○村松
説明員 この七月にOECDの
会議がございまして、その帰途特にドイツを通りまして、さらにイギリスの
石炭対策を見てまいったのであります。
先生御
指摘のとおり、西欧諸国のうち、ドイツ、イギリスは特に石炭事情が急激に変動しておりまして、端的に申しまして各国政府とも
石炭対策に苦慮しておる、こういうふうな動きと受け取ってまいったわけでございます。
たとえば西独について申し上げましても、生産は一九六五年、昭和四十年から急激に減少しております。一九六四年は一億四千二百万トンでございましたのが、一九六六年は一億二千六百万トンというふうな下がり方でございます。このように、一九六一年あるいは一九六四年ころに、ドイツといたしましては一億四千万トン
体制というふうなことをもって諸般の
対策を行なってまいったわけでございますが、これが現在では維持できない、こういう状態にあるわけでございます。
この原因につきましては、申すまでもなく石炭の急激な需要の減少に起因しておりますが、これは明らかに低廉な流体エネルギーの供給能力の増大の結果であるということでございます。特にドイツでは石炭と石油の間に大体一五%程度の価格差がある。しかも石油市場におきますところの販売競争が非常に激しくなってきまして、ひいてはこれが石炭の販売量の減少、減産の大きな理由になっておるのではないかと思います。また、特に天然ガスの
開発の急進展も石炭需要の減少にさらに拍車をかけておるわけでございます。石炭に換算いたしましても一千万トン程度のものを、ドイツにおきましてはオランダから輸入する計画を立てておる、こういう現状でございます。
こういうふうな現実に直面いたしましたドイツの石炭業界といたしましては、一九六六年の十二月に、ついに計画的な撤退ということを宣言いたしまして、今後数年間にさらに二千五百万トンから三千万トンの生産能力の削限を余儀ないものと
考えております。このため、現在の出炭能力の一億四千万トン前後のうち、明らかに非能率化しているというふうな設備は、思い切ってこれをカットダウンするというふうに、いわゆる優良
炭鉱へ生産をできるだけ集約したいという方向を明らかに持っております。
このため、西ドイツの政府として提案いたしました
対策といたしましては、今度この九月に出しました石炭企業及び産炭地域の適応及び健全化の法案でございます。これをひとつ今後
石炭対策として統一をいたしたい。これは、簡単に申し上げますと、
一つには、連邦監理官制度をつくりまして、監理官の
行政指導の
もとに、生産能力なりあるいは販売数量というものを調整する。あるいは鉱区調整を監理官の積極的な助言によって行なう。あるはさらに、もちろん合理化等につきましても、ある程度これを指示するというふうな、国の介入の度合いを強める、こういうふうな法案を
考えております。この法案
実施後の多数のいわゆる閉山退職者の救済、こういったものはまだ依然としてドイツとしても問題であると申しております。また、産炭地域の今後の経済構造も、そう早急に回復できないというふうなことでございました。
要するに、西ドイツ政府におきましては、石炭産業を今後も国内の重要エネルギー産業として維持しておりますが、一方、生産の合理化、能率向上のための諸般の
対策を立てておりますが、特に計画的な生産規模を縮小しまして、優良能率
炭鉱の維持をはかるために、一九六九年の一月一日までに、定められたいわゆる最適企業規模というものを
考えまして、この規模に達していない石炭企業に対しましては、現在与えられているところの補助政策を打ち切るというふうな、相当思い切った
対策も
考えております。今後安逸な政府援助を期待する企業に対しては、大きな反省と、またさらに努力を促すということになると思います。
ただ、これに対します感じでございますが、一九六九年という時点は、今後この二年といった短い期間に、いま申しましたような最適企業規模に各企業が達するかどうか、こういう時点の短さがあるのではないかということ、またあるいは出炭目標をどういうふうにするかという点につきまして、一億一千万トンないし九千万トンという大きな出炭量の相違もありまして、この点につきましても、ドイツとしては目下のところ明確な出炭目標をきめかねております。
さらに、連邦監理官制度につきましては、ドイツ国内の石炭企業といたしましては、いま少し私企業を尊重していただきたい、こういうふうな業界の希望もある。
真にいわゆる石炭樹立
対策のために、石油とかあるいは天然ガス等の、ほかのエネルギー政策との総合性を持ったようなもの、すなわち競合エネルギーに対しますところの抑制策と申しますか、そういったような総合エネルギー
対策を
考えた
石炭対策がほしい、こういうふうな感じもいたしておるわけでございます。
要するに、西独政府の
石炭対策の目的は、石炭産業の縮小化というのではなくて、その健全化にある。つまり現在の危機的な現象を解消しまして、正常な状態に復帰する、こういうふうに
考えておるわけでございます。したがって、もしこの生産と需要が再バランスしまして、もうすでにドイツのほうは
日本と違いまして需要が非常に減少している、こういう
状況でございますので、両者がバランスしまして、さらにドイツが
考えておりますような優秀な
炭鉱設備がフル稼働しまして、産業が最適の企業単位に整備されるならば、石炭産業は必ず安定するだろう、こういうふうなドイツ政府の
考えておることが実現されるならば、私といたしましては、ドイツの
対策も今後徐々に成功していくのではないか、こういう感じを持ったわけでございます。
イギリスにつきましては、御
承知のように国営でございますので、ドイツとは違いました
一つの事情がございます。現在イギリスの生産は一億九千万トンから一億八千万トン台に落ちておるわけであります。
炭鉱数も現在約四百三十五ほどございますが、これはイギリスにおきましては国営でございますので、この
炭鉱の能率を相当分析しておりまして、能率のよいものは二百
炭鉱ございます。今後存続する将来性の少ないものは五十、残りにつきましては、一九七〇年までには閉山したい、こういうふうなまさしく計画的な撤退を英国としては
考えておるようでございます。したがって、またイギリスは国営でございますので、投資計画も大体年間七千九百万ポンドでございますが、これにつきましても計画的ないわゆる投資計画というものをはっきり出しております。やはりイギリスといたしましても、結局は非能率あるいは不採算
炭鉱を切り捨てまして、高能率な優秀な
炭鉱に生産を集中するということを真剣に
考えておるわけでございます。
ただ、英国の一番当面しておる問題は、先ほど
先生お話がございましたように、労働問題がやはり相当深刻でございました。英国におきましては、賃金等も他の国よりは高うございますが、ヨーロッパで英国は出稼率が一番悪い、こういうふうな事情もございました。そういうふうなことで、英国といたしましては
労働者の需要をアフリカなりあるいはイタリアというふうな海外から求めている、こういうふうな事情もございますが、やはりこの労働問題につきましては、
日本と同様、今後どういうふうにするかということについては非常に頭を悩ましておるようでございます。イギリスといたしましては、いずれにしてもこういったふうな優秀
炭鉱に生産を集中する方向に、特に機械化という点につきまして相当力を入れてまいる、こう存じておるわけでございます。
なお、英国は
日本と同じように一九六五年の石炭産業法で四億一千五百万ポンドの肩がわり
措置をいたしたわけでございますが、その結果、一九六五年から六六年の間に利子負担をしまして、二千百万ポンド減少しました。減価償却といたしましても一千四百万ポンドの軽減を行なうことができた。このため一九六五
年度の石炭庁の収支は大体とんとん程度というふうにイギリスのほうでは申しておりましたが、実際はさらに悪いようでございます。したがいまして、こういったふうな英国の石炭事情を
考えますと、英国の今後のいわゆる計画的撤退というものがはたして石炭庁が
考えておるようにうまくいくかどうか、こういう点にかかっておる、こう
考えるわけでございます。
以上が大体ドイツとイギリスの
石炭対策の現状でございます。