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国務大臣(剱木
亨弘君)
お答えいたします。
学校教育法の改正案は、ただいままだ提案するかどうかということを決定をいたしておりません。ただ、案の内容につきまして、この機会にひとつ誤解のないようにお願いをしたいと存じます。学校教育法によりましては、御承知のように、私ども予定いたしておりますのは、三つの重大な改正点がございます。その一つは、高等商船学校の創設でございますが、これは論外といたしまして、特に学校教育法の改正をわれわれ意図いたしましたのは、ただいまの各種学校をいかにするか。いわゆるこれは中教審の答申に基づきまして各種学校の格上げをし、それに対して性格のはっきりした格づけをいたそう、こういう問題で各種学校の改正をいたすわけでございます。ところが、この各種学校の格づけをいたしますとどういうことになりますかと申しますと、ただいま、外国人学校といたしまして、各府県で各種学校として知事の認可において行なわれておるものがございますが、この認可して行なわれておりますいわゆる各種学校は、今度の各種学校の格づけと同時に、一年たちますとこれはすでに学校でない状態になってしまうのでございます。新しい各種学校には、当然これは外国人の学校は各種学校に認可するわけにはまいりません。そういたしますと、これをもしやらなかった場合には、外国人学校というのは全く法の
保障の外に置かれる学校になって、事実行為としてそういうものが行なわれるということでございまして、そういうことになれば、むしろそれがその際において治安の対象になる。私どもはそうしたくない、いわゆる
国際親善のためにこの外国人学校という制度を設けて、そしてそこに民族教育を
保障して差し上げよう、これがこの外国人学校制度を設けるという基本的なわれわれの考え方でございます。したがいまして、われわれ文部省がこれを学校教育の範疇の中に入れて、そうして民族教育を
保障しようという場合において、一部の人がこれを治安立法だと言われておるわけでございますが、文部省は治安当局ではございません。あくまで文部省がやるのでございます。それから、私のほうにたくさん朝鮮人の方が投書やら何やらやってまいりますが、全部誤解された投書でございまして、むしろその投書の面から言えば、なぜこれを認めてくれぬかというような意思表示もございます。いわゆる外国人学校というものについて民族教育をなぜ
保障しないのかと、こういうことなんです。私はこれは
小林委員にはっきり申し上げますが、あの規定の中で、いわゆる日本の国益と調和していかなければならない。外国人が日本において教育を受ける場合において、日本の国益を害するような教育をやってもらってはならないということは、われわれ日本は独立国家として当然のことでございます。もしこれが
世界万国におきまして、その学校が存在する国の国益を害するようなことはやるべきことじゃないことは当然のことでございまして、そういう学校を
世界じゅうで認められるはずのものではございません。日本にある
程度の永住をいたしまして教育を受ける際において、その日本の国と調和をしていく、いわゆる
国際親善の立場に立ってこれは当然のことでございまして、これをわれわれが国益を害するような教育をしてはならぬということは、否定をするまでもなく、日本に永住して日本人と一緒に同じ生活をしておる限りにおきましては、当然に自発的にそういう心がけをいたすべきものであって、日本の国益を害するという目途を持っておらない限りは、この法律にどうして反対するのか。私は、日本に永住するような外国人がおりまして、当然に日本の国益を害するのを目途として教育をやるというようなことは、日本として許さるべきものじゃございません。これは社会党の方でも私は当然にそうお考えになるのでございまして、もしこれを、外国人学校というのはけしからぬ、これを規定からはずせと申しましても、私どもは日本の教育の状態を格上げする
意味において各種学校を格上げしていくと、これは中教審の答申にもございますし、全各種学校の熱望するところでございます。私どもはこれを阻止するということはできないわけでございます。これをやりまして外国人学校をそれじゃはずしたらどうなる。私どもはむしろ、これは
世界の実情から申しまして、日本の特殊事情でございますが、六十万に近い外国人が日本に永住のいわゆる意思を持って住んでおります。そういう状態のところにおいて、その祖国の
ことばで歴史や国語やら自由におやりなさい、これを
保障してあげましょうという国が
世界にどこにあるでございましょうか。私は、そういう点について何らの考慮をされないで、もし私どもといたしまして――われわれは特にこれは朝鮮人だけを目的といたしておるのでございません。たとえばアメリカン・スクールとか、そういった問題につきまして、もしこれをわれわれ規定してあげない場合においては、アメリカン・スクールがいままで国の援助、たとえば学割りでございますとか、あるいは衛生上の利益とか、享有しておりましたものまでも剥奪するようなことになってしまうわけでございます。ですから、必ずしも私どもは朝鮮人の学校だけを目途とするものでなしに、全部の外国人学校について同じような気持ちでやろうとしておるのでございます。ですから、私どもは、ここでこれは提案するということはまだ最終的に
政府並びに私どもの党で決定したわけではございませんけれども、私どもは、むしろこういう場合におきまして、この外国人学校の創設は、朝鮮人の民族教育を
保障する
意味において、積極的に私はこれをむしろ規定をしてほしいと御希望になるべきはずでございますし、陳情の
趣旨から、あらゆる私は陳情を全部ごらんに入れてもいいと思いますが、朝鮮人の行なうところの民族教育を
保障しろというのが全部の陳情でございます。私どもはその
意味において各種学校の制度と不離一体として外国人学校制度を設けなければならぬとこれは考えておるのでございまして、そういう
意味においてやりますのに、これに対して何のために反対するのか、私はそこに非常な了解に苦しむ問題があるのでございます。私は、いままでこの問題をまだ提案をいたすということに決定いたしておりませんので、その内容について詳しく御説明をする機会はございません。しかし、私に言わせますならば、いま
小林委員が言うようなことがございますなら、この法案の提案をひとつさせていただいて、その上で法案に即して
論議をいたしまして、そうして十分納得がいくように私どもは御説明を申し上げようと思いますし、また、そういたしますれば、われわれの外国人学校を提案しなければならぬという理由をおそらく御了解をいただけるものと私は確信をいたしております。ただ、いま重ねて申し上げますが、ただいまのところまだ提案をいたすかどうかということを
政府として決定したわけではございません。