○多田省吾君 第四
分科会の
審査の
経過を御
報告申し上げます。
本
分科会の
担当は、
昭和四十二
年度予算三案中、科学技術庁、文部省、厚生省、労働省及び自治省の各省庁
所管に属する
予算でありまして、去る二十二日、二十三日と本日の三日間にわたり、
関係各
大臣並びに
政府委員からそれぞれ
説明を求め、慎重
審議を行ないました。以下、
質疑のおもなるものについてその
要旨を御
報告いたします。
まず、労働
省所管におきましては、最低賃金制の問題につき、先般中央最低賃金
審議会から
答申が出ているが、この
答申は三者構成であるべき
審議会が、総評側
委員の欠席のままきめたもので納得できない。ことに総評では、かねて現行の業者間
協定方式による最賃制には反対で、全国全産業一律最賃制をとれと主張しているが、この総評の一律方式については、すでに大橋労働
大臣当時から、これを前向きの姿勢で検討するということになっていたのに、最近は何か後退したように見られるが真意はどうなのかとの
質疑がありました。これに対し、早川労働
大臣並びに
政府委員から、
答申は有沢会長のもとで労使、公益三者の出席
委員で決定した。全国一律最賃制は理想であるが、しかし、同じ日本国内でも、生活
条件その他で
地域的に
格差のあることは争えない現実であるから、そうした点と、さらに現行の最賃制がはたしてILO二十六号
条約の精神に適合するかどうかという点も含めてこのたびの
答申となったものである。なおまた、総評の主張する全国全産業一律制については、今後引き続き検討すべき課題ということで
審議会の意見が一致していることを申し添えておきたいとの
答弁がありました。
さらに、定年制の問題について、労働
大臣は、
民間企業の定年制を延長すべしとの意見のようだが、定年制を云々する以上は、現在の日本の賃金体系がこのままでいいのかということも問題だし、また、教
職員などは、勧奨という形で事実上退職をしいられているわけだが、労働
大臣は一体どうしようと
考えているのかとの
質疑がありました。これに対し早川労働
大臣は、五十五歳以後の余命年数が四、五年延びている現在、ことに中高年齢層の労働力の活用がやかましくいわれている際に、
民間企業の五十五歳定年制を昔のままにしておくことは、国の利益にもならぬと
考えて勧告している。しかし、それには、従来の年功序列型賃金制度の是正に加えて。職務給、能率給の導入をあわせ
考える必要がある。また、教員など公務員の定年制については、五十五、六歳で勧奨退職などというやり方をやめ、そのまま老齢年金支給開始年につながるようにすることを
考えたい旨の
答弁がありました。
次に、厚生
省所管について申し上げます。
政府は、四十二
年度予算に重症心身障害児
対策費二十一億円を計上して、
年度末までに国及び
民間の療養施設のベッド数をそれぞれ倍増して千百二十床にするとうたっているが、それでも、一万七千三百名と推定される重症心身障害児の要収容者数の一割にも満たぬ状況でしかない。しかも、必要な医師や看護要員を充足すると称しているが、ほんとうは、病床ができても収容できないのが実状ではないのか。現にベッドがあいているところが目立つ。しかも、重症障害児の家庭では、子供をざるに入れあるいは柱にくくりつけて仕事に出ているというありさまである。
対策を急がねばならぬが、この際厚生当局の所信を聞きたいとの
質疑がありました。これに対し坊厚生
大臣並びに
政府委員は、施設も足らず
職員の充足も十分でないのは遺憾であるが、なお
努力を重ねながら四十五
年度までに八千床に達する
計画を進め、その間、在宅の障害児には指導員を派遣して、家庭での訓練、看護
方法及び子供の知識指導などを行なうことにしている。現在ベッドに欠員があるのは、障害児が親のもとを離れると一日中泣きじゃくり、それをなだめるのに一人の
職員がかかりきりになる。したがって、一度に収容すると手が回りかねるので、慎重な態度をとっているからでもあるが、都道府県側で収容児の選定に手間どっていることも
原因になっているとの
答弁がありました。
しかし、この
答弁に対しては、県などで選定がおくれているのはそれだけ入所の申し込みが多いからであり、同時に、医師も看護婦も足らぬ証拠であるが、この際、炭鉱労務者の主婦を看護
職員として採用できないかとの
質疑があったのに対し、労働省の
政府委員から、現在中高年向きの家事サービス職業訓練所が全国に八カ所あり、その課目の中に看護の補助的業務を習得させることもやっているので、炭鉱主婦の方々がそれらを
利用されて、そうした療養所の看護助手として進まれることは可能であり、また、そうなっていただくことを歓迎するとの
答弁がありました。
さらに、児童手当研究調査費として前
年度に六百九十一万円、今
年度九百七十万円を計上しているが、その調査研究はどこまで進んでいるのか。
鈴木前厚生
大臣は、第三子から始めるなどと言っていたが、いまはどうもあと戻りしたようにも見える。この
予算委員会が終われば、やがて明
年度予算の概算
要求の時期に入るわけだが、佐藤総理が言うように、四十三
年度から児童手当を実施するのかどうか、率直な意見を聞きたいとの
質疑があったのに対し、厚生
大臣並びに
政府委員から、児童手当については四十一
年度において一応基礎調査を終わり、四十二
年度ではその方式をどうするかを研究することにしているが、問題は、
わが国の人口問題及び雇用問題、さらには賃金制度のあり方や税制とも
関係してくるわけで、実施までにはなおまだ調査を要すると
考えている。しかし、その必要性は十分承知しているので、目下具体的構想について鋭意検討中であるとの
答弁がありました。
次に、自治省
関係について申し上げますと、まず、地方公務員の年金制度の問題をめぐって活発な
質疑応答が行なわれました。すなわち、戦後恩給法が廃止され、従来の
給与的性格にかわって、新たに社会保障的性格を持った共済年金制度が生まれたが、その短期の共済掛金がほとんど医療給付に使われている点からしても、組合健康保険と同様に国庫補助を
考えるべきではないか。また、長期共済では、この十一月から掛け金の改定を行ない三者負担にするというが、それならば補助率を厚生年金と同じ二〇%に
引き上げ、利回りも六分に改め、かつ、退職一時金の額も
引き上げるべきだと思うがどうかとの
質疑がありました。これに対し藤枝自治
大臣並びに自治、大蔵両省の
担当官から、
質疑者の意見は理解できないではないが、地方公務員の共済制度は、ひとしく相互扶助の形をとるとはいえ、組合健保とは違い、横の連帯だけではなく、むしろ縦の連帯を重視している。地方公務員の年金負担を改定するのは今回が初めてのことで、しかも、それは今後の財源問題に重大な
関係があるので、引き続き三者負担制をとるかどうかは検討するが、補助率を二〇%に上げることは困難だし、利回りも五分五厘にならざるを得ないと思う。また、退職一時金の額を
引き上げることも、今日のところできないが、厚生年金その他との均衡をとって
改善する必要があり、十分
政府部内で意見をまとめる
考えであるとの
答弁がありました。
さらに、地方
財政の
現状について、今日三割自治などといわれているが、その
原因にはいろいろあり、また、その責任が地方公共団体だけの負うべきものでないことももちろんであるが、捨ててはおけない問題である。自治
大臣はこの地方
財政の硬直性に対しどう善処する
考えか伺いたいとの
質疑がありましたが、これに対し藤枝自治
大臣から、行政
事務の再配分とそれに伴う財源の再配分に
努力するとともに、基本的には国の補助事業を減らし、自主財源に振り向け、税外負担の
解消、零細補助金の整理もその方向で
努力する。要は地方自主財源の
強化が第一で、それがない限り、問題の
解決はないが、自主財源をどこでどうやって求めるかは、またむずかしい問題で、結局、さしあたりは地方交付税の運用の中で
措置するほかないと
考えているとの
答弁がありました。
次に、科学技術庁
所管に関する
質疑といたしまして、国産衛星はいつごろ打ち上げられる
予定か。また、それはやがて人間衛星船の打ち上げにつながるものと思うが、
世界の先進国が戦争にかわるものとして、競って宇宙開発の研究、発展につとめている現在、日本としておくれをとらぬためにも、科学技術庁の宇宙開発に対する
計画並びに長官の所信を聞きたいとの発言がありました。
これに対し二階堂科学技術庁長官並びに
政府委員から、国産衛星の打ち上げ時期は、四十五
年度を目途に実現するよう研究を進めているが、現在のところ、人間衛星船までは
考えていない。また、今日の科学技術の進歩の陰には、戦争によって研究開発されたという面もあると思うが、しかし、日本においては、宇宙開発の研究にしても、あくまで国民生活の向上発展に資するものとして、平和的
利用に限って行なうこととしており、また、その
計画としては、四十五
年度までを国産衛星の実用実験の期間とし、その後の五年間に実用衛星の
完成を目ざし、五十
年度以降において人間衛星等の研究に進みたい
考えである旨の
答弁がありました。
さらに、鹿児島県種子島のロケット実験基地の問題につき、
地元の鹿児島、宮崎両県の漁民の間に強い反対運動が起こっているが、その真相はどうかとの
質疑がありましたが、これに対し、二階堂長官は、種子島をロケット打ち上げの基地と決定するまでには、新島、青森など候補地の実地調査を行なったが、結局、種子島があらゆる面で最も
条件にかなった土地ということで基地の
建設にとりかかったわけだが、
地元の漁民団体から、漁労の障害になるということで強い反対を受け、私としては就任以来、一番頭を痛める問題になった。しかし、その後、私自身、直接現地におもむいて
地元漁民の代表とも懇談、理解と
協力を求めた結果、鹿児島県側の漁民との間で八項目の
条件つきで和解が成立、文書を取りかわすまでになったが、宮崎県側の漁民は、あくまで生活問題であり、
条件闘争ではないという主張を譲らず、まだ了解を得るまでに至っていない。しかし、
政府としては、全体の責任をとる立場で極力
話し合いを進める決意を固めているので、多少時間はかかると思うが、いずれ円満
解決に運ぶものと期待しているとの
答弁がありました。
最後に、文部
省所管について申し上げます。教育に携わる者のあり方をめぐって、最近、ややもすれば、小中学の教員に対し、教師としての誇りを失っているといった批評が行なわれているようだが、その非難の
原因は、文部省が小中学校の教員、特に管理職にある教師に対し、法律的、行政的面からの強制を押しつけるからではないか。たとえば、学校は末端行政の場となって、校長や教頭は電話の番人になったというような陰口さえ聞かれる状況で、その結果、教師としての主体的な研究がおろそかになり、生き生きとした教育が行なわれないような傾向が生じている。今
年度の
予算で、管理職手当が大幅に増額されているのはけっこうだが、そういうことで教育の場が本来の使命を失うことになるのは賛成できない。文部当局はこの
現状をどう思うかとの
質疑がありました。これに対し剱木文部
大臣並びに
政府委員からは、学校には、教育の
内容を授ける以外に、人的、物的な管理に相当な仕事があり、したがって、これを統合する者の地位を重要視すべきである。もちろん、学校の主たる任務である教育には、校長以下全員が積極的に
努力を集中すべきで、教員それぞれが活発に研究に当たることも当然なことと
考えるとの
答弁がありました。
このほかにも、各
所管事項にわたって熱心な
質疑が行なわれたのでありますが、その詳細は
会議録により御承知願いたいと存じます。
以上をもちまして、第四
分科会担当予算全部の
審査を終了した次第であります。
右、御
報告申し上げます。(
拍手)