったようなことだけでは、もう抜本的な解決というものには私はならぬのじゃないか、そう思うのですが、いかがですか。
  8. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 御指摘のとおり、何しろ今日、お医者さんの絶対数が、これが不足しているということが何よりも私は大きい原因であろうと思いますが、そのお医者さんの絶対数をふやしていくというためには、これはどうしても大学におきましてできるだけ大ぜいのお医者さんを養成するというように持っていかなければならないのでございますが、これにつきましては、厚生省といたしましては、文部省に対しまして、いつも文部省に話をいたしまして、大学における医学生増員といったようなことも要請をいたしておるわけでございますけれども、何にいたしましても、これは主管が文部省のことでございますし、これはまた医学部整備充実していくということにつきましては、これはいろいろな方面関係もございますので、なかなか思うとおりにはまいらないのでございますが、その他の医師養成、あるいは試験、あるいは前国会におきましてもたいへん問題になりましたインターン制度といったような、相当これは基本的な問題に触れてくるのでございますが、そういったようなことにつきましては、御指摘のとおり、これは基本的にその根底に触れた考えをとっていかなければなかなか問題は解消しないものと、かように考えまして、厚生省といたしましては、そういう方面についても鋭意検討を続けているわけでございますが、なかなか短時日のうちにこの問題がすっかり解消するということもできないのでございますが、そういったような難点をでき得る限り克服してまいるべく努力を続けているわけであります。
  9. 竹田現照

    竹田現照君 まあ、これは言うべくしてなかなか簡単に解決しない問題であるということは私も十分に承知をいたしておりますが、それで医者が絶対少ないというこの前提の上に立って、特に、地方私立病院の問題については触れませんが、公立病院地方自治体のやっております町立あるいは村立、市立病院を含めまして、これが医者確保するためにたいへん涙ぐましい努力をしている、自治体がですね。大学医師派遣権というものがあるんだそうですけれども、それで非常に公立大学医者派遣してもらうためにもうたいへんな苦労をしている。それでもなおかつ医者派遣をしてくれない。その結果、たいへん多額の金を自治体が使って医局とのつき合いその他をやっているということは、いまや公然たる事実ですね。こういうことについて、なぜそうまでしなければ――金を払えば行くわけですよ、現実に。――しなければ、医局医師派遣権と称するもの、大学のですね、に対して、もう少し僻地医療対策国民の健康を守るという前提の上に立って、国公立大学はもう少し積極的にその問題に取り組むべきではないのか。ただ、医者辺地に行くと研究できないとかなんとか、いろいろな理由を並べておりますけれども、こういうことについて文部省の当局としては、もう大学先生には歯が立ちませんというようなことで、事実上あまり手をつけていない。この間、私が文部省審査のときにこの問題についての具体的な資料要求をいたしましたが、間に合いません。二十日までに集めるということでありますが、文部省としては初めてその私の要求に基づく調査を行なわれたようでありますけれども、こういうことについて、もう少し文部省は具体的に積極的に手を打つべきでないかと思いますが、どうですか。
  10. 宮地茂

    説明員宮地茂君) 国立大学あるいは公立私立大学におきましてもそうでございますが、そこでの医学部学生教育する場合に、入学の定員につきましては、厚生省医師必要数といったようなものをいろいろお話も承り、またそれに沿うべくやっておる次第でございます。来年度におきましては神戸大学と、たしか山口大学であったと思いますが、二十名ずつの増員をいたしております。ただ、これは文学部とかあるいは法学部のように簡単に学生増員ができるという性格のものではございませんで、やはり学生を入れます以上、それに必要な施設、設備、教官、あらゆるものが付随いたしませんと、ただ急場に学生だけを増加するというわけにもまいりません。まあそういったようなことで端的に社会需要に応ずるだけの供給がなされておるかという点については、多少異論もあろうかと思いますが、厚生省とその点はよく話し合いまして、文部省といたしましては、医者と船員、いわゆる商船大学医学部、これにつきましては、関係省の情報を十分キャッチをいたしておる状態でございます。  また、御指摘僻地等医者が行きにくい――これは別に責任回避ではございませんが、文部省といたしましては、直接医学教育をやっていく、医者になった者がどこに行くかということは、やはりこれは医療行政の問題であって、いわゆる文教行政が先頭に立ってやるべきことではなかろうと思いますが、しかしながら事実問題といたしましては、大学医学部付属病院、こういうところに、その学校を卒業したり、あるいは他の大学を卒業した者が相当勉強に集まっております。そういったような関係から、事実上いろいろ医師派遣について、大学医学部なり付属病院が御相談を受けておるということは私どもも承知いたしております。ただ御指摘の、そこでいわゆるあっせん料ともいうべき金が大学に行っているというお話でございますが、そのような事実は遺憾ながら私のほうも承知いたしておりません。それで、そうしたことを含めまして、当委員会のほうからも資料提出の御要望がございましたので、十一月一日に二十日間の期限を切りまして十一月二十日までに大学関係していろいろ地方医師をあっせんしたと、そういう場合におけるこの医師身分なりあるいはその医師の給料なり、あるいはそれに関連して大学が謝礼という名義で金を受け取ったとすれば、そういったようなもの、これを当委員会要求される資料であるという前提を付しまして、大学調査をいまいたさせております。したがいまして、結果につきましては、その後に御報告させていただきたい、このように考えます。
  11. 竹田現照

    竹田現照君 文教医療行政とは別だということはわかりますが、実際は医療行政を行なうところでも歯の立たないのが大学医局医師派遣権ですね、実際は。ですから、医者に関する限りは人事権が二つあると思う。大学のその医局の教授と、官公立病院であれば、国立病院長でもこれはあれでしょう、厚生大臣が任命しますが、これは大学医局の都合でいつでも差しかえるという、形式的な発令権公立あるいは国立病院の長は持っているにすぎない、こうまでいわれているのですね。それで、私が要求をしたその資料も、あっせん料がどうだとかこうだとかというものが具体的なかっこうで出てくると私は思わないのです。これは自治省のほうがよく知っていると思うのですが、実際に各町村医者大学から派遣をしてもらうために、いろいろな形で、いろいろな名目で金が医局とのつき合いの中で使われるということはお認めになりませんか。そういうことは掌握されていませんか、自治省は。
  12. 細郷道一

    説明員(細郷道一君) 医師不足につきましては、私ども地方団体集まりがありますと、最近ほとんどいつの集まりでも医師のそういう議論が出るのでございます。私ども、非常に地方団体がそういう意味住民保健衛生維持の上で頭を悩ましているということに深く実は同情をしておるわけでございます。したがいまして、各地方団体がそれぞれくふうをこらして医師の獲得につとめておるということは承知いたしております。したがいまして、何とかこの問題について根本的な対策ができればと実は絶えず思っておるわけでございますが、現実の問題としては、なかなかすぐそこにまいりかねますので、それぞれの団体の財政的な負担等を考慮いたしまして、十分とは思いませんけれども特別交付税等によって措置をいたしておる次第でございます。
  13. 竹田現照

    竹田現照君 いまのお答えで、自治省自治体がいろいろとくふうをこらして努力をされておることをお認めになったわけですが、そのいろいろのくふうというのが、それでなくても貧弱な地方財政の中でやりくりをされていることは、これはばかにならぬ金でしょう。これは町村が具体的に出さないのは、そんなことを出すとこれは大学の、また医局のげきりんに触れてそのしっぺい返しで医者を絶対くれないから出せないのです。しかし、現実はもう医者確保に泣いているのが事実ですね。私の知っているところだって、町村によっては医局とのつき合いに年二、三十万は普通ですよ。五、六十万から百万円、盆暮れのつけ届け、あるいは何だかんだの名目ですよ。大学先生の外国に行くせんべつだとか、やれ還暦がどうとか、いろいろなことのためにおつき合いをさせられている金というものは、全国的に町村の金を集約いたしますとこれはたいへんな金になると思うのです。しかし、それが名目どおりかっこうでは出ていないで、いま財政局長お答えになったように、いろいろなくふうをこらしてそれをつき合っていなければ大学から医師派遣をされないという現状ですね。これをやはり私は、もう理屈じゃなくて、厚生大臣、ここが政治だと思うのです。政治手だてで何とかしなければならぬ段階に私はきているのじゃないか。私の選挙区の北海道では、しかもこういう形で派遣をされる医師給与というのは、三十九年から四十年ごろまでは十五万円というのが普通でしたよ。これはまだ経験年数二、三年の医者ですよ。ところが、最近私は道内の町村を回ってみますと、二十一万というのが大体相場のようですね、これは手取りですよ。そのほかに管理職手当、あるいは医者が二人しかいないところ、これに院長と副院長名目宿直手当――病院なんかに宿直しないでうちで寝てても病直した、そういうようなことで、これはもうたいへんな金です。ところが、町村の三役だって、そんな二十万も三十万ももらっているなんて町村はありませんから、医者に関する限り、同じ公務員でありながら全く別ワク給与体系というものをとらざるを得ない。給与体系なんというものじゃないですよ。医者に関する限りは、別ワク給与というものを現実にやらなければ医師確保できない。病院開店休業で、地域住民からは、地方自治体の長は何をやっているんだと突き上げを食らう。それですから、町民なり村民の健康を守るという自治体責任者としては、どんな苦労をしてでも、医者大学からもらうためにもうどんな無理難題を言われても、それを聞かざるを得ないのです。それに、高いとか安いなんて言うと、あそこの町村はけちくさい、うるさいことばかり言う、あんなところにはやれないと言っている。医者も引き揚げてしまう。帰る帰るとおどかされるものだから、まあまあということで何とか引きとめにかかっている。二、三年したらまた退職金ですよ。これは私は、この間委員会で言った退職金と別な意味でどれだけ要求されるかわからない。そういうようないまの辺地医療行政の中に占める医師と実際の医師派遣権関係というものは、これは医者ということの特異性なるがゆえになかなか問題にされていない。このことについて、私は、先ほどお話ししたように、まるで抜本的な政治的な手だてをしない限り、このままでいけば、地方自治は限界がありますから、二、三年で六、七万も、十万に近くはね上がっているのですから、医者をもらうためにこれから三年たったらどれだけ上がるか。これは地方財政上かかえ切れない状態がくるんじゃないか。このまま放置しておくわけにはいかない事態に私はきているんじゃないか。そういう意味で、先ほど厚生大臣がいろいろとお答えになりましたけれども厚生省のいろいろな方もいろいろな本に書かれております、同じようなことが。しかし、そういうことだけでは問題の解決には私はならぬと思うのです。抜本的なひとつ対策を、厚生省文部省自治省を含めて、立てていただきたいと思います。しかしそれはいずれにしても、いまのようなこういう形で、国家公務員地方公務員の中で、同じ公務員身分でありながら、地方にいる医者のこういう状態というものは、給与問題一つに限ってみてもこれは正常でないと思うんですね。こういうことについて、自治省なりあるいは厚生省なりは、やむを得ない措置としてこれは黙認せざるを得ませんか。何らかの形で解決をしなければならぬとお考えにならないですか。こういうことについて御検討をなさったことがあるんですか。お答えをいただきたい。
  14. 細郷道一

    説明員(細郷道一君) 御指摘のとおり、医師確保地方団体が困っておりますので、先般も、地方ブロックごと地方団体代表者集まりまして、医師確保については、一つは、やはり病院を持っております医科大学といったようなものの地方への進出というようなことを考えてもらえないだろうかといったような真剣な実は議論も出て、それぞれ関係の向きにもそういった意向をお伝えをして御検討を実はお願いをしておるのでございます。
  15. 若松栄一

    説明員若松栄一君) 医師需給対策を抜本的に解決するべく検討しろということは当然のもっともな御意見と思います。私ども自身も長期的に医師確保対策検討をいたしております。日本におきまして、皆保険その他の医療保障の進展に伴いまして医療需要が非常に高まってきたことは事実でございます。そのために医師が総体的に不足を来たしてきた。絶対的に一体どの程度かということになりますと、これはいろいろむずかしい問題がございます。人口十万対医師が何人いるかということが世界的に一つの標準になっております。そういう場合に、そういう見方をいたしますと、日本欧米先進国に比べまして、まあ上中下と分けますと、下の程度でございますが、イギリス、フランスその他に比べまして、そう見劣りはございません。しかしアメリカに比べますと、四割程度不足している。ソビエトに比べますと、ほとんど半分近いというような状態でございます。しかし、このように非常に国によって開きがございますので一律に言うことは無理でございますが、従来から大体日本医師確保の目標といたしまして、やはり欧米水準ということを考えて長期的に計画を立てているわけでございます。そのために、医師養成につきましても、医療保障の拡充とともに医師増加をはかるべく努力しております。三十六年に皆保険が達成いたされましたけれども、そのころから医師養成を逐次増加いたしております。これは文部省にお願いしてやっておるわけでございますが、昭和三十四年までは、医師養成定員が二千八百二十名でございました。その後逐次増加いたしておりまして、四十一年は三千八百二十名、約千名近くこの数年間で増加いたしているわけでございます。先ほど文部省からお答えがありましたように、来年度また若干の増加をするということで、長期的に見ますと、現在約十一万足らず医師でございますが、それが現在の養成速度でまいりますと、昭和七十年には医師が約十五万人になる予定でございます。したがって、人口十万対の指数も、現在一一一というのが約一三〇足らずぐらいまでのぼっていくという、長期的にはそのような計画をいたしております。それから、短期的に、現在非常に急速に逼迫しておりますことは確かでございますが、これはきわめて短期的な原因もあろうかと思っております。といいますのは、御承知のように、インターン騒動で医師が国家試験を拒否いたしまして、本年の四月に医師が約三千名程度できるはずのものが、それが全然国家試験がボイコットされて四百名足らずしかできなかった。したがって、医局というものが、年々新しい人を入れて古い人が出ていって、ある程度医局のプールというものがあるわけでございますが、本年度におきましては、国家試験ボイコットというようなことから、医師の入局が非常におくれたわけでございます。そんな意味で、医局としても後任がないために医師派遣できないというような事情もございまして、そういう意味では本年度の当初、特に最近までの事情は、確かに医局が非常に苦しい状態にあるということも言えると思います。しかし、ただいま医師法の改正を計画しておりまして、もしこれが予定どおりにまいりますと、インターンを廃止し、そして学校卒業後直ちに医師の国家試験を行なうということになりますと――ことしの九月には二千九百名ばかり医師が国家試験に合格いたしました。来年三月に、予定どおりにいけば約三千名医師がまたできるわけでございます。また、私ども計画しております医師法がそのまま通りますと、来年の夏ぐらいまでに、また三千名ぐらいできるということで、約一年の間に一万名が医師の国家試験を受け、医師の資格をとるということになります。そのような状況があらわれますと、現時点の一番逼迫した状況はある程度緩和できるのではないか、そういうような意味できわめて長期的な見通しと、きわめて短期的な見通しだけを若干申し上げました。
  16. 竹田現照

    竹田現照君 そういう展望はいいんですが、医者が足りないということを悪用しているわけじゃないでしょうけれども、先ほど財政局長お答えになりましたけれども地方財政としては持ちこたえることが事実上たいへん無理なというようなところまでいって医者確保しているという、こういうことが、同じ国なり地方自治体給与の体系のあり方としても、これは必要悪として認めざるを得ないのかどうか。認めるとすれば、これはちょっとほかのほうにも波及することなんですが、辺地医者に限っては現状やむを得ない、こういうふうにお認めですか。私が先ほどから言っておるような給与状態あるいは大学医局とのために使われている現状、厚生大臣自治省に……。
  17. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 現在の状態でございますが、これはいまの状態がやむを得ない事態であるからといって放置する、やむを得ないというようなことは考えておりません。先ほどから申し上げましたとおり、お医者さんの絶対数が足りないということは、これはもう確かにいま医務局長からも答弁がありましたが、そういうようなことでお医者さんは、これは技術者であり、学者であり、決して商品みたいなものではありませんけれども現実には絶対数が足りないものですから、いわゆる売り手市場、買い手市場といったような傾向がお医者さんの需給というものにもあらわれてまいりまして、そして私は、お医者さんの大学における、何でございますか、先ほどから御指摘派遣権といったような、特にそういったような権限といったようなものが何も規定されておるわけでもないでしょうけれども、しかしその売り手市場、買い手市場といったような原因に左右されまして、確かにいま御指摘のような事実が、これはないということはここで断言できることでなかろうと私も思います。そういったようなことは、これは人間の健康を保持していく医療というような大事なことから考えまして、またさらに国民保険といったような観点からいたしましても、そういうようなことがあってはこれはもうならない。これはやむを得ない必要悪といったような考えは持っておりませんので、そこで私どもといたしましては、鋭意そういったようなことのないように、こういう事態解消されるように、厚生省はもちろんのことでございますが、文部省にもお願いを申し上げまして、そしてこれを解消してまいりたい、かように考えております。
  18. 竹田現照

    竹田現照君 解消してまいりたいという大臣お答えですが、年々歳々解消されるどころか、だんだん金の支出が多くなっているわけですね。先ほど自治省はえんきょくに私の質問をお認めになりましたけれども自治体はいろいろと支出させられている。これは少なくとも国公立大学医局にそういうようなばく大な金がいろいろな形で使われているということは、これは収賄ですよ。大学医局としては、これが医者なるがゆえに公然と認められる、「白い巨塔」なんというものじゃない、実際は。こういうことまでして、いろいろなことが行なわれておるということになれば、これは医は仁術じゃないですよ。医者が足りないということを全くたてにとって、公然たる収賄が行なわれているということになるんじゃないですか。しかも、ほんとうに貧弱な地方財政地域住民のそういう金が年に百万円もし使われているとすると――私は医局をそういうものに使われていることも知っていますよ。そうすると、大体医者が、先ほど言ったように、二十一万――管理職手当だ、何だかんだを入れますと、それを頭割りにしますと、月に三十万から三十五万、一人の医者確保するために、それこそ二、三年でやめられるときの退職金まで入れますと、それはもうたいへんな金を地方自治体は使わざるを得ない、こういう現状なんです。これはまあ売り手買い手の市場問題というよりも、そこで私が先ほど言ったように、もう政治的な何らかの手だてをしないと、これは解決をしない状態にきているのじゃないか医者の倫理の問題もありますけれども、とりわけ国立大学医局の教授なんかもう少し倫理観を持って、こういうことについて真剣に取り組んでもらわなければならぬ。医療行政厚生省の問題だといって文部省放置しておいてもらっても困りますし、自治省だってそういう現状というものを認めざるを得ない。いろいろそういう問題があるとすれば、これは財政的にも何らかの手だてをしなければならぬ状態現実はきているのじゃないですか。私はいろいろと国立あるいは文部省大学付属病院等の院長クラスの給与も調べてみました。国立大学付属病院院長でも最高十八万円ですよ、いろいろの手当を入れて。あるいは鉄道病院だ、逓信病院だというようなところでも――これはかなりの名医ですよ。しかもこういうところの先生方は、それでも二十万前後ですよ。これは公務員給与体系としてはやむを得ない。ところが、かけ出しの一年や二年のお医者さんにそれをはるかに上回る給与を出さなければ派遣ができないということ、ところが、ちょっと長くいればそこで金をため込んできて町で開業するのじゃないですか、現実には。こういう悪循環を繰り返しているということは、これは私はいまの医療行政の根本的な一つの欠陥として是正をしてもらわなければならぬ。先ほど私が言ったように、声を出せば医者をもらえない、病院はだめだ、地域住民医療確保できないという泣きどころ、この泣きどころをいまの段階で先ほどからくどく言っていますけれども、ほんとうに政治の力というものをここで発揮をしていただかなければいかぬ、そう思うのですが、これは幾ら言ってもコンニャク問答のようになりますけれども、これはもうほんとうに厚生大臣というより国務大臣として、この問題についても、関係各省との間にそういうでたらめな状態になっているやつを抜本的に解決をするという確固たるひとつ決意をここで披瀝をしていただきたい、どうですか。
  19. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 御指摘の点は非常に大事なことでございまして、実は先般国会におきまして、政管健保の臨時特例を御審議、御決定いただいたのでございますが、日本医療はそれで片づいたのではもちろんございませんので、しばしば申し上げましたとおり、抜本改正が必要であるということを申し上げて、目下鋭意準備中でございますが、この抜本改正をやるにあたりましても、これは抜本改正でございまするから、何も政管健保だけではなしに、各種の健康保険医療保険につきまして、いま厚生省の案を鋭意策定中でございますけれども、それにあたりましても、先ほどからの御指摘僻地における医師不足のために、医療保険の制度を十分整備していっても、肝心かなめの医師が足りない。医師が特に僻地におきまして不足を告げておるというようなことでは、かりにある程度の抜本対策というものができ上がりましても、これは当然それが実施されなければ、まさに絵にかいたもちというようなことになるということは、私どもも痛感しておることでございまして、そこで、この抜本対策をやるにつけても、僻地医療の問題をどうするかということが、これは一つの抜本対策の周辺の大事な問題であり、かつまた、抜本対策のバックをなす大きな問題の一つであるということを考えまして、ただいまその抜本対策をやっていく上において、これは不可欠の、不可分の問題といたしまして、これをひとつどういうふうに持っていくかということを鋭意研究をいたしておるというようなことでございまして、早急にこの問題の解消というわけにはまいらぬといたしましても、これを重大視いたしましてやっておるわけでございます。
  20. 岡三郎

    ○岡三郎君 関連。坊厚生大臣としてはまことに情けない答弁だと思うんですね。鋭意やるといっても、私は具体的にたとえば、大学文部省もここにいるわけですが、具体的に僻地に対するところの医師という問題はいま始まった問題じゃないわけですね。そうしてこれに対して行きたがらないというのがいまの実態ですね。やはり研究というものは医師にとって不可欠のものとするならば、どうしても草深いところに行けばおくれてしまうということで行きたがらないというところに問題点がある。したがって、僻地医師というものを特別に養成するくらいの対策というものを立てなければ、これはだめなんじゃないですか。これは結局全額給費とか、抜本的に文部省厚生省が連絡をとって養成してもみんな都市へ集まってくる。そういう点について、いま言ったような自治体がそういうふうな負担をしょっているということを自治省認めている限りにおいては、そういう面に対する自治省としての対策と同時に、医師がそこへ行くために、たとえば福島に医科大学があり、岩手にもありましたね。そうするというと、北海道なら北海道の場合に、特別に僻地医師を必要とする地域に対して、そういう面について何年なら何年という一つの義務というものを課す、そのかわりに在学中からそういうものを国としてめんどうを特にみるならみるという形をとるなり、何らか抜本的に循環していくような形をとらないというと、自治体が泣かされていく以外に方法がない。これは私はこの間建設省にも言ったんですが、元請と下請の関係で、下請が元請のやり方がひどいといって文句を言えば、仕事をくれなくなってしまう。だから結局下請は元請に対して文句が言えないと同じように、大学側に対して市町村が何とかかんとか言えば、おまえのほうにはやらぬ。よく似ていると思うんですが、そういう点で抜本的に具体的にいままで考えてきたことを厚生省のほうから答弁してもらうなり、文部省から答弁してもらって、こういう問題については、基本的に養成計画の中に含めて問題の処理をしなければならぬと思うんですが、この点どうなんですか。たとえば岩手の大学でも福島の大学でも北海道の大学でも、地元の人というよりも全国的に人が集まってきますね。ですから医師養成してもそこにおれということ自体、何というか基本的な条件がそろっていないんじゃないですか。だから、その県あるいは道において医師がこれこれ不足するならば、その地域に適応する医師養成ということで、一生おれは北海道にいるんだ、あるいは岩手にいるんだというふうな形、いわゆる地域におけるところの医療行政というものと密着した医師養成というものを、国の援護のもとに何とかこれを形づくっていく方法がとられないものかどうか、そういう点いかがですか。抽象的じゃなくて、具体的にどうしたらいいのかということについて、厚生大臣、もう一ぺん。いまのような抽象的なことじゃ問題にならぬ。
  21. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) いま御指摘の問題でございますが、ある学校を出た、その学校を出たからといって、出たお医者さんがその土地にとどまっていなくてどこへいくということも、これは自由であるというようなことについて何か手を加えたらどうか、こういうお話でございますが、これにつきましては、強くいわゆる強制ということができないわけでございますけれども、何らかの形におきまして、さようなことにつきましては確保すべきであるということを目下研究をさしておるわけでございます。
  22. 岡三郎

    ○岡三郎君 文部省はどうなんです。文部省考え方をちょっと聞いてください。
  23. 亀田得治

    委員長亀田得治君) いまの岡君の質問に対して、文部省はどうですか。
  24. 宮地茂

    説明員宮地茂君) 医学部学生が卒業すれば必ず僻地に行くという義務づけ、これは私、医者のほうはよく存じませんが、文部省でもやはり僻地教育というのは、従来からいろいろ僻地先生が行ってもらうのに苦労をいたしておりますので、その経験から申しますと、やはり給与、賃金というものは、ある程度需給関係というものが、ある程度ですが左右すると思います。したがいまして、僻地に教員を行かせる場合には手当をつけるわけですが、しかし、この場合、教員になりたいということは、それぞれ県単位に採用試験をして県が採用しておる。それから県が任命権を持って僻地に行かしておる。しかも、行くときの条件として、手当をやるだけでなくて、まあ希望によって二年なり三年すればかわりたいということがあればそれを聞いてやるとか、いろんなことがあるようでございます。それで、たとえば学芸大学の学芸学部、いま教育学部になりましたが、そこの学生が卒業して必ずしも教員にならないということで、教員の、特に義務教育教員の計画養成をやっておる文部省といたしましては、非常にその計画養成にそごを来たした時代がございます。そういうときに、それでは必ず教育学部を卒業したら、二年なり三年なりの義務が課せられないかということで検討したこともございますが、戦後の憲法なりいろんな条項から、大学卒業生に対して一年なり二年の就職義務ということはちょっとできないということで、昔は師範学校を卒業した者には義務年限がございましたが、現在ではございません。ただ、奨学資金を、あれは現在のは貸与でございますが、育英会がやっておる奨学金は貸与ですが、それを一定年限教員をつとめればその貸与は国に返還しなくてもよいとか、いろんな措置を講じておりますので、この医者の場合に、御指摘のようにはたして義務ができるかどうか。ただ、私詳しいことは承知しませんが、ところによりましては、医学部に在学をする学生に、村がある委託と申しますか、一種の委託学生のようにして、在学中の育英資金以外に奨学金を貸したり、給付にしたり、そういうことで卒業すれば僻地の地元へ戻ってくれるといったようなこと、事実上の契約みたいなことでやっておるところがあるというふうには聞いておりますが、詳細承知いたしませんが、ともかく、これは何も私ども医療行政だから厚生省だけが考えればよいのだということはもちろん考えておりません。先ほど厚生大臣もおっしゃいましたように、この場でこういう策がよいと直ちに御回答は申し上げられませんが、文部省といたしましても、厚生省ともよく御相談いたしまして、できる限りの措置を講じていきたいと思います。  それから、ついででございますが、先ほど来大学医局が絶大なる事実上の権限を持っておる、したがって、非常にべらぼうな給与を押しつけておるといったように伺いましたが、それがそういうふうなべらぼうな給与大学が押しつけておるということであれば、これは私どもとしましても重大な問題であろうと思います。せっかくいま調査いたしておりますが、そういう事実がありますればこれは重大な問題でございますので、文部省としても真剣に検討しなければいけませんが、まだ現在そういう風評が立っておるということでありますれば、まあ風評にしましても不名誉なことでございますから、ともかく、この実態は明らかにいたしまして、またいずれこの委員会でも御報告さしていただきたいと思います。御指摘のような点、私直接調査をいたしませんと、現在までに承知いたしておりませんので、その程度の答弁でお許しいただきたいと思います。
  25. 竹田現照

    竹田現照君 いずれにしても、政府側に抜本策がないということです。  それから辺地でたいへんな金が必要だということは、医者になるのに金がかかり過ぎるということ、昔は博士になるのに五十万かかるといわれた、うそかほんとうか知らぬけれども。たいへんなんです。いまならまだたいへんな金です。そのために、私はそういうものはどっかで金をよけい取ることを考えなければ医者になれない、そういうようなこともいろいろあるでしょう。いま文部省側の答弁はありますが、風評とかなんとか、ゆゆしいことだということで抜本策を考えられるのはいいけれども、最後にお願いをしておきますが、このことで、いま私がこの委員会でこういうことを質問して、たいへんゆゆしいことである、だから文部省もこれについて何らかの対策をやる、やられるのは当然でありますが、その反動として、医局が、ほんとうに最初から心配しているように、もうそうやかましいならこんりんざい地方には、大学医局からは医者派遣しませんよというようなことにはね返ってきたなら、ぼくがここで質問したのと全く逆の結果を招来しますから、そういうことの絶対に起こらないようにぜひ対策を練っていただくようにお願いしておきます。そういうことになりますとたいへんなことになりますから、そういうことをおそれるからなかなか問題にできないことなんです。泣き寝入りしていることなんですから、このことも十分、文部省はもちろんでありますが、厚生省当局も、それから自治省関係があるわけですから……。  それから先ほどいろいろ言っておりましたことも、市町村は条例をつくって、うちの村は大学の卒業生は三年間だけいてくれれば奨学金一つも返さぬでもいい、三年後にはどこへ行かれてもいいという形の条例をたくさんつくっている市町村のあることも知っております。これについても、地方自治体の財政に対する一つの圧迫なんですから、そういうことを地方自治体にやらせないということも含めてやはり対策を打ち立てるべき時期に来ている。このことを最後にお願いしておいて、この問題に関する質問を終わります。
  26. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 関連。この問題を聞いておりまして、非常に私は遺憾に思うわけです。私の知る限りでは、東大あたりでは入院患者よりもたくさんの医者がいるわけです。いま僻地には人がないということは、先ほど医務局長は、今度の医師法を改正すれば何か一ぺんに医者ができてスムーズにいくような話でありますが、私はもっと研究の場を与えなかったらこれは解決しないと思うのです。もっと教育の立場からこれは考えなければだめだと思います。現に尾道市民病院、あの大きな市民病院が、いま医者が引き揚げてしまうので来月の半ばになったら医者がいなくなってしまうから何とかしようというので自治労――働いておる人たちがいま一生懸命になって運動をして、私も頼まれてあちらこちら大学にかけ合っているわけです。みなそこから行ってしまう。これを考えてみても、これがたとえば京都あたりの市民病院を見てみたらどうかというと、非常に研究する場ができているために、何もたくさん金を出していないのです。公務員のベースにきまった金でもどんどん医者の行き手が、希望があるわけです。だから私は、そういう教育の場をつくるということなくして、いま金だけで解決しようと思えば非常にむずかしい問題があると思うのです。一方に東大あたりでは余っているわけです、実際の問題として。これがやはり研究したいためになかなか僻地に行かないという状態でありますから、私は、いまの教育病院というか、何らか医師法を改正すると同時にそういう抜本策をしなかったら、先ほど言われたように、僻地で困っているのです、言わぬでも。大学の場を見ても、大学はそういう病院を三つ四つ頼まれても、そう言われても医者がないのだから、事実ないのだからと言っているわけです。そういうところもあるわけです。だからして、それはやはり行政といいますか、いまのような問題が根本的にやられぬ限り、これはなかなか解決しにくい。それだからして、これはほんとうに私は、先ほどから言われているように、この制度というものを早く改正しなかったら、これはこれからやります抜本改正の中で一部問題を処理しますというようなことをいっている時期ではないわけですね。だからして、私はもうそういうことをたくさん耳にし、同時にまた、そういうことをやりながら、解決できないという状態でありますので、どうかそこのところは抜本的なことをここで考えてもらう必要がぜひあると思います。よろしくお願いします。
  27. 竹田現照

    竹田現照君 それでは、持ち時間も少なくなりましたから、簡単にお尋ねをいたします。  国家試験で医者になるのと同じ試験なんでありますが、今度はあんま、これはまた、いまお医者さんの給与その他というものが、これはところによっては全く必要悪として認められるようなたいへんなものが出されているという反面に、あんま、はり、きゅうを含めて、こういうところに対する措置というものは、試験をやったというだけで、こういうところの従業員というんですか、有資格者ですね、こういうものに対してさっぱり対策が行なわれていない。個人で営業しているあんまについては私は触れません。しかし、雇われている、施術所、施療所というんですか、あんまを何人か雇っているというようなところ、こういうところでは賃金も口約束、あるいは就業規則はもちろんない、基準法はまるきり無視、しかも賃金などは四分六、六分が本人にいっているところもあるようですが、私の知っているところでは四分しか本人にいかないで、逆にあとの六分のほうを雇い主が取っている。その中から、住み込みの場合いろいろめし代とかなんとか取られている。いろいろ形態が別々のようです。税金を持ってやるとか、税金にしたってどうなっているのかさっぱりわからない。こういうようなことについて、私は、労働省厚生省とももう少し具体的な立ち入り検査というのか、立ち入り指導というのか、こういうふうなことをされないといけないのではないか。特にこのごろは目あきのあんまがふえてきまして、めくらのあんまなどだん、だん圧迫されて、ほんとうにめくらのあんまという恵まれない人たちというのはたいへんな条件の中に置かれて仕事をしている。身体障害者の福祉云々というようなことが叫ばれておりますけれども、実際はそういうことについて行政上の指導というものは何ら行なわれていない。こういうことに労働基準局長は、実際私は行なわれていないと思うんですけれども、全国的にそのことについて、労働基準行政の上から何らかの行政指導というものが今日まで行なわれたのか、またこれからどうなさろうとするのか、ひとつ簡潔にお答えいただきたいと思います。
  28. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) あんまさんたちの問題についてわれわれどういうアプローチのしかたをするかという点については、いま竹田先生おっしゃいましたように、いろいろな形態がございますから、もちろん自営業であるあんまさんは、これは労働者でありませんから最初から問題がない。ところで、何とか治療院という名前のもとに数人のあんまさんがおるという場合の形態につきましても、使用従属関係の性格のきわめて濃厚なものと、そうでなくて数人が共同でやっておるというような場合もあるわけであります。  そこで労働基準法の適用問題を考えますときに、労働基準法の適用としては、保健衛生の事業、こういうことになるわけでございます。そこで主として問題になりますのは、何々治療院という看板を掲げておりまして、数人のあんまさんがおる、あるいはそれ以上のあんまさんがおるという場合に、労働基準法適用事業であり、かつ、そこで働くあんまさんが労働者であるかどうかという判断をしなければならぬわけでございます。この点につきましては、従来労働基準法の適用上いろいろ疑義がございまして、どう判断をすべきかという点について必ずしも明確でなかったんですが、昭和三十六年に通牒を出しまして、これこれの場合は使用従属関係ありと考えるという、その判断基準を明確にいたしたわけでございます。そこで、これは長い通牒ですから内容は省略いたしますが、昭和三十六年四月十九日付基収第八百号の通牒でその考え方を示しておるわけでございます。そういう観点から何々治療院といったような看板を掲げまして、あんまさんをその治療院に所属せしめておるというものについては監督指導を加えなければならない、こういう観点に立って問題を扱っておるわけでございます。ただ一方、これも御承知のように、賃金であるかいなかの判断につきまして、治療院主のほうからもらうんじゃなくてお客さんからお金をもらうという関係にありますので、それをどのように判断すべきか、中には治療院主に納めるだけじゃなくて、旅館などではその旅館にも一部納めるという関係があったりしまして、お客から受け取りました治療代の配分につきまして、さまざまな形態があるわけであります。そこで、労働基準法上の問題として事を処理します場合には、たとえば賃金としてどの部分をどのように考えるのかという点を明確にしなければいかぬ。しかも、これは個別的に実は判断をしなければいかぬといういろいろむずかしい問題がございます。  その他いろいろ基準法上の適用については問題があるわけでありますが、保健衛生の事業でございますから、深夜業につきましては、これは基準法上の制限がはずされておる、あるいは労働時間につきましても、一般の場合と違いまして、労働基準法施行規則第二十七条によりまして、一日九時間、一週について五十四時間という例外がございますが、この点に触れる例はあまりないんじゃないか。問題は賃金の額が明確でない。したがって、賃金不払いがあったかどうか、あるいは労働基準法の二十四条違反があったかどうかという点については、十分実態を調べまして処理せざるを得ない、こういうふうに考えておるわけであります。  なお、率直に言って、たとえば建設業とか自動車の運転手だとか、ああいう労働者に比較して厳格に徹底した監督を行なっておるかという点につきましては、遺憾ながら全国的に見まして徹底した監督を行なっておるという現状にございませんが、この種の問題につきましては、さらに労働基準監督の全体計画とにらみ合わせて今後処置してまいりたい、かように存じております。
  29. 竹田現照

    竹田現照君 そこで、三十六年に判断基準を出された以降、実際にこの治療院、施療所というようなところの立ち入り監督というものを今日まで行なわれてきたんですか、実際問題として。
  30. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) ただいまも最後に申し上げたんでございますが、年間の監督実施計画というものを大体つくりまして、そうして問題の多い業種を中心にして監督を進めております。このあんま、はり、きゅうの関係は、地方の監督署あるいは地方の基準局で監督を実施します場合の、当該局署で任意選択すべき事業というふうに示しておりますので、全体としては、監督実施の状況は、何と申しますか、あまりなされておらない。本省として重点として取り上げておりませんので、地方でもそう活発には取り上げていないというのが現状でございます。
  31. 竹田現照

    竹田現照君 実際私の了承しておる限りにおいては、そういう監督指導というものはなされておらない。それから先ほど申し上げましたように、こういうことは労働基準法以前の問題です。そういうところの条件というものは、したがってこれはお客さんから料金をもらうとかなんとかいっても、雇われているのは四分六とかなんとかいうのは、こういう業界の常識になっている。これは最低賃金等の問題も含めて、とりわけ目の見えない人はどんな部屋に入られているかわからない。いいかげんなところに押し込められていたとかなんとか、非常に劣悪な状態にあるところもかなりある。ついこの間、北海道で目の見えない障害者が、あんま、はり、マッサージを職業としている者が千三十六人北海道におるそうです。これを道の労働部がこの問題について調査したところ、ちょっと一般事業所では考えられない結果が出たということを新聞で報じております。いずれにしても、これはいろいろなあんまさん等の勤務条件を聞きますが、あるいは賃金の状態というものをずいぶん聞きました、いろいろな所で、東京でも。そうすると、やはりたいへんそういう賃金体系――これは賃金なんというものじゃない。そういう非常にでたらめな状態にある。これが同じ国家試験を通った一つ医療なら医療に従事している医者なんかと比べた場合に、たいへんな、天と地ほど、ほんとにおてんとうさんと番頭さんくらい違う。そういう状態というものは、やはり国家試験をやる以上、そして資格を与える以上、それに対するいろいろな身分的、経済的なことについても、厚生省労働省ももう少し真剣になって考えてやるべきだ。とりわけ身体障害者であるだけに、そういう人たちがだんだん圧迫をされてきている現状であるだけに、私は、そういう面の行政指導というものをより適切に的確に行なっていっていただきたい。  このことを要望して、ちょうど時間になりましたので質問を終ります。
  32. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 私は、遺骨収集の問題につきまして、厚生省及び外務省のそれぞれの担当官にお尋ねし、最終的には厚生大臣にも政府の所信を承りたいと思うのでございます。  いま沖繩の問題あるいは小笠原の問題、北方領土等の問題が、日本国民の悲願として促進をはかっているわけでございますが、その裏に私ども考えなくちゃならないのは、南太洋地域で戦死された約五十万の遺骨はほとんど内地に帰還していないので、風雨のもとにさらされた事態になっているわけです。私自身も現地に行って見まして、あのジャングルの中の至るところに遺骨累々たる姿をこの目で見せつけられてまいったわけです。おそらくは、おれたちがこの島を守ればといってがんばり抜いて玉砕した、あのグアム島にしても、サイパンにしても、ペリリュー島にしても、アンガウル島にしても、それぞれ眠った遺骨の英霊たちは、一日も早く日本に帰りたいということを願っているのではなかろうかということは、だれもが想像できる問題でございます。  そこで、終戦後これらの遺骨収集に対して政府はどのような処置をとってきておるかということをお尋ねし、さらに、先般十八名の全日本から選ばれた学生団が現地の遺骨収集、サイパン島、テニアン島に参りましたけれども、遺憾ながらハイ・コミッショナーの指示で遺骨収集することができずに、テニアン島で二十日間もじんぜん日を送って無為に羽田飛行場に帰らざるを得なかったという事態。  なお、遺骨収集をめぐって日本人としてまことに残念なことが起きていることを考えさせられるわけです。たとえば、民間の某々氏が政府代表の名前を使って国会議員を従えて行って、そうして正式代表として新聞記者等に話をし、島々を回っていろいろ工作をしてきているということ、あるいは遺骨販売会社を現地人とともにつくって、遺骨収集をして遺族に骨を渡そう、一ポンド、一万一千円というふうな価格で売り出そうというような計画まで立てられているという、こういう事態を私どもはこのまま見過ごすわけにいきませんでした。この問題について、私はいろいろとお尋ねしたいわけでありますが、これは外交上の問題もありますし、また、国会等の関係もありますので、具体的にそれぞれの名前を正式に、正確にあげることのできないことも、ひとつ御了承いただきたいと思います。しかしながら、問題の核心だけは私は詰めましてお尋ねしたいと思うわけであります。最後には、今後この遺骨収集をどう進めていくかという点について大臣の所信をお伺いしたいわけです。  最初にお伺いしたいのは、厚生省のほうで援護局長のほうからお答えをいただきたいと思うのですけれども、現在までの遺骨収集の実態、これをちょっと御説明いただきたい。援護局長さんが終わりましたら外務省のほうからひとつ……。
  33. 實本博次

    説明員(資本博次君) 海外におきます戦没者の遺骨収集につきましては、昭和二十八年以降におきまして、主としてこの玉砕地域を中心に政府の遺骨収集団を派遣してその収集に当たってまいったわけでございます。その経過を簡単に御説明申し上げますと、昭和二十八年におきましては、南方八島、いまお話がございましたサイパン、それからテニアン、グアム、ペリリュー、アンガウル、ウェーク、それから南鳥島及び硫黄島、その南方八島及びアラスカ、アッツ島について行なったわけであります。それから三十年におきましては、ソロモン群島、ビスマルク群島、東部ニューギニア、マレー、シンガポールという地域について行ないました。それから昭和三十一年におきましては、ビルマ、インド、西部ニューギニア、ボルネオ、この地域について行なったわけでございます。昭和三十三年にはフィリピンについて行ないました。  それで一応その三十三年におきますフィリピンの収集で概了いたしたわけでございますが、さらに六年ほど経まして、昭和三十九年にインドネシアについて行ないました。それから昭和四十二年には、本年度でございますが、ニューカレドニア、それからペリリュー島――いま申し上げたところについて遺骨収集を行なってきたわけでございます。ことしにおきましては、なお、この十一月、今月の二十日から約一カ月の予定でフィリピンのレイテの遺骨収集、それからルソン島の遺骨調査を行ないます予定を立てておりますし、さらに明年の二月から約一カ月の予定でサイパン、テニアン、メレヨンの遺骨収集の予定を組んでおるわけでございます。  まあいままでに政府が行ないました、あるいはこれから本年度行なおうと考えております遺骨収集の計画は、ざっといま申し上げた状態でございます。
  34. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 大体何体ぐらいの遺骨が収集できましたか。おおよそでけっこうです。集計できなかったら、あとでけっこうですから。
  35. 實本博次

    説明員實本博次君) この遺骨収集以外に、現実に部隊が持ち帰られたとか、そういうものを入れて計算いたしますと、海外の戦没者で海没しておられる人を含めまして二百十万、そのうち三分の一の約七十万柱が内地に帰ってきておる、あと三分の二はまだ艦船を含めて残っておる、こういう概数でございます。
  36. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 七十万の遺骨がお帰りになったということですが、政府の手によって終戦後遺骨がこちらにお迎えできたのは、何体ぐらいありますか。
  37. 實本博次

    説明員(資本博次君) 一万三千四百六十七という数字が出ております。
  38. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 今年度の千四百万程度の遺骨収集に関する予算は、先ほどのレイテ島方面の遺骨収集に充てる予定ですか。
  39. 實本博次

    説明員實本博次君) 本年度約千三百万の遺骨収集のための予算を計上いたしておりますが、これは先ほど申し上げましたように、フィリピンのレイテを中心といたしまして――ルソンは調査をいたしていく、収集いたしますのはレイテでございますが、このフィリピン関係と、それから来年の二月から予定いたしておりますサイパン、テニアン、メレヨンの内南洋の計画、この二つに必要な予算でございます。
  40. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 このルソン島の調査、あるいはレイテ島の遺骨収集で私があなた方のほうからお聞きしたことでは、厚生省から七人、外務省から一人、それから現地の大使館から一人、この合計九名の調査団によって現地で人を雇って遺骨収集をするのだ、こういうふうに承っているのですが、そういうふうな手順でやっていくのですか。
  41. 實本博次

    説明員實本博次君) おっしゃるとおりの手順をいたしておるわけでございます。  なお、つけ加えて御説明申し上げますと、フィリピンは大体四十九万柱眠っておるわけでございますので、先ほど申し上げましたように、この前の三十三年に行ないました収集には、やはり限度があったわけでございますから、今度は最終的に総仕上げ的に行ないたいと思いまして、フィリピンをできれば二年あるいは三年計画でもって、そういう仕上げを行ないたい。したがって、レイテは遺骨収集、ルソンのほうは来年の予定といたしております収集の予備調査をやってくる、こういうふうな計画になっておりまして、手続なりその他のやり方といたしましては、先生のおっしゃったようなやり方を予定いたしておるわけでございます。
  42. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 フィリピンで四十九万柱の遺骨が残っておる、これを両三年にわたって仕上げするのだ、具体的に予算要求等も次年度等からずっとこれは続けて要請して、具体的に実施していくのですね。
  43. 實本博次

    説明員實本博次君) そのとおりでございます。
  44. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 そうしますと、フィリピン関係事態はわかりましたけれども、南太平洋諸地域の、たとえばサイパンとかペリリューとかグアムとか、こういう諸島の遺骨収集はどういう形態でやっていこうとしておりますか、これを承りたい。
  45. 實本博次

    説明員實本博次君) いまお話しの南太平洋の収集計画でございますが、いま予定いたしておりますのは、本年度は、先ほど申し上げましたように、マリアナ群島のサイパン、テニアン、それからカロリン群島のメレヨン島というふうなところを予定いたしておりますが、四十三年におきましては、ギルバート諸島のマキン、タラワあるいはマーシャル諸島のクェゼリン、ブラウン、ルオットというようなところを予定いたしておるわけでございます。なお、マーシャルあるいはギルバート諸島のほかに、先ほど申し上げましたように、フィリピンのレイテ、それからできましたら西部ニューギニアのほうまで考えております。おそらく四十三年はそれで手一ぱいだと思いますので、残りのところにつきましては、たとえば東部ニューギニアとかソロモン、ビスマルク諸島につきましては四十四年度、あるいはインド、ビルマとか、そういったところ、さらには、これは非常にむずかしいのでございますが、中共の満州地区でございますが、そういうところも、これは外交上の問題がございますのでそう簡単には予定しても実現が可能かどうかわかりませんが、そういうところまで考えております。やり方といたしましては、やはりフィリピンと同じようなやり方を政府としては予定して進めてまいりたいと思っております。
  46. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 いまの計画を聞いていますと、この遺骨収集の最終的に仕上げできるのは何年くらいになりますか。というのは、私どもは現地を見てまいりまして、骨がすでに腐って、頭蓋骨が風雨にさらされてくずれかかっており、遺骸が、骨全体が断崖絶壁にひっかかったままになっている。サイパン島の地獄谷等に行ってみましても、約七十体の遺骨が累々として横たわったままになっております。さびついた銃、みけんに親指大の穴のあいた頭蓋骨がそのまま、おそらく最後の一弾を足の親指でみずからの命を断ったであろうその姿、壕の中には、まっ黒けに火炎放射器で焼けただれて、苦しんだであろうつめのあとまで残ったその姿そのままにいまだに残って風化されておるわけです。壕のそばには、でんでん虫のからが、かつて食物がなくてそれだけで生きたであろうその姿そのままに残っているのです。いまの厚生省計画でいったならば、あのうち、サイパンだけじゃありません。テニアンでもどこでもそうです。至るところにそういう遺骨累々としている。しかも工事が、公共事業等が向こうで進められるところでは、骨がブルドーザーで掘り起こされて、しゃれこうべが道ばたに飾られて、こういうめがねがかけられて飾りものにされているところもある。こういう事態のままで私たちは見過ごすわけにはいかないと思う。いまの厚生省が一生懸命やっていることは私たちもよくわかります。遺族の立場に立って遺族の代表等を現地に送る姿もわかります。しかし、いまの姿でいったのでは、五年たっても十年たってもあの遺骨を迎えることはできない。しかも、今度の八百万、千万の予算をもって遺骨収集に行くのも、厚生省から七人、外務省からと、現地に行って、現地の人を頼んで遺骨収集する。おそらくここに大きな問題があるわけです。フィリッピンへ参りましても、今度のテニアン、サイパンの場合も、問題はそういうところにあるわけでありまして、私が言わんとするのは、遺骨収集の国の予算がきまったから、現地民に対して、遺骨一体について幾らで日本政府に売りましょう、こういう計画で見られているんです。だれがそういうことをやったか。日本人が行って、日本の政府はこういう予算をつくったから、あなた方は骨をただ渡すんではなくて、この骨を売りなさいよ、売って島の開発にこれを使いなさいよ、こういうことを日本の人がやっているのです。しかも、それは厚生省の役人と称して名刺を使ってやっているのです。そして日本に連れてきて、サイパンのマリアナの議会の議員さんを三名連れてきて、厚生省の役人と会わせて、そして島へ帰って議長に報告し、日本政府もこれを了承して一ポンド一万一千円というわけで取引が成立したからと、こういうふうなことを議会に議長を通じ報告し、議会もこれを了承してやろうと、そういう策略をしたのでございますが、市長はそんなことはできないと、遺骨を売るというようなことはできない、と、その中に入った人の名前を申しましょう、中島文彦という日本人です。この中島文彦というのは、サイパンの市長、メイヤーに対して、あなた方はこういう計画でサイパンの開発をやりなさい、遺骨千三百万、これでジャングルを切り開きなさい、こういうことをしている。あなたはそれでも日本人かとメイヤーにきびしく追い詰められた事例もある。そのメイヤーはいま日本に来ています。日本のことをよく理解した人です。この奥さんはサイパンの全員玉砕の中で生き残った栃木県出身のみつ子さんという日本の人です。このメイヤーが一部始終そういうふうなことを私たちに語ってくれているわけです。だから、私たちの考えているのは、単に政府で予算をつくって、役人と一緒に、厚生省の人と一緒に行って、現地の人を使って遺骨収集をやるというとき、これではほんとうの遺骨収集には私はなっていかないと思うのであります。やはり国民的な立場で、遺族の代表等を交えて、そこで現地でねんごろに弔って遺骨を埋めてこなければならない。おそらく全部とってくるわけにはいかぬでしょう。これは遺骨収集という国際的ないろいろな問題になったらば、きのうも私ども話し合ったが、現地の人が反対したんです。日本人のほんとうの骨か、アメリカ人の骨か、われわれ島民の骨じゃないか、骨の選別まで問題になるはずです、感情がこじれてしまったとするならば。幸いにしてテニアンにしても、サイパンにしても、島民の人たちが日本のかつての居留民たちがまいた善意の種が実を結んでおって、日本人に対して非常に好感を持っている。私ども参りました十一月十一日、この日はサイパンの人たちはお盆で、全島民が民集まって、日本の兵隊さんの慰霊祭をやっている。毎年やってくれている。こういうふうなところですから、日本の中島文彦なるものが厚生省の名刺を使って行ったが、成功しなかったからよかったようなものの――ここで私は、中島の名前が出ましたから、援護局長さんか係の人に、村岡課長と中島文彦なる者は会っているのかどうか、そして、マリアナの議会の三人の人が厚生省にたずねてきてそういう相談をしたか、遺骨払い下げとか、売買の相談をしたかどうか、これをお尋ねしたいのです。
  47. 實本博次

    ○政府委員(實本博次君) いま先生お尋ねの中島文彦氏は、厚生省に――二十四年ごろと承知いたしておりますが――まで嘱託で、ちょうど海軍関係のこういう援護の仕事をいたしております業務二課というのがございますが、その課の嘱託をいたしておりまして、特に中島氏は、戦時中、南方開発という会社の技師をしておりまして、これはサイパン島の農林関係の開発の技師をしておったようでございますが、そういった関係で、サイパンのことについて非常に詳しいということで、二十四、五年ごろ、嘱託としていろいろそういう知識を提供してもらっていたという事実は、私、業務二課のほうから聞いております。ただ、厚生省をやめられたのはもう十年以上前の話でございますが、最近政府が、先ほど申し上げましたように、来年の一月に予定いたしております政府自身のサイパン、テニアンの遺骨収集計画というものを立てますについて、いろいろそういう、先生先ほどからの御指摘のように、現地のいろいろ事情のわかっている者からは、厚生省がプランを立てますについて、承っておけばいいことはすべて調査し、研究しておりますが、そういう人々からもいろいろ話を聞く。そして一月にすぐ行って、計画が何さまこれは一カ月だけの予定でございますし、それから、こちらから参ります政府職員も、そう多人数では参りませんので、やはりこの予定いたしております地域につきましては、まあ一年ぐらいかけて現地のオーソリティーに、これはまあ外務省も通じて協力依頼をやっておりまして、そういう公式ルートの準備行為のほかに、やはり省自体といたしましても、そういう現地の事情のよくわかっている者について、いろいろな知識なり、最近の情勢あるいは当時の古い話を吸収しておくということで、担当のところとの接触はあったようでございます。
  48. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 課長とどうしたのですか。
  49. 實本博次

    説明員實本博次君) ええ、それはそういう意味での接触はあったわけでございます。
  50. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 まだ現在でも厚生省の嘱託になっていますか、どうですか。それをまず伺いたい。
  51. 實本博次

    説明員實本博次君) それはさっき申し上げましたように、全然ございません。
  52. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 これは関係ない、現在は関係ない……。
  53. 實本博次

    説明員(資本博次君) はい。
  54. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 で、意見を聞くために厚生省に来てもらっているということはありますか。
  55. 實本博次

    説明員實本博次君) はい、そうです。
  56. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 これはありますね。それから村岡課長さんと会っているわけですねそ、れは。
  57. 實本博次

    説明員實本博次君) それは会っている、私自身もそれに立ち会っておりますから……。
  58. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 会っている。それから、マリアナ議会の議員さんとお会いになっておりますか。名前を申しましょうか。
  59. 實本博次

    説明員實本博次君) ええ。それは参っております。
  60. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 お会いしていますね。その席ではどういうお話しになっていましたですか。
  61. 實本博次

    説明員實本博次君) それは、来年の政府が予定いたしております実施計画を伝えて、これはとても短期間で少しの人数で行くんだから、よろしくひとつその際御協力をお願いしたい、こういうことは申し上げてございます。
  62. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 そうすると、この中島文彦氏がサイパンのサブラン市長や、あるいは議長に対して、日本政府との話がまとまって、こういうふうで遺骨を現地で引き渡し、その価格はこういうふうにしてやっていこう、こういうふうな問題については全然話はないわけですね。
  63. 實本博次

    説明員實本博次君) それはございませんです。
  64. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 これはなくて、これは中島文彦氏が個人の考え方で――その点は間違いございませんね。向こうに話したと、そういうふうにとっていいわけですね。私も常識的にそうであるだろうと想像したわけですが、その点は間違いありませんね。
  65. 實本博次

    説明員(資本博次君) ございません。
  66. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 ではもう一つこれに関連した問題で、私のほうでお伺いしたいのですけれども、先般早稲田大学の進藤仁という人を団長とする学生団が、遺骨収集で十八名十月九日に羽田飛行場を出発して十月十日にテニアンに着き、そしてテニアンに着いたところが、ハイコミッショナーのほうから遺骨収集いかぬと、その理由は、自今外国人が遺骨を持っていく場合には、日本政府間の了承が成り立たなければこれを持っていってはならないのだ。学生は政府の了承を得てきたものではない、したがって許可することはできない、こういう立場で十月三十一日に遺骨収集できないまま日本に帰ってきた実情は御存じでございますね。そうしますと、なぜ遺骨収集できなかったかということについてお尋ねしたいわけですが、この点については厚生省のほうにも現地側から、行ったまま遺骨収集できないから何とかしていただきたいという連絡があり、私のほうからも援護局長さんあるいは課長さんにもお願いし、外務省の北米、アジア局長さん等々にもお願いしましたけれども、結局許可はもらえないで帰った。どういう経緯で遺骨収集ができなかったか、外交上の問題とからめてひとつお答えいただきたい。
  67. 實本博次

    説明員實本博次君) 学生団の方の遺骨収集につきましては、これは遺骨収集という一般的な問題でございますが、遺骨収集等に政府以外民間が参ります場合に、入国査証、パスポートの問題でございますが、その入国する目的の問題でございますが、これは外務省からお答え願ったほうが適当かと思いますが、民間の方が行かれます場合には、そういうパスポートの切り方はいたしませんで、一応戦跡巡拝というようなことで観光のパスポートを持っていかれるということで、従来どんな団体でもそういうふうなことになっておりますので、それは形式的にいえば遺骨収集という目的でもってパスポートを示し、そしてそういうことを相手のオーソリティーに見せてやってくるという事例はなかったわけでございますから、結果的には現地で一般的なルールの非常に形式的な面で処遇されたということでございまして、実際問題といたしましては、現地では戦跡巡拝なんかで来られます人々に対して、ある程度事前にそういうオーソリティーに、外務省とかあるいはわれわれのほうから外務省を通じて連絡をして差し上げておく、そしてそこで事実上了解して遺骨収集をさせるというふうなことで従来のケースは行なわれておったわけですが、先生お話学生さんの場合は、最初からそういう事実上の了解というものが十分に現地との間でついていなかったのではなかろうか。途中でそういうケースがありましたので、外務省と話しまして私のほうの現地オーソリティーに対する依頼文といったものも出して差し上げたわけでございますが、最初のいきさつから、そういう根回しをしてまいればよかったのじゃないかというふうにも考えられるわけでございますが、そういった仕儀で、せっかく行かれたものが所期の目的を達しないで帰ってこられたという事例につきましては、われわれも今後そういうことがなるべく行なわれないような方法で外務省とも話をし、あるいはアメリカ当局なり大使館当局ともそういうことを話していかなければならないのじゃないかというふうに考えているわけでございます。
  68. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 私はそれでは満足できないわけです。厚生省のほうの努力されたことはよくわかるわけですが、しかし、学生団の人たちは、早くから自分たちの手で、若者の手で国のために死んだ人の遺骨を集めてきょうという計画を立てて、もう去年からアルバイトをしてそして旅費をつくって、計画を立て、三月には厚生省のほうにお願いして、こういうわけで遺骨収集で行きたい、その当時厚生省のほうからはうまく許可にならなかった。八月になって機熟してから南太平洋慰霊協会等のうしろだてもあって、アドバイスも得つつ外務省と相談して、それはよかろう、こういうことであなた方のほうとしては許可し、なお慰霊協会のグアム島にいる出先の者が、高等弁務官のほうに入域査証の許可もお願いして、旅券ばかりじゃございません、向こうの地域に入る許可願いも参議院の植木光教の名前で申請し、個人個人の書類も出してあります。しかも高等弁務官はこれも受け取っているわけです。現地に着いた日になって、はっきりと遺骨収集まかりならぬの電文に接したわけです。そこで団長たちが島の支庁長らと一緒になって、マリアナの政庁に行って遺骨収集の許可を願い出たけれども、ハイコミッショナーのほうはワシントンのほうに行ってしまっているので許可にならない、こういう事情で援護局のほうに再びあっせん方をお願いしたところが、援護局のほうでは外務省と一緒になってアメリカ大使館のほうにお願いし、ハイコミッショナーのほうを動かすことを努力したけれども結局はできなかったという、こういう経緯が横たわっているわけで、私どもとすれば、すでに二月、三月ごろから学生が行くということ、計画もあなた方のほうでよく知っている、現地に行ってどうしても収集ができないというなちば、さらに外務省を通じてアメリカまででも、あるいは信託統治の責任者のところにまで連絡して遺骨収集が成り立つような方法をすべきが当然のお役所としての仕事ではなかろうかと思うのですが、いかがでしょうか。
  69. 實本博次

    説明員實本博次君) 実は去年の夏でございましたか、私ども学生さんの進藤さんという方が私を訪ねられまして、お会いしてお話をお聞きしたことがございますが、何さま、とにかく遺骨収集と申しましても、なかなか気候、風土の違ったところで一カ月近くもたいへんな困難な仕事でございますし、まあ夏休みを利用して向こうにちょっと行ってやってくるというようなことではむずかしいことを申し上げましたら、よくわかりましたと言って一度お帰りになられて、それきり私のところには見えられませんでしたが、その後、やはりほんとうに純真な気持ちで、さっき先生がおっしゃったようなかっこうで、さらされている戦争犠牲者の、兵隊さん方のことをほうっておけないという熱情で、何とかしてやりたいというふうな意欲、熱心さが、やはり今回の計画になったと思います。ただ、われわれもそういう点では何とかそういう人の気持ちを実現さしてあげたいというふうに考えてはおりますが、政府といたしましては、やはりこれは政府の責任でそういう民間の方々の御奉仕をわざわざわずらわさなくても、最終的に総合的な仕上げをしてまいるのが政府の責任でございますので、特に今度学生さんが行かれましたサイパン、テニアンにつきましては、四十二年度の予算で特に一月から実施をするということもきまっておりましたので、そういう意味では御迷惑をかけずに済むのではないかという考え方もございましたわけでこういうふうな仕儀になった。おっしゃいますように、アメリカ当局の考え方というか、向こうのハイコミッショナーの考え方も外務省を通じて聞きましたところ、やはり日本政府にそういう計画も近々あるし、それから最近グアム島あたりにはずいぶんいろんな観光を主としたような訪問団みたいなのが来られて、その人たちが適宜遺骨収集をさせんかというふうな話も間々出てくるので、現地のハイコミッショナーとしましては、こういうものはやはりどこかでまとめて、なるべく政府がやるなら政府がやってもらいたい。本来的にそういうことは政府がやらなければならぬ仕事なんだから、なるべくそういうものは政府でやってもらって、民間の人がばらばら来られて、一々そういうふうな骨探しをやられては困るというふうな意向が強くなって、そうしてそういう交通整理をしてもらいたいということを日本政府に伝えてきた、こういう状況になっておるわけでございます。したがいまして、外務省とそれからわれわれのほうとアメリカのこちらの大使館の方と、今後そういうふうなケースをどういうふうにして扱っていくかということを話し合おうじゃないかということにいまなっておるわけでございます。
  70. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 政府の責任において遺骨収集をしたいと、当然そうです、そうなくてはならぬと思うのです。それが今日までなかなかいろいろ事情で進めなかったところに問題があったのです。特に私は、政府の場合においても、先ほど申しましたように一括して骨をがらがら集めて、そしてこれで遺骨収集終わりという形の政府の遺骨収集というのは、これでは意味がないということを考えるわけです。同時に、いまのハイコミッショナーのほうで急に――いつごろからそういうふうに変わったんですか、日本政府とアメリカ政府との間において計画を立てて、そうしてやっていこうと変わった事情は、いつ変わったんでしょう。今度学生たちが行って現地に到着してからですか、あるいは到着する以前ですか。そういう来てはならない、来てもだめだというところに学生が乗り込んだことになるんですか、どうなんですか、その点は。
  71. 實本博次

    説明員實本博次君) 外務省の話ですと、前々からそういうことは言っていたようですが、具体的にそういう話を持ち出したのは今回のケースが初めてだそうです。
  72. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 今回というのはいつですか。何月何日ごろですか。
  73. 根本博

    説明員(根本博君) 私はアジア局でございますので、北米課の担当官にかわって説明させます。
  74. 佐藤行雄

    説明員佐藤行雄君) そのいわゆる政府レベルでやりますという点も、公式に言ってきているわけではありませんけれども、われわれは学生遺骨収集団の許可が現地でおりないで困っているということについて、アメリカの大使館側にどういう理由なのか問いただしたときに、先方としては、こういう問題は政府レベルでやりたいと思っているということを答えた経緯がございます。
  75. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 わかりました。いまお話のように従前はそうでなかったと、学生たちが現地でとまってしまって作業できない。そこで初めて今度の問題が問題になったと思います。大使館のほうからハイコミッショナーのほうに引き合わせたところが、事情がそうなったわけですね。政府間の話し合いで計画的に遺骨収集をやるということになったのは、今度の十月十日以降そういう問題になったわけですね。なぜそれじゃそういうふうに急に変わったかということを、私はその裏を考えていきたいわけなんです。いままでは日本から来た遺骨収集団については、ていよく迎えていただいて遺骨収集もできたわけです。現地の人は非常に親切だった。今度の学生が行った場合でもテニアンの市長さんはじめ支庁長さんが学生が来たのだから何とかこれを解決してやろうと言って、学生の代表もサイパンの支庁長さんも一緒にマリアナの支庁長のほうに頼んで、全部の島民の代表も自治体の代表も支庁長の代表も一緒に行って学生の要望を達しようとしたけれども、達成できなかった。この裏を私ども考えなければならぬ。というのは、ここで私は一つの、先ほどの中島君と同じような問題を投げかけたいと思うわけでございますが、日本の公式な政府代表として乗り込んだと称する大倉某、しかも国会議員二人と秘書団、一行五名でグアム島に行った。その行った目的は漁業交渉であり、ミクロネシア方面の貿易の拡大の問題であります。こういう公式の目的で現地に乗り込んだ。その写真がここに載っております。グアムジャーナルに国会議員が載っております。大倉某というのが、これは政府の代表か政府の顧問で行ったか、おそらく私の調べた範囲では、そういう顧問という資格も何にも持っていないと思うのですが、名刺にはちゃんとそういうふうに顧問の文字を書いて堂々と使っているわけです。これは外務省のほうで、その名刺も、この新聞を出したから御存じのはずだと思います。正式の顧問だと言って、そして大倉某が団長として自民党の若手の国会議員二名を連れて行っている。こういうこと。この大倉某、この人たちが、乗り込む前にすでにハイコミッショナーの秘書のほうに連絡をして、学生団が遺骨収集に行っても絶対させてはならない、こういう文書等を出している、二カ月前、三カ月前に。しかも現地では慰霊協会の代表がサイパンの支庁長に参りまして、先ほど言ったサイパンのメイヤーが一緒に参りましてハイコミッショナーの口頭許可を得て行ったのが、今度はこの人たちが政府代表としての資格で話し込んでいったためにくずれてしまった。こういう経過がこれはうしろに横たわっている。これは外務省のほうでお読みになりましたね、私のほうで出しました書類を。私はこういうことは許されるべき問題ではなかろうと思います。この大倉某の問題について、私のほうで資料提供をして、この人が政府の、たとえば外務省と何かの関係があったかどうか、そしてまた、今度の公式訪問に、グアムやサイパンに行くことをお願いしたかどうか、これをまず確めたい。外務省にひとつ……。
  76. 佐藤行雄

    説明員佐藤行雄君) まず大倉徳一郎氏でございますが、外務省とは何の関係もございません。  それからわれわれといたしましても、彼が政府顧問というような名刺を持って現地で動いていたということは全然承知しておりませんで、学生遺骨収集団の方がお帰りになったときに、その名刺の写しを見せていただきまして初めて知った次第でございます。それにつきまして、われわれとしましても、事情を調査したいと考えている次第でございます。
  77. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 大倉某は外務省とは関係はない。日本政府とは全然関係ないのに、日本政府に関係あるこういう名刺を使っていることは御存じですね。
  78. 佐藤行雄

    説明員佐藤行雄君) 学生収集団が戻ったときに、われわれはその名刺を見まして初めて知ったわけでございます。
  79. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 もう一つ。大倉某はこういう名刺を使っております。「グアム及び信託統治領諸島経済開発コンサルタント大倉徳一郎」こういう名刺を使っております。私のほうでは、この大倉徳一郎はどういう性格であるか、どういうことを行なっておったか、どういう目的で旅券は交付されていたか、何回くらい向こうに行ったかということをあなたのほうで調査していただくようにお願いしておきましたが、それはできておりますか。
  80. 佐藤行雄

    説明員佐藤行雄君) 現在、依然調べております。
  81. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 調べておるのではしょうがないのですが、大臣、いまお話のように、遺骨収集をめぐって、たとえば大倉某という人の場合でも国会議員を従えて、写真だって自分がまん中に堂々と入って、私が団長であると自分で言明している。この新聞にも団長の大倉某は、ミクロネシアの独立問題とか観光問題にまで触れてやっているわけです。こうしてやっているこの目的というのは、いま南太平洋地域諸島で眠っている遺骨収集というのは、国の計画でやろうとしているので、この遺骨収集権を取り、観光開発権を取り、そうして交通の権利を取って、いわゆる民間代理大使になるような、そういう計画のもとに国会議員を使い、あるいは政府の名前を使ってやっていることが、現実に私どもには発見されている。こういうようなものが、先ほどの中島某の場合、大倉某の場合に、遺骨収集によって利権がここに重なっていることが想像できるわけでございます。そこで、時間がきてしまったのでお願いしたいのは、何といっても終戦後すでに二十二年たち、あの島々に眠った人々の遺骨を早く迎えたい。遺族の人たちも戦死の公報という、紙一枚で遺骨は全然ない。どういうところでどういうようにして死んだかわかっていない。いまだに生きていると信じているものもあるわけです。現に先ほどのサイパン市長の奥さんのきょうだいのごときは、二十四年目で産経新聞の報ずるところによって、現地で発見されて、初めて生きているということがわかっている。まだまだ戦死の公報一本で、いまどこでどういうふうになっているか、そういうことまで考えて、遺骨の帰る日を待っているわけです。この遺骨の帰る遺族の気持ちにつけ入って、いろいろな観光に名をかり、遺族の戦地の巡拝団に名をかりて、いろいろな営利事業がもくろまれようとされているわけです。したがって、私はこの際、結論的に言うと、厚生省では、いまのようななまぬるい手でなくて、もっと思い切って具体的に予算化して国の力をあるだけこの際しぼり出して、遺骨収集の道を切り開いていくべきだと思う。たとえば先般の松山の飛行機事故にしてもあるいは羽田の飛行機事故にしても、あれだけのすべての力を動員してまで遺体収集をやっておる。当然のことです。そうするべきです。それと同じです。あそこの地域、先ほど大臣局長のほうでも、二百何十万死んで七十万の遺骨、百何十万の遺骨が帰ってきていない。こういう事態考えたならば、もっともっと政府は積極的に手を打つべきである。同時に単に金を出して、現地の人を頼んで、ブルドーザーで集めた骨幾らというような日当の払い方でないやり方で、遺骨の収集をするべきである。そのためには民間にも厚生省認め、外務省が認めるところのたとえば南太平洋の場合ならば、南太平洋慰霊協会という正式な財団法人の機関があって、国会議員や政府の代表そうして仏教、宗教界の代表が行っておる、そういう慰霊協会とか、民間の確としたこういう団体があるはずです。そういった団体を十分に活用して、そうして慰霊の道をすみやかに立てるということが、私はこの際当然とるべき道だと思うのですが、大臣いかがでしょうか。
  82. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 南方の水陸等に眠っておられる遺骨でございますが、これは何といっても、国民の私情から発してこれの帰還を願う、こういう気持ちでもって、国家がどうしてもそういった純真なる立場に立ちまして、できるだけすみやかに御帰還を願う、こういうことでいかなければならない。これは当然そうでなければならぬ、かように私は思っております。  で、いやしくもただいま御指摘になりました中島何がし、大倉何がしといったような人がその間に便乗するというかあるいは介在するというか、他の目的のためにそういったような国民の私情なり遺族の気持ちというようなものに便乗しまして、これを利用するといったようなことは、これは排除していかなければならない。絶対にさようなことがあってはならないと、かように考えまして、この事態につきましては、実は私ただいまお聞きしてがく然としたのでありますが、そういった事態につきましては、さらにすみやかに厳重なる調査をいたしまして、そうしてこの具体的な事実、それについての対策考えるとともに、それはそれといたしまして、現在三分の一しか帰っていないというような遺骨でございますが、これは国家といたしまして、でき得る限り国家の責任におきまして、民間のそういったような変な意図を持ってやるというようなことが、これは起こってくるということは、国家がやることがまだ非常に御指摘のように十分ではない、非常に国家のやるというところにまだ遺憾な点があるというようなところから、こういったような何と申しまするか、変なといいますか、許すべからざる一つの行為というか、意図が行なわれようとしておる。さようなことを私はこれはむろん排除しなければなりません。排除する上におきましても、国家がこれはもっと力を入れて、全責任を持って、できるだけ民間のそういったような人たちが何と申しますか、ボランタリーなそういう遺骨の収集をやる、これも私情から出たのは、これは当然やっていただくことでありまするけれども、そういうようなものを排除するためにも国家がもっと腰を入れてもっと計画的に私は大がかりにこれをやっていく。そしてさようなことをやる必要のないように持っていくということが大事なことだと思いまして、私ども厚生省といたしましては、そういう意図を持って、そういう方向でこの問題を解決してまいりたいと、かように考えます。
  83. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 大臣のその考え方を私は閣議を通し、あるいはあらゆる機関を通してひとつ浸透させてもらって、具体的にこの問題の解決の早急であることを念願するわけでございますが、先ほども私は厚生省、あるいは外務省を責めているわけじゃありません。大学学生の現地で遺骨収集できなかったことに対してのあの一生懸命の態度は私たちよくわかるんです。そのことを学生たちに伝えておきました。学生たちはあそこで、とにかく二週間の旅費しか持っていなかった。食べるものも持っていかなかった。それが一週間も延びた。現地の島の人たちは野菜を提供したり、食糧を提供して、そういう中で民間の人たちはじっとこらえながら慰霊の誠をささげて島を歩けるだけ歩いた。そのときに、私のところへよこされた電報を読んでみます。「二十六日慰霊祭厳粛に執行す。団員は日本大学生として終始規律正しく理解しがたい収骨拒否にもかかわらずよく耐えた。われ高く評価す。二十七日公明正大に引き揚げるため、われら進んで荷物の検査を受け、これを確認させた。英霊に対してすまない。桟橋ではみな泣いた。原住民も泣いた。われも泣いた。二十七日十一時サイパン島にて」、こういう電文が私どものもとに入っているわけです。まさに島の人も泣いてくれたはずです。私どもがグアムを訪れ、サイパンを訪れ、テニアンを訪れたときも、島の人は日本のわれわれに対して、収骨に対して非常に好意を寄せてくれて、どこまでもわれわれをジャングルを切り開きながら案内してくれているわけです。私らが帰るときにも、先生帰るなよ、帰るなよと、こう言って私にすがりつく。最後には飛行場で「螢の光」で私たちをあの島の人は送ってくれているんです。あの島が戦争で悲惨なところになって、まる裸になったところへタンガタンガというネムの木の種を飛行機でまいたために、全山どこでもジャングルになっている。そのジャングルの中にちょっと入ったら、どこに入っても、二十メートルばかり入ったらどこにでも遺骨が横たわっているんです。ペリリュー島なんかもそうでしょう。「サクラサクラ」の最後の電報、あの玉砕時の最後の電報を打って、そのまま高崎連隊、これは全員玉砕した。あそこに足を踏み入れる者はだれもない。死んだままです。こういった状態に対してこの島の人たちは、ほんとうに日本に対して好意を持っている人たちは、これが一ポンド幾らで出るとか、私たちに金を出さなきゃ協力してくれない、そういうところじゃないんです。それを考えて、ひとつ民間の力も十分に活用して政府の力でこれを解決していく。で、先ほど申し上げましたように、南太平洋慰霊協会、重宗参議院議長がこれの名誉会長です。植木光教参議院議員が、これが理事長でやっているはずです。何とかして早くやっていきたい、収骨したい。また、国会の中では衆参両院を通じて南太平洋慰霊議員連盟ができておって、正力さんが会長であり、これは社会党、自民党、民社党、あげてこの議員連盟の中に入っておる。民社党の稲富さんが副会長であり、白濱仁吉さん、参議院の増原恵吉さんと、こういった組織の中でできておるというか、こういう民間団体の強力な支援と協力を政府は求めつつ、単に、がら集めに遺骨収集するんじゃない。国民の誠を尽くしながら遺骨を収集するという体制をさらに強めていただくよう、この点は私は援護局長にお願いしたいんですが、援護局長いかがでございましょうか。単に政府の力だけではなく、もっと広く国民の力をかりる方法を、善意の国民の力をかりる方法検討していただきたい。これを一つ要望しておきます。
  84. 實本博次

    説明員實本博次君) 先ほど、遺骨収集につきましては大臣からお答え申し上げましたように、あくまで政府の責任におきまして進めてまいる、ただ何さま日にちもたっておりますし、それから相当広大な地域に広がっておりますので、一骨も残さず収集してまいるということは、これはまあ理想的な姿ではありますけれども、気がまえとしてはそのつもりでやってまいりますが、まだ取り残してそのまま南方の島に眠るというふうなケースも出てまいるとは思いますが、そういう場合におきましては、またそれぞれの民間の力もかりるということも考えられますが、まあとにかく政府の責任におきまして、最終的な仕上げを年次計画を立ててやっていきたい。民間のいろいろな遺族会とか、いま先生のおっしゃった南方慰霊協会というふうなものにつきましては、主として現地訪問なり現地巡拝をお願いする。そうしてその巡拝されたところに慰霊塔を建てるとか、何とかいうようなものをおやりになる、あるいはまあとにかくその現地慰霊をやっていただくというふうなことは、これは民間の団体にお願いしてやっていくということがいいんじゃないでしょうか。やはり遺骨収集そのものは主として政府の責任において原則としては進めてまいりたい。そういうふうな官民の協力体制でもって戦争のあと始末をなるべくすみやかに行なってまいりたい、こういうふうにわれわれのほうでは考えております。
  85. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 現地慰霊を、そういう協会あるいは遺族会等でやってもらう、これはいいと思いますが、ひとつあくまでも政府でやるということは、それは基本だと思います。ただ遺族会の人たちが現地慰霊をし、現地収骨をしても、あんな高い断崖のところで、がけっぷちのところにあるものを遺骨収集できるはずはない。しかし若い力もあるわけです。若い力もうんと活用してください、遺族の、あるいは協会の。そうしてほんとうに官民一体の力で遺骨収集を十全であらしめたいと思う。  最後に私はいま大臣が遺骨収集を国の力として取り上げていきたいということでございますが、今年度千三百万の遺骨収集の予算ができておりますが、来年は幾ら要求しておりますか。それをちょっと具体的に。
  86. 實本博次

    説明員實本博次君) 大体本年と同額の千五百万円ばかりを要求いたしております。
  87. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 そうすると、大臣局長の先ほどの考え方とは違って、七十万の遺骨しかまだ帰ってないで、そうして今度の場合、八百万の予算でレイテ島の収骨と調査の両方をやっていくんだ。フィリピンも三年もかかるんだ、四年もかかるんだと。あとどうするんだ。ことし千三百万のあれだけしかないんでしょう。そんなことじゃできないでしょう。大臣考え方、局長考え方と違いますよ、それは。
  88. 實本博次

    説明員實本博次君) これは先ほど私冒頭に申し上げましたように、四十二年度におきましてはフィリピンを中心にいたしまして、サイパン、テニアンを行なう。それから来年度以降はフィリピンを、ことしはレイテを中心に、それからルソンを行ないます。その結果を見ましてまた四十四年に残るということもございます。これはもう橋をかけたり道をつけたりするような、そういうきちっとした計画どおりにはまいりませんで、そのときそのときのやはり実績を見ましてですね、その次の手を打っていく。これはいろいろな政治情勢なり、たとえばインドネシアなんかの場合も、向こうの現地の受け入れ状態というものであとへあとへと延びていくということもございますので、国際政治上のそういう制約もございます。そういう条件をいろいろ考えまして実施可能な範囲で目一ぱい見ました予算を計上いたしておるわけでございます。
  89. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 それじゃ納得いきません。それは国際情勢云々といっても、外交上の問題と言っても、事遺骨収集については、おそらくどこでも文句はないわけです。ただ、遺骨収集の方法等について原住民やその国を刺激するかしないかという問題だけだと思うんです。遺骨収集については絶対反対も、族券、査証等についてもそれほど――もちろん地域によってはありますけれども、いまのように実態を、いままでの実績を考えながらこうやっていくと、それじゃ一歩も前進しませんよ。これは局長さんに言ってもしようがないですから、大臣に聞きたいですが、ほんとに真剣になってこれやってもらわなければ、あの骨は、あの霊はどうするんです、これは。全くこれは大臣みずからも出る、局長もみんなあそこへ行って見せて、現に横たわっている姿を見てくださいよ。そうすれば、もっと真剣な考え方になるでしょう。状況を見てやります、ことし千三百万、来年は千五百万、そんな説明では私どもは納得できませんが、ここで論争したってしようがないわけですから。大臣に、最後に決意をひとつ聞きたい。
  90. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 遺骨収集につきましての決意につきましては、先ほど申し上げましたとおりでございますが、実際これをやっていく、遂行していくという手段、方法等につきましては、むろん先立つものは予算にお金を計上するということでございますが、なるほど仕事をやっていくためには、お金がたくさんあればあるほどこれは効果のあがることで、一応そういうことでございますが、そういった仕事につきましては、しからば金をどんどんどんどんと注ぎ込んだからというて、それだけでもって効果があがるということでは――むろん効果ないことはございませんけれども、それだけでもっては効果を期待しがたいというようなこともございまして、今日までの、先ほど局長お答え申し上げましたとおりです。いろいろやってきました実績あるいはやってきましたこの経過といったようなことも重大なる参考にいたしつつ、そうして最も効果のあがるというような方法を実践していかなければならないと思いますが、むろん私はことし千三百万、四十三年度において千五百万というようなお金は、これでもって十分だというふうには、私は考えてはおりませんけれども、さしあたって四十三年度におきましては、先ほど来申し上げましたいろんな観点からいたしまして、千五百万円要求して、これをそのまま承認をしてもらいたいというので、鋭意これから折衝を――あの先ほど局長お答えが少し間違っておりますので、私から訂正をいたしますが、四十三年度の要求額は二千八百万円ということに相なっております。むろん私はこれでもって十分だということは考えておりませんけれども、とにかく全力をあげていろんな方面から遺骨収集をできるだけすみやかに、もう遺族やあるいはなくなられました英霊に何とかして早く御帰還を願うという方向で進めてまいりたいと、かように考えます。
  91. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 従来の実績では――実績はないのです。足りなかったのです、努力が。従来の実績からこうだという、千八百万とかあるいは今度の訂正された三千万幾ら、これを考えても少な過ぎますよ。松山沖の航空事故だって三千万かかっているのです、捜査だけで。交通事故の補償だって、一つの事故だって千五百万の補償です。とにかく南太平洋だけで五十万の人があのままになっておるから、もう少し考えて三億、五億くらい出して一挙にやる。国民的な力を借りてやるというくらいの線を打ち出すべきだと思う。これでいったって来年二千八百万やっても、十年たっても遺骨収集はできません。当然全部の遺骨を集めることはないですから、ある程度集めて、それで終わりとすることはやむを得ないと思う。それで各島のことを考えていえば、いまの来年度予想される三千万では、遺骨の収集、遺族の願い、英霊の願いをかなえてやる予算ではないです。ここで言い争ってもしようがありません。私は強く大臣にお願いし、局長さんにも、いままでの実績ということから離れまして、沖繩の問題もめどがついた、小笠原の問題も解決した、こんなときなんです。もっとしっかりした考え方で、遺霊の問題を考えていただきたいことを強くお願いして、私の質問を終わります。
  92. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 外務省にちょっと要請しておきますが、先ほど出ました大倉某の関係を調べて、これを急いでもらいまして、できましたら今月中くらいに報告書を決算委員会に出していただきたいと思います。十二月臨時国会が始まりますと、最終の締めくくりに入りますので、それに間に合うように、事前にひとつ調査を急いでください。上司の方ともよく御相談願って、お願いします。
  93. 佐藤行雄

    説明員佐藤行雄君) かしこまりました。
  94. 亀田得治

    委員長亀田得治君) それでは午前中の審査はこの程度にとどめ、午後一時四十分まで休憩いたします。    午後零時三十七分休憩      ―――――・―――――    午後一時五十一分開会
  95. 亀田得治

    委員長亀田得治君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、  昭和四十年度決算外二件を議題といたします。  厚生省及び労働省決算について審査を行ないます。  これより質疑に入ります。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  96. 黒柳明

    ○黒柳明君 社会福祉施設に交付されておりますお年玉つき年賀はがきのことで、私質問したいと思いますが、初めに郵務局長さんに御出席をわずらわしておりますので、その分から話し始めたいと思います。  いま、お年玉つきの年賀はがきの売れ行きが悪いというようなこと、それから枚数も今年は減らしたと、そんなようなことを承っておりますが、まずその実情について説明を承りたいと思います。
  97. 曽山克巳

    説明員(曽山克巳君) ことし発行いたしました年賀はがきは、総数におきまして十四億五千万枚でございます。そのうち、寄付金のつきましたものが四億五千万枚、つかないものが十億枚でございます。例年でございますと、非常に売れ行きがよろしゅうございまして、いまの時点におきましてほとんど売り切れる。つまり実績を申し上げますと、寄付金のついたものが約九七%、寄付金のつかないものが九九%売れるというのが現時点におきます実情でございます。昨年は、料金値上げをいたしました関係で、若干成績が悪うございまして、いまの時点におきまして数%ずつ下回っておりました。特に、寄付金のついたものの売りさばき状況が、例年に比べますと相当程度悪うございました。  ことしの実績を申し上げますと、率直に申し上げまして、よろしゅうございません。特に、寄付金のついたものにつきましての売れ行き状況は、現時点におきまして七四%ということでございまして、例年にない不成績でございます。寄付金のつきましたものはさようでございますが、つかないものにつきましては、九一%という状況でございまして、これは必ず完売できます。なお私ども、この寄付金のついたものにつきましては、かように不成績でございますけれども、できるだけ努力をして売るようにいたしたいと存じております。
  98. 黒柳明

    ○黒柳明君 本年の九月一日に、このお年玉の一円の分について、四十三年度の配付のしかたについて郵政省から告示が出ていると思うのですが、告示の内容について説明いただきたいと思います。
  99. 曽山克巳

    説明員(曽山克巳君) 御指摘のように、ことしの九月一日に郵政省告示第七百十一号をもちまして、寄附金つき郵便葉書に附加される寄附金の配分を受ける団体の指定に関する政令に基づきまして、ことし発行しますお年玉つき郵便はがきに付加します寄付金を受けようとする団体を公募いたしました。これは例年公募しますので、特にここに取り立ててこの内容を全部紹介申し上げる必要もないと思いますが、おそらく先生御質問になっております内容は、次のとおりだろうと思われますので、その点を付言して申し上げます。  お年玉つき年賀はがきに付加します寄付金の受給をいたしたいという指定を受けたいという団体は法律できめられておりまして、社会福祉の増進を目的とする事業を行なう団体、それからガン、結核、小児麻痺その他特殊な疾病の学術的研究及び治療を行なう団体、さらに原子爆弾の被爆者に対する治療その他の援助を行なう団体、そのほか風水害、震災等、非常災害による被災者の救助を行なう地方公共団体または沖繩の被災者に対して援助を行なう団体、これだけでございます。この団体の中で希望するものを指定団体として指定するから、希望するものは申請しておいでなさいという意味の告示でございます。ただ、ことしはこれに、例年と違いまして、若干制限をつけました。その制限の内容は、社会福祉の増進を目的とする事業を行なう団体につきまして、直接みずから事業を行なう団体でありまして、その点を従来と違えて告示をいたした次第でございます。その点が、先生お尋ねの点であろうと思いますので付加いたしました。
  100. 黒柳明

    ○黒柳明君 私は、内容はわかっておりますので、要するに昭和二十四年くらいからですか、このシステムが始まったのは、それが四十二年九月一日の告示において変えたことはどういう点であるかと、従来は厚生省の管轄下にある中央募金会を通じて社会福祉施設からの申し込みを受け、そうしてまた希望に応じて金額を配付していた、ところが、九月一日の告示では、各都道府県の地方の中央郵便局を通じて申し込みを受け、そこから配付をすると、このような告示にしたと、こういうふうに私承知していると思うのですが、それでよろしゅうございましょうか。
  101. 曽山克巳

    説明員(曽山克巳君) そのとおりでございます。
  102. 黒柳明

    ○黒柳明君 この告示がさらに九月の三十日になって、内容が取り消されたような意味の告示がまた九月三十日に出ていますが、その告示について説明願いたいと思います。
  103. 曽山克巳

    説明員(曽山克巳君) 先ほど申し上げましたところで、最後に申し上げました前の告示では、社会福祉の増進を目的とする事業を行なう団体の中で、みずから施設を――先ほど事業と申し上げましたが、みずから施設でございまして、みずから施設を運営するものに限るという限定をいたしたのでございますが、さようにいたしますと、実は中央共同募金会がいままで指定団体になっておりましたものが、指定団体に第一回目の告示ではならなかったのでございます。この間、いろいろ厚生省方面でも御要望がございまして、私ども累次にわたって折衝を重ねました結果、最終的にはことしに限りましては、従来どおりの措置認めましょう、したがって、指定団体に中央共同募金会を入れようということにいたしました。来年以降につきましては、郵政省側の本来の主張でございますところの各みずから施設を行なう団体、つまりそれぞれの末端のみずからの施設を行なう団体という団体に限りたいということで合意ができましたので、実は、先ほど先生指摘になりました九月三十日の告示でもって従来のような方式に改めたわけでございます。
  104. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、来年度からは従来どおりの、中央募金会を通さないで、郵政省の地方の中央郵便局を通して、そうして公募し、配付金を流す、こういうふうにすることにすでに決定したと、こう解釈してよろしいでしょうか。
  105. 曽山克巳

    説明員(曽山克巳君) 当局としては、さように理解しております。
  106. 黒柳明

    ○黒柳明君 いまのお話で、私も十分に理解できたと思うのですが、ただ、問題点は九月一日に告示をし、要するに従来十八年間続いてきた、厚生省がその中央募金会を通じて当然社会福祉施設団体に流す。要するに行政の一本化をはかる、こういう趣旨で行なってきたものが、九月一日、郵政当局においてそのシステムを変える。お年玉年賀はがき法第五条には、社会福祉施設団体にその寄付金がいけばいい、こういうことから見れば確かに郵政省の言うことそのままだと思います。ただ、それが九月三十日になってすぐに告示をまた撤回している。これは明らかに朝令暮改である。いま局長さんおっしゃいましたように厚生当局の要望もあってと、確かにこれには違いないと思いますけれども、このことも過去のことで、いまさら云々してもしようがないと思いますけれども、若干この告示の出し方、当然下部組織においては郵政省も厚生省も、日本政府として、政府の当局としてこれ見ておるわけですから、若干の話し合いといいますか、準備が足りなかったのじゃないかと、このように思いまして、明らかに朝令暮改、まあ郵政当局も、そういうふうに決定したと、こうなっておりますからね。この点再びこういうような権威のある告示が一カ月で撤回され、その間に郵政省と厚生省の話し合いがなかった。このようなことでは、下部組織の混乱を来たす。聞くところによりますと、この一カ月全然公募がなかった。このようなことも聞いております。こういうようなことは、今後ないようにひとつ十分気をつけていただきたいと、こうも要望したいと思うんですが。  ところで、厚生省の御意見をお伺いしたいと思うんです。ただいまの郵政省の考えに対する厚生当局の考え、いかがでしょうか。
  107. 今村譲

    説明員(今村譲君) 厚生省考え方を申し上げます。九月一日に告示の前に、七月の中旬以降いろいろ郵政省のほうから、中央共同募金会を通ずるのをやめまして、個々に施設から申請をとるということにしたいというお話がございまして、で、私どもは、それは非常に困るということを、どうも申し上げるとぐあい悪いんですが、あえて申し上げます。困るその理由と申しますと、たとえば社会事業施設が非常に貧困といいますか、金が足りない。ふやしたいけれどもどうにもならぬ。国家資金、国庫補助、県の補助というルート、これは国や県が直接きめられます。そのほかに、ここで毎年いただいておりますお年玉の金とかあるいは自転車振興会のいわゆる競輪の金、小型船舶とか、いろいろそういう民間の資金がございます。ところが、つくります末端の県の場合におきましては、県立の養老院も、こういうお年玉でできる養老院も、全部設置計画とか配置計画とかいうもので統制をとらなきゃならぬ。ところが、国家資金、国庫補助金、公費というふうなものは、これは役人のほうでやりますけれども、それ以外のものは役人がかってにきめるわけにいかんというので、各都道府県に共同募金会がございまして、そこで、これに県の民生部の連中も入りますけれども、みんな集まっていろんな申請を出させる、これはいわゆる民間的な協議組織でございます。それで、あなたの施設は国庫の補助金でいきましょう。あなたの施設は、それじゃ自転車のほうでいきましょう。あなたのほうは一年待って来年お年玉でいきましょう。こういうふうにしている。そして、そうすれば、来年の何々県において、老人施設が何ぼふえて、それに要する経常経費なんかが何ぼふえる。国や県の負担を何ぼというふうに分けるというように、県全体の割合、全般的な計画というものが要るわけです。したがって、やはり過去、いま申されましたように十数年にわたって公金の補助金以外の部分については補助金でつくる施設も含めまして、そこでいわゆる施設長なり有識者が集まって県の共同募金会の中で、そういう割り振りなり調整をしておるということで、いまお年玉は非常に貴重ないわゆる原資でございますが、これだけは全然そのルートを通じないで、いわゆる中央郵便局と申しますか、統括郵便局というそうですが、そこを通じてやるということは、やはり県内の総合調整というものが非常に困ってくる。したがって、これはやはり申請書は各県で受理して、それを中央募金会に出して、もう一ぺん調整をして、厚生省とも相談の上で、郵政大臣に中央共同募金会から申請書を出すという仕組み、従来の方式にしていただきたいということをしばしば申し上げておったわけでございます。ただ、郵政省の御事情もいろいろ先ほどお話がありましたようにありまして、これはやはり筋から言えば、施設にいくべきものではないか。その間の協議はいろいろ厚生省や郵政省でやればそれでもって足りるじゃないだろうかという御意見もありまして、私どもももたもたしております間に九月一日を迎えた、こういう次第でございます。そこで、非常に私ども困りまして、九月中に曽山局長さんとしばしばお目にかかりまして、それで九月三十日に告示ということになったわけでございます。その間、地方でも相当どうなるだろうかというので、非常にはらはらしたという事態は確かにございました。この点、私どもとして不手ぎわであったと思います。  最後にちょっと、郵政省としては今年度限りの施行である、従来どおりは。来年度は九月一日の告示のあの思想だというふうに省としては考えておるとおっしゃいましたが、実は、私どもはそこまでは考えておりません。従来の方式で私どもは主張してきておりましたが、郵政当局の事情もいろいろございましょうが、告示撤回に関連して、引き続いて明年度もどういう方式でやったらうまくいくか、そこを詰めていただきたい。しかも、これは私から申し上げるのはおかしいのでありますが、郵便募金管理会のいわゆる整理と申しますか、行政管理庁のほうの問題もありますので、そうなった場合に、一体今後一円ずつの寄付金というものは、一体どういう形に流れていくのか、その点も新規の事態もありますので、それを含めて、今後さらに事務的によく詰めてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  108. 黒柳明

    ○黒柳明君 私も、いままでの各方面の意見もいろいろ聞いてきまして、九十四億ですか、そのうち五十三億が中央募金会を通じて各社会福祉施設に寄付、交付されてきた、こういうような事情を聞いております。私はいま言いましたお年玉年賀はがき法の第五条、要するに社会福祉施設にいけばいいのだ、だから何も中間的な中央募金会を通ずる必要はないと、このようなことですね。それに対しての郵政当局のお考えというのは、ともかく本年度はまあ調整ができてなかった、ですから、撤回もしましょう。若干のここに手落ちも私はあると思うのですが、来年度からは、中央郵便局を通じての募集であり交付である、こういうことがもう決定的であると、このような局長さんの答弁のように私は感じられるのであります。いままでの話も、そういうふうに伺ってきました。そうすると、問題は、今度厚生省の立場ですね。ですから、厚生省としてもこれから話をして煮詰めていく、こういう段階が当然来年度の問題です。まだ一年間余裕はあるにしても、こういうことがあると、先ほど私が言いましたように、下部団体のほうで混乱する。現に九月一日から三十日まで各地方郵便局を通じての公募はゼロであった。なぜゼロであったか。私はいろいろ聞いたのです。そうしたら、厚生省のほうから言うことばは、公募するなと、このほうはそうかと言って聞いても、そんなことはやらないと、こういう御答弁が返ってくることは、当然だと思うけれども、あるいは中堅幹部の方からは、そういうふうにはっきり言ったということも聞いております。まあここでお名前はあげませんですけれども、ともかくだしぬけに従来十数年も続いて、そこに何らのミスもなかった。そういうようなことで何も、直接年賀はがき法第五条で福祉団体にいけばいいのだというようなことをとって、郵政省がここで十八年も続いてきた組織というものをすぐくずす、こう言っては語弊がありますが、すぐうちのほうでやると、こう言わないでもいいだろう。だから、そんな不届きなことをやるならば全部公募はやめろ、一時ストップしろと、こういう命令がきて、私たちは募集に応じられなかった、こういうふうなことで今度は郵政省当局としても考えざるを得なかった、こういうようなこと。これは聞いた話ですから、私は断定したいですけれども、こういう話もあった。それは事実であるかどうか私はわかりません。にしても、火のないところに煙は立たないということで、現に厚生省当局の中堅幹部もはっきり断言しておりますので、こういうことがあってはうまくないと思いますし、また煮詰まっていくにしても、いま言ったような郵政の考えは決定的らしいですね。だから、大臣がここで交代がございまして、それは知らないという態度は当然ないと思いますし、最後まで、来年のことであって、いまここでこういう問題になっておるわけですから、大臣としてもこれに対して何らかの一つの方向というものをつけて、また次の大臣に引き継ぐなりあるいは御自分の代になったらまた決定的な結論を出すなり、こういうこともいまの時点においてはっきりしていただかなければ困るんじゃないか。何回も繰り返すようですけれども、下部が困っておるようです、体制を打ち出していただかないと。来年のことであるからこれから話を煮詰めればいい、こういうぐあいにいかないだろう。中心のほうの郵政省と厚生省局長さんのお考えが、ここで二者が対立していて、これから話がどう煮詰まっていくか。そこで変な話の煮詰め方をしても困るということも私は考えられます。ひとつ厚生大臣、いまの範囲内で、私のほうとしてはこうしたい、こういう希望意見なりあるいはこうすべきであると、こういう意見なりあったら、ひとつお述べを願いたいと思います。
  109. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) お年玉による募金でございますが、これが当然施設のほうへ流れていけば、これはその目的を達成すると、これはおっしゃるとおりです。そこで、私はその流れの行き方というものが非常に有効適切に流れていく、同じお金が流れていくにいたしましても有効適切に流れていくということが非常に大事なことであろうと思います。さような意味におきまして、これが要するに施設に流れていきます金の中には、政府の補助金あるいはその他のお金、それからお年玉つきのはがきのお金といったようなものがあるのでございますが、そういったものが総合されまして、そしてこの総合的な見地に立ちましてこれが配分されていくということが非常に私は大事なことだと思います。さような意味におきまして、従来この十八年間、今日までやっておったような方式がとられておったのでございますけれども、今度一、二転いたしたことは、これは事実でございますが、そこで、本年は従来どおりの型でいくことになりました。来年度以降一体どうするんだ、こういうことでございますが、これは先ほど郵政省のほうからお話がございましたけれども、これは理解すると、こういう話でございますが、私どもといたしましては、これはいま私が申し上げましたとおりで、同じお金でも総合的な見地に立ちまして最も有効適切に流れていくというような方法もとってまいりたい、こういうことを、私は小林郵政大臣とはこういう話は何らいたしておりませんけれども、小林郵政大臣もそういったようなことにつきましては、お金が最も集まりやすいように、また集まったお金ができるだけ適切に流れていくというようなことを実際上やっていくということについては、おそらく私も小林郵政大臣も同じ考えだと思いますが、それならそれをできるだけ早くやらなければいけないじゃないか、こういう御意見、これもしごくごもっともなことでございます。そういうようなことで、できるだけすみやかに、この来年度以降のことにつきましても、これは最も適切なる措置、適切なる方法というものを打ち出してまいらなければならない、かように考えております。
  110. 黒柳明

    ○黒柳明君 これも、また若干郵政省のほうに対しては申しわけない発言になりますけれども、まあ厚生省のほうの私が会った、少なくとも中堅幹部、またそれ以上の方もいますが、言うのには、これは郵政一家の陰謀である。これはそのまま私ここで発言しますと、郵政一家の陰謀である。要するに選挙の地盤固めのためじゃないか。それを通して各福祉団体との関係を密接にするのだと。これは私が言うのじゃなくてちゃんとこういうふうな発言があります。ですから、厚生省の下部、中堅幹部のほうでは、これは当然先ほどから言うように、何らの問題がない。これは十八年間のものをいまここで変える根拠はないじゃないか、こういうことであるし、その代弁が、集約がいまの社会局長お話で、大臣お話は、何か有効適切にというおことばの中には、私は従来どおりが有効適切である、また郵政省の話を聞いてそちらのほうが妥当性が若干あれば、その有効適切な措置を取り入れる、こういうようなことにお伺いしたのですが、大臣の立場としてはまだ郵政大臣とも会ってない、こういうようなことで発言を若干遠慮されているのだと思いますけれども、郵政大臣としてはすでにこの告示一点を見ても、うちのほうでやるということはきまっている、これは決定的であると思います。だから、まだお話になる余裕というものは当然あることは十分承知ですけれども、くどいようですけれども、その有効適切であるということは、いままでの厚生省がやってきた、中央募金会を通じてやってきたその措置、その措置は当然有効適切な措置である、こういうふうに私は理解したいのですけれども、それでよろしゅうございましょうか。
  111. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 私といたしましては、今日までとってきた措置が有効適切であったろうと思いますけれども、しかしながら、これも今日までやってきたことが、これは何よりも理想的だというようなことは私も考えておりません。こういった措置につきましてはちょうどいま問題も起こっておりますし、これについて慎重に検討いたしまして、今日の私といたしましては、ここでお答え申し上げますことは、いままでの措置を今度また郵政省におきまして、本年はこの方針でもっていくということにきめていただいておりますから、私はこれにつきましては、これをいま直ちに改めようということは考えておりませんけれども、要するに問題になったことでございまするから、これにつきましては厚生省といたしましても、よく考えてみて、そうして郵政大臣とも話をしたい、かように考えています。
  112. 黒柳明

    ○黒柳明君 いずれにしても、その両省間のどろ仕合いというものが下部組織にみっともなく映るようなこと、それはひとつやめてもらいたい、こう要望してこの問題は終わります。  次に赤い羽根の状態ですけれども、これもまたお年玉年賀はがきと同じように、これは今度厚生省の大きな問題点です。応募の状況が悪い、こういうふうに承っておるのですが、その現在の応募の状況あるいは過去と比較しての様子ですね、あるいはこれからの見込み、そういうようなことを説明願いたいと思います。
  113. 今村譲

    説明員(今村譲君) お答え申し上げます。仰せのとおりに、十月一日を前にして行管の勧告が出まして非常に世論の沸騰というようなかっこうでございます。したがって、ことに東京、大阪のような大都市におきましては、出足が非常に重うございました。それで毎十日ごとに各府県の共同募金会から中央募金会に報告がまいります。それで一番最近の十一月十日の結果を申し上げますと、一般募金の四十二年度の目標額が全部で二十二億三百七万九千七百四十円、まあ二十二億というふうになっておりまして、四十日経過しました十一月十日、十月一日からでございますが、十一月十日におきまして、一般募金の実績というのが十億二千九百十三万七千円というので、目標に対しまして四六・七%。これは昨年の十一月十日の全国集計と比較しますと^昨年は五三・七%、現実に集まっておるということでございますので、四六・七%との差七%と開いておる。これは少し楽観的かもしれませんが、十月の十日、二十日、あの辺から比べますと、最初は十数%から二〇%ぐらい開いておりましたが、これはたいへんなことになるなと心配いたしておりましたが、十一月十日では、七%ぐらいに縮まってきておるという点が一点でございます。  第二点といたしまして、これは後ほど先生からおしかりをこうむるのだろうと思いますが、市町村の募金は、即刻もう県に送ってしまえ、手元へあっためるなということを初めからいっておるのですが、もう少したまってから送ろうというので、県の募金会に送るのがおそかった。ところが、昨年は十一月十日に五三・七%集まったという報告、十一億五千二百万、そういうふうに現実に現金が県の募金会へきたのが六億一千二百万ということでありましたが、今年度は十一月十日に、現実に金が各県の共募にまいりましたのは六億九千三十七万、約七億ということで七%ぐらい集計上のものが減ってはおりますけれども現実に県の共募にきた金ははるかに早く大きいと、こういうふうな状況になっておりますので、相当いわゆる資金をあっためますと、いろいろな問題が起きる。すぐに送れというのが相当徹底しておるのじゃないか。今後の見通しは非常に大胆でありますけれども、少なくとも目標額まではいき得るのではなかろうかというふうな気がするわけです。それも都市部は非常にむずかしい。農村部あるいは中間部分につきましては、県によりましてはもうすでに昨年の実績より上回っているというところもあり、いろいろそうして総合的に見ますならば、目標額まではいき得るのではないか。これは担当者として少し楽観が入ると思いますが、そういうふうに考えております。
  114. 黒柳明

    ○黒柳明君 私は担当者として、相当それは楽観だと思うのですよ。大幅にこれは募金の状況が悪い。それから、ここで二〇%、十何%、七%になったとおっしゃいますけれども、その状態だけを把握して今後は差が縮まるというのは、ほんとうに大胆な楽観だと思うのです。なぜこのように公募の状態が悪くなったか。私はそこで指摘したいのです。たとえば各都道府県に、中央募金会の下部組織である都道府県の募金会支会があるわけですね。東京都の募金会の状況ですと、共同募金会の決算額を見ますと、二億九千四百万、ところが実際の寄付金の受け付けば二億九千八百万、四百万が行くえ不明である、こういう数字が出ているわけです。先ほどおっしゃいましたように、早く集まった金はどんどん送りなさい。その送る程度が非常にスムーズにいかなかった。現在は徹底して若干スムーズにいっている。こういうふうなおことばですけれども、東京都一つを見ても、実際に取った金と、決算してみた金が四百万も違っている、こういう例がある。さらに都道府県にいろいろな例がありますけれどもね。その不正な例がここにあげられています。たとえば宮城県においては、県の募金会が、県の職員がヨーロッパへ出張の際にせんべつを出している。これは全然社会福祉施設にいく金ですから、県の職員にせんべつなんか出す金ではない。ところが、せんべつを出している。さらに北海道の募金会、新潟の募金会、福岡の募金会も、これは県職員の転職、転出その他のときにおいてせんべつや記念品を支給している。さらに東京募金会、大阪、北海道、宮城、新潟、愛知、神奈川、福岡においては、同じく県の役職員が出張するときにみやげを渡している。病気の見舞いを出している。あるいは退職のときの記念品を出している。せっかくの浄財が全然目的外に使われている。さらに東京――東京というのは非常に悪い例にあげられていますよ。北海道、宮城、愛知、香川、福岡、新潟などでは、この募金を多量に飲食費に使っている、このようなものがあるわけです。さらに福岡の募金会のごときは、この募金したお金を会議費という名目で、架空な支出をしている。このような例。さらに一番ひどいのは、宮城県の河南町募金分会、ここにおいては横領不正事件がある。このようなことをあげれば数限りないですね。中央募金会の下部組織である都道府県の地方募金会が分担金を出して、中央募金会をまかなっているわけですね。そうして、言うならば、中央募金会の下部組織である各都道府県の募金会がこのようにせっかく集まった赤い羽根の浄財を他目的にどんどん使っている。こういうことがいまの募集の状態を悪くしている。これをふまえて、大胆な楽観であるけれども、目的は達成するじゃないか、こう言っていますけれども、都心部あたりの募金会に行って聞いてみますと、かわいそうなのは事務職員です。安い給料で、しかも目標に達するどころか、半分から四割です。いま局長さんのおっしゃったのは平均してですから、とてもじゃないが、目標なんか達成しない。現実生活は安い給料で困っている、しかも張り合いのないところで仕事をし、生活をし、今日でも苦労していらっしゃる。どこに原因があるか。こういう各都道府県の募金会が目的外に大いに使用しているところに、募金が集まらない、意欲的に集めようということになっていない大きな原因がそこにあるのですね。大臣、そこらあたりの不正の事実は十二分に御存じだと思います。大臣も先ほどの説明の中に問題があるとおっしゃっていましたけれども、はたしてこれで目標が達成できるか。これは大胆な楽観だと私は断定しますが、この事実について大臣は当然お考えもあるし、これからも手を打たなければならない、こうもお考えになっていると思うのですが、いかがでしょうか。
  115. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 共同募金の今日までの成績が必ずしも順調ではない、おそらくは相当見込み違いもあるだろう、こういうお見通し、私もそれを非常に心配いたしております。その原因として共同募金の使途が妥当ならざる、さらに進んで不正なる使い方まで行なわれておるというようなことが一つの大きな原因であったということは、これについては、私も全く同じ考えでございますが、先般九月十一日でしたか、行政管理庁から厚生大臣あての勧告を受けまして、これはたいへんなことであるということを私も考えまして、さっそく各地方における担当官を招致いたしまして、これに対しまして共同募金について勧告を受けた趣旨等の話を聞かせまして、そしてこういったようなことがもしあるとすれば、せっかくの国民の善意に満ちた助け合い、相互扶助、こういう、何と申しますか、非常にいい風習といいますか、善意の行為を阻害するというようなことになると、それこそほんとうにこれはいけないから、十分そういった点について、この運用について注意をしてもらいたいということを強く要請をいたしまして、本省の局長にもこれをよく命じまして、具体的の指示等をやらしたのであります。そういったような役所としてでき得る、政府として成し得るようなことにつきましては、いろいろな手当てを講じておるのでございますが、何さま御承知のとおり、共同募金というものは民間の運動でございまして、これに対して厚生省なり政府なりが、しかも下部機関役員に対して指示、命令をするというところまで、これを徹底的にやれないというようなことでございまして、この指導には十分気をつけてやってまいっておりますが、御指摘のように、私もこのたびの募金の結果というものについては非常に心配をいたしておるのでございますが、役所とし、政府といたしましては、何とか、この国民の善意に満ちた行為というものをさらに成長さしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  116. 黒柳明

    ○黒柳明君 そこで、下部組織に対しては政府としては指導できない。ところが、ここに行管の通達、これがあるわけです。これを若干読ませていただきますが、こういうふうに言っています。「厚生省では「社会福祉事業法の施行について(昭和二十六年六月四日、厚生省発第五十六号)」により、同法「第七十三条第三号の規定は、共同募金の配分の公正を確保するためのものであるから、共同募金会の役員または評議員の選出上とくに止むを得ない事情があるときは、」――この次からですよ。「配分を受ける社会福祉事業団体の役員であっても別の資格例えば商工会議所または共同募金会支会の代表として共同募金会の役員または評議員になることは、関係者に異存がない」と通達している。要するに、中央の、あるいは各都道府県の募金会の役員が、集めるほうの人が、今度は集まった金を分配するほうの役員、各社会福祉団体の役員、それになってもいい、こういうことですね。それに対して行管はこう言っている。「現在の共同募金会の役員、評議員には共同募金の受配者である社会福祉協議会、社会福祉施設の役員等を含めているところが多く、なかにはこれらの者が共同募金会の役員、評議員数の過半数以上に達している共同募金会がある四要するに、集めるほうと配るほうと同じ役員の場合がある。都道府県によっては半分以上の役員が兼務している。「このため募金および配分に関する項目で述べるとおり適切でない事例を生じる原因ともなっておる凶要するに、こういうことだから、だから先ほど言ったように、金銭が不当に使われ、目的外に使われ、横領が行なわれているので、「すみやかに上記通達を廃止して共同募金会の役員、評議員には受配者である社会福祉事業団体の役員等を含めないよう指導する必要がある。」まあこれは各関係者の見方で若干違うと思いますけれども、行管が長い間かかって足まめに調べ、当事者の厚生省が気づかない点を指摘していただいたわけです。私もそれを調べて、先ほどのような幾多の不正事実が出たわけです。それに対して、あくまでも行管の言っていることは、なぜこういう不正事実が起こるか、それは集めるほう募金会と、配るほう各福祉協議会と同じ役員が兼務しているからだ。だから、これは厚生省で異存がないという通達を出しているから、だめなんだ。その一部の原因がここにある。だから、すみやかに上記の通達を廃止しなさい、募金会と社会福祉施設、社会福祉協議会の役員兼務はやめさせなさい。そうすれば、この不正は、全部とは書いてありませんけれども、改善されるだろう。こう言っているわけですよ。この通達について、まあ大臣は行管のことに真剣に考えられているようですが、これについては、どのような御意見をお持ちでしょうか。
  117. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 金を集めるほうと、これを配分するほうとが同一人格であるということは、これは原則としては、そういうことがあるべきではない、こういうふうに私は考えております。ただ、いなかと申しますか、地方の府県等へ参りますと、お金を集めるというのには、やっぱり世間に非常に信用のある方が中心になって、そうしてその浄財を募集するということが、その人の信用によるということが喜捨してくれる方々もお金を出しやすいということでございまして、えてして、そういうような方がまた非常に公平であって、そういうような方が現実の問題としてはお金を配分するという上におきましても公平である。要するに、地方へ参りますと、人格の円満な人、力のある人が先ほどおっしゃられました商工会議所の会頭といったようなものになっておる事例が非常に多い。それで地方のことでございまするから、しからばそれにかわって人さんに信用もあるし力もあるし、また配分をするのに公平であるしというような人が野に埋もれておる、そういったような職についていないというような人で、そういったような適材を求めるということが非常に現実の問題として困難な場合もございまして、それで往々にして、地方においては共同募金に関する限り、集めるほうと配分をする側というものが同一の側に立つことがあるのでございますけれども、御指摘のとおり、これはあくまでもそういったようなケースにおける例外のことでございまして、原則といたしましては、私はそういったような二重の、一人二役といったようなことは排除していくべきが筋合いであろうと考えます。
  118. 黒柳明

    ○黒柳明君 大臣がいなかにおいては信用がある人と――信用があることと公平であることとは別だと思います。往々にして信用が隠れみのになって公平を欠く場合もある。ところが、いなかいなかとおっしゃいますけれども、この中央募金会の最高の地位にある会長が灘尾弘吉さん、また全国社会福祉協議会会長が同じく灘尾弘吉さん、ここに問題がある、こう言うんです。ここの問題というのは、いなかに行きまして、そこらの町や村に行きましての商工会議所あるいは町会の役員には、こういう原理は、ただいま大臣がおっしゃったおことばで当てはまらないこともないと思いますけれども、各都道府県で評議員、役員にしてもそんなに数が多いものじゃありません、二けたがいいところです。そうなりますと、東京都でも一区一人か二人です。各都道府県でも小さい町、村ではそういう人はいないわけです。市ぐらい、あるいはでっかい町ぐらい、そういうことになるんです。そうなりますと、いなかとかあるいはそういう信用、そういうことじゃなくて、問題は、一番最高の中央において集める募金会の会長と配るほうの福祉協議会の会長が元厚生大臣の灘尾弘吉さんである。このことがむしろ各地方の手本になっている。ある私が電話をかけたところにおいては、それのほうがあたりまえでしょう、そう言ったって、ごらんなさい中央においては一本じゃないですかと、こういう弊害、それを行管で指摘しているんじゃないですか。幸いなるかな大臣が、私はこれは分けたほうがいいと、あくまでも行管の多年の血のにじむ結果と報告と勧告と大臣の意見が期せずして一致したわけです。となると、中央のシステムそれ自体、地方における見本であり手本ですから、まず、この中央の集めるほうの責任者の灘尾さん、配るほうの責任者の灘尾さん、このことが暗黙のうちに、また実例としての各都道府県における募金会の手本となっている。私ここで兼務が幾人いるかという、それは大臣のほうがよく御存じですが、相当数の兼務、いま言ったような過半数の兼務のところが相当あるわけです。これをまず大臣の言った趣旨に沿ってやられる。大臣は原則として分けたほうがいいと、こういうことですから、いなかはともかく地方じゃそういうことはあり得ない。まず、最高の中央ではこういう事実ですから、このことは大臣在職中にすみやかに分けるほうに向けていただける裏づけのあるただいまの御答弁であると、こういうふうに私は理解したいのですけれども、いかがでございましょうか。
  119. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 非常に事例が具体的な問題に入ってきておりまして、いろいろなケースがあるようでございますから、詳しく具体的なケースにつきまして局長から御答弁いたさせます。
  120. 今村譲

    説明員(今村譲君) ちょっと本質上の問題じゃありませんので、私から申し上げたいと思います。  実は先生指摘のお気持ちはよくわかるのでございますが、行政管理庁が申しておりますのは、共同募金で金を集めて、金を配るのは都道府県単位の県共募というやつです。それを集める人が県共募の理事が二十人とか十八人とかたくさんおりまして、評議員が三十名とか五十名、その中にもらう人のほうがのこのこ入ってきたらおかしいじゃないか、そのとおりだと思います。ただ、昭和二十六年に社会福祉事業法ができまして、初めて共同募金、それから社会福祉協議会という規定ができます当時、衆参両院でいろいろ御議論がありまして、ことに参議院で、これの小委員会などをつくられまして、その当時でも、日本のいまの現状では、ことに市町村あたりにも行きますと、小さなところに行かれると、大臣が言われましたようにいわゆる信用のある人が非常に限られてくる。したがって、社協と共募は厳密に分離したらいずれも育たないのではないか、せめて配分をする共同募金の理事の二割、五分の一くらいは兼務を認めるというかっこうにでもしないと、地域社協の育成にもならない、どっちかにしろ、社協をやめたら共募に入ってもいい。これは山下義信先生でありましたか、小委員長のときにそういう御提案が強くなされました。国会の最終日でありまして、それには何らか行政的な方法考えざるを得ませんということで法案が通りまして、そこで、いまおっしゃいました二十六年の運用の通牒というかっこうで、あの当時二割くらいずつは考えておったわけですが、ところが、御指摘になりますように一人も入っていない県もございます。それから過半数のところと七〇%というところも実はあります。これはいつの間にやら、逐次そういうふうにイージーゴーイングにだんだんふえてきたというようなことで、行管が言うように、筋から言うて、同じ人間でやっているのはおかしいじゃないかというので、私どもは行管に対しましては、これは一気に全部やめてしまえと、こういうことになるといろいろな混乱がありますから、しかも、共同募金の実績というものをできる限り伸ばしていきたいということがございますので、極力それを減らせというふうな行政指導をいたす。それからたとえば、同じ共同募金会の中でも、配分委員会というものをつくって専門分科会などをやっております。そういう中には、そういう人は当面入れないというふうなことで指導したいということで、県の民生部長のほうにもきつく言っております。  それから中央共同募金会の――実はお名前が出たのですが、会長さんとそれから全国社会福祉協議会の会長さん、これはちょっと似たようなものでありますけれども、金を集めて配っておりますのが各府県の共募である。この共募の連合会――その団体が中央共同募金会、それから全社協――全国社会福祉協議会連合会これも共同募金からは一銭も配分はもらってない。要するに全国の各府県の共同募金会の連合会の寄り合い世帯みたいなものですから、実際は行管の勧告が言うように、銭を集めてくるということには直接的には関係がない。ただ類推して言えば、県で悪いといえば地方で悪いじゃないかというふうな議論が出るかもしれませんが、そこのところはちょっと性格が、中央協議会も全社協も県社協からは金をもらってない、受配団体でないという現状でございますので、その辺ちょっと県の段階とはものが違うのだということをちょっとお含みおきを願いたいと思います。
  121. 黒柳明

    ○黒柳明君 しかし、赤い羽根は中央でつくって地方へ流すのじゃないですか。だから、そのあたりは分担金を出してでも募金が維持されておるのです。直接それを中央募金会でやった日にはたいへんですよ。これは地方団体、各支会にまかせる、そういうシステムになっておりますけれども、しかしもしそれが無用の長物だったら廃止すればいい。廃止する必要はありませんというのは必要だからです、あるとすれば。だから、各地方に、中央の募金会が必要だからじゃないですか。実際に金の配分までどういうふうにタッチするかしないか、そこまでコントロールしないにしても、直接に間接にやはりいろいろな意味のコントロールをし、統轄下にある、こういうことはこれは明らかだと思うのです。その点、先ほどの大臣のおことばで大体尽きると思います。もう基本方針は出ていますから、その基本方針に沿って、そのことがまた来年度の赤い羽根の募金に対して大幅に今度は各支会が、都道府県の募金会が、良心的な運営をしていくと、私どももそれに対して心から募金に応じていく。こういう中心の腐敗というもの、そのシステムというものを抜本的に改善していかなければならない。それが腐敗を起こし、募金が集まらない大きな原因になっている、こういうことであり、また大臣の御答弁が、それに対しての趣旨に沿って兼務はうまくない、こういうような御答弁だったと思います。  時間がございませんので、その次の問題に移りたいと思いますが、国立療養所の入所患者の寝具ですね。これはいままで自前だったのですが、四十二年の七月から寝具基準が実施されて、療養所から外部の業者に寝具の提供を請け負わせている、こういうことになっていると思うのですが、その簡単な過程とそれに対する予算、これについてまず説明願いたいと思います。
  122. 若松栄一

    説明員若松栄一君) 国立療養所は、御承知のように、終戦後、主として陸軍病院あるいは傷痍軍人療養所あるいは医療団の施設を使いまして結核患者を収容しておりましたために、社会保険あるいは社会保障等が充実していない段階で、二割引きで現在までやってきております。そのように特殊ないわゆる軽費診療をしておりました関係上、いわゆる保険で言いますところの基準患者、基準看護あるいは基準寝具というような、そういう基準加計を準拠せずにきておりました。したがって、経済的にも非常に不如意でございましたので、寝具につきましては、一部手持ちのものはこれを患者に貸与しておりましたけれども、一部は患者が自分の寝具を自宅から持ってくるという形でいままで運営してまいりました。ところが、現在の段階では、もうどこの病院でもほとんど基準寝具を実施いたしまして、患者は自分で自分の寝具を持ってこなくてもいいという状況になってまいりました。したがって、国立療養所におきましても、この際、一般医療機関並みに寝具は病院で支給する形にしたい、そういう方針をきめました、しかし、寝具を直ちにいま調製いたしますと、たとえば一組が一万円かかりますと、四万ベッドを一挙に整えるということになりますと、四億円かかるというような状況から、さしあたりそれを委託で実施しようということにいたしまして、本年からさしあたり三カ年の計画で本年度約一万五千ベッド分を業者に委託して寝具を借り入れるという形で基準寝具の実施を行なったわけであります。
  123. 黒柳明

    ○黒柳明君 予算はどのくらいですか大体。
  124. 若松栄一

    説明員若松栄一君) これに要する予算額は一億一千五百五十万円でございます。
  125. 黒柳明

    ○黒柳明君 私の手もとに基準寝具設備実施状況、要するに四十二年の七月から各国立病院が業者に請け負わせている、それから洗たくから取りかえから全部やらせておるわけですが、それで北海道、東北、関東、信越、東海、北陸、各地方医務局別に、しかもその地方医務局でコントロールしている国立病院別に書いてあるわけです。東北――国立花巻療養所、盛岡療養所云々と、関東、信越――中野病院と浩風園、あるいは下総療養所とこうあって、そして一日ふとん一校の単価についてずっと出ていますけれども、非常にこの単価の差があるわけです。一番低いところは十九円、それから高いところは三十円、どうしてこういうふうに単価の違いが出てくるのか、この辺説明していただきたい。
  126. 若松栄一

    説明員若松栄一君) 基準寝具というものが現在では非常に一般的になりまして、各病院が全部借り入れをするという形になりましたので、これを請け負う業者がたくさんできてまいりました。そして大部分の病院がこの業者から借り入れてこれをやる。つまり業者が請け負って寝具を調製し、またその洗たくを引き受けるという形になっております。したがって、たくさんの業者がありますので、これを原則的には競争入札で行なうということにいたしております。したがって、入札によりましていろいろの値段で落札するという結果になったわけでございます。
  127. 黒柳明

    ○黒柳明君 で、これを各地方医務局別に見ますと、随契と指名競争入札と、こうあると思うのですけれども、これは各医務局別にどういうふうになっておりましょうか。
  128. 若松栄一

    説明員若松栄一君) 私ども本年度からこれを実施いたしましたので、当初に各地方医務局ごとに適切に指導をして当然のこととしてこれを競争入札してやらせるつもりであったのでございますけれども、寝具の実施が非常に急いだ点がございまして、その点で各地方局ごとに多少アンバランスが出てまいりました。現実には、ただいまお話がありましたように、北海道地区の一部並びに関東、信越地区の一部で随意契約でこれを契約した。その他の地域につきましては、大体指名競争入札で実施いたしております。
  129. 黒柳明

    ○黒柳明君 原則としては指名競争をしなさいと、こういう指示が各地方医務局、国立病院に流れていると、徹底されていると、ところが関東、信越の六国立病院――その他にもありますけれども、ことにこの関東甲信越の地方国立病院は全部随意契約ですね。その中央からの原則論がここでは破られて随意契約になっておると、こういうわけですね。これは非常にうまくないと、こう思うのですけれどもね。これに対して、まあ一年契約だから、来年度からはこれを改めて競争入札にさせると、こういうわけでしょうか。
  130. 若松栄一

    説明員若松栄一君) お話のように原則的にこれは指名競争入札でやるべきものというふうに考えておりますし、また、そのような指導をしたはずでございましたのが、実施の初年度であって、しかも一部の施設が非常に急いだために、これが徹底しなかったという結果でございますので、将来は原則的な指名競争入札の形で実施いたしたいと考えております。
  131. 黒柳明

    ○黒柳明君 中央の指示が本年度から始まったから徹底しなかったと、私はそれを否定するものじゃないですけれども、一部東北のほうでは、まあそうじゃないと、こういうようなこれはうわさであって私はほしいと思いますけれども、そういうようなうわさがある。特定の業者が指名をやって、そしてダンピングをやり、その相手業者を落してみずからの会社に合併して併合していくと、このような意図をもってやっていると、まあこのようなうわさも聞きますけれどもね。これはもう会計法二十九条の三ですか、随契をやれる場合、A、B、Cに分かれていますね。この会計法には明らかにこれは違反している。少なくとも現在の状態はこれは違法である、このように私は思うのですけれども、いかがでしょう。
  132. 若松栄一

    説明員若松栄一君) 原則的には御趣旨のとおりでございます。ただし一部随意契約をいたしました中には、指名競争入札をいたしましたけれども、予定価格までどうしても達しなかった。ところが、予算には限度があって、三十円を目途としてやれということをいたしておりますので、やむを得ず随契で契約した分もございます。
  133. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあ実情としては、私も何もむやみにおかしいと、こうは言いたくないのです。確かに設備も必要なことでありますし、またどの業者でもできるというような仕事じゃございませんし、特殊な仕事ですし、しかしながら実情論は実情論として、指名競争しろと、こういう原則を打ち出して、またその競争入札をやっているところが多いにもかかわらず、そういうことをやらないで随契でやっている。これは明らかに会計法に違反している、こういうことが、これははっきり断定できる、私はこう思うし、またそういうふうにおっしゃる。まあ実情論はあると思うのですけれども、しかしながら会計法違反である。これに対しては、これはやっぱり大臣としてもきびしくお考えいただくと同時に、また来年度は競争入札させると、こういうことははっきりして、来年は間違いなく行なわれる。こだこれは一年契約なものですから、一年間そういう状態で続いちゃうわけです。だから、いまここで違法であるとわかった時点において私は、いろいろな作業があってここですぐ撤回しろと言ってもたいへんなことになりますから、この趣旨は了解するとしても、また厚生省にも、またまたこういうような大きなミスがある、今年度は始まったからこれでいいという結論にいきませんですね。物事はすべて初めが肝心です。それから最終の美。初めと終わりというようなことで、大臣も最終の美を飾るべく本委員会において思い切ったまた発言もしていただく。またこれに対しても善処をしていただきたいと思いますし、違法である実情論はわかるけれどもこれはうまくない、こういうことなんですが、いかがでしょう。
  134. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 御趣旨の点は非常にごもっともと思います。  そこで、ことしはいろいろ、先ほど局長が申し上げたような理由をもって倒外的なものもありましたけれども、来年からは原則のとおりにとにかくこういったようなものについては指名競争入札という方向で、それに沿って実施してまいりたい、かように考えます。
  135. 黒柳明

    ○黒柳明君 最後に一言。当然そうなれば、ここにおいて十九円なり二十円なりというものは現在出ているわけですね。これは保険にして療養者のほうが非常に助かるわけです。ですから、これは当然原則の精神を打ち出したとおりにやっていただければ、多くの入院患者の方がこれでまた大きなプラスをこうむる、こういうふうになると思う。ぜひともそういう方向に向けていただきたい。以上です。
  136. 黒木利克

    ○黒木利克君 関連して。共同募金の役員と社会福祉協議会の役員と併任、兼任の問題につきまして御質問しますが、これは厚生省も単純にはお考えになっていないと思いますけれども、参考のためにお尋ねし、意見を申し述べておきます。  共同募金は、そもそもアメリカのまねをして始めたのでありますけれども社会福祉協議会と共同募金の関係は、その後アメリカでは、社会福祉協議会と共同募金は合体をしている。最も進んだ地区では、社会福祉協議会の中の募金活動として共同募金が存在するというような方向でございます。私も専門的な立場から、これが進歩の方向だと思いますから、日本はちょうどその過渡的段階にございます。だから、単純に行管が言うように、私は併任がまかりならんというようにお考えにならないで、むしろ社会福祉事業保護の条項が、そういう進歩の方向に沿っていなければ、法律改正を企図されてもしかるべきじゃないかというふうに考えますが、一応お考えを承りたいと思います。
  137. 今村譲

    説明員(今村譲君) お答え申し上げます。  アメリカの実情が、当初からだんだん推移してきているということは、私どもも不勉強ながら大体承知しております。したがって、そのいわゆる初期の段階における実態に応じて二十六年の社会福祉事業法が制定されました当時は、第三者募金というのが打ち出されておりますので、やむを得ずああいう日本の国情に合ったようなという意味での便法的な若干の措置ということをやっているわけでありますが、いまお話しのように、そういうふうないわゆる第三者募金というものじゃなしに、社協・共募を一体として、福祉の中心になっていくというような状況にまで逐次持っていかなければならんかどうかというふうなこと、そうでなければ、実際の実績があがらないというふうな意見も非常に強うございます。したがいまして、この問題はやはり社会福祉審議会というふうな、社会事業の根本を議論する審議会がございます。その辺でも十分時間をかけて検討していただいて、状況によって、現在の法律を改善するというところにまでいかなければならない結論にもなるのではないかというふうに考えます。
  138. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 午前中の質疑の中にも、わが国の医者教育の制度が非常に悪いために医者不足している。そういうふうな状態で、いろいろ追及され、また質疑が行なわれたのでありますが、この血液の行政につきましても、私は非常にいま血液対策が十分でないために、血液が非常に欠乏を来たしている。同時に、都会から離れたところの病院あたりで手術する場合に、血液がないので非常に大きなトラブルが起きている。これはもう大臣はじめ厚生省の方々お認めになっていると思うわけであります。  特に私はこの中で問題にしたいのは、献血によって血液の補給をするというたてまえ、そういうので昭和三十九年に閣議で決定されて、献血推進対策要綱というのが出されて、それに基づいてこれが行なわれているわけでありますが、これのために、非常に私はこの血液の行政がうまくいっていないように思うのでありますが、今後もこの方針を変えずにやられるのか、あるいはまた、もっとここに預血の方法も加えてやられるのか、そこのところをひとつお聞きしておきたいと思います。
  139. 坂元貞一郎

    説明員坂元貞一郎君) わが国の献血制度は、ただいま御指摘のように、三年前から政府の提唱で全国的に実施をしてまいったわけでございますが、御指摘のように現在のところ国民の完全な期待する線までまだ届いていないということは事実でございます。しかしながら、三年間の間に、実施する以前わずか一%台の献血の比率が、現在は全体の保存血液の総製造量に比しますと、七〇%をこえまして、七五・六%のところまで現在こぎつけてまいったわけであります。  その間、いろいろな問題はありましたにしろ、三年の間に七五・六%までこぎつけてまいったということは、御案内のように世界の各国でも、この献血を一〇〇%実施するについては、相当の苦労と経緯をもって今日に至っているというふうにわれわれは聞いているわけでございます。したがいまして、今後私どもは献血一〇〇%というものを目ざしまして、今後も既定の方針に基づきまして推進をはかっていきたい、かように考えているわけでございます。
  140. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 いまのあれを聞きましても、確かに七二%、四十万リットルですか、これの必要量があるところへ、六十万リットルくらいの必要量のところ四十一年度では四十五万リットルくらいを入れているというわけですが、それを分析してみますとそうでないわけでありまして、たとえば、まだ預血は二八%、献血が六八・九%、あるいはまた売血が三・一%入っておる、こういうような全体としての数字が出ておりますから、いまの七二%というのが出ているのでありますが、これは都会で見てみますと、たとえば東京都あたりで見てみますと三万一千本の採血をしております。しかし、その中では預血が五三・一%入っておりますし、献血は四二・一%くらい、大阪を平均としましても一万三千本の採血の中でやはりこの預血が五二・一%を占めて献血はやっぱり四七・九%という数字を示しているわけでありまして、やはり都会を見てみましてたくさんの需要にこたえるためには預血というものによって行なわれているのが非常に多い現状でございます。こういうことを考えてみまして、特に私はここで問題にしなければならぬのは、日赤にのみたよっておる、こういうことが私は非常にこの血液行政としては末端のほうまで行き渡らない一つの大きなガンではなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。日赤のほうを見てみますと、日赤のある場所はまだいいのであります。たとえば京都に例をとるならば市内はまだ比較的いいのです。しかし、郡部のほうへ行きまして、たとえば舞鶴だとか宮津のほうへ行ったならば――あの辺でちょうど私の知ったのがいま手術を受けたりしておりますが、血液がないために家族からたくさん集めてやっておる。特に私は、自分の知った人の手術をやるためにこの間あたりは各労働組合からその預血、献血をしておるすべての組合に頼んで三千CCの血液を集めるために大騒動したわけであります。こういうことがいま病人の責任で集めなければ集まらぬという状態であっては、私は、厚生省は一体何をしておられるかということを言わなければならぬのじゃないか。これを日赤に転嫁をして、そうして日赤が血液センターをこしらえてそこで血液を運んでおるということだけにまかして、厚生省はただその監督をしているような形では私はいけないのじゃないか、こういうふうに考えるわけです。外国の状態を見てみましても、この日赤に血液の事業をすべてまかせているというのはごくわずかでありまして、西ドイツだとか、あるいはまたアメリカにいたしましても、大体日赤にあれしているのは五〇%くらいです。最近また外国の様子を見てみますと、血液は保存血液だけを使うのじゃなくて、血液からいろいろな製剤にして――プラスマとかその他製剤にこしらえて、どんどんと血液の輸血のかわりにこしらえつつあるわけであります。こういう観点から見まして、私はこの血液行政というものをもっと高いところから見なければならないのじゃないか、こういうふうに考えるわけでありますが、これは大臣どういうふうにお考えでありますか。特に私は来年度――四十三年度の予算の中で一体血液対策というものに対してどういうふうに見ておられるか、これについて一ぺん詳細に聞いておきたい。
  141. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 血液行政というものは、非常にこれは病気治療のためにはもう絶対に必要なことでございますし、また献血行政ということになってまいりますと、これは善意に基づいて血をいただくということでございますので、この行政というものはきわめてきびしく、厳粛に考えていかなければならない問題だと思います。さような意味におきまして、献血の実際に当たるということは本来政府が非常に重大なる、厳重なる指導のもとにやっていってもらわなければならない問題である。かような意味におきまして、私は、日本赤十字にやっていただくということが非常にこれが適切妥当なる行き方だと思います。そこで世界の各国の事情を考えてみましても、いま大橋委員からも案外赤十字でやっておるのは少ないんじゃないかというお話でございますが、私どもの調べによりますと、これが詳しいことは担当局長から説明をいたさせますが、そういったような事例が各国において非常に多いように考えております。で、それだけでは足りないんじゃないか、こういう御意見もあろうと思いますが、今日のところは、何とかして日赤による献血というものを、これを推進し、これを育成し、これに対して国民の方々の御協力をお願いをしている、こういう立場をとっておりますので、でき得る限り日赤をしてこれをやってもらいまして、そうして必要なる血液をこのルートによって充足をしてまいりたい、かように考えております。
  142. 坂元貞一郎

    説明員坂元貞一郎君) ただいまの大臣の御答弁を簡単に補足申し上げます。  第一点は、大橋先生指摘の、大都市の地域において非常に献血の比率が少ない、非常に献血がおくれている、これは御指摘のとおりでございます。したがいまして、私どもは、大都市対策というものを重点的にしまして、今年度四十二年度、それから四十三年度、二カ年計画でこの大都市の地域を中心とした強力な献血の体制の強化というものを企図いたしているわけでございます。  それから第二点は、日赤を中心とするという現在のたてまえについての御指摘がございましたが、もちろん私どもは日赤万能という思想はとっていないわけであります。大橋先生御存じのように、京都府等はその典型的な例かと思いまして、私どもはむしろ日赤の手の届かないところ、当然そういうような山間僻地等については都道府県という実施体を今後強く推進をしていきたい。京都府の例はそういう例として昨年からことしにかけて起こった問題であります。したがいまして、日赤と都道府県というこの地方自治団体を中心として今後の献血体制というものを強固にしていきたいというふうに考えているわけでございます。  それから第三点は、預血についてのお考えが述べられましたわけでありますが、預血制度自体は、私ども、本来の預血というものは決して理論的に否定するものではないわけでありますが、現在わが国で行なわれている預血というものは、どうも本来の意味の預血と若干違っている面が一、二あるわけでございます。したがいまして、そのような若干の問題をかかえている預血というものを今後国が一つ施策として制度化していくということについてはまだまだいろんな問題が残されている。したがいまして、私どもは一刻も早く売血というものを完全に追放いたしまして、そうして残りますのはおっしゃるように献血と預血ということになろうかと思いますが、売血が完全に追放された後においては、この献血と預血というものの理論的な区別、また実際上の区別というものもそうあまり問題はなくなってくる、預血と献血というふうにことをあらためて区別することの意味というものは少なくとも非常に薄くなっていくんじゃないか。したがいまして、私どもは、今後やはりこの献血というものを中心にしてこれを伸ばしていきますならば、当然国民の輸血用の血液は献血一〇〇%の時代がまいりますならば、輸血用の血液はそれで十分まかなえるようになっていく。ただ、その際、最後に御指摘の、血液製剤というものが外国で非常に実用化され、工業化されておりますが、残念ながらこの点はわが国において非常に格段におくれがあるわけでございます。この点はわれわれ今後大きな研究課題として、この血液製剤の実用化ということについては本腰を入れていきたい、かように思っておるわけであります。
  143. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 いま、献血を主においているということ、私もそれはそれでいいと思うんですが、しかし、現在血液がないという現実、これは先ほどの医者が足らないというときの理論と同じことになるわけでありますが、このない状態をいかにしてやっていくか、献血でやるから、大臣も献血にしなければならぬと言っておられるが、献血の実態はどうなっているか。そしたら、いま献血をしてもらえるところは学校ですね、学校のうちでも特に高等学校くらいが一番多いという、やはり発育盛りの人たちから血をもらうこと自身もたいへんな問題だろうと思うのです。その次に多いのは自衛隊だ、こういわれております。こういうようなことを考えてみると、ことばは非常に献血献血といってきれいですけれども、実際からいったらなかなかそうマッチしてない現状である、だからそういううたい文句のかっこうのいいことだけ言っておっても血液がなかなか集まってこないというのが現状なんだから、私はむしろいま局長が言われたように、売血はいけないでしょう。あるいはまた、薄い血をとってはいけないでしょう。だからして、そういうことだけで十分できるような血液行政を進めていくなら、もっとほんとうに実用というか、要求に沿うところの施策が行なえるのじゃないかと私は思うのですが、その点はどうでありましょう。  それから、いまの血液製剤をつくる問題にしても、ぼくはもう少しこういうものを予算化してもっと進めるべきだと思います。特にこのごろは血液製剤でいけば肝炎も起こらない、いろいろいいデータも出ているわけでありますから、早くそういう方向に持っていくように、外国並みに研究費なり何なり厚生省でこれを処置していくべきではないか。  それからもう一つ、日赤ばかりに依存するのでなくて、やはり厚生省そのものがもっと血液というものに対してどうあるべきかということの最終責任は厚生省が持つ。そういう意味において、もっと国立的なそういうふうなセンターも置き、特に地域的に十分考えて、地域的にへんぴなところで非常な混乱が起こらないようなごとは国が責任をもってやらなければいけない。私は、いま局長が言われたように府県単位でそういうものをやられるのも非常にけっこうだと思います。けれども、それに対しては国がやはり補助金なり何なりして、きちっと最終の状態を見きわめて、これを政策として打ち出していかなければならない、私は、いまのような形では、まあそこはやっておるのでいいという形では非常にまずいではないか。京都府あたりは京都府が与謝海に血液センターをつくりました。ぼくはもっと厚生省のほうから予算でもつけて、これをもっと拡充していくというふうなことがもっともっと進められていくべきではなかろうか、こういうふうに思うわけですから、来年度の予算では振り返ってその立場からも一ぺんひとつよく検討してみていただきたい。それについての考え方をもっと明確にしておいてもらいたい。あまりきれいなことばではこのことは解決せぬと思う。
  144. 坂元貞一郎

    説明員坂元貞一郎君) 三年間の実施の経過を見ますと、非常に全国的に献血の意欲というものが国民の各階層に非常に高まってきていることは先生もお認めいただけると思います。私どもはこういう国民的な高まりのムードというものを今後も大いに活用いたしまして、さらに一そうの献血思想というものを国民に植えつけていく努力をいたさなければならぬわけでありますが、それにしましても、御指摘のように、わが国のいまの献血の受け入れ態勢というものがまだまだ十分でないこと、これは私どもも否定をいたすわけにいかぬわけでありまして、ちょうど四十二年度予算に大臣の強い御指示もございまして、献血の受け入れ態勢の二カ年計画というものを財政当局と話をしまして、四十二年度が初年度でございますが、一億三千万ぐらいの予算を、国費を計上しまして、これに都道府県が残りの二分の一を負担をしまして、献血受け入れ態勢を現在進めているわけでございます。明年度、四十三年度もその二年度目にあたりますので、私ども要求では、第二年度の要求として一億四千万ぐらいのものを要求いたしておりますが、この思想的な根幹になりますのは、御指摘の血液センターなり、あるいは血液センターの出張所なり、あるいは移動採血車というような、一番基本になる整設の整備を今後二カ年間で重点的にやっていこう。その場合も、先ほども申し上げましたように、大都市地域が非常におくれておりますので、大都市地域というものを中心としてこの予算の配分を合理的にもっていこう、こういう計画を進めているわけでございます。したがいまして、私どもはこの明年度、四十三年度分の二カ年計画が大体実を結びますと、わが国の血液の受け入れ態勢というものは一応基礎的な整備が完了する。もちろんこれだけでは十分ではありませんので、あと各方面からのいろいろな援助等も仰ぎまして、車等も整備していきますけれども、大体そういうふうな整備が終わりますと、一応基礎的な整備は完了する、そういった上でさらに今度は私どものほうでいっております献血の組織化というものを今後強力に進めてまいりたい。地域組織なり職域組織、こういうところまで食い込みまして、この組織化を進めてまいりたい。そういうことをあわせ行ないまして、できる限り早い時期にこの大部分の輸血用の血液が、いま申します献血でまかない得るようなところまでもっていく。もちろんそれにプラスするに先ほど来問題になっております血液製剤というものの研究開発を今後進めまして、これを実用化してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  145. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 先ほど予算の話が出まして、私もちょっと予算を調べてみようと思ってもらったのですが、予算を見ますと、四十三年度では受け入れの緊急整備費というのは六千万円も去年に比べて減っているわけですね。これでもって拡充できるのですか。現在受け入れ態勢はどんどん、あちらでもこちらでもないのに、去年より減らしておいてできるわけですか。ちょっとそこを御説明していただきたい。私の資料が間違っておったらまた別です。
  146. 坂元貞一郎

    説明員坂元貞一郎君) 予算要求のテクニックとしまして、公衆衛生局のほうの保険関係の経費に入れて要求をいたしております。これは予算要求のテクニックでございますけれども、御指摘の保健所関係の経費といわれますのは、私どものほうでは献血思想の普及のPR費が四十一年度まで若干認められておりましたのが、四十二年度、今年度予算で削られているわけでございまして、これはまあ全国知事会等において少額補助金というものの整理の方針にひっかかりまして、これが削られたわけでございますが、明年度はこれを復活いたしまして、保健所のほうの経費ということで予算要求をしている、こういうかっこうになっているわけでございます。
  147. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それからもう一つ、これはひとつ大臣にじっくりと聞きたいと思う点でありますが、現在血液製剤というものは日本の国内でもフィブリノーゲンだとかトロンビン、あるいはガンマ・グロブリン、アルブミン、プラスマネートというようなものが、期限を過ぎて使えない血液から、廃棄しなければならぬ血液から製剤がつくられるわけであります。参議院の社労委員会であったと思いますが、それでは大阪の緑十字のあれを見学に行ったことがあったと思います。あそこはアメリカの何とかいう会社でしたが、特許を買い入れて、かなりそうした製剤の生産に当たっている。ところがこれを調べてみますと、プラスマネートそのものにいたしましても、いまの需要が、月平均から考えてみると、いまの生産は約二万五千本といわれております。二万五千リッターでありまして、これは推定需要からいったら五〇%ぐらいにしか当たっていない。非常にプラスマネートそのものもいま医療機関では非常な要求がされているわけであります。特にまた濃縮されたアルブミンなんか非常に治療効果上望まれているわけでありますので、こういうような製品はいま日本状態でも製品をつくるということができる、相当りっぱな設備ができているわけであります。ところが反面日赤の本社のほうを見てみますと、こうしたもう使えないところの血液、大ぜいからもらった血液が二万五千リッターも日赤の中央血液センターの倉庫の中に寝ているというわけです。これはもらった献血者二万五千人ぐらいに当たるわけですから、献血者にしてみれば非常な好意を持って献血運動に賛成をして、そうしてこの献血をした、これはやはり二週間期限がたった保存血は使えませんから、当然こういうことになるわけでありますが、これがフリーザーの中にほうり込んである、倉庫の中に眠っている。一方では緑十字のほうでは多額の技術提携をして、アメリカから技術の特許を入れて、そしてその非常に治療効果のあるプラスマネートなりアルブミンなりガンマ・グロブリンというものをつくる制度ができているのに、この機械が遊んでおる。これは一体どういうわけなんですか。少なくとも献血者の誠意にこたえるためにも、その血液は完全に使用して、そしてこれを病人の病気をなおすために私は使うべきではないかと思うのでございますが、こんなものを寝さしておくのはどういうわけか。私が聞いてみましたら、その血液はガンマ・グロブリンなんか取ったものになっているとか、わずかしかないとかいっておりますけれども、私の調査したところではそういう結果があらわれている。そんなものを寝かしておくということになると、私はほんとうに何と申しますか、いま宣伝をして、そうしてほんとうに献血の運動に対してまじめな国民が、しかも真摯な気持ちで病人に協力して血を献納しておってくださる、その血液でありますから、私はもっとこれに対しては相当真剣に取り扱わなければならない、こういうふうに私は思うわけでありますが、いかがでございましょうか。
  148. 坂元貞一郎

    説明員坂元貞一郎君) 日赤なり都道府県のセンターで採血しました血液の廃棄分、つまり廃棄血液の処分の問題でございますが、御指摘のようにこの廃棄血液というものは、先生専門家でおられますので、世界各国大体二、三%の廃棄血液が出るのはもう常識になっているわけでございます。したがいまして、この廃棄血液というものを有効活用するということは、これはもう当然なところだと、私どもはかように思っているわけでございます。したがいまして、活用できるものは最大限活用して医学的方面に寄与させるという、この基本方針は私どもも同感でございます。で、私どもがこれまでやっております日本赤十字社等で廃棄血液の処理をどのようにしているかということについては、現在の時点においては確かに若干のストックが日赤のセンターにそのままあるということは事実でございます。私どもは何とかしてこの日赤に集まってきます廃棄血液というものを、いわゆるガンマ・グロブリンあるいはプラスマネート等の血液製剤に有効に役立てたいということで、現在方針を練っているわけでございます。で、民間の血液銀行等で、御指摘のように優秀な技術なり設備を持っておるところも一、二あるわけでございますので、こういうような優秀な技術なり設備を持っているところにこういうものをどのような方法で活用さしていくかということについて、私どももそういう方向で検討を進めているわけであります。で、現在までのところ、まだいろいろ問題がありますので、一定の結論を得ておりませんが、今後ともできるだけ日赤等で活用できるものは活用し、活用できる限度を越えるような廃棄血液の処理につきましては、民間等のほうに活用させるようにできるだけ早く結論を出したい、かように考えているわけでありますが、ただ、その際、やはり国民の善意に基づきまして出されました血液でございますので、この国民の善意というものを裏切ったり、あるいは一般国民の期待する方向と逆の方向にこの廃棄血液の処分がなされるというようなことがあってはならぬわけでありますので、そこらあたりの適切な処理方法というものは非常にまあ私どもは慎重にやっていかなきゃならぬ、かような考え方のもとに現在日赤の持っておりますこの廃棄血液の処理方法等についてはそういう角度から検討を進めておるわけでありまして、近く何らかの形で方針を出してまいりたいとかように考えている段階でございます。
  149. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 大臣もお急ぎになっておりますので、一言だけ伺ってこの問題終わりたいと思いますが、先ほどから局長説明でほぼわかるのでありますが、私はこの中で一番どこが問題点であるかということを考えてみますと、やはりこの日赤だけに依存しているという考え方、それから献血だけに非常にとらわれ過ぎているという考え方のために、いま局長のことばの中に、この献血者に報いるような始末をしなければならぬということ、私は当然そうだろうと思います。そうだろうと思いますが、しかし、私は、それだからといって、たとえば緑十字とかそういうような民間の会社にそういう設備を遊ばしておきながらそこに出すことに対してちゅうちょするということは、私はもう少しそこのところに――血液行政というものに対してほんとうに筋が入っていない形だと思うわけです。ただ、何だかんだ先ほどからも繰り返しているように、一つのことばに幻惑されて、献血ということにこだわり過ぎるために、もう一歩のところにちゅうちょをせざるを得ないのじゃないかと思うわけです。ですから、私はいま言うたように、売血だとかあるいは薄い血が出てくるようなことは、これは絶対にあってはならぬと思います。同時にまた、献血を主に置いていくということも私はいいだろうと思います。あるいは日赤がいままでそういうようなことで、政府としても相当の何と申しますか、後援をしながらその設備を整えたのだから、それを主体にやられることもいいと思いますが、それだけにこだわらないで、もう少しやはり民間のほうのそういう設備に対しても私は十分配慮をしていくべきではないか。特にそういうふうな血液を分離して血液製剤をこしらえるというその方向に対しては、相当真剣に進まなければいけない。今後はおそらく保存血液を使うよりは、その分離されてできたところの血液製品を使うことのほうがアメリカあたりではずっと多いはずです。そういうデータも出ております。ですからして、私はそういうことにもっと踏み切っていくべきである関係から、ことにいま出ているところのそのようなプラスマネートの要望というものは五〇%にも及んでいるわけでありますから、そこらの廃液はぜひ利用するように回わしていただくということ、それが一つの将来の、いわゆる一つの筋だけでいこうとするやつをもっと広げていくところの考え方と一致するわけでありまして、少なくとも民間のそうした緑十字のような設備を持っているところは十分監督をしながら日赤ともっと密着を、ドッキングをさして、下のほうへも上のほうへも、血液をとるほう、あるいは受け入れるほうにもそういうふうな配慮をしてもらいたいし、あるいはまた、そこでもう使えなくなった血液を処理する上においてももっとスムーズにそういう交流ができて、そうして実際はそれが患者の治療にはね返ってくるようなことにしてもらいたい。  それからもう一つ要望するのは、私の考えでは、そうしたことに対する研究費というものをもっと十分出して、そうして血液から製剤をこしらえるための急激な進歩をはかってもらうような政策の一環として大いに打ち出してもらいたいと、こういうふうな希望を持っているわけでありますが、それを早くやってもらわなければ、いま手術を控えて血液がないために右往左往するという非常なみじめな状態解消できないと思う。そういうことについて大臣としては、ひとつその固い決意のほどを、今後どういうふうにするかという決意のほどを明快に示していただいて、特にりっぱな設備を遊ばしている民間のそういうふうなところへももっとあたたかい気持で横の連絡のとれる政策をひとつ打ち出していただきたいと思うのですが、この点をひとつ御所信を聞いておきたい。
  150. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 先ほどからお答え申し上げておりますとおり、本筋として、筋としては私どもといたしましてはこれは献血していって、そうして日赤をわずらわすということで進んでまいりまして、これによって充足するということを期待をいたしておりますけれども現実に血液が足りないということを、これをほおかぶりして見ているというわけにはいかない、かような意味におきまして、できるだけ本筋によって充足はいたすつもりでございますけれども、しかし、現実の問題はこれはどうしても保管をしていかなければならない。その保管をする手段、方法等につきましては、これは今日慎重にしかも早急に考えてまいらなければならないということは、先ほど来担当局長お答え申し上げたとおりでございますが、なお予算等につきまして、あるいは血液政策等につきましては、厚生省におきましては四十三年度におきましてもこれは厚生省の中の最も重点政策の一つとしてこれを取り上げてまいる所存であります。
  151. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 訓練局長おいででなくて、基準局長と安全局長がおいでのようですから、先へちょっと細部のことについて一、二聞かしていただきたい。訓練局長がこられたら訓練の問題について聞かしていただきたい。  最近では経済の発展に伴いまして労災も非常にいろいろ多様化してきておるようであります。そしてその災害の状況も重大災害、一ぺんの事件で三人以上も死傷するようなもの、こういうような傾向にだんだんなってまいりますし、特に自動車の事故が非常にふえてまいりますので、公害とか、あるいは職業病とか、あるいはまたそうした労働災害というものが非常にこのごろ多様化してきておるわけであります。こういうことについて私は予算なんかの面を見ましても、もっと急激に何か制度的に、あるいはまたその対策を打ち立てる上に、予算の面から相当大きく盛り上げてもらわなければならぬのだと思っておるんですが、そういう方面からいまの制度的あるいはまた予算の面でどういうふうに盛られつつありますか、その様子を少し聞いておきたいと思います。
  152. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) 先生の御指摘のとおりでございます。私ども災害の防止、安全衛生の確保ということについてできる限り予算で努力していきたいと思いますけれども、基本的な考え方は、私どもの行政はやはり科学に立脚いたさねばならないと存じますので、来年度といたしましては研究所の充実ということに非常に大きな重点を置いております。その他いままでやっておりますことの強化ということを中心に考えております。
  153. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 防止の五ケ年計画がもう最終年度になっているだろうと思うんですが、これは業種別に見たらどれくらい成績が上がっておりますか。
  154. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) 千人率でみますと、三十二年の半分には達しませんけれども、大体半分に近くまできております。しかしながら、今後の見通しとしては楽観を許さないと思います。いままでのところは先進諸国に比べますれば、非常に急激な下がりかたをいたしておりますが、今後は御指摘のような問題、あるいは人手不足の問題による熟練労働者の確保の困難というような条件が重なりまして、なかなか従来のような対策では従来のような災害率の減りかたは期しがたい、かように考えております。
  155. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 労働省の安全衛生局から出ている資料を見ますと、いまちょっと見たんですが、四十一年度とその前年度の四十年度を比べますと、負傷者の数なんかでもやはり千四百六十二人から二千八十九人とか、あるいはまたその死亡者なんかを比べてみますと倍にふえておるんです。これはやはり防止対策というものがもっと具体性を持たなければいかぬのじゃないかと思うんです。  それからまたもう一つこの中で一番重要に思ったことは、ポイントになると私も思うんですが、労働災害防止のために第一線を預かっておられるところの労働基準監督官あるいはまた産業安全専門官とか、あるいは検査官とかいうような、こういう人がおられるわけですが、これの不足が目立っておって、こうしたことでは労働災害をむしろ助長するんじゃないか、こういわれているんですが、実際の状態はそうではないんでありますか、どうですか。それからまたそういう方の養成計画はどんなふうになっておりますか、これについてちょっと聞いておきたいと思います。
  156. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) ただいま先生の御指摘になりました数字は、何か違う数字ではないかと存じております。数字はそれとはかなり違います。全体といたしましては、絶対数は、非常に死亡者につきましては前年よりふえております、三百人ばかり。全体が六千人から六千三百人ばかりになっておりますから。負傷のほうは若干減っております。これは死傷病報告によってわかっております。  それから、監督官の数が十分かどうかという点につきましては、これは国際的にも非常に適正な監督官数というものが問題になっておりまして、私どもは決して現状をもって十分だとは思っておりません。また安全担当の専門官、これは技術が高度に進歩してくれば、その役割りはいよいよ大きくなってまいると思いますが、これも十分だとは思いませんが、状況の許せる中でできるだけの努力をいたしていきたい、かように存じております。
  157. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それから、私はこの間ちょっと京都のほうで郡部のほうを回ってきまして、中小零細企業、機屋なんかをずっと見てまいりました。それから、このごろは中小零細企業の災害というものが非常に多い、高くなっているようにいわれておりますし、ことに、何と申しますか、健康状態が悪くなっておる。特に二、三台の織機を置いて働いているところの家庭の主婦というものは、私は半病人のように感じてまいりました。こういうようなことは聞いてみますと、やはり監督署のほうからは非常な注意があって、晩の七時ごろになったら、何か組合の人が出て就業しないように見て回るというような運動も自主的にやられておる。それに対して監督署のほうからもかなり注意をしておられるという実際の状態を見てまいりまして、なかなか涙ぐましいような状態だと私は見てまいりましたが、しかし、あのような状態を見てみますと、やはり企業そのものに経済性もないし、あるいはまた非常に低賃金の関係で働かなければ利益を得られないという非常なそういうものがあるからして、そういうことが悪循環になってくる。またいろいろ指導されても、これが実績が上がらないという状況なのかもしれませんが、何かこういうものに対しては災害防止のための助成金を出すとか、あるいは何かそういう措置をする、こういうことにできないのかどうか、そういうことにならないのかどうか、私しろうとでよくわかりませんけれども、この災害の防止あるいはまたそういう健康管理の面で何か中小企業、零細企業に対して打つ手はないんですか。
  158. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) ただいま先生の御指摘になられました問題にはいわゆる家内労働というものを含んでいるんではないかと思います。で、家内労働につきましては、基準局を主務局といたしまして、目下鋭意検討中のところでございます。  それから、その他の問題といたしましては、そういった織物の機械化に伴って、かつていろいろ問題を起こしました有機溶剤なんかが持ち込まれておる問題があります。これは中小企業と家内労働では同じ問題をかかえております。かような問題につきましては十分検討いたしまして、流通面も含めまして効果ある対策をとっていきたいと考えております。
  159. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 もう一つ、ぼくもあまりよくわからぬのですけれども、教えてもらいたいと思ってあれしたいと思いますが、労働省のほうでは最近単調労働専門家会議というようなのが行なわれておりますね。それで尾高先生ですか何か入って、いろいろ設けてやっておられるようです。これは機械化によって心理学的な災害が起こるというようなことが、いろいろこれは対策研究されておるらしいのでございますが、この新しいこういう災害が出てくる状態から見ますと、医学的だとか、心理学的、工学的、いろいろな学問的からこうした実務家を集めての総合的な研究は非常によいことだと思っておるわけでありますが、その研究の結果は一体どうなのか、それからまたそれについて一体今後どういうふうな状態でやっていかれるのか、そういうことの展望についてもちょっと聞かしていただきたいと思います。
  160. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 技術の革新に伴いまして、いわゆる人間疎外、単調繰り返し労働というものが非常にふえてまいりました。パンチャーとか自動車のプレス工、板金工はじめ、労働している間は完全に人間が死んでいる。完全に機械が勝っている。ちょうどチャップリンのモダンタイムスのような労働が非常にふえてきているわけであります。これは従来の労働観念を変えなければならぬのじゃないか。いわゆる肉体的に非常にえらいたとえば農業とか、あるいは炭鉱とか、これがヘビイワークでありましたが、技術革新の時代にはそれよりもむしろそういったその間は完全に人間が死んでいる労働、これが問題であるということで、東大の尾高教授を会長にいたしまして発足いたしましてすでに数カ月たったわけでありますが、その結果二千数百カ所あるいは人というものを対象にいたしまして中間報告ができてまいりました。もちろんこれは中間報告であります。そこで興味あることは、非常にショッキングなレポートが出ております。たとえば自動車の板金工の例をとりましても、翌日出勤前に連日の疲労が残っておるとか、あるいはまた仕事に全然生きがいを感じないとか、あるいは子供にもあいそがないとか、いろいろおもしろいレポートが出ておるわけでございますが、このレポートをどう今後の労働行政あるいは労働基準行政に消化していくかという問題は、これはこれからの問題でございます。そしてまた、同じような非常に疲れやすいという訴えが出ておりますキーパンチャーにつきましては、いち早く労働省が、パンチャー病が出ましたので、休憩時間を制定いたしまして非常に労働時間が短くなっております。同じようなそういう人間疎外労働が非常に多いわけでありまして、この専門家、学者の方々によるレポートを十分もとにいたしまして、こういった新しい労働に対する新しい労働の基準、労働条件はどうあるべきか、今後の大きい課題としてわれわれは検討してまいりたい、こういう段階になっておる次第であります。
  161. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 非常に災害という、あるいはまた公害というたいへんな問題でありまして、ことに予算の面にも十分反映をして、ひとついま大臣からお聞きしたような線で、大いに働いている者のしあわせのための措置を十分していただきたいと思います。  もう一つ別な面で、非常に最近は労働力の不足、ことに技術労働者あるいはまた若年労働者というものの非常に不足状態になっているのでありますが、きょう時間がないので、ちょっと詳しくこの問題をお尋ねしたいと思う点もあったわけですが、できるだけはしょりましてお伺いをしてみたいと思うのですが、特にそういう意味で私は職業訓練について相当いま労働省でも力を入れておっていただくと思うのでありますが、この問題をひとつ運営費だとか、あるいは人件費だとか、いろんな面から各都道府県に対しましても、あるいは超過負担の状況になったりもしておりましょうし、その辺のところはどういうふうになっておるか、私は非常によくわからぬのでありますが、特にこの技術者の不足する現在、比較的賃金が安いので、職業訓練所で訓練をする優秀な指導員が得られてないのじゃないかと私は思うわけですが、そういう問題点も非常にあるのじゃないか、あるいはまた、月額なんかちょっと調べてみますと、かなり訓練所あるいはまた身障者の訓練所とか、総合訓練所なんか比べてみますと、一般の訓練所は三万九千何がしでありますが、総合訓練所あたりが五万一千何がしになっております。せめて私はそういうところの優秀な指導員のあれは公務員並みぐらい、あるいはまた公務員よりか少しは高いくらいの、少なくとも五万一千円くらいのベースまで上げてやらなければいけないのじゃないか、こういうふうにも考えるのですが、そういう点はどうですか。
  162. 和田勝美

    説明員(和田勝美君) 先生御存じのように、訓練所は一般訓練所としては都道府県が経営しておりますものと、国が失業保険から出資して雇用促進事業団でやっております総合職業訓練所と、公共職業訓練所としては大まかに言いますと二つに分かれております。一般訓練所のほうは、国から施設費及び運営費につきまして二分の一を限度にいたしました国庫補助をいたしておるわけであります。ただいま御指摘一般訓練所につきましては確かに従来から府県の超過負担という問題がございまして、人件費あるいは事業費、施設費等について府県の持ち出しが多過ぎるというような声を聞いておったわけでありますが、私どもも府県からまいります訓練所運営の実績等を調べました結果、そういう事実も確かにございますので、昭和四十一年度におきましてまず第一に人件費の超過負担をぜひできるだけ解消したいということで、四十一年度におきましては、人件費の補助を四二%引き上げまして措置をいたしました。これで人件費につきましては、相当大幅な超過負担の解消ができたのじゃないかと、かように考えております。しかし事業費及び設備費、施設費につきましては、なおそういう傾向がございますので、これは四十二年度、本年度予算におきましては事業費等につきまして一一%程度の単価アップもいたしております。また施設費についても六%程度の単価アップをするというようなことをいたしましたが、四十三年度以降におきましてもそういうことで重点を運営費及び施設費の単価の引き上げということにしてまいりたい、かように考えております。また、指導員の給与の問題につきましては、昭和三十六年に指導員手当という制度を設けまして、給与の百分の七という手当制度にしておりますが、なお十分であるとは考えておりません。そういう問題につきましても、これは身分が都道府県でございますので、都道府県とよく話し合いをしながら私どものほうの人件費補助単価の引き上げと相まって給与の改善の努力をしてまいりたい、かように考えております。指導員の養成につきましては、その大宗を占めますのを職業訓練大学校で現在やっておりますが、今後の職業訓練の発展の過程を見ますと、なお足らないと私ども考えますので、今後も職業訓練大学校の拡充を計画してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  163. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それから次には、身体障害者に対するところの訓練の実施の状況をお伺いしたいわけでありますが、この身体障害者の訓練に対しましはて職種についてもいろいろ検討してもらわぬでいいかどうか、あるいはまた施設に対しましても身体障害者に適したような施設をつくっていかなければ、私はノルウェーやデンマークあたりを見せてもらいましたが、訓練所は身体障害者の悪いところにマッチしたところで特殊なあれをやっておりますのを見て、もっと日本でも私はそういうものをやってもらったほうがいいのではないか、ことにその身体障害者が訓練所に通うために、これは交通災害なんかの危険もあるわけでありますし、また身体障害者が仕事に携わるにしても、やっぱり産業災害にかかりやすいわけでありますから、そういうことを含めてリハビリテーションといいますか、そういうところに力を入れなければならぬ。やっぱり身体障害者に対する訓練はほかの訓練よりそうした個々に合ったものにしなければならぬという観点から考えますと、私は共同作業所なんかもこしらえるとか、いろいろのことに配慮してもらわなければならぬように思うんですが、そういうことについては、いま予算の時期でもありますから十分ひとつ配慮してもらって、こういうものに適したような方向にひとつ伸ばしていた.たくようなことができぬものでしょうか。
  164. 和田勝美

    説明員(和田勝美君) 身体障害者の職業訓練所につきましては、現在全国で九カ所国がつくりまして、その経営は都道府県に委託しておるというかっこうでやっております。定員は千五百二十人くらいのところでございます。この訓練所の運営につきましては、ただいま御指摘のありましたように、身体障害者に即した訓練施設と身体障害者に合う訓練方法、訓練業種というようなものを考えながらやるということが私どものこの特別な訓練所をつくりました趣旨でございます。しかしながら、実際問題としてなかなかそういう点について行き届いた配慮がなお欠けておる、そういう点も確かにございまするので、今後につきましてはそういう配慮について、一段と動いていきます産業界の模様に合わせながらそういう考慮を払っていきたいと思っております。また、そういう点からしまして、身体障害者につきましては、原則として寄宿舎に入ってもらいまして、通所の不便というものをそういうことで解消するというようなことの考慮も払っておりますが、現実の職業にいよいよつきます場合に通勤の問題等がございます。あるいは、会社、工場におきます身体障害者を受け入れるにめの設備の問題がございますので、そういう問題につきましては、雇用促進事業団がやっております雇用促進融資等を活用して、身体障害者のために働きやすい環境をつくるようなことを考えていきたいと、かように考えております。
  165. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それからいま行なわれておりますところの職業訓練制度というのは、大体労働力の過剰時代に始められたわけでありますが、このごろではだいぶ様相が変って不足になってきておる、ことにまた若年労働者も少ないし、学校教育を受け、ことに事業内で訓練を受ける、こういうような人もあるわけですが、この問題についてもやはり非常に産業構造が変わってまいりましたし、あるいはまた技術の革新も出てきておりますので非常に不足しているわけですね。こういう展望から考えて、私は一ぺん訓練制度というものをもうこの時点では少し考えてもらう時期ではないか、このようなことを一つ考えるわけです。先ほど触れました事業内の職業訓練ですが、これにつきましても何か最近では文部省のほうで連携制度調査研究会なんかのようなものが発表されておったように思います。これも私あまりよく知らないのでありますが、これもやはり学校の資格を与えることによって、非常にまあ何と申しますか、各事業所でそういうことが行なわれて、ほんとうに技術革新にマッチしたような訓練がされていくということになれば、私は非常にいい方法ではないかというふうに考えるわけですが、その状態については一体どんなふうになっておるのか、少し聞かしていただきたい。またこういうことが急速に進められるならば、私もやっぱり、こういう非常に技術労働者の必要な時期でありますから、こういうことに対しても助成金を打つとか、何か企業内でそういうことをやってもらうこともいいのではないかと思ったりしているんですが、その点ちょっと教えていただきたい。
  166. 和田勝美

    説明員(和田勝美君) 先生ただいま御指摘のように、いままでの職業訓練の基盤はどちらかといいますと、できるだけ手に職をつけて職場にはめ込むというような、多少失業対策的なにおいが濃かったわけでございますが、最近の人口構成、出生率の低下あるいは進学率の向上というようなことを反映をいたしまして、技能労働者についてはたいへんな不足基調になってまいりました。三十六年以降毎年百万以上の技能労働者が不足しているという状態にあり、このことが今後の人口構成、出生率から見まして、さらに深刻になっていくであろう。こういうことが予想されますので、労働省としましては、この六月の二十八日に中央職業訓練審議会に諮問をいたしまして、職業訓練制度が今後の労働経済の情勢及び技術革新に沿うためにどうあるべきかということについて、全般的な検討をお願いをいたしておりまして、訓練審議会においてただいませっかく御審議を進めていただいておるわけでございまして、これを通して全般的な職業訓練制度の改正ということを私ども考えたい、かように考えておるような次第でございます。その重点としますところは、技能労働者の諸君が完成をした産業人になるような、そういう意味の訓練制度をつくり上げていく。それから技能労働者の諸君が自分の仕事に誇りと自信を持って従事するような、そういう世評を高めるような意味合いのものを訓練制度の中に取り込んでいく。それから今後の傾向としまして、いわゆる能力主義というものが非常に出てくるだろうと思いますが、そういうものを助長するような意味合いにおける技能検定制度の改正というような点を大きな方向づけとしまして、ただいま審議を進めて、いただいておるようなわけでございます。事業内訓練につきましては、進学率の向上その他を考えますと、この技能労働というものは会社にとっては直接的な問題でございますから、会社が不足する量を質で補う、こういうことを会社としては当然考えていかれるだろうと思いますが、そういう意味で、今後事業内職業訓練というものに対する重点というものが相当会社ではウエートを持ってくると思う。ただ、そのためには訓練を受けた者につきましては、これは職業選択の自由がございますから必ずしも会社に定着するとは限りません。現在の傾向ですと大体二割程度が会社の訓練を受けて、終わった段階で移動する。そういうようなこともございまして、訓練をする会社だけの問題にするのには相当問題があるように思いますので、国からの適正な助成問題というものも自然に出てくるのではないか。現在でも中小企業が共同で訓練をおやりになっておる場合には、運営費について多少の補助を差し上げておりますが、単にそういうことだけでなくて、いま申しましたようなことで訓練生が移動するというようなこともあり、また質の向上ということは国の立場からいたしましても非常に重要なことでございます。そういう見地からしまして、事業内訓練に対する助成策の強化ということについては、今度の訓練制度の改正問題の中でぜひ重点を置いて考えていきたい、かように考えている次第でございます。
  167. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 いまちょうど局長のほうからも話がありましたが、やはり中小企業に対して特にこれが必要じゃないか。大きな企業に対して立ちおくれて技術的な格差ができておるのでありますから、それを補うために特にそういうことが必要じゃないかと私も思うわけです。それから、このごろは技術の労働者が不足しておるために途中で転職する人が出てくるわけでありますから、必然的に中高年齢層の訓練制度というものが重要な意味をなしてくるわけであります。これを見て案外実績があがっていない。いま中高年齢の人が訓練計画に対して十分マッチしていないというのはどういうわけだろうかということを私は一ぺん伺いたいと思うんですが、それについてちょっと聞いてみましたところによりますと、比較的こういう訓練手当を受けている、失業した中高年齢の人が訓練を受けるときに訓練手当をもらうわけですが、この月額を調べてみますと、四十年は一万四千四百十円、四十一年は一万八千三百九十円。生活保護の平均月額と比べてみますと、それ以下であります。四十二年は二万一千三百四十円の生活保護を受けております。こういったところに私は大きな問題があると思うのですが、そういう点はいかがでございましょうか。
  168. 和田勝美

    説明員(和田勝美君) 転職される方の訓練につきましては、確かにいま御指摘の問題点がございます。ただ、数字的に見ますると、失業保険の受給者の方が、私ども予想したより意外に多く訓練を受けておられるというような点がございまして、訓練手当の消化に影響があることも事実でございます。しかしながら、失業保険を受けられない方の訓練手当につきましては、先生がいま御指摘になりましたような数字でございまして、昭和四十二年度においては一万八千円強であります。この問題は、訓練を喜んで受けるという額には確かに私どもも低いように考えます。そういう点を考えまして、来年度以降におきましては、安んじて訓練が受けられるような生活費の補給という点に重点を置いて訓練手当の額につきましては考えてまいりたい、かように考えております。
  169. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 持ち時間になって終わりますが、最近いろいろ労務保険士の関係で問題があるようでありますが、労働省が受理されておりますところの法人認可申請で労務保険士の関係がたくさん出ていると思います。たとえば京都では今西君なんかのやっている協会があって、それの法人届をしたということがあり、この間請願に来ていたようでありますが、そういう問題についてはどんなふうな方針でいくか聞きたいと思います。  あと時間がありませんから資料として出してもらったらいいと思うのですが、中高年齢者の就職促進措置制度の中で、就業給付金という制度があるわけですが、その活用状況はどんなふうになっているのか、これを四十年度以降、資料として一ぺん提出していただきたいと思います。  それから失業保険の不正受給が問題になっておるわけですが、その状況と、それから給付等に対して拒否されたのに不服のあれがあって審査のあれを提出したり、不正受給を審査されたときの状況、あるいはまた不正受給防止の対策に対してどういうふうにやられているか、これもひとつ資料でいただいたらいいと思います。時間がございませんから、さっきの法人の認可についてだけちょっとお伺いします。
  170. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) 現在いわゆる労務管理士の団体として法人認可をいたしておりますのは日本労務管理士協会だけでございますが、最近に至りまして、御指摘のような京都、大阪、兵庫あるいは北海道といった地区におきまして労務管理士の団体について法人認可申請が出てまいっております。この問題については先生御承知のとおりでございますが、国会方面におきましても、労務管理士的なものについて、最小限度必要な法的規制を講ずる必要があるのじゃないかという機運が非常に高まってまいっておりまして、社会保険労務士法といった法案をいろいろ御検討なすっておるようでございます。そこで、こういった種類の法人認可につきましては、このような動きがあるということを踏まえまして、適正な処理をはからなければならないというふうに考えております。いま、認可しないとかどうとかということじゃなしに、そういう法案の制定ということを頭に置きながら、労務管理士について今後どうするのかという指導方針とあわせましてこの法人認可の問題をも処理してまいりたい、早く結論を出してほしいという要望もございますので、事務的にも、いまこの基準を固めるべく作業を急いでおる段階でございます。
  171. 和田勝美

    説明員(和田勝美君) ただいまお話のございました失業保険関係と、職業転換関係資料は後刻提出さしていただきます。
  172. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 早川さん、私は最近徳島市に遊説に行ったのです。その節、徳島の全日自労の徳島分会から訴えを受けました。その訴えの内容というものは、徳島職安におきまして、いわゆる部落民に対する差別問題が起こって、そうして職安の全日自労の人たちは非常に怒って、そうしてその不当な取り扱いに対して私に訴えてきたわけです。ちょうどたまたまその日、職安で全日自労の人たちと代表者との団体交渉がありまして、私もその場に立ち会いました。そうしてその全日自労の人たちのせつない話を私もつぶさに聞いて、私自身も胸の痛くなるような思いをして実は帰ってきたのです。今日なおこのような差別待遇というものがあるのかと思って、私は腹が立つと同時に、非常に胸の痛いような思いをして帰ってきたわけです。  早川さんも御存じのように、憲法第十四条には「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会身分又は門地により、政治的、経済的又は社会関係において、差別されない。」ということが、これはまあ御存じのとおりあります。それから職業安定法の第三条にも、これと同じような意味の条項があるわけです。「何人も、人種、国籍、信条、性別、社会身分・門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として、職業紹介、職業指導等について、差別的取扱を受けることがない。但し、労働組合法の規定によって、雇用主と労働組合との間に締結された労働協約に別段の定のある場合は、この限りでない。」、まあこういうふうに規定されております。この憲法の精神から申しましても、職業安定法の精神から見ましても、人間に差別をつけるべきでない。これは当然のことです。ところが、実際には、今日なおかかる不当な差別が行なわれておる。あなたはこの事実に対してどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、まず労働大臣の御意見を伺っておきたいと思います。
  173. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 徳島の事例は、後ほど具体的な事例としてお答えいたしますが、一般論といたしまして、もちろん須藤委員の御指摘のとおり、そういった差別的なものは憲法、職安法にも許されないところでございます。ただ、徳島職安の失対の問題につきましては、私の知っているところでは、求職者が非常に無理な条件を言われたとか、あるいは職安で、こういう職業があるがそこへ行きなさいと言っても、九時からでなければいやだとか、あるいはいろいろな高い条件を希望したり、いろいろそういう事情があったようでございます。これはいま申しましたような差別問題と別個の問題としてやはり処理しなければならない問題ではないかと、かように考えております。
  174. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あなたはまあどこからそういうふうに話をお聞きになりましたか。私は現地で職安の次長にも会って話を聞きましたし、それから全日自労の代表者数名からも事実を聞いてまいったわけです。そしてここに差別待遇はないと言います。そしてあなたはその職安から実は認定を取り消された問題、いま、あそこでは認定を取り消された人が十七人、それから認定をほしいといって希望しているにもかかわらず不認定になった人が十人、二十七人あります。そのほとんどがいわゆる部落民なんですね。それで、何のために認定を取り消された、あんたは就職の熱意がないのか、私が聞いたら、そうではありません。私は就職の熱意は十分あります、こう答えておる人がほとんどなんです。そう答えております。ここに労働大臣に対する請願書三通私の手元に届いておりますから、私は後ほど、これをあなたの手元にお届けしょうと思っておりますが、時間が足りませんので、これ全部読み上げるわけにはいきませんが、近藤キヨ子さんという四十三歳、これは未解放部落に居住している、いわゆる同和地区に居住している人なんです。この人が就職を求めて、そしてこの万代製材所というところへ紹介を持って行った。そのときの万代製材所の社長さんとの一問一答がここにありますから、これを読んでみます。これでもこの人が就職の熱意がないということで首切りの理由になるのかどうかということを、ひとつ具体的に聞いていただきたい。「賃金は七百五十円から八百円、時間は八時から五時、交通費はない、健康保険、失業保険はある、そして常用だ」という条件が、これが職安から示された。そこで「私は喜んで万代製材所に行きました。面接には社長らしき人が当たってくれました。内容は次のとおりでした。」、本人「安定所から紹介を受けて参りました。」、雇い主「あなた住所はどこですか。」、本人「一宮です。」、雇い主「一宮のどこですか。」、本人「一宮の西丁です。」――これがいわゆる同和地区ですね、西丁というのは。雇い主(ちょっと考え込んで) 「一宮の西丁なら八時に間に合わぬではありませんか。」、本人「間に合います、間に合うように来ますから、お宅の条件がよいので雇ってください。」、雇い主「いや、あなたが来るといっても間に合わぬのではありませんか。」、本人「お宅で雇ってくださるのなら、時間はきちんと来ますのでぜひ雇ってください。」、雇い主「そんなに言うけれども、以前に雇った人は続かなんだからあかん。あんたそんなことを言って、製材の経験はあるのか。」、本人「経験はないが、安定所では経験がなくともできると言われて来たのです。」、雇い主「安定所に出した求人票には経験がなくともよいといっておいたが、あなたがここの近くで住んでいる人なら雇うのだが、なんや一宮では遠過ぎる、経験はないし、所は遠過ぎるので困る。」。このような面接で、それで断わられた。一宮と言ったら、一宮のどこだ、西丁だ、ここからすっかり態度が変わってしまって、そしてこういうやりとりで断わられた。だからこの人はこれはわれわれが同和地区に住んでおるので差別されてそうして断わられたのだと、こういうことで、その同和地区の人たちがおこって、それでこの近藤さんという人がこの福良という社長さんですが、そこへ確かめに行った。そうしたらわび状を書いたんです。そのわび状は「私儀九月十六日安定所より求職紹介面接のありました節不用意な発言しました言葉の内容が、住所はどこですか、本人は一ノ宮と答へましたが尚一ノ宮のどこですかと聞き一の宮の西町と答へましたが当時の質問に付いては私は差別的な考へが有って近藤さんに大変迷惑をおかけしました今後は此の様な考へを一日も早くなくする様努力致しますからお許し下さい。昭和四十二年九月二十日、徳島市万代町四丁目福良利雄、部落解放同盟近藤清子様」というわび状を入れておる。これを見ましても、明らかに近藤さんが就職を断わられた。これは部落民であるということを理由に断わっておるということは明らかです。先ほど読みましたように、近藤さんは就職の熱意がないということにはならぬと思う。あの社長さんとの一問一答お聞きになって、この人に就職の熱意がないという断定ができますか、早川さん。私は具体的にちゃんとこういうものを持って質問しているのです。決してそこらの人がちょっと訴えてきたのをすぐ取り上げてやっているのではなしに、実際こういうものがあるという事実をつかんで私は質問しているんですよ。だから、あなたが、聞くところによると、就職の熱意がない、なんとかかんとか理屈をつけて、文句をつけて、そして就職の意思がないから断わったということにはこれはならないのじゃないですか。どうですか。もう一ぺん答えてください。
  175. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 二十数名の中のお一人だと思いますが、具体的なそういうケースは存じておりません。いまお説のとおりでございましたならば、よくひとつ調べまして善処をいたしたい。
  176. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 こういう例は、ここに三人の請願書が来ていますから、みな届けますが、ほかにもたくさんあるのです。二十七人が全部私にそういうことを訴えて、首切りの書類もみなここにきているわけなんです。ほとんどがこれと同じことなんです。全部が働きたいけれども、そこに行くというと、町の名を聞かれ、地図を書かされ、そうすると、とたんに態度が変わって、そうしてなんとかかんとか理屈をつけて、そして断わられる、こういうことになっておるのです。こういう例が一つある。この船越徳太郎さんという方は、これは部落の方と違うのです。ここに請願書がありますので、これ短いですから、ちょっと読んでみますから聞いてください。この人は徳島市津田町三丁目船越徳太郎さん、五十三歳です。「私は大正二年十二月八日徳島市津田町のまづしい漁師の家に生れました五人家族で貧しいので私は小学校だけしか出して呉れません小学校がすむとすぐ大阪に行きそこで就職し(住友金属)ここを皮切りに各所の金属関係の工員として働いて参りました昭和十八年六月に兵庫県の沖にて漁業に従事中左足をケガしその后不自由な状態でした(四〇年まで入院)其の后また漁夫として雇用され仕事をしていましたが足が不自由なため続かず「中高年措置」の申請をしてどこかよい常雇につけて貰ふと昭和四十二年一月十二日に徳島公共職業安定所に対してソチの申請をしました安定所ではどうにかして就職につけて貰ふと熱心に頑張りましたなかなかうまく行きませんでした五月には夜警で日給五〇〇円のところを紹介して呉れましたが健康上昼の方がよいので他をさがして貰ひました八月高木建設に紹介されて先方に行き面接したが足が悪い為め十貫以上のものが持てずことはられました(先に足のケガで医者が十貫以上の物は持ってはいかん)と云われたと云ったのだが指導官が無理ヤリにそこを紹介した結果的には雇って呉れ無かった八月鈴木製材に紹介されたが重量物運搬のため不採用九月宮本古物商に紹介して貰った指導官が無理だから止めとけと云ふことになった三月に認定(失業者として認められ)され四月に指導になり約五カ月余り安定所の指導を受けてもついに常雇になれずあと十日位で期限が限り一時的に失対にでも入れと云ふ事になっていたのに突然十月の中頃一方的に認定取消されました其の理由を森川指導官にきくと「上の」命令だから「ヤリ度ないが仕方がない」と何ら理由が無いと云ひながら取消されましたこの様な不当なやり方をヤメ私にかかる不当な処分をテッカイする様お願ひします。右、船越徳太郎早川崇労働大臣殿」、こういう例もあるんです。この人は要するに認定をされておったんですが、突然切られてしまったんですね、その切られた理由は、やはりおまえは働く意思がないから認定を取り消すという理由で、ここにきているわけですね。このように、働きたくても、認定をもらいたいと願いながら認定をされないでいる。認定をされておっても、おまえ就職の熱意がないからというので認定を取り消す。こういう例と二つあるわけなんですね。そのほとんどが、私はいま未解放部落の人の例と、それからそうでない例と申し上げましたが、ほとんどが未解放部落なんです。未解放部落の人たちは働きに行くというと、職場で住所を言うと、すぐいろんな理屈をつけて断わられてしまう。働きたくても働くところがないと言って、私に涙をこぼして訴えているんですよ。早川さん、あなたも聞いてあげてください、こういう人たちの気持ちをね。みんなこういう気の毒な人たちなんです。こういう人を守るのが職業安定所じゃないですか、職業安定法の精神じゃないですか。ところが現地のある下の人は、おれはつらいと私に訴えていましたよ。しかし、上からこういうことをやれといってくるからせざるを得ないんだといって、こういう気の毒な人たちをみんな首にしてしまうんです。これでどこへ行って食えるんですか、早川さん。ここまでいくのは最も生活の最底辺におる人たちですよ、その人たちの働きたい意欲を押えて、そうして差別待遇を暗に認めて、そうしてこの人たちを職場からおっぽり出して就職させない。一体この人たちはどうしてめしを食っていけばいいんですか、早川さん。どうしたらいいんですか、政治家として答えてくださいよ。早川さんに政治家として責任ある答弁を求めますよ。
  177. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 私のほうで聞いておるのは、そういう報告を聞いておりませんが、よくいま一回、具体的な須藤先生の言われましたケースにつきましては、よく客観的なあれを調べまして、善処いたしたいと考えております。  なおあと局長のほうから……。
  178. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私の言ったことがほんとうならちゃんとしてくれますね。政治家として責任を持ってこの人たちの生活をちゃんとしてくれますね。それだけ頼みますよ。やってくださいよ。――大臣が首をたてに振ってやりますと言っていますから、私はそれ以上大臣を追及することはしませんけれども、実情はこうなんです。あなたは下の者の報告を受けていてはだめなんですよ。下の者は、上から言われると、それに輪をかけて、上の人が五をやれと言えば六やっちゃうのですよ。それで六やる。もっと七もやって、そして自分の立場をちゃんと糊塗して、自分がやっていることを上の人が承認してくれるような報告をしてくるのですよ。だから現地に行って、ほんとうのこの貧しい人たちの声を聞かないと、ものの判断を誤るのですよ。下の者の言うことだけ聞いておってはほんとうにあきまへんな、早川さん。局長、何か答えがあるのですか。
  179. 有馬元治

    説明員(有馬元治君) 徳島の事例につきましては、先生御みずから十七日に安定所に抗議に請願者の方とお見えになったケースでございまして、私どもも慎重に現地の報告を徴しておりますが、いまの二つの事例について、どっちがどういうふうな理由で認定の取り消しあるいは不認定になったか、そこの具体的な状況まで今日の時点で報告書が間に合っておりませんが、現地からの報告では、通勤距離の問題と、それから八時始業は困る、九時始業でないと勤務できない、こういう主として二つの理由から不認定にせざるを得なかった、こういう報告がきておりますので、具体的に、いま御指摘のケースにつきましては、不服審査の道もございますし、大臣あてのその陳情書を基礎にいたしまして、私どもとしては現地に厳重に実債調査を下命するつもりでございます。その結果、事実が判明いたしましたならば、是正すべきところは是正いたしたいと思います。
  180. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 大臣ね、人にはいろいろな立場があり、からだの弱い人もあるし、遠いところを通う人もありますね。とにかくこの人たちが職場へ行こうと思いますとね、大体交通費が往復百五十円か二百円かかるのですよ。どうしても同和地区というのはへんぴなところにあるわけなんですね。そうでしょう。だから交通費がとてもかかるのですよ。だから五百円や六百円の賃金をもらったのでは、交通費に消えちゃうのです。残りは四百円か、四百五十円になっちゃうのですね。これでは生活ができないのですよ。だからあるときは五百円の職場に行きなさいと言ったときには、それではとてもやっていけないから、だからもう少しいいところをさがしてくださいと、こういうことはあり得ますよ。そう言ったって、これは就職を拒否したことじゃないじゃないですか、大臣。第一、この職業安定法にちゃんと条件が合わないときは、それをお断わりしてもいいという意味の法の趣旨があるでしょう。職業安定法の第二十七条に関する施行規則二十条4の「イ」に、「指示された就職促進の措置又は紹介された職業がその者の能力からみて不適当であるとき。」これはお断わりしてもいいということになっておるわけです。「ロ」は、「指示された就職促進の措置を受けるため、又は紹介された職業につくために、現在の住所又は居所を変更することを要する場合において、その変更が困難であるとき。」、「ハ 就職先の賃金が同一地域における同種の業務及び技能について行なわれる一般の賃金水準に比べて不当に低いとき。」、「ニ 法第二十条の規定に違反して、労働争議の発生している事業所に紹介されたとき。」、「ホ その他正当な理由があるとき。」、こういう非常に幅の広い条項があるわけなんです。この人たちは決して労働の意欲がないというのでその紹介をお断わりしたりしたことはひとつもないのです。みんなそう書いていますよ、実際具体的に例をあげて。だから、この例をあなた調べるとおっしゃるなら、もっとほんとうに調べてもらいたい。労働省から県へ派遣されているところの労働何というのですか、あれは、県におる労働省の代表は。
  181. 有馬元治

    説明員(有馬元治君) 職業安定課長。
  182. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 安定課長の言うことなど聞いておっちゃだめですよ。そんなもの、安定課長の言うことなど聞いて、人民の声に耳を傾けない。ほんとうの労働者の声を聞こうとしなければほんとうの政治はできませんよ。安定課長は自分の出世しか考えていないじゃありませんか。これは安定課長がみんな指示してやらせたことなんです。安定課長がやったんですよ。そういう者のいうことを聞いて正しいものの判断などはできませんよ。だからほんとうにあなた方にその気持ちがあるならば、現地に行って現地の職安の全日自労の働いておる人たち、せめて私がいま言っておるこの請願を出した三人の人にでも会って、そしてその人たちのほんとうの気持ちを聞いてくださいよ、そして判断してくださいよ。役人の言うことなどそのまま受け取って政治ができるなどと思ったら大間違いです。頼みますよ。それはできますね、約束してくださいよ。
  183. 有馬元治

    説明員(有馬元治君) 本省の監察官を直接派遣をいたしまして、本件については公正な立場で事実調査をさせます。
  184. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それといま私が申しましたように、この人たちはいろいろな家庭的な事情や居住の事情がありますが、大体同和地区に住む人たちに対します紹介の特徴というものがあるのですね。これは特に目立つのは同和地区に住む人たちに対する職安の紹介は、大体失対の収入より以下の収入のところへ紹介するのですよ。そういうことが一つの特徴ですよ。それから身体の条件に合わないところを、よりもよってそういうところをやるのじゃないでしょうけれども、しかしそういうところが非常に多いということです。それからもう一つは、先ほども申しましたように非常に交通の不便な交通費のかさむそういう所に向けてこの同和地区に住む人たちの紹介をするわけです。したがって同和地区の人たちは、それを受けとめるのに非常に困難な立場に置かれておるということは言えるのです。そしてたまたま条件に合わないということでお断わりしますと、もうたちどころに就職の熱意がない、誠意がない、こういうことを理由にして首を切ってくるわけです。全く私は不当もはなはだしいものだと思うのですよ。この点もひとつ考えて、同和地区に住む人たちには特別に配慮して、その人の生活を守るという立場で扱ってもらいたい、こういうふうに思います。お答えを願います。
  185. 有馬元治

    説明員(有馬元治君) 同和地区を担当いたしております安定所の職員は全員御指摘のような差別の扱いのような受け取られ方が結果的にされないように、非常に神経を使っておるのでございますが、何せ地域社会の問題でございますので、賃金にもその地域社会で通常支払われておる賃金という水準がございます。場合によっては、失対賃金のほうが地域によっては上がり過ぎておるというところも事実ございます。しかし、まあ常識的には失対賃金がその地域における最低に近い賃金であるというふうな解釈もございますので、できるだけ失対賃金以下のところには紹介しないようにというふうにつとめてはおりまするけれども、職場の条件その他からいって賃金は多少低くても常用雇用として喜んでいけるという職場も、場所によってはあるわけでございます。そういういろいろな条件を勘案をいたしまして、第一線の職員は同和地区出身者の方々、これはその土地においては大体居住地をお尋ねすればすぐわかりますので、促進措置の点においてもあらかじめ制限を緩和いたしまして、一般よりも優遇をいたしておりますので、取り扱いにもきわめて慎重を期するようにというふうに指導しておりまするから、今後におきましても、同和出身者なるがゆえにどうこうという問題は絶対ないようにというふうに指導してまいりたい。具体的な問題につきましては、さらに御指摘の点について厳重に実地調査をいたしまして、是正すべきところは率直に是正をいたしてまいりたいと思います。
  186. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この同和地区の人たちを、雇い主がそれは同和地区の人たちだということで、こういう差別待遇が起きた場合、職業安定所はどういう処置をとられるのですか。
  187. 有馬元治

    説明員(有馬元治君) 求人者の気持ちといいますか、考え方を是正するということは非常にむずかしいのでございまするが、私ども学卒者の扱いにおきましても一般求職者の就職のあっせんにおきましても、まず求人者の態度、心がまえ、考え方を改めるということが先決でございますので、求人者の考え方は最近非常によくなってきておりまするが、間々御指摘のようなケースにぶつかることもございますので、雇用主側の指導を徹底するということは絶えずわれわれ安定機関に指示しておるのでございます。今後ともこの扱いにおきましてはさらに一そう徹底を期してまいりたいと思います。
  188. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それではこういう場合どういう指示をするか具体的に言ってください、そうでないと私たちは納得できません。具体的にはどういう指示をなさるのですか。あるところではこういうことも言われるのですね、こういう悪質業者には、もう再び求人がきても紹介しない、こういうこともあり得るわけですね。また徳島では、こういうことをやったときに交渉したのですね、そうしたら職業安定所は、もうああいう人たちには再び求人がきても紹介をしない、こういう約束をしたそうです。ところがいつの間にやらそれがくずれてしまって、なしくずしになって、もうどこやらいってしまって、その業者は平気な顔をして紹介を受けている、こういうのですね。具体的にどういうことをあなたはなさろうとしているのか、そして成果があがったかどうか一ぺん聞かしてください。
  189. 有馬元治

    説明員(有馬元治君) これは指導が中心になりますが、われわれのほうの窓口における具体的な措置といたしましては、そういったふらちな求人者の求人については求人を受理しない、こういう手がございます。しかし、これも永久に受理しないというわけにもいきませんので、態度が改まった場合には求人の受理をするということをやっております。しかし、まあ受理をすればまたもとのもくあみだという実例もございまするけれども、そういうことを繰り返しつつ求人者の態度を改めていく、これはあくまで指導で、強権をもってどうこうするという立場にはございませんので、求人者の御認識を気長に改めていただくよう指導を続けてまいりたいと思います。
  190. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その求人者の反省を求めるということは具体的にどういう形でやられているんですか。その求人者を呼んで、そしてその人たちのあやまちを説得して直すとか、どういうやり方をやっているんですか。
  191. 有馬元治

    説明員(有馬元治君) 具体的なケースにぶつかった場合にはそのつど呼びつけてこんこんと指導をいたしております。またその裏づけとしましては、もし改めなければ求人の受理はいたしませんよということを十分求人者側に申し伝えてございます。また一般的には、業界を中心にいたしまして、求人者全体の心がまえとして絶えず私ども積極的な指導をしておる、こういう状態でございます。
  192. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 一つ伺っておきますが、大体私の質問はこれで終わるわけですが、職業安定法の施行規則の十九条に、特に就労困難な人という条項がありますね。どこかにありましたね。その特に就労困難な人というのを私、質問しようと思ったけれども、ここに書いてありますから申しませんが、それはなんでしょう、一が身体障害者ですね。二が刑罰を受けたりした刑余者ですね。それから三が「その他社会的事情により就職が著しく阻害されている者」と、この三番は一体どういうことなんですか、「社会的事情により就職が著しく阻害されている者」とは。
  193. 有馬元治

    説明員(有馬元治君) これが御指摘の同和御出身の方ということを表現しておるわけでございまして、これはなかなかそういうふうに明確に書くこと自体に非常に神経を使わなきゃならぬ問題でございますので、ちょっとわかりにくい表現をいたしておりまするけれども、第一線の職員には十分この趣旨は伝えてございますので、運用の基本については十分徹底いたしておると思います。
  194. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それだけ政府は同和地区に住む人たちに対しては心を配っているんでしょう。それならば、こういう不当なことがあなたたちの下部において行なわれるというようなことね、それはあなた、とてもがまんならないじゃないですか。そういうことをそのままほうっておくわけにいかないじゃないですか。そこまであなたたちが配慮をしているんなら、その配慮がりっぱに実を結ぶようにすべきじゃないでしょうか。徳島でこういう事実が起こっておる、こういう事実、この差別待遇の結果、こういう不当なことが起こり、それならば、それはやはりあなたたちはちゃんとしなきゃならない責任があると思うのですよ。放置すべきじゃないですよ。でなくちゃ法の精神が生きないじゃないですか。私は思うのです。行政官というものは――こんなこと私が行政官に説教するのもおかしなようですけれども、早川さん、行政官というものは、やはりこの法律ばかり見て、法律のほうへばかり目がいって、法にあやまちがなければ、法に反しなければ、どんな冷酷なことをやってもいいという、私は、そういうのが今日の行政官の欠点だと思うのですよ。しかし、それではりっぱな行政というものはできないと思うのですね。やはり法に目を向けるよりも、まず事実を見るということ、これが私は政治家として重要なこと、これが行政官としてまず第一の要件じゃないか、法に目を向ける前に、まず事実に目を向けて、その事実をどうして解決するかということに……。それが私は重要なことじゃないか。この間、私が徳島へ行って受けた印象は、徳島の職安の所長にも会いました。そして聞いてみると、やはりあの人たちは法にとらわれているんですよ。そして上からの命令にとらわれるのです。いわゆる県の責任者ですよ、上からというのは。あなたたちが直接職安の所長に言ったわけじゃないでしょう。それにとらわれて、やはり自分の身を守るために、上の人の言うことは何でもはいはい聞く、  これは法に目が向いている一つのあらわれだと思う。これではほんとうに血の通った政治というものはできないと思うのです。こういうことではこういう気の毒な底辺におる人たちを守ることはできないのですよ。私はそこを早川さんに申し上げたいのです。早川さん、その点よく考えてやってください。この人たち、生きる道はないですよ、こういうことでは。だから私の言うことが納得いくならば、私はあの取り消した認定をもう一ぺん取り消してくださいよ。そんなことはできることですから、取り消した認定をもう一ぺん取り消して復活さしてください。それから認定がほしいといって――失業をしているということは事実です。中には失業保険をもらっている人もいるのです。失業者だということは明らかになっているのです。失業保険をもらっているのだから。そのくせに失業者としての認定を与えないのです、職安が。こんな不合理なことはないと思う。だからこういう認定を要求している人たちに対しては、即刻認定をすることです。認定措置にのせてください。そうして一たん取り消した認定をもう一ぺん取り消して、もとへ戻してください。これを私は皆さん方に要求しまして、そうして私の質問を終わります。
  195. 有馬元治

    説明員(有馬元治君) あくまで現地の事実判断の問題でございますので、御指摘の点は、先ほど申しましたように監察官を派遣いたしまして、公正な立場で事実関係を究明した上で善処いたしたいと思います。なお、保険受給者につきましては、この就職促進の措置を講ずるまでもなく保険が優先いたしますので、保険制度の中で十分対処してまいっております。先ほども申しましたように一般会計のこの措置よりも特別会計の失業保険のほうが条件もよい面が多いわけでございますので、こちらが優先できる限度においては必ず優先するというふうな措置をとっておりますので、その点は……。
  196. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もう一問。私はいま現在失業保険をもらっている人を言ったんじゃないのです。この間まで失業保険をもらっていて、失業保険が切れたというわけです。それで認定を求めに来たというわけです。ところがなかなかくれぬ、こういうケースです、これは。だからこの間まで失業していたんだから、就職しない限りその人は失業したのだということは明らかです。明らかと思うのです。それから念のために申しておきますが、あなたもしも徳島へ調査官を派遣されるなら、そのときは必ず全日自労の人にも会ってください。本人に会うと同時に、全日自労の人にも会ってください。それを約束してください。約束しますね。それははっきり約束してください。そうでないとほんとうのことはわからないです。第一、この間十月の二十四日に全日自労と徳島の所長が団交したのです。その節、所長が、今回のこの二十七名の取り消しの問題は無理だと思う、こういうふうに所長自身が答えているんですよ。これは私のところへ徳島全日自労の委員長が訴えてきましたよ、この間団交したらこうだったと。ここにおりますから証人としてもしも必要ならいっでも私は出しますけれどもね。そういう事実もある。だから中途半端な調査じゃだめ、やはり全日自労の人たちにも会い、それからこの御本人にも会って、それで官の代表の方にも会うのもいいでしょう。しかしこの二つを忘れては、ほんとうの調査調査にならないということを私はくれぐれも言う。だからどうぞそういう人たちに会うことを約束してくださいよ、ここで。
  197. 有馬元治

    説明員(有馬元治君) 職安行政は、職業紹介は求人者と求職者の間に職業の指導、あっせんを行なうわけでございまして、第三者である全日自労さんがどういう立場で介入をしておるか、私も具体的なケースを調べなければわかりませんけれども、この点は必ず全日自労さんに会って事情を聞くかどうか、これは現地に派遣した監察官の状況判断にまかせるべきだと思います。あくまでも当事者は求人者と求職者の間においてどういう事情があったとか、ほんとうに先ほどのような事態があったかどうかということについて究明することが主たる目的でございますので、その辺の判断は、現地に派遣した監察官の状況判断にまかせたいと思います。
  198. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私はこの問題をうまく解決するために言っているのです。あなたたちは変な調査をしたり、変な報告を聞いていて、そうして善処しないと、もめますよ。そういうことは好ましいことじゃないでしょう。だから私はこれだけ口をすっぱくして言っておるのです。りっぱな解決をするためには、やはり現地の人たち、本人たち、そういう人たちに会って、ほんとうの声を聞いてください。こういう困難な生活をしている人たちのほんとうの声を聞いてください。それを約束してください。どうですか。
  199. 有馬元治

    説明員(有馬元治君) 事情はよくわかります。
  200. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それじゃ終わります。
  201. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時二分散会      ―――――・―――――   〔参照〕    昭和四十年度厚生省所管一般会計及び特別    会計の決算に関する説明  昭和四十年度厚生省所管一般会計及び特別会計