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1967-05-12 第55回国会 参議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十二日(金曜日)    午前十時二十五分開会     ―――――――――――――    委員異動  五月十二日    辞任          補欠選任     二宮 文造君      小平 芳平君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         新谷寅三郎君     理 事                 白井  勇君                 西田 信一君                 日高 広為君                 平島 敏夫君                 八木 一郎君                 亀田 得治君                 小林  武君                 鈴木 一弘君     委 員                 青柳 秀夫君                 井川 伊平君                 大谷 贇雄君                 梶原 茂嘉君                 熊谷太三郎君                 小林  章君                 小山邦太郎君                 任田 新治君                 内藤誉三郎君                 林田悠紀夫君                 二木 謙吾君                 船田  譲君                 増原 恵吉君                 宮崎 正雄君                 山下 春江君                 吉江 勝保君                 吉武 恵市君                 占部 秀男君                 岡田 宗司君                 北村  暢君                 小柳  勇君                 鈴木  強君                 瀬谷 英行君                 羽生 三七君                 藤田  進君                 矢山 有作君                 山本伊三郎君                 吉田忠三郎君                 黒柳  明君                 小平 芳平君                 多田 省吾君                 向井 長年君                 春日 正一君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  田中伊三次君        外 務 大 臣  三木 武夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  剱木 亨弘君        厚 生 大 臣  坊  秀男君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   菅野和太郎君        運 輸 大 臣  大橋 武夫君        郵 政 大 臣  小林 武治君        労 働 大 臣  早川  崇君        建 設 大 臣  西村 英一君        自 治 大 臣  藤枝 泉介君        国 務 大 臣  塚原 俊郎君        国 務 大 臣  二階堂 進君        国 務 大 臣  福永 健司君        国 務 大 臣  増田甲子七君        国 務 大 臣  松平 勇雄君    政府委員        内閣官房長官  木村 俊夫君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣総理大臣官        房臨時農地被買        収者給付金業務        室長       瀬戸 国夫君        公正取引委員会        委員長      北島 武雄君        防衛庁長官官房        長        海原  治君        防衛庁防衛局長  島田  豊君        防衛庁教育局長  中井 亮一君        防衛庁人事局長  宍戸 基男君        防衛庁装備局長  國井  眞君        科学技術行長官        官房長      小林貞雄君        科学技術庁原子        力局長      村田  浩君        外務政務次官   田中 榮一君        外務省北米局長  東郷 文彦君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        外務省国際連合        局長       服部 五郎君        大蔵省主計局長  村上孝太郎君        大蔵者主税局長  塩崎  潤君        国税庁長官    泉 美之松君        文部省管理局長  宮地  茂君        厚生省公衆衛生        局長       中原龍之助君        厚生省薬務局長  坂元貞一郎君        厚生省社会局長  今村  譲君        厚生省児童家庭        局長       渥美 節夫君        農林政務次官   久保 勘一君        農林大臣官房長  檜垣徳太郎君        農林大臣官房予        算課長     大河原太一郎君        農林省農地局長  和田 正明君        通商産業省通商        局長事務代理   原田  明君        通商産業省石炭        局長       井上  亮君        通商産業省鉱山        保安局長     中川理一郎君        通商産業省公益        事業局長     安達 次郎君        労働省労政局長  松永 正男君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省婦人少年        局長       高橋 展子君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君        建設省計画局長  志村 清一君        自治省行政局長  長野 士郎君        自治省税務局長  松島 五郎君    事務局側        常任委員会専門        員        水谷 国一君    説明員        外務省国際連合        局外務参事官   滝川 正久君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件昭和四十二年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十二年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十二年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、二宮文造君が辞任され、その補欠として小平芳平君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 昭和四十二年度一般会計予算昭和四十二年度特別会計予算昭和四十二年度政府関係機関予算、  以上三案を一括して議題といたします。  昨日に続いて質疑を行ないます。小林武君。
  4. 小林武

    小林武君 休戦監視団とか、あるいは海外派兵一般にからまる監視機関について法制局長官にお尋ねいたしたいのですが、これについてどの程度検討ができておりますか。これは松野さんが四十一年二月の衆議院段階で、このことについて法制局でも検討段階に入っている、こういう答弁があったので、それについてお尋ねしたい。
  5. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) お答え申し上げます。  国連監視団の問題として御指摘があったと思いますが、国連協力活動として一体どういう問題があるか、この問題についてどう考えたらよいかというようなことは、これは実はほかの一般問題と同じように、法制局といたしましては、常に研究していると申しますか、勉強しているところでございまして、それがどの程度済んだかということになりますと、ちょっとその程度を申し上げるわけにはまいりませんのですが、何か特定の御質問がありましたら、それにお答えをさしていただきたいと思います。
  6. 小林武

    小林武君 いやいや、どの程度検討を続けているのか。それは、松野防衛庁長官は、法制局では当然検討している、それから防衛庁でもやっているのだ、こう言っているのです。しかしまだ回答は来ておりません、こう言っている。
  7. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 実は常時検討しているといえば検討していることでございまして、ただ、何といいますか、具体的に、たとえば大学の研究室とは違うものでございますから、何かやはりそういう研究の必要に迫られるといいますか、あるいはそういう問題が身近の問題として何か考えられる――身近の問題としてというのは、そういう具体的な案件があるからという意味でなしに、研究の動機となるようなものがありますれば、常にそれを研究するわけでございまして、それにつきましては、一般にこの委員会あるいは衆議院委員会等におきまして、ときどき質問に対してお答えしておりますが、そういう意味研究は一応遂げてある、こう申し上げていいと思います。
  8. 小林武

    小林武君 結果を聞かしてほしい。どういう結論にあなたたちのほうは傾きつつあるか。
  9. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) それでは、国連監視団ということでよろしゅうございますか。
  10. 小林武

    小林武君 それでいいです。しかし、このことについては、項目的には国外派遣、こういうことについても含めていろいろ検討しているということですから……。
  11. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) ごく概括的に申し上げまして、憲法九条との関係の問題でございますが、憲法九条には、御承知のとおりに武力行使、戦争――武力行使武力の威嚇ということがございます。その関係から申しまして、およそ武力行使関係のない事項につきましては、憲法九条の関係はそのままには出てまいりません。そういうわけで、一般国連監視団といわれておりますものが、特定の、レバノン関係なんかにございましたようないろいろな要素はございますけれども、たとえばあの場合におきますように、外国からの武器の浸透とか、そういうようなものを監視するというのがただの任務であるということ、しかもそこには部隊が派遣されるのじゃなくて、専門家であることが必要ではございますが、特定のものがそこへ行って監視の任に当たるようなものであれば、これは憲法九条の直接問題が出てくることではなかろうか。ただし、そこに参りますものがかりに自衛官ということであれば、自衛隊法関係からいうと問題がある。いまの自衛隊法そのままではやはりその任務に従事するわけにはいかないのではないか。ほかの身分ができれば別でございますが、そのままでは問題ではなかろうかというようなのが結論でございます。
  12. 小林武

    小林武君 椎名外務大臣は、その際に、これが憲法とのかかわり合いでどういうことになるかということを言っているわけですね。それについてはもう検討段階に入っていると、外務大臣もこう言っているわけです。また検討しなければならぬ、こう言っている。そこで私は外務大臣にお尋ねしたいのですが、実は海外派兵については大体三木構想というのができている。それについては総理大臣もすでに大体了承段階にきているというようなことをわれわれ聞くわけです。一体海外派兵について、もしそういう世間でいわれているようなことが事実であるならば、これは当然明らかにしてもらいたい。それはもう前の外務大臣から引き続いてきていますからね、私はかなり進展したものと理解してお尋ねしているわけです。
  13. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは国際監視団というようなものがどういう使命を持つのか、あるいはまた、国内法との関係というものが非常にこれは重要な関係を持ちます、憲法もあれば、自衛隊法もある。したがって、この問題が非常に進展して、結論が出るという段階ではありません。これは研究することは研究していいわけでありますが、これはいま言ったような国際監視団がどういう使命を持つのか。そのことによる国内法との関係というものは慎重な検討を要する問題であると私は考えております。いま結論が出ておる段階ではないのです。
  14. 小林武

    小林武君 それではこう理解してよろしいですか。海外派兵、いまの監視団休戦監視団というようなものを含めてですが、三木構想というようなものはまだまとまっていない、こういうふうに理解してよろしいですか。
  15. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 先ほどの御質問派兵ということであれば、それはもう海外派兵ということは絶対にできません、海外派兵というものは。まあ監視団ということの場合においては、いま言ったようなことで、いろいろそのことでも、国際監視団ということであっても、国内法関係で十分な検討を必要とする。ましてや海外派兵ということは、厳にこれはもうできることではないことでございます。
  16. 小林武

    小林武君 これは松野さんの時代のあれですから、すでにこれは松野さんのころに、防衛庁にも必要があるからそのことの研究を命じているというのだが、防衛庁長官にお尋ねいたしますが、いまの点についてはどういう研究がまとまっていますか。
  17. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 国際監視団のことだと思います。国際監視団と申しますというと、結局国際連合に与えられたる世界平和の保持という使命でございます。その使命に基づきまして、安全保障理事会なりあるいは国際連合自身がどういうことをする、こういうことをするというようなことで、おそらく国際紛争監視する監視団のことだと思いまするが、研究はいたしておりまするが、日本のほうから積極的にこれをこうせい、ああせいというようなことはいまだかつて考えたこともございませんし、三木外務大臣のおっしゃったこと、国際監視団ですね、つまり国際連合が主体性をとって監視団を編成するとかいうようなことにつきましては、研究はしてはおりましょうけれども、積極的に政府としてまだ働きかけるというようなことはないのでございます。
  18. 小林武

    小林武君 このことについては椎名外務大臣は、自衛隊でなければやっぱりできないと、この仕事に適当な使命をおびてやるということには適当なものはない、自衛隊以外。そういう答弁関連して、松野防衛庁長官時代に、いまのような研究をしているということについて、どんな研究をやっているのですか、その具体性がさっぱりない、そのおっしゃっていることに。
  19. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) その研究のしさいというものは私は承っておりませんが、しかし小林さんも御存じのとおり、日米安保条約の第十条の第一項にも、国際連合が適当なる措置をとるということを期待しておりまするし、国際連合憲章第五十一条にも、安全保障理事会世界の平和について責任のとれるまで各国は主権国家として個別的もしくは集団的に自国を防衛する固有の権利があるのであって、紛争が起きた場合には暫定的な措置をとってよろしいというようなことが書いてございます。その裏を考えますというと、国際連合というものが全世界の平和の保持、安全の保障について責任があるわけでございまして、そういうようなことの研究はいたしております。しかしながら、まだ具体的に国際警察軍とか、あるいは国際紛争があった場合に、監視団を派遣するとか、従来ちょいちょいあるにはあったのでございますが――よく見えている場合がございますが、しかしながら、それにつきまして自衛隊として、防衛庁としては、その程度研究でございます。
  20. 小林武

    小林武君 そうすると、これはあれですか、外務大臣にお尋ねいたしたいのですが、たとえばウ・タント事務総長が来られるというようなことは、これはもの最近近々のことなんですが、その事態の中で、あるいはベトナムの問題というものはなかなか急を要する問題なんですが、この急の問題に備えて急速に一体政府としての見解、まあ外務省なら三木構想だとわれわれ聞いているようなもの、それからいままで防衛庁検討してきたことによって、直ちにわれわれがあっという間にそういうものが実現するというようなことは、これはありませんか。この点については外務大臣の御意見とともに総理大臣からも御意見を承りたい。
  21. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはあっと、小林さんをあっと言わせるようなことはございません。これは重要な問題ですから十分政府としても検討しなければならぬのでしょうし、いろいろ国会等でもこれの御論議を願わなければならぬ問題も含んでくるかもわかりませんから、あっと言わせるようなことはございません。
  22. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も、どうも小林君をあっと言わせるわけにはいかぬだろうと思います。
  23. 小林武

    小林武君 私は、まあもっとはっきり言うと、そうするとこれは国会において議論されながらいまのような御答弁をいただいておる。したがって、この国会了承を得ないでこういう事態が起こらないと理解してもよろしいかどうか。
  24. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあこれは了承といいますか、国会でこういう問題はいま現にいろいろ論議もあるわけですから、国会論議もこういう問題には当然起こるでしょうし、国会承認といいますとね、この問題はそういう法律的な形においてどうということにはいろいろ検討してみなければ――条約などとは違いますからね。しかしこれは大問題でありますから、当然に国会などにおいてもいろいろ御論議をされなければならぬ問題で、承認という手続的な問題でなくして、やはり国会論議も当然にこの問題は、もしそういうことが行なわれるということになれば、それは起こることは当然だと考えるわけでございます。
  25. 小林武

    小林武君 私が申し上げるのは、この問題は憲法上のかかわりの問題だということを、これは前の外務大臣防衛庁長官も言っているわけです。ですからこういうことに関しては、やっぱりあっとというのは国会が十分それを理解するということがなければ、やはり「あっ」とするということになるわけですから、だからそのことは、ちょっと外務大臣の御答弁だというと、あいまいだと私は思う。
  26. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 小林さんにお答えいたします。  国会承認を得る得ないという問題は、あくまで現行自衛隊法の七十六条の防衛出動の場合でございまして、防衛出動というものは、これは国内に限るわけでございます。国外派兵ということについては絶対ございませんから、憲法九条一項、二項に照らしましてもございませんから、国会承認不承認ということもないわけでございます。つまり、全然ないわけでございますことは総理のおっしゃるとおりでございます。それから国内における武力行使が行なわれた場合に、国内の平和を保持するために防衛出動する、その場合はあくまでシビリアン・コントロールでございまして、シビリアン・コントロールの象徴とも申すべきものは国会が最高峰ということでございます。すなわち、国会承認をして初めて出動できるわけでございます。やむを得ない場合は事後ということも書いてございまするが、あくまで原則は事前でございます。そこで、小林さんもよくおわかりのとおり、憲法九条一項、二項の精神に照らして海外派兵ということはないのですから、でございまするから、国会承認不承認ということもないわけでございます。そのことを、明瞭に小林さんもわかっていらっしゃることでございまするが、明確にいたしておきます。
  27. 小林武

    小林武君 そうすると、そこで法制局長官ことばについて、ぼくは検討してみたい。  あなたは、さっき、自衛隊という身分ではなく、外務省の役人とか、どこかのあれに変えれば可能であるというような、大体あなたはこの憲法上のたてまえの議論をとっておるように思われる。そうすると、これはいかようなやり方でもできるわけですよ。そうでしょう。身分を変えればいい。その場合には何でもないということになると、これはやはり重大な問題です。海外派兵というのは、何か武器を持って押しかけていくというようなことだけじゃないのですよ。だから、含めて私は休戦監視団の問題もここに出している。前の、外務大臣とのやりとりの中にもそういう問題が出ているわけですから、その点はどうなんですか。
  28. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) お答え申し上げます。  ただいまお話がありましたように、海外派兵ということばを非常に広くおとりになりますと、いろいろな問題がごちゃごちゃと入ってまいりまするが、私、ただいまうしろで聞いておりまして、防衛庁長官がおっしゃった趣旨は、いずれにしても武力行使にまつわる関連の問題としてお答えになっておられると思います。それと、小林さんは海外派兵の中に入れていらっしゃるようでございますが、国連監視団の一員として行くというのは、これは部隊として行くわけでもございませんし、要するに専門家として行くというわけでございますので、憲法九条との関係につきましては、一般海外派兵、いわゆる狭義海外派兵ということとは意味が違うということを、そこまで申し上げませんでしたが、そういう趣旨で申し上げたわけです。私が自衛隊法関係で問題がないわけではないということを申し上げましたのは、狭義海外派兵について言っているのではなくて、国連監視団というような、軍事行動といいますか、自衛力行使武力行使関連のないことにつきましても、自衛隊法上の問題があるということを申し上げたわけでございます。その点は誤解のないようにお願いいたします。
  29. 小林武

    小林武君 身分を変えれば可能だという結論が出ますか。
  30. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) ただいま、身分を変えればどうかということでございましたが、いずれにしましても、武力行使にわたるようなものであれば、これはもう憲法九条が禁止しておるわけでございますから、また、海外派兵についての、海外出動についての参議院の御決議もあるわけでございますし、そういうことは度外視して申し上げます。そうしないと、また一緒くたになりますから、それと別に、いわゆる休戦監視とか、具体的な例を申し上げたほうがいいと思いまして、先ほどレバノンの例を申し上げましたが、ああいう場合につきまして申し上げれば、憲法九条の関係はございません。ただし、自衛隊法上の問題がございます。それは、自衛官任務からくる問題でございます。したがって、自衛官でなしに、たとえば外務職員が行くと、ただいま御指摘がございましたように、そういうことになれば、これは話は別でございます。ただし、そういう人が要求されているのかどうか、その辺になりますと、外務大臣が申しましたように、個々具体的な監視団使命といいますか、そういうものによく照らし合わせて考えていかなければならぬ、こういうことになるわけでございます。レバノンだけの例について言えば、いま申し上げたとおりでございます。
  31. 小林武

    小林武君 防衛庁長官にお尋ねいたしますが、米ソ駆逐艦接触の問題は、どういう状況になっておりますか。
  32. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 小林さんにお答えいたします。  去る五月四日から本日まで、日米合同演習が行なわれておるわけでございますが、これは毎年行なわれておる行事でございまして、本年も行なわれております。日米安保条約に基づきまして行なっておるわけでございます。  ところが、一昨日午後でございまするが、アメリカ海軍だけが――「ホーネット」という、この前も参加いたしましたが、一番小型空母がございます。これが参加しておるわけでございまするが、この小型空母を中心とするものが北海道沖のほうへ別の行動をとりまして、米海軍だけが行動をとりました。その際に、南下してくる際に、ソ連の駆逐艦米側駆逐艦とが接触をいたしました。詳細に申し上げますと、接触をする前に、アメリカ側駆逐艦が、至近距離におりましたから――国際の安全航行に関する規則というものがございます。その規則に照らして、あぶないからもう少し離れておれということをしばしば進言をしたわけでございますが、どうもそのことが行なわれませんで、結局五十フィートばかりの間隔で約五十分ばかり進行いたしておりました。そして十日の午後三、四時ごろ接触いたしました。米側駆逐艦はアンテナを一本折られました。それからソ連側の駆逐艦は救命ボートが一隻海へ落ちてしまった。これが十日の事件でございます。  昨日の事件は、やっぱり午後でございまして、夜分おそくに、十一時四十分ごろ自衛隊にも連絡がございました。アメリカの国務省、それから日本にあるアメリカの大使館側を通じまして防衛庁に連絡があったのが昨日の夜おそくでございます。それは、同じころ、やっぱりずっとアメリカの海軍が南下しておりました。日本側の海上自衛隊とアメリカの海軍とが一緒に演習しまして、本日でお別れということになるわけでございます、この十二日において。そこで、昨日はまだ、米側が単独行動をとっておるのと日米合同行動をとっておるのと両方でございます、昨日までは。その単独行動をとっておる側の同じ駆逐艦に、ソ連側の違った駆逐艦接触をいたしまして、両方とも直径五インチぐらいの穴が水面上にあいたという、これが事故でございます。
  33. 小林武

    小林武君 もう一ぺんお尋ねいたしますが、三次防と今度の問題との関連というようなことはお考えになりませんか。
  34. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 三次防は、昭和三十二年にきまりました国防の基本計画によっておりまして、国力、国情に応じた防衛力を漸次整備する、こういう線ででき上がっておるものでございます。小林さんも御承知のとおり、財政、国力、国情の線から見まして妥当の線である、こう考えております。もっとも、パーセンテージで申しますというと、日本の総予算に占める割合というものがだんだん低下しておりまして、昨年は七・九%、本年は七・七%弱というところへきております。総予算の七・七%弱でございまするが、私どもは、これが財政あるいは国情、国富に照らして最も妥当な線である、こう考えているわけでございます。  そこで、いつも小林さんにも申し上げておりまするし、他の議員の方にも申し上げておりまするが、全体といたしまして、当初、海上自衛隊にいたしましても、航空自衛隊にいたしましても、陸上自衛隊にいたしましても、武器等は向こうから貸与された、あるいは安く買ったというものが相当多いのでございまして、もう耐用年限を過ぎておるものが多いのでございます。いわゆる俗なことばで、ポンコツになるものが相当多いわけでございまして、今年も相当、国産なり、あるいはアメリカから買うものもございまするが、アメリカの援助というものは、もう今回からなくなるわけでございまして、そこで、絶対数はだんだん少なくなってきております。予算の数字からは、だんだん多いように見えまするが、絶対数は少なくなっております。ただ、プラスアルファというようなことはどういうものだということは、この前も申し上げましたから、きょうは省略いたしておきまするが、主としてナイキハーキュリーズといったようなものがプラスアルファでございます。  そこで、海上自衛隊につきましても、いつも十四万トン前後ということでございます。数から申しますというと、十七万トン、十八万トンということになっておりまするが、これはすべて廃棄処分にせにやならぬといったような古いものがございまするから、そういうものは廃棄いたします。したがいまして、大体におきまして多少ふえておる、何といいますか、自衛力としての実力は多少ふえておりまするが、今度の日米合同演習に関して、これが直接関係があるというものではございませんものでございまして、毎年やっておる日米海上合同演習の規模を出ないのが今回の日米海上合同演習でございます。
  35. 小林武

    小林武君 私は、まあ関連があるのではないかという考え方に立って、この前の暫定予算をやりましたときに、あなたに御質問申し上げたわけです。というのは、第三次防の目的の中に、いわゆる日本の周辺のあれがなかなか重大な段階であるからそれに備えるということが大きな目的の一つになる。そこで、三次防の出発というようなものは、将来日本の兵器産業がどうなってきて、日本の軍事力がどうなるということを考えた場合、今度の日米の合同演習というのはやはり新たな大きな刺激をソ連に与えたと、こういうふうに理解してもよいのではないかと思いますが、そういう点は、自衛隊のほうはお考えになっておりませんか。
  36. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) ただいま申し上げましたとおり、海上自衛隊というものは相当新規の建艦等をいたしますけれども、いつも十四万トン前後でございます。でございまして、特別にソ連に刺激を与えたというふうには考えておりません。大体、演習地というのは日本海の公海の上でございまして、私も地図をよく見ましたが、海上の地図を見ましたが、日本側から見ましても、ソ連側から見ましても大体まん中という、 ハイウォーター、ハイシー、パブリックシー、オープンシーの上において行なわれておる演習でございます。
  37. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。非常に重要な点でありますので、ざっくばらんに長官に聞きますが、この共同演習は、潜水艦に対する共同演習。中身は、目的はそういうふうに言われておるわけですが、共同演習の目的はそういうものかということが一つ。  それから、なぜこういう問題が一体起きたのかということのほんとうの原因を、どう見ておるかということを聞きたいわけです。関連質問ですから、私の意見も申し上げて御意見を聞きたいと思います。  私は、単に公海上で日米が合同演習をやっておる、それをただいたずら半分に妨害するとか、そういうものじゃないと思う。根が深いと思うのです。その深い理由は、この演習がソ連のウラジオにおける潜水艦――普通の潜水艦が百隻、原子力潜水艦が十隻あると言われておりますが、それを目標にした演習をやっておる、こういうところに、私はソ連側を刺激しておる最大の原因があると思うのです。その点をどう見ておるか。その点をほんとうに究明しませんと、今回はこういう簡単な接触程度で、まあ簡単な損傷ですか、そういう程度で終わっておりますが、感情の激するところ、どういうもっと大きな事態が起こるかも私はわからぬと思うのです。根本原因は、こちらが公海上でやっておるのに、公海の演習だから自由だ、そんなところへ、のこのこほかのものが来るのは間違いだとか、そんな技術的なことじゃ私は済まないと思うのです。演習の目的は、最初にお聞きした。今度はもっとその目的の中身ですね。中身は、ウラジオにおけるソ連の潜水艦、これに対する演習をやっておる、これが向こう側を刺激している。その刺激による偶発的な問題なんです。その点をいかに理解するか。  それから第三は、米ソ間に異常な事態等が発生した場合、日本の海上自衛隊、これは、たとえば対馬海峡なり、宗谷海峡なり、あるいは津軽海峡なり、太平洋に出る関門ですね、こういうところを押える、監視する、こういうふうな役割りというものを日米間において合意しているんじゃないかと、私たち思うのです。三次防と関係があるというのは、そういうところから私たち言いたいわけですが、関係あるなしの問題は別にして、そういうふうな合意を内部でやっているんじゃないか、これが第三の質問。  それから第四は、こういう種類の日米合同演習の場合に、一体司令部はどうなっておるのか。日米の合同の司令部がこの指揮をしておるのか。あるいはどちらか一つにまとめられてやっておるのか。それは、当然いざ事態が発生した場合においても非常に重要な問題ですが、こういう演習の段階自体においてそういう関係がどうなっておるのか。無秩序にやっていたら、それはたいへんな、内部同士でも事故が起こるわけでして、そこはきちんとしておかなきゃと思いますが、その点を明らかにしてほしい。  以上四つの事柄を区分けしてお尋ねしたわけですから、ひとつ、全部をひっくるめて、うやむやな答弁じゃなしに、きちんと答えてほしい。
  38. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 亀田さんにお答えいたします。  まず、日米合同演習がソ連に不当の刺激を与えやせぬかという御質疑でございまするが、私どもは毎年やっておるのでございまして、しかも日本海の公海の上、それから太平洋においてもやったわけでございます。いわゆる対潜訓練をやっております。対潜訓練をやっておることは亀田君が御指摘のとおりであります。各国とも、いまは対潜訓練ということを非常にやっておるわけでございます。その一つの例といたしましてあげるわけでございまして、別段ソ連ということを特別にあげたわけじゃございませんが、ソ連が国際公法上、御承知のとおり、青函海峡あるいは関門海峡等がもし領海でございましても、両方に公の海――ハイ・ウォーターがあった場合には自由に通過できるわけでございまして、ソ連の海軍は毎年太平洋において対潜訓練をやっております。そのときに見ることは、これまた自由でございまするが、日本は、米国もそうなようでございまするが、あまり見ておりません。ただ、日本海――公海における日米合同演習は、ごらんになることは自由だということを私は衆議院において申し上げましたが、いつも見ていらっしゃいます。見ていらっしゃいますけれども、あまりそばへ来られますというとあぶないと、五十フィートなんというのは非常にあぶないんじゃないかと、全く義経ではございませんけれども、八そう飛びでもできたらすぐ飛びつけるような、そんな近くを五十分も一緒に歩かれるということは、やっぱり彼我双方にとってはあぶないんじゃないかと、およしになったほうがいいのじゃないかということを、個人的には私は考えるのでございます。これで第一と第二の御回答を申し上げます。  その次に、海峡の監視の合意が日米双互にあるか、青函海峡あるいは関門海峡を通る場合に合意があるか、そういう合意はございません。  それからその次に、われわれは通過する船等はよく見ておりますよ。日本の本土の、どういう船が通るというようなことは、どこの国に限らず、やっぱり見ておることが、お互い一億国民を守る義務がございまするから、そういうことは見ておるということは申し上げておきます。  それから次に、今度の日米海軍――日本でいえば海上自衛隊、合同演習について総括的の司令部があるかどうか、これはいつも申し上げておりまするが、並立的でございまして、どちらが司令官ということはないのでございます。そういうことで従来ともやっておるということをこの際申し上げておきます。今回も日米の海上自衛隊並びに海軍の上に総司令官とか統一司令部というものはないのでございまして、並立的にそれぞれ司令官がございまして、そうして打ち合わせの上うまくやっておると、こういう状況で過去はあったのでございます。
  39. 亀田得治

    ○亀田得治君 私の質問に取り違えてお答えになっておりますが、対馬海峡なり津軽海峡、そういったような日本海に入る関門ですね。関門海峡の関門じゃない。そういう部分について、たとえば米ソ間に衝突が起きた場合に、自衛隊はいま私が申し上げたような場所、そういうところを特に監視する、そういう任務というものを日米間で合意しておるのじゃないか。何も通過するのに何とか、合意があるとかないとかとおっしゃったが、そんなことを聞いておるのじゃない。米ソ間に戦争が起きた場合に、衝突が起きた場合に、日本の海上自衛隊は日本海並びにそこへ入る場所、そういったようなところを特に監視する、そういう任務を負わされておるのじゃないか、そういうことがこれらの演習の根拠になっておるのだという立場で聞いておる。そういうのがあるのでしょう。
  40. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 亀田君にお答えをいたしますが、どうも負わされておるというと、何だか日本が隷属的な感じがいたしますが、日本が、日本政府が――これは国会を含めて申して決して差しつかえないわけでございまするが、日本政府が一億日本国民を守るために、青函海峡あるいは、関門海峡というのはちょっと間違いでございまして、対馬海峡等において、どんな船がどういうふうに通るかというふうなことを見るということは、当然防衛上の国民の皆さまに対する義務である。それで初めて国民の皆さまはまくらを高くして寝られると、こういうふうに私は感ずるわけであります。
  41. 亀田得治

    ○亀田得治君 じゃもう一ぺん、これで終わります。  そうすると、結局義務を負わされておる、負わされぬ、そういうことばの使い方は別として、そういう紛争が起きた場合には、日本の海上自衛隊は、いま長官指摘したような任務につくと、こういうこと自体は、これはもう客観的に明らかなことであり、そういう任務があって、初めてこれまた平素の演習というものも成り立つわけでして、私はそこに、こういうときどき起こる偶発的ないざこざですね、そういうものの根本の問題があるというふうに理解しておるわけなんです。  そこで確かめますが、この共同演習をやる場合には、おそらく事前に日米間で目的というものをちゃんとはっきりさせるわけですね。こんなことは聞かぬでも当然なことである、行動する以上は。今度のいま問題になっておる演習の目的というのは、どういうふうに書いてあるのですか。注釈要りませんから、目的はこれというふうなものがあるはずです。それをそのままここで、何だったら事務当局でもいいからお示しを願いたい。
  42. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 私補足いたしますが、亀田君の御質問の中で、日米において双方合意があるかどうか。一たん有事の場合、あるいは有事でない場合でも、合意のもとに何かやっておるか――合意はございません、打ち合わせはいたしております。それから、別に有事と言わず、有事でない場合でも、やはり青函海峡あるいは対馬海峡等は見ておる必要はあるわけでございまして、見ております。また向こうさまも見ておるようでございます。向こうさまもだいぶ見ております。どういうわけで見ておられるかわかりませんが、だいぶ見ていらっしゃいます。(「向こうさまというのはどこだ」と呼ぶ者あり)向こうさまというのはたくさんございますが、向こうさまも見ていらっしゃいます。
  43. 亀田得治

    ○亀田得治君 それから目的はどういう目的が書いてあるか。
  44. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 先ほど申し上げましたとおり、対潜訓練でございまして、アメリカ側から(「書いてある文字を聞いているんだ」と呼ぶ者あり)二隻の潜水艦を出してもらいまして、これを標的の潜水艦といたしまして爆雷等を投下する演習、それからソーナーによって、どこに潜水艦があるかというようなことを探知する演習、そういうようなことを四日から十二日まで九日間行なっておるわけでございます。
  45. 藤田進

    ○藤田進君 関連。まあどちらが悪いのかいいのか、どうもわれわれ現地を見ておりませんのでわかりませんし、答弁もまだ詳しくはないのですけれども、ただ問題は対潜訓練ですが、私も内閣委員長当時現地艦船に乗ってみたこともありますが、確かに非常に接近した爆雷投下等があり、これに目の先でデモみたいにやられるということは、現在の情勢が、ベトナムその他北爆事情もあってソ連側が出てきたことについては、私は出先艦船艦長が思いつきでやったようにも思われないのでございます、調べてみなければわかりませんが、調べがつくかどうかこれも疑問ですが、やはり相当な協議をし、ソ連側としてはこれに割って入るということが、これは当然接触は考え得るのです、日本海のいまの事情から言ってもですね。そういうことを考えてみますと、一体こういうことが累積し、あるいはこれが契機となって、二度にわたって接触をしているわけです。双方被害があった。といたしますと、これに共同演習をしておるわけであるわが日本としても、日本海でもあるだけに、国民は非常な心配をしておる。  私ども心配をしておりますのは、こういうことが契機になって国際紛争が深刻化する、あるいは大げさに言えば、事態が深刻化する端緒をつくるのではなかろうか。たまたま、アジアにおけるベトナムの問題があり、あるいは伝えられるところによると、北極海の原子力潜水艦、地中海の原子力潜水艦、これらがバシー海峡ないし日本海に彼我ともに移動した。しかもその原子力潜水艦であり、原子砲を持ったものが、七千キロからの射程を持ち、広島に落ちた原爆の約三十倍の威力を一発が持っているというものが、在来の潜水艦をおとりに従えて出てきているというのは、もうつとに伝えられていることですね。この中で日米の対潜合同演習をやるということは、確かに情勢上非常に私は軍事的に、その兵力の配備等から見て問題があったように思うのであります。したがって、これが重大化するということは、もう断じてあってはならないのであります。これについて防衛庁長官はどうお考えか。また重大化しないとすれば、その根拠をお示しいただきたい。  それから総理に、こういう事態は、やはり最高責任者であり、国防会議議長ですが、よほどこれは考えていただきませんと、どちらが悪いか、それは国際海上保安規則か国際法か知らぬけれども、向こうが悪いんだとおっしゃいますが、それは向こうで見れば、ソ連で見れば、そういわないかもしれませんね。ですから、これはよほど慎重に演習そのものの計画なり実施ということは考える必要があるんじゃないだろうか。これが反省となって、自後問題がなければよろしいですけれども、えてして、かつての戦史の発端なりを見ますと、案外こういうことがもう発火点になるのです。また、それにはそれ相当の広範な背景が出てきているというふうに考えますので、総理とされても、今後の演習を含む極東、アジアにおける軍事情勢に対処する心がまえとしての所見を聞きたいのであります。
  46. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 藤岡さんの御意見はつつしんで承っておきます。
  47. 藤田進

    ○藤田進君 いや、重大化するかどうかということです。質問をしているんです。つつしんでお聞きくださいという部分はあまりなく、重大化する可能性があるんじゃないだろうか。ないとすればその根拠を聞いて安心さしてもらいたい。
  48. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 毎年やっておることでございまするし、ことに日本海は大きな海でございます。それから公の海の上でやっておりまするし、沿海州その他には接近しないように注意はいたしておりまするし、大体において小林委員お答えいたしましたとおり、ハイ・ウオーターのうちで、私どものほうで調べたものもございますが、ちょうどまん中辺でございまするから、非常にデリケートな配慮を日米ともにいたしております。何しろ日本海という公海の上で演習が行なわれないということになってしまうと、これはやっぱり防衛庁としても困るわけでございまして、配慮はいたしておりますが、やっぱり刺激は与えないというあなたの御注意もございまするが、そのことを配慮しつつ、ハイ・ウオーターの上では対潜訓練はなし得るということでないと、日本の防衛権というものが相当拘束されやせぬでしょうか。これはあなたに御質問してもよろしいんですが、そういうようなことが私のお答えであります。(藤田進君「いや、今後重大化すると見るのか見ないのか、それがポイントなんですよ」と述ぶ)
  49. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 藤田君、どうぞ質問をしてください。
  50. 藤田進

    ○藤田進君 今後こういうことで米ソの関係が直接になりましょうが、これには一枚日本の艦船も加わった演習ですね。しかも日本海ということで、これがうまくおさまるんだろうか、どうだろうか。紛争を激化するもとになりはしないだろうか、その辺の情勢判断についてお伺いしているんです、ポイントはね。
  51. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) この程度では、私は紛争が激化するとも何とも考えられないのでございます。
  52. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私に対するのは、防衛庁長官に対する質問とちょっと違って、藤田君の御意見が大部分だったと思います。私はそういう意味で御意見を十分拝聴いたしましたが、また最高会議の議長といたしまして私自身考えますのに、したがいまして、こういう事柄は、ただいまも一部に心配をしておられる方があるのでございますから、よほど慎重の上にも慎重に扱うべきことだ、かように考えております。
  53. 北村暢

    ○北村暢君 関連。ただいままでの論議で、亀田委員の対馬海峡その他海峡の封鎖の問題とも関連するのでありますが、その封鎖の問題については、すでにその封鎖のための強化をするということは三次防の中で考えられておる、これは事実であろうと思います。それで今度の合同演習についての目的を明らかにせいと言ったのでありますが、これがどうもはっきりしない。私は、この合同演習というものが、従来やってきたけれども、最近やはり特に潜水艦に対する演習訓練、また装備においても、三次防でも対潜監視のための装備を強化するということがもうはっきりしておるわけですね。そういう中で、私はベトナム戦争と関係あるのかないのかということをひとつはっきりしていただきたいのでありますが、現在ハイフォンにおける港の封鎖というものがいま非常に大きな問題になっておりますね。それはソ連からの武器輸送というものを押える、そういう意味におけるハイフォンの封鎖が問題になっておる。そのソ連からの武器輸送というのは、一体どこからハイフォンの港に向かっておるかということですね。それと私は今度の演習というものは、非常に大きな関係があるのじゃないか。合同演習とはいえども、そういうハイフォンに向かうソ連の武器輸送というものに対して、このアジアのウラジオならウラジオから武器が輸送されてハイフォンに向かっておるということになれば、これはどこか海峡を通らなければ行けないわけですね。そういう情勢の中においてこの合同演習というものが行なわれておる。したがって亀田委員から、その演習の目的は一体何かといって聞いておるのは、私はそういうソ連のベトナム戦争に対する武器輸送というものについて相当想定がなされて、そうしてその武器輸送に対して潜水艦を護衛していくということがあり得るわけでありますから、そういう面について私は合同演習というものが考えられておるのじゃないかというふうに、これは当然のこととして考えられる。したがって、そういう問題については、合同演習とはいいながら、すでにベトナム戦争に私は何か関連をして演習が行なわれておる、このように考えられるのでありますけれども、一体そういう点の見解はどういうふうに持っておるのか。国防会議等において、すでにきのう、一昨日からも言っておるように、日米共同の、日米安保条約によって、ベトナム戦争において基地を使うということは自由だということになっている。そういう点からいって、もうすでにベトナム戦争との関連における問題が出てきておるのじゃないか、こういうふうに思われるのでありますが、こういう点についての見解をひとつはっきりさせていただきたいと思います。
  54. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 北村委員の御質問でございますが、実は亀田さんの御質問にはお答えしたつもりでございまして、すなわち今回の日米海上合同演習というものは、目的は対潜訓練でございますということを申し上げましたが、北村さんに重ねて御了解をいただきたいと思います。  それからベトナムへどこからソ連の援助兵器が送られているかというようなことは、つまびらかに私どもいたしておりません。ただ、朝鮮海峡等を運送船が相当通っておりまするが、別段ソ連の運送船が通っている場合に、潜水艦が護衛せんならぬというような状態ではないのでございまして、海上往来自由の原則に基づいて自由に往来している模様でございますということを重ねて申し上げておきます。
  55. 占部秀男

    ○占部秀男君 委員長
  56. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっとお待ちください。関連質問でございますから、だいぶ長くなりますから、一問だけにしてください。
  57. 占部秀男

    ○占部秀男君 一問だけにいたします。  いまの佐藤総理や増田さんの御答弁では、藤田さんが先ほど質問した、国民の中で非常に心配しておるということについての回答には遺憾ながらなっていないと思うのです。特に新聞あるいはニュース等によりますと、きょうは国連のウ・タント事務総長は、北爆がこのまま続いておる限り、これはどんなに大きくなるか知らぬ、この問題については世界大戦に発展する可能性もあるのじゃないかと、こういう点で非常に心配しておる言明をしておるわけです。そこで私は、増田長官が言われたように対潜訓練である、毎年やっておるのだと、この事情は事情として、事実として理解しても、毎年やっておるのだからこれからも引き続きやらなければならないんだというわけではない。少なくともベトナム戦争の終わるまでとか、あるいはいま言ったようなそういう期間のホットの状態に置かれている間は、何か誘発せしめるようなそういった危険なこういう日米合同演習というものは一時取りやめておいて、そうして国民に安心をさせるのが政府としてのやるべき態度であり、また、総理が最高国防会議の責任者としてとるべき態度ではないかと思う。そこで総理にお聞きしたいのは、一時そうした危険といいますか、誤解を避けるために、この際日米合同海上演習というものはある程度たな上げにして、ひとつ様子を見るのだ、そういうようなお考えは持っておらないかどうか、そういう点をひとつお伺いしたい。
  58. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま占部君のお話なんですが、先ほどから私、たいへん実は心配いたしていたのです。こういうような演習をやめろというような御意見があるのじゃないかしら、かように思って心配いたしておったのであります。ちょうど質問でそういうことに触れられましたので、私はただいままでの演習、これをやめる考えはございません。これだけははっきり申し上げておきます。
  59. 北村暢

    ○北村暢君 委員長、もう一つ。
  60. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 簡単にしてください。
  61. 北村暢

    ○北村暢君 合同演習の目的は対潜訓練ということであれば、私はその対潜訓練だけの技術的な訓練だったらばどこでやってもいいと思うのですよ、これは。これはそうじゃなしに、この合同演習というのは、一つの情勢というものを判断して、状況というものを仮設して、そうしてその状況の中において戦術、戦略面における訓練をやる、これはただ単なる潜水艦に対してどういうふうに撃つとか撃たないとかいう問題でなしに、それは幕僚なり何なりの判断というものです。高等な戦略的な訓練までこれはやるのですよ。合同訓練というのはそういうものなんです、大体が。ただ単なる技術的な兵隊の訓練をやるだけの目的じゃない。戦術、戦略について練るというのは、これは当然のことなんです。そういうことをやらない合同演習なんというものは考えられないのです。だから私は一つの想定を置いて、どういう敵側の――仮想敵国ということは使わないようでありますが、相手側がどういうような情勢にきたときに、どういうように駆逐艦なら駆逐艦、潜水艦なら潜水艦を配置するとか、そういう戦術、戦略というものは当然やるんですよ、これは。そういうもののない演習だったならば、日常の撃つだけの訓練なら、撃つだけの訓練は兵隊の訓練でできる、日常やっている。年一回の合同演習というものは、そんなに私単純な目的でやっているのではないと思う。戦術、戦略の面からいって、それは当然でしょうそういうふうの考え方は。仮想敵国というものは置かないかもしれないけれども、対象国というものが従来から論議になっている。その対象国をおいて戦術、戦略をやるというのはあたりまえなんでありますから、したがって、この極東の情勢なり何なりというものを判断しながらやるということは当然のことなんです。したがって、対潜訓練が目的です、こういうことの単なる説明では私は了解できない。あるのですよ、もっと大きな範囲における訓練の目的はある、幕僚だってこれによって訓練されるんですから。ただ簡単な訓練じゃない。ですからやはりこの武器輸送については、どこから行っているか知らないなんと言うけれども、それはあんたあれだけハイフォンをあれでしょう、封鎖するかしないかといって大きな問題になっておるのですから、一体どこから来る船だかわからないで、封鎖するというものについてハイフォンで封鎖するか、あるいは海峡で封鎖するかということも大きな戦術上からも出てくるんですよ、問題は。だからそういう牽制の意味において、いままだそういうところまでいっていないからだけれども、これはあなた、占部君がおっしゃったように、戦争が拡大していかないとも限らないいまの状態、そういう点でひとつもう少し私は親切な答弁をしていただきたい、それじゃ納得しないですよ。
  62. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 全体としてのわれわれの注意、あるいは将来に向かっての合同演習をするかしないかということは、自衛隊の最高指揮官である総理大臣お答えのとおりでございまして、それを守ってわれわれはやっておるわけであります。  それから北村さんのおことばの中に、先ほど海峡封鎖といったようなおことばがあったようでございますが、海峡封鎖ということは毛頭考えていないのでございます。海上航行自由の原則は不変的な原理でございまして、でございまするから、海峡封鎖ということは有事の場合でもまだわれわれが予想して訓練するということも考えの中に、頭の中に浮かんでこないことであるということを申し上げておきます。  それから今回の訓練でございまするが、亀田委員お答えいたしましたとおり、技術的の対潜訓練でございまして、アメリカ側から潜水艦二隻の供与を受けまして、これを探知する方法の演習をいたしております。訓練をいたしております。それから探知した場合に爆雷を落とすとかなんとかいう、そういう仮想爆雷を落としてどのくらい命中率があるというようなことの研究でございまして、純技術的なことでございます、今回の演習は。  それからなおもう一ぺん申し上げまするが、青函海峡あるいは朝鮮海峡あるいは対馬海峡を経由いたしまして、ソ連の軍艦が多数太平洋に出まして大演習をしておりまするが、この大演習に対しても、米国側からもどこからも抗議がございませんし、日本海の公海上における日米合同演習につきましても、ソ連側から抗議がきたことは一ぺんもございません。これはすべて海洋のオープンになっておる、自由であるというその原理原則を各国とも尊重されておる結果であると思っております。繰り返して申しますが、北村さんの御疑念の今回の演習は、どこかを想定してやりやせぬか、そういうことはないのでありまして、毎年やっているような規模だけのものでありまして、しかも潜水艦を探知するという技術的な方面を訓練する。探知した場合に、これに爆雷を落とすとかいうような、仮想爆雷をつくってやってみるという、そういう演習でございまして、長さは九日間、一年間にやっているだけでございます。規模は従来どおりでございます。
  63. 小林武

    小林武君 いままでのいろいろな御答弁によって、きわめて考えていることを明らかにしないままに、やはり小手先でごまかしているという感じは何と言っても抜け切らない。これはやはり三次防の関係、ベトナム戦争の関係で、重大なやはり日本に影響を与えるということから、みなが心配してやっているわけでありますから、いまのようなことをやっていたら、将来私はほぞをかむような事態が起こることを考えるわけです。そういう子供だましの質疑をやってもしようがございませんから、総務長官にお尋ねいたしますが、農地改革による被買収者数というのは幾らになっておりますか。
  64. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) 当初受給資格がある人のうち、請求してくると見込んだ方は百六十七万三千であります。それで三月三十一日の請求期限末において請求いたしました方は百十八万……。
  65. 小林武

    小林武君 いや、違うのだ、総務長官。農地改革によって土地を売らされたその一番初めの数です。それはあなたのほうの見込み数です。そうでなくて……。
  66. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) 被買収者の数ですか。
  67. 小林武

    小林武君 戸数です。
  68. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) これは推定でございますが、二百六万二千です。
  69. 小林武

    小林武君 これは百七十五万六千五百じゃないですか。一体その調査は、それはどういう調査でやったのですか。
  70. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) 当時の状況をつまびらかにしておりませんので、係の室長が来ておりますから、それに答弁させます。
  71. 瀬戸国夫

    政府委員(瀬戸国夫君) お答えいたします。農地被買収者の数の推定でございますが、私どもが用いました資料は、昭和二十五年に農林省が発表いたしました農地解放の実績調査、それだけでは足りませんもんで、昭和三十八年に総理府が行ないました実態調査、これらを中心にいたしまして推計いたしましたのが、ただいま長官が申し上げました二百六万二千人になります。
  72. 小林武

    小林武君 それはちょっと違うのじゃないですか。昭和三十二年に農地改革実績確定調査というのをやっているでしょう。これでないですか、あなたの言う調査は。三十八年のは違うでしょう。違いませんか。
  73. 瀬戸国夫

    政府委員(瀬戸国夫君) 調査の資料の主体をなしておりますのは、ただいま私が申し上げました二十五年の調査と三十八年の調査が主体でございますが……。
  74. 小林武

    小林武君 三十八年は請求有資格者予備調査ではありませんか。
  75. 瀬戸国夫

    政府委員(瀬戸国夫君) 三十八年の総理府の実態調査はいろいろなものがございますので、そのうちの先生がおっしゃったのは一つであろうと思います。
  76. 小林武

    小林武君 そうすると、これは百七十五万六千五百戸ということはなかったわけですね。個人、法人を合わせて、百七十五万六千五百戸だと思ったのですが、そうじゃない。断言できますか。それならば総理府見込み数というのは百六十七万三千四百二十九だと言ったのは、これはいま長官が言われたが、その差は幾らです。何%に当たります、その二百六万に対して。
  77. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) 当初見込んだ百六十七万三千人に対して百十八万八千となりますと七一%でありまするが、いまのおっしゃった二百六万二千ということになりまするとそれより率が下りますが、いまこれちょっと計算してみないとわかりませんけれども。
  78. 小林武

    小林武君 いまの質問はそんなことを質問しているのじゃないですよ。あなたのほうが二百六万二千戸だとこう言ったら、あなたのほうの見込み件数の百六十七万三千四百二十九件との差がどのくらい、人間としての差が、件数でもいいわ、戸数がどのくらい差があって、一体二百六万に対して何%に当たるかと、こう言っているのです。それがわからぬと、それはあなた調査にならぬですよ。
  79. 瀬戸国夫

    政府委員(瀬戸国夫君) 重ねて御説明いたします。先ほど先生のお話がございました百七十五万六千戸と申しますのは、確かに昭和二十五年の八月一日の農林省調査におきまして求められました戸数でございます。私どもはこの百七十五万六千戸の戸数をベースにいたしまして、さらにその戸数を員数に直した場合に幾ばくになるかということを推定いたしたのでございます。それがさっき申し上げました二百六万二千でございます。
  80. 小林武

    小林武君 その件数と戸数に直すことが補償法との関係でどういうことになりますか、これ。それはどこにありますか、補償法のどこに。法律のどこにあるのですか、その件数と戸数とが。たとえばこの処理要領の中にありますけれども、これはどういうふうにやっておりますか。教えてください。
  81. 瀬戸国夫

    政府委員(瀬戸国夫君) お答えいたします。補償法におきまして報償金を給付いたしますのは昭和四十年の四月一日現在におきまする被買収者個人でございます。人を中心にいたしまして報償金を支給することを定めてございます。
  82. 小林武

    小林武君 そうすると、たとえば一戸の中に何人かいるということがあるわけ。
  83. 瀬戸国夫

    政府委員(瀬戸国夫君) はい、ございます。
  84. 小林武

    小林武君 そういうことだね。そこで同じことを何べんも聞かなければならぬので困るのだが、二百六万認めますよ、それじゃ。二百六万認めるが、二百六万とあなたのほうの今度は見込み件数だね、請求者の。百六十七万というのについて、その差を計算してくださいよ。計算して何%に当たるか、それをよく聞いて……。できないのならいますぐ計算するならしなさいよ。
  85. 瀬戸国夫

    政府委員(瀬戸国夫君) 概数で申しますと、二百万に対して百六十七万でございますから、約八割余りでございます。
  86. 小林武

    小林武君 そうすると、この二〇%というのは、法三条による給付金を支給しないものの数と見てよろしいか。
  87. 瀬戸国夫

    政府委員(瀬戸国夫君) ただいま申されました二〇%という数字はどういう数字でございましょうか。二〇%という数字はどういう数字でしょうか。
  88. 小林武

    小林武君 あなた立ったままでいい。ぼくも立つと時間が取られるから。  あなた二百六万と言ったでしょう。二百六万に対して百六十七万というのは八〇%に当たる、こういうわけですね。そうすると、二〇%減っているわけでしょう。これは買収した者が全部が受けられるのが妥当でしょう。しかし、その中に法によってこういうものは支給しないというものがあるわけでしょう。したがって、その請求の見込み数というものはおのずから減らなければいかぬですよ。減る条件というものは、一番法的にあるのは法三条によりこれこれには支給しないという者だけは、これは一番はっきりしているのです。そうでしょう。あといろんなことをいっても、これはもう何かの事情で起こった問題で、法上ぴちっと来たものはこれだけでしょう。だから二〇%わかったでしょう。
  89. 瀬戸国夫

    政府委員(瀬戸国夫君) わかりました。
  90. 小林武

    小林武君 二〇%減った、だから二〇%というのは、法三条の規定によるもの全部なのか、どういうあなたたちのほうの見通しをつけたのか、数字は大事ですよ、これは。
  91. 瀬戸国夫

    政府委員(瀬戸国夫君) 御説明いたします。先ほどの二百六万二千と申しますのは、重ねて申し上げますと、農地被買収者の人数の推定数字でございます。そこから私どもは、被買収者ではあるけれども、請求する資格がない者というものは法定されております。ただいま先生が申されましたとおりでありまして、その数字は約二十万二千であります。したがいまして、まず二十万二千を引くわけでございます。その引いた残りの答えがこれは百八十五万九千でございます。したがいまして、その百八十五万九千のうち、請求をしない者がどのくらいあるだろうということを推定いたしたわけでございます。それを一割と見たわけであります、当初。したがいまして、それを落としますと、百六十七万三千に相なります。  以上でございます。
  92. 小林武

    小林武君 わかりました。それでは昭和四十二年度の改正見込み件数というのは、あなたのほうで百三十三万八千六百十一件に変更いたしましたと、とにかく出した。これは途中でもって撤回したけれども、これはどういうことですか。
  93. 瀬戸国夫

    政府委員(瀬戸国夫君) ただいま仰せの百三十三万という数字でございますが、率直に申し上げまして、昨年の十一月ごろ各都道府県からどのくらい請求があるであろうかという見積もりを報告していただいたのでございます。そのときの数字の合計が百三十三万であったのでございます。
  94. 小林武

    小林武君 総理大臣も聞いていただきたいのですが、二百六万もあったやつが法で二十万、さらに今度は減って百三十三万までになった。これはやっぱりこの法律の必要性にはずいぶん影響があることなんですよ。この百三十三万をあなたのほうでなぜ押しつけようとしたのですか。これは毎日新聞の中にまぼろしの三十四万件とございます。請求率の低いのを底上げするために百三十三万八千六百十一件をやったという見方もしている。これはいろいろな方面からしているわけです。県当局があなたに報告したというけれども、県当局はおかしいとこう言っておるのですよ。おれのほうでこれだけの報告をしたのにおかしいことをやっておる、こう言っておる。これは一々ここで例を引いていると時間が足りなくなりますから言わぬけれども、あなたは百三十三万八千六百十一件はだれかに漏らしたけれども、低い請求率を底上げするためにやりましたと、こうここで答えたら一番早いのじゃないですか。あなた言ったのだよ、それは聞いた者がいるのだから。
  95. 瀬戸国夫

    政府委員(瀬戸国夫君) 私どもは百十八万八千と、この数字はこの十日の日に最終的に整備いたしましたもので、これを新聞にも公表いたしたのでございます。
  96. 小林武

    小林武君 そのことがおかしいのだよ。なぜあなたこれを、前の見込み件数は違いましたと、百六十七万はこれがほんとうですとあなた初めそう言ったのでしょう、新聞記者にも。そうしておいてから、なぜこれは撤回したのです。撤回したのはおかしいですよ、あなた。
  97. 瀬戸国夫

    政府委員(瀬戸国夫君) 当初の百六十七万三千に対しまして百十八万八千というものが締めくくりの数字でございますので、確かに相違はございます。相違はございますが、前の百六十七万三千というものは当初の見込みでございますから、これを撤回するということはないわけでございます。百六十七万三千という当初見込みに対しまして、実際に出ましたのが百十八万八千という事実を申し上げたわけであります。
  98. 小林武

    小林武君 ばかなことをおっしゃい。困るね。もうそれ、時間見ていると気はいらいらするしな。あなただめですよ。売ったものがあるんでしょう。買った実数があるのですよ。そしてそれをいろいろな法的なあれから、これはやらぬでもよろしいと、大ざっぱにいってどのぐらい棄権するものがあるだろうということを見込んで一体見込み件数つくったんでしょう。それからさらにまた減っていって百三十三万になるということは、一体インチキきわまる話だということになりませんか。ほんとうにこの法律をどんなことをしてきめたか知っているでしょう、あなたは。どんなきめ方だったですか。その過程を知ったら、こんなインチキな数字を持ってきて、だんだん減ってきましたなんていうことが言えるか。言うならもっと筋の立ったことを言いなさい。もう一ぺん私の納得するようなことを言いなさいよ。ぼくは算術やってきたんだから、一生懸命。あなたの立場に立ってぼくは算術やったんだ。こんな算術は子供でもやるですよ。役人が六億も金を使ってやる仕事じゃないのだ、こんなことは。
  99. 瀬戸国夫

    政府委員(瀬戸国夫君) 私の言い方に過ぎたるものがございましたらお許し願いたいと存じます。私は百十八万八千と申しましたのは、実際上この請求があったほんとうの数字でございます。それから百六十七万三千というのは、先ほど来申し上げておりますがごとく、いろいろなデータを基礎にいたしまして推計をいたしたものでございます。したがいまして、その推計のしかたに甘さがあったのではないかという先生のお話でございますれば……。
  100. 小林武

    小林武君 推計は正しくいっている。
  101. 瀬戸国夫

    政府委員(瀬戸国夫君) その見込みが相違いたしたわけであります。
  102. 小林武

    小林武君 推計はちゃんといっているけれども、だんだんおかしくなってきた。表面的にはうまくいっている。
  103. 瀬戸国夫

    政府委員(瀬戸国夫君) 推計は何と申しましても相当過去のものでございますので、推計に全力を尽くしましたけれども、若干のそこが出てまいったのでございます。それは実績とそれから推計の相違でございます。
  104. 小林武

    小林武君 室長、だめだ。そんな子供だましみたいなことを言ってはだめですよ。(「長官長官」と呼ぶ者あり)長官も何もだめだよ。長官であろうと何であろうと、そんなわけのわからぬことを言ったってだめですよ。そうでしょう。いままでのあれは二百何ぼあるのですよ、売ったものが。はっきり言ったら、それは全部該当する数ですよ。被買収者として請求権持つ人間でしょう。しかし、法律があって、法三条によってこれが除外されるものと、それからいろいろな事情によって棄権するものというのをある程度見たというのは、それはよろしい。それが幾らかと言ったら百六十七万と言っているのでしょう。それをまだ下げて、これは甘かったとか辛かったとか、何を言うのですか。それならこんな法律は出さぬでもいいと言ったわれわれのほうの言い分が正しいのだよ。そうしてあなたのほうで百十八万になったから、あわてて百三十三万にして、そうしてとにかくここらで押しつけようとしたから、各県からいろいろな文句がで出たんでしょう、どうですか。ぼくがいまここでみんな読み上げれば一番いいんだけれども、時間なしにしてやりましょうよ、どうです。時間なしにしてやらなければ、こういうわからぬことを言うのじゃ、そういうことになりますよ。
  105. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 小林君、質疑をお続け願います。
  106. 小林武

    小林武君 いや、質疑応答できないじゃないですか。ちょっと、それでどうなの、百三十三万というのは、結局あなたのほうでこういうふうに直してくれと言ったんでしょう。言ったやつを撤回したんでしょう。
  107. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記をとめて。  〔速記中止〕
  108. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めてください。
  109. 亀田得治

    ○亀田得治君 議事進行。先ほどから問題になっておる点について、総務長官からあらためてきちんとしたひとつ答弁を要求します。きちんとしたと言いましても、十分その間の事情を知らぬ点もあるようですから、わかっている限り、きちっと御答弁を願って、なお詳細な点については一般質問なり分科会等でひとつ責任を持った処置をとってもらいたい、こういうことで一応進行願いたいと思います。
  110. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 塚原総務長官
  111. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) 私が当初申し上げました百六十七万三千という数字は、これはあくまでも推定でございまして、これに基づいて受給資格者というものを考えたわけであります。そこで百十八万八千というのは三月三十一日で締め切りましたときの請求の状況の数字でございまして、いま問題になっておりまする百三十三万云々という数字につきましては、私の聞くところでは、昨年の十一月ごろ、各県から見積もり数字として出てまいった数字であるやに聞いております。決して守備範囲が広いから逃げるわけではございませんけれども、この詳細については私もよく存じておりませんので、直ちに調査をいたしまして、他の委員会等において明らかにしたい、このように考えております。
  112. 小林武

    小林武君 まあ時間のないものは負けますわ、こうなると。結局認めておらぬのですよ。大体見込み数ですからというようなことを言うけれども、そうじゃない。売った数ははっきりしておる。それに法律をつくったから、除外されるのが出てくるのは当然だ。さらにたくさん数もあることだから、その中に大体どのくらいの請求権があるだろうと見込むのも当然だ。そうすると、百六十七万という数は正確な数なんですよ、われわれに言わせると、ある程度の。これをいいかげんな推定だなんというのは、これはもってのほかだと思う。もしこれがいいかげんな数字だということになるならば、大体この法律案というものはきわめていいかげんな根拠の上において成立したと、こういってもよろしい。だから私はおかしいと思うのだ。大体どこでぼろを出したかというと、百三十三万でぼろ出したのです。私はこのことについてかれこれ言いたくないのだ、ほんとうは。しかし、あなたのほうで――あなた、その当時総務長官じゃなかったけれど、その当時一体新聞その他に発表する場合には、これはとにかく見込み数にこれはかえるのだと、こういうことを言った。ところが、それがさんざん突っ込まれて、最後にどうなったかといったら、これは撤回せざるを得ないことになった。だからきわめて私は問題のあれだけれども、そういうせっかくのあれがあったからここで引きましょう。  そこで、私はもう一ぺんお尋ねいたしたいのは、金額において九〇・六六%であったと、この請求に対してこたえたと、こういうわけなんだ。これは一体内訳を聞きたいのですよ。それは法第六条によっていろいろ区分がされておる。あるいは地主その他、地主の中にもいろいろなランクがあるから、これによってどこらへ一体金がどれだけいったのか。たとえば三町歩以上のものはどこへいったとか、五十町歩以上のものはどこへいったとか、それには幾らやった、それを明細にしてもらいたい。そのくらいのことができなかったら、これはインチキだということになりますよ。一町未満のものはどうだ、一反未満のものは幾ら金をやった、その累計ができなかったらおかしい。
  113. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) ただいまのランク別の資料は、私はつまびらかにいたしておりませんから、係の者より説明させます。
  114. 瀬戸国夫

    政府委員(瀬戸国夫君) 請求金額を階層別にするといかなる状態になるかという御質問でございますが、私どもは三月三十一日に請求を締め切ったとはいえ、まだ審査を相当残しておりまして、この審査がおおむね終わりますれば、その内容につきましては正確に統計を作成いたしたい、こういうふうに考えておりますので、現在正確な形で申し上げることはできないのでございます。ただ、昨年の十二月の末に中間的に県の報告をいただいたのでありますが、これによりますると、一畝以上一反未満――非常に零細な方、これは一万円の給付金を出しておりますが、これはおおむね当初の見込みに近いものが出るものと思われます。それから、一反から五反ぐらいの層でございますが、この辺の層の請求の出方がおくれておるように思います。五反から一町、この辺はおおむね当初の予定に近いのではないかと思っております。それから、一町以上の層は、当初の見込みに変わりございません。幾らか多くなるのではないかというふうに見ておりますが、これらはいずれも昨年の末の中間的なものを基礎にいたしまして現在判断しているところでございまするので、正確にはすっかり審査を終えました後にこれらの点は分析をいたしまして正確な統計にいたしたい、こういうふうに思っております。
  115. 小林武

    小林武君 これはあなたのおっしゃることはもう全然納得いかぬ。四十八万三千四百十九件というのが棄権しておる。これはもう三〇%近いものです。私の計算によれば三〇%よりもっと多くなるんですよ。被買収者仲数二百六万に対し権利放棄件数を計算すれば、ずっと多くなる。棄権数があって、金額面から九〇・六六%申請率となり、しかも、おおむね零細な地主が申請したとしたら、これは大口のところでうんと脱落者がなければならぬ。そうなったら一体九〇・六六%なんという金額が出てくるはずがないですよ。これはもう数学なんというものではない。算術ですよ。算術にもならぬようなあなた報告をやっちゃいかんですよ。わからぬというのはわかります。まだ集計できないから。しかし、それならば九〇・六六%なんということを出すというのは不届きですよ。こんなのを出すというのはごまかしですよ、一種の。
  116. 瀬戸国夫

    政府委員(瀬戸国夫君) 金額的にいまのところ推定の給付金額でありますけれども、千三百億円ぐらいになると推定いたしております。それは、百十八万八千と先ほど申し上げました件数に対応いたしまする、将来出るであろう給付金の総額推定であります。そういたしますると、千三百億円に対して当初私どもが見込みましたのが千四百五十六億円でございますので、割り算をいたしますと九〇%ぐらいになるわけでございます。そういうことでございます。
  117. 小林武

    小林武君 だめです。それじゃ農林大臣にお尋ねいたします。いまのような質疑を聞いておったら、あなたは、やっぱり三十九年の二月一日のころに農林省で主管官庁なることを拒否した、そういうことがうまくいったと、こう思っていらっしゃるんじゃないかと思うんですが、農林大臣はいまにかわっても大体そういうお考えですか、どうですか。
  118. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のように、農地被買収者に対する政府措置といたしましては、行なわれました農地改革を否定ないし批判をするという立場からやったわけではございませんので、つまり、農地改革を政府が進めますのについて被買取者が貢献をいたしたと、このことを多とするということでああいう措置を考え出されたのでありますから、これは農業政策の問題というよりも、国政全般にとって必要なことであるという、つまり、そういう観点に立って行なわれたものであると存じますので、従来そういうことについて調査をいたしてまいりました総理府が所管することがきわめて妥当であろう、こういうことで農林省としては御辞退を申し上げるのが行政上いいんではないか、こういうふうに解釈いたしたわけであります。
  119. 小林武

    小林武君 先ほど申し上げた主管官庁決定のときの農林省の拒否態度。最高裁が認めた戦後の農地解放は正しかった。何に対して報い償うのか、農林省の立場からはわからない。これは農政に属することではない。旧地主の四割は農民でない。自立経営農業の育成推進と農地解放には矛盾がなく、間違いであるとの印象を与えるうしろ向きの問題で手をよごしたくない。こういう考えはいまでも変わらぬということをあなたの部下の中にはやっぱり堂々と言うりっぱな人がいると思う。あなたは農地改革はどうですか、間違いだと思っていますか。
  120. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) その後の経過、それからわれわれが将来展望する社会を通観いたしまして、農地改革についてのあの当時のやり方については、巧拙に対する批評は幾多あると思います。けれども、ただいまアジア諸国などで大きな地主と小さな農民とのいろいろな紛争等を見ておりますというと、やはり、わが国政治全般の中では農地改革というものはりっぱな成果をあげておるし、また、農業にとりましても、自営農業を育てていこうとする今日の農政の思想と合致しているものであると思います。
  121. 小林武

    小林武君 そう言えば、大体農林省の態度を認めていることだと思うんでありますが、そこで、もう前からのやりとりを総理大臣お聞きだと思いますからお尋ねいたしますが、あの農地補償法が通ったときは、本会議で二十三回動議合戦をやって、牛歩戦術の結果、あれはようやく通った。無理に通した。そのときに一体毎日新聞は何と書いたかというと、「自民党はついに農地報償法案の強行採決に成功した。国会の多数を制すればどんなことでもできるということの適例である」――いい例だと、こう言った。朝日新聞は「民主政治の正義が傷つけられた」、残念だと、こう言った。「旧地主団体の要求にずるずると押し切られた政治姿勢」だと、こうも言った。「一部の圧力団体の前に屈した」という毎日新聞のあれもあるし、それから日経さえも――日経さえもじゃない――日経もどういうことを言ったかというと、それについては同じような見解をとっている。こういうやり方は「あくまで非難されなければならない」と言っている。私は、こういうことについて佐藤総理は政治的責任をお感じになっていないかどうかということ、こういうずさんなやり方をやって、ほんとうにこれは一体りっぱな法律だったのかどうか。農地補償というようなものは、最高裁のあれをかれこれ引っぱり出してやる時間ないですから言いませんが、一体これはいいのか。大内さんの談話として、これについて書いておりますけれども、これは「旧地主が困っているからぜひ、というものではなかった。低俗な政治的要請、単刀直入にいえば自民党の票集めにすぎず、結局、血税のムダ使いに終わったことがこれでハッキリした」と談話で発表したと、こう書いてある。私は、この農地補償の問題について、総理大臣は、いまでも強行採決をやって、りっぱなことをやったと思っているかどうか、もとつ御意見を承りたい。
  122. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 農地報償の問題を解決する、そのときにいろんな議論がございました。しかして、また同時に、農地報償の制度、農地報償の解決の問題、これは国内の重要課題でも私はあったと思います。ただいまいろいろ当時の強行採決云々等が批判されておりますけれども、私は、これを解決することによりまして国内の懸案事項を一つ片づけたと、かように実は思っております。私はただいま悪いことをしたようには考えておりません。
  123. 小林武

    小林武君 労働大臣にお尋ねいたしますが、ことしの春闘の賃金の相場といいますか、どんなぐあいになっておりますか。
  124. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 相場と言いますと、これは普通の一般用語でございますが、大体四千円、四千二百円という、必ずしも、各企業によって中身は違っております。四千円を切っているのもあるかと聞いております。
  125. 小林武

    小林武君 一体、炭鉱労働者のいままでの賃金の問題に関してはどういうぐあいになっていますか。労相として御存じだと思いますが。
  126. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 炭鉱労働者の賃金は、従来は非常に高額賃金でございましたが、その後産業が斜陽化いたしました関係上、現在は五万円ちょっとの平均賃金になってきているわけであります。ただし、昨年の賃上げ――ベースアップは簡単に妥結いたしまして、一〇%ちょっとこえるベースアップがなされたという数字になっておるわけであります。したがって、中高年が多いですから、平均賃金としては製造業の四万円よりは一万円ほど高いということは言えます。
  127. 小林武

    小林武君 四十一年度の場合は七%、一千七百五十円、それに一時金が千五百円ですね。今年はどうなんですか。また七%、千八百円か、九百円ぐらい、大体政府もそういう見方をしているんじゃないですか。
  128. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 七%というのは、一応給金なんかの積算の基礎でああいう数字が出たわけでありまして、これは別に拘束力はないわけであります。しかしながら、石炭産業は非常にきびしい環境に置かれておりますから、鉄のようにあるいは非常にいんしん産業のようにはいかないだろうと思います。そういった実情のもとで労使が話し合って決定すべき問題でございまして、政府としては介入する意思はございません。
  129. 小林武

    小林武君 通産大臣のお尋ねいたしますが、昭和三十年から昭和四十一年、二年まで、生産の能率、一体どのくらいのあれになっていますか。ちょっとそれを教えてください。
  130. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 古いところはいま私の手元に資料がありませんが、昭和四十年度は一人当たり一カ月の生産が三十八・一トン、昭和四十一年が四十・三トン、昭和四十二年が、これは見通しでありますが、四十三・八トン、こういうような計算になっております。
  131. 小林武

    小林武君 古いのを知らないでは困るんですが、昭和三十年度が十二・九トンなんです。現在、あなたがおっしゃるように、四十・三トン、十二・九トンから。これについては労働者の生産性の高まりというのはどうですか。それに対する貢献の度合いというのはお認めになりますか。
  132. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) もちろん、労働者の生産性の向上ということは認めます。が、しかしながら炭鉱の機械化の進展によりまして、それだけ生産率があがってきたのでありますからして、その機械化、近代化とその労働者との能率、これが合わせてそれだけ生産高が増加したと、こう考えております。
  133. 小林武

    小林武君 労働大臣にお尋ねいたしますが、この間において合理化が何べんか行なわれた。それについてどのくらいこの労働者数が減退してきたか、昭和三十年から四十一年。
  134. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 正確な数字はちょっときょう……。十二万と指定されておりますが、また四十一年は一万二、三百人ぐらいが職を失なうという結果になっております。
  135. 小林武

    小林武君 これは突然言うわけじゃなくして、予告して言っているわけですから、もう少し炭鉱労働者のためにも正確な数字をおっしゃっていただきたいですな。通産大臣も古いことはわからぬ。労働大臣もはっきりしたことはわからぬ。これじゃ困りますよ。昭和三十年二十七万八千四百、いまは十万六千五百四十八しかない。合理化でこのあらしの中に炭労の諸君は入っていく。非常な苦労をなめている。しかし、生産の能率については、先ほど言ったように――総理、四十トンまで上がった、十二・九トンから。災害率はどうなっているかということをひとつお尋ねしたい。災害率。
  136. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 災害全体は件数でいかなくて、ほかの製造業百人以上の災害比率に比べますと、炭鉱はたいへん多いわけです。大体百万時間当たりの死傷者数というのが基準になっておりまするが、普通の百人以上の製造業では大体十二人というような平均でございまするが、残念ながら、炭鉱業に関しましては百五十人という非常に大きい災害率になっているわけであります。
  137. 小林武

    小林武君 ひとつ政府委員にお尋ねいたしますが、災害率についてもう少し詳細なあれを出してください。
  138. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 一般に災害の発生の度合いを判断いたしますには、労働者数の増減という要素もございますので、それを加味いたしまして、度数率とそれから強度率という数字を用いております。度数率は死傷件数を労働時間数で割りましたもので、いわば頻度数、それから強度率というのは、労働時間で損失日数を割ったもので、その災害の度合いがどれくらい強いかという点から見たものでございます。ただいま大臣が申されましたのは、そのような従来用いております方式に従いましての傾向を申し上げたわけでございます。
  139. 小林武

    小林武君 そこで、昭和三十年から四十一年まで、ひとつどういうことになっていますか。
  140. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) そこで大体の傾向を申し上げますと、通産省の調べによれば、度数率につきましては、石炭鉱業では昭和三十二年当時は六八・六五、それが、毎年まあ多少の変動がございますが、三十五年は七九・八一、それから三十八年、御承知の三井三池の災害がございました年でありますが、一一四・六一となっておりまして、非常な高い度数率となっております。その後、昭和三十九年一一〇・一五、四十年一一三・七八、四十一年一一四・四三というように、遺憾ながら横ばいといったような形で度数率は推移いたしております。  強度率につきましては、かなり上がり下がりがございまして、三十二年は八・五一、三十五年は九・〇三、三十八年は一六・八九――これは非常に高うございますが、三井三池の大災害がありました関係でございます。三十九年九・〇二、四十年一五・一八、四十一年九・九一というように、多少でこぼこがございますけれども、まあ度数率のような顕著な増加傾向とは若干異なっておるということが指摘できると存じます。
  141. 小林武

    小林武君 まあ災害というものは、大体この合理化やったときに多いんですよ、これは。三十八年が多いというのは、これは合理化のときです。合理化のときに多くなるというのは、いままでの統計を見れば明らかなことです。そういうふうに、労働者というものはたいへん、まあ炭鉱労働者は困難な状況の中に置かれている。危険が多い仕事なんです。他の産業よりかもひどいということは、労働大臣もそう言われた。私はその中でいまの炭労の賃金の問題がどうなんだということは重大なことだと思うんです。これはまあ北海道というのは、石炭のほうではほんとうに全国的に非常に重要な立場にあると思いますが、あすこの資料を見ても、いまやもう若年労働者はあすこへ集まらぬのですね。それで軒並みにと言っていいほど定年制を延ばしておる。そのことは、将来の炭鉱が一体どうなるのか、エネルギーの問題を一体どうするのかという問題につながるわけです。しかし、そんなことを議論するいま時間がありませんから、問題は、一体炭労の賃金をどうするか。斜陽産業にありますから、おまえらそれでがまんしろといったようなことを一体やるというのは酷だと思う。とにかく今度の予算の中にも炭鉱の予算が出ているわけですが、その中で大企業に対しては相当のやはり援助を政府もやっている。それをやらなければもう立っていかぬぐらいです。それに対して、労働者に対しては私はあまりにも冷酷な考え方を持っているんじゃないか。これは労働大臣も斜陽だからしかたがないと言わんばかりの言い方をしているんだが、これは私はどういうものですか。これは総理大臣にお伺いしておきます。
  142. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  石炭労働、炭鉱業、これはもうかってたいへんはなやかな状態でございました。この賃金にいたしましても、最高、また必ず三つ数えればそのうちの一つと、そういうものでございました。最近になりまして、まあ能率は上げておるにかかわらず、また、合理化等について積極的に協力しながらも、ただいまの貸金水準、たいへん低くなっております。私は、本来賃金のきめ方、これはもう産業の実態にもよる。労働の実態、また産業の実際から賃金がきまるものだと、かように私は思いますけれども、ただいまの炭鉱労務者の賃金のきめ方、これは現状をもってしてですね、労働者の質量にふさわしい賃金だと必ずしも私は思いません。しかし、いま直ちにこれを改善しろと、かように言われましても、私はやや困難ではないかと思います。また、政府がこの炭鉱に対する補助その他がですね、十分でないというような御指摘でもありますが、私は、この炭鉱に対する、炭鉱企業に対する政府の計画並びにこれに対する援助、これは大小を問わずなかなかきめこまかにできておるのではないかと、かように私は思っております。今回特別会計を設けるようになりまして、おそらく質量にふさわしい賃金が決定されるようになるだろうと思います。また、そうしなければならない問題と、私はかように考えております。まあいままでしばしば言われますように、単純な賃金の平準化、これを要求される動きもないようでありますし、私どもが施策として当然やらなきゃならないのは、その労働の質量にふさわしい賃金、これが決定されるようになお努力すべきものだと、かように私は思います。ただいまの小林君の御質問に対して、私も共鳴を覚えるものであります。
  143. 小林武

    小林武君 どうぞひとつ総理大臣、十分ひとつそれについてはお力を出していただきたいと思います。  それから、北海道のこの石炭の需給状況なんか見ますと、政府の施策の中に、きめこまかいというが、私はあんまりきめこまかくないと思う。たとえば、いまやもう電力と鉄は、これはもう政策需要なんですよ。そうでしょう。ところが、この鉄の問題を考えるというと、大体西日本にずっと広がっていっている。そうすると、北海道の石炭の単価というものは高くなるのはあたりまえです。コストが高くなる。そういう状況の中で北海道の石炭どうするかというようなことを考えていったら、これはここだけでも問題がありますよ。その他道内のいろいろな大口の需要者というものを見れば、これはみんなもう四十五年度までにはだんだん減らしていくあれですよ。こういう中で労働者の賃金と企業の状態というものはどうなっていくかということを考えると、私はきめこまかいなんということを通産大臣あまり考えないほうがよろしい。きめ荒いですよ。もう少しやはり実態に即したやり方をやらぬとこれはうまくない。これはエネルギーの問題として大いにまあ研究していただきたい。これは答弁要らぬです。  それから、最後に一つだけお尋ねしたいのは、文部大臣です。まあ総理もひとつ御意見を承りたいのですけれども、一体あれですか、文部大臣、外国人学校というても結局あれはまあ朝鮮人の教育の問題です。これはまあ何べんか私はその問題についてやっぱり質疑をしているわけでありますから、当初のもう出だしからよくわかっているわけです。それはもう明らかに、教育の問題ではなくて、これは治安問題として皆さんがおとらえになっておるということに、私は大きな不満を持っておる。今度の場合も、立ち入りがどうだとか何だとか、いろいろな法律案を見ますというと、教育の現場に対する配属ではなくて、まさに治安問題としての対策というふうに私は考えておるわけです。一体これをそういう立場でやらなきゃならぬのかどうか。このことの理解は、もうとにかく、朝鮮の人が感ずるばかりでなく、日本の学者連中がみなこれに対してそういう表明をなさっていることは、皆さんのところにもいっているからよくおわかりだと思う。これに対する考え方です。  それから、もうそういうものは出さぬほうがよろしいのじゃないか。文部大臣としてば、もう出さないと、こう言い切ったらどうかと私は思っているのですが、どんなものでしょうか。
  144. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) お答えいたします。  学校教育法の改正案は、ただいままだ提案するかどうかということを決定をいたしておりません。ただ、案の内容につきまして、この機会にひとつ誤解のないようにお願いをしたいと存じます。学校教育法によりましては、御承知のように、私ども予定いたしておりますのは、三つの重大な改正点がございます。その一つは、高等商船学校の創設でございますが、これは論外といたしまして、特に学校教育法の改正をわれわれ意図いたしましたのは、ただいまの各種学校をいかにするか。いわゆるこれは中教審の答申に基づきまして各種学校の格上げをし、それに対して性格のはっきりした格づけをいたそう、こういう問題で各種学校の改正をいたすわけでございます。ところが、この各種学校の格づけをいたしますとどういうことになりますかと申しますと、ただいま、外国人学校といたしまして、各府県で各種学校として知事の認可において行なわれておるものがございますが、この認可して行なわれておりますいわゆる各種学校は、今度の各種学校の格づけと同時に、一年たちますとこれはすでに学校でない状態になってしまうのでございます。新しい各種学校には、当然これは外国人の学校は各種学校に認可するわけにはまいりません。そういたしますと、これをもしやらなかった場合には、外国人学校というのは全く法の保障の外に置かれる学校になって、事実行為としてそういうものが行なわれるということでございまして、そういうことになれば、むしろそれがその際において治安の対象になる。私どもはそうしたくない、いわゆる国際親善のためにこの外国人学校という制度を設けて、そしてそこに民族教育を保障して差し上げよう、これがこの外国人学校制度を設けるという基本的なわれわれの考え方でございます。したがいまして、われわれ文部省がこれを学校教育の範疇の中に入れて、そうして民族教育を保障しようという場合において、一部の人がこれを治安立法だと言われておるわけでございますが、文部省は治安当局ではございません。あくまで文部省がやるのでございます。それから、私のほうにたくさん朝鮮人の方が投書やら何やらやってまいりますが、全部誤解された投書でございまして、むしろその投書の面から言えば、なぜこれを認めてくれぬかというような意思表示もございます。いわゆる外国人学校というものについて民族教育をなぜ保障しないのかと、こういうことなんです。私はこれは小林委員にはっきり申し上げますが、あの規定の中で、いわゆる日本の国益と調和していかなければならない。外国人が日本において教育を受ける場合において、日本の国益を害するような教育をやってもらってはならないということは、われわれ日本は独立国家として当然のことでございます。もしこれが世界万国におきまして、その学校が存在する国の国益を害するようなことはやるべきことじゃないことは当然のことでございまして、そういう学校を世界じゅうで認められるはずのものではございません。日本にある程度の永住をいたしまして教育を受ける際において、その日本の国と調和をしていく、いわゆる国際親善の立場に立ってこれは当然のことでございまして、これをわれわれが国益を害するような教育をしてはならぬということは、否定をするまでもなく、日本に永住して日本人と一緒に同じ生活をしておる限りにおきましては、当然に自発的にそういう心がけをいたすべきものであって、日本の国益を害するという目途を持っておらない限りは、この法律にどうして反対するのか。私は、日本に永住するような外国人がおりまして、当然に日本の国益を害するのを目途として教育をやるというようなことは、日本として許さるべきものじゃございません。これは社会党の方でも私は当然にそうお考えになるのでございまして、もしこれを、外国人学校というのはけしからぬ、これを規定からはずせと申しましても、私どもは日本の教育の状態を格上げする意味において各種学校を格上げしていくと、これは中教審の答申にもございますし、全各種学校の熱望するところでございます。私どもはこれを阻止するということはできないわけでございます。これをやりまして外国人学校をそれじゃはずしたらどうなる。私どもはむしろ、これは世界の実情から申しまして、日本の特殊事情でございますが、六十万に近い外国人が日本に永住のいわゆる意思を持って住んでおります。そういう状態のところにおいて、その祖国のことばで歴史や国語やら自由におやりなさい、これを保障してあげましょうという国が世界にどこにあるでございましょうか。私は、そういう点について何らの考慮をされないで、もし私どもといたしまして――われわれは特にこれは朝鮮人だけを目的といたしておるのでございません。たとえばアメリカン・スクールとか、そういった問題につきまして、もしこれをわれわれ規定してあげない場合においては、アメリカン・スクールがいままで国の援助、たとえば学割りでございますとか、あるいは衛生上の利益とか、享有しておりましたものまでも剥奪するようなことになってしまうわけでございます。ですから、必ずしも私どもは朝鮮人の学校だけを目途とするものでなしに、全部の外国人学校について同じような気持ちでやろうとしておるのでございます。ですから、私どもは、ここでこれは提案するということはまだ最終的に政府並びに私どもの党で決定したわけではございませんけれども、私どもは、むしろこういう場合におきまして、この外国人学校の創設は、朝鮮人の民族教育を保障する意味において、積極的に私はこれをむしろ規定をしてほしいと御希望になるべきはずでございますし、陳情の趣旨から、あらゆる私は陳情を全部ごらんに入れてもいいと思いますが、朝鮮人の行なうところの民族教育を保障しろというのが全部の陳情でございます。私どもはその意味において各種学校の制度と不離一体として外国人学校制度を設けなければならぬとこれは考えておるのでございまして、そういう意味においてやりますのに、これに対して何のために反対するのか、私はそこに非常な了解に苦しむ問題があるのでございます。私は、いままでこの問題をまだ提案をいたすということに決定いたしておりませんので、その内容について詳しく御説明をする機会はございません。しかし、私に言わせますならば、いま小林委員が言うようなことがございますなら、この法案の提案をひとつさせていただいて、その上で法案に即して論議をいたしまして、そうして十分納得がいくように私どもは御説明を申し上げようと思いますし、また、そういたしますれば、われわれの外国人学校を提案しなければならぬという理由をおそらく御了解をいただけるものと私は確信をいたしております。ただ、いま重ねて申し上げますが、ただいまのところまだ提案をいたすかどうかということを政府として決定したわけではございません。
  145. 小林武

    小林武君 一言だけ。いまの長いあれに一々やっておったら、時間、ルール破ることになりますからやりませんが、私はあなたのことばの端々にやはり問題点があると思うのです。国益を害するとか、そういうものの考え方が一つあること、それと、私が前に、一体パルチザン戦術をやるなんという事実がどこにあるのかという文部大臣に質問したことがある。あなたたちはそういうことを一体国の文部大臣としておっしゃることはいけませんよということさえ言わなければならぬようなやりとりがあるわけです。でありますから、私は、そういうあなたの信念が、ほんとうに外国人がその土地の――国のことばで民族の教育をやることを日本が援助してやるというならば、あわててそういういま混乱を起こすような事態を避けて、ほんとうに相互が理解し合えるような立場をつくってやるということが一つです。もう一つは、朝鮮という民族とわれわれとの関係の中において、他のものよりかも、だれよりかも配慮をしてやらなければならぬという事実があることを、ひとつあなたはお考えになっていただきたい。まだ提案のあれがきまっておらないそうでありますが、ひとつあわてずに十分にいまのようなことで検討していただくことを希望して、私の質問を終わります。
  146. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。時間が過ぎておりますから簡単に言います。
  147. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 簡単に願います。
  148. 亀田得治

    ○亀田得治君 一言だけ、これは時間もありませんからお聞きします。文部大臣から学校教育法改正についての趣旨をるる説明されましたが、特に、なかんずくその中で民族教育を守るべきだと、この改正法によってむしろ、こういうことまで言われておる。だからむしろ喜んで受け入れてくれなきゃいかぬのだという趣旨のことまで言われておる。ところが、これは経過があるわけですね。お互いにこれは知っているわけだ。明らかに朝鮮人の諸君がやっておる民族教育、これに対して政府なり自民党の諸君が一つの偏見を持って、これは取り締まらなきゃならぬと、こういうところがらこの問題が出発したことは、これはもう理屈じゃない、事実としてこれは明らかなんです。これはぬぐい去ることができないんです。だから私は、そういうことから出発して、非常な保護をしてやるという相手方が、ちょっと待ってくれと。また、保護されるほうがちょっと待ってくれというのに、いやそうじゃない、これでやってやろうと、これもおかしな話でね、実際は。そうでしょう。だから、そこら辺も不自然なんですよ、不自然。ほんとうに外国人の民族教育を守って、そのためにやるんだというなら、やはり私は、混乱したままで、十分な理解がつかないままで押し切って提案をしていくということは、これは相当慎重に考えてもらわなきゃならないと思うんです。その点ですね。それで、まあまだきまっておらぬと言われますから、これは総理に特にひとつ慎重にお願いをしたい。理屈を言っているんじゃない、経過の上に立ってこういう問題が起きておる。それから、商船学校とかそのほかの各種学校ですね、これは制度上整備されることをわれわれは少しも反対しておりません。だから、これはむしろ切り離して、堂々と政府として早く提案してもらえば、われわれとしてもそれは賛成するものは当然賛成していかなきゃならぬと思っているんです。だから、非常に経過から見ても問題が違うわけでして、それを一緒にするというところに無理がある。だから、われわれも賛成しているものは早く出してほしい。そうでないものはゆっくり。ところが、それが野放しになると、こうおっしゃるんですが、それは制度のつくり方ですよ。経過規定のつくり方ですよ。従来どおりの扱いを経過規定としてやろうと思えば、それはできぬことはない。全く文部大臣がおっしゃるように、そんなことをしたら外国人学校だけ野放しになって困る、そういうことには私はならぬと思うんです。だから、いずれにしても、われわれもいま申し上げたような気持ちで言っているわけですから、その二つを一緒にしないで、そして一つの反対のある部分については、これは相当慎重に考慮してもらわなければ困る。最後の決定権を持っておる総理大臣のお気持ちをこの際聞かしてほしいと思います。われわれは毎日陳情を受けておる。
  149. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど、外国人学校に関する法律案につきましては、文部大臣から詳細に申し上げました。一部でこれは治安立法だというような誤解がありましたようですが、ただいま文部省はまだ治安をやっておりませんので、その点は誤解のないように、これも文部大臣のお答えしたとおりであります。ところで、ただいまこの法律案をまだ提案しておりません。最終的決定をしておりません。それについてたいへんだだいま重大な発言がありました。われわれの反対するものは出すなというお話でございます。私はそれは御意見として伺っておきます。とにかく国会でこれは十分審議していただく、そういうものでありますから、法律が提案されたら、これはぜひ御審議をいただかなきゃならない。そうして、その提案の前に社会党が反対だから提案するなという、これは少し行き過ぎるんじゃないかと思います。これだけは申し上げておきます。もし、そのわれわれがというのは、社会党の代表だからというふうに思います。これはちょっと行き過ぎじゃないかと。私はもう、提案につきましては、ただいままだ決心しておりませんから、ただいまのような御意見についてはようく考えてやります。
  150. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上で小林君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  151. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 引き続き向井長年君の質疑を行ないます。向井君。
  152. 向井長年

    ○向井長年君 私は、ただいま問題になっております核拡散防止条約問題につきまして、特に政府の態度並びに現在の情勢の認識、そうして今後の政府行動、決意等をお聞きしたいと思うんです。外務大臣が四十五分に来るということですが、まだ見えておりませんが、特にこの問題につきましては、たびたびの委員会なりあるいは本会議でも質問をいたしておりますが、拡散防止条約草案について、米ソの案が近々中にまとまるようであったかと思ったのですが、昨日の新聞を見ますと、アメリカがこれに対する修正案なるものを出しております。したがって、まことに微妙な形に動きつつあるのではないかと、こう考えますが、政府の今後の見通し並びにこれに対するところの趨勢についてお伺いしたいと思います。
  153. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 当初予定されておりましたよりもだいぶ、アメリカ側と申しますか、西側の内部の調整に手間どりまして、まだ米ソ交渉にも本格的に入ってない段階でございます。したがいまして、これがいつ米ソの話がまとまり、十八カ国委員会に持ち出されるようになるかという見通しは、現在のところ立てがたい状況でございます。
  154. 向井長年

    ○向井長年君 この平和利用条項が挿入されなければ、日本としてば参加しない、こういう態度を堅持されているか、これは総理から。
  155. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 核拡散防止条約というものについてのその基本的趣旨には、私ども賛成なんです。これは事前に各党と外務大臣が話し合いました場合も、皆さん方の御意向も一応伺ったのでございまして、で、その点が入らなければどうかというようなお話でございますが、ただいま一点について私実は聞き漏らしたのですが、総体としてその趣旨が生きているかどうか、その辺から考えて判断したい、かように私思っております。
  156. 向井長年

    ○向井長年君 平和条項を、特にこの問題については、まことに平和利用の問題についての保障という問題が非常に問題だと思うんです、これは。ドイツではアデナウアー氏が死ぬ前に、米ソの案でもしこれがまとまるようであって、わが国が参加するなら、第三流国にこれは下がるであろう、こういう強い決意で、ジュネーブ会議でも十数人のいわゆるオブザーバーを出して、非常な決意で臨んでおるのですね。それに対してわが国がどういう態度かということなんですよ。
  157. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、原子力の平和利用については、もうすでに日本もやっておりますから、このほうは問題ない。核爆発物質の開発をするか、しないかという問題です。現段階においては、これは平和利用と軍事用に区別するわけになかなかいかない。もう一つは、やはり放射能の完全――これもまだ処理が解決しておりません。そういうことを考えますと、現段階でそれじゃ日本が一体核爆発物質の開発をやるかどうかというと、この点は私はやる考えはございません。そこで問題は、持たない国が持つ国と非常な差別を受けて、そしてその意味で平和利用のチャンスを失う、こういうようなことがあってはならないということで、これはいろいろ事前に希望条項を出しておるわけであります。私は、このことはいまそう心配しなくて大体落ちつくんじゃないだろうかと。どういうような表現がされるだろうかと、こういうことをいま見ているという状況でありまして、私は、いま向井君が心配しておられるように、持たない日本がそういう点で非常な立ちおくれを来たさないように、また差別的な待遇を受けないようにこれはぜひやりたいものだ、かように私も思っております。
  158. 向井長年

    ○向井長年君 核爆発というが、平和利用の問題はもちろん原子力開発の問題ですが、こういう中で自然的にプルトニウムができるんですよね。それが核爆発のいわゆる材料というか、原料なんですね。そういう問題に対して、やはり平和条項が本文にいわゆる挿入されなければ、やはりわが国としてはこれから重大な問題になると思うんですよ。その点の決意を私は聞いておるわけなんですがね。
  159. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 原子力の平和利用について、今度の条約が各国の自由にこれを開発することを妨げるものでないという趣旨は、明らかにされると思います。そのことと、平和利用の施設に対する保障措置をどうするかということがまた別にあるわけでございますが、このあとのほうの問題につきまして、ドイツの場合には、従来ユーラトムの査察を受けておる、それが新しい条約でもしIAEAの査察に切りかえられるということであれば、しかもソ連がその査察を受けないということであれば、非常に不平等になる、産業スパイというような問題も起こるということで、強い反対の意思を表明していることは、御指摘のとおりでございます。ただ、その点については、日本の立場はドイツと若干趣を異にしておるわけでございまして、日本の場合にはIAEAの査察を現に受けておるわけでございます。
  160. 向井長年

    ○向井長年君 そういうことを私は聞いておるんじゃないんですよ。いわゆる平和条項が、平和利用に対する条項がもし条約に入らないとするならば、日本の決意はどうだということを聞いておるんですからね。そのほかの問題じゃないんです。決意の問題を聞いておる。
  161. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 決意の問題は、先ほど申し上げましたように、全体を見て私考えます、かように申し上げます。
  162. 向井長年

    ○向井長年君 ドイツはそれでなければ入らぬという態度を持っていますね。はっきりしていますね。日本はどういうことか。
  163. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ドイツはドイツの考えでやるでしょう。それで、入るか入らないか、まだきめているとは私も思っておりません。先ほど来私が説明いたしましたように、原子力の平和利用、これはもうすでにやっておることです。そのほうの研究はやっております。また、核爆発物質の開発をするかしないか、この問題は、先ほど申し上げましたように、私、やらない、いまの状況のもとにおいてはやらない、かように申しておりますから、いまの条約にどういうような書き方をされるか、それによりまして私どもの目標は達せられるんじゃないかと思いますが、いまの、全体――とにかく条約が明確になりまして、案文ができた上で、その上で、これなら反対だとか、これなら入れるとかというようなことをきめればいいと思います。と申しますのは、この核拡散防止条約の基本的なもの、核の拡散は防止さるべきものだ、そうしてそれが核軍縮へつながるものだ、その第一歩だと、こういうような意味において、私はその趣旨に賛成でございますから、ただいま申し上げるような結論でございます。
  164. 向井長年

    ○向井長年君 日本政府が米国に対しまして、特に原子力委員会等専門家を派遣の要請をしたようですが、この要請は、そうすると専門家のクラス、あるいはまた時期は具体的にどう考えておられるか。たとえば、専門家の派遣が草案ができ上がったときに考えられるのか、その前に考えられるのか、この点どうなんです。
  165. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 先般三木外務大臣がフォスター長官と会いましたときに、いろいろ懇談を重ねました。その際に、ぜひとも専門家をひとつ派遣してもらいたいという要請をいたしまして、フォスター長官も、たいへんけっこうなことであるからできるだけ御要請にこたえたいと、こういうことで、いずれ具体的なことにつきましては先方で十分検討いたしました上で早急にこちらのほうへ何らかの回答があるだろうと、かように考えております。
  166. 向井長年

    ○向井長年君 回答じゃなくて、私が言ったのは、草案のできるときであるか、その後であるか、その点がどうかという時期の問題です。
  167. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) これはもうできるだけ早い機会にこちらのほうへ派遣を願うことになるだろうと考えております。
  168. 向井長年

    ○向井長年君 この平和利用の保障が当然要求されなきゃならぬし、これがない限りにおいては、日本は非常に問題が重大だと思うんですよ。そういう中から、特に非核保有国の間の差別問題、先ほども言われましたが、この問題は絶対あってはいけないと、こういう態度で総理は先ほど答弁されましたが、この点については貫徹する決意ありますか。
  169. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 持つ国と、それから能力を持ちながら持たない国、また能力はあってもなくても持たない国、そういう間に差別があってはならないというのは、これはもう基本的な態度であります。
  170. 向井長年

    ○向井長年君 きょうの新聞に、牛場次官がユーラトムの問題について、日本の考え方といいますか、これを述べておりますが、具体的にこれを説明してください。
  171. 滝川正久

    説明員(滝川正久君) ただいまの牛場次官の発言につきまして、私が直後に次官にお会いしまして伺いましたのですが、新聞に書いてあるとおりのことをおっしゃったわけではないそうでございます。会談録を持っておりますけれども、記事とは相当相違しております。
  172. 向井長年

    ○向井長年君 具体的に説明してくれと言ってるのに、違うとかなんとか、そういうことじゃないですよ。具体的な説明をしてくれと言ってるんです。
  173. 滝川正久

    説明員(滝川正久君) いろいろな点が発言されておりますけれども、いまのに多少関係のある点だけをちょっと読み上げさしていただきます。これは完全な速記ではございません。会談録の要旨、メモでございます。「ユーラトムの査察で難航しているのだろう」という質問に対して、答えとして、「ユーラトムを認めておくのはよいと思う。まだ日本が文句をつけるのは早い。」、質問「査察は方向としてユーラトムかIAEAか」、答え、「ユーラトムは過渡的なものでIAEAと同じようにやる。」、質問、「西独は査察国を問題にしているが」、答え、「それは問題はないと言っている国が多い。IAEAに報告が出てくれば査察内容は全部わかってしまう。直接見にくる人についていやな国の人を入れないのはIAEAの条約で明文化されている。」、質問、「米が査察を受けてもいいとすると、何かのゼスチュアか」、答え、「米は全くの善意で言っていて、ほんとうに信用してもいい。この条約を不平等でないようにということで、条約関係なくステートメントで出すかもしれない。」、この程度のことでございまして、ユーラトム査察のやり方とIAEAの査察のやり方とを同じにするということを、日本が核防条約に入るかどうかというような問題についての条件であるとかなんとかというような要求をされたわけではないわけであります。
  174. 向井長年

    ○向井長年君 ユーラトムの査察というのは、やはりもし、共同体の中で内輪で査察しようということですからね。そうでしょう。そうすると、国際原子力機関の問題については内輪じゃないわけですね。それをきらって、それをユーラトムでやろうとしているのだから、それに対して日本としてはどういうことを言ったんですか。どういう態度で牛場次官は言っておるのですか。
  175. 滝川正久

    説明員(滝川正久君) いまの新聞記者の会見では、はっきりその点はおっしゃっておりませんが、大体従来から外務省で考えておりますことは、ユーラトム諸国というものは、おっしゃるとおり、ユーラトム査察を受けておるという現実はございます。今度IAEAが拡散防止の関係で締約国が査察を延ばします場合に、これとの調整を考えなければならない。ユーラトム諸国の希望を聞きまして、アメリカとしては、ある程度の過渡期間における調整ということを考えておるわけでございますが、これは日本には直接関係がないことでございます。日本はもうIAEAを受けております。ただいま諸大臣からお話がございましたように受けておりますので、ユーラトムと同じ立場でものを言っておるのじゃない。特にヨーロッパの問題でございますので、これは、関係国とまず相談した上で一つの合意された方式ができるならば、それをも認めていっていいのじゃないかという趣旨でちょっと記者会見のときおっしゃった、こういうことでございます。
  176. 向井長年

    ○向井長年君 総理、これは先ほど言われた差別待遇ですね。一方においては、内輪でひとつ査察をしよう、こういうことと、それから公式な国際原子力機関で査察をしようというのとおのずから違うのです、性格が。同じだったらユーラトムなんかやらずに国際機関で査察してもらえばいいわけでしょう。これがやはり大きな差別になってくるわけでしょう。この点どうお考えですか。
  177. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私のことばにも、あるいは差別待遇を受けないという、これは非常に厳格に考えると、これは一つの機関の査察でなきゃいかぬと、こういうことになりましょうが、しかし、まずそれがそんな厳格なものかどうか。これはやっぱり総体を見て判断すべきものだ、こういうところで調整をとったつもりでございます。もうこのウィーンの国際原子力会議、これには私も出かけまして――日本のように原子力の平和利用をやっている。これはもう公開、平和という原則がございますから、受けることはちっとも差しつかえないじゃないかということでありますし、またユーラトムを除くEEC諸国だけ特別な査察機関というものを考える。これは純然たる一つのサークル、グループだけで考えておるものでございます。それだけではたして許されるかどうかという問題はございますけれども、私は総体として基本的な趣旨が生かされておれば、そういう点は一々取り上げまして言うことはどうだろうか、かように思いますので、ただ、私非常に心配なのは、持っている国、しかも査察を断わっている、こういうような状態のもとにおいてこういう事柄がいわゆる差別待遇を受けないで、その立場から見て核拡散防止の基本約な趣旨に合致するだろうかどうか、こういう問題だろうと思います。むしろそのほうに力を入れていられるんじゃないだろうかということです。
  178. 向井長年

    ○向井長年君 総理はそう言われますけれども、もちろんその保有国と非保有国との差別待遇もいけないが、と同時に非保有国の中でドイツ等はあくまでも国際原子力機関の査察は絶対受けない、こういう立場を明確にしているわけですが、そうしてユーラトムの問題に取り組んでいるわけです。それに対してアメリカはそれを了解した形をとっているわけですね、ソ連は別ですが。その中で日本としても、そういう欧州の国々、特にドイツを中心とした国々と日本との問題としては、非保有国の問題としては格差が生じたではありませんか。これは、少なくとも将来、国際原子力をきらう以上はやはり厳格にやられるという考え方から、このユーラトムをやっていると思う。この点について格差を生じているじゃないかということです。
  179. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま最終的な決定の段階でございませんから、これまでにいろいろ各国が都合上主張しているところは幾つもございます。これは絶対に譲らないと言って私どもも主張することもありますし、私がいま申し上げるように、全体として十分勘案して、しかる後に態度をきめる、こういうような表現もあると思います。いま最終的にどういう結果になるか、その上で判断していただきたい。かように私はお願いいたします。
  180. 向井長年

    ○向井長年君 そうすると、日本政府は傍観しているということですか。ドイツが真剣なかっこうでこれに取り組んでおりますが、いわゆる核拡散防止条約の中で一番重要な問題は平和利用の問題、それに対する保障の問題とあわせて査察の問題ですね。各国がやはりこれからあらゆる核エネルギーの立場に立ってこの問題を開発しようとする、こういう中での一番問題は、査察問題を問題にしている。この査察問題に対して真剣に取り組んでいることに対して日本は傍観しておって、でき上がったやつを見て考える、こういう考えですか。
  181. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 傍観しておりません。だからこそ特使を派遣したり、わが国の主張を明確にしているわけです。また皆さん方の御意見を聞いて、そして政府の最終的の特使派遣についてどういうことを申し述べるか等を言っているので、いわゆる傍観しておらない、この点は御了承いただきたい。
  182. 向井長年

    ○向井長年君 そうすると、牛場次官が「日本も緩和要求へ」という、こういう見出しで出ておりますが、どういう緩和をしようとするのか、この点はどうですか。
  183. 滝川正久

    説明員(滝川正久君) ただいま申し上げましたような関係国に緩和要求をするということを言われたわけではないわけでございます。ただ、関連がございますのは、先生のおっしゃいますように、ユーラトムのやります査察保障措置とIAEAがやっております保障措置というものとの間にもし違いがあるならば、これはなるべくそういうことのないようにしたいという一般的な希望を持っておるし、これは、いろいろな段階においてそういうことを言う機会がございますので、核防条約の条件というような形で要求しているわけではございません。そういう希望があることは確しかでございます。ちなみにユーラトムを認めます場合において、IAEAがそれを検証と申しますか、ヴェリフィケーションということばを使っておりますが、IAEAが相談に乗ってユーラトムが行なうであろう査察につきまして合意するわけでございます。つまり両機関の間で話し合いをしまして、いまおっしゃいましたような調整が行なわれるという見通しもあるわけでございます。しかし、これはいま総理おっしゃいましたように、すべて今後の交渉にかかる問題でございますから、いまのことが直ちに実現する、こういう見通しはいまのところまだ立っていないわけでございます。
  184. 向井長年

    ○向井長年君 外務大臣が来てから質問したらいいんでしょうが、先般ブラント外相ともこの問題について話し合ったと思うのですが、この具体的内容はわかりますか。
  185. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) もうじき外務大臣が参りますから、外務大臣からお答え申し上げるのがいいと思いますが、ただいま核問題につきましては、ブラント外相と三木外務大臣との問で現実に話し合いを進めておる最中でございますので、いまここでどうということは言えませんが、いずれまた外務大臣が参りましてからはっきりお答え申し上げたいと思います。しばらくお待ちいただきたいと思います。
  186. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 向井委員に申し上げますが、外務大臣の会談が少し予定よりも長引いておるようでありますから、もうやがて見えると思いますから、その問題については外務大臣が見えました上で質疑をしていただくことにいたしまして、他の質疑に移っていただきたいと思います。
  187. 向井長年

    ○向井長年君 そうするとドイツ等が出張しておるところのユーラトムのこの問題については日本政府は認めるということになりますか。認めますか、これは。
  188. 滝川正久

    説明員(滝川正久君) これはいまユーラトム諸国とアメリカとの間の話し合いの段階でございますので、最終的な形を見ない上ではまだ政府としては最終的にきめることはできないだろうと思います。いまのような状況であれば、いま申しましたような考えを外務省は持っておる、こういう次第でございます。
  189. 向井長年

    ○向井長年君 そういうことを言うのだったら、きのうこれは新聞に出ておりますが、アメリカの態度を一ぺん説明してください、この間からの。アメリカが修正案を出しておりますね。この具体的な態度を示してください。
  190. 滝川正久

    説明員(滝川正久君) この問題につきましては、大臣が見えましてから大臣からお答え願うのが適当だと思います。いろいろなこまかい末端のことは承知しておりますけれども、基本的なことにつきましては、これはやはり外務大臣がお見えになってからお聞き願いたいと思います。
  191. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 外務大臣が見えた上でその問題については質疑をしていただくことにしてはいかがですか。
  192. 向井長年

    ○向井長年君 外務大臣が来るまでできぬですから、待ちますよ。
  193. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 向井君、いま外務大臣がもうすぐ見えるそうです。
  194. 向井長年

    ○向井長年君 外務大臣、早速ですが、先般、ドイツの外相と話し合われた核拡散防止問題についての具体的な話し合いの内容をお聞かせいただきたい。
  195. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま終わったばかりで、共同コミュニケも出したわけですが、この核拡散防止条約の中で、われわれは日独とも核兵器というものを開発したり持ったりする意思はないので、平和利用という面については、核の平和利用という、原子力の平和利用というものについては、この条約によってこれが阻害されることのないように、この点についてはお互いに、今後のこの条約の草案ができて、いろいろ今後まあ軍縮委員会等においてこの草案が出るわけですから、そういう場合に関心を持っていこうではないかと、平和利用という問題について両国の意見が一致したと、こういうことについていま共同コミュニケを発表してここへ参ってきたばかりでございます。
  196. 向井長年

    ○向井長年君 そうすると、平和利用の条項を、ドイツも日本も絶対これは挿入さそう、こういうことは一致しておるのではなかろうかと、こう思うのですが、そうすると、その次に出てくる査察の問題ですね、査察の問題については話し合われなかったのですか。
  197. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ドイツは、国際原子力機構でなくしてユーラトムですね、これはやはり欧州のEECの中の地域的な関係からしても、EECの中においてもユーラトムの査察を受けるということがEEC各国の共通の希望であるということを述べておられました。しかし、この問題はこれは大問題の一つですから、これから米ソがいま草案をつくる最終段階の話し合いにいっておると思うのですから、こういうものが草案が出る場合にどういう形で入ってくるかということは、現在非常に不確定なものでございます。そういう考え方は聞きましたけれども、これは一体どのように取り入れるかということは、草案を見なければ現在まだわからない段階でございます。
  198. 向井長年

    ○向井長年君 このユーラトムにつきまして、アメリカはきのうの修正で認めるというような方向をとっておりますが、おそらくソ連は反対でしょうが、日本政府としては、ドイツと日本と、日本は国際原子力機関での査察というかっこうになってくるかと思うのでありますが、この問題についてやはり差別するような状況になってくるのではないかと、こう思うわけでありますが、この点はどうですか。
  199. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは、草案がどういう草案が出てきますか、だから、その草案を見てでないと、ここで私が仮定の上に立っていろいろ申し上げることは、いろいろ弊害もあろうかと思います。ただ、日本が言っておることは、査察についてはこれはもう平等であってほしい、核保有国、非保有国の間でもひとつ平和利用に対する査察は平等であってほしいと、こう言っておるわけでございまして、具体的な問題については草案が出てからいろいろ見解を述べることにいたしたいと思うのでございます。
  200. 向井長年

    ○向井長年君 外務大臣、仮定の問題と言われますけれども、これはもう仮定でなくて、現実の問題ですよ。ドイツはユーラトムでやろうと。それに対して、アメリカは、修正として出そう、出してもいいと、こういう判断をしておる。こういう中で、日本と同じ非核保有国のドイツとの間に差ができてくるじゃないか。そうなってくるならば、平等から離れると、こういう結果が出てくると思うのですがね。これは現実の問題ですから、日本政府の態度というものが決意というものが必要じゃないかと、私はこう思うわけですがね。
  201. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いまあなた自身が御指摘になりましたように、はたしてこれはソ連がのむかと、こう言われたですね。また、この問題というものは、私が草案を見てからでいいではないかというのは、これは、アメリカといっても、アメリカ一国のものではないですから、だから、どうしてもやはりソ連と合意に達して草案になりますから、そういうことでこれはまだ仮定だと私が申し上げるのは、アメリカの一方的意思だけではこの条約はできないのですから、そこにこの問題のまだまだどうも仮定の状態にあるということは、そういうことを私申し上げておるのでございます。
  202. 向井長年

    ○向井長年君 そうすると、ユーラトムと国際原子力機関との査察の問題においては、これはやはり何か差がございますか。
  203. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは、この査察の問題については、国際原子力機関が査察をする場合に、従来のような査察をするかどうかという問題もあって、いま私がいろいろな不確定な要素があるというのは、原子力機関がこういう核拡散防止条約ができてそのもとにおける査察と、従来のような日本が受けておるような査察とは、またこれは性格等も多少違ってきまずからね。そういうことで、一体、国際原子力機関の査察がいままでのような基準でやるかどうかという問題もございます。また、ユーラトムの査察というものが、これがまたいままでEEC内部でやっておるような査察をそのままやるのかどうかという問題もあって、これは草案が出てもう少し議論を詰めてみないと、それは不平等かどうかということを私はまだこの段階では申し上げられないのではないかと、こう思うのでございます。
  204. 向井長年

    ○向井長年君 現状で、外務大臣の留守中に牛場次官が「日本も緩和要求へ」というかっこうで、これは新聞に出ているのですが、これはやはりユーラトムが少なくとも内輪の査察であるということを認識した上で緩和されておる、国際原子力機関の中においては厳格にやられると、こういう立場をやはり日本はとっておると思うのですよ。とっておるからこういうことを言っておると思うのですがね。この点に対する日本の態度主張というものはあるはずだと思う。これに対して、まず外務大臣お答えをいただきたい。
  205. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは、やはり査察の場合に日本だけが非常に不平等な査察を受けることは困りますから、いろいろユーラトムの査察というものができれば、そういうふうな査察の基準といいますか、そういうものに均てんされたような査察を受けるようにしたいと、こういうことは当然のことだと思います。
  206. 向井長年

    ○向井長年君 したがって、不平等の取り扱いをやられないという立場において日本はそれに対する決意を持っている、こう解釈していいですか。
  207. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 決意決意と、こう言いましても、これは出てから日本が不平等な取り扱い、特に日本だけに厳重な査察ということは困りますから、そういうことのないように――こまかいことはこれからのことになると思いますよ。そんな査察の基準まで条約の中にきめるわけではないですからね。そういうふうな、特に査察の点について日本だけがきびしい査察を受けることのないように今後努力をいたしたいと考えております。
  208. 向井長年

    ○向井長年君 そうすると、いまいう国際原子力機関の中で、現在までの基準じゃなくて、ユーラトムのような状態で生かそう、こういうために一つの検討を始める、こういうふうに考えられますか。
  209. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは、当然にそういうこともやらなければならない。このユーラトムの査察というものが条約の草案の中に一体出てくるかどうかということも、これはやっぱりまだ未確定です。そういうことになってくるような場合には、国際原子力の機関に対して、いろいろ日本が不平等な取り扱いを受けないように、その査察の基準というものを日本がいろいろこういうふうにしてもらいたいという要求を持つことは当然のことでございます。
  210. 向井長年

    ○向井長年君 三木大臣が西独の外相といろいろ会談された中で、この条約が成立の見通しがあると見られますか、それとも、不成立に終わるのじゃないか、こういうふうに考えられますか。この点はいかがですか。
  211. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この条約は、核戦争の危険の増大を防止することに役立つと私は思っております。ドイツも同じだ。ただ、しかし、それが無条件ではなくして、いま申したように、平和利用という面において、この条約を結んだことによって平和利用のための研究とか開発というものが阻害されるということでは困るわけでありますから、ドイツ外相も、羽田に来て、イエス・バットと、こう言った、そういうふうなことだと思うのであります。これは精神においては賛成、これは日独とも同じでございます。その内容については、いろいろ各国ともみないろいろの立場において要求があるわけですから、そういうことで、そういう考え方、そういう日本の持っている希望をできるだけこの条約に反映さすような努力をする、この精神には賛成である、こういう立場でございます。
  212. 向井長年

    ○向井長年君 それで、これから、ドイツと日本と共同歩調でこの条約に取り組む考え方がありますか。あるいはまた、そういう決意がありますか。
  213. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは各国ともおのおの立場で違いがあるんですよ、いろいろ。だから、核拡散条約、この問題についてドイツと共同歩調をとるという考えは持っておりません。平和利用の問題においてできるだけこれが阻害されないような条約にするためにお互いに努力をしようではないかということですが、一切のこの条約に対してドイツと共同歩調をとるという考えは持っておりません。
  214. 向井長年

    ○向井長年君 総理にお聞きしますが、この平和利用の拡散防止条約の問題については、これはもう政府とか一党一派の問題じゃなくして、これは国家あるいは国民全体の今後のわが国の開発発展に大きな重大な問題だと思うのですが、そういう中からいま微妙な形で交渉が行なわれ、あるいは草案がつくられてきておりますが、これに対して、政府としては、さきに三木外相が各党の代表ともいろ話し合いましたが、今後もこれに対して、まあ言うならば超党派的に各党のいわゆる党首等と話し合う一つの考え方を持っておられますか、具体的に。
  215. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、ひとりこれに限りませんで、必要があれば各党と話し合う、これはもう当然でございます。
  216. 向井長年

    ○向井長年君 必要があればじゃなくて、この問題がまことに重要であるから、特にそういう考え方があるかないかということを聞いておるのです。
  217. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 誤解のないようにいまお願いしているのですが、この問題について特にさらに各党と協議するかどうか、こういうお話ですが、私はこれは三木君とも話しておりまして、特使等の報告が全部まとまったら、やはり実情等もよく連絡をして各党の協力を得ることが望ましいのではないかということを申しております。何ぶんにも国会が忙しいので、その段階までまだ行っておらないわけであります。
  218. 向井長年

    ○向井長年君 次に、この核拡散防止条約からめぐりまして、これから国内のエネルギーの平和開発の問題ですが、この問題について、特にいま日本のエネルギー産業、あるいはまた、今後の産業全般としても重要な問題でございますが、政府がこれに対してどういう姿勢をもって臨むのか、たびたびいろいろな委員会で私も聞いているんですが、あいまいなんです。というのは、行政機構、指導の立場がどこにあるのかわからないということ。言うならば産業全般の問題、あるいは科学技術研究の問題、あわせまして、どこがこの指導権を持っているのか。ただいま、原子力問題については原子力委員会がある。これは決して実行機関じゃないのですね。あるいはまた、エネルギー産業については通産省がやらなければならない。そして、科学技術庁は研究段階をやらなければいかぬと、こういうかっこうになっているのですが、具体的な構想としてはこれから行政機関としてどうこれを持っていくのか、この点をまずお聞きしたいのです。
  219. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは、わりあいによくやっているのではないでしょうか。原子力全般については原子力委員会があるし、原子力産業の面については通産省が熱心にやっておりますし、まあえてして行政機構がばらばらになって連絡がとりにくい問題もあるのですが、この問題はわりあいにこう分野を分けてやっておる行政の分野ではないでしょうか。まあ日本の原子力産業だって、これは非常な急速な発展を遂げていますから、驚くべき発展をやはり遂げておりますから、いろいろ改革を加える点はありましょうが、大体分野ははっきりしてやっておる面ではないかと、こう考えておるのでございます。
  220. 向井長年

    ○向井長年君 原子力委員会というのは、これは委員会であって、一つの計画なりいろいろとそういう問題を審議するのですが、これは現実に実行でき得る状態、あるいは現在の状態はどうこれを改善していくか、いろいろな計画問題がいろいろやられておりますが、そういう中から今回この問題のいろいろと法案が出てまいっておりますけれども、この点について本気に取り組む姿勢があるのかないのか。また、あるとするならばその裏づけをどう考えておるのか、ひとつ科学技術庁長官にお聞きしたいのです。
  221. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) お答えいたします。  向井さんのいまの御質問でございますが、原子力開発につきましての基本的な政府の態度というものは、原子力基本法に明らかにされておりまするように、これは平和、自主、公開という三原則が貫かれておるわけでございます。そういう基本法に基づいて政府が施策を進めております。また、これにつきましては、特に安全性の問題等が非常にやかましく論議をされておりますし、また、開発当初から国民の間にもこの問題についてば非常な関心がございますので、したがって、原子力委員会という一般の審議会と少し趣を異にした審議会というものを持っているわけであります。この審議会のあり方についてもいろいろな御意見もあるようでございますが、今日まで、この委員会が存在しておることによって、平和利用の原則が非常に貫かれてきておる。そうしてまた、国際機構による査察も、諸外国に例を見ないほど厳重な査察が行なわれてきておる。しかしながら、平和利用の面については、開発研究についてはちっとも支障を来たしていない。こういうような、安全性の確保、あるいは具体的な法令に基づいての規制、それから許可等、これは原子炉をつくる場合、原子力発電所をつくる場合、そういう許可等について具体的な問題についても今日まで相当大きな仕事をしてまいっておると思います。また、今後も、原子力のエネルギー開発の事業というものは国家的な大きな使命でございますし、これから原子力発電なり平和利用というものをば私どもが進めていく上におきましても、さらにこの原子力委員会の果たせる機能というものは相当大きなものがあると思っております。積極的に働いてもらわなければならぬ点が相当あると思っております。政府が考えております基本政策につきましては、原子力基本法に基づいて明確になっております。ただ、電力の開発等になりますというと、政府では基礎的な研究というものは原研等でやっておりますが、これをさらに応用し、さらに実際の発電等になりますというと、相当これは民間の手にゆだねなければならない部面も多いわけであります。しかし、相当な頭脳も要するし、金も要するし、また、研究開発も諸外国が相当やっておりますが、これにおくれをとらないようにやっていくためには、官民総力をあげての力の結集というものが必要であろうと思っております。そういう面については、今回も新しい動力炉の事業団というものを燃料とあわせて法人をつくりまして、そうして官民一体となって諸外国、先進諸国に劣らないような姿勢をとることが必要だと考えて、この新しい事業団の法律も国会において審議をお願いをする、こういうことになっておるわけであります。
  222. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 質疑の途中でありますが、都合により午後三時まで休憩いたします。    午後一時三十九分休憩      ―――――・―――――    午後三時十二分開会
  223. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、向井君の質疑を行ないます。向井君。
  224. 向井長年

    ○向井長年君 午前中国内原子力開発の問題につきまして質問をいたしまして、満足しない答弁でございますが、この問題につきましては相当掘り下げてやらなきゃいけませんし、今度法案も出ておりますので、これは次の委員会において具体的にいたしたいと思いますから、省略いたします。  次に、沖縄の施政権返還につきまして、総理並びに外務大臣質問をいたしたいと思うのですが、総理は先般も、沖縄問題が解決しない以上は終戦処理は終わらない、こういうことを言われております。全くそのとおりだと思うのですが、そこで今日沖縄の施政権返還をはばんでおるところの基本的な要素は、しからばどこにあるのか。これをひとつ外務大臣なりあるいは総理からお聞きしたいと思います。
  225. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 沖縄の、はばんでいるといいますか、これが施政権返還がいますぐにできない要素は、やはり極東の情勢から来ると思います。
  226. 向井長年

    ○向井長年君 アメリカが特に、この沖縄基地は極東の安全保障あるいはまた自由世界の安全保障のために保有しなければならぬ、こういうことを言っておるのですが、それはそのとおりである、こう考えられますか。
  227. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いまごらんになっておる極東情勢というものは、非常に安定しておる状態ではないですから、そういう必要は現在のところあると考えられます。
  228. 向井長年

    ○向井長年君 そうでありますならば、沖縄の、アメリカが言っておるようなことを、まあそうであるとするならば、どういうところに大きな要素があるかというならば、核基地としてあるのか、あるいは補給基地としてあるのか、訓練のための基地としてあるか、この点どうです。
  229. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはアメリカが施政権を持って、核の問題などもアメリカが公表はしておりませんから、基地としての自由使用ができるわけですから、われわれのところで、どういう状態になっておるかというこれをわれわれのほうから明らかにすることは、私は困難だと思います。
  230. 向井長年

    ○向井長年君 そうなってくると、困難であるならば、施政権返還、全面返還という問題について積極的に取り組むといったところでですね、取り組めないんじゃないですか。この点どうです。
  231. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはやはり極東の情勢と非常に結びついておると思います。そういう点で、これをいますぐに施政権の全面の返還ということは、これは困難であることは、向井さんお考えになってもおわかりのとおりでございます。したがって、しかしそういう客観情勢というものは変化も起こるし、あるいはまたいろいろその基地というものに対する評価というものも変わってくるでありましょうから、いまもうそんなことはだめだとはいえないけれども、現在直ちに全面返還が無理だという判断は、これはせざるを得ないと思います。
  232. 向井長年

    ○向井長年君 防衛庁長官にお聞きしますが、大体この沖縄の、現在、いま外務大臣が言われましたが、核基地その他もろもろの要素があるようですが、これに対して具体的に、しからばどういう軍事施設で必要になっておるか、この点をひとつお答えいただきたい。
  233. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 向井さんにお答えいたします。  現在沖縄におけるアメリカの実態はつまびらかには存じませんが、公表された資料によりますと、兵力は約四万五千名。陸軍は、補給部隊のほか、ナイキハーキュリーズとホークを装備しておる部隊もございます。海軍は、艦隊の基地部隊、また空軍の部隊がございます。それから、マリーンが、海兵隊が若干ございます。そういうわけでございまして、それから、そのほかに、これは両院においてもお答えいたしておりまするが、衆議院と参議院でお答えしておりまするが、短距離弾道弾であるメースBというものも若干あるもようでございます。このメースBの射程度距離は約二千キロ内外でございまして、そのために核弾頭等も若干備えておるやに聞いておる次第でございます。  以上が大体の、私どもはよくわかりません、大体における防衛庁として知っている範囲の米軍基地における、米軍の沖縄における状態でございます。
  234. 向井長年

    ○向井長年君 そういう中で施政権返還を要求し、今後これを積極的に進めるとするならば、この基地の評価というものが必要ですね。したがって、極東の安全に、あるいはまた自由世界の安全のためには絶対欠くべからざる基地である、こういう考え方の判断でいま日本政府が立っておるように私は考えられる。そこで、そうならば、これに対する変わる法はないかということですね。いわゆるいま言う安全保障のための変わる法がないかどうか。この点、防衛庁長官、いかがですか。
  235. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) これは衆議院においてもお答えしたわけでございまするが、総理大臣もときどき国会においておっしゃっておりますが、兵器の状況はだんだん変化しつつございまするし、あるいは進化といってもよろしいかもしれませんが、でございますから、絶対的なものではございませんのでございまして、ある程度将来に、遠き将来ということを眼中に入れるというと、変わり得る状態である。いまのところ、外務大臣のおっしゃるとおり、基地としての効力は相当極東の平和を維持するために必要なものである、こういうふうに考えておる次第でございます。
  236. 向井長年

    ○向井長年君 いまアメリカの装備の中では、第七艦隊の核装備の問題なりあるいはポラリス潜水艦等の問題等があるわけでありますが、こういう技術的な見地においてこれは変わり得るところの何があるかどうかということを私は聞きたい。
  237. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) ポラリスというものは日本には絶対に寄港いたしませんし、総理がいつもおっしゃっておるとおり、核兵器を持ち込ませない、保有しない、製造しないという方針で、日本本土においてはポラリスの寄港もこばんでおるわけでございます。しかしながら、沖縄、琉球等におきましては、ポラリスの補給基地になっていないということまでは言いかねるのではないか、こう考えておる次第でございます。
  238. 向井長年

    ○向井長年君 総理、そうすると、これは固定基地になりつつあるんじゃないですか、こういうかっこうであれば。そうなってくると、施政権全面返還ということは、口で積極的に取り組むと言ったところで、事実上これは不可能である、こういう結論が出てくるんじゃないですか。
  239. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはなかなかむずかしいことですね。私は、絶対固定という、そういう言い方はないように思います。また、もう一つは、情勢の変化もあるだろうと思いますし、防備体制の変化等もございますから、必ずしも固定化すると、こういうようにはならないと、私はかように思っておりますが、しかし、やはり陸上にあることは何といっても強い魅力であるに違いございませんから、そういう意味で、ただいま固定化しないとかするとかいうこと自身が防衛体制の面から見まして適当かどうか、私は疑問だと思います。とにかく私どもとしては、祖国復帰を一日も早く実現したいし、それかといって、やっぱり沖縄がいまアジア極東の平和維持のために果たしておる役割り、これを無視はできないだろう、こういうことでたいへん心配しておるのであります。いま向井君のお尋ねも、そういう点から出ておると思いますが、私どもあらゆる努力をして、ただいまのような情勢の変化、これは内外でございますが、そういう問題と取り組むし、同時にまた、そういうことが実現するまでもなく、これは沖縄は必ず返ってくるのですから、そのために備えて、沖縄同胞と内地との一体化に積極的に取り組んでいく、というのがただいまの方針でございます。
  240. 向井長年

    ○向井長年君 そうすると、特に固定化をするという何ができなくとも、そういう方向を考えざるを得ない、いまの状態で。しからば、施政権返還の問題については、先般、下田当時の次官ですか、発言されたような、いわゆる分離返還といいますか、こういう問題もあり得るということですか、いわゆる基地貸与。
  241. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは近いうちにそういう事態が起こるとは、私、どうしても考えられませんけれども、いま言われますがね、日本に返ったときに、そういう日本の完全領土で施政権下にある、こういう場合にどういうような処置をとるのだ。これはかねてから私ども申し上げておりますように、核武装はしない、核兵器は持ち込みもしない、製造もしない、そういうことになるのですね、沖縄が返ってくれば当然。そういうことでアジアの平和維持にどれだけ貢献するか。これはアメリカとしても私はなかなか心配なことなんじゃないかと思います。だから、なかなかいま簡単に近いうちに、ただいま申し上げるような状態が直ちに実現するとは私は思っておりません。
  242. 向井長年

    ○向井長年君 いわゆる基地貸与で、そうしてから施政権を返還、こういうようなかっこうが先般外務省で発表されておりましたが、そういうこともあり得るということで。そういうことが考えられるのかどうかということですよ。
  243. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、いま基地貸与、基地として非常に極限できるのかどうか、こういう問題が一つあるだろうと思います。まあ昔の租借地というような問題ですね。けれども、必ずしもどうも最近の近代的な装備から見まして、そういうことはちょっとできにくいようなことではないだろうか、かように私は考えております。
  244. 向井長年

    ○向井長年君 そうすると、施政権返還というのは、まあ事実上当分不可能である、こういう結論ですか。
  245. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま言われます当分というのは、どのくらいを言っておられるのか。まあ私はここ一、二年そんなことはないだろう。まあ佐藤内閣でいろいろ考えましても、そんなに五、六年先のことは私は考えておりませんから、そういう点をただいま申し上げております。
  246. 向井長年

    ○向井長年君 そうすれば、衆議院の所信表明の中にも、私も質問いたしましたが、少なくとも正式に施政権返還への要求交渉をこれから進めていく決意があるのかないのか、あるとするならばどの場でやろうとするのか、佐藤総理が秋、ジョンソン会談をやられるそうですし、あるいは大使を通じてやるのか、そういう問題もあわせてお伺いします。
  247. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、施政権返還、これを直ちに交渉するような考えは持っておりません。しかし、もうすでに御承知のように、私どもが財政的な援助をやっておる。これが絶対に返ってこないもの、また日本人でもないという地域なら、日本が財政的援助をやるはずはございません。そのことをお考えくだされば、この沖縄同胞、またこれがいわゆる潜在主権を持っておる地域、そういうことであるから、必ず祖国復帰は実現する、また実現さす、こういう観点に立って初めて今日とっております財政援助も意義があるわけです。皆さま方に御承認を願うのもそういう意味であります。でありますから、私はあきらめるような考え方ではない。また、この援助自身も、祖国復帰、それに備えて内地との一体化をはかるというのがただいまの考え方でございまするから、この態度は続けてまいります。  そこで、私は、いわゆる交渉するとかいうような話ではございませんが、機会あるごとにこの話を持ち出して、その理解と協力のもとに同胞の一体化については積極的にこれを実現するように努力をしてまいるつもりであります。
  248. 向井長年

    ○向井長年君 施政権返還の遅延の問題、これが特にやはり反米思想の状態に国内においてもやはりなりつつあると思う、事実。したがって、ただ沖縄の基地の重要であるという問題でプラスという考え方と、国内のいろいろな問題から考えて大きなマイナス面があると思います。これは私が言うまでもなく、もと大使の言われておりますように、また上院議員でも言われておりますが、そういうように国内のアメリカの反米思想の問題がこれは醸成されてきていることも、沖縄の問題が大きく加わっているのですよ。ただ基地の重要性だけじゃなくて、いわゆるそういう問題もあわせて、総理がもっと真剣にこの問題を考えなければならぬのじゃないか。ただ極東の安全安全と言うが、それはその面もあるでしょう。しかし、もっと重要な国内問題というものをどう考えているのか。こういう問題から考えて、やはり堂々と正式に施政権返還、あるいはまた、場合によればその問題に対する取り扱いの方法、いろいろ方法はあると思いますが、この点をひとつ考えてもらう必要があると思うのですが、総理の決意のほどを承りたい。
  249. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま言われまするように、私は政府の考え方は非常に国民に対してもはっきりしておる。そこで、国民のほうから見ますると、いま言われるように、一部、安全保障体制、これは余計なことだと言う人もありますし、また沖縄自身が米軍に占領されておる、これはもう不自然な形じゃないか、一日も早く解消しろ、こう言う方もございますから、そこでいろいろな迷い、これが起こる、かように思います。一面から申しまして、米軍自身、これもやはり沖縄住民と、この同胞に十分理解されて、その協力がない限り、軍事基地というものは私はその目的を果たし得ないと思う。だから、これを力だけで、ああいうところにありましても、それはなかなか目的を達するものじゃないと思う。そういうことも考えますから、アメリカ自身もいろいろくふうをし、そうして協力を得るような処置をとっております。また、わが国自身が日米安全保障条約、これを締結しておる。そうしてわが国の安全を確保する。わが国自身の持つ自衛力、それは、御承知のように単に攻撃的な脅威を与えるものではない、そうして通常兵器による攻撃に対して国を守るという、しかも、これはおそらく長期にわたって守るというような力があるわけじゃないと思います。だから、日米安全保障条約、これに多分にたよっておる。皆さま方から、わが国の安全はアメリカの核のかさの中において初めて達成されておるのだ、こういうことをしばしば指摘されておる。私は今日、日本の経済的な発展、また今日、私どもが安心してこの国土に豊かな生活を享受することができる、これは何といっても日米安全保障条約のたまものだと思います。したがいまして、私は、これはもう大多数の国民はこの体制を支持しておる、かように確信しております。昨日はもちろん、特別なデータも出されましたから、必ずしもそうでもないという、そういう御意見もございますが、しかし私は、ただいまの体制が望ましい、国民の支持を得ておる、かように考えておりますから、こういうものと総合的に一体としてのものごとの考え方で、ただいまの沖縄の置かれておる地位、これは返還が一方に――相当復帰を念願しておるものが一方にあるし、また同時に、極東の平和、それに果たしておる役割り、これも非常に大きい、それを結びつけて総合的な立場からこの復帰が実現するようにいたさなければならない、かように思っておるのでありまして、これにいま条件をつけていついつまでに片づけろ、期限をつけていついつまでに話をしろと、こう言われましても私はそれはなかなかむずかしいことだ、かように思っております。この点ではむしろ国民あるいは沖縄の同胞にいたしましても、とにかく私どもが置かれておる現実のきびしさ、これも十分見ていただきたい。そうしてその後において、しからばどういうふうな処置が望ましいか、どういう方法でわれわれが努力するか、この方向にものごとの考え方を発展さしていただきたい、かように思います。
  250. 向井長年

    ○向井長年君 そうすると、秋に総理はアメリカに行かれるそうですが、ジョンソン会談をなさるそうですが、こういう中で、正式要求というかっこうでなくとも、沖縄の施政権問題なり、あるいは沖縄の今後のいわゆる住民の要望等、こういう問題については話し合われますか。話し合われる場合、どういうことを話し合われるのか、それをひとつ。
  251. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは私が平素考えておることでございます、誤解のないように願っておきますが、アメリカ行きというのはまだはっきりきまっておりません、万一そういうことがあればと、そういう前提でございますが、平素考えておるそのものをとにかく会談の機会に出す、これはあたりまえであります。今日私どもが努力しておりますものは、民生の向上あるいはまた経済的に内地と同様な発展を期したいということ、あるいはまた社会保障制度の問題、あるいはまた教育制度の問題等々、広範にわたると思います。ただいま大浜君がちょうどアメリカに出かけておる最中であります。それでこれは御承知のように沖縄問題懇談会、かつてのものを、これは総理府にあったものを、今度は内閣が、私自身が全体の問題として取り上げる、こういうことで大浜君と懇談をしておりますから、今度帰られましたら、そういう意味で後半の問題についてさらに具体的に掘り下げが行なわれるだろう、そういうものを持って出かける、これはもう当然でございます。
  252. 向井長年

    ○向井長年君 あまりわれわれの要望した回答がないのですが、とにかく沖縄施政権返還問題については国民全般の大きな念願である。したがって、これについては少なくとも政府みずからが積極的に、特に極東の平和の問題についてもあるいは安全の問題についても、具体的にやはり戦術論としても考えられる要素が専門家としてはあるということも聞いております。そういう問題もあわせてひとつ積極的に取り組んでいただきたいということを強く要望しておきます。  次にケネディラウンドの問題でございますが、これはただいま交捗中で進行途上でございますのであまり多くは触れませんけれども、ただ、現在までの経過をひとつ説明を願いたいと思います。  〔委員長退席、理事平島敏夫君着席〕
  253. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ケネディラウンドはいま穀物協定で非常な難航を続けておるわけでございます。その議論は、従来言っているのは、穀物協定の中に食糧援助、定額援助、これを入れるということは筋道が立たないのではないかという主張を続けておるわけであります、宮澤君は。ところが、世界各国とも穀物協定の中に入れることにどうも賛成しておるようなんですね。日本が孤立したような立場に置かれておる。これでケネディラウンドが最終段階にきておるわけであります。そこでアメリカ政府としても、たとえばジュネーブにおいてもあるいはまたワシントンにおいてもぜひ日本が賛成してもらいたいという強い要請を受けておるわけでございます。そこでわれわれとしては宮澤長官を派遣しておるのでありますから、宮澤長官がこの強い国際的な要請を背景にして、現地で判断をして政府に報告があると思いますので、現在は宮澤長官の報告を待っておるというのが現在の段階でございます。
  254. 向井長年

    ○向井長年君 この問題についてはもしそういうかっこうになってくるならば、日本は非常に不利な立場に置かれる、こういうことで強い決意で臨んでおられることは非常にけっこうだと思うのですが、政府として、長官があちらへ行っておりますけれども、これに対して、あくまでもこういう形を推進し、理解を求める形で進んでいただきたいと思うのです。これは私もう多くは述べませんが、要望としてお願いしておきたいと思います。決意のほどを……。
  255. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 新聞の報道を向井さんごらんになっても宮澤君奮闘しておるわけです。そこで、これが現地でないと現地の感覚というものがやはり必要なんです。  〔理事平島敏夫君退席、委員長着席〕 これはいろいろな話し合いがあるわけですからね。したがって、現地自体がどういう状態にあるのか、これは宮澤君の報告を待っておるわけですが、日本の政府としては、国際的に孤立しておるような状態で、正直に言ってまことに苦境に立っておるわけですよ、いま。非常に苦境に立っておる。この苦境の中にケネディラウンドというものは成功させたいですよ、これはね、日本も。これが成功しないということになれば、保護貿易主義というような形に逆戻りしないとも限らない。貿易というものを日本経済のために非常に重要な――日本としてはケネディラウンドの交渉が妥結することが貿易の拡大に役立つ。これもやはり妥結させたい。一方では、こういう穀物協定というもので国際的に孤立の状態になっている。正直に言って政府は苦慮している、この問題の処理に。しかし、これをどうやるかということについては宮澤君の報告を待ちたいということですから、今日においても何とかして日本政府の主張が通らないかと考えておることはもう向井さんと全く同じでございます。
  256. 向井長年

    ○向井長年君 その問題はそういう決意で進んでいただきたいと思うんです。  次に労働大臣にお伺いしますが、午前中も若干本年度の賃金の解決問題が出ておりますが、わりあいに円満に労使が話し合って解決したところが非常に多いわけなんです。非常にけっこうだと思うんです。そういう中で、いまこれはもうたびたび私が質問をしていろいろな答弁をされておりますが、実現されないのですが、このスト規制法というのがありますね、これはどういう経過で、どういう形で現在に及んでいるかちょっと説明してください。
  257. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 向井委員もすでに御承知のように、三年の時限立法が恒久立法になりまして、また、参議院の商工委員会おにきましてこれを廃止する方向で検討してほしいという御決議があったことも承知をいたしておるわけでございます。そういった経過をたどっておりまするが、国民の電気スト、停電ストというものの重要性にかんがみまして、現在までこれを廃止するというところまでいっていないのが実情でございます。
  258. 向井長年

    ○向井長年君 自民党の政府は、閣僚がかわれば方針はかわるんですか。池田内閣当時に池田総理も、これは廃止への方向で十分検討しましょう、大橋労働大臣も当時そういう答弁をされております。したがって、ただいまそれについてどういう考え方で進んでおられるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  259. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) あくまで検討するというお約束でございまして、その後スト規制法に違反する事例が出ていないことも御承知のとおりでございます。しかし、この問題は国民のこの停電ストというものに対する恐怖感、不安感というまことに重大な問題でございまするので、そういう面におきましていま直ちにこれを廃止するという段階までいっていないというのが現状でございます。決してこのスト規制法をいついつ廃止するというお約束はしていないと承知いたしております。
  260. 向井長年

    ○向井長年君 労働大臣、停電ストと、こう言っちまうのだけれども、これは憲法二十八条の労働基本権ですよね、それに対して制約を加えたのがこの現在の法律でしょう。だから、そういうことは、国民の利益、公益をいわゆる阻害するようなことがあってはならないということは当然のことなんです。そういう意味から労調法ができておるんでしょう、労働関係調整法が。労働関係調整法の三十七条と三十八条はこれは何ですか、この解釈をひとつ御説明してください。
  261. 松永正男

    政府委員(松永正男君) ただいまの向井先年の御質問のございました三十七条の規定は、公益事業に関しまする争議行為についての制限に関する規定でございまして、公益事業に関する事件について争議行為を行なおうとする場合には、少なくとも十日前までにその旨を労働委員会及び労働大臣または都道府県知事に通知をしなければならない。いわゆる抜き打ちストをしてはいけないという規定でございます。
  262. 向井長年

    ○向井長年君 三十八条は…。
  263. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 失礼いたしました。  三十八条はいわゆる緊急調整に関する規定でございまして、緊急調整の決定をいたしました旨の公表がありました場合には、五十日間それに関して争議行為を行なうことができないという旨の規定でございます。
  264. 向井長年

    ○向井長年君 その規定そのものは法文に書いてあるとおりです。そういう立法精神はどこにあるかということです、私聞いているのは。したがって、予告あるいは緊急調整という、条項が二つあるわけですよ。しかも、これを合わせると六十日間、二カ月あるんですよ。その間に円満解決をするのがあたりまえであると、公益事業についてはまたそうされなければいかぬというのでこういう制度をつくっているんでしょう。だから、そういう点から考えて、それでも不安だという考え方なんですか、労働大臣、どういうことです。
  265. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) これはなかなかむずかしい問題でございますが、実は石井教授を中心といたしました労使関係研究会の報告が先般出されたわけでございます。これはその道の権威者のこういう問題を含めましたレポートでございまするが、この報告でもこういうように書いておるのでありまして、最後は、「電気、石炭両産業における労使関係の現状、将来並びに国民一般の考え方を基礎として決すべきであろう」、こういう結論になっておるわけでありまして、御承知のように、電産労組はストもやっておりませんし、違法行為もむろんありませんですが、問題は、この停電スト、それから炭鉱における保安放棄ストというような問題は、非常に国民の生活にドラスチックな激しい影響を与えますので、なお慎重にこのスト規制法の廃止は考えなければならない、こういうように私たちは考えておるわけでございます。
  266. 向井長年

    ○向井長年君 もちろん、公益事業ですから国民生活に大きな影響を及ぼす。これは石炭とか電気だけじゃない、ほかにあるでしょう。私鉄もそうでしょう、交通関係としては。あるいはガス事業でもそうですよ。そういう問題については何らできていないんですよ。しかし、これだけにつくったというゆえん、あるいは時限立法でつくったというのはどういうわけですか。
  267. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 初めは時限立法でやったんですが、恒久立法に昭和何年でございますか――三十一年の国会における存続決議によりまして、現在は恒久立法になっておるわけでございます。
  268. 向井長年

    ○向井長年君 時限立法をつくったわけを聞いているんですよ。経過を聞いているんではない。あるいはその他の公益事業との関連を聞いておるんです。
  269. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 労政局長からお答えさせます。
  270. 松永正男

    政府委員(松永正男君) お答え申し上げます。  この法律ができましたのは昭和二十八年でございまして、先生よく御承知でございますが、その前に、御承知のような電気事業の大ストライキがございました。国民の生活の面からいたしましても非常に重大な影響があったのでございます。そこで、争議行為が正当な争議行為であるかどうかということにつきまして、この電気の発電あるいは送電、変電等を阻害いたしますような行為は、争議行為としてでも正当なものではないという解釈を、従来政府は持っておったわけでございますが、このような事態に対処をいたしまして、そのような法律上の事態を宣言的にこの法律において宣明をいたすということが電気事業及び石炭鉱業の争議行為の方法の規制に関する法律の立法当時の趣旨でございまして、政府といたしましてもそのような方針を当時御説明を申し上げておるはずでございますし、現在におきましてもそういう解釈であるということには変わりはございません。
  271. 向井長年

    ○向井長年君 経過も違うし、それから、それであればなぜ恒久立法に当時からしなかったのですか。時限立法にしたというこのゆえんのものは何ですか。
  272. 松永正男

    政府委員(松永正男君) ただいま申し上げましたような趣旨の法律でございますので、元来違法であるもの、正当でないものを宣言的に明らかにしたという趣旨でございまして、なお、その存続、あるいは存続に関しては三年後の国会の議決によって決定をする、そういう意味では時限立法ということが言えると思うのでありますが、普通の何年間有効ということではなくして、存続か廃止かにつきましては国会の決議によって決定をするという附則がついておって立法されたというふうに記憶をいたしております。
  273. 藤田進

    ○藤田進君 委員長
  274. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 関連ですか。
  275. 藤田進

    ○藤田進君 ちょっと関連。向井委員の持ち時間がないようですから、片っぽう言いっぱなしで、それに反論する時間がないと私は思うのですが、経過一切その他これは違う、労政局長。あなたのポイントとするのは、かねて当時の、つまりスト規制法のなかりし時代においても、電気産業労働者の争議行為、なかんずく、停電に至るストライキはこれは当然違法である、労組法第一条の正当なる行為、したがって、違法性の阻却に入らない、これをただ宣言的に明文化したものである、こういう法制史を説くのだが、これは違う。実は私も一年間労働法規の審議会に入っておりまして、当時ずいぶん議論したところです。要するに、労調法の予告制度が吉田内閣時代にできて、これは労組法以後ですからね。そうして、さらに停電に至る争議行為等が出てくるので、いま向井委員指摘する緊急調整が発動された場合には五十日、これは日にちは別として、この辺が実は憲法第二十八条の団体行動権の制限のぎりぎりだという当時はまあ定説になり、緊急調整というものになり、これは石炭も含めてああいう労調法の強化というか、これがなされたにすぎません。ただ、昭和二十七年当時の停電に至る争議行為については、加藤勘十労働大臣がその当時、これは社会党ですね、当時これが労働大臣声明を出しております。これは違法と言っているのじゃない。ただ、突如として時限立法として昭和二十八年第十六国会でこのスト規制法なるものが出てきた。中間報告というような強行手段によってこれは成立したということになっているのが経過です。さて、そこで三年の時限立法という論争については、三年という時限立法にしなければ、憲法上これを恒久立法にすることは違憲なりという意見が強かったからそういうことになり、いたしましたが、その後これがスト規制法を適用するような事案は出てきていないが、ついに三年後にこれを恒久化した、こういう事態、これだけは認識をはっきりと、事実問題ですから、してもらわなければ困る。したがって、当時各所に起こった変電所、あるいは発電所等におけるスイッチオフの、いわゆる電源を停止するという争議行為については、ことに最高検等の治安当局においても、これがいろいろ起訴の方法について検討された。また、現実に起こった争議行為に対して、これを起訴しようという動きがあった。取り調べもあった。ついにこれが起訴するに至らなかった。起訴してもこれは合憲なりということが明らかになるから起訴するに至らなかった。特に起訴されたというのは、違憲の範囲をこえた、したがって、業務執行妨害であるとか、威力業務執行妨害であるとかいう、間々ありがちな事業ストライキの段階における現象面の起訴があったにすぎないのです。これを労政当局が踏まえての質疑応答でないと困ると思うのです。したがって、向井委員指摘するように、最近の佐藤内閣になってからも、スト規制法は撤廃する方向で――これは池田内閣以来、そこでその方法その他を検討しよう、撤廃する意思については、これはもうその意思を表明されている。一体時期をどういうふうにするかというようなことがわれわれとしては残されていると理解しておるのです。これについてその経過を反省して、そうであるかないか、反論があればお答えいただきたい。
  276. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 当時の記録等を見まして私どもが記憶しておるところを申し上げたのでございますが、いま藤田委員のおっしゃいましたように、参議院の商工委員会におきまして電気事業法関係の法案審議の際に、廃止の方向で検討するという附帯決議がつきましたことも承知をいたしております。それから、ただいまおっしゃいましたように、池田総理大臣、それから大橋労働大臣、石田労働大臣、小平労働大臣、歴代の労働大臣がこの点につきましての御質問につきまして御答弁を申し上げておるのでございますが、趣旨といたしましては、池田総理大臣も、まあいろいろな点から申しまして、私は本会議でも申しましたように、いま直ちにこれを廃止するという気持ちはございません、労働大臣も同じだと私は考えておりますという答弁をしておられます。それから、小平労働大臣でございますが、今後引き続いて検討はいたしたいと思いますが、いま直ちにこれを廃止するという考えは持っておらないわけでございますというようなことで、検討をいたしたい、ただし、いま直ちに廃止をするという考えはないというお考えを述べておられます。それから、検討でございますが、先ほど大臣がお触れになりましたが、労使関係研究会が昨年の十二月に研究の結果についての発表をいたしております。その中におきまして、労使関係の現状及び将来並びに国民の一般の考え方を基礎として決すべきものであるという報告をいたしております。したがいまして、大臣からも御答弁を申し上げましたように、この問題について廃止するかどうかということを慎重に検討をいたしたいというのが政府の方針でございまして、その点は先ほど大臣から申し上げたとおりでございます。
  277. 向井長年

    ○向井長年君 さっきのこと、さっきの時限立法でやられた根拠。
  278. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 私ちょっと記憶違いをいたした点がございますが、たしか最初にいわゆるスト規制法が提案されましたときには期限がついていなかったのではないかというふうに記憶を
  279. 向井長年

    ○向井長年君 もちろん、公益事業ですから国民生活に大きな影響を及ぼす。これは石炭とか電気だけじゃない、ほかにあるでしょう。私鉄もそうでしょう、交通関係としては。あるいはガス事業でもそうですよ。そういう問題については何らできていないんですよ。しかし、これだけにつくったというゆえん、あるいは時限立法でつくったというのはどういうわけですか。
  280. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 初めは時限立法でやったんですが、恒久立法に昭和何年でございますか――三十一年の国会における存続決議によりまして、現在は恒久立法になっておるわけでございます。
  281. 向井長年

    ○向井長年君 時限立法をつくったわけを聞いているんですよ。経過を聞いているんではない。あるいはその他の公益事業との関連を聞いておるんです。
  282. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 労政局長からお答えさせます。
  283. 松永正男

    政府委員(松永正男君) お答え申し上げます。  この法律ができましたのは昭和二十八年でございまして、先生よく御承知でございますが、その前に、御承知のような電気事業の大ストライキがございました。国民の生活の面からいたしましても非常に重大な影響があったのでございます。そこで、争議行為が正当な争議行為であるかどうかということにつきまして、この電気の発電あるいは送電、変電等を阻害いたしますような行為は、争議行為としてでも正当なものではないという解釈を、従来政府は持っておったわけでございますが、このような事態に対処をいたしまして、そのような法律上の事態を宣言的にこの法律において宣明をいたすということが電気事業及び石炭鉱業の争議行為の方法の規制に関する法律の立法当時の趣旨でございまして、政府といたしましてもそのような方針を当時御説明を申し上げておるはずでございますし、現在におきましてもそういう解釈であるということには変わりはございません。
  284. 向井長年

    ○向井長年君 経過も違うし、それから、それであればなぜ恒久立法に当時からしなかったのですか。時限立法にしたというこのゆえんのものは何ですか。
  285. 松永正男

    政府委員(松永正男君) ただいま申し上げましたような趣旨の法律でございますので、元来違法であるもの、正当でないものを宣言的に明らかにしたという趣旨でございまして、なお、その存続、あるいは存続に関しては三年後の国会の議決によって決定をする、そういう意味では時限立法ということが言えると思うのでありますが、普通の何年間有効ということではなくして、存続か廃止かにつきましては国会の決議によって決定をするという附則がついておって立法されたというふうに記憶をいたしております。
  286. 藤田進

    ○藤田進君 委員長
  287. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 関連ですか。
  288. 藤田進

    ○藤田進君 ちょっと関連。向井委員の持ち時間がないようですから、片っぽう言いっぱなしで、それに反論する時間がないと私は思うのですが、経過一切その他これは違う、労政局長。あなたのポイントとするのは、かねて当時の、つまりスト規制法のなかりし時代においても、電気産業労働者の争議行為、なかんずく、停電に至るストライキはこれは当然違法である、労組法第一条の正当なる行為、したがって、違法性の阻却に入らない、これをただ宣言的に明文化したものである、こういう法制史を説くのだが、これは違う。実は私も一年間労働法規の審議会に入っておりまして、当時ずいぶん議論したところです。要するに、労調法の予告制度が吉田内閣時代にできて、これは労組法以後ですからね。そうして、さらに停電に至る争議行為等が出てくるので、いま向井委員指摘する緊急調整が発動された場合には五十日、これは日にちは別として、この辺が実は憲法第二十八条の団体行動権の制限のぎりぎりだという当時はまあ定説になり、緊急調整というものになり、これは石炭も含めてああいう労調法の強化というか、これがなされたにすぎません。ただ、昭和二十七年当時の停電に至る争議行為については、加藤勘十労働大臣がその当時、これは社会党ですね、当時これが労働大臣声明を出しております。これは違法と言っているのじゃない。ただ、突如として時限立法として昭和二十八年第十六国会でこのスト規制法なるものが出てきた。中間報告というような強行手段によってこれは成立したということになっているのが経過です。さて、そこで三年の時限立法という論争については、三年という時限立法にしなければ、憲法上これを恒久立法にすることは違憲なりという意見が強かったからそういうことになり、いたしましたが、その後これがスト規制法を適用するような事案は出てきていないが、ついに三年後にこれを恒久化した、こういう事態、これだけは認識をはっきりと、事実問題ですから、してもらわなければ困る。したがって、当時各所に起こった変電所、あるいは発電所等におけるスイッチオフの、いわゆる電源を停止するという争議行為については、ことに最高検等の治安当局においても、これがいろいろ起訴の方法について検討された。また、現実に起こった争議行為に対して、これを起訴しようという動きがあった。取り調べもあった。ついにこれが起訴するに至らなかった。起訴してもこれは合憲なりということが明らかになるから起訴するに至らなかった。特に起訴されたというのは、違憲の範囲をこえた、したがって、業務執行妨害であるとか、威力業務執行妨害であるとかいう、間々ありがちな事業ストライキの段階における現象面の起訴があったにすぎないのです。これを労政当局が踏まえての質疑応答でないと困ると思うのです。したがって、向井委員指摘するように、最近の佐藤内閣になってからも、スト規制法は撤廃する方向で――これは池田内閣以来、そこでその方法その他を検討しよう、撤廃する意思については、これはもうその意思を表明されている。一体時期をどういうふうにするかというようなことがわれわれとしては残されていると理解しておるのです。これについてその経過を反省して、そうであるかないか、反論があればお答えいただきたい。
  289. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 当時の記録等を見まして私どもが記憶しておるところを申し上げたのでございますが、いま藤田委員のおっしゃいましたように、参議院の商工委員会におきまして電気事業法関係の法案審議の際に、廃止の方向で検討するという附帯決議がつきましたことも承知をいたしております。それから、ただいまおっしゃいましたように、池田総理大臣、それから大橋労働大臣、石田労働大臣、小平労働大臣、歴代の労働大臣がこの点につきましての御質問につきまして御答弁を申し上げておるのでございますが、趣旨といたしましては、池田総理大臣も、まあいろいろな点から申しまして、私は本会議でも申しましたように、いま直ちにこれを廃止するという気持ちはございません、労働大臣も同じだと私は考えておりますという答弁をしておられます。それから、小平労働大臣でございますが、今後引き続いて検討はいたしたいと思いますが、いま直ちにこれを廃止するという考えは持っておらないわけでございますというようなことで、検討をいたしたい、ただし、いま直ちに廃止をするという考えはないというお考えを述べておられます。それから、検討でございますが、先ほど大臣がお触れになりましたが、労使関係研究会が昨年の十二月に研究の結果についての発表をいたしております。その中におきまして、労使関係の現状及び将来並びに国民の一般の考え方を基礎として決すべきものであるという報告をいたしております。したがいまして、大臣からも御答弁を申し上げましたように、この問題について廃止するかどうかということを慎重に検討をいたしたいというのが政府の方針でございまして、その点は先ほど大臣から申し上げたとおりでございます。
  290. 向井長年

    ○向井長年君 さっきのこと、さっきの時限立法でやられた根拠。
  291. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 私ちょっと記憶違いをいたした点がございますが、たしか最初にいわゆるスト規制法が提案されましたときには期限がついていなかったのではないかというふうに記憶をいたしておりますが、それが一ぺん国会で流れまして、その論議の際に時限三年という修正が付され、そしてそれが成立しないで終わりまして、その次に政府が提案しました際に、その国会の審議の経過を考えまして三年という期限をつけたというふうになったことが正しいようでございます。私が最初から三年の期限をつけたというふうに申しましたのは間違いであったようであります。
  292. 向井長年

    ○向井長年君 これは、少なくともいま言うように、昭和二十七、八年ごろのストライキの現況を見、戒め立法として、一応これは、本来であるならば、憲法二十八条から言えば違憲の状態が明らかなんですよ。そこで、戒め立法だというかっこうで一応これを時限立法でやられた。したがって、その後恒久立法にした。このわけはどういうことかといっておるのです。
  293. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 停電ストというものの公共性並びに国民に与える不安、そういったいわゆる公の利益のためにこれを三年のあれを継続、恒久立法にかえたと理解しております。
  294. 向井長年

    ○向井長年君 現状から認識して、現状を把握してこういう三年の時限立法を行なって、その後の三年間の現状の中から、これは廃止しようという意図があるから時限立法にしたのでしょう、そのときに。したがって、現状をどういう現状に把握されていますか、三年間。
  295. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) その後、労働組合が非常に国民の心配するような事業ストに訴えたということは聞いておりません。しかしながら、別の観点から、池田内閣以来答弁しておりますように、停電ストとかいう問題が国民の間における不安感、こういうものがやはり払拭し得ない。そこで、この問題は直ちに廃止しないで、よく検討しよう。そこで労使関係研究会でも御検討願ったのでありまするが、その学者の研究報告にも、これを直ちに廃止しろという報告にはなっておらない、こう申し上げているわけです。
  296. 向井長年

    ○向井長年君 佐藤総理にお伺いしますが、こういう労働基本権問題について、当時池田内閣なり、あるいは、また、歴代の労働大臣が現状についていろいろと質問の過程から、この点はいま直ちにじゃないけれども、何とかこういう問題は廃止しなければならぬという方向で十分ひとつ検討いたしましょうということを事実いっているのですよ、私の質問で。電気事業法案の成立の中でもいっている。附帯決議もついておる。その附帯決議に対して、尊重して十分やりましょうという答弁をしておるわけです。したがって、こういう問題についてどう考えられるか、総理のこれに対する決意を伺いたい。
  297. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうもいろいろ御意見等も、また、事務当局等の詳しく説明するところとずいぶん意見が違っておるようです。私は、しからばこの内閣ではどうするのかと、かようにお尋ねがあれば、当分の間、いま直ちに廃止するということは考えておりません。
  298. 向井長年

    ○向井長年君 今後どうですか。
  299. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのことを申し上げております。
  300. 向井長年

    ○向井長年君 いまこれはやらなければならぬような現状であるかどうか、非常に労使円満な状態にいま進んでおりますよ。そういう問題についてどうですか。かえって公益事業の立場を十分推進するために、お互いが生産性向上に取り組んでおるこの姿をどう見られますか。
  301. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 最近の労使間の関係、ことに今春の労使間の関係はたいへん好ましい状況だと思います。私は、こういうことで新しい労使関係ができることを心から望んでおります。
  302. 向井長年

    ○向井長年君 こういうことから出てくるのじゃなくて、そういう問題は、いわゆる労働基本権として憲法保障されているのだから、したがって、現状認識です、少なくとも公益事業である、公益性を保たなければならぬ、こういう立場に立って取り組んでいるこの状態を見るならば、労働基本権、しかも、時限立法できたやつを恒久立法にしなければならぬというあれが出てくるのかどうか。そうすれば廃止への方向で検討しなければならぬという結果になるのではないかと、こういうことを言っているのです。
  303. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 労働基本権、これはもちろん尊重しなきゃなりません。しかし、この法律は憲法違反じゃない。これはもう今日御指摘にもありましたように、憲法違反ではございません。しからば、この法律を残しておくとたいへん労使双方に悪影響ありや、こういうことになりますが、私は悪影響ありとは思いません。もちろん皆さん方が労働基本権を尊重され、そうして公益事業としてのその組合の方として当然守るべきものは守る、こういう事情ならば法律があってもなくても同じようなことじゃないかと私は考えております。
  304. 向井長年

    ○向井長年君 そういう、あってもなくても同じようだとか、そういう問題から私は言っておるのじゃなくて、時限立法、この経過を、総理、考えなきゃいかんですよ、今日までの。そういう中から、なくなられたけれども、池田さんとか、その他の歴代労働大臣もそういう形で取り組んできているやつを、佐藤総理佐藤内閣になって、これは絶対廃止しません、こういうような考え方で今後も進まれるのですかどうですか。
  305. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今後も絶対に廃止しませんと、かように私は申しておりません。ただいま廃止する考えはございません。
  306. 向井長年

    ○向井長年君 今後はどうですか。
  307. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今後のことは今後で考えます。ただいまの状態を考えて、これが一番正しいのだ。だから、今後皆さん方の御協力によりまして新しい労使関係が確立されること、これはほんとうに好ましい状態でございます。ただいまはかように御了承いただきたいと思います。
  308. 藤田進

    ○藤田進君 関連。これは大法律の論争としては、実際向井君気の毒な時間なんで、先ほど言われたの、多少聞き違いもあると思うのですが、総理は、このスト規制法――略称スト規制法は合憲なりと、つまり憲法違反ではないということは、これは御了承のとおりとおっしゃいますが、これはもう学説多々ございますが、私どもを含めて、これは違憲立法である。これははっきりしているのです。憲法違反だ、憲法違反なんですが、それを最高裁判所で違憲、合憲の判決というものもないし、また、そういう事案が現在までない、それだけのことなんです。総理としては合憲なりと、これは自由でしょう。だけど、私どもを含めて、すでに合憲と認めておられますようにと言われたのじゃ、これは困る。合憲と認めていない。いや、もう一切今後スト規制法があろうがなかろうが、何もしないから、とにかくこれは廃止したほうがいいじゃないかという論議では向井君ないと思うのです。それならば総理言われるとおりあってもなくてもいい、そこらでおいておけばいいというわけですが、現実には、やはり電気労働者は、これ以来、大体全産業のトップと言われていた給与水準、賃金水準、その他労働条件というものがいまどうでしょうか、日本の中で、労働省がいくら言っても、二十四、五番目になっておる、そういう状態です。利益率その他から見、あるいは生産性においては驚くべきことなんです。生産性高いですから、諸般の事情から見て、いかにもスト規制法下における電気労働者のみじめな姿というものが実に出ている。これがやはり廃止を必要とする最大の理由でなきゃならぬと思うのですが、いかがですか。
  309. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は藤田君も御賛成だと申したわけじゃございませんが、政府は絶対に憲法違反はいたしておりません。だから、これは御意見として、これは憲法違反なりという方もそりゃあるかもわかりませんけれども、政府憲法違反すると、かような立場でございませんから、それだけはひとつ御了承をいただきたいと思います。  それから、なお、この電気事業に従事する組合の諸君の立場は、これがあるからたいへんみじめな状態だと、かように仰せられますが、私は、いま電気関係従業員、これは別に言われるような非常なみじめな状態ではないと、かように私は思います。この法律と今日置かれておるものとは直接関係がないと、私はかように考えております。
  310. 向井長年

    ○向井長年君 時間がないから、この問題についてはまた委員会で適当な機会にやります。  次に税金問題で聞きたいのですが、特に企業税、あるいは法人税といいますか、あるいは住民税、こういう問題等もありますし、また、時間があまりございませんので、私は特に地方税について、自治大臣、電気ガス税をなぜことしは減税しなかったんですか。
  311. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 今年度地方税の伸びも相当あるわけでございますけれども、しかし、地方の財政そのものは決して御承知のようにゆとりのあるものではございません。ことに単独事業をやる費用などが非常に欠けておったのでございますので、そのような関係でガスの免税点を上げただけにとどめたわけでございます。しかし、電気ガス税はいわば大衆の課税でございますので、今後もその合理化には考えてまいりたいと考えております。
  312. 向井長年

    ○向井長年君 電気ガス税というのは、これはもう池田総理時代佐藤総理が通産大臣のときに、悪税で一日も早くやめてもらいたいということを佐藤総理みずから言われたんですね。ところがこれをなぜやめないのか。
  313. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 三十九年の税制調査会の長期答申の中でも、現在ある程度この継続を承認されるような御意見もあるわけでございまして、特に市町村につきましては経済の状況によりまして伸びる税が非常に少ないのでございまして、市町村税の伸び率は府県税に比べて鈍化しておるような関係でございまして、他のよき税源を今後考えながら、そうした地方財政のあり方を考えながら合理化を考えてまいたいと思います。
  314. 向井長年

    ○向井長年君 そういう地方税がそれだけ貧弱で困っているというなら、大企業からなぜ取らないんですか、大企業は免税しているんじゃないか。
  315. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 電気関係の税を免税いたしておりますのは基幹産業であり、しかも電気の使用量が相当多い一定のものをつかまえまして、それをやっておるわけでございまして、これはやはりそうした基幹産業の発展という意味から必要であろうと存じております。
  316. 向井長年

    ○向井長年君 基幹産業であってもこれは営利事業ですね、株式会社でしょう。そういうところには免税をして一般住民から取るというのは、これはどういうことですか。もちろん基幹産業も発展をしなければならぬが、一般住民から取って、しかも生活の必需品ですよ。これを取っておいて一般の利益を追求する株式会社に免税をしておるというのはどういうわけですか。
  317. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) すべての基幹産業でなくて、その中で電気の使用量が特に多いものにつきまして免税をいたしておるわけでございます。一般の住民から取る電気ガス税につきましては、先ほど来申し上げておりますような事情で本年は減税ができませんでしたけれども、ガスの免税点を上げただけにとどめましたが、将来他のよき財源、税源とのにらみ合わせを考えながら考慮してまいりたいと思っておる次第でございます。
  318. 向井長年

    ○向井長年君 答弁にならぬ。通産大臣どうなんですか。大体いま電力コストがやはり開発によって資本費が上がりつつございますが、こういうことで電気が豊富にあって、使ってください頼みますというときならば別として、こういう時期にそういう大企業がたくさん使っておるから免税をしておる、一般住民から取る、これで理屈が立ちますか、通産大臣、所管大臣。
  319. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 電気税の軽減ができなかったということは、やはり地方税の関係でできなかったことと思っておるのであって、いまの自治大臣も、できれば電気税の減税を早くやりたいという希望を持っておられることは、よくわかるのであります。ただ、地方税の収入の減という立場から本年は実現できなかった、こう存じております。
  320. 向井長年

    ○向井長年君 通産大臣、それを開いておるんじゃないんですよ。大企業を免税して、一般住民から取るということは合理的かどうかということです。資本費の増加する中で。
  321. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 私が聞き間違いしておりましたが、大事業については減税しておるということは、これはやはり大事業の性格上、日本の産業の発展という立場からこれを助長したいという立場で減税をしておる、こう存じております。
  322. 向井長年

    ○向井長年君 減税じゃない、免税ですよ。
  323. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 免税――私は、大事業免税ということは、私自身存じておりませんから、いまお聞きしたのであって、免税ならば免税でいいです。
  324. 向井長年

    ○向井長年君 総理ね、いま言うように、一般住民の生活必需品から、財源措置とはいいながら、そういうものを取って、大企業の利益を追求する株式会社には免税している、こういう状態、これは理論に合いますか、どうなんですか。
  325. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはもう長い間、池田内閣以来悪税だと、かように申しました。私も現にさように心得ております。一日も早くこういうものが改正されることが望ましいことはもう問題ございません。でありますから、過去におきましても三カ年継続で一%ずつ下げる、こういうような改正措置もとられたことも記憶に存するところであります。しかし、この税がたいへん取りやすい税だということで、地方財源のない自治体といたしまして、これにたいへんたよっている、こういう向きもありますので、いままでのところ他に適当な税源を見つけない限り、この問題は解消されない、こういうことで大蔵当局も、また自治省当局もそういう意味でいろいろ苦心してまいっておるのであります。これは全面的にいわゆる電気ガス税の問題であります。もちろんその中にはただいま御指摘になりましたような大企業に特に便宜をはかっているんじゃないか、そうして国民の負担をまんべんなくやっておるんじゃないか、こういうようなことをも含めて、そうして適当な財源を見つけていきたい、こういうのが先ほどお答えしたところの自治大臣の答弁でございました。私もかような状態にあるということは十分認識いたしまして、今後の問題として、悪税だと言っている限り、これをいつまでも存続させておくことは筋ではないということを御了承いただきたいと思います。
  326. 向井長年

    ○向井長年君 佐藤総理が通産大臣当時に、こういう悪税は一日も早くなくしましょう、なくしてもらわなくては困るということをみずから言われたんですね。総理になられて、やはり財源措置の中からやむを得ないという状態がこのままいけば出てきますよ、ずっと。それよりも私はこういう不合理な生活必需品から取る、一般住民からですよ、そうして利益を追求する大企業が免税されておる、これは時代が違うんですよ。いま、いわゆる開発の資本費がどんどんかかってくるこの電力に対して、よけい使うところに対しては便宜をはかっておるというようなかっこうはいま通らない。資本費がかかってね。したがって、この不均衡をどうするかということと、地方財源に対する穴埋めを政府みずからが考えて、これを撤廃しなければ、いつになってもこれはだめなんですよ。この点について自治大臣、総理大臣、ひとつ最後にこれからどうするかという決意だけ示してください。
  327. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 国と地方との行政事務の再配分、さらにそれの裏づけとなるべき財源の再配分等につきまして、目下、地方制度調査会で御審議をわずらわしております。それらの財源の再配分と見合わしまして処置してまいりたいと存じます。
  328. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私も向井さんのおっしゃられる方向でなるだけ早く解決したいと思っております。
  329. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上で向井君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  330. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に、春日正一君の質疑を行ないます。春日君。
  331. 春日正一

    ○春日正一君 私は三次防全般の問題について質問します。  最初に、二次防と三次防はどこに変わりがあるのか、新しい点はどういうところか、この点説明願いたいと思います。
  332. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 趣旨におきましては、昭和三十二年に閣議決定によって設けられました国防に関する基本方針にのっとっておるのでございます。そこで、一次防、二次防が終わりまして、三次防がこの四月一日から始まったわけでございまするが、プリンシプルにおいては変わっていないのでございます。ただ、国情、国力、財政等の許す範囲におきまして防衛力の内容の充実整備をはかる、こういうことに相なっておりまするから、春日君が数を申せということでございましたら、またおいおいと三自衛隊について数を申し上げる用意がございます。
  333. 春日正一

    ○春日正一君 それをひとつ言ってくれませんか。
  334. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 大体、頭の中にございまする数を申し上げますが、陸上自衛隊はいままで十七万一千五百人でございましたが、三次防の末期、すなわち昭和四十六年までに八千五百人を増員いたしまして、十八万人を充実させるつもりでございます。ただし、充足率は必ずしも一〇〇%とはいきませんのでございまして、昭和四十六年末までに九二%にいたしたい、こういうことでございます。しかしながら、方面隊並びに十三個師団というものの数は増加させないつもりでございます。その範囲において陸上自衛隊の増加をはかります。  それから海上自衛隊でございますが、海上自衛隊といたしましては、護衛艦――たしか五、六隻でございました――を含む、潜水艦もございまするが、合計いたしまして四万八千トンの増強をはかります。しかし、一面スクラップがございまして、スクラップ・アンド・ビルド方式でやっておることは、三自衛隊に共通した原則でございます。そこで、海のほうもそうでございまして、数で申しますというと十七、八万トンになりまするが、スクラップにするものが四万トンばかりございまするから、現在、大体ございまする十三、四万トンの線を昭和四十六年末においては出ない。いまのところの海上幕僚幹部の立てておる方針、防衛局の立てておる方針といたしましては、合計いたしまして三次防末期――昭和四十六年末期において十四万二千トンでございます。  それから空でございますが、空のほうはいま千百機くらいございまするが、これもスクラップが多うございまして、耐用年数がきまするから、スクラップになりまして昭和四十六年末には八百八十機ということになります。戦闘機とか、あるいは観測機とか、あるいは運搬用のYS11とか、そういうものを加えまして八百八十機に昭和四十六年末になるわけでございます。ただいまよりは約二百機弱減るということに相なっております。それからプラスアルファになるものがございまして、それはナイキハーキュリーズがいままでございませんでしたが、昭和四十六年末までにはナイキハーキュリーズが三個大隊増加いたします。それから一個大隊は四次防の始まりごろに新しくつくりたい、その準備を三次防の末期において、すなわち昭和四十五、六年のころにおいて始める、こういうことに相なっております。ゆくゆくはナイキアジャックスという射程四十五、六キロ行くのを、ナイキハーキュリーズで――百三十キロ行きますが、そういうハーキュリーズで置きかえて換装をいたす――カンは交換の換で、ソウは装備の装でございます。換装いたします。いずれにいたしましても、春日君のおわかりのとおり、防衛武器であることは御承知のとおりでございます。それからナイキのほかにホークというのがございますけれども、ホークは現存のものが二個大隊ございますが、なおプラス二個大隊にいたしたい。それから四十七年以後においてもう一個大隊ふやすような準備をいたしたい。これが従来に比べてプラスアルファの点でございます。すなわち航空機は非常に減りますが、ナイキハーキュリーズという防衛専門のミサイルはふえるわけでございます。
  335. 春日正一

    ○春日正一君 それで装備はそういうことですけれども、今度の三次防の計画の大綱を見ると、きわめて重要な内容が含まれていると思います。まず第一に、通常兵器による局地戦以下の侵略事態に対して――これはいままで使っていることばですけれども、最も有効に対応し得る効果的な防衛力、こういうと、これはどういうことになりますか。
  336. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) いろいろことばがございまして、前には効果的ということばがございますが、今度は最も効果的ということばを使っておりますが、これはもう文章でちょっと力強い感じを与えただけでございまして、内容はいま申した範囲でございます。でございますから、国会議員の間におきましても、自衛隊はアクセサリーにすぎないとおっしゃる方もあるということは、私はここでもしばしば申し上げましたが、しかし、通常兵器による局地的の侵略は、ある程度抑止できる実力である、通常兵器による局地的の侵略をある程度阻止し、排除し得る実力である、こういうふうに考えております。最も効果的で、あらゆる国土を、どんな形の侵入があろうとも阻止、排除できるというところまでは、文章はなかなか力強いような感じがいたしますけれども、そこまではカバーしていないということは、春日君もおわかりじゃないかと思います。
  337. 春日正一

    ○春日正一君 現状でそこまでカバーしていないということは、これは私もわかるのですけれども、少なくとも基本方針として、最も有効に対応するというふうに規定してあるわけですね、これは必ず勝つということになると思います。そういうことになれば、敵の戦力との相対的な関係できまるわけですから、そうすると、自衛隊の戦闘力というものが無限に拡充する、それを目標とするということにならざるを得ない、書いた文章にそうなっているのだから。どうですか、そこのところ。
  338. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 繰り返して申し上げますが、文章は力強いような感じがいたしておりますけれども、内容はそれほどのものではない。ことに予算面から見まして、どこの国でも十数%、あるいは二十数%、あるいは五、六〇%を防衛費に投じているところもございますが、わが国は国防会議の議長である総理以下われわれ、国力、国情に応じた自衛隊をもってある程度の侵略に対処すると、こういう確固たる方針は終始一貫変わっていないわけでございまして、すなわち、総予算に比べまして七・六九%というのが今回の予算でございます。前年度の予算は総予算に対比いたしまして七・九%でございますから、文章と予算の数字とは必ず正比例的ではないということを、賢明なる春日君もおわかりくださると、こう思う次第でございます。しからば将来五カ年間をどうするか。総理裁断によってきまりました三兆四千六百億、プラス、マイナス二百五十億というものをかりにプラスといたしましても、それに大蔵大臣がよく答えていらっしゃいますベースアップは別だという、そのベースアップを若干見積もりまして、五カ年間の予算はちょっとわかりませんが、まあ人によっては三十三兆円という人もございまするが、しかし、経済社会発展計画によりますというと国民総所得はわかっております。すなわち二百二兆円でございます。二百三兆円から見まして、相当ふえたといたしましても、一・三%というところにとどまっておりまするから、割合は低いわけでございまして、あなたのおっしゃるように無限大にふえていくものではないのでございます。おそらく四次防、五次防がございましてもこんな範囲ではないかと私は考えておる次第でございます。
  339. 春日正一

    ○春日正一君 で、大綱の中で……。
  340. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) ちょっといまの訂正いたしますが、二兆三千四百億、上下幅二百五十億を持たせる、こういうことでございまして、それに大蔵大臣がしばしばおっしゃっておりますベースアップは別だと、すなわち本年度からのベースアップ――昨年のベースアップは本年の中に繰り込まれております。それから昨年の臨時国会におけるベースアップは昭和四十六年までの給与ベースの中に入っておりますから、本年おそらくあるでございましょう人事院勧告の線、あるいは明年あるでございましょう人事院勧告の線がおよそ準用されますから、それが入りました線を加えましてもまず二兆六千億を上回らないであろう、昭和四十六年までの総額が。そういたしますというと、国民総所得――昭和四十六年の総所得を、もう少し伸びるという方もございますが、二百二兆円といたしまして、そのうち一・三%にまだ満たない、こういうわけでございまするから、文章は力強い感じがいたしておりまするが、内容はきわめて貧弱なものである、しかしながら、日本の国情、国力、財政にかんがみまして妥当な線である、こういうふうに考えておる次第でございます。
  341. 春日正一

    ○春日正一君 まあいま大したことないと言ってますけれども、大綱の中では、二次防では精強の部隊の基礎をつくるというふうに言っておったのが、今度は「精強な部隊の建設」ということばに変わっているんですね。これから本格的にやるんだ、その第一歩なんだというふうに書いておるわけですね。だから、どこまでやるつもりなのかということが問題になってくるんです。当然四次防、五次防ということが考えられるわけですが、めどがないわけじゃないですから、どこをめどに置いておるのか。
  342. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) これは国防会議の議員である大蔵大臣にお聞きくだすったほうがいいかと思いますが、国の財政、経済、国情、国力等に比較いたしまして、いまの程度以上を出るものではない。将来相当長期にわたって私は防衛計画はあると思いまするが、しかしながら、パーセンテージもまた長期にわたって国民所得に比べて――一・三%以上持ちたいという人も相当ございます。防衛庁の中にはございまするが、まずまずこの程度ではないかと。長期的見通しを私が申すということはこれはおかしな話でございますが、ひとつ詳細の点は国防会議の議員である大蔵大臣あるいは経済企画庁長官にお聞き願いたいと思うのでございますが、パーセンテージがこれ以上上回ることはまずまずあるまいと考えておる次第でございます。
  343. 春日正一

    ○春日正一君 その点、総理の考えをちょっと聞かせてください。
  344. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の考えと防衛庁長官の考えは食い違っておりません。先ほど来たいへん詳細にお答えしておりますが、同一の考え方をしております。御了承願います。
  345. 春日正一

    ○春日正一君 そう言われるけれども、たとえば経団連の防衛生産委員会事務局長、この人のことばとして、防衛産業にとって三次防は中二階である、飛躍は四次防、五次防であると、そういうふうに言っているんですね。そうすると、やはりそこに大きな期待が持たれているし、また、うたわれていることばからいってくれば、当然そうならなければならぬというふうに国民は判断せざるを得ないような大綱を出しておいでになる。なぜそういうものを出されたのか。それほど内輪のものならいままでどおり内輪にしておいたらよさそうなものだ。いままでのものをなぜ変えてそういうふうにお書きになったのか、そこのところですね。変えた以上そこに考えがなければならぬ。
  346. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 文章は変わっておりますけれども、内容はそれほど変わっておりません。つまり最小限度の自衛力を持つという趣旨でございます。これはあなたが予算書その他をお読みになればすぐおわかりになるわけでございまして、まずこれほど貧弱なものかしらというふうな、あなたのほうで御発言があってもよいのじゃないかと思うくらいでございます。
  347. 春日正一

    ○春日正一君 大綱の中で新たに「陸・海・空自衛隊の有機的協力体制を進め、三自衛隊の総合的運用効果を高める」これはどういうことですか。
  348. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) これは従来ともやっていることでございまして、有機約な機能を発揮する、三自衛隊がそれぞればらばらではいけませんし、従来も気をつけてまいりましたが、将来とも一そう気をつけてまいりたいということが、昨年の十一月二十九日決定されました国防会議における基本方針でございます。
  349. 春日正一

    ○春日正一君 「有事の際すみやかに事態に対処し、行動能力を継続的に維持」するということを目標とするというようにあるけれども、これはどういうことですか。三次防で特にことさらこういうことばが、有事の際に対応ということばが出てきたということはどういう意味ですか。
  350. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) いろいろことばはございまするけれども、事があった場合に、やはり国民から頼もしいと思われる働きをしなければならぬ、こういう意味でございます。
  351. 春日正一

    ○春日正一君 それはいままでもあたりまえのことです。なぜいま出してきたのか。有事即応体制に置くということになれば、自衛隊をいつでも戦争のできる状態に置くということになるわけでしょう。そういうことから見て三軍の有機的な協力体制づくり云々ということ、それとの関連で見れば三次防と質的に逢ったことを考えておったというふうにしかとれないじゃないですか。そこのところどうですか。
  352. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 内容は二次防と変わっておりません。
  353. 春日正一

    ○春日正一君 それでまた新たに周辺海域の防衛、海上交通路の安全確保、重要地域の防空というこの自衛隊任務規定が明記されているのですけれども、なぜこの時期に特にそれをうたわなければならぬのか。初めからわかり切っていることであって、それをなぜいま文章の上に押し出してこなければならぬかということですね。
  354. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) あなたもわかっていらっしゃることで、やはり文章に書いたほうがいいと思います。
  355. 春日正一

    ○春日正一君 それでは防衛すべき周辺海域、海上交通路の範囲はどこまでですか。
  356. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 事態によっていろいろ変わりまするが、日本周辺海域とは日本周辺海域でございます。
  357. 春日正一

    ○春日正一君 それでは答弁になっていないと思うのですが、周辺と言ったらば地球はまるいのだからみな周辺です。そんなことじゃない、もっと具体的に答えてもらいたい。
  358. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 日本に近接したる周辺という意味でございます。
  359. 春日正一

    ○春日正一君 どこからどこまでということをもう少しはっきり言ってくれなければ、周辺と言ったってフィリピンまでだかベトナムまでだかわかりゃしない。それをはっきり言ってくれなければ困る。
  360. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 日本周辺のどこからどこまでが周辺海域であるかということは、具体的に申し上げられませんけれども、とにかく防衛といたしましては、領土、領空、領海並びにそれに近接をする周辺である、こういう意味でございまして、周辺海域と申します場合には、領海並びに領海に近接するその周辺の海域、こういうことです。
  361. 春日正一

    ○春日正一君 答弁にならぬです、それでは。ぼくは二つ聞いているのですよ。防衛すべき周辺海域ということと海上の交通安全確保と……。
  362. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 春日君、ちょっとお待ちください。すわったままで質問されますと第一速記がとれないのです。ですから、発言を求められまして、速記をつけてやはり質問していただいたほうがけっこうです。
  363. 春日正一

    ○春日正一君 時計のほうをとめておいてください。そうしなければ、そんなことを言われては、あなた、質問時間、三十一分なくなってしまうのです。時計をとめておいてくださいよ、いまのやつは。  私の聞いているのは、周辺海域の防衛と海上交通路の安全確保、この周辺海域と海上交通路というのはどの範囲を防衛するかということを聞いているのだから、はっきり言えませんけれどもと言うけれども、防衛するというからにはどこからどこまで防衛するという範囲がなければ、どれだけ船を持ったらいいか、兵隊を持ったらいいかわからぬはずなんだから、はっきりそれを言わなければ答弁にならぬですよ。
  364. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 三次防で考えております周辺海域防衛能力の向上という場合におきます内容は、わが国の沿岸あるいは海峡あるいは海湾、こういうものに対する防衛力を高揚しよう、こういう趣旨でございます。なお、海上交通におきますところの護衛能力と申しますか、交通確保力の向上、こういう場合におきましては、わが国としては、周辺海域に、有事におきまして船舶の往来でございますけれども、それに対しましてある程度の防御といいますか、護衛を考えなければなりませんが、それを海上自衛隊の一部において担当しようということでございますが、ただ、それがどこまで船舶の護衛等を行なうかということにつきましては、これは具体的にどこからどこまでだということはなかなか申し上げかねるのでございまして、わが国の海上自衛力の力をもちまして可能な限り船舶の護衛に当たる、こういう趣旨でございます。
  365. 春日正一

    ○春日正一君 申し上げられないというのは、秘密だから申し上げられないというのですか。どの辺かまるっきり見当がついていないということなんですか。
  366. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 具体的にどの辺の海域までということは、まあ一応われわれの作業の前提としてはございますけれども、そこまでは三次防の末において確保できるのだということは、これはもうそのときの事態の様相も非常に複雑でございますので、なかなか予想できませんので、ここにどの海域までは防衛できるのだということは具体的にはなかなか申し上げられないというのが実情でございます。
  367. 春日正一

    ○春日正一君 三次防の中で考えておるというのだから、予算出してくる以上、この辺まで考えてこの予算を出したということを害わなければ理由にならぬじゃありませんか。
  368. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 先ほど来出ておりますわが国を有効に防衛し得る能力を整備することが目標でございまするけれども、これも三次防の末において一挙にそこまでいくというものでございませんので、やはりわが国の国力、国情によりまして漸進的にこれを整備していくということでございます。したがいまして、三次防の末においてこれだけの艦艇を確保すればここの海面までは確保できるということは、一応まあ作業の基礎としてはございますけれども……。
  369. 春日正一

    ○春日正一君 その基礎を言ってください。
  370. 島田豊

    政府委員(島田豊君) それは具体的にはちょっとこういう席では申し上げられないのでございます。
  371. 春日正一

    ○春日正一君 秘密だというのですか。
  372. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 秘密というわけではございませんで、先ほど申しましたように、そのときの様相というのはきわめて多種多岐にわたることでございますので、それは、われわれとしては事が起こりました場合には全力を投入してできるだけの防衛をやっていく、こういうことで考えておるわけでございます。
  373. 春日正一

    ○春日正一君 だまって何にも言わないのですね、だからこれは言わしてくださいよ。とにかく予算を出してくる以上、このくらいの規模でやるというので、そのときに相手が強くなったらそこまでいかなんだということはそんなことは問題じゃないのだから、いまどの辺まで考えて三次防でこれだけのものをふやそうとしているのかという、どの辺までを言わなければ話にならぬじゃないですか。予算をつくる基礎がないじゃないですか。増田長官答弁している。千五百キロくらいとはっきり言っているのだ。
  374. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) いま防衛局長の言ったことに私が補足するというとおかしな話ですが、つまり事があったときに、有事の際に護衛艦でございますから、船団を護衛するというようなことも考えております。しかし、護衛艦は合計いたしまして四十隻でございまして、そこで船団はどういうふうに事があるときに組むかというと、それは八はいずつ三列に組んで三、八、二十四のカーゴボートを、あるいはタンカーを護衛するというようなこともございます。その場合に、何しろ護衛艦は四十隻でございますから、そのはたへ三隻ずつ六隻つくというような話もございますし、いろいろ想定はございますが、一つの船団を護衛していってうんと足が延びた場合は千五百キロくらい守れるという場合もあるということを衆議院で申したわけでございまして、幾つも幾つも船団ができたときに、とても手が回りませんから、そこで日米安全保障体制のもとにおいて日本の平和と安全を事があるときに守る、こういうことになるのでございまして、日本だけの海上兵力の、海上自衛力の手で一切を守れるわけのものではございませんから、防衛局長に何キロは全面的に海上を守るのだ、あるいは周辺を守るのだと、こう言わせようたってこれは無理でございまして、一船団ぐらいを千五百キロくらい守っていける場合があると、こういう意味に春日君はぜひとっていただきたいと思います。要するに、日米安保体制のもとにおいて海上自衛力が自衛の力を発揮するのである。その総額はもうわかっているのですから……、合計で四十隻とこういうわけでございます。
  375. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると周辺海域の防衛、海上交通路の安全確保というのは、結局日米安保体制でアメリカと力を合わせて守ると、こういう意味ですか。
  376. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) そういう意味でございます。
  377. 春日正一

    ○春日正一君 現在朝鮮で非常に緊張が激しくなっているさなかにおいて、きのう来問題になっているように、日本海、津軽海峡あたりで大規模な日米合同演習が行なわれているということはこれは非常に重大だと思います。きのう来この問題についていろいろ質問がありましたので、こまかいこともそのときに防衛庁長官のほうから出されているから、私ここは省きますけれども、しかし、この演習というものはどういう想定のもとでやられているのか。その点聞かしてもらいたいと思います。
  378. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) こまかい点まではわかりかねますが、わが国の護衛艦が五隻出まして、それから向こうでは駆逐艦が六隻出まして、それからホーネットという一番古い型の、三万一千トンばかりの最も古い空母でございます。これが出まして、合同訓練をいたしておるわけでございます。その訓練の目的は対潜訓練でございまして、その対潜訓練を太平洋において行ない、それから青函海峡において行ない、日本海の公海の上で、公の海の上で行なっておる。本日をもって終了いたします。大体において、日本海におきましても、山陰道の裏側の京都の北ぐらいのところの公海の上で終わるということになっておりまして、非常に心づかいをデリケートにいたしておるということを御了解いただきたいと思います。
  379. 春日正一

    ○春日正一君 それで私の聞いたことに答えてほしいと思うのです。どういう想定でやられたか、これを聞いているのです。
  380. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 想定のことはわかりかねますが、ただ、対潜訓練でございまして、潜水艦の発見並びに潜水艦を発見した場合に、これに爆雷を投下して落とすという両方の訓練をいたしておる。その想定まではわからぬわけでございまして、その目標潜水艦はアメリカの潜水艦が協力してくれているわけでございます。それは二隻でございます。
  381. 春日正一

    ○春日正一君 防衛庁長官が想定をわからぬというのはおかしいですね。専門家でもいいから、どういう想定でやられたのか、これを聞かしてほしいと思います。
  382. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) お答えいたします。  想定を特に設ける訓練はいたしておりません。訓練の内容は対潜捜索、対潜攻撃訓練ということでございます。
  383. 春日正一

    ○春日正一君 合同演習というからには、当然日米の共同作戦ということを前提としているのだかして、つまり武力の侵略があった場合に、日米共同して対処する、こういうことでございまするから、打ち合わせはございまするが、連絡はございまするが、しかし単一指令部とか、そういうことはあくまで考えていないことは、これは事実でございまするから、私が別段強弁で事実を曲げて話しているわけじゃないのです。両方とも並立したそれぞれの指揮所がありまして、日本側の最高の指揮官は総理大臣であり、向こう様はだれになるか知りませんが、そういうことで並立して、しかしながら、守る対象は、日本の施政権下における米軍の施設あるいは基地であり、また日本の本土であり、日本国民一億の生命、身体、財産を守る、こういうことでございまするから、連絡はあるにはありますけれども、それ以上の何か変わったものがありはせぬかと、しきりにあなたは探査をされておるようでございますが、それはございません。
  384. 春日正一

    ○春日正一君 なければ、防衛計画も訓練計画も立たぬと、私はそれを言っているのですよ。それじゃ、三次防の策定にあたって、政府防衛庁は当然その前提となる国際国内情勢の現状、見通しについて検討したはずだと思います。政府は現在の国際関係、政治、軍事情勢について、どのような判断と見通しを持って三次防を決定されたのか、その点御説明願いたいと思います。
  385. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) これは国防会議の一人として申し上げますが、国防会議におきまして三次防が、基本計画が十一月二十九日にきまりまして、三月十三日にそれに基づく主要項目がきまりまして、同じく所要経費がきまったわけでございますが、その当時の話し合いでは、国際情勢はプラスの面すなわち雪解けの面、平和に貢献する面もある、しかしながらマイナスの面もある。結局、結論的には、なかなか油断ができない情勢であるから三次防を策定する、こういうような話し合いはあった模様でございまするが、それ以上のことはございません。
  386. 春日正一

    ○春日正一君 それじゃちっとも三次防の基礎はわからない。私はここに書き抜きしたものを持っておるのだけれども、私が言っておったのじゃ時間がかかるから、もう少しこういう判断のもとでこうしたということを話してくれなければ困りますよ。審議にならぬですよ。
  387. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 結論を申し上げますが、なかなか国際情勢は、油断を許さない情勢である、こういう前提から三次防が策定されたものでございます。
  388. 春日正一

    ○春日正一君 それでは質問をしますが、ではソ連が攻めてくるおそれがある、あるいは中国のほうから攻めてくるおそれがある、こういう判断をしましたか、しませんか。
  389. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) ソ連あるいは中共が攻めてくるというようなことは考えておりません。
  390. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、ソ連以外に一体何を対象に守らなければならないのかということですね。
  391. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) ある程度自衛力が存在することによって、日本の国民を守り、国民がまくらを高くして寝られるようにするという、そういう意義が自衛隊の存在についてあるわけでございます。
  392. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、日本をいま緊急に守らねばならぬ心配があまりない。そういうことになると、結局、三次防でああいう勇ましいことを書き立てたということは、ベトナム侵略戦争がいま非常に拡大している、これは去年の総理答弁で、アメリカとも話をしてよく知っているけれども、たいしたことにはならぬと言っておったけれども、その予想を越えて拡大していると思いますよ。そうして他の地域への波及という問題が国際的に心配されている、そういう情勢が一つあるでしょう。そうしてアメリカのジョンソン大統領は、去年の十月末に韓国を訪問したときに、アメリカはアジアのどこか他の地域でも侵略を阻止しなければならなくなるかもしれない、また三十八度線はベトナムの十七度線につながっているということを言っているのですね。そうして韓国の国会では、国土統一を実行に移す準備を整えるという呼びかけをやっている。そうしてまた、シャウプ米太平洋軍総司令官は、四月十三日の下院での証言で、公式には朝鮮戦争は終わっていない、こう言って南朝鮮での戦備の強化が重要だということを言っている。しかもジョンソン大統領が韓国を訪問して以後、朝鮮の軍事境界線一帯で、米韓側からの軍事挑発事件が激増している、そうしてきわめて緊張した事態がかもし出されている。こういうことを考えてみますと、結局、日米合同演習の役割りといい、これは日本の安全を守るという前提じゃなく、まさにアメリカが朝鮮侵略戦争の再開ということを予想して、これに対処するためにやっているのではないか。そうなると、日本の自衛隊というものは、あなた方の言うように国民を守る自衛隊ということでなくて、アメリカの侵略に協力する軍隊ということになる、この点どうなんですか。
  393. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 自衛隊はあくまで自衛隊でございまして、あなたがごらんになっても、数字、数学等によってごらんになってもおわかりのとおり、われわれは、日本の平和と安全とを守る、こういう方針に、総理がいつもおっしゃる方針に徹している、そのための自衛隊でございます。これくらいの自衛隊でどうして日本の自衛を守れるか、私はこれだけの自衛隊では守れないと思いますから、日米安保体制のもとにおいて、日本の平和と安全とを守るものでございまして、それ以上あなたがいろいろおっしゃいましても、私どもはそうは考えないのでございます。
  394. 春日正一

    ○春日正一君 安保条約には、日本を守るという一つの側面もあるけれども、同時に、アメリカが日本、沖縄を基地にして、極東戦略を遂行していくという側面もありますよ。だから、あなたは自衛隊自衛隊でありますと言うけれども、しかし、たとえば緊急発進を出動した記録を見れば、三十六年四月二十日の午後四時半、在韓米軍レーダーで国籍不明機をとらえたということで、航空自衛隊が、全隊に緊急警戒体制の指令を出しているということを言っているし、もっと関係のないことは、ケネディが三十七年の十月二十二日にキューバ強硬声明を出した、そのとたんに在日米軍と航空自衛隊が警戒体制に入った、そうすると、アメリカのケネディが、キューバに対してやったということで、自衛隊はもう発動の準備をしているということになれば、日本を守るだけでありますとか、アメリカの作戦に関係ありませんとかと言うが、この事実によってもう弁護の余地のないまでに証明されているじゃないですか、どうなんですか。
  395. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) キューバにおけるケネディの行動に関して、日本の自衛隊がどうしたこうしたということは、私はよく存じません。ただ、日本の自衛隊がレーダーその他、今度はバッジ・システムというものもいよいよ昭和四十二年末には完成をしますから、日本を守るために責任を持ち、良心的な立場で二六時中警戒をいたしておるということは、これは責任上当然であると私は考えております。
  396. 春日正一

    ○春日正一君 防衛庁長官、知らぬと言いますけれども、これは大事だけれども、どうですか。専門家にはっきり――三十七年十月二十二日のその事件のときに、自衛隊が緊急警戒体制に入ったということがないのかあるのか。
  397. 海原治

    政府委員(海原治君) 私、当時防衛局長をしておりまして、その件につきましては、当時の衆参両院の関係委員会でも御質問がございました。そのときに詳細に申してございますが、自衛隊は警戒体制に入っておりません。ただ、そのような連絡がございましたので、火の用心ということで連絡をした、念のために注意をしたということを、当時の志賀大臣からお答えしております。
  398. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、朝日新聞はうそを書いたと言っていいですか。ここではっきり言ってください。うそ書いた……。
  399. 海原治

    政府委員(海原治君) 私が申し上げておりますのは、私のほうが、そのようなお答えをしておるということでございまして、新聞がどうこうということを申し上げる筋合いではございません。
  400. 春日正一

    ○春日正一君 私は新聞をたねにして言っているのだから、私の言うことが間違いなら、朝日新聞はうそを書いたということになる。だから、新聞の信用のために私はそれを聞いている、もう一度言ってください。
  401. 海原治

    政府委員(海原治君) 先ほど申しましたように、衆参両院の関係委員会におきまして御質問がございまして、政府を代表いたしまして私から、さらには大臣からそのようなお答えをした、これは事実でございます。
  402. 春日正一

    ○春日正一君 私はね、日米共同作戦が、朝鮮戦争の再開を予想して、これに対応することを中心にしておるということを、単なる想像とかそういうもので言っているわけじゃないですよ。三矢作戦計画といってここで問題になった文書、あるいはフライイング・ドラゴンズ作戦というような文書によっても、あるいは最近問題になっているブルラン作戦というような文書を見ても、すべて朝鮮での戦争の再開ということを予想して、そうしてそれに対応する、この共同の作戦が計画で練られておる。これは事実でしょう。
  403. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) フライイング・ドラゴンズとかブルランとかいうものはございません。
  404. 春日正一

    ○春日正一君 三矢作戦計画の文書はあったと、これは認めているのですよ。そうして、私はもうこの議論を進めますけれども、こういう点から見ても、三次防というものは、結局三矢作戦計画の延長線上での自衛隊の増強だと、アメリカの極東戦略の一単位としての侵略的な役割りを強めるものだ、そう判断せざるを得ないんですけれども、そういうものに対してあなた方はどう答えますか。
  405. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 春日君のおっしゃるうちで一番耳にくるのは、日本は侵略を企図しておる、侵略を企図しておるということは、私は、言論は自由でございますから、あなたのおっしゃることは御自由でございますが、絶対に反対でございます。
  406. 春日正一

    ○春日正一君 反対だと言ったって、そういう文書が幾らでも出てくるんだ。その三矢作戦計画では、日韓条約の締結、日本及び朝鮮に対する海上交通路の保護、対馬、津軽、宗谷の海峡封鎖作戦、米海軍基地の警備というようなことが検討されている、その文書にはこれは廃案になったと言っているけれども、実際に出てきたものなんです。あるいは政府がやった日韓の強行妥結というようなことを見るならば、明らかにこういう課題が、三次防計画に取り入れられておる。それとの関連で、先ほど私の聞いた、新しい問題が明示されてきているのじゃないか。そういうことなんですが、どうですかそこは。
  407. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) そういうことは私はないように思いますが、春日さんもよくお考え願いたいですがね。そういうことはございませんよ。それから三矢のことを、さらに三、四年前のことをおっしゃいますが、研究の過程としては、いろいろございましたでしょうが、責任の持てる文書ではない、したがって提出はいたしませんということで、一応これはけりがついていることでございますから、一事不再議といったようなこともやっぱり御考慮願いたいと思います、立法府の議員でございますから。
  408. 春日正一

    ○春日正一君 一事不再議で、やらなければいいけれども、不採択になったものが実行されているということを、私は問題にしている。三次防の大綱によれば、「有事の際すみやかに事態に対処し、行動能力を継続的に維持しうるよう弾薬の確保等後方体制の充実を図る。」こう言っていますが、「有事の際」つまり戦時に即応できる後方体制というものはどのようなものか、これを説明してほしい。
  409. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 詳細なことは、防衛局長お答えさせますけれども、いま弾薬の装備とか、準備等もきわめて少ないのでございまして、これではとても間に合わないというような感じを持っておる専門家もございます。しかしながら、漸次整えてまいりたい、これが防衛庁の考えでございます。
  410. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 三次防を作成するにあたりまして、われわれとしましては、二次防の期間におきまするところの防衛力の現状ということにつきまして、いろいろ検討を加えまして、それを是正をするというのが三次防の一つの目的でございます。二次防の反省の中で、後方支援体制というものがまだ弱体である、こういうことが経過として出てまいりましたので、特に三次防としてはそういう点をうたいまして、これをできるだけ整備していきたい、こういうふうに考えておるわけでございまして、その中の代表的なものが弾薬等の備蓄でございますけれども、これ以外におきましても、いろいろ補給整備等の面におきまして、できるだけその内容を充実をして、有事即応という体制を、後方面において、そういう欠陥のないように充実していきたい、こういうことでああいう文章を作成いたしたわけでございます。
  411. 春日正一

    ○春日正一君 弾薬の話だけしか計画には書いてないけれども、有事即応体制というからには、政治、経済、社会、思想、そういう国民生活のすべての面にわたって後方体制を確立していくということは、当然だと思います。たとえば弾薬だけ言っているけれども、戦争ともなれば、当然大量の戦闘要員、あるいは軍事要員が必要になるけれども、これの確保という計画はどうなっておりますか。
  412. 島田豊

    政府委員(島田豊君) わが国の防衛におきまして、ただいま御指摘のような、いわゆる人的な予備兵力というものが、戦前と違いましてございません。したがいまして、一つは予備自衛官の制度を設けまして、有事におきまして予備自衛官を活用するという制度が一つございます。それ以外におきましては、法律によりまして、有事所要の人員につきましては、それらの確保ということが当然起こり得ると思いますけれども、それはあくまで国会の審議を通じてやることでございまして、それ以外に自衛隊としてそういう人的な補充措置というものを考えておるわけではございません。
  413. 春日正一

    ○春日正一君 四十一年度の組織募集推進要綱というものがあるでしょう。
  414. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 組織募集要綱はございます。
  415. 春日正一

    ○春日正一君 それによりますと、その三項の市町村の実施事項という中には、いろいろ具体的なことが書いてありますけれども、たとえば町内会、部落会、青年団、婦人会、消防団、その他の団体に対する募集広報の協力依頼ということ、こういうことで青年団から消防団からみんなひっくるめて自衛隊づくりに突っ込んでいくというのが出ている。これに基づいて書かれた市町村自衛官募集事務処理要綱準則というものを見ますと、区長、総代、町内会長等に対して、自衛隊の募集及び広報及び入隊手続等について協力を要請する、自衛隊父兄会、隊友会、自衛隊相談所、防衛協会等を育成し、自衛官募集の協力体制を確立する、それだけでなくて、採用予定者に対し、協力団体の協力を得て入隊の際に壮行会、激励会を行なうようつとめるというようなことになっております。これでは昔の出征兵士を送る行事を復活させるようなものです。そこまできているわけです。これでは結局、この方向を徹底していけば、国全体をあげての軍国づくりというような方向にいかざるを得ないんじゃないか、そこをねらっているんじゃないか、どうですか。
  416. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 私は自衛隊というものはきわめて弱冠のものでございますが、しかしながら、この自衛隊の存在によって、日本に侵略戦争が起きないという効果があると思います。しかしその背景として、国民的支援が自衛隊になされないというと、やはりあらゆるものがそうでございますが、コンセンサスのもとにおいて存在する自衛隊が、はじめて戦争の阻止力があるわけでございますから、やはり春日君も応援していただきたい、こう思うわけでございます。
  417. 春日正一

    ○春日正一君 もう一つ聞きますけれども、昭和三十九年七月八日の国防会議幹事会、これの国防の総合計画を達成するための基本計画というものによれば非常事態に際し、防衛力を有効適切に維持できるよう、国土計画や輸送通信計画について配慮しておく必要があるということを言って、検討事項の中では、国防意識の高揚その他の諸方策とともに、経済計画における防衛の問題として人的条件、道路、港湾、運輸、通信などにおける防衛支援体制その他のことがあげられております。三次防で有事即応体制が強調されているということは、当然放送であるとか教育など、これまでも反動化として指摘されてきたような思想、意識の軍国主義化ということに加えて、道路、港湾、運輸、通信など経済政策を含めて全面的な有事即応体制というものが、ひそかに進められておるのではないか、こう疑わざるを得ない。この点はどうなんですか。
  418. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 御指摘のようなことはおいおい研究する必要があると思いますが、まだそこまでは考えていないのでございます。
  419. 春日正一

    ○春日正一君 ブルラン作戦計画の存在については、あなた方は否定しておいでになる。しかし、そこに書かれておることを見ると、陸上輸送の主体はトラックによる必要があると言い、その道路網は北海道では札幌を中心に稚内、室蘭、函館を結ぶ線、及び札幌、釧路、北見と札幌、小樽こういうふうに書いてある。東北では青森、仙台あるいは郡山、新潟、直江津、金沢、あるいは東京、静岡、名古屋、大阪、広島、長崎が北海道から九州に至る主要幹線道路として開発されるというようなことになっておる。ところが、この道路計画は、私は建設委員をやっておりますから、政府がいま計画しておる国土幹線自動車道路計画――北海道、東北、東海、中国、九州なんかの、それぞれ調べてみたんですよ、地図を持ってきて。このとおりどんぴしゃりです。ちゃんと一致しておる。そういうことになれば、あなたはそこまで考えていませんと言ったって、現実にそれが進められておるということは間違いないじゃないですか、否定できない事実じゃないですか。
  420. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 私も長く建設委員をしておりまして、そのあなたの御指摘の道路は、日本縦貫高速道路でございまして、それはもう日本にあり余る、これからまたふえてくる自動車をさばくのに容易じゃないわけでございまして、とてものことに、それを防御用道路なんというものに転用できるものではない。もっと早くどんどん開発してもらいたいと思います。
  421. 春日正一

    ○春日正一君 それは道路というものは、ふだんには物も運ぶし、人も通る、戦争のときには戦車が走る、ヒットラーのアウトバーンの例もそうでしょう、だからあなたのその弁解では国民は納得しない。  そこで最後に、問題ですけれども、こういうことまで公然と言い出してきた。つまり基礎をつくる、基礎をつくると言ったので、三次防で公然と、戦争をやる軍隊、しかも先ほど来言ったようにアメリカとの共同作戦という中で、よその国の戦争にまで引きずり込まれるような軍隊ということになると、それは当然憲法に違反するということになると思いますよ、どうですかその点。
  422. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) やっぱりこれははっきりしておかなければならぬ点は、お互いにはっきりしておきたいと思います。すなわち共同作戦なんということばは使っていただいては困るのです。先ほどからだいぶ時間をかけて、それぞれの指揮所は別々にあって連絡はするかもしれぬけれども、二つの指揮所がある。作戦なんということばは従来使っておりませんから、あなたのほうでお使いになるのは御自由ですが、私のほうは防衛作業でございます。作業という字を使っております。商売の意味とちょっと似ておりますが、作業計画とこう言っておりまするから、そういうことばにぜひしていただきたいと思います。ただしかしながら、衆議院の松本代議士に申し上げたとおり、これは弁護士をしていらっしゃいますから、やっぱり日本のことばの用語が、それほど自衛隊にあらゆる場合に都合いいようにできておりませんから、ときどきいろいろなことばを使うかもし肌ませんが、その前提としては、あくまでも侵略に対処する自衛隊である、防衛庁である、こういう前提に使っておるわけだから、御了承願いたいと言ったところが、松本代議士は了承されました。さすがに法曹家でございます、代議士でございます。しかしこれは反駁したいとおっしゃるならまた反駁していただきたい、また私も反駁いたしますから。そこであなたの作戦ということばは不適当だと私は思いますから、私は反駁するわけです。
  423. 春日正一

    ○春日正一君 私は一般に世間で使われていることばを言っておるのですし、自衛隊の場合には憲法のもぐりをやろうと思うから、対象国だとか対象方針だとか、そういうふうに言っておるだけで、私は実態を問題にしておる、軍隊としての実態を。その機能を問題にしておる。そのことだけを言って、あなたは侵略に対処するのだ、自衛の軍隊だと言うけれども、しかし憲法の九条をよく読んでみれば、いかなる意味でも軍隊を持ってはならぬということになっておりますよ。自衛のための戦力とあなた方言うけれども、じゃ一体、自衛の軍隊と侵略の軍隊というのは区別をどこでするか、はっきりした定義を示してもらいたい。
  424. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 自衛の軍隊と言っておりません。自衛隊と言っておるわけであります。
  425. 春日正一

    ○春日正一君 だめだ、そんなふまじめな答弁じゃ。どこで区別を、自衛の軍隊と侵略の軍隊とをどこで区別するのか、そこを聞いておるので、名前なんか聞いていやしないのだから。
  426. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) まじめに答えております。自衛隊というものは、侵略があって初めて行動に移る、刑法の正当防衛の範囲において行動に移る。正当防衛並びに緊急避難でございます。刑法三十六条と三十七条、この範囲において行動するものが自衛隊でございます。
  427. 春日正一

    ○春日正一君 じゃあ委員長、具体的に聞きますけれども、これは増田長官じゃなくて総理に聞きますけれども、戦前の日本の軍隊は自衛の軍隊だったのか、侵略の軍隊だったのか。それから大東亜戦争というものは、日本にとって自衛の戦争だったのか、侵略の戦争であったのか。もう一つ、ベトナム戦争はアメリカにとって自衛の戦争なのか、侵略の戦争なのか、総理の判断を聞かしてほしい。――総理の判断を聞かしてほしい。
  428. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 一応私から申し上げます。  第二次大戦以前の問題につきましては、後世史家の判断にゆだねたいと思っております。
  429. 春日正一

    ○春日正一君 総理の判断を……。
  430. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま後世史家の判断にまつというお話が出ておりますけれども、私がしばしば申し上げますように、今日私どもが考えておる自衛力、これは非常に限定されておる。だから、その広義に解釈するということはせぬでほしいと実は申しておるのであります。したがいまして、いままでの軍備、それはいろんな表現がございましょうが、また、いままでの日本の軍隊は、これは自衛のためというような話であったと思います。これが、この場合の自衛というのがずいぶん広い、あるいはまた、国防の第一線が満州にあったらやはりたいへんだったと思います。しかし、いま私どもが言っておる自衛力、これは憲法のもとにおいて、この第九条のもとにおいて許されておる自衛力でございます。ただいま刑法にいう個人の場合の正当防衛あるいは緊急避難、こういうものに該当するのでございますから、非常にこれは限定される、かように御了承いただきたいと思います。  また、ベトナム問題についていろいろお話がございまするが、これはもうたびたびいままでも説明しておりますように、南ベトナムが北からの浸透にふずからを守る、自衛的な立場にアメリカの協力をお願いした、そこでアメリカが出ておる。アメリカのための自衛戦争というものではございません。
  431. 春日正一

    ○春日正一君 結局ですね、ずばりそのもののように答えられない。そうしてアメリカがあそこまで出ていくということが、自衛というものとの、侵略との関係から見てはっきりできぬということになれば、どんな場合でも、自衛の戦争と侵略戦争の区別というものははっきりしないということになると思います。だから、結局、自衛ということを口実にして自衛隊をつくっていく、軍隊をつくっていくということは、あなた方は、自衛の軍隊だから憲法の範囲内の軍隊だと言うけれども、私どもはやはりもぐりの軍隊だ、やっぱり憲法に反した軍隊だ、反してつくられておる軍隊だというふうに思います。  そこで最後にあれしますけれども、問題はもう一つ、自衛隊だけとってみれば、小さなものだ、小さなものだと言うけれども、あなた方が口を開くごとに言うように、日米安保体制を基調としてわが国の独立と平和を守るということになれば、当然これは軍事同盟だし、日本の運命をアメリカの侵略的な極東政策に結びつけて、日本を再び軍国主義と戦争の道に引き入れることになるんじゃないかという問題です。現にわが国では、沖縄、小笠原を含めてアメリカの極東における最大の軍事基地、補給基地になっておるし、ベトナム侵略戦争に使われておる。この委員会でも明らかになったように、日本の軍用地図までそっくりアメリカに提供しているというような状態になっている。まるっきり一体になっている。そこが一番問題だと思うのですよ。その点どうなんですか。
  432. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 春日君に御注意いたしますが、私ども、もぐりの軍隊をつくっておりません。これははっきりしておきます。共産党が何とおっしゃろうとも、私どもは、もぐりの軍隊、かようなものはつくっておりません。これだけはひとつ訂正してもらいたい。同じ日本人じゃございませんか。その上、表現は一体何ということですか。私どもは憲法を守っております。ひとつはっきりしてもらいたい。
  433. 春日正一

    ○春日正一君 この問題では一番問題の対立しているところなんだ。私どもはあくまで、いまの自衛隊というものは憲法に違反するものだと確信しておりますよ。  そこで、実際政府のやっているところを見ても、政府が韓国、台湾、南ベトナムの反共かいらい政権との条約上の結びつきを固めて、アメリカのベトナム侵略戦争に現に加担しておる。中国敵視政策を強めておる。在日朝鮮公民の帰国協定の打ち切りだとか、あるいは学校教育法の改悪の問題だとかというように、アジアの社会主義諸国、民族解放運動に敵対する政策を強めておる。こういう政策が結局、諸国民との協和による成果を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにするというこの憲法の精神に全く反している。国際の緊張の中で一方の側に加担し、日本の最も近い周辺の国との関係を悪化させ緊張させるということになっておる。その面でも、政府のやっておるいまの政策というものは、憲法の精神に合致していないと私は考えるけれども、どうですか、その点は。
  434. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まことに残念ながら、共産党と私の意見が違っております。私は、りっぱに自衛隊が合憲のものであると、かように考えております。
  435. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 春日君に申し上げますが、持ち時間がありませんから、いま一問だけにお願いします。
  436. 春日正一

    ○春日正一君 日本の独立と平和をほんとうに守ろうというんなら、憲法のそういう規定に忠実に従って、日米安保条約を破棄して、自主独立の立場から、朝鮮民主主義人民共和国、中華人民共和国、ベトナム民主共和国など、日本の近隣の諸国との関係を改善して、極東における現在の緊張を緩和していく、この方向に向かってこそ、全力を尽くすべきであろう、このことを私は一言申し上げて質問を終わります。(拍手)
  437. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上で春日君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  438. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に、市川房枝君の質疑を行ないます。市川君。
  439. 市川房枝

    ○市川房枝君 最初に、ILO条約百号の批准と働く婦人の問題について、関係当局に伺いたいと思っております。  労働大臣は去る四月の十二日の全国婦人会議の開会式の席上で、ILOの百号の条約を批准するために、国会にその承認を要求する案件をこの国会にお出しになると言明されたそうですが、いつ御提出になりますか。また、その内容、趣旨を簡単に御説明願いたいと思います。
  440. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 本日の閣議で決定いたしましたので、早急に国会に提案することにいたしております。その内容の趣旨は、一九五一年ILOで採決されました同一労働に対して男女は差別してはならない、性別による差別をしてはならない、こういう内容の条約でございます。
  441. 市川房枝

    ○市川房枝君 この内容は、労働基準法の第四条の規定と同じなわけですね。それだから特にその条約承認する、批准するに関連して国内法を改正する必要はないと、こういうわけですか。
  442. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 労働基準法四条の精神と抵触いたしませんので、特に国内法を改正する必要がない、このように考えております。
  443. 市川房枝

    ○市川房枝君 そうだとしますと、もっと早く批准をなさってもよかったと思いますが、それをこんなにおそくといいますか、いまの時点を選んでどうしてなさるのか、その理由をちょっと伺いたいと思います。
  444. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 私も、いままでおくらしておった理由がわからないのであります。当然批准すべきものでございまするが、もう一つの理由は、明年国際連合国際人権イヤーという祝典がございます。それに関連いたしまして、ILO本部からモース事務局長の名によりまして、この未批准の百号も入りますように、これをひとつ批准を急いでほしいという要請もございました。しかし、根本は、もう日本の社会はILO百号を批准すべき時期に来ておる。特に女子の雇用者が九百三十万人にもなっておる実情から申しまして、この百号条約を批准することによりまして、女子の地位の向上、それから就職意欲の向上等をはかることが妥当と考えまして、批准をお願いをするということになったわけであります。
  445. 市川房枝

    ○市川房枝君 おくればせながら批准してくださることは、私どもとしてけっこうだと思うんですけれども、しかし、ただ批准しただけでなくて、婦人の側から言えば、それを日本が批准することによって婦人の地位が向上するといいますか、あるいは男女の同一労働に対しての同一の報酬が労働基準法では規定をしておるけれども、必ずしもいままでそれが厳格に守られていたんではなかった、こう私は思うんですけれども、その点はどう思いますか。
  446. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) ILO百号条約を批准するということの最も大きい理由は、いわゆる婦人の労働者、働く婦人に対する新しい国民全体の気風を高めるという効果が根本だと思います。それに伴って、いろいろ差別待遇をしておるようなものが少なくなっていく、労働基準法第四条の男女の同一労働同一賃金に対する違反は、現在のところは表に出ておるのは、去年で三十三件くらいでございますけれども、潜在的にはまだ日本の社会にそういう差別はかなり残っておる。そういう封建的な差別というものが、こういう百号条約の批准を一つの契機といたしまして、国民にいかぬというような理解が高まるものと期待をいたしておる次第でございます。
  447. 市川房枝

    ○市川房枝君 いま私のうしろで、差別待遇が労働省の中にあるんだとしきりにおっしゃっておりますが、私は、この批准の機会に、法律を改正する必要がないかもしれぬけれども、まあ行政措置といいますか何かで、この機会にひとつ批准されたことによって婦人が実質的にほんとうに喜べるような御努力を願いたいと思います。  ところで、労働大臣に続いて伺いたいんですが、現在並びに将来の日本においての婦人の労働者の日本経済の発展に対しての貢献をどのように評価しておいでになるか。また、現状においてのいわゆる働く婦人の問題点について、そういう点を伺いたいと思います。
  448. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 御承知のように、若年労働力が非常に減ってきておる現在の雇用情勢におきまして、婦人の労働力の貢献度というのはたいへんなものだと思います。最も大きく貢献しておるのは農村、御承知のように、三ちゃん農業で、御婦人がほんとうによく働いておられます。それから一般の雇用者の面をとりましても、二千万をこえる労働者の中で、すでに九百三十万人という膨大な御婦人の被雇用者が働いておられるわけでございまして、そういう面からいえば、今後の日本の雇用をささえるものは、中高年の男子と、そうして御婦人、むしろ若年労働力のウエートが、出生率の低下によりまして、より小さくなってきておるという、こういう時代でございますので、婦人の日本の経済の面における貢献度というのは非常に大きくなってきておると私は信じております。
  449. 市川房枝

    ○市川房枝君 労働大臣にもう一つ。そういう貢献を非常にしている働く婦人の障害となっているといいますか、問題となっている点はどの点にあるとお思いですか。
  450. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 日本は数年前までは、女子の就労者の平均年齢が二十八歳でございました。結婚までの腰かけ的な就労が多かったのであります。ところが、近時非常に変わってまいりまして、既婚者が約四十数%というウエートを占めてまいりました。そうなりますと、家庭の問題、特に子供を持っておられる方なんかの場合には、保育所とか託児所とか育児所とか、いわゆるかぎっ子というような、こういう問題が非常に大きい問題になってきておるわけでございます。こういった問題は、厚生省の当局におきましても、一万一千ぐらいありますが、本年度予算におきましても、これが拡充、充実に大いに御努力を願っておるわけでございまして、そういう面における婦人雇用面への隘路というものが大きく浮かび上がってきておるということは事実だと思います。
  451. 市川房枝

    ○市川房枝君 いま労働大臣が農村の婦人のことをおっしゃいましたが、農林大臣から、農村の婦人のことをちょっと伺いたい。
  452. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 農村は、御承知のように、だんだんと若い人たちの労働力が他の産業に流れておりますので、家庭婦人が農業において働かれる分野は非常に多くなりました。統計を見ましても、現在農村において働いておられる実際の方は、男子よりも婦人がやや多くなってきておるわけでありますが、そこで、この農村の御婦人の労働力をできるだけ省くことのできるように、われわれはその省力について努力をいたしておるわけでありますが、さらにまた、家庭生活の改善であるとか、環境設備の改善であるとか、そういうことに、御承知かもしれませんが、農業普及員というのが、男性と女性と両方ございます。ともども協力して、そういうことについてつまり、労働力を省き、そしてまた、環境をよくすることについて指導をいたしておるわけであります。
  453. 市川房枝

    ○市川房枝君 農村の婦人で特に問題になるのは、健康の問題なんですが、大臣もちろん御存じだと思うんでありますけれども、私、最近農村の婦人の健康調査を拝見して、非常に心配しておるんですが、これに対する対策というものはどんなものでございますか。
  454. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 農村の人々を含めての国民健康に関しましては、厚生省の所管でございますが、私ども農林省といたしましても、農家の生活改善を任務といたしまして、そういう面から、農民の保健のために努力をいたしておるわけであります。いま申し上げましたような生活改善普及の活動、そのほかに、いま申しました指導員等の努力によって、栄養指導、それから住居改善、家事労働の省力化、被服改善等を行なうなどいたしまして、生活水準の向上の一環といたしまして、農村婦人の保健について私ども農林省としては、あとう限りの努力をいたしておるつもりであります。
  455. 市川房枝

    ○市川房枝君 いま農林大臣から伺ったこと、私もある程度承知をしておるのですけれども、そういうようなことが生活改善課の負担になっているというか、健康調査もそうなんですが、あの課の仕事というか、私は非常に大きいと思う。現在の農村における婦人の勤労者の多いという点から考えても、農林省自身はそういう問題でもっと考えていただきたい、予算はほとんどふえていないし、農林省のそういう態度に対して私は少し不満がありますが、こまかい点はまた適当な機会に申し上げることにしたいと思います。  厚生大臣お見えになりますか。――さっき労働大臣からも、農林大臣からも、働く婦人が、子供を持っている人たちが多い、そうすると、託児所、ことに乳児保育所の必要があるということをおっしゃいましたけれども、現在厚生省がそういう問題を所管しておいでになりますけれども、その必要なだけの保育所なり乳児保育所がありますか、それを伺いたい。
  456. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) お説のとおり、婦人が職場につくという傾向がだんだんと大きくなって、したがいまして、既婚の婦人がやはり職場につくということに相なってまいります。既婚の婦人が職場につくということになりますと、当然厚生省としてこれを留意すべきことは、既婚の婦人は必ず子供さんが、乳幼児はじめ子供さんがこれに伴うということと、それから婦人自身の健康の管理と申しますか、健康を保持する、この二点が厚生省としてはこれを留意していかなければならないことだと思っております。  そこで、その婦人労働に伴う子供さん、特に幼児、乳児といったようなものに対しましては、これはどうしてもその保育所というものを整備してまいらなければならないと思っておりますが、そこで、いま御質問の保育所が十分あるかどうか、こういうことなんでありますが、まだもちろん十分ではございません。
  457. 市川房枝

    ○市川房枝君 いや、私は現在の数を伺っている。その要求に対して満たしているかどうか。要求はあるけれども、それだけできないのだというか、その点をちょっと伺いたいのです。
  458. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 現在保育所は一万一千六百五十五カ所ございますが、現在なお四千カ所ばかり不足しておる、こういうことでございますので、これをできるだけすみやかに充足できるように、昭和四十二年度から年次計画を立てまして、国庫補助あるいは国民年金の特別融資等によって整備をしていこう、こういうことで鋭意つとめておる次第でございます。
  459. 市川房枝

    ○市川房枝君 いま厚生大臣から、ふやすことに努力をしていただいていることを伺ったのですが、まあちょっと前は、厚生省の考え方は、むしろ、保育所をつくれば、かえって婦人が家庭から出ていく、それで、むしろ、家庭に婦人をかえそうということで、保育所をふやすということに対して、むしろ消極的であった、家庭家庭ということを言って、児童局――家庭を児童局の上にくっつけたりしてなすっていたような傾向があったと思うのですが、しかし、現在はそうでなくて、前向きの態度で考えてくださるのは非常にありがたいと思うのですが、総理、いままでのあれをお聞きくださったと思うのですけれども、私は、都市においても、農村においてもというのですか、婦人が労働力として非常な貢献をしている、こういうような現実というものを見ていただいて、それで、それはもう日本としては、どうしても婦人が家庭にかえるとかなんとかということはできないので、だから、そういう人たちは、しかし同時に、ほかに家庭、育児という任務を持っているわけなんですから、二重の負担になるわけです。両方完全にやろうと思っても、なかなかできない、結局、家庭がおろそかになる、あるいは子供がおろそかになり、両方やろうとすれば、結局、健康を害するということになってきていると思う。そこで私は、この問題は、つまり、現実のそういう婦人の状態を踏んまえて、そうして厚生省だ、労働省だ、農林省だと別々に考えるというのでなくて、むしろ、総合的に具体的に計画を立てていただいて、どんなに働く女の人たちがいま困っているか、苦しんでいるかという状態を解消していただきたい。それが私は、政府がいま直ちにやってくださるべきことであって、婦人を家庭にかえす、そうすれば非行青年問題なんか解決するなんていうなまやさしいことではないのであって、そういう点の認識をひとつ改めていただいて、この問題についてのひとつ計画を立てていただくといいと思うのですが、いかがでしょうか。
  460. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 市川君から先ほど来各大臣と質疑応答をなさいまして、私もかねてから、婦人の地位、また、その価値を、意義を十分認めておるほうの男でございますが、いまのお話で一そう明確になりましたので、今後とも、ただいま仰せになりましたような諸点について積極的に取り組むことにいたします。
  461. 市川房枝

    ○市川房枝君 次は、牛乳の問題を伺いたいと思います。  物価の問題の一つとして、いま主婦や母親の間で大問題となっておりますのは牛乳の問題でございます。牛乳の値上げの問題です。公取は大メーカー及び小売り業者の一斉臨検をやったようでございますが、その理由あるいは結果なんか伺えたら伺いたいと思います。
  462. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) お答え申し上げます。  四月の初めに、二つの県の牛乳商業組合で価格協定の上、小売り価格を上げたという疑いがございまして、これ、まず審査に入りまして、それから四月十三日でございましたか、乳業の大手メーカー、それから全国小売商業組合連合会、あるいは全国牛乳協会といったもの、こういったものに対しまして、卸売り価格、あるいはまた、小売り価格の全国的な価格協定があるのではないかという疑いを持って審査に入ったわけでございます。ただいまのところ、審査の過程に属しますので、詳細に御報告するわけにまいらないわけでございますけれども、結局、当初は、従来は牛乳につきましては、農林省の行政指導による価格指導が行なわれたのですが、それが今回は、行政指導というものは価格の抑制よりも、むしろ、価格の引き上げのきっかけをつくる誘因となるおそれがあるというので、国民生活審議会の消費者保護部会で御提案がございまして、それにのっとって農林省で行政指導をはずされたということでございます。行政指導をはずされますと、これは自由競争によって価格がきまるべきものでございますので、もし、その間に価格協定というものがございますれば、これは独占禁止法違反とこういうことになりますので、審査に入ったわけでございます。
  463. 市川房枝

    ○市川房枝君 経済企画庁長官がおいでにならないので、農林大臣に伺いたいのですが、牛乳を安くといいますか、豊富に国民に提供するのはやはり農林大臣の責任ですね。今度の牛乳の値上げの問題は一体妥当だとお思いになるかどうか、それをひとつ。
  464. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 最近のなま乳生産の停滞ということをバックにいたしまして、なま乳の生産者団体と、それから各乳業者との間で昭和四十二年度の飲用向け乳価を一升当たり十二円引き上げるということに話がついたわけでございます。で、まあその了解を契機にいたしまして、卸、小売り価格も引き上げようという結果になりまして、この間におきまして、ただいま公取委員長のお話がございましたように、私どもいままで指導価格という制度をとっておりましたけれども、審議会では、さようなことに行政府が手を出さぬほうがいいという御意見もあり、それから御婦人団体などでも、やはりそういう指導価格制というものがあるから上がるのだと、こういうお話もありましたので、これを撤廃いたしました。そこで今度は、自由に価格形成がされる筋合いのものでございますから、生産者、乳業者、それから小売り業者、三者がいろいろにお話し合いをなさって今日のようなことになったと思いますが、市川先生御存じのように、ただいま肉の値段が非常によくて、わりあいに牛を飼っている人が引き合わないものでありますから、つい大事な牛乳を出してくれる牛を殺して肉牛に回してしまうような傾向が出ましたので、私どもとしては非常に心配をいたしまして、何とかしてこのなま乳生産である乳牛を保護するということを考えなければならないということで、近く法律案も提出いたすことに本日の閣議できめていただきましたが、外国から買ってまいりまする乳製品の国家があげておる差益をその酪農業者に援助するというようなことまでして、そうしてなま乳の生産をふやそうというような次第でございますし、市川先生もおっしゃっていらっしゃるように、生産者は保護しなければならぬということはもうわかり切っておることでございますから、そこで小売りの段階で、流通機構を何とか改善して、価格を上げないようにしようではないかということでいろいろ骨を折りましたわけでございますけれども、今日のような情勢になってまいりましたのは、牛乳につきましては、御承知のように、他の消費生活物資の割合からいたしますというと、三年間ほど押えられておりましたので上がっていないのであります、その上がり方のパーセンテージを見ますと。したがって、やはりなま乳の生産意欲を増進するという意味では、若干の引き上げがあることはやむを得ないのではないだろうか。そこで、もうこれからは流通機構をうまくして、消費者に安定した価格で供給しなければならぬということに全力をあげて、私どもは指導いたしておるような次第でございます。
  465. 市川房枝

    ○市川房枝君 生産者といいますか、酪農者に必要な値上げは私どもやむを得ないと思うのですけれども、しかし、いまお話しのように、消費者の側からいいますと、やはり農林省が、牛が少なくなりそうだというか、なったら早く補充するとか、あるいは酪農者に飼料が高くなって生産費が高くなるといえば、飼料を何とか安く供給するようなことも考えていただくなりして、そうして安い牛乳を提供していただけるように骨折りいただいてしかるべきなんです。もっとも、いまの農林大臣でなくて、前の農林大臣の責任になるかも知れません。けれども、これはすぐというわけにいかない、そのときが二年なり三年なりかかるでしょうから。でしょうけれども、一般の私どもとしてはそういうふうに考えるわけなんですが、消費者の団体ではこういうことを言っているのですが、その中間のメーカーですね、大メーカーが少しもうけ過ぎている、それに対して農林省はむしろメーカーの側について、メーカーの言いなりになっているのだというような不平を私ども聞くのですけれども、そんなことはどうなんですか。
  466. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) そういうことはあり得ざることでございますが、乳業のメーカーが、特に大手メーカーが全体のうちの五〇%以上を占めておりますけれども、決算上安定的な利益を計上して、現在一割二分の配当を行なっておるわけでありますが、市川先生御承知のように、一般の消費者がやはり消費者という立場でもう少し勉強していただくことも大事だと思うのです。なぜならば、なまの生一本の牛乳よりも加工乳のほうが売れるのですね。したがって、加工乳のほうがもうかるものですから、そういうほうをすぐに要求するというような傾向すらあるわけでございます。私は、やっぱりそういうことでなまの牛乳のほうではもうかりませんけれども、それに若干の手を加えた乳製品のほうの利益でかなりの利益をあげていると、こういうことを感じられるのでありまして、しかしながら、私どもといたしましては、乳製品について、御承知のように、畜産振興事業団で外国品を買い入れて、その差益の出ますものについて国家がいろいろなことをいたしておりますからして、そういう立場で、メーカーの人たちにも、この人たちの社会的な立場をよく理解していただいて、かりにも、いまあなたの言われたようなことのないように指導いたしてまいりますが、これからも注意してまいりたいと思います。
  467. 市川房枝

    ○市川房枝君 まあ消費者がもっと勉強しなければとおっしゃっておりましたが、それはなるほど消費者のほうにも足りませんけれども、しかし、現在のこの商売主義といいますか、消費者には、いわゆるマスコミでもっててんでんかってに宣伝をされて、どれが一体正しいのか、そしてその間の一体値段はどれが正当なのかということなんかを信用ができないといいますか、教えられる機会がないで今日に来てしまっているので、だからこれも私はやっぱり婦人たちの努力はもちろんです、婦人たちはほんとうはもう一銭でも安いものを買おうとして、八百屋なんか何軒も見て歩いてそうして買うということはやっているわけなんですけれどもね。やはり私は、消費者の教育といいますか、そういうこともやっていただかなきゃならない。それで今度まあいままでの農林省が指導をした価格をきめていたことをやめて、自由競争にしたのだと、そして消費者と業者とメーカーとで協議をして値段をきめるとかなんかおっしゃっていたのですが、これは消費組合があれば私はそれはいいと思うのですけれども、しかし一般の大衆の婦人はそんなことを言われたって一々配達する小売り店の牛乳屋と話したって、てんで向こうは受け付けてくれないし、飲まないわけにはいかないしということで、それが何だか突き放されたような意味でみんな少し不満に思っておる状態なんです。で、牛乳は、これはきょうび子供や病人はもちろん一般の国民にとってもこれば主食の一部分になってきておりますので、まあお米とまではいかなくても、私はある程度それに準ずるような扱いをやっぱりしていただいてもいいんじゃないか、こういうふうに考えて、安くていい、うまい牛乳を主婦に提供していただけば、それこそ佐藤総理の人気は一ぺんに上がってまいりますので、この物価の問題は、実際いま主婦たちがみんな一番頭へ来ておる問題でございますので、たまたまいま牛乳が問題になっているので私はこの問題を取り上げたのですが、ひとつその点は、政府はなお一そうよろしくお願いをしたいと思います。総理、何か……。
  468. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 物価の問題は、全般の問題として政府に課せられているただいまの重要な政治課題だと、かように思っております。その物価全般ではなくして、ただいま話題になっております牛乳の問題、これはもう、今後米に次ぐ主食的な地位を牛乳が占めるだろう、かように私も思います。したがいまして、子供だけの問題ではない、おとなの問題でもありますので、農林省におきましても、特に、今後牛乳の需要がうんと大きくなるだろう、そういう意味で、全般的な供給を円満にするようにいろいろ苦心しておる最中でございます。さらにまた、それが日常の生活に及ぼす影響等を考えると、関係の業者をして、消費者の求めに応じ得るように、さらに流通機構、その他消毒方法等々につきましても、新しいものをくふうしていかなきゃならない、こういうことで、せっかくいま勉強中でございます。
  469. 市川房枝

    ○市川房枝君 次は、政治資金の規制の問題について二、三お伺いしたいと思います。  自治大臣は、選挙制度審議会の答申どおりを法文化するとしばしばおっしゃっておりますが、答申の中にこういう文句がありますね。「政党は、できるだけすみやかに近代化、組織化を図り、おおむね五カ年を目途として個人献金と党費によりその運営を行うものとし、当審議会は差当り次の措置を講ずべきものと考える。」というふうにあるんですが、この点は、法文にはどういうふうに盛り込まれているんですか。
  470. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) ただいまお読み上げになりましたような文句でございますが、政党の組織化、近代化につきましては政党の努力にまつことにいたしまして、審議会がさしあたりとるべき措置として以下掲げておりまするものを成文化いたしたいと考えております。
  471. 市川房枝

    ○市川房枝君 いや、私は立法の上でどういうふうにと申し上げたんですが、それはもう入っていないんですわね。
  472. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 入っておりません。
  473. 市川房枝

    ○市川房枝君 私は、ほんとうはそれについては、五年と、こう書いてあるんで、少なくとも五年ぐらいの時限立法にしないと、審議会の意思はやはりそれに盛られないことになるのじゃないかと思うのですけれども、それはどうですか。
  474. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 同じことを繰り返すようでございますか、しばしばお答え申し上げましたように、審議会の答申の中で書かれていることは、政党はおおむね五年を目途として、こういうことを、近代化、組織化をはかるべきである、そうして審議会としてはさしあたりこういうふうに考えるというような言い方でございまして、近代化、組織化につきましては政党の努力にまつ、また、それを国民は監視されておるだろうという意味で、いわゆる時限立法等のことをとらなかったわけでございます。
  475. 市川房枝

    ○市川房枝君 総理に伺いたいんですが、総理は、この委員会でのほかの委員の方の質問に対して、政治の浄化は至上命令なんだと、今国会で成立を期したいと、暗にそのための国会の会期の延長もあり得るといったような御答弁がございましたが、もっとも、きのう、きょうの新聞によりますと、ちょっと怪しくなってきているみたいなんですが、それはともかくとして、現在起草されている法文の内容で、どの程度政界が浄化され、国民の政治への信頼が取り戻せるとお考えでしょうか。
  476. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 端的に申しまして、どのくらい政治についての不信が取り戻せるかと、こういうお尋ねでございますが、選挙制度審議会にお願いいたしました際にも、とにかく国民の信頼を高めなきゃならない。そういう意味で、私どもに対してどういうようにしたらいいだろうか、こういう諮問をいたしたのであります。その諮問が出てまいりましたので、これは他の問題といろいろ関連を持つだろう、かように思いますけれども、とにかく選挙制度審議会がまずこれを取り上げておりますし、その意味における緊急性も私どもわからないではございませんので、先ほど来藤枝君がお答えしたように、政府といたしましては、これを尊重して、そうして御審議を得て、できるだけすみやかに成立さしたいと、かような考え方でございます。
  477. 市川房枝

    ○市川房枝君 私は、数年来政治資金の調査を実はしてきましたこと、総理も御存じであると思いますが、その私の結論を申し上げれば、これは選挙制度審議会の答申の前文のところにちょっと書いてあったんですが、政党は党員の党費とそれから党を支持してくれる個人からの寄付によって運営すべきである、ところが、現在は財界や労組の大口寄付に依存しているから、政党は結局頭でっかちで足が非常に弱いといいますか、そういうものになってきて、金との悪因縁がつき、そこから黒い霧も出てくるということになってきている。だから、私は現在、いわゆる現行会社法あるいは労組からの寄付をすぐ禁止すると混乱におちいるとか、それはもう不可能なことなんだと、こういう議論もあって、それはとうとう答申の中に入りませんでしたけれども、私は、少し苦しくとも、早くそれをやることによって、そして個人の寄付をもう少し集めいいような、私は税制なり何かの優遇の措置を講じ、あるいは国民にもやはりそれぞれ自分の支持する政党に参加するようなふうにして、そして私は、政党政治を確立するということが日本の民主主義政治に一番大事なことではあるまいか。だから、どうしても政党を確立するのには、私はやはり大口の寄付に依存していれば、そうするとやはり党員もあまりふやさないというか、あるいは党員からきちっと会費を取り立てるということもしない、そうすると、やはり党員意識というものができないのだ、そして、それが続けばだんだんそういうふうになっちゃうのです。私は、時がたてばたつほどかえってやりにくくなるのだ。だから少しでも早い機会にそうすることのほうが、日本の将来にとって非常に必要だと、実はそういうことを確信をしておるわけでありまして、それをいつも申し上げておるわけなんですが、で、これは私は自民党にも申し上げたいのですけれども、社会党にも、民社党にも私は同様に申し上げたいわけでありまして、これはまあ何も法律によらなくたって、党自身がそういう決心をなさり、そういう決定をなさればできることでありまして、それをすればするだけ私は早く政党が立ち直れるのだ、こういうふうに考えておるわけなんです。そこで私は、今度の選挙制度審議会の答申にも実は不満です。むしろ、後退したのだ、五、六年前の第一次及び第二次の答申のときのほうがまだ進んでいたのだ、こう言っていいと思いますし、これから提案されようとしておる改正案も、私は、現状とほとんど同様、多少の手続的な点ではそれは改善されている点はありまするけれども、実質的に言ってはほとんど同じなんだという意味においてあまり賛成できない。私は、むしろこういうふうな法律よりも、一ぺんできてしまうとなかなか改正ができにくいのでありまするから、もう少しいい規正法をむしろつくるほうがいいのではないかというふうに考えているわけでありまして、成立しないほうがむしろいいんじゃないかというふうにまで考えておる一人でございます。まあしかし、これは意見の相違でありましょうから、この問題についてあまり総理にこれ以上御質問は申し上げることはひとつやめたいと思っておりますけれども、私の考えだけを申し上げておきたいと思うのですが、何か総理にもし御意見がありましたら、伺わしていただきたい。
  478. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま市川さんのお話、私賛成する部分もありますけれども、ときに必ずしも賛成できない。今回、この法律などはできないほうがいいんじゃないかというようなことになっては、実は私はあまり賛成しないのです。ただ、民主政治のあり方として、政党がもっと成長し、政党中心に政治が行なわれる、そういう状況であってほしい、これは私どももそのとおりであります。ただいま、市川さんの特別な地位にかかわらず、政党をそこまで認めてくださるのはたいへん私はありがたく思い、これはたいへんいいことだと思います。ただ、日本の場合、議会政治あるいは政党政治が始まりましてからまだ非常に未熟だと思います。その意味において、政党自身もさらに気をつけなければなりませんが、国民に対しましても、政治に対しての協力体制をさらにもっと呼びかけなければならない。民主政治はまだできておらない、かように私、思うのであります。外国の例など見ましても、この政治資金規制、これが、ただいま御指摘になりましたような、党費あるいは純個人の協力、そういうことでまかなえるまでには、非常な紆余曲折といいますか、いろいろな歴史をたどってきております。私どもも、いま政党もちょうどそこへ来ているんじゃないか、そういう意味で、各方面からの批判もございますし、また政治意欲、政治知識も国民の間に高まりつつあります。したがいまして、そういうものを十分つかまえて、この際に、政界を浄化し、国民の期待するような方向に持っていかなければならぬ、かように実は思っているのであります。  で、誤解のないように申し上げますが、この政党政治におきまして、私は、いまの状況におきましては、いろいろ想像するより以上に金のかかるのが、実態でございます。これは個人の政治家が――市川さんは特別な立場でやっていらっしゃるから、たいへん浄財ばかり集めていらっしゃる。その他の政治家も、これまた浄財をもとに政治を運営していると思いますけれども、しかし、それにいたしましても、とかく多大の出費を必要としている。こういうふうな事柄は、これからはできなくなります。このことは、現実とわれわれの考えるものとの間に非常な格差がある。そういうものをなくしていかなければならないので、これはなかなかたいへんな問題だと、かように思っているのであります。私も、総理であり総裁であるという立場において、この政界の浄化はどうしてもしなければならないし、金のかからないような政治をしなければならない。しかしながら、現実はなかなかそこまでいくのにはたいへんな努力を要する。非常な重荷をいま負わされている、かように実は考えているのであります。  しかし、私は、選挙制度審議会の、もうすでに結論を出しておりますので、その答申を得た今日でありますから、あらゆる困難を克服いたしまして、そうして一歩でも二歩でも前進のできるようにぜひともしたいものだ、かように思うのであります。ただいまは、選挙制度審議会の答申では不満だ、かように言われますけれども、私は、この答申を実施するにいたしましても、現状との間のギャップ、これはたいへんなものがある、かように考えております。理想は理想でございますが、現実の問題として、一歩二歩浄化の方向へ進めていきたい、かように思います。
  479. 市川房枝

    ○市川房枝君 おことばを返すようですけれども、総理、政治には金が要る、これは池田さんもおっしゃったのですけれども、それは私にもわかりますけれども、しかし、いまの政党なりあるいは派閥なり、それのお金の使い方を調べてみますとずいぶん浪費があるのですよ。あんなに金は要らないと私は思う。もらった金だからああいうふうに使うのだ。だからそこらにも問題がありまして、無条件に政治は金が要るということを私はどうも肯定ちょっとできないのですが、次は、政治家と税金についてちょっと簡単に伺いたいと思います。  まず、国税庁長官に伺いたいのですが、この五月の一日に、全国の税務署から、四十一年の申告の所得が五百万円以上をこえる人たちのリストが発表されました。で、歳費等の増加したせいもあってか、リストに載った議員が四十年の三倍の四百九名に増加したとして、その氏名あるいは金額まで掲載した新聞がございました。しかし、国民の多数はまだやっぱり政治献金等の収入で申告漏れがあるんではないか、これだけというはずはないんだと、歳費、手当だけで勘定しても五百万円ちょっと欠けるだけなんであって、だからもう十万円ぐらいちょっと別な収入があれば五百万円の上に出るのであるからというふうなことを申しておりますが、国税庁長官はどういうふうにお考えになりますか。
  480. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お答えいたします。  お話しのように、五月一日から十五日間、所得五百万円をこえる人の申告所得の公示をいたしたのであります。これにつきましてはいろいろの御批判がございます。ただ私どもといたしましては、現在は三月十五日までに申告していただきましたものにつきまして、まず税額の計算に間違いがないかどうかということを確かめる申告審理というのを、今月一ぱいくらいまで続けております。その申告審理が終わりましたあと、申告された所得がはたして適正な所得であるかどうかということの調査をいたすことになっておるのであります。そういった調査をいたす前の段階におきまして、この申告が正しいかあるいは少ないかというような予断を持ったことを申し上げることは差し控えたいと思うのであります。申告の内容につきまして、調査した上で、もしその内容が少なければ修正申告を出していただくなり、あるいは更正の措置をとるなり、何らかの措置をとるのはけっこうでありますが、その前に、あらかじめ予断を持ったことは申し上げかねるのでございます。
  481. 市川房枝

    ○市川房枝君 まあそれならば御無理はないと思います。こうした政治資金ですね、政治家個人に入ります政治資金は雑所得として必要経費を差し引き、その残額に課税をするということになっておるのですね。その何を必要経費というかについては、衆参両院の会計課からこまかい書類がまいりまして、私ども拝見しているのですが、大体その雑所得としてあった金額の何割といいますか、平均して何割ぐらいが費用として差し引かれておるのか、あるいは全額が費用として棒引きされることもあるのか、その辺はいかがですか。
  482. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 政治活動に伴います個人または法人からの収入につきまして、私どもとしましては雑所得として申告をしていただくというようにお願いいたしております。その雑所得の必要経費につきましては、公の政治活動に伴って支出をするものということで、お話のように、先般両議院の会計課の方に私どもの見解をお話し申し上げましたら、これをプリントにしてお配りになっておられるようであります。しかし、あれにはまだそれほど詳細に出ておりませんので、実は個別の問題といたしまして、いろいろその場合その場合におきまして、これが必要経費になるかどうか、非常にデリケートな問題がございまして、それらにつきましては、個別に国税庁あるいは国税局にお問い合わせいただいた上で御申告をいただくようにということを申し上げておるのであります。したがいまして、その収入に対して幾らが経費であるかということ、これはもう非常に千差万別でありまして、何割というようなことは申し上げることができません。
  483. 市川房枝

    ○市川房枝君 大蔵大臣にちょっと伺いますが、個人でもらった場合には課税の対象になりますね。政治家個人は政党、派閥、法人、個人からもらうわけですね。ところが、本人から申告がない限りはわかりませんね。どうやってつかまえますか。
  484. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 本人から申告がない場合でも、法人もしくは個人で献金をしたほうは申告はございますので、税務署で査定すれば、どこへどういうふうに支出しているということがございますから、結局これは税務署としては申告漏れとして、調査の結果更正申告を出してもらうというようなことになるのでございまして、全部これはわからないというものではございません。一方支出したほうの帳簿には載っておるのですから、これは申告漏れは結局やはり最後は正式に申告してもらうということになろうと思います。
  485. 市川房枝

    ○市川房枝君 帳簿に載っているだけじゃしょうがないのですね。やっぱりちゃんと届けてもらわなければわからないのじゃないでしょうか。でも法人はそういう届け出の義務がありませんね。そうすると、ちょっとわからないでしょう。それから個人が届け出とおっしゃったけれども、個人は届け出るのでしょうか。もらったほうは届ければ税金の対象になるのだけれども、わからないのじゃないでしょうか。
  486. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま税務署のほうではこの所得の調査をやっておりまして、法人の調査をやったときにどういうふうに政治献金が行なわれているか、寄付金が行なわれているかということはその帳簿から出てまいりますので、必ずその場合には、一方この寄付をもらったというほうの税務署に連絡がございまして、そちらの個人に申告が出ているか出ていないか突き合わせをいたしますので、申告は出ていないということになると、もらったほうの税務署から、これだけの申告漏れがあるから出してもらいたいというような連絡で、これは申告してもらうということになっております。
  487. 市川房枝

    ○市川房枝君 大蔵大臣のおことばを返してなんですけれども、それは法人のほうはそういう届け出をする義務はないのです。税務署もそれは一々受け取りをごらんになっていないのです。これは私が直接伺ったのですが、ただ計算して合計した数を紙に書き出したものだけであって、だからそれは届け出ようと思えば届け出できるのですよ。私はむしろ、だからこれは大蔵省のほうで法人が個人に、あるいはまあ政党、あるいは政治団体に出したのを私はちゃんと届け出るようにしてもらえばはっきりすると思うのですが、いまの法律はそうなっていないわけです。もらったほうが、政治団体は届け出ることになっていますね。だから個人の場合には私はまあつかまえようがない。ただ政治団体、派閥なり政党なり政治団体から、そのもらった場合にその政治団体が政治資金規正法によって収支の報告を届け出ますね。それを見ますると、そこに何のだれそれに幾ら金をやったというのが出てくるのですよ。そこでつかまるのですけれども、それを税務署が一体追跡しておいでになるかどうかなんですけれども、私はずいぶんそういうことを調べてみたつもりなんですけれども、きょうそのことをこまかくまであれできませんから、また適当な機会を見てしたいと思うのですが、そこで、もう一つ実は佐藤さんがここにおいでになるのですが、佐藤さんの派閥は、まあ四十年には政治講座というのがおありになったんだけれども、それが今度は名前が変わって育政会というのになった。それから前からの政経研究会というのがおありになる。それで私は四十一年の、昨年の二つの団体について個人の議員の方、現職の議員の方にお出しになった金を調べてみた。そしてそれと新聞に出ておりました届け出の金額と、こう並べてみたんです。たくさんありますけれども、時間がないから千万円以上の方々だけ八人だけですが、これは公になっておりまするから申し上げても失礼ではないかと思うんですが、衆議院議員の植木庚子郎さん、これはまあ二つのいまの団体から研究費、調査費、組織活動費という名目で一年間に五千百十万円お受け取りになっている。そして申告額は七百五十一万二千円。参議院の斎藤昇さんは四千二百万円、申告額は七百五十六万四千円。衆議院の西村英一さん、金額は三千七百万円、申告額は七百七十二万九千円。衆議院の木村武雄さんは二千九百万円、申告は五百四十一万六千円。参議院の郡祐一さんは千三百万円、申告は六百六十五万四千円。衆議院の久野忠治さんは千二百四十万円、申告は六百二十五万七千円。衆議院の塚原俊郎さんは一千万円、申告は五百四十四万九千円。参議院の田中茂穂さんは一千万円、申告は八百二十二万二千円でございます。それで、この方々は申告されているけれども、そういう収入はほとんど実費で出ちゃって、課税の対象――課税の中に幾らも入っていないことになると思うのですが、まあきょう、これはあんまりいやなことを私がここでほじくり出したことになるとお思いになるかもしれませんけれども、私は税金の問題は、国民には実際わずかな収入でも税金を取っているんですよ。ですから、議員も私は同様にやっぱり納税の義務を尽くすべきであり、それがやっぱり政治への信頼を取り戻すことになるのだと、こう思いますので、たまたま私が前からやっている政治資金の調査でこういうのが出てくるんでございますよ。それでちょっと御参考までに申し上げたわけでございますけれども、総理はこれをお聞きになってどうお考えになりましたか。
  488. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、いま佐藤派という派閥だと、こう言われますが、経理のことば私自身全然存じません。私自身が見てないんです。それでこれのいま言われました人たち、私が親しくしている連中でございますが、おそらく全部が自分の所得になっているわけじゃないのだと思っています。で、これを実際にどういうようになっているのか、さらに掘り下げてみないとこれはわからないんでございますけれども、ただいま、たいへん無責任答弁をするようですが、実際に存じ上げないものですから、ただいまのような状態で、たぶんそれらの人たちだけじゃないんだというような気がいたしますので、ただ思いつきを申し上げたわけであります。
  489. 市川房枝

    ○市川房枝君 まあいまの問題は時間がありませんから、そのままにしておきますが、大蔵大臣にお願いします。大蔵大臣はこういう派閥、特にさっきちょっと私申し上げたのですけどね、支出の面を見ますと、一昨年の暮れにちょっと私どもで支出の一部分を発表しましたけれども、ある派閥では一カ月に十六回会合し、その料亭に払った金額二百六十四万円を支出しているのです。それからマージャンだのゴルフだのボーリング等、全く政治活動と何にも関係のないことに浪費されている。それでこれが新聞に出ましたときに、大蔵省はそういう政治活動に関係のないことに対しては課税をすると、こうおっしゃっておりましたけれども、これは団体ですよね、政治団体ですね。今度議員の個人の政治資金に対しては課税をなさるような、所得としてですね、おきめになったんだけれども、そういう政治団体に対しての支出の内容、何に使っても一体かまわないのかどうか、大蔵大臣いかがですか。
  490. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 政党その他の政治団体は、税法上人格なき社団ということになっておりまして、法人格を持っておりません。そこでこれに対する課税をどうすべきかということについてはいろいろの御意見がおありになろうかと思いますが、現行法におきましては、そういった人格なき社団が収益事業を営んでおる場合に、その収益事業に伴う所得についてだけ課税するという制度になっております。諸外国のいろんな例を見ましても、そういった人格なき社団に対して、全部の所得に対して課税するというのはあまり例がないようであります。収益事業に課税するのはなぜかと申しますと、普通の法人が同様な収益事業を営んでおる場合に課税をする。その場合に人格なき社団であるからといってそれに課税をしないと、他の普通の法人との間の課税のバランスがとれない、こういうことで、そういった収益事業の所得に対して課税をするようになっておるのであります。したがいまして、政党その他の政治団体が収益事業を営まないで、個人または法人から寄付を受けて、それによってその支出をまかなっておるという場合には、その収入に対しては課税にならないという制度になっておるのであります。したがって、現在もそういう政治団体あるいはその他の人格なき社団に対しましては、一律に収益事業でない限り課税をしないという扱いでございます。
  491. 市川房枝

    ○市川房枝君 総理、そうすると、政治団体がそういう浪費をしているというか、政治活動でないことに金を使っていることについては、寄付をした財界なら財界の人がチェックする以外には方法はありませんね。けれどもまあ私は、そういうもらった金だからそういう使い方をする、自分のふところで飲んでいるんじゃないのだということですね。これが非常な私はやはり悪い影響を与えているのじゃないか、そこら辺もやっぱり大口の献金、非常にたやすく金が入ってくるということが、私は政治家の品性の上に非常に悪い影響を与えているのじゃないかということも考えるわけです。だから政治団体のいわゆる検査というのは、今度の選挙制度審議会からの答申の中でも、検査機関というものは入っていないのですよ。だから届けっぱなしでしょう。だから検査機関というのはむずかしいですけれども、しかしそれじゃいまと同じことですね、ある程度そういう審査機関があれば、私は別な意味においてやっぱり使い方を気をつけるということになりましょうけれどもね。自民党では何か現益機関を設けるべきだという御意見が党内で出てきているということを新聞で見まして、私はそれはけっこうだと思いましたが、いつの間にか消えちゃったのですけれども、せめてそういうことでも入れてくだされば、から言えばやはり私は歓迎すると思いますが、いかがですか。
  492. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いろいろ理想論があるだろうと思いますが、しかし、ただいまの現実は何かかけ離れております。先ほど全般的に私の所見を申し上げましたように、そういうものを一々克服して、初めて政界の浄化ができるのだと思います。前途まことに多難でございますが、そういうものと真剣に取り組む、そうして一歩、二歩近づいていく、こういう努力をしなければならぬ、かように思っております。
  493. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 市川君、もう時間がありませんから。
  494. 市川房枝

    ○市川房枝君 時間がきましたから中止したいと思うのですが、総理、私の言うことを理想論理想論というふうに片づけなさるみたいですけれども、まあそういう点もあるかもしれませんけれども、私は決して実行のできないことを言っているわけじゃないのであって、これは選挙のやり方もそうですけれども、いま申し上げていることなんかも、私はただその現状に引きずられて、現状がこうだから、困難だからということであっては、いつまでたってもだめなんで、やっぱりそこに一つの勇断が必要じゃないかということを考えるわけであります。
  495. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上で市川君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、総括質疑通告者の発言は全部終了いたしました。総括質疑は終了したものと認めます。     ―――――――――――――
  496. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に、明日以降の日程につきましては、先般委員長及び理事打ち合わせ会において協議いたしました結果、お手元に配付いたしました要領により取り運ぶことになりました。  すなわち、一般質疑は五日間とし、質疑総時間は五百六十一分とし、各会派への割り当て時間は、自由民主党及び日本社会党はそれぞれ二百二十一分、公明党六十八分、民主社会党、日本共産党及び第二院クラブはそれぞれ十七分といたしました。質疑順位は総括質疑と同様とすることといたしました。  以上御報告いたしましたとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  497. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  次回は明日午前十時開会することといたしまして、本日はこれをもって散会いたします。    午後六時四十七分散会