運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-05-25 第55回国会 参議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月二十五日(火曜日)    午前十時十二分開会     —————————————    委員異動  五月二十五日     辞任         補欠選任      加瀬  完君     稲葉 誠一君      野坂 参三君     岩間 正男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         浅井  亨君     理 事                 後藤 義隆君                 田村 賢作君                 久保  等君     委 員                 梶原 茂嘉君                 木島 義夫君                 斎藤  昇君                 鈴木 万平君                 松野 孝一君                 稲葉 誠一君                 岩間 正男君                 山高しげり君    国務大臣        法 務 大 臣  田中伊三次君    政府委員        警察庁刑事局長  内海  倫君        法務省刑事局長  川井 英良君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   寺田 治郎君        最高裁判所事務        総局人事局長   矢崎 憲正君        最高裁判所事務        総局経理局長   岩野  徹君        最高裁判所事務        総局民事局長   菅野 啓蔵君        最高裁判所事務        総局刑事局長   佐藤 千速君        最高裁判所事務        総局家庭局長   細江 秀雄君    事務局側        常任委員会専門  増本 甲吉君        員    説明員        法務大臣官房司        法法制調査部長  川島 一郎君        大蔵省主計局主        計官       渥美 謙二君        自治省選挙局選        挙課長      山本  悟君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 浅井亨

    委員長浅井亨君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、加瀬完君が委員を辞任せられ、その補欠として稲葉誠一君が委員に選任せられました。     —————————————
  3. 浅井亨

    委員長浅井亨君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題とし、本案に対する質疑を行ないます。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この法案判事を四人、それから簡裁判事を三人ふやすのですか。それからその他の職員のやつもありますが、判事四人ふやすということの具体的な根拠はどこにありますか。
  5. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) ただいま稲葉委員からお話のございました、判事四人、簡裁判事三人増員根拠でございますが、これは、御承知のとおり、前回の国会で借地法等の一部を改正する法律が制定せられまして、その結果裁判所には借地権譲渡に関します一連のいわゆる借地訟事件というものが参ることになったわけでございます。これは本年の六月一日から施行されることになっております。そこで、その借地訟事件を処理するための要員ということで、予算に計上していただき、定員法として御審議いただいておるわけでございますが、その計算根拠は、お手元法務省のほうから参考資料というものを出していただいております。その資料の十四ページでございます。十四ページに、「昭和三十九年における借地上の建物増改築数及び譲渡数(推計)」というのが出ております。これはこまかく説明申し上げますと非常にまたたいへんでございますが、ごくおおまかに申し上げますれば、この建物増改築数及び譲渡数というものは、それぞれ建設省、自治省等調査ではっきりした数がわかっておるわけでございますが、ただそのうち今度の事件の一応対象になります範囲は借地上のものでございます。そこで、それでは建物増改築及び譲渡の中で借地上のものがどのくらいあるかということが問題でございますが、この点につきましては統計がございませんので、その借地上の建物そのものパーセントというものを出しまして、その点からその実数を推定しておるわけでございます。ただ、借地上の建物というものの推定自体が、これは全国的な統計がございませんので、大都会統計しかないわけでございます。そこで、その大都会では比較的借地上の建物が多いであろうということで、そのパーセントで出てまいりましたこの数字がすなわちこの譲渡なり増改築の数になるかどうかには問題がございますが、ほかに根拠もございませんので、一応こういう数字を出したわけでございます。  そうして、次に最も問題になりますのは、この中のどれくらいの部分が実際に事件として裁判所に出てまいるかということになるわけでございます。で、まあその点はこれまた全くの推定になるわけで、いろいろ考え方によりまして、二割程度は出るであろうという見方もございますし、いや五%ぐらいではなかろうかという考え方もあるわけでございます。その間にかなり見通しの幅がございます。また、実際問題として、譲渡等が行なわれましても、出訴いたすにつきましては、弁護士等に依頼するという関係もございまして、そういう関係からその裁判所に出てまいる数というものの推定というものはきわめて困難になるわけでございますが、そういうところをいろいろ推定いたしまして、まあこのくらいの事件が出てくるかというような見通しをつけまして、それに必要な人員を要求いたしておる、計上していただいておる、かような関係になるわけでございます。
  6. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ちょっと肝心のところがはっきりわからないのですが、なぜ四人という数字が出てきたかというのがわからないのですが、要求したのは何人ですか、大蔵省へ。
  7. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 当初要求いたしましたのは、借地借家関係では、判事十二名で、簡裁判事十一名ということでございます。
  8. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、判事十二名要求したときはそれなりに一応根拠があったわけですね、別に水増しで要求したわけではないでしょう。それはどういうことですか。
  9. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは、先ほども申し上げましたとおり、つまり裁判所に実際に出てくる事件がどのくらいであろうかということで、先ほどいろいろな見方があるということを申し上げましたが、当初要求いたしましたのは、二〇%、すなわち二割程度出てくるかということで出しました数字でございます。ただ、これも当初からいわば年次計画でございまして、二〇%すなわち二割出てくるという場合に、上訴審までをも含めまして全部で必要な判事の数は四十名近く、簡裁判事三十数名ということで、全部で七十名近い数が全体としてその場合には必要になる、こういういう計算が出てくるわけでございます。ただ、何と申しましても、本年はまだ、六月一日からでございますし、先のほういろいろあるわけでございますし、なおまた一般にどの程度に普及するのかという問題もございますので、年次計画としてそのうちの二十数名を当初要求でいたしたわけでございます。それに対しまして最終的に妥結いたしました数が、先ほど来問題になっております合計七名ということでございますが、これは一応その出訴率を五%とした場合の数でございますが、しかし、あくまでこれも見通しでございますので、今後その事件状況によりまして、昭和四十三年度予算段階になりますれば、かなりその点がはっきりいたしてまいると思いますので、そういう点で今後に期待したい、かように考えているわけでございます。  なお、ついでにつけ加えて申し上げますれば、この数をきめるにつきましては充員という関係も当然考慮に入っておるわけでございます。
  10. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 増改築の数がありますけれども増改築するについては、禁止の特約がまあ不動文字で印刷してあるものもありますけれども、そうでない借地上の建物は自分の所有になるのだから、増改築は自由なわけですから、増改築に伴う借地条件の変更というのはそんなに数が多くはないようにも考えるのですがね、そこはどういうふうに見ているのですか。  それから、譲渡の場合、地主承諾をしない場合は、その承諾を求めるわけですがね、それをどっちをどの程度に見ているかというようなことは、これはなかなかいまの段階では非常にわかりにくいことだと思うのですけれども、そこはどういうふうに見ているのですか。
  11. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは稲葉委員お話しのとおりでございます。それで、全くそういう意味では、ある意味でこういうもっともらしい数字を出しておって、非常にそれが根拠薄弱だというおしかりを受ければ、そういうことになりかねない面はあるわけでございます。ただ、何と申しましても、手がかりがございませんから、一応盛んに数字を出しておるわけでございますが、先ほど来申し上げますとおり、借地上の建物譲渡数そのものがはっきりしないわけでございます。これは推定でございます。  それから、その場合に、その地主承諾すれば問題ない、そのとおりでございますが、これも考えようによれば、こういう法律ができますれば、今後は一応承諾しないということも考えられるわけで、しかし同時に、そうかといって、すぐそれが裁判になってくるというわけでもないわけで、その辺がまことにあやふやとおしかりを受ければ、そういう面はございますが、とにかく第一年度でございますから、こういうことでやってまいりたいということでございます。
  12. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 判事簡裁判事とに分けたのは、どういうわけなんですか。
  13. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは地方裁判所に参りますのが原則でございますけれども、しかし例外的には合意等がございます場合簡裁に参りますし、特に調停に付されることが相当多いであろう、調停に付される場合には簡易裁判所でやることになりますので、そういう意味簡裁判事を計上していただいておるわけでございます。
  14. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その判事簡裁判事だけふやすことでは何か足りないように思うので、これに伴う書記官とか何とかじゃなくて、鑑定士のほうはどうなんですか。鑑定士は今度の非訟事件の場合には必要になってくるわけですか。
  15. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 鑑定委員関係について申し上げます。  この借地事件につきましては、御指摘のとおり、鑑定委員というものが必要なわけでございますが、これはやはり、先ほど総務局長から説明しました事件推定数と、それからその鑑定委員に一体どのくらい事件を負担してもらえるかというような点から算定いたしまして、最小限度三千七百人程度鑑定委員の選定が必要であるというふうに私どものほうで計算をしておるわけでございます。全国で三千七百人程度でございます。
  16. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 調停委員のほかに別に鑑定委員という形になるのですか。ダブる人がほとんどですか。
  17. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 非訟事件でありますこの借地事件につきまして、鑑定委員というものが必要なわけでございますが、この鑑定委員にどういう方になっていただくかということが一つの大きな問題であるわけでございますが、私どもといたしましては、この鑑定委員の中に、いわゆる法律専門家、それから不動産関係専門家、それから一般の学識経験者という、いわば三種類の鑑定委員の方が必要であろうというふうに考えておるわけでございまして、この法律専門鑑定委員という方の中には弁護士の方が大部分である。しかも、御承知のとおり、調停委員の中には弁護士の方が相当数おられるという関係上、調停委員とダブって鑑定委員をお願いするというケースが相当数あるわけでございます。
  18. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この法案が通ると、六月一日から直ちに判事四名、簡裁判事三名というものをすぐ任命できるようになっておるのですか。
  19. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは、現在簡裁判事の中に判事の資格を持っておる者もございますので、そういう者からできる限り判事を任命いたしたいと考えております。  また、簡裁判事につきましては、これは定年退官者及び特任判事等でできる限り早急に任命いたしたい、かように考えておるわけでございます。  書記官以下の職員は直ちに任命いたしたいと考えております。
  20. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま裁判官欠員はどういうふうになっているのでありますか、資料はありますか。
  21. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) お手元の先ほど差し上げました資料の三ページに、三月一日現在の定員と現在員が出ております。それによりますと、判事は五十三人、判事補は二十九人、簡裁判事は八人の欠員ということになっておるわけでございます。しかしながら、その後判事につきましては、御承知のとおりに、判事補が三月三十一日で十年目に達しました、それが約七十名近くございます。正確に申し上げますと六十八名ございますが、これが判事に任官いたしたわけでございます。ここでは欠員が五十三となっておりますけれども、しかしこの中にはこれ以外に三月一日以後にさらに欠員がふえておりまして、そういう関係判事補はすべて判事に任官いたして欠員は大体埋まったわけでございます。  それから、それによって生じました判事補のほうの欠員は、これまた御承知のとおり、本年度修習生から判事補に六十数名、それから簡裁判事のほうにも若干回りましたが、そういうことで修習生のほうからこれまた大部分は埋まっておると思うのでございます。ただ、簡裁判事のほうには若干の欠員がございまして、逐次これは特任判事あるいは定年退官判事等で埋めてまいっておると、かような実情になっておるわけでございます。
  22. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 修習生判事補になったのは四月ですか、それを含めると正確な資料はどういうふうになるんですか。
  23. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは本日現在の正確なものを手元に用意いたしておりませんが、先ほど申し上げました判事につきましてはほぼ欠員は埋まっておるというふうに考えておるわけでございます。
  24. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 判事補二十九人の欠員でしょう。それで判事補になったのはやっぱり七、八十人いるわけでございましょう。そうなってくると、定員オーバーじゃないですか。
  25. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 定員オーバーとおっしゃいますのは、判事のほうの関係でございますか。
  26. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 判事補です。
  27. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 判事補関係は、これはつまり判事補から判事になりまして、そこで欠員が相当ふえたわけでございます。そして欠員合計七十人近くになりました。そこで、修習生から判事補に六十数名なりましてほぼ埋まっておる、かような状況になるわけでございます。
  28. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 判事補から判事になるのは十年たつわけですね。そうすると、十年の同期の人たち判事で七十人近くもなっていますか。もっとも昔の制度でいくと——十年だから昔の制度じゃないですね、新しい制度ですね。そうすると、そんなにもたくさんいないんじゃないですか。
  29. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これはもう正真正銘同期生、正確に申し上げますと先ほど申し上げました六十八名でございますが、おるわけでございます。何期というのでしたか、はっきり記憶いたしておりませんが、そこで実は、これは内論話的になりますと、昨年は同期の人たちが全部判事になれないおそれがある、つまり欠員が十分埋まってさらにあぶれる、判事補から判事になれないということで、これは大問題であるということで、非常に強くお願いしまして、二十九名という判事のかなり大幅な増員を認めていただいたわけでございます。いろいろほかにも理由はございますが、一つはその点があったわけでございます。それで、本年の場合は全部一緒になっていただける状態であった、かような関係になるわけでございます。つまり、あぶれなかったということになるわけでございます。
  30. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 判事補から六十八名が判事になったわけですね。そうすると、判事補の現在員が六十八人減るわけですね。そうして、今度判事補になった人は何人くらいいるんですか。
  31. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) いま判事補と申し上げましたのは、やや常識的な表現でございまして、官職判事補でおりました者は四十数名でございます。簡裁判事判事補として、つまり実質的には簡裁判事の身分を持っておりまして判事補として仕事をしておった諸君もございます。そういう者がやはり三十名弱あるわけでございまして、この表から申しますとその者は簡裁判事のほうに計上されておるという勘定になるわけでございます。御承知のように、判事補諸君は、常に判事補としてのみ活動しておるわけではございません。簡裁判事の場合にもございますが、簡裁判事といいますといかにも特任判事の印象を与えますので、先ほど来それをまとめて判事補と申し上げておりましたが、判事補官職からなりましたのは四十名ばかりでございます。したがいまして、判事補欠員ができましたのは六十九名でございます。七十名くらいでございます。
  32. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、この表の中の現在員というのは、判事補の中でも何人か減っているし、それから簡裁判事の中でも何人か減っているわけですね、この表を見ると。そうすると、ふえているというのは、判事補のほうがほとんどふえているということになるわけですか。そうなってくると、現実の四月現在において欠員関係というのはどういうことなんですか。そこがちょっとはっきりしないんですがね。
  33. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは四月一日と申しましても、先ほど来三月の末でというふうにごく大まかな表現で申しておりましたが、判事補に任官いたしますのもたしか四月八日ごろなりますし、それから司法修習生になりますのもそのくらいの時期になります。したがって、少しずつそれにズレはあるわけでございます。それから、大まかに申しまして、お話のとおり、判事欠員判事補及び簡裁判事から参ったものでほぼ埋まったということになりますと、それだけの分が判事補簡裁判事のほうに欠員がふえているということになるわけでございます。もう少し端的に申し上げますれば、判事補のほうの欠員は七十名近くになっていると、こういうことでございます。そうしてそれが、たしか四月八日であったと思いますが、修習生から判事補に六十数名なりましてほぼ埋まったと、こういうふうな勘定になるわけでございます。それから簡裁判事のほうは若干これより欠員がふえておりますが、それは逐次定年退官者あるいは特任判事でもって埋めていると、こういう実情で、なおそのほかに、きわめて少数ではございますが、弁護士なり検事からおいでになる方もございますが、これはきわめて少数で、大きな問題ではないと思いますが、一、二名程度は常時あるわけでございます。
  34. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ことしは、修習生の中で判事希望した人とか、検事希望した人、それから弁護士希望、いろいろありますね。ここ四、五年のものはどういうふうになっておりますか。いまある資料でけっこうですがね。
  35. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 四、五年と申しますと少しあれでございますので、四十年くらいから申し上げますが、四十年には、修習生を終わりました者が四百四十名程度で、判事に七十二名、検察官に五十二名、弁護士に三百十六名、その他一名でございます。それから四十一年度は四百七十八名、判事になりましたのが六十六名——これは裁判官と御理解いただきたいと思いますが、裁判官になりましたのが六十六名、検察官四十七名、弁護士三百五十九名、その他六名でございます。その他と申しますのは、たとえば大学のほうにおいでになるという方でございます。それから本年度は、四百八十四名中、裁判官七十三名、検察官四十八名、弁護士三百五十三名、その他十名、こういう計算でございます。
  36. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 裁判官志望者が七十二名、六十六名、七十三名——実際はもっと多いんではないですか、修習生の中で。これはどうなんですか。志望しても、裁判官としてあれだからというので採らないんじゃないですか。
  37. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) 必ずしも多いとは限りませんで、大体希望された方はほとんど判事補におなりになっているというのが実情でございます。
  38. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 修習生のころに、判事志望検事志望というふうなことで、大体希望をとったりなんかして振り分けるのですか。それで、何か裁判所のほうじゃ、なかなか——これをまあエリート意識というとおかしいのだけれども裁判官のほうは優秀でなければいかぬというわけで、修習生のときの成績の悪いのは採らないでしょう、これ。
  39. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) いや、そのエリート意識とか、そういう問題では決してないのでございます。要するに、御承知のように、四百人、五百人の修習生が、大体五十名前後に分かれまして、そうして一緒に勉強するわけでございますが、その中でおのずからお互いの間に、修習生のA君は相当できるとか、それからまたC君はあんまり勉強しないとかいうような、お互いの間で、それぞれの評価とまで言ってはぐあいが悪いのですけれども、そういうような、まあ何と申しますか、率直に言えば評価というものでございますが、それが出てくるわけでございますけれども裁判所のほうの裁判官になる方は、比較的その同窓の間でもまあ、あいつ裁判官に向いているとか、それからよく勉強するとかいう方々裁判官希望されるというのが実際でございまして、そういうような希望者が先ほど申し上げましたようにほとんど裁判官になっているというのが現状でございます。もっとも最初裁判官希望者の数から最後になりますとだんだん落ちてまいりまして、最初百名であったものが六十名になったり七十名になったりするというような減少率が相当あるということも、これまた事実でございます。
  40. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは希望したからといってすべて判事になれるわけじゃないでしょう。だいぶ成績が悪いのは、最初から判事になれないということで落としちゃうのじゃないですか。
  41. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) いや、最初から落とすということは決していたしませんのでございます。ただ、御承知のように、稲葉委員も十分御承知と思いますけれども、教官がそれぞれおられまして、まああんたは裁判官希望だけれども、これはもうけっこうだから大いにひとつ裁判官になってがんばってやってくれと言って激励する方と、それからまた、そうでなく、あまり激励を受けないという修習生も、先ほど申し上げましたようないきさつでおるわけでございまして、激励を受けた方が裁判官を志望してまいるというのが実情であるわけでございます。
  42. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、最高裁当局としてはどうなんですか。この裁判官志望者が、これがこういう数字では少ないと見ているのですかね、これで多いと見ているのですかね、どうなんです。
  43. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) これは現在までの先ほど寺田総務局長から御説明申し上げました数字では非常に少ないと、もう少し何とかしてたくさん来てもらいたいと、こういうようにわれわれのほうでは熱望いたしておるわけでございます。
  44. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで問題は、裁判官志望者があまりふえないという理由がどこにあるかということですね。これは最高裁当局としてはどういうふうに考えておるわけですかね。
  45. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) これは司法研修所でもいろいろと調査しているようでございますし、また最高裁のほうでは、その判事補を志望してまいる人たちに最終的には面接いたしまして、そうしてその方々裁判官になられるわけでございますが、そういう機会をとらえまして、どういうわけで裁判官志望が少ないのだろうかということを聞いてみるわけでございます。その中で最も主張される原因といたしましては、こういうことでございます。まず第一は、裁判官はもう非常に仕事が、関西弁で言うしんどいというのでございますか、記録を一ぱい持っていて、そうして昼間ミルクとパンを飲みながら、それで記録を読みつつ食事をしている。そうして、大きな記録をまたうちに持って帰ったりして、非常に日常生活のエンジョイも乏しい。とてもああいう生活というものは、よっぽど裁判官になろうという積極的な使命感を持たない限りはなかなかあれにはなれないというように感じております。これが第一の原因のようでございます。それからまた、修習中に判決書きの起案というのがございます。これは、御承知のように、司法研習所の長官がきわめてこまかくその起案されたものに筆を入れまして、そしてできるだけ完全なものにするように直してあげるわけでございますけれども、その判決書きというものが非常にむずかしいと、あれではちょっとついていけないんじゃないかというような感じを起こされる方もあるようでございます。それからまた、もう一つの大きな理由といたしましては、判事補は十年間に大体三回ぐらい転任していただくということになっているわけでございますが、そうなりますと、転任のわずらわしさ、逆に言いますと、御承知のように、最近の若い方々は大都会都会生活を十分にエンジョイと申してはちょっと語弊がございますけれども都会生活の中に入って生活したいという気持ちがお強いわけでございます。で、その気持ちが十分満たされないというようなこと。ほかに理由を申し上げればいろいろございますけれども、大体大まかに申し上げますと、そういうような、いま申し上げましたようなことが理由になっておるようでございます。
  46. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それらの理由ももちろんでありますけれども、同時に、裁判所全体の中でいわゆる司法行政の強化ということが強く出ていると、それが若い修習生人たちにとっては何となくたえられないという裁判所の独自の一つの空気ですね、そういうようなものが強く左右しているように考えられるのですがね。  そこでお聞きしたいのは、私もよくわからないのですけれども、もとは司法省があって、司法省があったころの人事権とか、そういうようなものは裁判所関係はどういうふうになっていたのですか。それが、司法省が法務省になり、最高裁に分かれたのですが、分かれたと言うとことばが悪いけれども、そこら辺は最高裁一つの、何といいますか、自治権というか、自律権というか、そういうふうなものが出てきたと思うのですがね。司法省が解体してきたのは、どういうポイントから解体してきたことになるんですか。
  47. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) 司法省があります時代には、すべて司法大臣の監督下に裁判官は属していたわけでございます。したがいまして、司法大臣のもとに裁判官検察官も双方監督を受けていたわけでございます。しかしながら、終戦後新憲法ができましてから後は、裁判の独立ということが重視されまして、これはもう稲葉委員承知のとおりでございますけれども、最高裁判所のもとに司法行政の権限を一切ゆだねるということに相なったわけでございまして、転任、昇給すべての人事行政は戦前と異なりまして、最高裁判所においてとり行なうということになっておるわけでございます。
  48. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法務大臣おいでになっておられて、どの程度時間があるのかはっきりしないものですから、この機会にちょっとお聞きしたいと思うのですけれども、最高裁判所判事の任命ですね、これはいまのような制度の場合には法務大臣が責任を持って推薦するのですか——そういう形で実際きまっているわけですね。それは具体的にはどういうふうにやってきめておるのですか。お聞きしたいことは、現在の最高裁判所判事の任命というのが、法務大臣の推薦というか、内閣の権限をもって行なわれるということは、結局そのときの政府に都合の悪いような人は最高裁判事になれないわけですわね。時の政府の政策に批判的な人は最高裁判所判事になれないということが現実に生まれるのじゃないかと、こう思うのですがね。ここのところはどうなんですかね、こういう行き方でいいのか悪いのか。
  49. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) 形式的には内閣総理大臣の任命ということでございますが、政府の行政の各部門、各省庁に分かれております中で、一番独立しております司法権に近い役所は法務省でございます。そういうところから、事実問題としては、法務省がよく各方面に打診をいたしまして、一応の、任命にも、裁判所側の推薦される者、検事側の推薦する者、弁護士側の推薦する者、一般学識経験者というふうに大体の配置はできております。無理のないように、その方面の意見を十分に打診をいたしまして、それを内閣総理大臣に私のほうから——法務大臣のほうから連絡をする、こういうことで、人事の決定は内閣総理大臣、こういうたてまえで運用が行なわれておるわけでございます。
  50. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはそのとおりなんですけれどもね。そういうことで、結局は時の内閣の政策に対して批判的な人は、これはやっぱり最高裁判事としては困るわけでしょう。そこをお聞きしておるわけなんですがね。
  51. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) まあ理屈の上では、憲法上全く思想は自由でございますから、こういう思想を持っておる人は適当であるとかないとかいうことは表面の理由としては言いにくいのではない、言うてはならぬことで、どのような思想を持っておる人でもよいのでありますが、実際問題としましては、行き過ぎた思想を持っておる——いわゆる行き過ぎた思想、中庸の思想でなく、右であるとか左であるとかいうような方向に行き過ぎておる人物は適当でないと実際問題として判断をすることは、実情上やむを得ないのではないかと考えております。
  52. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあそこら辺のところが問題なんですね。だから、最高裁が、時の施策が憲法違反だなんという結論は出っこないのですね、いまのような運用の方法でやっていっては。ぼくはそこのところが根本的に疑問だと思うのですよ。そこが一つですけれども、それはまた別に論議いたしますけれども、それからもう一つ検事希望者が非常に少ないわけでしょう。四十何人ぐらいでしょう、普通。まあ四十七士、四十七士と言っていますけれども、四十七人ぐらいいれば大体いいくらいですね。なぜまた検事志望者が少ないのか、これは大臣としてはどうお考えですか。まあ大臣も検事志望しなかったのだから、それはあれでしょうけれども、どういう点なんですかね。ちょっと横道にそれちゃっていますがね。
  53. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) 専門家の刑事局長がおりますから、これから答えさせます。
  54. 川井英良

    政府委員(川井英良君) では、最初に私のほうから答えさせていただきます。裁判官希望する者が必ずしも多くないということについて裁判所当局のほうからいろいろ御説明がありましたが、大体検察官の志望につきましても、ややニュアンスの相違はあると思いますが、同じようなことが言えるのじゃないかというふうな観測を持っております。特に検察官の志望につきましては、実務修習で現地へ行って検察庁の実情を見まして、いかにしても忙し過ぎる、これじゃ落ちついて法律の勉強もできないのじゃないかというふうな印象を持って、最高検察官志望でありました者が、現地から帰って卒業間近になりますというとほかのほうへ志望を変えるというふうな人も多いようでありますが、そういう人たちが大体表面の理由として述べるところは、非常に忙し過ぎるというようなこと、それから裁判官の場合にも述べられましたけれども裁判官より以上に転任が多いということでございます。裁判官は十年のうちに三回ぐらいということでありましょうけれども検事の場合おそらく十年間に四回ないし五回の転任は覚悟しなければなりませんし、必ずしも大都市ばかりには参りませんで、初めのうちはどうかするとむしろいなかに行くほうが多いというふうなことから、最近の修習生には転任はごめんだというふうな人も多いようでございますので、裁判官志望について述べられたことに、特に検察官の場合について特徴的と思われるのは、もちろんほかにもいろいろな理由がありましょうけれども、特徴的な理由としては、その二つの理由が大きな一つの表面の理由となっておるようでございます。     —————————————
  55. 浅井亨

    委員長浅井亨君) この際、委員異動について御報告いたします。本日、野坂参二君が委員を辞任せられ、その補欠として岩間正男君が委員に選任されました。     —————————————
  56. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あまり横にそれてもいけませんから、大臣が来られたものですから、せっかくおいでになったのにと思って聞いているわけです。いま言った理由、確かにあるのです。だけれども検察官は上命下従が激し過ぎるのですよ。若い人、いやんなっちゃうのです。自分でこうだと思っても、上の次席のほうに行くと、それはだめだと言われる。それから検事正のところに行くと、検事正は大体新聞読んでいる程度で、退屈し切っている人が多いのですよ。大体遊んでいる。ほとんど何もやりません。それは、そういうことでかえって常識的に練られるからいいわけですけれども、とにかく上のほうから下のほうに対する命令が非常に検事は激しいのです。ぼくもそれでいやんなっちゃったのですが、とにかく激しいのです。そこら辺のところが中心なんですけれどもね。  もう一つは、別の機会に言ったほうがいいのですが、検察庁全体は非常に空気が突っかえちゃっているのですね。今度は人事異動をうんとやらなくちゃいかぬと思っておるのですが、ぼくがやるのじゃないけれども。何といいますか、昭和十三、四年ごろから十七、八年ごろまでの期の者が非常に多いのですよ。それが上に行けなくて、何といいますか、あっぷあっぷになっておる。上のほうの人がやめないでしょう。やめないものだから、空気がうっせきしてしまっている。これは刑事局長よく知っていると思うのですが、それはとにかく激しいものなんですよ。だから、内部では七、五、三とか六、三、三とか言っている。検事総長三年やったらやめてくれ、検事長五年やったらやめてくれ、検事正を七年やったらやめてくれ、でなければ下のほうが突っかえてしようがないというのです。だから、そういう不平不満が検察庁全体に強いのです。そこら辺のところ、大臣よくキャッチしてやってみると、空気が変わってくると思います。これは別にお答えいただくあれじゃありませんけれども。  そこで話をもとへ戻しますが、司法行政の強化の問題、裁判所でこれが非常に激し過ぎるじゃないかということを考えるのですが、たとえばいわゆる部の統括をする人がありますね、これはいまどういうふうになったのですか、途中から制度が変わりましたね。最高裁の事務総長の任命ですか、これはいまはどうなったのですか。
  57. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 下級裁判所の部の事務を総括する裁判官の任命は、終始一貫最高裁判所の任命でございます。その限りにおきましては、変わっておりません。ただ、それにつきましては、現地の意見を聞いて、その意見を十分参照して、そうして最高裁できめるという、その手続の面におきまして、かつてはその下級裁判所の意見を聞いておりましたのを、現在は下級裁判所の所長の意見を聞くように変わっておる、その点がいまお示しの変わった点ということになろうかと思います。
  58. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 部の統括者というものをつくって、そうしてそれに特別な手当を与えるわけでしょう。
  59. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 特別な手当はございません。
  60. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、管理職手当みたいなのがあるのじゃないですか、特別というか。
  61. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これも、かつては管理職手当というものがございましたが、先年の報酬法の改正で、全部組み入れていただきまして、一本の方法になりまして、それは必ずしも高い号俸の者が当然にいわゆる部の総括者というわけではございません。一般的には、部の総括者は年次の古い人が多いのでございますから号俸も高いのが普通でございますが、地方のほうへ参りますれば必ずしもそうではございません。
  62. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 裁判官会議の実情などは、これは修習生の人は直接はわからないわけですけれども、いろいろ話を聞いてくるというと、結局裁判官会議というのは形式だけになっちゃっていると、実体が何もないというふうなことを強く考えるわけですね。そこから、裁判所というものがもっと自由な自主的な空気があるのだと思っているのに、それがないということでがっかりするのが非常に多いのです。これは、大阪の地方裁判所で、裁判官会議が形骸化しているということで、いまのあれですか、部の統括者を裁判官会議の中で投票によってきめていたわけでしょう、たしか。それを取り上げたようなかっこうになって、最高裁が任命するという形をとったということで、強い反対があったのじゃないですか。決議書でもないけれども、何かそういうものが出たことがあるのじゃないですか。
  63. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは、先ほど申し上げましたように、最高裁判所の任命という点は変わっておらないわけでございますが、ただ、従来は下級裁判所の意見を聞いておりましたのを、これはもう十年ばかり前でございますが、所長の意見を聞くというふうに改めまして、その改める際に、やや大阪の裁判官の中にいろいろ御意見があったようでございます。これは正式の決議というふうには私ども承知をいたしておりませんが、そういう原稿などもいろいろ巷間誌に出たこともございます。ただしかしながら、大阪のほうでは、今度はその所長が意見を述べることについては、裁判官会議の意見を十分聞くというもう一つの手続をとって実際にやっておるわけでございまして、所長がいわば独断で意見を言わずに、十分裁判官会議の意見を聞いた上で所長が最高に意見を述べる、最高はむろん拘束されるわけじゃありませんが、それを尊重して最高裁で任命する、こういうふうな手続になっておるわけでございます。
  64. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこら辺のところが、たとえば東京の高裁で部長をきめる場合ですね、これは全員の裁判官の投票によってその部長をきめていたんじゃないですか。だから、必ずしも古い人が部長にならなくて、序列からいうとちょっとおかしいかもわからぬけれども、新しい人が部長になって古い人が部長になれないというふうなことも東京の高裁ではやっていたんじゃないですか。それを最高裁のほうでやめさしちゃった——やめさしちゃったというか、何というか、そう言っちゃいけないので、やめるようになったのじゃないですか。
  65. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは相当古いことでございますから、私の理解があるいは正確でないかもしれませんけれども、ただお話の二十五、六年当時は、これは御承知のとおり相当変革期でございますし、それからまた、終戦直後にはかなり多くの方が、当時の司法省の施策によりまして、定年を待たずしておやめになった方もあり、それから一方では満洲国あるいは南方においでになった方が相当大量にお戻りになりまして、必ずしも序列というものもはっきりしなかったわけでございます。そういう関係で、いろいろ、若い人が総括になったり、年をとった方が陪席なんかになられたりした例もございますが、しかしながら、最近ではそういう点は、ある意味ではキャリア的になったとでも言えるかもしれませんけれども、そういう外地から帰った方というのが比較的ございませんから、大体先輩、後輩ということにはっきりなってまいっておるわけでございますので、御指摘の大阪では、いまでも、投票と申しますか、つまり裁判官会議の意向を十分反映して所長が意見を述べておられるわけでございますが、しかし、その裁判官会議の意見は、多くの場合、むしろ非常に先輩を尊重するような形になっておって、それが決して、そんなおっしゃるような、かりに投票でやったから若い者がどんどん上がるということでもないようでございます。実際にそうでございます。その辺のところにも問題はあるかもしれませんが、現在の実際はそういうことになっておるわけでございます。
  66. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ただ、実際としては、投票々々といったって、一票々々入れたのかどうか別として、事実上投票に近い形で選んでおったことがあるのじゃないですか、部長を。東京高裁なんかやっておったのじゃありませんか、多少古いかもしれませんけれども
  67. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは裁判官会議できめることになりますれば、しかも総括裁判官というのは数十名でございますから、おのずから投票の方法あるいはそれに近い方法をとらなければ、実際上決定することは非常に困難であろうと思います。
  68. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 最高裁の中でいろいろ課長がおられますね。これは法務大臣本関係するのですけれども法務省にもたくさん課長がいるでしょう。それもみんな、純粋の検事の人と、それから判事からかわった形の人がいるのですけれども、それはたとえば最高裁で、いろいろな課長が、一体全部が全部判事でなければつとまらないのですか。何人くらいいますか、そういう人が百人近くおりますか。百人もいないでしょうが、法務省と両方合わせて百人ぐらいか、とにかく非常に多いのですね。一つ一つ検討してみると、これが判事でなければならぬということは何もないじゃないですか。純粋の判事はもっと裁判のほうに回すという方法をとったほうがいいんじゃないかと思うんですがね。この点、多少変えたのもありますね。たとえば厚生関係、あれなんかの課長は、これは判事がやっていたでしょう。厚生管理官か何か、これはレクリェーションの係ですか。レクリェーションでもないでしょうが、こんなのは判事がやる必要がないということで、一般の人になったんでしょう。そこら辺はどういうふうに考えているんでしょうかね。最高裁、それから法務省のほう。
  69. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) この点は、稲葉委員は全部御存じのことでございますので、もう正真正銘申し上げるわけでございますが、いわゆる判事で事務総局におりますのは二十数名でございます。そのほかに判事補がございますので、三十名をこえております。そのほかに、司法研修所の関係とか、あるいは調査官を入れますれば、お話のとおりかなりの数になりますが、純粋の事務総局だけで申しますれば、そういうことでございます。そうして、局課長必ずしもいわゆる判事の資格者でなくても十分じゃないか、それはお話のとおりでございまして、先ほど御指摘のありました厚生管理官もそうでございますが、そのほかに、たとえば統計課長でございますとか、あるいは用度課長でございますとかいうものも数名おるわけでございます。ただ、何と申しましても、民事、刑事というようなものは裁判に非常に密接な関係があるわけでございます。それから私どもの総務局なんというところは、あるいは事務官でもいいんじゃないかという御批判も受けるかと思いますけれども、やはり国会に出てまいりまして法案の御説明なりあるいはいろいろ裁判所の御説明を申し上げるにつきまして、事務官の諸君が十分国会議員の方々の御理解を得る程度にやっていただくには、まだ十分そこの養成ができ上がっておらないわけでございまして、将来できる限りこういう仕事は事務官のほうにまかしていく方向でいきたいと思いますし、また個人的にも、私どもはこういう事務の仕事をしたいために裁判官になったんじゃなくて、裁判をしたくて裁判官になったわけで、一日も早くそういう現場へ戻りたい熱意に燃えておるわけでありますが、何と申しましても、いろいろな関係からそういうわけにもまいらないような事情で、これはもう意見としては稲葉委員お話のとおりでございますが、実情はなかなかそこまでは参らない、こういうことでございます。
  70. 川島一郎

    説明員(川島一郎君) 法務省実情を申し上げますと、法務省の場合は、設置法の十七条におきまして、「当分の間、特に必要があるときは、第十三条の十七に定める職員(検察庁の職員を除く。)のうち、百三十三人は、検事をもってこれに充てることができる。」、こういうことになっておりまして、現在大体その数の検事が法務行政事務に従事しているわけでございますが、こういう規定が設けられましたのも、裁判所における事情と大体同様でございますが、特に法務省の場合は、法律の立案——民事、刑事、それから司法制度などの立案に相当の人員を要する、これらはいずれも法曹の資格を持った者でないとぐあいが悪いというような事情もございます。それから訟務事務でありますとか、検察事務でありますとか、やはり法曹の専門の法律家をもって充てないとその仕事が十分に果たせないというような関係がございますので、ただいま申しましたようなことになっておるわけでございます。
  71. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 判事が足りない、検事が足りないと言っていて最高裁法務省の中で何も判事検事を充てなくたっていいのに充てているのが相当あると思うんですよね。たとえば、個人的なことを言っちゃ悪いから言いませんけれども、だれが見ても、最高裁で言えば、民事訴訟の大家がいらっしゃるわけですよね、日本でも一流の大家がおられる。その人が経理関係なんかやっているのはもったいないと思うんですよね。経理関係といっても自分でそろばんをはじくわけでもないでしょうけれども、何で経理関係裁判官で優秀な人がやるのかわからないですね。それから営繕関係なんというのがありますね。なぜ判事がそういう営繕をやらなければならないのか。法務省でもそうなんです、検事がやるんです。営繕関係とか——主計は多少違うかもわかりませんけれども、営繕とか、会計課長とか、あんなのをなぜ検事がやる必要があるんですかね。惰性で行っているんじゃないですか。ぼくは、最高裁法務省でいま判事なり検事なりが局長なり課長をやっているのを全部表にして出してもらいたい。一つ一つ理由をつけて出してください。これは判事でなければできない、検事でなければできないという理由をつけて出してください。そこまでやらぬと、やらないんですよね、あなた方は。寺田さんは正直なんで、いまぼくがいろいろなことを知っているからほんとうのことを言うなんて、それじゃ知らない人が聞いたら適当にごまかすということですよ。まあそれは冗談話としてお聞き願ってけっこうですが、これはあまり知らない人が聞いていればひがみますよ。冗談でいいですけれども、いまのやつは資料として出す出さないはいいと思います、そこまではぼくも干渉しませんけれども、ちゃんと内部で検討してくださいよ。現実に、いままで判事検事がやっていたのを、要らないと言って廃止したのがあるでしょう。厚生管理官というのは何ですか、一体これは。判事がやっていたのをやめたんですか。
  72. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 先ほどの私の発言は、さような趣旨で申し上げたつもりでは毛頭ございませんで、つい口がすべりましてまことに恐縮でございます。ただ要するに、私どもは何とかして、むしろ、稲葉委員お話のように、裁判官の有資格者が現場に帰り得るように、裁判所の一般職員を養成して、逐次それを待ってかわってまいりたいと、かような気持ちでおるわけでございますが、いまのお話の厚生管理官も、御指摘のとおり、先般——最初この制度がそういう形でできました当時は、やはりいろいろ当初の関係もございまして、これは判事ではございません、判事補でございますが、有資格の者がやっておりましたが、だんだん体制も整いましたり、また仕事の内容上もこれはやめて、適任の優秀な事務官がおりますのでこれを充てたと、こういうことでございます。今後とも御趣旨のように沿ってまいりたいと、かように考えております。
  73. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから、この前も一つ問題になったのは、最高裁職員ですね、ここで調査官、書記官をふやすわけですね、一般的に、最高裁だけでなくて。裁判所関係は、普通の役所と違って、管理職がよけいに指定されているんですか、そこはどうなんですか。普通の役所よりはちょっと多いことは多いんですか。
  74. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) さほど大きな差異はないと思いますが、要するに裁判官が管理職の中に入るかどうかというようなことのあるいは御意見かと思いますが……。
  75. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、裁判官以外の職員です。
  76. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) 大体各省の水準でございます。若干、何と申しますか、たとえば裁判部におきまして書記官、それから家庭裁判所における調査官というようなところで、相当地位の高い者がいるわけでございます。そういう者等について管理職の指定はされているわけでございますけれども、現場を持っております各省庁に比べますと、そういうような裁判部の特殊性からいいまして若干管理職のパーセンテージは高いということに相なるかもしれません。
  77. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは法務大臣にお聞き願っておいたほうがいいと思うんですけれども裁判所に行きますと、普通の人はわからないですよね。たとえば首席書記官というのがあるでしょう。それから主任書記官というのがあるんですね。それから次席何とかというのがあって、どっちが上なのか下なのかよくわからないけれども、どうしてああいうふうにたくさん首席何とかだとか次席だとか主任だとかいうのをつくるんですかね。どうしてああいう行き方をとるんですか。
  78. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは、何と申しましても、裁判所はいろいろな仕事を部単位でやっておるわけでございます。そうなりますと、その部には、先ほど来問題になっております統括裁判官というものがおり、裁判官が数人おりますが、そしてさらに書記官がおり、速記官がおり、あるいは事務官がおる、それから法廷の関係では廷吏がいる、そういうふうな関係になるわけでございます。そういう数名の書記官、事務官等をやはり一つの部でまとめて、いろいろ裁判官の要望にも応じ、また当事者のほうとも連絡するということについては、どうしてもそこに取りまとめの主任というものが必要になるわけでございます。そういう主任というものがおりますれば、それで部が、東京地方などの場合におきますれば数十にも及ぶわけでございまして、そうすると、自然やはり全体の書記官のいろいろ仕事ぶりを見て指導育成していくというポストとして首席というものが必要になるわけでございます。まあ同時にしかし、これは裏から申し上げますれば、そういうポストにつくことによりましていろいろ待遇面でも改善されていくという面をも持っておるわけでございまして、これは職員の一種の地位ということにもなっている面もあるわけでございます。
  79. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、地裁はそうでもないかもわかりませんけれども、高裁の首席書記官だとか、主任書記官だとか、いろいろありますね。そういう人たちは、いろいろな手当がついて給与がよくなっちゃって、しかもわりあいに転勤も少ないというわけですね。それで簡裁判事よりも、一緒人たちが給与がよくなっちゃうわけですね。地裁なんかでも、簡裁判事よりも事務局長のほうが手取りが多くなってくるんですね。それは実態はどういうふうになっていますか。そこで、簡裁判事は、公には言えないけれども簡裁判事の自分たちよりも事務局長や職員のほうが給与が上だというので、結局あまり気分的にはおもしろくないというか、それは自分は判事だからといって特殊な扱いをしろというのはおかしいかもわかりませんけれども、ともかく簡易裁判所判事よりも、そういう事務局長だとか、首席だとか、主任だとか、いろんな手当がついて給与が上になっちゃう。それで簡裁判事のほうは非常に給与が低くなっちゃっているというので、非常に気分的に給与の改善をしてほしいという意見があるんですね。あるけれども、言えないで困っているんですね。法務省でも同じですね、副検事がそうですね。副検事は年齢的には六十五までやれるからいいようなものですけれども。検察庁の中でも、ほかの人がだんだん給与が上がってきちゃって、副検事のほうが上がらないということで、あるひとつのあれがあるんですね。ここら辺は、実態はどうなっていますか。一つは、具体的には今後どうしようということになるんですか。
  80. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) なるほど、ただいま仰せのとおりの現状はあったわけでございます。しかしながら、現在は、ここでお世話になりました裁判官の報酬法の改正によりまして、簡易裁判所判事につきましても、相当高い本俸と申しますか、報酬額が規定されたわけでございます。したがいまして、簡易裁判所判事を七十歳までつとめますと、一般職と比べましてもとより比較にならないほど本俸の金額は高くなるわけでございます。したがいまして、やめるときの退職金、それから特に年金等につきましては、一般の首席書記官よりもずっと高くなるというわけでございまして、職務内容も非常に張りがあるということになるわけでございます。しかしながら、ただいま仰せがございましたのは、事務局長、それから首席書記官をしていて、あまり簡裁判事になりたがらぬ者がいるではないかという、まあ御趣旨でございますが、これは現在のところではむしろ、報酬面が中心というよりは、御承知のとおり、事務局長、首席書記官になりますと、相当のもう年配に相なるわけでございます。そういたしますと、先ほどまあ裁判官希望者が少ないということを申し上げました第一の理由といたしまして、非常に職務が繁忙であり、しかも判決事案の技術的な修練等が非常にたいへんであるということを御説明申し上げたわけでございますが、これがやはり相当年配に達しました事務局長や首席事務官についてかかってくるわけでございます。でございますから、事務局長と首席書記官とを比較いたしますと、事務局長は簡裁判事に比較的なりたがらない。しかしながら、首席書記官のほうは、しょっちゅうこの具体的な事件にも接しておりますし、上訴記録等も精査いたしておりますので、首席書記官のほうからは相当簡易裁判所判事希望者が多いというような現状であるわけでございます。
  81. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは七十歳までつとめた場合の話はわかるんですよね。だから、いまのたとえば同期ぐらいの人が事務局長、首席書記官ですと、それと簡易裁判所判事になっている場合に、いろんな給与がありますね、手当やなんかついた、その比較をしてみるとどうなんですか。
  82. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) その比較の面におきまして、先ほどお話し申し上げました、当委員会でお世話になりました報酬法の改正以前におきまして、相当アンバランスがございました。で、こちらのほうで報酬法の改正をしていただきました前後に、そういうようないびつの点を直すべく努力いたしました。最近におきましては、その給与の面は比較的アンバランスがなくなっておるのが現状でございます。
  83. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは私の聞いてるのとはちょっと違いますね。私の聞いてるのは、これはなりたがらないという話はそのとおりですけれども簡裁判事は、それらと比べてですね、実質的な収入が少ない、同じ年代で少ない。しかし、それをほかへ訴えようといったって、なかなか訴えられない。最高裁判所へ言っていけないというんですね。最高裁は非常に権威があり過ぎて、とても近寄れないというのですな。とても寄れないというので、いろいろ雑談の中に出てくるんですよね。ちょっと話は違うと思いますが、私どものほうでも、そういう話ならば、調べてはみますけれども。  そこで、簡易裁判所判事の話になってきたわけですけれども、ここでふやすのは——これは借地借家だけやるわけじゃないのでしょう。結局、交代になるから——逮捕状の問題だとか何とかどんどん出すわけでしょう、当番やなんかでやるわけですね、これはそうでしょうね。
  84. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) まあ一応これは計数上のものでございますから、その任命されました者が何をやるということは、当然のリンクはないわけでございます。
  85. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、逮捕状の問題になるんですけれどもね、この簡易裁判所判事の仕事で逮捕状を出すということが非常に多いと思うんですね。東京などはあれですか、全部検事を経由して逮捕状を請求しているんですか。これは現在の刑事訴訟法のたてまえからいけば、その必要はないはずですけれども、東京はそういうふうにやっているんですか。検事を経由して逮捕状請求しているんですか、直接やっちゃうのですか。
  86. 内海倫

    政府委員(内海倫君) ものによりますけれども検事を経由せずにやっておる場合が多いと思います。
  87. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 何か検察庁なり何なりの座談会のちょっとあれを見てみたら、東京では、警視庁関係では全部地検を経由して逮捕状請求しているということを、伊藤栄樹君かなんかのあれに出ていたわけですけれども、それは刑事訴訟法のたてまえからいけば、その必要はないわけですけれどもね。そこで、東京などでも、地裁の判事に逮捕状を請求すると、なかなか出してくれない。だから、簡裁判事に請求すれば出してくれるということで、東京ばかりでもなく、ほかでもそうですけれども、逮捕状の請求を簡裁判事にしようという動きが全体的にあるのですね。これは簡裁判事が、全然中を見ないで、めくら判でもないでしょうけれども、押してしまうのですね。宿直とか、自分のうちにいて。日曜なんかの当番がありますね。逮捕状請求を職員が持っていくと、中なんか見ないでばんばん判こを押してしまう。そういうようなことが非常にあるというので、これは一つの問題になってくる、私はこう思うのです。そこで、一つの例として通告しておいたのですが、宇都宮の例——選挙の文書違反ですね。これは文書違反になるかどうかは非常に議論のあるところですが、教職員組合の委員長をやっている湯沢という人が逮捕された事件がある。これは勾留理由の開示の請求があって、そしてその直後に勾留取り消しになったのですが、まず基本的に逮捕の問題で、いまの警察なり検察庁の考え方は、任意出頭をかけた、呼び出ししたけれども、出てこなかった、その場合に逮捕状をすぐとるのですね。そういうことは法律的に一体許されるのですか。そこはどういうふうに考えているのですか。任意で呼び出しかけて、出てこない、さあ逮捕状だ、きまっていますね。どうなんですかね。任意呼び出しかけて出てこなかったからといって、すぐ逮捕できますか、法律的にそういうふうに言えますか。
  88. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 法律的には、被疑者の場合、任意出頭をかけて出てこない、したがって取り調べができないというふうな場合、純理論的にいきまして、逮捕状を出すか出さないかは別問題として、逮捕状の請求をして取り調べの必要があるならば、取り調べを進めていくということは、刑事訴訟法のたてまえからいって私は可能だろうと思います。ただ問題は、運用の問題としまして、任意出頭で、なるべく任意捜査でやるというのが、御承知のとおり、法のたてまえでございますので、運用の問題としては、なるべく相手の事情も考えて、そして任意出頭の、任意捜査でできる事件であるならば、捜査当局だけの都合ではなくて、そこのところは運用の問題としてできる限り任意捜査でいくべきだというのが運用のたてまえであるし、またそういうふうに指導をしているつもりでございます。
  89. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 任意出頭かけて出てこなかったから逮捕状を請求して逮捕ができるのだという、そういうことはどこに書いてあるのですか、どこに根拠があるのですか。
  90. 川井英良

    政府委員(川井英良君) いま直ちにその法律の条文を示すだけのあれを準備してまいりませんけれども、任意出頭かけて出てこないというふうな場合には逮捕状の請求ができることは、これは当然のことだと思います。
  91. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういう考え方がぼくはおかしいと思う。条文をさがしてくださいよ。そんなのは基本問題ですよ。大臣どうですか。まあ大臣は弁護士ですから、弁護士に聞くと違う答えが出てくるかもしれないけれどもね。これはおかしいですよ、いつもおかしいと思っていた。すぐ結びつかないことですよ、あたりまえのことのようにやっている……。
  92. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 刑事訴訟法に定める逮捕状による逮捕の場合の要件からいきまして、その要件が整えば逮捕状の請求ができるというのが、これは原則として、たてまえとして当然のことだろうと思います。
  93. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どこに書いてありますか、どこのどこに書いてあるんですか。
  94. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 具体的には、原則は百九十九条の定めるところと思います。
  95. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、任意出頭ですよ、それに応じなかったということで、直ちに逮捕ができるのですか。
  96. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 先ほど申しましたように、あくまで法のたてまえは、任意捜査でやるのがたてまえで、強制捜査は例外の規定になっておることは、そのとおりでございますけれども、一般的な原則として、その法律の定める要件があれば、逮捕状を請求して、逮捕の上強制的に取り調べをするということも法が認めているところでございますので、したがって、その要件が整うならば、捜査官として裁判官に対して逮捕状の請求をするということも可能だろうと思います。
  97. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 自白を求めるために、逮捕をして、そうして勾留をするということは、現行の刑事訴訟法でそれは許されることなんですか。
  98. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 自白を強要するために逮捕をするということは、法のたてまえからいって許されないことだと思います。しかしながら、その事案の内容によりまして、その人の身柄を自由にしておくということが、あるいは逃亡のおそれがあるとか、これは罪証隠滅のおそれがあるというふうな場合には、捜査の必要上からその身柄を拘束するということは許されておりまするし、またそういうたてまえで運用がなされているものと、こういう確信しております。
  99. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それじゃ、具体的な例に戻るのですけれども、宇都宮の簡裁判事が逮捕状を出し、それから勾留したわけですね。この湯沢という人を。この勾留をしたという根拠はどこにあるんですか。これは最高裁のほうかな。
  100. 佐藤千速

    最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 私ども外見的な状況のみしか聞いておりませんので、ただいま御質問のような理由、どういう理由であるかというところは承知しておらないわけでございまするが、勾留状の理由には、罪証隠滅のおそれと逃亡のおそれということの理由が掲げられていると聞いております。
  101. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは勾留状に印刷してあるんですよ。たくさん印刷してあるでしょう、勾留状に。何号と何号でしたかな、その何号と何号というところにまるをつけて書けばいいんですよ。印刷してあるんですよ。具体的にそれじゃどういう証拠隠滅のおそれがあるとか、逃亡のおそれがあるとか、これはもうきまり文句なんですよ。片一方だけでやらないんですよ。二つマルをつけるのですよ。これは何号でしたかね、ちょっと忘れましたが、これでやるんですよ。全く機械的ですよ。東京の十四部あたりだったら、わりあい勾留の場合は、勾留請求しても却下しますね。若い判事がいて却下すると、そして準抗告なんかもやっていますけれども、準抗告が通る場合もあるし通らない場合もありますけれども、これは地方の裁判所へ行くというと、勾留請求しても勾留請求が却下されるということは全くないですね。ことに簡裁判事は全くない——全くないと言っちゃこれは悪いかも知れないけれども、うのみですよ、これは。具体的に証拠隠滅のおそれが何があったか。逃亡のおそれが具体的にどうだったのか。この人なんかはちゃんと住所もあるんだし、これは何も呼び出しかけたりしたわけでも何でもない。選挙が終わってから、足利の人ですが、宇都宮に泊まっておった。いきなりそこから逮捕していっちゃった。逃亡のおそれなんか何もない。理屈はくっつければだれだってありますよ。逃亡のおそれがあるといったって、そのおそれは何もないんじゃないですか。そういう点、全く機械的に逮捕状出す。だから、これは勾留開示があったときに、取り消したでしょう、勾留を。勾留開示があったら、ぼくはそこで、勾留の理由がなければ、職権で取り消したらいいと思うのですよ。絶対職権で取り消さないですね、裁判所は。これは職権で取り消しちゃいけないという何かあれでもあるのですか。一体どんな——勾留を職権で取り消したら何かぐあいが悪いのかも知れませんけれども、職権で取り消さないでしょう。それで、職権の発動を促す。勾留の請求をしてくれと言うのですね。請求するでしょう。勾留開示が終わって、すぐそこで職権の発動を促す、勾留請求を取り消してくれと出す。そしたら、勾留取り消したですね。そんなら、ぼくはここで職権で勾留を取り消したらいいと思うのですよ。あるいは、初めから勾留しなければいいと思うのです。具体的に証拠隠滅のおそれ何があるんだと聞かれたら、それはわからない。ところが、勾留状に印刷してありますから、そこにマルつけるだけの話なんで、具体的に証拠隠滅のおそれがあるんだとか、逃亡のおそれがあるんだとか、そういう点について全然と言っていいくらい考えないんですよ。全く機械的にやっちゃうんですね。これなんかだって、どこにどういうあれがあったのかわからない。どういうわけであれですか、そうすると取り消したのでしょうか。
  102. 佐藤千速

    最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 具体的にどういうわけで取り消したかということは詳細は存じませんが、理由といたしましては、勾留の理由がなくなったということで取り消されると、かように考えております。
  103. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはあたりまえのことです。それは大臣ね、滝川さんが常々言われていたことですけれども、勾留更新決定というのがあるのですね。いまは六十日で勾留更新を決定しますね、裁判でね。勾留継続する必要があるから勾留を更新するんだという決定なんですよね。そんな裁判があるかといって滝川さんが言ったのです。勾留を更新する必要があるなんというのは結論なんですよね。勾留更新する必要があるから勾留を更新すると、こんなのは理由にならないというのですよ。いまと同じようにですよ、勾留を取り消す必要があるから勾留を取り消すと言うのでしょう。こんなものは裁判じゃない。どうなんですか。大臣に聞くのもおかしいけれども、これは昔からの慣習ですね。実に悪い慣習に従ってやっているんですよ。勾留を継続する必要があるから勾留を更新するというのも、答えになっていないんじゃないですかね。なぜ勾留を更新するかということの理由は全然ない。いまだって、勾留を取り消す理由は何にもない。勾留を取り消す必要があるから勾留を取り消した、そんなものはぼくは裁判じゃないと思うのですね。非常におかしいのですけれども、これなんかだってあっさり職権で取り消したらいいんですよ。メンツにこだわって職権で取り消さないのですから。勾留開示をやった段階で、そんなことはわかっているわけですよ。それをやらないですね。弁護人のほうから書面出してくれという、勾留取り消し出すでしょう。それであらためてそれをやっていく。実にぼくは形式的だと思うのですね。いろいろ議論があって、あまりこまかいことを言うのはいけませんけれども、ぼくはそういう惰性で非常に来ているところが多いと思うのですね。それから、いま言った、自白を求めるために逮捕するのですね。これは非常に多いですよ。これは「法曹時報」というので、私もよく知っている人ですけれども、いま最高検の本田正義さんね。あの人もはっきりそういう意味のことを言っていますがね。「日本の起訴前の勾留は、何といっても取り調べのためであり、自白を求めるためであり、また余罪を追及するためのものです。もしそうでないと言えば、私はうそだと言いたい」、これは本田正義さんが「法曹」の十三巻の八号の「検察の諸問題」という座談会で言っているわけです。本田さんはわりあい新しい型の検察官ですから、高木一さんと新しい型の検察官ですから、古い方とか、違ってこういう考え方を持っているかわかりませんけれども
  104. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 勾留の問題につきまして、ただいまは一般論として大いに反省を要するべきだというふうな御趣旨の御意見がございましたので、私どもその衝に当たる者としましては、御趣旨を体して遺憾のないように努力をしてまいりたいと、こう思っております。ただ、具体的な案件につきまして、裁判所のほうにはまだ報告が参っていないと思いますけれども、私のほうには、若干その具体的なケースについて、どういう事情で勾留を請求し、それからどういう事情で勾留開示の公判が開かれ、またいかなる理由で勾留が取り消しになったかということについて幾らかの説明が来ておりますので、そこをちょっとお答えにかえて申し上げておきたいと思います。  で、この事件は、まだ取り調べ中でございますので、あまり詳細を申し上げることはいかがかと思いますけれども、公判の前の身柄の手続の問題でありますので、ここで申し上げることも差しつかえないと思いますけれども、受け取った検察官のたてまえとしましては、どうしてもこの事件に必要な犯罪の成否にかくべからざる証人が一人おるのだけれども、この人にいくら呼び出しをかけ、手を尽くしても、検察庁あるいは警察のほうへ出頭がしていただけないということで、この人を調べないことには起訴もできないし、不起訴にもならないというようなことで、何とかしてこの人を調べたいということでもって、その人を調べるまでは逃亡の上で証拠隠滅のおそれが十分にうかがえるのだということで勾留の請求をしたようでございます。そこで、被疑者のほうから請求がございまして、勾留理由の開示の公判が開かれて、そこで裁判官から勾留の理由が示されておりますけれども、その理由の中にも、検察官の請求は、その証拠隠滅のおそれが一応うかがわれるということで勾留状が出ているのでございますけれども、その後弁護人のほうから、そういう調べる必要があるならばそれを調べてもらったらよかろうというふうなことで、その証人が直ちに検察庁のほうへ出頭してまいりましたので、検察官のほうがその必要欠くべからざる証人につきまして十分に事情を聴取することができたということで、聴取ができたということを裁判所のほうに連絡いたしましたところ、裁判官としましては、検察官が問題にしておったその重要な証人の取り調べができた上ならば、あえてこの被疑者について、逃亡のおそれがあるということで、証拠隠滅のおそれありとして勾留を続けることは適当でないと、かように判断されまして、即日勾留の取り消しがなされ、検察官の方またその命を受けましてこれを釈放したと、こういうふうな私どものほうにその間の事情の報告が参っておりますので、もしもそのとおりだといたしますならば、これはこのような始末が結局一番適当であったのだろうと、こういうふうに私ども考えておるわけでございますので、ちょっとその報告に基づきましてその間の具体的な事情を御説明申し上げました。
  105. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 勾留したときに、だから具体的にどういう証拠隠滅のおそれがあるかとか、逃亡のおそれ、二つで勾留しておるのですね。いまの中心点は、証拠隠滅のおそれはなくなっちゃっておるのでしょう、この公判廷の中心は。だから、この二つというものは、これはきまり文句でみなくっつけるのです。何でもみんなくっつけるのですよ。印刷してあるんですからね。印刷してあるのは、みんなそのままくっつけるのと同じなんですよ。それが一つ。  それじゃ具体的に証拠隠滅のおそれがあると勾留するときに裁判官が判断したのかしないのかということなんですよ。そこがぼくは不明だと思う。十分にこの内容を判断してこういうような結論を出したというなら、私はまだまだ見解の相違ということになってくると思うのですけれども、そこらのところが——本件の場合には判断したのでしょう。だけれども、一般的な場合にはそこまではやっていないのじゃないかということが考えられる。私も勾留尋問に立ち会ったことがあります。十何人も一つの部屋に入れておいて、ただ端からばたばたやるだけですからね。ばたばたとやって、一人一分くらいでどんどん済んでしまうのですからね。これは裁判でも何でもないですよ。惰性でもって行なわれているのではないかということが一つ考えられる。  それからもう一つの問題は、入っている被疑者は黙秘権を使っている。黙秘権は権利ですよ。権利として黙秘権が与えられているわけですね、憲法上。で、使っている。そうすると、そのことから、さあ証拠隠滅のおそれがあるという形に、すぐそこに持っていくのですね。権利として黙秘権を与えられているのですからね。それを行使することによって、そのことで証拠隠滅のおそれのほうに持っていかれて勾留されるのでは、何のために黙秘権が与えられているのかわからなくなってくる。あるいは、それは全然考え方が違うのだ、黙秘権を与えられているということとそのことによって勾留されているということは別個の問題なんだという、こういう考え方はあるかもしれませんけれどもね。中に入っている人がいろいろしゃべっているというなら、また通謀関係の問題も起こってくるということは言えるわけですね、理論的に。完全黙秘で、黙秘権を使っているなら、外部との通謀関係というものは起きないじゃないか——通謀の問題は起きてこないじゃないかということも、そこに言えるのじゃないですか。まあここはちょっと議論のあるところだとは私も思いますが。だから具体性がないのですよね。証拠隠滅のおそれがあると言っても、何がどこにあるのか、わけがわからない。まあそのことは、いま検察庁からの報告が出ましたから、私もそれ以上言うと、みんなぼくの知っている人ですので、悪いから言いませんけれども、この勾留開示の前の日に主任検事が釈放すると言ったわけですよね。夜おそくまで釈放に走り回っているのですよ。それがいろんなことで釈放にならなかったわけですけれどもね。まあそれ以上ぼくは言いませんけれども、どうも納得が私はいかないですね。  大臣、これは本件より離れまして、たとえばある男が強盗殺人を犯している、かように考えられる。あるいは、そうでなくして、別の大きな犯罪を犯している。そうすると、一年前とか二年前とかのつまらない横領事件だとか小さな傷害事件で逮捕状を請求し、勾留を認められるでしょう。で、調べられるのは、別の強盗殺人とか、ほかの犯罪、これを調べるわけです。たまたま強盗殺人なんかの事件——非常にうまくいけば問題にされないかもわからないけれども、もしうまくいかなかった場合、あるいは逆に、その横領だとか傷害だとかのきわめて微細な事件で、それで逮捕をしていながら、別の大きな、たとえば公安事件だとか何とかの調べをしようとしておる、こういうようなことが相当考えられるわけですね。いわゆる別件逮捕、いわゆる別件勾留ですね、これなんかも全く無批判に行なわれている。これは憲法違反ですよ。この強盗殺人なりあるいは別の大きな事件では、逮捕状も出ていない、勾留状も出ていない。また、出せないわけですね、それだけの根拠がないのですから。それを小さな横領事件だとか傷害事件だとかということで逮捕して、それだけを調べるわけですね。いわゆる別件逮捕、これは公然と行なわれている。これは法律的に厳密に言うと、法律違反じゃないですか。どういうふうに考えているのですかね。これはもう明らかに法律違反ですよ。逮捕状がなくて逮捕して、勾留状がなくて勾留できるのと全く同じですよ。そうじゃないですか。もうずいぶん行なわれているわけです。無批判に行なわれている。これはどういうふうにお考えなんですか。
  106. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 確かに、御指摘のように、非常に大きな犯罪の疑いを受けている者に対して、取るに足らないようなきわめて軽微な、まあ私どもでも言う起訴価値のないような事件について逮捕状を取って取り調べをし、その間にねらっておる事件の捜査を続けるというふうなことは、刑事訴訟法のたてまえからいきまして適当でない措置だと思います。ただ、いまの訴訟法が二十四年から御案内のとおり施行されまして、運用の実情等をも加味し、また犯罪の非常に大きなことと、それから勾留日数がきわめて制限されているというふうな実態から、いろいろな手続の運用が編み出されてきた、こう思うわけでございますけれども、取るに足りないような、問題にならない微罪でもってそれをするというふうなことは、かなり適当でありませんけれども、いわゆる明らかな別件逮捕というのじゃありませんで、その疑いを受けたグループの中に十分起訴価値のあるような犯罪を犯している者が多数あるというふうな場合に、その大きな犯罪の捜査の過程において、その起訴価値のある犯罪が、人と証拠とが自然に浮かび上がってきたというふうな場合に、それらの者をその事件について逮捕状をもって取り調べをするということは、これはあながちまた非難もできないことではなかろうか、こういうふうに私ども一応考えておるわけでございます。
  107. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 起訴価値のことで逮捕するなら、勾留するなら、話は別ですよ。そのことでやっていないじゃないですか。調べていないわけですよ、そのことは。たとえば横領なら横領、この事実は認めているわけでしょう。いいですか、事実を認めて、被害者の調べもついているから、逮捕状が出るわけですから。被疑者もつかまったときには横領なら横領の事実を認めておる——傷害の事実もそうですがね、あるいは家もある、こうなれば、勾留するという必要はないですよ、法律的に。しかも、そのことは、逮捕していって、ほかの事件を調べていて、ほかの事件が実ればこっちの事件は起訴するし、こっちの小さいのは起訴しないのです。そういうのが実に安易に行なわれておる。だから、逮捕状の発付、勾留状の発付というのが、裁判所——ことに簡易裁判所の場合において、率直の話が、内容を検討しないで行なわれているのが非常に多い。これは実に多い。だから私は、簡易裁判所判事というものにきわめて人権感覚に乏しい人が多いように非常に考えられてならない。一つ考え方としては、なぜかといえば、それは新しい時代の教育を受けた人じゃないわけですよ。戦争前からの教育を受けた人で、その人がだんだん上がってきた、こういう者が多いのです。そういう人だから、新刑訴のあれなんというのは十分のみ込んでいないのですよ。だから、昔と同じことで、言ってくれればばかばか出してまう。はなはだしいのは、判こを預けっぱなしの者があるでしょう。簡易裁判所判事で、自分でやるのじゃなしに、書記官に判を押さしているのが、この間免職になったのがいますけれどもね。そういう例もあるくらいですが、いずれにいたしましても、時間の関係がありますので……。
  108. 佐藤千速

    最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 委員長、ちょっといまの発言と関連して。
  109. 浅井亨

    委員長浅井亨君) 佐藤刑事局長。
  110. 佐藤千速

    最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 稲葉委員のほうから、裁判官、ことに簡易裁判所判事の人権感覚が問題であるという御指摘があったわけでございますが、私どもこの点は、簡易判事の重要な職責の一つとしての令状事務というものは認識しているつもりでございます。それで、昨年も令状に関する会同を——特にその令状の処理ということに限りました簡易判事の会同もいたしましたし、また令状の処理に関しますところの資料も最近つくりました。今後も、五次会同におきまして、なお本年も令状に関するところの教育会を計画いたしておるようなわけでございます。なお、研修所におきましては、簡易裁判所判事の研修もございますので、研修所のほうへも連絡をいたしまして、特に令状事務というようなものに重点を置いて研修をしてもらうように、そういう連絡をいたしておるようなわけで、今後ともそれらの点については十分配慮していくつもりでございます。
  111. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 東京地裁では、どうして簡裁判事には普通令状出せないのですか。
  112. 佐藤千速

    最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) おっしゃるのは逮捕状ですか。
  113. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 逮捕状、勾留状でも。
  114. 佐藤千速

    最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 逮捕状は、通常の場合はウイークデーは、これは昼間は簡易判事の方が出しておりまして、それから夜間は地裁のほうの裁判官が当直で担当いたします。そういう構成をとっております。
  115. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 東京の場合は、勾留は刑事十四部で全部やるのですか。
  116. 佐藤千速

    最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) ウイークデーは刑事十四部でいたします。ただ夜間は地裁の各判事が当番で処理いたします。日曜も同様でございます。
  117. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 選挙違反の裁判で、百日裁判というようなことを最高裁でも言われているわけですね。これは確かにそのとおりの趣旨だと思うのですが、私はいままでの選挙違反の逮捕状なり、勾留状なり、捜査のやり方、これは根本的に問題点があると思うのですよ。そこでちょっとお聞きするのですけれども、これもこれに関連して出てくるのですが、法定費用ですね。まず、大臣、法定費用があるでしょう。ぼくはわからないのは、法定費用がどういう合理的な根拠で算出されているのかということなんです。これがわからないのですよ。これは衆議院、参議院——参議院は地方区、全国区、県会とか、いろいろありますね。これに分けて、自治省の方が来ておりますから、説明してください。ぼくは合理的な根拠が聞きたい、法定費用の。
  118. 山本悟

    説明員(山本悟君) ただいま御質問のございました各選挙におきます法定費用、公選法の百九十四条及び施行令でそれぞれ規定されておるわけでございますが、それぞれの選挙におきまして選挙運動の規制の内容もいろいろ違っております。実際に単価を算定いたしましたときも、ざっくばらんに申し上げますと、中心になります衆議院の総選挙というようなものを想定をいたしまして、これが総平均して通常の選挙区におきまして約二百四十万くらいかかるであろうというような想定をいたしまして、固定額あるいは有権者割りというものを算出をいたしておるわけでございます。その際には、やはり過去のずっと経緯がございまして、政令で定めたとき、あるいは昭和二十九年のように法律で定めましたとき、三十七年からまた政令ということになっておりますが、そういった過去の額とその額をきめます際の運動の内容といったようなものをそれぞれ勘案をして中心をきめまして、それと他の選挙におきます県会議員あるいは参議院といったようなものの従来の比率等を勘案してきめられていっているというようなことでございまして、先生御指摘のとおり、これで運動やった場合にどんな運動になるのだということを下から積み上げたというかっこうではいささか根拠というもののお示しはむずかしいというような状況でございます。
  119. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私の言うのは、たとえば均等割りみたいな基礎は幾らかかって、有権者一人に対して幾らかかる——たとえば七円かかるとか何とか積み上げするでしょう。それが参議院の場合——地方区、全国区、衆議院の場合、都会とか、県会とか、市会とかありますね。それを全部どういう根拠によって出していますか。いますぐでなくていいですよ、別な機会でいいですから、どういう根拠によってそういう法定費用を算出しているのか、その合理的根拠はどこにあるのか、これは全部資料として出してもらいたいのです。これは根拠が全然ないのですよ。ぼくは前から疑問に思っておるのですが、いいかげんなものですよ。それが一つと、それからいま法定費用は二百四十万とかきまりましたね。いいですか大臣、聞いていてください。二百四十万を選挙違反を犯さないで合法的な支出で埋めることができるのかできないのかということですよ。それが選挙違反の捜査の一つのポイントになると思うのですよ。衆議院選挙は二百四十万だった、いいですわ、法定費用に入らないものがありますからね。候補者の使った車とかマイクとかというようなものは入らない。法定費用に入るものを選挙違反を犯さないで満ぱいまで——満ぱいというとことばが悪いけれども、そこまでやっていくのに一体どうやって使ったらいいか、そこはどういうふうになっているか、これまたわからないですよ。これにからんできて、こいつがわからないから、金を使うとすべて選挙違反にされちゃうのです。まず二百四十万なら二百四十万を合法的な支出というものから埋めていってごらんなさい。法律的な制限がありますから、合法的支出には、事務所で使う者は十五人、労務者が何人要るとか、埋めていってごらんなさい。衆議院選挙で公営掲示板あるのに、労務者というのはどういうものが考えられるのか。考えていってごらんなさい。
  120. 山本悟

    説明員(山本悟君) たとえば衆議院の二百四十万、そのうち半分を、固定額を百二十万、あと有権者割りにしているわけでございますが、いま先生おっしゃいましたように、衆議院であれば、選挙運動のほうにつきまして、労賃を幾らと、あるいはそれから事務員は報酬を出せる人間が幾ら、それぞれきまりがございます。それから、この二百四十万をきめました当時は、まだたとえばポスターといったものも公営掲示場もなかった時代にきまっておりますから、そういう場合に、ポスターの枚数もその当時一万二千枚でございましたが、その当時印刷にどのくらいかかるだろう、あるいはポスターを掲示するための労賃はどのくらい要るだろう、こういうようなことを大ざっぱに積み上げてまいりまして、もちろんぴしゃっとした金額になるわけじゃありませんが、ほぼそういうものを積み上げてまいりまして、こういった中心になるものが算定されるというような程度でございます。
  121. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、公営掲示板があった段階で労務賃というのは一体何が考えられるのか、どんなことがありますか。
  122. 山本悟

    説明員(山本悟君) これは選挙の実態、ちょっと私どももつまびらかではもちろんございませんが、考えられることといたしましては……。
  123. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 違法でないやつですよ。
  124. 山本悟

    説明員(山本悟君) たとえば公営掲示場でも、掲示場に張りにいくのは公営でやっているわけじゃございませんから、そういうときに人夫が要るのじゃないか、あるいは、無料はがきでございますが、このあて名書き人には労賃を払うのじゃないか、こういった点が考えられることじゃないかと思います。
  125. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、そのほかにそれじゃ違法でない支出というのはどんなものがありますか。
  126. 山本悟

    説明員(山本悟君) 全部というわけにはまいりませんが、一、二考えてみますと、たとえば弁当代といったようなものも、単価とそれから人数が法定できめられております。総ワクがきまっておるわけでございますから、その金額は一定の金額が出てくるわけです。あるいは通信費でございますとか、それから演説会場の——公営じゃない場合でございますね、いろいろなところを借りました個人演説会場の借り上げ料、あるいは選挙事務所の借り上げ料、こういったものが考えられるのじゃないかと思います。
  127. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、違法でないもの——こういうものは違法でない。違法でないものについては、人数の制限があるものがあるでしょう。労務者は数の制限はない。しかし、賃金で制限があるわけですね。それから人数の制限で、十五人というもので制限があるものがあり、費用で制限があるものがある。いろいろあるでしょう。それを全部表をつくってごらんなさい。一体違法でない支出、一体どこまで法定費用でまかなえるのか、できないですよ、これは。一番いい方法は、ごまかす方法はあるのですよ。事務所の借り上げが動くのですよ。事務所の借り上げ料二百万かかったと言えばごまかせるでしょう、満ぱいになりますけれども、そんなことは常識で考えられないですから、だから選挙法というものはいいかげんなものですよ。いいかげんな選挙法に乗っかってきて捜査をやられて、勾留だ——逮捕勾留されちゃうんですよ。かなわないですよ、これは。といって、選挙違反をうんとやれと言っているわけじゃない。選挙違反の悪いのは徹底的にやってほしいのですよ。  そこでお聞きするのですけれども、それじゃ、法定費用がありますね、候補者から法定費用を出納責任者に渡しますね、全部二百四十万なら二百四十万渡しますよ。それは選挙違反になるのですか、ならないのですか。候補者が法定費用つくって、「法定費用ですよ」と言って出納責任者に渡す、これは選挙違反になるのですか。
  128. 山本悟

    説明員(山本悟君) ただいまのおっしゃいました点でございますれば、いまの選挙費用は出納責任者を通じない限り候補者といえども直接支出できないというたてまえでございますから、当然違反の問題は生じない。
  129. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、その法定費用を出納責任者が——各地の選挙責任者がありますね、それに法定費用の範囲内で渡しますね。渡した場合に、選挙違反になる場合とならない場合とあるでしょう。どういう場合がなって、どういう場合がならないのですか。
  130. 山本悟

    説明員(山本悟君) 文書による承諾といいますか、内容を指示をして渡しました場合には、それに従って支出をする限りはならない。ということは、公選法の百八十七条でございますが、「選挙運動に関する支出は、出納責任者でなければすることができない。但し、出納責任者の文書による承諾を得た者は、この限りでない。」ということで、文書による承諾を与えてあります場合にはならないと存じます。
  131. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 出納責任者は、各地区の選挙の責任者に金を二十万とか——二十万ずつたとえば渡すでしょう。そうすると、それは選挙違反になるんですか。
  132. 山本悟

    説明員(山本悟君) 支出の内客につきまして文書による承諾を与えてない限り、なるかならないか具体的にわかりませんが、全然ならないということも申し上げられないと思います。
  133. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これなんかもおかしいのですよね。そうするとあれですか、こういうふうに使ってくれということを、たとえばいまの労務者の賃金ね、労務者の賃金に使ってくれということを文書にして渡し、それと一緒にお金をつけて渡せば、各地区の選挙責任者がもらっても違反にならないのですか、もらったことについては。
  134. 山本悟

    説明員(山本悟君) まあ文書による承諾でございますから、詳細に、細部まで人を特定する必要があるかどうかという点については問題があると存じますが、通常私どもの指導といたしましては、少なくとも労務者何人分の何日分の日当である、それでやってくれというような程度まで文書によって示しておいてもらいたいというような、これは行政指導でございますが、そういう行き方をいたしております。
  135. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから、概括的に、労務者賃金だと、あるいは事務所の人の費用だ、よういう形でいって、それで金を渡せば——例を十万なら十万、二十万なら二十万にしましようか、選挙事務所から金がいけば、それは選挙違反になる場合とならない場合とが含まれているわけですよ。そうでしょう、これ。その点はっきりしていますね。その点ちょっと答弁してくれませんか。
  136. 山本悟

    説明員(山本悟君) ただいまのようなことでございますから、この法に従えば、ならない場合もあるということでございます。
  137. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それをいまのたてまえでは、警察でも、検察庁でも、事務所からなりあるいはその他の者から金が動けば、全部それは買収資金だと、投票取りまとめの資金だという形で逮捕状を請求されているわけでしょう。ほとんどそうですよ。それで無条件で勾留されているんじゃないですか、それは。金が動けばもう選挙違反という前提ですよ、いまの捜査は。だから、現実にじゃ金をもらった人がこういうような選挙運動をやっていって、労務賃なら労務賃として現実に使って、立てかえ経費だと、それをもらったんだということに弁解をしても、それは通らないですよ。選挙違反にされちゃうんですよ。こういう問題があるんじゃないですかね。だから、選挙違反の捜査というものはぼくは考え直さなくちゃならない段階だと思うのですよ。それが一つと、それから調書が——これは検事も笑っているんですけれども、もうほとんど作文なんですよね。金を受け取るでしょう。受け取ると、受け取った人の取り調べについては、その金はもらったと、もらったのはその候補者に対する投票取りまとめの一つの謝礼としてもらったのだというふうに調書がずっとできてくるわけですね。できていくわけですよ。それで起訴されるわけですよ。だから、それに対する弁解はどんどん起きてくるわけです。現実には自分のほうではこれだけの金を使っているんだから立てかえ分としてもらったんだとか、あるいはもらった趣旨が違うのだという形の弁解が出てくるんですね。それは裁判を引き延ばすための弁解であることももちろんあるわけですけれども、そうでない場合もある。選挙違反と選挙違反でないものとがごちゃまぜになって、金が動くとすぐ選挙違反だという形になり、そういう形での捜査が行なわれ、そういう検察なり何なりの調書がとられて、そこで裁判になりますから、だから公判でもたつくわけですよ。百日じゃできっこないわけですよ、こういうことの問題は。そこに問題点があるわけですよ。だから、こういう点はきょうのあれではありませんけれども、これはもう十分ひとつお考えを願いたいと、こう思うのです。そこでぼくは自治省に資料として要求しておくのは、法定費用の——各選挙ですよ、いろいろな選挙がありますよ、各選挙のきまった、合理的と考えられる根拠ですね、それを明らかにしてもらいたい。参議院は地方区、全国区、衆議院、それから都会議員から県会議員から市会議員とあるでしょう、全部出してもらいたいですね。ここら辺から検討しないといけないのですね。  それから、まああとの問題は捜査の問題ですから、これはきょうの問題ではないからあれしますが、まあそういうようなことでいろいろございますが、そこでぼくはひとつ時間の関係——時間過ぎてしまって申しわけございませんけれども一つお聞きしたいのは、たとえば司法、立法、行政を分けておるわけですね。分けていて、司法である最高裁判所が、国会に提案された法律に対していろいろ意見を言うわけですね。これはどうなんですかね。司法権の立法府に対する介入ではないのですかね。逆な場合もありますよ。立法府の司法権に対する介入ももちろんありますけれどもね。ここはどうなんですかね、どこまで——一般的な抽象論ならまた別だと思うのですけれども、具体的な法案について最高裁がこの法案はああだこうだということは、どうなんですかね。そこのところ、ちょっとぼくもはっきりつかめないのですがね。どの程度まで許されるのですかな、最高裁として、現実に出ている法案に対して。
  138. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは非常にむずかしく、また重要な問題であると考えておるわけでございます。まあ何と申しましても、法律は国会で制定されるわけでございますし、その提案権は内閣が持っておる。またむろん議員提案はございますが、最高裁判所には提案権はないというふうに普通解せられております。そういうことではございますし、また同時に、立法というものは多くの場合に一つの政策になるわけでございます。そういう意味では、政策に最高裁判所が立ち入るということはやはり穏当ではないと考えられるわけでございます。裁判所がそういうものについて意見を述べるのはまさに裁判において判断をすべきものでございますので、そういう段階でない時期において、たとえば国会の委員会等であまりに突き進んだ意見を述べるということにはやはり限界があろうと考えておるわけでございます。ただ、現在ここで御審議いただいておりますこの裁判所職員定員の問題であるとか、あるいはまた法務委員会で、多くの場合、たとえば報酬の問題であるとか、あるいは裁判所の機構の問題であるとか、そういういわば司法制度の運営、あるいは場合によりますと根幹に触れますような問題につきましては、やはり裁判所といたしましても、その立場から一応の意見を申し上げる。これは国会法でも、私どものほうは積極的に、何と申しますか、意見を申し述べたいということを私どものほうから申し上げまして、そして委員会の御議決を得まして、そしてまあ発言を許していただいておると、そういう点では政府委員の方とは立場が違うわけでございますが、そういうことで、私どもが意見を申し述べます場合に、委員会のほうで御了承をいただけますならば、やはり一応の意見を参考にお聞き取りいただくと、こういう気持ちで出てまいっておるような次第でございます。
  139. 久保等

    ○久保等君 まあ時間があまりありませんから、きょうは簡単にちょっと法案の内容についてお尋ねしたいと思います。法務省関係の質問もあるのですが、まだ資料が出ていませんから、きょうは裁判所定員の問題等についてお尋ねしたいと思います。  裁判所には、裁判官もそうだし、それから一般裁判官以外の職員についてもずいぶん欠員が多いようですが、この欠員補てんの問題についてはどういうふうにお考えになっておるのですか。
  140. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これはいろいろな面から御説明する必要があろうかと存じますが、まず裁判官の問題につきましては、先ほど来いろいろ御説明申し上げましたように、裁判官希望者が必ずしも多くないというようなところから、定員をふやしましても必ずしも思うように充員できないという面がございます。ただ、お手元資料にあらわれておりますこの数が、常時それだけの数あるわけではございません。つまり、四月の上旬という時期が比較的欠員の埋まる時期でございます。ただ、これもしばしば国会でも問題になったことでございますが、裁判官は定年によって退官する場合が一番多いわけでございます。途中で退官される方もときどきございますが、きわめて多くの方が定年で退官される。その定年は、つまりいわゆる六十五才の誕生日、それから簡裁判事の場合には七十才の誕生日の前日ということになりますので、随時来るわけでございます。そういうふうにやめました補充を随時することは非常に困難でありますために、つまり一年間分の退職者の欠員が三月に埋まるわけでございます。それも三月の末から四月にかけて埋める、こういうふうな形に裁判官の場合にはなるわけでございますが、これに対しまして、一般の職員——書記官、事務官の点は、これはだいぶんその面が違いまして、これも資格者の制限等がございますから、そう自由にも任命できませんけれども裁判官ほど任命の制限があるわけではございません。お手元資料欠員が三百人ほどに出ておりますが、これは二万人から見ますと六%ぐらいですか——ということで、そういう数は実は非常に多いということでもなかろうかと考えております。これは各省ともある程度欠員があるわけでございます。また同時に、現在いろいろ定員抑制措置等で、欠員不補充という問題についてもある程度の御協力をしなければいけない立場にありまして、そういう点での欠員が若干あるという面もございます。ただ、何と申しましても、充員することが最も大事でございますので、できる限り充員する努力を進めつつある、かような実情でございます。
  141. 久保等

    ○久保等君 裁判官の場合についてお尋ねしたいと思うのですが、三月一日現在だと総計九十名の欠員があるようになっておる。そうすると、ごく最近の状況はどういうことになっておりますか。五月一日現在でも、いつでもいいですから、四月になってからの状況はどの程度です。
  142. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは先ほど来るる御説明申し上げましたように、判事につきましては、ほぼ欠員は埋まっているというふうに御理解いただいてけっこうだと思います。判事補につきましても、ほぼ同様でございます。ただ、簡裁判事につきましては、若干の欠員があるわけでございます。
  143. 久保等

    ○久保等君 その点、正確に少し答弁してもらわないと困る。現実にこういう資料を出しておいて、いや埋まっていますという抽象論じゃなくて、中身について説明をひとつきちっとしてもらいたいと思います。
  144. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 正確に申しますと、この判事のほうの五十三名の欠員がございますが、それから以後に十五名ほどさらにふえまして、その上で判事補から判事に四十二名、それから判事補の資格を有する簡裁判事から二十六名、計六十八名判事になりまして、欠員は埋まったわけでございます。  それから判事補のほうでございますが、判事補のほうは、いま申し上げましたとおり、四十二名判事になりましたので、これは七十一名の欠員になったわけでございます。それに対しまして、修習生から六十一名と、それから弁護士から二名ほどふえたようでございまして、それで七、八名の欠員が出ておるわけでございます。  それから簡易裁判所判事のほうは、いま申し上げました三十名足らずの者が判事のほうになりまして、修習生のほうから簡易裁判所判事に十二名なっております。それで合計三十数名の欠員でございましたところへ、修習生から十二名なりましたのと、それから定年退官判事その他から六名なりまして、したがいまして残り二十数名の欠員、こういう勘定になるわけでございます。
  145. 久保等

    ○久保等君 今度定員の改正で合計七名、これはかりに法律が成立すれば直ちに充当する準備、そういうようなこともやっておられるのですか。
  146. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 判事につきましては、直ちに充員できると考えております。簡易裁判所判事につきましても、できる限りすみやかに充員にしたいと考えております。
  147. 久保等

    ○久保等君 それから、一般の裁判官以外の職員の問題。この問題は裁判官の場合とは若干事情が違うかと思うのですが、違うというのは、むしろ逆に裁判官以上に欠員等の補充が比較的やりやすいはずなんだけれども、現在総計三百三十五名、この資料提出時においては欠員がある。これも、もう少し常時人事異動等の面で考慮していけば、こういった形にはならなくて済むんじゃないか。たとえば、一部には非常に過員になっているというような状態も、この資料等ではうかがえるわけですね。この問題については、現在どうなんですか。
  148. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) まことにお話のとおりでございますし、特にこの資料は二月という古い資料で、非常に恐縮なわけでございますが、これは実は現地任用の職員も相当あるわけでございます。御承知のとおり、裁判所簡易裁判所まで含めますと千に近い単位を持っておるわけでございまして、それがそれぞれで場合によりますと現地採用のものもあるわけでございます。そういう関係で、常時報告してまいりますが、それを集計いたしたりします関係で若干ずつ日時のズレがある、こういうことを御理解いただきたいわけでございます。そうして、私どもとしては常時しかしながら欠員が埋まるように施策しておるわけでございまして、一例をとって申し上げますれば、この書記官について現在ここに百十七名の欠員がございますが、これは数字で申し上げますれば、書記官研修所を卒業いたしました者が三月の末に全体で百九十人ばかりおったわけでございます。そこで、それはこの時点以後にいろいろ事務官に転換いたしまして、たとえば事務局長等になりますれば事務官に転換いたしますので、そういうふうになりました者等を含めました欠員を全部埋めることができておるわけでございます。それから、家庭裁判所調査官につきましても、ほぼ同様でございます。ただ、そういうことになりますと、結局事務官から書記官になるわけでございますので、その欠員はいわば全部事務官のほうにしわ寄せになってきておると、こういうわけでございます。そこで、その事務官につきましては、四月に大学とか高校を卒業しました者を、多くの場合に現地採用でございますが、現地で採用して埋めつつある——現在でも毎日いろいろ採用についての連絡が来たり、そういうような状況でございまして、逐次埋まりつつあるという状況でございます。
  149. 久保等

    ○久保等君 この定員法の今度の改正で、四十七名程度の総計定員増を提案されているのだけれども、三百二十五名にのぼる欠員、二月一日現在の資料では。これは増員の面から見ればたいへんな欠員ですよね。だから、欠員さえ補充がつかないような状態で、ただ定員の面だけでの数字をいじってみたところでどうなるのかという、きわめて常識的な疑問を持つんです。この三百三十五名は、めったにないことだけれども、たまたまことしの場合非常な欠員ができたんだという事情で三百三十五名という数字が出ているのか、それとも平年いつも、大体三百名か二百名か知らぬけれども、相当欠員があるという状態なのか。最近のここ数年あたりの状況なんかはどういうふうになっていますか、欠員状況は。
  150. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これはお話のとおりでございますが、率直に申し上げますと、しょっちゅう変動しているわけでございます。たまたま現在のこの時点に非常に欠員が多いのかというお話がございますれば、それはそうではございません。非常に多い時期があるわけでございます。端的に申し上げますれば、やはり年度末が比較的欠員が多いわけでございます。そして、つまり四月に新規の採用をしますことによってそれが埋まる率が非常に高いわけでございますから、つまり年度当初は比較的欠員が少ないわけでございます。それともう一つ、三百何名ということが、つまりある裁判所、ある職種についてずっと継続して欠員があるというわけでは決してございませんで、つまり千に近い単位をかかえておるわけでございまして、そしてまた裁判所の場合、この表にも出ておりますけれども、たとえば廷吏であるとか、タイピストであるとか、いろいろの職種があるわけでございます。たまたまそのタイピストがやめますれば、それはタイピストなんか途中で採れますから、すぐ採るわけでございますが、採るまでに暫定的に欠員があると、これが全国で積み重なってこういうことになるという面もあるわけでございます。おそらくタイピストの欠員というようなものは、これは各現地でなるべくすみやかに補充しようと努力していることは間違いないと考えられますから、したがって、きわめて暫定的な、一時的な欠員が全国で積み重なっているという面もかなりあるわけでございます。そういうところが、とにかく全国にわたりまして千に近い単位をかかえておるものをトータルすると、こういうふうになってくる面もあるわけでございます。それについては、できる限りすみやかに補充するように大いに現地を督励し、こちらとしてもやっておると、こういう実情でございます。
  151. 久保等

    ○久保等君 タイピストの場合を例にあげられたんですが、そういったことについても、もう少しこういった欠員の出ないような形の補充ということが迅速にやられ得るんじゃないかと思うのですよ。それから、単にタイピストに限らず、事務官なんかにしても、地裁だけでも三十五名の欠員がここに載っています。特別むずかしい資格があるわけじゃないでしょうし、事務官あたりの異動なんかの問題で、欠員という形にならなくても、うまく異動でもって埋めていくことがやれるんじゃないですかね。これはたいした数じゃないと言われるが、そうだとすれば、数はばらばらに言ったら問題にならぬ、全国で四十七名程度増員ですから。それこそたいした数じゃないと思うんですけれども、しかし少なくとも、約その十倍くらいの欠員を持っておるということは、いかにも法案を提出する立場からすれば不見識な話で、異動する間のほんのわずかばかりの間に若干のブランクができる、欠員が出るというなら、話はわかるんです。いまの御説明だと、必ずしもそうじゃなくて、ある程度欠員が、単にことしの二月一日現在だけじゃなくて、ある程度ノーマルな状態であるような話ですから、そうだとすると、人事の何か配置のしかた、あるいは人事配置の発令のしかた、そういったことについての計画性なり、それから事前にやめるとかなんとかということもあると思うんだけれども、そういったことに対する対策というか、人事の補てんの準備等で何か手抜かりになっておるんじゃないかという感じがしますけれども、どういう実情なんですか。
  152. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) いまのお話はまことにもっともで、私どももその点大いにくふうして、まあ何とか欠員を少くするように定員配置を考えたいという立場でいろいろ検討はいたしておるわけでございますが、いままでのところまだこのような次第でございます。ただ、ちょっといまお話のございました三十五名の欠員と言われましたのは、これはおそらく家庭裁判所調査官の項のものだろうと思いますが、家庭裁判所調査官は非常にやかましい資格がありまして、調査官研修所を出ました者で充用いたしますので、この欠員がこの時点にはあったわけでございます。その後におきましては、調査官研修所の出身者でこれもかなり埋まったわけでございます。そういう状況でございます。事務官のほうは、この三角のついております六十三名の過員と、この時点においてはなっておるわけでございます。ただ、書記官、事務官あるいは事務雇というものが、かなりいろいろ仕事の上でも共通の面もございます。なお、タイピストにおきましても、場合によりますと、これに共通の面がございます。そういう関係でいろいろやりくりをしてやっておるわけでございまして、事務官は過員になっておるという状況でございます。
  153. 久保等

    ○久保等君 いま家裁の調査官とか言っておったですが、調査官じゃないんです。事務雇なんですよ。事務雇なんかであれば、なおさら特別埋めるのに困難とかなんとかいう問題はないと思うのです。これは三十五名というのは、調査官でも何でもない、事務雇です。これが三十五名の欠員になっているんですよ。こういったようなことは、欠員でもって放置するどころじゃなくて、幾らでもこういうものは簡単に埋められ得る職種じゃないかと思うんですが、どうなんですか。
  154. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) その点は全くお話のとおりでございますので、そういう事務官なり事務雇というものはできる限り欠員を生じないように埋めることに努力してまいりたいと考えております。
  155. 久保等

    ○久保等君 特別むずかしい事情はないんでしょう。ひとり事務雇だけの問題じゃなくて、私は総体の問題として申し上げているわけだし、特にいまのなんか一つの事例としてタイピストという問題を出すから申し上げたんですけれども、全体的にいま言った三百三十五名の欠員があるということについては、もう少し迅速にあと補充をそれはやろうと思えばできたと思うんで、私はむずかしい事情が——むずかしい資格がなければどうだとかいうことになってくると、裁判官のような場合にはなかなか簡単にいかないものがあることはわれわれもわかります。しかし、裁判官以外の職員の場合には、これだけの欠員が少なくとも出ているということになりますと、片方において四十七の増員を提案してくるのにあたっては、いささかじくじたるものを感ずるんじゃないかと思うんですが、したがって、もう少し努力の余地があるんでしょう、どうなんですか。
  156. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 書記官とか家裁調査官等は、これは裁判所の特殊な官職であり、かなり資格等がございますから、必ずしも簡単にまいらない面もございますが、それ以外の職員は、これは各省共通の問題でございますので、それは各省と同様に私どもとしてもその点について努力を重ねなければならぬと考えておりますし、御指摘のとおり、まだまだその点については努力の余地があると考えております。
  157. 久保等

    ○久保等君 それから書記官のことについては、総体で十二名の増員が予定されているのじゃないかと思うんですよ。これに対して増員要求数というのはどのくらいなんですか。
  158. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 裁判所でこういう増員の要求をいたします場合には、通常事件計算をいたしまして、それに必要な裁判官の数を要求数としてきめまして、そうしてつまり裁判官の数に見合う書記官の数を要求する、こういうやり方になっているわけでございます。そうして今回の場合、裁判官は、先ほど来御説明申し上げましたように、二十三名要求いたしまして、それに見合う書記官としては四十二名、この借地借家関係では要求いたしたわけでございます。ただ裁判官関係では七名になりましたので、書記官もそれに見合う十二名になっている、かような経緯になるわけでございます。
  159. 久保等

    ○久保等君 単に借地借家法改正だけにとどまらず、その他のとにかくできるだけ訴訟事件を早く処理をしようとかいったような関係でも増員要求はあるんじゃないですか。
  160. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) そのとおりでございまして、たとえば高裁の事件訴訟促進の関係では、裁判官二十四、書記官三十二という要求をいたしたわけでございます。
  161. 久保等

    ○久保等君 ほんの一部だけ認められたということですね。ここらに、何か要求された人員から見るとまことに微々たるこれまた要求が通ったというか、今度の増員の改正が出てきたという形になっていますが、ここらも何かあまり数が開きが多いので、これも少し政府への要求が水増し要求で、十の要求が十通らなくてもやむを得ないという初めから判断をしておったのか、そこらに若干の熱意を疑わざるを得ないと思うんですが、さらに家庭裁判所調査官、これも今度で三十五名ですか、今年の場合には五名の増員を予定しているようですが、これは本年の要求は幾らですか、昨年と。
  162. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 本年度の当初要求数三十五名でございます。
  163. 久保等

    ○久保等君 昨年はどうですか。
  164. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 昨年度は家裁調査官は百名を要求いたしました。
  165. 久保等

    ○久保等君 昨年は増員は幾らになったんですか。
  166. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 昨年の増員は二十五名でございます。
  167. 久保等

    ○久保等君 そうすると、去年の百名要求で二十五名、それからことしは要求が三十五名ということになってくると、去年の要求分だけの要求もことしはしなかったということですね。それはどういう事情ですか。
  168. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) その点は、実はいろいろ前から検討していたところでございますが、つまり昨年度百名要求はいたしましたけれども、家庭裁判所調査官というのは非常に資格のやかましいものでございまして、原則として調査官研修所の卒業生から充用しておる、こういうことでございます。そういたしますと、そういう高度の資格を持った者を百名充用するということはなかなか容易ではないわけでございます。そういう点から、ことしの場合にはある程度調査官と事務官とに分けて要求し、調査官は、何といいますか、必要最小限度と申しますか、真に必要とする数にしぼり、それを補助する官職として事務官のほうに移していくということで、事務官をあわせて要求してはどうかというような立場になりまして、それで、家裁調査官は三十五名であるけれども、事務官のほうをそれにかわるべき数を要求するということでやったわけでございます。そういう点についてもいろいろ御批判はありますけれども、手っとり早い方法はこれではないかというような結論から、そういうようなやり方をとったわけでございます。
  169. 久保等

    ○久保等君 あまりこまかい問題について私質問しょうとは思いませんが、ただ、家裁だとか、それから簡易裁判所ですね、こういったところの仕事の量は、けさほどもらった資料を見ますと、非常なふえ方をしておりますね。たいへんな、何十万といったような仕事の面ではふえ方をしておるのですが、そうなってくると、これの事務的な処理だけでもなかなか容易じゃないと思うのですが、その事務処理を特にされると思う裁判官以外の職員の問題について、おたくのほうで要求せられた要求数の約一割前後が——半分とか三分の一とかいうものじゃなくて、きわめて微々たる増員の予定になっておるような点から見ますると、どうもちょっとふに落ちない面があるわけです。現在おる職員そのものについては、相当足りない面は超過勤務とかなんとかいう形で処理をしているわけですか。その場合の処理はどういうふうに調整をとっておられるのか。
  170. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) お尋ねがございましたので、ちょっとこの資料も説明さしていただきたいわけでございますが、事件——前回久保委員からお話のございました、三十年ごろと比較してというお話で、三十年ごろと比較しまして定員についてそこへ提出いたしました。裁判官について約百九十人の増、それから一般職員について千二百人の増ということでございますが、事件関係でも、これは各審級によって若干は違いますが、三十年当時に比較いたしますと、大体民事はかなりふえており、刑事事件はかなり減っておるというような数字になるわけでございます。で、必ずしもどんどん事件がふえているというわけでもないわけでございます。それから御指摘の簡易裁判所関係でございますが、簡易裁判所では、三十年当時と比べて、民事は減っておりますが、刑事が激増いたしております。この激増は、ごらんいただきますと、略式手続というところが、百十二万件というのが四百十五万件ということで、約三百万件ふえておるわけでございますが、この略式手続の中でふえておりますのは、ほとんど交通事件関係の略式事件でございます。それから家庭裁判所関係でも、これは家事事件は七万件とかなり大幅に減っておるわけでございますが、少年事件がやはり激増いたしております。この少年事件の激増いたしておりますのは、これは約七十六万件ふえておるわけでございますが、そのうちの六十三万件、つまり大部分はいわゆる交通の保護事件でございます。そういう関係で、ごく大まかに見ますと、交通事件関係が激増しておるのでございまして、一般の刑事事件はむしろ減っており、民事事件が若干ふえておる、こういうような状況になるわけでございます。  そこで、それに見合う増員がされてあるかどうかという点でございまして、十年間で裁判官百九十、その他の職員千二百ということは、まあいま一般に国家公務員の定員が押えられております環境のもとではある程度のものではあろうと考えますけれども、しかし決して私どもとしてこの数字で満足しておるわけではございません。将来ともますます増員の必要があると考えておるわけでございます。その中で、本年要求と最終の結論と違います趣旨でございますが、これも先ほど来るる御説明申し上げた点である程度御理解いただけるかとも存じますが、年次計画になっておるものがかなりあるわけでございます。たとえば借地関係につきましても、これは本年は六月からの施行で半年間のことでございますので、その半年間の実績を見まして、四十三年度にまたさらにそれによって大幅に要求したいという気持ちがあるわけでございます。それからまた執行官の事務に伴う増員も、これはいずれにしてもこの程度の数ではとうていまかなえないわけでございまして、これは何年計画になりますか、とにかく三、四年なり数年かかって逐次ふやしていく、そうしてその間はいわばその仕事は裁判所で受け持たなくてもいいという法律になっておるわけでございます。そういうような点は、それでまかなえるわけでございます。ただ一般の職員関係は、できる限り、いなかのほうの事件の少なくなりましたところから、都会へ集めるような方法をとりまして、まかなってまいりまたいと思っておるわけでございます。それによって足りません分は、いろいろ超勤その他の方法で補わざるを得ない面も若干あるわけでございます。
  171. 岩間正男

    岩間正男君 私は重複を避けてお聞きしたいのですが、いまいろいろ説明がありましたが、まとめてこれはここで出していただきたいのですが、当初の予算要求、それからこの中で定員がずっと各裁判所別に出された、それが実際通った数、これが一覧表で出ればいいわけですけれども、ここで発表していただいてもいいわけです。
  172. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) まず裁判官でございますが、裁判官は全部で七十四要求いたしまして、そうしていま予算で計上されておりますのは七名でございます。それから地方裁判所調査官は、十三名要求いたしまして、いま四名ということになっております。それから事務官は、二百八十六名要求いたしまして、二十六名ということになっております。それから書記官は、百名要求いたしまして、十二名ということになっております。家裁調査官は、三十五名要求いたしまして、五名ということになっております。その他の職員を含めて全体の要求数トータル六百九十二でございまして、それに対しましていま御審議いただいておるように五十四という数字になるわけでございます。
  173. 岩間正男

    岩間正男君 どうもこれは過大見積りですかな。予算獲得上のこれは技術なんですかな。ここよくわからぬのだけれども、あんまりかけ違うじゃないですか。六百九十二名の要求で五十四名というと、これは一〇%足らず、九%くらい、こんなことでいいのですか。予算獲得の技術上で少しは掛け値ということも考えられるのだが、あまりひど過ぎるじゃないですか、これじゃ。そうであるか、そうでなければ、これはどうも高裁の皆さんの予算獲得技術が非常にうまくないということ——大蔵省来ていますか、主計官見えておりますか。次官も来るはずだ。大臣にも出てもらいたい、実際は。こういうかっこうじゃ話にならないのだから、実際。ここで説明聞いたって、予算とどうで、どういうことになっておるのかわからない。こういうことでは、われわれこの内容が大問題ですよ。どういうことなんですか、さっぱりわからぬのです。こんな例がありますか、ほかの各官庁。大蔵省と対決したい。実は、こういう形で毎年同じことが行なわれるんではしようがないと考えて、大蔵大臣の出席を要求したんですけれども、きょうは出られない。主計官だけ。主計官の事務的なあれではだめなんだ。政治的な司法行政上の重大問題なんだ。この問題をもっと大蔵省にくさびを打ち込まなければ、あんたたちを擁護するというそんな立場じゃないけれども、あまりこれはひど過ぎる。どっちかに欠陥があると考えざるを得ない。最初から山を十倍もかけているのか、あるいは技術がまずくてこれは通らないのか、これは今後の司法行政上重大問題です。私はそう見た。こんな例はない。ほかの官庁を見たって、こんなばかな例はない。そうでしょう。この点についての反省をどうお持ちになっていらっしゃるのですか。
  174. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 一応私どもの立場を説明さしていただきたいと存じますが、まず裁判官関係でございます。裁判官関係で七十四名という要求をいたしましたのは、これは私どもとして、今後高裁の事件の処理期間を半減する、つまり訴訟を促進するという見地、それから借地借家関係では、新しい事件を処理するという見地でこの程度が必要であろうという一つの見込みを立てたわけでございます。これは決してその意味では水増しではございません。ただ、その当時におきましても、七十四名についてはたしてこれの充員の見込みがあるであろうかということについては、むろん非常な危惧の念はあったわけでございます。ただ、御承知のとおり、この当初要求と申し上げますのは、八月の末現在で内閣へ出すことになっておりますので、その時点においては、あるいは今後の努力によっては弁護士会等からもおいでいただく方が非常にふえればこれが埋まる可能性もあるということで、まあ充員について十分自信があったわけではございませんけれども、ともかく必要数というものはこういうことだということで提出したわけでございます。ただ、いよいよ妥結いたします段階は、本年の場合は特に二月ごろになってまいりまして、そうなりますと、非常に充員についても見通しが具体的になってくるわけでございます。ところが、先ほど来種々問題になりましたように、裁判官の給源というものは非常に限られております。弁護士会とも数次に御連絡いたしましても、なかなかおいでいただけない。そうすると、結局充員の関係で足を引っぱられるということで、先ほどちょっと申し上げました高裁の事件訴訟促進の関係の二十四名というものは、ほんとうはぜひほしい数でございますが、増員していただきましても埋める見込みが立たないわけでございます。埋める見込みが立たないものは、これは先ほど来のお話がございましたように、予算だけ取るわけにはまいりませんので、おりざるを得ないという、結局裁判官関係は主としてそういう充員の見通しの点からおりざるを得ない関係になってきたわけでございます。それがひいては、裁判官がふえませんと、書記官もそれとリンクしてふえる形でございますので、ふえにくいという、そういう影響が来ておるというのが一つの問題点でございます。これが全部ではございませんが、一つの問題点であるわけでございます。
  175. 岩間正男

    岩間正男君 法務大臣お帰りになってしまったんだが、法務大臣としてもどう考えるのか。それから最高裁判所長としてこれはどう考えるのか。どうも毎年こういうかっこうになっておるような気がするんですがね。ことしは特にこれはひどいんじゃないでしょうかな。私は、要求というものは必要があって要求しているんじゃないか。ところがそれが取れないというんならば、必ず欠陥が起こる、こう考えざるを得ないでしょう。そうでなければ、たいへんなヤマカンやっているわけですからな。最高裁判所がそういうヤマカンやっているというんじゃ、重大問題なんだ、それ自身が。これは責任問題になるのですが、こういうことから考えますと、必要があって要求した、それが一〇%も取れない、このことについての責任の所在をやはり明確にしなければ、司法行政を今後ほんとうに前進させるということは、私これはできないんじゃないかと思います。実際、こんなこといつまでやっていてもいいんですか。  そこでお聞きしますが、いろいろ弁解的なことはいいです。それは聞きたくない。聞いてもあんまり足しにならない。聞いてみると、技術的ないろいろな、裁判官をとれなかった、そうすると、ほかにそれに伴って書記官調査官もとれなかった、こういうようなことを言われるんですが、そういう技術的な問題じゃなくて、やっぱり大きなところでこの問題をはっきりさせる必要があると思うんですね。したがって、そういうことになりますというと、いろいろな欠陥が起こってくるだろう、こういうふうに思うんですね。大まかに言って、今年度予算、こういう形になりますというと、どういうことが起こりますか。
  176. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) まことに申しわけないことでございますが、たとえばこの高裁の促進の関係で要求した趣旨は、つまり現在高裁では、民事で約十六カ月、それから刑事で六カ月かかっております。お手元資料に出ておるわけでございますが、それを目標としては、民事では八カ月、刑事では三カ月というふうに短縮しようということで、それのいわば三年計画ということで増員要求したわけでございますが、それが入らないわけでございますから、したがいましてその審理期間半減ということがまあできない。したがって、従来どおりの審理期間、ある程度の努力をして短くするといたしましても、つまり急速にその審理期間を短縮することはできない、こういうことになるものと考えるわけでございます。
  177. 岩間正男

    岩間正男君 これは二つあるのじゃないですか。むろん、これは国民との関係では、訴訟事務が停滞するということが一つ、これは非常に大きな問題です。同時に、ここで働いている裁判官以下の各職種の人たちに対して非常に労働過重が起こっていく。その結果が、いろいろな職業病というようなものにこれは発展したりね。そういう点で、あなたたち、どういうふうにここのところをきびしく調査されているのか。これは無反省でいったら、たいへんなことになる。ものすごい欠陥が起こっている。現にもう非常にやはり訴訟事務の停滞というものがはっきり出ている。もうこれは国民からも批判されているところです。そうでしょう。それから実際は、ほんとうにあそこでこの事務、職務に携わっている人たちの間に、そういういろいろな欠陥が起こっています。これはどうですか。
  178. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 私どもの立場から申し上げますれば、これはつまり訴訟の審理期間を半減しようという趣旨で要求したものが通らなかったわけでございますから、半減という目標が達せられないということでございます。ただ、実際問題としては、私ども裁判所におりました経験で、やはり事務量が多ければ、何とかして少しでも早く片づけようということで、増員が通らなかったからおくれてもしようがないという気持ちにはむろんなるものではございませんから、そういういわば心理的なところから少しでも早くしょうということで無理をするという面はむしろあると思いますが、純粋に事務的な見地からは、これは従来の状況が引き続き続くという関係になるわけでございます。ただ、従来とも、いま岩間委員御指摘の、いろいろ病気の問題等もございます。その点はまたお尋ねによりまして逐次御説明を申し上げたいと思いますが、一応の問題としては、そういうように従来どおりの事務量でやってまいりたいということを前提に考えておるつもりでございます。
  179. 岩間正男

    岩間正男君 もう一つは、その前に要求したいのは、欠員ですね、欠員は各職種別にどういうふうになっておるんですか、現在は。これも言ってください、最高裁から。
  180. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これはお手元資料にございますとおりでございますが、その後の関係につきましては、先ほど来裁判官その他の職員に区別して御説明を申し上げたとおりでございますが、その大要を申し上げますれば、判事につきましてはほぼ欠員は埋まっており、判事補につきましては十名弱、簡裁判事につきましても二十数名の欠員がまだ残っておると、こういう状態であるわけでございます。それから一般職のほうの職員につきましては、書記官につきましてはほぼ欠員が埋まっておるわけでございますが、事務官につまきしてはかなりの欠員があり、それをいま逐次採用しつつある現状でございます。
  181. 岩間正男

    岩間正男君 欠員がずいぶん長い間続いているんですね。そうすると、予算執行上、使わない予算が出てくるわけですね。これを返しているでしょう。政府に返している額は明確になっていますか。これは、たとえば三十八年、三十九年、四十年、四十一年———四十一年はまだ発表しないか、四十年までの予算不執行の点で返還している。これはどうなっていますか。
  182. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) ただいま記憶いたしておりますのは、四十年度の人件費の残額でございます。これは約一億三千万から一億五千万ぐらいだと思います。
  183. 岩間正男

    岩間正男君 これははっきり資料として出してくれないと。
  184. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) はい、わかりました。
  185. 岩間正男

    岩間正男君 こういうかっこうではどうもうまくない。うまくないというか、何と言いますか、その傾向が、いま言ったような二つのところにしわ寄せされているのですから、そうするとこういう形ではまずい。  その次にお聞きしたいのですが、これは衆議院でもわが党の松本君が聞いたようでありますが、財政法十九条の歳出見積もり書を国会に当然私は提出したらよかったかと思います。大体あなた、こんな一〇%も通らないような、こういう予算でどうして納得してしまったのです。当然これに対して、はっきりあなたたちの主張が明確に、そしてほんとうに正しいものであったらば、堂々と、国会に、やはりちゃんとあなたたちの持っている一つの定められた権利なんですからね。これを明確にして、やはり国会での論議の資料にすべきじゃなかったかと思うのです。なぜそういうことを避けたのですか、どうもこの点理解できないのだな、どういうことですか。
  186. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは各局に関係する問題でございますが、便宜私からまず申し上げたいと存じますが、これはお話しのとおりでございまして、裁判所が内閣に席を持っておられない、閣議に列席できない状態において、予算を獲得する唯一の武器、と言ってはことばが妥当でないかと思いますが、これがいわゆる二重予算制度でございます。したがいまして、私どもとしては、常にまた二重予算というものを念頭に置いて、そうしてこれを出すチャンスと考えておるわけでございます。毎年の予算折衝におきましても、常にそういう頭でやっておるわけでございますし、おそらくは内閣なり、直接担当されます大蔵省においても、その点は十分考慮しておられることと思うわけでございます。  この増員の点が、先ほど来いろいろ問題になっておりましたほかのところと比較して言うことは、非常に妥当でないかもしれませんけれども、いま内閣全般として、非常に定員の抑制措置というものがやかましくて、私ども関係の各省でも純増というものはほとんど認められておらない状況のもとで、ともかくも、わずかの数でも、裁判所においては、欠員不補充ではなくて、純増が認められていく、計上されておるということは、私どもは、二重予算制度というものを背景にして、内閣といろいろ折衝いたしますことのあらわれではないかと考えるわけでございます。そして、先ほど来わずかに一割ではないかというお話がございました。まことにごもっともでございますが、ただ予算全体からいたしますれば、当初要求額の八五%程度は計上されたわけでございます。ただ定員関係が著しくこういう不利な数字になっているわけでございますが、何と申しましても、私どものほうにも、この裁判官書記官等につきましては、補充源ということについての一つの弱みがございまして、技術的だとおしかりを受けますが、ともかく裁判官等につきましては、供給源、補給源というものの弱みがございます。二重予算を出しまして、国会で御審議をいただきます際に、それでこれは埋まるのかというふうな御指摘を受けますと、やはりそこに問題があるわけでございます。まあ同時に、その他の職員等につきましても、定員の問題もございますし、また普通の一般の職員につきましては、やはり政府全体と申しますか、国家全体、国家公務員全体というものとのバランスというごとも、おそらくはある程度はあるであろう。したがって、営繕関係あるいはその他の関係で、本年度の場合におきましては、一応の金額に達しておれば、まず本年度の場合には二重予算という方法をとらずに、これでやってまいって、また来年の場合に十分検討いたしたい。こういうことになって、二重予算手続をとらなかったというような次第でございます。その点いろいろな御批判はあろうと思いますが、私どもの立場はさようなことでございます。
  187. 岩間正男

    岩間正男君 予算総額のどれくらい通ったのですか、あなたたちが出した。
  188. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは当初要求いたした額が約四百十億でございます。それに対しまして認められましたといいますか、計上されました額が約三百五十億でございます。大体八五%ということになっておるわけでございます。
  189. 岩間正男

    岩間正男君 そうしますと、営繕やその他のところは、これは大幅に通っているけれども、人件費にそのしわが寄っているという結論になるのじゃないですか。いまの一〇%、全体は八五%、そこのところが、私やはり非常に裁判所の運営、それから、実際は民主的な運営、そのような面からいっても、労働過重の問題非常に起こっているのですから、こういう点からいって非常にこれは重大問題だと思うのです。八五%通った。だいぶ通してもらったので、どうもあまり大蔵当局につら当てがましいような二重予算の書類を提出したのじゃぐあいが悪い。こういうようなことでは、そのしわがどこにいくかという点をはっきり考えてもらわなくちゃならぬ。二万からの定員があって、これはその大部分はやはり書記官であり、調査官であり、速記官であり、さらに行(二)のいろいろな人であり、タイピストであり、ボイラーのかまたきまでいるわけでしょう。そういう人たちのところに実際寄っていくというような、この私は司法行政のあり方そのものを問題にしたいのだ。この問題をいまのような話で、来年はこれはやるつもりでございますということですが、いままで二、三回出したということを聞いておりますけれども、やはり国会で堂々と論議するための資料を、ただ一つの武器だと言われたから、その武器を使ったらいいと思うのですよ。どうなんです。  ちょうど主計官見えたけれども、さっきから問題にしているのは、人件費において要求した、六百九十二人もの人員のこれは定員増を要求した。しかるに、わずかに五十四人しか通らなかった。九%そこそこなんですね。そうしますと、この査定というようなものが、これは非常に私は問題になるのじゃないか。どっちかがおかしいのです。どっちかがこれは狂っていると言わざるを得ないのです。最初に過大な見積もりをして山をかけたのか、それから、必要がほんとうにあって出したのだったら、これをこういうふうにむざんに切るような例というのは、ほかの官庁にはこれは例がないのじゃないか。そうすると、やはり特別機関だということで、この裁判所に対する大蔵省の扱いというものがここで問題になってくるわけですが、これは司法行政の民主的なあり方という点と関連して、この問題をいま問題にしておるのですが、この点はどうなんですか。実はこれは大蔵大臣に出てもらって、この点明らかにしたがったのですが、あなたが事務担当されたのでしょうから、その辺のところを、簡単でけっこうですが。
  190. 渥美謙二

    説明員(渥美謙二君) 裁判所側から裁判官七十四名その他職員六百十八名、合計六百九十二名という御要求がございました。いろいろお打ち合わせの結果、予算に計上されましたのが五十四名というのは、おっしゃるとおりでございます。まあ御要求はいろいろの相当の項目にわたりまして、それぞれの増員について御要求がありましたわけでございます。一つには、裁判官の場合、その給源というものが、一般から採用するわけにまいりませんので、そこにおいて限界があるということは言えるかと思います。何分予算御要求がございますのは八月ということで、いろいろ折衝を重ねてまいりますうちに、実績等あるいは見通し等が具体的につかめてくるわけでございまして、人数がこういうふうになりましたということの一つといたしましては、そういうことで給源が明らかになっておらない。それから、いろいろ訴訟件数といったようなものの見通しというものも、これはかなり流動的なものでございまして、当初要求時の見積もりに比べまして、件数が、やっていくうちにそれほど多くならないという見通しが立っていくということもございますかと思います。  また、これは一般行政機関についても同じでございますが、要求の際には、こうありたいというようなことで各機関から要求されるわけでございます。行政機関の場合は、現在やっておりますその増員抑制あるいは定員不補充というようなことで、人件費をなるべく削減してまいりたいという内閣の方針が明らかになりまして、予算折衝の過程で、それを御遠慮願う。裁判所は、もちろん内閣と違いますので、内閣側から御協力を願って、できるだけ同じような御配慮をいただきたい、こういうことをお願いするわけでございます。幸いにその趣旨に賛同していただきまして、極力現在の定員のやりくりといったようなことで、御配慮いただくというようなこともございます。大体そのようなことで、いろいろ裁判所側と私どもと時間をかけて御折衝、お打ち合わせをいたしまして、こういう結論になったわけでございます。
  191. 岩間正男

    岩間正男君 協力といいますけれども、たいへんな協力でしょう。要求の九%でがまんしてくれというんだから。こんなものは協力ということにはならないでしょう。だからこの問題は、これはいずれ大臣に出てもらってやらなきゃならぬ問題じゃないかと思いますけれども、どうも私はあまりこれはひど過ぎると思う、懸隔があり過ぎる。そうしてその結果がどこに行くかというと、何といいましても、これは二つの先ほど申しましたところに行くのですから、そういう点から、時間の関係から、一々こまいところまで私はやる予定でおりましたが、また重複を避けまして、一つだけお聞きしたいんですが、職業病の問題ですね。これは詳細につかんでおられますか。一体どういう病気があるのか。それから、これについていままで訴えがあったのか、ないのか。それについてはっきりとどういう処理をしたのか、そういう点についてお聞きしたいと思います。
  192. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) ただいま現在継続しておりますいわゆる職業病の疑いがあるとしての申し立て件数は十件、三十名あるわけでございます。そのおもなものを申し上げますと、いわゆる書痙、それから腱鞘炎、それから頚肩腕症候群等の病気の疑いということで申し立てがございまして、現在調査しておる段階でございます。
  193. 岩間正男

    岩間正男君 その原因なんかも調査されましたか。
  194. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) もとよりこれは個別的な申し立てでございますから、個別的なその事案、事案につきまして、それぞれ専門医の鑑定を求めたり、また求めつつあり、またそれぞれの職場の実情等について調査しておるのが現状でございます。
  195. 岩間正男

    岩間正男君 こういう実情をあなたたちおつかみになっておりますか。たとえば東京地裁で速記官が百四十名、そのうち八〇%が何らかの故障を起こしておる。その中で、職場内で仕事を軽減することが認められている者が二十名いる。当局の承認を受けて治療に専念している、そういう人が現在八名いる、こういうことを聞いておりますが、これは東京地裁だけの例であります。
  196. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) 東京地裁当局からいまだそのような実態についての報告は受けておらないわけでございますが、ただいま御指摘もありましたので、八十名についてもそのようなことがあるかどうか、東京地裁のほうでそうしたことについては実態を相当知っておると思いますので、調査してみたいと思います。
  197. 岩間正男

    岩間正男君 これは私もそういう具体的な話を実際にタッチしている人たちから聞いたわけなんですが、東京地裁だけでこれだけ起こっているとすれば、これはたいへんなことだと思うんです。したがって、当然あなたたちは積極的にこの問題をやはり解決するために努力をするというのが当然の義務だと思う。ところが、下のほうから報告がこないから、そこで結局それをつかんでいない。実際は報告を出しているでしょう。ところがなかなかこれは握りつぶされているのか、あるいは実際はどこかでこれは不明になってしまうのか、最高裁のそういう幹部のところに届いていない、こういうことが大体考えられるわけなんですね。ですから、どうしてもこの問題をやはり明らかにする必要があると思うんです。  その中でなぜこういう事態が起こるのかという問題は、いまの予算の獲得の問題、定員の問題と切り離すことのできない問題なんです、具体的にそうなんです。そうでしょう。ですから、そういう点をほんとうに、いまの裁判所の実際の具体的なそういう仕事のあり方について、科学的に厳密に調査することが私は絶対に必要だと思うんです。単に見込みとか、あるいは報告ぐらいでこの問題をごまかしていては、こういうことでは、やはりほんとうに要求に応ずることができないわけですから、そういうふうに考えるわけですけれども、どうですか、この点は。
  198. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) 速記官やタイプ等につきまして、それぞれ立ち会いの時間がどのくらいで、それからタイプにつきましては一日どのくらいというような一応の標準を、地裁は地裁で立てまして、そして、たとえば速記官については、その時間をこえる分については、われわれは外速と申しておりますが、外部に速記の熟練者がおりまして、それを法廷に謝金を払って呼びまして、そして当該事件について外部の速記を利用して、できるだけ過重な負担はもちろんかけないように努力するという方法で、東京地裁では運用しているというように聞いておるわけでございます。
  199. 岩間正男

    岩間正男君 これは速記官が不足で、いまの外注の問題も出ましたけれども、それだけじゃなくて、不足を補うためにテープレコーダーでとって、あとで速記をとる、速記官がいないので、それをほかの人たちが、まあ書記官がやるというようなことも実際は行なわれるということです。これは最高裁の方は御存じないかもしれぬけれども、そういう事態が実際に行なわれている。  こういうことで、非常に人員不足による労働強化が起こっているんですよ。具体的にこの職場の実態というものを把握しないといかぬと思う。私はいまの問題を解決しないと、この定員の問題に含まれているのは、この勤務の内容なんです。それがどんなに国民にしわが寄ってきているかということなんです。労働者の負担が、実際はそこだけで終わる問題じゃありません。これは国民の訴訟事務の迅速、こういうことをうたっていながら、全く反対の現象が起こっておる。そういうところにしわが寄ってきておりますから、そういう点にメスを入れて、これを解決するという努力なしにはこの問題は解決しないわけですよ。その点、いかがでしょう。
  200. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者矢崎憲正君) 録音機の問題が出ましたが、それにつきましては、本来は刑事局長、民事局長から申し上げるべきかもしれませんけれども、便宜私が存じておる範囲でお答え申し上げたいと思います。  録音機を使用することを、別にその当該裁判官が審理中に、特に求めて逐語的な調書を書記官に録取させておるということは、これは決してございません。ただ書記官におきまして、要領調書等を作成する場合に、録音機があったほうが便利だというような場合に、その録音機を利用いたしまして、そうして要領調書作成の資料とするということはままあることでございまして、録音機を使っているがために、特に労働が過重になるということはないものと考えておるわけでございます。  それから、先ほどちょっと申し落としたわけでございますが、東京地裁において八十名くらいの職業病があるのじゃないかというお話でございますけれども、昨年来、年二回にわたりまして速記官、タイプ等につきましては、専門医の特別検査を行なっておるのが実情でございまして、いわゆる定検と申しておりますが、速記官、タイプについては、全国の裁判所において二回にわたっていわゆる定期健康診断を特別に行なっておるということだけ申し上げておきたいと思います。
  201. 岩間正男

    岩間正男君 これは私たち具体的にそういう話を耳にしたわけですから、それで最高裁のほうでつかんでいる情報とは、これは違ってくるのですね。特に東京地裁刑事十三部というのは、これはどういうことかわかりませんが、ほとんど全部職業病にかかっている、速記官はね。それからタイピストなんかを見ても、これは八〇%にそういうなにが出ているのですね。それで、この速記官の欠員はいま何名ですか。
  202. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これはお手元資料にございますとおり、十数名、十三名と出ておりますが、これは時点によって少しずつ変動しますが、若干の欠員があるわけでございます。お手元資料にございます数字は十三でございますが、時点によってはもう少し多い、二十名をこえている時点もあると思います。
  203. 岩間正男

    岩間正男君 そういう形ですから、これで仕事はどうかというと、こういうことでしょう。司法行政権による裁判への干渉が最近非常に強化されている。統計でちゃんと事件処理件数の競争をさせるということになっている。それはちゃんと公表されているのですね、裁判所前に公表する。一種のノルマです。そうすれば、結局裁判官は、やはり事件の処理能力について競争心を起こすでしょうし、それがどこに行くかといえば、速記官に行き、調査官に行き、書記官に行くのですよ。どんどんつくって、ノルマを達成するとか、そういう上からの一つの指示というものをやっていこうと、そういう形にこれはなってくるとなれば、当然そこに労働強化が起こるのです。  どうも最高裁方々は、やはり雲の上じゃないかね、少し。現実というのをやはりもう少し率直におつかみになる必要があると思うのです。予算要求の熱意というものも、そういう問題をほんとうに解決して、何よりもあそこでみんなが十分に健康でしかもただ働く、そういう体制をつくらないで、やはり旧態依然とした権力支配の最もひざ元みたいなところがありますね。残存している。それが再びまた復活している。そういう体制の中で非常にいまのような問題が起こっているのです。私はちょっと聞いただけでも、これはやはりたいへんな問題だと思うのですね。したがって、ここに最初から予見を加えないで、現実のありのままの姿というものを皆さんが調査する必要がありますよ。そうしてその原因は一体何なのか。原因を徹底的に調査して、実情をまず把握する。その次には原因をはっきり究明する。そうしてこれに対する具体的な最高裁としてのやはり対策を考える。少なくともいまの職業病のような問題をなくすために、私は努力をするということは必要だと思う。そうなれば、まるで予算折衝というものは変わってくるでしょう。ところが、どうもそういうところは御存じないと、上だけの話し合いで、そうして結局は、大蔵省のほうが何といったってこれはさいふのひもを締めて、予算を切るのが商売ですから、切ればこれはやはり手柄になるのですから、これは冗談かもしらぬけれども、そういうようなかっこうの中で、成績があがるなどということと関連があるような形で、なかなかこれは手腕のいい主計官だなんということを言われて、その結果がはっきり最高裁のほうに、裁判関係のほうにしわ寄せされるのでは、私は困るのじゃないかというふうに思うのですけれどもね。もう時間がたってまいりましたから、まあその点について、やはり明確な態度で処置すべきだと思います。したがって欠員の補充というものは、これは急速にやる必要がある。第二に、職業病に対してどういう具体的な措置をとるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  204. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) お話しの点まことにごもっともなことばかりでございまして、私ども重々注意いたしまして、この欠員補充の点は、これは急速にいたしますように、努力いたしたいと考えております。
  205. 岩間正男

    岩間正男君 それから、これは一般職と並行して考えられるのは、行(二)の問題ですね。行(二)というのは国会なんかにもあって、非常に大きな問題になっているわけですけれども、電話交換手の人は行(二)に入るのですか、これはもうどんどん新庁舎が建っていって、仕事がどんどんふえていることは、ほんとうにこれに対して労働強化というものが大きくなってきているのですね。それから汽かんのボイラーたきですか、こういう人たちもやはり仕事がふえている、庁務員の人たち。結局そうなってくると、掃除面積がふえる、定員はそのわりにはあまりふえていない。そういうような問題にやはり手が届いていないのじゃないか。そういうところがいつも犠牲になるのだな。したがって、足場が悪いのですから、足が非常に弱くて頭でっかちになってくるのですから、どうしてもやはりその結果が、訴訟事務の遅延というかっこうになって国民にはね返ってくるというのがいまの現状だと思うのです。この行(二)の問題について、いろいろな待遇の問題、労働条件の問題について、いままでなされていると思いますが、これについてどういうふうな処置を考えておられますか。
  206. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 行(二)の問題のごく一般的な点を私からまず申し上げたいと存じますが、お話しのとおり新営庁舎等ができます場合には、掃除用員その他で行(二)が必要になる、あるいは電話交換の関係で必要になる、御指摘のとおりでございます。そういう場合、私どものほうといたしましてもいろいろやりくり等もいたしますし、また、たとえば東京地裁のような場合には、これは清掃会社というものが東京では発達いたしておりますので、裁判所職員によりませず、共用部分等はその会社のほうにまかせまして、直接裁判官等の執務する場所なり、そういう方面に重点を置いて職員がやるというような形をとっている面もございます。また、電話につきましても、自動交換等もできる限り可能な範囲で利用するというくふうもいたしておるわけでございます。しかしながら、非常に行(二)の定員については苦慮して、いろいろ検討し、今日まで行(二)の職員の執務に差しつかえないように十分な配慮をしてまいりたい、これは従来ともやっておることでございまして、おそらく、特にここで非常に不足しているということはそうないのではないかと思いますけれども、まあ不十分な点も多々ございますので、今後とも努力してまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  207. 岩間正男

    岩間正男君 裁判所に行ってみて、ときどき参るわけですけれども、感ずるのは、やはり裁判官と一般職との、いろいろな何といいますか、使っている道具とか、それも非常に格差があるような気がするんですね。やはり昔の階級制かもしれないけれども、机とかいす、ロッカー、扇風機、こういうものまで差別がついているような、あり過ぎるんだ、目立ちますよ。一般職の行(二)と差別がある、非常に階級制があるんですね。階級制といいますか、その階級制が、ああいうふうに非常に目立つようにあるということは、やはり一つの司法行政の私は民主化の問題と関係があると思うのですね。それがやはり意識にまで影響してくる、こういう点については、これはどうお考えになっているんですか、つまらない質問のようなんですが、しかし案外ばかにならぬ、こういう一つの外的な条件というものが、一ついまの階級性を維持するためにそのまま残されているのですから、これはどうですか。
  208. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) まず、ごく一般的なことで私から申し上げたいと存じますが、これはやはりいろいろな関係がございまして、必ずしも裁判官とすべての職員とが全く同じということはきわめて困難でございますのは、御承知のとおりでございます。そういう点では、先般来例の研究庁費というのを裁判官について計上していただきまして、これは裁判官の執務の上で非常なプラスになっているわけでございますが、そういうことの余波はやはり一般職の職員にも及んでまいる面もあるわけでございます。一般の普通の職員の方と行(二)の職員とが特に差別があるというふうには私どもは理解しておりませんが、部分的にはあるかと存じます。  それから、いまお話の給与の面でございますと、これは国家公務員に一般に共通する面がございまして、裁判所もそれを準用している関係がございますので、そういう面ではあるいは若干の関係があろうかと思います。特にまた裁判所職員のうち、大部分を占めます書記官とか、家裁調査官というのは、いろいろな面でいい待遇をしていただいておりますから、その点ではあるいはその他の職員とは差があるということもやむを得ない面があるわけでございます。
  209. 岩間正男

    岩間正男君 最後に一つだけお聞きしますが、これはこの最高裁のこれらの関係予算というのは、全国家予算のパーセンテージとしてどのくらいになりますか。それは統計をとっていますか。
  210. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 〇・七〇四でございます。
  211. 岩間正男

    岩間正男君 ここ数年のやつはどうなっているのですか。
  212. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 最近では一番低い状況でございます。
  213. 岩間正男

    岩間正男君 だんだんだんだんと、それが落ちていくのですね。ひとつこれはがんばらなくちゃならないと思うのです。そして、そのしわを解消するほうに務力するというのが、いまの任務ではないでしょうか。全部やはりあそこで働いている職員の皆さんの問題であり、最終的の影響は全部国民にくるのですから、それは。ちょっといままでの統計がありますか、ここ数年の全体に占める、それをちょっとここで言っておいてもらいたい。
  214. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 十年さかのぼります。三十三年〇・八四八、三十四年〇・八七六、三十五年〇・八八一、三十六年〇・八六八、三十七年〇・七六八、三十八年〇・七四四、三十九年〇・七三六、四十年〇・七六一、四十一年〇・七三一、四十二年〇・七〇四でございます。
  215. 岩間正男

    岩間正男君 ずっと転落してきている。そのしわがいまのところに行っているのです。私はその一端を指摘したにとどまるのですけれども、こういう点について、これは十分に検討していただきたい、こういうふうに思うのです。これで終わります。
  216. 浅井亨

    委員長浅井亨君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれをもって散会いたします。    午後一時二十三分散会