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1967-06-22 第55回国会 参議院 法務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二十二日(木曜日)    午前十一時四分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         浅井  亨君     理 事                 後藤 義隆君                 田村 賢作君                 久保  等君     委 員                 木島 義夫君                 斎藤  昇君                 鈴木 万平君                 中山 福藏君                 松野 孝一君                 亀田 得治君    政府委員        法務大臣官房司        法法制調査部長  川島 一郎君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局民事局長   菅野 啓蔵君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○旧執達吏規則に基づく恩給年額改定に関す  る法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 浅井亨

    委員長浅井亨君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  旧執達吏規則に基づく恩給年額改定に関する法律案を議題とし、これより質疑に入ります。本法律案に対し質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 後藤義隆

    後藤義隆君 執行吏恩給に関する改正は従来訴訟費用等臨時措置法改正によって行なわれておったのでありますが、今度新たな法律によって改正しようとするのはどういう事情からでしょうか。
  4. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 従来、執行吏恩給増額いたします場合には、訴訟費用等臨時措置法改正、正確に申しますと、昭和二十四年に制定されました訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律改正によって、これを行なってきたわけでございます。仰せのとおり、今回は従来と異なりまして、新しい別個法律制定するということによって執行吏恩給増額を行なおうとするわけでございますが、このような従来と方向を変えましたのは、これは全く技術的な理由によるものでございます。すなわち、従来の法制によりますと、執行吏恩給を受けるということは執達吏規則規定されておったのでございますが、他方訴訟費用等臨時措置法の第五条で執行吏に対する国庫補助基準額がきめられておったわけでございます。御承知のとおり、執行吏に対する恩給算定にあたりましては国庫補助基準額をもとにして計算をいたしております関係上、昭和二十四年でございますが、最初執行吏恩給増額をいたしますときに、この訴訟費用等臨時措置法にさらに六条という規定を設けまして、「執行吏受クベキ恩給年額ハ前條ノ政令ノ定ムル額——つまり国庫補助基準額——「俸給額ト看做シテ算定ス」、こういう規定を挿入いたしまして、同時にその改正法附則で、ただいま申し上、げました第六条の規定特則として執行吏恩給増額について規定をいたしたわけでございます。このようないきさつから、その後執行吏恩給増額を行ないます場合には、昭和二十四年の訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律附則に、さらに規定を追加するという形式で行ってまいったわけでございます。ところが、昨年執行官法制定されまして、執行吏制度執行官制度に切りかえられました。と同時に、執達吏規則廃止されまして、訴訟費用等臨時措置法の先ほど申し上げました第五条、第六条の規定も削除されたわけでございます。したがいまして、執行吏恩給につきましては、執行官法の第十四条の一項でございますが、ここに「この法律施行前に給与事由の生じた旧執達吏規則に基づく恩給については、なお従前の例による。」という規定を設けまして、この規定を根拠として執行吏に対する恩給を支給するということになったわけでございまして、その結果、訴訟費用等臨時措置法執行吏恩給には関係のない法律となりましたので、今回はこれにさらに新しく規定を追加するという従来のやり方で執行吏恩給増額を行なうことは適当ではないというふうに考えまして、別個法律制定するということにいたした次第でございます。今後執行吏恩給増額が行なわれます場合には、今回制定いたしましたこの法律にさらに規定を追加する、こういう形式で行なっていきたいと考えております。
  5. 後藤義隆

    後藤義隆君 今度のこの改正では、六十五歳以上の者を対象にしておるようでありますが、六十五歳未満というのはどういうわけで対象にしなかったわけですか。
  6. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 現在執行吏恩給を受けております者を調べてみますと、すべて六十五歳以上でございます。六十五歳未満の者は一人もいないわけでございます。したがいまして、そのような者について規定する必要はないという点から設けなかったわけでございます。
  7. 後藤義隆

    後藤義隆君 今度の改正で、六十五歳以上七十歳未満とそれから七十歳以上というふうな二つに分けてありますが、六十五歳以上七十歳未満の者がこの法律によって増額され恩典を受ける人は何人くらいいるわけですか。
  8. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) その点は、さきに提出いたしました参考資料の八ページに記載してございます執行吏恩給受給者数の表がございます。その表について簡単に御説明申し上げますと、一番下に合計という欄がございます。そうして、七十歳以上の者が六十四名、それから六十五歳以上七十歳未満の者が二名というふうに書いてありますが、この両者合わせました合計六十六名というものが現在執行吏恩給を受けている者の総数でございます。このうち今回の恩給改定によりまして恩給年額増額を受けます者は、ちょうどまん中ほどに小計という欄がございますが、そこに記載されておりますものがこれに当たるわけでございますが、七十歳以上の者について申し上げますと、昭和三十九年八月三十一日以前に退職いたしました者が今回の恩給年額改定を受けるわけでありまして、これに当たる者が五十六名、それから六十五歳以上七十歳未満の者につきましては、昭和三十八年九月三十日以前に執行吏退職した者がこれに当たるわけでございまして、該当者は一名でございます。したがいまして、今回恩給年額改定を受ける予定になっておりますものは、この一名と五十六名を加えました五十七名でございます。
  9. 後藤義隆

    後藤義隆君 今回の恩給増額支給恩給法等の一部を改正する法律案に対応するようでありますが、元執行吏恩給改定に関連する右法案の部分についてはどういうことになっておりましょうか。
  10. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 仰せのとおり、今回の執行吏恩給増額一般退職公務員恩給増額に準じてこれを行なうということにいたしております。一般公務員恩給増額につきましては、別途今国会法案を提出いたしておるわけでございます。その法案恩給法等の一部を改正する法律案でございまして、目下国会の御審議を受けておるわけでございますが、この恩給法等の一部を改正する法律案附則の二条と三条が一般公務員恩給増額関係のある規定でございます。この附則の二条と三条でございますが、これは一般退職公務員普通恩給のほかに、軍人の恩給でありますとか、あるいは遺族に対する扶助料でありますとか、そういうものについても一緒に規定をいたしておりますので、はなはだ複雑な規定になっております。そこで、この規定を適用した結果どうなるかということだけを簡単に御説明申し上げたいと思いますが、先ほどの参考資料の九ページにそのことが書いてございます。これによりますと、従来恩給年額改定は、仮定俸給年額というものを設定いたしまして、退職時の俸給がこの仮定俸給年額よりも少ないものについては仮定俸給年額基準として恩給年額を算出するということにしておったわけでございますが、この仮定俸給年額を今回はさらに増額するということによりまして恩給年額増額を行なうこととしているわけでございます。その仮定俸給年額増額する割合でございますが、それはここに書いてございますように、七十歳以上の者につきましては二八・五%、六十五歳以上七十歳未満の者につきましては二〇%、それから六十五歳未満の者につきましては一〇%、この割合でもって増額することにいたしております。もっともこの法案にはこういったパーセンテージで表示してございませんで、備考に掲げてございますように、具体的な金額で記載してございます。すなわち、現行仮定俸給年額がたとえば十四万七千七百円である場合におきましては、六十五歳未満の者は今後その一〇%を加えた十六万二千五百円にする、六十五歳以上七十歳未満の者は二〇%を加えた十七万七千二百円にする、それから七十歳以上の者につきましては二八・五%を加えた十八万九千八百円にする、こういうふうに具体的な金額で表示してございます。  それで、ついでに執行吏恩給増額との関係を申し上げますと、現在の執行吏仮定俸給年額というものは、この備考に抜き出してございます数字にはいずれも該当いたしませんで、十五万三千六百円となっておるわけでございます。ところが、この備考最後のところに書いてございますように、「恩給年額計算の基礎となっている俸給年額がこの表に記載された額に合致しないものについては、その直近多額俸給年額に対応する仮定俸給年額による。」、こういう規定になっておりますので、この規定に合わせますと、執行吏の場合の十五万三千六百円というのは、恩給法等の一部を改正する法律案によれば、十五万三千七百円として計算するということになるわけでございます。したがいまして、その表に基づいて見てまいりますと、改正後の仮定俸給年額は、六十五歳以上七十歳未満の者につきましては十八万四千四百円、七十歳以上の者につきましては十九万七千五百円、こういうことになるわけでございますので、今回の法律案はこれに合わせて起案をいたしたものでございます。
  11. 後藤義隆

    後藤義隆君 この執行吏恩給には、一時恩給とかあるいは扶助料制度がないのは、どういうわけでしょうか。
  12. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) お尋ねのように、執行吏につきましては、普通恩給増加恩給だけが認められ、一時恩給とか扶助料というようなものは認められていないわけでございます。なぜこういうことになっておるかと申しますと、そもそものできた当初からそういうことになっておりましたので、現在その理由は確たることは申し上げられないわけでございますが、最初執達吏規則ができましたときに、その執達吏規則の二十一条には、「執達吏ハ官吏恩給法ニ照シ恩給受ク」、このように規定されておったわけでございます。そして、その当時の官吏恩給法によりますと、現在の普通恩給とそれから増加恩給、この二種類恩給しか規定がなかったわけでございます。ところが、その後大正十二年であったと思いますが、官吏恩給法廃止されまして、現行恩給法制定されたわけでございますが、現行恩給法は、普通恩給増加恩給のほかに、さらに一時恩給扶助料についてまで規定を設けることになったわけであります。同時に、現行恩給法は、恩給を受ける者は国に対して一定の国庫納金をするというような制度もつけ加えられたわけでございます。ところが、執行吏の場合は手数料でその収入を得ておったわけでございますので、国庫納金制度に親しまなかったため、恩給法が全面的に執行吏に適用になるというふうに考えるわけにもいかなかったのでございまして、その結果、執達吏規則の第二十一条の規定は依然として「官吏恩給法ニ照シ恩給受ク」、以前と同じ表現をそのままに据え置かれたわけでございます。その結果、この規定の解釈といたしまして、執行吏恩給法によるすべての恩給を受けられるのでなくして、その制定当時の官吏恩給法に定められていた普通恩給増加恩給の二種類だけを受けられるにすぎないというふうに解釈され、運用されてまいったわけでございます。そういう事情にありますので、それ以上のことははっきりいたしません。
  13. 後藤義隆

    後藤義隆君 執行吏あるいはこの執行官手数料制度によって維持されておるわけですが、それが恩給を受けるわけですが、ほかに同じような類似のものがありますかどうですか。類似制度手数料制度によって維持されておるもので恩給を受けるというようなものが。
  14. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 日本ではほかにはないように思います。
  15. 後藤義隆

    後藤義隆君 昨年の暮れから執行官法施行されたのでありますが、従来に比較してその執行業務はどういう状態でしょうか。
  16. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 昨年執行官法制定されまして、この実際の執行吏の、執行官業務の上におきましても従来と異なったところが出てまいったわけでございます。その大きなところをかいつまんで申し上、げますと、何と申しましてもその第一は、役場制度廃止になりましたものでございまするから、執行官裁判所に勤務するという体制になりまして、したがいまして、またその管轄区域というものも、その勤務する裁判所管轄区域内という執務体制になったわけでございます。  それからもう一つ大きな点は、従来は執行当事者執行吏委任するという形であったわけでございます。これがとかく債権者執行吏との間の不明朗な関係を生ずるというきらいがなくもなかったわけでございます。その点が、委任制が改められましたために、申し立て制ということに相なりまして、事件の割り振りは結局裁判所における分配規約規則によって行なわれるということに相なりまして、当事者執行官との間のとかくのうわさがありました不明朗な関係というものが完全に断ち切られた。それからこの執行事務というものが、役場仕事でなくて、はっきりと裁判所仕事であるということが法律の面で明確化されました関係上、事件受け付け等裁判所職員がこれをやるというたてまえになったわけでございます。従来も民事訴訟法規定で、執行官が不在の場合には裁判所書記官がかわりに委任を受けてやるというような、委任の中継ぎをやるという規定があったわけでございます。これを廃止いたしまして、裁判所がその本来の職務として事務受け付けるという体制になったわけでございます。それから、執行吏役場廃止されたということは、裁判所執行官事務所というものについてはっきりした責任を負わされたということにも相なるのでございまして、そういう意味におきまして、従来非常に狭隘あるいは執務環境の悪かった事務所につきましての改善につきまして予算が伴うわけでございますので、一ぺんにはできませんけれども、その点につきまして昨年来一そうの努力を続けているような次第でございまして、漸次その効果があらわれてきているという状況でございます。  なお、執行官法におきましては、金銭授受——従来執行官がいわばどんぶり勘定でやっておったような金銭授受のしかたを、裁判所金銭を取り扱う、出納の事務を取り扱うという体制に改めましたが、しかし、これは人員等予算関係もございまして、漸次そういうふうに持っていく。原則はそうであるが、漸次そういうふうな体制に持っていくというような法律規定になっておりますので、昨年から少しずつ始めているわけでございます。昨年は何ぶんその点に関する予算の手当てがございませんものでしたから、全国でわずか十カ所程度の裁判所でそれを行なっているにすぎないのでございますが、ことしはその関係予算が、年次計画の三年度分のうちの一年度分といたしましての予算が入りましたので、その予算の限度内でその関係会計裁判所に取り入れるという法律の実施が可能になったわけでございます。  以上でございます。
  17. 後藤義隆

    後藤義隆君 申し立て人が特定の執行官を指定してあの人に頼みたいというようなふうなことは、そうするとできなくなったわけですか。
  18. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 先ほど申し上げましたように、委任制ということが廃止になりまして、申し立て制ということになりますと、やはり裁判所事件受け付けと同様に、順点ということが原則でございます。そういうふうな事務分配に関する規程というものを各地方裁判所につくらしているわけでございます。ただ、訴訟事件につきましても、いわゆる牽連事件であるというようなものにつきましては、事務分配の上で特別の規程を各地裁でもつくっております。そういうような関係で、牽連事件につきましては、順点原則にかかわらず、当該執行官がその事件受け付けてやるというような特則は設けられることになっておりまして、現にそういうような規定をつくっているところが多いのでございます。特にこの執行官にということは、原則としては許されないというたてまえになっております。
  19. 後藤義隆

    後藤義隆君 そうすると、手数料分配か何かの方法によるんですか。やはり、その執行官職務を行なった、それに対するものはその人が特に取るというようなふうな制度になっておるわけですか。
  20. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 事務分配のほうは、ただいま申しましたような原則によりまして、規約によって、規程によりましてきまっていくわけでございますので、手数料はその行ないました職務に対する対価でございます。したがいまして、手数料収入のほうは別々だということになるわけでございまして、自分が働いた分に対する手数料というものはその執行官に入るという関係になります。ただ、役場制度廃止になりましたけれども、まだ事務員というものはおるわけでございまして、そういう事務員執行官が共同して雇うというようなところもございまするので、そういう経費関係で、その経費をどういうふうに分配するかというようなことにつきましては、執行官同士規約をつくっているというわけでございます。
  21. 後藤義隆

    後藤義隆君 いまお話のありました、事務員とかあるいは職務を代行する者とかいうようなふうなものについて、将来何かその処遇について方針を立てられておるのかどうか、その点についてお聞きしたいのですけれども
  22. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) この点が、実は執行官法制定の際に、私ども執行官制度を実施するものといたしまして、その切りかえにつきまして非常に考慮を払わなければならない点であるというふうに考えておったところでございます。さような意味におきまして、いわゆる執行吏代理制度というものは、これは不合理であるので廃止するということにいたしたわけでございますが、いま直ちにその制度をやめろということではございませんで、その間の経過規定をつくっていただいたわけでございます。当分の間執行吏代理——いまは臨時執行官事務取り扱い者というものがいまでもおるわけでございます。しかし、これは制度の目的といたしましては、将来解消していくべきものである。そういう人々が、実は法律施行の際に、現在まだ二百七名おるのでございます。その中では、御承知のように、執行官事務取り扱い者ではありますけれども、その執行官事務のうちいわゆる執行を取り扱う者と、送達だけを取り扱う送達執行吏代理と言われておった人がおるわけでございますが、その二百七名のうちの内訳を申し上げますと、執行をする資格のある者が九十七名、送達のみの者が百十名、それでいわゆる執行吏代理をなくしていくという執行官法の趣旨でありますが、その執行吏代理というものの中で特にその執行をやる執行吏代理というものをなくさなくてはいかぬ。送達につきましては、これはなお将来研究すべき余地があるというので、まあこの送達代理というものはしばらくの間また残っていくかと思いますけれども執行吏代理というものは、私どもといたしましては、暫定的といいましても、ここ二、三年のうちにそういう姿をなくしていこうというふうに考えておったわけでございます。したがいまして、現在その関係執行吏代理の九十七名という人々処遇ということが問題になるわけだと思うのでございますが、このいわゆる執行吏代理のうち数名の者が執行吏になる実務修習ということを現に命ぜられております。そういたしまして、昨年の執行官法は、そういう者につきましては、新法にかかわらず、旧法の規定によって執行官任命することができるということになっておりまするので、この九十七名のうち現に実務修習中の者につきましては、試験の上しかるべき時期におきまして執行官になり得るというふうに考えておるのでございます。それで、あと九十名くらいの人でございますが、従来の実績から申しますと、執行吏代理の方で年齢のために自然退職されるという方が、年間にやはり三十名くらいはあるわけでございます。まあ三年くらいの後には、従来の実績から言いますと、そういう方々はいなくなると、なおそれでも残る方があれば、これは先ほども申し上げましたように、会計方面につきまして裁判所職員が必要であるというような事情もございまするので、できればそういった面に裁判所職員として取り入れていきたい、かようにしてこれらの方々の後々のことを考えたい、かように思っているわけでございます。それからなお、事務員がいるわけでございます。これが二百九十九名ただいまのところおります。全国的に見まして、これが大半が未婚の女子の方で、まあ結婚前に事務の手伝いをするというような方が大半でございます。そういう意味で、この執行吏代理制度は三年先にはなくなるだろうと思いますけれども事務員制度というものはいましばらく残るんじゃないかと思います。その間に女子方々は何とかなるんじゃないかというふうに考えておりますし、それからなおその他の方につきましても、裁判所職員として採用できる人はなるべくそういうような方法をとってまいりたい。で、最後までこういう方々制度犠牲といいますか、制度改正犠牲にならないような配慮は十分にいたしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  23. 後藤義隆

    後藤義隆君 この執行官任命については、どんな基準によっておるのでしょうか。
  24. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) これは裁判所法規定によりまして、裁判所が定める基準ということになっておりまするので、執行官規則の第一条がその任命につきましての基準を設けているわけでございますが、要するに行政職俸給表の四等級以上またはこれに準ずる職歴を有する四十歳以上の者が、地方裁判所の行なう筆記及び面接試験を経て任命できるということになっております。筆記試験法律知識考査面接試験は人物、適性の考査を主として行なうわけでございますが、裁判所書記官の経験のある者につきましては筆記試験は免除できるということになっております。
  25. 後藤義隆

    後藤義隆君 執行官になったその後において、別に研修するとかいうふうな計画はないのですか。
  26. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) これは正式に予算を取って始めましたのは、ことしの一月と二月にわたって行ないましたのですが、これは主として四十年以降に任命された者、すなわち新しく執行官になった者というものを対象といたしまして、ことしの一月から二月にわたりまして書記官研修所で七十六名を対象といたしまして行ないました。本年度は、その点に関する予算も少し増額して認められましたし、新しい制度のもとにおきまして任命された執行官が出てまいったわけでございます。やはり書記官研修所で今度は十日間ぐらいにわたりまして研修を行ないたいと思っておりますし、人数は約四十名ぐらいの予定でおります。
  27. 後藤義隆

    後藤義隆君 この委任制度執行吏のときと、今度は申し立て制度の執行官に変わってからの職務執行状態はどういうようなふうになっておりましょうか。まあ依頼者でない国民信頼度とか、あるいはまた事務進捗状態とか、そういうようなものはどんなふうでしょうか。
  28. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 何ぶん施行が昨年の十二月の末でございまして、約半年の間でございまするので、はっきりどういう面で国民の側からどういう批判があるという点になりますと、まだ実績の点で幾らか短いかと思いますけれども、しかし、金銭裁判所が取り扱うようになった場所では、とかくのうわさのあった点が、まあ裁判所金銭を取り扱うと、会計法規の規則によって取り扱うという、まあいわばガラス張りの金銭の出納ということになった点につきましては、これはたいへんよくなったという御批評もいただいておりますし、ただガラス張りにして法規的にやりますと、多少その間手続の面におきまして、ことにこの施行当時ふなれな場合におきましては、手続が多少めんどうになったじゃないかというような御批判も受けておるわけでございます。これはまあ金銭の取り扱いを厳格にするというたてまえをとった以上は、ある程度はやむを得ないのじゃないかというふうに思っております。  それから、受け付けにつきましても裁判所職員がやるたてまえになりましたことは、これはやはりそれだけの評価を受けておるというふうに私どもは受け取っております。
  29. 後藤義隆

    後藤義隆君 この執行官に対する監督はどんな方法で行なわれておりましょうか。
  30. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 監督につきましては、執行官法改正以前も、裁判所法あるいは最高裁判所規則である監督規程というものがございまして監督をしておったわけでございます。しかしながら、この監督の方法というものが、やはり執行吏役場というものが外にある、それを監督するというような制度になっておったものでございまするから、いわゆる査察ということを主にいたしまして、年に何回か執行吏役場裁判所任命した査察官が出かけていって査察をするということであったわけでございます。そういう意味で、査察が、監督が常時行なわれておるという態勢では必ずしもなかったわけでございます。しかしながら、役場制度廃止になり、執行官というものが裁判所職員——従来から裁判所職員であったわけでございまするけれども、その色彩というものがさらに濃厚になってまいったわけでございます。したがいまして、内輪の者を監督するという体制になりましたので、常時監督をするという体制に相なりましたために、監督に関する規定もこれを改めまして、単なる査察官ということでなく、監督官を置く。そうして監督補佐官を置く。そうして査察は、年に何回かの査察はもちろんであるが、常時いろいろな報告を求め、記録を提出させて監督しなければならないという体制になりまして、監督の面におきましては従来よりも相当強化されたということが申し上げられると思います。
  31. 後藤義隆

    後藤義隆君 この執行官の数が少なくて、申し立て人が非常に不便で困っておるというようなふうな状態はありませんか。
  32. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 執行官になり手が少ない、したがって老齢者も執行官に残しておかなければならないということが、まあ執行官法制定をお願いいたしました最も身近な原因であったわけでございます。したがいまして、執行官法制定によりまして執行官任命しやすくしていただいたわけであります。その一つはこの国庫補助金の非常な増額があったということでございますが、まあそれにいたしましてもまだ完全に十分というわけではございませんでした。しかし、まあそういうことがございましたために、執行官法施行の当時は三百三十七名ぐらいしか執行官はおらなかった。これは昭和三十七年ごろから漸次減少の傾向をたどりまして、私どもは憂慮しておったところでございます。それが執行官法附則による執行官、すなわち旧執行吏の資格で任命された者を含めまして、執行官法施行以来新規採用者というものが四十六名出てまいったわけでございます。これは約半年の間にそれだけの任命ができたということは、将来楽観は許せませんけれども、それでもっともっと執行官を必要としているわけでございますが、おかげをもちましてそれだけの効果が半年の間に出てきた。現在は三百六十数名ということになっております。近来といたしましては、執行官任命といたしまして非常に多数の者を任命するということができたということが申し上げられると思います。
  33. 後藤義隆

    後藤義隆君 執行官職務執行する際に、執行官であるということを他から確認できるような、何かそういうふうな方法を講ずる必要ありませんか。
  34. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) その点につきましては、規則の上に——執行官手続規則五条の四でございますけれども、身分証明書を携帯し、そして関係人から求められたときにはこれを呈示しなければならないという規則が一応あるわけでございます。それだけでは外見上必ずしもはっきりしないわけでございます。あるいは制服を着用してはどうかというような説もないわけではございませんけれども、まあ債務者のところに制服を着たそういう人が行くということには問題もございましょうし、その辺のところまでは考えておりませんけれども、現在といたしましても、非常に関係人が多くて、すなわち、家の取りこわしであるとか、明け渡しの場合に、いろいろ人夫なんか参りますときに、その中でどれが執行官だかわからないというようなことでは困る場合もございます。適宜腕章などをつけておるようでございまするし、私どもといたしましては、そういうような場合には通達などを出しまして、必要な場合には腕章をつけろというようなことも考えてみていいんじゃないかというふうに思っております。
  35. 中山福藏

    ○中山福藏君 私ちょっとお尋ねしておきますが、大体執行官の任務というものは、その職責からいって債務者にとっては鬼に見えるわけですね。その鬼の仕事をやるのが大体執行官だという認識を常識的に一般に持っておるわけです。そこで、その観点から考えまして、私は、たとえば建設省がある工事をすると、あるいは法務省がある工事をする場合には、入札者というものを選定しておる、あらかじめ一級、二級、三級、五級というようなあんばいで。だから、その実績に基づいてあらゆる方面から判定をして、この人間は資格あり、あるいはこの法人は資格ありという認定のもとに入札を許可しておる。ところが、この競売なんかには、めんどうくさいからこういうことはないわけです。そこで一番問題なのは、結局鬼に見える執行官と、それから第三国人を交えた競落者と、そうしてそれをどういうふうにして延期するかというので十万、二十万円の延期料を取るのです。これは内々ですけれども、これは私は長い間の弁護士生活でよく見ております。そこで、手数がかかると思いますけれども、入札者と競落者というものの資格をあらかじめ選定しておくという手続をとるということが、これは思想悪化の——これは債務者ですから、金を払わないとか、あるいは悪いことをしたとかいうことで、結局実質というものを損害賠償の点からあらわさなければならぬということになりましても、これは非常に恨むと思うのです、人間というものはあさましいものですから。そこで、やはりその競落者の資格選定というものをやっておく必要があると思うのですが、そういう点については何も最高裁においては関心持っておられないのですかね、それちょっと伺っておきます。
  36. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 執行制度の改善は、執行官制度の組織法的な面だけでは不完全だと思います。それで、私どもといたしましては、法務局にお願いいたしまして、手続法の面、それの改正をお願いいたしまして、ただいま仰せにございましたような、たとえば競落人の資格について考えてみるとか、そういうようなことも、この組織面の法が一応これで固まりましたら、引き続きまして手続の面、具体的に申しますれば、訴訟法上の強制執行編を改正する作業をことしから始めていただくようにお願いしているわけでございます。
  37. 中山福藏

    ○中山福藏君 もう一点だけ。これは法務大臣に尋ねたいと思ったのですが、あなた民事局長さんだから尋ねておきますが、大体競落というものは、最低の価額で落としおるのです。それで結局私は、これは国家が非常な債務者に対して不親切だと思いますよ。大体三分の一程度で落とすのですね。それをまず親類縁者によって買い戻してもらう、債務者が。そのときは三倍あるいは四倍でこれを親類縁者が買い取っておるのです。私はこの点は非常に、何と言うのですか、古い思想の残滓をなめているのじゃないかという感じを受ける。そこで、私がこの際お願いしたいのは、債務者というのは非常に悲境の立場にある。その悲境の立場にある人を救う意味において、いまの三分の一程度の競落の標準というものを三倍にして、普通の価額でこれを国家が買い上げるというような措置を講じなければ、債務者はたまったものじゃないのですよ。こんな不都合なことをした人間だから三分の一やあるいは四分の一でたたき倒して、いわゆるオークション——競落してしまえというようなことでは、ほんとうの私は債務者の救済にはならないと思うのです。それで、この点についての法規というものを一応つくる、お考えを願って、そうして債務者に更生の道を与えるということは、やはりこれは考えられなければならない問題だと思う重大な問題ですよ。だから、これに関連した、つまり法規のあらゆる方面からの改正というものは必要だと思うのですよ。これは法務大臣に言っていただきたいのです。あなただけにこれは申し上げるのじゃない。あるいは最高裁の判事の方々にもこの点を申し上げていただきたい。これは非常に必要だと思う。こういうことが看過されておった、いままでは。債権者が主体になって、債権者の便利のための競売というのが行なわれておる。私はこれはそうじゃないと思う。やはり債務者の立場を思い、また債務者が人間として満足感を得て、そうして更生の道をたどるような仕組みでなければ、私はほんとうのこれは国家としての任務は果たしたものじゃないと思うのですが、どうですか。その点は十分当該関係の人にひとつ伝達していただきたい、こう思うんですがね。
  38. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 裁判の事務といたしましては、裁判と執行は相並び立つぐらいに重要な仕事であるというふうに考えているわけでございまして、その執行につきましていろいろうまくいってない点があるという点も承知しているつもりでございます。したがいまして、御趣旨のような点につきまして、私どもも十分に検討いたしますとともに、関係方面にもその趣旨を伝えて、将来その点に関する改正が円滑にいくように努力いたしたい、かように存じます。
  39. 中山福藏

    ○中山福藏君 これは最高裁も、法務省も、人権、人権と言いながら、こういう点は全然何らの考慮を与えていない、いままで何十年という間。実に国民に対して私は不親切だったと考えている。いままでの、弱い者はほうりっぱなし、強い者は助けていくというやり方では、これはいかぬですね。ほんとうにこういう問題は、これは大臣に私は申し上げるつもりでおったのですが、民事局長はお若くて非常に聰明だという私は判定をしているわけですから、あなたに申し上げるわけですがね。私から言えば、一言にして、なっておらぬですね、いまでの法制関係というのは。だから、よほど時勢というものに目ざめ、人間の価値と尊厳というものに対して、もう少し在朝在野の法曹界において十分ひとつ考慮しなければならぬ重大な問題だと考えるのですがね。これはひとつ民事局長から、最高裁の長官にも、あるいは法務大臣にも——これはあなた法務省の関係じゃないと思うのですから私から申し上げますけれども、ただ法律がきまったからこれを施行すればいいというような簡単な考えだったら、これはほんとうに国民は哀れなものですよ。どうかひとつそういう点お考えくださいまして、私の愚見と申しますか、率直な意見を伝達していただきたい、お願いしておきます。
  40. 浅井亨

    委員長浅井亨君) ほかに発言もなければ、本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三分散会