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1967-05-30 第55回国会 参議院 文教委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月三十日(火曜日)    午前十時三十九分開会     —————————————    委員異動  五月二十六日     辞任         補欠選任      辻  武寿君     北條  浩君  五月二十九日     辞任         補欠選任      鶴園 哲夫君     千葉千代世君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大谷藤之助君     理 事                 楠  正俊君                 中野 文門君                 秋山 長造君                 鈴木  力君     委 員                 北畠 教真君                 近藤 鶴代君                 玉置 和郎君                 内藤誉三郎君                 吉江 勝保君                 千葉千代世君                 柏原 ヤス君                 北條  浩君                 林   塩君    国務大臣        文 部 大 臣  剱木 亨弘君    政府委員        文部大臣官房長  岩間英太郎君        文部省初等中等        教育局長     斎藤  正君        文部省大学学術        局長       天城  勲君    事務局側        常任委員会専門        員        渡辺  猛君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法  の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院送  付)     —————————————
  2. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。去る五月二十六日、辻武寿君が委員辞任され、その補欠として北條浩君が選任されました。また、昨二十九日、鶴園哲夫君が委員辞任され、その補欠として千葉千代世君が選任されました。     —————————————
  3. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本法案につきましては、すでに提案理由説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。  なお、政府側より、剱木文部大臣天城大学学術局長が出席いたしております。
  4. 鈴木力

    鈴木力君 この法案提案理由によりましても、この法案提出の主たる理由一つに、大学急増対策ということが含んでおるということなんですが、この方向について私ども賛成なんですけれども、問題は、この大学急増対策というのはどういう形で進んでいけばいいのか、この辺についてはずいぶん問題があるだろうと思います。それで、その問題について若干伺いたいのですが、統計が出ておるか出ていないかわかりませんけれども、ことしの高等学校卒業生と、それから大学志願者、それから大学募集定員、したがって、これらの結果から浪人がどの程度に出ているのか、浪人状況がどうなっているのか、これらのあらましについてまず説明をいただきたいと思います。
  5. 天城勲

    政府委員天城勲君) 本年度数字につきましては、指定統計の発表がまだございませんものですから、推計でございますので、御承知願いたいと思います。四十二年三月の高校卒業生が百五十八万八千と推計されます。そのうち大学への志願者、これの推計をとりますと五十三万七千ございます。約三三・八%と推定いたしております。それから浪人の問題でございますが、これが最近の動きが非常に浮動でございまして、前年度受けた者がどのぐらいもう一度受けるかという過去のいろんな実績からいろいろ推定いたしておりますが、最近はやや下がっているような傾向がこの二、三年出ておりますので、それで本年度は大ざっぱに言って、数字的に言いますと、二十一万七千という数字検討したわけでございますが、大体二十万ちょっとぐらいじゃないかと思っておりますが、合計で七十五万四千という受験者が出る、これに対しまして入学実員が、これまた各学校定員はわかっておりますけれども私学等における実員が最終的にまだわかりませんものですから、これも大ざっぱな推計でございますけれども、四十一万から二万ぐらいは結局合格しているのじゃないか、こういう検討をいましております。大体以上でございます。
  6. 鈴木力

    鈴木力君 そういたしますと、これは推計ですからやむを得ないわけですが、大体ことし入学しかねた学生というのが十二、三万というところですか、そういうふうに聞いてよろしゅうございますね。
  7. 天城勲

    政府委員天城勲君) いま申し上げました基礎数で申し上げますと、やはり二十数万になるんじゃないかと思います。   〔委員長退席理事中野文門君着席〕
  8. 鈴木力

    鈴木力君 浪人を入れると三十万ぐらいになりゃしませんか。
  9. 天城勲

    政府委員天城勲君) いまのは浪人の数だけでございます。
  10. 鈴木力

    鈴木力君 これは数字の問題でありますから、あとで調べればわかることであって、また、多少違ったところで大きな問題じゃないわけでありますが、問題は入学志願者の質の問題もあろうと思うのですね。質というのは、質的にいいか悪いかじゃなしに、事実上の志願者と、それから結果的に出た志願者との数が、これは統計をとれと言ってもちょっと無理だと思いますから、それはお伺いはいたしませんけれども、要するに、大学入学を希望している者が、希望しながらも、いまのような入学試験その他の競争の状況から進学をあきらめておる者というのも相当あるような気がいたします。そういたしますと、まあこれはつかんでいないから確実というわけにはいきませんけれども、大体まあ二十万前後というのが毎年浪人としてはき出されていく、さらに潜在志願者といいますか、さきに私が申し上げましたような、そういうものも含めますと、大学進学対策というのは、これは相当重要な問題になってくるだろうと思うのでありますが、そこで、ことしこの大学設置をいたしまして、若干急増対策はできた、とかし、ことしの定員増ぐらいでは、いまの伺いましたところのはみ出した学生の救済という形にはほとんど手が届いていないと思うのです。したがいまして、私が伺いたいのは、ことしのこういう状況から将来の急増対策構想を持っていられるのかどうか。持っていられるなら、どういう構想急増対策をなさるか、それを伺いたいと思います。
  11. 天城勲

    政府委員天城勲君) 実は急増対策ということばが適当かどうか、ことばとしては私どもも疑問に思っております。現実にいわゆるベビーブームの波がだんだん年とともに上級の学校の門に迫ってきたという事実から、ここしばらくの間、大学志願者が非常にふえると、そういう事実はわれわれも十分考えております。と同時に、最近、大学への進学希望率と申しますか、率そのものもだんだん上がってきておる、その量的な問題と、それから進学志望者志望率上昇と、この両方からいわゆる急増期をどう処置するかということを、四十年、四十一年、四十二年あるいは四十三年くらいのところで、大体数字的に見ますと山になるものですから検討いたしておるのでございますが、御存じのとおり、計画と申しても、われわれ私立大学あるいは公立大学につきまして、御存じのような許認可の権限責任を負うだけでございまして、実際のところまでいろいろ規制をする立場にございませんものですから、数字的にいって数を確保するという措置はできないのでございますが、大体、全体の見通しと流れの中で、過去の実績から見まして、志願者の六割くらいがその年に入っておるようでありますが、多小の出入りはございます。五〇%台のときもございますし、六〇数%のときもございますけれども、大体、志願者の六〇%を中心としたくらいが入学できるようにしませんと、当該年度子供たちに非常に不公平な扱いになる。その辺を非常に大きな目安でございますから中心いたしまして全体を考えておるわけでございます。過去においても大体その辺のところで入っておりましたので、その辺の合格率が維持できれば、非常にふくれ上がった時期におきましても、さほど不公平なことにはならないだろうというのが一つ考え方でございます。なお、全体の規模がどうなるかということにつきましては、進学率上昇ぐあいとか、あるいは各学校規模の問題等いろいろな関係がございますので、あるいは最終的にも数字的に申し上げたようなまだ計画というものは持ってないのでございます。
  12. 鈴木力

    鈴木力君 そういたしますと、今後ずっと六〇%の進学率——進学率といいますか、合格率といいますか、志願者に対して六〇%くらいはずっと学校進学していける、そういう態勢をとりたいというのが、いまの文部省の方針だと、こう承っていいわけですか。
  13. 天城勲

    政府委員天城勲君) ここ数年の、いわゆる急増期においても過去の大体六割前後の合格率というのは維持しなければならないだろうというのが、いま申し上げた考え方でございます。と同時に、大学全体の量的な問題を考えます場合に、よく言われることでございますが、大学生が多過ぎるとか、あるいはもっとふやせという議論もございますが、これらにつきましては、大体、同年齢層の何%ぐらいが高等教育に在学しているかというような大数的な見方もひとつございまして、これは逐年上がってきておりますけれども、これも一つの全体をながめる指標になろうかと思います。私たち高校からの進学率という問題と、それから合格率という問題と同年齢層の何%ぐらいが大学にいくかというその点が、非常に大観する一つ指標になるのではないかと、大ざっぱにそう考えております。
  14. 鈴木力

    鈴木力君 私はいまこれを伺いましたのは、大学が多過ぎるとか、少な過ぎるとか、そういう議論は確かにあることも承知しておりますが、この問題はちょっと簡単に議論してもどっちだという結論は得られそうにありませんし、また、文部省としても、この問題はさらに研究なさっていることだと思いますから、そういう点についてはあと回しにするのですが、ただ、少なくともいまの教育の問題で、大臣はこの前、文教委員会秋山委員質問に対しても、いまの六三制をくずすという考えはない。六三制を基準にして充実をしながら、その欠陥を克服するために検討する。そういう意味のことをお答えいただいたと思うのですが、そのお考え方に私ども賛成なんですが、そこで、そういう立場に立ちまして、いま最も問題になるのは六三制と言いますか、六三三四の教育体系、この六三制の教育を最もゆがめているのがいまの大学——大学というよりも大学入学試験なんです。こう現在言われております。これはおそらく中教審からの答申の中に後期、中等教育あり方ですか、拡充整備について、その答申資料の中に、そういう意味のことが指摘をされている。したがいまして、入学試験あり方をどうするかということだけでも、しかし、救いようのないような気がする、入学試験という問題と、それからいまの大学定員志願者関係と、それからいまの後期中等教育なり、六三教育体系の問題なり、こういう問題が一貫して検討され、打開をされていかないと、いまの状態がいつまでも続くんじゃないかという気がいたします。したがいまして、いまの、今後の何と言いますか、大学志願者に対する対策は一応おくといたしまして、入学試験制度について文部省がいまどうお考えになっいていられるか、あるいは改善案等があったら、その具体的な御意見等も伺いたいと思います。
  15. 天城勲

    政府委員天城勲君) 御指摘のとおり現在の大学入学試験制度と申しますか、あるいは問題が高等学校以下の教育に相当な影響がある、また、しかもこれは日本において独特な教育上の問題ということについても、われわれの認識も、先生のおっしゃる点同感でございます。また、浪人という問題も日本独特の問題だと言われるわけでございます。これは私、基本的には入学選抜というものは、学生高等学校から大学への受け渡しといいますか、授受にあたるものですから、両方協力しなければならぬということが基本的だろうと思います、高等学校側も、大学側も。そこで従来、大学入学大学学生をとるのだから、大学意思できめるという基本線がございますけれども入学試験も、いわば大学側意思だけでやればということに対して、やはり三年間ならば三年間、高等学校の指導の成果というものは、ただ一回の試験よりもはるかに信憑性が高いのじゃないかということで、具体的には高等学校調査書を重視してほしいという要望も高等学校からございますし、また、これに関するいろいろな調査等からも、高校成績というものと入学成績との関連においてかなり相関度が高いというようなことも調査の結果が出ておりますから、最近は一つ方法として、高等学校調査書大学入学選抜に大いに重視するということを一つ考えております。これはある意味では単なる受験勉強というもの、あるいは受験技術というものから受験生を解放しなくてはならぬという考え方一つあるわけでございます。  もう一つは、この高等学校調査書を尊重する一つ方法として、両校からの特に責任を持って推薦する制度、最近はよくマルAなどということばを言っておりますが、学校で特に責任を持って推薦できる人は、そういう調査書の書き方もけっこうであるというような実態がだんだん普及してまいりました一方、高等学校内申書の問題、あるいはその他の大学の入試に関して、あるいは格差とか、各大学のばらばらの状態がよく問題になるものですから、これは中教審答申に基づきまして、いわゆる能研の実験的な仕事も進んでおります。これは能研につきましてはいろいろな批判もございますようですが、基本的な考え方としては、そのテストを、いわゆるアチーブメント的なものだけでなくして、もっと能力適正を見るテストが必要じゃないかという面での研究を進めていろ機関がございますと同時に、全国的に行ないますれば、いわゆる格差と言われている問題、あるいはいろんな評価の場合の一つのものさしと申しますか、標準に使えるのじゃないかというようなことから能研趣旨を理解していただくようにいろいろお話ししているわけでございますが、これは強制というわけにまいりませんので、学校の理解の得られるところからこれを活用していく、こういうようないろんな方法でもって改善にわれわれも努力しております。具体的には私たちのほうに入学試験改善委員会を設けまして、これに大学側高等学校側の方々を委員になっていただきまして、両者で構成して検討していく、国大協におきましても特別委員会を設けて、入学試験の問題を検討しておりますが、高等学校側でも、高等学校協会の中で専門機関を設けて、たえず検討いたしておりまして、それらの機関意思ができるだけ歩み寄っていい方向が出るようにお互いに努力しているというのが実情でございます。
  16. 鈴木力

    鈴木力君 いつ聞いてもこの種の問題は研究している、いい方向にいくように努力をしておる。これはもう何年か同じことを繰り返しているという気がするのです。入学試験がいまの教育をゆがめているということは間違いない事実だと、私はそう思うのですけれども、そういたしますと、研究しておることによって、これが是正をされるのかどうかということになりますと、これはちょっと心細い話だと思うのです。少なくとも私どもいま詳細に見ておりませんにしても、いろんな話を聞いたり、いろんなものを読んだりしてみても、この大学入学試験のもう影響中学校にきておるわけです。ひどいところは小学校にももうきておる。ここまできておるのです。いま研究しておるということではどうも私どもは納得し切れないような気がするのですが、もう少し何か案がありそうな気がするのです。たとえば、いま伺いますと、基本的に両方協力しなければならない、このことについては異論がございません。ところが、両方協力しなければならないというのは、おそらく戦後のいまの教育制度始まって以来のことだったと思う。それはみんなわかっておって協力ができなかった。だから、いまのような結果が出てきたわけですね。そういたしますと、協力ができないという理由はどこにあるのか、その辺は検討していらっしゃいますか、どこにあると思いますか。
  17. 天城勲

    政府委員天城勲君) まあ私、研究しているということを申し上げたのは、ただ考えているという意味で申し上げたのではございませんので、法律制度のようにすぱっと変えて、新しくそれへ切りかえるというようなことがこの場合にできないものでございますので、いわば積み上げ的な努力を繰り返さなければならぬ、その意味で申し上げたら、表現が毎年同じようなことだということになるかもしれませんが、それなりの努力は重ねて、それから私は私の考えておるところでも非常にテンポはおそいと思うのでございますけれども、いずれも皆さんが現状でよくないという認識においては一致しておるわけですから、できるところから改革しようということからやっておることはもう事実でございます。先ほど申した調査表の重視の問題、調査表をどういうふうにしたら最も利用しいいかということで毎年くふうし、その点の改正を行なっていくということは努力いたしておるわけでございます。一番先の問題でございますが、高等学校大学の問題、協力し合うという問題、これは、実は具体的なことでございますが、実は中教審の三十八年の答申がございまして、能研制度を創設いたしましたときに、これこそ高等学校側大学側協力体制一つの橋渡しの場になるのじゃないかということで、全国的にはもちろんでございますが、府県の単位に地域の高等学校大学とで入学試験の問題をめぐる懇談会がいろいろ開かれたのでございます。ある場合には文部省があっせんしたものもございますし、また、われわれが招かれて出たものもございます。あるいは地域的に開かれたものもございますが、そのときに、私もあるところで、入学試験の問題をめぐって両者で会合を開いたことは初めてだという話もあったくらいであります。要するに、場を同じくして話し合う機会がなかった、非常に妙なことでございますが、それが一つあったと思います。それから大学側で、やはり入学の問題は自分たち仕事だから自分たちでやるのだという気持ちが非常に強かったのじゃないかと思います。そういう点がだんだん両方意見が歩み寄ってまいりましたのと、それから何よりも、これはわれわれも非常に進めておるのでございますが、追跡調査をやってみますと、問題がかなりはっきりいたします。それをなかなか大学がやらなかったのですけれども、最近、かなり積極的に熱心な先生がおられてやっておられますが、こういうことがあらわれてこういうことになったという事実が積み上がってまいりました。ただ、口で申しまして、外部から言ってもなかなかその結果が実質的にこれがわからないものですから、私ども追跡調査ということをできるだけやっていただきたいということを申し上げたのでありますが、それによって高等学校側との関係高校教育その他の条件もだんだん明らかになってくるものですから、これは一つのいい方法じゃないかと考えております。
  18. 鈴木力

    鈴木力君 努力していないとは私は決して申し上げません。努力していることは認めますけれども、効果のある努力をなさっていただかないとなかなか期待に沿わないのじゃないかと、こういう意味で申し上げておるわけですから、したがって、いまの懇談会ができた、あるいは追跡調査の結果が出てきてだんだんに改善をされていく、こういう話を承りますと、たいへん明るいみたいな話になりますけれども、しかし、現実にはもう中学校から試験準備はいまから始まっておるわけです。それで、中学校入学試験準備をいまから始めているのは、問題は大学入学試験というのが頭にあるのです。それからきて高等学校入学試験の問題か出てきて、中学校と、こう動いてくるわけですから、こういたしますと、そうあまりのんびりばかりもしておられないような気がいたします。したがって、私はいまの能研テストという話も出ましたけれども能研テストがいいか悪いかという議論を始めますと、これはまあたいへんな議論になると思いますから、これはあと回しにしたいと思いますけれども、たとえば、能研テストの話がいま出ましたからちょっと伺いたいのですが、国立大学能研テスト入学試験に採用している大学は幾つございますか。
  19. 天城勲

    政府委員天城勲君) ちょっとその前に、御質問受け取り方として、私はこう理解するのですけれども能研テストだけで入学試験にかえてしまうという考え方のところはもう一つもございませんし、それから能研自身があの思想の中にその考え方は初めからございません。入学選抜資料としてどこまで使うかという見方だと思います。これにつきましては、いままでいろいろな経過がございますが、四十二年度の例で申しますと、国立大学入学選抜資料にした大学はことしは一校でございます。
  20. 鈴木力

    鈴木力君 相当ある国立大学でこの能研テストの結果を当然資料として使うわけで、それを入学試験にかえろとは申しませんが、資料として採用しておる学校が一校ある。これは私が聞けば一校しかないと聞くほうがむしろ正しいと思います。なぜ能研テストがこのように国立大学のほうに採用されないのか、この辺については文部省としては検討しておりますか。
  21. 天城勲

    政府委員天城勲君) これは私は一つはたいへん能研テスト趣旨誤解されておるということが一つあると思います。一つは、いま申したように、個々の大学の行ないます入学選抜試験はやめてしまって、これにかえる。しかも、かえさせようとして強制力がどっからか及ぶのじゃないかという誤解がかなり最初にあったと思いますが、能研のものの考え方の中にはそういう思想は初めからございませんでしたが、それが一つ誤解じゃなかったかと思っております。もう一つ入学選抜の何と申しますか、実施の権限大学にあるのだ、だから、大学にあるのだということは自分が問題を出して自分が採点して、自分が最終まできめなければ大学選抜権を完全に行使していないのだという考え方日本では非常に根強いのじゃないかと思います。よく言われますが、諸外国でも入学選抜にここまでやっている国というのは例外中の例外じゃないかと指摘をされておるくらいでありますが、そういう伝統とものの考え方でございますから、第三者の、あるいは第三機関資料を使うということに対して消極的であるということが依然として大きな原因であろうと思います。もう一つは学力のテストと、それから能力テストというものに対して、これは理論的な問題というよりも学問的な問題かもしれませんけれども、十分に実績ないしは検討も進んでおらないために、まあ従来からいけばアチーブのほうが安全だという気持ち一つありまして、能力テストのほうはなかなか食いつきにくいということが一つあると思います。もう一つは、全国的に見た場合に、特に私学にはもう一つ財政上の、私学経営上の問題が日本ではからまっておりまして、これは理論ではわかっていただきましても、現実私学経営上の問題、特に財政上の問題がからまっているものですから、ちょっと別の要素が加わってきておると思います。国立だけでもという議論が出てくると思いますが、国立についてはいま申したようなものの考え方がございまして十分に浸透いたしておりません。先ほど申しました追跡調査と申しますのは、高等学校成績、あるいは能研成績、あるいは大学の行ないました試験入学試験、そういうものと入学後の成績というものをかなり追跡調査して調べておる大学がございます。また能研でもいろいろやっておりますが、そういう実績の中からそれぞれのテストの持っておる意味というものがだんだん明らかになってまいりますれば、以上の理解が進むのじゃないかと考えております。一方、大学能研テストを利用する場合に、これはもう新聞にも出たことで御存じだと思いますが、芸大が昨年は採用いたしました。ところが私たちから見ますと、いろいろな他の要件を、他の要素を織りまぜて学生の激しい反対連動が起こりました。ことしは長崎でやりましたけれども、長崎についても同じような他の問題とからみ合った激しい反対運動、あるいは場合によりますと、学園紛争の一つの具になってしまった。ことしも国際キリスト教大学で大きな紛争が起きておりますが、これも何か能研テストがきっかけのようになってしまって、この辺、私たいへん能研テストを純粋に考えるべきものなのに、残念な現象が続いておると思っております。
  22. 鈴木力

    鈴木力君 入学試験能研テストの話を繰り返していると長くなりますが、しかし、私はこれは非常に重要な問題だと思いますので、きょうのこの設置法のことは、直接はこれによってどうこうという問題でもありませんから、時間の関係もありますので、私はきょうはこの問題はこれでやめておきますけれども、ちょっとお願いをしたいのです。それは大臣にも聞いてもらいたいのは、たとえば能研テストというのを文部省がつくったといいますか、文部省の方針のもとにやっておるわけです。これをやり出してからもう相当の年数ですね。相当の年数なのに、たとえば入学試験資料にできるという考え方からやっておっても、たくさんある国立大学でことしは一校だ、前に採択した学校はもうやめる、こういうことを繰り返しておるわけです。私立大学もそうです。そのときに、ただ、趣旨がわからないのだ、誤解なんだ、そういう形でだけこれを言い切ってしまっておるということは、これはちょっと私は問題が多いと思うのですね。いまの大学考え方が悪いからしょうがないのだ、大学入学試験自分でやって自分入学者をきめるという考え方は外国には少ないけれども日本には多い。この根性が直らないから幾らいい指導をしてもだめなんだ、そういう言い方できめつけてしまって、この問題をずっと続けておっても、私はこれは意味がないじゃないかという感じがするのです。これは能研テストについては私も意見がありますけれども、これはあとでいつかの機会に申し上げたいと思うのですが、こういう問題については再検討したらどうかという感じを持っておるわけであります。と同時に、この入学試験全体の問題については、できるだけ早く、文部省としてもこうなんだ、あるいはここから手をつけるという具体的な問題等についても、これは努力をしてもらいたいと思います。ついででありますから、この能研テストの問題についてはいろいろな資料あとで私はちょうだいして、私も少しこの問題については勉強してみたいと思いますから、あとでお願いしたいと思う。能研テストじゃなしに、この入学試験の問題はそれだけでやめますが、したがいまして、第一番に私が申し上げましたこの大学急増対策、これを提案理由を拝見いたしますと、学校の学部を創設をいたしましたり、そういう形で急増対策の一環としてやられた。その一環としてやられたことについては賛成でありますけれども、しかし、急増対策というのは、学部を一つか二つつくったって、これだけで急増対策を済ましましたということでは、いまの問題の解決の糸口にもつかないような気がいたしますから、そういう面も総合的に今後検討願いたい、こう思うわけであります。  その次に、ちょっと進みますが、この法案で出されております芸術工科大学について、実は、これは私はいろいろな形で審議を早くしてくれと言われますけれども、ちょうだいしている資料では審議のしようが私にはない。提案の理由もございますけれども、新しく日本にまだ全然なかった芸術工科大学というものを今度つくるのですから、もう少し親切に、審議を特に本気にやれという場合には、どういうものを一体芸術工科大学というのか、その構想は一体どういうことになっているのか、そういうような資料をお出しいただいて、そうしてその資料を拝見の上で、あとでこれについては質問申し上げたいと思います。資料を提出していただけることはよろしゅうございましょうか。
  23. 天城勲

    政府委員天城勲君) 結論として、いま間に合う資料をさがしまして提出いたしたいと思います。いますぐのことでございますね。
  24. 鈴木力

    鈴木力君 すぐと言いましても、できない相談は申し上げませんから、できるだけ早くいただきたい。
  25. 天城勲

    政府委員天城勲君) 至急提出いたします。
  26. 鈴木力

    鈴木力君 それでは、いまの芸術工科大学のほうは資料をちょうだいいたしましてから後刻御質問申し上げたいと思います。  その次に、教員養成大学の名称の変更について若干伺いたいと思います。学芸学部を教育学部に、あるいは学芸大学教育大学にする、この件につきましては、前の通常国会のときにも相当議論した問題でありますから、私はこれをむし返しはいたしません。ただし、前に名称変更いたします場合に、私どもは名称だけ変更しても何にもならない、そういうことをずいぶんくどく申し上げた記憶があるのでありますが、まず、一カ年前に学芸学部を教育学部に切りかえて名称変更した大学について、中味を具体的にどう変えているのか、それらについて御説明をいただきたいと思います。
  27. 天城勲

    政府委員天城勲君) 当時、昨年の法案の御審議の際に、名称変更とそれに伴う諸措置についての質疑がかわされたようでございます。私あとで速記録で拝見いたしましたけれども、要するに教員養成の目的、性格を名称の上から明らかにしていくということで、その後、文部省としてのとりました措置といたしましては、主として五教科を中心としました学科目の整備、具体的には教員の充実でございますが、そのような措置を進めてまいってきているのが、その後の実情のごく大ざっぱな基本でございます。
  28. 鈴木力

    鈴木力君 もう少し詳しく伺いたいのですけれども、五教科の整備、教員の充実をはかった、これだけじゃちょっとぼくはのみ込めないのですけれども、五教科というのは何々なのか、それからまた、大学設置基準がどういうふうになっているのか、あるいは手続として各大学教育課程をどういう形に直したのか、それらの点を相当詳しく伺いたいと思う。
  29. 天城勲

    政府委員天城勲君) たいへん符牒みたいなことを申し上げて恐縮でございました。私たち五教科の整備と申し上げておりますのは、国語、理科、数学、社会、英語の五教科でございますが、これの充実ということで、実は教官組織がこういう科目について不十分な大学がございましたので、これの充足をはかってまいりました。四十一年度で五十九名、四十二年度六十三名の教官増をいたしたのがこの措置でございます。それからこれは一つの試みでございますけれども、東京学芸大学、これは御存じのとおり、名称が適当なものがございませんものですから、まだきまらないわけでして、教育大学と申しますと、東京教育大学がぶつかってしまうものですから、まだそのままの名称でおりますが、この東京学芸大学に、初めて教員養成を中心とした修士課程、大学院の設置をいたしまして、教員養成大学の学問的な水準の向上と同時に、教員養成を中心とした大学院のあり方というもののその一歩を踏み出してみたのでございます。  そのほか、カリキュラムの問題でございますけれども、これはカリキュラムと申しますか、全体の基準でございますけれども、これは大学設置審議会の基準分科会で、基本的な大学全体に通じます大学基準の御答申が一応出ておるわけでございますが、その後、専門分野でとの関係学部基準というものが、なお検討中でございまして、教員養成学部につきましては、その関係学部の基準の一つとして検討はされておりますけれども、まだ具体的にきまったものが出ておりません。大ざっぱに申しますと、その後の様子は大体そういうようなことでございます。
  30. 鈴木力

    鈴木力君 これは大臣にひとつだけ伺いたいのですけれども、私は、名称を変更して、そして多少、五教科に教官を増加した、こういうことだけで、いまの大学設置基準の各関係学部の基準の答申すらまだ出ていない。私は教員養成学校の基準の答申はまだ出ていないと記憶しているのですけれども、間違いなければ。そういう答申すらまだ出ていないのに、看板だけ塗りかえを急がなければならなかったという理由はどうしてもわからぬ。ことしなお残ったものを全部看板を塗りかえたその理由について、大臣に簡単にお伺いいたしたいと思います。そのあとまた局長さんに伺います。
  31. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) この教員養成大学につきましては、特にいろいろ歴史的に論議がかわされてまいりまして、大体、時代とともに大きな流れが変わってきたと思いますけれども、特に終戦後におきましては、あの当時、師範学校をどういうふうにするかという問題のときに、いわゆる昔の師範学校あり方が、一つの教員の養成機関という狭い視野に立って人間養成をしたことに対して、非常な欠陥があったということから、一般教養の先生の養成をして、その一般教養から出ました者が、必ずしも教員になるということではなしに、その中から教員の特別課程を履修した者に教員の免許状を与えるというような考え方で、いわゆるリベラルアーツでございますか、学芸大学というような主張が非常に強くて、そうして、学芸大学というものが誕生したわけでございます。ところが、その後におきまして、やはり教育者として、ほんとうに教育の職に一生を捧げるというような気持ちであるならば、はっきりと教育者になるという目的を掲げて、そうして教員養成の大学に、教育者となるという意思を持って入ってきた者を教育者として育成するというのが正しいのではないか、この理論は常に繰り返されてきていると思いますが、終戦後におきまして、学芸大学あり方についていろいろ論議された結果としまして、中教審で、やはり教育者としてのはっきりした自覚のもとにおいてやるために、教育大学教育学部、こういうふうにはっきり目的をすべきだという論が大勢を制しまして、その答申になったと思うのでございます。お説のとおりに、その名称を先に変えまして、内容面についてはまだその基準も明確にきまっておりませんけれども、しかし、私は学芸大学なり、学芸学部でございましたときにおきましても、大体、教員養成の基準に基づきまして実質的には養成されておったものでございますから、その教育内容については大なる変革があるとは考えられません。ただ、たとえば一般の学部が併設されております大学等におきましては、この学芸学部で他の学部の教養を受け持つとか、いろいろの面があったと思いますが、しかし、はっきり今度は教育学部といたしまして、学部の形態を明確にして、そうして、その専門教科につきまして、これを強化していくという方向に一応いま努力をいたしているわけでございまして、まあ基準が決定はいたしておりませんけれども、大きな変革と申しますか、それは学芸学部であったときと、そう違ったものは、現段階では出てまいらないのではないかと思います。ただ、私自身としまして、教員養成の問題につきましては、私は非常にむずかしい問題があると思います。特に小学校の教員と、中学校及び高等学校の教員とは相当本質的に違うものがございまして、小学校では全教科を一人の教員が担任するというところに非常にむずかしい問題がございまして、ほんとうの意味において、私は教員養成の対象と考えられるのは、小学校先生が主として対象として考えられるべきではないか、他の教科につきまして、一般的担任科目を専門的に持つという教科の先生につきましては、必ずしも教員養成を主とする大学ではなしに、やはり専門的に教科を習いました者に対して、ある程度の教育専門科目を履修させることによりまして、これを教員にするということも可能である。しかし、小学校だけはこれはできないのじゃないか、だから、この小学校先生を対象にする教育大学と申しますか、これは非常にむずかしいものがあると、こう考えておりますし、全科目でございますから、どうしても学問の内容は一般教養という面が重視されてまいります。その面におきまして、私は現在は教育大学にこれを変更いたしましたけれども、しかし、教員養成の問題は実際むずかしいのでございますから、今後とも十分このあり方について研究し、しかも研究しつつ向上させていかなければならぬ、かように思っておるわけでございます。
  32. 鈴木力

    鈴木力君 教員養成の問題はむずかしいということはわかりました。あとしばらく局長さんにもう少し伺いまして、後刻また大臣に伺いますけれども局長さんに伺います。  いま大臣も御説明なさいましたが、ひとつ伺いたいのは、特に小学校の教員養成課程の学芸学部時代の卒業生で、教員に採用された者と採用されなかった者との比率は、一年だけじゃぐあいが悪いのですが、最近の統計があったらそれを示していただきたいと思います。   〔理事中野文門君退席、委員長着席〕
  33. 天城勲

    政府委員天城勲君) いまちょっとこまかい数字が手元にございませんが、ここ数年の傾向で申しますと、学芸大学時分あるいは教育大学になりましてからも、卒業生の進路についてはほとんど大きな違いが出ておりません。大体百人のうち九五%くらいが就職いたしておりますが、そのうち百人のうち八十七、八だと思いますが、教職になっておりまして、あとが教職以外に就職いたしておる。この数字は若干の出入りはあると思いますけれども、ここ数年変わっていないと思います。
  34. 鈴木力

    鈴木力君 私が伺いたいのは、学芸学部という名称があると教育者としての自覚を持って入ってこないという、そういう前提で教育学部と名前を変えたのだとおっしゃるから、それを伺ったのですけれども、おそらく私は名称いかんにかかわらず、ここは小学校の教員を養成する大学だということになりますと、これは小学校の教員になろうとする自覚を持って大部分は入ってきている、こういうふうに見るのですけれども文部省はそれを教育者としての自覚を——目的意識といいますか、そういう自覚を持ってこないと判断されたその根拠をひとつ承りたい。
  35. 天城勲

    政府委員天城勲君) 実は御存じのとおり、従来、国立大学には教育学部と学芸学部とございました。これはたいへんややこしいことになるのでございますけれども、実は一般教養との関係が……。
  36. 鈴木力

    鈴木力君 いや、その仕組みはわかっているから、学芸学部に入ったものは教育者としての目的的な自覚がなかったという説明をする根拠を説明せよと、こういうことです。
  37. 天城勲

    政府委員天城勲君) 私の理解しておりますところでは、いま申したような学部の体制をはっきりするということが目的でございまして、名前を変えないと学生入学志望者の意思がはっきりしないということがおもな理由だったとは私は思っておりませんですけれども……。
  38. 鈴木力

    鈴木力君 そうすると、さっき大臣の答弁された目的意識を変えるために中身はたいして大幅には変わらないけれども名称を変えた、この大臣の答弁はうそだとおっしゃるわけですね。
  39. 天城勲

    政府委員天城勲君) うそだという大臣の答弁が——要するに、大学の学部としての性格をはっきりするということを申し上げたわけでございまして、中身が変わらないという意味は基本的には大学の学部である、大学全体の一般教養にしましても一般大学の基盤の上に行なうということは変わらないということを申し上げておるわけでございまして、それと同時に、学部の目的、性格を明らかにするということでございまして、大臣の申し上げたことと食い違っているつもりはございません。
  40. 鈴木力

    鈴木力君 それほど食い違っていないということをおっしゃるとすると、そういう教員を養成しようとなさるとすればたいへんな問題だと思いますが、これはこの前にも議論をしたのですよ、この前の通常国会のときにも議論をした。しかし、この前の通常国会のときに時間切れでこの問題の議論が足りなかったから、私はきょう伺っているのですからはっきりしていただきたいのです。つまり、学部の性格とかいろいろ言うけれども、教員養成という立場から私はものを言っているわけです。その立場から先ほど大臣にも聞いたわけです。だから、この学部の性格という場合に学芸学部であっても小学校教員養成課程というのがあるのです。中学校教員養成課程というのがあるわけです。これは学部の教員養成課程としての教員養成という性格があるわけじゃありませんか。学芸学部全体のいろいろな機能がありますよ。そのことについては教育大学と学芸大学の発生の歴史や経過、これは私はわかっていますから、それには触れなくてもよろしいわけです。特にいま急いで変えなければならなかった理由はと聞いたら、さっき大臣はそう答えたわけです。もしそうでなしに、これは教員養成として入るものもその自覚を持って入ってくる、卒業すれば大部分のものはそのコースに従って教職についていく、こういうことになるなら、私はなぜ、まだこの設置基準の答申も出ていないのに、中身をどうするということもやらないのに看板だけをまず先に変えたという考え方がまたわからなくなってくる。その辺をもう少しわかりよく説明いただきたい。こういうことです。
  41. 天城勲

    政府委員天城勲君) いや、大臣の申し上げていたことも、実は従来から申し上げておることと変わりないと申し上げたのでございます。それからいまの基準ができていないのにというお話でございますが、実はこれは大学設置基準の改定の問題でございまして、新しい大学設置基準をつくろうという前提で、その設置基準そのものがまだ実施されていないわけでございます。したがって、それに基づきます各学部ごとの実施要項というものも出ておらないということを申し上げたわけでございまして、ほかの大学につきましても、現在ございます大学設置基準で運営されていることは教員養成の場合も同じでございます。ちょっと先ほど説明しなくてもいいとおっしゃいましたけれども大学のいま一般教養を中心としましていろいろ組織がえが行なわれておるときでございますので、特に学芸学部、教育学部というのは他の学部との関係で非常に複雑な機能をやっておりましたし、あるいは他と分担していくということもございました。その点が逐次整理されてまいりまして、教養課程の組織化とか、充実が一方行なわれております。あるいは文理学部の改組等が行なわれております。そういう体制で教員養成を従来からやっておりましたので、その教員養成を主目的とする学部の性格を明らかにしようということで教育学部としたのでございまして、私たちはそういう理解のいたし方で従来もずっときておるわけでございます。
  42. 鈴木力

    鈴木力君 どうもよくわからぬのですね、私は。さっき伺いましたら、学芸学部を教育学部に切りかえて具体的にどこをどう変えたかと言ったら、五教科の教官を去年は一年間で五十九名、四十二年度の六十三というのはことし六十三名ですか、去年のに加えて六十三人ですか、そこははっきりしませんけれども、教官を若干加えたというだけの話ですね。一大学当たりとすれば幾らもふえていないわけです。抜本的に中身を変えたわけではないわけです。そこを私が先に聞いたのは、あと局長が、いま大学の整理、統廃合いろいろやっておる、機構を変えているからと説明するだろうと思ったから先に聞いておいたわけです。たいして機構は変わっていないですよ、学芸学部が教育学部に変わっても。学芸大学になったほうがいいかもしれない。学芸学部が教育学部に変わったことによって中身の変わったのは五教科の教官が若干——一人か二人ふえただけだ。これなら大学の機構が大きく変わりつつあるときなので名称を変えましたという説明にはあまりにも説得力のない説明ですよ。だから、やっぱり私は説得力のある説明は、教育者になろうとする自覚があるのかないのかというところが一番境目だと思うのです、これは確かに答申にもそういう意味のことが書いてありますから。しかし、それならばさっき聞いた学芸学部時代にはその自覚がなかったかというと大差がない、そういうお答えになるでしょう。そうして今度は設置基準のほうは改定の設置基準案が出ていない。これは私も承知いたしております。しかし、いま改定しようとする動きが出ておるのであります。教員養成大学設置基準の案がまだ答申にも出ていない。改定しようとする設置基準をいま検討しているわけです。そういうときに名前を変えるかどうかという議論をするなら、なるほどよくわかる。それをあと回しにして、あとでどういう悩みが出てくるかは別として、まず看板を変えるという理由は、私はどうしても納得ができない。これはさっきの大臣の御答弁もありましたが、食い違わない、食い違うということ、これも整理をしてみないとわからぬことですから、また、そんなところを、違ったというところをそれを私は問い詰めるのが目的じゃありませんから、これらの問題は、もう一度、いま私が聞いたようなことに対してもう少し整理をして、後刻お答えをいただきたいと思います。  午前中はこれで質問を終えて、あと、午後さらに継続したいと思います。
  43. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 午前の委員会はこの程度とし、暫時休憩いたします。    午前十一時四十一分休憩      —————・—————    午後一時四十四分開会
  44. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  午前に引き続き、国立学校設置法及び国立養博教諭養成所設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑のある方は順次御発言願います。なお、政府側より剱木文部大臣天城大学学術局長が出席いたしております。
  45. 鈴木力

    鈴木力君 午前に質問申し上げました回答がどうも私は納得いかなかったので、整理して御答弁いただきたい、そういうことで午前打ち切っておりますから、その整理した御答弁をいただきたい。それは、もう一度申し上げますと、学芸大学教育大学、あるいは学芸学部と教育学部といっても同じでありますけれども、要するに、教員養成大学の名称変更についていろいろと御答弁がありましたけれども、この御答弁では名称を変更したということで、教員養成大学の目的と性格をはっきりするということはどうも私には納得ができない。大臣の午前の答弁では少なくとも教員養成大学という場合、入学をする学生が教員になるという一つの目的意識を持って、あるいは教員になる自覚を高めさせるという、そういう一つのねらいがあって名称を変えたんだという趣旨の御答弁があったと思うのです。がしかし、局長さんにその後御質問申し上げましたら、名称変更以前にも、大体入学する学生は教員になるという目的意識を持って入学をしているし、卒業生の動向はほぼ八〇数%は教職についている。そうなってきますと、私は単なる名称の変更ということではあまり意味がないんじゃないか。私の意見は、少なくとも大学制度というわけではありませんが、大学あり方等については答申も出ていることでもあるし、あるいはまた設置基準や、そういう方面の検討もいまされていることでもあるし、そういう中身の改善といいますかね、中身の改善とともに看板を変えるというのが正しいのじゃないか、そういう御質問を申し上げたわけですけれども、さっき申し上げましたように、御答弁がどうも私にはなるほどという御答弁にならなかった、そこで整理してもう一度お答えいただきたい、こう申し上げたのが午前の質問のしりです。もう一度御答弁願いたい、こう思います。
  46. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 午前中も申し上げましたように、学芸学部と教育学部との沿革的な問題はいろいろ申し上げたわけですが、学芸学部にいたしましても、実質的にはやはり教員養成の学部として、実際、学芸学部を出た者が教育者に、ほとんどいままでと変わらないようになっていることは事実でございます。ただ、御承知のように、学芸学部という名称をつけまして、師範学校から移行した新制大学の学部にいたしたわけでございますが、師範学校の教師陣容と申しますか、教育内容は、いわゆる急速に大学のランクに上がってまいりまして、教員の素質なり、構成が非常に他の学部に比べまして非常に弱体であったことは否定できない事実だと思います。それで、そのままで今日まで移行してきたのでございますが、やはりこの学部の内容を相当充実していくという意味が、一つどうしても要請されたわけでございます。  それからもう一つは、先ほども申しましたように、教育者になるというはっきりした自覚を持たせるためには、教育学部というものをまともに打ち出したほうがいいのだという中教審答申がございまして、まだ内容の充実は必ずしもそれに伴っておりませんけれども、先ほど局長説明いたしましたように、五教科につきまして着々と内容の充実をはかり、また、教員数の増だけでなしに、教員の資質の向上ということもはかってまいっておりますので、私は教育学部に変えましたこと自体が、もともと学芸学部というのは、名前は学芸学部でございましても実質的には教育学部でございましたので、これを本来の姿に直したということで誤りではなかったのではないかと思います。ただ、学芸学部という名称そのものは、実は非常にあれはリベラルアーツというのをもじったような形で学芸学部ということになったのでございますが、学部の名称としては、一応できてしまえば教育学部と同じように受け取ってきたのですが、名前そのものはやはり習熟されたりっぱな日本語的な学部の名称でなかったように思います。教育学部ということにやはり名称を変えまして、本来の姿になったのではないか。ですから変わりばえはあまりしていないけれども、実際上は本来の学部の姿、名実ともにそういう姿になったのだと私は解釈をいたしますけれども、これを学芸学部を教育学部にするときに多少の御批判もあったのでございますけれども、今日に至りましては各大学ともこれに対しまして異論を差しはさむものがない、全部やはりこれに移行してまいったのでございますから、この際はひとつこの教育学部という名称でぜひお慰め願いたいと思っております。
  47. 鈴木力

    鈴木力君 先ほど大臣も、昨年批判があったということはお認めになっていると思いますが、問題は、どういう名称にするかということは、やはりほんとうの教員養成とは何かということから議論をしないと納得がなかなかされないだろうと思います。さっき伺いましたところによりますと、名称を変えてから中身の改善に何をしたという私の質問に対しましては、五教科の教官を昨年度は五十九名増加した、今年度はまた六十三名、こういう若干の教官を増加したということであって、ほんとうに大騒ぎをして名称を変えるというそれほどの中身の改善ということは、あまりどうもなるほどと思うような事実はなかったように伺ったものでありますから、そういう点でいろいろ問題か、あるいは問題がないことが問題になったりしている原因じゃないかとも考えられるのです。このことにつきましては、昨年いろいろ問題がありながらも、大部分は学部を変更したのでありますから、いまどうこう議論をしても、また戻せという議論はなかなかしにくいこともありますから、それは申し上げませんけれども、少なくとももう一つだけ大臣に伺って、それから申したいのは、これは何日の新聞でしたか、ちょっと忘れましたが、新聞を持ってまいりませんけれども、いつかの閣議のあとで総理大臣が発言をして、教科書の無償を完全に実施をしたあとには地理、歴史を正しく教えるのだと、そういう意味の発言があったということが新聞記事に出ておりますが、この辺の真相を大胆にちょっと伺いたい。
  48. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 実はそれは地理、歴史をどういうふうな表現で言われたか私も存じませんが、これはテレビの対談で、総理が、地理、歴史をしっかりやるんだというようなことを言われたやに聞いております。閣議のあとではそういうことは実は問題になったことはございません。ただし、総理がどういう意味で言われましたか、私もそのときのことをよく詳しく存じませんので、お許しを願いたいと存じます。
  49. 鈴木力

    鈴木力君 これは五月二十四日の毎日新聞に出ておるのですけれども関係のところだけ読みますと、「義務教育の教科書は二年すれば全部無償になる。そのときは教育内容も変えなくてはいけない。昔のものを取入れて、正しい地理、歴史を教えなくてはいけない。われわれが子供のとき教育は知育、体育、徳育の”三育”といわれていた。教育内容も三育を中心に調和のとれた教育によって人格形成をしなくてはならない。」、このごろの学生騒動を見ていると一体何をしているのかと、言いたい。まあその他ずっとありますけれども、このことで世間はこうとっておるのです。その後いろいろ新聞にも投書も出ておるのですけれども、「昔のものを取入れて、正しい地理、歴史を教えなくてはいけない」、これが首相発言になっているわけですね。そういたしますと、いま申し上げた教育学部の改変も何とやらわけがわからないが、まず名前を変えて自覚をさせるとか何とかいって、強引に、大学が去年あたりは相当反対があったのに統一的に学芸学部を教育学部に持っていく。そうして教科書を今度は書きかえて昔のものを正しく教えるという表現が総理大臣から出ておる。日本教育政策は、特に教員養成を通じていよいよ国家統制の道に踏み出すのじゃないか、そういう危惧が非常にいま強くなっておるということなんです。社会がそういう危惧を持っているということは、大臣御存じかどうかわかりませんけれども、少なくとも大学の名称変更の、何といいますか、ごり押しというような変更のしかたから、それからそのあとのいろいろな発言等を結びつけると、相当心配している向きがあるわけです。だから、たとえば教科書を書きかえるというようなことを、しかも地理、歴史を正しく教える。現在の地理、歴史は正しく教えていないかということも議論になるわけです。これは総理の発言で大臣存じていらっしゃらないと、こうおっしゃるのですから、大臣質問しても無理な話ですから、質問ではありませんけれども、そういう形でいまの教育行政、教員養成というのが、文部省の真意はどこか別といたしましても、おそらく真意どおりに受け取られていない。非常に心配をされている向きがあるわけです。そのことだけはひとつ認めていただいて、そうして、やはりこの運用をなさる場合、社会からそういうような疑いの目をもって見られたり、あるいはそういうような心配の目をもって見られるような教員養成大学にしないということ、そういう点については十分な配慮をいただきたいと思う。
  50. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) ただいまの総理の地理、歴史の問題は、これは私、テレビでそういう発言をされたということを聞いただけでございます。なお、知育、徳育、体育の三者調和ある教育をしなければならぬということは、これはあらゆる場合に総理がどうも口ぐせのように言っておるようでございますが、この点は問題がないんじゃないかと思います。なお、私ども教育学部に直しましたからといって、大学の実際のあり方教育全体として国家統制をやるというようなことは毛頭考えておりませんし、少なくとも文部省の、私どもでそういうことをお感じになるようなことは言った覚えはないと思っておるわけでございます。また、実際上も今後もそういうことは絶対にやらないということをお誓い申し上げてけっこうだと思います。
  51. 鈴木力

    鈴木力君 いまの大臣の御答弁で、この問題については質問を終わります。  次に、養護教員養成所について若干お伺いいたしたいと思います。まず、今日の状態で、これもいつということを言っても無理があるかもしれませんから、私のほうからいつとは申し上げませんが、養護教諭の配置状況がどうなっているか。それから、ついでですから、時間の節約上一緒に申し上げますが、文部省に、この養護教諭の充足五カ年計画ですか、配置五カ年計画ですか、五カ年計画というのがありましたですね、あの五カ年計画の進行状況がいまどうなっているのか。この二つについてまず伺いたい。
  52. 天城勲

    政府委員天城勲君) 養護教諭の配置状況、手元に四十一年五月の資料がございますから、これに基づいて申し上げます。御存じの定数法によりまして養護教諭の一応のワクがございますものですから、それを前提に養護教員の配置状況を見ますと、公立の小学校では定数に対します充足率が九六・七%、公立中学校では九五・二%、それから公立高校では、数字の上からまいりますと一〇一・四%、ならしまして全体で九七・一%という状況でございます。これは四十一年度の定数に対する充足ぐあいでございます。それから学校数に一名というお話がよくございますが、その数字から申し上げたのではない数字でございます。もう一つ、三十九年から四十三年までに小学校千五百人に一、それから中学校二千人に一といったのを、それぞれ千人に一人、千二百人に一人という定数を改善して、四十三年度までに実現いたしますという前提で、大体五千人の増員計画を立てておったことが、いまおっしゃった五カ年計画の充足の内容だと思いますが、私たちはそういうプランを持っております。これにつきまして、この五千人の新規需要と、それから損耗補充が当然出てまいりましたので、これを大体推計いたしまして、合わせて四十三年度までに六千七百人という推計をいたしておるわけです。その実施推移でございますが、大体、三十九年度で供給が千三百五十八、四十年で千二百十二、四十一年で九百二十、それから四十二年はまだ実績が出ておりませんが、あと四十二年、四十三年で千五、六百ずつの供給によりまして、いま考えております需要数に見合う、こういうのが御指摘計画の中身とその進行状況でございます。
  53. 鈴木力

    鈴木力君 こまかい数字になって恐縮なんですけれども、いま伺いますと、三十九年度は百三十五でしたか。
  54. 天城勲

    政府委員天城勲君) 三十九年度の供給が千三百五十八でございます。
  55. 鈴木力

    鈴木力君 それから、四十年度が千二百十二ですね。四十一年度の九百二十というのは、これは計画とだいぶ違っているように見えますけれども、事情はどういうことなんですか。
  56. 天城勲

    政府委員天城勲君) ただいま四十一年度まで申し上げたものは実績でございます。
  57. 鈴木力

    鈴木力君 私が伺いたいのは、計画数字は出ておるわけでしょう。四十一年度計画は千四百六十という計画になっているのです。ところが、九百二十という実績ですからね、計画からおよそ五百四十ですか、下回っておるわけですね。そうしますと、さっきの九七%かいるということがどうもおかしくなってくるようなんですけれども、この五百人くらいの食い違いというのは、どういう事情によって食い違っているのかということです。
  58. 天城勲

    政府委員天城勲君) 四十一年の実績九百二十人、簡単に言うと、少ないではないかという御指摘だろうと思いますが、これは予定の千四百に対しまして、実際には免許状取得者、資格者の中からこれだけしか採用ができなかったという実態が出ております。したがって、計画としては足りなかった分については後年度に譲らざるを得ないということになるだろうと思います。
  59. 鈴木力

    鈴木力君 そういたしますと、後年度に譲ると言うけれども、いま、四十二年度千五百、四十三年度千六百と伺いましたが、計画は、四十二年度が千五百八十、それから四十三年度が千六百十です。後年度に譲ると言いますけれども、五百の差というものは、いまの答弁では、後年度では全然補充される見通しがないわけですけれども、どういうことですか。
  60. 天城勲

    政府委員天城勲君) 当初立てました五千人の計画は実現するという前提でございますが、毎年度の事情が、特に需要供給の関係が、御存じのとおり養護教諭の供給源と申しますか、非常に多極にわたっております。新卒者でそのまま採用するのじゃなくて、いろんな資格の者から入ってきたりするもので、需給の関係がきちっと計画どおりには進んでおりませんし、また、教員の配置状況も、先ほど申したように、総数で見ると一〇〇%こえるというような数字も出るくらいにアンバランスの状況があったりいたしまして、逐次その関係を調整しながら進んでおりますので、前年度状況が当初考えたプランよりも狂っておることは事実でございますが、結論といたしましては総体の計画を実現するようにいたしたいとわれわれのほうは考えたわけでございます。御存じのとおり、需給のマッチするところは都道府県教育委員会の採用という面で出てまいりますから、私たちのほうは初中局と相談いたしまして、全体の計画の中で供給の面を一応考えてみたわけでございます。
  61. 鈴木力

    鈴木力君 どうもよくわからぬですが、いまの答弁ですと養護教諭を採用する供給源が複雑だ、それからさっき局長がおっしゃった免許状の取得をしておる者の採用がなかなかできなかった、そういう事情で五百の狂いがあった。そういうふうに確認してよろしいわけですか。
  62. 天城勲

    政府委員天城勲君) 一言で言えばそのとおりでございます。要するに、資格を持っている者の中で、他の資格、たとえば保健婦の資格を持っている者がおりますと、勤務地の関係等で条件が必ずしもよくないという場合には、養護教員にならないで保健婦の資格でほかに行ってしまうというような場合もございますから、免許状取得者の数でいきますと合うのでございますが、需給の面でそういうギャップが出てまいります。
  63. 鈴木力

    鈴木力君 私が聞きたいのは、現実に養護教諭の数が需要に応じておるのか応じていないのかということなんです。これがポイントになるわけです。いまの学校の養護教諭の配置状況からみますと、これはあとでもう少し詳しく伺いたいんですが、少なくとも養護教員、これが足りないということは通説だと思う。そういう場合に、計画を立てたけれども、少なくとも私は去年からこれを調べておりませんから不正確ですけれども、お伺いいたしましたときに、計画の充足はだいじょうぶだ、そういう御答弁があったように記憶しておりますが、すでに四十一年度末で五百も狂っている。そういうことになればその計画を是正する必要があるのではないかということですね。四十二年度、四十三年度の千六百という計画は、この五カ年計画の減耗補充を含めて六千七百人はとても確保できない、こういうふうに私は見受けるわけです。その辺はどういう計画になってどういう構想を持っておられるのか、具体的にお伺いしたいと思います。
  64. 天城勲

    政府委員天城勲君) 計画ということばで呼んでおりますこの中身は、先ほど申したような形で、終局的に標準法で考えております総定数まで増員できるような考え方でいるわけでございますが、現場の御要望に養護教員がマッチしないというお話の中には、四十一年度で申しますと、定数法の定数自身がまだ学校に対する比率から言いますと低いわけでございます。したがって、そういう基本的な定数法の問題が一つあるのじゃないかと思います。したがって、四十一年度のさっきの実績でまいりますと、四十一年の定数に対しましては、先ほど申したような充足率になっておるわけでございますが、現場に行きますと足りないという実態は確かにあると思います。それから、教員養成の面からまいりますと、資格を取る機会を十分与え、あるいは資格を得る養成施設を設けるという形によって必要な供給量をはかるという考え方をとるわけでございますが、現実に先ほど申したような需給の条件というものがいろいろ複雑でございますので、これは人事行政上と申しますか、その面での努力を片一方でいたしませんと、予定どおり教員が確保できないという現実がございます。したがいまして、都道府県の採用者側に対しては、主として初中局を通じてでございますけれども、いろいろな資格を持ってきている養護教諭の採用につきまして、いろいろなくふうをしていただくように働きかけておる、その両面から考えておるわけでございます。
  65. 鈴木力

    鈴木力君 はっきりしていただきたいんですがね、局長、ぼくはいままで伺っておったのは、供給源が複雑であって、免許状を持つ養護教諭はこれだけしか採れなかった、それがさきの局長の答弁だと聞いたんですがね。いま聞いてみると、今度は供給は持っているけれども、採用側で採らなかったから九百二十しか養護教諭が実際は充足できなかったんだと、こういう答弁に聞こえるんです。どっちなんです。そうすると、もし後者だとすれば、免許状を持っていて職場に配置にならない養護教諭が定数の関係で余っているのかどうか、どうなんですか、その辺は。
  66. 天城勲

    政府委員天城勲君) 先ほど申したように、養護教員の供給源はいろいろ複雑だということを申し上げましたけれども、この全体の計画の中には、御存じの市町村の普通養護職員といっております市町村費負担の職員がおります。これを正規の職員に切りかえていくことを含めてこの計画をやっておるわけでございまして、養成機関で養成しましたいわゆる学卒者についての需給の問題は予定どおり進んでおりますけれども、全体の五千名計画で申しますと、養護職員からの転換をかなり当て込んでおるわけでございます。これが現場の人事行政上いろいろな問題で予定どおり転換できていない面が大きなギャップじゃないかと思います。
  67. 鈴木力

    鈴木力君 少しこまかいようですけれども、そういうことになりますと、もう一つ伺います。四十一年度で養護職員からの配置がえをした職員は何人いますか。
  68. 天城勲

    政府委員天城勲君) 総数で申し上げますと、四十一年度で百四十八名でございます。
  69. 鈴木力

    鈴木力君 そういたしますと、ここに約四百の狂いがあるわけですけれどもあと百二十の狂いがまだあるわけですね。だから問題は、この養護職員からの配置がえが、計画によりますと六百ですから、六百の計画を百四十八に落とさなければならないような状態であった。そういたしますと、ここの計画の六百というのはそれ自体が狂っているわけですね。そういたしますと、同じ傾向であるとすれば、四十二年度、四十三年度の七百というこの計画についてはどういうふうな見通しを持っていらっしゃいますか。
  70. 天城勲

    政府委員天城勲君) これは率直に申して、ことしの実情が示しておりますように、養護職員からの転換は人事行政上いろいろな問題がからまっております。たとえば年齢の問題が府県によりますとございましたりして、単に私たちが認定講習などで資格の向上をやっておりますけれども、資格の問題だけではなく、人事行政上の問題がからまっておりますので、個々の府県の事情というものは、われわれが考えているような全体の数字にすぐ合うような簡単な行き方ができないようなことを心配をいたしております。結論といたしましては、計画年度までにこれを実現しようという考えでおりますけれども、その中間の方法といたしましては、資格の取れるような方法考えると同時に、やはり人事行政上の問題を進めていかなければならないというふうに考えております。
  71. 鈴木力

    鈴木力君 どうもこまかいことを聞いて、局長を困らせたみたいで申しわけないのですけれども、私はこまかいみたいですけれども、ちょっと重要な問題があると思っておるのです。つまり計画で、いまの御説明でも、いまの定数法で、要するに千五百人から千人、それから千二百人、あの定数法が改正になったときの計画で五カ年計画計画を立てた。そうしていまの減耗補充を含めて六千七百人あれば定数法上養護教員が満ぱいになるという計算で出ているわけでしょう。それが三年目に早くも五百人の狂いを来たしておる。その五百人の狂いを出した主要な原因は養護職員からの配置がえであった。これは大部分がそうでありますからそういうことが言えるわけです。そういたしますと、そういう傾向にあるものが、四十二年度、四十三年度になりますと、年齢その他の人事行政上の問題になりますと、ますますその問題が大きくなるわけです。そういう傾向にあるときに、四十二年度、四十三年度というのを、その部分の採用計画を一番大きい数字に出しているというのは無責任じゃないですか。私はそういうふうに考える。だから、そういう無責任数字ではなしに、この辺でもう計画考え直して、あるいは四十四年度、五年度まで続くものですから、そういうような不可能に近いような計算のところから教員養成のほうに視点を置きかえなければならないときにきているんじゃないか、こういうことが私の申し上げたい主たる意見なんでありますけれども、その辺については検討なさったことがありますかどうか。
  72. 天城勲

    政府委員天城勲君) 実は養護教員の養成、供給源の問題でございますけれども、端的に言って、大学の問題とそれから養成機関の問題と、それから養護職員からの転換の問題、両方あるわけでございます。いま申したように、養護職員からの転換が思うようにいかなかったわけでございますが、養護職員の人たちが全部年齢にぶつかるわけでもございませんし、三十歳未満の方も四分の一以上はおられる実情でございますから、したがいまして、やはり資格授与の道を講じながら、このソースからの充実ということも同時に合わしていかなければならぬと私たち考えております。なお、養護教諭の大学あるいは課程認定等による充実の問題でございますが、これも御指摘のとおり合わせて考えていかなければならぬ問題だと、こう考えております。
  73. 鈴木力

    鈴木力君 率直に聞いているのですがね。ことしは六百の計画が百四十八だった、しかし、これは何も年だけじゃないですから、来年から計画どおり七百採用していく見通しがあるという答えは私はいただけない。そういう見通しがあるなら、なぜことしこんな狂いを生じたか。ことし狂いを生じた理由は何かと言えば、年もあれば、その他人事行政上の問題がありまして、おおよそ三分の二だけの狂いを生じておるわけです。こんな狂いというものは小さな狂いでありませんよ。そして、そこのところをそう言っておいて、来年度からどうするというのは、年やその他の問題もありますからと、こういう話ではまじめな議論にならないと思うのですね。こういう狂いがあるなら、なせことし四百なんという狂いを来たしたか。来年も、再来年だっていまのような傾向がある限り自信がないというのがほんとうの話じゃないのですか、ここのところは。
  74. 天城勲

    政府委員天城勲君) いろいろなことを申し上げるものですから、何か答弁があいまいのようになって恐縮でございますけれども御存じのとおり非常に実態が複雑ですから、ただ平面的にこうだからこうだと申し上げられないものですから、いろいろな条件を申し上げておるわけでございまして、実際問題として、最終的に学校に養護教員が入らなければどういう計画を出しても成り立たないものですから、したがって、われわれのほうとしては養成計画という面を担当しておるものでございますから、どうしても人事行政上の問題とも合わせませんと予定どおりいかないということを申し上げておるわけでございます。全体として計画が思うように進捗しないということは、まあずさんだと言われれば、そういう御非難もやむを得ないのでございますが、まあ計画でございますので、一応の目標の中で年次的にその都合に応じて問題を直していかなければならぬということも当然だと思います。私ども五カ年間で一応この定数法の目標を達成するために、今後の残った年度間における数字的な中身というものは最も現実に即し、そうして目的に沿うようにこれは当然改めるといいますか、実情に即した数字に直さなければならぬということは十分感じております。
  75. 鈴木力

    鈴木力君 大臣にお伺いしますが、いまの数のやりとりは、これは大臣には伺いませんのですが、少なくとも傾向として、私は計画がずさんであったとか、そんなことをどっちかきめようというつもりはありませんが、少なくともこの養護教員の配置の問題で、いまのこの五カ年計画についてはきわめて大きな不満があるのです、私どもは。しかし、それはあとで申し上げますけれども、一応この定数上の計画だけで申し上げましても、いまのような、あいまいもことしたものが入っておるわけです。そういたしますと、やはりそういうはっきり将来きめることができない要素の分については、もう計画がはずれてくるという傾向が大幅に出てきておるのですから、やはりこれは新規の養成ということでカバーをする以外にどうにもならない。これはここ来年一年とか二年とかいう問題じゃなしに、将来そういう計画があると思うのです。そちらのほうで考えて重点を切りかえて計画を練り直す時期が来ておるのじゃないか、それが私の考え方なのですけれども、これは大臣に法外なことを伺って恐縮ですけれども、そういう筋からいったらどうなんですか。
  76. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) その養護教員の養成が実際上そういう計画とそごを来たしております実情については私も率直にこれを認めざるを得ぬと思います。いま申されましたように、これを新規養成計画に切りかえたらどうかという御意見でございますが、その御意見は十分私どもも承りまして、ぜひひとつこの計画のそごを来たさないように努力をしてまいりたいと考えます。
  77. 鈴木力

    鈴木力君 それではこの辺で、いまのこの養成計画についてはこれだけ申し上げまして、もう一つ、その配置の状況ですね、これを局長にお伺いいたしますが、現実にいまのこの定数法上の配置状況はさっきパーセンテージで伺いましたのですが、学校全体に対して、小学校は大体学校数と養護教員数の比率はどうなっておるか、中学校高校というふうに学校種別ごとに教えていただきたいと思います。
  78. 天城勲

    政府委員天城勲君) これも四十一年五月の実情でございますが、公立の小学校学校に対する配置率と申しますと三七・七%、それから中学校で三二・七%、それから高等学校で八二・八%でございます。
  79. 鈴木力

    鈴木力君 これはいまの定数法がありますから全体からの比率でいまどうこういうわけにはまいりませんけれども、これも蒸し返しなんですけれども学校教育法の何条ですか、条項は忘れましたけれども、小学校中学校には養護教諭を置かなければならないというのが学校教育法のたてまえですね。これはもう伺うまでもない話です。ただ、当分の間これを置かないことができるという、そういうことで逃げておるわけなんですけれども、これは去年も私は中村文部大臣のときにお伺いをした記憶があるのですけれども、当分の間置かないことができるという意味は、意味といいますか、あの規定した趣旨は、当時、養護教諭という制度ができたばかりのときであるから、養護教諭の数が足りない、したがって、数が充足するまでは当分の間置かないこともできるということで救済しておるのだ、こういう法律の解釈のように御答弁をいただいておったのですけれども、それがいまになってまいりますと、何か予算の都合で当分の間置かなくてもいいみたいな解釈になりつつあるのじゃないか。こうなってきますと、いまの養護教員が不足だといういろいろな要求と非常に違ってまいりますから、こういう解釈はどう見ればいいのか、大臣にお伺いいたしたいと思います。
  80. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) やはり特に養護教員の定数の考え方は、いま申されますように、生徒、児童数で何名というような割り出し方をいたしましておりますが、実際上の要望といたしましては、むしろ逆に、たとえば僻地でございますとか、そういうところによけい必要なものと要求されておるわけでございます。これも私どもはもっともな要望だと思います。ただ、現段階におきまして、文部省がとっておりますのは、一応、定数の計画を立てましてきめて、まだその定数だけでも実現ができておりません状況でございますので、根本的に再検討する時期は、これはまあ一応定数の関係を終わりましてからと考えておるわけでございますが、しかし、やはり学校教育法の趣旨にもございますように、すべての学校に養護教員を置くという方針に向かいまして今後この問題を検討してまいらなければならないと思っております。
  81. 鈴木力

    鈴木力君 定数法は四十三年度でおしまいです。そういたしますと、定数法が終わってから考えるという大臣考えは、私は半分わかりますけれども半分はわかりません。つまり、いまの学校教育法の趣旨からいって、少なくともどの学校にも養護教員を置かなければならないんだと、このことだけはお認めになるわけですか。定数法は四十三年で一段落つくわけですから、できればその翌年からでも学校教育法の趣旨に従って当分の間というのをとって、全校配置の方向努力をするというのが私は文部省の正しい考え方だと思うのです。で、そういう前提に立ちますと、まあ今度の法案の中にも養護教員養成所は設置をされておりますけれども、さきの五カ年計画で申し上げましたように、この計画でも定数法の計画を満たせるかどうかわからない。もっとも、今度新設される養成所に入った人は、五カ年計画のワクには入りますけれども、見通しからいえば、まだ三七%や三二%の状態にあるときに、いま養成制度を拡大しておかないと、これはあとで切りかえしたものでは人事行政上云々なんていつまでも言っておる時期ではないと思うのです。したがって、この養成計画は、定数法云々にかかわらず、いまこそもっと抜本的な養護教員の養成制度考える時期がきているのじゃないかと、そう思うわけなんですが、おそらく定数法が済んでから養成をということになりますと、当分の間がまだしばらく続くことになると思うのです。こういう考え方文部省はどういうふうに考えていらっしゃるのか、これも大臣から伺いたいと思います。
  82. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) これは全部私は鈴木委員の説に賛成でございますけれども、私どもの力の及ばないところで、現段階におきましてはやはり予算上の処置は、まあ一ぺんにこれを全部充足するという方向にいけないのでございますから、漸次、順を追って充足していくという政策をとらざるを得ないと思うのです。それは相当のやはり教員の定数から申しますと増加を来たしますから、養護教員だけでなしに、私どももほかのいわゆるいろいろな事務職員でございますとか、あるいは栄養士の問題でございますとか、要望される面が非常にたくさんございますので、全部充足に向かって努力はいたしてまいりますけれども、国の予算上の措置といたしましては漸増的にこれを逐次、漸次充実していくという方針をとらざるを得ぬのでございます。その御意見については全く私どもも同感でございますけれども、なおかつ今後ともその方向に向かいまして努力はしてまいりますけれども、国の予算的措置といたしましては、なかなかそう一ぺんには充足しがたいというので、今後とも十分努力をしてまいりたいということでお許しを願いたいと思います。
  83. 鈴木力

    鈴木力君 わかるような気もするのですけれども、法律の解釈が、ある場合には国の予算上の都合により、ある場合には文部省の都合によりということで当分の間というのがいつでも出てくる。これが別の職員の場合には、当分の間というのは、もう法律にあるからということで、きりきりと一日か二日でとられてみたり、こういうような教育上絶対なければならないという一つの要素のものを、予算上の都合によりというだけでは、これはちょっとやっぱり納得できないような気がするのですね。私はいつでも、だから日本の政府は、教育優先だと、どこへ行ってもいうけれども教育優先されていないじゃないかということをよく私は言うのです。かりに土木の場合には、コンクリートと鉄筋と、砂と砂利の割合がきまっている。橋をかける場合に予算がないから鉄筋を抜くというようなことは許されないわけです。その辺の場合には、予算がないから鉄筋に値する養護教員は抜いといてこれでやってくれ、こういう理屈がいつでも通っておるというところに教育の大きな欠陥があるのじゃないかという感じを持つのです。これは決して養護教員ばかりじゃありません。教育というのは、たとえば教師が足りなくとも何とかやっていける。土木のように形が見えないから、したがって、政府は、予算にいつでも、こちらにしわ寄せをされるというような、こういういき方をいつまでも繰り返しておったら、当分というのは百年になるのか、二百年になるのかわからないような気がいたします。したがって、いま大臣の御答弁の趣旨は、私も全然わからないわけじゃありません。また、苦労なさっていらっしゃることも、これも理解できないわけじゃありませんけれども、こういう問題については、もう少し義務的な処置だという考え方で政府全体が当たってもらう、そういう雰囲気をつくりながらやっていただきたいと思います。特に養護教員の場合には、先ほど大臣も申されましたけれども、たとえば僻地等に行きますと、無医村、あるいはその他の医療機関がないというような状態からも、これは養護教員の趣旨からいえば違うにしても、非常に広い地域からの要望がある。あるいはまた、学校が大きいところでは一人では足らないという要望もある。いずれにしても、養護教員がいなければ養護教諭がしなければならない仕事は欠けておるわけですから、これはいつまでもほっておけないわけです。今日まで二十年来欠けておるわけなんです。そろそろもう努力をしなければならないと思いますので、特に養成計画は、先ほど以来、御質問でも明らかなように、いまの計画で五年間の計画でさえ狂いを来たしておるのですから、養成計画にはさらに力を入れるように御要望申し上げたいと思います。
  84. 千葉千代世

    千葉千代世君 関連質問。私、二点だけ伺いたいと思うのですが、一つは、先ほど御答弁の中に供給源の問題がございましたが、もう一つは養成の展望でございます。その最初の供給源のことですが、昭和三十七年の三月二十六日の、文部省と、それから与野党一緒の中で確認した中の充足計画ですが、この充足計画をずっと推進していく中で、やはり隘路になるものが供給源のことでございました。その中で、これを打開していくためにいろいろな方途を講じなくてはならない。そこで、採用するほうの側はこれこれの要件を満たしてもらいたい。その中で年齢の問題があったわけです。たとえば各県によって、教員を採用する場合には三十歳以上は選考の基準からはずれるとか、あるいは三十五歳以上は採らないとかという選考の基準があるわけなんです。しかし、養護教諭に限ってはその基準をゆるめるという行政指導をしてほしいということが話し合いの中にありましたわけです。それから充足していく中に、その次には市町村支弁のものを優先的に県費支弁、すなわち国庫負担の分は幾ら、県費支弁は幾らという教員と同じ給与負担の方向に切りかえていくという、このことがあげられておったのです。それから免状はありながら、できない者の数と、それから講習する者、講習する者については単位を幾らとってあって、足りないものは何か、それについては講習計画をどうするか。こういうわけで、その後、文部省のいろんな配慮の中で講習もつい最近持たれるようになったということも聞いておったわけですけれども、そういうふうな計画と、各県の採用のしかたの中にたいへんな行き違いが生じていることはわかったわけです。そこで、文部省では、その後どのように各県に行政指導なさっていらっしゃるかということを、私はある県を二、三調べたんです。そうしましたところが、三十九年に切りかえの通達を文部省が出した。その後、四十一年の九月に全国の予算給与の課長会議でございましたか、そこで財務課長さんから指示した、この二点ぐらいらしいのですね。そこで、席をはずした課長さんは知らないらしくて、県に帰って全然お話になっていない県がたまたまあったわけなんです。何にも知らないわけです。そういうこともありました。具体的に県の名前はございますけれども、そういうふうで、文部省のほうではほかにまたどういうふうな行政指導をお出しになったかということを、いまここで伺いたいことが一つなんです。  そのことと、年齢的な問題についてはこれは無制限ですね。六十になっても採用するとか、そうじゃなくて、三十で制限があったら三十五歳とか、四十歳ぐらいまでは採用年限を延ばしてもらいたい。というのは、養護教諭になりますのは前歴がいろいろでございますために、本人のほうの不本意な条件の中で、年齢が伸びて免許状をもらった方がずいぶんありますので、そういう条件を考慮に入れてもらいたいということがずいぶんあったわけです。  それからもう一つ、現在勤めておっても、他府県に行く場合には新規採用条件にひっかかるわけです、これは一般教員も同じですが。特に、事養護教諭の場合には、前に話し合いました採用条件をやっぱり適用してもらいたい。具体的には、ついこの間も千葉県の銚子に勤めておった方でたいへん優秀な方なんです、三十九歳、これが東京都の御主人が大島の測候所に転任になった。もう少しで恩給がつく、たいへんいい方だというので何とかしてやりたい。そうすると、当然置かなければならないような人員の不足なところで、しかも離島でございます、大島の元町です。ところが、そこには要らないと、こういうわけです。要らない内容を調べてみますというと、それ以上は申しませんけれども、養護教諭でない者が定員の中川いたとしたらどういうことになるかというようなことも出てくるわけです。そういうふうに、しさいに検討してきますというと、これは容易ならない問題を含んでいるわけです。養護教諭の定数の中でありながら、養護教諭でない者がいるということも文部省は考慮の中に入れて御調査していただく必要があるのではなかろうか。これは一、二の例でございますから、これをもって全部をそうだといって私は断定するほど資料は持っておりません。ほんの一つか二つですけれども、そういうふうな問題も考えたわけです。で、私の伺いたいのは、行政指導をもう少し徹底していただいておかないというと、県のほうでもたいへんお忙しいし、養護教諭という特殊のお仕事でございますために、教員の配置計画の中でこの養護教諭の配置というものはたいへんややこしいんですね、とかく、ひがみ根性でなく、まま子扱いの見方がかなりございますようです。そういう意味で、もうちょっと親心を持って行政指導をしていただきたいということを申し上げ、その後出されました、私が申し上げましたほかに、いつ幾日、行政指導をお出しいただいてきたかということ、ただいまの件についてはどういう御指導をいただいておるかということもお聞かせいただきたい。  それから立ちましたついでに、養成計画を。いま鈴木委員から述べられたとおり全く同感なんですが、私もう一つ、いままで養成所——今度の三カ所を加えますと、計十六カ所、三十七年以降国立でなさっていただくわけです。その中で、看護婦の免状を持っておる、それに一年を加えて、一年の養成をしてそうして一級をくれた、これが三十七年、三十八年ですね。それで三十名定員で五カ所、次が三十名定員で三カ所、それから四十年、四十一年、四十二年と続けて、これは高校終了後三年の今度養成所の教育をして保健の二級養護教諭と、こうくれるわけです。それで保健の免状をくれるわけです。で、私は卒業して現場にいらした方々から聞いてみました。それから採用する側からも聞いてみました。それで、本人のおっしゃることには、やっぱりこれは教諭でございますから、学校教育の中に自分の理想と、それから実際に生かすためには完ぺきなる養護教諭としての仕事の力量を発揮していく、そうするにはやはり四年制の教員養成課程、この中にやっぱり組み入れてもらいたいと、こういうことです、養成所ではなくて。ですから、たとえば短大でもない、大学でもない、養成所ということになりますので、ごく小さくものをもし考えた場合には、あなたはどこの卒業生ですか、養護教諭養成所でございます。国立養成所でございます。はあ、そんなものがございましたか、この人は何とかの養成所ですってよと、こういうようなこと。これは別に何も誇りを持っておればいいことですし、天下の養成所でございますから、何の差しつかえもないわけです。本人が仕事にファイトを持って自信を持ってすればいいわけです。けれども、やはりこの何といいますか、   〔委員長退席理事中野文門君着席〕 その現場におりますというと、御父兄とも接しなければならないし、高等学校に配置になった人たちもそれぞれまたいろいろな関係もございますし、そこで、やはり大学の卒業ということ、内容も形式も共に整った大学卒業というものがほしいという、こういう意見がありました。皆さんからお聞きになったらば、なに、内容さえよければいいじゃないかとおっしゃるかもしれませんが、やはり私はその中でほんとうにこの持っている力を出し切る場所をよりよく用意してあげるということが教育行政者の任務じゃなかろうかと、こういうふうに考えました場合に、四年制の養成課程なりを大学、学芸大学教育大学、そういうところに設置してほしいということを考えておるわけなんですが、それについて何か前々から陳情もございますようですけれども文部省に腹案があるかどうか。  もう一つは、保健主事の問題もありますが、きょうは時間もありませんから、またの機会にこれは譲りますけれども、たとえば養護学校の校長の場合に、何かございますと、これは養護教諭だけの免状でございますというと、校長さんになれないという規定はないわけなんですけれども、校長には云々ということの裏を見ていくというと、なかなか養成所卒ではなれないようになっておるんですね、養護教諭というのは。養護学校の校長あたりには、養護教諭のやっぱり現場の経験を積んだ、行き届いた者がなるということはもう適任ではなかろうかということを私いつも考えているんですけれども、そういう点なんかについてもひとつ伺わしていただきたい。以上です。
  85. 天城勲

    政府委員天城勲君) 御指摘のようにたいへんいろいろな問題がからみ合って、養護教諭の充実と申しますか、充足の問題は複雑でございますが、文部省といたしましても、御質問の指導を徹底しろということでございます。これにつきましては、私いつ幾日にどういうことをということを所管局長でないので申し上げかねますが、給与関係とか、人事関係の担当課長の会議の機会には私たちのほうも所管局を通じてお願いしておりますので、会議の席ではかなりの機会を使って申し上げていると私ども思っております。ただ、文書についての通達は、御指摘のとおり、ないかもしれません、その後。会議を通じての指導をやられたと私どものほうは記憶いたしております。  それからいまの養成所は、三年制の問題に関連いたしまして、大学の四年の課程にすべきじゃないかという御意見だと思いますが、現在、こういう養成所制度をとっておりますことは、御存じのとおり、需給の関係と申しますか、一定の数がまだ不足しているということで努力いたしているわけでございまして、まだ数も十分でない段階で、すぐ四年の問題に入るか、あるいは養成所の姿で一定の数を確保するかという、ある意味では質も数も両方求められておりますけれども現実の問題としてその辺のバランスがございますので、お説の点につきましては十分考えてまいりたいと思っております。ただ、あとの校長との関係、校長の資格等のお話も出ましたけれども、三年でおしまいという意味では毛頭ございませんで、少なくとも養護教諭の養成に特別な三年の課程を設けましたけれども大学への編入学の道もございまして、進んで四年の大学を出られるような道も、これは便法とおっしゃるかもしれませんけれども、考慮はいたしておるつもりでございます。将来、養護学校の校長さんが養護専門の中から出られるようにというお話でございますが、これはいろいろ人事行政上の問題、あるいは学校運営上の問題、いろいろな要素があって、ひとり免許状の問題だけではないと思いますけれども、養護教諭の行政につきまして、将来にわたって充実するよう考えろというお説は私ども同感でございまして、承ります。
  86. 千葉千代世

    千葉千代世君 重ねて伺いますけれども、将来にわたってということは、私はさっそくその計画等に取りかかっていただきたいということで御質問申し上げたわけです。というのは、やはりいま鈴木委員質問したように、たいへん人数が足りないわけです。そこで、局長は、いみじくもバランスを考えながらとおっしゃったのですけれども、バランスというのは、数のバランスだけじゃなくて、やはり質のよい養護教諭をつくりながら、しかも、出た養護教諭はあとからくる人の指導性を持って、また、養護教諭の教官にもなってもらわなければならぬ、こういうふうな二つの面を持っているわけです。いまの養護教諭養成所の教師の方々は、見てまいりますというと、やはり現場の経験を持った養護教諭の方々というのはたいへん少ないように伺っております。そういうふうな二面を考えますので、どうかひとつ早急に着手していただきたいという強い要望を付しまして、またの機会に質問を保留いたしておきます。
  87. 鈴木力

    鈴木力君 養護教諭養成所の問題につきましては、私は先ほどの御質問で終わりますけれども、ただ、さっき伺いました五カ年計画の充足状況、定数上からいう配置状況、それから全体の数からいう配置状況、これらについてはあと資料をお願いいたしたいのですが、あと検討をしたい点もありますので、お願いしますが、よろしゅうございますか。
  88. 天城勲

    政府委員天城勲君) かしこまりました。準備いたします。
  89. 鈴木力

    鈴木力君 別の件について伺います。  商船高等専門学校について伺いますが、まず、先に大臣にお伺いいたしたいのですが、私はいまの六三制の体系からいきますと、高等専門学校がじゃんじゃんできるということは望ましいことではないと基本的には考えております。だがしかし、やはり学校の種類によりましては特殊な技能を養成するとか、特別なものについてはやむを得ないというか、高専でなければならないものもある、そういうふうに考えておるんですが、したがいまして、いまここに提案をされております商船高等専門学校は、そういう学校教育内容といいますか、学習すべきことの中身の特殊性といいますか、そういうことからいわば特例——特例ということばが当たるかどうかわからぬですけれども、そういう事情から高等専門学校設置するのであって、決して六三三四の体系から専門学校をじゃんじゃんふやしていく趣旨のものではない、そういうふうに提案の趣旨を理解したいのでありますけれども大臣の御所見はいかがでございますか。
  90. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 私ども高専の制度をつくりましたときに、相当、国会でも、また一般にも論議があったことと思いますが、一番高専の制度の論議になりました点については二つあったと思うんです。その一つは、六三制というのは日本に単一学制をしいたのではないか、それに高専をつくるというのは、その単一学制制度という基本的な考え方を破ることになるので、いわば学制のこぶみたいなものをつくるのではないか、こういう一つの批判があったと思います。それからもう一つの批判は、これは主として私学の側からでございますが、短期大学というものの性格に照らして、あまり高専をつくるということは、それに大きな圧力と申しますか、矛盾が起こるんじゃないか、こういうので私学側からの相当の反対もございまして、高専の範囲は非常に限定をすべきだという意見で、あの際工業高専だけに限りました。その後、今度、商船高専をつくりましたが、これは海運業界の非常な御要望と、それからたまたま商船高等専門学校というのは、国立の五つの高専だけでございますから、他に影響する点がございませんので、商船高専に踏み切ったわけでございます。ただ、今日の段階におきまして、なお特例としてではございますし、私も無制限にこれを拡張すべきものではないと存じますけれども、しかし、はたしてこれだけでいいかどうかという問題はまだ残っておると思います。この点につきましては、この予算が今度通過いたしましたので、この高専の将来、限界点と申しますか、広げるとすればどの程度の面までは広げられるものか、広げてはいけないかどうか、こういうのを含めまして、ことし一年で早急に調査研究をしてみよう、予算も少しとっておるのでございますから、直ちに検討を始めてみたいと思っておりますが、原則としては、やはりお説のとおり無制限に拡張すべき筋のものではないと考えております。
  91. 鈴木力

    鈴木力君 大体趣旨はわかりました。そこで、あと局長さんに伺いますが、原則としてはどんどんつくるべきじゃないという大臣の御趣旨はわかったんですが、商船高等専門学校をつくらなければならない理由——理由というのはちょっとことばが当たらないかもしれませんが、その事情を詳しく御説明いただきたいと思います。
  92. 天城勲

    政府委員天城勲君) 現在、商船教育については、大学高等学校がございますけれども、その高等学校も、まあ国立が五校あるのでございますけれども、実態といたしましては、この高等学校も二カ年の専攻課程を持ちまして外航要員の養成と、結果的にはそういう実態でございます。したがいまして、まあ三年の高等学校制度的に二年の専攻科を無理に制度上つないだ形にして五年の教育をしておるというような実態がございます。そこで、最近、海運界の近代化と申しますか、技術革新と申しますか、船員の質的な向上が非常に要望されておりまして、海員審議会におかれても、特に外航要員の質的拡充の議が持たれて、この新しい制度の高専に商船教育を組み入れてほしいという要望も出ております。また、実態から申しましても、三年の高等学校と二年の専攻科、しかも、そのうちの大部分が、あとの大部分が実は航海実習でございまして、学校との関連がいまの無理にくっつけた制度で必ずしもうまくいかないものですから、制度としても直さなければならぬという技術的な意味もございまして、そこで、われわれのほうでこの商船教育が高専としてうまく高専制度の中に入るかどうかということを、調査会を設けまして検討をいたしました。この商船教育におきましては、どうしても航海実習という問題が不可欠の要素に入ってまいりますのと、それから免許上の関係から、航海実習の一定の期間、一定の規模の船による一定期間、現在はまあ一年間以上の航海実習を要求されておりますが、こういうものを織り込んで高専レベルの教育がうまくいまの高専制度に入るかということで、この調査会で非常に議論をいたしてみたわけでございます。結果的には、五年の専門学校にはどうしてもこの両者の要求では入らない。そこで、まあ席上課程と言われておりますが、席上課程と航海実習を含めて、ただいたずらに長くても困るし、それから一貫教育としての意味を持ち得る限界等から、特例として五年半ならば、現在の工業高専レベルの教育を施しながら、要求される航海実習も含めることができる、こういう結論になりまして、五校をそれぞれ素材といたしまして、新しい商船高専に転換するという措置に踏み切ったわけでございます。
  93. 鈴木力

    鈴木力君 大体わかりました。そこで端的に伺いますが、いまのこの外航船舶職員の資質の向上のために、それからまた、いま伺ったような特殊技能の教育等も必要であろうと思いますが、そういう意味からこの高等専門学校に踏み切ったその事情はわかりましたのですが、全部、船だけじゃなかろうと思いますけれども、同じ船舶職員の中に、いわゆる通信士がいるわけですね。それで、この通信士に対する配慮がどうなっておるのか。まあもう少しこうざっくばらんに申し上げますと、私は通信士を養成しておりますいまの国立の電波高等学校ですか、電波高等学校があると、この電波高等学校を現状のままにしておいて、それでいまのようなこの外航船舶職員の資質の向上に十分間に合うのかどうかですね。同じような観点から電波高等学校について説明をいただきたいと思います。
  94. 天城勲

    政府委員天城勲君) 電波の問題は、もちろん船、これは商船も漁船も必要な職員でございます。また、船として必要な機能でございます。と同時に、最近、電波関係が、これも何と申しますか、技術の高度化という条件がございまして、陸上勤務においても、まあ電波関係の需要が非常に多いというようなことで、電波の高等学校が必ずしも商船だけと密着しないまあ実態もございますし、それだけに新しい問題がいろいろ起きておるわけでございます。今回の措置といたしまして、一応、商船教育のまあ主体と申しますか、中心についてこういう調査会で議論をいたして、転換をいたしたわけでございますけれども、いまの電波の話は、私たち全然話を聞かなかったわけではありませんけれども、商船教育の質的向上という中に、不可欠に電波の問題を含めて議論するという形をとっておりませんでした。ただ、先ほど大臣申し上げましたように、まあ別の面からも高専のあり方、特に学科の範囲等についていろいろな要望がありますので、先ほど申したように、本年度そういう問題を含めて私のほうでひとつ専門的に検討いたしたい。そのための準備も、事務費も予算でお願いいたしておるわけでございますが、そういう過程で十分検討いたしたい、こう思っておるわけであります。
  95. 鈴木力

    鈴木力君 国立電波学校というのは、文部省の管轄は間違いありませんね。
  96. 天城勲

    政府委員天城勲君) はい、文部省の所管の学校でございます。
  97. 鈴木力

    鈴木力君 そこで伺いたい。国立電波高校卒業生、最近の卒業生状況について承りたい。つまり、卒業生状況というのは、結局は通信士の資格を取って、どういうところに、どういう状況の就職になっておるのか。それらの状況について伺いたいと思います。
  98. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) これはいま初中局の職業教育課の問題でございますから、いますぐ呼び寄せましてお答えいたしたいと思います。
  99. 鈴木力

    鈴木力君 それじゃ大学関係は、あと私伺いませんから。
  100. 中野文門

    ○理事(中野文門君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  101. 中野文門

    ○理事(中野文門君) 速記を起こして。
  102. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 学部のことについてお聞きしたいと思いますが、現在、学部はどんなものがあるかを教えていただきたいと思います。
  103. 天城勲

    政府委員天城勲君) ちょっと御質問趣旨がよく取れないのでございますが、学部の種類でございますか。
  104. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そうです。どんな学部があるかですね。
  105. 天城勲

    政府委員天城勲君) たいへんございまして、これ読みますともう数十にわたるのでございますけれども、まあ普通には工学部、理学部、文学部、あるいは教育学部というのが多いのでございますけれども、数から申しますと、合計何種類でございましょうか、何十とございますので……。
  106. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 それはまたあとで見せていただきます。  それで、そういう現在できている学部以外に新しい学部ができなければならないと思いますが、そういう新しい学部をつくるということに対して文部省はどういう態度を持っていらっしゃるか、お聞きしたいのです。
  107. 天城勲

    政府委員天城勲君) 御指摘のように、まあ伝統的に先ほど申しました文学部ですとか、あるいは理学部、工学部ということのほかに、学問的な要請もございますし、社会的な需要もございまして新しい学部の要望が出てまいります。それで、こういうものにつきましては私のほうでそういうものが大学の学部として成り立つか成り立たないか、大学教育の中に入り得るかどうかということが一つ問題でございますので、大学設置審議会の中にも基準の委員会がございますものですから、そういうところで新しい問題については検討するような仕組みになっております。
  108. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 それでその設置基準委員会の中で検討されるわけですね。
  109. 天城勲

    政府委員天城勲君) 原則的にはそこの委員会で処置をいたすことにしております。
  110. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 その委員会の問題なんですが、いままでいろいろそういう新しい学部をつくるための審議をされたと思いますが、何となくその態度が嫁いびり的であって一つのワクの中できめようとしているのじゃないか、そういう態度であったならば、日進月歩のこの文化というものに対しておくれていくのじゃないか、どうも文部省の態度というものはそういう傾向が強いように感じられるのですが、いかがでしょうか。
  111. 天城勲

    政府委員天城勲君) 先ほど申し上げましたように、新しい社会の要望あるいは新しい学問の発展によりまして、既存の学部の基準と申しますか、あるいはワクでははまり切れないというような実態は確かにございます。しかし、およそ大学でございますものですから、何でもいままでのものに合わないものは新しく考えろと申しましても、やはり学生教育ということが前提になりますと同時に、研究の体制ということも考え、あるいは卒業生の社会的な需要ということも十分考えませんと、何でも新しいものをつくれというわけにもまいらないわけで、したがって、基準の委員会で関係専門家が集まって、これは従来の学部の中ではどうしてこなせないかということをまず検討いたしまして、そうして、どうしてもこなせないものについては新しい学部をつくる。たとえば最近の例で申しますと、工学部の中にも入るかもしれませんし、一部は芸術関係のことで入ってくるかもしれませんが、どちらにも合わないということで造形学部というものも新設されてまいってきております。いまのおことばでございますけれども、ある意味ではかなり慎重に新しい事態に処していくためにそういう印象が出るのではないかと思っております。
  112. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 それで、私がしいてこれを申し上げるわけは、私立大学というものはこういう学部の新設というものを積極的に考えていくべきだと思っているわけです。私立学校は特にそうした新しい学部を新設していくところに特色がある。また、現在のまだ未研究というのですか、発達してない学問もいろいろございます。そういう学問がさらに研究をされるようになれば、やはりこの新しい学部というものが特に私立大学などにはどんどんできていくということが考えられる。そういうものに対して文部省は積極的に許可するような態度で臨んでいただきたいということをお願いするわけです。で、これは実例ですが、海洋学部というのがございますね。この海洋学部ができるときも非常に文部省は文句たらたらでなかなか許可をしなかった、こういうことも聞いておりますので、今後こういう私立大学で学部をどんどんつくっていこうとするときに、文部省は積極的にこれを許可していくというふうにするべきだということを強く申し上げるわけですが、いかがでしょうか。
  113. 天城勲

    政府委員天城勲君) 海洋学部のお話が出ましたけれども、現在、私立大学に海洋学部がございます。これも従来の理学部であるのが、商船とあるいは水産と、いろいろな問題がからみ合ってきているものでございますから、文句たらたらというおことばでございますけれども、やはりいろんな専門家が集まって、大学のお持ちになった案についていろいろ御質問申し上げたり不審な点について議論をいたしますものですから、持っていったものを黙ってのまなかったからということだけで非常に文部省はネガチブだとか、あるいは設置審議会が動かないということではないと思っております。ただ、全体といたしまして、学術関係から発展いたしてまいりますものについては、いきなり学生教育ということでなくて、むしろ新しい領域は研究から入るべきじゃないかという議論がもちろんございます。したがいまして、その出てきた問題によりましていろいろに考えていかなくちゃならぬと思っております。新しい学部が、私学がかなりパイオニアの役目を果たしていただいて発展いたしております。また同時に、これは主として経費の問題でございますけれども国立でなければなかなかやりにくい学部もございます。現に商船のごときは国立でないとなかなかやりにくい。また、今回お願いいたしております芸術工科大学のような新しい行き方も国立で試みておりますけれども方向としては、先生のおっしゃるとおり、あまりかたくなにならずに新しい方向考えていくということは基本的に私たち賛成でございます。
  114. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 以上です。
  115. 中野文門

    ○理事(中野文門君) よろしゅうございますか。
  116. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 はい。
  117. 中野文門

    ○理事(中野文門君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  118. 中野文門

    ○理事(中野文門君) 速記を起こして。
  119. 林塩

    ○林塩君 私は今回、大阪大学にできました医療技術短期大学部の設置に関して少しく質問をしたいと思います。  この中に含まれておりますのが、ここに説明にありますように、従来、看護婦、衛生検査技師、診療エックス線技師などの養成は、これは医療技術という意味で各種学校になっておりましたのを一括して短期大学部として設置した、こういうふうになっております。看護教育が各種学校でなされることについては非常に不合理であるから、かねがねこれをやはり学校教育法の中の短期大学または大学に入れてするべきであるという要求がずいぶん出ておりました。ようやくこれが大阪大学の中で短期大学の程度で発足しましたことはたいへんよいことなのでございますけれども、ただ、いままでは看護学校として各種学校ではございますけれども、単独にこれが教育がなされておりましたのが、今回これをみんな集めて、そして——パラ・メディカルの問題ではあろうと思いますけれども、どうしてこれが医療技術として、ここに総合として短期大学の中に入ったか、その理念について文部省としてはどういうふうにお考えになったのかということを伺いたいのでございます。
  120. 天城勲

    政府委員天城勲君) 短大レベルにこのパラ・  メディカルの要員の養成ということは前々からお話のございましたことでございます。御存じのとおり、短大になりますと大学の基準が要求されてまいりまして、一般教育その他の教育課程も必要になってまいりますし、一定の教官、組織も必要になってまいります。専門の面としては看護婦、あるいはエックス線技師、あるいは検査技師、それぞれございますけれども、短大レベルで考える場合には共通な面もかなりございますので、医療系の技術者の養成の短期大学として一つの新しい試みをしてみようというわけで一緒にいたしまして、三つの学科を置いた短大にいたしたのが理由でございます。
  121. 林塩

    ○林塩君 それで、パラ・メディカルという問題では確かにこれは医師の役目でございます。診断、治療の取り巻く問題ではございますけれども、看護ははたして医療技術の中に入るかどうかという問題でございます。それは教育の面で私もそういう短大を構成していく上に総合教育的なものがあると思うのです。あると思うのですけれども、そういうただ短大を運営していく上の問題としてこれを医療技術の面に入れられたのでしょうか。看護というものをただ技術として考えられていかれたかということです。私どもとしましては、将来やはり看護専門の、教育がなされなければならないんじゃないかと考えますので、文部省当局はそれについて、看護に対してはどういうふうに考えられているか、もう一度伺いたいと思います。
  122. 天城勲

    政府委員天城勲君) 看護教育と申しますか、看護教育ということばで表現できるのでしょうか、私もよく的確なことばはわかりませんが、具体的には専門職業としての看護婦ないしは准看としての資格をとるような養成機関でありながら、なお日常学校体系の中でということを考えますと、御存じのとおり、現在、高等学校に看護高等学校がかなりできております。これは卒業すれば准看の資格が得られますともに、やはり女子教育としての高等学校教育を施していこうというねらいが大きくあると思います。短大になりますと、やはり短大教育の目的そのものが入りますから、その中で専門としてそれぞれパラ・メディカルの要素があるものはそういう面で教育しますし、工業系のものは工業糸の短期大学というものがあるわけでございまして、基本的には学校制度というものの持っている趣旨に即してそれぞれの専門が生かせるようにという考え方をとっております。看護につきましては、もちろん広い意味での医療という中で重要な要素でございますので、その充実ということは考えておりますが、その方法が単独の看護短大でなければならぬ、ほかのものと一緒になった場合にはその趣旨が遂げられないというような、さい然とした分け方で私どもとしては考えているわけではございません。
  123. 林塩

    ○林塩君 そういたしますと、将来とも文部省におかれてはこういう方向で看護学校教育法の中に入れて、大学制度に持ってくるとすれば、将来ともこういう形でずっと進められていく予定でございますかどうか、伺いたい。
  124. 天城勲

    政府委員天城勲君) これは私たちいろいろな問題点がまだあるんじゃないかと思っておりまして、ことし大阪でいわば試験的に一つ始めてみたわけでございます。それから大学のほうの要望もいろいろございまして、大阪大学ではこの三科を一つにまとめて短大を設置したいということでございましたし、その辺のところは今後十分大学とも相談しながら、また、大阪の一つのモデルを十分検討して今後の問題を考えていきたいと思っております。
  125. 林塩

    ○林塩君 少しこまかいことを伺いたいのですが、たとえばこの中で看護婦、衛生検査技師、診療エックス線技師のこういう三科からなっておりますが、それぞれの課程は、それぞれ御承知でございましょうが、看護婦免許をとりますために国家試験を受けなければならない、そういうことでカリキュラムはおのずから違うと思います。こういう形になっておりましても、そのカリキュラム自体は全部それに入っているような仕組みになっております。今年度はどのくらいの志願者をもってどのくらいを教育していく予定かということをお聞かせいただきたい。
  126. 天城勲

    政府委員天城勲君) もちろんこの三学科ともそれぞれの専門職に適応するようなカリキュラムを組んでございます。看護でしたら、看護婦の免許状が取れるようにカリキュラムが組んでございます。  それからなお、ことしの志願者とか、状況でございますけれども、ことしの大阪の実情を申し上げます。看護のほうは定員八十名、あとは四十名ずつでございますが、看護の志願者は百七十九名ございました。それからエックス線のほうは百二十八名、それから衛生検査技師のほうはたいへん志望者が多くて三百九十八名志望者がございました。合計いたしまして、定員百六十に対して七百五名の志望者でございました。なお、看護のほうで百七十九人のうち百七十六人は女子でございまして、男子の志望者も三名ほどおりました。入学者の中にも男子も入っております。それから衛生検査技師の関係においては三百九十八名のうち二百二十三名が女子の志望者でございました。
  127. 林塩

    ○林塩君 これは少し込み入ったことで小さいことのようですが、たいへん大事なことだと思いますことは、短期大学になりましてそこの看護を教える教師の問題、これにつきましては特別の配慮があっておりますかどうか。
  128. 天城勲

    政府委員天城勲君) 短期大学になりますと短期大学としての基準がございまして、一定数の教官が必要になってまいります。したがいまして、各種学校時代よりは教員の定数あるいは全体の内容はかなり充実してまいると思います。たとえば専任教員の基準にいたしましても、従来の各種学校としての看護学校では必ずしも何名なくちゃならぬという基準は制度上はございませんでした。ところが短大になりますと、とにかく一般教育というものが入りますので、そのための専任教員の基準ができてまいりますし、専門につきましても看護科の専門教育をするために教授が何名、助教授が何名という条件がございますので、それに即した定数をこのたび予算措置いたしておるわけでございます。
  129. 林塩

    ○林塩君 それで、ここで問題になりますのは、将来ともそういう形で短期大学をつくっていきますとすれば教師が問題になってまいります。で、短期大学を教える教師としましては、やはりいわゆる大学卒でなくちゃならないというふうに設置基準にはなっております。それから、そういう点で文部省として将来そういう形でつくっていくとしますれば、そこを教える看護教師の問題について何らかの配慮があっているかどうか。  続けて質問をいたしたいのですが、かって衛生看護学科というのがございました。四年大学でございましたが、これがつぶれたのです。それで私は、たいへん悪いのですけれども文部省として看護教育を進めていくためのそういう配慮がいままでなされていなかったというふうに感じますので、文部省自体の姿勢として、将来そういうことをどういうふうにそれじゃ考えていかれるかということを承りたいと思うのです。その衛生看護学科のことにつきましてはもう一度あとで詳しく伺いたいと思います。
  130. 天城勲

    政府委員天城勲君) まあ短大の教官の養成と申しますか、あるいは供給源というものは、短大の基準からまいりますとかなり広い面がございますので、特定の大学でなければ養成されないということではないと思います。ただ、専門の問題といたしまして、専門の教官の養成ということも同時に考えなければならぬわけでございますが、現在、公立、国立、私立にわたりまして四年制の大学の学部もございまして、これが当然かどうかわかりませんが、こういう大学卒業生が将来にわたってそういった教官のソースになろうと思います。また、短大の卒業生におかれても、なお研究を続けていかれれば教官になる場合も考えられるわけでございます。
  131. 林塩

    ○林塩君 これは先ほど出ておりました養護教員の問題と同じになってくると思うのでございますが、そういう専門分野のこれを推し進めていきますためには教育は大事だと思うのですが、教える教師自体の問題を考えないでそういった分野の発展はないと思うのでございますが、常に——女でありますといってひがむわけではありませんが、その点の配慮ができないためになかなかこの分野は進まないということは、ひいてはやはり学校の健康教育の上からいろいろなところに関連を持ってくるわけでございます。あとから伺います病院の問題にも関連し、それからまた医学教育がどのように国民の福祉のために役立つかということにもなってまいりますというので、大きな意味を持っているわけでございますが、そういう点につきましては、将来そのことについては十分に配慮をしていくというおつもりでございますか、どうでございますか、伺いたいと思います。
  132. 天城勲

    政府委員天城勲君) もちろん医療関係の要員の充実につきましては、現場の要員もまたそれを養成する機関も、あるいは進んでその養成機関の指導者の教育の問題につきましても、全体として考えていかなければならぬと考えております。
  133. 林塩

    ○林塩君 先ほどちょっと申しました衛生看護学科の問題でございますが、これが四年大学の形で、そこで保健婦でもあり、それから助産婦でもあり、看護婦でもあるというふうな形で、それが同時に四年大学になるという形で衛生看護学科というのが十年ぐらい前にできたわけでございます。それが最近になりまして、聞くところによりますと、それに入学する志望者がことしあたりはたった一人しかないというような状態なんですね。これを育てていこう、そしてできるだけ有利な状態にしてやろうというふうな配慮がございません。もちろんそういうのは必ずしも文部省当局だけの政治責任ではないと思いますけれども、そういうことがもしかりにあるならば、そこに入りやすい状態、それからまたいい条件を卒業生に与えていくという問題、そういうものが中にあって初めて学校も育つと思いますし、せっかくできたのがつぶれていったということにつきまして、ここは、すでにその教師がもしかりに必要であれば、ここの卒業あたりは使えたのではないかと思うのですが、少なくともそういうのができたというのにつぶれたということであれば、そういう点で何かそれについてお考えがあったのかどうか。これは現在、保健学科となっておりまして、入学者のいろいろな内容が違ってきているということでございますが、このあたり御当局どのようにお考えになっていらっしゃいますか、伺いたいと思います。
  134. 天城勲

    政府委員天城勲君) 東大の衛生看護学科は先生御存じのような経緯でもって志望者も非常に減ってまいりまして、これはかなり東大の入学選抜の場合には特別扱いをいたしておったのでございますけれども、志望者もついになくなってまいりましたし、それから二百名ほどの卒業生を出したわけでございますけれども、本来の専門に向かうよりももっと多角的な方向学生の進路がいろいろ移っていったということもございましょう。とにかく学生の志望者がないということになりますと、学校としても考えざるを得なかったわけでございます。現在、御案内のように保健学科を改組いたしまして、従来の衛生看護学科よりも少し広範囲な、もう少し公衆衛生という観点でございましょうか、そういう面の知識、技術の教育を施すという課程に変わっているわけでございます。結果的に、東大でもこういう新しい試みを持っておやりになったわけでございますけれども学生のほうの魅力と申しますか、学生のほうも減ってくる、卒業生についても必ずしも所期のほうに十分活躍できない、いろいろな事情から変えられたわけでございまして、ただ、このことによって四年制大学における看護関係教育が成り立たないのだということではなくて、これは多分に東大というものの持ついろいろな条件が加わっていたと私は思います。
  135. 林塩

    ○林塩君 それでは、将来は教師の養成並びにこの専門職を生かしていくという意味におきまして、衛生看護学科というふうな形をとらずとも、何かそういったふうなことで短期大学的なものを育てていきますことによって、看護の社会的地位は高くなると同時に質的にも非常に進歩していきますことは、近ごろ社会が要求しておりますところの医療の向上に役立つことだと思うのでございますが、これもやはり文部省としては教育の一環として考えていかなければならないことではないかと思うのでございます。で、あわせてここで、衛生看護学科のことはそれといたしまして、そういう必要性においてやはり教師の養成並びに医療教育といいますか、医師の教育だけが医療の教育でございませんで、すでにパラ・メディカルも出てきておるわけでございますから、そういう点は文部省といたしましては、こういう方面の教育を非常に力を入れていこうとする御意図がおありかどうか、それも伺いたいと思います。
  136. 天城勲

    政府委員天城勲君) 御指摘のように、国民の医療水準を上げるという目標から見ましても、単に医師の養成だけでは進みませんで、御指摘のようにパラ・メディカルの関係をあわせて考えていかなければ成り立たないことは、現実に病院の実態から見ましても十分われわれも了知いたしております。したがいまして、方向としてはそれを関連づけて考えていくということを先ほど申し上げたわけでございます。ただ、学校制度といたしまして、どれもこれも四年制の大学でなければならぬかということは、これは社会的な需給の関係ですとか、あるいはまあ量の問題も大きな条件だろうと思います。それらの点も考えながらいかなければならぬわけでございまして、すべてが学校教育法一条の学校でなければそのことができないとは私たち考えておりません。ただ、申し上げたように、医者の養成だけで事が足りるというわけでないことを十分了知しておりますと同時に、このパラ・メディカル関係の養成についても一そう充実をはかっていく、このために文部省の分担している領域におきましては最大限の努力をいたしたいと、かように考えているのが現在の方針でございます。
  137. 林塩

    ○林塩君 それはただいま御担当のほうからお答えでございますが、文部大臣としてはどのようにお考えになりますか、御方針をお伺いいたします。
  138. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) お尋ねの点は、おそらくこういう短大をつくってもそれに適当する教師の養成はどうなっておるかという、その点に重点を置くかどうかという問題も含まれておられたと思います。先ほど柏原委員からお話がございまして、新しい学部をどんどんつくれという場合におきまして、われわれが一番悩みになりますのは、新しい学部をつくるのはいいのでございますが、同時に、その学部に相当する教師がはたしてあり得るかどうか。今度この法案の中にも、御承知のように芸術工科大学というのをつくりました。これで一番いま、普通でございますならば、つくるときには、本年度から学生を募集してつくるというのが例でございますが、一年準備期間を置きまして四十三年から開校するという大事をとりましたのは、一番大きな問題は教師をどうこれを探し出していくかという問題でございます。これは養成計画としましては、ことし大学院を卒業する優秀な学生の中から希望する者に一年間この科目に相当する研究をしていただきまして、そうして新しい学科に即応する教師を充実していこうという計画を立てておるわけでございます。それで、今度看護につきましての短大をつくりましたのでございますが、やはりこの問題は仰せのように教師をどうするかという問題であろうかと思います。で、今後、いま局長が申しましたように、単に医師の養成だけでなしに、このような医療に関係いたします方々の養成ということは非常に重大でございますので、この教師の補充ということについては、いま私たちが法制限に短大をつくれないのも教師の補充が十分でないからでございます。この点、十分考えながら今後この方面の教育を充実してまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  139. 林塩

    ○林塩君 その問題、なかなかむずかしい問題だと思いますが、やはり非常に大事な問題でございますので、その点、将来ともよほど積極的に政策を立てていただき、またそのために、実現するように努力をしていっていただきたいと思うわけでございます。現在、おっしゃるように一つ、二つの短期大学でどうなるわけではございません。事実すでに四年大学になっている民間のものもございます。それから民間自体も、それに必要に迫られてせざるを得ないというふうに、私学もそれをやろうとしております。しかし、国としての姿勢というのが非常に大事だと思うのです。それで、国がこういう方針であるということを打ち出すことによりまして、そうしてそれは非常に進むと思うのです。国が全部するというようなことはとてもいずれにおきましても不可能だと思うわけでございますが、民間も、国の姿勢がそういうふうになれば、これでやろうというふうになれば進むと思うのでございます。どうぞそういう意味で、看護教育をすることは非常に大事なことであると同時に、またその教師の養成ということは非常に大事なことであるというふうな姿勢でお進みいただくことを要望したいわけでございます。  ついでに申し上げますが、医療制度調査会というのがございまして、これは医療問題に関係しましていろいろ問題が出てまいります。そうして、その制度の中にやはり将来の看護教育をどうするかということで答申が出ております。その中に教育の分野と、それから厚生省とよくはかってそういうことをなすべきだと出ております。それから看護教育につきましては、一応できる限りこの方針で、指導者に対しましては四年の大学で、今日、法律的には保健婦、助産婦、看護婦というふうに分かれておりますけれども、これを一本の線に出して、そうしてそれを四年の大学の中に入れていったらというふうな意向が出ておりますので、これなどもひとつ御研究いただきまして、文部省におかれてぜひ教育の中で御検討がいただきたいわけです。いま、いつでも出てまいります問題は、看護婦が非常に不足をしているので、救急の問題として看護婦不足を補うために高等学校教育の中に准看護婦を入れるのだというようなことを言っておりますが、私はただ看護婦不足を補う医療従事者をつくる、それだけのために目先のことだけを考えまして、そういうことは教育であってはいけない。むしろ、それは大事なことでありますけれども、文教政策といたしましてその線も十分に配慮がなされなければならないのじゃないかと考えるわけでございます。そのことをよろしくお願いしたいわけでございます。  次に、それと関連いたしましてインターンの教育のことでございます。これは看護教育じゃございませんけれども、医療教育、医療面の教育として大事だと思いますのですが、文部省はそのインターンにつきましてどうような——これも教育でございますので、実習は教育じゃないという考え方でなくて、教育としてどのようにお考えになっておりますか、ちょっと伺いたいと思います。
  140. 天城勲

    政府委員天城勲君) 現行のインターン制度につきましては、発足以来いろいろな問題がございまして、特に最近、学生側のインターン拒否、インターン後の国家試験の受験拒否というような問題がございまして、非常に大きな、医者の養成問題のみならず、学校教育上もあるいは社会上も大きな問題となっていることは御存じのとおりでございます。昨年六月、文部大臣と厚生大臣と一緒になりまして、医者の、医学部卒業後の研修のあり方についての懇談会を持ちまして、一年間、鋭意この後の措置につきまして検討をいただいたわけでございますが、去る五月二十三日にこの懇談会から御答申をいただいております。それによりますと、いろいろ問題が複雑でございますけれども、現行のインターン制度は廃止しよう、そして学部卒業者は直ちに国家試験を受ける、その合格者に医師免許状を与える制度に切りかえる、その医師の免許状を一応取った者について、医師というものは職務の特殊性にかんがみ、その後も臨床研修につとめるべきであるという考え方のもとに、新しい臨床研修体制を確立すべきであるという御答申をいただいております。したがいまして、これは制度的に申しますと、インターンに関する限り、法制上の措置は厚生省所管の医師法その他関連の法規に規制されておりますので、それの改正問題が具体的に起きてまいりますし、したがいまして、今後は従来のようなインターン制度でなくて、新たに医師となった者の臨床研修というような形で、大学病院、あるいは新しく考えられております大学以外の教育病院、この両者だけで臨床研修を進めてまいるという構想答申されております。私たちも基本的にはこの構想を受けまして、これの具体化のための措置をいま検計中というのが一連の流れでございます。
  141. 林塩

    ○林塩君 たいへんむずかしい問題ということは承知しておりますけれども、具体的には医師を非常に必要とするという状態が大事だと思うのでございます。まあ、医師の教育につきましては、もっと多くの優秀な医師をほしいと言っておりますのが国民の声でございます。専門の分野につきまして、これは業務のことでございますから、そこまでは詳しくは伺いませんけれども、しかし、インターンが、実習の場がたいへんに困るということで、それぞれ聞いてみますと、実習の場とそれからインターンの期間中にいろいろな、何と言いますか、生活上の問題ということ、これが大学病院におきますところの無給の医師の問題と、それからインターンがたくさん大学病院におりまして、インターン自身もそこではほんとうの実習ができないのだといういろいろな問題がございます。このことにつきましては、解決は急にはできないと思いますが、その辺につきまして、実習も教育であるという考え方文部省としては臨まれておりますかどうかということをちょっと伺いたいと思います。
  142. 天城勲

    政府委員天城勲君) 今度新しい答申をいただいておりますので前向きの方向で問題を考えるわけでございますが、御指摘のとおり、現行のインターン制度は、医学部を卒業してしまってもう学生でない、学生でないけれども医者でないというたいへん身分のはっきりしない立場において、まあとにかく研修をしなければならぬ。しかも、それが医師の国家試験を受けるための義務であったというところに、いま御指摘のような研修を受ける体制とか、あるいはその者の身分、あるいは給与関係というものが不徹底であるわけでございます。しかし、本質的には医師の研修ということは必要である、臨床研修は必要であるということはこれはどなたも異議のないところでございますので、いままで不徹底でございました、あるいは十分措置のできなかった問題等をあらためて考え直そうということで先ほど申し上げたような御答申をいただいたわけでございますので、今後はその趣旨に沿いまして研修を受ける場の研修体制と申しますか、その問題と、それから研修を受ける研修生の身分ないしは立場という両面からはっきりした制度にして、医師の臨床研修を充実いたしたいという御答申趣旨でございますので、私たちも全く同感でございますので、従来のことは一応従来のこととして、あらためて前向きの方向考えていきたい、こう考えておるわけでございます。
  143. 秋山長造

    秋山長造君 ちょっと関連して。いまの医師の養成の問題ですが、そうすると、何ですか、これはまあ所管から言うと文部省と厚生省とでまたがった問題で、へたをすると、いわゆるなわ張り争いというか、権限が抵触するような、ちょうど接点にある問題で、また、そういう行政的な扱いとしても非常に複雑さがあって、おそらくあなた方のほうも非常にてこずっておられる問題だろうと思うのです。ですから、医師の養成と一口に言っても、医師の養成の途中までは文部省でやる、それか一定のところは厚生省でやるというようなかっこうになっておりますね。そこで、非常に端的に私お尋ねするのですが、国家試験を受ける直前までは文部省の医師の養成という一つの過程を考えると、国家試験を受ける直前のところまでは文部省責任を持つわけです。国家試験を受けるところから先は厚生省が責任を持つわけですから、どういうことになるのですか。
  144. 天城勲

    政府委員天城勲君) 今度の新しい制度で申し上げますと、要するに、学校教育としては、医学士になりますと、今度は国家試験を受ける資格が出てくる。これは極端に申し上げますと、ほかの例でも同じでございまして、商船も商船大学を終えますと海員免許状を受ける資格ができる。ですから国家試験というのは医療行政上からくる別の行政と考えていいと思います。それから先の臨床研修という問題でございますが、これは医師である以上は、もうそれで一人前の医者なんでございますけれども、最近の医療技術の向上から、とにかく臨床研修を積まなければ、よりよい医者ができないということから、これは何も義務教育学校という形でなくて、臨床の場を踏みながら技術をみがいていくということが要請されてくるわけです。その辺が非常に御指摘のように複雑なんでございます。これがすべて大学責任なら、大学大学教育体制の中に入れるわけでございますけれども、すべてが大学でやるということもないわけでございまして、したがって今回、水準の高い病院を教育病院として、これは大学の付属病院と同じように教育の病院というものを指定いたしまして、そこで一定の研修計画に従って研修をする構想答申されておるわけであります。所管の問題になりますと、はなはだ複雑でございますけれども、この懇談会自身が文部省と厚生省の二人三脚で始めたものでありますので、実施につきましても、両者分担して、そごを来たさないように考えていなければならないこう考えておるわけであります。
  145. 秋山長造

    秋山長造君 教育病院というのは何ですか、いままでの大学の付属病院とは全然別に新しい医師の養成ということだけの目的の病院をつくるわけですか。
  146. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 医師の今度の新しい研修制度をつくりましても、医師の試験に合格した者の研修機関は、これは私どもとしてはほとんどこれは大学病院に入れなければならぬと思っております。ただ、それだけでは足りませんので、厚生省のほうで教育病院というのを指定しますが、教育病院については、やはり大学と十分に連絡をとって、教育的な医療機関として認定をする形をとるわけであります。すべての病院が教育病院になるわけではございませんで、相当の教育的な余力を持つ病院を厚生省が指定する。ところが、この指定するのにつきまして、どの程度の病院が教育病院になり得るかということについては、現段階ではまだはっきりいたしておりませんけれども、とにかく大学病院以外に教育病院というものを設けるということでございます。ただ、私は今度の制度、お尋ねの中にはないのでございますけれども、私は実はこの答申の線は、文部省立場から言いますと、非常に私は進歩してきておると思います。なぜならば、いままでは大学四年と、二年のプレ・メディカルをやる。四年の大学教育を受けながら、なおかつインターンを一年やらなければ国家試験を受ける資格さえなかったわけであります。しかし、今度はやはり医者の養成学校でありながら、医者にはまだなるかならぬかわからぬような養成をしておったのが、本来、これはやはり私はこの四年の大学を卒業したら、当然に試験を受ける資格は少なくとも与えるべきである、これは私の持論でありましたが、その線まで今度到達されたのが一つ。もう一つは、大学病院の問題といたしまして、一番現在私どもが苦労いたしておりますのは、無給医局員の問題でございます。それで、実地診療の研修をやります場合は、いわば無給医局員と同じような形のものがここにできるわけでございますが、これは要するに大学試験に合格しますと、その大学大学院の学生の取り扱いをいたしてまいります。それからもう一つ重大なことは、無給医局員ができました一番大きな原因は、現在、医学博士の制度でございます。開業いたしますためにはどうしても博士号を持っておらなければ開業できない。ですから、たとえばその基礎医学、細菌学とか、そういったようなもので学位を取りながら、しかも開業は内科とか産婦人科でやる、こういったようなことで、とにかく学位が欲しさに無給医局員として医局で働いておるという場合が非常に多かったのでございますが、今度は二年の研修を入れますと同時に、そのお医者に登録医の制度を設けたのでありまして、   〔理事中野文門君退席、委員長着席〕 内科で二年間実地にやりますと、内科の登録医としてこれを登録する、そしてそれを看板に掲げることができるという制度をとりまして、これは専門制度への移行を意味すると思うのでございまして、実際上の診療の技術とその看板とが一致する、こういう形におきまして従来の不合理であった学位制度というものに対して、基本的な考え方を変えようといたしておるのでございます。私は今度の答申は、私どもにとりましても、また大学の取り扱いにつきましても、非常にいい方向答申がなされておるものと私は解釈いたしておるのでありまして、大学病院における診療研修の形は、これから非常に割合スムーズな形で行なわれることができるのじゃないか。その意味におきまして、国立大学の病院といたしましては、医学部といたしましては、あらゆる答申に沿うような最善の努力を、内容の改善ということでぜひやりたい、そういうように考えております。
  147. 秋山長造

    秋山長造君 もうこれでやめますが、いまのお考えは一応いままでのよりは多少改善になるかとも思うのですが、その前に、一体、大学の六年ですね。六年間医学教育をやって、それでなおかつさらに卒業した後二年間実地研修をやらなければ、この資格は資格といっても名目的な資格ですわね、実質的な資格は取れぬということになると八年ですわね。それもけっこうでしょうけれども、その制度の前に、現在の六年間に教えているその内容を何か改善のしようがないですか。たとえば実地研修なんかにしても、何も卒業してからでなければ実地研修できないということじゃない。付属病院もあるし、医学部のあるところには必ず病院がある。実際には現在だって学生が実習をやっていますね。ただいわゆる学科目その他内容が張りすぎて、とても十分な実地研修ができぬということかもしれぬけれども、二年の教養過程、これは原則的にすべて初めの二年は教養過程ということになっておりますけれども、それは一応原則として認めながらも、やはり医学教育に即した教養過程というようなことに考えれば、何か六年間ですからね、六年の間に理論と実際と両方やって、とにかく一応国家試験に合格すればもうそれで一人立ち、一人立ちと言っても一人立ちの内容はいろいろありますけれども、一応、最小限度の一人立ちはできるということは考えられぬですか。
  148. 天城勲

    政府委員天城勲君) まさに御指摘のとおりでございまして、この懇談会答申におきましても、結局、医学部の教育という問題が一つ問題として議論されましたけれども、結論としては当面のインターン制度の処置ということで次の検討に残されております。六年間の、ほかに比べて長い教育でございますので、この間における臨床研修のあり方、さらには医学教育そのものについてのいろんな御意見が出ておりまして、私たちも次の問題としてはこの問題が検討に正面から対象になると考えております。先ほど大臣が申されましたように、大学院の問題と、それから医学部教育の問題、この問題があわせて考えられなければならない問題と思っております。
  149. 秋山長造

    秋山長造君 どうもそこらのことになると、実地の必要ということもあるかもしれぬが、何か厚生省がいままでインターンの一つの何を持っていたわけです。縄張りを。それを廃止してしまうと何もなくなるわけです。そこにインターンという制度を形の上ではなくすけれども、何かの意味で医者が一人立ちするまでの過程の中で、文部省だけじゃなしに、厚生省としても発言というか、関所を一つ持っていたいという、そういう私は傾向が案外こういうようなことになってあらわれている。いわば文部、厚生の妥協点みたいなことになっているんじゃないかという感じを受けるわけですよ。だから、いま新しい制度でも反対していますね。若い連中が依然として反対の旗をおろさぬでしょう。そういうところを敏感に感じとって反対をしているんじゃないですか、どうなんですか。
  150. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) この新しい答申に対しまして、まだ学生がインターン廃止で本質的に反対をしているというのは私も詳しくは存じておりませんが、しかし、学生の今度のインターン問題に対する反対は必ずしもインターンだけの問題じゃございませんで、特に医学教育の、私がこう言うとおかしいですけれども、旧来の講座制というものに対します一つの反感と申しますか、これは本質的にあると思います。ただ、インターンの問題につきましては、この答申でも実際たとえば開業いたしますとか、独立して実地に診療を行なう場合においては、四年間だけではなお不十分だから、その上に十分もう少し、人命に関する問題でございますから、研修を必要とする。しかし、必ずしも研修を義務づけているわけじゃございませんので、この研修をいたすことは本人の自由意思でございます。特に必ずしも直ちに開業するという場合でない場合は、これは義務づけておるわけではございません。ただ、私はインターン制度を、もし研修を絶対に必要とするならば、医師教育がかりに五年になっても卒業するときに一人前にして出すべきである。しかし、現段階におきましては一応四年で卒業させて、医師免許状を与えて、それ以上に専門医的ないわゆる登録医になるためには二年間の研修を必要とするというのでございますから、一応これでインターンの問題は解決できるんじゃないかと思っております。しかし、なお学生の動向には十分注意してまいりたいと思っております。
  151. 林塩

    ○林塩君 インターンと関連いたしましての問題ではございませんが、やはり教育をしている限り、医師自体の教育だけでなくて、やはり何のために医師教育があるかということは、同時に国民のほうの需要もあるという関係におきまして医師の数が非常に少ない。例を申しますと、近ごろ問題になっております交通事故等の問題につきましても、四千人の人がもし脳外科の医師があったならば助かったであろうということを申しております。それに対して脳外科の専門医は二百人しかいないということは非常にほど遠い問題でございます。そういうようなことと関連いたしまして、文部省としても、起こってきます問題に対処しますための医師の教育をどうするかということと同時に、何人ぐらいを養成していなければいけないとか、これはもちろん厚生省の問題だといいましても、厚生省は教育をしておりませんので、そういう点の対策は、いま考えられているものでございましょうか、将来そういうところまで考えられていくようなことも、文部省として責任を持たれるかどうか、医師が数が少ないということがやはり非常に大きな問題になっているわけでございますので、このあたりについて御意見を伺っておきたい。
  152. 天城勲

    政府委員天城勲君) いまの御質問は、ある意味では医師の絶対量の問題と特定の部門の専門家の養成と二つあるのじゃないかと思っております。医学部の学生定員につきましては、これは厚生省の医療行政との関係現実にございますのだ、たえず密接な関係をとってきておりまして、これは御存じだと思いますが、戦後一時、戦時中の臨時医専、あるいは昔の医専等いろいろなものがございましたので、その整理ということを——あまり数をふやしてほしくないという考え方が医学界あるいは厚生省側からございまして、その整理をしてまいりました。しかし、その後、健康保険の普及によりまして、やはり医師の不足がだんだん取り上げられてまいりまして、最近、私たちのほうも国立大学については学生定員の増をできるところからやってまいりました。最近なお厚生省からも医師の増員について考慮してほしいということを言っておりますので、厚生省と十分連絡をとって考えていきたいと思っております。  それからたまたま脳外科のお話が出たわけでございますが、こういう特殊な領域の専門家、専門の臨床家の設置につきましては、私たちもいろいろ各方面の御要望もございますので、十分検討いたしながら必要な臨床家の設置をいたしております。特に御指摘のように、本年度は脳関係につきましては、単に脳の診療の部門をふやすだけじゃなくして、もっと広い意味での脳の研究を大学の医学部でやり、新らしい脳の研究所の設置も今回お願いするようなわけでございまして、そういう両面から量と質と申しますか、専門分野の拡大という点については今後とも留意していきたいと考えております。
  153. 林塩

    ○林塩君 あと三つほどで終わりますが、次に、大学病院の問題でございますが、いつかもこの問題につきまして質問いたしましたが、二点ございます。いまの大学病院自体はやはり医師を養成するためにその実習所としてあるのだ、教育目的はあるのだということをうたわれております。しかし、同時に患者を診療するという意味では医療法上の病院でございますが、文部省大学病院をたくさん持っておりますが、これについてどちらに重きを置いておられますか。
  154. 天城勲

    政府委員天城勲君) 御指摘のように、大学が本体でございますから、大学がそもそも付属病院を持つ理由教育研究ということが本来の目的でございます。しかし、同時に実際問題として考えてかなり高い医療水準を持っておりますし、国民の社会的な診療機関としても重要な使命を持っておるわけでございます。私たち内部でいつも話をするのでございますが、大学の付属病院というのは、教育と研究と診療という三つの機能を果たしていくということで、たいへん複雑であるし、負担も重いということをいつも問題のあるたびに議論しているのでございますが、その辺の現実はそういう形でございまして、私たちはこれは形の上ではそういうものの言い方はできますが、これが三つ、こん然一体として実は運営されているような実態でございますので、その機能は私たちも十分意識しております。ただ、基本的には大学の持っている意味というものを失ってはならないと、こう考えております。
  155. 林塩

    ○林塩君 それで大学病院は相当大きな分野でございます。しかし、それを文部省で管理をし指導している病院課というのは非常に小さなものですね。それで、あれくらいの病院を持ち、それから医療法上の病院でございます。何百床、何千床という床を持っております。それがやはり適正な医療、看護、そういうものを行なうとするならば、その指導という面ではかなり大きな管理能力文部省本省が持っていなければ、その人員とか、あるいは内容とかいうようなものにつきましてはできないように思うのでございます。最近、病院課ができまして何とかというようなことでございます。看護業務の問題もそれと関連し、それからそこにありますところの教育の問題もそれと関連し、実習の場としての看護患者はどうかということで、非常にむずかしい問題がございますが、これについては病院をどんなふうにお考えになり、将来、文部省としてはそういう分野の拡充をされていき、適正な医療を病院にされるように、ひいてはインターンの実習の場としていい状態がつくれるようにとお考えになっておられますかどうか、その辺、伺いたいと思います。
  156. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 先ほども御答弁申し上げましたように、今度の臨床研修は相当重大な大学病院に対しまして負担をかけられることになると思います。したがいまして、これに要しまする施設、内容、研修の場としまして相当拡充整備してまいらなければならぬと思います。それで、大学病院の地位がだんだん仕事の上からも重大になってまいりますので、四十三年度の予算編成にあたりましては、十分この大学病院課のあり方につきましても考慮をいたしてまいりたいと、こう考えておる次第でございます。
  157. 林塩

    ○林塩君 文部大臣にぜひお願いいたしますことは、文部省としまして医療関係が相当入ってきておりますので、その分野につきましても相当御研究をいただきまして、そして四十三年度におきましては、いま申し上げましたような状態について、格別の御研究と、それからまた予算上のことにつきましては御努力をお願いしたいと思います。本日はこれでやめますが、文部大臣の御所信を伺いたいと思います。
  158. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) お説のとおり非常に重要になってまいりますので、十分私ども検討努力をしてまいりたいと思います。
  159. 秋山長造

    秋山長造君 この改正案の順序に従って二、三点お伺いしたいと思うんですが、まず第一点として、この提案説明にもありますが、国立大学拡充整備計画云々ということがあるんですが、文部省として国立大学拡充整備計画というものは何か持っておられるんですか、プランを持っておられますか。
  160. 天城勲

    政府委員天城勲君) 実はけさほどもちょっと申し上げたわけでございますが、鈴木先生の御質問に関連して。ちょうどいわゆる急増期に当たりまして、大学全体の規模あり方考えていく中で、国立大学としてどういう分担をするかという、四十年、四十一年、四十二年、四十三年ぐらいの見通しを持っておるわけでございます。それは一つは数量的な増部の問題と、それを遂げていく場合の学生の増募をはかっていく場合の方法、たとえば学部の増設とか、学科の増設、あるいは従来も課題になっておりました文理学部の拡充改組の中でどういうふうに遂げていくか、あるいは全体の中で文科系と理科系をどのような比率で伸ばしていくかというような基本的な考え方を持っておるわけでございます。
  161. 秋山長造

    秋山長造君 私がお尋ねしているのは——いま局長がおっしゃるのは、また、けさ鈴木委員との論議の中に出たのは、これは国立大学の整備拡充という問題の中の私は一部だと思うんですよ。ただ、主としていま量的な問題だけで、ベビーブームをどうこなしていくかという面だけの整備拡充でしょう。私がいまお尋ねするのは、それももちろん重要な要素にはなるが、ただ国立大学の整備拡充というとそれだけじゃないと思う。考えようによっては、そういうことも大事だけれども、もっと大事なことは、質的な整備拡充ということが本来はもっと大事なことじゃないかと思いますので、そういう両者を含めたことになりますけれども、そういう意味のひとつ、たとえば養護教員の養成についても五カ年計画という充足計画一つある。その他計画ばやりで何カ年計画というものがいろいろな面に出てきていますが、そういうような意味で、文部省として、このたくさんある国立大学の整備拡充計画というものを持っておられるのかどうかということを聞いているんです。
  162. 天城勲

    政府委員天城勲君) ことばが足りませんでしたけれども、けさほど鈴木先生の御質問に関して申し上げたのは、国公私立を含めての量的な一つ考え方でございます。その中で量的な面から見れば国立大学の分担する分がございます。それを含めて申し上げたわけでございますが、同時に、国立大学自身として御指摘のような質、一言で質と申しますか、内容を充実しながら拡充していくという考え方は当然でございまして、私たちも持っております。それで同じ量をふやすにつきましても、ちょっといま申し上げましたように、大学全体の中で国立大学の持っておる意味から、たとえば理工系に重点を置くとか、それから教員養成の、義務教育教員養成については国立が中核になっておりますので、それの充実をはかるという点、あるいは非常にこまかいことがいろいろございますけれども、たとえば教官の研究費、あるいは学生の経費、これは予算的な水準の向上でございますが、そういうものを伸ばしていく、あるいは大学院の問題につきましても新しい修士課程を設けるとか、あるいは全体の水準を上げる問題とか、あるいは従来からも問題になっておりました文理学部の改組を、この急増の増員の過程の中でどうこなしていくかとか、学術関係の分野を研究所をはじめ全体をどういうふうに整備していくかとか、あるいは一般教員についての充実をはかるために教養部の設置をどのようにやっていくかとか、こまかく申し上げればいろいろなことがございますけれども考え方といたしましては、単に量の問題でなくして、質あるいは組織の問題を含めて考えたわけでございます。ただ何と申しましても、ここ両三年間、量の拡大ということがある意味では不可避的な要求でございますので、やや質的な問題についてはタイミングのズレを考えまして、この山を越えた段階で一そう質的な改善をはかろう、こういう大体のもくろみは立っております。
  163. 秋山長造

    秋山長造君 そうすると、頭の中での整備拡充計画というものは一応あるにしても、何か具体的な書いたものは、まだそういうものは持っておられぬということですね。
  164. 天城勲

    政府委員天城勲君) 特に国立大学につきましては大学の意向というものがかなりございますものですから、私たちがこういう学部をつくれとか、ここをふやせということを一方的に言えないものでございますから、そういう基本方針を定めまして、この三年間なら三年間の基本的な考え方大学に示して、その中で大学と話し合いをつけながら、できるだけその計画を実現するようなそういうやり方をいたしておるものですから、文章で書くと申しますか、骨については書いたものも持っておりますけれども、何々計画といって数字がきっちり入ったものは私たちは現在持っておりません。
  165. 秋山長造

    秋山長造君 事の性格上、何々計画というようなものはできにくいということだと思うのですが、ただ、国立大学は七十四ですか、あるのですね。まあひところは駅弁大学だなどと、ずいぶん悪口を言われた。また最近は少しことばを変えて量産大学というようなことばを言ったりしておりますが、いずれにしてもそのことばに含まれておる意味というものは、同じ国立大学であっても、地域により、また大学によってずいぶん格差がひどい、ピンからキリまである、こういうことだろうと思う。第一、入学試験だって一期校と二期校と同じ国立大学でそこに差別がついておる。どうしても一期校は二期校に対して優越意識を持つでしょう。また二期校は一期校に対してコンプレックスを持つことにになるでしょう。これは否定できないと思う。そういうことをできるだけなくしていって、ほぼバランスのとれた国立大学というものの網を全国に張るというのが私は当面の理想だろうと思うのですね。文部省としてもそういうようにお考えになってこの整備拡充ということに努力していかれるおつもりかどうか。これは私立大学も入ります、広げればね。そこまでは手が回らないから、とりあえず私が問題にしておるのは国立大学七十四校のことを問題にしておるのですけれども、七十四校がそれぞれ個性があり専門が違うのですから、ある意味では違ってくるのはやむを得ないが、それにしても質的にあまりにも格差がつき過ぎておるということは否定できないでしょう、設備の面からいいましても、教官の陣容からいいましても、学生の質からいいましても、あらゆる面からいって。そこいらを将来、量だけでなく質的な整備拡充の面でどういうような根本方針でやっていこうとされているのかということです。
  166. 天城勲

    政府委員天城勲君) これを一言で申し上げますのはたいへんむずかしいのでございますけれども、簡単に申し上げますれば、私たちは、それぞれ大学が歴史的な事情を持っておりますし、また、地理、地域的な事情を持っております。要するに、個性がございますものですから、それぞれの特色を出すようにいたしたい。何でも同じ型にしなければならないという考え方はむしろとらないほうがいいのじゃないか。大学のそれぞれの特色を発見してそれを伸ばすような形で応援したいということを第一に考えております。  それからよく格差ということを言われるのでございますけれども、私たち基本的には予算、積算、あるいは制度の上でもっていわゆる旧制大学とか、新制大学とかいっても、積算上その他の区別はしないでおるわけでございます。ただ、現実問題として大学院が非常に充実してまいりますとか、あるいは研究が非常に積極的になってくる大学については、研究費、あるいは大学院の指導費、講座費というようなものが加算されてまいりまして、その面が非常に大きなウエートを占めるために、総体的には格差が非常に目立つような印象を受けますが、私たちは基本的に少なくとも学部教育のものの考え方においては同じように扱っておる。しかし、できるだけ各大学の特色を生かしてそれを伸ばすように応援したい。抽象的に申しますと、そういう考え方を基本に持っておるわけでございます。
  167. 秋山長造

    秋山長造君 この問題の議論はもっと突き詰めてやっていく必要があると思う。しかし、きょうはやりませんけれども、あなたのほうでもそういうことで現在の大学というものの実態調査をやられるんでしょう。
  168. 天城勲

    政府委員天城勲君) 国立大学につきましては平素の仕事関係もございますので、いろいろな角度から業務報告的なものはとっておりますが、本年度もっと広い意味での大学調査を、これは官房のほうが主体になりまして実施する計画を持っております。
  169. 秋山長造

    秋山長造君 それで、今度、山形大学、茨城大学の文理学部を人文学部と理学部に分けるということが出てきておるんですが、これはいままで全部で十四文理学部がありましたね。それをずっと分離してきて、ここで山形大学と茨城大学を分離する、そうするとあと千葉、愛媛、高知、島根、富山……。
  170. 天城勲

    政府委員天城勲君) 三つです。
  171. 秋山長造

    秋山長造君 あと三つですか。どこどこですか、あと指摘していただきたいんですが、それで一応文理学部の分離は終わるわけでしょうね。私は必ずしも入学志願者の急増に対する対策としてだけでやってこられたものとは思っていないんです。やっぱりそうでなしに、質的な拡充整備計画ということでやってこられたんだと思うんですがね。やはりあと残っている三大学も続いておやりになるのかどうかということ。それから、ことし富山もやるとおっしゃっておりましたね。それがここで抜けておるのはどういう事情かということ。それから、あわせて法文学部というのが四つか幾つかありますね。法文学部なんかを法学部と文学部とに分離してそれぞれ充実をしていかれるおつもりがないかということを承りたい。
  172. 天城勲

    政府委員天城勲君) 御指摘のとおり、いわゆる文理学部というのが十四大学にございました。これは中教審の三十八年の答申でも文理学部の趣旨はございますが、その後のいろいろな実情から文理学部はそれぞれの実情をしんしゃくして改組なり拡充されることが必要である、こういう答申をいただいております。それに基づきまして、この基本趣旨に従って各大学でどういうふうに拡充していくか、改組していくかということを御検討願いまして、内部の態勢が整ったところから逐次実施してまいったわけでございまして、今後残るものが——今後残ると申しますかまだそれが済んでおりませんのが、愛媛、高知、千葉の三文理学部でございます。
  173. 秋山長造

    秋山長造君 富山はどうです。
  174. 天城勲

    政府委員天城勲君) それからいま御指摘の富山のような、あるいは島根のような大学は文理学部を分離いたしませんで、現状のままで内容を充実するというのが学校の方針でございましたので、二学部に分けないままの大学もございます。これはそれぞれの大学考え方によっていずれの方法によってでも文理学部を充実する、こういう方針に従ってやったわけでございます。したがいまして、全体としてこの十四大学が分離するか、あるいは分離しないままで充実するか、それぞれの大学考え方によりますが、一わたり全部いたすつもりでございます。それから御指摘の法文学部という学部が四つございます。これをどうするかというお話でございますが、この中にはやはり沿革的にいろいろな過程を通って現在の法文学部になっておるものもございます。これを次に——次にと申しますか、すぐ法学部系と文学部系に分けるとか分けないとかということにつきましては、私たち全体のプランの中から考えまして次の問題にいたしたい。一応この分離の問題を一わたり終わった次の問題として取り上げたい、事務的にはそういう考え方で現在おります。
  175. 秋山長造

    秋山長造君 そうすると、文部省のお考えは、あと残っているのは千葉と愛媛と高知と、来年これをやるのですか。それで来年やって、そうしてさらに再来年になりますわね、再来年以後の問題と、法文学部はというようにお考えになっているのですか。
  176. 天城勲

    政府委員天城勲君) あとの三大学につきましては、三大学がそれぞれ検討されておりますので、その内容がまとまれば逐次やるということで、来年すぐ三大学とも事情が整うかどうか、現在の時点ではわかりません。しかし、方向としては全部やるつもりでおります。それから法文の分離と申しますか、他のこういう複合学部的なものをどうするかということは、一応これを終わりましてから、それをどうするかということを考えたい、こう思っております。
  177. 秋山長造

    秋山長造君 そうしますと、いまのところは文理学部を分けるということしか考えてない、法文学部のことは一切考えてないということなんですか。
  178. 天城勲

    政府委員天城勲君) 実は法文学部だけでございませんで、一応分離ということを計画的にやってまいりましたけれども、文理学部のことを取り上げてまいりましたけれども、他に学部の問題がいろいろございます。従来の文学部と言われたものでさえも内容の再検討をしております。いろいろ新しい問題が起きてまいりますので、一応、文理学部の改組拡充の問題が終わりました段階で、大学の学部問題をどう考えるかをあらためて考える。その中で御指摘の法文学部も当然議題になるだろう、こういうことを申し上げたわけであります。
  179. 秋山長造

    秋山長造君 私は必ずしも文理学部についても文学部の理学部に分離することを一律にやっていいかどうかということは、いまも局長のおっしゃるように、問題がそれぞれの大学の特殊事情というものを十分尊重されるということ、富山や島根というものはむしろ文理学部のままで充実していきたい、こういうことだとおっしゃる。そこで、法文学部についても四つあるわけですけれども、その四つを一律に分けるとか分けぬとかという議論にはならぬと思うのですけれども、しかしただ、さっきの文理学部を分けると同じ趣旨で四つの法文学部のうち、ぜひその地域の事情、また大学の特色その他から考えて速急に分けて、個々に充実していきたいという強い希望を持っておるところは、あるいはもうそういう陣容を持っているところは、これは分けるのは文理学部だけで、あとのものは一切あと回しだというのも私はおかしな話だと思うのですよ。文理学部は文理学部としてやればいいが、それと並行して法文学部などの問題も考えていったらいいんじゃないかと考えるのですがね、それはいかがですか。
  180. 天城勲

    政府委員天城勲君) 実は法文学部の問題だけじゃございませんで、現在人文学部という名前の学部でも、中から社会科学系を分けるという議論も出ておるわけでございまして、それらの点はたまたま法文という名前が出ているので法文という議論が出ますけれども、人文系の中でも、中を社会科学系を分けたいという話も出ておるわけでありまするので、ひとまず文理学部の処置が終わりましてから、そういう従来の既設学部の再編成の問題はあらためて考えていくという原則論を申し上げておるわけですから……。
  181. 秋山長造

    秋山長造君 原則論でもいいんですが、文理学部を大体分けるというのは、そもそも理由は何ですか。やはり文と理は水と油のように不自然なものだから分けるというのですか。
  182. 天城勲

    政府委員天城勲君) 分けなくても充実していける大学がございますように、分けなければならぬという理由はございません。ただ戦後、文理学部が旧制高等学校を母体としてできてきたいろいろな沿革から、当初考えました文理学部のありようが、その大学の他の学部、あるいは一般教育をおもに引き受けておりますので、そういう関係から、その大学について最初考えられたとおりいくことが、必ずしも最初考えたとおりいかない場合がいろいろ出ておるものですから、文理学部全体としていろいろな問題がございましたので、特に文理学部の問題が中教審でも取り上げられて、それぞれ実情に応じて改組なり拡充なりしたらいいじゃないかという御答申がありまして、これは文理学部関係者が長い間集まりまして相談した結果、それぞれの大学の実情に即した分け方をしてきたわけでございます。したがいまして、大学によりましては、御指摘のように自然系と人文学系一本でもいいという学部がございまして、それぞれの大学の事情によって処置いたしたわけでございます。なお、学部全体といたしまして、私たちもいろいろな問題をかかえておりますので、どこはどうする、どこはどうするということを、この場で私申しかねる事情にございますので、ひとり文学部だけの問題ではございません、全体として学部の問題を考えさしていただきたいということを申し上げておるわけであります。
  183. 秋山長造

    秋山長造君 分離というと、文科系と理科系、これを一緒にしておくのは不自然だから、分けたほうが自然だろうという感じ方が、お互い気持ちの底にあるのじゃないかと思うのですよね、それはありませんか、あなた。
  184. 天城勲

    政府委員天城勲君) それは、普通見るとそういう考えがあると思いますけれども、たとえば東大の駒場の教養学部の教養学科、普通教養学部の専門と言われておるものも、いわゆる教養学科と基礎科学と自然科学と、人文科学系、社会になっておるわけでございます。それはそれでも大学考え方でございますし、本来、自然科学と社会科学が同じ学部でごちゃごちゃに教育するわけじゃございませんし、それぞれの専門のところは、専門のところとしてやるわけでございますから、事の性質上同じ学部にいていけないということは成り立たないのじゃないかと思っております。
  185. 秋山長造

    秋山長造君 わかりました。結局、文部省としては何ですね、一つの原則を立てて、それで機械的に割り切っていくというやり方はとらない、あくまで当該大学の個性といいますか、その大学個々の事情によって対処していく、こういうように受け取っていいですね。
  186. 天城勲

    政府委員天城勲君) 具体的な問題については大学と十分話し合いをしていくということでございます。ただ、基本的にやはり考えられる問題は、それは幾つかございますので、先ほども申した設置基準というようなものもございますので、その程度のことは、大学と話し合うときにわれわれの意見として申し上げますが、具体的の問題については大学と十分話し合っていきたい、どこもここも同じ方式で、同じ型によっていかなければならないという考え方は持っていないということを申し上げる次第であります。
  187. 秋山長造

    秋山長造君 時間とりますから次にいきます。  第二の大学院の問題に関連してですが、この間、国大教から国立大学教官の給与改善対策要望書というのが、文部省と大蔵省と人事院に提出されておりますね、これは文部省として、特にあなたのほうが担当の局になると私は思う、これはどういうように扱うおつもりなんですか。
  188. 天城勲

    政府委員天城勲君) これは内部のお話もございましたから、正面からの担当は人事課が従来給与の担当はやっております。もちろん大学の問題でございますので、大学局も一緒になってこの給与問題は処理してまいりました。このたび国立大学協会から国立大学教官の給与改善に関する要望書が文部省に提出されております。それにつきまして、私たちのほうの処理のしかたでございますけれども関係の人事課が中心になりますが、関係の部課が集まりまして、これは内部だけの問題でございますが、一つの給与に関するわれわれ研究会と称しているものがあるのでございますが、そこで十分検討いたして、毎年の措置でございますが、人事院に要望という形で文部省から大学教官の給与改善について申し入れをいたしております。このたびも国大協からこういう御要求をいただいておりますので、その措置を、その方法によってそれの実現に努力したいと、かように考えております。
  189. 秋山長造

    秋山長造君 これは文部大臣にお伺いしますが、いまちょっと大臣が席をはずされたから、局長に、しかたなしにお尋ねしたのですけれども、この間、国大協から出た国立大学教官の給与の改善に関する要望書、大臣はこれをお読みになりましたか。
  190. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 詳しくは読んでおりませんが、大体わかっております。
  191. 秋山長造

    秋山長造君 これはきわめて重要な内容を含んでおると思うのですが、文部大臣としてこの要望書に対して今後どう対処されようとしておるのか、ちょっとお伺いいたしたいと思います。
  192. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 私は詳しくはまだ検討しておりませんけれども、国大協の要望の筋は私は非常にごもっともな点が多いと思っております。でございますので、このほど人事院総裁ともお話したのでございますが、できるだけ基本的にはその線に沿ったように、今度の勧告の時期も近づいておりますので、人事院でも考慮してもらって、できるだけこの趣旨を取り入れるような勧告をいたしてもらうように、人事院ともお話し合いをしてまいりたいと思っております。でございますから、基本的にはぜひひとつこの線に沿って私どもできるだけ努力をしたい、こう考えております。
  193. 秋山長造

    秋山長造君 次に、さっき鈴木委員から資料要求のあった九州芸術工科大学のことですが、さっきの大臣の御答弁では四十三年度から開設するということにはなったけれども、なかなか教官の陣容を整えるのがたいへんだというお話だったと思うのです。これは特にこういう教官もなかなかこの学校に向いたような専門の教官を備えるのが文部省の力をもってしてもたいへんだというような、できるかできぬかわからぬぐらいたいへんだと思うのです。特に九州でこういう要望が持ち上がったというのは何か特別な事情があるのですか。工業デザインでしょう、要するに、これは。
  194. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 実はこれは内容を打ち割って私お話し申し上げるのでございますが、御承知のように福岡県の学芸大学はいわゆるタコの足大学と言われまして、一つの本校と四つの分校を持っております。こういう状況では教員養成といたしましてもだんだんまあその内容が低下してまいりますので、全県民の要望といたしまして、これを一つに統合いたしまして、教育大学を移転統合するという方針を決定したわけでございますが、その際におきまして、特に本校がございました福岡市としては、従来ありました学芸大学の本校がなくなるということは市民としてたいへんな問題でございますので、そのあと地にぜひひとつ、その当時でございますと、芸術大学をつくってもらえないかという強い要望がございました。それで、芸術大学といたしましては、はたして日本に、上野の芸術大学以外にもう一つ同じようなものが要るかどうかということからいろいろ検討をいたしまして、最近の産業と芸術と合わせた一つの新しい大学をつくったらどうかという意見がだんだん強くなりまして、そうしてこれを文部省のほうに地元からの要望で取り上げていただきまして、それの調査費を三年ばかり計上して、そうして成り立つかどうか、また成り立った場合に内容をどうするかということの委員会における長期にわたります研究をしていただきまして、そうしてこれは近代産業におきましてきわめて必要な学校一つ制度であり、しかも、これをやるためには必ずこういうプランでやれば成り立つという一つの見通しがつきましたので、これを四十三年度から開校するということで今度お願いをいたしておるわけでございます。でございますから、そういう歴史的な意味合いにおきまして福岡につくるということに決定したわけでございます。
  195. 秋山長造

    秋山長造君 この提案の趣旨を拝見いたしましても、なかなかこれはいままでのわれわれの常識のワクをはるかに越えたスケールを持っているのですね。「自然科学と人文社会科学の総合、あるいは科学と芸術の総合が必要とされるのであります。このような新しい学問分野を開拓するため、」云々と、これは壮大なスケールを持った大学ですね。いま大臣がおっしゃったような経緯があって福岡へできる、九州にできるということですから、これについてとやかく言うのでは私はないのです。ただ、これだけの趣旨で、しかも工業デザイナーというようなものの養成を中心にした大学ということになれば一もちろん九州がいなかだと申しません。九州に置いてけっこうなんですが、しかし、私どもの常識から言うと、当然、東京だとか、大阪だとかいうようなところで、そういう要望というか必要はなをさら非常に強いはずだと思うのです。ですが、まず九州にということになったのですが、そうしますと、東京や大阪にもまたつくっていかれるというような御計画があるのかどうか。これは芸術大学が東京の上野に一つだけあると同じように、この工業デザイナーの養成の国立大学というものは九州一つでやっていくのだというおつもりなのか、そこらのおつもりをちょっと聞かせていただきたい。
  196. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) これは私、この大学は第一の問題はいま申されましたように、非常に内容的にむずかしい大学でございますから、この大学をりっぱにつくりあげるという面も相当の努力が要ると思います。それから第二の問題は、これに必要といたします教師、いわゆる先生をいかにして集めるかということが非常に問題でございます。これはいまこの教師につきましては選考委員会をつくりまして、広く人材を日本全国にこれを求めて相当なこの組織についていま進展をしつつございます。しかし、これを一ぺんに幾つもそういうふうにつくるということは非常に困難な問題であろうと思いますが、遠き将来におきましてこれが非常な成果をあげてまいりまして、近代産業としてぜひ必要であるということから、必ずしもこれは一つだけでは済まぬじゃないかという問題が起こってまいりますれば、これは私どもといたしまして必ずこの一つに限定をするというだけの意味は、ただいまはっきりこの一つだけで絶対にあとはつくらないと私は明言するだけのあれはないのでございますが、さしあたりは、やはり当分の間は幾つもこれをつくるということは非常に困難じゃないかと思っております。
  197. 秋山長造

    秋山長造君 現在、この今度の芸術工科大学がねらっているようなデザイナーの高度な、程度の高いデザイナーの養成ということでしょうが、いままではこういう程度の高いデザイナーの養成ということはどこでやっているのですか。いままでの大学でこういうことをやっているところがありますか。
  198. 天城勲

    政府委員天城勲君) 名称から申しますと似たようなところもないわけではございません。国立大学につきましては千葉大学の工学部に工業意匠学科というのがございます。これはある意味では、いま先生おっしゃったように、いわゆる従来いわれております工業デザインの学科でございます。ここで考えておりますのは、工業デザインという、従来いわれておった工業デザインだけではございませんで、もっと広い意味をもって、いわゆるデザイン、日本でデザインということばが非常に狭く解されているので、ときどき誤解を受けるのでございますが、ここでは設計ということばを全体に使っておりますが、環境の問題でございますとか、あるいは工業の問題だけじゃなくして、画像の問題ですとか、あるいは音響の問題、芸術面と非常に関係の深い分野について研究していこうというのでございます。現在類似の学科がないわけではございませんが、ここでねらっているような総合的な学部と申しますか、これは初めてだと思っております。
  199. 秋山長造

    秋山長造君 専任教官四十六名という計画のようですけれども、この学科の名称、それからいろいろな教育内容、この資料を拝見しますと、どうも一つ一つが全く私ら予備知識がない者はわからぬ非常にむずかしい感じを受けるのですが、いまの国立大学の中にこういう専門家、大学の教官としての適格者というものはこれは四十六人そろえなければならないのですが、これはこの陣容をそろえることについては文部省は自信と見通しを持っておられるのですか。
  200. 天城勲

    政府委員天城勲君) 大臣もさきに触れられたように、この教官をどう構成するかということがこの学校のかなめだと思っております。これは国立大学に限りませんで、国公私立大学、あるいはさらに広く民間の機関におられる専門家を対象にいたしていま検討いたしているわけでございます。四年間に完成いたすわけでございまして、特定の分野につきましては現に検討している中には、まだ若い研究者で海外で研究している方もあるような状況でございまして、従来の大学教官のソースにこだわらず、かなり広い範囲から研究者としての適正なる方を探そうというのがいまの選考委員会の考え方でございます。大体の全体についての見通しはある程度できかかっているのが現状でございます。
  201. 秋山長造

    秋山長造君 やはり私は地域的なハンディというようなことはあるでしょうし、なかなか優秀な陣容をそろえるということはたいへんな骨の折れることじゃないかと思う。しかし、まあせっかくこうやってつくるわけですから、ひとつその点は十分配慮をされて、文部省としても、ただ看板だけの学校で、生みっぱなしにならぬように相当腰を据えて、名実ともに備わった大学に仕上げるように、これはうんと努力をされなければならぬのじゃないかと思うので、まあその点は強く要望しておきます。  それから、もう時間がありませんが、もう二点だけこの際お伺いしますが、一つは、さっき林委員の御質問に関連して大臣からちょっとお話が出ておったのですが、無給医局員の問題ですね、この無給医局員については、今度、予算で若干、一億円ばかり組まれておるようですが、もちろんこれで、一億円の予算でこの無給医局員の問題が片づくとは思いませんが、無給医局員は一体いまどのくらいの数があって、そしてそれを今後どういうようにして解決をつけていこうとされているのか、何か計画があるやに聞いておったわけですが、その点をちょっと御説明願いたいのです。
  202. 天城勲

    政府委員天城勲君) 現在、無給医局員は大ざっぱに申しまして八千人ほどございます。これの措置につきまして、本年度、四十二年度予算編成の段階におきましては、先ほど申したように、ちょうど医学教育に関する懇談会が持たれておりましたときでございまして、その答申が最終的にまだ出ておりませんので、抜本的な方策を立てかねたわけでございます。しかし、現実におる事態に対しては対処いたさなければならぬものですから、私たちこの無給医局員と言われている者の実態がかなり多角的でございますので、これを十分明らかにするということを一つ考えております。それで、同時にこの無給医局員と言われている人々の中で、現に臨床研修の立場から臨床に従事している方があるわけでございます。その臨床に従事している人たちが、大学の診療業務に、ことばは何と申し上げていいか、要するに寄与している、診療業務として寄与している分につきましては、それに対する対価を支払わなければならないだろう、支払うべきであるという考え方は、研修生でありますけれども、診療業務に従事することによって大学の診療に貢献する、寄与しているという部分については対価を払うべきであるという考え方から、診療協力謝金という名目で今度予算を計上いたしたわけでございます。これはいわゆる無給医局員と言われている人々の医局における勤務実態と申しますか、研究実態が非常に多様でございますので、これを今年度中に明らかにいたしまして、その上でただいま申し上げたような措置をとりたい、かように考えたわけでございます。一方、大学自身の診療要員の不足ということがいろいろ言われております。実質的にはこの無給医局員と言われている方々の中には、十分診療要員としての実力を持っている方々もおられますし、これらの方々については診療要員の定数を増加することによって、はっきりと病院の医官という側に入れる方もあります。その両面から問題を考えていかなくちゃならないのじゃないか、かねて大学卒業後の研修制度というものがこの無給医局員の実態の中にございますので、臨床研修体制を整えながら、病院としての必要な診療要員を確保しながら、そして、あとはほんとうに研修に従事するというこの関係を明らかに仕分けいたしまして、今後、無給医局員といわれているものの実態を制度的に明らかにしてまいりたい、こう考えているのがいまの方針であります。
  203. 秋山長造

    秋山長造君 今度その診療業務従事者として予算を組んでおられるのは何人ですか。今度の予算の。診療協力謝金でしょう、この予算の対象になっているのは何人ですか、八千人の無給医局員のうち。
  204. 天城勲

    政府委員天城勲君) これは先ほど申しましたように、現在八千人おりますけれども、勤務あるいは研究の実態というのが残念ながら詳しくわからないのでございます。それで、私たちといたしましては、今年度の前半にこの実態を明らかにいたしまして、その実態に即して診療協力謝金を使いたいと思っておりまして、現時点におきましてはこまかい積算ができておりません。
  205. 秋山長造

    秋山長造君 最初の文部省のお考えでは病院教官というんですか、何か病院教官という制度をつくって、それに漸次切りかえていくというようなおつもりじゃなかったんですか。私ちょっと総選挙の前ころでしたか、何かそういうことを耳にしたことがあるんですけれどもね、無給医局員の問題が新聞に言われておったころです。
  206. 天城勲

    政府委員天城勲君) これは先ほども申し上げましたように、大学として、また、大学の病院として必要な人員、これは先ほども先生の御質問にもございましたように、教育と研究と診療という三要素を持っております病院といたしまして、普通の病院の基準以上に医療職員を常置しなければならぬ問題でございますので、その面で必要な職員は職員として確保する、そういたしますと、現に無給医局員と言われておる方々の中で、実質的に医療要員になるべき資格のある方、あるいは実質的にそういう貢献をしておる方もありますから、そういう人たちは私たち考えでいけば助手とか、あるいは講師という身分で病院側の職員になっていく、そうでない人はやはり本質的に研修が目的なので、それは研修員として取り扱っていく、これを明らかにしたいというのが今回の考え方でございます。ですから無給医局員の解消といいますか、その方法は両面から考えていかなければならない、こう考えております。
  207. 秋山長造

    秋山長造君 そういたしますと、やはりこれもとりあえずこの医療協力謝金制度というものをつくって、そうして手当を支給していけるのなら、ことし一年かかって無給医局員の実態調査をやって、調査がまとまった上で、いま局長のおっしゃるような二つの方法によって何か年次計画でも立てて、はっきり無給医局員というものを解消していく、こういうように受け取っておったらいいですか。
  208. 天城勲

    政府委員天城勲君) 基本的には私どもはさように考えております。ですから、今後ほんとうの研修をするものについては、これは研究生としてはっきりいたすと、その辺の仕分けをいたした上で、かねて、このたび医療教育懇談会から出ました答申もございますので、その制度を織り込みながら言われておる無給医局員のあいまいな制度というものをはっきり仕分けいたしたい、そういうつもりでおります。
  209. 秋山長造

    秋山長造君 それからもうこれでやめますか、提案説明の第三のところの、国立大学の付置研究所の新設その他に関連してちょっとお尋ねするのですが、まあせんだって来、科学研究費の援助をアメリカ軍から受けていたという問題が出てきてずいぶん論議を呼んだわけです。もうきょうはそのことは繰り返しませんけれども、ただ結論だけお尋ねしておきたいのは、あの当時、佐藤総理大臣も、こういう問題についてはとにかくけじめをつけねばいかぬということを何回もおっしゃった。それからまた文部大臣もそれと同じようなことをおっしゃり、さらに大学の自治という原則はあるが、しかし、終局的にはやはり文部大臣責任だ、だから何らかのやはり結末をきちっとつけていきたいというような意味のことを何回かおっしゃった。まああちこちの大学でも自発的にこれを辞退するとか、今後は一切やめるとか、いろいろあとに尾を引いているわけですけれども文部省としては終局的にこの問題は今後どういうように処理をされるのですか。
  210. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) まあ基本的に文部省はいままで大学に対しまして、学者の研究については関与しないで、学者の自主的な判断にまかせるという態度でずっとやってまいりました。しかし、今度の問題が起こりまして、これはやはり大学の教授の自主的判断において正しかったということは一応言えないと思います。しかし、文部省立場としましては、あくまでこれはおもしろくないからやめろというような命令的な態度に出ませんで、大学自体がこの問題について反省をしていただこうという考えをいたしまして、先日、実は関係のございます全部の大学の事務局長を呼びまして、これに対して大学自体で何らかの話し合いで考え方をまとめて持ってくるようにということで、おそらく関係大学で話し合いをいたしまして、これに対する結論を大学自体が出したという形で持ってくるだろうと思います。そのことを期待していま処置をいたしておるわけでございます。
  211. 秋山長造

    秋山長造君 こういう問題が出るたびに日本の政府の出しておる科学研究費が非常に少ないという議論が必ず出てくる。まあ私自身は、今度の問題と科学研究費が少ないということは、それは関連がないことはないでしょうがね。だから、どっからでももらうということにはならぬと思う。これはやはりその金の問題も金の問題ですけれども、やはり学者の一つのモラルといいますかね。何かそういうことに触れる面が非常にあると思う。そういう意味では、私はその理由がどうであろうと、それは国民の学者、研究者に対する信頼感といいますかね、無条件の信頼感というようなものに対して非常なやっぱりマイナスをつけたと思うんですよ。これは極端なことを言えば、科学者に対する国民の信頼感というものを根本的にくつがえしたといっても言い過ぎじゃないぐらい、そういう意味の衝撃というものを与えていると思う。それが筋が通っておるか通っていないか、また実態に即しておるかどうかは別として、そういう意味では非常に大きな問題を残したと思うんですけれども、しかし、その問題は学界自身、大学自身が、いま大臣のおっしゃるように非常に内部で反省されて、今後の善処ということは自発的にやろうということのようですから、また、文部省としても、あくまでその線で問題を処理をして切りをつけたいといいますので、それはそれでけっこうだと思うんですが、その問題についてはもうこれ以上申しませんが、それはそれとして、文部省の科学研究費が少ないということは、これはもう否定できない。これは全く少ないと思う。この科学研究費を何とかもう少し思い切ってふやすということはできませんか。
  212. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 実験講座、非実験講座、診療講座と分けまして、それに対しまして、年々その満座研究費の分はある程度増額をいたしまして、ようやく戦前までには回復してまいったと思います。しかし、戦前といっても十分でないことは事案でございますが、もう一つ問題になりますのは、特定のテーマによります科学研究費でございます。これは現在におきましては、要望がございましても予算の関係がございまして、特定研究費の配分分科会で詳細に検討いたしましてそれを配分するわけでございますが、大体希望の十分の一ぐらいでございましたか、相当希望を満たしていないのが現状でございます。ただ、もちろん研究の内容につきまして、特別の科学研究費を配分すべきやいなやということは、その学術研究の重要度によることですから、全部希望どおりにいくということは考えられぬと思いますけれども、しかし、相当な重要研究につきましては、やはりある程度十分研究ができる程度の考慮をしてやらなければうそだと思うんです。で、この問題につきましては、今回の問題をきっかけにいたしまして、十分私は将来の研究費の問題については努力をしてまいり、学者の要望にできるだけ沿うように予算をつけるように努力してまいりたい。そういうことによって、今度のような問題が起こらないように処置をしたいと思っております。
  213. 秋山長造

    秋山長造君 去年の予算を拝見しましてもこの科学研究費として三十七億八千万円、ちょっと三十八億円ですね。全国の大学研究所、これは全部含まれているのだろうと思うのですが、それが三十七億八千万円、これは一人当たりにしたら、何か一説によると、二万円か二万円ぐらいになるのだという話ですがね。どういう計算でこの一人当たり二万円程度になるのか、私はその積算の根拠というものは全然わからないのですけれどもね。いずれにしてもスズメの涙ぐらいな配分にしかならぬということをもっぱらいわれているわけです。たとえば東大の宇宙航空研究所ですか、あそこのロケット打ち上げの経費なんかというのは、あそこの宇宙研だけで三十四億ですね。もちろんこれが多過ぎると言うんじゃありませんよ。多過ぎると言うのじゃないが、そういうことに比較してみて、あまりにもこれは問題にならぬ数字じゃないか。しかも、その上にさらに先ほど国大協から出た大学教官の待遇改善の要望書なんかの内容を照らし合わせて、読み合わせてみますとね、それはもう全くお話にならぬのじゃないかと思うのです。ことしのことはちょっと私、数字がわからぬですけれども、去年の、四十一年度の科学研究費が三十七億円ですね。これはガンの特別研究費だとか、研究成果刊行費、こういうものを全部含めて三十七億円ですが、この申請件数が二万あまりもあって、そうして申請の総額が二百二十八億円だったのが、ばっさり査定されて三十七億で手をついたというように聞いている。一方ではこういう現実があり、そうして他方には、せんだって来問題になったような、研究費がないから、あるいは旅費がないから、外国の学会へ出る費用にも事欠くから、アメリカ軍の何を、くれるものはどこへでも食いつく、外国へ行くにも立川からアメリカ軍の飛行機を利用して、ただで行ってくるというようなことが起こる。しかも、さらに他面では、何でしょう、海外引き揚げ者の引き揚げ財産の補償ですか、まだ確定したわけじゃないですけれども、二千億とか三千億とかいうように、まことに気前よくばさばさっと、こう出るわけですが、そこらに、私の申し上げるのは緻密な議論じゃないですけれども、しかし、やはり一般の国民としてはそういう大ざっぱな感じで、やはりものを判断していると思うのですよ。だから、同じ政府がやっていることが、もう、どう言いますか、片ちんばなといいますか、へんぱなといいますか、でたらめといいますか、そういうことになるのじゃないかと思うのです、結論としてね。もう少しやはり科学研究、少なくとも基本的な基礎的な研究に必要な経費ぐらいは、寄付にたよったり、あるいはその他ややこしいものにたよったり、外部にたよらなくても、政府の組む予算できちっとまかなっていけるというくらいなところまで持っていかなければ、これは問題にならぬのじゃないかという気がするのですがね。これは歴代の文部大臣はいつもおっしゃるのですよ。こういうことを言うと、それはもう大いに努力しますとおっしゃるのですけれども、いまだかつて、今度やったなというような目ぼしい成果は見えたことないですよ。これはもう言われると、じきにやめられるしね。剱木文部大臣はひとつこういう、この間——先日来の問題もあったときだし、私はやはり一つのきっかけとしていい時期だと思うのです。これは画期的にひとつ科学研究費の拡充ということ、充実ということをやってください。
  214. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 終戦後ずっと文部省でつとめてまいりましたのは、まあ基礎研究費の基礎になりますのは講座研究費でございまして、これが非常に少なかったのをだんだん上げてまいりまして、そのネットがだいぶ上がってまいって、いまも申しましたように戦前の程度まで達したと思います。これもだから通常の講座におきまして、通常の教授が研究される経費につきましては講座研究費としていっておるわけでございますが、ただいま秋山委員の申されましたのは、この科学、特定のテーマを各学者が示しまして、その自分の研究をやりたいという希望を申し述べまして、その要求が二百何十億にも及んでおる。これがまあ十何%というのが科学研究費として計上されておるというのが現状でございます。これはもちろん科学研究費の増額ということは、おっしゃるとおり、いままでも増額につとめてまいりましたけれども、その額は問題にならぬのでございまして、今後これを相当増額するということは、私としましては責任をもってやってまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  215. 秋山長造

    秋山長造君 この科学研究費の中でも、特にあのガンにつきまして、ガンの特別研究費という予算項目がありまして、年々相当多額な研究費を出しておられるようです。四十一年度二億五千万円、四十二年度は三億円という特別研究費まで組んでいられるんで、このガンの研究というようなものは相当文部省として力を入れておられると私は思い込んでおったのです。ところが、せんだってこの五月十八日の朝日新聞、例のアメリカ軍からの研究費をもらった云々というあの記事のしまいのほうに、佐々木研究所の所長の吉田富三博士ですね、吉田博士のことばとして、「日本のガン研究がこれまで伸びたのは大半はアメリカの援助資金による」、こういうことを吉田博士が語られたということがあるのですね。まあこれは間違いじゃないだろうと思うのです。特にカッコしてある。このガンの論議をするつもりはありませんけれども、一体この吉田博士がおっしゃったようなことが事実だとしたら、これは一体日本のガン研究というものは何だという、あるいはまた政府にしても文部省にしてもそれでいいのかという感じがするんです。で、私は大学のガンの研究をしてる学者の人から、何人かの人から聞いたのですが、たとえばガンの研究なんかやるにしても電子顕微鏡ですか、電子顕微鏡というものがぜひ必要だというんですよね。ほかのものはなくてもいいから電子顕微鏡だけでもぜひ研究室に一つずつはほしいんだという、これもたいした、何百万円か程度のもののようですが、ところが、その一つ大学に電子顕微鏡というようなものが、この共同使用で一つか二つしかないというのですね。やっぱりそれではほんとうのガンの研究はできぬというのですね。やっぱり教室に一つずつはほしい、それをやってもらうとガンの研究というものが非常に進むんだということを何人かの専門家から私聞いたんですが、まあやっぱりこれも研究費が少ないから、それでできないということになるんだろうと思う。これはまあ一つの例ですけれども、そういう問題について、この席で、ガンの専門家ではないんですけれども大臣局長か、私いま申し上げたことについてお答えできればお答えしてもらいたい。
  216. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 実は新聞記事の問題でございますが、記事が載りましてすぐ古田博士が私のところに参りまして、ああいう記事が載りましたが、私の申したことを何か誤解されて記事にしたんだと思います。私はそういうことは絶対に申しておりませんからというように言うてまいりました。これは何か吉田博士とのお話があったことは事実でございますが、何か誤解をされた点があったんではないか。吉田博士自身も私のところへ参りました、そういうことは絶対に申しておりませんということを申してまいりました。しかし、事実アメリカのおかげでなったとは、そういうことは言い過ぎだと私は思いますが、ガン研究につきまして、やはり十分な研究費がいままでいってなかったことは事実でございます。なお、電子顕微鏡等も、これはいろいろガン研究、あらゆる面から研究しておられる方がおられますから、特に電子顕微鏡が必要な部面につきましては、私どもガン研究に最重点を置いておるつもりでございますから、そういうこともできるだけ御要望に沿うように、今年は特に予算を認めていただきまして相当増額をしてまいりました。そういう意味で十分要望に沿うように努力をしたいと思っております。
  217. 天城勲

    政府委員天城勲君) ちょっと補足させていただきます。  ガンの研究につきましては、ガンの基礎的な研究と大学の病院におきます診断治療という面と合わせまして、私たち特にガンの研究ということを横並びに見ていろいろ措置をいたしておるつもりでございます。科学研究費の中におけるガンの特別研究も、たまたま吉田先生のお話が出ましたけれども、吉田先生専門の方々の強い御要望もございまして、別ワクにいたしまして、本年度三億というように逐次伸ばしてまいりまして、これで百%というわけじゃございませんけれども関係の学者から非常に科学研究費内のガン関係の特例のワクということについて喜んでいただいておるわけでございます。したがって、私たちもこれはできるだけ拡大いたしたいと思っております。特にガンの基礎研究について、いろいろ必要な設備費の問題もございますが、大学の病院につきましては、治療関係がいろいろ必要になってまいりますので、一々専門的な名前は申しませんけれども、コバルト六〇の治療装置以下何種類かの新しい金のかかるガンの治療ないしは研究の設備につきましては、計画的に大学に予算を配賦するという考え方をとっておるわけでございます。
  218. 秋山長造

    秋山長造君 もうこれで質問終わりますが、大学のこの研究費の積算のやり方ですね。それから配分のやり方はどういうようになっておるのですか。といいますのは、これは、これもこの間新聞記事に出ておった、湯川研究班に対して今年は研究費の配分がゼロだという、新聞に出ていましたね。ああいうことにも関連して、研究費の積算と、それから同時に配分のやり方、それからそれに対して文部省がどの程度タッチしてどう対処するかというようなこともあわせて説明してください。
  219. 天城勲

    政府委員天城勲君) 研究費にはいろんなものがございますが、大ざっぱに分けて基本的なものが、教官当たりの積算校費、通常講座研究費と言われている研究費でございます。これが四十二年度で総額約二百三十七億ございます。これは自然系、人文系それら臨床系によって単価がきまっておりますので、これはそれをもとにして大学に講座数に応じて配分いたします。それから、ただいま例を申されたのは科学研究費でございます。科学研究費は、先ほどのガンの三億を含めまして、総額本年度四十一億八千万円でございますが、これの配分は非常に専門的な要素がからまっておりますので、私のほうに科学研究費の配分の委員会がございます。これは各分野の専門家を委嘱するわけでございますが、主として学術会議の御推薦を得た各専門分野の科学者をもって、専門分野ごとの部会を設けまして、そこで大体予算で、科学研究費のうちの特定研究とか、あるいは総合研究、基幹研究、各個研究とか、いろいろのワクがございますので、最初にそれのワクについてお示しして、大体各専門分野にどのくらいに分けたらいいかという基本的なことを御相談をいただいて、それから研究者から申請のありましたものをこの専門委員会で検討していただきまして、決定したものをわれわれ答申としていただくというシステムにいたしております。ただ、先ほど来お話もございますように、何ぶん申請件数が非常に多いところへ持ってまいりまして、予算額の限度もございますので、すべての希望に応じかねる。件数で、昨年、大体申請件数の二〇%ぐらいだと思います、採択件数は。それでときどき二、三万とか二、三千円というお話も出るのでございますけれども、これは研究のカテゴリーによりまして、最高は千万円台、千五百万円という大きなものも研究テーマによっては出るようになっております。そういうような仕組みでございます。
  220. 鈴木力

    鈴木力君 相当時間も経過しておりますから、端的にお伺いいたしますが、いまの国立学校設置法の第八条には、国立高等学校の項に、いまの商船高等学校と電波高等学校と一緒になっておるわけですが、その電波高等学校について若干伺いたい。  まず一つは、電波高等学校教育の内容と目的は何か。それから、時間がありませんから、この電波高等学校卒業生状況といいますか、実態といいますか、把握できればそれを伺いたい。
  221. 斎藤正

    政府委員(斎藤正君) 国立電波高等学校は、御承知のように、戦後、逓信関係にありました無線通信講習所を学校教育法に基づいて転換したものでございますから、したがって、電気通信に関するオペレーターの養成ということを目的としております。現在は三校ございまして、これを合計いたしますと、本科二百八十人、そのほかに専攻科百五十人、それから第一別科百五十人、第二別科百人、計六百八十人の定数でございまして、この中で二級の無線通信士の受験を期待する者が、本科、専攻科——これはまあ重複いたしますが、それに第二別科がございまして、三百八十人、その中で、四十一年度で申しますれば、この海運関係に就職した者百二十人、その他は陸上の生産会社その他に就職いたしておるということでございまして、就職自体としては心配はございませんが、この海運関係につきましては三十数%という就職率でございます。これが一つには船舶の関係の職員の需給状況とか、あるいは船舶職員法に基づく人数とか、いろいろなことが影響しまして、三十五年以後の状況を見ますと、かなりまちまちな様相を呈しております。四十一年度はいま申し上げました数字でございます。
  222. 鈴木力

    鈴木力君 まあ陸上にいく分は陸上の分としてですね、あとでまた議論があると思うのですけれども、この電波高等学校が開設をされてから今日までずっと教育をしているわけなんですが、この電波関係の、何といいますか、技術が高くなった。あるいは水準が高くなった。そういう今日の情勢で、いまの高等学校教育内容、そういう点から検討がされたことがありますか。あるいは検討の必要を感じたことがございますか。そういう事情、事情についてというのもこれもおかしいのですけれども、そういういきさつがあったらちょっと伺いたい。
  223. 斎藤正

    政府委員(斎藤正君) 実は私のお答えすべき範囲をやや越えているのでございますが、私どもとしては現在の高等学校段階のもので、どこまで、まあ二級免許なり、あるいはこの第一別科にあります三級程度のものを充足できるかという観点からまあ検討しておるわけでございまして、いまの御質問は、まあ高等教育のような段階で、どういう一体現在のその需給状況を勘案して将来検討すべきかという御質問だろうと思いますが、この点につきましては、たとえば国立大学で、電気通信大学であるオペレーターの学校、あるいは短期大学、あるいは私立に幾つかございます短期大学学校、そういうものはあるわけでございますけれども、実態として、そういうものが大型船舶の船舶通信士としてどういうふうにいって、どういうふうに将来流れていくかというようなことについては、なお検討すべき課題がたくさんあると思いますから、私どもも今後検討してまいりたいと思います。
  224. 鈴木力

    鈴木力君 だいぶ古い話ですがね。電波法が通過いたしますときの審議のときに、衆議院で文部省が答えている答弁があるのですね。それによりますと、いまの斎藤局長の答えた趣旨とはだいぶ違う答弁が出ているようです。これはまあいま古い速記録をひっくり返してどうこうということは言いませんけれども、たとえば、国立電波高校は二級をもっぱら養成している。二級通信士養成ですね。二級以上を取るのが目的だから、成績のいいのは一級も取り得るというような話からずっといって、現状では、早急に学校教育内容の検討、学科編成の検討を進めたい、これが衆議院の答弁なんですね。そのときの質問の要旨は、もうそのときから電波高等学校専門学校なり短大なりにつくりかえして、そうして教育内容を変えていかなければいけないじゃないかという趣旨質問に対して、そういう検討をするという答えを実は三年前にやっているのです。で、そういう経過から今日の状態を見ますと、だいぶ期待をしていながら期待に沿っていない、こういうことが言えると思うのです。で、さっき局長から御答弁がありましたけれども、私どものほうの調査ではこういう状態になっておる。三十九、四十、四十一年度の合計になりますけれども、電波高校卒業生で、国家試験を受けて通信士の免許状を取った者の状況は、合計していいますと、専攻科の卒業生二百六十五人のうち一級が六十二人取れている。それから二級は四十九人取れておる。本科の卒業生は、九百人のうち一級が二十九人、それから二級が九十八人通っておる。こういう状態からいたしますと、二級以上の通信士を養成する高等学校ということと、それから実際の国家試験を受けて合格をしている状況から見ますと、少なくとも現在の高等学校教育の中身といいますか、教育レベルでは、今日の通信関係の進歩に追いついていけないのじゃないかと、こういう感じを私はこの統計からは見るのですけれども、こういう点についてはいかがなものですか。
  225. 斎藤正

    政府委員(斎藤正君) この二級の試験あるいは専攻科については二級ないし一級の試験を受ける、その受けた合格率という問題につきましては、実は三十三年まではこれは改正前でございますけれども、八〇%程度あったのでございます。その後のいまの三〇%前後のような合格率の問題は、先生のおっしゃるように教育内容としてまず改善すべきものがあるという点も別に否定はいたしませんけれども、実は全体の需給状況というものが、また一つには左右するのでありまして、船舶にいくという——需要が非常に多くて、どうしてもその道をいくというときの受験の態勢と、それから三十五年以降は船舶のほうの求人状況あるいは弱電関係の陸上の雇用状況、いろいろなものが反映するのでありまして、直ちに合格率が低いから全部教育内容に問題があるというふうにだけ即断するのには、もう少しいろいろ複雑な要因があるというふうに考えますけれども、しかし、御指摘のように、教育内容についてもなお改善すべき——電波法の改正等と関連してすべき問題があるということはあろうと思いますが、ただ、数字をそれに全部引き直すということは私はもっと検討すべき要因があるだろう、こういうふうに考えます。
  226. 鈴木力

    鈴木力君 受験しない者があるかもしれないし、陸上の弱電関係に就職する者は、これは通信士の免許状を取らぬでもいいから、そういう者もあるからと、そういうことですが、しかし、これを全部見ていいのかどうかですね。少なくとも二級以上の免許状を取らせることが一つ学校の目的である場合に、これが受験の志願者が少ないというなら話はわかる。しかし、私のところでいろいろ調べてみたところによると、これは受験の志願者が少ないどころの騒ぎじゃない。しかも、本科だけではどうにもならぬで専攻科に入る、あるいは再教育を受ける。こういう状態の生徒が相当数いるということをわれわれは聞いておるわけです。特にいまの需給関係で申しますと、一つは電波法の改正によって貨物船も含めて一級通信士でないと採用にならないという、そういう状態があるわけでしょう。そういう状態がありますときに、一級はなかなか取れないといういまの高等学校では、国立高等学校としては相当検討を要するんじゃないかという感じがするんです。もちろん通信大学がある——電気通信大学ですか、国立大学があるからと言いますけれども、あの大学卒業生の船舶関係の就職状況を見ると、あまりたくさん出ているというふうには見えないわけです。そういたしますと、船舶の乗員を養成する——乗員だけを養成するということにはならないのだけれども、相当数はここから船舶の乗員が出ているわけであります。そういう面を考慮した行き方でなければいけないんじゃないか、こういうふうに見られる。で、時間がないから端的に申し上げますけれども、私はやはり、船乗りというとことばが悪いけれども、船舶職員の資質を向上するというたてまえで、いまの商船高等学校専門学校に今度格上げをするわけです。そういたしますと、相当部分の生徒が船舶職員になっていくことも事実だし、これからまた一級免許状を持たないと船舶職員になれない、そういうような情勢になればなるほど、こうした一級を取らせるような学校に切りかえる必要がいまきているのじゃないか、少なくとも高等学校という課程では相当無理な状態があるのじゃないか、こういうふうに思うんです。で、いま直ちに私はここで電波高等学校専門学校にすべきであるという、そういう回答は求めませんけれども、このことが社会的に要請される時代になってきた、これだけは認めてもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  227. 斎藤正

    政府委員(斎藤正君) いま御指摘ありましたように、大型外航船の要員としての甲種船舶通信士、その基礎として必要な第一級の熱線通信士を、現在の高等学校三年で期待することは実態として無理であるという点は私どもそのとおりであると思います。この点につきましては、一つは今後における甲種船舶通信士の需給の問題、あるいはこの高等教育におけるそれとの関係で、一体そういう分野の養成をどうすべきかということは、大学局が中心になりますけれども、私どもとしても検討してまいりたいと思います。
  228. 鈴木力

    鈴木力君 この需給の関係というのを主たる要素にされるということについては、これは相当私は時間をかけて議論をしないといけない問題がたくさんあると思うのです。これはたとえば電波法の改正のときに、御存じと思いますが、いままでの三人の定員が一人に減じてもよろしいというような、そういう改正もあるわけですね。しかし、改正があったから一人で済むかというと、これは雇用主である船主ですか、それからこの通信士の団体との間に一つの協定をしてきめるべき筋合いになってくる。ですから、そういう問題がいろいろと要素が組み合いますから、文部省筋が、船主協会といいますか、もっぱら雇用者側の意見で需給が少ないとかどうとかいう判断をされると、これはもう少し実態を明らかにしなければいけない問題があると思う。だから、私のほうは、いま時間もないことですからそれらを議論しようとはわれわれは思っていないんですけれども、少なくとも需給関係からいっても、これから一級免許状を持った者がたくさん出てこなければいけない。それから年齢関係からいいましても、電波法を改正をして、いよいよ二級免許を持っておる者が切りかえをしなければならないという時期にいろいろな処置があると思う。いろいろな処置はあると思うが、その後の見通しからすれば、やはり国として養成をするということをいまからやっていないと、船舶の航行安全という問題とも抵触をするおそれがある。そういう意味で、私は本来ならば、いま商船高校専門学校にすると同時に電波高等学校専門学校にして、そういう社会の要請にこたえるべきだという意見を持っておりますけれども、直ちに、いまのこの法案の審議のいきさつからいたしますと、そういうわけにもいかないような状況ではありますけれども、少なくとも私が申し上げるような社会的な情勢なり、あるいは電波関係の技術、あるいはそういう面の進歩の度合いなり、そういう点から少なくとも専門学校にしてこの内容を高めていくという、免許状を獲得しやすいような状況にしてやる、そういう方向検討してもらいたい、これがまあ私の申し上げたいことなんですけれども、これは大臣にひとつ方針といいますか、所見を伺っておきたいと思うんです。
  229. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) この問題はさきにも申しましたように、電波通信士の問題のみならず、その他におきましても高専制度に採用してまいりたいという要望が相当ございます。でございますから、私どもは直ちに、予算が通過しましたので、それに計上されております調査研究費を利用しまして取りかかるつもりでございますけれども、その取りかかりました際におきましては、鈴木委員のおっしゃいました趣旨を十分体しまして、電波通信士の問題につきましても、できるだけ御趣旨に沿うような方向に向かいまして検討してみたいと、こう考えております。
  230. 鈴木力

    鈴木力君 ちょっと私の申し上げる趣旨と——大体あとのほうは近いんですけれども、私が大臣に申し上げたいのは、他の高等学校といいますか、他の高等専門学校とあわせて検討するという、そういうことではなしに、私は、たとえば船舶職員なら船船職員という構成を考えたときに、船舶職員の中には、航海士もある、あるいは機関士もある、通信士もある、こういう形で一つの船舶職員というものが構成されているわけです。しかも、これは明らかに、私は元来なら原則的には専門学校をふやすべきではないという大臣のお考え方には賛成なんですけれども、しかし、いまの教育の実態からいって、明らかに電波高等学校のほうは、いまの高等学校では現在要請される免許状取得には不適だ、不適だというか、教育が足りない、そういう状態がほぼ明らかになっておるのですから、そういう場合には特殊教育もしなければいけない、そのことが明らかになっているんです。ほんとうを言えば、商船専門学校とセットで検討してもらいたいという気持ちなんですけれども、技術的に言いましてもセットにはならぬわけですから。ただ、そういう基盤に立って検討してもらいたい、これが私の要望なんです。
  231. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) 私の申し上げましたのは、それはもちろん御趣旨のとおりそう考えてまいりますが、同時に、やはりこの際、高専の大体外郭でございます。どの程度まではということをこの際基本的に考えようと、こういっておるときでございますから、これだけ一つ取り上げてどうとかということでなしに、これだけ一つになるかもしれません、あるいは他の種類のもので類似のものがあれば取り上げて、この程度であれば高専に将来やってもいいじゃないかというところの一つの外ワクをつくりたいと思っておりますので、その際には十分御趣旨に沿うように考えていきたいと、こうお答えを申し上げたわけでございます。
  232. 鈴木力

    鈴木力君 もう一つだけ申し上げます。そういう順序でそういう検討をしていただくということで、まあ順序はそうなければいけないと思いますけれども、ただ、検討中ということでこれがずっと延びるということになりますというと、いま当面しておる高等学校の生徒が非常に心配が多くなるわけです。それは私どものほうにも、高等学校のPTAやそういう関係者からも、できるだけ早くやってくれと、こういう希望もずいぶん出されておるわけでありますから、その辺も、あるいは学校当局等の希望等も調査をされて、これはできるだけ早くやっていただきたいと思います。そういう私の強い要望を申し上げまして質問を終わります。
  233. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  234. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 御異議ないと認めます。  それではちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  235. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記を起こして。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  236. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。  国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  237. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 総員挙手、全会一致と認めます。よって本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。  鈴木君より発言を求められておりますので、この際これを許します。
  238. 鈴木力

    鈴木力君 私は、ただいま可決されました法律案につきまして附帯決議を提案したいと思います。皆さんの御賛成を得たいと存じます。  次に、案文を朗読いたします。    国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、左記事項の実現について、速やかに検討努力すべきである。  一、学校教育法第二十八条の規定の趣旨に基づき、養護教諭の養成、待遇等について必要な改善策をたて、その充足を推進すること。  一、近年における電波通信技術の発達とその重要性にかんがみ、国立電波高等学校の高等専門学校への転換を図ること。   右決議する。  以上であります。
  239. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいま鈴木君から提出されました附帯決議案を議題といたします。  ただいまの附帯決議を本委員会の決議とすることに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  240. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 総員挙手、全会一致と認めます。よって鈴木君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、文部大臣から発言を求められておりますので、この際これを許可いたします。剱木文部大臣
  241. 剱木亨弘

    ○国務大臣(剱木亨弘君) ただいま本案について行なわれました附帯決議につきましては、その御趣旨に沿いまして、その実現についてすみやかに検討し、努力をいたします。
  242. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  243. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。  午後六時五分散会      —————・—————