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1967-11-01 第56回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年十一月一日(水曜日)    午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 大坪 保雄君    理事 安倍晋太郎君 理事 高橋 英吉君    理事 濱野 清吾君 理事 加藤 勘十君    理事 横山 利秋君 理事 岡沢 完治君       千葉 三郎君    馬場 元治君       森山 欽司君    山口シヅエ君       井岡 大治君    中谷 鉄也君       沖本 泰幸君    松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君  委員外出席者         総理府人事局次         長       宮内 通雄君         警察庁警備局警         備課長     三井  脩君         行政管理庁行政         監察局監察官  北条 久弥君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省刑事局公         安課長     豊島英次郎君         法務省入国管理         局長      中川  進君         外務省アジア局         北東アジア課長 野田英二郎君         文部省初等中等         教育局地方課長 別府  哲君         厚生省援護局長 実本 博次君         運輸省自動車局         長       原山 亮三君         最高裁判所事務         総長      岸  盛一君         最高裁判所事務         総局総務局長  寺田 治郎君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢崎 憲正君         最高裁判所事務         総局経理局長  岩野  徹君         最高裁判所事務         総局民事局長  菅野 啓蔵君         専  門  員 高橋 勝好君     ――――――――――――― 十月七日  委員下平正一辞任につき、その補欠として中  谷鉄也君が議長指名委員に選任された。 十一月一日  委員山下元利君及び三宅正一辞任につき、そ  の補欠として森山欽司君及び井岡大治君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員森山欽司君及び中谷鉄也辞任につ吏、そ  の補欠として山下元利君及び三宅正一君が議長  の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 八月十八日  一、刑法の一部を改正する法律案内閣提出、   第五十五回国会閣法第九四号)  二、裁判所司法行政に関する件  三、法務行政及び検察行政に関する件  四、国内治安及び人権擁護に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  派遣委員からの報告聴取  裁判所司法行政に関する件  法務行政及び検察行政に関する件      ――――◇―――――
  2. 大坪保雄

    大坪委員長 これより会議を開きます。  先般青少年犯罪実態及び裁判所法務省関係庁舎整備状況調査するため、委員宮城県、岩手県、青森県の各地に派遣いたしましたが、この際派遣委員よりその報告を求めます。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 去る十月十六日より行なわれました派遣委員調査につきまして、ごく簡単にその概要を御報告いたします。  なお、詳細は別途報告書を提出いたしますので、会議録にとどめていただきたいと存じます。  私どもは、仙台、盛岡青森の各都市において一、青少年犯罪実態調査、二、裁判所法務省関係庁舎整備状況などの調査項目について懇談会を開き、あるいは宮城刑務所青葉女子学園盛岡少年院青森少年院の各施設を視察するなどの方法により調査を行ないました。  今回の調査に当たって特に印象を受けました諸点を申し上げておきます。  一、他の官公庁に比較して、法務省裁判所系統の建物が著しく改築が立ちおくれていること。  二、少年犯罪増加傾向が鈍化してはいるが、中流家庭学生犯罪年齢の上昇、集団化性犯罪窃盗等増加が見られる。さらに総合的な対策が必要と思われる。  三、道交法違反増加は、いろいろな角度でさらに検討する必要がある。  四、裁判所法務省系統人員不足が強く訴えられていること。他方では長年の臨時雇用員が存在すること。職業病の増加の陳情があったこと。  五、刑務所少年院をはじめ、特殊な作業をしている公務員は、労働条件についてさらに優遇する必要があること。  六、刑務所少年院等における食費はあまりにも低廉過ぎる。至急増額の必要がある。かつ、運営についても検討の要を認められる。  七、出かせぎに伴う犯罪、家出に伴う犯罪等については、予防措置を総合的に措置する必要がある。  八、多くの有意義な懇談と視察をして、国会としても今後さらに調査改善策を検討する必要を痛感したが、政府側最高裁側がこれらの問題について解決のための熱意が不十分ではないかとすら思われ、その努力を強く期待する。  以上、簡単でございますが、御報告申し上げます。
  4. 大坪保雄

    大坪委員長 派遣委員からは、別途詳細な報告書が提出されておりますが、これは本日の会議録に掲載することといたします。     ―――――――――――――   〔報告書本号末尾に掲載〕      ――――◇―――――
  5. 大坪保雄

    大坪委員長 これより裁判所司法行政に関する件、法務行政及び検察行政に関する件、並びに人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。森山欽司君。
  6. 森山欽司

    森山委員 最近まで、最高裁判所をはじめとして各地裁判所で、裁判所構内外に赤旗を立てたり、あるいはいろいろな騒擾事件めいた動きが行なわれていることをわれわれ耳にもいたしますし、さらにわれわれ自身も、最高裁はじめ若干の裁判所の周辺でそういうことを見るわけであります。裁判所というところは、行政府、立法府と異なりまして、公正な立場で何が法であるかということについての決着をつけるところであると考えておったわけであります。そういうところに、われわれが先ほど申し上げましたような事態を耳にし、あるいは現にわれわれ自身がそういうことを見るというようなことは、決して裁判の公正かつ正常な運営という面から見て好ましい事態ではない。いろいろ調べてみると、裁判所外からの公安労働事件等でそういう事態が起きることもあるようでございますが、また、裁判所内部組合運動というようなことが、そういうような事態の一つになっている場合もあるようでございます。  そこで、裁判所内部事態ということで調べてみると、全司法という、組合員が一万五、六千人の公務員組合、この組合は非常に共産党勢力が強くて、四百名ないし四百五十名が共産党員あるいはそのシンパであるといわれております。十九名の組合中央役員の中で、十一名ないし十四名が党員またはシンパであるといわれておる。ことしの七月、名古屋で大会が行なわれたようでございますが、このときの役員改選を見ましても、三役及び専従の役員七名のうち五名までが党員またはシンパであるというようなことで、公務員組合運動における共産党の牙城である、公務員組合運動の中で一番共産党動きが激しいところであるというようなことを、あらためて私どもは認識をいたしました。私ども立場からすれば、たいへんこれは困ったものだと考えておったわけでございます。偶然の機会に、九月十八日の「裁判所時報」の号外というのを見たのでありますが、これによりますと、最高裁判所事務総局のメンバーと全司法労組との交渉の経過がこれに記されております。その中にこういう一節がある。これは総評第三十四回定期大会における討議を「月刊総評」という雑誌の中に書いておるわけでありますが、全司法委員長発言がございます。  この全司法委員長発言について、「裁判所時報」の中に、全司法との交渉ということで、事務総長はその発言について、まず、全司法労組一万五千人の組合員意思を代表してそういうことを述べたのかという質問をしております。これに対して全司法委員長は、「そのとおりである。」という返事をしておる。そこで、全司法委員長発言であるが、その発言は、いろいろ言っておりますが、こういうことを言っております。「日本裁判官は非常に清潔だとか、わいろをとらないとかいって、裁判所に対する幻想というものがありますけれども、しかしだれかがいわれたように、日本裁判所資本家政府手先となっていることは事実と思うわけです。」云々。そこで、私は、最高裁事務総局幹部がきょうは御出席のようでございますから、全司法組合員と申しましても、これは裁判所職員でございます。その裁判所職員が、日本裁判所資本家政府手先になっていると考えて日常の業務を遂行しておるのであるかどうか、そのことをひとつ最高裁幹部からあらためてお伺いをしておきたい。
  7. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 憲法にも定めてありますように、すべて裁判官は、その良心に従い独立して職権を行ないまして、憲法法律にのみ拘束されるということがございます。これはただ憲法にのみ規定されている事柄ではございません。従来、わが国の裁判所は創立以来伝統的にこれを守り、かつ、いかなる権力に対してもこの独立は維持するという強い伝統のもとに育ってきたわけでございます。もちろん裁判所職員は、全部がこの伝統誇りといたしまして、そして確固たる信念のもとに裁判運営に関与いたしておるわけでございまして、その裁判所資本家政府の言うがままになる、手先になるというようなことは、これは私どもからいたしますともってのほかのことでございます。全司法委員長が、一万五千の組合員の代表として、組合員がそう考えておるということを公に申すということは、まことに遺憾きわまりないことでございます。ほとんどの裁判所職員というものは、先ほど申し上げましたように、従来の伝統に従いまして、自分仕事誇りといたしまして執務いたしておる、公正かつ無私に裁判所職員としての仕事を執務いたしておる、このように御理解いただきたいのでございます。
  8. 森山欽司

    森山委員 そうすると、この、一万五千人の組合員を代表して、日本裁判所資本家政府手先になっているという表現は、組合員は同時に大部分が職員でございますから、職員立場においてはそんなことは考えておらない、そういうふうに考えてよろしい、こういうことでございますな。
  9. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 どうかそのように御理解いただきたいと存じます。
  10. 森山欽司

    森山委員 しからば、約一万五千あるいは六千の全司法組合員、その組合員立場になると、代表してそうだというようなことを全司法委員長が言うようでありますが、これは四百人から四百五十人ぐらい日本共産党党員並びにシンパがおるという、その連中はそんなことを考えておるかもしれぬ。残りの連中はそんなことは考えてないのだ、引きずられて、全司法という組合として、そういう一部の連中のものの考え方が、組合員全員あるいは全司法職員全体の意思のごとく表明されているのだ、このように理解してよろしゅうございますね。
  11. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 そのように御理解いただきたいのでございまして、委員長うしろに傍聴しているようでございますが、決して裁判所職員全員がそのように考えて職務をしているのではない。もしそのように考えて、自分たち仕事資本家それから政府手先としてやっているというように考えるとするならば、とうていいまのような執務状況の維持はなし得ないというように私ども信じているわけでございます。
  12. 森山欽司

    森山委員 いまの御返事で納得いたしました。まさにそうなければならないのでございます。公正な立場にある裁判所資本家政府手先になっておるというようなことがあっては困るのであります。同時に左翼勢力の思うままになるような行動をされても困るのであります。いまの御返事は当然のことではございますけれども、一応念のためにお聞きをした次第でございます。  それだけではないのでございまして、この「裁判所時報」を読むと、全司法委員長はこういうように述べて誇ります。「裁判闘争法廷内だけで闘うものではなくて、運動として法廷外で徹底的に広範に全労働者の場で闘うということを強調したいわけです。……しかしややもすれば弁護士まかせ、当事者まかせになる裁判闘争を、もう一度法廷外職場の地域の運動に仕立てていく、法廷外から裁判所裁判官を包んでいく、そういう闘い方をしていくことが大事ではないかと思います。」そんなことを言っているのです。最近非常に激しい法廷闘争がしばしば新聞記事をにぎわすのであります。学生運動と並んで裁判所における異常な事態というものが大きく報道されておる。一体あなた方事務当局のスタッフは、これについてどういうふうに考えているか、こういう事態に対して今後どう対処していこうとしているのか、ひとつ立場を鮮明にしていただきたいと思います。
  13. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 もとより裁判はその法廷にあらわれました証拠に基づきまして、そして法律憲法に従いまして判断され、結論にいくということは、世界各国いかなる国の裁判につきましても、それが常道でございます。それを裁判所外の特殊の勢力をもってそれに圧力を加えるということは、これまさに裁判独立に対する異常な侵害であるというように私どもは考えておるわけでございます。これがかりにイギリスアメリカでございましたならば、法廷侮辱として処断されるというケースでございますが、まだ日本はもちろんそこまではいっていない。しかしながら、それが世界各国いかなる国の実情に照らしましても、そのような外部から裁判に対して圧力を加えるというようなことはない。もしそれがあるとすれば、日本特有の現象ではなかろうか。これについては、私どもは非常に憂慮いたしておるわけでございまして、そのようなことがないように切望もいたし、また努力もいたしたいと存ずるわけでございます。
  14. 森山欽司

    森山委員 この問題は、掘り下げますともっといろいろこの機会にお伺いしなければならないことがございますけれども、いずれ法務委員会の開会のつど、ひとつ私ども立場からこの問題について掘り下げた議論をいたしたい。本日は非常に抽象的な御返事でございまして、必ずしも満足するものではございませんけれども、この問題はこの程度にとどめたいと思っております。いずれかの時期に、この問題について、あらためて事態の真実の姿というものを私どもは明らかにいたしたいと思っております。  その他、この「裁判所時報」に書いてあることはいろいろ問題でございますし、「月刊総評」に載っておるいろいろなことなどについても、専門的な見地から見ましても、非常に問題がございます。問題はございますが、きょうは最高裁の御都合で午前中だけという審議の予定のようでございます。それからまた、質疑をされる方も多数おいでのようでございますから、これに関連しての事項はこの際お尋ねをすることを差しとめまして、次の問題に移りたいと思います。  この「裁判所時報」の号外を見まして、異様な感じがいたしました。こういうことでは困ったことではないかというので、全司法新聞機関紙にどんなことが書いてあるかと思いまして、最近の新聞を入手して読んでみたのであります。これは十一月四日付の新聞でありますが、十月二十四日前ごろから、職員リボンをつけるいわゆるリボン闘争をやっているという記事が出ておる。東京地裁の所長さんがこれを禁止した。ところが、これに従わないでリボン闘争を続けているかのような記事が出ております。一体最高裁判所でこのようなことが行なわれておったのか、裁判所でこういうようなことが行なわれておったのか、この事実をひとつここで説明をしていただきたいと思います。
  15. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 最高裁判所内部につきましては、私どもいろいろ廊下を歩いたり部屋を見たりしてみたのでございますけれども、そのようなことはほとんどない。聞くところによりますと、前に、組合委員をしていた者が一、二つけていたことはあるようでございます。東京地裁につきましては、現実に現認いたしたわけではございませんけれども、一両日つけまして、そしてそれをあとでほとんどがはずしたというように聞いておるわけでございまして、その実態については、いま申し上げた程度に理解いたしておるわけでございます。
  16. 森山欽司

    森山委員 いわゆる組合運動におけるリボン闘争の問題については、ことしでございましたか、全逓のリボン闘争問題が、神戸の地方裁判所で第一審の判決か何か出ておる。それは上訴をして係属中の問題でございます。私は判決の内容を一通り拝見いたしましたが、こういう考え方で出されました判決には、個人として同意はいたしません。これはさらに上告まで持っていって、最終決着をひとつつけていただかなければならないと考えております。係属中の事件でございますから、それ以上申し上げることを差し控えたいと思います。それから、リボン闘争はいかぬのだというのは、一応最高裁判所職員の場合は別でございますけれども政府としてはリボン闘争はいかぬのだという方針でいっているようでございますし、人事院でも、これは紙に書いたもので、そういうことについて、リボン闘争をやっていいというようなものは出ておらないように私どもは考えておるわけであります。個々の事件等について若干の拘束力のない判断は、それはあるかもしれません。しかし、そういう事態でございますから、これらの事例について、私は法理論を振り回そうとは思いません。私が伺いたいのは、勤務時間中にリボンを着用することについて、最高裁当局はどのように考えておるのかということであります。  裁判所職員というものは、全く政治的に中立でなければならぬ。したがって、その職域も、特に勤務時間中は、厳粛かつ公平に一般世人から見られなくてはならないものでございます。ここに、去年の一〇・二一のときに、徳島県の裁判所廷吏がこういう一〇・二一――これはちょっと破けていてわかりませんが、賃金を一律七千円上げろ、ベトナム侵略反対、全国一律最賃制を法制化せよというのを服につけていた廷吏があった。これは一般世人の何でもない人でしたら、こんなことで一体裁判所は公正な判決をするだろうかと疑惑を抱く。裁判長はもちろんつけていたわけではない。一般廷吏がつけておったようでありますが、公安労働問題なんかが問題となっておる場合に、裁判所廷吏がこういうものをつけておりますと、裁判所は一体公正な判決をしてくれるのかどうかということについて、専門家でない一般の人は疑惑を抱くわけであります。そういう点から考えて――これは去年の例で、当時そういうことがいろいろ言われたわけであります。勤務時間中にリボンを着用するがごときは、裁判所職員としての品位を傷つけるものであるばかりでなく、職務の公正な執行を阻害するものと考えられるが、一体どうであるか。もしそういうことであるとするならば、勤務時間中の組合活動としてこれは禁止さるべきではないだろうか。裁判所職員としてあるまじき行為であって、監督者勤務時間中の組合活動として当然禁止さるべきものと考えるのですが、最高裁判所当局のこれについての見解を承りたい。
  17. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 御趣旨のように、勤務時間中の組合活動としてリボン、いわゆるリボン闘争は禁止さるべきものである、このように考えております。
  18. 森山欽司

    森山委員 これは禁止さるべきものであるという結論はわかりますけれども、こういうことをやると、裁判の公正さに疑いを持たれる、職員としての品位を傷つけるものだ、だから、こういうことはもうやっては困るのだと私ども常識的に申し上げているわけであります。別に法理論をここに特に言っているわけではないのであります。それについて、そうですという御返事はけっこうですが、もう少しものの考え方、われわれの常識論について、法律家でもおありでありましょうから、ひとつ重ねてお話を伺いたいと思います。
  19. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 この点も御指摘のとおりでございまして、アメリカイギリスあるいは大陸法糸のドイツ、フランス、イタリア、それからまたインドの裁判所等に参りましても、そのようないわゆるリボンをつけて公衆に接する、当事者に接するというようなことは皆無でございます。裁判所といたしまして、先ほど申し上げましたように、全く政府からも国会からも、しかもジャーナリズムからも、すべて独立に、完全に、公正無私に仕事を行なうべきところといたしまして、そのようなリボンがつけられて、勤務時間中に特殊の雰囲気がかもし出されるということにたりますと、これはまことによろしからざる影響世人に与えるというように私どもも考えているわけであります。
  20. 森山欽司

    森山委員 常識論としてはしかるべきでありますが、昨年の十月二十一日も、ことしの十月二十六日も同じような事態が絶えないということは、組合運動の性格もさることながら、最高裁判所当局がだらしないのじゃないかというふうに考えますが、いかがですか。
  21. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 そのようにおしかりを受けますと、まことに申しわけないと存ずるわけでございますけれども、できるだけ世人からは尊敬を受け、そしてまさに公平に裁判が行なわれ、全くすべての政治的な色彩からは無色である、すべてのところから完全に独立しているというような職場がつくり出されるように私どもも今後とも努力をいたしたいと思います。
  22. 森山欽司

    森山委員 常識的な立場から私は申し上げたのであって、法理論を展開して、その法理論を、重箱のすみをつついて、そうして自分たちのやりたいほうだいなことをやろうとするような動きからすれば、さらに精緻な議論になりますが、私どもはきわめて常識的な、一国民としての立場からこういう点について伺ったのであります。  このリボン闘争というのは、これによって――先ほどちょっとお触れになったようですが、職場に特殊な雰囲気をかもし出す、服務規律を弛緩させる影響を与えて、事務の正常な運営をそこなわしめるおそれを生ずることになるのではないか。先ほど私は申しましたが、一般の人が裁判所に行って、これは原告あるいは被告として裁判所に行って、そして裁判所はだいじょうぶかな、安心ができるかな、裁判長がつけていないでも、廷吏さんがこういうものをつけてずらりと並んでいるとか、あるいは職員の人がみなこういうことをやっておりますと、そういう疑いを持つのは常識でございます。あるいはそればかりでなく、おそらくいま裁判所事務当局最高幹部お話は、そういうことをしてもらっては困るという考えでありますが、そういうことをしてもらっては困るというにもかかわらず、あえてそういうことをやった。まあ外側を見ますと、一〇・二一にしろ一〇・二六にいたしましても、特に昨年の一〇・二一のごときは、総評臨時大会を開きまして、総評岩井事務局長は、今回の統一闘争は、いわゆる一九七〇年の前哨戦と演説もし、紙にも書いた。そういうことを私は記憶いたしております。そういうことで公共部門におきましては、あるところではストライキは禁止されておっても、時間内職場大会というような形でストライキをやる。これで処分されてはかなわぬと思う連中は――そのかなわぬというのは、他日を期して戦力を蓄積しようという考え方を持っている人たちは、この際時間内職場大会をやって処分を受けて、あと犠牲者救済基金を積んで、ごっそり組合財政にお世話にならなければならぬというのでは困るというので、時間外職場大会をやる。また時間外職場大会とまでいかなくても、あるいは時間外職場大会とあわせてリボンみたいなものをつけて、その統一行動の象徴をつけるというようなこと、しかしこれは裁判所に対する世人の信頼を傷つける、裁判所職員としてはそういうことをやるべきではないという考え方で、最高裁判所当局はそういうことをやってはいかぬというにもかかわらず、つけるということになれば、これはいやでも応でも職場に特殊な雰囲気をかもし出して、服務規律を弛緩させる影響を与えて、事務の正常な運営をそこなわしめるおそれがあるということだけは間違いないと思います。でありますから、上司がリボンの着用を禁止するのは当然だと私ども思います。それはまだ確定しない判決を持ち出して、神戸の裁判所のあれでこう言っておるではないかとか、あるいはたいして拘束力のない人事院の勧告的性格を持った決定あたりを持ち出して、こうだというような法理論をあるいは言われるかもしれませんが、最高裁判所はそういう一般官庁の例というものを一応参考にされてはおるけれども裁判所という一つの特質があるわけでありますから、そういう特質のもとにおいて独自の判断をもって進むべきものであるというように考えるわけであります。リボン闘争は、公衆に対して公務の適正な運営疑いを生ぜしめるというような心配があるということを私は先ほど申し上げたわけでありますが、職務上の監督者は、職務の規律保持の面からこのようなリボンは取りはずして執務せよと命ずることが当然であると考えるが、この点ちょうどきょうは総理府の人事局次長が来ておりますから、ひとつ総理府人事局としての所見を伺いたい。これはしかし、参考として伺うのであって、あくまでもあなた方の権限は国家公務員としての立場裁判所職員という、私どもから見れば非常に大事な、特に公正さを要求される立場にある職員でございますから、あなた方の意見は参考にするという程度ではございますけれども、しかし参考のために伺っておきたいと思います。
  23. 宮内通雄

    ○宮内説明員 公務の公正さを要求されるという点では、まさしくただいま最高裁当局からお述べになりました筋が全く妥当すると思います。そういった意味で、やはり職場に特殊な、異常な雰囲気を持ち込むような、リボンを一斉に着用するといったようなことは、まさしく好ましくないことであると結論として申し上げます。
  24. 森山欽司

    森山委員 最高裁は、午前中一ぱいのようでございますから、私がこれから予定どおりやりますと、私だけで終わってしまって、ほかの方々が御質疑ができないと思いますので、この程度で私の質疑は打ち切らしていただきます。  ただ、先ほど来申し上げましたように、全逓のリボン事件とか、あるいは人事院の解釈とか称せられるもの等については、私ども法律的に見ますれば、いろいろ意見がございます。そういう意見を、さらに深めてここで論議いたしたかったのでありますが、時間の関係もございますから、差し控えさしていただきますが、ただ、後ほど関連されまして、いろいろ御質疑があります際には、ひとつ関連質問としてやることをお許しいただきたいと思います。
  25. 横山利秋

    横山委員 議事進行について。先ほどから、よく知り合いの森山委員でありますから、私も、なるべく当法務委員会で特にやりたいというのですから、本来から言うならば――私はあえて言うが、八百長質問だと思っているけれども、まあまあと思って認めておるのに、何か、あとから質問するわれわれの牽制策として時間を費やして、そうして私どもがやったら、また関連質問を許せ、こういうやり方というのは、与党として、しかも長年国会でめしを食われた森山委員としては、少し不穏当ではないか。しかも、十二時半に最高裁が退出したいという、そういう中で自分だけ十分、自分だけですよ――きょうの議題というのはたくさんあるのだから、そのリボンだけを取り上げて長々とやって、そうしてあとの質問が出たら、おれにも関連質問を許せ、ということでは、私は納得しかねる。しかし、よろしい。それならば関連質問で堂々とやりましょう。したがって、そのかわり、最高裁はその質疑応答、関連質問が終わるまで、最後までここにおってもらわなくちゃ困る。これだけひとつ委員長に善処いただきたい。リボン事件を徹底的にきょうはやる……。
  26. 大坪保雄

    大坪委員長 次に横山利秋君。
  27. 横山利秋

    横山委員 森山委員、あなたは長いこと、四十分もやったんだから・-…。
  28. 大坪保雄

    大坪委員長 横山委員発言を望みます。
  29. 横山利秋

    横山委員 最高裁にお伺いをいたしたいのですが、森山委員はなるべく法理論を避けて、常識的にやろうということですから、私も常識論から、まず入るわけでありますが、私の常識論は、たとえば、リボン闘争というのは、私どもも経験があるし、あなた方も、これは使用者側としての経験がある。あえて言うが、最高裁でなくて、使用者側としての経験から言うならば、リボン闘争は、これは最低の抵抗だ。これは実力行使をやるとか、あるいは集団的ないろいろなことをやるとかいうことのラインから言うならば、労働者としての最低の問題だ、それに目にかどを立てるということはおとなげない。そういう重箱のすみをつつくようなやり方でリボンをどうだこうだと言って、そうして労使の間でつまらぬ論争をすること自身、私は最高裁なり、あるいは総理府としてもみっともないと思う。  いま、質問の中で、私どもあとの質問に対する牽制策として、全逓兵庫地本事件の地裁の判決をまるで無視した話である。あるいは、私は意見は違うけれども、総理府人事局が出したリボンに関する見解もまるきり無視をした――まるきりとは言わぬにしても、無視をして、自分に都合のいいことだけ取り上げて、地裁の判決が何だ、こういうような言い方というのは、国会議員としても、与党議員としてもきわめて不穏当な意見である。議論を聞いていらっしゃる皆さんはわからないだろうから、一応私は理論の問題でなくて、常識の問題として地裁の判決を引用するのだが、「リボン等の着用は「世上一般にみられるところであり、特に社会常識に反する服装であるとは通常認められず」また「原告らが取りはずし命令を予想してこれに不服従の意思で本件リボン等を着用したとしてもリボン等が正しくない服装に当らない以上、規律無視の風潮を生むいわれはない。」さらに、リボン等の着用が「対外的に職員職務専念義務違反の疑いを公衆にいだかせる」という被告の主張については「現代の近代化された一般市民の労働知識ないし感覚にかんがみ、首肯しがたい」としてこれをしりぞけている。一般勤務時間中の組合活動は禁止されるが「労働者が労働法上保障された労働基本権を行使する場合で、しかも労働者が雇傭契約上の義務の履行としてなすべき身体的精神的活動と何等矛盾なく両立し業務に支障を及ぼすおそれのない組合活動については、例外的に許されるものと解するのが相当である」「リボン等の着用による組合活動は……憲法及び公労法上認められた勤労者の団結権の行使としてなされた一種の示威活動であって、その必要性が認められ業務内容と地位身分にてらして、原告らが国に対して負担する身分上、業務上の義務と何等矛盾なく両立し、その業務及び公共性に支障を与えるものではないと認められる。被告は「上司の命令が違法であっても、その違法性が客観的に明白でない限り、部下職員は命令に服従する義務を負う」のであるから違反であると主張した。しかし、取りはずし命令は、右組合活動に対抗してなされた命令であるから純粋の業務命令とは解しがたい面があり」また、もしリボン等の着用が正当な組合活動であれば、その取りはずし命令自体が、使用者側の不当介入を生ずる問題であるから……これに従わなかった部下職員に対して命令不服従の責を問うことはできない」としている。」私は常識論で言うつもりであったけれども常識論以外の法理論であっても、きわめて地裁の判決は事理明白、理路整然たるものがある。私はリボンというこんなものをつけて、これには「労働強化反対、人を増やせ」と書いてある、こういうリボンをここへつけることによって一体何が起こるのか。  あなたにまず最初に伺いたいが、私が最初当委員会の同僚諸君とともに東北地方を視察してきた、視察してきた結果というものを多少私の個人的意見も入っておるかもしれないけれども、それにしてもあそこで質疑懇談し、陳情を受け、裁判所側から、検察庁側から、少年院から、あらゆるところで要望を受けたのが、人が足りないことである、建物が足りないことである、建物が陳腐化していることである、あるいはこういう職務にあるものであるから労働条件について優遇してもらいたいということであった。そういうことについて裁判所側としてももっともだと思われるでしょう。私の報告に疑義がある、あるいは地方の使用者側の言っていることについても無理がある、こういうお考えでございますか。
  30. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 先ほど来神戸の判決が出ているわけでございますが、この神戸の判決は公共企業体等労働関係法の適用を受ける現業国家公務員については、一般公務員に比して労働者の権利がより強く保護されているということを前提にいたしまして判決が出ているようでございますけれども、これは、しかしながら、現在係属中の事件でございまして、これについて、私どもにおいてとかくの解釈を申し述べることは差し控えさしていただきたいと思います。   〔発言する者あり〕
  31. 大坪保雄

    大坪委員長 静粛に願います。
  32. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 それ以外にも、増員の点につきましては、もちろん、予算といたしまして、十分に本年度の予算といたしましても大蔵省に予算要求をいたしておるわけでございます。その方面の予算上の措置については、鋭意努力いたしまして御趣旨にこたえたいと存じます。
  33. 横山利秋

    横山委員 「労働強化反対、人を増やせ」ということ、それから「大幅賃上げ、完全昇給」ということ、このことは、裏を返して言えば、地方の裁判所側も、検察庁側も、少年院側も、つまり使用者側も、この起こっておる事態については同感である。手段方法についてはいろいろ意見があるけれども、このこと自身については別な角度で私どもに陳情をしておるわけですね。しかしながら、このことの方法について、今度は使用者側と労働者側との意見の相違がある。あなたは公労法と国家公務員と違うと言いますが、労働法上の違いはある。しかし、憲法上は団結権が認められておるわけですね。リボンをつけることが、団結権の行使の最低線として、なぜそれほど目にかどを立てなきゃならぬものか。使用者側としては不愉快ではあろう。しかし、労使の関係というものは、両方が気持ちのいいことばかりではない。ときには不愉快なこともある。しかし、それは、あなた方が不愉快であると同時に、労働者側もまた不愉快なことがある。それは相対的なものだ。あなた方は、いかにも自分たちのやっていることがすべて間違いなく、労働者側のやっていることがすべて間違いであるがごときことであるならば、それこそ根本的な間違いである。動があれば反動がある。理由なくして問題は起こらない。そうでしょう。これらのことを私どもに逆に使用者側から陳情する。しかも、陳情ということは、使用者側の責任が果たし得ない、十分いっていないから、私どもの力も借りたいとおっしゃる。いっていないから労働者側から反動が起こる。その反動に対してあなた方がまた反動する。こういう相関関係にある。私が言うように、裁判所職員あるいは法務省職員刑務所少年院職員が、労働条件が、権力機構の中において言うことも十分には言えない。そして目的も十分に貫徹し得ない。方法も十分ではない。そういううっくつした気持ちの中で、リボンをつける最低線がどうしてそんなに目にかどを立てなきゃならぬことか。  先ほども森山委員が言ったことに関連をするのですが、東京地方裁判所長奥野利一さんは、管下の使用者側の職員に対して、リボンの件ということで報告書をとられたそうです。それによりますと、このリボンをつけるなという命令を伝えた日時、伝えた者を書け、命令を受けた者の官職、氏名、不服従の期間を書け、命令に従わなかった理由を書けということだが、こういうことを一々その職員に、同時に労働組合組合員に書けと言う権利は、どこにありますか。なぜこんなように重箱のすまっこまでつついて、逆にまた反動を呼びさまさなければならないか。こういうことをするのは世にもふかしぎなる小児病患者であって、どうしてこういうことをするのか。これこそ全く労働運動を知らざる人間であって、こういうことをやっていると、結局つまらぬことで問題が生ずると私は思う。これはあなたのほうが御命令なさったことでありますか。それとも奥野さんがかってにおやりになったことでございますか。
  34. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 ただいまの横山委員からの東京地裁の取り扱いについての御質疑でございますが、これは私どものほうは存じておりません。しかしながら、上司からの命令が出ました場合に、それについてどういうような態度をとったかということにつきましては、これは横山委員がどのような資料に基づいておっしゃっておいでになるのか私は存じませんけれども実態は、おのずから数日のうちには監督者のほうに知られてまいるのが常でございまして、個々的な一人一人について監督者は十分にその実態を把握しておるわけでございます。奥野東京地裁所長がそういうような、ただいま伺いますと、こまかいことを書くようにというように命じたということは、むしろいわゆる明歴々、露堂々、隠さずにあっさりしているような態度でございまして、ほかの裁判所におきましては、おのずからそれぞれの監督系統を通じてわかってくることでございます。ただ、そのとったやり方がどうであったかということにつきましては、私どもは承知いたしておらないわけでございます。
  35. 横山利秋

    横山委員 ここで私どもの体験や、あるいは与党の皆さんの意見を、いろいろ戦わしてもいいんですけれども、労使関係というもの、労働運動というものは、もう少し大局的なものの考え方がなくては、こういうように、それこそ重箱のすまっこをつつくように、一人一人にリボンをなぜつけなかったか理由を書かせ、そして何町何分から何時何分までリボンをつけておったかというような調査をするような根性、そういう小児病的な感覚では、労働運動を扱う資格がないとすら私は考える。そんなことをしておって、一体人間の心をつかむことができるだろうかと私は思うのです。しかし、リボンの問題はきょうは必ずしも主軸ではありませんけれども、まさに森山委員に挑発されたようなもので、つまらぬことを森山委員も持ち出したものだと思う。私は、リボンというものについて、軽くあなたのほうをたしなめて、もう少しおとなになりなさいということを言うつもりだったんですけれども、何か森山委員の挑発で私もかんかんになっておこって、しかもあなた方に対して猛烈な叱責を下すという結果になってしまいましたが、出た以上はしかたがない。こういうような調査をして、従わなかった理由を書かせて、そして、もし従わなかった理由が悪かったら懲戒処分にするとか、処分をするとかいうようなことをなさるというようなことであるならば、私どもは絶対に納得しません。もうちょっとおとなになってさいはいを振られることを特に私は要望すると同時に、御考慮を願っておきたい。  それから、その次は事務総長にお伺いするのですが、先ほど森山委員から、裁判官は全くいい人ばかりで、公正な人ばかりで、中正な人ばかりだという感覚をおっしゃった。森山委員はほんとうにそう思っていらっしゃるのではないと私は思う。私もそうありたいと思うが、裁判官も人間ですから、中にはいろいろな人がいる。そのいろいろな人を、ここで名前を出すことは私は避けておったのですけれども、従来から一人の人を素材にして議論をしてまいりました。飯守さんであります。飯守さんについては、何か私が目のかたきにしているようですけれども、同時に、飯守さんも私を目のかたきのようにしているらしい。これは弱ったことである。事務総長の、累次の予算委員会、あるいはここの発言を聞きますと、十分たしなめてあるから、もう書くなと言うわけにはいかぬけれども横山さんないしは法務委員会の御意向は十分に伝えてあるから、まあこの辺で目をつむってもらいたいということでした。そうですね、事務総長。そう考えてよろしいですね。
  36. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 そうです。
  37. 横山利秋

    横山委員 ところが、またいろいろなことを書いておる。与党の皆さんも聞いてちょうだい。あなた方にも関係がありますよ。「次に現行憲法日本国家の根本法、最高法規として最大の尊重を受け擁護されなければならない。国民全体が憲法尊重擁護の義務を負うていることは勿論であるが(憲法に反しこれを破壊する思想を表現することは、思想内容は違憲であっても現在自由国家の寛容により放任されている)、公務員は全体の奉仕者である点からいっても、憲法に拘束され、それを尊重する義務は重い。憲法第九十九条にはこの点が強調され、大臣、国会議員、裁判官その他の公務員がこの憲法を尊重し擁護する義務を負うことを明記している。(国会議員を入れていることは意味深長であろう。)と書いているのですね。それから、次のほうには、「ところが世上私のやり方を、政治講話、思想講話と称し、いかにも裁判官の政治的、思想的中立性の枠を破って偏頗な政治思想を公費で宣伝しているごとく言う人々がある。国会からも盛んにこの声をあげる社、共両党の議員さんがいらっしゃる。これは私は専ら誤解から言われていることと信じたいのである。なおこれらの議員さんたちはみな平和憲法擁護、憲法改悪反対を叫んでいる人たちである。それでは、どんなに現行憲法を尊重し擁護する思想をお持ちであろうか。憲法第九十九条には国会議員も憲法を尊重し擁護する義務を負うことが規定されている。これらの議員さんはみな社会主義制度を主張し資本主義制度を不合理かつ罪悪視し否認する人々であるから、その限度においては勿論憲法を尊重し擁護する念があるとは言えないが、共産党の人々は別として、社会党系の議員さんたちは政治的見解として、社会主義革命に成功した暁には、現在の共産国家のようなプロレタリアート独裁の政治形態を採るものと考えておられるかどうか。現行憲法の議会制民主主義、資本主義政党を含む複数政党主義を維持される心算であろうか。現行憲法上、社会党などの階級闘争理論に多くの問題が残されていると私は見ている。」  ここでこの人のものの考え方を指摘をしたいのですが、まず第一に、こういうことを裁判所広報の一ページに書くなということを言ったことについてごうも反省がないということが、第一に言えるわけです。そして、われわれに挑戦している。私は社会党の議員であるけれども、いやしくも国会議員としてお話しをし、同意を願って、そして理事会で話があって、最高裁事務総長がその意を受けてやったことを、そういうオーソドックスなことを考えずに発言をした国会議員に挑戦をしているということが第一であります。  それから、第二番目には、この人は自由民主党が憲法改正を考えている――社会党が、また共産党が、憲法擁護と言いながら、実はどうのこうのと言っておるけれども、同時に、飯守裁判官は、自由民主党も憲法擁護といいながら憲法改正を考えておるということをどう考えているのか。きわめて一方的、社共両党に対するだけに憲法論を展開して、独善的であるということが指摘をされる、そう言われると思うのであります。  それから「法の日に思う」という十月二日の鹿児島新報掲載等々、新聞に連載をされております。ここであらん限りの罵倒を労働運動に投げかけておる。たとえばこの種の階級闘争の特徴を列挙している。  「1、政治経済上利益になることは何もかも政府や会社に要求する。その一部分が実行に移されると、彼らは、政府や会社は決して国民や社員の利益になることを進んではやらぬのだ。われわれが圧力をかけたので政府や会社はいやいやながら実行せざるを得なかったと宣伝して集団の圧力を誇示し、階級問の憎悪をあおる。2、政府や会社の軸部との交渉について、これらの人びとを反労働者的政策の体現者のように描写し、憎悪と軽蔑の念を国民に起こさせるように煽動的な記事を書き、演説する。そして使用者をつるし上げるような侮辱的記事を慢性的に書く。つねに官庁会社の合理化に反対し、したがって生産性の向上に反対する。そして賃上げだけを要求する。合理化は使用者だけを利し、労働者は労働強化だけを押しつけられると考える(革命は別問題とし、一体こんな公式主義的考え方が勤労者の利益になるだろうか。これは労使協調否定の結果であり結論である。)4、政府や会社の方針には何でも反対で、代々の政府、会社の役員に対しつねに同種同様の悪罵を放つこと。5、何々闘争と、やたらに闘争の字を使う。6、組合の場合、経済問題よりも政治闘争、たとえば安保反対闘争、反米闘争に重点を置き労組の政党化の傾向を表わす。7、自分の気に入らない法律はすべて憲法違反で無効だと宣伝し、自分たちに不利な裁判裁判と認めないと公言する。」  枚挙にいとまがないのですが、これで七つ、まだたくさんありますが、この中で考えられることは、労働組合に対する、労働運動に対する一方的な憎悪感に満ち満ちておるということであります。もう労働組合とさえ見れば、社会主義の政党とさえ見れば、本能的な憎悪感しかこの人は持っていない、こういう感じがするわけであります。これでは何が中立か。少なくともこの中に、使用者側の不行き届きな点、政府の不行き届きな点が配列をされて対比をされる中で、労働組合のおちいりやすい欠陥だとか、あるいは政党のおちいりやすい欠陥だとかあげられるならばまだしも、全文に満ち満ちておりますことは、全く社会主義政党や労働組合に対する憎悪感である、感情的な憎悪感である。   〔「厳正な批判じゃないか」と呼ぶ者あり〕
  38. 大坪保雄

    大坪委員長 私語は遠慮してください。
  39. 横山利秋

    横山委員 それでは、一体裁判官として適当であるか。私はあえて言う。裁判官の適当であるかないかは別としまして、少なくともこういう文書を裁判官新聞紙上、「裁判所広報」に書くな、最低線それだけは遠慮しろということは、あなたと私、及びオーソドックスな法務委員会最高裁判所の共通点であったはずである。それはすでに二回、三回にわたっていまもなおかっこういうような文書を発表して、そこで傘下のこの裁判所に起こったのが、森山委員が先ほど引用した事件なんです。裁判所長が、こういう憎悪感を日ごと夜ごと「裁判所広報」に、そして地元の新聞に出しておる裁判所において起こった事件が、森山委員の指摘した事件です。遠因はそこにある。だから私は、もうあえて言うのだけれども、一体これはどうしてくれる。あなたは、私の顔を見ると、どうも飯守問題でものを言いそうな顔をする、横山さんの顔を見るとほんとうに悪いという顔をしている。事実あなたもつらかろう、約束をしたのだから。けれども、いいかげんに処理してくださいよ。あなたの責任ですよ。個人の問題じゃないですよ。国会最高裁の問題だ。どうです。
  40. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 ただいま御質問の中で、そういう飯守所長のもとで森山委員が指摘されたような事件が起きたと言われましたが、それはどういうことですか。
  41. 横山利秋

    横山委員 鹿児島地方裁判所で九月二十六日、旭相互銀行小園弘君の不当解雇問題について松本敏男裁判長がとった措置なんであります。それはあなた御存じないかもしれませんけれども、これをきょう本論にするつもりはないのですが、引用だけしておきます。  結局こういう事案なんです。非常に厳重な監視の中で傍聴を許した。そして傍聴をもっとさしてもらいたいと言ったら、いきなり発言禁止を命じた。続いて小堀弁護士が裁判長に、四名の警備員はうしろに立ってもらうよう要請したが、裁判長は何の回答もせず、弁護人に対してまで発言禁止をした。そのとき傍聴席の中から「ファッショだ」という声が起こった。松本裁判長はいまの発言者はだれであるかと聞いた。警備員はわからないと答えた。そうしたら松本裁判長は、最前列左はしの人を起立させ、退廷を命じた。おれはそんなことを言ったのじゃないと言ったら、それならその隣にすわっておる人間だ。おれも言わなかったと言ったら、あとで取り調べると言って強引に退廷を命じた。そうしたら、ほかの人が「発言したのを確認して拘束したのか」と聞いたら、おまえもいかぬと言って退廷を命じた。つまりファッショと言った人がわからぬ。わからぬで裁判長は、適当に、みせしめのために、発言しない人を二人引っぱって、そうしてその人に最終的に罰金刑を科した、こういうことなんです。きょうはこれを議論するのがあれではないんです。これを議論するとまた長くなるから。私の言うのは、幸か不幸か、偶然か、私は偶然とは思わないけれども、こういうような「裁判所広報」や何かを見る人はないといってみても、裁判長が労働組合に対して憎悪感、侮べつ感、偏見を持っている思想というものが「裁判所広報」に掲げられるというところに問題があることを言いたい。
  42. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 先ほどの私がお伺いしました問題につきましては、鹿児島の地方裁判所から正式に報告が来ております。その報告の内容を見ますと、ただいま横山委員のおっしゃったのとはだいぶ事情が変わっておりまして、その事件の関係人――というのは傍聴人を含めてですが、その人たちに非常に喧騒にわたる行為があったので、その次の開廷の際に、厳重に構内の警備をし、そして法廷を開いたところが、裁判長の制止を聞かずに、傍聴人の中から発言した者があった。それで、その発言者を突きとめるについても、ただいまお話しのような経過ではなくて、この男ということがはっきりしている。それを法廷等の秩序維持に関する法律という法廷秩序維持法を適用しまして、そして罰金ではなくて秩序罰、過料を言い渡した、こういう経過でございます。横山委員のお読みになった資料とちょっと内容が違います。  そこで、先ほど来お尋ねのありました問題でございますが、大別すると二つになると思います。第一は、広報にああいう誤解を招くようなものを載せないようにということを無視しているじゃないかという問題であります。第二の問題は、飯守所長の労働問題に対する考え方を含めての、要するに、飯守所長の考え方を問題にされておられると思います。そこで、便宜上第二の点から、私の考えますところを申し上げたいと思いますが、裁判官といえども、やはり思想発表の表現の自由というものを持っております。しかし、それは、決して一般人と同じように無制限なものではなくて、裁判所の中立性を疑われるような発言は、厳に慎まなければならぬということは当然でございます。裁判所長が所長としての資格で裁判所の広報などに論説を掲げるときには、その点についての細心な注意を払わなきゃならない。これは、従来からわれわれもそう申し、また、飯守所長とも、そういうこと等について話し合ったことがあります。一方、また、ただいまは、初めてここで伺いましたが、新聞に何か書かれておられる。その新聞に書かれたことについては、広報の場合と少しく違いまして、その内容の当否は論外として、これは裁判所の所長としての問題ではないものだと考えます。いずれにしましても、先ほどお話がありましたが、飯守所長も、憲法の精神を守るということは前々から言っております。憲法の基本精神である民主主義というものを尊重しなければいかぬということを言っております。ただ、こまかい議論になりますと、いろいろ中には批判を受けるようなこともあるかもしれません。しかし、これはその人その人の立場によって、受け取り方も違うと思います。あの論説に対してまっこうから反対するという立場もありましょうし、また、あれに賛同する立場もあろうと思います。それについて、そういう考えを持つ人間を裁判官として置くことがはたして適当か、先ほどもちょっとそういうお話がございましたが、この問題は、特定の裁判官の思想を問題にしてその適格を論ずるということは、この国政調査の作用としては適当ではない、裁判官に対する民主的監視の方法は、おのずから国法がきめておりまして、その手続によって堂々と行なわるべき筋合いのものではなかろうか、かように私は存じます。第二の点から先に申し上げました。  第一の問題でございますが、これは先般の五月でございましたか、十六号の広報をめぐって、これは前々から引き続いた問題でありまして、この席でも横山委員から非常に御質問を受けました。あの十六号というのは、公務員は全体の奉仕者であるという憲法の趣旨をこまかく説いているもので、その行間に、筆の走りとか、あるいは筆の足らないために、意味あいまいな、あるいは誤解を招くようなことがあったかもしれませんが、全体としては、憲法の規定する公務員は国民全体の奉仕者であることを忘れてはならぬということを説いておるわけであります。しかしながら、一再ならず「裁判所広報」にそういう種類の論説を載せますことは、所長が職員に対して政治的教育を施しているのではないかという疑いを持たれ、また、現にこの席でもそういう御指摘がありましたが、そういう疑いを持たれるようなものは筆を控えようということで、当時、高裁長官からもいろいろ話して、そういうものは控えようということで、その以後は、数号というものは、実際全然そういう問題とは関係のない論説とか随筆めいたものを載せておったわけであります。ところが、十九号に、ただいま御指摘になったものが出たわけであります。これは、私といたしましても、あの中に特定の政党の名をあげてとやかくされたということの真意はともかくとして、そういうことは広報としては非常にまずいのではないかということを率直に考えます。しかしながら、幸いにして、その号が出たあとで、私は飯守所長にお会いする機会があって、その心境をじっくり尋ねたことがあります。そのときに、飯守所長の言うのには、その前々からの問題になっていることはよくわかる。よくわかるけれども、まさに五月、ここで私が横山委員からの質問を受けていろいろ応答いたしましたその議事録が鹿児島の裁判所のほうにありまして、それを職員たちがみな読んで、あれによると、自分は欠席裁判を受けているような気持ちである。特に思想的な節操がないとまで言われている。それでは、自分としては職員に対してじっとしておれぬ。そればかりではなくて、その前に、日にちは飯守所長もはっきり記憶しておりませんでしたが、鹿児島の裁判所の所長室の下の道路に宣伝カーが参りまして、その宣伝カーが裁判所に対して呼びかけた。裁判所のことばは正確かどうか存じませんが、その意味を申しますと、裁判所の皆さん、反動所長を追放しましょう、という意味のことを宣伝カーでやられた。そういう立場自分が置かれておるので、これはもうやむにやまれぬ、ほんとうにやむにやまれぬ気持ちなんだ。これは、裁判官といえども人間ですから、やはりその程度の感情を持たれる。これは本人も承知の上で、やむにやまれずして書いた。しかし、もうそういうことはやめましょう、そう申しておりましたので、その十九号が出たいきさつも十分に理解していただきたいと思います。
  43. 横山利秋

    横山委員 きょうは事務総長の率直な話、よくわかりました。私は、あなたが内蔵しているお考えはなかなか進歩的だというように承知しておるものですから、あなたを責めておるわけじゃない。飯守さんを責めておる。けれども、あなたも考えてくださいよ。ちょっとおとなげない人ですね、その人は。ただし私も、人間的に、横山といえば飯守をすぐあれにするという点に心中じくじたるものがあるのです。だから、一ぺん私と飯守さんと議論させてくださいよ。いまの広報にありますように、社会党が天下をとったら資本主義政党を含む複数政党主義を維持されるお気持ちであるかどうか、これは私に聞いておる。私に一番質問をされておる。ここに書いてあるように「現行憲法上、社会党などの階級闘争理論に多くの問題が残されていると私は見ている。」というのは、私に聞いておる。そのほかに言いたいことがあるでしょう。私も聞きたい。私が一方的だというなら、一ぺんここへ呼んでくれませんか。どうですか、委員長。そういうことを本人がおっしゃって、きょうまた私が言えば、またやりやがったなというわけで、またお書きになる、また私がやらなければならぬ。ちょっと外でマイクが追放しろといったらまた書くような人なら、これはどうかと思いますね。あなたのほうで、そうそう、もっともだ、もっともだ、おこるのはしようがないな、とおっしゃったとは、私は思いませんがね。きょう私が言ったら、またお書きになる。どうですか。
  44. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 飯守所長をこの席へ呼んで横山委員と対決させろ……(横山委員「対決とは言わぬ、話し合いさせろ」と呼ぶ)そういうことですが、これは先ほどもちょっと私が申し上げましたが、特定の裁判官の思想を問題にするということは、こういう法務委員会のような席でやるべきものじゃないと私は考えます。
  45. 横山利秋

    横山委員 私が言うのは、やり合いになってしまう。あの人は何かちょっと言われるとすぐかあっとなって、こういうことをまたお書きになる。私が言わなくても、マイクで一言いえばまた書くということになる。きょうまた私が言ったら、また書くということになる。それではとどめがつかぬ。国会最高裁との約束は、こういうことは書かぬ、こういう意味のことは書かぬ。できるなら、随筆なり、ソビエトの冬はどうだったとか、朝はどうだったとか、おれが反省したときはどうだった、赤になったときはどうだったということでも書かれたらということを言っているのです。とにかくそうなっておるのですから、ちょっと刺激があるとすぐ書くということは何とかしてほしいのです。
  46. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 十九号が出ましたときに、先ほど申しましたように、私が飯守所長の上京の機会に一時間余りとっくり話し合いしました。そして、それを書いたので自分もさばさばといってはおかしいけれども、これで最後のつもりで書いたんだ、そういうような心境でおります。その点は御了承願いたいと思います。
  47. 横山利秋

    横山委員 あまり時間がありませんから、あとで御質問も続いてあると思いますから、私は裁判所に関する問題をもう一つだけ申し上げて、これは他の省とも関係もありますので、お含みおきを願いたいと思うのですが、他の省はあとで質問します。  この間、日本交通科学協議会というところで、交通訴訟の追跡調査をいたしました。結果はごらんになったと思うのですが、これは非常に興味のあるいろいろな問題を提起をしておるわけであります。この交通訴訟追跡調査の別表を見ますと、一つには、訴訟に持っていった件数のうち、調停が非常に少ない。すなわち、「簡易裁判所の調停をなぜ利用しなかったのですか」という点について、「示談の話合い状況ではとても調停はムリだと思ったから。」「キチンとした結果がほしかったから。」「「示談がダメなら裁判」と自分ではじめから決めていた。」「調停は長引くわりにまとまらないように人から聞いていた。」というような状況で、調停機能が十分に果たされていないということ。それから「裁判をはじめるとき、和解について考えた事がありますか」、その七八%までが「加害者側が折れば和解しようと思った。」ということを考えておる統計。それから「和解されたのはなぜですか」、「少し位安くても早く解決した方がいいと思ったから。」が四二%、つまり裁判にかげながら、しかもその中で和解を望んでおるということが強い考えだと思います。それから「裁判費用と弁護士費用」で相当の負担がかかる。「法律扶助制度をなぜ利用しなかったか」という中で、「そんな制度は知らなかった。」というのが五〇%以上にわたっておる。「訴えてから判決・和解までの期間」についても、これを見ますと、二年以内が圧倒的に多い。三三%もある。「判決額についてどう思いますか」という点について「不満だ。」という数が多い。それから「裁判に勝ったが金がとれないというケースがよくありますが、あなたの場合どうでしたか」という場合に、「まったくくれない。」というのが判決で二八%もある等、裁判に訴えて判決がされながらとれないという数字が圧倒的にある。これは決して最高裁だけの、裁判所機構だけの問題ではありませんが、これだけ激増しておりますこの交通問題の裁判調停機能について一ぺん根本的に検討してみる必要があるのではないか、こういうことを考えますが、いかがですか。
  48. 菅野啓蔵

    ○菅野最高裁判所長官代理者 ただいま横山委員からお話がございました交通科学協議会の追跡調査、これは私どもにとりましても非常に参考となり、その結果につきまして大いに考えていかなければならないというように、その調査結果というものを高く評価しております。その中で、私ども最も留意をいたしました点は、交通に関する損害賠償の裁判所の判断というものがから手形に終わっているのではないかという点でございます。この点につきまして、私どもといたしましても、裁判所法律上の判断をした以上、その判断どおりの事実上の実現がされるということが非常に望ましいわけでございまして、これは横山委員すでに御指摘のとおり、裁判所だけでそのいわゆる執行の面まで完全にやり得るという仕組みにはなっておらないわけであります。と申しますのは、判決の場合は、たとえば被告になっておる相手方の資力というようなものを考慮するということは、理屈の上からもできないのではないかというふうに私ども考えております。  それから、和解調停の場合におきましては、それは和解調停の手続の経過におきまして、やはり相手方の立場、資力というものも考慮に入れつつ判断がなされる、そういう意味におきまして、なるべく調停の結果あるいは和解の結果というものがいわゆるから手形にならないようにということは注意しつつ、調停委員会というものが結論を出す、実際にさような努力をしておるというふうに考えるのではございますが、しかし、やはりこれも一つの判断機関でございまして、相手が無資力だから和解損害額はゼロでいいということもできないものではないかというふうに思うわけでございまして、そこに実際上、執行上の問題と判断の問題との間にズレがあるということは、裁判機構の上からいって、遺憾ではあるが、現行上の制度としてはやむを得ないのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。  それから、さらにもう一つ、追跡調査結論の中で、裁判が必ずしも早くない、和解も決して早くないというような調査のアンケートが出ておるようでございます。この点につきまして、これは訴訟事件というものが遅滞なく行なわれるということが望ましいことは申し上げるまでもございません。その中で、特に交通事件のような性格を持ちます事件というものがすみやかになされるということが望ましいわけでございますが、この点につきましては、訴訟手続におきましては、あるいは裁判部の専門化であるとか、あるいは訴訟裁判例の資料の充実であるとか、そういう面につきまして私ども及ばずながら努力をいたし、わずかながらその効果が少しずつあらわれておるという実情でございます。  この交通事件、統計上は一般訴訟事件に比べますと、交通事件の訴訟というものが統計上は期間が長く、具体的に申しますと、普通の事件ですと一年、交通事件ですと一年と一カ月、十三カ月というような統計上の資料が出ております。これはなぜかと申しますと、普通事件の中にはいわゆる欠席判決、争いのない民事判決というものが比較的多いのでございますけれども、交通事件ともなりますと、やはりそこには多少の争いというものがありまして、争いのある事件でありながら普通事件と同じくらいの審理期間できておるということは、そこにこの事件に対して裁判所が特別な努力をしておるということも申し上げられると思うわけでございます。和解調停になりますと、これは大体三カ月ないし六カ月で片づいておりますので、そうおかしいとは思いませんけれども、しかし、これもさらに努力いたしまして、より短い期間に解決の努力をしたい、かように思っておるわけでございます。
  49. 横山利秋

    横山委員 時間の関係上、次の点を言いますから、これは法務省のみならず各省に関係のあることですが、お急ぎですから、私が申し上げる点について最高裁判所側の御意見があれば聞かしていただきたい。  私の意見でありますが、交通事件訴訟法というような意味のものを立法化したらどうかという考えであります。これだけマンモス的に交通問題が山積しておりますのですから、何かそういう特殊な問題を処理する仕組みをつくらなければならぬと思われる。  第一として交通事件の非訟化ですね。借地法のやり方によって処理をしようという、そういうことが第一。  第二が、家事審判法十五条の交通事案に対する導入を考えたらどうか。それは御存じのように、扶養義務者が金を払わない場合、裁判所が中に入って扶養義務者から金を取るというようなことを考えたらどうか。  それから、東北地方へ参りましても、特に交通専門裁判所を設置することはどうかということが強く各方面から要望されております。  それから、先ほど申しましたように、法律扶助協会、法律扶助制度のPR予算の増額をはかることが、この際決定的に重要な問題ではないか。  次に、判決の履行確保のために、払えない人、払えるけれどもいま払えない人、そういう人たちに対する国の肩がわり制度が自賠法などをも考慮して考えられないものであるかどうか。  次は、損害賠償額が常に問題になる。初めてのことだから、被害者も加害者側も見当がつかぬ。だから、損害賠償額をある意味においてモデルをつくったらどうか。これは裁判所側及び運輸省側か、しかるべきところが協力をしなければならないのですけれども、いわゆる自賠法によって最低線を確保しているのだけれども、示談なり判決なりある一定のモデルをつくって、それにあらゆる要素をプラスするかマイナスするかというようなことが考えられないか等々、いろいろあるのですけれども、これらのことについて、最高裁判所側として御意見があったら伺っておきたい。
  50. 菅野啓蔵

    ○菅野最高裁判所長官代理者 たくさん問題をいただきましたのでございますが、私の知る範囲といたしましては、この中のごくわずかな部分でございますが、しかし、一応意見を言えということでございますので申し上げてみますと、交通損害賠償事件の手続の特別化、特に非訟化を考えてはどうかということでございますが、やはりこれは争訟的性質を有する事件でございますので、非訟化というところまでいくのはどうかという考えでございます。なお検討をしてみたいと思います。  それから、履行確保の制度をやってみたらどうかということでございます。家事事件につきましては、履行確保の制度というものが相当の効果をあげていることは存じております。交通事件もやはり争訟事件であり、そこはやはり当事者主義、弁論主義の働く場面であるということを考えますと、この執行の面におきまして全然当事者主義をはずしていいものかどうか。しかしながら、交通事件というものは、一般の争訟事件とは多少性格が違う面がある。それは単なる取引上の争いではなくて、むしろ被害を受けた人はどうしても弱い立場にある人たちが多いわけですから、そういう特殊性を考えて、執行の面におきましても特殊の制度を考えたらという点につきましては、私どものほうも、一応争訟の性格を持つから、直ちにこの履行確保の制度が交通事件にマッチするかどうかという点に疑問がありますが、この点を検討してみたい、かように思っておるわけでございます。  それから、法律扶助の制度でございますが、これは法務省の関係のことではございますが、法務省でもその方面のPRを相当されておるようでございますし、それから統計を見ましても、この交通事件につきまして扶助を受けておる数が年々ふえておるようでございますし、なお、交通事件に関する限り、扶助の申し立てをしてそれが認められる割合というものが非常に多いようでございます。八〇何%かになっておる統計のようでございます。  それから、たとえば国が一時損害賠償の立てかえ払いをやったらどうか、これによっていわゆる判決のから手形を防止できるではないか。これも、私どもとしては、そういう制度ができることが非常に望ましいわけでございまして、ということは、つまり、先ほども申し上げましたように、裁判所といたしますれば、判決をした以上、それが実際に実現されることが望ましいからでございます。ただ、この立てかえの制度といたしまして、直ちに国家予算でやるか、あるいは諸外国でやっておりますように、自動車を持っておるものの負担金というようなことでまかなっていくか、いろいろの考え方はあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、かような制度ができてまいるということは、裁判所立場からいえば非常に望ましいことでございます。  それから、損害賠償の額を定型化したらどうか、それによって訴訟が早くなるのではないか。この点を御指摘のとおりでございますが、保険制度におきましては、損害の程度によりましてその補償額というものが定型化されておるわけでございます。これが従来直ちに裁判に持ってこれたかった理由は何かといいますと、やはり人の生命あるいは人の身体というものの額は金銭をもっては算定できがたいものであるということが前提になっておるわけでございまして、したがいまして、従来の民事裁判における損害賠償の算定の方法といたしましては、御承知のとおり、実害と得べかりし利益-事故を受けなかったら将来得たであろう利益、これを支払うという形になっておるわけでございます。これが定型化されまして、死んだらおよそ幾らということになりますと、これはその生命を金銭ではかるということになるわけでございます。そういうことでもあるいはいいのかもしれません。しかし、それがはたして国民のいわゆる人権の感情に合うかどうかということになりますと、やはりそこはまだそういうふうな割り切り方では国民の方々も満足しないのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。これは先ほどの交通事件の訴訟手続の特殊化ということにも関連し、この損害額の標準化ということにも関連することでございますが、私は、あるいはこういうことならできるのではなかろうかというふうに思うのでございます。それは、いま自動車損害賠償保障法によりますと、これが民法の特則といたしまして、過失の点につきまして立証責任を逆転さしておるわけでございます。その点がこの自動車交通事件の訴訟の上におきまして一つの特色を持っておるわけでございますが、さらに損害の程度につきましても、原告側に立証責任を負わせるのではなくて、むしろ被告に一定の額――原告が一応この額の損害があるとこう言えば、それ以下だと言うほうの被告のほうに立証責任を持たせるというような立法でもすれば、ある程度といいますか、ある程度訴訟の迅速化がはかられるのではなかろうか。それは必ずしも人の命をすぐ一定の額にきめつけてしまう制度でもございませんので、人権その他ともそれほどズレが出てこないのではなかろうか、法律改正の点につきましてはさような考えをただいま持っておるところでございます。
  51. 横山利秋

    横山委員 非常に御親切な御答弁ですけれども、時間がございませんので、あとは一つだけ意見を申し上げておきます。  この間、豊橋の交通刑務所を見学してみました。交通事故の加害者側の状況を見ますと、非常にまじめに刑務所で働いておる。朝な夕な被害者の位はいにお参りをしておる。殊勝なといいますか、そういう感じがいたしました。ただしかし、一回ひとつこの追跡調査をなさって――日本交通科学協議会も法務省に頼んで刑務所におる加害者側の人たちの心理を追跡調査をしてみたいとおっしゃっておられるのですけれども、私もちょっとそんな感じがしたのです。自分が悪かった、だから朝な夕なお参りをして、自分は刑期をつとめるということによって、贖罪意識というものが強い。つまり、罪を重くすることによって、もうそれで自分のなすべき責任は果たした、いわんや刑務所に入っているために、加害者としての賠償なり何なりの能力が低下したという考えが強いように思うのであります。私は、その雰囲気なり私の感じをもってすると、どうもまあ刑法の問題を持ち出すべきではないのですけれども、加害者の罪を刑法上重くすることが、被害者側の賠償に非常に影響があるのではないかということを考えます。だから、もしも罪を重くするのだったら、ますます賠償能力が低下していくのであるから、それと相対的に、もしも罪を重くするなら、相対的にその賠償が十分に履行できるように、いまでも裁判のしっぱなしということなんですから、相当の数が判決はあったけれどももらえぬ、そのもらえぬという現状をさらに濃くするのではないかということを考えまして、いま何か国家が肩がわりをすることを考えたらどうか、これはもう不可分の関係で考えなければいかぬのではないかということを考えました。これはまたあとで各省にお話しをし、御意見を聞くこととして、これでおきたいと思います。  時間が長くなって同僚諸君に恐縮でございますから、最高裁に関する私の質問はこれで終わります。
  52. 大坪保雄

  53. 中谷鉄也

    中谷委員 お尋ねします。  本日は、表現の自由だとか団結権だとか服務規律だとか、いろいろな問題が交錯をした問題として、鹿児島の裁判所広報の問題とリボンの問題が論議されたわけですけれども総長にひとつお教えいただきたいと思います。  お尋ねをしたいと思いますけれども、先ほど総長お話の中に、いわゆる裁判所広報昭和四十二年七月号のこの記載についても、前々からの経過があったので、飯守所長とじっくりと話し合いをされた、その心境などもお聞きになった、こういうふうなお話がありました。なお、こういうようなものについては、裁判官のいわゆる良心の自由とかいろいろなことを言ったって、いわゆるそれが限界があるのだというふうなことについての総長の率直なお話もあったわけです。  そこで、その御答弁になった中で、総長お話をお聞きしておりますと、結局、こういうようなものについては好ましくないというお考え方を端的におっしゃったと思うので、そういうふうに理解していいと思うのですけれども、その中で、国政調査としてこれ以上飯守さんの問題について議論をするなら別の場所ですべきだと思うというふうにおっしゃったと思うのです。特にアクセントをおつけになって、堂々と別の場所でおやりになったらどうかとおっしゃった。念のためにお聞きをしておきますが、別の場所というのはどういう場所なのかをお答えをいただきたいと思います。これは総長のほうからそういうお話があったわけですから、お答えをいただきたいと思います。
  54. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 これはあらためて申すまでもなく、これまでもたびたび、これは訴追問題である、訴追問題であるというお話がありました。特定の裁判官をその適格性を問題にして国政調査の対象にすることは国政調査権の逸脱で、裁判官の適格性を問題にするなら訴追の問題として考えるほかはない、そういう趣旨でございます。
  55. 中谷鉄也

    中谷委員 司法権の独立あるいは国政調査裁判官の問題などについては、戦後ずっと論議されてきた問題だと思うのです。したがいまして、こういうふうな発言は、私もずいぶん控え目に申し上げなければならない問題だというふうに今日まで考えてまいった。そうすると、こういうことでございますか。念のためにお教えをいただきたいということで、あえてお尋ねをしたわけですけれども裁判官弾劾法、国会法等――飯守さんのお話が出てまいりまして、飯守さんがこの裁判所広報にお書きになっておることについては、少なくとも言論の自由、表現の自由というようなことをいったって、ある程度の制約の線はもうすでに越えていると思われるような向きもある、好ましくないと思われるものもある、そういうような御趣旨。だから、その点については、最高裁としては、執筆についてはずいぶん配慮をするように、特に禁止命令というのはお出しにならなかった。実はこの問題については、前の法務委員会で、表現の自由なんという問題にも関連をしてくる問題だし、大事な問題だから、といろよりも、注意深く論議しなければならない問題だというようなことを私申し上げたと思うのです。総長のお口のほうから堂々と別の場所でということになってまいりますと、要するに、これは法務委員会の中において、国政調査の範囲内において論議するのが適当だということで論議をした。その範囲を越えない範囲において議論をして、そうして裁判所のあるべき姿というものを見出そうとしておる。ところが、総長お話は、裁判官弾劾法という法律があるのだから、その法律によって訴追をしたらいいじゃないですか、堂々とおやりなさいと言わんばかりの言い方だし、また、飯守さん自身が受けて立とうじゃないかというふうなお考えがあるかのごとくにも私は受け取りました。だから、訴追だとか裁判官弾劾法だなんというものの言い方は、非常に慎重に言うべきことだと私自身が思います。しかし、別の場所でというふうなお話があったので、いま一度、総長が「堂々と」というようなおことばでお答えになったその真意を、この機会に明確にひとつ御答弁をいただきたい。
  56. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 誤解のないように申し上げておきたいと思いますが、決して私は訴追をしたらいいじゃないかという趣旨で申しているわけじゃありません。これまでのこの飯守問題についての論議の結末は、結局飯守判事が裁判官として適格性を持っているかどうか、そとに落ちているのです。そういう問題は、この国政調査の範囲でやるべき問題じゃない。適格性を論ずるならば、これはおのずから国法の定めた別の手続がある。その別の手続ということは、先ほど別の場所ということばで申しましたけれども、そういう趣旨で申しておるのでありまして、裁判所側がこれは訴追しなければならぬというふうにかりに考えます場合には、これは訴追の義務があるのです。裁判所としてはそういうことは全然考えておりませんけれども、この問題について飯守判事の裁判官としての適格を御論議なさるならば、この場所では不適当である、こういう趣旨で申したわけです。
  57. 中谷鉄也

    中谷委員 大事な問題だし、こういう発言をしましたので、もう一度私のほうからもお尋ねをしておきます。要するに、総長の御答弁として、かりにある裁判官の問題について法務委員会で何か議論があったという場合、その裁判官のおやりになっていることは、良心に従って、憲法に従って忠実にその職務をやっているのだ、そういうことについては、最高裁立場から見て、その裁判官の行為について何々委員のほうから発言があったけれども、云々されるものではないと思います。こういうふうな御答弁は、国政調査の範囲内において私はあり得ると思うのです。そういうことが一々言えないとなれば、全部訴追の対象になってくる。ところが、飯守さんの問題が出た中で、飯守さんの行為については、総長としても、はっきり一言えば私の受けた感じでは、困ったものだ、やっかいなものだというふうな印象を率直にいって受けた。とにかく裁判官のいわゆる中立性、こういうことは大事にしなければいかぬと思う。それをどうも総長のお立場から見ると相当逸脱しているように思われるというふうな趣旨のお話があったあとで、この問題については、国政調査の問題としていわゆる裁判官として適格かどうかということを論議することはふさわしくないから、それなら別の場所で堂々とということになれば、少なくとも総長としては、飯守さんのこういう裁判所広報がいいとおっしゃってない。よくないとおっしゃっている。裁判所自身としては訴追という行為を起こそうとはしないけれども、そういうふうなにおいもする、疑いもある、あなたの立場からこういうことを言われてもやむを得ないということであればこそ、堂々とというおことばが出てきた。むしろ私は、本日総長はたいへんなことをおっしゃったと思って、実はそれでは訴追ということについて検討されたのかということさえも私は考えた。この点についてはいかがでしょう。
  58. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 私が先ほど広報についてその点はまずいということを申しましたのは、十九号の中に特定の政党の名をあげて書いておる。そういう表現のしかたがまずい、こういうことを申しましたので、これは裁判所の所長としての職務の逸脱であるとまでは申しておりません。そういう特定政党の名をあげて広報に載せるということはまずい、そういう趣旨で申しておるわけであります。決して、これが逸脱して訴追ものだ、だからここでこれ以上この問題について論議すべきじゃない、そういう趣旨で申しておるわけではありません。
  59. 中谷鉄也

    中谷委員 この問題については、国政調査ということと裁判所の問題というのは、非常に微妙な問題がある。国政調査の範囲、限界ということについても、私は心得なければいかぬと思います。これ以上は私お尋ねすることを差し控えますけれども、どうも私がお聞きしていた先ほどの雰囲気は――少なくとも堂々とというようなおことばだけはお取り消しになったほうが私はいいんじゃないかと思います。お取り消しにならなくてもけっこうです。
  60. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 私が申しておりますことは、きょう一日ばかりではなくて、何回か、数カ月前あるいは一年前から同じことを申しておるのであります。それで、ただいま中谷委員から言われたように、われわれがこれは訴追ものだから国政調査としてのほうを封じよう、そういうことではない。それは裁判官の言論について一切国政調査の対象にはならないとは申しません。それはケース・バイ・ケースによってあると思いますけれども、少なくともこの飯守問題に関する限りは、論議の末は常に裁判官としての適格問題にまでいくわけなんです。そういう議論ならば、ここでこういう国政調査の席でやるべきことじゃない、そういう趣旨で申しております。
  61. 中谷鉄也

    中谷委員 先ほどの雰囲気と若干変わりました。というよりも、私のほうからこまかくお聞きしたから、そういうことになったのかもしれませんけれども、質問を変えたいと思います。  そこで、飯守さんのそういう行為については好ましくない。先ほど、ずいぶんお会いする機会があって、そうしてゆっくりととにかく話をされた。私は、端的にお聞きしまして、裁判所長である飯守さんとそれから総長との間には、いわゆる仲間同士のそういう何か民主主義みたいなものがお互い同士の間にあると思うのです。ところが、時間がないようですからお聞きしますけれども、いわゆるリボン、どんなことを書いてあろうが、何をしょうが、とにかくリボンをつけることは禁止さるべきだと思うという趣旨は、そういうものはつけてもらわないほうがいいのだという趣旨なのか、それともそういうことは法のどの規定に触れるのだということなのか。先ほど矢崎局長のほうから禁止さるべきものと思うという御答弁があった。そして何かこちらのほうの与党の委員の御質問は、精緻な法律論を云々するつもりはないというようなお話があった。私自身もこの問題について法律がどうのこうのということはないのです。一体そのことについてかりにお答えをいただけるとすれば、その禁止さるべきものと思うという趣旨は、どういう趣旨なのか、総長からひとつお答えをいただきたい。
  62. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 結論は、先ほど人事局長がここで説明したとおりでございます。要するに、組合活動としてただリボンをつけるのじゃなくて、あるいは国民全体が哀悼の意を表するためにつけるとか、そういったものじゃなくて、組合活動としてリボンをつけて執務するということは、勤務時間中の組合活動になる。これは仕事影響があったかどうかということとは別に、そういう法律的、理論的に申しますと、やはり勤務時間中の組合活動ということになる。そればかりでなく、裁判所にはやはり裁判所らしい雰囲気がなければならない。このリボンはわれわれの目に触れるだけならば、たいしたことはないのです。裁判所というところは大ぜいの当事者が出入りするところです。その大ぜいの当事者が出入りする裁判所で、この間のようなリボンをつけるということは、これは国民から見て、裁判所が何か政治闘争しているのじゃないか、あるいは政治的な意図を持って仕事をしているのじゃないかという誤解を招くおそれがあるわけです。そういう点から見ましても、やはりそれは禁止さるべきであると思います。もちろん神戸の判決のあることは、十分知っております。しかも、判決のある以上は、どこの裁判所判決であっても尊重しなければなりません。しかし、最終的にわれわれが拘束を受けるのは最高裁判決、まだ係属中である限りにおいては、このリボン問題についてわれわれ行政の仕事に携わる者がやはり独自の解釈を考えるということは、これは差しつかえない、かように考えております。
  63. 中谷鉄也

    中谷委員 総長にお教えをいただきたいのは、そういうことでもあるのですけれども、そういうことじゃないのです。要するに、リボンをつけることを禁止さるべきだと思う、そしてそんなことの禁止を命ずることは差しつかえがないことだと思うというふうなお話があった、いまの御答弁では。そうすると、一体勤務時間中の組合活動だとおっしゃるのですね。
  64. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 そうです。
  65. 中谷鉄也

    中谷委員 だとすると、いわゆるどの法律、どの規定一何条のどこにどういう関係でそれが触れてくることに相なるのか、総長からお答えをいただきたい。触れてくるとはっきりおっしゃるのか、触れる疑いがあるとおっしゃるのか、あるいはそういうふうに近いと言われるのか、この点々を明確にして、それから続けて質問いたします。そういう点について、それぞれの裁判所にそういうふうな指示をなさったという事実があるのかどうか、この点いかがですか。
  66. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 これは中谷委員御承知と思いますが、国家公務員法には「職員は、」「その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。」、いわゆる職務専念の義務があることは、御承知のとおりでございます。そうしてさらに「職員は、」「給与を受けながら、職員団体のためその業務を行ない。又は活動してはならない。」という国家公務員法の条文のあることも、御承知のとおりと存じます。そしてまた、「職員は、その職務を遂行するについて、」「上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。」とあるのも、これまた御承知のとおりであります。これらの法律上の解釈によりまして、当然ただいまの問題は法律上の問題として禁止することが妥当であるという結論に相なるとわれわれは考えておるわけでございます。
  67. 中谷鉄也

    中谷委員 それは、そういう条件についてはもちろん承知をしておりますし、そういう御見解についてはずいぶん無理な御見解だと思います。端的に申しまして、組合活動だとかというようなものの実態、それから内容というようなものとずいぶん離れた御見解だと私は思う。しかし、法律の条文を引っぱってくるということになれば、その条文を引っぱってこなければ説明のしようがないと思うのです。しかし、その点については、私は、局長のお顔を拝見しておりますと、実は閉会中に「ある裁判官の歩み」という本を読んだのを思い出した。そして岩松先生が減俸反対運動でずいぶんおやりになったというような――岩松先生はおやりにならなかったけれども、当時の裁判官はおやりになったということを、局長どもずいぶん岩松先生をほめて座談しておる、そのことを私は思い出した。それは別のことですけれども、そういうことで、大幅な賃上げなんというのは、昔の最高裁の大先輩の判事さんだって、減俸反対運動をおやりになった。なぜそういうことがいけないのか。二重予算権も行使されずに、ああいうものをつけてくるということが――裁判所はむしろ予算がふえてくることになるのじゃないか、私はそう思っておる。しかし、その見解は別として、事実関係をもう一ぺんお尋ねします。  先ほど、私は局長から異なことを承ったのです。東京地方裁判所の所長さん――これは飯守さんの問題であえて申しますけれども、どうも裁判所職員の中では、西の飯守、東の奥野、こういうふうにおっしゃるらしい。その奥野所長さんあてのいわゆる文書、東京地方裁判所の文書というものは、とにかくそんなことはわかっておることだし、リボンをいつつけたとか、リボンをはずせということはわかっておることだし、むしろ文書にしたことはあっさりしておるというお話がありました。しかし、一体問題の文書というのは、そういう命令を受けた人、受命者が書くことになっておるのですか、それとも課長さんとかいわゆる管理者、監督者が、どの職員はいつからいつまで、そういう命令を出したけれども、いつからいつまで、何時何分までリボンをつけておったということを書いて出す文書ですか。一体何時何分までということを書くことが――何秒までとは出ておりませんけれども、ずばっと男らしい、あっさりした、逆に言うと、その裁判所がうまく円満にいく方法だ、やり方だと本気になってお考えになっておるのかどうか、この点いかがですか。
  68. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 中谷委員がおっしゃる東京地裁でどういう文書でどういうふうにしたかということは、正直なところ、私全然知らないわけでございます。しかしながら、私が申し上げたところは、従前から申し上げておりますように、職員勤務実態を把握するということは、所長の当然なさるべき仕事の内容でございます。東京地裁では、そういうことをそういう方法でやったのでございましょうし、また、地方のほうではそういうことをしないでも、おのずから数日のうちにはこうであったということがきちんとわかるようになっておる。だから、東京地裁の所長がそういうようなことをやったということは、それは方法論という点ではいろいろな御意見はあるかもしれないけれども、、むしろはっきりしていて、あっさりしていていいじゃないか、別にそれをここでお取り上げになって御叱責になるようなやり方ではなかろうじゃないかというふうな趣旨で申し上げたわけでございます。
  69. 中谷鉄也

    中谷委員 こういう文書なんです。要するに管理者、監督者が署名をして、組合員のだれに自分の部下ですが、何時何分にはリボンをはずしなさいという命令を出した。ところが、その何月何日何時何分から何月何日何時何分までの間はリボンをつけておりました、こういうことを報告させる文書なんですよ。一体職務専念義務ということになれば、管理者だって仕事があるのでしょう。大事な仕事をしておられるのでしょう。それが何時何分までというかっこうで――何分ですよ、局長自分の部下がリボンをつけていることを一々そうしてにらみ回している、調べている、そんなことがあっさりした行為なんですか。そんなことで裁判所の中における労使の円満なあり方、とにかく職場雰囲気がやわらかい雰囲気仕事ができるということが、はたして行なわれるのでしょうか。しかも組合員は、そういうことは、調査されたことも知らないわけです。隠微なかっこうで、ひそかに、不自然に、不公正にそういうふうなものを調査しているということが、どうしてりっぱなことなんですか。私が言っていることは、少なくとも裁判所職場雰囲気というものが国民にとげとげしくあってはいけないというような立場からこういうものが出されたとしても、こんな調査方法をしているということでは、東京地方裁判所という一つの役所がとげとげしいものになってきたとしても、これは非常に残念なことだけれども、私はやむを得ないと思う。こういうやり方をほんとうに支持されるのですか。
  70. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 こちらのほうでそのようにメモをつくって、どうこうしていただきたいということを指示したことはないわけでございます。東京地裁でそういうようなメモをつくることを考えたわけでございまして、いま隠微な、陰険な方法というふうな趣旨でおっしゃったのでございますけれども、それは私どもの感じとしては、逆に下のいろいろな人を使ってどうだこうだという調査をするよりも、むしろあっさりしていて、正々堂々たるやり方で、かえっていいじゃないか、こういうふうに申し上げたにとどまるわけでございます。
  71. 大坪保雄

    大坪委員長 松本善明君。
  72. 松本善明

    ○松本(善)委員 時間がないようですので、簡単に質問します。  リボン闘争のことが問題になりましたけれども、根本問題は職員の給与の問題なんです。公務員の中には、生活保護の申請をしている者があるということまで出てきているわけです。そういう状態については、第五十五特別国会でも、裁判所職員が内職をしているということについて、私は詳細な質問をしたわけです。人事院勧告も完全に実施されない、職員は非常に低い生活水準で困っているということを根本的に解決しなければならない裁判所とすれば、いま中谷委員も言いましたけれども、二重予算の権利もあるわけで、この職員の給与水準を根本的に早く何とかするという考えがあるのかどうか、それを聞いておきたいと思います。そういうことをしないで、リボン闘争を弾圧するというようなことだけをやっておったのでは、これは総評大会政府資本家手先だというふうに言われるのはあたりまえなんです。裁判所職員労働条件について、根本的にどう考えているか、それを聞きたいと思います。
  73. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 私どもも、現在の給与の状態が十分である、これでほんとうに満足であるとまで考えているわけでは決してございません。そのために、できるだけ給与が高くなるよう、極力人事の担当の者といたしまして努力するのは当然のことでございまして、これは鋭意努力しなければならない、こう存じておる次第でございます。
  74. 松本善明

    ○松本(善)委員 時間がないので、そこが根本問題なんだ、そこのところを解決しないで労使間の紛争をますます大きくするようなやり方ではだめなんだということを警告しておいて、次の問題に入りたいと思います。  飯守裁判官の問題では、事務総長は、これは裁判官適格の問題なら、ここでの問題ではない。ここで問題にしておるのは、司法行政の問題だ。所長としてそういうような言動でいいかどうかということを言っておる。先ほどいろいろ横山さんから話がありましたけれども、もうちょっと言っておきますと、たとえばこの法務委員会で問題になった直後に、問題にしているほうが偏向なんだということを飯守所長は言っておる。そして最高裁からあまり立ち入ったことは書かないほうがよいという電話連絡があったけれども、警告めいたことはないのだということを堂々と七月二十二日付の鹿児島新報に談話として発表しています。そういう行動をやっておる。初めから、国会で問題になっておるようなことについては無視をしていくという考えなんです。それから、この飯守所長の考えはきわめて特異であって、この日本憲法は議会制民主主義だ、それは労使協調を前提にしている、経済制度は修正資本主義なんだ、こういう見解を持っているわけです。この労使協調主義と修正資本主義の思想を広げる必要があるのだ、そのために共産党や社会党に対する批判であるとか、あるいは労働組合の闘争に対する批判的活動を活発にする必要がある、こういう見解を持っている。そしてそういう見解が裁判所広報に出てきたり鹿児島新報に出てきたりということになっている。極端な例を話しておきますと、労働組合の安保反対闘争だとか反米闘争はいかぬとか、生産性向上だとか合理化の名のもとに労働者の配転だとか首切り反対、労働強化反対、こういうような戦いを合理化反対闘争としてやっていますが、その合理化反対闘争はけしからぬとか、こういうような言動を裁判所長がやっておる。こういう裁判所長がいいと考えているのかどうか。司法行政の問題として、それはいいかどうか。こういうことについて総長の見解をはっきり聞いておきたいと思う。総長はそれを弁護するのか、それともそういう所長の言動はいかぬというふうに考えているのか、はっきり答えていただきたい。
  75. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 従来たびたびそういう趣旨の御質問を横山委員からも受けました。所長として、政治問題、労働問題について意見を持つということは、これは自由だと思うのです。ただ裁判官であるという特殊な官職にある者としては、その意見を発表するについては、時期とか方法とか場所とかいうことについて十分の慎重さがなければならないと思います。その点につきますと、そういう意見は広報にはなるべく避けたほうがいい。広報というのは、いわば裁判所の半ば公のものであります。広報にはそういうものは避けるのがよろしい。そういう考えでございます。
  76. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういう見解についてはたいへん不満であるし、むしろそれは飯守所長を弁護している結果にしかならないという考えを持っていますけれども、これはまたあらためて問題にすることにして、もう一つお聞きしたいことがあります。  それは、アジア財団から裁判官が金をもらって外国へ行ったということについて、五十五特別国会でも問題になりました。このアジア財団はCIAと関係があるということで、私たちは問題にしておるわけです。裁判の公正を担保するという観点で、きわめて遺憾であると私たちは考えておるわけですけれども、この金をもらった裁判官の氏名を公表してもらいたい。
  77. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 再三そういうお話を、当委員会の場でなくて、私、松本委員から伺ったわけですけれども、松本委員はそういうことは決してなさらないことは十分承知しているのでございますけれども、前に、ある具体的な事件におきまして、アメリカに留学した、アメリカ裁判上の研究をしてきたということだけの理由をもちまして、弁護人から忌避の申し立てを受けました。その忌避の申し立てのために訴訟が相当遅延したというようなことがあるわけでございます。このアジア財団がどういう性格であるか、またどういうようなものかということは、私どもは全く存じないわけでございます。また、アジア財団から若干の旅行の費用をもらったかどうかということも、全くわれわれは関知しないことでございます。しかしながら、それは、だれが行ったかというようなことについては私どものほうでわかってはいるわけでございますけれども、そういうような心配がございまして、松本委員についてはもちろんそうじゃございませんが、申し上げると速記録にも載りましょうし、かりに速記録に載らなくても、やはりこれを申し上げますと、ほかのほうにも漏れていくことにもなりましょうし、そういうふうな点で、申し上げた人の名前が変に色めがねをもって見られるということにつきましては、まあできたらかんべん願いたい、こういうような趣旨でお願い申し上げているわけでございます。
  78. 松本善明

    ○松本(善)委員 事務総長は、五十五特別国会で、このアジア財団は政治、宗教に関係ないのだ、これはかまわぬことなんだという答弁をしています。そういう公明正大なものであるならば、これをもらった氏名を公表して一向に差しつかえない。裁判官というものはそういうものである、こういうような行動をしている人だからということは、だれに知られても、ガラス張りの中で裁判をしていく、それが公正な裁判ではありませんか。裁判官行動を隠さなければならない、そういう情けないことでいいのかどうか。事務総長どう思いますか。
  79. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 前回確かにそのとおり申し上げました。アジア財団から金が出ておりましても――これは留学する裁判官、判事補、検察官、弁護士がアメリカの大学の試験の受けて、そしてスカラシップをとって、その大学へ留学する往復の旅費と研究費だけは大学から出ますけれども裁判官が行った場合、あるいは検察官が行った場合に、その機会を利用して各地裁判所の状態を視察する、そういう費用は出ないわけです。そういう点で、留学するその個人とアジア財団との関係において、二百ドルなり三百ドルなりの援助を受けた、そういう趣旨です。しかも金の援助を受けるについては、アジア財団から何らの注文もつけられない、何らの研究題目も与えられない、全く自由に見てきなさい、報告義務も負っていない、そういう意味で、これは決して何らやましいものではない、かような意味で前回申し上げているわけであります。
  80. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういうようにやましいものでなければ、堂々と公表すればいい。裁判官が人に隠れてこそこそやらなければならぬようなことをやってはぐあいが悪い。当然じゃないですか。裁判によっては、人の運命が変わるような、その裁判官がどういう考え方を持っているか。その金はCIAにもつながっているというふうにいわれている金ですよ。それをもらっていてかまわぬのだ、一向にやましいところはないのだというなら、堂々と公表すればいい。もう一度見解を聞きたいと思います。
  81. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 同じことになりますが、公表できない理由は、先ほど人事局長も申しましたように、それが訴訟法上悪用されるおそれがある、そういう意味で公表できない、こう申しておるわけであります。
  82. 松本善明

    ○松本(善)委員 その見解には全く賛成できないし、一方的に初めから悪用ということを言っているけれども、事実を明らかにして、場合によっては忌避される場合もありますよ。アメリカに反対している政治闘争の中で弾圧されるという場合に、CIAから金をもらった裁判官に裁かれることを忌避するのはあたりまえです。そういうような見解はけしからぬということを言っておいて、次の質問をちょっとしたいと思います。  最近「全貌」という雑誌が「裁判所共産党員」という記事を載せて刊行されております。このことを事務総長御存じかどうか。
  83. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 私ども存じております。
  84. 松本善明

    ○松本(善)委員 この「全貌」という雑誌の五月号では美濃部亮吉氏の特集をして、そうして都知事選の最中に美濃部氏の家庭のことまであることないこと掲載して、悪質な選挙途反だということで法務委員会でも問題になりました。また七月号では「共産党の駒にされた芸能人」ということで、樫山文枝から高峰秀子、それから吉永小百合、中村錦之助、美空ひばりに至るまで赤呼ばわりをする記事を書いているのです。こういう雑誌について裁判所はどう考えているのか。この記事を書かれたことについてどう考えているか。
  85. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 あそこの記事がどういう資料に基づいて書かれたのか、私ども一向にわからないわけで、私どもが読んでも非常に的をはずれたことが書かれてあるわけでございまして、特に裁判官と書記官とが手を結んで事件をどうこうやっているというようなことは、とんでもないことでございます。読んではおりますけれども、しかしながら、私どもとしては、その点についてきわめて迷惑を受けたというように感じております。
  86. 松本善明

    ○松本(善)委員 ところが、最高裁はこの雑誌の十月号、この特集をされた「全貌」を人事局の依頼で購入し、地裁などに配布したといわれているけれども、そういう事実があるかどうか。
  87. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 人事局が依頼をいたしたことはございません。
  88. 松本善明

    ○松本(善)委員 購入をした事実があるかどうか、経理局長に聞きたい。
  89. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 購入いたしました。
  90. 松本善明

    ○松本(善)委員 何部ですか。
  91. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 部数は記憶ございません。
  92. 松本善明

    ○松本(善)委員 百七十部ではございませんか。
  93. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 記憶ございません。
  94. 松本善明

    ○松本(善)委員 調べればわかりますか。
  95. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 わかると思います。
  96. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは、それはどこの依頼で購入しましたか。
  97. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 資料の関係は私どものほうでやっておりますので、私どものほうで購入の手配をいたしました。
  98. 松本善明

    ○松本(善)委員 それはどういう費目で買いましたか。
  99. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 これは抽象的に申しますと、資料整備費と申しますか、いろいろそういう雑誌とか新聞とかいうものを買う費用があるわけでございます。
  100. 松本善明

    ○松本(善)委員 いまの人事局長の答弁では、的はずれであって、迷惑に思っているというような雑誌を、どういう目的で購入したのですか。
  101. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 これは、この雑誌が出ましたときに新聞に広告が出ました。また私ども駅の売店等でも若干見受けまして、その見出しに「裁判所共産党員」ということであったと思いますが、そういう見出しが出ておりまして非常に衝撃を受け、また関心を持ったわけでございます。その当時また一、二の所長から、こういうものを何か某所から送ってまいった、これの名前をいま正確には記憶いたしておりませんが、第三者でございまして、民間の団体であったと思いますが、そういうところから送ってきたがどういうことだろうというような照会も受けました。いずれにいたしましても、そういうものが公刊されまして、そして裁判所職員の目にも入り、また民間の方々の目にも入るということになりますし、司法行政をやる者といたしましては、これに対してどう対処すべきかということについて腹がまえをする必要があるわけでございます。先ほど人事局長も申しましたように、私どもあの内容は全然あれしておるわけではありません。相当問題点を含んでおると思います。しかしながら、それにはまず中を読まないことには問題にならないわけで、それを読んでよく研究したい、こういう趣旨で購入したわけでございます。
  102. 松本善明

    ○松本(善)委員 東京地裁では、寄贈されたと称して、この「全貌」なる雑誌を回覧しておるということを聞いておりますが、そういう事実はありますか。
  103. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 どういう範囲の回覧か存じませんが、私どもは承知いたしておりません。
  104. 松本善明

    ○松本(善)委員 裁判所は、寄贈されたら、そういうものは全部回覧をする、こういう慣行になっておりますか。
  105. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 これはものごとによりまして、それぞれしかるべき関係者に回覧ということであろうと思います。
  106. 松本善明

    ○松本(善)委員 裁判所に一言言っておきたいのは、一方では飯守裁判官のような言動を、私から言わせれば野放しにしている。むしろ弁護している。まずいとは言うことは言うけれども、実際的には弁護している。だからこそ、何べん問題になっても解決しないという事態が起こっている。あるいはCIAと関係のある金を受け取った裁判官の名の公表も拒むというような姿勢であり、あるいは反共雑誌の「全貌」を、税金を使って裁判所の金で買う、こういうことをし、一方では全司法の労働組合活動を、ほんとうに給料が安くてどうにもならぬといっていろいろ活動している労働組合活動を圧迫する。こういうような裁判所の姿勢では、これはいかぬのじゃないか。いま全体として、戦争前と同じように、戦争体制になろうということでいろいろ批判がされております。戦争中には、裁判官は治安維持法を適用して、国のファッショ化と侵略戦争に協力をした。いまのような姿勢では同じあやまちをおかすものだ。遺憾に思っております。このことについて、私は厳重に裁判所が反省するよう要求して、質問を終わります。
  107. 大坪保雄

    大坪委員長 高橋英吉君。
  108. 高橋英吉

    高橋(英)委員 法務大臣にお尋ねしたいのです。北鮮帰還問題ですが、これは政府のほうで閣議決定にもなって一応打ち切りということになっておったのですが、これは人道問題で、私は同じ与党の一人として政府の打ち切り決定に対して多少残念な思いをいたしておりました。不満であるという程度でなくても、どうももう少し考えようはないかというふうに考えておったのですが、政府のほうもよくお考えになったとみえまして、新聞で見ると、今度セイロンあたりで第二回の会合が持たれるということ、日本の赤十字と北鮮の赤十字ですか、そういうふうなことになっておるというので、非常に明るい思いをいたしておるのですが、どういうふうなことになっておりますか、そのことをひとつお尋ねしたいことと、ひとつ、これは北鮮の帰還問題と違うのですけれども、御調査の上で御回答をお願いしたいと思うのです。  明治三十八年の日露戦争後の講和条約反対のいわゆる焼き打ち事件といいますか、暴動事件といいますか、そういうことをはじめとして、大正二年に第三次桂内閣の打倒、憲政擁護運動というものが起こって、そしていわゆる焼き打ち騒動というのが起こったわけです。暴動的なもあが起こった。それから大正三年でしょうか、翌年だったと思いますが、山本権兵衛内閣に対してシーメンス事件というような海軍の汚職事件が起こって、そして山本内閣打倒のためのやはり焼き打ち事件が起こったと記憶しております。それから米騒動事件とか、そういうふうに、あの三十八年の講和条約反対の暴動事件以後、ああいう集団的な暴動事件というものに対して、どういうような法条が適用されたか。今度の羽田事件なんかに対しましてわれわれいろいろ研究しなければいけませんので、そういうふうなものを参考資料に考えてみたいと思いますので、まあすぐにはこれは御回答できないと思いまするから、どういう罪名であったか、それから事件の内容とか、もしくはその犯罪人の数とか、そういうふうなものの性質とか内容とか、量的な問題とか、そういうものをひとつ御調査の上で御回答を願いたいと思います。  まず、とりあえず北鮮の帰還問題について……。   〔「大臣、六人いますから簡潔に。」と呼ぶ者あり〕
  109. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 簡潔にですけれども、ちょっと申し上げなければやはりどうもいかぬことがあります。日朝両赤十字のモスクワにおける会談が成功いたしませんで、残念でした。その理由は、わが国のほうの見解はすでに昨年の打ち切り声明、閣議の決定によって本年十一月十二日以後打ち切りを断行するのだということの既定の事実についての主張でございます。その主張は全然いれないで、これを延長すべしとの主張を先方が行ないました結果が、決裂となっております。したがって、今後セイロンでやりますか、どこでやりますか、まだ決定はいたしませんが、わが国の内閣の昨年の打ち切り声明というもの、したがって、本年の十一月十二日には打ち切りを行なうのだという前提に立って、さてどうしようか、何をどうしようというのかといえば、積み残しがあるわけでございますから、積み残しをどうしようかという問題に限られた話でございますならば、場所はどこにいたしましても、再開をする用意がある、それを認めてくれなければ再開の見込みがない、こういう見通しでございます。  先生の第二段の御質問に対しましては、明治三十七、八年のころでございますので、詳細を取り調べまして、これを御報告機会をつくりたいと思います。
  110. 高橋英吉

    高橋(英)委員 セイロンで再び会議を持つということは大々的に報道されておったので、非常に明るい思いをしておったのですが、いまの大臣の御答弁ではあまり明確ではないので、新聞社のほうで先走りしたのかと思って非常に心細い思いをしておりまするが、しかしとにかく、何といってもこれは何とか解決をつけなければならない問題ですから、大臣の努力をお願いするとともに、いま言われました三十七、八年以後の――私は例示的に三、四言ったのですが、それ以外に集団暴動的な事件があったならば、それに対してどういうふうな処分がなされたかというふうなことをひとつ御調査願いたいと思います。  帰還問題については、何も横山君と共同闘争するわけではございませんけれどもあと詳しく横山君のほうで御質問がありますから、私は謙譲の美徳を発揮して、横山君に譲りたいと思います。
  111. 大坪保雄

  112. 横山利秋

    横山委員 八月二十七日、大臣は、日本法務大臣として韓国に行かれました。伝うるところによりますと、二十八日午前十時、外務部崔圭夏氏を訪問して、約五十分間、在日韓国人法的地位協定施行に関する問題を協議されたのであります。崔長官はこの席上で、在日僑胞の永住権申請手続を簡素化するよう重ねて要求し、在日僑胞北送と、東京都で朝鮮人大学校を認可しようとする動きに対して、強力に抗議した。これに対して法務大臣は第一番目に、いわゆるカルカッタ協定は来たる十一月十二日で満了することを再確認された。第二番目に、在日僑胞問題は優待する立場であらゆる問題を処理すると約束された。第三番目に、朝鮮人大学校認可問題は、政府が東京都に対して強制命令をすることはできないが、認可のできない方向で努力をすることを約束された、こういう話でありますが、これは事実でありますか。
  113. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 そういう事実はございません。ありましたら、ありのままを全部申し上げます。  もう一つ、韓国の訪問は韓国政府の御招待によりまして、たいへん熱心な御招待があったものでありますから、つい親善のための旅行、したがっていろいろな雑談はございました。雑談はございましたけれども交渉とか話し合いとかいうような折り目のついたものではないのでございます。いろいろな話は雑談の中で出てまいりますけれども、そういうことが目的で行ったのじゃないのです。親善を目的として参りました。そういうふうに御承知おきいただきたいと思います。
  114. 横山利秋

    横山委員 八月二十九日の韓国日報、それから同じく八月二十九日の京郷新聞、同じく八月二十九日の朝鮮日報、大体同じことを書いているのですね。そうすると、この事実はない、こういうことを議論をし、かつ三項目にわたって約束をされたことはないと公式におっしゃるわけですが、これらの新聞の報道は間違いでございますね。
  115. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 お互いにゆるやかな懇談の席でございますから、そういういろいろな話が出ております。私が行っておることでございますから、私の権限に関するような事柄はいろいろなお話が出てはおる。出てはおるけれども、どういう約束をしてきたとかどういう調印をしてきたとかいうようなことは一切ないのであります。もとより親善が目的でございますから、親善のために行ったので、親善の立場からいろいろな話は出ておる。一々それは覚えておりません。正式にこういう話についてこういう約束を取りつけてきたというようなことがありますならば、これは覚えて帰らなくちゃならない。そういう話はございません。
  116. 横山利秋

    横山委員 そうしますと、今日まで法務委員会で法務大臣が答弁したことは、何ら変更をするつもりはない。それから韓国を訪れて、少なくとも法務行政及び日本のこの種の問題について方向を変えたというようなことは一切ない、こう理解してよろしゅうございますか。
  117. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 さようにお考えをいただきましてけっこうでございます。  もう一言申し上げますと、親善のために旅行をいたしましたことでございますから、従来まで日本政府がとってまいりました態度、また約束しております協定の精神、そういうものについては誠実にこれを履行することに努力をする。こういう気持ちでものを言うておりますし、向こうもそういうつもりでおることは、これは当然のことでございます。これは新しいことではございません。従来の対韓国の方針を変更するというようなことは一切ございません。
  118. 横山利秋

    横山委員 別な角度で伺いたいのですが、八月十二日までに届け出ろ、そしてそれは十一月十二日に送り返す。これは朝鮮と日本の両赤十字社の約束ではなくて、日本政府の一方的な意思でございますね。そうするとあれだけの混乱の中に、かってに日本政府が言うたことでございますから、少なくとも希望した一万七千八百人の帰りたいと言った人は、これはもう家財も売り、十一月十二日に日本政府が送ってくれる、送ると言ったのだから私は届け出る。こういう意味合いで、日本政府は一万七千八百人の人については送り返す義務がある、そう私は解釈するのが至当だと思うのですがどうですか。
  119. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 そういう御解釈も当然出てくる御解釈ですね。行き過ぎた御解釈ではない。同時に、こういうことも言えるのではなかろうか。こちらの国から先方のお国に送り返すわけでございますから、送り返したのを受ける北鮮側のほうで、従来の経過によるように、やはり親切に適切に配船の準備をいたしまして、これで戻してくれという配船の誠意ある手続を先方さんがなさることも必要ではなかろうか。先方がこれをなさらぬと、送り返しようがない、こういうことになると思いますね。
  120. 横山利秋

    横山委員 それならば、先方さんに送り返す者の受け入れ態勢をつくってもらうのが当然だというならば、一方的ということはないわけでしょう。向こうが承知しないのに、一方的に八月十二日までに届け出ろ、十一月十二日に送り返すと、かってに言った以上、それを向こうに責任を求める権利はない、世の中というものはそういうものですよ。もし向こうに受け取ってもらいたいと期待するならば、話し合いできまったからやるというなら話はわかる。向こうが承知せぬものを、こっちから八月十二日までに届け出ろ、十一月十二日に送り返すと一方的に向こうも承知しないのに言って、それによって一万七千八百人の人が心中じくじたる思いをしながら、私は帰りますと言って家財を売って待っているわけですよ。それを向こう側が受け取らぬからいかぬと言えた義理ではない。これはぼくの論理です。考えてみれば当然のことですよ、この考えが。あなたのほうは何か向こうが悪いように思っておられるが、こっちだけがかってにきめたことではないか。かってにきめたことならば、かってに責任を履行する義務があるではないか、どうですか。
  121. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 昨年の閣議の決定により内閣が天下に声明をいたしました声明のとおりにいきますと、迎えに来てもらわなければ帰れないのです。迎えに来てくれなければ、こちらから船を仕立てて帰すというような筋ではないのですね。(横山委員「そんなことはわかっているのだが、何でかってにきめたのか」と呼ぶ)ですから、打ち切るということは、八年間にわたって政府が誠意を尽くしてやってきたのも、一方的にやっておるわけです。先方と約束をしてやっておるわけではないのです。この八年の間は一方的に送っているのです。ただ、受け取りに来て持って帰っているという事情があるわけでありますから、だから今度もそんなにかた苦しい話ではないので、あっさりと、帰りたいという者が一万数千人おるのでありますから、それが帰れるように配船の準備をしてくれさえすれば、こちらは送れるのですよ。そんなことを衆議院のここで議論をしてみたところで、向こうが船をよこさぬのですから、手のつけようがないのです。
  122. 横山利秋

    横山委員 手のつけようのないことを、なぜ一方的にやるのですか。大臣、あなたはここで私の言うことを率直に、そうでしたと論理を認めるわけにもいくまいが、帰ってよくお考えになれば、私の論理はよくおわかりだと思いますよ。  第三の質問はこういうことなのです。向こうは無条件延長だという。こちらは閣議決定で破棄だという。そこで衝突してしまってどうにもならない。それにもかかわらずコロンボで話し合おうということは、相互の主張は主張として話し合おうということだと思うのです。こっちもいまさら――私は無条件延長しろと言っているのだけれども、閣議の決定をもう一ぺん引っくり返すわけにはいかぬ、それがこっちの立場だったら、向こうだって国の意思として無条件延長ということを言っておられるわけでしょう。対等であれば、どちらにも体面があるわけでしょう。あなたの気持ちもわかる。私の気持ちはこうだ、とにかく話し合うまいかと、何でその気になれぬのかということです。おまえがおりたら話し合おう、いやおまえがおりたら話し合おう、土俵に入るのに、前提条件を双方ともつくっておるというのは、私はおかしいと思う。現に一万七千八百人の人がおるのですからね。そういう前提条件抜きで一刻も早く話し合おうとなぜ言えぬのか。これはどうですか。
  123. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 横山さん、私はあなたのおっしゃることも、構成の御趣旨はわからぬでないのですよ。けれども閣議で決定をして、そして最終的にもうことしの十一月十二日には打ち切るのだと声明をしておるのです。(横山委員「向こうだって……。こっちのかってなことばかりいかぬ」と呼び)この打ち切りはこっちがかってにやってよろしいという考えなのです。打ち切りもかってにやってはいけないのだ、先方の承諾がなければ打ち切りは許されぬのだと考えていないのです。あなたの考え方と私の考え方は根本が違う。ですからそれを認めて、しかし人道問題が一つあるじゃないかと、ここでこの間あなたも仰せになりましたね。私も同意をした。一万数千の積み残しがあるとすれば、これは仰せのとおり帰さなければならぬ。それは帰すについては、船をもらわなければ帰しようがない。心を入れて、そしてそれに応ずる配船の準備をしてくれるということになって初めて、さてどういう方法によるかということになるべきものではないでしょうか、ものの筋は。いかがでしょう。
  124. 横山利秋

    横山委員 それは、ですからその話し合いをしなければまとまらぬでしょう。話し合いの場に入るのに、おまえの主張をおろしたら話し合いをすると、双方が言っておるわけです。ぼくはきわめて客観的なものの言い方をしている。そんな前提条件をつけて話し合うということがあるか。だから、向こうは無条件延長と言っている。こっちは閣議の決定だといっている。こっちが国の意思なら向こうも国の意思だ。まん中に一万七千八百人がおる。何で譲り合って、それならばその条件抜きでとにかく話し合おう、おまえも無条件延長を言わないでくれ、おれのほうも閣議決定とは言わない、とにかくそれはそれ、あなたの気持ちはわかるけれども、とにかく場に入って話し合おう、一刻も早く話し合おうとなぜなされぬのかということが、ぼくの主張です。わからぬですか。大臣は私のことばがわかると声が小さくなって、わからぬと声が大きくなる。大体あなたの感じは、すでにわかっておられると思うのですが、どうですか。
  125. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 私の考えは、譲る、譲らぬと仰せになるが、打ち切ったということは、一方的に打ち切ってよいのだという立場に立っているのです。そこで、打ち切りたる前提に立ったその上で、積み残した者をどうするかという問題に入ってくださるならば、お互いが譲歩をして話し合いがあり得る、こう言っている。(横山委員「それがかってだと言っている、どうしてわからぬのだ。」と呼ぶ)私は非常にようわかっているつもりなんです。
  126. 横山利秋

    横山委員 同僚委員からも質問があるから、時間がなくて遺憾だけれども、私は、あなたはこの論理はわかっておると思うのだ。コロンボで話し合おうというのでしょう。それは間違いないですか。いつですか。
  127. 中川進

    ○中川説明員 別に何もまだ話はございません。ただ万が一あるとすれば先方の公館のあるところということで、コロンボなどが一つの候補にあがっているということでございます。
  128. 横山利秋

    横山委員 それはほんとうのことですか。
  129. 中川進

    ○中川説明員 ほんとうです。
  130. 横山利秋

    横山委員 実は与党の中にも野党の中にも心配する人がおって、私も無条件延長派でありながら、何とか話を合わしたいという意味において、私はいまのような論理を言っているわけです。だから、一刻も早くとにかく話し合う、そうして一万七千八百人の人について議論をするということをやってもらいたい。  それから第二番目に、これはどうもこんなことを法務省側に言っては恐縮なんですけれども法務省と総理府ですか、それから外務省、小じゅうとが多過ぎるという感じです。この問題については。それぞれ所管があるだろう。あるだろうけれども、行く人に少なくとも全権をまかす、また権限がある人が行くということでなければ、話はまとまらぬ。向こうは一本ですからね。こっちが、実は日本赤十字社という権限もない人間が、いつもうしろのおばあさんやおじいさんのほうを向いてものを言わなければならぬということでは、話がまとまるはずがないと思うのです。ぼくはいま政府の高官が出ろとは必ずしも言わぬけれども、三省なり、厚生省も含んで関係省が、少なくとも出ていく人間に全権を委任する、弾力性、アローアンスを持たせるというやり方でなければ、百年河清を待つようなものだ、こう思う。その意味において、法務省もそんなにややっこしいことを言わずに、法務大臣としては、よし、大綱方針、人道上の問題、理解する、行ってこい、あとはまかした、こういう立場にならぬですか。
  131. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 仰せのようにはなかなかならぬです。ならぬですが、しかし、先生の熱心なお話がございますので、打ち切りを認める前提に立って、どうしようという筋の通った話で話し合いをする、こちら側のたてまえはそういうたてまえで、ひとつ極力再開をして話し合いをするということには努力いたします。よくお話はわかっております。
  132. 横山利秋

    横山委員 最後に。たてまえをあまり固執しなさんな、話し合いだから、相手が一方いることだから。今度ばかりはこっちが一方的にやったことなんで、一方的にやったことを向こうに押しつけるということでは、話し合いにならぬですよ。  それから最後に言いたいのは、かりに政府のべースでものを言っても――だから私が最初議事録のことを引用したのだけれども、一万七千八百人の人は十一月十二日までに帰れぬですよ、残るのです。そうすると、十一月十二日のリミットはくずれたも同様だ。けれども、それは八月十二日までに届けよといった以上は、政府が責任があるということですね。これがまず第一。だから、その意味において、一方的な政府の宣言はくずれたといってはぐあいが悪いけれども、十一月十二日というものは事実上崩壊しているのだから、それなしにずっと送らねばならぬと思うのです。  その次に、十一月十二日までに帰らなければいかぬぞといったところで、うちを売る、土地を売る、商売を片づけるということになれば、そんなうまいぐあいにはいかぬと思うのです。  それからもう一つは、八月十二日という日でなければ、申請をしなければ、何ともならぬという問題では必ずしも私はないと思う。そんなところに人道はつかぬと私は思う。  その次に、もし八月十二日以降帰ろうとする人については、この間本委員会でいろいろ議論したのだが、延長とか不延長でなく、事実問題として帰りたいというときには、向こうから船が来たらどうするかと言ったら、それはかってに来られてもお困りだろうから、話もせんならぬ。旅券はどうするのだといったら、直接向こうへ行けるように扱いましょう。それなら銭がなくて新潟へ行けぬ人はどうするかと言ったら、それは厚生省でひとつ民生保護も考えましょう。それでは引っ越し荷物はどうするのだと言ったら、とれまた引っ越し荷物は引っ越し荷物としていろいろ手配の方法もありましょう。こういうようなお話だったのです。八月十三日以降に申請する人の問題ですよ。それなら実際問題として、これも一方的にはできますまい。そうすると、政府のベースに立ったにしても、協定の延長とはかりに言わぬにしても、何か話し合いのべースによって、取りきめか、協約か、了解事項か、何かによってやらなければならぬのじゃないかと言ったら、まあそうだというのが、先般の法務委員会の答弁でした。その点は、先ほど確認したように、今日といえどもお変わりはありませんね。
  133. 中川進

    ○中川説明員 ただいまの何かの協定が要るというような点は、議事録を私ちょっと……
  134. 横山利秋

    横山委員 協定とは言っておらぬですよ。取りきめか了解事項か、何かかんか向こうと話し合いの結果として行なわれるということを言っておるのです。
  135. 中川進

    ○中川説明員 少なくとも私はそういうふうに答弁した覚えはございませんが、とにかく八月十三日以降の申請者に関しましては、先生御承知のように、具体的にまだ一人もないのでございます。それで出てきましてから、一体どれぐらいの人があるかという実態を把握してから研究したい、こう考えておるわけであります。
  136. 横山利秋

    横山委員 あなたも出ておったはずだから、一ぺん議事録を読んでおいてくださいよ。きょうは時間がないから議事録でどうということはできませんけれども、あれは一たんおっしゃたことなんですから、大臣がここで従来の質疑応答については変わりはないとおっしゃるのだから、その意味で私は引き下がりません。この点は実際問題として、将来あるべきことについて責任を持ってもらいたいと思います。
  137. 大坪保雄

    大坪委員長 岡沢完治君。
  138. 岡沢完治

    ○岡沢委員 時間がないようですし、ほかにも質問者があるようですけれども、大臣は、帰還協定を打ち切られる根拠は閣議決定だということをたびたびおっしゃいますが、それ以外に、何か日本の国益が害されるという事実があるのですか。それ以外の理由はあるのですか。
  139. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 閣議決定という理由であります。
  140. 岡沢完治

    ○岡沢委員 閣議決定の権威を守りたいということに尽きるわけですね。
  141. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 そうです。
  142. 岡沢完治

    ○岡沢委員 わかりました。この帰還協定が実現して以来約八年間、大体日本の側の財政的な負担はどれぐらいになりますか。
  143. 実本博次

    ○実本説明員 この協定が成立して以来の負担額は、いま全部ここには数字を持っておりませんが、最近の四十一年ないし四十二年におきます年間の帰還業務についての日赤センターのサービスの補助金といたしまして、約一億円補助をやっております。
  144. 岡沢完治

    ○岡沢委員 私はここで論戦をかわすつもりはありませんけれども、わずか一億円ぐらいの負担でかりに北鮮の皆さん方との国交が友好的に進む、そしてまた、申し上げるまでもなしに一万七千以上の方々の人権が守られるというのなら、権威よりもやはり人道上の問題のほうが、大局的な見地から見ても日本にプラスではないかと私は思うのですが、大臣の御見解はどうでしょうか。
  145. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 やはり、申し上げにくいのでありますが、閣議決定の線を守りたい。この点は一歩も譲らぬ。要らぬことを言うようですけれども、一歩も譲らぬという強い決意、厚生省も来ておりますが、これは政府は一貫しておるのです。
  146. 岡沢完治

    ○岡沢委員 私は意見がありますけれども、この点、外務省も御出席のようでありますから、野田課長さんの御見解はどうでしょうか。
  147. 野田英二郎

    ○野田説明員 外務省といたしましても、全く同様に考えております。
  148. 岡沢完治

    ○岡沢委員 大きな問題ではありますけれども、やはり私は一番近い国の一つとして、平和の根本原則、相互理解ということを考えましても、むしろ求めて交通その他の道は開いておくべきだというのが、一つの大原則だと思います。まして歴史的な経過なり、朝鮮の方の日本にお住まいの現状等を考えました場合に、あまりかたくなにならずに、大局的な見地から、別にあやまちとは申しませんけれども、えこじを捨てて、視野の広い面から考え直される必要があるのじゃないかというふうに考えますので、指摘しておきます。  それから、先ほど大臣から、韓国訪問は親善訪問であって、直接これは議題ではなかったというお話がございました。実は私も九月の十三日から十六日まで韓国に参りました。ところが、韓国の方々とお会いしてみると、朝鮮大学の問題あるいは北鮮の帰還協定の問題は、想像以上に韓国の方は敏感に感じ取っておられるようでございます。現にことしの八月の日韓の閣僚会議の共同コミュニケの中にも、この帰還協定打ち切りの問題がうたわれておるわけでございます。私は、経済閣僚会議というのとこの帰還協定、しかも北鮮との協定が日韓の間で問題になるというのは、ちょっと場違いな、あるいはまた変な意味での政治的な関係があるような感じがするわけでございますが、韓国の意向と北鮮の帰還協定の打ち切りとは関係があるかないか。もしないとすれば、なぜ先ほどの閣僚会議のコミュニケに載せられたのか、これは閣僚の一員として法務大臣は責任ある立場で、お逃げにならないでお答え願いたいと思います。
  149. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 私は、日韓関係の閣僚会議には出席をいたしておりませんので、お話はよくわかりましたが、私からはお答えを申し上げかねる。お許しをいただきたいと思います。
  150. 岡沢完治

    ○岡沢委員 あと二分しかございません。ほかの委員がおられますので、私はこれで遠慮いたします。
  151. 大坪保雄

    大坪委員長 松本善明君。
  152. 松本善明

    ○松本(善)委員 簡潔なお答えをいただきたいと思いますが、法務大臣は先ほど、日本の打ち切りという立場を認めなければ再開の見通しはつかないというような趣旨のことを言われた。そういうことになっていくと、これから国際世論にもさらされると思いますが、いわゆるカルカッタ協定の九条によりますと、「本協定の有効期間は、調印の日から一年三カ月とする。ただし、この期間に帰還事業が完了できないと認められる場合は、協定期間終了三カ月以前に日朝両赤十字団体協議の上、本協定をそのまま又は修正して更新することができる。」ということになっておる。帰国事業が完了できないと認められるかどうかということが一つの大きな問題なんですが、いま一万七千八百人以上の帰国希望者が残っておるという現状で、法務大臣は帰国事業が完了しているというふうに思っておられるのかどうか、これをお聞きしたい。
  153. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 いいえ、そんなことは考えておりません。積み残しがあると先ほどから盛んに申し上げておる。
  154. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、この協定に基づいて、まさに帰国事業が完了できないと認められる場合であるから、日朝両赤十字団体が協議をして、本協定をそのままかあるいは修正して更新することができるというこの協定の第九条によって、両当事者が協議をするということをやるのが当然の義務じゃないかと思うのですが、どうです。
  155. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、修正ができる、協定の更新ができるということになっておりますが、それは更新しなければならないということじゃないのであります。わがほうの政府は、打ち切りをお認めくださらなければやらない、こういう決心でございます。
  156. 松本善明

    ○松本(善)委員 法務大臣も認めるように、帰国事業は完了していないという状態で、せっかく協定にちゃんとこういう条項があるのに、それもやらないで、何にも取りきめのない状態にしてしまう。それで混乱が起こる、これはあげて日本政府の責任ということで、国際的にも国内的にも糾弾されるのじゃないかと思います。  時間がないので、続けてお聞きしますが、この問題こういうふうなきわめて不合理なやり方をやってきている理由に、朝鮮民主主義人民共和国を敵視をしている――韓国との関係を各委員がいろいろ聞かれるけれども、朝鮮民主主義人民共和国を敵視しているという考えが根底にあるのじゃないかと思うわけです。その事実を法務大臣に一点お聞きしたいのですが、昨日、国葬のあった日です。私たち反対している国葬ですけれども、この日の十時から十時半ごろに朝鮮大学の前で、自衛隊員が朝鮮大学に向けて射撃の訓練をしている。そうして朝鮮大学の受付職員に向けて立ち撃ちの姿勢で銃をかまえた。これは何人も証人がいる。この事実を見ても、政府が朝鮮民主主義人民共和国に対して敵視政策をとっている。だから、このカルカッタ協定の当然の条項も無視をしてやっているというふうにしか考えられないのです。法務大臣、どう考えられますか。
  157. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 松本さん、あなたはこの問題で何か敵視政策に通じるように仰せになるのですが、そういうふうに仰せになると、たいへん胸が痛い。それはそうじゃないのです。積み残しをどうするかということに限って御交渉くださるならば、これに応ずる用意がある、こう言っておるのですから、これはそれに応じてくださればできるのですね。これは申し出てきた者の積み残しがあるのに、それをほっておいてどうするのかという筋と敵視政策とは関係がない。決して敵視はしておらない。友好関係はない国ではあるけれども、これは敵視をしておらない。これはここではっきり申し上げることができるのです。そう御了解をいただきたいと思う。本件は決して敵視政策と通ずるような意味のものではありません。
  158. 松本善明

    ○松本(善)委員 ほかの委員の質問にあったように、何の利益もない、それからカルカッタ協定にちゃんとこういう場合を規定している。それもやらないといったら、敵視政策と考える以外にないでしょう。この態度を根本的に改めるように要求して、時間がありませんから、私、質問を終わります。
  159. 大坪保雄

  160. 横山利秋

    横山委員 残っておられる皆さんに少し確かめておきたいのですが、さっきセイロンのコロンボというお話が出ました。コロンボを選ばれる理由はどういう理由ですか。
  161. 中川進

    ○中川説明員 それは、先ほど申し上げましたように、どこでやるかということはまだきまっておりませんが、コロンボということが新聞に出ました一つの理由は、おそらく私どもが想像しますのには、両方の公館があるということだと思います。
  162. 横山利秋

    横山委員 北のほうの公館もある……。
  163. 中川進

    ○中川説明員 はい。
  164. 横山利秋

    横山委員 伝えるところによりますと、ここには韓国の大使館もあるそうですね。
  165. 中川進

    ○中川説明員 ちょっとその点つまびらかにいたしませんが、常識としまして、韓国、北鮮、両国と国交を結ぶということは考えられないことですから、どちらか一つしかないと思いますが、その点ちょっとつまびらかにいたしません。
  166. 横山利秋

    横山委員 私も確かめずに聞いて非常に恐縮なんですけれども、セイロンのコロンボを選ばれたのは、どこから出た筋なんですか。
  167. 中川進

    ○中川説明員 先ほどから申し上げますように、もし日朝両赤十字間で会談をするといたしますと、やはり暗号電報その他の関係で、両方の国が公館を持っているところがいいだろうということになりまして、たとえばモスクワはどうだ。これはこれから冬に向かって寒過ぎる。これはこの前行かれた方も、かぜをひかれた方があって非常に困った。これは向かない。それじゃ次にどこがいいだろうというと、あまりないのであります。インドのデリーとかセイロンのコロンボというようなところがあれじゃないか、世界地図をあれしてみると。そうなってくると、いま寒くない、居ごこちがどうだということになると、セイロンがいいだろうという関係者の想像だと思いますが、まだ固まって、そこでやるということまでは話がついてないと承知しております。
  168. 横山利秋

    横山委員 避暑や避寒に行くのじゃないのです。相談に行くのです。私も来月ソビエトに行くのですけれども、相談をするのに、あたたかいほうがいいだろう、寒いほうがいいだろう、そんなかってなことを言ってもらっては困る。そんなばかなことを言ってもらっては困るということを言っておきます。  その次は、かりに日本が無条件延長がいやだとしたならば、あとの帰りたい人についてはどうするかという対案をお出しになるのですか、ならぬのですか。
  169. 中川進

    ○中川説明員 ちょっと先生の……。帰らないときの対案でございますか。
  170. 横山利秋

    横山委員 もう八月十二日で申請は終わりだ、こういうことなんでしょう。無条件延長はしないというならば、八月十三日以降帰りたい人については、日本政府としてはかくかくであると考えておる、こういう便宜をはからう、閣議で決定した便宜をはからうということについての内容を提示する義務があると思っておるのです。その内容についてお出しになるのでしょうねと言っておるのです。
  171. 中川進

    ○中川説明員 ただいまの御質問の趣旨は、日朝がかりに会談した場合ということでございますか。
  172. 横山利秋

    横山委員 もちろんそうです。
  173. 中川進

    ○中川説明員 これは先ほどから申し上げますように、私どもといたしましては、八月十三日以降の申請者というものはまだ一人も出ておりませんので、これがほんとうに出るようでありましたならば、もちろん政府といたしましても帰国の便宜をはかるということはございますので、たとえば出国証明書を出すというような、そういう便宜をはかることは考えております。
  174. 横山利秋

    横山委員 それはちょっとおかしいと思うんですよ。希望があれば対策を考える、希望が出なかったら対策の必要はないというのは、きわめて形式論理だと思う。現にあなたのほうは、八月十三日以降は、希望を市町村でなくて入管局へ届け出よ、本省へ届け出よ、こういう通牒をお出しになったそうでありますが、そういうことならば、自分が届けたならばどういう待遇というか、条件で送り返してくれるのかということを親切に言わずにおいて、ただ希望があれば届け出よ、これは内示じゃなくて正式なものですから、こんな不親切なしかたはない。在日朝鮮人に対して不親切であると同時に、朝鮮民主主義人民共和国に対しても無条件延長はしないというなら、そのかわり今後お帰りになる人についてはこういうふうにしたいというものが一緒になって出なければ話にならぬじゃないかというのは、当然のことだと私は考えておる。
  175. 中川進

    ○中川説明員 その点は御指摘のとおりでございますが、私どもといたしましては、協定の期限が切れた五月十三日以降の出願者は、その出願された方のイニシアチブにおいて帰られるというふうに了解しております。
  176. 横山利秋

    横山委員 意思で……。
  177. 中川進

    ○中川説明員 その方のイニシアチブでございます。何と申しますか、自分で船をとってお帰りになる……。
  178. 横山利秋

    横山委員 それでもいいです。それでも、いきなりアメリカへ行く、あるいはフランスへ行くのと違うのです。条件が違うのだから、それなら旅券はどうなるだろう、あるいは船はどうなるだろう、引っ越し荷物はどうなるだろう、ここでさんざん議論した問題が聞きたいのは当然でしょう、向こうだって。朝鮮のほうだって、それはどうするのだ、自分の国の問題です。それを聞きたいのは当然だ。何を見たらいいのかわからぬということになるでしょう。だから、在日朝鮮人の諸君のためにも、韓国と話し合いを成立させるためにも、私は、延長なんだけれども、しかしかりに無条件ではいやだというなら、そんならこういうやり方で送るのですから、心配なさらぬで話し合いにのってちょうだいという、こういうやり方、つまり、対案がなければおかしいではないか。その対案も出さずにおいて、自分でかってにきめた無条件で延長はしないということだけでは、何を一体考えているのだろうかと向こう側から言われるのは、当然のことではないか。
  179. 中川進

    ○中川説明員 御指摘の点でございますが、これは私どもといたしましては一般外国人並みに帰国できる、帰国願う、こういうことになっております。したがいまして、一般外国人が日本を離れて国へ帰る場合には、おのずから準則がございますから、それにのっとってやっていただければよいというふうに考えております。
  180. 横山利秋

    横山委員 あなたは局長としておっしゃっているのだが、御存じのように、閣議では自後の問題については便宜をはかろうときまっておるのですよ。繰り返し私はここで、便宜とは何だ、もうまつ正面から日本と朝鮮のように、ここでやはり同じような激突をしておるのもつまらぬから、だから政府の言う便宜というものから共通点を見出して、便宜とは何だということから議論をし始めているわけであります。便宜というのは、少なくとも他の国の人が自分の国へ帰るよりも非常に条件の違うところであるから、こういう便宜を特にはかろうというのが便宜なんです。便宜によろしくやるということなんです。その便宜によろしくやるというのが内容となって朝鮮側にも示され、在日朝鮮人にも示されてこそ筋が通るというものだ。それを、閣議では便宜をはかろうときめておりながら、知らぬ顔して聞いてみたら、最初は内容はなかった。それじゃインチキじゃないかといってぼくはおこった。おこったら、いや船はこうする、旅券はこうする云々という話になってきたから、もっとそれを固めたらどうだ。これは私の意思ではないけれども政府側としてはもう少しその点親切に固めてみたらどうだ、こういって忠告をしておるわけです。それをもって、いれられる、いれられぬは別として、少なくとも朝鮮側については、八月十三日以降帰国申請をされた人についての日本側の取り扱いはかくのごとくでございますというものを示してこそ、話し合いも可能になる。それがオール・オア・ナッシングでは、朝鮮側が日本側に対して疑惑を持ったり、どういうことを考えておるのかということになるのは当然ではないか。それはしかし、あなたはそこまで権限を持っていらっしゃるかわからぬから、いろいろ御相談なさるときに強くひとつ押していただきたい。  それから、いまこんなことを聞いてはなんですが、この種の問題は厚生省、外務省、法務省等等、関係省を含めて、中心になって日赤にこういうことをやってもらいたい、こういうようにしてもらいたいという取りまとめの責任省、主管省はどこですか。
  181. 実本博次

    ○実本説明員 この帰還事業につきまして、先ほど申し上げましたように、国内サービーのセンターとして日赤センターが新潟にございますが、それの運営費の補助を厚生省が出しております。そういう意味で、事務的な窓口というものは一応厚生省がやっておる。したがって、日赤と政府との間の連絡というものは、厚生省が一応窓口になって当たる、こういうことでございます。
  182. 横山利秋

    横山委員 そうすると、どこで開くか、どういう条件で開くかということについて外務省、法務省等の意見を徴して、あなたのところが原案をつくって、そして日赤側に渡して、さあ行ってくれ、こういうしかけになるわけですか。
  183. 実本博次

    ○実本説明員 そういうふうな、中身をどこにきめるかということは、これは各省のそれぞれの所管によって、たとえば在外公館の両方あるところとかないところとか、あるいはどこがちょうどいいかということは外務省がその中身をきめていただく。きまったものについても、一々場所については外務省から知らせますと、これは外務省、日赤、煩にたえませんから、そういう中身はそれぞれの所管省の事項においてきめられたことを全部まとめて、われわれのほうからお知らせする、こういった意味の窓口でございます。したがいまして、いろいろな、船を入れるか入れぬかとか、あるいは出入国の手続をどうするかしないかというような、ほかのそれぞれの所管省の問題の決定事項については、それぞれの所管省の御意見をまとめてもらって、まとまったものを総合してお知らせする、こういうふうな意味でございます。
  184. 横山利秋

    横山委員 あなたのところは、文書課であって、企画課ではないというような意味らしい。それでは企画省はどこですか。総合判断をして、相手仕事であるから、これは譲る、これは譲らぬということも話し合いの中身に結局はなるわけですから、そういう企画を担当する責任省はないのですか。
  185. 実本博次

    ○実本説明員 これはその事項、その事項について担当省が案を出すということでございますから、それでもって会議をするということでございますから、それ一本で、たとえば帰還事業そのものについての一本の所管省がない限りは、そういう企画部局一本でということは、現在の状態ではやっておりません。
  186. 横山利秋

    横山委員 それを先ほど私が言うたのですよ。だから、交渉が、向こうは一本だけれども、こちらが難航する、こちらが常にうしろを向かなければならぬ。船で譲るなら旅券でおれの言うことを聞いてくれということが、必ず起こるとぼくは思うのです。そこのところで下がってくれば、こっちでおれのほうの文句を聞いてくれということは、必ず起こるのです。それを下がるほうは法務省が承知せぬ、おれのところを取引の材料にしてもらったら困るというようなことで、結局日本政府側の足並みというものはここでうまくいかなくて、こんなことを私がこんなところで言ってもおかしいと思うのだけれども、だからずばっとした話ができないのではないか。そうして政治的に韓国だけを考慮して、気がねして、日本政府が、人道的でなければならぬ、帰さなければならぬと言っておりながら、ばらばらで、まとめてぎゅっとやって、ここで下がったのだからここで話し合いをつけてもしようがないじゃないかという責任のラインというものがないということを、私は痛感している。決してこれは何も朝鮮側だけにいいの、日本側にいいのということではなくて、交渉の当事者能力が日本赤十字社にはないのではないか、これは政府としても考えなければならぬことではないか、こういうふうに思うわけです。これはあなた方に言うても何ですけれども、それでもやはりそれぞれの部局を担当していらっしゃる皆さんとして、こういうことを考えて、ひとつ上司の皆さんにも日赤のためにも働いてもらいたい。外務省、御意見はどうですか。
  187. 野田英二郎

    ○野田説明員 この問題は関係各省庁いつも協議いたしてやっておりまして、また日赤のほうでも、協定自体は日赤と向こうとの協定でございますけれども、実際に政府の関係当局が関与する問題が多いものでございますから、密接に政府と連絡してやっておるわけでございます。
  188. 大坪保雄

  189. 中谷鉄也

    中谷委員 私はきょう、公務員犯罪の問題、主として現在特に世論の批判を浴びている通称陸運汚職といわれている問題について一、二点お尋ねをいたしたいと思うのです。それで、刑事局長さんに御答弁いただく問題が多いと思うのですけれども、最初に自動車局長さんにお尋ねをいたしたいと思います。  質問を申し上げる前に、一応次のようなことだけはやはり前提として発言しておいたほうがいいと思うので申し上げますけれども、昭和四十一年度の犯罪というものが、警察庁のほうから出ております。それによりますと、いわゆる陸運汚職といわれている場合、はたしてそれが事件になるかどうかということで問題になっているわいろ罪につきましては、運輸省関係だけではなしに、むしろ国税庁だとか、あるいは大蔵省だとか、それから通産省だとかいうふうな各省にわたりまして、そういう事件が発生をいたしているわけなんです。なお、さすがに検察庁関係にはそういうふうな事件はありませんけれども法務省の関係でも、昭和四十一年度は十六件のわいろ罪というふうなものが出ているというふうなことで、質問の前提として、私は運輸省だけを責めるということで質問をするわけでありませんけれども局長にお答えをいただきたいのは、問題になっているいわゆるせんべつですね。転勤に際して、管理職や上級職といわれている、本件の場合でいうならば大阪陸運局の前局長がせんべつを受け取った、こういうふうなことについては、大臣が、今回、厳正な規律を保て、業者のせんべつ辞退をという、そういう大臣通達をお出しになったことは新聞で拝見をいたしましたけれども、ひとつ端的にお答えをいただきたいのですが従来、十数万という、いわゆる十万円をこえるようなせんべつというものが、陸運局関係のいわゆる上級職、管理職の方の場合は授受されておったのかどうか。こういうふうなことは、国民としては非常に意外でもあるし、非常に不愉快なことだと思うのです。しかし、こういうふうに表立ってしまった以上は、その点についてひとつ率直にお答えいただきたい。  なお、自動車局長さん、そういうせんべつというようなものについて、一体どういうふうにお考えになっているのか、その点についても、ひとつ姿勢を正すという意味から、従来そういうふうなことが慣例として許されていいというようにお思いになっていたのか、あるいはその点についての厳重な自己批判といいますか、厳粛な反省をしておられるのか。事件になるとかならないということを私は露骨にお聞きしませんけれども、この点についてはいかがでございましょうか。
  190. 原山亮三

    ○原山説明員 このたび陸運局関係でいろいろと事件が発生いたしまして、非常に残念に思っておる次第でございます。御指摘のせんべつの問題でございますが、従来はやはり御指摘のとおり、陸運局のそういう職員の転勤に際しまして、せんべつという事実がございました。しかし、今回特にせんべつの問題というものが社会的にも非常に問題になってまいりましたので、先ほどお話しのように、大臣の名でもって、今後転勤に際しては一切そういう業者なりあるいは業者団体からそういうふうなせんべつをもらうことは固辞せよ、こういうふうなことで、今後はそういう点は一切やめにしたい、かように考えております。
  191. 中谷鉄也

    中谷委員 私がお聞きしているのは、大臣通達があったという事実は、そのとおりすでに事実として御承しておる。なお、いま現在、世論の集中的な非難と批判を浴びているのは、大阪陸運局を中心とする陸運汚職だといわれているわけなんです。私もこれは当然世論の批判を浴びると思います。  では、もう一度聞きにくいことをお尋ねいたしますけれども、従来、こういう多額の、二十万、三十万、あるいは四十万などということにも及びかねないようなせんべつというふうなものが、授受されていたのだろうか。こういうことについて、大臣通達というのは、今後こういうことはしないという趣旨の通達なんですけれども、従来のそのような行為については、私はこれは厳重な反省をしていただかなければならぬ問題だと思うのですが、その点についての御答弁がなかったと思うのです。  同時に、この機会にお尋ねしますけれども、たとえば中元だとか、あるいはマージャン、あるいは招待のゴルフだとかいうようなことも、そうすると、かなり過去においては運輸省関係等においてはひんぱんに行なわれていた。要するにこういうことはしてはいけませんよ、しないようにしましようという大臣通達にあったことが、過去においては非常にひんぱんに行なわれておったということに相なるわけですか。なお、その点については、きょうは運輸委員会でありませんので、大臣はお見えになっておりませんけれども、運輸省全体としてこの問題について、過去のそういうような好ましくない――あえて好ましくないということばを使いますけれども、そのような実情については、どのように反省をしておられるのか、反省をすべきものとして理解しておられるのか、この点いかがでございましょうか。
  192. 原山亮三

    ○原山説明員 お話しのように、従来そういうようなものが全然なかったとは申し上げられません。やはりそうひんぱんというわけじゃございませんけれども、そういうふうな点がありました。今後はそういう点については十分反省いたしまして、そういう世間の誤解を受けないように身を正したい、かように考えておる次第でございます。
  193. 中谷鉄也

    中谷委員 川井刑事局長さんにお尋ねをいたします。  本年度の犯罪白書は、「最近の犯罪犯罪者処遇の諸問題」というサブタイトルをおつけになりまして、その点に力点を置いてお書きいただいた犯罪白書のような拝見をいたしました。ところが、特に「公務員犯罪」の項の中には、「収賄」という四十一年の犯罪白書にはない新しい項目をお設けになりまして、いわゆる公務員の収賄というようなものについての防止のための努力をしておられる、努力しなければならないんだということを指摘しておられるのです。で、一応これは質問の前提として申し上げさせていただくわけですけれども、昭和三十七、八年ごろには五百ないし六百人台であったものが、昭和三十九年以後は千人前後の数字を示すようになってきた。要するに、激増とまではいかないけれども、漸増の状態を示している。そうしてこの種の事案というのは、他の犯罪のように特定の被害者がないためにきわめて潜在的で、ひそかに行なわれる、そういう性格の強い犯罪であって、統計面にあらわれた数字というのは、いわば氷山の一角にすぎないのだ、こういうことを特筆しておられるわけなんです。そういうふうな状態の中で国民として期待をするのは、世論がこの問題、陸運汚職について注目をしておるのは、要するに上級職、管理職といわれる人たちに、従来、せんべつとか中元と称して相当な金品が授受されている、そういうふうな事実があったらしい、また業者による招待ゴルフだとかマージャンなどもかなり行なわれてきておったようだ。こういうことが公務員の汚職との関連について、法務省としては、厳正に取り締まるのだ、こういうことを言っておられて、同時に、現に統計にあらわれてきているところの汚職事件の数というのは氷山の一角にすぎないのだということを言っておられる。そうすると、このせんべつとか中元とか招待ゴルフとかいうものに徹底的なメスを入れていただかなければ、下級公務員ではない上級公務員の汚職の、根絶ということはなかなかむずかしいけれども、防止、漸増を防ぐということは、非常に困難ではないかということを私は考えるわけなんです。そういうふうな観点から、法律問題としてお伺いしょうとは思いませんけれども、せんべつとか中元とか称しておるこういうふうな金銭の授受について、法務省としてはどのようにお考えになっておられるか、この点についてひとつ御見解を承りたいと思います。
  194. 川井英良

    ○川井説明員 いわゆる公務員犯罪につきましては、犯罪の内容はいろいろありますけれども、まず公務員が姿勢を正していくということが民主主義のもとにおける政治、経済の根幹ではないかということを考えまして、累次の検察庁長官会同等におきましても、その趣旨のことを徹底いたしまして、特に公務員の汚職関係につきましては、全力をあげてその摘発と処理に適正を期すようにという方針を堅持してまいったわけでございます。  ところが、御指摘のように、公務員犯罪、なかんずく汚職の関係は、必ずしも減るわけではありませんで、むしろ増加の傾向をたどっておるばかりではなく、最近摘発された事件などをごらんいただきましても、相当悪質な事件が出てきている状況に相なっております。  そこで、私ども立場といたしましては、普通の事業官庁と同じように、その年度初めにおきまして、これこれこういうふうな事業をするんだというふうな、明確な事業計画を立てるわけにはまいりませんし、また立てることは適当でないと思いますけれども、限りある検察陣容を運用いたしまして、時代に沿ったような最も的確な検察行政を行なうということのためには、やはりそのときそのときに応じたような重点施策を遂行していくということが適当ではなかろうか、こういうふうに考えまして、ここ二、三年の間におきましては、暴力犯罪あるいは交通犯罪少年犯罪それから公務員犯罪というふうなものを重点施策といたして、その摘発また妥当な処理に当たってまいっておる次第でございます。  基本方針は以上のごとくでございますが、最近摘発いたしました事件を見ますると、御指摘のようにある的確な請託行為を行ないまして、その請託行為に対して報酬として直接不当な報酬を供与するというふうな典型的な涜職の事案がわりあい少なくて、ある行為があったときにはその行為はそのままにしておきまして、多少時期をずらしまして、中元とか歳暮とかあるいは慶弔というふうなことがあった際に、その機会に不法な報酬を、前に行なわれたあるいは将来行なわれることあるべき行為に対して提供するというふうな事案が、比較的多く出てまいったように思うわけでございまして、そのような観点から、たまたませんべつに対するいろいろな考え方が大きくクローズアップされてまいりましたけれども、私どもも早くからそういうふうな面について、名前をせんべつにかりまして、実は本質的には涜職であるというふうな事案がかなり多いように見受けるわけでございまして、したがいまして、そのようなものにつきましては、法律の解釈の面におきましても、また適用ないしは捜査の面につきましても、万全を期しまして、悪質なものについてはこれを摘発して、もって姿を正していくということに注意を向けるように、検察庁に対しまして指導しておる状況でございます。
  195. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、従来いわゆるせんべつあるいは中元などと称して、われわれ国民の常識からするとちょっと考えられないような、万に十がつくようなお金が業者との間に授受されておるというものが、慣例だというふうなことで従来もし公然と行なわれてきておったなんというようなことについては、私は非常に問題があったと思うのですけれども、この種の事案について、従来検察庁のほうではどの程度メスをお入れになったのかどうか。ちょっとその点について、公務員犯罪一般の防止ということを重点施策として取り上げておられるということですけれども、こういうせんべつ、中元の問題については、特に上級管理職の公務員の問題については、ある意味ではかなり見のがされておったのではないか、こういう感じがいたすのでありますが、いかがでございましょうか。
  196. 川井英良

    ○川井説明員 一般論としましては先ほど申し上げたとおりでありますけれども、御承知のように、ある特定の行為について報酬として出された趣旨のものなのか、あるいはそうではありませんで、長年のつき合いの関係からいって、ある慣行として行なわれておる時期に、その慣行として出されたものであるかどうかということは、なかなか、法律問題は別問題といたしまして、適用、運用の面ではかなり微妙なものがあるわけでございます。したがいまして、要は公務員に対して提供された金額、物品の額ないしはその態様というふうなものが、まあ社会通念に照らしまして著しく多いかどうかというところが、職務に関して提供されたものか、あるいはそうじゃなくて、慣行、慣習として提供されたものかどうかというふうな分かれ目になると思うわけでございますので、その辺の公務員の地位なりあるいはその行なわれておる職務の内容なりというものを勘案いたしまして、その辺のせんべつか、あるいは具体的にわいろかということの認定は、個々のケースにおきましてはかなりデリケートなものがあるように思うわけでございます。そこで、この下級審なんかの涜職に関する判例をごらんいただきますとよくわかりますように、せんべつなんかに関係しての消極、積極の判決というものは、最近実は思ったより非常に多いわけでございまして、多いということは、検察当局がこの種の事件を取り上げて積極的な姿勢を示しておるという一つの証左になる、こう思うわけでございますけれども、いま申し上げましたような事情がございますので、前向きに積極的な姿勢でもって取り組んではおりますけれども、なかなか認定がデリケートなものがありますので、必ずしも思うようなふうに処理はできていないというふうなことがいえるのではないかと思いますけれども、なお今後さらに万般のくふうと努力を重ねまして、的確なこの面についての検察を指向してまいりたい、かように存じております。
  197. 中谷鉄也

    中谷委員 もう一点だけ、刑事局長に非常にこまかいことをお尋ねして恐縮ですが、との点はひとつ何らかの今後の公務員犯罪防止ということと関係があって、将来分析をしていただく材料になればと思ってお尋ねをいたしますが、実は昭和四十二年度、先ほど引用いたしました犯罪白書の収賄罪の起訴率に関する表が出ております。その表によりますと、昭和三十九年度におきまして五四・一%起訴されております。ところが昭和四十年度になりまして四二・八%という起訴でございます。さらに昭和四十一年度が上回りまして四九・一%ということに相なっているわけです。そういたしますと、何か最近世論の批判、世論の監視というふうな問題がありますけれども、最近に至りましていわゆる各省に公務員犯罪が漸増というよりも、むしろ感じとしては非常にふえているというのは、何か検察のあり方として、昭和四十年の起訴率が非常に下回っているというふうなことと若干関係があるのではなかろうかというふうな感じもいたすわけです。要するに私がお尋ねいたしたいことは、先ほど刑事局長のほうから、この種犯罪については事業計画を立てるようなわけにはいかないけれども、重点的な施策として当然公務員のいわゆるこの種犯罪については取り締まるというお立場をお示しいただいたのですけれども、五四二、四二・八、四九・一というふうな、端的に申しますと一割以上も違うような数字の変動は、どうような原因からそのようなことに相なったのだろうか。また、そのような四十年度におけるいわゆる起訴率の内容がよくわかりませんけれども、起訴が低かったということが現在の一つの汚職頻発の原因、全く一つの原因でもないかもしれませんけれども、というふうなこと々検察のお立場としてひとつ検討してみていただけないだろうかどうかというふうにお尋ねをするわけなんですが……。
  198. 川井英良

    ○川井説明員 このいわゆる刑法犯の起訴率の問題でございますが、長年統計をとっておりまして、大体の起訴率のラインが出るわけでございますけれども、こまかく検討いたしますと、五%、一〇%内外の出入りというのは免れないわけでございまして、いまの四十年度の起訴率が前年に比べまして一〇%余り落ちているという御指摘に対しまして、的確な御説明を申し上げるだけの調査をいましておりませんけれども、これは三十九年度ころにちようど私、最高検察庁におりまして、この涜職事犯についての非常にきつい検察についての検事総長の訓示が示されたことをいま思い出しておるわけでございまして、この年度におきましては、四十年度にかけてかなりの涜職の数字がおそらく出ていると思います。  それから、起訴をする基準は、大体各検察庁おおよそきまっておりまして、必ずしも事件が多いから多く起訴するというわけではございませんで、ある一定の基準に達したものを起訴するというふうなかっこうに相なっておりますので、おそらく件数は多かったけれども、実のある、起訴するような事件が少なかったということに基因するのではなかろうか、これは私の推定でございます。  そのほかに、なお、ある程度検察庁あたりが涜職事件をやりますと、民間から告訴ないしは告発、投書というようなかっこうでもって、この役所にはこういうことがあるというふうなことでかなりな訴えがあるのが通常でございますので、そういうふうなものを一応立件いたしまして調べたところが、必ずしも中身がなかったというようなことで不起訴で落とすというふうな事件もかなりあるように考えております。  いずれにいたしましても、推測を申し上げたわけでございますけれども、ただいま御指摘の点につきまして、また後刻適当な機会に、四十年度についての起訴率の低下について一応具体的な事情を調べた上で御報告を申し上げることにいたしたい、こう思います。
  199. 中谷鉄也

    中谷委員 同じく犯罪白書は、次のようにこの種収賄事件について指摘をしておられるわけです。要するに、「最近の傾向として、ひとたび検挙が行なわれると、執よう、かつ、徹底した証拠隠滅工作が行なわれる事例もまれではない。」というふうに指摘しておられます。そこで、大阪陸運汚職といわれているこの汚職事件については、私の記憶をたどってみますと、いわゆる冷房料金の問題から世論が非常にこの問題について批判をいたしました。そうして、おそらくこの問題がなければ、こういうことは私はいわゆる氷山の中に隠れた問題として問題にならなかったのだと思うのですけれども、八月の十二日ではなかったかと記憶をいたしまするけれども、大阪地検の特捜部のほうでいわゆる強制捜査に踏み切った、こういう経過であったと思います。ところが、現在、人権の尊重だとかいろんなむずかしい問題がありますけれども、多数参考人、関係者、被疑者等を任意でお調べになっている、こういうことであります。ところが、そういうようなことで、世間では、西に大阪陸運局の汚職があれば必ず東も出るだろうというふうに言うておったら、それは単なるうわさや推測、放言ではなしに、最近東京陸運局でまたこのような事件が出ました。これは逮捕をしている。しかし、よく考えますと、この東京陸運局の事件と大阪陸運局の事件とは、若干性質を異にするのではないか。要するに東京陸運局の事件というのは、非常に証拠もはっきりしているような、どちらかといえば下級公務員の涜職事件というふうな感じがいたすわけなんです。そこで大阪陸運局の事件について、人権尊重というお立場あるいは捜査を徹底的にして真実を究明するといういろいろなお立場の中で、任意捜査ということで御捜査をしておられることが真実を発見をするという意味から見て適切の方法なんだというふうにお考えになっておられるとするならば、御捜査のことでありまするけれども、その点についての根拠を示していただきたい。要するに、国民は大阪地検の特捜部の捜査について期待をしているし、また非常な関心を持っているだろうと思うのです。逆に申しますと、下級公務員事件については、強制捜査をして逮捕までした。いわゆる上級公務員の問題については、事案の複雑性というようなことがあるにもかかわらず結局任意捜査でやった、うやむやに終わったということになると、うやむやに終わったという批判が出てくるだろうと思うのです。証拠隠滅というようなことを私はあえて申し上げるわけではありませんけれども、真実を言わなければならないかどうかは別として、八月十三日の新聞の報道によりますと、問題の被疑者とされているところの運輸省の公務員の方は、そんなせんべつなんかもらった覚えはない、こういうことを新聞記者会見といいますか、新聞記者の取材に対して答えているようです。それだけでも、もう現在では何かそういう金銭の授受があったことが当然のこととして、いわゆる金銭の趣旨を争っているということになってきていると思うのですが、そういうふうな新聞記事一つをとってみましても、いわゆる証拠隠滅というふうなことは、私は疑われてもしかたがないと思う。任意捜査でおやりになっている。それでひとつ国民の期待にこたえて真実の究明がしていただけるのかどうか、あるいは場合によっては捜査の進展によっては強制捜査に踏み切るということもあり得るということなのかどうか、この点についてはいかがでございましょうか。
  200. 川井英良

    ○川井説明員 大阪地検におきましては、大阪陸運局と業界との間に不正があるのではないかという情報を入手いたしまして、かなり長い期間内偵捜査をしておったようでございます。その結果、容疑ありとの確信に基づきまして、八月十二日、十六日、十七日、それから二十一日の四回にわたりまして、合計十四カ所にわたってかなり大規模な家宅捜索を実施いたしましたことは、御承知のとおりでございます。非常におびただしい証拠品を押収いたしまして、自来かなりの検察官と検察事務官をさきまして、この事件の真相の究明に当たっていたわけでございます。最近になりまして、証拠類についての若干の説明を求める必要があるということから、参考人という立場で相当数の人の取り調べを進めておったわけでございまするけれども、ごく最近になりまして、参考人ではなくて、被疑者ということで数名の者について取り調べを始めたという報告に接しているわけでございます。問題は、この種の事件について任意捜査でもって目的を達することができるのか、あるいは強制捜査に移して趣旨の究明をすることが適当ではないかと、こういうふうな御質問の御趣旨だろうと拝聴したわけでございますけれども、大阪地検におきまして、この具体的なケースについて、現在の段階で直ちに強制捜査に踏み切るか、あるいは任意捜査をもってもうしばらくの間その事件の進展を見きわめていくということ、どちらがこの事件の究明に関して適当かというようなことにつきましては、私どもには実はわかりませんで、大阪地方検察庁特捜部の捜査にまかしたい、こういうふうに思っているわけでございますので、今後この事件の進展ないしは見通しにつきましては、もうしばらく時間をかしていただきまして、地検の捜査の進展を見守ってまいりたい、かように存じております。  ただ、つけ加えますと、きわめて物的証拠が明確である場合には、必ずしも身柄を逮捕して調べる必要はありませんし、逆にまた、きわめて証拠が薄い場合におきましては、被疑者を逮捕して調べる理由がないわけでございまするので、本件の場合におきましてはそのどちらに該当するのか、いまここで申し上げるだけの資料は持ち合わせておりませんけれども、これは大阪地検が何らかの必要と、それから目的に基づいてこのような捜査を続けておるものではないか、かように考えております。いずれにいたしましても、もうしばらく捜査の経過を見守ってまいりたい、かように存じております。
  201. 中谷鉄也

    中谷委員 法務省の御見解は了解ができると思うのですけれども、特にこの問題については、大臣が退席されたわけですが、大阪で記者会見をされまして、いろんなことがあっても、絶対にこの問題については徹底的な捜査をするんだということを発表されたと、私は記憶いたしております。そういうようなことで、そうすると、法務省刑事局長さんのお立場としては、全く大阪地検の特捜部を信頼して、そうして特捜部の自由な、公正な捜査にすべてをまかしている、個々具体的な報告は別に受けていない、こういうことになるのでしょうか。
  202. 川井英良

    ○川井説明員 捜索が終わったあと、ないしは身柄を調べたあとにおきまして、これこれこういうふうなものを、こういうことについて捜索し、捜査をしたという報告には接しております。見通しについてどうかこうかというようなことについては、報告に接しておりません。この種の事件につきましては、法務省と検察庁との間は、そういうふうなやりとりをしているのが、従来の長い慣行でございます。
  203. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、法務省のほうへ報告があったのは、被疑者、ことに贈賄側の被疑者が一名ではなしに数名――これは正確には御答弁いただけるのでしょうか。要するに、数名になったということ、そうして収賄側の被疑者の方は、これは一名ということになるのか。贈賄側の被疑者については、すでにもう調べが進んでいる。この方についてはお調べが進んでいないのかどうか。この点はいかがでしょうか。
  204. 川井英良

    ○川井説明員 率直に申し上げます。贈賄側の被疑者として数名の者を取り調べたという報告には接しておりますけれども、収賄側の者として被疑者として取り調べた者につきましては、報告に接しておりません。
  205. 中谷鉄也

    中谷委員 個人的には、こういう質問をすることは、非常に遺憾な質問をしなければならないので、気が進みませんが、自動車局長さんにお尋ねをいたします。  どういうようなことに事件の運命が相なるのか。あるいはまた、刑事事件として検察庁が強制捜査をされたということになれば、これは検察庁の一つのそういう見込みというものがあるだろうし、国民の常識からいえば、こういうふうな多額の金品の授受というようなことが簡単にまかり通るというようなことは、私はあり得ないと思うのだけれども、運輸省としては、結局、現にこの被疑者になっている方については、どのような処置をおとりになるのか。公務員の規律の厳正という立場から、すでに何らかの処置はおとりになったのかどうか、この点についてはいかがでしょうか。
  206. 原山亮三

    ○原山説明員 現在公務員の側では、先ほど刑事局長お話しのとおり、まだ取り調べを全然受けておりませんし、被疑内容につきましても、私知っております範囲では、新聞に載っておる程度しか存じませんので、そういう段階で当該被疑者と思われる人をどうこうするというわけにまいりませんし、やはり捜査の段階をよく見きわめまして、その後においてとるべき処置を考えてまいりたい、かように考えております。
  207. 中谷鉄也

    中谷委員 もう一度お尋ねいたしますが、そうする~、すでに新聞等の報道といいますか、世間の常識になったことは、八月十三日の段階では、いわゆる金銭の授受はなかったということだった。ところが、結局金銭の授受というものはあったのだ。しかし、そういうことは儀礼なんだ、社会的慣習なんだ、要するにそういうことは従来もしばしば行なわれておったことなんだというふうな弁解というか、主張というか、当然考えられることだろうと思いますけれども、そういうふうな主張といいますか、そういうふうな話がちらほら聞こえてくる。そうすると、従来そういうことが行なわれておったというたてまえと前提に立って金銭の授受があったということは、はっきりしているように私思うのだけれども、この点については、いわゆる進退伺いも出ていなければ、行政処分をするつもりもない。捜査の結果、被疑者が被告人に変わったというふうなときに至って初めて処分のことが検討されるのだ。実は私、この点について、午前中、国家公務員の労働組合の人がリボンをつけたというようなことについて、それがいいことか悪いことかというようなことで、盛んに最高裁判所の管理職の人にいろいろなことをお尋ねをした。そういうようなリボンをつけるというようなことも、職務専念の義務違反なんだというふうなお話があった。そうすると、運輸省のお立場から申しますと、三十万くらいなせんべつ金を受け取ったって、これは別に行政処分の対象にはならないのだ、結局それが職務に関してなければいいのだ、そういうことについては検討の余地がないのだということなのかどうか。これは私自身、声を大きくしてお尋ねしたり、また現にそういう立場の方についてこういうお尋ねのしかたをすることは、個人的に非常に遺憾だし、残念なことだし、これ以上お聞きすることは差し控えるべきだろうと思います。その人自身にとっては非常につらい立場にあるのだろうからと思いますけれども、一体、運輸省の立場として、こういうことについては従来しばしばあったのだから処分としては考えない。要するに、職務に関した刑事事件として疑われない限りは処分としては考えないのだというふうにお答えになるのかどうか、この点いかがでありましょうか。
  208. 原山亮三

    ○原山説明員 金銭の授受が特定の許認可に関連して行なわれたというふうな場合でございましたら、もちろんそれは収賄ということが明確でございますけれども、今回のこのせんべつの問題に関しましては、先ほど来の刑事局長お話のように、法律解釈上いろいろと非常にむずかしい問題もあるように承りますし、現在のわれわれの立場といたしましては、もう少し捜査の進展を見まして、それがはっきりしてからそれぞれの措置を考えてまいりたい、かように考えております。
  209. 中谷鉄也

    中谷委員 人の身分に関することですから、そういうふうなお立場を考える、これは私、当然あると思いますし、それ以上とやかく申しません。ただ、次のようなことだけは、やはり私、国民の常識として理解ができないということだけはひとつ申し上げておきたいと思うのです。  同時に、いろいろな批判もし、また、いろいろなことをわれわれ申し上げますけれども、たとえば裁判所裁判官は、自分で割り勘以外で会食したというふうな経験は、私はないだろうと思います。そういうことであっても、なお裁判所に対するいろいろな批判もある。そういうふうな状態の中にある役所、そういう人たちがいる。しかし、業者からいろいろごちそうになる、招待ゴルフもあるというふうなことも、それがとにかくしばしば行なわれておる。しかも、多額なせんべつ金をもらって転勤をしていくというようなことは、私は、同じ公務員でありながら、とうてい考えられない。しかも、そういうふうなことが、直ちに事件になるならないにかかわらず、悪なんだ、処分の対象になるのだというふうなことのお答えが出ないというところに、現在の公務員のいわゆる職務に対する姿勢というか、そういうふうな問題があるんじゃないかと私は思うのです。こういうことを申し上げて非常に恐縮ですけれども、われわれが、同僚の検察官が転勤をしていく、栄転をしていくというときに、何人かの弁護士が寄ってせんべつを渡すというときだって、わずか二千円くらいの万年筆を一本というのでそれで終わりなんです。十何万とか二十万というようなことは、とうていわれわれ国民の常識とか普通の人間の感覚では考えられないことだ。しかも、その点については、身分のことですから、そういうお考えがあればそれ以上私はお聞きをしませんけれども、刑事事件でなければ行政処分の対象にならないんだというふうなお考えがもしあるとするならば、私はいつまでたっても、運輸省のみならず――運輸省の局長さん、たまたま陸運行政のことについておいでいただいて恐縮なんですけれども、大蔵省にしろ、国税庁にしろ、汚職はなくならないだろうということだけは、私は指摘できると思うのです。こういう点について、一応私の考え方を述べておきます。  そこで、行政管理庁の監察官の方においでいただきましたので、お聞きをいたしたいと思いますが、最近の汚職事件の一つの特色といいますか、傾向といたしましては、許認可権をめぐっての汚職というものがかなり多いと思うのです。たとえば許認可権という一つの裁量ができるものを持っている人が、そのことに関して汚職するという場合が非常に多いと私は思う。それで陸運行政、ことに個人タクシーだとか、いわゆる貨物であるとか、ハイタクの営業許可だとか、新免だとか、そういういわゆる自動車行政といいますか、陸運行政の中の許認可権の点で、監察のお立場から検討し、改めていくべき点がないかどうか、この点について管理庁としては、すでに過去何回かお仕事上当然ではありますけれども、陸運行政についてのいろいろな監察をされ、また勧告もしておられますけれども、通称いわれている陸運汚職が発生したこの段階において、ひとつ御見解を承りたいと思います。
  210. 北条久弥

    ○北条説明員 監察の基本的な立場は、主として行政事務運営の改善ということでございまして、直接汚職なり不正の事実の摘発ということを目的としておりませんので、調査の途上においてそういった問題が発生すれば、当然しかるべき措置はとりますが、従来から基本的な方針としては、汚職に直接結びつけたような監察はしておりません。
  211. 中谷鉄也

    中谷委員 汚職に直接結びつけた監察というのは、なるほど検察庁が汚職についての公正な取り締まりということの仕事だということですけれども、そうすると、陸運行政のひずみだとかゆがみだとか、いわゆる国民不在の陸運行政というふうなことが盛んにいわれるわけです。そういうふうな批判が、今度の陸運汚職発覚ということばを私はあえて使いますけれども、端緒にもなったのではないかと思うわけですけれども、そういうことから、では陸運行政のいわゆる許認可権について、国民不在だとか、あるいはまた、ゆがんでいるのだとか、業者本位だとか、そういう批判の点から検討すべき点はどのような点だろうかということについてお答えいただきたいと思います。
  212. 北条久弥

    ○北条説明員 たとえば、先般私どもの大阪管区が冷房料金の問題で監察いたしましたように、国民不在の行政であるとわれわれが感じました場合には、当然にそういった許認可の問題を取り上げて所要の勧告をいたしております。
  213. 中谷鉄也

    中谷委員 特にあのときは諸永さんなどが軽率な陸運行政というふうなことばを使ったように私記憶いたしますけれども、結局、そういうふうな冷房料金の許認可の問題について、どこに問題があったのか、要するに、どういう点が国民不在であり、業者本位であったのか、許認可権のいわゆる幅というようなものの広さ、裁量権の大きさ、小ささ、そういうようなことがそのようなものを生んだ原因なのかどうか、この点についてはいかがでしょうか。
  214. 北条久弥

    ○北条説明員 許認可事務に関しまする監察をやります場合に、大体許認可につきましては一定の手続がきまっておりますので、そういった手続が正しく守られておるかどうかというようなものをわれわれよく監察いたしまして、定められたとおりの手続が踏まれてない場合に、これについて勧告をいたしております。
  215. 中谷鉄也

    中谷委員 私がお聞きしているのは、ちょっと違うわけなんです。要するに、そういうふうな許認可について、法律的には別に違法でも何でもない許認可がされておる。ただ、しかし、そこには国民不在であり、業者本位だという、そういうふうな許認可があったとすれば、これは当然監察の対象になると思うのですけれども、そういうふうなものが現在の陸運行政の中に、行政管理庁の立場から見てあるとすればどの点なのか、この点なのですが……。
  216. 北条久弥

    ○北条説明員 具体的にこれこれの許認可がそうだということについては、はっきりした見解等は現在のところございません。そのときどきの、たとえば、先ほど申しましたように、冷房料金等の問題があれば、当然その許認可が国民不在であるかどうかということを判断いたしまして、調査に入るわけでございます。
  217. 中谷鉄也

    中谷委員 刑事局長さんにお答えをいただきたいと思います。この点については、公務員犯罪、特に涜職事件と申しますか、収賄事件を防止する、少なくとも減少さしていくというような観点から、次のような問題についてはどういうふうにお考えになっておられ、どういうふうに対策を講ぜられることが適切かどうか、お考えになっているかということなんです。  一つは、最近のいわゆる特色として指摘されておるのは、地方公務員、いま一つは公選によるいわゆる地方議員、首長などの汚職事件が多いという点が指摘されているわけです。その原因については、いろいろなコンビナートの建設だとかいうふうな、そういう太平洋ベルト地帯の都市に特に多いんだとか、いろいろなことがいわれておりますけれども、このような汚職事件に対するところの防止の措置として、どのようなことをお考えになっておられるか、これが一点。  それから、最後の質問でございますけれども、いま一つは、要するに、東京陸運局の汚職事件の場合は係長さんのようでありますけれども、まあ言うてみれば現場公務員、下級公務員というふうなことばで表現していいんじゃないか。そういうふうな下級公務員の方の汚職というのが、最近かなり目立っている傾向ではないか。そういうふうな現場公務員の汚職が非常に多いとするならば、その上司、いわゆる上役の人たちとの関係で、上司が一体そういうふうな汚職の発生をどうして防止できなかったのだろうか、あるいは上役に刑事責任はないのだろうかというふうな点について、今後検察として配慮され、あるいは対策を講ぜられ、あるいは主として捜査に当たってメスを入れるというようなことが当然あってしかるべきだと思いますけれども、この二点についてお答えいただきたいと思います。
  218. 川井英良

    ○川井説明員 検察法務といたしまして、ただいま御質問のような行政的な措置についてどの程度容喙するかということについて多少問題があると思いまするけれども、従来私どものやってまいりましたのは、この種の事件につきまして捜査が完了いたしました際には、当該官庁並びに行管ないしは内閣等に対しまして、この点についてこういうふうな措置をとっていただければ、こういうふうなことは未然に防止ができたんじゃなかろうかと思われるようなことにつきまして、簡潔に意見書を取りまとめまして、そのつど、しかるべき機関からしかるべき機関に対して伝達をいたしまして反省を求めているというのが、私ども法務検察のとっておるやり方でございます。  それ以上に、もう少し具体的に、しからば、その直接の上司をお呼びして、具体的にはこういうようなことになっているけれども、上を見習って下もやったんだというふうな供述もあるようである。うそかほんとかについては、必ずしも捜査の証拠はないのではっきりしないけれども、その辺の点については抜からないように適当な措置が望ましいというようなことは、私どもやってもいいかと思いまするけれども、そこまで検察という行政機関が出るのはいかがかというふうに考えまして、二、三特殊な事件につきましては、それを担当した検察庁の次席ないし検事正においてそういうふうなことをした事例がありますけれども、多くの場合には、先ほど申しましたような書面でもって行政改革についての意見具申をするという程度にとどめているのが、普通の状況でございます。  なお、せっかくの御指摘でございますので、これを契機といたしまして、これから、この種の事案につきまして、最も端的に、しかも最も効果のある方法について、しかも検察の分野を逸脱しない方法において、適当な方法があるかどうかということについてなお検討をしてみたい、かように思っております。  それから、最初の質問でございます地方公務員ないし公選議員というふうなものにつきまして、相当最近汚職事件が起きているようであるけれども、その防止について何か特別な配慮があるかというふうなことでございます。具体的には、茨城県の県会議長の選挙ないしは岐阜県でも同じような事件が起きておりまするし、その前に東京都でも同じような事件が起きておりますし、それから一般公選議員ではありませんで、地方公務員一般につきましても、かなりこまかい汚職事件ができていることは、まさに御指摘のとおりでございます。これらにつきましても、検察当局として、行政一般についてどうするかというふうなことにつきましては、必ずしも端的な意見具申はしておりませんけれども、やはりそのつど、その当局についてその結果の概略を、差しつかえない限度に取りまとめて文書として提供いたしまして、口頭をもって今後の反省の参考の資料にしていただきたいというふうなことは、させるようにいたしております。なお、この点につきましても、さらに的確な方法があるかどうか、あらためて検討してみたい、かように思っております。
  219. 大坪保雄

    大坪委員長 沖本泰幸君。
  220. 沖本泰幸

    ○沖本委員 まず川井刑事局長さんにお伺いいたしますが、一般紙あるいは一般世論としましては、この問題に対して非常な関心を傾けておる。これがうやむやに終わらないように徹底的に究明してほしい。こういうことは各紙が社説の中にも取り上げておりますし、あるいはいろいろな中にも、この腐った陸運汚職に対して、徹底的なメスを入れてほしい、こういうことが望まれておるわけなんですけれども、それにつきましては、話がさかのぼるわけですが、大阪の事件に関して八月の十二日に第一次の手入れをやってから第二次までの間に六十八日間時間がかかった。また、田中法務大臣も、この事件に関しては強権発動はしない、こういうふうな発言をしておられる。これは大臣に聞きたかったわけですけれども、こういう内容について、周囲は、政治的な圧力がかかってくるんじゃないか、こういう点を非常におもんぱかっておるわけです。大阪のほうに行って聞きますと、これはうわさ話なんですが、どうやら圧力がかかっておって、大阪地検の特捜部も非常にやりにくいらしいというような話のうちに、だんだんと任意捜査に変わってきている、こういうふうな形がおぼろげに一この問題に関心を持つ者にとっては、だんだん捜査が軟化してきているんじゃないだろうか。ただ、おっしゃるところの証拠隠滅、あるいはこれをはっきりと結びつけるという問題に難点はあるにしても、そういうところに非常に大ぜいの人が疑義を持っておるわけです。それで、局長さんのお話では、この問題は大阪地検の特捜部の今後の捜査に待つ以外にない、こういうお考えなんですが、これも回答を十分いただけるかどうかは疑問なんですけれども、はたしてそういう圧力がかかるものなんでしょうか、かからないものなんでしょうか、その点、いままでそういう事実がありましたか。あるいは今後はそういう問題に対して、たとえどういう圧力があろうとも、断固たる態度でこういう問題に臨んでいく、こういうお考えなんでしょうか。具体的にお願いします。
  221. 川井英良

    ○川井説明員 この種の政治的な背景を持つ事件につきましては、事件の結果がうまくいきましても、それから途中でつぶれましても、政治的な圧力、配慮が加わったのではないかということがいろいろ世上に伝えられていることは、私もよく承知いたしております。法務大臣と検察庁との関係は、御案内のとおり、法務大臣は検事総長のみを指揮することができるということで、具体的な事件につきましては、法務大臣みずから、したがって法務大臣を補佐しておる私自身といえども、この事件に関すれば、大阪の検事正でありますけれども、それを呼んでとやかく言うとか、あるいはそれについて電話をもって指揮するとかいうふうなことは、一切できない仕組みになっておりまするし、事実上そういうようなことはいたしておりません。したがいまして、大阪陸運の前の共和グループの事件のときにも、前回の予算委員会でしばしば問題になりまして、田中法務大臣がたびたび言明いたしましたとおり、検察を信頼してこれを見ているんだ、自分のほうからは、やれとかあるいはこの辺でやめろとかいうふうなことは一切言ってないということを言明されておりまして、大臣が検察庁に対してものを言う場合には、刑事局長である私をパイプとしてものを言うということが制度の内容になっておりますので、私が言わなければ、検察には、やみのルートは別問題といたしまして、正規のルートとしてはそれは伝わらないわけでございます。したがいまして、私は、前の事件でもそうでありまするし、今度の事件につきましても、この事件についてもっとはなばなしくやるべきであるとか、あるいはいいかげんでやめたらどうかというふうな、そういう指揮権めいたことにつきましては、一切現地に伝えたことはございません。したがいまして、この事件につきましては、あげて大阪地検の特捜部の証拠収集、またそれに基づく事件の処理ということにまつ以外に方法はない、かように考えているわけでございます。いろいろ伝わっていることは承知いたしておりまするけれども、特に政治的な面からのこの事件について配慮を加えたり、それを伝えたというようなことは、今日までございません。
  222. 沖本泰幸

    ○沖本委員 話を少し変えますが、行管庁の北条監察官にお伺いしますけれども、この大阪陸運局のほうでいわゆるバスの申請――阪急バスの了解がなかったら市バスの乗り入ればさせないとか、あるいは奈良県下で通学バス路線の赤字補償の名目で裏金をとっておった、こういうことについては、おたくのほうからは一応勧告したことがあるのでしょうか。まずそういうふうなことに関しまして、陸運行政に関してどの程度の数の勧告をなさったかという点について、御回答いただきたいと思います。
  223. 北条久弥

    ○北条説明員 陸運行政につきましては、三十八年に陸運行政監察全般をいたしまして、また昨年の第二・四半期にもそれの推進監察をいたしましたが、ただいま御指摘のございました最初のほろの、いわゆる指定市の市長に路線認可の場合に意見を聞く問題につきましては、その際いろいろ調査いたしましたが、特に勧告はしておらなかったと記憶しております。  なお、第二点の奈良県下の問題であります。これはただいま奈良の地方行政監察局のほうで調査をしておりますが、いまだ報告書が参っておりませんので、詳しい実情は承知しておりません。以上でございます。
  224. 沖本泰幸

    ○沖本委員 では、こまかい質問のほうだけ片づけて御関係の方に帰っていただきますけれども、話が飛び飛びになりますが、一応せんべつであるかわいろであるかというところでいろんな論点にきておるわけでありますけれども、文部省のほうに伺いますが、こういうふうなせんべつをもらうという慣習がどこにでもあるということは、国民周知の事実みたいになっているのですが、そういうことで学校の先生の異動、転勤、こういうときになると多額の金が動いておる。ある調査ですが、堺市だけで、ある一時期の先生の異動で約七千万円の金がPTAとかいろんな関係業者のほうから出た。これは調査でわかったわけですが、こういう非常に不明朗な点がたくさんあるわけです。ちょうど話題になってきたときでもあるのですが、先生の異動についてのせんべつというものは、子を持つ親では非常に困るわけです。また、こういうことで教育行政が変わってはいけないのですけれども、こういう問題に対して文部省は現在どういうふうな考えを持っておられるか。ちょうど話題になったときでもありますし、この問題は今後にもいろいろからんで問題を起こしてくるわけですから、文部省としてどういう態度でこの問題を考え、今後どうしていかれるか、そういう点についてお答えをいただきたいと思います。
  225. 別府哲

    ○別府説明員 御指摘のような事実があるとすれば、それはまことに遺憾なことであると考えます。文部省といたしましては、個々の教員の監督権者でございます教育委員会のほうにおいて、そのような事案については十分な監督あるいは指導を行なうべきものであろう、このように考えるわけでございますが、そういう監督を行なっております教育委員会に対して、文部省といたしましても、いろいろな機会を通じて、公務員の服務の厳正、綱紀の粛正という問題について注意を喚起しておるという次第でございます。
  226. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ちょっといまお答えなんですが、そういう事実があるとすればまことに遺憾であるというのですが、いま事実を申し上げたのですよ。先生はたくさんいるけれども、一つの例として、堺市で調べただけで、合計すると七千万円ほどお金が動いておる。これはPTAの協議会が調べたわけです。そういうふうになっておるわけです。そうすると、一般の先生では金額を幾らにしようとか、あるいは教頭先生ではどれくらいにしようとか、校長先生ではこういうふうにしなければならない、こういうこともあるのです。あるいは、ある校長先生が海外旅行を許可されて、それが行くことになったときに、その周囲の人たちが集めたお金が約三百万円、その先生が正式にいただいた旅費は三十万円、事実あるのです。そういう問題はいつもころがっておるわけです。ですから、こういう際にもっと綱紀を正して、要るものは要るとしてちゃんとしてあげなければならない。むしろそういう点で姿勢を正さなければならないのですが、そういう点についてお答えがあまりにも白々しいように私は感じるわけなんです。あらためて御回答をいただきたいと思います。
  227. 別府哲

    ○別府説明員 個々の事案につきまして文部省は十分な資料を持ち合わせておりませんので、先ほどのような御答弁を申し上げたわけでございますが、御指摘のようなことがかりにあったとすれば、まことにけしからぬことでもございますので、今後そのような事案についての資料の収集等につきまして十分留意してまいりたい、かように考えております。そして、そのような事案を発見いたしました際には、文部省が個々の教員に対して直接に指導するという立場にはございませんが、教育委員会に対してしかるべき指導を行なうように十分な連絡をいたします。
  228. 沖本泰幸

    ○沖本委員 あなたは、監督機関である、こうおっしゃるんですね。もしそういう事実があればと言うが、少し念入りにお調べになれば、幾らでも出てくるのです。それで、処罰をするとかしないとかいうことではなくて、姿勢を正していこう、こういう点から、もう少し考えを変えていただきたいと思います。  では、文部省に関する質問は、もっとあったのですが、時間もなくなってきましたから、これくらいにしておきます。それで、文部省のほうはもう少し真剣にお考えになっていただきたいと思います。  今度は自動車局長さんにお伺いしますが、自動車局長さんは大阪陸運局長でいらっしゃったことがあるんですね。
  229. 原山亮三

    ○原山説明員 ございます。
  230. 沖本泰幸

    ○沖本委員 やはり局長さんもせんべつをいただかれましたか。
  231. 原山亮三

    ○原山説明員 いただきました。
  232. 沖本泰幸

    ○沖本委員 こまかいところに触れていきますが、新聞記事から読んでみると、前任者と後任者とが――この場合は安富さんと上原さんがコクサイ・ホテルで協会の会合に出席されて、三百人ほどの前で三十万円のせんべつを手渡された、こういうことになるが、現任者は、安富さんは陸運局長として行っているわけです。上原さんは、やめた方はこっちに帰っているわけですね。そうしますと、いわゆる任地を離れた方がその協会の招待で行く場合は、出張名目で行かれたのでしょうか。御自分の点でお答えになってください。
  233. 原山亮三

    ○原山説明員 上原君がどういうふうな形で行きましたかは、ちょっと調べてみないとわかりませんが、私の場合は、あれは三十八年だったと記憶いたしますが、総理府に近畿圏整備本部という役所ができまして、そこのほうに転勤いたしました。役所が新しい役所でございまして、それから役所づくりをする、事務室すらなかったわけでございます。事務室を手配するとか、あるいは人員を整備するとか、そういうふうなこまかい作業がございましたので、転勤命令を受けましてすぐ東京のほうに参りまして、そういう準備をいたしておったわけでございます。そうこういたしておる間に、私の仕事の内容が近畿圏整備本部という仕事でございましたので、現地のほうに出張する機会がございました。そういう機会に、従来からずっと歴代関係の団体でもって歓送迎会をやるから、それに出席してくれ、そういうふうな形でもって、私が近畿圏整備本部の仕事で出張したときをつかまえて、そういうふうな送迎会をやっていただいた、こういうことでございます。
  234. 沖本泰幸

    ○沖本委員 今度は立場を変えて、運輸省の責任ある答弁者としてお答えになっていただきたいんですけれども、上原現運輸省自動車局参事官は、大阪陸運局長辞任されたら、次の職務は直ちにこの運輸省の自動車局の参事官であったわけですね。それで東京へ転勤なさったわけじゃないんですか。
  235. 原山亮三

    ○原山説明員 御指摘のとおりでございます。
  236. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうすると、あなたの右腕であり、左腕であり、また部下でもあるということになるんじゃないでしょうか。
  237. 原山亮三

    ○原山説明員 自動車局の参事官で、局長の特命事項の内容を仕事といたします。
  238. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それは非常勤なんですか。
  239. 原山亮三

    ○原山説明員 もちろん常勤でございます。
  240. 沖本泰幸

    ○沖本委員 常勤であると、その方が任地におもむかれて、現大阪陸運局長をあわせて歓送迎会をやるということになったその場所は、大阪のコクサイ・ホテルなんですが、その日はちょうど日曜であったということではないと思うんです。そうすると、出張するときには必ずあなたに了解を求めるなり、何なりの名目で出張するということをおっしゃっていくはずなんですが、あなたが御存じないということはないと思うんです。そうすると、何かの業務で出張なさることになると、出張旅費ということは請求なさると思うんです。これは調べればあとではっきりするわけなんですが、その点について、出張名目で業者の団体の会合へ、そう重要ではない、ただ歓送迎会へ出席するということが、従来の慣習として行なわれたんでしょうか。
  241. 原山亮三

    ○原山説明員 上原君は歓送迎会に出ましたのか、出張で出たのかどうかということについては、詳しく存じません。そういう転勤の節にあらためてそういう歓送迎会に出かけていくというふうなケースというものは、従来あまり聞いておりません。
  242. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この場合は、日にちをたぐればそういうことになるんですがね。御出席になった日、ことしの二月四日ですね。大阪東区のコクサイ・ホテルで、大阪タクシー協会の多島太郎会長から三十万円のせんべつを受け取ったことは事実である。そのことに関してあなたの了解をちゃんと得てあるということなんですが、了解を得られたでしょうか、どうなんでしょうか。
  243. 原山亮三

    ○原山説明員 歓送迎会に出席することについて、もちろん私のほうに了解を得て出席しているわけでございます。ただ、その歓送迎会に出席の名目が出張であったのかどうか存じません。と申しますのは、転勤した場合において、おそらく家を引っ越しするようなこともございますから、そういうふうな引っ越しのついでという場合もございます。上原君の場合はどういうふうな形で歓送迎会に出たのか、それは私現在存じません。
  244. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それだったら、引っ越しかなんかというおことばをお使いになる必要はないと思うのですが、直接の上司であるあなたからはっきりしたことを伺いたいと思ったのでお伺いしたのですけれども、あなたの前任者もやっぱり同じような名目でせんべつを受け取られておった。従来の慣習であるからということになるんですが、じゃ今度、それが調への結果――調査すればわかるわけなんですが、その調査の結果、出張名目を立てて出張旅費をお取りになって、その業者の団体の会合だけに出席なさった、まあ私が大阪におりますから、いろいろほかのことで聞いたんですが、そのあとは二次会、三次会、いろいろあるということは聞いておりますけれども、それで公費をもらってそういうところへ出たということが事実になると、これはどういうことになるでしょうか。
  245. 原山亮三

    ○原山説明員 出張名目で出たのかどうかということについては、よく調べないとわかりません。おそらく休暇をとって行ったのかというふうに考えますが、その辺はもう少し調査しないとわかりません。
  246. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いずれにしましても、国家公務員法の九十九条の中には、「職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。」、こういうふうにはっきりきめられておるわけなんです。そういうことに対して、先ほど中谷議員の御質問に対して答弁なさっていらっしゃいましたけれども、そういう事実がはっきりすれば、それに対してはっきりと対処していくというあなたのお話なんですけれども、現在の段階からいけば、この問題は明らかに国民の不信を買っておるということは事実なんです。新聞の投書の中にも、たくさんこの問題を究明しろということが出ております。今度は大橋運輸大臣のお話の中なんですが、二十日には、いわゆる社会常識一般常識の通念をはずれるようなことがあってはならない、こういう談話を発表されたあとで、今度は二十七日にははっきりと、転任によるせんべつをもらうことは厳禁する、こういう異例の通達を出されたということになるわけですが、大臣ではないのですから、はっきりした答弁はいただけるかどうかわかりませんけれども、二十日の大臣の談話と二十七日の関係とは、あなたのほうが一番所管の関係なんですから、どういう関係から大臣通達にまでなったか、こういういきさつをお答え願いたいと思うのです。
  247. 原山亮三

    ○原山説明員 綱紀の粛正につきましては、御指摘のとおり厳重にやる必要がございます。今回大阪でのこういうふうな事件もございましたし、東京におきましても、先ほど来お話のございましたようなトラック関係の事件があったということで、この際大臣から、直接綱紀の粛正について、今後十分公務員たる者は姿勢を正せというふうな通達をいただきまして、われわれといたしましても、その通達の趣旨を十分下部に徹底いたしまして、今後国民の批判を受けることのないように、十分姿勢を正してまいりたい、かように考えております。
  248. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そう結論を急がれては困るのですけれども、結局マージャンとかゴルフのつき合いなどは一切辞退させる意向で、この種の悪習慣を断固一掃したい、こういうふうにはっきりなっておるのですが、そうすると、先ほどマージャン、ゴルフの話も出ましたけれども、マージャン、ゴルフは習慣的に業者とやっておったということなんですね、誘われると。
  249. 原山亮三

    ○原山説明員 特定のそういう役所との関係において、いろいろな事案が関係しておるような会社とそういうことをやることについては、もちろん収賄、わいろというふうな性格のものでございますので、そういうふうな点については十分厳重に注意をいたしてきたところであります。ただ、マージャンなんかを全然やっていなかったかといえば、若干そういうこともございますから、今後はそういうことのないように十分注意する、こういうふうに考えております。
  250. 沖本泰幸

    ○沖本委員 大臣がはっきり一掃したい、こういうふうにおっしゃっておるわけですが、何も運輸省だけがそういう問題が一番多いということではなくて、一般紙を見ると、建設省にもいろいろ問題が出ておりますし、あるいは通産省にもいろいろ問題が出ておるわけなんです。ですから、これは官僚行政全体の問題として考えなければならないことですから、そういうふうにしていただくことは当然なんですけれども、その間にあって一番問題は、ある新聞が論じておりましたけれども、晴海ではなやかに自動車ショーをやった。ロータリーエンジンまでつけたすばらしい車がいろいろな安全対策を立てて、きらびやかにショーをやった。それにしては運輸行政があまりに暗過ぎるじゃないかということを言っておりますけれども、いわゆる出先機関に、これはタクシー問題、料金の問題だけではなくて、バスの問題もあればいろいろな私鉄の問題もからんでくるわけです。そういう多量の、何でもかんでもすぐ事件に結びつきやすい問題を一つの小さなところへかためて置いておくという行政自体が、間違っているんじゃないでしょうか。そういう点を改正しなければならない、改革しなければならないとお考えになったことがありますか、あるいはまたそれを断行されようとしておられますか、どうなんですか。
  251. 原山亮三

    ○原山説明員 自動車関係で許認可行政が非常に多い、事故が多いということでございますが、この許認可については、それぞれその必要があって制定せられたものでございますけれども、やはりこういうふうな許認可を行なうについては、事件の発生するおそれがございますので、十分注意する必要があるということで、そういうふうな許認可をやる行政の仕組みにつきまして、極力担当者あたりが自由裁量的にやるようなことを少なくするように、機械的にやっていけるような形に、許認可の事務的な処理手続というものを、今後の方向としては考えてまいりたいと思っております。
  252. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そういう問題に対して、部分的には地方自治体のほうへ権限を譲ったらどうなんですか。何もかも運輸省がひっくるめてかかえ込んでしまってやらなければならないというところに、汚職しなければならないので、そういうのを全部ひっくるめて持っておる、こういうふうに一般は考えておりますが……。
  253. 原山亮三

    ○原山説明員 権限の配分の問題については、いろいろと問題があろうかと思いますけれども、それぞれ国として広域的な行政としてやるべき仕事、あるいは一地方公共団体として狭い範囲内においての仕事についてはもちろん公共団体がやるというようなことで、現在、われわれのほうの仕事は、いわゆる鉄道は鉄道監督局という別の機構でありまして、鉄道と自動車との調整問題、あるいはバス、タクシーの調整というふうなことでもって、総合的、一元的にそういう交通機関というものを監督するということが、最も公共の福祉を増進する上において適切であるというふうなたてまえをもって現在の制度ができておるわけでございまして、そういう点についてもし支障がありとすれば、改めるべき点については極力改めてまいりたいという考えでございます。
  254. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いま計画はないわけですね。今後検討していく、こういうことなんですか。
  255. 原山亮三

    ○原山説明員 今後、そういうふうな事務の処理の簡素化の問題なり権限配分の問題等々、いろいろと総合的にそういう面、将来いかなる方向に改革を加えるかについて検討を加えてまいりたいと思います。
  256. 沖本泰幸

    ○沖本委員 加えていくんですか。加えておるわけなんですか。どっちですか。
  257. 原山亮三

    ○原山説明員 今後十分検討を加えてまいりたいと考えております。
  258. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それは一番初め冷房料金の問題から端を発したわけですけれども、このときの問題で一般の声としては、どうして早く個人タクシーをもっと認可してやらないんだろう、こういうことが一般の声でもあり、総理大臣もその問題については善処していきたいという答えを出していらっしゃるわけなんですが、現在個人タクシーに対して四千台から東京のほうで残っているのを本年度じゅうに三千台まで消化していきたい、こういうことなんですが、現況としては申請者はどの程度来ており、今後どの程度まだある見込みであり、それに対して運輸省のほうとしてはどういう認可を与えていき、どういう方法をとっていくというお考えなんでしょうか。または外国の例を見てみると、六割までがいわゆる個人経営のタクシーになっております。ところが日本はあべこべで、法人格のタクシーがほとんどを占めておるというところに、今度の事件の発端の原因もあるわけなんです。その点について、直接の衝にある局長さんのお答えをいただきたいのです。
  259. 原山亮三

    ○原山説明員 個人タクシーの育成助長ということにつきましては、御指摘のとおり、物価対策閣僚協議会でも話が出まして、総理のほうからもそういう個人タクシーの育成をせよという御指摘がございました。個人タクシーの未処理の件数が多いのは、東京都内の個人タクシーの申請でございまして、三十九年、オリンピックの年でございますが、このときに相当数の個人タクシーの増車をいたした。その後、オリンピック後三十九年度中に相当な申請件数が出てまいりました。それが押せ押せになりまして、本年度の五月ごろ現在で四千四百件ぐらいの未処理があった。それで、この前の特別国会でその件についての御指摘をたびたびいただきまして、われわれとしましては、東京陸運局に個人タクシーの処理の推進ということを強く指示いたしまして、東京陸運局のほうでは現在の人員の体制でもって極力多くの処理をしたいということで計画を立てまして、来年の三月末、四十二年度末までに三千件を処理するというふうな計画を立てまして、すでにその計画樹立後二回にわたって三百五十件くらいずつを処理いたしました。今後そういうふうなベースで進みますと、大体予定どおり年度内には三千件の処理ができる、かように考えております。個人タクシーの増加ということは、タクシーの運転手等に夢を与える、それからタクシー業界に新風を吹き込む、こういうふうな趣旨で生まれてまいったものでありまして、タクシーの発足というものは法人でもってずっときたものでございますので、三十五年ごろから個人もふえてきたということで、現在ではもちろん法人のほうが数としては多うございますけれども、東京の場合におきましても、最近の事案の処理というものは、法人のほうではございませんで、個人のほうばかりを現在処理の推進をはかっているような次第でございます。決して法人重視、個人軽視というふうな考えでやっておるわけではございません。
  260. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それは東京の場合のみでしょうか。大阪のほうでは、まだまだ申請した人は幾らでもおり、受け付けてもらえないという声がいっぱいありますし、またなかなか処理してもらえない、たくさんだまっておるということも事実なんですが……。
  261. 原山亮三

    ○原山説明員 東京以外の都市におきましては、個人タクシーの申請並びに処理につきましてはそれほどたまっておるわけでもございませんで、そのときそのときで適切な処置をいたしておる、このように承知しております。
  262. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いずれにしても、話をさかのぼらせますと、いわゆる法人タクシーが出たのは、いわゆる統制が解けてから、一つのところでかたまっておった自動車業者が分かれて、そのまま法人格になっていったというところが法人タクシーの事の始まりなんですから、それは終戦後の終戦処理のところからずっと続いているわけです。ですから、何も法人格だけが特別に認められたということではなくて、時代的な推移がそういう状態をかもし出したということなんですから、どんどん個人をふやして、それでうんと交通行政も明らかになっていくようにやっていただきたい、こういうふうに考えるわけです。  それから、刑事局長さんのほうには押えるほうのパイプはない、こういうことでございますが、どうぞうんと激励してあげて、事件が明るみに出て、国民の愁眉を開くような方向に向かうように今後進めていただきたい、こういうふうにお願いしたいわけでございます。  長時間ありがとうございました。
  263. 大坪保雄

  264. 中谷鉄也

    中谷委員 警察庁の警備の関係の方と、それから法務省の公安課長さん、それに刑事局長おいでいただきまして、十月八日のいわゆる羽田事件の際の山崎という京都大学の学生の死因についてお尋ねをいたします。この問題については去る十月十一日、地方行政委員会において若干お尋ねをいたしまして、そうして私のほうから問題点を指摘をしておきました。本日でこの問題について私の質疑が終わると申しますか、問題点がすべて明確になるとはい思いません。この問題については、警察庁の方のおことばにもありましたけれども、いずれにいたしましても、一人の青年の死の原因について、本日は私は端的に申し上げますけれども、警察庁の御説明になっているようなことがはたして死因としてすべて真実だろうかどうか、この点について疑義があるという前提でひとつお尋ねをし、お答えをいただきたい、こういうことです。  そこで、地方行政委員会会議録を持ってまいりましたけれども、前回私の質問に対して警察庁の次長が、いわゆる現認報告書に基づく大体の当時の状況だとして御答弁になった点、この点については本日御訂正になる点はございませんか、前のとおりであるかどうか、この点を最初にお答えをいただきたいと思います。
  265. 三井脩

    ○三井説明員 前回、次長から答弁をいたしました内容については、その後警視庁において捜査を進めておりますが、現在までのところ、特に訂正すべき点というのは私ども報告を受けておりません。
  266. 中谷鉄也

    中谷委員 前回、次のようにお答えをいただきました。時間もありませんので、重要だと思われる点について一応二、三分読み上げまして、その点についてさらに答弁を明確にしていただきたいと思います。会議録の一六ページのところですが、「警備車はそこで一たんとまったようでございますが、すぐにまた前進をした。そうして車と橋の北側手すりの間が大体一メートル足らずの間隔でございます。このとき倒れた警察官、学生を他の機動隊員が引き起こして助けておりますが、学生一名が警備車前部右かど付近で右足をひっかけられて倒れて、前輪の右側で腹部をひかれて、機動隊員も倒れたままそこで足にけがをした」、こういう趣旨の御答弁がございます。  そこで最初、そうするとこの学生というのは山崎君だという前提でお尋ねをいたしますが、警備車前部右かど付近で右足をひっかけられたというそのときの状況、学生と警備車との関係はどういう関係なのか。向かい合っていったのか、それとも同じ方向を向いておったのか、この点はいかがですか。
  267. 三井脩

    ○三井説明員 大体においてこの前のところと特に変更した点はないと申し上げたわけでございますが、細部につきましては目下鋭意捜査をいたしておるわけでございます。いわゆる轢殺と申しますか、その犯人の捜査に全力をあげておりますし、その罪となる事実という点につきましても、捜査の重要なる内容として目下鋭意捜査中でございます。したがいまして、きわめて細部にわたりましては、捜査の進行との関係もございますので、この点については御答弁々ごかんべんいただきたいと思うわけでございますが、いま御質問の京大の学生、山崎君と思われる人がどういう状態で倒れたかという点につきましては、現在までの各種の資料等によって判断をいたしますところでは、本人がころんで倒れたわけでございます。そこに学生の運転する警備車が本人をひいていった、こういうのが現在までの事実でございます。
  268. 中谷鉄也

    中谷委員 ころばなければ倒れません。ころんだ原因が問題だ。警備車の右かとが、前部が――学生という御答弁があれば、それは山崎君だと思う。その右足をひっかけた、それでころんだ、ということだという前提で、そういう答弁があったから、その前提でお尋ねをしている。そのとき、これを警備車として、これが山崎君の顔のほうだとすると、これが背中ですね。そうするとこういうかっこうだったのか、こういうかっこうだったのか、それともそれ以外のかっこうだったのですか。まずそこからひとつお答えをいただきたいということなのです。
  269. 三井脩

    ○三井説明員 ただいま申し上げましたように、目下捜査中でございます。確定的事実という点については、さらに詳細に分析、検討を目下進めておる最中でございますので、これが最終的に確定的なものであるという点につきましては、捜査の関係もございますので私から申し上げかねるわけでございますが、ただいま御質問の点につきまして触れますと、これは写真その他でも判明いたしておりますが、山崎君と思われる学生が、自分でころんでおります。他と接触なくころんでおります。そのころんでおる状態は、車の前輪に対して大体横――車に正対するとか車に背面を向けるとかということでなくて、横であります。それに対して警備車が進んでいっておる。それが大体において警備車の右前輪の付近、そのまま右前輪の下付近に本人がひかれていった、こういうような状態でございます。
  270. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、前回御答弁になりました「学生一名が警備車前部右かど付近で右足をひっかけられて倒れて、前輪の右側で腹部をひかれて、」こういう御答弁はどういうことになるのですか。その前提で本日質問の準備をしてまいった。ひっかけた事実がないということなら、そもそも出発点から違ってくる。だから、最初にお尋ねしたのは、捜査がいわゆる一つの過程、流動的なものとして進んでいるなら、何も前回十一日の答弁を私のほうもそれに固執をするわけではないから、訂正をする点があるなら訂正をされますかと冒頭にお尋ねをした。いかがですか。
  271. 三井脩

    ○三井説明員 大筋において訂正すべき点ということにつきましては私たちも報告を受けておらないわけでございますが、いま申しました微細の点につきましては、確定的ではありませんが、いま申した程度には変わってきておるということでございます。
  272. 中谷鉄也

    中谷委員 自動車にひっかけられて倒れた、何も接触しないのに倒れた、ずいぶん事情が違うと思うのです。自動車にひっかけられて倒れてないんだと積極的に言われるんなら、突き飛ばした人間がおるか、突き当たったことがあるかというふうな状況だって想定できてくるわけなんです。  では、こういうふうにしていただけますか。先ほど、冒頭にお尋ねをいたしましたように、死因については――一人の前途有為な青年がなくなったということで、この羽田事件についてはいろんな評価があり、いろんな批判がある。しかし、死因が明確でないという疑いを一人の人間として持った以上は、この問題は私はひとつ徹底的にただし、真相を究明したい、こういうように思うわけです。  同時に、被疑者Xとの関係において、山崎君の死因というものが問題になっているけれども、かりに被疑者Xというのが検挙されなかったとするならば、一体山崎君について――その被疑者というのが要するに車を運転しておった人間で、それに轢過されたということでXが検挙されたら、過失致死で当然そのことが問題になる。しかし、そうでないとするなら、Xが検挙されないとするならば、山崎君とその周辺の人間は、死因について疑義を持ちながら、結局最後までそれを明らかにし、検討する機会というものはない、そういうことでございますね。そうすると、この委員会を通じて死因は何かということを論議しない限りは、論議の場がないわけなんです。  もう一度、では私のほうからこういうふうにお尋ねいたします。前回も警察庁の報告書、いわゆる現認に基づくと称する報告書は信憑性に乏しいんだということを私は申し上げた。その点について、そうではないとおっしゃった。冒頭から、ひっかけられてないんだということとひっかけられたということは、大筋において大きな違い――基本的に違ってくる。頭がどっちの方向を向いたのか、そして倒れたときの状態はどうなのか、腹部をひかれたというのは、あおむけにひかれたのか、横になってひかれたのか、ひかれたというなら、頭は一体どうなのか、轢過部分はどうなのか、同時に一体地面の状態はどうだったのか、タイヤあとがどこについておったのか、疑問が百出してくる。その死因などについていろいろなことを追及する人がおるけれども、私自身はこの問題については、法医学の専門家じゃないですけれども、死因については究明できる立場にある人間だと思う。そういうことで、この問題について、大体の報告と称するものが報告されたんだけれども、ちょっと違っておる。しかし、もう四時になってしまったから、この問題については、私は今後納得のいくまで質問さしていただきますから、あらためてあなたのほうから、当時の状況についての報告を文書でいただけるかどうか。そうでなければ、私は時間をいただいて、法務委員会のあるごとにこのことについてお尋ねします。まずひっかけた状態、倒れた状態、最初ひかれたときの状態、車の位置、時間のある限りお尋ねしていくつもりですが、文書で、現在確定したことを報告をいただけるかどうか、この点はいかがですか。
  273. 三井脩

    ○三井説明員 先ほどお答え申し上げましたように、山崎青年が他と関係なく、つまり押し倒されたとかいうようなことでなく、本人がころんだと考えられるわけでございます。それを車で轢過されたというのは、現在までのところ、私たちははっきりしておると考えておるわけでございますが、なおこれが捜査との関係もございますので、捜査の結果犯人が検挙されなければ、永久にその点がはっきりしないとおっしゃる点につきましては、目下鋭意捜査中でございます。したがいまして、そういうことにならないように努力をいたしておりますし、また、ならないことを期待しておりますので、捜査により犯人が検挙されるということになりますと、またこれが公判等の段階において、その点が焦点になるわけでありますから、明瞭になっていくものと考えておるわけでございます。
  274. 中谷鉄也

    中谷委員 被疑者Xというのは、車の運転をしておった人間、それが轢過したかどうかということが争われる。轢過以外の傷があるのではないのかということが、私の投げかけている疑問なんです。逆に言うと、被疑者はBなんです。XといえばZですが、Zは別の人だということが問題なんです。Xについては、轢過したかしなかったかという点で争えばいい。しかし、そのZという、轢過せずに、前に死因を与えた人間がおるとすれば、Xの裁判では問題になりません。そのそばの議論としては問題になるけれども、必ずしもZは出てこない。だから、ここで論議をしなければ、私は論議をする場がないと言っている。  そこで、もう一度お尋ねいたしますけれども、前回、警備車前部右かど付近で右足をひっかけられて倒れた学生一名というのが山崎君である。そして腹をひかれたという文章がついているわけだから、それは違うわけです。そういう点で違うとなれば、前回の御答弁をその点でお聞きしてくれば、いろいろな点で違いが出てくると思う。現在の段階で、次の法務委員会――委員長あるいは横山理事その他の理事さんたちできめていただくのだけれども、それまでに、いわゆる捜査とのかね合いで、前の報告書の訂正される点は訂正されるものとして、前の御答弁を文書でお出しいただけますか。いただくべきだと思うが、この点はどうかと聞いておるのです。
  275. 三井脩

    ○三井説明員 この前、十月十一日にお答えいたしましたのは、八日に事件がございまして、その当時現在においてわかっておる点ということでございました。その後におきましても、捜査を目下鋭意進行中でございますので、その進行過程において、細部において若干の相違が出てくるという点はございますけれども、大筋の点におきましては――結局どうするかという点について御議論はあるかと思いますけれども、その点については特に改めるべき点はないと申し上げたわけでございますが、いま車でひっかけたかどうかという点について、特にその点を焦点として御質問があったわけでございますが、この点につきましては、いま申し上げておりますように、目下各種資料をもとにいたしまして捜査を続行中でございます。いずれ被疑者も検挙になることを私たちも期待しておりますので、また本人の調べという中からいろいろな点が明瞭になってくると思いますので、次の法務委員会がいつか存じませんけれども、端的に次会というような点につきましては御約束はいたしかねるわけでございますが、ただいま申しましたように、鋭意捜査中でございますので、その成果に期待をいたしたいと考えておる次第でございます。
  276. 中谷鉄也

    中谷委員 私のほうはどうでもいいんですよ。どうでもいいという意味は、この問題については、私自身はどんなことがあっても真相を究明してみようという決意を持っておる。私は一番最初に病院でその死骸を見たんだから、この人のためにそういうことをやってやらなければいかぬと思った。それで、その前提になる、私が疑義を提起する材料、素材というのは、警察庁の関係ではまず現認報告書と称するところのものに基づく次長の答弁なんだ。そうですね。この答弁を私は精読をしてきた。全部頭に入っております。それを一々、このような場合は一体状況はどうなんですかと言っても、答弁がくるくる変わっていけば、時間はむだだし、真相の究明はできないしということになる。だから、この十六ページの上段の答弁をごらんいただいて、いわゆる当時の状況を、長いものでもあるいは短かいものでも、どういうことだったんだということを、あらためて文書をもってお出しになることが、審議の上で合理的ではないのか、こう言っているのです。きょうはしょっぱなから食い違いが出ている。前の答弁ときょうの答弁が違うという食い違いが出ている。そういうことで時間をいただくことは、お互いに各同僚議員に対しても、関係者の方に対しても御迷惑じゃないか、だから文書で出されることが真実の究明にいいんじゃないですかということをお尋ねしている。
  277. 三井脩

    ○三井説明員 文書による提出の件でございますが、ただいま捜査続行中でございますので、これとの関係で考慮さしていただきたい、こういうふうに考えます。捜査中の状況でございます。目下捜査進行中でございますので、この捜査の進行状況との関係で、これは全く確定的なものであるというものをもし出すには時間もかかと思いますし、中間で出しましてもまた問題だろうと思いますので、この点につきましては、もっと捜査の進行状況をにらみ合わせまして考慮させていただきたいというように考える次第でございます。
  278. 中谷鉄也

    中谷委員 捜査が流動的であり、その後変わっていくということは、私認めるのです。それでいいと思うのです。だから、その段階において論議をする。鉄は熱いうちに打てということばがありますけれども、その段階でいろいろな矛盾点が出てくれば、全部おたくのほうで固められてしまって、それでこの点についてということになれば、いろいろな矛盾点というものがその段階では出にくくなる。だからこそ、この段階でお聞きしておる。この意味はわかっていただけると思います。  それから、なお一点指摘をしておきますけれども、次長は過失致死罪で調べるとおっしゃるのですね。過失致死ということばは、刑法上のことばとしてお使いになっておるわけでございますか。
  279. 三井脩

    ○三井説明員 そのとおりでございます。
  280. 中谷鉄也

    中谷委員 要するに、重過失致死罪だとか業務上過失致死罪というのじゃなしに、過失致死罪ということでお調べになるということなんですね。私この点は何べんも念を押して、前にも聞いた記憶があるし、きょうもその点をお聞きしておるということなんです。しかし、御答弁をどうも変えたいようですね。だから、私はそういう点はどうでもいいと言うのです。捜査は流動的なんだから、そういう点がどういうふうに変わっていこうが、その点まで私はきついことやむちゃなことやあるいは言い過ぎたことを言わない。過失致死といえば、たしか罰金しかございませんですね。そういうことで御捜査になるのですか。あるいはその上に重過失ということがつくのかということだと私思うのですけれども、私は前からそんなことを指摘するよりも、黙って御答弁をお聞きしてきた。だから、あなたのほうのお話が流動的であり、不確定であるということはよくわかるし、訂正をされても、矛盾のない合理的な訂正をされるならいいですよ。しかし、その後何かわけのわからぬ矛盾を指摘されたから、そこで矛盾をカバーするような訂正ということは許されない。だから、現在の段階での御答弁をお願いしたい、こういうことなんです。  いずれにいたしましても、そうすると、もう一度あなたのほうにきめていただいてもけっこうですが、前回のこの次長の答弁を基本として掘り下げて大筋で変わりないとおっしゃるなら、お聞きしていって矛盾点が出てきたときにはどうされるのですか。私があなた方の捜査のお手伝いをすることになるのですか。さらに、あなたのほうで文書をお出しになりませんかと言っておるのです。
  281. 三井脩

    ○三井説明員 捜査を現在いたしておりますから、御指摘のように矛盾が出てくるということでは、捜査としてもこれは完ぺきなものではないわけでございます。そういう矛盾点を捜査の上において解明していく、こういうことでございます。したがいまして、捜査が完了した暁におきましては、そういう矛盾というものはすべて解明されておるということになると私たちは思うわけでございます。  なおまた、過失致死という点について御質問でございますが、これは前回の質問のときには殺人罪かどうかということとの関連において御質問があったように記憶いたしておりますので、それは殺人罪で捜査しているのではなくて、過失致死ということで捜査している、当初からそういうつもりであります。こういうことでございます。いわゆる過失致死罪の中の単純なる過失致死か、業務上過失致死か、さらに重過失致死かという点につきましては、捜査の結果といいますか、捜査の進行の中で解決されていくべきものというように考えておるわけでございます。
  282. 中谷鉄也

    中谷委員 まあどうでもいいというわけじゃないのですけれども、傷害致死もあれば、過失致死、それから業務上過失致死とあるわけですから、答弁も私は正確にしていただきたいと思うのです。いわゆるしろうとの話ではないわけですから、そういう点を正確にしていただかなければいかぬと思うのです。  そういうことで、私のほうではこの問題を掘り下げていきますから、前の答弁と変わったなら変わったという点、あるいはこの点は違うなら違うという点、ひとつ時間をいただいて納得のいくまで今後お尋ねさせていただきますので、御答弁の準備をいただきたいと思います。きょう私がおたくにお尋ねすることはそれだけです。しょっぱなからすでに前の答弁と違うわけだから、私にとっては疑いが一そう深まったという以外に本日私の感想はない。
  283. 三井脩

    ○三井説明員 いま、捜査の各段階で質問をしたい、こういう御意見でございますが、御存じのように捜査はだんだんと固まっていき、また新たな資料が出てくるとか、目撃証人が現在までの目撃証人以外にあらわれるとか、そういう点を十分に詰めるわけでございますので、先ほどもお話しのように、一定の段階においてはこの点とこの点とが食い違うということもあろうかと思います。これは、捜査を全般として推し進めていきまして、最終的にこういうようなことであるという結論を出すわけでございますので、その各段階でそれぞれ捜査の段階を御説明申し上げるというわけには、なかなかいかないのではないか。現在鋭意被疑者捜査中でございますので、被疑者を逮捕いたしました場合におきまして、また被疑者の供述等もありまして、これが被疑者以外の供述の中とどういうふうな関係を持ってくるのかという点についても、十分これを捜査をいたさなければならないというようなことでございますので、捜査の苦心の点については十分御承知おきいただいておりますが、現在のところはともかくそういう段階でございますということでございます。  ただ、死因の問題につきまして、われわれといたしましては十分これが明らかになるということは、もとより私たちはそういう観点で捜査を進めておりますので、その点につきましても万全の捜査をいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  284. 中谷鉄也

    中谷委員 捜査というのは、本来そういうものであっていいと思うのですが、それならそれで、私は警察の態度が、連中だとか暴徒だとか盛んにおっしゃった。そういう言い方もあると思うけれども、それならそれで、轢殺だ、それが金科玉条、全くゆるぎのないもののような発表を早々とおやりになったということが、本日、十一月の一日になって、大筋においては違わぬけれどもというようなことでひっかかったか、ひっかからないかという――あなた自身が一番専門家であり、くろうとだから、そういうことは一つの事件の一番大筋だと思うのです。そういうことについてお話が違ってきて、しかも大筋は変わらぬ、変らぬとおっしゃるなんということは、この問題について警察の発表が非常に早過ぎた。もうほんとうにゆるぎのない、みじろぎもせぬ轢殺なんだ、轢死たんだとおっしゃった点について、発表が早過ぎるぞ、これは少しこの問題を掘り下げてみなければと私自身が感じた原因なんです。そして実際、その問題についていろいろな点を検討してみると、疑義が出てきたということなんです。これだけ申し上げておきます。  法務省課長さんのほうからお答えをいただきたいと思いますけれども、死体の解剖というのは、刑訴法百二十九条になるのでしょうか。慶応大学で本人の解剖をいたしましたね。これは百二十九条に基づいてやる解剖、検証の一種ということになるわけでございますか。
  285. 豊島英次郎

    ○豊島説明員 解剖につきましては、実は鑑定を嘱託するにつきまして、鑑定上必要な解剖の処分というものを裁判所に請求したわけでございます。刑事訴訟法の条文について申し上げますと、御承知のとおり、鑑定の嘱託につきましては、二百二十三条の一項に規定があるわけでございます。そうしまして、その鑑定の際に必要な処分につきましては、二百二十五条に規定がございまして、鑑定の嘱託を受けた者は、裁判官の許可を受けて、鑑定の処分に規定する各種の処分ができるのだということになっておるわけでございます。この鑑定の処分の一つの態様といたしまして死体解剖があるわけでございまして、この許可は検察官、検察事務官または司法警察員から請求するということになっておりますので、実は本件につきましては、検察官から裁判所に対してこの鑑定の処分を請求した、そういう経緯になっております。
  286. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、その結果出てまいりました書面は、すでに相当大部なものができている。そうして、いわゆる鑑定結果、鑑定所見等も記載されたものが出ているだろうと思うのです。ただ問題は、かりに轢過だとすれば自動車だということが問題になっておりますが、自動車の重さだとか、一つの車輪にかかってくるその加重だとか、いわゆる地面の状態だとかいうようないろいろなことが問題になって、単純骨折必ずしも轢過でないのだといえないだろうし、複雑骨折必ずしも轢過だといえないような法医学上の問題もあるだろうと思うのです。そういうような点で、その問題についての専門家の慶応の教授の鑑定結果は、拝見することができますかどうか。この点についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  287. 豊島英次郎

    ○豊島説明員 鑑定につきましては、先ほど御説明いたしましたとおり、慶応大学法医学教室の主任教授である斎藤銀次郎に対しましてこれを嘱託し、同教授が執刀し、鑑定をいたしたわけでございますが、その結果につきましては、いまだ東京地検におきましても書面回答に接しておらないわけでございます。現段階では、そういう意味におきましては、その結果をお話しするということは不可能なわけでございますけれども、さらに付言いたしますと、捜査の状況一般につきまして、捜査段階にあります現状においてこれを公表するということは、差し控えさしていただきたいという感触でございます。
  288. 中谷鉄也

    中谷委員 わかりました。ただ問題は、その鑑定結果の要旨でございますね。どういうふうなことになっているか。問題点がたくさんある。その点についての御答弁は、本日もう時間がないようですから、何か御準備になっていただいているのじゃないかと思いますけれども、ひとつ次回にお願いをいたしたいと思いますが、御答弁要旨を、しかもそれが論点として、私のほうから疑義があるならば疑義が提起でき、納得できるならば納得できるというものとしての御答弁あるいは文書、どちらかいただけるかどうか、ひとつその点はいかがでしょうか。
  289. 豊島英次郎

    ○豊島説明員 死体解剖に際しましては、実は東京地方検察庁の担当検察官が立ち会いをいたしておりまして、状況をみずから目撃した部分があるわけでございます。そうしてなおその鑑定の状況につきまして、口頭で検察官が鑑定医に対しまして尋ね、了解をしておる部分も若干あるわけでございます。それらの部分につきまして、概要、要約的なものはお話しできるというふうに考えております。
  290. 中谷鉄也

    中谷委員 では、かっこうとしては、次回に私がお尋ねをしてその要旨を御答弁いただく。なお私自身は、それでまた一ぺん委員会を延ばす、またその次の委員会ということでもおかしいと思いますので、あらかじめお伺いをして、そうしてその要旨についてお話しを伺って、次回の委員会で要領よく御答弁いただく。ただし、私のほうから、その御答弁についての疑義があると思う点についてお尋ねをするというかっこうで、ひとつこの問題について真相究明の機会を私は持ちたいと思います。こういう点についてひとつ委員長にもお願いをしておきたいと思います。  この問題については、何と申しましても、私はやはり病院で一番最初に顔を見た人間として――検察官とか警察の方を除いて、一番最初にその顔を見た人間として、やはり真相を究明する、このことは一つの仕事だと思います。ひとつそういう点について、検察庁も公正なお立場で、明らかにしていただく点は明らかにしていただく。なお、特に検察庁の御専門的な立場からいわゆる死体解剖の所見が、現場の状況との関係でどうなるのか、鈍器だといっても、一体鈍器とはどんなものなのか、重いものだといっても、一体どんなものなのか、そういう点についても問題があると思う。私自身も法医学的なことについては全くのしろうとですけれども、さらに自分自身この問題についてはだんだんと理解を深めていきたいと思いますので、検察庁のほうでも、その問題について私のほうから疑義が提起されたときは率直なお答えをいただけるように御準備を願いたい。これだけをお願いいたしまして、私自身本日のこの問題についての質問は、また続行させていただくということで、一応終わりたいと思います。
  291. 大坪保雄

    大坪委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後四時十七分散会      ――――◇―――――