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国務大臣(早川崇君) 第一の技能労働力の不足につきましては、御承知のように、毎年約百万人といわれておるのでございます。これに対しまして労働省といたしましては総合
職業訓練所、公共
職業訓練所、いわゆる公的
職業訓練所で約十二万人、主として中卒を
中心といたしまして訓練をいたしておるわけであります。また、雇用をいたしました事業内の
職業訓練所、これで約八万人近い技能者を養成いたしておりまして、それぞれの需要に応じようといたしているわけでございます。しかしながら、根本は日本人がいわゆる技能者、ブルーカラーというものを軽視する風潮が依然として残っているわけであります。いわゆる各会社でも工員さんと職員さんというのを御承知のように雇用の差別をつけておる会社がたくさんあるわけでありますが、したがって、学校教育とそういった労働省の
職業訓練と、加うるに社会に技能者をもう少し尊重するという気風を醸成していかなければたいへんなことになると
考えまして、われわれは技能者表彰
制度あるいは学士院に相当するような技能院というようなものをつくって、また、三年後には技能オリンピックというものを日本に招致しようといろいろ考慮をいたしておる次第でございます。
二番目の、中卒者が、若年労働力が非常に減ってまいりまして、これは出生率の低下が影響いたしておりますし、また、大学志望者が非常に多くなってむしろ中学卒業者が減っておるとか、そういった状態から、あの安定計画の中では、
昭和四十五年には現在百五十八万人という学校卒業者の就職者に対しまして百十七万人、約四十万人近い若年労働力の供給が減ってまいるわけでございます。これはたいへんな問題であります。他方、中高年者は十年後約五百万人ふえていく、こういった事実を踏まえまして、今後の労働力というものをどういうように有効に活用していくかという問題が一番大きい問題でございます。それにはむろん人口問題もからみますが、結局中高年を、あるいはまた婦人労働力をいかに活用するかという点にしぼられてくるのではなかろうか。
そこで、今後の雇用情勢を
考えますと、中高年の方、婦人の方にうんと働いてもらうようにしなければならない。その対策といたしましては、中高年者にいつまでもできるだけ働いてもらうためには、やはり定年制の延長、五十五歳では現在の心身の状態、寿命の伸びた状態からいって、あれは明治時代の遺物だといわれております、これの延長を呼びかけておるわけであります。
それから、中高年を雇う中小企業者に対しましては、住宅奨励金というものをことしの
予算で設けまして、月四千円、一カ年そういう中高年を雇う中小企業には差し上げていく。また、そういった人たちのための住宅融資約八十億円をもちまして中小企業の労働者、主としてこれは中高年が多いのでございますが、そういう人たちの施設も行なうことにいたしておる次第でございます。
次に、お尋ねの婦人の雇用に対しましては、いままでは結婚までの雇用でございました。最近急激に既婚者の雇用者がふえてまいりました。九百三十万人に及ぶ――これは農業労働をのけております、いわゆる一般の九百三十万人に及ぶ婦人のそういう雇用者の約四三%までが既婚婦人になってきておるわけであります。これはアメリカン・スタイルといいますか、欧米スタイルに変化しつつあるわけでございます。こういった事実に即応いたしまして、労働省といたしましては、こういう人たちの隘路になっているいわゆる託児所、保育所、子供を預かってもらう施設の充実、これが
厚生省で本年度も大幅に拡充されておるわけでございます。
もう一つは、婦人は家庭を持っておりますから、パートタイマーというものがちょうど兼業農家みたいなもので、雇用面におけるパートタイムというものをやはり大きく取り上げて、家庭婦人の家庭の仕事、育児、それから
職業というものを三つ
調整していかなければならない、そういう観点から、パートタイマーの
職業につきましては、特別の相談所も設け、われわれといたしましては、この雇用条件の改善その他につきまして特に配慮をいたしてまいりたいと
考えておるのであります。特に団地夫人なんかに対しましては、千葉県あたりではすでにパートタイムの仕事を日立
関係の会社が委託をいたして成功いたしておるという例もぼつぼつ出てきておるわけでございます。
それから、身障者をどう活用するか、就職さすかという問題は、御
質問の第四点でございまするが、これに対しましては、身障者就職促進のための
法律によりましていわゆる雇用率を設定いたしております。民間会社では一・二%ですか、官庁
関係は、一・五%とか三%とか、そういう雇用率を設定いたしまして、身障者を百人のうち何人という、
義務づけといいますか、強制力はありませんが、一つの雇用率設定による勧告奨励をいたしておるわけでございます。この点につきましては、民間会社におきましてはおおむね雇用率のとおり身障者を採用いたしております。もちろんこれは平均でございまして、一・二%に満たない事業者に対しましては、
職業安定所を通じまして雇用率の充足に努力をいたしておるわけであります。官庁
関係におきましては、それぞれやはり雇用率設定に伴いまして、採用いたしてもらっておるわけでございまするが、残念ながらこの官庁の法定雇用率が一・四%でございまするが、三公社の例をとりますると、身障者の雇用率の一・四%を達成しておるのは国鉄、専売でございまして、電電公社は残念ながら〇・九八%という低い雇用率になっております。まずそういった公の機関から模範を示さなければならないんですけれ
ども、残念ながらそういう数字が出ておるわけであります。
それから、申しおくれましたが、中高年の雇用率、いわゆる六五%は中高年だ、こういう雇用率もございまするが、これもおおむね、官庁
関係におきましてはそれに即応して中高年の活用をはかっていただいておりますけれ
ども、その中で郵便配達人――電報なんかを配達される、そういう
部面だけがやはり中高年の雇用率達成においては大幅にうまくいかない。それから、エレベーター・ガールといわれておりますが、ガールということばが適当かどうか知りませんが、官庁のエレベーターをやる人は、若い御婦人よりも中高年という雇用率設定をいたしておるんでありますけれ
ども、残念ながら中高年の採用率が三〇%。それから道路公団の切符を切る方、こういうのも中高年の雇用率設定の業種の中に入っておるんですけれ
ども、なかなか道路公団の実情や雇用状態でこういう面で目的を達しておらない。
今後とも中高年の雇用率の達成と身体障害者の雇用のための雇用率設定の実施に労働省としては努力をいたすとともに、特に身障者に対しましては適当な職種というものを設定いたしまして、
職業訓練、リハビリテーションというようなものをやってまいりたいと思います。この中で、特に私は最近の明るいニュースはムサシノ電子工業という、これは御殿場にできるんですけれ
ども、三百人ほど、いわゆる手押し車で仕事をしなければならぬという重身障者を
中心として、全部身障者で電子工業をやっているという会社もございます。これは六月から操業開始するのですけれ
ども、それで経営が成り立つというのです。こういう明るい一つの民間の会社が模範を示していただきましたならば、こういう電子工業は身障者でも十分採算ができるのだというモデルケースになりますので、大いに期待いたしておる明るいニュースもあるわけでございます。
最後に、特に少年集団就職者の転離職率が非常に高いじゃないか、これをどうするかという御
質問でございます。最近新聞で大きくいろいろ話題になっておりまするが、実際のところは、東京都の場合を調べますと、少年の集団就職した者の九カ月以内の離転職率は大体一割四分ということになっております。しかし、鹿児島県から集団就職した人を三年の時限をとって調査をいたしましたレポートもございまするが、これによると約四割九分が三年間で離転職している、こういった報告も出ておるわけであります。しかし、この問題は、青少年がやはり一つの夢を持って来るのですから、必ずしも離転職しちゃいかぬというのでないので、やはり自分の夢に合わない仕事というような場合に職場を変わっていくということは必ずしも悪いことではありません。しかし、それによって非行青少年に走っていく、こうなるとたいへんなんです。そこで、労働省といたしましては、従来、職場に安定さすための定着指導員というのを各県にそれぞれ地方公務員として持っているわけであります。それから、非公務員である定着指導員、東京で二百五、六十名おりましょうか、そういった人を活用して、そういった少年の就職者というものの定着指導をいたしておるわけでありますけれ
ども、それだけでは不十分である。そこで、先般労働省から各出先機関に対しまして、特に受け入れ地の市町村、府県に対しましては、年少就職者相談室を新たに設置をいたしまして、そうして身近なそういった少年就職者の相談に応じよう、かように
考えておりまするとともに、もう一つの大きい理由は、就職のときの条件が違うじゃないか、一万七千円だと思っていたら八千円だった、こういう不満もあるわけであります。ところが、よく調べてみますと、それは食費とか住宅費というのをのっけて一万六千円といっている。それを引かれると八千円くらいになるのですね。そういったことが、就職案内者のほうはうそを言っているじゃないか、こういうのですけれ
ども、やはり求人する会社がそういったことをこまかく間違いないようにひとつ毎年毎年の求職時期にははっきり出すように指導をいたしておるわけでありまして、いやしくも少年がだまされたというようなことでは、実際はだましていないのですけれ
ども、誤解を与えますので、まずその就職のころからひとつ少年の夢を破らないようにしようじゃないか。それから就職いたしましても、あとアフターケアーを一年にわたりまして十分にやっていくということも
考えるべきではないか。いろいろ考慮をいたしておる次第でございまして、離転職率が高いということは、決して全部悪いというわけじゃありません。もう少し、もうちょっと落ちついて職場に専念してもらうというように、労働大臣といたしましては最善の努力をしてまいりたいと
考えておる次第でございます。