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1967-05-24 第55回国会 参議院 予算委員会第一分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月二十四日(水曜日)    午前十時十九分開会     —————————————    委員異動  五月二十四日     辞任         補欠選任      小山邦太郎君     岡本  悟君      岡田 宗司君     小柳  勇君      占部 秀男君     山本伊三郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     主 査         二木 謙吾君     副主査         山本伊三郎君     委 員                 青柳 秀夫君                 岡本  悟君                 宮崎 正雄君                 北村  暢君                 鈴木 一弘君    国務大臣        法 務 大 臣  田中伊三次君    政府委員        宮内庁次長    瓜生 順良君        皇室経済主管   並木 四郎君        法務大臣官房経        理部長      辻 辰三郎君        法務省民事局長  新谷 正夫君        法務省刑事局長  川井 英良君        公安調査庁次長  長谷 多郎君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局事務総長   岸  盛一君        最高裁判所事務        総局総務局長   寺田 治郎君        最高裁判所事務        総局経理局長   岩野  徹君        最高裁判所事務        総局刑事局長   佐藤 千速君    説明員        宮内庁管理部長  西原 英次君        法務省大臣官房        人事課長     羽山 忠弘君        法務省入国管理        局参事官     辰巳 信夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○副主査辞任及び補欠互選の件 ○昭和四十二年度一般会計予算内閣提出衆議 院送付) ○昭和四十二年度特別会計予算内閣提出衆議 院送付) ○昭和四十二年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 二木謙吾

    主査二木謙吾君) ただいまから予算委員会第一分科会を開会いたします。  まず分科担当委員異動について報告いたします。  昨二十三日、任田新治君が委員辞任され、その補欠として小山邦太郎君が選任されました。また、本日、小山邦太郎君、占部秀男君が委員辞任され、その補欠として岡本悟君、山本伊三郎君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 二木謙吾

    主査二木謙吾君) 北村君から都合により副主査辞任したい旨の申し出がございましたが、これを許可することに御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 二木謙吾

    主査二木謙吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  つきましては、直ちにその補欠互選を行ないたいと存じます。互選は、投票の方法によらないで、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 二木謙吾

    主査二木謙吾君) 御異議ないと認めます。  それでは、副主査山本伊三郎君を指名いたします。     —————————————
  6. 二木謙吾

    主査二木謙吾君) 昭和四十二年度予算中、皇室費を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 先日新聞に出まして、私も最近見てまいったのですが、  〔主査退席、副主査着席〕 例の埼玉県の越谷にありますカモ猟場のことについてお伺いしたいと思います。だいぶ外国の国賓であるとか、あるいは外交官接待に使われているのだそうですが、行ってまいりましても、かなり池も干上がって、カモの来る量も減ってきている、こういう話なんですが、これに対しての状況と、これからどういうふうになさるか、その見通しと、この二つをお伺いしたい。
  8. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) この埼玉カモ場の池の、つまりカモが集まってまいりますその池の水は、あれは設置の当初は元荒川——ちょうど横を元荒川が流れておりますが、その元荒川地下浸透水——地下をずっと浸透してくる水、それが池のほうにこうしみ出してきまして、そして池の水をたたえておったのであります。それがだんだん元荒川水位が下がってまいりまして、その浸透が非常に少なくなった。そこで、沿革を申しますと、昭和十七年以来は川岸に水をあげる揚水ポンプを設けまして、そして特にカモ猟の時期においてその用水ポンプで池のほうへ水を入れておったわけであります。しかし、その揚水ポンプで池のほうに水を入れなくても、平素もある程度の水はあったわけであります。ところが、本年の三月ごろから川水が急に減りまして、四月の七日には池の水が完全にかれたのであります。その原因考えますると、これは第一は、元荒川水位が年々下がり、さらにまた下がったということも考えられますが、また一方、このカモ場の下流のほう四キロメートルくらい——約一里ぐらいの地点に利根川のほうから水を引いて、かんがい用水として利用している逆川というのがあります。この水がもとは荒川と一緒になって合流をしておって、その水が元荒川のほうへぐっと逆流してのぼってきて、カモ場用水取り入れ口付近では水があって、それで池を潤しておるというような状況であったのに、一昨年から埼玉県のほうでは、この逆川のほうを、これは農業用水に使う、これを専門農業用水にするために元荒川の下を暗渠で通して、そうして先のほうの田のほうへ持っていくように工事をされたわけです。元荒川は分離されたわけです。そのために元荒川のほうにある程度流れてきておった逆川のほうの水が全然来なくなったわけであります。それで元荒川のほうの水がぐっと減ってしまった。そういうようなことのために、この池のほうへも水が浸透してこないというようなことで、かれたものと思われるのであります。そこで、このことにつきましては、この工事が完了したのは本年の三月二十三日でございまするが、すぐにこの工事関係埼玉県のほうへ宮内庁のほうからも担当者が行って対策について協議をいたしました。埼玉県のほうではそれほど深く考えていなかったので、これは何とか考えようということで、いま技術者同士でいろいろ協議をいたしておりまするが、その一応の協議のいま中間状況ですけれども、一つは、現在、揚水ポンプであげていますその揚水ポンプ位置を少し上のほうへ持っていきます、二百メートルくらいですけれども。そうしますと、そこらあたりですと少しはまあ水があるわけであります。その水をその揚水ポンプでくみ上げて、パイプでこの池のほうへ持ってくるというような方法を、とりあえずやってみようかというようなこと、これは中間状況ですが、なお研究の結果、もっといい知恵が出るかもしれませんが、そういうようなことを一応やってみて、その状況を見ようじゃないか。なお、それだけでは不十分であろうかと思います。水を入れても、底のほうにずっと吸い込んで行ってしまって、うまくたまらないというようなことであれば、うまくいきませんので、また根本策としては池の底の漏水防止工事をやるなり、あるいは新たに深い井戸を掘って、水を取ることを考えるようにしたほうがいいとか、というような意見もございまするが、これは相当金がかかります。今年度の予算には予定をされておりませんので、あるいは来年度の予算でそういうようなことをお願いをしなければいかぬじゃないかと、こう思いまするが、とりあえず、少し上流のほうへポンプ位置を動かして、水をひとつくんでみようじゃないか、その状況をまず見ようじゃないかという状況になっております。
  9. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 現在は多少水があるようになっているのですが、カモの来る数というのはどのように減ってきておるのですか、だいぶ減っているのですか。
  10. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) カモの参ります数は年によって違いますが、多いときは四万羽あたり参りますが、三万羽くらいのことも、それよりもっと少ないときもございます。最近はやや減りぎみの点はございますが、これはこの水の関係というより、やっぱりいろいろな周囲の環境の影響じゃないかと思います。しかし著しく減ったために、接待用その他のカモ猟ができないという状況にはなっておりません。
  11. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いま池の底をすっかりコンクリートで固めるという話があったのですが、かなり掘ってもまだ水が出ないという状況のときもあったようです。そういうことから見ると、コンクリートで固めるといいながらも、その池の元だめと言われるところは三千坪以——約四千坪近い。その四千坪をコンクリートで打つということになるとたいへんな工事だと思うが、そこまでおやりになるのか。それともコンクリートで固めるとなっても、ごく一部分をおやりになるのか、その辺のところはまだ宮内庁としては計画はできていないかもしれませんが、構想程度はおありなんだろうと思いますが。
  12. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) ポンプで水を入れてみて、その状況にもよりまするが、やる以上はやはり全体をやらなければいけないのじゃないかというように考えます。しかし、さらに調査の結果、それに及ばないということになれば、一部でも済むことになるかと思います。
  13. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは昨日も、宮内庁の新浜の御猟場のことで、野鳥楽園がなくなってきている、これがだいぶ問題になって、新聞でも騒がれている。同じように、埼玉県ではその近所の白サギの名所にもだんだんと白サギが来なくなって、有名なサギ山もだめになるのじゃないかという心配が出てきた。住宅が多くなり、水利の便その他のことで変わってくるのだと思いますけれども、武蔵野の中にいわゆる野鳥楽園のようなものはとっておかなければならない。それだけに相当積極的にやってほしいと思うのです。ですけれども、一面ではそう言われておりながら、あそこの越谷の御猟場にいたしましても、言われていることは——現在もかなり坪数がある、県あたりのほうに言わせれば、何とかふだんのときは多少でも開放してもらいたいという意向もあったようです。そういうようなところも、両方兼ね合わせて、ものの考え方はできないわけですか。
  14. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) カモ場につきましては、そういう広さがありますが、あそこは一般開放といっても、あそこはいくらか草っ原のところもございますが、いまのところ特別に一般開放ということは考えていませんが、しかしカモ猟の時期以外でも、皇室関係に関連したいろいろの接待の場所などには使っていることがございます。いまの先生のおっしゃった点については、さらに検討してみたいと思います。
  15. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次に、下総御料牧場使用状況について伺っておきたい。成田空港の建設で移転が迫られているわけですが、代替地栃木県の高根沢町に内定したというような話なんですけれども、内定したとなれば事実かどうか。それから、高根沢町に移転したときの坪数は一体なんぼほどというふうにお考えでしょうか。
  16. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 下総御料牧場のところが国際空港予定地なものですから、いずれにしても移転をしなければならない。移転候補地としては、いま栃木県の高根沢町から芳賀町にちょっとわたりますが、大部分高根沢町の地帯を第一候補地といたしまして、いろいろ地元との話を進めております。その新しい牧場の広さは、約三百ヘクタールと一応考えております。現在の三里塚の御料牧場は四百二十九ヘクタールありますので、それよりも百二十数ヘクタールたしか少なくなるわけであります。
  17. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 三十八年の内閣委員会のときに、次長からの答弁で、事業費その他の答弁があったのですが、御答弁から伺うと、そこでとれる食物類見積もり金額が非常に少ないような感じを私ども受けるのですが、四十二年度の御料牧場事業費はどのくらいで、そこで収穫される物についての見積もり金額はどの程度でありますか。
  18. 西原英次

    説明員西原英次君) いま御質問の四十二年度に対しまする収入見積もり金額につきましては、千五百万ほどの収入見積もりになっておりますが、四十年度の収支決算をいたしました数字を、過去の実績を申し上げてみますと、四十年度につきましては収入が千百八十九万ほどになっております。支出は一億一千三百万余になっております。収入関係が非常に支出金額に比べまして少ないようにかつてお話があったこともございますが、御料牧場の性格上、どうしても人件費等かなり支出が必要になりまして、こういうふうな結果になっておるのでございます。
  19. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この千五百万円の収入見積もり内訳はどうなっていますか。
  20. 並木四郎

    政府委員並木四郎君) こまかい数字は持ってきておりませんが、ただいま下総御料牧場では軽種馬サラブレッドの生産を行なっております。この千五百万円の大まかな内訳を申し上げますと、三十八年、三十九年、四十年、この三カ年の収入決算を見ますと、サラブレッド売却代金が三年間で三千二十六万円ございますので、一年平均約一千万円のサラブレッド売却代金がございます。その他——その他と申しますのは生まれました牛とか、豚とか、そういう形質の悪いもの——形それから性質の悪いものは売却しております。そういうものの売り払い、もちろん馬もございますが、馬でも老廃馬とか、あるいは将来乗馬にならない、あるいは将来挽馬にならないような形質の悪いような馬がおりますので、そういうものの売り払いの三年間の合計が千五百七十万三千円、一年平均にいたしまして五百万円と、いま管理部長が申しましたように、収入見積もりはここ三年間の実績を見まして千五百万円、そのうち、サラブレッドが一千万円その他が五百万円と、こういう計算になっておるわけでございます。
  21. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 三十八年の内閣委員会で御答弁なさったのですが、収穫された食物類見積もり金額が三百十三万というようなことを述べられておるのですが、今回はそこで収穫された食物類等見積もり金額についてはわかりませんか。
  22. 西原英次

    説明員西原英次君) 本年度は大体、いまの経済主管説明にありましたように、三百数十万の見積もりになっておると思います。
  23. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それは収人見積もりに入っておるのか、それとも全然入らないのか、どちらなんでしょうか。
  24. 西原英次

    説明員西原英次君) 御料に使います供出品につきましてはいわゆる見積もり金額としてあげておりますので、収入支出収入には入らない、見積もりの中には入っておらないわけでございます。
  25. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうすると、この食物類の収穫については、これの消費はどこでなされるのでございますか、全部皇室で消化をしてしまうということですか。
  26. 西原英次

    説明員西原英次君) いま申し上げました三百数十万の供出品につきましては全部皇室でもって、まあさらに申し上げますと宮廷及び内廷でもって御使用になるものでございます。したがって、それ以外に余剰のものにつきましては、一般払い下げをいたしておるのでございます。
  27. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 こまかいことを聞くようですが、一般余剰として払い下げられている金額は、大体どのぐらいなんでしょうか、金額に直しますと。
  28. 西原英次

    説明員西原英次君) 昭和四十年度の実績を申し上げますと、馬とか乳牛を売り払いました金額を除きますと、二百万ぐらいになっておるのでございます。
  29. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その払い下げ一般というのは、どういうところにやられますか。
  30. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) この一般と申しますのは、結局、分量とするとそう多い金額じゃございませんで、市場に出すほどじゃございません。そこで、宮内庁のほうの菊葉会といいますか、職員のための食堂など別の組織があります。そういうところへ払い下げたり、あるいは牧場職員のほうに払い下げたり、縁故者のほうへ払い下げをしておるわけであります。
  31. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは、当たらないことかもしれませんが、私どもがいろいろ皇室職員の人から不満を聞くと、一般払い下げといいながら、実際には一部の人だけでもって非常に格安で払い下げてしまって、下級のほうにまで及んでこない、そういう不満をちょっちょっと私は聞くわけですが、そういうことが実際にあったのかどうか。うわさかもしれませんけれども、その払い下げのやり方ですね。その点については、どういうように公正を期すようにやっていらっしゃるか、お聞きしたいのです。
  32. 西原英次

    説明員西原英次君) 職員等に対する払い下げにつきましては公平にやっておりまして、下級のほうの職員にいかないというようなことはやっておらないつもりでございます。ただ、ここ数年は、以前よりもだんだんと払い下げ数量等が減ってきておるような状況にございます。たとえばバターなどにしましても、皇室で使いまするものの数量が相当ございますので、以前に比べまして最近は非常に払い下げ数量が減ってまいっております。そういうふうなこともあって、従前の事情を知っておられるような方々には、多少、あるいは、何といいますか、職員間の考えの、あるいは誤解と申しますか、そういう点があるのかもわからぬと存じます。公平な基準で払い下げをやっております。  それから、たとえば牛乳等につきましては、菊葉会というのが庁員食堂をやっておりまする団体でございますが、そこらのところで希望者に売るというようなことをやっております。
  33. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いずれにしても、天皇陛下の足元のところで、そういうような不満の声なんかがわれわれの小耳にはさまってくるようじゃしょうがないと思います。どうしても、払い下げということになると、かなり格安なものになってくる。その格安なものが量が少なくなり、一部の人にだけしかチャンスがめぐってこないのでは、そういうような誤解を生むのは当然だと思うのですね。その点は十分に留意してほしいと思うのです。その点、次長、どうでしょうか。
  34. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) いまのおっしゃる趣旨はごもっともであります。実を申しますと、牛乳なんかは、以前はそういう払い下げを受けたこともありますが、ここ数年は全然受けておりません。量が減ったのだと思いますが、なるべく上のものがまず優先的にとるということはいけないということで、私なんか、ほとんどここ数年はいただいていないということで、いまおっしゃいましたような趣旨については、今後も十分留意したいと思います。
  35. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次長のように、ごく上の方はいいかもしれませんが、そういうこともあるのじゃないか。そういうところで、こういうような声が出たのじゃないかと私は思います。十分留意していただきたいと思います。  次は、皇居造営のことで、次長のほうから、新宮殿完成予定は四十二年三月、予算額は八十億から九十億であるという説明を三十八年に国会でなされておる。ところが、ことしの予算を見ると、百二十一億二千八百万、さらに延びて、昭和四十三年に完成というような予定になっておる。合計して百三十億で、当初八十億から九十億と言われたのに対して一・六倍というふうになっておるのですが、それは何が原因でこういう大きな違いが出てきたのか、何か積算の違いがあるのか、この点について。
  36. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) それは、三十八年のころには、建築費として八十八億ぐらいの予定でおったのであります。完成も、いまおっしゃるように、四十二年の三月ぐらいに完成、四十一年度一ぱいということで考え、三十九年から工事にかかってまいりましたのですが、実際に工事を進めてまいりますると、最初考えたよりはむずかしい点が非常に多いのであります。といいますのは、この宮殿建築様式は、ほかに例が全然ない様式で、柱と柱の間も非常に広いし、天井も非常に高いし、しかも、西洋建築といいながら、日本の古来の伝統の宮殿様式の精神も入れながらやっていくというようなことで、かなりむずかしい点がありまして、いろいろなものをやるのに、一々模型をつくり、それを専門の大学あるいはその他の研究所に委嘱して、それをよくまた実験をしたりしながら進んでまいります。そういう関係上、この実施設計最初考えたよりも、ひまがかかるというようなことがわかりまして、結局一年半ぐらい延びることになったわけであります。最初三年のつもりだったのが四年半ぐらいかかるというようなことになりましたが、現在の工事の進め方から言いますると、その一年半の延長の考えは、まず実行ができると思います。来年の十月一ぱいには一応この工事はできるというように工事担当者も申しておりますので、それはそうと私は信じておるわけであります。  なお、費用の点で、八十八億が結局総額百三十億を必要とするというように、だんだんふくれ上がってきた、このことでございますが、これは、最初基本設計に基づいて八十八億の金額を一応出したときは、こまかい実施設計がないときでありましたので、その際のおおよその腰だめ式に概算を出した部分が相当あるわけですが、実際に実施設計にあたって、先ほど申し上げましたように、いろいろな研究をしながらやってまいりますると、実際はそう簡単にいかない、こういうことで、それで経費がふえてきた分も相当あります。たとえば、この宮殿屋根でありますが、屋根は銅でふくわけですが、銅の厚さなども、最初考えた厚さでは、いろいろ実験してみますると、安全度が悪いというので、それを厚くするというようなことでその部分がふえてくるとか、あるいは柱などは、これは基本は鉄筋コンクリートですから、その柱のコンクリートを、まる出しでもかっこうが悪いので、初め、ウルシの一種の塗料のようなものを上に塗るという考えがあったのですが、これをいろいろ実験すると、これはひびが入ったりしてみっともないという専門家の御意見で、これは銅板を張ったほうがいいというので、銅板を張ることに変わりました。銅板を張って、ちょうどこの部屋のああいうような色になるわけです。ですから、ちょっと見た目には、木に色を塗ったような感じになるわけであります。そういうことで銅板を張るということになったりしたこと、それから、材木関係が、一般市場ではどうしても間に合わない。市場材ですと、そう高くないのですけれども、市場のほうの状況は、いまあまり大きな材木がないのであります。建築様式が変わってきていますから、相当大きな材木を使うのに、市場にはない。そうなりますと、一々山を調べて、山の奥から切り出してくるというようなことになりまして、そういう木材費なんかも、最初考えたよりは、よけいどうしても要るというようなことになりました。それに、なお一方、労務賃の値上がりというようなものも、これもございまして、そのほかこまかい点がございまするが、それを総合してきて、どうしてもふえざるを得ない状況になったのであります。これにつきましては、いろいろ予算を組む際に、大蔵省の査定当局でもこまかく見てもらいまして、そしてむだはないように、節約できるところは節約するというようにしながらまいりまして、そういうふうになったのでございます。  それで、一昨日の当分科会でも申し上げましたが、それじゃ、また一年半のうちにふえることがありはせぬかということを、北村先生から念を押されましたが、現在、工事担当者と十分検討しております結果でありまして、これ以上ふえることは、まずないという見通しでございます。
  37. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 工期のおくれの問題ですが、いままでにないような新建築であるからというのですが、いま、ほとんどの建物が新建築様式です。そのために模型をつくったり実験するということは、どこでもやっていることです。それは当初から見込んでいてあたりまえだと思うのです。それがあまりにも甘い計算で、こんなに一年も二年も延びるというようなことになりますと、これは非常に問題だと思うのです。だから、いま、今後これ以上延びることはないだろうというお話だったのですけれども、今回ので見ますと、百三十億円昭和四十三年までにかかるわけですね。非常に壮麗なものであるという話なんですが、壮麗なものであり、昭和時代の建築の一典型だということがうたわれておるわけです。実際考えると、これだけ国費というものが大きく伸びてくるのであれば、多少、いままでよりは設計の面積を減らすか、あるいは、延べの床面積がいま七千坪近いのですが、そういうものを詰めてくるとか、そういうようなことは一向考えられなかったのでしょうか、中間で。
  38. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) この宮殿の広さを小さくするということは、考えなかったわけであります。これは、現状を考えますると、なお将来も考えあわせてみますると、最近お客は相当多数見えまするし、できるだけ多数の方が招かれるような宮殿であったほうが時代にも即応するということで、あすこの地所にふそう面積ということで七千坪の設計ができたわけであります。人によりますと、もっと大きくできないかという意見もあったわけですが、場所柄、そう大きくできないということで、そうきめたのであります。そういう点では、特に減らすようなことは考えなかったのでございますが、しかし、最初基本設計の際のアイディアの中にあった部分で経費を節約できる部分はできるだけ節約しようというので、たとえば銅板を使おうというようなところはアルミニウムに変えた部分もあります。それから天井に木材を使うと高いものですから、そうじゃなくて、一部きれ地にするとかいうようなことを考えたり、いろいろ部分的には節約の方途を考えたわけです。実を申しますと、去年あたりから今年にかけて最後の詰めをして、工事担当者だけの意見ですとさらにまだ数億円足らないわけですが、あまりふえてもというので、その数億円はぐっと落とした結果が百三十億円ということになったわけであります。
  39. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 とにかく、一・六倍にふえると、普通のトンネル工事とかダム工事のような感じを私ども受けてしまう。非常に地盤、岩盤が悪かったというので工事費がふえるというのは私はわかるのですけれども、設計変更、設計変更でこういうふうにふえてくるということは、これは考えなければならない。今度の皇居をつくるについて、新宮殿については、威厳よりも親愛を、荘重よりも平明をという、そうして国民に親しまれるものであるということが言われておるわけですね。しかも、新しい時代の建築の一典型ということですが、この前でき上がったの、何かございましたですね。あれなんかを見て、どうしてあんなに、外側から見ると、いろいろな色をごたごた塗ったみたいなものになってしまったのか、あれでは荘重でもないし、あれが新しい時代の建築の典型とは思えない、文化を破壊するようなことになるのではないかと、ぼくは思ったのです。その点で、前のは評判が悪かったろうと思いますけれども、その点、どう思いますか。
  40. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 現在の宮殿については、非常な清楚な感じというふうにでき上がると思います。屋根が緑青をふいた銅屋根で、いまごらんになりますと緑が少しどぎついように見えるかと思いますが、あれは半年くらいたちますと、色がさめてまいりまして、自然の緑青で、もっと薄い色になります。これはそういうふうになる。なお、壁のところが白いしっくい様になってまいりまするし、柱の部分にこういうような色の銅板が張られたりして、そうごてごてした感じにならないように、関係者は十分注意しながら進めておるわけであります。
  41. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 問題は、あとは、この新宮殿ができて、国民に親しまれるものであるということ——皇居造営の概要、あるいは宮殿造営についてのプリントの中にあるのですけれども、国民に親しまれるものであるかどうかということは、今後の完成してからの使用状況でいろいろきまってくるだろうと思うのです。その点について、どういうふうにお考えですか。
  42. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 新しい宮殿ができました後のいろいろの行事は、中も広いですから、現在よりも多くの方がいろいろの行事の場合に招かれやすくなると思います。たとえば園遊会、いま赤坂御所でやっておりまするけれども、ああいう園遊会も、一度はこの東側地区の庭園でも行なうほうがいいと言われておりまするが、しかしながら、場合によると、宮殿の中で、いわゆるレセプションのような形で行なうということもいいのじゃないかというようなことも考えられておりますが、そうすると、地方のいろいろな方も、中でのそういう行事にお入りになることができると思います。なお、その他、宮殿の参観というようなこともある程度考えようと思っております。
  43. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ぜひ、そうお願いしたいと思います。  それから、今度は話がまた飛びますが、前に高輪御用邸の問題で私はここで質問したことがありますが、あのような払い下げをめぐっての問題、こういうことは二度繰り返してもらいたくないのですが、宮内庁としてはどうお考えになっていらっしゃり、また、今後旧御用邸を払い下げるということが起きた場合には、どういう点に留意していこうとしておるか。その点についてお伺いしたいと思います。
  44. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 高輪御用邸の問題については、いろいろごちゃごちゃしたような問題が起きまして、たいへん遺憾に思っておりますが、なお、今後の御用邸について、御用邸を廃止して一般開放するようなことがあるかという問題ですが、場合によると、沼津御用邸はそれほどお使いになっていないので、ある適当な時期にこの御用邸を廃止して、一般開放するという案もございます。そういう場合にも、それがどういうように使われるかというようなことも考えながら進めたいと思います。できるだけ一般公共用にそれが使われるようなふうになるということを希望しておるわけでございます。
  45. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いま、沼津の御用邸の問題が出てきたのですが、これがほとんどなかなか使われていらっしゃらない。ざっくばらんに言えば、そういうことらしい。で、これの移転をしたいというような話もあったり、あるいはいまのお話のように、将来廃止したいという話があったり、いろいろあるわけですけれども、大体の方向としてはどういう方向に固まりつつあるのですか。
  46. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 沼津の御用邸については、適当な時期に皇室用財産を解除するというふうに持っていきたい。つまり、いまの御用邸が、海の状況が御用邸として適当でなくなってきておりますので、もっと適当な、かわるべき御用邸が設けられるならばいいんじゃないかというので、伊豆の沿岸あたりをいろいろ調査をいたしておりますが、まだ結論には到達をいたしていないわけでございます。結論に到達すれば、そういう時期には踏み切れるのじゃないかと思います。
  47. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 沼津の御用邸を返還して、そのときには移転ということになる、それも大体伊豆の海岸付近である、こういう御答弁だと思うのですけれども、まあ、前にありましたような狼煙崎につくろうというようなことで、結局あの問題はどうなったか知りませんけれども、いろいろ不明朗な問題が報道されている。そういうことは二度とないと思うけれども、狼煙崎との関係はどうなっておりますか。
  48. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 狼煙崎につきましては、これは御用邸の用地としてあまり適当でないというように考えて、その他をいろいろ物色しております。
  49. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 大体いつごろがめどですか。目標がなくて御用邸をさがすということも、移転するということもなかろうと思いますが、いつごろをめどにというふうにお考えですか。
  50. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) これは、はっきりしためどはなかなか立ちにくいのでありますけれども、新しいかわるべき用地を、ここ二、三年以内ぐらいに見つけたいと思っております。
  51. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次に、那須の御用邸の問題で、これは地元からいろいろ言われるのですけれども、現在、三百七十万坪の膨大な面積を持っておるわけです。これに対して、わりに使用度数も少ない。天皇御一家が御使用される財産としては、御用邸の付近三万坪なり四万坪ということで十分足りるのじゃないかということをよくいわれるのですけれども、その点についてはどうお考えですか。
  52. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 那須の御用邸につきましては、御使用の日数は相当ございます。これは、七月、八月、九月にかけて、夏の暑いときには両陛下が那須によくおいでになります。その他の皇族さんも、その間ときどきおいでになられます。なお、那須の御用邸としての面積は三百万坪をこして、非常に広いとお考えかもしれませんが、その大部分は要するに付属の山林地帯でありまして、那須の御用邸に陛下が御滞在中は、その山林地帯のところをずっとお歩きになって、植物の採取などをされて静養をされる、御研究もなさるわけですけれども、やっておられるわけであります。で、その山林地帯につきましては、中にも町道が横に入ったりしておりまして、だれも入れないというようなふうにかきねでずっと囲ってあるものではないのであります。ですから、一般の方もその辺のところには入っておられるような状況でございまして、まあ国有財産としてのこの山林については、農林省の関係なり、営林署長にも委嘱して、これを見てもらったりしているというふうなことで、広いようでございますけれども、いま言ったような状況にあるわけであります。
  53. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そこの山林の部分ですが、山林の部分の入り会い権の問題は、どういうふうになっておりますか。
  54. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 特に入り会い権として認めているものはございません。しかし、その一部分に、この那須町の体育場が設けられたり、いろいろリクリエーションのために貸し付けている部分はございます。
  55. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この一部分を、いまリクリエーションの場に貸してあるということであったのですが、われわれとしては、身体障害者のような、いわゆる虚弱児童のような、そういうような人たちに開放してあげられれば、貸してあげられれば、非常にいいのじゃないかということを思うのですけれども、そういうことを将来おやりになろうとかというようなお考えはございませんか。
  56. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 現在のところ、特に具体的には考えておりませんけれども、研究問題だと思います。
  57. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 以上で……。
  58. 並木四郎

    政府委員並木四郎君) 先ほど御質問のありました中に、牧場の本年度の収入見込額でございますが、誤りがありましたので、たいへん恐縮でございますが、ちょっと訂正させていただきます。  過去三十八、三十九、四十年度の収入については、誤りはございません。四十二年度の収入見込額として予算に載せておりますのは、実績より減りまして、本年度は千百二十六万五千円にして計上してございます。と申しますのは、新しい牧場ではサラブレッドの生産をやめる計画でおりますので、逐次サラブレッドの頭数を、生産駒を、いままで三歳の春に売り払っておったものを、二歳の春に売り払うというふうにして、逐次減少をはかっておりますので、したがいまして、過去三年間よりも——四年間といいますか、四十二年度は、過去よりも収入金額が減ってくるわけでございます。ちょっと誤謬がありましたので、訂正させていただきます。
  59. 山本伊三郎

    ○副主査山本伊三郎君) 以上で、皇室についての質疑は終了したものと認めます。     —————————————
  60. 山本伊三郎

    ○副主査山本伊三郎君) 次に、裁判所所管を議題といたします。  まず、岸最高裁判所事務総長より説明を聴取いたします。岸事務総長。
  61. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 昭和四十二年度裁判所所管予定経費要求額について御説明申し上げます。  まず、昭和四十二年度裁判所所管予定経費要求額の総額は、三百四十八億四千五百四十六万三千円でありまして、これを前年度予算額三百十九億五千四十三万六千円に比較いたしますと、差し引き二十八億九千五百二万七千円の増加になっております。  この増加額の内訳を大別して申し上げますと、人件費が十六億九千三百七十一万三千円、営繕費が九億三千六十二万一千円、裁判費が一億三千二百九十四万五千円、その他、司法行政事務を行なうために必要な旅費、庁費等が一億三千七百七十四万八千円であります。  〔副主査退席主査着席〕  次に、昭和四十二年度予定経費要求額のうち、おもな事項について御説明申し上げます。  第一は、訴訟の迅速適正化に必要な経費であります。  まず、借地法等の一部を改正する法律が昭和四十二年六月一日から施行されますが、これにより、多数の新たな事件の起きることが予想されるところでありまして、これを適正に処理するため、判事四人、簡易裁判所判事三人、裁判所書記官十二人、裁判所事務官六人、の増員に要する人件費として一千七百五十五万四千円、また、地方裁判所における工業所有権関係事件、租税事件を迅速に処理するため、地方裁判所調査官四人の増員に要する人件費として三百七十三万二千円、合計二千百二十八万六千円が計上されました。  第二は、強制執行の機構の確立に必要な経費であります。  新執行官法の趣旨に即した強制執行の機構を確立するに必要な経費として、歳入歳出外現金出納官吏補助職員たる裁判所事務官二十人の増員に要する人件費四百九十三万八千円、執行官の研修に要する経費七十四万七千円、合計五百六十八万五千円が計上されました。  第三は、家庭裁判所の充実強化に必要な経費であります。  このための経費として、所長専任庁の増設に要する経費百二万円と、家庭裁判所調査官五人の増員に要する人件費二百七十四万六千円、合計三百七十六万六千円が計上されました。  第四は、人事管理体制の確立に必要な経費であります。  人事管理体制を確立するため、家裁首席書記官三十六人、地家裁事務局次長十二人、課長補佐四十一人の組みかえが認められ、また、司法行政管理研究会に要する経費として九十九万四千円が計上されました。  第五は、営繕に必要な経費であります。  まず、裁判所庁舎の継続工事十七庁舎、新規工事十七庁舎の新営工事費として二十五億六千六百八十四万三千円、二番目は、執務体制確立、すなわち宅調廃止に伴う施設の整備に要する経費として二億五千四百十六万九千円、三番目に、その他、庁舎の増築補修等の施設の整備に要する経費として二億六千二百八十六万六千円、四番目は、最高裁判所庁舎新営に伴う敷地買収のための不動産購入費等及び換地清算金として八億四千五百二十九万円、五番目に、最高裁判所新営庁舎設計の公募に要する経費を含む営繕事務費として八千三百三十三万八千円、合計四十億一千二百五十万六千円が計上されました。  また、このほかに、最高裁判所庁舎敷地取得のため、七億円を限り、昭和四十三年度において、国庫の負担となる契約を、昭和四十二年度に結ぶことが認められました。  第六は、裁判に直接必要な経費であります。  これは、国選弁護人の報酬、証人、調停委員等の日当、その他裁判に直接必要な旅費、庁費等として二十三億四千四百十七万七千円が計上されました。  なお、この経費には、国選弁護人の報酬を、約一〇パーセント増額するに必要な経費として二千九百七十四万円、調停委員等の日当を、現行九百円から千円に増額するに必要な経費として三千五百七十一万六千円、証人等の日当を、現行の予算上の積算単価五百円を五百五十円に増額するに必要な経費として三百三十五万二千円、計六千八百八十万八千円が含まれております。  以上が、昭和四十二年度裁判所所管予定経費要求額の大要でございます。よろしく御審議のほど、お願いいたします。
  62. 二木謙吾

    主査二木謙吾君) 速記をとめて。  〔速記中止〕
  63. 二木謙吾

    主査二木謙吾君) それじゃ速記を起こして。  ここで分科担当委員異動について報告いたします。  本日、岡田宗司君が委員辞任され、その補欠として小柳勇君が選任されました。     —————————————
  64. 二木謙吾

    主査二木謙吾君) それでは、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  65. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ、裁判所の予算に関して若干質問したいと思います。  まず最初に、この裁判所所管の予定経費要求額が説明されたんでありますが、増員の状態は一応書いてあるわけですね。参考までに、最高裁、高等裁判所、地裁、簡易裁判所、家庭裁判所、順々に、判事、書記官、あるいは事務官、それぞれの定数と、それから現在定数が充たされておればそれで合いますけれども、現在員、それをひとつ知らしていただきたい。
  66. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) こまかい数字になりますので、所管の局長からお答えいたさせます。
  67. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ただいま山本委員お話のございました、裁判官その他の職員の定員と現在員の問題でございますが、まず最高裁は、これはもう十五人全部おいでになるわけでございます。そこで、高裁以下を申し上げますが、高裁のほうは、裁判官、これはいわゆる高裁長官というのと判事とございますが、その定員が二百五十四でございます。いま申し上げますのはいずれも、今回のこの予算で計上していただいております分を含めません従来の定員でございます。高裁の長官、判事定員二百五十四、定員だけずっと申し上げますが、地裁のほうは判事が七百九十八、判事補が三百七十九、家裁が判事百九十三、判事補百四十八、簡裁が七百三十一、こういうことになっております。そして現在員は、これは正確な数字で申し上げたいと思いますので、三月一日現在ということで御了承いただきたいと思うのですが、三月一日現在で、高裁の長官、判事二百四十二、欠員十二でございます。それから地裁は、判事七百六十九、欠員二十九、判事補三百七十五、欠員四、家裁の判事百八十一、欠員十二、判事補百二十三、欠員二十五、簡裁七百二十三、欠員八、こういうことでございまして、これを全部合計いたしますと、定員が、判事千二百四十五、判事補五百二十七、簡裁判事七百三十一、現在員が、判事千百九十二、判事補四百九十八、簡裁判事七百二十三、欠員が、判事五十三、判事補二十九、簡裁判事八、こういうことでございます。ただ、これは、いまも申し上げましたとおり、三月一日現在でございまして、その後三月の末に、判事補及び簡裁判事から約七十名程度の者が判事になりまして、そこでこの欠員及びこの三月一日以後に生じました欠員をほぼ埋めておるわけでございます。それから、それによって生じました判事補の欠員は、司法修習生がやはりこれまた四月の初めに任官いたしました。これが全部で七十数名ございますので、これによりましてかなり埋まっておるわけでございます。結局、簡裁の判事のところに若干の欠員がございますが、これは近く特任判事の選考をいたします関係と、それから定年で退官しました判事が逐次それになってまいりまして、これで埋まってしまう、こういうような一応の数字になっておるわけでございます。  それから一般職の職員につきましては、これは裁判所別に申し上げますと非常にわずらわしくなりますので、ごく大まかな職種別のところで御了解いただきたいと思いますが、書記官が定員が六千三百六、現在員が——これまた二月一日現在の現在員でございますが、六千百八十九、欠員が百十七、それから家裁の調査官が千百五十七、現在員千百二十二、欠員三十五、事務官が五千八百八十三、これは過員になっておりまして五千九百四十六、過員六十三、それに対しまして、準雇いのほうが、定員八百一、現在員七百九、欠員九十二、こういうものを全部合計いたしまして、いわゆる裁判官以外の一般職員の定員が二万八百六十六、現在員が二万五百三十一、欠員が三百三十五、こういうことになっております。これまた、書記官につきましては、三月に書記官研修所を卒業いたしました者、これは大体事務官の身分の者でございますが、それが書研を卒業しまして書記官に充用されておりますし、それから家裁調査官につきましては、調査官研修所を卒業しました者が調査官補に充用されております。それによって生じました事務官とか調査官補の欠員は、新しい大学卒業者あるいは高校卒業者等で埋めてまいっておる、かような状況になっておるわけでございます。
  68. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この書記官、事務官ですがね、一般公務員にはこういう名称は今日ないかもしれないですが、これは給料は一般職のいわゆる職員の給料表を使っているのですか。
  69. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは一般的には、一般職の職員の給与表を準用と申しますか、そういうことで、それに準じた給与になっているわけでございます。ただ書記官、家裁調査官につきましては、非常に専門的な職種であり、またいろいろ資格等も高度のものが要求されているというところから、号俸調整といいまして、若干のパーセントのアップをしていただいているわけであります。そういう関係で、普通の事務官に比べますと、これらの人たちの待遇がそれだけよくなっている、こういう関係になるわけでございます。
  70. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると何ですね、書記官の一番最高は、一般行政職の給料表の一等級から三等級あるいは四等級、そういう区別はどうですか、どうなっていますか。
  71. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは、裁判所におきましても、一般職員、つまり裁判官以外の職員につきましては同様でございまして、やはり一等級、二等級、三等級等々となっているわけでございます。
  72. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いや、それを書記官の職に、これは職名というのですか、役名というのですか、その書記官は、いわゆる行政職の(一)表の何等級から何等級になっておりますか。
  73. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これはかなりいろいろこまかく分かれているわけでございまして、たとえば首席書記官——高等裁判所の首席書記官というようなものになりますと、大体一等級または二等級。それから主任書記官というものがございます。これまた高等裁判所の主任書記官ということになりますと、三等級、四等級、こういうようなことでございます。それから、もう少し例を申し上げますれば、地方裁判所の首席書記官になりますと、大体二等級から三等級、地方裁判所の主任書記官は三等級から五等級ぐらいまで、こういうふうに大体格づけされておりまして、それぞれやはり級別定数というものが予算上きまっておりまして、それによって任用してまいる、かような関係になるわけでございます。
  74. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、何ですか、順序として、もちろん初めから書記官と、ずばり書記官に任命される人もありますが、大体やはり一般公務員——大学を出れば六等級ないし高等学校を出れば八等級ということから、順々に昇格、あるいはまた各等級を、等級の上進といいますか、上がっていく、順序はそういう順序でやっていかれるのですか、一般公務員のような。そうでなしに、試験制度か何かあるのですか。
  75. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) いまお話しの点は、山本委員お話しのとおりでございまして、やはり裁判所の職員につきましても、そういうふうに学校を出てまいりまして、それからいろいろ試験その他で逐次に登用してまいる、こういうことになるわけでございます。  その中で、先ほどからお話のございます書記官につきましては、これは裁判所に、御承知のとおり、裁判所書記官研修所というものがございます。その研修所で一年ないし二年の教育をするわけでございます。これは大学の法学部を卒業しております者は、比較的法律に詳しいというところから、一年間の研修をいたしております。それに対しまして、法学部以外のところの者は二年間の教育をするわけでございます。そうして、相当高度の教育をいたしまして、それによって書記官に任用する、こういうことになっております。ただ例外的に昇任試験というものもございまして、これは書研に入らなくても、特別にそういう試験にパスすれば書記官に任用する、こういう方々でございます。そういたしまして、そういうふうになって書記官になりますと、大体五等級とか六等級ということになるわけでございます。そうして、その上で、今度はまた主任書記官になりますにつきましては、厳重な選考がございまして、その選考にパスいたしますと主任書記官に任用される。そうして主任書記官は五等級から三等級までぐらいでございますので、先ほど申し上げましたように、五等級の書記官の中から選考された者が主任書記官になって、最初は五等級から、それから四、三と上がってまいる。その中からまた厳重な選考によって首席書記官に任用される、かような順序になっておるわけでございます。
  76. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは一般職と違って、人事院という制度は準用されてもその管轄外にありますから、相当格づけ等においては公平でなければいかぬわけですね。裁判所のことだから、人を裁判するところだから、もちろん公平にやっておられると思いますが、いま言われた格づけ基準というものはつくっておられるのですか。
  77. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは実は私のほうの厳密な意味での所管でございませんので、ややこまかい点まで正確には申し上げられませんけれども、ただいま申し上げましたような趣旨でそれぞれ官職があるわけでございます。それに基づきまして基準を設けております。そうしてそれによって厳重な選考をいたしておりますし、ことに書記官の昇任試験というようなものは、これは非常にむずかしい試験をやっておるような実情でございます。
  78. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その試験はどこでやられるのですか、もちろん裁判所内部ですか、どういう機構があるのですか。
  79. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは最高裁判所に裁判所書記官昇任試験規程というものがございます。そういう規程に基づきまして試験委員会というものができておるわけでございます。そうして、その委員会によりまして試験を実施しておると、こういう状況でございます。
  80. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その試験委員というのはどなたですか、どういう人がやるのですか、試験委員、現在。
  81. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) こまかい正確なところはいますぐ調べまして申し上げますが、部内と部外と両方にわたっておったように記憶いたしております。部内では、主として裁判官、それからその首席書記官の中の一部の者があるいはおったんじゃないかと思いますが、中心は裁判官でございます。それから部外では学識経験者等もまじっておったように記憶いたしております。
  82. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 裁判所といういわゆる国の三権分立の一つの機関でありますから、内部機構は私は相当整とんしておると思うのですが、実は、裁判所の人事に対しては、これは内閣委員会でやらずに、法務委員会でこれをやっておられますので、いつも内閣委員会で問題に実はなるのでございまして、したがって、もちろん一般職と裁判所の職員とは若干使命も違いますし、また憲法上の規定もありますから、それはやむを得ないといたしましても、やはり人事についてはきわめて厳正にやらなくちゃならぬと思っておりますので、尋ねたわけであります。  そこで、あとの質問にも関連があるのですが、実は裁判がいま非常に渋滞をして、なかなか審決するまでに相当日数がかかるという一般の批判もあるのですが、これはこういう人員構成、いわゆるそういう裁判所の人の構成上からくるものがあるのか、またはその他の事情で裁判がおくれるのか、その点はどうでしょう。
  83. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 裁判の遅延ということにつきましてきびしい世論のあることは、私どもはしみじみと身にしみております。この訴訟の遅延というのは、わが国ばかりの問題ではなくて、古今東西もう常に古くて新しい問題と言われております。で、遅延した裁判——裁判の遅延は裁判の否定にひとしいということばすら古くから言われております。極端な表現としましては、速い間違った裁判のほうがおくれた裁判よりもいいという、そういう極端な表現すら用いられております、これは外国のことばでございますが。私どもといたしましては、やはり裁判の適正と迅速と二律背反的に考えないで、迅速適正な裁判をできる限り実現したいというふうに思っております。  ただいまお尋ねの裁判遅延の原因は、これは戦前と戦後とを比較するとすぐわかりますが、現状において戦前の事件数の約倍になっておりますが、それに伴う人員というものは必ずしもふえていないという点がございます。しかし、この裁判の遅延の原因は、ただに人員の不足ばかりではなくて、いろいろ、制度の問題、手続の問題がございます。そういう点については逐次改良を加えて今日までまいっておりますが、さらに重要なことは、訴訟に関与する裁判官以外の、裁判所の職員以外の、つまり当事者の裁判の促進に対する協力といいますか、その熱意、これも非常に大きな要素になっております。特に最近問題になっておりますような選挙違反の百日裁判がおくれているというような点なんか、いろいろ理由がございますが、そういうわけで、あらゆる面から総合的に考えて、やはり裁判の促進というものを考えなければならぬ、かように考えております。
  84. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは人をさばくのですから、そう簡単には結論を出すということは、これは非常に問題があることはわれわれも重々常識上わかるのですが、しかし、いま総長から選挙違反の問題が出ましたが、もう現在選挙違反にひっかかっても、まあ衆議院四年間——四年間まるっきりいることは少のうございますが、任期中おそらく結論が出たということは私の経験ではほとんどないのですね。一件か二件あったようですね。そういうことがあると、選挙違反があっても当選さえすればいいんだと、こういう感覚で、まあそういう人があるかないかは別といたしまして、結果はそうなるのですね。したがって、何か機構上の欠陥が——いわゆるいま言われました当事者というのは、弁護士も入りましょうし、また被告も入ると思いますけれども、何かそこに、皆さん方専門の立場におられるのですが、公正にしてしかも迅速に百日裁判のできるような方法というものは考えられないものでしょうかね。
  85. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) まさに御指摘の問題を、たまたま一昨日、東京で全国の刑事裁判官が集まりまして、選挙違反事件をいかにして迅速に処理するかということについていろいろ協議をいたしました。そこでいろいろな問題が取り上げられましたのですが、その概要を、ちょうど刑事局長がおりますので、御説明いたします。
  86. 佐藤千速

    最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 御指摘のように、百日裁判事件と申しましても、昭和四十一年におきまして百日以内で処理されたものと申しますのはごくわずかで、三件にとどまるというようなわけで、百日の趣旨はいまだほど遠い状況でございます。それで、ただいま総長から申し上げましたように、一昨日刑事裁判官の全国会同でもこの問題を取り上げました。実は従前からその促進方につきましていろいろの具体案が、打ち合わせが行なわれていたのでございまするが、その後の実務の経験をも加味いたしまして、さらに具体的な諸方策につきまして協議を行ない、また打ち合わせも行なわれたというような状況でございまするが、もちろん裁判所におきましても、裁判所の内部におきましてもなお訴訟指揮の問題において改善を要する問題もございます。しかしながら、現在の当事者訴訟のたてまえにおきますると、何と申しましても、当事者の検察官、弁護人の協力ということが不可欠でございます。従前も指摘されておりますように、起訴状が非常に多い。訴因の数が六百九十にものぼるというような例も紹介されておるわけでございます。そのために弁護人の準備も十カ月近くも要するというようなことでは、百日の裁判はなかなか実現できないわけでございます。また、弁護人のほうとしましても、つかれる弁護人が遠隔地におられる、あるいはほかの事件をたくさんお持ちであるというような事情もあられて、なかなか期日が集中的に入らないというような悪条件もございます。そこで、これらの問題について、それぞれ、検察庁も弁護士会の御協力もさらに求めまして独力に促進方を行なおうということで、一昨日も打ち合わせが行なわれたというような次第でございます。
  87. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この裁判所の機構については、現在最高裁を頂点にしてたくさんあるのでございますが、簡易裁判所の実情ですね、まあ話題を変えますけれども、この簡易裁判所というのはほんとうに簡単なものの事件をいわゆるさばくところでありますが、これはこの実際の実情は、どういう事件と申しますか、そういうものはどういうものが多うございますか。
  88. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) いま山本委員お話のございました簡易裁判所の事件の種類という問題でございますが、これは民事と刑事とできわめて多種多様に分かれておりまして、ちょっとまあ一口でも必ずしも申し上げかねるわけでございますが、たとえば民事事件でその数のほうから申し上げますと、過料事件、つまりあやまち料の事件が三十万件、それから督促事件といいまして、支払い命令を出すという事件が二十万件というようなのが大口でございます。それから訴訟事件も六万件ぐらいございますし、それから調停がやはり重要で、これが五万件ぐらい、こういうようなことになるわけでございます。それから刑事事件のほうで申し上げますと、これはもう圧倒的に多いのが、いわゆる略式の事件、つまり略式命令というものを出します事件でございます。これが四百万件ばかりあるわけでございますが、その中で特に多いのがいわゆる道路交通違反、つまり交通事件でございます。これが四十一年度におきましては三百八十万件ぐらいあるという統計になっております。そのほかむろん刑法犯の訴訟事件等もあるわけでございますが、まあ大口はそういうことでございます。ただちょっと一言つけ加えますれば、件数ではそういうものが非常に大きいわけでございますが、裁判官の負担という面では、必ずしもこれらのものではなくて、やはり訴訟事件等がウエートが大きいと、こういうことでございます。
  89. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは、この簡易裁判所の判事百九十三名ということになっておりますが、大体これで裁判所においてはこなしていけるという現在の実情なんですね。
  90. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 簡易裁判所の判事は定員は七百三十一名でございますが。
  91. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ああそうですが。
  92. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは、簡易裁判所に関しまする限りは、おそらく裁判所全体の中では一番ゆとりのあるところでございます。そういう関係で、簡裁判事でもある程度は地裁に応援に行ったりしている面もあるわけでございます。むしろ私どもとしては、簡裁の権限をもう少し広めて、たとえば民事事件で申し上げますと、現在十万円以下の事件が簡裁へ来るわけでございますが、それをせめて二十万円あるいは三十万円ぐらいに広めまして、そして地方裁判所の負担を減らして、簡裁へ持っていきたい、こういう希望を持っておるわけでございますが、この点はいろいろ関係方面とも関連がございまして、いまのところそういう運びになっておりませんが、そういう意味ではいまお話しのとおりでございます。
  93. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もう一つ、家庭裁判所の調査官というのは、これはどういう身分の人ですか。
  94. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 家庭裁判所調査官は、やはり裁判所の職員で、裁判所の職員でございますからいわゆる特別職ではございますが、いわゆる広い意味で一般職といいますか、つまり裁判官以外の普通の職員ということでございます。ただ、非常に裁判所の職員の中で特殊性を持っておりますのは、これは裁判官はむろんのこと、書記官も事務官も大体において法律職でございます。しかしながら、家庭裁判所調査官は、大学でいいましても法科出は必ずしも多くない、むしろ少ないわけでございまして、もっとほかのほうの、たとえば心理学とか、そういうような方面の勉強をされた方が多い。そういう面では、技術者的な面を持っているわけであります。
  95. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃあ、大体なんですね、いまの裁判所の各段階に応じた、最高裁を頂点として、いまの裁判制度における人員については、今度ここに要求された若干名の増員によって一応まあ、スムーズというわけではないが、大体それで行けますということでありますね。
  96. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは一応私から説明申し上げて、もし御理解が得られませんでしたら、さらに総長から説明していただければと思いますが、私どもといたしましては、裁判官その他裁判所職員のあるべき姿、一体何人であれば完全に円滑にやってまいれるかということについては、しばしばいろいろな面から計算をいたしておりまして、数年前にも、いわゆる臨時司法制度調査会のときに、裁判官あと五百七十名必要であるというような数字を御報告したこともあったわけでございます。ただ、しかしながら、これも、一体裁判所の事件というものがかなり浮動するわけでございます。一例をとりますと、たとえば道路交通事件にいたしましても、非常にいまふえているというのが常識でございますけれども、しかし四十年から四十一年にかけましては約三十万件減ったわけでございます。これは原因わかりませんけれども。また同時に、道路交通事件の占めますウエートというものがありますから、それが減ったから楽になるということでもございませんが、そういうふうに件数というものはある程度浮動の要素があるので、なかなか最終的に何人が必要かということも出しにくいわけでございます。ただ、今年度計上していただいております増員の関係は、一つには借地借家事件の処理ということでございまして、これはつまり六月一日から借地借家法の改正で新しい事件が来る、それを処理するための人員ということで、本来私どもはもう少しよけいないとできないのではないかという感じといいますか、計算をしておったわけでございますが、何分にも見通しのことでございますから、ともかくまあこの半年やってみて、非常に事件が多発するということであれば、さらに昭和四十三年度においてはもっと一そうの増員をお願いする。それから執行官の関係も、これは法律の附則でもって段階的にやっていっていいことになっておりますが、とりあえず事務官二十名を認めていただきまして、若干の裁判所から進めてまいりたい。したがって、これで全部の裁判所が完全ということではございません。そういうふうにいわば年次計画に盛り込んでいるわけでございます。ただ、本年度——四十二年度におきましては、全体的な公務員のいわば定員抑制という環境のもとにおいては、裁判所としてもこの定員をもってやってまいりたい、かようなことで予算をお願いしたい、こういうようなことになるわけであります。
  97. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この人の問題はその程度にしておきますが、裁判所のいわゆる建物、人をさばく建物ですが、東京地裁は新しい建物で何かモダン的にできているのですが、いなかに行くと、もうやはり重苦しいといいますかね、威厳を持たすというかしらないが、光線の少ない、全く罪が決定しない前に何か人の心を圧するような建物が多いのですがね。最高裁を新築をされるようでありますが、そういう基本的な考え方ですね、裁判所の法廷の構造と申しますかね、昔から法廷というものは神聖なものということでああいう形になっておるのですが、どうも私ら、自分自身はさばかれたことないから、まだ行ったことないですが、昔からそうなっていますが、そういう点はどう考えられますか、法廷の構造について。
  98. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 法廷の構造につきましては、従前からも裁判所の建物の中で最も大事に考えておる場所でございますし、まあ古い木造の建物は木造の建物なりに、それぞれその当時の人がくふうをしてつくり上げてきたわけであります。現在でも古い建物、新しい建物それぞれ混在いたしておりますが、新しい建物の中では、やはり法廷に最も力を注いでつくり上げております。ただ、現状の法廷が広さあるいは装飾等につきまして、必ずしも皆さんに満足のいくようなデザイン等にあるいは材料を使っているかどうかということになりますと、まあ多少御批判もあることかと思いますが、戦後財政の困難な時代に追っかけてきておりましたので、現在から振り返りまして、まだ不十分な——新しい建物でありましても不十分な状況はあるかと思いますが、今後改築に際しましては、やはり、何といっても法廷のあり方、構造、それから当事者の出入り、そういったものをできるだけ中心にした建物を建てていく考えでございます。  最高裁判所の庁合の、法廷に関しましては、これはいずれ一定の一般公開協議によってまあ英知を集めるということになるかとも思いますが、現在の最高裁判所の法廷は壁画等をめぐらしておりまして、終戦当時修築いたしました法廷といたしましては、まずこれ以上のものはできなかったかと思われる程度でございます。
  99. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まあ私の考えるのは、外国の法廷は、私、映画ぐらいで見るだけですので、あれが事実かどうか知りません。何かやはり民主的な、何といいますか、非常にものの言いやすいような空気、雰囲気というものをかもし出すような状態の構造といいますかね、裁判長のすわるところがら証人の席とか、日本の場合は何か固苦しく考えられるんです。しかし、それがひとつのやはり法廷としての使命であるかもわかりませんが、やはり刑事裁判になると、犯人は、それは何といいますか、狂暴犯人もおりますから、なかなかそう簡単にはいかないけれども、何かそういう空気をやわらかにするというあるいは構想というものがあって、私はかえって効果があるんじゃないか、あまりいかめしいような空気であると、犯人なりまた被告人が、何か言おうと思っても、何か押されてしまって沈黙するという環境になると私は常識上思うんですがね。したがって、構造上どういう壁画をかけるとか、そういうことでなくしてそういうことを考えていくべきであるか、それとも、もっといかめしく、入ったらすぐ心の引き締まるような感じのするような構造でいいのかどうか、この点の考え方、だけをひとつ聞いておきたい。
  100. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) ただいま日本の、特に刑事法廷についての御批判ございましたが、ごもっともと思う点ございます。最近できます刑事法廷をごらんいただければ御了解願えると思いますが、最近新しく建てつつある裁判所の刑事法廷は決して暗い空気を与える構造ではございません。元来裁判所というのは、裁判所に訴えたい者はいつでも来なさいといって手を広げていかなければならぬところであるので、そういう圧迫感をまず与えてはいけない。しかし、何分にも法の権威というものを表徴しますので、ふさわしい、ある威厳さと申しますか、そういう重量感は考えなければならぬと思いますが、しかし、そのために法廷の空気を暗いものにしてはいけない。そういう点で、担当の経理のほうでも、単にどういう法廷をつくるべきかということを始終研究いたしております。
  101. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 戦前は弁護士も、あれは法衣というんですかね、冠みたいなのをかぶってやっていたんですが、今日弁護士はそれを着ていない。裁判官は、あれはひとつの制服になっておるんですか。
  102. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 裁判官は、ただいま、いわゆる法服と称しておりますが、これを着ております。法廷に臨むときには必ずこれを着用する。昔のように冠はかぶらないようになりました。
  103. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 やはりああいう普通の弁護士みたいな風でやるということについては、何ですか、やはり裁判官として人をさばくという立場にあるから、何か一つ自分の心も清めるというような意味でもあるのですか、愚問かもわかりませんがね。
  104. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) まず裁判官につきましては、これは裁判官の個性というものを露骨に出すべきものではない。そこで、やはり国家を代表して裁判をするわけでございますから、たとえば背広の色の地が見えるよりは見えないほうが、やっぱりそういう抽象化されたほうがいいというところが趣旨であろうと思います。その点で、戦前は、頭も、私のようにはげておるのはあまりよくないということで、冠をかぶったわけであると思いますが、しかし、いまその点は戦後はなくなりましたので、頭は出るわけですが、外国ではいろいろかつらをかぶる例があるようでございます。弁護士の方につきましてはいろいろ議論がございまして、弁護士会自体でもそういうお話がございます。特に最近は婦人の弁護士がだいぶふえてまいっておりますし、そういたしまして、ことに夏場になりますと、かなり婦人の方が軽装されるということで、法廷にふさわしくないのではないかという議論がこれは各方面にございますが、まあ、一つの研究問題になっているわけでございます。
  105. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは私の意見です。これは専門家じゃないから、そのつもりで聞いていただきたい、一般の国民の代表として。裁判というものは、これは厳格な、きわめて厳粛なものであります、人をさばくのですから。しかし、さばくというのでありますけれども、もう今日、民主主義という一つの思想が徹底してくれば、法に対する観念というものは国民自体持ってきつつあると思うんですね。したがって、あまり外見で支配するというよりも、精神といいますか、気持ちをそういう方面に持っていくという——持っていくというのは、ことばは非常にあいまいですけれどもね、さばく者とさばかれる者——さばかれる者といっても、それは自分が悪いと思っておる者もありますし、悪くないと思っておる者もありますから、その点を考えて、私はなるべくあまり形にとらわれずに、さばく内容に重点を置いたひとつの方向を、構造もそうですし、やり方もそういう方向にやっていくべきではないかと、私はそう思うのです。あとでこれは法務省にもお尋ねいたしますけれども、刑法の改正案もいまつくられておるようであります。その大綱を聞きたいと思いますが、漸次そういう方向に向いておるのじゃないかと思いますね。したがって、法律もそういう考え方で進んでおると思いますが、そのさばく機構と申しますか、裁判所というものも、そういう方向に向かっていくべきでないか。一口に言えば、民主主義にあったようなさばき方というか、その上でスピードアップしていく、こういう方向が私は理想でないかと思うのですが、その点、総長、どうでしょう。
  106. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) まことに同感でございます。昔の法廷、御存じかどうか知りませんが、裁判官が高い壇に上がりまして、それで両わきに検察官、書記官を従えて、被告それから弁護人は一段下に立っておりました。しかも、そのスペースというのは非常に狭いスペース。これは、昔の戦前の刑事訴訟法の手続が、非常に裁判所の職権というものを強く重く見て、裁判官と被告、まあ、これはたとえて申しますと、裁判官と被告との間でやりとりをする、つまり、被告は裁判官に向かって防御する、裁判官は被告に向かって被告の矛盾をついて調べていくといったような方式になりがちなもので、本来の法律の精神はそうではございませんでしたけれども、ともすると、やはりいわゆる昔風のお白洲といいますか、お上の裁判というなにがあったわけであります。ところが、戦後の裁判は、裁判官は冷静な判断者という立場になっております。むしろ法廷での活動は、検察官とそれから被告側の弁護人の法廷での自由な、活発な、つまり、法廷のルールに従った訴訟活動、それを中心にする。そしてそれを冷静に裁判官が聞いて判断する。そういう仕組みでございますので、勢い、法廷の構造というものも、その法律の精神に沿うたようにつくられていくべきものと思っておりますし、現にまた、そういうふうにつくられつつあるわけでございます。
  107. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 最後に、先ほどちょっと触れられましたが、最高裁判所の新築ですが、これは場所は現在のところでやられるのですか。
  108. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 俗にパレスハイツあとと申します隼町でございますか、三宅坂のちょうど道路の分かれますところ、銅像がございます、国立劇場の南側に空地がございますが、あれが、現在のところ、将来の最高裁判所庁舎の敷地ときまっております。
  109. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それは決定いたしましたか、敷地は。
  110. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 最高裁判所庁舎新営審議会の答申でも、現在のところ、あの土地以外にはなかろうということで、私どももこの場所で建てることに決定いたしております。
  111. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、あとの、いまの最高裁判所の建物は何かに利用されるのですか。
  112. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) これはまだ、最高裁判所の新営の庁舎が昭和四十八年ごろに完成する見込みでございますので、その後の利用状況を現在確定的に申し上げるわけにもまいりませんけれども、実は裁判所のございます霞ケ関一丁目一番地のあの一帯がきわめて狭隘でございます。それと、地方裁判所、高等裁判所等で裁判官数も相当あるにもかかわらず、法廷も裁判官室も不足いたしておりまして、いわゆる宅調と申しますか、一週間に三日裁判所に出て、あと三日はうちで執務をせざるを得ない。こういうような状況になっておりますので、あの一角に裁判所を建てるといたしますと、現在の最高裁判所庁舎をそのまま転用いたしましたのでは、なおはるかに面積が足りない状況でございます。したがいまして、さらに今後七、八年たった後の事件数の増加等を考えますと、あの建物のあとに相当面積の大きな建物を建設せざるを得ないのじゃないか、そう予測いたしております。
  113. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これに附随して、最高裁判所を頂点とした各種裁判所の判事の公舎といいますか、そういうものはどうなっているのですか。所長は聞いておるけれども、それ以外の方はどうなっていますか。
  114. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 御指摘のとおり、戦前と申しますか、は所長の官舎と予審判事の官舎、それから検事の関係では、検事正のそういう官舎がありました。ところが、戦後になりまして、いわゆる公務員宿舎法ができまして、この宿舎法にのっとって宿舎が建てられております。裁判所が裁判官の宿舎の建設に着手いたしましたのは、公務員宿舎法の制定前に、予算上の措置として少し建て始めたわけでございます。現在のところは、公務員宿舎法にのっとりまして裁判官の宿舎も建てております。結局、裁判官の等級、あるいは判事、判事補、簡裁判事のそれぞれの等級に応じました規格等が、公務員宿舎法に基づいて漸次きめられてまいりまして、それに従った建物を建てておるわけでございます。ただ、予算上申し上げますのは、一応公務員宿舎関係の経費は大蔵省に計上されまして、大蔵省から裁判官の宿舎建設に必要な経費は最高裁判所に移しかえを受けまして、私どものほうで設計し、建築を進めておる状況でございます。
  115. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大体わかりましたが、私の質問した趣旨は、相当多数の裁判官がおられますが、それは全部そういう公務員の公舎ということで充足されておるんですか、その点だけ。
  116. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) これは現在の状況でございますと、特に大都市でございます東京、大阪、横浜等大都市で、現在のところ、まだ若い人たちが入れないという状況になっております。ただ、これが現在不足数だけを建設すれば足りるということでなくて、実は年数がたってまいりますと、古い人はやめていく、そのあと新しい人が任命されますが、古い人は必ずしも官舎に入っていなくて、自分の持ち家、あるいはそのほか等に入っておられる方がやめられて、官舎の必要な方が任命されてまいりますと、そのとき必要戸数として浮かび上がってまいるわけでございます。そういう点で、相当期間、ある程度の不足というものが浮かび上がってはまいりますが、現在では、大都市の官舎が若い人たちに少し行きかねておるという現況でございます。ただ、いなかのほうに参りますと、きわめて古い建物、宿舎がございまして、これは改築していかなければならないような状況でございます。
  117. 二木謙吾

    主査二木謙吾君) 速記をやめて。  〔速記中止〕
  118. 二木謙吾

    主査二木謙吾君) 速記を起こして。  以上をもちまして、裁判所についての質疑は終了したものと認めます。     —————————————
  119. 二木謙吾

    主査二木謙吾君) 次に、法務省所管を議題といたします。  まず、政府側から説明を聴取いたします。田中法務大臣。
  120. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) 昭和四十二年度法務省所管の内容につきまして、その大要を御説明申し上げます。  昭和四十二年度の予定経費要求額は六百六十九億二千百八十四万一千円でございます。このほかに官庁営繕費として建設省所管予算中に別に五千五百三万三千円が計上されております。前年度当初予算額五百九十四億八千五百六十万二千円と比較いたしますと、法務省所管分は七十四億三千六百二十三万九千円の増額となっております。なお、前年度の補正後の予算額と比較いたしますと五十八億四千四百三万二千円の増額となっております。  増減の詳細は別途の資料によりまして御承知おきいただきたいのでございますが、増額分の内容を大別して御説明いたしますと、第一に、人件費関係の四十九億七千四百四十五万九千円であります。これは、昨年実施されました公務員給与ベースの改定に伴う増額分及び昇給等原資としての職員俸給等の増額分がおもなものでありますが、そのほかに、検事、副検事、法務事務官等三百五十名の増員、ただし、組織内部のいわゆる凍結欠員解除によりまして充当いたしました分を含めますと、これに伴う所要人件費が含まれております。  この際、増員三百五十名の内容について申し上げますと、公判審理を迅速化するための検事五名、交通事件、特に業務上過失致死傷事件処理を適正迅速化するための副検事二十二名、非行青少年対策を強化するために二十五名少年院補導力の強化、教官十五名、少年鑑別所観護の強化、教官七名、保護観察所機能の充実、保護観察官三名。登記事件の増加に対処して、その事務処理を円滑適正化するため事務官二百名、暴力団関係収容者の増加に対処して、刑務所における保安警備を充実するため、看守七十八名、出入国審査業務の適正・迅速化をはかるための舟艇要員として入国警備官三名、破壊活動調査機能の充実をはかるため公安調査官十五名、法務本省の人事管理業務の充実をはかるため法務事務官一名、法務総合研究所国際連合研修協力部の業務充実をはかるため法務事務官一名となっております。検事、副検事につきましては検察事務官の欠員より振りかえ、また、法務事務官等三百二十三名につきましては、内部組織の凍結欠員のの方法により振りかえ充当することとなっております。  第二に、一般事務費としての十一億三千五百九十万八千円であります。これは事務量の増加に伴い増額されたもののほか、積算単価の是正、職員等の執務環境の整備改善及び矯正関係等収容者の処遇の改善に伴う増額分等であります。  なお、この中には本年四月に実施されます地方選挙の公正を期するため、適正な検察を行なう必要がありますので、これに要する経費として七千百七十四万二千円が計上されております。  第三に、営繕施設費の十三億二千五百八十七万二千円であります。これは、法務局等施設の新営費等として五億八千三百八十七万二千円、静岡刑務所の国庫債務負担行為契約に基づいて静岡市の建設した施設を取得する経費として七億四千二百万円が増額となっております。  次に、おもな事項の経費について、概略を御説明申し上げます。  第一に、外国人登録法に基づき、在日外国人の登録及び指紋採取の事務を処理するために要する経費として一億五千九百一万円、  第二に、法務局、地方法務局等において登記、台帳、供託、戸籍等の事務を処理するために要する経費として十億四百九十一万七千円、  第三に、検察庁において処理する一般刑事事件その他各種の犯罪事件に対する直接検察活動に要する経費とし七億九千四百七十三万円、  第四に、拘置所、刑務所、少年刑務所、少年院、少年鑑別所、婦人補導院の昭和四十二年度一日平均収容予定人員合計七万七千九百三十人の衣食、医療および就労等に要する経費として六十九億六千六百四十七万九千円、  第五に、犯罪者予防更生法、更生緊急保護法及び執行猶予保護観察法に基づき、保護観察に付された少年、いわゆる刑余者及び執行猶余者等を補導監督し、これを更生させるための補導援護に要する経費として十億七千九十一万四千円、  第六に、出入国管理令に基づき、出入国の審査、在日外国人の在留資格審査の事務を処理し、不法入国者等の護送、収容、送還を行なうに要する経費として九千九百三十四万一千円、  第七に、公安調査庁において処理する破壊活動防止のための調査活動等に要する経費として九億八千八百三十三万四千円、  第八に、法務局、検察庁等の庁舎及び刑務所、少年院等の収容施設の新営、整備に要する経費四十五億五千百三十六万六千円で計上されております。  以上が法務省所管歳出予算予定経費要求の大要であります。  最後に、当省主管歳入予算について一言御説明申し上げます。  昭和四十二年度法務省主管歳入予算額は三百十五億八千百六十九万四千円でありまして、前年度予算額三百七億五千八百五十八万三千円と比較しますと、八億二千三百十一万一千円の増額となっております。これは、過去の実績等を基礎として算出したものでありまして、増額となったおもなものは、罰金及び科料と刑務作業収入であります。  以上、法務省関係昭和四十二年度象算についてその概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議を賜わりますようお願い申し上げます。
  121. 二木謙吾

    主査二木謙吾君) ただいまの説明に対し質疑のある方は、順次御発言を願います。
  122. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ、まず最初に法務省関係職員の定数を先にちょっと聞いておきたいと思うのですが、私これから伺いますから、いわゆる検事、副検事、教官、保護観察官、事務官、公安調査官、入国警備官、看守、これに漏れておる者があれば、それもつけ加えて、定数と現在員を、ちょっと関係の方から、担当の方からひとつ。
  123. 羽山忠弘

    説明員(羽山忠弘君) 検事の定数は、最高検察庁から地方検察庁まで合算いたしまして一千八十二名でございます。それで現在約二十数名の欠員がございます。それから副検事でございますが、副検事は定数が七百六十二名でございまして、これは現在欠員が約三十名ございます。その次のお尋ねは、恐縮でございますが、何で……。
  124. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 教官ですね。
  125. 羽山忠弘

    説明員(羽山忠弘君) 少年院の教官でございますか。
  126. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 教官という職名があるんじゃないですか、少年院あるいは全部含めて。
  127. 羽山忠弘

    説明員(羽山忠弘君) 教官に二通りございまして、法務総合研究所で教えておりますのも教官でございますが、これは少年院の非行少年を取り扱っておりまする教官とは多少性質が違いますので……。
  128. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 少年院の教官。
  129. 羽山忠弘

    説明員(羽山忠弘君) 少年院の教官の定員は二千二百三十四名でございます。そして約百名が欠員でございます。それから、同じく教官と申し得る者に少年鑑別所の職員がございまして、それは定数が八百二十二名でございまして、六名欠員となっております。それから刑務所でございますが、刑務所の看守、看守部長、看守長、副看守長といろいろ職名がございますが、いわゆる監獄職員と申しますものの定数は一万五千八十一人でございまして、現在員は一万四千八百八十九人でございます。それからまだ何か残っておりますでしょうか。
  130. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 公安調査官、入国警備官、それから法務事務官というのはこれは何ですか。法務省一般職員のことですか。
  131. 羽山忠弘

    説明員(羽山忠弘君) さようでございます。
  132. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それも一緒に。
  133. 羽山忠弘

    説明員(羽山忠弘君) 入国関係で申し上げますと、定数といたしまして七百九人でございまして、現在員が六百九十九人でございます。それから公安調査官の定員は千六百五十五人でございまして、現在員が千五百七十四人でございます。いま現在員と申し上げておりますのは、去る三月三十一日の現在員でございます。
  134. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それから法務省関係一般職員ですね、事務官は。
  135. 羽山忠弘

    説明員(羽山忠弘君) 法務省関係一般職員は、これは御承知のように、行政職の一等級と行政職の二等級に分かれるわけでございまして、行政職の一等級を申し上げますと、七千百八十九人が定員でございまして、現在員は六千七百九十二人でございます。
  136. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いま一等級と言われましたが、行政職(一)表の該当者が七千百八十九人ですね。
  137. 羽山忠弘

    説明員(羽山忠弘君) さようでございます。
  138. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それから保護観察官、これは別にあるのですか。
  139. 羽山忠弘

    説明員(羽山忠弘君) 保護観察官でございますが、定員が七百六十九人でございまして、現在員が七百三十一人でございます。
  140. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、法務省関係の現在言われた、定数、現在員、これをトータルしたものがそうなんですか。それとも、まだ行(二)の関係の方もあるんですか。法務省関係総数で幾らになりますか。
  141. 羽山忠弘

    説明員(羽山忠弘君) ただいま申しましたほかに、なお法務省の中には、研究職あるいは刑務所の医者のような医療職のような者が少しずつおりまして、総数を申し上げますと、法務省職員全体は、定数が四万七千八百十九人でありまして、現在員は四万六千六百五十二人でございます。
  142. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 わかりました。それで若干、時間もそうとれないと思いますが、検事、副検事は、これは別の給与体系で裁判官に準じてやられておるのですね。どうですか、給料表は。
  143. 羽山忠弘

    説明員(羽山忠弘君) 検事、副検事は、検察官の俸給に関する法律というのを適用を受けておるわけでございます。
  144. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それは大体裁判所の判事に準じたような給料表ですか。
  145. 羽山忠弘

    説明員(羽山忠弘君) 上のほうは多少違いますが、大体判事に準じております。
  146. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そのほか、いま言われた教官と、保護観察官、それから看守、これらの看守は公安職を準用されていると思うんですが、公安職でやっていると思われますが、その他は一般の行政職(一)表でやっておられるのですか。たとえば保護観察官、あるいは公安調査官、入国警備官、これらはやっぱり一般行政職(一)表の給料表でやられているのですか。
  147. 羽山忠弘

    説明員(羽山忠弘君) 御承知のように、行政職の(一)俸給表というのと、行政職の(二)の俸給表というのとございまして、それから公安職にも(一)と(二)があるわけでございます。それで刑務所の関係で申し上げますと、公安職の(一)が監獄職員でございまして、それから保護観察官は行政職(一)の俸給表に調整をつけるという特別な扱いをいたしております。それからあと少年院、少年鑑別所の教官等につきましては、別途、公安職(二)のほうの俸給表の適用を受けておるというふうになっておりまして、医療関係は、また医療職の俸給表というわけでございまして、全部が行政職(一)というわけではございません。
  148. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ、これは法務大臣にお聞きしたいのですが、先ほど裁判所の予算をいろいろやったのですが、裁判が非常におくれておるという、これは裁判所側の意見では、もちろん、裁判所の相当責任もあり、欠陥もあるけれども、裁判の当事者、すなわち検事、弁護人という方の御協力も非常に得なければ、百日裁判とか、あるいは裁判を迅速にやることができないというお話があったのですが、いま定数を聞きましたが、裁判官の数から見ると、検事、副検事合わしても数が非常に少ないように思うのですね、定数だけを見ましても。現在の検事の数で検察業務が円滑にいけるのか、いいのかどうか、この点、ひとつまず法務大臣に聞いておきたい。
  149. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) おことばをいただきまして、たいへんありがとうございます。現在の員数で十分であるかというおことばに対するお答えといたしましては、たいへん窮屈な、不十分な——ありていに申し上げますと、不十分な現状でございます。それで、検察官は申し上げるまでもないことでございますが、訴訟手続の上から明らかでありますように、裁判に立ち会います立ち会い検事のほかに、事件を起訴してまいります、公判を維持してまいりますための捜査の検事が重点でございます。そういう点から申しますと、起訴になりました、公判請求をいたしましたもののほかに、略式命令もございます。また、そういうふうに公判もしくは略式で起訴をいたしましたもののほかに、起訴猶予処分、不起訴に付しましたものの中で相当手数をかけて捜査をいたしますような事情のものが多いわけでございます。そういう点から申しますと、おことばどおり、非常に窮屈な思いをいたしておりますが、年々歳々努力をしておりますが、国の財政の現状にも照らしまして、本年もこの程度の増員でがまんをして、しっかりがんばろうということを決意しておるような次第でございます。今後十分にこれを強化をいたしまして、裁判所の員数に追いついてまいりたい、こういう努力をいたしたいと存じます。
  150. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 実は法務大臣、私も昭和三十五年の安保のときに、問題ありまして告訴したのですがね。もちろん、まあなかなか検察調査はむずかしかったかしれませんが、ようやく呼び出されたのが一年半後なんです。だから、もうそうなったら結局、証拠があがらないということで不起訴にしたらしいのですが、ぼくらのことだから、検事も相当誠意を持ってやったものと思いますが、それでもそういう状態です。しかも、暴力関係の犯罪が相当ふえてきておりますからね。いまのような状態で、検察業務が実はもう円滑に実情に応じてやれるかどうかということを私ちょっと心配しておるのですが、いま法務大臣は、極力窮屈な人員を総動員してやるということですが、現在の状態では、検事、副検事は大体検事と同じような活動をしているのですか、権限は一緒ですか。検事と副検事と同じ検察権の権限を持ってやっているのですか。その点どうですか。
  151. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 大体において刑事訴訟法上の権限は同じでございますが、検事は地方検察庁のほうに主として配属いたしまして、地方検察庁の事件を処理するということをたてまえとし、副検事のほうは区検察庁に配属いたしまして、主として区検察庁の事件を処理させるということをたてまえにいたしております。
  152. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そういうことですから、これはおそらく予算もあるし、国の財政もありますから、検事だけをはなはだしく増員するというわけには、それはおそらくいかぬだろうと思うのですが、検察業務の内部を私は十分知りませんが、ひとつ何とか能率を上げるような方向でやれないかと思うのですね。もちろん人権尊重もありますから、その点もありますけれども、この点について関係の方々どうでしょうね。大臣はそう言われたのですが、実際問題で、いまの実情で満足というわけにいかないが、いけるかどうかですね。
  153. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 大体裁判官の増員に比例いたしまして、検察官の増員がなされておる状況に相なっておりますが、全体の数を比べてみますと、御承知のように、裁判官のほうは刑事だけではございませんで、民事のほうも担当いたしております部門もありますので、刑事を担当いたしております裁判官の数と、それから検察官の数とを比べてみますというと、大体裁判官と検察官の数が比例をしておることになるわけでございます。  なお、裁判官もたいへん多忙でございますけれども、検察官も一般行政官に比べまして、非常に多忙な職務を遂行しているわけでございますが、最近特に問題になっておりますのは、御承知のように、道交法の事件が非常にふえたということでございまして、事件そのものは、ほかの事件に比べまして簡単でございますけれども、何といたしましても数が多いということは、やはりそれだけ事務の面で手数がかかることでございますので、年間約五百万件に及ぶ道交法違反を警察から送致を受けておるわけでございますけれども、この処理に検察庁が非常に難渋をしておるわけでございます。そこで、何とかこの道交法の処理について多少なりとも手をあけるような処理が法制上許されるならば、そこの余力をもって一般の刑法犯の事件について、検察として本来の姿に戻って力を注いでまいりたい。片や、その面とともに、あわせてまた、先ほど大臣がお述べになりましたように、できる限り国の予算の範囲内におきまして、人員の補充を受けるとともに、また検察部内の教養ということにもつとめて、この難局に対処してまいりたい、かようなことを考えておるのでございます。
  154. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 次に、外国人登録事務に一億五千九百一万円、これは在日外国人登録及び指紋を採取して、これはどこで保管されておるのですか。検察庁ですか、どこでこれは保管されていますか。
  155. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 入国管理局のほうでいま処理しております。
  156. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは外国人というけれども、実は朝鮮関係の人だと思うのですがね。これは法律審議のときにもいろいろ問題になったのですが、その指紋は、ここではその善悪は申しませんけれども、どういうところに利用されるのですか。その指紋を採取して保管をして、どういうところに御利用されるのですか、現実にその必要があるかどうかということ。
  157. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 結局、何といいますか、外国人が相当多数在留しておりますので、朝鮮の方ばかりでなくて、ほかの方全体につきましても、その在日中におけるいろいろな動向あるいは在留のための手続その他につきまして、日本人と違いまして、いろいろ姓名とか、あるいは住所の移動とかいうふうなことが、必ずしも的確にそのつどつかめませんので、そういうふうな面におきましてもやはり確実にそれをつかむことができる、やはり指紋を整理しておくことが、入国管理の行政事務遂行の上においては必要かと思います。
  158. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 最近、なんですか、いわゆる密入国という事件は相当ありますか。
  159. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 今日でも減っていない状況だと思います。
  160. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 減っていないというのは、そういう実情はどうですか、数字で言えば。
  161. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 入国管理局のほうで数字を持っておると思いますけれども、私、刑事局長でありますので、確実なことはわかりませんが、やはり密入国は大体刑事事件になって私のほうにも参りますので、そういう数字の面から見ましても、必ずしも減少していないということは言えると思います。
  162. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 きょうはその関係の方おられないのですね。
  163. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) 間もなく来るように、呼びますから……。
  164. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ来られてから聞きたいと思います。  それまでにもう一つだけ聞いておきたいと思いますが、こういう機構の関係で法務局がありますね、いわゆる土地とか何とかの台帳なんかを扱う、法務局関係の人も来ておられませんか。
  165. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) 民事局が来ております。
  166. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 法務局が、都会付近の法務局はいいのですが、いなかに行くと、全く人員の整備がされていないのですね。何か夫婦二人で泊り込みで台帳をやっておる。どうもわれわれとしては、権威ある法務局がそういう状態でどうかと思って——これは私の私見ですが、いっそのこと、市町村にこれを事務移管をしたらどうかということを言ったのですが、法務大臣はその見解はどうでしょうか。
  167. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) おことばのように、いま先生仰せをいただくのは、法務出張所と申しておりますものです。これには数ばかり多くて、一人庁——役人が一人しかいないというような出張所が非常にたくさんございます。これを統合いたしまして、お役に立つようにという計画も、ずいぶん古くよりなみなみならぬ努力を重ねておりますが、統合といいますと、どこかが欠けて、どこかにこれを併合するということになりますので、その欠けるほうが、従来どおり一人でもいいから置いておいてくれ、役所がなくなることは不便であるという御希望が民間に多うございまして、なかなかこれが、有力な人、が背景となられてそういうおことばが出てまいりますと、統合がうまくまいりません。そこで統廃合という問題が、ある意味においては民意尊重をいたします立場からは、行き詰まりという状態になってきておるような現状でございます。しかしながら、いま仰せのように、権威というものの上から申しますと、やはり将来は一人庁は廃止の方向に持っていきたい、たとえ甲と乙との地域、どちらかに統廃合します場合に、ごきげんが悪いということならば、新たにその地域のまん中に持っていく努力をいたしましても、経費がかかるわけでございますが、そういう努力をしてでも、やはり統廃合を思い切ってやりまして、一人庁をなくする方向に向かってひとつ年数をかけて努力をしてみたい、こういう考えでございます。
  168. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あれはいなかへ行くと、いま言われたように、それは遠いと不便ですからね、置いてもらいたいという希望が多いと思うのですが、いま申しましたように、何でしょうか、法務省の管轄に置いておかなければならぬこともわかるのですが、戸籍事務も、これも法務事務の一つですからね、市町村長に機関委任をしておりますが、そういう関係で、いわゆる指揮系統は法務大臣でいいんでございますが、場所なり、そういうものを市町村の役場に置いておくと、私は非常に便利であると思うのですね、利用者のほうから見ますと。そういうことを考えられたほうが、能率的で経済的でいいと思うのですが、その点どうでしょう。
  169. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) 新しいアイデアでございまして、一つの考えであると存じますが、どうも国民の権利義務に関する重要なる国の事務という立場から考えまして、なかなか踏み切りにくいものでなかろうかと存じます。しかし同様大事な戸籍の事務につきましては、御承知のとおりに、市町村がこれを所管してあやまちなくやっておる、それは法務省が監督をしておるという事情になっておりますので、この新しい御構想については、ひとつ真剣に検討をしてみたいと考える次第であります。一つの方法であると存じます。
  170. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは時間も休憩なしでありますから……。実はきょう特に大臣なり関係者なりにお聞きしようと思っておるのは、いま法制審議会で刑法の改正案が熱心にやられておる。しかも、たびたび新聞に出て、なかなかまだ日にちはかかるけれども、相当進捗しておるようでありますが、今度の刑法改正の理由といいますか、目的と申しますか、それの概略と、それからおもなる内容ですね、その点をひとつ関係の方から。
  171. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 刑法は、御承知のように制定されましてからおよそ六十年を経過することに相なるわけでございますが、その間におきます社会情勢の変化とか、あるいは国民感情の変遷とかいうふうなこともございまするし、また戦後におきましては憲法の改正という、法律の基本法が大きく改正を受けまして、その憲法の改正を受けまして、また国の基本的ないろいろな法令が改正をしておるというふうな現実もございまするし、それらの法制と刑法との調和、バランスの問題はいかがなものであろうかというようなこと、それから、六十年間におきまするところの刑法理論の発展、あるいは内外の判例の積み重ねというようなこともございますので、このような大きく申し上げまして三つの大きな柱を考えまして、いままさにこの日本の刑法に対しましても、基本的にその全体にわたって再検討を要する時期ではなかろうか、かように法務省としては考えたものでございまして、かような観点から、法制審議会に改正の要否、その必要があるとするならば、その参考案を示されたいというような諮問をしておるわけでございます。  なお、その第二の御質問の点でございますそのおもなる点でございますが、こまかく申し上げますというと非常に切りがございませんが、ごく大づかみに大綱だけを二、三申し上げてお答えにしたいと思います。  第一の点は、やや抽象的になりますけれども、近代刑法の基本的な根本原理と言われております責任主義、それから罪刑法定主義、こういうふうなものの考え方を現在の近代的な刑法に当てはめまして、現行法よりはやや一歩進めてまいりたいというようなことから、この犯罪の成否でありますとか、刑の体系でありますとか、あるいは刑の適用というような事柄に関します刑法の総則の規定を整備すべきではなかろうかというのが第一点でございます。  それから第二点は、刑法でいわれておりまする目的主義、ないしは人道主義というふうなたてまえから申しまして、刑事政策的な面における刑法における実現発展を期すべきではないかというようなところから、具体的には保安処分でありますとか、あるいは常習累犯者に対する不定期刑の問題でありますとかいうことを、新しい角度から研究してみたいというのが第二点でございまして、第三点としましては、学説、判例の発展に対しまして、刑法各則のたくさんございますそれぞれの法条の法定刑の均衡の問題でありますとか、構成要件のきめ方の問題でありますとか、そういうふうなことについて、あらためてスポットを当てて研究してみたい。それから非常に古い法令で、かたかなでむずかしくなっておりますのを、近代の国民一般の感覚に合いますようにやさしい表現に直す必要はないだろうか。  以上申し上げました四点が、この改正のための方向の主眼点というふうに取り上げておるわけでございます。
  172. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この審議会でやられておる刑法の実体法に対していまお話を聞いたのですが、これに伴う手続法の刑訴法についても、付随してやられておるのですか、これはどうなんですか。
  173. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 刑法改正を打ち出すときに、どちらを先にすべきか、また同時にやるべきかということについて、多少事務当局で議論をしたわけでございますけれども、結局法務省の考え方といたしましては、実体法であるこの刑法の改正をして、それに沿うような刑事手続法をそれに沿ってまた研究していくのが筋であろうということと、刑法は、先ほど申し上げましたように、たいへん古い法律でございますが、現行の手続法は、御承知のとおり二十四年になって制定されたばかりで、まだ日が浅いということもございますので、いずれ刑法の改正ができ上がりましたら、続いて刑事訴訟法の改正を研究してみたいと、こういうふうなことを考えております。
  174. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その大づかみなことで、なかなか具体的にものを尋ねていくには時間がございませんが、大体何ですね、目的主義、いわゆる主観主義といいますか、あるいは特別予防主義と申しますか、そういう大体傾向というもの、いわゆる刑事政策的な方向に刑を改めていこう、こういう方向は前から、明治以来からずっときておりますね。そういう方向を進めようという大体の考え方ですね。基本的にいえば。ひとつ何か刑罰の例を一つとって教えてもらったらわかりいいと思います。
  175. 川井英良

    政府委員(川井英良君) いろいろ考え方があろうかと思いますけれども、いま御質問の中にありましたような目的主義、あるいはその一つのあらわれとしての刑事政策的な面の強化ということは、確かにこの審議会の一つの大きな柱であることは、そのとおりでございます。そこで、いま申し上げましたような観点から、具体的な問題といたしましては、いろいろあろうかと思いますけれども、一つは保安処分の導入というようなことが、具体的には、第三小委員会はこの保安処分だけに限ってほとんど三年間ほど研究をして、その成案を得るために努力しているというようなことでございます。各国ともに保安処分については研究がなされているようでありますが、まだわが国には、刑法の制度としては保安処分は導入されていないわけでございますが、精神障害者の犯罪が多い今日、特にこの制度の必要性というようなことがあるのじゃなかろうかというような問題、それから、先ほどちょっと触れました常習累犯者に対する不定期刑の制度を導入するというようなこと、あるいはまた一つ、宣告猶予の制度をこの際導入してみたらどうであろうか、起訴いたしまして、判決をする場合に、すぐに有罪とか無罪とか、あるいは執行猶予とか、有罪にして執行猶予にするというのが現在の状況でございますけれども、その情状、ないしは被告人の現在の反省の程度というようなことを勘案いたしまして、刑を宣告するのを猶予するというようなところが、諸外国にも一、二出ておりますけれども、そういうような制度を導入することによって、それとタイアップいたしまして、量刑の面における観察ないしは矯正というような面もにらみ合わせまして、犯人の個別的な改過遷善をはかって、刑事政策の実効を遂げていくという面からの研究というようなこと、まだこまかい点で二、三ございますけれども、そんな点が目的刑主義の具体的なあらわれとしてあげることができるのではなかろうか、こう思っております。
  176. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私はそういう方向を、詳しいことは、なかなか時間の関係で尋ねられませんが、その一般的傾向を考えておられる傾向というのは非常にいいと思うのです。しかし、ただいま世間一般では、非常に犯罪がいわゆる凶悪化してきている。したがって、目的刑主義あるいは教育刑主義と言って刑政策的に考えているけれども、それがために一般の予防主義というものが非常に薄らいできている。そういう凶悪犯罪というものがいわゆる予防できないという主張をする人も一部にあるのですね。これは私は刑法自体の、いまの世界の学者なり、あるいはそういう方々の考えている方向はいいんですが、日本の場合、そういう一つの実態と申しますか、犯罪の実態から見て、これもゆるがせにできないのじゃないかという危惧もするのですが、実際問題として、今日非常に、特に青少年の凶悪犯罪が戦後多いということ、もちろん、年齢もいかないのでございますから、刑をそういう保安処分ですね、いろいろ将来を教育していくということは社会的に正しいと思いますが、その点の調和というものは、非常に議論もあるかと思うのです。この審議会の中でそういうものの議論があったかどうかということを、御存じであれば、ひとつ聞かしていただきたい。
  177. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 御承知のように法制審議会は、いろいろな方を網羅して委員に委嘱しておりますので、目的刑主義を妥当だという委員の方ももちろん多いのでございますけれども、反面、また反対の意見を主張する委員の方も相当数おられるわけでございまして、一つ一つの問題について真剣な、また激しい議論が続けられていることは御想像のとおりだと、こう思うわけであります。  そこで、ちょっと話がそれるかもしれませんけれども、犯罪の趨勢というものは、ずっと統計面で見ますというと、少年を除いた成人の刑法犯、先ほどの暴行とか何とかというのを除きまして、刑法犯の統計というのは、大体ここ長い期間見まして、横ばいの状況になっておるわけであります。必ずしも数においてふえているわけではございません。いまちょっと御質問にもございましたように、刑法犯の中で、私ども粗暴犯と呼んでおります殺人とか強盗とか強姦とかいうような、そういう三面記事に載るような事件は、主として少年層にふえている、増加を示しているわけでございまして、この犯罪情勢の分析から申しますというと、事件はふえておりますが、道交法、あるいは道交法による人身事故の業務上過失傷害事故が非常にふえておりますけれども、それ以外の事故は、成人のところではあまりふえておらない。横ばいの状態でふえておらない。青少年の関係のところで、粗暴犯が顕著な増加を統計的に示しているというのが、最近の実情になっているわけであります。青少年の関係につきましては、御承知のように家庭裁判所の専管といたしまして、個別的な処遇の目的刑主義の徹底した措置がとられておりますが、成人の関係におきましては、検察官が主になりまして、刑事訴訟法の刑事事件としての取り扱いで、こちらのほうは、先ほどお話がありましたように、どちらかというと一般予防的なものをある程度強調いたしまして処理が行なわれている。こういうふうな実情に相なっておるわけでございます。
  178. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もちろん、その犯罪という行為があって、初めて刑法が動くのですから、少年凶悪犯の少年の犯罪というものを、これを予防しようといえば、結局教育指導という方向が前提になると思うのですが、非常に今日一番われわれとして憂うべき社会現象というのは、少年の凶悪な行為、これが一番大きい問題です。それと暴力団と申しますか、こういう問題が私は一番社会悪として考えなければならぬ。そういう問題も十分検討して、刑法の改正というものを考えられておると思うのですが、きょうは時間もないし、あまり深く聞けませんが、どうかひとつこの点については十分やっていただきたいと思うのですが、ただ手続の問題として、あの法制審議会の刑事法改正特別部会ですか、その結論が出て、それから法制審議会全体の会議にかけられて、それからあれは総理大臣ですか、法務大臣ですか、答申をする。法務大臣に答申をされて、それから政府で実際の法律改正に着手する、こういう段取りになると思うのですが、そのとおりですか。
  179. 川井英良

    政府委員(川井英良君) おおよその筋書きはそのとおりでございます。
  180. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、実際この刑法の改正が国会の問題となるには、相当日にちがだいぶおそくなりますね。大体政府はいつごろのめどでこれを諮問されたのですか。
  181. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 三十八年五月に、中垣法相のときに諮問されまして、そのときに、この法案は基本法でありまするし、国民の生活に密着しておる法令である、国民感情からも考えまして、何年の何日までというふうに期限を切ることは、各国のあれを見ましても適当でなかろうと、しかしながら、漫然と何十年もかかってやってみても、これは事務として適当でないということで、諮問の際に大臣からは、でき得べくんば、なるべく早くやっていただきたいのだが、三年ぐらいをめどにしてやっていただきたいという意向は、一応諮問の際に示しております。去年の五月に、ちょうどその三年がきているわけでございますが、法務省が希望しておった期間をちょうど一年ほど今日経過していることに相なります。
  182. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もう一つ。これは常識的な考えで聞いておきますが、死刑廃止論というものが相当学者の間で論議されておりますが、それについては、この審議会では問題になっていないのですか。
  183. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 第二小委員会だったと思いまするが、その主管になっておりまして、死刑廃止の問題をずっと引き続き検討中でございます。
  184. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 法務大臣はなかなかこの法律には明るい方ですから、死刑廃止については、あんた、ここで言えるだけの意見を、ひとつあんたの意見はどうでしょう、死刑廃止論についての。
  185. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) ただいま川井刑事局長から御報告を申し上げましたように、法制審議会に委嘱をいたしまして、法制審議会は過去四年にわたって、死刑ばかりを論じているわけではございませんが、一応の審議をしておる最中でございます。結論が出ておりません。そこで私が、にわかづくりの大臣が、死刑廃止についてこうだということはいかがかと存じますので、以下申し上げますことは、法制審議会を拘束する心で言うのではないのだと、しかし、いやしくも法務大臣としての立場で、死刑廃止をいかに考えるかというおことばに対しては、発言をせぬわけにいかぬと、決して法制審議会を拘束するものでないという意味で、そういう前提でちょっと一口申し上げますと、私はこの死刑は全面的に廃止すべきものでないと思う。  その理由は、被害者の霊並びに被害者の遺族の立場を深く考えることが、国家刑政の重大な目的の一つであるというように考えるのでございます。しかし現行の死刑は、御承知のとおり、人の命をとった場合ばかりではございません。それ以外にも死刑に処する、いわゆる外交上の内憂外患に関する罪につきましても死刑に処しておりますが、総じて申しますと、残酷な手段で人の命を奪ったという場合に限って死刑になっておると言うても、言い過ぎではないと思います。大体そういうことに限られておる、実際は。  そこで私は、残酷なやり方で人の命を奪った者に対しては、これは死刑を廃止すべきものでない、断固たる態度で霊に報いるべきものだ、また遺族の期待に報いるべきものだ。これが法秩序を維持し、わが国の刑政を維持していく上から絶対の必要要件である、こう考えております。しかしながら、命をとる以外の犯罪、たとえば交通に関する犯罪等につきましても、人の命をとらなかった場合があろうと存じます。それから、政府転覆その他に関しまする犯罪でありましても、いわゆる政治犯というようなものについての死刑の規定は廃止すべきものである、自然人の命をむごい手段で奪った場合の残虐な犯罪に関しては、死刑は存置すべきものである、こういうふうに考えております。
  186. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 法務大臣とここで議論するということは、私もそういう資格はありませんが、ただ前提として、いわゆる残虐な方法、人を殺すということにもいろいろ、種類というとおかしいですけれども、きわめて残虐な方法でやったというものについては、やはり応報主義的に、死刑というものはある程度存置すべきであろう、これはあなたの私見だと、それはひとつ参考までに聞いておきたいと思います。  それで、刑事局長、一つ聞きますが、死刑を現在廃止しておるような各国、先進国のうちにありますか、死刑制度を刑法からなくしておるという国は。
  187. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 正確なことを申し上げる資料を持ち合わしておりませんが、私の記憶によりますと、ソ連が一時廃止をしたことがございます、数年前、そのうち間もなくまた復活した模様でございます。それからイギリスは、先年たしか死刑を刑法から削っているはずでございます。おもなところでは、そんなところじゃなかったかと思います。
  188. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 入国管理の問題で一つだけ残しておったんですが、最近いわゆる三国人といわれる朝鮮からの密入国の数の傾向、実態わかりますか。
  189. 辰巳信夫

    説明員(辰巳信夫君) 数字のことになりますが、昭和四十年までは、朝鮮半島からでございますが、検挙いたしました密入国者の数が千四百五十六ということでございます。それは昭和三十年から大体同数、千五百前後ということでございましたが、昭和四十一年に入りまして、それにプラス検挙いたしました不法入国者の数は七百五十九ということで、大体半分ぐらいに減少いたしておるということでございます。
  190. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 朝鮮以外、いわゆる世界のどこの国からでもいいんですが、密入国した数はわかりますか、ほかの国から。
  191. 辰巳信夫

    説明員(辰巳信夫君) 朝鮮に次ぎましては中国でございます。これは台湾及び中共本土も含めまして、大体四十一年が三十名でございます。これは大体昭和三十年以後その前後の数を続けております。その他が、昨年四十一年が七名でございまして、この数も、その他の数といたしましては、昭和三十年から大体大同小異というふうに御理解いただければよろしいだろうと思います。
  192. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 朝鮮半島を除いては問題にならないのですが、朝鮮半島が一番多いんですが、これもやはり日本で働きたいという希望で来る人も多いんですか、それとも何か、物の販売をやるとか、そういうことですか、その点わかりませんか。
  193. 辰巳信夫

    説明員(辰巳信夫君) いま御指摘のように、朝鮮半島からの不法入国者の動機と申しますか、目的の第一は、やはり出かせぎという者が多かろう、それともう一つございますのは、在日朝鮮人が六十万人近くございますので、それの肉身者と申しますか、縁故をたどってくるという者も多うございます。大体こういう二つにしぼれるのではないかと考えております。
  194. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その場合、そういう者は検挙といいますか、発見された場合の措置は、送還されるのですか、どういう措置をとっておられるんですか。
  195. 辰巳信夫

    説明員(辰巳信夫君) 検挙されますと、刑事手続に乗りまして、裁判を受けるものが大半でございますが、刑事裁判が終わりまして、今度は入管の関係で退去強制の手続というやつに乗るわけでございます。退去強制の手続に乗りましたものは、原則として国外退去ということになって、本国に送還いたすわけでございますけれども、法務大臣において、特別に在留を認めるべき人道的その他の事由があるものに対しましては、特別在留を許可をするという制度がございます。その比率は、いまここにはっきりした数は持っておりませんのですけれども、法務大臣の在留許可の数は相当数と申しますか、半分以上ぐらいある、こういうように御了解いただけばよいと思います。
  196. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 けっこうです。時間もないし、きょうはこれで終えておきましょう。
  197. 二木謙吾

    主査二木謙吾君) 法務省所管に関する質疑は、これにて終了いたしたものと認めます。大臣御苦労さまでした。  以上をもちまして、本分科会担当事項である昭和四十二年度総予算中、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣及び総理府のうち防衛庁、経済企画庁及び科学技術庁を除く分、法務省及び他分科会の所管外事項に対する質疑は終了いたしました。  これをもって本分科会の審査を終了いたします。  なお、予算委員会における主査の口頭報告の内容及び審査報告書の作成につきましては、これを主査に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  198. 二木謙吾

    主査二木謙吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時十九分散会