○松永忠二君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま提案になりました二
法律の
改正案について、佐藤
総理並びに
関係大臣に
質問をいたします。
黒い霧事件が起こって、佐藤首相の責任が問われたとき、首相は
国会で、「
国民の間に
政治不信が高まることはゆゆしいことである。私は
国民の期待にこたえ、
政治に対する信頼を回復するために、責任
政党として自民党の体質
改善と金のかからない
選挙を
実現することの二点を当面の課題として考える。金のかからない
選挙については、
選挙制度審議会がその結論を得次第、勇断をもって取り組む所存だ」と言明しています。
審議会に対しても一大決心をもって取り組むと言ってきました。ところが、
答申が渡されて二カ月も過ぎて
法案が
提出されました。たまりかねて
審議会長は法制化を促進するように申し入れたほどです。特別
委員会で
審議の始まりましたのは六月の二十八日、会期末まで一カ月もないのに、十四人の自民党
委員全員
質問に立つと主張し、時間かせぎだといわれるような
質問を展開し、
改正案を
成立させようという気がまえは全く見られませんでした。野党側から七月十二日質疑を終了し、十三日
衆議院通過を申し入れたほどであります。しかも自民党は、党の方針がきまっていないといって、この
日程を拒否いたしました。イギリスで効果をおさめた腐敗行為防止法が提案されたときも、
罰則がきびし過ぎる、こんな少額の費用では
選挙ができないと反対が議員から出されましたが、党の幹部は熱心にこれを推進してこの
法案を
成立させました。しかるに自民党は、幹部が先に立って車の両輪説を持ち出し、自民党内でさえもまとまらない
選挙区
制度とからませたり、福田幹事長のごときは、
国会提出はメンツ問題である、
あとは煮て食おうが焼いて食おうが、かってだと言ったり、現在では、
政治資金規正法案は本
国会では通過時刻のきまらない臨時列車だと言って、
法案成立について全く熱意を示しておりません。自民党総裁であるあなたが
成立を期していると
国会で言明したのに、その態度すら疑わしい現在、今
国会成立は絶望的だと、世論も見ているのはあたりまえではありませんか。これで自民党の体質が
改善されたというのですか。これが勇断をもって取り組んだ結果なのですか。また、
政党政治に対する
国民の信頼を高めることになっているのですか。佐藤
総理の言明や公約と全く逆になっている、現在のこのていたらくに対する
政治責任をどう考えられているのでありますか。また、どういう形で
政治責任に決着をつけるつもりであるのか。お
伺いをいたします。また、本
法案は、本
国会でどうなるのか、
総理の率直な見通しを
伺いたいのであります。
自治大臣は、どんな
日程的なめどを持って、本
国会で
成立をさせる自信があるのか。また、
法案不
成立の場合は、どういう形で一体責任をとるおつもりなのか。お尋ねをいたしたいのであります。
次に、
法案の
内容についてお尋ねをいたします。
総理は、
国会において、この
法案は、
審議会の
答申を最も忠実に尊重してつくったと、たびたび答えられています。また、お話のありますように、
答申を尊重し、骨抜きどころか、
小骨一本も抜くことはしないと申されました。この
答申の最大のねらいは、五年後に
会社、
団体の
政治献金を禁止させ、
政党の運営は
党費と
個人献金だけでまかなうことができるように、
政党に
近代化、
組織化への自覚を促している点であります。
政治資金の
規正強化は、そのための当面の
措置であります。
審議会でも、従来の
答申を大幅に後退したものを出すのはおかしいという
意見もありましたが、しかし、今回はそれを
実現しやすくするため、現在では制約を受けることの少ない
団体二千万円、
個人一千万円という
金額が示されたのであります。五年をめどに
会社、
団体の
寄付を禁止するという前提条件があってこそ、この
金額の
制限も
意味があるのであります。しかるに、
法案のどこにも、経過的にこの目標を達成することは書かれていません。基本的な点がぼけてしまって、不徹底な
改正でお茶を濁すよりは、
政治献金は
個人に限ることを
中心とした
改正を他日に期して、
改正を見送れという
意見すら
国民の中から出ているのであります。
総理に
伺いますが、五年ということはなぜ
法律に書かないのでありますか。また、この
趣旨に賛成なのか反対なのか、お答えをいただきたいのであります。
また、この
法案では、国や
公共団体と
請負や特別の
契約をしている者の
寄付の条件を
答申以上にゆるめたり、
答申が具体的に触れない
会社、
団体の
寄付については、現に受けている減税をはるかに上回って、公益の増進に寄与し緊急を要する公益
法人の
寄付のみに許している指定
寄付並みの、全額損金という特別
措置を受けることにしています。まさに
政治献金の
制限ではなくて、奨励だとさえ言えるのであります。
大蔵大臣にお尋ねいたしますが、なぜ
法人についてこんな大幅な減税を認めたのか、その理由をお聞きしたいのであります。また、
個人の受けた
寄付については、今後どう処置をするつもりなのか、お答えをいただきたいのであります。
答申に全然ない
寄付あっせんの
規制を入れたり、労働協約まで拘束するような天引き徴収禁止が立法化されました。また、
答申では、
公職の
候補者及び
後援団体などは
選挙区内の者に対して
寄付をしてはならないと簡単明快に禁止をしていますのに、温泉招待はだめですか、
国会見学に来た消防団に帰りのバス代を出すのはどうなんだというような、ばかばかしい
質問をしなければならないほど、あいまいなことばで、一定期間を除いて野放しにしてしまいました。供応、接待、物品の供与も、一定期間を除けば自由にできることになりました。
政治が
国民に対してまずくいけば、それを補うために金が必要になることは、安保
国会後の
選挙で自民党が、勢力を維持するために、飛躍的に多額の金を使ったことを見れば、明らかなことであります。
実施の時期についても、
答申の
趣旨を尊重するというならば、明年一月一日から実施をするという初めの自治省の案が最低でありますのに、この
法案は実施の時期を明らかにしていません。参議院の新しい分野は安保の年まで続くので、負けられない
選挙だから、
選挙資金が不自由では
選挙に自信が持てないので、一年延期の線が出てきたといわれるのであります。実施時期を明らかにしないということは、骨抜きという種類の修正ではなくて、
答申に反撃をしているとさえ考えられるのであります。(
拍手)
自治大臣は、
衆議院特別
委員会で
原案に必ずしも固執しないと言っていますが、明年一月一日
施行というように修正されることについて、異議はないと思うのでありますが、どうですか。(
拍手)また、明年の参議院
選挙にこの
改正を適用するのかどうか、お答えをいただきたいと思うのであります。
以上述べましたように、
答申の精神を曲げたり、
答申にないことを加えたり、また大幅に変更したりしています。これでは修正が大幅過ぎて、骨抜きになったというよりも、全体として質が変化したと言って言い過ぎではありません。佐藤
総理が、党内の事情から
答申を
実現することができないので、最大の努力を払って、ようやくこの
程度にまとめた、総裁として、首相として遺憾だと、な態度が披瀝されるならば、まだそこにもありますが、こんな
内容で、
答申を最も忠実に尊重した、
小骨一本も抜かないなどと、白々しいことばを
国会の場で述べるようでは、どう考えても三百代言的なものの言い方だとしかとれないのであります。このことばを聞き、この態度を見たときに、
国民は、
政治家の言うことは信用できないという気持ちになるのは当然であります。
政治家という名のもとに、われわれもとんだ迷惑を受けているのであります。そこで、
総理にお尋ねいたしますが、これで最も忠実に
答申を尊重したというのは、いまのような御
説明では納得ができません。どういうわけで最も忠実に尊重したというのか、具体的にひとつわかるように
説明をしていただきたいのであります。また、
衆議院本
会議で、
原案に必ずしもこだわりませんと言われておりますが、
答申を忠実に尊重するという
意味で、
答申に近い案に修正されることは歓迎するところであり、拒むものではないという態度であるのかどうか、お聞きをしたいのであります。
最後にお尋ねいたしたいのは、
政治資金の
報告の問題であります。
この
法律は、
寄付の
制限を最も重要な事柄として、
罰則もきめておりますが、その
制限が守られているかどうかということは調査をしなければわかりません。特に
個人に対しては五十万をこえて
政治献金することを禁止していますが、もらった者が
届け出の義務はないのでありますから、これまた、これを守っているかどうか、よほど厳密な調査が必要なのであります。
届け出第一
主義の机上の点検ではどうにも発見する方法は見当たりません。
罰則がついて禁止されている事柄であって、単なる訓示
規定ではないのでありますから、
自治大臣が答えているように、悪知恵を働かすことは前提としていない、行なわれると考える脱法行為について
一つ一つ穴をふさぐのはこの
法律の性格ではないと申しているのでありますが、
罰則をつけて禁止していることが容易に脱法行為が行なわれ、これを防ぐ方法がないなどという
法律は、
法律として不適当、不備だと思うのでありますが、法務大臣の
見解をお聞きしたいのであります。
立ち入り調査を認めることは、本来自由であるべき
政治活動に警察権の介入する危険もあり、本来避くべきことだとわれわれも考えておるのでありますけれども、世論がこれを支持しているのは、
政党や
政治家の現状にその
原因があるのであって、むしろ、
政党人の反省すべきところであります。したがって、ざる法と言われた従来の方法を改めて、この
法律が正しく守られるという信頼を
国民から与えられるものにしなくてはなりません。そこで
自治大臣に
伺いますが、学識経験者による第三者の調査のための機関を設けることが必要ではないかと思うのでありますが、どうお考えになりますか。また、
選挙管理委員会に事務局を置いて常勤の
委員を置くなど、
委員会を充実させるとともに、
政治資金規正法の補則第三十一条を修正して、「
報告又は資料の
提出を求めることができる。」という
規定に、「かつ、必要な調査をすることができる。」とこれに加えても、その目的を達することができると思うのでありますが、この具体的な提案について、
自治大臣のお考えをお聞きしたいのであります。また、大臣が具体的な案を持っておるというならば、お聞かせをいただきたいのであります。また、
大蔵大臣に対しては、
選挙管理委員会の充実のため、どんな財政的な用意を考えているのか、お聞きをいたしたいのであります。
なお、御承知のように、先ごろ行なわれました
衆議院選挙、統一
選挙で、二十五都道府県の中の県市町村で、公費から多額の陣中見舞いが
候補者に贈られたことが明らかになりました。国または
地方公共団体と特別の
関係のある
会社が
個人にする
寄付について、
罰則をつけて
制限をしておりますのに、
地方公共団体が公金を出して
寄付する行為を野放しにしていることは、法の公平という立場から、公金であるという性格からも、放置すべきことではないと存じます。法的な
規制を行なうべきものだと思うが、これについて今後どうする考えなのか、法務、自治両大臣にお
伺いをいたします。
以上で、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕