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1967-06-27 第55回国会 参議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二十七日(火曜日)    午前十一時七分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         浅井  亨君     理 事                 後藤 義隆君                 田村 賢作君                 久保  等君                 山田 徹一君     委 員                 梶原 茂嘉君                 久保 勘一君                 中山 福藏君                 大森 創造君                 亀田 得治君                 野坂 参三君                 山高しげり君    国務大臣        法 務 大 臣  田中伊三次君    政府委員        法務大臣官房司        法法制調査部長  川島 一郎君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局民事局長   菅野 啓蔵君        最高裁判所事務        総局家庭局長   細江 秀雄君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君    説明員        内閣官房内閣調        査室長      大津 英男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○旧執達吏規則に基づく恩給年額改定に関す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○検察及び裁判運営等に関する調査  (元家庭裁判所調停委員詐欺事件に関する件)  (ソ連における日本人旅行者に対する軍事裁判  問題に関する件)     —————————————
  2. 浅井亨

    委員長浅井亨君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  旧執達吏規則に基づく恩給年額改定に関する法律案を議題とし、本案に対する質疑を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言願います。
  3. 大森創造

    大森創造君 この法案は、要するに一般公務員にかかる恩給法改正にならって執行吏恩給増額をはかるものと理解いたしますが、その内容には格別の意見はございませんけれども法律の数はなるべく少なくしたほうがいいと思います。そこで、これのみを単独立法とした理由は何ですか、どういうところにあるのですか。
  4. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 執行吏恩給増額につきましては、従来、訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律、これが昭和二十四年に制定されておりまして、この法律附則恩給特別措置を講じた。これは最初恩給改定をいたしましたときにその法律附則で行なったわけでございますが、それ以後その法律附則に項を追加する、こういう方向によってこれまで執行吏恩給増額を行なってまいったわけでございます。ところが、昨年執行官法制定されまして、執行吏制度が一応制度的には廃止されまして、執行官というものがかわりにできたわけであります。そこで、執行吏につきましては、従来のすべての法律が一応根拠を失いまして、執行吏恩給については執行官法附則に「従前の例による」という規定が設けられまして、その規定のみによって恩給が支給されるということに法制上は相なったわけでございます。そこで、今回の恩給増額措置するにつきまして、その執行官法附則にさらに項を追加するかあるいは別の法律制定するかということが技術的に問題になったわけでございますが、恩給改定は、御承知のように、一年から二年の間に一回くらいずついままで行なわれておるのが実情でございますので、執行官法附則にこれを追加していくということもていさい上どうかというので、別の法律制定することにしたわけでございます。それで、今後恩給増額改定が行なわれます場合には、この法律にさらに項を追加すると、こういう方法で行なっていくという趣旨で今回は新しい法律を提出いたした次第でございます。
  5. 大森創造

    大森創造君 執行吏恩給のいままでの経過とその特殊の性格についてはわかりますけれども、いまお話しのうちで、法令制度のたてまえからいうと、恩給法の中に組み入れるかあるいは執行官法附則の中に組み入れるかという技術的くふうを行なうことができるのではないかと思うのです。しかし、いまお話しのような方向で今後やっていくという基本方針はきめたわけですね。
  6. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) さようでございます。
  7. 大森創造

    大森創造君 それでは、その点はわかりましたから、その次に移りますが、執行吏恩給には一時恩給扶助料制度がありませんね。
  8. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) ええ、ございません。
  9. 大森創造

    大森創造君 そこで、その点一般公務員恩給と比べて不均衡の感じがいたしますけれども、またたとえば裁判所職員が退職してあと執行吏となった場合、恩給が二重取りとなってくる場合がございます。このような点について何かすっきりさせるくふうはないものでございますか。
  10. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 確かに、仰せのとおり、現在の執行吏恩給制度につきましては、いろいろ問題がございます。これは沿革的な理由によるものでございまして、そもそも執行吏制度が設けられました明治時代から引き続いて現在のようなたてまえがとられてまいりましたので、昨年執行官法制定されるにあたりましても、この点をもう少し何とか考えて、すっきりした制度をつくるべきではないかということが一応考えられたわけでございます。何ぶんにもいろいろ複雑な事情がございますので、今後の検討問題として考えるということにして、まあ現在その段階にあるわけでございます。今後、いま仰せになりましたようないろいろな不合理の点をすっきりさせるべく、検討努力していきたいと考えております。
  11. 大森創造

    大森創造君 何か、この法案をつくるということは趣旨はわかりますけれども、よけいすっきりしなくなるんじゃないかという感じが私はするんですよ。まあそれはそれとして、この法案とからんで考えられる基本問題は、執行官制度あり方そのものです。つまり、身分は公務員であって、一種の公権力の行使を担当する執行官収入を、御承知のように、おもに私法上の権利を有する申し立て人からの手数料に依存しておりますね。これは今日多くの問題があると思います。これについて、昨年執行官法審議にあたって、衆参両院でいろいろ議論されて、衆議院においては、執行官法の採決にあたって附帯決議がつけられております。そこで、それから一カ年を過ぎた今日、政府並びに最高裁判所はこの附帯決議の実現についていかなるぐふうを払ってきたか、具体的にひとつ説明していただきます。
  12. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 執行官収入が、一般公務員と違いまして、俸給でなくして手数料に依存しているということは、確かに特異な現象でございます。そのために現在の執行官執務の態度その他に問題があるという御指摘を受けましたことも事実でございまして、その点につきましてはわれわれ今後とも検討を続けていくつもりでございます。ただ、御承知のように、執行吏制度、これは従来——執行官法制定される前の執行吏でございますが、この制度は、御承知のように、明治時代からずっと制度的に放置されておりまして、それだけに非常にいろいろな多くの問題が積み重なっております。それを幾らかでも改善したいということで、その第一段階として昨年執行官法制定されたわけでございます。そこで、執行官法制定にあたりましては、従来の執務体制の整備と執務体制改善ということに重点を置きまして、たとえば役場を裁判所外に自由に設置していた、これを裁判所の中に吸収してつくると、あるいは債権者委任を受けるにあたって執行吏が直接取引で委任を受けるという体制を改めまして、裁判所申し立てをして、裁判所事件執行官分配する、そういった手続面執務体制改善をはかったのが昨年の執行官法制定趣旨でございます。で、これは最初に申しましたように第一段階改善策と考えておりましたので、今後残された問題につきましては第二段の改善策を考えるということになるわけでございますが、執行官法施行されましたのが昨年の十二月三十一日でございまして、またその施行後の状態も十分検討した上でございませんと第二段の改善策を確定的に考えるわけにはいかないのではないか。まあ私どもといたしましては、改正後の実情をもう少し実態調査などによって明らかにしました上で第二段の改善策を考えていきたい、このように考えておるわけでございます。  いま仰せになりました手数料の問題でございますが、これは確かに制度的にいろいろ問題がございます。しかし、明治以来この手数料制度がとられておるということはまたそれなりに理由もあるわけでございまして、これを単純に俸給制にまあ切りかえるというだけで済む問題ではないというふうに考えておるわけでございます。外国でも俸給制を採用しているというところはほとんどございません。手数料制が大部分であります。手数料制俸給制を加味しておるというところもございます。まあそういったいろいろな批評がございますので、国内の執行吏業務実態外国制度を比較検討いたしまして、第二段の改善策を考えていきたいというふうに考えております。
  13. 大森創造

    大森創造君 この執行官というのは、東京あたり手数料がずいぶん入るでしょう。それで、地方裁判所ごと職務がありますから、ずいぶん手数料が多いところと少ないところがあると思うのですが、東京あたりで一番多い人はどのくらい収入があるものですか。
  14. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 仰せのとおり、執行官収入というものは俸給でございませんで手数料でございますために、全国的に見ますと非常にでこぼこがあるわけでございます。で、事件の多いところと少ないところで収入が違うわけでございまして、東京あたり非常に多いんじゃないかという御指摘でございますが、東京は少ないわけではございませんが、全国的に見ますと、東京が個人的な収入の上におきまして一番多いというわけではございません。それは事件のわりあいには執行官の数が多いということでございまして、個人個人収入から見ますと、大阪、名古屋あたりが一番多い人があろうかと思います。  一番多い人がどのくらいかということでございますけれども、その点ちょっとただいま資料を持ってまいりませんでしたけれども、どの程度収入になっているかということを表にしたものを持ってまいりましたので申し上げてみますと、一番極端に少ない十万円未満という人が全国に一人、十万円をこえて二十万円までが五人、二十万円から四十万円までが二十五人、四十万円ないし六十万円という人が四十二人、六十万円ないし八十万円という人が三十七人、八十万円ないし百万という人が四十三人、百万から百五十万という人が六十四人、百五十万をこえる者が百二十四人ということになっておりまして、まあ一番、百五十万ぐらいが平均になっておると思います。
  15. 大森創造

    大森創造君 それで、そういう手数料右左自分の所得になるわけですか。
  16. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 実は執行官収入にはもう一つ立てかえ金収入というのがございます。つまり、旅費等の、あるいは食料であるとか、そういう収入がございます。これがやや手数料収入と同じくらいじゃないかと思います。しかしながら、この旅費などを申しますと、これはやっぱり大部分が実費としてなくなります。それから手数料収入のために事務員を雇っておるとか、そういう人件費のために全収入のうち半ばというものは経費にかかるわけでございます。でございまするから、まあ年間百五十万ぐらいがただいまのところの収入かと思います。
  17. 大森創造

    大森創造君 わかりました。そうすると、そういうばらばらなアンバランスなものであって、それがまあアメリカあたりにおいてもそういうものであると、一がいには固定俸給制に切りかえるのはむずかしいというが、日本の司法制度からいってだんだんには固定俸給制というものに切りかえるお気持ちをお持ちでしょうか。
  18. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 制度の問題でございますから、私のほうから申し上げるのはいかがかと思いますけれども実情というようなことでお聞き取りいただきたいと思います。何ぶん執行官仕事というものは非常に困難な仕事でございます。そしてまあ、この仕事に当たる人を求める、しかも相当程度の教養のある、学識のある人を求めるというのはなかなか困難な問題であるということは、御了解いただけると思います。それで、具体的に申しますと、うんと高い俸給に格づけできればあるいはこういう困難な仕事にも人が来てくれるかもしれません。しかし、これはまあ一般公務員制度の中で執行官をどのくらいに格づけするか、私どもといたしましては非常に高いところに格づけしてほしいのでございますけれども、これは他との比較もございまするので、そういうこともなかなか困難だということもお認めいただけると思います。そういたしますと、やはりそこに手数料制というものの一つのメリットが出てくるわけでございます。この公務員の格づけの中ではそう高くないとしても、困難な仕事をたくさんやればそこに相当収入があるということで、人が来てくれるという面があるわけでございます。それならば、いなかに参りますと、先ほども申し上げましたように、極端なところでは年間十万円にも満たないという収入のところがあるわけでございます。これを補いますために、いわゆる補助金制度がある。それで、補助金制度があるがために、要するにまあそういうところですと、結局手数料収入が少ないように事件の数も少ないわけでございますから、比較的ひまなところでございます。そういうところで最小限度六十五万円の保障はあるということで人が来てくれるというので、手数料制度をとりながら補助金制度を片方でとり、そしてなおかつそれでなり手がないというところは、執行官法にも制度がございますように、裁判所職員執行官仕事をさせるために指定できるいわゆる代行者機関という制度で、離島であるとか遠隔の地で人を得がたいところを補っているという現状なわけでございます。理想といたしましては、非常に高い俸給制度を設けまして、全部を公務員にするというところが理想でございますけれども、現実の問題としてなかなか高い格づけの俸給を得がたいということになれば、人を得がたいということの実情のために、手数料制をとりながら、補助金制度であるとか、代行者機関制度であるとかいうことで補ってやっておるというのが実情でございます。
  19. 大森創造

    大森創造君 わかりましたけれども、それで現職の執行官自然減がございますね、それを充当しないことでいまから約三ヵ年計画で裁判所職員に代置するという考えがございますか。
  20. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 執行官法で、従来の制度にありました執行吏代理という制度を廃止するということに相なりました。しかしながら、経過的な措置といたしまして、当分の間はそういう人もしばらくの間は仕事をさせる。しかし、これは暫定的な措置であるから、ここ三、四年のうちにそういう人が執行するということがなくなっていくようにということを目しておるわけでございますが、ただいまそういう関係で、現在執行吏代理という形で職務を行なっている人は二百人ばかりあるわけでございます。そのうち、こまかく申しますと、送達だけやっている人が約半分で百人、あとの百人の、いわゆる執行吏の、執行官代理をしている人が百人、これを三年のうちにそういう人が執行するという姿をなくしていこうということでございますが、これをなくしますと、ただいま三百六十数名おります執行官では間に合いませんので、理想的に言えば、あと百人ぐらいの執行官増員を必要としているわけでございます。こういう正規の執行官によって執行を行なうことにしたい、そのためには百人余りの増員をし、そうして、ただいまは執行吏代理臨時職務取り扱い者と言っておりますけれども、そういうものをやめてまいりたいと、かように思っているわけでございます。
  21. 大森創造

    大森創造君 ちょっと私わからないので聞きますが、執行官報酬を払っている臨時職務取り扱い者というのですか、その数はどのくらいいるのですか。
  22. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) この臨時執行官職務取り扱い者というものは、執行官自分の手足として使っている人でありまするので、執行官とその臨時職務取り扱い者との関係委任関係でありまするので、執行官がその人に報酬を払うという私法上の関係になっているわけでございます。そういう制度は非常におかしいということで、廃止することになったわけでございます。その数が、先ほどもちょっと申し上げましたように、現在二百七名おるのでございます。全国的に見まして。その中で、この執行官法制定によってやめていかなければならない人は、いわゆる執行代行者でありまして、それが九十七名、あとの人は送達をやっているいわゆる送達代理でありますので、この人たちは三年の後におきましても残っていくだろうと思うのでありますが、問題は執行代行者九十七名という人が問題になっているわけでございます。
  23. 大森創造

    大森創造君 そうすると、その執行代理者が退職することによって、その九十七名の所遇ということが問題だろうと思うのだけれども、その点について何か配慮がございますか。
  24. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) その点が、執行官法施行に際しまして、私ども一番心配した点でございます。それで、執行官法施行の際におきましても、当分の間は旧法任命資格執行官を採用できるという暫定措置を講じまして、その結果、執行吏代理の者が一定の修習期間を経ますれば試験を経た上で執行官に任命できるということにいたしておりますので、そういう意味におきまして、修習をただいま命じております者が数名ございまするし、それからすでに修習を終わり試験を経た上で執行官に任命した者が二十六名ございます。その余の数十名という人の運命というものが、行き先ということが案ぜられるわけでございますが、従来の経過から見ますというと、年間にやはり二、三十名の人が自然にやめていっているというのが従来の経過でございます。これは執行吏代理という人は相当老齢者が多いためであろうと思うのでございますが、そういうふうにして、なおやはり二、三十人の人が三年後にやはり問題になるわけでございますけれども、そのうち資格のある人は、今度執行官法施行によりまして、裁判所事務官というものが会計の関係あるいは受付の関係相当数必要となる、そのための増員の要求もしておるわけでございまするので、そういう方面にも吸収できる人は吸収していきたい、最後までそういう人のめんどうは見てまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  25. 大森創造

    大森創造君 いままでの説明で大体わかったところもございますが、衆議院附帯決議にもありましたように、各地方裁判所内に執行官執務場所を確保するということ、それから執行官事務の公平な分配など、執行官法趣旨を具体的にどういうふうに扱っておりますか、簡単にもう一回御説明いただきたいと思います。
  26. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 執行官法制定によりまして、執行吏役場という制度がなくなりました。ということは、つまりもう少し完全な形で執行吏というものが、執行官というものが裁判所職員ということになったわけでございます。それはひとつ、そういうことになりました以上、執務する場所も、従来のように裁判所の建物の外にあるという形を順次廃しまして、裁判所の中に執行官事務室を設けるということでなければならないわけでございます。そこで、昨年執行官法の御審議を願っている際は、執行官事務室裁判所の外にあるというところが全国で六十カ所近くあるわけでございます。その後いろいろ努力をいたしまして、ただいままだ裁判所の中にそういう事務所がないというところが十五カ所ばかりあるわけでございますが、結局、執行官法公布からただいままでの間に、約四十カ所以上を裁判所の中に収容いたしたということでございます。まだ十五ヵ所ございますが、何ぶんやはりこれは物的施設を伴うものでございますので、予算を要することで、一挙にできないということが遺憾ではございまするが、これは近いうちに裁判所の中にそういう事務室を設けるということに向かいまして予算的な手当てのために努力をいたしたい、かように思っておるわけでございます。  それからなお、従来執行吏制度で問題でございました、いわゆる委任制のために、事件を特定の執行吏に頼むということから、執行官債権者との間に不明朗の関係を生じて、とかくのうわさがあったわけでございます。で、その点を改正するために、申し立て制といたしまして、そうして申し立て制といたしますれば、それは執行官事件ということではなく、裁判所事件ということになりまするので、裁判所事務分配をして、債権者執行官との間の不明朗な関係というものをそこで断ち切ることができるわけでございます。裁判所事務分配をするという制度になり、そのための規程を設け、原則として受け付けの順序によって、裁判所事件と同じように順点して割り当てるということになりましたので、債権者との間の不明朗な関係ということについてのとかくの風評はなくなるというふうに考えておるのでございます。
  27. 大森創造

    大森創造君 沼津でしたか、事件がありましたね。執行吏収賄事件があって、そのために沼津執行吏全員退職したというふうに聞いておりますけれども事件内容はどういうことなんでしょうか。
  28. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 仰せのとおり、これは非常に遺憾な事件でございまして、沼津執行官四人おったのでございますが、いずれも収賄ということで、つまり債権者事件の便宜をはかったということで刑事事件になったわけでございます。ただいま起訴状等を持ってまいりませんものでございましたから、内容等詳しいことはちょっと失念いたしましたけれども、金額といたしましては四、五万円程度の人が最高収賄の額であったかと思います。しかし、これは執行官法施行——三十八、九年のときのことであったかと思います。そうして、すべてこれらの人は刑事処分になりましたので、懲戒の処分をいたし、そうしてそのあとの補充をして、ただいま事件をやっているという状況でございます。
  29. 大森創造

    大森創造君 そうすると、沼津執行業務支障はないわけですか、現在。
  30. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) その事件が起きました、ごたごたいたしました当時は、何ぶんにも全員が警察に連れていかれるという状況でございましたために、多少の混乱はございましたが、ただいまは後任を補充いたしましたので、ただいまのところ支障なく事件をやっております。
  31. 大森創造

    大森創造君 この問題に関連して、いわゆる競売屋とか道具屋とかというものがございますけれども、そういうものの手口とかそれから筋とかというものを、事例をあげて、ちょっとわかりませんので、説明してくれませんか。どういうことなんですか。
  32. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 執行制度につきまして、執行官法という法律で組織法的な部面というものはやや改善されたということを申し上げることができると思います。ただ、手続法の面におきましては、強制執行法改正ということがまだ実現しておりませんために、執行手続に関していろいろ問題があるわけでございます。その一つが、あるいは道具屋であるとか、ブローカーであるとか、あるいは執行屋であるとか、立ち会い屋であるとか、執行手続を取り巻くいろいろの人々から起きてくる問題なのでございますけれども、じゃなぜそういうものを一挙に排除してしまわないのかということに御疑問があろうかと思います。ここにたとえて申しますと、道具屋というものがございます。道具屋というものは、これは動産競売におけるまあ商売的な買い受け人、競落人になる人でありまして、転売によってもうけて商売をするという人でございましょう。で、こういう人がなぜ残っていると申しますか、ある意味では社会的な機能を営んでいるわけでありまして、元来この動産競売というようなことは、将来の姿から見るというと、いまの家財道具を全部を押えていくというような制度は時代おくれでございまして、将来強制執行法改正になれば、差し押えられるべき物件というようなものは非常に制限してもいいのじゃないかと思う。家財道具のがらくたまで全部押えるというような制度というものはなくなっていりてもいいのではないかと思う。また、そういうふうに社会は進歩していくものであると思うのでございますけれども、そうして現に外国あたりの例を聞いてみますというと、自動車も、そういうものは生活の必需品として差し押え禁止物件になっているというふうにも聞いております。ところが、日本の現状からいいますと、たとえばテレビを押えるとか電気冷蔵庫を押えるということが実情なわけであります。そういうものを禁止してしまえばいいようなものでございますけれども、じゃそれ以外に何を、押える物がいまの債務者の多くの場合にあるかというと、ほとんど物がない、そういうがらくたでも押えなければならない。そういうがらくたは、これは債務者自身にとっては価値のあるものでございましょう、日常それで生活をしている。第三者に転売するということになれば、これは二束三文。そういうものを競売の対象にしているということは、それを差し押えるぞということを債務者が言えば、債務者はやはり無理をしても、まあ分割弁済をしても差し押えを延ばしてくれというようなことで、まあ差し押えでなくて、いわゆる間接強制的にその差し押えが利用されておって、それによって債務の弁済ということが一部なされるというような関係で、それはそれなりに日本の現在の社会では無意味ではないわけでありますというふうに私ども見ているわけであります。それで、じゃなぜ道具屋というものが出てくるかということになりますと、これは道具屋があって、これは債務者に売り戻すということが通常の慣行でございます。なぜかといいますと、そういうがらくたを買って他に売ろうと思っても、買うという人は、前の債務者以外にはほとんどそういう客というものはないわけであります。で、道具屋は非常に安く買いたたくのではないかということがあるわけでございます。これは債務者の面から見ますと、非常に高く買われてしまっては、買い戻すときに債務者が非常に困るわけでございます。債権者の立場からすれば、高く売れなければ困る。しかし、高く売れなければ困るといっても、客観的な価値からいえば、二束三文のがらくたでございます。そういうものを買う者は道具屋しかいない。道具屋は債務者に買い戻しさせるというような関係がございまして、非常に安くは買いたたかれるようでありますけれども、買い戻す側からいうと便利な面もある。非常に変な複雑な関係で差し押えというものが現状、動いておる。こういうことがいいか悪いか。将来の進歩した社会においては、差し押え物件というものは非常に制限をするかわりに、そういうものは競買に出してはっきり高く売れるようなものだけを差し押えるという制度になっていくべきではないかと思います。日本の債権者、債務者の現状というものはそういう現状にあるということでございます。
  33. 大森創造

    大森創造君 一言。わかりましたけれども道具屋というものは、これは商売なんですか、プロフェッショナルなんですか。
  34. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) これは、いわゆる競売だけでやっているという人はおそらく少ないのじゃないかと思うのです。普通の、何と言いますか、骨とう具屋ですか、それと兼ねてやっておるというような人が多いのじゃないかと思います。そういう意味では、商売人といえば商売人であります。
  35. 大森創造

    大森創造君 これは、ひとつ資料として出してほしいと思う。というのは、各地方裁判所競売屋道具屋の数、ある程度実態、概数というようなものをお出しいただけますか。むずかしいですか、これは捕捉しがたいですか。
  36. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) これは、非常にやはり浮動的でございまして、この実態を非常につかみにくいのでございます。ただ、そういう人たちが現実におるということはわかっておるのでございますけれども、これ、地方裁判所にそれを調べろと申しましても、なかなかつかみにくいのじゃないかというふうに思います。
  37. 大森創造

    大森創造君 私の調査したので調べますからいい。それで一応終わります。
  38. 中山福藏

    ○中山福藏君 それでは、ひとつ法務大臣にお尋ねいたしたいと思います。  実は、この前の委員会の当日、大体私の考えておりますことを申し上げて、法務大臣に御伝達を願いたいということを申し上げておいたのですが、その要旨は、どうも長い間の競売、競落の関係についていろいろな弊害がある、そういう点にかんがみて、いろいろな改正が行なわれるということはまことにけっこうなことでございますが、この競落のときにその競落者の資格というものがこの際相当私は注目に値するものじゃないかと考えておるわけです。それは、第三国人を交えたある種の暴力団的な素質と申しますか、傾向を帯びた連中がその競落に参加しておるという実態を私どもは見ておる。それで、あたかも建設省が各種の入札の場合に、その資格をちゃんと、何と申しますか、資格条件というものを一応事前において考査して、そして入札の資格を与えている。それで、そういうふうな処置をおとりになるお考えがあるかどうかということ。並びに、その競落されるという人々の立場というのは、ある場合においては連帯保証人がやられる場合がある。私は連帯保証に立った人が首をくくって死んだのを見たのです。それで、そういうふうな残酷な結果をもたらすこの種のいわゆる入札については、これはやはり行政面から政府としては相当の考慮を払う必要があるんじゃないかということをふだんから考えておるわけなんです。そういう点につきまして、そういうことを防止する意味において、いわゆる入札者の資格というものを限定しておく必要があるんじゃないかというようなことをふだんから考えておるのですが、法務大臣のお考えはどうでしょう、第一点それをひとつお尋ねしておきたい。
  39. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) 間々ありがちな世の中の実情にかんがみて、たいへんごもっともな御意見かと存じますが、裁判所からひとつお答えを申し上げます。
  40. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 競落につきまして資格制限ということでございますけれども、御趣旨はごもっともで、そういう点につきまして留意を加えつつ、法務省のほうで御準備をお始めになっておると伺っております。強制執行手続改正のときに、そういう点につきまして十分に御検討をさしていただきたい、こう思っております。いますぐそういうふうなことに裁判所はきめておるというふうには申し上げられないのでございます。
  41. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) 裁判所からまずお答えをいただいたわけでございますが、ただいま中山先生の御発言の内容は、いま裁判所からもお答えがありましたように、この強制執行法の将来改正の問題の際に、この点はひとつとくと考えてみたいと考えております。ことに、それが改正されれば、今度は強制執行法の運用にかかってくる問題でございますので、これは裁判所と切って切れない関係を持っております。裁判所の御意見もお伺いせねばなりませんが、この点非常に重要な意味を含んだ御発言と考えます。裁判所とよく相談をいたしました上で、強制執行法改正の際にこれをよく検討をしてみたいと考えます。
  42. 中山福藏

    ○中山福藏君 私はせんだっての委員会におきまして、実は田中法務大臣十分御承知のとおり、あるいは最高裁の民事局長御承知のとおりに、大体競落を受けるというのは、ことごとくその競落に付される人が悪質の者であるということは言えないわけですね。ある場合には連帯的な立場から、ある場合においては単なる保証の立場から、あるいはある者は家族の人が病気におかされてやむを得ず借金をして露頭に迷う、病人を出して救済するということが非常な家族の負担になりまして——精神的あるいは物質的な非常な負担になりまして、相当苦労をして借金をしておる。それがひとたびこの国家の執行文付与によって競落に付せられるというときには、その競落の価格というものが大体三分の一です。ある場合には五分の一になっておる。これはよほど考えなければならぬことで、これは私は、国家がやはり一応鑑定をさして、この物件というのはこれだけの価値があるのだということを鑑定してもらって、その評価に従って一応国家がそれを買い取って保管しておいて、これを競売なら競売ということで売り出すということにせなければ、これは浮かばれぬと思います、この債務者は。ことごとく悪質な者であれば、ある意味において懲罰的な意味を加えまして競落の処置をとってもいいのですが、これは弱い立場にある人です。だから、行政というものは、中産階級以上の人はほうっておいても楽な生活ができる。中産階級以下の人は、人間に生まれたかいがあったという、いわゆる何と申しますか、人間としての存在の価値を認識し得るような行政というものが必要だと私はふだんから考えている。だから、競落に付せられた人は、相当価格の金で買い上げてやって更生の道をたどらせる。そうして、おれの家財道具は三分の一で売られるところを、国の力で現在の時価の標準に従って買い取ってもらった、そうして人間というものを人間らしくするということがほんとうの行政じゃないかと考えているんです。ところが、戦前の封建的な思想とかいろいろな考え方が、この救済は中産階級以下はほったらかしですよ。これでは私はほんとうの切り捨てごめんのいわゆる政治がそのまま続くということになるのではないかと見ているんです。それで私はこういう質問をしているわけですが、私がこういう質問をすると何だか変な気持ちにおなりになるかもしれませんけれども、私はほんとうの政治というものは、やはり人間の存在の価値と尊厳というものにその安定の基礎を打ち立てるような政治が必要ではないかと考えているわけです。それで、いま民事局長おっしゃいましたけれども、これから考える、研究するとおっしゃるが、大体官吏というものは二年ぐらいすると栄転していかれる。私なんかの説を、意見を聞いた人はほかの局にお回りになって、そうしてまた新しい人に私どもは相談しなければならないことになるわけです。どうかひとつ、私どものこういうことを言ったということを聞きざりにせずに、即時にこういうことは御研究になっていただきたい。これは、私は自民党の一員でありますけれども、こういうことは社会全般の公正の立場から私はこれを申し上げておく次第でございますが、どうかひとつ十分御吟味をいただきたい、こういうことを念願しておきます。
  43. 浅井亨

    委員長浅井亨君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  速記をとめてください。   〔速記中止〕
  44. 浅井亨

    委員長浅井亨君) 速記を始めて。     —————————————
  45. 浅井亨

    委員長浅井亨君) 次に、検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  46. 山高しげり

    ○山高しげり君 私は、先日来新聞に報道されておりました元家庭裁判所調停委員詐欺事件というものについて少し承りたいと思います。  最初に、大臣に一言伺いたいと思いますけれど、大臣はこういう事件が発生しましたことについてどんなふうにお感じでございましたでしょうか、これを一言でけっこうでございますけれど。家裁の調停委員というものが就任中に詐欺の犯罪を犯したという容疑でいま……。
  47. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) 家庭裁判所の調停委員という立場であります人に対しては、一般世間の目は非常にこれに尊敬をし、信頼を持っておる関係でございます。したがって、世の中から信頼せられ、尊敬されておる調停委員を選ぶにつきましては、それぞれ家庭裁判所が一定の基準と手順に従って選んでおるわけでございますが、どうも人選を行なうにあたりましては非常に慎重な態度をもって臨まなければならぬということは、この事件にかかわらず、申し上げるまでもないところでございます。しかるところ、私は問題の事件について詳細な報告は受けてはおりませんけれども、新聞の報ずるところによりますと、こういう立場にある人が事もあろうに詐欺事件を構成するに至ったというようなことは、まことに世間に対して申しわけがないと、こう考えるのでございます。事件内容を具体的に知悉しないので、詳しく申し上げようがないのでありますが、そういう私の持っております考えから申しますと、将来は調停委員の選任にあたっては、定められた基準に従いまして一そう厳格な態度でその人選をしていかなければならぬものと、こう考えるのでございます。
  48. 山高しげり

    ○山高しげり君 ありがとうございました。  それでは、だんだんこまかいことを伺いたいと思いますが、この婦人は三十七年の一月から家裁の調停委員になられて、四十二年の四月に正式に辞任されたと新聞に出ておりますが、そのとおりでございましょうか。
  49. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) ただいまの御指摘のとおり、この調停委員は三十七年に東京家庭裁判所の調停委員に選任されまして、本年の四月三日に辞任をいたしております。
  50. 山高しげり

    ○山高しげり君 これも新聞が伝えているところでございますが、この福永という婦人が犯罪を犯しましたことが問題に内部でなって、当人が一月に辞表を出すに至った。それを正式に辞任の扱いになったのが四月だと、こんなふうに出ておりますが、その点いかがでしょうか。
  51. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) その点につきましては、私案は新聞の記事のただいま御指摘の点は承知いたしておらないのでございますが、本年の四月三日、本人からは病気ということを理由に辞任の届けが出まして、東京家庭裁判所ではそれを受理しておるわけでございます。その間の事情につきまして、実は東京家裁のほうに尋ねてみたわけでございますが、東京家庭裁判所といたしましては、辞任の辞表を受理する際には本件のような事案があったということを全然知らなかったということでございます。
  52. 山高しげり

    ○山高しげり君 そういたしますと、本人からは四月になって病気を理由で辞任の辞表の提出があった。新聞の、一月に辞表が出て、当局としてはそれを四月にお認めになったということではないのでございますね。
  53. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) ただいまの御質問の点でございますが、私の手元に参っております辞任届けの写しは、四月三日付ということになっております。したがって、一月に辞表が出されたというふうには私理解しておりません。
  54. 山高しげり

    ○山高しげり君 この事件は、いまお調べ中でもございましょうし、その事件内容に触れていくことはどうかと思いますので、一般論として、家庭裁判所調停委員につきまして伺いたいと思います。  まず最初に、家庭裁判所の調停委員が任命をされます経路と申しますか、どのようにして選任されるのでございますか、その手続をひとつ承りたいと思います。
  55. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 調停委員の選任、正確に申しますと、調停委員となるべき者の選任につきましては、最高裁判所の規則がございます。これは調停委員規則という規則でございまして、この規則によりますと、選任の基準といたしましては、「調停委員となるべき者は、徳望良識のある者の中から選任しなければならない。」ということが第二条の第一項に掲げられております。なお、調停委員につきましては、民事調停委員あるいは家事調停委員というふうに、いろいろ各種の種類がございますので、そういうふうな特別の知識経験を備えた者の中から選任するということを同じく第二条で掲げられております。具体的な選任基準につきましては、第九条で「調停委員となるべき者の選任及び調停委員の指定に関し必要な事項は、地方裁判所又は家庭裁判所において定めることができる。」、こういうふうになっておりまして、民事調停委員につきましては地方裁判所、家事調停委員につきましては家庭裁判所において、それぞれ詳細な選任の基準というものを定めているわけでございます。
  56. 山高しげり

    ○山高しげり君 そういたしますと、この場合は、東京の家庭裁判所の選任基準を拝見しなければほんとうのことはよくわからぬわけでございますか。
  57. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 東京の家庭裁判所の選任基準と申しますか、これは内規としてあるわけだと私考えておりますけれども、大体いまの東京の様子を聞いてみますと、第一次に書面で審査をいたしまして、第二番目にその候補者に面接をしてその人物を見る、それからその上で裁判官会議にかけまして調停委員となるべき者の選任をきめるというふうな手続でやっております。
  58. 山高しげり

    ○山高しげり君 その最初に書面審査をなさると申しますと、その候補者はどこから選ばれてくるというわけでございますか。
  59. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) これもやはり各裁判所によって違っておりまして、推薦母体のあるところもございますし、また推薦母体がなくて個々的に候補者を選ばれるというところもございます。たとえば選任母体のあるところでございますと、弁護士会、あるいは調停協会、あるいは市町村、あるいは医師会とか、そういうふうな各界各層の団体から推薦をしていただくという場合もございますし、また個人の方から推薦していただくという場合もございます。東京家裁の場合にも、自薦の場合もあるように聞いております。
  60. 山高しげり

    ○山高しげり君 自薦あり他薦ありということらしゅうございますけれども一般に家庭裁判所の調停事件というものは戦後非常にふえておりまして、一般人もなかなか関心も持ち、ある程度知識も持っているかと思いますけれども、ただ調停委員がどこでだれの手で選ばれてくるのだろうというようなことは、非常にふだんからやはりよく私どもも質問を受ける点なんでございます。ただいま仰せのように、弁護士会とか、あるいは調停委員会でございますか、こういう問題に関係のあるような一つの団体のようなものの御推薦があるということはよくわかるのでございますが、医師会という仰せでございましたが、これはまあ幅の広い人事の問題でございますから、この医学に関係のある問題も当然出てはくるのでございますけれども、当局から弁護士会に、あるいは医師会に、何人か候補者を選んでほしいというような要求をなさるのですか、それとも団体のほうから自発的に推薦するのでございますか。
  61. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 私も実はその点の詳細については、ここではっきり申し上げることはできないのでございますけれども、大体推薦母体を持っておるところでは、毎年の年度末に、各そういうふうな弁護士会、あるいはそういう医師会とか、そういうところに適任者の推薦方をお願いしておるのが実情でないかというふうに推測いたしております。
  62. 山高しげり

    ○山高しげり君 御推測でございますが、推薦母体というその名称をお使いになるわけでございますが、そうすると、それはその裁判所のほうから推薦母体とみなされるという何か条件があるのでございますか、この団体とこの団体は推薦母体とみなしておるというような。
  63. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) ただいま推薦母体ということばはあるいは不適当かもしれませんが、調停委員は各界各層から適材な方に出ていただくということが裁判所としては最も望ましいわけでございます。したがいまして、弁護士の御出身の方も必要でありますし、また医学的な知識をお持ちの方も必要でありましょうし、また農事関係におきましてはその方面の専門的な知識をお持ちの方も必要でありましょうし、鉱害調停委員ということになりますとその方面の特別知識をお持ちの方も必要であります。そういうわけで、各それらの方々の所属する団体に適当な方の御推薦をお願いするという場合が多いのでないかというふうに考えております。
  64. 山高しげり

    ○山高しげり君 先ほど大臣も、ちゃんと基準があり、手順があって選んでいるとおっしゃったんでございますが、それでいまだんだん規則の内容を伺っていると思うのでございますけれども、そういたしますと、それぞれの地方地方での裁判所で、その推薦母体を適宜お選びになって、そこへ御依頼になると、こう解釈してよろしいのでございますか。
  65. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 先ほどもちょっと申し上げましたように、そういうふうな推薦の母体があるところもあるし、またない裁判所もございます。推薦母体のあるところでは、先ほど申しましたような手続で推薦の御依頼をお願いするということになろうかと思います。
  66. 山高しげり

    ○山高しげり君 そういたしますと、それはその家庭裁判所のそれぞれのお考えによって推薦母体というものが決定される、こういうふうに解釈してよろしいのですか。
  67. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 最高裁判所といたしましては、具体的な調停委員となるべき者の選任は、民事調停については先ほど申しましたように地方裁判所に、家事調停委員については家庭裁判所にまかしておりますので、各地裁あるいは家裁において選任いたしておるわけでございます。
  68. 山高しげり

    ○山高しげり君 どうも、私どもがしろうとのせいですか、各家裁におまかせになる何か基準といいますか、そういうものがないことはふしぎのように思いますけれども、いかがなものでございましょうか。
  69. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 一般的な、抽象的な基準といたしましては、一番冒頭に申し上げましたように、最高裁判所の規則というものの中に調停委員の規則がございます。その規則に、抽象的にこういう方が調停委員として望ましいという規定がございますし、またこういう人は調停委員としては不適格であるという不適格の事由も規定されております。こういうふうな抽象的な、一般的な規定最高裁の規則にございまして、こまかい細目につきましては各地・家裁に委任をしておるというのがたてまえでございます。
  70. 山高しげり

    ○山高しげり君 推薦母体が存在する。そうしてそれは、現在問題にしておりますのはこの家庭裁判所の調停委員でございますから、各家裁に推薦母体は自由にまかせてある、こういうことになるのですか。
  71. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) どうも推薦母体ということばが非常に問題になったようでございますが、実際上選任するについてどういう方が適任かということを把握するためには、弁護士会、あるいは調停協会、そういうところにお願いして適任者の推薦をお願いするということでございまして、それを推薦母体と言えば推薦母体かもしれませんが、むしろ推薦母体じゃなくて、こちらは諮問する団体と申しますか、そのほうが適当なことばではないかというふうに考えております。
  72. 山高しげり

    ○山高しげり君 推薦から諮問に変わってきたわけでございますが、そのいずれにしましても、当局が最適任の方を得たい、そのためにひとつ諮問なり推薦なりを依頼するような団体が現在ある、そこまではわかりました。それの推薦団体、あるいはその諮問団体という、名称はいずれでもよろしゅうございますが、御相談になる組織、いわゆる最初に推薦母体ということばをお使いになった、その対象になるものの基準というものは最高裁の規則の中にないのでございますか。
  73. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) それはございません。各地・家裁にまかしております。
  74. 山高しげり

    ○山高しげり君 そうしますと、推薦母体を活用しないで人選していらっしゃる家裁もあり得るのでございますか。
  75. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 先ほど来申しましたように、そういう母体を活用しない裁判所もございます。現に東京家裁では、そういう団体は活用しておらないと思います。
  76. 山高しげり

    ○山高しげり君 この問題の調停委員は、東京家裁の調停委員のようでございますので、したがいまして、そうすると、これは個人の推薦で出てこられた委員でございましょうか。
  77. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 私の承知しております範囲では、問題の委員は個人の方の推薦によって裁判所が選考した上で選任したというふうに聞いております。
  78. 山高しげり

    ○山高しげり君 それでは、いろいろな経路をとって、個人の推薦であれ、推薦母体の推薦であれ、もちろん当局が、書面審査、あるいは面接、裁判官会議という、いろいろな過程を経て最後の決定をしていられるわけでございますが、現在全国で家庭裁判所の調停委員は総数でどれくらいおいででございますか。
  79. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 昭和四十二年の一月一日現在におきまして、家事調停委員の数は一万八千四十五人というふうになっております。
  80. 山高しげり

    ○山高しげり君 そのうち東京は。
  81. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 調停委員の数は、先ほど申しました最高裁の規則の中で、二百名以上五百名以下というふうに規定されております。しかし、各裁判所によりまして、事件の数あるいは地域の関係その他がございますので、特に規定されたワクをこえて調停委員を選任する必要のある場合には、最高裁判所の許可を得ればその人数以外の者を選定できるということになっております。現在東京家裁におきまして選任されておりますのは、六百四十六名の調停委員が選任されております。
  82. 山高しげり

    ○山高しげり君 全国で一万八千四十五人、それから東京で六百四十六人、男女別、ついでに伺いましょうか。
  83. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 昭和四十二年の一月一日現在におきましては、男子が全国で一万二千五百六十六名、女子が五千四百七十九名、こういうふうな数になっております。
  84. 山高しげり

    ○山高しげり君 東京も伺いたいのです。
  85. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 東京家庭裁判所におきましては、男子が三百五十九名、女子は二百八十七名、こういうふうな数字になっております。
  86. 山高しげり

    ○山高しげり君 ありがとうございました。  それで、それらの方々の中には、その調停委員をなさっております年数でございますね、それが最高と、一番新しい方、どれくらいございますのでしょうか。
  87. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 原則といたしまして調停委員は毎年選任するということでございますので、調停委員の任期は一年ということになっておりますけれども、再任を妨げないわけでございます。したがって、古い方は相当年数やっておられますし、いま私の手元に、全国的に見てあるいは東京家裁におきまして一番長い人は何年という資料を持ち合わせておりませんので、はっきりしたお答えは申し上げかねるわけでございます。
  88. 山高しげり

    ○山高しげり君 この一年一年で更新をなさるというのには、何か理由はございますか。
  89. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) これは民事調停法第七条、家事審判法第二十二条に、毎年これを選任するという規定がございまして、法律規定に従って行なっておるわけでございます。
  90. 山高しげり

    ○山高しげり君 それはわかりますけれども、結局、その毎年毎年更新をするという考え方の根本になるものがあると思うのですけれども、任期が二年あっても三年あってもよろしいというものもございますけれども、毎年毎年入れかえをなさる、ただし再任を許されるといたしますと、その入れかわって新しくなっていく率はどんなものでございますか。
  91. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) やはり調停委員に新しい新風と申しますか、それを吹き込む意味におきまして、毎年ある程度の数の調停委員の新しい方を入れかえるという必要が起こってまいるわけでございます。現在、大体毎年新しく選任されて交代していかれる方が二〇%近くでないかというふうにいまおよその数を記憶いたしております。
  92. 山高しげり

    ○山高しげり君 これは正確な数字が、後ほどでよろしゅうございますが、わかりましたら資料をいただきたいと思います。  で、私どもがまあ個人的に存じている方でもう十数年やっていらっしゃる方もございますが、年齢はどんなことになっておりましょうか、何か制限がございましょうか。
  93. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 年齢につきましては、別に制限がございません。したがいまして、家事調停委員につきましても、相当高齢の方がなっておられるという場合がございます。しかし、平均いたしますと、昭和四十二年度では六十四歳というかなり高齢な平均年齢になっております。
  94. 山高しげり

    ○山高しげり君 ついでに伺いますが、高齢な方が多いと同時に、委員の中には病気等で相当長く休んでいらっしゃる方がおありのようでございますが、そういう場合にも何か限度がございますか。
  95. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) この問題につきましても、現場の各家庭裁判所に一任しておるわけでございますが、各家庭裁判所におきましてもやはり年齢の範囲ということを考えておるようでございますけれども、何分、先ほど山高委員から御指摘のとおり、十数年で、あるいは家庭裁判所始まって以来調停委員をなさって非常に調停のために尽くされたという方を高齢のゆえに再任をしないということはある程度情において忍びないということで、そういう高齢の方は残っておられる場合が間々あると申しますよりも、相当あるというふうに私ども承知しております。
  96. 山高しげり

    ○山高しげり君 これらの委員さん方がいろいろな事案をお取り扱いになります場合、手当というものが出ておるかと思いますが、その金額はいかほどでございましょうか。
  97. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 調停委員に対する旅費、日当は、現在のところ一件について九百円ということになっております。
  98. 山高しげり

    ○山高しげり君 一日のうちに午前に一件、午後に一件というふうに、事件が重なる場合もあり得るでございましょうか。
  99. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) ただいま御指摘のとおり、午前に一件事件を扱い、午後にさらに他の事件を扱うという場合も間々ございます。そういう場合には、支給の基準といたしまして千六百円が最高限度ということになっております。
  100. 山高しげり

    ○山高しげり君 一件を取り扱って九百円、二件になりますと割り引きみたいでございますが、その支給基準というのはどういう考え方から出るのでございましょうか。
  101. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) これは結局予算に関係する問題でございまして、大体調停委員の日当につきましては、国会の御審議を経まして一定の予算のワクというものがきまっているわけでございます。これに対して調停の事件あるいは調停の回数というものなどを考慮しまして、その予算のワク内でまかなえるという基準を最高裁のほうできめて、その基準を各地・家裁に流しておるというわけでございます。
  102. 山高しげり

    ○山高しげり君 そういたしますと、一件九百円というその旅費、日当を積算の基礎に置いてはじき出して予算をお取りになるというわけではないのですか。
  103. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) ただいま仰せのとおり、積算の基準としては、一件九百円ということで積算の基準にいたしております。
  104. 山高しげり

    ○山高しげり君 そういたしますと、一件九百円で二件扱って千六百円という考え方がどうもよくわかりませんけれども、積算では九百円で計算をしていらっしゃるので、二件なら千八百円が当然ではないか、人が働くのでございますから。
  105. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) ただいま御指摘のとおり、九百円の場合二件になれば千六百円ということはどうもおかしいのじゃないかという御指摘もございましたけれども、これは単なる基準でございまして、たとえば調停期日に調停委員が出頭された、ところが当事者双方とも出頭してそのままお帰りになるという場合には、実は九百円差し上げておらないわけでございます。減額をしてこれは一日七百円というふうな額を差し上げておるということも、総額に影響してまいることかと思います。
  106. 山高しげり

    ○山高しげり君 総額に影響ということがいまのようなふうだと出てくるわけでございますけれども、やはりお仕事をなさることの基準から言えば一件九百円で、お仕事をなさらなかった場合に減額ということはわかりますけれども、確かにその調停をなさって、そうして一件ずつなら九百円、二件なら千六百円となることは、何か妥当でないような、筋が通らないようにどうも思われるのでございますが。
  107. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) いま御指摘のことは、全くごもっともだと思うわけでございます。と申しますのは、調停委員の日当というものは一体報酬の性質を帯びているものかどうかという点に問題がかかってくるのじゃないかというふうに思われるわけであります。報酬だということになれば、二件ならば増額するのは当然だ。しかし、日当だということになれば、奉仕でその日出たというために支給される額でございますので、二件だろうが一件だろうが同じじゃないかという議論も出てまいろうかと思うわけであります。したがって、私どもとしてはこれを報酬というふうには考えておらないわけでございますけれども、しかし、二件をやっていただくということになればそれだけ時間をたくさん使っていただくという意味において、一件の場合よりも二件の場合のほうが額を上げているというのが実情でございます。
  108. 山高しげり

    ○山高しげり君 まあ局長さんにそれ以上お答えを願おうというのが無理かもしれませんので次へ進みますけれども、まあ二件あるのかあるいは三件あるのか私は存じませんけれども、まあ一人の人が一件、二件というものがなければこの問題はまたおのずから別になると思いますけれども、大ぜいおいでの方の中で、数件持たれる方、あるいは数日一向お仕事がないといったような、そういう問題はどうでございましょうか。
  109. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 先ほど申しました調停委員となるべき者に選任された者から実際に事件を担当する調停委員を指定するのは、各裁判官が指定するわけでございます。したがいまして、その裁判官は事件の難易その他によりまして適当と思われる調停委員を指定されるわけでございますので、ある調停委員の方には事件が少し片寄り過ぎる、あるいはある調停委員の方には事件が一カ月の間少しもないというような場合も間々起こり得るかと存じます。
  110. 山高しげり

    ○山高しげり君 一応ごもっともと承るのですけれども、一カ月も仕事がないような委員さんがこれで適任であるのか、あるいはある問題には非常に適任だけれどもその委員をわずらわすような性質の事件がない場合ももちろんあるとは思いますけれども、大体において家庭事件内容から申し、また先ほどからお話があったような相当な厳選をなさった委員さんならば、そうたいへん忙し  い委員さんといわゆるお茶をひいているような委員さんと出てこないのではないかと思われますが、その点はどうでございましょうか。
  111. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 小さい裁判所で調停主任裁判官は一人あるいは二人の場合でございますと、各調停委員の手持ち件数というものの全体の見通しがつくわけでございます。ところが、東京とかあるいは大阪というふうな大きな裁判所になりますと、調停担当の裁判官の数も多いわけでございます。したがって、各調停委員の手持ち件数というものを把握するということが非常にむずかしいわけでございます。したがって、その担当裁判官は、その事件に適した調停委員を指定するという場合に、たまたままた他の裁判官も、この離婚事件はやはり相当複雑困難な事件であるので老練な調停委員にお願いしたいということで、同一調停委員を指定するという場合も起こり得るわけでございます。したがいまして、小さい裁判所ではいまおっしゃったようなことはあまり起こり得ませんけれども、大きな裁判所では間々あることでございます。
  112. 山高しげり

    ○山高しげり君 やはり私ども常識的に考えて、大きな裁判所に問題がどうもありそうに思います。たいへん遺憾ながら今回の事件東京裁判所に起こったわけでございますけれども、問題の婦人などが相当犯罪とおぼしき行為を行なっておりながら、四月辞表が出てそれを当局がまあお認めになるまでに、先ほどの局長さんのお話ではちっとも知らなかったというふうにお答えになって、まあそれは当然でしょうけれども、この婦人以外の場合でも、どうも不適任ではあるまいかといったような問題が起こることもあり得ると私ども思うのでございますけれども、そういうような場合に、当人が四月三日に辞表を出した、即日これをお受け入れになったようでございますけれども、私どもが新聞に一月と——当人が一月辞表を出して、四月にその辞表が受け入れられた、その間三ヵ月あるわけでございますけれども、どういう場合にでも、私は、多少何だかおかしいというようなうわさなどが立ちまして、当局も多少お調べになるとか御心配になって結末がついていくというのがまあ世間の普通のことかと思うのでございますが、何か問題らしいものが起こりそうな、起こってきたような場合には、いままではどんなふうに処置をしてこられておるのでございましょうか。
  113. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) これは、先ほど来申しました調停委員の規則という最高裁の規則の中に、調停委員たるにふさわしくない行為があったときはその選任を取り消すという規定がございます。したがって、その調停委員の日ごろの行状その他によってどうも調停委員としてふさわしくないというふうに当該裁判所が認定をいたしますと、その選任を取り消してしまうわけでございます。本件の場合につきまして、どうもやはり、東京家裁が私どものほうに報告してまいりましたように、四月の三日まで、辞表の提出があるまでわからなかったというのが実情じゃないかと思うわけでございます。と申しますのは、この調停委員の取り扱った件数なんかから見まして、もしそういうふうな疑いがある、調停委員としてふさわしくない行為があったというふうな場合だと、まず取り消しか、あるいは調停委員として事件を割り当てない、いわゆる調停委員として指定しないというのが実情であろうかと思うわけであります。ところが、この調停委員につきましては、昭和四十年度には十六件、昭和四十一年度には十一件、それから昭和四十二年度は四月やめるまでに五件という事件を割り当てております。したがって、そういうふうないかがわしい風評をかりに担当裁判官あるいは当該家庭裁判所が耳にしておれば、そういうふうな具体的事件の割り当てはしなかったのでないかというふうに推測いたしますので、東京家裁からの報告のとおり、私どもも、辞表の受理をするまで、こういう不祥事があった、あるいはそういううわさがあったということについて、東京家庭裁判所も、また担当裁判官も知らなかったのでないかというふうに考えております。
  114. 山高しげり

    ○山高しげり君 まあ新聞では、おととしぐらいからことしにかけて一億四千万円からの詐欺事件を起こしていると、これはいずれ当局のお調べで犯罪の内容が明らかになると思いますけれども、四十二年の四月の三日に初めて問題が起こったわけでないだろうということは常識で判断ができるのでございますけれども、もしこの警察のほうのお調べで、新聞の記事のように、一昨年から犯罪行為が行なわれていた、そうして裁判所としては四月三日に辞表が出るまで知らなかったということでございますと、これは裁判所の御怠慢ということになりますね、いかがでございますか。
  115. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 調停委員の監督ということにつきましては、非常にむずかしい問題でございまして、調停委員は裁判所職員でないわけでございます。いわゆる奉仕的な仕事をしていただいておるという立場にあられる方方でございますので、裁判所職員に対する監督のごとく、日常の私生活までわたって目を届かすということは実際問題としてやっておりませんし、また不可能なことじゃないかというふうに考えております。
  116. 山高しげり

    ○山高しげり君 先ほど局長さんが、この婦人の調停委員さんが取り扱った件数について数字をおあげになりましたが、比較的案件をたくさん取り扱っていて、少なくとも一カ月に一件ないしはそれ以上扱っているというような数字になりますが、まあ数字からだけ推すこともできますまいが、犯罪のことは別にいたしまして、この福福永調停委員は調停委員としては相当優秀な委員であったということになりましょうか。
  117. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 取り扱い件数だけから見てその調停委員が優秀であるかどうかという判定は、実は私いたしかねるわけでございます。また私、実は福永調停委員にお目にかかったこともございませんし、また担当裁判官からどの程度の力量のおありになった方かということも聞いておりませんので、ただいまの御質問に対しては正確なお答えをいたしかねるわけでございます。
  118. 山高しげり

    ○山高しげり君 それは御無理かもしれませんけれども一般論といたしましても、月に一件以上は取り扱っていらっしゃったと、ことにやめる年は——四月の初めにやめられたのですから、四十二年の一月、二月、三月と三カ月、その中にはお正月休みもあろうと思いますのに、五件も持っておられるということは、私どもが常識で判断をすると、相当有能な委員さんであったのではないかと思うのですけれども、調停の仕事が有能であっても、片一方にこんな大きな犯罪行為があるということ、これはひとり福永委員の場合だけたいへん特別な事例であるとも私どもはやはり思えないので、今後におきましてもやはりこういう遺憾な問題が出てこないように、今後続いてまいるべき家裁の調停委員の任用に対しては、先ほど大臣が、抽象的ではございますけれども、今後ますます人選に慎重な態度で当たらなければならないということを繰り返しておっしゃったのでございますけれども、御当局としては、ああいう事件が起こりましたことについて、今後のことを何かお考えでございましょうか。
  119. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) こういう事件が起こりましたことにつきましては、先ほど田中法務大臣からお答えのとおり、私どもといたしましてもまことに遺憾な事件であるというふうに考えるわけでございますが、特に新聞に出ております事実が真実であるということになりますと、その調停委員から調停を受けられた方々に対する心理的影響と申しますか、そういうものを考えますと、私どもの責任のますます重いということを痛感する次第でございます。したがいまして、今後とも調停委員の選任については、厳選の上に厳選を重ね、慎重の上に慎重を重ねてやっていかなければならないというふうに考えております。
  120. 山高しげり

    ○山高しげり君 この福永委員が取り扱われた事件内容というようなものは、われわれはそれを知ることは格別法律的に違法ではございませんね。——それでは、参考のためにひとつその資料をお願いしたいと思います。
  121. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 私も実は新聞に出ている程度しか存じないわけでございます。と申しますのは、これは捜査段階事件でございまして、おそらくまだ検察庁にも行っておらないのじゃないかと思います。そういたしますと、警察で被疑事実としての捜査をされているわけでございますので、私どものほうから警察へ照会するということもいかがなものかと思いますので、もしできれば所管の警察庁あたりからお聞きいただきたいと、こういうふうに思います。
  122. 山高しげり

    ○山高しげり君 私のことばが足りなかったようでございますが、私は、その福永委員が取り扱われた家裁の調停事件でございます、たとえば離婚を何件扱ったとか、子供の問題があったとか、こういうその三年間に三十件以上にわたっております取り扱いの調停事件内容が知りたいと、こう申したのでございます。そのことは、いま局長自身が、調停を受けた人の心理的なあれはどうであろうかと思う云々とおっしゃいましたけれども……。
  123. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 調停委員の取り扱います事件は、これは家庭の秘密に属する事件が多いわけでございます。したがいまして、その記録の内容をお知らせするということはいたしかねるわけでございます。
  124. 山高しげり

    ○山高しげり君 個人のその家庭の秘密のことはよくわかるのでございますが、そういう個人に関係したことは伏せていただいてけっこうでございます。ただ調停の内容として、どのようなものが何件ぐらいあったかと……。
  125. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 抽象的にどういう事件を扱ったかということは、調査いたしますればわかりますから、お答えいたしたいと思います。
  126. 山高しげり

    ○山高しげり君 できるだけその許される範囲内におきまして詳しいものをいただきたいと思うのです。  で、いろいろ承りましたが、今後この家庭裁判所の調停委員につきまして、抽象的なおことばでは大臣のおっしゃいましたし、局長からも伺いましたけれども、選任の基準というようなものをもう少しはっきりしていただくことができないか。それからその任用までの間に、この人は適任であるという推薦があり、何段階かの手続を経て決定をなさいましても、この仕事というものには初めてつかれるわけですから、研修と申しますか、そういったような課程を今日までも考えて実行しておいでになったのでしょうか、そのこと。
  127. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 調停委員の研修でございますが、これは各家庭裁判所におきまして研修をやっているわけでございます。また、調停運営協議会というものを、全国的な会、あるいは家裁単位のブロックのそういうふうな運営協議会というものを開きまして、調停委員の方方あるいは新しく調停委員になられた方々に対しては、調停委員の使命というもの、あるいは調停委員として知っておかなければならない法律的な知識と、そういうものについて、まあ研修と申しますか、あるいは協議と申しますか、そういうふうな会を持って、毎年やっております。
  128. 山高しげり

    ○山高しげり君 いろいろありがとうございました。まだ伺いたいことがございまして落ちているように思いますので、後日また承らせていただきたいと思いますが、どうぞひとつ、一人こういう問題があったので、これはその事件の当事者だけの個人的な問題ではどうもないように思いますので、今後もこの調停委員制度はまだまだ続いていくのかと思いますから、ひとつ厳重に選任をなさり、また的確なその技能の習得というようなことにも積極的にお考えをいただきたいと思いますが、同時にこの推薦につきましても、たいへんこだわるようでございますが、局長がおあげになった幾つかの団体以外でも、こういう人こそ家庭裁判所の調停委員になって働いてもらいたい人だというような人がございましたときに、いろいろ民間の組織もまた推薦をさせていただくということが可能であるようにひとつお考えが願いたいと思うわけでございます。医師会等の御推薦というのは、医師会がぜひ推薦をさせてくれというのか、あるいは御当局のほうからひとつその方面から適任者を選んでほしいといって諮問をなさったのか、私どもは、その推薦母体というものがあるのでございましたら、もっと幅広く国民の間から適任者が一人も多く任用をされまして、この制度の成果があがるようにしていただきたいと、今回の不祥事件一つの契機といたしまして、まだまだこの制度にはいろいろ問題点があるように思いますので、きょうはまあ第一回として承ったわけでございますが、質問の終わりにあたりまして私の要望を一言申し上げる次第でございます。
  129. 中山福藏

    ○中山福藏君 関連して。ちょっと家庭局長にお尋ねしておくのですがね、この調停委員を選任されたということについては、相当これは責任があるわけです。そこで、新聞、雑誌というものは、いろんな、雑誌記者もあれば、新聞記者もあるわけですね。そして、ことにローカル新聞というものを許可しておる今日は、これはもう新聞記者全体の性格というものを一応見て、人間の名誉というものをいかにして擁護するかということが反面においては非常な必要なことだと私は思うのです。だから、単に新聞、雑誌にいろんな記事が出たからといって、自分の選任が誤りだからこれを取り消すということは、これ非常な私は重大な問題だと思うのです。ことに辞表を出すということはおのずからその人のかってですけれども、これを取り消す——判決が確定しない以上は、国連憲章でも、日本の憲法でも、白だと、こう言われておるのですね、その前に取り消すということになると、二重の私は世間の信用を失墜するかさを着せるんだと、こう考えておるのですがね。その点においては十分ひとつ考慮をしていただかぬと、これはまあ選任は厳選ということが最大の条件であるということは、だれしもこれは否定する人はありませんけれども、一たび選任ぜられた人がそういう新聞記事でもって不名誉をこうむる場合においては、これは私は非常な問題だと見てるのです。そういう点は、これは小さい国でごちゃごちゃしてるような国だったらこれでいいですけれども、もうそろそろ日本というものを世界の大国並みになろうとしている今日には、よほど人の名誉ということについてはお考えを前にしていただいて取り消しの処置を講じないと、とんでもないことになるんじゃないかと思うのですね。こういう点についてひとつ御意見を承っておきたい。
  130. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) ただいま中山委員から、調停委員に対して非常に御理解のある御発言をいただき、恐縮しておるわけでございますが、本件の場合に、こういうふうな非行と申しますか、犯罪の嫌疑があったから辞表を受け付けたというわけでなくて、本件の場合は、先ほど来申し上げましたように、病気を理由に辞任の届けが出ておりまして、当時裁判所といたしましても、こういう事実があった、あるいはそういう疑いがかかっておるということを知らずに、本人が病気というので辞表を受け付けたわけでございます。したがって、単に風評があるからというだけで選任を取り消すとかというようなことはしないで、やはりいま仰せのとおり慎重にその点を検討した上で取り消しをする場合にはしなければいけないというふうに考えております。
  131. 中山福藏

    ○中山福藏君 もう一点だけお伺いします。先ほど六十四を標準にして大体選任しておるというおことばがございましたね。そこで、六十四ということ私の聞き間違いかしれませんが、とにかく一定の年限を制限して選任する方針をとっておられます。これは私ある裁判所で承ってるんですがね。そこで、私は年寄りのために、これは抗弁しておかなきゃならぬと思うのです。この席で一番私が年寄りでしょう。それでね、選挙のときなんか年寄りは引き下がれという演説をよくやるのです、若い人が。その若い人が、そういう演説をしたが、三人とも死んでる、私よりか先にね。だからこれはよほど考えられぬと、脳の細胞のいろいろな活動というものがその人の健康に宿っていると見ている。だから、そういうことを旧来の思想にとらわれて年寄りをいじめるというようなことは、すこぶるよろしくないと考えるのです。だから、これは要するに、多年の経験を積んで、そうして学識経験があり、また非常に常識も豊富な人は、私はやはり調停委員たるの資格があると考えるのですが、抽象的に、一般的に、たとえば裁判官の年限を制限するかのごとき態度でいわゆる調停委員を選ばれるのではとんでもない間違いが起こるのじゃないかと思うのですが、この点はどうですか。最後の質問なんです。
  132. 細江秀雄

    最高裁判所長官代理者(細江秀雄君) 先ほど私六十四歳ということばを言いましたのは、これは全国の家庭裁判所の調停委員の平均年齢が六十四歳であるということを申し上げたわけです。最高裁といたしましては、調停委員選任の年齢の基準というものは設けておらないわけでございます。これは、先ほど来申し上げましたように、各家庭裁判所におまかせしておるわけであります。中山委員がいま仰せの、ある裁判所では最初の任命のときの年齢に制限を加えておる裁判所があるというふうにおっしゃいましたけれども、これは確かに、東京、大阪などにおきましては、あまり老齢の方は最初に調停委員として任命はしておりません。ただ、その方たちが十年たち、あるいは十五年たち、八十になられた方もあるわけでございまして、まあ最初に任命する際には、なるべく六十五以上の方は選任しないというふうな内規をつくっておられる裁判所もあるようでございます。しかし、先ほど仰せのとおり、人間の能力というものは各個人差があるわけであります。それで、調停委員につきましても定年制をしいたらどうかということが従来から言われておりますけれども、一体定年制をしくことが可能かどうかということも、各個人の個人差によりまして一がいに筋を引いてしまうということは困難であり、また社会の経験を積まれた年八十歳になってもなおかくしゃくとしておられる方もおありになるわけでございますから、そういう方にはやはり調停の場で御活躍をいただくことも必要かというふうに考えておりますので、私どもといたしましても、最高裁判所としていまのところは年齢の基準はきめておりません。     —————————————
  133. 亀田得治

    ○亀田得治君 私は、内河氏に対するソ連におけるスパイ事件の判決、この問題に関して、本日はまあ主として資料をお願いするという立場から若干質疑をしておきたいと思うのです。  最初に、内閣の調査室としても非常にこの事件は注目をされておると思いますが、新聞で拝見いたしますと、判決文の要旨が外務省に届いたようでありますが、当然調査室のほうにもその写しが回されておると思いますが、いかがでしょうか。
  134. 大津英男

    説明員(大津英男君) 判決文はまだ届いておらない。それから、判決文は来ておらないけれども、公判を傍聴したモスコー大使館の係官の、何と申しますか、傍聴しましたところによります判決の要旨といいますか、そういうものが来ておると聞いておりますが、内容の詳細については承知しておりません。
  135. 亀田得治

    ○亀田得治君 その要旨は、内閣調査室のほうにはもらっておらないのですか。
  136. 大津英男

    説明員(大津英男君) 書類になっておりませんので、いただいておりません。
  137. 亀田得治

    ○亀田得治君 内容は聞いておりますか。
  138. 大津英男

    説明員(大津英男君) 大体聞いておりますけれども、内河が自供をしておるというようなことかと思います。
  139. 亀田得治

    ○亀田得治君 問題点がいろいろあろうと思いますし、いずれ判決の全文も見る段階が来れば、その段階でさらにお尋ねもしたいと思うんですが、一番問題になっておるところは、端的に言って、日本政府の委託を受けてスパイをした、こういう意味のことがこの判決の中にあるようなんですね。その点はどうなんです。そういう事実があったかないかじゃなしに、判決の中にそういうことが書かれておるのかどうか。おそらく報告書があったのであれば、その点が一番大事なところなんですから書かれておると思いますが、どうなんですか。
  140. 大津英男

    説明員(大津英男君) 私が聞いておるところでは、これは正確じゃございませんと思いますけれども、内閣調査室の外郭団体である団体というふうなことではないかと思っておりますけれども、正確には存じません。
  141. 亀田得治

    ○亀田得治君 私の思うのでは内閣調査室の外郭団体というふうに思うと言われるわけなんですが、判決の要旨が報告されてきた、その中にはどう書いてあるんです。外郭団体から頼まれたと書いてあるのか、日本政府から頼まれたと書いてあるのか、どっちなんでしょうか。
  142. 大津英男

    説明員(大津英男君) 正確には存じません。ちょっと申し上げかねますけれども、正確でございませんので。
  143. 亀田得治

    ○亀田得治君 私は一字一句ことばづかいを聞いておるのじゃないので、それは政府直接のものなのか、あるいは政府関係のある外郭団体なのか、ここがみんなが注目しておる要点ですわね、ただ個人の趣味で行ってそういうことをしたのか、この三つでしょう、大体考えられることは。だから、聞いておらないと言われますけれども、それは一番大事なところを、たとえ口頭の連絡でありましても、それはあなたとしては確かめてもらわなければいかぬのじゃないですか、内閣調査室として外務省のほうへ。きょうは外務省が来れぬものですから、しかしこれは少なくとも調査室としては当然お聞きになっていることだろうと思ってお聞きするわけですが、そういう点ではっきり外務省から説明受けておらぬですか。
  144. 大津英男

    説明員(大津英男君) 外務省のほうから私のほうに文書で参っておりませんので、正確なことがわからないと申し上げておるわけでございますが、きょう新聞に伝えられておりますところを読みますと、日本政府の委託を受けて云々というふうなことが判決の要旨にあったように見ております。そういうことでございます。
  145. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは委員長にひとつ要求しておきますが、外務省のほうにこの判決要旨の報告があったようですから、その報告のあった要旨をひとつ資料としてここへ提出してほしい。これは内閣調査室としても当然お知りになりたい文書でしょうから、調査室としてもそれを協力してもらいたいと思います。やはり議論をする場合に、いろいろな想像ではいけませんので、そういう報告書があるのですから、これはひとつ委員会として正式に要求をお願いしておきます。
  146. 大津英男

    説明員(大津英男君) 外務省のほうにも私のほうから連絡を申し上げます。
  147. 浅井亨

    委員長浅井亨君) それはあるんですね。
  148. 大津英男

    説明員(大津英男君) 外務省のほうにはあると思います。
  149. 浅井亨

    委員長浅井亨君) それではそのように。
  150. 亀田得治

    ○亀田得治君 それで、問題になっている外郭団体というのは、財団法人世界政治経済調査会、この団体ですが、御本人の内河さんはこの調査会にはどの程度おっとめになったのですか。
  151. 大津英男

    説明員(大津英男君) 世界政経調査会のほうで聞いてみましたところが、昭和三十六年からつとめまして、昨年の八月三十一日に退職しているということでございます。
  152. 亀田得治

    ○亀田得治君 内河さんのその間の役職、仕事ですね、これはどういうことだったでしょう。
  153. 大津英男

    説明員(大津英男君) 内河さんは世界政経調査会におきまして外国刊行物の翻訳というような仕事を担当しておったというふうに聞いております。
  154. 亀田得治

    ○亀田得治君 ロシア語関係ですね。
  155. 大津英男

    説明員(大津英男君) そのようでございます。
  156. 亀田得治

    ○亀田得治君 それから手当はどの程度もらっていたのですか。
  157. 大津英男

    説明員(大津英男君) ちょっといま手元に資料がございませんが、これは調べまして。
  158. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは正規の職員ですね、嘱託とかそういうものじゃなしに。
  159. 大津英男

    説明員(大津英男君) そうでございます。
  160. 亀田得治

    ○亀田得治君 その手当は、正規の月給と、それからもしそのほかに研究費とか何かあるのであれば、その点も含めて御調査を願いたい。
  161. 大津英男

    説明員(大津英男君) わかりました。
  162. 亀田得治

    ○亀田得治君 ついでに、政経調査会の規約、それから設立当初からの主要役員並びに予算と事業ですね、これをひとつ資料として出してほしいと思うのです。
  163. 大津英男

    説明員(大津英男君) できるだけ早く提出いたします。
  164. 亀田得治

    ○亀田得治君 次に、調査会とあなたの調査室の関係ですね、これはいつごろから補助金が出ているのですか。
  165. 大津英男

    説明員(大津英男君) 世界政経調査会は昭和三十六年にできておりますので、その当時から——その前から、四つばかりの団体が統合されて一本になってできたと聞いておりますが、その団体に対しまして、世界政経調査会としては三十六年から委託費が支出されているということでございます。
  166. 亀田得治

    ○亀田得治君 四つの団体というのは、どういう団体ですか。
  167. 大津英男

    説明員(大津英男君) アジア動態研究所、国際問題研究会、それから内外事情調査会、国際経済調査会、こういう四つの団体が統合されて財団法人としてできた、こう聞いております。
  168. 亀田得治

    ○亀田得治君 その四つの団体には、内閣から委託費等は出ていたのでしょう。
  169. 大津英男

    説明員(大津英男君) 委託費を支出しておったということでございます。
  170. 亀田得治

    ○亀田得治君 それでは、四つの団体の規約、主要役員、それから事業予算、これらも明らかにしてほしいと思います。委託費を出しておるのですから、当然そういうことがわかっておるはずです。どうでしょう。
  171. 大津英男

    説明員(大津英男君) わかると思いますから、調査をした上で提出いたします。
  172. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、いまのお話ですと、世界政経調査会が三十六年に創立をされ、内河さんは創立当初からのメンバーですね。その前には、何か四団体のどこかに勤めていたんでしょうか、内河さんは。その点はどうでしょう。
  173. 大津英男

    説明員(大津英男君) ちょっといまここでわかりませんが、これも調査いたしまして……。
  174. 亀田得治

    ○亀田得治君 それから、三十六年以降内閣調査室から出された委託費ですね、これ毎年のやつを全部ひとつ明らかにしてほしい。そうして、その費用の使途ですね、使い道、これも明確にしてほしいと思います。それはできますね。
  175. 大津英男

    説明員(大津英男君) はい、そういう点調査いたしまして、提出いたします。
  176. 亀田得治

    ○亀田得治君 それから、調査室がいろんな団体に委託費等を出しておるようですが、世界政経調査会が一番金額が多いというふうに報道されておるんですが、それは間違いないんでしょうか。
  177. 大津英男

    説明員(大津英男君) 世界政経調査会の委託費が一番大きいということは事実でございます。
  178. 亀田得治

    ○亀田得治君 これはいずれ資料を拝見いたしますが、たとえば四十二年度の予算ではどういうふうになっておるでしょうか。
  179. 大津英男

    説明員(大津英男君) 約二億一千万円だったと思っております。
  180. 亀田得治

    ○亀田得治君 四十一年度——昨年はとうでしょう。
  181. 大津英男

    説明員(大津英男君) 一億八千数百万円だったと思います。
  182. 亀田得治

    ○亀田得治君 四十年度はおよそどれくらいですか。——まあ、いいです、それは資料で見ますから。  いまお答え、ちょっと例示的にお願いしたわけですが、まあ金額が一番多くて、そうして毎年どうもこれがふえていっておるようですね。したがって、外部から見れば、これが内閣調査室の一番関係の深い団体、これはやはりそういうふうに評価されます。そこに創立以来いた内河さん、こういうことですから、これは相当私は重大なやはり外部から見れば問題になろうと思うんですね。  で、もう少し若干関係事項を聞きますが、この政経調査会以外に相当委託費が出ておるようですね。何団体ぐらい出ておりますか。
  183. 大津英男

    説明員(大津英男君) 全部で十一団体ございます。
  184. 亀田得治

    ○亀田得治君 昨年度のこの結果から見ますると、十一団体で総計幾らぐらい出ておりますか。
  185. 大津英男

    説明員(大津英男君) 昨年度で十一の団体で五億七千五百万円でございます。
  186. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあ十一団体で五億。一団体に対して二億近くということですから、非常なこう違いがあるわけですね、外部から見た重みというものは。十一団体というのはどういう団体です。
  187. 大津英男

    説明員(大津英男君) 日本放送協会、内外情勢調査会、共同通信社、ラジオプレス、共同通信社開発局、海外事情調査所、世界政経調査会、東南アジア調査会、国際情勢研究会、国民出版協会、民主主義研究会、そういうことでございます。
  188. 亀田得治

    ○亀田得治君 いまおっしゃった団体に対するこの各年度の委託費ですね、これもひとつ一覧表にして出してほしいと思うのです。
  189. 大津英男

    説明員(大津英男君) 承知いたしました。
  190. 亀田得治

    ○亀田得治君 それから、その十一団体の責任者、規約、そういう点も——それと、まあ規約を見れば目的はわかりますからいいですが、そういう点もひとつ明らかにしてほしいと思います。よろしいな。
  191. 大津英男

    説明員(大津英男君) はい。
  192. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあきょうは大体こういう資料をひとつ求めておきまして、次回にさらに突っ込んだ質問をしたいと思っておりますが、最初あなたからお答えになったように、内河さんは自供しておるということのようですね。そうしますとね、どうなるのですか。公判廷で、日本大使館の係の方が傍聴をされるその前で自供をしておられると、自供の中身は、この新聞等で報道されておるように、日本政府から頼まれたという意味のことを言うておる。ということになりますとね、その頼むのは、これは一体どこなんですか。現在の機構からいうたら、あなたの調査室しかないのじゃないですか。
  193. 大津英男

    説明員(大津英男君) 内閣調査室としては、そういうことについて委託をしたと、頼んだということがございませんので、まあその点、本人が世界政経調査会に前に在職をしたことがあるということで、まあ伝えられるような行動と結びつけてそういうふうな解釈をされたのじゃないかと、そういうふうに私どもは想像しておるわけでございまして、詳しいことはわからないのでございます。
  194. 亀田得治

    ○亀田得治君 あなたのほうが直接この内河さんに頼んだんじゃなしに、世界政経調査会の諸君にこう頼むと——しょっちゅうこう連絡があるわけでしょう、ばく大な委託金を出しておりますし、室長なりあるいは部長などが知らぬ間にそういうことが行なわれるということがあるのじゃないですか。そこで、調査会に政府が頼む、そういう形で、政府の人が——政府としてと言えぬかもしれぬが、政府の人が。そうすると、調査会の役員が今度は、内河さんあちらへ行くならひとつこうこうこういうことも非公式に——どうせ非公式ですよ、こんなことは。非公式に言われておるので、ひとつそのつもりでと、それは言うておるかもしれぬですね。そういうことを内河さんは日本政府からこれは頼まれているのだと自分は理解ししゃべっておるかもしれぬ。そこまでの間、あなた監督はできるのですか。
  195. 大津英男

    説明員(大津英男君) いままで私いろいろ調べてみましたけれども、そういうふうに頼んでおる、団体に対してもそういうことを委託をするというようなことはありませんので、そういうことは何かの聞違いではないか、かように考えております。
  196. 亀田得治

    ○亀田得治君 その辺が、本人のこれは証言ですね、室長なり部長が頼まぬから日本政府とは関係がないのだと、私はそういうものじゃなかろうと思うのです、外部から見たら、外国側から見たら。それは皆さんのほうはいろいろ正規の仕事もあるでしょうが、それに関連して、できるだけ関係のあるものは集めてこい、集まってくれば、やはり、うん君はなかなか大いに腕がいいといったようなことになるのでしょう、平常は。私は調査仕事というものはそういうものだと思うのです。地位では一番上にいたって、その人がそういう一々研究員なり調査員のやっておることまでわかるものじゃないですよ。だから、そういう点についても、絶対にそんなことはないというようなことをここで断言できますか。
  197. 大津英男

    説明員(大津英男君) 私はないというふうに信じております。
  198. 亀田得治

    ○亀田得治君 思うだけでしょう。
  199. 大津英男

    説明員(大津英男君) 信じております。
  200. 亀田得治

    ○亀田得治君 しかし、なんでしょう、皆さんは外国のいろいろな事情を知りたがっておるのでしょう。これは大臣に来てもらって本格的に一度議論しなければならぬことですが、それはあなた、内閣の調査室の規約なり内規なり、いろいろなことにあるはずです。ともかくいろいろな材料、資料を集めろ、そういうものがあるのに、それに従って忠実にやったら今度はこういうようになった、そういうふうになると、そのもとのほうは、おれはそんなものは知らぬ、こうなったんでは、ちょっと私はつじつまが合わぬようになると思いますね。内閣調査室の何か調査活動についての規約なり、そういうものはあるんでしょう。
  201. 大津英男

    説明員(大津英男君) 規約というようなものは別段ございません。私ども公務員法に従っての勤務規律ということでやっておるわけでございますが、あとは特別に何かその規約というようなものをつくっておるというようなことはございません。
  202. 亀田得治

    ○亀田得治君 調査室の目的はどういうことになっておりますか。
  203. 大津英男

    説明員(大津英男君) 内閣の重要政策に関する情報の収集及び調査、それから各行政機関の行なう情報の収集であって重要政策に関するものについての連絡調整、こういうことが内閣調査室の仕事になっております。
  204. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういうふうに書いてあるのであれば、あらゆることがこれは入ってくるんですよ、全部あなた内閣の政策に結びついていくわけですから。まあきょうはあなたに対してあまりいじめても始まらぬわけで、先ほど申し上げたいろいろな資料を至急これ出してください。
  205. 大津英男

    説明員(大津英男君) わかりました。
  206. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうして、いずれ私、いま申し上げた点は、これは最南責任者に聞きますからね。われわれとしてもまた別個に調べながら聞くわけですから、あまりごまかしてもそれはばれるわけでね。あとからばれてからどうもと頭をかくようなことじゃなしに、やはりこれだけこう注目された以上は、真相を明らかにする。ある人は、それは当然じゃないかと、こういう意見もあるわけなんです。あなた方の中にもあるのじゃないですか、腹の中では。いろいろあるのです。だから、ざっくばらんな質疑をしてみたらいいと思うのです。それはソ連もやっておるし、アメリカもやっておるのであって、お互いが自分のことは抜きにして、ほかの国にかこつけてそういう意見を言う人もあるしね。だから、この真相はどうなのか、これはやはりはっきりしなければいかぬと思うのですよ。本人が公判廷でそういうことを自供しているんですからね。それを簡単に日本政府として、いや私のほうはそんなことありませんと、それだけではやはりちょっと通用せぬと思うのですね。筋の通るひとつ答弁ができるように、大臣に準備しておくように言うておいてください。じゃ、きょうは……。
  207. 浅井亨

    委員長浅井亨君) ほかに発言もなければ、本件の質疑は本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十七分散会