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1967-05-18 第55回国会 参議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十八日(木曜日)    午前十時三十四分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         新谷寅三郎君     理 事                 白井  勇君                 西田 信一君                 日高 広為君                 平島 敏夫君                 八木 一郎君                 亀田 得治君                 鈴木 一弘君     委 員                 青柳 秀夫君                 井川 伊平君                 植竹 春彦君                 大谷 贇雄君                 岡本  悟君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 任田 新治君                 内藤誉三郎君                 林田悠紀夫君                 船田  譲君                 宮崎 正雄君                 吉江 勝保君                 吉武 恵市君                 岡田 宗司君                 北村  暢君                 小柳  勇君                 鈴木  強君                 瀬谷 英行君                 羽生 三七君                 藤田  進君                 矢山 有作君                 山本伊三郎君                 吉田忠三郎君                 黒柳  明君                 小平 芳平君                 多田 省吾君                 中沢伊登子君                 山高しげり君    国務大臣        外 務 大 臣  三木 武夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  剱木 亨弘君        厚 生 大 臣  坊  秀男君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   菅野和太郎君        労 働 大 臣  早川  崇君        建 設 大 臣  西村 英一君        自 治 大 臣  藤枝 泉介君        国 務 大 臣  塚原 俊郎君        国 務 大 臣  二階堂 進君        国 務 大 臣  福永 健司君        国 務 大 臣  増田甲子七君        国 務 大 臣  松平 勇雄君    政府委員        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院事務総局        管理局長     小林  巖君        人事院事務総局        給与局長     尾崎 朝夷君        総理府人事局長  増子 正宏君        総理府統計局長  野田  章君        警察庁交通局長  鈴木 光一君        行政管理庁行政        管理局長     大国  彰君        防衛庁防衛局長  島田  豊君        防衛庁人事局長  宍戸 基男君        防衛庁経理局長  大村 筆雄君        防衛庁装備局長  國井  眞君        経済企画庁総合        計画局長     鹿野 義夫君        科学技術庁長官        官房長      小林 貞雄君        科学技術庁原子        力局長      村田  浩君        外務省北米局長  東郷 文彦君        外務省経済局長        事務代理     鶴見 清彦君        外務省経済協力        局長       廣田しげる君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        外務省国際連合        局長       服部 五郎君        大蔵政務次官   米田 正文君        大蔵省主計局長  村上孝太郎君        文部省初等中等        教育局長     斎藤  正君        文部省体育局長  赤石 清悦君        文部省管理局長  宮地  茂君        厚生省医務局長  若松 栄一君        厚生省保険局長  熊崎 正夫君        農林省農政局長  森本  修君        林野庁長官    若林 正武君        水産庁長官    久宗  高君        通商産業省通商        局長事務代理   原田  明君        通商産業省重工        業局長      高島 節男君        労働省労政局長  松永 正男君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        建設大臣官房長  鶴海良一郎君        建設省河川局長  古賀雷四郎君        建設省道路局長  蓑輪健二郎君        自治省選挙局長  降矢 敬義君        自治省財政局長  細郷 道一君        自治省税務局長  松島 五郎君    事務局側        常任委員会専門        員        水谷 国一君    説明員        法務省民事局参        事官       貞家 克巳君        建設省国土地理        院長       安藝 元清君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭利四十二年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十二年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十二年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付) ○分科会に関する件     —————————————
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十二年度一般会計予算昭和四十二年度特別会計予算昭和四十二年度政府関係機関予算、  以上三案を一括して議題といたします。  この際、本日の委員長及び理事打合会において、分科会に関する件について協議いたしましたので、その要旨について御報告いたします。  分科会審査期間は来たる二十二日、二十三日、二十四日の三日間でございます。  分科会の数は四個とし、それぞれの所管事項分科担当委員数と、これが各会派別の割り当ては、お手元に配付いたしてあります刷りもののとおりといたしました。  分科担当委員の選任は前例によりまして、委員長において指名する方法によること、分科担当委員の変更については、その取り扱い委員長に一任することといたしました。  また、分科会において参考人出席要求を決定したときは、その取り扱い委員長に一任することにいたしました。  ただいま御報告いたしましたとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) それでは、一般質疑を続行いたします。小平芳平君。
  5. 小平芳平

    小平芳平君 初めに、ケネディラウンドの五年ごしの交渉妥結しまして、これについて外相から閣議に報告して了承されたと報道されておりますが、これについて外務大臣からその概要等について御報告願いたい。
  6. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 関税一括引き下げいわゆるケネディラウンドは、これは御承知のように昭和三十九年から始めたんですから、ちょうどまる三年かかって——これはいままでにこんな大幅な関税引き下げ交渉はなかったわけであります。それで、各国利害——みな各国とも自分利害に対しては非常にきびしいですからね、多国間でやるわけですから。非常な難航したんですが、最後ホワイト事務総長が間に立って調停をしまして、鉄鋼とか化学品穀物協定、この大筋はこれによって妥結を見たということになったわけであります。  これに対してわれわれは大体個々関税につきましては、全体で三三%から三五%、世界貿易の七〇%ぐらいの品目について関税引き下げが行なわれる、いまの五〇%にはいきませんでしたけれどもね、ケネデイの唱えた。そのことによって日本の場合は、これは輸出というものに対して非常に日本経済は依存しておるわけですから、そういう意味で、しかも日本経済は成長を今後とも続けていくでしょうから、いますぐにというよりも、将来のことを考えてみれば、非常に日本経済発展のためにこれは有利なことになるという判断をしておるわけなんです。それは、もしこれができなければ貿易の、保護貿易主義的なあるいは地域主義的な傾向が起これば日本は非常に打撃を受けますから、そこで個々の問題についてはまだ二国間交渉などもこれから残っていますから、非常に数字をあげての評価はむずかしいが、日本がオファーしたものに対しては、向こうのほうから見返りは取っている。そういう間において非常に日本がこの交渉によって損失を受けたというふうには見ていない。こちらは見合うものは取っていますから、全体として見ればこの妥結日本経済の将来の発展のために喜ぶべき結果であるという評価をいたしておる次第でございます。
  7. 小平芳平

    小平芳平君 いま外務大臣説明のように、大局的に見れば、また将来を考えれば、決してこれは日本にとって不利なものではない。というよりも、まず喜ぶべき結果であると、その点はそのように思いますが、そこでもって問題になります点を若干御質問いたしたいわけでありますが、一つは、米国が関税引き下げますと、いわゆる開発途上の国から輸出する綿製品雑貨などに日本製品が押される、競合した場合に日本製品のほうが不利になるのではないか、要するに労働集約的な生産物から資本集約的な生産物輸出増強を急ぐ必要があるんじゃないか、そういうような対策をまず本腰を入れてかからなければならないのではないか、このような点についてはいかがですか。
  8. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 小平さん重要な点を御指摘になったのであります。それは何かといったら、これから特恵関税という問題が起こってくるわけです。この問題ではまだそこへいっていない。ケネディラウンド一つの柱の後進国に対する貿易拡大というものは、このケネディラウンドでは手がついていないわけです。これからの問題になってくる。それは低開発諸国にすれば、産業発展段階からして、すぐに重化学工業といかないのですから、いわゆる軽工業というようなところから出発するのですから、そうなってくると日本と競合する場合が非常に多いと思う。しかし、低開発国とすれば、一次産品もできるだけ輸出を促進したいだろうし、また、そういうまだ初歩的な工業製品も、特別なやはり関税の待遇を受けたい。そうでなければわれわれが外貨を獲得する手段はないではないか、これは低開発国をあげての大きな声になりつつある。この問題が一番クライマックスに達するのは、来年の二月のニューデリーで開かれる世界貿易開発会議で、これが中心の議題になるわけです。そこで、小平さんから御指摘があったように、日本もそういう低開発諸国が発業的に発展していこうとするのを、日本先進国といわれておるわけですが、まだまだしかし、日本の内部には中小企業をかかえているし、軽工業に対する依存度も高いですから、競合はしても、その芽を日本がみなつみとるということでは、これはやはり低開発国日本関係がうまくいきませんから、やはり日本産業というものが高度化して、そして低開発国産業が伸びていく余地を与えることが、日本の大きなやはり目標としてはそこへ持っていかなければならない。持っていくためには、中小企業あるいは軽工業の部面における体質の改善というものが伴わなければ、低開発国の芽をみな日本がつみとってしまうのではうまくいきませんから、御指摘のとおり、この点については重大な課題を日本産業界になげかけておると私は思います。この施策というものが進められなければならぬと考えておることは、小平さんと全く同感に思っております。
  9. 小平芳平

    小平芳平君 外務大臣お急ぎのようですから、通産大臣にはあとでお尋ねすることにいたしまして、次に外務大臣にお尋ねしたいことはASPの問題でありますが、これはアメリカから明確な約束がとれたともいわれますし、とれなかったともいわれておりますが、この点についてはいかがでしょう。
  10. 鶴見清彦

    政府委員鶴見清彦君) ただいま先生の御質問ASPの問題でございますが、これは先ほど外務大臣から御答弁申し上げましたように、ケネディラウンド交渉最後最後まで非常にもめた問題でございまして、特にアメリカEECとの間で非常にもんだ問題でございます。したがいまして、最後の結果といたしましては、アメリカASP廃止というものに努力をする。これは立法手続を要するわけでございますので、その努力をする。それは今後二年のうちに廃止を実現するように努力する。それまでの間に、EEC側は二〇%まで、一応自分のほうの化学製品関税引き下げる。しかしながら、もしアメリカASP関税撤廃できないような場合には、そこでもう引き下げをストップする。他方、アメリカ側のほうは引き続き五〇%まで引き下げる。そういうことで大体話がついたというのが実情だと存じます。したがいまして、そういう面におきまして、日本にもそのASPでカバーされている化学製品、特に石油化学製品が多うございますが、そういうものについての、何といいますか、余波といいますか、余恵というものがくるというふうに考えておるわけでございます。
  11. 小平芳平

    小平芳平君 はっきりしませんですが、アメリカは二年以内に撤廃することに努力をするということですか。どうなんですか、最後のところ。
  12. 鶴見清彦

    政府委員鶴見清彦君) ただいま御説明申し上げましたように、二年以内にASPという制度をやめる立法手続その他をとるわけでございますが、もしそれがどうしても議会の承認が得られないという場合には、EECは二〇%までで、それ以上にはもう下げない。したがって、五〇%は下げないということになります。しかし、はっきりとアメリカがその場合に約束をいたして、ASP撤廃をやると言った関係でございますので、行政府としては大きな責任を負ったわけで、そのための努力は十分いたすのではないか、そういうふうに考えるわけであります。したがいまして、相当大きな、重大なコミットメントといいますか、約束といいますか、アメリカ政府としてはしたということになると考えております。
  13. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 関連。いまのASP撤廃の問題ですけれども、最終の妥結の状態になってきたために、とにかくまず妥結をしなければならん、時間がないということで、努力をする約束をしたけれども、実現する約束をしたわけではない。とにかくアメリカ側としては十分に考えましょうというふうなことで、片方二〇%EECが残したといいますけれども、そういうふうな中途半端な形で、はっきりきまったのではないというふうに、一つの声では理解をしてきたのですが、その辺はどんなふうな事情になっていますか。はっきりした約束が何か公文でなされているのか。それとも、ただ努力してやりましょうというだけで、アメリカ側としてはその意思は全然ないけれども、とにかくケネディラウンドを終結させるために、その場だけは努力をするという返事をした、こういうふうにも伝わっているわけですが、その辺どうですか。
  14. 鶴見清彦

    政府委員鶴見清彦君) その点につきましては、先ほど申し上げましたとおり、代表団、したがいましてアメリカ政府といたしましては、二年以内にASPという制度をやめるということを約束をしたわけでございますが、ただ、先ほども御説明申し上げましたとおり、それをやめるためにはアメリカ議会手続が必要なわけでございますので、議会で万が一それを採択しないという可能性も、もちろんないわけじゃございません。少なくとも行政府としてはそれをやめるということを約束したわけでございます。もし、万が一通らない場合には、これが守られないという結果になるわけでございますから、行政府としては約束をしたということになると思います。
  15. 小平芳平

    小平芳平君 次に、穀物協定の問題ですが、これは小麦国際価格の引き上げが、小麦輸入国である日本にとって、また小麦国内価格が上がるのではないか、あるいはまた、こうして輸入国日本が外国に援助をすることについての問題点、そういう点についてはいかがですか。
  16. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 穀物協定最後まで一番やかましかったのであります。日本小麦輸入国であります。穀物協定の中で食糧援助を義務づけられることは困る。日本はそういう食糧援助は従来もやったし、今後もやるけれども、穀物協定の中に義務づけられるということは、筋道が通らないではないかということで、これは留保いたしたことは御承知のとおりであります。しかし日本は、食糧援助の四百五十万トンの五%は日本がやる。そのやり方については二国間その他の方法で協議をするというようなことで、詳細は、この点については宮澤君が帰ってきてから報告するという電報が来ておりますから、詳細に聞きます。  しかし日本とすれば、小麦価格帯が、下限一ブッシェル一ドル七十三セント、それに四十セントですから二ドル十三セントですか、上限が。そういうことの価格は、いまの実勢価格に比べたら必ずしも高くないのです。そういうことで、いますぐ小麦輸入に対して食管会計などに非常に問題が起こるということではない。だから、そういう意味で、この穀物協定価格帯協定が、日本小麦輸入に対しての価格を非常につり上げるという結果には、私は見てないのでございます。日本とすればこれは輸入をするのでありますから、一番輸入としては大きい部門の一つでありますから、非常に関心を持ったのですが、その結果が輸入価格の非常なつり上げにはならない、こう見ているわけでございます。
  17. 小平芳平

    小平芳平君 次に通産大臣から、いまの問題につきまして、外務大臣からも先ほどございましたけれども、日本の将来の貿易についての見通し、また通産省としてこれに対処する基本的な方針、こういうことについて伺います。
  18. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) ケネディラウンド貿易にどういう影響を及ぼすかということについては、大体外務大臣からお話がありましたが、そこで外務大臣からもお話がありましたとおり、まだ詳細な情報が入っておりませんから、その一々についてはお答えができないと思いますが、とにかく関税引き下げということが、貿易立国を標榜しておる日本にとっては有利であるということはこれは一応考えられるところであります。そこで、輸出についてはそれではどうかという問題でありまするが、輸出については五〇%の引き下げを見たものがほとんどないというように聞いておりますが、しかし、それにしても輸出についても決して不利ではないと思っておりますし、したがって今後においても、輸出は決して、ケネディラウンドによって輸出が減退するということは心配要らぬと、こう考えております。  輸入につきましては、大体日本輸入品というものは無税品が多いのでありますからして、ケネディラウンドによって影響されるところは少ないのでありますが、しかし、それでも影響されるものがありますから、それは例外品としてまあそれに対しての対策は講じていかなければならぬ。こう考えておる次第でございます。
  19. 小平芳平

    小平芳平君 そこで通産大臣、こまかい点については長官が帰ってからということになると思いますけれども、ここでもって、産業の、日本産業の、先ほどもありましたような資本集約的なものの拡大に力を入れていく、また産業の基盤をしっかりつくっていかなくちゃならない、こういうような点について、まだあまり具体的な方策といっては無理かもしれませんけれども、お考えをお聞きしたい。
  20. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 先ほど外務大臣への質問綿製品などについてのお話がありましたが、これはお説のとおりでありまして、今後、労賃の安い低開発国において綿製品の製造を始めますから、したがって、日本との競争上日本が不利になると思います。がしかし、その点につきましては、これは日本繊維産業全体の問題でありまして、低開発国の安い製品と、それから先進国におきましては繊維産業についての非常な近代化をはかっておりますから、そういう方面の圧迫と、はさみ打ちにあわんとするのがいまの日本繊維産業だと思いますので、今度皆さん方の御審議をお願いしております繊維産業に対する特別措置法によって、これが対抗策を講じたいと、こう存じておるのでありまして、要するに、日本綿製品その他の製品にいたしましても高級なものをつくるということ、それから設備の近代化をはかって安く物をつくるということ、そういうことを考えていきたいということで、今度の繊維産業についての特別措置法の御審議をお願いしておるような次第であります。
  21. 小平芳平

    小平芳平君 その問題については、とにかく手おくれにならないように万全の対策を要望いたします。  次に……。
  22. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それに関連して。  次に移るようですから一つ伺っておきますけれども、通産大臣幾らガットで、このケネディラウンド関税の率が下がったとしても、綿製品の場合には完全な輸出規制向こう側のほうに、綿製品協定で、わが国から輸出するには非常な困難があるわけです。業界のほうでも自主調整をやっている。鉄鋼にいたしましても、同じように、わが国から輸出するのには自主調整をしているのが現状でしょう。そうすると、ケネディラウンドで下がって輸出には影響がないというお話ですが、いろいろな影響が考えられる。そういうような関税障壁ではない、非関税障壁というものが相手側にある。これが一つ。いま一つは、先ほどお話があったように、雑貨とかおもちゃということになれば、どうしても低開発国の品物では間に合わない。そうなるといま言われた安く、高級品をつくるようにということだけではこれは解決しないと思う。綿製品協定、あるいはそのほかの鉄鋼賦課金問題等向こうには出ております。そういうような問題はどう処理するか。これを決然と戦っていってとらなければ、非関税障壁が残ったままで幾らケネディラウンド関税が下がっても何の役にも立たない。その辺はっきり言われないで、ただ繊維工業特別措置法で何とかいたしますということだけじゃあ国民は納得できないと思うのですが、その辺。
  23. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) ただいまお話しのとおり、関税引き下げ以外の問題で貿易障害になっている条項があります。先ほども御質問がありましたが、ASPの問題については、先ほど外務当局からお返事したような次第であります。そのほかアンチダンピングの問題、この点につきましては、国際コードができるという大体見込みをいたしておりますからして、国内産業にもしかりに被害があるような場合であれば、この点はこの国際コードをつくる場合にあわせてこちらからも要望していきたいと、こう考えている次第であります。そういうことで大体この機会にいままでの関税以外によって起こっておる貿易障害というものを除去する、除去してもらうということで努力したいと、こう考えている次第であります。
  24. 小平芳平

    小平芳平君 社会保障関係について質問いたしますが、初めに、この経済社会開発計画、これが閣議決定になったものがございますが、初めに企画庁からお尋ねいたしますが、この計画が立てられるに至ったについては、かつては所得倍増計画とか、また、かつては中期経済計画、こういうようなものがありましたが、やはりそういうものに対する欠陥というものを認めて、ここでもって新しく経済社会発展計画というふうになったと思うのでありますが、それにしてはいかにもこの計画自体が社会保障関係については貧弱ではないか、あるいは抽象的ではないか、こういう感じがいたしますが、いかがですか。
  25. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この経済社会発展計画がつくられました理由は、いまおっしゃられたとおりであります。この三十年来の高度成長によって、いろいろなひずみが出てきておる。これらを是正して解決するとともに、また、いま直面している全面的な国際化とか、労働力不足の本格化とか、あるいは都市化と、こういうような問題に対処しながら、新たに均衡のとれた社会を建設していこうとするためには、どういうところに重点を置いてどういうやり方をすべきかということを一応考えたのが今度の計画でございます。  その中でもう御承知のように、最重点としてとり上げているものが三つありますが、一つは物価の安定、一つ経済の効率化、もう一つは社会開発の推進ということで、この三つの重要事項の中に社会開発というものはとり上げられておりますので、計画自身は非常にこれに重点を置いておるということでございます。抽象的にと言われておりますが、結局この社会開発の推進において、それじゃあどういう点に重点を置くかということをこまかく項目別にあげております。そうしていままでの欠点がむしろ医療保障というほうに偏重しておって、全体の社会保障のバランスがとれていない、もう少し所得保障的なものに力を入れなきゃいかぬということを中心に、計画についての大きい指針を示しておるということでございますので、これを重視しているわけじゃございません。
  26. 小平芳平

    小平芳平君 確かに重点の三つはよくわかりますけれども、これから社会保障関係について二、三私が御質問いたしてまいりますが、そうなりますと、いまお述べになった問題にしましても、たとえば医療費関係重点から所得保障にもっと力を入れていかなければならないということを打ち出しているというふうに御説明されますが、それならば、所得保障に力を入れていくという点では、たとえて申し上げますならば、年金ですね、年金の関係、国民年金の給付をどれだけ引き上げていくか、その点についてはどうですか。
  27. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) わが国におきましては、年金制度の出発というものがまだほんとうに日の浅いものでございますので、給付内容においても、まず国民の所得水準から見て、掛け金というものも一挙に解決はできませんので、この年金制度というものの充実というものは、これからの私は社会保障制度の問題だと考えております。
  28. 小平芳平

    小平芳平君 少なくとも、掛け金をした年金を、物価が上がって、実際給付を受けるときには、ごく零細なものしか受けられないというふうなことにならないような、かりに言えばスライド制ですね、物価が上がったからには、やはり年とったあとのために年金をかけておくんだから、実際年金をもらえるようになったときに、その物価にスライドした所得があれば安心してかけていかれる、しかし、現状ではそうなっておらない、こういうような点も早くやっていかなくちゃならないのじゃないでしょうか。
  29. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 年金制度につきましては、ただいま大蔵大臣がお答えいたしましたように、まだ成熟していない、おとなになっていないということが、今日年金が非常にまだ完全に行なわれていないというようなことでございますけれども、そのほかに、御指摘のように、現行の年金ではこれはきわめて貧弱じゃないか、こういう御議論も私はこれは否定できないことだと思います。さような意味におきまして、この年金制度を鋭意水準を上げ充実をはかっていくということにつとめておるわけでございますが、実は、年金制度は五年ごとにこれを改定していく、実情に沿うように。それで、厚生年金のほうはもう来年改定するというような段階になっておりますが、国民年金のほうも、これにおくれないように持っていこう、こういうふうに今日計画をいたしておる次第でございます。  それからまた、年金制度の中で一つこれは欠点じゃないかということをかねがね御指摘を受けておりまする児童手当の問題につきましても、先般の衆議予算委員会において総理大臣が、これについても前向きの検討をするんだ、こういう言明をせられたわけでございますが、そういったような趣旨に沿いまして、今日これも何とかできるだけ早く実現をしていこうということで、今日検討を進めておる次第でございます。
  30. 小平芳平

    小平芳平君 年金と児童手当と、いま二つお答えになったものですから、初め年金のほうを私はっきりお答え願いたいと思いますことは、スライド制ですね。いまのような年金、何千万人の人が国民年金、厚生年金を毎月、あるいは毎年積み立て金をしているわけです。しかし、それが、実際これから三十年もたってから、四十年もたってからどれだけ自分がもらえるかということを考えた場合に、魅力がないわけですね、実際に。現在これだけかけている、二十年、三十年かけていく、そうなった場合に、どれだけ自分が年とったときに保障されるか、生活保障されるかという点を考えた場合、全く魅力のないのが現在の年金制度ではないか、このように私たち思うわけです。したがって、物価にスライドして、たとい物価が上がっても、あなたがこれだけかけていけば、こういう生活ができるんだという、もっと魅力のある年金にしていかなくちゃならないじゃないでしょうか。
  31. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 年金のスライド制ということは、非常にこれは重大なる問題でございまして、この点につきましては、厚生年金につきましては社会保険審議会で、国民年金につきましては国民年金審議会でただいま検討していただいておるのですが、スライドと申しましても、物価にスライドしていくか、賃金にスライドしていくかといったような問題もありまして、これは両審議会において慎重に検討をしていただいておるのでございまして、その結果とにらみ合わせて、われわれといたしましてもこれを研究してまいりたい、かように考えております。
  32. 小平芳平

    小平芳平君 審議会で検討中はよくわかりますけれども、厚生大臣としまして、いま私の述べている点について、こうやっていま若い人たちが若い時代から何十年も積み立てていって、そうして年とった場合にこういう生活ができるのだ、そういう年金制度自体に、魅力のある年金制度にしていくべきでないか。その点についての大臣のお考えをお聞きしたい。
  33. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) もちろん、所得保障の一番大きなウエートを占めておるところの年金というものは、国民の魅力のあるものでなければならないということを私は深く考えております。そこで、これをどういう形に持っていくかということについて、審議会で御研究を願っておる、こういうことでございます。
  34. 小平芳平

    小平芳平君 次に、先ほど児童手当について、厚生大臣は、総理が早急にこれを始めるように、前向きに検討するようにというふうな意味のことをおっしゃいましたが、総理ははっきり衆議予算委員会では、四十三年から始めると言っているんじゃないでしょうか。
  35. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 総理が四十三年からはっきりやると申しましたかどうかということは、私ちょっと記憶ございません。これは速記録を調べればわかることでございますが、私どもといたしましては、できるだけ早く児童手当の実現をさせるよう、今日準備を進めておるという次第でございまして、目下具体的構想については検討中でございまして、昭和四十三年度にもでき得る限りこれを実施をする目途でもって研究をしていきたい、かように考えます。
  36. 小平芳平

    小平芳平君 四十三年と言っていますよ。
  37. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) いや、そういう目途でもって……。だから私どもも、いま速記録にはっきりどう言ったか、こうお聞きになると私ちょっと記憶いたしておりませんけれども、総理の言明の趣旨にも沿いまして、四十三年度を目途として実現をしてまいりたい、かように考えております。
  38. 小平芳平

    小平芳平君 それは委員長、はっきり言っているんですがね。速記録にも載っている。速記録を取り寄せて ……。
  39. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 委員長、議事進行で。総理が言ったかどうか、はっきりわからないということでとまってしまっているんですが、大臣、すぐ速記録を取り寄せて見てもらいたい。
  40. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 坊厚生大臣。
  41. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) まだ速記録を調べたわけではございませんけれども、総理は四十三年度から実施するということを言明しておられるようでございます。そこで、厚生省といたしましても、その趣旨に沿いまして四十三年度から実施するというつもりでもってやってまいりたいと思っております。
  42. 小平芳平

    小平芳平君 それははっきり衆議院で言っておりますので……。そこでまた、この発展計画に戻るわけです。この発展計画では、児童手当については、いま厚生大臣がおっしゃった程度の感じしか出ていないですね。児童手当については、その創設を促進するため検討を進める、これだけのことしか出ていないということは、総理がもう四十三年から始めると言っていることと、あまりにも計画自体がぼやけているんじゃないか。
  43. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 経済社会発展計画は、総理が予算委員会で言明せられる前に私はできたものだと思います。その後、衆議院の予算委員会におきまして総理が言明したことであって、その経済社会発展計画はこれより以前に策定せられたものだと私は理解いたします。
  44. 小平芳平

    小平芳平君 それはもちろん前にできたものですけれどもね、これは五カ年の見通しなのです。その五カ年の見通しが、わずか二、三カ月のズレでもって、総理大臣が国会で言明したことすら、はっきりしていないということですね。  それからもう一つ具体的にお尋ねいたしますと、振替所得については現在五・五%、これを二%程度引き上げて、七・五%を目標とするというふうにこの計画では言っておりますが、じゃ、その二%程度引き上げるという中に、いまいうところの児童手当なり、あるいは国民年金の——どういう形でか、とにかくふやすということが入っての話でしょうか、どうでしょうか。
  45. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 経済社会発展計画を策定いたす過程におきましては、まだ児童手当というものの具体的な数字による積み上げ等はなかったかと思います。しかしながら、児童手当というものは、その策定当時、早晩これは実現しなければならないものである、こういう考え方には立っておったと思います。したがいまして、五・五%を二%程度上げる、こういう構想の中には、児童手当というものを吸収していこう、こういう考えがあったと思います。
  46. 小平芳平

    小平芳平君 吸収するというように書いてないわけです。検討するとしか書いてないわけですがね。
  47. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 五・五%を目標時に二%程度引き上げるということは、一々数字を積み上げて、そうして出してきたものではない。と申しますることは、一つには、振替所得の中で非常に大きなウエートを占めまする社会保険——医療保険ですね、医療保険の根本的な建て直しをやる、いわゆる抜本改正をやるということも、御案内のとおり、まだそれの具体的内容も決定いたしかねておるというようなときでございますし、そういったような、児童手当ももちろんそういうことでございましょうが、そういうようなわけで積み上げた数字ではなくて、非常に、何と申しますか、マクロ的な視点に立って二%を引き上げていく、こういうことでございますので、はっきりと幾らというふうには、経済社会発展計画の中では、年次的にどの部門に幾ら、どの部門に幾らというふうにきめていったものではないのでございます。
  48. 小平芳平

    小平芳平君 ですから、大蔵大臣もお聞き願いたいことは、そういうように経済社会発展ということを目標にしながら、実際には、社会保障関係は非常にあいまいもことしていて、実際に児童手当についてすら、世界六十二カ国もやっておるという児童手当についてすら、総理大臣と厚生大臣の感覚すら違うような、これが日本の社会保障の現状じゃないか。  それからまた、ここでもって振替所得の問題にしましても、厚生省からいただいたこの資料を見ても、振替所得は七・五%にかりにこれから五年たってなったところで、これはもう西欧諸国に比べたら問題にならない低いものではないか。もっともっと、十数%が現在の西欧諸国であってみれば、日本の国でわざわざ社会保障を非常に重点にして五年間の計画を立てるような場合には、振替所得も少なくとも七・五%なんという低い目標でなくて、もっと高い目標で、もっと具体的に児童手当なり、そのほかやっていかなければならない、このように思いますが、両大臣からお答えを願いたい。
  49. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) お説のとおりでございまして、あれにのっとって、これから私どもは社会保障のあり方について検討してこの整備をしなければならぬと思っております。  そこで、いま議論になりました。児童手当の問題も、この計画の中では一応前向きに検討するという方向を書いてございますが、あの線に沿って私どもはやはり検討はいたしております。いたしておりますが、実にむずかしい問題でございまして、まず外国でああいう制度ができたということは、日本と違った労賃体系、雇用制度というものを土台にして外国でできたという発生の歴史から見ますというと、これをわが国にそのまま取り入れようというときになりますというと、この賃金体系、賃金制度のあり方というものとも関係いたしますし、また、税制とも関係してくる。そうして、すでにいま日本では児童に着目していろいろなことをやっております。母子福祉年金とか児童扶養手当、特別児童扶養手当というような制度があって、低い所得階層を中心として、児童に対しては全額国庫負担の年金ないし手当支給が行なわれる、こういうような社会保障制度一つのやり方を日本ではとって出発しているということになりますというと、ここで一律に、国民の所得に無関係で児童に一定の手当を出すということにしますと、最低限のこの制度充実ということで計算してみましても、ざっと九千億円くらいの金が要るということになりますというと、いま医療保障の問題でいろいろ苦心していて、この財源問題もこれから根本策を立てなければならないというところに直面しておるのに、新たに九千億の支出を要する制度というものを、いまある制度の中にどういうようにはめ込むかということになりますと、これはやはり社会保障制度の総合的な、根本的な調整というものもやりますし、賃金、税制というものとの関係も調整しなければやれない、こういう問題にぶつかりますので、そう簡単に、すぐにこの児童手当制度が取り入れられるということは、私はそう簡単にはやれないのじゃないかというふうにいま考えております。しかし、まあ計画は前向きで、そういう問題があるから、ひとつそういう問題を検討しろということを言っているのでございまして、当然あの計画の中でも、具体的なことを述べているわけではございませんし、そういう言い方をしているのですから、私ども、その線に沿ってやってはみましたが、とにかく、いろいろなむずかしい問題にぶつかっているということだけは、ここで申し上げておきたいと思います。
  50. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 目標年次の振替所得の対比率を五・五%から三%程度引き上げるということでもまだ少ないのじゃないか、西欧各国に比してまだ少ないのじゃないか、こういう御質問だと思います。数字から申しますれば、まさにそのとおりでございます。そこで、この二%引き上げるためには、年率にいたしまして一年に、何年度に幾ら、何年度に幾ら、こういうわけではございませんけれども、これを年率にいたしますと約一七%七、一七・七くらいの比率でもって振替所得を上げていかなければならない、こういうことでございまして、国民所得の年率の伸びは大体一一%というふうに予想されておりますけれども、それに比べましては、これはとにかく、国民所得の中で、この振替所得の伸び率というものに対しては、非常に大きなウエートを置きまして、そうして、これを上げていくという努力をしておりますことも、ひとつ御理解願いたいと思います。
  51. 小平芳平

    小平芳平君 まあ厚生大臣は低いことは認めるが、この努力をしていくという趣旨だと思います。で、大蔵大臣ね、私は簡単に児童手当をやれというふうに言っているわけではなくて、総理大臣が、先ほども申し上げたように、四十三年からやるように検討していると、総理が言っているわけですよ。ですから、それはむずかしい点があることはよく想像いたしますけれども、そうした総理の言明に比べて、あまりにもいまの大蔵大臣のお話では、ただむずかしいむずかしいだけじゃないでしょうか。
  52. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 総理の意図はわかりますが、むずかしさをあまりよく知らなかったのじゃないかと考えております。これはなかなか、これは真剣な問題ですが、たいへんでございまして、国民の負担はどのくらい負担がかかるかという問題ですが、いま御承知のとおり、日本は租税負担と社会保険金の負担と合わせると二三、四%ということでございますが、こういう制度を実施している外国の負担は四〇%もこえているということで、国民負担が国民所得に対して四〇%こえるということは、相当のやはり全般の国民所得の水準が高くなければできないことということになりますというと、日本の国民所得のあり方、国民がどのくらいの負担に耐えるかということともいまこれは関係する。同時に、現存の諸制度とのいろいろなものとの調整関係を持たなければならぬということから解決しなければならぬ問題でございますので、私は一、二年で日本でこの問題が解決できるようなやさしい問題じゃないというふうに思っております。
  53. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 総理が四十三年と言われて、先ほど厚生大臣は四十三年には何とかと言われた。大蔵大臣は二、三年じゃとても片づかない。どういうことなんでしょう、これは。総理はそういうむずかしいことはわからないだろうと、知らないで言ったのじゃないかと大蔵大臣言われたのですが、たとえ知らないで言ったにしても、ILO百二号条約に加盟するかしないかということは、この児童手当問題にかかってきているのです。
  54. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 知らないで言ったというのはちょっとことばが足りませんが、総理の意図はわかるので、これはやはり児童手当というものは社会保障制度としてはいいことで、悪いことではないということは総理も言って、そういうふうにしたいという意図を述べたのだと思いますが、それがいつできるかということになりますと、いま言ったような問題の解決ができなければ、児童手当制度というものは発生の歴史が違うことから見ましても、日本のいまの社会にこれを取り込むということには、よほどの準備がなければ簡単にはやれない。そこまでのいろいろなむずかしさを総理は十分知った上で来年、四十三年にやるというようなことを言ったのではないだろうというふうに言ったわけでございまして、これはなかなか簡単な問題ではございません。
  55. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまのそれはそうかもしれないけれども、いまの話を聞いて、大蔵大臣は、いま振替所得が現行五・五%だけれども、外国を見ると一五%とかというのですが、あるいは富裕な国でそれほど社会保障関係の費用を必要としないところでも、六%、七%という状態です。これを七・五%に上げるためには、児童手当をやらなければならない。それは大蔵大臣は、やはり現在の振替所得を二%程度上げるだけでいいと、そうでなければ国民の負担が多過ぎて困る、つまり、十二分な社会保障をしないほうがよろしいというお考えのように私は受け、取れるのですが。
  56. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 経済社会発展計画でも述べておりますが、国民負担はこの五カ年間において、ああいうやり方をしてこの経済発展させたら、この計画期間内に二%ぐらい国民負担がふえることはやむを得ぬだろうという、大体国民負担が二%ぐらいふえるだろうということを予定した計画になっておりますが、国民負担をふやすということはたいへんなことでございまして、よほどの施策によって日本経済規模をふやし、国民所得をふやすということを前提にしなければ、国民負担といもうのの率を増すということはできませんので、五年間今後の努力によっても、私どもは国民負担を二%ぐらい増加させることがせいぜいじゃないかと思うくらいでございますので、まだまだ先進諸国のような負担率まで日本の国民所得を持っていくというためには、よほどの所得増という政策が先行しなければできないんだろうというふうに考えています。ですから、さっきおっしゃられたような、やらなくてもいいんだということじゃございませんで、社会保障は年々強化していかなけりゃなりませんが、いくためには、よほど国民所得増の政策によって裏打ちされなければ、なかなかできないということを申しただけでございます。
  57. 小平芳平

    小平芳平君 この問題ばかりやっているわけにもいきませんので、最後に、大蔵大臣が、いま児童手当その他いろいろな制度がもうあるから非常に困難だと言われましたが、実際問題として、四十二年度予算の中から児童関係のいろんな福祉の予算を拾ってみても三百二十七億、四・三%、百万の身体障害者の方の四十二年度予算を概略拾ってみても五十八億、〇・九%、あれだけ大きく社会的に問題にされているガンですね。ガンの対策費を見ても二十五億、〇・三八%、こういうのが現状なんです。そこでもって、健康保険関係はまたあとでこの次にいたしますが、健康保険関係の何千億に比べた場合ですね、非常に日本の社会保障制度がおくれているということを、よくよくそういう立場に立って、ひとつ総理と御相談願いたいと思うわけなんです。  それから厚生省としてはですね、四十三年からでも始めようというからには、まあたとえば全児童に出すのか、あるいはまた金額はどのくらい出すか、あるいはまた全額国庫が負担する——大蔵大臣はさっき九千億と言われましたが、あるいは事業主や使用者に一部負担をさせようというようなことを検討されていらっしゃるのか。いずれにしても、早く厚生省としてはこういう草案を発表して、広く意見を求めるべきではないか、このように思いますが、いかがですか。
  58. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 対象をどうするのか、財源をどうするのかといったような問題でございますが、そういったことを今日検討をいたしておるので、それが発表することのできるような段階になりましたならば、これを発表いたしまして、そうして皆さんからの御意見を承ろうと、現在慎重にそういったようなことについて、やり方について、具体的の方策につきまして検討をしておる過程にあるということであります。
  59. 小平芳平

    小平芳平君 それは検討中はよくわかりますけれども、やがて四十三年度予算編成期にもかかるわけですから、したがって、早く大体の原案なり草案なりつくってですね、広く検討を、一般に意見を求めるというその時期、またそういうなるべく早く発表して意見を求めるという考え、これに御賛成かどうか。御賛成ならば、大体いつごろを目標に作業をお進めになるか。
  60. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 鋭意検討いたしまして、これは発表して御意見をこれに対して求めることのできるような段階になりましたら、発表いたすことは私は賛成でございます。それで、そういう時期が、できるだけすみやかにそういう段階にまいるように、今日懸命の努力をしておると、こういうことでございまして、何月幾日とか、あるいは何月ごろにということは今日申し上げかねるような段階でございます。
  61. 小平芳平

    小平芳平君 大体いつごろ——もうそんなに何カ月もないわけですよ。次の予算編成を考えた場合。
  62. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 大体いつごろとおっしゃられましても、いまちょっとそれは私といたしましても自信を持って申し上げることのできないような段階でございます。
  63. 小平芳平

    小平芳平君 それでは、次に健康保険関係の問題について御質問いたします。  いま国会には特例法案ということで出ておりますが、この社会保険制度議会でも抜本改正に取り組み、昭和四十三年度から必ず実施というふうに言っておりますし、また社会保障制度議会でも、この健康保険問題についての政府の無策は、いかなる事情があったにせよ、強く責められなければならないとか、あるいは一内閣一大臣の問題ではない、右顧左べんするよりも、むしろ断を下すべき段階というふうにも言っているわけです。したがって、この健康保険関係の特例法をいつまでこの特例でいくおつもりか、あるいは抜本改正というものをいつ考えていかれるか。
  64. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 抜本改正はもうこれはどうしてもやらなければならないような事態であるということは私ども痛感いたしております。しかも、それはできるだけすみやかにやらなければならない。かような意味におきまして、四十三年度をめどといたしまして、これはどうしても抜本改正をやっていく。今日御審議を願うことになっておりまする暫定対策でございますが、これはその抜本対策が実施せられるまでの、ほんとうにそれまでの暫定対策でございまして、その抜本改正は四十三年度をめどとしてやっていこう、こういう決心でございます。
  65. 小平芳平

    小平芳平君 それでは特例法案に、はっきり四十二年度で終わるというふうに入れたほうがいいのじゃないですか。
  66. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 臨時暫定対策に当分の間と、こういうことにいたしましたのも、社会保障制度議会の御意見もこれあり、そうしたのでございますが、要するに抜本対策も、厚生省や政府だけでこれはきめられるものではない。国会の御審議も願わなければならない。国会の関係もございますし、それから抜本改正というものは、これは四十三年度をめどとしてやるということでございますけれども、たいへん大きな作業でございますから、その抜本改正の全部を四十三年度で一ぺんにこれを立て直すということも、これは非常に望ましいことでございますけれども、全部これをやってしまうということも私は非常に事実上困難なことだと思う。そういうようなことで、一応当分のうちということにいたしましたのでございますが、これをだらだらと続けていくというようなことでは、医料保険というものをぶっこわしてしまいますから、断じてこれをだらだらなんてことは考えておりません。
  67. 小平芳平

    小平芳平君 まあこまかい点についてはまた別の機会で御質問したいと思いますが、まあ時間の関係もありますので、まとめて三点をお尋ねいたしますので、お答え願いたいと思います。  一つは、料率を引き上げるこの改正案、千分の七十二に引き上げるというような、これは予算編成、四十二年度予算に対する一般の見方としまして、米価の値上げあるいは健康保険料の値上げというものは非常に重大問題だと思う。しかも政管のほうが千分の七二で半々とすれば千分の三六になる。組合健保のほうは最高千分の三五となっている。どうして中小企業のほうが多く負担になるような矛盾をあえてしようとなさるのか。それが一つです。  それから第二には、今度の改正では患者が薬代の一部を負担するという制度、これは四十二年度の赤字を埋めようという暫定措置だと大臣もおっしゃいますが、こうした重大な制度改正をなぜここへぶち込んでしまうのか。弱い者から金を取って、それで抜本改正のようなむずかしいことはあと回しというような感じになりますが、これが第二点です。  それから第三点は、病院の経営実態について厚生省が最近発表したものがありますが、病院の経営実態調査の現状と将来の方針について。以上三点。
  68. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 順次お答えを申し上げます。健康保険組合の被保険者の負担限度料率は一般に被保険者の負担能力の面から見た限度を意味するものではなくて、制度の歴史的、沿革的には、政管健保の保険料の料率との均衡を考慮してきめられてきたものでございます。今回の保険料率引き上げによりまして、政管健保の被保険者負担の料率は千分の三六と、御指摘のとおり千分の三六となりますので、従来の経緯からいたしますと、むしろその組合の被保険者負担限度料率は現在千分の三五でございますから、それを引き上げて、そうしてバランスを合わせるというのがこれの筋なんでございますけれども、しかし、現行の組合の保険料率の上限、一番上でございます。それが千分の八〇と法定されております。そのままにして千分の三五を、これを引き上げた場合には、事業主と被保険者との負担割合、これは事業主の負担割合が減りまして、被用者のほうが、被保険者のほうが負担割合がふえてくるというような、そういうおかしな負担割合を招来すると、こういうようなことになりまするので、今度はそういうことをやらないで、また現在組合の保険料率上限を、これを引き上げるというようなことも、組合の現状から申しまして適当ではありません。組合健保の被保険者負担限度料率千分の三五については今回はこれを据置いたと、こういうような次第でございます。  それから薬剤の一部負担についての御意見でございますが、今回の財政対策におきましては、昨年講じましたように保険財政の収入面の対策のみではとうてい赤字を解消することができないような財政状況にありますので、給付を受ける者と給付を受けない者との均衡をはかるという趣旨で、まことにこれは臨時、応急の措置でございますけれども、一部負担制度の改正に手をつけざるを得なかったと、こういうようなわけでございますが、その一部負担の改正にあたって、現行の初診料及び入院時の一部負担金を増額することを考えましたが、これが現行の一部負担金の手直しだけでやっていく場合には、それぞれたいへん大幅な引き上げをせざるを得ない。その引き上げを妥当な額に、できるだけ妥当な額に押さえることといたしまして、通例だれもが受ける給付であるところの薬剤に着目いたしまして、そうして外来投薬時における被保険者本人の定額負担をあわせて行なうと、こういうことにいたしたような次第でございます。  それから医療経営の実態調査についてでございますが、医療経営の実態調査は、昭和二十七年に実施して以来今日まで全面的な調査は実施していない。そこでその後多くの年月を経過しておりますので、医療経済の実態も大きくこれは変化をしてきておりますので、最近の実情を調査して、現在における医療経営の実態を把握する必要があるものと考えております。で、この種の調査は、調査を受けるほうの側の理解ある協力がなければ真実なりっぱな結果を得るというようなことが困難でございますので、現在行なわれておりまする中央社会保険医療協議会の検討を待ってこれを実施しよう、かように考えておる次第でございます。
  69. 小平芳平

    小平芳平君 そこで厚生大臣に。いまの経営実態調査ですね、経営実態調査は厚生省としてもっと強い態度でこれに臨まなければならない。ということは、最近の新聞で見ましても、非常に水増し請求一億円とか、こういう八十二機関指定取り消しとか、こういうことはまじめなお医者さんに非常に迷惑な話だと思いますね。ですからこういう点厚生省がいままでのようにただむずかしいむずかしいだけではなくて、もっとやっていかなくちゃならないという点について、決意なり具体的な方針をお尋ねしたい。それが一つです。  それから次についでに申し上げますが、大蔵大臣に、これはやはりさっきの計画では、相当程度保険料が引き上げらるべきことは当然であるというふうに、何となく保険料を引き上げれば赤字が埋まるというような安易な考えですね。今度は患者さんにまでも薬代を負担させて赤字を埋めようという考えですが、これは非常に社会保障制度に重点を置いていこうというお考えと矛盾する考えではないでしょうか。
  70. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 医療の実態調査につきましては、まことにおっしゃるとおりでございまして、これは厚生省当局といたしましても、ほんとうに強い決意をもってやらなければならないと思っております。さような意味におきまして、今日中医協を開いておりますが、この中医協に対しましても、その結論をできるだけすみやかに、できるだけ妥当なものを出してもらいたいということを強く要望いたしておりますし、私もまた事務当局係官を督励いたしまして、ほんとうに強い決意でもってこの実態調査をやりまして、そして実態を把握してまいりたいと、かように考えております。
  71. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 社会保障制度を保険制度でやっていこうという限りは、やはり保険計算に基づいた給付に基づいて、給付に拘束されたこの保険料率というものが、当然に算出されるわけでございまして、そういう意味においてこの内容を充実しようというときに保険料率の増加というものが伴うというのは、これは保険制度による限りは、当然であるというふうに私は考えております。
  72. 小平芳平

    小平芳平君 当然だと言われますけれども、この当面の赤字対策が、ただ保険料を値上げして埋めようと、患者さんにまで薬を負担して赤字を埋めようと、それでよろしいですか。
  73. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いまの制度では、うまく運営できないということからきている問題でございますので、これについては抜本的な対策を立てようと、その間とりあえずこの、いま起こっている赤字の対策だけは、保険制度としてしなけりゃならぬという臨時の措置が、今回の措置でございますが、これもいままでの累積赤字を今度の措置で解決しようとするわけじゃございませんで、従来の千億をこす赤字はそのままにしておいて、本年度だけ新たに発生する七百億円を中心とする赤字対策、こういうことから政府も出すし、保険料において利用主も負担するし、保険者も負担する、三方の負担によって、今年度の赤字を緊急的に解決しようというのが今度の措置でございまして、これでいいというわけじゃございません。
  74. 小平芳平

    小平芳平君 以上で社会保障制度は終わりにしまして、次に私は道路、それから交通対策についての質問をいたしたいと思いますが、初めにきのう、きょう、けさの新聞では、警察官が千葉では無免許でいたずら運転をして七人の幼稚園の児童にけがをさせたと、また警察官が京都では八十キロで飛ばして事故を起こしたと、こういうようなことが報道されておりますが、ここでもって私たちが感ずることは、これから私、相当道路問題についてあるいは交通対策について御質問を続けていきたいわけですが、まことに国会でこうして論議していることと現実に社会で起きていることとは、ちぐはぐ過ぎるような感じがいたしませんか。
  75. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 世をあげて交通事故対策に取り組んでおる現在におきまして、しかも指導あるいは取り締まりの任に当たりますべき警察官が、あのような事故を起こしたことにつきましては、深くおわびを申し上げる次第でございます。被害者の方あるいはその父兄の方々ばかりでなく、国民全体におわびをしなければならないと思います。平素から教養訓練に、あるいは技術の指導につきましては、特に警察官で車を運転する者については、そうした物心両面にわたる訓練を厳重にいたしておったのでございますが、このような事故が起こりましたことは、ほんとうに申しわけなく存じております。今後さらに制度的にも、物心両面にわたる教養を強化をいたしまして、今後あのようなことのないよう絶滅を期したいと存じます。
  76. 小平芳平

    小平芳平君 いままあ、いろいろと予算関係について質問に入る前にいまお話がありましたように、こういう問題が次から次へ起きるということは、非常に国民にとっては重大な問題だと思いますので、いまおっしゃったような点に、常に力を入れてやっていただかなくてはならないと思います。  それで交通安全施設等整備事業三ヵ年計画というものがありますが、これについては建設省、また警察庁のほうからも予算がついておりますが、出されました資料を見ますと、三ヵ年計画が四十二年で二年になりますが、二年かかっても計画の半分もいってないというような項目すらあるように見受けますが、これはどういうんでしょうか。
  77. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 交通安全三ヵ年計画ですが、大体保安施設のうちに、第一種というのが歩道橋とかオーバー・ブリッジ、それから歩道。第二種というのは道路照明、防護さく、そういうようなもので、一種二極と分かれております。大体におきまして初年とことし、ことしは二年目でございますが、ことしを過ぎますというと、第一種の点におきましては八〇%ぐらいできるわけでございます。いまその途中でございます。それから第二種につきましては六〇%くらい——第二種の照明であるとかあるいは防護さくというようなものでありまして、ただいまのところ、いま五〇%ぐらいしかできていないというような施設もあろうかと思いますが、今年度で相当に進む、かように考えておる次第でございます。
  78. 小平芳平

    小平芳平君 警察のほうは。
  79. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 公安委員会所管の交通安全施設は、御承知のように交通信号機あるいは道路標識、道路標示等でございます。全体計画が四十三億円で、四十一年に八億円、それから四十二年度で十三億五千万円の企画をいたしまして、これも警察のほうのおくれておりますのは、これが昨年の七月からでございまして、そのような関係もありまして、やや道路関係に比べておくれておるような次第でございます。
  80. 小平芳平

    小平芳平君 建設大臣のほう、いま説明された二種は、かりに道路照明で見ますと、四十一年、四十二年プラスして四五%になっておりませんか。
  81. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) これもう少し詳しくそれじゃ御説明しますと、第一種の歩道は、四十一年度と四十二年度、四十二年度は途中でございますが、四十二年度は計画を全部やりますと、歩道につきましては七五%できる、それから横断歩道橋につきましては八四%できます。それからこの第二種の道路照明ですが、これは四十二年度で五五%、それから防護さくにおいては五九%、それから道路の標識につきましては五七%、その現在四十二年度を全部完了したとすれば、その程度にするわけでございます。
  82. 小平芳平

    小平芳平君 そうするとこの資料と違いますがね。
  83. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) いま聞きますと、あなたの持っているやつは当列の目標だと、こう言っておりますが。
  84. 小平芳平

    小平芳平君 予算委員会で配られた資料ですよ、これは、今度。
  85. 蓑輪健二郎

    政府委員蓑輪健二郎君) お答えいたします。  実はここに出した資料につきましては、四十一年度、四十二年度の表が載っておるのでございますが、四十一年度につきましては、四十一年度当初の計画の数字になっております。その後四億幾らをふやしまして、いまの大臣の答弁されたのが実績の数字になっておるのでございます。
  86. 小平芳平

    小平芳平君 じゃ、その正確な資料を出してください、あとでね。  それで次に、交通安全施設は歩道ですね、あるいは歩道橋、あるいは道路照明、こういうものが歩行者を守るための設備として非常に大事なわけなんですが、特に建設省としてはどういう方面に重点を置いておやりになるか。これも建設省の指示で七大都市などに通達をして、それで交通安全施設を一日も早くつくれという通達を出したということが報道されておりますが、これは七大都市の通達もさることながら、大都市でなくても、一号線とか二号線、三号線、四号線というような、こういうところは非常に危険なんですね。ですから、そういうところにこそ歩道も必要だし、歩道橋も必要じゃないか。
  87. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 先般から歩道橋の問題につきましては、当委員会でもたいへんいろいろ質問がありました。したがいまして、私といたしましては、一番歩道橋をつけたいと思いましても、その土地の人との設置場所につきまして、了承を求めてやらなければできないのであります。そういうトラブルは、どうしても都会地に多いのでございます。とりあえずそういうトラブルがあるところは、早くそのトラブルを解決しなさい、したがいまして、それに対して緊急に措置をしたいと習ったのでございます。全般的に進めることは、それによって他のところはおくれることはないのであります。どうしても設置場所の点が非常に遅延をさせるもとになりますから、それを特に重点を置いて、トラブルあるものは報告せよ、できれば建設省直接にいろいろ交渉をするから、こういうようなことで、とりあえず緊急措置としてそういう措置をとった次第でございます。
  88. 小平芳平

    小平芳平君 ですから、たとえば一号線とか四号線とか、四号線などは死号線と言うそうですけれども、そういう危険なところに対してのお考えをお聞きしているのです。
  89. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) その他、大都市でなくても、危険な個所につきましては、引き続き緊急に進める態勢をとっておるわけでございます。
  90. 小平芳平

    小平芳平君 交通安全施設の整備計画が、どうも出された資料と違うというようなことで、あまりはっきりしませんけれども、そこで総理府の対策本部長の総務長官にお尋ねいたしますが、こういうような交通安全関係が非常に各省にまたがっておりまして、それで計画が予定どおり進んでいるものかどうか、あるいはそれだけの計画ができたら、どのような安全性が保てるか、そういう点についてまとめていらっしゃるかどうかですね、あるいは対策本部としては、どういう活動をしていらっしゃるか、お尋ねいたします。
  91. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) 御承知のように、私のところには交通対策本部というものが設けられております。昭和三十五年以来設けられておりまして、私がその本部長というものをつとめております。次官をもって本部の会議は構成され、また局長クラスが幹事役として、またその下の機構もございまするけれども、一応そういった形で運営されておるわけでございます。昨年非常に残念なことではありまするが、きわめてグルーミーなニュース、戦後最高の死者を出したという交通事故に対処いたしまして、いま問題になっておりまする緊急三ヵ年計画というようなもの、これは四十一年度を起点といたしたものでありまするが、こういうものを中心としていろいろと協議も進められ、進捗度においていろいろ御批判はあるようでございまするが、これを二ヵ年に繰り上げてこれを全部実施するというようなことも各省に対して強い指示をいたしたのでありまするが、いま数字の点でいろいろお話の出ているような点もあります。もちろん関係各省が全部集まったものでありまして、各省のなわ張り争いでできないのじゃないかという声もありまするが、私の見るところではそういうことはなく、きわめて各省円滑にこの会議というものは進められておる。私はこのように考えております。しかし、なおいろいろと御批判の点もありまするので、総合調整という立場から、いま一番重要な政治問題とまでいわれているこの交通対策、交通の安全施策につきましては、今後とも各省の総合調整をはかりながら、直ちにできるだけのことを進めていかなければならないという強い決意を持って、この問題と取り組んでおる次第でございます。
  92. 小平芳平

    小平芳平君 そこでちょっと具体的に、これは各省大臣に全部お尋ねすべきことかもしれませんが、対策本部長さんにお尋ねいたしますが、国としては、そのように総合的に対策本部を持っておりますが、地方公共団体はそれを持っているかどうか、あるいは持っていない場合には、どういうような総合対策のお考えがあるか、それが一つです。  それから次に実際交通事故が起きた場合に、交通相談ですね、まあいろいろな相談です。被害者、加害者とも相談する先がいまなくて困るわけですから、そういう点、被害君のあるいは援護とか、こういうことをめんどうを見る機関、そういう点についてのお考えがあるかどうか。  それから次に、実際交通事故が起きた場合に示談するかどうか、裁判になるかどうか、非常に困っている人があるわけですが、こういう方々に対する調停機関なり相談、そういうようなものが必要じゃないかと思いますが、それについてのお考え。
  93. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) 昨日も小平委員御出席の参議院の委員会で申し上げましたように、日本は歩行者に非常に事故が多いという特殊性にかんがみて、従来言われている道路等安全施設の整備という一つの柱、それから交通教育というもの、取り締まりというこの三つ以外に、犠牲者に対する保護という四本の柱で、私はこの問題と取り組んでおる次第でございまするけれども、いま御指摘の点について一つ一つ申し上げたいと思いまするが、やはりこういう問題は、国民総ぐるみ運動、県民総ぐるみ運動、もちろん国民総ぐるみ運動というようなものも絶対必要であります。そこで、このところ交通安全国民会議というような会合も持ちまして、この交通安全についての対策を強く練っておりますることは、これは御承知のとおりであろうと思いまするけれども、いま御指摘の第一番目の問題は、国と地方との関係という点であったと思いまするけれども、国には、もちろん御批判はあったとしても、こういう交通安全対策会議があるわけであります。地方においてももちろんあるわけでありまして、これに対してどういう影響力をわれわれが持っているかといえば、やはり今日の段階では、それぞれの各省庁を通じまして地方自治体、地方団体等に対しましてこの問題の趣旨をはかっているのが第一でございます。  それから第二に、いろいろと問題の起きた場合の交通相談所と申しますか、そういうものを設置する意思があるかないかということでございまするが、今度、各都道府県にこの相談所を設けることにきまりまして、近くこの活動が開始されると考えております。なお、府県庁の所在地だけでは足りない場合には、さらにその末端においても直ちにいろいろなものに応急的な措置が講ぜられるようなことも、これまた考えていかなければならないと思うのであります。  それから第三の交通調停制度という問題でありまするが、これは法務省のいま所管になっておりまするので、一応法務省から詳しい話は、説明はいたさせたいと存じます。  以上であります。
  94. 貞家克巳

    説明員貞家克巳君) 司法機関の手によります調停制度の立案等に関しましては、法務省の所管に属する事項でございまするので、便宜法務省の関係官としてお答え申し上げます。  現在、交通事故が起きました場合の交通関係の調停に関しましては、昭和二十六年に成立いたしました民事調停法に基づきますところの裁判所の民事調停事件の一種として処理されているわけでございます。そこで、この制度の運用の衝に当たります裁判所当局におかれましては、この種の事故の頻発性と、それから事件になりました場合のその事件の重大性にかんがみまして、種々運用上のくふうをこらされているように承知しておるわけでございます。したがいまして、今後も事件として司法機関に出ます前の援助助言というような問題は別といたしまして、司法機関による救済という点に関しましては、第一次的には裁判所当局によります運用の改善と、それからなおこの制度が広く国民の各層に理解されまして、十分利用されるようにつとめるということが、最も望ましいことではないかと考えるのでございます。  司法機関の行ないます調停制度といたしまして、現在の民事調停法によります民事調停制度と全く別個の新たな制度を設けるということも考えられないわけではございませんけれども、はたしてその実益があるかどうか、非常に疑問でございまして、むしろ制度を複雑化させますよりは、現在の制度の拡充と、その事件の特殊性による裁判所の運用の改善ということを期待するほうが得策ではないかと存ずる次第でございます。  なお、念のために申し上げますが、農事調停とか商事調停というような特殊の調停事件がございますが、これらにつきましても、すべて民事調停法という法律に基づきまして、これは従来ばらばらでございましたのを、わざわざ昭和二十六年に統一いたしまして、その内部におきましてそれぞれ事件の特殊性に応じた運用上のくふうをしているというのが、実情でございます。
  95. 小平芳平

    小平芳平君 いまの点は、よく困っている人が利用できるように、相談しやすいようにということの趣旨で申し上げたわけですので、御検討願いたいと思います。  それで次に、交通問題は自動車対人の問題がいま盛んに大事な問題となっているわけですけれども、やがては今度は自動車対自動車の問題ですね、これについて通産大臣日本の自動車がいまのようなままの構造や性能で輸出ができなくなりはしないか。要するに外国では自動車対自動車の安全性というものが非常な大事な段階にあるときに、やがて日本の国でも自動車対人の問題を解決し——解決するのはむずかしいかもしれませんが、自動車対自動車の安全、こういう点について考えなくちゃならないと思いますが、いかがでしょうか。
  96. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) お話しのとおり、この問題は重要な問題だと存じております。が、しかし御存じのとおり、日本の国産自動車の輸出が非常にふえておりますが、これは結局性能、質の上においてやはり世界的になってきたがために売れておると思うのでありますが、ただその自動車の安全性、あるいは排気ガスの量というようなことで、外国のほうではだんだんと取り締まりがきびしくなっておりますから、したがってそうなってくると、いまの日本の自動車ではたして海外に売れるかどうかということが問題になると思うのです。その点につきましては、各業者ともにそれぞれ改善をはかっておりますから、したがいましてこれは各業者ともにこの問題について非常に熱心に改善をはかって、海外に売れるように努力いたしております。また同時に政府といたしましても、この問題についてはやはり取り組まなければならぬと考えまして、工業技術院の機械試験所、それから資源技術試験所等を中心といたしまして自動車の安全公害研究センターを設置いたしまして、それでこの排気ガスの問題、安全性の問題ということについては、官民協力してこれが改善をはかるということにして、それによって自動車のまた性能なりあるいは改善をはかっていって、海外にどんどん売れるようにしたいというふうに考えておる次第でございます。
  97. 小平芳平

    小平芳平君 次に、道路整備について御質問いたしますが、道路整備新五ヵ年計画というものを提案しておられますが、これについて御説明を簡単にお願いしたいことと、この道路整備新五カ年計画六兆六千億によって、どの程度の道路整備が見込まれるかという点についてお尋ねいたします。
  98. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) このたび道路の整備につきまして、四十二年度を初年度としまして五カ年計画を策定することにいたし、六兆六千億円を見込んでおるのでございます。その六兆六千億円の予算につきまして、ただいま法案といたしましても道路整備緊急措置法案を提出いたしております。内容等につきましては、この法案が通りましたら、非常にコンクリートな内容をきめたいと思っておる次第でございます。大体この五カ年によって全部ができるわけではございません。したがいまして、さらにその後に五ヵ年計画をつくる、しかしおおむね考えておるところによりますると、今後二十年くらいの間には、現在予定されておりまする七千六百キロの自動車の高速道路、これをおおよそ片づけたい、二十年くらいのうちには。しかし、その前半の十カ年くらいにつきましては、そのうちの半数くらいに着手をいたしたい、さらに今回の五ヵ年計画では、有料高速道路にいたしましても、現在着手いたしておりまする東名高速道路、これは完成をいたしたい、また中央道の東京——富士吉田間も完成いたしたい。そうしますと、高速道路に関しましては、おおむねやはり神戸からございますから、中継しますと六百三十キロくらいになると思います。さらにそのほかの道路を着手いたしますから、その完成ができましょうから、この五カ年間には高速道路としても相当に開通するところ、供用せられる道路ができると、かように考えておる次第でございます。
  99. 小平芳平

    小平芳平君 建設大臣にお尋ねいたしますが、はっきりなっていなければなってないでやむを得ませんが、いま具体的に高速道路建設についてございましたが、そこで、いま問題になっております関門ですね、関門の架橋、あるいは本州と四国の連絡の架橋、こういうものはどの程度の見通しでおやりになるか。  それからまた第二には、中央道が富士吉田までできた場合、それから先の計画、それについてです。  それから次には、都内の交通麻痺ですね、都内の交通麻痺は、高速道路ができてなおさらひどくなりはしないかという心配はありませんか、その点について。
  100. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 関門架橋でございますが、関門架橋につきましては、ただいままでは直轄調査をいたしておったのでございます。しかし、四十二年度から着手したいということで、日本道路公団で実測の調査をいたしておる段階でございます。いまの計画ですと、おおむね四十七年には使えるようにしたいということで、もっと早くならぬかという希望がございまするが、これは相当に技術的な非常にむずかしい仕事でありますので、四十七年の初めには何とか供用したいと、かように考えております。  もう一つの瀬戸大橋の中国−四国の架橋の問題でございますが、この十九日に土木学会から——建設省と日本鉄道建設公団が一緒になりまして技術上の調査の委託をしました。その結果の報告は十九日にあるわけでございます。われわれといたしましては、その報告を拝見をいたしまして、どのルートにどれだけの予算がかかるか、また、どれだけの期間がかかるか、こういうようなものをその調査に基づいて計算をしたい。さらに、どのルートをとるべきかと、こういうことにつきましては、今後もう少し考えて進まなければならぬだろう、かように考えております。  もう一つ、中央線の富士古田からの先の問題でございまするが、これはいま第一次的な調査はしたいとは思っておりまするが、まだはっきりした目安がついておりません。  こういうように高速道路がどんどん東京に乗り込むというと交通麻痺を起こすじゃないかという御心配、それはもっともでございます。したがいまして、こういうような高速道路が都内に乗り込む場合に、それはやっぱり大きい環状線で受けとめてそして交通の整備をしなければならぬと思って、その外郭の環状線につきましても一部は考慮をいたして計画をいたしておるのでございます。しかしながら、小平さんも御承知のように、非常に密集なところにこの環状線をつくるということには賛否両論がございまして、ことに地元の方々がなかなか反対をしておる方もたくさんあるのでございまして、われわれといたしましては、高速道路を受けとめる環状線につきましては、何らかの方法でこれは処置しなければならぬだろう、こういうことでせっかく検討をいたしておる最中でございます。
  101. 小平芳平

    小平芳平君 この交通麻痺の問題は非常に重大な問題だと思いますので、ひとつ検討もされ、早く具体案を、それこそ総合的に立てなければ、ただもうこういう道路をつくるだけで済むかどうかという問題もあると思いますので、お願いしたいと思います。  次に、この六兆六千億の財源についてですが、これは建設大臣と大蔵大臣にお尋ねいたしますが、この財源は、一般財源によってですね、四十二年の用にまかなっていかれるお考えか、あるいはガソリン税等の値上げあるいは道路債券、そういうようなものをお考えになりますか、この点について。
  102. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 六兆六千億円は、今後五ヵ年の間におきまして、国、地方を通ずる全体的な財政上の見通しのもとにこれをきめたのでございます。しかし、その財源をどういうふうなものでどう充てるかということにつきましては、事業の計画がまだはっきりいたしませんので、いまその財源の区分を申し上げる時期ではないと思うのでございます。そのために今後これはもう少し事業内容がきまりましたら、大蔵当局その他関係の方々と相談して、その財源について考えたいということでございます。
  103. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま建設大臣が言われましたとおりでございまして、いま事業の内容も、その財源の問題も、関係省内において検討中でございまして、財源関係にはまだ結論が出ておりません。
  104. 小平芳平

    小平芳平君 それが具体化された場合ですね、ガソリン税値上げみたいなことはおやりにならない、そういうことはわかりませんか。
  105. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 一般会計からどれだけ出せるかというような問題は、他の財政需要との関係がございまして、やはり一定の限度がございます。で、それをどれくらいこの五ヵ年間には込めるかという問題と、一方特定財源の伸びをどういうふうに見ると、それが足らない場合には、ガソリン税の値上げという問題を考えなければならぬかとか、こういうようなものを関連させていま検討している最中でございまして、まだ結論が出ておりません。
  106. 小平芳平

    小平芳平君 労働大臣、たいへんお待たせいたしまして恐縮でしたが、最後に、労働省としましていろいろお尋ねしたい点はありましたのですが、一つだけ、産業安全あるいは安全衛生のための施設をつくる場合ですね、これについて、工場などで施設をつくる場合に、奨励金とか減税とか免税とか、そういう点についてどのようになっているか。
  107. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 事業主が産業災害を防止するために、有毒ガスや粉じんの極小排出処理装置等の特定の産業施設を設けました場合には、所得税、法人税及び固定資産税につきまして、特別の減税措置を昭和四十一年度から行なっている次第でございます。
  108. 小平芳平

    小平芳平君 大蔵省のほうへは、労働省のほうからそういう産業安全、安全衛生のための施設についての問題について、減税、免税の措置の申し入れがありますか。
  109. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 昨年申し出がございまして、そのために五つ免税措置をとろうということを昨年やりましたが、今後なお続けて検討していくということになっておるそうでございます。
  110. 小平芳平

    小平芳平君 ですから、五つそうなっておりますが、ここでもって労働大臣にお願いしたいことは、いま公害の問題でも、公害のためのいろいろな施設をつくる場合には、減税、免税措置その他公害のための公庫、お金を貸してくれるところまでできているわけですが、ここでもって産業安全、安全衛生についても、そういう点をもっと幅広く強力に進めていかれなくちゃならないんではないか。先ほどの交通事故の問題でもありますけれども、しかしまた、産業の安全確保のために人命尊重の上からいっても、そういう点についての企業に対する労働省のお考え、もっとあたたかい思いやりのあるお考えが必要じゃないかと思いますが、いかがですか。
  111. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 御指摘のとおりでございまして、産業災害が七十万人にも及んでいる状態でございますので、今回の四十一年度からの安全設備に対する減税措置というものの周知徹底をはかってまいりたいと思っておるわけでございます。現在まで昭和四十一年度では、そういった安全衛生設備の増設による事業件数は百件にとどまっておるわけでございます。事業主にこの減税措置を周知徹底させるとともに、このほかに特別の融資制度がございます。そういった設備をつくった場合の有利な融資の方法をも活用できるわけでございますから、事業主に対しまして、今後大いにこれを活用していただくように指導してまいりたいと思います。
  112. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上で小平君の質疑は終了いたしました。  午後一時十分再開することといたしまして、これにて休憩いたします。    午後零時三十三分休憩      —————・—————    午後一時二十七分開会
  113. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、質疑を行ないます。  西村建設大臣から発言を求められておりますので、これを許します。西村建設大臣。
  114. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 五月十日でしたかの委員会で矢山委員から、国土地理院におきまするいわゆる軍用地図についての質問がございましたが、当時私は新聞を見たばかりでございましたので、簡単なお答えをし、いずれ調べましてお答えをしようということでありましたので、その後調査をいたしました結果をただいま御報告申し上げたいと存じます。  この地図は、農産物に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定に基づく、米国からの余剰農産物の資金のうち二億五千二百万円をもって日米共同地図作製を行なうことにつき、日米両国の合意を見て、昭和三十五年二月十八日、外務大臣と米国大使との間で交換公文がかわされました。これに基づき国土地理院——当時は地理調査所でございましたが、昭和三十五年度から昭和三十九年度までの五カ年間に、本州及び北九州の一部、総面数四百五十四面の地図を作製したものであります。  地図の内容につきましては、本地図は日本式と米国式との折衷をとって作製しておりまして、国土地理院がいままで刊行し、市販中の五万分の一地形図と大差はないのでありますが、異なる点といたしましては、グリッドの記入、道路の状況表示、等深線の記入等があります。このグリッドにつきましては、すでにイギリス、スイス、ドイツ等の諸国におきましても、市販の地図に採用されておりまして、また道路の状況の表示等につきましては、わが国の市販の地図にも、基準は若干異なるが、表示されておるところであります。また、等深線につきましては、水路部において一般に発行しております海図から編集したものであります。このような状況でございまして、特にこれが軍用地図として異なったところはないように見受けられるのでございます。
  115. 矢山有作

    ○矢山有作君 この間の軍用地図の問題につきましては、佐藤総理は全然事態を知らなかったようです。むしろ、どういう取りきめに基づいて行なわれたかということも知らない。そしてその発言の模様から見ると、安保体制のもとで事務当局がかってにこういうことを進めているということになればそれはけしからない、こういう意味の私は発言だったと思う。ところがいま聞いてみると、この軍用地図の作製というのは、外務大臣と駐日アメリカ大使のダグラス・マッカーサー二世との間に取りかわされた交換公文によってこれが行なわれているわけです。このことを外務大臣は御承知になっておったのかどうか、これをお伺いいたします。
  116. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは矢山君御指摘のように、当時の藤山外務大臣アメリカの大使との問の交換公文でこういうことができたわけでありますから、やみからやみに行なわれたものではございません。
  117. 矢山有作

    ○矢山有作君 アメリカ大使と日本外務大臣との間の交換公文に基づいて行なわれたのだから、やみからやみで行なわれたものじゃないと言われたわけですが、十日の委員会には外務大臣出席になっておったはずですね。総理のほうの答弁は、全然知らないという答弁であったわけです。外務大臣、この点をどうお考えになりますか。あなたがこの経緯を知っておったのであるならば、そういうことが問題になった場合には、やはりあなたのほうからその経緯を積極的に明らかにしていくというのが、外務大臣としての立場じゃありませんか。
  118. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 八年前のことでありますから、いろいろの、全部の交換公文というものについて、全部私が知っておるというわけではないわけです。したがって、そういういことも、問題になって交換公文も調べてみたわけでございます。しかし、外務省自体としてはそんなこと知らぬわけではないわけで、ちゃんと交換公文でやった、私自身はああいうことが問題になって調べてみたということであります。
  119. 矢山有作

    ○矢山有作君 これであなたはこの問題が表面化するまでは何も知らなかったということが明らかになったわけです。これは少なくとも政治担当の最高レベル間で取りきめられた交換公文に基づいて行なわれたことであって、事務当局がかってにやったものではない、このことは明白になりました。  次にお伺いいたしたいのは、十日の予算委員会で建設大臣は、新聞にはことさらに軍用軍用と書いておる。しかし、これは五万分の一の地図とあまり変わらないのだという答弁があった。いまの調査結果の説明を聞いても、普通の地図とあまり変わりはしません、ことさら軍用の目的のものではないと、こうおっしゃるわけですが、あなたはあくまでもそういう考え方をお持ちですか。
  120. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) そのあまり変わっておらないということでございます、その変わっておらないということを申し上げるのは、たとえば日本の五万分の一で市販しておるものは日がありません。グリッドがありません。しかし、グリッドがありませんけれども、そのグリッドは日本でもそういうことをやったらどうかというような意見もありましたし、それからまた色合い等につきましても、それは多少向こうと違うわけでございます。それから等深線——海の深度を入れた、そういうようなものもありますけれども、そのつくったものにつきましては、日本のものも、それからそういうようなグリッドを入れたものも、市販に出したことがあるようでございますけれども、ただ日本人にはあまりなじみがないのですね。また、日本名でなしに英語でも書いてあるからなじみがないので売れなかったというようなことで、一般市販にしておりますから、それだから特に軍事用というのではないというので、呼び方の問題でございますけれども、私は普通に、そう違っておらないということを申し上げるだけでございます。
  121. 矢山有作

    ○矢山有作君 建設大臣、そういう次元でものを言わずに、これがつくられたもとから考えると、あなたは経過は御存じのように、日本が敗戦によって占領軍の占領下に入った。アメリカの測量関係の技術大隊が日本に入ってきて、当時日本軍が持っておった日本それから東南アジア、中国大陸、これらの地図を全部没収したわけであります。これをもとにしてアメリカアメリカタイプの地図に書き直していった。同時に、北海道から始めて日本海沿岸の地図を独自につくっていったわけです。ところが、講和条約が発効した。そういうことになって独自で自分が地図をつくれなくなったから、米軍のほうから金を出して、米軍の極東地図局が金を出して、そうして地図をつくらした。これは明らかに、地図の形がどうとかこうとかいうのでなしに、軍用目的のためにつくらしたということになりませんか。
  122. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) そういう意味でおっしゃるなら、外務大臣と大使の交換公文にも、共同防衛のための軍事上の資材、施設あるいは役務を提供するというようなことになっておるのでございまして、そういうような言い方におきましてはまた違った意味を持つというのでございますが、地図そのものについてはあまり変わっていないと、こういうことを申し上げておるのでございます。
  123. 矢山有作

    ○矢山有作君 それでは軍用目的のために作製したということだけは認めますね。
  124. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) やはり一般の市販と変わらないのですから、軍事目的のためにと、交換公文にはそう書いてあるから、それは軍事用ということになれば軍事用ということでありまして、特に違わないと、こういうことを私はあくまで申し上げておるのであります。
  125. 矢山有作

    ○矢山有作君 特に違う違わぬということを言っておるのじゃない。軍用目的につくったかつくらないかということを言っておるので、簡単に答えてください。建設大臣、もう一ペン、地図の現物をどうとかこうとか言っておるのじゃない、目的につくったのでしょうと、こう言っておるのですから、そうならそう、そうでないならそうでないという根拠を示してもらいたい。もう一ぺん答弁してもらいたい。
  126. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 交換公文の共同防衛のための軍事上の役務を提供するということの意味では、あなたのおっしゃるとおりかもしれません。
  127. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、この地図は軍用目的のためにつくったということは明らかになりました。  で、次に私がお伺いしたいのは、軍用目的につくったのではあるが、一般の地図とは違わぬとか違うとかいうことをおっしゃいますが、大臣は地図の現物をごらんになりましたか。
  128. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 地図そのものは拝見いたしました。
  129. 矢山有作

    ○矢山有作君 その地図の現物をあなたが拝見なさったときに、これが軍事的に非常に役立つものであるという感じをお持ちになりませんでしたか。私が、現物を見ました。現物を見た結果、これはやはり米軍の極東地図局がつくらしただけあって、軍事的に直ちに一般の地図に比べて非常に役に立つ地図だと、こういう印象を受けたわけでありますが、あなたはその点そういう印象を受けなかったわけでありますか。
  130. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 私は、軍事上のことはあまり詳しくないから、どういうことが、そういうものに軍事上重要なことかわかりませんが、ただやはり海岸線に等深線が入っておるようなことも、これはいままでやはりあるわけなんですから、特にこれは軍事用だと、私は軍事上の知識はございませんからそう感じません。いわんや、そのものを市販にはしたのでございますから、ただあまり売れなかったということだけでございます。
  131. 矢山有作

    ○矢山有作君 建設大臣ね、盛んに同じような地図を市販した市販したということを強調なさるのですがね。もとの地図は米軍の金でつくって、すべての資料を米軍に提供して、米軍はそれをもとにして米軍川の地図を作成して、そしてその原版を地理院に返してくれてそれでつくったのでしょう。そういう経緯なんですよ、それは知っていますか。
  132. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) まあ、それは共同でつくったのですから、これはそういうことはあったかもしれませんけれども、でき上がったその結果につきましては、私がいま言ったようなことでございまして、でき上がった結果につきまして見れば、そうあまり変わりがないということなので、特に軍事上これがあるからということで……、ただ、やはりいままでの日本の地図の場合は平面的な地図しかつくれなかったが、あるいは航空写真によってつくるとか、精密になっておるというようなこともありますが、そうい意味において、私が変わらない変わらないと盛んに強調しておるようだとおっしゃいますけれども、私にはそれほどぴんときないわけです、あなたの言うように。まあ、軍事上の知識が私にはないからかもしれません。
  133. 矢山有作

    ○矢山有作君 軍事的な知識がないということでお逃げになるのですがね。日本で市販されている地図と米軍用に作製されたものとを一ペん突き合わしてごらんなさい。特に軍事的に日本では必要がないということで一般に市販する地図については、その軍事的な要素の濃いところは、強いところは、抜いてあります、日本の地図ではね。米軍用の原版にはそれがはっきり出ているわけです。ですから、私は軍事用に役立たないというような議論を、日本の一般の地図とあまり変わらないんだというところに持っていっては間違いだと言うのです。そういうところを強く指摘しておきます。したがって、問題はどういう地図であるかということを私はみんなが知っておかなきゃならぬと思いますから、地図を資料で提出してください。よろしいですね。
  134. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 資料の提出、委員長と相談いたしまして提出してもいいと思います。
  135. 矢山有作

    ○矢山有作君 先ほどの答弁を聞いておりますと、安保条約のもとで役務提供の義務づけその他がある、したがって、共同防衛の立場からこういう地図をつくったのだと、こう建設大臣もおっしゃる。それから増田防衛庁長官も先日の国会の答弁でやはり同じようなことを言っておいでになる。私はそこに問題があると思うのですよ。なるほど安保条約の制約下には日本はある。しかしながら、日本は独立国では間違いありませんね。その点はどうなんですか。
  136. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) それは私に確めるまでもなしに独立国であることには間違いはありません。
  137. 矢山有作

    ○矢山有作君 独立国である日本が、共同防衛の立場から、あなた方の立場に立ってですよ。必要だといって自分たちの手でみずからつくって、必要最小限度の範囲で日米の共同使用をやろうと言うなら、あなたたちの立場に立ったならば理屈はわかります。しかしながら、共同防衛であるという議論を振りかざして、すべてを米軍のために、米軍の金で米軍のためにつくっておるということ、そしてそれをやるために政府機関が全力をあげてこれに協力しなければならぬということ、このことは一体独立国という立場が貫けておるのですか。安保体制のもとにおいては日本政府機関、あらゆるものがアメリカの要求に応じてすべてこれをやらなければならないということになるのですか。それでは私は独立国とは言えぬと思う。それは安保条約体制のもとにおいて日本が従属国であるということになるんじゃありませんか。
  138. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) それは独立国でありましても、これは私はとやかく言う筋合いじゃありませんが、独立国でも共同防衛をやっておればそれは相手国に対する利益も供与しなければならぬでしょう。また自国の利益をはからなければならぬこともあると思います。
  139. 矢山有作

    ○矢山有作君 防衛庁長官どう思いますか。独立国独立国と言うなら独立国らしいことをしなきゃ……。
  140. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 矢山さんにお答えいたします。私はこの前もお答え申し上げましたが、常識的の立場から申し上げておるわけでございまして、日米関係は日米安保条約第五条によりまして日本の施政権下に武力行使が行なわれた場合に、それは米軍の施設あるいは基地に行なわれる場合もございましょうし、それからその他の日本本土に行なわれる場合もございましょうが、双方に対する危害と認めて、そうしておのおのの憲法にのっとって対処する、これが、日米安保条約は十何カ条ございまするが、趣旨とするところは第五条の第一項だと思っております。そこで第一項から見ますというと、独立主権国家であることは矢山さんのおっしゃるとおりでございまするが、日米が、日本の施政権下の国土、あるいは施設、あるいは基地が武力行使を受けた場合にこれを防護する、防衛するということが日米安保条約でございます。でございまするから、その条約の趣旨にかんがみまして、アメリカでも日本の施政権下のことをある程度知っていなければ武力行使を受けた場合にこちらの防衛的の実力行使はできにくかろうと、こういうふうに私は常識上考えておる次第でございます。でございまするから、そういうことをいろいろなことを研究しておりましても、別段、主権国家としての近代戦争における、近代侵略戦争といったほうが正確でございまするが、侵略戦争に対処する防衛的の実力行使ないし戦争という義務を背負っておる——あくまでも防衛でございまするが、その防衛義務を背負っておるアメリカとして平素研究をしておくことは当然である、わが国主権国家の権威と威信というものを落としたものでは私はない、そのために日米安保条約を結んでおるのでございますと私は考えておりまするが、矢山さんいかがでございましょうか。
  141. 矢山有作

    ○矢山有作君 あなたはもっともらしいことをおっしゃるけれども、共同防衛上の立場からアメリカがある程度のことを知っておらなきゃならぬ、そのことはあなた方の立場からすれば私はわかります。あなた方の立場からすればですよ、わかります。しかし、そのことが即日本の国土をまる裸にするのですよ、まる裸に。一たん戦闘が始まったら、きわめて正確に砲爆撃ができ、ミサイル攻撃ができ、上陸作戦が展開できるような、それに最も適合した地図をつくって、しかもアメリカ軍の金でつくって、日本政府機関が全面的にそれに協力をして、そうしてもとのものは全部アメリカに行くんですよ。その写しを日本はもらってきて日本人用の地図をつくっておるのですよ。これであなた、独立国である主権は侵されてないとおっしゃるけれども、国民はそれで承知しますか、よく考えてごらんなさい。
  142. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 安保条約の基礎である国連憲章第五十一条には、どこの国も、国連安全保障理事会が国際紛争が起きたときに適当なる措置をとるまでの閥、めいめいの国は国有の、あるいは集団的の自衛権があるのである、それが第五十一条でございます。第五十二条は、そのために集団的の安全保障の取りきめをすることができると、こう若いてございます。集団的の安全保障の取りきめのしかたでございまするが、結局二国間以上の安保条約というものはたくさんあるわけでございまして、矢山さん御存じのとおりでございます。NATOを初めとしてワルシャワ安全保障条約、そういうわけでございまして、外国の軍隊にすら独立主権国家が駐留してもらっておっても、近代国家思想は十九世紀の国家思想と違いまして、外国の軍隊がおっても、その独立、主権国家の権威と威信とを落としたものではない。まず第一に必要なことは、自国の存立と国民を保護することである。こういうわけで、西ドイツ、あるいはフランスはこのごろなくなりかけましたが、ベルギー、オランダ等にもアメリカ軍がおるわけでありまして、おりましても別段に主権国家たる実を害しないという解釈に国家学というものはだんだんだんだん進展しつつあるように私は考えます。
  143. 矢山有作

    ○矢山有作君 これはあなたの基本的な考え方と私の基本的な考え方が違うんだから、おそらくすれ違いの議論になるでしょう。しかし、あなたのような考え方でものを処理するのを国民が納得するかどうかということは別問題ですよ。私は軍用地図をつくる、なるほど共同防衛というあな方の立場からすればやるでしょう。それを日本みずからがつくって、必要最小限度の中で日米で共同利用しようというなら、日本の私は自主性、独立性というものの立場を堅持しながらやる行為だと思う。ところが、そうじゃない、いまあなた方がやっていることは。だから、私はあなた方がやっていることは全くアメリカに従属したやり方ではないかと、こう言っておる。これは、あなたに幾ら言ったって、そういうような思想の持ち主では、これはどうしようもない。しかし、そういうようなものの考え方で処理するならば、二十年か三十年前だったら売国奴と言われますよ、これは。日本をまる裸にして、軍事攻撃に最も便利のいい地図を外国の金でつくらして、それを渡してしまうというようなやり方はね。これはよく考えておいてください。
  144. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと関連。  国土地理院から来ておりますね——。この地図の現物、持っていませんか、いま。持っていたら、ちょっと、そこへ出してください。
  145. 安藝元清

    説明員(安藝元清君) 持っております。
  146. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと見せてください。それに基づいて質問するから。
  147. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 委員会に資料を提供するのでございますから、委員長の許しがあるまでは……。
  148. 亀田得治

    ○亀田得治君 いまかりに一枚だけちょっと見せて、そこにあるやつを……。  そうしたら、ただいま見せていただきました二枚の地図、一方のほうが特定で一方のほうが市販されておるほう。この特定のほうにあって、そうして一般のものにないもの、それは何と何か。いま出された広島県の海田市ですか、その地図の部分についてひとつ説明してください。
  149. 安藝元清

    説明員(安藝元清君) 特定五万にありまして日本の市販の地図にないと申しますものはグリッドでございます。それから色が一色違います。それから等深線が特定五万には入っておって、市販の五万には入っていない。それから磁極につきましては両方入ってございます。それから、もちろんこれはローマ字と日本字とで入っておりまして、日本版のものは日本字だげだ、そういうことが主たる違いでございまして、道路の記号につきましては、いろいろの記号の書き方がありまして、どういうものが入っているか、入っていないかということにつきましては、非常に比較しにくいわけでございますが、たとえて申しますと、日本式の道路でございますと、幅員十一メーター以上の道路、五メーター五十から十一メーターの道路、それから二メーター五十から五メーター五十の道路、それから幅員一メーター五十から二メーター五十の道路、それから小さい道、それから一般国道及び路線番号、主要地方道、道路の不良部、建設中道路、こういうような分け方に相なっておるわけでございます。それに対しまして特定五万のほうは、舗装幅員二車線以上の道路、それから未舗装幅員二車線以上の道路、それから舗装幅員一単線の道路、未舗装幅員一車線の道路、それから乾期通行可能なものといたしまして、未舗装幅員二車線以上の道路、未舗装幅員一車線の道路というふうな表現で書かれておりまして、これは記号の問題でございまして、どれが書かれている、書かれていないというようなことではないように、技術的に考えられるわけでございます。  それからグリッドの問題につきましては、これは先ほど大臣からもお話がございましたように、これは世界的な学術的な問題として、世界を一つの基準のデータムからグリッドを入れるということで、各国、ヨーロッパ諸国ではほとんど入れておるわけでございます。日本もこれを入れるべきでないかという議論も学術的にあるわけでございますけれども、昔の地図が、御承知のように白黒の五万の地図でございまして、それにグリッドを入れるということは、非常に見にくくなるということで、現在もそういう観点から、ユーザーも見にくいのじゃなかろうかということで考えておるわけでございまして、入れるということも、現在、学術的な問題として考えておるわけでございます。  それから地極につきましては、これは別に私たちはこれがミサイルにどうこうというふうには考えておりません。ユーザーが磁石を持って旅行する場合におきます利用といたしまして書いてあるわけでございます。  それから等深線の問題につきましても、これはわれわれといたしましても、五万の地図に入れたほうが、ユーザーが使いやすいのじゃないかという気持ちもあるわけでございますけれども、役所の関係で海上保安庁のほうで、水路部の水深をとっておるという関係で、われわれの地図には入れていないということで、私は別にこの特定五万の地図が軍用にきわめて役に立つというふうな考えはいたしておりません。
  150. 亀田得治

    ○亀田得治君 現在でも地理院のほうでは重力とか地磁気の変化ですね、こういうものについては米軍のほうに報告しているのじゃないですか。
  151. 安藝元清

    説明員(安藝元清君) 地磁気、重力のデータにつきましては、これは純学術資料といたしまして、観測値を、これはアメリカとかということでなしに、学術資料といたしまして海外八十五カ国に配付いたしております、資料交換でございます。
  152. 亀田得治

    ○亀田得治君 それはどういうことに基づいて米軍に出しておるのですか。
  153. 安藝元清

    説明員(安藝元清君) 別に米軍と特定したものでございませんで、学術の交換資料といたしまして地図会議等の申し合わせによりましてやっているわけでございます。
  154. 亀田得治

    ○亀田得治君 地図会議というのはそれはどういう会議ですか、地図会議
  155. 安藝元清

    説明員(安藝元清君) 各国の測地学者とか、そういうものが集まりましてやるいろいろな国際会議がございます。
  156. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 亀田君、関連ですから簡単に願います。
  157. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連ですから、いずれまた出された地図を専門家にも見てもらって十分検討した上でお聞きしたいと思います。  最後に一言だけ聞きます。それは、この特定五万分の一のほうですね。これは日本を攻撃する、あるいは日本で軍事行動をやる、こういう場合にはこれがあれば非常に便利である、こういうことは私は断定できると思うのですね。その点はどうですか、専門家として。
  158. 安藝元清

    説明員(安藝元清君) 市販いたしている地図とほとんど変わりはございませんので、便利、どの程度便利かと——市販の地図と同じ程度の便利さであると思います。
  159. 亀田得治

    ○亀田得治君 そんなばかなことはあるものではありません。市販しているものとないものとこれは非常に違うじゃないですか。それが同じ程度なんということは、あなた常識的に考えられますか。あなたのほうが技術的な立場で正確にお答え願えるのだろうと思ってお聞きしているのです。そんなことは大臣が政治的な立場に立ったって言えぬのですから、市販のものと同じだ、そんなことを言い張るのでしたら、私もこれは専門家にひとつよく検討してもらって、その上でさらにお聞きします。
  160. 安藝元清

    説明員(安藝元清君) グリッドの入った特定五万のそのままの形で、この地図の中は一緒なんでございますが、ふちはちょっと日本語に書き直してございますが、それと同じものを一部市販したことはございます、一般に。けれども、それはあまり売れ行きがよくなかった関係でいま売られておりませんけれども、そういうことで公開いたしておりますので、別にそういうことはないと、こういうふうに考えるわけでございます。
  161. 藤田進

    ○藤田進君 関連。何か市販をしているので、なに大したことはない、お前ら何を言うかというものの言い方ですがね、これは認識不足ですよ。二十年前の第二次世界大戦に至るまではどうでしたか、わが国の五万分の一は参謀本部、それから海図については水路部、グリッドとか何とかいうけれども、当時そんな英語なんか使っていなかった。たとえばコンター・ラインね、これは等高線といっている、いま水については等深線とあなた言っている。まるっきりもうアメリカになりきっている、アメリカナイズされているのだろうが、要するに方眼目ですね、あなたがグリッドと言っているのは。これは作戦上絶対必要なんです。一旅行者である場合は、自分の位置を定める場合に東経何度、北緯何度、そんな必要はないのですよ。それは航海なんかすれば別ですが、いま主として陸地部の地図について論じている。これは作戦用兵の場合に、各部隊に指令をし、伝令をする位置を定めるためには絶対必要です。あなた、番号打っているでしょう、東西なり南北なり。そうすると、自分の位置が出るのです、これは。さらに自衛隊に行ってみますと、落下傘の落下可能地域、これが部隊によっては黄色く塗ってあったり、そういうふうにきちっと軍事的に不可欠なものなのです。ですから、かつて軍がこういう大切な地図の作製の衝に当たっていた。聞きますが、NATOありするけれども、おそらく私はまだそこまで調査しておりませんが、日本ほどストリップになって、これは日本語で言えば裸ですし、こんな国がありますか。これは軍事基地を提供すれば、その基地内の詳細な高低なり地形なりというものは、これは貸与を受けているものがつくるでしょうけれども、いまここで立ち話で聞けば、参謀本部のかつての五万分の一、これはもう誤謬だらけです。実際の実務をやった人ならわかるのです。たいへんなこれはもう間違いなんです。これは、三角点が各地にあって、山から大体目の子で見てコンター・ラインを書いたりしているものですから。しかし、いま聞けばそれを全部誤謬の補正をしたというのでしょう。補正してあるのです。近代戦で原爆、水爆がどこへ落ちようが、日本で四発ぶち込んでおけば日本は蒸発すると言われておるのですから、谷間だろうがどうでもいいというものですが、しかし、こまかな作戦になりますと、やっぱり落下傘部隊がどうだとか、あるいは広島のほうが原爆がいいのか長崎がいいのか、米軍だって論議しているのでしょう、落とす前に。ですから、こういうことは軍事的な面と何ら関係がないとは言えない。であるからして、交換公文を読みますと、重光外務大臣との間に協定ができている、軍としてのですね。この辺は十分認識して、日本の役人である以上はやってもらわなければ困る。一体どの辺まで日本を裸にして提供するのか、地図ではわかった、聞きたい。それで、類似の協定のあるNATOとか、あるいは日韓、日タイ、おそらく日韓、日タイは日本と同じかもしれませんよ、ストリップになっているのかもしらないが、これも含めて。それからNATOについては、一体フランスなりドイツなり、こういうところが日本と同じような協定があり、かつその地図を提供するようなことに、なっているのか。外国の事情も知らないで日本だけイエスと言ったってそれは通りませんよ。これは見ますと、一九五五年ないし六〇年ごろの話だというのですね。いわゆるGHQ等のパージの余波を受けて戦々恐々たる中で、もう何でも言われたとおりにした時代だと思うのです。これについてはひとつ外務大臣でよろしいし、三大臣おられますから、わかった人でいいですが、いまの類似な共同防衛体制のあるところで、日本ほどストリップになっているところがどこがあるのか、お聞かせいただきたい。
  162. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 藤田さんの言われることですね、これはやはりいま相当事情が違っている。いまは航空写真もありますし、人工衛星だから、各国とも非常に緻密なやはりいわゆる地図というものはもう持っておって、地図の持つ秘密性というものは戦前とはもう一変してしまっていると私は思います。したがって、これが欧州などにおいても、いま言っておるのは、日本式で言えば方眼式と言うのですか、そういうふうな地図というものは、これはもう一般に公開もされておりますし、地図の持っておる秘密性というものは今日では非常に激変している。だから、日本だけがまる裸で、ほかの国はみんな何かそういうことが軍事的に、地理の持っておる公開性というものが、よその国は守られて日本だけがまる裸だという考え方には、残念ながら藤田さんの御見解ですけれども同意いたすわけにはいきません。
  163. 藤田進

    ○藤田進君 NATOはどうなっていますか。
  164. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) NATOも、イギリスなども皆まる裸——まる裸とこう言いますがね、いま、そうでしょう、それは人工衛星が飛び回っている、そういうことでですよ、もっとやっぱり正確な、いま言っておる参謀本部の地図なんか間違いだらけだと言っている、もっと正確でしょうね、宇宙の写真というものは。これはそういうふうな、そういう意味においてやはりもうどこも——日本だけがまる裸でありません。日本がまる裸というなら世界が、まあソ連などに対しては、シベリア上空なんかなかなかいろいろ言っておるようでありますが、それでもそのシベリア上空が世界の前に目を閉ざされておるかどうか、私は疑問に思う。地図の持っておるその地理を世界に秘密にしようということが確実に守られておる今日の世界情勢では私はないと思います。
  165. 藤田進

    ○藤田進君 非常に三木さんは雑に言われますがね、あなたは専門家でないんだから、私も聞き過ごしたいと思ったんですが、私も実は地図についてはまあくろうとなんですよ、サーベイングは。あなたがおっしゃるような人工衛星や、あるいは地上との目標なり、そういうプロットのやはりセンターを置かないで、いやしくも五万分の一の地図があなたできると思いますか。航空写真の苦心はそこにあるんです。人工衛星やですね、あなたの言われるような、もうよその国からかってに来て旅客機で見ていく、だれか乗ってそれで写せばすぐ五万分の一の地図ができる——そんな、できるならばこれは答弁してください。これはできっこないんですから。しかも、コンターラインですね、等高線、等深線、こういうものを入れるにおいては、これはやっぱりそれ相当の技術と同時に準備が必要なんです。ですから、それは月なんかなら、いま言われるような方眼も入れて、いや亀裂がきたとか、ショベルで何か土をかいたとかいう、そんなものならそれはできます。しかし、これを五万分の一にプロットするためには、いまあなたがおっしゃるようなことでは、この測量技術が進んだ何だいっても、これはできないんですよ。だから、予算もたくさん食っているでしょう、航空写真というのは。
  166. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 増田防衛庁長官がそのほうの専門ということでお答え願いますが、私の言わんとすることは、ここに矢山さんにしても、亀田さん、藤田さんにしても、いかにも日本が丸裸にされて、世界は丸裸でもなんでもないのに、日本だけが丸裸にされておるような、非常にそういう日本だけが世界の中で特別にもう何もかも丸裸になったと、そういう印象を国民に与えることはよくない、これは。それはやはり五万分の一と航空写真が一緒だと言っておるのではない。戦後この地理というものの持っておる秘密性、これはもう戦前とは全然違いますよ、今日では。この変化というものを頭に入れなければ、いかにも日本だけが丸裸でほかの国は何もないという、こういう考え方を国民に与えることは、私は国民大衆に不必要な不安を与えることになってよくないというので、しろうとでございますが、あえて発言をいたしたのでございます。
  167. 矢山有作

    ○矢山有作君 あのね、地図の技術論をやったり、そのものがどういうふうに軍事的に役立つか役立たぬかという問題は、次元の低い問題ですよ。問題は米軍の極東地図局ですよ。これが金を出して、極東地図局の実質的な指示のもとに地図がつくられたんですよ。そのことはアメリカ軍が自分の軍用に最も有利につくらせるということでしょう。それを前提としないで、アメリカ軍が金を出して日本の国土地理院に地図つくらせますか。次元の低いところで論議しなさるな。要はそこに問題があると言うのですよ。だから、地図の効用がどうとかこうとか、技術的に戦術的に戦争に役立つとか役立たぬとかいう問題じゃない。政治の姿勢の問題ですよ。それをあんた、三木さんはどう思うんだ。
  168. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは政治の姿勢……。あの余剰農産物から来ているんですがね。その中からやっぱりフルブライトなんかの奨学金も来ているわけです、それはね。だから、そういう——何か矢山君の話を聞いておると、もうアメリカに隷属となって、そして——そういうふうな私はものではない。やっぱり地図はこの目的、軍用という意味からも、目的がないとは言わないけれども、また平和な目的だって地図は使えるわけですからね。地図の持っておる一つの効用というものは……。いかにももうこれがアメリカに隷属である、日本が丸裸に、軍事的にと、そういう角度ばかりから、これを私は見るべきでない。地図は国土開発にだって要るじゃありませんか。そういうことで、これはやはり余剰農産物というもので、そしてこれでつくろうという、向こうの提案があったわけですから、向こうがね。これを何か日本と話し合いをして日米の両方の便利になるようなものに使いたいという提案で検討をして、これをしようということですからね。特にもうこの地理というもの、地図をつくるということにアメリカが熱意を持って、これを日本に押しつけたものじゃないんですよ。政府がやっぱりこういうものをしたらどうだろうかということで、アメリカの提案にこたえたわけでありますからね。だから、何かこう日本の地理をつくることにアメリカが非常に興味を持って、これで日本がいやいやなのを押えつけてつくったと、そんなものではないということは明らかにしておきます。
  169. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。それはちょっとおかしいですよ。それは事実と反しますよ。これは敗戦後米軍が一方的に作製を始めたわけでしょう、経過としては。講和条約後こちらが独立して、向こうがつくれない、一方的に。そういうことから、あとを国土地理院がやっているわけなんです。出発点は、あなた、米軍だけでやっておったわけですよ。そういう経過から見たって、これはあなた軍用と引き離して考えるというようなことは、およそそれはとっぴな解釈ですよ。やはり常識的に納得できるようなことを言ってくれなけりゃね。これは軍用かもしれぬけれどもそれほど秘密にする必要もないと思うんだとか、それは三木さんのお考えですね、いまおっしゃったのは。そうでしょう。それほど秘密性はないんだと、地理というものについては。それはすぐ、だからといって軍用を否定するということは、この経過からいって間違いです。なるほど軍用という立場で、また軍の立場から見たらなければならぬですよ、何と言ったって。軍用以外にもこれは必要かもしれませんよ。しかし、これをつくるという出発点は軍用じゃないですか、これははっきり。それすら否定するということは、それはこじつけですよ、そんなことはね。軍用否定できますか。
  170. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) あの交換公文見てみますと、やはりその中に共同防衛、役務、サービスということばがありまして、そういうものに根拠をするんでしょうが、しかし、私はなるべく正確な地図はつくったらいいと思っているんですよ、どこの国でもこれは。NATOというものに対しては、これは調べてみますけれども、当然に私はあると思うんです。だって、これ市販しておったんですからね。(「市販していないですよ」と呼ぶ者あり)おったと私は思いますよ。私はNATOもまた調べてみます。これは市販しておったのですけれども、なじまないのですよ、ああいう筋を引いたものに。それで売れないから、売れないからということで……。
  171. 矢山有作

    ○矢山有作君 それは三木さん、違うよ。原版をちゃんとつくって、原版が全部アメリカへ行ったんですよ。それで……
  172. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 矢山君、答弁を聞いた上で質問してください。
  173. 矢山有作

    ○矢山有作君 あんた、いままで何をしておったの……。
  174. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いや、ここでいま言われておって、私は聞いておって答弁したんですが。これは市販したんですと。しかし、なじまないものですから、今度は改訂をしたんですというふうに答えて——私の耳が悪かったかもしれぬが、そういうふうに聞いておったので……。
  175. 矢山有作

    ○矢山有作君 最初はアメリカ軍でしておって、その原版で日本でつくった。
  176. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それについていまお答えしているので、私は地図というものは正確なものを持って、そうしてみなが、それは専門家じゃないとあまり詳しい地理というものはなじまないかもしれぬが、その必要は、出発点はそういうものであっても、平和的にも、亀田さん、使用できますよ、これはね。そういう意味で、やはり出発点はそうであっても、正確な地図を持つということは国のために必要なことである。また、NAT Oという具体的な御質問ですが、NATOの地図は見ておりませんからここでは答えられぬが、そういう地図はですね、今度はもう当然に欧州においても市販されておるわけですからね。こういった方眼式の地図というものは市販されておりますから。そういうことでありますから、あるとは思いますが、これは調べてお答えをいたしますが、私はこれにたいした大きな意味をお持たせになることは、今日の世界的常識からいって合致しないという意見でございます。
  177. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあこれは幾ら議論してもすれ違いだ。しかしね、いまの政府当局の説明では国民を納得させることはできませんよ、これは。そもそも占領軍が日本の地図を独自に作製したり、やっておった。ところが、講和条約の発効でできなくなった。したがって、日本にやらした。そのときに米極東地図局が金を出して、それでつくらした。そうすると、軍が金を出してつくらす以上は、軍の目的に最高度に有利なような地図をつくらすというのがあたりまえなんだ、これは。そうしなければ軍がわざわざ金を出してつくらせる必要はないんだから。それがつくられた後にどういうふうに利用されるかというのは、これは話は別です。現に盛んに日本で市販されていると言うけれども、もとの地図はアメリカの極東地図局で全部つくられて、その原版が日本に返されて、日本用の地図をつくったんだから、だからそのことをはっきりしておきなさい。私は、そういう経過から見て、共同防衛体制のもとでそれは必要な地図をつくるのはあたりまえだとおっしゃるが、あんた方のそういう立論を認めたにしても、私は日本の主体性だけは守りなさいと言うんです。日本みずからの手でつくる、そして必要最小限度において共同防衛用に使うというんなら、日本の独立性をちゃんと自覚した立場に立ってのやり方だと言える。前からアメリカ軍から金をもらって、アメリカ軍のためにつくって、その原版を返してもらって、それで日本用の地図をつくる。主客転倒じゃないですか。こんなばかな話はない。  次の質問に移ります。いまはもう覚え書きの期限は切れた。それで、国土地理院はアメリカ軍に対していろいろな地図関係のデータを提供する義務はないはずです。ところが、現在も国土地理院には、一部残っておる極東地図局の関係者が自由に出入りをしておる、現実に。そして先ほど亀田さんが指摘されたような重力測定あるいは地磁気変化のデータ、その他各種の資料が積極的に米軍に提供されておる、この現実があります。これを外務大臣、あなたはどうお考えになりますか。
  178. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 私の知っておる限りにおきましては、この件はさいぜんも申しましたように、三十九年の五ヵ年間の約束でやっておることでございます。したがいまして、この関係に対する約束事はないわけであります。しかし、地図の問題でございまするから、やはり相互の技術上のいろいろな問題があろうと思うのです、お互い同士の。しかし、現に国土地理院にもアメリカの方が来ておるようです。しかし、アメリカの方のみならず、ほかの方々もやはり来ておるのでございまして、その辺につきまして相互に学術上のいろいろ話し合いがある、こういうことについてはやっておりまするが、この関係は現在は終局したものと私は思っておる次第でございます。
  179. 矢山有作

    ○矢山有作君 時間がなくなりますから、何ですが、それでは先ほどの答弁の中でも、重力測定や地磁気変化のデータ等については八十数ヵ国に対して出しておるんだ、こういう話がありました。したがって、覚え書きによって地図の作成が終わった段階以降、いまなお米軍関係者が出入りをしておるということは地理院で確かめた事実です。また、いろんな資料が渡されているということも事実です。一体どういう資料をどこの国に対して渡されたのか、これを資料で明確に示してもらいたい。米軍関係者で国土地理院に出入りしている者の官職、氏名、これも明確に示してもらいたい。いいですね。建設大臣、出せるだろう。あんた、八十何ヵ国に出していると言ったんだから。
  180. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) いま地理院の院長に聞きますと、出入りした人は一々名前はわからぬというんですが、御趣旨のほどはわかっております。御質問はわかっておりますから、できるだけそういうことに沿うて、もし——一々出入りした人というようなことはあまりよくわからぬのですが、あとの御質問はどうだろうかと、こう言っているんですが、わかるだけのことは私は出してもいいと思います。
  181. 矢山有作

    ○矢山有作君 提供資料も出しますね。
  182. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 提供資料というのは、向こうにやった資料ですか。——向こうにやった資料等はあれば、それは調べてみたいと思います。
  183. 矢山有作

    ○矢山有作君 次に、ちょっとお尋ねしますがね、外務大臣、あなたはMATという、これは通称ですが、ミリタリー・エア・トランスポーテーションというのですが、これの存在を知っていますか。
  184. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) 米軍の輸送担当機関としてそういうものがあるということは聞いております。
  185. 矢山有作

    ○矢山有作君 私の手元でいろいろ調べてみたのですがね、MATをですね、かなり日本側が利用しています。一つだけ例を申し上げますと、五年前にハワイで太平洋学術会議が行なわれましたね。あのときに百三十名の日本の学者がこのMATの輸送機でハワイに送り込まれております。その他MATと日本の学界その他関係者のつながりというものは、かなり深いというデータを私は持っております。さらに、国土地理院の関係者がMATを利用して盛んに米国にも渡っていったり、いろいろ連絡をやったということも聞いております。こういうことは事実ですか。
  186. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は学術の——国土地院のものはあとで説明するでしょうが、学術のことは存じません。必要があれば調べてけっこうでございます。
  187. 矢山有作

    ○矢山有作君 文部大臣、知っていますか。
  188. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 私も全く聞いておりませんので、必要があれば調べてみます。
  189. 矢山有作

    ○矢山有作君 全くずさんな話で、MATと日本の学界その他の関連もよく知らないらしい。だから、この次までに、どういうふうな関係を持っておるのか、いままでMATを利用して渡米し、あるいは学術会議に出席し、その他いろいろな資料を調べれば出てくるはずです、それを資料として提出を願います。  次に、最後に言えることは、私はこの軍用地図の作成にしても、それからまた、これはきょうの新聞ですかね、アメリカの極東研究開発局が、この間問題になりましたように、日本の大学や研究所に対していろいろな名目で研究補助をやっている。ところが、その中心は、細菌やビールス、寄生虫などの医学部関係の研究が中心になっております。これは御承知のように、アメリカがいま細菌戦、化学戦に対して非常に熱意を持ってやっておる。このことはおそらく防衛庁は知っておるでしょう。アメリカは化学兵器あるいは細菌兵器を通常兵器として採用しておるはずですよ。そういう中の一環として日本の生物学関係の研究を軍が金を出してやらせておるという事実もここに出てきておるわけです。  そうすると、学問の分野でもこういうことがある、さらに地図の作成の分野でもいままで指摘したような問題が出ておる、これらのことを考えると、日本の国の学術も、あるいはその他政府機関も、一切あげてアメリカの御用をつとめておる、アメリカの軍事目的に奉仕させられておると言えるのじゃないか。私は、そういうような形を続けておるのでは、ほんとうにあなた方が言われるような独立国としての尊厳は保てませんよ、これは。学術研究に金が要るなら、なぜ米軍から金をもらわないで日本の予算で組まないか。地図をつくる必要があるなら、米軍から金をもらって、米軍用の地図をつくって、それを返してもらって日本の地図をつくるというようなぶざまなことをしないで、なぜ日本みずから国土地理院に予算をつけてやって日本の地図をつくらないか。そういうことをあなた方、反省していただきたい。それをどう思いますか。
  190. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 矢山君は、日本は独立国でない、ないと、こう言っておるが、日米の関係でおそらく矢山君とわれわれの考えの違いは、日米の信頼関係、協力、こういうものを、アメリカといえば、これに対して、いかにもこのことによって軍事的に常に隷属させられるのだ、そういうふうには考えていないわけであります。いろいろな面において日米は協力していきたいと考えておるわけであって、そのことが日本の独立を侵されると。この独立を守るということに対しては、あなたと私に何らの差異はない。日本の独立は守らなければならない。一切のいろいろの問題にしても、これは軍からもらったもらったと言うけれども、もとの金は余剰農献物のアメリカの積み立て金ですからね、もとから。
  191. 矢山有作

    ○矢山有作君 アメリカの金ですからね。
  192. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) アメリカの金であっても、ことさらに、いかにも日本が軍事的にアメリカに隷属しておるのだということを強調して、これがテレビなどに出ると、非常に国民に誤解を与える。このもとは余剰農産物ですよ。
  193. 矢山有作

    ○矢山有作君 向こうの金じゃないですか。
  194. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 向こうの金であっても、それは各国とも……。日本だって、そんなら、東南アジアなんか言うなら、あなたのような論だったら一やっぱりみな各国が協力のできるものは協力していき合うというのが今日の世界的な大きな流れですから、いかにももうほかの金はいいけれども、アメリカの金をもらったら全部隷属だというふうに、そういうふうにとると、やはり国際的な協調というものはくずれていきますから。それはしかし、独立を守るということに対しては、これはきわめて厳格でなければなりませんが、一切、何か協力関係を全部軍事的隷属に結びつけるその立論のしかたには、私は承服いたしかねると申し上げておきます。
  195. 矢山有作

    ○矢山有作君 三木さん、それはいさきか暴言ですね。あなたのそういう説得で国民が納得すると思っていたら、大間違いです。日米の親善関係とおっしゃるけれども、歴史の流れから見てごらんなさい、どう変転していくかわからないですよ。それが固定されたものじゃないんですから。もう少しよくものを考えないと、あなたも先ほど私が言ったように売国奴扱いされますよ。二十年前だったら、売国奴ですよ、まさに。  それじゃ次の質問に移ります、時間がありませんから。沖繩施政権の問題についてお伺いしたいんですが、沖繩施政権の返還問題で政府が常に言っておられるのは、沖繩施政権の問題は極東の安全保障との関係で考えられねばならぬと、こう言っておいでになりますね。そのことは裏返してみたら、要するに、極東に脅威と緊張があると、だからそれがなくなるまではやはり沖繩施政権の問題というものは解決がつかないのだと、こういうふうに理解していいんですか。
  196. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) なくなるという判断、これはいろいろあると思います。しかし、やはり極東の安全、極東の情勢というものが沖繩の施政権返還に関連を持っている。また、一方においては、基地というものに対する軍事的な評価も、これは一つ関係があるでしょうね。それをどこで判断するかというこの判断というものに対しては、判断する者によっていろいろ違いはありましょうが、極東の情勢というものと沖繩の施政権返還とは関係がある、こう見てわれわれも考えておるわけでございます。
  197. 矢山有作

    ○矢山有作君 まず第一点にお伺いしたいのは、米国が沖繩の施政権を行使する根拠というのは、あなた方は平和条約第三条だと、こう言っておるわけですね。その平和条約第三条に、沖繩の施政権をアメリカが保持する根拠として、極東の安全保障というようなことを書いてありますか。ないですね、これは。ありますか。
  198. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま日米の間には、絶えず沖繩の施政権返還に対して、これは最高首脳部が会ったときには、常に沖繩施政権返還というのは問題になるわけであります。そういう場合に施政権者としてのアメリカ日本がいろいろ話し合った場合にも、常に、ジョンソン・佐藤共同コミニュニケの中にも、極東の情勢が安定をして沖繩というものが日本の国民の希望のように返還される日の早いことを希望するというような共同コミュニケが、文句は多少違っておりますが、そういうことで、現実にそういうことが日米間の話し合いのときに施政権を返還するという場合の判断の大きな基礎になって、平和条約三条には言われるように書いてはないですけれども……。平和条約三条にも返還ということも書いてないですね。それは言われるとおりでございます。
  199. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、いま御答弁のように、平和条約第三条には、アメリカの沖繩施政権の保有が、極東の安全保障のために保有しておかなければならぬのだ、こういう意味の条文は出ておりません。結局あなた方、極東の安全保障ということと平和条約第三条ということとをすりかえて、沖繩のアメリカ施政権の保有を認めているんじゃないですか。アメリカが施政権を行使しておる根拠というのは平和条約第三条ですね。その第三条であるが、その前段の規定ですね、国連の信託統治云々という、あの規定を根拠にしてアメリカがいま施政権を行使しているわけですね 間違いないですね。ところが、その平和条約第三条それ自体が、国内法の上から、国際法の上から無効か有効かということについてはいろいろ学説があります。私は時間の関係でそんな議論をしようとは思いませんが、それは別として、アメリカはこれまで沖繩を信託統治制度のもとに置くというようなことを言うたことありますか。むしろ沖繩は信託統治制度のもとには置かぬという意思をたびたび明らかにしているわけですよね。そうなると、沖繩施政権をアメリカが保有している根拠というものはなくなってくるわけです。そうすると、施政権返還をあなた方がほんとうにやろうというのなら、そこのところが一番問題じゃないですか。どうなんですか、それは。
  200. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私はそうは思っていないんです。第三条の規定は、矢山君よくお読みになれば……
  201. 矢山有作

    ○矢山有作君 何度も読んだ。
  202. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私と読み方が多少違うわけですがね。三条は、いつまでに信託統治というふうなそういう義務づけてもいないし、期限も切っていないですからね。そういうことで、アメリカも信託統治にしないという公式な発言はないですけれども、ケネディ発言でもジョンソン発言でも、そういう信託統治なんかにするような形でなしに、直接日本に返そうというような意図ととれるような発言ばかりですね。われわれもまた、沖繩がもう一ぺんまた平和条約三条のように信託統治、そういうものを経てというふうには考えていないわけです。しかし、公式に信託統治の意図を持たないということを発言したことはない。間接的にそれと受け取れる発言はたくさんある。そこで、われわれとしては、アメリカの施政権を返還をしてもらいたい、してもらいたいといったら、アメリカが施政権を返還する場合に、返還をするという場合の一つの条件といいますか、環境というもの、これは日本アメリカもいま沖繩の持っておる極東に対する軍事的な一つ評価というものに対しては、いま直ちに沖繩の施政権を全面的に返還することは極東の情勢は許さない、この判断は日米とも食い違いはない。同じであります。したがって、今後返すのには、この三条を有効とか無効とかいうわけではなくして、まともにアメリカに対していま言ったような、いますぐには全面返還というのはむずかしいけれども、しかし極東の情勢だって変化もするんだし、あるいは軍事的な基地の評価というものも変わり得るわけでありますから、この施政権の全面返還というものは絶えず日米交渉議題として取り上げていく。しかし、現実の問題として、いますぐに返還はむずかしいから、その暫定的な処置としていろんなことを、われわれとしてできるだけのことをしたい。これは施政権の返還と直接結びついておるとは言えませんが、あるいは漁船に対する日の丸の旗の問題にしても、旅券の問題にしても、あるいは移住の問題にしても、外交保護権の問題にしても、日本は、沖繩が日本に近づいてくるような処置は一歩でも、小さいことでもとりたい。しかもまた返還された場合に、日本の本土と非常な格差があってもいけないので、できるだけこの格差是正、沖繩の住民の福祉の向上というものに対しても、日本が、昨年度に比べれば本年はほとんど倍額に近いだけの財政的な援助も与えておりますし、あるいは自治権の拡大というものに対しても日本が絶えずこの問題に関心を持っておる。だから、いますぐに返すということは無理だけれども、やがて必ず返ってくる沖繩、その暫定的な期間にできるだけのことをしたい、こういうのが現在政府のやっておる考え方であり、やっておる方法でございますし、また今後も努力をしていこうと思っておる方向でございます。
  203. 矢山有作

    ○矢山有作君 私はね、沖繩援助の問題は、きょう問題にしておりません。沖繩援助をいかに拡大しても、施政権返還に結びつくものではないということを、あなた方自身もお認めになっているわけですから、その議論はきょういたしません。先ほど信託統治にすることが、アメリカの義務でもなければ、それをしなければならぬ期限もないのだとおっしゃった。ところが、なるほど義務とも書いてないし、いつまでにやらにゃならぬとも書いてない。しかし、あなた方、少なくともいまの政府は、沖繩の領土問題解決ということを、外交の基本方針にしているわけでしょう。戦後二十年以上たつのです。そうすれば、沖繩をアメリカが保有しておることが不当であるという、その点をやっぱり追及をして、返還をさせるという努力をしなければいけないんじゃないですか。極東の情勢について云々言われますが、これは私はあとで触れます。法的にいえば、純法律的な議論は抜きにしても、信託統治をやる意思がない、これはあなたも間接的にアメリカがそう言っておるとおっしゃるのですから、そうすれば、少なくとも信託統治をやるということを前提にして沖繩保有というものがアメリカに認められているのだから、平和条約三条は、その点では根拠がなくなってしまうわけです。しかも、権利であって義務ではない、あるいは期限がないとおっしゃるけれども、あなた方先ほど言ったように、返させるということをやっぱり熱心に考えておるなら、考えておる以上は、こういう点の矛盾をアメリカに徹底的に追及して、返させる必要があるんじゃないですか。
  204. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 早く返してもらうように、アメリカに対してわれわれが絶えず働きかけるということに対して、矢山君と私の考えの相違はない。あなたはそれを、平和条約第三条の不当の行為であるというところから、アメリカに要求せよと言う、私はそうはやらない。やはり不当というのでなくして、二十数年もああいう状態で置かれておることは、いかにも不自然で、一日も早く国民の願望に沿うような状態にもってこらすように、アメリカに対してもこれを説得の形。あなたは平和条約三条をたてにとって、不当であるという要求の形、私は、アメリカを説得する形で努力をしたいというのが私の考えで、目的は一緒でも、やり方の途中の方法が違うということでございます。
  205. 矢山有作

    ○矢山有作君 それはちょっとおかしい、方法は違うけれども、問題はね、第三条を不当であると見るのか不当でないと見るのか、この点がはっきりせぬと、返還要求の姿勢が確立してこないのですよ。腰がふらつきますよ、自分のところがしゃんとしないと。砂上の楼閣ということばもありますしね。
  206. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 現在のアメリカの施政権の行使が、平和条約三条に抵触しておるとは私は考えていないのです。
  207. 矢山有作

    ○矢山有作君 合法ですか。それはおかしい。
  208. 鈴木強

    鈴木強君 関連して、いまのところは非常に大事なところだと思います、私も。そこでちょっと私は外務大臣の都合で質疑ができませんでしたので、この機会にちょっと関連してお伺いいたしますが、沖繩の施政権を日本が返還を求めるという、この基本的な態度について、今日まで幾度か論議されてまいりました。政府としては、あらゆる機会に、施政権返還について努力をしている、最善の努力をしている、日米交渉の場をとらえましてもやっている、こういう御発言がございました。ところが、いまの大臣のお話を聞きますと、当面は、施政権返還については、アメリカ日本も極東の安全を保持するために、そういうために沖繩を返すことについては無理だ、こういうことが両国とも一致している。きわめてこれは重大な発言だと思います。そうなりますと、あなたのおっしゃるように、あらゆる機会を通じて、日の丸の旗を船に立てるとか、あるいはテレビも向こうにつけてやるとか、いろいろやっていることは認めますけれども、そうであれば、この前問題になりました教育権の返還ですね、こういうことも、施政権返還の一つの、なしくずしと言うと表現が適当かどうかわかりませんが、せめて、次代をになう子供の教育については、日本の施政権の中に教育権を戻していこうという、こういう一歩前進の姿というものが、より積極的に行なわれなければならない、あなたの立論から申しますと。ところが、そういうことは、基本的な施政権の返還が先なんだから、教育権の返還はやめだ、こういうわけですね。そうなりますと、国民から見ますと、全然わからなくなっちゃうわけですね、政府の態度というものが。あなたの言うように、当然そういう一つ一つ前進する、一歩前進する、ケースバイケースの姿が出てくればわかるわけですが、それすら否定しているのではないか。そうすると、おっしゃる論というのは否定されてくる。これは一体、国民はどういうふうに判断していいかわからなくなるのですが、どうも右へ行ったり、左へ行ったり、ジグザグコースをとって国民にはさっぱり沖繩に対する基本的態度というものがわからないんですよ。私は少なくとも矢山さんも言っているように、条約上の問題は一つの論議として残るでしょうが、基本的な態度は、やはりこれは返してもらうという、こういう態度を堅持して、アメリカとぶつかっていくというのでなければ、これはおかしいのでありまして、もういまは無理だということを、日米とも認め合っているのだということですけれども、そんなへっぴり腰ではこれは納得できませんよ。もう少し自主的な態度でやってもらいたいと思います。
  209. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 鈴木さんね、国民が静かにいまの極東の情勢を見て、いま直ちに沖繩の施政権の全面返還というものがもう時期だと判断するでしょうか。私は国民もいまのところはなかなか無理であろう。しかし国民は、一日も早く返してもらいたいという希望はだれも異存はない。しかし、いまの極東情勢ではなかなか無理があると国民は判断するのではないでしょうか。それは、極東情勢がいまのままで返していいのだという人もありますよ。しかし、冷静にいまの極東情勢を見て、これは全面返還はいまは無理だと考えるのが国民多数の考えではないかと、こう思っておる。これはあなたは、それは違うとおっしゃるかもしれぬ。  そこで政府が考えておるのは、何か部分的に施政権を割って、何権何権というのではなしに、全面的な返還というものが早い時期に達成できないかということを考えておるわけです。しかし、その間の多少の時間のズレもありますから、その間、施政権そのものでないにしても、それに近づけるようなことは、小さなことであっても、やはり何でもそれに一歩でも近づけることはやりたいということで、解決できる問題は解決しているわけです。で、いろいろの案が出ておりますわね。教育権とか、教育の施政権とか、これはただいま大浜さんの沖繩問題懇談会でも、これをいま取り上げて検討を加えて、答申を出すというようなことで、私は研究はいろいろやったらいいと思うんですよ、研究は。あらゆる研究をしたらいいと思う。政府がその方針でいまおるかというようなことになりますと、政府が考えておるのは全面返還であるということを、絶えず総理大臣もここでお答えしておるわけです。しかし、それまでの多少の時間的ズレがありますから、何かもっと近づける可能性がないか。その研究は怠るべきではないと考えておりますし、われわれもまた研究はいたしておるわけでございます。しかし、それがいまの政府の、分離して施政権の返還を求めるというのが政府の方針かというと、政府の方針ではございません。研究はしても、目標はいまの政府の方針は全面返還でございます。これが政府のやはり統一したお答えでございます。
  210. 鈴木強

    鈴木強君 関連。そうなりますとね、わからないんですよ。外務大臣ね、私はそこら辺、問題はその構えですね、基本的な。ですからわれわれは返してもらいたいんだという態度をはっきり国民が期待しておりますから、政府もその態度をはっきり持って、その上に立って現在の極東情勢の中で、沖繩の置かれている立場、それからして、アメリカはどうしてもこれを確保したいと言うでしょう。おそらくこれは間違いない事実ですよ。だからそういう場合に、日本としては、いわゆる受け身の形において、やむを得ないその情勢について、不承不承ながら認めたというあれなんだが、そういう点についてある程度理解しなければならぬという、そういう態度の中で、あなたのようにもういまの段階ではしようがないのだ、安全保障上。だから、施政権返還については当分たな上げだということじゃないですか。そういうことであると、かまえが全然違うのですよ。われわれだって極東情勢の緊迫化について全然無視していいとは思いません。ですから、そういう情勢の変化というものについては国民もわかっていると思います。ただこれは、問題は日本政府の態度というものはあくまでも返還をやっていくのだというこの基本線をいつの場合においても貫いていくという、私はこのかまえを政府が持ってもらいたいということを言うのですよ。  それから、そこで、もしあなたが言うように無理だと、したがって一歩一歩前進する形において施政権返還に近づけていくというならば、これはやはり教育権の返還をやるのだというそのかまえを持っていまの立論を国民にアピールすれば、これは国民はわかりますよ。しかしそうでなくて、今度は逆にそこへくると、いや、それは政府の態度じゃありません、全面返還だということになって、百しからんずんばゼロの、こういうむだな戦いをやることになる、交渉を。だから国民はわからぬというのです。その辺もう少し理論的に、そうならそうで教育権はやるんですというなら、ああそうかとわかるわけです。そうでしょう。その辺の矛盾を解いてくださいと私は言っている。
  211. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は沖繩の人たちは国会の論議なども非常に注目しておると思うのです。あまり幻想を抱かすことはよくない、いますぐ施政権が返ってくる——そういうことはかえって不親切なので、いまの極東情勢では無理だけれども、しかし極東情勢というものは常に変化するものですから、これは永久に変わらないものでないのですから、できるだけ早く施政権の返還を望もうという政府の姿勢、態度というものは、これはもう変わりようのない基本的な態度ですよ。だから、あらゆる機会にわれわれはこれに対してアメリカとのいろいろな会談の場合に、沖繩問題というものはやはり大きな問題になる問題で、絶えずこの問題が持ち出されて熱心に施政権の返還というものを説いているのですよ、鈴木さん。何も言わぬのではないのですよ。しかし、そこには極東情勢とかいろいろなことがございますから、多少のやはりわれわれの願望と現実の客観情勢というものの間にズレがありますから、その間のズレというものを、どうやって国民の願望と客観情勢のギャップを埋めていくかということは努力をしなければならぬので、いろんな問題は研究の題目とはしたいと思うのです、方法論について。しかし、いま研究しておるときに、ここで鈴木さんに、こういうことで施政権を分離返還、政府はこの方針でいきますということは、それは私は、政府の態度としては非常に軽率な態度である。いろんな施政権を分離ということになれば、非常な、単に観念的な問題ばかりでないですから、だからこういう方針でいくというようなことは、政府として言えるものではなくして、いまはもう、政府は全面返還である、しかしそれまでの間の過渡期な行き方としてはあらゆる可能性というものを探究するということは、これはやはり当然の政府の責務だと思っております。しかし、それならそれをまだ研究も何もしてない途中で、それをいきなりこういう方針でいくのだという旗を掲げなければ政府の熱意というものはあらわせぬではないかというのは少々鈴木さん無理じゃないでしょうか、いまの段階で。現状では、やはり施政権の全面返還ということを、あくまでも強くアメリカに対して日本がその主張を通すような努力をするということでございます、いま言えることは。
  212. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、全面的に返還をさせるのだという基本的な態度、その根拠は何ですか。
  213. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 戦争が終わって二十数年ああいう状態に置かれておるという、こういう一つの国民の願望といいますか、国民の感情といいますか、こういうふうなものが一日も早く返してもらいたいという大きな背景になっておる。もちろんその背景の中には、沖繩は日本の領土であるという、これはもう根底にありますよ、言うまでもなく。そうでなければ返してくれとは言わぬわけです。住んでおるものは日本人である、領土はやはり日本の領土の一部である、だから、それが背景になって国民も返してもらいたいと思っておるから、こういう国民の気持ちを体して外交をやることは当然でございます。
  214. 矢山有作

    ○矢山有作君 そういう抽象論でなしに、返してもらうという以上は、やはりもらうだけの法的根拠があるわけでしょう。がっちり。その法的根拠というのは何ですか。
  215. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 平和条約第三条には返還ということは書いてないんですね。しかし、これは日米間のいろんな会議を通じて、ケネデイ大統領もジョンソン大統領も、一日も早く返してもらいたいと言うし、向こうも返すようにしたいと、こういうことを言って、アメリカの最高責任者というものがそういう意思表示もしておるし、日本もまた返してもらいたいのですから、両国の意見が、いつかその時期に対しては明示していませんが、返すということに対する意見の一致があるわけでございます。
  216. 矢山有作

    ○矢山有作君 三木さん理論家だというけれども、やっぱりこれはだめだね。じゃ、アメリカの沖繩施政権の保有が第三条に照らして合法だとあなたは言った、合法である根拠は何ですか。この第三条から合法であるという根拠は。
  217. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 第三条に、アメリカが唯一の施政権を行使することができる解釈が三条からできるからでございます。
  218. 矢山有作

    ○矢山有作君 ところが、その施政権を持つということは第三条の前段の規定を根拠にしているわけでしょう。ところが、信託統治に回すというアメリカの意思がないことをあなた認められたわけだ。そうすると、第三条自体がくずれてくるんじゃないですか、これは。もうなくなっちゃうわけですよ、基礎が。だから、沖繩保有を第三条に基づいてやっておることは、その点からだけ議論をしても無効であるということになるんじゃないですか。
  219. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 繰り返し言っておるように、アメリカは、そういう信託統治を提案するアメリカの権限はもう放棄したと公式に言わないんです。
  220. 矢山有作

    ○矢山有作君 言っている。
  221. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 言わないですよ。
  222. 矢山有作

    ○矢山有作君 ケネデイ声明ではっきり言っている。
  223. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 声明はそれは間接的にはそうとれるにしても、平和条約第三条による信託統治の権限を放棄したというまともな文書は私は見たことがない。
  224. 矢山有作

    ○矢山有作君 あなた、いいかげんなこと言っちゃいかぬ。返してもらおうというのが日本の基本的な態度でしょう。それで、しかも信託統治の提案をやるということが基礎になってアメリカは施政権を保有しておるんでしょう。ところが、少なくとも、間接的にしろ何にしろ、信託統治に回す意図がないんだということが明らかになれば、第三条に基づいて沖繩を保有していることは、これはもう根拠がないといって返してもらいたいなら、その点をあなた議論の対象にすべきでしょう。そういうような理屈にならぬ理屈をこねたんじゃ、理論家といわれるあなた名前が笑いますよ。こんなことで時間をとってもしようがないから、じゃ次に移ります。  あなたは、第三条と極東の安全保障という問題をすりかえて、アメリカの沖繩保有を正当化しようとしている。そうすると、極東の安全保障というのは、極東の脅威と緊張があるということを、裏返せばあなた認めておられるわけだから、極東の脅威と緊張というのは具体的にいうと何ですか。たとえば、ベトナム戦争が終わったら一応緊張は緩和して沖繩施政権は返還してもらえるんですか。
  225. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この安保条約というものはベトナム戦争の後に起こったものではないのですから、全体のやはりベトナム戦争と極東の情勢に関連があることは否定しませんよ。しかし、やはり全体としての極東情勢というものはもうベトナムがすべてということではないわけですね。全体の軍事バランス、こういうことも考えなければなりませんから、極東の情勢というものの判断の基礎になるものはベトナムだけだということは言えません。これはやはり全体の情勢なんで、これを、いろいろ変化も起こりましょうし、いまここに何がこれだと、極東というものの判断の基礎はこれだということは私は無理があると。ただ、しかし、矢山君のいろいろ聞いておって、私との根本の違いは、やはりわれわれは安保条約を結んでおるわけで、そうして極東というものの安全の影響というものは、それが日本の安全に影響するから極東の安全が問題になるわけです。安保条約の基礎というものは、これは実際日本の安全というものを中心にして考えたわけでありますから、だからアメリカとの間には、日米の安保条約の基礎になっておるものは両国のやはり信頼関係だと私は思うんですね。これは信頼関係ですよ。こういうものは。そういう点でやはり日本、何かこう沖繩というようなものも、平和条約三条に対するアメリカの不法であると、こういうところから責めろと、こういうアメリカとの関係というものがわれわれ政府の考えているような信頼関係の上に結ばれて、しかも極東の安全というものが日本の安全に関係ないならば、そんなに大きな問題でもないかもしれない。日本の安全と関係するところに、極東の問題が大きな問題であるという、この二点についてあなたとの議論の入り口が少し違って、こんなに意見が食い違うんじゃないでしょうか。そうでなければ、非常に意見は一致することが多いんですがね。
  226. 矢山有作

    ○矢山有作君 三木さん、あなた頭がすこぶるいいのに、沖繩の施政権返還と安保条約とをからみ合わしてお話しするということになると、これあなた、安保条約と沖繩施政権の問題は表裏一体なんですか。そうなってきますよ。沖繩の施政権返還と安全保障条約云々、あるいは極東の安全保障ということは、法的にいえば別個の問題である、その点あなた混乱さしちゃいけませんよ。
  227. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は法的に言っているのではないのですよ。やっぱり日本の安全というものを考えたときに、極東の情勢というものは日本の安全に非常に影響しておりますから、だから、法律的でなしに、政治的な判断としては、これはやっぱり結びついているというふうに判断しなければ、日本というものは孤立して、日本の安全というものは……。
  228. 矢山有作

    ○矢山有作君 ごっちゃにしないで。
  229. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 法律的にはそうでしょう。しかし政治的にくれば、やはり極東の安全と日本の安全というものは、非常な一体の関係を持っておるものだと私は思っている。
  230. 矢山有作

    ○矢山有作君 それですから、私は、極東の脅威と緊張がなくなったときというのは一体どういうときなんですかと政治的に聞いてるんですよ。それに具体的に答えられなくちゃ、沖繩施政権返還のめどは一切立たぬじゃないですか。あなた方が極東に脅威と緊張がある、安全保障に必要だと言うんだから、その脅威と緊張は何であるか、それを明らかにしなくちゃいけません。その義務がありますよ。
  231. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ベトナム戦争が平和的に解決されるのも一つでしょうね。そして、だれが見ても極東の情勢というものは相当安定したという判断ができたときで、それは一々——なんですよ、ベトナムというものはみんな一つの要素として認めますよ。だけど、それだけかといったら、それだけじゃないでしょう。それだから、やっぱり極東全体の一つの軍事バランス、そういうふうなことから考えてみて、沖繩の基地というようなものが必要でなくなるという判断が——みなが見ても、もう極東も安定したと、基地というものの必要性が非常に少なくなったという判断がある場合で、ここにいろいろ、将来どういうことが起こるかもわかりませんしね。だから、極東というものの判断を一々ここで全部あげろということは、それは不可能です。将来もまだ、いろんなことが起こる可能性があるわけです。
  232. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。外務大臣、結局、軍事バランスというようなところを考えておられるようですね。そうすると、ソ連、中国、それから北朝鮮、これとのバランスという意味だろうと思うんです、おそらく。だから、その点をもう少し、軍事バランスというのがどういう意味か、その意味と、それから、それが解決するというときまで待つというんなら、これは当分だめなんじゃないですか。いや、そうじゃない、軍縮会議等でこういうふうになるとかいう見通しがあるのか、その二点をちょっと明らかにしてほしい。沖繩返還にとって重要な関係があります。
  233. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 一つ日本の安全というものを中心にして考えるわけですから、そういう場合に、いま沖繩の持っている一つの基地というものが、日本の安全を支持する上において一つの大きな役割を果たしておると私は評価しておるわけです。どこが敵というものではないわけです。しかし、あすこを軍事的な真空状態に置くと、いままで持っておるところのバランスというものがくずれていきますから、これがもう少し安定をしたときならばそういうことは可能でしょう。しかしいまのような極東情勢においては、全面的にもう沖繩の基地というものは要らぬ、全面的な施政権の返還をしてもいいという時期には考えられない。それで、全部極東という客観情勢は変わるわけですから、いまの時点で何もかもあげてみろといっても、なかなかあげにくいので、だれが見ても極東の情勢というものはすっかり安定し切ったということにはなかなか容易にならぬでしょうが、一応、軍事的な緊張、軍事的ないろんな将来の危険性、そういうものもまあ一応遠のいたという判断、こういうことを極東の安定という中に私は言っておるので、具体的に一々将来起こり得る問題もございますから、ここであげることは私は実際問題としてはむずかしい。質問をされる気持ちはわかりますけれども、実際あげるほうの者としては、それはなかなかあげられるものではないと考えております。
  234. 矢山有作

    ○矢山有作君 あまり抽象論議を繰り返してもいけませんから、やはり私は問題を具体的に考える必要があると思う。あなたのほうで具体的に言いづらいなら、私のほうから言いますから、それに対してあなたの考え方を述べてください。  アメリカはよく、中共は相変わらず好戦的で、アジア諸国に対する侵略の危険がある、だから中共封じ込めの戦略目的のために沖繩は必要だ、こういうことをしょっちゅう言ってるんですよね。そうすると、軍事バランスがとれた状態というのは、中国を封じ込めた、とき——具体的に一つの例をあげれば、そういう場合もあるんですか。
  235. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 中共を目標にして、中共を封じ込めるという、そういうふうな考え方が沖繩の施政権の背景になっておる。中共を封じ込めるというのはどういうことなのか知らぬが、(「せきとめにかかったんだよ、せきとめに」と呼ぶ者あり)中共自身が次第次第に各国に膨脹することは、これは困るでしょうが、封じ込めるということは、どういう意味か私にはよくわからない。自分の国を中共がどういうふうにおさめていくかということは、中共の自由ですからね。だから、それで、何も中共自身を封じ込めるといっても、アメリカでもいまは封じ込めにはいっていないのじゃないでしょうか。
  236. 矢山有作

    ○矢山有作君 アメリカはよく中共封じ込めと言っているんですよね。私どもは、あなたはアメリカと同じような考えを持っていたんだと思っていた。ところが、そうでもないらしい。そうすると、一体、極東の脅威と緊張というのは何なんですかね。この内容が明らかにならぬと、返してもらうんだ、返してもらうんだと言いながら、かけ声はいいですよ、しかし、かけ声だけじゃなかなか返らない。法的にもあなたはアメリカが施政権を持っていることはいいのだと、こう言っておるのだから、一体そうなると、沖繩施政権の返還の見通しというのはどうなるんですかね。あなたのような答弁を繰り返しておったんじゃ、沖繩の県民で本土復帰を願っている人たちは、どうにも五里霧中で見当が立ちませんよ。政府も五里霧中かもしれませんがね、どうなんですか、一体。
  237. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはだれでも——矢山君は何年といってあなたは時間を限られるのかもしれぬが、実際むずかしいですよ。これはむずかしい。それは何年といっても、やはり極東情勢の変化もありましょうし、そういうことでこれは何年先という予告をするということはむずかしい。だから、やはり抽象的といわれるかもしれませんが、できるだけ早くということ以外に、期限を切ってこれはちょっと言える状態ではない、それは客観情勢——いわゆる極東情勢の変化もあるわけですから、そういうことで、これがいかにも沖繩に対してアメリカの施政権行使がいいことだといって……、私はあなたがこれは違法かと言うから私は違法だと思わないと言ったので、いかにもこういう、施政権をアメリカが持っておることを大歓迎で、いつまでも続くのがいいとは私は思っていないのですよ。しかし、これを平和条約第三条に対する違法行為であると、こうあなたが大上段に言ってきたから、われわれは、そうは考えないということで、われわれ自身だって心を痛めておることは同じですから、そういうことでできるだけ早い機会と申し上げる以上に——これは沖繩の人たちには年限でも切って言えばいいのでしょうが、これは極東情勢もあるし、アメリカとの協議もございますから、ここでやはりみんなが安心するように何年先というようなことを私は申し上げることは、この段階ではできません。
  238. 矢山有作

    ○矢山有作君 外務大臣、あなたの考え方だったら、返還の見通しは全然ないわけですよ。あなたは、平和条約第三条は違法でないとおっしゃる。あくまでも沖繩返還問題を極東の脅威と緊張に関連づけて考えられる。それなら、私は、その期限を示しなさいとは言いませんよ。だから、極東の脅威と緊張が解消されたというのはどういう状態であるかと。そうして、それがはっきりしたら、その極東の脅威と緊張を解消させるための具体的な手を打って、はじめてあなたの言われる沖繩施政権返還が実現するんでしょう。ところが、極東の脅威と緊張とは一体何やらわからないと。何やらわからないんだから、極東の脅威と緊張を解消させるための外交的な方策も何も打てないと。じっと座して返還をしてくれ、してくれといってかけ声だけやって待っておるんだと、こういうことになるわけです。これでは、いまの国際情勢から言うならば、未来永劫に返還の見通しは立たぬということじゃないですか。かつて、アメリカの、名前は忘れましたが、だれかが、沖繩施政権の返還は神秘的な将来の問題であると言ったことがありますよ。そういうことになるんですか。
  239. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 矢山君にお願いしたいのは、もう少しものごとを善意に解釈できないんですか。何でもあなたからいったら政府は悪者で、沖繩の施政権の返還なども口で言うだけだと、こういうふうに言われるんですが、心を痛めておるのは一緒ですよ。あなたに劣っておるとは思わない、責任を持っておるだけに。もっと何とかできないかということを絶えず考えている。ただ、しかし、極東の安定とは何ぞやといえば、やはり極東が戦争の脅威がなくなってですね、これは一口に言ってもなかなかむずかしいですね。それなら、そのために日本努力したらどうかということでありますが、極東の平和安定のために努力したらどうかということで、それは日本としてもできる限りのことはやらなきゃらなぬし、今後もやろうとしておるわけであります。たとえば、日本がいろいろな東南アジアなどに対する経済協力なども、せんじ詰めてみればやはり平和の基礎を築いていく一つの一本になるわけですからね。そういう意味で、外交的にも努力せんならんということは否定しないんですよ。ただ極東の情勢を腕を組んでじっとみておるということではいかぬ。やらなきゃならぬが、しかしながら、いまここで沖繩の人たちが安心できるように、これとこれとこういう条件になったらこうだ、年限はこうだということは、なかなかここで申し上げられないのは非常に残念に思います。
  240. 矢山有作

    ○矢山有作君 これはもう時間がなくなって、すれ違いの議論になるんですが、私は、あなたは理論的に考えても極東の脅威と緊張があるから沖繩は返してもらえぬのだということになれば、極東の脅威と緊張は何であるかと。それがわかったら、その極東の脅威と緊張を解きほぐすために、日本は外交的に努力をし、そうして返してもらうと。これが私は理論の筋だと思うんですよね。そもそも、極東の脅威と緊張が何やら一体わかりませんというのでは、沖繩は、あなたがいかに心を痛めて、日夜寝られぬほど悩んでおろうとも、これは沖繩の施政権返還はあなたまかせ、アメリカさん次第ということになって、日本としての自主的な考え方なり自主的な対策というものは何にもないと、こういうことになるわけです。言わば自民党政府のもとでは沖繩施政権はどうにも返るめどは立ちませんとこういうことになりますね。そうですね。
  241. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それはまた自分かってな理屈で、沖繩の返還はやっぱり自民党政府のもとという、私は強くそういうふうにしなきゃならぬと考えています。そこで、いま言っておるように、ベトナム戦争なんかも大きな極東の緊張緩和の材料になることは事実ですよ。
  242. 矢山有作

    ○矢山有作君 それから……。
  243. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それからといっても、いろいろなものが起こり得ますからね。
  244. 矢山有作

    ○矢山有作君 それはわかっているでしょう。
  245. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは極東状態がいろいろ極東の中に対立関係が起って……
  246. 矢山有作

    ○矢山有作君 どういう対立……。
  247. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) どういう対立といっても、いろいろあるじゃないですか、それは。
  248. 矢山有作

    ○矢山有作君 それをあなたはっきりしてもらわなきゃ……。
  249. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) はっきりといったって、それはいろいろ動いていくんですからね。一番大きな問題は、やはりベトナム戦争というものがおおいかぶさっておるわけですから、これはやはり大きな問題であることは事実です。
  250. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあこれは三木さんがいかに強弁をされようと、これはもう沖繩施政権は自民党政権のもとでは夢物語だと、こういうふうに結論せざるを得ないと思うんです、いまの答弁を全部総合して考えたら。  ところでね、私は最後一つ聞きたいんですが、この間、総理は、軍事技術が発展していけば、沖繩基地というものは不要になって、返還の見通しがあるんじゃないかというようなことをおっしゃったんですが、この点はどうお考えになりますか。
  251. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) やはり、軍事技術といいますか、こういうものは非常な長足な進歩をしていますから、基地というものに対しての評価も変わり得る可能性を持っていると思いますよ。したがって、陸上基地に対する戦略上の評価というものは、将来変わり得るものを持っておると思います。総理の言われるとおりだと思います。
  252. 矢山有作

    ○矢山有作君 ところが、これは、あなた少し認識不足であるんじゃないですか。なるほど、軍事技術はいかに向上しようと、その軍事技術の向上によって、それは沖繩基地の機能的な役割というのは私は減じてくる場合があると思うんですよ。ところが、沖繩基地が不要になるということがはたして言えるのかどうか。私は現在の沖繩の基地としての重要性は、しょっちゅうアメリカの首脳部が言っておるように、あれを事実上の主権を持って、自分の思うように使えると。そこに基地としての非常な重点を置いているわけですからね。そうすると、軍事技術の向上だけで沖繩基地が不要になって返ってくるんだというふうな考え方をして、そういうことをべらべらしゃべっておられると、また政治家としての不見識だということを暴露することになりますよ。
  253. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは、やはり一つの、いろいろ可能性というものを考えた場合に、そういうことも全然ないとは言えません。だから、これに対してそのほかのいろいろな要素もありましょう、それはね。あるけれども、それだって一つの将来の沖繩問題を考える場合に、全然頭に置かなくていい問題だとも思わないんですよ。それに対してどれだけのウエートを置くかということは、いろいろ議論の余地はありましょう。しかし、その問題は全然頭の中に置かなくてもいいんだとは思いません。だから、検討する場合の一つの材料にはなると考えられます。
  254. 矢山有作

    ○矢山有作君 それは、これまた考え方の相違でしょうがね。これはワトソンが、中国の核装備後の沖繩基地の価値について、昨年の五月五日に意見を述べたことがあるんですがね。それを見ると、東洋における自由諸国の安全に対する脅威が続く限り、共産諸国の軍備とは関係なく、沖繩の軍事基地の戦略的価値は持続されると。要するに、軍事技術がどう発達しようと、沖繩の戦略的価値というものは、極東の情勢の中から絶対にもう価値は減らないんだということをはっきり言っているわけです。また、ワトソンだけでなしに、アメリカの軍関係あるいは首脳部のいろいろないままでの発言を検討してみると、大体みんなそういう考え方です。  だから、私は軍事技術の向上によって沖繩基地が返ってくるかもしれないというような、そういう根拠のないことを言うんでなしに、沖繩施政権の返還の障害になっているのは、あなた方が言われるように、極東の脅威と緊張でしょう。これを根本的に解決しない限り、沖繩は返らない。そうすれば、先ほど来私が繰り返しているように、沖繩をあなた方が返してもらうというこの問題を解決しようというのが日本の外交の基本方針であるならば、その極東の脅威と緊張が何であるか、それをまず見きわめる。そうして、その緊張を解きほぐすために、外交的にどういう努力日本政府はしなきゃならぬか。それをきちっと把握しない限り、沖繩施政権返還ということは望めないということになりますよ。  繰り返して言いますが、自民党政権のいまのようなあなた方の考え方では、沖繩施政権は返らぬということになりますよ。それでは、沖繩住民をアメリカの極東軍事戦略の犠牲にして、アメリカに売り渡したことになりますよ。その点、あなたよく考えてください。
  255. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 前段の、矢山君の言われる、極東の情勢の緊張緩和、これが施政権返還の中心題目だということは、私もそう思います。戦略的な価値の変化というよりも、やはり極東情勢だと思います。その戦略的な評価の変化というものにあまり重点を置くべきではない。極東情勢だと思う、中心は。その点は、私もそう思う。そのための一番の大きな問題はベトナム戦争であることは明らかである。ベトナム戦争の解決というものが極東情勢にいろいろな変化をもたらすと思っているんです。そういうことで、ベトナム戦争というものは、これはやはり極東の緊張緩和のための現在においては一番大きな課題であるということは、これはあなたの認識と変わらない。  後段の、施政権返還は自民党内閣でできないというようなことは、これはもうそんなことはわれわれは考えておらない。施政権の返還は自民党内閣でと考えておる次第でございます。
  256. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっと三木さん、どうもあなたの、これは関連ですが、さっきからのお答えを聞いておりまして、やはり矢山委員が言っているように、あなたが自民党政権の手によって行なうと、こうおっしゃるが、どうもいろんな角度から総合して判断してみたときに、自信がない。そこで、こういう点を私は聞いているのですけれども、真実かどうか私はわかりませんからあなたに伺うのですが、一昨年、佐藤総理が沖繩に参りましたね。あのときに米軍の施設にお泊まりになって、たいへん問題になった事件もありましたが、その際、当時のワトソン高等弁務官との間に、沖繩を極東の最強の軍事基地として強化していくというようなお話が出されたと私たち聞くのです、そういうふうな話を。そういうところに出発しておりますから、幾らわれわれが聞いてみても、理論的に矛盾したようなことをおっしゃって、最後には軍事的なバランス、軍事的なバランスということになると、今度は中共が核兵器を持っている。そうすると、日本が核兵器を持たない限りは、アメリカの核のかさによって日本は守っていく。こうなりますと、将来絶対に、この軍事的なバランスから言うならば、沖繩の基地の返還ということば不可能だということになるわけです。そうして自衛隊を沖繩に派遣していくようなことを、あらゆる角度から総理は言っているわけです。これらの当面の政府のやっておられる具体的な政策を見ますと、どうもワトソンとの間にそういう話があったということを聞くのだが、これが真実性を裏づけておるように思うのですが、あなたはそういうことを総理から言われておるから、なかなか教育権の返還はやりたいのだけれども、矛盾したことばかり言って、あなただって頭いいから百も承知なんだよ、そんな矛盾しておるのは。施政権の返還を一つ一つやるのだと言っておきながら、じゃ、育教権をなぜやらぬと言ったら、それは政府の方針としてやれぬのだ、全面返還だと、こう言っておるからわれわれはわからぬ。すべてそこに出発していると思うので、そのことについてあなたは聞いてますか。
  257. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私、実際聞いていないのです。そういう話は全然総理から聞いてませんが、やはり私は一つ一つ施政権の返還をやれとは言っていないのですよ。その発言はしていないのです。やはり全部返せというのが政府の方針で、しかし、あらゆる可能性を、多少の時間的なズレがありますから、そのズレを埋めるために何か方法はないか、全面的な返還という前にやる方法はないか、やれることとは何でもやろうということで、小さいことでもやっていることは御承知のとおりであります。そういうことで研究はいたしますということを申し上げておるので、いま政府の方針として申し上げるのは、全面的な返還ということ以上に私は申し上げるだけの研究もできていないのでございます。
  258. 矢山有作

    ○矢山有作君 時間がまいりましたので、きょう総務長官なり官房長官にもおいでいただいて、もう少し施政権の問題をお聞かせ願いたいと思ったが、また別の委員会なり、それぞれの機会にやらしていただいて、施政権返還に対する私の質問はこれで終わらせていただきます。
  259. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上で矢山君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  260. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に、山本伊三郎君の質疑を行ないます。  ちょっと速記をとめて。  〔速記中止〕   〔委員長退席、理事平島敏夫君着席〕
  261. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 速記を始めて。  十分間休憩いたします。    午後三時二十八分休憩      —————・—————    午後三時五十一分開会
  262. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行ないます。山本伊三郎君。
  263. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まず、労働大臣にお尋ねいたします。大臣お急ぎのようでありますから、簡単に尋ねますから。  今期春闘の妥結状態、相場、その点をまず先に伺っておきたい。
  264. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) ただいま私鉄、鉄鋼、電気、造船をはじめ、大手企業の多くで妥結をみましたが、なお、石炭、車両、紙パルプ、セメント、ガス、金融業や中小企業の多くはまだ未解決でございます。現在までの妥結金額の状況は、それぞれの業種で非常に開きがございますが、定昇を含めまして、おおむね三千五百円から四千五百円というところになっておるわけでございます。
  265. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その数字はちょっと総評の発表と違うのでございますが、まだ妥結しないところがありますから、一応それを基準にこれから質問いたしますが、その前に、ただいま闘われておるところの公労協の問題でありますが、今回の闘争においては、政府は当事者能力を広く認めて、そして調停段階でこれをおさめるという方針であるようでありますが、これに対する政府の考え方、決意をお聞きしておきたいと思います。
  266. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) なるべく調停段階で平和的な解決がはかれるようにということはわれわれも強く希望いたしておるところでございまして、過去においてもいろいろ検討はいたしましたが、とは申しましても、なかなか前進することが困難、しかし、今次春期賃金交渉にあたりましては、ぜひそういう意味においての前進をはかろうというので、ただいま山本さんおっしゃいましたような趣旨の処置をとった次第でございます。おおむねいまこういうことであるが、どうだと言われたこと、そのとおりでございます。
  267. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 労働大臣にもう一ぺん聞いておきますが、今後公務員の給与の質問に対して参考としたいのでございますが、三十五年から四十一年までの毎勤統計による年度ごとの民間労働者、全産業労働者のいわゆるベースアップの率をひとつ公表を願いたいと思います。
  268. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 昨年度に例をとりますと、四十一年の平均の毎勤の現金給与のベースアップは、前年に比べまして一〇・八%増でございまして、四十年の増加率の九・五%を一・四%上回りました。これを上半期、下半期に分けてみますと、下半期のほうは景気が回復してまいりましたので伸びが大きくなっておるわけでございます。なお、三十五年からのやつをこまかく申し上げますか。
  269. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 けっこうです。そういう資料を踏まえて、次に、人事院総裁一つ聞きたいと思う。  先ほど労働大臣の報告並びに答弁から考えて、本年度も公務員のいわゆるベースアップの勧告をしなければならぬ情勢であると思うのです。まだ調査段階でありますから、明らかにはできぬと思いますが、その際の人事院の基本的な態度、たとえば調査対象の規模、昨年同様に百人規模の企業を対象にするのか、また、住宅手当、家族手当その他の問題についての取り扱い、こういう点についてどういう考え方を持っておられますか。
  270. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) おことばにありました企業規模、これば昨年同様に、企業規模は百人以上ということで調査をしております。それから、家族手当の関係は、今年は調査をいたしておりません。住宅手当は、これはもうここ数年間、毎年しつこく調べておるわけでございますが、今年も調査をいたしております。
  271. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大体勧告をするとすると、昨年の懸案であった勧告制度の改正がやられておらない。したがって、やはり本年も、あの法律によると八月上旬ということになると思うのですが、人事院の考え方について。
  272. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 今年も従来どおりということで調査を進めておるわけで、したがいまして、その集計その他の瞬間を考えますと、大体例年どおりの八月中ごろになろうかと思います。
  273. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 住宅手当の問題は、特にあれは池田内閣のときかと思いますが、相当強く人事院から要請されたと思うのですが、単に要請だけで、これは実現しなかった。この点について今後どういう考え方を持っておられるか。
  274. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 住宅手当の問題は、近年一番われわれとしては深刻に考えておる問題でございます。したがいまして、先ほど申しましたように、調査も毎年やっている。というのは、結局民間における住宅手当の支給状況が、圧倒的に多数の会社が支給しているということになりますと、われわれも当然考えなければならないということもかたわらあってのことでございますけれども、まだ今日までのところ、多数の民間企業で住宅手当を支給しているという段階にはいっておりませんので、いままで見送ってきたわけであります。今年の調査がどうなりますか、これはまだふたをあけてみてからのことだと思います。ただいまおことばにありました池田総理云々ということは、住宅手当の問題ではないので、住宅手当をぜひという話があるけれども、これはかようかくかくの事情で、なかなか出すまでのデータはそろわない。しかし、現実に公務員の住宅事情、宿舎というものが非常にまだ少ない、せめて実質的な宿舎の面の整備はぜひお願いしますという意味でお願いして、これはまあ相当政府でも毎年お考えいただいておると思っております。
  275. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 内容については、まあ調査段階ですから、これからいろいろと機会があると思いますが、ひとつ人事院は、われわれの過去のいろいろの機会で主張した点を十分考えて勧告してもらいたいと思います。  そこで、私きょうひとつ深く突っ込んで質問をしたいと思うのは実施時期の問題。まず、人事院の態度を聞いておきたいのですが、民間企業にいたしましても公労協にいたしましても、裁定なんか見ましても四月一日実施ということになっていますね。公務員だけがなぜ五月という実施期間を希望されるかということについては私ども理解できない。その点どうですか。
  276. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 五月実施ということは、ここ数年来ずっとやってきておる、いわば先例でございますけれども、しかし、いまお話のように、いろいろと違った考え方が出てまいります。私どもも、はたしてこの五月実施というのは絶対のものであるかどうか、絶対正しいものかということは慎重に検討してまいっておりますが、結論は出ませんけれども、ただいまのところでは、まあ両論立ち得るなあというところまできております。
  277. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 政府の六人委員会と称する閣僚の主要メンバーがきょう全部お集まりになったので、この点の理解をひとつ掘り下げていきたいと思う。いま申しましたように四月実施、これはもう公労協しかりで、民間の場合もそうでありますが、五月ということによる実は効率と申しますか、その率は、かりに、たとえば昨年六・九%、これを勧告されたのでありますが、政府はその点受けたけれども、人事院の勧告どおり五月にやっても十分の一というのが、実は率は落ちておるわけなんです。これについて人事院の考え方をまず聞いておきたい。
  278. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 実施期限が切り下げられました結果、十二分の一となるのか、あるいは十一分の一になるのか、その点はまた別のいろいろな計算があると思いますが、要するに、私として申し上げられることは、たとえば大ざっぱに申しまして、昨年の場合でいうと平均まあ一万四、五千円くらいの減損になっておる。とにかくたいへんなことだという気持ちを持っておるわけであります。
  279. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 総理府総務長官にお聞きいたします。大体人事院の考え方は一応お聞のとおりでありますが、総務長官は、昨年九月実施ということで、いわゆる他の公労協を比較するのが一番いいと思いますが、四月から実施されたというのと、公務員の場合五月という場合における実質一年延ばしたアップ率というものは幾らに踏んでおられますか、それをまず聞いておきたい。
  280. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) せっかくの御質問でありますが、ちょっとただいまその数字が出てまいりません。
  281. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大体公務員のいわゆる六人委員会で、まあメンバーはかわっておると思いますけれども、重要な、九月にするか十月にするか、あるいは五月にするかというような決定をする場合に、そういう効率計算式を考えずにやっておられるとすれば、私は、六人委員会と申しますか、五人委員会のメンバーに対して不信の念を抱くのですね。私は、これから私のつくっておる実は計算式を皆さんに渡しますから、計算してください。
  282. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) どなたからでも答弁を願います。
  283. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 答弁というのもいかがかと存じますが、示された算式による計算は四%と少し、四・〇三%くらいになろうかと思います。
  284. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そのとおりでございます。名答弁だ。実は、この式については反論があると思う。批判があると思う。これは私は三つくらい方式があると思うのですが、一番安いやつを出したわけであります。したがって、この式でいわゆる十二分の五という計数は、四月に上げたその組合と、公務員が九月であるから五カ月、十二分の五という計数でありますから、大体これで出ておると思うのですが、これに対して、これはまあ政府委員の方でけっこうです。大臣にあまり無理を言うちゃいけませんが、これに対する反論があればひとつ示してもらいたい。私は自分でこれがいいと思っておりませんよ。
  285. 増子正宏

    政府委員(増子正宏君) 便宜私からお答え申し上げますが、人事院の勧告を勧告どおりに実施した場合には、一年のうちでいわゆる月額を基準にした場合に何カ月分もらうのかという計算によって、いわゆるいま示された式の分母が変わってくると思いますけれども、しかし、これを一年は十二カ月分だというふうに、そういう考え方によれば御説のような計算もちろん出てまいります。しかし、いわゆる六・九%に基づく俸給表なりその他の手当の改正といいまするのは、一応俸給表の構造としましては、俸給表は、先回の例でいいますと六%のアップという俸給表の構造になっておるわけですが、その他手当等がございますので、俸給表だけ見ますれば平均して六%アップの俸給表になっておりまして、この俸給表は、たとい実施が九月になりましても、九月以降はその率でずっと上がったものが支給されておるというふうに見るわけでございますから、その六・九を今度は年間受け取るべき経費は六・九に相当すべきだったのに、月数が減った分だけは結局手取りが減ったんだというような、そういうお考え方を示す数字としては一応ああいうものは出てこようかと思いますけれども、私どもはそういう見方でなくて、俸給表なり手当の改善率はやはり六%なりあるいはその他の率で、大体勧告で示された率のとおりの改善は行なわれたというふうに見ておるわけでございます。
  286. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それは、あなたの詭弁とは言いませんけれども、あまりにも自分かってな解釈なんですね。ベースアッブは毎年度やられるんですよ。結局、六・九%上げたと。むしろ私は六%にしたいんでございますけれども、数字を多く言うために六・九%、〇・九%は諸手当に充てているんで、これに入らない。だがむしろ、私は、皆さん方に有利なように六・九%とやっておる。したがって、四十一年度で六・九%上げられたけれども、受け取った金額というのはこの率しかもらっておらない。しかし、ただ、言うべくは、人事院のほうではいろいろまた反駁があると思いますが、期末手当というものもあるから、単に分母が十二ということにおいては問題があるけれども、大体四%程度しかもらっておらないということについてとうなんですか。——人事院でもいいですよ。人事院の専門家、ひとつやってください。
  287. 尾崎朝夷

    政府委員(尾崎朝夷君) 人事院の勧告は、一年間だけのあれではございませんで、給与引き上げを五月一日からずっとやっていただきたいという趣旨でございます。しかしながら、先生のおっしゃるように、四十一年度について計算をするということをいたしますれば、先ほどございましたように、月分で計算すれば四%ということになりますが、期末手当等について計算いたしますれば、若干変ってくると。微少でございますけれども、四・一ぐらいになるというふうに思っております。
  288. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私は抽象的に言ってないんだ。数字で、大蔵大臣、また五人の方々にお伺いするんですが、結局、四十一年度で六・九%上げたというけれども、実質受け取りは——若干の狂いはありますよ、〇・一%ありますから、四%程度しか月々受け取っておらないということになるんですよ、結論は。これはだれがやってもなる。そうすると、ここで皆さん方にお伺いしたいんですが、五人の方にお聞きしたいんでございますが、四十一年度の物価の上昇は一体幾らでございましたか。これはもう参議院の予算委員会でやっておりますから、だれでも知っていると思います。大蔵大臣、そんなこと知っているでしょう。
  289. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 四・七%でございます。
  290. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、これは算術計算ではそのまま、まあ高等数学を使ってないんだからわかりませんが、ちょっと動くか知りませんが、物価の上昇が四・七%で、公務員のいわゆるアップ率、受け取り額は四%となると、マイナス〇・七%というのは物価より低いものを公務員に押しつけているということになるんですね。この見解はどうですか。総務長官ひとつ。そういうことになるんです、いま数字を確認したんだから。
  291. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) 数字の上から申しますと、そういうことになりまするが、一がいにそうも言えない面もあると思います。なお、昇給も公務員の場合にはございまするし、あれは九月分からでございまするから、全国平均四・七%といたしましても、一がいにそうはとれないのじゃなかろうかと、こういうふうに考えております。
  292. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そういうことはあるということは承知してぼくは質問しているんですがね。昇給は、大体予算書を見ますと、三%ないし四%組んでおります。しかし、公務員の昇給、定昇というのは、職階級からくるところのいわゆる定昇なんです。で、これは必ずしも全部が上がるというわけではない。一般的にわれわれがベースアップと言っておるのは、人事院の勧告では物価とか民間の給与の格差によってやる。したがって、あなたが言われたようなことになると、結局定昇も入れて、上がらないものを含めて四%ということであるからそれをカバーするじゃないかと、こう言っておられますけれども、民間のいわゆる四月から実施した方々と、上がる率というものは、公務員と差が問題でないほど差があるんですね。四月から実施しておる。現に、公労協の場合は、同じ政府関係機関でありながら、そういうことになっておるんですよ。その点の説明はどうされますか。
  293. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) 春闘が終わりました時期、四月を調査の時期として、おおむねそれを基準として人事院勧告が出るわけであります。われわれは、これを十分尊重するたてまえをとっておりまするが、御批判のような面は何年問か続いておる。昨年度のときは、私はこの職にありませんでしたけれども、私の聞いたところでは、非常な努力をいたしまして、幾らでも前進させる態勢をとろうという努力が払われたことも承知いたしておりまするが、当時の財政状況から見てそれもできなかったと。今回も、スケジュールは、やはり春闘と見合わした四月の調査、いま人手院総裁が答えたようなスケジュールで遊んでおります。おそらく八月の勧告によって、じゃいつ——これは完全実施が一番望ましい姿ではありまするが、どういう形になるかということは、これからの問題であります。しかし、私といたしましては、従来のマンネリを打破して、一歩でも前進したいという気持ちを強く持っておる。というのは、公労協の場合には、今度の場合は調停の段階であるいは有額回答で解決するかもしらぬ。あるいは裁定に行ったとしても、これは出るんですから、じゃ公務員と比べてそこに問題があるじゃないかという御批判も私はよく承知いたしております。そういうことを考えながら、それを勘案しながら、何とかひとつ御批判を少なくとも少なくするような方法をとりたいというために努力をいたしておる段階でございます。
  294. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私はその回答はあとで聞きたかったんですが、私はい左確認しておる。三十六年から四十一年まで、これは数字をみなとっております。時間がないから言わなかっただけでありますが、三十六年では二・、五%も物価上昇よりも——これはたくさん物価は上がっておりますから、二・五%下なんです。三十七年は二%、三十八年は二・八%、それから三十九年は物価は若干おさまりましたので〇・五%、四十年度においては三・二%という、物価の上がった率からまだ下回っておるというこの現状なんですね。たまたま三十九年、前の池田総理のときに、太田・池田会談ということで何とかしようというので、ようやく一カ月だけ早めて九月にしたんですね。九月にしても、なおかつ三十九、四十、四十一年もこういう状態が出ておる。これをどう認識されておるかという問題なんです。その措置についてはまたあとで聞きますけれども、この認識です。
  295. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) 消費者物価との関係において、数字の上で見ますると、おっしゃるとおりでありまして、それだけ御迷惑をおかけしているということも私はこれは認めざるを得ないのであります。それだけに、そういうものを何とか改善していかなければならないというための努力をせっかくいたしておるところでございます。
  296. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この事実を認めていただいたということについては、一歩前進だと思うのです。大蔵大臣、どうですか。
  297. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私は、いまの人事院勧告のしかた、また、政府がこれに対する対処のしかた、何か改善案がないかと、今年度も非常に、苦心しましたが、名案がないということで、一応、いままでどおり、今年度も勧告を受けて処理するということになったわけでございますが、このやり方は何かうまい知恵がありそうなものだというふうに考えまして、私はいま失敗したと思いますことは、いままでは財政事情が悪いということで昭和三十四年までは人事院の勧告が出ても、政府が実施する時期は四月一日でした。で、ちょうど私が大蔵大臣になりましたときに、当時の財政がよかったために、従来四月一日から実施するものを、八月勧告を受けて十月に実施しようということを二年間やって、この十月の例をつくりましたが、いまから考えて失敗したのではないかというような気もいたします。そうすれば、九月、八月、七月と順々にいくことがいかにもいま言ったような前進というふうに思われるかもしれませんが、これはもう前から申しているように、私は国民の税金というものをいかに厳粛に取り扱うかということが国会の使命でございまして、そのためにこれだけ大きい時間をかけて国家予算というものをきめる。きめた予算がすぐに一月か二月たったら、勧告によってその中にたくさんの余裕を見ておかなければやれなかったという予算を組ませられるということ自身は、これはたいへんな問題であって、そういうことが事実上やられなければならぬような仕組みの勧告であって、それを実行しなければならぬとすれば、あらかじめいろいろ要らない費用でもこの国会に対してはこれは必要な費用だといって皆さんの前にそういうものをいろいろな部署に入れておくなんということはたいへんなことでございまして、こういうことを各役所にやらせるようになったら、国家財政は紊乱してしまう。私は、国民に対してこの予算の厳粛性と国民の血税というものは実に国会は完全に監督してこれをきめているんだということを示すためには、私は金は惜しくないというふうにいまは考えております。これだけのものが一年公務員に対して一般の国民よりもおくれたんだ、損したんだというのでしたら、それだけの分を決して損かけないようにまとめてどういうふうにかしてはっきりとその処置をするというようなことをするんですなら私は賛成ですが、これをずるずる、今度きまって、三月にきまったら、すぐさかのぼってこれを支出しろだなんということを私どもが承認するような予算の組み方というものは、私は改善しなきゃならぬ。そういうことで、私は、やっぱり国民の前に、金は惜しまぬが、この国家予算というものが厳粛であって、中央も地方もいやしくもそこにみじんも放漫なことがないんだというのを国民にはっきりさせる形で私はこの問題は解決したいと、これは私の希望でございます。
  298. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 国家財政を厳粛にと、われわれは国民の血税でやっているのだから、同じことですよ。私は実際に出せとは言っておらない。他の労働者、特に政府機関で同じに働いておる人がそういう差別をされておる事実をいま数字で示したわけなんですね。これは物価が上がらなければこういう問題も私はあまりここで追及したくないんです。政府の施策によって、物価は平均六%上がってきておるのですね。毎年そういう実情を繰り返しておる実情というものは、国家財政は一文でも始末しなければならぬ、それはあたりまえですよ。しかし、あなたの理屈で言うと、国家財政を始末すると言ったって、公務員——地方公務員含めて二百数十万おられますが、そういう人だけはしんぼうしなさいと、ほかの人はそれでいいんだと、こういう理屈は——私は何も公務員の諸君だけの立場で言うのじゃない。国家財政を預かる一人として、やはり民間労働者あるいは関係のそういう方々と同じような処遇はすべきであると。なぜ公務員だけがそういう差別的な、いまここで言いました三%、四%低い——勧告は六%でありますけれども、実際実施されて受けているものが平均三%以下も低いと、この事実をどう見ておられるか。国家財政なんと言われるのは、私も同じことですよ。われわれが国家財政をむだに使えと言ったことありますか。たとえば、いろいろありますよ。農地報償の問題でも、たくさんあれは反対したんです。そういう問題にはあなた二千億、三千億と出しておるでしょう。公務員の正当な取り分までも押えてやらなくちゃならぬかというところを私は追及したい。
  299. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そうではございませんで、そういう不利なことをさせたくないためのやり方を考えようということでございまして、たとえば昨年度におきましては四百十二億円、九月実施でそれだけの資金が必要となりました。そうしますと、これに対応して地方は四百六十一億円、八百七十三億円というものはもう何ヵ月前に妥当な予算としてきめた中からこれが一斉に中央、地方の財政の中から出てくるというのですが、これは実際に財政監督をやっている私どもから見てもふしぎなくらいのものであって、もしこれが、八百七十三億円が必要だというのでしたら、ちゃんと国会の承認する一定の金額で、その中からやりくりしてこうだという説明がつくのならいいんですが、全部国会がきめた予算の各所からこういうものがさっと一どきに補正をしなくても出てくるというような予算の組み方というものについては、私自身どうしてもどうも割り切れない気持ちを持っておるものでございます。
  300. 鈴木強

    鈴木強君 関連。大蔵大臣のこの人事院勧告に対する基本的な考え方を、ちょっといまの御答弁ではとりにくいですから、私たちが理解しにくいですから、もう一回伺いたいのですが、かつてこれは昭和二十三年公務員法改正以前においては、国家公務員にもストライキ権が与えられておりました。そうして、国家公務員でありましても、みずからの生活権を守るために賃金の引き上げを要求し、それがいれられないときには憲法によるストライキ権ですね、これが保障されておったんですね。ところが、マッカーサーの指令が出て——こんなことをいまあなたに言うのは失礼だと思いますけれども、公務員法が改正になってストライキ権を公務員から取り上げました。しかし、そのかわりとしてこの人事院というものが設置されたのでしょう。ですから、人事院が勧告したものはそのまま実施してやるというのが筋なんですよ。これは。ところが、法律的にそういう逃げ道があるものですから、財政的、資金的に困難な場合には国会の承認を得なければならぬというそこのところを、われわれから言うならば悪用をして、人事院勧告以来今日までたった一ぺんでも完全実施したことがないじゃないかということですよ。国家公務員はストライキ権もない。しかし、公僕として一生懸命やっていますよ。そういう人たちだけが、なぜ、四月から実施しなさいという、五月から実施しなさいというものを、十月に、九月にさせられるということは、これは承服できませんよ。そうでしょう。その基本的な態度については、あなたも理解してくれていると思うのですよ。そうであるならば、一つの例として、たとえばことしは政府が見通す物価が六%なら六%上がるということになりますと、必ずこれはベースアップということが出てきますよね。ですから、給与の全体の総額の中にたとえば五%なら五%というものを予備費的に組んで、勧告されたらすぐにやれると、その分だけは。しかし、七%と、こう上にいった場合にはあらためて国会の承認を得るということなんですよ。これはそういう程度ぐらいの私は予算の中に配慮をしてほしかったと思うのですよ。これはもう国民が払う税金、その税金は厳粛にこれは使わなければならない。われわれも心得て審議に参画しております。だけど、国家公務員に勧告どおりやらなければならないという、一般の人たちと同じように待遇しなければならぬということを原則的に認めておるならば、それが実現できるようにくふうするのがやっぱり政府の責任ではないですか。財政当局の責任ではないですか。そういう意味において、給与全体の国家予算の中における予備費的なものを置いて、物価が上がらなければそれは使わなきゃいいんですよ。それは国会の承認を得ればできるのですよ。それは一つ方法として考えられることだと私は思うんですが、あなたがおっしゃるように何とかしてこれは四月一日から、五月一日から勧告どおりにやれるという道をやはり考えなければいかぬというのは、これはみんな同じことだと思うんですよ。そうであるならば、一本どうしたならばいままでのような勧告どおりにやれないことが完全実施できるかということをもっと政府自体が真剣に考えなきゃいかぬと、こう私は思うのです。その点が、そのときそのときになれば、閣僚会議が開かれてやられます。かつて十月が九月になりましたよ、三年ばかり前に。それを一つの前進と、こう言うのだけれども、前進でも何でもないんですよそんなものは、あなたが言うように。ですから、本来の姿に戻すために、一体そういう措置を真剣に考えたらどうか。最近、公務員制度議会だって、ストライキ権を含めて基本的なものをやると言っておきながら、ILO八十七号の分だけをやって、あとは空中分解だ。これは藤枝さんが言っているように空中分解している。これは一つも前進していないじゃないですか。だから、ことしもまたこういう問題が出てくるんですよ。だから、そこであなたにどうしたらいいかという具体的なことを山本委員は聞いておるのだと思いますから、そういう意味においてわれわれが理解できる具体的な案を示してもらいたいというのがわれわれの希望なんです。
  301. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私どももそう考えて、たとえば人事院勧告をもう一ぺん十一月なら十一月にやってもらうということになれば幾ぶんその点はまた違ってきますので、こういう手はないかということを人事院に相談しましたが、なかなかこれはうまくいかないようでございますし、山本さんの言われるようなことだとすれば、五月というのがやはり私にはわかりませんね。会計年度が四月から三月までとなっておれば、やはり公務員の俸給も四月から三月までという一年を対象として扱うのが正しいのじゃないかと思いますし、このやり方、これは私どもは逃げておるわけじゃございませんで、ほんとうにいいやり方を考えたいと思っておるときでございまして、公務員の組合の代表と会うときでもしょっちゅう言って、そちらのほうからも少し知恵を出してくれと私は頼んでおるのですが、これはことし間に合いませんで、ことしは従来の方式でやはり考えるほかはないということになりましたが、これは次の年あたりまでにはほんとうに合理的なことを考えたい、国会でもひとつ考えていただきたいというふうに私はお願いいたしたいと思います。
  302. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ことしはしかたないということ、まあそう無責任にはいかない。私は、それできょうは実は時間をさいてこの問題だけをお話ししておるのです。昨年もいろいろ言われましたが、結局はああなったのです。佐藤内閣になってから九月でもう定着ですね。われわれは、もうとにかく先ほど言ったように、四月にやるべきものを九月に延ばすこと自体に大きな問題があるのだが、今日まで引きずられてきた。いま鈴木委員が言われましたように、国家公務員なり地方公務員あたりは実は何もやる手段がないのですね。そういう手かせ足かせをした人々は弱いのだということで考えておるのだということでは私はいかないのだと思う。やるという方法は私は幾らでもあると思う。補正予算でも、膨大といったってそう大きなものじゃない。あと五ヵ月分組めばいいのですから、大蔵大臣やろうという決意をすれば私はやれると思う。そこを私は言っておるのですよ。
  303. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いずれにしろ、政府部内で、もうこの問題と取り組みましたが、勧告の時期をどうするとかこうするとかいうような従来の方式は変えないで、やはりことしは従来どおりの勧告を人事院にしていただく、それによって私どもは対処するということがきまったのでございますから、いま言ったような根本対策というようなものは本年度はできなかったということを申しておるわけでございます。
  304. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすれば、まあ制度としてはやむを得ない、これは私が先ほど人事院に尋ねたときに回答があったのですが、そうかといって、これの救済ということはできませんが、もとに直すという方法は財政力によってやれるのです。公労協の場合でも、費用が足らなければ、やはり国会に審議を願って足らないものは出すということを過去でもやったことがある。したがって、やろうと思ったらやれる。財政当局の考え方、それは閣僚全部の閣議にはかってもいいのですが、国会に出せばできます。本年はそういうことは考えるかどうか、これをひとつ。
  305. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 国の財政の余力があるのならともかくですが、いままでのやり方を見ますというと、一応勧告を実施するのに相当の金額をここに出しておりますが、この出し方には非常に無理があって、人件費としてとっておかれたものをこれに充てるというものではございませんで、勧告によってこれだけの金を集めるためには、実際に予定されておった専業の繰り延べもありましょうし、あらゆる無理をしてやっておるということでございますので、それだけの余裕がなければ、簡単に私は五月までさかのぼるというようなことを、きめた予算の中からこれを捻出するということは不可能だというふうに考えております。
  306. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 不可能だということになれば、全然考えないことになる。物価をことしは四・五%に押えております。私はそれ以上上がると、この前あなたと質疑応答したけれども、物価は後半期にあなたはおさまると言っておりますが、四・五%にいたしましても、従来の勧告から見れば同じような現象が生ずる。しからば、公務員については物価がベースアップ以上に上がって実質的に賃金が下がってもそれでしんぼうせよ、こういうことですか。
  307. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういうことではございませんで、これからの財政事情がどう変わるかわかりませんので、勧告が出てからいつも政府はやれる範囲内においてやっておる。十月から九月にさかのぼるということも一つでございましたが、そういうさかのぼり方がこれからできるかどうかということは、これからの財政問題、財政の実情で解決すべき問題だと思っております。
  308. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私は、ことしは相当六人委員会でおそらく議論になると思います。そういう意味において、六人の方、五人の方ですか、経済企画庁長官おられませんけれども、お呼びしていろいろ話しておる。労働大臣、あなたは日本の労働行政に携わっている方ですが、こういう事実についてのあなたの見解だけを聞いておきたい。
  309. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 公務員と民間労働者といろいろそういった財政の支出の仕組みが違いますので、理想を申し上げますならば、人事院勧告が勧告どおり実施されるということが望ましいわけでございます。ただ、先ほどから大蔵大臣も申されておりますように、財政支出の仕組みあるいは財源ということで勧告時期が完全に実施されてこなかったということは遺憾なことだと思っております。
  310. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 通り一ぺんの答弁だと思いますが、過去三十六年から今日まで、四十一年までを見ますと、財政のよかった年もあるんですよ、景気上昇して。しかし、一番悪い三十九年のときに十月から九月まで池田さんが思い切って一ヵ月早くやったんですね。この事実は認めるでしょう。したがって、財政がいいか悪いかによって政府はやっておらない。あなたの誠意の問題です。あのときは公労協及び民間も非常に荒れたものだから、とうとう池田さんも出てきて太田さんと会見をしておさまった。大いに騒動を起こしたならば政府は認める、それをやらなければ認めない、こういう態度でしょう。それに対してはどうですか。
  311. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 確かに財政だけという事情で九月にさかのぼったわけではないと思います。高度成長のあとで、高度成長期間には所得は伸びておりますが、同時に、あの時代にも物価は上がっておった。ところが、経済が停滞期に入りましたために、物価が上がっていながら所得増にやはり停滞があったということから、そういう問題の解決のために一ヵ月早めるという措置をとったというふうに当時の事情は聞いておりますが、こういう事情も当然考慮されたことと思います。
  312. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私は昨年一〇・二一で相当問題を起こして処分をされたということは、この間実は自治大臣の報告を聞いたけれども、実はやりようがないですね。こういう不合理なことを政府がやっておるのに対して、いまの国家公務員、地方公務員はやる方法がない。公労協の諸君も、違法だと言っても、やりますよ。これは労働運動の鉄則ですよ。それをやらざるを得ないようにする政府の責任というものをこれは明らかに考えてもらいたいと思う。法律があるからと処分したからといってやることになる。だれしも、小学校三年生の者でもできるようなこういう数字がわかっておったら、幾ら押えたってやりますよ。それが労働運動の鉄則です。もし法律があってやれないとなれば、戦前なんか労働運動できなかった。それをあなたら覚悟しているかどうかということですよ。どうですか。これは自治大臣にお聞きします。
  313. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 地方公務員の給与は国家公務員の給与に準じてやっておるわけでございます。国家公務員において、先ほど来大蔵大臣がお答えしておるような事情である。ことに地方自治体は、申し上げるまでもなく、非常に財政が苦しいのでございまして、国家公務員以上のことがなかなかできかねるということでございます。これはもう山本さんに申し上げることではございませんが、そこで、やはり公共企業体における仲裁の取り扱いと人事院勧告を尊重するというところには、やはりある程度のニュアンスがあるのではないかということを考えておる次第でございます。
  314. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。そのニュアンスというのは何ですか。
  315. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 仲裁裁定が出た場合の国及び公企体の責任と人事院の勧告を尊重するということばとには、ある種の違いがあるのではないかということでございます。
  316. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それであなたらがどういう腹であるか大体われわれは了解できますがね。これは大蔵大臣、あなたは閣僚六人委員会であなたがさいふを預かっておる関係で非常にきついということはわかります。しかし、今度の場合はこれではおさまりませんよ。公務員は皆さん方の手足となってやる人々ですから、むしろあなた方の言うことを逆にあなた方のかわりに私がここでものを言っているんです。公務員に憲法二十八条の団体行動権があれば、私はかりにこれが一〇%上がるところを五%に押えられても、私はそればそれでいいと思う、団体交渉なり行動をやってやるんですから。しかし、いまのところ何もできないんですね。人事院勧告だけが唯一のたよりなんです。あてがいぶちなんです。勧告が出ても政府は何もやらない。一体どうしたらいいんですか、この人たちは。それなら黙って頭を下げておれということですか。そういう方々の不満というものはどうなってくるかということは、私は日本の政治においても憂うべきときが来るんではないかと思うんですね。この点一体どう反省されておりますか。大蔵大臣、どうですか、見解を。
  317. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 何度も申し上げておりますように、公務員に、民間に比べて不利だというようなことをさせないためにどうしたらいいかということを考えておるのでございます。
  318. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 官房長官、その点。
  319. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 山本さんの仰せのことは、その限りにおいてわれわれも大いに参考にいたさなければならないと思いますが、現行制度のもとにおけるわれわれの苦衷ということについてもよく御存じのとおりでございます。私は現時点において、公労協関係等につきまして、ある種の努力をいたしまして、調停段階でなるべく解決をはかりたいというような一種の情熱を持っておるわけでございますが、これから先の人事院の勧告の取り扱いにつきましても私は私なりの情熱を燃やしていきたいと思うのでございますが、先ほどからも話が出ておりますように、現行制度のもとにあっては、御指摘のようなことがかなりあるわけでございます。これから先のことでございまするから、まあここでどういうことにしようかということは、いま言うのはほんとうは早いと思うのでございますが、しかし、制度を変えない限りにおいては、御指摘のようなことは毎年論争も繰り返されなければならない。そういうところに大蔵大臣も制度の根本的な改変についての意欲をああしたことばによって述べておるわけでございます。現にまだ制度が変えられるということに至っていない今日において、われわれの申し上げることは、できるだけ今後とも努力をいたしますと、こういうことに尽きる次第でございます。やむを得ないが、そういうように申し上げるほかないと思います。
  320. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 総務長官
  321. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) こういった論議が起きるであろうということは、当然予想されたところであり、そういう御批判に対して、これを回避して、幾らかでも前向きの形で進みたいという気持ちから、実は春闘の始まる前、佐藤総裁もお見えになっておりまするが、従来のプログラムによる四月の人事院の調査という前に、水田大蔵大臣やその他からお話しがありましたようないろいろな方法について検討いたしましたが、その結論が出ないままやはり調査をしなければならない時期を迎えてしまったわけであります。そこで、先ほどから申しておりまするように、四月の調査、まあ一応この二、三カ月はこのくらいのままで進んでまいると思いますが、勧告が出ました以上、私、人事局を担当いたしておりまするものといたしましても、もちろん政府としても当然勧告は尊重しなければならないのでございまするから、この間にあっても六人委員会を常時開きまして、ひとつ少しでも御批判を少なからしめるような方策をとって、国民に奉仕する公務員の方々のために努力していきたい、私はこのように考えております。
  322. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 四人の意向を聞きましたが、さすが総理府総務長官は担当大臣として、ことばの上だけでないと思いますが、なかなか誠意のある答弁だと思う。  私はとにかく納得さすということは労働運動の大前提だと思うんですね。幾らそれは賃上げしても全部これに満足するような賃上げというものは、今日の自由主義経済においては私は出てこないと思う。しかし、どっかで一つの妥協点というものがあると思うんですね。公務員の場合は、その妥協点に達する方法を持っておらないんですね。いよいよと思っても、これは人事院へ地方から陳情に行っても、綱を張って入れないというんですね。一体この人たちはどういう方法自分らの要求、不満というものを表明したらいいんですか。この点、だれですか、担当大臣は。官房長官ですか。
  323. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 担当大臣ということになりますと、私ではないと思いますが、しかし、そういうことを越えて、閣僚の一人として、お説のようなことについての問題の解決を今後一そうの熱意を持って進めていかなければならない。現状では、確かにおっしゃるようなことがある程度あるわけでございます。そこにわれわれの苦慮もあるというわけでございます。
  324. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もう一回、人事院総裁もおられますから、二つだけ聞いておきたい。  実は、調査の段階で一番問題になるのは、春闘の積み残しの問題ですね。これは相当大きく調査の結果に影響すると思いますが、その問題についてお伺いいたします。
  325. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 従来私どもの調査が四月ということにしておりましたのは、御承知のように、その前はもっと早目にやっておったんですが、これは大体民間の賃金が大幅に変わるときということを抑えようということで四月でやってきたわけであります。ただいまお話しのように、最近ここ二、三年春闘は非常におくれてきておる。私どもの立場としては、春闘をいつやるかということについては何ら御相談はないんでありまして、これはあちらのほうの事情で春闘がおくれていかれる。これもまたただめくらめっぽう追随するというのも、一方の考え方から申しまして、おかしなことであります。したがって、その帰趨をひとつ見守らなければいかぬ。これは毎年非常におくれるようになれば、それこそ調査時期をもうちょっとずらして、全部つかまえるような時期をとらえませんと徹底しないことになりはせぬか、そういう気持ちも持ちながら注視しておる。しかし、現実は現実でありますから、理屈を申しますこともさることながら、要するに春闘のおくれの分をそのままわれわれは見のがしてつかまえなかったということになれば、それは今度は翌年の分として加算されていく。公務員の立場となればそれだけおくれてしまったということにもなります。これがきわめて顕著である限りにおいては、何とかそこを勘案すべきであるということで、これも御承知のように、私ども数年来やっております四月の調査の際に、付帯的な調査といたしまして、四月中に現実には支払われなかったけれども、その後団交などが妥結して、そうしてさかのぼって四月に払うことが確定したというものをとらえられる限りとらえてまいりまして、そうしてそういうおくれのものは事業所の数にして非常に多いということになれば、これはまことに異常なことでありますから、例外的な扱いとしてそれを勘案して、その年でできるだけ消化するのが筋であるということでやっているわけであります。したがって、原則は四月調査である以上はあくまでも四月でいきます。しかし、そういう特別の異常なことがあれば、それも無視するわけにいかぬというのがただいまの態度でございます。
  326. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 今後の問題として、政府の六人の各閣僚がいろいろと言われましたが、この問題は解決の方法が非常にむずいかしいと言われますが、私は本年の問題はまた暫定的な措置が考えられると思うのですが、これはまた別の機会で聞きますけれども、人事院勧告を完全に実施するということについて、人事院としてはどういう方法があるか。
  327. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) これはもう先ほど来各大臣からお話がありましたように、政府とも力を合わせてというとおかしいのですが、ねらいは同じねらいですから、こういうことについては大いに協力申し上げていいということで、われわれも政府のお智恵を借りながらいろいろ検討いたしましたけれども、結局あれもこれも名案なし。私どもの基本的な立場を申しますというと、民間の賃金の変動というものが大体春だということになれば、その時期をつかまえるということ、そうして勧告の基礎は民間給与、これについて完全なデータをつかまえて、そうして官民の較差をとらえて、その上に作業を積み上げていく、これがやはり信頼を得るゆえんだろうということで基本的に考えておりますので、したがって、調査の時期についても、この春の時期からあまりずれてしまっても困るというようなこともあります。したがって、そこにいろんな問題があるわけでありますが、今日のところはどうも名案がないということできておるわけであります。ただ公労委の仲裁裁定あたりが、先ほどお話に出ましたように、新年度に入ってから、これが四月にさかのぼって完全実施された。予算の流用だけで補正も何もなしに、これが完全に実施されたという事態がわれわれの目の前にあるわけであります。私どもがおあずかりしているのは一般職公務員でありますけれども、五現業の中には、郵政のように、われわれのおあずかりしている一般職の人と、公労委の仲裁裁定のもとにある人と同じやねの下に机を並べておって、片方は四月にさかのぼって完全実施される、われわれのおあずかりしているほうは九月だ、十月だということは忍びない。  そこで、一つの当面の方法としては、当初の予算をお組みになるときに——先ほど大蔵大臣もちょっとそれらしいサゼスチョンをされました。お組みになるときに、多少の見通しによっての含みくらいはつけておいていただいて、公社や五現業の予算の運用のようなふうにいけばいいやということで、実はずっとここ数年来お願いしてきておるわけであります。
  328. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大蔵大臣、ここでは時間の制限がありますからくどくど言いません。答弁は要りませんから、十分よく考えて今年の措置をしてもらいたい。でないと、公務員はそういう形で非常におとなしい——というわけじゃございませんが、言えない立場にありますから、腹に不満を持たすということは、やはり行政能率——これは悪いことはしませんが、行政能率にも響くということもありますし、われわれとしては、あなたの前におる人は高級な人だから、あまり不満もないかもしれませんが、地方に行ったら、それはやかましいことですよ。いま私が示した数字なんかでもそういう人からサゼスチョンを得たのですよ。物価が上がっているだけでは上げてくれませんよと、悲壮な叫び方ですね。この点は十分考えてもらいたい。  それから藤枝さんが、ちょっとなんか仲裁裁定と人事院勧告とはニュアンスが違うと言われましたが、仲裁裁定は前はなかなか完全実施されなかったのですよ。公労協の諸君は大きな犠牲を年々してとうとう最後はそこまできたんです。単に黙って政府がやったんではないのですよ。労働者が自分の権利を守るという過去の長い犠牲と戦いの中からかちとったものである。これは日本の労働運動も世界の労働運動もみなそうですよ。私がここで皆さん方にこんなことを言うのは非常に情けない。労働三権があればこんなことを言わないでいいんですよ。みんなかってにやりますよ。それをここで言わざるを得ないというこの情けないわれわれの、何といいますか、心情というものは十分考えてもらわなければならぬ。私はここで言えるからまあ実は気が晴れるかもしれませんけれども、一般の公務員諸君は何にもものが言えない。この点を十分考えてもらいたいと思うのですが、これに対して藤枝さんはどうも感じが違うと思うのです。
  329. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 私が申し上げたのは、過去の実績についてそういうことがあったということについて申し上げたのであって、私自身といたしましても、地方公務員をおあずかりしまして、これらの人が人事院勧告にならって、国家公務員に準じて給与の改善がなされることが望ましいということでございます。したがいまして、個々の小さく分かれる自治体でございますから、なおさら給与財源等が非常に不足をいたしております。それらの充実をはかりながら、これら地方公務員の給与の改善に努力をする熱意につきましては人後に落ちないつもりでございます。
  330. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは一応どういう結末をつけるか知らぬが、国家公務員の場合は、政府にその財源を負担してもらって一応おさまる。これは不満であるかどうかは知らぬが、いろいろ考えてもらうということになって一応おさまるが、地方になりましたら、地方財政について、非常に給与が上がったということで、これはなかなか地方では問題があることは御存じのとおりです。  そこで、私はあなたに聞きますが、いろいろと地方に行きますと、人件費が上がって地方財政が苦しいと言われますが、昭和四十一年度、まだ本年度の地方財政計画でいいんでございますが、地方財政計画総額に占める人件費、給与関係費のウェート、構成はどうなっておりますか。
  331. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 地方財政計画では、三十五年度では三九%でありましたものが、四十二年度では三六%に落ちております。ただ決算で見ますると、昭和三十七年度以降をとってみますると、その比率はやや高くなっております。
  332. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 高いというのは三十五年と比較して……。
  333. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 三十五年度と昭和四十年度はほぼ同率でございますが、三十七年度以降をとってみますると、年々比率がやや高くなっておるのが決算の状況でございます。
  334. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 決算は御存じのように、いろいろの要素が入っておるからちょっとそれは分析せぬとわからぬと思いますが、私は三六%というウエートは必ずしも低いとは思っておらない。他の産業から見ると、三六%の営業に対するウエートは多いのですが、そこは認識の問題にしてもらわなければいかぬ。一体地方公務員のうちにおける人件費のウエートというものは非常に高いのですよ。警察の場合は人件費と物件費の比率はどうなっておりますか。人件費が八〇%以上になっておるのです。教育関係でもおそらく七〇%以上になっておりますね。そういうものは他の産業にはない。そういうものをひっくるんでやっておるから結局全般として高いような印象を受けるのですね。そこで、警察費でも、教育費の問題でも、教官の費用というものは決して消費的費用ではないと私は思う。教官それ自体が教育に当たって、あなたたちの立場からいえばいわゆる労働力を養成しておるのですね。警察官もそういう使命を持っておるのじゃないかと思う。だから、三六%が非常に高いということは言えない、その内容がね。その点どう思いますか。
  335. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 御指摘のように、警察官あるいは教育、教員の費用というようなものはこれは非常に高い比率を人件費が占めるわけでございますから、三六%そのものを必ずしも高いとばかりは言えないと思います。ただ決算の状態その他を見まして、人件費がやはり相当高くなって、財政全体が硬直状態になりつつあるという点につきましては、やはり警戒を要することじゃないか、それは警察とか教育とか以外の面におきまして、なお考えなければならない点があるのではないかと思っております。
  336. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはあなたが言われていること、時間がないから私は数字で言わないけれども、たとえば民生関係なんか二〇%割っておりますよ、人件費を見ると、他の産業に比較して高くないと思う。現在地方財政を苦しめておるのは、それの要素だけではないのです。財政が硬直性になるというのは、単に地方財政だけではない、しかも硬直性になるような制度じゃないのですか、現在、都道府県市町村としても、ほとんど政府のほうからくる機関委任の事務をやっているでしょう、硬直性になるようなシステムになっておるのですよ、これ自身変えなければ、財政の面だけ考えてもこれはならぬ。あなたも専門家か知りませんが、なりませんよ。そういう中で、人件費、いわゆる給与だけを何とか考えて押えようということについては、われわれはあきたらない、その点いかがですか。
  337. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 必要な人件費はこれは必要でございます。ただ、人件費が高くなるからいけないとかいう一般論を言うわけではございません。個々のいろいろな財政につきまして十分考えなければいけないわけでございまして、ことにいま御指摘のような、国と地方との事務の再配分、あるいはそれに伴う財源の再配分等も考えながら、こうしたものに対処しなければならない、ただ人件費を目のかたきにして、それが低くなればいいのだというような意見を私申し上げているのではございません。
  338. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それは私は地方財政についてはまた別にやるし、また、同僚委員もやると思いますが、地方財政が今日まで押えられている硬直性というのは、たとえば超過負担の問題でも、おそらく四十一年度末でまだ千億ぐらいあるのじゃないですか、政府のほうからこれをやりなさい、いわゆる地方団体でそれを受けるけれども、その単価は非常に開きがある、小中学校の場合に非常にはなはだしい、住宅の場合でも、そういう政府の措置をとっておいて、地方の財政が悪いから地方の責任だという、これはよほど考えてもらわなければいかぬと思う。しかも、これは最後に聞きたかったんですが、もう時間がありませんから……この参議院で、実は総理大臣の佐藤さんが電気ガス税は悪税だから廃止すると言われた、私は新聞で——ここにおらなかった、これは相当地方財政に及ぼす影響が大きい、大体地方税の七%くらいのウエートを持っているのですね、それをかりに、悪税なら廃止してもけっこうです、大いにけっこうですが、そのかわり財源としてどのように考えておられるか、これはベースアップにも関係してくるのです。
  339. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 電気ガス税は市町村にとって非常に安定した税でございます。その額も六百億以上になるわけでございますから、これをただ廃止するわけにはいかないのでございまして、他に適当なよき財源を見つけ出して、そうしてこれにかえていくという方法を考えなければならないと思っております。
  340. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはもうすでに来年の予算編成に影響があるんですよ、自治省としては。どういう考え方でやっておられるのですか、私はあとで意見を申します。
  341. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) いまだそのかわるべき財源として具体的には考えておりませんけれども、総理の言われましたのも、そういう他のよき財源を考えつつ廃止の方向で努力すると言われました、私もそのように存じております。
  342. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大蔵大臣帰っちゃったんですね。実はこういう説、これは政府から出たかどうか知りませんけれども、たばこの価格を引き上げて、いわゆるたばこ消費税にそれを回すということも一応考えられる、そうなると、国民負担は、たばこの価格が上がりますから、この点について大蔵大臣おられぬから、官房長官、総理大臣にかわってその点政府の考え方を示していただきたい。
  343. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) たばこ消費税などもそのかわりのよき財源の一つであると私は心得ております。
  344. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはいいんだ、たばこの価格を上げてそれでやるという……。
  345. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) これを私は報道で伺っただけで、大蔵大臣がどのような言い方をされたかわかりませんので、ちょっとお答えいたしかねます。
  346. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 官房長官、ひとつあなた——それでは主計局長
  347. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) お答え申し上げますが、大蔵大臣がおっしゃいましたのは、要するに、現在の税収入の中のウエートで、直接税と間接税のウエートを、所得税の減税というものをやっていく場合に、経常的なコストは経常的な収入でまかなわなければならぬとすると、間接税の割合というものは高くなってこなくちゃならぬのではないかというふうに一般論としておっしゃったと思います。現在たばこの価格をどうするかという問題は、来年度における物価事情、その他の問題も考え合わせて慎重に決定せねばならぬことでございますし、先ほどのたばこ消費税の問題も、すでに国の財政、専売といいながら、たばこ消費税のほうが国に納める財政益金よりはすでに大きくなっておるという形で、専売制度そのものの根本の問題にも関連いたしますので、来年度の問題として慎重に検討いたしたいと存じております。
  348. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ぼくがちょっと受け取りましたのは、主計局長だって、あまり責めるわけにいきませんが、当然たばこの価格を上げなければならぬというような印象を受けた発言だと思うのですね、主計局長として、これは事務当局でありますから、そこまで追及できませんが、言われましたように、現在の専売益金の状態等々実情を見て、たばこの値上げをしなければならぬという実情が大蔵省部内で考えられておるかどうかという点。
  349. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) これは山本委員も御存じのように、毎年度予算を編成いたしますときに、できるだけ国債に対する依存率を下げたいということから、一般の財源というものをわれわれは検討いたしますときに、常にたばこ専売収入というものは出ております。と申しますのは、現在の定款の中では、いわゆる益金部分に相当する収益率というものはどんどん下がってまいっております。これはたばこも上がりますし、それから労働力の単価も上がりますので、そこで、常にそういうふうな検討はいたしておりますけれども、他方にまた、現在における物価情勢その他のことも勘案しまして、最後の結論を下すというのは、結局予算編成のぎりぎりの場合に、ほかの財政需要なり、あるいは他の財源なりというものを総合的に勘案してやるというふうな経過で、毎年度課題にはのぼっておりますけれども、ことしもそれが見送られておるということでございます。
  350. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あなたから責任あることを聞こうというのは無理でありますけれども、どうも政府部内では、たばこの値段の引き上げというものが考えられておるように考えられてしかたがないのです。しかし、今日消費者物価の問題等大きいときでありますから、単にそういう専売益金とか、財政上の問題ということとは別に、物価の問題としても考えなくちゃならぬと思うのですが、大蔵大臣おられぬのであなたしか、しかたがないのですが、どうですか。
  351. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) 先ほどから何度もお答え申し上げておりますように、公共料金の問題を現在の消費者物価対策の中でどう位置づけるか、どう考えていくかということは慎重に検討いたしたいと思います。
  352. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは最後に、公務員の問題の集約をいたしますと、どうせ今度もまたいろいろと問題が起こってくると思うのです。あなたが好むと好まざるにかかわらず、政府の態度いかんによって問題は起こってくると思うのです。これは私は必然性があると思う、その程度はどうであろうと、そういうことでありますから、政府当局もこの点は、先ほどから何度も申しましたから、その点は十分理解をしてもらいたいと思うのです。ただ処分だけが、これだけが唯一のおさめる手段だと思っておったら大間違いだ、処分さえすればおさまるなら、労働運動というのは早くになくなってしまっております。処分をしてもそこに皆さん方を納得さす方法がなければ、これは大きな問題だと思う。こういう点について、大臣はだれですか。担当大臣六人おらぬが、全部私は責任大臣呼んだのですが、それに対して一人一人、大蔵大臣おりませんが、五人委員会、六人委員会のおられる方は一人ずつ順にひとつすわっている順にお答え願いたいと思います。
  353. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 私は、直接にその種の関係の部下を多く持っている立場ではございませんが、御説のことを先ほどから長々伺い、重々参考にいたしたいと存じます。
  354. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 労政全般の担当大臣といたしまして、まず、公労協につきましては、処分者を出さないようにする。それには違法ストライキをやらぬように調停の段階で妥結しようということで本年は報道機関に報ぜられておるような誠意ある態度を、回答をやりまして、調停段階で実質的に妥結する、形式的には仲裁に移りましょうが。そういう方向で指導監督いたしておるわけでございます。今日までのところ、昨年とは非常に違う。ストライキもほとんどないというふうになってまいりまして、喜んでおるわけでございます。  一般公務員の問題につきましては、労政全般としては、山本委員同様、何らかいい方法でいける方法はないかと常に苦慮しているわけでございまして、六人委員会を通じまして、そういう国家公務員、地方公務員が納得いけるような方途の探究に今後とも最善の努力を尽くしたいと思っております。
  355. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 地方公務員の給与の改善につきましては、先ほど申し上げたとおりの熱意を持って当たりたいと存じます。
  356. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) いろいろと御意見を承りましてありがとうございました。まあことしもプログラムはここまで進んでおりまするけれども、しかし、何回も繰り返しておりますように、違反を幾らかでも少なからしめる意味において、また公務員は全体の奉仕者であり、争議行為は、これは禁止されておりますので、また国民の批判も、鋭い目も光っておりまするから、そういうことをさせないためにも最善の努力をしなければならぬ。先ほど来とつおいつ、いろいろと考えておるわけでございますが、たいへん御高説を拝聴いたしまして、ありがとうございました。
  357. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) いいですか。
  358. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いいです。
  359. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上で山本君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  360. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に、多田省吾君の質疑を行ないます。多田君。
  361. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、最初に、政治資金規正法の一部改正法案並びに選挙法一般について自治大臣にお尋ねしたいと思います。  政治資金規制の法文化をめぐって、最近、与党内に、政治資金の規制は選挙区制の改正と並行して行なうべきであるというような、車の両輪説と称するものや、あるいは答申内容の手直し議論、そういったものがいろいろ出まして、法案作成が非常におくれているように思います。自治大臣は、この予算委員会におきましてもしばしば今月の中旬を目途として法案作成を急ぐと、こうおっしゃっておられるのでありますが、中旬と言えばもうすでに十日から二十日までとすれば、もう二日しかございません。国民の多くは、もう五年待たないで、政治資金の寄付はもう会社法人はやめて、個人の献金だけにすべきであるという声が非常に強いわけであります。今回の答申内容も不十分であるけれども、必要最低限のものとして早く実行されることが望ましいと、こう言っているのです。また、各新聞の論調を見ましても五月十二日、十三日ごろは一斉に社説に政治資金の規制を急げという社説を掲げて国民の世論を反映させております。こういったさなかにおいて法案作成がおくれておるということは、やはり与党の巻き返しであり、総選挙や統一地方選挙が終わったので、ここで国民の前に開き直ったような姿さえ見られるのでありますが、自治大臣としては、この大事な政治資金規正法の一部改正案の法文化をやはりこの中旬を目途としてやられるおつもりなのか、それともおくらすつもりなのか、その点をお伺いいたします。
  362. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 中旬を目途としてお答え申し上げておったのでございますが、意外に法文化の作業がおくれまして、やや下旬にかからざるを得ない状態になりましたことは申しわけないと思っております。ただ、これはただいま御指摘のありましたように、自民党がいろいろわれわれに注文をつけておくらしておるというようなことではございませんで、現実にわれわれにまかされた例の人数とか、その他そうした問題がありまして、これを現実に法文にいたしますのに相当の手間がかかっているわけでございまして、私といたしましては、答申の線を十分に尊重いたしまして、提案し、御審議をいただく所存でございます。
  363. 多田省吾

    ○多田省吾君 いつまでですか。
  364. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 下旬にややかかりますことをお許しいただきたいと思います。
  365. 多田省吾

    ○多田省吾君 いま自治大臣は、自民党の圧力ではないということをおっしゃいましたけれども、きのうの参議院本会議の黒柳議員の質問に対して、政府が補助しておる団体の規制をどうするのかという、こういう質問に対して総理は、まああらゆる団体が何らかの形で政府の補助を受けておるのできめ方がむずかしいという答弁をなさっておりますけれども、一般にこれは答申の線から、はずれた案を与党が持っているのじゃないか、政府が持っているのじゃないかという懸念を持っております。また、今日の新聞等見ましても、政府の補助というのはただ四機関に限るのだ、こういう線で提案を急ぎたいというようなことも考えておられるように思えるのでございますけれども、あくまでも、それは答申を尊重なさいますか、自治大臣として。
  366. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 答申にありまするように、国から補助金、負担金、利子補給金その他の給付金の交付を受けているものは寄付を禁止される、これは私は答申どおりにいたす所存で、ただ、私が伺っておりませんでしたけれども、総理がおっしゃったのは、その補助を受けておるという実態をつかむのがなかなかむずかしいのじゃないだろうかということの意味のように拝聴いたしております。また四機関に限るというのは、例の国の金融機関から融資を受けているものは制限額の半額になる。これについてどのような機関を指定するかということにつきまして目下研究をいたしておるのでございまして、たとえば国民金融公庫のように、庶民金融をやっているものまで入れる必要はないのではないかというようなことを検討いたしているわけでございます。
  367. 多田省吾

    ○多田省吾君 世論の多くは個人一千万、会社二千万の制限額でさえも多過ぎるという風潮もございます。また、答申では、受け取り額の総額については制限はないわけでございますけれども、政治団体について受け取り額の総額について制限をしていくようなお考えはありませんか。
  368. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 政党とかその他の政治団体につきましての政治活動というものは、元来自由であるべきものであろうと考えます。したがいまして、団体ごとの全体の制限額をきめるという意思はございません。
  369. 多田省吾

    ○多田省吾君 衆議院の予算委員会あるいは決算委員会でも論ぜられたことでございますけれども、答申には、おおむね五カ年を目途として個人献金と党費によってその運営を行なうものとする、こういう答申が出ておりますけれども、この大事な原則を、衆議院では努力目標だけであって法文化しないというお話でございましたけれども、これはやはり第五次選挙制度議会において、献金は個人に限ると、そういう強い意見が出ました。で、さしあたりの措置を論ぜられておるのでありまして、どこまでも法文化すべきであると、そのように思うわけでございます。自治大臣はその点について……。
  370. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) たいへん多田さんと意見を異にして恐縮でございますが、この答申にもありまするように、かくかくのことが望ましいが、その実現は困難であろうという前提に立って政党はこれこれのことを、おおむね五年を目途としてやれ、当審議会は、さしあたり掲げるような措置をせよ、したいということでございますので、私は、やはり党の近代化、組織化というようなものは党みずからが、各党と申し上げるとあるいは失礼に当たるかもしれませんが、党みずからが努力すべきもので、政府としていま政治資金の規制についてやる仕事は、このさしあたりやるべしということを法文化するのが妥当であると考えておる次第でございます。
  371. 多田省吾

    ○多田省吾君 あくまでもそういった答えは、審議会の理想とする方針、また国民一般の世論を反映していない成案化だと非常に遺憾に思う次第です。また、たとえここに答申どおりの法案が成立したとしても、従来からいわれているように大きな抜け道があるのじゃないか。それは、規正法にはたとえ不正な、うその報告が出されたとしても自治省に調査権がない。一応、自治省や選管等に資料の請求権はあるようでありますけれども、それは出さなくても別に罰則は定められていない。そういった姿が、無届けやうその報告を出しても野放しになっておりまして、その真偽を調査する機関さえない。ここにおいてこの抜け道封じのために監査委員会制度等の抜け道封じの道をつくるべきではないか。また、百歩譲ったとしても、自治省、選管等に調査権を与える、あるいは監査権を与えるというような、調査、監査の充実強化をすべきであると思いますけれども、その点はいかがですか。
  372. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) この政治資金規正法に基づく届け出につきましては、真実を記載した旨の宣誓書を添付させております。元来、こうした性格のものは政党その他の政治団体の良心にまつべきものと存じておりますので、立ち入り検査あるいは監査というようなところまで至るのはいかがかと存じますが、現在の資料請求権よりはやや強いある種の是正措置ができるような程度にはいたしたいと考えております。
  373. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 関連質問。自治大臣にちょっと関連して伺いたいのですが、さしあたりのほうは法案になるけれども、理想とされておる、答申にあります、五年を限るというのがあります。五年を目標にしてというその五年間というのが抜ければ、政治資金規正法もはっきり言えばこれは骨抜きになってしまう。そうすると、これはいわゆる政府案で考えているのは、私どもから見れば、これはどうしても一歩後退した、答申を十分尊重してということばとはうらはらのものじゃないかとこれは考えざるを得ない。それからいま一つの立ち入り調査権云々というお話があったのですが、そこまでやらなければ、またそこまでやられてもいいような政党でなければ、ほんとうに国民の負託にはこたえられないと思います。その点は多少強めるというような程度ではわれわれ納得できない点があるのです。その二点について。
  374. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 五年の問題は、どうも所見を異にしてはなはだ恐縮なんでございますが、私はやはりこういうものは政党自体がみずから努力して近代化、組織化をはかるべきものと考えておるわけでございます。また、立ち入り検査につきましてでございますが、監査機構という御意見でございますが、私はやはりこれも政党や政治団体の良心にまつべきもの、また、その意味においての真実を記載した旨の誓約書も入れておるわけでございます。私はそれでよろしいのではないか、ただ、しかし、いまの書類提出命令権ばかりでなく、もう少し中身の是正措置ができるような程度にはいたしたいと考えておる次第でございます。
  375. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほどのお答えに対してまた再びお尋ねするわけでございますけれども、自治大臣は、まあ一般新聞には数多く出ているのですから私はそうは思いませんけれども、与党の圧力は全然ないのである、あくまでも答申を尊重して作成を急いでおる、そういうお答えでございました。で、おくれたのは、なんですか、ほかの団体等というようなことにこだわっておるのだというようなことをおっしゃいましたけれども、ほんとうにたとえば選挙資金に関しては別途とするとか、そういった手直しをやらないということを確約できますかどうか。あくまでも答申どおりにやられるかどうか、それを重ねてお尋ねいたします。
  376. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) もちろん政党内閣でございますから、与党と相談はいたします。また、与党の理解は求めますけれども、私は答申の趣旨を十分尊重してその答申の線に沿った成文を得て御審議いただきたいと考えております。
  377. 多田省吾

    ○多田省吾君 それからもう一点、その政治資金のことでございますけれども、たとえば衆議院の区制の問題でさえも国勢調査をもとにして五年おきに区制を検討する、そういう状況が法文化されております。しかるにいま関連質問がありましたように、大臣はあくまでも当審議会は次の措置といっておりますから、さしあたりのことですけれども、あくまでも本来の目的はおおむね五カ年を目途として個人献金と党費においてその運営を行なうものとする、これがもう大前提になっておる、これが法文化されなかったならば、まことにこの政治資金規正法の一部改正案としては、少しもといっていいほど意味がない、もう少しぐらいの前進で、そうして抜け道をつくられたならば、これはまたこの政治資金規正法が政治の腐敗助長法だといわれるような悪名をこうむることになると思いますけれども、どうしてもそれを防ぐためにはこの五カ年ということを法文化すべきであると、重ねてお尋ねいたします。
  378. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) たいへん多田さんと所見を異にして残念なのでございますが、ただ、私はこれが国会に提出され、御議決をいただいて、法律が成立いたしまして施行されましても、常に政治情勢あるいは社会情勢とにらみ合わせながら、これをさらに検討をしていく努力は払っていくつもりでございます。そうして必要があれば、さらに再改正することも考えなければならないと存じております。
  379. 多田省吾

    ○多田省吾君 もう一点、連座制の強化について同じくこの答申に最後に出ているわけでございますけれども、今回の答申では連座対象者の範囲の拡大について記されております。この連座制の強化につきましては、どうしても裁判の促進ということがうたわれなければ実効は薄い、このように思います。特に買収等の実質犯の裁判を促進しなければ、連座制の強化がうたわれないと思いますけれども、いま一点は、その連座制強化に対してどのような答申どおりの成案を出すおつもりなのか。それから裁判の促進についてはどう思われるのか。その二点。  それからさらに、先ほど成案は下旬の初期にかかるというようなお話がありましたけれども、また、与党との折衝で遅れて今度の国会に間に合わなかった、審議に間に合わなかったと、そういうことがあるとすれば一大事です。一体、下旬の初期というのは、具体的に二十二、三日ごろと、そういうふうに了解をしてよろしいのかどうか。
  380. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 連座制の強化につきましては、答申のとおりに成文化する所存でございます。  裁判の促進につきましては、御承知のとおり、公職選挙法に百日以内に裁判をせよという注意規定はございますが、現実には守られていないのが事実でございます。これはやはり関係者の努力によりまして、この公選法にいう百日裁判ができるように努力をしなければならないと考えております。  提出時期につきましては、日を切って、それが食言をいたしたような結果になりますのをおそれますので、先ほど申しましたように、下旬にかかることを御了承いただきたいと存ずる次第でございます。
  381. 多田省吾

    ○多田省吾君 裁判の促進につきまして、このたび都道府県の選挙管理委員会から改正意見が出されておりますけれども、その最後のほうに、罰則として、連座制を強化すること、あるいは第一審裁判所で、有罪判決があった場合には、この職務の執行を停止することとすること、そういうような罰則強化を意見として出しておるようでありますけれども、自治大臣としては、この点はいかがお考えですか。
  382. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 今回の答申に基づく公職選挙法の改正につきましては、答申にある程度のことを盛り込みたいと考えておりまして、ただいまお示しのような点はなお研究をいたして、また審議会の御意見等も伺いまして、考慮してまいりたいと思います。
  383. 多田省吾

    ○多田省吾君 この政治資金規正法の一部改正案とともに、この前問題になりましたけれども、衆議院選挙でせっかく一月の十五日までに成人になった者すら、四十数万人、衆議院選挙の選挙権を行使できなかった。そういう非常に今度の永久選挙人名簿に対する悪評が立ったわけです。今度、自治省では年四回の登録制度に変えられるような法案を出されるようにお伺いしましたけれども、たとえ年四回としましても、六ヵ月が三カ月になるだけで、やはり場合によっては何十万人という新有権者が投票できなくなる。そういう点が十分考えられる。でき得れば、新有権者のみは、公示日等を前後として補充登録を認めるような、そういう姿があってこそ、初めて新有権者は政治に対する大きな自覚を持つのではないか、また、悪評も防げるのではないかと思いますけれども、その点に対してはいかがですか。
  384. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 資格を持ちながら、登録されないために投票ができないという人が多数ありましたことは、はなはだ残念でございます。その意味におきまして、今度の公職選挙法の改正案の中には、いままでの回数を四回にふやすことによって、とりあえずこれらを救済したいと考えております。なお、目下、国会に提出いたしまして御審議をわずらわす予定になっておりまする住民基本台帳制度が確立いたしますならば、これは有権者の資格を得ますれば、常に町村長が職権をもって写しかえをいたしますので、そうした心配はなくなるわけでございます。  〔委員長退席、理事平島敏夫君着席〕
  385. 多田省吾

    ○多田省吾君 なるほど住民基本台帳法案というものが出ておりますけれども、これも同法公布の二年後にはということであって、この二年間は出されないという、その点はどうですか。
  386. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) これは地方の選挙管理当事者等ともいろいろと相談をし、その事務能力等を考えたわけでございますが、やはり、とりあえず、この住民基本台帳制度が確立するまでは、四回の登録でやっていくのが、現在の選挙管理委員会の能力としては精一ぱいであるというような結論で、残念ながら四回の登録ということにいたしたわけでございます。
  387. 多田省吾

    ○多田省吾君 従来補充登録は、全般にわたってやってきたんですから、新有権者に限ってその補充登録をするということは、さほど難事ではないと思いますけれども、どうですか。
  388. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 御承知のように、従来の選挙人名簿制度をこの永久選挙人名簿に切りかえたのは、遺漏、脱落、その他二重登録等によりまして、選挙の公正を害することを是正するために、永久選挙人名簿に切りかえたのでございまして、そういうこの永久選挙人名簿制度というたてまえからいたしますると、たとえ、新有権者だけでありましても、補充名簿をつくるというようなことは、そのたてまえに反するわけでございまして、遺憾ながらその制度をとれなかった次第でございます。
  389. 多田省吾

    ○多田省吾君 この住民基本台帳をもとにして永久選挙人名簿をつくるということでございますけれども、この新制度への移行に際しても、また、毎年定期においても、一斉調査というものは全然やらないような法案のように見受けますけれども、これで正確な運営はできるかどうか。
  390. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 住民基本台帳につきましては、できるだけ指導をいたしまして、毎年定期の検査をさせるつもりでございます。
  391. 多田省吾

    ○多田省吾君 毎年定期の調査をさせるというのは、この法案に出ているんですか、それとも政令で定めるのですか。
  392. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 指導でやってまいりたいと思います。
  393. 多田省吾

    ○多田省吾君 「住民台帳制度の合理化に関する答申」というものには、「毎年定期に住民の実態の調査を実施すること。」とあるんですから、やはりこの基本台帳の法案にはっきり成文化したほうがよろしいと思いますが、どうですか。
  394. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) これは法律に書かなくても、唯一の住民の記録でございまして、市町村長が住民のための政治を行なうための基本となるべきものだと。当然そうした調査を定期に行なって正確を期することは、これは市町村長としては当然の義務であると考えるわけでございます。しかも、指導によりまして毎年定時にやらしたいと存ずるわけでございます。
  395. 多田省吾

    ○多田省吾君 この前の永久名簿のときも、一斉調査というのをやったわけでありますけれども、それは国勢調査の四分の一か五分の一の規模でやったのだと言っておりましたが、結局、完ぺきを期すると言いながら、非常に脱漏、二重登録等が起きて評判が悪かった。今度のそういった政令によって行なうような毎年の定期の調査も、場合によっては、相当脱漏、二重帳簿とか、そういったものが考えられる。そうしたならば、この選挙自体が非常に大混乱を生ずるのじゃないか。そういう懸念があります。その点に対して、どういう措置をとって完ぺきを期そうとされているのか。
  396. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 先般の永久選挙人名簿制度をとりましてから、それを実施するまでの期間が十分でなかった点もありまして、いろいろなトラブルが起こりましたことは、はなはだ残念でございますが、その後の調査によりますれば整備をされておるわけでございます。今回の住民基本台帳制度につきましては、相当の時日をおきまして、講習その他、あるいはあまりに急ぐことによって脱漏が起こることのないような時日をおいております。また、先ほども申しましたように、これからは住民の唯一の記録になるわけでございます。町村長としては、それを常に整備することは、町村行政をいたす者としての義務でもございますので、いろいろと講習その他の指導を重ねまして完ぺきを期してまいりたいと思います。
  397. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 関連して。いまの、町村長として、当然やるのは義務だろうし、常時やるであろうというのですが、お金の裏づけがなければ、やれ、やれと言ったって、やれませんよ。調査並みの調査をやるということになれば、それはそれだけのものを積んでおかないと……。ところがそれをなしでもって指導だけでもって、やります、やりますと言ったって、実際の業務になれば、そんなことにはならない。この間の永久選挙人名簿のときだって、アルバイトを使って適当にやってみたり、あるいはそういうものを全然使わずに、いままでの選挙人名簿から拾ってきたというものが、ずいぶんあったわけです。そのために、死んでいるのに選挙権がきたり、生きているのにこなかったり、一斉調査にしたって、アパートの入口で帰ってしまうのですから、アパートの住民は、全部登録ができなくて、落ちてしまったという事態が起きているのではないですか。そういう裏づけなしでもって、指導をするの何のと言ったって、絵に書いたぼたもちです。その点はどうなんですか。  〔理事平島敏夫君退席、委員長着席〕
  398. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) お話のように、調査をいたしますのには費用もかかりますので、これらの点につきましては、この制度が確立された上におきまして、十分考慮してまいりたいと思います。
  399. 多田省吾

    ○多田省吾君 いま関連質問にございましたように、前自治大臣もこの前の一斉調査に対しましては、まあ国勢調査の四分の一並みの金を使うのだから絶対だいじょうぶだ、そういう保証を何回もしたのでありますけれども、結局は、このように大きなつまずきとなったわけです。もう一回くどいようですが、はっきり住民台帳を通じての選挙人名簿の調査確定あるいは記載が、全部遺漏なく行なわれる、そういうことを予算措置等も関連してお約束できますか。
  400. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) たびたび繰り返すようでありますが、もうこの制度が確立いたしますと、住民に対する記録はこれだけになるわけでございます。したがいまして、市町村行政としては、これが唯一のたよりになるわけでございます。選挙人名簿は、もちろんのことでございますが、住民の記録として唯一のものでございますので、予算措置ともあわせまして、正確を期してまいりたいと存じます。
  401. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほど申し上げましたように、今度、都道府県の選管から、改正意見が出ておりますけれども、その中で特に強調しているのは、選挙運動の自由化——文書等の選挙運動の自由化、あるいは戸別訪問の自由化、それを早急にやるべきであるというような意見が非常に強いわけです。むしろ、今度の第五次選挙制度議会の次の話題は、衆議院の区制や参議院の選挙制度審議じゃなくて、あくまでもそういった、国民がほんとうに明朗濶達な選挙を行なえるような選挙運動の自由化というような姿のほうで、ここで論議すべきであると思いますけれども、いかがですか。
  402. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 昨日、初会合を開きました選挙制度議会の第二委員会、選挙運動に関する委員会でございますが、この委員会におかれましても、そうした選挙運動のあり方、特にテレビの利用でありまするとか、あるいは選挙の自由化——選挙運動の自由化の方向でありますとか、そういうものを具体的な議題といたしまして、御審議をいただくことになっておりますので、適切な答申が得られるものと、私は確信いたしております。
  403. 多田省吾

    ○多田省吾君 新聞報道によりますと、いま自民党ではブロック懇談会をやっているようでありますけれども、緊急ブロック懇談会を開いたときに、労働組や宗教団体の行なう選挙運動は制限すべきではないかというような意見も出たそうでございますけれども、もし、これがほんとうだとすれば、これは重大な憲法違反の意見だと思いますけれども、まさかそういったことはないと思いますが、念のため、自治大臣はどうお考えですか。
  404. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 私、出席いたしておりませんので存じませんが、いまのおことばのようなことでなくて、労働組合や宗教団体の行なう政治献金について御意見があったやに漏れ承っておるんでございますが、労働組合や宗教団体が政治運動をされることについては、これはもう当然のことだと、私は考えております。
  405. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、文部大臣に二、三お尋ねしたいのですが。初めに、いつも問題になっております私学の助成についてお尋ねしますが、私学は非常に社会に貢献しているわけでございますけれども、財政難が非常にはなはだしい。長年の懸案であるところの私学振興会の融資条件の引き下げ、あるいは父兄に対する方策として、学費を所得から控除する問題、あるいは私学に対する寄付金については、なお一そう減免税措置の改善をはかる、こういった問題について、文部大臣はどのような努力をなされておりますか。
  406. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) お答えいたします。  お尋ねの第一点は、私学振興会から私立学校に対します融資の条件の問題であろうかと存じます。これは融資条件につきましては、こういう問題について、私学のいまの調査会の中間報告に基づきまして、私学振興会の融資の額を増額いたしますと同時に、その貸し付け条件の緩和をいたしたのでございまして、特に従来、この貸し付けが二年据え置きの、七年もしくは十二年となっておりましたものを、相当大幅に延ばしまして、最高は二十五年、また一番短いもので十二年、その各融資の種類によりまして、相当こまかな条件緩和をいたしたわけでございます。  それから第二点の教育費の免税の問題でございます。これは高等学校以上の教育費が相当父兄負担になっておりますので、何とかこれは所得控除の形におきまして免税措置をとりたいと考えましたが、今回、今度の場合におきましては、税制調査会等におきまして、これはまあ所得税全体の問題といたしまして、この問題は実現に至りませんでした。しかし、私どもとしましては、将来の問題として十分検討してまいりたいと思っておるのでございます。  それから第三点は、寄付金の免税措置でございましたと思いますが、私学に対します寄付金の免税措置につきましては、相当いままでの免税よりも、各番付金につきまして免税の範囲を相当広げまして、できるだけ私学に対しまする寄付金ができやすいように処置をいたしておるのでございます。
  407. 多田省吾

    ○多田省吾君 いまの問題についてお伺いしたいのですが、特に佐藤総理は、この予算委員会におきましても、父兄負担の学費についての所得税の控除を検討しているということを言われたわけでありますが、大蔵大臣は、四十三年度の予算措置として、それを積極的にやられるお考えをお持ちか。それから、先ほどの私学に対する寄付金の問題、また私学振興会の融資条件についての問題、あわせてお尋ねいたします。
  408. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 前段の佐藤総理の言ったことというのは、ちょっともう一回言ってください。
  409. 多田省吾

    ○多田省吾君 父兄負担の学費について、所得税の控除の検討を約束しているわけです。
  410. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 教育費の控除との問題は、これから政府の中でも検討すべき問題でございまして、目下のところ、この結論は得ておりません。  それから私学振興については、いま文部大臣がお答えいたしましたとおり、やはり私学振興会に政府出資や財政投融資を強化することが、一番私学に対してはいいことでございますので、本年度は大体貸し付け等も三割近い増額をはかっているということと、それから融資条件を今年から非常に変えまして、五分から七分一厘、民間の他の金融機関の金利に比べて高くない措置をとって、さらに貸し付け期限の問題も、七年、十二年というものを二十年にし、従来十七年だったものを二十五年にするというように、いろいろ個々のケースによって違いますが、融資条件を大幅に変える。それから寄付金に対する措置というようなことで、本年は相当私ども、私学の振興には強化をはかったつもりでございます。
  411. 多田省吾

    ○多田省吾君 いま私学振興会の融資条件の問題でありますが、あわせて教職員の経常費に関するようなものまで融資をする、そうして絶対政府、文部省当局が口出しはしない、そういうお約束で、経常費にまで融資をするという一歩進めた考えをお持ちかどうか、文部大臣、大蔵大臣。
  412. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 私学の最終的な助成方策につきましては、ただいま臨時私立学校振興方策調査会におきまして結論を急いでおるわけでございますが、六月末日をもちまして答申が出ることになるわけでございます。その答申の結論を待って、私どもはこれを尊重いたしまして、施政の上に実施してまいりたいと存じますが、一般経常費の補助をいたすようになりますか、また、いたします場合に、どういう形式でやるか、その結論はまだはっきりわかっておりません。ただ私どもといたしましては、私学の自主性をあくまで尊重いたしまして、それをいかなる場合におきましても、できるだけ、政府が監督によりまして、自主性を阻害するということのないようにいたしてまいりたいと思っております。
  413. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵大臣。
  414. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 寄付金の範囲を広げましたが、まだ経常費まで広げてはおりません。
  415. 多田省吾

    ○多田省吾君 義務教育の父兄負担の軽減という問題は、非常に大きな問題でございまして、憲法の第二十六条にも「義務教育は、これは無償とする。」とありますけれども、最近ますます義務教育に対する父兄負担のお金がたくさんかかるようになっております。御承知のように、三十九年度でも小学校で一万三千七十円、中学校でも一人一万六千七百八十円、それが毎年一〇%以上ずつ値上がりする。小学校、中学校、ほとんどもう二万円ずつ一人かかるという状況です。三人、四人と小学校、中学校に行っておれば、これはたいへんな父兄負担。農村等に参りますと、義務教育の父兄負担があまりにも多いので、それが一番の苦痛になっておる、そういう姿が見られます。幸いに教科書の無償配布については、ことしは中学三年まではできませんでしたけれども、中学二年まで一応無償となっておる。特に学校給食費の問題につきましては、生活保護法や学校給食法の給付を受けている児童も若干ありますけれども、しかし、そのほかにも給食費の未払い児童がもう毎年十六万人以上もいるという姿です。父兄は、何とかして子供さん方にいやな気持ちをさせたくない。そういう気持ちで、泣き泣き涙ながらにお金を全部出しているようでありますけれども、それでも出せないのが相当多いわけです。  学校給食は、体位の向上等に非常に貢献してきたし、これは進めていくべきであると思いますけれども、そういうときに、文部大臣が、個人的な意見かどうか知りませんけれども、十五日開かれた都道府県、指定都市教育長会議で、学校給食については主食費を将来教科書同様に無償にしていきたいという、そういう希望意見を述べられたそうでありますけれども、これは非常にけっこうな意見だと思います。もしそれが文部大臣の個人的意見だとしても、これは大いに尊重して、政府自体が、さらにまた大蔵当局もこれを推進していくべきであると、このように考える次第でございます。やはり教育は何といっても最も大事な課題でございます。国家百年の大計にかかわる問題でございます。この義務教育について、また、さらにこの学校給食の無償について、文部大臣から前向きの御答弁をお願いしたい。
  416. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) お答えいたします。  先日、全国の都道府県並びに指定都市の教育長会議におきまして、私があいさついたしました中で、まあ学校給食を無償にするというようなことが伝わったのでございますが、これはその席上で、私の重要な政治的な、重点的な事項につきまして説明をいたしました際、特にただいま申されました父兄負担の軽減ということを、私ども今度相当最重点の一つに取り扱ってまいりましたが、教材費とか、あるいは教科書の無償とか、これらを進めてまいったのでございますが、学校給食につきましては、実は牛乳並びに脱脂粉乳及び小麦粉等に対しまする補助は、実質上は昨年度とまあ同様な補助率に終わったのでございまして、実質的には父兄負担がむしろ逆に増加するという形になりましたことを、まことに申しわけないということを申し上げました。  特にこの学校給食におきましては、私は、体位の向上なり食生活の改善にきわめて重要でございますので、教科書無償が本年は中学校二年まででございます。来年ぜひひとつ三年まではお願いをしたいと存じますが、これらがまあ完了いたしますれば、学校給食の問題について父兄負担の問題に最善の努力をしてまいりたい。特にただいま保健体育審議会でこれらの問題について十分審議をしていただいておりますので、その結果を待ちまして、やはり父兄負担の軽減に向かいまして、最善の努力をしてまいりたいということを申し上げたのでございますし、また私も今日、将来とも努力してまいる決意でございます。
  417. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵大臣に同じことをお尋ねいたしますけれども、政治献金の優遇措置なんかに比べて、いままでは私学の寄付等に対してずいぶん冷たい措置をとってきたのがいままでの政府でした。国民は、それと比較して、非常に憤りを持っている。特に教科書無償措置は、ことしで中学三年まで完了すると思っておったのに、中学二年で差しとめられた。そういう観点から見て、昭和四十三年度は、中学三年までは当然完了させる御予定だと思いますけれども、さらにいま文部大臣のおっしゃった学校給食の給付等の無償に対しても、学校給食全般に対する無償についても、私は大蔵大臣に、あくまでも前向きの姿勢で御検討いただきたいと、こう思う次第でございますけれども、いかがでございますか。
  418. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いろいろ言われることについて、一々私が文句を言うようでございますが、私は、社会保障制度がみんなばらばらに、いろいろこれをやったほうがいい、いいことはわかっておりますが、わかっておるものをばらばらにやったために、いまこれをどう統合するかという必要に迫られて、骨を折っているときでございますが、先ほど午前中にも出ましたが、児童手当の問題にしましても、母子福祉年金とか、いろいろこの児童に着目して、各種の措置を積み重ねてきている。ここへきて、今度は、金持ちの子供でも何でも一律に子供に月幾らという、何千円の現金を給付するような手厚い制度をここへこしらえろというのでありますが、そうしますというと、既存の、いままでやった制度とも相当調整をとらなければいかぬという問題、いろいろな問題がたくさん出てくると思います。  で、給食についても、順々に補助を重ねてきて、へき地の児童は無償にするとかいうところまで積み重ねてきた。ここへきて、今度はもう無差別にそのほかの児童への給食も父兄負担にするなということもやろうとしますというと、またここでいろいろな施策をやり返さなければならぬ。全部を平等にするのだ。特に困る子供については別個の措置を考えてやらなければ、またこれは平等の措置にはならぬというような問題もたくさん含んでおると思います。で、ことに私の考えでは、この金持ちのむすこなんかの父兄の負担を免除するのが先か、身体障害児、そのほかの者への措置を厚くするのがいいか、いま社会保障全体の費用のうちでは、非常にこの資金の配分がアンバランスで、医療保障に相当とられているために、ほかの施策がたちおくれしている。で、そういうときに、五十億、百億の、ガン対策でもなかなかできないというときに、こういうことで八百億、千億というものの金をさっと分けるというような制度が、先にやる制度であるかどうかということは、私はやはり考えなければならぬと思う。社会制度として、どちらが先に緊急性を持った問題かというようなことは、均衡をとってやるべきものだ。ことに、いま私どもは、そういう金の出し方は、せいせいと要請されておると同時に、一方から、そういう金の出し方こそが効率のない財政資金である、そういう金の使い方はいかんのだという、各種の委員会からの勧告も受けておるというようなことで、これを調整してやることが、やはりわれわれ財政当局としての責任だと思いますので、かしこまりましたと私言いたいのですが、まじめに考えて、こういう問題について、来年からしましょうなどという返事は、私自身はできません。しかし、こういうことは、いいことはいいことでやりたいのですが、やるためには、やるような総合施策をやはり整備してやらなければいかんというふうに私は考えます。
  419. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですから、いまお尋ねしました中学三年のことはどうですか。
  420. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは、順を追って軌道に乗せてやってきた途上でありますので……。
  421. 多田省吾

    ○多田省吾君 来年度は。
  422. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) できます。
  423. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、そのようないわゆる補助金制度というような姿であったならば、各種の批判が出ると思いますけれども、こういった小学校、中学校の義務教育、国民、父兄全部これは熱烈に考えている問題です。で、大蔵大臣も、いいことだとおっしゃっているのでありますけれども、やはりこれは軽重をつければ、これは一番大事な問題である、こう思います。  で、そういった金の出し方がまずいのだというようなことは、一体どういった委員会がおっしゃったのですか。
  424. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まあ義務教育の児童については現金の手当を出す、それから今度は教育費を税から控除しろ、こういう要求と、控除しながら、さらにこういう補助をこういうふうにやれというふうな要求でしたら、やはりそれを体系的に整備してかからなければ、これはみんな木に竹をついだような施策になって、これが今日困っている問題でございますから、私はやはり準備があって、こういう総合性というものの整備がなされなければ、やたらにこういうことを安易にやるべきじゃないというふうに考えております。
  425. 多田省吾

    ○多田省吾君 もう一回文部大臣にお尋ねしますけれども、大学はことしは空前の入試難といわれました。高校、大学を含めて、ことしの入学の状態、また来年度の見通しについてお伺いいたします。
  426. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 大体昭和四十一年度から例のベビーブームの影響を受けまして、大学に進学する希望者が非常に増加いたしてまいりました。四十二年度におきましては、大学の受験を希望する者が相当増加してまいったのでございます。そこで文部省といたしましては、この入学者の急増対策といたしまして、国立大学、公立及び私立大学を合わせまして、二万名以上の収容人員を増してまいったのでございます。実際上は受験者の総数は、まだ明確にはわかっておりませんけれども、前年度浪人をして受験した者を入れますと、約七十二万人に達しておったと思います。実際、今度の入学をいたしました者は四十三万くらいに達しておりまして、大体いままでの六割の線を確保し得たと思います。この状況は四十三年まで続いて増加してまいります。でございますから、四十三年度におきましても、本年に相当するくらいなこの大学のほうの収容を増加する施策をやっていかなければならぬではないかと思っておりますが、四十四年以降におきましては、だんだん漸減の状態になってまいります。で、あまり大学の……。
  427. 多田省吾

    ○多田省吾君 具体的な数は……。
  428. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 予定でございますか。——あとでちょっと数を調べてお答えしますが、大体この増加率は、本年と同じ程度の増加率を来年もいたしてくると思いますし、入学定員につきましても、本年とほほ同等の定員の増をいたさなければならぬじゃないかと思っております。  ただいま申しましたように、四十二年度の入学志願者の総数は約七十二万九千、それから明年度の推定は七十六万七千、約四万ぐらいな増加をいたす見込みでございます。そこで、入学定員の増加といたしましては、昭和四十二年度は二万四千二百三十人、国立が三千九百八十五、公立が四百四十、私立が一万九千八百五名と、こういうふうになって増加したのでございます。そこで、四十三年は二万以上の増加でございますので、定員の増を、国立、公立、私立を合わせまして、大体一万九千人の増加をはかっていかなければならないのではないかと考えております。
  429. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に農林大臣にお尋ねしますが、十二日に、農林省農政局長から各県の農政局長あてに、農業協同組合の不正防止対策についてという通達が出ました……。
  430. 小平芳平

    小平芳平君 関連。父兄負担の問題で大蔵大臣、ちょっとほかに問題がいくようですから…。  午前中の問題が、総理と大蔵大臣と違う点はよくわかりましたので、その点と、いま多田さんの質問されている点とは全然違うと思うんですけれどもね。といいますのは、義務教育に対して父兄が実際に、講堂建設とか、プール建設とか、そういう点でもって寄付をつのられるわけです。ですからこういう寄付が、一方では、税金の場合は、いろいろな意味で、税法に従って税金が徴収されるわけですから、ところが、義務教育のために、講堂建設やプール建設のために、あるいはその他のPTA関係の父兄負担が非常にふえていると、たくさんあると、これはいま大蔵大臣のおっしゃるような社会保障制度のいろいろなアンバランスの問題とは全然違うと思うのですね。これは当然父兄が負担しなくてもいいように財政措置さえできていけば、安心して子供が学校へ通えるようになるわけですから、これは当然進めていくべきじゃないですか。
  431. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういう教育費について父兄負担をした場合に、税の優遇を与えろという問題でございますか。そうだとすれば、私どもも、今度の税制でもこの問題を検討しましたが、その問題と違いますか。
  432. 小平芳平

    小平芳平君 それもありますけれども、その前段に、現にその父兄がお金を取られるわけです、寄付金を。ですから、それは学校でいろいろな名目で、要するにPTAのほうから、その地域の一戸当たり幾らとか、学校へ通っている子供は幾らとか、子供のあるうちは幾らとか、場合が非常にいろいろあって一概に言えないのですけれども、要するにそういう父兄負担ですね、子供さんが学校へ通うために父兄が負担するお金です。こういうものは、講堂なら講堂は公費で建てれば、父兄負担は要らないわけです。少なくとも、こういうことは社会保障のアンバランスの問題などとは全然別個の財政措置で解決すべき問題ではないか、このように思うわけです。
  433. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) それはそのとおりだと思います。いわゆる超過負担とか、父兄負担の問題、この解消は何年か前から非常に問題になっておりましたので、毎年の予算でも、これを地方財政計画の中でも見まして、徐々に改善されていっておりますが、まだ若干の負担が残る。残るときに、これを完全に全部公費で解消してしまうのがいいのか——これはそれがいいと思いますが、それでもなお残るという場合には、現実に負担した父兄の費用を税において控除するとか、また別の方法はないかというようなところまで、私どもはいまいろいろ検討しておるところでございます。
  434. 多田省吾

    ○多田省吾君 農林大臣、農業協同組合の不正防止対策というパンフレットをなぜ出されたか。それから、三十六年から四十一年までの刑事事件になった不正件数と合計金額、また特に四十一年度は、千葉児の農協連の特別背任事件とか、堺の中央農協の暴力事件、その他岐阜市、埼玉県、三重県等に大きな億を数えるような刑事事件が起こっておりますけれども、その明細について御説明願いたい。
  435. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 明細につきましては、政府委員からお答えいたします。
  436. 多田省吾

    ○多田省吾君 なぜ出されたか、その趣旨を。
  437. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御存じのように、では最近不正事件の発生が非常に多うございまして、昨年はそのために二回にわたりまして関係者のほうに農林省からも注意を喚起いたしたのでありますが、その後なお不正事件が発生いたしておりますので、本年三月重ねて注意を喚起いたすとともに、従来の指導がやや抽象的でございましたので、その後全国農協中央会とも協議をいたしまして、今月十二日付で局長通達をいたしまして、都道府県に対して内部管理体制の整備及び行政検査の強化につきまして具体的な指導を指示いたしたわけでありますが、特に内部牽制組織の整備につきましては、農協中央会において農協の一斉点検を行なうことになりました。それから、各都道府県におきましても、これと相協力いたしまして農協の指導に当たるように、こちらでは指示をいたしておるわけでありますが、今後都道府県及び農協中央会における農協に対する個別的また具体的な指導及び農協の体制整備により不正事件が未然に防止されることを期待いたしておるわけであります。今後におきましては、役員の責任体制の整備をいたしますとともに、役員制度の改善、それから信用事業の健全性を確保するための信用事業に対する監督の強化などの制度面についてもなお十分検討いたして、こういう事件の未然に防がれるようにつとめてまいりたいと思っております。
  438. 森本修

    政府委員(森本修君) 最近におきますいわゆる農協の不正事件の発生の状況でございますが、私どものほうで毎年各都道府県から、刑事犯の対象となるもの、またはそれのおそれがあると行政庁において判断したものということで、その件数、金額等について報告を求めております。それによりますと、全体の最近の傾向といたしましては、発生件数におきましてはやや減少をいたしておりますが、金額におきましては一件当たりの金額の増加というふうなこともございまして増加をいたしております。具体的に申し上げますと、三十六年度では発生件数が百八十八件、四十年度は六十七件、それから金額にいたしますと、三十六年は約三億、四十年は約九億、こういうふうな状況に相なっております。
  439. 多田省吾

    ○多田省吾君 四十一年は。
  440. 森本修

    政府委員(森本修君) 四十一年はまだちょっと集計ができておりません。
  441. 多田省吾

    ○多田省吾君 それからもう一つの問題として、いま千葉県の背任事件なんかも、非常にこれは金額も大きいし、大きい問題だと思いますけれども、その具体的な御説明をお願いしたい。
  442. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 政府委員から申し上げます。
  443. 森本修

    政府委員(森本修君) 御指摘がございました千葉県の農協不動産株式会社の事件の概要でございますが、この会社は、千葉県の共済連が取得いたしました不動産を運用するために、同連合会がほぼ全額出資をして設立をされておる会社でございます。事件の概要は、同会社の社長が、ある不動産を取得しようといたしまして、手付金を約五千万円共済連から一時同会社に借り入れをいたしまして支払ったのでございますが、結果的にはこれが詐欺ということになりまして、農協不動産株式会社に五千万円の穴があいたということでございます。ところで、同社長は、さしあたりその穴を埋めるために、県の共済連と連帯をいたしまして、千葉県の信連から五千万円を借り入れまして、その資金で同社長の知人から不動産を買い取りまして、その不動産の売却代金をもって五千万円の穴を埋める、これにより同会社は共済連からの借入金を返済した、こういう概略経緯になっておりまして、昨年十月に農林省が検査を行ないまして、千葉県の共済連の農協不動産会社に対する五千万円の貸し付けにつきまして、適正を欠く、それから共済連が担保を提供いたしまして連帯債務者となって信連から借り入れを行なったことも、適切ではないという点を指摘をいたしまして、これに対する対策と、役員の責任について回答を求めておるという段階でございます。なお、同社長につきましては、会社における特別背任の疑いということで、目下捜査中ということでございます。
  444. 多田省吾

    ○多田省吾君 もう一つ、堺中央農協の、それだけひとつ。
  445. 森本修

    政府委員(森本修君) 大阪府の堺市の中央農協の関係でございますが、概略は、同農協の副組合長、それから専務理事、参事が共謀をいたしまして、組合の資金を約六千万円横領をした事件でございます。で、背任横領ということで、関係をいたしました者が起訴をされまして、目下公判中ということでございます。
  446. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあこういったさまざまの不正が続出しております。特にあの堺中央農協なんかは、市会の市会議員に立候補するための政治資金として使っているというような、地方政治との関係で乱れも明瞭でございます。さらに最近の農林中金の過剰融資事件等も数多く起こっておりますし、またさらに、これは農林大臣にお尋ねしたいのですが、農協の組合員には非常に準組合員が多い。耕地を持っていないけれども組合に加入して融資を受けているというような人も非常に多いわけです。そういった点もからめて、農協自体が大きくこれは改組をすべきではないか、そういった点も考えられるわけです。今度の、監督官庁として、農協の不正事件を通じて、そういった農協の組織改革、あるいはもっと強い監督をしなければならない義務があると思いますが、最後にその点をお伺いしたいと思います。
  447. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 先般農林中金のことにつきましてお答えいたしましたとおりに、大体農協というものの組織は、御存じのように、一般の単協に参加いたしておる農家の資金が集中しておるもんでございますから、そういう特殊性にかんがみまして、ことにその信用並びに資金を扱う当事者といたしましては、さような意味において慎重に、ことに慎重に対処しなければならぬと思っておるわけでありますが、ただいまは、御承知のように、地方の単協は都道府県が監督をいたしまして、連合体は農林省が監督をいたしておるわけでありますが、私ども、多くの事件が発生いたしておる現状にかんがみまして、先ほどのような措置はいたしておりますけれども、なお農協の使命感に燃えてこの人たちが多くの農民の期待に沿えるような態度をとられますように、なお厳重にひとつ指導してまいるつもりでございます。
  448. 多田省吾

    ○多田省吾君 行管庁長官にお尋ねをいたします。  このたび逆行した通達を出しまして、時間がありませんから簡単にお尋ねしますけれども、きょう行政監理委員会を開いたそうでございますが、その結果、さらに総選挙で自民党は行政の改革を考えて、総理も公約されているようでありますけれども、もう二年半も臨調の答申というものが全然無視されたような姿でございます。今後どういう態度でそれを進めていくか、そして二年半でどのような実績をあげてこられたか、その点をまずお伺いいたします。
  449. 松平勇雄

    国務大臣(松平勇雄君) お答えいたします。  臨調の答申が出てから二年半にわたってどういう実績をあげてきたかというような御質問でございますが、まず臨調の全面的答申ができます前に、約一年前に、すなわち昭和三十八年の八月に行政改革本部が設けられました。さらに昭和四十年の八月に行政監理委員会を設置いたしまして、行政改革の推進をはかってまいったわけでございます。この間、臨調の答申のうち、消費者行政の改革、青少年行政の改革、審議会等の整理、機構の統廃会の一部、それから許認可等の整理、それから事務運営の改善等についてはその実現を見ておりますが、何と申しましても、臨調答申は広範な問題及び行政制度の基本に関する困難な問題を提示いたしておりますので、最大の努力を傾注しつつ、逐次できるものから実現に移していきたいというふうに考えておるのでございます。なお、本年度においては、部局及び特殊法人等の組織の整理、再編成の推進を強力に推し進めるという考えのもとに、現在行政管理庁をあげて、この問題に関しまして努力をいたしておる次第でございます。
  450. 多田省吾

    ○多田省吾君 長官、きょうの逆行通達に対する委員会の状態をお伺いしたい。
  451. 松平勇雄

    国務大臣(松平勇雄君) 逆行通達と称せられるものの内容に関しましては、この委員会におきましても詳細に御報告申し上げましたのでございますが、これは昭和四十年、いまから二年前に、臨調答申の推進をはかるというので、行革本部の中に推進班というのを設けまして、臨調答申の推進をはかる作業をいたしたわけでございまして、その作業の中間におきまして、推進班としての意見、あるいはまた関係官庁、あるいはまたその当の特殊法人等の意見の交換をいたすために、かの文書でもって報告をいたしたというようなものでございまして、あの内容は、いわば、たびたび申し上げておりますように、メモ的なものでございまして、したがって、あの書類というものは、行管庁を代表しての意見の開陳ではなく、また行政改革本部の意見でもないわけでございます。しかしながら、こういった書式でやった、手紙の形でやったということは、非常に適当でなかったのでございまして、これに対しましては深く反省をいたしているわけでございますが、今後は、あの書類には関係なく、百八の現存の特殊法人に対しましては、厳正中立に、強力にこの再編成の問題に関しまして調査いたしまして、その結果を待ちまして行政改革本部あるいは行政監理委員会等にはかりまして、この整理統合の実現をはかってまいりたいというふうに考えております。
  452. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵大臣に、公団、公庫の役員給与について、A、B、C、Dに分けて、その月額、また賞与、退職金等をおっしゃってください。
  453. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 百八の公庫、公団のうちで、給与等について大蔵大臣に協議のあるものは、そのうちの四十六を省いたものでございまして、四十六の公庫、公団については事実上大蔵省の関係がないということになっております。私どもの協議を受けることになっている公団公庫、事業団を大体四つに、A、B、C、Dに分けまして、Aは日本国有鉄道、電電公社、専売公社というものをはじめとして、公社、銀行、日本輸出入銀行、開発銀行、これがAでございまして、その次の公庫、公団——国民金融公庫以下日本道路公団等の公庫、公団がB、Cは、事業団のうちでも大きい事業団と小さい事業団がございますので、愛知用水公団、石炭鉱業合理化事業団、森林開発事業団というような大きい事業団がCで、その次にそれより小さい事業団がたくさんございますが、これをDとしまして、大体給与の基準はこの四つに分けられておりますが、Aの公社、銀行では、総裁、理事長というものが大体四十万、副総裁、副理事長というものが三十三万円、理事が二十五万、監事、監査委員というものが二十万、そしてその次の公庫、公団は、大体これから総裁、理事長が五万円落ちて、そのほかの理事は三万円ぐらい下がるという基準になっております。大事業団になりますというと、総裁、理事長が三十一万円、副総裁、副理事長クラスが二十八万円、それから理事が二十三万から十八万というふうになっておりますし、小事業団では、総裁、理事長がさらに大事業団よりも三万円低いところで二十八万円、副総裁、副理事長がこれは大事業団より四万円低い二十四万、理事二十一万五千、監事、監査委員が十八万五千、大体大蔵省が協議にあずかっておる公団、公庫、事業団の給与の基準はそういうことになっております。
  454. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうしますと、四十万円クラスの人は一カ月つとめただけで給与と退職金のみで六十万円になる。あるいは三十五万円の人が、賞与あるいは退職金を含めますと、五年つとめただけでざっと計算しただけでも千三百六十五万円になる。また、それが全部いわゆる高級官僚の天下りという姿が非常に多かった。一ぺん退職金を受け取って、またさらに何年かつとめて膨大な退職金を受け取る、その点に関しまして非常な批判も出ております。  最後に、行政管理庁長官にお伺いしますけれども、そういったいままでの十八の公団、公庫に対する統合整理が非常になまぬるかった点、それを今後どのようにやっていかれるおつもりか、それから高級公務員の公団、公庫に対する天下りという問題に対してどういう姿勢でいかれるか、この二つの問題についてお聞きしたい。
  455. 松平勇雄

    国務大臣(松平勇雄君) 臨調で指摘いたしました十八の公団、公庫に関しましては、承知をいたしたものも三つほどございます。なお、あの中では再編成ということをうたっておりまして、御承知のとおり、整理統合するものばかりではないわけで、場合によりましては強化するような答申のものもあるわけでございまして、現在そういった方向に向かって作業をいたしておるわけでございますが、御承知のとおり、行政管理庁といたしましては、勧告をいたして、そしてその実現を期すべく努力をいたしておりまするが、やはり各省ともいろいろ事情がございまして、御指摘のとおり、まだ十分な成果はあげておりませんが、今後一そう努力をいたしまして、臨調の答申に沿うように作業を続けてまいりたいというふうに考えております。  なお、天下り人事に関しましては、これはまあ別に特に役人だけを入れて特殊法人の役員につかせておるというような考え方はないのでありますが、民間からも入っていただいておる特殊法人もあるわけでございますが、まあ概して、おっしゃるとおり、役人をやめられた方が多いわけでございます。しかし、まあ役人と申しましてもなかなか皆さん非常に能力のある方でございまして、一がいに天下り人事がいけないということも申しませんけれども、現在の弊害と申しまして特に言われておりますのは、そこの監督官庁の役人の方がやめるとそこに入るというような習慣がございました。しかし、これは非常にまあ感心しないことであるというので、先般も閣議におきまして官房長官が、こういった役員の欠員の問題に関しましても、また新設の公団に関しましても、官房長官のところにおいて一応まとめまして、関係大臣と打ち合わせながら人事を進めていくというような方針をとられることに申し合わせができたのでございまして、多少はそういった点におきまして、こういった問題も改正されていくのではないかというふうに考えております。
  456. 多田省吾

    ○多田省吾君 外務大臣にお尋ねをいたします。時間もありませんので要点だけお尋ねしたいと思います。  まあ、きょう核防条約が十八カ国軍縮委員会に提出の予定でありますが、難航が見込まれております。で、査察に対してソ連の態度が硬化したということが伝えられております。それぞれソ連あるいは西ドイツが国益を強く主張しておるようでございます。私は、外務大臣があくまでもただ核防条約を早く締結さえすれば第六、第七の核保有国が出ないのじゃないかというような思惑のために事を急いで不利益な条約に賛成することのないように強く御要望申し上げ、そうして三つ、四つ今後についてお尋ねしたいと思います。  第一の点は、あくまでも軍縮規定は本文に内容を明示して入れていただきたいということ。第二番目には、非核保有国の安全保障については、核保有国が非核保有国を攻撃しないというような国連決議をすべきであるし、また条約に盛り込むべきである。また、第三に、査察の点につきましても、あくまでも強く主張して、そうしてもし西ドイツのユーラトムの査察が許可されるようならば、IAEAだけじゃなくて、きのうも討論がありましたけれども、第三者というものも考えるべきじゃないか。もっとほかの方法も考えて、ユーラトムと同じ条件で査察をさせるべきじゃないか。また第四に、期限に関して実質的に外務大臣は五年後に再審査をしたい、こういう御意向のようでありますけれども、これはあくまでも西ドイツや、あるいは朝日新聞の社説等にもございましたけれども、五年を期限としたほうがよろしいのではないか、そういった点を強力に主張しつつ、そうして日本の不利益にならないようにすべきである。こういうように思う次第でありますが、その点に関して。
  457. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 四点ばかりおあげになりましたが、核軍縮はできるだけ本文に入れてもらいたいということでわれわれも主張しておるわけであります。どういうことになるか、まだ草案が出ていないようでありますからわかりませんが、これが日本の立場でございます。  また、査察の点については、第三者ということは考えていませんが、国際原子力機構、これで、核保有国も非保有国も国際原子力機構の査察ということで行くべきだと思っております。ユーラトムという問題、これもどういうふうになりますか、これからの問題になる。  それから第三の非保有国に対する安全保障の問題、国連決議で安全保障に対する決議をなさるべきだということはわれわれもそう考えております。  期限の点は、どうもこの条約が五年の有効期限というものについてはいろいろこれは問題がある。しかし、五年来れば五年ごとにやはりそれを再審査するような機会はぜひ持ちたいと考えておるわけでございます。
  458. 多田省吾

    ○多田省吾君 外務大臣は、草案が出てからその検討段階で賛成か反対かの最終決定をなさるというお答えをなさるのは当然でありますけれども、要は、その姿勢でございます。あくまでもこちらの要求を貫き通して、そうしてこの条件がのまれなければ賛成しないという、もちろんわが国は賛成しないからといって核兵器を持たないということは世界の全国が知っておることでございます。あくまでもそういった国益を貫いて主張すべきであるし、そしてなまはんかに妥協すべきではない、そう思いますけれども、いかがですか。
  459. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 国益を守るということは外交の基本だと考えております。ただまあこの条約、何かこう、しりをまくるようなかっこうをしないで、日本のやはり主張をできるだけ条約の中に反映さす努力を続けたいと思っております。
  460. 多田省吾

    ○多田省吾君 その核防条約に関連して、平和条約のための核爆発の役務もアメリカが代行すると申し出ているようでありますけれども、そうしてこの申し合わせば条約には含まない、このような申し入れがあった場合に、将来土木工事等において核爆発がどうしても必要だというような場合はアメリカの役務提供を受け入れるお考えはおありですか。
  461. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはアメリカというよりかは、軍事利用と平和利用との区別がつくようになれば、何か国際機関でその請負をするような、請け負って核爆発エネルギーを利用できるようなそういう機関ができる必要が私はあると思います。一国よりも国際機関による核爆発エネルギーを利用できるような役務の提供といいますか、そういうものは国際機関のほうがいいと考えております。
  462. 多田省吾

    ○多田省吾君 もし国際機関においてその役務の提供が可能であるような場合は核爆発を土木工事等に受け入れる、そういうお考えはおありですか。
  463. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) みずから核爆発をやろうという考えはありません。しかし、それを平和利用のためにもう世界がみな普通に実用化される段階になれば、日本もそのエネルギーは平和のために使いたいと考えております。みずからは核爆発をやる意思はないということです。
  464. 多田省吾

    ○多田省吾君 このたびの核防条約の問題で軍縮問題が非常に論ぜられているわけです。アメリカ等においても、外務省にやはり軍縮局を置いて、政府内ではありましょうけれども、二百人をこえるスタッフを置いているそうでございます。また、スウェーデンあるいは西ドイツ等においても相当強力な研究調査体制をしいているようであります。わが国には外務省の国際連合局内に軍縮室があって、わずか数人の人がいるにすぎない、こういわれておりますけれども、この際、これからのやはり日本の国運を決する安全保障あるいは世界の平和ということに関して、軍縮あるいは軍備管理という問題は大きな問題であろうかと思いますので、重ねて外務省に軍縮庁等を新設して強力な軍縮研究をなさるおつもりはないか、その点をお伺いします。
  465. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 軍縮の面から日本は世界平和に貢献する余地というのは、多田さんの言われるように、非常に多いと思います。したがって、庁をつくる意思は持っておりませんけれども、いまの外務省の機構がこれでいいとは私は思ってない。活動を強化いたすことにいたしたいと思っております。
  466. 多田省吾

    ○多田省吾君 平和利用の問題は非常に重要な問題です。昭和五十年度までに約五百二十四万キロワットの原子力発電計画があるように承っておりますが、平和利用の査察の問題で、もしアメリカ等に全部握られてしまいますと、アメリカのスイッチで全部日本の電灯がついたりとまったりするようなことになるのではないかという心配をする向きもあるわけでございます。そういった点から、広く学術会議あるいは原子力産業界等広く、いままではあまりやられなかったようでありますが、会合を持って研究していくべきではないか、このように思いますけれども、いかがですか。
  467. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 草案が出ましたら広く意見を徴したいと思っています。日本だけが不利益をこうむるようなことのないようにしたい。しかし、現在すでに国際原子力機構の査察を日本は受けておるのですから、いままで受けなくて新たに受けるというのでないので、日本の場合はこれができる限り各国に対して平等な取り扱いを受けたいということでございます。いま現に日本は国際原子力機構の査察を受けておることは御承知のとおりでございます。
  468. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 時間がありませんから、これで最後にお願いします。
  469. 多田省吾

    ○多田省吾君 このたび、非常に残念な問題ですけれども、ソ連の機関紙のイズベスチアが外務大臣を批判するような論文を出しまして、大東亜共栄圏じゃないかとか、あるいは三国同盟じゃないかとか、あるいは核防条約についても意見を言っているようでございます。こういったことは非常に遺憾でありまして、また、外務大臣が七月に訪ソする上において大きな問題であろうかと思いますが、この点に関して外務大臣はどのように思われますか。
  470. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私もイズベスチアの記事を見まして、全くの日本の立場を曲解するものである。日本は第一番に、いまここでも多田さんに私はお答えしておるように、みずから平和利用のためにも核爆発をしようとは思わぬと言っておるんですから、こんなに核というものに対して、核アレルギーといわれるぐらい核に対しては神経過敏でありまして、この条約によって抜け穴をつくろうなどということは全然考えていない。ソ連は日本のこの平和的意図を曲解しないですなおに受け取るべきだと考えております。  第二の点は、日独の定期協議というのはこれで三回目ですからね。日本各国との間に外務大臣の定期協議を持っておるわけであります。各国とも友好関係を増進したいというのが外交の基本方針ですから、この日独の定期外相協議が日独枢軸のこれが強化であると、これまた非常な曲解でありまして、そんな考え方は全然ない。また、私がアジア太平洋圏という外交ということを言っておることがアジア共栄圏、そんな力は日本にいまありません。何とかしてアジアがよくなってもらいたいという願いから、日本日本の力の中でできるだけのことをアジアの安定のために尽くそうということで、昔の、軍事力を背景にした共栄圏というがごときことは、これまた日本の今日の態度を曲解するもので、これは正当に今日の日本の立場をソ連が理解することを私は強く望んでおるものでございます。
  471. 多田省吾

    ○多田省吾君 委員長もう一点。
  472. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) もう時間がありませんから、簡単に願います。
  473. 多田省吾

    ○多田省吾君 今度は要望でございますけれども、最後に。  やはりソ連からそういった曲解を受けるということはアジア太平洋圏構想そのものが、共産圏を特に意識しているというような問題、あるいはベトナム問題等、数多く問題があると思います。また、今度の核防条約につきましても、草案ができてから産業界に示す、学術会議に示すということは、もはや手おくれではないかとさえ思えるのでございます。なかなか変えられるものではないと思います。そういう点で、私はもう一そう国益に関して、あるいは平和に対して積極的な姿勢で臨まれることを強くお願いします。  最後にベトナム問題について、いま外務大臣は十七度線で停戦して話し合いをする以外にはないんじゃないかとおっしゃいましたが、いまアメリカ等からもいろいろな問題が起こっております。時間がありませんので申しませんが、この際、釈迦休戦を機会にして、あくまでもいまの十七度停戦、また話し合いあるいは平和維持会議の開催、あるいは十七度線に停戦して国連監視団を置いて平和維持をはかるとか、そういった具体的な提案をどんどんなすべきときではないかと思うのでございますが、この点に関して最後にお伺いして終わります。
  474. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ベトナムの戦争の拡大は私たちも心を痛めているわけですから、あらゆる機会をとらえて平和的な努力、提案が必要なら提案もいたしますし、あらゆる機会をとらえて平和的な努力をいたしたいと思っております。
  475. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上で多田君の質疑は終了いたしました。  次回は明日午前十時開会することといたしまして、本日はこれをもって散会いたします。    午後六時五十七分散会