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1967-05-04 第55回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月四日(木曜日)    午前十時二十分開会     —————————————    委員異動  四月三日     辞任         補欠選任      中村喜四郎君     二木 謙吾君      西村 尚治君     西田 信一君      豊田 雅孝君     斎藤  昇君      中津井 真君     大谷 贇雄君      青田源太郎君     木暮武太夫君      任田 新治君     西郷吉之助君  四月二十六日     辞任         補欠選任      林   塩君     市川 房枝君  四月二十八日     辞任         補欠選任      中沢伊登子君     向井 長年君  五月一日     辞任         補欠選任      木暮武太夫君     林田悠紀夫君  五月四日     辞任         補欠選任      西郷吉之助君     山内 一郎君      熊谷太三郎君     小林  章君      林田悠紀夫君     岡本  悟君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         新谷寅三郎君     理 事                 白井  勇君                 西田 信一君                 日高 広為君                 平島 敏夫君                 八木 一郎君                 亀田 得治君                 小林  武君                 鈴木 一弘君     委 員                 青柳 秀夫君                 井川 伊平君                 植竹 春彦君                 大谷 贇雄君                 岡本  悟君                 梶原 茂嘉君                 小林  章君                 斎藤  昇君                 杉原 荒太君                 内藤誉三郎君                 二木 謙吾君                 船田  譲君                 増原 恵吉君                 宮崎 正雄君                 山内 一郎君                 山下 春江君                 吉江 勝保君                 吉武 恵市君                 占部 秀男君                 岡田 宗司君                 北村  暢君                 小柳  勇君                 鈴木  強君                 瀬谷 英行君                 羽生 三七君                 藤田  進君                 矢山 有作君                 山本伊三郎君                 吉田忠三郎君                 黒柳  明君                 向井 長年君                 春日 正一君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  田中伊三次君        外 務 大 臣  三木 武夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  剱木 亨弘君        厚 生 大 臣  坊  秀男君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   菅野和太郎君        運 輸 大 臣  大橋 武夫君        郵 政 大 臣  小林 武治君        労 働 大 臣  早川  崇君        建 設 大 臣  西村 英一君        自 治 大 臣  藤枝 泉介君        国 務 大 臣  塚原 俊郎君        国 務 大 臣  二階堂 進君        国 務 大 臣  福永 健司君        国 務 大 臣  増田甲子七君        国 務 大 臣  松平 勇雄君        国 務 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        防衛庁防衛局長  島田  豊君        経済企画庁調整        局長       宮沢 鉄蔵君        経済企画庁国民        生活局長     中西 一郎君        経済企画庁総合        計画局長     鹿野 義夫君        経済企画庁総合        開発局長     加納 治郎君        外務省アジア局        長        小川平四郎君        外務省北米局長  東郷 文彦君        外務省経済局長        事務代理     鶴見 清彦君        外務省経済協力        局長       廣田しげる君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        外務省国際連合        局長       服部 五郎君        大蔵省主計局長  村上孝太郎君        大蔵省主税局長  塩崎  潤君        大蔵省理財局長  中尾 博之君        大蔵省銀行局長  澄田  智君        文部省文化局長  蒲生 芳郎君        社会保険庁長官  山本 正淑君        農林政務次官   久保 勘一君        農林大臣官房長  檜垣徳太郎君        農林省畜産局長  岡田 覚夫君        食糧庁長官    大口 駿一君        通商産業省通商        局長事務代理   原田  明君        通商産業省企業        局長       熊谷 典文君        通商産業省重工        業局長      高島 節男君        中小企業庁長官  影山 衛司君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君        建設省計画局長  志村 清一君        建設省住宅局長  三橋 信一君        自治省行政局長  長野 士郎君        自治省選挙局長  降矢 敬義君        自治省税務局長  松島 五郎君    事務局側        常任委員会専門        員        水谷 国一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○昭和四十二年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十二年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十二年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付) ○公聴会開会承認要求に関する件     —————————————
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから予算委員会開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  四月二十六日、林塩君が辞任され、その補欠として市川房枝君が選任され、同月二十八日、中沢伊登子君が辞任され、その補欠として向井長年君が選任され、五月一日、木暮武太夫君が辞任され、その補欠として林田悠紀夫君が選任されました。     —————————————
  3. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に、理事補欠互選についておはかりいたします。  理事が一名欠員になっておりますので、その補欠互選を行ないます。互選は投票の方法によらないで、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認めます。それでは理事西田信一君を指名いたします。     —————————————
  5. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 昭和四十二年度一般会計予算昭和四十二年度特別会計予算昭和四十二年度政府関係機関予算。  以上三案を一括して議題といたします。  まず、委員長及び理事打合会におきまして、三案の取り扱いについて協議を行ないましたので、その要旨について御報告いたします。  総括質疑は、本日から開始して六日間といたしました。  その質疑総時間は千二十三分とし、各会派への割り当ては、自由民主党及び日本社会党はそれぞれ四百三分、公明党百二十四分、民主社会党共産党及び第二院クラブはそれぞれ三十一分といたしました。  質疑順位は、日本社会党自由民主党日本社会党自由民主党日本社会党自由民主党公明党日本社会党自由民主党日本社会党自由民主党公明党日本社会党自由民主党日本社会党自由民主党日本社会党自由民主党日本社会党自由民主党公明党日本社会党自由民主党民主社会党日本社会党自由民主党日本共産党、第二院クラブ日本社会党自由民主党の順といたしました。  以上御報告をいたしましたとおり、取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  7. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に、公聴会開会承認要求に関する件についておはかりいたします。  公聴会開会は、来たる五月十六日、十七日の両日にわたり行なうこととし、公聴会の問題、公述人の数及び選定等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認め、公聴会開会承認要求書を議長に提出することといたします。     —————————————
  9. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) それでは、これより三案の総括質疑に入ります。羽生三七君。
  10. 羽生三七

    羽生三七君 きょうは経済、外交の両問題についてお尋ねをいたしますが、最初に、まず経済について質問をいたします。  政府は、四十二年度予算一般会計財投ともに前年度伸び率より低いということで、拡大予算ではないと、こう言っております。しかし、一般会計特別会計の純計でみた場合、四十年度決職六兆八千二百七十九億円に対して、四十一年度のそれは七兆七千七十五億円となって、対前年比一二・八%の伸び、これに対して四十二年度予算の純計は九兆八百三十二億円、これに対して四十一年度のそれは七兆七千七百三十億円となりまして、対前年度比一六・八%の伸びとなっております。これは、政府の説明に反して、拡大予算と言えるのではないでしょうか。
  11. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま、おっしゃられた純計でいいますと、。パーセントはまさにそのようになっておりますが、これは一般会計特別会計をいまの純計は加えたものでございますが、私どもの言っておりますのは、財政中立性とかいうような問題は、要するに、国民経済計算上における政府財貨サービス購入というようなものの率がどういうふうになっているかということを問題にしているのでございまして、そういう点から見ましたら、昨年度よりも一般会計財政投融資において規模が圧縮されているということ、そういう意味で、私どもの言っているように、景気を刺激しないように昨年度よりもそういう問題を考慮して圧縮したんだということが言えるんじゃないかと思います。
  12. 羽生三七

    羽生三七君 それは一般会計だけをいえばそのとおりです。しかし、財政法第二十八条による参考書をわれわれにも出してあるわけですから、これに基づいて計算をすれば、日本全体の財政総額というものは、いま私が指摘したとおりに、決して世上言われるような中立予算でもない、これは拡大予算である、こう言えるのであります。しかし、この問題は、企画庁長官はこれについてどこかの答弁の際、政府財貨サービス購入の比率を示してこれに答えられたそうですが、しかしこれもおかしな話で、四十二年度のこの比較は、四十一年度実績と四十二年度の当初見通しを比較したものです。ところが、四十一年度実績には補正が含まれておりますが、四十二年度にはまだ補正がないのですから、比較すべからざるものを比較して、それで政府財貨サービス購入から見るならば四十二年度も決して拡大ではないと、こう言われておるようですが、これも間違いでありますが、これは答弁は要りません。いずれにしても、政府一般会計だけで問題を判断してもそれはだめだ、拡大予算であると、こういうことを申し上げて公債問題に入ります。  公債政策につきましては、衆議院でいろいろ質疑応答があったようでありますが、参議院では今国会ございません。したがって、あらためて、ここでお尋ねをいたします。  まず最初に、公債政策の基本問題でありますが、この公債政策導入政府が今日までどういうように見てきたか、これはこの始まりから歴史的にひとつ見てみたいと思います。四十年度予算審議の過程で総理大臣が、中期経済計画期間中、すなわち四十三年度までは公債発行しないと、こういう発言から出発をいたしたわけであります。これが四十年七月になると、福田前蔵相は、健全な公債政策導入こそは国の財政に大幅な減税の余裕を与えると称して、いわゆる減税公債論が出てきたわけであります。その次は四十年十二月の補正予算の際でありますが、そのときは、租税収入の減少に対して財政規模の圧縮を行なうことなく、あえて公債発行と説明されて、いわゆる赤字公債論が出てきたわけであります。その次は四十一年度であります。この場合は、不況を脱却し、デフレギャップを埋めるためということで本格的な公債政策導入したわけであります。その次には今国会の四十二年度予算であります。水田蔵相は、公共資本の立ちおくれ、不均衡是正には相当な資金が必要として公債政策を説明いたしております。このように公債政策の理由づけが過去数回、そのつど違っております。しかも、同じ内閣のもとにおいてであります。そこには長期的見通し一貫性も全然見受けられない。そこで、あらためて参議院において、この公債政策の基本的な考え方をひとつお示しいただきたいと思います。これは総理からお願いいたします。
  13. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  この財政あるいは民間の金融政策、そういうようなものは実はかみ合って、そうして経済成長あるいはその国の経済あり方等をきめていく、また、国民負担等もそういうところのかみ合わせからできておる、これが今日経済に対する基本的な態度だと思います。この点では羽生君も同じような考え方ではないかと思います。それぞれの時期におきまして、財政が果たす役割り、これはそれぞれその時期に対応するものがあってしかるべきではないかと思います。非常に固定的な財政政策あるいは金融政策、こういうものではいかないんじゃないか。経済はいわゆる生きものだ。こういう点から、これに対処していくことが必要だと思います。この財政の問題でこれを見ました際に、財政そのものにそういう意味弾力性のあることは御了承いただけると思いますが、その場合に、公債をも含めてこの弾力性を持たす、そういうあり方がはたして許せるかどうか。いわゆる公債を持てばこれは借金であることに間違いございませんから、そういう意味でいろいろな弊害も出てくる。したがって、弊害に堕することのないような注意を十分はらわなければ、公債財政政策の中へ取り入れる場合において非常な危険がある、かように私は考えておるのであります。したがいまして、公債政策に踏み切りました場合に、財政弾力性を保ち、しかも、公債発行した場合に生ずる弊害、それに堕さない、それに陥らないように、これは注意しなければならないと思います。まあ、しばしば言われることでありますが、公債発行いたしますと、安易な財政政策に流れやすい。これが一番の問題でありまして、安易な財政政策に流れると、その結果インフレになる危険も多分にある、こういうことでございます。そのつど私どもの言っていることがかわっておるとかいう御非難は、ただいま申し上げますように、財政そのもの弾力性があることが当然なんだ、かように考えますと、そのときどきの情勢に対応するような財政政策を立てておりますから、これがそのつどやや表現が相違しておると、かように思っております。しかしながら、一貫して大事なことは、公債発行することによるいわゆる弊害に堕することのないように、弊害を生ずることのないような注意、これは十分にはらわれておらなければならない、かように思っております。したがいまして、公債発行する場合に、建設公債であるとか、さらにまた、市中消化原則が守られ、そのときの経済情勢に対応して適正なる規模であること等々が考えられるわけでありまして、私は今後ともそれぞれの時期において、それぞれ対応するような、必要なる弾力的な処置が取られてしかるべきだ、かように思っております。
  14. 羽生三七

    羽生三七君 弾力的な処置をとるということで、長期にわたる公債の基本的な考え方というものは、必ずしも示されておりませんが、そこで、弾力的であろうとなかろうと、とにかく公債政策恒久化しつつあることは事実であります。このやり方ですね。この公債政策恒久化するという、これを当然とする考え方は、単にインフレを促進するだけでなしに、私は財政法第四条の違反ではないかと思います。要するに、ただし書きが通常のことになってしまう、原則はあってなきがごときもの、こういえるのじゃないかと思います。この点は、私はここで、大蔵大臣財政法第四条を見ていただけばわかりますが、どうしてもその年度において必要やむを得ざる場合ならとにかく、当然のこととしてこれを恒久化するということは、私は精神からいっても、財政法第四条の違反だと思います。いかがですか。
  15. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 当然のこととして恒久化するということは、やはり財政法の趣旨に違反するものだと考えております。ですから、やむを得ない場合に、この公債政策を採用することは、これは悪いことではない、必要でなくなったらこれはやはり一般の税をもって経常経費を支弁するというのが財政法原則であるというふうに考えております。
  16. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、国債政策恒久化とともに、国債償還計画、これを国会に提出しないことは財政法違反であると思います。第四条のただし書きにいう「その償還計画」の「その」は、これは毎年度の銘柄をさしているのではないかと思います。また、「その償還計画」とは、そのつどを意味するのではないかと思います。いかがでありますか。
  17. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そのつどを意味するものであることは間違いございません。そうだと思います。
  18. 羽生三七

    羽生三七君 そのつど出しますか。
  19. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ですから、たとえば本年度国債発行というものにつきましては、予算書償還計画表を添付して国会に提出してございますが、これは本年度国債についての償還表でございます。
  20. 羽生三七

    羽生三七君 必ずしもそうではないが、それでは、私はそれでも財政法違反だと思います。第四条違反だと思います。これは減債基金制度なんかつくっても、詳細な償還計画が必ずしも示されているわけではない。ですから、財政法違反だと思いますが、なお、これを続けるのか、あるいは財政法第四条は改正するのか、私たちは違反だと思いますが、それをさらに今後とも続けるのか、あるいは第四条を改正するのか、その辺はどうですか、もういろいろな議論は要りません、わかっておりますから。
  21. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 経済社会開発計画の中でもいっておりますように・公債発行はまだしばらく続けるつもりでございます。
  22. 羽生三七

    羽生三七君 財政法は改正するか、しないか。
  23. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 財政法の改正はする必要はないのじゃないかと思います。
  24. 羽生三七

    羽生三七君 だから違反を続けることだと、私はそう思います。  そこで、私は四十一年度の当予算委員会において、四十一年度予算審議の際に、今後数年間の公債発行額、その累積見積りを詳細に数字をあげて申し上げました。これは膨大なものですから、時間の関係できょうは省略をいたします。  そこで今度は、経済社会発展計画期間中の公債発行額累計額公債費——国債費等を推計してみるというと、その総額は、計算のしかたにもよるでしょうが、ほぼ五兆五千億程度になります。それからまた、その時点における国債費内外債利子を含む国債費のそれは、大体四、五千億になります。手取りが少なくなるだけではなしに、一般会計予算に対してたいへんな重圧になる。特に四十年度赤字公債償還時に当たる四十七年度には、赤字公債は借りかえしないから、そのときには国債費の合計がどんなに低く見積っても七千億前後になります。結局、利子支払い国債発行という現象を呈するのではないか、その結果は、さらに大幅な公債発行をしない限り、支払いに食われて、結局政府が本来の目的とした社会開発に充当できる金額はほんのわずかになってしまって、これは一兆五千億、二兆円も発行すれば別ですが、本年度のように八千億程度なら、支払いに食われてしまって、社会開発に回りません。こういうようなことでよろしいのですか。
  25. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 公債の利払いに追われて公債を出すというような事態になったらたいへんでございますが、これは、当然そういうふうになりませんで、公債発行についての私ども考え方も、しばしば述べてございますとおり、やたらにこの赤字公債というものを出すというのでございませんで、建設公債であるということと、市中消化ということを絶対の条件にするということになりますと、公債発行限度にはおのずから限度があるということが一つと、それから、どういうふうに公債を出すかという問題で、財政制度審議会でも指摘しておりますように、公債への依存率というものは年々下げる、そういうふうな運営のしかたを私どもははっきりとするつもりでございますので、そういう公債に対する適切なる態度を持つ限りは、これが一般会計をそう圧迫するような形にはならない、また、ならない形でとめるべきでございますので、おっしゃられるような数字にはならないと思います。前に羽生先生からも、この見通しについて、いろいろ試算を示されたことがございますが、すでにこの試算でも、昭和四十二年度、今年度はもう若干違ったことになっておりますし、累積がそういうふうにいくというふうなことには全然ならないと、私どもは考えておるわけでございます。
  26. 羽生三七

    羽生三七君 いや、それは後世の批判に待つという意味だろうと思いますが、私はそうは思いません。  そこで、政府は、この公債政策長期見通しを、それだからこそ示さなければいけない。少なくとも、経済社会発展計画期間中のものは必ずこれは示す義務があると私は思います。この計画期間中の成長率を平均八%と想定して、その程度と想定して、これと税収や総需要との関係を推算すれば、租税弾性値の問題もありますけれども、一応必要な発行額というものは出てくるのじゃないか。しかるに、経済社会発展計画には、多くの問題に触れながら、公債問題については公債政策の適正な運営という程度でお茶を濁しておるのは、はなはだこれは奇怪千万であります。少なくとも、経済社会発展計画においてその他の問題についてある程度の方向を示しているのですから、公債発行についても期間中の一応の見通しぐらいは示す義務があるんではないかと思いますが、いかがですか。
  27. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この問題は、先ほどの財政法四条の二項で償還計画というものを出さなきゃならぬというのですが、この償還計画というものは、結局廣次別償還予定額でいいんだと、償還財源の計画を要求しているものじゃないんだと、こういう解釈に落ち着いていることと同じことでございまして、もし償還財源というものを年度別に計画を立てなきゃならぬということになりましたら、これは事実上できない。同様に、財政計画においても、何年の財政規模がどうで、税収がどうで、国債をどれだけ発行するかということを予定しろと言っても、事実上これはできないものでございます。したがって、この長期計画におきましても、財政についての長期的な考え方、それから公債についての考え方を述べておるだけで、年度別の公債発行額というようなものをここでは全然触れていないということも、これは事実上そういうものはできない、経済成長がどうなって、そして税収がどうなる、そのとき幾ら減税をやるということによって公債の額はこうすべきというものを、全部予定するということは事実上不可能でございますので、この計画でもその問題に触れなかった、こういう実情でございます。私どもも、年次別のそういう計画というものは実際に立てることは困難であるというふうに考えております。
  28. 羽生三七

    羽生三七君 後世の国民に膨大な借金を残すのですから、私は、やはりある程度計画を示す必要があると思います。  では、どの程度期間がたち、また、どういう条件が満たされるならば公債政策から脱却できるのか、これはそのときの事情によるからわからぬとおっしゃられるかもしれませんが、しかし、政府では、数年先になるならば予算規模が七、八兆円になるからそれぐらいの支払いは大したことはないと、そういうことをよく言われますが、予算規模が大きくなるということは、財政需要がふえるということであります。それならば、やはりある一定期間たてばそれを上回る税収の伸びが期待できるのか、あるいは、どこか切って落とせる経費ができるのか、どういうことなんですか。その辺の見通しをもう少しはっきり述べられる必要があると思います。
  29. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま、日本の公共事業費は一般会計に対して二割ということで、非常に諸外国に比べて多い率でございますが、これはやはり、日本の社会資本のおくれということの結果、世界で特に高いこの公共事業費の率を示しておるわけでございますが、これを公債財源でまかなうということをやりますというと、この公債に見合った国民資産というものが一方においてどんどん蓄積されてくる。これが効用を発揮してくるということになりますというと、長い間には、これが全部やはり税収となって、はね返ってくるということになりますし、そうしますというと、たとえば、これがあと十年、十五年続けられましたら、外国と同じように日本も公共事業費は予算の四、五%で済むというようなことになってきようと思います。一方、税収はこれに対して多くなるんですから、税収と公債が徐々に置きかえられるというふうなことになろうと思いますので、究極的には、やはり経常収入がふえるということによって公債をなくしていくという方向をとるよりほか、しかたがないだろうと思います。
  30. 羽生三七

    羽生三七君 長い期間の先、建設事業がほぼ目的を達して公債をだんだん減額できると見ておる、こういうことだと思います、いまのお話は。しかし、それには非常な時間がかかります。特に、昨年度七千三百億の公債発行したときは、これはデフレギャップを埋めるということだった。ところが、これが予算の中に定着してしまったんです。だから、それがもう予算の通常の基準になってしまいましたので、なかなかこれから脱却することはできません。そこで、政府はこの公債政策から脱却するために具体的な計画をすみやかに立てるべきだと思いますが、とりあえず、公債依存度、絶対額、ともに前年度より減らすという原則を確立すべきだと思います。というのは、依存度は四十一年に比して〇・八%減らしました。しかし、絶対額は逆に、七千三百億が八千億になっております。ですから、依存度、絶対額、ともに今度は明年度から減らすという原則を——われわれの立場では公債はやめろという意見ですが、少なくとも政府の立場からいっても、その程度原則を確立すべきだと思う。いかがですか。
  31. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 当初予算との比較でいままでいろいろやっておりますので、今年度も、予算編成にあたっては、昨年度の当初予算との比較で公債規模を私どもはきめました。そうして公債の依存度は昨年度より減らしたつもりでございましたが、御承知のように、四十一年度の税収が当初の見込みより非常に多くありましたので、七千三百億の公債発行予定額を六百五十億に削減するということを去年いたしましたので、これによって見ますと、昨年度予算公債依存率は一五・四%、そこまで下がっておりますので、そうしますというと、いまの八千億の公債依存率は去年より高いという結果が出てまいっております。まだ今後どういうふうになるかわかりませんが、財政運営としましては、私は、昨年度依存率よりはやはり今年度下げるという方向に運営をしたいというふうに考えております。
  32. 羽生三七

    羽生三七君 絶対額は。依存度だけでなくて、絶対額を……。
  33. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 依存度を下げるように運営しようとしますと、いまの八千億は、これは先行き経済情勢ともにらむことでございますが、ある程度削減するという運営をすることになろうと思います。
  34. 羽生三七

    羽生三七君 次に、この公債発行恒久化する場合、地方交付税が国税主税の三二%という現行の交付方式、これは地方財政の非常な圧迫になるのではないかと思います。したがって、一般会計国債発行額に見合う額をプラスする交付税の新しい体系を確立する必要がある。いかがですか。これは一つの地方財政の重要な問題です。
  35. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは、地方財政審議会でも問題にしておる大きい問題でございますが、そこで、その考え方につきましては、あの審議会から出てきました考え方は、公債というものと国税というものとを大体同じに見て、この二つを寄せたものを分母にして割って二〇何%というような数字を出しておりますが、この考え方については私どもは反対でございまして、もし、そういうことで地方財政の年々度の繰り入れを決定するというようなことにしましたら、国は国債をこれから償還していかなければなりませんが、地方は全然償還しないものをそれだけ多くもらうということで、国と地方との財政バランスというものはくずれてしまうということになりますので、これを合理的にやるためには、国も国債を出して国債に見合う資産というものをつくって、この効用を発揮している期間にその公債をなくなせばいいというような考え方をとっているのですから、これに対応する地方財政の財源としましては、やはり地方債をもってこれに対応させるという考え方が基本的には正しいのじゃないか。で、いま地方財政を見ますと、国の場合の依存率は大きいのですが、地方の場合の地方債は去年七%でございました。ことしはさらに少なくなって、四・八%というような、非常に軽い地方の負担に現在なっておりますので、ここを整備して将来の地方財政をどうするかということを考えることが一番本筋の考えではないか、そういう考えのもとに、私どもは、来年度の地方財政あり方について、今年度この問題を徹底的に検討したいという考えをいま持っております。
  36. 羽生三七

    羽生三七君 自治大臣。
  37. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 地方制度調査会が出しました二三%論につきましては、いろいろ御批判はあろうと思いますが、要は、こういう国債発行という事態に立ちまして地方と国との財源配分に非常な変動がきたわけでございますので、地方財政についてある種のめどを立てて——単に臨時措置の積み重ねばかりでなく、ある種のめどを立てて国と地方の財源を配分すべきであるという趣旨につきましては、私はさような方向で進むべきではないかと考えております。
  38. 羽生三七

    羽生三七君 公債政策はこの程度にいたします。  次に、経済の動向ですが、政府経済見通しによれば、四十二年度の設備投資は大体一四・八%の伸びとなっていますが、他方、開銀やあるいは通産省その他の調査では、だいぶ大きなものになっております。はたして政府見通しでおさまるのかどうか、まず、この点からひとつお尋ねいたします。
  39. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 各方面から、政府見通しよりは高い設備投資の予測が出ておるわけでございますが、これは、もう申し上げるまでもないことでございますが、いわゆるカバレージが、一億円以上の大企業でありますとか、そういったようなものを中心に予測が出ておりまして、私どもは、そのほかに、中小企業であるとか、農業であるとか、その他のものも、みんなひっくるめまして、ああいう見通しを立てておるわけであります。そこで、かりに、ただいま民間企業で予定あるいは準備をしております設備投資がそのまま実行されるとなりますと、これはかなり高いものになるであろうと思いますので、私どもとしては、できるならば民間が自主調整において、あるいは場合によっては事実上政府が多少の勧奨をすることも——勧奨というのは「すすめる」という意味でございますが、勧奨することもあるかと思いますけれども、五月の末ごろまでには、新年度の設備投資が大企業中心にある程度調整されたものでスタートすることが望ましい、そういうことがそのとおりになりますれば、大体私どもが考えております一五%程度のところでおさまるのではないかと、また、そうあってほしいと思っておるわけでございます。
  40. 羽生三七

    羽生三七君 成長率は、私は、実際には一〇%をこすだろうと思います、実質成長率が。中には一二%を想定しておる人もありますが……。  そこで、いまのようなこの景気動行、これは、先年来政府が言った、いわゆる安定成長路線に合致するのか、あるいは高度成長への復帰なのか、これはどうでありますか。実質一〇%をこし、場合によっては一二%というようなこの現状が、従来いわれてきたような安定成長路線と言えるのかどうか。これはひとつ総理からお伺いいたします。
  41. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 最近の経済の上昇基調というものは、ただいまお答えいたしましたように、なかなか強いものであります。したがいまして、実質成長等から見て、今度は相当高い成長率じゃないか、いわゆる高度成長に帰すんじゃないのかと、こういう見方を一部ではしておるようでございます。私はしかし、池田内閣当時のような高度成長、これはしないつもりで、あらゆる努力をしております。高度成長には違いありませんが、かってのような高度成長にはならないと、かように私は確信を持っております。  そこで、問題になりますのは、現在、行き過ぎないようにこの上とも注意することだ、そういうものが一体どこへ出てくるか——いまの設備投資あるいは消費、等々ございますが、どういう点を一番政府注意する目標か、かように申しますと、やはり何といっても、こういうような経済成長ムードの際には、国際収支がどうなるかということ、さらにまた、物価が一体どういうように動くであろうか、こういうことで、絶えずその二つに注意を払っていく。そうして行き過ぎないようにしたい。わが国の経済として、他の国に比べてたいへんな大きな成長率を持つこと、これは、現状から申せばやむを得ないと思います。しかし、かつてのような高度成長になりますと、どうしてもわれわれが期待するような、長期にその状態を持続することは困難である、かように思いますので、ただいま申し上げるような点について絶えず注意を怠らないつもりでございます。
  42. 羽生三七

    羽生三七君 財政支出も、それから民間設備投資も本格的に動き出す年度後半、これがまあ問題であろうと思います。政府と民間資金の競合が起こる時期であります。その場合、もし心配されるような事態が起こった場合にどう対処するか、蔵相財政の後退を言われておるようであります。総理金融政策にウエートを置かれておるようであります。どちらに重点があるのか、これは総理大臣大蔵大臣からお伺いいたします。
  43. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ、どちらということでなくて、可能な場合をいろいろ想定して処置をとるつもりであります。ただいま比較的に、増収あるいは税収がふえるというようなことが考えられる、そういう場合に、やはり公債を減額することができるかどうか、そういう点が、まず財政上では問題であろうと思います。また、かつて、過去においてもやりましたが、公債ばかりじゃなく、実行予算をやはり押えるということもございますから、財政政策金融政策、合わして対処すべきでありまして、いずれに重点を置くと、かように申しましてもちょっとそのどちらが中心だということはむずかしいのじゃないだろうかと私は思いますが、とにかく合わしてどういう処置がとられるか、それを考えればいいと思っております。
  44. 羽生三七

    羽生三七君 大蔵大臣はどうですか。
  45. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 大体総理考え方と私のほうも矛盾していないと思います。前に後退すると申しましたのは、たとえば民間需要が非常に多くなって、また三十五、六年のときのようなシェア競争というような設備投資の動向が出てきたというときに、民間をそのままにしておいて国の財政だけが引っ込んでいくということを言ったのではございませんで、国は民間の需要を、金融需要を圧迫しないようにこちらも弾力的な運営をすると同時に、民間に対してもあの金融政策も兼ねて、そうしていたずらに設備投資を膨大にしないような方策をとるというほうはもっぱら経済政策、金融政策がやはりもとになることでございますし、それと一方政府財政政策とが一緒にならなければこの効果はあげられませんので、財政と金融、これは、こういう場合には切り離した政策はできない、一体の政策をとるという意味でございまして、結局食い違いは私はないと思っております。
  46. 羽生三七

    羽生三七君 ところでこの金融政策による民間投資の抑制策、この有効性は著しく弱いと思います。特に企業の内部資金の依存度が高い今日では自己資金によるものが大部分で、この金融引き締めをしても投資を押えることはこれは初期の段階ではなかなかむずかしいのではないか、その辺はどうですか。
  47. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) おっしゃられるとおりだと思います。金融の引き締めという政策が以前のようにすぐに即効薬としてきかないというような事態になっておると思います。したがって、そうかといって金融政策をしなければなりませんし、いま申しましたように、財政政策がこれに加わる、一体になる政策でなければその点効果がないというふうに考えております。
  48. 羽生三七

    羽生三七君 この国債発行下では従来のような積極的な引き締めを行なうことはできぬのじゃないかと思うのです。たとえば公定歩合を引き上げれば国債価格が下落する、だから八千億の公債発行をしておるときにその公債価格の下落を承知で公定歩合の引き上げなんかできっこないと思うのです。金融政策という場合はどういうことをおやりになるのですか。
  49. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 金融政策はそう新しいものでございませんで、従来からやっている金融政策——こういうときに処する政策は幾つかございますが、それらを適宜組み合わせてその情勢に応じて採用するというよりほかはなかろうと思います。
  50. 羽生三七

    羽生三七君 それでこの金融機関が手持ちの公債を売り出す場合ですね、この場合には公債の相場は下がってしまう。また、政府公債の値下がりを防ぐために買いざさえをすれば通貨の膨張になるわけです。現在でも発行後一年の公債が六割も日銀に入っておる。この趨勢のもとで最近の日銀券の発行高が目立って増加しております。数字はここに持っておりますが、省略をいたします。これは国民所得やあるいは消費の根強いこの伸びの反映には違いないけれども、それにしても一部にいわれるようにこれを成長通貨といって片づけていいのかどうか。これは貨幣価値の維持、物価を押し上げる圧力、そういう問題との関連で真剣に考慮を払うべき問題だと思います。ただインフレになる心配がないというような単純な見解でこれを見過ごしていいのかどうか、ひとつお考えを承りたい。
  51. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 通貨は大体一五%程度の増加になっておりますが、いままでのところでは、この程度経済の現状から見て成長通貨、必要通貨とみなされるのじゃないかというふうに考えております。
  52. 羽生三七

    羽生三七君 それで成長率が予想外に伸びていった場合、国際競争力を、輸出力を強化するためにある程度やむを得ないという考えに立つのか、あるいはそれがよってきたる起こるべき諸般の現象をチェックするための政策に重点を置くのか、その辺はどうですか。一部にはこの輸出力強化のために若干の国際収支等の悪化はやむを得ないという考え方もあるようですが、それをやむを得ないとするのか、あるいはいま申し上げたように、よってきたる弊害というものをチェックするための政策に重点を置くのか、いずれでありますか。これは大蔵大臣のあと企画庁長官からもひとつ……。
  53. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これはいまやはり重点は国際収支の動向の問題でございますが、国際収支もこれは短期的にだけ見るわけにはまいりません。やはり長期的視野で見なければいけないと思いますので、短期的に一時国際収支の悪化があるとしましても、昔のようにいわゆる基礎収支——経常収支が赤であって長期資本収支が赤であると、こういうことを基調にしてのいろんな短期資金の対策というようなことはこれは不安でございますが、いまの日本の国際収支のポジションはそういうことにはなっておりませんので、したがって、外貨繰りがっくという限りにおいてはある程度必要な設備投資というものもやらせなければならぬと考えますと同時に、また、それも度を越えますというといまのような問題が起こりますので、これはチェックする必要が出てくるということでございますから、そこは私は割り切れないと思います。一方用心したかまえを事前にとりながら、また事後に起こってくるいろんな情勢を見ながら対処する。そう引き締め一点ばりの政策というものをとるべき時期ではございませんし、事態はそういう——過熱過熱といわれていますが、まだそういう事態にはなっていませんので、 いまのうちからこれをどっちにするかという、私は割り切る必要はないのではないかと思っております。
  54. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいま大蔵大臣答弁されましたことと大体私も同様な気持ちでおるわけでございます。すなわち設備投資——現在の企業の設備というものが相当多くの部分でほとんどフル操業に近くなっておりますし、また国際的に規模の利益を求めていかなければならないという問題がございます。中小企業にはなお設備更新の必要があるわけでございます。したがって、そういう投資は今後一年半なり二年後にいわゆる国際競争力になってあらわれるわけでございますから、そういう投資の必要は確かにある、シェア競争は困りますけれども、投資の必要はあるということを一方で私も認めておるわけであります。他方で、今年度はおそらく内外の金利差等から考えましてある程度長期資本の流入があり、また短期の輸入のユーザンスでありますとかあるいは外銀の短期のドルの繰り入れであるとかいうものはかなりあると予測されますので、したがって、外貨準備そのものに大きな減少があるということは考えなくてもいいのではないか。ただそうだからといって幾らでも金を借りておけばいいというふうには考えませんけれども、国際収支の天井というものの性格が数年前とは相当異なっておりますので、その点をひどく心配する必要はないのではないか、むしろ堅実に貿易収支の幅を伸ばしていくということに努力をすればいいのであると、こう考えますので、全体としては、ただいま大蔵大臣の言われたようなそういうニュアンスで経済運営していけばよろしいのではないかと私も考えております。
  55. 羽生三七

    羽生三七君 私は、短資の流入やあるいは特需でかろうじてカバーしておるような現在の貿易構造はきわめて不健全だと、こう思っておりますし、それから、必ず国際収支はいまに相当の問題になるであろうと、設備投資も気迷いぎみといわれておりますが、かなりのところまでいくと必ず後半に問題が起こってくると、それは確実だと思います。しかし、時間の関係で、あと外交の質問が——時間の関係もございますので、もう一間だけで経済を終わりたいと思いますが、卸売り物価が最近若干値下がりぎみで、これは消費者物価や小売り価格と重要な関係がありますが、しかし、これは鉄鋼の緊急輸入等、いわゆる輸入増加によって起こった市況現象ではないんでしょうか。したがって、いまの卸売り価格の下落というものが定着した趨勢なのか、あるいは一時的な市況なのか、この辺の判断をひとつお聞かせいただきたい。
  56. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 四旬ばかり続いて卸売り物価が下がっておるわけでございますが、これは昨年ございました幾つかのやや異常な現象、すなわちただいま御指摘の棒鋼とか形鋼というような鉄鋼の一部のもの、あるいは繊維についても同様なことがございました。非鉄金属についてもあったわけでございますが、それらのやや異常な——これは、私は鉄などには仮需要のようなものが相当あったのではないかと思っておるのでございますが、それの訂正安というところがいまのありさまではないかと思います。木材だけはどうも続いて上がっていくように思いますが、したがって、この訂正安のところで大体平常の状態にほぼ返ったと思っております。輸入がこれに貢献したかといいますと、私はそうは思いませんで、輸入をするぞという、そういう気がまえがむしろ仮需要を押えるのに貢献したと見ておるわけでございます。それで、これから先、卸売り物価がなお下落を続けるというふうには思いませんけれども、またもとへ返って非常な上昇に転ずるというふうにも考えません。ただ、底は強いとは思いますけれども、昨年のような異常なことがまた起こる、四%もの上昇があるというふうには考えなくてもいいんではなかろうかと、私はただいまそう思っております。
  57. 羽生三七

    羽生三七君 経済問題でもう一つだけお伺いしたいと思いますが、さきのインドネシアに対する新借款六千万ドル、これは四十二年度中に予算化するんですか、実現するんですか。
  58. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いまこの六千万ドルの借款については、どういう条件でするかということについて、外交機関を通じて話し合いの最中でございますから、その結論を待ってこの処置を考えることになると思います。
  59. 羽生三七

    羽生三七君 あまり緊急でもなさそうなことになりますね、ゆっくりした話で。それは四十二年度中に補正を組むのか、あるいはそれ以外に何かはかのやり方があるのか、これは時間の関係がありますので、経済はこれくらいにして国際収支の問題あるいは消費者価格、いろいろの問題がありますが、時間の関係で外交問題に移ります。  まず最初にベトナム問題から承りますが、ベトナム戦争の現状をどう認識しておるのか、また、これに対してどういう見通しを持っておるのか、まずこの現状認識と見通しについて外相の見解を承りたい。
  60. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 現状については、双方とも自信を持って自分のペースでなければ話し合いに応じない、こういう状態であります。したがって、各方面からいろんな努力がなされ、また、国際的な世論も、一日も早く平和的な解決を望んでおるにかかわらず、現在では早期に話し合いによって解決されるという糸口は残念ながら見出されていないということでございます。しかしながら、この見通しでございますが、軍事的にこれが解決をつけるということは困難であります。軍事的に勝敗をきめるという性質のものではない。また、北が南ベトナムもたいして共産化するということはできない、また南も共産政権を倒すということはできない。そうなってくるとジュネーブ協定の精神に立ち返って、十七度線、ここで一応北は共産、南は非共産、そういうことで競争的な平和共存、これをやる以外にはない、見通しとしては。だから、結論はそれよりほかにはないのではないかということでありますから、何らかの機会でこれを和平に持っていかれる可能性は常にある、何か非常に違った結論が出るというのではない。いま私が申し上げた結論以外にはないではないか。したがって、いずれの日か和平の可能性は常に持っておる、こういうふうに現段階を観察しておるものでございます。
  61. 羽生三七

    羽生三七君 そういうことで今春来、少し平和への希望が持てたのに、これが最近、また暗い見通しになっておる、その原因は何とお考えになりますか。
  62. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 何ぶんにも相互不信である、両方がお互いに信用しない、そうして、猜疑心が非常に強い、したがって、双方ともお互いの真意というものがよく理解されてない。したがってまた、相手に対する観察も、過小評価したり過大評価したり、お互いに相互の理解というものがされていないということが根底に私はあると思う。これが今日の状態を暗くしておる原因である、何とかして双方の立場をもう少し理解されるようなことになれば、案外和平の機会はつかめるのではないか、こういうことが原因だと見ておるのであります。
  63. 羽生三七

    羽生三七君 まあ抽象的な表現でございますが、いずれにしてもベトナム戦争を終結するためには、軍事的にも経済的にも強者と見られるアメリカが、北爆の停止やあるいは戦争のデスカレートに踏み切らぬ限り、解決の糸口はつかめないのではないかと思います。現にウ・タント国連事務総長も、人類の歴史に先例を見ない力と富を持つ米国は、このような——「このような」というのは一方的停戦のことです。このようなイニシアチブをとる立場にあるというふうに述べているのです。いかがですか。
  64. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) ウ・タント氏の提案は、これは一つの平和的解決の有力な提案であると思います。こういう形で一日も早くこの戦争が片づくことは、われわれも望むところでございますが、ウ・タント提案がハノイ政府によって拒否されたということは非常に残念である。しかし、ウ・タント氏もまだ望みを捨てていないようでありますから、これは和平への努力を継続されることをわれわれも心から望んでおる次第でございます。
  65. 羽生三七

    羽生三七君 私ごとを申して恐縮ですが、私は昨年、外国訪問の際に、フランスでは、ドゴール大統領の特使として北ベトナムを訪問して同国のファン・バン・ドン首相やあるいは中国の周恩来首相と会談しました御承知の、あの有名なベトナム通である、あるいは中国通であるショーベル氏と会談をしてまいりました。いろいろな事情を詳細に聞くことができたわけであります。しかし、私が一番関心を呼んだ問題は、私がフランスをたつ前日に手に入れましたル・モンドの記事であります。それはベトナム問題に対するアメリカの責任という非常に長大な論文でございます。これによりますと、北ベトナムが少しでも和平への動きを示すと、その直後にアメリカがかえって北爆を強化したり、戦争のエスカレートをするという。これを時間を追って克明に説明をいたしております。ワシントンで私がウィリアム・バンディ国務次官補に会った際、会談をした際、私はこの一文を引用いたしました。ところが、もちろんバンディ氏はそれは事実に反すると否定をしたのであります。しかし、今日までの歴史的な経過はほぼル・モンドの記事に一致をいたしております。各国を歩いてみて多くの国々の指導者がアメリカの口で言う平和と、行動が一致していないということに強い不信感があることを深く私は印象づけられたのであります。やはり、アメリカが口先だけではなしに現実に行動をもって平和への実証をすべきではないか、こう思いますが、外相いかがですか。
  66. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私は、アメリカが平和的な解決を望んでいないということは考えない。それでは、アメリカは戦争を継続することによって得るものは何か、もし南ベトナムの独立と自由が確保されるならば、それならばそれ以上のことはアメリカは望んでおるわけではないわけですから、アメリカが早期に平和的解決を望んでないという批判は私は賛成できない。ただこれが、いま最初に私が申しましたように、みんな両方とも自分のペースでものを解決しようというところに問題があるわけです。問題を解決しようとするならば、お互いにある程度譲歩するよりほかにはない。こういうことが、もし、お互いに両方の立場をもっと理解し合っておるならば、それで解決の方法が私はあると思う。しかし、お互いにこう両方が、相互不信の感情が強いものですから、お互いの立場を理解し得ないでおるところにこの不幸があるので、アメリカが長期にこの戦争を継続していこうという希望があるわけではないわけだと、私はアメリカの立場も信じておるわけでございます。
  67. 羽生三七

    羽生三七君 いまのお考えについてはあとから漸次触れさしていただきますが、先のウ・タントの提案というものが、目下望み薄になったのは、はなはだ残念でありますけれども、しかし、北ベトナムがウ・タントの提案を不満とする理由は、その直接の原因は何かと言えば、北爆停止の後退であります。ひところ言われておった北爆の停止という問題が非常に後退してしまった。だからアメリカが北爆の停止と、戦争のエスカレートをやめることが問題解決の重要な、私はかぎであると思う。あっちも悪い、こっちも悪いと言うたら絶対にこれは問題の糸口は——解決の糸口はつかめません。これに対して外相はどうお考えになりますか。
  68. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 最近に朝日新聞の森恭三君がハノイを訪問して、いろいろと私も直接に話を聞く機会がございました。ただしかし、北ベトナムの考え方は、北も南もないのだ。だから南のほうに対していろいろの援助をするのは、ベトナムのために援助しておるので、南と北という関係を、ハノイは非常に、それは、北も南もないんで同じベトナムだと、ベトナム人の立場で援助するのだから、よその国に援助しておるという感覚を持っていないわけであります。ここにやはりウ・タント提案にもひっかかる問題ができてくるわけで、しかし、現実を見れば、北と南とが別の政治の機能をもっておることは、これは現実である。いろいろ言い分はあるにしても、現在、北と南とは、いろいろ政治に対する基本的な考え方も違う。そういうことで、お互い別な政府機能をもっておることは事実でありますから、どうしてもやはり北爆停止という場合、そのかわりに北のほうも南に対する浸透をやめてくれという、こういうウ・タント提案にも一方的なものでなくして、その現状をそのままの形で凍結するという思想が出ておるのですから、これはやはりそういうことには……これは平和的に解決しようとするならば、そういう形にならざるを得ないというふうに、私どもはこれを観察いたしておるわけでございます。
  69. 羽生三七

    羽生三七君 北からの浸透という問題も向こうのアメリカ側の言い分でありますが、それはよく私も承知しておりますが、しかし、北のほうは侵略者と犠牲者を区別しろということを言っておるし、そんなことを言っておれば問題の解決にはならないので、強者である、人類史上まれに見る強者であるというアメリカが、まず北爆停止あるいは戦争の縮小をするためのイニシヤティブをとれ。それを私は言っておるわけです。いまのようなお話はわかりますよ。しかし、そんなことをいくら言ったって問題は解決しないから、とりあえずまず強いほうが——強いと見られているほうがイニシャティブをとるべきではないか。そういうことです。いかがですか。
  70. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 最初に申し上げましたように、お互いが信用していないのですから、北爆を停止した間に、北のほうから南のほうに対する浸透を強化するのではないか。そうすれば、北爆を停止しても意味はない。停止しておる間に南のほうにあるいは物資、兵力、それを増強するのではないかと、こう疑ってかかるところに、なかなかアメリカが無条件に北爆を停止しきれないものがあるものと思うのであります。だから、こういうことを言っておっても、これはなかなか解決になりませんから、やはり何とかしてお互いの相互の考え方、これをもっと理解せしめて、一日も早く和平にもっていけるということ、これは必ずしも宣伝をしてやるというようなことでは、この問題は解決できるとも私は思わないのですが、何か双方の立場の上に立って、双方の考え方を理解しながら、ハノイに対しても、アメリカに対しても、何かもっとお互いの立場を理解できるような橋渡しの役、これをつとめあげることが、やはりこの段階においては非常に必要なのではないかと、こう考えておるわけでございます。
  71. 羽生三七

    羽生三七君 ハノイは少なくも昨年の暮まで米軍の無条件撤退が主要な条件の柱になっております。ところが今春来北爆停止、無条件撤退ということを必ずしも前面に出していないですね。北爆の無条件停止、これが、こういうふうに変化しておることは、これは重大な変化であります。向こうも相当な、そういう意味では現状に応じた判断をしておると思います。  それから、もう一つは、ベトナム問題が、やはり民族の問題であるということ、しかし、これもあとからだんだん触れていきますが、それはとにかく、この点は、日本政府はベトナム問題に何らかの役割りを果たそうとしておるのですか。
  72. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) われわれ、アジアの一員として、こんな悲惨なことは私はないと思う、この戦争。そういうことで一日も早くこの戦争というものが和平へもっていくということが、日本国民全体の願いであることは、もう明らかでありますから、何とかして政府は、この両方の橋渡しの役ができないか。これはどうしたところで、第一番には、当事者が話し合う場をつくることが第一番です。戦争の当事者が話し合いをする場面ができないか、この環境を何とかしてつくれないか。もう一つは両方の立場をもっと、信用しないんですから、お互いの立場というものを、両方が誤まりなく理解し合うような橋渡しはできないか。これがやはり日本政府としていま考えて、また努力をしておる一つの大きな焦点であります。われわれとしては、むろん日本の果たし得る役割りというものは限界がございますけれども、外交の機能を通じてできるだけの努力はいまいたしておるわけでございます。どんな努力でも早期に和平がもたらせるとなれば、日本政府は努力を惜しむものではないのであります。どんな努力でもしたいと思います。こんな悲惨なことはない、そういうことでしておるのでありますが、残念ながらまだ有力な手がかりはっかめてはいないけれども、今後とも努力を続けていく考えでございます。いま、しかしこの機会にどういう努力をしておるのか公表せよということは私は有益でないと思う。したがって、この機会に公表することは差し控えさしていただきたいと思います。
  73. 羽生三七

    羽生三七君 この機会に公表することを差し控えるほど重要な役割りを果たしたというならば、まことに欣幸でございますが、それはとにかく、今日まで日本政府はアメリカのベトナム戦略をある意味で一方的に支持してきたことはいなめないと思います。しかし、もしベトナム問題で何らかの役割りを果たそうとするならば、従来よりもより第三者的、より中立的な立場をとらない限り、その役割りは果たし得ないと思いますが、いかがでありますか。
  74. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これはやはり平和的解決のためにはある程度双方が譲歩をしなければならない。いわゆる話し合いでいこうとするならば、もう全部、一〇〇%アメリカはアメリカの主張を通すということでは平和的な解決はできませんから、そういう譲歩すべきものは譲歩して解決するよりほかにはない、そういう意味において、日本はアメリカに対しても常によき友人たらんとして言うべきことは言ってきておることは事実でございます。
  75. 羽生三七

    羽生三七君 実は椎名前外相は、本会議、予算委員会、外務委員会を通じて、アメリカの北爆はやむを得ない、こういう態度を一貫して堅持してきました、やめられるまで。ところが、いまお話のように、内容は公表をはばかるけれども、何らかの役割りをいま果たしつつあるし、また果たさんとせられるならば、第三者的あるいは中立的な立場に、従来の態度を変えない限り、その役割りが果たせるはずはないのです。私は調停不可能と見ておりますが、その点はいかがでありますか。従来の態度と変わりはないのですか。
  76. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 不可能とあきらめてしまったら、こういう問題はどうにもならない。考えようによってはこの問題に対して一番大きな役割りを果たすものはソ連とか中共だと、ほかのものはしかたがないのだとあきらめてしまえば、これはまあ方法はないわけですが、世界の各方面においてもあれだけ和平のために動いておる。日本役割りは小さいかもしれませんよ。しかし、あきらめるべきでない。これだけのアジアにおいて有力な日本が、アジアに起こっておる戦乱に対して無関心であるという立場は私は許されないと思う。傍観者であってはいけない。できるだけのことは、そのことがどの程度効果があるかないかは別として、努力をするということは日本の立場として当然のことである。だから羽生さんのように私はあきらめない、和平がくるまではあきらめないという態度でございます。
  77. 羽生三七

    羽生三七君 私があきらめておるわけではございませんが……。  さて、外務大臣、椎名さんの言われた北爆はやむを得ないという立場で調停者の役割りをあるいは何らかの日本としての役割りを果たそうとするのか、それを聞いておるのです。あきらめるとかあきらめないとかそういう問題じゃない。
  78. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いや、北爆だけを取り出して、これはけっこうなものだと考える者はだれもおりません。しかし、そういう北爆というものを、事態を引き起こしたいろんな関係があるわけですからね。だからこれがいいとか悪いとかいう議論がこの早期の解決に有益な議論だとは私は思わないのです、これは両方がいろんな言い分があるからこういう紛争が起こっておるわけですから。そういうことではなくして、どうしたならば和平を招くことができるかということに努力を集中することが必要なんで、いま北爆がいいか悪いか、こういうふうなことを取り出して言うことが、それが和平を早くもたらす私は非常に有力な手がかりになるとは思わないと考えておるわけでございます。
  79. 羽生三七

    羽生三七君 それは私はそうは思わないので、それだけを取り上げて言っておるわけではない。日本の外交のベトナム問題に取り組む基本的な姿勢を言っておるわけです。ところが私がショーベル氏に会った際にも、アメリカ寄りと見られておる国々の調停が成功する可能性はほとんどない、詳細な説明を私は聞いてきました。英国も先般ウィルソン首相とそれからソ連のコスイギン首相とが長時間、長時間というよりも長日時の会談をして、ワシントンとずいぶん連絡をとったようですが、ついにワシントンと最後の了解ができなくて調停不可能になった。それからソ連も、あれほどの力を持つソ連すら、なおかつ今日北爆の無条件停止がない限り調停者の役割りを果たせない。ですから、日本が何らかの役割りを果たそうという場合に、そんなあいまいな態度役割りが果たせるはずはない。ですからこの席ではっきりしたことを言えというのは羽生君それは困るというなら、それはわかりますよ。それはよろしい、これ以上追及する必要はない。それはわかるが、しかし、気持ちとして何らかの役割りを果たそうとする場合に、少なくとも北爆はあたりまえの話ですよというようなことを言って、それで北ベトナムが平和の調停どころか、情報の交換にすら応ずるかどうか、私は疑問だと思う。それを言っておるんです、いかがです。
  80. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) そんなにいろいろ言って、もうこれもだめだ、あれはだめだといったら、救いようがないんですから、最後までやはり希望を持って、日本ばかりでなしに、世界各国が努力するよりほかにはない。世論だって、世界の世論もまたこういう問題に対しては影響力がないとは言えません。これとまた一方において、この戦争を継続することによって、それならばいま最初に申したように南のほうは共産政権を倒せるか、そんなことはできるわけはないんです。北もまた南を共産化できるわけはないではないか。そうなってくると、一応ジュネーブ協定の精神に立ち返って十七度線で一応の秩序を維持していく以外に方法がないではないか。こういうことを考えてみれば、和平の可能性というものが私は常にあり得ると思う。この戦争継続することによって非常に大きな変化が起こるなら、それはまた継続する理由もあるかもしれませんが、起こらぬです。最後の結論はそれ以外にはないんだ。そうなってくれば、これは常に和平の機会というものはあり得るのではないか。あきらめないで各国が、日本もまた、ことにアジアにおいて国をなしている日本のことでありますから、よそよりももっと関心が多いわけでありますから努力をすべきである。北爆に対しても、これは当然なことだと日本は言っておるわけではない、まことに残念なことだと、しかし、そういうものが継続されておる事態には、双方にお互いに言い分があるんだから、そのことをどちらが悪いいいという白黒つけるような形で、この問題が解決できるわけではないんですから、一応の話し合いをつけて、当然北爆もやめなければならぬ、また一方北爆をやめたときに北のほうから南に浸透があるという事態だって、これは平和的解決を阻害しますから、やはりウ・タント氏の提案のように現状において戦線はもう拡大しないで、一応ここで凍結するという形が、これは和平を早くもたらすための一つの前提だと私は思うのでございます。
  81. 羽生三七

    羽生三七君 それはそれでいいんですが、その場合に相手から信頼されるような姿勢というものが必要だという意味で、私は質問しておるわけでありますが、そこで、いまジュネーブ協定の精神に基づいてと、こうおっしゃったし、佐藤総理総理として就任されて問もなく、この委員会で私の質問に答えられて、ベトコンも交渉の対象にしてよかろう、こう答えられております。そうすると、ベトコンも交渉の対象にする、ジュネーブ協定の精神に戻る、そうなってくると、やはり糸口はやはり無条件長期にわたる北爆の停止、こういうことが解決の糸口になってくるんです。だから、私は問題をそこに焦点をしぼっているわけです。解決をあきらめるとか、そんなことじゃない、熱心であればこそ、私は最も解決の糸口として重要なものが何であるかをいま探究しておるわけです。これは総理からもひとつベトナム問題についての基本的な考え方を聞かしてください。
  82. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ベトナム問題についてただいま外務大臣から詳細に、長く時間をかけてお話しでございました。お答えいたしました。私、外務大臣を信頼して、いまの外交の基本の方針を支持しておるものでございます。その話のうちにもありますように、ただいま両者——北と南、これはたいへん相互不信がある。また、完全勝利を望み得ない状態にあるにかかわらず、いまなお完全勝利を考えておる。そういうところにこの調停のでき上がらないといいますか、話し合いに入らない基本があるようであります。最近、毎日新聞で読みましたボーフル将軍などもそういう点を指摘しておる。いずれにいたしましても、どんな理由があるにいたしましても、アジア極東の地域でこういう紛争が続いている。たいへん心配にたえません。この悲惨な状態ばかりではございませんし、さらにきょうなぞも、新聞では中共領域に対しても爆弾が落ちたという、そういう報道をしておりますが、これなどもたいへんなことだと私思いますが、そういうことを考えると、一日も早くこういう事態が平静に帰すべきである、また招来をしなければならぬ、平和を招来しなければならぬ、こういうふうに念願しております。そういう意味で、日本がいままでもいろいろ努力しておりますが、今後とも、ただいまこの席で、こういうことをやっておりますと、こういうことは申し上げませんけれども、心から平和の招来を願っておる、念願しておる、これは社会党の諸君もわれわれも同じような考えであること、これだけはひとつ御理解をいただきたいと思います。  ただ、申し上げますように、その基本的に相互の不信があり、相互が、それぞれが完全勝利を確信を持って戦っておるところに、ただいま話し合いがつかないんだ。しかし、必ずしも現状で今後とも推移するとも思いませんし、あきらめないで不断の努力をするという外相の答弁、そのとおりです。われわれもあきらめないで不断の努力をすることだ。そういう不断の努力をする場合に、この行為はよろしいとか、この行為は不都合だとか、こういうような話で、お互いに話し合いに入るといってもそれはなかなか入るものではないと思います。第三者的な見方、これはわからないじゃございませんけれども、善悪の批判をすることもわからないじゃございませんけれども、しかし、当事者としてはあらゆる全力を注いでただいまも行動をとっておるのでありますから、それがはたからいろいろなことを申しましても、そうして完全勝利を目的として争っておるそういう連中が、冷静にわれわれの忠告を聞いてくれるとは思いません。でありますから、こういう際に、やっぱり何といっても無条件でお互い話し合いに入る。まあ、かつては北も無条件停戦を言っていたようだというように言われますが、やっぱり無条件であること。最近はアメリカは無条件でとにかく話し合いに入ろうというような気持ちも動いているようであります。お互いがそういう方向へ行くなら、この硬直状態も妥結できるのじゃないか。まあ、先入観を持たないで、現状に対してどうしたらいいか。いまのような無条件ということが望ましいことであり、無条件が望ましいのじゃなくて、話し合いに入る糸口がそこにっかめるのだというふうに私は考えております。そこで、ウ・タント事務総長の提言なるものについてわれわれが歓迎したのもそういう意味でございます。とにかく両当事者が平静になる、冷静になる。そうして各国の忠言に十分耳をかす、そういう空気をとにかく醸成すること、これがただいまのところ最も必要なことじゃないかと思います。
  83. 羽生三七

    羽生三七君 これは外相にお尋ねいたしますが、さきのグアム島の会談について、どういう決定が行なわれたのか御承知なさっておったら、承知されておる限りひとつお話し願いたい。
  84. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) グアム島の会談は、羽生さん御承知のように、参戦国の会議でございますから、われわれは詳細にその内容を知るという性質の会議ではございませんので、承知はいたしておりません。
  85. 羽生三七

    羽生三七君 これは今日の戦争のエスカレートを裏づける重要な私は会議であると判断いたしておりますが、それはとにかく、この戦争の現段階が、先ほど総理からもお話しがあったように、ミグ基地の爆撃やあるいはハイフォンの爆撃、あるいは、まだハイフォン港の封鎖はいたしておりませんが、そういうミグ基地の爆撃、ハイフォン港の爆撃等非常に戦局は重大化いたしております。私は非常に重要な問題だと思います。しかし、まだ決定的な本格的な爆撃とは言えないかもしれませんが、一応手をつけた、しかし、アメリカの国内動向いかんによっては、タカ派とかハト派とかいろいろ問題がありますが、この国内動向いかんによっては、いよいよ本格的な爆撃やあるいはハイフォン港封鎖等の事態がないとは言えない。もしこれ以上拡大していく場合には、一体どういう事態というものを考えられるか、これをひとつ外相の考えを承りたい。
  86. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) アメリカの作戦内容についてわれわれはよくわかりませんが、しかし、日本の変わらざる立場は、戦争の拡大を望まない。できるだけ戦線の拡大を阻止して早期に解決をできるように持っていってもらわないと、これは重大な結果を招来するという立場が、アメリカに対しても、あるいはまたハノイに対しても日本政府の立場ではあるわけでございます。
  87. 羽生三七

    羽生三七君 これは事態の発展によってはソ連も対抗措置をとることは必至であると思います。また、中国もどういうことになってくるかこれはわからない。一部には、ソ連介入を契機としてアメリカが政策転換の契機に利用するのではないかという説もありますが、私はそういう考え方は非常に甘いと思います。ですから、問題は非常に危険だと思います。私は米国で会談をしたマンスフィールド民主党の院内総務、この人は米中戦争に発展することをおそれると盛んに言っておりましたが、しかし、私はそれもあるだろうが、同時に、戦争がこれ以上エスカレートした場合に、はたしてソ連が平和共存政策を維持ができるかどうか、今日までの姿勢を継続できるかどうか、これが非常な問題点ではないかと、こう考えて、そういう話をマンスフィールド議員にしたわけでございますが、とにかく、アメリカはいま一押しすれば北が引っ込むのではないか、あるいはより有利な条件が獲得できるではないか、こういう判断に立って戦争でエスカレートをやっているのではないか。あるいは外相の言われるように北も同じじゃないかと言われればそれまでですが、少なくとも戦争を大規模拡大しているのは今日アメリカであることは、これはもう万人の目に明らかでございます。もし日本が真にこのアジアの平和を欲しその繁栄を願うとするならば、それはベトナム戦争の拡大阻止のために徹底的な努力を払わなければならないと思います。特にそれは勇気を持ってアメリカにものを言うことであります。ベトコンに言うだけでは——あるいはハノイにもと外相は言われるかもしれませんが、その中心は、アメリカ中心に積極的にものを言うことであろうと思います。アメリカに直言することである。そうでなければ、外相の言うアジア太平洋地域構想というのは夢物語りじゃないか、この事態、このようなことが継続しているならば。そういう意味で私は真剣なる対策を樹立する必要がある、その日本の外交姿勢というものを求めたい。いかがですか。
  88. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) このベトナム戦争は世界戦争に拡大する危険なしとは言えないわけでございますから、これ以上戦争が拡大してその危機をはらむということになれば、当然に日本日本の立場としていろいろとアメリカに対してもものを言わなければならない立場ができることは当然でございます。
  89. 羽生三七

    羽生三七君 けさのテレビニュースで、ウ・タント事務総長が来月十八日訪日と伝えておりましたが、そのような場合、来日をされた場合にどうするかという問題ですが、先日衆議院総理は、和平交渉をさらに進めるよう協力したいという、こういう発言をしております。それはウ・タント提案を支持するということなのか、あるいは、日本が独自の何らかの提案を持って会談をするということなのか、その辺、これはひとつ総理からお答えをいただきたい。
  90. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ウ・タント事務総長が来日をするこの際に、私どもはウ・タントさんの提言、これを歓迎しておりますが、それをめぐってのいろいろの相談はその際に十分してみたいと思います。また、そういう際に、今後の努力する方向といいますか、そういう糸口を見つけること、これに何らか役立ちはしないだろうか、かように私は思っておるわけでありまして、衆議院においてお答えしたのもそういう意味で、このウ・タントさんの見えるその機会が一つの契機になりはしないだろうか。これは、私どもがいま考えているものごとをあきらめないで不断の努力をするその一つのあらわれだと、かように御了承いただきたいと思います。
  91. 羽生三七

    羽生三七君 それから、総理は近く外国訪問をされるわけです。これは総理の御自由であります。野党のわれわれがかれこれ言うことは毛頭ございません。しかし同時に、日本がベトナム問題で何らかの役割りを果たそうとするならば、その訪問国の選択については、おのずから節度や配慮があっていいんではないかという気がするんですが、いかがでありますか。何か一方の陣営だけを訪問されるような感じですが。
  92. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の外国訪問についていろいろ予定しておるもの、そういうもののあることはもう新聞その他で伝えるとおりであります。しかし、はっきりこういうところというのはまだ確実にはきまらないのであります。また、ただいま言われますように、一方的なというわけでもないですが、それぞれの国の都合もやっぱり事前の打ち合わせをしなければなりません。そういう意味で、ただいま考慮中、またそういう準備中だとかように御了承いただいて、ただいままだどこそこを除くとかどこそこに行くとか、そういうようなものはまだきまっておりません。
  93. 羽生三七

    羽生三七君 ただいま申しましたように、ベトナム問題で何らかの役割りを果たそうとし、しかも、それを成功させようとするならば、訪問国の選択については十分な配慮をなされることを希望いたしておきます。  それから次に、外務省ではベトナム和平に対して国際監視団の派遣を考慮しておるという説もあるんですが、そういうことはお考えになっているんですか。
  94. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) まだまだベトナム戦争はそういう段階に来ていないわけです。問題は、ウ・タント提案にもあるように、一応北爆もあるいは北の浸透も一応ここで戦線をそのままでやっぱり凍結しておいて停戦をやって話し合い、平和的な和平会議、こういうような順序だろうと思います。だから、まだまだいかにしてそういうところに持ち込めるかということに対して、戦争の両当事者に対してどう説得するかということに重点が置かれておるのでありまして、まだ監視団だとかなんとかいうようなことは、そこまでベトナム戦争というものがそういう段階には達していないので、そういう結論を外務省が出しておるわけでもないわけでございます。
  95. 羽生三七

    羽生三七君 それは私の質問をちょっとはき違えておられるのです。そういう姿勢を示さなければベトナム問題で役割りは果たせない、日本も何かそういうことをしなければ、つまりベトナム戦争で何かの寄与をしておる、そういう外交姿勢をつくるためにそういうことを考慮しておるということが伝えられておるのでお伺いしたわけですが、もちろん、それはベトナム問題がいま監視団を派遣するような状況にないことは当然の話で、私の言っておるのは、そのために外交姿勢をつくる一環としていまのようなことを考慮して国際的に何か日本の意思を示すというようなことも一部伝えられておりますから、念のためお伺いしたわけです。
  96. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 日本の外交に、そんなにていさい、姿勢を示すようなために、いろいろ知恵をしぼるようなことは全然考えていません。これは日本はアジアの一国としてこれだけやはり日本国民の良心を痛めておることはないんですから、ベトナム戦争ぐらい。そんなにていさいをつくらんならんというようなことは、外交の努力の中に、私の頭の中にそんなものは一かけらもないということを申し上げておきます。
  97. 羽生三七

    羽生三七君 いや、三木外交としてそれはけっこうだと思います。ただしかし、事務当局としてはそういうこともいろいろ考えて、いろいろ作業しておられるのではないかと、このほかにもいろいろ問題はありますよ、私ここで指摘するならば、沖繩問題にしてもその他にしても、事務当局との考え方の違いというようなものはかなりあると思う。しかし、私は時間の関係上、これ以上は申しません。  次に、ベトナム問題はこの程度にしまして、核拡散防止条約についてお尋ねをいたします。この問題についてはすでに政府考え方もある程度示されております。しかし、率直に言って、その重点がどこにあり何を志向しているのか、必ずしも明瞭ではない。新聞ではいろいろ承知いたしております。この問題での特使派遣も私はそれなりの意義がないとは言いません。しかし、どうも日本が提起した問題を強く主張してそれに相応する成果をあげるという積極的な努力が非常に薄いように見られる。何か一応の外交のポーズをとりながらも、その姿勢は国内対策向けの感が深いわけです。それはいま外相はたいへんな意欲を示されましたけれども、それにもかかわらず、そういうにおいがはなはだ強い。したがって、非常に迫力のないものになっております。しかし、それはとにかく特使の派遣は具体的にはどういう成果をあげたのか、何が期待できるのか、どういう反応が示されたのか、ひとつ詳しくお聞かせをいただきたい。
  98. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) この点も申し上げたいのは、核拡散防止条約について払っておる外交の努力はポーズなどというものではないのであります。これは日本の将来の運命に大きな影響を持ちますから、できるだけ日本の意向というものが条約の中に反映されなければならぬということで、ポーズなどというような、そういうものではなくして、日本外交として全力を傾けておるわけでございます。その一環として大野勝巳君をアメリカに、西村熊雄君を欧州及びインドに派遣をいたしたのでございます。その派遣はちょうどタイミングも私はよかったと思う。いま米ソがいろいろ話し合って、これから草案を固める段階でありますから、そういうタイミングであったために相当な成果があったことを私は認めるのであります。しかも、アメリカに対しても非常に強く日本の立場というものを主張いたしまして、大野特使はラスク長官、フォスター軍縮局長等とも時間をかけて話をする機会を持ちまして、日本の主張というものは、これは非常に強く主張をしております。その日本の意向が、これは素案が出てみなければわかりませんが、相当に日本の主張が取り入れられるという感じを私は報告を通じて受けたのでございます。また西村特使は、これは非核保有国を回ったわけでございます。こういう国々と意見を交換し、日本の立場というものに対して理解を深め、また、そういう国々は十八カ国軍縮委員会のメンバーでもありますから、日本の意向を反映さすためにおいてこれはやはり有益な西村特使の派遣であったと思います。さらに念を入れて、これはアメリカだけというわけにもいきませんから、ソ連の代理大使を私は一昨日外務省に招いて、日本の主張というものをソ連にも伝えて、日本の主張がこの条約の中に取り入れられるような努力をいたしておるわけでございまして、できる限り今後も、まだ成案というものも得ておりませんから、軍縮委員会が開かれても、開かれる前においても、できるだけの努力を傾けてまいりたいと考えております。
  99. 羽生三七

    羽生三七君 まあソ連には——アメリカや西欧には特使を送って、ソ連は通常の外交ルートだけというのも、これもおかしな話で、一昨日ですか、代理大使を呼ばれて話をされたというようなことは、いささか私は、米ソ両国の今日の核の力を見るならば片手落ちだと考えておりますが、それはとにかく、私どもとしては、この条約に核保有国の完全軍縮の実現の問題、非保有国の安全保障措置の問題、あるいは査察の平等性の問題、さらに平和利用の問題、こういう基本的な条件ももちろん盛り込ませなければいけないと思いますが、同時に条約の期限あるいは再検討条項等の問題も、これに劣らぬ重要性を持っております。これらの問題が完全でないまでも、ある程度その要件が満たされることが必要であります。そこで、現状ではそれがどの程度受け入れられる可能性があるのか、日本の最小限度の主張はどれとどれに要約できるのか、差しつかえない限りひとつお聞かせいただきたいと思います。
  100. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いま御指摘の問題は、きわめて日本の主張として重要な問題に触れておる。一つは、核兵器の軍縮、これは新たに核兵器を持つ国をふやすことを押えるというばかりでなしに、核兵器をすでに持っておる国も、段階的に軍縮の意図を明らかにせなければいかぬ、条約の中で。これが一点。  第二点は、非核保有国の安全保障の問題については、十分な配慮が払われなければならぬ。そうでなければ、この条約に多数国の参加が期待をできない結果になってもいけない。ことに非同盟諸国の立場というものは、日本もやはりこれは考慮しなければならぬわけでありますので、この問題があるわけであります。これは何らかの形で非核保有国に対する安全保障という問題が考慮されなければならぬ。  また次には、これは日本として一番重要な点でありますが、この核拡散防止条約を結ぶことによって、原子力の平和利用あるいは研究開発というものがいささかも阻害されるものであってはいけない。この原子力の平和利用に対する十分な保障をとっておきたいという、これは日本のような原子科学も相当発達して、原子産業も将来伸ばしていかなければならぬ国として一番重要な点でありますので、これは強く主張をいたしておるわけでございます。これは何らかの形において条約の中に明らかにされる見通しでございます。  さらに、御指摘になったような条約の期限とか再審議、こういう手続の問題も重要でありまして、その中で日本は、このように科学技術の進歩が非常に激しい時代であるから、この条約がある一定の年限ごとに再審査をされて、核軍縮への努力も検討されるような機会を持たなければ、これは条約の運用というものに対して、条約締結国がこれを、その運用の状態を締結国会議を開いて検討する機会を持たなければならぬ、これは強く主張をいたしておるわけでありまして、こういう考え方もこの条約の中に取り入れなければならぬという空気になっておることは事実でございます。しかし、まだ米ソの話し合いというものが残っておりますから、どういうような草案になって十八カ国軍縮委員会に提案されるかということは、いまここで予断することはできませんが、相当に日本の主張はこの条約の中に反映をされるものだという見通しを持っておるものでございます。
  101. 羽生三七

    羽生三七君 実は、必ずしも外相の言われるように有望かどうか、私はちょっと疑問を持っておりますが、それはとにかく、総理は三月十八日当院の本会議の答弁の中で、「最後にどうしてもわれわれが納得ができないということであるならば、これはそういうような条約に賛成するわけにはいかない、これは申すまでもないことであります。」と、こう答弁されておるわけです。そこで——これは速記録によってです。そこで、納得できるかできないかについては、条約のどの辺に重点を置かれておるのか。それが納得できなければ条約には賛成しないとおっしゃったのですから、どこに重点を置かれて納得されるのか、されないのか、これを承ります。
  102. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまちょうどその草案をつくるといいますか、そういう際でございます。また、先ほど来外務大臣が申しましたように、私どもの期待、希望、これは強いものをそれぞれの当事者に進言したばかりでございます。まあそういう際でございますから、これこれが出なければ絶対にいやだと、こういうことを言いますのは、あまり適当じゃないのじゃないかと思っております。問題は、やはり出てくるものをひとつよく見たいし、また、その上で態度をきめても別におそいというものではないように思いますし、また基本的にはこの事柄は望ましいことであって、その精神には私ども賛同しておるのでありますから、したがいまして、多数の国がこれに参加しやすいように、いわゆる拡散防止が実効があがるような、そういう事態が望ましいと、かように思いますので、最終的な態度は、十分成案を見た上で最終的に決定したい、かように御了承いただきたいと思います。
  103. 羽生三七

    羽生三七君 そういうことが受け入れられない場合には、参議院の本会議の答弁は間違いないのかどうかという点。
  104. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 参議院の本会議で申しましたこと、これは取り消すほどの筋じゃないと思っております。
  105. 羽生三七

    羽生三七君 外相、この期限の問題は、日本は引っ込めたのですか。
  106. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 期限の問題については、日本の場合は、これに対して無期限ということよりも、何か期限の問題については五年ごとに——日本はまあいま五年と言っているわけです。五年ごとに再審査をして、そうしてそれが実際に運用が条約どおりに行なわれておるかどうかということ、また科学技術の進歩というものが、この条約と非常に前提が違うような変化が起こっておるかどうかというような場合には、これは改正という事態も起こってくるわけでありますから、今日の日本の主張は、期限を切るというよりかは再審査、再審査の機会を持ちたいということに重点を置いた主張をいたしておるわけでございます。
  107. 羽生三七

    羽生三七君 これは最初の主張からかなり後退したと思うのです。最初は期限をちゃんとはっきり付したことは、やはり当然だと思います。それは再審査、再検討条項のことは、あとに触れます。  そこで、脱退条項にいうところの、異常な事態が生じて施行の利益が危うくなった場合、その異常な事態というのは、日本はどういうケースを想定しておるのですか。これは脱退条項の重要な問題点です。
  108. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) その草案というものは、まだ最終的に固まっておりませんから、草案というものを前提にしての御質問にはお答えするのは適当でないと思いますが、むろん条約でありますから、どの条約にも脱退の条項というものは当然になければならぬので、そのおそらく脱退ということは、この条約が非常に大きな国の施行の利益に反するような場合、こういう場合を考えて脱退条項がつくられるということが、常に国際条約におけるこれが普通の常識だと判断をいたしておるわけでございます。
  109. 羽生三七

    羽生三七君 いや、それはわかっていますが、その場合に、異常な事態に脱退するに値するその重要なケースとしては、どういうことが想定されるのかをお聞きしておるわけです。
  110. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いまその一々、こういう場合、ああいう場合と具体的な事例、これはやはり客観情勢によっていろいろ起こってくるんでしょうから、この場合、頭の中にああいう場合、こういう場合というものを具体的に想定して、そうしてそれと結びつけて考えることは、私は適当ではないのではないか。そのときの世界の世論もあるし、国内の世論もありましょう。だから、施行の国の利益に大きくやっぱり害する場合、こういうふうに考えることが適当なので、具体的な場合を想定していろいろ申し上げることは、かえって問題を混乱さすのじゃないかと思うのでございます。
  111. 羽生三七

    羽生三七君 問題はちっとも混乱いたしません。具体的な場合を想定して対策を立ててこそ、初めて完全な条約ができるんで、そんなことをいまから言うのは意味ないということでは、条約の審議ができないわけです、条約が現実に出ているわけじゃないのですが。  そこで、たとえば条約施行後の五年後——一応五年と想定しまして、この場合に完全軍縮への核保有国の努力を検討した上、場合によっては脱退を可能とするためには、一つ、条約の期限を切るか、それから二つ目には、再検討条項に脱退を可能とするように明記するか、こういう処置が必要です。しかし、条約にこういうものが盛られなくて不十分である場合には、残された道は、条約実施後、たとえば核保有国の完全軍縮への努力が全く認められないような場合、日本としては、脱退手続にいう異常な事態が、自国の施行の利益を危うくしているという場合に該当すると認める旨の解釈宣言を署名にあたって行なうべきだと思う。黙っておって署名するということだけでは、私は非常に不完全だと思います。したがって、それを明記して調印する場合には、その解釈宣言をした上で署名をする。要は、要するに、再検討の際は、核保有国の完全軍縮への努力、あるいはまた、この条約に有効性が全く認められないような場合には、脱退も辞さないくらいの覚悟で条約に加入することが先決だと思う。いかがでございますか。
  112. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 羽生さん、脱退、脱退ということに、脱退というものに非常にアクセントをおつけになりますが、これはやはり核軍縮の問題でも、何らかの形で条約の中にその意向が明らかになる見通しをわれわれは持っておるわけであります。またそうでなければいかぬ。だから、その条約の明らかにされた意図をたてにとって、核軍縮を迫るということで実行さすということに目的があるので、脱退、脱退ということで、脱退ということをちらつかせてするということよりかは、やはりそういう明らかにされた意図をたてにとって核軍縮を迫るというほうの行き方が建設的だと私は思う。われわれとしても、核兵器を持っている国が次々にふえていくことが好ましいことではないということでありますから、この条約の精神には賛成しておるのですから、何でも脱退だ、脱退だ、こう言って、いかにもこの条約は、いやいやながら日本がやったというような態度でなくして、核軍縮などもこの条約のワクの中で実行を迫るという態度に、日本の建設的な態度があるのではないか、かように考えておるのでございます。
  113. 羽生三七

    羽生三七君 何も脱退が目的で議論しているわけじゃないのです。有効な条約をつくるためには、それくらいの決意がなければだめだということを私は言っているわけです。どうも外相は表現をじょうずにされるが、前の椎名外相に比べて、中身の点は私はどうかと思う。むしろ椎名さんのほうが正直にいろいろしゃべったと思いますが、あなたは非常に言語の使い方がじょうずで、それでごまかされている感じがかなりいたします。  そこで、この核保有国が非保有国の安全を保障するという問題、一般論はとにかくとして、日本の場合には、どういうことをお考えになっているか。
  114. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) それは何か国際連合などで、一つの核非保有国に対する核の脅威とか、あるいはまた核による、核兵器による脅威とか、核兵器による攻撃、これを何か阻止できるような国際的な意思表示というものができることが好ましいのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  115. 羽生三七

    羽生三七君 それから第三条にいう非保有国の査察の場合ですね、保有国は査察の対象にならないというこの条約の不平等性。この問題とともに、非保有国に対してどういう査察方式が考えられるか。これは平和利用の場合ですね、それが著しく固有の研究を阻害するようなことにならないかどうか。これに対して有効な対策が考慮されておるのかどうか。これは非常に重要な問題だと思います。
  116. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) この点は現に国際原子力機構の査察を日本は受けておるわけですから、したがって、新たなる条約に加盟することによって、新たなる査察が加わるということではないわけですが、当然に、御指摘のように、この査察を通じて、原子力の研究開発というものを阻害するものであってはならぬ。これはもう強いわれわれの原則的な考え方を持っておるものでございます。
  117. 羽生三七

    羽生三七君 いや、それはわかっておりますが、しかし、査察の結果ですね、こういうものは永久に秘密独占をしていいものかどうか疑問ですが、かりに一国の開発や研究が阻害されるような事態に有効に対処する何らかの考え方があるのかどうかそれを聞いておるわけです。
  118. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは世界的に大問題であります。それはなぜかといえば、非核保有国の中においても核兵器の開発能力を持っておる国とすれば、核兵器の開発はしなくても、平和利用の面においてはみんな大いに発展をしたいと思っておるのでありますから、もう各国ともこの問題に対しては、条約の中でこの平和利用の問題に対しては非常な神経過敏になって、条約というものの草案ができてくることを見守っておる状態でありますから、この査察という条項があることによって、非核保有国の原子力産業というものが阻害をされるようなことはもう絶対に避けなければならない。この点については、あらゆる角度から日本自身としても今後検討を加えて、十分なこれに対する保障を得なければならぬと強く考えておるわけでございます。
  119. 羽生三七

    羽生三七君 これはまあ私の全く個人的な見解でありますが、平和利用の問題については、軍事的な核爆発と厳密に区別しながら、この純粋な平和利用について、その道を閉ざすべきでないことは、これも言うまでもありません。この場合、開発可能な国々が中心になって——もちろん純粋の平和利用の場合ですが、中心になって、たとえば国連等に新組織をつくる、国際管理のもとに共同研究機関をつくってはどうか。この宇宙開発すら、宇宙開発の問題も米ソの共同研究が要望されておる今日でございますし、この種の問題は、査察とも関連して、一国の秘密独占がどこまで保たれるかも、なかなか予断しがたいものがあると思います。そういう意味で、真の平和利用のために、世界に新しい道を開く意味で、共同研究機関、国際管理のもとに共同研究機関をつくるというようなことについてはどうか。これは私の全く個人的な考えでありますが、こういう問題もまあ検討の価値あるものならば、ひとつ検討していただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  120. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 現在のところは情報の交換ですね、平和利用の面に関しては、核保有国もこれがやはり情報を提供して、お互いに非核保有国がこの条約に入ることによって、科学技術の進歩で非常な不利益をこうむらないような努力をしたいと思っておるわけです。これは何らかの形においてこの保障をとりたいと思っております。  原子力の国際的な機関でこれを共同研究する場合を考えてみたらどうかということは、一つの御提案だと思います。これは将来の検討の材料にいたすことにいたしたいと考えております。
  121. 羽生三七

    羽生三七君 それで、この核拡散防止条約の問題はこの程度にいたしますが、結論的に言って、まだ現段階では、日本の主張のどれとどれが有望であるかということをおっしゃるには、時期が早いですか。
  122. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これはまだ、御承知のように、米ソの話し合いがこれから始まって草案ができるわけですから、いま私少し早いと思います。適当な機会があれば、これで超党派的に話し合いをしようと言っておるわけでございますので、適当な機会には当然に明らかにいたしたいと思います。
  123. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、私は率直に言って、この核拡散防止条約で本格的な全面完全軍縮を期待することは非常にむずかしいと思います、この条約の性質上。したがって、それだけに今後一そう、フランス、中国を含む世界軍縮会議の開催なり、十八カ国軍縮委員会の一そうの活動というものが望ましいと思いますが、これはいかがですか。
  124. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 言われるとおりに、この核拡散防止条約を結んだことによって直ちに全面的な核軍縮が行なわれるということは期待はできないと思います。しかし、軍縮へのこれが第一歩であることは間違いない。そういうことで、将来は、軍縮ということになれば、中共もフランスも入らなければ、そうでないとやはり全体の核戦力のバランスの上からいってもなかなか実際問題として核軍縮が行なわれないわけでありますから、やはり将来フランスも中共もこういう条約に入り、また条約の一つの義務として核軍縮を行なうというふうに持っていくことが適当であるという羽生さんの意見には、私も同感でございます。
  125. 羽生三七

    羽生三七君 日本は十八カ国軍縮委員会に参加を希望しておるわけでございますね。その場合に、どういう立場で参加されようとするのか。つまり、この軍縮委員会は東西中立国のバランスの上に構成されておるわけですね。日本はどういう立場で参加を求められますか。
  126. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 日本のごとき、こういう世界的な今日の地位からしまして、やはりこういう重要な国際会議には当然日本が入って、日本の見解を述べることが世界政治の上においても貢献する道だと考えています。ことに核兵器の問題については、ほかの国よりも、日本は特殊なこの問題に対する国民的感覚を持っておるわけでありますから、いろいろな意味において日本が一枚加わるということは非常に世界全体の軍縮からいっても意義のあることだと考えております。軍縮のメンバーは必ずしも中立国ばかりではないわけでありますから、東西両陣営に中立国が加わっておるわけでありますので、日本はこの軍縮委員会のメンバーに日本がなることによって世界にも大きにやはり貢献できる立場があるのではないか。しかし、まだ実現をしていないわけでありますから、今後とも努力をいたしたいと考えております。
  127. 羽生三七

    羽生三七君 実は、椎名外相は、この前私の質問に対して、西側の立場で参加を求めると、こう言われましたが・そうすると、おそらくは東側の一国も加えて十八カ国が二十カ国になるだけで実際上たいしたことはないと。しかし、日本が有力な国として何か軍縮委員会で述べたいというならば、それに値する軍縮構想というものを持っておるのかどうか。参加が認められたならば、それから立案するということじゃないと思います。一応の何らかの構想というものは日本としても持っておるわけでありますから、その辺をお伺いしたい。そのために外務省に、軍縮の調査室ですか、設けておるはずでありますが、どの程度考えられておりますか。
  128. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 日本は、核兵器をやはり全廃したいという強い希望を日本国民くらい持っておる国民はないのではないか。こういう非常に日本のその立場というものは、世界各国よりも、われわれが被爆国だけに非常に端的にやはり国民的な感情が強いと思います。具体的な軍縮ということについては、御指摘のようにまだメンバーでもなかったですから、そういう点で具体的に軍縮に対してのちゃんとした日本が構想を持っているかということは、十分だとは思わないのです。これはやはり、軍縮というものが世界的に大きな課題でありますから、日本も今後真剣にメンバーであってもなくても取り組む必要がある、そういう点で、外務省においても、一つの軍縮という担当する機構を今後とも強化していきたいという考えを持っているものでございます。
  129. 羽生三七

    羽生三七君 この問題はこの程度にしまして、次に日本の防衛力、安全保障の問題でお尋ねをいたします。  自衛隊が、あるいは日本の防衛力が違憲か合憲かという議論は、私はきょうはいたしません。ただ私の聞きたいことは、日本の防衛力には一定の限界があるのかどうか、あるのかないのか、限界を増田長官にお伺いをいたします。
  130. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 羽生委員にお答えをいたします。  一定の限界はございます。すなわち、外国に脅威を与えるような存在であってはならない——日本の自衛隊というものは外国に脅威を与えるような存在であってはならないという限界があると思います。
  131. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、そういうようにしていった場合、そういう考え方で自衛隊を増強していった場合に、たとえば陸海空がどの程度の力を持ち、質的にはどの程度ということで、一応この程度という「ませ」があるのですか、何もないのですか、それを聞いているわけです。
  132. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 羽生委員の御存じのとおり、現在はまだ自衛隊というものはビルドアップの段階でございまして、第三次防の末期は、艦船が十四万二千トン、陸上自衛隊が十八万名、航空自衛隊は、ナイキ八ーキュリーズを加えまして、従来は一千一百機ほどございましたが、八百八十機ほどに減少いたします。第四次防その他のことにつきましては、今日の段階では詳細には申し上げかねますが、まだまだ自衛隊はビルドアップの段階でございますということを申し上げます。
  133. 羽生三七

    羽生三七君 そういうこまかい数字はいいのです。どこまでビルドアップをすればとどまるところがあるかということを聞いておるわけですが、そこで実は、四十年の三月参議院予算委員会の分科会での私と小泉当時の防衛庁長官との質疑の内容を速記録でちょっと紹介したいと思います。私の質問、「大規模な戦争は別として、局地戦的な性格の何らかの紛争が起こった場合、それを制圧するに足る程度の力はいまの自衛隊が持っていると解釈してよいか。」、小泉長官、「さようでございます。」、こう答えておるわけです。要するに、局地戦的なものならば今日の自衛隊の力で大体可能だと答えておるのでありますが、この小泉元長官の考えと増田長官の考え方はどうなのか。しかもこれは、第三次防衛計画のできる、第三次防の前の段階の答弁であります。
  134. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 小泉長官のおっしゃったとおりでございます。局地戦的の侵略があった場合に、一応現在の自衛隊で対処し得る、しかも通常兵器をもってする侵略に対処できる、そういう考えでございます。
  135. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、今後それをさらに増強していくということは一体どういう意味なんですか。
  136. 増田甲子七

    ○国務大国(増田甲子七君) 局地戦的と申しましても、一カ所に限るという場合もございますし、数カ所もある場合もあるのでございまするから、いまの段階ではまだまだ、ある委員が、おもちゃのような自衛隊ということも、皆さんの御質問の側からもおっしゃった方もございます。速記録等にも載っておりますが、当時の小泉さんの御答弁は、一応そのときの御答弁として、私はしかるべき御答弁である。まだまだしかし、羽生委員もお認めのとおり、ビルドアップの段階でございまして、その極限というものはどういうものかといいますというと、極限は、外国に存在の脅威を与えるようなものであってはならないというあくまでも原則がある、極限があると考えておる次第でございます。
  137. 羽生三七

    羽生三七君 それは、おもちゃのような自衛隊でないことは、あなたのほうが御存じでしょう。アジアでいまやどのくらいの力を持っているか、世界で何番目ぐらいのものになったかですね。しかし、これは数字をあげてここでいま申し上げると時間がなくなるから聞きませんが、次は、では日本の自衛隊、防衛力がどの程度になれば米軍の駐留を必要としない条件になるのか、安保から脱却できるのか、どこまでいけばいいのですか、永久予想ができないわけですか。
  138. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) われわれは、通常兵器による侵略者——侵略者は国家である場合もあるし、団体である場合もあるし、海賊である場合もございましょうが、いろいろな侵略に対処すると、こういうことを限度として自衛隊を海上、陸上、航空いずれも持っているわけでございます。そこで、通常兵器以外のものは、御承知のとおり、長距離爆撃機とか、あるいはICBMとか、あるいはIRBMとか、あるいはメースBとか、そういうふうなものはわれわれは保有しない、製造しない、持ち込まないという決意を持っているわけでございまして、でございまするから、世界の様相なり、あるいは、近代戦争ということばを使いたくないのでございまするが、スクランブルというような字を使ったほうがいいかもしれませんが、そのスクランブルに対処するにはやはり米軍の駐留が必要であると、こういうふうにわれわれは考えております。当分必要である——総理がいつもおっしゃるとおり、相当長期にわたって駐留は必要であるという考えを私も持っている次第でございます。
  139. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、おそらく頭の中には、兵器の発達、あるいは国際情勢、つまり相対的なものだからということが頭の中にあるのだと思います、あなたのほうは。ですから、ほとんど際限がないということですね、無制限である。日本の防衛力の増強、口では一応「ませ」があるように言われておりますが、実際問題としてはほとんど「ませ」がないにひとしい。特に、武器を相対的なものと認め、兵器の発達等考えていった場合には、相対的と考えれば考えるほど、ほとんどこれは無制限、一定の限界というものはない。だから私は、きょうは憲法論争をやっているわけではありませんよ。そうでなしに、日本政府としても、大体この程度という一応の制限はないという——あるようなことを言われますが、実際はないわけですね。そういうことがはっきりすれば、それでいいのです。また次の機会にこの問題を明らかにするが、本日のところはそういう政府の腹というものがわかればよろしいのですから。
  140. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 私は、限度というもの、めどというものはあると思っております。そこで、本年度予算等において、あなたがごらんのとおり、従来よりもパーセンテージは低下しておりまして、七・六%前後になっております。それから、第三次防衛五カ年計画全体の経済社会発展計画から見まして、国民所得は二百二兆といわれております。その二百二兆から見まして、一・三%くらいである。二百二兆になるというエキスパートもございますけれども経済発展計画におきましては非常に内輪に見ております。その内輪に見た範囲におきましても、従来よりはパーセンテージが下がっておるのでございまして、もとより羽生委員は相対関係だということは良識を持っていらっしゃってお認めでございまするから、そこで、予算面あるいは国民所得の面でだんだん低下しておる。しかも限度というものは、外国に脅威を与えてはいけない。それから、あなたがよく御存じのとおり、従来のものはたいていもう昭和二十年ごろMAPで供与を受けたものでございまして、俗なことばで言えば、ポンコツにしなければならないものがほとんどでございます。それをスクラップ・アンド・ビルドと言っておりますが、そういうことでかえるわけでございまして、でございますから、航空機の数等も、千百三十機もあるものが、八百八十機に減少してくるわけでございまして、でございますから、際限なくふえていくということばはどうかと思います。限度もございまするし、絶対数量ではむしろだんだん減りつつあるというようなところも相当あるわけでございます。ただ絶対的にふえるというものはどういうものかというと、近隣諸国にもございますような、ナイキハーキュリーズが新しく設けられます。それからホークが二個大隊設けられます。これがまずふえるものではないかと私は考えておる次第でございます。
  141. 羽生三七

    羽生三七君 外務大臣にお尋ねしますが、どういう条件が整えば安保から脱却できるのですか。私どもの基本的な考え方はここでは申し上げません。政府としてはどういうふうにお考えですか。
  142. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 世界全体、まあ国際情勢の推移だと思っております。まだまだ何となしに世界情勢が不安があるわけでありますから、これが不安がなくなってきて、もう平和というものの基礎が世界的に確立なる——まあそれはある程度の確立なるというような、そういうふうなことになれば、それはやはり集団安全保障体制というものにも変化がくると思いますが、これはやはりどういう場合といっても、具体的にはなかなか、そのときの国際情勢、それの判断とある程度見通しを持つよりほかに私はないと、日本だけの主観的な意図だけではいかない、客観的な国際情勢に対する判断というものが背景にこれは必ずあるというふうに考えられるわけでございます。
  143. 羽生三七

    羽生三七君 要するに、半永久的に安保から脱却できないと、そういう考え方に立っておると私は理解、了解、判断せざるを得ないわけですね。つまり、国連による安全保障措置ができるなんということはいつのことかわかりません。ですから、たとえばベトナム戦争が片づくとか、あるいは中国問題が処理できるとか、アジア周辺が平和になったとか、そういうようなときが条件になるというのか。私たちの基本的な立場は別ですよ、これは。いま脱却しても日本が不安全とは言えないという基本的な立場ですから、それは別として、そうすると国連の安全保障措置というものはいつのことかわからない、だから安保は半永久的なものになるのではないか、政府考え方からいけば。
  144. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 半永久的とも考えられません。国際情勢というものは変化があるものですから。一つの場合は、御指摘のように、国際連合における安全保障の措置が有効に働くような場合、これは夢物語だと羽生さん言われるけれども、やはり……。
  145. 羽生三七

    羽生三七君 時間がかかる。
  146. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 時間がかかる、それはそうでありましょうけれども、これも一つの場合である。こうなれば、安保条約というものの必要性がなくなってくる——有効な安全保障措置が国際連合にできれば。それともう一つは、世界全般の情勢が、ことに極東の情勢というものが非常に大きな変化があった場合と、こういう場合が安保条約に対する考え方の変化が起こる二つの大きな要件だと私は考えます。
  147. 羽生三七

    羽生三七君 そういう問題についての基本的な私ども考え方をまた機会を見て申し述べたいと思います。  次は、総理にお伺いしたいことですが、日米安保条約の固定延長か自動延長かという問題、これはそういうことを論議するには時期が早いと、そういうお考えだろうと思いますが、それはそれでよろしい。問題は、どういう条件が固定延長か自動延長を決定する主要な要素になるのか。つまり、どういう条件の場合には固定になり、どういう条件の場合には自動延長になるのか、それを決定する要素は国際的なのか、国内治安対策なのか、それをお聞きしたいのです。そうでなければ、固定か自動延長かという議論は出てこないわけです。それをお聞きしたいのです。
  148. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま言われるように、安全保障条約どんな形になるか、これはいましばらく研究しておる最中の問題でございます。これはただいまも、直接ではございませんが、まあ米軍駐留等についていろいろ、どういうような状態が来ればこんなものは必要でないか、こういうお尋ねがございましたが、ちょうどそのうらはらになるような問題のように思いますけれども、私はどこまでもわが国の安全を確保する、そういう見地に立ってものごとをきめていく、これが基本的態度であります。私はいましばらく国際情勢等はなかなか一年や二年ですっかりもう心配はないんだと、わが国の安全をこれで確保できるんだ、こういう確信は持てない、かように考えておりますので、安全保障条約体制を堅持するということはかねてから申しております。このことはただいまも触れましたように、わが国の国内治安対策上という、それはどういう意味か私ちょっとおかりかねますが、この安全保障条約体制を必要とするというのは、これはもう主として国際的な問題でございますから、そういう観点に立ってきめていくということであればいい、かように思っております。
  149. 羽生三七

    羽生三七君 私の言った国内治安対策とは、取り締まりのことじゃないんです。安保でまた大騒動が起こっちゃかなわぬからという意味のことが、固定か自動延長かを決定する重要な条件なのか、あるいは国際条件が何かあるのか、それを聞いておるわけでありますから、お間違えのないようにひとつ。
  150. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの国内治安上というのがただいま言われるような反対騒動だとか、こういったようなことを予想されてるかということでございますが、私はそういうことは考えなくてよろしい。ただ、いま国際的な問題からわが国の安全を確保する道、これは一体どうしたらいいのだと。御承知のように、わが国の憲法は国際紛争を武力によって解決しないという、いわゆる戦争放棄をいたしております。そういう観点に立ちまして、わが国自身が攻めていくことはございません、攻撃を加えることはございませんけれども、わが国をもしも侵略された、そういう場合にわが国を守る、これがただいま最小限度のものが要求されているいわゆる自衛隊でございます。先ほど防衛庁長官が答えたとおりであります。これは自衛のため必要な最小限度のものを用意するということでございますし、同時にまた、それは外国に対して攻撃的脅威を与えないものでございます。そういう観点から見まして、わが国の安全を確保するためにはただいまどうしても安全保障体制が必要だと、かように私は考えておるのであります。その形をいかにするかと、これはどこまでも国際的な問題で考えていけばいい、かように思っております。
  151. 羽生三七

    羽生三七君 そのこまかい説明は大体わかっているのですが、そうすると一九七〇年の時点で自動か固定かをきめるものは、国際情勢が中心なのですか。国内のことは問題ないと……。その点だけはっきりすればいいのです。
  152. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま国内の国民もこういう体制を大多数は望んでいるようでございます。私は治安上そういうことを考慮する必要はない、かように考えております。
  153. 羽生三七

    羽生三七君 最後に、この五月中に日米安保協議委員会が開かれるように何か考えられているようですが、その点は進んでいるのですか、どうですか。
  154. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 五月の中旬に開く予定に、大体そういう予定になっております。
  155. 羽生三七

    羽生三七君 その場合に主要な議題は何か。先ほど来私がいろいろお尋ねしてきたような問題についても十分にアメリカと話し合って、このときこそ日本がアメリカに言うべきことをはっきり言う絶好の機会だと思う。十分にこれをひとつ活用してもらいたいと思うが、どういうことが重要な議題として予想されているのか。
  156. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) この会議の主たる議題は極東情勢全般に対する情勢、これに対してアメリカ側からも意見を聞き、こちらもいろいろと日本の意見を述べる、こういう——こまかくいろんな議題をつくっているというよりかは、極東情勢全般に対する討議ということが中心題目になる予定でございます。
  157. 羽生三七

    羽生三七君 これで質問は終わりますが、昨日は憲法記念日であったけれども、いまの政府の姿勢を見ると、いまや全く、これは先ほど来の防衛問題で明らかなように、あってなきがごとき状態になっておるんではないかという心配を私は持っております。ベトナム戦争の将来の帰趨、あるいは日本外交がもし国際的に評価を問わんとするならば、三木さんは今度の核拡散防止条約について積極的な日本の立場というものを主張して、その主張を貫くべきだと。そういう機会を最大限に利用していただくということと、特に日米安保協議委員会の開催の際にはベトナム問題、中国問題等を中心に積極的に正しい主張に立って意見を開陳されることを希望しまして、私の質問を終わります。
  158. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上をもちまして、羽生君の質疑は終了いたしました。  午後は一時四十五分再開することといたしまして、これにて休憩いたします。    午後零時四十五分休憩      —————・—————    午後一時五十九分開会
  159. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、西郷吉之助君、熊谷太三郎君、林田悠紀夫君辞任され、その補欠として山内一郎君、小林章君、岡木悟君が選任されました。     —————————————
  160. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 午前に引き続き質疑を行ないます。梶原茂嘉君。
  161. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 まず、わが国の人口の問題に関連して質問を始めたいと思います。  わが国の人口は御承知のように、おそらく来年、昭和四十三年には一億をこすであろうと厚生省が報告をしておりますことは御承知のとおりであります。最近の、ことしあたりの状況を見ますと、あるいは年内に一億の線を突破するかもわからぬ。明治の初めに三千万台で出発いたしまして、ちょうど百年目を迎えるときに人口が一億の台に乗るということは、明治百年の大きな記念とも考えられると思います。国際的な舞台で独立国としての権威を保持するためには、少なくとも人口が一億以上あるということが一つの要件であるということを、ドゴール大統領が言ったということが伝えられておるのであります。しかも、一つの民族で一億からの人口を持ったということは、わが国が世界を通じまして独特なほんとうに権威のある地位を確保する最大のゆえんであろうかと思います。もちろん経済力なり、軍事力、これも大事でありましょうけれども、それ以上に日本人が一億からの人口を持ち、それが総合された活力として国際の場面に活動を展開するということは、何としても日本の最大のこれは価値の私は基盤であろうと考えておるのであります。まず総理の御見解を承りたいと思います。
  162. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 人口問題について梶原君の御所見を交えてのお尋ねでございますが、かつてのように人口が国運の全部を左右するというような考え方ではもうただいまはございません。また、人口の問題の見方にいたしましても、明治初年とはよほどこれは変わっていると、かように私は考えております。明治初年は三千万国民というようなことばが使われたものがその三倍になっておりますが、もちろんその間に国運の進展もすばらしいものがございます。しかし、これからの人口構造というものがどんなに変化していくか、最近の出生率等もよほど衰えておりますので、今後、日本の人口の老齢化と言いますか、いわゆる六十五歳以上の者のパーセンテージがだんだんふえてくるのじゃないか。そうすると、まあ民族としての老齢化が行なわれる。そこらに今度は新しい問題としていろいろな議論をしておるようでございます。しかし、こういう事柄はいま一時的な現象としてこれを見るべきもので、長期的な観点に立つとおのずからまた変わった見方も立つのではないだろうか。かように私は思っておりますので、一部で非常に心配しておるような、そういう心配はしなくてもいいのじゃないだろうか。これもある程度自然的なものにまかしておいて、そしてまた非常に片寄った状態が起これば、自然的調節もおのずから出てくるのではないだろうか、かように私は考えておる次第であります。
  163. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 総理のお話しのように、これまでは大体人口の問題というと、その国自体のむしろ問題であったのであります。昭和の初めに、当時の内閣は人口食糧問題調査会をつくりまして、二、三年かけまして、三十年後の日本の食糧、人口の姿を想定をして計画を立てたことがございます。三十年後ですから、ちょうど昭和三十二、三年になるわけであります。私はかつて三十年前に計画されたその計画実績とを比較したことがあります。もちろん途中に大きな戦争が入りまして、事態は非常に変わったのでありますけれども、しかし、当時の日本ですから、非常に素朴な計画でありましたけれども、非常に興味の深い結果が出ていたようであります。しかし、最近は人口の問題はその国その国自体の大事な問題でありますと同時に、その国を越えまして、世界的な視野といいますか、国際的な視野からの問題になりつつあることは申し上げるまでもないわけであります。したがいまして、昭和七十五年になりますか、新しい世紀、二十一世紀を目の前にして、世界的に人口の問題が論議をされておるのであります。二十一世紀、三十何年か先でありますから、ずいぶん先のような感じを一般は持つわけでありますけれども、人口の問題になりますと、これは決して先ではないのであって、新しい世紀の当初ということは現在の問題であります。現在の問題であって、決して先の問題ではないということが十分理解される必要が私はあると思うわけであります。  終戦後十数年の間、日本の人口は敗戦の影響もあり、占領政策の影響もあり、いろいろの事情から、これまでに、海外の人口の歴史の上で例のないような大きな変化を経験をしたわけであります。そのことのいい悪いを論議するわけではありません。これは現実の事実であります。その結果が、現在、これから先、相当長く影響を持っていくことは、これまた当然のことであろうと思います。国連の人口関係の当局では、しきりに新しい世紀をモットーにして世界人口の推計をいたしておるようであります。人口の推計ですから、いろいろの条件によって見方によって違うわけですけれども、たとえば、日本の周辺がどうなるかということを国連関係当局の推計の数字で見てみますると、韓国と——これは北鮮を含むと思いますけれども、台湾を合わせますると一億四百万人という数字が想定されております。言いかえますると、日本人口以上であります。それからインドネシアは二億、現在の倍になります。タイとベトナムを合わせますというと、これまた一億三千万という数字になります。問題の東南アジアだけでかれこれ五億という数字を国連は出しておるのであります。中共の人口の実態はなかなか把握はできませんけれども、まず毎年一千万、少なくとも一千万は増加している、一千万人以上増加しているであろうということは一般に言われておるところであります。おそらくそうであるようであります。したがいまして、このまま十年たちますと、中共において増加した人口というものは日本人の総人口に匹敵するわけであります。これが三十数年後の姿であります。はたしてこうなるかどうかは、これはわかりませんけれども、しかし、世界的に人口が相当な勢いでふえつつあるということは間違いのないところですから、多少時間的にずれることがありましても、まずまずそういう情勢になるであろうと考えるべきであろうかと思うのであります。ケネディ大統領は、新しい世紀を迎えてアメリカの人口が少なくとも三億をこす、そういう想定のもとに、新しく国土の総合的な資源開発を計画されたことも伝えられておるところであります。  ところで、それじゃわが国の人口がどうなるのか、これは厚生大臣おいでですけれども数字にもし間違いがあったら御指摘を願いたいと思いますが、昭和三十二年の厚生省の推計によりますると、日本の人口は昭和六十年でピークになって、それからは減少する方向に行くんだということが報告されておるのであります。私は、そのとき実は非常なショックを受けたわけであります。日本の人口が、ともかく昭和六十年といいますとすぐ目の前であります、それがピークで、下がっていくんだ——まあ下がって、また相当期間かけて上がっていくかもわかりませんが、世界各国がどんどんふえている段階で、ともかく日本の人口が下がっていくという試練にわれわれが直面するんだというわけで、非常なショックを受けたのでありますが、計算上そういうふうになるんでしょう。したがいまして、それでいきますると、昭和七十五年、すなわち西暦二〇〇〇年におきましては、日本人口は一億四百万見当になるわけであります。それから、その次に昭和三十五年の発表によりますと、今度はピークが十年ずれまして、昭和七十年が日本人口最高のピークで、それから下がります。そのときの数字が一億一千三百万、二十一世紀初頭の数字は一億一千三百万、こうなって、漸減していくということであります。それから、最近、三十九年六月の発表によりますると、またピークがずれまして、今度は昭和七十五年に一億二千百万の数字になります。そしてピークは新しい世紀に入って昭和八十年に一億二千一百六十万、これがピークで、下がる、こういうことのようであります。言いかえますと、過去三回の間に漸次日本の人口の実態が変わってまいりました。だんだんとずれてきたのであります。このことは、内容的にはいろいろ批判はありましょうけれども、私は、いい傾向に直りつつあると、こう見ておるわけであります。いずれにいたしましても、近い将来を考えますると、世界はもちろん、わが周辺におきましても、非常な人口の、よかれあしかれ圧力を受けるわけであります。非常なプラスでもありましょう。しかし、プラスだけでもないでありましょう。そういう段階において日本の人口が近い将来漸減していくんだということは、どうもこれ疑わしいといいますか、自然な姿じゃないように思うのであります。厚生省がそういう数字を出されたんですから、計算すればそうなるんでしょう。それは老齢人口が多くなるのですから、死亡が高くなる、少産少死だけれども、死亡者が多くなるので、ピークがあって下がっていくということになるのでしょうけれども、しかし、やはり日本人は、理屈を離れまして、おのずからその間の適当な調整と申しますか、是正というものが行なわれるであろうと期待をしておるわけであります。世界人口の情勢日本人口の将来について、総理大臣なり、また厚生大臣は、どういうふうに考えておられるであろうか。問題は現在の世紀にすぐどうこうというわけじゃありませんけれども、現実、世界の国際的な問題をいろいろつかまえましても、人口の問題というものは、職業の問題とからみながら、政治不安の一つの要因をなしておるということは、これは間違いがないのでありますので、ひとつ御見解をお伺いしたいと思います。
  164. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 日本の国の人口の問題につきまして、いろいろと重大なる問題として御指摘をいただいたわけでございますが、この人口の問題の中にはきわめて留意すべき点が多々あろうと思います。そこで、厚生省といたしましては、最近人口問題審議会に諮問をいたしまして、これらの留意すべき点をどういうふうにしていくかということについての御検討を願っておるところでございますけれども、ただいま梶原委員から数字等にわたっていろいろと御指摘がございましたので、これについて便宜私からお答えを申し上げます。  現在のわが国の人口を概観いたしてみますと、出生率も死亡率も、欧米各国に比べまして、これは低い水準にございます。そこで、梶原委員仰せられました二十一世紀に一体どういうことになるんだと、こういうお話でございますが、この二十一世紀にあたってどうなっていくかということは、ただいま申し上げました出生率がいかに推移していくかということでたいへんな違いが出てこようと思いますけれども、現在の人口の動態から、厚生省の人口研究所で推計をいたしましたものがございます。それについて申し上げます。  二十一世紀でございますが、二〇一五年までの将来人口、これは昭和九十年でございます。昭和九十年までの将来人口について調べたところによりますと、二十一世紀の初め——これは五年五年でやっておりますから、二〇〇五年、昭和八十年目には、日本の総人口は約一億二千万となり、その後漸減の方向をたどる。さっき六十年とおっしゃられましたが、昭和八十年から漸減の傾向をたどることとなり、しかも、その人口構成をながめてみますと、年少人口の割合が著しく縮小いたしまして、老齢人口の割合が著しく拡大いたしまして、老年化の傾向が進んだ形と相なる次第であります。  それで、数字について少し申し上げますと、一九六五年、これは国勢調査のときの人口でございまするが、総数九千八百二十八万人、そのうちで零歳から十四歳までが二千五百十四万人、パーセンテージにいたしまして二六%、十五歳から六十四歳までが六千六百九十二万、パーセンテージにいたしまして六八%、六十五歳以上が六百二十二万、パーセンテージにいたしまして六%でございます。これが二〇〇五年、昭和八十年になりますと、総数が一億二千一百七十万人。これに対しまして、零歳から十四歳までが二千百四十七万人。そこで前と比べますと、六%であったものがこれが一八%になる。それから、十五歳から六十四歳までが八千七十二万人。十五歳から六十四歳までの、先ほど申し上げましたパーセンテージが六八%でございますが、これが六六%。六十五歳以上が、ここに問題があろうと思います、千九百四十九万人。先ほど申し上げました六十五年の際はこれが六%でございますが、一六%にふえておる。こういうようなことでございます。それから、二〇〇五年の人口のピーク時のときでございますが、総数が一億二千——おっしゃるとおりです、一億二千百七十万人。それが零歳から十四歳までが二千一百四十八万人、一八%。十五歳から六十四歳までが八千七十二万人、これが六六%。それから、二〇一五年の人口がやや漸減いたしまして、一億一千九百二万人、零歳から十四歳までが二千二十三万人、これが一七%でございます。十五歳から六十四歳までは七千四百九十四万人、これが六三形。六十五歳以上、これが二千三百八十五万人となりまして、そして二〇%というふうに、だんだんとこの老齢者の人口が、割合がふえてまいる。こういうことでございまして、これは相当雇用の問題その他の問題もありまして、日本の国の人口構成というものについては相当これは留意すべき問題であろうと思いまして、ただいま人口問題研究所におきまして鋭意これらにつきまして検討をしていただいておる、こういう次第でございます。
  165. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 先ほどお話しの、私の申しました六十年というのは、厚生省で三十二年に出された数字であります。それがお話のようにだんだんと、二、三年の間にずれてきておるわけであります。だから、六十年は三十二年のときの時点において計算したときの数字を申し上げたわけであります。  それから、大体お話のとおりでありますが、留意すべき問題であることは、大臣のお話のようにそのとおりだと思いますけれども、私の言いたいのは、その中高年層あるいは年寄りといいますか、これは現在、これからもいるのですからいいんですが、幼年人口が昭和八十年になっても二千万ちょっとですね。その数字というものは昭和十年あたりの数字よりも下なんですね。戦争前の昭和十年ですか、あの辺の数字よりも下回っているというところに日本人口の将来の大きな問題があるのではないかというのが、私の指摘したいところなんであります。若干数字が、私の言うのに間違いがあるかもわかりませんが、しかし、若い者が非常に少ないというところに問題があるので、年寄りの多いのは、これに対してできる措置は幾らでもとれると考えるわけでありますけれども、はたしてそれでいいであろうかどうかということをお聞きしたわけであります。すぐにどうこうするわけにいかぬ問題ですけれども、少なくとも人口の問題というものは長い目で見るべきですけれども、人口の問題それ自体はきょうといってあした、今年度どうこうという問題じゃないのです。現在の時点の問題がすぐ三十年、四十年の先に関連を必然的に持っている性質ですから、ひとつ大事に御注意願いたい、こういうことを言わんとしたわけであります。  それから、厚生大臣からお話が出ましたから、労働大臣にもお伺いいたしますけれども、いずれにいたしましても、現実はこのところ相当長い年限にわたって中高年齢層の問題が政治面にも経済面にも、いろいろの面に問題を提起してくるわけであります。特に労働力の有効利用の観点等からも万全の施策を立つべき必要があるのかと思いますけれども、ひとつ御所見をお伺いしたいと思います。
  166. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 御指摘のように、若年労働カが非常に不足してまいりつつございます。本年は中学、高校、大学卒業の新規就職者が百五十九万あるわけであります。ところが、昭和五十年、八年後には百十七万人に減るわけであります。約五十万人減る。そうなりますと、消耗の補てんが大体百六十万人ほど毎年要るわけでございまするが、その減耗補てんすらいわゆる若年労働力で補充できないという事態がくるわけであります。それ以後もいまの出生率ではますます漸減していくという状態。  そこで、雇用政策といたしましては、人口問題は私の所管じゃありませんが、審議会で御審議をいただくことにいたしまして、雇用政策といたしましては、こういう事態を率直にながめた場合に、どうしても中高年の人が十年後五百万人ふえるわけでありますから、この人たちに大いに働いてもらわなければならない、そういう観点に立ちまして定年延長も勧告いたしているわけであります。と同時に、婦人労働力、いわゆる婦人の中高年、結婚した人もひとつアメリカのように働いてもらわなければなりません。さらに、このままで若年労働力が減ってまいりますと、勢い中小企業あるいは商店、特に農業という面におきましては、人手不足で、当然これは人の面から集約化、大規模化、能率化、いわゆる労働の生産性の効率化というものが好むと好まざるとにかかわらず急激に進まなければ倒産をする、食糧生産が落ちる、こういう事態に直面をいたしておるわけでございます。したがって、当面この事態に対処する労働雇用政策といたしましては、最初申し上げましたように、中高年あるいは婦人労働力、そういった面に重点を置いて雇用政策を推進をいたしておるのが実情でございます。
  167. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 いま一つ、人口構造の内部に関連する問題でありますが、人口の都市集中化の傾向であります。もちろんどの国でも、日本でも例外ではないのでありまして、以前から都市地帯に人口が漸次移動していく、集まっていくということは、これは当然の傾向であり、必然的な情勢だと思います。事実そうであった。しかし、このところ十年ほどの日本の人口の動きの状況を見ますると、数字をあげることは控えまするけれども、以前と非常に様相が変わっておるのであります。以前は、どの地帯におきましても相当人口がふえまして、そのふえた人口が大体都市のほうに集まっていくというわけで、各県とも人口はふえるけれども、実態的には大きな変化はなかったのであります。しかし、御承知のように、最近の状況は非常に激しい移動の状況でありまして、出産の状況は、先ほどお話のように、減ってまいりました。東京中心、大阪中心、名古屋中心といいますか、そういう一つの大都市中心圏に非常な勢いで移動が行なわれておるのであります。その結果、全国の最近の数字を見ますると、従来の人口の実態を割りまして人口が減っていく県がだいぶふえてまいりました。以前はそういうことはなかったと思います。約二十数県の県は一%、多いところは五%くらい人口が減ります。こういう動向でいきまするというと、まあその割合どおりにはいかぬでしょうけれども、十年たてば人口が五割減ってしまうということになるわけであります。はたしてそういうことでいいであろうか。私は人口が大都市に集中していく傾向がいかぬというわけではありません。それは一つの必然性があると思います。しかし、それにしてはあまりに激し過ぎる。ある県においてはどんどん人口が減っていく。ある地方は減っている。九州全体は減りつつあります。山陰も減りつつあります。東北も減りつつあります。現に人口は減りつつあるわけであります。これは当然それでいいんだ、日本経済の成長のためにはそのほうが好ましいのだという見方も私はあると思います。それを否認するわけではない。しかし、やはり国土が狭いのですから・その狭い国土の中で、あるわずかな地点に人口が集まって、国全体が人口的には傾斜をしてしまうという姿は、私は総理の言われる、調和のある人口の分布とは、どうも思えないのであります。やはりそういう傾向は傾向として是認するにしても、おのずから一つの秩序がなくちゃなるまい、かように感ずるわけであります。このままでいきますれば、あとでお伺いします大都市の問題あたりはおそらく解決することができないでしょう。次から次へと、よくすればよくしただけ、人口がふえてきてしまう。しかも、半面、地帯によっては荒廃する地帯ができてくるというわけであります。経済の効率化、経済の成長それ自体はけっこうですけれども、あまりにそれに急なために、将来に大きなロスが出る、さしあたり経済的には多少効率に欠くことがありましても、長い目で見て、将来のためには、結局そのほうが効率的であったというふうになるのではなかろうかとさえ思うのであります。こういう情勢、現実は私の言ったような情勢であります。数字はそれぞれ関係庁がお持ちだと思います。自治大臣はどういうふうにこの情勢を見ておられるか。あるいは、厚生大臣は、人口の問題を考えられておる立場でありますが、人口の流動性というふうな観点から、こういう問題をどういうふうに考えられているか。また、総理はどういうふうにお考えであろうかという点をひとつお伺いしたいと思います。
  168. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 人口の過密過疎の問題、御指摘のとおりでございます。地方自治を預かる者といたしましては、この過密過疎の現象をとらえまして、それらの都市並びに農漁村がいずれも行政水準を下げないようなために、あるいは交付税において、あるいは起債の点において注意をいたしておるわけでございますが、それは結局、あとを追っかけていくことでございまして、実際問題としては、もう大都市、特に東京、大阪等への人口、産業の集中は抑制をして、そうして国全体として考えた地域の開発に努力をすることが必要ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  169. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 次に、都市政策の問題でありますが、これは先ほど御質問いたしました人口の激しい流動に関連するわけでありますけれども、現在の巨大なわが国における東京、大阪等の大都市は、これは従来の都市、従来の都会という感覚を越えた性格のものかと私は思うのであります。したがいまして、どうしてもこういう巨大な都市に対する国としての考え方、政策というものがなければならない時期に直面しておるのではないか、思い切った一つの都市改造もやらなければならぬでしょうし、しかし、その基礎として、都市に対する国としての基本的な政策というものをどうしても立てなければならない、こう考えるのであります。したがって、自治行政の面から見ましても、従来のパターン、型ですね、従来の型をそのまま持っていって、はたしてうまくいくかどうか、非常に疑問であります。何か新しい一つの形を、実態に合う、将来を見通しての形というのでありますか、制度を考える必要があるのではなかろうか。私は特に首都圏がどうとかということを言わんとして言っているわけでは決してありません。こういう問題は一党一派を越える問題のようにも思えるのであります。早急にひとつ検討を——もちろん、これまでも政府としてはしておられるのでありますけれども、政策を立ててもらいたい、立てる必要があるであろう。きょうの新聞を拝見しますると、建設省においては都市再開発、再改造の計画を立案中のようでありますが、できますれば、その骨子をお話し願いたい、かように思います。  しかし、いずれにいたしましても、先ほど自治大臣もお話のように、やはり地方からの都市への流動というものをチェックしていかなければならない。そのためには経済企画庁の例の発展計画においても、もっと計画的にそういうことを対象にしての計画があってしかるべきだ、私はかように思うのであります。ただ、日本経済が八・二%上昇するのだ、民間投資がどう出るかという従来の型ではなくて、そういう国内における非常に大きな地域的なアンバランス、これがおそらく今度の経済社会発展計画においても、私は結果においてそういう格差というものはさらに大きくなるであろうと、ひそかに見ておるのであります。計画自体にそういう考え方を織り込みになって、そうしてやっていかなければ、自治省のほうで、藤枝さんが、いや、交付金をどうこうするというふうなことだけでは、とうていこれは追いつかないのではなかろうか、かように思うのであります。この問題はまたあとで触れますけれども、都市計画についての考え方をお聞かせ願いたい。総理におかれましても、御所見を伺うことができれば幸いに思います。
  170. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 都市対策と一口に申しますけれども、実は都市化対策と都市対策があるわけでございまして、さいぜんも自治大臣がお答え申しましたように、やはり都市化が——今後の経済の成長、産業の発達によって都市化の傾向が起こります。しかし、現在のように増加する人口が大部分、一地区に集まるというようなことは、これを急激にやっては、産業のうまい発達はできないと思います。したがいまして、そのためには、やはり産業の基盤、産業の場であります国土を有効に使うために、建設省といたしましても、あまり経済的ではなくても、国土開発の自動車道路をやるとか、あるいはブロック別に中心となる都市の育成をやるとかいろいろして、なるべくその都市化傾向をやはり緩慢に行ないたいという考えを持っております。  それとともに、都市問題でございますが、都市問題は、いままでの方法では収拾がつかない、東京とか大阪とか、こういうところについては、やはりこれは都市対策として従来よりはきびしい態度で取り組まなければならぬと思っております。従来も都市につきましては、土地の利用計画はありました。都市計画法というものがありましたが、現在の都市は、御指摘のようにその相貌が前の都市とは変わっておりますので、広い範囲につきましてやはり都市対策を考えなければならぬと思っております。したがいまして、私のほうでは、まあできればこの土地の利用計画につきましていま検討いたして、都市計画法を抜本的にひとつ改正して、現在行き詰まっておる、いわゆる都市対策をやって、国民に豊かな、楽しい場を与えたい、かように考えておる次第でございます。
  171. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどお尋ねがありましたが、私の発言の機会がついありませんでしたので、この機会にあわせてお答えをしたいと思います。  御指摘になりましたように、最近の都市化傾向、人口の移動が都市を中心にしてこちらへどんどん集まっておる、こういう実情は、御指摘のとおりであります。私どもが政治をいたします場合に、その政治は、すべての国民に、最近の文明の恩沢といいますか、そういうものを受けるような生活の向上を——都市といわず地方といわず、まんべんなくそういうように生活の向上をはかるのが政治の本来の仕事でございます。目標でございます。ところが、ただいまのように都市化の集中が行なわれると、そうしてそのことが全体のしあわせになればいいが、逆にこれが幾多の問題を引き起こしておる。たとえば、御指摘になりましたような産業自身の集中度も、都市と地方では雲泥の相異があるし、また都市においては経済活動が活発でありますが、同時にかもし出される公害の問題がある、あるいは交通災害の問題がある、あるいは労働災害の問題がある。また現状になかなかついていけないために、住宅問題、あるいは生活環境の問題、上下水道の整備だとか、あるいは交通整備の問題とか、いろいろな難問題を引き起こしております。  本来、先ほど申しましたように、政治としては、国内の調和がとれて、そしてすべてのものが同じように近代文明が享受できるような、そういう状態をつくらなければならない。この過密対策に対しまして、片一方で弊害の除去について特別な注意を払って、いろいろの問題を計画する、それがいまの都市再開発の問題でありますが、何といいましても、都市集中の傾向にストップをかけることが必要であろう、そのためには積極的に、新産都市だとか、あるいは産業整備地域であるとか、あるいは地方開発計画であるとか、あるいは農業基盤の整備だとか、あるいは漁業の振興であるとか、あるいは林業の整備であるとか、まんべんなく、地方開発につきましても、同じような施策をとっていくわけであります。ところがなかなか積極的な施策が十分の効果をあげないうちに、なお都市集中の形にどんどん進んでいっておる。これではそれに対して、今度は積極的に、何らかのブレーキをかけなければならなくなってくるのじゃないか、ストップをかけるような必要まで実際生じておるのじゃないかというように、実は心配をいたしておるのであります。ことに先ほどお話がありましたように、人口の構成も、将来にわたりまして、長い観点に立つと、よほど変化していくだろう、また、科学技術の進歩も、これはすばらしいものを予想されるだろう。したがって、過去のような労働というか、エネルギーの使い方でなしに、近代的な科学技術の進歩に相応しての産業計画というものを進めていかなければならなくなっている。そういうことをもあわせて総合的な施策をとっていくというのが、今日、私ども政治家に課せられた課題だと、かように思います。これの表現のしかたを、あるいは地域格差をなくする、格差のない政治をする、そういう意味で最善の努力を払っていくということ、あるいはまた積極的に調和のとれた発展を期するとか、こういうような表現をいたしております。この格差を是正するということ自身につきましても、幾多の問題を残しておりますので、よほど緻密な、総合的な施策をやらない限り、この格差はなかなか解消されるものではない。これは先ほどの自治大臣の答弁につきまして梶原君が批判されたように、簡単なものではない、かように思っておるのであります。しかし、このままで進んではよくないことは御指摘のとおりであります。これはもうその格差をなくする、そうして調和のとれた発展をさせる、そのためには総合施策をもっと力強く推進していくということでなければならない、かように私は考えておる次第であります。
  172. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 総理のお考えごもっともだと思います。ただ、これまでのやり方ですと、ほうっておきましても、何といいますか、そういう地帯のほうに重点がいくわけであります。それが日本の高度成長の数字に現われてくるわけであります。八%が平均の数字であります。内容的には、地域的にいえば大きな傾斜をしている、したがって、この調和をとる、あるいは均衡があるようにするためには、片方を押えなければこっちは上がってこないのであります。どうしても考え方の基礎を地方のほうに、うんと大きなウエートをおかなければバランスがとれないのであろう、私はかように思うわけであります。  それから次に外交の問題に若干触れてみたいと思います。第一はモンゴルの問題でありますが、この数年来モンゴルとわが国との国交正常化について、若干の動きがあったわけであります。この際経過だけひとつ、まず御説明を願いたいと思います。
  173. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 梶原さん御承知のように、第十六回国連総会でモンゴルの国連加入に対して、日本はこれを支持したわけでありますから、事実上日本が承認ということはいえないわけでもないわけであります。そこで、外交関係をどういうふうに結んでいくかということについては、いま、まだ結論は出ていないのですけれども、今後——この間もエカフェの総会に次官が来ておって外務省でも接触をしたわけです。今後も接触を続けてまいりたいと思っておるわけでございます。まだ結論は出ておりませんが、接触を今後とも続けていこう、こういうふうな態度でございます。
  174. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 接触を続けていくということは非常にけっこうだと思います。私はもう一歩ひとつ前進されたらどうであろうかという考えを持つものであります。御承知のように、いまのお話のように、モンゴルの国連加盟につきましては、日本といたしましても賛成をいたしたわけでありまして、アジアにおける共産陣営として、独立した立場において国連に入っているのは、まあモンゴルあたりかと思います。現在ソビエトの関係、あるいは中共との関係、その他なかなか微妙な点がもちろんあるわけですけれども、きょう午前中ベトナムの問題についての羽生委員との質疑応答等にもありましたように、アジアの問題、大事な問題を三木外務大臣がまっ正面から非常な熱意を持って取り組んでいかれる上におきましても、ああいう地帯に、モンゴルあたりとやはりもっと積極的な関係を持つということが、私は、当然日本外交の将来のためにも、将来でなくても、現在のためにも非常に好ましいことではないか、かように思うのであります。賠償の問題とか、いろいろそのほか気を配らなくてはならない問題ももちろんあろうと思いますけれども、積極的な態度で進んでいくというふうに私は期待もするわけであります。もし御所見を拝聴できれば幸いであります。
  175. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 今後の問題として、十分に検討いたしたいと思います。
  176. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 次に、ケネディラウンドの問題でありますが、御承知のように、相当長い年月をこの問題につきましては費しまして、いよいよ最終段階、結論が出る直前にまいるわけであります。伝えられるところによると宮澤さんがお出かけになるそうであります。おそらく結論は出るのでありましょう。いまの段階でどういう結論が出るのかとお伺いすることは少し無理であるかもわかりません。しかし、ケネディラウンドにはわが国にとりましても何かと影響の多い事柄があるわけであります。特に関税の一括引き下げに関連しながら新しい穀物協定の問題があるわけでありまして、この穀物協定の中には、どういう理由でそういうことが入ったのか私にはよくわかりませんけれども、低開発国方面に対する食糧関係の援助のオブリゲーションといいますか、義務を持つというようなこともあるようであります。そういうように実現するのかしないのか、これはいまの時点で私にはわかりませんけれども、相当日本には影響と関連がある問題だと思います。いまの時点で、これは外務大臣になるのですか宮澤さんになるのでしょうか、どういう見通しであろうか、また、どういう影響が期待されるのであろうかという点についてひとつ御答弁をお願いしたいと思います。
  177. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 梶原さんの御指摘のように、穀物協定と綿製品、鉄鋼、これに対する主要国の意見の対立がまだやっぱり妥結をしてないのであります。穀物協定の中には、御指摘のように、食糧援助という問題もこの中に入っておるわけでございます。わが国としては援助はいたす、まあ食糧の援助というものは世界的な課題でもあるわけですから、インドなどに対してもいたしましたし、これを拒否するものではないが、穀物協定の中に入れるのはどうも筋が通らぬではないかという主張を続けておるわけでございます。しかし、なかなかこの問題が解決を見ないわけでございます。したがって、どういう見通しになるかということは今日予断を許しませんが、まあ最後まで日本日本の主張を通すように努力をいたしたいと思います。土曜日、明後日この問題について政府のほうで関係の閣僚会議を開いて今後の対策を検討することになっておる次第でございます。
  178. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 まあここまでEEC方面でも何かと論議を重ねてまいった問題ですから、おそらくある結論が出るであろうと期待をしておるわけですが、お話の穀物協定自体は別といたしましても、食糧関係の援助の問題につきまして、お話のように、それを拒むわけでも決してないのでありますが、趣旨がどうもぴんとこない点がありますので、御留意をわずらわしたいと思います。  なお、それに関連いたしまして御意見をちょっと承りたいのですが、穀物協定は、従来の小麦協定のある意味では変形のように思われます。これは違うかもわかりませんけれども、そういう受け取り方を私はしております。さらに穀物以外に、穀物の中に入りますけれども、トウモロコシ等の飼料関係も入るようであります。それはまたいろいろな影響がありましょう。私は、近い将来、米につきまして、東南アジア方面、アジア方面を見ますると、ヨーロッパ、アメリカ等と違いまして、米のウエートが非常に御承知のように高いのであります、この米の生産、輸出、輸入問題は、東南アジアを中心にいたしまして、御承知のように、なかなかめんどうな問題であり、しかも、大事な問題であります。ときどき、池田さんのときでありましたか、この地帯を中心にして、日本がひとつ肝いりをして、ライスバンクといいますか、米の銀行のようなファンクションを考えたらどうかというような構想もあったようであります。私は、遠からず、あるいは近い機会に米を中心にしての一つの関係国の、何といいますか、申し合わせといいますか、協力関係をつくりあげるようなことが現実の話題として、現実の問題としてあらわれるのではなかろうか。そうなれば、やはり三木外務大臣非常に御熱心でありますが、問題は、アジア、特に東南アジアが中心になるのでありまして、日本自体が相当の役割りをこれは担当することになるであろうか、こう思うのでありますが、そういう点について外務大臣なり農林大臣のお考えをひとつ承りたいと思います。
  179. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 梶原さんの御意見、東南アジアにおける米というものは非常に重要な問題でありますから、何らかの国際的な取りきめのようなものができぬかという問題は将来のやはり課題だと思いますが、現在のところではなかなか米の需給関係が非常に激変するわけですから、それと、また、米の品種が東南アジアでは非常に多岐にわたっておるわけでありますし、絶対量も足りないのですね。東南アジアはほとんどタイ、ビルマを除いたら、みな輸入国になっている。だから、ここで必要なことは、どうしてやっぱり米の増産をするか、生産性の向上といいますか、こういうことがいまの大きな課題で、そういうことがある程度目的を達成されないと、米の需給の安定ということもなかなかやはりむずかしい問題を含んでおると思います。現実に米の国際取りきめということはなかなか支障がございますが、将来何か米という問題を東南アジアで国際的な取りきめのようなものを検討すべきだということは、将来の課題として一つの示唆に富む御意見だと思うわけでございます。
  180. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 次に、外務大臣がお話のように、具体的な問題として取っ組むまだ時期ではないようです。また、東南アジアにいたしましても、基本的には、お話しのように、食糧は不足ぎみでありますけれども、やはり相当年によっての動きがあるので、その間、やはり何らかこれを調整的に考えていく必要があるのではなかろうか。言いかえるならば、ああいう地帯の生産について日本が相当協力、援助していく場合もおそらくそういう問題も具体的に起こってくるであろう、こういう感じを持ったわけであります。今後の研究課題で、御研究をお願いしたいと思います。  それから、資本取引の自由化の問題でありますが、これも外交的な問題に関連するわけですけれども、これまでの貿易自由化の場合におきましては、相当わが国といたしましては、大企業といわず、中小企業といわず、農業といわず、非常な神経質でこの問題に対処したわけであります。ところが、今回の資本自由化の問題につきましてはそれほどではない。しかし、総理の施政方針演説を見ましても、その点につきましては相当のウエートを置いて演説されておるのであります。経済企画庁の新しい計画におきましても、その問題に相当の関心を払っているように思うのであります。私は、貿易自由化に比べますと、はるかに今回の資本自由化の問題のほうが本質的であり、日本の産業経済に与える影響というものは比較ができないほど大事な問題であろう、かように実は考えておるところであります。少しこれは思い過ぎかもしれない。しかし、どうもそういう気がする。特に日本人の性質といいますか、等も考えあわせますると、これはよほど慎重にかまえていかなければならない、こういう感じがするのであります。もちろん資本自由化の基本的なことにつきましては、これは世界の現状から申しましても将来を考えましても異論はない。しかし、あくまで日本自体がこれは主人公でありまして、日本自体が主人公で、日本自体の立場、日本自体の産業経済、これが中心であり、本体である。それをゆがめる、それに非常な波紋を起こすというようなことは、これは避けなければならない。避けることが当然できる性質のものだと私は思うのであります。総理の施政方針演説を見ますると、二カ所そういう経済の国際化に関連して産業体制の整備をするということ、あるいは産業界の自主的な活動によって産業界の構造改善をやる、それについては政府国民経済的な立場から方向を示すということをいわれておるのであります。また、方向を示すだけではなくて、財政上の措置も講ずるということを施政方針演説ではうたっておられるのであります。国民経済的な観点から、一体どういう方向を示されんとするのか、財政的な施策というのはどういうことを内容としているのか、基本的に資本自由化に対する受け入れというか、体制はどういう段取りをいましつつあるかという点につきまして通産大臣なり農林大臣からもひとつ御説明をお願いしたいと思います。
  181. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) お話のとおり、資本自由化という問題が貿易為替の自由化よりもわが国の経済にとっては重要な意義を持っておるということはお説のとおりであります。したがいまして、それだけ慎重にこの問題を取り扱わなければならない、こう考えておりますが、根本的の態度といたしましては、前向きに積極的にこの資本自由化という問題に取り組みたいという考えをいたしております。また、お説のとおり、資本自由化ということが今日世界の大勢でありますので、したがいまして、この大勢に順応して資本自由化という問題に取り組みたい、こう考えておるのであります。しかし、この資本自由化を、自由に自由化を許しますと日本の産業にたちまちに影響を与えますので、したがいまして、いま通産省では資本自由化をどの程度に許していいか、あるいは漸進的にどういうようにしていくかということを目下審議中なのであります。  そこで、お尋ねの中に、資本自由化に対して構造改善のお話がありましたが、資本自由化に対してはもちろん構造改善をやって、資本自由化のために外国資本のじゅうりんに負けないように日本の産業構造を改善しなければならないということを考えております。ことに中小企業などはその影響を受けますので、したがいまして、そういう構造改善について財政的の処置を考えておるかというお話がありましたが、その具体的な例を申し上げれば、たとえば中小企業の振興事業団のようなものを今度予算を出し、また、法案を出すことにいたしておりますが、これなどがその一つの例でありまして、中小企業を強化して体質改善していきたい。したがって、政府も相当な資金を出して中小企業の体質改善をやるというようなこと、あるいは繊維産業なども、これも構造改善の一つの処置でありますが、これについてもいままでにない思い切った処置を考えておるのでありまして、それに対してできるだけ政府が資金面なり、あるいはその他それを改善するための助長資金を出すとかいうようなことで具体的な財政援助を考えておる次第であります。
  182. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 農林省所管の仕事は、多く食料製造品でございますが、御承知のように、こういう業種におきましては比較的中小企業が多いし、また、したがって、その設備も近代化されておりませんし、現在の状況ではきわめて過当競争に置かれておるような状態でございます。したがって、国際競争力にきわめて乏しいものが多いわけでございまして、したがって、いわゆる資本の自由化ということで自由に放任いたすというふうなことになりますと、そのよって来たる影響はきわめて大きいと存じます。ことにそういう企業に対して影響が多いばかりでございませんで、その原材料は、つまり農林省関係のもの、そういう方面にもいろいろな影響を持ってまいりますので、農林省といたしましては、社会的な摩擦を考慮しながらそういうことのないように対処してまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  183. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 両大臣のお話はわかりますが、資本の自由化、国際的なというのですか、には、当然の事柄であるという見方であります。若干そういう面があると思いますが、それは大体大企業ですね、国際的に大きな企業についてはそうであろうと思う。しかし、わが国の中小企業とか農業関係の食料品関係、こういうものまで、これは世界の通則といいますか、通念だからとその場にそのままさらすということは、私は少しどうかと、こう思うのであります。全然いかぬというわけじゃありませんが、やはりちょっと性質が違うのじゃないか。だから、きみのほうは近代化をやれとか、いや、どうこうと、こう言っておるわけですけれども、そういうところはもっと先に延ばしていいのであって、まず必要があれば大企業のほうからおやりになればいい、率直に言えばそういう感じがいたします。実態が非常に違うのであって、日本経済界では中小企業が本体だと思う、実際を言えば。だから、大企業さんのほうは、それは、公正取引委員会といいますか、独占禁止法関係、どうなるか知りませんけれども、寡占化するかどうか、いろいろ問題がありましょう。しかし、多数の中小企業の面までその場に出していって、これはいや国際的にどうこうだからと言うのはちょっとどうであろうか。ちょっと感情的かもわかりませんけれども、そういう感じがいたします。よろしくお願いをいたします。  それから経済企画庁の新しい「経済社会発展計画」でありますが、あれに関連していろいろ承りたいことがありますけれども、時間の関係があるので、一点だけにいたしたいと思います。  それは、今度は、従前のたとえば所得倍増計画あたりの場合とは性格がだいぶ変わってきたようであります。それはそれでけっこうであります。その中で、実質八%程度のアップを目標にして、そして物価は最終年度昭和四十六年に三%ということを打ち出しておられるわけであります。そうして、解説等によりますと、八%というのと三%というのが関連をいたしておりまして、八%以上上げれば三%はもてないというふうな関連になっておるようであります。私は、あの計画上、八%と三%というものがどういう関連で出てきたかはよく知りません。しかし、そういう解説がされておるわけであります。総理の演説を見まするというと、今年度の五%もこれはなかなか大幅であるということを強調されておるのであります。今度の発展計画は、国際収支の問題と物価の問題に非常に重点を置かれておるわけでありますが、特に物価の問題に重点を置いておる。だとすれば、これはちょっと極端な言い方ですけれども、実質八%アップで五年目に三%の消費者物価というのじゃなくて、八%をもう少し下げてみたらどうなんだ。出発点は少なくとも下げて、そうしてもう少し早く三%を実現するなり、二%程度に持っていくなり、そういうくふうはされなかったのであろうかという問題であります。言いかえれば、今度の社会発展計画における物価の考え方と実質八%アップ、これも現実すでに八%じゃ無理であろうという論議が行なわれておるのは御承知のとおりであります。まごまごするというと、午前の羽生さんの質問に対して、総理は、いや所得倍増計画とは性質が違うのだと言っておられますけれども、結果においてはあれ以上というふうなことにならぬとも限らない。したがって、そういう点が八%アップと三%とはどういう関連にあるのか、八%をちょっと下げてみてやるべきでなかったであろうかという一つの私の疑問であります。  その点と、それからもう一つ、ついでに物価問題でありますが、御承知のように春闘相場が本年はきわめて平穏裏に始められまして、すでに四千円台にのっかっておるわけであります。これは、上げ幅から言いますと、相当の幅であろうと思います。私は、これを高いとか安いとか言うわけではありません。総理の演説には、賃金と物価の関係、賃金と生産性の関係については、これと取っ組んでいくというか、これにタッチをしていくべき段階だという趣旨の発言がありました。富澤さんも、ちょっと別の、ニュアンスは違いますけれども、そういうことを言っておられます。で、問題は、実態はわかるのですけれども、どういうアプローチといいますか、方法でその問題に対処していかれるか、その方法論といいますか、それについてお考えがありましたら、ひとつお聞かせを願いたい、こう思います。
  184. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 成長率と消費者物価の上昇との間に、相関関係が八と三との間にあるという解説になっておると言われまして、それはそのとおりなんでございますが、そういうふうな解説になりましたのは、つまり、あの計画をつくりましたときに、何十本かの方程式をつくりまして、そうして、モデルと申しておりますが、それにいろいろな財政変数を入れまして、電子計算機を使って幾つかの非常にたくさんの試算をしたわけでございます。シミュレーションをいたしました。そのシミュレーションの中で、四十六年に消費者物価が三%よりもっと上に出るようなそういうシミュレーションは全部落としたわけでございます。つまり、政策目標として、まず四十六年には三%より非常に高い消費者物価の上昇があるようなそういう経済政策はとらない。いろいろな組み合わせが可能なわけでありますけれども、そういう結果になる組み合わせばとらないということにしたわけでございます。そうして、そのシミュレーションの中で一番高い成長はどれであろうかということを試算いたしましたところが、それが八%程度ということになったわけであります。したがって、もしこのモデルなりその間の考え方が間違っていないといたしますと、八%というものが達成されると同時に、消費者物価はまず三%台になるはずだ、これはそういう計算になったわけでございます。ですから、まず先験的に三%以上のものを捨てたというところが今回の一つの特色でありまして、それはそういう政策目標を先験的に掲げたわけでございます。ですから、八%が九%になったらその三%が幾らになるかというような議論は、常識で申しますとあまりのみ込めないような話になるのでございますが、計算としてはそういうかっちりした計算になったわけでございます。ですから、今度は逆に、梶原委員の言われますように、それならばもっと早く三%になるように成長を落としたら、そういう計算は可能かとおっしゃれば、私はそういう計算はむろん可能だと思うのでございますが、ただ、その場合には、民間の設備投資計画であるとか、政府の公共投資であるとか、あるいは賃金水準の上昇であるとか、そういうところのものを、非常に不自然な、ちょっと現実にできそうもないような想定をとらないと、そういう低い成長の数字が出てこないということになったわけであります。ですから、私どもむしろ心配いたしますのは、はたして八%でおさまるであろうかということのほうをどちらかといえば心配をいたしますので、それはすなわち消費者物価が三%で四十六年におさまるかということにつながるわけでございます。ですから、なるべくその八%台というもので経済運営していきたい、こう考えておるわけであります。  それから後段のお尋ねでございますが、私どもはいわゆる所得政策というようなことを軽々に申すつもりはございません。ただ、御指摘のように、生産性の高い部門においては賃金の上昇が十分に可能でありますけれども、労働力が逼迫しておりますために、それが生産性の低い部門に伝播をいたしまして、そうして、そういう部門では、賃金の上昇分を生産性で吸収することができませんので、その部分の価格なりサービスなりが上昇していく、そういう伝播があることは確かでございますから、そのことをまあ国民の皆さんに認識をしていただきたい。そうして、これはなかなか御注文をしてもむずかしいことではございましょうけれども、賃金要求をされる側も、また賃上げに応じられる側も、名目所得もさることながら、実質所得というものをもう少し考えていただくと、国民経済全体という視野が出てくるのではないだろうか。具体的には、経済審議会が「経済社会発展計画」を答申いたしました際に、賃金と生産性あるいは物価との関係については今後経済審議会において検討をするということを言っておりますが、これは、予断を持たずに、最初、中立的な方々——おそらく学者あるいは学識経験者になると思いますが、方々から、現在のわが国の経済における賃金と物価と生産性というものの学問的な研究をまずしていただきたいと、こう考えております。物価安定推進会議でも多少そういうことをしようかというお考えがございます。その上で、まずだれが見ても基礎になる資料なりデータなりについてはそんなに異論がないというそういうものをまずつくりまして、それから後いかにあるべきかという議論が発展するなら発展しなければならない。ただいまのままでは、みんなが合意し得る基礎のデータがございませんし、労使の間の信頼感ももう一つまだ望ましい点がいろいろございますわけですから、まずその共通のデータというものをつくってみよう、そういう方法論で進んでまいりたいと思っております。
  185. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 本年度の新しい予算の性格に関連する問題ですけれども、その前に大蔵大臣にお伺いしたいのですが、四十一年度予算の性格は、御承知のように、危機の脱却でありまして、これは総理の非常な御努力で完全に成功したわけであります。脱却をした。安定路線に入る。とたんに中立予算を組んだ。そういう性格の予算を組んだわけですけれども、実態は相当過熱傾向を示しておって、国際収支、物価等に対する警戒信号がすでに出ておるわけであります。一体、危機から脱却したとたんに相当の急カーブで上に上がらんとする状況が出た、その原因はどこにあるのであろうかということであります。言いかえれば、これはこの前の不況のときにいろいろ論議がありました、その論議にまた関連してくることかと思いますけれども、一体どこに原因があるのであろうかということについてのお考えをひとつ承りたい。
  186. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この分析は非常にむずかしい問題だと思いますが、これは、政府の中できまった意見というものじゃなくて、私個人の意見になるかもしれませんが、四十年度のああいう状態についてとった経済政策は、御承知のとおり、私は効果を発揮して成功したものだと考えております。で、その場合に、公債政策をとるときの経済情勢から見ますと、デフレギャップは二、三年は解消しないだろうと、こういう見通しでございました。それがわずか一年のフィスカルポリシーによって克服されると同時に、新しい経済成長へ向かっているという事実が出てくるということは、私は、これは当時言われておった生産能力の過剰というようなものではなくて、結局は消費が不当に圧縮されておったということになるのではないかというふうに考えております。そうしますというと、この原因は、あるいは引き締め政策がちょっと過去において長過ぎはしなかったか、もし半年前にこの引き締め政策がやめられておったら事情は変わったのじゃないかというふうにも考えられますが、いずれにしましても、生産力が多過ぎるという事態ではございませんで、不当に消費が圧縮されておったと、こういう形であったために、わずかの策によってこれがすぐに効果をあらわして、克服から同時にまた新しい成長を必要とするという経済の上昇過程の強いという事態が出てきておるのじゃないかというふうに私個人は考えております。
  187. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 大蔵大臣の個人的の見解として傾聴いたしておきます。  それから国際収支の見通しでありますが、いまの時点でどう判断するか、非常にむずかしいと思いますけれども、どういうふうに見通されておるかということと、外貨の準備の状況がどうであるか。貿易の規模その他も相当大きくなっておりますけれども、大体二十億ドル前後をずっと持続しておるわけであります。いま少し手持ちの外貨準備を量においても質においても大きくするという必要があるのではなかろうか。言いかえますと、国際収支がちょっと変わりますと、すぐにやあやあというわけで大騒ぎをするわけであります。単年度予算のせいもあるかもしれませんけれども、どうも少しどこか準備が足りないのじゃないか。それは外貨準備だけじゃないでしょうけれども、そういう感じがするのでありますが、大蔵大臣のひとつお考えを承りたい。
  188. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 貿易に対する手持ち外貨準備の比率というものが他の国に比べて少ないことは、事実でございます。もっとこれはあったほうがいいと思うのですが、しかし、この二、三年の間に日本の国際収支の構造が変わって、貿易はふえましたが、その間に手持ち外貨がふえなかったといううらみは、日本の債務が非常に多く返済されておる。外国の金利が高くなりましたために、いわゆる円シフトや何かを起こしておる。この金額も相当だと思いますが、もし外国のそういう金利事情というようなものがなかったら、いま、手持ち外貨は、二十億ドル台じゃなくて、この二年間にもっと多い外貨の蓄積になるのじゃなかったかと思うのですが、ふえなかったかわりに質が非常によくなって、国際収支のポジションが非常によくなったということでございますので、特にこれがふえなくてもいま困る事態ではない。しかも、国際収支については、いろいろのことが言われておりますが、短期資金は流入してくる傾向でございますので、実際手持ち外貨は滅らないというようなことも見通されておりますので、いま程度で私は支障がないものと考えております。
  189. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 農林大臣にお伺いしたいのでありますが、時間の関係で一点にしぼりたいと思います。  農林大臣、長野県の状況をよく御承知のわけであります。私、農村工業のことを承りたいのであります。これは農林省の所管じゃないかもわかりませんけれども、初めに私が伺いました人口の流動の問題とか大都市の問題に関連するのですが、新産都市もけっこうであります。大都市で大きな企業を興すこともけっこうでありますけれども、地方の農村地帯において、その付近において、十分本来の工業を設け得ると、かように実は思っておるのであります。そういう考え方は以前からあったわけであります。農林省としては、農村の副業とかそういうふうな考え方の指導をやってこられましたけれども、そうではなくて、いわゆる地方において、農村地帯において、そこで精密工業をやる。そして、農工両全といいますか、農村における労力を活用する。以前は相当困難な状況がありましたけれども、交通関係とかいろいろな関係で相当そういうことが可能ではなかろうかと、こう思うのであります。当面、経済コストとか企業的の面からいえばいろいろ問題がありましょうけれども、将来の日本の姿を考えますと、どうしても新しい観点でこの問題を取り上げるべきじゃなかろうかと、かように思うのですけれども、ひとつ大臣のお考えを承りたい。
  190. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お説のように、年々成長してまいります経済に伴って、地域的に工業が集約されてまいる傾向というものは、国家全体として私はいい傾向ではないと思っております。御承知のように、諸外国におきましても、やはりそういう面を考慮いたしまして、工場を地方へ分散いたしておるわけでありますが、私はやはりあとう限りは、地方にそういう工場が分散され、そうして副業ではなくして、自分の家庭からその労働力が通勤をして行かれるような地域に工業を伸ばしてまいるということが将来必要ではないかと、このように考えております。そこで、やはりそういう場合には土地利用区分というものをそれと並行して、しっかり国家は立てていかなければ、農業それ自体にも支障を来たす結果になりますので、私はやはり政府全体としてはそういう方向でこの政策を進めてまいるべきではないかと思いますし、そのために農業が影響を受けるようなことがあっても困りますからして、そういう点との調和をはかりながら、やはり工場というものは次第に地方に分散させていくべきものではないか。したがって、道路とか交通というものも地方には十分そういう用意を並行してやらなければいけないと、このように考えております。
  191. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 最後に私総理に若干総理の言われた風格ある会社について伺います。  総理の施政方針演説の中で「風格ある」ということばがあらわれたのは、これはもう初めてでございます。風格とは何だと言ってみても、なかなかこれ日本語では説明ができない。外務省はどういうふうに風格ある社会をつくるということを翻訳されて海外へ出されるか知りませんけれども、英語で訳すのはなかなかむずかしい。風格とか、風流とか、風味なんということは、日本のことばであってよくわかるけれども、さて説明ができない。ところが、ずっと見渡しますと、総理の風格ある社会をつくりたいと言われるのと非常に逆の現象が多いんですね、少なくとも。はなはださびしいのであります。しかし、非常に大事なことだと思うんです。やはりその個性といいますか、個々の性格というか、個性を尊重するということが大事じゃないか、一つは。日本には日本の個性がある。先ほどの資本の自由化じゃないけれども、何かそういうものが出ると、これはいや世界の動向でござるとか、いやこれはどうこうでござるとか、近代化といえば、いやこうだ、みんな先進国ではどうこうとか、終戦後の動きを見ますると、何というか、厚生省はじめことごとく、人口はヨーロッパのタイプになった、栄養はどうこうでと、みんな人さまのことばっかし言っておって、大事な個性というものが失われつつある。そういう観点から一、二お伺いしたい。  風格ということばで私言うわけじゃありませんけれども日本の現在の国語、ことばが非常に乱れつつあると思います、日に日に乱れる方向に進んでおるように思う。もちろん、最近はそれに反抗——反抗じゃありませんが、それに反しまして相当いい面も出つつありまするけれども、ことばが非常にこう乱れてまいりました。一体これは日本語かと思われるような風景がわれわれの日常に周辺にたくさんあります。フランスあたりでは、フランスのことばを守るのに国民をあげて非常に熱心であります。フランス語の純粋性を保つというので非常に努力しておる。ドイツもそうであります。イギリスだってそうであります。自分の国のことばを大事にしない国は、文化国家でござると言っておりますけれども——私ないと思うのであります。だからといって、政府にどうこうしてもらいたい、文部大臣おられておりますけれども、文部大臣にどうこうしてもらいたいという気持ちはありません。しかし、これでいいであろうかという感じがずいぶんするのであります。政府は要らぬおせっかいはしないほうがいいと、こう思います。国語についていろいろの立場からいろいろの論議があります。しかし、たとえば国民のわれわれの姓名の字は制限されておるんです。こういう文字を使っちゃいかぬということを文部大臣が言っておられるのであります。そういうことについては、そういうこと自体がことばを乱していった私は一つの原因だと思う。これは文部大臣はけしからぬと言われるかもしらぬけれども、どうもそういう気がする。ことばを大事にするということは、やはり風格ある社会をつくる上において非常に大切なことだと思います。  それからもう一つ、今度の経済計画には経済の効率化ということがうたわれております。隅田川が、東前知事の私は最大の功績と思いますけれども非常にきれいになりました。しかし、このごろ行きますと、川べりに壁がこうできまして、これは水害を防ぐ関係でしょうか、川を渡りますと、ハイウェイが隅田川の岸に沿って延びております。隅田川を見ることができない。もし、これがパリであればですよ。セーヌ川であれば、フランス人は一人もそういうことは許さないと思いますね。ところが東京都民といいますか、日本人は平気なんだ。大体東京に隅田川があるということを知っておる都民は少ない。それでは風格ある東京はできっこないと思うんです。どうか、総理の施政方針演説に「風格」が入ったのでありますから、せめて、ことばの乱れ自体は何かの方法でなくなるように、ことばを大事にするとか、川を大事にするとかいうことがやはり——今度都市再開発が行なわれるそうでありますけれども、ちょっとした配慮で、経済的な効率は悪いかもわからないけれども、将来のために大蔵大臣も多少この際金を出すという含みがなければ風格ある社会は出てこない、私はこう思うのであります。ひとつ御所見を承りたい。
  192. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも、風格ということばを使ってだいぶ問題を各方面に起こしたようですが、風格というのは何だかわかったようだが、一体辞書じゃどう書いておるか、こう思って、この風格ある社会と使いながら一度それをひもといてみました。ただいま英語に訳すことばがないだろうという御指摘でございます。そのとおりのようで、どうも英語には風格というのはないんです。ある辞書では、ふうさい、品格、これを略して風格となったのだと、こういうのがあります。これはそのふうさいというのがですね、この場合はむしろ風味、一つの味じゃないかと思うんです。で、この風格ということばを使った場合に、持ち味というようなことばがあります。その持ち味から発展すると格調——格調の高いとか低いとかいうあの格調、これに発展するようでもあります。  そこで、ただいま御指摘になりましたような、やはり個性を出していく、これもやっぱり風格のうちの一つの要素として取り上げられる。で、まあいま社会の発達の状況を見ると、たいへん物質文明が発展して進歩してまいりました。しかし、どうも私どもはまあ物心両面が行き届いた調和のとれた充実したものがほしい。だから、まあ風格ある社会と同時に実力のある社会ということを言いたいんですね。まあそういうことでありますが、同時に日本のわれわれがつくる国家、また社会と、こういうものについては日本人らしさというものを生かしたい、そこに先ほど御意見として述べられた個性というものがこれは大事だと、かように実は思っておるのであります。こういうものをなぜ私どもがこの際に言うかと、先ほどのような画一的な方向へ向かっていくが、どうもそれだけでは気が進まない。ことにまた新興独立国がたくさんできておって、いわゆるナショナリズムが台頭しつつある。そういうところから見ても、画一した薄っぺらな国をつくることはどうも納得できない。そこで個性を生かした重厚な社会をひとつつくると、そのことが同時に世界の平和と繁栄につながるとまあ言えるだろう。うんとひとつ個性も伸ばしてみたい、こういうように思って、ただいまのような風格ある社会ということを実は申したのであります。いまのように百も御承知のことを重ねて申し上げますけれども、なかなか風格あるというその「風格」でということばが、何だかわかっておるようでわかってないという気がするので申し上げたのであります。  そこで、発展をして、どうも最近のことばがうまく使われてないのじゃないか、国語が生きてないのじゃないか、こういうお話であります。私もそういうことをしばしば考え、文部省におきましても国語、国字等の国語審議会がある。それは各方面の人をそこに集めておりますから、なかなかいろんな議論が出るようであります。あるいは能率的、効率的という方面から見ると、非常に画の多い国字を使う、いわゆる漢字を使う、これは非常に困る。だからもっと略字等も使うし、もっと簡単にもしようじゃないか。それだけなら大体わかるのでありますが、今度はどうもことばを制限するというか、そういう方向へいっている。この間も都(みやこ)観光というこれは観光会社です。ところが若い者にこれをいったら都(と)観光とこう言っておる。これは都(と)という字じゃないか、「みやこ」とは読まない。なかなかぴんとこないものがありますね。そういうところを見ますと、どうも国語審議会にも私どもは実は注文をしております。ただ能率的だけでも困る。またそういう意味からローマ字を常用しろ、こういうわけでも困る。もっと味のある方向、いわゆる風格のある国語というものが実はほしいんじゃないだろうか、こういうことを実は申しておるのであります。で、その点から非常にその例として出されたいまの効率化、あるいは隅田川がきれいになった。ここはまああの土手をつくったこと、これは非常に低い所ですから、水害からこれを防ぐという意味だろうと思いますが、確かにあの土手は風格を損しておる、隅田川らしくない、こういうことは御指摘のとおりであります。しかし、まあ今日水をきれいにし、同時にまた隅田川らしくするために、自然の景色も乱さないように対策をするにしても、ややもう少し考え方もあったんじゃないのか。そういうような意味では、御指摘になりました点を、政府大蔵大臣にも話をして、もっと金をかけて、そして隅田川を昔の風致をそこなわないように実はしたいもんだと、かように思いますが、いずれにいたしましても、私の使ったことばからいろいろ問題を引き起こし、論議を盛んにしていただいたことは、私はそれだけでもたいへん役立ったことではないか、風格ある社会もそれでできるのじゃないか、かように思っております。ありがとうございました。
  193. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上をもちまして、梶原君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  194. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に占部秀男君の質疑に入ります。占部秀男君。
  195. 占部秀男

    ○占部秀男君 これはもう言うまでもなく、国民生活の福祉の問題は国の施策であったとしても、国だけで実現する問題ではなくて、国と地方との合作でほとんどいまやられているようなわけでありますが、それだけに地方政治に対する政府考え方、基本的な方針、これは国民生活の福祉を直接左右するほどの大きな問題であると思うのであります。ちょうどいま統一地方選挙が終わったばかりでありますから、この際地方政治に対する政府の、総理の基本的な考え方を伺っておきたいと思うのでありますが、まず地方自治についての総理の姿勢について私はお伺いを申し上げたいと思うわけであります。というのは、総理は今度の知事選の最中の三月のたしか二十七日か二十八日であったと思いますが、三多摩での演説の中で、よく地方選のたびに言われております中央に直結した地方政治、こういうことばを出されて、衆議院予算委員会で追及をされたわけでありますが、そのときは、保守、革新の知事といえども差別はしないんだというようなことを答弁されたというように私は聞いておるわけであります。ところが、そのあとの四月五日に、また総理は三多摩で地方自治を否定するような演説をされたということが新聞に報道されておるわけであります。私いまこれを一つの新聞を読みますと、私が政権を担当している限り、松下候補が知事に選ばれれば、私は彼と話し合いをする。佐藤内閣と対決する人がもし知事になれば私は非常に楽だ。何となれば見ていればいいからだ。しかし、それは都民の生活のことを考えると、たいへんなことになるだろう。こういうことを府中の駅前で言われた。しかも、立川の駅前では、私と対決しようという革新知事には、たとえ知事に選ばれたとしても、私は協力をしない。かようにまあ言い切って演説をされたと、かように報道されておるわけであります。これは一つの新聞でなくって、ほとんどの新聞が都下のこの版には同じように報道されておる。このために現在都民の中には、美濃部都政に対して佐藤内閣は一体どんなことをしてくるだろうか、特に総理のいまのことばの中には、もし美濃部さんが当選したならば、それは都民の生活のことを考えるとたいへんなことになる。こういうようなことがあるので、非常に心配して見守っているわけでありますし、まあ人によっては、こんな言い方は総理として少しおかしいじゃないか、こういうような話もあるわけです。しかし、いずれにしてもこの問題は、これはもう東京都だけの問題ではなくて、今日革新知事、革新市長というものは全国的に出てきておる。特に今度の地方選挙では社会党だけではなくて、塩尻では共産党の市長さえ生まれておるわけですね。そういうような中で、総理がこんな考え方を持たれたのでは、一体地方政治というものはどういうふうになるんだろうかということで、相当地方住民の中にはこれはショックを与えておることばであります。  そこで、私はまずお尋ねをしたいのでありますが、美濃部さんは確かに社会党と共産党とが推薦をして立候補しました。しかし、当選して知事となった美濃部さんは、社会党の知事でもなければ、これはまた共産党の知事でもない。一千万都民の知事であることは御存じのとおり。ちょうど総理が自民党の代議士であるけれども総理大臣になれば、これは日本総理大臣であり、一億国民総理大臣であるのと同じであります。その都民の知事と、都民の問題で、都政の問題で、てんからおれはもう話し合わないのだと、傍観していればいいのだと、あるいは協力しないのだと、こういうような言い方は、今日の議会主義、民主主義の時代ではちょっと常識的にわれわれは考えられないと思うんでありますが、総理はそれであたりまえだとほんとうに考えておられるのかどうか、これが第一点。それから第二点は、そういうことで一体総理大臣としての行政責任というものを果たすことができるんだ、果たせるんだと言い得るかどうか、これが第二点。それから第三点は、そういうようなことを五日の日に言ったとしたならば、衆議院予算委員会で革新、保守の知事にかかわらず差別待遇はしない。そういうふうに総理は言われたことに対して、これは大きな食言ではないかと私は考えるのでありますが、以上三点をまずお伺いしたいと思います。
  196. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあいろいろ選挙中の私の言動について、ただいまお話がございました。しばらくその点には直接お答えをいたしませんが、とにかく選挙の結果、これを尊重することは民主政治の第一の要諦であります。したがいまして、私はいろいろなこともございますが、ただいま反省もし、選挙の結果はこれを尊重する、こういうことでございます。また選挙中もそういうことはしばしば申したのでありますが、政党の所属を明らかにした地方首長、これが望ましいか、あるいは政党の所属をはっきりさせないこと、いわゆる無所属で立つことのほうがむしろ地方においてはこれは望ましいのではないか、こういう話をしておりますから、そういう点では誤解のないように願いたいと思います。私は、必ずしも自民党の党籍を持つ者が、これが首長になることのみを主張はしない、こういうことをよく選挙民にも話をしております。また選挙の結果を尊重するということは、それは選挙に臨むに際しましてはそれぞれの形で推薦はされるけれども、当選の暁は、東京都の場合は一千百万の都民の代表でございますし、また私については、なるほど社会党や共産党の支持は得ませんでしたけれども総理としてこれは十分尊重するという、占部君の言われるとおり、私も都知事については同じ考え方を持っております。また、ただいま申し上げるような立場でございますから、都民のためあるいは国民のために政治をとるという私の姿勢でなければならない。何の何がしのために政治をする、こんなけちなものではございません。したがいまして、東京都の選挙の結果を尊重し、都民の生活の向上に、また福祉の向上に資するためには、私は協力を惜しむものではない。これはあらためて申し上げるまでもなく、その点は非常にはっきりいたしておりますから、今後の問題について誤解のないようにしていただきたい。私は、この機会に私の心境を率直に申し上げてお答えといたします。
  197. 占部秀男

    ○占部秀男君 総理は、いま一々のことばには触れたくないと言われているんですが、そうは私はいかぬと思うのです。また、選挙の結果については尊重すると言われておりますが、それはまあ当然のことであって、われわれも総理のその気持ちは理解いたします。しかし、選挙の結果の問題以前に、選挙中に言われたという問題については、これは消すことができない問題である。そこで、いま新聞で私が読んだようなことばを、一体総理は言ったのか言わないのか、この点を私ははっきりとしてもらいたいと思います。
  198. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 実はあまりそのことに触れたくはなかったのです。私が実はけんかを売ったつもりはございません。とにかく地方選挙において佐藤政権と対決するんだ、また、そういうような発言がされている、したがって、私どものところにはあまりお見えにならないだろう、また、京都においてもそういうことが現にすでにございます。そういう場合だと非常にこれは楽だ、こういうことを実は申したのです。それは率直に申し上げておきます。だから、それをいまとやかく言われれば、私ははっきり申し上げます。しかし、私自身の心境は、都民のため、また国民のために政治をするのでありますから、そういう点で首長がどういう政党から出されようが、そういうことで二、三にする考えは毛頭ない、このことははっきり申し上げます。
  199. 占部秀男

    ○占部秀男君 蜷川さんがお見えにならないか、なるかは私は別にしまして、対決すると言ったその知事の候補なり首長候補なりがかりに当選したといったところで、これは選挙の結果は当然のことであって、一々それを選挙の投票前に、三多摩の大ぜいの大衆の前で私は言う必要はない。これを言うということは、やはり選挙に勝ちたいと思うから総理が言ったことは、私は明らかだと思うのですよ。そういうようなことを考えてみると、総理は簡単にそういうふうに言われるけれども、これは簡単な問題じゃない。やはり一ぺん総理に、総理の地方自治に対する姿勢については徹底的に聞いておかなくちゃならぬ問題だ。というのは、いま言った都民もそうであるし、最近全国知事会では、自民党の系統の知事ではない、革新知事だからというので、従来は、都知事がたいていいままでずっと会長であったやつを、今度は会長を都知事にせずに、桑原さんですか、愛知県の人にしよう、それもやはり総理と話し合えないような知事じゃしようがないじゃないか、こういうところに原因があるということを私は聞いておるのです。いずれにしても、この問題は、総理のことば自体は、地方自治の問題にも、都民の問題にも、今後のいろいろな形の上に、先ほどの風格の問題と同じようにいろいろと話題を巻き起こしておるわけですから、その点はひとつ言ったか言わないのか、そういう点もし言わないとすれば、これは新聞社の報道の誤りなんですから、したがって、私はその点だけは明確にしておいていただきたいと思います。
  200. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それは新聞に出ておるのですから、そういうふうに……。そのとおりかあるいはそれと同じような趣旨か、それは言ったことは確かです。ただいまも申し上げたとおりです。しかし、私も選挙後においては、美濃部君と二回も会っておりますから、いま御心配になるようなことはない。まあこれからはそんな御心配なさらないで、美濃部君自身が私のところにあいさつに来、また、その次の機会にも会っておりますから、もう御心配のないように願います。
  201. 占部秀男

    ○占部秀男君 どうも総理は、御心配のないようにということを先に言うのですが、私も、美濃部さんとあなたとけんかするとは思ってないのです。ないけれども、こういう新聞が出ておるので心配だし、これは総理と美濃部さんだけの問題じゃなくて、国民全体が心配している問題だから、この国会の場で明らかにしたいと、こういうわけなんですね。そこで私は、まあこれ以上言ったとか言わないとかいったところでしようがないのですから、この問題を中心に総理の気持ちというものを私ははっきり聞いて、国民の疑惑をまあむしろ総理のお手伝いをして解いてやりたいと、かように私ども考えておるわけであります。  そこで、まあ私は第一番に、この総理の演説なるものを見て一番感じたことは、一体民主主義の議会制度のもとで反対党があるのはあたりまえな話なんで、憲法も認めておるのです。したがって、現在の政府の政策の批判をするというものが地方の首長の中にも出てくるのは当然である、批判の自由はあると、私はこういうふうに思うのですけれども総理はいかがですか。
  202. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も同感であります。
  203. 占部秀男

    ○占部秀男君 ところで、総理は常々そういう気持ちですから、院内においても、野党の人とはなるべくひとつ忍耐と寛容で、お互いに一致点を見出してうまくやっていきたい、こういうことを言われておる。ところが、あなたが三多摩で言われたこのことばは、事都政になると全く忍耐と寛容なんというものはなくなっておるのですね、このことばの中には。そうでしょう。てんからあなたは、反対党から出た知事だから、これはもう話し合わないのだ、傍観しておるのだ、協力しないのだと、これでは私は、民主主義というものを否定する思想というか、そういうものに通ずるのではないか、特に総理のいま言われておる中には、非常に、党派はあっても都民はないような、独善的なその考え方がその中にあるのじゃないか。いわば一億の国民の中で一千万の都民を、おまえはおれのほうの党から出た知事を出さなかったから村八分にするのだと、これと同じようなことをあなたは言われておるのじゃないかと、かように私は考えて、非常に都民に対しては侮辱であると、こういうように考えるのでありますけれども、私はいやなことばを使いますけれども、真剣に言っておるのですから、その点総理もひとつ御答弁を願いたい。
  204. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどお答えいたしましたように、佐藤総理と対決すると、こういうことを言われた、それが私に入ったのであります。私は、都民のために都知事としてりっぱな都政をしかれると、こういうことであれば、これはもう都民のために政治をするので、国民のために政治をするので、これは私どもが協力するのはあたりまえなんであります。しかし、佐藤と対決する——その対決ということばが私にはよくわからない。しばしば言われたような、そういう意味で対決というか、反対の陣営から私自身にやってくると、こういうことでは、これはどうも私は納得ができぬ。東京都民のためにこういう仕事をするのだ、そういう意味ではっきりしたことがわからないので、そういう意味佐藤に十分申し入れる、これはもう地方自治体の権限というものは、これはわかっておりますから、皆さんもしばしば三割都政とか、あるいは一割五分都政だとか、こういうように、都知事で全部できるわけではございません。それならば中央と地方が連係してうまくやる、そういう考えでなければ困る。だから私のほうは先にけんかを売ったわけではございません。だから、その点をただいまよく御理解いただければ、ただいまのような話は氷解する、だから現にもう選挙が済んだ後に、私ども美濃部君と会えば、ちゃんとりっぱな都政、都民のために、ひとつりっぱな都政をやってくれと、こういう話をし、激励もしておる。したがって、過去をいろいろ言われますけれども、今日においては、私は、都民はまだ心配しておるという占部君のお話ですが、美濃部君と私との会談を見た都民は、これはもう心配はしていない、かように私は思っております。
  205. 占部秀男

    ○占部秀男君 心配を都民はしているかしていないかは、お互いに感じの問題ですからここで何とも言いませんが、いま総理の言われた対決をするといったことばで総理もがちんときた、こういうふうに言われるのですが、これは総理と決闘しよう、対決しようというのではないのですね。やはりおのおのの思想があって、思想に基づく政策のあり方がある、いろいろの政治のとり方がある、そういう点について、これは総理のやり方では都政はうまくいかぬ、こういうことでその対決ということばを使ったことであって、何もがちんといくほどのものじゃないのだし、現に民主主義の議会で、いろいろの制度で対決するなんということばを使ったくらいで、びくっとするようなそんな心臓の私は佐藤総理じゃないと思うのです。やっぱりあなたは、いまこれを言われますけれども、これを中心にあなたは駅前で票を集めようとしたとしか思えない。現に美濃部さんは、今度の知事の就任のあいさつのときに、私は社会党と共産党から立候補したけれども共産党と社会党の政策をそのままやるのじゃないのだ、自民党もあるいはまた民主社会党公明党もこの三つの政党とも、どの政策でもそれが民主主義であり都民のためであるならば私はとるのだ、こういうふうに言っておる。これと総理のことばと比較してみると、私は、お月さまとスッポンじゃないかという感じが、総理に悪いけれどもするのですが、したがって、こういうような気持ちのやり方こそ、私は都知事として当然であり、民主主義のルールを守る当然のことであって、対決をするということば自体でがちっとくるというのは、そういうような考え方自体に、何か総理の中に権力主義的なにおいがしてしようがないのですけれども総理、いかがですか。
  206. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) だから、さきの選挙中のことはしばらくあずかって、そういうことは触れないでください。新しく出た前向きの姿勢のところでひとつ話をしようじゃないか、それを申し上げたのであります。
  207. 占部秀男

    ○占部秀男君 しつこいようですが、前向きの姿勢前向きの姿勢というけれども、もとがあなた解明されなくて、幾ら総理は前向き前向きと言われたって納得できますか、われわれが。国民が納得できますか。第一総理は協力をしないということを言われておるのですね、この立川の演説会で。一体今日知事や市長などというのは、地方首長に総理大臣が協力をしないで済まされますかどうか。私は、行政責任の上から言って、その点を総理にもう一ぺん聞きたいと思うのですよ。都政の問題は確かに都知事が全責任を負う問題ですけれども、単に都知事だけでないことは御存じのとおりです。国の委任事務というものは、いま都政でも他の府県市政でも、大半は委任事務でやられておる。特に機関委任の場合には、知事というものは国の機関になって、国の施策を実施するのです。その場合に、総理大臣なりあるいは自治大臣なり、佐藤内閣には行政指導の面から、あるいはまたいろいろな知事の行き過ぎや、あるいはまた言うことを聞かないというような場合には、罷免したり代執行する、そういう権限さえこれは与えられているのが現在の地方自治法なんです。そこで総理が幾ら協力しないと言ったって、協力しなければならないように、国の施策が都民の利益、県民の利益に関係する問題については、知事や市長と総理や大臣は協力をし、話し合わなければならないように、今日の法律制度ではでき上がっておるのです。それをあなた御存じの上でこういうようなことを言ったというのは、これはとても、われわれは断じて承服できないのですよ。そういうところを私は言っている。総理はどうですか。
  208. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これから地方と中央とが全然交渉なしにやっていくかどうかよく見てください。
  209. 占部秀男

    ○占部秀男君 交渉なしにやるかどうかよく見てくださいとあなたは言うけれども、いまの法律制度で交渉なしにできますか、逆にあなたにお聞きしたい。
  210. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 相当にこれからうんと交渉して、そうして都民のため、国民のためになるような政治をする、これ、お約束いたします。
  211. 占部秀男

    ○占部秀男君 まああまりこれしつこくなるといけないからこの辺でひとつ確認だけしておきますから。そうすると結局、立川や三多摩で言われたということの中には、まあ勇み足があって、とにかく選挙された美濃部都知事については、これはもう協力すべきことは協力する、話し合いをすべきところは話し合いをする、こういう考え方、と同時に、これは何も共産党のことを言うわけじゃありませんが、塩尻で共産党の市長が出ている。これも市長としては同じであります。これはやはり美濃部さんと同じ形で協力すべきものは協力する、こういう考え方であるというように私は理解しますし、したがって、国の財政支出のいろいろな面であるとか、事務、事業の面であるとか、こういう面は美濃部さんだからといって別に差別しないのだ、こういうように了承してよろしゅうございますか。
  212. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そういうような消極的な考え方でなしに、都民のためになり、都民の福祉のためになる、そういうことには積極的に協力するということをはっきり申し上げておきます。
  213. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。ちょっと関連して総理に、これからもあることですから確めておきたいと思います。  それは、総理が各種の選挙に応援に行かれる、特に地方自治体の問題、そういう際にやはり総理の地方自治に対する政策上の考え方、これをどんどん出されて演説をされることはこれはけっこうだと思うのです。あるいは自由民主党の総裁としての立場で、自民党の立場から地方行政についての考え方、ただそれだけじゃなしに、国政あるいは全般についてやられてもこれはけっこうなんです。しかし、当然にこの反対党のものは、その総理に対する考え方をやはり演説の中で批判もする、単に地方自治だけじゃなしに、これは当然みんなからんでおるのですから、あり得ることだと思います。それから選挙民に対しては、やはりできるだけお互いに詳しく内外の諸問題についての考え方をしゃべったほうがいいわけですから、しかし、そのことと先ほどから問題になったこととは、これはもう全然次元の違う問題、これは美濃部さんが対決と言われたというのは、これは政策的な問題の対決、たとえば一つ取り上げてみてもすぐ考えられることは、憲法記念日ですね、国のほうではなかなかやろうとされない。しかし美濃部知事は、今度は準備が期間がなくてできなかったが、来年からはやりたいという意味のことを言われております。だからそういうことはすべてこれは政策上の違いの問題なんです。それを演説のときに対決と言った、だからこちらも受けて立った、受けて立つ場合に相手の政策自身をどれだけこっぴどく追及しても、私はそれはいいと思うんです。だけど、全然次元の違うような、先ほど来あんまり何べんも問題になったことを、また同じことかとうんざりされるかもしれぬがね、非常に私はこの点が遺憾だと考えておるんです。だから、今後はですね、絶対そういう政策上の論争、対決と、そうして選挙の結果を否定するような、憲法上認められた大事な制度なんですからね、そういうものを何か水をかけるような、否定するような、そういう印象を与えたことは間違いないわけでしてね。選挙通に言わすと、かえってあのために美濃部さんの票がふえたんじゃないか、まあそういうことを言ってる人すらあるくらいですからね。それほどやはり深刻な反響を呼んだことは事実なんでしてね。今後絶対にこういう立場での演説はやはり御遠慮願いたいと思うということを、私ここで注文だけじゃなしに、総理のやはり決意をお伺いしておきたいと思うんです。
  214. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御忠告ありがたく承っておきます。
  215. 占部秀男

    ○占部秀男君 地方自治の問題でもう一つ伺いたいのは、国と地方自治体との合作で、一番いま当面の問題となっておる社会再開発といいますか、社会開発の問題であります。この社会開発ということば自体は、非常にこれは弾力性のある問題ですが、政治的な課題としては、総理はどういうことを基本的には考えておられるのか、この点をまずお伺いしたい。
  216. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 社会開発を打ち出しましたのは、経済開発ということばがございますね、そうして、それにはずいぶん力が入ってきている。しかし、一体経済活動といい、政治活動といい、全部が人に結ばれる。したがって、人の集団である社会、そこに開発の効果が帰一するというか、そこにいかなければ、経済活動もまあ魂が入らないということになるのでございます。そういうところがら、りっぱな社会をつくろうというのが社会開発ということばになっておるわけであります。
  217. 占部秀男

    ○占部秀男君 まあ要すれば、産業基盤の開発をすると同時に、国民の生活基盤の開発までして、バランスをとっていくんだと、こういうふうな目標で進むんだということになるわけでありますか。
  218. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただ、社会開発経済開発とが二つが対立するとか、こういうようなものでなしに、社会開発というものが本来の政治の目標だし、また、経済活動の目標でもなきゃならない、そこへ利益が帰一する、こういうことでありたい、これが私の考え方であります。
  219. 占部秀男

    ○占部秀男君 そこで、この問題は佐藤内閣の組閣以来の大きな旗じるしの一つであって、われわれもそういうふうにいくということについては、決して反対ではないわけで、賛成の点も相当あるわけですけれども、これを実施していく場合に、やはり国の施策に重点を置いて、国だけでやっていくのか、それとも、地方団体と一緒に合作的にやるのを重点にしておるのか、その点をお伺いしておきたい。
  220. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国の政治、それから地方自治体の政治、この場合に私はこれを分けられないんじゃないかと実は思っております。それかといって、中央の政府の考えることと地方自治体とが全然別な方向であっては目的を達しないのでありますから、これはおそらく考え方は帰一するだろう、かように私は思います。しかし、政府だけでできないこと、また、地方自治体だけでできないこと、これはもう百も承知でございますから、そこに相互関連を持つ協力の必要、こういうことが出てくると思います。
  221. 占部秀男

    ○占部秀男君 そこで、この佐藤内閣が、一昨年ですか、この問題を取り上げて以来、国民生活審議会ですか、あるいはまた、今度のこの経済開発の——まあ二つ、三つの審議会で、この社会開発の問題を、それぞれの形からプランを描いて出しておるわけなんですが、どうもこの二年間、社会開発——総理の言われるような社会開発というほどの、国民の生活の福祉の改善が行なわれたとはわれわれはどうも思えないのですね。進んでないような感じを持っておる。かりに住宅の問題でも、確かに政府の施策住宅というものは、四、五年前から比べると、十万台が二十万台になり、四十二年度は三十万台になってきておる。ところが、住宅の不足というものは、その当時百五、六十万であったやつが、今日は四百万近く住宅は不足しているということになってきて、追いついていかない。こういうような実態にあるわけですね。一体これはどういうところに原因があるのか。この仕事自体が非常にむずかしい仕事だとは思いますけれども総理のひとつ考え方を明らかにしていただきたい。
  222. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの経済開発は非常な経済発展、これはたいへん速いスピードで拡大しております。また一面に、この都市集中の人口の移動が非常に急激に行なわれている。経済の発展もすばらしければ、人口の移動も急激である。これに当然対応するためには、社会公共資本の投資が積極的に行なわれなきゃならない、そのものがおくれておるというのが現状なんだと思います。いわゆる、その指摘されておるのに、民間あるいは公的なもの、その間のバランスがとれるということが一つの社会発展の必要なことでございますが、なかなかそのバランスがとれない。そういうところに、いまこのおくれが出てきておるのであります。したがいまして、一時的に見ますと、住宅の不足が指摘されるけれども、これもまあ相当長期期間で見れば、おそらくこういうことが解消する、また、それを解消させなければならない、かように私は考えます。
  223. 占部秀男

    ○占部秀男君 私も半ば、総理の言われるところは肯定するのですが、結局、社会公共資本の投資が不足であった、こういうところに総理は持っていかれたのですが、私はそのとおりの実態だと思うのですが、特に、これは高度成長政策以来、産業基盤の開発のほうには相当——これはもう数字をあげては言いませんけれども政府の言うような形の投資もしておる。ところが、国民の生活基盤の開発には非常に薄い。それはまあいろいろな統計をあげてみればいいのですが、時間がありませんから言いませんけれども、そういうようなところに問題が起きておるわけであって、それが、今日自民党は社会開発だということを大きく打ち出しても、なかなか国民に、なるほど開発されたというふうにいかない原因じゃないかと私は思うのです。そこで、やはりこの従来の社会開発の仕事のしかたといいますか、あり方、これに伴う財源の確保のあり方を、この際、従来の形から大きく、何といいますか、飛躍的に変えた考え方でいかなければ、社会開発なんてものは、とうてい総理の言うように実行できないのじゃないかと私は思うのですが、そういう点は総理、どうお考えになっておりますか。
  224. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これから占部君の御議論がだんだん発展するのだと思いますが、先ばしったようで申しわけございませんが、ただいま予算を編成する、そういう際に建設公債発行する、そういうような、片一方で減税もやらなきゃならないし、また、税で支出する筋のものは非常にある。非常な不均衡、おくれをとっておる公共投資を積極的にやろう、こういうところから建設公債が出ていく。ところが、中央は一応それで財源はまかなえた、かように考えましても、地方自治体のほうがこれに対応する財源を持たないと、せっかくの公共投資もおくれるのじゃないか、こういうことで、ただいまの悩みの問題がある。これらのことは、先ばしった答弁をしてまことに相すみませんが、中央と地方との間の行政の分配、配分が適当になっておるかどうか、また、その配分に、仕事に適応する財源がちゃんとつかまえられているかどうか、こういう問題があるわけであります。ことに、公債発行するようになりまして、その財源の確保ということ、そういう点で、特に地方制度調査会なども、問題のあることを指摘しておりますし、また、ぜひとも答申を得て結論を出して、そして中央地方が同じ立場に立って、積極的にこれらの施策を遂行できるようにしたいものだと、かように思っております。
  225. 占部秀男

    ○占部秀男君 総理の苦心されておるところはわかるのでありますが、やはりもう社会開発の問題もスローガンの時代じゃなくて、私は実行の時代であろうと思うのです。じゃ、実行をするためにはどうするかといったら、やはりいままでの社会公共資本の投資というものは少なかったのだという点が、やはり何としても大きな点である。それを改善するためにはどうしたらいいか。少ない金で効率的に社会開発の事業を、住宅、道路、いろいろな問題についても進め得るにはどうしたらいいか、この急所の点をはっきりさせなければ、私はこの社会開発の問題はなかなか、描かれたモチにしかすぎないようになるのじゃないかと、かように考えて、いまのことを言ったわけなんですが、その点、総理どうですか。
  226. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの段階は、ただいま御指摘になったとおりだと思います。まあ比較的、住宅あるいは交通問題、これはだれもすぐ目をつけるのでございますが、最近の東京都の場合でも、問題になりますのは下水の整備、まあ上下水道とも問題ですが、ことに下水道の整備、非常に金がかかる、これが非常におくれておる、かように私ども痛感しております。
  227. 占部秀男

    ○占部秀男君 そこで私は、総理にこれは注文といいますか、あるんですが、さっき私は、仕事のあり方と、じゃ、これに要する財源の確保のしかたをひとつくふうしてもらいたいということを言ったのですが、いまの、何といいますか、国民所得を中心とした使える財源、この中でも私はけっこう社会開発の問題は進展できるのじゃないかという感じを持つわけです。これはまあ、総理大臣になったような言い方をして非常に申しわけないのですけれども、たとえば仕事のあり方も、従来のような産業基盤の開発に中心を置いたようなやり方から、国民のいろいろの生活環境、福祉環境を重点的に、公共事業なり、あるいはいろいろな補助事業なりをやらせる、こういうふうにやっていけば、相当違ってくるのじゃないか。たとえば道路の問題一つを取り上げても、高度成長政策以来、道路の舗装率というのは確かに、国道を中心として産業道路は大きく広がっておるけれども、市町村道あるいは府県道の主要でない部面に至っては、ほとんど開発されてない、こういうようなやり方を変えていけば、これはけっこう、こういうような開発問題はできるんじゃないか。公害でも、工業用水道でも、住宅問題でも、これはそうじゃないかと考えるのですが、総理はいかが考えておられますか。
  228. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 確かに、社会公共投資が非常におくれておる、こういうことでございますから、これにさらに積極的に力を入れなければならない。まあ、昭和三十年代は経済開発というか、そのほうに特に力が入った。まあ大体先進国の一員になり得た。しかして、その間に、社会公共投資をやられたものの、国民所得に対する割合は二、三%だ、かように思いますが、さらにそれを倍にするというか、四、五%にこれを持ち上げれば、ただいまのようなおくれも取り返すことができるのじゃないか。今後の予算編成等におきましても、順次、民間のほうの所要資金よりも、ただいま申したような社会資本の投資に力を入れるような方向でさらに検討していく、これが必要だ、かように私は思っております。
  229. 占部秀男

    ○占部秀男君 その際に、確かに、現在二、三%程度のものを倍にすれば、これはいろいろの点について進行することは事実でありますが、やはり仕事のやり方の重点の問題が、はっきりと社会開発の進み方、促進自体を制約してくると思うのでありまして、そういう意味で私の申したような、そうした方向を、社会開発の問題の場合にとってもらえないかどうか、とるべきじゃないか、かように考えているのですが、その点いかがですか。
  230. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまここで、すぐ約束をするわけでもございませんが、力の入れ方の方向をいまお話ししたわけです。また、たとえば道路等におきましても、国道の整備がまず中心になっている。しかし、実際の日常生活や、あるいは経済活動においては、もっと低い——低いと言っちゃなんだが、地方道のほうに力を入れることのほうが必要じゃないか、実は、御指摘になったとおり私も思うのであります。いわゆる幹線道路は整備されましても、日常の生活の点から申せば、市町村道、これがたとえば舗装されれば農業関係だって見違えるように活動ができる、こういう点も指摘できるのでありますから、全体としてのいわゆる市町村に重点を置くような、また、そういうところで仕事がしよいように、これから指導していかなければならぬと思います。  どうも、今回の統一地方選挙等を見ましても、市町村の、村会議員の選挙などには住民が非常な関心を示す。また、市町村の首長は、府県の首長よりも関心が深い。それほど国民の生活に直結するものである。これは末端行政機関、かように私は思うのでありまして、たぶん占部君はそういう点を御指摘になっているのだと思いますが、全然同感でございます。この選挙における関心度等を見ましても、やはり末端の自治体の政治がうまくいかないと、国民生活としてはやはり圧迫をこうむる、こういうことになるように思います。
  231. 占部秀男

    ○占部秀男君 次に、財源の確保の問題でありますが、国民生活審議会の審議の内容を二、三読んでみましたけれども、やはり問題は金だというふうに言われているわけです。その金の、財源のつくり方でも、現状、くふうをすれば、非常に社会開発を進め得るようなやり方があるのじゃないか。たとえば、これはいつも言っていることですが、国税の例の特別措置に関する税金、企業減税、そういうようなものも、ある程度今日はいいのじゃないか。こういう点を、われわれは相当社会公共資本の投資のほうに振り向けたら私はいいのじゃないか、こういう感じがするのですが、こういう点は総理はどういうふうにお考えになっていますか。
  232. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 税の問題になりますと、まだまだむずかしい問題が幾つもございます。したがいまして、ただいまのような税の特別措置、減税しているものをあたりまえに取って、そうして積極的にこれを支出するように考えろ、こう言われましても、まだそう簡単な結論にはちょっと賛成しかねますから、いましばらく実情をよく調べまして、そうして、もう時代に適合しない税の特別措置、これは順次直していかなければなりませんが、ただいまのように、全部どうこうする、右から左に持っていく、こういうようなことにはちょっと……。
  233. 占部秀男

    ○占部秀男君 そこまでいかないなら、せめて地方の公共団体ででき得る範囲だけでも、政府は行政指導なり何なりすべき問題があると思うのですが、たとえば各都市で工場誘致条例なんかつくっておりますが、これなども、実は工場誘致条例をつくろうが、つくるまいが、来る工場は、もうけることができる条件があれば来るのであって、いまさらこれをする必要は私はないと思うので、これは相当工場誘致条例を撤廃させると、それだけやはり交付税が浮いてきてそういう方面に回ってくると、こういう循環的な形になるわけなんですから、工場誘致条例などはこの際撤廃させるように指導したらどうか、こういうふうに思うのですが、自治大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。
  234. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) まあ相当大きな工場が参りますと、将来にわたっては、相当地方税が入るというようなことで誘致条例等を設けておる地方団体があるわけでございます。しかし、ただいま御指摘もありますので、やはりこれは相当再検討をしなければならない時期に来ているんではないかと考えております。
  235. 占部秀男

    ○占部秀男君 いずれにしても、この社会開発の問題は、非常に広範なむずかしい問題でありますけれども、現在のような仕事のやり方と財源確保をするという方法では、とうてい完全な私は社会開発はできないと思うので、この際ひとつ総理に勇断をもってふんばってもらいたいと思うわけです。この点はこの程度にしておきます。  次に、地方問題のもう一つの問題で、地方税制のあり方の問題でちょっとお聞きしておきたいと思います。それは、私は税金というのは、これはもちろんもう応能の原則といいますか、担税者の能力、これに応じて課するのがたてまえだと思うのでありますが、地方税の場合には、やはり地方の事務事業のいろいろな特殊性がありますから、これは応益の原則がある程度、何といいますか、課税の上に及ぼされるということは、私は認めたい。ただしかし、住民税の中の均等割りですね、これだけはどうも問題は昔の人頭割りと同じであって、応益の原則だとか何とか言うが、そんな範疇のものじゃないと私は考えるのですが、これは撤廃していくべきじゃないか、非常に不明朗なその意味では税金になっているのじゃないかと思うのですが、自治大臣はどういうふうにお考えになっていますか。
  236. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 地方税が、その地域の費用を、その地域の住民が広く分に応じて分担するという性格であることは、十分御承知の上での御質問なんでございますが、その意味で、ことに最近の課税最低限の引き上げその他もございますので、やはりそこの住民があまり多くないある種の負担はしていただくのが、地方自治のゆえんではないか。そういう点から考えますると、住民税の均等割りはそういう性格のものではないかと考えるわけでございまして、現在直ちにこれを撤廃するという意思は持っていないわけでございます。ただし、その税額その他賦課の方法等については、さらに研究を進めていかなければならないものがあろうかと存じます。
  237. 占部秀男

    ○占部秀男君 この均等割りの問題は、特に個人の場合を私は指して言っておるのですが、どのくらいな納税者の数と、そうして年間どのくらいな税額、徴税額があって、それが地方税収の中で何パーセントぐらいを占めておるか、こういう点を、概略でいいですから説明をしていただきたい。
  238. 松島五郎

    政府委員(松島五郎君) 均等割りの納税義務者は、約三千万人でございます。なお所得割りの納税義務者は、それより少なくて二千三百万人ぐらいでございます。それから税額は、県民税の均等割りと市町村民税の均等割りを合わせまして約百四十億円くらいであります。税収入は大体市町村の場合で、市町村税収入のうちの一%ぐらいであります。
  239. 占部秀男

    ○占部秀男君 いまのお話で聞くと、税収入としてはわずか百四十億なんですね、しかも、それが三千百万人という、所得税の納税者から比べると千万人以上も多い、非常に広範なところに散らばって取られておる。いわゆる零細的に取られておるわけですね。しかも、あなたは応益の原則ということをまた言われるのですけれども、これはこの地方税の中には、事業税であるとか固定資産税であるとか、こういうような大きな柱ですね、地方税収の中の大きな部分を持っている柱、これがやはり応益の形で取られておることは御存じのとおりなんです。いまさら旧封建時代のような人頭税的な戸数割りの肩がわりをしたようなこういう税金を置いておく必要は私はないと、こういうふうに思うのですが、あなたのお考えはどうですか。
  240. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 考え方としては、先ほど申し上げたようなことでございます。しかし、いろいろ御指摘もございますので、今後も十分検討をしてまいりたいと思いますが、やはり地域社会を形成している者は、その地域社会の経費を少なくともある程度は分担するというのが、地方自治の本旨ではないかと考えるわけでございます。
  241. 占部秀男

    ○占部秀男君 議論が分かれるところだから、これはこのままにしておきます。  次に、先ほど触れた課税最低限制度の問題なんですが、これは言うまでもなく、これは国と地方を通じて、この立法の趣旨としては変わりない扱いをされるのが、私はほんとうじゃないかと、こういうふうに思うのですが、時間がないから、あまり内容は言いませんけれども、急所の点だけ言いますから、御答弁を願います。
  242. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 地方税の性格は、先ほど申し上げたようなことでございますので、所得のあるところに課税ありとする所得税とは、その最低限が必ずしも一致する必要はないという感じは持つわけでございます。しかし、全体といたしまして、地方税の負担がなおなお高いと、高いと申しますか、重いと申しますか、言われておる現状でございまして、今後もこの課税最低限の引き上げにつきましては、努力をしてまいりたいと考えております。
  243. 占部秀男

    ○占部秀男君 地方税のうちの府県民税あるいは市町村民税も、これはやはり所得割りを中心にして大部分はやっておるのであって、これはやはり所得税なんですね。所得課税なんですね。所得課税ということになると、所得課税についての課税最低限の制度を設けたということは、国税だろうが地方税だろうが、同じじゃありませんか。地方税だから別の扱い方をするというわけじゃないでしょう。たとえば、この問題の立法の趣旨というものは、私はおそらく最低限の生活の保障と、そして健康で文化的な生活をさせるために、最低限の制度を設けておる。地方住民の立場に立っても国民という立場に立っても、これは生活は一つですから、同じじゃないですか。あなたは地方税だからちょっと違うということを言われておるが、どうも私はその点は納得できないのです。
  244. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) これはやはり地域の費用を、地域の住民が分に応じて広く分担するという趣旨から言いますると、所得税と常に一致しなければならないというものではないのではないか。あるいはいろいろな各種控除においても、所得税と住民税とで多少の差異があってもいいじゃないかと考えておるのでございます。ただ先ほども申しましたように、現在の最低が四十三万円というような数字が、はたして現在の国民の生活にマッチしたものかどうかという点については、さらに検討を要するものがあると存じております。
  245. 占部秀男

    ○占部秀男君 あなたは、地方税を分担するということを中心に言われておるのですが、これは私の言うのは、課税最低限制度というものは一体どういうものか、こういうことを言っておるのです。ちょっと次元が違いはしませんか。その点ひとつ大蔵大臣にお伺いしたい。
  246. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま自治大臣が言われましたように、地方税と国税はいま言ったように性質の違いがございますので、必ずしも一致しなくともいいというふうに私も考えます。しかし、いままでの税制改革を見ますというと、国税のほうの減税が進んでおって、地方税の減税がこれに伴っていないということが、いま指摘されておりますので、政府では来年度は地方税の減税というものについて、いまいろいろ検討しておる最中でございますが、そうなりますと、当然やはり最低限の問題を、国税となるたけ格差をおかないような方向ということで、やはり地方税の減税も考えらるべきだと、こういう立場でいま検討中でございます。
  247. 占部秀男

    ○占部秀男君 次に、私はいまだいぶ問題となっております政治資金規正法の改正の問題について、ちょっとお尋ねをしたいと思うんであります。これは言うまでもなく衆議院でも自治大臣は、この答申を尊重して、五月の中旬には何とか閣議決定をして国会へ出したいと言っている。ところが、最近私が聞き及ぶところでは、作業も相当自治省内ではおくれておって、それがまた法制局のほうにも関連をしておると、で、自民党の内部にも、やはりその問題で足を引きずると言っちゃ悪いんですが、相当な異論もまだあると、こういうところでとうてい五月の中旬には出せないんじゃないかということを、しばしば聞いておるんですが、この経過をひとつ知らしていただきたい。
  248. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) あの答申をいただきましてから、それを尊重して法文化すべく努力をしておりまして、実は私どもと申しますか、事務当局では、相当に予定どおりの進行を示しておるのでございます。ただ、たとえば政治団体の定義なども、今度はそれに寄付するほうがある種の罰則がつくようなことになりますので、いままでのようなばく然とした表現でいいかどうか、もう少し罪刑法定主義と申しますか、詰めていかなきゃならぬというようなものもございますので、多少の考慮の余地がございますけれども、事務当局といたしましては、予定どおりの進行をいたしておりますので、前に申し上げましたように、中旬にはぜひ出したいということで、せっかく努力をいたしておる最中でございます。
  249. 占部秀男

    ○占部秀男君 そこで、私は佐藤総理にお伺いをしたいんですけれども、いま中旬には出したいというように努力しておると言われますが、私の聞いておるところでは、十五日ごろにはとうてい間に合わぬというように聞いておる。いずれにしても今度の国会では出されるということは、これはもう私たちも考えておるのですが、しかし、会期は御存じのように六月の三十日ですか、二十九日、三十日。つまり六月一ぱいだとしても、かりにこれがおくれるということになると、一カ月や一カ月ちょっとでは、これだけの大きな問題が衆参両院を通るということは、私はなかなかむずかしいと思う。結局審議未了になるということになるか、継続審査になるか、これはまあいずれにしてもそのときになって——ところが審議未了にならないまでも継続審査ということになると、これはもうやはり鉄は熱いうちに打てということばもありますけれども、従来、重大問題がそのままなくなってしまってきておる。これは間々例がある。非常にこの点は国民として心配しておる。したがってこれは提案がおくれるような場合は、総理は福岡では、勇断をもってこれを実現するのだと言われておるのですから、われわれもそれを信じておるのですから、したがって、たとえばどうしてもというときには、会期延長をかりにやっても、今度の国会でこの政治資金規正法の問題だけははっきりと通して、黒い霧だとか、政治に金が、いろんな金がかかるとか、そういう世相というものは、疑惑というものは解いていくのが、私は総理としての役目ではないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  250. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの占部君の御意見のとおり私も考えております。ただいま藤枝君がお答えいたしましたように、ただいまたいへん成案を得べく最善の努力を払っております。たいへん気の装な——連休等もあって気の毒に思いますけれども、積極的にとれはぜひとも予定どおりに中旬には出すようにいたしたいものだと、せっかく努力しておる最中でございます。申すまでもなく、今日国民から私どもに対する期待というか、政界の浄化、政治資金規制の問題は国民の至上命令だと、かように実は考えておりますので、そういう意味で、あらゆる善処をはかるつもりでございます。あるいは与党内にもまだいろんな意見があるであろうということも心配していただいておりますが、私自身総理であり、同時に総裁ですから、二つの資格を持っておりますから、今日法律案を出すことは政府の責任だと、かように考えておりますので、万障を克服して、ただいまのようにこれを国会で御審議をいただく、ぜひともそうし、そうして審議だけではなく、成立を期する、こういう覚悟でいるわけであります。
  251. 占部秀男

    ○占部秀男君 くどいようですが、審議を期する中には、当然会期が足りなければ、国会を延長しても審議を期するのだ、それだけの腹がまえを持っておるのだと、こういうように解釈してよろしゅうございますか。
  252. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま申し上げましたように、審議だけじゃなくて成立を期する決意でございますから、ただいまの国会の会期延長その他、これはまあ政府の問題よりも皆さん方でおきめになることだと思いますから、とにかく審議する、出したら審議するのは当然であります。審議しただけじゃなく、成立を期する、こういうことでなければならぬ、かように思っております。
  253. 占部秀男

    ○占部秀男君 そこで、自治大臣にお伺いしたいのですが、いま法律案の作業に入っておるわけですが、もちろん総理も自治大臣も、新聞で私読んだのですが、あれだけはっきりしたことを言われておるので、答申案の急所の点ですね、寄付の制限であるとか、特定会社の寄付の禁止であるとか、あるいは匿名寄付の問題であるとか、あるいはまたその他の団体の場合であるとか、およそ答申に盛られた趣旨は、そのまま法律案の中に生かされてこの法案が作成されるものと、私はまあ信じておるのですが、いかがですか。
  254. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 答申に具体的な数字等の入っておりますものは、それはそのまま尊重して成文化する所存でございます。
  255. 占部秀男

    ○占部秀男君 その場合に、一部では大口の寄付者にいわゆる政府から融資や請負関係、契約関係などにあるのが相当あるので、この一千万円にやられるというのは非常に困る、これはやはり普通の会社で二千万円にしてもらいたいというふうな意見が相当あるというのですが、そういう点なんか、間違いなく答申案のとおりやるわけですな。
  256. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) いまそういう意見があるということでございますが、私は全然聞いておらないわけでございまして、答申を尊重して成文化するつもりでございます。
  257. 占部秀男

    ○占部秀男君 なお、選挙のときは平時のときよりも金がかかるんで、選挙の場合だけは少し特例を認めるようにしてもらいたいというような意見が、これば率直に言って、自民党さんの中にあると思うのですが、そういうようなことをつけ加えるような考え方を持っておりますか。
  258. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) そういう御意見も私は実は伺っておらないわけでございまして、あの答申を十分尊重して、成文化するつもりでございます。
  259. 占部秀男

    ○占部秀男君 それじゃあそういう点はつけ加えないというのですね。
  260. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) そういう意見も私聞いておりませんので、答申のとおりに、答申を尊重して、成文化するつもりでございます。
  261. 占部秀男

    ○占部秀男君 はっきり言ってください。つけ加えないというのと、答申を尊重するということと、同じようであって同じでないような感じがするので、その点明確にひとつ。普通のことばでひとつお願いします。
  262. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) たいへん申しわけございません。答申にはそういうことないのでございます。
  263. 占部秀男

    ○占部秀男君 そうするとつけ加えないということでよろしゅうございますか。はっきり言ってください。つけ加えないということでよろしゅうございますな。
  264. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 答申にそういうことは書いてないのでございますから、そういうことはあり得ないわけでございます。
  265. 占部秀男

    ○占部秀男君 最後に、私はこの公務員制度に関連する二、三の問題点について、お伺いしたいと思います。  それは、最近、公務員の定年制の問題を検討されておるというのですが、どういうような検討をされておるか、また今度の国会へ出すつもりであるかどうか、その点について自治大臣と総務長官にお伺いいたします。国家公務員法と地方公務員法と両方ありますから。
  266. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 地方公務員の定年制につきましては、新陳代謝、あるいは事務運営の刷新からいたしまして、好ましい制度であるとは考えておりますが、しかし、この定年制度をしくためのいろいろな前提条件にさらに検討すべきものがございます。そういうことを検討いたしておりますので、この国会に提出することはなかなか困難ではないかと考えております。
  267. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) お尋ねの定年制の問題につきましては、公務員制度の一環として、これは非常に重要な問題であると考えております。従来から検討が加えられておったようでありまするが、今日もなお、先ほど申しましたように、公務員制度の一環としての検討は進めておりまするが、今日の段階では、この国会に立法措置をもって提案するというような段階にはまだ至っておりません。しかし、関係者の間で寄り寄り協議をいたしておるような状況であります。
  268. 占部秀男

    ○占部秀男君 その点について、これは新聞で読んだだけですが、定年基準を何歳に置くかというような問題や、それから定年後、やめた後の老後保障の問題についても検討されておるというのですが、そういう点を二、三ひとつ報告してもらいたいと思います。
  269. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 定年の年齢そのものにつきましても、いろいろ検討を加える要があろうと思います。  それから先ほど、定年制度を円滑に実施する前提条件と申し上げましたのは、定年でやめられた方の再就職の問題等が円滑にいくようないろいろなくふうもしなければならないと思います。そのようなことを研究をいたしておる次第でございます。
  270. 占部秀男

    ○占部秀男君 その前提条件の中には、老後の、退職後の老後保障の問題もありますけれども、まあ欧米の地方公務員の定年制があるやつをよく見てみますと、前提条件としては、やはり公務員の団体交渉権なり、労働基本権なりをある程度認めて、そして官側との間の団体交渉をさせることによって、老後保障の問題や、老後保障につながる原職中の生活の給与、勤務条件の問題を交渉さぜておるわけですね。そういうような点については、いわゆる前提条件の中に入れて検討をされてはいないのですか、その点。
  271. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 定年制度も一つの勤務条件でございますので、勤務条件に関する地方公共団体の当局と職員団体との間の交渉の対象には相なるものと考えております。
  272. 占部秀男

    ○占部秀男君 私の言うのは、交渉の対象ではなくて、もっとさらに前進をして、いまの公務員制度審議会が中途になっておりますが、あそこでもILOの場合の条約問題に関連をして、公務員の労働基本権をどうするかということを討議しようということになっていたのがまだやっていないわけですね、そういうような点について、前提条件としての中に入って討議をしておるかどうか、こういう意味です。
  273. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 公務員の労働基本権をどこまで制限するか、あるいはどこまで認めていくかというようなことは、これは公務員制度審議会が御審議をいただく。まあ現在ちょっと空中分解のような形になっておりますが、これが早く再発足してやっていただきたいものと考えておりまして、私のほうではその点については現在は検討をいたしておりません。
  274. 占部秀男

    ○占部秀男君 次に、多年の問題となっておる地方事務官の身分移管の問題についてお伺いをしたいのですが、自治大臣と、あるいは行管長官のほうは、身分移管についてはもう賛成であるというような考え方でも、労働省と厚生省等は反対であるというので、これはまとまらないでいるわけですね、この点について、もう臨調の答申も、つい先年は行政監理委員会の意見の決定も見たのですから、早くひとつこの点は進めてもらいたいと思うのでありますが、どういう状況になっておるか、自治大臣、行管長官、労働大臣、そして厚生大臣にお伺いしたいと思います。
  275. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) いわゆる地方事務官制度は、これは二十年たちましたけれども、一種の暫定的なものでございまして、臨調の答申もあり、あるいは地方制度調査会でも答申をされておるわけで、あの線に沿って、しかも私どもとしては一括して解決をいたしたいと思いまして、現在関係省と協議を進めておるわけでございます。まあいろいろ御意見もあるようでございますが、できるだけ早く実現したい、そうして努力をいたしておるような次第でございます。
  276. 松平勇雄

    国務大臣(松平勇雄君) 御指摘のとおり、この問題は臨調並びに行政監理委員会から意見も出ておりまして、それに基づいて慎重に検討をしておるわけでございますが、ただいま自治大臣が申しましたとおり、二十年間の経緯もございますし、また、いろいろ困難な問題も含んでおりますので、これは慎重に進めたいというふうに考えておりますが、ときどき自治大臣を督促し、また、関係諸省に督促いたしましてこの進行をはかっております。
  277. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) この問題は非常に重要な問題でございまして、労働省としては慎重に検討いたしておるわけでございます。その理由は、御承知のように、職業安定行政というものは、就職一つをとりましても、全国的規模で需給関係がはかられておるのが第一点でございます。  第二点では、失業保険というものの給付というものは、御承知のように、北海道でつとめた人が居住地の府県に帰って支給を受けると、もとの職場と給付の場所が違いまして、そのため給付が全国的にプールされている。それと国会で御批准されましたILO八十八号条約というのがございます。この八十八号条約では、第二条で、職業安定行政は国の機関でやらなければならぬという条項があるわけでございまして、世界各国ともこの職業安定行政というものは国の直轄機関でやっておる。まあアメリカは州でやっておりますが、州はステートでございます。そういった関係がございますので、この職業安定機関とうちの労働基準局、労働監督署というものが非常に密接な関係が労働行政に持っておるわけでございまして、これとの統合というような問題もあわせて、これはよほど慎重に検討しなければならない問題だと思っておりまして、まだ慎重に検討中でございます。
  278. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 地方事務官の問題でありますが、御承知のとおり、社会保険、たとえば健康保険、国民健康保険、政府管掌健康保険というようなものにつきましては、これはやはり政府が経営主体といたしまして、そして全国統一的にこれを運営をしておる、こういったような関係上、地方にこれを機関委任をすると適当でないというような面もこれはあるわけであります。たとえば料金の徴収だとか、あるいは出納だとかいったようなことにつきましては、これはまだ機関委任をしてない、こういうようなものでございまして、これを地方事務官をやめまして、そして地方公務員ということに相なりますと、この地方公務員によっていろいろそういったようなことが運営せられていくということに相なりますと、その責任は何にいたしましても、これは政府管掌でございまして、政府が全責任をとる、こういうようなことに相なりますので、必ずしもこれは適当ではないというふうに考えておるわけでございますが、いろいろの御意見のあることは、私もよく承知しております。そこで、ただいま健康保険、社会保険等につきましては、来年度から抜本対策をやっていくんだ、こういうこともしばしば決意を申し上げておるのでございますが、こういったような抜本対策に際しましては、経営主体というものにも当然これは何らか触れてくるであろう、かように私は考えておるわけでございますが、そういったような抜本対策と、それから関係政府部内における、先ほどから各大臣から御答弁がありましたが、そういったような関係各省といろいろこれは協議、相談をいたしまして、両方にらみ合わせまして、この問題を慎重に解決をしてまいりたい、かように考えております。
  279. 占部秀男

    ○占部秀男君 どうも慎重に慎重にと二十年過ぎておるのですよ。二十年慎重にやっちゃったんですね。いま労働、厚生大臣のお話を聞いてみても、全国的な視野であるとかいろいろ言われるのですけれども、同じような性格の事務事業で機関委任になっている問題が地方団体にはいくらでもあるのですよ。だからこそ、この前の福田行管長官は、労働省と厚生省の反対意見は具体性がなくてわからぬと、はっきりとわれわれの委員会で答弁しておるのです。いずれにしても、時間がありませんから私はこの点にあまり早くは入りませんけれども、現在知事は機関委任をされて執行の責任は持たされる。しかしながら人事権はない。服務に対する規律はできない。給与の問題も手がけられない。金の出納の問題さえない。こういうようないろいろの点で単に指揮監督という名前だけ持たされていて、実際にはどうにもならぬというのが知事の立場なんです。こういうようなことを置いておいたんでは、これはもう事業組織といいますか、いまの公務員組織の組織は動いていくものではないのですよ。特に東京のような場合、あるいは地方でもそうですが、保険課長が悪いことをして金を使い込んだ、あるいはリベートをとった。ところが知事はそれを罰することができない、悪いやつでも。しかもその知事が罰することのできないやつを知事は使って仕事をしなきゃならぬ。その仕事の責任は知事が持たなくちゃならない。こんなばかなことはあり得ないことなんですよ。  そこで私は率直に申しますけれども、一体佐藤総理は、たびたびこの審議会の答申であるとかそういうものは尊重すると言っている。今度の選挙制度審議会の問題でもりっぱに尊重されると言って私も非常にいいと思うのですが、こういう問題こそ臨調の答申があり、行管の意見もはっきり出ているのですから、やはり総理のところでこの問題は早急に結着をつけてもらいたい、かように私は考えるのですが。
  280. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 地方事務官制の問題は、各省でそれぞれの特殊事情があるようでございますが、しかし、もう長い問題でありますし、また、ただいまの説明を聞きましても納得のいかない点もあるようでございます。とにかくもっと合理化してすっきりしたものにすること、これはいずれにしても必要だと、かように私思います。ただいま耳に入ったばかりというわけでもございませんが、十分この問題は関係省と相談をしてとりまとめて合理的解決をするようにいたしたいと思います。
  281. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上をもちまして占部君の質疑は終了いたしました。  本日は、これをもって散会いたします。    午後五時七分散会      —————・—————