○国務大臣(剱木
亨弘君) ちょっと、私も入学試験の問題ずいぶん関心を持ってまいりましたので、一言私からお答えいたしたいと思います。
実は、ひとつ
国立大学の場合考えてみますと、入学試験につきまして、かつて旧
制度の場合におきまして、いま新制
大学ができましたけれども、昔の旧帝大等は一つの
高等学校という段階を間にはさんでおったわけです。ですから、
大学自体が入学試験をやりますのは、実は
高等学校の
生徒から選ぶのでございまして、その間の入学試験に対する考え方がだいぶ違っておったと思います。一ぺんの形式的な、たとえば英語だけとか、数学だけとか、そんなことだけでも判別して、そして入れても大して
大学について悪い影響は生じなかった。だから、
大学自体において入学試験ということについて非常に真剣に取り組んでいくという態度がなかったといっていいと思うのです。実際上の入学試験の一番重点は、
大学において入学させました学生が、その
大学教育を受けるに足る
能力があるかどうかの判定と申しますか、判別をいたしますことが一番大きな
大学自体においては重要なことであった。それからもう一つ、
大学入学試験のやり方について一番重要なことは、
高等学校の平常な
教育を阻害しないようにするということ、この二つが重要な
課題になると思いますが、今日いろいろな入学試験のやり方について、
高等学校及び
大学自体の入学試験のあり方について
研究をいたしてまいっておりますけれども、
秋山委員のおっしゃるとおり、これはいろいろなことを主張いたしますけれども、これが採用いたされなかった一番大きな原因は、これを反面からいいますと、現に行なわれております
大学の入学試験は非常に厳正ではあるけれども、きわめて不妥当だという一言に尽きると思うのです。
国立大学の場合は特に入学試験が厳正であるということを非常に要望されております。したがいまして、機械的に入学試験を、学科試験をやりまして、それの機械的な計算で割り出しましてまいりますと、これはもう厳正という面からいえば、きわめて、一番正しいやり方でございますと思いますが、それで、たとえば能研テストをやるとか、あるいは内申書をしんしゃくするとかいうこと、そういう機械的な判断でなしに、ある程度の複雑な判断が要請されまして、その間において厳正さという面からの批判というものは、非常に言いのがれといいますか、自分でそれに対して、これで厳正にやったのだということに最重点を置くあまりに、適当な入学試験というものが行なわれてこないというのが
現状ではないかと思います。私ども長年にわたって入学試験
制度については論議をし、
研究してまいりましたが、今日までこれが主張はされても行なわれていないというのは、
大学側においてわれわれの主張とは全然別個に、
関係なしに、
大学自体が現在の試験
制度を捨てようとしない、それの一番大きな
理由は、一応自己陶酔といいますか、これで
大学の試験は厳正に行なわれたのだというところに、他の方法をとると、どうしてもそこに他の判断の要素が加わってくるというところに、捨て切らないで今日までいるのじゃないかと思います。それで私、先ほど
局長も申しましたが、
大学の入学試験の正しく行なわれるためには、
高等学校の
教育に対して非常に悪影響を及ぼさないということが一つの考慮点と、それから
大学に入ってから、はたして入学試験が正しい選択の方法であったかどうかということは、あくまで
大学のその後の追跡調査ということがぜひ必要ではないか、こう考えるのでございます。いま能研等で追跡調査をずっといたしておりまして、ある程度の結果が出ているのでございますが、入学試験だけでやったその結論がいかに誤りが多いかということは、すでにわずかな追跡調査でも出てまいっているのでございますし、また、私どもは能研テストを主張しますけれども、能研テストだけで、またこれで全部の入学
能力を決定するということを主張しているわけではございません。やはり内申書と能研テスト、それから
大学で行ないますところの科目試験、これらを併用し、それらをお互いに取捨選択しまして、正しい入学試験の方法が見出さるべき筋ではないかと私は思います。こういう点について、実は
大学自体において、これを進んで採用するという状況に今日至っていないのでございますが、この入学試験の
制度を
改善するためには、何としても私は
大学側が真剣にこの問題に取り組んで、そうして少しでも正しい入学試験、誤りのない入学試験、厳正であって妥当な試験を行なってもらいたい、これをやらなければならぬと思うのでございます。そういう
意味におきまして、近く全国の
国立の
大学長会議が開かれます。その際におきまして、私は真剣にひとつ
大学の学長会議におきましてこの問題を提起し、そうして
大学側の反省を促してまいりたい。そうして
大学が真剣にこの入学試験の問題に積極的に取り組んでもらわなければ、いかに協議会を開きましても、文部省が理想案とか
改善案を主張しましても、これは行なわれてまいらない。これは先ほど
秋山委員の御質問の中にもありましたとおりでございまして、長年の間
研究し、
改善策を叫びながら今日まで何らの
改善が行なわれていないというのは、一にかかって
大学側がこれを受け入れてくれるかどうか、また、それを受け入れるだけの熱意を示してくれるかどうかにあると思うのでございます。もちろん入学試験は
大学自体が
責任をもって決定すべき問題でございますけれども、しかし、これは同時に、進学に対する公正な入学試験が行なわれるということは国民全体の利益に関する問題でございますし、また、
高等学校に非常な影響を及ぼすものでございますから、私は強力にこの問題に
大学自体が真剣に取り組んでもらいますように、私としましては強力に
大学側に要請をいたす決意でございます。