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1967-07-20 第55回国会 参議院 法務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月二十日(木曜日)    午後二時二十一分開会     —————————————    委員異動  七月二十日     辞任         補欠選任      松野 孝一君     林田 正治君      木島 義夫君     小柳 牧衞君     —————————————   出席者は左のとおり。     理 事                 後藤 義隆君                 田村 賢作君                 久保  等君                 山田 徹一君     委 員                 梶原 茂嘉君                 久保 勘一君                 小柳 牧衞君                 斎藤 昇君                 林田 正治君                 大森 創造君                 亀田 得治君    国務大臣        法 務 大 臣  田中伊三次君    政府委員        法務省民事局長  新谷 正夫君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○会社更生法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○刑法第二百十一条改正反対に関する請願(第二  七七六号) ○継続調査要求に関する件 ○委員派遣承認要求に関する件     —————————————   〔理事山田徹一君委員長席に着く〕
  2. 山田徹一

    理事山田徹一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  会社更生法等の一部を改正する法律案議題といたします。  本法律案に対し質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  3. 亀田得治

    亀田得治君 若干最後に主要な問題点について御質問をいたしたいと思います。  その第一は、更生手続乱用の問題に関することですが、従来、労使間の交渉人員整理の協議が成立する、その結果使用者退職手当の支給を約束する、そういうふうになった後に突如として使用者側が、退職手当請求権をたな上げする、そういう目的会社更生手続開始申し立てをするというふうな事例があったわけでありますが、こういう場合は明らかに更生手続乱用だと思われますが、そういう点に対する対策という点についてお答えを願いたいと思います。
  4. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) お尋ねのような、人員整理の結果生じました退職手当請求権をたな上げするという目的会社更生手続を利用するようなことは、明らかに更生手続乱用となるものと考えます。このような申し立てば、第三十八条第七号の「申立が誠実にされたものでないとき。」というのに該当いたしますので、当然にその申し立てば棄却されるものと考えております。  なお、第三十五条の改正によりまして、裁判所は、更生手続開始申し立てがありましたとき、労働組合に対しましても意見の陳述を求めることができることとなりますので、労働組合意見をも十分しんしゃくいたしまして、更生手続開始の当否を決することとなるのでございます。したがいまして、この面からも更生手続の一そう適正な運用がはかられるものと考えます。
  5. 亀田得治

    亀田得治君 それから第二は、保全管理人の問題について若干お聞きします。  その一つは、保全処分によって保全管理人選任された場合、団体交渉当事者はだれになるのかということです。
  6. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 保全管理人は常務に限られるのではございますけれども、事業経営並びに財産管理及び処分をする権利を有するのでございますので、当然に団体交渉当事者となるものと考えます。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 それから第二には、保全管理人会社事業規模を縮小するため人員整理をする、そういうことまでできるのかという点についての見解を明らかにしていただきたいと思います。
  8. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 保全管理人選任は、これは保全処分によって行なわれるものでありまして、その任務は更生手続開始申し立て開始決定までの間の暫定的なものでありまして、会社事業を停止しないように維持しながら会社財産を保持してこれを管財人に引き継ぐという点にあるのであります。したがいまして、原則としましては会社帯務に属する行為、すなわち経常的な業務行為しかすることができないのでありますので、お尋ねのような人員整理をすることはできないものと考えております。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 次に、退職手当請求権、これに関する点を若干お聞きいたします。  その第一は、現行法では更生手続開始後退職した労働者退職手当請求権は多くの場合に共益債権とされておりますから、更生法百十九条の二の第一項の規定は現状よりもむしろ労働者不利益となるのではないかという意見もあるわけですが、どういうふうにお考えですか。
  10. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 現在更生手続開始後に退職いたしました労働者退職手当請求権共益債権とされておりますのは、第二百八条の規定適用されました結果によるのであります。この点に関しましては、新設の第百十九条の二第三項におきまして第二百八条の規定適用されることが明記されておりますので、今後も現在と同じく、人員整理労使交渉で勧奨退職させる場合、あるいは定年退職の場合等におきましては、第二百八条の適用によりましてその退職手当請求権全額共益債権となるのであります。更生手続き開始前に退職いたしました場合及び更生手続開始結婚等のためもっぱら労働者自身の事情によりまして退職いたしました場合におきましては、現行法によりますと、退職手当請求権共益債権とはならないで、優先的更生債権となることになっております。これに対しまして、新設の第百十九条の二第一項の規定はこれらの場合にも適用されますので、退職手当請求権の一部が共益債権に格上げすることになるのであります。したがいまして、更生法による退職手当規定現行法のもとでの取り扱いよりはるかに労働者に有利になるものでありまして、およそ労働者不利益になるというふうなことはあり得ないと考えております。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 それから次に、第百十二条の二第四項の少額債権弁済許可の制度によって優先的更生債権となった退職手当請求権についても弁済許可することができるかどうかという点についての見解をお聞きしたいと思います。
  12. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) たとえて申し上げますと、三十五万円の退職手当のうち十五万円が共益債権となりまして、残りの二十万円が優先的更生債権となるような場合を考えてみますと、その二十万円につきましては少額債権として弁済許可対象とすることができるものと考えております。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 次に、更生手続開始申し立て後における退職者退職手当請求権について、第百十九条の四「(開始前の借入金等)」の規定によって裁判所許可を得てこれを共益債権とすることができるかどうか、この点についての見解をお聞きしたいと思います。
  14. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 更生手続開始申し立てがありました後その開始決定までの間でも、会社事業維持の必要上会社事業規模を縮小するためにやむを得ず人員整理をするような場合におきましては、第百十九条の四の規定いたしております「会社事業継続に欠くことができない行為」というのに該当することになりますので、その間に退職いたしました労働者退職手当請求権裁判所許可によりまして共益債権とすることができると考えます。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 最後に、強制執行中止に関する点につきましてお尋ねをいたします。  その第一として、共益債権に基づく強制執行または仮差し押えの中止などを定めた改正法規定第二百十条の二は労働者の有する共益債権行使にとって不当な障害となるのではないか、こういう心配が持たれるわけですが、いかがでしょうか。
  16. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 共益債権に基づきます強制執行につきましては、これを制限する必要のある二つの例外的場合にのみその中止あるいは取り消しを命じることにいたしたのであります。  その第一は、その強制執行事業経営に不可欠の設備等対象としておりまして、会社更生に著しい支障を及ぼし、かつ会社が他に製品あるいは遊休設備等その換価の容易な財産を有する場合であります。この場合には、他の換価の容易な財産に差し押えがえをしてもらう趣旨におきまして、強制執行中止あるいは取り消しが命じられるにすぎないのであります。  第二は、会社財産共益債権の総額を弁済するのに足りないことが明らかになった場合であります。この場合には、更生会社は実質的には破産状態になっているのでありますので、管財人会社財産を売却して各共益債権の額の割合に応じて弁済すべきものとされております。このことは、現行法の第二百十条に規定があるわけであります。このような場合には、各共益債権者が個別的に強制執行することはもともと許されないものと解されております。したがいまして、改正法は、この場合につきまして管財人裁判所決定により強制執行取り消しを比較的簡便に求められる方法を定めたにすぎないのでございます。  以上申し上げましたことは、仮差し押えについても同様の関係にございます。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 次に、賃金等労働者の有する共益債権については第二百十条の二の適用を排除する旨を規定すべきではないか、こういう意見もあるわけですが、いかがでしょうか。
  18. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 第二百十条の二の規定は、きわめて例外的な二つの場合についてのみ共益債権に基づく強制執行あるいは差し押えの中止あるいは取り消しを命ずるものでありまして、さらに共益債権たる賃金債権のために強制執行をするような場合には会社破産状態にあると言えるのでありまして、この規定によりまして労働者権利行使が制約されることは実際上ほとんどあり得ないと考えております。賃金債権等労働者の有しまする共益債権につきましては、更生手続の制約を受けることなく、労働基準法第二十三条、第二十四条がそのまま適用され直ちに支払うべきものでございますので、お尋ねのような規定を置くまでもないことと考えておるのであります。
  19. 亀田得治

    亀田得治君 最後に、この第二百十条の二第三項を適用する場合、会社財産評価基準ですね、これをどこに求めるのか明らかにしてほしいと思います。
  20. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) お尋ねの場合におきましては、原則といたしまして改正法第百七十七条の規定適用を受けますので、更生手続開始当時におきまして会社事業継続するものとして評定した価額によることになるのであります。しかし、もし清算を内容とする更生計画案作成につきまして裁判所許可がありました場合には、改正法第百八十二条の第三項によりまして例外的に処分価額によることとなろうかと考えます。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 じゃ質疑終わります。
  22. 山田徹一

    理事山田徹一君) 速記をとめて。   〔速記中止
  23. 山田徹一

    理事山田徹一君) 速記を始めて。     —————————————
  24. 山田徹一

    理事山田徹一君) この際、委員異動について御報告いたします。  ただいま、木島義夫君及び松野孝一君が委員を辞任され、その補欠として小柳牧衞君及び林田正治君が委員選任されました。     —————————————
  25. 山田徹一

    理事山田徹一君) 速記をとめて。   〔速記中止
  26. 山田徹一

    理事山田徹一君) 速記を始めて。  ほかに御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 山田徹一

    理事山田徹一君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。  なお、修正意見のある方は討論中にお述べを願います。
  28. 亀田得治

    亀田得治君 私は、自民社会公明三党を代表しての共同修正案につきましてまず提案をいたします。修正案を朗読いたします。  会社更生法等の一部を改正する法律案に対する修正案  会社更生法等の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。  第一条のうち第百十九条を改め同条の次に三条を加える改正規定中『第百十九条中「並びに」を「及び」に改め、「預り金及び」を削り、同条の次に次の三条を加える。』を「第百十九条の次に次の二条を加える。」に改め、第百十九条の三を削り、第百十九条の四を第百十九条の三とする。  第二条中第三十九条の改正規定を削る。  第三条中第四十五条の改正規定を削る。  附則第三項中「第百十九条の四」を「第百十九条の三」に改める。  附則第六項中「第三十九条第二項及び」を削る。  附則第八項中「及び第四十五条」を削る。  以上であります。  なお、社会党としては、この修正案にはもちろん賛成し、修正案を除く原案部分についても賛成をいたします。  なお、本件につきまして、同じく自民社会公明党共同附帯決議を提案いたします。案文を朗読いたします。  会社更生法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議  会社が倒産した場合において、関連中小企業者労働者等経済的弱者が十分に保護されるよう、中小企業労働者関係法規趣旨を尊重して、会社更生法運用上十分の配慮をするとともに、政府が今後の諸施策においても適切な対策を講ずることを希望する。なお、今回の改正後の会社更生法運用の実績をみたうえで必要があると考えられるときは、政府が速かに再検討することを希望する。  右決議する。  以上でございます。
  29. 山田徹一

    理事山田徹一君) ほかに御意見もないようですから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 山田徹一

    理事山田徹一君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより会社更生法等の一部を改正法律案について採決に入ります。  まず、討論中にありました亀田提出修正案を問題に供します。亀田提出修正案賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手
  31. 山田徹一

    理事山田徹一君) 全会一致と認めます。よって、亀田提出修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  32. 山田徹一

    理事山田徹一君) 全会一致と認めます。よって、修正部分を除いた原案全会一致をもって可決されました。  以上の結果、本案は全会一致をもって修正議決すべきものと決定いたしました。  次に、討論中に述べられました亀田提出附帯決議案議題といたします。  亀田提出附帯決議案賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  33. 山田徹一

    理事山田徹一君) 全会一致と認めます。よって、亀田提出附帯決議案全会一致をもって本委員会決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、田中法務大臣から発言を求められておりますので、この際これを許可いたします。田中法務大臣
  34. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 附帯決議の御趣旨は、まことにごもっともに存じます。政府はこの御趣旨に沿うよう将来の施策に最善を尽くしてまいりたいと存じます。
  35. 山田徹一

    理事山田徹一君) なお、本院規則第七十二条により議長提出すべき報告書作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 山田徹一

    理事山田徹一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  37. 山田徹一

    理事山田徹一君) 次に、第二七七六号刑法第二百十一条改正反対に関する請願議題といたします。便宜速記中止して。   〔速記中止
  38. 山田徹一

    理事山田徹一君) 速記開始。  本請願の審査はこの程度にとどめます。     —————————————
  39. 山田徹一

    理事山田徹一君) 次に、継続調査要求についてお諮りいたします。  検察及び裁判運営等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査継続することとし、本件継続調査要求書議長提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 山田徹一

    理事山田徹一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 山田徹一

    理事山田徹一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  42. 山田徹一

    理事山田徹一君) 次に、委員派遣承認要求に関する件についてお諮りいたしたいと思います。  検察及び裁判運営等に関する調査のため、閉会委員派遣を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 山田徹一

    理事山田徹一君) 御異議ないと認めます。  なお、派遣委員の人選と派遣の細目及び議長提出する委員派遣承認要求書作成便宜委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 山田徹一

    理事山田徹一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時四十九分散会