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1967-06-16 第55回国会 参議院 本会議 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月十六日(金曜日)    午前十時十五分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第十七号   昭和四十二年六月十六日    午前十時開議  第一 緊急質問の件  第二 公害対策基本法案閣法第一二八号)及   び公害対策基本法案(衆第一一号)(趣旨説   明)  第三 資産再評価法の一部を改正する法律案   (内閣提出)  第四 所得に対する租税に関する二重課税の回   避のための日本国ノールウェー王国との間   の条約実施に伴う所得税法法人税法及び   地方税法特例等に関する法律案内閣提   出)  第五 住民基本台帳法案内閣提出)  第六 厚生省設置法の一部を改正する法律案   (内閣提出衆議院送付)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり     —————————————
  2. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、緊急質問の件。  藤田藤太郎君から、ILO第百五号条約批准促進に関する緊急質問が提出されております。  藤田君の緊急質問を行なうことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。発言を許します。藤田藤太郎君。    〔藤田藤太郎登壇拍手
  5. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、日本社会党を代表して、ILO条約批准に関し、政府に対し質疑を行なうものであります。  政府は、わが日本常任理事国として参加しているILOをどう理解しているかという点であります。  ILOは、一九一九年創立以来、働く者の保護と、世界の恒久平和のために、社会正義を樹立し、大きな成果をあげてきたのであります。世界の恒久平和とは、国と国との力によるバランス平和ではなく、人数の生活を高め、また世界労働者保護されるところから始まるのであり、この役割りILOが果してきたと言っても過言ではありません。一九四四年ILOフィラデルフィアにおける宣言は、「世界のいずれかの地域における貧乏は、世界のある地域の繁栄の障害になる」と言っております。日本ILOに対する歴史は、一九三七年三国同盟成立と同時にILOを脱退しました。戦後の復帰国民の願いでありまして、政府労使復帰運動をやってきたのであります。しかし、完全に復帰すると、経営者団体は、ILOの議決が三者構成できめられるので、これには従いにくいといって逃げを打ったのであります。政府ILOとの取り組みをさぼっていると言わざるを得ません。今日まで条約百二十六件のうち、日本は二十五条約しか批准をしていない。特に昭和二十八年以来、三条約しか批准していないのであります。そこで、政府お尋ねをしたいのであります。  政府は、ILO精神を十分に理解して、今後活動していかれるつもりがあるか。  二番目に、今後、政府は、条約批准促進勧告理解とに基づいて、国内行政をどのように発展さしていこうとするのか、その道筋を明らかにしていただきたいのであります。  三番目に、生産第一主義経済政策は、七十万件をこえる労働災害、加えて激化する公害によって、国民に恐怖と障害を与えております。通産大臣は、ILO労働保護の大精神理解して産業政策を進めておられるのかどうか、お尋ねをしたいのであります。  四番目に、外務大臣お尋ねをいたします。日本は、国際労働条約百二十六件のうち、二十五件しか批准していないことは、ただいま申し上げました。これで近代国家間の文化経済外交ができると思っておいでになるのかどうか、お聞きしたいのであります。  ところで、すべての人間は基本的人権を有すると高らかにうたったフィラデルフィア宣言精神は、そのまま世界人権宣言精神にも通ずるものでありますが、明一九六八年は、あたかも世界人権宣言の二十周年、国際人権年にあたるのであります。そこで、ILOモース事務総長は、総会決議及び理事会の決定に基づき、加盟国政府に対して、基本的人権に関連する最も重要な七条約のうち、未批准のものを明年までに批准するとともに、すでに批准した条約の完全な適用促進するよう、このほど要請いたしました。この際、私は、これら七条約に関する政府考えをただすことによって、ILOそのものに対する政府基本姿勢について伺いたいと思うのであります。  七条約とは、強制労働条約強制労働廃止条約結社の自由・団結権保護条約団結権団体交渉権条約農業結社権条約雇用職業差別待遇に関する条約男女同一労働同一賃金に関する条約でありますが、日本はすでに、二十九号、八十七号及び九十八号の三条約批准しております。  そこで、問題は二つに分かれるのであります。一つは、批准済み条約を完全に適用するために政府がこれまでにとった措置、及び、これからとろうとする措置を、政府ILO事務局に通知することになっております。もう一つの問題は、未批准の四条約批准するため、これまでにとった措置、及び、これからとろうとする措置を、ILOに通報しなければならないということであります。  批准済み条約のうち、二十九号条約はしばらくおくといたしまして、八十七号条約及び九十八号条約は、はたして完全に適用されているか。わが国労働行政に、労働関係に、血となり肉となって溶け込んでいると言えるか。答えは、遺憾ながら、いなと言わざるを得ないのであります。公務員制度審議会の一方的運営、並びに、労働者抜きの答申をたてにとって、関係国内法政令施行を強行したこと、人事院勧告完全実施を求めて、やむにやまれず立ち上がった一〇・二一統一行動に対しては、宮之原日教組委員長を含む大規模な刑事弾圧を行なったことなど、政府ILO精神に全く無関心であることの例証は、枚挙にいとまないのであります。  そこで、まずお尋ねをしたいのであります。  政府は、八十七号条約が完全に適用されていると考えているか。そして、ILOに対して、とのような報告を行なうつもりか。ILO理事会で正式に採択されたドライヤー報告書の性格と意義を、政府はどのように理解しているか。これが、八十七号条約解釈基準適用基準として国際的に承認された歴史的な文書であること、日本国内法労使関係とをはかるべきものさしであることを、政府理解しているのかどうか。  ドライヤー報告書は、ストライキが禁止される場合、労働者に与えられるべき代償措置として、「労働協約が両当事者を拘来すべきであり、また、完全かつ迅速に実施されるべきであるという原則は、きわめて不完全にしか適用されていない。その結果として、団体交渉公平性及び有用性に対する信頼はそこなわれざるを得ない。したがって、本委員会は、この事態の早期かつ徹底的な再検討勧告する。」と述べているのであります。このきびしい表現を政府は何と受け取っているのか。  三公社現業賃金交渉が、当事者能力の一〇〇%に近い欠除によって、全く団体交渉のていをなしていないこと、労働協約によって解決した事例のないこと、したがって、団体交渉に対する労働者信頼は全く失われてしまっていること、しかも、このことは、労働者のみならず、三公社現業経営者をも苦しめていること、このような事態に対する、早急かつ徹底的な再検討を、政府に迫っているものではないか。同じ論理は、毎年内容を大幅に値切って実施している人事院勧告についてもそうである。このようなやり方で公務員労働者信頼をつなごうとするのは、まさに木によって魚を求めようとするにひとしいと言わざるを得ないのであります。政府は、これらの問題の解決について、公務員制度審議会開店休業に藉口することなく、直ちに制度徹底的検討を行なうべきではないか。また、現在まで検討したことがあるのか。  次に、重要な役務や職業に従事する労働者ストライキ制限または禁止される場合には、当然その利益を十分に保護する代償措置が講じられるべきだというドライヤー報告書論理は、もし政府代償措置を講じることを依然として怠り、しかも反省の色を見せない場合には、労働者としては、その利益を守るための行動の自由を留保すべきであるという論理を当然に内包するものではないか。政府は、このことを承認するのか。わが国現行法体制において、公務員及び公共企業体労働者ストライキ権を否認され、しかもその代償措置は不完全であることを政府は認めるのか。労働者にとって、いかなる打開の道が残されていると考えるのか。これでは、労働者はまさに強制労働を余儀なくされているとしか言いようがないではないか。このように見てくると、労働者労働組合権の侵害から保障する八十七号、九十八号両条約適用は、きわめて不十分、不完全ではないか。  次に、未批准条約のうち、今国会提出済みの百号条約と、わが国関係の薄い十一号条約を除いて、百十一号条約、特に百五号条約批准する用意があるのかどうか。  百五号条約採択された翌年の春、すなわち、三十二年四月二十三日の参議院社会労働委員会において、私が当時の石田労働大臣に、「百五号の強制労働廃止に関する条約批准をする、この立場から国内法の問題の処理に当っている、こういう工合に理解してよろしいのですか。」と念を押したのに対しまして、石田労働大臣は、「その通りに御理解をいただいてけっこうだと思っております。」と、はっきり答えております。それ以来、すでに九年余の年月が経過しているのであります。かりに、条約に抵触する国内法部分があるとしても、これを条約に適合せしめるための時間的余裕は十分にあったはずであります。だとすれば、まさに政府の怠慢か故意か、そのいずれかであると断ぜざるを得ないのであります。政府の所見を承りたい。  しかも、ILO当局は、憲章十九条に基づいて、昨年百六十四回理事会の選定した二条約、すなわち、強制労働条約(二十九号)及び強制労働廃止条約(百五号)に関する実施状況報告を、来たる七月一日までに提出するよう、要請しているのでありますから、政府は百五号条約批准するのか、しないのか、何が批准障害になっているのか、その障害をいかにして克服しようとするのか、批准意思を表明しながら九年も放置しておいたという事実に照らしても、政府は、国会に対し、国民に対して、意思を明らかにする義務があると思うのであります。お答え願いたいと思うのであります。  最後に、昨年の第二十一回国連総会は、十二月十六日、世界人権宣言実施促進をはかるための国際人権規約を満場一致で採択をいたしましたが、去る三月のILO理事会は、同規約採択を歓迎するとともに、ILOに関する部分については、その履行に全面的に協力することを契約いたしました。問題は、同規約第一部八条が、「本規約当事国は、ストライキ権確保を約束するものとする。ただし、それがその国の法律に従って行使されることを条件とする。」と定めて、正面からストライキ権を保障しているのであります。この場合、国の行政に携わる公務供、すなわち、管理的地位に立って行政を執行する公務員については制限を設けることを認めておりますが、それ以外の大多数の公務員及び地方公務員については、基本的人権としてストライキ権が保障されるべきであることを規定しているのであります。政府は、かつて九十八号条約の第六条における管理職員除外規定についても、これを単純に「公務員」と訳して、すべての公務員団体交渉権の保障から締め出しているのでありますが、公務員という用語の解釈適用を、国際的常識の線まで、すみやかに引き戻すべきではないか、こう考えるのであります。その上で、国際人権規約について早急に批准措置をとるべきではないか、この点を明確にお答えをいただきたいのであります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  6. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  藤田君のお尋ねは、広範また多岐にわたってのお尋ねでございます。私は特にILOの問題について、その精神並びに政府の態度についてのお答えをいたしたいと思います。その他の事項については、担当大臣からお聞き取りをいただきたいと思います。  私が申し上げるまでもなく、御指摘のように、日本は、ただいまILO常任理事国一つであります。これは戦後におきまして、こういう方面においての協力を多とされた結果だと、かように私は確信しております。したがいまして、ILO精神とするところのもの、いわゆる労働条件の改善により社会主役を打ち立て、また、世界恒久平和に寄与するというこの精神を、よく理解し、また尊重し、活動してきておる結果だと思います。今後とも、ただいまの精神を十分理解し、尊重し、また協力してまいるつもりでございます。  その他の事項は、担当大臣からお聞き取り願いたいと思います。(拍手)    〔国務大臣早川崇登壇拍手
  7. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 第一は、ILOモース事務総長から、人権に関する七条約批准を、本年一月に希望してまいりました。その中で、第一の御質問は、すでにわが国批准をいたしておりまする八十七号条約、九十八号条約、二十九号条約というものが、完全に国内でも実施されておるかと、こういう御質問でございます。二十九号条約は、御承知のように、強制労働に関する条約でございまして、これはもうすでに憲法におきましても保障された条項でございまして、完全に実施されておるわけでございます。八十七号条約につきましては、近年批准をいたしまして、これに伴いまして国内法を改正をいたしまして、国内的には完全にこの趣旨実施されておるわけであります。九十八号条約、すなわち団体交渉権その他不当労働行為の禁止の条約でありまするが、これにつきましては、関係法令によりまして、この団体交渉権団結権というものは、国内適用を保障されておると考えるわけでございます。  次に、未批准の七つの条約の中の三つは、いわゆる百号と百五号、百十百万でございまするが、そのうち百号条約男女の同一労働同一賃金は、今国会にすでに提案し、御批准を願っておる次第であります。百十一号条約は、御承知のように、皮膚の色とか、あるいは、その他の政治的信条等によりまする雇用あるいは職業訓練差別の撤廃でございまするが、これは日本におきましても、ほぼそういう目的は達しております。今後この条約につきましては、検討をしてまいりたいと思います。  百五号条約につきましては、御承知のように、先進国におきましても、イギリス、西ドイツ、カナダを除きまして、フランスも、イタリアも、アメリカも、ソビエトも、批准をいたしておりません。特に、この西ドイツ等は、との条約批准したのでありますが、強制労働というものの解釈で、いま非常に困っておるわけであります。政治目的活動をしたことにより、刑罰を科しまして、これは強制労働に入るか入らないかということで、すでに批准をした西ドイツ等におきましても、この問題で困っておるわけであります。そのように、この強制労働という解釈が、ILOでは最終的にまだきまっておりません。さらに、エッセンシャル・サービス、基本的なサービス業務の者には刑罰を科していいという解釈がある。このエッセンシャル・サービスというものを、どの範囲のものに考えるかというような問題もございます。わが国におきましては、公務員法地方公務員法等刑罰規定がございまするので、そういう解釈問題、範囲問題等をあわせ考えまして、百五号条約は慎重に検討をしてまいらなければならない問題だと考えておる次第でございます。  次に、ドライヤー報告——ストライキ権を奪った三公社現業公務員に対する代償措置が不十分ではないかというドライヤー報告のことをお取り上げになっておるわけでございます。御承知のようにドライヤー報告は、これだけではございませんで、中央交渉の問題、あるいは、一律に三公社現業ストを禁止している、その中では、専売なんかはスト権は認めてもいいのではないかというような御意見も入っておりますし、労働組合関係につきましては、日本労働組合は、あまりにも経済目的を越えた政治的な活動が多過ぎるというおしかりも、労働組合に出しているわけであります。したがって、労使ともに対する一つのアドバイスでございます。その中に、藤田先生指摘の問題は、スト権を奪った代措償置が、完全に実施されておらないのではないかという御質問でございまするが、わが国におきましては、三公社現業につきましては、御承知のように仲裁裁定という制度、いわゆる公労委、労働委員会制度がございまして、政府は、この仲裁が下りました以上、いままで全部完全に実施をいたしておりまするので、代償措置というものが不完全に履行されておるということは、私は、誤解であり、誤りであると考えておるわけでございます。問題は、人事院勧告完全実施という問題でございまするが、ILO考え方では、一般公務員というものの場合には、その給与を法律できめればいいという解釈なんで、公務員の、あるいは地方公務員の給料につきましては、予算上あるいは法律で決定されておりますから、この問題は指しておらないのではないか、かように考える次第でございます。  それから、最後に、九十八号条約の第六条は、公務員管理職だけだという御解釈でございます。これは、実は非常な誤りでございまして、これは、公務員全体を含むのであることは、ILO結社自由委員会の第五次報告におきましても、一般職国家公務員地方公務員というものは除外できるという解釈になっておるわけでございます。したがって、九十八号条約というものは、団結権団体交渉権原則条約でありまして、しかも、公務員というものは、スト権を認めない例外規定として認められておるということが、ILO結社自由委員会結論であることを、御了承賜わりたいと思うわけであります。  最後に、明年の国際人権イヤーを迎えるにあたりまして、国連総会国際人権規約というものをきめまして、これは同町にILO採択したわけでございまするが、政府はこれを批准する意思があるかどうかと、こういう御質問でございます。この国際人権規約というものは、もうすでにILOのほかの条項とずいぶん重複する——労働組合の権利とか、広範にわたっております。この内容につきましては、いろいろ複雑でございますので、政府としては、これを十分慎重に検討いたしまして結論を出してまいりたいと、かように考えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣菅野和太郎登壇拍手
  8. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) ILO百五号条約に関連してお尋ねかと思うのでありまして、政府生産第一主義でやっておって、したがって、産業公害などについては、これを軽視しておるのではないかというような御質問であったと思いますが、政府は決して生産第一主義ではないのであって、生産公害などを防止することに鋭意つとめておるのであります。たとえば、鉱山保安に関する法律、あるいは化学工業におけるいろいろの爆発事件などを防止する法律、火薬あるいはLPガス取締法、そういうような法律を設けまして、産業公害発生をできるだけ防いで、かつ、生産の向上をはかりたい、こういうつもりで経済政策をとっております。(拍手)    〔国務大臣三木武夫登壇拍手
  9. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 藤田君御指摘のように、ILO関係条約はできるだけ多く批准することが好ましいことは、申すまでもないのであります。しかし、その条約の中には必ずしも解釈が明確でないものもございますし、内容の一部には日本の国情に必ずしも適合しないものもございますので、十分な検討を必要とすることは申すまでもないと思います。ほかの国々、先進諸国等においても、全部が全部批准しておるわけではないのでありますから、わが国が可能な限り、また意義のあるものは、できるだけ多く批准をするということは、これはもう方針として堅持しなければなりませんが、関係条約を全部批准しないからといって、近代国家としての外交を推進する上に障害を来たすとは考えていないのでございます。お答えいたします。(拍手)    〔国務大臣塚原俊郎登壇拍手
  10. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 公務員制度審議会現状のままあることは遺憾であります。言うまでもなく、公務員制度審議会は、公務員労働の基本問題に関していろいろと諮問をいたしておるのでありまするが、また、その審議会の任務から考えても、その重要性は言うまでもありません。一日も早い再開を私は希望し、また努力いたしておるわけでございます。今日まで、関係方々——特に総評の方あるいは同盟の方、その他関係方々にいろいろとお会いする際にも、強くこのことをお願いをいたしておるような次第でございます。今後とも公務員制度審議会再開に努力をいたす考えでございます。(拍手)      ——————————
  11. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 日程第二、公害対策基本法案閣法第一二八号)及び公害対策基本法案(衆第一一号)(趣旨説明)。  両案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者から順次趣旨説明を求めます。坊厚生大臣。    〔国務大臣坊秀男登壇拍手
  12. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 公害対策基本法案について、その趣旨を御説明申し上げます。  近年わが国においては、目ざましい経済高度成長が遂げられつつあり、産業構造近代化、人口の農村から都市への集中、新工業地域形成等が予想をこえた速度で進行しておりますが、このような急激な経済的、社会的変動の過程において、企業公害防止施設社会公共施設整備の立ちおくれ、立地や土地利用に対する適正な配慮の不足等のため、大気や水の汚染騒音悪臭等による公害発生が各地に見られ、人の健康や生活環境に対する脅威となって、重大な社会問題を引き起こしております。  このような公害を除去するため、政府としては、従来、大気汚染水質汚濁等発生源の排出の規制、公害防止施設整備促進のための金融上、税制上の措置等をそれぞれ実施してまいったところでありますが、公害問題は、複雑かつ困難な問題を内包しているため、必ずしも満足すべき効果をあげることができず、また対策制度化されていない公害も残されている現状であります。  これらの個々の対策を今後とも強化充実することは、もとより必要とするところでありますが、公害対策は、相互に有機的な関係を保ちつつ、総合的、計画的に推進される必要があり、そのためには、公害対策における共通の原則を定め、事業者、国及び地方公共団体公害防止に関する責務を明らかにし、公害防止のための基本的な施策を確立することが重要であります。  このような見地から、国民の健康を保護するとともに、生活環境経済の健全な発展との調和をはかりつつ保全することを目的として、ここに公害対策基本法案を提案することといたした次第であります。  以上が、この法律案を提出した理由でありますが、次にこの法律案の概要を御説明申し上げます。  第一に、公害防止に関する事業者、国、地方公共団体及び住民責務を明らかにしたことであります。  第二に、大気汚染水質汚濁及び騒音については、環境基準を定めることとし、公害防止施策は、この基準確保を目標にして、総合的かつ有効適切に講ずべき旨を規定したことであります。  第三に、公害防止のために国及び地方公共団体実施すべき施策について規定するとともに、特定の地域については、施策の総合的な効果確保するため公害防止計画を策定し、その実施を推進することといたしております。  その他、公害にかかる被害に関する救済制度整備促進公害防止についての費用負担財政措置、並びに公害防止のための行政組織として公害対策会議及び公害対策審議会を投資すること等について規定しております。  以上が、公害対策基本法案趣旨及び概要でございます。(拍手
  13. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 衆議院議員角屋堅次郎君。    〔衆議院議員角屋堅次郎君登壇拍手
  14. 角屋堅次郎

    ○衆議院議員(角屋堅次郎君) 私は、公害対策基本法案につきまして、日本社会党を代表して、提案の理由並びにその趣旨を御説明出し上げたいと存じます。  およそ公害は、今日洋の東西を問わず、産業経済の目ざましい発展、人口の都市集中化、交通機関の高度の発達等に伴い、逐年増大の傾向を示し、大きな社会問題、政治問題になっております。したがいまして、いずれの国においても、国民公害から守るために、公害の予防、排除、救済について、思い切った措置を講ずべきことは、まさに現代政治に課せられた重大な責務と申さなければなりません。  災害は忘れたころにやってくるということわざがありますが、公害には必ず公害発生源があり、この発生源に対する総合的な対策を誤まれば、ときに被害が人命にまで及ぶことがあります。かの有名なイギリスのロンドン事件では、一九五二年十二月五日から九日まで約一週間のスモッグで、四千名にのぼるいたましい犠牲者を出しました。またベルギーのミューズ事件、アメリカのドノラ事件、メキシコのポザリカ事件等でも、相当の死者を出しております。わが国では、熊本の水俣病事件で、四十一名の死者を出し、その原因の徹底的究明をあいまいにしている間に、第二の水俣病事件が、新潟の阿賀野川で発生し、現在大きな社会問題、政治問題になっていることは、御承知のとおりであります。いやしくも、公害が人命にまで被害が及ぶことは、近代国家の恥辱であり、人道上からも絶対許し得ないところであります。この意味で、二度にわたる水俣病事件の政治的責任は、きびしく糾弾されなければなりません。  わが国の憲法は、その第二十五条第一項において、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」ことを述べ、同条第二項において、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」旨規定しております。わが国公害現状を見るとき、はたしてこの憲法の条項は、完全に守られていると言えるのであろうか。いな、むしろ公害にかかる国民基本的人権は、全く無視され、侵害されていると断ぜざるを得ないのであります。  今日都市の住民は、煤塵によごれた空気を吸い、亜硫酸ガスのために、ぜんそくなどで苦しんでおります。かつては魚をつり、遊泳ができるほど澄んでいた川の水は、工場の廃液や家庭の汚水のために、どぶ川と化しつつあります。また、ジェット機や交通騒音のために、静穏な日常生活は破壊され、学力の低下や食欲減退、高血圧の増加等を、引き起こしております。地下水の過剰くみ上げ等による地盤の沈下は、災害の危険を増大させております。その上住宅難、交通難、生活難等々が加わるのであります。かくして都市の生活環境に望まれる安全、健康、能率、快適の条件は、ますます遠のくばかりであります。東京都の美濃部知事が、選挙の際、「東京都に青い空を」と都民に訴えて、共感を得たことは、けだし当然のことと申さなければなりません。いずれにせよ、今日わが国公害対策が、従来のような産業偏重、生産第一主義の姿勢では、これからの公害対策の万全を期することは、とうてい不可能であり、われわれがつとに国民の健康、静穏な日常生活、財産及び農林水産資源等を公害から守るという大前提に立ったみずからの公害対策基本法案を提示し、政府に強く善処を要請してまいりましたのも、責任ある政党の立場として、けだし当然のことであります。佐藤内閣も、われわれの強い要請と世論の前に、ようやくみこしをあげ、先ほど坊厚生大臣より御説明のありました内容政府案を提案されたのでありますが、政府案発表当時あらゆるマスコミがあげて批判したごとく、経済界の圧力に屈して、当初の厚生省試案より大幅に後退し、およそ公害対策基本法案たるにふさわしいバックボーンに欠けていることは、まことに遺憾であります。われわれは、わが国公害現状と将来に深く思いをいたし、国民公害対策基本法案寄せる期待にこたえるため、最善の努力を尽くさなければなりません。その意味において、われわれの案とそまさに国民の期待にこたえる最良の案と信じ、以下、若干政府案にも言及しつつ、その内容のおもなる点を御説明いたします。  まず第一は、本法の目的に関する事項についてであります。われわれの掲げている目的は、そのまますなおに御理解いただけると存じますが、政府案には「経済の健全な発展との調和を図りつつ」という、きわめて重要な字句が挿入されているところに問題があります。この表現は、第一条の目的と第八条の環境基準に出ておりますが、本来、公害防止とは異質のものであり、国民の生存権にかかおる公害対策が、産業界の要求に道を譲って公害対策の万全は期し得ないし、企業自身も他の企業公害によって被害を受けている事例に徴しても、当然削除すべきものであります。  第二は、公害に対する事業者の責任を明確にうたっていることであります。本来、公害は、発生者責任主義によって処理すべきものであり、公害の主たる発生源たる事業者は、その社会的責任の立場からみても、進んで公害防止のための万全の措置を講ずべきであります。このことは、われわれの基本的主張であるのみならず、公害審議会答申、社会開発懇談会中間報告、人口問題審議会の意見、国民生活向上対策審議会の答申等の中でも、一致して同様の主張を述べております。従来、日本事業者の場合、政府企業擁護の政策と相まち、公害に対する企業責任の自覚に欠け、あるいは責任を回避する傾向の強かったことは、経団連の「公害防止対策の基本的な考え方」の中でも、明らかに読みとれる点であります。事業者の中には、日本の産業経済地域開発に貢献しているというゆえをもって、ある程度の公害発生は大目にという尊大な気持ちがあったり、あるいは、企業間競争や国際競争に勝ち抜くためには、コストのかさむ公害防止施設の設置や所要の公害防止事業の実施など、ほどほどにという企業エゴイズムの強いものもあります。われわれをして率直に言わしむれば、年間六千億円をこえる交際費のたとい三分の一でも、四分の一でも、思い切って公害防止事業に振り向けるという新しい企業者モラルを持つべきだと思うのであります。なお、公害防止の徹底と公害にかかる被害者の救済に万全を期するため、事業者の無過失賠償責任を明らかにしたことは、きわめて重要な点であります。  第三は、国及び地方公共団体責務を明確にし、公害発生防止のみならず、公害にかかる被害の救済に関する施策を講ずることを明らかにいたしました。  第四は、政府公害対策に関する五ヵ年計画を作成して、国会に提出するのみならず、これを広く天下に公表し、毎年その実施状況を国会報告する義務を課しております。  第五は、公害行政の一元化による所要の機構整備をはかったことであります。すなわち、今回新たに公害発生防止に関する行政事務及び公害にかかる紛争の処理に関する事務を、統一的に、かつ、公正に遂行させるため、総理府の外局として中央公害対策委員会を置き、この委員会に事務局及びその地方支分部局、中央公害対策審議会並びに公害防止研究所を置くことといたしております。  また、都道府県または指定都市に地方公害対策委員会を置くことができることとし、地方公共団体の自主性を尊重しつつ、公害行政の一元化をはかる所存であります。  この点について、政府案は、現体制の上に公害対策会議といういわば関係閣僚会議ともいうべきものを設けるにすぎず、従来の各省のセクショナリズムの排除、迅速的確なる公害行政の運営などほとんど期待し得ないことは、過去の実績に徴しても、おのずから明らかであります。  第六は、公害にかかる許容限度の設定についてであります。中央公害対策委員会は、中央公害対策審議会の意見を聞いて、大気汚染水質汚濁、及び騒音のそれぞれについて、許容限度を設定することとし、その基本的条件は、住民の健康、静穏な日常生活、財産、農林水産資源等が侵害されないようにするため、必要かつ十分なものでなければならないと明確に規定して、公害から国民を守る国のき然たる態度を明らかにしております。  第七は、排出等の基準の設定についてであります。排出等の基準の設定については、中央公害対策委員会が、中央公害対策審議会の意見を聞いて行なってまいりますが、その権限を一部地方公害対策委員会等に委任することができることとし、中央、地方を通じ、実態に即した機動的運営をはかる所存であります。  第八は、公害にかかわる被害についての救済制度ついてであります。これは、公害にかかわる被害を受けた国民からすれば重大関心事でありますが、従来の事例に徴しても、公害紛争は、被害者と加害者の間で短期間の間に処理されることが一般的に困難であり、かつ、加害者が不特定多数で見きわめがたい場合においても、現に被害者が公害にかかわる死亡もしくは病気という事態も当然予想されます。したがって、われわれは、公害にかかわる被害者の立場に立って、救済基金制度や救済のための公害保険制度等の創設を検討し、その結果に基づく救済制度を確立して、公害にかかわる被害者に対する医療の給付もしくは生活費の給付または公害にかかわる被害についての原状回復等の救済がすみやかに行なわれるようにいたしたいと存じます。  最後に、公害の顕著な地域等における特別の施策については、政府案は、基本法案の中に実体法的性格の内容のものまで含まれていると考えられますが、われわれは、この点については明確に区分し、別に、公害の顕著な地域等における公害防止特別措置法案として、基本法案と同時提案しておりますことを申し添えておきます。  以上がわれわれの提出いたしました公害対策基本法案の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、御可決あらんことをお願い申し上げまして、提案理由の説明を終わる次第であります。(拍手
  15. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。柳岡秋夫君。    〔柳岡秋夫君登壇拍手
  16. 柳岡秋夫

    ○柳岡秋夫君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案されました公害対策基本法案について、総理並びに関係大臣及び提案者に質問をいたしたいと思います。  はなやかな工業開発の裏で、国民はいま公害におびえております。明るい太陽がほしいという声は、単に、一時的、局地的なものではなく、常に広く全国的に広がっておるのであります。そうして公害都市四日市では、企業政府の人命軽視の無責任な態度に対して、死をもって抗議をするという悲劇が再び起きているのであります。公害が社会問題としてやかましく論議をされましてから十年を経過いたしますが、その被害は深刻かつ重大化しつつあり、わが国の美しい国土と健康な国民生活を破壊するばかりでなく、農林水産業等の他産業にも悪影響を与えるなど、重大な問題となっておるのであります。  公害問題がここまで大きくなったことは、制度上の欠陥もさることながら、わが国企業政府の産業優先政策の庇護を当然といたしまして、経済活動や営利の自由を強調して、企業の社会的責任を自覚しないばかりか、政府もまた、企業保護生産第一主義の立場から、企業国民生活環境や健康を阻害することを、やむを得ないこととして見過ごしてきた人間無視の政治に、その大きな要因があるのであります。  国民の生命をあずかる政府の政治的責任はまことに大きいのでありますが、人間尊重を唱える佐藤総理は、今日のこの現状を招来した政治責任をどう感じておられますか、まずお伺いしたいのであります。  質問の第二は、公害問題に対処をする政府の基本的姿勢についてであります。  総理は、今国会の施政方針演説の中で、「社会の主体は人間であり、経済の繁栄は人間の尊厳と社会の福祉に奉仕するものでなければならない」と強調されました。政府公害対策基本姿勢を示します目的規定には、「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」という条項がございます。言いかえれば、経済の発展のためには、国民の健康が犠牲にされることもあるということであります。私は、ここに、政府の産業優先の基本的な性格が端的にあらわれていると思うのであります。人間の生命や健康を脅かすような経済の発展は、それ自体、健全とは言い符ないと思います。憲法で保障された、国民の健康で文化的な生活を営む権利を守るためには、公害発生源についての権利を制約することは、国の当然の使命であります。国民公害の被害から免かれる権利を持っていることを認めて、被害者の人権尊重を何よりも優先させるということを基本としなければならないと思うのであります。総理の演説が口先だけでないことを、ここに示していただきたいと思います。  質問の第三は、公害の責任についてであります。  都市公害は別といたしましても、公害企業活動の結果であることは明らかであります。したがいまして、その責任者は企業であることは論をまちません。この点、政府原案は、発生者責任主義をとっているにもかかわらず、それを具体化する原則の表明に欠けているために、その責任がきわめて不明確になっているのであります。すなわち、被害者に対する補償責任については、今後の検討にゆだね、また、公害防止事業に対する負担の範囲については、一切を別の法律に定めるとしているのであります。科学的に因果関係が証明でき、原因者がはっきりするのであれば私法上の救済の余地がございますけれども、当事者が多数で確定できず、また、因果関係の証明ができないところに、今日、新たな公害規制の必要が化じたのであります。したがって、公害関係についての立証は、常識的に見て因果関係があると判断できる程度であれば責任を認めるということにしなければ、公害問題の前進はあり得ないと思うのであります。企業活動と被害との因果関係が個別的に明白である場合はもとより、これが不明確な場合でも、無過失責任の原則を確立し、企業みずからの責任において救済措置を講ずべきであります。この点について、総理の見解をお伺いいたします。  また、厚生大臣は、「この法案は一般的な基本法であるから、一般的には無過失責任を規定できない」と衆議院の本会議において答弁をされました。しからば、鉱業法や原子力賠償法のように、個々の法律において個別的に規定する考えであるのかどうか、お伺いをいたします。  質問の第四は、救済制度についてであります。  基本姿勢のあいまいさが企業の責任を不明確にし、発生者の責任がごまかされてしまうのであります。四十一人もが死亡をいたしました水俣病が新日本窒素水俣工場から排出をする排水中のメチル水銀化合物であると判断をした政府は、二度とこのような事件のないようにということで、全国の同様な生産工程に対して調査と指導を行なったはずであります。しかるに、同じ事例が再び新潟県阿賀野川流域において発生したということは、政府に手抜かりがあったか、あるいは企業側の廃液処理に欠陥があったか、いずれにいたしましても、因果関係がはっきりしているにもかかわらず、企業は、当社に責任がないとして、裁判を受けて立つと豪語いたしております。政府もまた傍観の態度をとっていることは、きわめて遺憾でございます。このような企業政府の姿勢が続く限り、国民公害の被害から免れることはできないのであります。  公害の予防と、現に起きている公害の排除、そして被害者の救済制度の確立は、今日、公害対策の重安な課題であります。泣き寝入りや不当な示談に甘んずることのないように、すべての公害の紛争に、和解.仲介の制度、調停及び仲裁制度を設けるほか、被害者の申し立てによる公害発生源に対する施設の改善命令ないしは施設の使用中止命令などの行政処分の行使、さらには苦情受付窓口の一元化等、被害者の救済を徹底的に行なうべきであります。政府はいかなる救済制度考えているのか、厚生大臣から明らかにしていただきたいと思うのであります。なお、この際、阿賀野川事件に対する総理の御見解もあわせてお伺いをいたします。  質問の第五は、基本法の持つ効果と関連法律についてであります。過般の衆議院における政府の態度は、基本法で公害防止ができるような印象を受けることはきわめて遺憾であります。基本法は、具体的施策のよって立つべき基本方針の宣明を内容とするものであることは言うまでもありません。そして、それは憲法と異なり、他の関連法律に対して、法律的意味ではこれを規制する効果を持っていないのであります。そこで、基本法の審議にあたっては、関連法律をあわせ審議するのでなければ、その実質上の機能を確保することはできないのであります。しかるに、今国会に提出される関連法律案は、海水汚濁防止法案、工業立地適正化法案の二つだけでございまして、最も関係の深いばい煙規制法、工場排水法の改正案は、提案をされておりません。また、基本法に基づいて当然制定すべき費用負担に関する法案、被害者救済に関する法案については、その要綱さえもいまだ明らかにされていないのであります。公害はおくれればおくれるほど事態は深刻となり、解決は困難となるのであります。仏つくって魂入れずということばがございますが、仏ならざる仏では魂の入れようもないと思うのでありますが、関連法律が提案できない現出はどこにあるのか、また、いかなる法律を、いつ、いかなる内容でもって提案しようとするのか、厚生大臣にお伺いをいたします。  質問の第六は、公害行政の一元化についてであります。公害対策の適切な施策をはばんでおりますものに公害行政の多元性がございます。十二に及ぶ関係省がそれぞれの立場から、ばらばらに対策を打ち出してくるために、所管の不明確さから、手がつけられないものができたり、せっかく取り上げられた施策が、異なる立場からの牽制によって、効果がしり抜けになっているのであります。基本法が、実施部門の多くの名にまたがっておる施策について共通の目標を設定し、総合化をはかることにあるとするならば、総合化を確保する道として実施部門の一元化がより有効であります。厚生省も、こうした観点に立って、強力な権限を持った行政委員会としての公害委員会の設置を打ち出したと思うのでありますが、関係閣僚会議のごとき公害対策会議に後退をした理由はどこにあるのか、また、かかる寄り合い世帯的機関で国民の期待にこたえるような責任のある総合的施策が推進できると思うかどうか、お伺いしたいのであります。  また、総理に、この際、一元的行政機関によって責任体制を確立してこそ、総合的な施策の推進がはかられると思うのでありますけれども、御見解をいただきたいと思います。  質問の第七は、公害の予防対策についてであります。今後の公害対策の基調は、総合的な都市計画ないし地方計画に基づく土地利用計画による予防的施策でなければなりません。政府は、この際、土地利用、規制に関連をして、憲法第十二条及び第二十九条の解釈を明らかにし、土地利用原則を確立すべきであると思うのであります。また、都市計画法の改正を検討中でございますけれども、この中で公害規制にどのような地位を与えようとするのか、建設大臣にお伺いをいたします。  質問の第八は、公害防止技術の研究開発についてであります。今日、わが国公害防止技術の研究開発の体制は、少ない予算で、しかも各省ばらばらの研究が行なわれております。さらに、民間におきましても、利潤に結びつかない研究は放置をされ、研究の秘密主義と相まちまして効率的でないのであります。したがって、実用化率も低いのであります。国民の生命と健康を守る立場から、政府は、この際、試験研究機関の強化をはかるために、大幅な研究費の増額と、公害防止の総合試験研究機関を投資する考えはないか、厚生、通産両大臣のお答えをいただきたいと思います。  質問の第九は、中小企業対策についてであります。中小企業は、発生源が多発的であり、しかも技術の後進性と資金難で、防除施設の普及も容易ではありません。したがって、特にきめのこまかい政府の援助が必要であります。今日、中小企業近代化資金等の貸し付け状況を見ますると、貸し付け予定ワクに対し申請件数がきわめて少ないのであります。したがいまして、公害防止施設のための融資は、自己負担をやめまして、全額無利子の融資とする考えがないかどうかを、この際、通産大臣にお伺いしたいのであります。  次に、角屋衆議院議員に、政府案と社会党案の基本的な相違点をお伺いをいたしたいと思います。  最後に、今日、公害対策は、実行あるのみであります。どんな困難な事情が伴うとしても、強力に推進をしなければならない国民的課題であります。したがって、私は、国民の立場に立った具体的施策のすみやかな実施のために、政府も、原案にこだわることなく、党派をこえて各党のそれぞれの基本法案を謙虚に検討し、一日も早く人権優先の理念に基づいた基本法の制定をはかるべきと思うのでありますが、この点についての総理の所信をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  17. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 柳岡君にお答えいたします。  御承知のように、最近の経済の発展は、すばらしい、目ざましいものがあります。その結果、私どもの生活も向上し、また、繁栄をもたらしたのでございます。しかし、その一面に、御指摘にもありましたように、過大都市が出てくる、あるいは工業地帯の集中が行なわれる。その結果、あるいは大気汚染する、水質汚濁する、騒音が起こる、あるいは動揺等を感ずる等々のいわゆる公害発生を見たのであります。そうして今日これが社会問題になり、同時に大きな政治問題になったと、かように私は考えております。経済の発展、これをなくして昔のような自然の姿に返す、こういうことは、幾ら公害がたいへんだと申しましても、だれも考えてはおりません。やはり文化を、文化的生活をもとへ返す、こういうものではない。しかし、ただいまのような産業が興るにしても、これに対する対策よろしきを得ればいまのような公害を起こさなくても済みはしないか、お互いの健康を守り、同時にまた生活環境を保持することができるのではないか、これが私どもの考え方であります。そこで、私は政権を担当すると同時にまず申したことは、社会開発の必要を強く説いたのであります。経済開発、これはたいへん望ましい、それぞれの効果のあることではあるが、しかし、人間の尊厳、同時に社会公共の福祉に奉仕する、これが経済開発の目的でもある、そういう意味でいわゆる社会開発の必要性を説いてまいりました。今日この観点からただいまの公害問題にも対処しようとするのであります。今回提案いたしまして御審議をいただいておる基本法は、そういう観点に立って実は立案されております。どうかさような観点に立って、目的を十分達するかどうか御審議をいただき、お説にもありましたように、今日これはほうってはおけない、一日も早くりっぱな法律をつくるべきだ、かように私も考えますので、十分の御協力、御審議のほどをお願いをしたいと思います。  そこで、基本的な問題で、どうも今回の基本法を見ると、「経済の健全な発展との調和を図りつつ」、こういうようなことを言っているが、ここはどうも重点がぼけるのではないかというお話であります。しかし、私がまず第一段に申し上げましたように、すべてのもの——政治はもちろんでありますが、経済の開発も公共の福祉に奉仕するものだ、こういう観点でただいまの調和の問題を考えるのでありますから、本末は絶対に転倒するようなことはございません。どうかその辺は、また十分監視していただきたいと思います。  そこで、第二の問題といたしまして、この公害発生する、そうすると、これの対策もいろいろあるが、事業者、国、地方団体等がそれぞれ対策を立てていくが、まず何よりも事業者の無過失責任、そういう制度考えたらどうか、こういう御指摘であります。これもなるほど一つ考え方かと思いますが、ただいまのわが国のいわゆる憲法のもとにおいての法制の基幹はいわゆる過失責任、そういう考え方でものごとは法制ができております。これがそのいわゆる無過失責任——原子力の損害の場合だとか、あるいは石炭鉱業の場合等にあるようないわゆる無過失責任、そのたてまえでものごとを考えることが、いまの法制と調和するかどうか、これはひとつ十分考えていただきたいと思います。でありますから、無過失責任、これはその範囲なりあるいはその規模なりがやはり議論の対象になるのではないだろうかと思います。で、私は全然無過失責任を無視するというものではございませんけれども、この扱い方についてはよほど慎重に審議していかないと結論は出てこないように思います。また、この無過失責任の制度がよし採用されたにいたしましても、それで公害自身が発生しないというものではない。私どものねらいは公害発生させないことにあるので、公害ができたらその責任の追及もいたしますが、それは、追及する場合には、事業者、国並びに地方公共団体がそれぞれ責任を分担して処理していく、こういうたてまえであって、できるだけ公害発生しないようなくふうをすべきだと思います。先ほどの柳岡君のお話にも、土地の利用計画を立てろ、あるいは私権についても適当に制限を加えるべきではないかと、こういうことなどは、いわゆる公害発生しないようにと、こういう意味からのいろいろのくふうだと思います。それらの点を全部勘案いたしまして対策を立てていく考えでございます。  さらに、公害関係はそれぞれの所管省が非常に多数にのぼる。したがって、ときに一貫性あるいは総合性を欠くおそれがあるのではないかと、こういう御指摘であります。私も、その点をたいへん心配しております。担当省によりまして、取り扱い方が別になると幸不幸が生ずる、かように思います。しかし、私は、それぞれの所管省がそれぞれの専門的な知識を十二分に働かして、そして公害と取り組む、こういうことが最も望ましい方法ではないかと思いますし、総合的な統一性を保持するためには、私自身が長になりまして、そうして関係閣僚会議を開催すること、それで十分対策が立ち得るように考えておるのであります。  また、阿賀野川事件といわれるものについてのお尋ねがございましたが、その詳細は、厚生大臣からもお答えすると思いますが、ただいま関係各省におきまして真剣に急いで、その原因を探求しております。いずれ近く、正式にそれがはっきりし、結論が出てくると、かように思いますので、それまで、いましばらくお待ちをいただきたいと思います。  被害者の方々に対する援護方法につきましては、また、医療等につきましては、これは万全を期する考え方でございます。  最後に、公害防止についての技術開発並びに技術研究所を設けろと、こういう御提案でございます。公害は、ただいまいろいろの議論をされておりますが、何といっても公害発生しないようにすること、これがまず第一でございますから、御提案のように、公害発生しないための科学技術を研究する、これは最も急を要する問題だと思います。ただいまそういう方向で検討はいたしております。また、ただいまの研究所、そういうセンター、そういうもの等については、これは前向きの立場で十分検討してみたいと、かように用心います。(拍手)    〔国務大臣坊秀男登壇拍手
  18. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 私に対する御質問お答えを申し上げます。  まず第一は、公害についての無過失責任についてどうかと、こういう御質問でございますが、すでに総理から詳しく御答弁を申し上げたとおりでございますが、一言補足をさしていただきますならば、公害基本法は、きわめて複雑多岐なる公害に対する基本的な政府の方針、態度といったようなものを規定したものでございまして、この複雑多岐なる、いろんな問題に対しまして、無過失責任をとるということも、これは立法上その他の関係で非常に問題が多かろうと思いまして、無過失責任は基本法においてはとらなかったわけでございますが、御指摘のとおり、ほかの単独の法律におきましては、無過失の責任をとっておる法律もございます。そういったようなことも勘案いたしまして、この基本法に関連する諸般の法律案に対しましては、これは慎重に検討をいたすべき問題であろう考えております。  次に、救済制度を一体どうするかと、こういう問題でございますが、日本国民は、何ぴとも民法その他に基づく損害賠償を請求できることになっておることは、これは当然でございますけれども、公害については、因果関係を十分明らかにすることができないような場合が多い。そこで、訴訟技術上の問題もあるので、現在、水質保全法、ばい煙規制法等におきましては、都道府県知事による和解の仲介の制度が設けられております。今後は、さらに公害に関する紛争処理の制度整備、被害の鑑定や、原因の把握のための専門機構の整備などを検討するとともに、一般住民からの苦情の処理や、救済資金を確保する方法としての基金または保険といったような構想というものを、これは検討してまいるべきものだと考えております。  なお、原子力による被害及び石炭鉱業による被害については、現在すでに原子力責任保険や石炭公害基金といった制度が確立されておりますので、このような考え方や仕組みについても、これを参酌いたしまして検討を進めてまいりたいと、かように考えております。  それから、基本法との関連法を一体どうするかと、こういう御質問でございますが、公害問題は、まことに複雑多面的な問題でありまして、この重大な問題を解決するためには、政府及び地方公共団体事業者住民の三者が一体となって公害に取り組むことが、何よりも重要でございまして、それなくしては公害問題は解決できない問題でございます。このような見地から、これら三者の責務公害問題に取り組むべきその基本的姿勢の方向を明らかにしようとするのが、基本法でありまして、政府におきましては、この基本法に規定している施策を、できるだけすみやかに実施していく方針でございますが、具体的な公害対策実施のための個別法令の制定、改正について、逐次検討を加えて、整備をはかってまいる所存でございます。  公害防止に関する法令で、今国会にすでに提出されておるものといたしましては、船舶の油による海水の汚濁防止に関する法律案、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害防止等に関する法律案がありますが、その他土地利用及び施設の設置に関する規則についても検討が進められております。今後、大気汚染の観点からのばい煙規制法の全面的な改正、騒音等のまだ規制されていない対象でありまするこの公害の規制等についても、早急に検討を加え、逐次法制化をはかってまいりたいと、かように考えております。事業者費用負担に関する法律の制定、公害にかかる被害救済制度整備についても、すみやかに検討を終えまして、その実施につとめる所存でございます。  次に、公害行政の一元化の問題でございますが、この点につきましても、総理からすでに詳しく御答弁がございましたので、重複を避けるために、私は差し控えさしていただきます。  それから、公害の総合的な研究をどうするかということにつきましても、これも総理から詳しく御答弁がございました。私から重複を避けさしていただきます。  以上でございます。    〔国務大臣西村英一君登壇拍手
  19. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 公害の予防につきまして、総合的な土地利用計画をつくる必要があるのじゃないかというお話でございますが、私も質問者と全く同意見でございます。ただいまも土地利用につきまして制限がいろいろございますが、たとえば、地域制によります住宅の制限、あるいは一定規模以上の住宅宅地の造成をやる制限等がございまするが、現在の都市の無秩序な拡散によりまして、住宅と工場が混在する、あるいは非常に環境が悪くなるとかいうことに対して、現在の方法では対処できません。したがいまして、総合的な土地の利用計画をつくりまして、秩序ある都市形成をしたいと思っておる次第でございます。また、都市計画をする場合には、より新しい制度を取り入れまして、公害の防除並びに環境のいい都市をつくりたいために、現在、建設省といたしましては、都市計画法を検討いたしておる最中でございます。  なお、土地利用計画を策定する場合におきましての憲法との関係でございまするが、この都市計画の策定のために私権が制限されたといたしましても、それは公害の防除であり、あるいは環境整備のためである以上は、これはやむを得ない。憲法第十二条ないし二十九条の精神に違反するものではないと考えておる次第でございます。一般財産権におきましても、現在では、それは公共福祉のためにはある程度の犠牲を払わなければならぬということは常識でございます。いわんや、公共性の最も高い土地についてはその感を深くするものでございまして、憲法のいう精神と違反しないと、私はかように考えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣菅野和太郎登壇拍手
  20. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 私に対する御質問として、公害防止の総合試験所をつくったらどうかということにつきましては、総理からすでにお答えになったとおりでありますが、なお、個々別にはすでにそういうような公害防止の技術の研究をやっております。たとえば、排気ガスを防止するために、工業技術院の機械試験所並びに資源技術試験所と両々相助け合って、官民一体で自動車安全公害研究センターをつくりまして、そうして排気ガスの防止の研究をいたしております。また、すでに昨年度からは脱硫研究を大じかけにいたしておるのであります。  なお、お話のとおり、総合的な試験研究所というものの必要はわれわれも痛感いたしております。  それから、ただいま大企業は、みずからの資金で公害防止の施設ができるが、中小企業は資金力が不足しておるからできないじゃないかということに対して、どういう対策があるかというお尋ねがあったように思いますが、それに対しましては、中小企業設備近代化資金によりまして、二分の一の無利子貸し付けをやり、また、中小企業金融公庫、公害防止事業団による低利融資を行なっておるのでありますが、さらに本年度からは、新たに発足する中小企業振興事業団から、共同排水処理施設に対し、八割の無利子融資を行なうことにしております。が、しかし、明年度以降におきましても、中小企業公害防止施設のために、条件をより有利にしたいという考えで積極的に考えておる次第であります。(拍手)    〔衆議院議員角屋堅次郎君登壇拍手
  21. 角屋堅次郎

    ○衆議院議員(角屋堅次郎君) 先ほど柳岡さんから、政府案と社会党案との、法案の基本的な差異についてお尋ねがございました。簡潔にお答えをいたしたいと思います。  私どもは、皆さんも御承知かと思いますが、すでに昭和四十年の四月に、社会党の公害対策基本法案国会に提出いたしまして、そして政府に、すみやかに政府公害対策基本法を出すべきである、こういうことを強く迫ってはいった経緯がございます。で、今回、社会党の公害対策基本法案を提案するにあたりましては、その後における公害審議会、あるいはまた、厚生省試案あるいは日弁連の意見、関係団体等の要望、こういうものを十分精査をいたしまして、今日の時点で、国民的な立場から、公害対策基本法として、いかなるものを基体的に包含すべきであるか、こういう立場から、今回の社会党の公害対策基本法案を提案をいたしたわけでありまして、したがいまして、四十年の四月に出した法案の中身と、基本的には差異はございませんけれども、相当現在の情勢に即応して、内容整備を行なったわけでございます。  先ほど来、柳岡さんの質問に対して、佐藤総則以下関係各大臣の御答弁がございましたが、私どもは、今日の時点において、公害対策基本法案をお互いの政治的責任においてきめていく場合において、まず考えなければならぬことは、今日までのわが国公害の経過と現状において、政府も、地方公共団体も、企業者も、いかなる反省の上に立つかということがまず出発点にあると思うのであります。  その場合に、公害の主たる発生源である日本企業者の多くは、公害問題についてはきわめて責任観念が薄い、あるいはまた、ややもすれば責任を回避する傾向にある。元来、アメリカやヨーロッパの事業者等の状態からいたしましても、いわゆる事業者自身は地域社会の一員である、生産活動をやると同時に、公害防止については、地域社会の一員として社会的責任を感ずる、そして、その立場から、企業者としての任務の遂行を、万全を期していく、こういうことが欧米の企業者の姿勢でございます。しかしながら、わが国においては、残念ながら、生産第一主義利益追求第一主義、こういうことに企業者は追われまして、公害防止に対する責任の遂行については非常に欠ける点があったことは、反省されなければならないと思います。同時にまた、政府自身の立場からいたしましても、特に昭和三十年来以降の、経済高度成長政策の中においては、公害問題については、いわば事後対策的な観念に追われて、生産利益追求、こういうものを助長するような経済高度成長政策をとってきた、こういうことに対する政府自身の冷厳なる自己批判がなされなければならないと思うのであります。  また、地方公共団体が、戦後のわが国経済の発展の中において、工場誘致ということに非常に追われまして、工場誘致ないしは地域開発にあたって、地域住民の福祉、地域住民におけるところの地場産業の育成強化等の関連において、正しい地域開発はいかにあるべきか、こういう点において、地方公共団体の従来のいおゆる地域開発のあり方については、冷厳な反省が必要であります。  私どもは、今日、全国的にひどくなってきている公害現状考える場合において、企業者の立場から見ても、政府あるいは地方公共団体の立場から見ても、今日の公害の深刻なる現状を、公害対策基本法案を制定するにあたって、それぞれの責任分野において、いかに責任を感じ、姿勢を正し、そうしてまた、今後、公害の絶滅のために、それぞれの責任分野で何をなすべきであるか、こういう立場において、本来基本法がつくられなければならない、こう思うのでございます。  そういう点から考えてまいりますと、たとえば先ほども佐藤総理から御答弁がありましたが、第一条の目的、あるいは新しく創設をされました環境基準の第八条において、「経済の健全な発展との調和」という美名のもとに、国民の生命、健康が二次的に取り扱われ、あるいは「経済の健全な発展」に道を譲るがごとき条文を挿入をいたしたことは、これは経済界の要請ではありましょうけれども、公害防止の立場から見た場合には、これは当然削除されるべきものでございます。同時に、企業の責任の立場から申しますならば、私ども並びに野党の、他のすでに提案されておる法案の中でも提示されておりますように、先ほど、総理、関係大臣から御答弁がございましたが、無過失賠償責任、こういう立場に立って企業者が公害対策に対するみずからの責任を遂行していく姿勢が、今日大きく望まれておると私どもは思うのでございます。  具体的な二、三の重要な問題についてさらに触れて、簡潔にお答えをいたします。  まず、環境基準、排出等の基準に関連をいたしまして、政府案では、環境基準、排出等の基準の相互関係がきわめて不明確であります。いわば、環境基準は、排出等の基準に対する政策の目標的な性格を持っておる感がいたしますけれども、私ども社会党案では、環境基準を「許容限度」と表現をしておりますが、そう基本的に大きい差異はないと思いますけれども、この場合には、許容限度は、国民の健康、静穏な日常生活、財産、農林水産資源の保護の立場から、必要かつ十分なものでなければならないということを明定をいたしまして、やはり公害防止は人間の生命と健康が基本である、こういう立場で環境基準をきめるべきであり、それを下回った条件下において、各工場その他の排出等の基準がきめられていくべきである、こういうことを明確にし、しかも許容限度については今後常に科学的検討を加えながらレベルアップをしていく政策的意欲も明らかにしておることは、御承知のとおりであります。  なお、重要な救済制度の問題についても、本来、救済制度の基本的な考え方としては、医療費の給付問題、生活費の給付問題、被害にかかる原状回復問題等々を含んだ救済制度を中身にすべきが基本的な考え方でございまして、政府案では、単にこれらの救済制度については検討をするという考え方をしておりますけれども、何といっても、公害については、公害の予防・排除・救済、この三位一体が基本法の中で明確にされなければ、バックボーンに欠けると申し上げなければなりません。  なお、農業基本法の場合においても、あるいは中小企業基本法の場合においてもとられておる国会に対する報告義務が、なぜか政府案では除かれておるわけでございます。今日、国民の生命・健康にかかわる公害防止の問題について、他党の場合には十年という長期目標になっておりますが、われわれは五ヵ年間の目標、それに基づく総合計画、年度別実施計画を国会報告するとともに、天下に公表する。また、その実施状況については毎年度国会報告する義務を課しておるのでありますが、群、公害の問題については、政府案にはそれがない。この点は、他の政府の基本法案に準じて、国会に対する報告義務を課し、天下に総合計画の内容を明らかにすることは、責任ある政治の止揚から当然とられなければならない問題であると思います。  なおまた、先ほども柳岡さんが触れられたように、重要な問題は、今日、公害防止については十数省にまたがっております各省ばらばらな権限の中で、実効をあげ得ないのが今日までの実態でございます。したがいまして、公害防止のためには、中央公害対策委員会、地方公害対策委員会、こういう一元的な機構の中において、公害の予防、公害の排除、公害の救済、こういう問題について、国民的な立場からこの問題を処理する責任ある体制がとられなければならない、かように考えておるわけでございます。  なお、最後の問題については、委員会の審議を通じて御説明申し上げたいと思います。(拍手)     —————————————
  22. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 小平芳平君。    〔小平芳平君登壇拍手
  23. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は公明党を代表いたしまして、ただいま議題となっております公害対策基本法案について、総理並びに関係大臣に若干の質問をいたすものであります。  質問に先立ち、まず総理にお願いいたしたいことは、公害問題は十数省にもわたる複雑な問題でありまして、それだけの大臣全部をここに御出席願うわけにはまいらないので、私は基本的な問題についてお尋ねいたしますので、関係大臣のいない問題については、総理から一括して御答弁をお願いしたいわけであります。  産業公害現状については、多くの説明をここに述べるまでもなく、いまや人命にかかわる重要な問題であり、公害対策こそ、最も焦眉の急を要する政治的課題であると思うのであります。そこで、今国会にも公害対策基本法案が、内閣からも、また各会派からも提出されております。これはみな、国民大衆をいかにして公害から守るかに、最も重要な目標があるわけであります。しかるに、政府案は、この基本的な目標からはずれていることを、まず指摘せざるを得ないのであります。  そこで、質問の第一は、まず政府案は、第一条の目的に、「国民の健康を保護する」ことと「経済の健全な発展との調和」をうたっております。総理は先ほども経済発展の重要なことを強調されましたが、もちろん、われわれも経済の発展をないがしろにしろと言うのではありません。ただ、経済発展のための法律はほかにもたくさんあるわけであります。したがって、この公害基本法になぜ経済の発展を入れなければならないか。公害基本法は、経済の発展した現段階において、あるいはまた、将来さらに発展したときに、いかに公害から国民を守るかが、それが基本法でなくてはならないわけであります。現実に公害に悩んでいる人たちがたくさんいるときに、経済発展との調和をうたうという、その政府の姿勢に対して、はなはだ理解に苦しむものでありますが、総理の明確なる御答弁をお願いしたいのであります。  質問の第二は、国会でこのような論議をしている問にも、去る十三日、三重県の四日市では公害病患者が病気を苦にして自殺したと報道されております。すでに自殺者は二人になっております。この四日市の場合などは、工場ができてから住宅ができたのではありません。白砂青松の美しい自然の中に住んでいた人たちです。その住宅街に隣接して大工場が建設されたとたんから、このような公害に苦しめられ始めたのであります。まずもって政府は、このように現在苦しみ悩んでいる被災者の救済に努力すべきではありませんか。政府の基本法には、「政府は、公害に係る被害に関する救済の円滑な実施を図るために必要な制度整備を行なうものとする。」といっておりますが、いかなる救済制度を立てようとするのか、具体的に総理並びに厚生大臣にお伺いしたいのであります。  四日市ではすでに公害関係医療審査会をつくり、ここで認定された患者には治療費の全額を補償しております。われわれはすでに以前から、国がこれを傍観しておるべきではないと強調してまいりましたが、ようやく四十二年度予算に国が医療費の八分の一負担するようになっております。しかし、それはわずか百万円であります。われわれはこうした救済制度を全国にわたって制度化していくべきだと考えます。新潟の阿賀野川水銀中毒被災者に対しても、治療費二百万円が厚生省から支出されることになったといわれますが、このように単発的な一時的なものでなく、法律の上で明確な制度をつくるべきだと考えますが、いかがでしょうか。金額においても、百万円とか二百万円というわずかなものでなく、本格的な対策を講ずべきが当然でありますが、総理はどのようにお考えですか、お伺いいたします。  質問の第三は、環境基準の設定についてであります。国民大衆を公害から守るためには、この環境基準のきめ方、その内容、また、それをいかにして強力に実施するかにかかっております。厚生大臣は、いかにしてこれをきめ、国民の納得のいく基準を強力に実現することができるとお考えか、また、その基準はいつできるのでしょうか、その具体的な対策と決意のほどをお伺いいたします。  それにしても、わが国公害対策現状は、調査研究がはなはだ立ちおくれております。いま、一例をあげるならば、大部市や幹線道路沿いに住む人たちにとって大きな悩みは、自動車の排気ガスの問題であります。ところが、諸外国ではすでに排気ガスについての研究も進み、実施に移されて、相当の効果をあげているのに、わが国ではまだ、ほとんどその効果をあげていない。しかも、これを担当する運輸省では、自動車公害対策の研究を船舶技術研究所の中に置いております。なぜ自動車の公害対策を、独立した研究所で行なわないのか。しかも、この部門の定員は、部長以下わずか十人、研究予算もわずかで、はなはだ不十分であります。こうした研究こそ、政府が力を入れなくてはならないのであります。利潤本位の業者が、とうていそのような研究を行なうわけがありません。したがって、政府の努力に待つ以外にないのでありますが、どのようにこの研究を充実させていくかについて、運輸大臣、大蔵大臣にお伺いしたい。特に、大蔵省が予算の査定の段階で、これらの研究についての予算を大幅に削減したと言われますが、いかがですか。また、わが国の自動車が、公害対策を怠っていると、もはや外国では使えなくなってしまうのではないか、今後の自動車の輸出にも影響する問題として、通産大臣にも御所見をお伺いしたいのであります。  次に、質問の第四は、公害行政の一元化についてであります。総理も、その必要をお認めになっているように発言しておられますが、具体的にどういたしますか。現状を見れば、たとえば、水について、企画庁、厚生省、農林省、建設省、通産省等と、それぞれ予算を取って、調査などを実施しています。一本の川、一つの海に対して、なぜそんなにばらばらの調査をしているのか、空気にしても、厚生省、通産省、農林省、建設省等が調査をする。空気はただ一つでしょう。そこで、私は一歩譲って、調査はそれぞれの部門で必要だとしても、公害防止のためには、そのような各省ばらばらでないところの、強力な実施機関が必要だと考えますが、いかがですか。政府の基本法は、相変わらずばらばらですが、これについて総理、大蔵、厚生の各大臣から御所見を承りたいのであります。  最後にお伺いしたいのは、今後の具体的な対策についてであります。ただ、基本法ができただけでは、実際の効果はあがらないことは、先ほど来のお話のとおりであります。この精神を具体的に実現するために、各省では、具体的な関連法案をいつまでに準備するのか。先ほども御答弁がありましたが、ここで、公害に悩む国民に対して、いつになったら安心して生活ができるようになるかを、総理並びに関係大臣——関係大臣がごく少数でありますので、特に総理から、誠意をもってお約束願いたいわけであります。  また、企業は、いまだに積極的に公害防止にかかろうとしないうらみがありますが、そこで、中小企業に対しは、特に積極的な助成措置を講ずべきであります。従来、すでに事業団もでき、融資の道も開かれておりますが、国全体の公害現状から見て、とうてい満足のいく成果をあげていません。先ほど通産大臣の御答弁にありますけれども、現状の成果は、とうてい私たちの国民大衆の納得のいく成果をあげていないことを、よく認識してかからなければならないと思うわけであります。また、公害発生する企業に対しては、無過失責任の原則を認めるべきであります。厚生大臣は先日の衆議院本会議で、今回の法案には無過失責任というものを規定するに至らなかったが、今後、重大な検討事項として残していきたいと答弁し、先ほど、厚生大臣は、やや具体的に御答弁をされておりましたが、国民の安心できるような、具体的な、明確な御答弁を、重ねてお願いいたしたいのであります。また、この点について、佐藤総理からも先ほど答弁がございましたが、総理自身もこれを重要な検討事項とお認めになっていらっしゃるのかどうか、御説明を願いたいのであります。  以上、総理並びに厚生、通産の各大臣にお伺いしまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  24. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。先ほど柳岡君にもお答えいたしましたが、だいぶ重複する点があるようですが、小平君、特にこれらの点について、重複するにかかわらず、お尋ねでありますので、重ねてお答えいたします。  そこで、いわゆる経済の発展と調和をはかる、こういう点でありますけれども、これはなぜそういう字句を挿入したか、こういうお話であります。いままでしばしばいわれておりますものは、産業第一主義、あるいは生産第一主義、こういうことばを皆さん方は好んで使われるようであります。しかし私は、この産業の発展、これは大事な文化的国家をつくる上に、また繁栄する社会をつくるために必要なことだと思いますが、この経済の発展だといって、ただそれを野放図にいたしますと、たいへんな公害が起こる、先ほど来申しましたような高度経済成長の結果が、過密都市ができたり.あるいは工業地帯の集中が行なわれたり、その結果が公害発生でございます。私は、そこで、経済の発展と同時に、それと見合う社会開発ということが第一だということを絶えず説き、また、これを私は政治遂行の基盤にしております。そういう観点から、経済を無視するわけではありませんが、経済の発展も必要だ。しかし、これはやはり調整をはかって、そうして最終的には人間に奉仕するもの、公共の福祉に奉仕するもの、こういうことを十分認識してもらいたい、かように思うからこそ、ただいまのような調和をはかるというようなことばが出ておるのであります。私は、このことばが、いわゆる経済偏重、経済第一主義、産業第一主義、そういうものでないことをひとつ御理解をいただきたいと思います。  次に、この公害発生した所、たいへんきれいな場所だったのが、そこで公害発生しておる、四日市の例をお話になりました。しかし私は、こういう所で全部工業がなくなる、そうして昔のような状態に返ることだけが、ただいま申すように、お互いのしあわせではないということを申し上げておるのであります。そういう意味からも、調整をはかることが必要でございます。そこでひとつ、今日まで発生した公害、それに対する対策、今後産業がかもし出すおそれがある公害とその対策、これは一体、二つに分けて一応考えてみますると、その発生した公害、この被害者に対する救済、この処置は、これは十分尽くさなければなりません。これは御指摘のとおりであります。そこで、私は、しばしば申し上げますように、まず、事業者の責任、あるいは国の責任、地方公共団体の責任と、この三者の分担をそれぞれ明らかにしていこうではないかということを実は申しておるのであります。具体的には、ただいま被害者が生じた、そういうのが地域的な関係において救済を要する場合が多いのであります。したがいまして、これはやはり地方公共団体がそういう衝に当たるということが望ましいことではないと思います。そういう場合の費用は一体どうなるのか。国自身がこれは地方制度といたしまして交付金等の制度考えられたのであります。また、特別交付金等もございます。そういう事柄で、地方の財政状態をも勘案いたしまして、国も十分救済に万遺憾なきを期していくというのが今日のたてまえでございます。で、これを国で全部まかなっていけと、こういうようなお話が先ほどからあったわけでありますが、しかし、地方自身もこういうような意味の被害者に対する救済の支出もございます。しかし、そういう事業がそこにあるために地方として利益を受けておる点もあるのであります。そういう点で、地方でこれをまかなうことも、これはある程度当然のことではないかと思います。私は三者の間の均衡をとるべきが必要のように思います。また、その意味で無過失責任の議論が出ておりますが、先ほども議論いたしましたが、私の考え方も十分申し上げたわけでもありません。御承知のように、人命に関するもの、これだと、これはもうその責任は非常にはっきりしております。けれども、今度事業者の責任にしましても、いわゆる生活環境整備と、こういうような問題になりますと、動植物まで、あるいは財産まで入ってくるようになるわけでございます。そうすると、それらの対策といたしましても、全部事業者だけに負わすということが適当なりやいなや、これはだいぶ議論しなきゃならないと私は思います。そういう意味で先ほども申したのですが、無過失責任をどういう場合に、どういう範囲にとどめるかということが一つの問題であろう。だから、そういう意味では前向きに研究いたしますが、今回はいわゆる総括的な無過失責任という制度はとらなかった、かように実は申したのでございます。全然これを無視したというわけではありません。したがいまして、十分これは検討をしてみたい問題でございます。  公害行政の一元化については、先ほどお答えいたしました。問題は、やはり統一性、計画性を欠くようなことがあってはならない、かように思います。しかし、何と申しましても、産業政策公害防止政策とは一つの場所でやることが最毛望ましいことのように思いますので、この統一性と計画性を欠くことのないようなために、関係閣僚の会議を開いて、私が調整をとっていく考えでございます。  中小企業に対しまして、特に御注意がございました。これは確かに、中小企業の場合においては、特別な対策を立てて、また事業者の負担を軽減するように政府はくふうすべきである、かように私は思います。そういう意味で、具体的な処置は今後の問題にまかしていただきたい。  また、いろいろ法律案が提案されますが、今日はただいまの基本法だけを出しまして、そうしてその基本法の趣旨、それを押していきたいと思いますが、この国会にもすでに、船舶による海水汚濁、油の関係ですが、その防止法律であるとか、あるいは航空機の騒音防止に関する法律案などを出しておりますし、また排出をするガスその他についての規制は、今後これを整備していく必要があります。いまできておりますものについても、改正の必要があればいたしますし、未規制のものについてはさらにくふうすべき問題だ、かように思います。(拍手)    〔国務大臣坊秀男登壇拍手
  25. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 私に対する御質問に対してお答え申し上げます。  今日、公害による被害の救済、これの制度整備していくということの大事なことは、いまさら申し上げるべきものでもございません。  ところで、この公害発生の第一次の責任者というものは、多くの場合に企業者であるということでございますが、ところが、その発生の原因と、被害となった結果、つまり、因果関係の認定だとか、負うべき責任の範囲の判定等の非常に困難なのが、これが公害の特徴だと思います。例としておあげになりました阿賀野川の件だとか、四日市の問題だとかということにつきましては、今日、厚生省では御指摘のとおりの措置をとっておりますけれども、これは決して十分なものだとは言えないと思います。そこで、今度の公害対策基本法という法律案を御提出申し上げまして、これを審議していただいて、通過さしていただいたならば、この法案の中には、「公害に係る被害に関する救済の円滑な実施を図るために必要な制度整備を行なう」、かようにうたっておるのでございますが、政府といたしましては、これに基づきまして、早急に、公害に関する紛争処理のルールだとか、あるいは被害者の判定のための専門機構だとか、住民からの苦情の処理等について検討を加えまして、逐次公害による被害救済制度整備につとめてまいりたい、かように考えておるのでございます。  環境基準についての御質問でございますが、環境基準行政上の目標となるべき基準でありまして、科学的に究明された汚染物質等の分量、人の健康等への影響との関係を基礎といたしまして、社会的、経済的、技術的配慮を加えてきめられるものでありまして、すでに汚染等の進行しておる地域につきましては、汚染の程度をこの基準まで低下させなければならない、また、そこまで汚染されていない地域につきましては、この基準を越えてはいけないというふうに、排出等の規制をやり、また、土地利用及び施設の設置に関する規制等を総合的に実施していくものでございまして、この法案を御審議の上、御決定願えますれば、すみやかに環境基準をきめてまいりたい、かように考えております。  それから、公害防止の観点から行政を一元化すればいいじゃないか、こういう御質問でございますが、これは総理から詳しく御説明申し上げたので、私は重複を避けさせていただきます。  それから、基本法を実施するにあたって、一体、具体的な関連法の整備についてどう考えておるか、こういう御質問でございますが、公害対策基本法では、特に法律による事業者費用負担規定いたしておりますが、その他にも、たとえば被害の救済について必要な場合にも法律を制定することといたしたく、逐次検討を加えております。公害対策基本法の対象となる公害のうち、騒音悪臭等、まだ規制の対象となっていない公害については、逐次これを検討してまいりまして、法的な対策の必要な点については法制化をしてまいりたい、かように考えております。公害防止に関する法律では、先ほども柳岡さんにお答え申し上げましたが、現に、船舶の油による海水の汚濁防止に関する法律案、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害防止等に関する法律案は、今日御審議を願っておるわけであります。それから、これも先ほどお答え申し上げましたが、ばい燈規制法、水質保全法等、現行の公害防止関係法については、公害対策基本法との関係検討を加える必要があって、これを強化する必要のある場合には強化してまいりたい、かように考えております。  それから無過失責任につきましては、総理から御答弁がございましたので、私は重複を避けさしていただきます。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男君登壇拍手
  26. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 公害の研究費に関して所見を問うということでございましたが、御承知のように、資本の自由化を前にして国産技術の研究開発というものが緊急の課題になっております。また、人命に関する交通公害を中心にする研究も喫緊の課題となっておることは御指摘のとおりでございます。また、この参議院におきましては、予算委員会において学術研究費についても、だいぶおしかりを受けましたので、私は、来年度の予算編成におきましては、およそ研究費と名のつくものについては、ひとつ惜しまずにこれに臨んで取り組みたいという方針をいま持っておるところでございます。(拍手)    〔国務大臣菅野和太郎登壇拍手
  27. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 排気ガスの装備が不十分だから、自動車の輸出などに障害を来たさないかという御質問だったと思いますが、先ほども申し上げましたとおり、排気ガスを防止するために自動車安全公害センターをつくりまして、これから鋭意研究させますので、したがいまして、この排気ガスの装備を自動車に設けさせて輸出を盛んにしたいと、こう考えております。  それから、中小企業の問題につきましては、総理からもお答えがありましたが、先ほどもお答え申し上げましたとおり、現在の段階で政府機関を動員してやっておりますが、これで決して私は十分だとは考えておりません。明年度からその資金の融通あるいはその他の点において、一そう強化したいと考えております。(拍手)    〔国務大臣大橋武夫君登壇拍手
  28. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 自動車の排気ガスによる公害防止につきましては、運輸省としては、昨年七月に自動車排気ガス試験方法を定め、それに基づいて試験を行ない、自動車の構造上、排気ガス中の一酸化炭素の濃度が三%をこえないように規制することにいたしました。また、自動車の使用過程における整備についても、近く整備基準を制定する方針であります。なお、研究体制の強化という点でございますが、本年度、船舶技術研究所に交通公害部を設置いたしましたが、新しい分野に属する研究でございまするので、公正妥当な実施には研究開発がなお必要であります。したがって、当省といたしましては、今後さらに体制を拡充強化し、自動車の排気ガスによる公害防止対策を積極的に推進いたしたい考えであります。(拍手
  29. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      ——————————
  30. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 日程第三、資産再評価法の一部を改正する法律案。  日程第四、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国ノールウェー王国との間の条約実施に伴う所得税法法人税法及び地方税法特例等に関する法律案。   (いずれも内閣提出)  以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長竹中恒夫君。     —————————————    〔竹中恒夫君登壇拍手
  32. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 ただいま議題となりました二法律案につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。  まず、資産再評価法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、株式会社または有限会社の再評価積み立て金にかかわる経理の簡素化をはかる見地から、株式会社または有限会社が、昭和四十八年三月三十一日を含む事業年度の直前事業年度の終了の日において、なお再評価積み立て金を有している場合は、これを資本準備金に組み入れることによりその最終処理を行なうとともに、この間、再評価積み立て金を任意に資本準備金に組み入れ、また抱き合わせ増資による資本組み入れも行ない得ることとし、その他、所要の規定整備を行なおうとするものであります。  委員会の審議におきましては、再評価積み立て金の処理の現状、電力、私鉄が特に資本組み入れ割合が低い理由等について、熱心な質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。  質疑を終了し、採決の結果、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。     —————————————  次に、所得に対する租税に関する二更課税の回避のための日本国ノールウェー王国との間の条約実施に伴う所得税法法人税法及び地方税法特例等に関する法律案について申し上げます。  本案は、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本とノールウェーとの間の条約が改正されることとなったことに伴い、現行特例法の全部を改正し、所得税法特例等を定めようとするものであります。すなわち、ノールウェーの居住者が受ける配当、利子、使用料等に対する所得税の税率を、配当については親子会社間の配当を除き一五%、親子会社間配当、利子及び工業所有権等の使用料については一〇%と規定するとともに、道府県民税、市町村民税等の特例を定める等、所要の規定整備をはかろうとするものであります。  委員会におきましては、わが国とノールウェーとの間の経済交流状況等について質疑がありましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。  質疑を終了し、採決の結果、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  33. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  34. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 過半数と認めます。よって、両案は可決せられました。      ——————————
  35. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 日程第五、住民基本台帳法案内閣提出)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。地方行政委員長仲原善一君。     —————————————    〔仲原善一君登壇拍手
  36. 仲原善一

    ○仲原善一君 ただいま議題となりました住民基本台帳法案につきまして、地方行政委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、市町村における住民の届け出に関する制度及びその住民たる地位を記録する各種の台帳に関する制度を一元化し、もって住民の利便を増進し、あわせて行政の合理化に資するため、住民に関する記録を正確かつ統一的に行なう住民基本台帳の制度を設けようとするものでございます。  第一に、市町村は、住民基本台帳を備え、その住民につき、住民たる地位に関する正確な記録を常に整備しておくとともに、これに基づいて住民に関する事務を行なうこととし、  第二に、住民基本台帳の正確性を確保するための措置として、住民基本台帳と戸籍の附票制度を存置することとし、  第三に、住民は、住所等の変更をしたときは、市町村長に届け出をなさなければならないこととするとともに、その変更に伴う届け出は、すべてこの法律の定めにより、一つの届け出で足りることとするなどをおもな内容とするものであります。  本委員会におきましては、住民基本台帳制度の運用その他について慎重な審議をいたしましたが、その詳細については会議録によってごらん願いたいと存じます。  質疑を終了し、討論に入りましたところ、別に発言もなく、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本案に対し、各派共同により、住民基本台帳の備えつけに要する経費については、十分な財源措置を講ずること、住民基本台帳に関する事務の管理態勢が十分整備されるよう指導すること、この制度の本来の趣旨にのっとり、適正な運用を期すること等に留意すべきであるとする旨の附帯決議案が提出されましたが、これまた、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  37. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  38. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      ——————————
  39. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 日程第六、厚生省設置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。内閣委員会理事八田一朗君。     —————————————    〔八田一朗君登壇拍手
  40. 八田一朗

    ○八田一朗君 ただいま議題となりました厚生省設置法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本法律案は、公害防止行政を一そう積極的に推進するため、環境衛生局に公害部を設置するとともに、厚生省の職員の定員を本省三百九十四人、社会保険庁七十人、計四六十四人増員しようとするものであります。  委員会におきましては、公害行政範囲とその対策、欠員の状況と増員の内訳、国立療養所の現状等について熱心な質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。  質疑を終わり、討論に入りましたところ、自由民主党を代表して八田委員より、本法律案の施行期日を公布の日に修正の上賛成する旨の発言がありました。  次いで、採決の結果、右修正案、並びに修正部分を除く原案は、いずれも全会一致をもって可決され、本法律案は修正議決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  41. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案の委員長報告は修正議決報告でございます。  本案全部を問題に供します。委員長報告のとおり修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  42. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって委員会修正どおり議決せられました。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十分散会