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1967-09-06 第56回国会 参議院 外務委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年九月六日(水曜日)    午前十時十分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         赤間 文三君     理 事                 木内 四郎君                 増原 恵吉君                 森 元治郎君     委 員                 鹿島守之助君                 岡田 宗司君                 加藤シヅエ君                 羽生 三七君                 大和 与一君                 黒柳  明君    国務大臣        外 務 大 臣  三木 武夫君    事務局側        常任委員会専門        員        瓜生 復男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (当面の国際情勢に関する件)     —————————————
  2. 赤間文三

    委員長赤間文三君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  国際情勢等に関する調査を議題といたします。  御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  3. 森元治郎

    森元治郎君 きょうは大臣にはいろいろいやな質問が多いと思うんで、心を平らかにして御答弁を願いたいと思うんです。  私はいままで、沖繩問題にしても何にしても、外交の問題は外務大臣主管で、行政長官としての外務大臣国務大臣として内閣方針責任を持って御答弁できるし、だから質問をしておったんだが、けさ新聞、朝日新聞をちょっと見ただけですが、私が心配していたような事態になってきた。大臣が一体政府方針責任を持って正確に御答弁願えるのかどうか。個人の御答弁は、これはまあ別席で伺いましょう。政府方針を、少なくも沖繩に関して御答弁できるかどうか、その点を伺います。
  4. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 政府方針を御答弁申し上げます。
  5. 森元治郎

    森元治郎君 私もしろうとではないから、かねがねこんなことばかりやってるんで、見ていると、あなたがヨーロッパから帰られてから、どうも総理とあなたの関係が冷たい、非常に冷たい。むしろ敵意さえ——どっちが敵意を持ったか知らぬけれども、そんな感じがする。こんなことを世間も、私も思うんだが、一つは、外務大臣はなかなかお話もじょうずだし、コスイギン会談新聞はトップにはでに書き、ASPAC、これも大いにやって、なかなか三木さんやる。あまり上出来だという評判が出ると、またやっかむ人も出てくるんですよ、これは世の中だから。そういう人たちもあるんだろうし、また、あまり三木さんがえらくなると、将来また自民党のえらい人にもなっていくんだろうし、いろんなことがからみ合ってるせいではないかと思うんです。で、これは政治のきたない面なんです、実際は。そういうのが一つのバックにあるんじゃないか。また今度具体的な問題になりますれば、外務大臣は終始核つき——核基地つきですね——返還は求めない、そういうものは自分としてはいやだというのがずうっと一貫した御答弁本土並み適用地域沖繩という形での返還を実現させたい。これが一貫している。ところが、総理お話を伺うと、どうもすっきりしないで、次善の策というようなことで、核つきもやむを得ないんじゃないかと思われるような発言もある。これは想像でありますからわかりませんが、三木さんほどはっきりしない。そんなこんながからみ合ったのか、どうもしっくりいかないと思うんですが、大臣はしっくりいっていると思いますか。
  6. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは申し上げておかなきゃならぬですが、総理と私との間はきわめてしっくりいっておるわけであります。総理が何かやっかみなどというようなことは、総理として考えるというようなことはあり得ることでもございませんし、また、これは完全に総理外務大臣とは緊密な連絡の上において、そしてともに日本外交のために緊密な連絡のもとにわれわれは努力しておるので、そういう御懸念は一切ないということをこれは明らかにしておきます。先ほどのような前提で御質問をされるならば、前提が狂うわけでありますから、そういう前提は、もうそういうふうな揣摩憶測をなさらないで、きわめて両人の関係は緊密にしょっちゅういろいろなことを連絡をとりながら外交をやっておる。こういうことは、これは森さんばかりじゃなしに、国民にも明らかにいたしておく次第であります。
  7. 森元治郎

    森元治郎君 それならば、去る八月の八日、総理官邸であなたを先頭に、外務次官その他関係官、それから官房長官の列席で、沖繩問題の御進講か、御相談に行ったはずです。これは否定されないから私は正しいと思ったのだが、総理はのっけから、おれの沖繩問題についての腹はきまっているのだ、で、この問題は最高レベルで話し合うことで、事務当局などがへたな結論を急ぐようなことがあってはいかぬと、一喝をされ、せっかく御相談しようと行ったあなた以下、あなたは黙して語らなかったように伺っておりまするが、そういうことがあったようであります。その最高のおれがやるのだ、これは直接持ち出すのは総理であろうとも、あなたが主管大臣であって、ヒトラーあるいはムッソリーニの独裁じゃない。いまの憲法のもとにおける内閣制度はそんなものじゃないとすれば、あまりなことではないか。なぜそのときにあなたが参画をしようとされないか、黙って引き下がったかということをひとつ伺いましょう。
  8. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは私も総理と同じ考えで、沖繩問題解決というものは政治最高レベル解決に属すべき問題だと思います。したがって、この沖繩問題についての解決は、総理訪米されるわけですから、総理ジョンソン大統領会談ということに一番重点を置くべきだと考えております。したがって、いろいろ事務当局検討をすることは私も検討するように言ってある。しかし、結論を出して、そしてこれよりほかにはなかろうというようなところまでは行くべきではないので、やはりいろいろな角度からこの問題を検討はするけれども、結論事務当局が出すというようなことはよくない。私自身外務省においてもそういうことを日ごろ申しておるのであります。ちょうど総理に話をするという前にもそういうことがあって、私も総理と同じようなことを言ったわけであります。したがって、この場合は、ただ聞かれれば、いろいろいままで検討しておることを言うということであって、総理の言われるように、事務当局がある結論を持って話をするという性質のものではないのであります。常時、いろいろ研究の結果については総理に対して報告もいたしておるわけでありますが、やはりこの問題に対する方向をきめるということは、やはり政治最高首脳部責任を持ってそういうことをしなければならぬものだと、私も総理と同じ考えであります。同じことを私も外務省で言ったわけであります、前日に。
  9. 森元治郎

    森元治郎君 それは一応わかりますが、しかし、同じ閣内で、佐藤総理がそれならば、特にこの重大問題——重大問題です、これは。終戦後の非常に大きな問題だ。これは朝晩、寝てもさめても、たまらないくらいに、やせるくらいに考え考え、人の意見を聞き、会議を開き、もう三木さんなんかも呼ばれてきりきり舞いするくらいに相談すべき性質のものですね。ところが、そういうことをやっている様子はない。あしたあたりから台湾のほうへ飛んでいってしまう。また、南のほうへ飛んでいってしまう。二回も行って帰ってきて、そして向こうで話してくるという。一体どこに勉強する機会がありますか。しかも、あなたが参画して、ともに相談している様子がないということは、これは最高レベルで話し合うという、手続上は総理ジョンソンであろうとも、もう少し深刻にやらなければ、私は沖繩問題というものは相手にばかにされ、問題にならないと思うのですよ。  そこで、けさ新聞を見てもあなたは、事実聞きますが、これは三木記者佐藤総理に御質問しているような内容でしょう。あなたが、沖繩返還方式について総理の腹はきまっているかと言ったらば、これはこの間の新聞記者会見以上じゃない。外務大臣記者会見と同列だ。新聞見ても同じだ、あれを見たまえということでは、私はこれは辞表問題だと思うのですね。そうですよ。そして今度また、あなたはかねがね、ワシントンへ行って貿易経済委員会のときにはラスク、マクナマラーできればマクナラマ長官にも会うだろう、そのときにはひとつ下準備をしたいということは、穂積君にも答えている。教えられない、腹もわからない、はっきりきまってないで、何で下準備ができるのですか。それから、あなたはそこで黙っていないで、今度おとなしくしていないで、政府方針がはっきりきまってないというようなことでは困りますと述べたところが総理は、事実だからしかたがないと言った。これはあなた、同じ内閣で、生死をともにして日本の平和と安全をはかろうという内閣総理外相がこんな関係では私は外交はできないと思います。そして、何を言ったかと思ったら、沖繩懇談会ですか、あの意見も聞いてみよう。——米価審議会意見を聞くんじゃないんですぞ、これは。こういう重大問題を、各界各層意見を聞くと言うが、あれはあなたのほうの好きな人ばかり集めて、大体平均年齢五十五歳以上の人ばかり集めている。そんなものの意見を聞いて、こんな重大な問題をワシントンでやるなんというのは、なめられてだめです。しかも、けさ新聞でごらんのように、各党は全部全面復帰を野党は要求している。あなたの党の中曽根君も言っている。大勢は大きく動いているのです。こういうときに大臣が、こんなことで——それは総理と会ったあとでしょう——アメリカ政府首脳には日本政府方針を述べることはできなくなったが、私個人としての考えは場合によっては述べる機会があろう、などと言う情けない大臣が行ったのじゃ、グッドモーニング・ファインデー・イズントイットで終わってしまう。あなた、外務大臣として認められておらぬのだよ。これはほんとうに、これだけ国民が真剣に考えている問題のときに、このようなことで総理の腹を探りかねるなんということで、この一カ月間に二度も三度も出ているようなことでは、外交はできない。あなたは無視されたのだと思うから、私なら辞表を出すね。これは日本のためだよ。
  10. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私はこういうふうに考えておるのです。いま実際、沖繩問題、これはきわめて重要な問題であるわけですから、政府としては、われわれもときどき沖繩問題については総理大臣と忌憚なく話し合いをしておるわけであります。いまでも沖繩問題について話し合っている。しかし、これは政府方針をきめるということは、いろいろ各方面意見も徴さなければならぬし、世論の動向も見きわめなければならぬし、そういう慎重な検討の上に政府方針はきめられるべきです。そういう場合において十一月の総理の訪問ということは、これは非常にやはり重要な会談になると思うのです。したがって、いまの段階総理自身としてはいろいろな考えはあるであろうけれども、いまはそれは沖繩問題懇談会にしても、各方面学識経験者が寄っていろいろ検討を加えようとしているのが、この間発足したばかりですから、こういう意見も徴す。徴する必要もないというならば、そんな懇談会をつくる必要もない。意見も聞く、各方面意見も徴して、そういう上に立って総理訪米考えているわけでありますから、昨日の段階政府方針をここできめて、そうしてワシントン日本政府方針を示して交渉するという段階には、私はこれは無理がある、現在の状態で。したがって、いろいろ話し合ったのでありますが、こちらのほうの国内の情勢ということもわれわれはよくわかっているのですから、そういうことも伝え、アメリカ側としても、この問題に対しては積極的に取り組みたいと思っているのですから、先方としてはいろいろな意見を持っているに違いない。そういうことを率直に話し合って、そうしてその後総理が行くまでの間にはいろいろな外交折衝機会があるわけでありますから、そういうことで、私がワシントンにおいてラスク長官なんかと話し合いをすることはきわめて重要な意義を持っている。ただ、ここで政府方針をきめて、こういうことでということでアメリカ折衝するほうが折衝がしやすいですよ。しかし、現実にまだいろいろな客観的な情勢がそういうところへ行かぬとするならば、現在の時点におけるこの問題に対する立場の上に立ってアメリカ側と率直に話をすることは、十一月の総理訪米に対してきわめて重要な意義を持っていると、私は思っております。
  11. 森元治郎

    森元治郎君 それでは、この総理ワシントンに行かれた場合に、返還要求ということを出されるのか。返還の問題、返還問題ですね、似ているようでちょっと違うので、返還問題を率直に語り合うのか。その点どうかということが一つ。そうして、そうなれば、どうしても具体案は出さな仕ればならないのじゃないか。  もう一つは、いまのような、総理が、おれがやるのだ、三木君なんか関係しなくてもいい、最高レベルでやるのだ。三木さんもこれを承認し、為すみすと自分外務大臣の権限をゆだねてしまって、放棄してしまって、どうぞおやりなさい、ハイエスト・レベルで。このような不勉強でおったのでは、おそらく世間が、みなが心配しているように、沖繩返還問題について率直に語り合ったあとは、代行機関でそれからどうするかきめようとか、あるいは、沖繩日本の安全、日米安全保障上大事なものであるということを強調するだけで終わってくる。私は、総理はその辺を大筋として考えているのじゃないかと思う。だから、そんなに、あまり突き進んで、どうするという、核基地を入れるか入れないかという、三つも四つもある考え方に突き進もうとしないで、大きい点で、やさしいところで形だけつくってくるということのおそれがあるのですが、真剣に返還をおやりになるつもりか。返還問題をおやりになるつもりかどちらですか。
  12. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはいままででも、一昨年も私一緒に参ったのですが、その場合にでも沖繩返還要求を、要請をしたわけです。これに対して、共同コミュニケにもそういうことが盛り込まれていることは御承知のとおりであります。ただしかし、沖繩の持っている日本を含めての極東安全保障上の見地は、われわれとしても重視せざるを得ない。したがって、返還要求と、日本を含めての極東安全保障のために持っている沖繩役割り、これをどう調和するかというところに問題のやはりむずかしさがあるわけでありますから、したがって、この問題については十分に総理大統領との会見において討議されなければならんと私は思っておりますが、日本政府としては、返還をしてもらいたいという立場に立って話し合いをすることは、これはもういままでもそうでありますし、今後においても明らかであります。
  13. 森元治郎

    森元治郎君 いまのような何となく割り切れない内閣協和——不統一とは申しません。不協和——ハーモニーがないですね。こういうことでは、私は、国民の期待に反して佐藤内閣はとんでもない方向に進むと思う。佐藤内閣が倒れるのはいいけれども、せっかくここまで来た空気、アメリカも耳をかして相談しようという気分になっているのをこわしてしまったならば情勢を大きく悪化させるというので、これは慎重と、あなたも言うべきことは言い、外相責任を果たせなければやめることが私はこの交渉を前向きに大いに進展させることになるのだろうというふうに考えます。そこで、あとでベテランもおりますから、何といってもこの山ほど外交問題たまっているのですね、いろいろな聞きたいことが。で、私は、日ソの領土問題のほうに移って、これはあとの二人におまかせします。  三木さんも行かれたコスイギンとの会談について、時間もございませんから簡単に伺いますが……。
  14. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ちょっと、いまの途中で、総理がこの沖繩問題に対して真剣でないような御発言があったようでありますが、きわめてこれは真剣な日米間の最大懸案である。この問題に対しては非常に真剣に考えておられる。
  15. 森元治郎

    森元治郎君 二大懸案でしょう。
  16. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) したがって、これは何もたいして具体的に考えてない、研究もしてないのだということは事実に反することを申し上げておきたいのです。これほどの、やはり重大な懸案というものは日米間にいまないわけですから、これを懸命に処理するということは日米両国の将来のためにもきわめて重要な問題を含んでおりますから、私との間にもきわめてこの問題については真剣な話し合いを数回も持っておりますし、ただ、今日の段階政府方針をきめて、このことで、アメリカに対してこういう方式施政権返還をしてもらいたい、こういうことをやらないということだけでありまして、ほかのいわゆる沖繩問題に対する取り組み方というものは、総理はもとより内閣自民党もきわめて真剣に取り上げておるということは申し上げておきます。
  17. 森元治郎

    森元治郎君 お話を伺いましたが、その必死さといいますか、気魄というか、それがにじみ出るように出てこないということを私は申し上げたのであります。三大懸案と言いましたが、沖繩小笠原と、あなたは二つにするのですか、一つにするのですか。日米三大懸案と言うが何ですか。
  18. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 沖繩小笠原問題。
  19. 森元治郎

    森元治郎君 沖繩小笠原二つにしている。そういう態度にすでに誤りがある。沖繩小笠原、これは一つですね。
  20. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いまあげ足をとるような……。沖繩小笠原というのは一緒のものです。そういうことはあげ足をとらないで。
  21. 森元治郎

    森元治郎君 あげ足じゃない。それはいつも二つにしているから小笠原どうするのだと言って国民質問をするのですよ。  コスイギンとの会談が、これは非常にむずかしいように思うのだが、われわれが新聞承知しているのは、平和条約締結は、御承知のようにソビエトも希望している。思いつきだが、平和条約の問題にどうやっていいか、両国ともまだよくわかっていない、まだ。中間的なものを両方で話し合ったらどうかという話し合いですね。これも、この意味は、三木さんは、日本が願ったような領土問題ということを言っているのかどうか相当検討をなさったようだが、私は、このときにあなたがすぐ賛成と言ったと新聞報道ではあるのですね、けっこうだと。わかって賛成したのか、わからないで賛成したのか、そこがわからないですね。大体あのテーブルのつくり方がまずいのですよね。通訳があなたと大使の中川君の間に並べて顔を出してやっている。ここが大事なところだ。意見を聞こうと思ったって、中川君が遠くにおっては聞きようがないでしょう。ああいうことは小さいことだが、実は大きいことなんです。どうしてこれは賛成と言ったんですが、それを伺います。
  22. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはですね、コスイギン首相自身もどういう形が適当なのか研究をしてみようというわけでありますから、研究するのにはわれわれも当然にこれは賛成であって、日ソ間の関係は領土問題も未解決、そのために平和条約締結というものが阻害されておることは事実、だから、平和条約までに至らなくても、何かの中間的措置がないものか研究してみようじゃないか。これに対して私が何もノーと言う理由はない。研究してみよう、賛成するのは、態度として当然のことであると考えております。
  23. 森元治郎

    森元治郎君 時間があれば、ゆっくり順を追ってやれば話もわかるだろうが、短い。少し行き違うかもしれませんが、どうアプローチしていいかわからない、両国ともまだよくわかっていない点もあるからと。わかっていると私は思うわけですね。領土問題を片づければ平和条約の問題は片づく。何もアプローチがわからぬということはない。それをあなたが賛成したのがおかしい。両国がまだよくわっていない点がある、それをあなたが認めた、日本もわかっていない点があると。わかっておるのですよ。平和条約というものは、常識的に言えば、最終的に領土問題を片づけて平和条約をやるのが普通ですな。だから、まだよくわからない点があると思うから相談してくるということは、私は聞けない。もう突っぱねるべきだ。わかっている、あなたがこれ領土を日本返還させれば何のことはない。事務的にいろいろあるかもしれないけれども、まず突っぱねるべきだったと思うがどうかということが一点。  それからもう一つは、中間的なものというのは、中間的な文書と言ったんですか、中間的措置と言ったんですか、いろいろわかりませんが、可能性をやって、中間的なものとは何というふうに御理解をなさったのか。  第三点は、外交機関を通じて検討してみたらどうかということですが、あなたは外交機関の長なんですね、外務大臣。そのために定期協議へ行ったんです。幸い私は国家外交機関の長でありますからやりましょう。グロムイコもゆうべだかきょうだか帰ってくるから話してみよう。だから、こういう外交機関を通じてというのを、特に日本に持ち帰るまでもなく私は話ができると思う。念を押してもう少し、どういう意図なんだということが話し合われてよかったんじゃないか。もっと、そうすれば、もう少し話がはっきりしたんじゃないか。質問をすればやぶへびになるというか、消えちゃっても困るから、火を消さないでそっとしておいたほうがいいという配慮があったんだか、私は、外務大臣がこれでいこう、イエスと言う前に二、三の若干応酬があってしかるべきだったと思う。日本式に言えば、お茶の一ぱいも飲もうということで、ぐっと一息入れて考えていく余裕が大臣にほしかったと私は思うのです。おそらく大臣の頭に、何かうまくきっかけができるかもしれぬということがちらっと働いたのかもしれぬけれども、いずれにしても、わかっていないということはどういうふうに考えたのか、中間的というのはどういうことか、そういう点について。
  24. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはコスイギン首相自身も、まあどういうような一つアプローチをするかわからぬ点もあるという前提で、自分がこういうふうにしたならばいいという考え方を持って発言というので私はないと思う。これはやはり研究してみようということに重点があるわけでありますので、その場合、それを研究してみようというのですから、すでに何か結論を持っておってそれでどうだと言うのならばそれはそのときに話が相当はずんだと思いますが、研究してみようというので、自分にもよくわからないがというような意味のことも前提にして話をしておるんですから、その場でそれを話し合ったところで、それ以上の結論が私は出るとは思わない。したがって、中間的文書というものも、この問題も平和条約、それはすぐに平和条約を結べないから、それは領土問題は、すぐに向こうが領土問題の懸案を全部一ぺんに解決しようとすれば、これは結べることは明らかでありますが、そういうところに、なかなか、ソ連がそこまで領土問題に対して腹をきめておるとは私は思わない。したがって、そうなってくると、そういう問題を腹をきめておけば簡単でありますが、そういう領土問題に対する考え方というものが、ソ連考え方が変わってないとするならば、この問題をどういうふうにして解決していくかということは、非常に話し合う余地があるのではないか。いままでは、この平和条約の問題は、領土問題がからんでおりますから、あんまりそういう形では、平和条約の問題というのは話することをソ連は非常に拒否するような態度をとってきたわけであります。今度はやはり、話してみようということでありますから、これを手がかりにして日本かこの外交交渉の場に移すということは、当然に私はやるべきである。この中間的文書というものも、そういう検討の結果に待たなければ、一体どういうものがあるかということについては今後研究しなければならぬ。したがって、いまモスクワ大使館においても検討を命じてありますが、適当な機会には中川大使を手元に呼んで、いろいろソ連に対していままで打診した報告も求めて、協議をしたいとも考えております。
  25. 森元治郎

    森元治郎君 その中間的なものというだけで、内容は、いわゆる日本がずばり要求している領土問題についてというふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  26. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いや、領土問題についても、話し合いをしなければ。まあ、これはやはり中間的といっても、そういう問題も当然にこの話し合いの中には入らざるを得ない、こう考えております。
  27. 森元治郎

    森元治郎君 それは別なことばで言えば、中間的なものという内容は、正直に言って、ああもとれこうもとれ、そして中川君を近く呼び返して——近くかどうか——中川君がソビエト側と折衝したこともあるのでしょう。あるですね。そういう結果も待って検討をする。外交交渉には、新聞にはこの秋などという早いことを言っておりますが、そういう手だてで進むのですか。
  28. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いや、これは準備ができれば……。それはいつという期限は切っては考えておりません。また、外交交渉外務大臣ですからそこでやれというようなお話、これは非常にせっかちな話で、この問題はいろいろな歴史的な経緯もあるわけですから、そんなにわれわれが、外交交渉を、モスクワで滞在をしてこういう複雑な問題をやれないということは、森君過去の経験から徴して百も御承知のことだと思いますので、特に答えませんけれども。
  29. 森元治郎

    森元治郎君 あなたがクズネツォフと会ったのは、新聞その他に一切ソビエトも日本も発表しなかったと思うのです。理由は何ですか。あれはコスイギンと会ってすぐそのあとですか、翌日ですか。
  30. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 翌日だと記憶しております。
  31. 森元治郎

    森元治郎君 クズネツォフとの会談をどうして公表できなかったのですか。
  32. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) クズネツォフとの会談というものも報道されておると思います。
  33. 森元治郎

    森元治郎君 いや、帰ってきてからです。
  34. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いえ、それは一々……。帰ってきてからはクズネツォフとのことにも触れて言いましたが、帰っきて全部——おそらく森君は新聞を通じてごらんになっておるのでしょう。
  35. 森元治郎

    森元治郎君 そのほかないですね。
  36. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 新聞は何もかにも全部のことを申し上げる性質のものでもないわけですから、重点のものを、重点だと思われる点を言うということは当然のことだと考えております。
  37. 森元治郎

    森元治郎君 大臣答弁から受ける感じですよ、やっぱりこの領土問題を腹に置いて、中間的なものという表現にこだわらないで何らかやっていこうという、中間的なものも考えなければならない。もちろん、ソ連側の意図を探りながら、何を考えるか、同時にまた従前と同じように、領土問題を考えるという二つの方法があるわけですね。一つだけじゃありませんね。中間的だけにこだわって交渉するのではない。そうですね。
  38. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それはやはりコスイギン首相との会談の結果生まれてきたわけでありますから、そういう線に沿うて考えてみたいと思っております。
  39. 森元治郎

    森元治郎君 そこで、中間的というと、いろいろ想像してみんなが研究して言っていますが、この前の共同宣言は平和条約を予約しているのですね。予約。今度は領土問題を予約するような平和条約、ちょっと本来の平和条約の本質とは違いますが、特殊な日ソ関係であるならば、領土問題を将来どうするという予約をしてそして平和条約を結ぶということもあろうかと思うのだが、これは一つの中間的なもののような感じがしますが、いかがですか。
  40. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま具体的に検討中ですから、いろいろお答えできません。
  41. 森元治郎

    森元治郎君 で、お答えできない一つの問題ではあろうかと思うが、そこで、新聞報道では、この潜在主権と言ってみたり、択捉、国後の日ソ人の雑居ですね、あるいは平和的な経営をしている日ソ人の雑居は認めてもらう。また漁業のほうからいえば、安全操業の面に引っかけて、接岸操業なり沿岸操業ということで、事実上、日本の領土のような形で日本に利用させてもらう、こんなようないろんな点も考えられておるようですね。あるいは買収ということも人によっては考えておるようでありますが、これらの点も検討に値する、あるいは検討の座にのぼったことのある問題でしょうか。
  42. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 具体的なことについてはいろいろ検討を加えておりますから、いまお答えはできません。
  43. 森元治郎

    森元治郎君 お答えはできない……。  それで、私は、これは時間がないから終わりますが、いずれにせよ、重大な時局でありますから、しっかりやってもらわなければならぬと思いますな。
  44. 羽生三七

    ○羽生三七君 いまの森委員の質問に関連して一つだけ先にお尋ねして、あとの問題に移りたいし思いますが、その中間的のものという場合には、最終的な平和条約以前に何か留保条項を付したような中間的な条約という意味なのか。それ以外に、領土の中間的ということは、たとえばまあストレートに領土問題に触れるということ以外に、国後、択捉等の沿岸漁業と関連をして、領海問題等をなしくずしにして接近をしていくという方法もあるでしょうが、そうでないと、やはり最終的な決定的な条約になる前に中間的ということになるというと、一種の留保条項を付しての中間的な条約ということも考えられるのですが、そういう点はどうなんでしょうか。まあ、最終的な考えが固まっていらっしゃらないとしても、これは基本的な問題ですから。中間的なということの解釈は、それ以外にはないように思うのですが。
  45. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ、いろいろな意見があると思いますが、これはやっぱり十分検討をして、検討の過程にいろいろ申し上げることも適当でないと思うのですが、いろいろこれは慎重な検討を加えていきたいと考えております。
  46. 羽生三七

    ○羽生三七君 まあ、その問題はまたの機会にしまして、沖繩問題でお尋ねしますが、いまも森委員から佐藤総理発言について質問がありましたが、先日の記者会見の際に佐藤総理はこう言っておりますですね、「下田構想については首相は「ただいまは考えていない」と一応否定した。しかし「場合によっては核基地つきの返還考えるのか」との問いには「それは一番むずかしいところだ」「沖繩問題の中核をなす問題だ」と答え、」、核基地つき返還を全面的には否定はしなかったと、こう報道されているわけですが、しかし、衆議院の外務委員会その他を通じて、この委員会でもさきに外相の意思の表明はあったけれども、これは外務大臣の場合は明確に核基地つきは否定されておるわけですね。そこで、総理があいまいなことを言われておるということは、まだそういう余地が残っておるんですが、これは政府の統一見解として核基地つきだけは全面的に日本政府の基本的な方針として認めないという決定的な統一見解というものは出ておるのかどうか。
  47. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私に対する質問は、下田発言について質問を受けた場合でお答えをしておるわけであります。下田発言というものは個人的な見解で政府方針を代表するものではありませんと、こう答えた。したがって、政府全体の方針は、これはいろいろ検討をこれからするわけでありますが、下田発言政府の意向を代表するものではないということをその当時も申し上げましたし、衆議院の委員会においても私は述べておるわけでございます。
  48. 羽生三七

    ○羽生三七君 どうも総理答弁と同じようにちょっとそこのところあいまいだと思うんですがね。ですから、核に関する限りはもう決定的に日本政府の統一した見解としてこれを拒否するということはきまっておるのかどうか。
  49. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いまの時点で申し上げられることは、下田発言というものについて、これは政府の意向を代表するものではない、だから、全体については総理自身は非常に真剣に検討を加えておるし、したがって、まあほかのいろんな懇談会等もございますし、また、日本政府方針をきめる場合にはいろんなことを考えて十分に検討をさるべきであって、政府方針関係をして私がここでまだ発言をする適当な時期では私はないと思います。
  50. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は一下田発言を問題にしておるわけじゃないんです、必ずしも。基本的な問題なんですよ。と言うのは、歴代の日本政府が、核に関する限りは絶対に日本自身も持たず、また持ち込みも認めないという一貫した方針を持っておるわけですね。だから、もしそれが総理答弁にあるようなあいまいなことが残されるとしたならば、歴代の日本政府方針が根本的にくつがえされることになる。ですから、一下田発言の問題ではない。重大な政府方針の変更である。だから、そういう余地がまだ残されておるのかどうか。下田発言に私は必ずしも拘泥しません。
  51. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま、政府が核兵器の持ち込みを認めないという、この政府方針が何も変わったわけではありません。沖繩問題全体に対する解決については、これはいま政府方針は、先ほど申し上げましたように、いろんな点から検討を加えておるので、政府方針としてはいま決定を見てないわけであります。アメリカの意向なども徴さなければなりませんので、この席上において、沖繩の問題に関連して、政府方針としていろいろ申し上げることは適当な段階ではない、いずれそういう時期がありましょうけれども、この段階では適当な時期ではないと私は考えております。
  52. 羽生三七

    ○羽生三七君 沖繩が現在の条件下にある場合を基礎に議論しておるわけじゃないんです。沖繩施政権が返るという場合のことをいまここで議論するわけですね。その場合に、まだ核について何らかの余地が残されるような発言総理記者会見の中に見受けられるのでお尋ねしているわけです。これは重大な——沖繩問題に関連して」と外相は言われましたが、これは基本的な問題だと思うんですね。返るにしても、そういう形の返り方なら、これは日本政府の重大な政策の変更でありますから、われわれにしても、おそらく日本国民だれもこれを容認することはできないでしょう。ですから、現在の条件下においての議論じゃないんです。返還が可能な場合になったときの条件としての核問題をいま論じているわけですね。
  53. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私はね、羽生さん、こういうふうに思うんです。政府方針として、沖繩施政権返還という場合における政府方針は全部一括してきめたほうがいい。この問題はいろいろアメリカ側とも話を私はするわけですから、そういうアメリカの意向あるいは日本考え方、いろいろあるわけです。そういうことで一つ一つ問題を取り出してこれに対してどうこう言うよりかは、全般の問題として取り上げたほうがいいということで、私は下田発言に対してお答えした以上のことを申し上げない。これはもう全部ひっくるめての問題として政府方針はきめられるべきであるということでございます。
  54. 羽生三七

    ○羽生三七君 それはたくさんの中の一つで、全体の中の一つとおっしゃるけれども、これは歴代内閣の基本的な問題でありますから、その他大ぜいというような式のことは困ると思います。しかし、時間の関係もあるから、次にやはり沖繩返還に関連して、私たちが見のがすことのできない一つの重要な要素は、極東の平和と安全に沖繩の果たす地位とか役割りというもの、こういうことが日本政府でしばしば述べられているわけですね。だから、沖繩返還の場合、この沖繩極東の平和と安全に果たす——果たしておるかどうか見解の相違でありますが、それはそれとして、政府立場から言うならば、沖繩の果たしておる役割りを、それを第一義的に考えるのか、あるいは返還そのものに重点を置くのか、その辺の関連は非常に私重大な問題だと思うんですが、それはどういうふうに判断をされておるんですか。
  55. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 要するに、羽生さんとの考え方の私は根本的な相違がある。それは安全保障の問題だと思いますね。安保条約などに対して、安保条約も要らないという立場、こういう立場をとれば、日本の内地でも要らぬというわけですから、ましてや沖繩に安保が適用されることにも反対でしょうが、そういう角度から見れば、羽生さんなどが返還される事態に重点を置かれるということは、それはそういう立場をおとりになると思います。しかし、われわれは安保条約というものが必要である、安保条約が。そういうふうな立場から考えるのでありますから、したがって、極東情勢に対しての考え方も相違があるかもしれません。そこで、われわれは施政権返還を望むが、しかし、やっぱり一方においては、日本を含めて極東の安全に対する役割りもこれは評価しなけりゃならぬというので、両方をどう調和さすかというところが自民党内閣として一番苦心のあるところで、もう安保条約も要らないんだという立場施政権返還一本やりで論議を進められる社会党の立場とは根本的に違っている。一本やりではないんだ。そこにやはり調和を見出そうとするところに自民党内閣の非常なやっぱりこの問題に対する問題のとらえ方も解決も、非常にむずかしい問題がひそんでいるんだ、こういうふうに御了解を願いたいのであります。
  56. 羽生三七

    ○羽生三七君 外務大臣はいま安保にからめられましたがね、私は必ずしも安保そのものをからめて議論しているわけじゃないんですね。これは極東の平和と安全という観点から沖繩をどう見るか、それは見方の相違もあるでしょうが、必ずしも安保をからめているわけじゃない。それは漸次お尋ねするとして、その場合、やはり政府のお考えの中に、核は別としても基地の自由使用という考え方もあると思いますね。この際、いままでは現状のもとにおける基地の使用の条件と根本的にこの施政権返還後の場合は問題が違ってくると思いますね。というのはいままでは潜在主権はあったが、現実には施政権アメリカのもとにある。この沖繩からベトナムにアメリカ軍が発進をしても、行動の基地となっても、外国はある程度の理解をしておるだろうと思う。しかし、かりにもし日本施政権下に復した沖繩から米軍がベトナムその他に行動をとることになるならば、これは日本自身責任になるわけです。実はこの問題は私として一番重要な問題だと考えています。というのは、施政権返還返還といま盛んにいわれておるし、これは当然な話ですが、しかし、この点を考える場合、私は非常にこの問題重要だと思います。それは問題の性質が根本的に違ってくる。くどいようですが、潜在主権は持っておるけれども、現に施政権下にあるアメリカの行動の場合には外国の批判もおのずからそこには余地がある。ところが、日本施政権下に戻った、日本の本土と同じ条件下に戻った沖繩から米軍が行動を起こす場合には、外国の理解というものは根本的に違ってくる。これは日本自身責任になるわけですね。ですから、この基本的な問題をあいまいにすると、内地並みとか、あるいは全面返還とか、基地の自由使用とか、まあ、それに関連していろいろな議論がありますけれども、しかし、いま私が申し上げた問題は一つの基本的な問題ではないか。これは私たちが一番懸念をしておる。全面返還は、私自身も無条件返還ができればこんなけっこうなことはない。しかし、次善の策があればこれもけっこう。しかし、それすら、いま私が申し上げたような条件のもとでは、非常に現状とは違った重要な条件に置かれることになる。そういう状態は好ましくないんではないか。その点はいかがですか。どういうふうにお考えになりますか。
  57. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 施政権返還後の場合は基地の性格が違ってくるということは御指摘のとおりだと思います。沖繩施政権返還問題というのはいろいろそういういま御指摘のようなことも頭に入れて処理しなければならない問題であると思います。しかし、これに対して私はいまここで、まだ政府方針を全体としてきめていないわけでありますから、これに対して私が賛否を申し上げることは適当でない。
  58. 羽生三七

    ○羽生三七君 さきの国会の際に、森委員の質問外務大臣答えられて、沖繩問題日本全体として考えなければならぬ問題だと言われた。私は、それは全く考え方のポイントの置き方は違うかもしれぬけれども、日本全体として考えなければならぬことは当然だと思います。だから、いまこの熾烈な沖繩の島民——あるいは日本本土国民も同様ですが、沖繩返還について非常な強いいま要求がわき上がっておるわけですね。それを体して総理なりあるいは外務大臣アメリカへも行かれる。しかし、この場合に私は、やはり角度は違っても、私たちの立場から言うならば、いま申し上げたようなことを含めても日本全体の立場から考えないと、単なる出先の一部の要望だけ、これ要望でも正当な要望は出ることは当然ですが、ただ、施政権が戻ればその条件態様はどんなものでもいいというような考え方には私はくみするわけにはまいらないですから、その沖繩返還の場合の条件、そのあり方、その態様というものは非常に重要だ。そういう意味では日本全体として十分考えなければならぬ問題だと思います。それが先ほど私が申し上げた極東の平和と安全という問題についての政府と私たちの見解の違いということになるかもしれませんけれども、問題はそこにあると思います。どういうふうにお考えになりますか。
  59. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 御指摘のとおり、この問題はむろん沖繩人たちの世論の動向というものも重視をしなければなりませんけれども、この問題はやはり日本全体の立場に立って考えるべき問題であって、そういう場合にいろいろな世論というものもあるわけですから、世論といいますかいろいろな意見があるわけでありますから、そういうことを十分に頭に入れてこの問題は処理せなければならぬことば御指摘のとおりだと思います。
  60. 羽生三七

    ○羽生三七君 そんなこと、私は実は全くの希望的観測で、あり得ざることと思うけれども、かりにもし無条件返還、あるいは内地並みの条件での返還というそういう場合には、アメリカとしてはその代償として日本自身に防衛力の増強を求めてくるのではないですか。私は、この問題を非常に一部では安易に考えているようですが、そんななまやさしいものではないと思います。最近、かなり安易に考えられておる方面もあるようですが、私は、無条件なんというのは、いますぐあり得ないと思います。アメリカのきびしい立場から見ると、かりに無条件の場合にしても、内地並みの条件にしても、そういう条件が、返る場合には必ずそれにかわるべき、日本に防衛させるというか、防衛力の増強という代償を求めてくるのではないですか。これはどうですか。
  61. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 羽生さん自身あり得ないことだということを前置きにしての御質問でありますから、そういうあり得ないようなことを前提にしてお答えすることは適当でないと思います。
  62. 羽生三七

    ○羽生三七君 それはもう、そんななまやさしい条件ではないということはわかりますが、しかし、そういう場合には、かりにそういう場合にはということを考えた際に、結局、いま私が申し上げたことになるのじゃないですか、それは予見されるでしょう。
  63. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いろいろこの場合に仮定して、まだ話もしてみないのに、そして仮定をしていろいろとお答えするということは適当でないと思いますから……。しかも、その仮定というものが、きわめて、質問されておる方も、こういうことはあり得ないだろうというような、そういう仮定でいろいろお答えすることは適当でないと思います。
  64. 羽生三七

    ○羽生三七君 これは先ほどの森委員の質問にも関連するけれども、結局、外務大臣質問しておっても、何が何やらさっぱりわからぬということになっちゃいますね、これは。これはあまり総理のほうに遠慮されているんじゃないですか。いやしくも一国の外務大臣が国の外交の基本的な問題をきめるのにそんなに遠慮されることはないと思う。こういう案を持っておるが総理はどうだということでなければならぬと思うのです。
  65. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは遠慮という意味ではないのですよ。しかし、あなたの言われるように、全面返還した場合に、軍事力の増強をアメリカが、要求してくると思うが、やはりこれはまあ問題自体が仮定でもありますし、アメリカ自身ともこれから私がいろいろ話をするわけですから、そういうときに、そういう仮定の上に立ってアメリカ態度というものをいろいろ私が揣摩憶測して国会でお答えするということはどうかと思うのです。それだから、私は何も逃げておるわけではありません。
  66. 羽生三七

    ○羽生三七君 むしろ、そういう場合を想定して明確な方針を打ち出すことのほうが私は将来の発展に寄与すると思う。明らかにさせたほうが、なかなか向こうに行ってあなたが言いにくいこともあるだろうが、それをここで言う分には一向差しつかえない。ですから、それはもっと明確にしてもらいたいと思いますが、しかし、だんだんこう考えていくと、どうも基地の自由使用ということを認めなければ施政権は返りませんよというところに落とすのが落ちではないかという感じがするのですが、それ以外にそれはこまかいことで若干のやりとりはあるでしょう。大筋としては、日本国民としてはそういう要求をしておるが、しかし、政府折衝してみよう、現に折衝したが、基地の自由使用を認めなければなかなか返りませんぞということに何か落とされるような感じがする。そうでなしに、もっとき然とした態度でこういうものを貫くということがあれば、それはまた承りたいものだと思いますけれども、何かあまり先回りして、それこそ揣摩憶測するのもいかがかと思いますが、どうも落ちはその辺になるのじゃないかという心配を非常に持つわけです。
  67. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私が参りまして話をする場合に、沖繩問題ということは議題にするわけですから、だから、いろいろな角度からこの沖繩問題というものが話し合われるわけで、そういうこっちの国内の動向ということも十分に説明をしたいと思っておりますから、また向こう向こうとしての立場から、アメリカ側も率直な意見の開陳があると思いますので、そういう場合に、ここで総理訪米されるにしても、そういうことが大きな判断の基礎になるわけでありますので、いまここでアメリカ側が一体どういう考えであろうかということをいろいろここで揣摩憶測してその場合にお答えをしないで、むしろやっぱりワシントンでそういう会談を通じて、いろいろなわれわれの持っておる疑問点もありますから、それもアメリカ側にただし、こちらのいろいろな国内の動向なども伝えて、そういう率直な対話の中から将来一つ解決方向を見出すことが日米の合意に達するのであろうかということを十分検討して来たい。だから、いま、アメリカがこうであろう、ああであろうということを、出発を前にして、そして何かいろいろ申し上げてお答えするということも私適当でないと思うのですよ。それで、まあこの場合どうだ、あの場合どうだという御質問に対して十分お答えをしてないわけでございます。
  68. 羽生三七

    ○羽生三七君 外交の問題ですから、微に入り細をうがってこういう公の席上で議論できないことはわかりますが、しかし、大筋だけは——いま私が申し上げたことはほんとうの大筋のことだけですね。だから、そういう基本的な問題にはもっと十分な見解を示してもらいたいと思いますが、時間の関係で次に進みます。  まあ、いずれ総理外相も、訪米の際にはベトナム問題に触れられると思いますが、それでこのベトナム問題についての政府考え方が三つ出ておりますね。一つは、戦争当事国がまず停戦をし、一つ、和平のテーブルに着く。一つ、ベトナム問題はベトナム人の手で解決する。大体これが政府考え方の大筋のようですね。
  69. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) このベトナム人の解決の前に、私は申しておるのは、ベトナム人自身がみずからやはり将来の運命はきめるべきだと思いますが、いまのところは自由にきめられるような環境でないですので、それはいろいろな、やっぱりああいう外国軍隊もおりますし、いろいろな軍事援助も各国から受けているというようなことですから、もっとベトナム人が自由な意思によって自分の運命をきめられるような環境のもとでベトナム人がきめるべきで、そういう環境を一日も早くつくるということが必要である。そのためにはジュネーブ協定の精神に返って、南北のやはり共存の態勢をとって、そして安定した基礎の上においてベトナム人が将来の運命をきめるべきだ、こういうふうに申しておるのであります。
  70. 羽生三七

    ○羽生三七君 そこで、まあそういう前提条件はあるにしても、ベトナム問題はベトナム人民自身解決する、この問題を一番先に持ってきたらどういうことになるのですか。第一項にこれを持ってくる。そうすると、結局、いまのアメリカの北爆というようなことが不当なものだということになってくるわけですね、介入をしておるのですから。たとえ南の要請があったという口実があるにしても。したがって、ベトナム問題はベトナム人自身解決をするという民族自決の精神に日本賛成だということになるならば、現在のこの北爆ですね、この停止をまず求めない限り、実際問題としては、これは日本政府が幾ら民族の自決、その自主性の尊重ということを言われても、これにアメリカがこういう形で介入している以上、この問題が解決するはずはないと思うのです。ですから、日本がベトナムの人民の自身解決ということを尊重するならば、当然北爆停止のほうを要求すべきだと思う。これはいかがですか。
  71. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 原則が、常に国際的な原則はありますが、民族自決というようなこれは一つのプリンシプルだと思います。その原則がいずれの場合でも適用できるかというと、そうではないのですね。その原則が適用できる環境をいかにしてつくるかというところに、国際問題というものは常にやっぱりそこに困難性があるわけですから、ただ原則があるから、その客観的な環境を無視してすぐに原則を適用しろということには無理が私はあると思う。いろいろな原則はあっても、その原則を適用できる環境をいかにしてつくるかというところに国際問題の問題点がひそんでいると私は考えます。だから、先に持ってこいと言っても、持ってきてその原則を適用できるような環境でないですから、それは私は無理がある、かように考えるものでございます。
  72. 羽生三七

    ○羽生三七君 そこで、総理が南ベトナムを訪問されるわけですが、これはさきにこの委員会で私の質問に答えられて外務大臣が、これは和平の探求にあると言われた。日本がどういう役割りをベトナム問題で果たそうとなさっておるのか、これはなかなか理解しにくい点ですが、かりにもし何らかの役割りを果たそうとする場合、けんかの場合だって、仲裁者であるならば、両方の意見を聞きますよ。だから、南と接触したあと、北とはどういう形で接触なされようとするのか。これは前に私の質問に答えられて外務大臣は、ハノイの招請があれば喜んで北を訪問すると言われましたけれども、実際に向こうからは招請があるとは思えない。しかし、それはともかくとして、何らかの役割りを果たそうとする日本政府が、南だけに接触をして、それじゃ北とはどういう形で接触をしようとするのか。それがなかったならば、いくら和平の探求とかなんとか言ってみたところで、これはもう全然問題にならぬと思いますね。それじゃ国際的にも日本は何らの評価を受けるはずがない。一方の陣営とだけ接触をして、他の陣営とはそのままにしておいて、しかも、むしろ対立を深めるような訪問をして、それでベトナム問題で日本政府が何らかの役割りを果たし得るとは考えられないわけです。どういう形で北と接触なさいますか。
  73. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはやはり国交が北とはないことは事実ですから、第三国、いわゆる北と接触のある第三国を通ずるという方法もございましょうし、そういう間接的な接触の方法をとるよりほかにはないということでございます。
  74. 羽生三七

    ○羽生三七君 これは佐藤内閣が組閣した当時ですが、予算委員会で総理は私の質問に答えられて、ベトコンも交渉の対象にすることはいい、こういうふうに答えられておるわけです。あるいはその後変わっておるかどうか知りませんけれども、それじゃ、ハノイはともかくとして、ベトコンとはどうして接触なさいますか。
  75. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあベトコンも、やはり第三国にベトコンの代表が出ておる地域が相当にあるのですから、だから、やはりベトコン自身もなかなか直接の接触というのはむずかしいところがあり、まあ間接的な接触ということにならざるを得ないと思います。
  76. 羽生三七

    ○羽生三七君 そこで総理が南ベトナムを訪問して帰られたあとすぐということではないでしょうが、他日、日本政府がベトナム問題に何らかの役割りを果たそうとするお考えがあるならば、第三国であろうと何であろうと、南だけの接触で事足りるわけはないのですから、役割りを果たそうとする場合に、それですから、対象が第三国であろうと何であろうと、何らかの形で北との接触も考えられるわけです。それでなかったら、非常な片手落ちになるわけです。
  77. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それはいままでもやっておりますし、また今後も努力をしていきたい。これはどうしてもやはり北との、そういう間接であっても、接触をすることは必要であると私も考えております。
  78. 羽生三七

    ○羽生三七君 いままでは、横山特使とか、ああいう形のことを言っておられるんですか。何か、それ以外に。
  79. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いやいや、第三国——やはりハノイと国交を開いておる国々、そういう国々を通じて、いろいろこちらの意見を言ったり向こう意見を聞いたりするようなことは、従来もやっておるわけでございます。
  80. 羽生三七

    ○羽生三七君 どうもいまの外務大臣の御答弁を承っておって、日本が、佐藤総理が南ベトナムを訪問して、これが和平の探求であると言い、あるいはまた南ベトナムについて何らかの役割りを果たそうとすると言われておるにもかかわらず、積極的なそういう意欲がほとんど見られない。私自身は、日本がそれだけの力を持っておるかどうか、また、そういう役割りを果たすに適当な地位、条件、力を持っておるかどうか、それはいろいろ評価の仕方があろうと思いますけれども、それはそれとして、何らかの役割りを果たそうというにしては、あまりにも何か、南に対してはともかく、北に対しては接触の熱意が薄い。それでは私は役割りは果たせない。果たす意思がないというならそれでいいんですよ。だから、ずっと一貫して、外務委員会、予算委員会等を通じて質問に答えられて、日本政府もできる限りの和平のための努力をしたいと、繰り返し繰り返し言っておられるわけですね。それならば、どういう方法でその目的を達しようとするのかという質問をしても少しもおかしくない。
  81. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それはおかしくないんですが、羽生さん、私は、ベトナム戦争の終結にはいろいろ表から国際世論というものもございましょうし、また、きわめて非公式な形の接触ということもあり得る。これが前宣伝をしていろいろやるということが適当でない面もあることは御承知のとおりです。だから、いまこの際いろいろなことを全部申し上げることは、私は適当でないと思う。しかし、申し上げられることは、われわれはその効果が非常にあがっておるという評価はしておりませんが、外交機関を通じてできるだけというか、全力を傾けてそういう機会を、間接であっても接触の機会をつくるようにという指示を与え、その指示に従って出先は動いていることは事実でございます。一々こうだああだということを申し上げることは、いまの場合適当でないと思うのでございます。
  82. 羽生三七

    ○羽生三七君 いや、私も一々こまかいことを聞くわけじゃないんですが、時間の関係もありますから、この問題はこの程度に……。  最後に、一つだけお尋ねしたいことは、首相のカンボジア訪問中止ですね。これはカンボジアは、現国境線に基づくカンボジアの領土保全の承認と尊重、この問題を各国に求めたわけで、これが問題の焦点ですね。やはり何とかいうむずかしい名前の寺院——お寺ですね、その帰属問題、これが問題の核心らしいんですが、これは国際司法裁判所によってカンボジア帰属という裁定があったわけですね、私の知っている限りでは。そうすると国連中心主義という日本外交が、一応国際司法裁判所で裁定のあった問題について、これはタイとの、その他いろいろむずかしい問題もあると思いますが、これを避けるためにカンボジア訪問中止ということは、これはいかがな問題かとも思う。特にカンボジアが、とにかく曲がりなりにも中立を維持して、極東において果たしている役割りはある程度私は相当なものだと思うのですね。これをはずしてしまうということは、私は非常に日本外交の、今度の総理の訪問中の一番のマイナス点だと思う。なぜこれをはずされたのか。もっとやはり勇気を持ってこの問題と取り組んで、相手の了解を得るような話し合いをしても訪問をすべきであったではないかと思う。
  83. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは非常に残念なことでありまして、まあ、できるだけカンボジアに対しても日本の真意を伝える努力はしたのですけれども、国際司法裁判所の判決が下って、そしてまたこれに対して異議の言える期間もあるのですね。だから、日本はむろん国連の立場を尊重するという外交方針をとっておることは御承知ですが、そういうこともあるので、尊重ということは申しておるんですけれども、承認という法律的な用語はどうであろうかという配慮があったわけですね。そういうこともあるので、何とかやはりカンボジアとの間に話し合いをつけたいと、まあ、われわれとしてもカンボジア訪問というのは重要な意義を持つと考えていたのですが、なかなかやっぱりつかないのです。だから、相談をして、適当な時期ではないので延期しようということになったんですが、まあ、承認ということはいろいろ考えたのです、こちらのほうも。しかし、そういう法律的用語というものをつかって、国境の紛争の問題に日本がそこまで入っていくことに対して、われわれとしてもちゅうちょせざるを得なかった。残念でありますが、しかし、今後この問題の解決、カンボジアも来年の一月を目途として解決を望むというようなことを言っておるようですから、何とかカンボジアとの現在の関係を打開するために努力をしてみたいと思っております。しかし、まあ、非常に考えたのですけれども、どうも承認ということについては、ちゅうちょせざるを得なかったということでございます。
  84. 羽生三七

    ○羽生三七君 承認をしなければ総理に来てくれちゃ困るということだったのですか、その辺はどうなんです。
  85. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いや、総理の何か来ることを断わったというわけではありません。しかし、そういう大きな懸案を持ちまして、カンボジアとしては大問題でしょうからね。そういうことに対して、問題が妥結というか、解決できてないときに訪問するということもいかがかということで、今度は延期ということにしたのです。断わったということではないのですけれども、総理が親善旅行のために訪問する雰囲気としてはあまり適当でないという判断で話し合った結果、延期をしたのでございます。
  86. 羽生三七

    ○羽生三七君 最後ですが、インドネシアに行かれるわけですね、総理は。そうすると、インドネシアを除けば、少なくともベトナム戦争等について中立的立場をとっているのはカンボジアだけになるのじゃないですか。ビルマもラオスも、まあそういえばそうです。しかし、一番の中心は何たって私はカンボジアだと思います。だから、これを除外する今度の総理の東南アジア諸国訪問というものは、非常にその意義が薄れる、われわれから見る評価はさらにマイナスになるということだと思います。これはもう変更の余地はないのですか、いまさら。
  87. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) カンボジアについて延期したということは残念なことでしょうが、だからといって、東南アジアの今度の訪問の意義がほとんど薄れたというふうには思っていない。残念なことですけれども、ほかの東南アジアの諸国を全部回るわけですから、これはやっぱりそれなりに大きな意義を持っておると考えております。
  88. 羽生三七

    ○羽生三七君 これで私の質問をやめますけれども、先ほど申し上げたように、森委員の質問で尽きているわけですが、いやしくも一国の外交最高責任者ですね——総理もあるけれども——しかし外交に関しては最高責任者、もっとやはり意欲と自信を持って——あるいは意欲を持ち過ぎたからこういうことになったのかどうかその辺は知りませんけれども、もっと言うべきことを総理にどんどん言って、外交問題についてはむしろ総理をリードするような気魄でやってもらいたいと思う。それはわれわれと違った方向へ走っていく意味の意欲を求めているわけじゃないのですけれども、しかし、少なくとも外交最高責任者である外務大臣が、この一カ月というものは、かなり従来と違った、何か遠慮というか、そういうものが、外から僕ら見ておっても見受けられるのですね。非常にこれは遺憾なんです。これは森委員の質問に尽きておることですが、余分なことだけれども、つけ加えておきます。
  89. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は遠慮も何もないのですよ、総理に対して。私の外交に対する意欲、自信というものはいささかも変更はない。総理との間も、遠慮も何も一ありません。きわめてざっくばらんにいろいろな問題を話しておる。ただ、沖繩問題は、御承知のように、まだ実際、政府方針もきまっていないわけですから、ここで方向をきめてということにはならぬけれども、しかし、それなりにアメリカとの間には一つの大きな議題として取り上げて話し合いをするということに意義があるし、将来この問題を解決するための一つ準備的な過程としては大きな意義があるということで、そういう羽生さんが御懸念を持っているとしたならば、事実と全然違う。これはもう、ますます自信と意欲を強めておるものであることを申し上げておきます。
  90. 森元治郎

    森元治郎君 ちょっと関連して。カンボジアのことですが、事実関係を伺うが、こちらの都合でやめたような御答弁ですが、われわれが見ているところでは、カンボジア側がこういうような状況ではおいでになるようなムードではないからというようなことで、こちらもそれはそうだというので下がったのが真相じゃないですか。
  91. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) こちらの都合ということじゃありません。両方が相談して、吉岡君をやりましたから、こちら側が行くのをやめたとか、向こうが断わったというのじゃなしに、両方が話し合った結果、そういう判断に達したのであります。
  92. 森元治郎

    森元治郎君 先ほどはこっちがかってに断わったというようだったからね、こっちが。そうではなくて、向こうに断わられたんだが、いまの大臣の話じゃ両方ということ……。それはいいですよ。そこで、これはちょっと思いつきだが——思いつきということがはやりますから——カンボジアの国境を認めろ、「承認」はどうだと、字でこだわっているから、よしと、択捉・国後を認めるか、これはいわゆる認めて、これをぶっかければ両方五分五分だが、これは向こうはソビエトとの関係もあるし、そんなことを言ったらソビエトにしかられるからと、それは承認、それじゃカンボジアは待ってくれ、このくらいやらなければだめですよ。まあ、それはいいですけれどもね。
  93. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いろいろと、森式外交ですが、私はとらぬ。
  94. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 先ほど森委員、羽生委員とのやりとりを聞いておりますというと、どうも沖繩返還と核ミサイルあるいは核基地との関係についての外務大臣の御答弁は、総理記者会見以降、少し変わってきた、後退したように思われます。私が予算委員会でも御質問申し上げたり、あるいは外務委員会でも御質問申し上げた記憶では、かなりきっぱりと下田発言を否定しておる。そして、それは単にあれは政府答弁ではないというだけではなくて、やはり日本核基地を置かない、あるいは核兵器を持ち込まないという根本方針と関連して、沖繩核基地つき返還には難色を示されたように受け取っておった。この間の衆議院の外務委員会における穂積委員の質問に対する外務大臣のお答えも、新聞紙に伝えられるところを見るというと、かなりそういうふうなニュアンスをくみ取れるんです。いまお伺いしていますと、単に下田発言はこれは政府の公式の見解ではないと言って形式を否定されるだけであって、核つきでなければ沖繩は返らないぞという、そういう意味の下田発言の内容そのものを否定しておるようには思えないんですが、その点はもう一度私念を押したいと思うんですが、その核基地つきの返還ということそのものについて三木外務大臣は否定的見解をお持ちなのかどうか。
  95. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま申し上げたのは下田発言の形式ということではなしに、下田発言の言っておることは政府の見解を代表するものではないと、こう言っておるわけでありますから、ただそういう発表のしかたが悪いということではないのです。その下田発言の見解は政府を代表する意見ではないと申し上げておるので、ただ発表のしかたということではありません。しかし私は、沖繩施政権返還問題について、基地の問題というものは重要な問題をなしますから、そういうものは全体としての考慮をしたらいいと考えておるわけです。全体としてね。だから、一々、返還方式についてはいろいろなこと、意見、これを総合的に判断をしながら政府の腹をきめるべきであって、そういう施政権返還方針というものについて、いろいろ、これはいかぬ、あれはいかぬというようなことの発言は、この場合私は差し控えたいと思うのです。そうして全体としてどういうふうな方式をとるかということを検討したらいいということで申し上げておるわけでございます。
  96. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 まあ、先ほどからのやりとりを聞いておりますというと、やはりどうも総理記者会見と同じようなところまで後退されたような意見です。しかし、それはそれとして、私どもは沖繩核基地つき返還ということは重大な問題だと思います。おそらく沖繩返還についての最も重大な問題だと思うのです。各党の態度を見ておりますというと、社会党は御承知のように、平和条約第三条無効という立場から、いまのアメリカ沖繩施政権を持っていることは、これは法的に無効である、こういうことで、アメリカの全面撤退、もちろんそれの返還ということを要求しておる。したがって、核基地は当然廃止されるという考えであります。それから民社党は、沖繩返還にあたって、現在の日本で適用されておる安保条約の範囲内で沖繩が返るように言っておるわけです。公明党も核基地の問題についてはきわめてシビアーな態度をとっている。共産党ももちろんそうであります。また、けさほどの新聞の伝えるところによりますと、自民党の中曽根議員が総理に向かいまして、やはり基地の問題を取り上げて、四十五年までに解決するようにということを言われたように伝えられております。そういたしますと、この核基地をそのままにしての返還というのはまだきまっておらない。自民党の中の大部分あるいは沖繩の一部を除いては大部分の意見じゃないか。沖繩におきましても、下田発言あとでもって琉球新報が世論調査を行ないましたときに、その際に世論調査にあらわれましたところでは、核基地つきでもいいから帰りたいというのが一一・三%にすぎない。下田発言の前でありましたならば、あるいはそういうこともあり得たけれども、あれだけはっきりと下田発言があり、そうしてそのあと沖繩の民主党内あるいは琉球政府の一部においてもその意見が放送されてから後に沖繩における世論でも一一・三%しかないということは、やはり沖繩でも核基地は撤廃しろという意見が強いということを示しておるわけです。そこで私どもは、やはりこれは国民の総意として、沖繩から核基地を除くということを強く政府アメリカ側要求してもらいたい。どうもいま私が考えておりますというと、今日アメリカ沖繩核基地を持っておるということは、何かこう動かしがたいことである、これはもういまの極東情勢からいって宿命的なんだというような考え方があるんじゃないかと思うのです。これは私はいろんな観点から見て変化しつつあるのじゃないか、したがって、日本としてももっと堂々と沖繩核基地撤廃を要求していい段階に来ているのじゃないかと思うのです。私はこの点について、一九六三年にアメリカとトルコの交渉によりましてトルコからジュピターの基地が撤廃された。それからイタリーからやはりジュピターの基地が撤廃されたことは、これはやはり日本としても研究してみる価値があろうかと思うのです。御承知のように、アメリカはNATOの加盟国である。そしてNATOの加盟国であるトルコとそれからイタリーにジュピターの基地を置いたわけです。特にトルコに置いたジュピターの基地は、ソ連のどてっ腹をねらうことになり、ソ連のICBMの基地をねらうかっこうの位地に置かれたわけです。ところが、ソ連のほうでIRBMがたくさんできるようになり、それがやはり国内の国境沿いに配置されるようになるというと、トルコ自身も非常に危険を感じたので、また、アメリカもあそこに固定基地としてのジュピター基地を置いておくということが非常に危険になってきたと、こういうことも感じたのか、その間に基地撤廃の話が進められた。そして六二年にポラリス潜水艦が地中海に配備されるようになってから急速に話が進んで、一九六三年にこの核基地が撤廃されておる。こういうような事態というものは、私どもは日本沖繩核基地を撤廃させる要求をするにあたって非常に重要な基礎になっておると思う。最近USニューズ・アンド・ワールド・レポートが、中国において核兵器が開発され、そしてミサイルも近く完成して、IRBMも完成されるだろう、そうなってくれば、極東におけるアメリカの第一線基地をマリアナ群島の線まで後退させるという意見があるということを伝えております。これは私はUSニューズ・アンド・ワールド・レポートのアメリカにおける地位からいたしまして、そしてかなり政府筋からの専門家のいろいろな意見が出ており、その立場も、政府反対でない、どっちかといえば政府支持の立場であるこの雑誌にそういう専門的な意見が出たということは、アメリカでもかなり軍事的に、これが軍事専門家の間で論議されておる意見だと思うのであります。この意見でも引き下がることになっておる。御承知のように、いまの沖繩にあるメースBは、これは固定基地にある、そして射程は中国の半ばぐらいまでおおうわけでありますけれども、中国側にIRBMの基地ができれば、わずか六百キロぐらいしか離れていない沖繩の基地というものは、核基地としての役割りはもう果たし得ない、核抑止力としての力というものは失われるわけです。アメリカはそれに備えて、すでにポラリス潜水艦の七隻を太平洋に配置している。こういう状態ならば、イタリー、トルコから撤廃されたと同じような状況が出てきているのではないか、こういうふうに私どもは考えておるのであります。この問題についてはマクナマラ長官が判断を下して、そうしてマクナマラ長官がこれを撤廃する当事者であったということは、これは私はたいへん興味深いことだと思います。そうしてこのマクナマラ長官がキューバ事件の直後の一九六三年の一月三十日の下院軍事委員会でこの点についてこういうことを言っているのです。「一九五七年、ジュピター配備の決定がなされたときは、ソーとともに、ジュピターはNATOが展開しえた唯一の戦略ミサイルであった。しかし急速な技術進歩と加速度的なわがミサイル兵力の発達によって、それはもはやNATOのミサイル兵力の主要部分ではなくなった。さらに重要なこととして、原子力合同委員会が一九六一年二月にジュピター・ミサイルを移動可能の固形燃料ミサイル体系に代えることを勧告した際に、その報告書でのべているごとく、ジュピターーミサイルは液体燃料使用でまた敵につきとめられ易く、しかも、通常兵器および核兵器の攻撃に対してのみならず、妨害行為に対してもぜい弱であるという点である。それゆえ、これらの理由により、ジュピターをより近代的な兵器体系に置き代えることが望ましいと思われる。もっとも良い代替はポラリス体系である。これらの潜水艦搭載のポラリス・ミサイルは、核の奇襲攻撃に際してきわめて高い存続可能性をもっている。ポラリス体系は、その現在の利点のほかに、ジュピターと異なって、将来長期にわたる発達の可能性をもっている。それゆえ、われわれはポラリス潜水艦が本年前半中に地中海で作戦を開始することを提案する。すでに一九六一年四月に、われわれはトルコ政府との間に、とくにジュピター・ミサイルが旧式化しつつあること、それを置き代える必要のあることについて討議を開始した。昨年十二月、パリにおけるNATO外相会議の時に、私はトルコとイタリアの国防大臣とジュピターの代替について討議した。つづいて米国政府は公式討議を発議して、イタリア、トルコ両政府は原則において受諾の意を示している。」云々、こう言っているのです。でありまするから、私は、この沖繩における核ミサイルの存在ということについての固定的な観念というものをこの際政府においても打破してもらいたい、そうして、私はこういうような観点から、やはり日本国民及びいまの沖繩の県民の方々が望んでいるこの危険な核ミサイルの撤廃ということについて、政府はもっと積極的な見解を示して、そういう態度アメリカに臨んでもらいたいと思うのです。  まず第一にお伺いしたいのは、外務省においてはこのトルコやイタリーのジュピターをアメリカが廃止した問題について御研究になっておるかどうかをお伺いしたいわけです。
  97. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この核戦略といいますか、核戦力といいますか、これに対して御指摘のようないろいろな変遷があることは事実であります。したがって、われわれとしてもそういう変遷に対しては注目しておるわけであります。いろいろなそういうことも頭に入れながら、沖繩問題の場合においては、そういうことも頭に入れながらこの問題というものに対処していくことが必要だと考えております。
  98. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今度の訪米の際にラスク国務長官とはもちろんお会いになると思います。それが主だろうと思います。マクナマラ国防長官とはお会いになりますか。
  99. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 会う予定でおります。
  100. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 沖繩はいま沖繩軍司令官が高等弁務官となって沖繩施政権を総攬しておるわけですが、したがって、管轄は国防省の管轄にある。そこで、まあこの沖繩返還の問題、あるいはまたいま言われた戦略との関連の問題、さらには軍政のあり方の問題等についても、これは国防長官と話をされなければならない問題も幾多あろうかと思うのでありますが、その国防長官と、つまり沖繩施政権を管轄しておるマクナマラ国防長官との話について、相当な御用意はされて行くつもりでしょうか。
  101. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 会うときには十分用意をして会いたいと思っております。
  102. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私どもが一番懸念しているのは、下田発言がまあ政府の見解でないと言って否定されておるにかかわりませず、さきにも申し上げたかと思うのですけれども、沖繩の立法院の議長が東京に来たときに、ちょうど下田大使の赴任の直前でした。そこであった談話記というのが世界週報の七月の何日号かに出ておりました。それによると、下田大使は、総理の言えないことをそんたくして言っているんで、これは私の意見政府意見と思ってもいいというような、そういう言い方をしておるのですね。また、沖繩でもそう受け取っているのです。でありますから、政府としては常に下田発言政府の見解でないと否定されておっても、なかなかそれが払拭できない。沖繩においては、そういう点で、あれはやはり政府が思い切って言えないことを代弁しているんだと、そういう受け取り方をしておるということは、これはまだ私は問題はずっと残っていくものだと思っております。この点について、やはり政府としては、そういう不安を沖繩の県民諸君に与えないようにまた日本国民にも、そうなった場合一体日本はどうなるのかという不安を与えないような配慮は十分に払いつつアメリカ側交渉していただきたい、こう思うのですが、いかがでしょう。
  103. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 世界週報に、「政府の意を体して」、というのは、それは誤りだと思う。
  104. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 「体してとは」書いてない。つまり、首相の言えないことがあるから、その首相の意をそんたくしてと……。
  105. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあそんたくも、そういう雑誌のことですから、それをここでいろいろ責任を持つわけにはいかぬですが、政府の意向をそんたくしてということはありません。それは下田君の個人的な見解、その見解が政府の意向をそんたくしているというわけではないということは明らかだと思います。
  106. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 まあ、今度の総理並びに外務大臣沖繩問題についてのアメリカでのいろいろな意見とか、あるいは討議ということは、返還の問題と同時に、当面、まだ返還されないうちに一体沖繩でどういうことをするかという問題も含まれておると思います。その際にですね、いまのアメリカ沖繩の統治の方式というのは、これは私に言わせると、植民地統治ですね。大統領行政命令に基づいて、そうしてその沖繩の軍司令官が高等弁務官になり、その下に民政府がある。その下に琉球政府がある。ところが、アメリカの憲法もアメリカの法律も適用されないで、沖繩の軍司令官、高等弁務官の発する布告、布令がこれが憲法であり、一切の法律である。それからまた、沖繩米軍民政府というものは非常にこまかい干渉を琉球政府に対して行なっておるというような状況で、いわゆる間接統治というよりも、むしろ直接統治に近いやり方で、しかも、裁判の問題についてはアメリカのやり方を見てみますと、切り捨てごめん、軍人軍属は逮捕されてもすぐアメリカ側は引き取る、裁判は公正に行なわれない、判決は示されないというような状況で、こういう専政政治、あるいは軍政、こういうものが一体いつまでも続けられていいのか。これは私は返還前の問題でもあると思う。こういう問題についてアメリカ側と、つまり、被統治者の意見なりあるいは意思というものが統治の上に反映されて初めてそこに近代的な政治が行なわれると私は思うのですが、アメリカはそれが全然ない。そういう形で、返還前においても何らかの形でそういうものが実現されるような方向に行くようにお話しになるつもりがあるかどうか。これは根本問題なんです。
  107. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは施政権返還問題でしょう。時間がかかる。すぐに右から左に行くわけのものではないわけです。それまでの間の問題というのは、御指摘のような住民の自治あるいは人権、経済的な諸問題いろいろありますから、そういう問題に対しては、われわれとしても、沖繩の住民の人たちのいま言ったような面からの配慮が当然日本としてもなさるべきでありますから、こういうことも十分に話したいと思っております。
  108. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 いずれにせよ、私ども佐藤総理訪米されてどの程度話をされるか、まだ政府のほうでおきめになっておらないということで、わかりませんししますが、まあ、今日のアメリカ側のいろいろ洩れてくる意見とか、あるいはアメリカ側の特に軍部側のこの問題に対する態度というようなものを見ておりますというと、かなり壁が厚い。それでどうもなかなかいい結果が出そうにもないという気がするわけなんです。私どもは、やはりこの問題は国民の問題であり、特に沖繩県民の問題であり、単にアメリカにお願いしてだけおるという問題ではない。もみ手をしてお願いをして解決できる問題ではない。やはり一つの現地における抵抗闘争というか、そういうものを、あるいはまた国民運動というものが展開されて、それがバックになって強い力になってアメリカ側要求したときに何らかの解決の曙光が見えてくる、こう私どもは考えている。それでまあ独立前のキプロスにおけるイギリス軍の基地の問題、あるいは現在アデンのイギリス基地の撤退の問題、これはやはりそういうような長い間の軍政的なものが反発を招いて、それが大きく発展していったという点もあるわけです。また、パナマ運河の問題をめぐってのパナマ国民の対米感情、あるいはグアンタナモの問題等もそういう点があるので、私どもは政府もそれらのことを十分に考慮をしつつアメリカ側との折衝に当たってもらいたいと、こう思っております。
  109. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは御承知のように、日米関係はきわめて友好の関係にあるのですから、したがって、何でも率直に話ができるわけです。私も国内の動向というものに対しては十分承知をいたしておるわけでありますから、したがって、まあ、もみ手をするとかなんとかという性質のものではない。日米両国の将来の関係、これがやはり長期にわたって良好であれかしと願っておる。こういう立場から、そういういま御指摘のようなもみ手とかなんとかというのでなしに、きわめて素直な話し合いをしたいと思っております。
  110. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 とにかく、今度の首相のアメリカ訪問の際の沖繩の話について沖繩側では非常に重大視し、特に深い関心を待っている。もし期待にこたえられないような結果が起こる、つまり、挫折感というものが大きく広がると、これはかなりアメリカに対する態度その他というものが沖繩において、あるいは日本において変わってくるということは十分に腹に置いて折衝されたい、こう思っております。
  111. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私も、総理の十一月の訪問というものは、これは沖繩に限らず、日本国民も大きな期待を寄せておると思いますから、その場合に、やっぱりある成果をあらしめるように全力を傾けたい、こう考えております。
  112. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次に、あす首相が台湾を訪問されるそうです。まあ、表向きは親善訪問、しかし、親善訪問ではあっても、これは単なる親善訪問に終わるものとは思っておりません。おそらくアジアの諸情勢についての話し合いが行なわれるだろうというふうに考えておりますが、私どもがおそれるのは、とにかく台湾は反共の急先鋒の国だ。特に中国に対しましてはそういう態度が強い。この国で、もし台湾のとっておるような態度に対してあるいは同意を与える、あるいは歩調をそろえるというようなことになっていくのではないかということをおそれる。この訪問自体が私どうもアジアにおける反共陣営の強化につながる。色目ばかりじゃなく、実際そういう結果を招来するのではないか。また、それが中国側に与える影響というものも相当あるんじゃないか。もちろん、今日中国は一種の混乱状態にありますから、しかし、日本と中国との関係というものは、貿易も行なわれておりますし、将来のことを考えれば、混乱——混乱もそういつまでも続くもんじゃない。そうすれば、日本と中国との関係はやはり何か改善される方向に行かなければならぬ。このときに総理が台湾を訪問されるということは、やはり一つの、何といいますか、波紋を呼んでくるんじゃないかと思うんですが、これは長期路線として三木外務大臣は日中間の平和共存ということを言われておったんですが、それと矛盾するんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。
  113. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは矛盾すると私は思っていないのです。アジアはいろんな政治的な立場を異にする国が多いですからね。したがって、反共的な一つのグループをつくるというようなことではアジア外交ということにはならない。いろんな立場が違うのですから、そういうことになるわけではないのです。単なる親善であり、理解を深める。理解を深め、かつ親善の目的を達成するということ以外にはない。また、国民政府との間には日本は国交も回復しておるし、大使も交換しておるわけでありますから、今度東南アジアを訪問される機会に台湾を訪問しようということは、これは当然のことだと思います。アジアにおける反共ブロックの結成というような意味を持つものではないと考えております。
  114. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 とにかく、五八年でしたか、五七年でしたか、岸総理が台湾を訪問された。十年ぐらい前の話ですが。池田内閣のときには、池田総理は全然台湾を訪問されなかった。かなり慎重だった。しかし、あのときに吉田書簡でだいぶ問題が起こりましたけれども、今回の佐藤総理の訪問というものは、私は、外務大臣がそう言われても、やはり相当、結果はいろいろな波紋を起こすんじゃないだろうかと思うわけですが、新聞等に伝えられるところによりますというと、何か沖繩問題が論議されるようなことが伝えられておるのであります。つまり、アメリカ沖繩から撤退する、あるいは沖繩軍事基地を縮小するというようなことになるとかということを台湾は非常に懸念しておる。そして、この問題もまた論議されるであろうということが伝えられておるわけであります。総理と蒋介石あるいは向こう政府首脳部との間に縄沖問題を討議するということが議題に含まれておりましょうか。私は、この問題が含まれておったらたいへんだと思います。
  115. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私の承知する限りでは沖繩問題が今度の台湾訪問のときの議題になるということは私承知をしておりません。そういうことはない。
  116. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それははっきり言えることですね。  次に、日韓関係の問題でお伺いしたいのです。日韓閣僚定期会議が行なわれましたあのあと外務大臣にこの問題についてお伺いする機会がなかったのですが、あのときの私どもの受けた印象は、どうも何か韓国から要求されて言いなりほうだいになるという感じなんです。日韓条約の締結の際に、有償、無償で五億ドル、それから民間の借款でもって三億ドル以上というような取りきめがなされておる。それがまだ計画的に使用されておらない。それだのに韓国側からさらに二億ドルの借款の要求がある。そしてこれは第二次五カ年計画に関連をするものだが、総理が朴大統領就任式に行かれた際に約束をしてきたのだということが伝えられておる。それでとうとう押し切られて二億ドルを認めたようなことになって、しかも、償還能力の問題については、利子を返すだけで元金の償還能力の問題についての言明がないというようなことからして、私ども非常に懸念にたえないのです。何でこうも年じゅう韓国におどされたり、それから押しつけがましくやられて、譲歩してうんうんと聞くのかということなんですが、こういう態度が日韓会談の前から一貫しておるのじゃないかと思うのです。私は、韓国に対する日本外交態度というものは、これはもうちょっとしゃんとしてもらわなければならぬのじゃないかと思うのです。たとえば北鮮の人々の帰還の問題についても、韓国側から一々文句を言ってきて、その圧力が相当きいておるように思うのです。今度の国内の学校の認可問題ですね。これなんか私は韓国がいろいろ言うことは内政干渉だと思う。こういう内政干渉のことを平気で言ってくるというよう状況も、韓国は、率直に言えば、えらい高姿勢でつけ上がっているじゃないかという感を受けるんですが、三木外務大臣は、この韓国との外交について、低姿勢なり、あるいは押しまくられるというような印象を与えるようなことはぜひやめてもらいたいと思うのですが、どうでしょうか。
  117. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 日韓の閣僚会議、これは、向こうは五カ年計画をやっておって、非常に五カ年計画に期待を寄せ、また、これを繰り上げて実施したいという非常な熱意を持っておるわけであります。日本としても、一番隣国でもあるし、韓国が安定してくれるのは日本の望むところであるので、できるだけのことは韓国にもしようという基本方針でございますが、しかし、押しまくられたというわけではないので、二億ドルの民間借款を御指摘になっていると思うんですが、これば、ある程度日本もやはりこの際五カ年計画に協力しようということで、各省で大体いろいろ話をしておった。そういう線から非常にそれたということではないのであります。しかも、その実施については今後話し合ってやるというわけでありますから、すぐにぽんと二億ドルを出すというわけでもない。まあ新聞紙上では、日本が韓国に二億ドルの、そういう借款といいますか、何か韓国に二億ドルを渡したような感じを受けるとすれば、それは事実に違うんで、それはちゃんと輸出入銀行を通じてやるわけですから、ちゃんとした金利も取りますわけで、これはしたがって韓国の五カ年計画を助けるという意味でありますから、そのことが非常に日本政府考えておった線を上回ったというものでもないんです。各省で話しておったような大体の線ということでございます。そういう印象を与えたとしたならば、これはわれわれの報道機関への説明が十分でなかったと思います。
  118. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そういう印象は私だけじゃない。新聞なんかの書いておるところ、あるいは経済雑誌なんか見ましても、そういう印象を受けたように見受けられるんですね。いずれにいたしましても、韓国の相当高飛車な態度というものは、これは新興国で、あるいは旧来の日本と韓国との関係からいって、あるいは韓国はそういうような態度をことさらとるのかもしれませんけれども、しかし、私どもとしては、少なくともそういうような印象を与えるような外交は行なってもらいたくない、こういうふうに考えております。  ほかにもいろいろ質問したいことがございますけれども、時間が参りましたので、私は終わります。
  119. 黒柳明

    ○黒柳明君 一、二重複する点があると思いますけれども、なるたけ早く終わりたいと思います。  沖繩の問題について政府態度はきまっていない。非常に遺憾だと思うんですが、けさ新聞報道、あるいは前からの総理の話なんか聞きますと、各党の態度がきまってから、出方を見てから、あるいは国民の世論の動向を待ってと、このようなことで政府態度をきめたいと、こういうようなことがことばの端々、また新聞論評に出ております。これは先ほどから言われたように、当然政権担当者として、むしろみずから沖繩の構想を打ち出して、それで各党の批判を仰ぎ、また国民世論のいろんな注文も聞いていくと、こういうことが当然だと思うのです。これは沖繩だけじゃないですが、当面は沖繩が一番重要課題になっておりますから、沖繩のことに話をしぼってもこういうことは言えると思うのですけれども、まるっきりこれは逆だと思うのですがね。政府のこういうような態度、これは非常に沖繩の本土復帰熱望、そういう情熱とは反するような、口では非常にりっぱなことを言っていらっしゃいますが、行動自体、こういうような気がするんですけれども、外務大臣としてこういう態度について一体どのような見解をお持ちでしょうか。
  120. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は黒柳さんとは違った感じを持っているんです。この問題は、政権を担当する者として領土問題に関係する問題というものは、きわめてやっぱり重要な問題でありますね、ほかの問題に比べて。だから、慎重にならざるを得ないと思います。だから、初めから政府方針はこうだということをきめて、そうして国民に呼びかけるということも、事と問題によったらそういう式のほうが、民主政治のもとにおいては好ましい場合もありますが、沖繩問題というもの、森君は沖繩小笠原と言えと言うのですが、沖繩小笠原問題というものは、非常にいろいろ深刻な問題を含んでおりますから、おのずからやはり黒柳君の言われるような時期があろうと思います。常に国民の世論の動向ということも、これは無視するわけにいかない。そういうことも見きわめながら判断を加えていかなきゃなりませんので、常に先へ、そういう世論の動向というものを見きわめる前に、政府意見はどうだ、これに対して国民意見を聞きたいというような形にしては、どうも私は、まだそういう時期に来ていない。これは適当な機会が来れば、そういう黒柳君の言われるようなことはあり得るわけですが、いまはまだやはりそういう時期が熟しているとは思わないのです。しかし、この問題に対して、だれが見ても、やはりこれだけの国内の世論というものがあるわけですから、これをこのままこの問題に取り組まないで、いろんなことばだけの問題としてほおかぶりをするということは許されない。したがって、この問題は当然に、政権を担当する者としては最も重要な課題として、日夜このことに心を砕いていることは間違いのないことです、だれが考えても。これだけの世論が国内に巻き起こっているときに、これをただことばの先でというようなことを考える者はない。政権担当者はだれも深刻に考えておるが、それをすぐに、いまこういう方針だと、国民のこれに対する賛否はどうだという、そういう形というものは、よほど考え方が煮詰まった時期でないと、それは簡単にやるべきものでないと私は思います。だから、時期の問題で、取り組み方は、これはきわめて真剣な課題として取り組んでおることは間違いの余地のないことであると、こう確信をしております。
  121. 黒柳明

    ○黒柳明君 おことばを返して申しわけございませんけれども、私はその時期という問題についても、むしろもう時期がおそいのではないかと、こう思うのですけれども、沖繩本土で、規模の大小はともかくとして、本土復帰反対運動が起こっていると、こういうことを外務大臣お聞きになったことございますでしょうか。本土復帰の反対運動。本土復帰するのはおれたちはいやだと、こういう運動が起こっている。一つは、やはり経済的問題も伴っている。日本政府は何も経済の青写真つくってないんじゃないか。施政権返還に対しても相当柔弱だ。さらには二十二年間——いまの時点においても、外務大臣のおことばに、機が熟さないというような御発言があったわけですけれどもね、そういうことは、現地住民には耳に入れることができないおことばだと、こういうふうに私は思うのです。この国会の場でですからそういう発言が許される。もし外務大臣がそれを沖繩でおやりになったとしたら、沖繩の世論からどのような反発を食うかということは、私はちょっと想像にかたくないのですけれども、こういう大小、規模は問題ないと思う。それは別にして、こういう芽ばえが出てきているということは、非常におそろしいことだと思うんです。こういうことも十二分に外務大臣はお考えになりませんと、時期が来ていない云々なんということで、失礼な話ですけれども、もしそれがごまかしであるようなことならば、これはいつの間にか日本政府が置き去りになって、そしてあっと言う間に事が片づく。アメリカ当局としても軍事基地としての重要性について、いろいろな意見言っております、当事者が。後退しているとか、移転したらいいとか、そういう議論が出ている中に、真剣に取り組んでいるはずの、またそれを何回も発言して確約しているはずの日本政府が、まだ総責任者の外務大臣が時期が来ていないと——いろいろなそこに含みもあると思いますが——というような発言をなさるということは、こういう運動も起こさざるを得ないような一つの動機にもなるのじゃないかと、私は非常に憂えるとともに、いまの大臣のお考えを根本から改めていただかなければならないと、そういうふうに考えておりますが、この復帰運動、こういうことによく耳を傾けてもらいたいと思うのです。小さいものがやっぱり大きくなるのです。初めから大きいものありませんよ。一方的見解みたいになりましたけど、いかがです、大臣
  122. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは復帰反対という、そういう運動があるということ、これは全体の声だと私は思っていない。これは沖繩人たちの全体の声、日本国民の全体の声は復帰反対ということではなくて、やはり早く復帰したいということである。この前提に立って沖繩問題政府考えざるを得ない。いろいろな運動はあるでしょう。しかし、そういう前提の上に政府は立つ。また、沖繩問題を真剣に考えていないのだということならば、沖繩人たちにも失望が起こりましょうが、総理は、十一月に訪米されるときに沖繩問題というものが一番重要な課題になるということを言っておるわけでありますから、それまでの間にいろいろ各方面意見も徴するし、また、私が今回アメリカにおいてアメリカの首脳部と話し合うこともいろんな参考になりますから、そういう上に立って、そして政府の腹づもり、腹といいますか、政府方向をきめて、そして、そういうときが来て適当な時期が来れば、国民にもそういう考え方をお伝えする場合もあるでしょうし、そういうことですから、何もこの問題をただじんぜん日を延ばすということでないのですから、私の答弁沖繩の人が聞いても、決して失望するものではないと私は信じております。
  123. 黒柳明

    ○黒柳明君 現地の人の要望は、総理アメリカに行って相当沖繩のことを真剣に討議してくれるのだろう、解決方向に向かうだろう。と同時に、先日総務長官もいらっしゃって……。それよりも、なお現地で希望するのは、外務大臣がぜひ沖繩に来ていただきたいということなんです。先日も私申しましたですけれども、外務大臣沖繩に来ていただかないで、そうして、まあまた再三申しわけないのですけれども、真剣に取り組んでいる、取り組んでいると。いや、総理にまかせないで私も真剣にやっているのだとおっしゃっても、現地でその熱意が非常に割引されて考えざるを得ない。それはお忙しいことはわかっている。ですけれども、一日か二日あれば各界の責任者、たま百聞一見にしかずのことわざのとおり、まずその土を踏んでいただければ、ひしひしと外務大臣がおっしゃった裏づけというもの、さらにその外務大臣の熱意が倍にもなって対米折衝に当たっていただける、こういうことなんですね。お忙しい中を、なぜ沖繩に訪問していただけないのか、もう先頭切って沖繩に行かなきゃならない立場にあるのじゃないか、こういうふうな意見が強いのですけれども、いかがでしょうか。
  124. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私、御承知のように、いろんな国際会議が重なりまして、実際に時間的にもあんまりゆとりがなかったわけであります。だから、沖繩訪問したいと思っておりますが、訪米前には行けなかったけれども、しかし、塚原総務長官の話も聞きました。まあ、あらゆる沖繩問題に対するいろんな見解を私はドキュメンタリー、出版物、あらゆるやはりこれに対しては沖繩関係するものは私は目を通しておるわけです。これは、だれでも、これだけの国内において世論というものがあるわけですから、この世論というものにだれも無関心でおれる政治家は私はないと思う。これはどの党派といえども、この問題をどう処理するかということは、日米関係の将来にも影響する問題だと思っておるわけであります。したがって、そういう沖繩に対する態度というものは、私は政治家であれば甲乙はないと思います。ことさら政権を担当しておる者としての責任は一般の人よりも重いことは明らかであります。ただ、そのときどきにいろんなことをこうだ、どうだというそういう考え方を述べて、国民の反響を求める方法もありましょうけれども、しかし、そういうことをするためにはいろいろな懇談会もその一つでしょうし、懇談会ばかりでありませんよ、ほかのいろんな意見も徴し、各党の意見だって耳を傾けなけりゃならぬ。そういういろいろな材料を踏まえて、そうして、政府としての腹づもりをつくって、しかも、それが先のことでないのですからね、十一月に訪米するという時間まできまっておるのですから、それまでの間に慎重なやはり準備をするということを、それも待てないんだと私は考え国民はいないのではないかと。したがって、いろいろこの場合はああだこうだということは申し上げませんが、それはやはり慎重に検討しておる過程でいろんな意見が出ることが必ずしも私はこの問題の取り扱いとして適当だとは思わないのです。そういうことで、もうちゃんと、こう話をする日もきまっておるのですから、そういういろんな環境に対して黒柳さんも御理解を願って、政府はいろいろこれからやってみて、その結果に対しての御批判は受けなきゃならぬが、やろうということに対しては、まあしっかりやってみろという立場をとってもらいたいと私は願うものであります。
  125. 黒柳明

    ○黒柳明君 総理も、訪米前にもう一回沖繩訪問はこれは不可能であろうと、こういうようなことになったのですけれども、せめて外務大臣に、まあ一回も行かれたことないのですから、訪米後にでも、総理訪米前、その中間をねらってひとつぜひ一回視察されて、それで外務大臣の強力な意見を対米折衝に盛り込んでいただきたいと思うのですけれども。
  126. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私も一回沖繩訪問しなけりゃならぬと考えておりますが、時期は別として、そういう機会を持ちたいと思っております。
  127. 黒柳明

    ○黒柳明君 それから時期、時期って、昨日も新聞報道によりますと、要するに、外務大臣ラスク、マクナマラ会談のときに何らかの総理のトップ会談のときの下打ち合わせをしたい。何かの方向を持っていきたいと。総理大臣はまだ時期が早いと。外務大臣はちょっとがっかりしたと、このような——がっかりしたとは出ていませんけれども——そういうような報道がありましたけれども、まあ心境は、相当ショックだったようなことですけれども、もう外務大臣は時期が来ていると、もういまやらなきやならない、当然そういうふうにお感じになっている。総理とちょっとズレがあるような感覚で私たちは見ているのですか、あの新聞をお読みになった人たちは、みんなそういうふうな感じを大なり小なり受けるわけですけれども、ほんとうにここで、くどいように、先ほどから社会党の先生も何回もおっしゃって、くどいようですけれども、きのうの話、ことに外務大臣がここで、もう時期に来て、何らかの構想を持って、自分としてもアメリカに接触をしたいんだ、そういう時期に来ている。こういうふうなことを外務大臣ははっきりお感じになっていると思うのですが、きのうの外務大臣、まあ新聞発表において大体尽くされていると思うのですけれども、もしお差しつかえなければ、総理とどのような点についてお話しになったのか、お聞かせ願いたいと思います。
  128. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) きのう総理とはざっくばらんにいろいろな問題話したわけですが、ただ総理は、たとえば一番近い日程では、沖繩問題懇談会の話もしております。自分の都合で日程を十二日かしらにやる。台湾の訪問から帰ってきてすぐです。そうしていろいろな意見も聞いてみたい。そういうことで、せっかく懇談会も始まって、ほかにもいろいろ検討しなければならぬ問題もあるので、まだこの時期に、日本政府方針というものをきめて、そうして外務大臣折衝をするという時期ではないのではないか、こういう見解であって、私ども、この時期として、それは私自身政府方針があって話をすれば話しやすいことは明らかです。しかし、いろいろな環境から見て、そういうことはいまの環境ではやはりむずかしいなあという感じも私は持ったわけであります。しかし、こうやってワシントンに行って、そうしていろいろ首脳部と会うわけですから、そういう率直な話し合い、しかも、これはアメリカとの間には日本は一番友好関係を持っておる国ですから、話し合いというものはきわめて率直であることは明らかでありますから、わざわざ行って話すわけですから、そういう話というものは、また総理方向をきめる場合に、こちらが方向をきめて話をするということができれば、それも一つの形としては、そのほうが、話が進む上においては、そういうほうが便利かもしれませんが、現在ちょっとなかなかそこまで至らぬというならば、至らぬという時点に立って、そうして私がもう最善を尽くしてみる。これは何かと言ったら、全部総理訪米ということに焦点を合わして、これだけの国民の期待のもとに行かれるのですから、できるだけやっぱり成果をあげてもらいたいと願っておるわけでありますから、それに対して何らかのいろいろな腹づもりをする上に対する意義のある会談にしたいと、こう願っておるわけであります。
  129. 黒柳明

    ○黒柳明君 その昨日の会談においても、外務大臣、初めから何らかの構想を持っていきたいという御意思は、総理から早いと、それを全面的に納得されたかどうか。納得されるような外務大臣じゃないと思うのですけれどもとにかく日本態度がきまれば、案外、沖繩問題も早く片づく、アメリカでもそう言っているわけですね。それが何か今度の外務大臣の訪問は、向こうからお話を承る、こういう態度で行くんだというような報道ですけれども、これじゃあくまでも根回しにならないし、全面的に総理訪米に焦点を合わせてといっても、話は積み重ねていかなければ、総理が行ったからすべてこれでという可能性も少ないし、前からの話し合いというものが重要になってくるわけですけれども、全面的に総理のことばを納得したのですか、外務大臣は。そのとおりだと、あるいはいま早いと。
  130. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いろいろ段取りなどもありまして、いまの段階で私が、まあそれは便利であることは間違いないですよ、話し合いに。しかし、いまの段階でやはり無理だということで、完全に意見が一致したわけです、その点では。できれば、それは日本方針を持ったほうが話しやすいですよ。しかし、いろいろな総理は説明もしておりましたが、いまの段階政府方針を持って私がアメリカの首脳部と会うということは無理だということは、完全に両者の一致した意見であります。そこで、しかしこれは、沖繩問題を議題にして率直な話し合いをするわけです。しかも大事なことは、日米間という、いわゆる経済ばかりでないのですね、日米間というものは、やっぱり日本の防衛に対しても責任を分かち合っておるのですから、ほかの関係よりもずっと両者が率直な立場話し合いができるのではないか。われわれとしても日本の安全というものに対しては無関心でないし、アメリカでも、責任を負うておるアメリカとすれば、これは無関心でないわけですから、両者の利害というものがそんなに大きな食い違いがあるとは思わないのです、これは。だから、そういうかけ引きずるのでなくして、率直な話し合いをすることは、そういう十一月の訪米に対しても非常なやっぱりこれは参考になる会談であるということを私は信じておるものでございます。
  131. 黒柳明

    ○黒柳明君 先刻民社党の委員長総理と相当の話が進んだと、沖繩問題について。社会党の委員長とも話し合ってみたいという報道が出ておりましたけれども、やっぱり沖繩問題について野党の見解も出ましたし、政府態度決定が迫られておりますし、この時期に、やはり野党からの呼びかけではなくして、総理から、自民党総裁のほうから呼びかけて、そうして党首会談を開く。形はどうあれ、各党の見解を聞く。こういうときにも来ていると思うのですけれども、これはもう沖繩問題でもそうですし、また、北ベトナムへの社会党の委員長、南ベトナムへの総理の訪問、これについてもやはり先刻私は質問しましたけれども、当然事前にお二人が会って、賛否はともかく、意見を交換する。会うことに大きな意義がある。話し合いを持って、話し会うことに国際世論を納得させる一つの力を持ってくると思う。出てくると思う。日本のウエートを、発言力を大きくする。ですから、沖繩問題に対して、また社会党の委員長の北ベトナム訪問についても、総理から、自民党総裁としての総理から野党の党首に対して会談を申し入れる、こういうサジェッションを外務大臣としてもぜひしてもらいたいと思いますが、 いかがですか。
  132. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) その前に党首と会うということは総理自身の判断にもよるわけですが、しかし、社会党もやはりベトナム戦争というものを早期に解決するほうがいいという立場ですから、したがって、今度勝間田君がハノイに行かれるについても、ハノイという立場から、ハノイを訪問してハノイの首脳部と話をするという、こういう場合においても、やはり何とか早期に和平を実現したいという角度から話されてくるのですから、それは政府としても非常に参考になることだと思っております。また、これは政党として何も敵味方ではないのですから、そういうことで、そういうことに対して政府外交をやる上においていろいろ参考にすべきだと思います。しかし、党首会談自身総理自身の判断ですることでございますから、そういう声が世間にあることは事実ですから、いろいろ検討されていると思います。
  133. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 十二時半に約束があるのですが、時間が過ぎましたから、あと一問でひとつけりをつけてくれませんか。
  134. 黒柳明

    ○黒柳明君 それでは、まとめてお聞きしたいのですけれども、中共の核開発あるいは沖繩の通常基地ですね。あらゆるところに沖繩に通常基地、それにかわるようなものができておりますから、中共の核開発とともに沖繩の核の利用性というものが後退しつつあるということですが、要するに、今回沖繩返還にあたって米軍の、アメリカ側沖繩の核兵器あるいは通常兵器の重要性、必要性、価値というものが後退しつつある、あるいは薄らぎつつある、こういう認識、これは米国側でもそうですが、持っているのですが、わが国としてもそういう認識を十二分にまた重ねて与える、こういうことが、沖繩返還アメリカを納得させる大きな原因になると思うのですけれども、極東の緊張と脅威、こういうことがアメリカ沖繩を確保する、沖繩を維持する大きな原因になっている。ところが、緊張と脅威というものは、ベトナム戦に、通常基地の利用的価値あるいは中共の核との結びつきから見て、核、通常基地ともに非常に従来アメリカが言っておった極東の脅威と緊張という意味がぐっと薄らいできているのではないか、こう思うんですが、外務大臣のこの点についての見解を、まずイエスかノーかということを、どういう見解をお持ちになっているか。これを向こうにぶっつけることによって相当沖繩返還時期というものの速度というものは早まるのではないか、こう思いますし、また、これは何もこちらだけではなくて、アメリカ国内においてもさんざんこういうことがいわれているわけです。それについての大臣の見解はいかがでしょうか。  それからもう一つ、北方領土に対して、いま衆議院は行っております。参議院は終わりましたけれども、政府の見解は、北方領土の問題はただ単に遠くから望遠鏡で見ておればいいという問題ではない。そのひまがあるならば、失礼ですけれども、国会でどんどんソ連に対して強硬に政府として早く返せ。これは沖繩よりももっと法的根拠——わが国か返還要求する権利、そういうものは明白になっているわけです。すでに解決済みだ、決定済みだと言っても、そういう歴史的証拠、そういうものがない。ですから、ここにおいても当然沖繩小笠原を含めて北方領土の返還問題が取り上げられるし、重要性があるから衆参両院で派遣されて視察しているんですから、これについても政府は相当な態度でまたソ連に対しても交渉を始めるといいますか、あらためて態度をしっかりしていただきたいと思いますが、いまの時点においてこの北方領土の返還について政府はどのような態度でいらっしゃるか。  それからもう一つは、先ほどの北爆、その原則は客観情勢が是認するだけの原則がないと言いますけれども、原則というものを出して、その原則にマッチする客観情勢もつくっていかなければならないと思うんですね。いつまでたったって、日本が北爆を停止せよという、そういう提案をするような客観情勢はできないのじゃないかと、こう思うんですが、しかし、わが国が原則を示すことによって客観情勢は変わってくると、こう思うんですが、いかがでしょうか。この三点ですが。
  135. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 第一問は、黒柳さんと私は見解が違っております。極東情勢の緊張が次第に緩和しておるというふうには見ていないんです。やはり、相当な緊張の状態の中に極東情勢はあると見ざるを得ない。  第二番目については、北方の領土については、これは政府は、御指摘のとおり、しっかりした態度で、せっかくコスイギン提案もあるわけですから、これから外交交渉のルートに乗せようと思っております。  もう一つは、北爆、さきに岡田さんの御質問と同じように……
  136. 黒柳明

    ○黒柳明君 原則と客観について、原則に客観も順応してくると思うんですよ。
  137. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いや、そういうふうに私は考えないんで、民族自決という旗を掲げればベトナム問題が解決するというふうには見てないんです。それは民族自決はごもっともですけれども、民族自決といったところで、いまのようなところでは自決をするだけのやはり条件がありませんからね、どうしても。
  138. 黒柳明

    ○黒柳明君 北爆の停止ということについてですね。
  139. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) あの戦争を片づけて、民族自決の原則が適用できるベトナムを一日も早くつくるということが現実的だと私は考えております。
  140. 黒柳明

    ○黒柳明君 北爆停止ということを提案すれば、その客観がそれに順応してくる。客観情勢はまだ北爆停止ということをわが国が主張する客観情勢ではないと先ほどおっしゃったわけです。ですから、原則というものを出せば、客観が順応して変化してくるということも考えられるんですが、原則とは北爆停止の主張。
  141. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 原則は北爆停止ということではなく、民族自決という原則ではないでしょうか。民族自決という原則はそうでしょうが、北爆を停止すればすべてが解決するというものでもないと私は思います。やはり、話し合いがある程度つかないといかないんで、そこにやはりどちらか一方が北爆停止すればすぐに和平が来るという保証もありませんから、この問題は戦争当事者の間に非公式に——仲介者があっていいですよ——やはり話し合えるような機会を持って、そうしてこの戦争を片づけるというような話が全体としてできなければ、北爆停止、それでベトナムに和平が来るというふうに簡単には考えておらないということでございます。
  142. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十五分散会