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田中国務大臣 たいへん恐縮に存じます。これはどうもありのままのことを申し上げることが一番よいと思うのであります。
数が多いのは、二十何年だんだんと数が多くなっている。初めは二、三万で、五、六万となり七、八万となり十万、来年の正月の
お茶会はおそらく十二万くらいな数になることではないか。たいへんな金がかかるように見えますが、
はがきは、普通の
はがきが、こうございますね。この
はがきの裏面のところには
国会中央報告が書いてある。税金はこうなります、
健康保険はこうなります、一般の
所得税はこうなります、
法人税はこうなる、
地方税はこうなるという、たいへん民衆の生活に
関連の深いことの
国会報告が
大体大部分いつでも書いてある。
はがきのあて名を書きますところの下は、二分の一使ってもよい
規則になっている。ここに
お茶会の、どうぞお
ひまならば、お散歩のついでにおいでくださいという
意味のことが書いてある。これが普通の二十何年間の出し方でございます。
そこで本年は同様、
中央の
情勢報告と、そして表には小さい広告を、
お茶の
案内を出しまして、これをやる
考えで、五、六カ月もかかりまして、ようやく十二月の初めに書き上げたところへ、これは
ほんとうにはからずも
大臣になってしまったということでございますので、私はこれを
案内をする予定の
はがきの
表書き、それで数が多いわけでありますが、それを断わり状に切りかえた。どうして切りかえたのかといいますと、
石橋内閣、ちょうどいまから十年前でございますが、ちょうど
お茶の会も十年ほど続いたところでございます。本年は二十年続いております。ちょうど十年ほど続いたところで
石橋内閣の、これも十二月に、妙に同じような時期に閣僚になりました。それは
はがきを出さずにほっておいたのです。ほっておきましたところが、たくさんな
お客さんが見えまして
——何しろ千人近い
お客さんが見えるものでありますから、その当時でも数百人の
お客さんが見えまして、
紋つきを着た姿のままで表へ出て
おわびを言うやら、受付をこしらえてテーブルを出すやらして
おわびを言うたということが私の脳裏にございました。これはまたまずいから、ちょうど
はがきの
用意ができておるところだから、
お茶の会をいたしますというやつを、簡単にひとつ本年はいたしませんと、いたしませんのみならず、中に書いてありますように、
宮中参内、
法務省の
行事等で
京都に帰れないが、
ひまができ次第
——国会でも終わったらという
意味でございます、そうは書いてありませんが。
ひまができ次第帰りまして、あらためて
茶会をいたします、できるならば皆さんとお目にかかりたいという
意味のことを書きましたので、この
通信は、
お茶の会をいたしません、
ひまができれば
茶会をいたします、こういう
意味のある
——新年おめでとうなどという
通信じゃないのです。
意味のある
通信です。それで
選挙に何も
関係がない。いかに私の情を憎んでお
考えをいただきましても、新聞に
全文が出ておりますからお読みをいただいたことと思いますが、一点指でさしたほ
ども選挙に関する
関係、
選挙のにおいのある
関係はない。
衆議院議員などとは書いてない。
法務大臣などとは書いてございません。そういう
ことばは使ってない。初めの
京都から送ってまいりました
文章には、
法務大臣田中伊三次と書いてあったのです。それを私が抜きまして、私の
お茶の雅号が
格窓庵でございますので、
格窓庵伊三次という名称にこれを切りかえた。それで
法務大臣に就任し
云々という
文章も送ってきた
文章にはあったのです。しかしそれは、このたびはからずも
法務省につとめることになり
云々というふうに、
法務大臣とか、任官とか、就任とかいうことを避けて、
法務省につとめることになりという
文章に私は意識的に書き改めたのでございます。
で、その時期が悪いじゃないかというおしかりは私はあろうと思う。これはみな何人も知っておりますように、
選挙が近くあることを日本全国民知らぬ者はだれもないのですね。ところが御承知のとおり、年内
解散はない、年内
解散はないと総理も言うております。閣僚である私たちも、年内
解散がないものと信じたのが二十日前後の情勢でございます。いよいよこれは年内
解散二十七日にやるぞということは、二十五日、六日になりまして、年内
解散をやる危険があるということを感じましたというきわどい
判断ができますのが、このたびの
選挙の特徴であったということは皆さん御理解をいただくことと思います。近く
選挙があることはわかっておるが、年内
解散があるなどということはわからない、こういう情勢のもとにこれを出しましたわけでございます。
そこで、あまり私が言いますと、大事な
判断がまだ残っておるわけでございますから、また役所の
判断に
影響さすようなことになると思うので、遠慮をしておるのでございますが、私はこういう
意見なんでございます。
立候補をいたしました瞬間、以前と以後を分ける。立候補をいたします以前は事前でございます。その事前に関しましては、各代議士ともに、あまり窮屈なことは迷惑でございます。どういうことかと申しますと、ビラを張って
国会報告をする、こういうととがありましても、やはりこれは
選挙を有利に導こうというふうには世間は
考えないのじゃないかと思いますけれ
ども、
国会報告という目的がある、
国会報告という大目的のために、結果は
選挙に有利になるかもしれぬが、たくさんのビラを張って、そして演説会をするということが
——私はそういうことをしたことはございませんが、まま行なわれておる。行なわれておるが、そういうことからしましても、目的がある。ビラを張る目的、演説をする目的がある。
現職の
国会議員が
国会報告をするという目的を持っておる。逆に申しますというと、
選挙が来たらよろしく頼むとか、票を私にいただきたいとかいう得票の意思、すなわち
選挙運動の意図は見受けられぬ。腹の中は別であります。しかしながら、表面はそういうことでございますから、これは堂々と行なわれておることは御承知のとおり。私の
通信もどうかひとつ
——立候補以前に配達される文書につきましては、どうか目的のある
——しこうして、逆に申しますと、
選挙が来たら票をよろしく頼るという、そういう
趣旨の意向が表明されておらぬ文書は、どうぞひとつ憲法、
通信の自由によって、それを認めていただきたい。認めてくださらぬということなら、各代議士ともに、たいへん窮屈きわまるものとなるわけでございます。私は、情の世界もわからぬ男ではないわけであります。必ずしも
法律一点張りのことではないわけでございますが、そう
考えまして、
法務大臣就任とか、
衆議院議員とかいうことを抜いたので、これは純粋の通告にしないと悪いと意識しておるわけです。意識せずに書いたなどということはうそを言うことになる。意識して、これは純粋の
文章でないといかぬ、こういうふうに書きました。
はがきの表をひっくり返しましたところでは、
法務大臣秘書官室とあって、そこが
通信の発信所になっております。これはどんどん
通信が戻ってきますときに、
京都の宅にも戻ってきます。議員宿舎にも戻ってきます。会館にも戻ってまいります。こういうことでいつも整理に困りますので、これを一本にしようということで、秘書官室にその文書が集約されてくるように
——秘書官室に文書がどんどん戻ってくるということは、何かといいますと、百通に六、七通は戻るのですね。一割近いものが戻るのです。というのは、
通信を出しますときに、たとえば私が弁護士会に長く因縁があったといたしますと、その弁護士会の知り人だけでなしに、弁護士会員名簿に載っている人全部に御
案内が出ている。ある組合に
関係があると、組合の重役だけ知っておるわけですが、知らない顔の組合員全部に
通信が出ておる。こういうことになりますので、移転その他の
関係でたくさんのものが戻ってくる。こういう事情でございます。そういう逆送を
一つにまとめるために、裏に
大臣秘書官室が表示されておる、こういうことでございます。
そういうことでございますから、私は、
横山先生に一口大事なことを申し上げたいと思うのです。何かおしかりを聞いておりますと、おまえは良心に恥じるところはないかというふうに仰せになる。一点良心に恥じるところがあれば、どのようなおしかりでもよろしい。私は、一点良心に恥ずるところがないと意識して書いたものである。一点良心に恥ずるところがない。良心に恥ずるところがあれば、モラルの観点に立って身の処理をいたします。どうぞ憲法上、この種の
通信の自由はお認めをいただきたいものだ、こういう念願を持っておるわけでございます。