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1967-10-09 第56回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年十月九日(月曜日)    午前十一時八分開議  出席委員    委員長 多賀谷真稔君    理事 神田  博君 理事 藏内 修治君    理事 三原 朝雄君 理事 岡田 利春君    理事 田畑 金光君       鹿野 彦吉君    倉成  正君       篠田 弘作君    野田 武夫君       廣瀬 正雄君    井手 以誠君       中村 重光君    細谷 治嘉君       渡辺 惣蔵君    池田 禎治君       小平  忠君    大橋 敏雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  菅野和太郎君  委員外出席者         通商産業省石炭         局長      中川理一郎君         通商産業省鉱山         保安局長    西家 正起君         通商産業省公益         事業局長    井上  亮君         通商産業省福岡         鉱山保安監督局         長       久良知章悟君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君         労働省安全衛生         局長      大野雄二郎君     ————————————— 九月二十三日  委員池田禎治辞任につき、その補欠として小  平忠君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員小平忠辞任につき、その補欠として池田  禎治君が議長指名委員に選任された。 十月九日  委員木原津與志君及び池田禎治辞任につき、  その補欠として中村重光君及び小平忠君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員中村重光君及び小平忠辞任につき、その  補欠として木原津與志君及び池田禎治君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 八月十八日  一、石炭対策に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件(三池炭鉱坑内火災事  故)  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 これより会議を開きます。  会議に先立ちまして、去る九月二十八日、福岡大牟田三池炭鉱災害により、七名の痛ましい犠牲者を出しましたことは、まことに痛哭のきわみであります。本委員会といたしまして、この際、議事に先立ちまして、犠牲者の御冥福を祈り、黙祷をささげたいと思います。各位の御起立をお願いいたします。黙祷始め。   〔総員起立黙祷
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 黙祷終わり。どうぞ御着席を願います。      ————◇—————
  4. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 それでは、去る十月一日から五日間、九州地区における石炭鉱山等実情調査のため委員派遣を行ないましたので、そのうち特に三池炭鉱坑内火災事故について、まず派遣委員報告を求めます。岡田利春君。
  5. 岡田利春

    岡田(利)委員 石炭対策特別委員会委員派遣九州班のうち、三井三池炭鉱坑内火災事故調査について御報告申し上げます。  すでに御承知のとおり、去る九月二十八日、三池炭鉱三川鉱において死者七人に及ぶ大災害発生いたしました。九州班はおりから出発直前でありましたので、急遽派遣日程を変更し、十月一日大牟田市におもむき、三池炭鉱における災害実情調査した後、予定の派遣日程に入ったのであります。したがいまして、一般的な九州班報告は、別途文書をもって提出することとし、ここでは三池炭鉱災害関係について御報告したいと存じます。  私ども九州班一行は、十月一日、大牟田市に集合、大牟田市役所において、まず、福岡鉱山保安監督局福岡労働基準局及び九州医務局より災害実情を聴取し、続いて福岡県、大牟田市、三池炭鉱三池炭鉱労働組合三池炭鉱労働組合及び三池炭鉱職員組合より、それぞれ説明並びに要望を聴取いたしました。そのあと、すでに夜に入っておりましたが、三川鉱坑口に花輪を供え、犠牲者冥福を祈り、さらに二班に分かれ、天領病院大地評診療所白鳩診療所及び米の山診療所入院している被災者をお見舞いし、深夜、福岡市内の宿舎に帰りました。私どもの聴取したところによりますと、災害実情並びにその後の経過はおおむね次のようであります。  坑内火災発生した個所は、三池炭鉱三川鉱の三百五十メートル左の0片材料線坑道奥部であります。この材料線坑道は、三川鉱の本層と上層のほぼ中間にある三百五十メートル坑道人気バイパス坑道であり、災害発生個所はその奥部沿層部分で他の坑道とクロスしている地点付近であります。もともと三川鉱は、自然発火要注意炭鉱として、鉱山保安監督局においても防止計画立てさせていたところであり、かつて昭和三十九年にも、今回の個所と約五百メートルの個所自然発火を起こした事例があるのでありまして、特にこの部分自然発火を起こしやすいところと目されて、そのための防止措置が講じられております。今回坑内火災を起こした材料線坑道は、保安上一日一回の巡回をもって足りるところでありますが、九月二十七日午前十時の巡回には異常な点は発見されておりません。ところが、二十八日午前五時四十分ないし五十五分ごろ、運搬係員が、坑内火災現場から約五百メートルの地点で煙を発見し、坑外の三交代係長に連絡いたしました。三交代係長は、坑内係員にそれぞれ連絡して、労働者退避をはかったのでありますが、ついに死者七人を出し、十月一日午前九時現在、入院者三十九人という大災害に至りました。救護隊は、七時三十分ごろより順次入坑し、午後四時ごろまでには遺体収容を終わり、さらに火災の直接消火に当たりましたが、直接消火は困難であるため、密閉消火の方法をとることとなり、十月一日午前四時三十分、本密閉をいたしました。なお、密閉に際しては、鎮火後の現場調査が可能なように、人の出入りできるマンホールの設置等措置を講じております。  災害発生当時、坑内には組夫七十一人を含む五百六十一人が入坑しておりましたが、災害発生の知らせを受けた労働基準局は、CO中毒患者発生を予想し、直ちに九州大学、九州労災病院等に医師、看護婦等高圧タンク派遣を要請し、午後三時三十分には治療が開始されております。現在入院中の被災者の症状は、一般的に頭痛、はき気はありますが、精神障害はなく脳波も、一人境界領域にあるほか、すべて正常でありまして、全体として軽症であり、後遺症はないものと見込まれております。なお、入坑者のうち七十九人がまだ健康診断を受けておりませんが、会社は、組夫をも含め、全員に受診させる方針をとっております。  死亡者に対しては、会社から一人八十万円が支給されておりますが、退職金は、最高二百九万六十六円、最低二十七万八千五百四十七円であり、他に労災給付として、一時金最高九十五万七千六百円、最低三十八万五千二百円、年金の場合は最高三十七万二千四百八十二円、最低十四万五百九十八円が支給されることになっております。  災害原因については、材料線坑道奥部沿層部分炭壁自然発火したものと推定されておりますが、正確には今後の調査に待たなければならない実情であります。今回の災害生産への影響は、三川鉱生産停止等により、三池炭鉱全体として五三%程度の減産になっております。  次に、関係者からの主要な要望について申し上げます。  三池炭鉱労働組合からは、保安監督行政強化保安機器開発研究と企業への導入、保安施策に対する国家的な財政援助強化罹災者救済援護について要望がありました。また、自然発火事前にわかるものであるから巡回強化すること、自己救命器は短時間しか使用できず、熱を発するので、その改良をはかること、個人個人に携帯させるようにすること、保安教育はからだで感得させることが必要なので、これが可能なような保安教育の資材を充実すること等の諸点が強調されました。  三池炭鉱労働組合からは、徹底合理化によって保安が無視されていること、保安教育の不十分さ、災害時の指揮系統に問題があること等が指摘されたほか、自己救命器改良個人携行について研究すること、現段階においては炭鉱災害に対して厳罰主義を採用すること、生産第一主義石炭政策を改めること等の要望がありました。  三池炭鉱職員組合からは、保安技術職員労働密度の是正、自己救命器改良個人携行及び集中配置の併用、退避訓練徹底した充実等について要望がありましたが、三者を通じて、災害原因徹底的究明を行ない、万全の保安対策を講ずるよう強い要望があったのであります。  最後に、今回の災害に関して、二、三の点を指摘しておきたいと存じます。  第一点は、今回の災害意味と、その影響についてであります。申すまでもなく、三池炭鉱わが国の代表的な炭鉱でありますが、さきに昭和三十八年にも同じ三川鉱で大災害を引き起こしております。再び今回、一千億円の肩がわりを中心とする画期的な石炭政策実施段階において、このような災害を起こしたことは、まことに遺憾であるばかりでなく、今後の石炭産業全体にとって重要な意味を持つおそれがあると思います。なぜならば、さなきだに労働力確保に悩む最近の労働情勢においては、三池炭鉱のようなわが国屈指炭鉱災害は、単に一三池炭鉱の問題にとどまらず、全般的に炭鉱労働者の流出につながり、一方、石炭産業に対する世間一般の目をますますきびしいものにするからであります。いまや保安確保は、石炭産業存立社会的基礎でもあることを十分認識し、生産第一主義的な傾向があるならば、直ちにこれを是正するとともに、関係者災害保安に対するなれを徹底的に排除すべきであります。  第二点は、自己救命器についてであります。自己救命器は、三川鉱においては、交代最大入坑者数約千五百人に対し、二千百四十五個備え置かれております。今回の災害に際しても、使用の実態を正確に把握しておりませんが、かなり効果があった模様であります。しかし、現在の自己救命器使用時間約三十分にすぎず、それも現実には高熱を発してのどがやけるため十五分程度しか使用できないといわれており、現に今回の災害の場合も二個くらい持って退避し助かった人もいるのであります。今回の犠牲者七人のうち六名は自己救命器使用したと想定されるのでありますが、この間の事情は明確になっておりません。いずれにしても、自己救命器改良は焦眉の急というべきであります。また、自己救命器個人携行させることは、現に松島炭鉱等においては実施しているところであり、自己携行を義務づけることが必要と思われます。  第三点は、災害時における指揮命令についてであります。災害の場合における指揮命令徹底は、坑内労働という特殊な作業環境においては、かなり困難な問題があろうと思います。三池炭鉱においては坑内無線使用しており、今回の災害に際しても、相当効果的であったといわれておりますが、それでも坑内火災発生を明確に指示しなかった事例もあり、退避訓練を考えたものもあったようであります。また、宮浦鉱退避した人は、上司指揮命令がないため、正午ごろまで坑外に出ることができなかった事例もあるのであります。災害の場合、特に一酸化炭素ガスにやられているものは一刻も早く坑外に出ることが必要であります。このような事例を聞くと、平常の退避訓練のしかた、災害時の指揮命令等について、根本的な検討が必要であると思うのであります。  第四点は、保安措置の再検討についてであります。今回の災害は、自然発火によるものと推定されておりますが、この点は関係者のひとしく一致しているところであります。自然発火のような災害事前に感知することができるといわれているものでありまして、十分な保安措置が講じられていたならば防止できたということができる災害であります。したがって、今後巡回の頻度、正確な巡回等、いわば単純な保安業務について一般的に反省を加えるほか、通常の観念では危険度の低いと思われる場所あるいは問題に対しても、むしろこのようなところに重大災害発生の危険が高い事実にかんがみ、その保安措置について再検討をしてみる必要があると思います。  以上のような観点から、この際あらためて、保安法規の再検討、必要な改正、保安監督行政強化、十分な予算措置等を考慮しなければならないと考えます。また、入院中の被災者は、全般的に軽症といわれておりますが、病院にお見舞いした感じでは、中には薬の数が数えられない人もいるのでありまして、必ずしも軽症とばかりはいえない状況であります。これらの人々に対しては十分治療が行なわれるよう、関係者に強く要望しておきたいと思います。  以上、御報告いたします。
  6. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 これにて派遣委員報告は終わりました。      ————◇—————
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 次に、石炭対策に関する件について調査を進めます。  三池炭鉱坑内火災事故について政府の報告を求めます。西家鉱山保安局長
  8. 西家正起

    西家説明員 このたび大牟田三池炭鉱におきまして重大災害発生いたしまして、監督責任者といたしましてまことに申しわけなく存じております。  ただいまから災害概況につきまして御報告をさせていただきます。お手元に簡単な資料が配付してございますが、これに基づきまして御報告をさせていただきます。  石炭鉱名三池炭鉱三川鉱でございます。甲種炭鉱でございます。鉱業権者名三井鉱山株式会社、所在地は福岡大牟田市、災害個所三川鉱三百五十メートル左0片材料線奥部——後ほど図面で御説明いたしたいと思いますが、一番うしろについておりますが、災害場所はこういうところでございます。災害発生月日昭和四十二年九月二十八日午前五時四十五分ごろでございます。  罹災者職氏名、年齢でございますが、死亡者は七名でございまして、坑内保安係員の田中さん三十六歳、発破係員伊木田さん三十一歳、採炭工の阿部さん四十一歳、同じく採炭工の吉田さん三十七歳、同じく採炭工の原沢さん四十二歳、同じく採炭工の川本さん二十八歳、巻き方の機械工上村さん三十歳の七名でございます。そのほか一酸化炭素中毒による入院患者の方が十月七日十二時現在で五十三名となっております。  次に災害概況でございますが、三池炭鉱は今回災害発生いたしました三川鉱のほかに四山鉱宮浦鉱の二坑口がございまして、三池炭鉱在籍者の総数は一万一千百八十一名、うち坑内八千九百十八名でございまして、月に約四十万三千トンの出炭をいたしております。そのうち三川鉱在籍者数四千五百十二名、うち坑内三千九百八十二名でございまして、本層と上層の二層を稼行炭層といたしておりまして、月に約十六万四千トンの出炭をいたしております。  今回の災害発生いたしました三百五十メートル左0片材料線坑道と申しますのは、坑口から四千五百メートルの位置にございまして、旧二十一卸部内を稼行しておりましたときに、材料通気坑道として使用していたものでございますが、現在はその旧二十一卸部内の採炭を終わっておりますので、採炭をいたしておりませんので、三百五十メートル水平坑道からくるバイパス坑道としてもっぱら通気の専用に使っておったものでございます。  なお、災害が起こりました当該バイパス坑道入り口のほうから、すなわち三百五十メートルの二十一卸分岐点のほうから全部で長さが三百六十一メートルございますが、入り口のほうから百二十五メートルが沿層でございます。それから約百七十メートルくらいに岩石が出ておりまして、その奥がまた沿層になっておる、こういったような状況でございます。  九月二十八日の午前五時三十分ごろ、三百五十メートルの九日抜に設けられました運搬監視所——一番うしろから二枚目、七ページにごく簡単な略図が書いてございます。はなはだ簡単で恐縮でございますが、これにつきましてちょっと申し上げたいと思いますが、一番右のほうが先ほど申しました三川鉱入り口でございまして、これから斜道が、第一斜道と書いてありますが、二本斜道が入っておりまして、この長さは約二千メートルございます。その坑底から左のほうに、ずっと上のほうに三百五十メートル坑道というものが通じておりまして、これは坑外から入りました人気坑道になっておるわけであります。この三百五十メートルのまん中のちょっと右あたりに矢のしるしが二つ分かれておりますが、これが先ほど御説明申し上げました通気分流地点でございます。それから下のほうに分かれまして、左のほうに行きまして、また三百五十メートル坑道と合流いたしておりますのが災害の起こりました0片材料坑道でございます。それでこの三百五十メートルのまん中あたり上層西二十六卸というものがこれから下のほうに下がっておりますが、この交差点から少し右のあたり休憩所というものがございますが、それはただいま申しました休憩所の設けられました運搬監視所があるところでありまして、ここにおりました運搬係員次方係員との申し送りの電話を終わりまして待機をしておりましたとき、三百五十メートル坑道空凾を引いた、あき箱を引いた電車が来ましたので、監視所の前に出たわけでございます。ところがその場所から約五十メートルくらい坑口のほうを見た場合に、天井より下がっておる螢光灯がくすんで見えましたので、坑口のほうに検査をしながら歩いていったのでございます。上層二十六巻き立て——先ほどの図面のちょうど交差をいたしております。ちょっとふくれ上がったところでHと書いてあるところでございます。この巻き立てと二十六ループ坑道、これは運搬坑道で、このふくらんでおるのがループ坑道でありますが、それとの中間でちょうど三百五十メートル坑道と、先ほど申しましたバイパスとの交わっておるところよりたばこの煙くらいの薄い白色の煙が天井を伝わって本線に流れているのを発見いたしました。次第に煙が濃くなってくる状況にあったわけでございます。そこで直ちに坑外の三交代係長に、電話で三百五十メートル旧二十四昇のシュート付近から煙が出ている、一、二分後には煙が濃くなり、坑道全体に流れるので非常、非常という報告をいたしております。報告を受けました係長は、直ちに坑内の各作業場に対しまして電話にて異変の発生を告げておりまして、全員退避するように指示をする一方、上司報告をいたしまして、救護隊召集措置をとったのでございます。  ここでちょっと、資料にはございませんが、簡単にそのときの作業配置状況につきまして御説明いたしたいと思いますが、その当時坑内入坑いたしておりましたのは、全体で五百六十一名でございました。その五百六十一名の配番場所でございますが、先ほどの図面をちょっとごらんいただきまして、おもな採炭個所と申しますのは、図面で大体長方形に書いてある場所がございますが、上層の西三十六卸のところ、それから左のほうにいきまして本層西三十六昇と書いてあるずっと下のほうに二カ所、これは本層の西三十六卸になるわけでございます。この個所、それから図面には書いてございませんが、本層の西三十六昇というところ、この上のほうにも採炭個所がございまして、大体おもな採炭個所は三カ所であったわけでございますが、本層の三十六卸の一番左のここの長方形のところでございますが、ここに九十五名の者が配番をされております。それから右のほうの上層の二十六卸部内には八十九名、それから図面にはございませんが、先ほど申し上げました上層三十六昇部内には九十八名、そのほか各掘進個所に百九名が、三百五十メートルの左のほうとか、四百五十メートル坑道の左のほうとか、その他掘進個所がたくさんございますが、そこに百九名、そのほかに、百七十名の者が坑内各所に、保安あるいは通気運搬電気、こういった作業に従事しておったのでございます。  それで、これらの人たちは、上層二十六卸におりました人たちは、一部三百五十メートル、大部分が四百五十メートルの人気坑道のほうを通りまして坑外に出ておるわけであります。それから、災害発生個所よりも人気側におりました者は、それぞれ三百五十メートル、三川鉱の斜坑を通りまして退避をいたしております。それから、左のほうの本層西三十六卸のほうにおりました人たちは、宮浦鉱に通ずる坑口から脱出をいたしておりますが、先ほど御報告がございましたように、途中で、坑内の安全な個所ではあったのでございますが、かなりの長い間、坑内におったようでございます。  それから救護隊状況でございますが、七時から八時三十分までの間に各坑の救護隊が召集されております。そして七時三十分から十一時ごろまでの間に八十六人の者が入坑をいたしまして、三百五十メートル坑道あるいは四百五十メートル側から探険をいたしておりまして、罹災者発見救出に当たっております。二十八日の十四時四十分ごろまでに前述の死亡者の七名の方を確認をいたしております。十六時ごろまでに全遺体収容を完了いたしております。  罹災者の方の位置は、同じ図面の上に×印をもって書いております。左の本層西三十六昇の近くのところで四名の方がなくなっておられます。それから、上層西二十六卸の下のほうでございますが、お二人がなくなっておられますが、このお二人につきましては、一時は四百五十メートル坑道人気坑道に近いところに全員無事に退避をしたあとで、通気戸を締めにいくために五名の方々が新しいマスクと命綱をつけて逆に進入をいたしまして、このときに二人が罹災をされておりまして、後ほど救護隊で九時過ぎにお二人を救出、搬出したのでありますが、坑外に出てから一酸化炭素中毒によりまして死亡されたということになっております。その上の上村さんは、ちょうど上におられた巻き座の機械工でございますが、この方の発見はちょっとおくれたのでありますが、おそらく巻き立てから、もう時間で作業はかなり前に終わっておりますので、昇坑される途中に、途中まで出られて、罹災したというふうに推定されております。  災害後の現場におきます処置状況でございますが、二十八日の八時二十分ごろ、三百五十メートル坑道の十一目抜き——十一目抜きと申しますのは、先ほどの個所よりもう少し左になるわけでございますが、三百五十メートル坑道の十一目抜き補助扇風機電気保安係員停止をいたしまして、同日の十時ごろに、三百五十メートル坑道九日抜き奥通気戸救護隊員によって開放いたしまして、通気短絡して、三百五十メートル連れ坑道のほうに直接流動させる措置をとっております。  十五時ごろに、左0片材料線奥と連絡しております上層二十一卸と三百五十メートル本坑道との間に設けられました約二・四メートルの立て坑図面で申しますと一番最後の二図のところをごらんになっていただきますと、0片材料坑道付近をちょっと拡大して書いてございますが、一番右のほうのナンバー一と書いてございます。そのところでございます。ここに三百五十メートルから二・四メートルばかり上に上がりまして、それから0片材料坑道に入るわけでございますが、その立て坑部分ビニール帯によりまして仮遮断をいたしております。  同日十九時十分ごろ、今度は0片材料坑道の左のほうでございますが、三百五十メートルの七日抜き奥——七日抜きと申しますのは、この図面で三百五十メートル坑道から左のほうに斜めに0片材料坑道につながる坑道がございます。これが七日抜きでございまして、この七日抜きのところから五十三メートルの位置に仮密閉をいたしまして、ビニール張りによる仮密閉救護隊によりまして実施をいたしました。  その結果、坑道一般に煙が薄くなりましたので、前に実施いたしました仮密閉を破りまして、左0片材料線上層二十一卸連絡坑道——上層二十一卸連絡坑道と申しますのは、第二図で申しますと一番右のほうに縦に通っておる坑道でございますが、この間を救護隊によりまして探険をいたしたのでございます。当初内部の煙が濃厚で進入が困難でございましたが、数回の探険によりまして左0片材料線上層二十一卸の連絡坑道付近炭壁から煙が出ておりました。立て坑の奥約九十メートル付近に火のあることを確認をいたしております。同日二十一時五十分ごろ、救護隊によりまして、ホースを二本使いまして直接注水消火を開始いたしました。二十九日の朝の四時ごろでございますが、直接注水をいたしますと、注水部の煙は消えるのでございますが、前に注水した手前の個所から煙が今度は出始める。そして火の手が立て坑入り口のほうにだんだんと移動してくる傾向が見られましたので、消火作業隊員に対する危険度が非常に大きくなってきたのでございます。五時ごろでございますが、直接注水消火を中止いたしまして、もとどおり立て坑口に仮密閉をいたしました。これも救護隊によりまして実施いたしたのでございます。九時ごろ直接消火密閉消火の可否を関係者検討いたしました結果、密閉消火によるほかなしとの結論に達しました。密閉あたりましては、人気側立て坑密閉には通気用の六インチパイプを設置いたしました。排気側密閉には人の出入が可能でございます三十インチのマンホールを設置いたしまして、鎮火後通気確保し、密閉現場調査が可能であるという措置を講じさせることにいたしました。なお、密閉作業は三十日の二時二十分から着手いたしまして、風下側は三十日の十八時に、風上側は十月一日の四時三十分に作業を終了いたしました。  災害原因でございますが、三百五十メートル坑道、左0片材料線坑道には、火災原因となる電気施設がございませんので、当坑道奥部沿層部の炭壁自然発火し、坑内火災に進展したのではないかというふうに考えられるのでございます。なお確実な原因につきましては、今後の調査等によりまして、はっきりさせたいというふうに考えております。  なお、ちょっと申しおくれましたが、当材料坑道には前日の十時に観測員がこの付近密閉個所を観測したことを監督官において確認いたしております。  災害後とった措置といたしましては、災害発生の報を受けました福岡鉱山保安監督局長は直ちに鉱務監督官七名を現地に急派いたしまして、罹災者救出の指揮と原因の究明に当たらせる一方、一酸化炭素中毒患者の発生に備えまして、高圧酸素室を現地に急送する措置等を関係機関に要請した後に、みずからも現地に急行いたしまして指揮に当たったわけでございます。また本省からは鉱山保安局の石炭課長を現地に派遣いたした次第でございます。  以上、災害概況報告を終わらせていただきます。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 菅野通産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。菅野通商産業大臣
  10. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 このたび三池炭鉱三川鉱において発生いたしました坑内火災原因につきましては、ただいま局長からこの災害の模様、また災害後における処置等について詳細な報告があったのでありますが、大体御承知のとおり、死亡者も七人を出したというようなことであるし、多数の罹災者も生じたことでありまして、この点につきましては、私といたしましてはまことに遺憾に存じておるのであります。  政府といたしましては、人命尊重の見地に立って、従来から鉱山の保安確保について監督指導の強化拡充につとめてきたところでありますが、今回の災害に顧みまして、原因の究明は大体出ておるようでありますが、なお一そう原因を詳細に究明をいたしまして、今後再びかかる災害発生することのないように、強力に保安行政を推進していきたいと存ずる次第であります。     —————————————
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 ただいまの報告に対し、質疑の通告がありますので、これを許します。岡田利春君。
  12. 岡田利春

    岡田(利)委員 今回の三井三池炭鉱三川鉱における災害についてただいま報告があり、大臣からも見解の表明が行なわれたわけですが、問題はやはり災害原因徹底的に究明をして、この種の災害を二度と起こさない、こういう対策を万全に立てることがきわめて重大だと思うわけです。しかも鉱山の保安に関しては、通産省の鉱山保安局で中央保安協議会という組織があって、常日ごろ具体的な保安問題についてはこの保安協議会の中で十分討議をされ、あるいは意見が出され、研究がなされ、これが大臣に答申をされて、予算上必要なものは予算措置を講ずる。あるいはまた法規を改正しなければならぬ点については法規の改正をする、こういう形で法案が提出をされてまいったわけです。私はそういう意味において、今度の災害についても徹底的にまず保安協議会においてその原因を究明すべきではないか、しかもその中から出てくるこの法規の改正、あるいはまた保安機器の開発の問題、あるいはまた必要な予算措置、こういうものについてはすなおにこれを受けとめて実施に移す、こういうことがはっきりしなければならないと思うわけです。特に北炭夕張の災害についても検察庁当局からその責任者が起訴される、こういう新しいケースも今日生まれてきておりますので、そういう点についてもまず大臣の見解をこの際明らかにしていただきたいと思うわけです。
  13. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 ただいま岡田委員の言われることは、私全く同感でありまして、この災害原因徹底的にこの際調査して、したがってその調査の結果に基づいてこれが対策をまた強硬に実施すべきであるという考えをいたしております。  もちろん、政府といたしましては、生産第一主義よりも保安第一主義をやることが結局生産の増進になるという信念を持っておりますので、したがいまして、保安第一主義で今後やはり進めていきたいという考えを持っております。  お話のとおり、保安協議会はすでに六回開いておるのでありますが、なお部会で逐次これを改正いたしまして、そこで詳細にひとつこの原因の究明をしてもらって、その上でまたこれが対策を講じていくようにしたい、こう存じておる次第であります。
  14. 岡田利春

    岡田(利)委員 三池炭鉱わが国最大の炭鉱であり、また炭量からいってもわが国最大のビルドアップの炭鉱でもあるわけです。こういう炭鉱で重大な災害が起きるということは、結局いま九州、北海道全体の炭鉱で、炭鉱に働く労務者を確保することが非常に困難である。こういうことがいずれの炭鉱からも、実は私ども調査に参りました節も、切々と訴えられておるわけです。いわゆる安全なくして安定的に労務者を確保するということは、これは不可能なことです。ですから、今後の炭鉱保安問題というのは、日本の石炭産業というものが一体やっていけるのかどう史災害が頻発することによって、その山が立ち行かないという場合も出てまいるでしょうし、また石炭産業全体から見れば、そのことによって労務倒産の傾向をより一そう促進する、こういうことになると私は思うわけです。そういう意味で私ども炭鉱における保安問題というものをはっきり受けとめておかなければならぬと思うわけであります。  私は、有澤調査団が答申をしましたときに、この有澤調査団の答申の日本の炭鉱のビジョンというものは次のようなものではないか、それは、能率はなるほどヨーロッパの炭鉱並みである、賃金はおそらく三分の一強くらいの賃金水準に答申では落ちつくであろう、そして、炭鉱災害はヨーロッパの大体三倍に近い炭鉱災害率というものが続くであろう、こういう姿が予想されるということを申し上げましたけれども、まさしくいまの日本の炭鉱はそういう状態にあることを否定できないわけです。私はそういう意味において特にこの炭鉱災害を見ますと、今回の場合でもそうですか、いわば炭鉱坑内の銀座通り、災害が起きるべき個所でないところで重大災害が起きているわけです。戦後の三大災害である三池三川鉱の大爆発も大斜坑で爆発が起きている。あるいは北炭夕張の災害も主要坑道災害が起きているわけです。また山野の災害は、これは特免区域で大災害を起こしているわけです。災害が起きてならないところで重大災害が起きて、しかも、いずれも重大災害はそういう最も安全なところで起きているわけです。そうなってまいりますと、炭鉱保安に対する私どもの考え方を根本的に変えなければならぬのではないか。いわゆる炭鉱というものは、坑口から切り羽の末端に至るまですべて危険な個所である、こういう認識に立たなければならないと私は思うわけです。私はそういう意味において、いまの法規でいう特免区域その他ございますけれども、こういう面については根本的に再検討しなければならぬのではないか。今度の場合も人気坑道災害を起こしているわけです。いわば沿層坑道でありましたけれども、従来の観念からいえば、災害が起きない個所自然発火が起きているわけです。そういう点で、私はそういう一連の保安法規等について特免区域についての考え方、こういう点についても根本的に再検討すべきである、こう考えるわけですが、こういう点についてはどういう見解か承っておきたい。
  15. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 ただいまのお話のとおり、この災害が思いがけないところに発生しておるという点において、これはもうわれわれとしては反省しなければならない問題かと存じます。したがいまして、この炭鉱保安の問題につきましては、従来監督指導をやっておるのでありますが、この際、こういうような災害発生にかんがみて、ひとつ一斉検査を各炭鉱でやらせる必要があるのではないか、こう考えております。また、法規についてもお話のとおり、もちろん保安協議会によっていろいろ調査研究してもらいますが、それらの調査研究の結果によって、私は新しい法規もまたつくる必要があるのではないかというようなことを考えておりますので、そういう点につきましては、ひとつ今後検討していきたい、こう存じております。
  16. 岡田利春

    岡田(利)委員 原因が明らかになりておりませんから、見解を述べることは問題点も若干あろうかと思いますが、このバイパス坑道は、問題は沿層に持たれておる。しかも発火点の予想地点坑道のクロス地点である。こういうことが一応推定されるということが大きな問題点であるわけです。そして、客観的な条件としては、五百メートル下の採掘区域で自然発火が起きて密閉個所があるということ、またその近くでも自然発火の徴候があって、これは事前にたいした問題がなくて消火をされた、こういう傾向もある。こういう客観的な条件がある地域なんです。この点が非常に問題なわけです。もちろん三池の石炭というのは着火が非常におそい、こういう一応の特性を持っておるということは一般的に言われておるわけですが、そういう自然発火が客観的に起きていて、なおかつバイパス坑道沿層に持たれ、クロス地点がそのままの坑道で使われておった、こういう点が非常に検討されなければならない重大な問題点だと思うわけです。そういう意味において、こういうバイパス坑道巡回というのは、私どもの常識からいっても、大体一日に一回巡回をするという程度であることはどこの炭鉱でもいまの場合大体同じでありましょう。それなるがゆえに、発見あるいはまた要注意個所ではないという、そういう観念があるだけに巡回も精密に点検をするということがなかなか炭鉱係員の観念にも浮かび上がってこない。そうなってまいりますと、やはりこういう個所については安全度を高くとらざるを得ないのではないか。そういう意味では、今後の保安指導については、もちろんこういう坑道沿層に持たない、沿層に持つ場合には完ぺきにこれをおおう、こういう点が積極的に指導されなければならないということがまず教訓としてはっきり出てきたと思うのです。こういう点について直ちにそういう措置をとる決意があるかどうか、承っておきたいと思う。
  17. 西家正起

    西家説明員 ただいまのお話にございましたように、沿層坑道バイパス通気の分流に使いました点につきましては問題があろうかと思います。この場合は、バイパスを通しませんと三百五十メートル坑道を通ります人気の速度が制限速度以上になりますので、これを使用しておったようなことでございますが、できるだけそういう個所に重要な人気坑道をつくらないようこれからやる必要があるかと思いますが、万一そういうところを使います場合には、先生のおっしゃいましたように、確かに巡回の内容並びに巡回の頻度の点につきましては、十分にこれを強化する必要があるかと考えるわけであります。今回の災害個所につきましては、一日一回回る個所になっておりまして、前日もこの辺の密閉個所の観測をいたしておるのでありますが、それにもかかわりませず、その時点におきましてこの徴候の発見をいたしておりません。こういうことから考えまして、十分に巡回頻度につきましては、これをふやすような方向で検討いたす必要があると考えます。
  18. 岡田利春

    岡田(利)委員 一日に一回ということは巡回が二十四時間に一回ということですから、大体自然発火の時間測定から考えれば、巡回するときは何でもなくて、次の巡回までに自然発火が起きるということは理論的に当然考えられるわけです。ですからいま局長が言われたように回数はふやさなければならない。そうすると、当然この回数というものは二十四時間を割って最低三回は巡回をしなければならぬことになるのではないか。しかし問題は、こういう個所を三回も四回も巡回しなければならぬということがいかぬわけです、主要人気坑道なんですから。ですから設定した場合にはやはり炭壁を出さない、こういうやはり指導決意がないとなかなか炭鉱災害というものは防げないわけです。大体ヨーロッパあるいはソビエトの坑内を見ましても、こういう坑道以外でも炭壁は出さないということが常識なんですから、こういう通気だけの坑道については、沿層であった場合にはやはりそれを壁に触れさせない、こういうことがまずはっきりしなければならぬと思うのです。巡回をふやすという意味ではない。これはできるわけですからたいした問題じゃないでしょう。炭壁を出さないということが、その考え方のほうが巡回よりも優先しなければならない。また若干の短い風坑等の場合には巡回をふやす、こういうことがあると思うのですね。しかし主要坑道の場合、人気坑道の場合には、巡回をふやすという個所をつくらないことが大事ではないか、こう思うのですが、どうですか。
  19. 西家正起

    西家説明員 ただいま先生のおっしゃったとおりだと私も考えます。
  20. 岡田利春

    岡田(利)委員 特に重大災害の問題について、ガス爆発あるいは坑内火災あるいはまた出水、こういうことが原因として考えられるわけです。ガス爆発の場合は、ぽんと、こうくるわけですから、直ちにこれは待避をしなさい、こう考えるのが管理者として当然の常識なわけです。ところが坑内火災の場合は、自然発火の場合には、まず一番先に現場の人が考えるのは、火が出ているのですから火事と同じですよ、消そうということなんですよ。自分のうちで火事になれば、まず水をかけて消そうと思うわけですね。そのうちに火事が大きくなってきてどうにもならぬで、消防のほうに連絡する、それを見たほかの人が連絡をしてくれる。消防車が来たときには火事が大きくて消火ができないという、こういうような一般の通例だと思うのですね。炭鉱坑内火災についてもそうだと思うのです。私も坑内火災に遭遇したことがございますけれども、やはりまず消そうという観念が働くわけですね。そういう点から考えますと、報告の中でも待避の問題、現地でもいろいろ言われておりますけれども、やはり坑内火災の場合には、風下の現場の者はすぐ待避をさせる、これがはっきりしなければならぬのではないか。風上におる者は状況を見て係の指導に従って消火作業をする。とにかくそれ以外の下の現場におる者は待避をさせる。これがはっきり処置として、保安管理者及び保安係員といいますか、義務づけられる必要があるのではないか。でないと、どうしても坑内火災を消そうということになる。待避時間もそういう状況を見る。大体ほんとうの命令を出す人は普通は坑外におるわけですよ。そして現場から電話がきて状況判断し、日ごろ現場を十分知っておりますから、そういう判断の中で待避命令を出す、こういう仕組みにいまは大体なっているわけですね。やはり坑内火災が起きた状況が大体わかるわけですから、とにかくその場合に風下の者はすぐ待避をさせる、こういう観念を徹底させる必要があるのではないか。私は、これができればこのCO中毒患者などの場合には、話を聞いてもおそらく相当簡単に待避ができたのではないか、こういう気がするわけです。こういう点の災害に対する、特に坑内火災に対する指揮、待避の命令の発し方、こういうものをもう少しぴしっとする必要がある。もちろん保安は自主保安でみずから守る。みずから生命を守り、みずから使っておる者を安全に移すということが基本でありますけれども、そういう点の観念をやはり徹底をさせる必要があるのではないか、こう思うのですが、こういう点については、今度の待避状況から判断をしてどう思いますか。
  21. 西家正起

    西家説明員 ただいま先生のおっしゃったとおりだと私も思います。平素から、待避訓練というものにつきましては法律で義務づけておりまして、当三川鉱におきましても、三カ月に一回、各現場ごとに待避の訓練はやっておったようであります。待避訓練をやっておったのでございますが、確かに、実戦的な待避訓練が行なわれたかどうか、これはこの事例から見まして非常に疑問であったと私は考えております。直ちに待避ができるような訓練なり、あるいは命令指揮系統をもっと強化する必要があるかと存じます。
  22. 岡田利春

    岡田(利)委員 待避訓練の問題が出ましたけれども、大体法で義務づけられておりますから、待避訓練があり、それが記録になって報告をされておると思います。ただ最近、非常に炭鉱労働者の流動性が激しいということをわれわれは考えなければならぬと思います。ですから、普通、雇用状態の安定しておる場合には、大体退避の一応の訓練をしますと、こういう重大災害の場合に避難をするという点についてはほぼ理解できるところまでいくのですけれども、今日のように流動性の激しい場合には、しろうとも非常に多いわけです。坑道がどっちを向いておるかわからないという方も非常に多いわけですから、こういう労働者の流動性の多い現状にかんがみて、退避訓練というものはやはり相当本格的な訓練をさせるという考え方が一本きちっと通っていないと、今日の炭鉱労働者の流動状況では、いまやっておる退避訓練では不十分だ、こう指摘されるのは私は当然だと思うわけです。こういう面でやはり本格的な退避訓練をさせるということが必要だと思うのですが、いかがですか。
  23. 西家正起

    西家説明員 そのとおりでございます。保安局といたしましてもただいまおっしゃいましたようなことで、各監督局を通じまして直ちにこういうことを鉱山にやらせますように、監督局等にも指示をいたしたような次第でございます。
  24. 岡田利春

    岡田(利)委員 今回の災害自己救命器使用されておるわけですが、まだその詳しい使用状況というものは確認されていないわけです。しかし、七名の罹災者のうち六名の者が自己救命器を使った形跡があることはすでに確認をされたところです。あるいはまた病院に入っておる患者の人も、私たちが会った多くの人は自己救命器を使っていない。こういう患者の方が非常に多かったわけです。そういうことです。自己救命器は個数については問題がございませんし、大体各炭鉱ともそれぞれ安全な個所自己救命器を配置しておるわけですが、この自己救命器は最近実験も終わっておりますし、これはすみやかに自己携行をすべきではないか。実は私おとといの日に松島の池島炭鉱入坑いたしたわけですが、ここでは入坑するときに私ども自己救命器を携帯させられるわけです。自己救命器を携帯させて使用のしかたをちゃんと係員が教えて、そうして坑内に入ってきたわけです。あの松島炭鉱でも、日鉄の伊王島の場合も全員すでに自主的に自己携行をしておるわけですね。これはほかの国がやっておる。すでにわが国炭鉱でも自主的に自己携行をしておるところがあるわけです。ですから、こういう点については当然自己携行をすべきではないか。ただし、この場合自己救命器にたよるという観念を保安教育徹底的に払拭しなければならぬ。なぜかならば、自己救命器があるから少しくらいあれしてもいいだろうというような観念になりますと、わずか三十分程度でありますから、むしろそのことによって緊急退避をするといいのに、退避がおくれることによって災害を拡大する、こういう重大な欠陥を持っておるわけです。これはもう諸外国でも指摘をされておるわけですから、自己救命器自己携行をさせる場合には、自己救命器を使う場合の観念ですね、その機械に対する観念を当然徹底的に教え込む必要性があるわけです。これをやらなければ、かえって災害を拡大する場合もあるのではないか、こういう心配がありますので、そういう点も含めてすでにわが国でも自己携行をしておるわけですし、予算上必要であるならば予算措置を講じて自己携行をさせるべきである。それと同時に、今度の災害で担当係員が一名の者を連れて入坑したと思うのです。この手直しに入っていって二人とも死んでおる、こういう実績が出ておるわけです。もちろん鉱員の場合はすぐ緊急退避をさせるというのが常識なわけです。しかし係員の場合には全体を確認しなければならぬわけですね。全体が待避されたかどうかということを係員は確認しなければなりませんから、その部署だけの鉱員と一緒に待避してしまうということは、なかなか実際問題としてできないわけです。そういたしますと、いわゆる自己救命器にかわる簡易救命器——相当の時間をもてる酸素ボンベのついた救命器だけを使うのではとてもたいへんですから、簡易救命器のある程度の開発をすべきではないか。そして、そういう資格のある者には許可、使用できるという、そういう点の簡易救命器の開発あるいは備えつけ、こういうものが考えられなければならないのじゃないかと私は思うのですが、この面についての見解を承りたいと思います。もちろん指定鉱山労働者あるいは有資格鉱山労働者がおりますから、係員、補佐あるいはまた遠隔な坑道のポンプだとかめくら立て坑におるとか、いろんな場所については自己救命器ではなくて、そういう簡易救命器を備えるというような点も含めてこれは検討されるべきだと思うのですが、この点についての見解を承りたいと思います。
  25. 西家正起

    西家説明員 COマスクの件でございますが、ただいまは規則では最大入坑人員よりも多数のマスクを坑内に備えつけておかなければならないということになっておるのでございますが、ただいま一番多く使われておりますのはSRの一〇型でございまして、このマスクは資源技術試験所におきまして検定をいたしましたかなりの効果のあるものでございますけれども、持ち歩いておりますと中の薬品が粉になりまして効力を失うということでございまして、この品種につきましては従来どおり適当な個所に備えておく必要があるかと思います。そのほかに、ただいま先生がおっしゃった個人携行につきましては、これは私も今後必要であるというふうに考えておりまして、実はこのことはだいぶ前から、いろいろ携行してもいいマスクにつきまして、わが国といたしましてもメーカーその他に研究させてまいっておったわけでございます。当初研究の域を脱しまして携行できるマスクをつくらせ、さらにこれを各炭鉱に試作品として配置して一年間使わせてみた結果、携行してもだいじょうぶであるという品種がこの二月からでき上がっているわけでございます。これはSRの一〇E型という新しいものでございまして、ただこれは、現在まだ毎月の生産能力が三千個くらいしかございませんので、もちろん全炭鉱にはまだ渡っていないわけでございますが、逐次前の古い型と置きかえるということでただいままでまいってきたような次第でございます。今後この新しいマスクをさらにたくさんメーカーにつくらせまして、これにつきましてはメーカーを入れて相談したのでございますが、現在は月三千個でございますけれども、これを近く四千にできる、さらにはいますぐに設備を増強いたしました場合には、来年の四月からは八千個の生産ができる、こういうような見通しもついておりますので、今後個人携行の方向に前向きに検討していきたい。これは規則の改正を必要といたしますが、保安協議会等にもはかりまして、前向きで検討させていただきたいというように考えておる次第でございます。なおその際も、マスクの保安教育等につきましては、これは絶対必要でございます。  それから最後に、係員が特にあぶないと見られますような場所に入っていきます場合に、ただいまの改良型のマスクでも長時間はなかなか有効じゃございませんので、みずから酸素を供給する救命器、これを先生に御指摘をいただいたのでございますが、これにつきましては、今年度、四十二年度の予算で、現に川崎航空重松製作所、それからこれを使うほうの石炭技術研究所、これの共同研究で現在実施をさせておるような状況でございます。これが開発されまして完成いたしますまでには若干の時日を要するものと存じておる次第でございます。
  26. 岡田利春

    岡田(利)委員 通産大臣にお伺いしますが、いま石炭産業はなかなか自分の力だけでは石炭企業が成り立っていかない。したがって、今年度答申に基づいて抜本策と称される一つの施策をとったわけです。しかも、石炭特別会計が設定されておるわけです。金を出すのは炭鉱側に出しておるわけですから、特にこういう日本の炭鉱のように災害が頻発をして、どうしても重大災害があとを断たない現状にかんがみ、しかもそのことが労働者確保を不可能にする、労務闘争を引き起こす原因になるというおそれをわれわれがはだをもって感ずる今日でありますから、保安機器の問題、保安施設の問題については、極端に言えば、思い切ってこれを買って与える、でなければ高額の補助をする、こういうような形で積極的に進めるべきだと私は思うわけです。もちろん、保安の予算も逐年増加はいたしておりますけれども、この際考え方をある程度変えて、この保安機器の開発や、保安施設や、こういう保安に関する面については、どうせ義務づけるわけなんですから、そういう義務づけるものについては思い切って助成措置をする、こういう姿勢がないと、なかなか実効が伴わないのではないか、私はこういう気がするわけです。そういう点についての考え方を承っておきたいと思います。
  27. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 いま岡田委員の言われたとおり、最近の石炭鉱業の情勢というものは一そうきびしいものがあると私は考えております。せっかく抜本策として皆さん方の御賛同を得た昭和四十二年度の予算その他の問題につきましては、これによって抜本策が講ぜられるというつもりで皆さん方の御賛同を得たのでありますが、その後における石炭情勢というものは非常にきびしい。その一つの原因はやはり労務者の不足というところにある。また、その労務者の不足する一つの原因として、鉱山保安確保というところに問題があるということについては、岡田委員と同じ意見でありまして、したがいまして、まず保安対策ということを今後の石炭対策の重点にしなければならぬのではないかということについても、私自身もその点について強い意見を持っておるのでありますが、なお、お話しのとおり保安専用機器については、政府が補助金を出してやるとか、その他保安対策については、政府ができるだけ助成するとかいうようなことについては、極力予算の計上をはかりまして、そうして保安確保に努力したいと考えておる次第であります。
  28. 岡田利春

    岡田(利)委員 いまの保安機構から見ますと、もちろん保安というのは切り羽の末端のそれぞれの係員を中心にして自主的に保安を守っていかなければならぬのは、これは基本であるわけです。しかし、一方において石炭産業が困難な状態で、再建策を出し、それに基づいて割り当ての出炭確保しなければならない。いうならば、原料炭を必要としてまいりますと、原料炭増産で各社長さんが山を歩かなければならぬというのが実は今日の現況なわけです。生産も非常に強く要請されておるのが昨今の現状であるわけです。そうなりますと、現場係員として、保安の問題と生産の問題を考えた場合に、その担当係員の身になって私どもが考えてみますと、この程度でまあまあ安全だろうというところと生産というものをどう結び合わせていくか、こう考えるのが、今日置かれておる各保安係員のほんとうの姿であろう、こう考えるわけです。ですから、私はそういう意味において、たとえば最も日本の炭鉱でガスの多い、あるいはまた突出の危険のあるといわれる住友赤平等を見ます場合に、これはとにかくガスに対する万全策を講じなければ、最大のビルドアップの山がどうなるかということになるわけですから、この点については念には念を入れ、保安体制をとって、そのためには保安にある程度専属する保安係員が配置をされ——保安だけに従事している係員数、こういうものが非常に多いという傾向が見られるわけです。しかしガスがあまりない、自然発火もないということになりますと、どうしても側面的な保安管理という面は、生産の中で並行して保安を守る、生産も上げるという体制に単純化されていることはいなめない事実でもあるわけです。私はそういう意味において——もちろん保安監督員があり、あるいは監督補佐員も労働者側から出ておりますけれども、これはそういう問題で炭鉱保安というものは解決できないんではないか。やはりある生産に直結するラインと別に、ある程度チェックできる体制と保安監督強化が相まって、今日の日本の炭鉱坑内条件からいえば、そういう方法の積み重ねによって有機的な保安管理の連携によって災害をできるだけ防ぐ。こういうことについては非常に有効でないかと私は考えるわけです。私はそういう意味において、これは規則できめるとか、法律できめるという問題ではないと思うのです、それぞれの条件が非常に違いがありますから。しかしそういう指導をある程度する必要があるのではないか。そういうことで自主的な保安管理の機構と保安監督の有機的な連携、こういうものをもう少し深く掘り下げて検討して、しかるべき方向が出るならば、この点を個別指導する、こういう体制が望ましいと私は思うのですが、こういう点についてどのような見解を持っておりますか。
  29. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 ただいま岡田委員の言われたとおり、鉱山の保安確保するについては、労使相携えて自主保安体制を確立するということがやはり肝要でありまして、それに対して政府がこれを強力に推進するために監督指導体制を立てるというところであって、両々相まって鉱山の保安確保されるという考えを私はしておるのでありまして、ただいま岡田委員の言われた意見については全く同感であります。
  30. 岡田利春

    岡田(利)委員 今回の災害で医師、看護婦の派遣及び高圧酸素タンクの配置等については、あの条件の中では非常に迅速であった。このように私どもは判断をいたしておるわけです。しかし、たとえば九州ですと、この高圧酸素タンクのごときは福岡にある。北海道であれば札幌の大学病院にあるという状態なわけです。しかし、CO中毒立法も前国会で通過をしたという面からも考えて、特に炭鉱災害に適用でき得る配備のしかた、こういうことをやはり研究をし、配置されることがより望ましいわけですから、そういう点についてももう少し掘り下げて検討すべき事項ではないか、このように私は考えるわけです。もちろん札幌や福岡から迅速に持っていくと、そう時間はかからないとしても、もう少しそういう点について迅速にでき得る体制をとる。そういう点で炭鉱、炭田地帯の中核病院に配置をするということが望ましいと思うのですが、こういう点については通産大臣の所管ではございませんけれども、通産局としてはこういう面について積極的に要請する必要があるんではないか。また直接担当の労働省からこの面についての見解を承っておきたい。
  31. 西家正起

    西家説明員 今回の事件につきましては、労働省のほうにおきまして非常に迅速な措置をとっていただきまして効果をあげたようなわけでございますが、あるいは先生のおっしゃいましたような、ほかの地区につきましても十分検討いたしまして、労働省のほうともよく連絡をいたしまして、おそいことによる被害の拡大がないように極力努力をいたしたいと考えておる次第であります。
  32. 村上茂利

    ○村上説明員 労働省では、昨年度炭鉱地帯の労災病院を中心にいたしまして、高圧酸素室の整備をはかった次第でございまして、今回不幸なできごとでございましたけれども、そういった意味の医療体制につきましては、今回も災害発生と同時に現地に指令をいたしまして、高圧酸素タンクの出動を命じたわけでありますが、九州大学から出動したもの、それから関係労災病院から出動したもの、いずれもこれは労働省のほうから予算を出して措置したものでございます。それから北海道の美唄の労災病院その他必要な個所には整備いたしております。  これは種類はいろいろございまして、固定した非常に大がかりなものと、移動式のものがありますが、とりあえずのものとしては北海道にも配置をいたしておる、こういう状況になっておりまするけれども、さらに一そうこういった面の充実を期したい、かように存じております。
  33. 岡田利春

    岡田(利)委員 あとの質問者がおりますから、最後に一点だけ承っておきます。  今度の三川鉱災害は、入坑労働者数は五百六十一名で、三井鉱山の直接の従業員は四百九十名であったわけです。先般災害地へ行きまして報告を受けたところ、三井建設その他の九つの組員が資料でも出ておるのですが、大体どこの炭鉱でも坑内組夫使用は届け出て認可を受ければいいわけですが、数多い組というものはあまりないわけです。大体三つか四つが非常に数が多いわけですが、これはどういう雇用形態になっておるのか。  それと、今度の場合に、一酸化炭素中毒の検査を受けた中で、組夫は被災地の場所的な面からいえば心配がないという個所のほうが多かったようでありますが、非常に少ないのですね。七十数名のうち十一名ぐらいしか受けていない。こういうような状況報告があったわけですが、こういう数字が間違いがないのかどうか。承っておきたいと思います。
  34. 西家正起

    西家説明員 三池炭鉱におきましては、三井建設をはじめといたしまして、請負労働者が当時七十一名入坑いたしております。この中には、三井建設の下請のようなもの、それからそれ以外のものとがまじっておるかというように感じておりますが、この雇用形態のこまかいことにつきまして、ちょっとただいまデータを持ち合わせぬのでわからないのでございますが、三井建設の関係の下請関係のほうの数が圧倒的に多いかというふうに考えております。  それから請負組夫の受診件数が少なかったという——当時少なかったのでございますが、その後坑内におりました全部につきまして検診を受けさせるようにきめておるようでございます。  入院患者は、ただいまのところ請負組夫の中には出ておらないような状況であります。
  35. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 基準局長、いまの組夫のほうの受診者が非常に少なかったということについて……。
  36. 村上茂利

    ○村上説明員 その点につきましては、一般の、三井鉱山の直用労働者と同じように受診はするように、私ども指導いたしておるわけであります。
  37. 大野雄二郎

    ○大野説明員 組夫は全部で七十一名と把握しております。その直後にありましたのは、御指摘のとおり十一名でございますが、十月六日、やはりいろいろの危険をおもんばかりまして、六十名の検診を終えております。
  38. 岡田利春

    岡田(利)委員 いずれあるでしょうから、また議論することがありますが、組夫の問題について、いま下請の下請という話が出ておりますけれども、どうもおかしいですよ、これは。炭鉱の場合、これは組夫使用個所がきまって、そして一切の働く者が鉱山労働者なわけですから、その点の雇用形態がどうも聞いた話では、まちまちなんです。私どもの常識でわかるところまでならいいけれども、わからないところがわかってくるようなこないような、非常に複雑な問題なんですが、この点はひとつ十分調査をして、しかるべきあとにこの点は特に聞きたいと思いますので、注意をひとつ喚起しておきます。終わります。
  39. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 細谷治嘉君。
  40. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大臣、時間がないようでありますから、大臣に最初御質問したいわけであります。  実は、私どもが現地に行った以上にその後の状況というものは深刻なように思うのです。私どもが参りました際には、五百六十一名の入坑者で、そのうち、十月一日現在で三十九名が入院されておったと、こういうことでありますけれども、きょういただいたのによりますと、五十三名の入院患者ということでありまして、十四名ふえておるわけです。私は昨日現地のほうから聞いたのでありますが、入院患者は昨日は四十八名と私は聞いておりました。ところがそれが五十三名になっておるわけです。ところが通院患者は三百七十九名おるわけですね。五百六十一名というのも、現地ではずいぶん数字をチェックしたのでありますけれども、五百六十一名だということに、私は確認をしてまいったのでありますけれども、当時の入坑者は五百七十二名だということもいわれております。五百六十一名だろうと五百七十二名でありましょうと、入院患者五十三名、通院患者三百七十九——これは四十八の入院患者と通院患者三百七十九という関係でありますが、いずれにいたしましても、四百三十程度入院あるいは通院患者と、こういうかっこうになっておるわけでありますから、五百六十名か五百七十名の中で四百三十名ということになりますと、大部分の方々がだんだんやはり一酸化炭素中毒症にかかっておるという証拠が出てまいっておるのであります。そこで私は、お尋ねしたい点は、どうも当局の数字の把握が非常に変動しておるというところについて不満を申し上げたいのでありますけれども、この五十三名の、十月七日十二時現在という場合の通院患者なり、どういうふうにつかんでおるのか、まずこれをお聞きしたいと思うのであります。
  41. 村上茂利

    ○村上説明員 きょうただいまのことはわかりませんが、私ども入院患者五十三名というふうに把握いたしております。通院は、これは一般の負傷などと違いまして、いわゆる通院という概念で扱うべきか、あるいは健康診断の継続でさらにあとを確かめるという式のものと考えてよいか、そこら辺、用語上の問題はあろうと思いますが、私どもは一応、先生のいわゆる通院に相当する人数としては四百四十六というふうに承知いたしております。
  42. 細谷治嘉

    ○細谷委員 先ほど、組夫七十一名ははほとんど大部分検査を受けたようでありますが、基準局、現地のほうも、せんだっての第五十四国会ですか、特別国会で成立した特別立法に基づいてやっておる。まだ政令は出ておりませんけれども、そういうことであります。そうなりますと、できるだけ早く法律に基づいて所定の検診をいたさなければならぬと思うのでありますが、まだ残っておりますね。これはどういうことなんですか。
  43. 村上茂利

    ○村上説明員 残っておるというのは、検診を受けない者が残っておるという意味かと思いますが、ただいま御指摘のように、CO法の施行規則がまだできておりませんので、CO法による健康診断そのものというわけではございませんけれども、行ないます健康診断の内容は、省令で予定いたしておりますものを実施してもらいたいということを会社側にも話をし、指導いたしておるわけであります。そこで、今後施行規則が制定公布されました場合に、再び健康診断を行なうかどうかということでございますが、法律による健康診断実施いたしたい、かように考えておるわけであります。
  44. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私どもが衆議院の石炭特別委員会で、特に早急に当時の入坑者全員が検診を受くべきだ、特に組夫は、いまのところ一人も入院も通院もない、一酸化炭素には全く関係ない、いまでもこうなっておるわけであります。当時もそうであったから、委員の皆さんから、組夫は一体どうなっておるのか、こういうことをお聞きしましたところが、現地の鉱山の責任者が、いや、これは内輪でございますから、ということばなんです。そういうことばを私どもに答えているわけです。内輪なら、この検診を内輪同士でという形に片づけられる懸念があるわけですね。これは重要な問題ですから、労働省は、やはり法律に基づいて全員早急に検診を完了するように、ひとつ特段の配慮をお願いしたい。私が特に懸念しているのは、現地の所長の考えが、内輪でございますからと、三井建設という名のもとに下請があるわけですが、内輪でございますということだけで、場合によっては治療を押える、検診を押えるということもなきにしもあらずでありますから、特段の配慮をいただきたいのでありますが、いかがでありますか。
  45. 村上茂利

    ○村上説明員 内輪であるということの意味が私はよくわかりませんが、しかし、少なくともその一酸化炭素が発生した際、業務上の必要により、その発生にかかる場所におり、またはその直後、業務上の必要により当該場所に立ち入った労働者に対しては遅滞なく健康診断をやらせるというのがCO法の規定でございまして、このような考え方に立ちまして健康診断実施する、こういう考えでおります。そういうことで、今後法定の健康診断をやります場合には、このような場所におった者については全員やる、こういう考えでございます。
  46. 細谷治嘉

    ○細谷委員 特に内輪でございますということは、いつでもやれる、どうにでもなる、いろいろな意味があるでしょうから、とにかくいま局長が答えたように、きちんとひとつやっていただきたい。というのは、どんどん入院患者がふえておりますから、事態容易ならぬものがあると私は思いますから、特に申し上げておるわけであります。  そこで、大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、昭和三十八年の十一月九日、四百八十七名が一瞬にしてなくなった。そして現在も八百人くらいの人たちが、やはり一酸化炭素中毒で悩んでおるわけです。ところが今度また火災を起こして、一酸化炭素中毒でなくなった人、そして四百名に近い人が入院なり通院なりをしておる、こういう現状でございます。  ところで、お聞きしますと、三十九年にもこの種の火災が起こったことが確認されております。三年十ヵ月ばかりになるわけであります。もう一回この間にやはり火災が起こったのです。幸いその二回については、人命については影響なかったのでありますけれども火災が起こったことは事実であります。火災が起こるということは、坑内でありますから紙一重の差で大事故にならないとも限らない。三十八年の世界第一といわれるあの炭じん爆発、今回のやつも幸い——幸いということばは言えませんけれども、この前と比べますと人は少なかったのでありますけれども、これは紙一重であります。しかもその間落盤事故というものは二十何回も起こっておるわけですね。二十何名もなくなっておる。新聞等が指摘しております。日本一の炭鉱で、これはまたたいへんな災害が起こっている、こういうことがいわれております。先ほどの報告の中にも生産第一主義ではないか、こういうことばもございました。そこで大臣、具体的にお尋ねしたいのでありますが、この前の爆発の際に、もっと監督行政を強化する意味において、たとえばビルド鉱である三池炭鉱には常駐の保安監督官を置くべきである、こういうことが主張されたのでありますけれども、廃山に次ぐ廃山を続けておる筑豊の田川とか飯塚とか直方には、保安監督署があるのでありますけれども、ここの場合はないのであります。依然としてないのであります。しかも日本一のビルド炭鉱、日本全体の石炭のやがて三分の一も出そうというところ、しかも事故が頻発しておるこの三池に鉱山保安監督署を置かないという理由はないと思うのでありますが、大臣いかがですか。
  47. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 ただいまお話しのとおり、災害の頻発するところへ常駐の監督官を置いたらどうかという御意見でありますが、常駐の監督官を置くということについては、少し検討する余地があると思いますが、しかし、災害の頻発する鉱山については監督者を派遣して、そして監督検査の頻度を高めるということが必要であるということをわれわれは痛感いたしておりますので、今後三池炭鉱についてはしばしば監督調査するという方針でいきたい、こう考えております。
  48. 細谷治嘉

    ○細谷委員 しばしば調査するというおことばで逃げていらっしゃるのでありますけれども、実は福岡鉱山保安監督局長もいらっしゃっておるのでありますけれども、ことしになっても総合検査というのをやっておるわけですね、たしか六月ごろです。それから巡回検査というのは三回もやっている。しかもこの三池炭鉱三川鉱については、九月の二十四日と五日かに巡回検査が行なわれておるわけです。事故のありました当日は、宮浦鉱三川鉱巡回検査も行なわれておるわけです。しかも九月の十二日には、どうやら炭鉱に危険性があるという労働者の心配がありまして、わざわざ福岡まで出かけて参りまして、十数項目の申し入れをしておる。いわゆる巡回検査や総合検査があるときは、保安については気をつけたようにしておるけれども、平素の保安体制というのについて少し心配がある、こういうことが確認されておるのであります。そうしますと、現状では常駐せぬ限りはぎりぎり一ばい形だけはやっておると私は思う。内容は別です。にもかかわらず二十四、五日にやった数日後に火災を起こしておるわけですね。しかもこの火災の起こったところは、鉱山保安監督局があぶないのだ、こういうことで特定注意個所に指定したところで火災が起こっておるわけです。先ほど岡田委員の質問にもありましたように、沿層坑道である。そしてその沿層坑道の中は十字路になっておるわけです。十字路になったところは、これはもの風のフリクション等で火災が起こりやすいということははっきりしておる。ですから特定注意個所に指定してあるのでしょう。そういうところを見ておるか見ておらないかわからぬ。前の日の十時に鉱山の担当係員は回られたということのようでありますけれども、どうもやはり保安監督行政が不徹底だ、こういうふうにも申さなければならぬと思うのであります。いま、だんだん廃山で石炭のない田川とか直方等には保安監督署があるのでありますけれども大牟田にはない。三池には常駐者もおらぬ。これは私は実情にそぐわないいまの体制ではないかと思うのであります。ですから先ほどの大臣の答弁では、これはやはり現状にマッチした保安監督行政の推進ということにならないのじゃないかと私は思うので、重ねてお尋ねしたいと思います。
  49. 西家正起

    西家説明員 先生ただいま御指摘のように、三池炭鉱につきましては、今年度に入りまして大体毎月一回の監督検査をやっております。それから六月には先生がおっしゃいましたように総合検査もいたしております。それから九月には災害直前でございますが、やはり監督官が巡回検査を行なっております。そのときもそれぞれ重点的に事故指定をいたしまして、監督官に巡回をさしておるわけでありますが、従前の場合には先生御指摘の落盤、それから払いの自然発火、それから坑道通行個所等に重点を置いていたさせておりまして、当日災害の起こりました坑道につきましては巡回をいたしていなかったわけでございます。それから十二日の日に監督局のほうに現地のほうからいろいろい問題点の陳情があったことも耳にいたしておりまして、これに対しましては、詳しいことは監督局長も行っておりますので、それぞれ処置をしたことになっておるわけであります。  それから監督官の常駐でございますが、それぞれ三池の鉱山にずっと常駐させるということにつきましては、実際鉱山の保安確保するのは、やはり鉱山自体の方たちがその気にならなければできないことだと思います。監督官が常駐することによりまして、監督官をたより過ぎるということになりますと、これはかえって大きな問題でございますし、それからまた実際に監督官に全部これをやらせるということになりますと、相当な監督官の数も必要と思いますので、ただいまの段階では、先ほど大臣がお答え申しましたように、あくまでも自主保安体制をいろいろな面から強化させまして、それをサイドチェッカーとして監督官がチェックをする、こういうことでやらせていただきたいというように考えておる次第でございます。  十二日の件につきましては……。
  50. 細谷治嘉

    ○細谷委員 それは大臣、時間がないからあとで聞くから……。  局長、あなた変なことを言うたな。自主保安体制を確立するというのはあたりまえのことなんだ。それでもやっぱり足らぬので、鉱山保安局というのがあるわけです。それを監督するのがあなたの役目なんだ。みんなやってくれているのなら、しかも三池が十分なら、出張所も置く必要もない、常駐も置く必要もない。問題は自主保安体制なんだ。それなら監督署は要らぬ、みんなやっているのなら。そういうふうに指導なさっているならば。私が申し上げるのは、いままでの例にかんがみて、そういうことではならぬのであるから、どうしてもここは保安監督行政というのを強化する必要がある、こういうことから申し上げておるのであって、ひとつ大臣の率直な考え——どうも私は保安監督行政強化すること、出張所が来るということは強化されることでしょう。何かじゃまするものがあるのですか。全体の体制に応じて、日本一のビルド鉱といわれているんだ。そこに災害が頻発とはいかぬまでも相当起こっているのですから、しかも紙一重の重大事故が起こっているわけですから、やはり設くべきだと思う。三年前にこの問題はたいへんな問題になったことですよ。いまも一つも変わっていないのですね。これではいかぬのじゃないかと思うので、大臣、重ねてお尋ねしておきます。
  51. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 ただいまのお話のとおり、災害の頻発しておるところ、しかも出炭量の多いところというところについては、監督をひんぱんにしなければならぬということでありますので、したがって、そういう意味において監督署を置くということ、出張所を置くとか常駐するとかというような必要性があるということは、これは私も同じ意見であります。したがいまして、その点についてはもう一ぺんわれわれのほうでも検討してみたい、こう考えております。
  52. 細谷治嘉

    ○細谷委員 これはひとつ検討だけではなくて、三年十ヵ月前からの懸案でありますから、今度はぜひ実現していただきたいと思っております。  そこで、大臣にここまで私が質問をして、これから先質問するのは少しおまえ矛盾しているじゃないか、こういうことになるかもしれませんけれども、私は現在の鉱山保安体制ということについては抜本的な検討が必要ではないか、こう思っておるのです。何といっても通産省は生産を担当する省であります。どうしても生産を担当する省でありますから、保安ということについては二になりがちであります。そういう点で、保安行政の一元化ということがやはりぜひとも必要ではないかと私は思うのであります。おまえ、保安行政の一元化ということは、通産省から保安局をはずせ、労働省か何かに持っていけ、こういうことを言いながら、出張所のことをおれに質問するではけしからぬじゃないか、こうお思いかもしれませんけれども、大臣はただ単に通産行政の大臣でありませんで、一国の国務大臣でありますから、大所高所に立った鉱山保安がどうあるべきかというひとつ基本的な考えをこの際お聞かせいただきたいと思う。
  53. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 私は先ほども岡田委員の御質問に対してお答えしたのですが、もちろん生産ということが鉱山の主要な目的でありますが、しかし、その生産をあげるがためには保安ということが大切な前提条件になる。したがって、生産保安というのは表裏一体だと私は考えております。したがいまして、今日まで保安生産とを一体という立場から通産省のほうでもそういう政策をとってきたと思うのでございまして、生産保安とが別の行政系統に属するということになりますと、おのずからそこに意思の疎通を欠いたり、あるいは行政上の手違いなどが起こるかと思いますので、この際はやはり生産保安というものは一体であるという立場から、通産省でこれを両方をあわせて行政するのが一番いいのではないかというのが私のただいまの意見です。しかし、この問題につきましては、今日までの歴史、また今後の起きるいろいろの問題等も考えてみまして、私は一応この問題については検討する必要があるという考えをしておりますけれども、私の現在の考え方は、この際は一体でやったほうが、かえって妥当ではないかという考えをしております。
  54. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大体戦後石炭の傾斜生産というものがとられた際に、当時の労働大臣加藤勘十さんと通産大臣水谷さんとの間で鉱山保安行政というのが通産省に移ったと私は思っている。当時の石炭の傾斜生産、こういう状況から、あるいはいま大臣がおっしゃった生産保安の一体性ということは通用したかもしれませんけれども、今日の炭鉱災害等の実態から見ますと、私はやはり近代的なチェックシステム、こういうものを採用するのがよろしいではないか、このままでは、これは事故が起こってからいつも二度と再び起こさないように努力しますという言いわけに終わってしまう。そして常にやはり生産第一主義で動いていく。こういうことになるのではないかと思う。これは、思うばかりじゃなしに、実績がそう示している。ですから、ひとつ大臣、通産大臣ということでありますけれども、一国の国務大臣という大所高所からこの問題についてひとつ御検討をいただきたい。労働大臣は見えておりませんが、この席で労働大臣なり労働省はどう考えているかということもお聞きしたいのでありますけれども、また意見が違うと時間がかかりますから、もうこれ以上は質問しないことにいたします。  ところで、現在のところ原因がはっきりいたしておりませんけれども原因は突き詰めるという決意で、密閉作業の際に七十五センチのとにかく大きなパイプをはめ込んであるわけでありますが、何カ月後になるか知りませんけれども、半年後だという説もありますし、二カ月後だという説もあるのでありますけれども、一刻も早くこの原因を究明をしていただいて、ほんとうの意味において二度と再び起こらないように、ひとつ十全の対策をとっていただきたいと思うのであります。  ただ、原因がわかりませんけれども、私は鉱山の事故の場合に、火源がどうのこうのという問題の前に、一体火源があったといっても、爆発するような状態に坑内がなかったならばよかったわけですから、火源ばかりでなくて、爆発するような状態、自然発火が起こるような状態にしたというところに今日の事故の大きな原因があると思う。これはやはり保安監督の問題でありましょうし、あるいは保安をどういうふうに自主的に進めておるかということが問題であると思うのでありますが、今度の事故を顧みますと、大体風量が足らぬという形で、本来ならば廃坑にしなければならぬものに四分の一程度の風を流させておった。それも沿層坑道で、炭が裸で、おおいをすることなく流しておったということ、しかも鉱山保安監督署が特定注意場所という指摘をして、こういうことをやらしておったということは、やはり鉱山保安監督局の責任は免れないと思う。同時に、そういう形でほっておいた会社側の責任というのも免れない。しかもそういうことでありながら、不徹底保安巡回しかやっておらぬ。あるいは会社のほうも、毎日回ったと言うけれども自然発火というのは、三池の炭というのは二十四時間で火がつくようなそんな炭じゃないということが常識であります。そういうことからいって、どうしても手抜かりがあったのじゃないか。現にそうでしょう。警察も手入れをしたでしょう。ガサを入れられた。福岡鉱山保安監督局も、新聞によりますとガサを入れるというのですよ。警察が入れる前に、九州行監局が入れるというのだ。新聞に書いてありますよ。これは不ていさいな話です。しかも不ていさいな話でありますけれども、事実やっぱり問題点というのが明瞭になってきているというのが今度の火災状況だと思うのですよ。  しかも、私ども聞きますと、職員の人たちは、保安技術者の労働密度が高過ぎるのだ、こういうことまで言っております。こういう点について、私は監督強化しろという面を冒頭質問したのでありますけれども、火源がどうのこうのということは、いま密閉されていてわかりませんけれども、問題ははっきりしている、こういうふうに申していいと思うのでありますが、こういう点は大臣、いかがですか。
  55. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 いまお話しの問題は、保安監督をより完全にするというところに問題があると思うのですが、お話のとおり、いままでの体験上では得られないような、予見すべからざることも起こり得るようなこともあると思いますので、こういう鉱山の保安の問題については、各方面から今後研究していくべきだ、こういうように考えております。したがいまして、この鉱山保安の問題というのは、先ほども申し上げましたとおり、生産とは離るべからざる関係にあるし、ことに労務者の不足しておる今日、保安がなければ労務者は決して寄ってこないので、したがって同時に生産が上がらないのであります。したがいまして、保安を第一主義として今後やっていきたい。それについては、いまいろいろお示しのあったようなことについてはわれわれも重々今後注意してやっていきたい、こう存じておる次第であります。
  56. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 田畑金光君。
  57. 田畑金光

    ○田畑委員 大臣に二、三お尋ねしておきたいのですが、その前に、重大災害というものが非常にしばしば起きておるわけです。この数年間を振り返ってみても、昭和三十五年二月の北炭夕張のガス爆発をはじめ、三十八年の三井三池三川鉱の炭じん爆発、あるいは四十年二月の北炭夕張の同じようなガス爆発、さらに四十年四月の日鉄伊王島のガス爆発、昭和四十年六月の山野鉱業所のガス爆発などいろいろ重大災害発生しておりますが、これの原因の究明並びに責任の所在というものがどのようになってきておるのか、これをひとつ簡潔にお答え願いたいと思うのです。
  58. 西家正起

    西家説明員 昭和三十八年十一月に三池炭鉱において起きました大爆発につきましては、鉱山保安監督局といたしましては、捜査をいたしました結果、法規違反事項を指摘いたしまして送致をいたしたわけでございます。その後検察庁におきまして、最終的な処分の原因が非常にむずかしくなったようでございまして、結果といたしましては不起訴ということになっておるようでございます。  それから北海道の夕張で起こりました四十年の二月のガス爆発につきましては、法規違反事項で会社の送致をいたしまして、ごく最近でございますが、起訴をされたようでございます。  それから長崎の伊王島のガス爆発でございますが、これにつきましては、私のほうといたしましては、送致をいたしておりますが、検察庁では起訴をいたしておりまして、目下裁判中の模様でございます。  それから福岡の山野炭鉱のガス爆発でございますが、これにつきましては、保安局といたしましては送致をいたしまして、現在起訴になっておるような状況でございます。したがいまして、大きな災害につきましては、三池を除きまして起訴になっておるような次第でございます。  それから災害原因でございますが、三池炭鉱の爆発の災害原因といたしましては、先ほどの三川鉱の斜坑に坑車が自走をいたしまして、その坑車が電線を切った。その切った電線のスパークか坑車の自走の摩擦熱かによりまして、人気斜坑にありました炭じんに火がついて爆発をいたしたような次第でございます。  それから夕張炭鉱の爆発につきましては、これは払いあとに自然発火発生をいたしまして、付近にたまっておりました可燃性ガスに引火爆発をしたというような原因で起こったものでございます。  伊王島の炭鉱爆発災害原因につきましては、ボーリング坑から湧出をいたしましたガスが通気不良のために坑道にたまりまして、同坑道に配線をされておりました信号線が同時に切断されまして、そのスパークによって停滞しておりましたガスに引火して爆発した、こういうような原因になっております。  それから山野炭鉱の爆発につきましては、これは元来あまりガスがないとされておりましたところから、ガス突出が起こりまして、このガス突出によりまして爆発をした結果、多量のガスが風下のほうの採掘作業場のほうに回りまして、そこで働いておりました人たちの大部分一酸化炭素中毒によりまして死亡させた、こういうようなことになっておる次第であります。
  59. 田畑金光

    ○田畑委員 起訴されて刑事処分がなされた事例が今日まで何件あるのか、それを説明していただきたいと思います。
  60. 西家正起

    西家説明員 保安法が施行されまして以来、起訴されまして確定をした数はかなりあるかと存じますが、ただいま全部の数字の資料を持っておりませんので、ちょっとしばらく時間をかしていただきたいと思います。
  61. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 文書でどうですか。
  62. 田畑金光

    ○田畑委員 ひとつそれはあとから資料として提出を願いたいと思います。  大臣が時間を急ぐようでありますので、私は大臣の考え方を承っておきたいと思うのです。いま重大災害について原因の追及と責任の所在の問題についてお尋ねいたしましたが、お聞きのとおり、重大災害についても起訴され、現在訴訟係属の案件もありますが、多くの場合は不起訴処分、したがって、責任の所在も明確でない、原因の追及も不徹底に終わっておる事例がしばしば繰り返されて今日に来ておるわけです。今回の場合も、三十八年に続いてこのようなまことに大きな事故を起こしたわけでありますが、先ほど来指摘されておりますように、出火したであろうという場所についてはすでに密閉されて、取りあげ作業がなされるのもおそらく半年前後かかるのではなかろうか、こういうようにいわれておるわけです。証拠隠滅のおそれがあるというので、密閉については当初検察庁が強く反対したということも現地で報告を受けましたが、しかし坑内出火を押えるためには密閉以外にない、こういうようなことで現に密閉されておるわけです。したがって、今後原因の究明ということになってまいりますと非常に手間取るのではなかろうか、あるいはまた正確な原因の探求がなされないおそれもあると見るわけです。こういうようなことがしばしば繰り返されて今日まで来ておるのがわが国炭鉱災害の一般であると私は指摘したいのでありますが、このようなことが即、先ほど来指摘しておりますように、石炭産業に対する不安をかき立てておる。特に災害が起きた直後には、当該炭鉱だけでなく、わが国の石炭全体にこれが影響し、やめていく労働者が多数出ておるということは、これは経験から、統計からはっきりいわれておるわけです。このようなことに対して今後石炭の安定をはかるためには、特に保安が第一だということは申すまでもないことでありますが、このようないままでの経緯からかんがみて、また今後のわが国の石炭の安定という立場から見て、大臣は今回のこの事故を教訓にどのような対策を考えておられるのか、具体的にお示し願えるならばひとつお示しいただきたい、こう思うのです。
  63. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、ただいま原因の探求につきましては、鉱山保安協議会のほうでいろいろやっておりますので、それによって原因がはっきりいたしますれば、したがって、今後その原因発生しない対策を講じなければならない。その対策については、鉱山自身でやるべきことは鉱山にやらすということになる。また、それが監督については厳重に監督するという方針でいくべきだと思うのでありまして、三池の今度の災害いついては、ただいま具体的にどうするという確答はできませんが、原因を探求した上でそれぞれの確固たる対策を講じたい、こう存じております。
  64. 田畑金光

    ○田畑委員 いつもそのような答えで、その教訓から学んだ何らの具体的な施策も行なわれないままに来ておるのが今日までだと思うのです。いま申し上げましたように、原因の究明と申しましても、一番大事な場所は現在密閉されておるという現状であるわけです。自然発火であるということはおよそ一致した見解であると見ておりますが、その自然発火した場所についても、先ほど指摘されたように長い間鉱山保安監督局のほうとしても、これはだいじょうぶだ、危険個所がない、こういう形で今日まで特別な措置が講ぜられないままに来ておることは、大臣も御存じのとおりであるわけです。沿層坑道がクロスしたところが実は発火の場所であったということ、しかも風道であったということ、さらに現地に行って調べてみますと、昭和三十五年にも、これは四月と言っておりましたが五百メートル下のほうで坑内火災が起きたということ、そしてそこが密閉されておるということ、こういう場所が全然点検の場所として保安局のほうからも指摘されないで来たということなどを見ますと、一体監督行政の立場から見て十分であったかどうかということを、われわれは深く疑問に感じたわけです。ことに自然発火というものは、常識だけで見ても二十時間前にいわば坑内巡視で点検したという報告にはなっておりますが、自然発火というものがそう短い時間のうちに災害になるかどうかということは、われわれの現地における調査や各層の話を聞いてみたときに、それが事前にわからぬはずはない、こういうことを共通して言っておるわけです。しかも災害の起きた二日前に監督官も三川鉱に入って坑内の巡視をやっておるが、この大事な場所は点検の対象からはずされていたということなどを考えたとき、一体沿層坑道を長期的に風道として利用することがよかったのかどうか、こういうようなことなど、私は監督行政の立場として当然反省すべき問題ではなかろうか、こう考えるわけです。また、かりに風道として、人気坑道として、これが使用を認めていたとしてもなぜ巡回検査が容易にできるような措置がとられていなかったのか。巡回検査をもっと容易にするような措置がどうしてとられなかったのかという問題もあろうと思います。人気坑道がこの地点では狭くなっていたから、風速が規則に違反するため沿層坑道使用したというようなことになっておりますが、当該個所使用人気坑道の拡大措置がとられたならば、こういうようなことも未然に防げたのじゃなかろうか、こういうことがいわれておるわけですね。そういうことを考えてみますと、だんだん原因を探究してくるならば、やはり保安監督行政の面においても反省すべき点が多々出てくるんじゃないか、こう考えているわけです。また、災害の起きた前の日の十時に現場を点検した、こう言っておりますが、それは確かに点検したということであるかもしれません。しかし、点検したかどうかということを確証する方法がない、こういうこともやはり問題じゃなかろうか、私はこう思うのです。保安日誌に書いてあったから見たんだ、点検したんだ、こういうことは必ずしも信用できない面もありはせぬだろうか。たとえば現場にいつ幾日何時に回ってどうであったという現場で掲載するような措置などがとられておれば、確実に点検したというようなことにもなろうと、こう思うのでありますが、その辺のくふうも全然なされていない。  こういうことを考えてみますと、私は大臣に重ねてお尋ねしたいわけでありますが、この種の問題は、常にその原因について調査中である、これから調査して対策を立てるんだ、こういう形で逃げられてきたわけでありますが、この際大臣としてももっと掘り下げて御検討の上、監督行政の上において、正すべきは正す、指導監督の面で足りなかった点はさらに具体的な措置を施してこれを正すくらいの、この際具体的な措置を私はやっていただきたい、こう思うのですが、もう一度大臣の見解を承っておきます。
  65. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 いままで災害が起こったときに、そのままにしておるというわけでは決してないのでありまして、前回の三池の災害以後におきましても、政府はいろいろの措置をとっております。したがいまして、それぞれいろいろ措置をとっておりますが、また今回のような災害を見たということは、われわれとしてまことに遺憾に思っておりまして、今回の災害につきましては目下原因調査中でありますから、その調査の結果によって、またこれが対策を講じなければならないし、もしいままでの監督の不行き届きの点があれば、それについてもまたわれわれは反省しなければならぬ点がある、こう考えております。また自然発火だからというようなことで私は単純にこれを見逃すわけにはいかない。自然発火するに至るまでの、そこに何か諸条件があったのではないか、そういう諸条件もこの際は究明する必要がある、こう考えておりますので、とにかく今回の災害に顧みて、われわれといたしましては、できるだけ各方面からこの原因調査して、そして、それによって必要な対策を、確固たる対策を講じて再度こういう災害の起こらぬようにやりたい、こう考えておる次第であります。
  66. 田畑金光

    ○田畑委員 私、この際大臣に端的にお尋ねしておきますが、さっきの鉱山保安局長の話によれば、COマスクの改良型ができて、そして個人携行もできるようになった、こういうことですね。そうしますと、今後、中央鉱山保安協議会などで相談なさって、保安規則を改正なさって、COマスクについては個人携行ということに御指導なさる御意思なのかどうか。同時にまた、これがためには、先ほど来指摘されたように、今日炭鉱はとにかく四苦八苦の状況であるわけですから、機器の開発なり、こういう保安機器の設置については、予算措置その他において、十分炭鉱がやっていけるような援助措置を通産省としては今後やる方針であるかどうか。これが一つですね。  もう一つ、この際明確に大臣からお聞きしておきたいことは、保安センターというのが設けられたわけです。ことしから九州あるいは北海道、来年は常磐という約束がなされており、この三地区には保安センターがもう一両年のうちには配置されるわけですね。保安センターというものは何をやるのか、まだよくのみ込んでおりませんが、保安センターが設置されるならば、この際少なくとも救護隊を常設すべきではなかろうか。常設救護隊を設置する、ちょうど消防署が置かれておるようなものですね。そして必要な場合には必要なところに直ちに動員できる、そこでは救護訓練もやる、保安教育もやる、そういう意味の鉱山救護隊保安センターに設置して、これを中心に保安の行政、保安の教育、訓練が推進されるような措置を、今回の事故にかんがみても、ぜひこの際やるべきだと思いますが、保安センターの構想は何なのか、こういうようなことを考えて、大臣としてはおやりになる気持ちがあるかどうか、この際明確に承っておきたいと思います。
  67. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 まず第一番の問題は、この鉱山保安の問題が従来よりも重要性を帯びてきたと私は考えております。というのは、石炭産業自体が従来から見て非常にきびしい状態になってきておりますので、そこで、いままでのような安易な考えでこの保安という問題を考えてはいかぬ、こう私は考えております。せっかく皆さん方の御賛同を得て、昭和四十二年度に画期的な石炭対策を講じたのでありますが、その目的を達成するがためには、鉱山保安確保ということがやはり前提条件である、こう考えておりますので、いままでより以上にきびしくこの保安という問題を考えていきたい。したがって、今回の三池の災害などにかんがみて、あるいはいままでの保安監督については不十分な点があったのではないか。そういう点については厳重にわれわれは反省もするし、あるいはまた、いままで予測すべからざるような原因があるいはひそんでおったのではないか。そういう点も厳重に調査研究して、そしてこれが対策を講ずるし、あるいは法規の改正を必要とすることであれば、法規の改正もやらなければならぬというように考えておるのであります。要するに、保安確保をよりきびしくするということは、生産を高めるというわれわれの根本目的を達成するために、これをきびしくやりたい、こう考えておりますから、保安の問題について皆さん方でいろいろお気づきの点があったら、ひとつ御容赦なくわれわれのほうにも御注意していただいて、皆さんとともに万全を期したい。そして石炭産業の安定をはかりたい、こう存じておる次第であります。  それから保安センターの問題につきましては、詳しいことは局長からお答えさせますが、いまの救護隊保安センターに設けるという案は、いまのところはないようであります。しかし、そこで救護の訓練をする、そしてその訓練を得たベテランがそれぞれの鉱山に帰って、そして救護についての指導者になるということで、この保安センターでそういう方法をとるということを聞いております。しかし、保安センターの内容については、局長から直接お答えさすことにいたしたいと存じます。
  68. 西家正起

    西家説明員 鉱山保安センターにつきましては、今年から二カ年計画で予算をとりましてつくることになっておりますが、中でやりたいと思っておりますことは、新技術に対する保安教育、それから一般の保安技術職員に対する教育、リーダーになるための教育、そういったような保安教育の設備を増強しまして、そういう保安教育強化をはかるということが一つと、それからもう一つは、鉱山救護隊の訓練を新しくやったり、あるいは、これはしょっちゅう再訓練をする必要がございますので、そういうときに、この保安センターにおきまして再訓練をさせまして、各鉱山におきまして十分な鉱山救護隊が常にあるというような形にさせたい、こういうことで現在計画をいたしておる次第でございますが、なお、先生の御指摘の点につきましても、今後十分検討させていただきまして、最もいい保安センターをつくるように努力いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  69. 田畑金光

    ○田畑委員 これは細谷委員の質問の最中ですから、私はこの点だけ確かめておきたいのですが、いまの鉱山救護隊の常設の問題ですね。これは私の聞くところによれば、外国でも西独やフランスなどではそういう制度がすでに設けられて相当の成果をあげておるということも聞き及んでおるわけですが、この際保安センターを設置されるわけですから、保安センターの目的は先ほどあなたもあげられた二つが当面の目的であるかもしれぬが、さらに一歩進めて、常設の鉱山救護隊を設置して、機動的に動けるような体制もやはりこの際考えてみる段階に来ておるのではなかろうか、こういう感じもするわけです。これは単にここの答弁としてではなく、私は願わくは、四十三年度の予算要求もいまなされておる時期でもあるし、この際、別に私はこれだけに限ったわけではありません、もっと思い切ってひとつ保安の問題については補正予算で、あるいは四十三年度予算でやってみられたらどうか、こういうことなんですよ。監督官の数が定員を割っておるような資料もこの間現地でいただきましたが、やはりそういうような面については、監督官の定員が充足されていないなどということが仕事の上に支障を来たすとするならば、この際、人命は何ものにもかえられぬことでもありますし、ひとつ思い切って努力されてみたらどうか、われわれもまた国会の意思として、そういうような方向に大いに援助しなければならぬ、こういうような気持ちを強く持っておるわけですから、十分これらの事情を考慮されて検討していただきたい、こう思うのです。
  70. 西家正起

    西家説明員 確かに先生のおっしゃるとおりでございますが、鉱山救護隊につきましては、外国あたりではできるだけ早く災害現地に行くという必要がございますので、まず第一に鉱山の救護隊をすみやかに出動できるような体制に訓練するということが第一にありますが。保安センターにおきましての常駐につきましても、先生のおっしゃいましたように、十分に検討させていただきたい、かように考える次第でございます。  また監督官の充足等につきましても、確かにこの間御報告申し上げましたときには欠員があったのでございますが、目下中間試験をいたしまして、急遽これを充足中でございます。やがては充足されることだと思いますが、なお今後におきましても、監督官の数の増強等につきまして、先生のおっしゃいましたように、極力予算措置を講じたい、こういうように考える次第でございます。
  71. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  72. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 速記を始めてください。
  73. 細谷治嘉

    ○細谷委員 久良知さん、十二日に保安上どうも完ぺきじゃないということであなた陳情を受けたわけですね。その陳情を受けて、あなたは二十四日、五日に宮浦、四山等の巡回検査をなさったと思うのですよ。ところがあなたのところで特定注意個所と指定したいまの火災個所には行っていないわけです。どういうわけですか。これは特定としてあなたのほうが指定したぐらいのところですから、当然見るべきですよ。それを行っていない。二十四、五日ごろ行っているなら、あなたのところが行ってみたら、こんな火災は起こらなかったかもしれない。未然に防げたかもしれませんよ。ですから、十二日にどういうことを伺ったのか、それで自分はこう判断したから特定注意個所も行かなかったのだ、こういうふうに納得いく説明をしてください。
  74. 久良知章悟

    ○久良知説明員 先生のいまおっしゃいました組合から十二日に話があったと言われましたのは、炭労それから全炭、炭職協という三つの石炭関係の組合があるわけでございまして、三カ月に一回、各四半期ごとにこの三つの組合と各個別に保安上の問題についていろいろ話し合いをする会を持っております。その第二・四半期分の会を九月の十二日に炭労との会議をやったわけでございまして、そのときに三池労組から来られた方のお話で、八月の二十八日から九月の二日まで私の局の木佐木監督官が宮浦を巡回したときに、いろいろ規則上の問題その他につきまして八項目ほど話を持ち出した。ところが、時間の関係で全部の話を終わることができなかったので、その九月十二日の懇談会のときにもう一度あらためて話をしたいということを申し出られたわけでございます。そのときに二、三私、話を聞き始めたわけですが、非常に項目が多いということでございまして、当日は三池の労組とだけの話し合いではなくて、九州の他の山の炭労の方も多数見えておられまして、各山についての問題、この話がかなりありましたので、三池の労組だけに時間を費やすことができませんので、そのときには、もう一度この件については話し合いをしましよう、いつでも都合のいいときに監督局においでくださいという話をしておったわけでございます。その結果、九月二十二日に三池の労組の方が私のところに見えまして、お話があったわけでございます。  このときには、監督官と課長に話を聞かしたわけでございますが、話のありましたのは、三池における火薬の管理の問題、運搬坑道の幅の問題、待避訓練の問題、斜坑の定義の問題、出水の見張りの問題、人車乗降場で人車の前を通行する問題、この六項目がございますが、おもにこの六項目について規則の運用解釈の問題についての質問がいろいろございました。この大部分のものについてはお答えをいたしまして、話を終わったわけでございますが、そのときに、宮浦鉱で大体六月から八月にかけまして、炭じん防止のための散水が不十分であった実例、岩粉の散布が不十分であった実例、運搬の定凾の違反の問題、ハッパの際のいろいろやり方の問題、坑道幅の実例の問題というふうな問題をあげられまして、これは過去に、その間にありました、労組のほうで違反と考えられる問題の提議があったわけでございます。それで宮浦鉱につきましては、十月の巡回のときによくその事実を調べて、直すべき点は改めましょうという約束をして別れたわけでございます。これが三池の申し出の問題でございます。  それから先生のおっしゃいました第二番目の、監督官が九月二十五日、二十六日に三川鉱の検査をいたしまして、そのときに問題の個所の検査をしなかったという問題でございます。この問題は、先ほども先生がおっしゃいましたように、私どもといたしましては、年に一回総合検査というものをいたしております。それからそのほかに普通の、つまり巡回監督を毎月一回やっております。御承知のように、三川鉱そのものは非常に大きな坑内でございまして、坑道だけでも約九十数キロございます。ですから、毎月の監督で全坑内を見るということは不可能でございます。したがいまして、年に一回やります総合検査のときには、これは原則として全部坑内を見る、それから、その他の巡回のときには、各重点項目をきめまして、その項目に従って検査をやっておるわけでございます。たまたま九月につきましては、先ほどもちょっと話が出ましたように、三池で落盤による死亡災害というものがある程度頻発いたしておりますので、それを中心にしまして、つまり払いのそういう落盤対策、それから通行坑道の安全の問題というようなものを主点にして巡回をさしたわけでございます。その結果、九月の巡回のときには問題の個所を通らなかったという事情でございます。
  75. 細谷治嘉

    ○細谷委員 重点が違っておったということで、九月の巡回検査は行ってなかった。前の日の十時、職員が回ったのも、回ったと保安日誌に書いてあるそうでありますけれども、何らの異状がない、こういうことでありますが、現に異状が起こっていたと申さなければならぬわけですね。この点は、私は、鉱山保安監督局長、重点をきめて、千里眼じゃないのだから今度の場合はそれを見なかったということについては、あまり追及できないと思うのだけれども、ところで、どちらでもいいのですが、せっかく現地から来ているのですから、なまなましい体験を持っているだろうと思うのです。先ほど来質問がありましたけれども、私どもも現地でいろいろな人に聞いてみますと、たとえば待避訓練、こういうものがきわめて不徹底だということははっきりしていると思うのです。私ども、組合の代表の方から市役所で聞いたのでありますが、代表の方から、もっとじかに訴えるような訓練をしていただかなければならなかった——何が一番この際大切だと思いますかという質問に対して、実感のある訓練をやっていただきたい、こういうことを言っておりました。当時坑内におったある人に私が直接聞いたところが、いや、今度のやつは実は演習だと思ったんだ、こういうことも言っておりました。ですから、待避訓練というものがきわめて不徹底だったと思う。五時四十五分ごろ出火いたしまして、一応はとにかくCOマスクを携帯しなさい、こういう指令も出た。どこそこに集まりなさいという指令も出た。ところが、COマスクを使いなさいという指令はついぞ出なかった。それから、どこの経路をとってどこから坑外に出なさい、そういう指令も出なかった。こういうことからいって、命令指揮系統にも訓練の不十分さがさらに加重しておった、こういうことが私は指摘できるのじゃないかと思う。  それからもう一つは、保安委員会等の運営についても私はやはり問題があったのではないか、こう思うのですね。たとえば密閉作業というのは、二十八日、事故のあった日の夜の九時か十時ぐらいに意思決定しているわけだ。あなた方もそれを了承したでしょう。ところが組合側に対しては、翌朝、とにかく入っていって、組合のそれぞれの代表者——組合が三つあるわけですから、よく実地に点検した上で、どうしてもしようがないならば、その点検の上で密閉をしようじゃないか、こういう約束がなされて翌日下がったそうでありますが、事実は前の日の夜の九時か十時ぐらいに、あなた方が了承した上でもう密閉の方針が確定されておった、こういう点からいって、私は保安委員会の運営等も、せっかくこの前の三十八年の事故によって法律が改正になったのでありますけれども、法律の趣旨にのっとって運営されておらなかったのではないか、こういうような気がいたすのであります。  さらには、マスクの問題にいたしましても、中には、前に使用方法を教わったけれども、ああいう火急の場合になりますと、どういうふうに使っていいかとまどいました、あるいは、あんな火急の場合、使い方はもう忘れてしまいました、こういう人もおりました。このことは、いま私が指摘したいろいろな点からいって、保安体制、保安訓練、避難訓練、いろいろなものが欠けておったということははっきりいたしておると思うのでありますが、鉱山保安局としてこの辺はどう考えますか。時間がありませんからまとめて私は質問しているのですから、ずばり十分だったか不十分であったか答えてもらえばいいわけです。
  76. 久良知章悟

    ○久良知説明員 退避とそれから退避の訓練でございますが、三川鉱から各主要な稼行の区域がございます。この区域に対するいろいろな連絡、指示、これは的確に、ある程度正確に行なわれたようでございますが、その各部内部内で、端末へ対する連絡だとが、退避の指示だとか、マスクの使用の問題等については、かなりな混乱があったように私どもも聞いております。  それから退避の訓練の問題でございますが、これはやはり先ほどから何度も出ましたように、リアルと申しますか、現実に即した訓練というものについては、まだかなり訓練のやり方そのものにくふうをしなければならぬのではあるまいか。経路だけの問題ではなくて、やはり煙がありますと坑道の自分の足元すらも見えなくなるというふうな事情でございますので、たとえ経路がわかっておりましても、正しくどこで曲がるかというふうな坑道のそういうポイントを知るのに非常に苦労したというふうな話でもございますので、これは訓練の方法だけでなくて、やはりそういう場合に、どういうふうにすれば退避が間違いなくできるかということを私どもとしてもかなり検討、研究しなければならぬ余地があるように考えております。  それから密閉の問題でございますが、これは先日、私大牟田でお話し申し上げましたように、災害のございました日のあくる日になるわけでございますが、夜明け前、四時ごろになろうかと思いますが、実際に現場に参りまして、直接消火をしておりました火災の現状を見たわけでございますが、そのときに、直接消火は困難である、直接消火は困難であるならば、現場の保存をするためには密閉をして消火をしたほうがベターであるという判断をしたわけでございます。同時に、それと前後いたしまして、救護隊長それから会社からも同様の申し出がございました。そのときには私は、本密閉については承諾を与えませんで、関係先との相談もございますので、ビニール幕による仮密閉だけをさしたわけでございます。そういたしまして、翌朝の九時に関係者が会合いたしまして、今後の処置をいかにするかという、関係者と申しますか関係官庁と相談をいたしまして、本密閉のほかやむなしという結論に達したわけでございます。その後に会社側に密閉をしてもいいという了解を与えたわけでございます。会社側はたしかその日の夕刻から密閉の本格的な工事にかかったはずでございます。
  77. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そこでお尋ねしたいのでありますけれども、先ほど局長からいただいた上層西二十六卸の問題、ここで阿部さんという人と吉田さんという方がなくなっているわけです。ところが経過はこういうことになっているわけですね。四百五十メートル坑道採炭の人が四十名ばかりと係員六名が退避しておった。ところが係員一名と鉱員一名がまだ残っておる、こういう知らせを受けまして、その救助のために係員四名と鉱員九名の救援隊を編成して、そして通風を、二十六をぐるっと回ってショートサーキットしたわけです、短絡したわけです。そのために煙が薄くなって、その残っておる係員一名と鉱員一名は救助されたのでありますけれども、その門をあけて、とにかく二十六卸のほうに行っておる空気をショートサーキットしたわけだから、その門を今度締めに行ったわけです。締めに行って——これは責任感ということは言えるかもしれませんが、二十六卸の人たちはみんなもうすでに避難したわけでしょう。それをまた今度もとどおり直さなければいかぬ——事故が起こっておるのです。もとどおりやらなければいかぬという形で救助に行ったうちの阿部さんと吉田さんという二名がなくなっておるわけです。二十六卸の者を全部救助してしまったわけですから、そして煙が薄くなったわけですから、わざわざまた戸を締めに行かなければならぬということで、危険をおかして行く必要があったかどうか、この判断は非常にむずかしいと思いますが、私は、結果から見るとこれはミスだったのではないか、指示のミスだったのではないか、こういうふうに申し上げなければならぬと思うのです。むろんこの際に、行った際に係員の人も倒れておるのですが、いまなくなった人が二人ということになっておるのですが、この辺はどういうように見ておりますか。
  78. 西家正起

    西家説明員 ただいま先生のおっしゃいましたような事実を監督局といたしましても認めております。  それで、なぜわざわざ戸を締めに行ったか、行ったことは事実でございますが、なぜ行ったかということにつきまして、若干係員坑外におります係員との指示の間に供述にそごがございまして、目下その点について追及をしておるわけでございます。行ったことは確かに行った事実がございます。したがいまして、私の考えといたしましては、せっかく一時四百五十メートルのほうに——大体全員が助かったわけでございますから、この際急いで締めに行く必要はなかったのではないかというふうに私は考えておる次第であります。
  79. 細谷治嘉

    ○細谷委員 久良知さん、そう思うね。
  80. 久良知章悟

    ○久良知説明員 同感でございます。
  81. 細谷治嘉

    ○細谷委員 もう全部救助してしまったのですから、救助が一番大切だ、救助されてもうだれもいない、ただ戸がショートサーキットされておるだけですから、やる必要も——戸を締めることも、救助ならば別ですが、これはまたたいへんな問題点を蔵しておると私は思うのでありますが、いまやるべきではなかったのではないか、こういうことであります。この辺は徹底的に明らかにしていただきたい、こう私は思います。
  82. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 午後三時から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時五十九分休憩      ————◇—————    午後二時二十八分開議
  83. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  三池炭鉱災害に対する質疑を続行いたします。細谷治嘉君。
  84. 細谷治嘉

    ○細谷委員 引き続いて二、三の点を御質問申し上げます。  自己救命器についてでございますが、自己救命器の問題については、現場にはその方の数からいきますと二倍以上の備蓄があったわけですけれども、現実に聞いてみますと、七名のうち六名がマスクを持っておったということでありますが、それがどのように活用されたか、これも不明でございます。あるいは持っておったにすぎないのじゃないか、こういうことであります。それから自己救命器は持たされたけれども使用の指令がなかったのでそのまま上がってまいりました、こういうようなことがありました。それからさらにちょうど交代時でありましたので、マスクを置いてあるところに行くよりも坑外に上がったほうが近いし安全だと思ったので、マスクは取りに行きませんで、そのまま上がってまいりました、こういうような人たちがおります。したがって、せっかく国の助成等で一応マスクが備えられておったわけであります。自己携帯という問題が大きな問題でありますし、あるいは能力の問題等もありますけれども、一たんは五百六十一人、この数も動いているようでありますが、そのうちどのくらいの人がマスクを携帯して坑外に上がってきたのか、持参した人のどのくらいの人がマスクを使ったのか、これが第一点であります。  それからもう一つは、三十分しかもたぬというので二つくらい持って上がっただろうというのもありますが、二つはやはり一つになりますから……。もう一つは現に使った人のことばでありますけれども、温度が六、七十度くらいになって、とてもとてもつけておられません、三十分というけれども実際は十五分くらいです、こういうような話があります。したがって、マスクのいろいろな点に問題がありますけれども、とりあえずとにかく本人のからだに使った、使わないは別として、持っておったのは何人くらいか、使ったと思われる人はどのくらいなのか、この辺の数字がわかりましたら、ひとつ教えていただきたいと思います。
  85. 久良知章悟

    ○久良知説明員 COマスクの問題についていろいろお尋ねでございますので、順を追ってお答え申し上げたいと思います。  先生の御指摘のとおり、当日入坑しておりましたのは五百六十一名でございます。この中で火災現場よりも風上で就業しておった人、これは三川鉱の斜坑底ですとか、坑底に近いポンプ座とか、そういうところに就業しておられた方が百二十四名ございました。したがいまして、COマスクを必要とした方は四百三十七名でございます。それから一方、坑内に二千個ちょっと出るくらいの数のCOマスクがあったわけでございますが、その中で災害後に持ち出されておったもの、格納個所から取り出されておったものが五百九十四ということでございます。五百九十四個のCOマスクの中で——COマスクは使いますときにせんを抜くことになっております。水分がマスクの中に入りますと、ホップカリットのきき目がなくなりますので、これは密せんがしてございますが、それを抜いて使うという手順になるわけでございまして、せんを抜かれたものが一応使われたのではないかということに考えますと、四百八個のCOマスクがせんを抜いて捨てられた。捨てられたといっても回収されたわけでございます。したがいまして、未使用のまま百八十六個のCOマスクが回収されております。  先ほど申し上げましたこのCOマスクを必要とした人が四百三十七人、実際に使われたマスクは四百八個、そういう数になるわけでございますが、COマスクを必要とした四百三十七名の中で、はたして何人の人がCOマスクを持ち出し使用したかという問題が残るわけでございます。これはただいまこの五百六十一名につきまし七個人ごとに退避の関係、COマスクの関係を調べておりますが、まだ全数は終わっておりません。したがいまして、一部推定になるわけでございまして、本層三十六とか上層二十六とか上層三十六という各部内が三川鉱にあるわけでございます。その部内の係員で、実際に退避のときにその個所に働いておった鉱山労働者を引率して出た人を集めまして私のほうで調べました結果、もちろんこれは推定が入るわけでございますが、本層三十六につきましては大体全体の八割の人がマスクを持って出た、その中の五割の人がマスクを使った、そういうふうな推定をいまの段階では入れまして、全体の使用した人の数を推定いたしました結果では、三百六十人前後の人がCOマスクを格納場所から持ち出しております。その中の約二百人の人が実際にCOマスクを使っておる。これは一部推定が入りますが、大体その程度の見当でございます。なお実際の数につきましては、現在各個人個人に当たりまして調べていきたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
  86. 細谷治嘉

    ○細谷委員 正確な数字でありませんが、五百六十一名のうち大体二百名程度がマスクを使用したと考えられる。そういたしますと、大体三分の一程度。さらにマスクが倉庫から取り出されたと考えられるものが五百九十四個、約六百個、でありますから、三百六十人程度が持ち出したといたしますと、一人で二個持っていった人もかなり外いわけですね。幸か不幸か今度六百人になんなんとする人がCOマスクの問題について取り組んだわけです。これは貴重な実績だろうと私は思うのです。後ほどこの委員会におきましてCOマスクの開発の問題なり、あるいはこれの助成の問題等について御検討いただくことになっておるわけでありまして、今後の非常に重要な政策の一端にもなるわけでありますから、たいへんめんどうでありましょうけれども、一人一人について、あなたは使ったのか、何個持ち出したのか、その効果はどうだったのか、こういうような点について聞いて、五百六十一名とマスクとの関係を明らかにして、でき上がりましたらひとつ委員会等にその資料を貴重なものとして御提出をいただきたいと考えるのでありますが、いかがでございましょうか。
  87. 西家正起

    西家説明員 先生のおっしゃいましたように、ただいまもその点について調査中でございますが、なお各人につきまして一人一人のマスクの状態その他につきまして資料をつくりまして、提出いたしたいと思います。
  88. 細谷治嘉

    ○細谷委員 それをひとつお願いをいたします。  さらに現地の局長が見えておりますから……。先ほど私が申し上げたように、救助訓練の不足等もあり、命令等の不統一から退避したまま何らの命令なしに十一時過ぎまで坑内におったという人たちがおります。それもなおその時点においても指令がないものですから、みずからの意思で宮浦鉱に上がってきた、こういう人も私は直接お聞きしております。救護隊の出動が五時四十五分から七時過ぎになっておりますから、この辺にかなり手おくれがあったのではないかという意見もございます。これについてどうお考えになるのか。  それから監督局のほうは七時過ぎには連絡を受けたわけですけれども、十時ごろ立って、十二時ごろ現地に届いたわけですね。現地に十二時ごろ届きまして、実際の入坑というのは三時半過ぎです。四時くらいになりますと、ほとんど救護は済んだわけですから、これもおそきに失したのではないか。連絡を受けてから到着をするまでの時間もすいぶんかかったし、それから到着してから坑内に入るまでの時間もかかり過ぎたのではないか。現地で局長にお尋ねしましたところが、局員もやはり重要な生命でありますから、安全が確認されなければ坑内におろすわけにいきませんと言われる。それはそのとおりでございますけれども、それにいたしましてもおそきに失したのではないか、こういう点がございます。この二点についてひとつお聞きしたい。
  89. 久良知章悟

    ○久良知説明員 救護隊の問題でございますが、これはやはり発動の時期は決して早いとは言えない。やはりおそかったのではあるまいか。将来こういう場合にはもう少し早く救護隊の発動をしてもらいたい、私も同感でございます。  それから、二番目の監督官の到着がおそかったという問題でございますが、先ほど先生のおっしゃいましたように、当日宮浦の四山に監督官が巡回に参っておりましたので、災害報告がありましてすぐに三川のほうに回るように申しつけまして、その監督官は十時過ぎに着いたはずでございます。それから、福岡から巡遣しました監督官は、十二時前後に着いておるわけでございます。  それから、入坑の問題でございますが、これは大牟田で申し上げましたとおりでございまして、坑内火災の場合には、これはたしか昭和三十六年でございますか、大辻炭鉱で非常に苦い経験があるわけでございまして、火災を起こしますと、場合によりましては坑内通気系統というものが変わることがあるわけでございます。昭和三十六年の大辻炭鉱ではコンプレッサー座が火災を起こしまして、火災の途中で通気の逆転が起こりましたために、所長以下、たしか二十九名の方がなくなっております。それから今度の三池の災害の場合でも、十時過ぎに災害現場の近くにありました補助扇風機をとめまして、そのうしろ通気ドアを開いたわけでございます。そのために火災現場から奥にありました一酸化炭素を含むガスが宮浦鉱の扇風機に吸われまして、一部宮浦のほうに流れた。そのガスが回り回って先ほどの一小部分でございますけれども、多数の人が三時間ほど待っておりました上層三十六昇のほうに若干入ってきたというふうな事実もございまして、やはり火災を起こしておる坑内に入るということは、非常に予期せぬ危険というものを覚悟しなければいかぬというふうに私ども考えております。
  90. 細谷治嘉

    ○細谷委員 だから、安全を期して入ったのだから、おそきに失しておらぬ、こういうことですか。
  91. 久良知章悟

    ○久良知説明員 時間からいえばおそかったかもしれませんが、やはり監督官を入れる時期については慎重を期したということでございます。
  92. 細谷治嘉

    ○細谷委員 それは慎重を期したのはいいけれども、現地の理由は、いや警察が来たからそれと会わなければいけなかったとか、あるいはある国会議員が会いたいというから会っておっておそくなった、こういうことで、客観的じゃなかったわけなんだね。何はさておいても、入るということがやはりあの場合においては監督局長としての結論でなければならぬ。ところが現地で聞いた理由は、いや、よそのほうからじゃま者が入ったからおくれたんですという理屈になっておりましたから、これは筋が通らぬのであって、鉱山保安監督員の生命も守らなければいかぬから、やはり局長としては安全というものが一応確認されなければ入れるわけにいかぬのだ、これだけの話でいいのであって、あとはその判断になるわけですけれども、変な理由がつきましたものですから、私は理解できなかったから申し上げたわけです。  そこで労働省にお尋ねしたいのでありますが、冒頭に私が御質問しましたように、一番最初私がお聞きしたのは、三十二名か三名かの入院者があるということ、その前には、事故の当日は入院者等もあまり確認できませんでしたが、それから一日現在では三十九名、それから四十八名という経過も経たし、きょうは五十三名、その後に通院者というものもかなりふえた。この通院の見解についても先ほどいろいろとお話があったわけですけれども、お尋ねしたい点は、私ども調査に参りました際に、ある病院ではたいしたことはないですよ、うちに帰って休んでいてください、こういうことを言い渡された。ところが時がたつに従いまして、どうも頭が割れるように痛い、吐きけがする、こういうことで他の病院に参りましたところが、かなりの重傷じゃないか、直ちに入院しなさい、こういうことで入院をいたした人もおります。そういう中には、単に寝ておればいいと言われておった人も、労働省からさっそく動員されました高圧ロックの中に入った人もあるわけです。現に私ども石対特別委員がそれぞれの病院を見回ったのでありますけれども、何ら異常がない、寝ておればいいと言われた人に酸素吸入をやっておるところもありますし、中には医者から与えられた薬の飲み方がわからない。行ってみますと、赤い薬と黄色い薬があるわけです。お医者さんはこれを幾粒ずつ飲みなさい、こういうふうに指示しておるわけでありますけれども、患者は全然わからない。隣の人、これは炭鉱でなくて、相部屋でありますから、その人が、あなた、医者の言ったことと違う飲み方をしているんじゃないかと言ったら、ああそうですかという形でやっておる。その人に聞いてみますと、自分はたいしたことはありません、吐きけがするので注射をしてもらっております。頭が痛いのでどうにもなりません。それじゃあなたは何か忘れっぽくなったんですか、何か自覚症状がありますかと言うと、いいえ、私は何もありません、ところが薬の飲み方も混乱しておる、こういうふうな実態なのであります。こういう実態を見るにつけ、それから時がたつに従って、いわゆる入院患者がふえていっておる事情、それから通院者——まあ村上局長のことばでは通院にもいろいろ定義があるようでありますけれども、いずれにしてもこの問題で治療を受けておることは間違いないわけですね。その人が入院者のほかにもうすでに三百八十名もある。こういう事態から見ますと、私は一酸化炭素中毒というのは、時がたつに従って症状が出てくる、中枢神経がおかされてくる、こういう心配もすると同時に、どうして医者である者に違った診断が行なわれるだろうかということについて、非常にふしぎな感じがしてならないのであります。医学というものは自然科学であります。自然科学である以上は、客観的な、科学的な根拠に基づいて、客観的に結論が出てくるはずでありますけれども、どうもそうではない。どうも一酸化炭素に関する限りは主観的な診断が医学の名において行なわれているんじゃないか、こういう感じがいたしてならないのであります。この点について労働省はどう受け取っていらっしゃるのか、お尋ねしておきたい。
  93. 大野雄二郎

    ○大野説明員 一酸化炭素中毒症にかかっているかどうかということを客観的に最も正確に判断する基準は、ヘモグロビンの検査でございます。これは、法が施行になっていなかった関係もございまして、その体制がとれなかったということが一つでございます。もう一つ、実は私も現地にたまたまおりまして、この点非常に心配でございましたので手配をいたしたのでございますが、その点について十分対策がとれなかった。それは、いままでいろいろお話がありましたように、五時四十五分から五時五十五分に火災が生じている。これは前の日からずっと働いている。非常に長い時間がかかる。皆さん、おそい人は十一時くらいに出坑いたしておりますので、その人たちをとめてやるということは、たとえその備えがあるにしてもむずかしかったのじゃなかろうか。それからもう一つ、ヘモグロビンの検査は、一酸化炭素を吸いましてから二時間くらい以内にやらないと結果が出てこないのです。それからまた、たばこを吸いましても、検査の精度が非常に正確度を失ってきて明確にならない。私ども、いろいろ一酸化炭素中毒の診断基準をきめておりますが、第一がヘモグロビンの問題、これにつきましては、私どもの聞くところ、四十八人しか血液がとれなかった。血液をとって、それが凝固しないような薬を入れて、空気とさわらないようにパラフィンで隔離するわけであります。そういった対策が十分講じられていなかったためにとれなかった。そのあとになりますと、御承知のように神経症状とかあるいは精神症状というものがこの中毒の特質でございますので、そういった問診ということも当然行なわれるわけでございます。いろいろ簡単に聞いてみる。それでたとえば精神障害があるかどうかというようなことは、口で聞いてみるために、非常に医学は主観的だ、こういうふうに見られる面もあるかとも存じますが、これは診断の基準の一つでございます。ただ、こういったものだけで完全ではございません。御指摘のようにあとになってそういう症状が出る。労働者の方々にしてみれば、前の晩から働いていて、出坑してみると十一時くらいだ、まず家族に元気な顔を見せたいというので、疲れているのでうちへ帰って寝る。そうすると症状が出てくる。こういうことで、あとになってからそういう症状を訴えられた方もあろうかと思います。そこで、いろいろの問題はありますが、結局この際こういったヘモグロビン検査は、もういまの段階においてはできませんが、その他いろいろの、たとえば尿とか血液——これは赤血球の沈降速度とか、白血球の数とか、尿、視野の所見、心電図、その他精密検査を、この十一日、十二日の両日、一酸化炭素を吸ったのではないかと想定される人に、できるだけ広範にやってもらうことに相なっている次第でございます。
  94. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私がお聞きしておるのは、一酸化炭素ヘモグロビンの検査は、血液が十分とれなかった。まあ、ある程度とったようであります。血液もとらなければいかぬでしょう。中には、小さなことではありますけれども坑内から上がってきて、たばこを吸った人もおったそうです。たばこを吸えば、平常よりも一酸化炭素ヘモグロビンのふえることは間違いない。しかし、これは致死量ではないのです。あるいは脳神経をやられるような量にはならない。数字は忘れましたけれども、平常だって、一酸化炭素ヘモグロビンは人体の血液の中にあるわけです。それが、相当たばこを吸えば上がる。しかし、それは危険は何もないわけです。時間を経ると減ってくるわけです。しかし、一たび脳神経がおかされてその細胞が死滅したものは、もう蘇生しないわけですね。ですから、一酸化炭素ヘモグロビンは一番直接的な診断の結果でしょう。さらに脳波をとっているのですよ。ところが、私どもが現地で、入院患者概況という形でそこの病院長からお聞きしたところによりますと、全身状態に所見がある、自覚症状が強い、自覚症状が軽い、こういうふうに症状度を三つに分けて、これはこの前の第一症度、第二症度、第三症度の尺度とは違うそうでありますが、症度を一、二、三に分けて、所見の中で、その全身状態に所見があるというのは、たった二人しかおらない。そうして脳波を調べた結果、ボーダーラインにあるというのはたった一人しかいない。そのボーダーラインというのはどういう意味ですかと私が聞いたら、脳波の所見が正常ともいえないし、異常ともいえない、いわゆるボーダーラインでございます。こうきているわけです。ところが、いま言ったその症状度という点では、全身状態に所見があるというのはたった二人、脳波の状態がボーダーラインにあるのは一人です。今度の特別立法の中でも、一酸化炭素ヘモグロビンの検査なり、あるいは脳波の検査というものはきめられているのですね。非常に重要な一つの診断のあれでしょう。にもかかわらず、入院患者が日を追うてふえていっている。しかも、当時すでに三十九名の入院患者があったわけですね。私はある医者に聞きましたところが、権威あるお医者さんの脳波の診断で正常だと言われますけれども、あの脳波の状態ではこれは正常だと診断するのは医者としてどうかと思いますと、こういうふうに言っておった医者もおりました。私がしろうとながら——私ばかりではありません、行った委員の方々が市役所で聞いた、これに基づく診断の結果、うちに帰って寝ておれば、しばらくしたらなおるでしょうと言われた人が、病院に行ってみますと、どっこい、薬の飲み方もわからない。こういう状態から見て、どうもうそだったのではないか、あの報告は信用できないのではないかと——私はその日はその病院に行きません、ほかの病院に行きましたが、ほかの委員の方からそう指摘された。いま私が申し上げました、しろうとながらの幾つかの検査からいきますと、どうもお医者さんというのは病状を重く見るというのが、しろうとから見た常識であります。金もうけになるかならぬかではありませんよ。とにかく病状というものを重く見るというのが医者の常識でありますけれども、そのお医者さんが一酸化炭素中毒に限っては軽く見過ぎるのじゃないかという感が強くしてならないのであります。この点であなた方ふしぎに思いませんか。行っておったからおわかりだろうと思うのだ。
  95. 大野雄二郎

    ○大野説明員 私おりましたのは当日でございますので、それからあとの問題については私自身この目で見たわけではないので、何とも申し上げかねると思います。その日におきましては、診療所のほうで見まして、明らかにこれは重いという方から入院させておったと聞いておりますし、またこれは当然な説明として私は受け取ったわけであります。その重いほうの患者に——これは組合のほうの病院に入っておられる方も同様でございますが、タンクに入っている人を除きまして全部一人一人私は聞いて回りました。そのときに神経症状を起こしておる——私医者じゃございませんけれども、いろいろのことを聞きまして、返事は普通にしておられる人がほとんどでありました。ただ頭痛を訴えるとか、あるいは吐きけがするということを訴える人はもちろんおりました。医者によっていろいろな診断があろうということは、これは医者も人間である以上、私は当然だと思うのであります。したがいまして、この方面の権威、その地方におきます権威の九州大学の黒岩教授に現地に行っていただきまして、入院患者の診察を行なってもらっているわけでございます。
  96. 細谷治嘉

    ○細谷委員 これ以上私は申し上げませんけれども、学界の権威必ずしも臨床の権威でないということ、学者必ずしもりっぱな先生でない、こういうようなことばもありますけれども、医学の大家必ずしも臨床の大家じゃない、こういうことなんです。私はその感が非常に強くいたすのであります。実例は私が見たとおり、私自身も前の日においでた委員の方が——私は別の班でほかの病院を見たのです。ある病院のあるところに行きますと、ここで聞いてたいしたことないと言っておったけれども、ということでありましたが、私はその翌日わざわざ行って、あなたはどうですか、異常ありませんか、吐きけはしますか、吐きけはします、だから注射で押えております。頭はどうですか、とにかく盆でかぶされたように頭が痛いです、ぐあいが悪いです、じゃ、あなたは自覚症状としては記憶力等はありますか、いや、それは異常ありません、こう言いましたところが、しばらくしまして全く関係のない横のベッドの人が、いやこの人はそう言うけれども、おかしいですよということを私に言われたので、事情をよく聞いてみましたらそういうことです。前の日に委員の皆さんからお聞きした話が事実だということを私は確認をしてきたわけです。その人にあなたはどうですかと言ったら、いや、うちへ帰って寝ていればいい、こういう診断を受けました、こういうことであります。この辺に、私は権威にだけたよっておってはならないのじゃないか。やはり脳波の動き等も十分に医者の良心で見ていただけば、とにかく帰っていい、何らあなたは一酸化炭素症状を起こしていません、こういう極端な結論と記憶力なりあるいは判断力というものが、もう常人でないというところまでなった人とそんな大きな診断の差は起こってまいらない、こういうふうに私は考えております。そういう事実があったということをひとつ労働省の両局長さん、十分念頭に置いて、この治療対策に万遺憾のないようにひとつお願いをいたしたいと思うのであります。  これに関連いたしまして、せっかく迅速な手配をしていただいて高圧ロックを送っていただいたわけです。三十九名入院しておりますが、全員そのお世話になったわけではないのです。何人かお世話になっていない人がおります。その高圧ロックに入った結果はどうかというとたいへんいいですよ、いいですけれども、翌日になりますと大体ふだんと変わらなくなります、こういうことばでございました。これは私はしろうとながら、せっかくの高圧ロックという——常態ではできないものが、高圧酸素下においては新陳代謝ができるということになるわけでしょうから、少なくとも全国にある労災病院あるいは労災関係の病院等については、しかも炭鉱のあるようなところは、立法もできたおりからでありますから、やはり二日、三日、四日と効果的なんでありますから、それがほんとうに治療に役立つような形で、この高圧ロックを備えつけていただくことがいいことではないかと私は思うのであります。ところが労災病院に備えつけはありますけれども、全労災病院ないし労災療養所にあるわけではございません。あるいはまた炭鉱の大きな病院にあるわけじゃございません。そういうことでございますから、ひとつ積極的に労働省関係の労災病院等については、この高圧ロックをこの機会に少なくとも一つなり二つは、いろいろタイプがあるようでありますから、備えつけるようにしたらいかがか。そうしてまた今度の場合も最初の日、二十九日に来ましたけれども、さらにこの高圧タンク治療を続けられるようにしてやったらいかがかと思うのでありますが、この点いかがですか。
  97. 大野雄二郎

    ○大野説明員 私専門家じゃないので、聞いたところでございますが、高圧ロックの効果は初期においてあるのだそうでありまして、時間がたつと高圧ロックは役立たないというように聞いております。
  98. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 大牟田のようなところに置いたらどうかというのです。
  99. 大野雄二郎

    ○大野説明員 その問題につきましては、おっしゃるとおりです。私は労災病院といわず、炭鉱病院に全部置いておいたらいいのじゃないかと思います。
  100. 細谷治嘉

    ○細谷委員 労災病院にないから置いたらどうかというのです。これは固まっちゃったらだめですから、初期に必要です。初期に必要ですけれども炭鉱から上がったその直後の期間に、十分か十五分ばかりやるのではなしに、初期に、たとえばもっと間欠的に時間を長くしてやったら、これは効果があるんじゃないか。そういう観点から言って、労災病院に全部あるかというと必ずしもそうではないようですから、ひとつこれの整備というか、増強ということをはかっていただくべきじゃないか、こういうことなんです。
  101. 村上茂利

    ○村上説明員 午前にもお答えしましたとおり、必要のある労災病院、すなわち産炭地中心に設けることにいたして整備をいたしてきているわけなんです。労災病院の数はたしか三十幾つありますか、全労災病院に備えつけるという必要性につきましては、これはいろいろ議論のあるところでございまして、まあ第一義的には産炭地のそういった患者の多いところ、必要のあるところに置く、こういうことで設けたわけであります。そしていま大野局長から御答弁しましたように、災害直後これを使用するということがこういう施設のいわば効用、効果を決定するわけでございますから、先ほども申しましたように、備えつけのたいへん完備したものもありますれば、持ち運びの軽便なものもある、こういうことでございまして、今回はその移動性のものを使用したわけでございます。  したがいまして、労災病院に置く、こういうことは必要性に応じて、かつ機動性を考えての措置であるわけでございますから、今後必要に応じて私どもは整備をいたしますが、いまのところ、お役に立ち得るような形で第一段階的な整備が終わっておる、こういうふうに申し上げて差しつかえないと思います。
  102. 細谷治嘉

    ○細谷委員 それは機動的なことも必要でありますが、もっと整備する必要があるのじゃないかということです。それからさらに、たとえばその高圧ロックというのは何も一酸化炭素患者に限ったことじゃないわけですから、これは公立病院なりあるいは大きな会社病院なりあるいは今度の病人を扱っておるところも強く要望しておった点は、酸素吸入等いろいろな金もかかりましたこういう事故にかんがみて、やはり自分でも進んでそういう施設を備えつけたい、こういうことでありまして、そういう医療機器の整備のために、今度のこういう事故にかんがみて——これは政府の病院でありませんから金をくれなんということはやりませんけれども、補助なり融資の道をひとつ開いてほしいという要望が強いのでありますが、これはいかがですか。
  103. 村上茂利

    ○村上説明員 一般医療問題になりますと、私のほうが答弁することはいかがかと思いますが、先ほど申しましたように、CO中毒関係で必要があると予想されるところには整備をはかっておるわけであります。あとCO以外にもきくじゃないかとか、ほかにいろいろききます。ききますけれども、労働省としてそういった一般疾病にまできくからというので、全部整備するかいなかということになりますと、おのずから制約があるわけであります。しかし高圧酸素室というものは、数から申しますと労災病院が一番整備していると思いますが、医療効果というものを私ども認めておるわけでありますから、今後整備する方針で進んでいきたい。  ただ私立病院等において整備したいがどうか、その融資はどうするかということになりますと、私のほうではなくてむしろ厚生省の医療金融ということになろうかと存じますので、答弁は差し控えさしていただきたいと思います。
  104. 細谷治嘉

    ○細谷委員 たとえば炭鉱の持っている専属の病院がありましょう。労災病院も必要でありましょうが、炭鉱病院等にもやはり高圧酸素室が必要じゃないか、こういう場合に補助なり融資なり、あるいは今度の事故で病人を扱っておるようなところでは、やはりポータブル脳波測定機とか、あるいはこういう高圧タンク——高圧タンクまでいかぬにしても、ポータブルの脳波測定機くらいはぜひ必要だということを痛感しておるのです。ですから、これは一般医療の問題でありますけれども、同時に、やはり炭鉱地帯であるだけに、そういう問題が今度の火災を通じて直接起こってきているのでありますから、労働省もおれは知らぬという筋合いのものでもないのじゃないか、多少のかかり合いはあるだろう、何らかの体制を整えるために御協力いただくべき筋合いのものじゃないかと私は思うのですが、簡単にお答え願いたい。
  105. 村上茂利

    ○村上説明員 労災病院に整備いたしておりますのは、これは労災保険特別会計から直接金を出し、出資金ということで出資しているわけであります。ですから労災施設につきましては、融資の問題は考慮する必要はないのでありまして、そうしますと炭鉱会社病院とか、そういったことになろうかと思いますが、それには会社側のいろいろの考え方もあろうかと思います。そういった具体的な話が出ますれば、私どももまた相談に乗りまして、できるだけの御協力はいたしたいと思っております。
  106. 細谷治嘉

    ○細谷委員 村上局長の心境というのは、炭鉱の事故を起こすごとに労働基準局——今度ば別の局長ができましたけれども、おれがみなしりぬぐいをしてきた、その間に通産省は五人も鉱山保安局長がかわったじゃないか、しりぬぐいは全部おれがしてきたというあれがあるでしょうし、ほんとうは通産省はけしからぬと思っておる。一人前の保安局長になりかけたと思うとどこかにかわっていってしまうのですから。もっとも爆発を起こすごとに首が飛んだという例がありますけれども、まあそういう問題もありますけれども、それだけにやはり五年間この問題に取り組んでまいりました労働省の責任——責任とは申しませんが、役割りは非常に重要だと私は思うのであります。それだけに、私は、ひとつ今度の災害を契機にいたしまして、前回の大事故、もつれにもつれていまだに解決しない幾多の問題もある。これはいずれまた、私はこの委員会等で質問をいたしたいと思いますが、ひとつ今回はそつのないように対処していただきたいということを切にお願いをしておきたいと思うのであります。  最後に、生産再開の問題についても、これはやはり十分慎重に対処してまいらなければならぬと思うのでありますが、いまのところ、新聞等によりますと、組合側のほうはやはりそれぞれの立場で、安全が確保されない限りは生産できないということで、いま整備をし、その上で確認されたならば生産再開という段取りだ、こういうふうに私は承っております。組合側も今度は非常に強い意見で臨んでおるようでありますが、どういう見通しなのか、これをお聞きいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  107. 西家正起

    西家説明員 生産の再開につきましては、ただいま先生のおっしゃいましたように、最終的には、絶対に安全であるということを監督局が確認をした後でなければ再開させないということには違いないのでありますが、その前におきましても、鉱山側におきまして労使相携えて十分に安全だということを確認し、かつ十分な整備計画をつくりまして整備をやった後に、監督局のほうがさらにもう一回念のために検査をいたしまして、安全だということを確認いたしてから再開をさせたい、かように存じておるわけでございます。
  108. 細谷治嘉

    ○細谷委員 一言だけ。そのころ現地の責任者である鉱山監督局長として、部下ばかりではなく、私はやはり現地に臨んで、今度こそもう名実ともに、二度とこの種の事故が起こらないようにという決意と体制が必要だろうと思うのでありますが、その確認は局長みずからやっていただいたほうがいいのじゃないか、こう私は思うのですが、その辺のところはどうですか。
  109. 西家正起

    西家説明員 実は今月の十二、十三日に監督局部長会議を開くことになっておりますけれども、この問題に関しまして、もしその当日、そのころに現地の監督局長が必要であります場合には、その監督局部長会議に参加をせずに、現地へ直接行くように指令をいたしておるわけでございます。したがいまして、監督局長は現地に行きましてみずから指揮に当たることになっております。
  110. 細谷治嘉

    ○細谷委員 終わります。
  111. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 田畑金光君。
  112. 田畑金光

    ○田畑委員 ちょっと先ほどの質問に関連してお尋ねしておきたいのですが、しごく簡単なことですけれども、このCO特別措置法ですね、これは施行の政令、省令についてはいまどうなっておるのですか。いつ施行するということになっておるのか明らかにしてもらいたいと思うのです。
  113. 村上茂利

    ○村上説明員 CO特別措置法が制定されまして、これは法律が公布されましてから九十日以内に施行するように定められておりますので、今月の二十五日がその期限ということに相なっております。できるだけ早く施行したいという観点に立ちまして施行規則案等を練ってきたのでありますが、医学的、専門的な立場からいろいろ検討する必要がありまして、施行規則案の作成に若干の日数を要したわけでありますが、関係政令、省令としては三つございます。第一は、施行日を定める政令でございます。それから第二は、CO特別措置法の施行規則であります。それから第三といたしましては、障害補償の問題に関連しまして、特に精神神経障害についての障害等級をさらに細分化するという観点から、労働基準法及び労災保険法の施行規則の一部を改正したいと存じまして、それが第三の問題になっております。政令一つ、省令二つ、このそれぞれの案を関係審議会に諮問いたしております。すなわち、労災保険審議会に対しましては十月二日、労働基準審議会に対しましては十月五日に諮問をいたしまして、労災審議会は二度すでに審議会を開いております。労働基準審議会はあさって第二回目を開くということに相なっておるわけであります。いろいろ御意見がありますが、逐条的にやっておりまして、まだ審議を尽くしていない個所が相当ございますけれども、私どもできるだけ審議を促進していただきまして、早い機会に施行させていただきたい、かように考えております。
  114. 田畑金光

    ○田畑委員 そうしますと、政令によって施行期日は三月以内できめなくちゃならぬというのは、もう間もなく政令施行にこぎつけるわけですね。あと二つの省令について、特に労災補償の等級の査定の問題ですね、これについてはいつごろ話をまとめるという予定なんですか。
  115. 村上茂利

    ○村上説明員 施行省令は、要するに施行規則の実体が固まりませんと、政令で施行日を指定いたしましても実際は働かぬわけでありまして、その施行規則の審議状況と見合いまして、その施行令の日にちも確定するわけでありますが、一応十五日と予定はいたしております。  ところで、CO特別措置法の施行規則案の内容ですが、幾つかございまして、炭鉱災害の範囲だとか健康診断の内容と実施回数、使用者の供与すべき福利厚生施設の範囲及び供与すべき期間、介護料の額、アフターケアの内容、アフターケアを必要とする者に対する健康管理手帳の交付といったような事項が内容になっておるわけであります。それから、障害等級の是正につきましては新たに九級を設けるという規則の改正をいたしたい。  それから、いま先生のお話は認定の問題かと思いますが、それは施行規則の作成の問題とは別でございまして、行政措置でございますから、当面これはかかわりはないわけであります。
  116. 田畑金光

    ○田畑委員 そうしますと、これは三カ月以内に施行する、こうなっていますね。これは三カ月以内で政令、省令施行ができるという作業に間違いないわけですか。
  117. 村上茂利

    ○村上説明員 九十日以内に施行しませんと、これは法律違反になりますので、これは施行しなければならぬわけであります。きょうもいろいろ御審議がございましたように、また災害でも起こりますと健康診断がどうとかそういう問題が生ずるわけでありますから、私どもはできるだけ早く施行させていただきたい、そういう点につきまして労使、公益の御協力を賜わりたい、かように考えておる次第でございます。
  118. 田畑金光

    ○田畑委員 いろいろむずかしい問題があるのでおくれていたのかもしれませんが、三カ月以内で施行する、こういうようになっておるのが、今日までずるずるになってまだ実際動いていない。今度のこの災害であなた方も相当刺激されてこの作業を急いでいる、こう思っておりますが、やはり今回のこの事故に際して現地においてもCO患者の問題などが出てまいりますと、この法律の問題はすぐ浮かび上がってくるわけです。ことに健康診断なんか見ておりますと、これは法律の解釈などについて、すでにいろんな解釈が出ておるわけです。健康診断についても、これは使用者の義務規定としてこうしなければならない、こういう形になっておりますね。ところが、この法律のたてまえからいうと、一酸化炭素の発生したところ、あるいはそういう地域にあとから入った者については、使用者はかくかくしなければならない、こうなっておるのだが、現実にこの法律がまだ動いていないということが一つ。それからまたもう一つはいついつまでに診断を受けねばならぬというその権威が示されていないということなどで、けさほど指摘されたように、健康診断などについても特に請負夫についてこれが延び延びになっていたということが現にあるわけです。これはその後、先ほどの話によれば全部受けたことになっておる、こういうわけでありますが、そういうような法の解釈、運用についても現に問題があるということは、やはり三カ月以内に施行するということになっておるわけですから、いろんなむずかしい問題もあろうが、それをまとめて早く調整をとられてすみやかにこの法律を施行する、この法律に基づいて現地においては指導する、こういうことが必要ではないかということを感じたわけですが、この点どうでしょうか。
  119. 村上茂利

    ○村上説明員 先ほど申し上げましたように、審議会ではできるだけ早くお願いしておるわけでありますが、現在では、労働側委員からいろいろな意見が出ておりますが、使用者側意見あるいは公益側意見というものはまだ開陳されておりません。調整といったような形にはなっていないわけであります。しかし、それはそれといたしまして、できるだけ審議会の審議を促進して早く施行したい、かように考えておるわけであります。
  120. 田畑金光

    ○田畑委員 私がいま聞いた中で、この法律の第四条の趣旨をすなおに見れば、当然健康診断などについてはすみやかにやらねばならぬ、これは会社側としても当然の義務規定だと思うのですが、この点どうでしょうか。また、実際動きだした場合に、この法律の指導についてはどのように当たるのか、その辺。
  121. 村上茂利

    ○村上説明員 法律のほうでは、遅滞なく健康診断を行なわなければならない、こう書いておりますが、できるだけすみやかに、こういう趣旨であることは先生の御指摘のとおりであります。その健康診断の具体的内容については施行規則で定めるわけでありますが、先ほど安全衛生局長からお答え申し上げましたように、今回のケースにつきましても、予定されておる施行規則の健康診断事項を前提として健康診断をやっていただいた。そのように指導いたした。ただ、ヘモグロビンの検査については、遺憾ながら上がってきた労働者一人一人をつかまえて五時間以内に検査を行なうということは、諸種の事情から見て、なかなかできがたいことであるという見解を示されたわけでありますけれども、私どもといたしましては、健康診断その他適切に措置いたしませんと、あとあとまでにいろいろ問題を生ずることでありますから、法律が施行され、施行規則が制定されるという段階におきましては、厳正にこれらの措置実施させたい、かように存じておる次第でございます。
  122. 田畑金光

    ○田畑委員 それから、さっきの質問の中にありまして、あなたのお答えでおおよそはわかったのですが、産炭地の主要な地域における労災病院については、高圧酸素室などの設置について、あなたとしては必ずやるということを明言されたわけですが、そうするとこれは将来産炭地ということになれば、どの地域にまだ設置されてない、どの地域に今後設置するのか、そのあたり答えておいてもらいたいと思います。
  123. 村上茂利

    ○村上説明員 ちょっといま資料がございませんが、九州にはございます。それから美唄労災病院にも置いてございます。あと釧路と常磐地区がどうなっていますか、これは資料がありませんので確答いたしかねておりますけれども、幾つか昨年中にこういう施設を装備いたしましたので、九州、北海道のいわゆる石狩炭田、これ以外にもあるはずでございますから、あとで調べましてまた御報告申し上げたいと存じます。
  124. 田畑金光

    ○田畑委員 大牟田のあれは労災病院の分院になるのかしれませんけれども、あそこはあるわけですね。
  125. 村上茂利

    ○村上説明員 あそこにはございません。あれはいわば診療所という規模も小さなものでございますので、あそこには設置いたしておりません。機械だけあったのではこれは動きませんので、そういった専門の職員その他が必要になってまいりますので、いまのところは設置する予定にはいたしておりません。
  126. 田畑金光

    ○田畑委員 先ほどの質疑応答を聞いていたら、大牟田のその分院か診療所か知りませんが、私は労災病院にも設けるのだというように聞いたのですが、いまの局長の答弁はそうでないのですか。
  127. 村上茂利

    ○村上説明員 今回の災害の経験から見ましても、要するに機動力がございましたならば、かなり早く現地に到着し得ると私ども考えております。したがいまして、そういった面を考慮すればよいのであって、すべての炭鉱にそれぞれ設けるというふうには私ども考えておりません。今後一そう機動力の強化その他によりまして応急の措置をとり得るように考えてまいりたい、かように思っております。
  128. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの点は、ひとつ資料を出してください。特にあなたの先ほどの答弁は、産炭地の主要な地域の労災病院については必ず設置する、こういう答弁のようでありましたので、今後その答弁に基づいて処理を願うと同時に、いままでどうなっているかということもひとつ資料として出していただきたいと思っております。
  129. 村上茂利

    ○村上説明員 ただいま申し上げましたように、整備をはかってまいりました分については資料として出したいと思います。ただ、考えておりますのは、いわば大きな把握のしかたの産炭地ということでございまして、たとえば北海道などですと石狩地区とかあるいは留萌地区とか釧路地区とかいろいろございますが、そういった小地域を対象にしてそういうものを設置するかどうかということになれば、これはいろいろ問題がございますし、労災病院のないようなところもございますので、いわゆる広い意味における産炭地という前提で考えさせていただきたい、かように存じます。
  130. 田畑金光

    ○田畑委員 これは非常にこまかい問題にわたるかもしれませんが、鉱山保安局長に二、三お尋ねしておきたいのですが、大牟田監督署がない。直方、田川、飯塚、佐賀、佐世保にはそれぞれ監督署があるのに大牟田監督署がないというのは、これはどういう沿革的な事情によるものか、それを聞かしてもらいたい。
  131. 西家正起

    西家説明員 従来大牟田市に保安監督署がなかった理由と申しましては必ずしも正確な理由じゃないかとも思うのでございますが、福岡から大牟田に参ります時間が比較的短かったというようなこともございまして、従来はなかったのではないかと私は考えておりますが、これは監督署といたしましては、できるだけ多いほうがよいというふうに考えておる次第でございます。
  132. 田畑金光

    ○田畑委員 ただ距離が短かったから置かなかったということですか。あるいは災害発生率などから見て少なかったので置かなかったのか。これは同じ近くの直方でも田川でも飯塚でもそれぞれ監督署があるのに、ここだけがないというのは、われわれの常識から見ても、いまの出炭生産状況から見てもおかしい、こう思うのですが、この点はどうなんですか。
  133. 西家正起

    西家説明員 大牟田と申しますと大きな三池炭鉱が一つあったようなことでございまして、その周辺を広く考えますと、大牟田市に監督署がありましても、もちろんあったほうがベターというふうに考えられるのでございますが、理由といたしましてはむしろ炭鉱の数が小範囲に考えた場合に一つしかないということと、福岡からの距離が比較的時間的に近かったということで従来なかったのではないかというふうに考える次第でございます。
  134. 田畑金光

    ○田畑委員 監督署などを設置する目的というのか趣旨というのは、災害発生状況によって必要とするのかしないかという基準で考えるべきじゃないかと思うのですが、最近の災害発生状況から見れば、けさほども議論されたように、大牟田監督署がないということなどは、これは考え直すべき問題だ、こう考えるので、この点は局長としてどうお考えなのか。ただ、一つの炭鉱しかなかったから置かなかった、あるいは距離が近かったから置かなかったというようなことなのか、その他の地域、たとえば田川等については中小炭鉱がなるほどたくさんあったかもしれない。あったかもしらぬが、いまやほとんどなくなってしまったというようなことなどを見た場合に、炭鉱の数からだけいってもいまの答弁はおかしい、矛盾したことになると思うのですが、この点どうですか。
  135. 西家正起

    西家説明員 当時監督署を設置いたしましたころは、たしか炭鉱の数等に特に重点を置いて設置したのだと思いますが、現状におきましては、確かに先生のおっしゃいますように、炭鉱保安状況保安成績、この点につきましても十分に考慮してやる必要があるかというふうに考える次第でございます。
  136. 田畑金光

    ○田畑委員 私は統計資料を見ていないのでよくわかりませんが、昭和三十五年ごろを境にして、三井三池の災害状況が前などとは相当変わってきた、こういうのですが、統計上から見ると、どういう足取りできておるわけですか。
  137. 西家正起

    西家説明員 三池の災害状況につきましては、三十八年の大災害以後、わずかながらではございますが、災害は減少をいたしております。しかしながら、九州地区全体あるいは全国平均というものに比べますと、三井炭鉱災害率はまだ現在でも高いという状態でございます。ちなみに三池炭鉱災害率の四十二年の一月−六月の平均を申し上げますと、稼働延べ百万人当たりの災害率が九六一というふうになっております。四十一年が一二〇七、四十年が一二三七、三十九年が九八一、こういうふうになっておりまして、若干減少の傾向にはあるわけでございますが、九州管内の全体の平均から見ますと、四十二年の一−六月の平均が一〇六二ということになっておりまして、九州管内の全体の平均よりは若干低くなっておりますけれども、これは中小その他も含んでいる関係でございまして、大炭鉱三池炭鉱としてはやはりまだ災害率が高い、こういうふうに考える次第でございます。
  138. 田畑金光

    ○田畑委員 中小を含めたら平均からは若干低いが、大手の平均では高い、こういうお話ですね。とにかく大きな災害が起きると三井、三池、こう最近なってしまったということはまことに遺憾だ、こう思うのです。そしてまた、施設も設備も一番高度の技術を備えている山でこういう問題が頻発しているということはまことに遺憾だと思うのです。そこで保安確保については、自主保安体制の確立であるとか、監督保安行政の強化であるとか、いろいろいわれておるわけです。ことに監督保安行政については、私は午前のときに少し申し上げたので、それは重複を避けますが、自主保安体制の確立という問題について、はたで見ておりますと、労使関係が率直にいってあまりうまくいっていないということ、こういうことが一体保安についてどういうような影響があるかという問題なども、これはやはり率直に考えてみる必要がありはせぬだろうか、こういう感じが私はするわけです。特に私が非常に悲しく感じたことはあの痛ましい災害で七名の犠牲者が出られた。この痛ましい人たち犠牲者を弔う告別式が三者三様で持たれなければならぬということなどは、これはまことに悲劇だという感じを強くしたわけです。そういうことなどを振り返ってみたときに、自主保安体制ということは、やはり何といっても生命を預かる保安の問題であるだけに、労使が憎悪関係でなく信頼関係の上に立たぬとうまくいかぬと私は心配するわけですが、特に久良知局長は現地においでになって、自主保安体制の確立に相当努力を払ってこられたということをけさほど来お答えになっておりますが、この自主保安体制の確立などについて、どういう配慮で今日まで指導なさってきておるのか、このあたりどのように見ておられるか承っておきたい、こう思うのです。
  139. 西家正起

    西家説明員 ただいま先生がおっしゃいましたように、確かに三池炭鉱におきましては、労使関係が非常にむずかしい、人の和におきまして非常にむずかしい点が存在いたしております。私どもといたしましては、現地の監督局長もそうでございますが、事、保安に関しましては、やはり労使お互いに相携えてこれはやらなければいかぬということでございますので、鉱山保安という一つの事柄を通じまして、極力労使双方が円満に、かつ協力して確保できるような体制に、いままでかなり努力してまいったつもりでございます。しかしながら、現在十分にその効果があがっておるかということになりますと、必ずしも一〇〇%効果はあがっていないのでございますが、私の感ずるところといたしましては、そういう人の和の面におきましても、逐次進歩が見られつつあるのではないか、かように考える次第でございます。なお現地の監督局長もおりますので、具体的な問題につきましては、現地の監督局長からお答えいたしたいと思います。
  140. 久良知章悟

    ○久良知説明員 三池につきましては、率直に申し上げまして、先生が御指摘されるような点が多々あるわけでございます。具体的な保安の問題を考える上にも、私どもとしても非常にむずかしいと申しますか、障害になる点があるわけでございますが、これはやはり労使の問題でございますので、私どもといたしましては、両者の間で解決をしてもらいたい、そういうふうに考えておるわけでございますが、保安の問題につきましては、そういう態度で過ごし得ない問題、やはり具体的に私どもも直接関係をいたしまして解決しなければならぬ問題も多々あるわけでございます。こういう問題につきましては、これはケース・バイ・ケースで、是は是、非は非という公正な態度で臨んで判断をするということにつとめております。
  141. 田畑金光

    ○田畑委員 是は是、非は非、適正な判断に基づいてやるということは当然のことだし、事、人命に関することだから、必要なことは勇気を持ってやるということは当然のことだと思うのです。けさほどの質疑の中でも、私、若干気にかかったのは、退避命令が適切であったかどうか、こういう問題ですね。これに対して久良知局長は、上司のほうから坑内のそれぞれの責任者に対する指示は適切にいったが、そこから下部末端にわたる指示が適当でなかったと思うという答弁がありましたね。どうも私は、そういうことだけで割り切っていいのかどうかということなんですが、病院を見舞ったとき、患者からその前後の話を聞いてみました。私たちが痛感したことは、退避命令が適切に下部末端まで届いてなかったということ、これはもう否定できない事実のようです。ことに三十六昇関係は三時間も坑内て待機させられて、退避の指示を坑外に仰いだけれども、適切な指示がなされなかったということですね。これはしばしばそのような答えにわれわれぶつかったわけです。してみると、あなたの先ほど答えたことと、この事実関係は非常に反しておりますが、この点はどのように見ておられますか。
  142. 久良知章悟

    ○久良知説明員 坑外から三川鉱坑内の主要作業個所に対する指示、これは私先ほど申し上げましたのは、災害が起こりました直後の命令、指示について申し上げたわけでございます。ですから五時四十五分ごろに災害が起こりまして、それから十分ないし十五分の間の退避命令、これについて申し上げたわけでございます。ですから、これについては、部内の主要作業場に対しては早く的確に早急に退避しろという指令が届いた。その部内の中で、末端の各作業場につきましては、払いというふうな多人数の働くところはかなり早く届いたようでございますが、やはり中には一人、二人というふうな作業者が独立して就業している個所もあるわけでございまして、そういう個所については、中に若干の混乱があったということは事実のようでございます。それから、この後の、大体七時から八時にかけまして、安全な地帯にだんだんと避難をして集結をしたわけでございますが、そういう人たちを早く坑外に出すということについての指令については、これは適切でなかったと私ども考えております。
  143. 田畑金光

    ○田畑委員 そのお答えの、各部署ごとに退避する指令が適切に下部末端に浸透しなかった、それがために相当のガスを吸うて入院せざるを得なくなった人方もあるわけですね。あるいはまた、その三十六昇から宮浦に通ずる坑道使用すれば犠牲者も出ないで済んだかもしれぬという見方もあるわけです。また宮浦との連絡坑道がありながら、一部三百五十メートルの坑道のほうに退避して、それが四名の犠牲者になったというようなことなど、いろいろ適切を欠いた面がある、こう思うのです。私は、そういう点から見ますと、この退避訓練などが平生保安教育としてどの程度真剣に行なわれていたか、こういう点が非常に疑わしくなるわけでありますが、こういう点について、当局としては、どのように保安教育あるいは訓練上指導してこられたか、承っておきたいと思うのです。
  144. 久良知章悟

    ○久良知説明員 ただいま先生の御質問の中で、上層三十六昇に約三時間近くとめ置いたということが罹災者を多くしたのではあるまいかという内容があったのでございますが、先ほど私お話し申し上げましたように、若干のガスが上層三十六のほうにも宮浦を通じて流れた時期があったわけでございますが、上層三十六昇そのものは宮浦から約二千七百立方メートルほど毎分新鮮な空気が流入しておる区域でございますので、早く坑外に出さなかったということで、私も実は非常に心配をしておったわけでございますが、特にそのために罹災者を多くしたということはなかったのではないかと考えておる次第でございます。  それから訓練の問題でございますが、これは先ほどから申し上げておりますように、三月に一回確かに実施はしておるわけでございます。火災それから爆発、出水というふうな特定の災害項目と、その災害発生しました個所を仮定いたしまして、鉱山労働者にその災害に対応する適当な退避路を指定をして上がらせるというふうな訓練をしておったのでございますが、やはり現実味と申しますか、真剣さが、どうしても、そういうやり方では出てこないという弊害があるわけでございます。実戦に応ずる訓練をやるということのためには、その真剣さを増すということのほかに、やはりいろいろなくふうが要るのではあるまいか、そういうふうに考えておる次第でございます。
  145. 田畑金光

    ○田畑委員 鉱山保安法や規則によれば、保安委員会というものがありますね。あるいはまた組合代表が参加する保安監督複佐員という制度もありますね。こういう保安委員会だの保安監督補佐員というものは、いろいろ法や規則でこういうことをやるのだというような使命というか権限というか、任務というものが授けられておりますが、これらの委員会などの機能というものはうまくいっているかどうか。こういうような問題こそ、やはり自主保安体制確立の一番大事な機関ではなかろうか、私はこういう観察を持っておりますが、あなた方としてはどのように観察をしておられますか。
  146. 久良知章悟

    ○久良知説明員 保安委員会の運営につきましては、法規どおりの運営がなされておったようでございますが、議事の内容そのものには、やはり先ほども申し上げましたように、労使の間が完全にしっくりいっていないという影響があらわれておるように見ております。  それから、補佐員の任命、この活動につきましては、これは組合のそういう影響を受けずに、円滑に実施されておるというふうに、これは各組合から聞いております。
  147. 田畑金光

    ○田畑委員 保安委員会はうまくいっていないと見ておるというわけですが、そういうようなところにやはり保安監督局が努力をしなければならぬ問題もあるのではないか、こう思うのです。あなた方自身の保安監督行政の足らざるところは十分に自己反省し、そしてまた責任を感じてもらわなくちゃならぬと思いますが、同時にまた自主保安体制確立のためにも、行政機関は行政機関なりに指導なり調整なりの分野があるのではなかろうかと思うのです。これは現地で福岡鉱山保安監督局からいただいた資料を読んでみますと、「炭鉱保安確保については労使の協調が前提であり、監督の際労働者の代表にも連絡して監督官の現場巡回に同行することにしている。」というようなことが述べられております。いろいろ巡回検査をやったとか、総合保安監督をやったとか、あるいは追跡検査をやったとか、ずっとやってこられたことを述べておられますが、こういう際には組合の代表にも、率直に言って二つの組合があるわけですから、両組織の代表にも参加してもらって、組合の協力のもとに検査などについても進めてきておるのかどうか。やっぱり私はそういうような機会を通じ、監督局が中に立って、そういう面における調整の役割りを果たすことが、自主保安体制の空気をつくっていく一番大事なことではなかろうかと判断しておるわけです。そのあたりどうですか。
  148. 久良知章悟

    ○久良知説明員 先ほど細谷先生の御質問のときにお話し申し上げましたように、監督官が巡回をいたしますときには、組合の代表者に会いまして、そのたびごとに、組合の保安に対する考えを聞いておるわけでございます。なお、先生のおっしゃいましたような趣旨で効果があるように努力していきたいと思っております。
  149. 田畑金光

    ○田畑委員 私、これも現地で組合の話を聞いて頭に残っておる問題ですが、あの例の災害個所密閉について皆さんが最終的な決断を下すにあたって、先ほど久良知局長のお話では、関係機関、官庁の話し合いで最終的な方針をきめたということでありますが、こういう大事なときにおいては、当然やはり会社の話も聞くし、組合の意見も聞く、それぞれの代表機関の意見を聞いて総合的に判断することが賢明な策じゃないかと私は感じたわけであります。今回のこの措置についてどうしてそのようなやり方がなされなかったのか、局長の判断は当時はどういう判断であったかということですね。
  150. 久良知章悟

    ○久良知説明員 現場密閉は、災害現場を原状のまま保存をするというために、直接消火によらず密閉によって火を消そうというふうに判断をしたわけでございまして、いわば監督上の必要から密閉に踏み切ったということでございます。したがいまして、本格密閉に踏み切る前には、その関係の機関の責任者と相談をしたわけでございますが、密閉につきまして、その作業そのものは、組合の協力がなければできない問題でございますので、私どもといたしましては、会社に対して密閉をせざるを得ないという話はしたわけでございますが、組合に対しては会社から了解を求めるというふうに考えておったわけでございます。
  151. 田畑金光

    ○田畑委員 その辺の判断がいろいろ違ってくるわけですが、会社に話をして会社の同意を求めた、会社から組合のほうには連絡してもらうという判断で局のほうは決断したというようなのも一つの行き方であり、見方でありましょうが、しかしその会社と組合との関係は、特にこの災害でお互い異常な状態にあるとき、やはり私は公正な立場に立つべき局が、労使に話し合いをして、了解のもとに決断を下すべきであったのではなかろうか、こう感じておるわけです。  言いたいことは、要するに保安確保ということは、第一には、まず監督官庁のあなた方の責任だと思うのです。これは、こまかく検討してくると、福岡鉱山保安監督局でもこういう点はもっと何とかできなかったものかという感じをわれわれは痛感するわけですね。また同時に、それを裏打ちするだけの国の保安施策が十分であったかどうかというところに問題があろうと思うのです。  同時にまた、やはりわれわれとして考えなければならぬことは、自分たちの生命を守ることだから、これは労使の一番大事な問題だと思うのですね。そういうことを考えてみますと、やはり労使がお互い、こういう問題については、それこそ俗にいう党利党略を離れて、率直に相談をして保安を守り、自分たちの山の安全を確保するということが大事なことではなかろうか、こういう感じもするわけです。職場規律が正常に維持されて、お互い保安というものを大事に考えていくというような機運が成り立つならば、初めてそこに自主保安体制も確立されるだろうし、そしてまた一方、監督機関の保安監督行政を厳にして、みずから正すべきを正していくならば、こういう災害も二度と繰り返さないことになるだろうと私は考えておるだけに、あなた方の使命というのは非常に大事でありますので、そういうようなことを念頭に置かれて今後努力することを強く私は要望しておきたい、こう思っているわけです。
  152. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 次会は明後十一日午後二時から理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。   午後五時五分散会