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1967-10-18 第56回国会 衆議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年十月十八日(水曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 内田 常雄君    理事 藤井 勝志君 理事 三池  信君    理事 毛利 松平君 理事 吉田 重延君    理事 武藤 山治君 理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    笹山茂太郎君       村上信二郎君    村山 達雄君       山下 元利君    渡辺美智雄君       只松 祐治君    中嶋 英夫君       野口 忠夫君    広沢 賢一君       広瀬 秀吉君    堀  昌雄君       村山 喜一君    広沢 直樹君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         郵 政 大 臣 小林 武治君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  委員外出席者         総理府人事局長 増子 正宏君         経済企画庁調整         局長      赤沢 璋一君         経済企画庁国民         生活局長    中西 一郎君         経済企画庁総合         計画局参事官  宍戸 寿雄君         大蔵大臣官房財         務調査官    近藤 道生君         大蔵省主計局給         与課長     津吉 伊定君         大蔵省主税局長 塩崎  潤君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         大蔵省国際金融         局長      柏木 雄介君         郵政大臣官房電         気通信監理官  浦川 親直君         自治省行政局公         務員部長    鎌田 要人君         自治省財政局長 細郷 道一君         日本電信電話公         社総裁     米沢  滋君         日本電信電話公         社運用局長   藤川 貞夫君         日本電信電話公         社計画局長   井上 俊雄君         日本電信電話公         社経理局長   中山 公平君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 九月十九日  委員柳田秀一君辞任につき、その補欠として中  嶋英夫君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件      ————◇—————
  2. 内田常雄

    内田委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。広瀬秀吉君。
  3. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 まず最初に、公務員給与関係について大蔵大臣及び関係大臣質問をいたしたいわけです。  八月十五日に勧告が行なわれましてからもう二カ月余りたっておるわけであります。大蔵省は、財源見通しが十月中旬以降にならぬと立たない、こういうことで一体この処理をどうするのかということについていまだにめどが立っていない、こういうようなきわめて遺憾な状況にあるわけであります。したがって、公務員諸君も、争議権剥奪の代償として設けられた人事院勧告が尊重されない、完全実施されない、こういうようなことから、ことしは非常に大きな不満を持って、二十六日には職場大会ども開いて、抗議の意思を表明しようというようなことにもなっているわけであります。いよいよ大詰めの段階を迎えているわけであります。そこで問題になりますのは、大蔵省財源見通しが立たぬと言うのでありますが、昨年の同じ時期に大蔵委員会が開かれまして、同じような質問が行なわれたわけでありますが、大蔵省も大体十月中旬になれば見通しが立つ、こう言っておられるわけでありますから、大体自然増収見込みその他いわゆる租税外収入等も含めまして、財源見通しが立ったかどうか、この点をまず大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思います。
  4. 水田三喜男

    水田国務大臣 昨年の例によりますと、まだほんとう見通しはやはりいまごろ立たなくて、結局十一月になって九月決算の結果というものが大体判明したということでございますので、本年もいまのところほんとう見通しをつけるのはどうしても十一月半ばになるということでございますが、しかし、この問題はそう長く決定を延ばせませんので、いま大企業について十五日から調査を始めておりますので、あと一、二日たって大ざっぱな見通しでも出れば、それによって政府の方針をきめようかというふうに私ら考えておりますが、財源の点は現在のところ全く見通しがついていないという実情でございます。
  5. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 勧告から二カ月もたっておって、しかもこの段階を迎えて、財源見通しが全く立っていないというそういう答弁は、私どもは承服できないわけであります。税の自然増収、これは当初予算の月別の大体の計画もあるわけであります。それについて四月から少なくとも九月までの実績くらいはもう出ておるわけであります。そういうものを見まして、ある程度、少なくとも税の自然増収見通しくらいは立っていなければならないはずだと思うのです。ほかの委員会等におきましても、大蔵大臣は八月の税収状況がどうだというようなこともある程度お答えにもなっておる。ある程度数字も示されておる。この一番肝心な大蔵委員会において、その点を非常に意図的に、あと二、三日というようなことを言われるのは、たいへん残念なんですけれども、その点をもう一度。もちろん正確なところはわからないにしても、大体の見通しぐらいはこの際はっきりひとつ言っていただきたい。どのくらいありそうだということをまず言っていただきたい。
  6. 水田三喜男

    水田国務大臣 八月末の実績で一兆五千九百億円という税収でございますが、これは収入歩合から見まして昨年に比べてわずか二%に足らない向上ぶりということでございますので、これがすでに五カ月たった実績で、もしこの調子でいくとしますと、十二カ月の三月末というものを予想しましても、せいぜい二千億円前後ということしか期待できません。しかし、問題は九月決算による法人税でございますので、この法人税の大体の見通しがつかないというと、この二千億円に対してどれだけのプラスの自然増が確保できるかというのが問題でございますので、この数字把握したいというのが私ども考え方でございますが、これが九月決算でございますので、十月半ばから大きい法人だけの調査をいまやっておりますが、全部やるためにはどうしても二週間ぐらいかかるということでございますので、これが出ないとほんとう税収がどのくらいかという見込みがたちません。  そこで、この人事院勧告でございますが、これを実施するためには補正予算でこれは対処しなければならぬといいますと、補正予算国会に出すためには、他の補正要因がたくさんございますので、こういうものを勘案いたしますと、一定の財源がないというとこの全体の予算補正ができないということで、それとのからみ合いで、私どもはこの財源がはっきり把握できぬ限り、実際は補正予算編成もできないということで、政府でもこの自然増把握待ちで、他の補正予算準備するということもできないで、いま停滞しているというのが実情でございます。何とかして早くことしの見通しだけ立てたいと思うのですが、御承知のように事情がだいぶ変わってきましたし、ことに締めをやっているその効果が来年一月以後ごろでないと出ないだろうといわれているくらいでございますから、来年一月以降の問題の把握もなかなかむずかしいという問題がございますので、あともう少したたぬと財源について何とも言えないということでございます。
  7. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 宮澤経済企画庁長官にちょっとお伺いしたいのでありますが、当初はなだらかな成長だろうというような中立的な気配であったものが、非常に急激に警戒しなければならない情勢というものが生産の面、経済成長の面で出てきた。こういうようなことから、九月一日から公定歩合の引き上げというようなこともやって景気抑制をしなければならぬ、こういう状況にもなったわけであります。しかもその後においても、十月、今日現在におきましても、各企業設備投資あるいは生産状況というようなものはきわめて堅調である、むしろかなり強気の設備投資が現に行なわれている、こういう状況が続いておるわけです。こういうことでございますから、ことしの経済成長と申しますか、生産の増強というようなものは、経済企画庁予算編成基礎になった見通しとはかなり大きく違ってきているんじゃないかと思うのです。この前の委員会におきましても、堀委員から、早くその見通し改定を出したらどうかというような御質問もあったわけでありますが、この経済成長見通しについて、この際率直な見通しをひとつ聞かしていただきたいと思うのです。おそらく今日まだ正式な見通し改定を出しておりませんけれども準備は、どの程度のものになるだろうかということは、賢明な企画庁長官、ちゃんと目算というものはあるだろうと思うのです。これをひとつざっくばらんに表明をしていただきたいと思います。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 九月に引き締め措置をとったわけでございますが、おそらくその措置が具体的にきいてまいりますのはかなり時間がかかる。半年ぐらい従来の経験から考えますと時間がかかるのではないかと思われますので、したがって、この昭和四十二年度に関します限り、表へ出ます成長率なり設備投資なりは、当初の見通しよりもかなり高いものになるであろうということは御指摘のとおりだと思います。おそらく実質で一〇%をこえる成長ということになるのではないか。ただ、ただいまの段階見通しを改めるということをいたしませんのは、引き締めに入りまして一月余りしかたっていませんし、なるべく時期がおそければおそいほど見通しが正確に立てられるかと考えますので、それでいわゆる改定ということをただいまいたしておりません。おそらくは明年度予算編成あるいはそれとの関連で昭和四十二年度の予算補正をいたしますことになるかと思いますが、そのころの段階で、その時点に立っての新しい見通しを出したいと思っておりますけれども、ただいま具体的にこうであろうといったようなことを申し上げる準備をまだいたしておらないわけでございます。
  9. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いずれにいたしましても、当初八%台の成長だろうということが一〇%をこえるということは、もうだれが見ても今日確実なものになっているだろうと思うのであります。したがって、国民総生産がそういうぐあいに伸びる。しかも九月期の各企業決算状況なんかを見ましてもかなり好調である。こういうようなことからいいますならば、大蔵大臣、これは確実なものがつかめないにいたしましても、法人税伸びというようなものもかなり大きく期待できるのではないか、こういう考えに立つわけであります。  いま大蔵大臣は、約二千億ぐらいじゃないかというようなことをちょっと言われたわけでありますが、すでに財政制度審議会等に対して、財政硬直化の問題をめぐって大蔵省からメモを出しておられるわけです。この中で、いろいろ推算をして、来年どの程度当然増が出るかというようなことの基礎資料となるべきものとして、税収伸びを少なくとも二千五百億から三千億というようなこともいわれておるようでありますが、一体そういう問題についてどのようにお考えでしょうか。
  10. 水田三喜男

    水田国務大臣 さっき二千億と申しましたのは、いま出ている収入歩合から推しまして算術計算しますと、そのくらいのものがはっきりした自然増であると見込まれるということでございまして、それにプラスするものとして一番大きいものは法人税である。この法人税見通しができないというと、九月決算の結果が見通されないと、これに千億加わってくるのか千五百億加わってくるのか、その見当はつかないということを申しただけでございまして、確実に申せる分が大体二千億、これは間違いないだろうということを言っただけでございます。
  11. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大蔵大臣、非常にこの公務員給与を上げたくないという腹に一物があるので、その問題非常にまあ控え目に控え目に、少な目に少な目にというような気がしてならぬわけであります。  主税局長お見えになりましたからひとつ……。いま大臣が、二千億くらいは自然増収がいままでの傾向を見てあるだろうと言われたことについて、大体税目別にどういうような伸びを予想されてそういう数字が出ておるのか、法人税のほうは抜きにしまして、おおよその数字をひとつここでお示しいただきたいと思います。
  12. 塩崎潤

    塩崎説明員 先ほど大臣がお答え申し上げましたように、私どもは八月末までの実績から推測して自然増収を予測しているわけでございますので、おっしゃるほどこまかく具体的にまだ見積もりをいたしておりません。非常に大ざっぱな過去の、前年の収入歩合、本年の収入歩合から大きく逆算いたしまして、まずこの程度であろうというようなことを頭に置いてしておるのでございます。もちろんその割り振りを大ざっぱに各税目について割り振っておりますけれども、これはここでまだ申し上げるほど客観的と申しますか、的確なる数字ではない。その傾向といたしましては、もちろん法人税収大臣のおっしゃいました自然増収のうちの大部分でございます。しかし、その自然増収のうちの法人税というものは、先ほど大臣もまた御説明されましたように、非常に九月期の決算状況に関するものでございますので、これはもう少し九月決算内容等を見て、そしてまた政策的に持ち得る数字にしてから申し上げたほうが適当ではないか、かように思うのでございます。
  13. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 正確な数字は私どももそれは責任ある立場としてそこまで要求するつもりはないんです。しかし、去年の同じ時期に大蔵委員会で、やはりあなたは堀委員の同じような給与問題に対する質問の中である程度数字を示されておるわけです。ことしどうしてそれが示されないのか、そういうことになるわけであります。概算数字でよろしゅうございますからひとつこの際明らかにしてもらいたい。
  14. 塩崎潤

    塩崎説明員 これもまたいろいろな計算方式があることはもう御案内のとおりでございます。さらにまた、八月の収入実績も七月分に比べまして〇・二%ダウンした、こんなようなことから、私どもはいままでの趨勢だけで判断することは非常に危険である、こういう気がいたすのでございます。したがいまして、かりに私どもが八月の収入歩合から推計した自然増収を、いろいろな方式がありますが、三つばかり方式がありまして、やってみると、千七百億から二千三百億円ばかりの幅のある数字が出ます。一つは千七百億円、一つは千九百億円、一つは二千三百億円、こんな数字が出てまいりまして、先ほど広瀬委員指摘のような大きな数字にはどうしても収入実績からはならない。今後の趨勢をどう見るかということがまあ多分に影響するのでございまして、これはひとつ九月決算動向等を見ながら、あるいは企画庁の策定されますところの経済予測、これを私どもが参考にしながら正確なる数字を次の補正予算の機会にひとつつくりたい、こんなような気持ちでございます。
  15. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 千七百億から二千三百億、まあ計算方式によって若干のフラクチュエーションがあるということでございますが、いずれにしても二千億くらいはあるということです。九月決算法人税、これはかなり大きなものが期待できるはずであります。先ほどの経企庁長官の御答弁の中からも推察がされるし、また九月決算を大手のところで、少なくとも新聞報道の面を見ましてもかなり好調であるということがいえる。さらにまた、給与所得税なんかの面につきましても、かなり大きなウエートを持っている公共企業体なんかもまだ全然、四月から実施されるものが配分の問題をめぐって実際に渡ってないというようなことから、そういう問題なども所得税となってあらわれていない、こういうような面もあるわけであります。したがって、いま給与問題が当面焦眉の急になっておりますから大蔵省は非常に、これはまあ習性でございましょうけれども、少な目に、給与改定前は必ず少な目に数字を出してくる、こういう一種の習癖があるわけでありますが、そういうことではなしに、やはり財政硬直化というより基本的な大きな問題に直面しているような時期でございますから、そういうようなときにそういういわば隠し財源を保有するとか、あるいは財源を隠してどうこうして急場をしのげるような状況でもないような状況になっておるわけであります。こういうようなときにはもっとざっくばらんにやはり出すものは全部洗いざらい出して、そうして硬直化という問題とあらためて取り組んでいくという姿勢が私はやはりなければいかぬだろう、こういうように思うわけです。だから、そういう意味で私どもはいろいろ資料によって推算をいたしましても、少なくともことしは三千億をこえる自然増収を見込めるのではないか、こういうように見ておるわけでありますが、大臣いかがですか、その点。
  16. 水田三喜男

    水田国務大臣 私のほうは三千億円じゃ困ると思っています。もうちょっと自然増が見込めるようでないと、御承知のように三二%が地方税へ行く以上、あとへ残る国費というものは、三千億円だとすれば非常にわずかになる。もう食管の赤字を解決するのと国債を削減しただけでも二千億円の財源がなければ補正予算を組めないという状況でございますので、この公務員給与の問題を解決し、そのほかの義務経費の、不足分を解決するというためには、もう少しの税収がなければ私ども補正予算が組めませんので、そういう意味であなたのおっしゃるように、もう隠し財源をそろそろ出すときだとか、そんなのんきなことではございませんので、できるだけもう少しの増収を期待してこの公務員の問題にも対処したいというふうに、むしろ私ども考えは逆でございまして、そんなたくさんの税収が期待できるような経済状態でないこともあなたはもう御承知だと思います。
  17. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いまの大臣答弁を裏返しすれば、もう三千億やそこらの増収というものはこれは軽いのだというように私どもとれるわけですけれども、そういうように確認してよろしいですか。
  18. 水田三喜男

    水田国務大臣 いや、軽いんじゃなくて、それ以上出さないというと国会でも補正予算が出せないということですから、自然増がどうしても見込めないというときには既定経費の大きい節約をやって臨むかなにかの措置をとらなければいけないんじゃないかというふうに考えて、三千億が軽いなんていうふうに全然考えておりません。
  19. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 財源論争は将来の見通しの問題も含まれますのでまたあとにいたしまして、一体大蔵大臣公務員給与に対して人事院勧告というものをどうお考えになりますか。この問題をやはり根本的に問題にしなければならぬと思います。財源財源と常に公務員給与財源問題にひっかかって、いまだかつて完全実施されたためしがない。このことについて一体国財政のひもを握っておる大蔵省がそれでいいのか、こういう基本的な問題についてひとつ答えていただきたい。
  20. 水田三喜男

    水田国務大臣 人事院勧告のあり方、それから政府側における予算編成しかたいかんによっては、この人事院勧告を尊重することが必ずしも財源の問題ということでなくて解決解決できるんじゃないかというふうに考えております。ですから、そういうことを私どもは一番希望しておりますが、遺憾ながらいまのような形で、期の中途で補正予算で片づけろという勧告になりますというと、この実施は常に財源の問題にかかわってくる。したがって、いまのような形の勧告に対処しようとしたら、これは常に財源問題というものがつきまとうというふうに私は考えています。したがって、これを尊重するためにはできるだけ財源の確保が必要であって、どうその財源を確保するかということに私どもが苦心しているということでございます。
  21. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 その財源の問題については、これはいわゆる人事院勧告制度というものがとられてから二十年近いような、十数年の経過もたっておるわけです。人事院は、補正予算でやれといって出しているわけでは私はないと思う。補正予算であろうと何であろうと、とにかく人事院勧告したものは完全に実施すべきが筋合いであって、法律でちゃんときまっている。法律できまっている問題はいわゆる義務的経費だ、これは当然にふえるんだ、法律の根拠を持ったふえ方をするんだ、こういうことで、ほかの諸問題——食管の問題にしても、その他社会保障問題等にいたしましても、その問題については必ず、これは財源のあるなしにかかわらず、大体それを満たしている。公務員給与だけは、いまだかつて一回も実施していない、こういう形になっておる。このことについては、特に財源の問題について、少なくとも去年やおととしよりも窮屈であるという状況ではないことしにおいて、税の自然増収かなり大幅に見込める段階においてこれをやらないということは、やはりこれはもう政府国家公務員給与の問題に対する感覚の問題、誠意の問題、こういうものに帰するだろうと思うのですね。この点についてひとつ明確に御答弁いただきたい。
  22. 水田三喜男

    水田国務大臣 先ほどから財源説明をしておるとおりでございまして、ことしはもう税収が十分あるんだからなぜやらぬかということですが、税収があれば非常にやりいいことなんですが、いまその見通しはつかめないというときでございますので、したがって、私どもは税源の許す範囲で人事院勧告は尊重したいという態度で、いま苦心しておるところでございます。
  23. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 五月から実施をした場合と、昨年どおりの九月から実施をした場合とでは、どのくらいの金額の差がございますか。これは給与課長ですか、総理府人事局長ですか、関係者から答えてください。
  24. 津吉伊定

    津吉説明員 五月実施といたしますと、国におきましては九百億でございます。それから地方団体分につきましては千億でございます。かりに九月実施といたしますと、国の分につきましては五百九十億でございます。地方団体分につきましては六百六十五億程度でございます。
  25. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 八月実施としたらどういうことになりますか。
  26. 津吉伊定

    津吉説明員 かりに八月実施といたしますと、概算でございますけれども、国の関係では六十億ややこえる程度地方団体分につきましては七十五億程度ということでございます。それだけの増を要するわけでございます。
  27. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 八月と九月の差は大体百三十五億ということになりますね。少なくとも昨年よりは——これは給与担当大臣総務長官が絶えず公務員の代表に、五月から実施をしたいということを言っておられるわけです。労働省筋でも、労働大臣も大体それに近いような見解を言っておられる。経企庁長官なりあるいは大蔵大臣ベースになると、先ほどのようなきわめて渋い態度になられる。これはまことに遺憾でありまして、少なくともことしは、去年よりは一カ月でもというお考えにはなりませんか、大臣。一カ月でも早く実施をする、その程度気持ちにもなりませんか。
  28. 水田三喜男

    水田国務大臣 いままで政府部内の相談は、御承知のようにあの勧告内容についての吟味に相当の時間をとっておりましたために、実施時期をどうしようかというようなものは、何回も会合をしましたが、まだそこまでいきませんで、明日あたりから、この問題を政府部内でも討議しようというふうに考えておりますので、政府部内でも、各大臣の意向は明日ごろから出てくると思いますので、それまでは、私の個人の考えは述べないほうがいいんじゃないかと考えております。
  29. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 かりに一カ月ぐらいさかのぼっただけでは、当面の不満というものはおさまらぬだろうと私は思うわけです。しかし、最大限の、精一ぱい誠意だというようなことで、ここまでならばやれるんだというようなことは、これは補正予算に当然関連してくるわけですけれども、大体いま補正しなければならない要因というもの、それとその金額を、概算数字でけっこうですから、ここで言っていただきたいと思のです。
  30. 水田三喜男

    水田国務大臣 財源がつかめない間は、追加需要の点についてもいろいろ考えなければならぬところがございますので、正確なことは申しませんが、私どもの試算では、自然増が三千億円以上にならないといろいろな追加財政需要は満たせないというのがいまの計算でございますので、どうしてもそれ以上の規模の補正予算になるというふうに考えております。
  31. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 もう少し数字で御説明いただきたいのですが、項目ごとに……。あまり時間がないですから、ひとつ大体の数字を言ってください。
  32. 水田三喜男

    水田国務大臣 まだ数字が確定しておりませんので、きょうはまだこの数字を言うのは御猶予を願いたいと思います。
  33. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いつになったらわかりますか。
  34. 水田三喜男

    水田国務大臣 さっき言いましたように、ほんとう税収見込みがつきますのは十一月半ばになると思っておりますので、そのくらいでないと補正予算の全貌というものもはっきりしないというふうに思います。
  35. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 数字まで言えなければ、大体どういう項目、たとえば食管だとか給与の問題とか交付税の問題とか災害とか、いろいろあると思うのです。そういうものをひとつあげてくれませんか。
  36. 水田三喜男

    水田国務大臣 やはり大きい金額は災害でございます。災害は去年よりは干ばつそのほかで少し災害が大きゅうございますので、いまのところ予備費の大半は災害に充てなければ足らぬという状況になっております。
  37. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そのほか項目をあげてくださいというのです。
  38. 水田三喜男

    水田国務大臣 そのほかはもう私が言わなくても御承知だと思いますが、いまの人事院勧告の問題、それから交付税の問題、それから食管の赤字の問題、それからそのほか義務的ないろんな経費の不足の清算の問題、それからまた医療保険に関するいろんな補正要因が相当ございますので、そういう問題万般にいろいろな補正の必要がいま出ておると思いますので、項目は相当多岐にわたっておると思います。
  39. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大臣自然増収が三千億をさらにこえるというような状況になる。補正財源としては、予備費も当然これはあるわけですから、そういうようなものを全部含めて少なくとも——先ほどから大臣は二千億くらいというほんとうにしぶちんの見通しを立てているわけですけれども、これが財源上二千億をかなり、少なくとも一千億以上こえる、千五百億近くにもなる、こういうような自然増収が出た場合には、少なくとも完全実施、あるいは一カ月でも二カ月でも昨年よりさかのぼった実施というようなことをやるべきだと思いますが、いかがですかその点は。
  40. 水田三喜男

    水田国務大臣 それはさっき言いましたように、財源が完全に見通せてから決定していいというのでしたらこれは楽でございますが、公務員給与の問題はほんとう見通しを持つときまでは待てないというふうに思いますので、もう近いうちに大体の予想を立てて、そうして税収の当て以外に、やはり国の節約する分はないかとかいろんなそういう点からでもこっちのほうは先にきめる必要が出てくるのじゃないかというふうにも私考えておりますので、それでいまいろいろ苦心しているところでございます。
  41. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 さらに聞きますが、それまで待てということではなしに、少なくとも第二次補正ということまで考えても——財源が比較的余裕のある状態に、自然増収も好調で予想以上に伸びた、こういう事態、あるいはまた、最近七%の節約なんかも呼びかけておるようでありますが、それらの施策を講じて、少なくとも財源の余裕が、最終的に年度内に、一たんやったあとでも、そういうものが出たという場合には、第二次補正を組んででもやはりこのことは当然やるべきだと思います。そういうお気持ちはございますか。
  42. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のように、一般公務員についての勧告法律上の義務規定があるわけではございません。これを尊重するというたてまえのものでございますので、財源がなかったというときにはこれが尊重されなくてもやむを得ないというのが従来の解釈であるし、また現にそうやってきたのでございますが、しかしこの勧告を尊重すべきであるという立場から私どもはこれに対処しようとしておるのでございますので、いまのところの見通しでは、これは九月、従来どおりもできませんし、十月というところから実施しようとしても、財源のないことはいまはっきりしています。しかし、それでは進みませんので、いまの見通しを待たないででもこの問題はやはり別のいろいろなことから解決しなければならぬのじゃないかと思っておりますので、財源があったら出す、なかったら出さないというような取り扱い方をしないで、やはりこういう解決のしかたをしようといって政府は踏み切るのだ、踏み切るよりほかにはしかたがないのではないかというふうに考えておりますので、今度そういういろいろな観点から私どもがきめましたら、それをまた年末にいってもう一ぺん補正し直すとかなんとかというようなことは私やりたくないと考えております。
  43. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 とんでもない大臣の発言だと思うのです。私ども財源のあるなしにかかわらず、これは当然やらなければならぬことなんだ。新聞の論調あるいは社説などを見ましても、これはたてまえとしてそうでなければならぬ。そうでなければ、あなた方が公務員に対してどうこう言うべき筋合いでもないじゃないかというようなことすらいっておるわけです。世論はもう支持しているのです。当然これは最優先にやるべきものなんだ。財源のあるなしにかかわらず、やはりやらなければいけない。そういうものの考え方に対して、いまの大臣答弁というものは全くさか立ちしていると思うのです。どうですか、その点いまのあなたの答えは重大問題です。
  44. 水田三喜男

    水田国務大臣 いや、重大問題ではなくて、これは法律上はそうなっておって、過去においてはやはり資金のないときにはやれないというのでやってきましたが、私どもはそれではいけないから、できるだけ早く財源見通して、そして政府態度をきめたいということであせってまいりました。前にも申しましたように、総理が外遊される前に、自分が帰ってくるまでに財源見通しをつけてくれということで、私どもはそのつもりでやってまいりましたが、総理が帰ってくるまでに、どうもあと何日たってもこうだというはっきりしたものがつかめるかどうかわからないということに考えております。したがって、完全に財源があるからやるとか財源がないからといって全部これはやらぬというふうでは済まされない問題でございますので、正確なものはわからなくても、十五日から一応やってはおりますから、大ざっぱな把握をもとにしてもうきめなければならぬだろうというふうに私は考えておりますので、そう申しただけでございます。
  45. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 総理が帰ってくるのももうあと二、三日のうちであります。それまでには確実に財源見通しを立てられるわけですね。その問題を一つ聞きます。  もう一つは、私どもがいま言っていることは、これは財源のあるなしにかかわらず、とにかく完全に実施するのがたてまえなんだ。しかし、そうは言っても、財源というものもやはり現実の問題として一応ぶつかるようなかっこうに今日なっておる。そういう現実を踏まえたならば、財源見通しをこれくらいだということで、それに基本的な立場としてはかかわる問題ではないのだけれども、とにかく財源というものも一応考慮した立場でやった。ところが、財源がそれ以上最終的にあったという場合には、これは当然やるべきだ、こういう主張をしておるわけです。そういう立場を一ぺんくらいとったっていいじゃないですか。これは当然最優先にやるべきものなんです。その点いかがです。一歩前進する気持ちはないですか。
  46. 水田三喜男

    水田国務大臣 いまの私ども見通しでは、いま見通せる範囲で一ぺんきめておいて、先にいってさらに余裕が出たときにはもう一ぺん考えるというような余裕があるとは思っておりません。と申しますのは、さっき補正要因一つ申し残しましたが、国債の削減の問題もございまして、これも自然増収の中で片づけなければならぬ問題でございますし、これが最終的であるか、またもう一ぺん考えなければいかぬかというような問題も、いま財源の当てがない以上はこの問題も考えられないというところへきておるわけで、私どもはもう一ぺん余裕があったら何をどうするというようなことはいま全然考えておりません。
  47. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 非常に冷酷な御答弁でわれわれは非常に不満であります。したがってこの問題は、こういうことを政府が繰り返しているならば、二十六日における公務員の抗議集会というようなものはこれはもう避けることはできないだろう。何らの誠意がない。ちっとも前進をさせようという気がまえがない。しかも、少なくとも国家公務員に対してスト権まで奪っているその代償として完全に人事院勧告というものは尊重されるべきなんだ、こういうたてまえになっているにもかかわらず、それについて大蔵当局はそういう冷酷な態度をとっているということでは、全く公務員の諸君に対する説得性も何にもないと思うのです。国民全体に対しても、新聞論調にあらわれるような、当然これはもう義務的経費として最優先にやらなければいけないのだ、こういう支持がある問題についてもやらない、そして国民が支持しないようなところに金を使っておられる、こういうようなことでは絶対に国民の納得しないところだと思います。大蔵大臣のさらに再考を促してこの問題についての質問は一応終わりたいと思います。  次の問題に移ります。宮澤企画庁長官にお伺いしたいわけですが、いま毎日問題になっておりますいわゆる財政硬直化に伴う諸問題を解決する方法、あるいは物価安定の方策をも含めてのことだと思いますが、いわゆる宮澤構想なるものが出たわけであります。この中で私ども非常に問題だと思う点を一、二お伺いをいたしたいわけです。  公務員給与の問題と関連をするわけでありますが、前年度の物価上昇分だけを当初予算に組む、こういう構想のようでありますが、これは人事院勧告制度というものとどういうかかわりあいを持つか。人事院がそれに拘束をされて勧告する余地がないということになって、かえって年度じゅう財源問題やなんかのうるさい問題が起きないではないか、こういうお考えのようでありますが、これは単にそういうことだけではなしに、制度の問題としても非常に問題だし、また巷間いわゆるインカムポリシーの導入、所得政策の導入への道を示唆していることではないか、こういう問題もあるわけでありますが、宮澤さんのお考えはいかがでありますか。
  48. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 世上報道されております考え方、私の私案でございまして公のものではございませんので、まずその点を最初にお断わりを申し上げておかなければならないと思います。  それからもう一つ、これは現在の状態にかんがみて明年度、昭和四十三年度に限ってこういうことを考えたらどうか、主としてそういう限定のもとに問題を提起しております点を、これもあらかじめ申し上げておく必要があると思います。したがって、これがインカムポリシーにつながるかどうかといったような問題は、そもそも本来は明年度一年度のことをいっているだけのことでございますから、そういうこととの関連はない、そのようにお考えいただきたいと思います。  しかし、給与についてあのようなことを申しましたのは、ただいまずっと御質問を承っておりましても、まことにごもっともな御質問だと私も思って拝聴しております。つまり、年度の途中で非常に大きな補正要因が毎年例外なく出てくるということになりますと、たまたま自然増収があればよろしゅうございますが、ない場合にはこれにどういうふうに対処するかということの代案の出しようがない。しかも、勧告は尊重しなければならないということでございますから、やりようがないわけでございます。従来幸いにして少しずつ自然増がございましたから対処できましたけれども、これも極端に申せば、当初の歳入見積もりが非常に正確であれば途中で自然増が出るなんということは本来おかしなわけでございます。今後、経済情勢を考えますと、途中で自然増が必ず出るというような保証はないわけでございます。それならば、あらかじめ当初予算給与の増額分を組むかということになりますと、一定しておりませんものを組むことはなかなかむずかしい。かりに人事院なら人事院が予備勧告のようなことでもしてくれればそれを組むということはあるいは可能であるかもしれませんけれども人事院としてはそういう予備勧告というようなことはおできにならないたてまえのように承知しております。そういたしますと、結局問題はまたぐるぐる回ってまいりまして、何か政府が独自の立場に立って一定のものを組んでおくかということになるわけでございますけれども、何ぶんにも問題はかなり重大な問題でございますから、恒久的にどうすべきかということはやはり明年一年いろいろな角度から検討すべきではないだろうか、その検討を待って恒久的な策を立てるべきだと思いますけれども、とりあえず明年度の場合にはそういうふうにしておいたらどうであろうか。これは私としては少しも悪意と申しますか、悪い気持ちで申しているのではないのでありまして、そうしなければ、先ほどからるる御質問のような問題にまた明年もぶつからねばならない、このようなことを危惧しておりますから、あのような私案を関係閣僚に御検討をお願いしているわけでございます。
  49. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 明年度一年の問題について言っていることである。それからいわゆる所得政策というようなものを見通したようなものではないのだ。この問題に触れますとまた蒸し返しになりますからこの程度にしておきます。  次の問題は、いわゆる公共料金ストップのかわりに、財源確保のために減税を明年一年は見送ったらどうかという提言をされているわけであります。私はこれは大蔵大臣にもお伺いしたいわけでありますが、大蔵大臣給与所得等の問題について、少なくとも課税に最低限を百万円まで標準世帯で引き上げる、これは昭和四十四年に実施をいたしたいということをこの委員会で公約をされたわけですね。そうなりますと、明年そういうクッションが一つ入ったとしますと、これを一気に四十四年度で実現するということになるとかなりラジカルな変動が出ると思うのです。そういうことになりますと、やはり宮澤構想といいますか、その提言をそのまま考えますと、少なくとも一年ずれ込んでいく。今日給与所得税が非常に重いという状況の中で耐えがたいことである、こういうように思うのです。むしろ、宮澤さんがほんとう財政硬直化の問題と真剣に取り組み、また物価安定——最近は物価庁だ、物価企画庁だといわれるくらいに物価問題も熱心にやっておられる。また財政硬直化の問題についてもいち早くこういう提言をされたということについては、一応問題と取り組む姿勢において敬意を表する面が多々あるわけであります。しかし、この減税を一年見送るという問題は、これは少なくとも企画庁長官がもっと大胆に——今日最も租税体系を乱して、もはやその政策目的というものがきわめてあいまいである、そういうものが約四千億以上もある。地方税あるいは国税、両者を通じて四千五百億程度の租税特別措置による優遇があるわけです。これの大整理くらいを言うならば、私は、これは非常に意義のある提言であったと思うのですが、これが所得税を中心にした減税をとにかく一年繰り延べるということについては、私どもとしては全く反対でありますし、それは当然やってはならないことだ、こういうふうに思うわけです。大蔵大臣とそれから企画庁長官、お二人にその問題についての見解をこの際お聞きしたい。
  50. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 所得税の免税点を百万円にまでもっていきたいということについては、私ども共通にこいねがっておることでありますし、またぜひそうしなければならないと思います。私ども直接国民生活に関係ある仕事をしておる立場から申しますと、実はその減税はぜひともしてもらいたい、これが絶えざる願いでございます。それにもかかわらずああいうことを申さなければならなかったのは、私自身も実は不本意でございますけれども、これは消費を抑制するとかなんとかいう意味合いでは全然なくて、明年度の財政考えてみますと、おそらく財源がないのではないだろうかというふうに思われます。本来原則論からいえば、鉄道にしましても電話にいたしましても、私はその料金は利用者が負担するのが筋道であるというふうに考えております。ただ、現在の物価情勢が年度後半からかなりしり上がりになりそうに思いますので、そういたしますと、明年度からそういう公共料金が一斉に上がるということがそれにからみまして、かなり心理的に悪い物価上昇を生みやしないかということを心配しておるわけであります。ですから、原則論は利用者が負担すべきだというふうに思いますし、またどの部分までを国庫が、すなわち国民の税金によって負担をし、どの部分から先は利用者が負担するか、あるいは消費者が負担するかといったようなことは、鉄道にしても電話にしても、あるいは米にいたしましても、これは基本的にやはり原則をきめなければならない時期に来ておる、こう考えております。これもしかし大きな問題でありますから、その原則を立てるのに、やはり一年くらいはかかるであろう、こう思いますから、したがって、明年度の場合、物価情勢も考え合わせまして、一応応急措置として、ある程度財政が料金を押えるために助太刀をしてくれないだろうか、こういう考え方、これも一年限りで、その間に原則をひとつ立てようではないかという先ほどと同じ考え方でございます。  そういうふうに考えてまいりますと、片方で国債を相当出しておる。しかも、この国債依存率というものはなるべく逐年下げていかなければならないわけでございます。両方考え合わせますと、どうも公共料金は抑えていくんだ、しかし減税もするんだ、両方できれば国民生活にとってこれほどいいことはございませんけれども、なかなか明年度の財政を具体的に考えますと——両方できればこれにこしたことはありません、しかしできないということであればやむを得ない、不本意ながら一年ぐらい減税というものを国民にがまんしていただくことも場合によっては必要ではないだろうか。もしこれが財政当局のお考えで、いやそう心配しなくても国債もある程度依存率を下げていき、そうして公共料金はじめいろいろな財政需要もまかなってなお余地があるんだ、こういうことであれば、これはもうそれにこしたことはないと思いますが、万一ないときにはそれもやむを得ないではないだろうか。それを私がややむき出しに申しましたのも、何もかにもけっこうずくめということはできないような財政状態になっておるのではないだろうかということを国民に知っていただきたいというような気持ちが少し勝ちましてああいうことを申した。ただ、私は輸出に直接貢献するような減税の方法がもしあれば、やはり現在の引き締めのもとが国際収支の問題でもございますから、これはあればぜひやっていただきたいと思っておりますし、地方税につきましては、住民税などはやはりできれば減税をすべきじゃないだろうか。私が提案いたしました私案では、輸出振興に直接必要なものを除き国税の減税は一年行なわない、しかしこれはできれば行なうにこしたことはないのでございますけれども、もしどうしても財源的にむずかしいのならばそれもやむを得ないのではないだろうか、こんな気持ちで申したわけであります。
  51. 水田三喜男

    水田国務大臣 ただいまの宮澤長官の御意見は、やはり今後十分に検討に値する御意見であると私は考えます。しかし、私のほうは事所得税に関する限り、すでにもうたびたび公約をしてございますし、さっき四十四年ということでしたが、正式な公約は四十五年でございます。そうしてできるだけもっと早く実現するように努力をしたいという気持ちでおることはいまでも変わりございません。問題は、結局来年度の経済見通し基礎にして、財政需要や公債発行規模との関連で明年度の税制をどうするかということをことしの予算編成一つの方針としてきめなければならぬ時期はここ一、二カ月の間でございますので、その間においてそういう問題の検討とあわせてその種の御意見もわれわれは十分検討したいというふうに考えております。
  52. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 どうも、いまでもその考えは変わっていないと言われるところまではいいのですが、その後非常に歯切れが悪くなってしまうのですが、少なくとも四十四年には給与所得税について課税最低限を標準家族で百万円まで下げたいという気持ちに変わりはない、宮澤提言があったけれども、明年所得税減税はやります。こういうお考えを端的にひとつ表明していただきたい。住民税についてもしかりであります。
  53. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま宮澤長官が言われましたように、問題はやはり来年度の財源の問題、公債発行とのからみ合い、そういうような問題できめることだと言っておられるとおりでございまして、この問題によって来年度の減税もきまってまいりますし、ほかの減税が犠牲になってもやはりこの所得税の減税ということについては、——これは御承知のとおり、減税しなければ、しないだけで、それだけでも増税になるという構造になっておりますし、また物価が若干でも上がれば上がっただけは実質増税になる問題でございますからして、所得税の減税というのは私はやはり従来政府の方針どおり、ほかを犠牲にしてもやりたいという考えには変わりございません。
  54. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 あと国債の問題あるいは国際収支の問題、地方交付税の問題等予定をしておりましたが、時間がないものですからこれで終わりたいと思いますが、最後に給与の問題につきまして、地方公務員に対する財源措置、あるいは公営企業に対する財源措置等について、国家公務員と不平等な扱いにならないように善処をしてもらいたい、この希望意見を申し上げまして、私の質問を終わることといたします。
  55. 内田常雄

    内田委員長 広沢賢一君。  広沢君に申し上げますが、経済企画庁長官が午前中で一時退席されますので、経済企画庁長官に対する質問をまず先に進めていただきたいと思います。
  56. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 時間がないからさっそく始めますが、ただいま宮澤長官が、財政硬直化ということを理由に、米価の問題、それから給与の問題、減税、公共料金ストップの措置等については非常に憂慮して触れておりますが、西ドイツの場合、財政硬直化いたしましたときに思い切ってメスをふるった防衛費の問題、それから日本でいえば与野党でやった在外資産の補償の問題、それから海外援助費が非常にふえているとか、公共事業費の中の土地の値上がり部分が非常に響いているとかというような問題については一向に触れないのですね。それから長官は、独占企業の管理価格については、一日物価会議でもってそれに触れておりますが、これも十分に触れていない。というと、どうも今度言われていることが、宮澤さんは非常に心配されて言われたのだと思います。善意だと思いますが、持っていくところ、それから新聞の論調とか、これは全部所得政策とかそういうところにしわ寄せがきている。  そこで、まず所得政策の問題についてもう一回聞きますが、宮澤長官は、所得政策は準備不足、つまり条件ができないからやらないというのか、それとも諸外国でみな失敗しておりますし、それから前に池田前総理も否定的見解を述べられております。所得政策というのは非常に歴史が古くて、何回も蒸し返されておりますが、いま言われた所得政策はやらないのだというのは、これは準備不足なのか、それとも根本的に、やはり学問的にも実際的にも否定的なのか、どちらでございましょうか。
  57. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 所得政策というものの定義がいろいろございますと思いますけれども、ここでは便宜いま世の中でいわれておるような所得政策についての御質問だと、かように解釈いたしまして申し上げますが、所得と生産性との関係といったような問題一つをとりましても、議論の足がかりにいたします資料が実はいままでのところほとんどないわけでございます。ですから、そもそもこの議論をしようにももとのものがございませんので、ことに、たとえば労使間で十分な信頼関係があって、ひとつ話をしてみようかと、かりにそういうことになりましても、ただいまのところでは共通の議論をする資料がないと思います。ですから、そういう意味では、まずそもそも所得政策をやる気かという設問そのものが、私にとっては、どうもそれは不能なことをやる気かという設問のように聞こえるわけでございます。さらに進んで、それだけの資料ができましたといたしましても、十分労働側あるいは使用者側で信頼関係が確立されて、共通の基盤の上でひとつ考えようかというような情勢には、少なくともただいまわが国はございませんし、いつになったらそういうものができるかという見通しもはっきりいたしません。したがって、普通にいわれているような意味でのインカムポリシーというようなものは、可能でもないし、もし無理をしてそういうことをやろうと試みましても、結果は不必要な摩擦を生ずるだけであろう、こう考えております。
  58. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それでは、抽象的な所得政策のことでなくて、具体的にお伺いします。  長官は、来年一年限りでさっき言われた公務員給与所得の問題について措置をしたいと言われています。だから長官の言われているのは、さっき言われたような前年度の消費者物価上昇、これは一年限りだと思うのです。ところが、それともう一つ、自民党の高橋さんが試案を出しております。これはどうやら一年限りではないようです。つまり、引き上げ幅というのは、過去十年間の実質成長率と経済社会発展計画における実質成長率の平均と、それに十年間のベースアップの平均上昇率(定昇を含む)ということで出しております。これはおそらく政府当局と自民党との問で討議されておると思いますが、大体これは計算するとどのくらいになると思いますか。その大体の目安ですね、これが一つです。  それからもう一つは、宮澤長官が言われた、前年度の四・五%ぐらいにとどめるというのは、一年限りの言い方ですけれども、これが制度化されたならば、先ほど大蔵大臣が言われたとおり、補正はやりたくないのだという趣旨から出たとすると、たいへんなことになると思います。なぜならば、民間の賃金が、現在名目賃金が物価上昇の率よりちょっと上がるということはあり得ます。それはけしからぬということは言えないのでして、日本の賃金は、御承知のとおり先進国の中で非常に高度の資本主義、生産性が高い企業が相当ある。そういう高度の経済であるにもかかわらず、ヨーロッパに比べて賃金が非常に低い。これはもう御承知のとおりだと思う。最近、労働力の需給関係で労働力が不足している。そうすれば当然経済法則としてある程度実質賃金が上がります。これは当然のことなんですが、そうすると補正も組まないというようなことになれば、労働力不足からきた経済法則の問題も公務員については無視されるということになる。民間との格差がひどく広がっていくということになる。この是正措置として高橋さんは、やはり人事院勧告は民間との格差がひどくなった場合にはやると言っておられます。そうすると、宮澤さんと高橋さんの御意見、これは一年限りと永久ということで違うわけです。宮澤さんのお考えはどういうところから出たか、お聞きしたいと思います。
  59. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたように、私の考えの基本は、この際一応一年度限りああいうことをやっておいて、そうして一年間にいろいろな従来行なわれてきた制度、慣行について再検討をしようではないか。これは政府ばかりでなく、与党ばかりでなく、国民全部からいろいろな案が出てくることを希望しておるのでございますけれども、たとえば高橋衛参議院議員が言われました案、私、具体的につまびらかにしてはおりませんけれども、そういったようないろいろな提案がこの一年間に出てくることを期待しておるわけでございます。したがって、私の申しましたことと高橋提案との関係で申せば、私はともかくいろんな提案が出るのを、そういう場をこの一年の間に求めようとしておるわけでございますから、高橋さんのお考えもその一つの恒久策であろうかと思います。両方が別に競合関係に立つわけではないように思われるのでございます。私どもは、やはり国民の給与水準が高くなって、そうして投資も行なわれ、消費も行なわれる。それによって経済の規模が拡大して、コストが下がって輸出も可能になるというような政策を基本的に信じておりますので、給与は低いほうがいいというようなふうには本来考えておりません。ただ人事院勧告との関係では、先ほどから何度も申し上げておりますように、年度途中で大きな補正をしないで済むような方法が何かないか、何でもいいが何かないだろうかということについて、この一年間にいろいろな議論が行なわれる、提案がなされることを歓迎いたしたいと思っておるのでございます。
  60. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、予算編成のただ技術上の問題として、補正の幅を少なくするとかそういう点であるとすれば、さっき私が、ある場合には実質賃金の上昇はあり得るそれがほんとうで、働く人は生産性をうんと上げてるんですから。最近生産性を上げても、物価はどんどん上がっているのに比較して賃金が伸びないというんじゃ働きがいがないです。大きな会社はえらいもうけをしている、設備拡張をどんどんやっている。自分たちは能率をあげたって全然だめだということで。宮澤さんさっきうなずいておられました。私はやはり経済を合理的に考えるならば、実質賃金が上がるということは、これは経済の発展に沿って当然だと思うのです。それについて最近、福田幹事長は前の大蔵大臣らしからぬ非科学的な発言をされています。賃上げが物価上昇の原因だと言っておられますが、もともとこの問題は賃上げが物価上昇の原因であるかどうかが前から議論されていると思うのです。最近は労働分配率が企業の中でずっと低目になっております。生産性が上がっております。そういう状況から見れば、企業内から見ましても、これは賃上げが物価上昇の原因でないと思うのです。  それからもう一つは、たとえば賃金の上昇率が生産性を下回ったらば、それならば物価は下がらなきゃならぬ。ところが、昭和二十七年から三十六年にかけて製造業の生産性は九八・八%上昇したのに対して、名目賃金の上昇は八四・四%にとどまって、賃金の上昇率は生産性のそれを下回ったにもかかわらず、その間に物価下落が見られず、卸売り物価は二四%、消費者物価は二七・五%も上昇しているのであるという点を見ますと、私は重要な問題があると思うのです。物価値上げの真犯人は、これは賃金上昇ではないということを実証していると思うのです。企業内においてこの点についてどう思いますか。
  61. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこらはいろいろ問題が実はあるのではないかと思います。製造業の中でも、ことに大企業はさようでございますが、大企業について考えますと、ただいま広沢委員が御指摘のように、生産性上昇のほうが賃金上昇よりも高いということは、概して私はそのとおりだと思っております。ただこれほど労働需給関係が逼迫してまいりますと、おのずから大企業の賃金というものはその他の企業にも波及をいたします。これは新規学校卒業者などをお考えくだされば明らかにさようでございますし、またその賃金が米価決定にも反射をいたすわけでございます。そういたしますと、中小企業であるとか、あるいは農業であるとか、サービス業であるとかいうものは、大企業のように生産性の向上ということがさほど簡単ではございません。非常に卑近な例をたとえば申し上げますと、理髪業で生産性を向上しろと申しましても、これはもう非常に限度のあることでございます。それならば大企業の賃上げが理髪業にも波及をして、そうして理髪代が上がるということは、これはやむを得ないものかどうか。生産性の向上をしろといっても、これはきわめて余地の狭いことです。そう考えるならば、私はそれで問題は割り切れると思うのでございます。しかし、そういうことからくる消費者物価の上昇をそこまで理詰めに考えて、やむを得ないと割り切るだけの理解が一般にあるのかどうかということになりますと、必ずしもそうではない。どうもその辺のところに私はやはり問題があるのではないか。福田幹事長が言われたというふうに伝えられておりますことは、私は、やはり一部そういう事実がある。大きな製造業についてはあるとは思いませんけれども生産性向上はいかに努力しても現実に困難だという部分は、これは明らかに賃金上昇を価格あるいはサービス料金に転嫁せざるを得ないというふうにはどうも規定できないのではないか、こう思います。
  62. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 大企業にはそれがない、中小企業でございますが、ところが中小企業と大企業と比べまして一つ問題なのは、横浜のある大きな電機産業、大企業です。そこに若い女の子が一ぱい働いておりますが、その方々の賃金と、それからおそば屋さんで働いている者を私、日給に直してみたのですが、おそば屋さんのほうが高いですね。それほど需給力が逼迫しておるし、大企業でもって低賃金を強行するところはそうやっているわけです。問題は、それじゃおそば屋さんとか、いま言われました、理髪屋さんですが、これは能率が悪いですね。そうすれば、この中小企業の能率をよくする、農業の能率をよくする、そのために安い金利の資金を立ち行くように貸すということのほうが一番大事だと思うのです。これはもう社会党も中小企業、農業の近代化ということについては大賛成です。そういう点はあと大蔵大臣にも質問をしますが、十分ではない。大企業に対しては開発銀行の平均利子は、どう計算しても、銀行の計算によってもやはり安い。平均年利六分です。ところが、中小企業のほうは環衛公庫ができたとしても、まだ八分二厘ですね。それから特利でもって特別の場合だけということになります。そのほかたくさんの中小企業、これはみんな消費者物価に関係あると思いますが、これについての対策はきわめておざなりと私は見ざるを得ない。そうすると賃上げについては、中小企業の若い方々は、世の中一般の経済法則の中で、それじゃ自分のところは生産能率が悪いから、いつまでたってもみじめな無権利状態、労働強化、それから賃金もがまんしなければならないということになるかというと、それはならぬと思うのです。やはりそれには中小企業の近代化を促進することで段々と賃金格差をなくしていくということが、これが政治だと思います。したがって中小企業の賃金が、これは大企業の高い賃金から波及してきて、それだからだめだ。私はこれが原因だということではないと思うのです。これが一つですね。だからしたがって、この問題、物価対策を真剣にやるならば、大もとは中小企業、農業の近代化に対して、経済企画庁としてどういうような抜本的な対策があるかどうかという問題が一つあると思うのです。  それからもう一つは、やはり中小企業の賃金の引き上げが多少いろいろ消費者物価に関係します。これは一般の人でもやむを得ないと思う場合もある。おふろ屋さんの値上げについて東京都で審査します。そうすると、いろいろ議論した末、ちゃんとしたところに落ちついてきます。そうすると、そのほかに問題はあるかといったら、一番重要なことは、この点お聞きしたいのですが、通貨量と、それから鉱工業生産伸びの割合を見ます。そうすると、昭和三十五年から三十九年にかけて、鉱工業生産は三十五年を一〇〇とすると一六二、それから通貨量は二一四でございます。消費者物価がえらい勢いで上がったのは、高度成長の中での三十五年から分水嶺と一般にいわれています。そうすると、GNPで計算しても、二倍と三倍の開きがあります。そうすると、やはり物の出回りよりも、成長通貨を含めてですが、さらにまた通貨量は多い。これは日銀総裁が結果だからしかたがないと言うのですが、結果だからしかたがないという言い方が、結局無秩序に、物価は来年どのくらい上がるか見当もつかないというのです。社会発展計画ではいろいろ計算しても、その場その場になってしまう。これは資本主義経済につきものだと思いますが、そういう形なんです。そうすると、もっと通貨面、それからオーバーローンとかそれから設備拡張の問題等について、やはりはっきりとした計画的な規制その他のことが行なわれなければ、これはいたしようもない。公共料金をストップしても、この前のとおり一年で、あとでもって爆発するということになると思う。そういう点について、問題の真犯人はそこにあるのではないかという点については、宮澤さんいかがです。
  63. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 物価対策の一つの根本施策は、生産性の低い部門にコストの安い金を流していくことではないかと言われている点については、私そのとおりであると思います。従来もそう考えておりますので、政府としてはそういう施策はできるだけ、不十分ではありますがやってまいりました。これからもやってまいらなければならないと思います。ただその場合に、農業などではそういう施策が、安い農産物の価格になって返ってくるのには、申すまでもなく相当長い時間がかかることを覚悟して、忍耐強く問題に当たらなければならないと思いますし、また、再度申しまして恐縮でございますけれども、たとえば理髪業なんというものは、かりにただの金を貸しましてもどうやって生産性を向上するかということは、ほんとうにもう余地が乏しい。まあ雑に仕事をするというようなことに近い解決しかなくなっておるのではないかと思いますから、それだけのことをいたしましても、片方は時間がかかり、ある部分はやはり問題を根本的に解決することは困難で、自然、価格に転嫁されるということではないかと思います。しかし、御指摘の点は私どももまさに物価対策の基本であるというふうに従来から考えておりますし、ただいまもそう思っております。  通貨量との関係でございますが、確かにもう少し通貨量をしぼることができれば、経済の過度の拡大をある程度押え得るのではないかということは、これはそのとおり言えることだと思います。ただ、やや長期的に過去を振り返ってみると、私は、わが国ほどじょうずに通貨管理が行なわれている国はないのじゃないかというふうに考えております。申し上げるまでもなく、金の保有量も非常に少ないわけでございますから、いわば信用というものの上に経済成長を築いてきたということになります。ほんとうに信用という上に立って経済成長を築いてきた。これはまあ金本位制の論者とかいろいろな人から言えば、本来そういうことはあり得るんだろうかと思うくらい、じょうずに管理通貨政策をやってきたと私は思いますので、それなり、多少の行き過ぎなり、あるいは批判の余地はあろうかと思いますが、私は非常に大づかみに考える限り、わが国の通貨管理というものは今日まで成功してきた、こう考えております。
  64. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 もう宮澤さんの時間がないそうですから、もう一言だけ申します。  物価は先進国の中ではものすごく高い上昇率をしております。そういう点から考えると、これは管理通貨制度は成功していないと思います。  それからもう一つ所得政策の場合に、イギリスでは賃金上昇、生産性上昇の率以上に企業利潤、配当その他が高まった場合には、これを厳重に制約する、税金をかけるとかその他の措置をとるというようなことがありました。これはイギリスの資本家たちが反対して実現しませんでしたが、このようなことで、さっき私が申しました、つまり生産性も賃金の上昇率以上にどんどん上がる、いろいろなことがあっても、なおかつ物価は下がらないという管理価格の問題について、宮澤さんもお触れになっております。これは重要だと思います。たとえば大企業、独占企業と、働く人たちの税金上、金融上の不公平というのは、幾ら塩崎さん説明しても、大衆はなかなか納得しない。だから、そういうことについてぴしっとした態度を出せばやはり相当対話は生まれてくる。こういう問題について一言抽象的には触れられているけれども、それでは具体的にどうやるか、独占価格にどうメスを入れるかということについては、まだ十分本格的な論議になっておりませんが、宮澤さんの御見解を承って、大体宮澤さんに対する質問は終わります。
  65. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはやはり個々の業種について、プライスリーダーたちの問で、何か内々の共同行為のようなものがあるかないかということについて、常に私ども監視を怠ってはならないと思います。そういう行政の基本態度がやはり最も必要だろうと思います。かつては板ガラスについて相当問題がございました。これは一応問題は片づいたように思いますが、たとえば鉄鋼でございますとか、あるいは明年あたりはセメントの設備制限も自由になるのではないかと思いますが、その自由になり方がはたしてほんとうに自由になっていくかどうかというような、個々の業界の内部における法律上許されないような種類の共同行為というものに、やはり常に行政が監視をしていくということが根本になければならないと思っております。
  66. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それでは大蔵大臣質問いたします。  先ほど広瀬委員から言ったのですが、労働省はもちろん、それから大蔵省が、いろいろ所得政策の動きに対して、減税ストップについて新聞発表をされて、はっきりとした主張をされたことは、当然でございましょうけれども敬意に値します。そこで、減税の幅の問題ですが、大体物価上昇程度を調節するという減税以上に、公約どおり百万円までの課税標準の引き上げということについてどこまで努力するのか。新聞にはいろいろ出ておりますが、大体の構想をお示しいただきたい。
  67. 水田三喜男

    水田国務大臣 まだ来年度の予算編成方針というものをきめるところまでいっておりませんので、したがって、来年度の税制をどう扱うかというようなことについて、目下大蔵省では全く意見がまとまっていないという現状でございます。
  68. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 けれども、新聞ではもう出ておりますね。四十三年度は十万円だけ引き上げるということが出ておりますね。それで減収分は一千二百億円だ。ただしそのかわりに酒、たばこの間接税の増徴をやる考えだということを毎日新聞で宣伝しておりますが、これは学問的にいろいろ見ればわかると思いますが、実際の国民生活から見ればむしろ改悪じゃないか。というのは、物価調整にちょっと毛のはえたくらいをやって、あと累進性のない間接税増徴に力点を置いていくということでは、国民にとって、負担能力に応じての税制という点では、これは間違った方向じゃないかと思いますが、どうでしょう。
  69. 水田三喜男

    水田国務大臣 いまのお話も、まだ財政当局としてきめた意見でも何でもいまのところございません。
  70. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、新聞に毎日出ていることはうそですか。スクープしたのですか。
  71. 水田三喜男

    水田国務大臣 どこから出たのか、大蔵省はとんと知っていません。
  72. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そういうことならば、自然増収のさっきの問題と同じで、水かけ論で、ここからは対話は生まれないと思うのですよ。  それでは、ちょっときつい点をお聞きしますが、先ほど防衛費の問題に触れましたけれども、西ドイツとしては、財政硬直化の危機に際して、防衛費まで触れて、経済安定成長法というものを出してようやく乗り切ろうとした。時期はおそかったけれども、りっぱなことであると大蔵省資料説明に来た方から承りました。もしかそこまで財政硬直化の危機が進んでいるならたいへんだ。宮澤さんはじめ非常事態宣言をやられるほどでしたならば、やはり第三次防の二兆三千六百五十億のその年次を三年なり四年なり引き延ばして、財政硬直化のいろいろなものを乗り越えたときに、また新しくいろいろ組み直す、これは自民党の立場から考えると、保守党の立場から考えると、そういうことは考えられますが、そういうことについては理論上どう思われますか。
  73. 水田三喜男

    水田国務大臣 ドイツの財政で見ますと、国防費というものは予算の二六%を占めている。したがって、財政硬直化の問題が起こりましたら、当然国防費の問題が一番大きい問題になると思うのですが、日本におきましては、この国防費というものは予算の七%ちょっとという率でございますので、財政硬直の問題について私どもが今後いろいろ考えるというときに、当然国防費の問題も出てくると思いますが、ドイツの取り扱い方とは比重が全然違うというふうに考えております。一〇広沢(賢)委員 それだったならば、社会保障費が、イギリスその他先進資本主義国と比べてどのくらい低いか、大蔵大臣よくおわかりだと思うのです。問題は、私が言っているのは、戦車やジェットの何十台か先に繰り延べたって、日本の安全に変わりないと思うのです。問題は、そういう自分の都合のいいときにだけ外国との比較を出してきて、社会保障のときは知らぬ顔をするというのじゃだめだ。やはりそのくらいの意気を示せば、ほんとうに一緒になって考えようという気持ちが生まれるから、こういう一つの例として申し上げたのです。いつものとおりの人のいい大蔵大臣にしては、全く人が悪いというか、かたいだけです。そこからは対話は生まれないと思うのです。  たとえば防衛費では、四十二年度当初が三千七百五十七億円、四十三年度の要求が四千三百四十五億円くらい、増額が五百八十七億円だから、これはもうたいへんな硬直化の原因です。日本の予算規模で見れば、硬直化の原因です。  その次にお聞きしたいのは海外援助費の問題ですが、ドルがいま非常に不足している。二十億ドルを割ったということで大騒ぎをしている。それで引き締めなどが生まれたわけです。このやさきで、ことしになって今度は諸外国にどんどんばらまいておりますが、これについてどれくらいの総額になるのか、それからどういう国にいっているのか、お知らせ願いたいと思います。海外援助費です。
  74. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のように、先進国は国民総生産の一%くらいを開発途上国に援助しようということになっております。日本もこれに賛成して、できるだけそうしたいと努力しておりますが、いまのところ、まだ〇・六何%という程度の対外援助をやっているということでございまして、まだ一%というところまではいっておりませんが、昨年の対外援助の総計は五億三千八百万ドル、対国民総生産比を見ますと、〇・六九という比率でございます。いまの日本の対外援助費は大体この程度のものでございます。
  75. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それでは、これがどういうようにどこの国へ、たとえば一般会計を通じてなり、もしくは開発銀行を通じてなりどういうふうに出たかをお聞きしたいと思います。
  76. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま間違った数字ですが、私は〇・六九と言ったつもりですが、何か〇・六何%と申したそうですか、〇・六九%でございます。この具体的な内訳は、国別には、いままでこういうところでは正式に発表しておりません。
  77. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 これは時間がないが、重要な問題だと思うのです。どうしてかというと、大体の予測では、私の調べたところ、いろいろなところから集めて得たところでは、今後非常に増加するであろう、開発銀行だけで四十二年の二倍、四千二百億円にのぼるのではないかと言われておりますが、これは事実かどうか。つまり資料をお互いに交換しないで、お役所が全部閉鎖したままでやったのだったら、これはたいへん非民主的な問題ですから、われわれは資料要求をします。そのくらいたいへんなお金を今後もどんどん出していく方向にある。いま大蔵大臣が言った一%まで、これは目標だといって、新聞でも出ておりますが、諸外国と約束し、出している。ところが、たとえばベトナムの平定援助というのがある。平定というのは平らにおさめる、鎮圧、たとえば農業開発へ出すにしても平定計画、こういうものに出す。佐藤さんが向こうに行けば、約束はもっとどんどん出ていく。来年はたいへんなものになるかもしれません。そうすると、日本の国内で財政硬直化で、財源難だということでさっきあんなに心配していた、それからドルが不足しているという問題が起きている。そういう問題が起きているときに、こういう反共軍事国家とよく新聞では出ておりますが、そういうところにばかりばんばんばらまくことがいいかどうか。数年後、十年後になってからえらい恥をかいたり、それから後悔したりするようなことがないだろうかということです。こういう点で、私どもは今後これを資料要求をして、この問題について深く分析したいと思うのです。詳しくは資料がなければやれない。ですから、これは次の機会に譲ります。  それから今度は、金の貸し方、金融の問題についてお聞きします。これは大蔵省を応援するのだと思いますが、環衛公庫というのができました。この環衛公庫についてこの前銀行局長さんにいろいろお話を申し上げましたが、この環衛公庫というものができて、その次に今度はさらにまた先日の新聞では農林省関係の食品公庫というのができそうだというのですが、前に医療公庫ができました。ぼこぼこできますが、こういう傾向について、大蔵大臣金融全部を所管する責任者としてどうお考えになりますか。
  78. 水田三喜男

    水田国務大臣 いまお話しのような農林関係の公庫の要求はまだ出ておりませんが、しかし、そういう傾向ということは好ましいものではございませんので、私は、もうこの種の公庫としましたらこの環衛公庫を最後にしたいというふうに考えています。
  79. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それはりっぱなあれで、すぱっとそれで言い切りましたから、このお約束は私はしっかと皆さんにお伝えします。  そうすると、もう一つあります。いままでの環衛公庫についての所管ですが、これは国民金融公庫がいろいろ世話されています。ところが、この国民金融公庫のいろいろの方々からも注意があったのですが、環衛公庫はどういうことをやっているんだろう。ここに日本料飲社交連合新聞という新聞があります。ここで自民党の中野四郎さんが答弁しております。環衛公庫の対象に対してどんどん拡大してもらいたい、一千万円のワクも突破してくれ、ああそうかそうか。その次にバーのホステスも対象にしているというのですね。そうすると、環衛公庫ができたのは、私どもがやっぱりやむを得ないというふうに考えた理由は、国民金融公庫のワクが少ない、したがって利子も比較的に高い、回転期間もしたがってワクが少ないからどんどん早くしなければならぬというところで、非常に皆さんの御不満があって、それで環衛公庫で特利の一つの別ワクができた。これは好ましくないと大蔵省は言われたのですが、それならばこれはやはり大蔵省の責任ではないかと思うのです。それでまずお聞きしたいのは、バーのホステスを対象にする、こういうことにどんどん拡大していくならば、次第にキャバレーも特利のワクに入ってしまうということになったらたいへんなことになると思うのです。環衛公庫というのは、やはり零細なほんとうの環境衛生に努力しておられる方々、おふろ屋さんとかさっき言われた理髪屋さんとか、そこに貸すのが主眼なんだけれども、どうも今度のワクや何かの話ではバーのホステスとかキャバレーとか、一番初めに旅館業にいきそうな気がします。これでは本末転倒だと思いますが、これについてどう思いますか。
  80. 澄田智

    ○澄田説明員 やや技術的な点もございますので、私のほうからお答え申し上げます。  環衛金融公庫は、御承知のように環境衛生という非常に特殊な業態に対しまして、衛生的な見地もありますし、またその事業を近代化をするという趣旨もあって設けられたものでありますが、ただいま言われました飲食店営業とかこれに類する喫茶店営業、こういったものについてバーの例をあげてお話がございましたが、この点は初めから大衆的な事業というものを対象とするということに相なっておりまして、この点は衆議院の社会労働委員会の附帯決議においても、「大衆的でない事業に対しては貸付を規制すること。」そういう附帯決議をいただいているわけで、当然環衛公庫の融資対象等についても一番これは基本的な線といたしまして留意をして運営をする、こういうことになっています。内容は特定の設備というものを対象とすることになっておりますし、いまお話しのような点についてはそういうふうなほうに拡張をされるというような点は、われわれとしては最も慎むべきことである。かように存じております。
  81. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 ところが、たとえばこの新聞に麗々しく書いてありますが、斎藤さんという方で、名前を言っちゃ悪いですが、「こんどの公庫の融資条件に、大衆的でない事業には貸し出しを規制するという一項が入っているが、これは絶対に除いてもらわねば、業界の健全な成長は望めない。」と書いてあるんですが、こういう要望といろんなものがどんどん出てくるんです。そうすると、それはいろいろねらっておる方々のねらいがあると思いますが、そういうところが今後、たとえば環境公庫債をつくって、おれたちがお金を出した、だからひとつおれたちのほうへ優先的に回してくれということ。それから組合の幹部の方々が相談して融資先その他について口をいれてくる。キャバレー等大資本を要するもので一千万円の貸し付け限度を取り払う運動が起きている。いま言いました。そうすると、国民金融公庫は政府系三金融機関で大蔵省のあれを受けておりますから非常にまじめです。一生懸命零細企業のためにやろうとしておる。これがじゃまになる。はずせといってくる。そうすると、自民党にも働きかけてくるということになると思う。そうすると、これはだんだんと自民党その他の圧力から大蔵省が負けるという可能性が出ると思うが、その際に断固として大蔵大臣ががんばるという以外にないと思いますけれども大蔵大臣として、これを大蔵省のいい慣例としてぴしっと確立していただきたいと思いますが、どうでしょう。
  82. 澄田智

    ○澄田説明員 大蔵大臣からお答え申し上げます前に、いまお触れになりました点に私からお答え申し上げます。  環衛公庫が公庫債を出して、そうして関係の業界でこれを引き受けるというような考え方が一部にあることは私ども承知いたしております。ただこの点は、政府金融機関がこのようなたぐいの縁故債を出して、そうして関係業界で引き受ける、それであるからまた業界のほうにその金が還元されて融資を受けるというような形を考えるとするならば、これは金融秩序の上においてもはなはだおもしろくないことでございまして、そういうようなことは毛頭考えておりません。
  83. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 いまの答弁も、大蔵大臣答弁される前にはっきりしましたので非常に満足しましたが、ただ一つ大蔵大臣にお聞きしたい。  この間澄田さんにこういう質問をしたのです。国民金融公庫や中小企業金融公庫は非常に大事です。中小企業の働きでもって国の富が、大体四割以上付加価値が出ております。これは御承知のとおり。さっき言ったように、物価問題でも中小企業の近代化が必要である。そのために資金がほしい。これはたいへんな需要です。倒産も、賃金が上がったのではなくて資金その他融通手形などで倒産する。そうすると、輸出入銀行と開発銀行と国民金融公庫、中小企業金融公庫を比較すると、資本金のワクがけた違いだ。一つは大体三千五百億くらい、国民金融公庫や何かの大多数の人たちが欲するものが二百億程度、これはおかしいじゃないかというので、澄田さんもおかしいと認められたと思うのですが、そこで澄田さんもいろいろ言われました。たとえば資本金と金利と貸し付け条件は関連がないといったような大体そういう苦しい答弁をされましたが、いろいろな方が調べてみた結果、ここにあります資本金と貸し付け金利、貸し付け期間の相関表というようなものをつくってやりました。そうすると、資本金の貸し付け残高に占める割合は、日本開発銀行は資本金が二千三百三十九億、割合が一九・八%、平均年利が五・七%、平均の貸し付け期間が一八・八六年、ところが国民金融公庫は、二百億の資本金で割合が五・八、平均年利が八・二分ですよ。それから平均貸し付け期間がわずかの一・三三年ということになるのです。あとで今度また詳しく澄田さんともいろいろやりますが、大臣にお伺いしたいのです。つまり、資本金を増額しなければいけないじゃないか。ことに開発銀行は中小企業関係ではない。輸出入銀行もそうです。そこが安い利子で、輸出入銀行は平均年利が四分になっています。この計算方法もきちっとしております。そうすると、やはり本末転倒しておるのじゃないか。だから、資本金の額をどうしても増額しなければならぬ。公庫総裁も切実な声でこの間それの増額を要求していました。資本金を増額しないと貸し付けワクだけふやしてもだめなんです。金利が安くならない。年限もでかくならない。これはおわかりになると思うのです。澄田さんが御答弁しなくても、大蔵大臣よくおわかりになると思いますから、それについては名大蔵大臣の大きな政治力を発揮して、中小企業金融公庫とそれから国民金融公庫はこの際資本金を大きく増額する。そうすれば価物問題の解決にも大きく前進すると思うのです。賃金格差も縮まる、非常に日本がよくなると思うのですが、資本金の増額についてどういうふうにお考えになりますか。
  84. 水田三喜男

    水田国務大臣 いままで国民金融公庫の貸し付け規模は、御承知のように年々二割くらいずつふえてきております。そして貸し付けの条件については、期間の問題にしろ貸し付け金利の問題にしろ、もう何回も機会があるごとに条件を緩和する方向できておりますが、現状から見ますと、いまの資金コストではこれ以上の金利低下ということはできないのじゃないかというふうに考えております。いまの資金コストではそういうふうに考えられますので、もう一歩この条件をよくしようということを考えるのでしたら、やはり資本金の問題にまで入らなければいけないのじゃないかというふうにも考えていまして、この点は来年度の予算編成というようなときにわれわれも十分考えてみたいと思っております。
  85. 澄田智

    ○澄田説明員 ただいまの大臣からの御答弁をちょっと補足さしていただきますが、この前も広沢委員の御質問がございましたが、公庫の出資金はやはり公庫の基本財産という性格でございます。資金コストの点はいろいろな方式がございまして、出資をするということもございますし、また金利の差を補給金という形で支給するというやり方もございます。財政硬直化もいろいろ言われておりますが、財政状況等にもよってその点はいろいろの考え方があるわけでありまして、出資金の金額と貸し出し金利の条件というものとは直接の関係はない、こういうことも言えるわけでございます。そういう点でちょっと補足さしていただきます。
  86. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 大蔵大臣がそう言っておるのだから、澄田さんともあろう理性的な方がそんなに口を出さなくてもいいです。せっかくそこまできたのだから。それで、大蔵大臣は資本金の増額が非常に問題だ、こういうふうにちゃんと言われまして、次の予算でやると言われておりますから、私もこれに大いに期待して——大体開発銀行、輸出入銀行の平均年利四分までいけば一番いいのです。そこまで中小企業にやれば、そこで初めて公平な政治といえると思うのです。ひとつよろしくお願いいたします。
  87. 内田常雄

    内田委員長 この際、三十分間休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      ————◇—————    午後一時十三分開議
  88. 藤井勝志

    ○藤井委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質問を続行いたします。竹本孫一君。
  89. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、大臣に特に景気調整を必然ならしめた諸般の事情についていろいろお尋ねしてみたい、また今後のあり方についても御質問いたしたいと思います。  私は、選挙のあとの最初の大蔵委員会、三月十八日の速記録をここに持っておりますが、そのときにも申し上げたし、またたびたび予算委員会大蔵委員会においても申し上げておるのでございますけれども、大体日本の財政運営の基本的なものには大きな欠陥があるのではないか。一つは、長期財政計画というものをほとんど持っていないということであります。一つは、その関係でありましょうけれども財政は毎年膨張に次ぐに膨張をもってしておる。これでは経費のむだが自然にそこに大きく入ってくることも当然でございますし、また経済運営全体の計画性を混乱せしめることも心配であるという立場に立って常に質問、討論をやってまいりました。事実、わが国の財政、一般会計の膨張率を見ましても、昭和三十二年以来毎年、あるいは一〇%あるいは一五%、三十六年、三十七年のごときは二四%以上の財政膨張々やっております。最近になりましても、一七%前後の膨張率であり、ことしも約一六%に近いものである。こういうような財政の膨張に次ぐに膨張をもってしたのでは、日本の財政、経済、やがては必ず行き詰まるであろうということを心配しておったわけであります。そこで、大臣に私は、三月十八日にもいろいろお伺いしたのでございますけれども、そのときの大臣答弁を速記録によって、きょうは一、二お尋ねをしてみたいと思います。  まず最初に、大臣財政の重要性についてはこういうふうにおっしゃっております。「国の財政の力によって、景気というものはよくすることも悪くすることもできるといわれておりますし、また、現にそうだと思いますので、したがって、私ども財政を今後どう運営するかというのがきわめて大切だと思っております。」すなわち、財政の主導型と申しますか、あるいは財政の主導のもとにそのインフルエンスがいかに大きいかということを、大臣は十分に、景気のよしあしに大きな影響があるということを認めておられるわけであります。そこで私は、ことしの予算が組まれましたときに、「よく五兆円を食いとめた」というごろ合わせがあったようでございますけれども、そのことに関連をいたしまして、大体、私は五兆円予算というものは大き過ぎるのだという見地に立ちましていろいろと質問をいたしました。  そこで、まず大臣にひとつお伺いをしたいのでございますが、大臣のそのときの答弁にこういうのがあります。「結局五兆円以内におさまったということは、やはり私どもとしてはよくやったというふうに思っております。」すなわち、この五兆円予算は適正規模であるという御議論でございました。よくやったということでありますけれども、その後の運営の実績を見て、大臣は依然同じお考えを持っておられるかどうかを、まず伺いたいと思います。
  90. 水田三喜男

    水田国務大臣 予算の最初の編成のとき御説明申しましたように、私どもの苦心した点は、この財政の支出の伸びをできるだけ経済成長率を下回るものにしたいということを考えて、財政投融資、それから地方財政、国の予算、こういう全体としての財政支出を、当時予想された経済成長率一三・四%以下にするということで一二・八%に圧縮したということは、予算編成に相当気をつけて警戒的立場をとったものだと、当時としては私ども考えておりました。また、予算のワクを、そういうふうに警戒的、中立的にするだけじゃなくて、その執行においても、経済情勢の推移に見合って弾力的な運営をするということも最初の方針として予算編成をいたしましたが、その後の経済の動きを見まして、御承知のとおりのいろいろな調整策を財政策の上でも私どもはとってまいりました。しかし、いまのところは、当時の予算の規模をまだ圧縮するところまではいっておりません。税収に見合って予定した国債の発行を削減するとかいうようないろいろなことはやっておりますし、また、公共事業費の繰り延べということをやっておりますが、これは、最後には結局予算の削減ということになるかどうかわかりませんが、いまのところはまだそこまでの措置をとっていないというようなことから見ましても、予算の規模があの当時過大であったからいまのような事態が出てきているというふうにも、いまのところ、私ども考えておりません。当時私どもが言いましたように、けっこう最初から予算規模は締めてかかったというふうにいまでも私ども考えております。
  91. 竹本孫一

    ○竹本委員 大臣のお立場も一応了解できますけれども、しかし、来年度の予算編成、あるいは補正予算編成などいろいろの問題があとに続いておりますので、この際、日本経済の実態についての認識というものは明確にしておかなければならぬと思いますので、もう一度お伺いをいたします。  ただいまの答弁では、大臣は、当時としてはとか、予想された経済の動き等から見れば過大ではなかったとか、こういうような御答弁でございますけれども、しかし、予想というのは、一年を何々年度の経済の見通しとちゃんと政府の声明にも書いてあるのですから、一年間を見通すわけでございますから、やはり当時だけではなくて、当時考えられた一年間の見通しでなければ問題にならぬと思うのです。そういう意味から考えまして、いま何だか少し詭弁ではないかもしらぬけれども、ことばを巧みに、繰り延べをしたので圧縮はまだきまってはいないのだから、規模は大きかったのではないというようなお考えで、答弁としては巧妙な答弁かもしれませんけれども、実態から見て、三千億円の繰り延べは実際上はもう圧縮に近いものであると私は思いますが、これはまだ圧縮はきまっていないのだから、場合によってはもとに返る、繰り延べは圧縮ではないのだとはっきり言えるようなお考えでございますか。
  92. 水田三喜男

    水田国務大臣 繰り延べでございますので、いずれにしましても、これは圧縮しない以上は将来に繰り延べられる問題でございまして、今年度として見たら、どこまでが事実上の削減になるかということは、いまのところはまだ見当はつきません。
  93. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、この繰り延べは圧縮に近いものである、また、事実上これが繰り延べとして最後までいくということはほとんど不可能で、圧縮になると思っておりますが、その問題はまた事実が証明するでありましょうから、証明されたときにもう一度よく議論をいたしましょう。  いずれにいたしましても、政府の九月五日の閣議決定、あるいは九月一日の公定歩合の引き上げといったような問題は、経済財政政策の大きな転換と申しますか、転進と申しますか、そういうものであることだけは間違いないと思いますが、それにもかかわらず、水田国務大臣としての御答弁にはこういうことも書いてあります。やはり速記録によりますが、「五兆円というのは、単純なめどというのではございませんで、相当科学的な根拠を持っておる数字だと私は思います。」こういうことが書いてある。そういう御答弁でございました。科学的な根拠がはたして十分であったか、政治的な判断がはたして的確であったかということは、これからの議論を展開する上においても重要なものでございますが、そういう意味でやはりそのときの判断は、必ずしも政治的に見ても的確な判断ではなかった。それから科学的に見れば、私はその当時にも実はいろいろ質問の中で申しましたが、たとえば生産力に非常な余裕がある場合には、財政が相当膨張に次ぐ膨張を続けてもそれは意味がある。しかし、現実に生産力に余裕があるのか、また、全体の資金需給のバランスの中で財政がこれだけふくらむ、また、公債をこれだけ出していくということは無理があるのではないかということを、やや、それこそ科学的根拠に基づいて私は質問をいたしました。そのときに、ここにもありますが、宮沢政府委員は、「たとえば、粗鋼につきましては、昨年の稼働率は大体七〇%くらいでございますが、ごく最近の稼働率はこれが九三%という程度になっております。」というところから始まりまして、すべての操業率、稼働率というものがもうほとんどフルにきておるということを、同じく三月十八日に、宮沢政府委員経済企画庁のほうから答弁がありました。したがって、生産力には弔うあまり余裕はない。その上、五兆円予算を組み、政府の財貨サービス購入が全体で八兆三千億円ということになれば、それは必ず物価のむちゃくちゃな上昇を見るようになるか、あるいは資金の需給のバランスをこわして公債の値下がりを見るか、あるいは国際収支に大きなマイナスが出るか、必ずそういうところにうみが出てくる、矛盾が爆発してくる、かように私は考えたから、五兆円予算というものはいささか大き過ぎはしないかという意味質問をいたしました。そうして、それに対する答弁として、大臣は、科学的根拠があるのだということまでおっしゃったのだけれども、一体科学的根拠とは何をさして言われたのであるかをもう一度あらためて伺いたいと思います。
  94. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは、当時たびたび申しましたように、いま申しましたような見地からのワク組み、それから来年度の経済成長率を一定に見て、そうして、それからくる税収見込みというようなものとの関連で財政需要をどういうふうに調整するかというようないろいろな角度から、大体五兆円以内というものが適正な規模ではないかということを私どもはきめたわけでございまして、五兆円以内にきめたということは、私は、やはり相当意義を持っておったというように考えております。
  95. 竹本孫一

    ○竹本委員 ただいまの御答弁の中で、具体的なことは、経済の上昇率を見てということだけでございまして、あとは、いろいろなとか、その他、その他で、さっぱり科学的ではないと思うのですけれども、やはり科学的な根拠があってわれわれは五兆円予算はだいじょうぶ組めるのだ、これが消化できるのだという御答弁があったのですから、本来ならば、いかなる科学的根拠か、ただに経済の上昇率が幾らありましても、それ以上に需要の上昇率が出てくる、また、現実に稼働率がこんなに行き詰まっておるということをもう少し解明しなければならぬと思いますが、時間の都合もありますので、一応私は五兆円予算はどうも大きかった、大きかったから、それが繰り延べという形であるにせよ、三千億円をいま削って、そのほかに公定歩合を一厘上げなければならないことになったのだ、したがって、もしそのときに科学的な根拠があったと言われるならば、その科学的根拠はきわめて不十分なものであったということが言えると思うのであります。この点は、もう少し率直に反省をされた上でこれからの議論を展開していただきませんと、大体あれはその当時としてはもっともであった、十分な科学的根拠があった、しかし、いまは情勢が違う、こういうような説明でいかれたのでは、一体、国民はどこまでついていけばいいのかということになって、非常に国民を惑わしてしまうのではないかと思います。  そこで、国際収支の問題を大臣にひとつ御質問いたしたいと思いますが、これにつきましても、国内経済が過熱したのではないけれども、たまたま国際収支が悪くなってちょっとうまくいかないので三千億円削ってみたり、公定歩合を上げたりするというような意見もあれば、あるいは説明もあるわけでございますが、先ほど申しました生産力に余力があるかどうかということが、単なる経済の上昇率よりも大きな問題だと思います。もちろん、私は、生産力というものは政治のかじの取り方では幾らでもふくれ上がる力、潜在的な力を持っておると思いますから、生産力に対して悲観論を持っておるわけではありませんが、しかし、現実に与えられた条件の中での生産力に余裕がないのに財政ばかりふくらましてもだめだという意見で私は一貫しておるわけでございますが、そういう立場から見て、今度の景気調整と申しますか、金融引き締めと申しますか、その政策転換をやられたのは国際収支だけが理由であるのか、あるいはそれの重大なる要素として国内に過熱があった、あるいは国内は過熱しそうであるという国内経済の矛盾から政策転換をやられたのであるか、どっちがほんとうの理由であるかということについての大臣のお考えを承りたいと思います。
  96. 水田三喜男

    水田国務大臣 それは両方とも関連のある問題でございまして、経済の伸び方がなだらかに伸びるか急テンポに伸びるかという問題でございますが、当初予想したよりは伸び方が急テンポだった、鉱工業生産指数が年率二〇%という形でいきますので、これを放置しておけばやはり国内で過熱状態が起こる、まずそれは防がなければならぬということが一つと、そういうふうに鉱工業生産伸びて、需要がこれに伴っていくという形になりますと、これをささえるものは輸入増でございますし、また内需がそれだけ旺盛になってくれば輸出が鈍化するということも当然でございますので、そこで国際収支の壁に当然ぶつかるという二つの問題が関連した問題でございますし、これを避けて、もう少し安定的な成長にしよう、そのためには総需要を相当ここで圧縮するいろいろな財政金融政策をとる必要がある、こういうことからとった措置ということでございます。
  97. 竹本孫一

    ○竹本委員 大臣いま、急テンポに経済が伸びた、そのとおりでございますが、私が先ほど指摘したのは、急テンポに経済が伸びた、上昇をした、その原因をつくったのは、これは大臣の御答弁にありますように、大きな力を持つ財政、その財政がかくのごとく五兆円予算を組んで、膨大な予算を組んだということに原因があるということを言っているわけであります。しかし、これはポイントを変えまして、国内の急テンポな経済生産の上昇ということも大きな原因であるということが大臣の御答弁でわかりましたので、次へ進みます。  そこで、私がお伺いしたいことは、ことしの景気調整といいますか、金融引き締めの際に、政府としては、このまま経済が急テンポで上昇し拡大していったならば、国際収支の上では赤字がどのくらい出てくると考えられたのか。五億ドルという説もある。七億ドルという説もある。政府としては大体どのくらいという見当をつけられてこれはたいへんだということになったのであるか、その辺伺いたいと思います。
  98. 水田三喜男

    水田国務大臣 もしあのままでいったら、最後に国際収支の赤字の累積はどのくらいになるかということについては、これは政府の中でも関係省の見方が必ずしも一致しておりませんし、また外部の見方もそれぞれ違っておりまして、政府としてはこれくらいという数字はございませんが、四月からこの引き締め政策をとるまでの赤字は大体二億三千万ドル、一月から見ますと赤字が五億一千万ドルをこえているということでございましたので、この赤字基調が続くとしますと、いまおっしゃられるように八億ドルとかというような赤字も出かねないということは一応考えられますので、いずれにしましても、ここでこの国際収支の赤字基調を変えていかなければならぬというために、このいろいろな政策は必要だ。もしそれがうまくいって変えられるとするなら、もうこれは来年五億ドル以内の赤字にとどめることができるだろう。それ以下になるということでしたら、そうこれは致命的なことではございませんので、私どもは外貨の金繰りに困るという事態も避けられるというふうに考えまして、できるだけ五億ドル以内の赤字にしたいというのが、まあ当時の大ざっぱな考え方でございますが、そのとき幾ら赤字が出るだろうというような見通しは、いま言ったように各省ともみんな意見が違って、一致したものは当時ございませんでした。
  99. 竹本孫一

    ○竹本委員 経済企画庁の長官がいませんから残念でございますが、しかし、いずれにしても大きな政策転換をやる場合に、原因は大臣がいまお話しになりました直接、国内の過熱もあるし、国際収支の赤字もありますが、当面の努力目標は国際収支の赤字。この場合にいろいろ御議論があったということもよくわかりますけれども、大体しかし、赤字基調をあのまま、八月までの態勢を九月以降続けていったならばどのくらいの赤字が出るかということについては、最終的には一応意見を政府としてまとめられなかったならば、今後の景気調整の手段、方法について、あるいは程度についていろいろ議論がみな分かれてくるのではないかと思うのです。でありますから、われわれがこれから政策論議をやる場合にも、大体の赤字はいままで五億ドル出た、しかし、このままでいけば七億ドルなら七億ドル出るのだ、あるいは八億ドル出るのだ、いや五億ドルでとどまるんだという議論がいろいろあったことはよくわかりますけれども政府としての考えは大体この辺にめどを置いて、だから政策転換を考えたんだ、こういうことでないと、これからの議論のしようがないと思うのです。少なくとも大臣はどの意見をお持ちでおられたのですか、大体当時赤字は。これは過去の問題ですからはっきり言っていただいてもけっこうだろうと思います。九月に政策転換をやらなかったならば、大体どのくらいの赤字が出るという見通しのもとに政策転換をやったんだということを言っていただかなければ、それでは公定歩合の一厘の引き上げが正しかったかどうか、三千億円削ったのが正しかったのかどうか、これの議論ができないと思うのです。  それで、経済企画庁もお見えになったようでありますから、大臣としてはどの程度に赤字を一応想定されて、それで三千億という数字が出たのか。経済企画庁としてはどの程度に問題を見られたのか。九月の政策転換をやられた場合のその動機、目標はいずれもこの赤字が何億ドルであるかということがぼくは中心的な課題だと思うのですけれども、それについての明確な御答弁を願いたいと思います。
  100. 水田三喜男

    水田国務大臣 あまり明確な答弁がこれはできません。というのは、いまこれだけの引き締め政策をとっても今年度の最後の赤字がどういうふうになるかということはまだわからない。ということは、非常に不確定な要素をたくさん持っておりまして、たとえば欧州の経済の立ち直り、アメリカ経済の立ち直りがどういうふうな方向をとるか、これいかんによってすぐにこの数字は狂ってしまうものでございますので、私どもはこういう場合にはこう、ああいう場合にはああというふうに幾通りも前提を置いた推定をやっておりますが、その前提のしかたによって数字がみんなまちまちで、これで正しいだろうというようなものは、当然各省間でもいろいろ一応の意見はみな持っておりますが、最後にこうだという統一的な見方を立てることはむずかしかった。しかし、いずれにしましても、この一月から出ておる赤字をこれ以上にふやさない、その範囲内にとどめる政策が必要だということでああいう政策をとりましたので、私どもの目標は、少なくとも年度を通じた赤字は五億ドル以内にこれをおさめなければならぬというのが、目標といえば一つの目標だったということが言えると思います。
  101. 赤沢璋一

    ○赤沢説明員 九月に引き締めをいたします前の各種の指標というのは、御存じのように七月までの通関その他の統計が出ておりまして、それをもとに議論いたしたわけでございます。いま大蔵大臣からも御説明がございましたように、各省それぞれの見方がございまして、何億何千万という統一的なものは出ておりません。ただ、企画庁といたしましては、八月の下旬に行なわれました経済審議会の部会の席上におきまして、各種の意見を総合してみると、大体五ないし七億ドル程度の赤字ではあるまいか、こういう一つの推定を、当時の担当局長が申しておるだけでございます。
  102. 竹本孫一

    ○竹本委員 事情の複雑なこともよくわかりますが、不確定な要素が多い。もちろん不確定な要素ばかりでありますけれども、それに対する結論と見解がまちまちのままに、ただ赤字をおおむね五億ドル以内にしたいんだということでやっておるのだという御答弁でありますが、しかし、不確定な要素が多いということだけで答弁をされると、これを国民の立場、あるいは事業をやっている産業資本家の立場から考えてみましても、一体金融引き締めはどの辺までいくであろうか、いつまで続くであろうかということを何で判断をいたしますか。政府考え方は、不確定な要素が多いから、大臣それぞれ意見が違います。数字はまちまちであります。アメリカの景気がよくなればすべて一ぺんに解決しますといったような答弁だけだと、国民は何を目標にこの金融引き締め、政策転換に協力すればいいか、その辺が国民としては全然わからないと思いますが、いかがですか。
  103. 水田三喜男

    水田国務大臣 その数字をあげるのはいいのですが、私どものいろんな考え方がまだ権威を持っておりませんので遠慮しておる次第でございます。繰り延べが三千億円あると需要がどのくらい圧縮されることになるか、公定歩合が一厘引き上げられるというときには、それによる需要の圧縮がどのくらいになるであろうかというようなことも、私どもは権威がありませんが、それなりの一応の計算をし、めどを持っております。それから、これもそういう方式がきまっておるわけではございませんが、鉱工業生産が一%ダウンすると輸入にどれくらいの響きがあるかとか、国際収支の改善というものはどのくらい期待できるかとか、過去のいろんな統計やそのほかによって、全く無参考ではなくて、やはりめどらしいものは持っている。そういうようなものをいろいろ勘案して、これくらいの政策でいったらこの国際収支対策になるというようなことを考えて私どもはやったつもりでございます。これはいま言った方式が権威を持っておるものではございませんので、一々こまかい数字は言いませんが、私どもとしてはこの政策をとる以上は、政策のめどは一応持ってやったつもりでございます。
  104. 竹本孫一

    ○竹本委員 その政策のめどを持っておられるところを、権威がないとみずからおっしゃるのだから権威がないのかもしれませんけれども、私どもが政策を議論する場合にも、国民が国策に協力をする場合にも、たとえば大体八億ドルの赤字が出る心配が出てきた、あるいは七億ドルでもけっこうです。しかし、少なくともそれを五億——五億では私多いと思いますが、かりに五億ドル以内に押えなければならぬのだということになれば、二億ドルなり三億ドルなりの輸入はこの際押えなければならぬこういうことになるわけですね。そうすると、三千億円の公共事業費を削ったので、乗数効果を二・二八なら二・二八と見ても、七千億円の総需要の削減ができる。それをかりに八%か一〇%か、これも議論がありましょう。しかし、その程度の輸入依存率があるとして計算してみると、約一億五千万ドルくらいの赤字解消になる、こういう数字が出ると思うのですね。おそらく出してそれをやられたんだろうと思うから私は聞いているんです。むしろ善意に解釈しているわけですけれども、それは私の解釈なんで、政府として、かりに三千億円で七千億円の総需要が減になって、八%か一〇%の輸入依存率があるとすれば、一億五千万ドル近くの輸入が削減される。しかし、三億ドルの赤字をこの際消さなければならぬというなら、まだ半分しかない。そこで公定歩合を一厘上げた、窓口規制をこれだけ強化した、それによって総需要をどの程度押えて、それによって国際収支の赤字を何億ドル消すか、これについての一応の見通しがなければ、大臣、これは議論になりませんよ。その辺について、大ざっぱなものであるにしても、大体このくらいのめどでわれわれは政策転換をいたし、この三本立てで、三千億円でこれだけ、一厘の引き上げで大体これくらい——もちろん正確なことはだれにもわかりません。しかし、私は不可能なことを言ったつもりではありません。ただ政策を決定される以上は、政策の前提になった数字見通しがあるはずだから、これくらいの数字はわれわれにはっきり示していただかなければ、われわれも議論ができません。国民はなおさらわかりません。大体どういう見当でやっておられるか。三つの柱を立てて政策転換をやられた、その窓口規制には何をどの程度に期待され、公定歩合一厘の引き上げはなぜ二厘にならなかったか、一厘でどの程度のことを期待されているか、三千億円の削減でいいのかあるいは悪いのか、いいとすればどの程度のことを期待されるのか、その辺の一応の輪郭が示されなければ、全く政策転換は意味をなさないと思います。
  105. 水田三喜男

    水田国務大臣 さっきから申しているように、私もこういう推定のもとにやったと言うほど、われわれの推定にまだちょっと研究すべき問題がたくさんあり、やはりそう権威的なものではないと思いますので、その根拠については御答弁をひとつ保留したいと思っております。(「そんな明快な質問をしているのに答えないのは不親切だよ」と呼ぶ者あり)さっき言いましたように、私どもは私どもなりに一応のものさしをもって政策を進めておるつもりでございますので、はっきりここでそういう数字を公表することは、まだこれは権威のない数字でございますので遠慮したいと思っております。
  106. 竹本孫一

    ○竹本委員 これは大蔵委員会だから、何だかわけのわからぬ話でごまかすような感じでも困りますが、やはりこれは、国民としてはあれだけ大騒ぎをした政策転換ですから、こういう理由によってこういうめどをつけて、こういう政策の転換をやるのだということは、私は少しも非論理的なことを言っていないつもりなのです。きわめて常識的なことです。すでに政策を決定されたのであるから、されるについては一つ見通しがあったでしょう。赤字はどのくらいに見たのですか、三つの方法の柱はそれぞれどのくらいの解決に寄与する期待を持っておられるのですかと聞いているのですから、もう少しはっきり——それこそ国民だれが聞いてもあたりまえのような質問だと思うのです。少しもたちの悪い意地悪を言っているのでも何でもない。でありますから、関係官の中からでもあるいけ経済企画庁でもいいですが、大体こういうふうな理由でこういう転換をやって、政策効果としてこれだけのものを期待しているのでだいじょうぶだからあと大いに協力してもらいたい、こういう御説明がなければ政策論議にならぬと思います。経済企画庁、どうですか。
  107. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 議事進行について。  いま聞いておってまことに奇怪に感じるのですよ。権威のないものであっても、聞かれたらそのものさしを明らかにするのが私は政府の義務だと思うのですよ。そこで大臣、いまその数字を持ち合わせていないから竹本君の質問に答えられないのだというのが真相なのか、数字は持っているけれども、何らかの政治的配慮のために発表できないのだというのであるか、どちらであるか明らかにしてくださいよ。もし大臣が率直に、ここに数字を持っていないので、たまたまここでは答えられないというのであれば、われわれもわかりますが、それでなかったら、私どもも引き下がれませんよ。ちょっと委員長、議事進行で……。
  108. 近藤道生

    ○近藤説明員 ただいま御質問のございました数字につきましては、大臣から申し上げましたように、計算のしかたがいろいろございまして、またいろいろな前提を置きますので、非常に論議を招きやすいような数字でございますけれども、たってのあれもございますので、一応短期のパイロットモデルのシミューレーションでその結果を出しますと、財政支出の三千億の繰り延べのほうで六千六百億円ぐらい、それから金利の一厘上げのほうはあまりはっきりした数字は出ません。そういう結果が出ております。
  109. 竹本孫一

    ○竹本委員 それは、三千億円の乗数効果を考えて七千億円見当の総需要を削減することになるのだ。そんなことは常識で、私のほうから先に言っている。三千億円であるならば、当然数学的に六千六百億円なり六千七百億円は出るのでしょう。それはわかっておるが、たとえば、あと公定歩合を一厘上げるか二厘上げるかという問題についてもおそらく議論をされたんでしょう。しないでやったというのなら無責任ですよ。その場合に財政のほうはこれだけで、総需要は七千億円を削るから、あとは公定歩合一厘引き上げでこれだけの総需要を押えることになる。窓口規制で鉱工業の生産の上昇をこの程度押える。だから、大体あなた方の計算で二億ドルなりあるいは三億ドルなりは少なくとも赤字の解消ができるのだという見通しを持ったので、国民に大きな犠牲を要求して政策転換をやったのですという説明をしないと、あの当時考えましたけれども、どうも少し間違っておりました、いまやることについては不確定要素が多いので何だかわかりませんが、大体この辺でやってみましょう、間違ったらまたそのときに直します。そういうような出たとこ勝負でやっているのでは、私はほんとうに無責任だと思いますね。もう少し説明ありませんか。
  110. 近藤道生

    ○近藤説明員 貸し出し金利のほうにつきましては、金利からいきなりはじくわけにはまいりませんので、先生御承知のように窓口規制、貸し出し増加額の規制のほうもあわせて行なっておりますので、そちらのほうの効果を計数的にはじくことが非常にむずかしいという問題がございます。そこで先ほど申し上げましたように、貸し出し増加額規制を含めましての日本銀行の操作につきましては、計数的に乗数効果をはじき出すことが非常にむずかしいということを御了解いただきたいと思います。
  111. 竹本孫一

    ○竹本委員 いやいや、これはむずかしいとか精神的な効果、心理的な影響というようなことばかり言ってみても、あなた方は具体的に一厘の引き上げをやめて一厘にしたのでしょう。私も一厘に賛成ですよ。しかし、それにしても政府はどういう方向で一厘の引き上げということにオーケーをしておるのか、また、これではたしてどういう大きな全体の構想の中で政策転換をうまく成功のうちにやってしまおうとしているのか、われわれだってそれを聞きたいのですよ。いまのような説明で、一体国民のだれが理解できますか。いま私が質問して、大臣並びに皆さんが御答弁になった。これをまじめに聞いておれば、政府は一体何をやろうとしておるのか、なぜやろうとしておるのか、どこまでやろうとしておるのか、国民は何にもわからぬと思いますよ。わかると思われるのなら、思われる理由を言ってもらいたい。
  112. 水田三喜男

    水田国務大臣 あなたも御承知のとおり、こういう問題はそうはっきりと……(竹本委員「大体のめどを言っていただけばいいのです」と呼ぶ)だから、大体のめどを申しまと、いま言ったような繰り延べと金融政策とあわせて、私どもはこの効果はおそらく来年の一月ごろから出てくるものというふうに考えておりますが、それによって国際収支の基調が直るということによって、来年度を通じて大きい改善がなされると思いますが、直接本年度内と限ったら、この措置によって普通ならもっとどんどんふえるというものを、いま程度から二億ドルもこれが赤字を圧縮できるということだったら、この政策としては私どもは成功じゃないかというふうに一応考えてとっている措置でございます。ですから、この措置をとっても、三月までは赤字は相当残る。しかし、四月後は基調が変わってくることによって、来年度中に国際収支の均衡は期し得られるというふうな考えからとっておる措置でございまして、いつになったら幾ら国際収支が改善されるかというようなことを月を切ってはっきり申し上げるということはむずかしいと思います。
  113. 竹本孫一

    ○竹本委員 どうも大臣のせっかくの御答弁でございますけれども、私が聞いておる意味は、おそらくおわかりだと思うのですけれども、私がたびたび申しますように、大体何億ドルぐらいの赤字になるが、しかし五億ドル以上は困るから、したがってその差額の三億ドルなり四億ドルなりは少なくとも当面消さなければならぬ。そういう一つの目標がきまって、この三つの柱を立てて、いま御答弁がありましたように、三千億円については六千六百億円というようなことで、大体総需要の減少、それに伴う輸入依存率から計算すれば、一億数千万ドルの輸入が削減されるということはわかるのですが、しかし、そのほかのことについては、たとえば、いま申しましたように二厘引き上げをやらないで一厘をやるときには、いや一厘でも十分いける、十分いけるということは一厘の引き上げによって総需要をこのくらい押えて、その結果赤字をこのくらい消すことができるから一厘でいいんだ、こういうことでなければ公定歩合一厘引き上げの根拠がないじゃないですか。私はこれからの見通し——むずかしいことを言うのではなくて、大体の大きなめどを聞けば、数字はまちまちであるとか、精神的効果だと言われる。精神的効果も含めて若干の狂いがあるのは当然ですよ、ソビエトだって狂いがあるのですから。しかし、日本の資本主義の中でも一つ見通しをつけなければ、政策努力というものは展開できないのではないかということで、いろいろ議論したのですけれども、時間がなくなりましたから、これはあらためてもう一ぺん予算委員会か何かで本格的にやりましょう。そうしなければ、これは国民には、何をやっているのか、何を聞いているのか、いまの一時間ではほとんどわからなかっただろうと思うのです。むしろ極端に言うと、あまり根拠がない、権威がないとおっしゃったことだけしか印象に残りません。しかし、権威がない、根拠がないにしても、大蔵大臣としての一つのめどはわれわれに示してもらわなければ、全く政策論議以前の問題になってしまったような感じがいたします。しかし、時間がありませんので、最後にもう一つ聞いて終わりますが……。
  114. 水田三喜男

    水田国務大臣 そういうような言い方をされるなら、それじゃ権威がなくても一応私の考えだけ申しておきたいと思いますが、いま事務当局から金融政策についての計算は非常にむずかしいと言われたんですが、そのとおりこれはむずかしい問題でございます。一厘の効果というのですが、これがどのくらいかということもむずかしいのですが、これは窓口規制とからんでいることでございますので、そこのからみ方によって二千億円ぐらいの総需要の圧縮に役立つのではないか。そうすれば、これは財政政策が主でありますので、約九千億円近い総需要の圧縮ということをやったら、少なくとも国際収支を二億ドルぐらいの改善はできるというのが、大ざっぱな私ども考え方でございましたが、それをこまかい根拠で出して説明しろと言われますと、これはまた論議が起こりますので、そうは言いませんが、全く考えがなくてやっているわけじゃございませんで、大体そういうところを目標にした措置だということだけは申し上げておきます。
  115. 竹本孫一

    ○竹本委員 どうも時間切れになって初めて答弁が出ました。まあ私はそれについて議論があります。しかし、大体いまの御答弁だと、七億ドルくらいに赤字を見て、五億ドルくらいにまでこれを狭めていこう、そのためには公共事業の繰り延べ三千億円で一億数千万ドル、あと五、六千万ドルを公定歩合の一厘引き上げ、窓口規制で消していこう、大体こんなようなお考えのように受けました。しかし、私は、七億ドルと見るべきかどうか、それからまた五億ドルの赤字ならば一応いいではないかという考え方が正しいかどうか、これについては議論をすれば議論があります。私は、大臣、こまかいことを言っているのではないのです。やはり大体のいまのような大きな設計がなければ話にならぬではないかということを繰り返し言ったのですが、おかげさまで時間がすっかりむだになってしまいました。  最後に一つだけ伺いたいことは、これからの問題でございますが、補正予算をどのくらいの時期にどのくらいの規模で考えておられますか、考えておられませんか。
  116. 水田三喜男

    水田国務大臣 補正予算については全くこれからの問題で、まだ考えておりません。
  117. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで、補正予算並びに来年度の予算について私の考えを一口だけ申し上げて終わりにいたしますが、いま三つの柱で、国際収支の赤字、ドル危機に対して取り組もうという政府の御努力、その中での第一の公定歩合を一厘引き上げた、これをもう一厘引き上げる余地があるかということについては、私はこれはあまり上げる議論には反対であります。しかし、まあ反対か賛成かは別として、あまり余地がないだろうと思うのですが、その点。それから次には、窓口規制の強化ということも、今度は一五%ということでいきますから、相当中小企業等には犠牲、影響があると思いますので、これをさらにいま考えられている以上に強化するということも非常な困難と障害があるだろうと思うのです。そうしますと、三本の柱のうちの財政の圧縮というところに結局はまた問題がかかってくるように思います。そこで、補正予算を含めて来年度の予算についても、いままでどおりまた一五・九%膨張するといったようなイージーな行き方は許されない。公債の問題ももちろんあります。  そういうわけで最後にお尋ねしたいことは、公定歩合をさらに引き上げる余地があるのか、窓口規制をいま考えられておる以上にさらに強化する余地があると大臣はお考えであるか。それらとの関連において予算の規模というものは、いままでのように一五%以上も毎年続けてきたやつを、さらに今年もあるいは来年も続けるということは困難で、来年の予算については、宮澤構想も出ておりますけれども、よほど思い切った姿勢で取り組んでいかなければどうにもならなくなっておるのではないか。来年度の予算編成について、いま申しました範囲での大臣の基本的な考え方をお伺いいたしたいと思います。
  118. 水田三喜男

    水田国務大臣 もともと四十年の不況に対して、財政によって景気の浮揚力をつけるという措置をとったことでございますので、今回のように総需要を調整するということになりますと、財政政策が主役を買うべきであるというふうに考えております。金融政策は日銀がとられたあの程度の政策で、十分財政政策とからんでいることでございますので、さっき申しましたような私ども考えておる効果はあげられるというふうに考えておりまして、私は、金融政策はこの程度でよろしいんじゃないかと考えています。これは公定歩合の問題は日銀総裁のやることでございますので何とも申しませんが、おそらくこれ以上のことはやらぬのじゃないかというふうに想像しております。  それから来年度の予算でございますが、当然圧縮ぎみの予算を組まなければならぬというふうにいまのところは考えています。そして国債の依存度も、たびたび申しているように、できるだけ来年はやはり依存度を下げた予算を組みたいというふうに考えております。
  119. 竹本孫一

    ○竹本委員 もう一つだけですが、大体予算の規模というものは一五%以上のふくれ方はしないんだ。それから公債の依存度も世上一〇%以上は無理だというような意見もありますし、われわれももっともだと思いますけれども、私どもは党としましても、行政費のむだ使いが多い、あるいは行政機構の改革を徹底的にやれ、臨時行政調査会でうまくやれば一兆円ぐらい倹約ができるではないか、節約ができるではないかというような意見も出ております際で、やはり財政硬直化の一番大きな原因は政治家の頭が硬直化しておることだと思うのです。あるいは政治家の姿勢というものが硬直化しておることだと思いますので、この際、財政そのものもあるいは予算の規模そのものにつきましても、いわゆる抜本的な考え方をひとつ持たなければいかぬじゃないか。この意味におきまして、大蔵大臣の善処を強く要望いたしまして、時間でございますから質問を終わります。
  120. 藤井勝志

    ○藤井委員長代理 広沢直樹君。
  121. 広沢直樹

    広沢(直)委員 それでは大蔵大臣質問いたしますが、いまの質問とだいぶ関連しております。  まず、端的にお伺いしたいことは、来年度の予算の適正規模をどの程度のめどに置いておられるか。昨今の新聞には相当そういうことについての論議が出ておりますが、その点についてお伺いしたいと思います。
  122. 水田三喜男

    水田国務大臣 四十三年度予算編成はまだ緒についたばかりでございまして、この予算編成の前提となる来年度経済の見通しというものも、例年によりますと十一月末ごろにならないとこの見通しが出てこないというような事情もございますので、したがって、それを前提とした予算規模をどのくらいにするかというような問題は、まだいまのところこれをどうこうするという段階にございませんので、そういう点についてはまだ全くこれからの問題ということになっております。
  123. 広沢直樹

    広沢(直)委員 昨今の新聞によりますと、すでに来年度の予算概算要求が本年度の二五%増しで出ているということでありますので、それをできるだけ景気の抑制を加味して圧縮していきたいという意向が出ております。したがって、すでにそのめどとしては一般会計当初予算にして大体五兆七千億円だというような報道がなされておりますが、そういう点についてはどうお考えになりますか。
  124. 水田三喜男

    水田国務大臣 まだ五兆七千億というようなワクも、別に私どもは討議してきめたというようなこともございませんし、まだこれからの問題でございます。
  125. 広沢直樹

    広沢(直)委員 そこで、財政硬直化の問題がありまして、現実的にはやはり年々当然増というものがふえていく。したがって、そうなってくると、やはり圧縮予算を組むとしても、要するにそのめどはいま申し上げた程度のところに落ちつくんではないか、あるいはもう少し新政策を織り込んでいかなければならないということになると、やはり本年度の当初予算に比べて同じ程度予算が組まれるのではないか、このような見通しが立つわけでございますが、その点はいかがでございますか。
  126. 水田三喜男

    水田国務大臣 いわゆる当然増経費というものは、財源があろうとなかろうと、どうしてもこれだけは予算が必要であるという分は、概算で六千数百億円ということになりますので、予算の規模は、今年度の予算に対して少なくともそれだけ加わった規模になるということだけははっきりしております。
  127. 広沢直樹

    広沢(直)委員 そうなりますと、予算に比べていまの当然増が大体二二・七%増になるであろう、総額にして六千七百八十一億円ですか、そういうことになってまいりますと、いま申し上げたように予算規模のワクというものは、当初予算は大体六兆より以下、いま申し上げた五兆七千億円前後になるのじゃないかと思われるわけですが、本年度の予算と比べて大体何%ぐらいの伸びに押えようとお考えになっていらっしゃるか、その点について。
  128. 水田三喜男

    水田国務大臣 それはさっき申しましたように、来年度のやはり経済見通しというものともからみますので、まだこの予算ワクを何%伸ばそうかというような問題もいまのところは未検討でございます。
  129. 広沢直樹

    広沢(直)委員 私が懸念いたしておりますのは、本年度の予算が景気中立型の予算であるということで、先ほどもお話がありましたように五兆円以内に押えた、こういうことであったわけですが、現実的には予算が執行になってから間もなく、金融引き締めあるいはまた財政の繰り延べ、国債の減額というふうな次々に引き締め的な手を打たなければならなかった。いわゆる中立型というよりも、予算当初においての論議が重ねられたように、やはり景気刺激的な方向にあったのではないかということが懸念されるわけであります。したがって、いま申し上げましたとおり、当然増というものが例年に比べて倍以上にふえていく傾向になっている。そうなりますと、やはり予算のワクというものも大体本年度の予算伸び率ぐらいの程度になるのではないかというような予想が立ちますし、あるいは経済界においても、また新聞論調を見ましても、大体そういう線の見通しが濃いように出ております。したがって、当然増というものあるいは公共事業等の計画増というものも加えますと、やはり本年度予算の前年に対する伸び率と同じ程度になるのではないかという見通しが立つわけでありますが、それ以下に押えようという意向があるのかどうか、その点について。
  130. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、伸び率は昨年の伸び率以下に押えたいと思っております。
  131. 広沢直樹

    広沢(直)委員 以下に押えるとしても、いま申し上げたとおり、大体その前後になるのではないかと想定ができるわけであります。そうしませんと、要するに来年度は全く新しい政策というものを織り込んでいけない。当然増、計画増の伸びから考えましても、当然それは本年度の伸び率ぐらいのワクにしなければ新しい計画は一切織り込めないような状態にある、そのように考えられるわけであります。したがいまして、そういうことになりますと、当然、現在の景気過熱的な状況にあって、それを抑制していく予算を組むと言っておりますけれども、やはり大型の予算を組まざるを得なくなるのではないか。まして新規政策を全然織り込まない予算を組むということも考えられないわけであります。そうなってまいりますと、やはり現在の金融あるいは財政的な引き締めの問題がもう一段と行なわれるのではないかという懸念も持つわけでありますが、その点について御意見を伺いたい。
  132. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま申しましたように、来年度の予算編成はこれからの問題で、私ども万般の問題にわたって再検討しなければならぬと考えておりますが、当然増経費は絶対であるという考えでも通せない事態になってきやせぬかと思いますので、いわゆる当然増といわれている経費についても、相当私どもはこれを洗い直して、もう一ぺん考えるというようなことも来年はやらなければならぬじゃないかと思っております。
  133. 広沢直樹

    広沢(直)委員 そこで、先ほどから問題になっております経企庁長官宮澤さんの構想というものが一つ大きな問題になって出てきたわけであります。そこで、いま言うような状況にありますならば、当然減税の問題を、先ほど経企庁長官のほうは、十分検討していきたいけれども、現状においては減税は考えられない、一年間ストップしなければならないだろう、そういう御意見のようにお伺いしたわけであります。続いて大蔵大臣は、どうあっても、これは公約もあるし、所得税は減税しないだけでも増税になっていく、したがって方針どおり減税をやってまいりたい、このようなお話がありました。いままで各委員会においても述べられてまいりましたとおり、また大臣もここでお話しなさっていらっしゃったとおり、昭和四十五年をめどとして百万円の減税をやってまいりたい。四十五年というよりも、昭和四十四年、総理も答えておりますが、それをめどとして、それ以前に何とか百万円減税まで持っていきたい。しかしながら、ここで、いま言ったような財政事情のもとに所得減税が削られる、あるいはまた一年ストップするということになると、当然その百万円の減税ということも四十四年をめどとして、あるいは五年までかかるかもわかりませんが、それをめどとして公約している百万円減税というものがむずかしくなるのではないか、このように懸念されるわけでありますが、その点についてお伺いします。
  134. 水田三喜男

    水田国務大臣 一つの目標を持った減税をやる場合に、年次的に一回でもストップしますというと、その次それを取り戻すための減税をやるときには相当金額的に大きいものになる。間を置くほうが次が苦しくなるものでございますので、やはり計画的に減税すると言ったものは、無理をしてもその年次にやはり減税することのほうが政財は先に行って楽になるということもございますので、ストップ政策というようなものも簡単には考えられないというふうに私どもはいま考えています。問題は、減税の幅をどれくらい来年度見込めるかということになりますが、これは経済見通し財政事情とそれから公債の市中消化がどれくらいできるか、無理のない点がどのくらいかというようないろいろな問題とからんできめることでございますので、いま減税をどうするということは前もって言えませんが、私のほうの気持ちは、やはり所得税の減税は自分たちが考えた方向で来年も続けていきたいということをいまは考えております。
  135. 広沢直樹

    広沢(直)委員 その減税の問題についてはその意向で考えていると言いますが、大体課税最低限を十万円ずつ昨今上げてきているわけでありますが、これだけ上げるにしても約一千億の財源を必要とする、こういうような状況のもとで、ストップしないという意向のようでありますけれども、しないまでもその所得減税のワクというものを非常に縮めた場合において、先ほど、公約なさっていらっしゃる昭和四十五年ないし四十四年までに何とかやりたいとはっきりここで大蔵大臣答弁なさっていらっしゃる。そのところまでには、先ほどお話がありましたとおり、本年そういうことになりますと、その次においてはおそらく四十四年あるいは四十五年においても大幅な所得減税を行なわない限りは、それを達成することはできないと考えられる。その点について、もしも本年そういうふうな状況下において減税がかりに削減されたとしたならば、四十四年ないしは四十五年までにどうしても百万円減税、免税点の引き上げをやるというその点についての意思をはっきりお伺いしておきたいと思います。
  136. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま申しましたとおりでございまして、われわれのこの減税は計画的な減税でございますので、これはこれとしてどうしてもやりたいというふうに考えております。
  137. 広沢直樹

    広沢(直)委員 そこで、百万円減税の問題にもなりますが、先刻大蔵省が、三十五年から四十二年までの間の名目所得並びに減税の状態というものを試算したものがここに出ておりますが、これは御存じでしょうか。
  138. 塩崎潤

    塩崎説明員 非常に技術的な詳細な数字でございますので、私がお答えしてもいいかと思いますが……。
  139. 広沢直樹

    広沢(直)委員 それによりますと、名目所得は九七・七%増と約二倍にふえている、しかし物価の上昇分を差し引いた実質の所得というものは三四・八%しか伸びていない、こういうことになっております。また一方、この間に、所得税あるいは住民税、社会保険料を合わした広い意味での税金というのは、家族四人のサラリーマンの場合においては一〇五・九%増、つまり倍増している結果になっております。これは、三十五年から四十二年までの間に名目所得が二倍になっているので、三十五年にかりに年収七十五万円とするならば、四十二年にはその倍の百五十万円になる、そういう計算の上に立って計算されたものと思いますが、その内容を見ますと、所得税は課税最低限の引き上げによって大体八六・三%の伸びにとまっている、しかし住民税においては、この減税措置が十分にとられなかったために二一五・九%増、三倍をこえているという結果が出ておりますし、国民の負担が非常に増大しているということを示しております。また社会保険料も七六・三%ふえている結果になっております。  このように考えてまいりますと、このままでいくならば、国民は、政府は減税、減税ということを言っているけれども、結局は税金はちっとも安くならない、税負担は軽くならないというふうに、大きな疑問を持ってくるわけであります。したがって、その税負担を軽減していく上においては、百万円減税というよりも、現在の基準でいくならば、諸外国の例に合わしても、どうしても相当引き上げていかなければならない段階に立っていると考えられるわけです。かりに来年度の見通しに立って減税ワクというものが非常に縮まった場合においては、先ほどお話があったように、課税が累進的に行なわれる以上は、その税負担というものはますますふえていく、いわゆる増税という結果になってくるのではないか。そういうような見地から考えてまいりますと、当然本年においても大幅な計画に基づいた減税をやっていかなければならない。先ほど計画に基づいて減税をやっていくという大蔵大臣のお話でありますけれども、そういうことになりますと、四十四年度において大幅な所得減税をやっていけるという見通しも明確に立っていない状況においては、当然計画的な減税をやっていかなければならないと思うわけでありますが、そういう点について先ほどお伺い申し上げましたように、四十四年あるいは四十五年にそういう大幅な減税をやっていく意思があるのかどうか。あるいはまた、いま申し上げましたとおり本年十万円最低基準を上げていく、来年もそうだ、そうやって十万円ずつ上げてまいりますと、ちょうど昭和四十五年には百万円減税が達成できるわけです。いままでの減税の姿を見ておりましても、そのように大きくは減税をやっていない。所得減税は大体五百億ないし一千億程度の減税しかずっとやってきていない。非常に自然増収が見込まれる景気の上昇期にあってもそういうような状況にあるわけでして、将来の経済見通しに立って現実にそれだけの減税をやっていくことができるのかどうか。その点をひとつ明確にしていただきたいと思うのです。
  140. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま申しましたように、私はこの公約をした所得税の減税はやるつもりでおります。
  141. 広沢直樹

    広沢(直)委員 これはつもりでは困るわけであって、先ほど申し上げました試算によっても税負担というのは非常に大きい。あるいは諸外国の例と比べてみましても、再三論議になっておりますが、申し上げるまでもないことでありますけれども、経済の成長は非常に著しくて世界第三位というような立場になっておりましても、一人当たりの所得というのはベネズエラですかと同列の状態にあって、世界では第二十位くらいの立場にある。西ドイツの経済の状態と日本の経済の状態と大体似ているようなデータも出てまいっておりますが、その西ドイツと比べても相当にそこの開きがある。非常に生産性が低いということを物語っているわけです。そういうような観点からは、単にそういう方針であるといいながら、こういうような状況になってきて減税ができないというようなことになってくるならば、国民の税負担の過重感というものは解消されないと思われるわけです。したがって、そういう点について本年当初に公約されたとおり、あるいははっきりと明言されているとおり、昭和四十四年ないしは四十五年までには百万円減税は実施する、そういうことをはっきりここでお約束できるかどうか。その点について再度お伺いします。
  142. 水田三喜男

    水田国務大臣 私の考えは、いま言ったように、これはやりたいという考えで、このことはまた、これ程度のことはできると私は思っております。
  143. 広沢直樹

    広沢(直)委員 そこで問題は、その減税を行なうにあたって最近問題になっております間接税を値上げしていく、特に大衆に縁の深いたばこの値上げの問題だとかいろいろな問題が出ております。先刻新聞によりますと、大蔵大臣はできるだけそういったものは値上げしない方針であるというような意向を漏らしておったようでありますが、そういった所得減税をやっていくということになりますと、どうしても間接税のほうに税負担を重くしていくような結果が出てくるのではないか、そういうことも懸念されるわけでありますが、その点についてはいかがでしょうか。
  144. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、将来の方向としては、直接税と間接税のいまの比率がもう少し間接税に比率を置いても税制としてはいいのじゃないかというふうに思っていますが、その場合、間接税を必ずしもいまたばこというふうには考えておりません。
  145. 広沢直樹

    広沢(直)委員 もちろんたばこだけじゃありませんが、結局大衆課税になっていく面において、いま言った所得減税においても免税点を引き上げろというのが国民の要望である。したがって、それが間接税のそういう大衆課税のほうに重くなっていく結果になりますと、これはちょうど風船をふくらまして一方をへこませれば一方がふくれ上がってくるということで、結局においては同じことになってくるのではないか。まして、同じどころではない。間接税の直接大衆に響くものを上げてまいりますと、当然それは所得の立場においては、直接税の場合においてはこれは累進的な構造をとって、それを是正しておりますけれども、間接税の場合には同じような負担がかかっていく、かえって大衆課税は重くなっていくという傾向もあらわれてくると考えますが、その点についての大臣のお考えはどうですか。
  146. 水田三喜男

    水田国務大臣 間接税が必ずしも大衆課税になるかどうか、全部がもう大衆課税といえない間接税のあり方もあると思いますので、こういう点はこれから研究したいといま思っておるところでございます。
  147. 広沢直樹

    広沢(直)委員 それでは減税のほうについては、大臣は、あくまで公約どおり百万円減税はやり抜いていくという御意思のようにお受け取りしましたので、次の問題に移ってまいりたいと思います。  次は、いま金融引き締め等によって中小企業に対する圧迫が非常に重くなってきているわけでありますけれども、この金融引き締めの解除の時期——この間も名古屋で大蔵大臣はできるだけ早い機会にこれを解除したい、こういうようなお話があったわけでありますが、国際収支も八月以降少し持ち直してきているような状況にありますが、その見通し金融引き締め解除の時期についてどのようにお考えになっていらっしゃるか、その点をお伺いします。
  148. 水田三喜男

    水田国務大臣 時期をいつかということは、いまのところ私にも予測できません。問題は、こういう政策をとることによって、この政策の効果が傾向として出てきたというときには、いつこれを解除するかということを考える時期であろうと思いますが、いまのところはまだこれから効果が出ようとしているところでございますので、、いつというのはいまの段階で予想することは少しむずかしいと思っています。
  149. 広沢直樹

    広沢(直)委員 そこで、いまの金融引き締めというもの、あるいは財政繰り延べ等のそういった引き締めの効果というものは現在すでに出てきている段階ではない。少なくとも、先ほど宮澤長官から話があったように、半年くらい先にそういう効果が明確に出てくるのじゃないか、そういう時期を考えて、その時期において考えたいという話も先ほどあったようであります。しかしながら、そうなってくると国際収支の悪化というととが非常に問題になって、金融引き締めというものあるいはまた財政の繰り延べ等の抑制措置というものがとられていく。ところが、国際収支の問題については、これは一がいに国内だけの問題ではなくて、海外の景気の見通しというものが大きく問題になってくることは当然でありますが、やはり季節的な関係があって、多少八月以降それがよくなりかけている、このように見通しが立ってきているわけでありますが、その点については大蔵当局はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  150. 水田三喜男

    水田国務大臣 これから輸出期に入るときでございますので、上半期の動きとは違って、今後は国際収支もいままでよりも黒字幅がもっと多くなっていく、貿易収支の黒字幅は多くなっていく時期に入ると思いますので、一面改善されたように見えるかもしれませんが、これはもっぱら季節的な問題が多いことでございまして、この引き締めの効果によって国際収支の基調が変わったか変わらぬかという判断は、来年の一月以降でないとできないのじゃないかというふうに考えております。
  151. 広沢直樹

    広沢(直)委員 時期的にいいますと、国際収支というものは上半期においては大体赤字である、やはり下半期においてそれが持ち直していくというのが、大体国際収支の見通しのように伺っておるわけですが、そうなりますと、来年度のその見通しというものはどのように考えていらっしゃるわけでしょう。来年度の上半期においてやはりその季節的な面までを考えていくならば、本年度においても予算執行ですぐに引き締めの手段を打っておるわけです。ですから、来年度においてそういうような国際収支がやはり上半期において少し落ち込んでいくような状況になっていくならば、当初に申し上げたように、金融引き締めないしはまた財政的なミックスポリシー、そういったものの抑制的な手を打っていかなければならなくなるのではないかということも考えられる。いまは大体において、先ほどからお話のあったように、十分なる手は打っていない。一応そういうような抑制的な意向のために、公定歩合の一厘引き上げ、あるいは窓口規制による金融引き締め、あるいはまた財政の繰り延べ等をやっている。しかしながら、その状態においては、やはり来年度においてそれをもう一段と深めた行き方が出てくるのではないかということも懸念されるわけですが、その点においてはどうでしょう。
  152. 水田三喜男

    水田国務大臣 さっき申しましたように、私は、いま程度措置によって来年度国際収支の基調には変化が出てくると考えています。したがって、来年度さらにこの政策を強化するという必要はないのじゃないか。予算編成においてそういう点を十分に考えるのでしたら、私は、金融措置としてはこの程度で済みはしないかというふうに考えていますが、それにはいまのところこの効果の出方をもう少し見ないと何ともわからないのじゃないかと思います。
  153. 広沢直樹

    広沢(直)委員 そういうような状況にあって、今回の金融引き締めでもって一番被害をこうむっておるのはやはり中小零細企業の面だろうと思われるわけです。したがって、最近の倒産の状況——この上期においては多少それが下がってきたが、例年に比べると倒産状況というものは激しいように見受けられるわけです。この金融引き締め後においては、やはり一番響いてくるのは、金融関係の窓口規制、あるいは公定歩合の引き上げも当然でありますが、そういう面に響いてくるように考えられるわけです。したがって、現在の倒産状況を、新聞によりますと、九月においては大体六百八十七、八月上期に比べて九月は一一・七%の増になっている。前年同期に比べて五〇・八%の大幅なふえ方をしている、こういうことになっているわけです。したがって、この金融の緩和、抑制措置の緩和というものがやはり中小企業に対する育成策には当然考えられなければなりません。そういうようなことから、現在のこういう状態を続けていくならば、本年の年末の金融についても相当きびしくなってくるのではないかと考えられるわけですが、その点についてどのようにお考えになっていらっしゃいましょうか。   〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕
  154. 水田三喜男

    水田国務大臣 こういう金融政策をとるときには、どうしても中小企業に不当にしわ寄せがいくというのが過去の経験でございますので、今回の場合は、この措置をとるときに、金融機関に政府が要望しまして、また金融機関も申し合わせをして、中小企業への金融は十分慎重を期すということになっておりますし、また、政府は繰り延べ政策をとりましても中小企業金融は対象から省くという措置もとりましたし、できるだけ中小企業へしわが寄らないように万全の配慮をするつもりでおります。したがって、平年のときでも年末にはいろいろ年末金融の問題がございますので、こういう際でございますから、また年末金融についても一段と健全な中小企業が流動資金の不足のために特別困らないような措置は、われわれは十分気をつけてとっていくつもりでございます。
  155. 広沢直樹

    広沢(直)委員 そこで、この金融状況見通しについてでありますけれども、大体引き締め措置がとられてから約一カ月有余になるわけです。しかし、全国的にはやはり中小企業が相当多いわけでありますので、金詰まりという色彩が非常に濃くなってきておる。これまでは大体金融引き締めをやったところで、企業の資本の蓄積が相当高くなってきているわけで、そうあまり影響はないのじゃないか。ねらいは設備投資を押えていくという関係にあったわけでありますが、しかしながら、そういうこともあまり影響してこないのじゃないかという議論もあったわけです。しかし、最近になりますと、やはり銀行の借金の申し込みがふえ始めている。また年末にはますます集中してあらわれてくる傾向が出ている。そこで日銀としては、一番金融の激しい十二月の対策として、日銀貸し出しの限度を引き下げて金を供給しようとする方針をとっているけれども、景気調整等のかね合いからこれも限度があるので、年末の金詰まりはきびしくなるのではないかという見通しを立てております。先ほど申し上げました国債発行の影響で企業の手持ち資金が多少ふえてきているとしても、企業が銀行にたよる割合がそれだけ小さくなったのかというとそうではない。九月一日からの公定歩合引き上げの際も、銀行はこれに伴う貸し出し金利の引き上げを求めたのに、大企業の多くは、高い利子を払ってまで借金する必要はない、こういうふうに言っておったわけです。しかし、ごく最近にあっては、特に中堅企業を中心にして借金の申し込みが多くなってきた。これは第一には、景気調整がとられたあとも国内の商取引が非常に拡大を続けている。または、設備投資も予定どおり実行していく企業が多い。あるいはまた、必要な資金量がふえてきている。また、逆に豊かだった、いま申し上げた手持ち資金が、これまでかなり使い込んだのが響いてきて売り上げ高に比べた割合がじりじりと落ちてきている。また、財政繰り延べの効果が今後出てくるならば、ますますその企業のふところというものはゆとりがなくなるのではないか、こういったような懸念のもとに、大企業の一部、特に中堅企業においては借金の予約を急ぐという傾向が出てきた。日銀の窓口規制の対象にならないそういった面に対する借り入れ申し込みもふえてきている、こうなっているわけです。  そこで、最近強く行なわれている窓口規制の問題だとか、あるいは選別融資の問題等によって、相当資金ワクというものが中小企業に対しては圧迫的に出てきているのではないか。したがって、そういう中堅企業、大企業というものがやはりいままでと違ってそういうふうな資金を今後多く求めるようになってまいりますと、全国の銀行の中小企業向けの金というものも少なくなってくるのではないかと考えられるわけです。日銀が上位の都銀あるいは地銀から借り入れについて設けている程度というものはぎりぎりのところまできているのであって、これ以上貸し出しをふやさないという場合においては、年末は金詰まりがくるのではないか。中小企業政府三機関に対してはそれだけの引き締めはしないというふうには言っているけれども、そのしわ寄せは中堅企業にいってしまったりそういうようなことで中小零細企業というものは相当きびしくなってくるのではないか。あるいはまた前年に比べて、去年の実績における年末融資も五千億を下回る見通しも出ているのではないか。そういうことになると、いま言った中小企業に対する年末融資のワクというものはますます狭まってくる。そういうような関係企業倒産がかえってふえていく結果になるのではないかと懸念されるわけです。その点についてどういうようにお考えになっているか。まして、現在の、いま申し上げたような情勢から、抜本的に中小企業金融に対してもっともっと力を入れていかなければならないと思いますが、その点についてどういう姿勢を持っていらっしゃるか、その点についてお伺いしたいと思います。
  156. 澄田智

    ○澄田説明員 金融情勢の点でありますので、私のほうからお答え申し上げます。  ただいま御指摘がありましたような引き締め以後における資金需要というものにつきましては、従来は、企業の手元流動性が相当ありましたが、その点がだんだん取りくずされてきたというようなことで、これが金融機関に対する借り入れの申し込みの増加となってあらわれているというような点は確かに見られると思います。そうでなくても、例年年末金融というのは繁忙になるわけでありますが、こういう金融引き締めのもとにおきます年末を控えての金融でありますので、いろいろそういう点でいままでよりは需要も多く詰まってくるという点は争えないことだと思います。ただ、従来の引き締めの場合に比べますと、今回の場合は何といっても全体としての企業の手元の流動性はなお余裕がある。これは中小企業という意味でなくて、全体の企業の面においてもそうでありますので、資金需要の高まりというようなものも相当強くはなってきておりますが、従来の引き締めに比べると、程度としてはそれほどでもないという面はございますし、それから都市銀行あるいは地方銀行等の金融機関も、中小企業に対する融資の割合というものは次第に高めていく。現在は都市銀行で四十一年三月末の中小企業金融全体のうちの割合は二一%、地方銀行が二四%、合わせますと四五%を供給しているというようなぐあいで、非常にその比率が高まってきておりますので、引き締めのもとにおきましても、従来のように中小企業から手を引いていく、引き締めになりますと、それまで中小企業に貸し出しておったものも回収をしていくというような点については、今回はこれらの金融機関も態度を非常に変えてきております。中小金融に対して非常に注意を払いまして、そういうようなしわ寄せにならないようにという点に意を用いているというようなこともございます。また、従来でございますと、中小企業専門の金融機関、相互銀行、信用金庫というようなところは、引き締めになりますとコールレートが非常に上がりますので、コールのほうに金を回したがる。とかくそういうことをするというふうなこともございます。従来は、御承知のようにコールレートが三銭、四銭というふうに、引き締めの場合には上がるというふうなこともございますが、今回はコールレートについても、現在引き締め下におきましても、月越し無条件もので二銭一厘というようなところで、低目にとどまっております。今後も、これが季節的には若干の動きは示すものとしても、従来のように急上昇するということは考えられない状態でございます。こういうような点から申しましても、中小企業に回るべき金がコールを通じて大企業のほうに回ってしまうというような、従来のような弊はないのではないか、かように考えられます。  そういうような点、かれこれ考えまして、これから中小金融について一そう各面で配慮しなければならないことはもちろんでございますし、年末金融については十分民間の金融機関もその点に意を用いるように指導をいたしますと同時に、政府金融機関の面においても手厚く考えていきたい。こういうことではございますが、全体の趨勢として考えてみまして、非常に中小金融にしわが寄って大きな問題が起こるというようなことは、今回はないのではないかというふうに考えております。
  157. 広沢直樹

    広沢(直)委員 いまお話がありましたが、問題は、まず最初に金融機関として選別融資を引き締めの前にやっておったわけです。そういうような状況においても、中小企業においては金融事情というものが非常に悪くなってきている。しかしながら、その後においても窓口規制というようなものが、これは先ほども話がありましたように、強行されている関係においては、やはり非常に中小企業に圧迫を加えているわけです。特に選別融資の傾向あるいは窓口規制の傾向によって、現在の中小企業の倒産というものは、従来に比して、下期に至ってますますふえていく傾向をあらわしているわけです。したがって、こういったことをある程度中小企業に対してはゆるめていく、そういった傾向でなければ——やはり見通しはそのように立ったとしても、現実にはふえている趨勢にあるわけですから、それをゆるめていくような傾向考えていけないものかどうか、その点について。
  158. 澄田智

    ○澄田説明員 私は、いま一般的な金融情勢として申し上げました。個々の点につきましては、ただいま御指摘のように、倒産の件数等についても十分に注意をして、そうしてこれからの引き締め下における年末の中小金融というものについて、従来にもましてきめのこまかい配慮をするように、民間金融機関に対する指導とともに、中小三機関等に対する年末の資金量の配分等についても考えていかなければならない、かように存じております。
  159. 広沢直樹

    広沢(直)委員 その点は特に要望いたしておきます。  それでは、経企庁長官がいらっしゃいましたので、一問お伺いしたいと思いますが、先ほどいろいろな御論議になっておりました、来年度の予算に対して公共料金の問題、そしてまた一年間は所得減税をストップしなければならないのじゃないか、このようなお話があったわけでありますが、公共料金を一年間ストップさしたとしても、過去に見られたように、その翌年においてはやはりこれは大きな値上げになって出てきているわけです。また減税においても、すでにもう政府が公約をしておりますとおり、百万円までの免税点の引き上げは、四十五年にあるいは四十四年にやりたいという意向を再々漏らしておりますし、また、いまも大蔵大臣からその方針に沿ってどこまでもやり抜く意向であるということをはっきり答弁がありました。そういうようなところを考えてまいりますと、一年間だけ減税をストップさした、あるいは公共料金を凍結さしたとしても、その次に出てくる状況に対しては経企庁としてはどのように考えていらっしゃるか、長官にお伺いします。
  160. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 公共料金を一斉に一年間ストップするというふうに、私は私案として申しておるわけではございませんのです。私の申しておりますのは、午前中にも申し上げましたが、いまの物価情勢から来年当初の消費者物価情勢を考えますと、たとえば電話であるとか、あるいは国鉄であるとか、そういったようなものの料金引き上げがございますと、政府自身が消費者物価についてあまりしっかりした態度でない、むしろ上昇をあおるような原因をつくっておるじゃないか、そういうような理解を国民がされるということは心理的によくないことである、こう考えておるわけでございますから、財政で負担し得るものはできるだけ負担をしていって、政府自身の直接に動かし得るところの物価というのはなるべく動かさないでいきたい。一般に公共料金一年ストップというふうにおっしゃいますと、地方の交通機関でございますとかいろいろなものがございますから、それを含めて私が申しておるのではございません。したがって、昭和三十何年かにありましたようなああいうことを申しておるのではございませんで、財政で直接まかない得るものは、どうも一般原則とは少し異なりますけれども、この際はめんどうを見てくれないかという気持ちでございます。そうなりますと、そういう財政事情がある、他方で、私案ではございますが、私は、やむを得なければ食管会計などは赤字を残してもやむを得ぬじゃないかなんと、自分の頭の中では思っておりますから、そういたしますと、そういうことをしておきながら、他方で税金のほうもまけてしまうのだというと、財政の姿勢としては少し相済まないような気もしますし、それから財政当局としては当然財源も必要だ、こうお考えになるでありましょうから、それで非常に残念なことだが、やむを得なければ国税の減税も一年延ばしたらどうだろうか。もしやむを得なければでございます。そんな気持ちで申しておるわけでございます。  それで、いずれにしても一年たったあとどうするのか、こういうことについては、ともかくこの問題でどの制度、どの慣行をとりましてもやっぱり再検討する時期にきているものが多うございますから、どういう原則で再検討するかということになれば、相当時間もかかることでありますから、それを一年のうちにやってしまいたいということで、新しい制度が国民の納得のもとに発足するならば、それに従って再び正常な経済原則が働いていく、こういうふうに考えておるわけでございます。
  161. 広沢直樹

    広沢(直)委員 時間がありませんが、最後にお伺いしておきたいことは、減税の問題は、先ほど、大蔵省の試算が出ておりました三十五年から四十二年における名目所得の増加と減税との対比、そういったものをもとにしてお話ししたわけであって、価物の値上げを引きますと、名目所得は非常に下がっている。したがって、増税的な傾向であるし、この辺で減税を一年間でもストップする、あるいはいままでの減税ワクよりもまだそれを縮めるということになると、実質上は増税になっていく。当然物価の監督庁である経企庁としては、公共料金の抑制ということを言うのはあたりまえだと思うのです。しかしながら、その後における一年間は、いま食管会計の問題も出ましたけれども、そういうふうな赤字を一般会計等で補ったとしても、当然その翌年においては結果的には何とか値上げしなければならないという方向が出てくるのではないか。当座の行き方だけを処置をしたとしても、過去に見られたように、池田内閣のときに所得倍増計画、そういうことを打ち出して、所得が倍増するのかと思えば、その間はやはり公共料金等を抑制してきた。しかし、その後においては一斉に毎年毎年、四年間連続ですか、値上げは続いてきているわけです。来年度一年、これを凍結するような方向に持っていったとしても、その翌年にはまた値上げが出てくるのではないか。その問題と減税の問題、そのための財源を埋め合わせるにしても、減税をある程度抑制したということになりますと、当然国民の税負担というものはふえてくるわけだし、結局はどちらにしても国民にしわ寄せをしていくということには変わりなくなるのではないか。そういうことになりますと、将来の見通しをはっきり立てた上での現在の立場であったならば当然だと考えられるわけです。宮澤さんの構想を聞かしていただくと、来年度の財政においては当然いま言った所得の減税のほうもある程度考えなければならない、あるいはまた、公共料金も一年は凍結していかなければならぬだろうというような意味合いに私は受け取っておるわけです。その翌年、そのまた翌年、要するに政府が公約している昭和四十四年ないしは四十五年の百万円減税という一つのめどを持った立場においては、来年一年の見通しだけではなくて、将来どのような見通しの上に立っておっしゃっていらっしゃるか、その見解を聞かしていただきたいと思うのです。
  162. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 午前中も申し上げましたように、四十五年に百万円の減税をいたしたいということは、私ども当然そうあるべきですし、また、そのように申し上げておるわけでございますから、その目標を変えるということは私は考えておらないわけでございます。ただ、これは私見になりますけれども、あるいはあるかと思います。それは、ただいまの所得税の累進のしかた等を見ておりますと、かなり段階の組み方がこまこうございますから、毎年所得が上がりますと、それが敏感に税負担になってはね返ってまいります。だから、増収があるということにも逆に言えばなるわけでございますが、多少ここ十年の間に所得水準が上がっておりますから、あるいはその累進のしかたなんかにももう一くふうあってもいいのかもしれない。これは私の私見でございますけれども、そんなことも一年間には十分検討してもらえるのではないかというふうに思います。
  163. 広沢直樹

    広沢(直)委員 最後に、大蔵大臣にお願いしておきたいのですが、要望として申し上げておきます。  要するに、減税の問題については、先ほどもどこまでもそれを貫いていくというお話をいただいているわけですが、その関係が今度は間接税、いわゆる大衆課税的な方向が重く出てくるのではなくて、やはりその減税の財源というものは、これは時間があればいろいろまた申し上げたいと思ったわけでありますが、昨今問題になっております公社、公団の整理だとか、あるいは来年度期限がまいります租税特別措置法におけるその問題だとか、そういった面の問題を十分考えられて、間接税、大衆課税の方向にそれを向かうのではなくて、それを整理していくことによっても十分その財源というものは生まれてくるのではないか、このように私は試算しております。そういう関係で、後日においてまたその問題についてはお話を申し上げたいと思うわけでございますけれども、来年度減税についてはぜひともそれは計画どおりの減税をやっていただきたい。また、その減税にあたっては、いま見返りとして間接税を大幅に引き上げて、大衆課税になっていくのではなくて、やはり間接税を引き上げるのは、それはある程度認められる部分もあるわけですが、しかし、大衆にしわ寄せをしていくような間接税の引き上げは絶対反対である、こういうふうに考えております。その観点に立ってよく御検討をお願いしたいと思う次第です。
  164. 内田常雄

    内田委員長 堀昌雄君。
  165. 堀昌雄

    堀委員 本日は、最近すでに話題になっておりますところの電信電話料金の値上げの問題について、企画庁長官、所管の郵政大臣及び電電公社総裁にお伺いをいたしたいと思います。  実は私、昨年の三月二日の予算委員会の分科会で、四十二年度に予想されておりました値上げの問題を取り上げました。そのときに、藤山企画庁長官はこう答えておいでになるわけです。「しかし非常に消費者物価に影響するようなことをしておって、その際にもなお電電公社として値上げをしなきゃならぬというような場合には、そういう配慮をしていただくのが適当じゃないか、こういうことでありまして、その事態に応じてわれわれも考えていきたいと思います。」こういうふうに言っておられるのですが、そのことは何をここでおっしゃったかと申しますと、実は私の電信電話料金の値上げに対する考え方は、いま私どもが物価の問題を考えておりますのは家計の中における物価、要するに、消費者物価が一番重要な問題だと考えております。ですから、電信電話料金を値上げをするときには、企業の側の負担はこれはコストの中に当然入ってくるものでありますし、全体から見ればウエートは非常に小さいと思いますし、性格としては損金に落ちるというような性格のものであります。家計消費のほうは、現在電話を持っていらっしゃる方はおおむね所得税を払っておると思いますが、税金を払った残りで払っておる。これはたびたび私が申しておることであります。そういう意味からいって、私は物価上昇の著しいようなときには、消費者物価にかかわりのあるような値上げはできるだけ避けたい、こういう考え方なんであります。それについて藤山企画庁長官も、消費者物価が上がっておる時期にそういう問題を考えるときには、企業負担とそれからいわゆる個人負担という問題については考える必要があるだろうというのが、いま私が読み上げた部分でございますが、この点について宮澤企画庁長官は、けさからいろいろ一連のお話の出ております公共料金の問題の一部であります電信電話料金を——この十一月からおそらく各種の公共料金の値上がり、一連のものがずっと続いてまいるであろうと思いますから、その中でどういうふうにお考えになっているかをちょっと最初に承っておきたいと思います。
  166. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私、わが国の電話のことを考えますときに、非常に電電公社当局が努力されて、そして戦後今日まで非常に急速に電話のサービスというものがよくなってきておるということは、国民の一人として感謝していいことだと思っておるのでございます。さぞかし相当の金もかかることであろうということはよくわかります。それからいまの公社の言っておられることは、やはり健全な経営をしていかなければいけないから、この辺である程度のことをしておかないと、将来非常に経営が不健全になりやすい、こうお考えのようで、そのことも私は非常によくわかる。国鉄のようになっては困るというふうに思っております。  それからもう一つ、やはり原則論としては、ああいうものはいろいろな形で利用者が負担をするというのがこれが本来の本則であるということも、午前中にちょっと申し上げました。それでございますから、実は私、今年の当初ごろから電電のお話を伺っておって、十分理屈もあるし、情勢いかんではやむを得ないのではないだろうかというふうに考えてきておったわけでございます。いまも、もし一連の、午前中来御議論のありました措置がどうしてもとれないというようなことになれば、これはまた別の問題として考えなけばれならぬとも思っておるのでございます。ただ、ああいう措置がとれるようであれば、明年一年何とかそこを財政あるいは財政投融資、両方と思いますが、でめんどうを見ていってもらえないだろうか。本来基本の原則なり私の従来考えておりましたこととこの点は少し違うのでございますが、そもそも私案として提案いたしましたものが、そういう性格を持っておりますので、あれができれば一年はあれでやってもらえないだろうか。と申します意味は、明年の消費者物価の動向をいまから考えてまいりますと、今年度からかなりしり上がりに上がっていって、そしてそこで鉄道だ、電話だ、授業料だということになりますと、いかにも政府自身がこの事態に無関心であるというか、油を注ぐようなことに一般に受け取られると思います。そのことは、これは一般の値上げムードというものをあおる結果になりますから、この際としてはああいう措置ができるならばそう願えないだろうかということを私案として申したわけであります。
  167. 堀昌雄

    堀委員 私も大蔵委員会におりまして、経済の問題を所管してやっておるわけでありますから、諸物価の上がってくる中で、また、いまの電話の需要度の低いものがだんだんとつけられるということの中で、電話料金の値上げというものがやはり不可避的なものだろうと原則的には——時期の問題は別として、これは経済の原則に立てばそのとおりだと私も思うのです。ただ問題は、現在の電電公社が来年度どうしても物価上昇の中であえて値上げをしなければならぬほどの情勢になっておるのかどうかという問題が、私は一つ非常に大きな問題点になるだろうと思います。  そこで、今度実は電電公社では第四次五カ年計画でありますかをつくっていらっしゃって、大体三兆五千二百億円の建設投資をこの四十三年から五カ年間におやりになる、こういうふうになっておるわけでありますが、実は経済社会発展計画のほうで見ますと、ちょっとこれはタイムラグがありまして、四十二年から四十六年でありますから、ちょうど四十三年−四十七年、一年タイムラグがあるわけですが、ここでは部門別投資額として、電電は昭和四十年度価格として二兆六千六百億円の投資が定められておるわけです。そこで、この三兆五千二百億円という価格は一体いつの価格なのか、これをちょっと最初に公社のほうでお答えいただきたいと思います。
  168. 井上俊雄

    ○井上説明員 お答え申し上げます。  三兆五千二百十億円と申しますのは、四三−四七の計画期間中におきまするその年々の時価で計算されたものでございます。
  169. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、その年々の時価ですと、その年々の時価というのはいまはないわけですね。そこで、これは何が時価の基準になっているのでしょうか。
  170. 井上俊雄

    ○井上説明員 お答えいたします。  経済社会発展計画におきまする二兆六千六百億円、これは四十二年度——四十六年度間の四十年度価格のものであります。そこで、これを電電公社といたしましては、長期の投資計画はその年度その年度ごとにどの程度のサービスの改善をやるかということになりますので、その価格にふさわしい建設費を見込まなければならぬわけでございます。したがいまして、これを四十三年度——四十七年度に一年間シフトいたしまして、四十二年度——四十六年度の経済社会発展計画におきまする電電公社の割り当てとあまり逸脱しないかっこうにして、かつ時価に直す。この方法といたしましては、経済社会発展計画できめられておりますところのいわゆるIGデフレーター、これによりまして計算をいたしまして、経済社会発展計画におきまする経済成長率八・二%だけはさらに一年間だけ継続するものとさせていただく、こういう前提で投資額全体をはじきまして、それとの見合いにおきまして、公社で計算のし直しをやりましたものが三兆五千二百十億円、こういうことでございます。
  171. 堀昌雄

    堀委員 企画庁に伺いますが、いまのIGデフレーターというのは、われわれのいただいておるこれには出ていないですね。これは一体企画庁、公式に発表しているのですか、発表していないのですか。
  172. 宍戸寿雄

    ○宍戸説明員 お答え申し上げます。  政府の決定いたしました文書では、政府固定資本形成のためのデフレーターは公表いたしておりません。
  173. 堀昌雄

    堀委員 なぜそれは公表できないのですか。
  174. 宍戸寿雄

    ○宍戸説明員 公表いたしておりませんけれども計算の過程におきます数偽といたしましては、一応の計算ができております。
  175. 堀昌雄

    堀委員 物価というようなものは、この経済社会発展計画の一番中心的なかなめの一つだと私は思っているのです。ところが、ここに書いてあるのは、最初は六%ぐらい、最終のめど三%だと書いてあるだけで、中身は一つも触れていない。まことに抽象的なものが出してあるわけです。  そこで、私はちょっとお伺いしたいのですが、これは政府固定資本形成というのが国民総生産として四十六年にあります。これは三十五年価格であるわけですね。そして、四十六年にも政府の固定資本形成というのが今度は時価で出ていますね。だから、これを割り戻せば、実は計算として出ないことはないと思うのですね。そういう非常に不親切な出し方をなぜこういうふうにしてやっているのか、私これは非常にわからないわけです。これは複利表で割り戻してみれば、年率としてちゃんと出るわけです。年率としては出るけれども、そういうことをしなければならぬような仕組みをなぜ経済社会発展計画は重要な物価についてしておるのか、これをちょっと長官から伺いたいのですが……。
  176. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は経済社会発展計画には、公表していないバックデータが非常にたくさんございます。私ども役所としては整理はいたしておりますし、それからまた他の役所で公のために必要だというときにはごらんを願っておるのでございますが、実は中期計画などを考えましたあの段階で、どうも計画そのものが数字に振り回され過ぎたという反省がございました。そこで今度の場合には、これは計画の本体、ものの考え方が主であって、計数は一応バックデータであるということで作業がずっと進んでまいりました。ですから、デフレーターなんかも実は何べんも使っております。いろいろな目的に応じまして別のデフレーターも使っておりますけれども、これなんかも一バックデータのほうに載っておるわけで、にはしていない。それはあまり数字に振り回されまいという配慮から本来きたことでございます。
  177. 堀昌雄

    堀委員 それでは私の計算でなくて、企画庁のほうでいま私が触れた発展計画の二〇ページの国民総生産ですね。ここで出されておる資料から四十二年−四十六年のIGデフレーターを、これはどうせ計算すれば出るわけですから、あなた方は公表しているわけですから、それだけここで公表してください。
  178. 宍戸寿雄

    ○宍戸説明員 このIGデフレーターをいまここにございますような名目値と実質値との関係で、年率二・七%で伸びという計算で書いてあるわけでございます。
  179. 堀昌雄

    堀委員 実はここに書いてありますのが、最初が六%くらい、そして先が三%の目標ということで、そして年率が二・七%、これがどうもどういう関連になっておるのか、私自分で計算してみてわかっていたわけですが、書いてあることと数値とが全然合っていないですね。最初が六でしまいが三なら、三より上にならなければおかしいわけですね、年率にしてみると。そうでしょう、違いますか。いまのは年率だと思うのですが……。
  180. 宍戸寿雄

    ○宍戸説明員 いま先生のおっしゃっておられます物価の上昇率と申しますのは、国民消費支出のデフレーターでございまして、いわゆる消費者物価でございます。それはわれわれの計算のほうでも、大体四・二%の平均値になるようになっております。
  181. 堀昌雄

    堀委員 わかりました。そこはちょっと私の思い違いでした。実は、国民所得計算の中に出ておるところのインプリシットデフレーターというのは、政府の財貨サービスの購入部分が非常に高いんですよ。私はそれから見て、これは非常に低いような感じがしておるわけです。それで実はいまうっかりして、消費者物価とインプリシットデフレーターが一緒になっておりましたが、その点は訂正しておきます。  それで次にお伺いしたいことは、いま電電公社が四十三年にはたいへん大きな赤字になるということで、拝見をいたしますと、ちょっとお手元に私、話をする都合上、わかりやすいように資料をお配りしてあります。この資料計算の間違いがありますので、最初にちょっと訂正をいたしておきます。2という「資金調達計画」の右の一番端の「修正案」というところをちょっと直しておいていただきたいのですが、一番上の二千六百四十となっておるのは二千六百の誤りであります。それからずっと下に下がりまして、「外部資金」のところが三千九百二十二となっておりますのは、三千九百六十二の誤りであります。それから少し下にまいりまして、「財政投融資」というのに見合う千七百六十九というのは千八百九の誤りであります。その次の「縁故債」という欄に書いております八百五十二というのは八百九十二の誤りであります。ちょっとこれ四十だけの計算がどこかで間違ったようで、全体が間違っておりますので、それだけ訂正しておきます。  実は、四十三年度の電電公社の予算案を拝見すると、収支の不足が五百九十六億円ということになっております。これは1の一番左の四十三年の予算というところの上からずっと下におりてきたところで、「資本勘定へ繰入」となっておる部分でありますけれども、私も実はずっといろいろなこれまでの資料を見ながら、四十二年度予算では七十一億円の黒字であったものが、四十三年度になるととたんに五百九十六億円の赤字が出る、まことにどうもたいへんなことだなとこう思って見たわけでありますけれども、この点はいまからいろいろお尋ねをいたしますが、なぜこの五百九十六億円という、七十一億円から一ぺんに赤が立つようになったのか、ちょっとそれを承りたい。
  182. 中山公平

    ○中山説明員 お答え申し上げます。  収支の差額の問題でございますので、少し分けて御説明を申し上げたいと思います。  収入につきましては、四十二年の四月から六月までの実績基礎にいたしまして、これを年換算率、季節指数修正等をやり、四十三年度に伸ばしまして積算いたしておるわけです。その結果、現行料金のままでまいります場合には、収入の伸びは一五・一%ということになっております。四十二年度の私どもの電話の増設を計画いたしておりますものがそのとおりまいりますと、設備の稼働数の増率というものが一九・五%になります。それに及ばないということが収入の面ではいえるわけでございます。  一方、支出の面におきましては、一九・五%の設備の増というものに伴いまして必要な経費を計上いたすわけでございますけれども、営業費におきましては、この設備の増よりも低く押えて一七・〇%という伸びに、四十二年度予算との比較でありますけれども、押えております。しかし、資本費用のほうにおきまして三二・四%、こういう伸びが出てまいっておりまして、これは利子負担において三六・五%の増、あるいは債券発行、過去の償却、これはわずかの増でありますが、六・七%、約七%の増、それから減価償却費ですが、四十二年度末における公社の固定資産の額が正味で約二兆円ということになっておりますが、それに対して六千百三十億円の投資をする関係で、これも三四%、四十二年度予算に比較してふえておる。  そういう関係で、資本費用といたしまして総計して三二・四%の増加というやむを得ない事態になっております。なお、一つ四十三年度概計におきまして新しいものを計上いたしておりますが、これは期間収支の対応を明確にするという意味から税法においても認められておりまして、民間においてはこれをどの企業体も実施をいたしておるものでございますけれども、増大する退職手当の引き当て金、こういうものを設けることにいたしまして、百十億円を計上いたしております。それに予備費等を加えまして、支出のほうでは全体として二五%程度伸びということになります。  いま申し上げましたような収入における状況、支出における状況、それらが総合されまして、経営状況の悪化を来たし、先ほど御指摘のございましたような、五百九十六億円の損益における赤字が計上されてまいっておる次第でございます。
  183. 堀昌雄

    堀委員 企画庁長官お急ぎのようですから、ちょっとここをはしょって、簡単に企画庁長官のお考えを私伺いたいのですけれども、さっきおっしゃったように、私これをあとでゆっくりやりますが、実は四十三年度値上げをしないでも、少し財投で考えれば、処置ができると私は思っているわけです。いまいろいろお話があったのですが、四十三年の投資額がちょっと異常に高いのです。これはずっと私、資料で過去と将来等について伸び率を見ておりますけれども、四十三年の投資額が非常に高い。私は、価物の問題もあるときには、やはり四十三年度の投資額はここまで一ぺんに高くならなくても、五年計画ですから、少し平年度化してもいいのではないか、こう思うのです。そこらを調整してみますと、縁故債と公募債で外部資金の処置をすれば大体足りるという判断を実はしているわけです。ただ問題は、電報だけは実は経常収支率が五五〇%というようなことになっていますから、百六十九億というのを四十三年度予算にあげておられますから、これにちょっとぶっかけてみても、赤字が七百五十億ぐらいここに出てくる計算になってしまうわけですね、これは本物の赤字ですから。そういたしますと、経済合理性の問題から見ますと、アカウントの中身を見ると、実は電話のほうのアカウントは、まだ経常収支率で九〇%ぐらいのところで、そうして実はあげて電信のほうの赤字がしわ寄せしてきている、こう思っているわけです。そうしますと、私は、やはり経済的な合理性の上に立つならば、とりあえず、もしどうしても財投でめんどうが見られなければ、電報料の問題は考える余地がある。  もう時間をお急ぎだから、向こうから伺いたいのだけれども、こっちから少ししゃべりますが、電報の使用の中身は、大体、企業が七五%、個人用が二五%というように資料に出ておるわけです。そうしますと、電報料の値上げというものは、かなり企業負担なので——私この前、国鉄の問題についても、国鉄の定期は値上げしてもいいだろう、それは、かなりこれは企業負担になっているから、どうしてもこういう場合、特別の状況にきているときは、やむを得ないだろう、こういう考えを持っているわけですが、いまのこの問題も、十五字ぐらい、最低のところだけはひとつ——これは母危篤だとか、駅に何時着く迎え頼むという、これは電話のない人たちの唯一の通信機関でありますから、これを上げるというのは国民生活にも問題があるだろう。そこで、電報によって、あなたの電報は事業用だから高いですよ、これは安いですよというわけにいきませんから、十五字まではひとつ据え置いたらどうだろうか。それから上は応分の上げ方をして、ひとつ上げるということ。あるいは同文電報だとかいろいろな特殊な電報、あるいは加入電信の割引率だとか、電報電信系統にはノーマル以上のものがかなりあるように思うのです。そういうものはある程度検討するのもやむを得ないと思うのですけれども、ものの性格からすると、電話料の値上げだけは、少なくとも四十三年は控えるべきだ。いまの諸情勢からいっても、これから国鉄も上げなければ、国鉄は電電どころの騒ぎじゃありませんから、それは何とかいろいろな措置をしなければならないだろう。ことしの暮れから来年の初めになれば医療費も上がるでしょう。あれもこれも、政府関係したものがほとんど一斉に上がりますから、そういう情勢の中で——私はあとでゆっくりと、四十三年度の値上げの必要のないことは郵政大臣にもよく聞いていただくつもりでおるのですけれども、長官お立ちになるようですが、その点、いろいろな考え方を通じてみると、その財投を何千億と出すということじゃなくて、ことしも六百二十億縁故債をやっていらっしゃるのだから、縁故債も少し勉強してもらって、しかし財投も公募債のほうを少し考えるというようなことをすれば値上げをしないでも済むという、比較的まだ恵まれた条件だと私は思っているわけです。その点についての企画庁長官のお考えをちょっと承って、長官だけお先にお立ちになってください。
  184. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 電報が確かに非常な赤字になっておるということは、電電公社当局からも私聞いたことがございまして、どうもこればかりは、人を使う仕事でございますから、さもありなんと考えております。全体のことを私は詳しく検討をしておりませんので、何とも申し上げかねますけれども、たとえばいま言われましたようなことは非常に有益な一つの示唆ではないかと思います。それも、できればしないで済ませたいとは思いますが、ただいまのようなお考えは、いろいろな物価問題を考えますときに非常に大事な示唆を含んでいるというふうに承りました。
  185. 堀昌雄

    堀委員 私も電報を値上げをいたしていいと言うのではないのですよ。ただ財投その他がどうしてもつかなければ、それを電話料金の値上げという形で上げるのは来年度適当でない。それはいま申し上げたように、電話のほうのアカウントはまだペイできて、余力があって、電報のほうへまだつぎ込んでいる状態だということを背景にして申し上げておりますので、その点はひとつ長官としても、この前藤山さんは七%ぐらいずつも物価が上がっているようなときは、それは政府の公共料金は上げるべきではないということを委員会ではっきりおっしゃったわけなんですけれども、おそらく宮澤さんも、いまああいう発言をしていらっしゃるわけなんで、その点は私は藤山さんのお考えと差はないと思うのですが、その点ひとつお答えいただいて、長官に対しては終わります。
  186. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最後にお尋ねになりましたことの意味は、物価上昇が相当に急激なときには、やむを得ずやむを得ない措置をとると、こういう……。
  187. 堀昌雄

    堀委員 いや、藤山さんは、七%ぐらいの消費者物価の上昇が続いているようなときには電話料金は上げるべきではない、はっきりこうおっしゃったわけです。私は、いま、ことしが何%になるのかまだちょっとわかりませんし、来年度が何%になるのかまだわかりません。ただ、この後半から相当なカーブで上がることだけは、これは間違いがないと思います。だから、そういう相当加速度をつけているときには、電電のようなところは一年見送るということがあってしかるべきではないかというのが私の考えなんです。それはおそらく、藤山さんがお答えになったことはそうだと理解しておりますから、その点についてはおそらく宮澤さんも企画庁長官として藤山さんとお考えが同じだろうと思うので、その点はいかがかとお尋ねしておるわけでございます。
  188. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういうことでございます。しかし、そのために入り用な財政措置あるいは財投の措置はどうしてもとってあげねば電電公社は困るだろう、こう考えておるわけでございます。
  189. 堀昌雄

    堀委員 じゃどうぞ、長官けっこうでございます。  実は、いまお話の途中になったのですが、私ここに皆さんに資料をお渡ししておりますから、その3「減価償却費と建設投資額について」というのをちょっとごらんになるとおわかりだと思いますが、減価償却費は予算ベースでいいますと、三十七年には六百五十三億、三十八年は八百三億、三十九年は千四十六億、四十年は千二百九十六億、四十一年は千六百三十一億、四十二年は二千百二億、ここまではだんだんふえておりますけれども、そんなに急激なふえ方ではございません。ところが、四十三年にいきなり二千八百十六億、対前年の差が七百十四億と非常に大きな減価償却がここでとられておるわけであります。これまで発表されております調査会のベースについて見ても、実は四十三年は二千三百七十億、四十四年は二千八百十億、四十五年は三千三百億というふうに、対前年差が三百八十億、四百四十億、四百九十億と大体モデレートな形でいっているわけです。ところが、とたんに二千八百十六億。それでは固定資産が急激にふえたのかといって調べてみると、別に固定資産がここで急激にふえているわけではない。どうもこれは耐用年数か何かがここで急激にさわられて、要するに減価償却費を人為的に捻出をしたという感じがしてならないわけですが、これについてお答えをいただきたいと思います。
  190. 中山公平

    ○中山説明員 お答えを申し上げます。  問題が二つに分かれると思いますが、先ほどの調査会との比較の点が第一点、それから第二点は予算を経年的にながめた場合の比較の問題であります。  調査会との関係でございますが、電信電話調査会の当時におきましては、昭和三十六年に減価償却の方法を改正いたしまして、公社資産の大宗を占めますところの電信電話の機械設備、線路設備の総合耐用年数——もちろんこれは各品目ごとに耐用年数がきまっておるわけでございますが、これを総合した耐用年数が十六年ということに相なっておりまして、電信電話調査会におきましては、その減価償却方法をそのまま採用されたわけでございます。ところが、その後昭和三十六年から八年までの公社におきますこの種資産の削除の実態というものを調査いたしましたところ、御承知のように電信電話のサービスの改善、技術革新あるいは設備投資の増大に伴うもの、こういったことが原因をいたしまして、削除の実態というものが減価償却方法できめられた耐用年数よりはかなり下回っておる、こういうことでございました。四十二年度予算におきましてこの点をお願いいたしまして、大体主要品目は三十七品目あるのでございますけれども、主として機械関係の十七品目につきまして削除の実態、あるいは税法におけるところのこの種資産の耐用年数、あるいは民間の同種企業におけるところの耐用年数、こういったものを勘案いたしますとともに、電電公社の現在からここ当分におけるサービスの改善の設備、更新計画、たとえばステップ・バイ・ステップの交換機といったようなものはクロスバーに変わってまいる、そういったことを勘案いたしますとともに、削除の点についても、諸外国でやっておりますターンオーバー、すなわち撤去の逆累積法という手法でつとめて科学的に算定をいたしまして、これを郵政大臣に認可を申請して御承認をいただきまして、その結果、耐用年数の十六年が十四・八五年ということに短縮をされました。それが調査会との違いでございます。もちろん調査会で予定いたしました投資額と現実の予算決算に盛られました投資額との差というものも響いております。  第二点の予算の経年比較でございますが、それにつきましては、いま申し上げた点が四十一年度と四十二年度の予算との減価償却計上額の違いとなっておりますし、四十三年度につきましては、三十七品目のうちで残されております二十品目の調査を完了いたしまして、これについての手直しもお願いいたしておるということと、先ほども申し上げましたように、投資額が四十三年度概計では大きくなっておりますから、こういうものが両々相まちまして差が出てまいりました。こういうことでございます。
  191. 堀昌雄

    堀委員 たいへん詳しい御説明をいただいたのですが、郵政大臣、実はいまの電電公社のこの問題というのは民間と比べて非常に考えられておるのですね。民間では、減価償却にしましても退職引き当て金にしましても、御承知のように税との関係で問題があるわけです。ところが、公社は税金を払わないのですね。どこにも税金を払わない。ですから、それはどういうことで起こるかといいますと、ここでは紙の上のからくりみたいな感じになってしまうわけです。税金に関係がないものですから。郵政大臣にも資料をお渡ししてあると思うのですが、ここで減価償却を二千八百十六億円にし、引き当て金を百十億円計上しまして、何か支出が非常にふえたようで、赤字が五百九十六億円になっておる。ところが、資金調達計画のほうへいきますと、結局これを足してしまうわけですから、中身がどうあろうと内部資金の二千六百億円というのは変わりがないわけですね。ただ知らない人が見ますと、ああ、電電公社は五百億円も赤字が出た、たいへんだな、こうなるのですね。それじゃ値上げもやむを得ぬのではないかという錯覚におちいるわけですけれども、実は減価償却は、私が修正案というのを書いているのは、これは調査会の二千三百七十億円にして、百十億円の退職引き当て金をゼロにしたところで、二千六百億円の内部資金は変わらないのですよ。だから、こういう形がとられて、何か赤字が出たということが宣伝に使われているような感じがする。これはいまいろいろ公社の御説明がありましたけれども、税法の適用を受ける民間会社と同じような感覚でどんどん耐用年数を縮める。税法の場合はそれだけ税で落ちますから非常に有利になりますけれども、税金を払わないところはただこういう内部操作だけのことになるだけで、どうせ内部留保ですから、どっちみち変わりはないわけです。どうもそこらが私、この資料を見ながら非常に納得ができないのですが、郵政大臣はこういう−鉛筆をなめて書いたわけじゃないでしょうけれども、どうもペンシルワークを少しすると赤字が出てきたりするというようなことについては、これはPRの問題でありましょうが、やはりさっきちょっと宮澤さんに申し上げたように、まだ電電公社はこの限りではそんなに急いで値上げをしなければならぬという差し迫った問題ではないというふうに私思いますが、郵政大臣の御見解をいまの減価償却や退職引き当て金等の取り扱いを含めてちょっと伺いたいと思います。
  192. 小林武治

    ○小林国務大臣 ただいまの問題、堀先生の言われるような傾きがあると私も思っております。減価償却を幾ら多くしても、退職引き当て金を幾ら多くしても、全部内部留保でそのままこれが建設勘定で使える金でありますから、お話しのような傾きがあるということは、私も同感をしております。したがいまして、これからまたいろいろお尋ねがあると思いますが、ある程度あるいは先生のおっしゃるように、赤字が出るような宣伝にも使われておるのじゃないかなどとおっしゃられることも、必ずしも事実には反しない、こういうふうに私も思っております。
  193. 堀昌雄

    堀委員 ですから、私ずっとこの問題を調べておりまして、この計画の中にも、たとえば——私も経済は効率的にやらなければならないと思いますからいろいろ伺っておったわけですが、非常にこれからは住宅電話がたくさんつくから赤字がふえる、こういうことになっているわけですね。住宅電話は確かに企業に比べると通話数は少ないですから、その限りでは私はやはり収入は少なくなるだろうと思います。しかし、いま共同電話という制度がありますから、これで路線の部分がだいぶん節約をされるのではないか、こういうふうに思います。そういうものがここではたしか二共同で計算がされておるのではないかと思いますが、公社どうでしょうか。
  194. 井上俊雄

    ○井上説明員 共同電話につきましては、普通の加入電話に関します限り二共同でございます。
  195. 堀昌雄

    堀委員 これは技術的には何共同ぐらいまで可能でしょうか。
  196. 井上俊雄

    ○井上説明員 これはいろいろ検討しておりまして、たとえば共同電話にもお客さんの御希望によりまして、個別に呼び出しができる、あるいは個別に料金の計算ができる、それから相互の通話が可能である、またさらにほかに話が漏れない、こういうような単独の加入電話と全く機能が同じ共同加入電話といたしますと、現在ではまだ二共同の程度が技術的には限界になっております。しかし、公社といたしましても、できるだけ早い機会に比較的トラフィックの低い、利用度の少ないお客さんに対しましては、もうちょっと共同加入の範囲を広げることのできるようにいろいろ検討を始めておる、こういうことでございます。
  197. 堀昌雄

    堀委員 郵政大臣、いまの問題も、やはり線路は一本使えば往復で二本になりますが、二つよりはもし四つできるとすれば、同じ線を使ってやるのは、あとの、いまいろいろ話のありましたような秘話装置だとか計算をする機械だとかというふうなものはまた別個に要るだろうと思いますが、これは経済効率から見ても非常にいいことだから、ぜひ監督者である郵政大臣としても、この経済社会発展計画というものの中の一つの柱は経済の効率化ということを非常に強くうたっておるわけですから、その意味からもこれを推進していただくことによって——実は電電公社のほうでは設備料金を現行一万円を三万円に、ただし二共同電話は二万円でよろしい、こうなっておりますから、どうもこれだけから見ると、ともかく一万円だけは安くなるのだ、私もうちょっと安くなるのじゃないかと思いますが、そういう感じがいたしますから、この点もひとつ大いに促進することによって、いまと同じ架設をしても三兆五千億円は要らなくなるという問題が一つ片面に出てくる、こういうふうなことになって総体的な効率があがる、こう思いますが、ここは郵政大臣、どうお考えでしょうか。
  198. 小林武治

    ○小林国務大臣 これはもうお話のとおりでありまして、現在でも多少の不便をしのいで農村集団電話なんというのは六共同か何かやっておりますが、そういう方向に私は進むべきである、かように考えております。
  199. 堀昌雄

    堀委員 そこで、いまちょっと横道にそれたのですが、さっきの来年度の投資計画の問題がありますね。四十三年度の投資計画というのは予算で六千百三十億円、こうなっておるわけです。ところがこれまでは、予算ベースで四十年くらいから見ますと、これは資料の3、建設投資額の下のほうに書いてありますけれども、四十年が予算で三千四百六十九億、四十一年が四千百二十億——この四十一年は実は調査会では四千五百八十億という計画を出しておられたようでありますが、もし四千五百八十億ということになりますと、調査会ベースで、前年の四十年の調査会は三千二百六十九億でありますから、千二百十一億も投資額がふえるということになっていたわけですが、幸いにして、予算ベースでは四千百二十億ということでだいぶん調整をされた。ですから、予算ベースでいえば前年比六百五十一億という開きにしかならなかった。四十二年は四千九百六億で、予算べース前年比が七百八十六億、ところが四十三年にくると、とたんに六千百三十億だ。対前年差が千二百二十四億というふうに非常に急にふえておるわけです。これはあとのほうで新しい計画をお出しになっておるものを見ても、新計画と書いておるのですが、大体対前年差というのは四十四年四百二十億、四十五年五百二十億、四十六年四百十億、四十七年五百億、対前年差では大体四、五十億というところでモデレートな投資額の伸びになっておるのに、何か四十三年だけは千二百二十四億もの非常な差がつくほど投資がふえておる。これはちょっと資料のほうを拝見してみると、一般的なものはそんなにふえてないのですけれども、地域的な便宜をはかる措置ですか、それと例のデータ通信というのがここへ大きく頭を出して、百七十億と三百幾らですかの投資、それが非常に大きな要素になっておるということがわかるわけです。この問題も私はさっきの財投でめんどうを見てもらいたいわけですが、いまの全体の計画からいって、財投で必ずしも全部見切れないときにはこれを少し平均的に、投資を全部四十三年度に六千百三十億やらなくても、もう少しならせる処置もあるのじゃないだろうかというふうな感じがいたすわけでありますが、郵政大臣はこういう点についてはどうお考えでしょうか。
  200. 小林武治

    ○小林国務大臣 この案は、電電公社が概算としておつくりになって大蔵省へ取り次いで出しておる。その検討を受けておるものでありますから、お話しのようなこともこれから当然問題になってくる、かように考えております。
  201. 堀昌雄

    堀委員 そこでものの考え方を、さっきから申し上げておりました中でひとつ承りたいと思うのですが、この三兆五千億の中に、データ通信というコンピューターを電話回路によって送る非常に新しい企てが、百七十億円の投資で行なわれるようになっている、こういうことになっておるようです。これは公社の総裁に伺いたいのですが、私、この前も総裁に、さっき一番最初に企画庁長官にお話をいたしました企業負担と個人負担の問題について触れておったわけですが、これなどは全く企業にとってはたいへん有力な手段になると思います。銀行のオンライン・システムというのが今後非常に有効な力を発揮してまいるでしょう。そういうものについては、私は、その受益者が設備投資部分については縁故債を買ってしかるべきだ、こういう感じを実は持っておるわけです。大体設備投資は、本来借り入れ金で行なわれていいのではないか。経常収支の分は、これは当然料金でまかない、同時にそれの資本費負担をしながらいける程度にはやはり料金の問題というものはなってこなきゃならぬと思いますけれども、そういういまの百七十億のデータ通信の四十二年度の費用などは、やはり私は縁故債等で見るべきだと思うのです。皆さんのほうの四十三年度の概算要求では、公募債は九百十七億となっておりますが、縁故債ゼロとして、実は予算が組まれておるわけですね。ここらについて、私はやはりデータ通信のようなものは、その設備投資費用についてはそういう企業が負担をしても、非常なメリットを受けるわけですから、何ら問題はないと思うのですが、この点について、企業負担の問題について、公社の総裁、どうお考えになっているでしょうか。
  202. 米沢滋

    ○米沢説明員 ただいまデーター通信のお話が出ましたから、それを対象にして最初に申し上げます。  データー通信といたしましては、すでに本年度の予算で認められておりますような、地方銀行協会というように、その受益者が非常にはっきりきまっておるようなものと、それから公社がこの際計画いたしましたように、東京、大阪、名古屋のように、一般の加入電話線を使いましてやるというのと二種類に大きく分けられると思います。それで、それに対しまして、公社といたしましては、ことに四十三年度予算においては、いわゆる四十三年から四十七年に至る第四次五カ年計画の大綱というものを頭に入れまして、資金計画考えておるわけでありまして、そのために料金の修正とか、あるいは設備料の一万円を三万円にするという問題を含んで考えておりまして、料金修正というものは必ずしも四十三年度、単年度だけのことを対象にしていくわけではございません。公社として独立採算を維持していくという、健全なる企業経営を持続していきたいということが最大の眼目になっております。  それで、いまの縁故債の問題に戻りますと、公募債、縁故債というものに対しましては、やはり公社としては、何といっても公募債でお願いしたいのが本音でありまして、四十二年度予算におきまして、三百二十億の公募債と、それから六百二十億の縁故債ということに最終的になりましたけれども、しかし、公社の希望といたしましては、何といっても政府保証の公募債を希望するわけでありますから、したがって、四十三年度の最終的な予算の形がどうなるかは、まだこれから郵政大臣なりあるいは大蔵大臣がおきめになりますけれども、現在の時点におきましては、公募債でいただきたい、こういうことを強く要請しているわけです。  それからもう一つは、来年の債務償還の問題でございますが、四十三年度の債務償還が約三百七十億くらいありますが、この三百七十億のような債務償還は、やはりどうしてもこれを縁故債でやっていくということはまずいんじゃないか。したがって、債務償還につきましては、ぜひ政府保証債でいただきたいということでありまして、縁故債は全然ゼロで要らないというわけではないのでありますが、最終段階においてはお願いするようになるかもしれないと思います。
  203. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、いまの不特定多数の分というのと特定なものとがありますが、特定なものは当然そういう設備資金等は縁故債等で負担をしていただく、こういうことになるのでしょうか。
  204. 米沢滋

    ○米沢説明員 その問題につきましては、地方銀行協会というものが初めていたしますわけでございますので、将来の問題として検討することはやりたいと思いますが、何といいましても料金修正を含んでおります五カ年計画の大綱の中では、私はこのデータ通信というようなものは独立採算で考えたらいいんではないか。先ほど電報の話がございましたけれども、電話収入からデーター通信のほうへ経費を持っていくということは考えない。データ通信というものは、いわゆる資本費用を調達するということよりも、むしろ経常費のほうにウエートを考えて、独立採算的にやったほうがいいんじゃないかというふうに考えております。
  205. 堀昌雄

    堀委員 私もいまのデータ通信はそういう考えだったわけです。ただそういう考えで、電話のほうの起債でそれをまかなっちゃうというようなことのないように、要するに独立採算的に考えてもらって、そこで起債もやり、料金もそれにマッチするようなものをきめていくということでお願いをするならば、たいへんけっこうだと思うのです。ですから、その点非常に今後、いまはこの程度でしょうが、おそらく電電公社しかやらないということになると、このデータ通信というものの将来的な用途というものはかなり大きなものになってくるのじゃないかと思いますから、その点は、いま総裁はっきり独立採算的にやるとおっしゃったことは、非常に私はこの問題については意義があると思っておるわけです。  いま私は、宮澤さんちょっとお急ぎになったからはしょっていろいろやったわけですが、電報について、この前の調査会の案というのは、私に言わせたら、全くドラスチックな値上げだと思うのです。ああいう値上げは、私は庶民に電報を打つなと言うにひとしいほどのドラスチックな値上げだと思ったのです。さっき私がちょっと提案申し上げたように、十五字というところを限って、最低料金というのはひとつ——ともかく選択の自由がないのですからね。電電公社でなしにほかで電報を打ちたいなんて言ったって、日本では電報は電電公社でしか打てないという、これは全く独占企業としての性格を持っておりますから、これは国鉄なんかとだいぶわけが違うのですね。国鉄は、気に入らなければ、場合によったら、われわれのほうの関西ならば阪急電車、阪神電車と、同じところを三本も走っているわけですから、こっちに乗っていこうかということになって、選択制もまだあるわけですし、自動車で行くのもあればバスで行くのもあるし、飛行機にも乗れるわけですけれども、電報だけは、電話もそうですけれども、全く独占企業ですからね。確かにいま経常収支率が悪いし、今後ますますやはり悪くなると私は思うのです。悪くなると思うのですけれども、私はやはり最低のところだけは固定をさせて、あとはできるだけバランスがとれるように考える。それで最低のところを固定して、赤になった分というのは、国の政策としてそういうふうに価物対策上やるわけだから、ここは当然私は公募債その他でメリットを政府が与えるべきだ、こういうふうに考えたわけです。これはひとつ郵政大臣どうでしょうか、考え方として私がさっきから申し上げておりますように、十五字のところは据え置きにして、もし上げるとしても——いま上げろというのではないですが、もし上げるとしても、この前の調査会の案のような、一ぺんに二百円になったりするようなことは問題があるから、十五字のところを、いま六十円ですか……。
  206. 米沢滋

    ○米沢説明員 ちょっと先生数字が違っておりましたから……。
  207. 藤川貞夫

    ○藤川説明員 それでは御参考に申し上げますと、調査会の答申では、十字まで現在六十円でございますものを二十五字百五十円、累加料のほうは、現行では五字増すごとに十円、それをそのまま据え置きにしたらどうだ、こういう案でございます。
  208. 小林武治

    ○小林国務大臣 私は、電信についての考え方は、堀先生とだいぶ似ておるのです。ことに電信というものは一種の電話の補完作用をしておる。電話の普及しない地域にはぜひ必要である。しかも普及しない地域は、どちらかというと後進地域、低所得地域、こういうふうにいわれるのでありますから、私の考え方を申せば、電信料などはなるべく上げないでおきたい。ことに基本料等なんかも当然さような考えをするべきである、また累加の問題にしましても。電信というのはなぜ赤字が出るかといえば、機械じゃない、人手を使うから、人の足を使うから出る。したがって、これは今後も出ていく。しかし、問題は電話を補完するものだ、そういうふうにも考えるわけです。  それから、先ほどお話しのように、個人負担と企業負担がありますが、個人負担の分のやつは相当大きい、こういうことからいたしますれば、私は、電信がペイするほど上げるとすればたいへんなことであるから、そういうことは、上げる場合にはすべきでない。これはどうせ電信電話公社が電信と電話を一緒にやっているんだから、ある程度電話でもってこれを補給することは、私は差しつかえない、さように考えます。  機械設備等については、お話しのような問題がありますが、これが一番の赤字の原因は、機械設備ではない。人間の手足に対する経費がかかる。それがまた赤字の最大の原因になる。こういうことからいたしますれば、これをペイさせようなんということは考えるべきじゃない。したがって、足りない分の経常費は電話収入でもってある程度補給することはやむを得ない、またそうすべきじゃないか、こういうふうに私は考えております。
  209. 堀昌雄

    堀委員 五五〇というような経常収支率ですから、これはペイさせようなんて思ったら、とても電報打つ人がなくなっちゃうだろうと思うくらいになるだろうと私は思います。ですから、ともかく電報も、企業負担の部分はある程度負担をしていただいてもいいと私は思っていますが、基本部分はこれはもうともかく——しかし、十字ではちょっと電報打てないですね。やはり十五字ないと打てないから、私は十五字というところまではこれは動かさない、あとはある程度考えようによろうと思います。しかし、私は上げるのがいいというのではなくて、やむを得ざる場合の処置としてもそういう処置をとってもらいたい、こういうことで、その点郵政大臣ともお考えが同様であるようでありますから……。  だいぶ時間もたってまいりましたから、私がいままでいろいろ申し上げましたこと、少しあっちこっち飛びましたけれども、さっき申し上げたように、これから米価が上がりましたり、やがて医療費も上がりますでしょうし、国鉄のなにも上がりますし、バス料金その他も上がります。おそらく一般の庶民には、入浴料金も上がるでありましょうし、目のつくところ、公共料金的なものは、水道料も上がる、たいていのものがみな上がるという時期でありますから——私は、実は、電電公社としては、何も四十三年だけをめどとして値上げをされているとは思っておりません。ただ四十三年が、何かずっと全体を見ておりますと、非常に投資目がばっとふえている。減価償却もここでばっとふえている、退職引き当て金もばっとふえたりして、何かいやに赤字が出てきて、これからスタートするのにたいへんな赤字だぞというような印象を与えるような概算要求になったものですから、ちょっと調べてみると、いまのところ公募債に政府が少し配慮を行なえば、四十三年度の値上げをしないでも済むではないか、多少財務的な問題の悪化はあると思いますけれども、これは少し長い問題。私は、電信電話というものは生産性の非常に大きい、また成長率の高い産業でもありますから、今後は少しずつ下がるということになるかもわかりませんけれども、諸外国の例から見ても、まだまだ日本の場合には余力があるというふうに思いますので、公社の総裁としては過去のような経緯もありますから、できるだけ値上げをしたいというお考えでありましょうけれども、しかし郵政大臣、所管大臣として、この際、さっき経済企画庁長官もおっしゃいましたけれども、物価がこういう上昇の際ですから、できれば一年見送るというような考えをとっていただけないか、こう思いますが、郵政大臣、ひとつお考えをお伺いいたしたいと思います。
  210. 小林武治

    ○小林国務大臣 いまの電話料金の問題については、この段階においては私は白紙である、こういうふうに申し上げざるを得ない。まだいろいろ外的の事情等についても考慮しなければならぬと思いますので、私は実は普通の状態なら、もう主管大臣としてはそろそろ上げるべきだくらいのことを言うのが普通だと思いますが、私はいままで言うておりません。これは何を示すかということもおわかりになると思います。それはもうなるべく上げないに越したことはありませんから、政府としても上げないで済むような努力をすべきである、こういうふうに私はいま思っております。いずれの場合にいたしましても、私はまだどなたにもこの問題について上げるとかあるいは上げないとかいうことを申しておりません。これはすべて今後、先ほどのような宮澤長官のお話もございますし、万般の事情を考慮して慎重に扱うということで、私自身としてはこれにはあまり進んでおらない、こういうふうにひとつこの際御了解願っておきます。
  211. 堀昌雄

    堀委員 たいへん有効な御答弁をいただいて、実は国民はいま物価が次々上がるときですから、少しでも何か遠のくということを聞けば、それだけ明るい気持ちになるだろうと思います。物価という問題は、私どもが非常に安易に考えておりますと、電話料金の値上げは消費者物価の中の〇何%だとか、そういう問題は確かにあるでしょうし、何年間か上げてないから当然これは上げてほしいんだということは、それは一つの側面としてあるかもしれませんが、しかし、流れがある程度行くときには、やはり私は、政府が関与しておられる部分については、いまの郵政大臣のお考えのような処置を、これからいよいよ予算時期でもありますから、ひとつ所管大臣としては十分お考えをいただいて、国民に少し明るい希望を与えていただきたいということを要望いたしまして、きょうの質問を終わります。
  212. 内田常雄

    内田委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後四時十七分散会