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1967-05-15 第55回国会 参議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十五日(月曜日)    午前十時十七分開会     ―――――――――――――    委員異動  五月十五日     辞任         補欠選任      黒柳  明君     鬼木 勝利君      向井 長年君     中沢伊登子君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         新谷寅三郎君     理 事                 白井  勇君                 西田 信一君                 日高 広為君                 平島 敏夫君                 八木 一郎君                 亀田 得治君                 小林  武君                 鈴木 一弘君     委 員                 青柳 秀夫君                 井川 伊平君                 大谷 贇雄君                 熊谷太三郎君                 小林  章君                 小山邦太郎君                 内藤誉三郎君                 林田悠紀夫君                 二木 謙吾君                 船田  譲君                 増原 恵吉君                 宮崎 正雄君                 山下 春江君                 吉江 勝保君                 吉武 恵市君                 占部 秀男君                 岡田 宗司君                 北村  暢君                 小柳  勇君                 鈴木  強君                 瀬谷 英行君                 羽生 三七君                 矢山 有作君                 山本伊三郎君                 吉田忠三郎君                 黒柳  明君                 小平 芳平君                 多田 省吾君                 中沢伊登子君                 春日 正一君    国務大臣        外 務 大 臣  三木 武夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  剱木 亨弘君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   菅野和太郎君        運 輸 大 臣  大橋 武夫君        労 働 大 臣  早川  崇君        建 設 大 臣  西村 英一君        自 治 大 臣  藤枝 泉介君        国 務 大 臣  塚原 俊郎君        国 務 大 臣  二階堂 進君        国 務 大 臣  福永 健司君        国 務 大 臣  松平 勇雄君    政府委員        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院事務総局        管理局長     小林  巖君        人事院事務総局        任用局長     岡田 勝二君        人事院事務総局        給与局長     尾崎 朝夷君        人事院事務総局        職員局長     島 四男雄君        内閣総理大臣官        房臨時在外財産        問題調査室長   栗山 廉平君        総理府人事局長  増子 正宏君        警察庁刑事局長  内海  倫君        警察庁交通局長  鈴木 光一君        行政管理庁行政        管理局長     大国  彰君        行政管理庁行政        監察局長     稲木  進君        科学技術庁長官        官房長      小林 貞雄君        科学技術庁計画        局長       梅沢 邦臣君        科学技術庁研究        調整局長     高橋 正春君        科学技術庁振興        局長       谷敷  寛君        科学技術庁原子        力局長      村田  浩君        外務省経済協力        局長       廣田  愼君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        大蔵省主計局長  村上孝太郎君        大蔵省国際金融        局長       柏木 雄介君        文部大臣官房長  岩間英太郎君        文部省初等中等        教育局長     斎藤  正君        農林大臣官房長  檜垣徳太郎君        農林省農地局長  和田 正明君        通商産業省通商        局長事務代理   原田  明君        通商産業省貿易        振興局長     今村  曻君        通商産業省企業        局長       熊谷 典文君        通商産業省化学        工業局長     吉光  久君        運輸省鉄道監督        局長       増川 遼三君        労働省労政局長  松永 正男君        労働省婦人少年        局長       高橋 展子君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君        労働省職業訓練        局長       和田 勝美君        建設省都市局長  竹内 藤男君        建設省河川局長  古賀雷四郎君        自治省行政局長  長野 士郎君        自治省選挙局長  降矢 敬義君        自治省財政局長  細郷 道一君    事務局側        常任委員会専門        員        水谷 国一君    説明員        日本国有鉄道総        裁        石田 禮助君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和四十二年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十二年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十二年度政府関係機関予算内閣拠出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、向井長年君が辞任され、その補欠として中沢伊登子君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 昭和四十二年度一般会計予算昭和四十二年度特別会計予算昭和四十二年度政府関係機関予算、  以上三案を一括して議題といたします。  一昨日に続き質疑を行ないます。瀬谷英行君。
  4. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 在外財産補償問題について引揚者団体連合会が、六千億の補償要求貫徹大会を開いて、自民党の本部を初め、各方面に陳情しておりましたが、政府としてはこの要求に対して、どういう答えを出しているのか、御答弁願いたいと思います。
  5. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) やや遅参をいたしまして申しわけありません。どこが政府要求したかちょっと聞き漏らしたものですから、いま一回、おそれ入りますが、お願いします。
  6. 瀬谷英行

  7. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 引揚者団体連合会大会を開いたことは存じておりまするけれども、その御要求というものは、まだ正式に私のところへはまいっておりません。ただ党に議員連盟と申しまするか、三池信君を会長とする団体がございまするが、その関係者の方々から御要望の点については私は承っております。ただいまのところその程度であります。
  8. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 この問題は、だいぶ前から尾を引いていることなんですけれども、今日までの経緯、どういうふうになっているか、あるいは政府としてはどういうふうに対処されようとしているのか、その点を御説明願いたいと思います。
  9. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 在外財産の問題については、これが非常に大きな問題となっておりますることは、御指摘のとおりでございまして、よって在外財産問題審議会というものができまして、これについての御審議を願っており、この答申が出たのが昨年の十一月でございます。  答申内容はともかくといたしまして、政府におきましては、この補償問題についていかにすべきかということを、答申中心として検討いたしておりましたし、また、今次通常国会における劈頭の総理施政方針演説におきましても、この国会法的措置をもってこの問題の片をつけるという演説もなさっておりまする関係上、担当省といたしまして私のところの総理府がこの問題をお引き受けすることになったわけであります。したがいまして、私といたしましては、在外財産問題審議会答申の線に沿いまして、ただいまこの国会提出すべく法案準備中であります、関係各省と連絡をとりながら、いま準備中であります。五月十二日までの閣議にこれを間に合わせるように努力いたしておりましたけれども、何せ資料を集めるのに非常に困難を来たしておりますることと、それから失なわれた在外財産というものの性格検討いたしまする場合に、その形成された年月あるいは年齢等の問題において、いろいろまだ未調整の部分があるわけであります。しかし、これも次第に煮詰まってきておりまするから、近日中に、私としては非常にあせっているわけでありまするが、なるべく早い機会に交付金を支給する法律案としてこれをまとめ、国会提出して御審議を願いたい、このようになっております。
  10. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 答申を出した審議会性格なり構成について、御説明願いたいと思います。
  11. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 在外財産室長より答弁させていただきます。
  12. 栗山廉平

    政府委員栗山廉平君) 審議会構成は、衆参両院議員並びに学識経験者から構成されております。
  13. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 もっと具体的に。
  14. 栗山廉平

    政府委員栗山廉平君) 全部で構成は二十名でございまして、国会議員は、うち衆議院四名、参議院二名でございまして、ほかは学識経験者でございます。会長山田義見さん、前の会計検査院長であります。
  15. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 具体的にどういう人で、名前もあげてください。そんなに何百人もいるわけじゃないのだから。
  16. 栗山廉平

    政府委員栗山廉平君) いますぐ取り寄せまして御返答申し上げますから、ちょっとおまちください。
  17. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 内容については後ほど報告してもらいますが、答申を尊重するというのがいまの政府の姿勢なんですね。
  18. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) こういう、資料を収集するのに非常に困難な問題でありまするだけに、答申趣旨にのっとってやる以外に方法はないし、もちろん政府でお願いした審議会答申でありまするから、尊重することは申すまでもないことであります。
  19. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 この答申中身が具体的でない場合には、やはり相当これは調べてみなければならぬことになるでしょう。その答申中身というものは具体性を持っているのかどうか。
  20. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) その点が微妙でございまして、解釈のしようによって、非常に微妙な点が生まれてくるわけであります。私をして言わしむるならば、もっと端的に表現をしていただいたならば、これほどの苦労はしないで済むのじゃなかろうかと考えておりまするが、具体性があるかないかと言われれば、非常にニュアンスが微妙であり、各方面考え等も承って検討しなければならない部面も出てきておるわけでございます。
  21. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 答申内容をもう一回説明してください。
  22. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) まあ中心をなすものは、政府補償義務があるかないか、どういう、義務があるかないかということがやはり骨子になると考えておりまするが、政府法律上の義務は、補償義務はないというふうに規定いたしております。しかしながら、この失われた財産というものは非常に特殊のものである、いわゆる普通考えられる財物というものよりも、もっと検討を要する内容を含んでおるものである、ということは、そのよって得た対人関係、さらにまたつちかった基盤、また財物を失うということによって、生活の根拠そのものをすべてを失ってしまったという、特殊な意義を持った深刻なものである。したがって、これに何らかの措置を講ずべきであるというのが中心のところではなかろうかと考えております。と同時に、これを構成し得る年齢はどの程度に置くべきかということ、つまり、財産構成し得る年齢でありまするから、やはりある程度の成人に達したと解釈すべきようなものもありまするし、さらに当時非常に努力された方、つまり、中年層の方にウェートを置くべきであるというような解釈ができる部面中心をなしておるものと私は考えております。
  23. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 法律上の義務はないけれども、政策的に何とかしろと、端的に言えば、そういうことになる。しかし、それ以上に具体的に金額について、年齢についてということは、答申としては明記をしていないということになりますか。
  24. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 金額についての明記は一つもございません。さらに、繰り返すようでありまするけれども、その財産を形成し得る能力を持った年齢は幾つであると断定すべきかということについての回答も与えておりません。しかし、それはおのずからわれわれが常識で考えなければならない問題であると考えておりまするが、さらに、答申趣旨を尊重するならば、当時財産を形成した年齢というものを中心にするということを申しますれば、やはり中年であった者にウエートを置けというふうに、やはり解釈せざるを得ないのではないかと、そのように考えております。  なお、財産というものは、世帯を持って、世帯中心として構成されたものであるからして、世帯単位にこのことは解決すべきであるという意味を持った点もあることを申し添えておきます。
  25. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 審議会性格あるいはその答申内容等は、まことにばく然としているんですよ。こういう答申ならば、何もそんなに学識経験者だとか何だとか、いろんなのを集めて出してもらったところで何もならぬと思うんです。雲をつかむような答申じゃないかと思うんです。そうすると、この審議会そのもの意義をもちょっと考えなければならないことになってくるんでありますけれども、一体この審議会をこしらえたねらいというものはどここあったのか、その辺までさかのぼって答えていただきたいと思います。
  26. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 当時、この問題にタッチいたしておりませんので、あるいは明確を欠くことをお許し願いたいと思いまするけれども、やはり先ほど申しましたように、在外資産というものが特殊の意義を持ったものであるという、非常に重要な課題として解釈されましたので、各方面学識経験者あるいは各界の代表の方を集め、そして御審議を願ったものであると私は考えております。
  27. 栗山廉平

    政府委員栗山廉平君) 審議会委員名前を申し上げます。会長は、先ほど申し上げましたように山田義見さんでございます。副会長三好重夫、それから学識経験者といたしまして……。
  28. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 ちょっとね、名前だけじゃなくて、どういう職業、どういう地位にあるかということもあわせて言ってください。
  29. 栗山廉平

    政府委員栗山廉平君) 会長は、先ほど申し上げましたように元会計検査院長でございます。副会長は、会長代理でございますが、実際の名前は――三好重夫公営企業金融公庫総裁でございます。それから荒垣秀雄、元朝日新聞の社友でいらっしゃいます。それから伊藤正巳東大の憲法の先生でございます。それから伊藤郷一、元の衆議院議員でいらっしゃいます。それから河野一之大蔵事務次官でございます。河野通一、元大蔵省理財局長でございます。それから鈴木武雄、元東大経済学部教授でいらっしゃいます。それから田岡良一、前の京大の国際法教授でございます。それから森永貞一郎、元大蔵事務次官でいらっしゃいます。それから田辺繁雄日本赤十字の副社長、元厚生次官でございます。それから津汲泰宏引揚者団体連合会の副会長をこの間までしておられました。それから福島慎太郎、いま共同通信のあれでございますが、当時はジャパンタイムズの社長でございます。それから福良俊之東京新聞の御出身でございます。それから古海忠之、二、三年前に、満州国におられて、満州から引き揚げてこられました。それが学識経験者でございます。  あと国会議員としまして、衆議院議員は、秋田大助、それから受田新吉村山喜一、それから中野四郎の四名でございます。それから参議院議員といたしましては、青木一男大和与一のお二人でございます。ほかに官庁側が加わっておりますが、関係官庁でございまして、総理府の総務副長官法制局の次長、外務、大蔵厚生事務次官というものが関係官庁として加わっております。そういう構成でございます。(「鈴木竹雄は法学部でしょう」と呼ぶ者あり)いえいえ、同じ発音でございますが、経済学部先生で、いま武蔵大のやっぱり経済学部の、財政でございますが、先生でございます。
  30. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 答申が非常にばく然としておるわけですよ。考えようによると、政府にげたを預けたというようなふうにも受け取れるし、問題をすり抜けたというふうにも受け取れるわけです。政府としては一体この問題をどういうふうに受けとめて、どういうふうに対処されるつもりなのか。これは今度は大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  31. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういう答申が出ました以上は、答申の線に沿って私はこの問題は一応ここらで解決すべきであるというふうに考えて、いま政府部内でも検討いたしておりますが、長くなって、これが消えてしまう問題ということでございましたら、いろいろと考え方もあろうと思いますが、もう年とともにその要求が強くなって、この問題はそのままでは済まぬという性質のものであります以上は、やはりこれは政治問題として早期に解決するのがいいというふうに考えて、私は解決したいと、こう思っております。
  32. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 答申の線に沿ってと言うけれども、その答申の線があいまいなんじゃないですか。あいまいな線にどうやって沿うのか、その点、五月十二日の閣議できめるつもりだったと言うけれども、なぜきめられなかったのか、きめがたい事情は何かということをお伺いしたい。
  33. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 答申の線に沿ってやることはもちろんでありまするが、政府法律補償義務はないという断定は下しておりまするものの、失われた財産特殊性というものによって、特別の措置を講ずるということが答申にうたわれておりまするので、交付金を支給する法律案として、この国会提出して御審議を願うためのいま準備を進めておるわけであります。十二日というのは、大体三月ごろの閣議で、この国会提出する法案は、予算に関連する法案中心としてではありまするが、五月の十二日をタイムリミットとして御提出を願うというふうに、閣議の話し合いがありましたので、私も十二日までにはこれをきめたいという強い意欲を持って作業を進めておりました。きめられなかった理由は何かといえば、いまやはり申し上げましたような解釈上で、統一点に達していない面が若干残されておりまするので、それに要する日子を少しいただきたいということで、いませっかく努力中であります。その内容は、先ほど申し上げましたように、やはりその年齢の問題とか、あるいは未亡人の、遺家族の問題とか、あるいは今度はその在外年数の問題、そういったものが中心をなしておるわけでございます。
  34. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 旧地主を対象にした農地買収者に対する報償金の支給、これがずいぶん野党各派の猛烈な反対を押し切って強引に行なわれたわけなんです。結局考えてみると、これが呼び水になったのじゃないかというふうな気がするのでありますけれども農地報償実績から、その緊急性必要性というものが認められるのかどうか。これは小林議員質問の際にもいろいろ問題になっておったようでありますが、これは農林大臣からあらためてお伺いしたいと思います。
  35. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 農地報償につきましては、御承知のようにあの当時農地改革をいたしまして、そしてその農地改革に貢献をいたしたという趣旨農地報償制度が行なわれたものと私どもは理解いたしておりますが、したがって農政上の問題からいたしたわけではありませんで、他の一般国政上の見地に立って実行すべきものであるという判断に基づいて行なわれた模様でありますので、したがって、所管農林省ではなくてほかのほうで担当いたした、こういうふうにわれわれは理解いたしておるわけであります。
  36. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 所管農林省が避けたのは、めんどくさいから、あるいはやっかいだからこれを避けたんじゃないかというふうに私は考えているわけなんです。しかし農地買収者に対する報償金の問題だから、当然これは性格から言うと、農林省関係の問題になるというふうに思うのです。そこで二年たった今日の実績から考えて、この農地報償緊急性必要性があったとお考えになるのかどうか、その点を農林大臣からお伺いしたいと思います。
  37. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) いま申し上げましたように、私ども所管に属しておりませんので、このことを私のほうから申し上げることはいかがかと思いますが、私は農地改革という制度は、この前にも御質疑に対してお答えいたしましたように、わが国の長い歴史から見まして、ああいう制度、当時のやり方については、とかくの批判も残っておりますけれども、やはり農地改革制度というものは、わが国の全般の政治の上にとって効果のあったものである、このように理解をいたしております。
  38. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私が言っているのは、農地改革制度についてよかったか悪かったかということを聞いているのじゃない。二年前に非常に強引な方法でもって、強行採決までして押し切った農地報償の問題が、今日の実績から考えて、はたして緊急性あるいは必要性があったというふうに判断できるかどうかということをお伺いしているのです。これは総理府長官としてはどういうふうにお考えですか。
  39. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 私は、在外資産補償問題と農地補償問題を関連づけて考えていたことはございません。ただいまの御質問でありまするが、そのご質問にお答えするとすれば、農地改革に際して地主のささげた功績が大きいものであるからして、あの必要性というものは当然認めてしかるべきものと私ば考えております。
  40. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 だとすれば、小林議員からいろいろ先般質問がありましたけれども、あの実績の点において、どうもはなはだ明確でないものがある。その原因についてはどのようにお考えになりますか。
  41. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) さきにこの席で、小林議員から御指摘になりました数字の点で、たいへん差があるではないか、まあ申し込みの数が七〇%とも言われ、あるいはそれを割るとも言われておるし、支給した金額においても九〇%ということは、相当ずさんなものがあるのではないかという御質問を受けておりまするし、また、そういう御批判があることも私は承知いたしております。それが何によってきたものであるかということについては、これは十分検討を要する問題であると思いまするけれども、私がいま考えられることは、手続上の問題に繁雑な点があったこと、それから、今日まで申し出た数を見まするというと、都会周辺のものに申し出の方が非常に少ない。私が個人的に、君はまだあるのになぜ申し込まないのだと言ったら、どうも手続がめんどうなのでというように軽くあしらわれたのを聞いて、実は私、意外に思ったのでありまするが、その他いま関係者を通じまして、何がゆえにそういった数字の点で粗漏と言われる、批判される面が出たかという点を、十分検討いたしておるわけでございまして、全部を、こういう理由であるということを本日まだ申し上げる段階には至っておりません。
  42. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 手続上の問題は、これは理由にならないと思うのです。要するに、結論として、必要のない金を出したのだということになってしまうのじゃありませんか、今日。こういうものを野党各派の反対を押し切って強行したということが、それならば在外財産のほうも、もう一度考え直してもらおうじゃないかという呼び水になったのじゃないかというふうに考えざるを得ないのです。それは当時からもううわさをされていたことなんです。そうすると、今日の在外財産の問題も、へたをすると、必要のない金を出したというような結果に後々指摘をされるようなおそれがあるのじゃないかというふうに私は思うのです。だからその点を考えたならば、その答申の線といっても、はたしてその答申の線をどの程度に取り上げていいのかということは、相当考えなければならぬことじゃないかと思うのです。  一体、六千億要求をしておりますけれども、六千億要求の根拠を認めるのかどうか。総理府等において調査をした実態からいうと、はたしてどのようにお考えになるのか、その点もお答えいただきたいと思います。
  43. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 答申は、何回も繰り返すようでありまするが、政府補償義務はないとしても、財産特殊性から見て、これに対する何らかの措置を講じろということでありまするので、繰り返すようでありまするが、そういうものに関する法律案提出する考えでおるわけでございまして、ただいま金額その他が出ましたけれども政府はまだ金額はきめておりません。六千億という数字は、自民党のその方面関係者の集まりの会合の席上で出た数字ではありまするが、これは党議ではございません。したがって、政府としては独自の考えをもってこれを進めておりまするが、しかし、政党政治でありまする以上、党と緊密な連絡をとりつつあることは、これは当然であります。党のいろいろな考え方も承り、また、私たちは、抽象的であるとは言われながらも、答申趣旨というものをできるだけ正しくこれをキャッチしようとする努力をいたしておりまするし、また各方面の御意見も承りながら、いま作業を進めておるわけでございます。  なお、私が申し上げたいことは、この問題で戦後の問題については終止符を打ちたいということ、打つべきであるということが一つ。さらに報償――これに要する費用を支払う国民全部が戦争犠牲者てあるという考えを捨ててはならないと思うのであります。したがって、国民の納得のいく形で、国家財政とにらみ合わせながらこの問題を、そのトータルの線も出てまいりまするし、それから諸条件の検討というものも進めていかなければならない、いま党側と鋭意打ち合わせ中でございます。
  44. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 答申の線そのものがあいまいなんだから、それを尊重するといったって、どういうふうに尊重するかわからないわけでしょう。  そこで大蔵大臣にお伺いしたいけれども、正式に閣議の問題になった、ならなかったということを別にしても、あなたのほうの自民党の中で、この問題がかなりくすぶっておるということは周知の事実なんです。六千億要求の根拠というものを認められるのかどうか、端的にその点についてお伺いしたいと思います。
  45. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 御承知のように、大蔵省は請求官庁の請求があった場合に、これを査定し、意見を述べて調整する役所でございますので、目下主管官庁と党側においてもこういう問題の折衝中でございまして、そしてまだ予算の請求ということになってまいりませんので、その間において私どもの意見を先に述べるのはどうかと思いまして、私どもも研究はしておりますが、まだその意見を述べていないという段階でございます。
  46. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 引き揚げ者じゃない戦争犠牲者とのつり合いを一体どうする、こういう問題があると思うのです。戦争犠牲者は引き揚げ者だけじゃない。内地にいて空襲にあった人間もいる。それから戦死をした人間を、たとえ遺族に何らかの金が支払われたとしても、本人の命は戻ってこないわけです。私どもいわゆる戦中派というものは大なり小なり戦争の犠牲者なんです。戦争の犠牲者という面からいうと、引き揚げ者なるがゆえに特に特別に政治的な配慮を加えて金を出さなきゃならないという根拠は薄弱になってくると思うんです。その点は大蔵大臣としてどのようにお考えになりますか。
  47. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 当然他の戦争犠牲者とのつり合いというようなものを考えて、やはり国民が納得する方法による処置でなければいけないんじゃないかというふうに考えて、私どももいままで戦争に対する犠牲のいろんな処理をやってまいりましたが、この処理との均衡は十分に保った処置でなければならないというふうに考えております。
  48. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 六千億という要求が国民の納得のできる額だというふうにお考えになりますか。
  49. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 損害を受けた、あるいは犠牲を払った財産に対する補償ではないという立場の答申でございますので、一応何千億といっても、実際にはこれは調査ができないものでございましょうし、そういう角度からの補償ということなら、非常にこの問題はむずかしいと思いますので、私はいままでのいろんな処置について均衡のある補償とすればこうだというふうに、別の角度からの算定でなければこの問題の解決はむずかしいんじゃないかというふうに考えています。で、いまいろいろ額について言われていますが、そういう意味で、私ども何千億という数字をあげられても、根拠を説明するわけにもまいりませんし、また、あげておるほうでも、いまその説明が実際にはつかぬ状態ではないかというふうに考えています。
  50. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 引き揚げ者大会に対して顔出しをして、手を振った代議士もかなりいるというふうに新聞には伝えられておりますけれども、じゃあ現在のところ、閣僚の中で、引き揚げ者大会要求に対して、まあある程度何かを約束をしたというような人はいないわけですか。
  51. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは党自身も党議において別に約束している問題じゃございませんし、むろん政府は約束いたしておりません。
  52. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 大体在外財産というものはどういうものであって、これを補償する場合にはどうしたらいいかと、これらの点について総理府として調査をしていることではないかと思う。その調査の結果、どのように判断をして、どのようにしたらいいかという結論が出ておるのかどうか、お答え願いたいと思います。
  53. 栗山廉平

    政府委員栗山廉平君) 私からお答え申し上げます。  在外財産の喪失につきましては、まず日本と同じような敗戦をいたしました西独、イタリア等につきましても調査をしたのでございますが、イタリアのごときは、ちゃんとそれが賠償に入るということに平和条約で書いてございまして、賠償に充てられた在外財産の証拠のはっきりしたものについてだけ補償をするというやり方をやっております。ドイツのほうはそういうやり方ではございませんで、戦争損害という援護の――死んだという援護の面とは別でございますが、戦争損害全体から見まして、ある種の特別な税をとって、その中から損害を、何といいますか、そのままではございませんが、大きな損害にはパーセンテージを少なくして地ならしをするようなかっこうで穴埋めをしていくというようなやり方をやっております。こういう状況等を審議会も見ました上で、審議会審議におきましては、わが国の平和条約の状況が、平和条約をまだ結んでおらないという地域がだいぶございますので、その中に相当の、在外財産の量としては大きな量があるという現実からしまして、法律上の補償という点はまだとてもこれは断言できない。平和条約を施行している地域については、いろいろ詳しく調べた結果、法律上の義務は出てこない。それから平和条約をまだ結んでおらない地域につきましては、まだこれは法律上論ずるわけにはいかない。しかし、平和条約の模様によっては、同じようなものだとすれば、義務は出てこないだろう、出てこないという結論をいたしまして、次に、在外財産というものについての、まあこれを失ったという点につきまして何らかの措置が必要かどうかという点について審議をいたしたのでございまするが、これは財産を失ったという点から見ますと、戦災その他で財産を失ったという点とそう違った点は出てこない。したがって、単に財産を失ったという点だけからは、国が特別な措置をするという理由は見出しがたい。  そこで、それでは在外財産についての、失った特殊性があるかどうかという点につきまして審議を進めました結果、引き揚げをしいられたという人、つまり、国内に住んで在外財産を持っておったとか、あるいは会社法人のようなものが在外財産を持っておった、そういう在外財産の失われた点については特別な理由を見出しがたい、引き揚げ者としてその生活の本拠を持っておったところがら強制的に敗戦の結果引き揚げさせられたという人については、単に経済的価値のある財産のみならず、それ以外の生活面、生活の本拠そのものが根こそぎ失われたのであるから、この特別な事情に対して、何らか特別な政府としては措置をする必要がある、こういう結論を答申として出してきたのでございます。大体そういうところでございます。
  54. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 そうすると、在外財産そのものの金額等について認定はできないというのが結論になるんじゃないですか。
  55. 栗山廉平

    政府委員栗山廉平君) 在外の財産につきましては、いま仰せのとおり、確実な資料を欠いておりまするので、全体としてどうかという点になりますと、はっきりした資料はないというのが事務的な調査の結果でございます。
  56. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 資料はないということになると、この補償の根拠というものは引き揚げ者に対する見舞い金と、こういうような形になってしまうような気がするんですが、その点はどうですか。
  57. 栗山廉平

    政府委員栗山廉平君) 答申におきましては、この前の昭和三十二年の引き揚げ者給付金というものとの区別はどうかという点が大きな論点になったのでございまするが、この前の昭和三十二年の引き揚げ者給付金は、全般の、全体に出した――たとえば所得制限をしたといったような点から見まして、引き揚げ者が、引き揚げてきまして日本の国内の社会に復帰する立ち上がり資金、それをあとからサポートするという意味の援護資金であるというふうな見方をしておるのでございます。したがって、今度の措置はそれでは何だということになりまするが、これは前回の引き揚げ者給付金と違いまして、引き揚げ者が過去において生活の本拠を根こそぎ失ったというそのことに対する、そういう特別な特異性に対する政府の特別な措置であるという審議会趣旨をはっきり明確にいたしております。したがいまして、現在の生活が非常によくても、それは過去のことに対しての措置であるから、現在所得が非常にたくさんな人でも、それを制限して除外すべきではないということが答申にはっきりうたってございます。
  58. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 どうも答申にはっきりうたってあるというけれども、うたってある文句がはっきりしていても内容がちっともはっきりしていないのですね。第二次と第三次、特に第三次を第二次に追っかけてやらなければならないという根拠なり必要性というものをどこに見出すのかということです。
  59. 栗山廉平

    政府委員栗山廉平君) この前の審議会におきましては、在外財産に対して国は補償義務があるかどうかという点につきまして非常な長い年月をかけて審査したのでございまするが、両論がありまして結論が出ないということで、結局追加諮問がなされまして、在外財産問題解決のための引揚者に対する措置いかんという最初の諮問に対してもう一つ諮問が出たわけでございます。結局この前の審議会はその第二番目の追加諮問に対してだけ答えたのでございまして、第一の諮問であるところの国に補償義務があるかどうかという点につきましては、結局はっきりした答申をしなかったという事実はございます。それに対しまして、この点をまずはっきりすべきであるという運動が非常に裁判等の関係もありまして起こりまして、したがいまして、今度の、今回の審議会におきましては、法律上の在外財産に対して国の補償義務があるかどうかという点につきまして非常に多くの時間をかけたのでございます。答申もごらんになるとわかりますように、その点がほとんど半分以上を占めておるような状態でございます。それが今度の審議会の特徴だったと思います。
  60. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 一歩誤ると全く後向きの予算になるわけです。農地報償でとにかく一つのその実績から見て政府は失敗をしておるわけなんですから、これが呼び水になってまたこの在外財産の問題が蒸し返された、こういう感じを受けるわけですが、いままでの答弁を聞いてみましても、引き揚げ者団体のあげておりますところの数字についての根拠はないということになってしまう。政治的に圧力団体がいろいろとたすきがけでもって自民党の本部や何かに大ぜい来ると、そういうことで何とかしなければならないからという、その圧力団体向けの政治措置という印象を強く受けるわけなんです。そういう政治措置というものがはたして筋が通るというふうにお考えになるのかどうか、筋を通すためには一体どうしたらよろしいというふうにお考えになるのか。その点、総理府総務長官から再度お伺いしたい。
  61. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 私は、圧力団体に言われたからやるとかやらぬとかという問題では何も考えておりません。審議会答申の線に沿って、しかも自民党が、政府が今度の国会でこの問題のけりをつけるという、言うなれば公約をいたしており、その担当が私のところに参っておりまするので、私はこの仕事をいたしておるのでありまするが、圧力団体がどうであるからそれに屈してどうこうというような考えは毛頭持っておりませんから、その点はひとつ御了承願いたいと存じます。  なお、数字その他の点についてただいま関係方面関係各省、さらに党と連絡調整中であります。できるだけ早い機会に国民の納得のいく形で御審議を願う法案提出いたしたいと考えております。  なお、社会党の方々、民社党の方々からもいろいろとアドバイスをちょうだいいたし、これも重要な参考意見といたしております。
  62. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 国民の納得のいくということなんですけれども答申そのものが非常に具体的な数字も出せないというぐらいなんですからちっとも明確じゃないのですよ。で、いささかその責任回避的な処置として政府にげたを預けたという感が強い、これは。だからこの点は十分に配慮をして、そうして後々の批判の対象にならないように措置をしてもらいたいということを希望意見として申し添えておきます。  それから次の問題に移りますが……。
  63. 小林武

    小林武君 いまの問題が終わるそうでありますから、それに関連して一つお尋ねしておきたいと思います。私もこれに関連していろいろなことが出てくるんではないかと思うのですが、この間たしか小柳委員からこの件に関して質疑があったように思いますが、私も戦前教師をやっておりましたときに、ずいぶんたくさん満蒙義勇隊というものに行くことをすすめたわけです。そういう人たちが、生き残った人たちから手紙がたくさんきておる。これは当時内原訓練所に三カ月ないし六カ月教育を受けて現地に行くというと、これはもう当時の関東軍は、おまえらこそわれわれの片腕だと言って、いきなり義勇軍として使ったわけですよ。三年たつと大体土地をもらって、当時やはり家畜を所有したり、農機具を持って一応そこに定着した者も相当の数おります。そういう人たちが一体現在生き残って帰ってきて、たいへんな片手落ちの処置に対してふんまんな気持ちを持っておった。それが手紙になって出てきておるわけです。そういうものをたとえば資料なんかを調べられておるかどうか。先ほどの御答弁だというと、年齢的に財産を形成する年齢というのがあるということ。これらの人たちは年齢的にいえば中年ではないのですよ、その当時は。少年ですよ、十五、六で行っておるんですから。それから三年たったら十九だと、こういうことになると、そういう者の数が一体どのくらいあって、そこで死んでしまった者はどのくらいあって、帰ってきた者がどのくらいある、財産を形成しておった、われわれは十九であろうが――この人たちも書いておるのですが、それはいま年齢にしてみれば高校の生徒ぐらいだから、これはとるに足らぬ子供だと思っておるかもしらぬけれども、われわれは、あそこに行ったら一人前の軍人であり、そしてりっぱなその土地の農民であったと、こう思っておる。そういう問題もあるわけです。そこに一つまた不満が出るわけですよ。だから私はその瀬谷議員の話の中にもあるように、一つをやれば一つ片手落ちが出てきて、きりがなくなってしまう。農地の問題をやれば在外資産の問題が出てき、在外資産をやればいまのようた角度で、一体見当でもって形成する年齢がどうだとかなんとかいうことを言うと、そこから漏れたのはどうかということになる。まあこういうことはあなたたちのほうで、たとえばひとつ満蒙開拓義勇軍について正確な調査ができておるかどうか、それについて一体何か頭の中に描いているかどうか、そういうことを私は一つお伺いしたいのです。
  64. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 前の小柳議員に対してもお答えいたしましたが、いま小林議員からの義勇軍に対する御質問でありまするが、それは一つのやはり特殊なケースであると考えております。そのほかにもいろいろと問題が派生して出てくることはこれは覚悟しなければならないと思います。そこで資料収集に実は非常に苦慮しておるわけでございまして、三十二年に立ち上がり資金としてお渡ししたときの基準というものが厚生省にございまするが、これを重要な参考にすることはもちろんでございます。さらにできるだけ手を使って各方面から集めましたけれども、まあ大体推定として、世帯数九十五万四千世帯というものがつかめたということ、人員にいたしますると三百六十一万六千という、これはいずれも推定でございます。それから個々別に考えまして、それでは開拓義勇軍が何万人いたか、何が何人いたかということは、これは資料がもうなくなっておりますので非常に苦慮しておるわけでございまして、大体の数字は調べさせるよう努力しておりますが、いままとまってこれだけであるというものは出てまいりません。  なお、財産形成の年齢ということになりますると、常識的に考えて十八ではないかと、いや、当時は雄飛の気持ちを持って行った者は十五でもいいのだ、高等小学校終えた者はそうではない、いや外国に行く者は十三からでもいいではないか、いや在外資産から考え世帯を単位として一歳以上はやるべきであるという、いろんな議論が出てくることも、これはもちろん当然でありまするが、そこで私たちは各方面の御意見も承り、答申の線に沿った財産形成の問題という、財産形成をなし得る年齢は幾つであるかというようなことについても、完全に皆さん方のそうだそうだというようなあるいは納得は得られないかもしれないが、最大公約数的なものは何であるか、それからいま小林議員、前の小柳議員のおっしゃったような、こういうような問題についても何らかの方法で解決を要すべきではないか、もちろんけがとかなくなったということで厚生関係の援護措置にゆだねるべきものもありましょうけれども、やはりこれも一つの在外財産として考慮に入れるべきではなかろうかという、たくさんの御意見が出てきておるわけでございます。いまの小林議員の件につきましても、われわれはできるだけ資料を集めておりまするが、いまそれでは何人あって現在何人であるかということはキャッチしておりません。しかし、先ほど申しておりまするように、各方面との調整で手間取っている中のそれは一つでございまするので、今後限られた日数ではあるかもしれませんが、できるだけの努力をして御納得のいくような措置をとってみたいと、このように考えております。
  65. 小林武

    小林武君 そうするとあれですか、対象としていま考えているということになりますか。満蒙開拓義勇軍、長官はもう御存じだと私は思うんですよ、あの連中のいまの気持ちは。一旗組で外地へ出て行って、一もうけしてやろうというような連中とはわれわれ違うという考え方なんだ。いわば十四や十五の子供で、結局われわれが強制したようなものというようなふうにも理解できるわけです。国のため国のためと、王道楽土を建設するという、こういうあれでもって行ったわけですからね。これらの者に対して、やっぱり在外資産の問題でいまのような御説明を――たとえば室長の説明なんか聞いているというと合理的なようではあるけれども、当時の状況から言えば片手落ちという気持ちがやっぱり出てくるんですよ、相当。でありますから、私はそういうことのおそれを持つことと同時に、そういう者が一体いまどう対象として考慮されているかということをここでお伺いしておかぬとぐあいが悪いということです。私は一例を申し上げると、ずいぶん片手落ちがあるんですよ、資料がないということで。私は福島県に行きましたときに、徴用で、そして千島へ連れて行かれ、そして栄養失調になって小樽で死んだら、徴用で行ったか何だかわからぬ。これは厚生省のあれかどうか知らぬけれども、徴用で行ったかどうか証明のしようがない。当時の役所には帳簿がない。しかしだれか一緒に行った者がいるそうだけれども、それの言い分ぐらいではなかなか役所は認めてくれない。ずいぶん変な話がたくさんありますから、私はその点で、皆さんが御苦心あるところはわかりますけれども、騒ぐ者はとにかく得をする。政治に一つの圧力を――圧力団体と言ったらたいへんどうも御不満のようだったが、ある程度声が大きくて圧力かけられる者は適当に救われるけれども、しかたないなあと言ってあきらめるような弱い者にはどうも政治は、あるいは行政は冷たいという感じが私はするわけです。ですから、それが対象になっているかどうかということ、そういうことについていままでもあったことを考慮していろいろ配慮していることがあるのかということについて、それを承りたい。
  66. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 三十二年の立ち上がり資金としてやりましたとき、六カ月以内はこれを切るという制限を設けましたが、この満蒙開拓義勇軍の方々だけは特例としてその範疇からはずしておりますることは御承知のとおりであります。なお、私が先ほどから十八とか十五歳とか十三歳というような点を申し上げておりまするのも、やはり引き揚げ者であるという点においてはこれは当然考えなければならぬ問題でありまするので、そういうことを考慮に入れつつ各方面から検討をいたしておるわけでございます。
  67. 小柳勇

    ○小柳勇君 長官のさっきの発言の中で、答申中心にこの問題が論議されておる――このことも当然でありましょうから、先般私質問しましたように、答申の最後のほうに十八歳未満の者については差別をするような文言がありましたので、非常に心配をいたしておるわけであります。したがいまして、年齢の問題は、いま小林君も言いましたように、高等小学出まして、国の勧誘で、県や市町村の勧誘で行ったという点、十分ひとつ御記憶願いたいと思うんです。  それから第二は資料の問題でありますが、私も先般県庁の倉庫を調べました。県庁の倉庫の中に古い書類として、そのころの勧誘いたしました者の、役場なり、あるいは市役所なり、それからその行きました氏名がちゃんと残されております。したがって、努力をすれば――各県に通達を出して努力をすれば、倉庫の中に当時徴用に応じた者の氏名は明らかであると、私は一つの県でありますから全部はわかりませんが、私は福岡県を調べまして、倉庫の中に書類がありましたので、ひとつ再度熱意を持って調査をされることを期待いたします。  最後に、いま小林委員も言いましたが、あの人たちが言うのは、金をもらおうとは思わぬ、われわれは財産補償の言い分をしてはおらぬのだ、ただ、ソ連参戦後のものは準軍属として扱ってくれるが、たとえばなくなったら準軍属としての傷病の扱いをしてくれたが、それ以前のものはただ一部市民が希望して渡満したという扱いを受けておる。われわれは県や市町村の要請によって軍人に行ったと同じ気持ちで出ておるから、その点を十分ひとつ国がくんでくれないか。でないとなくなった方までも眠れぬ。だから補償は要らぬけれども慰霊祭ぐらいやってくれないか。それから野火に焼かれ傷ついて帰った者については、生活保護ではなくて――厚生省の生活扶助ではなくて、国が準軍属としての処理で今後手当を出してくれないか、こういうことでありますから、いまの在外財産補償というものについては大きな希望はありません。そのことを明らかにして、善処されることを期待いたします。
  68. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 小柳委員答申に十八歳はということを言いましたけれども答申には十八という数字は出ておりませんから。そのところは、「一定の年齢に達していなかった者および在外居住が一定年数に達していなかった者は除外するとともに、当時すでに中年以上であった者に対しては、特に重点を置いて措置すべきである。」というふうに書いてあります。そこで、私が先ほど申し上げておる財産形成のものは、一定年数というものを幾つに見るべきかということで繰り返し申し上げておるのでありまして、いまの御趣旨のようなことを考慮に入れながらいま検討いたしておるところでございます。  なお、資料の収集等についてたいへんいいことを教えてくださいまして、もちろんできるだけの努力をやりまして万遺憾なからしめたい、このように考えております。  なお、厚生省の援護措置とダブっておる面もあったように思いますが、厚生省の援護措置としても十分政府としてはとっておるものではなかろうか。われわれのほうはまた援護措置以外のものとして財産補償ということで考えておることでございますので、その点念のため。
  69. 小柳勇

    ○小柳勇君 長官、私これは個別的にまたお話しいたします、詳しいことは。少し理解が足っておりませんから、理解をしておいていただきたいのは、十八歳というのは、先般の給付でも十八歳未満ということで非常に問題になっておりますので、十八歳ということを私が心配しておるわけであります。  それから厚生省では、向こうで半身不随になりまして帰りまして、現在三十九歳でありますが、奥さんがとうふ屋をやって、本人は生活扶助です。したがって、先般から援護局に再三陳情いたしまして、国が準軍属としての処遇をしてくれないかという要請をいたしましたが、ソ連参戦前だということで一切拒否されております。したがって厚生省からの援助はありませんので、この点はひとつ、また詳しくは長官に別個話しますが、理解を、考えを変えておいていただきたいと思います。以上です。
  70. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 交通事故の問題についてちょっと質問したいと思います。一昨日でしたか、新小岩だったかで子供が自動車にひかれた。歩道橋をつくろうとしておったんだが、歩道橋の新設に対して地元の連中が反対をしておって、そのためにまあもたもたしている間に事故が続いておこった、こういうニュースがありました。こういう交通事故対策について、こういう問題は今後各地に出てくると思うんでありますが、一体どのように対処されるおつもりなのか、関係者にお伺いしたいと思います。
  71. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 新聞に出ました事故のことにつきましても、私は承知いたしておりますが、従来、往々にしてこういうことはあったのであります。なかなか設置場所の方の了解を取れることが困難な場合もあります。しかしながら、つとめて今後はその点に力を入れまして、設置の促進をはかりたいと思っております。で、今年度予定いたしておりまする約千カ所の歩道橋につきましても、ただいま非常に順調に進んでおるところでございまして、あくまでもその住民の了解のもとに進めたい、かように考えておるものでございます。
  72. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 ほかのことと違って、歩道橋の新設に対して反対をするというのは、全くこれはえてかってな反対理由じゃないかと思うのです。アメリカの軍事基地に反対するというのとは性格が違うのです、全然。だから、こういうものに対して一体どういうふうに対処するのか。こういうえてかってな言い分をそのまんま尊重しておれば、交通事故というものはちっとも減らないと思うのです。事故対策として、はたしてどのようにお考えになっておるのか。それから交通事故対策の根本方針といいますか、どうしたらよろしいというふうにお考えなのか、その点も担当者からお伺いしたいと思います。
  73. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 交通事故の中でも、いわゆる自動車事故が最も問題になっておるわけでございまするが、自動車事故のうちでは、やはり自動車対人間、車対車、車自身、大体分けてそういうふうになろうと思うのでございまするが、やっぱり一番多い事故は、人間対車の事故でございます。事故の統計を見ましても、やはり歩行者に対するものが三四・五%に達するということが過去の事例でございます。したがいまして、私どものほうといたしましては、やはりまずそれには、横断歩道橋をつくりまして、その危険な場所を横断歩道橋にやらせる。その場合も、そういう歩道橋をつくりましたら、もうそこは平面――きびしくその横断歩道橋以外を絶対に渡らせないように指導するということが必要であると思うのであります。もう一つは、歩道をつくる、現在非常に歩道のない道路が多いのであります。したがいまして、歩道をつくりたい。これも相当今年度、四十二年度予算には見ておるわけでございまするが、しかし歩道をつくる場合も、一般の歩道は、歩道だけを高くしてありますが、道路が狭い関係上、急速にはそれができない。したがいまして、そういうような場合は、簡易歩道をやはりつくる計画、その他照明の設備、防護さく、いろいろな人間対車の問題につきまして、最も力を入れていただきたいということでございます。  現在までの統計によりますと、そのためかどうか知りませんが、昨年と比較して、相当に自動車事故も現在のところでは減っておりまするが、本年計画いたしました第一種安全装置、第二種安全装置、いろいろな方法をやっておるわけでございまするが、計画どおり順調にひとつ強力に進めたい。歩道橋の場合は、どうしても取りつける場所が狭いもので、いろいろなふうに苦情が起こる場合があるわけであります、実際問題として。しかし、それにはやはり地区住民のあくまで了承を得まして、危険なところはひとつ促進をしていきたい、かように考えておる次第でござまいす。
  74. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。せんだって問題を起こしたところも、土地は、私有地には関係ないのでしょう、歩道橋つくる。ちょっと新聞でそういうふうに読んだように記憶するのですが。
  75. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 道路でございます。しかし実際問題として、幼稚園であるとか学校等の場合の歩道橋をやる場合、階段が道路につけられなくて、あるいは学校の用地を借りるというような場所もありまして、その土地土地によって、道路のみでなしに、私人の私有地を買うとか、あるいは公共用地ですと、足のほうは学校の用地に踏み入れるとか、いろいろな場所があるわけでありますが、一般的には道路用地でございますけれども、通行人がそれを通れるか通れぬかというようなことで、なかなかいろいろ問題あったのですが、まあ、いろいろくめんをいたしまして進めたい。かように思っておる次第でございます。
  76. 亀田得治

    ○亀田得治君 いや、せんだってのところは、私有地には関係ない、公の場所だけを使ってやれるところのはずです。だからそういうところについて、多少反対があるからというて、工事をするほうがぐずぐずしておる、そういう態勢ではよくないと、こういうことをわれわれ感じておるわけなんです。それを聞いておるわけなんです。だから、せんだってのやつはどうだったかということを確めたいのと、それから、ことし一千カ所ですか、先ほど申されましたのは。これもおそらく、ほとんど歩道橋ですから、公の土地だけを使ってつくれるのだと思います。いま大臣の説明によると、たとえば、ある場合には学校の敷地の一部にかかるといったようなところもあるようでございますが、しかし、それは学校の敷地にかかりましても、生徒を守るためなんですから、学校が文句を言うはずがない。だから、その程度の事例しかあげられないところを見ますると、歩道橋をつけられる家のまわりの人が若干狭くなる、その程度のことで反対運動が起きて、それを一々聞いてぐずぐずしているようなことでは、これはほんとうに生命を尊重するという熱意が私は足らぬと思う。そういう意味でこれは聞いておるのです。  だからこの一千カ所というものは、ほんとうにやってもらいたいと思っているのですが、その点をもう少しはっきりしてほしい。先ほどの御答弁聞いておると、どうも場合によっては、道路以外のところも使わなきゃならぬ。たとえば学校の一部など、そういう学校の一部などは、これは理由にならない。理由にならぬことをこっちからおっしゃるようじゃ、どうも姿勢が弱いんじゃないかというふうに心配するわけなんです。この千カ所というものは、そんなに私はむずかしい反対が起こるところじゃないと思うので、多少不便になる、直接足が自分の家のすぐ出入り口の前にくるようなところはね、そんな程度のことだろうと思うのですが、どうなんです。大臣そこまで知らなかったら、これはたいへん重要なことなんですが、道路局長なり、だれか関係者がおれば、はっきり説明してもらいたい。千カ所はやるならやるとはっきり。
  77. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 関係局長が見えていないようですから、私からお答えしますが、私が例にいたしまして、非常につけにくいような場所もあるけれどもと、こう言ったのでして、この千カ所を進めるということにつきましては、強力に私は進めたい。相当に順調にいまいっておる。たまたま、ああいうことがありましたのは、まことに申しわけないと思っておりますが、これは少々ぐらいな反対がありましても、これが危険な場所であれば進めたい。また、千カ所のもの、本年度の予定につきましては、これはぜひ実行したい。なおそれ以上にもやりたい、危険なところを促進していきたいという気持ちは十分でございまするから、どうぞそう御了承をお願いしたいと思います。
  78. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 警察庁関係に聞きたいと思ったのですが、いまのような場合、問題は建設大臣が言っているのとはちょっと違うのですよ。歩道橋をつくったけれども、渡らないでけがしたというのは、これはけがしたほうが悪い。しかし、歩道橋をつくろうとしているのに、それに対して理屈にならない理屈をつけて反対をする者がいる。その反対のために歩道橋をつくれない。そのためにけが人が出たというところに問題があるのです。そういうことに対して、警察庁としてどのように対処するかということをお伺いしたいと思うのです。
  79. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) ただいま御指摘のように、歩道橋をつくる場合に、店の先が狭くなるとか、あるいは二階をのぞかれるとかいうようなことから、地元で反対する向きもあるように私も承っております。これはやはり、そういうどうしても必要なところなんでございますから、そうした言い分に対しまして、歩道橋をつくることについての必要性を十分理解してもらいまして、そして建設省のほうで円滑にやっていただけるような素地をつくりたいと存じます。
  80. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと関連、大事なことですから。たとえば、建設大臣、歩道橋をつくって二階をのぞかれるというような場所も私は確かにあると思う。そういう場合には、二階に当たるところについては歩道橋に目隠しをつくる。そういったようなことをできるだけ私はやはり取り入れて、そうして、ともかくやることはやるんだということでやってもらわなければいかぬと思うのですね。そういうふうにやってくれますか。  それからもう一つ、たとえば道路工事すべきものをしないで道路がいたんだままにほうっておく。そのために、そこへ自動車がはまったりして、そのはまったあふりでけがをしたといったような問題等がよくある。そういうことについては、最近はそれはやはり道路管理者の責任というものをやかましく裁判関係でも言うくらいにまでなってきておるわけなんです。だから、つけるべきところに歩道橋をつけない、そのために事故が起きたというような場合には、私は実際上国に責任があると思うのです。そういうふうに建設大臣はお考えになるかどうか。そこまで考えれば、これは何としてでもやらなければならぬということになるわけですし、建設大臣の強い考え方、責任感。つけるべきところにつけなかった。そのために子供が死んだ。つけるべきところなんだからこれは行政の責任でしょう。これは私は国の責任が出てくると思うのですよ、争いになった場合に。そういう司法上の争いにならなくても私は大きな責任というものがあると思う。それをどう考えるか、その責任感。さっきの目隠しの問題、そういうことを考えるかどうか。二つ。
  81. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) いま亀田さんがおっしゃいましたように、のぞかれるとかなんとかいいますけれども、それはやっぱりやろうという決心でいろいろ工面をしてやらせたいと、かように思う次第でございます。  それから責任問題ですが、もちろん、そういう非常な事故の頻発な地域、危険な個所は、もうあらかじめわかっておってそしてこちらがそれをないがしろにするというようなことはわれわれとしても十分責任を感じなければならぬ、かように思う次第でございまして、あらためて、つまり人間の歩行に対する事故は極力防止をしたい、かように考えておる次第でございます。
  82. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 自治大臣にお伺いしたいと思うのですが、全国知事会というのは従来何をしてきたのか。あるいはその会長には特別の権限があるのかどうか。美濃部知事を敬遠をして今度は桑原愛知県知事が会長に選ばれたというような話があるのでありますが、そのほうが政府との連絡にとって都合がいいからそうなったのかどうか。これももちろん知事会の内部事情もあるでしょうけれども、大体知事会というものの性格あるいはその権限、会長の権限、こういったようなことについて伺いたいと思うのです。
  83. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 「全国知事会は、各都道府県間の連絡提携を緊密にして、地方自治の円滑な運営と進展を図ることを目的とする。」とうたっております。そうして従来ともこのような各府県間の連絡を密にして地方自治体、ことに都道府県の共通するいろいろな目的について政府に進言をしたり陳情をしたりいたしておるわけでございまして、それなりの使命は果たしてまいったものと考えますし、今後もそうした方向で地方自治の発展に努力をしていただきたいと考えております。
  84. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 この知事会の会長というのは特別の権限を持っておるのかどうか。それから、その会長がどういう人であるかによって政府との折衝が円滑になるかならないか、そういう問題が特にあるのか。
  85. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 会長はその知事会の取りまとめ役でございまして、特に権限――と申しますか――というものを持っておるとは考えておりません。  また、会長がどなたになろうと知事会としての政府との連絡は、これは別段変わったことはないと考えます。
  86. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 自民党の内部にもいろいろ意見があると思うが、知事の多選禁止、たとえば四選以上いけないとか、五選以上いけないとか、多選禁止という話が取りざたされておるということなんですけれども、その理由、それから自治省としての考え方はどうかお伺いしたい。
  87. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 知事の多選禁止についていろいろ御議論のあることは承知いたしております。私は、元来はこういう問題は選挙民が自主的に考えるべき性質のものだと思います。ただ、同一人が長く多年にわたって知事の地位におることによってのある種の弊害は起こり得ることもあろうかと存じます。これはむしろその個人の行政態度によるものだと私は考えますが、そういうことも考えられますので、そうした点についていろいろ多選についての御議論があるのではないかと考えております。場合によっては考えなければならぬことだとは思いますが、本質的には私は選挙民がこれを決定すべきものと考えております。
  88. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 そうすると、場合によっては何とかしなければならぬという意味のことをおっしゃられたけれども、もし知事の多選を禁止するということになると、市長にしても同じ、町村長にしても同じということになると思います。だから、政府として何らかの措置をする場合には知事も市町村長も同じようにこれは規制しなければならないということに解釈をされるのでありますが、その点の見解はどうでしょう。
  89. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 私自身と申しますか、自治省として、現在多選を禁止するような法的規制を加えようという考え方は持たないのでございまして、先ほど申し上げましたように、これは選挙民が決定すべきものと心得ております。ただ先ほど、何らかの処置を講じなければならない必要が起きるかもしれぬと申し上げました。そういう際には、もちろん単に知事ばかりでなく、その他の地方団体の首長についても考えなければならないことだと思います。
  90. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 そうなると、知事や市町村長だけ規制をするというのは、これまた片手落ちになるのじゃないかと思います。それじゃ大臣を何回もやった人はどうだということになる。代議士を何十年、何回以上当選した人はどうだとか、そういう論法からいくと、大臣経験者あるいは国会議員の多選もある程度チェックしなければならぬ、こういうことになってくるのじゃないかと思うのですが、代議士や何か、国会議員の場合はかまわないということになるのかどうか、その点はどうでしょう。
  91. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 元来、地方団体の首長とそれから議員とは性格が違うとは思います。で、あくまで私は原則論としてこういう問題は選挙民そのものが決定をするものと思っておりますので、現在そうした法的な規制をいたす所存は私はございません。
  92. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 選挙法の改正等についてちょっと質問したいのですけれども、小選挙区制、政治資金規正法と抱き合わせとかなんとか、いろいろなことが取りざたされておりますけれども、小選挙区制を実施をするといったようなことは今日考えていないのかどうか。
  93. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) その問題につきましては、現在の第五次の選挙制度審議会におきまして、これから検討をされることになっておりますので、その答申いかんによりまして、その答申を尊重いたしたいと考えております。
  94. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 さっきの在外財産の話じゃありませんけれども、とかくいろいろ審議会というのはあいまいな答申を出す。あいまいな答申を出した場合には、結局は政府として考えなきゃならぬということになると思うんです。で、この選挙法の問題について、それと選挙違反のこともこの際ついでにお伺いしたいと思うんですけれども、選挙違反の取り締まりについていろいろやっておられると思うんですが、最近の地方選挙並びにことしの衆議院選挙等における違反の件数とか、内容とかについてはどのようになっておりましょうか。
  95. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 第一に、総選挙につきまして申し上げますと、総選挙後三十日間、すなわち二月二十八日現在における集計で総計九千七百九十二件、一万六千七百九十一人でございます。そのうち買収が七千九十四件、約七割ぐらいになっております。これは前回の三十八年の選挙に比べますと、件数で四一%、人員で四九%減少をいたしております。  それから統一選挙のほうでございますが、五月八日現在における集計で一万四千五百九十七件、二万五百二十九人でございます。これも大体買収が七割以上を占めております。それで前回の統一選挙と比較をいたしますと、件数で一・七%、人員で三二%の減少になっておりますが、概括して私見を申し上げますと、総選挙において自粛ムードであったものが地方選挙においてはややくずれてきておるのじゃないかと思われます。
  96. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 地方選挙ではだいぶまたゆるんできたというお話なんですけれども、しかし、買収供応の場合と形式犯の場合と比較をして見た場合、言論戦なり文書戦というものを活発にするのが本来の選挙のやり方でなければならぬ。買収供応というのは、これはほんとうに厳に取り締まらなければならぬものだと思うのでありますけれども、とかく形式犯の数だけでもって、買収供応のほうが抜け道をつくって抜けられるということであってはこれはいかぬと思うのでありますが、選挙法改正の方向としては、むしろ選挙活動を活発にするという意味において文書戦、言論戦というものに対する規制をゆるめて、買収供応に対する規制を厳重にするというのが一つの方向として打ち出されなければならぬと思うのでありますが、自治省としての見解はどうですか。
  97. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 最初の形式犯でございますが、形式犯の中でも組織的な大量な形式犯というものは、やはり選挙の自由公正を害するものではないかと存じております。それから、選挙の自由化と申しますか、私どもも明るく正しい選挙の推進をやっておるのでございますが、正しいほうは相当できるのですが、明るいというやつは、実は現在の選挙法ではほとんど見当たらないのでございまして、そういう意味で、いわば政治の祭典とも言うべき選挙が、明るく明朗に行なわれるような、その方向での選挙法の改正は必要ではないかと考えまして、現在の選挙制度審議会におきましても、そうしたことを含めまして、選挙運動のあり方について御審議をいただいておりますので、その結論を待って善処したいと考えております。
  98. 鈴木強

    鈴木強君 関連。選挙運動改正の問題で一つ伺いたいのですが、簡単に申しますが、一つはテレビによる政見放送というものを許したらどうか。現在はラジオだけですが、それが一つ。  それからもう一つは、連呼行為に対しても、いまのところ衆参両院と知事の場合はいいんですが、その他は認められておりません。現状では、しかしなかなか、田中さんの例の連呼がありましたけれども、そういうふうにやられておるのですな。だから、その辺をどこまでということはちょっとここでは私は言えませんけれども、少なくとも区会ですね、それから県、市会ですね。その辺の段階までは、時間はある程度制限しても認めたらどうかと思うのです。  それからもう一つは戸別訪問、それから文書図画の頒布制限、こういったものについてもこの際思い切って緩和し、あるいは撤廃をして、自由にもう少しそういう面における選挙活動ができるようにしたらどうだろうかと私思うのですがね。もちろん、これから審議会のほうに御諮問になると思いますが、少なくともこれは自治大臣として、担当の大臣としてそういうことに対する御所信があると思いますから、この際はっきりしてもらいたいと思います。
  99. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 選挙運動にテレビを利用することはぜひ実現したいと考えております。もっとも、これは郵政省のほうの放送局の関係その他もございましょうけれども、私としてはぜひ選挙運動の中にテレビを利用したいというふうな考えを持っております。  それからまた、あとの文書の問題、連呼の問題、あるいは戸別訪問の問題は、方向としては私はおっしゃられるとおりだと考えておりますので、そういうこともあわせて審議会で御審議をいただきたいと思います。  もちろん、そのためには一方選挙運動そのものが、政党本位の選挙運動と申しますか、そういうことになることが前提ではありましょうけれども、方向としてはお話しのとおりだと私も考えております。
  100. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 四月二十六日の衆議院の予算委員会で高田富之議員から質問があって、建設大臣からも答弁があったのですが、荒川の砂利の乱掘の規制についてです。これは問題は荒川だけじゃないのですけれども、埼玉県で砂利の汚職でもって県の砂利行政の責任者が逮捕された、こういう事件があるのです。砂利採取事務所長、それから、それと関連をして自民党の現職の県会議員が逮捕された、こういう事件があるのです。とかくこの砂利の乱掘に伴っていろいろな問題が派生をしておるのでありますが、最近また飯能でもって山砂利の採掘でもっていろいろな問題が起きておる。県が警告を発してきたが、言うことを聞かない、こういうこともある。衆院議でも建設大臣は調査をするということを言っておられますけれども、こういう砂利の行政について県でなかなかどうも不十分な点があるといったような面について、どのような調査をなされ、どのような指導をされるお考えなのか、その点についてお伺いしたい。
  101. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 砂利の採取につきましては、従来からいろいろな問題のあった点があるのでございます。しかし、まあ現在は砂利を採取する場合は河川法によりまして、それぞれの条項によりまして、河川管理者の許可を受けなければならぬことになっておるのでございます。したがいまして、建設省としては、この河川の保全、あるいは利水等につきまして、適切な管理をしなければならぬので、砂利を場る場合には、砂利の採取の準則というようなものをつくっております。その準則に基づいて河川の全国の各重要な水系ごとに、この河川からはこういうふうにして取れというような基本の計画と、あるいはそれの規制というようなことをやっておるのであります。また、そういうようなことが正当に行なわれておるか、行なわれていないかということにつきましても、監視を十分にいたしておるのでございまして、直轄河川においては建設大臣、その他の河川においては都道府県知事をしてやらしておるのでございます。御指摘の飯能における点は衆議院でもいろいろ御質問がございました。調査をしましてということをお答えしておいたのですが、あの河川におきましては、施行者が不法なことをしておるので許可を与えていないのに、自分でやっておるのでございます。したがいまして、知事のほうからは警告を一応発したのでございます。しかし、その後あらためて、期限つきで撤去を命じております。きょう聞きましたら、昨日ですか、撤去をしたという報告を受けた次第でございます。いずれにいたしましても、この砂利の問題につきましては、今後非常にやはり砂利が少なくなっていくというような問題もありますので、厳重にこれらの点を、河川の保全から管理を、ひとつ取り締まっていきたい、かように考えており、問題の点は一応、その許可を取り消して施設を――いまは仕事をやめておるのでございいまするが、今後これがどういうふうになっていくか、あるいは許可の手続をどういうふうにとってくるか、その辺は今後の問題でございますので、御指摘の点は一応解決したと思っておる次第でございます。
  102. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 この砂利の問題は、これは飯能の場合は、河川法、道路法、森林法、農地法にそれぞれ違反の疑いがあるということで、警告は去年からやっておるという。去年からやっておってもなかなか言うことを聞かない。しかも、この新聞に載っておりますけれども、県のほうであらためて正式に、警告を無視すれば告発するぞと言っても、砂利会社の談話は、警告を受けたからといっていますぐ操業を中止するわけにはいかない、こういうことをちゃんと述べておる。完全にこれはもうなめられておるわけですね、砂利業者に。なめられておるというところから、砂利の汚職などという問題も惹起する下地があるんじゃないかと思う。だから、はたして現行法規でもって十分なのかどうか、法規の適用について地方自治体のほうで手抜かりがあるのかどうか、一体どうなっているのかということを私は知りたいと思うんですけれども、行政管理庁としては、これらの問題についてしかるべき調査をなさった事実があるかどうか、あるいは調査をなさる気持ちがあるのかどうかお伺いしたいと思います。
  103. 松平勇雄

    国務大臣(松平勇雄君) 昨年、昭和四十一年に河川管理に対する行政監察を実施いたしまして、砂利採取に伴う河川管理については、第一に砂利採取基本計画の策定。第二は、河川監視の強化、許可内容、条件の励行を確保、取り締まりの徹底。第三には、河川砂利の用途規制、採取業者の協同化、自主現制等につき強力な指導の徹底をするように昨年の十月に勧告いたしまして、これらに対しまして、逐次関係省においては実行に移しているところでございます。なお、御指摘の埼玉県の砂利採取の問題に関しましては、公共施設の損壊あるいはまた、上水道の取水障害、付近民家への被害等の問題等を引き起こしまして、埼玉行政監察局に対しまして、地方住民から相次いで苦情が提出されておりますので、五月から砂利採収に関する地方監察を行なっております。
  104. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 今後は所管の問題なんですけれどもね。たとえば山砂利のほうは採石法で通産省である、川砂利のほうは建設省である。あるいは道路法、森林法、農地法ということになると農林省にも関係してくる、地方自治体の自治省にも関係してくるということになると、いろいろ各省にまたがってくると思う。こういうふうに取り締まりの法規というものが各省にまたがっておる、しかも、その間隙を縫って砂利の汚職で逮捕された人は、県の砂利の所長であるとかあるいは村長であるとか、あるいはまた、現職の県会議員であるとか、こういう人が介在をしているわけです。汚職のすきをつくっているということは問題であると思うんです。こういう汚職のすきをつくらないようにするためには、現在の法規に遺憾な点がないかどうか、各省にいろいろまたがってその法規が存在しておって、今後取り締まりあるいは規制の面でやりにくいという点がないのかどうか、これについて再度お伺いしたい。
  105. 松平勇雄

    国務大臣(松平勇雄君) 御指摘のとおり、この砂利の問題に関しましては、先ほどお話がございましたように、たとえば森林法の問題と河川法の問題あるいはまた道路法、農地法の問題等いろいろ重なっているわけでございます。したがって、私どもといたしましては、そういった行政の組織の面あるいは行政の運営の面、また国家行政組織と地方行政組織との関係の問題等ただいま監察いたしまして、それらの点に関しましては欠陥がないかどうか監察いたした結果を勧告いたしたいと、かように考えております。
  106. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 建設大臣からもお伺いいたします。
  107. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 通産省の関係の採石法、これは山の石をとる権利のようでございます、もちろんわれわれにも関係する個処はありますが。権利のほう、もう一つの河川砂利の採取の法律、これは事業をやる場合の事業者を認定する、しかし、認定はただ届け出だけによってそういう事業を認定するということでございます。しかし、かりにその事業者が河川で砂利を取ろうと思えば、河川管理者の許可を受けなければならぬわけでございます。したがいまして、一応ダブっているように見受けられまするが、現在のこの法規で十分取り締まりはできると思うのでございます。ただ砂利そのものが非常に逼迫いたしておりますのと、砂利業者というのは一般にほんとうな零細企業から発達しているいままでの歴史がありますので、いろいろそこに問題が生じてくるわけでございます。したがいまして、私といたしましては、今後公共事業はますます続いて、そうして砂利というものが非常に重要な骨材になりますので、こういうような点は相互に非常に連絡をとり、また、建設省自身といたしましても、砂利採取につきまして、新しい点からいろいろ政策を進めなければならぬ、かように考えておりまするから、いま通産省にある二つの法律、あるいは建設省が所管している河川法とダブっているからいろいろ事故が起こるのじゃないかというような点は、特にそう見受けられませんけれども、両省で十分連絡をとっていきたいとかように考えている次第でございます。
  108. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 建設大臣にお伺いしますけれども、都市計画ですね、経済企画庁の経済社会発展計画によりますと、「土地利用の効率化」ということを特に強調している。土地利用の効率化のために、「都市計画を早急に確立することが必要である。計画の実効性を確保するためには、従来の現状肯定的ないし追随的な規制より以上の強力な規制と適切な誘導政策によって、土地に対する各種の需要を調整し、効率的な土地利用を実現することが緊要である。」、こう書いてある。で都市計画について新しい都市計画法をつくるという構想がおありになるのかどうか、その構想はどのようなものであるか、お伺いしたい。
  109. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 先般宅地審議会から第六次の答申をいただきました。それにもやはり地価対策の問題につきましていろいろな答申がございましたが、やはりこの地価対策の問題につきましても、しょせん土地利用計画をつくりまして、現状のようなばらばらのことをいたしておると地価対策上よくないから、あらためて土地利用計画を織り込んだ都市計画法を改正すべきであろうという答申をいただいたのでございます。したがいまして、ただいま政府の部内で都市計画法の改正を検討をいたしております。できればこの国会に提案をして御審議を願いたい、かように考えて、いま検討を進めておる最中でございます。
  110. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 都市計画法の構想について、大臣のほうから所見を述べていただきたいと思います。
  111. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 現在の都市計画法は、一定の市の区域内で用途別にはやっておるのであります。しかし、現在の都市の都市化の現象を見ますと、従来の計画法ではとてもいきませんので、広い範囲内において、やはり土地利用計画をつくります場合には、既成市街地、それから市街化すべき地域、あるいはこういう場所は市街化してはあまりよくないというような市街化を調整する区域、それからもう一つ、こういう場所はやはり保存しておいたほうがいいという保存区域というふうな四つぐらいな段階でこの区域を分けたらどうであろうか、そうしてその中で宅地を開発するものについては、やはり許可制度をとっていくべきではなかろうか、こういうような大体の方向で検討をいたしておるのでございます。
  112. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 都市計画というのは、たとえば国鉄あるいは私鉄等の輸送計画にも非常に大きな影響を持ってくると思うのです。現在の首都圏あるいは、近畿圏といったところに人口なり産業が集中しているわけだけれども、現状を肯定をした中で対策を立てるのと、この人口を抑制をして地方都市の開発をはかるというふうな方向でいくのとでは、ずいぶんこれは開きが出てくると思う。一体この都市計画の構想としては、どちらに重点を置くことになるのか、先ほどの総括質問の際にも、ちょっと関連質問しましたけれども総理大臣の答弁はあいまいで要領を得なかった、その点はどうなっているのですか。
  113. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 質問がちょっと……。
  114. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 都市計画の中で、現在非常に人口が集中しているわけですよ、東京なら東京に。その集中した現状を肯定する立場でもって今後の計画を立てていくのか、あるいは地方都市に人口を分散をさせるというような構想があるのか。どうもその点、伝え聞くところによると、建設省と自治省と必ずしも見解が一致していないようにも聞いておりますので、その点をお伺いしたい。
  115. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 仰せのように、交通関係と非常に密接な関係を持ちますのでございます。従来これは打ち合わせをしないことはないのでございますけれども、やはり宅地造成等につきましては、ややそういう点が手抜かりであったために、国鉄あたりからも、非常に宅地ばかりをつくって、交通は考えないじゃないかというようなおしかりも受けております。いまの点でございまするが、既成市街地の点は、既成市街地に指定される地域は、つとめてその中から工場とかあるいは流通機構とかという、そういうセンターになくてもいいような施設はなるべく外部に移しまして、そうしてそのあとを買い取って、高度にそれを利用するような道を考えたいと思います。まあその場合も、もちろん交通関係を考慮に入れないやり方はないのでありまして、同じ既成市街地の中でも、交通の非常に混雑するような場所は、それ自身の、それに応じた策をとらなければならぬと思います。それから今後市街化すべき地域、これにはやはり計画性を持たせて、この宅地の造成をやりたい。したがいまして、それは公的機関がやる場合もあるし、民間がやる場合でも、市街化したら適当であろうというような地域は、これは民間が適当な条件で、宅地を計画的に大量に供給するというようなものにつきましては、やはりこれはいろいろの租税上の便宜もはかっていきたい。もちろんこの場合につきましても、交通のことは十分連絡をしまして、考えまして、運輸省、国鉄とも十分連絡をいたしていきたい。市街地については、これは高度の利用をやりたいという、それから、市街化すべきこころについては、この宅地を十分に大量に供給したい。御質問の点にお答えできたかどうか知りませんが、そういうように考えている次第でございます。
  116. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 先般の質疑の際、国鉄総裁が、通勤通学輸送がたいへんな問題だ、しかし、国鉄がどんなに力んでも、どんどん国鉄とは連絡なしに、あっちこっちに団地ができてしまって輸送が追いつかない、こういうような意味のことを答弁しておられたのですが、国鉄としては、これからの通勤通学対策を考える場合に、日本が都市計画をどういうふうに進めていくかということによって、だいぶ違ってくると思う。だから現状、つまり首都圏なら首都圏、近畿圏なら近畿圏のこの過密化した都市というものを土台にして考えていくことになるのか、あるいはまた、現在の過密化した人口というものが地方に分散をされるというたてまえでもって計画を立てているのか、その点について、自治省なり、あるいは建設省なりから、どういうような連絡を受けて、国鉄としてはどういう構想でもって今後の輸送対策を立てているのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  117. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) お答えいたします。国鉄の通勤通学に対する方針でございますが、国鉄がいままでやっている通勤通学というものは、要するに、先行投資ではなくて、もうしりを追っているかっこうになっている。全く御承知のとおり、通勤通学の状態、特に東京、大阪における状態というものは全く交通地獄である。これを解消するというのではなくて、緩和するということにわれわれは努力しておるのでありまして、それだけでせい一ぱいということで、今後の趨勢に対処して備えあるような輸送力をつけることは、いまのところの考えておらぬ次第であります。
  118. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 今後の問題について考えておらぬという御答弁があったのですが、今後の問題がわからぬから考えておらぬだろうと思うのですがね。今後の問題は一体どうなるのか、これは運輸大臣にお伺いしたいと思います。
  119. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 御承知のとおり、政府といたしましては、東京都あるいは大阪市を中心といたしました過密都市というものにつきましては、根本的な検討を加えるべき時期に到達いたしておる次第でございます。したがいまして、今後の検討によりまして、何とかこの人口をできるだけ分散をはかっていかなければならぬという方向に、大体の世論も向いておるようでございますが、しかし、ただいま国鉄がやっております通勤通学対策というものは、そうした先の将来の問題でなく、さしあたりの混雑を少しでも緩和しようということであると心得ております。
  120. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 さしあたりのことだけしか考えていないんで、先行きのことは全然わからぬということになるんですか。
  121. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 国鉄の現状といたしましては、さしあたりの混雑を緩和するのに手一ぱいでありまして、将来は政府の政策によってそれ以上の新しい混雑の原因が除去されるということを期待しておるという程度のことでございます。
  122. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 じゃ、政府の政策というのはどういうことになるのか。それは運輸大臣にもわからないんですか。
  123. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 政府といたしましては、御承知のとおり、現在の関東、関西の過密都市をこれ以上人口を集中することはいろいろな社会的、経済的弊害を生ずるのであるから、これは断じて避けなければならない、こういう基本的な考え方に立っておると思います。
  124. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 建設大臣のほうに伺いたいと思うのですが、建設大臣としては新都市計画法というものを考えておられるという話がさっきありましたけれども、これは建設大臣としての構想はどういうことになっているんですか。
  125. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) なかなか質問と答弁とかみ合わぬようでございますけれども瀬谷さんおっしゃるところは、現在の都市の過密をそのまま認めて進むのか、あるいは地方分散をするのか、こういうようなことも一つの質問の中に入っているようですが、これは政府は、いま運輸大臣も申しましたように、なるべく産業と人口は地方に分散させるようという考えのもとにやっておることはやっておるのでございます。しかしながら、現状はもうすでに過密になっておるし、やはり都市化の傾向は、今後でもこれはぴしゃっととめるわけにはいかない。したがいまして、その対応策として、現在の都市化の問題に対して対処したい。その都市化の問題に対処するためには、建設省といたしましては、現在の都市計画法というもの、この法律によっては対処することができないから、新しい都市計画法をつくっていきたい。それには、まず第一に土地のやはり利用区分をはっきりして、その利用区分に従ってそれぞれの土地に対して対処していきたい、かように申しておるのでございます。しこうして、その場合でも、運輸交通が第一でございますから、運輸交通という点につきましては十分連絡を密にしていきたい、かように考えておるわけでございます。
  126. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 自治大臣にお伺いしたいと思うのですが、あなたは去年運輸大臣もやられたから――もっとも去年運輸大臣四人もかわっておりますけれどもね。非常に基本方針というものがはっきりしないわけですよ。そんなことじゃ、国鉄の通勤通学輸送と言ったって、なかなか根本的な対策が立たないんじゃないかと思うのですけれども、自治大臣としてはどのようにお考えになっているんですか。
  127. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 基本的には、大都市に対する産業人口の集中を抑制して、地方の開発拠点――新産都市、工特地帯、あるいは筑波山ろくのあの学園都市というような、こうした開発拠点の育成をいたしまして、人口、産業を分散させることが基本方針だと私は考えておりますし、またその方向に少なくとも自治行政としては持ってまいりたいと考えております。ただ、現在の大都市への人口集中を急激にとめるわけにもまいりませんので、しかもその環境その他が悪化しておりますから、大都市の再開発のための財政的な措置等もあわせて考えていかなければならぬと思いますが、基本的には、大都市への人口、産業の集中を抑制して、地方の開発拠点を育成していくというこの方針を堅持してまいりたいと考えております。
  128. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 経済社会発展計画によると、「鉄道の整備にあたっては、大都市圏の通勤・通学対策に重点を置く」、こうあるんですね。その「過密対策の一環として……所要資金がぼう大であるので、必要に応じて国家的見地から資金確保の方策を検討する。」と書いてある。ところが、国鉄の場合は、政府出資九百億を要求したけれどもいれられなかった。今後この政府出資というのはどうするつもりか、今年はいれられなかったんだが、政府出資というものをしないで、どのような方法でもって国鉄の輸送計画というものを今後立っていくのか、大蔵大臣に伺いたい。
  129. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 先般もお答えいたしましたが、今後どうするかをいま関係当局で検討している最中でございます。政府出資九百億円という要望がございましたが、いま国鉄の資本構成、これを見ますというと、四八・六――約四九%という自己資本比率になっておりますが、個々の民間企業全体で見ましても、資本構成は、御承知のとおり、非常に悪くなっている。二〇%という自己資本の比率になっている。それから見ますと、資本構成においては、国鉄は一般の民間の産業の倍以上とにかく比率としてはいいのだということになりますというと、これは資本構成はいいが、何だというと、非常に回転率の悪い事業ということでございます。この回転率の悪いのがどこからくるかということになりますと、そこに先般説明したようないろいろな検討すべき問題が出てきている。特に総裁がよく言っていますように、公共負担ということが一番の大きい原因だと言っておりますが、もしそうだとすれば、この公共負担に対して国がいろいろめんどうを見る方法というものがどういう形であり得るか、資本構成を直すというような形で解決できるものか、そのほかの別途の措置をとらなければいかぬか、いろいろな問題がいまたくさん国鉄には検討すべき問題がございまして、この根本的な検討をここでやって、はっきりした国鉄経営の指針を立てたいというのが私ども考えでございますので、いまそれに取りかかっているときでございますので、ここで来年は出資するとか、どうするという、いま私どもはそういうはっきりしたものを持たない、それと取り組んでいる最中でございます、
  130. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 たとえばこういう経済社会発展計画とか、こういった作文のほうじゃいろいろうまいことを書いている。ところが、実際のほうではちぐはぐなんです。しかも、大事なことはみな検討中になっている。じゃ、現実にきょう国鉄としては、一体一日に、あるいは月にどのくらいの収益があって、そのうち借金の利息の分はどのくらいになるのか、経営の実態というものはこのまま推移すればどうなるのか、それらについて総裁のほうから御報告願いたい。
  131. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) お答えいたします。  国鉄の収支の状態でございますが、最近における道路の発達、輸送機関の発達、それから受ける競争にによりまして、国鉄の収入というものはふえはいたしておりまするが、そのふえる率というものは非常に弱い。一方、支出のほうを見ますというと、人件費の増というものが――これは大体七割をなしているものでありますが、経費の増というものはなかなかえらい勢いでふえている。収入の増ははなはだ弱い、支出の増は強いということで、国鉄の収支状態というものは非常に悪化しておる。要するに国鉄の独占性というものにだんだんひびが入ってきたということが私は原因だと思いますが、この傾向というものは今後とも道路の発達その他によって悪くなりこそすれよくはならぬということで、われわれが国鉄の経営をするにつきましては、この点を頭に置いてやらぬというとたいへんなことになるんじゃないかということで、ことにさっきから問題になっております通勤通学難というものは、たとえば第一期計画、第二期計画においては合計千億ぐらいでやっておったのでございますが、その後都市の人口増加、それからまた団地が非常な勢いによって造成されておるというようなことで、われわれとしてはこの通勤通学難というものは一カ年に百分の七ぐらいの割合にふえていくのではないか、こういうことでやっておったのでありますが、実際においては百分の九を突破するというような状態になってきておりますので、そこにおいて今日の交通地獄というものがある。これに対する国鉄としてはどうしてやるかという問題なんでありまするが、これはつまり非常な金がかかる。しかも収入の点ははなはだ貧弱である。そこにおいて、利息のつく金をもってしてはとても収支というものは、独立採算制というものの維持ができない。そこで、われわれは救いの手をどこに求めるかということになると、昔は運賃というものを値上げして、それによって救いを求めていったのでありまするが、運賃増によるごりやくというものはだんだん弱化してきた。そこでつまり私が考えておるのは、国鉄というものは、この公共性というものを考えて、赤字線というものの負担をやっておる。これが一年に千億は見にゃならぬ、そのほかに政府の政策というものを、国鉄の犠牲においてやっておる。つまり、公共負担というものは四十二年度においては八百九十億くらいになる。このうちで赤字線というものは、これはまず国鉄としては万難を排して救っていかなければならぬが、この政府の政策を国鉄の犠牲においてやっておる。このお荷物だけは何とかひとつ軽減してもらわなければならぬ、こういうことで、つまり大蔵省にいま交渉しているのであります。現に、このことにつきましては、国鉄が何も新発明のものじゃない。基本問題懇談会におきましても、政府としては、出資の問題、それから公共負担というものに対してはまじめにひとつ考えなければならぬ、こういうことをうたっておるのでありまして、私はこれはだれが見ても考えなければならぬ問題である、特に大蔵省としてはこの問題を考えていただきたいというようなことで、いままでは予算折衝のときにそういう問題を出しておったのでありまするが、大蔵省はなかなか予算折衝の前になりますと各方面から来る申し出を切るということで、どうも国鉄の立場に立ってものを考えてもらうという余裕がないというふうに私は考えましたので、四十三年度の予算形成につきましては、あらかじめわれわれの側からよく話し合いをして了解を得るということにして、ただいま折衝中なんでありますが、私はこれは相当に手ごたえがあるというふうに確信をしておるのであります。
  132. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 総裁は八十一歳だそうですけれども、お元気で何よりだと思うんです。ところが職員の場合は、有能な職員を五十五歳でもってみんなやめさせるというのが現状ですが、五十五歳でどんどんやめさせるというのは御自身の年齢から考えても早過ぎるというふうにお考えにならないかどうか。先ほど人件費の増ということをだいぶ気にしておられたけれども、人間を大事にするということは企業の成績を上げるためにも事故防止という面でも大事な点だと思うんですが、その点はどうですか。
  133. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) これは私よりか瀬谷さんのほうが十分御承知だと思いますが、国鉄はその仕事の質から申しまして、五十以上になると非常に負傷者だとか休職者が多い、これは専売局や電電公社とだいぶ私は違うと思う。だからして、そういうことで、また民間のほうから考えましても、五十五というか、あるいは五十七とか六十とかいうことは言いませんが、これまでのところはまず五十五というものは私は適当じゃないかというふうに考えておりまするが、しかし、それは世間のほかの振り合いもありまするので、今後十分検討いたしたいと思いますので、何もこれまで五十五だから今後五十五じゃなければならぬということは、こういうことには私は考えておりません。  私の年齢を申しましたが、これは人によりけりの問題でありまして、四十にしてすでに老成する人もある、九十にして若い人もある。私は決して老成してはおらぬ、若いと考えている。どうぞ御安心願いたい。
  134. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 最後に運輸大臣にお伺いしたいと思うのですが、成田空港について、いま地元とだいぶいざこざがあるようでありまするけれども、その見通しはどうなのか、現在どうなっているのか承りたいと思う。
  135. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 成田空港につきましては、すでに運輸省といたしましては公団に対して工事着手の命令を発した段階なのであります。今後の段取りといたしましては、公団において、まず第一に用地の取得をいたさなければなりません。そこで、ただいまのところでは、公団から千葉県知事に対しまして、用地取得の準備として、用地に対する立ち入り検査を行ないたいということをお願い申し上げておる段階でございます。これに対しまする千葉県知事の態度といたしましては、いま少し地元の諸君の賛成気運を高めた上でやるようにしてもらいたいということで、そのためには自分が極力あっせんしようということで、ただいま千葉県知事が用地の所有者と公団との関係をあっせんしておられる段階でございます。ところで、これに対しまして、用地として買い上げるべき土地の所有者が非常な反対をなすっておられる方もございまするが、大体、千葉県知事のお話を伺いまするというと、まず七、八割というものは、これは条件的な反対である。だから条件によっては賛成にしてもらえる人たちである。ただあとの二割ほどが絶対反対であるということであるが、とりあえずの処置としては、この賛成してもらえる可能性のある方々に対して、政府としてもできるだけ誠意を披瀝して、その条件をいれるような措置を講じてもらいたい、こういうことでございまして、先般いろいろ関係閣僚懇談会等をも開きまして、政府として万全の誠意を披瀝するということに相なりましたために、これを背景にいたしまして、ただいま千葉県知事が精力的に、条件闘争と申しますか、条件によっては賛成しようという見込みのある方々に対しまして御交渉をいただいておる段階でございます。将来の見通しといたしましては、私は必ずや、用地の取得は多少ひまがかかるかもしれませんが、予定どおり行なわれ得るものと考えております。しかして全体の計画といたしましては、四十六年の四月から四千メートルの滑走路一本だけは業務に供し得るようにいたしたい、こういう予定になっておりますから、その期日を厳守するつもりで、関係方面を督励いたしておる状況でございます。
  136. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 その条件が満たされない場合には、いわゆる条件派ですら反対に回るということになるんですね。で、現状ははたしてその条件が満たされるという可能性があるのかどうか。  それから土地収用法の適用などというものを一体考えておるのかどうか、この点について。
  137. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 条件につきましては、政府といたしましてはこれを検討いたしました結果、誠意をもって当たろうと、こういう関係閣僚会議の結論に相なっておりますので、関係各省たくさんございますが、それぞれ分担いたしまして、これを実現するように目下努力中でございます。
  138. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 土地収用法の問題……。
  139. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) まだ現在の段階では、土地収用というようなところまではまいっておりませんので、できるだけ説得によって、土地収用にかけずに用地の取得ができれば、これにこしたことはないと思います。
  140. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 しかし、ほかのことと違って、空港なんですから、非常に条件がむずかしいと思うんです。この条件が満たされない、どうもはかばかしく進まないというような場合には、羽田の空港を拡張するといったようなことで当座しのぎをやるつもりなのかどうか、この点についてお伺いしたい。
  141. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 羽田空港の拡張の計画は確かにございます。しかしこれは新国際空港が見込みがない場合にそれをやろうというのではなく、羽田の空港といたしましては、すでに国際新空港の四千メートルの滑走路ができ上がる予定になっておりまする四十六年の四月以前におきまして羽田空港の拡張が必要になる、こういうふうに予想されますので、新空港の問題とは切り離して羽田空港の拡張を別途に考えております。
  142. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 反対派との話し合いをする考え、あるいは県当局にさせる考えというものはないのかどうか。その話し合いはいまどうなっておるのか。
  143. 大橋武夫

    ○国務大君(大橋武夫君) もちろん反対派の諸君の土地は買わずに済ますというわけにはまいらないのでございまして、全体の土地を取得しなければなりませんから、反対派の諸君に対しましても時期を見て十分に話し合いを進め、何とか御賛成願えるようにしなければならぬと考えます。
  144. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上で瀬谷君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  145. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に、船田譲君の質疑を行ないます。  〔委員長退席、理事平島敏夫君着席〕
  146. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 船田君。
  147. 船田譲

    ○船田譲君 私は、まず第一番目に、質問に先立ちまして、昨日北関東並びに南関東の一部を襲いましたところの、いわゆる熱界雷に伴いますところの降ひょうによって生じました農作物の被害等につきまして、農林省当局から速報がすでに入っておりますかどうか、また従来このような災害がありましたときに、都道府県の災害調査の数字と農林省の出先当局、たとえば農林省統計調査事務所等の数字がかなり食い違いがあったように思うのでありまするけれども、災害を受けました農民の立ち上がる意欲を促進するという立場に立ちますならば、農林省当局といたしましてもどうかぜひ、その災害の値切りのような立場から災害調査をなさらないようにお願いしたいと思うのでありますが、この点について農林省当局の御答弁をお願いしたいと思います。
  148. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) お答えをいたします。  御質問のように昨十四日午後、北関東の一部に降ひょうがございまして、葉タバコ、桑、野菜、麦類等に被害の発生があったようでございます。ただ被害の実情並びに被害金額等につきましては、県からの報告がまいっておりませんので、目下のところは不明でございます。被害額の調査につきまして、県の報告と農林省の統計調査事務所の調査の結果に食い違いがございましたことは、過去において事実でございます。で、その食い違いにつきましては、御案内のように、県の調査といいますものは、聞き取りもしくは見込み調査でございまして、統計調査事務所の行ないます調査は統計的手法に基づく調査でございますから、そこに食い違いが起こるのはある程度やむを得ないのでございます。また食い違いと申しましても、事例によりまして県の調査のほうが被害額が大きいという場合もございます。逆に県の調査が少ないというような場合も現にしばしば起こっておるのでございます。私どもは統計調査事務所の行ないます統計手法に基づく調査を対策の基準の数字として使わざるを得ないということでございまして、要は御指摘のございましたように、被害農家の立場というものを考えまして正確な被害の調査をするようにつとめるべきである。そういう点については今後、私どもも留意をしてまいりたいというふうに思います。
  149. 船田譲

    ○船田譲君 それでは次に、本来の質問に入ります。  私は、政府が「四〇年代への挑戦」と銘打って発表せられました経済社会発展計画におきまして、目的達成のための重要政策としてあげておられます中に、「人間能力の向上」という項目と、「自主技術の開発」という二つの項目がございますが、この二点に焦点をしぼりまして文部、科学技術庁、労働、通産の各大臣から政府のお考えをお聞きしたいと存じます。  まず第一番目に、文部大臣にお尋ねを申し上げます。  本計画の中で政府が心配しておられますように、今後の生産年齢人口の推移にはかなり問題がございます。すなわち若年労働力供給の減少、中高年齢層の占める割合の増加、学歴の高度化による技能労働者の不足等でございます。したがって今後は、労働力の供給の不足を質の向上で補っていくことが必要であると思いますけれども、そのためには、いま申し上げましたように、人的能力の向上をはかることを第一義に考えていかなければならないと思います。その意味で、まず第一番目に、後期中等教育のあり方が重要になってくると思われます。そこで私は、昨年十月の末に中央教育審議会が行ないました答申に関連をいたしまして、次の諸点につきまして政府の方策をお聞きしたいと存じます。  第一点は、高校教育の多様化をどう実現していくかということであります。あの答申の中には普通学科、専門学科のそれぞれの学科の立て方の問題であるとか、あるいは生徒の適性・能力の検定のしかた、あるいは進路指導のしかた、定時制、通信制教育の制度の併置、併修の形態の拡大、あるいは普通科を含めまして高校各科におけるところの職業教育の充実と、いろいろな項目に分けて答申をしておられますけれども、文部大臣はどういうお考えを持っていらっしゃるか。  第二点は、勤労青少年に対する教育の機会の保障がうたってありまするけれども、それの具体策をお聞きしたいと思います。  第三点は、各種学校制度の再編成の問題でございます。各種学校制度は、これは後期中等教育の中の重要な一環でございまするけれども、この時点におきましてぜひとも各種学校制度の再編成が必要であると、こう考えるわけでございます。なお、この各種学校制度の再編成に伴いまして、従来各種学校として一応認可されておりましたところの外国人学校制度の再検討の問題も必然的に派生してくると思うのであります。これにつきましては一部に不安を持たれる方々もおられるのでありまするから、政府は真意を尽くしてこれらの誤解を解きまして、各種学校制度再編成とこの外国人学校制度の問題とを、一体をなして、整備をはかるように努力をせられるべきであると思いますけれども、この点についてどうお考えであるか。  以上の三つの点、すなわち高校教育の多様化、勤労青少年に対する教育の機会の保障並びに各種学校制度の再編成に伴いまして後期中等教育に携るところの教員の養成及び現職教員の再教育の問題も、なかなか重要な問題であると存じます。以上の四点について文部大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  150. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 人的能力の開発につきまして、特に労働力の質的改善ということはきわめて現段階において必要だと存じます。いま船田委員の申されましたように、文部省といたしましては後期中等教育の整備につきまして、昨年十月の中教審の答申に基づきまして、この拡充整備にいま全力を注いでおるわけでございます。  第一問でございます高等学校の多様化の問題でございますが、これはあらゆる能力及び社会的需要に応じましてこの高等学校の教育を多様化するという面につきまして、ただいま理科教育及び産業教育審議会に具体的な内容につきまして諮問をいたしまして、審議をいたしていただいているわけでございますが、その結果によりまして、それに即応した施策を講じてまいりたいと思います。ただしかし、現段階におきましてもたとえば高等学校の教育においていろいろな多様化の線に沿いました学科新設――それに即応する意味におきましてそういう学科をつくります場合に、これに対しまして国が施設、設備について援助をする。一例を申し上げますと、衛生看護科等は非常に社会的に要望されておるのでございまして、これに対しまして施設設備の補助を四十二年度予算にも計上いたし、高等学校の多様化につきまして今後とも努力してまいるつもりでございます。  なお、勤労青年に対しまする教育といたしましては定時制及び通信教育、これらにつきまして、定時制につきましてはその施設設備の拡充のための補助でございますとか、定時制の夜間学生に対しまする夜の給食に対しまする援助とか、あるいはまた通信教育に対します教科書の供与とか、こういった問題につきまして勤労青年の教育に対しまして努力をいたしておるばかりでなく、本年度から特に定時制と通信制を併置いたしまする独立の高等学校の新設を、全国で三校でございますが、それを認め、また通信制と定時制と共に学習ができるような体制でやることを、ただいま推進いたしておるのでございます。  なお、最後の各種学校の問題でございますが、後期中等教育の段階におきまする各種学校は、相当わが国におきましても重要な面を分担しておるのでございまして、これも中教審の答申にもございましたし、ぜひひとつ今回学校教育法の改正で各種学校の格づけをして、そうしてこれが健全な発展を期したいと思って、ただいま国会に提案いたします準備をいたしておるのでございまして、この点はぜひひとつ、この国会で御審議を願いたい。それにつけ加えまして、いま申されましたように、各種学校の制度を新たに設けますと、従来各種学校として認可されておりましたいわゆる外国人学校は、これが普通の各種学校と同じように新たな各棟学校になり得ません。学校は全部一年をもって廃止、法の適用外になるわけでございます。そこで、これは特に、私どもとしましては、国際親善の立場から外国人学校制度を設けて、そうして外国人のみを教育する学校制度を認め、しかもその学校におきましてはいわゆる民族教育――その祖国のことばで祖国の国語及び歴史とか地理とか、これらを何ら規制することなく自由に行なわせます意味において、この制度を設けようということにいたしておるのでございますが、残念ながらそれは過去の歴史的事実もあったと思いますが、このわれわれの意図に対しまして非常な反対の声もあるようでございます。この辺につきましては私どもの真意を十分にわかっていただければ、必ず私はわれわれの、外国人学校制度の創設に賛意を表していただけるものと確信をいたしております。そのために私ども、今後のいわゆる内容の説明、これを宣伝と申しますか、わかっていただきますような努力は、最善の努力をいたしてまいるつもりでございます。
  151. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 速記をちょっととめて。  〔速記中止〕
  152. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 速記を始めて。
  153. 船田譲

    ○船田譲君 次に、高等専門学校制度及び学制全般に対する再検討について文部大臣にお尋ねしたいと思います。  数年前に工業高等専門学校が提案せられましたときに、これに戦前の専門学校の復活であるとか、あるいは、戦後せっかく単線型の六・三制が完成をしてきておるのに、これをくずして、いまさら複線型にして、いわゆる差別化をしないでもいいじゃないかというような反論もございました。そういう反論にもこたえる意味を含められまして、次の諸点につきまして大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。  第一は、ことし初めて工業高専は卒業生を出しましたのでありますが、その卒業生に対しますところの受け入れ側の反響と申しますか、実績と評価と申しますか、それは、どのようなものであるかということ。  第二は、現在の学校制度におきますところの高専制度の存在意義でございます。  第三点は、今年新たに商船高専にまでこの高専制度のワクをお広げになろうということでございますけれども、その理由をお聞かせ願いたいということ。また、これに関連いたしまして、航海訓練所の所管の問題をめぐりまして、文部省と運輸省側に意見の必ずしも一致してない点があるように承っておりまするけれども、文部省側からごらんになりました船員養成の一元化の問題を、どうお考えになっておるかということでございます。  第四点は、さらに商船高専からこの高専を他の分野にもお広げになる御意思があるかどうか。一説によりますと、農業あるいは水産、電波に関する工業高専をつくるような動きもあるように思っておりまするけれども、もしそういたしますると、一部に、これは旧制専門学校制度の全面的な復活だというような非難をする方もあるわけでありますが、それに対してのお考えをお聞きしたいと思います。  最後に、第五番目に、この際高等学校も多様化をする、また高専もワクを広げていくということになりますると、短大の存在意義というものが、あらためて問題になってくると思います。この短大制度の再検討を含め、また、過日、東京大学の法学部におきまして専門課程を二年から三年に延ばそうというような提案が行なわれたと言われておりますけれども、大学におきますところの一般教養課程の年数と、それから専門課程の年数との割り振りの問題、あるいは大学院のあり方等、学制全体にわたって検討をする必要があると思いまするけれども、これについての大臣のお考えいかん。  以上の五点につきまして御答弁いただきたいと思います。
  154. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) ことし約二十の高専から卒業生が出まして、その数は二千四百名余でございます。これの就職の状況を見ますと、上級学校に入学をいたしました者を除きまして、九十数%が全部就職をいたしております。求人数は、平均いたしまして約五倍、これは、その事実から見まして、高専の卒業者に対します産業界の期待が非常に大きく、しかも、その初任給は短大と大学卒業者との中間に位置づけられておるような状態でございまして、この高専制度が、五年間の一貫教育といたしまして、人づくりと申しますか、技術教育のみならず、人間教育におきましても相当高く評価されておるものと私は考えておる次第でございます。  そういう意味におきまして、もちろん、この高専制度をつくりますときには、まあ六・三制をしきますときに、わが国の学制を単一化するという一つのねらいがございまして、いろいろそういったような、一つの制度の上に、単一コースの上に乗せるということが重大な問題でございました。しかし、実際上の社会的需要は、必ずしも六・三制だけではやはり十分に社会の需要にマッチしないというところから、この六・三制以外に高専制を認めるということになったわけでございますが、現在の段階におきましては、やはり高専制を設けましたことは決して誤りではなかったと私ども考えておるのでございます。ただ、六・三制はあくまでわが国学制の基幹でございまして、やはりこの高専制がよかったからといって、みだりに学制を紊乱するような状態に持っていくことはできるだけ避けなければならない。あくまで、やはり高専制は一つの特例だと考えていくべきではなかろうかと思います。そういう意味におきまして工業高専だけを最初認めたのでございますが、今度の国会にお願いいたしておりまするように、商船高専の制度をお認めいただくように提出する予定でございます。しかして、商船高専を提案いたしました理由は、近時わが国の海運が非常に発展をしてまいりますし、近代化の線が非常に著しくなっている、その船員の素養と申しますか、に対する要望が高められてきた。特に外航船舶の要員につきましては非常に高い技術者の要請がなされてまいりましたし、これに対しまして、運輸省にございます海技審議会、これがいろいろ論議した結果、ただいまの五つの商船高等学校を改組しまして、高等海船に改組するのが適当であるという御答申を得まして、なお、文部省におきましては、その答申に従いまして、その学科内容、教育内容等を詳細に検討をいたしまして、高専制を設ける必要があるという観点から、今回商船高専を認めることにお願いをいたしておるわけでございます。  そこで、それじゃこの高専制度を無制限に拡充するかどうかという問題になりますと、原則といたしましては、これはやはり学校教育制度の一つの特例でございますので、無制限に拡大すべきものではない、しかしながら、工業やら商船以外におきましてもなお高専制度の要望が相当今日あるのでございまして、これらは、短期大学のあり方等とも関連いたしまして十分検討をしていかなければならぬと存じまして、四十二年度の予算におきまして、この問題の研究、検討をいたしますための多少の経費も計上いたしました。予算が通過いたしましたならば、私どもは、学識経験者関係者の御協力を得まして、ぜひひとつ高専制度の将来のあり方、学科の拡張はこの程度まではという問題を検討をいたしまして結論を得たいと思っておるのでございます。  高専制度が出ますと、短期大学のほうはどうなるかということが問題であろうかと思います。短期大学につきましては、御承知のように、私立短期大学は非常に今日わが国で重大なウエートを持っておるのでございまして、私学の問題にも大きな影響を持ちますし、ことに私は、短期大学といたしましては、技術的な養成も必要でございますけれども、やはり、技術養成という以外におきまして、教養を高めるとか、こういった面において非常に重要な役割りを持っておる。特に女子に対しましては非常に短期大学というものは高く評価されておるときでございますので、その意味において、短期大学の今後の行き方も十分考えていかなければならぬと思うのでございまして、高専制ができましたからといって、直ちにこの短期大学制度に、そう重大な、大きな影響を及ぼすものとは思いませんし、また事実、及ぼさないように考慮を払っていくのが適当ではないかと思っておるのでございます。そこで、そういう意味におきまして、ただいまの学校制度におきまして、後期中等教育の問題、大学における一般教養もしくは専門教養のあり方、これらにつきまして、私としましては、いま直ちにわが国の教育制度を変革するという考え方は持っておらないのでございますが、しかし、わが国の経済社会の進展、文化水準の向上、それらの社会的需要とをあわせまして、この学制全般にわたりまして再検討するときが来ておるんではなかろうか。私は、できましたならば今年度から、こういう意味におきまして、その長期的視野に立ちまして、わが国の学制について十分検討をいたしたいと考えておるのであります。
  155. 船田譲

    ○船田譲君 いまの質問の中で、船員養成制度の一元化についての文部省のお考えをちょっとお伺いしたい。船員養成制度の一元化の問題。
  156. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 失礼いたしました。  ただいま、この船員の養成につきまして、いわゆる商船大学、商船高等学校と、今度つくります商船高等専門学校、これが職員の養成になりますが、そのほかに、船舶に乗ります部員でございますか、これの養成については海員学校が運輸省にございます。これは短期養成の、いわば各種学校に類するものでございますが、この問題につきましても、やはり高等学校修了程度の教育を受けるということは非常に一般的な要望となっておりますので、このあり方につきましては、ただいま運輸省と文部省との間におきましていろいろ相談を進めておるわけでございます。  お尋ねにございました航海訓練所の問題でございますが、航海訓練所は、戦争中に、実は海運行政の一元化という問題から、当時の商船学校、高等商船学校と合わせて、文部省にありました航海訓練所が運輸省に移管になりました。終戦後、商船大学、商船高等学校は文部省に返ってまいりましたが、航海訓練所だけは現在運輸省にそのままの姿で残っておるわけでございます。しかし、特にまた商船高専をつくりますにつきましては、この商船高専の教育内容を相当充実していくためには、教育として現場の教育が学内におきまする教育と一貫いたしまして、そして常に連係を持ってやらなければならぬ、特に教育の一貫性という意味から申しまして、私どもとしましては、ぜひ航海訓練所をこの際文部省に返還をしていただいて、そして商船高等専門学校の教育内容を充実してまいりたい、そのことを強く希望いたしまして、ただいま運輸省にそのことを御要望申し上げ、また、行政管理庁におきまして早急にその所属、帰属につきましてごあっせんをいただきますようにお話を申し上げておる次第でございまして、文部省といたしましては、ぜひひとつこれは文部省にお返しをいただきたいと切望をいたしておるわけでございます。
  157. 船田譲

    ○船田譲君 次に、幼児教育の充実についてお尋ねをしたいと思います。  大臣は、近い将来におきまして、まず就学年齢の引き下げを必要とするお考えはおありかどうかということであります。と申しますのは、昨年、中村元文部大臣の御発言でしたか、やがては就学年齢を一年引き下げることも考えなきゃならぬというような御発言がありましたが、剱木文部大臣になられましてから、むしろ大学制度の整理のほうが先であるというようにとれます御発言があるわけでございますので、この際もう一度承っておきたいと思います。  それから第二点は、ことしは幼稚園教育振興七カ年計画の第四年目に当たるわけでございますが、この七カ年計画の最終目標の幼稚園就園率をどのくらいに踏んでいらっしゃるか、また、その際に幼稚園以外の幼児保育施設の就園率、あわせてお聞かせいただきたいと思います。また、その最終目標の幼稚園就園率の中で、大体国公立と私立の幼稚園の分担の割合はどのくらいにお考えになっていらっしゃるか、この点をお聞きしたいと思います。  それから第三点は、昭和四十一年度に大体幼稚園の六三%が私立の幼稚園でございましたのですが、その幼稚園の充実のために、昭和四十二年度の予算案にも施設費の国の助成がことしから顔を出しております。ただ、ことしの一月に幼稚園の暫定基準が切れて、おそらくそのままになっているんじゃないかと思いますけれども、これはどのように今後改めていかれるか、お聞きしたいと思います。  それから第四番目には、幼稚園の設置者は、学校教育法の百二条によりまして、当分の間は学校法人によらなくてもいいことになっております。しかし、幼稚園も一条学校でございまするから、やがては、ことごとくの幼稚園が学校法人立になることを文部省としては指向していらっしゃるだろうと思いますけれども、大体その当分の間というのはどのくらいのタイムラグを考えていらっしゃるかということと、その場合に、現在学校法人立が大体二一%、それから宗教法人立が三〇%を占め、残りが個人立あるいは財団法人立等でございまするけれども、この特に三〇%を占めておりますところの宗教法人立の扱いをどういうふうに指導していかれるかというような、以上の四点について文部大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  158. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) お答えいたします。  中村文部大臣のときに、義務教育年齢を一年下げるという御希望についてお話があったことは事実だと思います。ただ、私としましては、先ほどお答えを申し上げましたように、この就学年齢を一年下げるということは学制全般に影響を及ぼすことでございますので、わが国の現在の学制を長期的視野に立って再検討する、この際に、就学年齢を一年下げるべきかどうかという問題もあわせて検討すべきではなかろうか。すなわち、ただいま幼児教育というのが非常に重要視されてまいりまして、これが、後に申しますが、七年計画で拡充計画をやっておるわけでございますが、しかし、この拡充計画をやりましても、これを就学年齢の低下ということと関連をどう持たしていくかという問題は重大な問題でございますし、なお就学始期の問題につきましては、よほどこれは学問的な研究を必要とすると思います。いかなる教育をいかなる方法で、どういうふうにやっていくか、このことは相当学問的な研究の対象になる問題でございますので、就学年齢を一年低下する、下げるということを決定するのには、もう少し慎重に考えるべき必要があるんじゃないか。ですから、一年低下、下げるということを私反対しておるわけではございませんけれども、やはりもう少し慎重にこれは取り扱うべき問題だと考えておるのでございます。  それから、七カ年計画の進捗状況でございますが、三十九年から昭和四十五年までに就園率を大体六三・五%まで高めることを目標といたしまして、その学級数は約一万五千八百学級の増加をはかっておるわけでございます。昭和四十一年までに新増設されましたのが四千三百八十六学級で、大体計画どおりにやっておるのでございますが、昭和四十二年度におきましては、四十一年の施設設備の予算を大幅に拡大いたしまして二・二倍、すなわち四億七千八百万円を計上いたしまして、この幼稚園の拡充について強く推進をしてまいる予定でございます。六三・五%と申しますのは、大体において幼児のうちで保育所に入所いたします者を一八・七%、その他特殊事情に基づきます通学困難な者等を入れまして三六・五%が大体幼稚園の対象外にいたしました。六三・五%で大体幼児を全部対象にできると、こういう計画のもとに進めておるのでございます。  それから、現在までにおきまして、お説のとおり公立幼稚園がはなはだ少ないのでございまして、その大部分は現在私立の幼稚園でございます。公立が約三六%、私立が六四%でございますが、現段階におきましては、まあ公立をできるだけ増加するように努力はいたしておりますけれども、現実の姿といたしましてそれが急激に、やはり七カ年計画で増しておりますけれども、その増加率は、現在公立とやはり私立がほとんど同じ比率で増加しておるような状態でございます。まあ公立もできるだけ多くするという方針はとっておりますけれども、ただいまそのような状況でございます。  それから、私立の幼稚園の設立者が、宗教法人が三〇%以上あるわけでございまして、これが幼稚園の、いま申されました幼稚園の基準でございますが、幼稚園の基準は三十二年の二月一日にきめました。これで大体本年の、四十二年の一月三十一日までに暫定基準というものが切れたわけでございますので、これに対しましてあと暫定基準をどうするかということで、一応その基準につきまして、その取り扱いを決定したわけでございます。第一は教諭の数の問題でございますが、教諭の数が三分の一までは助教諭または講師をもってかえることができるとありまして、それで、これを強く要望いたしましてもなかなか正規の教員が充当できませんので、この暫定は一応延ばすことにいたしました。  それから幼稚園の規格でございますが、園舎やら、運動場の面積等についての一定の基準を定めましたけれども、これに対しては、この基準はいま直ちにこれを全部基準どおりということは困難でございますので、もうしばらくこれを延期するということにいたしました。ただ、宗教法人等で保育室を他の施設を借りてやっておりましたのを当分の間認めておったのでございますが、この点は、その幼稚園の中においてこれをつくらして、その施設を利用することを認めないことにいたしたのでございます。そこで、こういう暫定措置をとっておりますのも、幼稚園のまず数的な拡充をこいねがっておるからでございまして、内容面においてはまだたくさん改善しなければならぬ点も残っておりますし、たとえば宗教法人の問題がございましたが、どうしても幼稚園はやはり終局におきましては学校法人ということが望ましいわけでございます。個人立と宗教法人立がございますけれども、この点についてあまりに強く伝統的な姿からいうわけにはまいりませんので、いましばらくやはり現在の状況で、自然に学校法人立になることを指導していきたい。ただ、ことしから一億円、私立幼稚園の施設の補助を認めたわけでございますが、この新しい補助を出します場合においては、対象となりますのは学校法人立の幼稚園に限ると、こういうふうにいたしたいと思っております。大体その程度でございます。
  159. 船田譲

    ○船田譲君 次に、青少年の育成に関する施策について文部大臣にお尋ねしたいと思います。  まず、第一番目に、青少年育成に関する政府の施策の重点はどこにあるかということであります。それから第二点は、総理府に青少年局ができておりますが、これと文部省との間の施策の相互関係はどのようになっておるかということであります。第三点は、青少年の奉仕活動に関する施策はどうなっているか、たとえば日本版の平和部隊等、いわゆる海外派遣が行なわれておりまするけれども、その海外派遣の成果はどのようなものであるかということを簡単にお答えいただきたいと思います。なお、戦後の日本の教育は、教育の機会均等及び平等ということを主体に置いておりますけれども、この辺でたとえばソ連がピオニールで行なっているように、あるいはイギリスがパブリック・スクールで行なっておりますような、よい意味での指導者教育というものも検討すべき時期にきていると思うのでありますけれども、それについての大臣のお考えはどうでございましょうか。以上、四点についてお答えいただきたいと思います。
  160. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 青少年の育成に関しまする重点事項でございますが、これはまあ文部省といたしましても社会教育、いわゆる体育局を通じまして各種の施策が青少年の健全育成ということに集中されておると思うのでございます。社交教育的に申しますと、まず青少年の指導者を養成する、資質の向上をはかる、いわゆる指導者の養成計画でございます。策二番目は、青少年の指導の中におきまして最も重要な役割りを占めます家庭教育、いわゆる家庭教育を青少年指導を主眼としまして振興していかなきゃならぬ。そこで、家庭学級というのを文部省は非常に今年は力を入れまして、家庭学級をずっと盛んにしていきたい。家庭における青少年に対しまする養成をやってまいりたい。次に、青少年教育の施設につきまして、いろいろな意味において重点的にやっておるのでございます。この内容を一々申し上げますれば非常に多岐にわたるわけでございますが、特に私がここで申し上げたいと存じますのは、青少年教育の施設の拡充でございますが、その一番おもなものは青少年の宿泊訓練の場としまして青年の家の問題でございます。ことしは第六国立青年の家を建設をいたしますと同時に、都道府県市町村において行ないます青年の家につきましても援助を相当強くいたしておるのでございます。ただいま国立青年の家が五つ、それから公立の青年の家が百十六ございます。国立青年の家で四十一年度において約四十万人、公立青年の家で百万人、百四十万人の青少年がここで宿泊訓練を受けておるわけでございまして、将来はぜひひとつこれは二百万人ぐらいの程度までは持ってまいりたいと思っておるのでございます。その他青年スポーツの振興でございますとか、青少年の芸術活動の促進でございますとか、そういったような面につきましても相当施策をいたしておるわけでございます。  ここで、総理府に青少年局というのがあるがこれとの関係はどうかと申しますと、青少年を対象といたしました施策はもちろん文部省におきましても重要な事項としていたしておるわけでございますが、しかし、これはただいま申されましたように、海外へ技術者の青少年の派遣のため外務省でございますとか、あるいは農林省の農業におきます海外派遣でございますとかいろいろ各省でやっておるわけでございますし、なお犯罪その他の関係から法務省等ともいろいろ関係がございます。これらの問題を各省にまたがって実施しておりますのを、この内閣の総理府にございます青少年局で総合調整をしてまいるというために青少年局はできておるのでございまして、この青少年局が各省との連絡調整をいたし、各省がこれに基づいて各省の施策をやっておるわけでございまして、その間におきましてよく連絡協調し、そして調整をしてまいっておりますので、ただいまのところその関係は非常に順調にいっておると思います。ただ、事業の内容におきまして、各省でやることと、それから青少年局でやることが必ずしも画然として分けられるわけではございませんけれども、私は青少年問題としては育成が非常に重大な問題でございますので、各省がいろいろな施策について力を合わしてやってまいる、その間できるだけ矛盾撞着がないように一本化して、一つの青少年健全育成という面におかれまして協力する形が必要ではないか、これはわれわれも今後努力してまいりますし、矛盾撞着のないように政府部内で努力してまいりたいと存じます。  それから海外派遣でございますが、海外派遣におきましても、ただいま申しましたように、外務省の関係農林省関係、あるいは文部省におきましてもいろいろございます。青少年団体としてのたとえばボーイスカウトの海外派遣の問題は、今年度三千五百万円ですか、計上してあるのでございますが、その他ユネスコの関係で国際交流の問題でございますとか、あるいはスポーツによります国際交流の問題、いろいろ青少年の海外派遣をやっておるのでございますが、私どもとしましては、それぞれ各省でやるものも合わせまして、それぞれその目的に向かいまして相当の成果を今日あげておるものと確信をいたしておるのでございます。
  161. 船田譲

    ○船田譲君 最後にお聞きいたしましたよい意味での指導者教育をどうするかということは……。
  162. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) これは青少年の中の指導者的な人の養成と、こういう意味だと思うのでございますが、青少年の指導者を養成するという面につきましては相当強力に推進しておるのでございますが、指導的立場に立つ者の養成と申しますのは、実は青少年を海外派遣する場合におきましても、それから国内において青少年のいろいろな施設をいたします場合においても、大体において指導者的立場に立つ方を対象にする場合が多いのでございますが、ただ、指導者養成というような確定的な一つの計画をもってやっておる面は非常に少ないと思います。これはお説のように日本におきましても今後十分考えていくべき問題だと思いますので、この点につきましては十分なお検討さしていただきたいと思います。
  163. 船田譲

    ○船田譲君 以上で文部大臣に対します質問を終わります。  次に、労働大臣にお尋ね申し上げたいと存じます。若年労働力供給の不足の激化に伴いまして、労働力の確保はわが国の産業経済の維持発展の最重要問題になってきたと思われます。これについて次の諸点に対する大臣のお考えをお聞きしたいと存じます。  第一は、学歴が高度化するに伴いまして技能労働者が不足ぎみとなり、逆に事務系労働者のやや過剰ぎみの傾向があるように考えられますけれども、これに対してどういうふうに対処をしていかれるかということであります。第二点は、身体障害者、それから中高年齢者の雇用促進とその職業訓練の問題でございます。これの現在の実態と今後の進め方について簡単に御説明いただければ幸いだと思います。あわせて重要な労働力と考えられますところの婦人労働力の活用にあたりまして隘路となっておる点はどういう点があるか、その隘路を除いて活用を促進していく方策について簡単に説明をいただきたいと思います。  〔理事平島敏夫君退席、委員長着席〕  それから第三番目は、学卒新就職者の企業への定着率でございます。特に中学新卒者が新しい職場につきまして一年以内にやめてほかの職場に移る、転々としているうちに転落をするという例がかなり多いように聞いております。それにつきまして現実の定着率はどうであるか、また、それを高めていく指導はどのように行なわれているか。以上の三点につきまして労働大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  164. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 第一の技能労働力の不足につきましては、御承知のように、毎年約百万人といわれておるのでございます。これに対しまして労働省といたしましては総合職業訓練所、公共職業訓練所、いわゆる公的職業訓練所で約十二万人、主として中卒を中心といたしまして訓練をいたしておるわけであります。また、雇用をいたしました事業内の職業訓練所、これで約八万人近い技能者を養成いたしておりまして、それぞれの需要に応じようといたしているわけでございます。しかしながら、根本は日本人がいわゆる技能者、ブルーカラーというものを軽視する風潮が依然として残っているわけであります。いわゆる各会社でも工員さんと職員さんというのを御承知のように雇用の差別をつけておる会社がたくさんあるわけでありますが、したがって、学校教育とそういった労働省の職業訓練と、加うるに社会に技能者をもう少し尊重するという気風を醸成していかなければたいへんなことになると考えまして、われわれは技能者表彰制度あるいは学士院に相当するような技能院というようなものをつくって、また、三年後には技能オリンピックというものを日本に招致しようといろいろ考慮をいたしておる次第でございます。  二番目の、中卒者が、若年労働力が非常に減ってまいりまして、これは出生率の低下が影響いたしておりますし、また、大学志望者が非常に多くなってむしろ中学卒業者が減っておるとか、そういった状態から、あの安定計画の中では、昭和四十五年には現在百五十八万人という学校卒業者の就職者に対しまして百十七万人、約四十万人近い若年労働力の供給が減ってまいるわけでございます。これはたいへんな問題であります。他方、中高年者は十年後約五百万人ふえていく、こういった事実を踏まえまして、今後の労働力というものをどういうように有効に活用していくかという問題が一番大きい問題でございます。それにはむろん人口問題もからみますが、結局中高年を、あるいはまた婦人労働力をいかに活用するかという点にしぼられてくるのではなかろうか。  そこで、今後の雇用情勢を考えますと、中高年の方、婦人の方にうんと働いてもらうようにしなければならない。その対策といたしましては、中高年者にいつまでもできるだけ働いてもらうためには、やはり定年制の延長、五十五歳では現在の心身の状態、寿命の伸びた状態からいって、あれは明治時代の遺物だといわれております、これの延長を呼びかけておるわけであります。  それから、中高年を雇う中小企業者に対しましては、住宅奨励金というものをことしの予算で設けまして、月四千円、一カ年そういう中高年を雇う中小企業には差し上げていく。また、そういった人たちのための住宅融資約八十億円をもちまして中小企業の労働者、主としてこれは中高年が多いのでございますが、そういう人たちの施設も行なうことにいたしておる次第でございます。  次に、お尋ねの婦人の雇用に対しましては、いままでは結婚までの雇用でございました。最近急激に既婚者の雇用者がふえてまいりました。九百三十万人に及ぶ――これは農業労働をのけております、いわゆる一般の九百三十万人に及ぶ婦人のそういう雇用者の約四三%までが既婚婦人になってきておるわけであります。これはアメリカン・スタイルといいますか、欧米スタイルに変化しつつあるわけでございます。こういった事実に即応いたしまして、労働省といたしましては、こういう人たちの隘路になっているいわゆる託児所、保育所、子供を預かってもらう施設の充実、これが厚生省で本年度も大幅に拡充されておるわけでございます。  もう一つは、婦人は家庭を持っておりますから、パートタイマーというものがちょうど兼業農家みたいなもので、雇用面におけるパートタイムというものをやはり大きく取り上げて、家庭婦人の家庭の仕事、育児、それから職業というものを三つ調整していかなければならない、そういう観点から、パートタイマーの職業につきましては、特別の相談所も設け、われわれといたしましては、この雇用条件の改善その他につきまして特に配慮をいたしてまいりたいと考えておるのであります。特に団地夫人なんかに対しましては、千葉県あたりではすでにパートタイムの仕事を日立関係の会社が委託をいたして成功いたしておるという例もぼつぼつ出てきておるわけでございます。  それから、身障者をどう活用するか、就職さすかという問題は、御質問の第四点でございまするが、これに対しましては、身障者就職促進のための法律によりましていわゆる雇用率を設定いたしております。民間会社では一・二%ですか、官庁関係は、一・五%とか三%とか、そういう雇用率を設定いたしまして、身障者を百人のうち何人という、義務づけといいますか、強制力はありませんが、一つの雇用率設定による勧告奨励をいたしておるわけでございます。この点につきましては、民間会社におきましてはおおむね雇用率のとおり身障者を採用いたしております。もちろんこれは平均でございまして、一・二%に満たない事業者に対しましては、職業安定所を通じまして雇用率の充足に努力をいたしておるわけであります。官庁関係におきましては、それぞれやはり雇用率設定に伴いまして、採用いたしてもらっておるわけでございまするが、残念ながらこの官庁の法定雇用率が一・四%でございまするが、三公社の例をとりますると、身障者の雇用率の一・四%を達成しておるのは国鉄、専売でございまして、電電公社は残念ながら〇・九八%という低い雇用率になっております。まずそういった公の機関から模範を示さなければならないんですけれども、残念ながらそういう数字が出ておるわけであります。  それから、申しおくれましたが、中高年の雇用率、いわゆる六五%は中高年だ、こういう雇用率もございまするが、これもおおむね、官庁関係におきましてはそれに即応して中高年の活用をはかっていただいておりますけれども、その中で郵便配達人――電報なんかを配達される、そういう部面だけがやはり中高年の雇用率達成においては大幅にうまくいかない。それから、エレベーター・ガールといわれておりますが、ガールということばが適当かどうか知りませんが、官庁のエレベーターをやる人は、若い御婦人よりも中高年という雇用率設定をいたしておるんでありますけれども、残念ながら中高年の採用率が三〇%。それから道路公団の切符を切る方、こういうのも中高年の雇用率設定の業種の中に入っておるんですけれども、なかなか道路公団の実情や雇用状態でこういう面で目的を達しておらない。  今後とも中高年の雇用率の達成と身体障害者の雇用のための雇用率設定の実施に労働省としては努力をいたすとともに、特に身障者に対しましては適当な職種というものを設定いたしまして、職業訓練、リハビリテーションというようなものをやってまいりたいと思います。この中で、特に私は最近の明るいニュースはムサシノ電子工業という、これは御殿場にできるんですけれども、三百人ほど、いわゆる手押し車で仕事をしなければならぬという重身障者を中心として、全部身障者で電子工業をやっているという会社もございます。これは六月から操業開始するのですけれども、それで経営が成り立つというのです。こういう明るい一つの民間の会社が模範を示していただきましたならば、こういう電子工業は身障者でも十分採算ができるのだというモデルケースになりますので、大いに期待いたしておる明るいニュースもあるわけでございます。  最後に、特に少年集団就職者の転離職率が非常に高いじゃないか、これをどうするかという御質問でございます。最近新聞で大きくいろいろ話題になっておりまするが、実際のところは、東京都の場合を調べますと、少年の集団就職した者の九カ月以内の離転職率は大体一割四分ということになっております。しかし、鹿児島県から集団就職した人を三年の時限をとって調査をいたしましたレポートもございまするが、これによると約四割九分が三年間で離転職している、こういった報告も出ておるわけであります。しかし、この問題は、青少年がやはり一つの夢を持って来るのですから、必ずしも離転職しちゃいかぬというのでないので、やはり自分の夢に合わない仕事というような場合に職場を変わっていくということは必ずしも悪いことではありません。しかし、それによって非行青少年に走っていく、こうなるとたいへんなんです。そこで、労働省といたしましては、従来、職場に安定さすための定着指導員というのを各県にそれぞれ地方公務員として持っているわけであります。それから、非公務員である定着指導員、東京で二百五、六十名おりましょうか、そういった人を活用して、そういった少年の就職者というものの定着指導をいたしておるわけでありますけれども、それだけでは不十分である。そこで、先般労働省から各出先機関に対しまして、特に受け入れ地の市町村、府県に対しましては、年少就職者相談室を新たに設置をいたしまして、そうして身近なそういった少年就職者の相談に応じよう、かように考えておりまするとともに、もう一つの大きい理由は、就職のときの条件が違うじゃないか、一万七千円だと思っていたら八千円だった、こういう不満もあるわけであります。ところが、よく調べてみますと、それは食費とか住宅費というのをのっけて一万六千円といっている。それを引かれると八千円くらいになるのですね。そういったことが、就職案内者のほうはうそを言っているじゃないか、こういうのですけれども、やはり求人する会社がそういったことをこまかく間違いないようにひとつ毎年毎年の求職時期にははっきり出すように指導をいたしておるわけでありまして、いやしくも少年がだまされたというようなことでは、実際はだましていないのですけれども、誤解を与えますので、まずその就職のころからひとつ少年の夢を破らないようにしようじゃないか。それから就職いたしましても、あとアフターケアーを一年にわたりまして十分にやっていくということも考えるべきではないか。いろいろ考慮をいたしておる次第でございまして、離転職率が高いということは、決して全部悪いというわけじゃありません。もう少し、もうちょっと落ちついて職場に専念してもらうというように、労働大臣といたしましては最善の努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  165. 船田譲

    ○船田譲君 次も労働大臣にお聞きしたいのでありますけれども、第一に、いわゆる企業内学校の扱い方については、労働省側と文部省側とに多少の考え方の相違があるようでありますけれども、企業内学校の扱い方に対します労働省側のお考えを聞きたいということであります。また、高等学校にも職業課程があり、そこで技能に関しますところの単位または資格を認定いたしております。それから、おそらく企業内学校にもそれに類するものが、これは国の単位ではないかもしれませんけれども、あると思いますし、また公の職業訓練機関にも各種の技能の単位認定制度があるようでございます。この高等学校の職業課程、企業内学校、あるいは公の職業訓練機関等でばらばらに出しておりますところの単位の認定等は、共通なものとして、相互に関連できるものとして与えたらどうかと思いますけれども、この点についてどうお考えであるかどうかということが一点。  それから、第二点は、技術革新を企業が採用いたします際に、欧米の諸国におきましては労働者側のかなりな反対があるということを聞いております。いわゆる合理化反対の闘争でございますけれどもわが国ではそれがどのようになっておるかということであります。一説によりますと、わが国特有の終身雇用制、年功序列型の雇用関係によって、設備投資に技術革新を取り入れる場合の労働者側の反対というものがそれによって多少緩和されておるというようにも聞いておりますが、実情はどうであるかという、この二点についてお聞きしたいと思います。
  166. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 本来は、学校教育と労働省で行なっておる職業訓練教育というものは相補うべきものでございます。そのいう観点で、定時制高校のある単位を企業内訓練所でマスターした場合には、取ったことに認定してあげるというようなことを文部省の御配慮ですでに実現をいたしておるわけでございます。また、事業内の訓練を中学校を出まして三年受けまして完了した者は、ちょうど同じ年の高校出の新しく入ってきた人たちよりも、給与の面で、この私の手元の数字では四二・六%高く会社が扱ってくれております。また、公共職業訓練の場合には、中卒で一年間この訓練を受けますと、それを経ない者に比べまして五割近い若年労働者が、月給の面で優遇をされておる。こういった扱いを受けておるわけでございます。いずれにいたしましても、学校教育がまあ中心でございまして、あくまで職業訓練教育というものは技能習得という面を中心にいたしておりますので、よく連携をとりながら、いわゆる技能効率の向上につとめてまいりたいと、いませっかく勉強いたしておる次第でございます。  それから、技術革新時代に労働者が合理化にまっこうから反対する、極端にいえば、汽車ができたときに汽車をつぶす、紡績機械をつぶすとか、そういうような、五十年、百年前に産業革命でイギリスが苦しんだようなそういうことは全然起こっておりません。しかしながら、いま問題は、自由化に備えるための企業合理化、企業合併というものに対しては、労働組合の中では総評系と同盟系と多少意見が違っておるわけで、同盟系は合理化というものに前向きに対処していく、総評系の組合は、その方向には十分向いておるけれども、その態度のニュアンスにおきましては必ずしも同盟系というものとは同じ方向にはいっていないとは思いますけれども、総評の内部にもいわゆる産業政策を浸透しようじゃないか。原口君なんかが中心になりまして、産業政策までもひとつ労働組合は研究しようじゃないかということが、大きな総評の中の民間労働組合を中心に起こっておる。これに対して太田君なんかのあれが反対しておるというような実情でございますけれども、技術革新によって生産性をあげていって、高賃金、高能率の労働をつくっていくという基本原則には、どちらにしても近代化をはばむわけでありますから、その方向については、私は日本の労働組合は反対ではないと思うわけでございまして、その基本方向によって生ずるいろいろな摩擦、今後起こってくるでしょう自由化に伴う労働問題として、こういった問題を納得していくように、労使とも、また、政府も入りまして、混乱なく合理化あるいは技術革新、生産性の向上という面に取り組んで資本自由化の時代に備えていきたい、かように私は考えておる次第でございます。
  167. 船田譲

    ○船田譲君 以上で労働大臣に対します質問を終わりまして、次に、自主技術の開発に関しまして科学技術庁長官にお尋ねをしたいと思います。せっかく経済社会発展計画におきましても、外国技術の依存より脱却して、自主技術開発体制の確立が急務だとうたわれておりますが、その基本的な方策に関しまして、次の若干の点についてお尋ねをしたいと思います。  まず、第一番目は、技術の導入と技術の輸出の比率、これのわが国におきますところの比率を、現在の実績と今後の推移について簡単に御説明いただきたいと思います。  また、第二点は、研究開発投資の国民所得に占める割合は、経済社会発展計画におきましては、その計画の終わりごろにおきまして約二%に持っていきたい、こういうふうに述べておられますけれども、その実現性はあるかどうかということであります。特に民間の技術開発におきましては、どうしてもリスクを避けるために、細部改良的な技術開発は行なわれまするけれども、たとえば巨大科学であるとか、総合的な研究であるとか、境界領域の研究などは避けて通るような傾向があります。そういう意味で、いわゆる国民所得に対しますところの政府の研究開発投資の比率を高めることも大切でありますけれども、その全体の研究開発投資の中での政府の比率を高めることは、より大切だと思います。たとえば昭和四十年度の数字によりますと、アメリカでは大体六五%が国の投資でございまして、三五%が民間投資でございますけれども、日本はその逆で、国が三〇%、残りの七〇%を民間におぶさっておるわけであります。こういった点につきまして大臣のお考えをお聞きしたいと思います。  第三番目に、理化学研究所というのがございまして、基礎的な研究、あるいは応用的な研究におきまして従来非常に実績をあげておりまするけれども、それに対する政府の力の入れ方につきましては、必ずしも私は十分でないと思っております。このように実績と伝統を持ち、かつ、人材をたくさん用意しておりますようなせっかくの理化学研究所は、今後どのような充実強化のお考えを持っておられるか、この三点について科学技術庁長官のお答えをお願いしたいと思います。
  168. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) 船田さんにお答えいたします。  御承知のとおり、技術革新の時代に備えまして、わが国の技術開発を積極的に推進していかなければならないことは当然でございます。特に、また、資本取引の自由化を控えておりまして、この資本のわが国における導入と関連いたしまして、技術が一緒に入ってくるという場合が相当考えられるわけでございます。そこで、どうしてもこれらの情勢に対応していくためには、自主的な技術開発促進をあらゆる面において相当強力に行なっていかなければならぬと思っております。現在わが国における、御承知のとおり、科学技術者といわれる人の総数は、民間、大学等を含めて、約九十五万人くらいと想定されておりますが、この中で、大体三十四、五万人は大学卒であるといわれておりますし、なお、また、純粋な研究者というような数が十四、五万だといわれております。こういうような情勢からいたしましても、やはり技術者は非常に少ないわけでありますし、この技術者の養成につきましては、大学等におきまして、国立大学の定員増の中に占める割合を従来の三〇%から七〇%に引き上げるとか、あるいは高校の専門教育の定員増等をはかってやるとか、あるいは先ほど労働大臣のほうから話がございましたとおり、労働省におきまして技術訓練所とか、あるいは指導所等を通じて技能者の養成を行なう、こういうことで強力に技術者の養成をやっていかなければなりません。そうすることによってわが国独自な今日までも相当進んだ技術がありますが、それはさらに進めていくし、おくれている部面につきましても、相諸国も民間も総力をあげて推進していかなければならぬと思っております。この統計から見てみましても、昭和三十五年度から四十二年度までに外資法によって許可されてわが国に投下されております企業合併でありますとか、あるいは資本が入ってきたものは約四千件許可になっておりますが、その中で、技術が一緒に入ってきている、いわゆる技術導入がなされておるものが七〇%に及んでおります。こういうことなどを考えてみましても、私は、将来国が研究開発に果たすべき役割りというものがもっと多くなければならぬ、こういうことで、先ほど経済社会開発基本計画の中にも、従来、今日まで大体民間の研究投資に対して国民所得の中に占める民間の投資の割合が約四十年度で一・七%でございましたが、四十六年度までにはこの比率を二・五%までに高めてまいりたい、こういうような想定をいたして、国の持つべき責任をもう少し強化していく、あるいは民間における技術研究等に対しましても税制の面で優遇措置を講じて、そして自主的な技術の開発を行なっていきたい、こういうことで、強力にそういう方向で自主的技術の開発、あるいはそれに必要な人材の養成ということを考えてまいる考え方でございます。  技術導入における導入と輸出の比率はどういうふうになっておるかというお話でございましたが、先ほどもちょっとお話し申し上げましたが、四十一年度の技術導入に伴う外貨の支払い高は一億七千五百万ドル、支払いだけでございますが、技術輸出による外貨受け取り高は千四百五十万ドルということになっておりまして、技術導入に対する技術輸出の比率は八・三%でございまして、この比率は昭和三十六年度の二・五%に比べかなり増加をいたしておりますが、諸外国における比率、たとえば昭和三十八年度における西ドイツ三六・七%フランスが四〇%、イタリアが二三・四%等に比べて非常にまだ低い数字になるということは事実でございます。また、最近の技術導入の傾向といたしましては、おおむね重化学部門のものは一段落いたしておりますが、成長が相対的におくれた部門について、たとえば消費部門とか、あるいは中小企業部門等の導入は活発になっております。その形態について見ますと、クロスライセンスや共同研究のような、技術交換的な色彩の強いものが非常にふえてまいっております。また、技術輸出の内容も次第に大型化して、先進諸国への技術輸出もふえつつありますので、技術輸出による外貨受け取り高は対前年度に比しましても相当にふえた、非常にふえてきているというような状況でございます。研究投資のことにつきましては、先ほどちょっと触れて申し上げておきましたが、なお、この理科学研究所、いわゆる理研の問題については、これは御承知のとおり、もう五十年にもなる研究所でありまして、相当わが国の技術の開発、あるいは研究者の養成等については非常に大きな私は貢献をいたしてまいっているものと思っておりますが、このような設備がもう少し総合的な研究機関として利用されてしかるべきものではなかろうかと私も考えております。また、だんだん研究体制が大型の方向にまいっております。したがって、この共同研究をするような施設等も将来考えていかなければならぬと思っておりますし、また、研究学園都市等の建設もその線に沿った考え方であろうと思っておりますが、理研の内容等につきましても、今度大和町のほうに移転いたします際に、電子関係とか、あるいは農薬関係とか、あるいはその他の技術関係の研究開発に大いに貢献をしていくような形に変わっていくであろうと思いますので、こういうような施設を通じて、もう少し共同で、民間、学界、あるいは大学等の研究者が集まって研究が利用できるような方向に、しかも、また、その利用した研究をお互いに民間も政府のほうも共同で利用できるような体制に持っていくことが強く要請されていくのではないかと考えておりますので、そういう方向にひとつ指導してまいりたいと、かように考えております。
  169. 船田譲

    ○船田譲君 次に、同じく科学技術庁長官に、科学技術振興の長期基本方策と科学技術基本法についてお尋ねしたいと思います。  第一番目は、現在提出を予定しておられますところの科学技術基本法の骨子について簡単に御説明いただきたいのと、特にその中において人文科学をどう取り扱われるかということであります。  第二点は、法案作成の従来の経緯から見まして、人文科学を科学技術基本法に含めることには若干の反論もあると思うのでありますけれども、それはどのように予想をしておられるか。また、人文科学を含めました場合に、科学技術会議と、それから学術会議の間の業務の分担と申しますか、それがどういうふうになるか。また、科学技術庁そのものが、従来この科学技術会議の事務局的な役割りをしておられましたけれども、人文科学を含めると文部省との間の関係が出てくると思いますので、人文科学を含めました場合の事務局の所管と申しますか、どういうふうに考えていらっしゃるかということをお聞きしたいと思っております。  それから、さらに第三番目には、科学技術振興の長期基本方策を策定する場合におきましては、この科学技術基本法との関連でどのようなふうにきめていかれるかというようなこと。  以上三点につきまして科学技術庁長官にお答えいただきたいと思います。
  170. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) 科学技術基本法の問題でございますが、この基本法の骨子はどうかということでございますが、この科学技術基本法の目的は、御承知のとおり、科学技術の水準向上をはかるために国の科学技術政策の目標を示して、これを達成するということが基本的な意図でありまして、これに関連して国が講ずべき施策といたしましては、研究の推進、研究成果の利用の推進、研究者等の確保等を規定いたしております。また、これが施策は長期的見通しに基づいて、総合的、計画的にこれが講ぜられるよう基本計画を策定すべきだ、こういうことが骨子でございまして、この中で人文科学の取り扱いをどういうふうに考えておるかということでございますが、自然科学と人文科学の問題につきましては、今日もまだいろいろ議論があるところでございますが、しかし、昭和四十年度に出されました科学技術会議の答申、四十年の十二月、総理大臣に対して答申がなされております。また、学術会議の方々、あるいは、科学技術会議の方々、あるいは衆議院の科学技術特別委員会の方々との懇談会等を通じまして意見が一致しておりまするものは、やはり科学技術会議の答申の線に沿って、自然科学とあわせて人文科学も法律の対称とすると、こういうことでございます。こういう答申等の線に沿って検討審議を行ないまして、第一は、研究の面から見る限り、自然科学と人文科学が区別されるものではない、そして、自然科学と人文科学の境界領域に属する科学が誕生してきておるように、自然科学と人文科学の密接な関係を持って発展しておること等の理由から、基本法の対象として人文科学を取り上げることが妥当である、こういう考えでございます。私も就任以来、この問題につきましては、できる限り国の科学技術発展を助成していくためには、やはりそのもとになる基本法というものが必要である、こう考えまして、前大臣、前々大臣のときから受け継がれてきておりまするこの法案提出方について、鋭意努力を続けてまいっておりますが、先ほど船田先生お話のとおり、まだ一部のほうから、自然科学の中に人文科学を取り入れることについての反論もございますけれども、しかし、今日、たとえば、言語学等につきましても電子計算機等が進んでまいっておりまするし、これもやはり自然科学の中に入れるべきだ、あるいは心理学の中でも児童心理学、これは特に医学の関係から考えられましても、これも取り入れるべきだ、あるいは社会科学の一部におきましても、そういうことは当然自然科学の中に人文科学は入るべきだというような強い議論等もございますが、まあいま私は先ほど申し上げましたような答申の線に沿ってこの成案を得、できる限り早くこの国会法律提出いたしたい、かように考えておるようなわけでございまして、できる限りこの線でまとめて、そうして基本法に基づく科学技術政策の推進をはかってまいりたい、努力をいたしたいこういうふうに考えております。  なお、また、たとえば人文科学がもしこの中に含まった場合に、科学技術会議とそれから日本学術会議との関係はどうなるかというようなことでございますが、これは御承知のとおり、科学技術会議は、科学技術会議の設置法の規定に基づきまして規定されておりますとおりに、政府の科学技術政策について関係行政機関の総合調整を行なう必要がある場合に審議を行なう機関であるということが明確になっておりますし、日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学に関する重要事項を審議するとともに、科学研究に関する連絡をはかることを任務とする機関である、こういうふうになっておりますので、両機関のおのおのの任務は、科学技術会議が人文科学も所掌することになっても何ら変わるものではない、かように私は考えております。  なお、事務局の所管についてはどうかということでございますが、いま申し上げましたような考えである限り、今日は事務局は、科学技術庁が文部省の協力を得て、科学技術庁の中の計画局が所掌いたしておりますが、人文も含めた場合にはややこの趣旨が変わってくるのではないかと考えておりますが、その場合には、文部省と管理の共同体制をとるというふうになるのではなかろうかと、かように考えております。
  171. 船田譲

    ○船田譲君 次に、海洋科学技術の振興と動力炉開発の推進の二点につきまして科学技術庁長官のお考えをお聞きしたいと思います。  第一番目の海洋科学技術の振興、これを総合的に進めていくために、政府はどのような構想と計画を持っていらっしゃるかということであります。特に最近、大陸だなの調査開発という問題が漁業資源あるいは地下資源の開発の問題、あるいは領海、専管水域の拡張の傾向等の問題に考え合わせますときわめて重要な問題になってきたと思われますので、この海洋科学技術の振興を総合的にどうやって進めていかれるかということが第一点であります。  それから第二点は、今年度新たに発足いたします動力炉核燃料物質開発事業団と従来からあります原子力研究所の間で業務の重複であるとか、あるいは実際に運営をしていく上におきまして摩擦が起こりはしないかという心配を私は持っておるのでありますけれども、その点についてはどうお考えであるか。  また、原子力関係の技術者というのはわりあいと数は限られておりますので、このような事業体ができましたときに、原子力研究所、この事業団あるいは原子力船事業団等の間で少ない技術者の引っ張りっこと申しますか、そういう問題が、競合が起こりはしないかということを心配しているのでありますが、それについての長官のお考え。  それから第三点は、原子力研究所は、従来、ともしますと労使の間の意思の疎通があまりうまくいっていなかったように私どもは漏れ聞いております。その後、この労使関係はどのような事情になっておるかということでございます。  第四番目には、この動力炉核燃料物質開発事業団がアメリカ等の外国から導入したり、あるいは自主開発をいたしまして獲得したところの、基礎技術じゃございませんで応用的な技術につきましては、普通の社会通念上から申しますと、企業におきましても、自分のところで開発したノーハウであるとか応用的な技術は企業の秘密として守るわけでございまするけれども、原子力の場合、一方におきまして原子力基本法によって公開の原則がございまするから、この公開の原則と社会通念上の、俗にいえば企業の秘密としてのノーハウ、あるいは応用的技術の秘密を守ることとの間の関連はどのように考えていらっしゃるか。  以上の四点についてお答えいただきたいと思います。
  172. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) できるだけ簡単にお答えいたします、注意を受けましたので。  この海洋科学の研究開発の問題は非常にこれはむずかしい問題であるようでございまして、アメリカ等では相当進んで、海底における農場食糧等の開発研究を行なっておるようでありますし、相当ばく大な金も投資しておるようでございますが、わが国におきましても、海洋科学技術審議会から答申が出ておりまして、この答申の線に沿って関係各省ときわめて緊密な連絡をとって、海底の開発研究にようやく乗り出しておるというような状況でございまして、このことにつきましては、御承知のとおり、海底を研究調査する、潜水艇ですか、がことし完成をいたします、約三億九千万ですか投じまして。そして約六百メートルぐらい水底にもぐって海底の調査あるいは沿岸大陸だなの開発研究等を行なう。そのためにまた科学技術庁が中心になりまして調整費を関係各省に渡して研究開発を進めておる、こういうような状態でございます。今後、宇宙開発と反対の海底研究にも鋭意努力を続けてまいりたいというふうに考えております。  また、動力炉の開発の問題でございますが、これにつきましては、新しいこの事業団、燃料とそれから動力炉開発に関する事業団をつくって、わが国の自主的な燃料対策も含めた開発を推進することにいたしておりますが、原子力研究所等の関係は、御承知のとおり、原子力研究所は過去十カ年あまりにわたって一般的な基礎的な研究をずっとやってまいっております。で、個々の研究の成果等基礎にいたしまして、そして在来の軽水炉型の動力炉をさらに開発いたしまして、燃料等を効率的に使える新型転換炉、さらにその燃料をプルトニウムと濃縮ウランとを一緒にして使うような、その燃料が長く用いられる、燃料が燃えながらさらに燃料をつくっていくというような高速増殖炉の開発、これも進めてまいりたいと考えております。したがいまして、この原子力研究所との関係は、一般的、基礎的な基礎部分に関する研究開発というものは今後引き続き原研でやってもらって、そうして事業面――新しい動力炉をつくって、そして自主的な開発をやっていく面の事業については、原子力の今度の新しい開発に関する法人がこれをやっていく、そういうことでございまして、もちろんこの間に技術の研究の成果を引き継いで事業団がやっていくということもあり得るわけでございます。そういうわけで、私は不離不即の体制でもって開発を進めていかなければならぬと考えております。  なおまた、原子力研究所における労使関係の問題でございますが、   〔委員長退席、理事平島敏夫君着席〕 まあ当初設立されたときが社団法人の形でできて、しかも、初めてのことでありましたので民間からもあっちこっちから人を集めたりして、そういうことで構成ができておりました関係から、しばらくの間はこの労使関係がうまくいっていなかったというようなことも承っておりますが、丹羽理事長が就任されましてから、つとめて円満な労使関係をつくり上げるように努力をされまして、以来、まあストといわれるようなもんちゃく事件がだんだんだんだん減少いたしてきております。もとより統一ストなども行なわれておりますけれども、原研自体において自主的に起こされたようなストというものは減ってきております。ただ、労使関係を円満にするための労働協約というようなものがまだ十分でないようでございますので、こういう面についてこれから努力を重ねて、平和利用の開発に支障のないような体制をつくっていくように指導してまいりたい、かように考えております。
  173. 船田譲

    ○船田譲君 先ほどお尋ねいたしました最後の点の新事業団が導入または自主開発した応用技術の秘密保持の問題。
  174. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) どうも失礼いたしました。このわが国における原子力の平和利用に関する査察につきましては、御承知のとおり国際原子力査察機構がございまして、すでにこの研究の成果については公開の原則をとっておりますので査察を受けております。ただ、これを一般の燃料も民有化されてまいりますし、また、開発も民間でどんどん進めてまいりますが、ここで開発された特殊な技術、たとえば商業機密に関するようなものが漏れていくのではないかという心配もいろいろ議論されております。また、いま問題になっておりまするこの条約に関連いたしましてもいろいろ問題があるのでございますが、私どもといたしましては、現在行なわれております査察の範囲内においては、わが国の自主平和の開発が阻害されてはおりません。おりませんが、商業部面に関する機密漏洩に関する査察に関しましては、そういう機構でどうするかということについてはまだ検討を要する部門があろうと思いますけれども、現段階においては、私どもは、そこまでまだ突っ込んでどうしようという考えはございません。その部門につきましては、働く人と企業者間における業務協定と申しますか、あるいは就労規則等によってこれを取り締まっていくということが適切な方法ではなかろうかと、こういうふうに考えております。
  175. 船田譲

    ○船田譲君 以上で科学技術庁長官に対します質問を終わりまして、次に、通産大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  私は、わが国の産業が昭和三十年代の前半において大胆に技術革新を取り入れたところの設備投資を行なったことが、三十年代中期以降の高度成長や輸出の伸長に寄与したところが非常に多大であったと思っております。その反面、投資の行き過ぎが景気の過熱を生んだり、あるいは経済のひずみを生じたり、供給過剰によりますところの不況を招いたことも、また事実だと思います。このような見地に立たれまして、これからの設備投資はきめこまかく行なわれていかなければならないと思いますが、その内容的には技術革新に基づくものに限定せられ、特に、量的なものについては大型化を重点に、また、質的なものについては労働力を省く、いわゆる省力、合理化はをかるものを重点に行なうべきであると考えますが、この点についての大臣のお考えはどらかということが第一点。  それから第二点は、企業の研究開発投資に対しますところの税制上の優遇措置につきまして、たとえば設備償却の問題であるとか、試験研究費の損金算入の問題であるとか、試験研究法人に対しますところの企業からの寄付の損金算入の問題であるとか、特に中小企業が共同で行ないますところの試験研究事業に対しますところの税制上の優遇措置等につきまして、通産大臣といたしましては、財政当局に対し、今後積極的に折衝を進めていっていただきたいと思うのでありますけれども、それについての御所見はいかがかという、以上の二点でございます。
  176. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 第一の、最近における日本の経済の発展が技術の開発に基づいておるということについての御質問であるし、また御意見を拝聴したのでございますが、全く御意見のとおりでありまして、技術開発について大いに努力するし、また、大型の設備の創設、あるいは労働力を省くというような点についていろいろ技術開発をしたおかげで最近日本の経済が大いに発展してきたということは言えると思うのであります。そういう方面について、できるだけ努力いたしておるのであります。  それから税制の面につきましては、これは、技術開発についてはぜひ税制面から援助したい。資金面の援助ももちろんですが、税制面の援助をしたいということで、従来やっておりました民間の試験につきましては、開発研究用機械等の固定資産の特別償却をやっておりました。これが大体十二、三億円でございます。それから次には、開発研究用の機械等の固定資産に対する固定資産税の減免等をやっておりまして、これが大体三千万円ほどでありますが、しかし、もう少し税制については考えてみたいということで、いま御審議をお願いしておりますのは、昭和四十二年度から、開発研究用の機械等の固定資産に対する特別償却制度を発展的に解消いたしまして、試験研究費が過去の事業年度の最高額をこえた場合において、そのこえた額の二五%を所得税または法人税から差し引くということで、税金で差し引くという制度をとったのでございまして、これが技術面の開発に実は非常な貢献するのではないか、こう考えております。こういう制度によって、できるだけ民間の技術の開発については税制面から援助をしたいということをやっておる次第でございます。
  177. 船田譲

    ○船田譲君 次に、自主技術の開発の促進の一つといたしまして、発明くふうの奨励の見地に立ちました工業所有権の保護の問題、またその活用について、次の点について御質問したいと思います。  第一点は、昨年特許法の改正を試みられましたけれども、結局廃案になってしまいました――廃案というより、むしろ成文を得ないで流れてしまったわけでありますけれども、その間の反対の事情、簡単でけっこうでございますから。で、その法改正を見送ったかわりにとられましたところの応急措置について、簡単に御説明いただきたいと思います。また、こういった応急措置をとりましたために、昭和四十一年度の当初におきまして大体特許と実用新案を合わせまして六十万件ほどあったといわれます滞貨がどの程度減ったか、あるいはその後さらにふえたかということをお答えいただきたいと思います。  第二点は、今後、特許制度を改善をしていくという場合におきましては、制度の面ではどういう点を重点にし、また、運営の面ではどういう点に重点をおかれるかという二点について、お答えをいただきたいと思います。
  178. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 昨年、特許法の改正の原案を特許局のほうでつくりまして、いろいろ審査をいたしておったのでございましたが、各方面からいろいろ反対陳情がありまして、結局それは、無審査公開制の問題について反対論がありましたので、そこでもう一度練り直したらどうかということで、ついにこの特許法の改正案が提案されなかったのであります。したがいまして、それに対しての臨時措置をとっておりません、その特許法が出なかったからという。そのかわりに、できるだけ特許の審査を促進しようということで、定員の増加を昨年相当いたしました。また、本年度も定員の増加を相当して、人員をふやしてそれで特許の審査を促進するという方針をとったのであります。しかし、このように滞貨が非常に多いのでありまして、大体平均して審査が三年三カ月かかるし、それから審判が六年五カ月かかるというようなことでありますからして、せっかく発明されても効果があがらぬということであるし、それが日本の産業の発展、技術の開発のためには非常に支障を来たしますので、どうしても特許制度を根本的にやっぱり考え直さなきゃならぬということで、今度、昨年来、工業所有権の審議会というものを設けまして、そこでいま審議をいたしております。昨年十一月二十九日に工業所有権の審議会に諮問をいたしまして、そうして第一回の会合を開きまして、今後この特許制度等をどうすべきかということで、現在までに五回開催をしておるのでありまして、これによってひとつこの特許制度の促進改善をはかりたいという考えをいたしております。
  179. 船田譲

    ○船田譲君 最後に、防衛生産と技術開発との関連について通産大臣にお尋ねをしたいと思います。今日、アメリカが技術に関しては輸入一〇〇に対しまして輸出九〇〇と、世界の主たる技術輸出国になっております理由の大きな部分は、エレクトロニクスあるいは航空機工業をはじめといたしまして、国防及び宇宙開発の巨大研究の成果に負うところが多大であると思われるのであります。特にリスクの大きい分野の開拓や巨大科学の研究は、とても民間や大学の研究所では及びもつかないことでございます。このことは米国以外の欧米諸国でも同様であろうと思われます。この意味で、わが国の技術開発も防衛生産に伴う研究開発に依存すべき部分が少なくないと思いますけれども、大臣はどうお考えかということが一つ。  第二に、特に最近、ライセンス生産から漸次自主開発に向かいつつあるわが国の航空機工業を振興していくためには、防衛装備の国産化による需要の拡大、向上化が必要であると思いますけれどもどうかということ。  第三点は、なお近い将来におきまして、航空機工業が単なるアセンブリー工業、いわゆる胴がらをつくるだけの工業ではなくて、自主的にエンジンの開発も行なっていくべきであると思いますけれども、その可能性はどうかという以上の三点でございます。
  180. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 第一の問題ですが、お話のとおり、今後の科学技術におきましては、電子科学の問題、宇宙開発の問題、あるいは防衛産業というような問題、これが今後の産業の、基本の、まあ先導性を帯びてくるのではないかということを考えておるのでありまして、それにつきまして、ことにその中で日本において問題になりますのは、防衛産業の問題でありますが、今日では日本の防衛機具は国産化をはかるという方針をとっておりますので、大体、今日では八七%と、いうものは国内調達しております。しかし、国内調達しておりますけれども、技術そのものあるいは部品などはやはり海外から輸入しておるのでありまして、したがいまして、今後は国産化をもう少し奨励しまして、幸い、第三次防の問題もありますので、できるだけ国産化によってこれを供給したいというように考えております。  そこで、航空機の問題でありますが、航空機も今後、その大部分は第三次防によって、航空機、戦闘機が日本でつくられる――国産でつくられるということになりますが、商用機、民間機は御承知のとおり、YS11やMU2などの民間機が幸い世界的にその優秀性を認められておりますので、今後、これの輸出をはかりたいということで、御承知のとおり、漸次アメリカ、ホノルル、あるいは東南アジアあたりにも売れておるのでありますが、今後これの商路を拡張したいというふうに考えております。  それから問題は、いまお話のエンジンの問題でありますが、これはまだたくさんは国産化していません。遺憾ながらYS11のエンジンなどは、まだ外国のエンジンを買い入れて、そうして日本でこれを組み上げておるという状態でありますからして、この点はまことに遺憾に思っておるのでありますが、この点につきましては、エンジンなども国産化していきたいということで、その奨励を今後やりたいし、幸いこれが量産されてくるということになりますと、おのずからそのエンジンも国産化してもやっていけるのじゃないかということで、そのYS11などの海外輸出を大いに奨励して、そうして量産化していく、これと同じようにエンジンなどもひとつ国内でつくるようにやっていきたいという方針をとっております。
  181. 船田譲

    ○船田譲君 以上で質問を終わります。(拍手)
  182. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 以上で船田君の質疑は終了いたしました。  午後二時五十分再開することにいたしまして、これにて休憩いたします。    午後二時三十五分休憩      ―――――・―――――    午後三時五分開会
  183. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、質疑を行ないます。岡田宗司君。
  184. 岡田宗司

    岡田宗司君 まず、外務大臣にお伺いをいたします。本朝、日米安保協議委員会が開かれました。二時半に外務省からプレスリリースが出たのでございます。それによりますというと、「会談においては、主として極東における日本と米国との共通の安全上の利害に関連する最近の国際情勢について意見を交換し、また、日本の防衛に関連する諸問題について討議が行なわれた。」と、まことに簡単でございます。しかしながら、この日米安保協議委員会が開かれましたのは、一年八カ月ぶりかと思いますが、いま開かれました背景を見ますというと、非常に重夫なものが感ぜられるのであります。と申しますのは、アメリカがエスカレーションをさらに拡大をいたしまして、そしてウ・タント国連事務総長は、このままでいけば米中衝突があるかもしれない、あるいは第三次世界戦争はもう始まっておるんだといっていいかもしれない、というようなきわめて暗い発言をされておるのでございます。こういう時期に、私は、この安保協議委員会が開かれましたということは、この状況と関係があるのではないかという推測をせざるを得ないのでございますが、この安保協議委員会においていかなる問題が具体的に協議をされたか、この点について、外務大臣、けさ御出席になっておりましたと思いますので、明らかにしていただきたいと思います。
  185. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これはまあ時々開くことになっておったのですね。それが一年八カ月ぶりですか――開かないのですね。私はきょうも言ったのですが、これは日米の安保条約によって、防衛問題に対してアメリカと日本との間に安保条約があるし、重要な共通のこれは協力と関心を持っておるわけですから、こんなにたまに開くというのでなしに、これからはまあ一年に一回ぐらい開いて、そうしていろいろディスカッションすることは非常に有益ではないかということで、まあこれからは定期的に開こうと思っています。あまり、二年も開かずに、ひょっと開くと、岡田さんの御質問入たいなことが起こるのでよくないと、こういうのは。一年に一ぺんぐらいは当然に日米として話し合うべきもので、いままでは少し怠慢であったと私は思う。これから毎年開こうと思っています。  きょうの話は、申すまでもなく、ベトナムを中心として、極東の情勢に対するアメリカ側の判断を聞いたわけです。まあその中でアメリカ側が強調しておったのは、アメリカは北ベトナム政府を転覆させる意図は全然持っていないのだ、要は南ベトナムの独立と自由、これが保障されるならば、これはもう戦争はすぐにでも終わるのだ、しかしその目的が達成されなければ、中途はんぱでこの紛争が終わるとは思わない、アメリカはやはり途中で敗退するということはあり得ないと。アメリカとしては非常に強い決意である。だから、ハノイが、アメリカが途中でもうこのベトナムの紛争というものから手を引いてしまうのではないかというふうに思わないで、アメリカの決意と、それからまた北ベトナム政府を転覆さす意思などは持っていないのだというこの真意をハノイによく知ってもらいたいと思っておるのだ、こういう話ですね。  それから、もう一つは、いま憲法、新憲法が制定されて、南ベトナムですね、やがて九月の一日ですか、大統領選挙も行なわれて、一連の民政移管への南ベトナム政府の動きということをきわめて重視しておる。これとベトナム紛争の平和的解決というものに対して、やはり相当重要な関心を持っておるのだということが、まあ、かいつまんで言えばアメリカの説明の中の中心ではなかったかと思うのです。  私のほうからは、安保体制、日米安保体制をめぐる国内の動きというものに対して説明をしたわけです。ただ、しかし、結論的にこうだということを私は言ったのではない。こういうふうな国内の動きがあるということを説明をして、そしてまあこの問題に対する国内の動向というものに対しての判断の材料を提供したということで、結論的なこと申し上げませんでした。こういうことで、増田防衛庁長官が第三次防について、説明をした。これが内容でございます。  だから、岡田さんのおとりになるように、ベトナム問題、このベトナムの紛争の激化の中に、非常にそのタイミングと合わしてこの会議が重要な戦略的意義を持つのではないかということは、実際の会議に臨んでみて少し思い過ごしの点がございますことを、率直に申し上げておきたいと思います。
  186. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ、非常に時間も短いことでありますので、したがって、非常に突っ込んだ話、そして重要な話があったとも考えられない面もあるのですけれども、しかし、時期が時期だけに、私どもはその話のうちにおきまして重大な問題が含まれていたのではないか、こういうふうに疑うのも、これ、無理からねことだと考えるのであります。  いまお話がございました、そのベトナム戦争についてのアメリカの決意でございますが、それはそれといたしまして、一体、日本側としてはアメリカ側に対してこのベトナム戦争の問題について何か御発言があったかと思うのです。たとえばエスカレーションが非常に重大な段階に来ておる、ウ・タント事務総長の指摘したような危険性もあるであろうし、また日本といたしましては、やはり早く終結してもらいたいというようなこと、そのためには北爆というような問題がやはり重大な問題であり、それをやめることがやはり何といっても私どもはまず行なわれなければならない問題だと思うのでございますが、そういう点に関する日本側の見解というものが述べられたかどうか、この点はいかがでございましょうか。
  187. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 岡田さんのいま御想像のとおり、たいした会議ではなかったのです、たいした会議では。そんな重大なことがここできめられるような会議であるはずはないのであります。そこで、この会議を通じて日本側として述べましたことは、ベトナムのこの不幸なる戦争が一日も早く平和的に解決するということに対して日本は、もう国民をあげてのこれは強い希望である、この戦争に費やしておるエネルギーが平和の建設のためになぜ向けられないのであろうか、非常に強い平和的解決の希望を持っているが、これは何としても戦争の当事者ではないわけですし、それからわれわれの働ける余地というものに対してはいろいろ限界があっておるけれども、こういう強い希望、これは国民のひとしい願いであるということを、この会議を通じて申し上げたのですが、いろいろこまかい点についてこの会議をああだこうだということは申し上げることも適当でないかと思いますので、まあ一問一答式にここで申し上げることはお許しを願いたいと思います。
  188. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に、やはりこの問題についてお伺いするわけでございますが、この会議が行なわれる数日前から、日米の海軍の合同演習が行なわれたのであります。そうしてウラジオストックから二百海里くらいの沖合いで行なわれました対潜水艦合同演習に際しまして、二度にわたりましてアメリカの軍艦とソ連の軍艦との接触がございました。そしてソ連側からも非常に強い抗議がアメリカになされておるわけでございます。これまた私は、いまのベトナム戦争の進行状況、それが及ぼす世界平和に対する危機というようなものから考えますというと、やはりこれまた悪材料であることは免れないと思うのでございます。ソ連の態度の硬化ということもこれからもうかがわれるのでありまして、これがやはり米ソ間の関係に悪い影響をもたらすであろうということでありまして、まことに憂慮にたえないのでありますが、この演習に日本が巻き込まれておるわけでございます。そしてこの演習の最中に、ソ連の軍艦が日本側の護衛艦に対しましてやはり接近をしてきた事実があるようにけさの新聞は報道しております。幸いに接触がなかったのでございますが、こういうことが起こるということは日本にとりましても非常に重大なことだと思うのであります。なぜならば、私どもは米ソの接近、そして米ソの手によりまして世界平和の確立が進められていく、いわゆる緊張緩和が行なわれていくということに期待をかけておりますときに、日本の護衛艦が巻き込まれた、こういう事態によってそれが危殆に瀕していくということは、これは日本国民にとりましても重大に考えざるを得ないと思うのであります。この問題が日米安保協議委員会におきまして、つまりこの演習の問題が、そしてまたそれが起こしたこういう問題が、日米安保協議委員会において取り上げられたかどうか、日本側といたしましてはこういうようなことが今後起こらないようにしてほしいということをアメリカ側に申し入れたかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  189. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 限られた時間でありましたから、この問題に私は触れたいと思っておったわけであります。ところが、時間で、次の第二回に――昼食会があったものですから、この席に、この問題を引き続いて――触れられなかった問題はこの問題のほかにもございました。触れようということでしたが、記者会見をしましたら、この問題が出たわけであります。で、シャープ太平洋艦隊司令官、増田防衛庁長官の二人が答えられた。むろんその背景には、アメリカ、米ソ関係というものは非常にやはり注意深く見ておることは、これは申すまでもないのですが、現在この演習は、急にこの演習をやるわけではないので、毎年定期的に行なわれておる演習であるし、このことによってこの演習を中止したりする考え方はないということをシャープ司令官も話された。増田防衛庁長官もその席に出ておって、そういう考え方はないということでございます。
  190. 岡田宗司

    岡田宗司君 毎年行なわれておることであるから、やめるつもりはない、まあこういうことは、私どもにとりましてはやはり非常に危険なことじゃないかと思う。これが平常の状態でありますれば、私はやめるということは行なわれないでも、そうたいした問題ではないと思うのですが、現在のように米ソ両国間における関係があまりよくなくなってきておる、これからもベトナムにおけるアメリカ軍の行動が拡大されていきますならば、一そう米ソ間の関係が悪くなって、あるいは核拡散防止条約の成り行きにも響いてくる。それどころか、一般に米ソの平和共存関係を進める上にも響いてき、世界の平和の維持という上にも非常に大きな影響を持ってくるような状況のもとにおいて、こういうことが、たとい毎年行なわれる演習でありましょうとも、行なわれるということは、これは重大だと思うのであります。それに日本が巻き込まれるということは、日本にとりましても非常に迷惑な話であるし、日本国民としてもこれは好まないところであろうと思います。したがって、こういう問題につきましては、たといそれが毎年行なわれる問題でありましょうとも、あるいは場所を変えるなり、あるいは方法を変えるなりいたしまして、こういうような事態が再び起こることを避けることが私は望ましいと思うし、また、それが日本の政府のとるべき態度であろうと思うのでございますが、その点について三木外相から何らお話がなかった。まあ時間がなかったせいもあるのでございましょうけれども、非常に残念だと思いますが、その点についての御見解を承りたい。
  191. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私は、これはやはり問題にすべき点だと考えております。したがって、私が話をする題の中に私はこれを入れておったわけでございます。ところが、途中で記者会見、そういうことがあったわけでございますが、現在のところ、御承知のように、アメリカとしても、米ソ関係というものは非常にこれは重要なやはり関心を持っておることは間違いないし、日本としても、日米関係、日ソ関係というものは、やはり重要な関心を持たざるを得ないわけであります。まあ現在の段階において、両方の、太平洋のシャープ司令官、あるいは増田防衛庁長官が、現在はこの演習に対して何ら変更を加える意思はないという現段階における両方の責任者の言というものは、私はそのままやはり演習を継続するという両方の責任者の言というものを、現在の段階においてはこれに対して何ら異議を差しはさむことは必要がないと考えております。
  192. 岡田宗司

    岡田宗司君 今後の米ソ関係の発展並びに世界の平和のいろいろな問題にも影響するという観点から見ますならば遺憾なことであったし、将来こういうことが起こるということは、これは日本の外務大臣にとりましてもまた重大な問題でなければならぬと思うのです。したがって、私は、現在、両司令官といいますか、両者が、その問題は何にも危険もない問題だし、また、変える必要はないと言っておりますけれども、そういう外交上の関係考えますというと、やはり外務大臣としては、もっと積極的に現在の状況においてこういうものは変更さるべきことを要求すべきではなかったか、こう思うのであります。しかし、まあこの会議は済みましたことでございますから、この会議のことについては、もう私これ以上は申し上げません。ただ、この会議において私どもが懸念をいたしましたことは、こういうような情勢のもとで開かれまして、そしてベトナムにおけるアメリカのエスカレーション、これがさらに進められると、韓国はさらに一万の兵隊を増強するようでありますし、あるいはオーストラリアも爆撃中隊を提供しております。また、ニュージーランドも歩兵を出したようでございまして、こういうふうにアメリカと軍事同盟を結んでおる国は、それぞれベトナムに対してアメリカ軍を支持するために積極的に何らかの手を打っておるわけです。つまりアメリカの要求にこたえてそれをやっておるわけです。そこで、今回の会談において私どもはたいへん心配したのは、アメリカ側から、ベトナムにおけるアメリカの戦争努力に対して、日本に直接間接何らかの支持と、そして積極的な援助を求めてきたのではないか、こういう点なのでございますが、たとえば南ベトナム政府に対する経済援助であるとか、あるいは、また、武器の供給であるとか、あるいはそのほかのいろんな援助、さらに、また、アメリカ軍のいろいろな行動に対する日本側の有形無形の援助、そういうものを求められたことはないかどうか、その点を明らかにしてもらいたい。
  193. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは私も会議で、日本は憲法の厳重な規定があって、ベトナムに対して日本は軍事的にどうこうできるという立場ではないが、民生の安定向上については、まあ従来も技術援助とか医療援助をやっておるのですが、こういうことは今後も続けていくつもりであるということを育ったのです、私のほうから。アメリカから格別そういうことに対しての要請というものではございません。
  194. 岡田宗司

    岡田宗司君 いまのお話を聞きますというと、こちら側から民生安定等の援助をするということを申されたようでございます。その具体的内容はどういうことでございましょうか。
  195. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 従来も、御承知のような、たいした援助ではないのですけれども、医療とか技術協力など南ベトナムに対しやっておりますから、医療供与、技術供与、こういうことは今後もやっていくつもりであるということで、いままでもやっておるわけでありますので、そういうことを申したわけでございます。
  196. 岡田宗司

    岡田宗司君 それはアメリカ側の要請ではないと、こういうことでございますね。
  197. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) そうです。
  198. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。せんだっての米ソ間の接触事件ですね、これについてソ連側から十三日ですか、抗議の声明がアメリカ政府に渡されたことが伝えられております。新聞等見ますると、アメリカ政府としてはこのソ連側の抗議をそのまま受け取ったままにしておると、これ以上こじらせないと、何かそういうふうな取り扱いをしておるように報道されておるわけですが、真相は一体どういうことなのか。この抗議声明に対するアメリカ政府側の取り扱いですね、態度ですね、それが一つ。  それから、もう一つは、この抗議声明の中には、新聞によって多少書き方は違いますが、日米の軍艦がしばしばソ連の領土に近づいた。接触事件の起きたのはまあわれわれも新聞等で見ておるわけですが、あの抗議声明の中には、しばしばソ連領に日米の軍艦が近づいたということが指摘されておるのです。これは一体事実なのかどうか。そういうことが事実じゃないのだとすれば、アメリカ政府が黙っておるのもおかしいし、非常に割り切れない気持ちを持つわけですね。黙ってじっとしておるところを見るというと、やはり抗議声明が指摘しておるように、そういうふうな状態があったようにも受け取れるわけなんです。そういうわけですから、その点をひとつ、おそらく話が出ておると思いますから、明らかにしてほしい。  それから、もう一つは、まあ一緒に申し上げておきましょう、関連ですから。せんだって、十三日ですか、十二日でしたか、LSTの乗り組み員、日本人、横浜の人ですが、またベトナムで負傷を受けたということが報道されております。これは再度、これで三度目ですか、でありますが、おそらく政府として何らかの意思表示をされておると思いますが、どういう立場でおやりになっておるか、お聞かせを願いたいと思います。
  199. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) きょうはソ連から抗議を受けておるという話は何も出なかったです。そういうことを言いませんでした。したがって、それはちょっとこの段階で私からこうだああだということを申し上げることは困難でございます。  それから、第二の、LSTは私のほうから問題を出したわけです、きょうの会議で。そして日本人のこの生命の安全というものに対するアメリカの十分なる配慮、そういう犠牲者に対して十分なる補償というものを私のほうから要請をしたわけでございます。これに対してアメリカ側は、いままで二年間ああいう事件はなかったんだ、いままでほとんどなかったのに今度ああいう不幸な事件が起こったので、今後とも十分気をつけることにいたしたいと、それからその犠牲者に対する補償は十分なことをしたいという考え方であるということを、これはシャープ司令官から私に答えております。
  200. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。いまの岡田委員質問に関連することですが、こういうことをひとつ政府考えていただきたいと思うのです。というのは、一朝有事の場合に何かに備えて演習をする、合同演習をやる。それから、海上の演習だけでもいろいろあるわけですね。ところが、私ども考え方から言うと、とある日、何も理由のないのに日本に攻撃を他国がしかけてくるような条件を予見し得ることが近い将来あるか、私は永久とか絶対とかいうことばは使いませんが、まず近い将来、日本の周辺国を見てもそれはない。しかし、いまの日本海における合同演習のような場合、あるいはベトナムに何らかの協力をしたような場合、そういう場合がむしろ危険に相当する問題だと思います。ですから、日本の防衛というものが一般的な、通俗的な、超時間的な考え方から防衛を論じても始まらない。むしろある一定の条件下においてどういうことが起こるかということを想定して問題を考えるべきである。そういう意味で言うならば、きょう外相は時間がなくて発言されなかったと言われますけれども、私は、やはり積極的にそういう刺激的なことは、先ほど岡田君も指摘されたように、いまは避けるべきであるし、あるいは場合によってはその海域を変えてやるべきである。そういうことを積極的に言わないと、もし他日日本がベトナム問題に何らかの役割りを果たそうとしても、そういう条件下では十分なる寄与をなし得ないのではないか。そういう意味で、むしろ外相が積極的にそういうことについて発言すべきではなかったか。もし時間があったならばあなたは何とおっしゃったのですか、承りたい。
  201. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは当然に私が発言をすべき問題としておったわけで、会議が二回にわたったわけですから、あとの会議で話をしようということで、記者会見にもございましたが、あとの会議でもこの問題は持ち出したのでございます。持ち出したけれども、いま亀田さんの言われるように、ソ連から抗議を受けておるというような話は受けなかったのであります。まあこの問題は特にこの際選んだというのでなしに、毎年やっておることで、場所も日本海で毎年やっておることであるから、そんなにこの問題が非常に重大な事態になるという考え方をアメカとして持っておるというような印象ではなかったのでございます。
  202. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。もう一ぺん。どうも外務大臣自身がもう少し私はやはり心配してほしいと思う。防衛庁の説明によりますと、今度の日米各回演習のために横須賀を船が出た、それ以後、ソ連の飛行機がしばしば偵察行動をやった、こういうことが、これは防衛庁の実際に演習を担当された方が言われておるようですから、間違いない事実だと思います。私はそこになぜソ連がそういうことをやったのか、これは私やはりこの日米合同演習というものは毎年やられておるかもしれませんが、何と言ってもソ連を仮想敵国にしたこれは演習だ、特にベトナム問題がこういうふうになっておるときに、その毎年やっておるものを、さらに今度は念を入れてやる、こういうところに根本的なやはり大きな問題が横たわっておると思うのです。で、そういう出発点でありますから、こちらは何げなくやっておる、毎年のとおりなんだというふうに考えておられるかもしれませんが、相手方の取り方はそうじゃないし、それだけじゃなしに、実際にソ連領にしばしば近づいたというような事実、これは非常に重要だと思うのですね。この指摘されておることは、これは防衛庁のほうで調べてもらいたいと思うのですが、事実そういうことがあるのであれば、毎年のそういう演習等というものとやはり相当違った性格というふうに見られてもやむを得ないのじゃないかと思うのですね。だから、そういう意味でソ連の飛行機が横須賀出発後しばしば偵察行動をやった、あるいは抗議声明の中身、こういうものをぼくはもっと追及してほしい。新聞では、抗議を受けながら、もう聞き流す、何かそういうふうな印象にとれるのですね。それは私は事実があるので、あまり深入りしたくないというふうに米側としては考えているんじゃないか。だから協議委員会をもう一ぺんあなたは再開するくらいの気持ちで、もっと突っ込んで検討してほしいと思うのです。いずれ私また総括質問をやりますから、それまでに調べておいてもらいたい。
  203. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 亀田さんの言われること、いろいろソ連から抗議が出ておるのではないか、それを何もアメリカが検討しないでそのままになっておる、そういうふうな事情はどうなっておるかということ、私のほうでも調べておきます。
  204. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にケネディラウンドのことでお伺いしたい。ケネディラウンドもいよいよ最終段階にきました。交渉が一日延ばされたようでございますが、伝えられるところによれば、日本側の主張をいたしました、穀物協定のうちに今後延長の問題を含めることが避けられる、そして日本側が提案しておりました代替物による援助が認められたように言われておりますが、その点はすでに確定したのでございますか。
  205. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いまアメリカからは強く要請を受けておる。しかし、現地で宮澤君が最後の折衝をやっておるわけですから、そういうアメリカから要請があれば、それを宮澤君には伝えますけれども、現地で宮澤君の一つの判断、これはみんな寄ってやっているんでしょうから、これはその判断というものによる政府への報告を待っておる段階でございますが、新聞ではいろいろなことが出ておりますが、まだ公電としてああいうことを伝えてきていないのです、宮澤君から。そういうことで政府は今は何らかの最終的な報告を宮澤君からしてくるものだということで待機の姿勢でおるわけで、新聞にいろいろ出ておるのは、宮澤君からの報告の中にはああいうことは入ってこないのでありますから、現在、新聞の言われることが、こういう形で妥結を待っておると、ほとんど妥結されるような状態になっておると判断することは少し早すぎる感じがいたしておるのでごございます。
  206. 岡田宗司

    岡田宗司君 同じ外電の報ずるところによりますと、これはジュネーブからの外電ですけれども、アメリカ大統領は、ラスク国務長官を通じて、穀物協定に日本が参加するように圧力をかけてきておるということが伝えられておりますが、ジュネーブの交渉を通じてではなくて、直接アメリカ政府からこちら側に何らかの要請があったのかどうか、その点はどういうふうになっておりますか。
  207. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 圧力といったら人聞きが悪いですけれども、やはり強い要請がアメリカ政府からあることは事実でございます。
  208. 岡田宗司

    岡田宗司君 私どもはこの問題についてはあくまでもいままで日本側がとってきた立場を貫いてもらいたいと思いますし、また、他面におきまして日米間の交渉になっておりますポジチブリストの問題についても、アメリカ側は相当しぶいけれども、日本側として十分に日本側の利益が得られますようにがんばってもらいたいと思うわけであります。最後の段階における外務大臣の決意をお伺いをしたい。
  209. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 宮澤君もこうやって実際はまあ昨日で、これが最終の目標にしたわけです。これがまだ最後の報告がこないところを見ると、やはりわれわれの政府の方針を体して、より奮闘しておることだと思うのでございます。現在の段階においては、政府政府の立場をあくまでも貫きたいと思っておりますが、宮澤君の報告によって政府の最終的な態度はきめたい、こう考えておる次第でございます。
  210. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に、低開発国援助の問題についてお伺いをしたい。日本もOECDに入りましたし、世界の先進国に数えられております。それで日本といたしましても、OECDからの要請もあり、またそればかりでなく経済の発展した国として当然低開発国に対する援助は積極的に行なうべき段階に来ておると思うのであります。これは単によそから要求されたとか、あるいはまたおつき合いだからしかたがないということではなくて、これは世界の経済の発展のために、またこれを通じまして平和を確立するために私は必要なことである。日本政府はこれにもつと積極的な態度をとるべきだと思うのであります。そういたしますと、この問題に対する政府の基本的態度というものは、もっと一そうはっきりされなければならないわけでありますけれども、しかし、過日のインドネシアのほうからの要求のありました借款の問題についての、諸種の条件についてのいろいろ閣内における意見の相違といいますか、そういうような問題からいたしまして、あるいはまた他の大蔵省側がこれにつきまして相当しぶい考え方を持っておるというようなことからいたしまして、なお方針がはっきり確定されていないのではないかというふうに思うのですが、三木外務大臣は、この低開発国援助の問題についてどういう基本的方針をもって臨まれようとするのか、それをお伺いをしたい。
  211. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) ただいまの岡田さんの低開発国援助に対する御理解のある御発言を私は多とするわけでございます。それはえてして低開発国援助というものは、国内にいろんな投資をするものがたくさんあるではないか、道路にしても住宅にしても一ぱいあるではないか、その国内のものを割いてそしてアジアにという考え方はどうも納得できないという気持ちが国民の中にあることは事実です。それに対してまあ社会党の影響力を持つ岡田さんが、やはりこれがぜひとも必要なんだという発言を私は非常に多としたい。われわれ国際会議などに出ましても、日本に対する期待というものは非常に高まっているわけです。日本が、これはこじんまり日本だけでいこうというなら別ですよ。やはり日本は今日の先進国としての、アジアにおける一国ですからね。これがやはり地域的責任を果たそうとするならば、やはり国内でやることがあっても、一部を割いてでも低開発国に援助するという日本の態度が出なければ、アジアにおいて自分ひとりがいろいろアジアの指導国だ指導国だといっても、人がいってくれなければだめですからね、自分がいうだけでは。それだけのやっぱり国際政治における日本の地位というものは、これは認められるものではないわけです。そういう地位ばかりでなしに、将来の日本の安全、日本の経済的発展を見ても、やはり東南アジアといよううなものが、常にベトナム戦争が片づいてもまた次に戦争が起こるということになれば、これは日本の平和に対する大きな脅威ですよ。その上に、日本がこれだけの生産力を持っておって、将来この生産力で日本が貿易をやろうとしてもそういう低開発国の購買力を培養しないでどこへやろうというのでしょうか。そういうことを考えると、どうしてもやはり長い目で見れば、日本の平和のためにも、日本の経済的発展のためにもアジアの安定、発展というものは重大な関係を持っておる。こういうことについて国民にも理解をしてもらって、そして日本が世界に明らかにしておる国民所得の一%は海外の援助に向けたいという、日本が世界に約束したことは、これはいつまでという約束はしませんでした。しかし、一たん言った以上は、できるだけ早い機会に国民所得の一%を海外の援助に向けるように努力することが私は必要である。このことが日本の将来のためにも、平和のためにも、また日本の発展のためにも、やはり重大な関連性を持っておる。こういうことで、いまの御理解ある御発言を多とし、私の所信を述べた次第でございます。
  212. 岡田宗司

    岡田宗司君 大蔵大臣、苦笑いをして聞いておられるようでしたけれども、その大蔵大臣にお伺いしますが、国民所得の一%、これはまあ義務というほど強いものではないかもしれませんけれども、しかし、まあいわば一種の、OECDに入りますというと、一種の義務にもなりましょう。それから今後また開かれます国連の貿易開発会議等におきましても、この国民所得の一%という問題が必ず起こってくると思います。そこで、ことしあたり一%といいますというと、大体四十兆の国民所得に対しまして一%というと、まあ十一億ドルぐらいになるかと思うのですけれども、これはまあことしはすぐできないのだ、大体何年ぐらいのめどにおいて年々低開発国援助に一%の線に達する支出ができるのか、それをお伺いしたい。
  213. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 四十一年度の数字がまだはっきりいたしませんが、四十年度の実績から見ますと、四億八千六百万ドルの援助で国民所得に対して〇・七%という線までまいっておりますし、昨年――四十一年度はむろん五億トルをこしておりましょうから、この勢いでいきましたら日本が近づけたいと考えておる一%の線はもうすぐの問題だろう、そんなに長くかかる問題じゃないと思っております。
  214. 岡田宗司

    岡田宗司君 大蔵大臣にお伺いいたしますが、もしこの援助を行なわれますと、どういう形が主になるでありましょうか。日本の低開発国援助についてはいろいろの批評があります。たとえば賠償というような形で支払われておりますものも低開発国援助のうちへ入っているようですし、あるいはまた五年、七年ぐらいの延べ払いですね、これも援助のうちに入っているようですが、こういうものについてはほんとうの意味の低開発国援助ではないじゃないかというような批判もあるようですけれども、どういう形を主とした低開発国援助が今後行なわれるのか。そして日本としてはどういう形を進めていこうとするのか。またそれはどういう機関を通じて行なわれるのか。その点について外務大臣もしくは大蔵大臣からお答えをいただきたいと思います。
  215. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これはやはりいまは〇・七三とかというのも延べ払いもみな入っているわけです。しかし延べ払いもこれは援助であるに違いはないにしても、できるだけこの援助の内容というものは政府借款というものができるだけ中心になるほうが好ましいことは事実であります。そうしてまた金利もどうしてもやはり長期、低利と、二十五年以上、三分以下というような世界的な大きな流れができつつあるわけですね。これは日本の場合は輸出入銀行によっておりますから、金利五・七五というような、これはやはり受け取り方としてはなかなか援助といってもそれだけの金利をとるということになれば、援助という感じが受け取る側としても受けにくいわけですね。そこで私はやはりこのように世界的な大きな課題になってきておるのですから、低開発国援助というのは、日本も先進国としてこの義務からのがれるわけにはいかぬとするならば、やはり日本のこの低開発国援助の一つの体制というものを再検討せにゃならぬ時期にきておる。だから輸出入銀行で全部低開発国援助をまかなうという仕組みに対して私は疑問に思っているわけなんです。これはやはり商売ですから、貿易を伸ばす。やはり海外協力基金のあの制度ですね、これをやっぱり再検討して、そうして低開発国援助というものは、それは輸銀も必要ですよ、必要だけれども、いまのような輸銀を中心としていくやり方に対してはこれは疑問に思う。どうしてもやはり海外協力基金というようなものを資金量もふやし、あるいはまたそれが実際に低開発国援助のできるような仕組みに再検討しなければならぬ。これは外務省でも関係省と打ち合わして、いま再検討をしておる段階にあるわけでございます。
  216. 岡田宗司

    岡田宗司君 三木さんのお考え方が私は低開発国援助についてはまともな考え方だと思うのですが、大蔵大臣はその点どうお考えになるか。これは財政上の問題あるいは機関の問題等についてこれは大蔵大臣としても御意見のあるところだろうと思うので、それをお伺いしたい。
  217. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私どもも別に考えが変わっておりません。ただ、いままでのやはりいきさつがございまして、日本がいまの世界における地位、特にアジアにおける立場からアジアの低開発国に援助をすることは、これは日本の義務でございますので、国際機関の中でその責任をいままで果たすという態度でやってまいりましたが、国民一人当たりの所得というものを見ますというと、DACに加入している十五カ国の国での日本が国民所得が約半分という、五〇%という地位にございます。したがって援助するときにもその国力に応ずる――急に先進国並みの条件でみんなか歩調をそろえることはむずかしいということはDAC加盟国自身で認め合って、各国にそれぞれ援助の条件の違いがあるという形で今日までずっとやってまいりました。その場合に日本については、そういう日本の地位は世界的に上がっておっても、国民所得が他の国の半分だということから、ある程度日本は違いがあっていいと認められて今日まで各国に対する援助をやってきておるわけでございますが、DAC加盟国のほかの国を見ますというと、平均の金利が三分六厘、そうして期間は二十二年というのが他の十四カ国の大体平均条件だと思います。それに対して日本は大体平均が五分二厘で、年限が各国援助の年限を平均しますと、十二年ぐらいに日本はなろうと思います。このぐらいの条件の差があってもというのを認められながら今日まできておるということですから、各国の援助と日本の援助を比べますと、ずいぶん条件が、日本のだけでも五年あり、八年あり、十二年あり、十五年あり、二十年ありという違いが出ておりますが、いま外務大臣が言われましたような方向がやはり大勢である以上、日本もできるだけこの条件の緩和という方向には努力するつもりでございますが、たくさんの国に対してそれぞれ条件が違っておりますから、これを一挙にそういう方向に一時に持っていくということはなかなかむずかしい困難な問題がございますから、私どもは漸を追って国の力に応じてこの条件の緩和をこれからはかっていきたい、そういうふうに考えておるだけでございまして、考え方には少しも変わりはございません。
  218. 岡田宗司

    岡田宗司君 三木さんが海外協力基金ですか、基金のほうを多くするということが望ましいような発言をされましたが、いまの金の出し方はあまり多いとは思いません。この機関を拡充して、政府としてはここに金をもっと入れるつもりであるのか。あるいはまた外国では海外援助のために省もあるところもあるし、あるいはまた相当な政府機関を持って当たっておるところもありますが、政府としては海外援助のために閣内に海外援助協力会議というようなものを持つか、あるいはまた外部の有力な学識経験者等を集めて海外援助のための審議会というようなものを置くのかどうか、そうして積極的な発展をはかるかどうか、その点について外務大臣、大蔵大臣の御見解を承りたい。
  219. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いま大蔵大臣もですね、外務大臣と方向は変わっていない、同じだということでした。財政当局として財政にやはり限度がありましょうから、それは財政の限度というものを頭に入れつつ私が申したような方向に異存はないということでありますから、そういう方向で今後検討しなければならぬ。ただ仕組みですが、岡田さんの言われるように、各国とも省を持ったり庁を持ったりして一元的にやっておるわけです。日本の場合、行政機構というものについて何かということは考えていないのですけれども、もっとものごとが手っとり早くきまるようにしなければいかぬと私は思っておるのです。そのためにはやはり各省間、総理大臣を中心にして関係各大臣が何々経済関係閣僚会議という――閣僚会議もたくさんありまして、そういうことですから、そういう閣僚会議を別に開くというよりも、総理大臣を中心にして関係閣僚が寄って、やはりなるべく決定を早くするという、こういうようないままでの運ばし方の改革は必要だと思います。そうでないと、ぐずらぐずらしておると、金が生きない場合がありますから、そういう点でできるだけ機構というよりもいままでのきめ方の仕組みということには改革を要すると考えておる次第でございます。
  220. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 機構の問題でございますが、この延べ払い輸出といっても、出資の金融といっても、あるいは政府援助、政府借款といいましても、実質は円借款、商品の延べ払い輸出と同じようなものだ、こういうことになりますというと、これを画然と割り切ってどこの機関にどうということは事実上むずかしいのじゃないかと思います。しかも海外協力基金といいますが、基金は、これは二分の一は国民の税金の一般会計から入れる基金でございますので、これを無制限に援助の資金として、援助というためにあそこに無制限な金を入れるということがいいのかどうか、輸出入銀行には現在そういう資金を三千億円も政府はことし一年だけでも準備するということですが、これは適当に性質を考え調整しなければいけないという問題で、私どもいまの程度ならけっこうですが、今後この援助が大量になってくるというときには、機構についていろいろ考えたいと思いますが、当面の問題としてこれを割り切ってこう考えるということはむずかしいのじゃないかというふうに考えております。
  221. 岡田宗司

    岡田宗司君 お二人の答弁を聞いておりますというと、片方は積極的、片方は消極的、こういう感じを受けるし、食い違いがないと言っておるけれども、現在のところではだいぶ食い違いがあるように思われる。いずれこまかい問題はさらにお聞きするといたしまして、この問題と関連があると思うのですが、三木外務大臣がさきに発言されましたアジア太平洋構想ということですが、どうもこれまだ具体的にあまり内容を発表されておらないようですが、ああいうことを言われました以上、相当な骨格はできていると思いますが、それをお聞かせ願いたいと思います。
  222. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私は岡田さん、こういうふうに考えているのです。これからの一番大きな問題は、これはむろん戦争と平和の問題です。しかしこの該兵器ができておるときに、簡単に戦争というものは、世界的な規模の戦争というものは起こらない、むしろやはり大きな課題というものは南北問題ではないか。いわゆる先進国と低開発国との格差が次第に拡大していくわけですから、しかもその低開発諸国というものは、大ざっぱにいってももう人類の三分の二を占めているのです。大多数の人が、みなあしたのめしに心配しながら暮らしておる人間が人類の三分の二も占めているのだ、この事態というものは大問題だと思うのです。やはりこの状態を改善するということに世界政治が挑戦していかなければ、平和といっても、平和は先進国の中でくずれることはなかなかないと思うのです。しかし平和の問題というものがやはり低開発国をめぐるその混乱の中に世界戦争に拡大する危険性を常に包蔵をしておる。そうなってくると、先進国が総がかりで低開発国に対しての援助というものに取り組まんならぬようなことになってくる。むろん自分の努力、地域的な協力というものを前提にしますよ。それだけではやはり資金もない、技術もないのですから、経験もない低開発国ですから、次第に先進国というのは義務となってくる。ただもう同情して出すというのではなくして、非常に義務化されてくるのがこれからの大きな方向ではないかと思っております。その場合に、どうしたってこのアジアというものを考えてみれば、中共を入れたら十七億も住んでいるのですからね、アジアで。しかも、まあ特殊な国がありますけれども、平均したら一カ年間の国民一人当たりの所得は八十ドルぐらいですから、これはもうたいへんなことですよ。そこでそういうものに対して世界総がかりでなければならぬけれども、アジアの安定とアジアの発展というものに一番直接の利害関係を持っているのは太平洋の先進諸国ですからね、これは何といっても遠方よりも、豪州やニュージランド、あるいはカナダにしても、あるいはアメリカにしても、ヨーロッパ諸国よりもずっと重要な関連性を持っているのですから、だからこれを日本だけでやれといっても、これを財政当局としては多少違いがあるじゃないかということは、ニュアンスの差はやむを得ないと思うのですね、ある程度。これはさいふを握っておる者とすれば、なかなかそうあまりむやみに広げるわけにもいかない。だから日本には限度があるのですね、この問題は。どうしてもやはりアジアの将来に対して重大な関心を持っている先進諸国が、みながやはりこれは同じアジアというものに対して、直接の影響を受ける国々がアジアの開発というものに協力をしなければ私はならぬと思う。先進国の中ではお互いの貿易を伸ばしたり、あるいは文化の交流をやったりするのは、みなそういう仕組みができているのですね、先進国同士では。民間でもはや太平洋経済委員会なんかができて、もう動き出そうとしておる。むしろ必要なことは、太平洋の先進諸国がアジアの開発というものに対してどれだけ足並みをそろえていくことができるかという課題が、この地域の私は最大の課題だと思う。そのために豪州もニュージランドもカナダでも、アメリカでもむろん非常にアジアに対する関心が高まってきておる。豪州やニュージランドは、もうアジアの一員だという意識ですよ、最近外務大臣なども日本にやってきましたし。だからそういう一つのアジア協力の体制というものをますます日本は、これは機会あるごとにそういう協力の体制というものを促進して、やがては何らかの私は一つの協力体制が生まれる日があると思うのです。しかし、いま日本の外務大臣がこういう式を、アジア太平洋にこういう機構をつくるのだと言ったら、これはみんな反発して、それはいかない、だからいまはそういう機構をつくるというよりかは、アジア太平洋という一番運命を共有しておるような地域が、もっとやはりこのアジアの開発というものに対して協力できるような下地をつくるということが日本外交の大きな私は役割りだと思う。そういうことでいまは――将来は生まれてきますよ。しかしそれはEECのまねじゃない。この地域の条件に適したような機構が生まれてくるに違いない。しかしその機構をいますぐに打ち出さないで、そういう機構を生むだけの素地を、下地をつくるために外交は努力すべきである。そうでなければ、この問題は日本だけでといったって、とてもこれは手に負えるものではないですから、そういう意味でアジア太平洋という広さでアジア問題を考えようではないか、それを考えなければこれはとてもアジアの開発というものは手に負えるものではない。そのアジアの開発をすることが即世界の平和、世界の発展に重大な関係を持っているのではないか、だから一生懸命にアジア太平洋ということを声を大にしながら、この地域的な連帯性を大いに強化しようというところが現在の外交的段階であるわけでございます。
  223. 岡田宗司

    岡田宗司君 いまお伺いをしておるというと、まことにけっこうのように聞えるわけであります。もちろん実現されれば非常にいいわけでございますが、アジア太平洋地域におきまして、いま言ったようにアメリカ、カナダ、あるいは豪州、ニュージーランドというような、日本もそれへ入りますが、先進国とそうしていわゆる後進国と両方が入りますし、それからまた政治的にもいろいろな違いがあるわけです。共産圏に属している国、あるいは非同盟諸国、そしてまたいわゆる自由主義陣営の国々、そういうような条件にあって、しかもアジアにおいてはベトナム戦争のような重大な事態もあるわけです。したがって外務大臣の言われるように、この実現ということはなかなか困難なことであろうと思います。しかし困難でありましても、それをおやりになるというからには、やはり方々の国に働きかけなければ、いま言われたようなばく然たる構想を示されただけでは、私はなかなか応じてくるものもないかと思うのです。やはりもう少し目的もはっきりし、その組織もはっきりさせて、それを運営する方法も、もうちょっとはっきりさせる、そうしなければ、私は特にいろいろな援助をする側の国が応じてこないと思うのですが、もしおやりになるとすれば、それらの点をもう少しはっきりさせた上で、そうしてそれを発表されて働きかけになれば成功するが、いまの段階においてそれだけ言われましても、これはなかなか援助する立場に立つほうの国は応じてもこないだろうし、また、後進国のほうにおきましても、いまの政治情勢等から疑いの目をもって見るというようなところもあるかと思います。したがって、もう少しそういう構想を明らかにして出していただくならば、私どももこの問題について十分検討してみたいと思っております。その点はそういうもう少し明らかな構想をお示しになって、これから各国に働きかけられるのかどうか。その構想がありましたら、もう少し詳細に説明していただきたい。
  224. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) まあ岡田さんとは意見の一致することが多いので、その問題についてもいろいろ御理解のあるお話でありましたが、私は、一つにはベトナム戦争というものが、非常にこれはそういう構想の場合にいろいろ障害になる。やはりこの平和的解決というものは、アジアの事情というものを複雑にしますから、だからいまは、たとえば、豪州のハズラック外務相が来たときに、こういう話をしたわけです。全くそうだと彼も言うわけです。ニュージーランドも賛成だと、だからこれをあまり日本がイニシアチブを取って、そうして機構をちゃんとつくって、この中にひとつ入ってきてくれということはいかぬと思う。日本も研究しなければならぬ。その考え方は全くわれわれとしても同感だと、こういうわけでありますから、これをどのようにして協力体制をつくるかということが、ただここに東京で発表してですね。こういうことだというのでなしに、もう少し外交のチャンネルを通じて、皆がひとつの歩み寄れるようなそういういわゆる下地をいまつくっていきたい。日本もこれはむろん研究しなければならない。その体制はどういう体制が可能か。また、そのことがいま言ったような目的に合致するかということは、日本も研究しなければならぬが、また、諸外国との間にもこういう話し合いをして、こちらのほうで、大きく東京でこうだと打ち上げる前に、そういう努力が要るのではないか。そういう努力を、これだけの大きな構想ですから、すぐに一年や二年でぱっとできるというものでは私はない。しかし、だんだんとこのアジア太平洋地域に共同社会としての連帯感、こういうものが生まれてくれば、そういう機構を生むのにも生みやすい素地ができる。したがって、これをあまりせっかちに、おまえ、これを言ったじゃないか、どうやるんだと、早く機構を東京で発表せよと、こういうことではかえって成功しないのではないか。そういうことで、いまはそういう外交機関を通じて、できるだけ皆が歩み寄れるような、もっと一番有効な協力体制をつくり上げるために努力をしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  225. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと……。外務大臣にたいへん親切な解説をいただいておりますので、ちょっとこの機会に聞いておきたいのですが、そのアジア太平洋構想の中には、アジアにおける共産圏、これは含めて考えておるのか、あるいは段階的に含めるというような考え方で考えておるのか、いや、それはもう全然考えておらぬので、それを除外しての考えなのかという、まあ三通りくらい想像できるわけなんですが、あるいはこれもはっきり固まったものでないかもしれませんが、この辺のことについては、大体どういうふうな見当でしょうか。
  226. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは、まあ亀田さんも御存じのように、いまの段階では無理ですわね。しかし、将来やはり段階的にそういう共産圏というものも頭に入れなければならぬことは事実でしょうね、これは。いまの段階ですぐもうそのもともできないところに共産圏をみな入れていくということになれば、この問題はやはり非常に当初から混乱が起こりますから、将来のやはり共産圏も頭に入れるべきであると私も思っております。
  227. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあベトナム問題が片づかなければどっちみちだめなんで、まずその構想を大いに進められる前に、ベトナム問題の解決に日本ももっと積極的な努力をしていただきたい。  次に、最近悪化しております貿易並びに国際収支の問題についてお伺いしたい。  まず第一に、本年に入りましてからも、貿易の状況はどういうふうになっておるか。まあ本日の新聞を見ますというと、四月の貿易についての通関統計が発表されている。これがあらためて重大な問題であることを国民に知らしております。まずそれからお伺いしたい。
  228. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 本年度に入ってからの貿易の状況は、輸出は少し低調であるが、輸入は増加しているという状況であります。がしかし、大体毎年、上半期は輸出が減って、下半期に輸出が増加するというのが従来の慣例でありますが、ことしは、その輸出が昨年度に比べて鈍っておるということは事実であります。そこで、どうして輸出が鈍ってきたかというと、原因は大体二つあると思うのですが、一つは、アメリカの景気が悪いということです。もう一つは、国内需要がふえてきて、輸出余力が減ってきたということ、これが原因だと思っております。輸入の増加は、これは日本の民間設備投資などの関係で、原料、燃料の輸入が増加したということと、それから直接消費財の輸入が増加したということになっておりますか、しかしまあ下半期になるとアメリカの景気もよくなるという大体私たちの見通しをしておりますし、また、アメリカ国内においてもそういう見通しをしておりますから、したがって、私は、今日までの貿易関係は決して好ましいものではないけれども、一年間としてはそう悲観すべきものではないという大体考えをいたしておるのであります。
  229. 岡田宗司

    岡田宗司君 非常に楽観的な御意見で、とにかくいま輸出が鈍化しているけれども、後半になれば輸出はふえる、まあ輸入もふえてはいるけれども、そう心配したことはない、こう言われるけれども、私は、すでに四月の状況を見まして警戒信号が出た、こういうふうに思うのであります。ところで、これは大蔵大臣にお伺いしたいのですが、昭和四十二年三月十三日の閣議決定による、昭和四十二年度の経済見通しと経済運営の基本的態度、これに「四十二年度の輸出は世界経済および世界貿易全体としての伸び率の低下、国際競争の一層の激化、国内需要の増大を反映して、その伸びが若干鈍化し、年度間百九億五千万ドル程度となるものと思われる。  一方、輸入は、国内経済の上昇に伴い、前年度比一四・八%増の八十九億ドル程度に達するものと思われる。したがって、貿易収支の黒字は、前年度をやや下回る二十億五千万ドル程度にとどまるものと予想される。  さらに、貿易外収支の赤字が増大するものと思われるので、経常収支全体としては、前年度をやや下回る九億五千万ドル程度の黒字となろう。  他方、資本収支は、延べ払い信用供与の増大、開発途上国に対する経済協力の進展等からみて、前年度に引き続き九億五千万ドル程度の大幅な赤字が避けられないものと思われる。  この結果、四十二年度の総合収支において黒字を計上することは困難と見込まれる。」、こうありますが、私はこれより悪いと思う。で、おそらく黒字を計上することは困難と見込まれるどころではない、私は赤字になるのではないか。もちろん、あるいは最近のヨーロッパ、アメリカにおける金利の低下の傾向につれて、輸入のユーザンスあるいはユーロダラーの流入等があって、帳じりは合うように見えるけれども、実際的には悪くなる。もうすでに警戒信号が出ておる。そのために過熱に対するための財政金融政策というものについて準備をする、この段階にきておると思うのでありますが、この点の見込み並びに大蔵大臣のとるべき処置、それをどうお考えになっておるか、お伺いしたい。
  230. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いまおっしゃられましたように、大体四十二年度の国際収支は、経常収支は九億五千万ドルの黒字、それから長期資本収支が同じ額の大体赤字ということで、総合収支はとんとんになるというのが一応の見通しでございます。で、経常収支の九億五千万ドルの黒字を見込むというためには、いま言われましたように、貿易収支で大体二十億五千万ドルという黒字が確保されなければならぬということでございますが、昨年は、大体この輸出入――輸出季節、輸入季節いろいろありますが、ならして一億八千万ドル程度の黒字を月平均確保すればいいということでございましたが、本年はさっき言いましたように、輸出の伸び、輸入の伸び、この問題から大体ことしは一億六千万ドル平均の黒字が貿易収支で確保されれば一応いいというのが私どもの見込みでございましたが、今年に入ってからは、この一億六千万ドルの黒字を季節修正しましても一、二千万ドル割っておる、こういう状態でございますので、上半期は確かに国際収支は赤字になるという見込みは大体はっきりしておると思います。しかし、国際収支の短期的なアンバランスが出てきたから、それに対してどうするかということになりますと、これはまた、いま通産大臣が言われましたように、往年度にいった動きによっていろいろ変化がまいってきますし、もしこの輸入増が必要な設備投資の進へ方というようなものに関係しておるとしますというと、これは将来の長期収支の黒字の基礎をこしらえておるものと見られますので、そう単純に、これによって国際収支が悪化したからという対策を立てなくてもいいという問題もございますので、これもやはりこれから先の後半期の見通しと関連していろいろな対策をわれわれは立てる必要がある、いま程度のものでこの国際収支をそう大きく心配することもないんじゃないかというのが、私ども考え方でございます。
  231. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは本来なら経済企画庁長官にもお伺いしなきゃならない、いないからしようがありませんからなんですけれども、だいぶ見通しが違うように感ぜられる。私は、いまの設備投資の増加の状況等からいいまして、後半期におきましても、輸入の増大はさらに進むもんだ、そうしてその結果、あなたの言われたような、後半期において、この輸出入の状況が修正されてくるというふうには考えない。結局後半期においてやはり政府財政経済政策は、財政金融政策はこの問題について変化をせざるを得ない状態にくるだろうと思いますが、しかし、これ以上争ってもしようがないので、この際はそう申し上げることにとどめますが、そこで問題なのは、どっちみち鈍化しておる輸出をどう進めていくか、ふやしていくかということが問題だと思う。そこで輸出対策ですが、その輸出対策のうちにおいて、アメリカに対して一体どういう政策をとる、それからアジアは最近ちょっと違いますが、アフリカとか中近東というような国で、日本からの輸出が非常に多く輸入が少ない。そのために日本品に対する防遏が始まっておる、そういうようなアルジェリアとかケニアとかナイジェリアとか、いろいろそういう国がありますが、そういう国に対する対策、あるいはまた最近共産圏の諸国の貿易が進んでおりますが、さらにそれを発展させるための政策等々いろいろございましょう。そういうような点についての輸出ドライブの政策について、まず全般的な構想をお伺いしたい。
  232. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) ただいまのところ、輸出の大体三分の一は先進国に対する輸出であります。そこで、今後の輸出の方針といたしましては、先進国、対米輸出などはもちろんですが、を奨励すると同時に、先ほどからお話がありました東南アジア、いわゆる低開発国に対する輸出の増進それから共産圏の貿易の増進、これはイデオロギーの関係で支障はありますが、最近たとえばソ連にいたしましても、あるいは東欧にいたしましても、この共産圏の国がしきりと日本との貿易の発展を向こうから申し出ておるというような状態でありますし、この共産圏と自由主義国との貿易というものは、今後私は必ず発展すべき運命を持っておると、こう考えておりますから、したがって将来は、ことに共産圏の人口を多く擁する共産国と接近しておる日本といたしましては、共産圏との貿易というものは将来拡大いたしていくというふうに考えておりますが、しかしいずれにいたしましても、まず、国際競争力を増進するということが根本問題であります。それに技術の開発というようなことをやって競争力を増すということでありますが、なお輸出のドライブについて、具体的に一体どういう方針をとるかということについては、直接的な方針といたしましては、今般また皆さん方にお願い申しております、延べ払い輸出を促進するために日本輸出入銀行の資金を拡充するということ、これが先ほども大蔵大臣から首われましたとおり、約三十億円に増加しております。それから企業の輸出意欲を向上するために輸出割り増し償却制度の延長、これもお願いしておるのでありますが、それから輸出の交際費の免税、税金の特例ということ、これもお願いしておるのでありますが、こういうことで税制の措置によって輸出の奨励をやりたい。それから将来国際貿易を盛んにするがためには、優秀な貿易人を養成するということで、貿易大学校の設置をお願いしておるのであります。それからジェトロ、日本貿易促進協会に対する補助金の増額をやって、貿易の発達をはかるということをやっておりまするし、それからいまお話しのアフリカあたりの第一次産品の問題、これにつきましては、第一次産品の開発、輸入の促進の措置をとることにいたしたのであります。それによってアフリカあるいは東南アジア諸国の一次産品の輸入をはかるということを考えております。それからなお、先ほどからもお話がありましたが、低開発国に対する技術協力の推進、あるいは海外援助というようなことによって貿易の奨励をしたい。こういうような具体的な方法によって輸出の奨励をしたい、こう考えておる次第であります。
  233. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういうような方向で、一体本年度の約百十億ドルは達成できる、あるいはそれ以上増加して、輸入が増大してもだいじょうぶ、こういう問題ですけれども、その効果等についての測定ですね、はどういうふうでございますか。
  234. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 輸出につきましては、それぞれの品物についてどれだけ輸出ができるかということをいま調査、研究中でありまして、来たる六月六日の輸出最高会議でこれを決定したいという考えしております。大体まあ目標といたしましては、百十億ドル内外ということでいろいろいま調査、計算いたしておる最中であります。まあ百十億ドルにはひとつ本年度達成したいという念願を持っておる次第であります。
  235. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあいろいろ国際収支の問題についてお聞きしたいことたくさんあるのですけれども、時間がないので、最後に一つお伺いしたいのは、中国との貿易の問題について、いま通産大臣は、共産圏貿易が拡大される見込みがあるし、それを拡大することが必要であることを言われました。対中国貿易についての考え方をお伺いしたい。実は、最近西独等西ヨーロッパ諸国も非常に中国貿易に熱心であります。そうして最近では、あるものについては、日本側が競争で負けておるような状況です。また相当な設備投資を中国側に輸出する話も行なわれておるわけです。日本は昨年におきましては往復六億四千万ドル、相当な額に達しております。今後も伸びる可能性も十分あると思う。しかしここに大きな障害がある。それは例の吉田書簡であります。もう大体あの吉田書簡が発せられまして、輸出入銀行の融資を使えなくなりましてから三年になるわけであります。もう私は、そろそろ政府もこの問題について再検討してしかるべきときではないか。ほうっておきますれば、これがやはり障害になりまして、西欧諸国との間の競争に負けていくおそれもあろうかと思うのであります。この問題について、外務大臣、大蔵大臣、通産大臣はどうお考えになっているか。本来佐藤総理にお伺いしたいのですけれども、きょうは機会がないので、この三大臣に、吉田書簡についてどうお考えになっているかをひとつお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  236. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) まあこの輸銀を使う問題は、そういう具体的な事例が起こったときに、その事例ごとに自主的に政府が判断をしてきめる。いつも耳がたこになるほど申し上げておることですが、これをいま変更する考えはない、そういうことをお答えをいたしたいと思います。
  237. 岡田宗司

    岡田宗司君 大蔵大臣は輸出入銀行については大蔵大臣の管轄のことでありますから、もうちょっと具体的に答えられるはずだと思うのですがね。もっと積極的な方針を示してもらいたい。
  238. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まあ大体外務大臣の方針でいいのじゃないかと思っております。
  239. 岡田宗司

    岡田宗司君 通産大臣、対共産圏貿易、特に一番大きな市場である中国との貿易を伸ばす上にこれが支障になっているとお考えになっておるか、またお考えになっておらないのか、今後西独その他の西ヨーロッパ諸国との競争の上でこれはどういう作用をするか。これは通産大臣のお考え方を聞きたい。そしてそれに対して早くもっと積極的な態度をもって臨むべきかどうか、そこをお伺いしたい。
  240. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 吉田書簡に対する処置については、ただいま外務大臣が言われたとおりでありまして、私もそのとおりで、いまこれをどうするこうするということは言えないと思いますが、しかしこの吉田書簡が、日本の中共貿易について支障がないとは決して言えないと思います。たとえば日紡のプラント輸出がとまったとか、あるいは日立造船の造船プラントがとまったとかいうのは、やはりそれが原因していると思いますから、決してその影響がないとは言えない、こう思っております。がしかし、そこで、今日ヨーロッパが中共に盛んに進出しておるじゃないかと、お話しのとおりでありますが、ダンピングをやっております。がしかし、まだプラント輸出については、そう具体的な契約の成立ということはまだ聞いておりませんが、しかし相当積極的にブラント輸出しようというような考えをしておることは事実であります。がしかし、それに対して吉田書簡というものがあるために、外国が進出しようということをねらっておることは事実だと思います。がしかし、輸銀の金を使うか使わぬかということは、ひとつケース・バイ・ケースで今後は考えていきたいと、そう存じておる次第であります。
  241. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上で、岡田君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  242. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に、宮崎正雄君の質疑を行ないます。宮崎正雄君。
  243. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 国民の中には、大学紛争と公務員のストライキについて、大きな疑問と強い不満を持っておるのが少なくないと思います。そこで、私は主としてこの問題を中心といたしまして、若干の質問をいたしたいと思います。  まず、文部大臣――事務当局でけっこうでございますが、国立大学の学生の数、それから教官の数、それから総予算、これを伺いしたいと思います。
  244. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 国立大学の数は七十四、短期大学が二十四で合計九十八でございます。それから国立大学の学生数は二十二万六千三百三十九名、それから短期大学の学生数が七千八百三十四名、合計二十三万四千百七十三名でございます。それから国立大学関係の本年度の予算総額は二千二百七十二億八千六百四十八万一千円になっております。
  245. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 続いて全学連の概況をお伺いしたいと思います。事務当局でけっこうです。
  246. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 全学連は、ただいま大体三派あると思われます。その一つは、日共系全学連でございまして、これが全学連の主流派と称しておるものでございますが、大体加盟しておる数といたしましては、これは公安調査庁の調査に基づいたものでございますが、一万五千名、加盟しておる自治会は正式に申し込んでおりますのが百九十四で、またシンパ的に申し込んでおるのを加えますと三百三十に及んでおります。その次が、三派系全学連と称するものでございまして、これは社青同、社学同、マル学同中核派、これの三派が合同いたしまして、四十一年の十二月に結成されました全学連の一派でございます。その次に、第三の系列は、革マル系全学連、これは大体全学連の正統派と称しておりますが、これがマル学同等が分裂しまして、ただいまは三派系の全学連が、大体予想数が二千五百五十名から三千名以上だと思いますが、革マル系全学連は約五百名、加盟が十八というふうにいわれております。これが大体三つが全学連のおもなものでございますが、その他約九百名、これは以上の三派に入らない、共産党を脱退いたしました人々によっての指導系列下にございますのが約九百名、こういうふうな状況になっております。
  247. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 いままで国立大学にいろいろと紛争が起こったと思いますが、その概況でけっこうですから、お伺いいたしたいと思います。
  248. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 昭和四十一年だけで約三十九件の紛争が起こっておるのでございますが、そのうちで、これが相当ストライキ等の事態にまで発展いたしましたものが約十四件でございます。この内容を申し上げますと、この十四件のうちで警官等の導入をいたしますような事態、過激な事態が起こりましたのが三件でございます。このうちで、その原因別に大体、いろいろな複雑な原因で起こっておるのでございますが、大別いたしまして、授業料値上げ問題に関しまして紛争が起こったものが四件、それから学生会館の管理に対しますものが二件、その他能研テスト反対でございますとか、大学の移転、統合反対でございますとか、それらの大学の決定いたしました方針に反対したものが五件、こういうふうになっておるのでございます。この原因につきましては、いろいろ総括いたしまして、大学のあり方、それらに対しまする学生の不満ということもございますが、先ほどちょっと御説明申し上げましたように、この大学の中におきまして一つのイデオロギーを持ちまして、外部の勢力と一緒になって大学に紛争を誘発するというような状況においてこの紛争が行なわれた場合が多いのでございまして、なおこのほかに最近におきましては、医学部の学生のインターンの問題につきまして、相当のストライキにまで及びました紛争が別に四件ございます。これらもまぜまして相当全学連がこれにタッチをしておる場合が、非常に多いと認められております。
  249. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 学校によっていろいろ原因も事情も違うでしょうが、総括いたしますというと、私はごく一部の学生が、寮や会館の管理権を握って、最後には学校全体の管理権を握ろうと、こういう目的で、身近な問題あるいは不満を口実としてそうしてやっておる紛争が、大体多いのじゃないかと思うのでございまして、そうしてこれに対しましては、一部の教授が声援をしていると、こういう事実が私はあると思うのでございます。このような目的でありますというと、この紛争は今後も拡大すると思うのでございますが、文部大臣は今後どのような対策をお考えになっておりますか、お伺いいたしたいと思います。
  250. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 結局、これはまあ学生問題の対処につきましては、各大学におきまして大学が自主的にこれの解決に当たるというのが、現状でございまして、文部省はあくまで指導助言の立場におきまして、いろいろな問題の解決について指導助言をいたしてまいったのでございますが、根本的に申しますと、たとえば大学のインターンの問題でございますとか、あるいは大学のいろいろあり方の問題、学生の修学環境の是正でございますとか、教育条件の改善とか、こういったような問題は、文部省がやはり責任を持ってこれの改善に努力をいたすべき筋でございますが、ただいま申されましたように、直接的に大学のこの紛争の問題につきましては、あくまで大学自体が自主的にこれに当たってまいるということをたてまえにいたしているのでございます。ただ大学の中におきまして、いま御質問の中にございましたように、大学の管理機構の中におきまして意見の対立がございましたり、不一致がある場合におきましては、往々にしてこの解決を非常に困難にいたしておる事情がございます。これはやはり私どもといたしましては、あくまで大学の自主的に、みずからの力でみずからこれを解決するように努力をしてまいるべきだと存じますし、それはいま全国の国立大学のいわゆる協会をつくりまして、こういう問題に取り組んで、そうしてできるだけ学校の紛争が今後起こらないように、最善の努力は払っている実情でございますので、私といたしましては、そうこれが拡大して紛争が起こってくるというようなことは、国立大学におきましては、だんだん縮小されてくると思うのでございますが、しかし、その原因の問題でございます、私学の問題の授業料の問題等になりますと、やはりこれは何としても基本的な問題を、ある程度文部省において解決をしてやるという立場には立たなければならぬと思っております。
  251. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 全学連には、訓練を積んだバリケード工作隊というのがありまして、紛争が起こりますというと、これが出動するのが例だそうでありますが、こうした場合に、その学校の教授なり職員だけでこれを阻止することができると大臣はお考えでしょうか。またできないとするなら、どうしたらいいというふうにお考えでしょうか。
  252. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) これは大学は、私どももそう思います、できるだけ学園には警察官の導入ということを避けなければならぬと思いますが、しかし、現実に暴力行為が現行犯として行なわれております場合は、大学自体でこれを阻止するわけにはいかぬのでございますから、やはり暴力行為の排除は、正当な権限を持った人がどんどんやっていいんじゃないか。それを学園なるがゆえに、暴力行為を看過する、じっとそういう排除することをとめておるという状態は好ましくないのではないかと考えております。
  253. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 大学の責任者はもとより学長であると思うのでございますが、学長にはどの程度の権限があるのでございましょうか。
  254. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 大学の管理機構におきまして、もちろん総括的な責任は学長にございます。ただ、大学の学長のもとにおきまして、学部長あるいは教授会、それから総合大学等におきましては評議会、これらが責任をおのおの分担をしてやっておるのでございまして、学長は、そういう下部機構にはかりまして、それから学長としての権限を行使するというのが現状でございます。
  255. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 教授会や評議会、これは大学の意思決定機関であって執行機関じゃないんじゃないか、こう思うわけでございます。学生の運動を指導したり監督したり、これをいたしまする実質上の責任者は、だれになっておるのでしょうか。それからかりに教授会や評議会といたしましても、これは一週間に一回か、あるいは評議会なんかはおそらく一月に一回くらいだと思いますが、これが常時学生の指導監督ができるかどうか、その辺の大臣の御見解を聞きたいと思います。
  256. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 大学の学長の補佐といたしまして、各大学には学生部長がおりまして、これが補佐機関としてやっておるのでございますが、しかし、実際上の権限は、どうしても大学及び教授会にあるのでございますし、たとえば、東大のような今度のインターンの問題等につきましては、大学本部があまりタッチをしないで、各学部の教授会に一任をして処理さしておる。だから医学部の紛争については医学部の教授会が全責任をもって解決にあたっておるというような状況でございます。
  257. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 教授会や評議会というのは、これは教授の数はあまり多くないと思うのでございます。そこへ学生が計画的にこれに実力で圧力をかけるというようなことが起こりますというと、教授会の意思決定に重大な影響を与えることができると思うのでございます。現にそのために実質上に急進的な大学生の学生管理にひとしい状態になっておる大学があるのでございますが、こうした点について大臣はいかにお考えでございましょうか。
  258. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 具体的な例は、大体わかっておるのでございますが、しかし、これは私どもとしましては、そういう学生管理の状態ができますような状態になりましたのは、大学自体の管理機構がいわゆる弱体の場合でございます。あくまでやはり大学の管理機構がしっかりしておればそういう問題は起こってまいりませんし、それから一部のそういう学年が働きかけましても、その働きかける理由が全学生に対しまして相当巧妙なたとえば授業料値上げ反対であるとか、インターンであるとか、そういった問題を取り上げておる場合が多いのでございまして、そうでない限りにおきましては、やはり必ずしも少数の者の意見によって全体が動かされることはない。またいままでの学生紛争の解決を見ておりますと、結局はその一部の過激な行動に対しまして全学生の大多数が反省をし、これに学校当局と協力をして、これが鎮静になったという例が多いのでございまして、そういう意味におきまして学生管理というような問題は、これは全く私は経営当局、いわゆる管理当局の弱体に基づいたものであろうかと存じます。
  259. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 先ほど、お伺いしましても、全学連の数は全学生に比べましたらそう多くはないと思うのです。さらにまた全学連の中でも紛争を計画しこれを推進する数はごく微々たるものであると思うのであります。ところが現実には、このきわめて少数の学生に全国の大学が振り回されておる、善良な大多数の学生が非常に迷惑を感じておる、また学長は年じゅうこの対策のためにほとんどエネルギーを消費しておる、こういう現状に対して何かやっぱり根本的に対策を考える必要があるのではないかと思うのでございますが、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  260. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 全学連のいままでの傾向を見てみますと、これは各大学においてそういう傾向があるのでございますが、全学連に関係しております学生は、ほとんどそのあらゆる場合、あらゆる作戦で、時期をとらえて全学をいかにして動かすかということの戦術的な訓練に没頭しておるようでございます。ところが現在の大学当局自体は、これらの事態に対しましてきわめて無能力と申しますか、そういう対処する方法に欠けておるのでございます。そこで文部省といたしましては、こういったような問題につきまして大学当局に対しまして、たとえば学生部長でございますとか、そういう方々に対しまして、あらゆる機会にそういう問題に対処することについて十分講習会その他研究会等を開きますとか、あるいはまた大学の横の連絡を密にいたしまして共同してこの問題に当たるとか、   〔委員長退席、理事平島敏夫君着席〕 そういう問題を、最近に至りまして相当大学自体に私どもとして指導助言をいたして、大学紛争の起こらないように全力を注いで努力をいたしておる次第でございます。
  261. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 大学の紛争の起こる学校と起こらない学校と比較してみますと、紛争の起こらない大学は学長以下職員協力一致してこれの対策に全力を尽くしておる。ところが起こる学校は必ずその背後にこれを扇動したり、あるいはこれを激励する教授があるわけでございます。したがって根本問題は、これらの教授がそうした根本的な原因になっているんじゃないかと、こういうことになりますというと、大学教授の選任という問題が非常に重天な問題と私はなると思うのでございますが、この点大臣はどういうふうにお考えでございましょうか。
  262. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 大学の教授の任用につきましては、その教授の持つ思想――いかなる思想を持っておるかということによって任用また任用をしないとかいうわけには今日文部省の立場としてはいけないのでございます。各大学にそれぞれの成規の手続をもちまして正規の会議にかけまして選考をいたした上で任命されますと、それは文部大臣として発令せざるを得ないのが現状でございます。しかしながら、先生お尋ねのとおりに、現在の学校紛争の起こります原因は管理機構、管理者の中における不一致と申しますか、その統一した意見がないところに起こるのでございまして、この問題は私ども大学自体で十分に考慮をしてもらうことを希望いたしておるわけでございます。
  263. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 ある国立大学の助教授が、日教組の研修会に出まして教育の目的は、人民解放のために戦う人間をつくることであるというような指導をされたことを私は記録として続んだのでございます。こういう教授は、そう数は私はたくさんないと思うのでございますけれども、大多数はこういう考え方に国立大学の教授も反対であると思うのでございますが、そうした人が簡単に教授に選ばれる、任命されるというところに、私は、思想はもちろん自由でございますし、大学の自治というものはこれは当然でございますけれども、何かそこに欠陥が制度上あるんじゃないかというふうに私は心配するのでございますが、そうした点について、もう一度大臣の見解を承わりたいと思います。
  264. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 率直に申しまして、私どもとして、今日文教行政をお預かりいたしまして、そういう問題が一番私どもの苦慮いたしておる点でございます。もちろん大学の教官でありまして、その勤務は差しつかえない限りにおきまして、他の研究団体の研究を指導するというようなことは、これは公然と認められておることでございます。でございますので、今日日教組の講師団というふうになっております者、あるいは地方の団体の講師団になっております者は、相当数に達しておるのでございます。これらの者は、研究の指導でございますれば、これをとがめる方法はないのでございますが、その言動におきまして、いま申されましたようないかがわしい言動のときに、何とかこれを取り締まる方法はないのかという問題でございますが、これはただいま人事院の人事院規則において、政治的行為の禁止に関する条項がございます。しかもこの政治的行為の禁止におきましては、その手段、方法のいかんを問わず、有形無形の威力をもって組織的、計画的または継続的にその政策の目的の達成を妨げることを言い、したがって、単に当該政策を批判することはこれに該当しないというはっきりした条項がございまして、現在の人事院規則によりまして、これらの者が政治的行為をなす者であるという断定をするわけにいかない状況にあるのでございます。しかし、私としましては、いやしくも国立大学の教授はそういったような非常に他に大きな影響を及ぼします言動は、これは当然に自発的につつしんでもらいたい、これを強く要明するわけでございますが、現実の問題として、こういう教授が相当ございますことを、私、いまの文部行政を預かる者として非常にいま苦慮いたしておるのでございます。
  265. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 大学は、何といいましても、自主的に自分の力で自分の問題を解決する、これがたてまえであると思います。そこで国大協におきましては、専門委員会をつくりまして、その対策の試案をつくったようでございますが、その学長でつくった専門委員会でつくったその試案は、各大学に持って帰りますというと、結局教授会において骨抜きにされてしまう、そしてその案をまたようやく了解を得て今度は国大協の総会に持って帰りますというと、またこの総会でさらに骨抜きにされてしまう。結局この専門委員が苦心してつくったものとはほど遠いものになってしまう。しかもこれが外部に出ました場合に、国大協の試案であるからこれが一番正しいのだ、こういうふうに受け取られたのではたいへん困るのだといって心配しておられる委員さんがあったのでございますが、この点、大臣はその経過を御存じでございましょうか。
  266. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 新しい学制をしきましてから、特に大学問題につきましては、大学の管理制度をいかにするかという問題は、終戦後におきまする教育上の大きな課題でございます。昭和二十五年ごろでございましたか、大学管理制度に関します、御承知だと思いますが、我妻委員会というものをつくりました。これが非常に熱心に大学の管理体制につきまして論議をいたしましたが、ついにこれは結論を得ずしてお流れになりました。その後荒木文部大臣のときに中教審で管理制度に対しまする答申を得たのでございますが、これも大学側の強い反対に会いまして、国会に提案するに至らず、今日に至っておるのでございます。こういうわけで、その提案を出しませなかったときに、国大協におきまして、自主的にこの問題を解決するということで、国大協のほうで研究討議をいたしました成案が、いま申されますように、各大学に持ち帰り、反対に会って、これが日の目を見ずに今日までおる。いわゆる大学の管理体制の非常に大きな課題として、今日まで残された問題でございます。今日の段階におきましては、私どもはやはり各一つ一つの大学は、ひとつこの問題について真剣に取り組んで、その積み重ねによりまして、正しい大学の管理体制が完成いたしますことを熱望いたしておるのでございまして、いまのような状況で、強制的にいま管理制度というものを私ども政府がきめまして、そうしてこれに対して絶対的に、大学当局が全面的な反対をするという状況は、今日の状態といたしましては、私はまだそういう時期ではないと、こう考えておる次第でございます。
  267. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 私は、ただいま文部大臣の御意思もよくわかりました。監督はできないのでございますけれども、大学に対しましては指導助言ができるのでございますから、今後文部大臣のその方面の御尽力をお願いいたしますとともに、大学の学長以下教授の皆さんに、この問題に対する重要性を十分自覚していただいて、今後対策に万全を期していただくように切望いたしまして、あとはまた他の機会において御意見を承わりたいと思います。  続いて労働大臣にお伺いいたしたいと思います。  総評の中で官公労関係の組合が占める割合と、それから未組織労働者の数がおわかりでしたら言ってもらいたいと思います。
  268. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 総評傘下の官公庁関係の組合員は約二百六十一万名でございまして、傘下の全組合員数の六一・五%にあたっております。なお、未組織労働者の数は約千八百九十八万名でございまして、これは雇用労働者総数の約六五%にあたっております。
  269. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 労働大臣にお伺いいたします。大臣は公労協のストライキ宣言につきまして、九日に談話を発せられたように聞いておりますが、どのような理由で、そうして、その趣旨はどういうものであるか。いま一つは、正常なと申しますか、あるいは望ましいこの公労協関係の労使の関係はどのようにあるべきかということについて、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  270. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 先日の公労協関係組合のストライキ宣言が行なわれました五月九日に、労働大臣談話を発表したのでございますが、その趣旨はすでに官公労の関係の代表には三べん会っておりまして、官房長官が。そのつどストライキは違法だからそれを予告するような宣言はやめてもらいたいという自重の要請を行なったのでありまするが、スト宣言というものを行ないまして、そこで談話では、三公社五現業の職員は、法律で御承知のようにストライキは一切禁止されておりまして、そのかわりに事業の公共性にかんがみまして、公正な第三者機関である公労委による調停、仲裁の制度が設けられておりまして、その仲裁の裁定については、従来とも政府はこれを尊重し、完全実施する慣行がすでに確立しておるわけであります。それにもかかわらず、この公労委に調停を申請しておる段階、またスト宣言の以前、前日に官房長官が政府を代表いたしまして、誠意ある態度をもって各三公社五現業が回答することを期待しておるという言明をされた直後でございます。この二つの点を考えましたときには、あえてストライキ宣言をやるということは正常な労使関係のルートを破る行為である。したがって、もしこういうことを無視してストライキを実行に移すということになりましたならば、国民の生活、国民経済に多大の混乱を及ぼすことは必至である。またその結果好ましいことではないけれども法律に基づいて処分が行なわれるということになりましたならば、労働者自身にとっても非常な不幸な事態と考える。だから切にストライキという違法行為をやらないように、反省と自重を要請する、こういう談話を発表いたした次第でありまして、労働大臣といたしましては、公労協関係の労使関係はあくまで話し合い、そうしてそれがととのわないときには調停、調停がととのわなければ仲裁裁定とこういった合法的な手段でものごとを解決していく、こういうことが望ましく、また当然そうあるべきものだと考えております。
  271. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 公労協の組合の一部には、ふだんからストライキ基金というのがつくってあるところもあるようでございます。これは結局常時戦闘体制、こういうことに解されるのでございますが、こうしたことについて、どうしてこういうことが起こるのか、労働大臣はどのようにこれを解釈しておられるか、ひとつお伺いしたいと思います。
  272. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 常時ストライキ基金をリザーブしているということは存じ上げておりませんけれども、違法ストが行なわれて処分者が出るとなりますと、たいへんな費用が組合にかかってくるわけであります。まあそういう関係でそういった費用も積み立てされておるのかもしれません。しかし根本は、日本の法律では公労協関係というのはストライキを禁止されておる。いわゆる法治国家としてそういうことのない労使関係というものでなければなりませんので、われわれはそういうことを自覚する官公労働組合に成長してもらいたい。常々労働行政を担当する者といたしまして考え、また機会あるごとに組合の指導者にはそのことを話しているのが現在の実情でございます。
  273. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 私も、そうした正当な手続が保障されているにもかかわらずあえてそういうようなことをする組合員に対しまして、どういうわけか私は理解ができないのでございます。ところで、私がそういう点について政府関係の使用者あるいは管理者がどうも認識が少し甘いんじゃないかというような感を深くした一例がございます。これは地方新聞には出ておりましたから差しつかえないと思いますけれども、中央紙に出ておりませんから、私はあえて名前は申し上げません。ただある機関と、こう申しまして、その経過をひとつお伝えしたいと思います。この機関が、ことし創立何周年かの記念日を迎えたのでございます。組合はひとつ一緒に合同で記念事業をやってくれと、こういうふうに当局に申し入れたのでございます。そこで当局もこれを心よくいれまして、そうして合同でこの行事をやるように計画したのでございます。ところが、その日の直前になって組合が反対いたしました。当局は、紛争をおそれてこれを中止してしまったのでございます。ところが、それから後になって、今度は組合が単独主催でこの記念式典あるいは祝賀会を開催し、そうして当局に対して援助を申し出たのでございます。これに対して当局は心よくこれに援助をした。それは当局としては、家族のこともあるし、また労使間の円満な関係を願って、相当額の援助をしたのでございます。問題はこれからでございまして、ところが、そういう当局の態度に対しまして、その記念祝賀会の開会のあいさつに、組合委員長は何と言ったかというと、民主化闘争は完全な勝利に終わったんだ、当局は張り子のトラであると言ってまあ嘲笑し、今後積極的に闘争をやるんだという決意を披瀝したのでございます。そうして一〇・二一には初めてストに参加し、十一月三十日には当局の警告を無視して座わり込みをやったのでございまして、せっかく好転しつつあった労使関係が急速に悪化したと、こういう事例でございます。私は特定の意図を持ったところのものに対しましては、当局の誠意も善意も通ずるものではないんだ、かえってこれを逆用されておるというのがこの今回の例であると思うのでございます。そこで私は、これがただ一つのこの機関だけでありますれば問題にはいたしません。しかし、こうした類似の例がほかの政府関係機関にもあるということであればこれはたいへんなことであると思うのでございます。しかも、政府関係の公社、公団、事業団、法人、こういうようなものは、その数がかなりたくさんあると思うのでございます。したがって、これらの機関の、こうした機関の横の連絡をはかり、これを調整する責任体制を政府としてこれを検討する必要はないかどうか。これを総務長官にお伺いしたいと思います。
  274. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) ただいま実例をあげての御説明でありまするが、まあ国家公務員、さらに公共企業体の関係の方々、それから公団、公社等を含めて、人事の管理を総合調整せよという御趣旨のように私は承ったのでありまするが、今日までわれわれのとってまいりました態度は、それぞれの公団、公社等に対しましては、各省庁を通じていろいろと私のほうからお話は申し上げておりまするが、やはり御指摘のような人事管理の面において一致点を見出し得ない、なお、さらに総合調整を要すべき点も多々あると存じまするので、この問題についてはわれわれのところに与えられた権限、そういったものとの関連において検討をしていかなければならない問題であると考えております。
  275. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 次に、自治大臣にお伺いいたしたいと思います。  ILO八十七号条約の発効に伴いまして、関係国内法が改正され、それによって条例や規則が改正制定されたのでございます。その結果、ILO条約の精神に沿って、自治体においては規律ある労使の関係が確立されたものとわれわれは考えるのでございますが、これらの点につきまして、まず第一に、条例や規則が、これが完全に全国的に実施され、制定されたかどうか。またそれがそのとおり守られておるかどうか、全国的な概況をお伺いしたいと思います。
  276. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 先般の地方公務員法の改正に伴う条例等につきましては、まだそれに伴う条例をつくっていないところも数カ所ございます。また、正確に調査をいたしておりませんけれども、条例はできたけれども、必ずしも条例どおりに人事管理が行なわれていない面もあろうかと思います。条例を制定していない地方団体につきましては、改正地方公務員法の趣旨に沿って条例を早く制定するように指導をいたしております。また、条例をつくっても、その条例どおりにやっていないというようなところにつきましては、条例を正確に施行するように指導をしてまいりたいと存じております。
  277. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 続いて自治大臣と文部大臣にお伺いしたいと思います。  去年の一〇・二一ストにおきまして、地方公務員や教職員に大量に処分者を出したのでございますが、その概況あるいはその事後処理につきまして御説明いただきたいと思います。
  278. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 昨年十月二十一日のストでございますが、教員を除く一般の行政事務関係では、職場放棄等は三十数都道府県、約二百四十市、百九十町村で行なわれたと思われます。それで、処分を受けましたのは、懲戒処分等を受けましたのが五千五百人、それから訓告その他の事実上の措置を受けた者が十二万人ぐらいであります。また、教員については、約三十都道府県でストが行なわれました。これに対して懲戒処分六万五千人、訓告等の事実上の措置が五万五千人、合計十二万人と認められます。また、この処分に対して不服を申し立てた者は現在約六万人でございます。
  279. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 地方自治体の職員が、あるいは教員がこんなに大量に処分されたというのは今度が初めてであると思います。これは非常に重大なことであると思いますが、このストがどうして起こったのか、何の目的で起こったのであるか、どういうふうにお考えでございましょうか。自治大臣に。
  280. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 昨年十月二十一日のストは、御承知のように、人事院勧告の完全実施ということを要求して起こしたストでございます。
  281. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 それじゃ人事院総裁にお伺いしたいと思います。われわれは新聞で読んだところや、あるいは職場のポスターなんかを見ますというと、人事院勧告完全実施もございましたけれども、そのほかに、ベトナム戦争反対とか、いろいろなことがつけ加えられてありました。しかし、それは別といたしまして、人事院勧告がストの原因であったということでありますれば、私はこの点について人事院総裁にお伺いしたいと思うのでございます。われわれは昨年人事院から勧告や報告をいただきました。これをまとめる作業はたいへんであったろうということはよくわかります。その御苦労はよくわかるのでございますけれども、国民のなかには、特に中小企業あるいは農民、こういった方々の中には、勧告の内容につきまして実感として何か割り切れない感じ、納得ができないものを抱いておると思うのでございます。そして中には、人事院が圧力を受けているんじゃないか、あるいは親方日の丸というような立場でやっているんじゃないか、こういう疑問を持っているものがあります。そこで、私は第一に、人事院が圧力を受けられたことがあるかどうか、また、どういうふうにしてこの勧告案というものが出たのであるか、そうした点についてお伺いしたいと思います。
  282. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 私ども、国家公務員の給与をおあずかりしております者としては、御承知のとおりに、団交権その他の労働基本権を大幅に制限されておる人々の給与のことでございますからして、これはきわめて適正な、また、万人に御納得いただけるものでなければならないというたてまえを堅持しております。そこで御承知のように、これは民間の給与水準というものをとらえまして、せめてそれに並ばしていただきたいということでおるわけでございますが、この民間の給与水準と申しましても、一つの考え方から申しますというと、国ほど大きな企業体はない、したがって、民間と比べるについても、大企業、大会社等と比べるのが当然じゃないかというふうな考え方も一部にはございますけれども、ただいまたまたま御指摘がありましたように、公務員の給与はやはり一般国民大衆、納税大衆の御納得を得るものでなければいけないということに基準を求めまして、御承知のように、企業規模で百人以上、事業所規模で五十人以上というところに線を引きまして、これでまいりますというと、従業者の総人数におきまして、一般民間従業員の半数以上をカバーすることになりますので、そこに水準を求めて、ただいま現に調査中でございますが、六千数百の事業所を克明に回りまして、四十数万人の従業員に一人一人当たりまして、その結果を集計して出ました水準を国家公務員の給与の水準と突き合わせまして、そうして、これだけの違いがある、ぜひこの違いだけは埋めていただきたいという立場でやっているわけであります。私どもの作業は、きわめて現実的には、いま申しましたようなデータを率直に基礎としてやっておりますものですから、どこからも、圧力によって数字がどう変わるというようなものではない、それは勧告、報告のたびごとに詳細に資料として公開しております。すっかりデータを公開した上で、かようかくかくの次第でこれだけのベースアップをぜひお願いしたいということでいっておりますから、ただいまお話のありましたような、各方面の圧力というものが入り込む余地がないということを申し上げておきたいと思います。  それから一般の中小企業の方々その他からは、やはりわれわれのところにも、うらやましいなあというのが、たまには投書をいただくこともございます。   〔理事 平島敏夫君退席 委員長着席〕 ございますけれども、先ほど申しましたような趣旨から申しまして、われわれのとっている基準というものは、たまたま公労委のとっております基準とも合います。それは一般の皆さんの御納得を得ることであろうというふうに信じている次第でございます。
  283. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 人事院が外部から圧力を受けることなく、科学的なデータをもとにして作業して、その結果の結論であるということを承りまして、私は、その点は安心したのでございますが、しかし、去年の勧告の出されます直前に、人事院に赤旗が立ちまして、そうして、その中に地方の公務員が、私の聞くところによると千名ぐらい入って、そうして、どういうことか知りませんが、そういう事態があったことは私は事実だと思う。そういうことがあったから、あるいは圧力というような誤解を受けたのじゃないかと思うんですが、その人事院に押しかけた公務員は大体地方公務員あるいは地方の教職員であるということを聞きましたが、それに間違いはないでしょうか。
  284. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) お話のような事態が昨年ありましたことは事実であります。これは別に克明にその御出身を調べたというわけではありませんけれども、大体自治体関係の方々が多かったように思います。これははっきりしたことはわかりません。
  285. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 民間のデータをお調べになった場合に、大体民間のどの程度のものを基準にしてその勧告の案をつくられているのでございますか。たとえて言うと、民間の上のほうか中のほうか、下のほうですか。
  286. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 先ほど申しましたように、百人以上の企業規模、五十人以上の事業所規模というところでずっと押えまして、さらに、得ました個別の一人一人についての調査表を、職種別に、公務員側の職種別に対応させます。それから年齢別その他こまかい要素にこれを分析いたしまして、そうして大体課長級の方であればどう、一般の肉体労働に従事されている方であればこうというようなことで、こまかく突き合わせているわけでございます。
  287. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 自治大臣にお伺いいたします。  地方公務員の場合、各府県の人事委員会が人事院勧告を参考にし、さらに、その地方の民間の給与等を調べて、そうして勧告する、その結果決定するように聞いておるのでありますが、そのとおりであるかどうか、そうして、しかし、その場合に地方の人事委員会にそうした民間のデータを詳しく集めて調べるような調査能力があるかどうか、こういうような点についてひとつお伺いしたいと思います。
  288. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 地方公務員の給与はただいまお述べになりましたような基準をとりまして決定をいたすわけでございまして、その場合、都道府県の人事委員会等につきましては、その地方の企業体系、給与実態を調査する能力はあるものと存じております。
  289. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 官房長官はおられましょうか。――ただいまの人事院総裁のお話を伺いますというと、非常に良心的に、しかも、合理的に出した勧告である。こういうことでございますから、政府としては、これを十分に尊重されて、そのまま実施されるのが私は筋じゃないかと思うんですが、官房長官の政府としての御見解を承りたい。
  290. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) おっしゃるとおりのことがたてまえでなければならぬと考えております。
  291. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 去年の一〇・二一ストは、これは人事院勧告というのは国家公務員のためになさるべきものですが、それに対して、はるばる全国から集まって、そうして、先ほど圧力でないとおっしゃいましたから、まあ鞭撻といいますか、応援といいますか、これは結局、地方の公務員が国家公務員のために大いに努力した、応援した、こういう形であると思うのでございますが、しかし、私が調べました数字によりますというと、地方公務員の額と国家公務員の額とは相当に差があると思うのでございます。地方のほうが高いんですね。私は数字をそのまま比較することは、これは妥当じゃないと思います、いろいろな条件が違いますから。ただ、勧告をもとにしてやりますと、どうしても私は地方のほうが高くなりがちだということはいなめないと思うのですね。どういうわけかといいますというと、これはやはり府県によりますというと、大企業の少ないところは勧告案よりもやはり民間のデータは低くなると思う。そうすれば、やはり勧告案まで大体引き上げるというのは、これは人情だと思う。ところが、大企業のあるところは、勧告案は低過ぎる、民間企業のデータのほうが高くなるから、今度そのほうに合わせるということになると、大体全般的に高くなるという、こういう可能性があると思うのでございます。したがって、現実には、私はここで議論する考えはございませんが、額の、まあ国家公務員より少なくとも上にあると思われる地方公務員が、あえて人事院勧告完全実施のためにストまでやらなければならぬという、その真意が私には理解できないのですが、自治大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  292. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) お話のように、地方公共団体の職員、地方公務員の給与は国家公務員より高いところもございますし、低いところもあるわけでございます。それで、国家公務員の人事院勧告を実施いたした場合の国家公務員よりも、むしろ高額な給与を受けているような地方団体においては、お話のように、人事院勧告完全実施ということを理由にして、ストをやること自体いかなる場合でもいけませんけれども、そういうことをやられるのは、私も理由がわからないわけでございます。
  293. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 もう一度、今度は自治大臣にお伺いいたしますが、先ほど申しましたように、相当大量の処分者を出した。まあ減給以上は実害があるんですが、戒告でも私は実害があると思うんですが、どのような実害かあるでございましょうか。
  294. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 大体戒告以下の実質的な処置をされた者につきましては、昇給を延ばされるというような点におきまして関係が、実害があると考えます。
  295. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 私は地方に帰りましてこういうことを聞いたんです。一日に三十分や一時間職場を放棄しても、あとでそれくらいの仕事は埋め合わせをするんだと、それにもかかわらず、このような実害があるような処分をするのは行き過ぎじゃないかと、こういうふうな声を聞いたんですが、自治大臣はこの点についてどのようにお考えでございましょうか。
  296. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 地方公務員が全体の奉仕者として公共に奉仕する職務を持っておりますので、したがいまして、スト等の行為は禁止されておるわけでございます。それで、しかも、昨年の十月二十一日のストは、あらかじめ計画的にこうした違法行為を企画をいたしまして、それを実施したわけでございまして、このようなことは許されないのでございまして、たとえ事務に支障がなかった、国民に迷惑をかけなかったというだけで、こうした公務員の秩序を乱すようなことを許さるべきものではないと考えます。
  297. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 自治大臣にお伺いいたしますが、まあストに参加した者の中には、相当組合の指令に従ってやった者が大部分だろうと思うんです。したがって、そうした参加した者がその犠牲を払うということになりまするというと、これは困りますので、そこで、昇給延伸の回復について組合としても力を注ぐということは、これは大体想像はできるのでございますが、現在そのような動きが府県にあるかどうか、御存じでございましょうか。また、そういうようなことがもしあるとするならば、それは自治大臣としてはどういうふうにお考えでございましょうか。
  298. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 現実の調査をいたしておりませんが、昇給を延ばすことを回復するようなことは断じてあってはならないことだと考えておりますので、もしそのような動きがあれば、十分指導してまいるつもりでございます。
  299. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 大臣が、自治大臣が指導するとおっしゃったのですが、これは強制力がないわけですから、したがって、各府県がまあまちまちになるおそれがあると思うのでございます。そうしたことにつきまして、自治大臣としては、もうそれ以上何も手はないのであるかどうか、その点をお伺いいたしたい。
  300. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 地方公務員法の改正によりまして地方公務員の公務員秩序を正常なものにいたしたいというのが、われわれの念願でございます。その意味におきましては、そうした人事管理担当官の研修会その他等も開きまして、十分われわれの、と申しますか、改正地方公務員法の趣旨を徹底し、そうした近代的な人事管理をやってもらうようにいたしたいと考えます。
  301. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 次に、文部大臣にお伺いしたいと思います。  やはり一〇・二一ストは、これは一般公務員とはちょっと意義が違うと思うのでございます。と申しますのは、父兄や生徒の中には、そのような違法なストにはもう反対であると、こういう父兄が圧倒的に多いんじゃないかと思うのでございます。ところが、そういうストをやるような先生に対して、これはもう学びたくないと、こういうような自由が少なくとも義務教育学校においてはないわけです。あくまで一年間はその先生に教わらなくちゃいかぬと、そういう意味におきまして、父兄や生徒には、先生を選ぶ権利も、これを拒否する権利もないと、こういう意味におきまして、私は一般公務員とは違った意味を、重要な意味を持っておると思うのでございます。しかも、その先生だけではなしに、その先生は、まあ一人当たり三十人を先生が受け持つと計算しましても、概数四百五十万人の生徒、これがそうした自分の欲しない先生について学ばなくちゃいかぬ、これは私はたいへんなことであると思うのでございますが、文部大臣はこの点についてどのようにお考えでございましょうか。
  302. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 一般地方公務員が法規に反しまして実力行使に入るということは、これは絶対に避けなければならぬ問題でございますが、まして教育公務員、いわゆる義務教育の教育の任に当たっております先生方がストに参加するということは、私どもとしては絶対は避けたい。でございますので、二一ストが行なわれます前に、再三再四にわたりまして、各教育委員会に対しまして、その防止について勧告をいたしますと同時に、また、教育委員会もあらゆる努力をしてまいったと存じます。しかし、残念ながら、約十五万人のスト参加者を出しましたことは、きわめて残念な次第でございます。私はやはり教育者が教育者としての自覚におきまして、いま御質問の中にございましたように、父兄からも完全に信頼を受けるように、将来にわたりまして、そのようなことのないように、教育者の自覚を促してやみません。また、できるだけ私どもとしては、そういうことが起こらないように万全の施策を今後とも講じてまいりたいつもりでございます。
  303. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 去年の一〇・二一ストにおきまして、教職員の全部がやったわけではございません、その一部分でございます。そこで、大多数の学校におきましては、校長が非常にこのストの違法性というものについて深く認識をし、誠意をもって自分の部下職員を指導をした結果、ストを避け得たという実例も多々私は知っております。そういたしますというと、こういう重大なストを今後繰り返さないようにするためには、私は何といっても、学校長というものが重要な責任を持つのじゃないかと思うのでございます。そうした点にかんがみまして、現在学校長を任命することにつきまして、一方におきましてややルーズな点があるのじゃないかというような感を持つのでございまして、大臣とされましては、その点について、校長の任用ということにつきましては、特に慎重を期すように、地方教育委員会を御指導いただきたいと同時に、私はもともと教員自体にも、現職の教員を指導することも必要でございますが、しかし、それよりも、教員になるところのその人が私は問題であると思います。そこで、今後この採用ということにつきましても、私は慎重を期してもらいたい、というその意味は、これは全学連の有力な幹部が、これが公務員に就職したものの中を調べてみますというと、五〇%が学校に就職するのでございます。私は全学連が就職することを悪いとは言いませんが、ただ、それを採用する側がそうした点を自覚して、全学連でもいいのだ、こういう自信を持って採用したのか、あとでそれを知ったのか、私はこの人の、教員の採用において相当考えるべき点があると思います。この点について私は文部省の御指導もいただきたいと思いますが、さらに根本的には、教員養成の制度、あるいは、この資格付与の制度的な点にも相当な私は再検討を要する点があるのじゃないかということを痛感するのでございますが、文部大臣はこの点についていかにお考えでございましょうか。
  304. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 地方公務員たる教員がスト行為に入るということは、きわめて私どもとしては重大な問題であり、教育上避けなければならぬと思うのでございまして、これに対しまして、学校の校長が相当これに対して努力した事実は私どもよくわかっておるのでございます。ただ、基本的には、こういうスト行為をやめるということは、何と申しましても、ただいまのやはり日教組が、まずこの法律違反の行為をやる、日教組としてスト宣言をやるとか、スト行為に移行するというような指導をすることをやめて、いわゆる法律違反の行為をやめるということを前提条件として、これをぜひやめてほしいということを強く要望いたしておるのでございます。ただ、日教組の教員の採用につきましては、これはなかなか思想信条によって採用するとか、そういう差別をするわけにはまいりません。ですから、この採用については、そういう公平な採用方法をやっておると存じますが、要は、教員になりました以上は、この法律に正しく従うということをはっきりと自覚をさして採用する必要があると思うのでございます。
  305. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 私は最後に官房長官にお伺いしたいと思います。  いままでこういろいろと検討してまいりますというと、公務員の労使関係はまだ正常であるとは言い切れぬものがあると私は思うのでございます。その原因は、やっぱり幹部にまだほんとうに労使関係について本質的なものについての認識が足りない点があるんじゃないか、またもう一つは、その根底に、公務員の場合にはやはり国は滅びないんだ、親方は日の丸なんだ、こういう意識が強く流れているような感じがいたします。それから、それぞれの機関や、あるいは団体が、自分のところさえよければいいんだと、こういうような利己的な意識が強いんじゃないか。また、そうしたいろいろな千差万別の団体や組織、このばらばらなものをやはり縦、横調整する、こういう制度上の欠陥があるんじゃないかと、こういうような点を痛感するのでございますが、こうした労使の関係なり、あるいは労務管理、人事管理等につきまして、根本的な制度としての対策を講ずる必要を感ずるのでございますが、官房長官の御所見を伺いたいと思うのであります。
  306. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 御説の点は十分参考にいたしまして、今後の実際施策の上にいろいろ反映もさせていきたいと存ずる次第でございますが、御指摘の点につきましては、現行制度の運用によって、ある程度の欠点を補うこともできるかと思いますが、これはこれで努力をいたし、なおかつ、それをもって足らざる点につきましては、いろいろの機関でもよく御審議をいただきまして、それによっていかがいたすべきか今後さらに検討を続けてまいりたいと存ずる次第でございます。
  307. 宮崎正雄

    ○宮崎正雄君 わかりました。
  308. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上で宮崎君の質疑は終了いたしました。  明日は午前十時から公聴会を開会することといたしまして、本日はこれをもって散会いたします。    午後五時四十九分散会