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1967-05-10 第55回国会 参議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十日(水曜日)    午前十時三十一分開会     ―――――――――――――    委員異動  五月十日     辞任         補欠選任      小平 芳平君     二宮 文造君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         新谷寅三郎君     理 事                 白井  勇君                 西田 信一君                 日高 広為君                 平島 敏夫君                 八木 一郎君                 亀田 得治君                 鈴木 一弘君     委 員                 青柳 秀夫君                 井川 伊平君                 植竹 春彦君                 大谷 贇雄君                 岡本  悟君                 梶原 茂嘉君                 熊谷太三郎君                 小林  章君                 小山邦太郎君                 任田 新治君                 内藤誉三郎君                 林田悠紀夫君                 二木 謙吾君                 船田  譲君                 増原 恵吉君                 宮崎 正雄君                 山下 春江君                 吉江 勝保君                 吉武 恵市君                 占部 秀男君                 岡田 宗司君                 北村  暢君                 小柳  勇君                 瀬谷 英行君                 羽生 三七君                 藤田  進君                 矢山 有作君                 山本伊三郎君                 吉田忠三郎君                 黒柳  明君                 向井 長年君                 春日 正一君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  田中伊三次君        外 務 大 臣  三木 武夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  剱木 亨弘君        厚 生 大 臣  坊  秀男君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   菅野和太郎君        運 輸 大 臣  大橋 武夫君        郵 政 大 臣  小林 武治君        労 働 大 臣  早川  崇君        建 設 大 臣  西村 英一君        自 治 大 臣  藤枝 泉介君        国 務 大 臣  塚原 俊郎君        国 務 大 臣  二階堂 進君        国 務 大 臣  福永 健司君        国 務 大 臣  増田甲子七君        国 務 大 臣  松平 勇雄君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        総理府特別地域        連絡局長     山野 幸吉君        行政管理庁行政        管理局長     大国  彰君        行政管理庁行政        監察局長     稲木  進君        防衛庁防衛局長  島田  豊君        防衛庁教育局長  中井 亮一君        防衛庁装備局長  國井  眞君        経済企画庁調整        局長       宮沢 鉄蔵君        経済企画庁国民        生活局長     中西 一郎君        経済企画庁総合        計画局長     鹿野 義夫君        経済企画庁総合        開発局長     加納 治郎君        外務省アジア局        長        小川平四郎君        外務省北米局長  東郷 文彦君        外務省経済局長        事務代理     鶴見 清彦君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        大蔵省主計局長  村上孝太郎君        大蔵省理財局長  中尾 博之君        文部省管理局長  宮地  茂君        農林政務次官   久保 勘一君        農林大臣官房長  檜垣徳太郎君        農林省農林経済        局長       大和田啓気君        農林省農政局長  森本  修君        農林省農地局長  和田 正明君        農林省畜産局長  岡田 覚夫君        食糧庁長官    大口 駿一君        林野庁長官    若林 正武君        水産庁長官    久宗  高君        通商産業省貿易        振興局長     今村  曻君        通商産業省重工        業局長      高島 節男君        運輸省港湾局長  佐藤  肇君        運輸省鉄道監督        局長       増川 遼三君        運輸省自動車局        長        原山 亮三君        運輸省航空局長  澤  雄次君        郵政省人事局長  山本  博君        建設大臣官房長  鶴海良一郎君        建設省計画局長  志村 清一君        建設省都市局長  竹内 藤男君        建設省道路局長  蓑輪健二郎君    事務局側        常任委員会専門        員        水谷 国一君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和四十二年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十二年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十二年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、小平芳平君が辞任され、その補欠として二宮文造君が選任せられました。     ―――――――――――――
  3. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 昭和四十二年度一般会計予算昭和四十二年度特別会計予算昭和四十二年度政府関係機関予算、  以上三案を一括して議題といたします。  昨日に続き質疑を行ないます。矢山有作君。
  4. 矢山有作

    矢山有作君 最初に建設大臣にお伺いしたいんですが、けさの毎日新聞を見ますと、建設省国土地理院が、「米軍要請によって、ひそかに旧日本陸軍参謀本部さえも作らなかったような特殊な日本軍用地図を三十五年から五カ年計画で作成、米側に渡すとともに、ひきつづき現在まで各種測定資料を提供しつづけている。」とありますが、これ御存じですか。
  5. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 私もけさ新聞を見たばかりでございます。したがいまして、できるだけいろいろ事情を聞いてみたわけでございますが、まあこの新聞に書いてあるようなことでございます。しかし、まだはっきり真相はつかめません、どういう目的でどういうふうにしたのか。ただ、いまの地理院長の言うことには、この新聞にはことさらに軍用軍用と書いてあるが、普通の五万分の一の地図とあまり変わらないんだが、それで普通の地図には、五万分の一ではグリッドが入れてないのでありますが、これにはグリッドが入れてある。これは地理専門家に言わせますと、グリッドを入れたほうがいいというのと、入れないほうがいいというのと、いろいろな議論があるのであります。入れておるから直ちに軍用だということではないので、普通の地図以外にあまり出ないと思うというような意見でございまするが、なお詳細にわたりましては調べたい、こう思っておる次第でございます。
  6. 矢山有作

    矢山有作君 これは建設大臣、あなたの所管でしょう。それが新聞見るまでわからぬというのは、一体どうしたことですか。
  7. 西村英一

    国務大臣西村英一君) そういうところがまだいろいろ調査をする期間がないので、私ども地理院の詳細なことまで全部まだ知るだけの勉強が足りてないというのは、あなたのおっしゃるとおりであります。
  8. 矢山有作

    矢山有作君 建設大臣勉強不足を認められたわけですから、大いにこれから勉強しておいてください。それからなお、軍事的な目的はあまりないんだと言っておりますが、あなた新聞読んだというんだから御存じでしょう。時間がないから私言いませんが、この新聞を見ると、これはやはり純軍事的な目的が非常に強く出ている、これはやはりこれを見た者に対しては否定できない感じ方ですよ。
  9. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 私もそう軍事的なことはよくわかりませんが、まあ地理院長からいま聞きまして、聞いたことを率直にお話ししただけでありまして、その点は今後もよく調べてみたいと思っておる次第でございます。
  10. 矢山有作

    矢山有作君 それじゃ建設大臣、早急に調べて、この具体的な内容を明らかにしていただきたい、よろしいね。
  11. 西村英一

    国務大臣西村英一君) わかりました。調べます。
  12. 矢山有作

    矢山有作君 防衛庁長官きていますね。こういうふうな純軍事的な目的でつくられる地図が、外国援助を受けて、そうして外国のためにつくる、こういうようなことを防衛庁立場からどう考えますか。
  13. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 私もけさ初めて新聞で知ったのであります。しかしながら、日米安保体制のもとにおいて、日本の平和と安全を守られてある。自由を尊重し平和を安定するという総理の考え、政府、また国会におきましても、防衛二法をつくっているし、安全保障条約にも批准をなさっておるわけでございまして、そういう見地から見ますというと、日米関係は、ほかの国の関係とはいささか趣を異にしておるということを矢山さんにおいても御了解を願いたい次第でございます。
  14. 矢山有作

    矢山有作君 そこが防衛庁長官、問題なんですよ。日本独立国でしょう。独立国なら、日本防衛庁がやるというなら話はわかりますよ。しかし、外国軍隊が、幾ら安保体制のもとにあるといいながら、援助を受けて、そういったものを、資料を調製して、外国にそれを渡すということが、純粋に法的な見地から見ていいのですか。あなた安保体制を持ち出されるけれども安保体制は、現在ある安保体制、これが将来どうなるかということはわからぬでしょう。それを考えたことがありますか。
  15. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 日米関係は、やはりほかの国の関係とは趣を異にしていると思います。矢山さんの御承知のとおり、日本各種施設もございまするし、また基地もございまして、その目的日本の平和と安全を急迫不正の侵略に対して守るということでございまするから、国土のあらましのことも、アメリカにおいては、やはり共同防衛でございまするから、知っておるということは、政治的に見まして、当然ではないかと私は考えておる次第でございます。  地理の詳細の作製のことは、国土地理院の主管をする建設省において御答弁があると思いまするが、政治上の考え方は、私はしかるべきことと考えておる次第でございます。
  16. 矢山有作

    矢山有作君 それじゃ防衛庁長官、一体、こういう地図作製まで米軍の金でもって援助を受けてつくって出すというのは、具体的な法律的な根拠はどこにあるのか。  それからもう一つは、あなたの考え方には、日米安保体制というものが永久に存続するのだという観念がある。この日米安保体制というものは永久に存続するかどうかわかりませんよ。現在はそうなんです。しかしながら、永久に存続するかどうかわからないでしょう。そういうところに独立国日本が、防衛庁みずからつくる、そして必要な範囲において米軍と、あなたたち安保体制前提にしているのだから、必要な限度において米軍と、それを利用するというなら、それは話はわかる。ところが全部一方的にアメリカ軍の費用でつくられる、全部資料アメリカ軍に渡っている、そういうようなことと、安保体制永久に続くものでないということを考えたら、一体どうなるか、そんな無責任答弁はない。
  17. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 総理からも外務大臣からもいつもお答えいたしておりますとおり、日米安保体制というのは、国際連合において世界の平和を、日本といたしましては、日本の平和を保障し得る施設がりっぱにでき上がったと認めるまで、その期間までは存続するということを第一項に、十条の第一項に書いてあるわけでございまして、相当長期間である、こういうふうに私どもは考えておる次第でございます。
  18. 矢山有作

    矢山有作君 法的根拠のほうを言ってください。  それからあなたは相当長期に存在すると言うのだが、それは現在の政権が存続する限りそうかもしれない。しかし日米安保体制を打破しなければいかぬという強大な勢力があるということも御存じでしょう。それを前提に考えたら、私が先ほど言ったような理論が成り立つだろう。ノーズローでこんな問題を処理していくということがありますか。
  19. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 条約憲法と同等、あるいは憲法に次いで尊重しなくてはならぬというのが、これは法学の通念でございまして、そういう立場におきまして国会において批准を承認されたわけでございまするし、その十条の第一項という私は基礎を申し上げておるのでございまして、その十条第一項によりますというと――二項は十年経過した後は云々ということは書いてございますが、一項は、国際連合においてその安全保障理事会等におきまして、日本の平和が維持されることが保障されたということを日本と米国とが相互において認めるときまで存続すると、こう書いてあるわけでございまするから、私はいまの国際情勢の現況に照らしてみて、相当長期にわたるものである、こういうふうに考えるのは法の解釈上――条約も法でございまするが、法の解釈上しかるべきことであると、こう考えておる次第でございます。
  20. 矢山有作

    矢山有作君 それはあなたの主観的な考え方だ。これは幾ら議論したって行き違いになるので、総理の見解を聞きたい。
  21. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまお尋ねの問題は、私もいま新聞を読んで知ったばかりでありまするが、したがいまして、これはよく調べてみなければ結論を申し上げるわけにいかないのでございまするが、日本防衛のために必要なもの、それが日米安保体制のもとに必要だということなら、差しつかえないと思っております。
  22. 矢山有作

    矢山有作君 結局ね、いまの答弁を総合して考えると、あなたたちは、日米安保体制のもとで政治最高責任者である者が知らないうちに、いろんな事実が進行していっておるということですね。きのうも問題になったあの学会に対する米軍援助の問題にしても、今度のきょうのこの問題にしても、あなた方が何も知らぬうちにどんどんいろんな問題が出てきよる。こんなことであなた、日米安保体制安保体制ということだけで、ほんとう日本の安全を守るんだという主体性がどこにあるんですか。
  23. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 一々やっているこまかなことまで全部は私ども知りません。しかし大本は、国民から幾ら言われましても、ちゃんと日本の国の安全を確保する、これについて総理としての責任はとっております。
  24. 矢山有作

    矢山有作君 あなたはそう言われるけれども、これは小さなことと言われる。小さなことと言われるが、私は小さなことだと思わない。これは日本全土にわたっての、軍事的な立場からどうこれを処理するかという問題は、全部詳細に出ておるわけですよ、このとおりとするならば。小さな問題ですか、これ。これはたいへんな問題ですよ。
  25. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は小さな問題とは申しません。一々という、一々何もかも私が知っているというものではございません。
  26. 藤田進

    藤田進君 関連。まあ次回には総理調査すると言われるんですから、それもまあ方法でしょうが、ただ私ども感じますのに、事ここに至り表面化したために、これを正当化するためには、総理みずからも、これはもう当然なことだと言わざるを得ないから言うというような、そういうことであってはならないと思います。たまたま米軍ですけれども安保体制であろうとも、一部局が、建設省国土地理院ですね、この地図を出す、一部局が他国軍隊から要請されて、そのまま行政最高首脳である――所管はまあ建設大臣でしょうが、あるいは関連しては防衛なり、あるいは外務なり、問題によっては総理なり、総理、わかりますか。総理なり、他国軍隊から要請を受けて、いやしくも国土のすべてを図面にしですね、というような問題については、これはもう常識上からも、一部局が引き受けて、金になればそれをやってのけるということが、国家行政上これは問題があると思いませんか。私はそのことを直感いたします。金を出せば、安保体制であるからということのみならず、どこの国だってそれはいいことになります。安保体制と言われるけれども、これは基地の提供とかね、いろいろそれはありましょうけれども、測量して、すべての国土をまかしてしまうというような地図なんというの、これは少し行き過ぎじゃないでしょうか。
  27. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまとにかく調べてみないことにはよくわかりません。あるいは三十四年時分、何か特別に政府の申し合わせがあり、それから命令が出ておるのかどうか、そんなところわかりませんが、しかし、いま藤田君が指摘されておるように、この日本安保体制だということで、簡単に事務当局だけで重大な問題がきまっておるというようなこと、これには私どもも、そういうことであれば十分注意しなきゃいかぬことだと、かように私思います。だから、そういう点も含めて、よく取り調べて、これに対する態度をきめることにいたしたいと思います。
  28. 矢山有作

    矢山有作君 それではね、詳細な調査資料を出していただいてから質問いたしますが、総理ね、あなた、まあその何もかにも知らぬうちにできておる、こういうようなことじゃ、あなた責任済まないので、もう少しよく安保体制というような重要な問題については研究しなきゃいけませんね。  じゃあ次の質問に移ります。  まず第一に、ベトナム問題についてお聞きしたいのですが、この間の委員会で、三木外相のほうから、ベトナム戦争の見通しについてということで、ジュネーブ協定精神に立ち返って、十七度線、ここで一応北は共産、南は非共産、そういうことで、競争的な平和共存、これをやる以外には和平の可能性はないと、こう言っておられるのですがね。外務大臣ジュネーブ協定精神というのを、どういうふうに解釈しているのですか。
  29. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ジュネーブ協定では、一応暫定的にですね、十七度線、これを、まあ二年後に自由選挙ということになっておりまして、しかし、この暫定的に十七度線というもので一応のこの安定をはかろうというその精神というものは、その点を私はさしたものでございます。
  30. 矢山有作

    矢山有作君 ジュネーブ協定精神は、暫定的に軍事境界線をこしらえるというところにあるのですか、それで解決をはかろうというところにあるのですか。そんなものはジュネーブ協定精神じゃないですよ。ジュネーブ協定ほんとうのねらいというのは、軍事境界線は、政治的な、領域的な境界線とは考えない。これは暫定的なものだ。将来南北ベトナムの総選挙をやって統一を目ざすのだと、こういうことをはっきりいっているでしょう、最終宣言の中で。それがジュネーブ協定精神じゃないですか。暫定的な境界線だと、そこで戦争だけ終わらせるのだ、これがジュネーブ協定精神じゃありませんよ。
  31. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 矢山君の言われるとおりであります。そうして、それを一応の暫定的な国境線に、境界線にして、そうしてベトナム統一をはかろうということであったわけです、そのジュネーブ協定は。しかし、一応現在のところでですね、すぐにこのベトナム状態が、ベトナム人によってベトナムをどうするかということをきめられる段階では私はないと、一応だから暫定的なものであるにしても、十七度線を境にして東西の対立というものが停戦休戦、そうして安定した基礎の上においてベトナムはどうするかということは、ベトナム人がきめるべきものだと私は思いますが、いま行なわれておるこの戦争を、そんならばベトナム人にまかしたらいいといってもですよ、南と北とが戦っておる事実は否定することできないですから、一応ここで停戦休戦という事態をもたらすためには、そういうところで話をつけるよりほかにはないのではないか、これは私の現実的な観察なのでございます。
  32. 矢山有作

    矢山有作君 それはあなたの答弁からしたら、そういうことにならぬです。十七度線で戦争を終わらして、あなたは、競争的な平和共存南北、これをやらせる以外に方法はないと言っているわけでしょう。そうすると、このことばから出てくるのは、十七度線をいわば一つ国境として、南北に異なった両方政権を認めるのだ、十七度線で固定するのだという考え方になりますよ、これは。そうならないですか。
  33. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、あの不幸な戦争を一日も早く終わらすためにはどうかというところが私の出発点であります。だから将来において、一応二つの政権があることは私は事実だと、政権といいますか、違った政治の機能が北と南において働いておるということは、これは事実でありますから、この現状というものを根底からくつがえすということで平和な解決が見出されるとは私は思わない。一応はこれで、一方は共産政権であるし、一方は共産政権に反対する政治勢力であるわけですから、これをお互いにみな安定さす、両方を、その基礎において、そうしてベトナムの将来をもっと安定した基礎の上で考えなければ、いますぐにといったところで、なかなかそういう状態ではないわけですから、永久に固定した考え方を私は持っておるのではない。しかしある相当な、この間のベトナムの問題についてのジュネーブ協定にあるような、二年くらいというような短期間だとは私は思わない。だからある期間はやはり両方が、政治信条が違うのですから、それによって国内建設をやってみる、その間に安定してくるならば、ベトナムの将来をどうするかということは、ベトナム人が決めるべきもので、これを永久に固定化した考えはない。しかしかなり、この間のジュネーブ協定のような二年くらいだというような短期間だとは私は思わない。ある程度の期間を置いて、もう少し安定した基礎で、南と北とが、共産主義共産主義でないのと、違うのですから、根本的な政治信条が。それによって国内建設をやったらどうだ、平和共存といいますか、信条の違ったことによってお互い国づくりを競争したらどうだ。そうして両方が安定した基礎の上において、ベトナムをどうするかという永久の問題はベトナム人がきめるべきだ、これが私の考え方基礎にある考え方でございます。
  34. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、外務大臣、あなたの言うのは、要するに停戦するために、あくまでも十七度線は暫定的なものだ、それで停戦をやらせるのだ、こういう考え方解釈すればいいのですか。
  35. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは、私は一日も早くあの不幸な戦争を終わらす、これはもう絶対の命題だと思うのです。そのためには、やはり一応十七度線というものを、暫定的なものであっても、あれを境界として話をつけるよりほかに、現実的な解決方法はないではないか。それは間違っているのだ、ベトナム一つだと、こういっても、現実には大きく二つの政治機能が働いておるという事実は、もうこれは否定できないですから、そこで一応の平和をもたらして、そのあとでどうするかという問題については、ベトナム人がきめるべきではないか。いまの場合、平和をもたらすのに、ほかに方法はないではないか、こういうのが私の考えの基礎にあるものでございます。
  36. 矢山有作

    矢山有作君 外務大臣、私はベトナム賠償のときのいろいろな会議録を読んでみたのですが、あなたのほうから、二年間で総選挙をやって統一することができるとかできぬとかいうようなことは、言うべき問題じゃないのじゃないですか。これは、そのベトナム賠償の論議あときも、このジュネーブ協定が問題になったときに、それは日本の知ったことじゃないという答弁がでているわけです。そうするとあなたは、日本外務大臣として、そういうところまで触れるべきじゃない。要はジュネーブ協定を尊重するなら、これはやはりあくまでも暫定的な軍事境界線として、そうして将来総選挙をやって統一をするのだ、これを日本政府としても、その立場に立って問題を考えるべきだ。二年間でできるとかできぬとか、そんなことを言う権限があるのですか、日本政府に。
  37. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは矢山君は私の言うことを聞き間違っておる。私は、二年間で何も総選挙をやれとか、そんなことを言っているのじゃない。
  38. 矢山有作

    矢山有作君 そう言ったでしょう。
  39. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは前のジュネーブ協定にはそうなっておるけれども、二年間で選挙が行なわれなかったのですから、事実。私は総選挙をやれとか何とか言っておるのではない。私の関心は、ああいう不幸な戦争がいつまでも続いておることに何とか終止符を打てないかということが、一応十七度線ということで、そうして停戦をやり、お互い戦争でなくして、エネルギーを国内建設に向けるような状態に持っていけないかということで、そのあと総選挙をやるとかどうするかということは、それはベトナムがきめるべきで、日本外務大臣が言うべきことばではない。私は申し上げておるのではない。
  40. 矢山有作

    矢山有作君 誤解があっちゃいけませんから……。総選挙云々という問題はあなたは言われなかった。しかし、二年間で片がつく問題じゃないということを言われたわけでしょう。二年間で片がつく問題じゃないということは何を根拠にして、じゃ二年間で片がつく問題じゃないか。
  41. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ジュネーブ協定の場合は二年間で……。
  42. 矢山有作

    矢山有作君 それが頭にあるから言ったわけでしょう。
  43. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) あったわけです。しかしながら、二年間のうちにジュネーブ協定そのままを今度のいわゆる停戦の場合に適用することは無理だと私は思うのです、そのままでは、時代も違っておるわけですから。だけれども、ジュネーブ精神というものは、とにかく平和をもたらそうということがジュネーブ協定精神であった。いまの場合に平和をもたらすという方法としては、やはりジュネーブ協定のそのままをここへ持ってきて、そうして二年後に自由選挙をやって、ベトナムの将来の方向をきめるということは、この場合無理ではないか、あのような戦争をやったわけですから。したがって、戦争、長い間のあのようないきさつがあるわけですから、だから私は、ジュネーブ協定そのものが、今度の場合にそのままが当てはまるとは私は思っていない。ただしかし、ジュネーブ協定精神である、戦争でなくして和平をもたらす、和平をもたらすために、まあ一応暫定的に十七度線というものを考えて、和平をもたらしたそのあとは、いろいろ条件がついていますよ。そういう精神というものが今度の場合においてもこれは頭に入れなければ、なかなか解決の道はないのではないかというのが私の申し上げておる点でございます。
  44. 矢山有作

    矢山有作君 だから、私はことばじりをとらえるようですがね、二年間で解決するとかつかぬとかいうことを、あなたが言う必要はないというのです。ジュネーブ精神を尊重するんなら、そんな問題を、ジュネーブ協定が二年の間に総選挙をやって統一をするんだということを言っておるから、それがあなたの頭にあるからそういう問題が出てくる。そういうような考え方をしておると、へたをすると十七度線で固定化しようということに発展していきかねない。だから、ジュネーブ協定精神を尊重しようというなら、とにかく戦争を終わらす。そのために十七度線で一応戦争を終わらすのだ。これだけなら理解ができる。あなたのついている、うしろからついたのは、これは蛇足という、そういう蛇足をつけてものをしゃべらないように……。  それから次にお伺いしますが、それではベトナム賠償のときに、ベトナム政府の合法性についていろいろ論議がありましたね。あの私は論議にきょう触れようとは思いませんが、あのときの考え方というものは、いまも変わっておりませんね。
  45. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私もその当時は外務大臣でなくなって、どういう論議が行なわれたか、詳細な速記録を読んだわけじゃありませんが……。
  46. 矢山有作

    矢山有作君 結論は知っているでしょう、結論は。賠償するときに、どういう考え方で賠償をしたかという結論は知っているでしょう。
  47. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 賠償をした以上は、ベトナム政府を認めて賠償をしたので……。
  48. 矢山有作

    矢山有作君 どういう形で、それも知らない……。
  49. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) とういう形で――それはどういうことですか。もっと、どういう点はどうだと、具体的に質問をしてください。
  50. 矢山有作

    矢山有作君 ベトナムの賠償をやるときに、ベトナム政府の性格というものが、法的な地位というものが問題になったわけです。そのときの考え方は変わっていないかというのです。そのときあなた現職の国会議員でおったはずだ。
  51. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いわゆるそのときの政府考え方は、今日においても変わっていない。
  52. 矢山有作

    矢山有作君 どういう考え方だ……。
  53. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) とういう考え方――ベトナムを合法の政権と認めて、そうして日本は……。
  54. 矢山有作

    矢山有作君 どういうふうな合法の政権……。
  55. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは、そういうふうな、そのときになれば法的な解釈は、それは法制局長官でもいたします。
  56. 矢山有作

    矢山有作君 外務大臣がそれを知らぬというのじゃ話になりませんね、これは。外務大臣が知らぬからこの間のような発言……。
  57. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと申し上げますが、速記の都合もございますので……。
  58. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ベトナム政府を認めて今日も賠償協定もやるし、日本との間にも……。
  59. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記の都合もございますので、発言を求めてから……。
  60. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 外交関係を持っているんですから、それ以上そのときのことをいろいろ聞かれても、一々私が答える必要はないと思います。
  61. 矢山有作

    矢山有作君 じゃ、法制局長官から……。
  62. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) ベトナム政府ベトナム全体を代表する合法政府として認めておるわけでございます。
  63. 矢山有作

    矢山有作君 外務大臣よくわかったかね。ベトナム全土を代表する政府としてベトナム共和国を認めて、そして賠償をやった、それぐらいのことが外務大臣答弁できぬようなことで外務大臣はつとまらぬ。そういうことが答弁できぬようなことだから、こういうふうな誤解を受けるような答弁が平気でできるんです。これをこのまま読んだら、十七度線でこれはもう南北の分割を固定化するという思想ですよ。そういう軽はずみな発言が出るというのは、いま条約局長が言ったようなことを勉強していない証拠だ、局長よく教えておきなさい。  次は、もう一つ三木さんにお尋ねしたいんですが、南北ベトナムのあなた競争的平和共存と言って、アメリカとそれからハノイとの間の和平のために双方ができるだけ理解し合わなければいかぬ、理解し合って和平に持っていけるように橋渡しの役をつとめる、そのために外交的にできるだけのことをしたい、こう言ったわけですね。この橋渡しの役をつとめるのに、あなた現在の日本の状況で具体的にどうしようというんですか。
  64. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 日本は、日本国民の全体は、一日も早く平和をもたらそうということを、日本は望んでいるわけです。こういうことで、この意を体してどういうことを――お互いに信用し切れないんですから、お互いの不信感情があるんですから、一体、アメリカとしても、ハノイとしても、どういうことを考え、どういうことでベトナムの平和をもたらそうということを、外交機能を通じて、できるだけわれわれとして努力して知り、そういうことによって何か和平のきっかけをつかめることはないかという努力をすることは、当然のことだと考えております。
  65. 矢山有作

    矢山有作君 あなたの善意はいいんですよ、ところがいまの日本状態というのは、南ベトナム政府とそれからベトナム米軍に対して、政府なりあるいは民間ベースで直接、間接の軍事物資を含んだいろんな援助をやっているんでしょう。そしてベトナム戦争の遂行に協力しているんだ、日本政府は。そういうような態度の中で、橋渡し役がつとまると考えていますか。そこが問題なんです。
  66. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは世界各国をごらんになっても、いろんな立場の国があるわけです、世界各国に。それでもみな一様に何とか平和をもたらせられないかと動いておる。その国々によっておのおのの立場はある。立場があるからといって、何にも平和の問題に関心を持たぬということで、責任が果たせるとは私は思わない。だから、おのおのの立場はありますよ。その立場の中で、だめじゃないかと言って、こう言ってかかれば、みなそれぞれの立場があるわけですから、難くせをつければいろいろ私はつくと思う。それでも、そういう条件の中で、何とかして平和をもたらすことが、早く平和をもたらすことができぬかという努力をすることは当然のことだ、私は、日本としてもそれは日本の行動には制約されたものもあるでしょう。その制約の中で最大限度の努力をすることは当然のことだと考えておるのでございます。
  67. 矢山有作

    矢山有作君 外務大臣、あなたはただ形式的に橋渡し役をするんじゃないんでしょう。ほんとうに和平を招来しようという気持ちで橋渡しをするわけでしょう。それだったら、橋渡し役が効果的につとまるような状態というものを日本政府自体がつくり出さなければいけないんじゃないか。ただゼスチュアで橋渡し役をやるというなら、これは別ですよ。その辺はどうなんですか。
  68. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 矢山君はいろいろと、こう問題を、ゼスチュアとか何とかいろいろ考えて、ゼスチュアでやる必要は何もないわけです。しかし、だれが考えても、アジアの一国として何とかこれはならぬかと、その間日本がやれる限界というものは、日本はおのずから制約はありますよ。あっても何とか方法はないだろうか、外交機能を通じてできるだけ各方面と接触して、第三国もあろうし、戦争当事国もあろうし、何とか接触して、これで話し合いの糸口を見出すようなことができるかといって努力をすることが、これはもう当然のことじゃありませんか。それをゼスチュアというなら、世の中の平和運動というふうなものは、そういうほうにいったならば、何もしないでいいというようなことになる危険がある。だから、あきらめないで皆がやはり全力を尽くすべきだ。
  69. 矢山有作

    矢山有作君 私は何もしないでいいと言っているんじゃないんですよ、何もしないでいいと。やることはいいですよ。やるんだけれども、何の効果も期待できないようなことをやっておって、橋渡し役をつとめるんだといって国会で言えますかというんですよ。橋渡し役をつとめるなら橋渡しをつとめるような状況に、立場日本を置かなければならぬ。第一、昨年の四十一年の五月三十一日、椎名外務大臣が参議院の外務委員会でこういうことを言っているんですよ。日本は純然たる中立国ではない。日本は米国と安全保障条約を結んでおり、したがって、日本は、北ベトナムアメリカ両国に対して中立的立場にない。日本は、安保条約に従って米国の行動に対して援助の義務を負った特殊な関係にある。こう言っておるわけです。こういう基本的な立場で、南ベトナムなりあるいはベトナム米軍に対して積極的な直接、間接的の援助をやっているわけです。そういう状態があって橋渡し役をやるという、そんな橋渡し役ありますか。橋渡し役をやるなら、たとえば、けんかを知っているその二人を仲直りをさせるなら、どちらの味方にもつかない、その二人の者に対して等距離の立場に立ってやらなければ、これは橋渡し役はつとまりませんよ。一方に加担して、戦争に手を貸して和平だ和平だ、一体何をやるんですか、具体的に。
  70. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 矢山君のように考えるべきじゃないんじゃないかと私は思う。たとえば、イギリスの立場を考えても、やっているんですね、積極的に。イギリスとアメリカとの関係でいえば、日本よりも深い面がある。それでもやはりあれだけやっておるじゃありませんか。カナダだってそうです。アメリカとカナダの関係というものは日本よりも深い関係です。だから、そういうふうにおのおのベトナム戦争が起こる前から、その国にはその国の立場というものがあるんで、ベトナム戦争が起こったから、橋渡しのために従来の国の方針を変えてしまわなければ、いろいろベトナムに対する和平の努力ができぬのだと私は考えぬ。従来の立場があっても、日本は早く戦争を終わらしたいと思っておることは事実ですよね。そのやはり国民の気持ちというものが、日本のいままでの立場、いろいろな制約はあるでしょう。それは私も認めておる。制約の中で何とかできないかといって努力をするのを、それは矢山君の立場でもしっかりやれと言うべきだし、それはだめだ、だめだ、こう言って、そういう水をかけるような、そういう考え方は私は賛成できない。
  71. 矢山有作

    矢山有作君 私は、だめだ、だめだと熱を下げているんじゃないんですよ。熱は大いに上げてやりなさい。ところがあなたは、カナダの何とか、イギリスの和平工作だと言われましたが、カナダやイギリスの和平工作が全然はなもひっかけられない状態だ。これは何ですか。日本の和平工作だって同じでしょう、和平工作だって。カナダやイギリスや日本の和平工作がなぜ全然相手にされないか。むしろ、かえって良心的な世界の各国から笑いものになっているという、その原因があなたわからないんです。けんかの仲直りをさせようというなら、けんかをやっている一方に加担して仲直りさせることができますか。加担してもらっていないほうの一方から見れば、どういう感じで見るか。これは単純な理屈ですよ。私は何も和平工作するなと言っているんじゃない。
  72. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私はその点について矢山君と全然違う。イギリスが世界の笑いものになっていると思わない。私は、やはりウィルソンが和平のための努力をしておることを高く評価している。敬意を表している。いかにも笑いものになっている――笑いものにしていませんよ。それはだれも、そんなに矢山君の言うように簡単にベトナム戦争が片づくならば、これはだれも人類は悩みはしない。何とかしてこれは方法はないかとして、そうしていろいろむずかしい中に入っても努力をするというところに、平和というものは前進するのではないか。みな初めからわかって、そんなに解決が簡単な問題ならば、紛争や戦争は起こらない。それを何とかして、むだだと思いながらも、その努力が積み重ねられて世界の平和が前進するのではないか。あなたのように、何でも、イギリスは笑いものだ、日本はゼスチュアだ、これでどうして平和が前進するのですか。むだであっても、何とかならぬかといって悩むところに平和の前進はある。その点はあなたの見解と私は違います。
  73. 矢山有作

    矢山有作君 大臣、あなたがそれだけ真剣に平和、平和といって考えるなら、なぜベトナムに対する戦争協力をやめないのですか。それが一番のもとでしょう。たとえ安保体制のもとにあっても、アメリカの侵略戦争というもの、これに手をかすということだけはやめなさい。これに手をかしておいて、アメリカが和平工作をやる、そのゼスチュアの陰に隠れて戦争拡大をやっていっておる。そのあと押しを日本がしておって、相手のほうが和平工作を受け入れますか。それが理屈ですよ。あなたの意見に、そうだそうだと言う者がおるけれども、それは両方で、二人でけんかしてみればいいのだ。あなたが仲裁に入って、たとえばAさんの味方に立って一緒にこん棒持ってなぐってやろうとかまえて、あるいはちょっとくらいなぐったかもしれない。そのときに、Bが仲直りの交渉に応じますか。あなたはBにとって敵です。そこを私は言うのです。和平工作をいけないとは言わない。和平工作やりなさい。やるのだが、大いにやるのなら、やる前の立場というものを明確にしてやらぬと、アメリカに全面的に加担した体制の中では和平工作はできないというのです、私は。そこの理屈があなたはわからぬというのです。そのくらいの理屈はわかるでしょう、外務大臣なら。
  74. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ベトナム戦争のために安保条約、こういうことをやめるというのは、そんなことは……。
  75. 矢山有作

    矢山有作君 やめるとは言っていない。
  76. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) やめるというのじゃなしに、日米安保条約というものは日本の大きなやはり安全保障政策からきておるのです。ベトナム戦争が起ころうが起こるまいが、これは日本安全保障政策の重要なやはり基調をなすものでありますから、その範囲内で日本ベトナムの和平などに動くということは――ベトナム戦争の和平のために従来の方針を変える、そんなものじゃない。これは日本の安全のやはり基本方針から出てきているのです。したがって、いかにも戦争加担、戦争加担というけれども日本は安保条約アメリカに協力はしなければならぬですよ。しかし、日本が現にベトナムに対して戦略的な前線基地ということではないのです。日本はそういうことで、安保条約による協力以上のことを、この戦争に積極的に加担して日本はやっているのではない。安保条約の当然くる協力というものは、これはしなければならぬ。ベトナム戦争のいかんにかかわらず、日本の安全のやはり基本政策からきているからであります。特にこのベトナム戦争に加担をして、そうして安保条約一つ条約上の範囲以上に出てこの戦争に加担しているというように日本立場を誇張することは、あなたの議論は、有益な議論とは思わない。
  77. 矢山有作

    矢山有作君 あなたの議論のほうがよっぽど有害なんで、私の議論のほうがもっと有益なんだ。私は、あなたは自民党きっての理論家だといって新聞に書いてあるのを見たことがあるが、案外理論家でないね。基本の理屈すらわからぬ。私は、安保条約によって日本にはなるほど義務があるでしょう。しかし、あなたの論法でいったら、安保条約があるからアメリカは何をやってもいい、やったことに対して全部日本がそれに協力しなければならぬ、これだったら日本独立国としての自主性はどこにあるのです。たとえ安保条約があろうと、アメリカのやっていることが不正であるというなら、それに私は協力しませんと、そんな不正なことには。このことがなかったら、あなた、日本の独立性とか自主性とかいうことは言えませんよ。安保条約のもとで、アメリカが何かやった、日本はそれに協力するのだ、これは全く盲従精神そのものじゃないですか。そんなことでは安保条約ではない、これは危険条約になってしまう。そう思いませんか。
  78. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 矢山君とは、いろいろの見解、根本的な違いがあって、安保条約を危険な条約とは思わない。日本の平和を維持するためにこれは大切な条約だと思っております。したがって、また重大なことは、何でもアメリカの言うことを聞くというわけではない。重要なことは、事前協議の条項もあるわけであります。安保条約というものが、何でもアメリカの言うことは全部聞くというものではない。安保条約の範囲内における協力でありますから、このことが非常に危険などころか、日本安全保障に対して果たしている役割りというものは、これは誤りなく評価することが適当であろうと私は思います。
  79. 矢山有作

    矢山有作君 あなたのような理論家といわれながら理論を持たない人とは、いくら議論してもすれ違いだ。私は、安保条約のもとにおける義務を果たす、義務を果たすと言うけれどもアメリカがやることに対して何でもかんでもあなたは協力しているじゃないですか。アメリカベトナムでやっている戦争に対しても、何も言わないで協力しているじゃないですか、そういうことではいかぬ。あなたは、そういうことを言うと、すぐ北からの浸透が何だかんだと言うでしょう――私のほうが先回りして言っておく。言うでしょうが、元来ベトナムというのは単一の国家ですよ。民族はきわめて一体性の高い民族です。それがフランス植民地支配のもとで分割された――分割統治された。それが終戦後ホー・チミンによって統一国家として成立宣言やったことは知っているでしょう。その後の具体的な経過というものは私は詳しく言いませんよ、時間がないから。しかし、その具体的経過というものをすなおに見詰めていったら、一体ベトナム民族の統一、独立――ジュネーブ協定で言っているベトナム民族の統一と独立を害しているのはだれかということはわかる。色めがねをかけて見るからわからない。あのベトナム民主主義共和国成立以来のあの経過というものを、あなたは事実に即してすなおに見なさい。そうしたら、アメリカのやっていることがこれはいけないということはわかるはずなんです。そうしたときに、日本のとる態度というものは、ほんとうにあなたが和平をやろうというなら、もう即時全面的米軍の撤退を求める、軍事基地の撤去を求める、このために日本が強い態度をとる以外にない。そういうような公正な立場に立たずに、色めがねでもって、アメリカは浸透があるから、その浸透に対して対抗しているのだ、こう言えば、ああそれはそのとおりですというのじゃ、これはまるで盲従じゃないですか。アメリカの言うことをあなたがかわりに宣伝しているようなものです。そんな立場に立っておって、和平工作というものは絶対できない。だから私は、あなたがほんとうにここで言うことがうそでないなら、平和工作をやろうというなら、安保条約の体制下にあっても、日本ベトナムのあの事実経過を見たら、アメリカの不正な戦争には協力できないのだという立場は明確に打ち出すべきだ。その姿勢がまず確立されないで、和平交渉というものは効果的にはならぬ。ゼスチュアとしてなら幾らでもできるでしょう。効果的な平和交渉にならぬというのだ。そうして、その態度をきちっと示して、しかる後に日本アメリカに対して求めるのは、ジュネーブ協定に従って、米軍の先ほど言った全面的な即時撤退をやりなさい、軍事基地を引き揚げなさい、そうしてあとはジュネーブ協定がきめているように、総選挙による統一を民族の自主性のもとにやっていくのだ、これをあなたアメリカに強く言わなければいけない。アメリカの言うことをかわりに宣伝しながら和平交渉できますか。そこに私は基本的なあなた方の態度の間違いがあると思う。
  80. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 答弁も要らぬとは思いますが、やはり矢山君自身も、あなたの言うことは絶対で、非常にやはりほかの議論は誤っているという、そういう歯切れよくいろいろお割り切りになりましたが、そんなことでベトナム問題が解決するなら、そんなに世界の人類みながあげてこの問題に頭を悩ますということではない。矢山君の言うように、みな割り切って、アメリカはこうだ、こうだ、そうして解決するなら、これは非常に簡単でありますが、現実はそうはいかないので、現実はそうはいかないところに、何とかこれを解決する方法はないかといって申し上げているし、また、根本的に安保条約は危険な条約である、いろいろ言われるあなたの主張の根底において、私は承服できない、平行線をたどらざるを得ない、そういうことでありますので、あまりにも非常に割り切って、イデオロギー的に割り切っていくことで現実の問題が解決できるとは思わない。だから、現実に即して外交は考えざるを得ない、これは私の立場です。
  81. 矢山有作

    矢山有作君 理屈というのは一つしかない。それをおとなぶったことを言って、周囲の事情がどうだの、何だかんだと言ってへ理屈をこねてやるところに、問題の解決を困難にする原因があるんです。問題の解決が困難になったら、原則の立場に立ち返る。そして原則の上に立って解決するしかないんですよ。その原則というのは、いまのベトナムに対するアメリカ戦争の中で、あの状態をどう認識するかという問題なんです。その認識の上に立って日本戦争協力から手を引くという立場が明確に打ち出されなきゃ、これはあなたがいくら和平工作、和平工作と言っても、どうにもならぬ。  最後に聞いておきますが、あなたは、ベトナムに関するジュネーブ協定精神というもの、つまり十七度線は暫定的な軍事境界線であって、国境的な意味も持つものでもないし、政治的な意味も持つものでもない、将来総選挙による統一を目ざす、このことをあなた確認できますか。
  82. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 一切のことはベトナム人がきめるべきである。一応のこの場合の平和をもたらすために、この十七度線というものは話し合いの基礎になるのだ。どうするかということは、日本外務大臣が言うべき問題ではない。それはベトナム人が将来きめるべきものだと思います。この場合の平和解決のためにベトナム協定というものを私は持ち出している。将来はやっぱりベトナム人がきめるべき問題でございます。
  83. 矢山有作

    矢山有作君 これはいくら議論をやってもすれ違いになりますから、もうこれでこの議論はやめますがね。あなたもう一ぺんよく外務省の事務担当官に話を聞いて、ベトナム独立以来の――一九四五年のベトナム民主共和国独立以来の歴史的経過というものを事実に即してすなおにながめて、そしてその上に立って和平工作を効果的にやろうという立場をあなたもう一ぺんつくり直さなければならぬ、根底から。いまの態度じゃ、ベトナム和平どころの騒ぎじゃない。かえって、ベトナム和平だ、ベトナム和平だと言って動くことが、戦争拡大のお先棒をかついでおるように見られて、世界の笑いものになりますよ。最後にこれは注意しておきます。  次に、武器輸出の問題でちょっとお伺いしたい。総理がこの間言った武器の輸出、こういった場合の武器というのは、その概念はどういう概念を持っておられるんですか。武器、その種類、内容、そういったものはどういうふうに考えておられるか。
  84. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、いわゆる軍用に使われるもの何でもみな武器だと、こういうのじゃなくて、非常に狭い意味で、大体火器を主とすると、かように実は考えております。
  85. 矢山有作

    矢山有作君 その狭い意味で火器を主とすると言って、そんなあいまいな答え方せぬでも、武器とはどういうものをいうかということは、あなた方がつくった法律にも明確になっているんだから、それを明らかにしてほしい。どういうものを武器といっておるのか。
  86. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま法制局長官からお答えさせます。
  87. 矢山有作

    矢山有作君 あなたの言う武器ですよ。法制局長官の言う武器じゃしょうがない。
  88. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) いますぐ資料が出てまいりませんが、武器については武器等製造法という法律もございます。そういう法律できまっているという御指摘がございましたが、そういうものに出ているものをおさしになるんだろうと思います。
  89. 矢山有作

    矢山有作君 なるんだろうじゃ困る、はっきりしてもらわなくちゃ。なるんだろうじゃ、これからの質問ができない。武器とは何をいうのか、それをはっきりせにゃ、なろうという不確定なもので質問を続けろといったって、それはできない。
  90. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいま申し上げましたが、御指摘の法律に書いてあるというようなことがございましたので、法律がすぐ出てまいりませんでしたので、とりあえず申し上げましたが、武器等製造法の第二条「この法律において「武器」とは左に掲げる物をいう。」というわけで、銃砲、銃砲弾、爆発物等の定義が一号から六号まで書いてございます。もし必要があればこれを読みますが、御存じのことだと思いますので、省略をいたします。
  91. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、総理が武器輸出と言った場合の武器は、航空機とか、艦艇とか、電子機器というものは一切含んでおらぬと、狭義の武器だと、こういうことなんですか。広い意味においては、航空機、艦艇、電子機器、これらを含んで武器と言っているんだと……。
  92. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はそこまでは含めて言わなかったように思っております。
  93. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、はっきりしてもらいたいんだ。防衛生産委員会では、武器としてこれはあげているんですよ、航空機とか……。
  94. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 矢山君、質問をしてください。
  95. 矢山有作

    矢山有作君 質問じゃない。はっきりしてもらったら、します。
  96. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 一応答弁がありましたからね、再質問してください。
  97. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 御質問の趣旨が十分につかめておりませんが、ただいま申し上げましたように、武器等製造法にいう武器の定義は、先ほどごく大ざっぱに申し上げました。ところで、それが輸出する場合の武器について、これは別に定義が私はなかったと思いますが、しかし輸出貿易管理令等には、武器がこうであるということはございませんが、その別表には、銃砲、これに用いる銃砲弾とか、爆発物とか、そういうのがございます。ただし、それが武器であるかどうかというようなことは、別に定義されておりません。
  98. 矢山有作

    矢山有作君 総理の言う武器を聞いてるんです。だから、いまのは答弁にならないんだよ。武器等製造法にいう武器なら、教えてもらわぬでもちゃんとここにあるんだから知っているんだ。総理の言った武器輸出の武器というのは、防衛生産委員会で言っている武器まで含んでいるのかと、あるいは戦略物資輸出承認云々という、これにある、それらのすべての武器といわれるものを、一般観念で武器といわれるものを全部含んでいるのかどうかと言っているんだ。総理が答えなきゃだめだ。法制局長官、しゃべってないのにわかるもんか。総理、うなずいただけじゃわからない。あんたが武器と言ったときに何を言ったか。武器の概念わからないでしゃべったのじゃなかろう。
  99. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) さっき狭い意味で言ったんです。
  100. 矢山有作

    矢山有作君 総理のを言うんだよ。重工業局長がしゃべったってだめだ。総理は武器とは何を言ったのかということだ。
  101. 高島節男

    政府委員(高島節男君) 武器の観念につきまして、先ほど法制局長官から御答弁ございました武器等製造法に基づいての武器の観念、これは国内における事業活動をどうしていくかという観点からの一つの定義でございます。それに対応いたしまして輸出貿易管理令の場合は、法制局長官の御説明のとおり、品目それ自身を武器の観念でくくった規制ではございません。これはいろんな意味での輸出の規制がございますからそうなっておりますが、一応それを広く網をかけまして、われわれが運用いたしておりますときの観念は、軍隊が使用いたしまして、直接戦闘の用に供するという観念で、仕向け地につきまして――これに紛争国等との問題がございますから、仕向け地について制約を加えて運用していくという体系に相なっておりますから、さよう御説明いたします。
  102. 矢山有作

    矢山有作君 総理の言う武器を聞いているんです。これは局長や法制局長官の言う武器を聞いてるんじゃない。総理は、武器と言ったらどういうものを武器と言っているのかということです。
  103. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどお答えいたしましたように、私は当時火器を主にして申しましたと、かように申したのです。いま、一体定義は何かと言われるから、答えてもらいました。
  104. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、総理の言う武器輸出の武器の中には……。
  105. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) あげ足とらぬでもいいじゃないか。
  106. 矢山有作

    矢山有作君 あげ足じゃないよ、これは重大な問題なんだ。総理の言う武器の中には、狭義の武器じゃなしに、いま重工業局長が説明したような武器を含んでいるのか、含んでないのか、これはあんた大切な問題ですよ。あげ足の問題じゃない。武器の概念がはっきりせぬのに、輸出云々できない。
  107. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私が、輸出その他で、一々会議で指導はいたしておりません。事務当局にやらしております。したがって、いま高島局長が答えたとおりに、これがいわゆる輸出対象として取り扱われるものでございます。私の答弁がいままで非常に狭かったらただいま訂正しておきます。
  108. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、武器輸出といって総理が言った場合の「武器」というのは、いわゆる武器等製造法にきめられておる狭義の武器ではなくて、ただいま重工業局長が説明したように、軍隊の使用するいわゆる武器と、こういうふうに広義に解釈するわけですね。
  109. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま高島君が答えたのが、ただいま輸出をする場合に一々その許可を要するものでございます。また、対象目もあるわけでございます。これはどこまでも運用上の問題で、その運用上の原則の問題だ、これは製造の問題じゃございません。
  110. 矢山有作

    矢山有作君 製造だとか製造の問題――武器輸出とあなたが言った場合の「武器」というのは狭義の武器じゃなしに、重工業局長が言ったような武器輸出という「武器」は広い意味の武器を言っているのですかと言っているのだから、そうであるとかそうでないとか言えばいいじゃありませんか。
  111. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そのとおりです。
  112. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、私は従来の状況から見て、総理は武器輸出という場合のその輸出対象になる武器の範囲を非常に拡大されたと思うのですよね。その武器輸出を積極的に拡大して進めようとする総理の真意はどこにあるのですか。
  113. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、日本の産業がただいま特別のものをやっているわけでもないので、ただいま申し上げましたように、わが国で使っておるもの、それを主体にし、あるいは同種類のもの、こういうようなものが外国から注文があればそういうものを送る、これは差しつかえないと思います。しかし、それにしても、特殊の場合にはそれに条件をつける、加えるのがこれは当然だ。たとえば、共産圏だとかあるいは紛争当事国であるとかあるいは国連で決議した国、そういうところへ日本が幾ら商売が自由だからといってどんどん送ること、これはよくない。だからこそちゃんと通産省がそういうことを許可する、こういうことにしてあるのです。
  114. 矢山有作

    矢山有作君 じゃね、通産省からお伺いしたいのですが、過去の武器の輸出実績を詳細に説明してください。
  115. 高島節男

    政府委員(高島節男君) お答え申し上げます。武器輸出の状況は、金額としましてはまことに少ない金額でございます。昭和二十八年から四十一年までの輸出承認を経ましたものの統計の調査を見てみますと、一番多かったのが四十年で三億一千五百万円。
  116. 矢山有作

    矢山有作君 品目、品目。
  117. 高島節男

    政府委員(高島節男君) という数字が出ております。それが最高で、あとはいずれも非常に少のうございます。  おもな品目は拳銃あるいは小銃、それに伴う銃弾というようなものが主体をなしております。三十九年から四十年、四十一年の品目はそれに尽きているように思います。
  118. 矢山有作

    矢山有作君 そうするとね、いままでの輸出実績から見ると、そしてまた総理のただいまの武器輸出という場合の「武器」の観念から見ると、これは武器輸出のその範囲というものが非常に拡大された。これは私が先ほど言うたとおりですね。それほどに輸出を拡大しなきゃならぬほど武器の生産能力というのは日本国内では拡大されておるのですか。私はどの程度拡大されておるのか、どの程度の武器生産能力を持っておるのか、このことを通産省のほうから説明願いたい。
  119. 高島節男

    政府委員(高島節男君) 武器も機械工業の一部でございまして、御承知のように、機械工業の能力というものは非常に把握がしにくうございます。たとえばプレスでありますとかいうようなものは各種機械の共用に相なってまいる分野が非常に多うございます。したがって、能力把握はなかなかむずかしゅうございますが、その余力と申しますか、操業度を見てみました場合には、他の装置工業等と違いまして相当それは余力があると認定できる分野もあるかと思いますが、その余力が他の機械の生産等に使われているという分野もありまして、民間で操業度が余っておるととかく言いがちなほどではないと思いますが、この実態把握は非常にむずかしいところであるかと思います。
  120. 矢山有作

    矢山有作君 そうするとね、いまの答弁で、まあ武器の生産能力がどのくらいあるかということは的確にはつかめぬ、しかしながら、武器の生産能力というものは非常に大きくなっておるということは事実だろうと思います。また、それだけの大きな武器生産能力があるから、首相はこの段階で武器輸出の問題を兵器工業会ですか防衛産業委員会ですか、そういうところから要請されて積極的に発言されたんだろうと思う。ところが、そういうような大きな力を、大きな製造能力を持った武器生産の施設というものを国内に持つということは、これは憲法第九条等の関係からしたらどうなるのですか、これは。
  121. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答えを申し上げます。  ただいま御指摘と同じような問題が実は過去に何べんか出ておりまして、先ほど申し上げた武器等製造法案、これがたしか昭和二十八年でございましたか国会で審議の際に、武器の製造そのものについて憲法九条との関係が問題にされたことがございます。その際、武器は戦力の構成要素になるかもしれないが、戦力そのものではないから、武器の製造を認めるということが直ちに憲法九条の問題にはならないという御答弁が実はされております。で、これと同じようなケースについて、これは実際のケースでございますが、裁判判例が出たこともございます。やはり同様の結論になっておりまして、ただいま政府としてこれと変わった結論を持っておるわけではございません。
  122. 矢山有作

    矢山有作君 私は武器等製造法のときの審議の問題については後ほど触れようと思いますが、しかし、いずれにしても、私はこの間総理は自衛のための武器なら輸出してもかまわぬのだ、こういうことをたしか言われたと思うのですね、これは衆議院の決算委員会で。ところがね、外国の自衛のための武器まで日本の兵器産業がこれをつくる、これは日本の自衛のために必要とする兵器生産力以上のものを持つということになるわけですわね。そうなると、この点から外国の自衛を引き受けるための武器まで生産するようなそんな膨大な兵器の生産能力を持つということが憲法上から見て私は問題があるのじゃないか、こう思うのですがね、どうですか。
  123. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 憲法九条をめぐる問題でございますので、問題の御提起自身はごもっともだと思いますが、武器の輸出についても同様に過去の国会でもやはり議論に出ております。昭和三十一年ごろだったと思いますが、その際もやはり製造、輸出それ自身が九条に違反することはないということを申し上げております。で、その理由は、やはり憲法九条で保持が否認されておりますのは戦力でございますが、戦力というのは、これはほぼ確立した解釈でございますが、人的、物的の総合組織力である、したがって武器そのものが戦力にならぬであろうというのが前に申し上げた一つの理屈でございますが、そのほかに戦力を保持しないのは、わが国――日本国民といいますか国といいますか、そういう場合を想定してのことでございますので、それが日本で製造されたものが外国のあるいは政府の所有になるかもしれませんが、しかし、それは憲法九条が直接に規定するところではないということでございまして、憲法九条と法的な関係においてつまり違憲であるとかいうような関係で直ちに憲法違反であるというようなことはやはり言えないのではないかというふうに考えております。
  124. 矢山有作

    矢山有作君 しかしね、私は憲法九条に直ちに違反であるとか違反でないとかと言うんじゃなしに、憲法九条のいわゆる軍備の問題にしても、幾ら拡大解釈をとりつつも、政府のほうは一定の限界を置いているわけでしょう、自衛力の範囲というものは。そうすれば、その自衛力をまかなうよりももっと過大な、とんでもない武器生産能力を持つということは、やっぱり憲法解釈の上からいって、自衛の限界というその線がいままで一本あったんだから、だから、それからいったら、やっぱりはみ出してくるんではないかと、そう私は思うんですよ。それで、そのことは、あなたが指摘された武器等製造法のときの国会の論議でも、やっぱりそれに触れる発言があるんですがね。武器の輸出の引き合いがあったって、やっぱり武器の輸出というものは限度があると、そんなに輸出引き合いに応ずるわけにはいかないんだというようなことが出ているわけですよ。そのことはやっぱり私がいま言ったような考え方に立っておるんだろうと思う。そうすると、私はやはり憲法上の解釈としても問題があると、こう言うんですよ。それを問題ないというんなら、どんどん輸出のための武器を生産する、無限大にこれは拡大されていくわけですね。そうすると、日本の産業体制は軍事体制偏重ということになりかねないおそれがある。それがはね返って日本の再軍備の本格的な強化、自衛の限界を越えるような再軍備強化にならぬとは言えない。だから、あなた方が憲法解釈するにしても、一つの限界というものはあるだろう、いままで置いてきたんだから。なぜそれをいまになって踏み越えたのか、それが問題だと思う。
  125. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 憲法九条の解釈にあたってきわめて重要な点は、いわゆる自衛ということを言いますうらはらの関係でございますが、限界というものが実は生命線だと言ってもいいくらいで、したがって、九条の問題が出ます場合には、いろんな関係において限界論というものが出てまいります。それは御指摘のとおりでございます。ところが、それでは、そう言いながらいまの説明はどうだということになりますが、まさにそれは憲法そのものが規定しておる、日本国民が戦力を保持しないというその関係に立つか立たぬかという問題があるからでございまして、自衛のために一定限度の部隊、つまり、ただいまで言えば自衛隊でございますが、自衛隊の保持についても、あるいは自衛隊の活動についても、それには限界がある。しかし、そういう関係に立たない場面については、おのずから憲法の直接の規定するところではない。先ほどもちょっとおっしゃいましたが、憲法九条に直ちに違反するというような関係ではない。あとはそういうような武器が盛んにつくられて外国に行くということになれば、そういう結果、御指摘のような結果になるではないかというような考慮――政策的考慮と言っていいと思いますが、そういうような面からの考慮はまた別途考えるべきだと思いますが、その政策の面におきましても、むやみやたらにいわゆる自衛隊の持つような戦力、兵力を越えるようなものを大々的につくってそれを輸出するというようなことが、いままで政府側から言われたことはかってなかったと思います。いずれにしても、それは政策の問題になるというのが、私の申し上げたいところでございます。
  126. 矢山有作

    矢山有作君 それは直接的な憲法関係ではないと、武器の製造は政策的な問題になると、それはわかりますよ。ところが、日本の政策というのは、やっぱり基本法である憲法というものを踏まえてやっておるわけでしょう。そうすると、そのワクをやはり政策の施行においても守らにゃならぬ。憲法精神なりワクを越えて施策が行なわれる、政策がとられるということが問題じゃないか。そうすれば、武器製造能力というものについてもおのずから自衛力の限度がありゃせぬか。それを越えて膨大な武器製造能力を持つということは、政策の面からも憲法との関連で問題が出てくるんじゃないかと、こう言ってるんです。率直にそれあなた言いなさい。そんな政策論争で逃げちゃいかぬよ。
  127. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま矢山君も御指摘になるように、これは憲法第九条の問題になります。これはそれとの直接の関係のないことは、私どももそう考えまするし、また、矢山君もそういうようなお気持ちでいられることと思います。ところが、日本の武器製造は一体どういうことをやっておるか、これは私が申し上げるまでもなく、自衛隊の使う武器の国産化、こういうことでやっておるわけでございます。したがいまして、私は、自衛隊を持つ以上、それが使っておるものをやはり国産されることが、経済の原則から見ましてまた当然のことだと実は思います。しかし、その同種のものが、今後外国から注文を受ける。大体そういう場合に考えられます設備は、非常に膨大な施設を持っている。こういう場合があればいつでも引き受けられますが、おそらくそういうような膨大な設備を持ち、余力があるにかかわらず、国内の生産を引き受ける、こういうような事業は私は大体成り立たないと思いますので、おそらく事業経営者とすれば、国内で消費される、また必要とするそういうものの生産の能力ということだろうと思います。ただ、たまたま同種のもので余力があった場合に、外国の輸出の引き受けをする、こういうものだと思います。それをどんどん外国に武器を売りつけると、こういうようなことをやるのかというと、それはやらないのです。だからこそ、それが、通産省におきましても、武器輸出については特に自分たちが許可する、こういうことでございますから、これはよほど限定されるものだと、かように思いますが、したがって、ただいま言われるように、これは輸出ができるからといって、わが国の防衛産業が非常に拡大をして、そして防衛産業の圧力によって自衛隊が強化され、そして戦争への危険があると、こういうような論理的発展は私は実はどうかと思います。実際の問題としては、どうもそこまで話が発展していくべきものじゃないというように思います。自衛のために使っている兵器は、日本の場合はそういうものでございます。だから、そんなもの差しつかえないじゃないか、かように言ったのは、やや表現が不十分でありましたが、私はただいまのように整理をしてお答えをします。したがって、防衛産業自身が、その外注――外国からの注文、これを予想して膨大な設備をするということは、わが国産業の経営者自体がそういうことをしないと思いますし、また、事前に注文がないのでして、そういうような設備をするということは考えられません。したがって、その設備が膨大になったから今度は自衛隊がますます大きくなる、あるいはそれが特別に発展する、これはどうもやや論理が飛躍するように思います。
  128. 矢山有作

    矢山有作君 論理は飛躍しません。あとでまたその問題は議論します。なお、外注予想をしてまで膨大な兵器生産の設備はやらぬのだということも、あとで問題にしたいと思います。ただ私は、憲法に直接的な関係がない云々と言われますが、武器そのものあるいは武器製造そのものは戦力それ自体ではない、しかし、構成要素にはなるわけですね。そうすれば、やはり構成要素である以上、平和憲法のたてまえからすれば、私は、武器の生産能力にしても、自衛の範囲内という限度があるだろうと、こういうふうに言っているのです。だから私は、憲法に面接関係があるとかないとかと言うよりも、そういうふうな解釈をとるべきじゃないだろうかと、こう言っているわけです。ですから、直接に関係があるといえばあるわけですよね。その解釈から出てくるんですから、関係がないといえば関係がない。私は関係があると考えるべきだ。戦力の一構成要素である以上は、これはやはり第九条と関係を持ってくる、私はこう解釈します。  次の質問に移りますが、私はひとつ聞きたいのは、二十七年の十二月、武器等製造法案が国会に提案されたときの提案理由、これは御存じでしょう。「海外に対する政治的配慮などの理由からあまりに製造能力が過大となることは厳に抑えなければなりませんので、武器製造事業は許可を要することとし、その製造能力を必要限度にとどめることにしました。」と言っておるわけですね、この考え方との関連はどうなるんですか、いまのところで。これは通産大臣にお伺いいたします。こういうことを国会答弁では言っておりながら、いまの武器製造能力というのは、もう輸出を積極的に進めてもいいような状態にまでなった。国会における答弁と、現実の政策とは大きなギャップがあるじゃありませんか。
  129. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) ただいま矢山委員がお述べになりました武器製造事業法によりまして、大体は武器の製造をどんどん許すというたてまえではないのであります。したがいまして、いま武器の製造を盛んにやっておるではないかというようなお尋ねのようでありましたが、そういうように売るための武器の製造を、ちゃんと個人的にやるということはないのでありまして、特別の注文があった場合にこれを製造していいかどうか、輸出していいかどうかということを通産省に問い合わせがありまして、したがいまして、通産省といたしましては、輸出貿易管理令の運用基準によりまして、その基準に合わないもの、つまり三つの条件以外のものについては、それで許しておるということでありまするからして、武器産業というような産業はまだ日本には大きくは起こっていないと見てよいと思います。ただし、今度の三次防の計画によりまして武器の製造額はふえていくことは事実であります。しかし、今日までの状況におきましては、決して武器産業とまではいかないのでありまして、国産用の武器を製造した、その装備を利用して武器の注文があった場合には、先ほど申し上げました条件のもとにおいて武器の輸出を許すということになっておりますから、それほど武器の輸出を盛んにして平和を乱すというような、そういうようなことでは決してないように極力われわれのほうでも注意をいたしております。
  130. 矢山有作

    矢山有作君 通産大臣、そこにいてください。あなたそういう、それと同じことをやっぱり武器等製造法の審議のときに言っている。現実には、いま総理が言っているように、武器輸出がどんどんできるような過大な生産能力を持っているのですよ。だから、できるだけ武器製造能力は抑えるのだと、抑えなければいけないのだと、だから許可制にするのだと言いながら、現実には膨大な武器製造能力を持つ施設ができている。だから、あなた方の言うのと実際にやっておる政策というのは違っているのですよ。
  131. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 私の承知しておるところでは、国産用の武器製造能力を持っておりますけれども、輸出用の武器製造能力は、それほどたくさんな能力は持っておりません。
  132. 矢山有作

    矢山有作君 輸出用の武器製造能力がないのに、どうしてあなた輸出を積極的に取り上げなければならぬようなことを言うのですか。製造能力が十分国産の需要を――国内の需要をまかなって製造能力が相当余りがあるから武器輸出を積極的に言い出したのでしょう。
  133. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 積極的に武器の輸出をはかっておることは決してありません。注文があった場合に、これを武器輸出していいかどうかということをわれわれのほうで審査して、そして輸出するのであって、積極的にこちらのほうから武器輸出を奨励しておることは決してありません。
  134. 矢山有作

    矢山有作君 積極的に輸出を奨励していることは、いままでそれはない。いままでなかった。なかったけれども、現実の問題としては武器製造能力はできるだけ抑えるのだと言いながら、輸出余力が相当程度あるまでに施設がつくられてきたというところに問題がある。だから、最初総理は、私の言うたことに対して、武器製造能力がどんどん広がって自衛隊の強化につながって云々、そういうような論理の飛躍はないと言ったけれども、現実はそうなってきているというのですよ、現実は。輸出を奨励したことはないでしょう。だけれども、輸出は奨励せぬが輸出するだけの能力、膨大な能力を持てるような製造設備ができたというところに問題がある。これは水かけ論になるから議論してもしようかない、私はそういうことを言っているのですよ、誤解のないようにしてください。だから、武器等製造法であなた方の言ったのと実際の政策面には大きなギャップがある。これは、まるで憲法九条の解釈を変えてきたのと同じように符節を合わせてきているのじゃないかということを私は指摘したいわけですよ。  それじゃ、次に私は、先ほどの総理の発言に関連してお尋ねしますが、総理は、初めから輸出を目的とした武器はつくりません、こう言ったわけですね。ところが、これは四十二年――ことしの四月二十六日――じゃないか、新聞あとでさがしましょう。日経新聞だったと思いますが、これで見ると、「昨年の十月、豊和工業が輸出を前提として結んだ米国・アーマライト社との自動小銃「AR18型」の技術導入契約を認可、豊和工業はすでに製造準備を進めている。」と、これは輸出を目的とした技術の導入なんです。そこでつくられたものは豊和工業、アーマライト社を通じて輸出に向けるのだ、こういうことになっておるわけです。だから、輸出用の武器はつくらせないのだ、そういうような製造能力は持たせないのだと言いながら、現実に政府のとっておる方針は、輸出を目的とした技術導入契約を結んで武器をつくらしているのじゃありませんか。認可しているのじゃありませんか。これは一体どうなんですか。
  135. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 豊和工業の問題は、それはもともと小銃の製造でありまして、したがいまして、小銃であれば防衛用の武器だというように解釈いたしております。それで、したがって、それをいよいよその技術によって輸出するという場合になってきますると、これはもちろん通産省の許可が要るということに相なるのでありますからして、それによってどんどん製造して輸出するというわけではありません。
  136. 矢山有作

    矢山有作君 あなた、わけのわからぬことを言っちゃあいけない。輸出を目的として、技術契約を結んで小銃つくるのでしょう。だから、あなた、輸出促進じゃないですか。輸出を初めから目的としての武器製造能力はふやさぬと言ったのでしょう。最初から輸出を目的とした技術導入契約がある。わざわざ技術導入契約までやって輸出をするような武器をつくろう。そういうような詭弁を弄するから、幾らでも武器製造能力は拡大していけるのですよ。
  137. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) いまのお話は、輸出用のために技術導入したというようなお尋ねだったと思いますが、私どもでは輸出用のために技術算入したわけではありません。日本の小銃の技術をよくしたいという意味でそういうふうに技術を導入したのであります。しかし、いままで、そういう技術ではまだ小銃つくっておりません。今後そういう技術によって、あるいは第三次防でつくるかどうか、そこは私どもはっきりいたしておりませんが、とにかく、その技術をよくするという意味で導入を許したわけであります。
  138. 矢山有作

    矢山有作君 あなたの論理でいけば、これは幾らでも武器製造能力を拡大できるのですよ。この技術導入計画は、自衛隊に納めていない。自衛隊に納めているのは64式小銃でしょう、豊和が。それでない、自衛隊に納めてない、解式でない小銃、AR18型、これは輸出を前提としてつくる技術導入契約なんですよ。先でそういうものを自衛隊に使うかもしれない。こういう論法でいくならば、自衛隊で使うかもしれない、自衛隊で使うかもしれないと言って、武器輸出を前提とした製造能力幾らでもふやせるのじゃないですか。そういう施策をあなたがいままでとってきたから武器等製造法の提案説明とだいぶ違うような膨大な武器製造能力を持つような政策を遂行したのでしょう。詭弁を弄しちゃいかぬ、詭弁を。
  139. 高島節男

    政府委員(高島節男君) ただいまの御質問の事実関係の点について若干経緯をお話しいたさせていただきたいと思います。  AR18型小銃の技術導入をいたしました趣意は、わが国武器産業の技術の基礎を強く固めていくということでございます。当面の設備といたしましては、基本的な設備は従来のままでございます。若干それは先生御指摘のように余力があったことも事実でございます。それをベースに置きましてやっていくものでございますが、規格等はこれは違っている。ただ、小銃という分類の中で、同じ観念のものでございます。したがって、防衛産業の技術的な基礎を固めていきますことが一つの目標と、それから、将来の対外関係においていろいろ御指摘のような問題が起こるであろう、そのときは輸出貿易管理令によって厳に規制をしていく、こういう条件のもとにこれの仕向け先につきましてはいわゆる運用基準、御議論のありましたものによって厳重に規制をしていく、こういう形で許可いたしましたのが経緯でございます。
  140. 矢山有作

    矢山有作君 これはいまの説明の論法でいったら武器製造能力は何ぼでも拡大できますよ。私はそれをおそれておるのですよ。現在は使っていない。しかしながら、武器製造の基盤を強化するために技術導入をやっていろいろ研究していくのだ。そこで新しいものができる。また、これは輸出だ。当面使っておらないからまず輸出に向けようじゃないか。輸出を積極的に進めるということと武器製造能力の拡大ということはいまの通産省の説明でははっきり結びつくじゃないか。そういうようなことをやっておいて、それで製造能力の過大な膨張を抑えるといったってそれは成り立ちませんよ。総理どうなんですか、あなたは最高責任者なんだ。
  141. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は先ほど来答えたことで間違いがないように思っております。いまいろいろ御注意を受けておるようでございますが、いま矢山君の言われるとおりであるといたしましても、この設備をいたしましても輸出の許可ではやはりそこに制限があるわけであります。また、そういうものを国内で使うか使わないか、これは自衛隊自身のきめることであります。そういたしますと、事業経営者がそういうような非常なリスクをおかしてまでそこの設備を拡大するかどうか。これは私はちょっと現実の問題としては矢山君と結論は違う別な考え方をしております。
  142. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、新しい種類の武器の技術導入や新しい種類の武器をつくるような設備はもうやらぬというのですか。やるのでしょう。やるね。それが現在自衛隊で使っていない、現実には。ところが、先で使うかもしれないという論理のもとにやるのでしょう。それだったら武器製造能力の拡大というのは限度がなくなってしまうじゃないですか。幾ら輸出で輸出規制をやるといったって現実に産業がつくり出したのですよ。つくり出してあなたのところに、こんなものをつくり出したのだが、自衛隊はさしずめ使わないから輸出さしてくれといってきたらあなたはそれを拒否できますか。拒否するなら拒否するとはっきり言ってください。
  143. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) だからただいまのように、たとえば新しい技術の導入を全然しないのか、そうするとやはりこれは産業の進歩はございません。新しい技術の導入はすると思います。しかし、それが事前に自衛隊なら自衛隊が使うということが予定される、あるいはそのもとに注文されるから新しい技術を取り入れる、こういう場合もありましょうし、また、これは当然そういう方向へいくだろう。物も安いし、また資材も十分そのほうが入手が楽だ、こういうような場合には新しい技術導入ということはあり得ると思います。それを直ちに自衛隊が使わないという場合に、たまたま外国から注文があった。そしてその輸出のほうでもちゃんと許可ができる、そういう条件が整っておる、こういう場合だとそれは輸出ができるでしょう。しかし、いま言われるように、新しい技術を導入してその意味の設備は拡大する、そしてどんどん輸出をする、こういうものじゃないことだけは十分御了承いただきたいと思います。私は、これはどんどん輸出はできないが、この武器輸出についてはちゃんと運用の規則がありますから、だから経営者としては何でも輸出ができるのだ、といってどんどん拡張はしない、現実の問題としてはそういうことになる、こういうことを実は申しておるのであります。ただいまの問題で一切そういう輸出を許可しないか、こう言われますけれども、これは現実の問題でケース・バイ・ケースできめなければならない問題ですから、私は幾ら総理だからといってこれをきめることはやや間違ったように思います。
  144. 矢山有作

    矢山有作君 だから明らかにしり抜けなんだ、これは。  防衛庁に聞きますが、AR18型小銃は防衛庁で使う計画があるのですか。
  145. 國井眞

    政府委員(國井眞君) いまお尋ねのAR型、アーマライトの小銃でございますが、これは現在防衛庁で装備するという計画はございません。ただ小銃の軽量化という点から申しますと、銃床あるいは弾倉等の一部プラスチック化その他使用材料の問題等につきまして参考になる点がございますので、非常に参考になるものではないか。ただいま計画はございませんが、今後これは十分検討をしていきたい、かように考えております。
  146. 矢山有作

    矢山有作君 いま防衛庁答弁ではAR18型を使う予定はないんだ、予定のないものを技術導入してつくる、それは明らかに輸出を目的とするということははっきり言うてある。これは朝日新聞です、日経じゃなしに。そうなるとあなたの言ったことはまるで違ってきますよ。防衛庁が使うものについて技術革新をはかる、それでいろいろ設備拡充をやるということならわかる。ところが、防衛庁が使う計画が全然ないものを技術導入をやって設備の拡大をやる、これは明らかに輸出を目的としているんじゃないですか。しり抜けになっちゃうんだ、あなたの御答弁は。
  147. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま私が一般的な問題で武器製造しているもの、たとえば小銃を製造しているものが小銃の技術導入によって新しく軽くなるとかあるいは負担が楽だとかあるいは材料が簡単に入る、そういう意味で新しく技術を導入することはあるだろう、しかし、それは単に注文があってしかる上でやっておれば問題はない、また注文があるだろうとして技術導入をする場合もあるだろう、これは経営者の一つのリスクだと思います。そういう意味の技術導入はしたけれども採用されなかったという場合もあるだろう、しかし、これほうっておけば自分たちのいままでのシェアが変わるというような場合もありましょうから、これは経営者とすればやっぱり先に進んでいろいろなことを考えなければならぬと思います。ただ、この問題、いま議論されている問題自身は、通産省がその技術導入を許したそのときの経緯もあるようでございますから、これは私は事務当局のやったことがそれじゃ許せるのかどうかということ、私は事務当局のやったことはそれでよかった、かように実は思っております。矢山君から言われることは具体的な事例がら原則的なものを引き出そうとしておられるのでありますが、やはり技術の導入あるいは輸出、それもケース・バイ・ケースできめることである、かように思っております。御了承をお願いします。
  148. 矢山有作

    矢山有作君 しかし、具体的な事実から原則を引き出していこうとしておられると言いますけれども、具体的な事実はそういうふうに当面防衛庁使わぬのですよ。注文があった、注文があったから技術導入契約をやって新しく製造設備をつくっていく、こういうことでいくとこれは具体的な事例です。これが積み重なっていけば原則はくずれてしまいますよ。これはだから幾らでも武器製造能力はふやせるということになるでしょう。武器輸出をあなたが原則として認めないんだということをはっきりおっしゃるなら別です。ところが、武器輸出を認めるんだという積極的な発言をしておいて、しかも輸出のための注文があればそれは設備を拡張したりあるいは技術導入もやるだろう、こういうならその具体的なことの積み重ねで原則はくずれてしまって、武器の輸出を目的とした設備拡張がどんどん進んでいくということになるんじゃないですか。これはやっぱり理論的に考えてくださいよ、あまりその場その場の言いのがれでなしに。
  149. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはいまのように設備がどんどん拡大されるかというと私はそうはならないということを申しております。これは設備を拡大するときは必ず許可を必要とします。これはそう簡単に許しはいたしません。
  150. 矢山有作

    矢山有作君 許しているんです。
  151. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この場合は許しましたけれども、いつも絶えずどんなものでもどんどん輸出する、こんなものではない。これは私が先ほど論理の飛躍があると言ったのはそれなんです。チェックする場合があるんですね。さらにまた、設備はしても今度輸出するときにまたチェックされる、そういうことでありますから、いま矢山君の言われるように、これは無限にどんどんやられるんだ、こういうものでないことだけは御了承いただきます。またただいまのような国会審議を通じても貴重な御意見も出ておるのでありますから、いままでも慎重にやっておると思いますけれども、通産省ではなお慎重にやっておると思います。
  152. 矢山有作

    矢山有作君 チェックするチェックするとおっしゃるけれども、チェックの基準を一体どこに置くのですか。そんなものはこれは政策の問題で、行政執行者が言うのだということで、チェックが思うようにいかなんだら幾らでも拡大しますよ。チェックする、チェックするというあなたのことだがほんとうなら、武器等製造法の審議のときに言われたことは守られているはずです。守られないから膨大な製造設備ができた、またさらにこういうことになるでしょう。
  153. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) いまの矢山委員のお尋ねの件ですが、今後の小銃の問題も、従来の設備をそのまま使うということであって、新しい設備を許すということじゃございません。技術だけを導入することであって、設備を拡大はしておりません。だからして、したがって、武器をどんどんつくらさぬという意味でありますからして、武器等製造法という法律をつくったし、また、輸出貿易管理令によって基準を設けるということで、設備としてのコントロール、輸出としてのコントロールをして、まあ矢山委員の御心配のようなことは実現ぜぬように、極力われわれとしても注意しなければならぬ、こう考えております。また矢山委員のように御心配になることも、私も御無理はないと思うのでございますが、しかし、まあ日本立場としてはそういうようなことでできるだけチェックをして、そうして戦争国にそういう武器が提供されないように、これは押えていくという方針でいきたいと、こう考えております。
  154. 矢山有作

    矢山有作君 あのね、技術道導入は設備の増強じゃないとおっしゃるけれども、実質的には新しい技術を入れるということは、いわゆる設備の新増強になるのですよ、新増強に。そんないいかげんな言い抜けをしちやだめです。それじゃね、過大設備を設けさせないように規制するというのですがね。過大設備にならぬようにするという、過大設備を規制する基準をどこに置くのですか。わからないでしょう。わかるわけないんだ。
  155. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) それは先ほども申し上げましたとおり、武器等製造法によって特定の設備を申し出たときには一々これは許可することになっておりますから、したがいまして、それによってチェックする……。
  156. 矢山有作

    矢山有作君 だからその基準をどこに置くのですか、過大設備にならぬ基準を。
  157. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) それは、私は新しい設備を設けようということを申し出ますからして、したがって、それが特定の注文があって、そうして、これは輸出していいという場合には認めますけれども、もうこちらのほうで、これは輸出しちゃいかぬという場合にはその設備の拡張は許さない……。
  158. 矢山有作

    矢山有作君 輸出していい悪いの基準はどこに置いていますか。
  159. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 輸出していい悪いは、先ほど申しましたように、輸出貿易管理令によって基準がありますからして、その基準以外の国であれば武器は輸出していいということになっております’。
  160. 矢山有作

    矢山有作君 要するに、いまの答弁から想像されることは、結局武器製造能力を過大になることを押える基準は何もないと。輸出もやらぬと言わない。輸出はやっぱりやるのだ。こういうことだ。そうすると、輸出を認めるという前提に立てば、やはりこれは武器製造能力というのは、もう拡大の一途をたどると、こういうことに私は結論としてなると思う。あなた方は幾ら言いわけをしても、現実の政策はそういうふうに展開をしてきている。それでしかもそれだけの過大な武器製造設備を有しておいてさらに輸出を認めてその設備拡大に拍車をかけてそうして武器はたくさんつくられてくる。それを売り歩くために総理は武器輸出を認めたわけだ。総理あなた、へたをすると死の商人だと言われますよ、そんなことを言っておると。だからあなたそれだったら、そう言われたくないなら武器輸出は原則として認めませんと言いなさい。そう言ったらあなたは死の商人と言われません。あなたは死の商人と言われてもいいのならそれでいいです。それはあなた明らかにしてください。
  161. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は死の商人とは言われぬと思います。いまやっているようなことなら。それはもう普通のたいへん何といいますか、遠慮した行き方だと思っております。ことにわが国の通産省において設備の拡張につきましても、許可制であるし、さらに輸出をそんなに自由にどんどん送り出すのではございません。また注文をとって歩くようなことはございませんから、御心配ないようにひとつ。
  162. 矢山有作

    矢山有作君 総理が注文をとって歩かぬだろうが、しかし、少なくとも過大設備を抑制するといっても抑制するワクは何もない。限界が何もないということです。いままでの実績から考え、いまの答弁を聞いていると、何もない。許可するのは通産大臣のあなたの主観で許可するわけです。そうすると、時の情勢の勢い、兵器産業界からの圧力によれば幾らでも拡大していく道が開けている。そうして拡大された武器の生産能力が非常にふえて武器が国内で余っちゃう。どうするんだということになると、今度は輸出を認めているから、どんどん輸出をやっていきましょう、こうなる。そうなると、あなたは幾らいやだと言っても死の商人だと言われることになる。しかもあなたは武器輸出を認めた、それはあなたとしても心外でしょう。そこにワクをはめる、ワクをはめたのはただ一つ――なたが武器輸出は原則として認めない。これを言うことがただ一つの残された方法です。そう言いなさい。それを言わなければだめです。
  163. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は矢山君から命ぜられて言うわけではございませんが、ただいま許可制にしてちゃんとしていることは、これは原則として認めていないということです。
  164. 矢山有作

    矢山有作君 原則として認めませんということですか。
  165. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そのとおり、これはちっともふしぎはない、これをいまさらあなたの命令でそういうことを言うわけではない。ちゃんと自由に武器輸出を認めるというたてまえでないということは許可制度にしていることでもおわかりでしょう。
  166. 矢山有作

    矢山有作君 いまの答弁には抜け穴があるような気がする。しかし、私は少なくとも武器輸出をしないという原則だけは総理は認められたろうと思う。そうするとその原則は守りますね、あなた。
  167. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それは原則として認めない、いわゆる制限輸出ということばもあるかもしれませんが、私どもは輸出の運用については非常に厳正にいたします。
  168. 矢山有作

    矢山有作君 これで、まだまだ質問がこんなにたくさん残っている。ほかに沖縄の問題を質問するのでしたけれども、しかし、これで時間を食ってしまったのでしかたがありません。これはあとの質問に引き継ぎますから、あとで一般質問なりそれぞれの場でもっと明確にしてもらわなければならない。質問が中途半端になって一番肝心の問題を落としたことは私は残念でありますけれども、これは一応予算委員会のきめだから守ってやめます。
  169. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上で矢山君の質疑は終了いたしました。  午後一時再開することといたしまして、これにて休憩いたします。    午後零時十八分休憩      ―――――・―――――    午後一時十八分開会
  170. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き質疑を行ないます。吉田忠三郎君。
  171. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 ただいままでかなりの委員から各般にわたっての質問がありましたから、私はこの際はできるだけ重複しないようにして政府の見解を、意見をまぜながら、ただしたいと思います。  冒頭行管長官に若干お伺いします。それは、かねがね行管として取り組んでまいりました行政改革の問題を含めて、公社・公団の整理統合の問題がたびたび出ております。国民の大半も、この問題については、国民の血税がむだに使われるわけですから、非常に関心を持っていると思います。批判も多い。ところが、最近に至りましてから、行管が何かそうした動向に逆行するような通達を出した。このことは一体長官は知っておったのかどうか、これをひとつ聞かしていただきたい。
  172. 松平勇雄

    国務大臣(松平勇雄君) 知っておりました。この問題に関しまして、一応この書類の出ました経緯をお話申し上げると御了解いただけると思うのでありますが、実は御承知のとおり、臨調の答申が出ましたのは三十九年の九月でございます。それに基づきまして行政改革本部ができまして、行政改革本部では臨調の答申をいかにして実行に移すかということを検討された結果、三十九年の十一月十八日に臨調意見推進班というのをつくりまして、御承知のように、各種類にわたっておりまするいろいろな問題を班に分けまして実態を調査したわけであります。それによりまして、まあ当該の省と――いろいろ省自体でも内容を検討すると同時に、臨調でも推進班をつくって、両方相まって検討したわけであります。一応推進班としては、素案のようなものができましたので、それを各関係の省庁に送りまして、それに対して意見を求めることになりまして、その意見を求めるための書類が新聞で指摘されておる書類でございます。そういった書類を出したというのは、従来は行管でもってやっております監察は、中間においてはメモ式でもって書類を出して、そうしてそれに対する意見をまたメモでもらうという方法でやっておりましたが、この場合におきましては、行革本部に一応の資料として提出しなければならないために、正式の班長の名前で素案を出しまして、それに対する回答を求めて、両方を合わせて行革本部の事務当局である行政管理庁の管理局のほうへ提出したわけであります。ですから、今回出ました書類は、その班長の出した書類でございます。
  173. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 ただいまの答弁を聞いておりますと、知っておった、しかも出された内容のものは何か、それを取りまとめた主査ないし班長が出したものである、こういうお答えでございますけれども、私はそのことだけではちょっと理解ができないのであります。なぜかと申し上げますと、たびたび行管長官の談話が出された、それから三十九年の九月に臨時行政調査会が内閣に対して諸般の意見を出した、こういうものを私はいまここで読み上げておりますと時間もございませんからあえて申し上げませんけれども、そのことと、今度のこの通達の内容をしさいに見てみますと、相反するような経過がある。これを一体行管の長官がいままで談話を出しておったことでどう考えるか。非常に私ども理解ができない。
  174. 松平勇雄

    国務大臣(松平勇雄君) 御承知のとおり、いま百八ございます特殊法人を、今回あらためて検討することになっております。この方針とこの書類との関係がどうかという御質問だと思いますが、この書類のほうは、先ほどお話し申し上げましたように、班長としての素案でございまして、これが即行政管理庁の意見とか、書類とか、あるいはまた行政改革本部の意見、書類ということにはまだなっておらないのです。私どもといたしましては、この書類が出ました当時から二年もたっておりますし、かたがたそういった点を考慮に入れまして、再検討しようということになっておりますから、この書面の出ました内容は、参考にはいたしますけれども、これに拘束されるということはなく、百八に対しましては新たな見地から検討いたす考えでございます。
  175. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 若干この長官の答弁を思索してみますと、このあなたのいま知っていると言いましたね、この内容そのものは、いままで問題になっておった幾つかの問題がありますね――北海道開発公庫の問題であるとか、たくさんございますよ、行管から指摘された点は。その問題と関係して見た場合に、これはあなた方のような考え方というのは、そういうものは整理統合しなさい、あなた方の談話でも明らかです。ところが、今度は存続は問題はないということなんです、この内容は。ですから、それに拘束されないと言ってみても、それは、しかもいまの答えでは、何か局部的に調査をしたりあるいは検討を加えた班長がこういうものを出したのであるから、行管自体としてはこういうふうに言っている――これは一般的な形式論でございますから、世論としてそういうふうに受けとめるか、とめませんよ。同時に、佐藤総理にお伺いしますが、行政のあり方の問題としては、国会内部でも総理もたびたび申しておる。しかも、今日百八つにものぼるこうした公団、公社、事業団がございます。今度の予算編成にあたってもしばしば問題になって、逆に縮小どころかふえた。私はその議論はここでしょうと思いません。思いませんが、少なくとも国民に正しい意味の奉仕をするということになりますと、必ずや今度はこうしたいわゆる役人がやった行為というものは、百八つにわたる法人を将来整理統合してというようなことに対して障害になると思いますが、どうでしょうか。
  176. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 一時的な現象で、これはまあ基本線がゆるんだのではないか、こういう見方があるだろうと思います。もともと私の考え、また臨時調査会の答申等におきましても、行政の効率化からいって、公社、公団等については、これはもう積極的に整理統合すべきだ、あるいは審議会等も整理統合しろ、こういう答申がございます。この基本的なその趣旨は、私どもも尊重してまいるつもりでございます。前年は、御承知のように、公社等を一切つくらないということをきめまして、そして予算編成をいたしまして、ことしになりますと、それがまた非常にふえたではないか、こういうおしかりでございますが、時世の推移によりましても必要ということもございますから、全然ふやさないで要望を断わるというわけにもいかないのです。でございますが、その趣旨を尊重いたしまして、新らしくつくる場合には、在来からありますものをやはり整理するとか、それと一緒にするとか、いろいろくふうをして、あまり数がふえないように、こういうことに努力してまいっておるのであります。したがいまして、全体の動き、これをひとつ御了承いただきまして、この臨調の基本的な方針を十分尊重して政府はやっておる、これを御了承いただきたいと思います。
  177. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 基本的には、原則的には、この出された答申なり意見書というものを尊重しても、結果的に尊重していないことになるのです。これでは、結果的には。
  178. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 結果的には尊重してないじゃないかと、私どもは尊重した結果、今日のような結果が出たと、かように御了承いただきたいと思います。
  179. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 それは全く詭弁というものでありまして、それは社会に通用しませんよ、総理大臣。それで私はその論争をあとあとこれは行監委員会等で問題になろうから、時間をかけてこれ以上多く言いませんけれども、ひとつ要望しておきますけれども総理は常々、ただいまも答えられたように、行政の効率化をはかって国民にサービスすると、こう言っておりますから、その場合に使われておったことばは、勇断をもってとか、決断をもってやるというのでありますから、いま答えられたような詭弁のようなことでは、勇断とか決断ということばは当てはまらないと思いますが、それはどうですか。
  180. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御意見は御意見として十分伺っておきます。将来、また今日も努力しておりますが、この上とも簡素化、効率化に努力する、その決意であることを重ねて御披露いたしておきます。
  181. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。ちょっと確かめておきたいのですが、われわれもけさ新聞を見て、非常に行管の問題について奇異に感じております。ただいまこの行管長官は、あの文書は班長がひとつの草案として出したものだと、こういう意味のことを言われておる。非常にこれは軽い文書だというふうな意味だと思います。しかし、文書に書かれている内容自体は、答申において取り上げられた機構につきまして、これは存続してよろしいとか、あるいはこれは内容、運営などを多少変えて、そうしてやっていけばいいんだとか、非常に具体的なものなんですね。だからそういう具体的な内容を、ただ一班長が一体文書に書けるものかどうか、そういう意味で非常にさっきの答弁には納得できないわけなんです。班長が念のため作業を進めるために、準備的な行為として何かをおやりになる、これはこういうことは行政庁としてむしろ進んでやらなければならぬ場合もあるでしょう。しかし、準備行為というようなふうに言われる、その文書の中自体に、非常に重要な結論的なものが示されている。私は、これは単なる班長が独断でそんなことがやれるわけじゃないわけでして、やはり相当行管の上の首脳部の方とも相談の上でなければ出し得ない文章だと思う。そこをだから、いや、それでも班長がかってにやったのだとおっしゃるかもしれませんが、それだと、一体行管の役所というものはどういう仕事ぶりをやっているのか、はなはだ疑問を逆に持つわけでして、ここをもう少し、筋の通るような、わかるような説明をしてほしい。  それともう一つは、われわれは新聞で、この答申とは逆なものが出ているということを見ているだけですが、いわゆる出されたという文書ですね、そのものをそこにおありであれば一応朗読してほしい。中身をはっきり。大体、間違いないだろうと思いますが、新聞で報道されているものと、それを明らかにして、一体、そのようなものが一班長の草案というふうなことになるということは、ちょっとこれは了解しにくい。
  182. 松平勇雄

    国務大臣(松平勇雄君) お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、行革本部といたしまして、作業をいたします関係上、一方は各省、関係省庁でその問題を検討すると同時に、行政管理庁の事務職員を使って、推進班というのをつくったわけでございます。その班長が幾つかに分かれまして、今回の特殊法人の問題に関しましては、諸永審議官が班長になってやったわけでございます。そこで、それを推進班のほうで調査をいたしました一応の所見を関係省庁に送りまして、それに対する意見をまた関係省庁からもらうわけでございます。そのもらったものを今度は行革木部に両方つけて提出して、それを資料にいたしまして、行革本部が判断をするという形になっておるのであります。したがって、推進班の班長から出しましたのは一応の所見でございまして、行革木部の結論というふうにはならない。それを資料にして行革本部が結論を出すことになっております。
  183. 亀田得治

    ○亀田得治君 どういうものをお出しになったのか。そこにあるなら、班長自体が出した文書ですよ。それを読んでください。班長から出したものを。
  184. 松平勇雄

    国務大臣(松平勇雄君) 班長から出しましたのは、四十年の八月二日でございます。「公社、公団等、特殊法人に関する調査結果について」「昭和三十九年十二月四日付、行管乙第二二五号「公社、公団等特殊法人に関する調査について」により貴省庁所管の特殊法人を調査し、別添のとおり一応の所見を得ましたので、これに対する貴見を昭和四十年八月十日まで御回報くださるようお願いします。」、こういうものであります。
  185. 亀田得治

    ○亀田得治君 それは全部お読みになるとたいへん時間をとるから、これはあとから資料として御提出願いますが、ただいま冒頭だけをお読みになったところから想像しますと、やはり行管としての意見と、一応の所見というものを出した。こう、これは私は外部がとるのは当然ですよ、そういう出し方で役所の文書が出ておるとしたら。その出した人は班長とか、そういうことは書いてないでしょう。だれになっておるのですか。出した人の名前。
  186. 松平勇雄

    国務大臣(松平勇雄君) 失礼いたしました。差し出し人を申し上げるのを忘れましたが、出しましたのは行政管理庁行政監察局諸永監察審議官。
  187. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、監察審議官、これは行管では相当えらい人でしょう。その人がそういう公文書を出せば、行管が大体あの答申とは逆なことを考えておるのだというふうにとるのは、これはあたりまえですよ。だから、それが行管の意見じゃないというのであれば、長官はそれに対してどういう措置をとられましたか。あれは違う、行管としてのものじゃないということを、さっそくそういう手続等をとられましたか。どうなっておりますか、それ。それは明らかな公文書じゃないですか。
  188. 松平勇雄

    国務大臣(松平勇雄君) この書類を出しましたときに各省庁に対しましたは、これは行管の意見ではない、一応中間の所見であるというふうに言って出したのであります。
  189. 亀田得治

    ○亀田得治君 大臣の、非常にこういう文書が公になったものだから、何か文書自体を軽く扱ってうやむやにしたいというふうな気持ちが明らかに感ずるわけですが、それにいたしましても、非常にこの機構の整備というのは重要な問題なんです。そのことについて、具体的な結論を役所のほうが先に出して、そうして相手方に所見を求める。こうなれば、整理されるかもしれぬと思われているほうは、それに飛びついてくるのはあたりまえじゃないですか。そうでしょう。ほんとう資料を、相手方の所見を求めるのであれば、こっちのことなど言う必要ないでしょう、そういう段階で。もし言う必要があるとすれば、臨調のほうではこういう結論が出ておる、そに対してどういう意見を持っておるかと、すらっとした事務的な求め方でいいわけでしょう。にもかかわらず、その臨調の意見と反するようなものを公文書で出して、そうしてそれに対して意見を求めてくる。これは、あなた、臨調と反対意見を出せいということをあなた誘惑しているようなものでしょう、実際のこと、そう感じませんか。これは私ははなはだ不明朗だと思うのですよ、こんなことは。どうも関連質問ですからあまり時間はとりたくありませんが、先ほどの答弁ではちょっとこれは納得できませんが、解明してください、もっときちっと。
  190. 松平勇雄

    国務大臣(松平勇雄君) 班長といたしましては、臨調の答申を尊重して検討にかかっていることはもちろんでありますが、その段階において調査いたしました結果、やはり答申のとおりのものもございますし、答申が必ずしも一〇〇%当たっておるというふうにも考えられないものはあったかと思うのでございます。そこで一応自分のほうで見た所見を、調査した所見を出して、そうして関係省庁の意見も同時に求めたということでございます。
  191. 亀田得治

    ○亀田得治君 最後に一つだけ聞いておきますが、長官としては、これはあとから長官は知った仕事でしょうが、そのような意見の求め方、一方では整理せいと言っているのですよ。そういう際に内部の非公式な検討かもしれませんが、いやしくもそれと反するような内容のものを含めて、そうして相手方の意見を求める、そういうやり方が一体適当と考えておるのかどうか、そういうような処置がとられたことを長官としてはどういうふうにお考えですか、現存。
  192. 松平勇雄

    国務大臣(松平勇雄君) 必ずしも適当とは思っておりません。
  193. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 次に、私は、物価の問題で伺ってみたいと思います。  しかし、これも冒頭に申し上げたように、各派から各委員が質問いたしますから、この際は物価問題に対する政治的な姿勢を私は総理大臣に伺ってみたいと思います。まあこれは大蔵大臣が答弁することがあるかもしれませんけれども、どうも政府の今日の物価に対する政治的な姿勢というのは、いろいろそのときどきに総理大臣あるいは経企庁長官なりあるいは大蔵大臣が発言しておりますが、私はそうあまりこの取り組み方について、何といいますか、強力に、しかもそれを大きく取り上げているというような姿勢になっていないのじゃないかと、こう思うのです。  そこで、昨年の暮れに解散いたしました物価問題の懇談会というものが、新たに今度何か物価安定何とかという委員会をつくりましたね、これはどういうふうに違うのですか。まず、これを一つ聞いておきます。
  194. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 物価問題懇談会、これは昨年までは経済企画庁の長官が主宰して、この物懇の御協力を得ておったのであります。しかし、今回は私自身、内閣のそうして関係各大臣がいわゆるこの物価安定推進会議に出席する。これは申すまでもなく、物価問題は総合的に各省に関係あることですし、また、総合的な施策を必要とするものであります。そういう意味で、これは一局部の問題ではなく、もっと大きい立場において、これを取り上げるべきだ、そのほうが物価問題と取り組む姿勢として正しいのだ、かように考えて私自身の推進会議の催し、こういうことにいたしたのでございます。
  195. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 そこで、その今度できた会議そのものは面接総理がみずから主宰をして、つまり、責任体制を明らかにするという意味だと思いますが、それはそれでけっこうですが、しからば政府が、たいへんりっぱな論文を私はこれは読ましていただきましたけれども、「経済社会発展計画」というような、その他まあ経済政策なるものもあるわけですが、読んでみますが、物価の上昇のつまり率というものを四・五%と見込んでいますね。四・五%と見込んでいる。そこで今度の予算と関係して見ると、御承知のように、財投では昨年と比べて見まして、一七・八%膨張している。一般会計においても一四・八%膨張してますね。ですから、その膨張率というのは、昨年度予算編成した場合、つまり昭和四十年のときと比較して見て、私はかなりの膨張だと見ているのです。そういう中で、物価がはたして政府の四・五%にとどまっているなどという見方は甘いのじゃないか。もし四・五%に抑えようというには積極的な、かなりの私は政策的な、物価を押えていくという政策的な努力というものが必要じゃないかと思うのですが、そういう点のかまえというものは私どもうかがえないのですね。  それからもう一つは、去年物価問題の懇談会で四十二年度の予算編成にあたっての意見を出してますね。つまり、規模も昭和四十一年度程度にすべきだということ、それから公債なども七百億に今度ふやすということでございますけれども、これはそうではなくして最小限度にとどむべきだ、こういうような意見というものが出されておりますね、これなどは、常に総理大臣は各種審議会あるいは委員会等々の答申というものは尊重するのだと、こう言っておりますけれども、完全に今度の予算編成では無視されたというふうになりませんか。どうですか、大蔵大臣。
  196. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この昭和四十二年度の予算は私どもはやはり物価と国際収支の問題を非常に重要視して放漫に流れないように特に気を使ったということを、いままで申してまいりましたが、まず予算の規模は昨年よりも伸び率を減らしたことは、これは事実でございます。それから財政投融資もやはり物価とは結局関係ございますので、昨年二五%以上の伸びを見たものを今年度は一七%におさめるということも、私どもが特に昨年よりも伸び率を圧縮したということでございますし、またこれが物価に響く要素としましては、政府の財貨サービスの購入がどれだけ昨年より伸びるかということが一番大事です。このほうが直接的に関係のあることでございますが、中央、地方の財政を通じて政府の、こういうものの支出は、ことしは経済の伸び率よりも非常に少なく見てある。経済の伸び率を一三・四%に見ながら、政府の財貨サービス購入の伸び率は地方財政と合わせて一二%台に押えていくということから見ますというと、いまのこの予算の編成状態から物価を刺激するという要素は私は見られないんじゃないか、この点は今度は気をつけたつもりであります。
  197. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 予算規模の、特に財投で二五%というのでありますが、それは七千三百億の赤字公債を出しているわけですから、そういうことになるでしょう、去年は。ところが経済効果というものは、去年二五%財投で出して、七千三百億というものの影響というものが、ことしはやはり上積みされますよ。さらに、ことし八千億の公債を出すわけでしょう。ですから、ただ単に去年は二五%、ことしは一七・八%だといって、そこの比較だけのことでは私はまいらないと思う。その証拠に、先般来各委員からもお話もあったように、米の値段を上げ、酒の値段を上げ、きのうは何か総理大臣は、鉄道あるいは電話、電気料金は一年間上げないと、一年間というのは今年限り、年内だと思うのですが、そういうことを言っておりますけれども、しかしいま市中の諸物価というものは、大蔵大臣御案内のように、とめどなく上がっているじゃありませんか、生鮮食料品にしたって消費者物価というものは。あなたは、いまここでは物価にそれほど影響しないと言いますけれども、現実はもう物価に影響していますよ、現実に。これをどう見るのですか。
  198. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 昨日も申しましたように、昭和三十六年経済成長期から去年までの物価の上昇率は六%平均、非常に大きい率でございましたが、四十一年度になって、これは物価対策もある程度進んだためでございましょうが、初めて五%を切るところまで来たのが去年の実際でございます。したがって、今年度になって消費者物価がどんどん上がっているという傾向はいまございませんで、四月あたりは授業料の問題そのほかで若干上がるはずなのが、上がらずに済んでいるという状態でございまして、いまどんどん消費者物価が上がっているということは全然言えないんじゃないか。非常に落ちつき出しているということがむしろ特徴になっていると思います。
  199. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 それは見方の相違といいますかね、大蔵大臣、あなたはそういうふうに見ていると思うのですよ。しかし実際は、あなたのおっしゃるような安易なものじゃないですよ。これは国民生活を一人々々調査してみればわかるとおり。さらに私どもの心配しているのは、政府みずからが当然押えることのできる管理価格がどんどん上がっているわけでしょう。上がっていますね。それから米だって、これは公共料金の最たるものでしょう。当然これから連鎖反応を起こして周囲の消費者物価というものは上がっていますよ。上がる傾向にまたありますよ。あなたは、政府の管理価格――いま大体千ちょっとあると思いますが、それを責任をもって押えるというなら、いまあなたのおっしゃるようなことになると思いますが、しかしいま、そうなっていないでしょう。たとえば地方公営企業などについても、やがて必要なものは値上げするというようなことを言っているじゃないですか。現実にそういうものが出てきておる。これはどうするのですか。
  200. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 政府の物価対策としては、たとえば大企業の管理価格の問題にしましても、もういわゆる不況カルテルの名において物価値下げをはばんでおったカルテルは全部解消しましたし、再販売価格維持のこの問題につきましても、この間公取委員長から言われましたように、公取の活動が始まってこの解決をしようというふうに、物価のそういうあらゆる部面への行政対策というものがようやくいま及んできておるというようなことでございますので、したがって、物価がどんどん上がっているという傾向はいまのところはないので、非常にいま落ちついておる段階であろうと思います。今後上がる可能性というものは十分ありますので、したがって、いま言ったようないろいろな対策を私どもは強化しておるということでございます。
  201. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 時間がありませんから、一般質問などで具体的に私はその事例をあげて、さらに質問いたしますから次の問題に移りますが、それと関連して、しからば、物価には、総理大臣も申されたように、総括的に問題を把握をして対処しなければならぬということは、これは何人も否定しませんよ。ですけれども、いまの政府のとられておりまする物価の対策というものは、個々の問題をとらえてやっているというだけにすぎないと私は思うのですよ。これは総理大臣も言ったように、根本的なところにメスを入れなければならぬ。たとえば地価対策の問題だってそうですよ。地価対策の問題はどうやっておるか。都市にいまどんどん人口が集中してまいりまして、地価対策のみならず、都市構造の変化によってあらゆる問題が起きておるのじゃないですか。住宅の問題であるとか、通勤輸送の問題であるとか、それはそれで時間がございませんからあとあと伺いますけれども政府の地価対策は一体どうなっておるのですか。
  202. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 地価対策につきましては、地価の安定をはかるということが最も大事であろうと思っております。そのためにはやはり人口が都市に集中いたしますので、宅地の需要供給がアンバランスを来たしておるのでございます。したがいまして、いま地価を安定せしめる方法としては、やはり宅地を大量に供給するということが大事だろうと思うのであります。したがいまして、公的な機関によって、住宅公団とかあるいは金融公庫等によって公的にも宅地を供給する、また民間の宅地業者につきましても、これは相当に良好な宅地を供給する業者にはやはり税法上の恩典を与える、また一方非常に不当に悪質な業者もありまするから、そういう業者に対しましてはやはり宅地建物の取引業法の改正もしたいと、この法律も今度提案をいたしたような次第でございます。いずれにいたしましても、やはり審要供給の関係で土地が上がってくるのだと思いますので、宅地を大量に供給したい、こういうこと。まあ一つ方法でありませんで、その他あらゆる方法をもちましてせっかく土地対策、地価対策に対処したい、かように考えておる次第でございます。
  203. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 答えられるものが、大体いまのやり方というのはことばだけだと思うのですよ。たとえばあなたがたは、土地収用法でもある程度そういうものを抜本的な改正とか何とかいって考えられているようですが、それからもう一つには都市計画法も何か改正を――しかし、その内容を多少こう検討して見れば、その地価対策の問題などはただ地域区分をすることによって地価を押えていくというだけのものではないですか。私は根本的にそんな問題で地価の問題は解決されないと思うのです。たとえば地域区分の問題で、ある一面において利用価値のあるところは、それはそういうことで、地価という問題は現行のようなことになって、一面においては今度は利用価値のないところを抑えられるかもしれぬが、いまあなたもちょっと触れられたけれども、利用価値のあるところはどんどんどんどんこれは逆な作用を起こしてくるということにはなりませんか。こんなことで私は、いまあなたがおっしゃったような、政府が常に言っておりますような抜本的な、つまり物価の問題とからめての地価対策ということにはならぬと思うのですが、どうですか。
  204. 西村英一

    国務大臣西村英一君) いま一番困っているのは、地価対策と申しましても大都市の周辺であろうと思うのでございます。したがいまして、大都市の周辺で地価をいろいろつり上げたいるのは、やはりでたらめにあちらこちらに小規模の団地ができるとか、まあ非常に建築があちらこちらにバラ建てで非常な悪い現象、いわゆるスプロール現象というのが起こっておるから、やはり地価は土地の利用をちゃんときめ、そうしてやることがいいと思います。そのために、どれだけ地価が下がるかというようなことは、またこれは、その利用計画をきめただけで断定はできませんが、あらゆる手を打ちまして地価の安定をはかりたい。土地の利用計画は、これは都市部、大都市の周辺におきまして、いまやらなければ非常に地価の暴騰を来たしまして、私はそれでは非常な無秩序な都市ができると思いますから、それはそれで有効な政策であろうと思っておる次第でございます。
  205. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 どうもなかなか理解できないのですが、あらゆる方法と言ったって、どんな方法ですか、あらゆる方法というのは。私は少なくとも、政府が物価問題と関連して地価問題というのは重要であると、特にいまあなたが言ったような問題になるのは主要な都市でしょう。しかし、そこだけではないのですよ。日本国土にこういう問題があるのです。現実にいまこの不動産の価格の評価基準なんというものはこれは用いられていますか。どんな田舎に行ったって、その標準価格の三倍ないし四倍ぐらいで売買されている。それでなければ取得できないという問題が山積しているわけでしょう。ですから私は、あえてあなた方に申し上げたいことは、政府が土地問題、地価問題について責任の所在を明らかにする規定がないのじゃないか。もう一つは具体的な計画がないんじゃないか。もしお持ちだったらここで明らかにしていただきたいと思いますが、どうなのですか。
  206. 西村英一

    国務大臣西村英一君) それでありますから、一つの手できめ手はないと、こう言っているのです。ぴしゃっとこの手をやれば地価がちゃんと安定する、その地価が下がるというような手はないから、あらゆる方法、あらゆる方法というのは、まず都市の周辺におきましてはやはり宅地の大量に供給する。それから市街地において遊んでいるところがあれば、これはやはり市街地は都市再開発、いわゆる有効に、平面的ではなくて立体的になるべく有効に使う。それからまた、都市の利用計画をやるということ、また土地取得制度をやはり改正する。いまどんどん道路とか下水道ができていって、そのために地価が上がるところもありますから、そういうところにつきましては、開発の利益を合理的に処理したいために土地収用法も改正しなければならないだろう。それからまた、土地に対するその他税法上の問題も、これは検討しなければならないという、そういうことがあらゆる手でございます。いま、一つの手をもって、ぴしゃっとこれを押えるというようなことは、なかなか容易なことではない。そういう手はないということで、政府としては、この地価対策は産業の基盤であります、人間活動の基礎でございますから、これは建設大臣一人がやるのではございません。政府としては、総理のもと、一生懸命、この問題には真剣に取り組んでいく考えでございます。
  207. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 大臣、あなたから精神訓話を聞いているのではないのですよ。精神訓話を聞いているということだけでは、この問題は解決しない。根本の問題は、私権というものより、少なくとも国土開発、その面から見た土地の問題というのは、公益を優先にしていくという思想が貫かれなければいかぬのですよ。その思想がないじゃないですか。そういう思想がない。たとえば、英国などは、一つの企業が広大な土地を取得する場合、政府から許可を得るというようなものがあるのですね。その思想というのは、一体何ですか。私権というものより公益というものを優先にしていくという思想がある。そういう思想が、あなたら、ないのだ。ですから、先ほど言ったような、具体的な、土地を利用していくという計画を持っていないということですよ。計画を持っていないということは、具体的に言えば、これに対する政策がないということなんです。私は、政府の社会開発の発展計画なるもの、これはりっぱな論文だと思っていますよ、ある意味においては。ですけれども、こういう計画の前に私はなすべきことがあると思う。それは、特に日本の場合は、何といいますか、それぞれの権利といいますか、漁業権の問題であるとか、いろいろたくさんございますね。水利権であるとか、あるいは地上権などというような権利、さまざまな権利があって、そういう問題が土地問題を解決する場合にいろいろ問題になってくるのだと私は思うのですね。ですから、そういう事柄等も含めて、少なくとも、この間も総理大臣は、中期経済計画の中では高度経済成長政策のひずみがあり、問題解決のためには地域開発もやらなければならぬ等々ありましたけれども、地域開発をやるとしても、こういう問題が当面ぶつかってくる問題ですよ。私は、こういう計画をつくる以前の問題としてその基盤をなすものは土地じゃないかと思う。ですから、その土地の利用をどうやっていくかという政府の具体的な緻密な計画を持たなければ、こんな――こんなと言ったら失礼ですけれども、こういうりっぱな冊子に書いた論文というものは、空文にひとしいですよ。絵にかいたぼたもちのようなことに、これはなりませんかね。どうですか、総理大臣。総理大臣答えてください。
  208. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま吉田君の話を聞いておりますと、御意見を聞いていると、これはもうたいへんな広範にわたる問題でございます。わずかな質疑応答でこれが片づくような話ではございません。そこで、問題をしぼりまして、土地なら土地の問題について話をすることにいたしますと、土地は、言われるとおり、これは物価の基幹だ。ただいまでは中心をなすものだ。そうして、その影響するところはたいへん大きい。かつては米の値段が、そういうような意味で各方面に影響を持っておりましたが、今度は、その米と同時に、地価、そのあり方が非常な問題でございます。そうして、今日の特徴、これは、過大都市、過密都市ができてくると同時に、農村地方は寡少人口になる。こういう社会問題、政治問題を実は惹起している。それが、やはりもとは土地の問題であります。でありますから、いま地価をどういうように安定さすか。これが上昇するにいたしましても、格段の上昇でなくて、これを小幅にとどめるような方法はないか。いろいろ関係各省で意見をまとめておるわけであります。それで、先ほど建設大臣がお答えしたように、建設省が中心になりましてこの問題と取り組んでいるわけであります。そこで、価格も価格だが、同時に、土地の取得、これもやはり容易にするようにしないと困るだろう。今日の都市対策、または地域開発、それらに関連を持つ場合において、土地の取得、これはやはりもっと円滑に行なわれないと困る。  そこで、ただいま、思想がない、貫かれた思想がないというお話でありますが、申すまでもなく、今日まで、私権の尊重、これはもう絶対である。しかし、やはりわれわれが社会をつくり、国をつくる、そういう立場から、公益というものを無視はできない。ここに一つ考え方が生まれてくるのであります。土地収用法などは、その一つの手段としてそういう方法をとっておる。これはもう、吉田君も百も御承知でございますから、詳しい説明は必要といたさないと思うのであります。私どもは、ただいまの私権の尊重、これは今日の憲法のもとにおいて当然守らなきゃなるまい。公益公益と、かように申しまして、公益優先、その原則ばかりで、もしも貫くとしたら、これはたいへんな事態になる。かように思います。混乱さすことは問題を解決するゆえんではございませんから、そういう点で、国会の御審議もいただき、皆さん方の英知も拝借いたしまして、そして土地取得も円滑に行なわれるようにというので、ただいま土地収用法改正も提案し、御審議をいただいておるのだと思います。私は、先ほど来吉田君のお話しのもの、これは政府もやはりならうところでございますから、十分、この法案の審議にあたりましてただいまのようなお知恵も拝借したい、かように私はお願いする次第でございます。どこまでもこういう事柄は一方的だけでこれを強行するという、そういう考えではございませんが、その私権と公権、公益との調和、そこにむずかしさがあるんじゃないかと、かように思っております。
  209. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 総理のだんだんの答弁を聞いておりますと、私も、私権を無視してしまえなんというむちゃなことを言う気はないですよ。しかし、この土地に対するわが国の一般的に言える観念といいますかね、それから、あるいはいままで制度が幾つかございますが、これは、いずれも古い時代のものじゃないんですか。で、高度経済成長政策、あるいは佐藤さんおやりの中期経済計画なるものは、新たな方向に構造的な変化をもたらしたでしょう、社会の中に。そうした中から、この土地なら土地という問題が出てきたり、国土開発というふうな面が出てきたりしているわけですね。そうしますと、私は、土地利用の効率を高めていくというためにも、あるいは、いま議論しておった地価問題を解決するというようなためにも、それこそ、常にあなたが使われる勇断、決断をもってこの問題にメスを入れて、私は、新しい角度の土地に対する観念、土地観といいますか、そういうこと、あるいは土地に対する政策というものを踏まえる必要がいま出てきているんじゃないか、こう思うんですがね。総理大臣、どうですか。
  210. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まさしく、新しい時代、それに相応する法律でなきゃならぬと、かように思って、ただいま土地収用法の改正を提案している次第でございます。
  211. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 関連。いま吉田委員から地価問題についての御質問があったんですが、総理答弁は、土地収用法の改正ということが具体的な一つの問題として出されておりますけれども、私権の制限というものは、ある程度踏み切らなければ地価の安定ということはむずかしかろうと思う。そのために政府として考えなきゃならぬことは、大都市に対する人口並びに産業の集中というものは、これはやむを得ないものとしてこれに対処するということになるのか、あるいは、自治省あたりの見解のように、人口の大都市集中というものはこれを抑制する、地方開発に相当力を入れる、こういうような方法をとるのか、基本的に考え方はどちらに重点を置くかということがはっきりしないで、いたずらに地価の安定ということを言ってみたところで、問題は具体的には解決しないのじゃないか。だから、その点は政府の中でもいろんな見解があるようだけれども、一体どちらを選ぶか、どちらに重点を置くというお考えなのか。また、もし人口の都市集中というものを抑制するということであれば、かつて河野建設大臣当時、首都の移転というようなことを一つの構想として発表したことがあります。そういったようなことをも含めてやらなければ、なかなか問題はむずかしかろうと思うけれども、はたしてそういったようなところまで徹底をするということになるのか。基本的な考え方なんでありますが、この点を、どういう構想によるものであるか、ひとつ総理から御答弁いただきたいと思います。
  212. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 瀬谷君にお答えいたしますが、私が申し上げるまでもなく、御承知のように、都市集中の傾向、これは人口ばかりではない。産業も都市にどうしても集中する。これが特に最近の経済発展の情勢のもとでは著しい現象でございます。私どもも、政治から申せば、全体が、地方も都市も全部が生活が向上し、豊かな生活ができるようにすること、これが政治の目標でございます。そういう意味から、地方の開発について特に力がいたされておると。地域開発、これは適地適産業とでも申しますか、そういう意味のもの、あるいは新産都市、あるいは工業整備特別地域等々の施策をとって、まんべんなく発表するようにと、こういう方向でものごとを進めております。だが、同時に、都市集中の形が非常に著しく出ておる、この都市に集中する産業を積極的に分散する方法はないか、これも研究されております。そこで、いろいろ都市に集中しているその機関別に見まして、まず学校などは地方に移すことができるんじゃないか、あるいは研究施設等も地方に持っていくことができるんじゃないか、こういうような、学都、あるいは研究施設を適当な場所へ移すというような計画もございます。また、特に税制の面等におきまして、地方的に工場を誘致する、こういう場合には、工場が出やすいように固定資産税その他についての特例を設けるとか、いろいろな方法を企てております。この点はもう御承知で、いまも総合的施策が行なわれつつあることは御承知のとおりでございます。  ところで、そのうちの一つに、先ほどから議論している土地収用法の問題があるわけであります。また同時に、過密都市が分散しようとしても現実にあるのでございますから、都市の生活をやはり守っていくという、そういう観点に立っての都市再開発をしなきゃならぬ。でありますから、この地方開発、都市再開発、そのいずれが先かとか、いずれがあとだとか、こういうことでなしに、とにかく政治としては、まんべんなくやらなきゃならぬ、これが現状でございます。そこで、いろんな施策がそれぞれとられるということだと思います。極端な議論をする人は、そんなに過密都市ができるんなら、都市の再開発など一切やらないで、都市は住みにくいところだと、こういうふうにしたらどうか、こういうような議論までする人がございますけれども、私は、それも極端だと。やっぱり都市地方を通じてまんべんなく豊かな生活ができるようにすること、これが政治の目標でございます。
  213. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私権の制限というものは、ある程度思い切ってやらないことには、土地収用法程度のことでは、地価の安定というようなことは、考えてみてもなかなかむずかしかろうと思う。だから、前々から問題になっておって、むずかしいむずかしいという答弁だけで、何にもいままで政府はやってきてないのですが、私権の制限ということをある程度いままでよりは思い切って実行するという考え方政府にあるのかどうか、その点をひとつ伺いたい。
  214. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど申しましたように、私権の制限も、公益を増進するという、あるいは公益を守るという、そういう立場においてその調和をいかにするか、私権の制限というよりもその調和がいかにとられるかということが一つの問題だと思います。ただいま瀬谷君から、政府はもっと積極的に私権を制限する、こういうことに勇断をもって踏み切れという御激励を受けておりますが、むずかしいのはその調和をすることだと、かように私は思っております。
  215. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 まあその地価問題によってすでに時間があまりなくなりましたから次に移りますが、主としてこの物価の問題に関連します問題ですけれども、この際ひとつ、きのう総理大臣がこの委員会で公共料金の問題に触れられて、鉄道、それから電話、あるいは電気料金は向こう一年間上げないと言っておりますから、そのことにちょっと関連をいたしまして郵政大臣に伺っておきたいと思うのですが、いまこの電話の問題がたいへん問題になっておりますね。そこで、電話を合併しなければならないという問題がその最たるものじゃないかと私は考えるのですが、具体的に言えば、市内で電話をかけても市外料金を徴収されるという問題がたくさんありますね。これは一体全国で何カ所ぐらいあるのですか。
  216. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 最近の調査では約千三百カ所ぐらいあると、こういうことでございます。
  217. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 千三百ということがいまわかりましたが、これは千三百カ所というのはかなりの個所でございますね。そこで、先ごろ電電公社の総裁が国会で答えられた中に、北九州については昭和四十三年度を目標にそういう趣旨に沿うように、言ってみれば、合併したいということを答えられましたね。これは私はあまりこういうことについて政治的にとやかく言いたくないから申し上げませんけれども、北九州だけに限ってやっても問題は解決しないと思うのですが、これはどういうわけなんですか。
  218. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは北九州だけの問題でありません。やはり日本の全国を通じて調査をして、できるだけやはり一行政区域のものは市内通話にするのが私はあるべき姿であろうと、かように考えておるわけであります。最近、北九州についての御質問があったから北九州について御返事を申し上げた、こういうことでありまして、これだけの問題ではありません。
  219. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 そういたしますと、こういう理解でいいですか。調査をした結果、あなたの答えられたとおり、千三百カ所あると、特にこの東京周辺にたくさんございますね、三多摩地区とか何とか。ですから、そういうものを含めてこういう理解を私はしたいと思いますが、全国的にこうした問題は、行政の区域と通話区域というものは一致させなければならぬと私は思うのです。これは総理みずから言ってるように、政府というのは、まんべんなくあまねく国民が利益を、恩恵をこうむるようにするのだと、こういう私は前提に立って言うわけです。そういうあなたの答弁が、たまたまこの北九州の問題で質問されたからそう答えただけだと、こういうことですから、昭和四十三年を目途にこの千三百カ所の、いま私が申し上げたような、行政区域というものと通話区域を一致させる、そういう方針ですね、そういう理解でいいですね。
  220. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 行政区域と電話の通話区域が一致しなければならぬと、こういうような別段の法律の規定はございません。しかし、従前ともそういうことをやってきておる。ところが一方、とにかく最近数年、地方の町村合併あるいは市の設置、こういうものが電話の工事能力その他におかまいなしにどんどん進められておる。北九州の問題についても同様でありますが、事前に電話当局なりにこれらの御連絡もあまりない。したがって、町村合併について電話の合併が追いつかないこういう状態であります。しかし、私どもとしましては、やはり従前の慣例によって、行政区域と電話の加入区域は一致させたい、こういう希望を持っておりますので、これも合併のできたものは、相当たくさんのものをすでにやはり電話の加入区域と一致させている、こういうことでありまして、全体にまだ及ばない、こういうことでございます。しかし、私どもとしては、続いてできるだけ早い機会においてこれを実施せしめたい。しかし、一例を申し上げましても、北九州だけでも、この施設を市内区域にするためには設備費だけでも十億円もかかる、また、電話そのものの収入減も四億円にも及ぶ、こういうことでありまして、電話当局としましては、たいへんなこれは事業でありまして、町村合併のように簡単にはまいらない、こういう事情もぜひ御了解をいただかなければならない。それにいま申しましたように、北九州だけでもそれだけの費用がかかる。とれは千三百全体の問題になると、いま私は北九州だけしか見ておりませんので、たいへんな費用になるのでありまして、いまの状態においてこれらの問題が全部できるかどうかということは、なかなか当局としてもこれを引き受ける自信がない。中にはやはり料金でも変えなければならないということまで言っているところもありますが、とにかく私どもとしては、住民の利便をはかるためにできるだけの力を注いで区域を統合したい、かように考えておるのであります。したがって、いまの調査におきましても、実は私どもとしましても、今度のように全国的に一体どれだけそういうものが残っているかということも最近これはやってもらったのでありまして、そういうことを将来実施する、こういう具体的な意図をもってひとつ調査するようにと、かように申しております。
  221. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 どうも先ほどの、最初に答えられた当時は、北九州だけについての質問があったからそう答えたと言っておる。ですから、全国的に千三百カ所だということをおっしゃって明らかになったから、それは北九州に限らないじゃないかとだめ押しをしたら、今度はどうも歯切れの悪い答弁になってきましたな。希望しておくとか、そういうように願うとか、最後にはこまかな金のことまで言われましたが、これは大臣、企業性のみ追求していればそういうことになるのですよ。電話加入者は、電話を施設する場合には債券を持たされるわけでしょう。加入の施設料も取りますね。そういう負担をさしておるわけですから、同じ行政区域に居住しておって、Aという者とBという者は、今度は逆に、恩恵を受ける場合に、これは料金がかなり違うわけですから、そういう不公平な扱い方を一体常識的にできるかということですよ。できないでしょう。企業性にのみあなた方は考えるからそういうことになる。いわゆる電話の公益性というものをどういうようにあなたは見ているのですか。ですから、もうちょっと、――そこまで言い張ったなら、積極的により前向きでやるとか何とか答弁はできないのですか。
  222. 小林武治

    国務大臣小林武治君) もう前向きでやるためのお答えを申し上げておる。単なる企業性、ことに、いまの電話の区域の統合というものは、工事の負担をかけるような問題ではありません、電話の新しい架設ではありませんから。局の設備あるいは局と局との連絡、こういうことでありまして、これらの問題については加入者に負担をかけない、かけることのできないような施設が必要になってきておると、こういうことになっております。しかし、お話のように、われわれが前向きでもってこれを解決していきたいという熱意は十分持っておることを申し上げておきます。
  223. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 前向きで、熱意のほどがいま披瀝されましたから十分わかりました。ですけれども、現状の、いま出されている予算の中には、そういう積極的な前向きな姿勢というものは見られませんからね。ですから、来年度予算編成にあたっては、いまあなたの答えられたような熱意を示してもらいたいということを私は申し上げておきますが、どうでしょう、具体的に。
  224. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これらの問題も、いまお話のように、これは単なる加入電話の増設とか、局の設備とか、こういう問題ではありませんから、この問題のための予算等もひとつ特に編成をして進めたいと、かように考えております。
  225. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 それじゃこの問題はこれとして、それから次に、時間がありませんから移りますが、若干時間がなくなりましたから中小企業の問題について伺っておきたいと思います。  今日、総理大臣のおっしゃることでは、非常に日本経済というものが上向きになってきて、やや安定してきた。こういう中でも、中小企業の倒産というものほかなりまだ高い率を示しているのではないかと思うのですが、四月の件数はどのくらいになっておるのか。それから三月、二月はどういう倒産件数になっているか。できれば具体的にその内容等もお聞かせ願いたいと思います。
  226. 宮沢鉄蔵

    政府委員(宮沢鉄蔵君) ただいま御質問の全倒産企業件数でございますが、東京商工興信所の調べによりますと、四十二年の二月が七百三十四件、三月が六百三十六件、四月が六百二十一件となっております。
  227. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 もう一回読んでください。
  228. 宮沢鉄蔵

    政府委員(宮沢鉄蔵君) 二月が七百三十四件、それから三月が六百三十六件、四月が六百二十一件となっております。
  229. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 その件数だけでも、これはたいへんなものですね。ですから、決して、総理大臣が言うように、必ずしも日本経済というものは上向きになっているとか、安定成長の段階に入っているなんということは言えないですね。言えないと思うんですよ。なぜかというと、今日、日本経済の中に占める中小企業の役割りというものは、業種別に見ても、占めるウエートはこれは高いですよ。それに、生産されている、特にこれは消費者の消費製品を主としてつくっているところですが、それにしても、生産高は六〇%を上回っているのですからね。ですから、そういう面から見ると、決して、これは政府が言っているようなことになっていないと私は思いますが、それはそれとして、倒産している原因はどこにあるか、何にあるか。そうして、一体、そういう問題を解決するにはどこに焦点があるのかということを、その見解をひとつ示していただきたい。
  230. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 中小企業者の倒産数がふえてきたというのは、大企業は最近非常に発展しましたが、中小企業の発展がおくれておるというところに原因があるように思います。したがいまして、中小企業におきましては労力の不足、あるいは金融難等の事態の発生に沿い得ないというところに原因があると思うのでございまして、結局、高度成長のひずみの一つのあらわれが今日出てきた、こう思っておる次第でございます。
  231. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 ええ……。
  232. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと、吉田君待ってください、総理から……。
  233. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま通産大臣がお答えしたとおりでいいのでございますが、もう少しふえんしてお話をしてみたいと思います。  これは、最近の経済は確かにたいへん活況を呈しております。その結果、いわゆる労働力不足経済というものが――今度は労働力過剰経済から不足経済になってきた、これが一つの原因でございます。したがいまして、中小企業がよほど生産性を上げないと、近代化を積極的にやらないと、労働力不足経済の際に中小企業が存続することが非常にむずかしくなってきた、こういう点があるのでございます。これもいま中小企業がそういうような状態に立っておることについて、政府は特に施設の近代化であるとか、あるいは融資とは別に近代化資金等を低利で融通するとか、あらゆる努力をしておりますが、最近の経済の発展、活動が非常に著しい、それに対応ができない、たいへん残念な状態になっておるわけであります。これはわが国の中小企業の持つシェアから見ましても、これはたいへん重大な問題であります。そういう意味で政府はあらゆる努力をする。でありますから、最近の中小企業振興事業団等でいろいろ計画しておる、あるいは団地を形成する、あるいは協業化をはかる等々がこの近代経済に即応する、対応する中小企業の態勢だ、かように考えで、あらゆる努力をしているような次第でございます。
  234. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 通産大臣、さらに総理からも前任者ですから補足したのじゃないかと思うのですが、それはそれとして、確かに労働力が不足しているのが原因ですが、やはり金融ですよね、それともう一つには仕事を与えてやらなければいかぬですね。この政府のいまのやり方というのは、これは何と申し上げても大企業を中心とした、特に日本経済の重点ですね、重化学工業に指向していることは間違いありません。これは間違いない。ですから、そういう点のあおりが、やはり中小企業というものが今日の七百とか六百とかたいへんな倒産の件数、ただ単にそれは放漫経営がこうさしているというだけできめつけることのできない状態だと私は思うのですよ、総理大臣、これは。私は総理も金融のことを先ほど申されましたが、いまのそれぞれ確かに中小企業に対する金融機関がありますが、大蔵大臣、これはその看板どおりに中小企業を積極的に立て直す、育成する、振興させるというかまえで金を貸すというような状態になっていません。貸しつけていくというような状態になっていない。これは企業自体が――企業というのは金融機関でございますが、やはりその機関の、つまり利潤を追求していく、企業の採算性を考えながらやっているところに問題があるわけです。私は利子の問題とか、いろいろな制度上の問題はありますけれども、それとあわせてやっぱり今日の中小企業の金融機関というものにもう少し政府が積極的にメスを入れて、それでできるだけ看板どおりに中小企業に融資ができるような、その中から育成をしたり中小企業振興対策というものができてくるようなことにしなければならぬじゃないかというように思うのですがね。こういう点は、時間がありませんから多く申し上げませんが、あとあと私は細部にわたっても一般質問あるいは分科会等でやりたいと思いますから、これ以上申し上げませんが、どうですか。
  235. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まさにそのとおりでございまして、立ち行く企業は銀行が金融をしてこれを助けるという立場でいかなければなりませんので、私ども、倒産件数がふえるということに関連して、始終中小企業金融機関についてこの問題を出しておりますが、問題は、やはり金融機関であります以上は、担保上が不足の場合に金融しないということが実際上ございますので、いま倒産している中小企業が、銀行に金融をとめられたから倒産しているというよりは、銀行から金融されなかったので、ほかの方面の金融でやりくりしておったのが続かなくなったというようなケースが非常に多くございまして、したがって、これを救済せいということはなかなかむずかしい問題でございますが、そうでなくて、正常の企業をしている中小企業の金融は、決してこれをまごつかせないようにというこの方針は、いま各金融機関も非常に協力してやっておるところでございますし、御承知のように、四十年ごろの中小企業の貸し出し比率は非常に少なかったのですが、昔のような大企業と中小企業の比率がいま戻ってきている。最近は、非常に中小企業の貸し出し比率がふえておるということでもわかりますように、この点の心配は私はないんじゃないかと思っております。
  236. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 総括質問ですから、こまかなことはこれ以上聞きませんけれども、最近の傾向にもそういう傾向が多少出ているかもしれませんけれども、現状必ずしもそうなっていないんですよ。先ほど申し上げたとおりになっている。むしろ金融機関は、おのれの採算性という点から見て、中小企業に対する資金供給というものは漸次閉鎖的になってきております。しかも、その手続が、もう長いものになると三カ月ないしは四カ月もかかる。それに持ちこたえるような企業というものは幾つあるのですか。そういうところに、私は、思い切って政府は、総理大臣が言うような重要な問題であるということなんだし、あるとするならば、私はいまの金融機関そのものにもやはりメスを入れて、この中小企業というものを育成したい、あるいは中小企業振興というものをそういう面からとらえるべきじゃないかと思うのですがね。これは現実そうですよ。漸次閉鎖的になっていますから。
  237. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私どもの見方では、そう閉鎖的になっていないんじゃないか。非常にやかましく中小企業の金融についてはやっておりますし、無担保金融までさせるという方向で努力しておりますので、中小企業への貸し付けぐあいは、言いましたように非常にむしろ伸びておるということでございまして、内容がよほど悪いか、金融してもその企業が見込みがないとかという特殊な事情がない限りは、いま金融機関は中小企業の金融についてはそう閉鎖的になっていないと私は考えております。
  238. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 なっていない、なっているという平行線ですからね、もうわずか時間が六分よりありませんから私は申し上げませんが、しかし、そういう具体的な事例を私は次の機会にあげて、なっているかいないかということを明らかにしたいと思います。  時間がありませんから、たくさん準備していますが、最後に運輸関係のことに触れますが、特に最近の航空問題にしぼって伺いたい。  日本の航空事業について、一体基本的な政策をどう踏まえているかということなんです。端的にいえば、私は、航空事業についてはもう政策不在じゃないか、もうアプローチがないのじゃないか、こう思うくらいなので、この点をひとつ、ございますれば明らかにしていただきたい。
  239. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 航空事業の整備につきましては、御承知のように、昨年いろいろ検討いたしました結果、目標といたしまして、国際一社、国内二社ということに相なっておるわけでございます。で、この方針のもとに、これが実現方に向かっておる段階でございますが、御承知のように、昨年の春及び秋におきまして、飛行機事故、これに伴いまして、さらにこの方針について再検討の必要があるのでないかということも言われておる状況でございまするが、しかし、政府といたしましては、一応現在目標となっておりますように、国際一社、国内二社、この方向に向かって既定方針を進めてまいりたい、かような考えでおるような次第でございまして、それにつきましては、大体日本航空と国内航空との合併につきましても、その目標の時期等を一応定めておりまするし、また全日空を中心とする合併につきましても、一応スケジュールを定めてそれによって進んでおるような状況でございます。
  240. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 どうも大臣の答えというものは、これは政府としての政策には――そんなものは行政的な措置ですよ、大橋さん。いまあなたのおっしゃった、国内二社、国際一社などというものは、審議会の答申をあんた言っているだけの話ですよ。答申を尊重して、それは規模をそういうふうにしたいというだけの話で、それは行政的な措置でしょう。政府としても、今日国際的に見て日本はもう完全に空のクロスポイントになっていることを、あなた事実知っていると思う。しかも、これはものすごい国際競争の激しい私は事業だと思うのです。その中における政府の方向というものは、いま言った国際一社、国内二社だけで済まされるものではない。具体的に一体どう国際競争力基盤に対して対処するのか、あるいは国内航空事業というものは、あらゆるいま問題出てきていますが、どう対処するかというようなものがなければならないのですから、政策的に。ぼくはそれを聞いているのですよ。
  241. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 補足して申し上げます。  まず、国際航空につきましては、政府といたしましては、日本航空を中心にいたしまして、今日の国際競争に対処して日本の航空事業を発展させてまいりたい。それにつきましては、日本航空は政府出資の会社でございまするが、今後の航空機の大型化並びにSST化、こうした事態に対しまして、現在の日本航空の資力等については、なおこれを強化すべき必要がございまするので、政府といたしましては、数年問の継続的な計画をもちまして政府出資の増加ということを考えておるのでございます。さしあたり今年度におきましては、二十六億円の政府出資の増加をいたしてまいりたいと思っております。半面、これに対処いたしまして、民間資本の拡充も並行させてまいるのでございまして、こうした資力の増加ということを考えておるわけでございます。同時に、この乗員養成という面におきましては、民間のみの力にたよるわけにいきませんので、特に政府において今年度から準備をいたしまして、明年度におきましては、現在三十名でありまする年間の航空大学の収容人員を九十名に、一躍三倍に増加していきたい。これは航空機の乗員面の対策でございます。こうした各般の措置をもちまして、国際航空に対処いたしたいと考えております。  それから、国内面におきましては、特に安全の強化ということが強調されておりますので、これに対しまして五カ年間の継続事業といたしまして、一千百五十億円の総ワクを設定いたし、この金額によりまして国内の各飛行場の整備並びに安全施設等をやってまいりたいと思っております。御承知のとおり、新国際空港につきましては成田空港の建設を急いでおりますが、これはいま申し上げました総ワク以外に考えておるような状況でございます。
  242. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 いま安全の問題とか対策とか聞いたわけじゃないですけれども、いろいろなことを申されておったが、それはそれとして、ちょっとあなたの答えがなかったのは、国際的な問題については、日本航空に、これはあなたに言われなくても予算書を見ればこれに書いておりますが、二十六億予算を計上されておりますからね、漸次そういう方向で強めていっていただいて、そこで、日本航空に対して今日まで政府の出資が日本航空全体の資産規模に対してどの程度になっているか、お聞かせ願いたい。
  243. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 日本航空に対しまする現在の政府出資の総額は累積百三十億円になっておりますけれが、これが日本航空の総資本金に対する五八%に相当いたしております。
  244. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 それは今年の二十六億を含めてですか。
  245. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 二十六億はまだ予算未成立でございますので、これは今年度分で、それは別でございます。
  246. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 そこで、大体わかりましたが、日本航空が、したがって、大臣の答弁では、国際競争力の基盤強化というたてまえで政府は日航法に基づきましてどんどん出資をしていく、これはそういう傾向だと思うのですね。そこで、私は日本航空というのは特殊な、いわば国策会社だと思うのですが、これは関連でどのくらい資本投下しておりますかね、これをちょっと知らしてください。
  247. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 現在の総資本は二百二十四億二千百万円でございます。
  248. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 いや、ぼくの聞いているのは総資本ではない。資本金は大体ぼくは五八%かければわかるのですがね。日本航空自体が関連企業ないしは他の航空会社にも投資しておりますが、いいですか、その金額を明細、明らかにしていただきたい。
  249. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 日本航空から他の会社への出資その他の投資額の累計、これは十四億九千六百万円になります。
  250. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 具体的にどことどこですか。
  251. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) まず、日航商事へ三千六百万円、東京航空食品三千四百万円、大口を申し上げますと、日本航空ホテル三億二千十四万円、全日本空輸三億五千五百二十万円、日本国内航空一億五千万円――いま後半に申し上げたところが大口でございまして、その他三十三社ございます。
  252. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 その他三十三社というのは、私の手元にありまする――あなたの十四億というのは、これは日本航空が他の航空会社あるいは整備会社に持っている所有株の状況ですね。それ以外に持っているのですよ、それ以外に。たとえば日本航空ホテルに、いまおっしゃったように三億二千万くらい出資しておりますね。それからいま申し上げた東京航空食品ですかに四千五百万、それから空港グラウンド・サービスに三千四百万ですね、それから日航海事三千六百万、日本空港動力二千四百万、あるいは大阪空港交通株式会社というのですかね、これに一千万、等々合わせると五億をこえているのですよ。それから、いまあなたのおっしゃった関係は、全日空、これは全株の六・五%のものを持っておりますから三億五千五百万円、それから国内航空三億、その他日本航空機製造株式会社九千五百万、それから東洋硝子九千万、それからその他銘柄二十くらいございまして十億をこえているのですよ、私の持っている資料ではですよ。そうすると、トータルで約二十億くらいです。  そこで、私は運輸大臣に聞くのですがね、国策会社として日本航空株式会社法に基づいてでき上がっている航空会社が、つまり航空事業を行なっていく上において、諸般の事情があろうと思いますよ、思いますが、赤字が出たからといって国民の税金である出資を求める。今度の場合にも二十六億じゃないですよ、要求した金額は、当初予算編成のときは。そうでしょう。そうしておいて、一面においてはこうした関連企業から、これはもうまことに私はでたらめだと思いますけれども――あえてでたらめということばを使いますけれども、こうしたところに投資をしていくということについて一体どう考えておりますか。
  253. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 日本航空に対しまする政府の出資は、同会社の国際競争力強化のための経営基盤強化策として行なっているものでございまするが、日本航空がその資金をさらに他に出資その他の形で投資をいたしておる点についてでございますが、これらの資金の使用というものも、やはりこの会社の業務の運営を便宜ならしめ、そうして日本航空の力を強めていく、そういう面にのみこれらの投資は限らるべきものと思うのでございます。そうしてこれらの投資につきましては、かたく運輸大臣の監督のもとにその認可を受けて行なっておる次第でございまして、従来から運輸省といたしましても、これらの出資につきましてはその実情を精査いたしました上、これらの事業への投資が日本航空の事業遂行上適切である、ないしは必要であるというような判断をいたした上で、承認を与えているものと考えておる次第でございます。
  254. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 吉田委員に申し上げますが、持ち時間が超過しておりますから、そのおつもりで御質疑を願います。
  255. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 関連質問がありますからね、若干。  いまの答弁は、運輸大臣ね、これはもう全く一官僚がものを言うような答弁ですよ、それは。なぜ私、こういうことを言うかというと、日本航空に三億五千万、国内航空に三億ですよ、この国内航空というのはいまたいへん問題になっていますね、再建問題で。再建させるための手段で投資したというなら、これは国がやるべきことじゃないですか、国が。航空企業がこうした形でトンネル的に政府から出資を仰いで、こうした約二十億ですよ、これは。二十億に近いものを関連企業に投資していくというこういう状態、これは事実ですから、実態ですから、それが、あなたいまおっしゃられたような判断で、これはいいものかどうか。私が日航法のたてまえあるいは財政法のたてまえから考えてみたって、必ずしもこれはいい傾向だとは私は思わぬですがね、どうですか。
  256. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 日本航空のごとき巨大な経営体を経営いたしてまいります上におきましては、いわゆる関連事業ないし関連産業というものは相当に考えられるところでございまして、これらの事業につきまして必要なものは、やはり日本航空の統括下に、何らかの形によっておくということも、会社の事業経営上やむを得ないところと思うのでございます。そうしてこれらについて、全額出資によって会社を持つとか、あるいは日本航空の事業の一部としてそれらの事業を行なうということも考えられるのでございますが、しかし、それらの企業自体からみますと、単に日本航空だけを得意先とするよりは、そのほかにもいろいろ広く得意先を持って営業していくというようなことが適切な場合もあるわけでございまして、そういう点を考えまするというと、いわゆる関連産業ないし関連会社に対する投資というものは、今日の事業経営の常識から申しまして、ある程度やむを得ないものと政府としては考えておるわけでございます。その間に、これにつきましては厳重に監督をいたし、いやしくも無統制、野方図の出資は認めないという趣旨で、厳重に監督、承認の手続をとっておるわけでございます。
  257. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 時間が超過しますからこれでやめますがね。ある程度日本航空の事業の傘下に置くためにはやむを得ないとおっしゃる。日本航空というのは日航法に基づいてやっているのでしょう、御存じのように。その他の航空会社というのは、これは完全に民間ベースによる民間企業でしょう。本来、これはあれですよ、木と竹ほど違うのですよ。それを、そういう角度であなたが答えられるということは、これはたいへんな問題ですよ。私、時間がありませんから分科会でもうちょっとやりますが、たいへんな問題です。だから、この全日空の社長の交代についても総理大臣がものを言うようなことになるのですよ。これはどうですか、総理大臣。明らかに政府の出資を受けて、トンネル融資じゃないですか、これは。日本航空ないしは国内航空に何億――何億といったって七億くらいでしょう、トータルしまして。そうして、片や、一面は国民の税金ですよ、これは。国民の税金を国際競争力基盤強化という美名に隠れて、今年の場合は二十六億だ。いままでに、先ほど答えたように百三十億という金がもうすでに日本航空にいっているのですよ。どうなんですか。それ以外に日本航空のジェット機の減価償却についても問題がある。税法上七年のものをいま十年にして減価償却しているわけですね。時間がありませんからあとでやります。やりますが、総理大臣、どうですか、明らかにトンネル融資じゃないですか、トンネル融資でしょう。民間企業ですよ。日本航空というのは民間企業じゃないですよ。
  258. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これはトンネル融資と言われますけれども日本航空に対する政府出資の目的が、日本航空が日本を代表する国際的な航空会社として今後とも成り立ってまいりますために、国際競争力を強化するという必要でこの政府から出資をいたしたものでございまして、日本航空がその趣旨を達成いたしますためには、業務の運営についていろいろ必要な事柄があるわけでございまして、それらのために政府出資をさらに再投資するということは、これは結局、日本航空の国際競争力強化という本来の目的を遂行するため以外の何ものでもございません。したがって、私どもといたしましては、これはやはり本来の政府出資の目的を逸脱したものとは考えておらない次第でございまして、また、逸脱をいたさないように運輸省といたしましても厳重に監督いたしておる次第でございますから、どうぞ御了承をお願いいたします。
  259. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 御了承くださいと言ったって御了承できませんよ。(笑声)国際競争力の基盤を強化するということと国内の航空事業とどういう関係がありますか。日本航空は国内幹線を持っているのですよ。その事業を強化していくということに使われるのなら別として、これは別ですよ。御了承いただきたいと言ったって御了承できるものじゃない。しかも、そのことをあなたは知ってか知らぬかしらぬけれども、会計検査院から指摘されているところです。時間がありませんから、私はもうこれ以上論争しません。約束しておきますよ、一般質問か分科会でこの問題は私はもう少し掘り下げてやります。総理大臣どうなんですか、総理こういうことは。だから、あなたが全日空の社長をやめろとかやめないとかいうことを、石坂とか何とかに言うたとか言わぬとか新聞に出ている。そういうことになるのです。官僚統制になりますよ、こういうことをやっておりますと。
  260. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 大橋運輸大臣の先ほどお答えしたとおりです。私は、吉田君と考え方を別にしておる。いわゆる間接投資というか、いま何とおっしゃったか、この投資が……、(吉田忠三郎君「トンネル融資だ」と述ぶ)トンネル融資だと、さようには私は考えておりません。  それから、ただいま私の発言についていろいろ誤解をしていらっしゃるようです。私は、民間会社の人事に介入するような考えはございません。
  261. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上で吉田君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  262. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に、北村暢君の質疑を行ないます。北村君。
  263. 北村暢

    ○北村暢君 私は、まず第一に、四十二年度予算に関連をいたしまして、財政法第四条の問題についてお伺いをいたします。羽生委員の質問でも、四十二年度の国債の発行に伴う今回の措置というものは、財政法第四条の違反であるということを指摘しておるのでありますが、この点について私お伺いをいたします。まず、これを建設公債であるという解釈をとっておるのでありますけれども、これは明らかに一般会計の歳出に対する歳入不足ということであって、赤字公債と解すべきである、このように考えるのでありますが、この点についての見解をひとつ、まずお伺いいたしたい。
  264. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 必要な国の財政需要を満たすために、この財源を租税に依存するか、あるいは租税だけでなくて、国民の蓄積を活用するという公債発行ということによって得た基金でこれを一部まかなうかということ、これがどちらがいいかという問題でございますが、私どもは、昨年以来、税一本ではやらない、公共事業に限定する、しかも市中消化に限るという、この二つの原則でいくのなら、税だけに依存しないで国民の蓄積を活用するという処置をとるのが妥当であろうということで、公債発行に踏み切ったわけでございますので、そういう意味から、これは国の財政の赤字補てん策ということではないと思っております。
  265. 北村暢

    ○北村暢君 財政法第四条は、明らかに「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」これが原則ですね。   〔委員長退席、理事平島敏夫君着席〕 原則はそうなっておるわけですよ。したがって、ただし書きがあって、公共事業費については、国会の議決を経た金額の限度内において発行することができる。それについても返済計画等についてやれということがついておるわけですね。したがって、私はやはりこの精神は、建設公債であるから一般財源に匹敵するような膨大な国債を発行して、それでこの財政法の精神に違反しないのだということでは私はならないのじゃないかと思うのです。それは私も公債発行することを否定するものじゃない。否定するものではないですが、四十年、四十一年、四十二年おのおの国債が発行されているのですが、そうであったならば、その各年度における公債の発行の理由というものを明らかにしてもらいたい。私は非常にここに変わってきているであろうと。現在の財政法四条の精神を逸脱した公債発行である、このように思うのです。したがって、大蔵大臣のおっしゃるような説であるならば、財政法四条をまず改正してからでなければ、私は現在のたてまえではいかないのじゃないかと、このように思うのでありますが、ひとつ四十年、四十一年、四十二年の公債発行における理由というものを、そしてその性格というものをはっきり説明をしていただきたい。
  266. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 理由は先ほど申しましたように、日本のおくれた公共投資に対する財政需要というものが非常に多いときでございますので、この必要な需要を満たすために、この際、税だけに依存しないで、公債発行による資金に依存をするということはもう妥当であるという判断がら公債発行に踏み切ったということでございます。
  267. 北村暢

    ○北村暢君 ひとつ質問に答えてください。四十年、四十一年、四十二年の発行した趣旨が違うでしょう。
  268. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま申しましたのは、昨年、ことしの問題でございまして、四十年に出した公債は、これはもう緊急特別措置として、赤字補てんの歳入がないというために出した公債でございまして、これははっきりと赤字公債でございます。
  269. 北村暢

    ○北村暢君 したがって、同じ公債の発行でも、赤字公債と大臣のおっしゃる建設公債、私は建設公債というものを認めないわけですけれども、まあそういう趣旨の出し方はある。しかも、四十一年、四十二年では私はまた非常に違うと思う。で、四十一年と四十二年は趣旨は同じだということで、予算説明書に、四十二年には書いてありませんよ。四十一年にはちゃんと書いてある、この予算の説明書を見ますとね。だから同じだとおっしゃるけれども、非常に発行の条件というものは違うと思っている。四十一年、四十二年というものが、発行する環境というものは非常に違う。趣旨が違うのですよ。そういう点をひとつ、私は同じだということでは納得しないので、その発表するに至った経緯、これをひとつ説明してください。で、私もそのフィスカルポリシーというものを認めないわけじゃないですよ。しかし、この四十二年度の発行というものは、明らかにフィスカルポリシーの観念、理念というものから逸脱している、私はそう思う。したがって、そういう意味からいって、財政法四条というものの精神から逸脱している、こう思っておりますけれども、このフィスカルポリシーに対する理論的な考え方というものをひとつ説明をしていただきたい。
  270. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 四十一年度と四十二年度のこの公債につきましては、性格は私は全く同じだと思っております。ただ、問題は、公債の四十一年度と四十二年度の発行額の問題でいろいろこの国会でもずいぶん御批判が出ておりましたが、これは別の問題としまして、性格は同じものだと思っております。
  271. 北村暢

    ○北村暢君 性格は非常に違うんですよ。四十一年度は不況でもって、自然増収も少ない。したがって、景気刺激のために七千何百億の公債発行をする、そうして結局それで景気は立ち直ってきたですね。したがって、発行するときの条件というものは変わっているわけです。そういう意味において私は違うと言っている。したがって、そういう点についての変化というものがあったことは事実なんであるから、   〔理事平島敏夫君退席、委員長着席〕 それも認めないのですか。したがって、私は、フィスカルポリシーの理念から言えば、不況のときには財政景気政策として公債を発行することはある。景気が立ち直れば、それを自然増収等があれば減債のほうに向ける、そういう財政運営をやるべきである、これなら納得するのでありますけれども、まあ来年、再来年も続けて、景気不景気にかかわらず、これを建設公債という名のもとに発行するということについては、これは私は財政法のたてまえからいって財政法を改正すべきだと、こういうふうに思うんですがね。
  272. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) たとえば公共事業にいたしましても、一昨年から昨年へ伸びた率よりも、昨年から本年度の予算への伸び率のほうが非常に減っておるということでございますが、昨年は不況克服という意味がございますので、こういう公共事業費の伸び率を非常に多く昨年は見たわけでございまするが、これは本来ならば税によってまかなわるべきものでございますが、そうじゃなくて、いま言ったフィスカルポリシーという点から公債を発行すると同時に、昨年は相当大幅な減税をやるということによって財政政策をやったということでございますが、本年度は昨年と比べて自然増が相当あるので、したがって、もし減税をしないということでございましたら、公債の発行額ももっと縮小できたということでございましょうが、御承知のように、昨年あれだけの減税をやりましても、まだ所得税の負担というものは非常に重いということを考えまして、本年度さらに所得税の減税をやるということをやりましたために、公債の発行額がそれだけ圧縮ができなかったというような事情があると思いますが、公債の持つ機能については、性格というものについては本年度はそう違ったものではないと思います。
  273. 北村暢

    ○北村暢君 四十一年度は自然増収が大体千百九十億程度で、四十二年、本年度は七千三百五十億という自然増収が見積もられ期待できる、これはもうたいへんな、まあ最近にない最高の自然増収であるわけです。それで、一方、減税は景気刺激策として二千億の減税をやった。本年度は差し引き八百億ちょっとの減税なわけですね。したがって、税収見積もりというものを厳密に考えた場合、やったならばですね、私はこの八千億の公債発行というものを財政的にくふうしてこれを減らすことができたんじゃないかと思うんですが、どうなんでしょうか。
  274. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これもたびたび申し上げましたことでございますが、税収の見積もりにおいて、私どもは当初大体計算から八千三百億という税収見積もり、それから昨年の減税の本年度へのはね返り、これを千億程度差し引いて、そうして七千三百億。当初は七千億円でございましたが、百億円見積もりいたしまして、それでも見積もりとしますと、税収の伸びが二〇%をこえるということで、過去何年間から見て一番大幅な伸びを見ておることになりますし、弾性値も一・五三という大きいものを見てこれを見積もったのでございますから、けっこういままでの税収の見方としては、今度わざわざ過小に見積もったということではございませんでした。ところが、これは昨年の十二月の予算編成期のときでございましたが、一月になりましてから、私どもの考えた以上にいろいろ経済指標も変わってきましたので、税収の見積もりをもう少し見られるということになりましたので、さらに二百億円税収の見積もりを追加していまの七千三百八十億の見積もりにこの予算編成のときにさらに直した、再検討したという事情もございまして まあ私どもとしましては、これは過小の見積もりではないというふうに考えております。問題は、経済の伸び率を、御承知のように、政府の伸び率によっておりますので、これがあとで動くというようなことになりましたら、それに伴った増収というものは新しく見込まれるものであろうと思いますが、ただいまのところでは過小見積もりというふうには考えておりません。
  275. 北村暢

    ○北村暢君 まあそれでは、私はそれでも納得はいたしませんがね。かりに大蔵大臣の見解に合ったにしても、この返済計画表というものが出ておりますが、これは一体返済計画表と大臣はこれ見ておるんですか。
  276. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 財政法第四条で求めておる償還の計画というものは大体これであるというのがいまの解釈でございます。
  277. 北村暢

    ○北村暢君 これは雨が降る日は天気が悪いというだけのことなんです。返済計面じゃないですよ。これは償還計画じゃない。四十二年度の発行額が八千億で、四十九年の返還額が八千億と、この表にこれだけ書いてある。八千億ものものの償還計画表がこんなものであんた国会通ると思っているんですか、一体これ。
  278. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは公債を発行しましてから、つまり昨年から国会で衆参両院でずいぶん御論議のあった問題でございますが、財政法第四条の求める償還の計画というものは、結局年度別の償還の計画を示すことをもって足りる、その償還の財源計画を求めておるものではないというのが私ども解釈でございましたが、これについていろいろ御論議が出ましたので、前の大蔵大臣のときは衆参両院に対して約束をいたしました。結局償還財源の計画を示すということは事実問題としてできないが、こういう形で今後の償還をやっていく、国民に安心を願うやり方を考えるという、そのしかた、考え方については、ひとつ文書で国会にお出しするということが一つと、それから、この解釈について、さらに財政制度審議会あたりにおいて検討してもらうということでございました。この二つを昨年からことしにかけて私どもはやったわけでございますが、この考え方については、お手元に、三月二十三日でしたかの日付で配ってあるものがそれでございますし、それから、財政制度審議会のほうでは法律部会と、それから総会と、これは数次にわたってこの問題を検討した結果、大体政府解釈が正しいんだという確認をいたして、私どもへ報告が昨年の十二月の二十六日にまいっておりますが、衆議院で一ぺんこの問題をお読みしましたので、もう一ぺんことで、これは一応この報告を読んでみたいと思います。「財政法第四条第二項の規定によれば、公債を発行し又は借入金をなす場合には、その償還の計画国会に提出しなければならないこととされている。この償還の計画解釈については、従来議論のあったところであるが、この規定が公債の発行時にその公債の償還財源調達に関する具体的な計画を示すことを要求していると解することは困難であって、実質的には公債の年度別償還予定額を示すもので足りると解すべきである。  また、単に公債の満期時の償還予定額を示すだけではさしたる意味がないので、この規定を削除してはどうかという考え方もあるが、他面、予定償還期限を明らかにし、また年賦償還、満期償還の別を明らかにすることは、公債発行に関する審議の参考となる点もあり、この際しいてこの規定を削除するまでの必要はないと考える。」と、これが審議会の審議の結果の御報告でございますが、この解釈は公債問題から始まった政府解釈でございませんで、すでに公社法の中にも償還計画というものがございます。それもいままで財源に触れた計画ではないという解釈でずっと今日までまいりましたし、また、特別会計法の中にも償還計画表というものがございますが、この解釈も同じように従来から解釈されて今日まできている。こういうことでございますので、結局今度の場合にしますと、発行時が八千億円の国債発行、何年に償還八千億円、この二本で非常に簡単なようでございますが、もしほかにいろいろな銘柄別の公債を発行すると、今度は七年満期の公債一本でございますが、種類が幾つもあるとすると、この償還表はもっと複雑になる。さらに年賦償還の借り入れ金というようなものがあるという場合には、これが年次別にずっとたくさん長い償還の予定表がつくというようなことで、もっと複雑になると思いますが、今度の場合は何しろ一本で、銘柄も一つで満期公債ということですから、きわめて簡単でございますが、しかし、財政法の要求するものはこれ以上は困難であるという解釈にございますので、これはひとつ御了承を願いたいと思います。
  279. 北村暢

    ○北村暢君 それはその審議会か何かがそういう解釈をしたかもしれないが、国民が納得しないですね、それでは。私はそう思う。  それから、減債制度についてまあ説明があるわけですが、一体この八千億に対して、予算総則でも公共事業の範囲というものが載っておりますよ、これで、これに入ってない公共事業、範囲に入ってない公共事業というのは幾つあるんですか。予算総則の七条。
  280. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) このほかに大体七百九十億円あるそうでございますが、たとえば防衛庁施設費といったようなものも、ほとんど八千六百億と見ておりますから、このほかにあるものは一割前後ということです。
  281. 北村暢

    ○北村暢君 減債制度による百分の一・六でいくというと約六十年。したがって、まあ道路なんか六十年で償還を見積もっていいじゃないかと、こういうことですが、これを見ますと、たとえば住宅に対する公債発行、これは低家賃の住宅で木造で、そういうものに対して償却は大体二十年か二十五年でしょう、せいぜい。それに対してあんた百分の一・六でいくというと六十年になる。これはそのほかのまあ剰余金だの何だのありますけれども、こういう公債を発行しては剰余金なんてほとんど期待できない。したがって、この減債制度でいけば、おっしゃるように、六十年くらいのこういうものになるわけです。したがって、道路なら道路を六十年というならまだいいんですけれども、公共事業費に占める道路整備の経費というものはどのくらいですか。こういうものをひっくるめて八千億という膨大なものを、財源に充てて公債発行ということでやるわけです。そのうちには水害防止の河川の問題もあるし、住宅の問題もある。こういうずさんなことで膨大な公債を発行して、私はそれで国民が納得するというふうには思われない。全くずさんきわまるものです、返済計画というものは。だから納得しない。それから、財政法二十六条の債務負担行為についてでも、その財政法が単年度主義をとっておるのですから、したがって、一年、二年延びるものについては、こういうこまかいものが年次についてこれは提出することになっていますね、承認を得ることになっておる。こういう精神からいっても、私は、その公債のほかに方法がないからというので、この償還計画表でもって納得しなさいといわれても、そういうずさんなもので方法がないからというだけでは私は理解できない。そのくらい厳密にやはり財政法というものは規定しているわけです。したがって、私は財政法違反だという点もそういうところから出てくるのであって、私は、やはり改正を検討すべきである。あらゆる点から見て、いまの財政法のたてまえでやるということについては非常に無理がある。違反じゃないとおっしゃられるのなら、無理がある。したがって、私はこれはやはり改正すべきだと、こういうふうに思うのですが、御意見を……。
  282. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 先ほどの問題でございますが、耐用年数については、木造は木造、コンクリートはコンクリートと、相当こまかく計算して、平均大体五十年という数字を出しております。それから、もう永久資産とみられる出資金とかあるいは土地というようなものは、これはもう年限がないのでございますが、かりにこれを百年といいますと、百年と見るべき部分が大体公債発行の見合い財源の中には二割はあると見て、これを平均して六十年という耐用年数を一応見ているということでございますので、相当これはかたい見方であると思っております。過去も、現に日本の二万分の百十六という時代は八十六年で見ておりましたし、イギリスあたりでは百年で見るという国もあるくらいですから、この六十年という見方は決して減債制度というものをつくる場合の見方としてはずさんなものじゃないというふうに思っております。  それからいまの国庫債務負担行為でございますが、確かに、これは、行為をなす年度と、それから限度額と、支出をなすべき年度というものが示されております。そういうことになっておりますが、一方、これに対応する償還計画のほうでみますと、行為をなす年度に対して償還計画のほうでは発行年度、それから限度額というものに対しては償還のほうで発行額、支出をなすべき年度というものは年度別の償還予定額ということで、大体国庫債務負担行為の場合に比べても、こちらのほうが内容が簡単になっているということではございません。しかも、債務負担行為をする場合でも、支出するときにどういう財源調達をもってやるかというような財源問題に触れていないことは両方とも同じでございます。  そういう点から見ましても、別に私はいまの財政法を改正する必要はないものと思ってりおります。
  283. 北村暢

    ○北村暢君 この論議は、羽生委員も指摘しているように、これは財政法違反だと、はっきり言って、納得しておらない問題ですよ。でありますから、私も改正する必要はないと言って納得はいたしませんが、とにもかくにもこの予算総則の第七条に公共事業費の範囲というものが出ておりますけれども、先ほど言ったように、百年あるいは五十年、こういうものがこの公共事業費ごとにどれだけそれじゃ検討されて八千億もが出てきているかということについては、いま大蔵大臣は言われだからそういうふうに答弁したんであって、これは厳密にそんなものがあるんだったなら、これは幾らに見たというやつをこの項目ごとに出してください。
  284. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) 非常にこまかい技術的なことでございますので、私から御説明を申し上げます。  減債基金制度をつくりますときに、欧米先進諸国におきましては、戦債の処理等々、非常に急激に国債がふえましたときに減債計画を立てるという例でございますけれども日本におきましては、現状において、国民経済の規模あるいは財政の規模に対して、そんなに大きな国債の類推残高があるわけではございませんけれども、一方には、国債に対する民間の信用というものを確保する上において、あるいはまた、政府自体が公債政策を運用いたしますときにその残高が無制限にふえないように、いわば自制的な機能をも考えましてこの減債制度を立てたわけでございますが、そこで、一・六を計算します基礎としましては、これは毎年それぞれの経費のウエートが変わりますので、小さな指数の異動はございましょうけれども、われわれがとりましたときのは、四十一年度の予算額をとりまして、そのときの継続公債の対象と考えられます七千六百五十億円をそれぞれいま申し上げましたような永久資産あるいは償却資産――償却資産につきましては、税法に準じたもの、あるいは国営調査の耐用年数というようなものを基準にしまして、それぞれはじきまして、それぞれの経費が占めますウエートごとにそれをかけまして平均をいたしますると、六十年という計算が出たわけでございます。  四十一年度の予算を標準にとりまして計算をしましたときの内訳を申し上げますというと、公共事業関係費が五千八百六十八億円でございました。その中の永久資産が六百六十四億円、償却資産が五千二百四億円、その他の施設費が七百九十五億円でございまして、うち、永久資産と考えられるものが二十八億円、償却資産が七百六十七億円、それから永久資産と考えられる出資金がほかに八百億円、貸し付け金が百八十七億円、合計七千六百五十億円でございまして、永久資産がその中の約二割に相当します千四百九十二億円でございます。その他の償却資産が六千百五十八億円、その償却資産のそれぞれについていま申し上げましたような耐用年数の基準を立てまして、それぞれのウエートをかけましてアベレージを出したものが六十年、こういうことでございます。
  285. 北村暢

    ○北村暢君 そういうものは、ひとつ資料として、算出の根拠ですから、出していただきたいですね。
  286. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) いま御説明申し上げましたものは、後刻資料として差し上げます。
  287. 北村暢

    ○北村暢君 いずれにいたしましても、まあ経済の成長率その他あるでしょうけれども、これだけの膨大な公債を建設公債という名のもとに出しているというのは、世界的にも例は少ないですよ。依存率一〇何パーセントという、これで一七パーセントくらいですか、こういう高い公債発行をしているというのは、各国において例を見てもそうはないのであります。ですから、私は、いま大蔵大臣の説明では納得いたしませんし、また、これが公共事業費の大部分ですから、これを税収によって切りかえるという段階が私は三年や五年ではできないのじゃないか、こう見ているのです。依存度を下げていくということにはなっておりますけれども、三年や五年ではとてもできないというふうに思うわけで、非常に長期にわたってこの国債に依存しなければならない、まあこういう結果になってくるのじゃないかというふうに想定をいたしております。したがって、お伺いしたいのは、財政法四条のただし書きでない歳入は公債、借り入れ金によってはいけないという、この原則に立ち帰るのは一体、何年くらいを目標においているのか、これをひとつお伺いいたしたい。
  288. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いまの原則問題、なかなかこれはむずかしい問題でございまして、法律にああいうふうに書いてございますから、一応借金せずにやるのにこしたことはない、これほど健全なことはございませんで、原則といえば言えると思いますが、財政論としてこれがいいか悪いかということになりますというと、全部税でまかなわなければならぬということがはたして正しい原則論であるかどうかというのには非常に議論があろうと思います。まあ、どこの国でも、税一本でやっている国はございません。公債というものを発行して国民の蓄積を活用しているということは各国ともやっております。日本もやっておりましたが、終戦後あの日本のインフレを抑えるために、初めてドッジ氏の指導によって、一切国は借金をしないという原則を立てて、その年の仕事はその年の税収をもってやるという原則、日本昭和二十五年以降こういう方針できましたので、超均衡予算であったとは思いますが、これによって国民の負担というものは非常に多くなった。そうして、その間に社会資本のおくれがどんどん進んできたということでございますので、その後において国力がついてきたというときになったら、早晩はその方針を変更するときでなかったかと思うのですが、ちょうど歳入不足という事態にぶつかったということを機に公債政策というものを採用したのですが、これが例外であるか原則であるかという問題については、私はまだいろいろ議論があるだろうと思っております。
  289. 北村暢

    ○北村暢君 いまのは、私も、公債を全然発行するなということで否定しているわけではない。公債を発行することはあるということですね。弾力性をもってやっていくことは、これは認めておる。ただ、これが膨大ですからね。公共事業費の一般財源からいっても一七%というのは大きなものですね。したがって、これがややしばらく続くのじゃないかと、私はそう思うんですよ。したがって、その運用上からいって、依存率を切り下げていった場合に、どのくらいでもってその社会開発のおくれなり何なりを挽回してできるのか。これは、各大臣に、道路は長期計画でどのくらいだということを聞けば、とても三年や五年で社会開発のおくれを取り戻すなんということはできないですよ。だから、そうなれば、やや半永久的についてきます。膨大な残高になってくるのじゃないかというふうに受け取れるのです。したがって、この点は、ひとつ総理大臣に、一体どのような見通しをもってこの建設公債と称するものを出しているのか、その点を腹がまえをお伺いしておきたい。
  290. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) おっしゃられますように、公債の発行額としては、まあこの二年の発行額は日本は世界一だろうと思っております。しかし、従来公債というものを発行しておりませんでしたので、その残高の負担、あるいは国民総生産に対する比率というものは、まだ日本はきわめて低いということでございますが、この世界一に依存度の高い二年の状態を長く続けるということは、これはなかなかたいへんでございますので、いま一番社会資本への需要の多いときでございますので、これはまあ五年計画、いろいろ計面ができておりますが、これに沿って一応一、二期の遂行をやったあとでは事態が変わってくるというふうに考えております。要するに、公債を発行するといっても、国民の蓄積の内部で消化するのでございますから、民間資金を圧迫する形で発行しようとしても、これは不可能でございますし、そこにいろいろな拘束が加わっておるものでございますから、それと見合った公債の発行ということ、依存度をとにかく年々下げていくという努力をするなら、この公債政策はしばらく続いても私は心配ないじゃないかというふうに考えています。
  291. 北村暢

    ○北村暢君 総理大臣からもひとつ……。
  292. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま水田君から詳しくお答えいたしましたとおり、私もただいまのような心配があるので、もちろんそのような点についても注意してまいるつもりであります。私が言うまでもなく、公債は国民からの借金でございます。だから、借金が多くていいというのじゃないし、また、安易に流れてはならない。そこで、ただいま公債を発行しておりますのは、たいへんな経済成長、ところが、社会資本への投資拡充だ、あるいはまた保険制度の充実だ、こういうような点にどうしても税だけでまかなう、こういうことだと十分でないように思います。そこで、ただいまの経済成長に見合う社会開発をする、こういうところでただいまの公債制度に踏み切ったのであります。しかし、公債の持つ危険なものもございますから、過日も説明したのでございますが、やはり経済の規模と見合う、そうしてそれが同時に建設公債であり、また、市中消化、いわゆる国民の蓄積によってこれがまかなえる、こういうものでなければならない、かように思って、安易に流れないように一そう注意してまいるつもりでございます。
  293. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。先ほど大蔵大臣の御答弁の中に、第四条のただし書きの問題ですが、財政の政策から見て例外とするようなことをいまやっておっていいかどうか、やる必要もないじゃないかと聞こえるような御発言がありました。私は、ああいう例外、特例としてきびしい財政法上の規定を持っておればこそ、後世の国民に対しての責任が持てると思うのです。しかも、あの原則をくずして、そうして例外を通常化するようなことを当然とお考えになるような考え方ではたしていいのかどうか。昔の旧帝国議会の貴族院時代だったら、たいへんなことだと思う。先ほどお話しになったように、超均衡予算の時代と違いまして、大型予算化して経済の高度成長しておる今日の時代でありますから、同一に論ずるわけにはまいりませんが、しかし、そういう原則をきびしく持つ姿勢を堅持してこそ、はじめて後世の国民責任を持てる。いまの内閣が永久に続くわけではありませんから、安易に流れてはいかんということをあらためて確認しておいていただかぬと、あの例外を取っ払ってもいいんじゃないかと言わんばかりの御発言に聞こえましたので、特に念を押しておきます。
  294. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私もこの原則はそうだと申したいところでございますが、どうも、私、これは個人の考えにこだわるせいかどうかわかりませんが、まさか財政法で経常収入と公債をもってまかなわなければならぬと書くわけにはまいらないと思います。これは、だから、但しでこの問題を書いたと思います。そうすれば、まあ原則と例外というふうな規定に見てもいいんじゃないかというふうにも思われますが、しかし、財政論としてはそれが財政の原則であるべきかどうかということについては、さっき申しましたようにいろいろ疑問がある。問題は公債発行が、皆さんが心配するようなものでないかっこうであるんなら、むしろ財政運用としてはそのほうが、国民の蓄積で社会資本の充実をはかるというのは、本筋とも言いませんが、決して間違った財政論ではないというふうにも思われます。で一方、民間の経済がどんどん進めば、民間の設備はよくなっていく。そうして、国のほうが税一本にたよるとすれば、どうしても国の公共投資のほうはおくれる。これはもう当然でございますので、これを是正する方法としては、やはり民間資金が、国の投資と民間の投資とがバランスがとれるという方向でいくことが必要でございまして、このバランスをとる一つ方法として、やはり国債というものの機能というものは重んじていいということも言えますので、これは例外、原則というふうに私は割り切らないほうがいいんじゃないかという気が私自身はしております。
  295. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう一回だけ。ある特定の期間を限って――私たちはそれでも反対ですが、ある特定の期間を限ってという場合には、蔵相の言われることもある程度わかります。しかし、それが当然化して、しかも今後いつこれが大体打ち切りになる、今後公債発行しなくてもいいというような見通しもつかない時期に、そういう御発言をなさるのはいかがかと思います。つまり私はきびしい姿勢を要求するがゆえにこそ、そういうことを申し上げるのです。いまの答弁の、運営そのものが全部一〇〇%間違っているとは言いません。もし理屈を言うならば、徹底的な脱税の捕捉とか、あるいは交際費の課税とか、あるいは租税特別措置法の改正とかいうあらゆる努力を重ねて、なおかつやむを得ない場合にのみ発行が許されると私は解釈しておりますが、そういう議論は別として、きびしい姿勢がほしかったので、特に念を押したわけです。もうこれ以上申し上げません。
  296. 北村暢

    ○北村暢君 いまの羽生委員の意見に対して、私は先ほども言ってるように、大体目標がどのくらいになったら脱することができるのか。放漫ではいけないと総理大臣もおっしゃっているんだから、大体の目標くらいは、私は示していただきたいと思うんです。だから、先ほど来心配しているのは、国民の所得なり市中消化といっているけれども、実際はあんた、割り当て制はやっておらない、日銀総裁も割り当て制は受けておらぬとこう言っておるけれども、実際に一年たてば日銀のところへ国債が集まっていく。これはもう現実に六〇%程度集まっているわけですからね。それで市中銀行はそれを持ちこたえられないから、結局買いオペなり何なりに出なけりゃなれないで、日銀に集まってくる。そういう事態になってくるから、私は心配しているのであって、まあそれが日銀が貨幣をどんどん増額するような傾向というものは、私は出てくるのじゃないか。結局日銀が肩がわりせざるを得ないのじゃないか、そして、経済は成長する、したがって、公債以外の分はそれじゃ切り詰めるかというと、日銀は切り詰めない、こういうことになっていくのじゃないですか。したがって、そういう点を心配するから、そういう危険な状態にならない前に、財政運営で、金融財政の面でやっていくのだろうけれども、その目標というものは、一体いつごろまでをということを、私はやはり心配するがゆえにお尋ねしているのだが、何回聞いてもこれは答弁されないわけなんですね、どうなんですか。
  297. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 公債を何年先は幾らにするという計画というものは、これはなかなか持てません。しかし、たとえば昭和四十二年三月、ことしの三月一日に経済企画庁で調査しました、これまでの社会資本の蓄積がどのくらいかという計算をしましたが、大体国鉄、電電公社を除いて、社会資本三十兆円に及ぶという報告が出ておりますが、今度は、さらに今後五年の開発発展計画に出ておりますが、今後二十七兆円の投資が行なわれれば、きわめていい姿になるという姿が描かれるということでございますから、この計画に見合った投資は、やはりこの五年間、政府として計画的に私は続けるのがいい。それに要する財政需要はどれくらいかということは、これからの税収の見込み、税収そのほかと関係しますので、これもはっきりしませんが、この五年間の計画を完全に国がやるというような事態になりましたら、蓄積資本、社会資本というものは相当大きいことになりますので、これは将来の税収の根拠になって働いてくると思いますので、その時間がはっきりこの公債政策についての一つの区切りのつく時期じゃないかというふうに、私は大体の予想をいたしております。
  298. 北村暢

    ○北村暢君 それじゃ外務大臣見えましたから、財政問題はあと一問ぐらいで終わりますが、政府は今年度の予算編成の方針からいっても、中立型の予算を堅持するのだ、こういうことで、総理大臣も放漫に流れないようにと、こう言っておりますけれども、物価問題懇談会、財政制度審議会、いずれも、この経済の成長率程度に財政の規模はとどめるべきである、こういうのでありますが、財政の規模が一五・九%、名目経済成長率は一三・四%で上回っているわけであります。したがって、放漫に流れてはいけないというけれども、事実こういう状態にある。それから、一般会計でまかない切れないものが、財政投融資で千三百億ふくらまして復活要求の際にこれは出ているわけです。そういう点からいって、私どもは放漫財政、この中立型の財政はくずれたこう思っている。しかも、先ほど来話がありましたように、公社、公団、事業団というようなものも認めないということになっておったものが、五つ認める、こういうことで、財政投融資はふくらんでいるわけですね。したがって、安易になってはいけないというのですけれども、すでに第一年度からもう安易になっている、こういうことですよ。したがって、これはひとつ、私どもの見解からすればそういうことになるのでありますが、この点について、まあ政府の言う、政府の消費財ですか、云々と言っておりますけれども、明らかにこれは私は物価問題懇談会、財政制度審議会、それから経済社会発展計画、経済の長期計画の中にも、財政の健全性というものについてうたっている、これを逸脱しておりますよ。したがって、私はその点を指摘して、まあ見解だけをお伺いします。
  299. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 各審議会などから言われましたものは、経済成長率とこの財政規模を同じにしろとか、成長率より低い規模ということは言っておりません。やはり好ましい姿は、経済成長率を少し上回る程度の額がいいというのが、各委員会の御意見でございますが、やはり私はこの経済を伸ばしていき、国民生活を大きくしていくためには、経済成長率よりも財政の規模が少し上回る程度、大きく上回るのはいけませんが、その程度がいいんじゃないかと思っておりますので、したがって今回の場合も、予算のワクは経済の成長の見通しを少し上回っておりますが、伸び率において昨年の伸び率よりもふやさないという方針をとりまして、これは一般会計も同じでございますし、特に財政投融資では、これは大幅に昨年よりも伸び率を縮めてございますので、そういう点からは、先ほども申しましたように、私はそう放慢ではないというふうに考えております。
  300. 北村暢

    ○北村暢君 先ほど吉田委員の質問にもありましたのですが、今度の経済発展計画によりましても、社会開発ということを非常に強くうたわれているのですが、その際に建設公債とも関連をして、私、若干御質問を申し上げますが、公共用地の取得についての合理化についてでありますが、まあ土地収用法を一段と強化して、収用手段を迅速化するような考え方のようでございますが、私は、ごね得を奨励するものじゃない、ごね得というものは解消すべきであると、このように思いますが、所有権の不当な侵害というものはこれは許されない、このように思いまするので、土地政策の問題についてひとつ総理大臣、建設大臣から、再度で恐縮でありますけれども、御答弁を願いたい。
  301. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 土地政策の一環といたしまして、先般土地収用法の改正を提案をいたした次第でございます。それは北村さん、おっしゃいましたように、あくまでもごね得を統制するということでございます。したがいまして、それであるからといって、その土地収用法をたてにとって、あまり民主的でない方法をやるというつもりではないのであります。あくまで開発技術を合理的にやりたい、こういう趣旨で提案をいたしたのでございまして、この点につきましては、どうぞひとつ御了承をたまわって、国会通過に御協力を賜わりたいと思う次第でございます。
  302. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと総理にお尋ねしますが、これは具体的にはいろんなケースなどを私ども頭に置いて、ある意味ではまた心配な面があるわけです。土地収用法の強化をしなきゃならぬ、それはそれなりの意義はわれわれも理解はできる。できるんですが、現実には起業者のほうに大きな力を法律上与えることになるわけなんです。どうしてもそういう権限が与えられますと、それを使いたがる。こういうところにやはり一つの大きな危惧を感ずるわけであります。先ほど北村君も、ごね得を認めるとか賛成とか、そんなことはだれも考えておらない。建設大臣も、もちろんその点では同じ考えで言われておるわけですが、たとえば起業者が一つ計画を持って臨む、それだけが何か公共的な立場だ、公の立場だ、そういう考え方が強過ぎると、これはやはり強権を使いたがることになる。ところが、そういう計画自身にやはり相当問題があるのじゃないかというふうな、これもやはり公の立場なんですね。一人や二人が、あるいは少数の者が補償費を引き上げようとしてやっている。そんな問題じゃなしに、住宅の計画とか、あるいは学校なりその他のいろいろな社会施設、いろいろな関係等から見て、このほうがより公の立場に立った堂々たる計画じゃないか、そういったようなやはり対立というものが予想されるわけなんです。これは都市建設、過密都市、そういう中でやる事業ですから、なおさら私はものの見方が非常に複雑になってくると思うのです、非常に複雑に。いずれも公なんです、これは。起業者だけが公じゃない。だから、そういうことをよく理解した上で、こういう強い力を起業者に与えていこうということが考えられているのか。そうじゃなしに、ともかくもううるさいからどんどん押し切っていくのだ、それにはいまの法律じゃ弱いからというふうなことなのか、ざっくばらんに言うと。先ほど総理は、公と私の調和すか、といったような、きわめてていさいのいいことを言われておりますが、もっとざっくばらんに、腹の中というのはどういうところにあるのか。もうごちゃごちゃ言うておるのはうるさいから、押し切るのだ。そう言うたのじゃ刺激するから、そこは適当に言うていくのだ、ほんとうの腹はこうなんだ。ざっくばらんにしてもらいませんと、ああいう法案等を見ましても、われわれとしてもいろいろ決しかねるものが感ぜられるわけです。皆がやはり心配しているのもそういうところにある。役所だけが決して客観的に見て、いつも正しい計画なり意見を持つものではない。これは過去の事例がら見てもそうです。改めてよかったというものもあるわけです。だからして、われわれは何でもかんでも反対をしていく、そういう意味じゃもちろんないですよ。その辺のところを、きれいごとじゃなしに、総理からそこのところを聞かしてほしい。それで何べんも質問している。
  303. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はたいへん話のへたなほうですから、いわゆるきれいごとで説明するつもりはございません。先ほど北村君も御意見として、不当に私権が圧迫されるようなことがあってはいかない、「不当」ということばを、特に使われたように思います。またこの不当は、圧迫される場合にも、不当は困るのだが、不当に私権を主張することもまた困る。これはもうわかるだろうと思います。ただいま言われますように、公という立場でものごとを見る場合に、ただいまの事業経営者もこれも公、また土地所有者の権利行使もこれまた公、公と公とのぶつかり合いじゃないか、こういうお話でもあると思います。しかし、とにかくいままでの法律が、何といいましても私権の保護というものに非常に重点が置かれている。これだけはいなめないことだと思います。私は私権の保護、これはもちろんけっこうだけれども、ときに公益の立場から、それに適当な制限を加えることもやむを得ないのじゃないかと思います。そこで先ほど来申したような、調和という実はお話をしておりますが、そこで、いま具体的な問題で国会で御審議をいただいております法案でございます。この法案は、もちろん各党各派の方々が、この問題を、現時点において最も必要な問題だ、その扱い方をいかにすべきかというので、ほんとうに心配をしていらっしゃることだと思います。私は、前回この法律の改正ができたらよかったように思いますけれども、しかし、これは当時、税制の問題でなかなか意見の一致を見ることができなかったというようなことでおくれたのであります。しかし、おくれた関係で、法案の条項の整備もできたのじゃないかと、かように思います。もちろん、いま提出しておりますものが、これが万全だとは思いませんし、さらに皆さん方が慎重にこれを御審議なさるのは、これはもう当然のことである。私は、こういう事柄こそ、いま私権に制限を加える、こういうことでありますだけに、これは国会におきまして十分御審議をいただいて、そうして衆知をしぼって、りっぱなものをつくっていただきたい、かように私は思うのでございます。
  304. 亀田得治

    ○亀田得治君 この法案に対する考え方は大体わかりますが、あとの運用面ですね、こういう点を一番心配しているのだと思います。そういう点についての総理の見解の表明というものが、はなはだこれは弱い。まあ総理は、それも含めて言われたつもりかもしれませんが、もう少しそこら辺を納得のいくように。私は相当具体的に問題を出してお尋ねしたつもりなんです。
  305. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ先ほどの吉田君のお尋ねの場合は、むしろ、公権を第一にして、私権の制限は当然じゃないか、勇断をもってやれと、こういうような御意見でもあったのでございます。私はそう簡単にも実はいかぬと思い、ただいまの法律が整備されることがまず第一、また、運用の面におきましても、ただいまのような考え方で、事業の認定その他において、おそらく法の上で、そういうことについての取り扱い方の基準が示されるのじゃないだろうか、かように思います。そういう意味で、もちろん、この運用が雑に流れては、せっかくの法律もこれは死ぬものでございますし、問題は法律そのものじゃない、いつも人にあるのですから、運用のその人にあるのですから、かような立場行政当局、これを十分指導監督する必要がある、かように思います。
  306. 藤田進

    藤田進君 関連、総理の御答弁ですね、総理にちょっとお伺いしますが。あとでまた具体的なことは建設大臣に。  実はこの末端の行政機関なりその管理者がやる用地交渉とか、そういうところでは、間々イージーゴーイング、その権力に隠れてものを遂行するという傾向が強くなっております。まあ総理あるいは建設大臣、あるいは知事、市長というものが、知らないままに具体的な事実問題は進んでいって、予算などは、これは議決を必要とするものについてはしますから議論もありますが、それが個所別に用地買収といったようなことになりますと、おおむね末端で処理されてしまうわけです。ですから、最近の事例を見ますと、たとえば国道のバイパス、あるいはその他の高速道路等見ますと、私も実は苦情を受け、与党の皆さんからも相談を受けまして、それは困ったものだというので、いま現実の問題が数件あるのでありますが、交渉に臨みまして、大体まあ事務所長、副所長その下の管理者といったところが所有者との、あるいは、その団体との折衝に当たる場合に、あなた方いまのうちに何とか納得して妥結しなければ、いま国会にかかっている土地収用法が通ったらさっそくそれでやりますよと、こういうことを言った人に実は私も会いました。それくらい言って、また同時に、それをやらなければとても聞くものじゃないですよと、こういうことなんですね。両当事者においては、そういうことが感情になり、スムーズにいくべきものがいっていないということなので、あれほどの、たとえば事業認定の時期における単価決定、あとは工事にかかってもよろしい、文句があればあとでいったような、簡単にいいますと法律の趣旨になるわけです。これが、しばしばこれを使うというたてまえであったのでは、たいへんな強権のもとに、住民なり零細な所有者等すべて苦しむのではないか。よほど運営についての慎重みがありませんと、あとで建設大臣には事例を、権限内ですから示して見解をただすつもりですが、まあ一国の総理とされましても、亀田委員の関連につけ加えて私申し上げるのですが、総理としての、やはりこれが運営については、うんと慎重さというものを、いま申し上げた下部末端まで徹底をはかっていただきませんと、非常に問題があると思うのです。
  307. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 藤田君、また亀田君の心配は、いろいろの実例から来ておるものと思います。これはたいへん御心配だと思います。また、北村君が特に、いわゆるごね得は自分たちも味方するものではない、こういう御指摘がございます。その例に、片一方でごね得があり、また片一方で力を与えた上でのその権力行使、これもなかなか国であるだけに、政府であるだけに、のしかかってくる、そういう場合もある、あるいは事業認定におきまして、そういうものが、公の立場だと、こういうことを旗じるしとしてのしかかってくることもある。ここらに現実の問題としての政治のむずかしさがあるわけであります。十分これは徹底しなければならぬ。私はいま、もちろん、皆さんですから、法律の審議にあたっては、十分抜け穴のないように法文をつくられるだろうと思うけれども、やっぱりそういう法律をつくりましても、これを運用するものは人なんですから、やはり人が持つ意味を十分考えて、その私権の圧迫――制限が圧迫にならないように、また、私権を行使される、私権を主張される方も、やっぱり個人じゃなくて、社会的の利益としっかり合致する、こういう立場で話し合っていただければ、この法律をいきなり適用するというようなことはないでしょうから、おそらく話し合いでものは片づくというようなことにもなるのではないか、かように私は思います。やっぱり納得のいくような手段、手続をとることがまず必要じゃないか、かように思いますので、いま法律ができつつある際でございますから、十分落ち度のないように、条文を整備していただく。その上で、ただいまの運用にあたっての心がけ、気持ち、それを私ただいま申し上げたのであります。お二方とも、先ほどの吉田君の御質問に、また北村君の御質問も、別に私変わっておるとは思いません。片一方でごね得の事実があることもちゃんとあげていらっしゃいますし、また一方で、のしかかって私権を圧迫しておる、不当に圧迫しておる、こういうものを御指摘になっております。とにかく非常にむずかしい問題ですが、これから先、その事業を遂行していく上に、この種のことがどうしても必要だと、かように思いますので、十分御協議のほど願います。
  308. 藤田進

    藤田進君 西村建設大臣にお伺いいたしますが、大臣もかねて十分御承知のように、具体的な事例をこれ出しませんと抽象的になりますが、まあ万博ということで、大阪にもいろいろ交通関係、特に高速道路等の整備を行なっているわけですが、なかんずく、阪神高速道路公団の所管で、三号分岐線、これは大阪の旭区内を通過しまして、大学あるいは短大その他十二校、五メーターないし十五メーターのクリークに沿ってあるんですね。で、その周辺が市並びに府の住宅地ということで、この延長は約三キロないし四キロだと思うんです。これは実は、私もいろいろ建設委員会で陳情を受け、与党の数名の皆さんも、全くこれはひどいということで、きょう私が質問しようということになりましたわけですが、昭和三十八年六月五日に河野建設大臣のときに、これは直角九十度に折れるところが二カ所あり、この三、四キロのものをここへつけることは近来高速道路としては適当でないと、もっといい路線があるということで、そういう判断が下っていたのに、その後、大臣が何言ったって、大臣がやめてしまえば、そんなものはまたもとへ返りますよということを現地が――現地といっても、公団の一あれが言って、私それを耳にしまして、なるほど、文字どおりそうなってまた起きてきているんですね。このために、非常な問題を地元は起こし、構造的にもいろいろ考慮さるべきものであり、地元はもうあげて、万博もさることながら、わざわざここに大臣の取り消した腹いせを持ってこられて困るということになり、実は昨年四十一年五月二十六日に当院の商工委員会は、そのこともあり、附帯決議を五項目しておりますが、その三項目の中に、「公害など地元民との摩擦を生ぜざるよう十分に配慮する」という決議をし、これを受けて担当大臣であった三木さんから、「ただいまの御決議の趣旨を尊重して、万遺憾なきを期したい所存でございます。」ということにまでなっているんですがね。ところが、その大臣がかわれば、もうそんなものは――いかに国務大臣がいま権威がなくなっているか、ここでも出てきている。そこで、私は、これはだれが見ても、社会党という問題じゃないんです、与党の皆さんも数名の人、これはまあ十二校に及ぶ学校が、八十ホンのもとに授業ができなければ、文部大臣は黙っておれないはずなんですけれども、そういう事態があるわけで、事業決定をし、かつ、これを強行していくと、たとえば今度の土地収用法が成立したというような場合も考え合わしてみると、まことにどうもおそろしい限りなんで、これらについては、地元の被害者等と十分話し合われて、その話し合いがまとまらないのに強行してしまうということでは、これはとうていこの事業遂行自体があやぶまれるという事態であります。土地収用法いかにあろうとも、これについて建設大臣は慎重なひとつかまえと、その結論を出しての措置をしていただきたいと思うんでありますが、建設大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  309. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 公共事業のやり方につきまして、いろいろ先ほども総理からもお話がありましたが、やはりその実施にあたっては、スムーズにいくような体制をつくるということでございまして、そのためには、やはり地元の方々の意見も十分聞かなければならぬということであります。いま御指摘ありました大阪の三号分岐線の問題ですが、このルートはどこに選定するかということで、いろいろ従来のいきさつがあったようでございます。しかしながら、いま御指摘のように、その沿線には相当に学校等もたくさんあります。なかなか容易でないというようなことでありますから、私といたしましては、やはりこの話し合いができるまでは、これはあまり手をつけたくないと、かように考えておる次第でございます。
  310. 北村暢

    ○北村暢君 安保条約ベトナムの問題について、外務大臣にお伺いいたしますが、当委員会において、前の外務大臣椎名外務大臣が、ベトナム戦争は極東の外であるけれども、極東の平和と安全に関連があるので、当然、安保条約に基づいて日本基地アメリカが自由に使うということは当然であるという意味のことを言っておられるが、これはひとつ認められるかどうか。
  311. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ極東という範囲は、フィリピン以北の日本周辺ということには概念上なっておるわけですけれどもベトナム状態というものは、極東の平和と安全に影響するという立場は、私もそのように考えます。そして安保条約の規定によって日本施設あるいは地域、こういうものを使用できるということは、安保条約の第六条の規定によって明らかでございます。ただ、国民の誤解があってはいけぬと思いますのは、これの直接日本の地域が、基地ですね、これが直接の軍事行動の基地になる場合には、やはりこれは自衛権の対象になる。いまは兵たん補給基地として使用されているということでございます。
  312. 北村暢

    ○北村暢君 よく政府は、補給基地だからいいとかなんとか言うのですが、結局、ベトナム戦争に補給基地のない戦闘なんてできないのですから、これはもう戦争に関連して、日米安保条約があるがために、補給基地としての施設その他を使用するということがあるわけです。したがって、このたてまえからいくというと、日本国はすでにベトナム戦争の中に介入してきておるという判断をせざるを得ない、このように思うのですが、見解はどうですか。
  313. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) どうでしょうかね、北村さん、そういう場合に介入ということは、いかにもこう介入と言うと、積極的にベトナム戦争に入っておるような感じを国民は受けるでしょうが、これはベトナム戦争の前から安保条約はあるわけですね。安保条約の規定によって施設とかあるいは地域などを使用しておるわけですから、何かこうベトナム戦争に介入と言えば、少しことばの形容詞が、私適当なのではないのではないか。安保条約としての規定による協力はするわけであります。せざるを得ない。そして、それがベトナム戦争に介入しておるというようなことばで表現することは、少しことばが適当なのではないのではないか、率直に私はこう思っておるのであります。
  314. 北村暢

    ○北村暢君 これは、北ベトナムがまだアメリカ基地なり何なりを攻撃する能力を持っておらないから、そういうことが言えるのであって、アメリカはいま北ベトナムの補給基地というものをどんどん攻撃しているわけですね。だから能力が出てくればこれは日本基地として来ないという保障はない。そういう意味においてはまだ力がないからそういうことを言っておられるけれども、私はやはりそういう介入ということが、全く安全だという理解の上に立っておるからだけれども、論理からいえば、補給基地であってもこれは基地として攻撃されることはあり得る、そういう覚悟をしなければならないのじゃないか、こういうふうに思うのですが、どうですか。
  315. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは、日本基地を攻撃するものがあったならば、それはアメリカとの戦争を覚悟しなければならぬですから、だからそう基地の攻撃というものは簡単にできると私は思わない。それは安保条約を発動しますから。ただ北村さんに御理解を願いたいのは、ベトナム戦争の前に安保条約というものができておるわけですから、当然その安保条約としての機能がありますね。これはやはり国際条約を結んでおる以上は機能を果たさなければならぬわけですから、あとでベトナム戦争が起こってきたわけですから、いま果たしておるのはベトナム戦争に介入するために日本がそういう基地を提供したりしておるのではない。前からある安保条約の、日本条約上の義務を果たすという範囲内において、そういうものが日本が協力しておるので、そこでベトナムというのにアクセントをつけて介入ということは少し事実を国民に誤解を与えるのでないでしょうか。私はそういうふうに思っておるのであります。
  316. 北村暢

    ○北村暢君 安保条約を結ぶときは、まさしくベトナム戦争がああいうふうになるなんということは予期しておらない。したがって、ソビエトなり中国なり、これは仮想敵国とは言わないが、極東の情勢からして結んでおるのですよ。したがって、私はいまことさらそれを言うのじゃなくて、ベトナムの問題を通じて安保条約というものの真価というものが問われるときにきているのですよ。それで日本政府は安保条約を最大限に拡張解釈をしておる。そういうことによって危険があるのじゃないか。私は安保条約があっても、ベトナムの問題に対して介入しないでいく方法があるのじゃないか、基地を提供しないでいく、補給基地というものを提供しないで抑制的にやっていく方法があるのじゃないか、こういうふうに思っておるのです。したがって、そういう点から私は問題を提起しておるのです。ベトナムといういい具体的な例が出てきておるのですから、それでこの安保条約というものが、私どもベトナム戦争が始まるやいなや、この安保条約を結んだならば、戦争に巻き込まれる危険性があるのだということを言ったんで、それが結局ベトナムというものを通じて基地を提供するということになる。したがって、先ほど言ったように北ベトナムがまだ能力がないから心配ないだけの話であって、論理的にいけば、これはアメリカが北ベトナム基地を攻撃していると同様に、北ベトナムアメリカ基地、それが日本にもあったということになれば、補給基地をたたくということは論理的にはこれは成り立つことでしょう。それは安保条約があるから成り立つのですよ。そういう点でお伺いしておるので、この安保条約の功罪を私はやはりここではっきりしておく必要がある、こう思う。その観点から質問しているわけです。どうですか。
  317. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 残念ながら、国際連合などによる安全保障の組織というものが有効的に働いていないのですね、国際政治のもとで。だから、一つの国の防衛措置を持たないという国は――百三十くらいありますね、ほとんどないです。そういうことを考えてみると、いま北村さんの御意見は非武装中立の御意見をお持ちでないかと思いますが、これは世界はどこもやっぱりそういうことでは何となしに心配だということで、自分も自衛力を持ったり、あるいは集団安全保障条約をやっておるわけですから、日本でも、それは功罪と言われますけれども、いろんな変化がアジアに起こっておるのですよ。中共の核爆発実験なども、これはやはり中共がどうということではないですよ。それ自体から言えば、これは日本だっていろいろ影響あるわけですね。影響というのは中共がどうしようというのではないですよ。それからくる精神的なやっぱり影響があるわけです。いろんな変化が起こっても、日本が案外安全保障というものに対しては、国民の大部分というものがそう心配しないのじゃないでしょうか、いま。ほかの国は、もうわれわれいろんな国際会議に出たときに、国の安全保障問題というのがやっぱり会議の中で非常に大きな部分を占めているのです。日本の場合は、あんまり国民安全保障という問題について大きな関心を注いでいると私は思わない。それはやはり安保条約があって、いざというときに、日本が攻撃を受ければ、その国はやはりアメリカを敵にして戦わなければならぬ、これは大きなやっぱり抑止力になっているんじゃないでしょうか。だから私はやはりこの功罪という罪を北村さんは言われるのでしょうが、私は現在の国際情勢のもとにおける安保条約安全保障に果たしておる役割りはそんなに過小評価すべきではない、こういうふうに考えておるわけであります。
  318. 北村暢

    ○北村暢君 この拡張解釈の問題で、私はやはり拡張解釈をしなければ、ベトナム戦争状態というものは、ベトナムに限って拡大をしないということになれば、極東の安全と平和に関係ないということになる。そうすれば、基地を提供するという安保条約の機能というものは働いてこない。したがって、これは拒否ができる、こういう解釈が成り立つと思うのですよ。したがって、この拡張解釈するがゆえに、安保条約の機能でもって、先ほど言った、あなた心配ないと言うけれども、これはわからないですよ、これはわからない。戦争に拡大していった場合に入っていくかしれない。したがって、アメリカにも約束で、ベトナムの紛争というものはベトナムに限って極東に影響ないということになれば、安保条約の機能というものはないわけでしょう。そういうふうに解釈していくことが、私は方法はある。したがって、いま一貫して政府がとっているのは拡張解釈をとっておる。抑制的解釈をとるべきでないか、こういうこと言っている。
  319. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは極東の解釈をむやみに拡大解釈をしてはいけぬという北村さんの御意見私も同感ですが、おのずから限度があるわけです。しかも、いま言ったようにその基地の利用にしても、兵たん補給基地として利用を認めておるわけですから、そういうことでベトナムというものを実際考えてみた場合に、日本あるいは極東の安全保障に私は関係があると思うのです。私は拡張解釈論者ではないのです。にもかかわらずベトナムのああいう事態というものは、日本や極東の平和と安全にやっぱり関係を持っている、拡張解釈論者でなくてもそう思うのでございます。したがって、ベトナム問題がそんなに極東や日本の平和と安全に関係がないならば、これはわれわれも心をそう痛めないのです。何とかならぬかという考えを持っておることは、単に人道的なものばかりでなしに、ああいう戦争というものがエスカレートしていけばこれはたいへんなことになるのではないか、そういうことを考えてみますると、ベトナムというものが極東のもうこれは範囲外だ、これは範囲を越えたものだというふうには一がいに言えないものがあるのではないかというふうに私は思っておるのでございます。
  320. 北村暢

    ○北村暢君 この論議はまたいつかやることにしまして、先ほど外務大臣はこの非武装中立と同盟の安全保障の問題の先を越しての推察があったようでありますが、これについてNHKの世論調査所で調査をやっておる。この結果を私見たのですけれども、質問を私通告してありますから、その結果を御発表願いたい。
  321. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 政府委員から答弁させます。――数字はいま調べておるようですけれども、私は北村さん、こういう考えを持っておるわけです。非武装中立というものは一つのお考えだと私思うのです。しかし、いま世界を見てもそういう国はないということです。小さい国がどこでしたか、一カ所ぐらいある。全然防衛力といいますか、それを持たないでやっておる国はないのですね。それはおそらくやはり何かしら今日の国際情勢が無防備では安心ならないというものが――好き好んでやはりみな軍備を持っておる国は私はないと思う。軍備を持たないで社会保障なんかに回せれば、それにこしたことはないのですからね。しかし、どうも何か不安だという、この不安だという国民の気持ち、これは政治がこたえなければならぬ大きな課題ですから、そういうことでみながやはり相当な――日本なんかは非常に少ないほうですが、各国とも予算の三割、五割というものを持っておる国もあるわけですから。そういうことですから、どうも御意見として、一つの観念論的なものとしては私はよくわかります。しかし、現実の国の安全というものに責任を持っておる政府としては、非武装中立ということはとれない。これはまあ世論調査というものは聞き方にもよってだいぶ違いますからね、世論調査は聞き方によって。しかし、どういうふうな世論調査――これはあとで数字を見てみたいと思いますが、やはり政府としたならば、これはやはり今日の国際情勢のもとにおいては非武装中立は責任ある政府としてはとれない、これが政府の考えでございます。
  322. 北村暢

    ○北村暢君 出すのか出さないのか、ひとつ聞いてみてください。
  323. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) まことに恐縮でございますが、いま数字を持っておりませんが。いま数字をちょっと手元に持っておりません。
  324. 亀田得治

    ○亀田得治君 それは手元に持っておらぬと言ったって、だから通告してあるのだからね。おそらく中身が都合の悪いやつと違うかね。そんなことじゃだめだよ。
  325. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまの資料につきましては、三木外務大臣からは資料として提出しようということです。その資料の要求については私よく存じませんでしたが。
  326. 北村暢

    ○北村暢君 これは私、数字はわかっているのだけれども、世論調査の結果がこういうふうになっているからということで、こういうことを質問しますよということを言ってあるのですよ。だからわかっているはずなんです。
  327. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは都合の悪いものであっても何でも、それはもうどんなに政府が困ることであっも、資料は出すことにちゅうちょしないのですけれども、北村さんの御質問が、こういう世論調査が出ておるが、これについて政府はどう思うかということで、世論調査でどういう数字になっておることかというふうな質問でなかったので調べていなかったのです。これはしかし、そういうふうな質問が、数字というよりも、こういうことに対して政府考え方を述べろということであったので、してなかったので、それは都合が悪いから出さないというものではないことを御了承願いたいと思います。
  328. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。質問者のほうから数字を出してもらったら、それに対して外務大臣がお答えするつもりでいたというふうにまあお聞きをしましたので、違いますか。そういうふうにお聞きをしましたので、ひとつ質問者間の資料に基づきましてちょっと関連してお尋ねをいたします。外務大臣聞いてください、申し上げます。その世論調査の結果はこういうことです。A、ある程度の自衛力を持ち、アメリカとの同項を続けていく、これが二七%。B、強い防衛力を持って外国の侵略に備える、これが一四%、それからC、一切の武力、戦力を持たないで中立を押し通していく、これが四二%。こういうことになっています。これに対する感想をひとつ。
  329. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは世論調査というものは各所でいろいろやっておりますね。世論調査をNHKに限らず。まあいろいろ世論調査は、これはもう一番の世論調査はやっぱり総選挙でしょう、総選挙。これはやはり総選挙に自民党はこの非武装中立というものをとらない、そして今日の安全保障政策というものを選挙で強く訴えておるわけですから。だからそれは私は無視はいたしませんよ。NHKでそういう調査があったということは無視はしませんけれども、それだからどうだと、世論は全部自民党の考えに反対であるとあなたが論及されるならばそれはおかしい。それならば、そういう世論調査があったということは、私は数字は調べておりませんが、そういう世論調査があったという事実は、これはやはりいろいろ考える場合に参考にすることは当然でございます。しかし、そういうものがあっても、政府はいまの防衛といいますか、国の安全保障政策に対する変更の考えはないということを明らかにいたします。
  330. 北村暢

    ○北村暢君 あのね、私はこの世論調査は相当権威のある世論調査なんです。それで選挙ということもありますけれども政府なり外務省の一貫した見解というものは、もう非武装中立なんというものは鎧袖一触、問題にならないのだという、こういう問題の取り上げ方をしているわけです、一貫して。これは私は世界にいまそういう国はないとこうおっしゃるけれども、とにかく武装をしてあれだけ戦って無になったんでしょう。そういう戦争の経験から出てきたる私は国民一つの世論である。これはやはり私は自民党さんなり、外務省の見解が唯一であって、そういうものを私は取るに足らないものだという、そういう考え方自体が、私は、国民から遊離しているのじゃないか、そういうことを言いたいわけです。したがって、私は、そういう意味において、この武装にしても、武装中立と非武装中立合わせれば五六%というばく大なものになるわけですよ、これは。だからこういう点については、やはり私は外務省が一応そういう大きな問題をかかえておるのですから、やはりこれは国民の意識というものを常にキャッチするための世論調査なり何なりというものをやるということは――まあ政府がやったのじゃこれはあれでしょうけれども、こういう関心を持つということは必要だ、こういうことです。
  331. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それはやはり国民の動向、世論の動向というものは、政府が常に頭の中に入れなければならぬことですから、それは各方面でいろいろな世論調査が起こっておるときに、それと違うようないろいろな調査も、北村さん、たくさんあるんですよ。これが唯一のものではない。ほかにはたくさん違った世論もございますから、そういうふうなことも政治の場合にこれは参考にしなければならぬし、国民の気持ちの中に、何とか非武装でいけないかという願いがあることを私は否定しようとは思わぬです。それはやはり人類の気持ちの中にみな持っておる思想でしょうね。そういうことですから、それを私は一がいに何の値打ちもないとは言いませんが、現実に国の安全に対して責任を持っておる政府としては、これは十分な責任を果たさなければならぬ。そういうことから考えて、非武装中立の政策は政府はとらない、こういうことを申し上げておるので、いろいろお読み上げになった、そういう世論のあるということも、これはその事実を私は否定しようとは思いません。
  332. 北村暢

    ○北村暢君 これは従来も何回もやっているんです。これは世論調査、やっておって、従来はやはり非武装中立は三五から三六。それから自由陣営との協力の同盟のやつが三八%ある。このほうが多い。ところが、去年の二月やった影響は、これはやはりベトナムという問題が非常に国民に強くきている。そこで非武装中立というものが急にふえてきておる。そういう実態というものを、やはり国民の動きというものを反映して外交政策をやらないというと、三木大臣、とんでもない、あんたかけ離れた、国民と遊離した外交をやっていたのでは私はたいへんだと思う。これをひとつそういう点についての配慮というものは今後やっていただきたいと思います。  防衛問題もやるつもりでしたが時間がございません。  農業問題をひとつお伺いをいたします。  最近の農村の実態、農業就業人口というものが激減をしておる状態の中に、農業生産というものが停滞をして、他面、産業構造の変化による都市における労働力不足という問題との関連で、一体、将来農業における就業人口というものがどの程度になれば期待のできる農業生産を確保できるか、こういうふうに見ておられるのか、この点についてお伺いしたい。
  333. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のように、産業構造がだいぶ近年変化をいたしまして、一方に鉱工業が非常に成長を見た。その反面においていまお話しのように、農村から労働力が流出をいたした。それで私どもといたしましては、まあとにかく農地法に、北海道には十二町歩、あるいはまた内地には平均――まあ県によって違いますが、そういうような想定で、これに要する人口というふうなものも、当初法律をきめましたときには考えられておったのでありますが、どこの国でも、北村さん御存じのように、大体近年においては農業の就業人口は減少しておる趨勢であります。そこで私どもは、いまお話しのように、どの程度が適正であるかということについては、そのときの経済情勢、諸般の事情によって変化はあると思うのでありますけれども、しかしながら、農業生産を落としてはならないという命題は、これはもう変えることができないのでございます。そこで私どもといたしましては、いまの経済情勢の進展に従ってどのような手段で省力をやっていくか、こういうことが問題だと思うのであります。したがって、農業基本法に定めております方向に従って、われわれは生産対策、価格対策、同時にまた農業者の生活の安定をはかってまいる、こういうことに主力を注いでやっていくわけでありますから、やはり現在のような産業構造の中で、いわば跛行的に片方が伸びてまいりました日本の産業構造の中でややおくれておる、すなわち低生産性部門であると思われておる農業の進展のためには、自然に流出していく傾向にある労働力を食いとめるということはなかなか困難でありますけれども、しかしながら、農業を維持するために、やはり後継者を育成していくことを考えていかなければなりませんし、一方においては農業に従事することによって他産業の生産者と所得があまり変わらない程度の農業所得を確保することに努力をしなければならぬ、あるいは生活改善に力を入れなければならぬ、まあこういうような諸般の施策を行なうことによって生産を落とさないように、しかも、労働力が漸減してまいる傾向、その傾向はやむを得ないといたしましても、そのために生産を落とさないようにしなければならない、こういうことで努力をいたしてまいりたいと思います。
  334. 北村暢

    ○北村暢君 農業基本法の制定、農業基本農政の重点でありましたいわゆる畜産というものが伸び悩みにある。それから構造政策というものが行き詰まっておる。構造改善事業というものの申し込みが激減している。こういうものは一体いかなる原因によるのか、そしてその対策はどういうふうに考えるのか。
  335. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 北村さんはすでに専門家でいらっしゃるわけでありますが、いま私申し上げました五年前に農業基本法が制定されました時代に想定いたしました事柄は、一方における産業構造、すなわち高度経済成長のために跛行的になってまいっておる。それがやはり立ちおくれてまいりました一つの原因であることは申すまでもございません。そこで、先ほど申しましたように、他産業の所得と比較して劣らないような所得を確保するためには、どうしてもやはり経営規模を拡大いたしていくことが必要だ。それに必要なためには、もうすでに制定されまして以来十年もたっておりまする農地法に再検討を加えるとか、あるいは土地の流動性を高めてまいるとかして、経営規模を拡大することがまず必要だと思います。同時にまた、あと継ぎに喜んで農業に従事いたしてもらうために、先ほど申しました後継者育成資金といったようなもの、生活改善というようなことに力を入れて、農業者が農村にがんばってもらえるようにすると同時に、私は構造政策というものはぜひ進めなければならぬと思っております。ただいまあなたのお話で、構造改善というのはあまり成功していないようにおっしゃいましたけれども、あなたはよく御存じだと思います。いま各地でやはり構造改善に対する希望が引き続いて非常に多くなっておりまして、私どもといたしましては、やはりこの方針を進めてまいって、そして反当収穫をふやしていくようにしたいと思っております。
  336. 北村暢

    ○北村暢君 構造政策を進める際に、基本施策としての大きな柱でありました自作農主義というものが構造政策に支障があるという意見があって農地法の改正という問題が出ているようですが、自作農主義というものを一体どうするのか。これは農政の基本でありますから、まず総理大臣と農林大臣にひとつお伺いしたい。  それから米価審議会から国会議員を締め出すという問題が出ておりますが、これはひとつどういうふうに対処せられるのか、この点と二点。
  337. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) やはり自営農家というものはふやしていかなければならないと私は思います。すべての方針をそれに集中いたしてまいりたいと思いますが、日本の特殊の事情で、やはりある程度の兼業農家というものも立ち行くように考えていかなければならぬと思っております。  それから米審の委員のことでございますが、衆議院でもお問い合わせがありましたけれども委員の方々はただいままだ任期中でございますので、任期が切れないうちにその人たちをあとどうするかなんという失礼なことは考えるべきではないと、こういうのがただいまの事情でございます。
  338. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま倉石君の答えたとおりであります。
  339. 亀田得治

    ○亀田得治君 委員長、ちょっと関連。もう質問者の時間がないものですから、きわめて簡単なそっけのない御返事になっておりますが、この米審のほうですね、この点だけちょっと確かめておきたい。ただいま任期中だからそういうことについて論議するのは失礼だというふうなお答えがありましたが、しかし実際は、政府のほうでは国会議員をはずそうという相談はされておるんでしょう。そういう立場に立って総理もそれから農林大臣も、衆議院等で原則として、立場国会議員を入れないほうがいい、こういう意味の答えを今までされておるんですよ。しかし、それがこの席上へくると、急に何かそういう問題には触れないほうがいいというような態度でお答えになっておりますが、これはどういうふうに考えておるのか、はっきりやはりおっしゃってもらいたいと思う。それに対して再度私も質問をしたいと思います。
  340. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 政府部内でどうするかなんという相談をいまだかつていたしたことはございません。先般、新聞によりますというと、行管のほうでただいまお話しのように審議会なるものから国会議員をお願いをしないようにというふうなことを、何か閣議ででもやるような新聞がございましたけれども、任命してお願いをする当事者は私でございまして、私の知らないところでさようなことがかりに審議されたとしても、そんなことは何の価値もないことであります。でありますからして、政府部内でそのようなお話し合いをいたしておることもございませんし、それどころじゃございません。朝から晩までこうやって委員会に出て、そんなことをやっておる時間がないのでございますから……。
  341. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 亀田君、簡単に願います。
  342. 亀田得治

    ○亀田得治君 朝から晩までここに詰めておりましても、重要な相談は幾らでもやれるわけですよ。だからそういうことじゃなしに、きちっとお答え願いたいわけですけれども、何といっても米価決定は国民的な重大な問題でしょう。従来国会議員が参加をしていろいろの角度から論議をしててきておるわけなんです。私は、いままでの制度なり論議の過程というものは十分大臣も知っておると思うし、それはやはり評価されておると思うのですよ。あれは無用なものだ、そういうふうに一体考えておるのかどうか、従来のあり方ですよ。その点が一つお聞きしたい。  それからもう一つは、本来ならば、これほど物価等にも重要な関係を持つことですから、国鉄なりあるいは郵便料金等と同じように国会で大いに論議をして、そうしてきめるのがむしろ私たちは筋だとすら考えておる。しかし、現在の制度はそこまでいっておらない。やむを得ず各党から代表が審議会に出て、そうして各党の立場に立って、これは当然各党はうしろに国民大衆が控えておるわけなんです。その議論を展開して、それで埋め合わせをしておるのが実情なんですね、実情は。ほんとうの筋から言うならば、国会で堂々と議論したらいい。だからそういう筋合いのものであるという点を一体農林大臣はどう考えておるか。従来のその実績、これをどう評価するか。それから本来のあり方――国会においてもっと堂々とやるべきじゃないか、この二つ。  第三、したがって、一部で言われておるように、国会議員を現在の段階において排除して、そうして政府の言いなりになるような、いわゆる学識経験者、そんなあなた政府と反対の考えを持っている人を入れぬでしょう。国会議員から出すということであれば、どうしてもいろいろな意見が出てくる。そうでなく学識経験者、形だけは中立、実際は単なる隠れみの、そういうところだけにまかす、第三番目の意見が出ておるわけでしょう。これは私は絶対そんなことはとるべきじゃない。  この三つを一つ一つ。これで質問は終わりだと思って簡単に片づけぬように……。
  343. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 米審その他政府の審議会について、臨時行政調査会から御存じのように答申がございまして、ああいう行政府がやっておるところの審議会に国会議員をわずらわすべきではない、こういう答申が出てございまして、ただいまの政府はできるだけ行政調査会の答申を尊重して、審議会も整理をし、行政費のかからないようにして国民の期待に沿うようにせよという指示がございましたので、そこで、とりあえず、農林省に五つ六つほどありました審議会を合同して三つにいたしまして、そういうふうに審議会の答申を尊重してまいったわけであります。米審につきましては、先ほどのように、まだ任期中であるからそういうことを考えるべきではない、こういうことでありますが、亀田さん御承知のように、米審に国会議員をわずらわしておりますのは、各党の代表としてお願いをいたしておるわけではございませんで、学識経験者としてお願いをいたしておるわけでございます。したがって、この二十五名の学識経験者の中には、経験者であり消費者であるという立場から総評の組合代表のような方も出ていらっしゃいます。そういうことで、政府の言いなりになるような者だけを出して――もしかりにそういうふうにいたしましたならば、われわれはそういうものについてそれほど権威も感じませんからして、正々堂々たる議論をしていただく学識経験者をお願いしたい、こう考えているわけでございますけれども国会議員をわずらわすかどうかということについては、いま任期中でございますので、二十五名の方々にどういうふうにしていただくかということをまだ考えていないのであります。現在の段階はそういう状態であります。
  344. 北村暢

    ○北村暢君 先ほどの質問の答弁で、自作農主義というのはいままでの農政の中心になっている問題、ただ兼業を置いておきますくらいの答弁ではなくて、これがいま非常に論議になっておるものですから、それで農地法を改正するのかしないのか。農地管理事業団法というものを出して、これが廃案に二回、三回なっておる。それでもう方法がなくて、農地法を改正するかどうかというところにきておるわけですから、そういう面を、兼業農家を置くだけの答弁ではお粗末過ぎるので、それで私は、農政の根幹に、基本政策に関する問題だから総理大臣にも聞いておるので、ひとつ、同じでございます、なんと言われてもどうにもならない。
  345. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 先ほどそのことを申し上げたのですが、ちょっと雑音が入りまして……。農地法につきましては、すでに十年あまり制定されてから今日になっておる。だいぶ時代も変遷しておりますので、われわれは農地法については再検討をしていかなければならないではないか、このように考えておるわけであります。
  346. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上で北村君の質疑は終了いたしました。  次回は、明日午前十時開会することといたしまして、本日は、これをもって散会いたします。    午後五時二十三分散会