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1967-09-11 第56回国会 衆議院 地方行政委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年八月十九日(土曜日)委員長指名 で、次の通り小委員及び小委員長を選任した。  地方税に関する小委員       大石 八治君    奥野 誠亮君       久保田円次君    塩川正十郎君       渡海元三郎君    登坂重次郎君       井上  泉君    河上 民雄君       山口 鶴男君    折小野良一君       小濱 新次君  地方税に関する小委員長                 久保田円次君  消防に関する小委員       大石 八治君    奥野 誠亮君       木野 晴夫君    久保田藤麿君       塩川正十郎君    古屋  亨君       太田 一夫君    細谷 治嘉君       依田 圭五君    門司  亮君       小濱 新次君  消防に関する小委員長                 奥野 誠亮君  地方公務員等共済制度に関する小委員       大石 八治君    奥野 誠亮君       木野 晴夫君    塩川正十郎君       古屋  亨君    山田 久就君       太田 一夫君    細谷 治嘉君       山口 鶴男君    折小野良一君       小濱 新次君  地方公務員等共済制度に関する小委員長                 大石 八治君 ————————————————————— 昭和四十二年九月十一日(月曜日)     午前十時五十六分開議  出席委員    委員長代理理事 久保田 円次君    理事 大石 八治君 理事 奥野 誠亮君    理事 和爾俊二郎君 理事 細谷 治嘉君    理事 山口 鶴男君 理事 門司  亮君       木野 晴夫君    久保田藤麿君       塩川正十郎君    渡海元三郎君       永山 忠則君    井上  泉君       川村 継義君    河上 民雄君       島上善五郎君    中谷 鉄也君       華山 親義君    依田 圭五君       折小野良一君    大野  潔君       小濱 新次君  出席国務大臣         文 部 大 臣 剱木 亨弘君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君  委員外出席者         警察庁警備局警         備課長     三井  脩君         大蔵省主計局主         計官      秋吉 良雄君         文部省管理局長 宮地  茂君         厚生省環境衛生         局水道課長   大橋 文雄君         厚生省社会局施         設課長     飯原 久弥君         運輸省港湾局長 宮崎 茂一君         海上保安庁警備         救難監     猪口 猛夫君         建設省河川局水         政課長     上妻 尚志君         自治省行政局長 長野 士郎君         自治省行政局公         務員部長    鎌田 要人君         自治省財政局長 細郷 道一君         消防庁長官   佐久間 彊君     ————————————— 九月十一日  委員島上善五郎君及び華山親義辞任につき、  その補欠として川村継義君及び中谷鉄也君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員川村継義君及び中谷鉄也辞任につき、そ  の補欠として島上善五郎君及び華山親義君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 八月十八日  一、都道府県合併特例法案内閣提出、第五十   五回国会閣法第二三号)  二、地方自治法の一部を改正する法律案太田   一夫君外七名提出、第五十五回国会衆法第二   一号)  三、地方財政法の一部を改正する法律案太田   一夫君外七名提出、第五十五回国会衆法第二   六号)  四、地方公務員等共済組合法の一部を改正する   法律案太田一夫君外七名提出、第五十五回   国会衆法第三五号)  五、地方自治法等の一部を改正する法律案(太   田一夫君外十九名提出、第五十五回国会衆法   第三七号)  六、地方自治に関する件  七、地方財政に関する件  八、警察に関する件  九、消防に関する件  の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方自治地方財政警察及び消防に関する件      ————◇—————
  2. 久保田円次

    久保田(円)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長海外旅行のため、委員長指名により、当分の間私が委員長の職務を行ないます。  地方自治地方財政警察及び消防に関する件について調査を進めます。  この際、羽越地方局地的集中豪雨被害状況等について、政府当局から発言を求められております。これを許します。警察庁警備局三井警備課長
  3. 三井修

    三井説明員 このたびの羽越地方集中豪雨に伴います被害につきまして、多数の人命が失われましたことについて、哀悼の意を表します。  この集中豪雨は、停滞しておりました前線が活発に活動いたしまして、先月の末八月二十八日から二十九日にかけて新潟県北部、山形福島の各県下に局地的な集中豪雨を降らしたわけでございます。そのために、特に新潟県におきましては、県北の三面、鷲ケ巣、二王子岳などの山間部に三百五十ミリから四百ミリの豪雨があり、また平地におきましても三百ミリから三百五十ミリの大雨が降りました。このため、この地方を流れる加治川荒川、阿賀野川、胎内川をはじめ各河川増水はんらんをいたしまして、各地で堤防決壊、山くずれが起こり、岩船郡、北蒲原郡を中心県北地域に大きな被害をもたらしたのであります。  山形県下におきましても、新潟県との県境付近で四百ミリ以上の雨が降りました。このため最上川をはじめ小河川が急激に増水はんらんをいたしまして、特に小国町、川西町を中心浸水による被害が発生いたしました。  また、福島県下でも、新潟山形の両県境付近浸水して、被害が発生いたしたわけでございます。  本日の朝現在の状況で申し上げますと、人的被害は死者八十八名、行くえ不明五十名、負傷者百六十九名でございます。建物の被害は、全壊三百二十三棟、半壊七百十一棟、流失二百九十二棟、床上浸水二万六千六百四十一棟にのぼり、罹災世帯数は二万八千九十九、罹災者数は十三万九千三百十二名となっております。  昨十日までに警察官延べ一万四千五百名を出動させまして、避難民誘導人命救助、死体の捜索、収容、検視、行くえ不明者捜索、また罹災者救助交通確保等活動従事をいたしております。本日も新潟県下におきましては、引き続き警察官約三百名を出動いたさせまして、関川村、荒川町をはじめ、黒川村、豊栄町その他に出動させて、行方不明者捜索その他の救助活動に協力を行なっております。  山形県下におきましても、警察官川西町、小国町等に出動させ、救助活動従事をさせております。  現在のところ、新潟県下で国鉄米坂線が不通であります。また、国道百十三号線は関川村を除いておおむね開通をし、関川村でも片側交通はできるように目下努力をいたしております。  行方不明者状況でございますが、現在のところ、新潟県下で五泉市四名、また黒川村十二名、関川村十五名とその他の町村における行方不明者を合わせまして四十八名が、いずれも土砂くずれあるいは豪雨濁流による流失ということで不明になっております。山形県におきましては、米沢市で二名が濁流流失して、不明となっております。総計五十名の行方不明者捜索に目下鋭意努力を続けておる状況でございます。  被害概況を御説明申し上げます。
  4. 久保田円次

  5. 細郷道一

    細郷説明員 去る八月二十六日から二十九日にかけての集中豪雨により、羽越地方に大きな被害をもたらしまして、多数の犠牲者を出しましたことは、まことに遺憾であり、つつしんで哀悼の意を表します。  今回の災害は、最大降雨量六百ミリという異常な豪雨により、山間部における林地崩壊により多くの人命家屋等を失うとともに、中小河川はんらんにより、土木農林施設及び農作物等にわたって大きな被害を受けておりまして、特に新潟県におきましては、昨年七月水害に引き続く災害であり、その打撃はまことに甚大であります。政府といたしましては、調査団現地派遣非常災害対策本部の設置及び激甚災害指定等措置を講じて、応急対策復旧事業に全力をあげているところであります。  各県からの報告によりますと、九月五日現在の施設等被害につきましては、公共土木施設三百二十億円、農地等二百五十五億円、公立学校都市施設等十一億円、農作物被害百一億円、その他国鉄電力等被害を合わせて総額八百七十五億円にのぼっております。  今回の災害にあたりまして、自治省といたしましては、現地調査団派遣に際し、地方債課長派遣いたしまして、その災害状況を視察するとともに、戻りましてからも、政府内部において対策に参画してまいったわけでありますが、とりあえずの措置といたしまして、九月八日に四十億五千四百万円の普通交付税の繰り上げ交付を行ない、地方団体資金繰りの緩和をはかったのでありますが、このほか、政府資金による短期融資につきましても、関係機関とともにあっせん措置を講じてまいっておるのでございます。また、今後の措置といたしましては、税の減免、地方債の許可あるいは地方交付税配分等によって、万全の措置を講じてまいりたいと考えております。  なお、いま御説明をいたしました激甚災害につきましては、九月八日の閣議におきましては、公共土木施設農地等、それから湛水排除事業伝染病予防事業、小災害債元利補給等の各条章につきまして、適用指定決定をいたしております。  以上御報告申し上げます。
  6. 久保田円次

  7. 佐久間彊

    佐久間説明員 今回の災害被害概況につきましては、先刻警察庁のほうから御報告がございましたので、重複を避けます。  消防庁といたしましては、現地調査団の中に調査官を派遣をいたします等、関係省庁とも連絡をとっておる次第でございますが、主として今回の災害における消防機関活動状況について申し上げます。  新潟山形福島の三県に延べ七万七千五百人の消防職員及び団員が出動いたしまして、情報の収集及び伝達、山くずれ、がけくずれ、河川決壊等危険個所の警戒、巡視、水防作業避難の指示及び誘導避難所管理人命救助被災者の救護、土砂、落石の除去、行方不明者捜索被害状況調査など、各般にわたりまして、町村における第一線の防災機関として災害活動努力をしたのであります。特に加治川堤防締め切り作業につきましては、他市町村の応援千五百人を含めました延べ約二千五百人の消防職員及び団員が出動し、自衛隊、建設業者と協力して活躍をいたしたのであります。災害が起こりまして以後今日に至りますまで、終始消防職団員が積極的に活動をし、特に団員の中には、みずから被災したにもかかわらず、献身的に活動されたことにつきましては、感謝をいたしておる次第でございます。  この間、消防団員が九名殉職し、三名が行力不明となっております。殉職された団員の方に対しましては、まことに哀惜の念にたえない次第でございます。私どもといたしましては、救恤の措置につきましても、十分手厚くいたしたいと思っておる次第でございます。  なお、今次災害の経験にかんがみまして、防災対策上検討すべき点が種々あろうと思うのでございますが、状況がさらにつかめました上で検討をいたしたいと存じております。     —————————————
  8. 久保田円次

    久保田(円)委員長代理 次に、地方自治地方財政及び消防に関する件について、質疑の申し出があります。これを許します。華山親義君。
  9. 華山親義

    華山委員 ただいま報告のありました羽越災害について、お尋ねをいたしたいと思います。  災害にあわれました人々市町村等に対しまして、お見舞いを申し上げたいと存ずるのでございます。  このたびの災害特徴と私が考えられますことは、災害を受けた地方、その地方がきわめて、民度からいいましても市町村財政等からいいましても、程度の低い、財政的には弾力性のない、そういう地域に起こっております。この点は最近の水害特徴でございまして、このたびに限ったことではないのでございますが、河川改修の方式が高水敷改修であって、地方財政が乏しいために、また国のこれに対する関心が薄いために、中小河川改修がよくできておらない。したがって、高水敷改修によるところの本流の水が高くなる結果、中小河川の水がはけない。そういうことのために、いままでの自然の水の流れが違った水の流れ方をするために、思わざるところに災害が出てくるのではないか。とういうふうに人々も言い、私もその点があろうかと思うのでございますが、そういう結果と存じますけれども、このたびの災害は、私から言わせるならば、新潟県につきまして加治川の下流の再度にわたるたいへんな災害もございますけれども、山形県等を見ますと、山村災害、こういうふうに申してもいいと思うのでございます。その点特に自治省におきまして、貧弱団体財政について特段の御配慮をお願いしたいと思うわけであります。  それで、一、二の点につきまして伺いますが、このたびの災害激甚災害指定されまして、その条項等がきめられ、今後も追加されるとのことでございますけれども、これは各市町村別にその条項が違ってくると思うのでございます。各市町村別適用条項がきまらない間はきわめて不安定な状態にあると思いますが、それが確定的にきまるのはいつごろでございますか。
  10. 細郷道一

    細郷説明員 先ほども御報告申し上げましたとおり、去る九月八日の閣議におきまして、激甚災法のうち第二章の公共土木等指定、それから第五条の農地等適用、それから第十条の湛水排除に関する適用、それから第十九条の伝染病予防事業に対する規定、それから第二十四条の小災害適用、こういったものについて適用決定をいたしまして、その他のものにつきましては、なお現在調査中でございます。それで、これらの適用決定いたしたものにつきましては、御承知のように、それぞれの災害復旧事業費査定をいたしまして、それをもとにいたしまして各団体別告示が行なわれるわけでございます。その災害査定が、やはり一月半あるいは二月程度かかるかと思います。したがいまして、それらの整理の上で告示をいたすわけでございまして、告示は形式的なことになりますので、いまの予想では明年に入ってからになろうかと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、現実の査定ができてまいりますれば、自動的に計算することによって、それぞれの団体指定を受けるかどうかという見込みがみなそれぞれつくわけでございます。したがいまして、現段階におきましては、さしあたり査定を急いでやってもらうということが、一番大事かと考えております。ただ、こういった意味で、その間市町村におきましては、復旧事業、特に応急復旧事業等について、これは指定を待つまでもなくやっていかなければならないという事情にあろうと思います。そのための金融措置がさしあたって一番大事ではなかろうか、かように考えまして、先ほども御報告申し上げましたように、とりあえずの措置として、交付税の十一月分の繰り上げ交付をいたしました。しかし、それによりましてもなお資金が不足するといったような団体につきましては、短期融資あっせんをいたします。その融資利子分がそこの団体財政に大きいウエートを与えるような場合でありますれば、その分につきましては特別交付税等によって考慮をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  11. 華山親義

    華山委員 山形県におきまして最も財政の貧弱な飯豊という町、これは一例ですが、新潟県にもいろいろおありでございましょうが、私は山形県のことだけ言うわけではありませんが、飯豊の町におきましては、市町村道にかかっておる町村の維持するところの橋が七十くらい、そのうちの五十が流れてしまった。そうして現在でもそれらのところにおきましては、まだ孤立の村、部落がたくさんある。どうしても橋をかけなければならない、こういうこと。応急の橋もございますけれども、五十の橋をかけるということは、その町にとりましては私はたいへんな問題だろうと思うのでございます。いま利子補給とおっしゃいましたけれども、その元本を返し得るのかどうか、私は非常に疑問に思っておりますし、とうていできないのじゃないか、こういうことも考えられますが、そういうことにつきましては、何らかの財政措置がございますか、お聞きいたしたい。
  12. 細郷道一

    細郷説明員 その施設種類によると思いますが、施設種類によりまして、御承知のように、激甚災指定をして特別な財政援助をしていく、また単独事業のものにつきましては、地方債によってこれを処置をしていく、そうしてそれぞれその地方負担分に対する地方債元利償還については、御承知のように交付税基準財政需要額に算入するというような措置財政援助をしてまいりたい、かように考えております。
  13. 華山親義

    華山委員 そうしますと、今後その五十の橋を直すためにがかった金、そういうものは融資によってやりまして、将来の元利を見るわけですね。
  14. 細郷道一

    細郷説明員 それぞれの復旧事業をどの程度にやるか、これは査定の問題があるわけでございますが、復旧事業をこれだけやるということがきまりますれば、国庫補助対象になりますものについては国の補助で、その裏負担につきましては地方債、それから単独事業につきましては地方債というようなもので、それぞれ復旧事業を進めてもらいまして、そのあとでその元利償還額につきまして、その後の各年度におきまして、普通交付税の算定の際にそれを考慮してまいる、こういうことでございます。
  15. 華山親義

    華山委員 ただいま交付税の繰り上げの交付をなすったということでございますけれども、そういうことではこのたびの貧弱な市町村におきましてはとうてい間に合わないと思いますので、至急に融資の道を講じていただきたいのでございますが、その利子等につきましても、自治省におきましては考慮していただけますか。
  16. 細郷道一

    細郷説明員 復旧事業をどれだけやるかとうことの決定に多少時間がかかるわけであります。かりにそれがきまった場合にも、その地方債措置、あるいは国庫補助交付金交付措置というものがおくれることもあるわけであります。そういった間に、資金繰りとしてどうしても現金が必要であるというものにつきましては、先ほども申し上げましたように融資の道をあっせんをしていく、その利子分が相当の額になってまいりますれば、その団体財政力等によりまして、特別交付税考慮してまいる、こういうふうに考えております。
  17. 華山親義

    華山委員 私は、一つの例を飯豊という町にとりましたけれども、この町の損害はおそらく現在の税収入の十五年分に当たる、それだけの損害を受けておるわけでございます。また、この町は最も出かせぎの多い町、そういうふうな山村の典型的なところでございます。そういうところにおきまして、私は、普通のものの考え方ではとうていこの町の人たちが復興することはできないのじゃないか、こんなふうにも考えまするし、従来のいろいろな鋳絆を脱しましても、ああいう山村地帯町村財政、そういうことには特段の御考慮と御研究を今後ともお願いいたしたい、こういうふうに考えますし、またいろいろな実情について、県庁等を通じてお願いもあると思いますが、特段考慮をしていただきたいと思いますので、大臣から政治的なお考えを伺っておきたいと思います。
  18. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 ただいま財政局長からお答えいたしましたように、財政処置については万全を期してまいりたいと思いますが、特におあげになりましたような町村、まさに御指摘のとおりだと思います。したがいまして、今後そうした町村財政十分災害復旧その他にたえ得るような特別な処置は、十分に今後も考慮してまいりたいと考えております。
  19. 華山親義

    華山委員 特別交付税なるものがいろいろの情実によって決定されるというふうなことがいわれまして、そういうことは絶対にないという大臣の御言明もございましたし、私はそういうふうに信じておりますけれども、このような場合には、きわめて善意の政治的なものの考え方でございますから、ひとつ幅をもって御処置をお願いいたしたいと思う次第でございます。  その次に伺いますが、このたびのように、先ほど申しましたように、村が全面的に水をかぶるというふうな状態になりますと、至るところに損害ができまして、これをカバーしていくということのためには、激甚法におきましては五万円でしたか十万円でしたか、ちょっとはっきりいたしませんが、その点におきまして、いろいろな面において小さな災害が積み重なってまいりますと、私は相当な額に達するのじゃないかと思いますので、その点につきましても、ひとつ御高配をお願いいたしたいと思いますが、局長ひとついかがでございますか。
  20. 細郷道一

    細郷説明員 十分実態調査の上で考慮してまいりたいと思います。
  21. 華山親義

    華山委員 それから伺いますが、この山村地帯におけるところの水道あるいは簡易水道というふうなものは、伏流水をとっておるところが多い関係もございまして、川の低いところにあります従来のやり方にやはり反省すべきことがあるのであって、これらの水害につきましても、水源地だけは高い堤防で囲むとかなんとかのことがあってよかったのじゃないかと思いますが、大かたのところが、これが埋没してしまいました。たとえばいま申しました飯豊の町におきましては、広い場所でございますから、四カ所の水源地のうちで三カ所が埋没してしまったような状態、これのいま復旧につとめております。また皮肉なことに、小国というところでは、急激に埋没して砂で埋まったために、もう流れたかと思って掘ってみたところが、わりあいにちゃんとしていたなんというところもありますけれども、そういうふうな村落の水道等につきまして、激甚災害法はきめてない、この点は、私は法律の不完全な点ではないかと思うのでございますけれども、厚生省のほうでいかがお考えになりますか。
  22. 大橋文雄

    大橋説明員 お答え申し上げます。  町村水道簡易水道につきましては、先生の御指摘のように、水を求めます場合に、伏流水とか地下水井戸等取水設備で行なっておりますから、御指摘のように非常に災害を受けやすいという地形上に設置されております。しかし、その施設そのものは、ある程度災害を受けましてもだいじょぶなように考慮は払ってございます。たとえば井戸のまわりを少し高くするとか、あるいはポンプ室を高くするとか、具体的にはそういうようなことで考慮は払っておるわけでございますが、今回の集中豪雨のような場合には、その予想を上回りまして水が出てきたというようなことで、災害を受けておるわけでございます。したがいまして、今後これを復旧するにあたりましては、原形復旧と申しますか、災害復旧いたします場合には、原則として原形復旧ということになってございますが、技術的に見まして明らかに原形復旧することが適当ではないというようなものにつきましては、効用回復と申しまして、全く考え方を変えまして、今回のような災害が参りましても損害を受けない、再度災害を防止するという観点から、施設復旧考慮いたしまして、それに対して国は財政的な措置をするということになっておるわけでございます。
  23. 華山親義

    華山委員 お聞きしたいのは、この復旧につきましては二分の一の国庫補助があると思っておりますが、そうでございましたか。
  24. 大橋文雄

    大橋説明員 復旧費に対して国庫補助が二分の一でございます。裏起債につきましては、地方債をもってこれをカバーするということになっております。
  25. 華山親義

    華山委員 災害激甚法の中に水道というものが入っておらないのは、これはどういうわけでございますか。
  26. 大橋文雄

    大橋説明員 従来激甚法ができましたときに、水道が落ちておったわけでございます。これは災害を受けるたびに問題になるわけでございますので、今後激甚法の改正というふうなときにあたりまして、ぜひ水道もそれに含めるように、われわれとしては今後努力してまいりたいというふうに考えております。
  27. 華山親義

    華山委員 このようなことでございまして、二分の一は特別会計の独立採算制のもとに出さなくちゃいけないということになりますと、将来水道料金の値上げというふうな問題が発生しかねない。それで、この災害によるところの復旧につきましては、一般会計からこれを補てんするということは、公営企業法にもありますけれども、そういうことが可能でございますか。
  28. 細郷道一

    細郷説明員 公営企業法で、御承知のように、災害その他特別な事情の場合に、一般会計から補助をすることができるようになっております。したがいまして、その災害の度合い等を当該団体において考慮いたしまして、必要があればそういう規定の発動もできるものと考えております。
  29. 華山親義

    華山委員 自治省としまして、公営企業の独立採算制の意味から、一般会計から繰り入れることはやめろというふうなことは、災害の場合についてはおっしゃいませんですか。
  30. 細郷道一

    細郷説明員 御承知のように、公営企業法の第十七条の三で、災害その他特別の事情の場合についての一般会計からの繰り入れ補助の規定があるわけであります。それによります場合には、その補助ができる、こういうことでございます。
  31. 華山親義

    華山委員 そういたしますと、貧弱市町村につきまして一般会計においてそれだけのものが負担に相なるわけでございますけれども、この負担につきましても、自治省のほうでは、先ほどおっしゃったようなものの考え方によって処置していただけるでしょうか。
  32. 細郷道一

    細郷説明員 その復旧事業費の大きさでありますとか、あるいはその水道事業の規模でありますとか、あるいはその団体財政規模、いろいろな要件があるわけでございます。個々具体にそういったものにつきましてはよく実態を調査した上で、必要な措置をとってまいりたい、かように考えております。
  33. 華山親義

    華山委員 貧弱市町村のこういう場合の一般会計からの繰り入れにつきましても、特別交付税あるいは交付税につきまして御配慮を願いたいと思いますが、大臣いかがでしょうか。そういう場合にはそういう処置があっていいと思いますが、大臣からも伺っておきたい。
  34. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 まあ災害復旧の規模その他もあろうと思います。また、その団体の事情もございましょうが、具体の問題につきまして、その町村財政的に非常に困るようなことのないように配慮をしてまいりたいと思います。
  35. 華山親義

    華山委員 ここで私から申し上げますけれども、大臣局長も困ることのないようにと、こう言われる。私は、困ることのないという限界だけではなかなかたいへんだと思うのです。やはりある程度の幅をもってやっていただかないと、困らない限度ということになりますと、もうないんですからね。こういうところでは、単独事業なんかやる金は一つもないというのが現状でございますので、その点特段山村振興の意味からも御配慮をお願いいたしたい、こう思う次第でございます。  その次に伺いますが、災害の問題につきましては、その他諸般のことがございますけれども、この点につきましては災害対策特別委員会の領域でもございまするし、その問題につきましては私やその他の委員からも先日お伺いいたしておきましたのでその程度にとどめておきますが、消防庁関係についてちょっと伺っておきます。  このたびの災害におきまして、先ほど報告のありましたとおり、まことにお気の毒な犠牲者が出たわけでございますけれども、その犠牲者に対する弔慰につきまして万全の措置を講じたいとおっしゃいましたが、規定によりますと、その地位にもよりましょうし、それから消防としての勤務年数にもよりましょうから一がいには言えないのでございますが、県庁等の検討によりますと、遺族に対する年金は約二十万円足らずじゃないだろうか、こういうことを申しておりまして、県庁のほうでは非常に心を痛めております。現在のところ、もうそれ以外には、法令による以外には何らの方法もない、こういうことになるように思われますけれども、どうです、何かほかに方法ございますか。
  36. 佐久間彊

    佐久間説明員 公務災害補償の規定によりまする遺族に対する年金につきましては、先生のおっしゃいますように本人の勤続年限等にもよりまするが、大体ただいまお話のございました程度であろうかと思います。  それから、そのほかに制度といたしましては、その災害現場における功労の度合いに応じまして賞じゅつ金の支給の制度がございます。これは最高は二百万円ということでございまして、幾つか段階がございますが、これはなお具体の事情を県から承った上で処置をいたしたい。なお、国の行ないます賞じゅつ金の制度に準じまして、市町村におきましてもそのような措置をいたすのが通例になっておりますし、また県におきましてもそのような措置をいたすのが例になっております。その辺につきましては、県、市町村とも連絡をとりまして、できるだけ手厚い措置をするように配慮いたしたいと思っております。  それから遺族の子弟の育英のことにつきましては、先般来いろいろ準備をいたしてまいりまして、消防育英会、財団法人でございまして、消防育英会が過日発足をいたしましたので、明年からそれぞれの遺族の子弟に対する育英制度を事業開始するというようなことを考えておる次第でございます。
  37. 華山親義

    華山委員 遺族のことを考えますと、将来の問題でございますけれども、遺族年金が年に二十万円ということになりますから、交通災害でございましても基準といたしまして三百万円ということになっております。そういたしますと六分五厘に回しましても二十万円になる。三百万円だけ残るというふうな計算になる。私はいかにも低いと思うのでございます。いまここで法律を改正するということもむずかしいのかもしれません。私どもとしましては、それだから臨時国会でも——この問題だけではございませんけれども、臨時国会でも開いてこういうことについて根本的に考え直すべきではないか、こういうふうにも考えているわけでございます。大臣、私はどうも低いと思いますが、いかがでございますか。
  38. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 消防の公務災害の遺族年金等は、御承知のように公務員の災害補償と同じ水準でございます。この間、当委員会でも地方公務員の公務災害の基金の制度をお認めいただいたわけでございますが、現在のわが国でしかれておる災害補償においては高い水準のほうだと私は考えておりますけれども、しかし現実にいまおあげになりましたような事情がございます。今後もこの災害補償の充実につきましては努力をしてまいりたいと考えます。
  39. 華山親義

    華山委員 もう時間もございませんからここで議論をするつもりはございませんけれども、いま大臣のおっしゃった公務員と同じだということは間違いございませんか。公務員につきましては、しかし二十万円の年金をもらうなんという公務員だったらたいへんな低給の者でしよう。非常に低い人じゃございませんか。どうなんですか。その点、公務員と同じだということになれば私も一言もないわけですけれども。
  40. 佐久間彊

    佐久間説明員 公務員と大体原則的には同様な考え方で現在の金額を定めておりますが、詳しく申しますと、消防団員の最低の年金でございますが、これは公務員になりましてから大体五年くらいたった程度の人のところを基準にいたしておりますので、この最低につきましてはむしろ公務員になりたての方の場合よりも額が多くなっております。それからあと、公務員の場合におきましては階級に応じましてだいぶ上のほうが高くなっておりますが、消防団員の場合にはその幅は公務員よりも狭くなっております。しかし考え方は公務員に準ずるような考え方考えておるという状況でございます。
  41. 華山親義

    華山委員 時間もざごいませんが、その点につきましてあまり気の毒なのです。大体一家の主人をなくしております。そういう人たちの遺族が月に一万五、六千円ずつしかもらえない、こういうことではたしてやっていけるものか。私は非常にお気の毒だと思いますが、なお御考究をお願いいたしたい。  災害の問題はこれだけにいたしますが、このたびベースアップの給料改定がございましたが、この点、公営企業につきましては、ことに再建団体の公営企業につきましてはいろいろな問題がありまして、再建計画の中では困難な場合も起きてくるのではないかと思いますけれども、これにつきまして自治省はどういうふうにお考えになっておりますか。
  42. 細郷道一

    細郷説明員 公営企業職員の給与につきましては、御承知のように同種の企業の職員の給与でありますとかあるいはその他の経済情勢等を見てきめるということになっておるわけでございます。したがいまして、給与自体をきめるにあたりましては、それらの原則にのっとって給与を決定してもらいたい、かように考えております。現実の問題としまして、今回のベースアップに伴って公営企業体がそれぞれどういうふうにこれを処置していくか、基本原則はただいま申し上げたとおりでございます。その場合に、現実の給与の状態等を考えまして決定をしていただかなければならない、かように思います。特に、再建団体におきましては、いろいろ過去の債務の解消計画をかかえておるわけでありますから、その解消計画に支障を来たさぬような範囲でこれを考えていただかないとならない、こういうふうに思っております。
  43. 華山親義

    華山委員 それは私は考えますのに、公営企業というものは一面において公共的な目的を持っている。ほかのものであるならば、合理化といって、料金を上げることができる、給料も上げることができる。しかし、公営企業では簡単に料金を上げることはできない、そういうふうな、片方においての抑制がございます。また合理化といいましても、その合理化のあり方によっては公共的の目的を阻害する場合がある。そういうふうなことでございますから、一般企業と同じようなものの考え、あるいは一般企業よりももっときびしい環境に置かれるところの公営企業につきましては、合理化の範囲内で給料は決定すべきだ、そういうふうなことは、一般地方公務員であることにはこれらの公営企業の従事者も同じなのでございますから、あまりにも原則的で、企業的で、コスト主義に堕するものではないか、こういうふうに考えます。したがって、公益上の目的から、とうていこれ以上のことが、合理化ができないという限度、そういう限度におきましては一般会計からの繰り入れもやむを得ない、私はそういう場合もあると思うのでございますけれども、その点につきまして自治省はどうお考えになりますか、伺いたいと思います。
  44. 細郷道一

    細郷説明員 給与をきめていただく場合に、現実の給与がどれくらいであるか、それが公営企業職員の給与の決定の原則に照らしてどうであるかというのがまず第一であろうと思います。しかる後において、必要があるという場合に給与の改定ということを考えなければいけないと思います。その場合に、給与の改定ということについて財源をどういうふうに見出していくかという場合には、再建計画をつくっております団体については、その再建計画の範囲内でやっていただく、こういうふうに私どもは指導してまいりたい、かように思います。
  45. 華山親義

    華山委員 私も一般財政の再建計画で再建をやったことがある。その際に、自治省はそんなことを言ったことはない。おまえの県は再建計画の範囲だからもう少し倹約をして月給を上げろなんて言われたことは一ぺんだってありません。なぜ公営企業は一般職員と違うようにしなければいけないか。やはり同じ県庁の職員じゃありませんか、あるいは市町村の職員ではないか。そういうことでやるということになったならば、これは知事としてあるいは市町村長として、同じ地盤の部下の間に差別を設けることになりはしないか。私は、そういう意味におきましておかしいと思う。公営企業法の中で、一般会計からの繰り入れの問題について、自治省は財閥の威力に屈して、通産省の主張に屈して、そして一般会計からの繰り入れの条項を削ることができなかった。いまこれが存在している。その際の答弁では、この繰り入れば知事あるいは市町村長の政治的考慮によってやるのだ、こういうことを言っていられた、答弁された。それだったならば、あの条項によって政治的考慮のもとに自分の職員、その職員について差別することができないという考慮、そういう考慮から、一般会計から繰り入れする、あるいは一般会計から貸し出しをする、やむを得ない場合があると思いますけれども、その点どうなんですか。
  46. 細郷道一

    細郷説明員 公営企業の独立採算のたてまえからいたしまして、企業内の収支をみずからの計算において保っていく、これが本則であるわけであります。一般会計からの繰り入れにつきましてはいろいろな場合があるだろうと思います。たとえば、先ほどもお話の出ておりましたような、災害等で非常な打撃を受けているといったような場合にもそういうことがあり得るわけでありまして、一般会計からの繰り入れそのものがすべて形式的にいかぬというわけではございません。しかし、その内容によって私どもは判断をすべきものである、かように考えるわけでございます。そういう意味合いにおきまして、給与の改定そのものずばりで一般会計からこれを繰り入れていくということについては、私どもはこれを避けるように指導してまいりたい、かように思います。
  47. 華山親義

    華山委員 そうすればどうすればいいのです。給与を上げないということですか。
  48. 細郷道一

    細郷説明員 先ほど申し上げましたように、やはり給与の基本は、まず現在の給与自体が公営企業法の給与の決定の原則に照らしてどうであるかというようなことを考えていただくことがスタートであるわけであります。その点について管理者なり関係の方において十分お考えをいただいた上で第二段、第三段の問題が起こってくる、かように思っております。
  49. 華山親義

    華山委員 再建計画をお認めになった場合には、給与はこれでよろしいという前提のもとにお認めになったのじゃないですか。
  50. 細郷道一

    細郷説明員 再建計画は、御承知のように過去におきます債務の不良額をどういうふうに解消していくか、その解消の過程においてはいろいろな問題がある。歳入の面でも是正すべきものがある。たとえば料金の改定であるとか、あるいは歳出の面におきましても是正すべきものもある。給与の内容でありますとか、あるいはその他のいろいろな諸掛かりにつきましても、これを節約し合理化すべきものがある。そういったようなものをいろいろ努力をしていただくことによって過去の赤字額を何年かで解消していく。その間は国におきましても応援をいたしましょう。こういうような行き方でやっておるわけでございますから、その計画自体を、できましたものにつきましては、その計画の中身をそのように守ってやっていただきたい、かように考えるわけであります。
  51. 華山親義

    華山委員 それは、再建計画をお認めになるときには、これだけの給与基準、やはり各団体から出てきたものをお認めになって承認されたのじゃないですか。具体的にはそういうことにはおさわりにならなかったのですか。
  52. 細郷道一

    細郷説明員 再建計画の策定にあたりましては、その歳入、歳出の両面にわたって見ております。ただ再建計画自体は、御承知のように法律的には過去の債務が何年で解消するかというのがその内容であるわけであります。したがいまして、個々の歳入、歳出の諸条項がすべて現状がこれでよろしいという認定の上に立っておるのではなくして、こういう状況のもとにおいて再建計画をつくるにはいろいろ並行して合理化その他をしていかなければならないものがある。それもあわせて再建計画の中に織り込んでいく、こういうかっこうで再建計画は個々にできておるわけであります。したがいまして、再建計画をつくったのだから何もかも中身はあのとおりでいいのだ、現状のままで全部いいのだというわけではないわけであります。
  53. 華山親義

    華山委員 私は公営企業というものと一般企業には根本的な違いがあると思う。先ほども申し上げましたけれども、給料、こういうものは物価も騰貴いたしまするし、どうしても上がっていかないといけない。それがゆえにこのたびの人事院勧告もあるわけです。それによって一般公務員は上がっていく。したがって、公営企業の職員といえどもその例外であるわけではない。独立採算という形態をとっているのですから、それだったならば、それに応ずるだけの料金を上げればいいじゃないか、そういうことになりますけれども、料金を上げることは押えなければいけない。こういう矛盾に立っている。その矛盾をどう解決するか、これが知事なり市町村長なりの責任なんです。したがって、その際に料金を上げるべきか、あるいは公務員並みのベースアップをして、その足りない分は一般会計からの繰り入れあるいは一時これを貸すというふうなことで処置していくか、これは市町村長なり府県知事なりの責任、その責任によってやるということが十七条が存置された理由ではないのですか。いやなことを言うようでございますけれども、工業用水道についてだけはいいんだ、それだけは政治的な問題だからいいんだ、ほかのものはいけないんだということになってはおかしい。どうお考えになりますか。その点は府県知事なりあるいは市町村長におまかせになったらどうです。おっしゃるかもしれません、再建計画のために国から金を出すんだからあのとおりにやってもらわないといけないという理屈があるかもしれませんけれども、一般会計からの繰り入れあるいは一般会計からこれを貸す、こういうふうなことば認めて、そして知事があるいは市町村長が自分の直接あるいは間接になるかもしれませんけれども、部下を統率していく、これは知事や市町村長の責任だと私は思う。その点についてもう一度伺っておきたい。
  54. 細郷道一

    細郷説明員 知事や市町村長は確かに部下を統率する立場にあるわけでございます。しかしながら、それぞれの必要な経費は、一体だれに負担をしてもらうかということについても、住民の総意をくんでいかなければならないのだろうと思うのです。したがいまして、いまいろいろ御指摘のございました給与の問題につきましても、給与の現状自体が住民を十分満足させられるものであるのかどうかというようなこともまず考えていただかなければならないと思うわけであります。  私どもも、個々の団体によって事情もいろいろ違うわけでございますから、一律的に申し上げることは避けたいと思いますけれども、団体によりましては、たとえば交通の職員の給与ベースが現在の民間の同種の給与ベースよりもはるかに上回っておるといったようなものもあるわけでございまして、そういったもとにおきまして、料金を上げないからけしからぬのだということだけでは済まないのではないだろうか。やはりその両面を見比べながら妥当なところに落ちついていくというところにそれぞれの理事者の考え方と責任があるのではなかろうか、こういうふうに思っております。
  55. 華山親義

    華山委員 私はもう何年もこの問題について聞いておりますけれども、あなた方はいつでも東京都の交通労働者の賃金が高いということを言われる。私はそうは思わない。あの人たちは、東京都につきましては、あの交通というものを拡大するところの何らの措置を持っておらない。拡大していけるものならば、その中に新しい人が入ってきて、そして年齢の平均的引き下げができる。東京都の交通事業は縮小こそすれ新しい分野がない。新しい分野はほとんど全部これを民間にやらしている。その結果、人事の交流、人事の流れがないから、平均的に上がっている、そういうふうなことだと思うのです。私はその点につきまして、いまここで再び論議しようとは思いませんけれどもいつでも東京都の交通労働者を例に出されるから私も一言言っておきたい。それにしましても、これでもって高いのか安いのか、そういうふうな判断というものもこれは各市長がして、そうしてこれは高過ぎるから、今度の賃金ベースアップについてはひとつがまんしてもらおうじゃないかという判断もあり得るし、あるいはこれを一般会計から出すこともあり得る、そういうことについては市長にまかせるべきじゃないか、こういうふうにも考えるわけであります。料金は国において上げることを抑制する、当然のことでしょう。しかも、料金を抑制しておいて一般公務員並みの賃金のベースアップもさせない、これが方針だ、これで収支をまかなっていこうという方法は、あまりにもいろいろなしわを労働者、勤労者に寄せるものではないか、こういうふうにも考えます。大臣、どうですか、こういうことでいいのかどうか、私は非常に不満ですけれども伺っておきたい。
  56. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 こういう公営企業というようなものの収入というものは、一体それを利用するものを中心にして考えるのか、あるいは一般の税金から考えるのかという問題があろうかと思います。ですから、原則としては、やはり企業の内部のいろいろな経営のやり方の中から、賃金の引き上げその他の問題もまかなっていかなければならないもの、原則はそうだと私は考えておるのでございまして、このたてまえそのものが非常に不合理なものだというふうには考えないわけでございます。ことに再建団体につきましては。そういう過去の不良債務を解消するために、いわば一般の会社でいえば会社更生法の指定を受けた会社みたいなものなんでして、やはり経営者もあるいは勤労者も一体となって、できるだけ短い期間にそういう債務を解消して、将来——何と申しますか、十分将来のある企業に持っていくわけですから、その期間中はやはり相当の制限を受けるということはやむを得ないのではないかというふうに考えるわけでございます。もちろん、具体的にはいろいろ問題もございましょうから、そういうものについては自治省としてもいろいろ御相談にあずかりますけれども、一律に管理者にまかせて、知事なり市町村長が、もうこれは一般会計からべースアップの金を出すのがいいんだと判断すれば、それを一々文句をつけなくてもいいじゃないかとばかりは私は言えないのではないかというふうに思います。
  57. 華山親義

    華山委員 一言だけ意見を申し述べて、私終わりますけれども、一般会計からの繰り入れというものは現在認めているのですからね。工業用水道については認めている。これは政治的考慮によってやるのだということであの条項を生かしてしまった。そういうふうなことについては政治的考慮というものを上からぶっつけておいて、工業用水道については認めておいて、そうしてそういうふうな勤労者の給料についてはやかましく言う。少しことばがきびし過ぎるかもしれませんが、大企業のためにはそういうことはいいんだけれども、労働者のためにはいけないのだということさえも言い詰めてしまえば言えるのではないか、私はこう思うのです。  ついでに伺いますが、この問題につきまして前の財政局長は、工業用水道については決してこれで打ち切ったわけではない、これから通産省とも十分に相談すると言われたのですが、その相談は一体どうなっているのです。
  58. 細郷道一

    細郷説明員 通産省とその後もいろいろな角度で折衝中でありますが、特に先般通産省側から私のほうに来年度予算のこともあるので引き続いて相談に乗ってほしい、こういうことがございました。したがいまして、これからさらに検討をしてまいりたい、かように思っております。
  59. 華山親義

    華山委員 一般会計からの工業用水道に対する繰り入れが来年からでもやめられる見込みがあるのですか。
  60. 細郷道一

    細郷説明員 先生も前回のときの経緯もよく御存じでありましょうから、なかなか問題があるということは御承知と思うのであります。しかし、私どもとしては、従来の考え方に立って通産との折衝に当たってまいりたい、かように思います。
  61. 華山親義

    華山委員 ここでこれ以上申し上げましても議論になりましょうから、ほかの委員からも申し上げると思いますので私の質問は終わりますが、ほかの委員からのお話がありまして不満がございましたならば質問をやりますから、ここで質問を保留いたしまして終わることにいたします。
  62. 久保田円次

    久保田(円)委員長代理 小濱新次君。
  63. 小濱新次

    ○小濱委員 私は自治体でいま非常に大きな悩みをかかえております問題についてきょうはお尋ねしたいのです。あまりにも関係省庁が多いので、きょうはこの委員会を通していろいろとお尋ねしていきたい、このように考えます。  最初に、だいぶん最近活発に回漕業者あるいはまた管理者、その掌に当たる者あるいは建設省等、行政庁も動きを起こしているようであります。各港の沈船の現状についておもなるところでけっこうでありますが、地名、その隻数等を簡単に運輸省から発表していただきたい、このように思います。
  64. 宮崎茂一

    ○宮崎説明員 ただいまお話しの港湾の中におきますところの沈船でございますが、私どもの調べによりますと、概略申し上げますと、東京、川崎、横浜、名古屋、大阪、神戸、北九州、この七つの大きな港でございます。これにつきまして八月十七日の最近の調べでございますが、港湾管理者からとりました資料でございます。現在、沈船その他で、沈船としてやります数字が七百八十六隻、これは合計でございます。大体八百隻というようなことでございます。  それからついでに申し上げておきますが、過去二年間、つまり昭和四十年と四十一年の間に前記七港で港湾管理者が処理いたしました船の数が三百九十四隻、ざっと四百隻、その費用が約四千四百万、一隻当たり十一万円ちょっとということでございます。
  65. 小濱新次

    ○小濱委員 いま七大港湾についてその現況のお話があったわけであります。もう少しお尋ねしたいのですが、佐世保、長崎、下関あるいは堺、函館、室蘭、この辺もだいぶん大きな港になっております。この辺の沈船の状況についてはどうでしょうか。
  66. 宮崎茂一

    ○宮崎説明員 非常に残念でございますか、手元に資料がございません。また、できれば御報告——連絡して調査することは可能でございますから。
  67. 小濱新次

    ○小濱委員 この間、新聞を見ましたところが、瀬戸内だけでも沈船の数は大体二千と推定されております。そのほか長崎でも、佐世保でも三十から五十、あるいは堺の港では百、函館、室蘭も三十前後、こういう確認のできた隻数がございます。いま宮崎局長の言われた隻数は港湾管理者から報告のあった七大港湾の内容のようでありますが、それは表面の数字であって、水が濁って見えない沈船あるいは確認のできない沈船等が相当推定されるわけです。私のほうの調べですと、いろいろと資料を集めておりますが、私のほうで確認のできたものだけでも二千二百三十七隻という状態で、最近二、三年とみに沈船の数がふえました。そしていま局長は湾内だけの説明をしておられましたが、河川、運河はいまこの廃船の捨て場になっている。これを墓場といっております。あるいは火葬場ともいっている。私はそのことについていろいろと調査をし、資料を集めてみました。写真帳につくってまいりましたけれども、その醜態がすごいのです。戦後全然減っていない。毎年増加の傾向にある。もう二十二年もたっていながらいまのような状態にあるわけですが、この問題についてきょうは政府考え方をお尋ねしたいと思うわけであります。  自治大臣、こういう現況でありますが、大臣は御存じでございましょうか。
  68. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 私不敏にして港湾の沈船がどの程度あり、それがまた船の運航その他に支障を来たしているかということについては、十分承知したしておりません。
  69. 小濱新次

    ○小濱委員 きょうは運輸大臣はアメリカへ行かれてしまいまして非常に残念でありますが、いま申し上げたのは沈船の状況でありまして、港で仕事をしているはしけ、そういう船の——一応私のほうでも調べはできておりますが、五大港湾あるいはまた七大でも八大港湾でもけっこうですが、そこで働いている船の隻数を局長は御存じでしょうか。
  70. 宮崎茂一

    ○宮崎説明員 いますぐ幾らということは、私、非常に不勉強で申し訳ございませんが、大体各港ごとに何隻ぐらいおるというようなことは、まあある程度は知っております。しかし、不確かで申しわけないことですが、神戸港ですと二千隻ですか、相当なはしけがおるというふうに考えております。全体では、あとで資料を調べまして御報告いたします。
  71. 小濱新次

    ○小濱委員 もう一カ月ぐらい前から、私はこの問題については通告をしておったつもりでありますし、また委員会でも、先回やる予定が、委員長のほうから協力を求められまして時間にやめてしまったわけです。にもかかわらず、いま局長の御答弁でありまして、非常に私にはその責任をお感じになっていないようなふうに受け取れるわけであります。  大阪でこのはしけは約三千隻少しあります。いま申し上げたように、神戸でも名古屋でも横浜でも、東京でもそうですが、二千二百から二千五百、こういう隻数でありまして、そのうち大阪の例を申し上げますと、その三千の中で、第二軍といわれるもう耐用年数を経過したそういう船が約千三百。いろいろと調査をしてみますと、大体発生件数、いわゆる沈船の数が年間四十ぐらいあるようです。処理数は平均二十七隻になっております。その四十という数字でいきますと、この第二軍の千三百だけでも処理するには三十年以上かかる。あとにまた千七百隻が続いているわけです。こういう状態で、今後このはしけの捨て場がないために、業者はしかたありませんので、どこかへつなぎます。係留してそのままもうほうってしまいます。それが腐食して沈船になっていく、こういう状態考えられるわけでありますが、こういう将来について現状でも、美観の上からも市民感情の上からも、あるいはまた船舶海難の大惨事を起こし得る原因ともなるこういう沈船の問題から、これは急遽対策を練っていかなければならない。もう二十二年たってもいまのこういう現状では、各関係省庁に強力にひとつ決意をしてもらって取り上げてもらう以外にこれが対策はないであろう、このように思うわけですが、そういう現状について、運輸省ではどういうふうにお考えになっていますか。
  72. 宮崎茂一

    ○宮崎説明員 沈船につきましては、ただいまの御指摘のように、最近またふえてまいっているようでございますが、私どもといたしましては、おもに六大港を中心にいたしましてこの対策会議を開いておりますし、また二カ月ほど前でございましたが、高知におきましてもこの問題が管理者の中で問題になっております。御承知のように、このはしけの沈船につきましては実はその所有者があるわけでございまして、こういったものの処理をするということは、私はまずこの所有者をはっきりいたしまして、その所有者にひとつ処理していただくということが先決であろうと思うわけでございます。また港湾管理者の中でも、いまのお話のように処理する場所がないというようなことで、東京でございますとか大阪でございますとか、そういうところで処理場の建設を始めたところもございますし、また処理をしなければならぬというふうに考えております。管理者のほうからも、そういう処理施設に対する要望でございますとか、あるいはまたその沈船を捨てないようにするような行政指導とか、あるいは沈船の所有者がそれを処理をするような方法をしてもらいたい、こういったような要望が出ておりますので、こういった線について関係の各省とも横の連絡を十分とりながら現地で解決をしていくようにいたしたい、かように考えます。
  73. 小濱新次

    ○小濱委員 いま局長の御答弁を聞いておりますと、まことに当を得たような内容のように聞き取れるわけであります。確かにその船があるのですから所有者はあるでしょう。じゃ、船はどういう状態でつくられていくのですか、あるいはまた、その船にはその人の所有物であるという最後まで確認のできる方法があるのですか。あなたの言われるようなそういう道理ならば沈船なんかできるわけがない。法律によってきちっと指示命令を与えることができる船であるならば、沈船なんかできるわけがないのですね。なぜできるのかというところに問題があるわけでしょう。お答え願いたいと思います。
  74. 宮崎茂一

    ○宮崎説明員 この船にはいろいろ船名とかその他ございますが、自動車と違って、沈船の状態になると非常に所有が不明確だというようなことでこういう問題が起こってくるのだろうと思いますが、先般会議いたしましたところ、ある港湾管理者の話によりますと、なかなか判明はしがたい。しかしながらその港湾管理者のもとでは徹底的にその所有者を調べまして、その所有者に処理するようにやらしている。これはこの七大港ではございませんで、特定重要港湾の一つでございます。まだ現状におきましては、その所有者を突きとめるというようなやり方が少し手ぬるいのじゃないか、もう少しこの所有者のほうをはっきりさせるように努力しようではないか、そういったような意見もございます。非常にこまかいことを私存じませんが、やはりその港の中の船でございますれば、港湾管理者なりあるいは海上保安庁なり、そういったところが協力すればある程度はできるのじゃなかろうか、かように考えております。
  75. 小濱新次

    ○小濱委員 回漕業者が業を営むときには、これは持ち船の登録があるでしょう。しかしながら個人で船をつくるときには、これは現状では建造のおりは野放しであります。あるいは固定資産税を払っている人は、その回漕業者に所属しているようなはっきりとしている船は若干払っているようでありますが、それもほんとうに一部の人のようです。一割にも満たないような数字。とすると、その回漕業者から次の業者にその一般船主が変わっていったときには、もう船の在籍というものはなくなっている、登録はなくなっている。その業者から、古くなってきますと、耐用年限を過ぎますと、今度は次の業者、零細業者にだんだんと安く譲り渡しをされて、その人が目一ぱい使って、最後にはどこかへ捨てなくちゃなりませんが、処分するには十万、二十万円、二十五万円かかるわけです。その金を出せるような業者ならいいんですが、その金がない業者は岸壁に係留しておく。そして標識をとってしまう。船名を削りとってしまう。そして三カ月でも半年でも一年でもそこへ置いておく。ついには沈船になって持ち主がわからない。あなたは所有者があると言われたけれども、そういう船が全体なんですよ。その持ち主がわかっていればだれも苦労はないわけです。そういう沈船をどうやって運輸省では処理をされるのか、こういうふうに聞いているわけです。
  76. 宮崎茂一

    ○宮崎説明員 ただいまの御質問は、所有者のわかっている沈船はやりやすい、所有者がどうやっても探せない、わからないという沈船に対して、どのような対策をとっているのかというお話でございます。御承知のように、港湾法の十二条によりますと、港湾管理者の業務といたしまして、港の中を良好な状態に保つ——清掃も含めてでございますが、そういうような港湾管理者の業務がございます。したがいまして、港湾管理者にやっていただくということになろうかと思います。また最終的には、航路とかその他でございますと、海上保安庁とも連絡いたしまして、港湾管理者のほうでそういうものをクリアーと申しますか、掃除と申しますか、処理していかなければならない現状ではないかというふうに考えるわけでございます。しかしながら港湾管理者といえども、やはり港湾の区域内の問題でございまして、港湾区域外はそういう業務はないわけでございます。港湾管理者といたしましても、何でもかんでも沈船になったものを処分するといいましても、これは水難救護法ですか、六カ月間所有者の確認、あるかないかという確認をしなければならないということで非常に手間どるわけでございます。そういったような問題もございますし、あるいは実情がおくれているのかもわかりません。しかし、私個人として考えますのは、行政管理庁からも御指摘を受けたのでございますが、安易に何でもかんでも管理者がやるということに対しまして、港湾管理者もある程度やはり何と申しますか、もう少し的確に船舶の所有者に義務づけるようにしていただきたいという要望もございますし、これは行政管理庁のほうからの勧告でもございますので、先ほど申し上げましたように、できるだけ所有者にそういったものを義務づけるようにしたいと思いますけれども、それでどうしてもできないものは、現状におきましてはやはり港湾管理者のほうで港湾法の十二条によりましてやらざるを得ない、こういうふうに考えます。
  77. 小濱新次

    ○小濱委員 いま十二条を取り上げられました。二十九条もきっとお取り上げになりたいのであろうと思いますが、港では非常に公共料金は低廉で、これは赤字であります。そんなことで処理ができない港の現状と、政府、運輸省としては十分な財源を与えてないという責任もあるわけです。どこの港でも非常な赤字をかかえて困窮しているわけです。そしていま区役所等に六カ月間表示をして、その期間を過ぎれば処理をするということですが、五大港湾の中で、一隻二十万円前後かかるとどこでも言っておりますが、その焼却処理費を最高どのくらい予算で計上されたか、御存じでしょうか。
  78. 宮崎茂一

    ○宮崎説明員 各港湾管理者の報告でございますが、大体横浜では平均二十万円でございます。それから名古屋では十万円でございます。また大阪ではいまのところ八万六千円、大体、先ほど来申し上げましたように平均十一万ちょっとでございますので、ものによっていろいろ変わるであろうと思いますが、二十万円ぐらいというのが最高ではなかろうか、いまの報告によりますと。そのように考えておりますが……。
  79. 小濱新次

    ○小濱委員 年間予算はどのくらいかと聞いておるのです。
  80. 宮崎茂一

    ○宮崎説明員 年間予算は、過去二カ年間におきまして処理したのが、七大港平均して全体で四千四百万でございます。今年度、四十三年度の総計は、ちょっと手元にございませんが、いま申しましたのは四十一年と四十二年の合計でございます。
  81. 小濱新次

    ○小濱委員 その十万、二十万円の処理費がかかる、こういうことですが、自治体ではその処理費の予算がとれないで、そして沈船処理ができないでいるわけでしょう。またその所有者もなかなか発見ができない。六カ月間掲示したから何でも処分していいんだというものでもないようです。そういうことで、非常にこの問題では悩んでいるわけですが、宮崎局長さんのいままでの話ですと湾内だけですね。
  82. 宮崎茂一

    ○宮崎説明員 そうでございます。
  83. 小濱新次

    ○小濱委員 自分たちが所管をしておる湾内だけの話をしておったようであります。  海上保安庁の猪口警備救難監が来ておられるようでありますからお尋ねいたしますが、いろいろと小人数で昼夜にわたってパトロールをやっているようであります。たいへん御苦労なことであると思いますが、このパトロール中に、たとえば流出のそういう沈船あるいは廃木、沈木、そういうシモル丸太等を発見した場合には、海上保安庁ではどういうふうな処置をとられるのか、お答え願いたいと思います。
  84. 猪口猛夫

    ○猪口説明員 海上におきます沈船、壊船あるいは流木等、海上交通の障害になる事物を発見いたしました際には、緊急措置といたしましては、私のほうの巡視船艇で曳航可能なものにつきましては、とりあえずその航路筋をはずすように曳航作業をやっております。そしてまず第一番に措置しておりますことは、水路通報によりまして一般航海者にその航路付近におきます沈船あるいは流木等の漂流物の所在を放送あるいはその他の通報手段によりまして航行船舶に知らしておるわけでございます。  なお、先ほど先生からお話がありましたように、確かに戦後この種の廃棄物あるいは漂流物が港湾内あるいは一般の海域、ことに瀬戸内等で非常に多くなっております。つきましては、昭和三十九年の十月以降、おも立ったところに海水の汚濁防止協議会というものを各保安部長の主催におきまして、関係機関並びに関係業界の人たちと、それらのものの実際的措置をいかにすべきかということを申し合わせまして、そういう対策を練るための協議会をつくらせまして、できれば実効のあがるような措置を講じたい、こういうぐあいにやっておりますが、一昨年もその効果があがりまして、今治付近では、テレビでごらんになったかもしれませんが、保安部長の指揮のもとに、あの付近におきます廃船を一カ所に集めまして、重油をかけて燃して処理をしたという実例もあるわけでございます。一応まずやるべきことは、発見いたしますれば付近の航行船舶にその漂流物の所在を知らせまして危険の予報をする、あるいは巡視船艇で曳航可能なものにつきましては、とりあえず航路筋をはずしていく。それから港長の権限といたしまして、港湾内またはその一万メートル付近におきましては、港則法による除去命令もできますので、除去命令の発し得るものにつきましてはそういう措置を講じております。また公海付近のものにつきましては、港湾管理者にその所在等を通報いたしまして、航路の障害にならないようにその除去方をお願いしているわけでございます。
  85. 小濱新次

    ○小濱委員 海上保安庁は、港によっては港湾管理者と共管になっているところがある。いまの話ですと、航路は責任を持ってやっているようであります。ところがその他で発見をしたときには港湾管理者に通報して処理さしている、こういうふうに聞いたわけですが、共管になっている海上保安庁として、回漕業者に対しては国が免許を与えている。そういう立場から運輸省としては大きな責任があると思うのです。いまの話ですと、共管というようなそういう責任感には立ってないように見受けられるわけでありますが、港のその共管の範囲ですね、自分たちが責任を持って管理をする地域、これはひとつ明確にしてもらいたいと思います。
  86. 猪口猛夫

    ○猪口説明員 先生がおっしゃいました共管という問題については非常にいろいろの問題があると思いますが、私のほうの各港におきます港長の行ないます権限は港則法で明示されておりまして、港則法の二十四条及び港則法の二十六条に基づきまして、各港長はそれぞれ所有者のはっきりしているものに対しましては、先ほど申しましたように、港則法の第一条で規定されております海上交通の整理、整とんあるいは航行安全のために必要な措置をとるわけでございまして、その目的に相反する航路障害となるものに対しましては、所有者が判明しているものに対しましては除去命令を出す、そしてもしそれに応じない場合は代理執行をするということになるわけでございます。ただし、所有者の不明なものにつきましては、先ほども申し上げましたが、港湾内で航行の障害になるものにつきましては、当方の手で、とりあえず巡視船艇等によりまして、その航路筋を離れた適当な個所に曳航する、そしてその旨を港湾管理者に通報いたしまして、港湾管理者で、先ほど港湾局長からもお話しになりましたような、港湾法に規定されておる線に沿いまして、適当に処分していただきたいということを申し上げておる次第でございます。
  87. 小濱新次

    ○小濱委員 私も港湾法、港則法あるいはまた河川法あるいは水難救護法、いろいろ見てみました。しかしこの沈船処理に対して、いま猪口警備救難監の言われたようなそういうことで処理をしていくならば、これは問題はないわけです。そういうふうな責任所在をきちっとした運営が行なわれているのならば、これは問題ないわけであります。ひとつこれはお伺いしたいのですが、港湾局長、港の中で流出をしてきた沈船によって船が船舶海難の惨事を引き起こした、この場合の責任の所在はどこにあるのでしょうか、あるいはまたその被害者は、だれを相手にいわゆる訴訟を起こせばいいのか、この点もひとつ伺っておきたいと思います。
  88. 宮崎茂一

    ○宮崎説明員 非常にむずかしい問題でございまして、ただいまそういう問題につきまして私どもも検討いたしております。御承知のように、港湾管理者は港湾施設を有効に、良好な状態で保つという港湾法十二条の規定が、これが保たなければならないといった港湾管理者に対する義務規定であるのかどうか。あるいはこれは私どもといたしましては、やはりその職能的なそういう業務というものが、一つの港湾管理者の業務といったことで、それが義務規定じゃないんじゃないかという解釈に実は立っております。したがいまして、ただいまのお話でございますが、そういう沈船によりまして障害が起きた場合に、どこの責任かといった場合は、やはり個々いろいろな場合がございますので、個々の場合につきまして、海難審判庁その他の判定を仰がなければならないんじゃないか。一般的に、港湾の中で起きれば全部港湾管理者の責任だということにはならない。あるいは船長の過失という問題もありましょうし、また海上保安庁の関係も出てくるかもしれませんが、そういったことにつきましては、先生の御指摘のように、やはり多少法的な問題があるんじゃないかというふうに考えて、海上保安庁ともただいま協議しているところでございます。
  89. 小濱新次

    ○小濱委員 いまのは大事な問題だと思いますが、私ちょっと本を読んでみました。港湾運送と港湾管理のこの発案者の一人、法学博士の住田正二という方ですが、この人の本を読んでみましたところが、この中に無過失責任ということばが出てまいりました。過失はないが責任はあるのだ。最近よく国会でもこういうことばが出ているようでありますが、そういうことで、当然責任はその港湾管理者あるいはまた共管であるならば運輸省もとらなければならないと、はっきりとここで明言しているわけです。こういう点はどのようにお考えでしょうか。
  90. 宮崎茂一

    ○宮崎説明員 いま住田博士の書かれました本に港湾管理者の無過失責任であるというふうに書いてあるというお話でございますが、これから法制局ともよく御連絡しまして、どこの責任かということを明らかにするように努力したいと思います。いまここでそれに対しまして、そうでないとか、あるいはそのとおりと言うほどの私、見識と申しますか、自信を持っておりませんので、御了承願いたいと思います。
  91. 小濱新次

    ○小濱委員 だいぶ時間か経過しましたので、少しはしょりますが、建設省の上妻水政課長さん、ひとつお願いしたいのですが、河川法をいろいろと私も見てまいりましたが、この河川に二十ぱい、三十ぱいという沈船がたくさんあるわけです。そこは港湾管理者のいわゆる地域とは違うわけだ。たとえば第一橋梁から下は港湾管理者である、こういうふうになっておりますが、その上の河川内に、運河内にこの沈船が非常に多いわけです。建設省としてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  92. 上妻尚志

    ○上妻説明員 ただいま港湾局長から港湾内のことにつきましてるる説明がございましたけれども、河川区域においても同じような問題がございまして、河川管理者の立場としましては、港湾管理者と同じように非常に困っておる問題でございます。実は先ほどからも説明がございましたけれども、処理に非常に多額なお金がかかるということで、治水事業費にはそういう沈船処理費というものは別に予算で見ていないということでございます。ただ、最近鶴見川で、河川改修に伴いまして、河川改修区域内に沈船があったものですから、そういうものにつきましては、工事の一環として工事費で沈船を排除するという事業を進めておりますが、これも七万円ぐらいかかる、そういうような実情でございます。実は前々から私たちも困っておりますし、先生からも御質問があるということで、これは河川等につきましては河川管理者の問題ですし、港湾区域につきましては港湾管理者の問題ですし、漁港区域につきましては魚港管理者の問題です。関係各省にまたがるということで、運輸省、それから水産庁ともいろいろ議論したのでありますが、いま先生の御質問、それから港湾局長の回答というようなことと同じようなことでございまして、今後前向きの姿勢でひとつ各省で協力して解決策を講じていこうじゃないかというような話し合いをしたような実情でございます。
  93. 小濱新次

    ○小濱委員 先ほど説明しましたように、次から次と沈船は増加の傾向にあるわけでして、そんななまぬるいことじゃどうにもならないわけです。私どもも実際に現地へ行ってみて、船主なんかわかりませんよ。先ほど、区役所で表示するのだと言うけれども、私ですと出ていけば、二十万円取られるのですよ。十万円かかるのですよ。だれもそんなことを言うわけ、かありませんよ。そこでみんなやりっぱなしてしまう。そこで、先ほど局長言われたように、陸上交通、少し対象は悪いかもしれませんか、新道交法ができて、今度は過酷な反則金制度ができて、まことにりっぱな制度ができましたけれども、船には鑑札、ナンバーがないのですよ。船名を消せばなくなってしまう。持ち主はわからない。どこへでも捨てていいのです。捨てるのじゃない、そこへりないでおいていいのです。それが捨てたことに通ずるわけです。これは酷な言い方かしれませんけれども、陸上の自動車にナンバーがなかったらどうなるのでしょうか。大臣どうでしょう、ナンバーがなくて無数の自動車が走っておったらどうなるのでしょう。あるいは道路っぱたにスクラップになった自動車をどっと捨てていったらどうなるのでしょう。いま海はその状態なんです。これからまだどんどんふえていく状態なんです。こういう点で、これは港湾行政の盲点だな、その暴露した姿がここに出ているんだな、私はこれはどうしてもこの沈船に関係する法律を取り上げざるを得ないわけです。先ほどもいろいろと言われましたけれども、水難救護法を見てみました。これはひとつ、大臣聞いてください。これは明治三十二年にできたものでありますが、三十三年と、昭和に入って二回、全然関係のないところで一部改正されております。それによりますと、船長が船舶海難の事故を起こします。そうすると、その船長は書類をもって市町村長に届け出をしなければならないことになっております。ところが、その最後のほうに罰則として金五円——五円ですよ。その辺に落っこっている金ですよ。それから最高で五十円、こういう罰則が書いてある。これはおかしい、何とかこれは改正されているだろうと思っていろいろ調べてみたところが、五円は千円まで科することができると書いてある。五十円は二千円まで科することができると書いてある。船をやりっぱなして罰則を受けて、最高二千円払えば罪にならない、こういう水難救護法であります。建設省、これはあなたのほうですね。御存じでしょうか。その点について、私のいまの説明が間違っておるかどうか、関係者、ひとつお答えいただきたいと思います。
  94. 猪口猛夫

    ○猪口説明員 水難救護法の量罰関係につきましては詳しく申し上げる権利がございません。所管は運輸省の所管になっております。
  95. 小濱新次

    ○小濱委員 何だかたらい回しのようではっきりしないのですが、どなたか御答弁いただけるでしょうかな。(「大蔵省の感想でも聞いたらいいじゃないか」と呼ぶ者あり)じゃ、秋吉さんひとつ。せっかくおいでになっておりますので……。
  96. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 お尋ねが水難救護法プロパーの問題でございましたならば、それぞれの筋合いから責任ある御答弁をするのが筋合いでございますが、ただいままでの各省、それから先生の御質問、御答弁の内容を、私しろうとでございましたが、聞くにつけましても、いろいろ問題が錯綜しておるように承りました。大蔵省のまあ直感的な感想といたしましては、これはやはり所有者のモラルじゃないかという感じがしておるわけでございまして、どうも先ほど陸上の鑑札のようなお話がございましたが、まさしく私はこういう船主の公物に対するモラルをもっと高めることが必要ではないかと思います。そんな感じを直感的に持った次第でございます。
  97. 小濱新次

    ○小濱委員 わかりました。建設省の河川法の二十九条にいろいろとこの問題について条文があります。この中で「支障を及ぼすおそれのある行為については、政令で、これを禁止し、」と書いてある。次の二項にも政令ということが書いてある。いろいろ罰則を調べてみた中に、この政令を私さがしてみたのですが、残念ながら見当たりませんでした。おありになるのかどうか、お答え願いたい。
  98. 上妻尚志

    ○上妻説明員 まだつくっておりません。といいますのは、「河川管理上支障を及ぼすおそれのある行為」というのはいろいろな行為があります。一応私のほうで原案はつくっております。原案につきましては各省と折衝までいたしまして、しかし、いろいろ問題がございまして、その一つを見ましても、たとえば水質の汚濁の関係を見ましても、関係各省との関係がございまして、そういうことで、いま作業中の段階でございます。その政令案の中には、沈船につきましては廃棄してはならないというような規定は一応盛ってあるわけでございます。そういうことで、この間、各省とも連絡した際には、規制のほうもやらなければいかぬということで、いろいろ打ち合わせしたのでございますけれども、規制だけでは、いま先生のおっしゃいましたように、鑑札がなくてわからぬ。私も、まず所有者が必ずあるんだから、所有者をつきとめろということを現地に指示いたしました。そうしますと、やみにまぎれまして標識を、番号なんかを書いてあるものを消して、そこに置いていく、金目のものはみんな持っていって、残骸だけが残るというようなことで困る、こういうような実情でございます。  それから、先生がおっしゃいましたような、陸上交通で自動車がそういうふうになった場合に考えられるじゃないか、こういうことは議論したのでございます。ところが、スクラップにするといまのところ売れるそうで、船も売れれば問題はない。ただ、処理する費用がべらぼうにかかる。私どもも、実は二十万円とかというようなお金がかかるということを聞いてびっくりしたのでございますけれども、何か水を吸っておって簡単に燃やすことができない。積算で言いますと、それは何かクレーンで川岸に持ってきてたたきこわして、トラックに積んで捨てられるところに捨てていく、そういうような費用が六万円とか七万円とか十万円とかの費用でございます。余談になりますけれども、アメリカあたりでは、自動車が道ばたに捨てられて困っているというような笑い話を聞くのですが、将来そういう問題が起こるかと思いますけれども、そういうようなことで、二十九条の政令ができましたら、規制の面ではもちろん一生懸命やりたい。だけれども、規制だけでは、いまのところ目的を達し得られないだろう、こういうような感じでございます。率直な私たちの考えでございます。
  99. 小濱新次

    ○小濱委員 河川法を見ても、水難救護法を見ても、港則法を読んでも、港湾法を読んでも、きめ手がない、これを規制するものがない、こういう結論になりました。この点の改正をしなければならないであろう、こう思うわけですが、この点、改正については自治大臣どういうふうにお考えになりましょうか。
  100. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 だんだんお話を伺っておりますると、結局、一方において規制をするような何らかの法的な処置も必要でございましょうし、それから、いま小濱さんがお話しのように、大体はもうみんな捨ててしまう、所有者もわからぬというのが多いようでございます。しかし、中にはまた、かってに処分したからといって文句を言うやつもおるかもしれませんし、そうなると、やはり港湾管理なり河川管理者なりあるいは海上保安庁のほうで、そういうものを簡単に処分すると申しますか、海上交通に支障があるという限りにおいては、権限を持って処理ができるような権限を法律的に与えなければならない問題もあろうかと思います。そういう法的な規制の問題につきましては、なお関係各省相談されると思いますが、事実問題として、そういう沈船があって海上交通に支障があるときには、やはり港湾管理者なり河川管理者なりが処理をしていくことを促進していかなければならないんじゃないかと考えます。
  101. 小濱新次

    ○小濱委員 自治大臣にお尋ねしたいのですが、ただいままでのお話の経過をお聞きになっておわかりになったと思いますが、やはり湾内の問題については港長に、それから港長は所有者または占有者に対しその除去を命ずることができるというようなことが港則法の二十六条にあります。こういうことで命令したいのですが、持ち主がいないので、ついには自治体でこれをかぶらなければならない。それから、河川、運河にも山ほどその醜態をさらしておりますが、先ほど建設省のほうの意見もあったように、これは当然自治体がやってくれなければならない。そうすると、自治体では、一ぱいが十万、二十万という金がかかるのですから、二百隻くらいの沈船はどこにもあるようでありますから、これを処分するにはたいへんですが、現在の沈船を処分する場所がない。それから方法がない。金がかかるが金もない。こういうことで、あとからあとからどんどん沈船はふえていくわけです。結局、自治大臣が最後の腹をきめなければならない、こういう結論になってくると私は思うのです。  そこで、いろいろ法改正もしてもらいたいと思いますし、その船に対する登録制も考えていかなければならない。零細業者ですから、固定資産税を多額にかけることはできませんが、とにかく最後にどっかに捨てていく、その処置だけは何とか予防措置を講じていかなければならない。それがための対策も、これから話し合っていろいろとまた意見を聞いてきめていくというような先ほどのお話がありましたが、そんな状態ではないのだ、ひとつ急遽この問題については結論を急いでいただくようにお願いしたいと思います。  最後にこの沈船処理場ですが、これからも年々ふえていく予定ですが、沈船に対する打開策については、これは自治大臣考えなくてはならないであろう。ほんとうに検討してみました。私も九州から北海道までいろいろと現況を調べて報告もとりました。その内容をここに持っておりますが、どう考えても自治省で何らかの援助策を講じて、まず処理場をつくってやらなくちゃならないであろう。廃船ができたらここへ持っていきなさいと言って、港長が堂々と胸を張ってその場所を指定できるようなところをつくってやるのは、これは自治大臣のほうであろうと思うわけですが、それができない限り、幾ら規制をつくっても、あるいはまた通告をしても、いろいろと手ひまをかけてその所有者の発見につとめてもどうにもならない問題で、先ほどの建設省のほうの意見のように、夜陰に乗じて捨てていく、こういう深刻なことばが出てきておるわけですから、これは陸上交通とあわせて海上交通考えていかなくちゃならないし、見て歩きますと、まっ黒い油がその残骸に付着して、いやなにおいがして、それが十年、二十年醜態をさらしているという姿、みんな義務規制がないので、もう責任転嫁、そして結果は自治体がかぶっているというような姿になっておりますが、ひとつ何とか手を打っていかなくちゃならないと思いますが、この廃船処理施設についてもいろいろと調べてみました。大阪ではすでに計画表をつくっているようだが、焼く施設だけでも三千二百万円くらい、埋め立て費は別だ、そういうことで書いてございましたけれども、どうしても五千万円くらいはかかるらしいです。ですから、各関係省庁が今後予防処置についてひとつ努力をしてもらいたいということと、処理場を急遽つくっていかなくちゃならないだろうということ、ひとつこの予算措置についてきょうは大臣から明確な御答弁をいただきたいと思うのですが、いかがでありましょうか。
  102. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 今後そういう沈船をふやしていかないために処理場をつくるというようなことは、これはどうしても必要だとは思います。その意味におきまして、それが地方自治体の財政的負担に相なるものでございましたら、それらについての財政的な、裏づけというものは何らかの方法で考えてまいりたいと思います。各関係省と十分連絡をとりましてやってまいりたいと思います。また、従来すでに沈船になっておりまするものを処理するということも必要であろうと思います。それには先ほど申しましたように、法律的にいろいろ問題はあろうかと思いますが、現実の問題としては、港湾管理者なり河川管理者がそれをやっていかなければならぬ問題だと思います。これらの点につきましても、十分関係省と相談をいたし永して、早期の処分ができまするように努力をしてまいりたいと思います。
  103. 小濱新次

    ○小濱委員 早期解決に努力をするということでありますが、財政負担を非常に大きく感じておったために、いままでこれはできなかったわけです。そしてまた、自治体としては、国に対して何回この問題については陳情、請願に来たかわかりません。それもここに持っておりますが、それに対する何らの回答もなかった。言うならば、国でも無関心でおったのでこういうふうにならざるを得ないわけでありますが、大臣からはいまおことばをいただきましたのでよく理解できましたが、運輸省関係、建設省関係ではこの予防措置についてどういうふうにお考えになっておられるか、最後にひとつお答えいただきたいと思います。
  104. 宮崎茂一

    ○宮崎説明員 この予防措置でございますが、ただいま自治大臣からもお話しになりましたように、処理場の建設ということだろうと思います。前向きにひとつ取り組んで、建設省その他とも連絡しながら努力いたします。
  105. 小濱新次

    ○小濱委員 建設省関係も同じ御答弁をいただきたいと思います。
  106. 上妻尚志

    ○上妻説明員 私は、やはり原因は、はっきり捨てる方がおられるわけでございますから、この捨てることを規制するような、これは船舶行政の一環かと思いますけれども、そういう処置も必要なんじゃないだろうか、こういうふうに思っております。  もう一つの処理上の問題は、これは港湾局長が答弁申し上げましたように、関係する省もございますので、打ち合わせた上で善処したい、こういうふうに思っております。ただ、私たちのほうでどんどんやっていきますと、そんな次々に捨てられまして、私たちのほうはあたかも清掃屋みたいになる感じもしないでもないので、まずそういうことが行なわれないような処置というものが第一に考えられなくちゃならないのじゃないだろうか、こういうように思っております。
  107. 小濱新次

    ○小濱委員 秋吉主計官、いままでお聞きになったとおりであります。自治大臣からもいま方針については伺いました。一日も早くこれが対策を講じていかなくちゃならないわけですが、こういう内容でありますから、よくお伝えいただいて、一日も早くこれの処理、処分ができますように、よろしくお願いしたいと思います。  以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
  108. 久保田円次

  109. 川村継義

    川村委員 昼食抜きで質問をお許しいただいてまことに恐縮です。たくさん時間をいただくわけにまいらないと思いますので、私も要点をお尋ねしてまいりますから、自治省のほうもそのつもりでお答えをいただきたいと思います。  私がきょうお許しいただきました質問の問題としては、自治省地方行政の基本的考え方ということになりましょうか、具体的には、いま行なわれております地方公務員の不利益処分申請に基づく指導、そういうものについてお尋ねをいたします。大臣おられますから、その前にちょっと大臣のお考えを承ります。  本年も御承知のとおりに人事院勧告が出ました。これは八月の十五日に出ていると思います。その後、政府は六人委員会——あとで文部大臣が加わったそうですから、七人委員会と申しますか、そこで鋭意検討しておられるようでありますが、自治大臣としては、その七人委員会の中でどういう御意見を持ってそれに対処しておられますか。特にこの実施時期等について自治大臣はどう考えておられるか、これをお聞かせいただきたい。
  110. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 人事院勧告が出ましてから、給与関係の閣僚協議会を二回にわたって開催をいたしました。まだ財政当局の今後の財政の見通し等が的確に把握できておりませんので、具体的な議論ができないわけでございますが、私どもといたしましては、人事院勧告を十分尊重するという方向で今後も検討を重ねてまいりたいと思っておる次第でございます。
  111. 川村継義

    川村委員 勧告を十分尊重する、それはもう毎年政府側が言っておられたことばでありまして、それがどうなるか、この後の問題でありましょうが、ここでそれらについて私いろいろとこまかくお尋ねをしようと思いません。しかし、大臣もすでに御承知のとおりに、人事院勧告が完全に守られたことは一回もない。ということは、私が申し上げるまでもなく、公務員の権利というものが無視されているのじゃないか。公務員の生活というものが脅かされているのを全く顧みない態度ではないか。私たちとしては非常に遺憾であります。人事院勧告は政府と国会になされます。国会で毎年完全に実施しようとわれわれが要求しても、多数をたのむ政府側の皆さん方によって、それが踏みにじられて今日にきておる。ということは、これは国家公務員法あるいは一般職の職員の給与に関する法律等々の条章に照らしてみても、まことに大きな問題があると思います。  そこで、自治大臣は、私は、本年こそこういう覚悟で完全実施——特に自治大臣は都市手当等については問題にしておられるようでありますが、それはそれとして、ことしこそは実施時期を削ることがないように、全力を尽くしていただきたい。これが何よりのあらゆる紛争を解決する問題であると、私は申し上げてみたいと思います。  御承知のように、いまも申し上げましたように、これは大臣よく御存じのことですが、あの人事院勧告は、戦後本年で二十回目の勧告になると私は記憶いたします。ところが、いま申し上げましたように、一回も完全に実施をされていない。特に昭和三十五年以降ですか、勧告が五月一日から実施せよと、こういったのに、それが実施されておりません。それで、ことしもしも実施されないとなると、八回五月実施というのが踏みにじられてくるわけです。十月一日実施が四回かあったと思う。九月実施が三回かあったと思う。それも大臣、私たちは、大臣あたりの努力によって、ことしは何とか政府もあらゆる困難を乗り切って実施すると思いますけれども、ことしはまたそれが実施されないとなると、その責任はあげてやはり政府側にあると言わざるを得ない、こう思っておるわけであります。とにかく、そのようにして国家公務員法であるとかそういうものが軽視され、あるいは労働者、働く公務員の権利を一方的に抑圧するということは、まことに政府の越権行為であると言わねばなりません。ことしはおそらく間違いはないと思うんだけれども、もしも大臣、ことしもまた値切られるということでございますと、一体公務員はどうすればいいんですか。黙っておれ、引っ込んでおれ、文句言うな、こういうことになるんですか。公務員は一体どうすればいいのですか。大臣、所見はいかがでございますか。
  112. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 人事院勧告、ことに三十五年以来、期限つきの人事院勧告が、その勧告どおりに実施されていないことは事実でございます。それにはそれなりにいろいろ理由があると私どもは考えております。皆さん方はむしろ理由がないとおっしゃるんだろうと思いますが、しかし、いずれにしましても、人事院制度というものが一種の代償機関である、そういうことにかんがみまして、人事院の勧告の尊重ということ、ことに現在の給与担当の大臣である総理府総務長官は、そういう意味において、従来とは違った観点でこれを解決したいということは、私も同感でございます。  値切られたら公務員はどうしたらいいんだというお話でございますが、政府側として、いろいろな諸般の事情を勘案した中において、十分人事院勧告の尊重という態度をとることがまず必要であるというふうに考えております。
  113. 川村継義

    川村委員 昨年もとにかく五月一日に実施しなさいという勧告が守られておりませんから、昨年は全国的に各県地方公務員の間に相当怒りが爆発したというか、ぜひ完全に実施してくれという措置要求集会等を開いた。それが法律に違反するんだというようなことで、大量に処分を受けている。こういう事態になることは残念です。ところが、そういう事態になることはいやだからといって、黙っておるというわけにもいかない。やはり公務員には公務員の要求というものがあってしかるべきである。何ら意思表示できないということになる。一体公務員はどうすればいいのか。ただ処罰だけするというわけにはいきますまいと私は思うのです。その点は、私が申し上げるまでもなく、大臣よく理解いただいていると思いますから、ひとつお考えを願うわけであります。  そこで大臣、余分なことを聞くようですけれども、人事院勧告は勧告としましても、御承知のとおり、地方公務員法を開いてみても、そういう人事院勧告と同様な規定がある。地方公務員法の十四条を見ても、二十六条を見てもある。ところが、一体、この地方公務員法によっていわゆる真に独自の勧告を出した、あるいはそれを出したとした場合に、それを地方団体が完全に実施したという例がございましょうか。大臣、御記憶ございますか。
  114. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 私の記憶では、大体人事委員会等の勧告についてそれを実施いたしておると存じます。あるいは私の記憶間違いで実施時期等について違った場合があったかと存じますが、大体は人事委員会の勧告どおりに実施いたしているものと心得ております。
  115. 川村継義

    川村委員 私も、地方の人事委員会が独自に調査し、独自の勧告をしたという幾つかの例は聞いたことがあります。しかし、これらを地方団体が完全実施したということは、私も残念ながら記憶がないわけです。おそらくこれはないはずです。いま大臣がおっしゃるように、国家公務員に対する人事院勧告、それに準じて結局地方公務員の給与改定等がなされている。これは法律にその根拠があるわけですからやれるわけですが、そういうことであったと思うのです。こういう点について、何か国の政治、地方の政治、地方自治という点から考えると、割り切れないものがやはり残っております。私は言い過ぎかもしれませんが、独自に勧告をし、それを独自に実施をするという法律に基づいてやってもいいのではないか。しかし、それは今日までやっていない。そういうことを考えると、地方政治というもののあり方について、私は一応疑問を持つのでありますけれども、これはいろいろ財政とかいうような問題で今日までできなかった、こういうことであります。  そこで、全国の地方公務員というものは、国に準じてやられますから、全国の公務員が話し合いをし、あるいは力を合わせ、機関で決定をして、われわれは国家公務員に勧告があった人事院勧告に準じてやられるんだから、われわれも当然それに右へならえができるように、しかも完全実施ができるように措置要求行動をやろうではないか、こういう運動を起こすことは、これは当然なことであって、否定はできないわけですね。大臣、異議ございませんでしょう。
  116. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 地方公務員がみずからの処遇その他につきまして団結の力をもちましていろいろな行動をされることは、これはもう否定できるところではございません。ただ、私どもが常に申し上げておるのは、そういうことはあくまで法律の規定に従ってやっていただきたいということでございます。
  117. 川村継義

    川村委員 日曜日に大会を聞いてそういう運動を起こしたって政府が聞くことはない。やっぱり何か強い意思表示をやりたいという方法を考えるでしょう。それをすぐ違法じゃ、どうじゃと言って大きなげんこつをかませるから、問題が穏やかでなくなってくる。そこで、私は大臣にあらかじめちょっとお聞きしておきまして、昨年の問題のあと始末についていろいろいま大きな問題が起こっておるから、行政局長中心にひとつお聞きをしていきたいと思います。大臣は必要によってぜひ御見解をお聞かせいただきたいと思う。  長野さん、行政局長、あなたはいつから文部省の局長になったんですか。
  118. 長野士郎

    ○長野説明員 文部省の局長にはなっておりません。
  119. 川村継義

    川村委員 これはどうも失礼なことをお聞きしたようですが、私は、あなたがとられた行為について、実はけしからぬと思っております。それはあとでまたお聞きします。  長野さんも新部長の鎌田さんも、自治省に実に経験の深い方で、地方自治ということは、これは頭のてっぺんから足のつま先までわかり切っている人なんだ。言うならば、自治法を守る、地方公務員を守るという大番頭でなければならぬ。それが、長野さんたる者が、あとで指摘しますようなとんでもない通達をなぜ出したんだろうか、私少し不可解なんですよ。こういう皆さん方の前にこのことを申し上げると釈迦に説法なんですけれども、われわれのようなしろうとだって、自治省設置法の第三条の趣旨、地方公務員法の第一条の趣旨、地方自治法は言うに及ばず、読んでみると、みな地方自治の本旨であるとか、民主政治の確立であるとか、実にりっぱなことがうたってある。ところが、これから私がお尋ねしようというあなたたちのやったことは、どうもそれを飛び越えておるのじゃないか、踏みにじっているんじゃないかという気がするわけです。  そこで、お尋ねしてまいりますが、昨年十月二十一日に、全国的に人事院勧告完全実施を要求した措置要求大会、こういうことが行なわれておる。やり方は、一斉に休暇届けを出して、あるいは早朝、あるいは午後、集会を開いた。これは大きくそういうものを持ったものは大体教職員組合の諸君が多かった。ところが、相当大量の処分を受けた。これはもう御存じのとおり。そこで、目下各県で不利益処分に関する不服申し立てが行なわれておる。そして人事委員会の審査が開始されておるわけであります。これも御承知のとおり。私がおりますところの熊本においては、七月十三日に請求者約二千人の合同審査が行なわれた。これに対して、私が知るところでは、行政局長はまことに異例だと言っていいほどの干渉がましいところの通達を出しておる。その通達は次のとおりであります。私が読みますから聞いてください。  自治公第三六号  昭和四十二年七月二十九日              自治省行政局長   熊本県人事委員会委員長鈴木知男殿     公平審理について   貴委員会が、昭和四十二年七月十三日二千人を超える膨大な教職員の不服申立について一括して併合審理を行なったことは、公平審理制度本来の趣旨に反する不適当なものである。なお。このように多数の教職員が一斉に教育現場から離脱することは、明らかに正常な教育行政の運営を阻害するものであり、特に一週間後に夏期休暇を控えた時期の平日を選んで審理期日を決定したことは、極めて不適切な措置である。   今後、かかる公平審理を再び行なわないよう厳重に注意されたい。 間違いございませんね。
  120. 長野士郎

    ○長野説明員 いまお読み上げになったとおりでございまして、七月二十九日付けで、公平審理につきまして熊本県の人事委員長に通知を出しました。
  121. 川村継義

    川村委員 通達を出されました法律的な根拠は何ですか。
  122. 長野士郎

    ○長野説明員 地方公務員法、地方自治法につきましても、先ほどいろいろ地方自治の本旨にのっとってということでお話がございました。私どももさように思っております。ただ、地方自治の運営という問題につきましても、やはり法律が要求しております措置というものが完全に実現するということによって、初めて自治体の運営としてもそれ自身評価し得るわけでございますから、そういう意味で法律の期待しない結果を来たしますような場合の問題をどのように防ぐことを考えるか。地方公務員法におきましては地方公務員法の五十九条に、自治省地方公共団体の人事行政につきましてそういう公務員制度の原則に沿って運営されるように協力し、かつ技術的な援助をするということの規定もございます。そこで、自治省としては、地方自治法にもいろいろございますが、地方公務員法上のいまの問題でございますので、どういう理由に基づいてやったかというお話でございますと、地方公務員法のいま申し上げました第五十九条に基づく助言をいたした、こういうことでございます。
  123. 川村継義

    川村委員 地方公務員法の五十九条、「自治省は、地方公共団体の人事行政がこの法律によって確立される地方公務員制度の原則に沿って運営されるように協力し、及び技術的助言をすることができる。」とある。そこで、まず一つの点は、技術的助言とは何か、内容。いま一つは、この通達は自治公第三六号、行政局長名になっておる。この出し方と、次官通達等で出すのはどう違うのか、それを明らかにしていただきたい。
  124. 長野士郎

    ○長野説明員 この通達につきましては、公平審理というものについて、熊本県の場合のように二千人に及ぶような併合審理ということが、一体公平審理として可能であるかどうか、その公平審理の実をあげるかどうか、これはまあ公平審理というものの運営なり審理の内容なり、審理がその目的を実現するためにどうしたらいいかということから考えました場合には、その併合審理についての適切な運営のしかた、そういうものが一体保障されるのかどうかというようなことにつきまして、自治省としての見解を述べたものでございます。
  125. 川村継義

    川村委員 趣旨はまたあとで聞きます。技術的助言というのは一体どういうものか、こういうことです。
  126. 長野士郎

    ○長野説明員 公平審理についてのやり方、公平審理を開催する時期、方法なども技術的助言の中に入るわけでございます。
  127. 川村継義

    川村委員 あなたの先ほどの通達を読むと——趣旨ばあとで聞きますよ。趣旨はあなたがいま述べようとした趣旨かもしれぬけれども、この通達は、いまのあなたが言われようとした趣旨とは違った、あなたが答弁したところの技術的助言の内容とは違った、少しかけ離れておる通達ではないですか。技術的助言といえば、その開き方あるいは委員会規則改正等についての求めがあったらば、こういう委員会の規則をおつくりになることはいいではないか、そういう助言、そんなものが技術的助言だと私は思う。しかし、あなたが出した通牒は、どうもそれとは少し飛び離れておる、私はこう見ておるから聞いておるわけです。  そこで、この通牒は七月二十九日に出ておるが、なぜ審理があったあとで出したのかという一つの問題がありますよ。そういう趣旨であれば、これは事前に何らかの方法で、あなたが先ほどちょっと答弁したところのその指導、助言というものができるはずでしょう。それが一つの問題になる。  そこで、私は今度は聞きます。もう一ぺん、あなたが出した趣旨を、理由をあわせて答弁いただきたいと思う。
  128. 長野士郎

    ○長野説明員 事前にそういう連絡をする方法があったではないかというお話が一つでございますが、その点については、私どもも知り得る状態になりましてからはいろいろと熊本県の人事委員会にも連絡をいたしまして、そういう意味での助言というものはいたしたのでございます。しかるにかかわらず、結局のところは、組合と申しますか、そういうことが言えるのだろうと思いますが、教職員の関係団体の力に押し切られたと言っては語弊がございますけれども、大体そういうかっこうではないかと思われるようなことで、併合審理ということになったようでございます。そういうことからいたしまして、当時、公平審理の申し立ては、まあ現在もそうでございますが、全国的に相当多くの府県にその申し立てがあるわけでございます。そして、そういう申し立てを受けておりますところの関係の府県の人事委員会において、寄り寄り相談がございます。その場合に、熊本県の例というのが今後の審理について非常に大きな影響を及ぼすということが、関係者の間で指摘をされております。今後そういうことのないようにしてほしいというような意見も非常に強うございまして、申し出もあったわけでございますので、事後にはなりましたが、そういう通牒をいたしておるのでございます。  内容につきましては、私どもは、御意見もございますようでございますが、二千人に及ぶ申し立てというものにつきまして一括して併合審理をする——まあ公平審理というものは、そもそも申し立て者、いわゆる処分を受けました者の個々の人が、どういう状況でその処分を受けるに該当したかしないかということを、申請者個々の個別の行動というものが、そういう条件に、処分者の言うようなことになっていたのかどうかということを個別に判定することが必要でございます。そういう意味で、関係者の中で、申請者個々の個別の問題を個別に具体に検討するということでなければ、審理の実はあがらないわけであります。それを一括して二千人に及ぶものを併合審理するということになれば、審理そのものの実があがらないということは、これはもうだれしも想像のつくことでございますし、現に熊本県においてやりましたものは、そういう意味で実はさっぱりあがっておりません。結局のところは、あの当時、非常に穏やかな言い方でございましたが、朝日ジャーナル等も書いておりましたけれども、まあ言う人によって言わしめれば、一種の組合大会を人事委員会の主催でやったようなものだ、こういうような表現さえあったようでございます。そういうことでございまして、結果は、私どもが予想して心配しておったとおりのことをたどっておるようであります。そういう意味で、この通達は、事後にはなりましたけれども、一括併合審理を二千人に及ぶ者に行なうということ自体は、審理の実をあげないのだということをはっきりさせる意味もありまして、そのことに言及をしたわけでございます。そういう不適当な審理ということは今後行なわないようにぜひしたいということがございます。  もう一つは、先ほどもおまえいつ文部省の局長になったかというお話もございましたけれども、そういうことと関係なく、要するに、地方団体の運営について非常に支障を来たすやうなやり方でものを行なうか行なわないか、そして実があがるかあがらないか、これは何人も考慮をする必要があることでございますし、公平審理そのものの引き起こす業務に対する支障というものは最小限度にとどめるようにお互いにくふうすることが、これは当然のことではないかと思うのでございます。そういう意味で、私どもが申したのは、人事委員会がいつ公平審理をどういう形で開くのが適当かどうかということを言っておるのでございます。人事委員会としては、自分の公平審理の立場だけを考えればよろしいのだ、そこで地方団体の一切の業務がどうなろうがかかわりはないのだというわけにはいかない。まして、この場合二千人の人です。関係する学校が百九十八校でございましたか、たしか二百校に及ぶのでございます。そしてそのために、二千人でございますから、概略申しますと大体二千学級について影響があったわけであります。そして授業の振りかえを行なったりいろいろいたしましたが、結局授業を行なわなかったところも約二十学校くらいあったように聞いております。しかも、そういう状況でございますので、人事委員会の当局もだんだん調べてみますというと、土曜の午後やりたいとか、休日にやりたいとか、いろいろ折衝したようでありますけれども、この折衝ということ自体に問題がございますが、結局そういうことが一切考慮に入れられないで、絶対に平日に、言ってみれば、授業に支障を来すことを一つの目的として公平審理というものを固定するようなやり方が行なわれたのではないだろうかというふうにいわれるような見方も出てくることが当然のような当時の状態であったわけでございます。  そういう意味で、私どもはそういうやり方というものについては、今後そういうことのないように、再びそういう公平審理を行なわないように厳重に注意を喚起するということは、単に熊本県だけの問題ではございませんで、今後の公平審理全体に及ぼす影響というものを全国的に考えまして通知をいたしたのでございます。
  129. 川村継義

    川村委員 行政局長、あなたは、いつ大臣になったか知らぬけれども、余分のことを、自分の権限外のことを心配するから、私、さっきいつ文部省になったんだと聞いたのです。心配するのは人間としていいですよ。しかし、権限を行使するときには、やはり注意をしなければいかぬと私は思うのです。  そこで、二千人を一緒にやって問題がある。公平審理というものはこういう趣旨だ。あなたが言っていることは少し独断ですよ。二千人か千五百人か、あるいはたくさん一緒に、少なくとも一回か二回かは一緒にやってもらいたいということは、審理を促進して、早く不利益処分に対する審査の結論を出したいというのが公務員にあるわけです。二千人を、あなたが言うように一人か二人ずつやってごらんなさい、一体何年かかりますか。これは一年や二年では結末がつきませんよ。ところが、こういう一括審理をやれば案外早く片づくかもしれない。それを一緒にやるのは不都合だ、こういう見方をするのは、独断であると私はいわざるを得ない。一人ずつやってごらんなさい、一体どれだけやったらいいか、そういうことも言えるでしょう。あなただってやり切れますか。一人ずつ、何年かかってやるのですか。ところが、二千人一緒に集まったからといって、みんなが発言をするわけではない、これは知っているでしょう。熊本の場合でも、ちゃんと代理人がきめてやる。その人々が一緒に代表してものを言うという審理日程をとるのですから、考え方によるのですよ。だから、一方的に、そういうようなものの考え方でこういう通知を出すということは大問題である。  そこで、あなたはおそらくお聞きになっていると思うのだけれども、すでに審査請求が出たのが二月十四日、そして審査請求について、請求者側あるいは処分者側あるいは人事委員会、この三者のうちでいろいろと相談をしてきて、すでに四十二年六月九日には、こうしてやりましょうときまっているのですよ。少し時間をとって恐縮だけれども、あなたがそう言うから、私がこれを読みます。   四一・一〇・二一関係の懲戒処分取消し請求事案にかかる審理方式について、請求者多数から強い要望があったので、熊本県人事委員会は全員併合の審理を可能とする諸条件を検討した結果、次の六項目の条件と併せて次の八項目についての強い協力要請事項が守られるならば、全員併合の審理方式を採用してもよい旨、熊本県高等学校教職員組合及び熊本県教職員組合(以下両組合という。)に回答した。これに対し、両組合は、次の留保事項を付して条件及び要請事項を承認し、熊本県人事委員会もこの留保事項を認め、両者の合意が成立したので、今後互に無用の不信を排し、審理を公正、円滑に行なうことを期して、ここに条件、要請事項及び留保事項について確認しておくものとする。  一 条件  (一)代理人をただちに選任すること。ただし、その数が多すぎると認めるときは、制限することがある。  (二) 代表者を請求者の中から一名選任すること。   ただし、不利益処分についての不服申立てに関する規則第七条四項の運用として、別に両組合の代理人の中から二名の事務責任者を定め、審理開催通知は、全請求者分を人事委員会で用意し、その他の書類とともに事務責任者に送付するものとする。  (三) 口頭審理の準備のため、事前に争点整理に応ずること。  当初の書面に伴う求釈明及び釈明は可能な限り準備手続の中で行なうこと。  (四) 出席請求者の言動については、両組合において充分な統制を確約すること。  なお、出席請求者の発言がどうしても必要な場合は、あらかじめ定められた場所で発言させるようにすること。  (五) 審理外の発言は、代理人、請求者を問わず組合において自発的に統制すること。  (六)全員同時出席の機会を最少限度にとどめること。二 協力要請事項  人事委員会は、以下の項目について強く協力を要請するものである。  (一)審理場は、教育施設は避けたいこと。  (二) 今後人事委員会が行なう口頭審理は原則として県庁内の中または小会議室を使用することとしたので協力すること。  なお、一〇・二一関係のこの事案については例外として、これ以外の会場を使用することがある。  (三) 準備手続は原則として少数の代理人間で行なうこと。  ただし、必要がある場合には若干の請求者の出席を考慮することがある。  (四) 組合旗、ハチマキは持ち込まないこと。  (五) 休日(日曜及び祝祭日)の審理は避けること。  (六)第一回の審理予定日は、準備手続完了後の七月十三日とする。  (七) 原因事実を否認する請求者があれば、途中で分離のうえ別件として審理することがある。  (八) これらの条件と要請項目は両組合においてこれを了解すれば、人事委員会は処分者側の了解を得るべく最善の努力をする。もし問題が残れば両者の代理人と人事委員会で協議し、最終的には人事委員会が裁定する。  三 留保事項   現段階では条件(六)の最少限度の内容について、両者に食い違いがあるので、第一回の審理のあとで話し合う。   昭和四十二年六月九日   熊本県人事委員会委員長   熊本県高等学校教職員組合理事長   熊本県教職員組合委員長  これが六月九日にすでに確認書としてりっぱにまとまっておる。人事委員会は、私が言うまでもなく、県における独立機関ですよ。しかも、こういう審理をする裁判所だ。それがこうしてきめたものを、あとで、不都合だとか、やり直せとか、不適当だとか、何かの因縁をつけてこれを押えようとすることは、これは干渉じゃありませんか。一緒にやろうが、別々にやろうが、まかせたらいいじゃないか。それを公平審理を害するなどという、独断でこういう通知を出すことは、私は許されないと思う。  いま一つ。おそらくあなたは、熊本県の七月十三日の審理がどうも混乱したとかうまくいかなかったとか、どこから情報が入ったか知らぬが、こういうことが頭にある。あなた方は確認したのですか。だれを派遣したのですか。実際に向こうへだれを見にやったのですか。あなたが行ったんですか。
  130. 長野士郎

    ○長野説明員 いま、人事委員会と教職員団体との間でいろいろ取りきめがあって、そして併合審理をやるについても、支障のないようにするという努力が双方で払われた上でやったことじゃないかという御指摘でございます。おそらくそういうことが行なわれておるということは私どもも聞いておりましたし、いまお話になったことはそのとおりだろうと思います。  しかしながら、これは、一つは、審理そのもののやり方として、そういういわゆる世間でいうマンモス審理でございますが、マンモス審理という世間の言い方がはっきりそのことを言いあらわしておると思うのでございますけれども、そういうような大きな規模で審理の実があがるということは、これは全くの常識から考えても、やり方は非常に困難であるし、非常にむずかしいことだということは、当然予想のつくことでございます。また、同時に、かりにもせよ、熊本県の場合に非常にうまくいったからといって、これが全部の例になることが一体適当であるかどうかということになれば、私どもは、そういうことは保証がないことでございますし、そもそも審理そのものの性質からいいまして、いわゆるそういうマンモス審理ということが適当であるとは少しも考えられないことは、これは何びとも了解できるところだろうと思うのです。  そういう意味で、一熊本県の問題のみならず、ほかのところにも大いに関係することであります以上は、熊本県でいろいろ取りきめをしてかりにうまくいきましたといたしましても、それだからマンモス審理は適当だということは、私はそれは言えない立場だと思うのです。しかも、結果といたしまして、熊本県のマンモス審理の結果は、審理能率が非常にあがったからといえば、これはもう先生御承知のとおりでありまして、どうも私は能率があがっておるとは思えないのでございます。
  131. 川村継義

    川村委員 いまあなたが言ったことで一つ問題がある。  たとえば、五人、十人で審理をするといっても、審理のしかたによっては大混乱しますよ。そういうことはたくさんあるじゃないですか。そこであなたがマンモス審理はいかぬと考えることは——あなたが考えることはけっこうでしょう。しかし、マンモス審理をやることが、一括併合合同審理をやることが、不利益処分を受けた諸君にとっては審理の促進条件をつくるということを考えるのは当然だ。五人、十人と、少なくやったからといってうまくいくかというと、そうじゃない。  そこで、その問題は、いまあなたが言った最後のことばに関係してくる。熊本の場合は非常に混乱したといっているんですけれども、あなた方は実際に見ていない。もちろん私も見ていない。しかし、実際にいろいろ調査している。あなたが言ったジャーナルというのは——この「朝日ジャーナル」の八月六日号に、現地に行っておる「朝日ジャーナル」の永井という記者がこれを書いている。これを読んだからあなたは知っているでしょう。この中を見ても、あなたが心配するようなことは一つもないですね。これは、ずっと読んだら長くなるけれども、このうち拾い読みすると「この間、二千人の先生からはヤジはおろか、せきばらいも聞えない。「ここで荒れては、他の県で一括審理を拒否される口実ができる」という組合側のよみにもとづいた統制は見事にとれている。」と書いている。それからまた飛んで読むと、「ときどき思い余ったように拍手がばらばらとするのだが、そのたびに鈴本人事委員長が「拍手はご遠慮ねがいます」と神経質に注意、“組合大会”らしい空気はまったくない。」永井記者はこう書いている。それからちょっと読んでみると「鈴木氏の言動は上京したさい自治省からひどく強い延期要望をうけたからだろう、と組合や地元の記者は受取っている。いずれにせよ、この日の審理が大衆闘争のようなふんいきにならず、一応はスムーズに進んだことは、視察に来ていた他県の人事委員らも認め、当の熊本県人事委員会でも鈴木氏を除く他の二人が感心するほどだったことは事実だ。」と書いておる。どうです。  それからまだあるのです。というのは、熊本県の文教治安委員会でこの問題についていろいろと発言がなされておる。ところが、自由民主党の議員さんがこういうことを言っている。「純理論は別として、教育長は出席すべきだった。」——実は教育長が全然出ていないから、請求者側の質問に弁護士さんだけが答えておってものにならぬのだ。これはあなたの言ったことばに当てはまらぬのです。ものにならぬというのは、この公開合同審理の速記録を見るとはっきりそれがわかる。弁護士だけが答えておる。処分者側に質問をして処分者側の教育長が答えるべきだけれども出ておらぬ。出ておらぬから、言うならば不明のまま、もたもたして、結局約束してあった時間がきたから審理を終わっているんだ。成績があがったとか、能率があがったとか、あなたは一方的にものを言ってはいけません。  そこで、その議員さんのことばを読むと、これは自民党の議員さんですよ。「純理論は別として、教育長は出席すべきだった。あの空気を肌で感じとり、今後の資料にしてほしかった。みんなが予想し心配したほどでなく、おだやかに平静に進行されたと思う。今後早急に、夏休み中でも審理を開き、はやく解決するよう要望する。」と述べておる。これは、社会党あたりの議員さんの言ったことを言っても、あなたは信用せぬだろうから、私は自民党の議員さんのことばを引用します。  それから椎葉という教育次長も、この寡理が予定どおり進まなかったのは、結局町間が足らなかった。また、請求者側の質問に十分応じられなかった、こういうことを議会で答弁をしておる。そうすると、局長のさっき言ったことは、こういう事実を積み上げてまいると、みな違ってくるんだ。それをあなたが、どうもうまくいかなかったとか、騒いだとか、審理がうまくいかなかったのではないか、おれたちが予想しておったとおりだった、そういう独断的考え方で、独立機関である人事委員会を拘束する、特に干渉するような、技術的助言、援助というものを飛び越えたようなやり方というものは、私は許されないと思う。学校だって、それは先生が出てくれば残った先生か見たでしょう。あるいは何校か休んだでしょう。なぜ一体、そういう大量処分をしたかということになる。不利益処分を受けた者は、何らかの審理を開いてもらいたいと考えるのは当然でしょう。そうなって、もしも授業に不都合を来たしたら、夏休みにでも振りかえ授業をやればいいのであって、そんなことまであなたが心配する必要はない。しかも、この通達を見ると、「教職員が、一斉に教育現場から離脱することは、明らかに正常な教育行政の運営を阻害するものであり、特に、一週間後に夏期休暇をひかえた時期の平日を選んで、審理期日を決定したことは、きわめて不適当な措置である。」あなたはいつ文部省になったのですか、文部大臣からいつあれをもらったんだ、こう私は言っているわけです。あなたは、余分なこんなことを言わぬでもいい。指導したいなら指導したいでまた別途の文章があるわけだ、別途の言い方があるわけだ。しかも、行政局長命令、自治公で出しておる。ちょっと越権ではないか。干渉がましいことではないかと私は指摘したいのだ。実は、時間があればまだいろいろいまの点聞きたいのだけれども、さっき言った、いまの自治公で、あなたの名前で出したのと、次官通達等で出すのは一体——これはこの問題でなくて一般にとう違うのですか。
  132. 長野士郎

    ○長野説明員 いろいろなお話がございましたが、五人十人でも混乱することがあるというお話は、私はそのとおりだと思うのです。したがって、二千人ということになれば、一そうそういう保証がないということもこれは明らかです。そこで、熊本の人事委員会の場合の状況については、いろいろな見方があると思います。「朝日ジャーナル」というものが書いた見方だけでもないということも私ども聞いておりますが、それはともかくといたしまして、ここで私どもが、そういう意味で、公平審理についての併合審理というものの程度がこういう状態であれば、公平審理の実をあげにくいということは、これはもう一般論としていつでも主張できることだと考えております。そこで、そういう審理をいたします場合の審理のしかた、審理の開催時期等につきまして、それが正常な業務の運営になるべく支障を来たさないような配慮を人事委員会として配慮するということは、審理機関としても当然です。人事委員会というものは、公平審理だけ考えればいいということもある程度は立場としてあるかもしれませんが、しかしながら、同時に、運営全体に支障を来たさないようにということを配慮することも当然考えていいわけでございます。この際、この場合、考え得ることではなかったかということを指摘したにすぎないのでございまして、文部省でなければ言えないというようなことではございません。これがほかの関係の業務が行なわれておって、正常な業務が阻害されておれば、やはりそのように申すことはできただろうと思うのでございます。  そこで、この公平審理のしかたの問題につきましては、いろいろ技術的な問題もございますが、私どもが申しましたことは、併合審理というものがそういう大きな規模で行なわれることは、その実をあげにくいということを申したのであります。それから、開催期日については、そういう場合にはことさらに正常な業務の運営というものに支障のないように配慮をするということが必要だということを指摘したのでございます。それを自治公第何号で出したということは、どういうことになるかというお話でございますが、自治省設置法によりまして、地方公務員法の実施なり制度の企画立案なりというものにつきましては行政局が所管をいたしておるわけでございます。したがいまして、行政局といたしましては、その所管の部や課は公務員部であり、その公務員関係の課の、これは二課になると思いますが、公務員部ができまして、公務員第二課でございますが、そういうところの文書整理の手続に従ってこの通知を出したということでございます。ただ、この通達を出します場合には、行政局だけではございませんで、内部的には次官にも了解を得ましたし、大臣にも御連絡を申し上げた上で通達はさしていただいたのでございます。
  133. 川村継義

    川村委員 通達に「公平審理制度本来の趣旨に反する不適当」と書いてある。その本来の趣旨に不適当だということを、人間が多い少ないで解釈されることは問題が残る。公平審理というものは、不利益処分を受けた者を救済するのがその主目的でなければならない。そうなると、人間の多寡によってこういう一方的な解釈をするということは許されないのではないか。いま一つは、夏期休暇を前に云々とあるのだけれども、これは先ほど言ったように、ちゃんと確認書で三者が確認をしておることであるから、これに対してあなたがあとから追っかけてとやかく干渉がましいことを言うのは不適当である。言うならば、もっと別途の表現を自治省としては使わなければいかぬ。しかも、最後にこの「公平審理を再び行なわないよう厳重に注意されたい。」こういう場合の「公平審理」なんということばは、注意して使ってもらいたい。「公平審理を再び行なわないよう厳重に注意されたい。」となると、逆に言うと、不公平審理を行なえということになる。私たちは、熟語として使っておるけれども、受け取る者は、そういうふうに非常に奇異な感じがする。これは余分なことだけれども、そういうようなことであります。  そこで私は、実はまだそれについてもう少し聞きたいのであるけれども、行政局長、処分に対する不服申し立て審査の請求権、これは公務員にはあるわけですね。
  134. 長野士郎

    ○長野説明員 不服の申し立て審査請求権は当然認められておるのでございます。
  135. 川村継義

    川村委員 まことに急いで、また迷惑をかけてすみません。  大臣、せっかくのこの通知だけれども、これは私は、いま具体的に熊本の審理にちなんだ通牒の出し方に幾つかの疑問をもってお尋ねをしたわけです。ところが、この通達が出たおかげで、実はさきの確認書にもあるように、八月中にも一斉合同審査査は終わる、そういう予定になっておった。通達が出たので、ついに八月にも開かれない、九月にも開かれそうにない。人事委員会は非情に苦悩をしておるのですね。この確認書に確認された事項が次から次に破られていかなければならぬことになる。その原因はこの通達にあるのだ。これは実にたいへんなことだと私は思うのですよ。  そこで、この通達を散回できませんかね。私は、やはり出すなら、もう少し別途に考えて、人事委員会の審理が公平適正に促進されるように技術的な処理をすべきであって、こういう干渉がましし、しかも審理をストップさせるような結果をもたらす通達は、まことにけしからぬと思う。これは処分者にとっても迷惑だし、人事委員会にとっても大迷惑ですよ。これは大臣にぜひ決意を聞きたい。  それから、委員長にお願いがあるのですけれども、おそらくきょう私が二、三聞いただけでは、熊本県の人事委員長、あるいは請求者側等の意見も聞いてみなければ、私と行政局長の意見がちょっと平行線をたどっておるようです。できましたらひとつ委員会で御配慮いただいて、熊本県の人事委員長鈴木さん、それから請求者代表を委員会に呼んで、ひとつ調べて審議を進めるようにしていただきたい。ということは、これはただ今度の審理だけの問題でなくて、これは自治省の行政局が地方行政を担当する一つの責任者である、指導し、あるいは助言をする権限があるからといって、ことごとに行き過ぎておったら困る、こう思うからであります。地方行政の基本的な問題にかかわるものがあると私は見ておるからであります。だから、いまの、私がお願いしたことについての御決意をお聞きしたい。
  136. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 元来、公平審理の、ことに旦頭審理というものは、その審理される人が本人であるかどうか、そうして、その本人が懲戒を受けたような事実をやったかどうか、こういうものを個別的に審理をするものでございます。したがいまして、公平審理につきましては、その人数等にはおのずからなる合理的な限界がある。その合理的限界を越えておると認めたために、行政局長が人事委員会委員長にこうした助言をしたのでございます。それ自体何ら地方自治を侵害したり、あるいは人事委員会の中立性を阻害したりするものではないと考えておりますので、この通牒を取り消すという考え方はございません。
  137. 川村継義

    川村委員 藤枝自治大臣が初めからこれを知っておられたなら、おそらく注意をされたと思うんだけどなあ……。あとから文書に判だけ打ったんかもしれぬけれども、藤枝さんらしくない通牒だ。  それでは最後に——実はまだお尋ねすることがあるのですけれども、ひとつ次に譲らしていただくことにして……。  今度自治省の中には行政局に公務員部というのができた。これはさきの国会で自治省設置法の改正によってできた。あの自治省設置法ができるときには、自治省側は、労使の関係に干渉するもの、じゃないとか、いろいろなりっぱなことを言っておる。ところが、どうも公務員部というものの役割りが、公務員の立場に立って人事行政等を円滑に、しかも適正にということを考えるのでなくて、このような事実を見てくると、公務員を弾圧しよう、押えつけていこう、そういうような動きを示しておるんじゃないか、こう思われてならない。大臣、これは非常に警戒を要する問題だと思う。長野さんや鎌田さんがおられて、まさかとは思うんだけれども、実は非常に憂慮をしておる問題であります。婆は、前に選挙局に対して当選無効の訴えがなされたときに、非常に問題になった。そこで、県選管に対して再審査をするように何か自治省考えてもらうわけにはいかないかという相談をしたことがある。しかし、選挙局は、こういう票が無効票であるとか、あるいは法律解釈はこうなるとかいうことをお尋ねになればお答えいたします。しかし、選管に向かって再審査をやれとか、そういうことはできませんと答えられた。私はりっぱだと思う。私は、それだと思うのです。行政局の今日の出方は、そういう意味からするとやはりさっきの通達のあれにあるように、少し背伸びをしておるんではないか、こう考えられます。大体公務員の問題等を、ただ弾圧するということによって、大量に処分されたということは初めてだから、大臣のことばにもありましたけれども、一人二人呼んで調べるなどという、いままでのやり方では間に合わないわけでしょう。おそらくこう旧いうことは初めて出てきたんじゃないかと思う。そういうことから考えると、先ほどおっしゃったような考え方は、もう一ぺん改めてもらわなければ、不利益を受けた諸君は救済できないんじゃないか、救われないのじゃないか、こういわざるを得ないのであります。自治省はまた自治公第三八号、七月三十一日に、都道府県、六大市、仙台市人事委員会委員長殿として、「不利益処分についての不服申立に関する規則(案)について」という通達を出した。この通達を見てみると、たいへんこれは問題が多い。これまたいつかひとつお互いに検討しましょう。内容を見ると、とにかく審査請求をする者に都合が悪いように人事委員会規則を改正せよと出しておる。私は、きょうはその内容を聞きませんよ、、だから、先ほど言ったように、行政局の今日の態度は、少し背伸びをし過ぎておるのじゃないか。公務員部ができたからといって、そんなに一挙に強くならぬでもいいじゃないか。自治の本旨、地方行政の本旨、これをやはり専門家のあなたたちは常に考えてやってくれなければ困る、こういうことであります。  先ほど大臣は、この通達を取り消す必要はないということでありまして、これをいまさら取り消せといってもなかなかたいへんでしょうから、これはあらためて、私は、熊本県の人事委員会に向かっては一審理促進をするような助言があってしかるべきじゃないか。さっきも言ったように、あなたたちの通達によって八月に行なわれたならば、もう一括、審理は終わったかもしれません。大体そうなっておるのだ、確認書では。それがついに八月にできなくて、九月もできないような状態に追い込まれておる。どういうことですか。これは請求者側にとって、まことに忍びない問題がある。これは大臣、何らかの方法を講じてもらわなければ困る。いかがですか。
  138. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 自治省が、こういう大量併合審理は不適当であると言いましたのは、先ほど申し上げたようなことでございまして、そういう審理のしかたでは、本来のその本人であるかどうか、その本人が懲戒処分を受けるような行動をしたかどうか、そういうことの審査には一向入れないわけですから、幾ら大量の併合審理をやっても、むしろ不利益処分を受けた人、審査請求者が至急にどっちかに解決できるということをおくらしておるようなもので、むしろ地方公務員の権利を擁護しておるのは、自治省の見解であると私は考えます。熊本の審理につきましては、そういう見解に立って、人事委員会が公平審理を急いでいただくことは必要だと考えております。
  139. 川村継義

    川村委員 じゃ、これで終わりますが、どうも時間をとりまして、非常にまだ釈然としないものがありますが、先ほど私がお願いしました人事委員長を参考人として呼ぶ等の件については、ぜひ委員会で御相談をいただきますようにお頼みいたしまして、これで終わります。
  140. 久保田円次

    久保田(円)委員長代理 理事会で協議をいたします。  中谷君。
  141. 中谷鉄也

    中谷委員 じゃ、さっそく川村委員の質問に引き続きまして、私のほうからお尋ねをしていきたいと思います。  先ほど大臣は、自治省考え方、あるいは審理の方式などによれば、審理は促進ができるのだというふうなお話がありました。そうすると、一体熊本の場合、二千人以上の人が申し立てをしておる。これは先ほど政府委員のほうの御答弁の中に、法律の期待しない審理の方式をとってもらっては困るのだということがあったけれども、端的に申して、私は、こういう大量処分というものは、法律予想しない、人事委員会の現在の機能と制度では予想できなかったような事態だと思う。しかし、そういう事態の中で、私は、法律実務家として、一括審理方式でなければ、私は審理の促進というものは絶対にあり得ないと思う。あとで一々論証してもけっこうですけれども……。おそい裁判というのは裁判じゃないということばがあります。値打ちがないんだ。とにかくおそく判定の結果が出たというようなものは審理じゃないんだ。熊本のほうの人の話によると、とにかく自治省考えているようなやり方でやると十六年かかると言っていますね。そうすると、私は大臣にお答えをいただきたいと思うけれども、自治省考えているような方式ということで、一体何年で全部の審理が終わって、それが審理促進につながるのだというふうな一つの具体的な案とお考えの上で先ほどの御発言があったのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  142. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 要するに、千人、二千人というような大量の合同審査では、その本人が本人であるか、あるいはその本人がはたして懲戒に値するような行為をしたと自分で考えるか考えないか、そういうことが判定できない。それがなければ判決を下すわけにいかないのです。そういう意味において、合同審理の人数というものはある限界があるというふうに考えておるわけです。
  143. 中谷鉄也

    中谷委員 自治省は、人事委員会の審理に関して、いわゆる不服申し立てに関する準則を一応おつくりになっておられますね。この準則などというものは、私は本日民事訴訟法を持ってまいりましたけれども、それと比べてみても、端的に申しましてきわめて簡単なもの、別なことばで言えば粗雑なものなんです。だから、逆に言いますと、人定尋問などということも、やり方によってはいろいろなやり方があると思うのです。人定尋問というようなことも、だれが来たのかということを確認する方法などというのは、別に一々名前を読み上げて起立をさせるという以外のやり方だってあると思うのです。人定尋問というようなことにだけこだわる。そして、とにかく一括審理であれば人定尋問だけでたいへんだなんていう、いわゆる審理の実務というか——私はあえて申し上げます。私自身が人事委員会で審理に何べんも出て苦労しているから、そういうふうな審理の実務と離れたところでそういうことをおっしゃっていただいては困ると私は思う。人定尋問の問題についても、それほどむずかしい問題じゃないと思う。政府委員いかがですか。
  144. 鎌田要人

    ○鎌田説明員 人定尋問の点につきましては、現に熊本の人事委員会の公平審理においては省略をいたしております。これは私はやはり技術的にできなかったのだろうと思います。(「代理人だけやっている」と呼ぶ者あり)代理人についてやっているだけであります。請求人自身についてはやっておらない。それから、二千人という一括審理をやって、それでは審理が促進されるという保証はどこにあるのか。それで件数が少なくなるのか。二千件が一件になるのか。ならないわけであります。やはり先ほど大臣も申されましたように、一〇.二一の統一行動に参加をしたのかどうか、こういうことをやはり各人に当たるわけであります。現に熊本県でも、先ほど川村委員お述べになりましたように、否認をする者については何か別個に扱うとか、そういうことをやっておられる。これは当然個別的に審理をするということが前提になっておる。こういうふうに私ども考えるわけであります。
  145. 中谷鉄也

    中谷委員 やはり審理の実情といいますか、審理のやり方についておなれになっていないと思うんです。御存じないと思う、失礼だけれども。各別に各論的に個別的に審理というものはなければならないとおっしゃった。そのとおりなんだ。しかし、そういうふうな発言といいますか説明は、同時に、その前提としての共通のものがあるかどうか、総論的なものがあるのかどうか、全体的なものがあるかどうか、各人共通なものがあるかどうかという問題とこれは相関連してくると思う。そういたしますと、極端なことを言えば、一括審理をやらないで、個々別々にやるんだといいますと、一人一人について証人を調べなければならないという問題だって出てまいりますよ。何人も証人に対して尋問する機会を奪われないのだということは、これは人事委員会の規則にも書いてある。かりに教育長を証人に呼んだ場合、常識で考えてもかっこうの悪い話でしょう。熊本県の教育長が二千回証人に出たということ、生きているか死んでいるかわかりませんよ。というふうなことを考えてみましても、個別的な各人的なそのような審理の段階になれば、そのような審理も私はあってもいいと思う。しかし、個別的だとか各論的だということが言われるのは、当然その前提として、総論的な全体的な二千人に共通する問題がかりにあれば、それをやることが一括審理の長所なんです。それが併合審理の長所なんです。民事訴訟法にもそう書いてある。要するに、併合してやったら訴訟が促進できるという場合には、裁判所は併合しなさいと書いてある。この点いかがですか。
  146. 鎌田要人

    ○鎌田説明員 御案内のとおり、審理の併合をやるということは、やはり審理経済という面からの要請があることは当然であります。そういった意味合いにおきまして、私何も一日に一回一人ずつやる、こういうことを言っているわけじゃないのであります。二千人という、こういう大集団というものについてものを申し上げておるわけであります。そこにはおのずから、あるいは五、六十人ずつグループを分けてやる、こういうやり方もあるじゃないか、そのほうが審理も徹底して行なわれるし、個人の権利の救済にもそのほうが適切じゃないか、こういうことを申しておるわけであります。
  147. 中谷鉄也

    中谷委員 かりに、じゃ、五十人としましても、二千人を五十で割ったら四十回、同じ証人が四十回出るなんということは考えられないことです。それではまさに証人の人権を奪うことですよ。そういうことを考えてみましても、ことにいわゆる証人調べの前提になるような、法律的な論争をするというふうな場は、これは私は訴訟促進の立場から、一括審理というやり方でなければならないと思う。これは、こういうふうな二千人もの申し立てということは、私、地方自治法をお書きになった長野さんなどにしても、こういう状態予想しなかったと思う。こういうときの審理のやり方として、どれが合理的なのか、ただ単に審理廷の静粛だとか——これは熊本は非常に静粛に行なわれましたけれども、審理廷の平穏だとかということでなしに、いかにして一日も早く処分された人の処分についての判定を出すかという点に、やはり私は焦点がしぼられなければならないと思う。検討していただきたいと思う。私は法律実務家として、一括審理の方式でなければならないと思いますが、ひとつもう一度、皆さんよく検討された上で、この点についてあらためて質疑をいたしたいと思います。きょうは時間がないようだから……。  ただ、大臣に一点だけ、きわめて素朴なことをお尋ねいたします。  実は、先ほど川村委員が何べんも御引用になりましたこの通達の中に、「公平審理制度本来の趣旨」ということばが出てくるのです。大臣の御答弁として、「公平審理制度本来の趣旨」とは何か、これをひとつお答えいただきたいと思います。
  148. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 地方公務員個人の権利が常に守られつつ、しかも人事管理が適切にということが公平審理制度の趣旨だと考えます。
  149. 中谷鉄也

    中谷委員 お答えがあったような、なかったような、感じが私いたしますが、突然こういう質問というのは、非常にお答えにくいのだと思うのです。  政府委員の長野さんにお答えをいただきたいと思います。これは一括審理と関係をしますからね。要するに、地方公務員法あるいはまた地方自治法に記載されている人事委員会制度、この人事委員会制度というものの憲法上の根拠は一体何条でございますか。ちょっと突然ですが、これは本来の趣旨という点に関係があるんですよ。
  150. 長野士郎

    ○長野説明員 確かに突然の御質問で少しむずかしい話になりましたが、あるいは誤るかもしれませんが、まあ地方自治制度全般ということで考えますと、これは憲法の第八章、地方自治の章に基づいてこういう制度がつくられている、こう言っていいのじゃないかと思います。
  151. 中谷鉄也

    中谷委員 答えが違うのです。そうじゃないと思うのです。少なくとも私は、そういうお答えはお答えとして間違ってはない。しかし、一括審理なのか、それとも自治省の言っておられるようなやり方がいいのかという観点からの憲法上の根拠は一体何ですかということになってまいりますと、憲法の三十二条なんです。要するに、何人も裁判を受ける権利を奪われないのだということなんです。重ねて申し上げまするけれども、これが根拠法令なんです。要するに、私が申し上げたいのは訴願前置主義になっておりますね。したがって、要するに十六年もかかったということは、裁判を受ける権利を奪われることになるのだ。私が先ほどから何べんも申し上げているように、すみやかな裁判でなければ人権の保障はあり得ないのだということを私は申し上げている。このことを私は重ねて強調したいと思うのです。  そこで、その次に私お尋ねをしたいと思いますけれども、この通達について、次のような点について私非常な疑問と不満を持つわけなんです。ひとつ長野さん、お聞きいただきたいと思いますが、私も人事委員会の審理に何回か代理人として出廷をいたしました。人事委員会委員というのは、必ずしも法律専門家ではないわけなんです。ただ、しかし代理人として、少なくとも行政委員会としての人事委員会は、同時に準司法機関的なお仕事をしておられるのだという、そういう一つの敬意を払う気持ちというものを常に失わない立場で、われわれは人事委員会というものの審理に立ち会ってきた。当然そうでなければいけないと思います。そこで具体的な現に係属している事件について、たとえば東京地方裁判所の刑事一部、その事件の訴訟手続のやり方について最高裁判所のほうから、おまえのところでやっている訴訟手続のやり方はおかしいんだというふうな、具体的なその事件についての指示などということがあったら、これはたいへんなことです。これはもう完全に司法権の侵害で、全裁判官の総反撃を受けます。これはおわかりいただけると思うのです。一般的に審理というのはこういうふうにしようじゃないかというふうな会合をしたり、打ち合わせをしたり、研究会をしたりというようなことはありますよ。現に係属しているその事件の手続というのは、同時に判定に結びついていくわけですね。あらゆる手続というのは、結局どんな判定を出すかというための努力でしかないわけです。そのことについて具体的な指示を出すというようなことになると、これはたいへんなことになる。そうすると、地方自治法の、先ほどのお話では、要するに地方公務員法の根拠法令があるんだ、技術的助言をしたんだとおっしゃる。しかし、少なくともそのような技術的助言などというものは、人事委員会が現に係属している具体的事件、しかも事実上おやりになったところのそのような審理の方式について、そのような助言という名で通達をお出しになるということは、少なくとも行政委員会であるけれども、準司法機関的な役割りも果たしているところの人事委員会というものの権威を非常に低下せしめる。自治省のそのような通達自体が、人事委員会の権威を落としめた。われわれ人事委員会というものに対して、常にそういう敬意を払って、人事委員会の審理に臨もうとしている者にとって、非常に心外な通達であった。先ほど川村委員は撤回を求められたけれども、中立性を侵したことにはならないと思うとか、いわゆる自治省の人事委員会に対する圧力でないとおっしゃるけれども、少なくとも準司法機関的な役割りも果たしているんだという立場からいいますと、具体的事件についての通達ということは、私はどう考えてみても不適切だと思う。納得ができない。この点について、ここまで私が申し上げても、あたりまえなんだ、技術的助言として当然なんだとおっしゃるかどうか、いかがでしょうか。
  152. 長野士郎

    ○長野説明員 どうもおことばを返すようなことになって恐縮なんでございますが、先ほど先生御指摘になりましたような、何人も裁判を受ける権利を奪われるものではない、それはまさしくそのとおりでございます。そういう意味では、行政不服審査というか、そういうものに関係することにこれはどうせなるわけでございます。どうせなると言っては悪い言い方になりますが、審査請求でございますから、行政事件訴訟法の適用が当然あるわけでございます。したがいまして、審理機関がもたもたしておると、十何年かかって、裁判の権利を奪われるということになるかならないかということになれば、それがいいということで申し上げるのじゃございませんけれども、行政事件訴訟法では、審査請求があって三カ月たってもなお意思表示をしない場合には、当然にそのまま、訴願前置主義であるといいましても、訴訟することができるようになっておりますから、その審理機関がいつまでも時間をかけて審理をすればよろしいんだというようなことで、請求者の権利が侵されてしまうということには、現在の法制はなっていないというふうに私は考えられると思います。  しかし、そのもたもたしたことによって判定がし得ないという状況がいいということを申し上げておるわけではございません。私どもは、いわゆる一括併合審理ということが、審理の促進になるのかならないのかということを、現在の段階でわれわれとしていろいろな情報から考えまして検討した場合に、それは必ずしもそういう保証があることじゃないというふうに考えたわけでございます。これはそういう意見も相当多数の支持が得られるのじゃないかと思います。と申しますのは、なぜそういうことについてそれじゃ技術的な助言をしたか、その審理途中の審理手続について助言をするということは重大じゃないか、それはそのとおりでございます。お説のとおりだと思います。ただ、そういうことをいたしましたのは、これは熊本県だけの問題ではございません。先ほども申し上げましたように、ほかの府県もその問題をかかえて差し迫っておるわけでございます。したがいまして、そういうことからたしか二十一の府県が全体で申し合わせをいたしておりまして、そして、そういう大量一括審理ということはぜひやめなければいけないということで、強い考え方をきめまして、自治省に対して申し入れをいたしてまいりました。その一番の問題になりますものが、熊本県のいわゆる併合審理の問題であったわけでございます。そういう意味から両方あわせて考えまして、確かにそういう時期にそういう助言をするということについての問題というものはありますけれども、それをあえていたしましたのは、一熊本県の場合だけでなく、ほかの例にもなるという意味でさようにせざるを得ない、今後のこともある、こういうふうに考えたわけでございます。そうしてまた、準司法的な機関とおっしゃいますが、もちろんそのとおりでございますけれども、それはやはりそういう意味での準司法的な機関であります。行政的にこれの扱いというものを全体として考えていく、相関連しておる以上は考えざるを得ない、こういうふうに考えたわけでございます。
  153. 中谷鉄也

    中谷委員 時間がないようですので、じゃ、あと一点だけにいたします。  そういうふうな通達とかお考えが正しくないという前提で私申し上げているんだけれども、やり方としては、何もわざわざ、先ほどから何べんも私申し上げているように、現に具体的な事件が係属し、そのような審理の方法をおやりになった熊本県の人事委員会あてにそのような通達を出すんじゃなしに、研究会だとか、会同とか、そういう中でおやりになってもよかったんじゃないか。そういうふうなやり方が、準司法的な機能を果たしている行政委員会である人事委員会にとっては、私はどう考えてみたって、一つの圧力、非常にいやなことばで言えば、どうかつとしか私は受け取れない。しかも、そういう委員会に出廷をして、人事委員会というものの権威を高めようと努力しているわれわれに対しても、非常なとにかくいやな感じを与える。いやな感じというのは、人事委員会というものを権威あらしめようとしているわれわれに対して、自治省がそれをどろぐつで踏みつけたというふうな感じがするという気持ちを、あえて私は告白せざるを得ない。この点については、ひとつ十分——先ほど撤回をされないと言われたけれども、おやりになったことは、私非常に遺憾だと思う。この点を申し上げておきます。  そこで、先ほどから一括審理というふうなことについて、いわゆる訴訟の促進、審理促進の保証が必ずしもないのだということだけれども、これは一括審理をやらなければ絶対にだめだ。これは全く、そういう私自身の経験と、それから私は、各論というものがあれば総則というものもあるのだという前提で申し上げるのだけれども、地方公務員法の五十条によると、「直ちにその事案を審査しなければならない。」と、こうなっておりますね。そういたしますると、北海道から鹿児島まで全部で二十二の都道府県で現在この申し立てが行なわれておる。何か、よく調べてみますと、申し立てがあって、その受理という手続がされるまでにかなりの日数を要しているようです。それからさらに、その受理から審理を、実際第一回の期日の指定があるまでにもかなりの日数を要しているようだ。一体熊本なんというのは、私は非常に早く審理をしたところだと思うのです。そこに対してこういうふうな、端的に言って不服がましい通達をお出しになったけれども、現に審理の進んでいないところに対しては、どういうふうな技術的助言をしておられますか。一体現在審理が始まり、また現在審理の期日等がきまっていない府県は何県か、そのことについてはどういう措置をおとりになるか。少なくとも、いつまでに審理を開け——私は少なくとも九月中には開かなければいかぬと思うが、この点についての技術的な助言はされたかどうか。いかがでしょう。
  154. 鎌田要人

    ○鎌田説明員 現在すでに第一回の審理を行なっておりますところは、御存じのとおり、静岡県、それから埼玉県、それから問題の熊本県、それから北海道、大阪、それから市におきまして八王子市、こういうところが審理をいたしておるわけであります。この提出から受理までの間の日時は、これは書類、書式の整備で時間をとっておるようでございます。それから、すでに現在開きました県での実情におきましては、結局、県教組、県高教というものが人事委員長に対しまして、一括併合審理をやってほしい。これの交渉——私ども交渉ということばは適切でない、陳情だと思っておりますが、そういうことで非常に時間をとっておる、こういうことでございます。それからそのほかの県にいたしましても、審理に早く取りかかるようにという内面指導はいたしております。
  155. 中谷鉄也

    中谷委員 要するに、自治省がたとえば七月二十九日のこういう、はっきり申し上げて不適切な通達をお出しになるというふうな中で、人事委員会のいわゆる自主性というか、各地の実情に従って、じゃ自分のところは併合審理でやろう、一括審理でやろう、そういうふうな自主性というものが阻害されているわけなんですよ。だから、訴訟の促進、審理の促進ということをあなた方おっしゃりながら、このような通達を次から次とお出しになるものだから、結局訴訟を遅延させているのは自治省なんだ。だから請求者のいわゆる良識と、そうしてほんとうに各都道府県の人事委員会の人事委員会としての機能をまじめに発揮しようという自主性にひとつまかす、こういう姿勢をとっていただかなければ、ますます審理の期日などがおくれて、請求者は浮かばれない。審理が十年も十五年もかかるなどというようなことは、事実上審理がないにひとしい、裁判を受けられないにひとしいということを私は申し上げる。  時間がないようですからこの程度にしておきますけれども、これはひとつ十分に、かたい考え方でなしに、がんこじゃなしに、長野さんだって、いわゆるこの程度、二千人の申し立てなんということについては、法律をおつくりになるときに予想もしなかっただろうし、どのような審理のやり方が、はたして審理促進といわゆる合理的な手続にふさわしいのかというようなことについては、私はそれほど専門家じゃないと思う。だから、その点については、ひとつ柔軟に考えてやる、しかも各地の人事委員会の実情、自主性にまかしてやるという姿勢だけはとっていただきたいということを要望して、非常に残念だけれども、きょうこの程度で質問を終わっておきます。
  156. 久保田円次

    久保田(円)委員長代理 門司亮君。
  157. 門司亮

    門司委員 いま自治省の通達が問題になっておりますが、これに関連して最近の状態を見てみますと、行政関与の面——いわゆる国か地方に関与する三つの方法、行政関与の問題、司法関与であるとか、あるいはその他の立法的の関与の問題であるとかいうような幾つかの関与の方法がある。その中で、いま行なわれている行政関与の方法というのは、私は最近非常に行き過ぎが各省庁にあるように思う。そして私は、この問題には触れないが、いまのような問題が起こる一つの原因になっておる各省庁の地方の自治体に対する通達、通牒というようなものの統制は、一体どこでとっておりますか。これは任意にまかされておりますか。次官通牒はあるいは次官会議できめて出しておられるのか、あるいは局長の通牒はどうなのか、あるいは課長の通牒はどうなのか、課長補佐の通牒はどうなのか、一職員の通牒はどうなのか、これはどこで統制されておりますか。
  158. 長野士郎

    ○長野説明員 次官通牒を次官会議で統制するということはございません。各省所管の行政につきまして、各省がその行政を実施するために必要だという場合には、その内容の軽重度と申しますか、度合いに応じまして、次官の使命通達を出す、あるいはその所管をしておりますところの局の局長の名前で出す、こういうことになるわけだと思います。そうして行政官庁としての意思を相手方に明示いたします意味でのいわゆる通達ということになりますと、おおむね次官通達なり、局長通達でございまして、そういう場合には、それぞれ各省の文書処理規定にもよって多少の差異があろうかと思いますが、問題によりまして、局長通達につきましても、事務的には内部的にそれぞれ局だけでなくて、相当上のほうのところまで決裁を経るとか、これはまあやり方は、それぞれ各省によって一がいには申せないかと思いますが、おおむねそういう意味で次官通達、局長通達というようなのが当該官庁の意思を表明しておるものだというふうに考えられます。
  159. 門司亮

    門司委員 私のごく最近調査した資料では——必ずしもこの資料は私は新しい資料ではないと思いますが、たしか昭和四十年の資料ですが、各省から東京都庁に出した通達の総数は大体九千六十九件、総務課が受けた数だけが三千四百三十七件。こうなってくると、一体一日どのくらい各省庁からの通達が地方の自治体に来ておるかということですね。これはどこかで整理しないと、まるでめちゃくちゃなことをやっていますね。そうして、これをさらに細分して調べてごらんなさい。地方の自治体の事業であるものについて国が関係し得るものとして書いてあるものは、私の調べたものだけでも三十くらいありますね。許可するもの、認可するもの、示達するもの、検査するもの、あっせんするもの、調停するもの、命令更正、承認、決定、裁定、指示、質問、検査、処理要求、応援命令、実施命令、特定事項命令、取り消し、承認再審査、是正命令、審査調停命令、徴取、施設の臨検、意見の開陳、報告聴取、代行立ち入り検査、指示、改善命令、禁止、裁定、処置命令、調査、こういうものが、国の権限としてやられるように法律として各省庁できているのですね。したがって、ここから出ていくものは、全く不統一であって、全く不見識きわまるものである。たとえば、それが局長の出されるものはある程度自治省でもいいかもしれない。課長の出すものも、ある程度課長にまかされた権限の範囲であるかもしれない。しかし、一係官の出したものがあるでしょう。こういうものがなければ、九千なり一万という数字に私はならぬと思うのです。こういうことですね。まるで最近の状態は、これは官僚と言えば並んだ諸君はおこるかもしれないが、官僚の独占舞台である。地方の自治体のあらゆる行政に対して、何でも通達、通牒ができる。そうして、その指揮命令によってその仕事をしていこうというものの考え方。ことに人事委員会などは、昭和三十年のあの教育二法案の改正のときの国会における乱闘事件等を考えてみると、従来完全に独立しておった団体が、地方教育委員会というものが国の統制下に置かれた、そうして教育の自主性というものは全く失われたというところに、私は大きな原因があると思う。しかし、これをさかのぼっていまから言ったところで、法律がそう改正されておる。こういうことを考えてまいりますと、この関与のしかたについても、最近の行政関与、いわゆる司法関与というよりも行政関与というものが非常にふえてきておる。そうして、これが先ほどから質問されておるような司法権に対するある意味における越権行為だということが考えられてきておる。これは最近における最も悪い自治行政の傾向だと私は考えておる。これに対しても自治大臣はどういうふうにお考えになりますか。こういう状態でよろしいかどうかということですね。私はこれらの問題もそのあらわれだと思う。何回も通達を出す。そうして、さっきお話しのように、新事態に対しては地元では私はまごつくと思うのです。こういう通達が来たから、これによってやろうと考えていると、またあとから違った通達が来る。まるで地方の自治体というのは、国の出先機関というよりも、あやつり人形みたいな姿になって、全く憲法で保障された自治の本旨なんというものは、政府自身がこわしているように考えているが、その点は大臣どうお考えになりますかね。これを整理されるお考えがありますか。これはいずれ行政管理庁に私はよくこの点は聞かなければならないと考えておるが、大臣はこれはどうですか。
  160. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 例の自治法百五十条の機関委任について、政府がいろいろ委任した事務についての執行の方法等について指揮監督する、そういう問題もございましょうし、あるいは補助金を出しておるその補助金の出し方、あるいは請求のしかた、その決定というようなものもございますし、あるいは法律に基づいていろいろ各省に申請をし、またその許認可を受けるというような問題もございますから、一がいにそういうものがあるからといって非難するわけにもいかぬと思いますが、いま門司さんが言われるように、それが非常に何を朝令暮改であったり、それから非常にこまかなことまでいろいろ言うということは、好ましいことではございません。私ども地方自治をおあずかりする者といたしましては、できるだけ地方の自主性にまかしてもらいたいのでございますから、そういう点につきましては、今後行政管理庁とも十分連絡の上、その実態に即してできるだけそうしたものが簡素化されますようにつとめてまいりたいと思います。
  161. 門司亮

    門司委員 きょうはこれでいいです。あとはまたあとで聞きます。  それから、いま申し上げたものの資料要求をここに書いて持ってきておりますので、資料ができたら急遽次回に出していただきたいと思います。  一つは、自治法に書いてあります——必ずしも自治法に書いてあることだけではなさそうでありますから聞いておきたいことは、国からの機関委任事務の種類、各省庁別に分類したものがあったらこれをひとつ出してもらいたい。これが大体通達その他を出す一つの大きな原因になっているが、どれくらいあるのか。これは自治法に大体書いてあります。多少変わった面もあるかと思いますから、もう一回出してもらいたい。  それから、いま申し上げました私の調べた範囲以外にたくさんあろうと思いますが、本来地方自治体の事業であるものであって、国の許認可を必要とするような事業が一体どのくらいあるのか。本来が国の仕事でない前回申し上げた委任事務でないほかの仕事で許可認可を必要とするものがどのくらいあるか。これは条例、勧告に非常に大きな関係のある一つのポイントであります。  次に、ここで出しておきますが、いま申し上げました私の手元にあるのは東京都の実例を調ベただけでありますが、大体これが、報告を受けた末に書いてあるものを見ますと、東京都で一応調べたのが大体一万件をこえるであろうということでありますので、実態調査がもしおわかりならばこれを次の機会までに出してもらいたい。そして、それをさらに分類してもらいたい。次官通牒であるのか、あるいは局長通牒であるのか、課長通牒であるのか、課長補佐通牒であるのか、係長通牒であるのか、もう一つ下の係官の通牒というものが出ているはずでありますから、そういう段階についておわかりになるならばひとつ出してもらいたい。これがわかりませんと、またこういう通牒がばらばらに出ますから、これはもう実際において乱発ですよ。ですから、そういうものをぜひひとつ出してもらいたいと思います。
  162. 久保田円次

    久保田(円)委員長代理 依田圭五君。
  163. 依田圭五

    依田委員 文部大臣がおいでになるそうでありますから、それまでの時間、たいへんおそくなりましたので、私のほうも疲れておりますし簡単に御質問申し上げたいと思います。  藤枝大臣にお伺いしたいのですが、今度の朝鮮大学校の問題でありますが、これは所管は文部省と東京都の間の案件でありますけれども、非常にマスコミの上で大きな関心を呼んでいるわけであります。これに対して地方行政、地方自治を守り、できるだけ地方団体に対して理解のある立場から、憲法に保障されました地方自治の本旨にのっとりましてこれを援護していく、そういう役目を本来持っておる自治大臣のお立場から、一体今度の問題についてどういうふうにお考えになっておるか。単に東京都、一地方団体と文部大臣の間における問題であって、権限その他の関係から、所管から、自治省のあずかり知らないところである、こういうようにお考えになっておるのかどうか。それとも重大な関心を払ってこられたかどうか。払ってこられたとするならば、一体いかなる措置を現在まで——朝鮮人大学校が申請をされましてから一年半たっております。きょうの三時に、いまただいまの時間でありますが、おそらく私学審議会に東京都知事はこれを諮問すると思いますが、こういうような時点になって、非常に大きな反響を呼んでおる問題であります。これに対して包括的な自治大臣の従来おとりになりました措置の内容について、あればここでお聞かせを願いたいと思います。
  164. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 これは申し上げるまでもなく、自治法百五十条によりまして、機関委任した事務についてはその主管大臣が指揮監督権を持っておるわけでございます。したがいまして、その指揮監督権に基づいて、主管大臣が知事に対して種々、その範囲におきまして話をいたされたりすることは、これは法律上許されたことだと思います。ただ、私どもから考えますと、そういう指揮監督には服しまするけれども、たとえば、その機関委任をされた事務を具体的な場合に取り上げてしまうような、そういう監督は好ましくないというふうに考えておりますし、また、そういうことはおやりにならぬと思うわけでございます。特に今回の朝鮮大学校の認可の問題に関連いたしまして、いろいろ文部大臣の発言は伺っておりまするけれども、現在のところ、それ以上に進行もいたしておりませんし、私どもと申しますか、自治省として出る場面ではないと考えております。
  165. 依田圭五

    依田委員 好ましくない、またやらぬであろうというようなお話がございましたが、現にこれは新聞紙上、今回の剱木文部大臣の行政措置の発動というものは、地方自治法の百五十条にのっとって、その監督、指揮権からやっておるんだということを言っておるわけです。これはもう藤枝自治大臣も新聞をお読みにならぬわけはないんで、あなたは好ましくない、あるいはやらぬであろうというようなことを言われるが、それを根拠にやっておるんです。しかも新聞記者会見をいたしまして、文部大臣はしばしばそういうことを——私、ここに資料がありますが、各大新聞に対しても、新聞記者会見ではっきり言っておられるんです。こういうようなことでは話にならないと私は思いますが、まず第一に、機関委任とおっしゃいますけれども、この機関委任というやつは、これはやりっぱなしであって、地方団体の長の判断におまかせをする。民法上の代理や、あるいは民法上の委任とは違うわけであります。これははっきり違う。ですから、今回百五十条の発動ということは、それ自体疑問があるんです。ですから、東京都知事は、きのうですか、土曜日の協議をいたしたいということについての通達を——常に簡単な通達なんです。一行しかないんですね。この通達をいただいて、そしてこれが一体どういう権限で文部大臣が発動をしたのか、その根拠がわからない。協議に行く行かない前に、その権限の根拠がわからぬと言っておるのです。ですから、百五十条の発動が正しいならば、ここではっきりひとつその見解を申していただきたいのが一点。  それから、東大の田中二郎さんあたりもはっきり言っております。委任の内容というものは、包括的な委任であるから、事前の段階において機関委任した事項について、個々の問題を、朝鮮学校の問題であるとかいう問題をこういうように一々言うというのは、これは越権行為である。結論が出てからならともかく、その事前においてこういうことを言うということは越権行為である、こういうことを言っておりますね。これはもう行政法の大家が言っておるのです。その辺について大臣の御答弁を願います。
  166. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 ただいま申しましたように、機関委任をされました問題につきましての取り扱いについて、主管大臣が指揮監督をすることは、これは百五十条で認められておるわけでございます。ただ、それがどういう形でやるか、また、どういうことが適当であるか、これは個々の場合に判断をしなければならぬと思うわけでございまして、文部大臣の御発言等も私は伺っておりますが、この許された範囲を逸脱されるようなことは、おそらく私はないものと考えております。
  167. 依田圭五

    依田委員 文部大臣がおいでになりましたが、自治省の所管に関する重要な問題ですから、あえて自治大臣にお聞きしますが、大体地方団体の長あるいは教育委員会と中央政府との関係を規律する法律には地方教育行政の組織及び運営に関する法律があるわけなんです。この五十二条にはっきり、主管大臣が好ましくないと思われるようなことがあるならば、それについて行政措置、是正措置ができるということがうたってあります。これは特別法であります。これを発動しないで、あえて一般法である自治法百五十条を発動されました理由について、自治大臣、御存じでしたらお考えを願いたい。
  168. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 この百五十条を現実に発動されたかどうかということになりますと、いろいろ議論があろうと思います。したがいまして、これはむしろ主管大臣である文部大臣にお尋ねいただくことが筋なんだと思います。私どもとして考えられることは、この百五十条の指揮監督という範囲において行なわれる限りにおいては、それは正しいものだというふうに考えております。
  169. 依田圭五

    依田委員 それでは、地教法の五十二条は文部大臣にお聞きすることにしまして、自治大臣にお聞きしたいのは、こういうように一般的な問題ですね、四千幾つもある地方団体の行政水準のレベルを一定にするような、包括的な内容を持ったような事前の監督権あるいは指揮権、こういうことならできるけれども、こういう個々の、一つの特定の学校の個々の問題について、機関委任をされた問題を、その地方庁の長官が執行しようとするその前に、不確定の前に、もう三時ですから、あるいは諮問したかもしれませんが、まだそれがはっきりしない以前において、こういうようにかってに中央官庁の主務大臣が百五十条を発動する。これは発動するということは新聞に言っておるんですから。その前提に立って私は御質問しますが、一般論として、一体自治大臣としてこういうことはかまわないのですか。
  170. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 冒頭に申し上げましたように、委任されました事務を取り上げるような、そういう指揮監督はできないものと私は考えております。
  171. 依田圭五

    依田委員 おかしいじゃありませんか。取り上げぬと言ったって、事実上取り上げたと同じじゃありませんか、それに対してああしろこうしろと言うんですから。しかも、私はあとで文部大臣に聞きますが、ここに三つの通達がございます。内容に理由が全然ないのです。これこれの反日教育、こういう事実があるから、あるいはこういうおそれがあるから、こういう内容もあるから、ということでもって理由を付しておるのじゃないのです。二行か三行なんですね。こういうような形でもって、取り上げるとほとんど同じような内容の措置を——一般論として、一般的なケースの場合に、個々のケースでなくして一般的な問題には私是認します。個々のケースでできるかどうかということを聞いているのです。
  172. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 でございますから、すでに委任した事務、その事務について知事が行使ができないようなそういうことは、この百五十条の指揮監督の範囲をこえるものではないかということでございます。
  173. 依田圭五

    依田委員 今度のは、事実上行使ができないように中央政府の監督権を発動しているのと違いますか、具体的に、政治的にですね。そういう意味でぼくは発動しておるのだと思うのですが、自治大臣の理解は違いますか。
  174. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 私は、まだそういう意味において、東京都知事に委任された各種学校の認可について、その認可権を取り上げるような処置をされたものとは考えておりません。
  175. 依田圭五

    依田委員 認可権そのものを取り上げることは、法改正を待たなければできないでしょう。自治法の別表の三ですか、百二十四ですかの法改正をまたなければできないじゃありませんか。行政措置について、それを否認するような中央官庁の指令、これは事実上取り上げることになりませんか、機関委任されました地方長官の自由意思を束縛するわけですから。
  176. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 文部大臣がどういうお考えかわかりませんけれども、私は、現在まで文部省のとられたことは知事に委任された各種学校の認可権を取り上げるというものではないと解釈しております。
  177. 依田圭五

    依田委員 自治大臣のそのことにあまり触れますと、もう三時過ぎて、食事も抜きにやっておりまして失礼ですから、剱木文部大臣にお聞きします。  いろいろ論点を整理してまいったのですが、あまり時間がありませんので、一括お願いいたします。  私は、今回の問題は、第一に文部大臣地方団体の行政に対する御理解といいますか、愛情といいますか、そういう姿勢において一つの重大な問題があるのじゃないかということをおそれておるわけです。同時に、東京都知事が——これは知事ばかりじゃありません。たまたま具体的に知事が出てまいりましたから申し上げるのですが、非常に忙しいわけなんです。文部大臣もお忙しい。しかし、知事は、実際言ってさらに忙しいのです。ともかく今回の問題は、文教行政の非常に重大な問題なんですね。これは文部大臣にとっては正面切っての問題なんです。しかし、東京都知事にとれば、約二十万の職員、一万人の係長がおりますが、一人の係長が担当しておるのです。もう生活保護、建設、公企業、ともかくものすごく仕事があるのですね。一万分の一の係長がやっておる所管事項なんです。これを私が調べた範囲内では、四十年十二月二十八日の通達に何の理由も付しておりません。一ページの第二項に、「朝鮮人としての民族性または国民性を涵養することを目的とする朝鮮人学校は、わが国の社会にとって各種学校の地位を与える積極的意義を有するものとは認められない。」あとは何もいっておらぬですね。ですから、やっちゃいかぬ、こうしちゃいかぬ、はっきり打ち出しておるわけですね。通達が三回ありますが、あとは何にも理由が書いてない。その次の通達には、十二月二十八日の次官通達に基づき云々と、これは局長通達が出ておるのですね。しかも各種学校というのを除いておるのです。こういうような点について、私は大臣にいろいろ質問点がありますが、まずそういった包括的な問題からお答えをお願いしたいと思います。
  178. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 次官通達の内容の問題でございますが、基本的にひとつお考えをいただきたいと思いますのは、日本の学校教育法というものの解釈の問題でございますが、学校教育法は日本の学校教育法でございまして、その適用は日本人に適用になる、これは当然にお認めいただけると思います。  そこで、外国人の問題でございますが、もちろん、外国人が学校教育法に掲げました学校に入学いたします場合は、これは大体いずれの国におきましても、その国内の、日本人が入学すると同じような、同等の待遇で入学を認めてきておるのが普通の場合でございます。外国人のみを入学させる学校制度を設けますときは、これは国際問題でございまして、大体の国の実情としては、いわゆる国交のある国の間におきましては、相互におきまして認め合ってやるというのが通常の場合でございます。しかも、その場合におきましては、お互いに別個の規定を設けまして、外国人のみの入学する学校を取り扱っておるのが国際慣行であろうと思います。  そこで、日本の場合におきましては、私はこれは特殊の日本の、世界にまれな——こういう例はないと思いますが、例によって今日の状態が生じておると思います。それは朝鮮の方々が、終戦後におきまして、日本の国籍を有せず、いわゆる外国人として在留いたします場合において、一時的滞留にあらずして、相当長期にわたって滞在する場合において、朝鮮人を対象とする学校をつくりたい、こういうことが、例の外国人学校が発生してまいりました。そこで、これが学校教育法の一条学校として認可するというわけにまいりませんので、いわゆる学校教育法の中の各種学校としてこれを各都道府県知事が事実上認めてきたのでございます。しかし、本来の意味から申しますと、さきにも申しましたように、学校教育法は外国人のみを入れる学校に適用する法律でない、これはもう原則的にはいえるわけでございます。これが法理論的に、いま認めたのはそれでは無効かどうかというような問題になりますと、現実に社会秩序として存在しますものを無効として取り消す、これは社会の現状の極端な混乱を来たすおそれがございますので、今日までそういう状況が現に存在してきたということは認めなければなりません。  そこで、そういう状況で各種学校という名義で認めてまいりましたので、各種学校につきましては、御承知のとおり府県知事に機関委任をいたしておるわけでございます。それで、委任をいたしまして、それが純粋な法律上不当であるということは一応論外に置きまして、しかし法秩序といたしましては、私どもとしてはこれを直す意味において、日本で外国人のみを入れる学校を対象といたします新たな法的措置をいたしまして、その秩序を保ち、そして外国人のみを入れる学校の保障をいたすのが、日本の政府としての、国としてのとる立場ではなかろうかということで、実は外国人学校という制度を設けることに努力してまいりましたことは、お認め願えると思います。不幸にしましてこれが実現をせず今日に至りました。  そこで、次官通牒でそういうことは不適当だということは、外国人学校制度を設ける予定はもちろん文部省として持っておったのでございますから、そういう意味において、外国人学校を各種学校として認めることは純理論的には不適当だということは、表現せざるを得ない文部省の立場にあったというふうに私は思量いたしております。もちろん私のときにそういう通牒を出したのではございませんけれども……。ですから、文部省の立場としては、そういうふうに言い続けてまいりましたが、現実の問題として、各種学校として外国人学校が認められてまいっておるのでございます。そういうふうに至ったのが現状でございまして、これは適当だとか、不適当だとか法理論だとかいうことでなしに、私は、日本としてやはりこの外国人学校の問題は解決をしなければならぬ段階に迫られておる問題だと考えておるのでございます。
  179. 依田圭五

    依田委員 文部大臣が今回東京都知事あてにいろいろ強硬措置をとるとか、是正措置をとるとかいうことで、新聞紙上をだいぶにぎわておりますが、その判断のあれは、地方自治法百五十条に基づく——これは先ほど藤枝大臣にもお聞きしましたが やはり間違いありませんか。これに基づいておるのでございますか。
  180. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 私は百五十条にいう機関委任した問題として、指揮監督権の一部として処理しております。
  181. 依田圭五

    依田委員 先ほど自治大臣にも申し上げましたが、地方の教育と文部大臣とのいろいろの関係を律する法律として地行法がございますね、地方教育行政の組織及び運営に関する法律、この五十二条にいろいろ明記されております。これをあえて発動されなかった理由をこの機会にお伺いしたいと思います。
  182. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 地行法の五十二条で、いわゆる措置要求の問題だと思います。  先般、参議院の文教委員会におきましても、この問題について御質問がございました。この地行法によりますと、こういう問題につきまして、法令に違反するか、またははなはだしく適正を欠く状態が起こりましたときに、これを変更し、是正させることができるいわゆる措置要求ができる、こういう規定になっていると思います。  そこで、今度の問題の朝鮮大学校の問題について、私ども、これはいままで、前にも申しましたたくさんな学校が、各種学校として府県知事から認可されてきておる現状でございますが、これは純理論的には、やはり学校教育法の各種学校の中に入れるのはおかしいと思うのでございます。しかし、これが一たん認可された暁におきまして、これを取り消させる、変更させるということは、非常な混乱が生ずるのでございます。また、法律的にも非常に疑義がございます。  いま朝鮮大学校の問題につきまして、知事が一定の行政的行為を完了いたしまして、その結果において措置要求をして、あるいはこれを変更させるとか、取り消させるとかいうような措置をとりますことは、いま申しましたように、そのこと自体が非常に不穏当なことになりますし、また、法的に申しましても、たとえば一たん法人格を持ちましたものに対しまして、法人格を取り消すとかいうような困難な問題が起こりますので、その事前の措置といたしまして、私が今度とりましたのは、知事に対しまして、私どもは協議をしてくださいということは、この百五十条によって申しますけれども、その協議の内容については、ある知事の一定の権限を、私どもは、法的にあるいは権限的にこれを変えさせたり、あるいは命令をしたりする意思はございません。やはり知事と十分に話し合いをいたしまして、できるだけ事前に、結論として生じてはいけない、いわゆる不適正な状況が起こらないように努力してまいりたい、こういう意思でございます。
  183. 依田圭五

    依田委員 一般法よりは特別法が優先することは目下常識ですから、はっきりここに、地方自治法百五十条以前に、本来適用させなければならない地方教育行政関係の特別法があるわけなんです。これに基づくと、自治大臣と協議しなければならぬという条項もあるわけです。こういう条項に触れずに、この百五十条について協議という形でもってこれを発動したと言うんだが、内容はもう全然、中央政府の自治体に対する干渉である。しかも一般問題ならともかく、個別問題についての干渉である。こういうように理解しておるんですが、それについてのお答えをここでお聞きする時間がありませんが、反日教育について、あなたのほうでは何か具体的な材料があるんですか。
  184. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 今度の、私の協議をしてほしいということを出しましたのは、朝鮮大学校の教育の内容が反日教育だとか、その内容的な面には全然触れてもおりませんし、また内容的な問題で、こういう措置をやったのではございません。
  185. 依田圭五

    依田委員 何にも内容がないのに、名前は朝鮮大学校と言いますけれども、内容は各種学校なんですね。その各種学校に対して、内容もない場合、反証というか、それを拒否する理由がないのに、これをあえて取り上げたという理由に、あなたのほうは、外国人学校の創設に対する法案を準備してきた。確かに過去二回準備しましたが、国会では成立しなかった。流産している。こういうような過程の問題、将来また提案になるでしょうけれども、そういった過程の問題を理由として、反日教育の実情がない、あるいはこれを拒否する実情がないのに、これに対して、文部大臣が機関委任した個々の案件について、しかも、それがまだ下部で決定も出ない、まだ手続もしない前に、これを大々的に、しかも特別法を無視して、一般法の地方自治法の百五十条に基づいて、あなたが発言した指揮といいますか、監督といいますか、文部大臣として発言した根拠について、もう一度お聞きいたします。
  186. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 機関委任いたしました私立学校の設置認可についてでございますが、もちろん私立学校と申しますと、各種学校も含んでおるわけでございますが、ただその私立学校につきましては、大学及び高等専門学校につきましては、機関委任の範囲からはずしております。これだけはお認めいただきたいと思います。  そこで、朝鮮人学校でございますが、あるいは朝鮮大学校でございますが、実質的には私ども書類等で見ますれば、はっきり大学と申しますか、同様の組織、内容を持つものと考えております。それでございますから、実際上は大学であるものを、単に取り扱い上——いま先生は、実際上各種学校であるのを、大学という名称——どういうようにおとりになっておるかわかりませんが、私どもは、実際上大学の内容を持つものを各種学校という名前だけにして、これは知事の権限に属する、こうはっきり言い切るのには非常な疑問があると思います。現段階におきまして、大学及び高専につきましては、文部大臣の直接の主管の事務にいたしておりまして、したがいまして知事にはこれを委任をいたしておりません。  ただしかし、形式的に申しますと、各種学校と称するものは全部知事に委任しているじゃないか、これに云々するのはけしからぬとおっしゃるかもしれませんが、それでは実際大学の実質を持っておるものを、知事が各種学校という名称でどんどん大学を認可し出したら、これは日本の法制の基本的たてまえをあやまるのではないか。そこで、この大学たる実際上の内容を持つものについて、単に形式的に各種学校と称して知事が認可するということについて、私どもはこの点をとくに協議をしていただきたいし、日本の法制を守る意味において、私は話し合いをしていきたい、こう考えております。
  187. 依田圭五

    依田委員 時間がないから急ぎますが、それは、文部大臣、おかしいですよ。各種学校は都道府県知事に機関委任している。委任をして、これはやりっぱなしです。その判断にまかせるわけですから、その前にとやかく言う筋合いはない。一般的な問題ならともかく、個々の問題についてそんなことをやったら、地方行政は成り立たないのです。朝鮮人の大学校は各種学校なんです。御承知のように、これはあなたの所管ですが、従来、学校法人というものに財団法人でなくて、民法上の許可制でなくて、新しい一章を設けて認可制にしたわけです。これは憲法十九条、いわゆる良心の自由だとか、あるいは二十三条、学問の自由を保障しますという憲法上のたてまえから、これは認可制度にしたほうがよろしい、こういうことで、都道府県知事に機関委任をしておるわけですね。これは断われないんです、各種学校ならば。これは一つの条件を付して、学校の建物はどうだとか、生徒はどうだとか、授業時間数は六百八十五時間以上であるとかということでやってまいりますと、これは実は断われないのです。要式行為であって、これは最低要件を満たしておれば都道府県知事は断われないのです。憲法に発生をする学問の自由を保護する——各種学校のたてまえからいってこれは断われない。まして文部大臣が機関委任をして断われるわけはないのです。とやこう言われるわけはないのです。もしあなたがおっしゃるように、これの内容がほんとうに大学ならば、これは文部省直轄なんです。これは第一条の学校なんですから、これならあなたの所管事項なんです。それでしたら、そういうことになれば「文部広報」にはっきりあなたのほうで出しておるように、これはうしろのほうで、読めばわかるように問いの十四でもって、この外国人学校の制度というものができたならば、一定の規模以上のものは全部文部省の所管に移します、申請を届けさせます、やり直させますとはっきり出ておるのです。この通達のうしろのほうにも出ておるのです。こういうことを文部省の通達で書くのは私はおかしいと思うのだが、これは都の総務局長あてに対するあなたのほうの部下の管理局長の答弁なんだが、内容は何も書いてない。そうして一番最後に、今国会に外国人学校の創設を内容とする学校教育法の一部を改正する法律案提出すべく準備中でありますので、これを十分勘案してくださいと書いてある。そんな、成立するかいなかわからぬ将来の問題、それに対して文部大臣のほうで、これは自信があるというならば、でき上がってから、朝鮮大学校が、ほんとうにあなたのおっしゃるように、一定規模以上の大学教育をやっておるならば、あなたの職権でこれを届けさせて直せばいいじゃありませんか。四十三年の九月三十日までにはこれを届け出をさせ、新たに申し込みをさせ、文部省が認可すると書いてあるのです、あなたのほうの広報に。何も半年ばかり急ぐことはないと私は思いますよ。各種学校であれば、いまの扱いはやらなくちゃならない。これは断われないのです。
  188. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 非常に重大な問題でございますが、各種学校であれば、知事が必ず憲法上認可しなければならぬということは考えておりません。これは大学の場合でありましても、大学の認可申請があれば、それを大学とすべきかいなかということは、これはあらゆる方法でやりますが、審査いたしまして、認可するかどうか決定します。今度の各種学校におきましても、私学審議会の意見を聞いて、これを認可しなれけばならぬということは、当然に、各種学校として申請すれば、知事は認可しなければならぬという結論にはなりません。でございますから、これは裁量の余地がある問題でございます。  それから朝鮮大学校につきましては、一年有半というものを、認可申請してから今日までその申請書を東京都はじっと持っておったわけです。それでございますから、いま即刻これを認めなければならぬという問題もないと思います。私どもとしては、近い機会におきまして、ぜひそれを受け入れるような国の体制を整えて、そしてこの正式の認可の手続をしてもらうようにいたしたいと存じまして、その期間、東京都において待てないというわけのものではないと思います。
  189. 依田圭五

    依田委員 文部大臣のお話は、私の話がわからぬということであなたがお答えになったと同じぐらいの度合いで、全然あなたのお話はわからないのです。私、何も各種学校について申請があれば——これは申請者の自由ですね。あなたのほうが大学校として文部省に届けろとか、各種学校として都道府県知事に届けろとか、そんなことは法律ではっきり申請者の自由になっておるのです。これは関与できないのです。各種学校ならば、都道府県知事は必ずこれを認可しなければならぬと、私一言も言っていないのです。ただ、許可と認可は違う。なぜ財団法人からこれをはずして、認可の学校法人のほうへこれを移したか。学校法人のほうに移した理由は、この各種学校の申請というものは大体これを認めてやらなければいけない。もちろん要式行為がきまっていますよ。審議会に付さなければいかぬと。きょう三時からちゃんと学校審議会に美濃部知事はかけているじゃありませんか。その結論が出、これはしかし建議だけですから、また、意見を聞かなければならぬという意見だけですから、これがどういう結論を出そうが、知事は自分の職権でできます。これは断わることもできます。認可することもできる、認可しないこともできますが、ただこの案件というものは、一定の条件を付せば、最低条件を付せば、憲法上の保障もあるし、それから学問の自由の問題もあるから、大体これは許可しなければなりません。こういう心がまえ、姿勢の問題を私は申し上げておるのです。もし最初にあなたがおっしゃったように、許可しなければならぬという必然的なものであれば、今回の問題なんか発生する余地はありません。あくまでも知事の権限内、しかもあなたは機関委任をしてはっきり委任事項としてその職権を行使しておる、こういうわけなんです。  それでお聞きしたいのは、時間を急ぎますので結論を急ぎますが、大体今回の問題は、美濃部知事のほうは、もう昨年の十一月から十二月にかけて、自民党の都議会議員の方々、あるいは各党の方々を含めて、紹介議員その他でもって二十四回にわたりこの朝鮮人学校の場合は請願を受理をしておるのです。これは採択いたしておるのです。言いかえれば、東京都知事の公の立場とすれば、これは都議会の意思をもって、言いかえれば、一千一百万東京都民の立場をもってこれは行政を執行しなければならぬ。この採択の趣旨にしたがって、よほど重大な条件がない限りは、これはおおむね認可せざるを得ない、こういう立場に追い込まれておるのです。先ほど文部大臣がおっしゃったように、一年半前からペンディングになっておる。大体一年半も行政の許可をしなければ、これは不作為で不服審査法とか行政事件訴訟法で東京都知事が告訴されますよ。勝ち目がありませんよ。ちゃんと条件が合って、東京都の学事部の関係係官が調べて、土地の問題も、責任者の問題も、寄付行為の問題も、用地の問題も、財産の問題も、教科の問題も、時間の問題も、これは六百八十五時間以上、どこにも問題がありません。ですから事務レベルの段階ではもう問題がないから、これを審議会に諮問をいたします。これは私学法できまっているんですから諮問をいたします。こういうわけできよう諮問をいたしておるわけですから、その途中において、文部大臣のほうが、それはいかぬ、こう言ってお話しになると——いかぬとは言わぬ、相談をしようというだけのことを言ったというんですが、内容はいかぬということです。スムーズに事務を進めておる。機械的に客観的に進めておる。しかも所定のものを進めておる。文部大臣から委任をされた委任内容を忠実に果たすために、所定の法規に照らして進めておる。こういう東京都知事の事務執行に対して、あなたが、それはいかぬ、こういうことが現在の争いのもとじゃありませんか。内容じゃありませんか。われわれも、大新聞を通してしか実情はわかりませんけれども、私はそれが実際だと思うのですよ。それに対して東京都知事は、もう憲法上も、あるいは機関委任のたてまえから言ったって、これはあまり自由裁量がないのです。まして請願は採択になっておるのです。しかも、ほっておけば申請者である朝鮮人学校の責任者から訴訟を起こされると思うのです。こういう段階の中で、それはわれわれもそれぞれ四万や五万の票をもらい、文部大臣は参議院の方ですからもっと多いと思いますが、東京都知事だって二百何十万、三百万票に近い票をもらって、一党一派に偏せずに、都民党とかなんとか言って、いわゆる超党派の都民に奉仕する政治をやろうと思っている。こういう立場で純粋にこれを考えて、そしてこれに対処しよう、こういうときに、一万人もいる係長の一人が一生懸命やっていることに対して、あなたのほうが出てこいとか、あるいは協議しようとかなんとか、新聞記者会見をしてみたり何かして、これは一体どうなります。きょうの三時に、おそらく私の想像ですが、諮問したと思うのです。これから一体どうなるんですか。全く無責任な人は勝ち負けで喜んでいるかもしれませんけれども、四千地方公共団体の教育関係者に対する指揮の問題、これは非常に重大な問題を私は持っておると思うのです。これは一東京都の問題じゃないのです。まして一千万人をこえる都民から二、三カ月前に選挙されて、しかも機関委任事務であって知事の職権内の問題である。しかもそれは許可権じゃない、認可事項であって、しかも一年半もぺンディングしておって、この問題は事務ベースでスムーズに進めようというのが、一体どこが悪いのですか。反証があれば反証をあげ、理由があれば理由をあげていただきたい。ここにあるこの通達のどこを読んでも、理由らしきものは何もない。ひどいのは二行か三行だ。こういうことじゃ、これは実のある政治、ほんとうに話し合いの政治といえるのか。タクシーで百円もかければ飛んでいける都庁に、一体どういうように連絡をし、どういうように相談をしてまいったか。そのことを私はここで聞きたいと思うのですよ。単にこの問題の帰趨じゃない。おそらくこれはこのまま行くところまで行くでしょう。この政治的責任についてはどう思いますか。
  190. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 私は、東京都知事が私学審議会に諮問したことについて、何らその善悪の批判はいたしておりません。  ただ、はっきり申し上げますように、朝鮮大学校とありますけれども、実質は大学であると私は考えております。したがいまして、各種学校という名前だけで当然に知事が認可してもらいますと、日本の学校秩序を乱るということで、そういう点につきましては、知事と十分なる話し合いをするという立場に立ちますのは、これは当然の職務だと私は思っております。でございますから、紙上に、いかにも私が職権でこれを取り消させるとか、あるいは権力をもって阻止するとかいわれておるようでありますが、そういうような考え方は持っておりません。
  191. 依田圭五

    依田委員 先ほど言ったように、大学ならば、広報に出ている再来年の三月三十一日までに、外国人学校の制度の中にあなたの認定で入れればいいじゃありませんか。そうすれば文部大臣の指揮監督下に入るし、そうでなければ、いま私学審議会を通してこれで成立させれば、、一応不満足ながらこの朝鮮人学校が東京都知事の監督下に入るのです。いまここでもやらない、あなたのほうでも、これは待ち切れないというなら、その間野放しになるわけですね。これは無認可の状態になるわけです。無認可の状態になったら、だれが監督し、だれが一体これをやりますか。せめて東京都の知事の監督下に置いたほうがまだいいじゃありませんか。  あなたが通達でしばしば言っているように、外国人学校制度の創設について、過去にも経験があった、将来もまたこれは推し進めるつもりだということであれば、この広報のとおり、来年の九月三十日までの間に条件があれば申請させるし、なければ再来年の三月三十一日限りでそれを認可を取り消して入れればいいじゃありませんか。いまどうしてそれが待ち切れないのですか。
  192. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 明確に法的に適正を欠くような状態ができるという場合におきましては、私としては、それを事前に防止するだけの責任があると思います。したがいまして、一たん不適正な状態ができて、それでそれをあとで入れればいいという議論には、私は賛意を表すわけにはまいりません。
  193. 依田圭五

    依田委員 ともかく、文部大臣、この問題は一朝鮮人学校の問題でなくして、地方長官といいますか、これは中央政府地方団体の問題の相撲みたいなものであって、実際われわれとしては迷惑しごくなんです。非常に困る問題なんです。どうにも解決がつかないのです。これはどうします。地方自治法百四十六条で高等裁判所に提訴して、それから裁判にかけて、そうして総理大臣が東京都知事を罷免しますか。そんなことができますか。政治的な事実として、現実の問題としてそこまでいきますよ、これは。東京都知事をいとも簡単に——これどこでも同じです。どこの府県知事でも、私学の問題について少しなにがあれば中央政府へ呼びつけよう、こういう態度は、権力的な運営であって、見てごらんなさい 米ソの、ニューヨークとワシントンの間でグラスボロですか、あの精神ですね、妥協の精神、協調の精神。あなたのほうで、せめて管理局長くらい、次官くらいが地方官庁へ行って話をするとかなんとかという態度をとって、ほんとうに相談をしたら、もう少しスムーズにいっただろうと私は思うのです。いまやたいへんな問題になっていますよ。しかし、知事はどこの知事でも同じですが、私学の問題だけじゃないのです。これは山ほどあるのです。そういう意味では、ボリュームの点では、全くこれは一万分の一という表現をしましたが、予算の面でも何でもその程度なんですよ。これは文部大臣だけでなく佐藤内閣の信任に関する問題であり、信頼に関する問題で、たいへんな内容を持っております。あなたの政治責任は非常に重い。同時に、これは、自治大臣と御相談になって、何とかこれを解決の方向へ私は地方行政委員の一人として持っていっていただきたい。単に形式的に呼びつけてみたり、あるいは権限の発動なんかやってみても片づかない。これはアメリカにおいても、州権と連邦権の問題は、黒人の問題をはさんでたいへんな問題だったのです。これはあなたのほうが、佐藤内閣の閣僚の一人であって、国家的な立場から指揮監督権があるといえば、知事のほうは直接選挙によって何倍かの票をもらって、住民に対してそれこそ生まれてから死ぬまでのめんどうを見る責任がある。私学校の一つをいつまでもからかっちゃいられないという立場があるわけですから、よくひとつ努力していただきまして、これは何とか片づけてもらいたいと思います。
  194. 久保田円次

    久保田(円)委員長代理 本日は、これにて散会いたします。    午後三時四十六分散会