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1967-06-22 第55回国会 参議院 文教委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二十二日(木曜日)    午前十時四十六分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大谷藤之助君     理 事                 楠  正俊君                 中野 文門君                 秋山 長造君                 鈴木  力君     委 員                 北畠 教真君                 近藤 鶴代君                 内藤誉三郎君                 吉江 勝保君                 小野  明君                 小林  武君                 千葉千代世君                 柏原 ヤス君             発議者 秋山 長造君             発議者 小林  武君    国務大臣        文 部 大 臣  剱木 亨弘君    政府委員        文部大臣官房長  岩間英太郎君        文部省初等中等        教育局長     斎藤  正君        文部省大学学術        局長       天城  勲君        文化財保護委員        会事務局長    村山 松雄君        建設省道路局長  蓑輪健二郎君    説明員        内閣総理大臣官        房参事官     杉浦 喬也君        宮内庁書陵部陵        墓課長      小川 三郎君        運輸省鉄道監督        局国有鉄道部長  黒住 忠行君        建設省都市局都        市総務課長    野崎 清敏君        建設省道路局国        道第二課長    難波 隼象君    参考人        日本道路公団理        事        藤森 謙一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本育英会法の一部を改正する法律案秋山長  造君外一名発議) ○日本育英会昭和二十五年四月一日以後の貸与  契約により貸与した貸与金返還免除に関する  法律案秋山長造君外一名発議) ○高等学校定時制教育及び通信教育振興法の一  部を改正する法律案秋山長造君外一名発議) ○産業教育手当法案小林武君外一名発議) ○公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数  の標準等に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件 ○教育、文化及び学術に関する調査  (文化財保護に関する件)     —————————————
  2. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  日本育英会法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、発議者から提案理由説明を願います。秋山長造君。
  3. 秋山長造

    秋山長造君 ただいま議題となりました日本育英会法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由内容概略を御説明申し上げます。  日本育英会は、昭和十九年、日本育英会法に基づいて設立されまして以来、国家的な育英奨学事業として、人材の開発と教育の機会均等に大きく貢献してまいりました。しかし、その事業等については今後なお一そうの充実改善をはかることによりその発展を期待しなければなりませんが、当面、特に急務と考えられる次の諸点について改正を施そうとするものであります。  まず、その第一は、日本育英会の学費の貸与及び貸与金返還免除対象に、文部大臣の指定する養護教諭養成機関及び教員養成機関に在学する者を加える問題であります。養護教諭養成機関は、養護教諭需要を満たすことが困難な事態に対処するため教育職員免許法第五条第一項の規定に基づいて、また、その他の教員養成機関は、幼稚園教諭音楽中学校教諭等を確保するため同条別表第一の備考第二号の規定に基づいて、それぞれ文部大臣教員養成機関として適当な条件の整ったものについてのみ指定するものであり、現在、前者は四十九校、後者は五十三校が指定されておりますが、通常の各種学校とはその性格、実態を異にするものであります。しかも、ここで所定の単位を取得した者に対しては、養護教諭幼稚園教諭音楽中学校教諭等免許状が授与されているのであります。かように、厳格な条件を付して、文部大臣が指定した養成機関修業し、教育職員免許法によって同一の資格を与えられるものが、学資貸与対象にされていないことはまことに不合理といわなければなりません。  さらに、養護教諭幼稚園教諭等充実は、学校教育の当面の重要な課題でありますが、その充足はきわめて困難な現状であり、一そうの養成確保につとめなければならないにもかかわらず、これら養成機関日本育英会学資貸与及び返還免除対象に加えられていないことは、その養成確保の面からも著しい障害となっているところであります。したがいまして、現在、学資貸与対象の決定は政令規定すべき事項となっておりますが、さらに、文部大臣指定養護教諭養成機関及び教員養成機関に在学する者への学資貸与の道を開くとともに、それら養成機関において学資貸与を受けた者が一定年数以上継続して養護教諭幼稚園教諭等として勤務した場合には貸与金返還免除法的措置を講ずべきものと考えます。  第二には、日本育英会貸与金返還免除に関する条件緩和に関する問題であります。現在、学資貸与を受けた者が教育または研究の職についた場合の貸与金返還免除条件として、日本育英会法施行令第十八条ないし第十九条は日本育英会法第十六条ノ四第二項の規定に基づいて、原則として、大学等修業または退学後一年以内に教育または研究の職につくことを要するものとしております。ただし、文部大臣の認可を受けた特別の事由のある場合には、その期限を延長することを認めております。すなわち、大学高等専門学校等奨学生であった場合には、傷痍疾病等事由がある場合にさらに一年以内、大学院奨学生であった場合には、傷疾疾病のほかに返還免除対象とされていない教育または研究の職への就職留学等事由がある場合はさらに四年以内と、それぞれきわめて限られた事由のある場合に限って延長することが認められているにすぎません。  教員または学術研究者需要供給関係が各都道府県ごとに完全に計画的に行ない得るものでありましたら、現行の一年の猶予期間で十分でありましょうが、児童生徒の減少、教員または研究者志望者数変化等事情もあり、また、教員養成について開放制のたてまえをとっていることでもありますので、その需給関係を完全に計画的に行なうことは不可能といわなければなりません。したがいまして、教員または研究者需要の少ない年度におきましては、修業後一年以内に教育または研究の職につくことのできない者、あるいは返還免除対象とされていない教育または研究の職すなわち助教諭、非常勤講師等の職にしか就職できない者が多数生じているのであります。  かように、修業後一年以内に法令の定める教育または研究の職につくことのできなかった者は、その後せっかく法令の定める教育または研究の職についても貸与金返還免除は認められないのであります。これは本人責任ではなく、たまたま修業時の教育または研究者需給事情等によるものでありまして、そのため返還免除措置差異が生ずることはきわめて不合理、不均衡といわなければなりません。少なくとも、貸与金返還を免除するため修業教育または研究の職につくことを要する期間を三年に延長すべきものと考えます。  なお、貸与金返還免除条件として、日本育英会法第十六条ノ四第二項は、「一定年数以上継続シテ教育または研究の職になければならないものと規定し、同施行令第十八条ないし第十九条はこの年数を二年と規定しているのでありますが、上述改正に対応する意味からも、また返還免除に関する基本的条件という意味からも、これまた日本育英会法に明確に規定することが望ましいものと考えます。  第三には、日本育英会法第三十六条ノ二において、当分の間沖繩における教育または研究の職についた場合も、同法第十六条ノ四第二項に定めると同じ条件返還免除に関する規定適用されることになっておりますので、以上述べました二点についても同様の改正を施すべきものと考えます。  以上、本法律案提案理由について申し述べましたが、次にその内容について簡単に申し上げます。  まず、文部大臣の指定する養護教諭養成機関及び教員養成機関において学資貸与を受けた者についても、日本育英会がその返還を免除することができることとしております。次に、貸与金返還を免除されるため、修業後、教育または研究の職につくことを要する期間を三年とし、その期間延長について規定するとともに、二年以上継続してその職にあることを要するものとしております。なお、学資貸与を受けた者が、硫黄鳥島及び伊平屋島並びに北緯二十七度以南の大東諸島を含む南西諸島、いわゆる沖繩における教育または研究の職についた場合の返還免除措置についても上述の二点について同様に改めることとしております。  何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  4. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上で本法案についての説明聴取は終わりました。     —————————————
  5. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 日本育英会昭和二十五年四月一日以後の貸与契約により貸与した貸与金返還免除に関する法律案議題といたします。  まず、発議者から提案理由説明を求めます。秋山長造君。
  6. 秋山長造

    秋山長造君 ただいま議題となりました日本育英会昭和二十五年四月一日以後の貸与契約により貸与した貸与金返還免除に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容概略を御説明申し上げます。  現在、日本育英会法第十六条ノ四第二項の規定によって、大学高等専門学校大学院国立養護教諭養成所または国立工業教員養成所において、日本育英会学資貸与を受けた者が、修業後、一定年数以上継続して法令の定める教育または研究の職にあった場合には、その貸与金の全部または一部の返還が免除されることになっておりますが、かような措置はこれら教育または研究の分野に積極的に人材を誘致して、教育充実学術振興をはかる上で貢献しているところであります。しかし、この制度につきましては、今日、均衡上種々の問題を生じておりますので、その是正策を講じようとするものであります。  問題の第一は、この日本育英会貸与金返還免除制度は、昭和二十八年の法改正によって、まず義務教育従事者と高度の学術研究者を確保する目的で発足したものでありますが、その実施については、法改正前に貸与した貸与金についても適用することとされたのであります。しかるに、その実際の適用に当たりましては、日本育英会法施行令附則によって、大学院における貸与金については法の規定どおり全面的にさかのぼって、適用されましたが、大学における貸与金については国立大学教育学部または学芸学部の小学校または中学校教員養成課程に在学する者に対してのみ、昭和二十五年度以降に貸与した貸与金についても適用されたのであります。それゆえに、一般国公私立大学修業者貸与金については、昭和二十五年度にさかのぼることなく、昭和二十八年度以降この制度適用されたのであります。  第二は、昭和三十六年の法改正によって、高等学校進学者の急増に対処するとともに科学技術者養成を促進する目的貸与金返還を免除される職について、大学高等専門学校等貸与金については従来の義務教育に従事する教員のほかに高等学校大学高等専門学校等教育の職を、大学院における貸与金については従来の大学のほかに中学校高等学校高等専門学校等教育または研究の職をそれぞれ加え、公布の日から施行され、その施行の際、現に大学等に在学する者に対しては、その在学期間中に貸与した貸与金については返還免除措置がとられたのでありますが、それ以前の貸与契約により学資貸与を受けた者については返還免除措置が講じられなかったのであります。  以上申し述べましたように、貸与金返還免除制度は、教育または研究の職に優秀な人材を確保するための政策として行なわれたものでありますが、法による利益の供与はできるだけ均てんすることが望ましく、同じく重要な教育または研究の職にありながら、その出身学校差異、あるいは修業年度の相違によって貸与金返還免除措置差異を生ずることはきわめて不合理、不均衡といわなければなりません。また、教育の現場においても、このような不平等の存在は教員相互間に好ましくない影響を与えているのであります。  本案は、このような不合理、不均衡を是正するため、昭和二十五年四月一日以後に日本育英会から学資貸与を受け、修業後、教育または研究の職についた者の貸与金で、その返還を免除されなかったものについても、その返還を免除できるように措置しております。  〔委員長退席理事中野文門君着席〕  また、これに伴い、返還を免除した金額に相当する額については、従来の返還免除額と同様に、政府貸し付け金の償還を免除することができることとしております。なお、別に御審議をいただいております日本育英会法の一部を改正する法律案内容の一部として提案しております貸与金返還免除条件緩和、すなわち貸与金返還を免除されるため大学等修業後、教育または研究の職につくことを要する期間一年を三年に延長することにより、新たに返還免除措置対象となる者についても、本法律案によって昭和二十五年四月一日にさかのぼって適用することが必要でありますので、本法案日本育英会法の一部を改正する法律案と密接な関連を持っておりますことを特に申し添えます。  以上が本法律案提案理由内容の概要であります。何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  7. 中野文門

    理事中野文門君) 以上で本法案についての説明聴取は終わりました。     —————————————
  8. 中野文門

    理事中野文門君) 次に、高等学校定時制教育及び通信教育振興法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、発議者から提案理由説明を願います。秋山長造君。
  9. 秋山長造

    秋山長造君 ただいま議題となりました高等学校定時制教育及び通信教育振興法の一部を改正する法律案について、提案理由内容概略を御説明申し上げます。  最近、技術革新を基軸とした社会改革が急激に進行する中で、国民の資質及び能力展開向上に対する期待が一そう高まり、教育責任はいよいよ重大になってきております。すなわち、義務教育はもとより、後期中等教育大学教育拡充整備が切実な課題として取り上げられております。特に後期中等教育については、高等学校各種学校、その他の教育訓練施設に学ぶ青少年就学率が年々高まっており、いまや後期中等教育義務制化が真剣に論議される段階となりました。このような情勢の中で、戦後の新教育制度として発足した高等学校定時制教育及び通信教育は一段の飛躍が期待されておりますものの、実は問題を数多く含んでおり、伸び悩みの状態にあります。その理由としては、国全体として勤労青少年教育に対する理解、認識がいまだ不十分であるということに尽きるのではなかろうかと考えます。すなわち、各種の施策がこれらの教育施設に対して行なわれてきましたが、画龍点睛を欠くといいますか、一番根本のところにまだ手が届いていないと思うのであります。  その第一の点としては、御承知求人難人手不足の深刻な現在、使用者は好むと好まざるにかかわらず、勤労青少年労働過重に追いやり、勉学の機会や学習の意欲を阻害しております。また、すでに就学している勤労青少年も、昼間の労働、夜の通学というぎりぎりの生活の中で疲労こんぱいしております。したがって、使用者側理解、協力を一段と促進し、通学勉学の諸条件整備してもらいたいのであります。  第二点といたしましては、この教育施設を経営する側、主として地方公共団体並びにこれを援助している国の責任として、全日制高校に劣らない適切な施設、設備を整備することはもちろん、生徒教育指導する教師その他の職員に対する配慮を一段と厚くする必要があると信じます。現在、校長及び教員並びに政令で定める約半数の実習助手に対しては、定時制通信教育手当として、本俸の約七%の手当支給され、国はその三分の一を補助しておりますが、実習助手について政令支給制限していることは不合理であり、また、特に夜間定時制高校においては、校長教員実習助手のみならず、事務職員その他の職員ともどもに困難な条件の中で勉学している生徒を指導し、かつ学習環境をよりよくする必要もあり、この手当事務職員その他の職員にまで拡大する必要があると思います。  また、定時制通信教育手当は、さきにも申しましたように、現在、昼夜の別なく支給されております。しかし、夜間課程に勤務する教職員は、昼間勤務者に比べて、本人はもとよりその家族をも含めて、肉体的にも精神的にも苦労や疲労が非常に多いのであります。帰宅が毎晩おそいこと、食事もしたがって一日四回となり、しかも家族と一緒にとることがほとんどないありさまであります。このような職務内容の困難度という観点に立てば、昼間定時制にも支給されている手当を、若干、夜間に限って増額することも当然であり、この際、定時制通信教育手当増額措置を講じたいと考えるのであります。  以上、本法律案提出理由を申し述べましたが、次に、本法律案内容について簡単に御説明いたします。  本法律案は、第一に、勤労青年を使用する者に対し、勤労青年定時制教育または通信教育を受けるのに支障がないように、労働条件に関し特別の措置を講ずるようにつとめる等の義務を課することにいたしました。  第二には、本務として夜間において授業を行なう定時制課程事務その他の職務に従事する事務職員その他の職員及び本務として定時制教育または通信教育に従事する実習助手で、従前、定時制教育手当支給されなかった者に対し、定時制通信教育手当支給することといたしました。  第三には、夜間において授業を行なう定時制課程教育に従事する校長教員事務職員その他の職員に対し支給する定時制通信教育手当の額を一律五千円増額することといたしました。  第四には、本法律施行期日昭和四十二年九月一日といたしました。  以上でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  10. 中野文門

    理事中野文門君) 以上で本案についての説明聴取は終わりました。     —————————————
  11. 中野文門

    理事中野文門君) 次に、産業教育手当法案議題といたします。  まず、発議者から提案理由説明を願います。小林武君。
  12. 小林武

    小林武君 ただいま議題となりました産業教育手当法案について、その提案理由及び内容概略を御説明申し上げます。  現在行なわれております産業教育手当支給は、申すまでもなく、農業水産工業又は商船に係る産業教育に従事する国立及び公立高等学校教員及び実習助手に対する産業教育手当支給に関する法律に基づいております。また、この法律が、去る昭和三十二年に、その母法でありますところの産業教育振興法の第三条の三の規定の趣旨に基づいて制定されましたことも、御承知のとおりであります。  自来約十カ年にわたり産業教育手当支給が行なわれてまいりましたが、その経過並びに実施の状況をつぶさに調査し、検討いたしますと、必ずしも産業教育振興のために満足すべき現状にあるとは申しがたく、むしろ、産業教育手当支給対象とされるべき教職員学校教科及び手当額等について、早急に改善を行なう必要があることを痛感いたすものであります。  第一は、産業教育手当支給対象が、産業教育に直接に従事する教員及び政令で定められた助手のみに限定されている現実の矛盾を解消する必要があるということであります。  現在、農業水産工業または商船に関する専門教育を主とする学科を置く高等学校においては、ひとり産業教育に直接に従事する教員及び助手のみに限らず、普通教科を主として担当する教員及び実習助手はもとよりのこと、事務職員から用務員に至るまで、すべての教職員産業教育振興の一翼をになって、それぞれ欠くことのできない重要な役割りを演じているのであります。まずこの現実の姿を直視し確認すべきであると存じます。そもそも、これらの学校において、本来の使命である産業教育振興の実をあげるためには、その基礎となるべき一般教養教科が、普通課程高等学校におけるよりも、なお一そう重視されなければならないことは、論をまたないところであります。したがって、これらの学校において普通教科を担当している教員は、教科内容についても教授法についても、絶えず真剣な研修を怠ることなく、特に限られた短い授業時間内に最も効率的に生徒の学力を涵養するため、常に創意とくふうをこらしているのであります。その教育的責任度は、専門教科を担当する教員に比べ、まさるとも劣るものではありません。さらに、これらの学校においては、生徒組主任はほとんどすべて普通教科教員の担当するところでありますから、個個の生徒保健体育の面をはじめ、進学就職についての進路の指導に至るまで、それらはあげて組主任責務とされておりますし、加うるに、教務関係図書館等の広範複雑な事務処理は、すべてこれら普通教科担当教員にゆだねられておりますから、専門教科担当教員よりも、むしろハード・ワークが課されていると申しても過言ではありません。また、これらの学校事務職員は、一般的事務以外に、機械器具の購入、整備、保管、その会計の処理等についての責任を持ち、用務員もまた実習後の機械器具の整とん、清掃等、それぞれ普通課程高等学校における場合よりは、はるかに労働量の加重にたえながら、産業教育振興のための縁の下の力持ちとして、たゆまぬ努力を続けているのであります。今日、産業教育を行なっている学校にとっては、過去の徒弟式教育を矯正し、脱却して、総合的教育実施することが最も大きな課題の一つであり、そのためにこそ教職員の層が幅広く配置されております。そうして、おのおのの教職員が個々の持ち場においてその責務に専念し、十分にその能力を発揮し、こん然一体となって使命の達成に邁進するとき、はじめて教育の成果を期待することができるものと信じます。その姿は、あたかも大洋を航行する船舶にもたとえることができるでありましょう。すなわち、船長から火夫に至るまでのすべての乗り組み員に航海手当支給されておりますのと同様に、産業教育を行なう学校のすべての教職員に対して、産業教育手当支給されることこそ、教育的見地から最も望ましく、また当然のことであると考えるものであります。  第二は、商業及び家庭科に関する教育も、当然、本法の適用対象に含めるべきであるということであります。産業教育振興法第十二条の産業教育の定義には、商業及び家庭科に関する教育が含まれておりますにもかかわらず、これらの教科産業教育手当支給対象から除かれていることは納得のできないところであります。それゆえに、農業水産工業または商船と同様に、商業及び家庭科に関する教育実施している高等学校教職員に対しても、産業教育手当支給できるように措置する必要があると考えます。  第三は、盲学校襲学校及び養護学校高等部において、高等学校におけると同様の産業教育に従事している教職員にも、産業教育手当支給すべきであるということであります。盲、襲及び養護学校高等部における産業教育に関しては、これまた産業教育振興法第二条の産業教育の定義に含めて規定されており、現にこれらの学校高等部の中には、産業高等学校におけると同様に木工、被服等に関する産業教育実施しているものがありますにもかかわらず、いまだその教職員に対し産業教育手当支給されていないことは妥当を欠くものであります。一面、これらの学校高等部においては、産業教育に従事する適当な人材を確保することがきわめて困難であるため、人事交流の面からもしばしば支障を招き、ひいては教育不振の一因ともなっております。このような実情にもかんがみ、すみやかに産業教育手当支給の道を開くよう措置する必要があると考えられるのであります。  以上申し述べました理由により、ここに新たに本法律案を提出し、従来の不備を改めて産業教育の一そうの振興をはかろうといたすものであります。  次に、法律案内容について簡単に申し上げます。第一に、農業水産工業商業、家庭または商船に関する専門教育を主とする学科を産業に関する学科と規定し、これら産業に関する学科を置く高等学校と、盲学校、聾学校及び養護学校でその高等部に産業に関する課程を置くものを産業高等学校規定しております。  第二に、国立の産業高等学校校長及び教員事務職員その他の職員で、本務として産業に関する学科または産業に関する課程における教育事務その他の職務に従事する常勤者には、その者の俸給月額の百分の十に相当する額をこえない範囲内において産業教育手出を支給するものといたしております。  第三に、公立高等学校校長及び教員事務職員その他の職員産業教育手当は、国立の産業高等学校産業教育手当を基準として定めることといたしております。  なお、この法律は、昭和四十二年九月一日から施行するものとし、現行の農業水産工業又は商船に係る産業教育に従事する国立及び公立高等学校教員及び実習助手に対する産業教育手当支給に関する法律は廃止することといたしております。  何とぞ、十分御審議の上、すみやかに御賛同くださるようお願いいたします。
  13. 中野文門

    理事中野文門君) 以上で本法案についての説明聴取は終わりました。     —————————————
  14. 中野文門

    理事中野文門君) 公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数標準等に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  前回に引き続き、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。  なお、政府側より、剱木文部大臣、斎藤初等中等教育局長、天城大学学術局長が出席いたしております。
  15. 秋山長造

    秋山長造君 前回に、現在の高等学校教育を著しくゆがめている最大の要因として入学試験制度の問題があるという立場から、高等学校の入学試験制度の問題について若干お尋ねをしたわけでありますが、まだ不徹底のきらいもありますけれども、時間の関係もありますので、高等学校の入学試験制度につきましては、今後の文部当局の一そうの御努力を念願をいたして一応終わります。  続きまして、もう一つの要因であります大学の入学試験制度改善の問題について若干御質問をいたしたいと思います。大学の入学試験制度の問題が高等学校教育をゆがめておるという点については、これはもう何人も否定できない厳然たる事実だと思うんですが、文部当局としても年来この改善のための努力をされてきておると思います。この大体の経緯あるいは現状、さらに今後の対策ということについて、概略でけっこうでございます、筋書きだけでけっこうでございますが、御説明願いたい。
  16. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 御指摘のように、大学の入学者選抜試験のあり方が、いろいろな方面に問題を及ぼしておりまして、特に高等学校教育に対する影響、それから大学の拡大拡充に伴いまして、従来の入学試験のあり方等が問題になっておるわけでございます。三十八年に、中央教育審議会から大学教育改善につきまして答申がございまして、その中で入学選抜の制度改善ということが一つの大きな事項として答申されております。これの趣旨にのっとりまして、私たちいろいろな改善策を進めてまいったわけでございますが、一つは、基本的な考え方でございますけれども、入学試験制度の問題というのは、高等学校大学との間における学生のある意味では受け渡しの点でございますので、高等学校側と大学側が協力してこの問題に対処しなければならぬということが一番基本的な考え方と思っておるわけでございます。いろいろの点から改革いたす点がございますが、具体的にその後進めてまいりました措置は、一つは、従来の大学の入学試験、ただ一回の入学試験のみで真に大学教育を受けるにふさわしいものを選び出すということは非常に問題がある、これは過去におきますいろんな調査、研究からも出ていることでございますので、これを少しでもこの考え方を改めていかなきゃならない。そのための方法としまして、一つは、高等学校の三年間にわたる先生方の多角的な評価、いわゆる調査票にあらわれてまいります評価というものが、やはりただ一回の試験よりもはるかに信憑性が高いのではないか。それから大学の行なっております入学試験の問題の出し方、これも場合によりますと、高等学校教育課程を乱しているというと大げさでございますけれども、高等学校教育課程から逸脱したような問題が出てくる場合がございますので、これの是正の問題、それから大学の入学後の成績との関連でいきますと、単に一定の評価をおさめたというアチーブメントテストだけではなくて、もっと大学教育を受けるにふさわしい能力を検証するというテストの開発も必要ではないか、こういうような点が中心でございます。その一つのあらわれといたしまして、三十八年から能力開発研究所という財団の機関ができまして、いま申し上げたような意味でのテストの開発研究を行なってきております。それから一方、大学の具体的な入学試験のいまの現状に対しましては、絶えず適正な問題を出していただくということで、毎年、入学試験の問題の総検討を行ないまして、大学側に資料を提供して、逐年その問題の改善をはかっていただくという方法を考えております。それから、四十年度から高等学校の推薦制という方法も考え方の中に取り入れられてまいりまして、大学によりますと高等学校の推薦というものによって、あとは面接その他の方法によって、一般の入学試験をやらないで採用するということ、また選抜の場合に高等学校の調査書を全面的に重視していただくという方法、その他の方法を逐次進めてまいっているわけでございます。それらの個々の問題につきまして、あるいはそれらのいろんな資料の総合的な利用方法につきましても、大学側とも十分連絡いたしますし、また高等学校側とも連絡いたしまして、改善をはかっているようなわけでございます。特に四十三年度——明年度選抜の実施要項を定めるにあたりまして、高等学校側から、高等学校の調査書の重視ということが非常に強く出ておりますので、その点を強調いたしますとともに、高等学校の調査書につきましては、ややもすると学校差があって利用できないというような御意見もございますが、これにつきましては過去のいろいろな調査から、高等学校の調査書の持っておる意味、あるいは能研の客観テストによってこれを補正する方法その他につきましても、いままでわれわれの行ないました調査結果を参考資料として添付して、大学側の入学試験選抜制度改善に資していただくように指導いたしているというようなのが、大ざっぱに申し上げると最近の状況でございます。
  17. 秋山長造

    秋山長造君 ただいま局長が最初におっしゃった、何よりも大学高等学校側との協力ということが一番大切だというお話、これは私も全くそのとおりだろうと思うんです。これは中教審の答申でもやっぱりその点を非常に強調しておられるようですが、まあこれはそのとおりなんですが、実態はどうなんですか。私らの聞くところでは、高等学校の入学試験については教育委員会が中心になって、そして高等学校側と中学校側とのいろんな連絡、協議、協力というようなことが相当程度行なわれておるように思うんです。ところが大学高等学校ということになりますと、何か非常にかけ離れてしまったような形になりまして、一体どこが中心になって大学高等学校との連絡、あるいは協議、あるいはさらに協力というようなことが行なわれておるのか。さしあたってはあなたのほうがそういう役をなさるんじゃないかと思うんですけれども、たてまえはたてまえとして、実態は非常に不十分になってるんじゃないかという気がいたします。それからもう一つは、同じ文部省にいたしましても、たとえば高等学校の入学試験制度の問題ならば、これは初中局で全部所管しておられるわけですからね、中学校高等学校も。だから比較的そこらの調整というものはうまくいっているのではないかというような気がするのです。ところが大学の入学試験ということになると、試験制度そのもののあり方というものは高等学校教育を大きく左右する問題でありながら、文部省の所管関係から言えば、初中局と大学局というように別々なたてまえになっておりますね。そこらに、大体大学高等学校という前に、文部省自体の中にも、大学の入試問題についての大学局と初中局との間でのいろんな連絡、調整、協力関係というようなものが、どこまで徹底してやられているのかというようなことについても多少の疑念を持つのですが、その点いかがですか。
  18. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 御指摘のとおり、大学の入学選抜に関しまして、高等学校大学側が本来的には協力体制にあるべきものでございますが、現実については、私、遺憾ながらまだ十分いっていないということを認めざるを得ないと思います。まず文部省におきます状態から申し上げますが、私たちのほうに大学入学選抜のいろんな改善の協議会というものを設けてございますが、この御協力いただいている委員の方々は、大学の側と高等学校の側と両方から委員の方に出ていただきまして、大学側の意向、高等学校側の意向、忌憚なくここで意見を戦わしていただきまして、毎年の入学者選抜実施要項というものをここでつくっているわけでございます。この改善の協議会は所管としては私のほうの大学局の所管でございますが、初中局の関係の担当官も絶えずこの会議には出ていただきまして、第一段階としては、文部省におきましてはこの改善協議会を通じまして、大学高等学校の協力関係というものの実をあげたいと、こう考えているわけでございます。現在におきます実態を見ますると、大学はどうしても大学が自分で問題を出して、自分で選抜して、自分で最終的に決定したいという気持ちと申しますか、あるいはそういう伝統がございまして、高等学校との協力ということがなかなかうまくいかなかったわけでございます。また、実際問題といたしまして、個々の大学が入学選抜をやっておりますと、一応、府県なら府県単位にいたしましても高等学校との連絡の対象が非常に多くなってくる。特に大学は必ずしも地域的でございませんので、受験者が全国的に集まるものですから、なかなか一定の地域ごとに高等学校と連絡をするということも実態に即さない点もございます。しかし、最近は地方の大学は地方の高等学校との関連が非常に深くなってまいりましたので、私たちできるだけ両者の協議をあっせんするという態度に出ておりまして、最近は府県単位に地元の大学高等学校の方々との協議会というようなものを持ってきている府県もかなりふえてまいりました。また、国立大学に関しましては、国大協の中に入学選抜の問題を検討している常置委員会もございますが、こういう機関と、それから高等学校校長会の関係の方々との会談の機会をあっせんするとか、いろいろな方法で、できるだけ、先ほど申し上げたような趣旨の実現に努力いたしているつもりでございます。
  19. 秋山長造

    秋山長造君 まあ努力は何かされておるということは、これはもうおっしゃるとおりでしょうけれども、たとえば最初におっしゃった、この大学の入学試験制度改善協議会、大学側と高等学校側と両方出てやっておるということですが、その協議会というものはこれはもう恒常的にやっておるのですか。大学側と高等学校側がどういう割り振りでやっておられるのでしょうか。相当実質的な協議というものが恒常的に行なわれておるのでしょうか、どうでしょうか。
  20. 天城勲

    政府委員(天城勲君) これは私ども大学入学者選抜方法の改善に関する調査研究ということで協力者をいただいているわけでございますが、現在は二十人でございますが、これは恒常的に設置している機関でございますが、大体、大学側と高等学校側半数で、これは国立大学も私立大学側も、それから公立学校も私立学校側も入っております。なお、教育長、それから学識経験者の方も入っていただきまして構成している協議会でございます。
  21. 秋山長造

    秋山長造君 それ、どうですか、あなたのほうから見られて、これは二十人の定員の中にそれだけ多彩な各方面の代表のようなものが入られて、相当実質的な制度改善役割りを果たしつつあるというように見ておられるのですか、どうですか。
  22. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 私たち、いま申し上げたような代表の方々でございますけれども、同時に、この中にはきわめて大学の入学選抜の問題について専門的な研究者、あるいは深い経験のある方々もおられますので、私たちこの改善協議会で御審議いただいていることが非常に、何と申しますか、非常に役に立っている、というと、ことばが十分でございませんが、教えていただくことも多いし、また毎年の改善要項はその協議会の御意見を中心にやっていくという方式をとっております。たとえば、高等学校側の御意見につきましても高等学校側に専門の部会がございますので、その部会はここに十分反映されております。教育長協議会のほうの御意見も十分反映していただいている、大学側につきましても、この入学選抜の問題について長い間実証的な研究をされておられる先生も入っておられますので、この方々の御意見をここで総合していくというので、きわめて私たち重視している協議会でございます。
  23. 秋山長造

    秋山長造君 それだけの実質を持った協議会、これ、いつごろからやっているのでしょう。
  24. 天城勲

    政府委員(天城勲君) これは、途中で組織の変遷がございましたり、名称の変更がございましたけれども、戦後間もなくからずっと続いている組織でございます。
  25. 秋山長造

    秋山長造君 戦後からずっと続いておる組織で、しかも、いま局長のおっしゃるように、実質的に活動をやり、そしてそれだけの成果をあげてきておるというお話ですが、それにしては入学試験問題というものは一向改善されぬばかりでなしに、ますますむずかしくむずかしくなってきておると思うのですが、どういう点にこの協議会の結論というものが反映されて効果をあげてきておるのですか、具体的にどういう点が改まってきているのですか。
  26. 天城勲

    政府委員(天城勲君) いま、戦後からずっとこの種の機関があるということを申し上げましたけれども、ある時期におきましては、きわめて技術的な問題だけに限っておった時代もございます。現在におきましても入学選抜の制度につきましては、学校制度あるいは教育政策と関連するような非常に深い問題もございますが、一応の範囲というものは現行の方法を前提としながら考えるという形でございますが、特に先ほど申しました三十八年の中教審の答申が出ましてから、この協議会も積極的に、単に技術的な手直しというようなことでなくして、中教審の趣旨を前提としながら、現状を踏まえながら改善するという態度をとってきておられますので、いままで長い間入学選抜の問題については宿題でありながら一向に解決されていないじゃないかという御指摘だろうと思いますが、私たちも最近この改善協議会も中教審の線にのっとりまして、ただいま申し上げましたようないろいろな新しい御意見を提出していただいておるのが現状でございます。
  27. 秋山長造

    秋山長造君 そうしますと、当初に局長が当面の対策としておっしゃった、たとえば推薦入学の制度の採用だとか、あるいは高等学校の内申書の数字だとか、あるいは能研テストの数字だとかいうようなことが、その結論として出ているわけですか。
  28. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 今日の段階では、具体的には御指摘のような形でこの協議会の意見が出ているわけでございます。
  29. 秋山長造

    秋山長造君 そういう結論が出、またこの間、五月の三十日にあなたの名前で、来年度の入学者選抜実施要項という通知が出されておるのですが、その内容を拝見しましても、さっきおっしゃったようなこの三つの要素というのが相当重く扱われておるようですが、これをやればどの程度が改善をされるという見込みを持っておられるのですか。  それから、もう一つは、これは、まあこの内容を読んでみましても、非常に遠慮したといいますか、消極的な書き方がしてありますね、すべて。これで、まあこれを採用する、せぬ、あるいはこの結論に従う、従わぬ、この通知に従う、従わぬということは大学の自由にまかされているわけですが、そこで、どうしてもこれをある程度実行に移そうとすれば、あなたのほうと大学側との間でよほど真剣なやはり話し合いということが必要じゃないかと思うのですが、そうでなくて、ただあなたのほうで、これだけ、この三つやれば入学制度の問題は片づくのだ、解決するのだと、こうおっしゃっても、ただこれ一片の通知をお出しになっただけで、たちまちそれが来年の春の試験に反映されるのかどうか、改善されるのかどうかということは非常に疑問で、文部省は文部省、そして入学試験はまた別なたてまえで行なわれておるというようなことに、ばらばらになってしまうと思うんですよ。そこらどうでしょう。
  30. 天城勲

    政府委員(天城勲君) まず、ことしの改善実施要項の問題について、これらの点を新しく大学に示せば、入学試験の問題がかなり、あるいは一ぺんにうまくいくかどうかというお話でございますが、これは私たち入学の選抜方式の改善問題は、率直に申しまして一朝一夕にはなかなか改善できないと思っております。しかし、そうかといって手をこまねいておるわけにいかない問題でございまして、明年度のこの実施要項の改善問題につきましても、われわれが解決していくべき方向の過程としての現時点の改善策だということをこれは十分申しております。これは一片の通達ではございませんで、これを出しますと——大体いま終わったところでございますけれども、全国の幾つかの地域でもって、これは特に大学側の関係者のお集まりを願いまして、これの趣旨の説明会をずっといたしてきております。これですべてが一〇〇%解決するという考え方でございませんで、先ほど来申し上げました、高等学校大学の協力によって、そしてまた高等学校側の協力を乱さないように、また大学が真に大学教育を受けるに適するような能力のある者を選抜するという方向へ向かっての今日の段階での方法だということを申し上げて、この趣旨の理解につとめておるわけでございます。それで、ちょっといろんなことが関連いたしますので簡単に申しかねるのでございますが、二、三付言させていただきますと、ここで推薦入学の問題、あるいは能研の活用の問題、あるいは高等学校の調査書の重視の問題等を、方法としてはいい方法だと思って進めているわけでございますけれども、大学が従来やっております大学の行なう入学選抜試験について、これらの方法のほうがベターだということを実態に即して理解していただかなければならぬわけでございまして、そのためには、これはわれわれのほうで申しますと、追跡調査をしていただかなければ、その実証は出てこないわけであります。過去におきまして、われわれいろいろなサンプリング調査をいたしておりますけれども、本年度も、この実施要項の参考資料に入れてございますように、大学に入学後の成績の伸びというものは、一体どの資料と一番相関が高いかということをいろいろな角度から検討いたしております。これにはただ一回の現在行なっております大学の入学選抜試験よりも、他の方法をかみ合わせたほうがベターだという資料がたくさん出ておるわけです。これを大学に入って、個々の大学におきましても、入学者につきまして何年か追跡調査をして、その実績の上でこれが納得されるわけでございまして、その前提として、調査書の活用、あるいは能研テストの利用ということを追跡調査のためにもやっていただかなければならぬわけでございます。大学側が納得いたしませんとなかなか新しいほうに切りかえないし、この通達の文章も歯切れが悪いという御指摘でございますが、私たち命令するわけにまいりませんので、こういう方法が考えられる、従来の調査からいくと、こういうほうがベターな結果が出ておりますということを資料にしながら、説得と話し合いを続けていくというやり方をしなければならぬ仕事でございますので、一挙にすべてを解決しないという点は、私たちも残念に思いますけれども、逐次そういう方法を進めてまいりたい、かように考えているわけであります。
  31. 秋山長造

    秋山長造君 去年も四十一年の五月十八日付で同じような通知が出ていますね。去年の通知の中にも、たとえば推薦入学制度とか、あるいは能研テストの採用だとか、あるいは調査書の重視というような項目が入っているわけですが、一体これが、たとえばことしの三月の大学の入学試験にあたってどの程度採用されたのかということが問題だと思うのです。その項目別の、能研テストを採用したところが一体どれだけあるのか、あるいは推薦制度を採用したところがどのくらいあるのかということ、わかりますか。
  32. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 昨年もただいま申し上げたような点を、この改善協議会の意見として文部省から推薦したわけでございますが、その結果、いわゆる推薦入学制度をとりました大学が、国公私を含めますと、四十二年度七十四大学ございます。それから能研を利用いたしました大学が十九大学ございます。
  33. 秋山長造

    秋山長造君 その大学の内訳ですね、国立公立、私立あるいは短大というような内訳はわかりますか。
  34. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 推薦入学をいたしました七十四校について申し上げますと、国立が五校、公立が五校、私立が六十四校でございます。それを横に短大と四年制に分けますと、国立五校のうち短大が一校、公立五校のうち短大が四校、私立六十四校のうち短大が三十一校でございます。それから能研テストを利用いたしました十九校のうち、国立が一校、公立が一校、私立が十七校、国立公立は四年制大学でございますが、私立の十七校のうち短大が八校、四年制が九校でございます。
  35. 秋山長造

    秋山長造君 特に国立ですね、国立大学だけをとってみますと、これはもう非常に少ないですね。まあ、ほとんど無視されたというかね、文部省のこの通知の趣旨は事実上無視された結果になっていると言うても言い過ぎじゃないと思うのですね。特に能研テストなんかにしても、国立の一というのは、これは長崎大学ですか、長崎大学教育学部だけですね。で、たとえば上野の芸大なんかは、去年は一ぺんやったが、ことしはやめているのですね。そういう状態で、今後、文部省のほうだけで、その能研テストは大いにいいのだと言うて幾ら強調されても、ちょっと何だか一つ大きい壁があってどうにもならぬのじゃないかという、またそのならぬ理由については、それはいろいろあるでしょう。それは大学側に言わせれば、またその理由があるのでしょうが、そこらの大学のそう簡単に文部省の方針に沿うことができぬというその理由はどうなのかということと、それから、それに対して一体文部省としてどういう対策を考えられておるのかということ、その点が打開されぬと一向に実態は——議論は前進しても、入試の実態というものはちっとも改善されぬということになってしまうと思うのです。
  36. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) ちょっと、私も入学試験の問題ずいぶん関心を持ってまいりましたので、一言私からお答えいたしたいと思います。  実は、ひとつ国立大学の場合考えてみますと、入学試験につきまして、かつて旧制度の場合におきまして、いま新制大学ができましたけれども、昔の旧帝大等は一つの高等学校という段階を間にはさんでおったわけです。ですから、大学自体が入学試験をやりますのは、実は高等学校生徒から選ぶのでございまして、その間の入学試験に対する考え方がだいぶ違っておったと思います。一ぺんの形式的な、たとえば英語だけとか、数学だけとか、そんなことだけでも判別して、そして入れても大して大学について悪い影響は生じなかった。だから、大学自体において入学試験ということについて非常に真剣に取り組んでいくという態度がなかったといっていいと思うのです。実際上の入学試験の一番重点は、大学において入学させました学生が、その大学教育を受けるに足る能力があるかどうかの判定と申しますか、判別をいたしますことが一番大きな大学自体においては重要なことであった。それからもう一つ、大学入学試験のやり方について一番重要なことは、高等学校の平常な教育を阻害しないようにするということ、この二つが重要な課題になると思いますが、今日いろいろな入学試験のやり方について、高等学校及び大学自体の入学試験のあり方について研究をいたしてまいっておりますけれども、秋山委員のおっしゃるとおり、これはいろいろなことを主張いたしますけれども、これが採用いたされなかった一番大きな原因は、これを反面からいいますと、現に行なわれております大学の入学試験は非常に厳正ではあるけれども、きわめて不妥当だという一言に尽きると思うのです。国立大学の場合は特に入学試験が厳正であるということを非常に要望されております。したがいまして、機械的に入学試験を、学科試験をやりまして、それの機械的な計算で割り出しましてまいりますと、これはもう厳正という面からいえば、きわめて、一番正しいやり方でございますと思いますが、それで、たとえば能研テストをやるとか、あるいは内申書をしんしゃくするとかいうこと、そういう機械的な判断でなしに、ある程度の複雑な判断が要請されまして、その間において厳正さという面からの批判というものは、非常に言いのがれといいますか、自分でそれに対して、これで厳正にやったのだということに最重点を置くあまりに、適当な入学試験というものが行なわれてこないというのが現状ではないかと思います。私ども長年にわたって入学試験制度については論議をし、研究してまいりましたが、今日までこれが主張はされても行なわれていないというのは、大学側においてわれわれの主張とは全然別個に、関係なしに、大学自体が現在の試験制度を捨てようとしない、それの一番大きな理由は、一応自己陶酔といいますか、これで大学の試験は厳正に行なわれたのだというところに、他の方法をとると、どうしてもそこに他の判断の要素が加わってくるというところに、捨て切らないで今日までいるのじゃないかと思います。それで私、先ほど局長も申しましたが、大学の入学試験の正しく行なわれるためには、高等学校教育に対して非常に悪影響を及ぼさないということが一つの考慮点と、それから大学に入ってから、はたして入学試験が正しい選択の方法であったかどうかということは、あくまで大学のその後の追跡調査ということがぜひ必要ではないか、こう考えるのでございます。いま能研等で追跡調査をずっといたしておりまして、ある程度の結果が出ているのでございますが、入学試験だけでやったその結論がいかに誤りが多いかということは、すでにわずかな追跡調査でも出てまいっているのでございますし、また、私どもは能研テストを主張しますけれども、能研テストだけで、またこれで全部の入学能力を決定するということを主張しているわけではございません。やはり内申書と能研テスト、それから大学で行ないますところの科目試験、これらを併用し、それらをお互いに取捨選択しまして、正しい入学試験の方法が見出さるべき筋ではないかと私は思います。こういう点について、実は大学自体において、これを進んで採用するという状況に今日至っていないのでございますが、この入学試験の制度改善するためには、何としても私は大学側が真剣にこの問題に取り組んで、そうして少しでも正しい入学試験、誤りのない入学試験、厳正であって妥当な試験を行なってもらいたい、これをやらなければならぬと思うのでございます。そういう意味におきまして、近く全国の国立大学長会議が開かれます。その際におきまして、私は真剣にひとつ大学の学長会議におきましてこの問題を提起し、そうして大学側の反省を促してまいりたい。そうして大学が真剣にこの入学試験の問題に積極的に取り組んでもらわなければ、いかに協議会を開きましても、文部省が理想案とか改善案を主張しましても、これは行なわれてまいらない。これは先ほど秋山委員の御質問の中にもありましたとおりでございまして、長年の間研究し、改善策を叫びながら今日まで何らの改善が行なわれていないというのは、一にかかって大学側がこれを受け入れてくれるかどうか、また、それを受け入れるだけの熱意を示してくれるかどうかにあると思うのでございます。もちろん入学試験は大学自体が責任をもって決定すべき問題でございますけれども、しかし、これは同時に、進学に対する公正な入学試験が行なわれるということは国民全体の利益に関する問題でございますし、また、高等学校に非常な影響を及ぼすものでございますから、私は強力にこの問題に大学自体が真剣に取り組んでもらいますように、私としましては強力に大学側に要請をいたす決意でございます。
  37. 秋山長造

    秋山長造君 大臣の御意見を聞いておりますと、まことに御無理、ごもっともという感じがするのですけれども、そうであるにもかかわらず、大学がなかなかこれを受け入れぬということは、これは一面からいえば、大学の万事自主的にやるというか、自主性を非常に主張するということであり、それはまた一面からいえばけっこうなことなんですけれども、しかし、まあこの入学試験問題についてのおしなべての大学の態度というものは、相当批判の余地があると思います、おっしゃるとおり。それから大学のひとつの権威主義的な考え方といいますかね、そういうムード、あるいはおれの大学はというひとつのプライドもあるでしょう。それからまたそれが非常に閉鎖的といいますか、孤立主義的なような感じのものもあるでしょう、伝統的に。だから、大学の態度がやはりいいかどうかということは、大臣のおっしゃるとおり問題があると思いますけれども、そうであっても、なおかつ、それほど能研テストなり内申書なり、あるいは推薦制なんというものが、それほど普遍妥当的ないいものであれば、これは大学といえどもこれを受け入れざるを得ぬだろうと思うんですが、にもかかわらず門戸を閉ざして受け入れぬということは、能研テストそのものに対する信頼度といいますか、そういうものが十分確立するだけの条件がそろっていない、まだまだ能研テストそのものに非常に問題があるということですね。それからまた能研テストの運用というものが非常に、何といいますか、かけ離れてしまって、大学関係一般に対する説得力というものがない形で運営されているのではないか、もっと門戸を開いて、ただ学長だけに話をするというのではなしに、もう少し能研テスト是か非かという問題を広く高等学校関係者の間でも、大学関係者の間でも、広くもっと、われわれのよく使うことばで言えば大衆討議といいますか、もっと広い範囲で、あらゆる関係者を網羅して、もっと積極的に能研テスト是か非かということで議論を巻き起こす必要があるのではないかと思うんですが、この研究所をつくって、そうして研究所の関係者だけの間でやっておるということでは、どうも大学関係者から見ても、あるいは高等学校一般関係者からみても、何かかけ離れたところでかってにやって結論だけを押しつける、そんなものは信用できぬという不信感というものが非常に深くあるのじゃないかという気がいたします。  それかうもう一つは、内申書の重視にしても推薦制にしても、趣旨はこれは全く大臣のおっしゃるとおりで、それが公平に正しく行なわれれば、それは非常にけっこうだと思うのですけれども、第一、高等学校の間に学校差というものがいまのようにある、前回でもその学校差をどう排除していくかということがお互い悩みの種になっておるような状態ですが、そういう学校差に基づく内申書に対する大学側の不信感というものはなかなか深刻だと思うんです。いわんや推薦入学ということになればなおさら一体その基準がどうなのか、学校によってまちまちなのではないかというような問題があるでしょうし、それがまたいいのだというなら、いいということを納得させるだけの資料といいますかね、データが非常にいまの状態では不足しておるということもあるのじゃないかというふうに思うので、これは大学が当事者ですから、大学の決断いかんにかかるといって言えぬこともありませんけれども、決断に踏み切らせるためには踏み切らせるだけのものを示さなければ、これは幾ら一方的にけしからぬ、けしからぬ、態度が頑迷だといってみても、これはからに閉じこもって全然話にならぬという結論になるだけで、あとはしかたがない、こうなるんで、そこらのもっと文部省のほうで積極的に能研テスト是か非かという議論を巻き起こすとか、あるいは内申書や何かをつくる場合の客観性といいますか、公平さといいますか、あるいは学校学校との間の食い違いを是正するという努力はする余地はないのかどうかということを考えるんですが、それらの点はいかがでしょうか。
  38. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) お手元に差し上げまして、ごらんいただいたと思いますが、文部省の通知の参考資料の二ページにございますが、これの調査も決して絶対的なものとは考えませんが、一応、現段階において調べました一つの参考資料として私非常におもしろい資料じゃないかと思います。その中で、いわゆる学校の試験だけでやった場合と能研テストだけでやった場合とは、どちらも非常に低いという追跡調査の結果が出ておるわけでございます。でございますから、能研テスト自体がまだ完全なものでないということはこれだけでも証明できる、まだ能力開発の時期でございますので、これからやはり能研テストというのも開発し、研究していかなければならぬ問題が残っておると思います。しかし、この表から見ましても、一番高いのは能研テストと内申書と、それから学科試験と三つを併用していったものが非常に高い率を示している。ここに三者の信頼度を合わせてみますと、非常に大きな信頼度が出てくる、こういうところに一つの結論が出ておるのは、これは一つの参考資料でございますが、私はおもしろい結論だと思います。私はいま申されましたように、能研テストそのものが、これが絶対的なもので、これだけで入学試験をやれというふうには現段階では少なくともいえない状況だと思いますが、しかし、能研テストについて、私は大学側のほうで、いま申されましたように、積極的にこれに参加して、そうしてこれに協力していただく、そうしてその入学試験を合理的なものに改善する努力について大学側も参画していただくということを強く要請してまいりたい。そういう努力をした上に、これは絶対的な正しい入学試験というものはあり得ないと思いますけれども、しかし、漸次改善されていくという方向に大学側も協力をしていただくように要請をしていきたい、こう考えております。
  39. 秋山長造

    秋山長造君 能研テストの問題については、ここに追跡調査の表が出ているんですが、もちろんこれだけですぐ是非の判断をつけるには資料としてまだ非常に弱いと思うんですけれども、しかし、一応の資料としておっしゃるとおり無意味ではないとは思いますけれども、ただこれを国立大学十九学部、千四百人、どういう学校の、どういう学部についてか知りませんけれども、この程度のものでは、この資料を金科玉条にして大学を説得にかかるというにはまだ不十分だという気がするんですね。しかも、追跡調査も完全なものではありません。入学後一年間と二年間という程度ですからね、こういうものはもう少し資料を整える必要があるんじゃないかと思いますが、それにしても能研テストに対する大学側の不信感というものはなかなか相当大きいものだと思うんです。いろいろ大学の先生なんかに聞いてみましても、文部省が楽観しておられるほど、ちょっとやそっとで、それじゃ、それでいこうということにはなかなかならぬのじゃないかと思うので、だから、その点については、この能研そのものについていろいろ問題があるからだと思いますので、あなたのほうは能研がいいんだという考えでおられるわけですけれども、しかし、それに対する反論というものもずいぶんあるでしょうから、いずれにしても、これは文部省側と大学側あるいは高校側と、この三者が議論を煮詰めて、ある程度のところまで一致してくるということが大事だと思うのです。だから、その努力はひとつもう一そうおやりになってしかるべきだろうと思うのです。その能研の問題は、またそれだけとして相当議論の余地があろうと思いますが、きょうはその点はこれ以上触れません。この調査を見ましても、高等学校の内申書というものがやっぱり非常に意味を持っているですね。それからまた追跡調査をやってみても、やっぱり内申書というものが非常に効果的なものだということもよくわかるのですが、ただ、学校差だとか、その学校差に基づく不信感というものを払拭するということを、これは高等学校側でよほど練り上げてもらわなきゃいかぬと思うのですが、その点についてはどうですか。大臣でも学術局長でもよろしいが、文部省がこれだけの方針を打ち出す以上は、その裏づけとして内申書の信憑性といいますか、内申書というものの客観性といいますか、それを確立する努力というものはどういうふうになさるのですか。
  40. 天城勲

    政府委員(天城勲君) ただいまの表にもございますように、高校の調査書というものが大学入学後の成績と相関が非常に深い要素であるということが示されるわけでございますが、そこで問題は、絶えず学校差の問題が出てまいります。恐縮でございますが、四ページを見ていただきますと、能研学力テストと各高等学校の平均点というものを比較してございます。たとえばA校で四・五から四段階の評価のものの平均をとりますと六十四点、これがある高校ではAとしてくるかもしれませんが、一番右のJ校になりますと五十九点、この五十九点というものは、A校で見ますとCのランクに入ってしまうというような数字的な差が出ております。したがいまして、各学校の調査書におきますランクというものは、こういう客観的な一つのものさしによって再評価、補正をし直すことによってかなり信憑性が高くなる。そういう意味で私は能研テストの持っておる意味はあると思うのでございます。それから高等学校の格差ということも、学校の格差は総体評価の場合出てまいりますけれども、個々の子供の能力についてアチーブだけでは評価がむずかしいので、そこで進学適性検査というものを、能研でやっておりますように適正テストを加えますと、これは必ずしもアチーブとか、あるいは環境とかいう問題じゃなくて、ある程度潜在的な能力というものの検出もできますので、二ページの表に戻っていただきましても、この進適、能研の適正テストを加えますと、入学後の成績との相関関係がぐっと上がってまいります。そういう点を考えまして、ただ一つのテストの方法でもってやることは無理だと、これのかみ合わせが必要だということを申しておるわけでございます。高等学校の格差の問題ということそれだけをとらえて高等学校を直せ直せと言っても、これは非常な無理な条件が重なっておりますから、それを補正する方法はいろいろくふうすればあるんだということを考えていただきたいと思っておるのがわれわれの考え方でございます。  それから能研の大学との問題でございますが、ここにございます十九学部の追跡調査というのは、十九学部が協力いただきましたからこれだけ追跡調査ができ、実績がわかってまいったわけでございます。要するに、大学がこういう追跡調査に第一段階には協力していただかなければ結果が出ないわけでございます。能研を第三者に置いて、能研がいいものができたら使ってやろうといっても、いいものができるためには、大学がこの追跡調査に協力してもらわなければできない種類の調査でございますので、能研が現在一〇〇%だというようなことを申し上げておるわけではございませんので、能研のような方法を育てるには大学が協力しなければならない。しかし、それを採用するかどうかは別といたしまして、少なくともこういう実績の調査を出すためにも協力をしてもらわなければならぬということは大学に申したわけでございます。能研テストが持っておりますいろいろな問題というものは、もちろんまだ完全な研究能力を持っているとは思いませんけれども、能研の研究を伸ばすためには、大学が御協力いただかなければ、能研はひとりではできない種類の調査でございます。入学選抜というものは高等学校大学との協力ということを申し上げましたけれども、両者が合わさらなければ、高等学校の調査書というものが出て、それを大学が使ってその後の、入学後の成績についてもその調査書をずっとフォローアップしていくという態度がなければ、これは調査書の信憑性が出てこない。これがほんとうに協力体制だと思います。大学の考え方についても、そういう考え方で大学側に御協力願う、こういうぐあいに考えておるのでございます。
  41. 秋山長造

    秋山長造君 もう時間がありませんから、簡単に結論的なことをお伺いしますが、文部省からこの通知が出まして、これに基づいて準備をして各大学がそれぞれ来年度の入学者選抜についての細目を発表しますわね。それで大体来年、いまるるおっしゃった文部省の考えというものがどの程度採用されるかどうかということが出てくると思うのですが、大体見通しとしてはどうなんですか。このことしの数字より相当ふえそうな見通しを持っておられるのですか、どうですか。
  42. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 私たち六月の初めからブロック別に打ち合わせ会をずっと進めてまいりまして、かなり大学側の考えも前向きになっておるのじゃないか、それからことしは特に高等学校長会から、この調査書の重視と、それについての活用のための能研テストの利用ということを非常に強く訴えておられますので、私たち、まあ楽観だと言われるかもしれませんが、事態は徐々にですが、好転していくのじゃないかと考えております。なお、七月一ぱい、七月の三十一日までに各大学実施科目とか、試験の方法をきめることになっておりますし、その間これらの新しい方法の採用のしかたについて御相談を受ける場合もかなりあろうと思っておりますので、そういう機会を通じてわれわれの考えておることも十分大学にお伝えしたいと、かように考えております。
  43. 秋山長造

    秋山長造君 いままでお尋ねしたことは、入学試験制度そのものの方法論についてお尋ねしたわけですが、ただ、これがかりに完全に、文部省がおっしゃるとおり、御期待どおり行なわれたとしても、なかなか解決せぬ問題が、やっぱり大学の門は依然として狭いわけなのでね。その大学の門を広げるということをむしろもう一歩積極的にお考えになる必要があるのじゃないかと思うのですが、ことしなんかについても最初の呼びかけは国立大学の入学定員というものは相当ふやすような話だったのですが、予算の関係か何かだんだん狭くなって、結局、国立大学で三千六百五十五人、短大で三百三十人、合わせて三千九百八十五人程度の定員増ということにとどまった。だから、ほとんど入学志願者というのは私立大学が一手に引き受ける。そうして私立大学のほうでは定員の一倍半も二倍も水増しして入れるというようなことが依然として行なわれておるわけですが、一体、入学試験制度の方法を改善をするという努力と同時に、絶対数をもっとふやさなければ、これは問題にならぬと思うのですが、国立大学の入学定員を来年度はどの程度ふやされるおつもりなんですか、それをちょっと伺っておきたい。
  44. 天城勲

    政府委員(天城勲君) ちょうど四十年から始まりますいわゆる急増に備えまして、私たち大体ここ三、四年の間の大学の志願者の増というものを検討してみまして、定員の見込みを立てているわけでございますが、御指摘のように、今年も当初は大体国立四千という見当を立てたのでございますが、三千九百八十五、これは予算の関係で端数がございますが、大体四千の目標は実施したつもりでございます。その計画でいきますと、明年は大体三千ぐらいの増員を考えている次第でございます。なお、大学の規模の拡大でございますけれども、進学者を全部入れるのだという前提で大学を考えるかどうか、大学の基本的な性格をどう考えるかという問題にかかわる問題でございまして、ちょっとよけいなことでございますけれども、最近、大学における留年問題というのが学内で非常に大きな問題になってきております。大学に入りましてからついていけないで留年する率というのが逐年ふえてきておるということで、大学側自身にとっても、大学の門戸開放の限界ということが最近非常に意識されてきておりますし、一方、入学選抜の方法が適当であるかどうかということについての意識もだんだん強くなってきておる。門戸開放ということも、大学のあり方と大学教育を受けるにふさわしい能力を持っておる者を受け入れるという前提で考えますと、おのずから限界があるのではないかと考えておるわけであります。
  45. 秋山長造

    秋山長造君 その点につきましても、さっきの能研テストの問題なんかとともに、もう少し議論を深めていきたいと思うのですが、もうきょうは時間がありませんから次に譲りますが、最後に、いまの問題で、この間、新聞で見たのですけれども、六月の十六日、旧帝大ですね、国立旧帝大七大学の学長会議が九大で開かれたときに、この旧帝大の七大学というものを大学院大学に昇格したいという決議が行なわれております。これ、いまの大学入試問題の解決方法という面、あるいは地方大学の格差の是正というような面から考えましても、その面からだけ考えても、それは旧七帝大を大学院大学にするということは意味があると思う。ただ、その内容が、じゃ、いまの学士課程というものをどうするのかということによってまた違いますけれども、この構想はどうですか、文部大臣はどうお考えになりますか。
  46. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 私は日本の学術、科学技術の振興というような面から申しまして、将来の大学において大学院というものは非常に重要な存在になってまいると思います。したがいまして、大学院というものを非常に拡充していく形をとってまいらなければなりませんが、その際において、七十幾つの国立大学の場合に、すべて同じように大学院を置くということは非常に困難な問題だと思います。そういう意味において、いま旧帝大の学長会議で行なわれました一つの決議というのは、私どもも今後尊重して考えてまいりたい。ただ、私は大学院のみを置く大学大学院だけの大学というものの構想については、私自身は賛意を表することができないわけでございまして、やはり四年の学士課程ですね、やはり四年の大学の上に大学院を持つということが必要であるということと、それから地方のその他の——七つの大学だけに大学院を置くかどうかということを決定しておるわけじゃございませんけれども、幾つかの少数の大学に集中して大学院充実していかなければ、すべてに博士課程までも置きますところの大学院を全部充実するということは、国家的に見まして、国家の財政面から言いましても非常に困難な問題です。教授力の問題から言いましても非常に困難な問題だと思いますが、しかし、それだからと言って、地方の大学には全然大学院を置かないかと申しますと、私はその場合には、せめて修士課程まではこの他の大学に置いてもいいじゃないか、しかし、博士課程になりますと、やはり相当集中的に、大学院を置くのを集中しまして、その大学の卒業生だけでなしに、すべての大学から受け入れて大学院の課程をやっていく、こういうような構想というものを私自身も持っておるわけでございますが、これは私の構想がどうなるかということは別問題でございまして、ただ私の構想はどうかということで、公に文部省の方針としてそう決定したというわけではございませんから、ただ私はそういう構想を持っておるということだけ申し上げます。
  47. 鈴木力

    ○鈴木力君 ちょっと関連。時間がありませんから、簡単に一つだけ、これはまあ御質問というよりもお願いでありますが、いまの能研テストですね、能研テストの問題は、何かいまの通達その他を拝見しますと、高等学校教育を、相当これのほうからの束縛といいますか、規制といいますか、いろいろな問題があるように考えられますので、  〔理事中野文門君退席、委員長着席〕 きょうは時間がありませんから、この次に伺いたいと思いますが、前に能研の資料をちょうだいしておりましたけれども、もう少しお伺いしたいのは、この事業収入の内訳をもう少し詳しいものをお願いしたいと思います。それからあと人件費、それから一般事務費、これらについてもう少し詳しい資料をこの次までにちょうだいしたい。あとこの次、その資料等をちょうだいしてから若干御質問を申し上げたい。よろしいでしょうか。
  48. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 承知いたしました。
  49. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 他に御発言なければ、本法案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。     —————————————
  50. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  文化財保護に関する件について、本日、参考人として日本道路公団理事藤森謙一君の出席を求め、その意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  52. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 教育、文化及び学術に関する調査中、文化財保護に関する件を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。  なお、政府側より剱木文部大臣、村山文化財保護委員会事務局長、黒住運輸省鉄道監督局国有鉄道部長、難波建設省道路局国道第二課長、杉浦内閣総理大臣官房参事官、野崎建設省都市局市総務課長が出席いたしております。
  53. 小林武

    小林武君 初めに委員長にちょっと申し上げておきたいのでありますが、私、各種委員会が皆行なわれておりますので、大臣の出席を要求するところでありますけれども、その都合があってそれは認めたわけです。しかしながら、どうしても、何といいますか、大臣が出席しなければならぬというような場合には、ひとつこれはお認めいただかなければならぬ、これを先に断わっておきたいと思います。  そこで、建設省にお伺いいたしますが、国道百六十五号線というのは、着工はいつやるつもりですか。
  54. 難波隼象

    説明員(難波隼象君) お答えいたします。国道百六十五号というのは、橿原バイパスにつきましては先年度から予算をつけております。一部、百六十九号線の西側で用地買収を行なっております。工事はまだ始めておりません。
  55. 小林武

    小林武君 だから、いつからやるのか。橿原バイパスのほうと百六十五号線のそれ、いつから着工するのですか。
  56. 難波隼象

    説明員(難波隼象君) 工事の着工につきましては、その通過地点に藤原宮跡がございますので、目下、奈良県教育委員会で調査中でございます。その結果を待って文化財保護委員会と協議の上着工いたしたいと思います。
  57. 小林武

    小林武君 これは四十一年の六月に始まりましたね。この遺跡発掘届は奈良県のほうから……。それで、着工は四十二年の五月の予定じゃありませんか。
  58. 難波隼象

    説明員(難波隼象君) 四十一年度の予算で、一部、事前者の調査費二百万円を出しまして調査いたしましたのですが、この部分について着工する予定は立てておりません。
  59. 小林武

    小林武君 そうすると、着工の予定についてはなかったわけですか。私が聞いているのでは、橿原バイパスの着工というのは四十二年の五月、というのは、私はたいへんこれは重大視しているのですよ。着工予定というのは非常に間近い、間近いとすれば、まあいろいろな意味でこれはたいへんな時期だなというふうに理解するものですから、あなたのほうでそういう予定を立てているのかどうか聞きたかったわけです、はっきりしないようですから。いまは、結果を待っている、こういうお話。結果を待っているということですが、私は古都保存法という法律があることはもう御存じだと思う。この第六条の中に、建設大臣は、「歴史的風土特別保存地区を指定することができる。」ということになっている。一体この古都保存法に関して建設大臣がどういう権限を持っているのか。とにかく第六条を見て、たいへん重大なあれを持っていると思うが、どういうことですか、これは。
  60. 野崎清敏

    説明員(野崎清敏君) 古都保存法に基づきまして、建設大臣は都市計画の施設として特別保存地区を定めることになっております。特別保存地区内におきましては、政令の定めるところによりまして工事の規制を行なうことになっております。
  61. 小林武

    小林武君 第六条の「歴史的風土特別保存地区」というのは、これはたいへん大事な地区だということになるわけでありますが、それには、指定をやるという限りにおいては、建設大臣は、これが歴史的風土特別保存地区であると、それだけの価値があるということでやるわけでしょう。その判断はあなたのほうで、建設大臣がなさるわけですか。
  62. 野崎清敏

    説明員(野崎清敏君) 都市計画法の規定に基づきまして指定をいたしますもので、建設大臣が都市計画地方審議会に諮問をいたしまして、その答申を待って決定をいたすことになっております。
  63. 小林武

    小林武君 これについてはどうですか、奈良は、御存じのように法第二条における古都の中に入るのですね。そうでしょう。その古都の中に入るわけですから、そういう点について諮問をやってどんな答申を得ているのですか。
  64. 野崎清敏

    説明員(野崎清敏君) 奈良市におきます特別保存地区につきましては、建設大臣から原案を作成いたしまして、奈良都市計画地方審議会に付議をいたしまして、原案どおり可決をされまして、昭和四十二年四月八日付をもって告示をいたしております。
  65. 小林武

    小林武君 何を告示しているのですか。
  66. 野崎清敏

    説明員(野崎清敏君) 特別保存地区の決定告示であります。
  67. 小林武

    小林武君 どういう意味で、特別地区に指定するについてはかくかくのことがありますということがなければならぬはずでしょう。それはあなたのほうでどういう原案をつくったのですか。それをちょっと言ってみてください。
  68. 野崎清敏

    説明員(野崎清敏君) 奈良市の特別保存地区につきましては、私どものほうで歴史的風土審議会等の意見を聴取いたしまして、歴史的風土審議会の意見等を基礎にいたしまして、保存地域内において最も枢要と考えられます地区につきまして特別保存地区を設定をいたす。その地区につきまして地方審議会に諮問をいたしたわけでございます。
  69. 小林武

    小林武君 諮問の結果は。
  70. 野崎清敏

    説明員(野崎清敏君) 結果は、原案どおり可決でございます(「中身を言わなければしょうがない」と呼ぶ者あり)中身は、都市計画地方審議会でありますから、私どものほうに参っております答申は諮問どおり可決するという答申でございます。
  71. 小林武

    小林武君 諮問の内容は。
  72. 野崎清敏

    説明員(野崎清敏君) 奈良市につきましては、春日山特別保存地区千百四十ヘクタール、平城宮跡特別保存地区百七十二ヘクタール、山陵特別保存地区十七ヘクタール、唐招提寺特別保存地区二十九ヘクタール、薬師寺特別保存地区十ヘクタール、合計千三百六十八ヘクタールの特別保存地区の指定を諮問いたしたわけであります。
  73. 小林武

    小林武君 まあいいです。  ひとつ総理府にお尋ねいたしますが、法第十六条で歴史的風土審議会は総理府の付属機関としてこれはあるわけです。どういうことをやっているのですか。付属機関として持っていて、どういう運営をやっているか、ちょっと教えてください。
  74. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 歴史的風土審議会は、その古都保存法に基づきまして、内閣総理大臣の諮問に応じまして、まず歴史的風土の保存区域——一般区域でございます。その保存区域について内閣総理大臣が決定をしようとする場合に、審議会の答申を得て決定をしております。  それから次は、保存区域内の計画でございますが、保存計画を定める場合も審議会に諮問いたしまして答申を得て計画を決定しております。  それからもう一つ、この古都保存法に関する施行令がございますが、この政令の制定及び改変につきましては、法律規定に基づきまして同審議会に諮問して決定することとしております。なお、いままでの審議会の経過は、昨年からことしにかけまして五回、審議会を開催をしております。以上でございます。
  75. 小林武

    小林武君 十六条の付属機関として、あなたのほうは審議会の編成、それから審議委員を任命する仕事とか、その他運営のことは、一切、総理府でやるわけですか。
  76. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 審議会の委員の任命につきましては総理府で責任を持って任命いたしております。それから具体的な特別保存区域等のこまかい問題につきましては総理府のほうでは持っておりませんで、建設省がこれを執行いたしております。
  77. 小林武

    小林武君 いま委員は何名いて、だれとだれですか。どういう人がなっていますか。みんな言ってもらおうか、関係行政機関職員とか何とかあるからね。みんな言ってもらいましょう。特に民間の人は職業まで言ってください。
  78. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 審議会の委員は法律規定によりまして二十名以内ということになっております。  名前を申し上げます。堀木鎌三、国際観光振興会副会長、狩野近雄、毎日新聞社の論説委員、それから坂本太郎、東京大学文学部の教授、それから白石古京、京都新聞社社長、菅原通済、常盤山文庫理事長、関屋悌蔵、都市計画協会評議員、それから立花大亀、徳禅寺住職、林修三、首都高速道路公団理事長、森本孝順、唐招提寺長老、八嶋三郎、全国公営住宅共済会理事長、山本正一、鎌倉市長。神奈川県知事、奈良県知事、京都市長、これは人がかわった場合もございますので職名でございます。それから総理府総務副長官、大蔵事務次官、文部事務次官、運輸事務次官、建設事務次官、自治事務次官、以上二十名でございます。
  79. 小林武

    小林武君 古都保存法によってあなたのほうでそういう審議会を通して、あれですね、歴史的風土保存計画というものに関する計画というものをつくって、その計画に従って建設大臣は歴史的風土保存区域内において特別保存地区の指定をやっているということになると、私は単に——これは何を言いたいかというと、私は建設大臣というのは、ただ道路をつくればいいんだという立場ではないということを言いたいんです。先ほどの答弁の、ぼくは何もことばじりをつかまえるわけじゃないけれども、いまや古都保存法があり、文化財保護法があって、しかも、その法律をつくった政府の人がいまやっているわけですから、そういうたてまえからいえば、藤原宮の橿原バイパスの問題については、建設大臣は、単に文化財保護委員会の言うことを待ってやるとか何とかいう、そういうことだけではいけないんじゃないかと、こう思っているんです。おのずから責任があると、こう思っている。そういうたてまえでものを聞いているんです。そうすると、どうも答えがあいまいなので心配なんでありますが、一体、橿原バイパスがいま重大な判断の段階にきている。どこに路線を据えるか、いままでの路線のとおりでいいのかどうか、変更しないでいいのかどうかというところまできているわけでしょう。そういう時期ですから、私はもう少し建設省のほうではっきりした考えを持ってもらいたいと考えている。もっとはっきりしたものを持っていなければならぬはずです。悪くとれば、もうちょっと文化財保護委員会とか、文部省とかに責任を持たしておいて、道路だけはどんどんつくっていくという方向にいくおそれもあるんじゃないかと心配しているものですから、いまのような聞き方をしているわけです。  そこで、そのことについてあまり御存じないようですから、今度は文化財のほうにお尋ねをいたしますが、私はその前に村山さんにちょっとお尋ねをしたい。ことばのことですけれども、これは私は重大なことだと思うから聞きたい。一つは、あなたが、文化財指導者講習会というのをやった。その受講記の中のことを読んで聞くわけでありますから、村山さんがどういうようなことを言ったかということは正確にとらえていないんですけれども、どういう意味で言ったかということをことばの上で知りたいということが一つある。文化財保護委員会の文化財というのは「新語」であるということはどういうことであるか、あなたは、「新語」であるということを言っておられる。これは私は天然記念物のようなものが入ったから、そういう意味で「新語」と言ったのかどうか知らぬけれども、それにしてもちょっと「新語」であるという、そういうあれは、文化財というものが「新語」なのかどうかということについて私は非常に疑問を持っています。それについてまず質問したいことが一点です。  それからもう一つは、「発掘した後の遺跡は、すでに文化財としては形骸にすぎぬものである」ということは、一体どういう意味でおっしゃったか。これは二様にとれる。私はいろいろ考えたが、二様に考えられる。非常に文化財を尊重した立場でとる場合と、そんなものはほっぽらかしておいてもいいというようにとれる、文化財保護委員会の村山さんとしてはどういう意味で発言なすったか、そのことばのことだけ聞いておきたい。
  80. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) 前段でありますが、文化財保護法制定以前は、文化財保護法によりとらえられました文化財の概念は、たとえば国宝保存法ですとか、あるいは重要美術品等の保存に関する法律ですとか、あるいは史跡名勝天然記念物保存法ですとか、法律自体も分かれておりまして、統一的な文化財ということばでとらえた事例は、少なくとも制度法令としてはなかったわけでございます。それを文化財保護法によりまして従前の法令を統合し、概念も法律の二条で明確にきめて運営されるに至りましたので、そういう意味におきまして、文化財というものは文化財保護法によって法律的に創設された新語である、かように言ったわけでございます。  それから埋蔵文化財を発掘してしまえば形骸である、それは、そういう表現をなまで用いたかどうか、記憶がございませんけれども、埋蔵文化財、史跡のごときものは、これは創設のときにはある形があったわけでありますけれども、その後何百年、あるいは長きは千年以上の経年変化を受けまして、現在ではおおむね田畑、山林ないしは地表下に埋没しておるというような状態であるわけでございます。これを発掘するということは、たとえがそぐわないかと思いますけれども、たとえば人体解剖を行なう、解剖を行なってしまえば、それぞれ骨、皮、内臓、ばらばらになるわけでありまして、あとは丁重に埋葬するほかないわけでございます。しかし、史跡のごときものは発掘しても、その発掘した記録それ自体が意味があるわけでありまして、記録に伴う現物として、発掘後においてもこれを標識、説明板等を立て、その現地そのものを保存して昔をしのぶというようなことも意味があるわけでありまして、現在はおおむね発掘調査後も、それによって価値がなお明らかになった史跡として指定、保存されるのが通例でありますけれども、そのようなものは発掘調査もある意味においては破壊でありますので、場合によってはそれ以上新しい学問的発見が期待できない、いわば形骸のようなものになる場合もあり得るわけであります。そこで、私は発掘調査を慎重にやれ、いたずらなる調査は場合によっては破壊になることもある、それを戒めるような意味で、発掘調査をしたものは場合によっては形骸になるというような意味のことを申したように記憶しております。
  81. 小林武

    小林武君 私も村山さんが立場上妙なことを言ったのではないと思いますけれども、若干やはり不用意なところがあるのじゃないかと実は思ったのです、受け取る側のほうで。これを見るというと、特にそこにはアンダーラインを引いて、村山さんの発言として、「とくに埋蔵文化財については「価値の判定がむつかしい。発掘しないと真の価値が分らぬものである。発掘した後の遺跡は、すでに文化財としては形骸にすぎぬものである」と述べ」、本論に入ったと、こういう。私はこれは先ほども断わったように、聞いていたわけじゃないですから。速記録でもないのです。しかし、これを書いているのは専門家ですから、あまりいいかげんに聞いて書いたのだということではない、堂々と名前を出して署名をして出しているのですから。古代学研究の四十七号に書いてあるもののこれは抜粋ですからね。だから、私はいまのようなことではっきりしていないということでありますから、これ以上のこと申し上げませんけれども、形骸であるというような、文化財を発掘したら形骸になってしまうのだということは、これは建設をやる人たちがうまくこれに取りつけばまことに利用価値のあることばだ。文化財の保存なんということはしなくてもいいというような道に通ずることになってしまう。しかし、あなたのおっしゃるように、発掘をでたらめにやってはだめだ、技術の基礎をもっとしっかりやりなさいということならいいのですから、ここらあたりは非常に誤解を与えているということと、もう一つ、新語の問題でも、私は、あなたあまり文化財の問題について役人的でいかないと思うのです。あなたの講演の要旨の中にこういうことが書いてある。「当面できうる行政的課題だけとりあげ」て、ここで述べるのだということを講演の初めにそう言っている。文化財の行政的課題だけで、それ以外のことは述べないという断わり書きが前に述べられておるのですが、行政的課題ということはどういうことなのか、おれは行政に関係ある問題だけしか言わないということ、こういうことを文化財行政の中で言っていいのかどうかということです。やはり文化財に関する猛烈な何というか、愛着心というか、これを保存していかなければならぬという意気込みがどうも出ていない。非常に頭脳明晰なお役人の頭から出てくる行政的発言であるというふうに見て、私は非常にその点ではほんとうに聴衆にあれを与えたかどうかということについては心配しているのであります。そのことばのことはこれぐらいにしてやめますけれども、あなたのあれはいずれあとでゆっくりお伺いすることにして、藤原宮というのは発掘をされて、その発掘の結果について説明されて、その歴史的価値というものはどういうふうに判断なさっているのか、これをひとつ。
  82. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) 藤原宮は、平城宮に先立ち、持統、文武、元明三代、約十六年間の宮趾でございまして、これは長らく伝えは残りましたけれども、正確な位置等はわからないで現在になったわけであります。戦前に、一部、大極殿あとの調査が行なわれまして、大極殿を含む朝堂院等は史跡に指定されておったのでありますが、今般問題になりましたのは、指定地の北になる部分でございます。これはバイパスと関連いたしまして路線を調査いたしましたところ、当時の建物の遺構ないしは木簡といいまして、当時、記録の紙がなかったか、少なかったかした関係で、木の片に書く慣習があったようでありますが、木簡が多数出土しまして、この北の百六十五号線バイパス予定地がほとんど藤原宮趾に間違いないという推定がなされるに至ったのであります。これが何であるかは、平城宮等の例にかんがみまして、内裏あとであろうという推定がなされております。そういう意味合いにおきまして、平城宮より先立つ都城等も現在ない今日におきましては、最も古代の東洋の代表的な都城趾という意味で非常に大きな史跡としての価値があるものというぐあいに承知しております。
  83. 小林武

    小林武君 大体御説明はわかりました。あなたがおっしゃるように、これはもう日本の古代国家が確立する時代のもの、大宝律令が編纂されたのもこの時代だというわけです。政治制度、官僚制度整備して中国の都城制というものが入れられて、初めてこういう大規模なものができたということは、これは明らかになったのであります。それで内裏推定地というのがある、朝堂院があって、大極殿があるわけですから、そのあとに内裏というものがあるということは予想できるわけでしょう。これについてどうですか、発掘をして、どこまで——内裏というのは大体どのくらいの地域にあるか、これは内裏推定地域はどこだというようなことは全然わからぬのですか、どうですか。
  84. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) 平城宮の類推からいたしまして、現在、大極殿あとは発掘調査の結果、ほぼ学問的に承認される位置がつかめております。そこで、その北側に内裏があることはほぼ間違いがない。出土状況などから判断されております。しからば、その境がどこにあるかということにつきましては、これも平城宮などの類推から大体の推定はつきますけれども、正確な内裏は、現在、大体道路予定地の調査に重点を置いたような関係もありまして、まだ正確にはつかめておりません。
  85. 小林武

    小林武君 この図面によると、どうですか、大体、内裏の内郭に当たるところにはトレンチを入れているんでしょう。それでわからぬのですか。調べないのですか。調べてあるような地図が出ていますがね。外郭の一番の外側のところにもトレンチありますよ。どうですか、これは。
  86. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) 道路予定地の調査に関連いたしまして調べました結果、内裏内郭のところにトレンチも設けることができましたので、その一部は発掘調査して、ほぼこれが内裏内郭線の位置というぐあいに考えられておりますが、何せ内裏などは、大体四角に、回廊なり溝なり何なり、境を画した広がりを持つ面積でございますので、その悉皆調査が済んでないということで正確なことはわからないと申し上げた次第でございます。
  87. 小林武

    小林武君 そうすると、これからはっきりわかるまで調査をやるということですか。
  88. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) その点につきましては、調査をやるにいたしましても、所有者の許諾などが必要でありますし、許諾を得ることがなかなか困難というような事情もありまして、具体的に全域調査をするという予定はまだ立てておりません。
  89. 小林武

    小林武君 それでは建設省にお伺いいたしますが、これはその調査をやることすら、いまの文部省の話だというと、まだ許諾を得られるかどうかわからぬというのです。そうなったら、あなたのほうでは、そんななまぬるいことでは私のほうでは道路をつけてしまいますと、そうやりますか、それを聞きたい。
  90. 蓑輪健二郎

    政府委員蓑輪健二郎君) 私のほうの国道百六十五号線のバイパスが、ちょうどその位置にかかっているわけでございます。しかし、いま先生の御質問のように、そんななまぬるいことなら道路をつけるという考えは毛頭ございません。やはり歴史的な文化財は残す、さらに、道路も別な形でつけるというふうに考えている次第でございます。
  91. 小林武

    小林武君 それでは、文化財の問題でちょっと大臣にお尋ねしたいんですが、いまのようなことで、問題は内裏のところですよ。大極殿と朝堂院の部面については、昭和九年から十八年間の調査で特別史跡として指定されていて、内裏のところだけが指定されてない。ですから、ここのところを道路が横切るわけですがね、そうすると、大臣の考え方としては、これはいろんな所有者の関係とか、何とかで、トレンチは四個入ることになっていますが、あとどうなるかわからぬということで待っているわけですか、どういうことになるんですか、これは。早急にその調査をやるということになるんですか、どうですか。
  92. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 私としましては、重要な史跡、文化財といたしまして保存すべきものはぜひ保存していきたい。したがいまして、そのバイパスの建設につきまして建設省とできるだけ話し合いをいたしまして、その重要な部分を避けて道路建設ができるように、今後とも話を続けてまいりたいと思っております。
  93. 小林武

    小林武君 どうもいずれも迫力がないので困っちゃうんですがね、どうなんですか。私はこう聞いてるんですよ、建設省は道路計画を検討して直す意思はないというような意向だと、そういうふうに推測してるんですわ。そうして予定どおり年内に着工すると、こういう強気な態度をとっている、それに文化財保護委員会は押されていると、こういうふうに理解して心配している人たちが多いんですよ。で、私はいまのような態度だというと、これは待てど暮らせど、いつになったらその結末がつくかわからぬということになれば、建設省のいままでのやり方だと、いくんじゃないかという気がするのです。しかし、先ほど来——まだあなたがおいでにならないときに、古都保存法のことを引っぱり出して、建設大臣というのは、道路をつくりゃいいというのじゃない、重要な役割りを法の上で受け持たされているということを盛んに言ってるわけですがね、私は。共同責任意味で、藤原宮跡の保存については、われわれは遺跡のことに関しては、関係法律の上に立って十分保存するという態度でやっておるんですということなら、私も納得しますが、そこら辺はどうなんですか。あなたのほうでは道路を年内につくると、こう言ってるんですか、どうですか。
  94. 蓑輪健二郎

    政府委員蓑輪健二郎君) 橿原バイパス補助事業で奈良県が施行するようになっております。あるいは奈良県のほうで、また地元の橿原市のほうが、早く道路のバイパスをつくってくれということで強い発言をしているのではないかと思います。われわれといたしましては、こういう重要な文化財の問題は、文化財保護委員会との協議が済みません間は、その地区に着工する考えは毛頭持っていない次第でございます。
  95. 小林武

    小林武君 それでは、どうですか。ここが内裏であるということが明らかになった場合、この内裏はよけますか。
  96. 蓑輪健二郎

    政府委員蓑輪健二郎君) その辺は今後、文化財保護委員会とよく話し合ってきめたいと考えております。いま、まだ結論を得ていない状況でございます。
  97. 小林武

    小林武君 しかし、あなたのほうでは、重要なあれだから考えて、施工も実態を確かめてからと、こう言っているのでしょう。内裏というのはお互いにわかっているから説明する必要ないけれども、藤原宮というものは内裏を入れなければ一つの完成したあれにならぬのですから。そして、もうこわれるものはこわれて、完全なものというのは、平城と藤原しかないんですよ、保存するとすれば。そういうことがあるから、これは内裏ばかりじゃないですけれども、古都保存法という法律をつくったんじゃないですか。そして、鎌倉、奈良、京都なんというのが、この法の上で、この中に繰り入れられている。そうすると、よけるというのが当然じゃないですか、どうなんです。文化財保護委員会のほうはさることながら、あなたのほうとしては、よけなければならぬと思っているのでしょう。どうですか、それは。
  98. 蓑輪健二郎

    政府委員蓑輪健二郎君) これはいろいろ——このルートにつきましては、三十七年にたしか決定されておりまして、やはりよけるにはよけるだけの手続を踏まなければいけないことでありまして、そういう意味で、われわれは文化財保護委員会とよく打ち合わせをして、よけるべきものはよけるというようにしたいと考えております。
  99. 小林武

    小林武君 そうおっしゃれば、今度は建設省の蓑輪道路局長に、特に申し上げておきますが、古都保存法の上に立って、建設大臣というのは重要なあれがありますから、ひとつ建設大臣も、これについての見解をはっきり持ってもらいたいと思うのです。あなたの答弁はそれだけだから、もし何なら大臣にここへ来て答弁してもらいたい。あなたは、局長の立場としてはいろんなことを言われないと言うならば、ひとつ大臣呼んで、ここへ来てはっきりしたことを言ってもらいたい。法律なんかたくさんつくったって、ざる法なんかどうでもいいというんでは話は別だけれども、この法律はそんなことは言わさぬようにできているんですよ。あなたまかせみたいな話じゃだめです。文化財保護委員会が何とかって言って、そんな責任のもたれかかったようなことを言っちゃ困る。あなた言えないなら言えないでいいです。  それで、文部大臣にお尋ねしますが、歴史的重要性というものを一体どうお考えになっているんですか。残さなければならぬと、こう思っているんですか、それがそうであったら。——文化財保護委員会の委員長を呼ぶんだったな。
  100. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) これは文化財保護委員会が判断すべき問題でございますが、文部大臣といたしましては、藤原宮の内裏のほうは、ぜひひとつこれは文化財として残していきたいと、強くそういう目標を持っております。したがいまして、いま文化財保護委員会と建設省と事務的な打ち合わせをしておりますし、私の承っておるところでは、建設省の経費その他の関係もございますけれども、建設省も積極的に協力をいただけるものと聞いておるのでございますが、最終段階におきまして、もし話がつかぬということになれば、私もこの文化財の保存の意味におきまして、強力に建設大臣とも話を進めてまいるつもりでございます。
  101. 小林武

    小林武君 文部大臣の御意見としては、私はたいへん力強く感じます。ぜひそうあってもらいたいと思うのですよ。文部大臣がぐらつくというと、これはぐらつくおそれたくさんございますから。  それで、建設省にちょっとお尋ねいたしますが、いまの内裏と推定されるところと、もう一つ国鉄線の間が準工業地帯になるということなんですが、準工業地帯。
  102. 野崎清敏

    説明員(野崎清敏君) 現在の用途地はそのようになっております。
  103. 小林武

    小林武君 そうすると、これ一体どうなんでしょうね。準工業地帯になっていった場合には、相当にここは人口もふえることでしょうね。どのぐらい入るというような、人間を住ませるということは大体見当ついていないのですか。それは建設省に聞いてもだめですかな。
  104. 野崎清敏

    説明員(野崎清敏君) その点はまだはっきりいたしておりません。
  105. 小林武

    小林武君 はっきりしていないのはあなたのほうだけであって、相当はっきりしていますがね。人口はかなりふえますよ、ずいぶんここでふえていく、昭和何十年までにはどれぐらいになるという推定はできないことはないですよ。あなたのほうで知らないとすればおかしい、ぼくだってこんなに資料を持っているんだもの。  それはいいとして、村山さんにお尋ねいたします。ここがもし準工業地帯となった場合、非常に心配いたしておりますのは、飛鳥の遺跡ですね、ここが非常に荒されるということを心配しています。この点については文化財保護委員会は一体どうなんですか、何か事前にそういうことについての御心配はあるわけですか。
  106. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) 飛鳥地区は、現在では藤原地区よりさらに西南側になるわけでございまして、現在ではまだそれほど、何といいますか、都市化の傾向を見せておりません。この地域につきましても、史跡としては非常に重要な地区と考えまして、必要に応じて調査を進めておりまして、特に保存すべき地域の指定の問題もあり得るわけでありますが、たまたま古都保存法ができまして、古都保存法の趣旨は多少違いますけれども、特別保存地区として藤原、飛鳥地区もその指定候補地になっておるようでございますので、せっかくのことでございますから、できるだけ広くこの保存法による指定もかけていただいて、文化財保護法と両者協力して、なるべくこの付近の歴史的風土並びに史跡を守っていきたいというぐあいに思っております。
  107. 小林武

    小林武君 まあ非常に慎重な御答弁のようでありますが、この飛鳥地区についても、やはりいまのうちからその面の計画を立てられたらいいのではないですか、これはひとつ御注文をしておきましょう。飛鳥地区についてどういう見解か、後ほどまたあれしますから、関係方面と十分御検討の上、ひとつ私にお答えをいただきたいと思う。  なお、ここで、しつこいようですが、建設省に申し上げますが、ことしの秋にはバイパスに着工したいということを談話として発表しているのですね、これは四十二年の四月の朝日新聞に出ているのです。いいですか、読みますよ。「建設省は」と、こういっている、「藤原宮跡の文化財的価値がどの程度のものか、まだわからない」と、こういう、建設省も負担金を出しているからと、こういっている、そして、「バイパスが藤原宮跡を避けるためには、延長八百メートル、約八千平方メートルにわたって路線を変えねばならず、カネの面でもむずかし問題だ。いずれにしろ、今秋にはバイパスに着工したいといっている。」、これは間違いですか、これは朝日新聞の記事、間違いですか。
  108. 蓑輪健二郎

    政府委員蓑輪健二郎君) ただいまの新聞に発表されておりますことは私よく存じておりません。私自身がそういう指示をしてやった覚えは毛頭ございません。また、八百メーターの問題でございますが、いまの藤原宮跡が日本の誇るべき文化財であるということになれば、これが八百メートルを動かして、そのために金がかかるということは、われわれいとうものではございません。
  109. 小林武

    小林武君 それで、文部大臣がこの貴重な史跡を絶対守らなければならぬという御決意でありますし、また、建設省側も、そういう重要なものであるならば、延長については、これはもう十分努力すると、こういうあれでありますから、これは全く安心の状況になったと判断してよろしいと思います。文部大臣どうですか。
  110. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 私もできる限りの努力をしまして、これを、文化財を守りたいと思います。
  111. 小林武

    小林武君 もう一つ、この飛鳥と同じような問題があります。平城宮の問題でありますが、その前に一つ宮内庁の方にお尋ねをしておきたいのですが、この平城宮のところにバイパスが通る、そのバイパス、これは東一坊ですか、バイパスが通ってくるわけですが、そこに自衛隊の施設があるのです。その自衛隊の施設のそばにあるこの前方後円墳、これはどうもはっきりしないのですが、何か前方後円墳はあなたのほうの関係のものだと聞いているのですが、私のこの地図には三つあるわけでありますが、これは何と何ですか。
  112. 小川三郎

    説明員(小川三郎君) 図面で見まして、右側の大きい前方後円墳が宇和奈辺参考地です。それからそれに隣りまして左にありますのが小奈辺参考地です。これは参考地と申しまして、どなたの御陵というふうにきまっておりませんが、こちらで保存をいたしておるのであります。
  113. 小林武

    小林武君 これは自衛隊の正門が、この二つの、宇和奈辺、小奈辺の間に門をつくっておるのですね、この場合、陪塚なんかどうなっているのですか、こわれているのではないですか、すでに。
  114. 小川三郎

    説明員(小川三郎君) これは戦後に自衛隊の建設の際に陪塚をこわしたものがございます。二つほどございます。しかし、その後はそういうことはございません。よく保存さしてございます。
  115. 小林武

    小林武君 何か自衛隊の前は進駐軍がいたんですね。
  116. 小川三郎

    説明員(小川三郎君) そうでございます。
  117. 小林武

    小林武君 そして、水洗便所をここにつくったんでしょう。日本の陵墓もアメリカにかかっちゃ水洗便所のあれくらいか扱われない。これはしかし、この前方後円墳のそばについている陪塚ですね、これは完全になくなっているのですか、なくなっているのではないかと思うのですが、それはいいとして、あなたのほうで、これは宮内庁で保管——何というか、管轄、所管の問題とすると、これに対して一体どういう態度をとっているんですか。これはもうバイパスが通れば、とにかく影響はあると私は思うんですがね。あなたのほうでは何ら関知しないんですか、この問題。
  118. 小川三郎

    説明員(小川三郎君) 実はこのバイパスの道路の問題につきましては、本日初めて伺いましたような次第でございますけれども、バイパスのために陪塚がこわされるというような事態のお話であれば、それは建設省のほうとよく打ち合わせをしたいと存じます。
  119. 小林武

    小林武君 いや、初めて聞いたなんて言われるとまことに困るですがね。これはまあ、所管のといいますか、所管のものですからね。そして、すでに自衛隊のあれがあるんですよ。私は自衛隊がここに来ているからこの陪塚がなくなってきているんだと思うんです。これを見ると、ちゃんと宇和奈辺、小奈辺の間に門ができているんですよ、出口が。だから、このときは陪塚がおそらくなくなっているんだろうと私は想像する。これは想像ですよ。そうすると、今度は、もう一つあるでしょう、前方後円が。もう一つあるんですよ。宇和奈辺、小奈辺のちょっと北のほうというか、上のほうにあるんです、バイパスに沿って。そうすれば、ここにバイパスが通るというと、これは宇和奈辺、小奈辺のほうにも影響があるんじゃないかと、こう想像してあなたにお尋ねをしたんですが、まあひとつこういう点は、所管の問題になりますというと、いろいろむずかしいことがあるんでしょうけれども、これは宮内庁でそういう所管をした場合には、文化財保護委員会との関係はどうなっているんですか。
  120. 小川三郎

    説明員(小川三郎君) こちらの前方後円のような古い古墳は、文化財としての価値は十分にあるわけでございます。したがいまして、文化財の指定ということも考えられないではないのでございますけれども、こちらで、宮内庁で保存をするということは、文化財の保存の目的と保存という点では一致しておりますので、こちらだけで、文化財の指定を受けないで保存をいたしております。
  121. 小林武

    小林武君 私、そういうことは少し暗いんでよくわからぬのですが、宮内庁でどうしてもやらなきゃならぬというのはどういう場合ですか。
  122. 小川三郎

    説明員(小川三郎君) 第一に、御陵ときまりましたものでございますね。これは当然こちらで管理いたします。それから、ただいま申しましたように、参考地といいますのは、まだどなたの、天皇あるいは皇族というようなはっきりしたことがわからないのでございますが、しかし、大体どなたか皇族であるということが予想されるものでございますから、その意味で、将来の参考としてこちらで保存をいたしておるわけでございます。
  123. 小林武

    小林武君 これはまああんまりたいしたりっぱな地図ではないけれども、宇和奈辺、小奈辺のちょっと離れたところにあるのは、磐之媛命の陵ということになっていますね。これはそうですが。
  124. 小川三郎

    説明員(小川三郎君) そうでございます。
  125. 小林武

    小林武君 それが今度はバイパスでこわれるんですよ。宮内庁はまあおっとりしているのが特徴だろうと思うけれども、一体おっとりしているところを抜けがけにやるなんというのははなはだけしからぬのですが、これは大体地図を見たらおわかりになるだろうと思うんですがね。磐之媛命のあれとちゃんと名前が入っている、これはまあ伝説か何かわからぬけれども。そこのところを通るんですよ。だから、私はこのバイパスが問題なのは、そのことが一つと、もう一つは、これは局長にお尋ねしたいんですが、平城宮跡のわきのほうに、東一坊のところに、発掘によって新たな予想しない事態が起こったんでしょう。その点についてひとつ説明してもらいたい。
  126. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) 国道二十四号バイパス問題は、大体、昭和三十九年ごろからお話がありまして、文化財保護委員会としても、あの辺は史跡ないしは周知の埋蔵文化財包蔵地域が至るところにあるわけでありますので、関心を持って御相談したわけであります。そこで、道路の交通難緩和のためにバイパスをつくる必要性の有無につきましては、私ども判断の立場にないわけでありますが、建設省ないし奈良県側が、絶対必要であるというお話でございますので、もし道路をつくるとすれば、道路建設によって史跡なり、あるいは埋蔵文化財包蔵地の破壊を最小限度にとどめる。それから、きわめて重要な遺構などに当たるような場合には、場合によって路線を一部修正したり、あるいは土盛りをしたり、あるいは高架で通すというような、ごくふうを願うという含みでいろいろ相談してまいったわけであります。で、昨年ごろの結論では、平城宮跡のそばに道路を通すとすれば、路線をどうとったとしても遺跡に当たらないということは実際問題として不可能である。そこで、最小限というところで選定いたしますと、平城宮跡東側の旧東一坊大路は、古来これは道路であるから、それを拡張して近代的な道路にするということは、被害を最小限度にとどめる路線選定としてはまあ一番いいのではないかということで、道路建設計画につきましては基本的に了承いたしまして、路線予定地の調査を開始したわけであります。調査の結果、昨年の終わりごろに至りまして、東一坊大路と推定されるところを南北に数カ所の個所を選定して調査したわけでありますけれども、南から上がってまいりましてしばらくいたしますと、道路の遺構から、道路であろうと推定したところから、たとえば門のあとが発見されたり、あるいは井戸が発見されたり、あるいは木簡の類が発見されるというような事実がありまして、この東一坊大路は、ある時期には道路以外のものに転用されておる疑いがある。それから、場合によっては平城宮そのものが、ある時期には、従来、境線と考えられたところを越えて東側に広がっている可能性があるということがわかってまいったのでございます。そういう新事態に対処してどうするかの問題でありますが、最初に申し上げましたように、この路線を東側に移しましても、たとえばいま御指摘の陵墓参考地があったり、あるいは、さらに東側には法華寺があったりしまして、路線をどう持っていっても遺跡を全然避けるというわけにはまいらない。そこで、現在路線を変更するというようなことについて、必ずしも断定せずに、さらに調査を進めて、道路をつくるとすれば一番無難なところはどこかという線でやってまいろうと思っているのが現状であります。
  127. 小林武

    小林武君 ここへいったら急に弱腰になってどうもだめですね。これはもう明らかに、あなたいろんなことをおっしゃるけれども、第三十八次から第三十九次の発掘調査の概要というのが出ているんでしょう。これはあなたのおっしゃるように、かつてはここが東一坊が通っておったかもわからぬ。しかし、その後その模様が変わっておる。そして、そのわきのほうに張り出しているということが明らかになって、そして木簡がたくさん出た。その木簡の出土によって、一体どういうことを今度重要な問題として取り上げなければならぬかということ、そういうことの問題が出てきたんじゃないですか。私は古都保存法というようなものをつくり、しかも、日本のかつての宮趾というものでは、もう完全に残ったのはこれ二つだ、難波はもう大体こわしてしまったと同じだ。十三年、難波宮趾の保存に一生懸命になったけれどもといって、非常に残念がっている人がここに文章を書いているのがありますけれども、しかし、最後に残った二つの問題について保存していくというのには文化財保護委員会はもっと強気にならなければいかぬですよ。どちらにいってもいいと言うが、この道路を通していったらどこかつぶさなければならない。磐之媛命のところは陵墓をこわしていったら、宮内庁は、それはたいへんだが道路のことはしかたがありませんと言うのかどうか、それは昔ならばたいへんなことですよ、そんなこと言ったら命が幾つあっても足りない。私はそういう昔流の考えではなくて、文化財を保存するという意味で、もう手がありませんということを言うのはどういうことか、それが私にはわからない。建設省は一体これはどうなんですか、奈良の平城宮のバイパスの問題はどういうお考えを持っているのですか。
  128. 蓑輪健二郎

    政府委員蓑輪健二郎君) 二十四号線の奈良のバイパスにつきましては、先ほどお話がありましたように、三十九年ごろから計画をいろいろ進めてまいったのでございますが、現在の二十四号線が町の中に入っておりまして、大体幅員九メートルくらいで、昭和四十年で二万台をこえるような交通量になっておりますので、とうていバイパスをしないと交通事情に追いつけないということでいろいろ調査をいたしまして、一案、二案、三案、いろいろ各案について検討した結果、現在の線が一番いいというところで、文化財保護委員会とも協議の結果、この線でバイパスをつくるということになった次第でございます。現在われわれの考えとしては、その線でぜひバイパスをやらしていただきたい、そういうふうに考えております。
  129. 小林武

    小林武君 私は納得がいかないですね。藤原宮の場合とまるで別な態度じゃないですか、基本的な態度というものはそんなに変わるもんじゃないですよ。私は大体推定すると、文部省側も初めのほうで合意したものだから、いまごろになってひっくり返るのはぐあいが悪いというので、腹の中では、どうも残したいけれども残せないというようなところだと私は思うのです。そんなことではいかぬですよ。それは建設省のほうに向いて言ってもしょうがないですけれども、それはもうあなたのほうの大臣の責任というものがあるわけでありますから、一体、奈良の古都をどうするかという問題にかかわることでしょう。そうだとしたら、この発掘によって起こった事態ですよ、出土品に対してどういうものが出たかという説明もしないというのは、私は不親切だと思うのです。ここにみんないらっしゃるのですけれども、みんなりっぱな方ばかりで、だれだってわれわれと同じように、どんなものが出て、ここを調査することによって歴史的にどういうあれが証明づけられるとか、史跡としてきわめて大事であるとかいうことが、あなたたちの手によって強調されなかったら判断のしようがないですけれども、あなたは極力避けている。しかたがないという立場に立っているから、それが私はいかぬと言っている。建設省だってここを通さなければいかぬと、さっきあなたおっしゃったでしょう。道路を回すのについては、バイパスでなくてもいいと言うんじゃないですよ、ほかを通せば金がかかるということじゃないですか、ここは。金に糸目はつけませんと、あなたさっき言ったじゃないですか。糸目はつけませんとまでは言わなかったけれども、そうでしょう。大体もっと考える余地が出てきているんですよ。両方合意しているから、これだけやりますというようなことを言って通せるものかどうか、宮内庁はそういう場合にはしかたありませんと言えますか、どうですか。あなたのほうが所管している陵墓がこわれる、しかたございません、こう言えますか。
  130. 小川三郎

    説明員(小川三郎君) これは具体的な場合につきましてよく事情を検討して、道路の目的が達せられるように、しかも、こちらの被害の少ないという方法を講じてみる必要があると思います。ですから、そういう意味で検討したいと思います。
  131. 小林武

    小林武君 そういうことは言えないということはわかっておりませんか。これを見ますとわかるでしょう、これが磐之媛命の陵墓ですよ。ここでどういうふうなバイパスが通る。あなたも見なさい。そんな道路もつくる何もできるといううまいことができますか、私の地図から見れば、これは磐之媛命のあれでしょう。
  132. 小川三郎

    説明員(小川三郎君) これはこの図面からいくと避けているように見えますが……。
  133. 小林武

    小林武君 避けているように見えると、それはあなた断言できますか。
  134. 小川三郎

    説明員(小川三郎君) もう少し検討してみたいと思っております。
  135. 小林武

    小林武君 宮内庁に言ってもしかたがないが、これはどうですか。あなたのほうで、これは残すべき歴史的価値があるものかどうか、価値判断の問題です。これをはっきりしてください。歴史的なものとしてそういう価値があるのだけれども、もうこのバイパスが通るならいたしかたがないということなのかどうか、あなたのほうの対策を伺いたい。
  136. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) 平城宮跡として学術的な調査の結果、はっきりした境界内の部分は、これは文化財として保存すべき価値があることは申すまでもないことであります。そこで、問題は道路との関係でありますが、文化財保護法におきましても、文化財の保存を命ずると同時に、関係者の財産権とか、あるいは開発その他の公益との調整ということももちろん命じているところでありまして、問題は道路が絶対必要であるかどうかという判断であります。奈良、この辺は多数の住民が生活しているところでありますので、道路をつくってはならないということを一方的に断言することはなかなかむずかしい問題だと思います。そこで、私どもとしては、道路をつくることを歓迎しているわけじゃ毛頭ございませんし、できれば、このような所に道路をつくらないことが望ましいわけでありますが、もし私どもに路線を選ぶ余地がなく、しかも道路をつくることが絶対必要であるとすれば、比較的文化財に対する被害の僅少な路線を選び、被害を僅少ならしめるような配慮を講じつつ、その道路をつくるほかはないと考えているのであります。その点について藤原宮跡の場合には、私どもしろうと考えでありますが、路線を変更する余地があるように思いますので、その点で協議を続けておりますし、平城宮跡の場合には、文化財に対する被害を僅少ならしめるための路線というのが、現段階では、私どものほうでも、ここではいけないからあっちにしたらよかろうという判断がつきかねているのが現状でございます。
  137. 小林武

    小林武君 しかしあなた、いまになってからしろうとだなんと言ってもだめですよ。しろうとはわかっているが、あなたは所管の局長であるから、そんなばかなことを言っては困る。われわれ議員もしろうとであっても、ここに臨むときには、しろうとならしろうとらしく勉強して、どうやるべきかということを判断してやっているのです。だから、あなたのほうで道路のほうまで心配する必要はない。あなたはしろうとであると言うなら、道路についてはよけいしろうとでしょう。ここに道路をつけなければいけないという結論が出るほど道路について詳しいのですか、そういうことはないでしょう。そういう飛躍したものの言い方をしちゃいけない。あなたいろいろ言っているように、東一坊のわきのほうに出ているところのものについて、なるたけものを言わないようにしている。私は時間があれば、ここでみな読めばいいのだから読んでやりたいけれども、それでも人の迷惑を考えているからやらないだけで、あなたいいかげんなことではだめですよ。  建設省に伺いますが、平城宮の一部を横切って行くのです、バイパスは。そういうことをあなたたちはやりますか、さっきのあれと同じことですよ。平城宮跡というのは、今度の発掘でもってちょっと横にこう出っぱっているということがわかった。そうなると、それを横切っていくのはどうかということですよね。出土品がたくさん出たことも、あんたたちはあとでこれを読んでおいてください。出たものによってどういう場所であるかということが明らかになるわけです。それをあんたのほうで横切っていくのかどうか。ここが一番被害は少ないだろうということを考えるならば、もっと被害の少ないところはないのかどうか。たとえばぼくは被害が少ないと個人的な意見を言えば、この宇和奈辺、小奈辺の間の自衛隊の道路のところを通っていったって、そうあれですよ、横断しなくてもいいことになりますよ。もう一つずらすということ。ただし、これは私がそうせいなんということを言えるあれじゃありませんから、なかなか断言できませんけれども、いわゆる二坊というやつを通って宇和奈辺、小奈辺の間を通って、自衛隊のその国有地を通ってそうしていくということになれば、これは横断しなくてもいいということになる。そういういろんなことを考えてみないんですか。それから、もっとこれもはずれれば、なおいいのですけれどもね。しかし、どこを掘ってもぐあい悪いです、出そうですと言われれば。しかし、奈良というようなところであるとなかなかこれは容易じゃないと思うけれども、しかし、それにしても、いまの問題点はやっぱり奈良の平城宮跡を残すということが目的ですから、どえらいことが起こったらまた別ですけれども、普通のあれであるならば、これはよけて通るというのがほんとうじゃないんですか。この検討を建設省でやる意図ございませんか、どうですか、それだけ聞きたい。
  138. 蓑輪健二郎

    政府委員蓑輪健二郎君) 先ほども申しましたように、奈良というところは非常にどこのルートをとりましてもいろいろ古跡の多いところでございます。で、この奈良バイパスにつきましても、一案、二案、三案というようにいろいろ計画線をつくりまして、文化財保護委員会とよく連絡した結果、いまの三案が一番被害が少ないということできまったものでございまして、まあこの中の平城宮について道路の構造をどうするか、これはまだきめておりません。たとえば普通でありますれば道路を盛り土するわけでございますが、そういう古跡を残すために高架にするということもあるいは考えられるんではないかというふうに考えております。われわれのいま現在の立場といたしましては、現在きまっているルートがやはりバイパスとしても最良であり、また古跡を保護する上からも一番被害が少ないルートであるというように確信しておるのでございます。
  139. 小林武

    小林武君 あなた、ぼくの言うことを聞いてちょうだいよ。あなたがそういう判断をしたときには、ここの横のところは発掘していない。東一坊というのはずっともう通っていると思っていた。そして発掘していったら、どうですか、そこに横のほうに道路が曲がっておった。そしてそこからいろんなものが出てきた。そしてそれは平城宮の一部であるということが明らかになった。そうすれば事態が変わったということでしょうね。変わったんだから、その変わった事態になってものを考えないのかということをぼくは言っているんですよ。あなたのほうは、それでもここは被害が少ないから平城宮のあれを通していって、そうして、完全なとにかく古都を二つ残せるやつをここだけはこわすという決意なのかどうか。そうでないならば、いま新たな事態に対してあなたのほうで、建設省で検討するかどうか。それを聞きたいんです。前の話を言ったってだめだ。前の話は終わった。新たな事態が起こっている。
  140. 蓑輪健二郎

    政府委員蓑輪健二郎君) ただいまのお話のその後のいろいろ発掘の状況についてどう考えるかということでございますが、この点につきましては、やはり文化財保護委員会とよく打ち合わせをして話し合いをしたあと、われわれの態度をきめていきたい。
  141. 小林武

    小林武君 文部大臣、まあここまできたらもう大体結論が近いと思うんですが、大体、局長もこれはもういろいろ心配なさっておる。そして中身は一番よく御存じなんです。そして重要なやっぱり史跡の平城宮の一部であるということは十分御存じなんだ。専門家の話を十分聞いているわけです。ですから新たな事態が起こったわけです。ですから、この点について特に古都保存法の点からいっても、文化財保護委員会のほうから言っても、建設大臣も文部大臣関係の深い大臣でございますから、御相談の上で、新たな事態について御検討をひとつお願いする時期が来たと思うのです。これに対して文部大臣はどうでしょう。
  142. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) いま建設省からも文化財からも申し上げましたように、この初め三案がございまして、まあ文化財のほうでもかつての道路のあとであったということから、一番これは僅少であろうというので、一応三線のうちでいまの線に決定をして、そうしてそれが念のために調査したところが、平城宮のあとの中に入っておるという事実があとになってわかったわけでございます。でございますから、まあ建設省におかれましても、まあ三案のうちこれを決定するについては十分の相談をして決定したことですから、いまさらこれを変更するというのは非常に困難な点もあるかと思います。しかし、事後において起こった事実でございますので、この点につきましては十分再検討をいたしますし、また、この文化財の被害といいますかを僅少にすることに私どもも努力をしてまいりたいと存じますが、ただ、まあ奈良県のあの辺になりますと、実際申しますと、どこでも、至るところやはりこの文化財なり遺跡のところを通らないわけにいかないのでございますから、その点については実際の道路の必要の限度と、それから文化財のそこなわれる限界といいますか、そこでやはり適当な線を再考しつつ見出さなければならぬのではないかと思います。この再考をしていくということについては、私どもぜひひとつそのようにお願いをしようと思っております。
  143. 小林武

    小林武君 まあ新たな事態が起こったことですから、いろいろ遠回しにおっしゃったけれども、私は先ほど来言っているように、古都保存法なんという法律ができたいわれを考えてみれば明らかなことなんです。どこを掘ったって問題があるから、京都とか、奈良とか、鎌倉というところは、これは問題にしておる。ですから、私はその立場であまりかたくなにならないで、これは金が多少かかっても、何かのくふうというものはあるはずだ。私はかつて静岡県の登呂の遺跡については、道路公団の皆さんや何かにお願いをして、あそこをまたいでくれということをお願いして、そうやったことがある。これは非常にお願いしたら、案外簡単にやってくれた。私はまたぐ線が今度の場合いいとは思っていないが、しかし、それにやはりそれだけのことをやっておく必要がある。それが私たちが伝統を重んずるとか、国の何を重んずるということだ。そういうことをさっぱりやらぬでおいて、紀元節とか何とか言っておることは、これは少し頭がおかしい。ですから、私はそういうところには金を出すべきだと思うから、いままでいろいろ事情もありますからむずかしいと思いますけれども、やはり十分御検討の上、こわさないという方向でやる努力を、両方のほうでひとつ十分御努力をいただきたい。これは宮内庁のほうでも十分お考え願いたいと思う。あなたのほうでこれだけのあれをちゃんとはっきりしておいて、どこを通るのか、通ってもこわれないというんじゃだめですよ。  それから申しわけありませんが、最後に一つ残しますと、発掘について、きょうおいでになった方は、道路公団の方おいでいただいたし、それから運輸省の方もおいでになって、まことに申しわけないですけれども、私はここで運輸省のほうに申せば、山陽新幹線ができる。なかなかうまくいっているような話だけれども、現地に聞いてみると、たとえば文部省の講習を受けた中でも、いろいろ問題があるようです。出てきてもなかなか簡単に、遺跡について保存してやるというようなことについてはなかなか言わないらしい。これは岡山県の教育委員会の高橋護という人が新幹線の場合について言っている。「現場の工事担当官が事前協議の交渉相手となった点に問題がある。」と、こう言っている。現場の人ですから工事をやることだけにやっぱり重点がいくわけです。この点についてはお互いの覚え書きも出されておって、従前にちゃんと手を打たれてあるんだけれども、現場と、それから中央との関連でなかなかうまくいかぬということがある。それから北陸自動車道路の場合においては、金沢において——これは道路公団のほうだと思うけれども、なかなか手きびしいことを言っているらしいですよ。そんなもの知ってるかという態度であったらしい。だから、関係のひとつ建設省、運輸省、それぞれが十分事前の協議をするということについて、これは柳川前課長説明した中にあるが、事前協議による調整という問題、この問題についてはひとつ十分やっていただきたいと思うし、それと同時に原因者の負担の問題ですね。これもずいぶんかわいそうなことを言っているのありますよ。二十万ぐらいでやれといったら、実際において百万もかかって、そうしてそれを担当した、引き受けた考古学者が利子を取られた、金を借りて火を吹いているようなことだってあるんですよ。だれが出してくれるかわからぬ。結局、県が出してくれるだろうけれども、神奈川県ですかね、出してくれるんだろうというのだけれども、何だかまださっぱりはっきりしないということがある。ですから、私は原因者の負担という問題について、事実は原因者が当然負担するんだという考え方ばかりに達するのはちょっとおかしいのですよ。文部省のほうはそういう態度らしいけれども、私はそういうことばかりじゃないと思っている。国がやはりうんと予算を取るべきだと思う。柳川課長もあの中において、十億ぐらい金がやっぱり必要だと、こう言っている。剱木文部大臣のときにせめて五億でも取ってくれたらだいぶ担当のあれ喜ぶだろう。これはひとつこの次に延ばしましょう。  それから、最後に一つだけ文部大臣に申し上げますが、台帳ができているんですね。台帳ができて十四万件、そのうちの六千件というのが重要だと、こう言っている。その六千件というのは一体どのくらいに当たるかといったら、たった五%ですね。あとの九五%のものが、大体、台帳のあれからいってずっと話していくというと、九五%の遺跡というものは破壊されてもしかたがないという結論に聞こえた、こう言っている。もしそうだとしたら、私は重要な問題だと思う。この間講習を受けた人たちが、いろいろ文部省側の講習を受けたら、十四万件あるうちの六千件だけは——その中にもおかしなのがある、こう言っている。だから、かりに六千件というのを考えても、九五%をぶちこわしてもよろしいという破壊を前提にした考え方に立っている、こういう一体文化財行政というものがあるのかどうかということについて、文部大臣はひとつ御検討いただきたいと思うんですよ。ほんとうに九五%ぐらい吹っ飛ばしていいというお考えなのかね。これは埋蔵物文化財のことですよ。もし九五%破壊してよろしいというようなたてまえで、これからこの行政をおやりになるのだったら、私は猛烈に反対しなければいけないと思う。これについて文部大臣の御意見どうです。
  144. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 史跡として保存すべきものの価値判定の問題だと思いますが、現代の日本の行政から申しまして、国土の狭いところで人口がこうふえてきて、産業が発展してくる、こういう状況におきまして、文化財の全部を一〇〇%どうしても保存していくということが困難なことは、まあ、避けられないと思うのですが、ただ、そのうちでどうしても保存しなければならぬかどうかという価値の問題につきましては、相当検討を要する問題だと思います。五%だけが価値があって、他のものは全部こわしてもいいかどうかという問題につきましては、これは文化財のほうでも相当検討してもらいたいと思っております。
  145. 小林武

    小林武君 それから運輸省にお尋ねいたしますが、新幹線の問題について先ほどもちょっと触れましたが、これについての予備調査についてどういう手配をしているのか。それからそこに遺跡があらわれた場合には一体どういう文化財方面との折衝をやっていくのか。それから現場の人たちというのはやはり工事優先ですから、これは当然だと思うのですよ。工事優先だと思うが、現場の人には相当荒っぽい人がいるというような話も出ているようですが、一体それに対して、新幹線のほうとしてはどんなことになっていますか。
  146. 黒住忠行

    説明員(黒住忠行君) 中央におきましては、文化財保護委員会の事務局長と国鉄の副総裁の覚え書きを交換いたしまして、万遺憾なきを期するということに相なっておりますが、具体的には、事前におきまして各県の文化財保護委員会と十分協議いたしまして実施をさしている次第でございます。具体的には、岡山県におきましては、目下のところ六カ所該当のものがございまして、本件につきましては四十二年度に約一千万円、四十三年度には六十六万円ばかりの支出をいたしまして発掘調査を行なう予定でございます。本件につきましては、岡山県知事と新幹線の工事局長との間に契約書が結ばれております。それから兵庫県につきましては、該当の伊丹市、尼崎市、明石市、高砂市、姫路市、太子町、それから赤穂市というところに遺跡あるいは古墳があるようでございますが、その詳細につきましては現在協議中でございまして、昨日も関係の者と兵庫県庁におきまして話し合いを行なっております。われわれといたしましては、中央におきまして覚え書き等を結びまして、その御趣旨に沿うように処置いたしたわけでございますが、御指摘のような、現場におきます工事担当者がこれらの文化財の重要性について十分認識いたしまして万遺憾なきを期するように、今後も強く指導をいたしていきたいと思う次第であります。
  147. 小林武

    小林武君 それからあれですか、国鉄の場合には、特にこの工事計画の公表というのを避けると聞いているのですが、公表を非常に、何といいますか、あまり前に公表したくないという、これはいろいろな事情があるということは了承しますけれども、そのために調査ということがなかなかやはり不便だということもあるわけでありますが、この点については大体の、どこのどこらあたりを調査するというようなことについて、もう少し調査のたてまえから便宜をはかるようなことはできないのですか。
  148. 黒住忠行

    説明員(黒住忠行君) 新しい線をつくります場合におきましては、事前に写真その他で調査をいたすわけでございますが、具体的には非常にこまかい工事実施の計画に相なっておりますので、その工事実施の路線につきましては運輸大臣が認可いたしております。したがいまして、認可いたしましたものにつきましては、これを公表している次第でございます。それから、それ以前の調査につきましては、たとえば山陽新幹線の場合におきましては、さらにおおよその計画地等の認可も事前に行なっております。そういう場合におきましても公表いたしている、そういうことでございますので、地元にはなるべく早くお知らせいたしまして御協力を得ないと工事の円滑は期せられませんので、いま申し上げましたような方針で、地元の御協力を得つつ工事を進めていきたいと思います。
  149. 小林武

    小林武君 道路公団にちょっとお尋ねいたしますが、金沢で、だいぶ学者の側の申し入れに対して、道路公団側としては強硬な態度に出られたと、こういうふうに私は聞いています。名前も聞いたのですけれども、責任のある方だと思うのですが、一体、道路公団は、北陸自動車道路のあれにあたってはどういう指導をやっていらっしゃるわけですか。
  150. 藤森謙一

    参考人(藤森謙一君) ただいま小林先生の御質問でございますが、さっそく新聞に出ましたもので、金沢の建設局の発言した上司に問い合わしましたのでございますが、何かの行き違いで、そのような強硬な発言はしておらないということでございます。それで、私のほうの指導は申すまでもたく、従来やっておりました方法と同じでございますが、文部省はじめ関係官と密接に連絡をとりまして、出先におきましては関係県の教育委員会、それから本社におきましては文部省の委員会といろいろ覚え書きの案も大体でき上がっておりますが、これをもちまして、従来、名神、東名、中央道等でやってまいりましたとおりに十分協議いたしまして、これに臨むという態度を守っております。今後こういうことがないように、どういうことで伝えられましたのか、現地の部長に注意を喚起いたしております。
  151. 小林武

    小林武君 私は福井県のこの方面のあれを調査でなくて見学に行ったことがあるんですよ。福井県というのは非常にたくさんこわされております。驚くほど破壊されております。それで、私が福井、富山、石川、あの方面に道路ができた場合には、福井を含めた非常にたくさんのところが出てくるんじゃないか、その場合に、これがことばの行き違いであればけっこうですけれども、とにかく工事はどんどん進めていく、調査はとにかく工事をじゃまするようなやり方は困るとか何とかいうようなことでは、やはり困るんじゃないかと思うのです。それで、このことは私は建設省も運輸省も、道路公団も同様でございますけれども、武藤教授という方がこういうことを言っている。記録保存だけということで、やっておって、事前調査をやると、それが思いがけなく破壊に忍びないような発見がされることがある。その場合の保存に切りかえるときの措置が、調査団が保護と開発の板ばさみになるときだと言うんですね。そのときに一体どう国家的な見地から残していくかということになると、これはもうその間の関係者の人の問題になってくるんだということを言っている。だから、私はやはり国家的見地に立つということを言っておるのは、私はいろいろな法律ができるのはそこだと思うのです。文化財保護法などだけでやれそうなのに古都保存法ができるというようなぐあいに、これがやはりいろんな方面からお互いが協調するという形をとるべきことを意味しておると思いますので、どうぞひとつ関係の方面の方々の御協力を仰がなければならないと思いますので、よろしくひとつお願いをしたいと思います。  それから文部大臣に一つだけお尋ねいたしますが、太宰府ですね、太宰府は史跡の指定をやっていないようなんですね。西鉄がどんどん土地を——西鉄傘下の土地会社で同じ資本内容でしょうが。そうして、いまやとにかく太宰府のまわりにはうちが建ってしまって、どうにもならなくなってしまっている。口が悪い人は、西鉄にある時期まで指定しないでやらしておいて、のっぴきならぬ段階に追い込んでおいて、あとはこれだけはどうにもなりませんというようなことを言うんじゃないかというような話をしているものもあるんですよ。大臣の出身地でもございますし、太宰府というのはこれはもう史都ではございませんけれども、いわゆる何々宮ではございませんけれども、いわば当時の史都に準ずる出店のような重大なものであって、史跡としては重大だと思うわけです。なぜ一体史跡指定をまごまごしているのか。もう一つ、西鉄の現状というのはどうなっているのか、西鉄の土地会社の現状
  152. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) 指定の経過でございますので、先に御説明申し上げます。太宰府の史跡の追加指定につきましては、昨年三月、文化財保護委員会では内部決定いたしましたが、地元の一部に反対がございますので、福岡県の教育委員会並びに太宰府町を通じまして協議、説得につとめて今日に至っております。まだその間の話し合いがつきませんものですから、指定の決定を告示して対外的に効力を発効するに至っておりません。その協議の状況でございますけれども、現在までのところは、反対の方は、数からいえば町民の中の少数というぐあいに聞いておりますけれども、少数にもせよ、強硬に反対される方があるのに、強硬に告示いたしましても、指定保存するという趣旨が必ずしも実現できないおそれがありますので、さらに説得につとめたいと思っております。  それから指定が告示されない間における事実上の現状変更の問題でありますが、これもまあ指定が発効いたしませんと、法規に基いての規制はできないわけでありますけれども、実際問題といたしまして、県の教育委員会及び町と協力いたしまして、宅地の造成あるいは家屋の建築、これは太宰府のように非常に広範な地域を史跡に指定する場合には、絶対に禁止することは、かえって史跡の指定それ自体に対する反対を強からしめる、何と申しますか、角をためて牛を殺すような結果にも相なりますので、一定の条件で史跡の価値を損じないような現状変更は認めるような方向で指導いたしております。具体的に申しますと、たとえば、山はだの見えるところを広く削らないで、削るとしても隠れた部分を削るとか、あるいは家を建てるにいたしましても、高さであるとか、それから形であるとか、あるいは屋根の色などを周囲の景観と調和するような、たとえば地味な黒いかわらを使い、あまりとっぴな形の建物はつくらないという指導をいたしまして、認めつつ守っていくという方向でやっております。  西鉄の団地造成も、そういうことで無統制にやることは、これは困りますけれども、そういう狭義統制をはかりつつ、ある程度は認めていくというぐあいに指導しております。遠からず指定もして、指定を発効せしめて、史跡太宰府をさらに環境整備をして、前向きに保存していくことが可能であろうと思います。
  153. 小林武

    小林武君 そういうことはけっこうですが、ことばの上では。私も九州の太宰府のことは知らないんですけれども、皆さんも御存じのように、郊外に出たら違法建築でないものはないんです。もう土地造成やったら、そこへできるのはめちゃくちゃだ。火災のことも、衛生のことも何も無関係で雑然と建っているということは、この周辺の市なんかでは非鳴をあげているんです。そういうことを考えますと、私は案外、あなた、のん気に考えているとたいへんなことになる。土地会社は土地が売れればいいんでね。そういうこともありますから、十分ひとつそれについてはいまから注意して、あとで、これはしようがなかったというようなことを言わないようにしてもらいたいと思うんです。これについての質問はこれで終わりまして、この次にもう一回やりますけれども、きょうはこれで終わりまして、一つだけあと。実は、この間、資料を請求いたしておりましたので申し上げますが、文部大臣に。きのうの新聞では、死の灰が天水に、牛乳に入っているというようなことをずいぶん大きく取り扱った。天水を利用している学校というのは全国で十三校ある。この資料の北海道に一校あるというのは北海道のどこの学校だかよく知りませんが、これも学校を明らかにしておいてもらいたいし、それから天水というものを利用しているのは、どういう一体やり方をやっているのか。それから、私は東京にも必ずあると思うんです。東京にはないことになっている、この資料の中で。私はあると思うんです。ないはずがない、離島ですよ。それから香川県に、私が聞いたのでは一つあって、そこから希望が出たから私は調べている。そうすると、十三校以上になると思うんですが、学校の飲み水が天水でやったら衛生上どんなに問題があるかということは、これは体育局の関係の方もきていただいているが、私は調査してもらいたい。そういうものの影響があるのか、ないのか。さらには、いまのようなことになるとどうなるかということは十分考えて、何ならば、これについては国としては、十三校そこらですから、思い切ったやはり措置をしてやる必要があるのじゃないか、こう思うんです。  もう一つは、スクールバスやボートについて、国の補助はあるけれども、町村で断わったというのが北海道に一つ、そのほかに三、四県ある。それから鹿児島県にもある、こう書いてある。岩手県、新潟県、岐阜県にはないと、こう書いてあるが、これだけで一体十分わかるかどうか。資料は非常に急を要したので、御努力はよくわかっておるからあれですけれども、必ずしも全部を調べられたとも思わないが、これはしかし、そういうところはどこの市町村にそういうところがあるということを明らかにして、何らかやはり処置してやらなければならぬと思うのです。市町村がだめだというのだったら、どんなに必要でもだめだというなら、何らか、県がどうするとか何とかいうことを指導をしなければならぬ。そういうことこそ強力に指導すべきだと思うのです。ほかのことでやらぬでもいいなということを相当やっているようなこともありますから、強力に指導すべきことは指導して、ほしいものにやはり与えるというようなやり方をすべきだ。香川県の例をひとつ述べますと、そこにもしスクールボートがあれば飲み水も天水でなくて間に合う。わずかだから持ってこられる。学校の教師も大体通えるところがありますから、そういう点も非常に有利だということもいわれている。こういうことですから、もう少しやはりこの点については御検討いただいて、対策の点は文部大臣としてひとつ御考慮をいただきたい。これをもって終わります。
  154. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 他に御発言がなければ、本件に対する本日の質疑はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。   午後二時十二分散会      —————・—————