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1967-05-24 第55回国会 参議院 物価等対策特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月二十四日(水曜日)    午前十時二十分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         櫻井 志郎君     理 事                 木村 睦男君                 高橋  衛君                 渡辺 勘吉君                 田代富士男君     委 員                 内田 芳郎君                 岡本  悟君                 任田 新治君                 林田悠紀夫君                 山本  杉君                 吉江 勝保君                 田中寿美子君                 前川  旦君                 村田 秀三君                 中沢伊登子君    国務大臣        国 務 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        公正取引委員会        委員長      北島 武雄君        経済企画庁長官        官房長      鳩山威一郎君        経済企画庁調整        局長       宮沢 鉄蔵君        経済企画庁国民        生活局長     中西 一郎君        経済企画庁総合        計画局長     鹿野 義夫君        経済企画庁調査        局長       矢野 智雄君        農林省農林経済        局長       大和田啓気君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    説明員         農林大臣官房参        事官       太田 康二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○当面の物価等対策樹立に関する調査  (物価対策基本方針に関する件)     —————————————
  2. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) ただいまから、物価等対策特別委員会を開会いたします。  当面の物価等対策樹立に関する調査の一環といたしまして、物価対策基本方針に関する件を議題といたします。  まず、本件について、政府当局より説明を聴取いたします。宮澤長官
  3. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 物価安定の基本的な考え方並びに今後の経済運営基本的な態度について、所信一端を申し述べたいと存じます。  わが国経済は、昨年来、予想を上回る拡大を続けておりますが、昭和四十二年度におきましても、個人消費支出民間設備投資在庫投資など、国内需要の堅調が予想され、鉱工業生産かなり伸びが見込まれるなど、根強い上昇基調にあると考えます。他方消費者物価動向については依然警戒を要するものがあり、また、内需の増大海外景気停滞傾向もあって輸出伸び悩みの傾向が見られ、国際収支の推移については、引き続き慎重に見守る必要があります。  したがって、今後の経済運営にあたっては、物価及び国際収支動向に細心の注意を払いつつ、財政金融政策の機動的、弾力的運用をはかり、同時に、民間経済界における節度ある投資態度を期待することにより、現在の景気上昇を持続的な安定成長に結びつけるよう努力してまいる所存であります。  このように経済が慎重に運営されるならば、四十二年度においても、実質九%程度の安定した成長を期待することができるものと存じます。  消費者物価につきましては、昨年度は四・七%の上昇にとどまりましたが、四十二年度におきましては、諸般物価対策を一そう強力に推進することにより、四・五%程度上界にとどめたいと考えております。  物価の大幅な上昇は、国民生活にとって重大な脅威であることはもとより、経済の健全な成長を阻害することになりますので、物価の安定は、当面する最も緊要な政策課題と考えます。  この意味において、このたび参議院に、第五十二回国会に次いで、物価等対策特別委員会が設けられ、物価問題について御審議いただくことになりましたことは、まことに意義深いことと存じます。政府といたしましても、当委員会の御審議の結果を十分に物価対策に反映させ、物価の安定のため、一そうの努力を傾注してまいる所存でございます。  申すまでもなく、物価の安定のためには、農業中小企業等生産性の低い部門生産性向上流通機構の改善、公正な価格形成のための競争条件整備労働力有効活用など、各般施策を総合的に実施する必要がございます。  すでに、昨年の当委員会において、生産流通の諸対策をはじめ、消費者対策公共料金対策独占禁止対策など、広範かつ適切な御指摘をいただいております。政府といたしましても、御指摘の諸点について、鋭意調査検討をすすめ、当面実行可能なものから逐次その実現につとめており、四十二年度予算編成においても、格別の配慮を加えたところであります。特に、国民日常生活に欠くことのできない生鮮食料品については、野菜の集団産地の育成、肉牛対策の拡充、中央卸売市場及び公設小売市場整備産地及び消費地向け流通情報の提供など、きめこまかい対策を実施することといたしました。また、競争条件整備するため、公正取引委員会機構充実することとしたほか、中央地方を通じての消費者保護及び消費者教育を一そう充実したものにするため、消費生活モニターを設置することといたしております。  さらに、政府は、今般、産業関係労働関係消費者関係等各界学識経験者からなる物価安定推進会議を設け、内閣総理大臣中心関係大臣が一体となって、有効適切な物価安定対策推進することといたしました。  次に、政府は、去る三月十三日、経済審議会の答申に基づき、「経済社会発展計画」を策定いたしました。  この計画は、昭和三十年代の成長過程において生じた各種の不均衡を是正しながら、経済国際化労働力不足の本格化都市化の一そうの進展という四十年代の内外にわたる環境変化に適応して、経済の一そうの発展国民生活充実向上を実現することを目的としています。  この計画においては、昭和四十二年度から四十六年度までの五カ年間に、年平均八%程度経済成長を安定的に維持することとし、計画期間の終わりには、消費者物価上昇を年三%程度までに低下させるとともに、経済効率化社会開発の一そうの推進をはかることを重点政策課題としております。さらに、輸出の振興、自主技術開発人的能力向上等施策推進し、経済長期的成長条件整備につとめることといたしております。  政府は、この新しい計画を、今後長期にわたる経済運営の指針とし、各界の理解と協力のもとに、諸般施策を進めてまいる所存であります。  以上、最近の経済情勢と今後の経済運営について所信一端を申し述べました。  今後とも、何とぞよろしく御鞭撻と御協力を賜わりますようお願いいたします。
  4. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 次に、経済社会発展計画について、政府委員より補足説明を聴取いたします。鹿野総合計画局長
  5. 鹿野義夫

    政府委員鹿野義夫君) 私から、経済社会発展計画について、補足的に御説明いたしますが、計画がだいぶ分厚いものでございますので、全部にわたっての御説明が、時間的な関係でいたしかねると思います。物価関係中心に御説明をいたしたいと思います。  計画は、ただいま大臣から申し上げましたとおり、三十年代の高成長の反省の上に立って、今後四十年代にわが国経済社会がいかなる環境変化を受けるか、あるいは条件変化を受けるかということをまず述べておりまして、その際三つの大きな条件変化を述べております。それが経済基本的な前提になるわけでございますが、  一つは「全面的国際化」ということで、関税の一括引き下げ、全面的な貿易自由化から、さらに資本取引自由化と進んでいくわが国経済が、これから国際的なきびしい競争にさらされる、そういう状態に入っていくんだということが第一の条件でございます。  第二の条件は、「労働力不足の本格化」ということでございまして、労働力が、三十年代におきましては平均的に増加が一・三%程度でございましたが、特に四十年度、四十一年度あたりは年率として二%近い増加があったわけでございますが、それが今後激しく減少いたしまして、昭和四十五年度あるいは四十六年度に至りますと、〇・五%程度労働力増加というようなことになります。しかも、若年労働者が全体のシェアの中で非常に減少いたします。また、若年労働者が減るばかりでなく、その労働者がさらに学歴構成が高まってまいりまして、いわゆるホワイトカラーの方向へだんだん就職しようという動きがございます。そういう意味では、技能労働者が非常に不足するという事態になってくるんではないか。これが、今後わが国経済社会に課せられるきびしい条件の第二の条件だというふうに述べているわけでございます。  第三の条件は、「都市化のいっそうの進展」でございます。これはもう三十年代から引き続いて起こっている現象でございますが、四十年代に至りましてもさらに進展し、深刻化するであろう。都市においては、過密の問題、あるいは公害の問題も発生いたしますが、地方においては、特に農山村においては過疎の問題等現象を呈して、非常に深刻な問題が都市化の問題に付随して起こってくるのではないかというふうに述べております。  この三つ条件が、この計画の基礎的な背景をなしているわけでございますが、この条件を受けまして、計画では、四十年代の課題として三つ課題を掲げております。一つは、「経済成長物価の安定の両立」ということでございます。第二は「効率のよい経済への再編」ということでございます。第三は「新しい地域社会の建設」という三つ課題を、四十年代におけるわれわれに課せられる課題であるというふうに述べているわけでございます。  この中で、最初の「経済成長物価安定の両立」ということでございますが、これから国民生活をさらに充実し、産業発展させていく、あるいは構造政策を進めていくという場合におきましても、かなり高い成長が望ましい、また、わが国かなり高い成長をなし得る力を持っているという立場に立つわけでございますが、一方、物価の問題につきましては、三十年代後半からたいへん上昇率が激しくなってまいりまして、それが実質的な国民生活充実を乱し、阻害している。あるいは国民貯蓄につきましても、かなり激しい額の減少を来たしている。それがひいては国民貯蓄心にも影響するのではないかというふうに考えてまいりますと、やはり、これからの計画中心課題は、一つ物価の安定である。しかも、同時に、かなり高い成長を遂げていきたいということで、「経済成長物価安定の両立」ということを第一の課題に掲げておるわけでございます。  いま申し上げました三つ課題を受けまして、計画三つ重点政策を取り上げております。一つは、いま申し上げました「物価の安定」でございます。第二は「経済効率化」、第三は「社会開発推進」ということでございます。  「物価の安定」につきましては、ただいま大臣が申し上げましたように、消費者物価につきましてはだんだんと引き下げていって、計画目標年次である四十六年度には三%程度におさめるということを目標にいたしております。だんだん下げていくということでございますから、計画の期間平均いたしますれば、およそ四%程度の率になろうかと思います。また、卸売り物価につきましては、ほぼ安定的に推移するということを一つ目標に掲げているわけでございます。  こういった目標と、こういった一つ課題を受けまして、将来の、といいますか、経過期間中の経済成長率をどういうふうに考えていくか、つまり、四十六年度の目標年次の姿を描くにあたって基本となる経済成長率をどういうふうに考えていくかということにつきまして、いわゆる経済現象方程式体系でとらえましたといいますか、いわゆる計量経済学的手法と申しますか、モデルというものを使いまして、四十六年度の経済の姿がどうなるかということを、いろいろな条件を与えまして、連立方程式体系モデルを解いて四十六年度の姿を想定いたしたわけでございますが、その際に、いま申し上げました物価の問題との関係を考えながら、成長率をどの程度にするか、また成長率をきめるにあたりましては、物価の問題だけでなく、一つ労働力が、先ほど申し上げましたように、非常に今後本格的に減少してくるという問題と、もう一つは、国際収支の問題につきまして、わが国では貿易外収支かなり赤字でありますが、さらに経済協力を今後一%程度目標にしてやっていくといたしますと、資本収支におきましても、かなり赤字が出てまいります。それをカバーするだけの貿易収支黒字をもたらさねばならぬ。大体二十九億ドルをこえる貿易収支黒字を、計画は期待いたしておるわけでございますが、その程度国際収支黒字を期待するという面では、やはり、経済成長率を従来のように一〇%程度に持っていくということはなかなか困難ではないかというような制約条件が、物価のほかに、もう一つございます。それら三つの、労働力国際収支の問題、物価の問題を制約条件に考えながら、経済成長率はどのぐらいがいいかということを、いろいろな角度から検討したわけでございますが、大体八%程度、こまかくは八・二%の成長率を予定いたしております。このような成長率でも、物価上昇というものは、過去の傾向そのままを追うならば、なかなか三%台におさまっていくというふうな傾向は見られません。かなりこれから政策的な努力をいたすことによって、四十六年度の目標年次には三%台にするということを考えているわけでございます。  そういった成長率をきめました結果、経済規模は、三十五年の実質価格で四十兆二千億でございますし、時価名目価格でいいますと、六十一兆七千百億円の大きさになり、国民所得のベースでいいますと四十九兆九百億円ということになりまして、これを一人当たりの国民所得に換算いたしますと、大体ドルで千三百ドルということになりますので、およそ西欧の英、独、仏あたりの三十八年ごろの水準になろうかと思います。  そこで、物価の安定ということを、三大重点政策一つに取り上げたわけでございますが、物価の安定ということでは、この計画はどのようなことをねらっているかといいますと、基本的には、安定した成長を維持するということで、財政金融政策中心安定成長を確保するということが基本的な態度であろうかと思いますが、具体的な政策としては、一つは、中小企業あるいは農業流通部門の低生産性部門近代化をはかっていくという「構造政策推進」が中心になろうかと思います。  第二の政策といたしましては、「競争条件整備」ということを述べております。カルテルとか輸入制限といったような保護政策を、行き過ぎたものを改めていく、あるいは、大企業寡占態勢によって競争的な条件を制限するという傾向がございますが、そういった点を改めていくという、競争条件整備ということを第二の政策課題にうたっております。  それから第三の政策といたしましては、「供給量増大輸入活用」ということでございます。大都市の周辺における生鮮食料品などの生産の増強と、並びに市場整備あるいは流通輸送機構近代化ということによって、大都市圏への安定的かつ供給量増大ということをはかるべきであるということを述べております。また、輸入につきましても、適時適切にその需給の状況を勘案しながら輸入活用していくということがはかられてしかるべきであるということを述べております。  第四の物価安定政策といたしましては、「労働力有効活用」でございます。終身雇用制度とか、あるいは年功序列賃金体系といったような、賃金雇用制度の古い制度近代化いたしまして、労働力を大いに活用し、流動化するというようなことによって、先ほど申し上げましたような、これからの労働力の逼迫に対処しなければならないということを第四の政策としてうたっております。  さらに第五の政策といたしましては、「消費者選択のための条件整備」ということばで述べておりますが、新しい製品をつくるとか、代替品をつくるとか、あるいはサービス料金についても分割制をやっていくとかいうようなことで、消費者選択の余地を拡大していくということが重要なことであるということを述べております。  第六の問題といたしましては、「政府関与価格安定化」でございますが、全体の物価動きを十分に留意しながら上昇を極力押えていくということにはなりましょうが、長期的に見ますれば、均衡ある価格体系を考えながら、全体の価格動きを見て、できるだけ低目に、政府関与価格、いわゆる公共料金は押えていこうということを政策としてうたっております。  それから第七番目といたしましては、「地価抑制」の問題でございます。物価の中の地価の問題というのは非常に深刻であり、また、むずかしい問題でございますが、計画といたしましては、一応総合的な土地利用計画によった土地効率的な利用と、宅地の大量の供給といったこと、あるいは土地収用法の改正、土地については取引市場整備されておりませんが、そういった整備といったようなことをやりながら、地価引き下げをはかっていく、抑制をはかっていこうということを述べております。  最後に、物価政策といたしましては、「世論の反映のための機構整備」の必要がある。消費者を含む国民各層の声を反映する機構整備する必要があるということを述べております。  全体といたしまして、物価上昇が年々着実に低下していくということによって、消費者物価に対する危惧とか、あるいは生産者の思惑といったようなものを打破するということが基本的に必要である。そのためには、計画の前半においては、特に早急に効果のある生鮮食料品の増産とか、あるいは流通対策の強化とか、あるいは輸入活用あるいは公共性料金抑制といったようなものを通じて、できるだけ早期に価格上昇を鈍化させていく、で、長期的には、基本として構造政策あるいは競争条件整備をしてやっていくべきだということが、計画の中の物価安定の政策でございます。  その他、「経済効率化」あるいは「社会開発推進」について、たくさんの政策を述べてございますが、時間の関係もございますので、物価関係だけに御説明をとどめさせていただきたいと思います。
  6. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 速記をとめてください。   〔速記中止
  7. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 速記をつけてください。  次に、「昭和四十二年度の経済見通し経済運営基本的態度」について、政府委員より補足説明を聴取いたします。宮沢調整局長
  8. 宮沢鉄蔵

    政府委員宮沢鉄蔵君) 御承知のとおり、わが国経済は、四十年の末ごろから立ち直り過程に入りまして、その後も順調な上昇過程をたどってきております。その結果、四十一年度のわが国経済は、四十年度に比べまして、かなり拡大が見込まれ、経済成長率は前年度比で実質九・七%程度となる見込みであります。他方国際収支につきましては、総合収支黒字幅は、約六千万ドル程度にとどまりまして、前年度を大幅に下回ることになりました。  四十二年度のわが国経済は、前年度の景気上昇のあとを受けまして、強い上界基調にあります。反面、国際収支面につきましては、世界貿易拡大の鈍化が見込まれ、また、国際競争の一そうの激化であるとか、あるいは国内需要増大ということが予想されますので、四十二年度の輸出は、前年度ほどの伸びが期待できません。一方、輸入は、国内経済上昇に伴い、引き続き相当増加が見込まれるのであります。したがいまして、四十二年度におきましては、景気の行き過ぎがないように、国際収支動向を十分注視しながら着実にして安定的な成長を堅持することが必要であると考えられるのでございます。  したがいまして、四十二年度の経済運営あたりましては、これらの内外情勢を認識して、国民経済全体との調和を考えまして、財政規模及び公債発行額を極力押え、景気に対する財政中立的立場を堅持するとともに、物価国際収支動向に応じまして、財政金融政策中心とする経済生策の弾力的な運用をはかり、同時に、民間経済界における節度ある投資態度に期待することによりまして、現在の景気上昇を持続的な安定成長に結びつけますとともに、経済の体質を強化し、社会開発推進することによりまして、長期にわたる経済発展基盤整備し、国民生活充実をはかることを基本的態度とすることにしておるのでございます。また、この場合、経済活動が過度に拡大いたしまして経済安定成長に悪影響をもたらすおそれが生じてきました場合には、わが国経済長期にわたる発展基盤の保持に十分留意しながらも、機を逸することなく、金融面財政面、その他各般施策を講じて、経済の過熱を未然に防止するよう慎重な経済運営を行なうこととしておるのでございます。  このような経済運営基本的態度に基づきまして経済を運営することによって、昭和四十二年度の経済成長率実質九%程度となることを期待しておるのでございます。  各重要項目につきまして一々御説明申し上げるのもどうかと思いますので、特に問題となります企業設備投資について若干補足さしていただきますと、企業設備投資につきましては、かなり増加基調にありまして、製造業部門におきまして相当増加が見込まれます上に、非製造業部門におきましても引き続き堅調な伸びを示すものと思われますので、投資規模は、前年度水準の一四・八%程度上回るものと考えております。  なお、この点に関しましては、最近、当庁、通産省あるいは金融機関等の調べによる設備投資予測調査の結果が発表されております。これらによると、相当高い伸びが示されておるのでございますけれども、これらの調査アンケート調査であるために、各企業希望的数字がそのまま織り込まれておるというようなことだとか、あるいはまた、したがって、実行段階では若干減少すると思われること、また今後、鉄鋼でありますとか、石油化学でありますとか、その他一部の業種におきましては、調整が行なわれるものと期待されるというようなことがございますので、これらの調査結果ほどの設備投資の実勢が強いというふうには考えておらないのでございます。  その他、いろいろ重要項目について、多少それぞれの伸びを見込んでおるわけでございますが、その需要面に対応する供給面におきましては、まず、鉱工業生産でございますが、これは引き続きかなり伸びを示しまして、前年度比一四%程度増加するものと見込んでおるのでございます。  次に、国際収支でございますが、最近、国内需要増大、あるいは海外の一部諸国における景気停滞というようなことがございまして、輸出伸び悩み傾向が見られるのでございますけれども、この点につきましても、本年度後半におきましては、わが国輸出余力増大してくるというようなことだとか、あるいは米国などの海外諸国景気回復なども期待できるようなこともございますので、輸出につきましては、前年度実績に対しまして一一・一%増の百九億五千万ドル程度輸入につきましては、前年度実績に対しまして一四・八%増の八十九億ドル程度伸びるものと見込んでおります。したがいまして、貿易収支黒字は前年度並みの二十億五千万ドル程度になるものと予想しておるのでございます。反面、貿易外収支赤字増大するものと思われますし、資本収支につきましても、海外金利の低下による外資の流入はある程度期待できるにいたしましても、延べ払い信用供与増大であるとか、あるいは経済協力進展であるとか、こういうようなことからいたしまして、前年度に引き続き大幅な赤字は避けられないと考えておるのでございます。この結果、総合収支におきまして黒字を計上することは困難であるというふうに考えておるのでございます。  以上、最近の経済情勢に照らして、四十二年度の経済見通し及び経済運営基本的態度につきまして御説明申し上げた次第でございます。
  9. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 次に、昭和四十二年度物価対策関連予算案について、政府委員より補足説明を聴取いたします。中西国民生活局長
  10. 中西一郎

    政府委員(中西一郎君) お話の点に関連しまして、去る五月一日に、当委員会に関連予算の説明書をお配りいたしました。それと同様なものを本日調製しましてお配りいたしました。御参考になるかと思います。  なお、これに入ります前に、若干の最近の動向を申し上げておきますと、大臣のごあいさつにもありましたように、四十年度は、対前年度で六・四%の上昇である。四十一年度は、生鮮食品などの関係、特に野菜の値動きが比較的安定したというようなこともありまして、四・七%という上昇にとどまったわけです。しかし、住居費や雑費などの値上がり傾向は持続しております。依然警戒を要する点が多いと思います。  なお、昨年度一年間振り返ってみまして、それがそれぞれどの程度物価安定に寄与したかという測定はむずかしいのですけれども、年度初めの小麦粉の値上げ抑制、それから、中小企業価格協定につきまして、中小企業庁のほうから、そう容易には行なえない、都道府県で相当な行政の指導をいたしまして、いろいろ多方面にわたる価格カルテルの結成を困難にしたというような点もありまして、さらに、御記憶だと思いますが、コイン・オペレーション・システムの導入というようなことで、クリーニング関係での競争相当激しくなった。そういうようなことは理髪関係でも見られましたし、とうふ関係でも見られるというようなことで、総じて中小企業関係供給側の態勢に競争条件相当導入されてきた、そういうことが言えるのではないかと考えています。  卸売り物価のほうは、年度で見ますと、海外事情あるいは木材の関係等もあり、鉄鋼が一時非常に値上がりしたということもありましたが、最近は、二月以来いろいろな要素もからんで反落を示しております。四十一年度は対前年度で四%上がりましたが、四十二年度では対前年度で一・二%というところにおさまればいいのではないか。むしろ、おさめたいというふうに考えております。  物価上昇の原因その他については、あまり触れる必要もないかと思いますが、予算を編成するときの大きな柱としましては、先ほど来、経済社会発展計画あるいは本年度の経済運営について若干話が出ておりますところと重複もするのですけれども……。といいますのは、物価対策は、何といいますか、経済全体の運営と密接不可分であります。そんなことで取り上げて物価対策としての柱を申し上げるのは抽象的にならざるを得ない点があるし、また、重複を避けられない点があるわけですが、あえて申しますと、  一つは、生鮮食料品が非常に問題になっております。それの生産性向上とか、供給力の計画的な増大、あるいは出荷調整といった面での供給対策、あるいは肉その他につきましては輸入のことも考えていく。さらに、そういった日常のいわば消費者物価を構成しているウエートという点ではさほど大きくはないにしましても、わが国経済で指導的な立場を占めているいろいろな製造業その他の産業がありますが、生産性向上の成果が、ともすると賃金と利潤のほうにだけ分けられて、価格のほうになかなか回りにくい。そういう点が指摘されてきております。そういうことを実効的に進めていくことをねらいまして、独占禁止法の適切な運用その他のことが緊要の課題になっておるというふうに考えておるわけです。  さらに、財政金融が、何といいますか、経済運営の中でほんとうに必要な部内に円滑に流れ、そして均衡のとれた発展を遂げるようにするということも重要な柱になります。今後の景気動向に十分な注意を払いまして、弾力的、機能的に運営するという方針を貫いていく必要があろうかと思います。  地価につきましては、先ほど総合計画局長から触れましたので、あえて申し上げる必要がないかと思います。  消費者行政でございますが、言われ始めて、すでに数年たっております。最近の概要を申し上げますと、都道府県あるいは市町村段階で、中央にあります国民生活審議会、あるいは物価問題懇談会とか、あるいは安定推進会議、そういった中央の機構に準じた機構が設けられつつあります。われわれの手元にある限りでも、二十二、三の府県においてそういう組織ができまして、活動を始めておりますが、地域の問題、あるいは大きくいえば国の政策にかかわる問題、いろいろあると思うのですけれども、そういう段階で、消費者の保護あるいは消費者の啓発ということの進むことを期待しておるわけであります。これに関連しまして、大臣のごあいさつにもありましたモニター制度なども経済企画庁として取り進めてまいる、そういうことにいたしておるわけであります。  なお、物価安定推進会議でございますが、四つの部会ができまして、低生産性部門関係、大企業あるいは公共料金の問題、さらには財政金融の問題というふうに分かれまして、主査は、第一が馬場先生、第二が有沢先生、第三が都留先生、いずれにも属さない総合的な問題というので中山先生が総合部会の会長をなさっております。そういうことで、個別の問題から入らざるを得ないかと思いますが、ねらいとしては、物価問題の根底にひそんでおります制度あるいは秩序、慣習、そういった点にメスを入れていこう、こういう態度で御審議が進んでおるわけでございます。  予算の関係につきましては、以上申し上げたような幾つかの柱をそれぞれ立てまして別紙に記載しておきました。これを読んでおりますと非常に長くなるのですが、柱で言いますと、「農林水産業近代化」、あるいは「中小企業生産性向上対策」というのが、先ほど申し上げました生産性の低い分野についての柱、さらにそれに関連しまして、流通機構が特におくれておるということで特別の柱を立てております。なお、競争条件整備の問題あるいは住宅対策等の各項目にわたりまして金額を表示してございます。最後のところで、先ほども申し上げました消費者対策のことに触れております。なお、物価賃金生産性の問題がいろいろ議論されておるわけですが、経済審議会のほうで所要の事務費を計上して研究を深めていただくということも来年度予算に入っておることを申し添えておきます。  以上で、簡単でございますが、説明を終わらしていただきたいと思います。
  11. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 以上で、政府当局からの説明聴取を終わります。  審議の途中でございますが、本会議出席のため、ここで一時休憩をいたしまして、午後一時から再開いたします。    午前十一時三分休憩      —————・—————    午後一時二十七分開会
  12. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) ただいまから物価等対策特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、当面の物価等対策樹立に関する調査のうち、物価対策基本方針に関する件を議題といたします。  本件に関し質疑のある方は順次御発言を願います。渡辺君。
  13. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 質疑に入る前に、私、委員長に一言、その考え方を尋ねておかなければならぬのでありますが、すでに午前中から、この委員会の持ち方について、午後一時から質疑に入るということを全体で確認したにもかかわらず、定刻にはすでに宮澤長官以下政府関係者が出席をしておる。野党も過半数が定刻に出席をしておる。しかるに、過半数を占める与党がこういう状態で、一体この委員会を、はたして委員長は今後真剣に運営の衝に当たっていく自信がありますか。
  14. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) ただいま渡辺君の御発言ですが、委員長はどの会派から出ておるということに関係なく、委員会は私は公平に能率よく運営していくのが委員長の責任であると思っております。いまほど渡辺君から御注意のあったことは、実は率直に申し上げて、午前中私は自民党の理事に話をして、特に定刻を守るように、与党の議員諸君に回状も回しておったのでありますが、実情はまことに遺憾なことになりました。今後、委員会の能率よい運営をはかって、国民物価に対する関心に関し、できるだけ当委員会が寄与できるよう、私は委員会の運営を適切にはかっていくよう、特に与党の委員の諸君に私からそのように注意もいたして、運営の正常を期したいと考えております。
  15. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 先ほど長官のごあいさつにありました本委員会に対するごあいさつの中で、経済発展長期的構想に触れられたのであります。なお、これに関連して、総合計画局長から、経済社会発展計画の骨格についての大よその説明がありました。確かに、三月十三日に閣議決定された「経済社会発展計画に関する件」を見ますと、その前文にもありますように、この経済運営の指針とする「具体的な政策運営に当っては、とくに物価の安定をはかり、」云々ということを大きく踏まえて閣議で決定をしている内容に触れているわけであります。したがって、私は、これから与えられた時間の範囲で、経済社会発展計画を踏まえた三つ政策の柱の、特に物価安定に焦点をしぼる意図を持って、これから長官を中心にお尋ねをいたしたいのであります。  一体、この経済社会発展計画なるものは、中期経済計画の手直しとして、高度経済成長のひずみが社会問題とされている現在、発表されたものであって、過去のわが国経済の流れを見ますと、これから進めていく経済の運営の方向は、これはおのずから明らかになると思うのであります。すなわち、高度成長による経済の表面的な繁栄がある一方には、他方都市の過密化なり、道路の不足なり、公害問題等々、環境整備がきわめて立ちおくれている。経済水準は一応一流国並みであっても、社会資本なり、あるいは国民生活の面では、いまだ四流国の域を脱していない。こうした状態は、中期経済計画が出た当時と現状とは、少しも変わっていない。中期経済計画は、その目標として、第一に、経済成長によるひずみ是正を掲げておったはずであります。この点では、まだ現在を、現実を直視した態度に、この中期経済計画が置かれておったと思うのでありますが、今度の計画では、先ほどの説明にもありましたように、三つの柱が掲げられておる。一つ物価の安定であり、第二は経済効率化、第三は社会開発推進ということを掲げて、それぞれのクローズについて詳細な点を述べておるのでありますけれども、しかし、これをよく見ますと、その中心はあくまでも経済効率化を軸として展開しておる。したがって、物価の安定なり社会開発は、まあ悪口を言えば、これは単なる、それを生かすためのあだ花であるというふうにも私は理解せざるを得ない。  また、これからだんだん伺いますけれども、この審議会の性格なり、あるいは審議の経過を私なりに理解した限りにおいては、いわゆる経済同友会、財界のイニシアチブの中に、あくまでも寡占資本の整備、いわゆる産業体制の整備というものに重点が置かれて、この作文がまとめられたように理解されておるのであります。戦後幾つかの経済計画国民の前に出されておりますけれども、今回の計画ほど、一般国民立場を無視し、一方には資本家側の要求が表面に出たことは、かってなかったと思うのであります。むしろ、重点の置きどころを非常にこれは誤ったものであると理解するのであります。今度の計画ほど、世論から無視され、問題にされなかった計画も、かってなかったことであります。この作文は、もはや急速に国民から忘れ去られようとしておる。しかしながら、この中に物価の安定というものが、大きくその政策の中に占めておる限りは、私は、ここで問題とするところを逐次お尋ねをして、明らかにしていくつもりであります。  お尋ねをするにあたって、私は、この非常に美文調につづられた発展計画を、まあお粗末でありますが、三回読みました。その中で、特に第一部の総説自体を見て、非常に目ざわりといいますか、目についたのは、「経済効率」、いわゆる「効率」ということばが五十四回も使われておる。まあ個所は多少落ちがあるかもしれませんが、経済効率ということがこの総説の全体を貫いておるということは、この触れ方でも明らかではないかと思うのであります。  まず第一に伺いますが、この経済審議会の構成がいかなるメンバーによって構成され、いかなる運営を経、いかにこれが答申になったか、それをかいつまんで、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  16. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 続きまして、お許し願いまして、着席のまま答弁さしていただきます。  いま渡辺委員から御指摘のありました「効率」、あるいは「効率化」ということの問題につきましては、後刻なおお尋ねがあるように承りましたので、それにつきましては、その際に、考えておりますことを申し上げたいと思います。  経済審議会に対しましては、このたびの経済社会発展計画は、昨年の五月に諮問になりまして、そして今年の二月の末に答申が出されたわけでございます。経済審議会は、経済企画庁設置法の中に定められております正規の審議会でありまして、沿革的には、かなり長うございます。私どもといたしましては、私どもの役所の関係審議会の中では最も中心になる一番大切な組織であるというふうに心がけてまいっておるわけでございます。審議会の委員は三十名、任期が二年ということでございます。ただいまの委員は、たしか昨年の十月に、ほとんどそのまま、仕事の途中でございましたから、再任をお願いをしたわけでございますが、その委員の方々、まあ、かりに分類をして申し上げますと、第一次産業を代表せられる方二人、第二次産業を代表される方八人、第三次産業、金融を含みますが、八人、もろもろの団体、言論機関等を代表される方三人、学識経験者九名、都合三十名でございます。そして、しかし経済社会発展計画と申しますような大きな計画を立てていただきますのには、むろんこれだけの方では仕事がおできにならないわけでございますから、この目的のために、たくさんの専門委員、臨時委員のような方をお願いをいたしました。たくさんの部門に分けまして、ほぼ半年余り、五月からでございますから、九カ月になりますのでございますが、作業をしていただきました。ことに、計量も入っておりますので、その方面の専門の方にもお力添えいただきましたし、また、各省の事務当局の協力も得たわけでございます。多いときには二百人ぐらいですか、の方が——これは延べでありませんで、実人員で、それぐらいの方が作業に従事された。ほぼ、そういう経緯でございます。
  17. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 従来の石川委員長がやめられて、経済同友会の木川田委員が審議会の会長になった。そして経済同友会の系統の財界がイニシアチブをとって、この審議会の、そして特に総合政策部会を設けて、岩佐委員以下がそのヘゲモニーを握って、いわゆるこの産業体制の整備というものに重点を置いて、審議会令の二つの柱のうちの政策に重点を置いて、九月二日に基本的考え方をまとめたように理解するわけでありますが、ただ、私は、もうこれ以上抽象的な触れ方はやめます。具体的な内容に入りませんと、偏見で、一つ立場からの質問ということになっても、きわめて遺憾でありますから、具体的な内容にわたって、私のそういう考え方の中心が間違っているかどうかを明らかにしていけばいいのでありますから、さっそく具体的に伺いますが、宮澤さんが長官になられた直後に、経済同友会が出した答申原案というものにクレームをつけられた。そのいきさつというものは、どんなものだったんでしょうか。
  18. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 審議会が一定の答申の案をすでに持っておられて、それに対して私がクレームをつけたというのとは多少違いまして、審議会の中でその仕事の中心をなしておられる数人の方々から、私、当然、新任をいたしましたので、従来の作業の経緯を伺ったわけであります。それに対して、私が自分なりに考えまして、このようなことももう少し御検討いただけないかとお願いをいたした。これは、元来政府が諮問をいたした立場でございますので、言ってみれば、その作業中の内容の御説明に対して、もう少しこのところもお考えいただけませんでしょうかということをお願いをしたようなわけでございます。  その内容は、一つは、たまたま国民生活審議会が、これから将来に向かっての、わが国国民生活中心にしたところの、まあ、いわゆる生活環境の改善についての答申をされたわけでございますが、その答申に盛られましたいろいろな内容、施策、それもひとつこの経済計画に取り入れていただきたい、こういうことをお願いをいたしました。その理由は、経済発展ということは、むろん、それ自身が目的ではありませんで、終局的には国民の福祉を向上するということが目的でございますから、国民生活審議会がいろいろなサゼスションをしておられますので、そういうサゼスションが将来に向かって実現できるような、そういう考え方、諸施策をこの計画の中にも取り入れていただきたいという理由が一つと、さらに副次的には、現在のわが国情勢から考えますと、いわゆる社会開発というものを進めなければ、経済成長自身もだんだん無理になってきているのではないかといったような理由も副次的にございました。これが第一にお願いをしたことでございます。  第二にお願いをいたしましたことは、わが国企業がいわゆる国際的な規模の利益を追って大きくなり効率的になるということはもとより大切なことでありますけれども、その間、もし誤って、いわゆる寡占状態から独占的な傾向を生むようになれば、それは消費者全部にとって不幸なことでありますから、消費者保護に反するような姿での現在の法制の適用あるいは改正といったようなことについては、これは私としては賛成をいたしかねるということを、これを念のため、第二点として申し上げたわけであります。  第三点といたしましては、ともすると、このような計画が、第二次あるいは第三次産業中心に組まれやすい、ことに第二次産業中心に組まれやすいわけでございますが、これは国民全体のものでございますから、第一次産業のあるべき姿について、もう少し御検討を願いたい。ことに、第一次産業の中でも、いわゆる農業基本法の直接の対策になっております自立経営農家についての対策については、かなり政府の考え方もまとまってきてはおりますけれども、兼業農家、ことに二種兼業農家についての考え方がどうも私ども自身としても、さだかでないように思う。また、そういう兼業状態にある農家が今後どのように向かっていくべきか、政府はそれに対してどのような施策をするのかといったような、そこらの点が、従来とも政府自身も必ずしも明確でなかったように私考えておりましたので、この計画の中で、そういうようなことについても検討をしていただきたいということ。  第四には、この計画期間を通じて、卸売り物価がまずほとんど動かない、変動をしない、まあ上昇をしないという前提について。私が、このことをお願いをいたしましたのは昨年の暮れでございますけれども、昭和四十一年いっぱいを通して見て、簡単にそういう前提をとることがいいかどうか、単純にそういう前提がとれるものかどうかについて、これは私にも一応定意見があるわけではありませんが、あらかじめもう一度御検討を願いたいということを申し上げました。  最後に、この計画の後半においては、だんだん労働の需給関係も逼迫するであろうということは計画自身が想定をしておりますが、そうした際に、あるいはそれに移行する段階において、賃金上昇というものがわが国経済にどのような影響を与える見通しであるか、そういうことについても何かの形で御考慮を願いたい、御研究を願いたい。  ほぼこの五つの問題についてお願いをしたように記憶をいたしております。
  19. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 それで、お伺いするのですが、それじゃ、まず第一点から伺いますが、要するに、国民生活審議会の答申というものの内容が原案ではあまり生かされていないから、それを十分内容の中に入れるようにといういわゆる宮澤構想、当時の新聞にはそう名づけて出ております。そういうものがサゼストされたわけです。もっと具体的に伺いますと、国民所得からさらに割いてこれに充てる、いわゆる社会開発ということを、当時ことばの中では触れておるわけですから、それがどのくらい、それでは計量経済の中から出てきた原案に加算をされて出たのか。また長官は、その裏側の理解として、そのために経済成長のテンポが鈍ってもやむを得ないということを言うておる。しからば、当時すでにコンクリート化しつつあり、その後計数整理をして八・二になっておるが、それが一体どういうふうな計数の変化が起きておるのか、そこら辺、もう少し……。質問は素朴だと思うのですが、国民はそういう点を聞きたがっているわけです。それは一体、どういうふうに宮澤構想というものが生かされたのか。生かされたとすれば、計数の中にどういう変化が起こっているかを明らかにしていただきたい。
  20. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国民生活審議会で答申をされましたことは、現在から十年及び二十年、両方の試算をされたようでありますけれども、その将来の日本経済をいまから展望すると、もう少し多くの毎年の国民所得の割合をいわゆる社会開発に用いていかない限りは、国民一人一人の所得は伸びても、生活環境施設は、いわゆる先進国に比べて、はなはだ劣ったものになるので、したがって、国民所得の四、五%をそういう社会投資に充てていくべきである——現在やっておりますのよりは、一%ないし二%よけいということになるわけでございますけれども、そういうことが答申の中心になっておるわけであります。  そこで、私が昨年の暮れにお願いをいたしましたことは、当時すでに計量のほうの仕事もかなり進んでおりましたから、最終的にこの答申が、いわゆる国民所得の四ないし五%をそのような社会関連投資に充て得るような、そういう計量になっておるかどうか、すなわち、国民生活審議会が答申をした程度の社会投資をこの計画は十分包含し得るものであるかどうか、もし包含し得ないようであれば包含し得るような、そういう計画を考えてほしい、こういうお願いに帰着するわけであります。この点は、結果としては、私のお願いをいたしましたことは、計画の中に、まず満足な程度に取り入れられた、こういうふうに考えております。  なお、具体的な計数でございましたら、政府委員から申し上げます。
  21. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 どうも、大臣の御答弁を聞くと、そういうものかなあと思うのですが、あまり私も材料もないし、外側しかわからぬものですから……。  それで、この計画には、振りかえ所得の国民所得に対する比率は、四十年度は五・五%だと、それを二%程度上昇することになるということが、私は、宮澤さんが長官になられたときの御不満の点じゃなかったかと思うのです。そこで、私は、二%の上昇というものが適当な上昇率であるかどうか、一体二%という根拠はどこにあるかを伺わなければならぬ。  というのは、諸外国の例を見ても明らかなように、日本では確かに、四十年度、一九六五年度では五・五%ですけれども、フランスでは、振りかえ所得の国民所得に対する比率は二一・七%を占めている。西ドイツでは一六・六、イタリアでは一二・七、スエーデンは一一・〇、デンマークでは一〇・〇、こういう一つの実態がある。しかもこれは一九六四年ですね。そういうものから見れば、私は素朴に疑問を持つのですけれども、非常に社会開発というものは、作文の上では、そつなく、官僚の作文で、美々しく連らねられているけれども、しんがない。上下水道なり、あるいはごみ捨て場なり、あるいは地方道なり、公園なり、いろいろのそういう社会環境が、なぜこんな四等国の現状にあるか、そういう現状認識からいったならば、もっと社会開発に対する国家資本の投下というものは積極的でなければ、私は、あなたの言う構想というものが、この答申の中に生かされたものとは思わない。内容的にそういうものが含まれているとすれば、まあ何をか言わんやであります。そういう素朴な問題を感じるわけです。どうなんですか。
  22. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そこで問題が二つあるわけで、いま、二つの問題を渡辺委員が御提起になったわけであります。一つは、社会開発に対する答申の問題でありますし、もう一つは振りかえ所得の問題であったわけであります。  まず、振りかえ所得のほうから申し上げますが、昭和四十年度におけるわが国の振りかえ所得の国民所得に対する比率が五・五%である。そうして、これを四十六年度にはほぼ二%上昇させるということが計画一つの内容でございますが、このことは、御承知のように、国民所得伸びが非常に大きうございますので、その中において振りかえ所得の比率を伸ばすということは、実額では非延に伸びるということになるわけであります。年率にいたしますと、一六ないし一七%ずつ振りかえ所得を伸ばしてまいりませんと、一九七一年度に七・五という水準にならないわけでございます。この点をめぐりまして、この計画作成中に、各委員、それから関係の各省、ことに財政との関係で非常に問題がございました。ともかく年率にして平均一八、七%という高い伸びを、財政当局も、この計画を決定することによって認めたということになりますわけで、私としては、この点はかなりの進歩であるというふうに考えております。  で、渡辺委員の御指摘のとおり、たとえば、ただいまフランスでは二一・七ということを仰せられました。ヨーロッパの国では、かなり水準の高いところが多いわけでございまして、一五%以上というような国がかなりございます。しかし、イギリスのように九%程度のところもあり、アメリカのように六%程度のところもある。これは、結局、考えますと、アメリカあたりでこれが比較的低いのは、国民の多くが自分自身で勤労をし、あるいは現実に所得をあげる機会が多いために、いわゆる振りかえ所得の形で国が保護をしなければならない、そういう必要の度合いがヨーロッパの国なんかに比べて低いのではないかというふうに思われますが、いずれにしても、この振りかえ所得の率を非常に上げていくということは、それだけ国民の租税負担率を上げるということにほかならないわけでございますから、むろん、福祉国家の理想としては、これがより高いことがよろしいのでございましょうけれども、さらにもう一つ申せば、なるべく振りかえ所得のやっかいに国民がならないで済むような、そういうような社会なり経済なりの体制というものが、あるいはさらに望ましいことであるかもしれない。それができないときには、おのずから振りかえ所得が高くなるということでございましょうと思います。わが国の租税負担の現況から申しますと、この計画自身が、計画末期には現在よりも租税負担が二ポイントくらい高くなるようになっておるのでございまして、これ自身でも必ずしも容易なことではないと思われます。したがって、振りかえ所得をこの辺まで持ってくるということは、不十分ではございますけれども、私はこの計画一つの特色だと思っておるわけでございます。  それからもう一つ社会開発投資でございますが、これは、主としてやはり公共投資の形によることになりますわけで、それは計数的には二十七兆五千億という、これは、お手元にございますかと思いますが、資料の八〇ページに出ておりますが、これを達成することによって、国民生活審議会の答申に盛られております内容を、まず、多少、あるいはそれより上回った程度に達成ができる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  23. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 そうしますと、この公共投資の二十七兆五千億に触れられましたから、これについて確認をする意味でお尋ねするのですが、これはあなたの言う、たとえば上下水道なり、ごみ処理なり、あるいは公園なり、あるいは市街地道路なり、いろいろなそういう社会開発構想を十分に盛り込めと、審議会の有力メンバー、おそらく木川田会長や総合部会長その他でありましょう、に話をした結果というものが、この部門別投資額に反映して、そうしてそれが二十七兆五千億、用地費を含んでですが、こういう金額になったのですか。それ以前はこれよりも低くて、また、振りかえ所得の国民所得に対する比率が最終四十六年度には七・五%になるという経過の中で、これが変化をしたということなんですか。最初からこれはこうだ、あなたの言ったことは内容には十分盛られておるのだ、言わなくてもよかった、結果的にはそういうことだったのですか。
  24. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) おまえが注文つけたからこういうようになったのかと、端的にはそういうお尋ねでございます。それは、非常に明確に答弁をすることは困難でございますけれども、少なくとも、この作業の十二月の段階では、先ほど計画局長から御説明を申し上げました、いわゆるシミュレーションでございますが、いろいろなシミュレーションが行なわれておったわけで、そのシミュレーションの中で、公共投資についてはこの程度のものを確保するシミュレーションを採用した、その後に採用した、それがまた可能であったということになる、こう御説明申し上げるべきかと思います。  それから振りかえ所得のほうは、実はこれは最後まで、ほんとうに最後までもめまして、最終的な決定がなされる寸前に、ようやくここへ落ち着いた。年率一六、七%の振りかえ所得の伸びということには、相当政府関係省の間で問題がございまして、ともかくここへ落ち着くことができた。したがって、どの部分がおまえが言ったからできたのか、どの部分は自然にそうなったのか、ということにつきましては、必ずしも明確にお答えすることはできませんけれども、少なくとも、私がそういうことをお願いをいたしましたのは昨年の十二月でございましたから、最終答申になりますまでの間、ほぼ二カ月余り、十分私の希望を計画作成者において御考慮をいただく時間があった、こういうふうに考えております。
  25. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 どうも、わかったようでわからぬ。その結果経済成長のテンポが鈍ってもいいという、かなり勇気を持った発言をしておられる。それが一体どういう政策変数を伴った変化を生じたのか、あるいは、それもなかなか高度な判断で理解をするものか、どうなんですか。
  26. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま渡辺委員の御質問に、かりに、当時九%の成長を予定しておりましたけれども私がもう少し社会開発投資をふやしてくれといったようなことをお願いをして、その結果社会開発投資はふえたが成長は九%から八%に下がる結果になった、こうなりました、というふうに申し上げれば、この問題は比較的はっきり御納得をいただけるのだと思いますが、そうは必ずしも申し上げられませんので、作業はずっと継続的に進んでおります。片一方で、この計画そのものの考え方についての検討が進んでおりましたし、他方で、それを反映して先ほど申し上げましたマクロモデルを使ってのいろいろな変数を入れてシミュレーションが進行しておりましたから、端的に申せば、私の希望しておるところを取り入れながら最大の成長——なお、その中には、先刻申し上げましたように、消費者物価はここでとめるといったような課題が別途ありますけれども、それらをいっときに満足し得る連立方程式の解き方、それはどれであるかということは、最終的に二月の末に決定したということでございますので、こう申したがゆえに成長はこうなり、社会開発投資はその結果こうなったのだという、非常に簡単な短かい因果関係を御説明することは困難でございます。しかし、私は、自分が希望いたしましたことを、かなりこの計画の中に反映させてもらうことができた、そういう印象は確かに持っております。
  27. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 どうもよくわからぬのですがね。計量の過程でもの言いをつけた、それが最終的には整理されて出たものである、成長率を規制して、逆には公共社会資本の投資がふえて、というような、その変化がよくわからぬのでありますが、それは一応たな上げにいたしましょう。私は、わからないままに次に進みます。  それで、宮澤構想として当時新聞等を通じて発表された、先ほど答弁された第二の、私から言えばクレームであります。これについては、詳細には次のようにおっしゃっておるわけです。「国際競争の激化を控え、企業が大規模化して利潤を追求することに異論はない。しかし、産業体制の整備はあくまで自由競争の原則にたち、民間が自主的な方法でやるべきで、政府が介入して体制促進をはかることはこのましくない。また体制促進のため独禁法を緩和するという考え方はとらない。独禁法の取り扱いは慎重にし、誤解されぬよう十分注意してほしい。」と、先ほどの第二点の具体的な内容としては、当時の新聞が宮澤構想として発表しておる。これはまた、非常に国民の重大な関心のある問題点でもあるわけであります。そこで、たとえば独禁法の問題——長官が独禁法について、これを緩和するとか、いわゆる寡占資本の方向にばく進ずること等を踏まえて、いろいろこれは問題になる、そういう注意を喚起しておる。それは確かに、私が見た範囲では、この計画の三四ページの「競争体制の整備」というところにも見受けられるようであります。次のように言うておる。「まず産業体制の整備を促進する過程においては、業種別ビジョンの公的な確立を前提として業界の自主責任による合理化カルテルを認める必要がある。」 これは政府が認めるということ。「また企業の合併、業務の提携、共同投資あるいは設備調整などについても、産業体制整備のために望ましい範囲において、国際競争力強化に資し消費者等の利益を害さないという条件のもとで独占禁止法の適切な運用をはかり、前向きの姿勢でのぞむ必要がある。」ということ。そういうものかと思って見ますと、今度はまた一〇ページには、別の、この独禁法についてのかってな解釈が出ておる。上のほうですが、「同時に容易な生産調整価格協定は、企業責任をあいまいにし、産業の再編成をかえって遅らせるおそれがあるので、生産調整価格協定については、従来よりきびしい態度でのぞむ。一方、再編成がすすむにつれて企業規模も巨大化し、場合によっては市場支配力が強大になり、競争制限的行為が生ずるおそれがあるので、これを排除するために、政府公正取引委員会の強化、生産調整に関するいっそう厳格な規制などによって、適正な競争条件整備をはかる。」  私は、財界の要望するこの競争体制の整備に対する独禁法の理解と、価格政策に寄せる独禁法に対する態度というものが、この一つ発展計画の中に相矛盾する理解のしかたというものを見出さざるを得ないわけであります。こういうことを、宮澤構想を踏まえてこの諮問を受けたいわゆる木川田委員会は、一体どういうふうにそれを整理したのか。それは、宮澤構想はそういう一つの考え方を伝えたかもしらぬが、依然として、そのあらわれている考え方は、ここにいま部分的に取り上げたような一つの独禁法に対する財界の考え方というものが牢固として抜きがたきものを私は指摘せざるを得ない。あるいは、あなたが発表された構想の、産業体制の整備、自由競争の原則に立て、政府は不介入だ——私はまさにそのとおりだと思う。しかしながら、この計画の中にあらわれた、財界の筆になるところの計画は、あるいは資本合同にしても、あるいは免税の措置にしても、あらゆる点において、法律、行政の規制というものを強く要求しておる。もしもあなたの言うとおりであるならば、こういう点は、すみやかに十分長官の意思というものを体して整理した上で、これは政府の閣議決定に待つべき計画でなければならぬと思う。あなたのそういう一つの発想は、いつの間にか途中でそれが捨象されて、依然として原案というものが根強くこの計画の中に生きておるというふうに考えるのですが、その構想と、具体的にこの計画にあらわれた相関関係は、一体どう理解すればいいのですか。
  28. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま、計画の三四ページの部分と一〇ページの部分とを両方御引用になったわけであります。それはこういうふうに私は考えておりますし、また、計画そのものも、このように理解すべきものと思っておりますことは、この二つのことを同一時点、同一平面で考えますと、いかにもこの申しておることが何か矛盾するような、少なくとも混乱をしておるような印象を受けやすいと思います。しかし、私どもの理解するところでは、この三四ページに申しておりますように、わが国経済産業体制がいわゆる国際化の時代に直面をして、規模の利益というものを追っていかなければならないということは明らかでありますから、そのためには業種別のビジョンを立てる、また、時として企業の合併、業務提携、共同投資であるとか、あるいは設備調整などすることも、これは必要であろう、現在の法制はそれを認めておるわけでございますし、また政府としては、国際化の時点に立って、それをむしろ推進をするために、いろいろな金融上あるいは税制上の援助もいたしましょう、それは必要であると、これを三四ページに申しておるわけであります。  そこで、一〇ページのほうに返りまして、幸いにして、そういういわゆる企業の大規模化、合理化ができていったといたしますと  これは私はは、実際問題としては、いまの実業界の現状から見ますと、なかなか簡単にそういうふうになりにくいということを思いますけれども、幸いにしてそういうことが進んでまいりました暁には、今度はむしろ、そのようにして巨大化した企業が、ともすれば寡占というようなことになって、その結果として、国民消費者全体の利益に反するような動きをするおそれがあるかもしれない、たとえば、非常に市場の支配力が大きくなる、あるいは競争制限的な行為をしやすいわけであります。非常に多数の企業が乱立しておりますような場合よりは、少数の大企業に整理されましたほうが、そういう弊害が起こりやすいのでありますから、そういう場合にあっては、政府公正取引委員会——あるいは投資調整でなくて生産調整というようなことになりますと、それについては厳格な規制をしなければならない。そうして、そういう大規模化いたしました後に、なおむしろ、それであるがゆえに、適正な競争条件を残しておくことが必要である。こういうふうに二つの段階に、二つの平面においてお読みいただきますと、この計画の意図しているところが御理解いただけるのではないかと思います。
  29. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 まあ、税制上の問題、金融上の問題にも触れられましたが、私は、この中小企業に対する税制上の優遇措置ということは、明らかに、いまの低い生産性に置かれている、それが物価高騰の一要因をなしておりますので、これはかなり意欲的に政策として取り上げなければならないと思います。経済効率化として、産業体制の整備の手段として。大企業優先にこれをやはり便乗させるべきでないという、これは異なる見解を持っているわけです。これは意見でありますから、お尋ねではありません。  物価委員会ですから、早く物価の問題に入りたいのですが、何しろもう少しこのメカニズムに触れておかぬと、政府の考えている経済社会発展計画の中における物価の安定の基本に触れられないものですから、もう少し伺わざるを得ないわけで、非常に納得いきかねる点がありながら次に移らざるを得ないもどかしさを私は持っているのです。  長官が申されたたとえば農業の問題、これについては、どうも五年後の農業の位置づけというものは、一体はっきりしていないじゃないか。で、自立専業農家の大規模化もけっこうである、あるいはそういうものとは別に、最近では全体の八割近くを占めている兼業農家、これに対する具体的な指標というものもなければならぬじゃないか、そういう構想を十二月にこの経済審議会の代表にもの言いをつけておられるわけであります。確かにこれは経過的に見ますと、所得倍増計画からスタートを切ったわけでありますが、所得倍増計画は厳然として今日もあるわけであります一と思うのです。これはなくなったと言われればそれまでですが、これはあるんでしょうね、現在。あるとすれば、この所得倍増計画において農業昭和四十六年の、十年後のビジョンというものが明確に示されておったはずであります。全国で自立経営可能な農家を百五戸造成する。三人の労働力を駆使して経営規模が二・五ヘクタール、農業粗収入が年間で百万円、そういうものが中期経済計画ではかなり内輪に修正されておる。今度の経済社会発展計画では、一体そういう指標は、あなたの構想に基づいてどういうふうにこれが出てきているのか。私はあちこち見たが、なかなか見当たらない。宮澤構想をこの審議会がどう受けとめて、その大規模化する自立専業農家という指標をどこに四十六年度に求めたのか。八割をこえなんとする兼業農家の四十六年度の展望は一体どうなのか。それに対する具体的な施策はどうなのか。生産性の高まりをどこに求めているのか。そういう点を、一体あなたの構想を受けた審議会は、どう計画の中に反映しておられるか。
  30. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 在来の計画におきましては、いろいろな数値をかなり前に押し出しまして、いわば計画の骨子となるような形で計画ができておったわけであります。このたび、私ども、あるいはこの計画を直接答申されました審議会の反省としては、どうも過去において、やや数値に振り回されたきらいがあると、こういう反省がございまして、しかも計量経済的な手法を用いましても、数値そのものは必ずしも正確に事実となってあらわれませんために、そのゆえに、計画そのものが、もう価値がなくなったというように世間からも考えられやすい、そのような反省もありまして、このたびは、もちろん数値は、この計画で考えておりますものの考え方が首尾一貫しておって斉合性があるかないかということを検出する意味では、非常に大がかりな計算も行ないましたけれども、大切なのはこの計画に含まれておるものの考え方であって、個々の係数は、それをいわば裏づける、あるいは検出するための参考資料、こういつたような考え方をとりましたために、ただいま渡辺委員から御指摘のありましたような係数というものがあまり表面に出ておらない、これはそのとおりでございます。しかし、それでも、たとえば昭和四十六年度ごろにおける農業従事者の数はどのくらいになるであろうとか、あるいはまた農業の付加価値生産性が年率でどのくらい伸びるであろうと、これは一・九%ということを一応言っておるわけでありますが、そういったようなものについては、表に出ておる計算もございますし、また農産物の自給率についても一応試算はいたしておるわけでございます。  で、確かに私ども、この数年でございますが、自立経営農家というものについては、かなりこれを農業政策中心にして考えてまいりましたけれども、先ほどもちょっと申し上げましたように、事実は、兼業農家が八割近い七五%をちょっと上回りそうなところでございますから、そういう人たちはどういうふうにこれから考えていけばいいのかということの記述は、在来ほとんどございませんでしたが、このたびは、この計画の中に、不満足ではありますけれども、二、三カ所触れておるということになったわけであります。
  31. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 そうしますと、十二月に、あなたが新しく長官として発表されたその構想というものは、そのままには出ていないわけですね。
  32. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この点は、先ほどのお尋ねより多少はっきりしておりまして、おそらくは、私がそういうことを申しましたがゆえに、その点についての考え方、あるいは記述が、在来はほとんど実はなかったわけでございますが、二、三カ所に、それについての配慮が記述されておるということは、これはおそらく、私がそういうことを申しました結果だと思います。これは、先ほどの成長率云々の問題よりは、多少はっきりその間に因果関係があるように思います。
  33. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 そうすれば、二月二十七日に「参考表」として経済審議会が出しておる「部門別付加価値」、これは長官の構想によって出たものですか。
  34. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまお話しの答申をされました経済計画資料の「部門別付加価値」、これは、政府としては答申として受け取ったわけであります、で、この一・九%という農林水産業の付加価値自身が、私がそういう構想を示したからこうなったのかと言われますと、またその点はお返事に窮しますけれども、むしろ、計画の本文そのものの中で、たとえば一〇ページの「農業近代化」、あるいは一二ページの「社会開発推進」の中における兼業農家のあり方について、それから三五ページの「農林漁業の近代化」、この辺には、考え方としては不満足ではありますが、かなりそれらについての考え方が示されておる、こう思っております。この問題は、私が指摘いたしましたからといって、農業の付加価値の計算が変わってくるというものではあるまいと思いますけれども、計画の考え方は、文章として二、三カ所に顔を出しております。
  35. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 それでは、いま取り上げたついでですから、農林水産業実質付加価値の増加率一・九%を中心にしてお尋ねをしたいと思います。  何にしても、この付加価値の伸びそのものが、やはり消費者物価と相対関係を持つほどの重大な問題だと思うのであります。中小企業の前近代性の近代化とともに、これは大きな物価政策の柱でさえあるわけであります。そういう観点からこれを見ますと、長官がまだケネディ・ラウンドに出かけておる間、本会議で私が若干農業白書に関連して質問したのでありますけれども、なかなか政府のこの実質付加価値の取った指数にも私なりの疑問点があるわけです。その構成の要素としてまず考えられるのは、この計画の七二ページにもありますように、輸入については、食糧も輸入全体と同じ割合で伸び率を一二%と見ております。しかしながら、三十五年から四十年までの過去五年の輸入伸び率というものを見ますと、農産物については一七・一%の伸びを示しております、実績が。これは農産物全体でありますが、そのうち、食糧農産物に限って輸入伸び率を見ましても、これが一九・一%、こういう実績伸び率の中に、四十二年——四十六年の伸び率の一二%というこの伸び率は低過ぎるのじゃないかという問題がまず第一点としてあるわけであります。これはどういう吟味を経て一二%に定着をしたのか。  それからついでに伺いますが、この計画の三六ページの農業生産を、いわゆる伸び率で算出いたしますと、年率大体二・七%になっております。これは、過去五カ年の実績年率二・三%から見ると、これもかなりその伸び率が、農業生産としては過去の実績よりは高いきらいがあるのじゃないか、こういうふうに指摘せざるを得ない。  それで、いま長官が取り上げたこの付加価値の年率一・九でありますが、四十年を基準にして、その一・九にこの実質付加価値の増加率を求めた算出の内容はもとより私はつまびらかにするものではありません。しかし私は、与えられた資料を中心として、政府が出しておる農林省の統計調査部の農業生産指数と農業所得率、これから農業実質生産所得指数を試算してみますと、伸び率はわずか〇・三であります。この農業所得率の逐年の低下の係数と農業生産指数、この統計調査部の資料をそのまま用いて出した、これがわれわれとしては、純生産とでも称すべきいわゆるこの付加価値、実質付加価値を測定するという要素であって、これは違いがないはずである。それが〇・三であるのに、一・九というのはあまりにこれは乖離がはなはだしい。これは一体どういうことか。
  36. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私の承知しておりますところでは、ただいま御指摘の付加価値生産年平均伸び率一・九というのは、計量をいたしましたときに産業連関モデルで試算をいたしたものだそうでございます。なお、試みに同様のモデルを使いまして、昭和三十年から三十九年までの実績を計算いたしますと、やはり同じく一・九%であったそうでありまして、まず、その程度の付加価値の向上は実現できるものと計画当事者は考えたようであります。  それから輸入のことでございますが、たとえば米について申しますと、この計画の終期には、たしか米の自給率を九七%と考えておると思います。九六か九七でございます。昭和四十年度あたりが九二でございます。でございますから、米などにはかなり自給率の上昇を見込んでいる。麦については、たしか、そうまいりませんで、麦の自給率は多少落ちておるかと思いますが、米につきましては自給率の上昇を見たりしておりますので、そういうところから、ただいまの輸入伸びの多少の鈍化を見ておるのじゃないかと考えます。乳製品につきましても自給率は上昇を見ております。  それから先ほどのその産業連関表から出ました一・九%と御指摘の統計との関係につきましてでございますが、ちょっと私にはわかりませんので、政府委員がただいますぐ御答弁できるようでございましたらお答え申し上げますし、できないようでございましたら、御指摘の資料と照らし合わせまして、後刻両者の相関関係なり違いなりについて説明をさせていただきたいと思います。
  37. 鹿野義夫

    政府委員鹿野義夫君) 一口に申し上げますと、いま先生のおっしゃられた上昇率〇・三%とおっしゃられるのは、指数の上での伸び率であります。こちらが一・九%と申し上げておるのは、付加価値額の伸び率ということで、違いがあるのではないかというふうに思いますけれども、なお、もう少し詳しく調べた上で、さらにもし間違っておるようでしたら、お答え申し上げます。
  38. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 もう一つ、見方としては、この農業生産指数と農業所得率の中から純生産を算出する、伸び率を出す出し方とまた別個には、国民所得の中から農林水産物価格指数でこれを除して出す出し方もあるわけであります。後者の指数でまいりますと、〇・七であります。これは、政府の算出した資料もいただかんで、また私も、ただ口頭でべらべら言うたんでは、どうもすれ違いになって、時間があれですから、この実質付加価値の一・九になった函数のバックデータを、ひとつできたら後ほど整理してお示しをいただき、私も私なりに計算をしたものをお示しして、これは委員会とは別に、ひとつ比較検討をさせていただきたい。いずれまた正式に委員会で、それを検討の結果、取り上げることにいたしたいと思います。  ただ、私、これらを通じて考えますのは、農業生産性の高まりというものを、現実進行過程の中で、あるべき姿をあまり高く望んでおるのじゃないか。反面で言えば、農産物価格をかなり規制するという一つ立場に立っているのじゃないか、こういうふうな感じもするわけでありますので、この実質付加価値の伸び率というものは、またさらにしさいに検討を必要とするわけであります。  それで、十二月の大臣構想の最後にうたっておった、物価賃金あるいは所得との相関関係が不明確じゃないかと。もとより構造政策によるということは別としても、その点を明確にさらに浮き彫りにする必要があるのじゃないかという指摘をされたのでありますが、それが、これから物価を論議する上においてはきわめて重要な問題の提起だと私も思うのでありますが、審議会ではこれがどういうふうにそしゃくされ、計画の中に相関関係が生きておるのか、その点を、宮澤構想の問題の第五点を、最後にこの機会に伺っておきたい。
  39. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この問題につきましては、私がそういう指摘をいたしました際に、審議会のおもになっておられた方々からは、実はその問題については自分たちも気がついていなかったわけではない、しかし、十分な基礎的な研究なしにこの問題を云々することは、かえって世の中に好ましくない影響を与えるかもしれない、実はそういう配慮もあったのだという御説明で、私はそれはそれなりにごもっともなことだと思ったわけであります。そこで、最終的にはどうなったかと申しますと、審議会としては、この答申を政府に送られる際に、国民経済物価との関係において、貸金所得、労働生産性をどう考えるべきかという問題については、今回十分に検討を行なう余裕がなかった、したがって、今後そういう問題についても検討をこの審議会で行なう必要がある、そういう結論になりまして、これは、お手元にございます書類の二四ページの下から三番目のパラグラフの「第三に、」というところに、その趣旨が書いてございます。  そこで、ただいま審議会としては、ここに書いてあることに従いまして、まず、現在までにわが国賃金所得あるいは労働生産性等がどのような相関関係を過去において持ってきたか、あるいはこれから持つであろうかというような、基礎的な、ごく学問的な研究を審議会の内部でしてみようではないかということになったわけであります。と申しますのは、この問題は、ときとしていろいろな立場から論じられますけれども、各方面の人がお互いに承認し得るような、共通なデータなり、研究なりを目下欠いておるわけでありますから、まず、それを公平な第三者の立場から学問的につくり出すことが必要である。その後いかなる提言をするにせよ、あるいはせぬにせよ、そういうものがなければこの問題についての議論は進まないであろう、そういう認識のもとに、おそらく、間もなく一、二カ月のうちに適当な人選を終えて、審議会の中でこの問題についての学問的な研究が始まる。おそらく半年あるいは十カ月は当然それだけでかかるかと思いますけれども、そういうただいまの段階でございます。
  40. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 おおよそのところで、この経済社会発展計画がこの世の中に出るまでの陣痛とでもいうようなものの全貌を知ることができた感じがするのであります。  そこで、これから具体的な内容に入ってお尋ねをいたしますが、一体、こういう、わが国のような自由主義経済をたてまえとしている国柄の中で、こうしたような計画経済社会発展計画と称するこういう計画が、どう位置づけられておるものか、また、その役割りはどういうものか、その効果というのはどういうものか、ということを、大局的にひとつ長官からここで伺っておきたい。
  41. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、実は私自身もしばしば自問自答いたしておりますので、非常にむずかしい問題であると思いますが、たとえばこの計画の中で、今後五カ年間の経済成長率でありますとか、あるいは国際収支でありますとか、物価の見通しなど、そういったものについて述べております部分は、日本経済の今後起こりそうである環境と、政府がその間にとるべき、あるいはとれるであろう政策等を、こうにらみ合わせながら、計画期間中において望ましく、かつ実現できそうな経済発展のおおまかな姿はどのようなものであろうかということを示すためだ、この経済成長率国際収支、あるいは消費者物価などの数値はそういうものを示しておるものであると考えるわけであります。  次に、公共投資でありますとか、あるいは先ほど御指摘のありました振りかえ所得でありますとか、そういう政府部門のパブリック・セクターの中で想定されております諸条件というものは、これは政府が自分の意思で行ない得る性質のものでございますから、想定いたしましたもろもろの条件に大きな変化がない限りは、政府として決定をいたしました以上、これは実行につとめるべきものだ、そういう性格を持っておると思います。  それから第三に、民間の設備投資でありますとか、あるいは個人の消費でありますとか、鉱工業生産指数などにつきましては、これは政府が直接に左右できるものではございませんが、前に二つ申し述べましたような、そういう環境を前提とした場合に、民間が経済活動を行ない、あるいはお互い個人が消費をするといったような場合の、その基本的態度を決定する、その一つの目安である、ガイド・ラインである、こういう性格を持っておると思います。したがって、ただいま三つのことを申し上げましたが、そういうおのおの少しずつ異なった性格を持っておる三つの要素からなっておる、こういうふうにお答えすべきかと思います。
  42. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 いま、御答弁の中にあった、この計画を五カ年に限ったというのはどういうことなんですか。
  43. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは、おそらく五カ年以上にわたってある程度国民にお示しするに足る予想というものは困難である、それ以上こえては。そういう意味であろうかと思います。
  44. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 そうしますと、私はあとで消費者物価中心に伺いますが、五カ年の展望の中で、再び途中で計画変更の余儀なきに至るということはないと理解していいですか。
  45. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私どもは、現在わが国が持っておりますあらゆる知能、手段を動員いたしましてこの計画をつくっていただき、閣議決定をいたしたわけでございますけれども、だからといって、この計画はあまり誤差なく実現されるであろうということをすぐに結論するのは、それは私はかなり飛躍があると思います。計量経済といいましても、これは将来必ずりっぱなものに育つと思いますけれども、現在の段階では、まだまだ発達の初期の段階と申さなければなりません。したがって、この計画どおりに日本経済が進まなかったときに、正しいのは計画のほうであって、間違ったのは現実だというような、そういう不遜なことは申すべきではないし、そういうことを考えてはおらないわけでございます。
  46. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 わかりました。そうしますと、私これから伺うのに非常に不便を感じますのは、この五カ年の展望の中に、年次別というものが見当たらないんですね。これが計量経済の中にも出てこなかったのか、出さなかったのか、あるいはあるのか、そこら辺はどうなっているんですか。
  47. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この点は、先刻申し上げましたように、このたびはむろん計量も精緻にいたしましたけれども、そういう数字にわたりますことは、むしろこの計画のバック・データとして裏に引っ込んでいるような形になっております。そうした理由は、先ほど申しましたとおりでございます。まあ、そういう計量をいたしますときに、五年目の計量ができるのならば、その中間時点の計量ができないはずがないではないかと、こうおっしゃいますし、理屈は私はそのとおりだと思います。しかしながら、先ほど申しましたような性格の数字であり、かつ、ただいまの計量というものが先ほど申しましたとおりでございますから、その中間の時点を一々あげて世間に問うということは、むしろいい結果にはならないであろう、ときとしてミスリードをする心配すらあるのではないか、ということで公にいたさないことにしたわけでございます。
  48. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 政府のおもんばかりはわかりますが、表てには出さないが、しかし私たちにはお示しは願えるでしょうね。
  49. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 普通にも出しておりませんので、いわんや国権の最高府にお出しするだけの自信はないわけでございます。
  50. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 そうすれば、極端な話をしますと、昭和四十年は——一つの例を言いますよ、消費者物価はかりに一〇%上がった、四十三年は一三%上がったと、しかし四十六年は三%だ、こういうこともあり得るわけですか。
  51. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、事柄の性質上、おそらくそういうことはないであろうと思われます。その経過時点を示さずに、ないであろうというのは一方的ではないかという御批判があろうかと思いますけれども、昨年一〇%であった消費者物価が突然今年三%になり、その後はずっと三%で落ちつくというようなことは、連続した経済からいいますと、しごく考えにくいことだと思います。そこで、先ほど午前中に計画局長から申し上げましたが、昭和四十六年度に消費者物価が三%台になるとこの計画が考えておりますゆえんは、モデルをつくりまして、それにいろいろな変数を入れて、きわめて多くのシミュレーションができるわけですが、そのシミュレーションの中で、昭和四十六年度に三%以上の非常に高い消費者物価が出るようなシミュレーションは全部捨てた、その範囲で消費者物価がおさまるような成長なり何なり、その他のその数値を満足し得るようなシミュレーションのみを取ったということなんでございます。
  52. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 この機会に伺いますがね。あまり権威ある政府のバックデータということではなくて、参考に、その四十六年に至る年次別の経過はこういう経過をたどったというものをお示しいただきたいのですがね、バックデータを。
  53. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、消費者物価についてでございますか。
  54. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 できれば消費者物価と一般物価消費者物価でしぼれば、公共性料金指数、賃金、それらにしぼったものでけっこうです。四十二、四十三、四十四、四十五、四十六の年次別の試算をひとつお示しを願いたい。
  55. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この点は、先ほど申し上げましたように、あまり自信のある推計ではございませんし、計量そのものに、先刻申しましたような、まだ未発達である、また統計類も十分でないというような性格がございますので、それをお示し申し上げますことが、結果としていろいろな間違った解釈を世間に生むことがあるかもしれないというふうにも考えますので、しばらく考えさせていただきたいと思います。考慮をさせていただきたいと思います。
  56. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 ひとつ、これは前向きに考えていただきたいのは、それすらも出ないとなれば、四十六年の一つ目標である消費者物価の三%というものにすら、計量が初期の段階……。審議の過程を見ましても、だいぶ政策論争に十数回も論議の花を咲かせて、   〔委員長退席、理事木村睦男君着席〕 一つ基本的なあり方が出、その後やはりどうしても計量小委員会の設置の必要が出て、計量小委員会がまた総合政策部会に設置をされておる。私は学界のことはよくわかりませんけれども、計量経済の専門学者からいっても、必ずしも長官のそういう答弁には満足しない、抵抗を感じる点もあると思います。もとより、これを分析すれば、その中には大きな政策変数という係数がやはり問題もあることでありましょう。それも、内容的には総合的な関連をもってこれらの指数が出るわけでありますから、あまり良心的に控えめに考えられないで、やはりそこに至った年次別的な経過というものは、ひとつ、正式な堂々たる大きなバック・データということでなくてもけっこうでありますから、年次別的にはこういう経過を経て最終年度はこうなったという、その道筋がわかりませんと、   〔理事木村睦男君退席、委員長着席〕 なかなかこの四十六年の展望というものをわれわれはすなおに納得しかねる。ますます疑心暗鬼を抱くことに、むしろマイナス作用が出てくると思いますので、ひとつ検討を十分尽くされまして、次の委員会までには明快に今度は参考資料として提出できるように私は長官の良識に訴えておきます。  それから、どうもこういうことばかりお尋ねしていると本論に入りませんが、もう一つだけ伺いますと、サブタイトルが「四〇年代への挑戦」とある。きわめてこれは社会党的な、しかも文学的なサブタイトルでありますが、これは何に挑戦するんですか。
  57. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この計画全体が、過去のいわゆる最初の五カ年計画あるいは正式には採択いたしませんでしたが、中期計画等々に対するいろいろな意味での反省の上にでき上がっている、また、三十年代にわが国経済が歩みました歩みの反省の上にでき上がっておるわけでございまして、そうして計画立案者は、昭和四十年代という時代は三十年代とは異質な幾つかの問題にわが国経済が直面をすると、こういう認識で書かれておるわけであります。したがって、三十年代とは異なった心がまえで、そういう異質な要素にわれわれは直面をしなければならない。その異質な要素と申しますのは、御承知のように、経済は大きく国際化をするであろうということ、それから労働力不足という事態が初めて本格的にわが国に訪れるであろうというようなこと、第三に、都市化と申しますか、人口の都市への集中、あるいは国民生活のいわゆる都市化といったようなこと、これらの三つの要素は三十年代には全くなかったか、あるいはさほど顕著でなかったところのわが国として初めて直面する要素でありますから、そのようなチャレンジに対してわれわれはかような心がまえをしなければならぬといったようなことが、この「四〇年代への挑戦」という副題になってあらわれたものと考えます。
  58. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 資料としては、先ほどの消費者物価なり公共性料金の年次別の資料をほしいのでありますが、従来、中期経済計画なり、所得倍増計画、その他の場合でも、分科会報告というものが同時に提出されまして、この総体的な計画の内容を具体的にわれわれとしては知り得たわけであります。今回は出ないんですが、これは出していただきたい。この点どうですか。
  59. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 確かに過去においてそういうものがございまして、いま読みましても、最初の倍増計画なんかの報告でも相当興味がございますので、そのような御質問はごもっともだと思いますが、たまたま今回は、分科会を九つ設けて検討をいたしましたが、結局、分科会ごとの最終的な報告はいたさなかった。各分科会の間での意見のやりとり、それから総合調整ということはいたしたのでございますけれども、独立の報告は、おのおのの分科会が今回はつくらなかったということでございます。これは、文字どおりそういうものが存在していないという意味でございます。もちろん、この計画全体の中に総合的に入ってはおりますけれども、別々のものはつくっておりません。
  60. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 そう言われれば、どうもそういうものかと思うけれども、何となく、どうも大体論だけは聞かされても、まあ私も冒頭に申しましたように、これほど世論から無視されているものはないのに、なぜ執念深く、そういうこまかいことまで知りたがるかという疑念もあるかと思うんですが、私は、やはり国民を代表したものとして、この経済社会発展計画というものは、わが国の今後のあるべき姿を総合的にまとめたものとして、かなり重視をしておるわけです。ですから、その九つの分科会でいろいろ討議をされたまとまりがなければ、まとまらなくても、その討議の経過というものがどういうところに問題があったのか、そしてそれが全体としてかくのごとき計画書になったのか、そういうことまでやはり一々国会で聞かなければわからないというようなことではなくて、提出された資料によってそれが明らかになるということでなければ、その核心に触れた理解が十分いかないわけであります。それなしに、ただ、出たこういう美辞麗句を中心として連らねられたものだけを見ると、何となくもっともらしいような文章に酔わされるだけで、なかなかこの背後にあるところの問題意識というものの、より具体的、客観的な理解は困難なわけです。したがって、あるいは偏見を生むでありましょう。それを正しく国民に理解させるためにも、私は、権威ある分科会の諸君がやったその審議の内容というものは、少なくともこの付属添付書類として国会にお出しを願って、経過はこうなんだ、それを踏まえて、分科会ごとの総締めくくりはなかったが、全体としては発展計画にかくのごとき集約をしたというぐらいの親切さがなければ、これは国民不在の経済社会発展計画であるとも言いたくなる。そういう分科会ごとの締めくくりをしなかったことにも私は問題があると思う。締めくくりをしないということは、かなり問題が複雑であって、全体的にまとめかねたと、あるいは解釈しても自由でありましょう。だから、疑心暗鬼を生まないために、その審議の経過を、事こまかにとは言いませんが、この分科会はこの課題についてはかくのごとき意見があったということでもいいから、それを参考資料として出す親切心はあっていいと思うのです。どうなんです。
  61. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま疑心暗鬼と仰せられましたけれども、まさしく疑心暗鬼でなくて、やはりそういうことは間々あったように、むしろ私は見ておるわけでございます。つまり、渡辺委員はこの計画を三度ごらんいただいたそうでございますので、おそらくは、もうおのずからこの行間に、あるいはことばづかいの中に、ここは何か意見の相違があって、どうもこういう表現でしかまとめ得なかったんだろうという幾つかの個所にお気づきになっておられるに相違ないと思います。したがって、その基礎になったおのおのの分科会の意見はどうであったかということに関心を持たれるのは、私はむしろ当然であろう、私自身も、率直に申しましたら、やはりそういう意味での関心を持つであろうと思うのでございます。ただ、ほかにも事情はございましょうが、やはり各分科会の意見はこうであったということになりますと、政府といたしましては、一応それらと異なった意見を一つの方向に、ともかくこのようにまとめましたという立場でなければ、この完全に矛盾いたしましたような幾つかの報告を、そのまま生まのまま御提出するということは、どうもいいこともございましょうけれども、弊害も生むかと考えます。今回は分科会報告をつくりませんでしたので、お示しいたすことができませんけれども、おっしゃいますように、九つの分科会がございますと、いろいろな意見が出てくる。先ほど振りかえ所得のことについてちょっと申し上げましたが、最後までいろんな点で難航いたした。難航した、ばらばらの、矛盾したままで国民にそれを示すということもいかがなものだろうか、かように考えまして、今回は、ここにまとまりした従来に比べますとかなり広範なものでございます。それらにかえて、ともかくもここに一まとめにした、こういうのが、つつまずに申し上げた実情でございます。
  62. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 分科会報告はもうあきらめます。これ以上あなたと問答していても始まらぬから。ただ、資料の中で、私どうしても正式に確認してほしいと思うのは、総合政策部会の部会長報告というのがある。これをひとつ出していただきたいんですがね。
  63. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 実は、お手元にございますものが、総合部会長の報告として経済審議会に提出されまして、そして経済審議会は、たしか非公式の会合をいたしまして、二、三字句の修正をしたことがあったかと思いますが、事実上ほとんどそのまま審議会の決定として採択をいたしました。したがって、部会長報告というのは、お手元にございます計画に、部会としてこのような決定をいたしましたから報告をいたしますという上書きがついたものでございます。したがって、実体は、お手元にございますものがそれでございます。
  64. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 私の伺いたいのは、こういうことなんですよ。総合政策部会の部会長として報告した、その審議会に対することばですね。次のように言っている。——これらのうち、最重点政策として精力的に取り組まなければならない問題は何かというと、経済効率化、これが最重点ではないか。三十年代の日本経済というものは過当競争の面が多かった。そのため、経済成長を高めた過程において非常にむだな設備ができ、むだな労働力をそこに割りつけており、経済効率化をはばんだ。これが中小企業流通農業などの近代化をおくらせ、また行財政効率を妨げる。こういったものを全部含めても、構造政策というものがやはり政策の重点にならなければならぬのじゃないか。——その間を省略しまして、——経済効率化が高まれば物価問題も相当程度解消し、また社会開発も進められるというのが総合政策部会の全員の一致の見解であった。——こう述べている。あくまでも経済効率化が柱である。これさえ進めれば、物価の安定もその目的が達せられるし、社会開発も進められるというのが総合部会のこれは全員一致の見解であったと。私は、この部会長の発言こそが、経済社会発展計画の中にひそむ、明らかなこれは中核を表現して余りあるものであると思うから、この点を資料として要求したい。
  65. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまお読みになりましたのは、おそらくは、総合部会長が総合部会あるいは経済審議会で話をされましたものの速記録ではないかと思うのでございます。それがこの計画の初期の段階でなされたものか、あるいは終期の段階でなされたものか、ちょっと私にもはっきりいたしませんが、そういう趣旨のものであると思います。記録はとっておりますので、照合いたしますとわかることでございますが、そういう御意見を総合部会長は持っておられる。効率化ということについては、同様なことがこの計画の中にも盛られているわけでございますが、私自身もまた、ほぼそのとおりであろうと、そういう考え方で間違ってはいないというふうに思うわけでございます。
  66. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 これは、いずれ速記録を大臣も直接ごらんになって、ごらんにならぬでも、そういう点を確認されておられますから、私は、ここで午前中大臣が述べられ、また補足説明を総合計画局長説明した「経済社会発展計画、四〇年代への挑戦」というものは、実はこの中心は、経済効率化、それがねらいなんである、これさえ進めれば、物価の安定もおのずと解決するし、社会開発も進められる……。そこで、私は第一部の総説の中に、あまりひまでもないほうですが、字句を拾って見れば、「経済効率化」というのが五十四カ所にも出てくる。これが、経済審議会の会長がかわり、いわゆる木川田経済同友会の会長が審議会の委員長となり、いわゆる木川田審議会会長が中心となって、イニシアチブをとったこの経済審議会の性格をまざまざ見せつけられる思いがするわけであります。  そこで、どうも私には時間があまりないので、具体的にその点をさらに、計画の内容に触れて、私なりに解明したいと思うのであります。だいぶこれはボリュームのある計画でありますから、どこに焦点を合わせるかということでありますが、この「適正な経済成長率の維持」という中から、私は一、二の問題をお伺いをいたしたいのであります。  そこで言うておることは、三十年代の成長率一〇%を下回って八%台、八・二%という指標が出ておりますが、そういうものに押えなきゃならないということを言うておるところでありますが、「成長率があまり高い場合には、三〇年代にもみられたように生産・消費の水準と、社会資本ストックとの間の均衡が失われがちであることや、経済成長に伴う構造変化制度、慣行の適応が追いつけず種々のひずみが生ずるおそれがあることなどを考慮」して八%台に成長率を押えた。そのためには「つぎの三つ条件を勘案して判断した」として、第一にあげているのが、「労働力供給の質量両面にわたる変化を考慮すると、労働力の制約から経済にひずみが生ずるのを防ぐためには、経済成長率も三〇年代を若干下回る必要があると考えられる。」云々と触れておるわけであります。ところが私は、結論から申しますと、この発想は財閥のエゴイズムから出ている考え方だ。経済効率化、そういう角度から、産業体制の整備促進、そういう大きなゆるぎなき柱の上に立った労働問題を提起しておる。八・二%と低く押えた要因の第一の点を、これにあげていると思うんです。なるほど、計画の述べておるような、こういう労働力供給の側面からくるひずみ、こういうものは、雇い入れる側の企業側からしましたならば、明らかに労働力が不足であるという現実、賃金がアップするという現実、不利な変化でありましょう。しかしながら、これは、反面、労働者側からすれば、明らかに有利な条件であるということであります。したがって、この計画の中にもうたわれておりますが、中高年齢層への依存ということを強めていくことの困難性、これを取り上げておりますけれども、こういう計画のいうような姿勢ではなしに中高年齢層への依存という姿勢を強めていくとしたならば、これは決して経済成長制約条件にはならないということであります。むしろ、制約ではなくて、経済成長発展の大きな役割りに寄与することである。このことは、たとえば、この下から四行目ですか、「この期間においては経済成長率を平均よりやや高目に維持することが望ましい。」と、こううたっておる。こういうひとりよがりなせりふともこれは関連することだと思うのであります。もしも、わが国労働力がヨーロッパ並みの、特に西ドイツ並みのように高い賃金水準に到達した上で経済成長一つのマキシマムに到達しておる、そういう場合は、これは経済成長制約条件でありましょう。そういう場合と違って、日本の場合は、いままでどおりの低賃金で若年労働力をそこに集中しての労働市場に焦点をしぼっておるから、財閥はここに逼迫感を感ずるわけであります。したがって、経済成長に必要な労働力というものは、賃金を上げることによって吸引できるばかりではなくて、計画が述べている労働力の流動化なり、あるいは年功序列なり、あるいは終身雇用制度を改善していく、これに窓を明けて新風を注ぎ込む、従来のそういう賃金系列というものを打破していくということによって吸引できる余地が多分にあるわけであります。労働力が真に成長制約条件として指摘されるためには、計画のいうように一人当たりの所得がヨーロッパ並みの水準になった後の段階で起こる場合と予想してあやまちがないでありましょう。したがって、計画のこの経済成長率を八・二%に押える第一条件としての取り上げ方は、労働市場が逼迫しないように、低賃金が今後も維持されるように、という、まことにこれは虫のいい財界エゴイズムの発想に基づくものである。  そういうふうに、経済効率化産業体制の整備改善、資本の集中化、そういうことを、経済同友会の財閥の連中が筆にした計画の中で一つの大きな問題として提起している、というふうに理解せざるを得ないんですが、長官は、私の意見はそれははなはだしく違うとか、そのとおりだとか、所見を伺います。
  67. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点につきましては、私は渡辺委員と所見を異にいたします。確かに、現在、またこれから考え得る近い将来にわたって、国民経済のすべてが、労働力の逼迫から脅威を感ずるでありましょうけれども、最も脅威を感ずるのは、ただいま仰せられました大企業ではなくて、たとえば、それと競合して人を採用しなければならない中小企業であり、あるいはまた労働力の流出のはなはだしい農業であるはずであります。もし、仰せられるように、大企業がいわゆる財閥エゴチズムでものを考える限りならば、自分がとりたいだけのものをとってしまえばいい。一番高い賃金を出し得るのはそれらの大企業であります。むしろ、そういうふうに考えるべきであって、国民経済的視野を考えるからこそ、こういう提言をしておるのだと、私は、その点はちょうど逆にむしろ理解をいたしております。
  68. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 中小企業の点にあなた触れられましたから、私なりに取り上げますと、たとえば、事業転換の円滑化ということを言っておる。これは中小企業に対する一つの首切りを宣言しておるものです。これは企業エゴイズムじゃないですか。
  69. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはやはり、どうしても、午後の会議の冒頭に仰せられました、この効率という問題について考えませんと正確な答えができない段階になったかと思いますけれども、つまり、ここに申しておりますことは、中小企業においても、従来のような労働力の豊富であった時代の経営を考えておってはだめだ、そのためには、だから機械化をしろ、あるいは協業化をやれ、高度化をやれということは、これは何ぴとのエゴチズムでもないので、むしろ経済がそういうふうに動いてきておるということであろうと思う。また、中小企業の中には現実に業種転換をしなければ、もう従来つくっておったようなものが、あるいは従来しておったようなサービスが社会から求められなくなり、新しいものに取ってかわっていくんだというようなことは、こういう激変の時代にはあるわけでございます。そのための準備をしなければならないし、また政府もその誘導措置を考えなければならないと申しておるだけであって、そのことは、経済変化をする限りは、私はだれのエゴチズムでもない、むしろ経済の自然の論理だというふうに考えるわけでございます。
  70. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 しかし、計画を見ますと、たとえばこの「経済効率化」の中には、「産業体制の整備」というところに、私はそういう具体的な問題が出ているのを見のがすわけにはいかぬわけであります。あちらこちらに、どうも長官の考えとこの計画は、必ずしも私はそりが合っていないと思うのです。長官なりの考えと、この計画とは、必ずしも表裏一体をなしていない問題が、かなり随所にあると思うのです。  そこで、いよいよ本論に入って、この三大重点政策なるものを伺いたいわけであります。いかに、これが企業エゴイズムであるかということに、やはり落ち着かざるを得ない。  経済効率化というところに、この計画があくまでも重点が置かれておるというふうに考えざるを得ないのですが、たとえば、計画の中に出ておる総体的な物価政策のつかみ方、それを整理をしてみますと、物価問題は、高度成長部門に対する生産性の立ちおくれという点に問題が非常に集中してしぼられておる。そうして、この立ちおくれ部門に対する構造政策に問題を集中しておる。こういうふうに問題をそこに置いて、私はそれがやはり物価政策の大きな政策課題であることを、もとより否定するものじゃないわけです。そういうことに問題の重点をしぼって、たとえば、いずれこれは次の委員会で資料をいただいて、その資料によって若干お尋ねもしなければならぬわけでありますが、公共性料金というものをどう見ているか、消費者物価を年次別にどう見ておるのか、その場合において、政府の管理する公共性料金の価額をどうするのか。それを一体、消費者物価を算出する場合の政策変数にどう適用しているという、こういう点が明らかになりませんと、今後における年次別の消費者物価動向なり、四十六年度における消費者物価の落ちつきというものがわからないと思うのです。しかも、そういう政策変数の中に、公共性料金なりその他の消費者物価を三%に持っていくためのあるべき政策に対する方向というものがない、計画には。逃げておる、あるいは、あるが書かないのか、一体、政策変数をどういう程度にこの消費者物価に採用し、整理をされたのか。四十六年度に限って、その点をまず明らかにしてほしい。
  71. 鹿野義夫

    政府委員鹿野義夫君) いま、消費者物価公共性料金との関係についての御質問でございますが、消費者物価を年々少しずつ下げていって、四十六年度に三%にというふうに考えました際に、その中において、公共性料金の考え方といたしましては、大体平均的な消費者物価伸び率よりもやや低めに押えていくような形で——公共性料金を今後平均的に考えてみた場合には、そういうような基本的な考え方で扱っていこうということにいたしております。先ほど申し上げましたように、消費者物価経過期間中の平均値は大体ほぼ四%ぐらいになっておりますが、公共料金につきましても、この計画のフレームといたしましては、同じように大体五年間の平均で見れば、四%程度のものを考え、年々下げていくという考え方ですから、四十六年度のところでは、公共料金も約三%程度伸び率にしていくという考え方——もちろん、先ほどからいろいろお話がありますように、年々の動きには出入りがございますから、必ずしもスムーズに下がっていくということじゃなくて、かなりいろいろな形ででこぼこながらも、大体そういった傾向を持つものというふうに考えて、いわゆるモデルを動かし、シミュレーションをいたして結論を出していくということでございます。
  72. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 長官。これ、やはり私、先ほどお願いした資料がないと、どうも問題がはっきりわからぬのです。ぜひお示しを願いたいのです。  そこで、この公共性料金年平均四%とし、これが消費者物価に与える影響はどのくらいに見ているのですか。公共性料金消費者物価に与える影響というものを、ウエートを何%に見て算出しているのですか。
  73. 鹿野義夫

    政府委員鹿野義夫君) 大体寄与率といいますか、ウエートは、三〇%程度のものであるというふうに考えております。公共性料金というものは、ですから、いわゆる公共料金よりもかなり幅の広いものでございますので……。
  74. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 私が資料としてお願いしておりますのは、公共料金じゃなくて、公共性料金であります。政府では、公共性料金と称すれば、何々をその範疇に入れておられるのですか、参考までに。
  75. 鹿野義夫

    政府委員鹿野義夫君) ここで公共性料金というふうに申し上げておりますのは、大体穀類あるいはお酒の類、水道料、光熱、保健医療、交通通信、教育、たばこ、といったような関係のものを一応公共性料金としてとっております、保健医療費などが全部入っているということで、かなり違っているかと思います。
  76. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 いずれそれは資料によってさらに年次別の点を見せていただきますが、かりにそれを四%に見たというときに、四%に押えるという政策意図が計画にはないんです。これは、特に物価の安定を三大政策の柱にしていますから、それは一体どういう政策を踏まえてそういう指数になっているのか。それを品目別に明らかにしてほしい。
  77. 鹿野義夫

    政府委員鹿野義夫君) 公共性料金として全部一括まとめた形で、消費者物価を出す際の一つ政策変数として使っておりますので、個々の内訳を、どれとどれ、たとえばいま申し上げましたように、この中の酒類の価格はどういうふうにするんだというふうなことはいたしておりません。公共性料金一本として政策変数として使っております。ただ、公共性料金について今後どういうふうに考えていくかということにつきましては、計画の二八ページのところにも「政府関与価格安定化」というところで、全体の物価動きを見ながら慎重に決定をしていく、長期的な視点に立って全体として均衡のある価格体系を目指していくのだというようなことなどが、考え方としてうたわれておりますが、個々の品目についての問題まで立ち入っておりません。
  78. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 そうすると、全体として、たとえば農林省が消費者米価を上げる、あるいは電話料金を四十三年から上げる、そういう個々の現場の役所でやるものは、全体のこの計画にどういうふうにこれは反映するのですか。
  79. 鹿野義夫

    政府委員鹿野義夫君) 個々の料金の問題につきまして、たとえば電電の料金をどうするかという問題が取り上げられる場合につきましては、やはり政府関与価格といいますか、公共性料金全般の影響として、それがさらに消費者物価関係にどういうふうに響いていくか。つまり、ある公共性料金が上げられる場合に、ほかの公共性料金が比較的低位に安定しているのに、その際に並行して上げるようなことがないかどうかといったようなことを考えながら、全体として、何といいますか、物価上昇率をだんだん下げていく姿に応ずるような態勢を持ちながら、料金の引き上げを扱っていくということだと思います。ですから、個々の料金の引き上げの際に、それが全体としてどういうふうな影響を持つかということを考える目安として、この計画の全体の公共性料金のあり方あるいは消費者物価のあり方というものが扱われるというふうに見ていいのではないかと思います。
  80. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 そうしますと、この計画の中に、経済成長率を八%とすれば、モデル算出として四%ないし五%が上がらざるを得ないというフレーズがありますね。それに対しては、かなりこれは政策としても、もっと物価の安定のためにきめのこまかいとり方がなければいかぬじゃないですか。これは、閣議で決定し、全体を支配するものじゃないですか。単なる作文で、抽象的に、いつでも現場は逃げられるような、そんな網の張り方じゃ、これは私は心配されるのです。少なくとも、経済企画庁というのは、単に作文を書く役所じゃないはずです。総合的に物価の総元締めをする権威ある役所でしょう。そういうものが、政策までここにはっきりと歯どめをかける。そうして、少なくとも政府管理価格中心として公共性料金の大きなチェックをする、そのための個々具体的な政策というものをはっきり掲げるということが必要ではないかと思うのですが、その点はどうなんですか。そうでなく、だいじょうぶなんですか。
  81. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは仰せになるとおりだと思います。すなわち、政府がこの計画を閣議決定いたしておるわけでありますから、毎年のいわゆる公共性料金動き方について、この線に沿ったようなものであるべきだ。まあ、個々のたばこの料金、あるいは通信費といったようなもの個々でなく、少なくとも全体としてはその年の公共料金動き方はほぼこの線に沿ったものでなければならない、少なくとも五年間をとってみれば、そうなりませんと、この計画そのものは実行がむずかしいということになるわけでございますから、そうあるべきものだと思います。
  82. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 いずれ、私まだこの物価の安定についてはもう少しお尋ねをしたい問題がありますが、先ほど言うたように、年次別の試算というものをいただきませんと、政策変数の内容まで見せていただけませんと、具体的にこの問題が明らかになりませんので、その資料が出てから、さらに若干のお尋ねをすることにして、私の質問は、きょうはこれでとどめておきます。
  83. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 田代君。
  84. 田代富士男

    田代富士男君 ただいま渡辺先生からもお話がありましたが、今回の経済社会発展計画のことにつきまして、年次計画が具体的に示されていないという問題でございます。  実のところ、宮澤長官に対しては、前池田内閣の当時より私は尊敬していた一人であります。その宮澤さんが経企庁長官におなりになった以上は、この難関をみごとに乗り切られるだろう、そのような期待をし、また事実そうあってもらいたいと願ってきていたわけなんです。そうして今回の、いまもいろいろ問題点が出ております経済社会発展計画のことにつきまして、私も読ましていただきました。文章は非常にりゅうちょうで、うまくまとまっております。しかし、具体的な問題にいま一歩という問題が欠けているのじゃなかろうか。  そこで、いまも何回も押し問答をされたけれども、年次経過が出されないということは、何のためにこれが出たのであろうか。世間のことばで言うならば、論語の中にも、「故きを温ねて新しきを知る」ということばがあります。やはり、過去のいろいろなデータ、伸び率、指数、そういうものの積み合わせの上から、今後はこのような方向にいくであろうという方向がわからないわけはないじゃないかと思います。また、六年先はわかって、その五年間の中間のものはすべてわからないということは、船で言うならば、出港地点と目的地の港だけわかって、その中間の海図ともいうべきものがないというようなものではないかと思うわけなんです。私は思うのです。だから、ちょいちょい、ことしは公共料金を上げぬぞ上げぬぞと言いながら、国民生活は、家庭生活というのは暗礁に乗り上げているのです。上げないと言いながら上がった、私、そういうことから考えるならば、今回のこのような計画に対しても、いろいろな疑問点があると思います。  いまも話がございましたが、五カ年間の平均は大体四%の伸び率であるというお答えでございますが、それを四%の伸び率で、そうして四十六年に三%に抑えたいというならば、それを実現するための、いまいろいろお話がありました経済効率化と、社会開発の一そうの推進をはかるという、わざわざここに三大重点政策の中にもこれを掲げてあるわけです。だから、この重点政策を年次ごとに計画をされなかったならば、これは何ら意味がないと思うのです。私もいま聞いておりまして、じれったいなあという感じがしましたけれども、この問題は、この五年間の平均は四%の伸び率である、そこまで出ているわけです。それを実現するためにも、経済効率化と、社会開発の一そうの推進をはかっていくというならば、その範囲内においても、この年次計画の問題につきまして、少し具体的にお話ができないものだろうかと思うのですが、その点、いかがでございましょうか。
  85. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、渡辺委員も田代委員も仰せられることは、私はごもっともだと感じられる点がございますのですが、いろいろなことを率直に申し上げるわけでございますが、長期経済計画、そうしてそれをしかも数値の裏づけをもってしますということは、かなり、何と申しますか、不確定な要素が多いわけでございます。短期ですらそうでございまして、御承知のように、毎年政府が決定いたしますいわゆるその来たるべき年度の経済見通しというものは、しばしば結果としては不正確である、これはもう各委員とも御承知のとおりであります。これはわが国だけのことではございませんようでありまして、相当この方面の技術が進歩しており、また資料が整備されておると思われます先進国におきましても、何人かの代表的なエコノミストたちの経済見通しというものを過去十年近く実績についてあとから検討してみますと、的中率というのは大体六割程度しかないわけでございます。それから私どもが先行指標と申しまして、二、三カ月先を予測するために使います指標の信憑性というものも、アメリカあたりでは、二、三カ月たってみますと、やはり信憑性が六割程度しかないというふうに言われておるわけでございますから、その数値をもって五年先を占うということは、実はかなり冒険の要素を伴っておる。それは、理由はともあれ、現実的に私はそうであろうと思うのであります。  それならば、そういうものは何もないほうがいいかといえば、それは必ずしもそうではない。やはり大まかにわが国経済がどうなっていくのだろうということは、予測し得る範囲では予測をしたほうが国民にとって御便利であろう、こういうことから、こういったようなものができておると思います。したがっていろいろな不確定要素、あるいはこれが不正確でありはしないかということは、実はこういうことを企てる当初から私は前提されているものであろうと思うのでございます。  いま、田代委員の言われますように、二年先がわからないで、何で五年先がわかるのかと言われますことは、まさにそういう要素もございますけれども、他方で、まああさっての天気はわからないけれども、いまから半年もすれば、たいてい寒くなるであろうということはわかったりするようなことは、これは実際にあるわけでございまして、大まかにどっちを向いておるかということはわかっても、経過のところはなかなかわからない。いわんや数値でとらえるということは困難だということは、これは冗談ではなくて、この仕事をやっておりますと、痛切に感じる場合が多うございます。  それで、先ほどの消費者物価のことでございますが、けさほども政府委員から申し上げましたように、その四十六年の三%というものは、いろいろなシミュレーションをいたしまして、四%とか五%とかいう結果が出ましたシミュレーションを全部排除いたしまして、残ったシミュレーションの中で、成長なりその他の要因を満足するものを選んだということでございますから、ある意味で先験的に、つまりアプリオリーに三%台というものが出たわけであります。下から積み上がった数字ではないので、したがって、電子計算機自身は、この三%はどういう政策の結果出たのかということは知らない。ただ、全体の方程式を解いたときに、これならば三%という数値は可能である、満足できますと、こういう答えを出しておるわけでありますから、そのための政策手段はどうで、何をどう積み上げて、その前の年はどうであったかということは、それ自身にはお答えができないというような性格を持っておるのでございます。いかにも何か心もとないことを言うではないかという印象をお持ちかと思いますけれども、実際やはりそういったようないろいろな制約がある。まだまだ、とことんの論争には耐えないような要素がたくさんあるわけでございます。しかも、そういう危険を覚悟しつつ、何も目標を持たないよりは、やはり大まかな趨勢というものは国民に知っていただくほうがいいと、こういう意図から、こういう計画につくっておるわけであります。
  86. 田代富士男

    田代富士男君 いまの長官のお話で、天気予報の例をとられて、この二、三日はどうなるかわからないけれども、半年先には夏になるのでございます。一年先には冬になるであろうという、そういう見通しのもとに立てたようなことでございますけれども、そのたとえでいきますならば、冬になりますと冬に対する対策というものを夏の間から立てていかなくちゃならない。だから、冬を六年先としましょう。その冬にいく前には秋もある、夏もある、これはだれしも予期することなのです。そうすれば、いまの長官の例で、いまは、二、三日先は天気になるかどうかわからぬけれども、秋になり、冬になることはわかる。私は毎日の天気予報をお知らせしてくださいと言っているのではありません。いま長官のおっしゃるように、いま春の立場であるならば、夏にはどうする、秋にはどうするか、冬の六年先の、五カ年計画の最後の総仕上げの年には、要するに雪に対するそのような救助の対策も講じなくちゃならないでしょうし、それぞれ、秋なら秋に対するさまざまな、台風シーズンに備えるなり、そういう対策があるわけです。いまの長官の例で言いますと。だから私は、いまの渡辺先生の御質問にありますとおり、そのようなこまかい数字よりも、長官のおっしゃる、夏、秋、最後の総仕上げの冬、すなわち六年先、この段階においてどうあるのか、そういう点でございます。その点につきまして、冬の段階で、六年先は三%でいきたいと、その結論が出ているのです。電子計算機は知らない——それは知らないかわかりません。こういうやっかいな今日の経済状態にあるために、佐藤内閣のホープとも言うべき長官がおつきになったのではないかと思います。その長官がそのように言われたのならば、われわれ国民はだれをたよりにしていったらよいのかということになる。その点、どうですか。
  87. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) たとえば、先ほど申し上げました一つの例を申し上げますと、昭和四十六年ごろには労働力が非常に逼迫するであろうと、このくらいな需給になるのではないかということを申し上げることは、ある程度できる。それはなぜかと申しますと、片一方で出産統計のようなものがございますので可能なわけでございますけれども、それならば、その中途の時点で大体どうなっていくであろうかということになりますと、今度は進学率というようなものを入れてこないとならない。そうすると、進学率を予想しておきましても、これが狂いますと、つまり学校卒業者が労働市場に出る時期が狂ってくるわけでございます。これは一例ですが、そういったようなことがございまして、中間時点が必ずしも明確でなくて、ある程度の先ならば大まかな姿が描けるというようなことは、これは冗談で申し上げた意味でなくって、やはり社会現象にはあるように思うのでございます。  で、ただいまの物価のことでございますが、昭和四十一年度は四・七%程度消費者物価上昇が済んだ。今年度は四・五%を見当にしておるわけでございます。そういたしますと、この経過期間中における平均が、まず四%程度であろうということが想定されておりまして、そうして終期には三%台に落ちるであろうと、こう考えておるわけでありますから、ほぼ常識的に考えられますことは、その間をならしたようなものが経過時点であろうということぐらいは、これは申し上げても間違いではなかろう。ただ、どういう政策をとったがゆえにそうなるんだというようなことになりますと、それは積み上がっておりませんから、なかなか申し上げにくい。たとえば、昭和四十三年に消費者物価がかりに一〇%になってしまったといたしますと、それはもう、この計画そのものが、平均の数値としても実現が困難でありましょうが、むしろ、そういう経済現象が四十三年度に起これば、それが単年度で済むはずはないという理由からして、やはりこの計画そのものが考えておったことに、どこかに無理がある、こういうことになるのではなかろうか。したがって、ただいまの四・七なり、あるいは四・五から四十六年の三・〇まで、ほぼその間を平均して四・〇でとらえるというようなことは、常識的に申し上げていいんではないかと思うのでございます。
  88. 田代富士男

    田代富士男君 いまのたとえで、不完全でございますけれども、長官の腐心苦衷の胸のうちは察するに余りありますが、それは、この重点政策の中に書いてあります「消費者物価の年上昇率を次第に低め、」と、こう書いてあるわけなんですが、その「次第に低め」というたった五字でありますけれども、これに含まれていると解してよろしいでしょうか。
  89. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、この計画としては、要するにこう考えておるわけでございます。まず、計画の前半期に政府消費者物価対策に特に力を注ぐことによって、国民の間に消費者物価に対するある程度の、いわゆる先は安定するのではないかという期待を持たせる、そういう予期を持たせることが大切ではないか。そして、片一方でそういうことをやりながら、他方で、低生産性部門生産性向上であるとか、あるいは季節商品の供給増加であるとか、こういったようなものをやっていくならば、おそらくは数年のうちに消費者物価動向はずいぶん変わるであろう、それが、ただいま言われましたその五文字の具体的な内容であろうというふうに考えるわけであります。
  90. 田代富士男

    田代富士男君 この問題につきましては、もうこの程度でとどめたいと思いますが、そこで、けさの長官のあいさつの中にもありましたが、物価安定推進会議を今回は設けるというお話でございましたが、これは、たぶん三月に発足したのじゃないかと思うのですが、この物価安定推進会議を設けるにあたりましては、「内閣総理大臣中心関係大臣が一体となって、有効適切な物価安定対策推進することといたしました。」——だから政府は、産業関係労働関係消費者関係各界学識経験者をもってこれを構成しているわけなんですが、この予算がたぶん一千五百万ぐらいの予算を組まれていたと思うのですが、このような推進会議とか、この前は物価問題懇談会とか、そういういろいろな会議をつくっていらっしゃいます。その物価問題懇談会で提案されて実施された状況も、ここに資料をいただいております。しかし、この物価問題懇談会においていろいろ指示され、実施された状況は、いまどのように物価安定のために寄与しているか。これを読んでみますと、中には実施された部分もありますけれども、これは、「四二年度中に結論を得る予定である。」「検査指導の強化を図る。」とかいって出ているものもありますけれども、これといった答えが出ておりません。また、このような懇談会から、報告、答申がなされておりますけれども、これを政府がバックアップいたしましてこれを推進しようというものがなされてないんです。この懇談会に対しても予算が組まれております。また、今回のこの物価安定推進会議に対しましても、千四百数億円、約千五百万だったと思いますけれども、これだけの予算をもってやろうとしておりますけれども、過去の物懇の答申に対して何もやってないような、そのようなものにこの物価安定推進会議がなったならば、それだけの予算をつぎ込んでやっても何にもならないじゃないか。私はそのように思うわけなんですけれども、三月からまだ数カ月しかたっておりませんけれども、一体どのような物価安定対策が論じられてきたのか、その成果を聞きたいし、また、今後どのような態度で臨まれるか、そのことについてお聞きしたいと思うわけです。
  91. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨年の物価問題懇談会は十幾つの提言をされたわけでございます。その中で、私ども一番根本的で、かつむずかしいと思っておりますのは、土地価格の問題でございますが、これは、御承知のように、一部は土地収用法の改正案の形で、ただいま国会において御審議を願っております。前国会にも提案をいたしましたけれども、衆議院が解散になりましたために、ただいま提案をしておるわけでございます。それから、その関連で、土地利用計画樹立のための都市計画法の改正案、それから都市開発に必要な都市開発法案等につきましては、ただいま政府で準備中であるわけでございます。で、この問題は、従来の慣行なり、あるいはお互いの持っております既成概念を、いろいろな意味で破らなければならない問題を含んでおりますので、この程度準備がかかりましたことは御了承いただけるのではないかと考えております。  それから財政についても提案をしておりまして、これは国債の発行に関してでございますが、これにつきましては、提案どおり十分とは申し上げられませんでしたが、すでに昭和四十一年度の予算の執行並びに昭和四十二年度の予算の編成に際して国債の発行額を減額し、あるいは一度決定いたしましたものを若干削減いたしました等々、趣旨に沿った施策は、その方向での考え方は私ども現実に取り入れてまいっておるつもりであります。しかし、この物価問題懇談会並びに三月に設けられました物価安定推進会議——特に、物価問題懇談会はすでに解散をいたしましたが、一番大きな貢献は、消費者物価問題についての国民各位の関心を高めて、その問題の所在を明らかにいたしますとともに、むしろ、行政をいたします各省、あるいは生産者でありますところの各企業に対して、また流通機構に対してもそうでありますけれども、つまり、国民全体の関心としての消費者物価問題というのを提起したということにあるのではなかろうか。したがって、現在の物価安定推進会議は、総理大臣のもとに関係大臣が出席いたして、そして推進会議の委員の方々の御提言を伺う、こういうことになってまいりました。この問題についての国民全体の意識が高まって、そしてこれは他人の問題ではない、自分自身の問題であると、すべての部署にある人々が思うようになった、なりつつある、というところに一番の貢献があるのではないか。そういたしませんと、問題の解決のためには、従来の慣行でありますとか、あるいは法令でありますとか、従来当然と考えてきたところのいわゆるマンネリズムでありますとか、そういうものを打破しなければならない問題がたくさんございますために、他人の問題と考えておった限りでは、なかなかそれができない。やはり自分自身の問題と考えるところに、そういう道が開けてくる。そういう点での貢献が、私は一番大きかったし、またこれからもそうあるであろう、というふうに考えておるわけでございます。
  92. 田代富士男

    田代富士男君 いまのお話で、国民生活全体のことを大所高所から御検討していただくということでございますが、この物価安定の政策の中に「競争条件整備」ということがここに書いてあります。物価安定政策の中に「競争条件整備」ということが言われておりますけれども、一体どのようにしていくのか。それはいろいろあると思います。野菜の集団産地の育成であるとか、中央卸売り市場の問題であるとか、カルテルの問題であるとか、いろいろ問題があると思いますけれども、競争条件整備というのは、どのようにしていくのか、かいつまんでお話を願いたいと思います。
  93. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、やはり価格が自由で、公正にかつ能率的に構成されるようにする、そういう環境をつくり上げる。一言で申せば、そういうことに尽きるかと思います。
  94. 田代富士男

    田代富士男君 そうしますと、「カルテル、輸入制限等各種の施策により不当に保護されていた面を改善する」といいますが、たとえいろいろな業界から反対、圧力があったといたしましても、消費者の利益を守るというふうに確約はできるでしょうか。
  95. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私は、基本的な考え方としては、それでよろしいと思っておるのでございます。ただ、そこで一つだけ非常に問題があると思われますのは、わが国産業の中で生産性が非常に低い部門との競合の問題であるというふうに考えております。その一番端的な例は農業でございますが、従来自由化が進められ、そうして輸入が行なわれてきた中にあって、一番顕著な例は、ある種の農産物については、それが今日まで行なわれていない。それは気がつかずに行なわれなかったというのではありませんで、事実上行なうことが困難であるという見地からのものが幾つかございます。御承知のように、主食であります米はその一番いい例でございますが、その他でも、でん粉類にいたしましても、あるいは酪農製品にいたしましても、消費者の利益の点から申せば、これらはすべて自由化をいたすほうが利益であることば、ほぼ間違いないかと思いますけれども、これらの生産をになっておりますわが国の農家の現実の数、農業労働人口の数、生産性向上に非常に困難があるという現実等々から考えますと、これらの自由化というものは今日までしておりません。また私は、おそらく当分の間、自由化をすることが困難ではないかと思いますので、そういう問題が、ただいま言われましたことのただ一つの例外になっておると考えます。
  96. 田代富士男

    田代富士男君 じゃ次に、また、この中に書いてありますが、「公正取引委員会機構充実する」ということを言っておりますが、一体どのように充実されるのであるか。この点もお話し願いたいと思います。
  97. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点は、今年度の予算で、実は私ども自分の役所の所管ではございませんでしたけれども、私どもの責任で総理大臣にまでお願いを私自身がいたしまして、公正取引委員会の職員の数の強化、それから支所——支所と申しましたか、地方事務所でございますか、の増設を四十二年度の予算でかなり大幅にお願いをいたして、国会でただいま御審議をお願いしている次第でございます。
  98. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 公正取引委員会の定員、機構充実につきましては、この数年来政府も心がけていただいておるわけでございますが、特に昭和四十一年度におきましては、その前二、三年間ほとんど十数名程度の定員増しかございませんでしたが、昭和四十一年度において三十名の定員増がございまして、広島に地方事務所を設けたわけでございます。昭和四十二年度、ただいま御審議いただいておりますこの予算におきましても、高松に地方事務所を設けること、それに、中央地方の定員全体でもって二十九名の増員をすることが予算の中に含まれているわけでございます。私どもといたしましては、この定員増加は決して多いものではないと思っておりますが、他の官庁におきましては、定員の増加ということがほとんど認められなかった中におきまして、とにもかくにも、二年間引き続き約三十名の増員が認められ、地方事務所が一応全国的に網が張られたということは、政府がその方面においてやはり相当力を入れていただいたのではなかろうかと、私自身は感じております。  なお、乏しい人員ではございますが、これを活用いたしまして、今後十分私どもの職責を果たしてまいりたいと、こう考えております。
  99. 田代富士男

    田代富士男君 また、同じこの中に「中央・地方と通じての消費者保譲および消費者教育を一層充実したものにする」と、このように書いてありますが、一体、消費者教育というのは、いままでもやってきたのですが、今度はどのように消費者教育をやっていくのか。具体的にこれを示していただきたいと思います。
  100. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 最近の例で申しますと、御承知のように、牛乳の価格の問題が世の中の関心を引いたわけでございますが、各地で、これについて消費者と小売り業者等と直接に話をしたいという機運がございまして、私どもの役所から関係の者が参りまして、具体的なその土地の問題を話し合う機会をつくる、あるいはそういう機会にアドバイスをするというようなことを最近もいたしたわけでございますが、これなどは、きわめて現実的な消費者に対する、何と申しますか、実地の問題提供の場であると思っておるわけでございます。  それから今度、四十二年度から各都道府県ごとに消費者モニターというものをお願いいたしまして、これはきわめて薄謝ではありますけれども、問題を提起をしていただいて、そうして各市町村なり、あるいは問題によっては各都道府県なり、最後には私どものほうへ問題が、いわゆるフィードバックの形で流れてまいりますように、そういう措置につきましても、ただいま御審議を願っております本年度の施策の中にあるわけであります。
  101. 田代富士男

    田代富士男君 いま、いろいろ物価関係のある各部門からお尋ねいたしましたけれども、価格が自由で公正に取り引きされるような環境整備をしていく、すなわち物価安定のための環境整備することが急務である、そのような、いまの一貫したお話でありましたけれども、そういうことを口では唱えながら、政府自身の現在の態度というものは、物価問題の根本的な問題ともいうべき流通機構と、このような問題点に対する抜本的な対策が現在あまりなされていないと思うわけですが、この問題に対してはどうお考えでございますか。
  102. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一般的に申しまして、流通機構というものは、やはり、細く長く複雑であるよりは、太く短いほうがよいという考え方を持っております。ただ、現実には、それぞれの機構によって生活しておる人がたくさんついております。社会問題との関連で、刀で物を切るようなわけには当然まいりませんけれども、機構としては、私はそうあるべきものだと考えております。
  103. 田代富士男

    田代富士男君 そこで、いま口では、物価の安定、あるいは流通機構の合理化、近代化ということが言われておりますけれども、いまも数字の上で出てまいりましたけれども、生鮮食料品の値上がりの趨勢のやまない今日、これをどういうふうにしてやっていくか。いまのお答えはあまり簡単でありますから、もうちょっと具体的に言ってください。刀で物を切るようにいかないという、もののたとえですけれども、単にもののたとえに対する質問はしませんから御安心なさってやってください。
  104. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 生鮮食料品対策でございますが、やはり一つは、需給関係安定化するということであろうと思います。と申しますのは、御承知のように、需給関係価格関係が不安定でありますと、従来、凶作のあとには豊作貧乏というようなことが循環して起こっておりまして、やはり生産者から言うと、価格が上がることはもとより好ましいでございましょうが、価格が下がらないということがやはり一つ大切なことで、つまり、価格安定ということが大切なことのように思われますから、そういったような観点からは、指定産地でありますとかいうような生産を安定させるような施策が第一に必要であろう。もとより生産増加させることも必要であろうというふうに考えます。  次に、生鮮食料品一つの特色は、腐敗しやすい、そのために、生産者消費者長期に貯蔵することが困難であるし、長途を輸送することも困難であるということでございますから、それに対処するための加工なり、貯蔵なり、あるいは輸送なりの方法に改善を加えて、鮮度をそこなわずに時間と場所との移動をはかるということが必要であろうと思われます。これについては、産地冷蔵庫であるとか、あるいはボランタリー・コールド・チェーンであるとか、あるいは急速冷凍であるとか、いろいろな施策かなり最近整ってきたように思いますが、これはつまり、腐敗しやすい生鮮食料品の鮮度をそこなわずにいかにしてやっていくかということに対するくふうであろうというように考えます。  それから最後に、もちろん、それらの流通機構のあり方について、価格が合理的に、効率的に、かつ公正に形成されるように、しかもなるべく流通機構に割かれますところの経費を少なくするように、そういう施策を進めていく。概してそのようなことであろうかと思います。
  105. 田代富士男

    田代富士男君 いま、いろいろお話を聞かしていただきましたけれども、今年度の予算におきましてもいろいろ組まれておりますけれども、それぞれの、いま申されましたいろいろな事業に対しまして、予算額の補助率あるいは事業規模については、どのようになっているか、その内容あるいは施設等について、わかりましたらお答え願いたいと思います。
  106. 太田康二

    説明員(太田康二君) ただいまのお尋ねの流通対策関係の関連予算でございますが、企画庁長官がお述べになったことと、ぴったり一致しているかどうかについては若干疑義がないわけではございませんが、一応大きくくくって申し上げますと、野菜の流通対策が五億三千万でございます。それから畜産物の流通対策が二億一千五百万、水産物の流通対策が三億五千五百万、それから中央卸売市場整備が九億六百万、それから新しく公設小売市場の設置に関する助成を四十二年度から始めることにいたしておりますが、その関係が一億二千万。これもまた新しい実験事業として四十二年度から取り上げた集配センターの設置に関する助成が八千万でございます。それから流通情報の整備ということで、できる限り情報を的確に早く産地等に流すための経費四億四千八百万、それからそれ以外に、大型米穀搗精施設の設置、これも新規でございますが、これが一億五百万。それから牛乳小売改善モデル事業これも四十二年度の新規事業でございますが、これが五百万。その他こまごましたものを合わせますると約一千万でございまして、合計で、これらに見合う前年度が十四億二千百万、これに対しまして四十二年度の要求額が二十七億七千四百万、こういうことになっております。
  107. 田代富士男

    田代富士男君 いろいろな施設なり内容についてお聞きいたしましたが、その一つとして、政府は四月二十五日の閣議で、流通業務市街地整備都市を指定する政令を決定いたしました。それには、札幌、仙台、名古屋、広島、福岡の五市が指定されました。今年度から流通センターの整備を始めると言われておりますけれども、具体的にどのようにそれが現在進められているか。その点につきましてお答えを願いたいと思います。
  108. 太田康二

    説明員(太田康二君) ただいま先生のおっしゃいましたとおり、本年四月、政令で名古屋、仙台、札幌、広島、福岡というものを指定をいたしましたのでございますが、おっしゃるとおり、政令指定後まだ日が浅くございますし、地元市当局での流通業務市街地の整備についての基本的な構想というようなものもまだ十分固まっているという段階まではいっておらないようでございます。そこでわれわれといたしましては、今後地元の市の構想の進展に応じまして、関係各省とも協議の上、これら都市につきましての流通業務施設の整備に関する基本方針というものを策定いたしまして、漸次これらの都市における流通業務団地の整備につとめてまいりたい。現在の段階はかような段階でございます。
  109. 田代富士男

    田代富士男君 これは、農林省のいまのお話を聞きましたけれども、物懇におきましてもこの問題が取り上げられているわけです。しかし、実情は何ら手が打たれていないようでありますけれども、これは、今回の四月二十五日の閣議だけでなくて、物価問題懇談会におきましても、この問題は出ておるわけなんです。まあこの当時、いまの長官は御存じであったか、御存じでないかわかりませんけれども、その間の事情はどうでございますか。物懇で問題になっておるわけなんです。
  110. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 東京、大阪は昨年指定をされておるわけなんです。
  111. 田代富士男

    田代富士男君 大阪の場合はどうなっておりますか。大阪は指定されて、それに対してどのような経過が出ておりますか。
  112. 中西一郎

    政府委員(中西一郎君) 衣服あるいは材木その他雑貨、いろんな団地をつくっていとうという計画が大阪では進んでおるようであります。ただ、用地の確保あるいは設計その他について、そこへ入ってくる業者の方々の何といいますか、賛成を得るといいますか、そういった点で円滑に進んでいないところもあるというふうには聞いております。しかし、大勢としましては、都市の過密化による交通状態、さらに集まってきます荷物の大量化といったようなことを背景に、そういう団地を利用することが利便であるという認識はだんだん広まりつつある。場所によっては、ひまがかかるかもわかりませんが、計画自体は着実に進めていくべきものである。東京についても似たような問題が数カ所ありますけれども、大勢としてはそう考えていいのではないかと、かように思っております。
  113. 田代富士男

    田代富士男君 これは、四十二年度の予算の要求におきまして、経企庁におきましても、六十二万八千円の予算を組みまして、この企画立案の要求が出ているわけなんです。だから、経企庁としては、この問題に対してどういうお考えでいらっしゃるか、お答え願いたいと思います。
  114. 中西一郎

    政府委員(中西一郎君) 経済企画庁の調整局、国民生活局、いずれも関係いたしておりますが、先ほど私が申し上げたようなことで、前向きに、いまもって隘路があれば、それを各省共同して打開してもらう、特に業界の方の前向きの、何といいますか、姿勢を早くつくるということが大切である、かように思っております。
  115. 田代富士男

    田代富士男君 この状況は、私は福岡と仙台の実情を少しばかり調べてみました。仙台の実情では、一部用地の買収が始まった段階になっておりますけれども、福岡県におきましては、まだまだそういう段階までなっていないわけなんです。現在、福岡市におきましては、百八十万円の調査費を支出いたしまして、九州経済協会という団体にこの調査を依頼しておるというような状態でありますけれども、私は、いま申されました衣服あるいは雑貨、そのような市街地構成であるならばけっこうですけれども、これに変な倉庫団地であるとか、そういうものができてしまったならば、これはどういうことになるんであろうかと……。だから、どんな業者をそのところに入れるかということが問題になるのじゃないかと思いますけれども、この点については、どうお考えになっていらっしゃいますか。
  116. 中西一郎

    政府委員(中西一郎君) それぞれの指定地域によりまして、どういう業種をそこへ集結するかということは、お話のとおり、この仕事をやっていきます場合のポイントであろうかと思います。で、何といいますか、その辺の明確な流通改善についてのもくろみなしに、ただ、倉庫さえあればいいというふうに単純に考えるのはよくないと思います。それぞれの地域地域に即しての最も合理化をすべきものに着目をして、それの合理化のためにこの流通団地が寄与するというふうに運営されることを希望しております。
  117. 田代富士男

    田代富士男君 次に、いま長官も申されましたコールドチェーンのことについてお聞きしたいと思いますが、魚肉、野菜等を低温で一貫した輸送を行なうコールドチェーンの研究、実験が、現在各方面で進んでおりますけれども、これに対する企画庁の考え方はどうであるか、あるいは政府は真正面から消費者物価対策として取り上げて推進をしておるのでありますけれども、具体的にどのところまで実現できたか、そのコールドチェーンの問題について、全般的にお答え願いたいと思います。
  118. 中西一郎

    政府委員(中西一郎君) 昨年度、科学技術庁を中心にしまして、いろんなコールドチェーンについての試験を進めまして、特に野菜については、なお継続して試験を進めていきたいということのようであります。肉あるいは魚等については、すでに地域によりましていろんな形でコールドチェーンが育ちつつあると考えております。その場合に、今後特に注目していいと思いますのは、学校、工場、あるいは病院、あるいは中小企業についての給食センターといったような大口の需要者が幾つかございます。そういうところでの食料費の節約ということにも寄与する点がありますので、そういう大口需要者が率先していろんな施設をつくり、大量な注文をしまして、安く、新鮮度の高いものを食膳に出す、こういうようなことでありますが、そういう点に今後は重点を置いて開発していけば、相当近い将来にもコールドチェーンは寄与する面が大きいのではないか、かように考えております。  野菜につきましては、先ほど申し上げましたように、品種によりまして、取り扱いのしかたがいろいろ違うようでございます。また、末端までコールドチェーンの機能を発揮するというのには少し時間がかかるではないか、こういうふうに観察いたしております。
  119. 田代富士男

    田代富士男君 この問題については、いま申されたとおり、時間のかかる問題でありますけれども、外国におけるコールドチェーンのそもそもの出発というものは、鮮度を落とさない、そうして消費者のみなさんにおいしくいただいていただこう、というところに出発があったと思うのですけれども、いま、日本の国におきましては、もちろんそれも含まれておりますけれども、物価安定、物価値下げの一つの事業としてこの問題を大きく取り上げられたわけなんです。私は、こういう点にコールドチェーンの問題が日本でどのように生かされていくかという点につきましては、まだまだ研究不足の面が残っているのじゃないかと思うわけなんです。だから、これを随時推進していくならば、コールドチェーンの拡大、これは農業基本法がうたっている適地適産を可能にさせる下地になることは間違いないのじゃないかと思うわけなんであります。そういう意味におきまして、これは今後も進めていかなくちゃならないけれども、一部では、このコールドチェーンの問題に対しまして、物価の安定よりもむしろ引き上げの要因になるのじゃなかろうか、そういうような声も出ているわけなんです。まあ、そういうわけで、はたしてコールドチェーンは物価を引き上げるのか、引き下げるのか、そういう問題でございますが、これに対していかがでございましょうか。
  120. 中西一郎

    政府委員(中西一郎君) 総じて申しまして、いまの鮮魚あるいは肉あるいは野菜の小売り店の業態でございますが、一人当たりに処理し得る分量が非常に少のうございます。逆に言いますと、人手が非常に多くかかる業種になっています。といって、需要がそのほうに向く限りは、そういう業態も今後残ろうかと思います。しかし、たとえばマグロのさしみ、あるいはタイのさしみ、あるいは焼きもの、といったような形で、従来の魚屋さんの作業を買う、人手を多く費やしておるサービスを購入するということであれば、その価格相当上がっていってもやむを得ない点があろうかと思います。他方、コールドチェーンのほうですが、品物が規格化されまして、それが大量生産され、大量に流通するということになりますと、それにかかる人件費は少なくなります。ただ、設備についての金利あるいは償却がかさむ。しかし、たとえばロスが非常に少なくなるとかいったようなメリットもあります。したがって、いろんな品物それぞれについて考えませんと、一がいに安くなるとか、あるいは高くなるとかいうことは言いにくいと思います。ただ、規格化が進みまして、家庭の中での調理の手間がかからないといったような形で、主婦労働を軽減するということもあります。単なる安い高いのほかに、そういったメリットもあわせ考える必要があるんではないか、かように思います。
  121. 田代富士男

    田代富士男君 いま、コールドチェーンの問題を申し上げましたが、これの進展に伴いまして、流通機構をどう改革をすべきかということが現在問題になっておりますが、また、一方で進めている中央卸売り市場の改革と、どう結びつけていくかということが大きな問題点じゃないかと思いますが、これはどうでしょう。
  122. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私ども、現在、中央卸売り市場の施設の整備及び取引の合理化について種々検討、また実施をいたしておるわけでございます。それで、ただいまコールドチェーンとの関係について御質問がございましたが、野菜等につきましては、実はコールドチェーンが技術的に成り立つかどうかということを現在科学技術庁関係で試験実施をいたしております段階で、それが相当大量のものとして市場に出回ってくるということには、私はまだ相当時間がかかるであろうというふうに考えております。コールドチェーンがもし技術的にも成立し、また野菜等につきましては、とにかく単価が安いものでございますから、コールドチェーンということで、はたしてどの程度いくかということは、ただ技術的な問題ばかりではございませんで、むしろ経済的な問題でコストがどうなるかということが相当大きいわけでございますから、当面の問題としては、私は、野菜がゴールドチェーンに乗っかってくることが中央卸売り市場において相当大きな問題として考えられるようなことには、当分の間ならないというふうに考えている次第でございます。
  123. 田代富士男

    田代富士男君 次に、コールドチェーンと関係がありますけれども、集配センターの問題について、関連がありますから、お尋ねしたいと思いますが、きょういただきましたパンフレットの中に、「大消費地の周辺に生産者団体が運営する生鮮食料品集配センターを実験的に設置することとし、その設置に要する経費に対し助成を行なうため、新たに八千万円を計上している。」と、このように、四十二年度物価対策関連予算につきましての計上がされておるわけなんですが、集配センターは、当初、東京と大阪、二カ所となっていたと承知しておりますけれども、どうして一カ所になったのか。この点、ひとつお答えを願いたいと思います。
  124. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 集配センターは、いまお述べになりましたように、いわば生産と消費とをできるだけ短く直結するといいますか、生産地から物を持ってまいりまして、それをストップポイント的に使うことと、それから中央卸売り市場にも出荷いたしますけれども、大口の消費者に直接配給するということも考え、それを生産者団体が現在流通改善の一こまとして熱心に希望いたしておりますので、私ども四十二年度の予算として八千万円の補助金を出したわけでございます。しかし、これは、私どもあくまで実験的なものというふうに考えております。生鮮食料品流通改善のかなめは、何と申しましても中央卸売り市場でございますから、中央卸売り市場とどういうふうに調整できるか、あるいは大口の消費者等とどういうふうに結びつくか。これはあくまで一つの実験でございますから、そう一ぺんに二カ所というのは無理ではないかという判断で、一カ所八千万円の補助金を全販連につけた次第でございます。
  125. 田代富士男

    田代富士男君 いまお話のありましたとおりに、生産者団体によるところの集配センターというものは、流通経路の短縮化に役立つ目的で有意義であるということは考えられますし、この問題につきましては、前農林大臣でありました松野農林大臣も積極的であったと思います。私も聞いております。各委員会においても、この問題は大きく取り上げられておりました。しかし、これも同じく前国会で、既存の業界の反対の意向が非常に強かった一面もありまして、だから批判的な意見も出たことがあったけれども、そのような背景のもとに、たった一カ所八千万円程度の金しか計上されてない。これでは、前農林大臣は積極的にやっていこうと言ったのですけれども、政府が本気で考えておるのかどうか、疑わざるを得ないわけです。いまのお話では、これは試験的であるというようなお考えでありますけれども、やる気があるならば、これはできないわけはないと思うのです。だから、生産者の団体側の切なる要望にもかかわらず、一カ所になった。だから、大阪の場合を取り上げますと、どうであるか。中央卸売り市場関係の反対に屈したという一面もないわけじゃないのです。事実もう、御承知のごとく、全販連は大阪の場合も準備しております。東京も準備しておる。大阪も準備しておるなら、ともに、試験であるならば——東京、大阪といえば、経済の問題であろうと政治の問題であろうと二分する地点です。それをどうして東京だけ……。東京と大阪とやるべきじゃないかと思うのですが、これはそのような中央卸売り市場関係者の反対に屈したのじゃないか、そういう見方があります。その点はどうでしょう。また、大阪市当局者に対しても、そういう積極的な意見でこれは話されたのであるか。どの程度の話になっておるか。その点を聞かしていただきたいと思います。
  126. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私たちが最初四十二年度の予算を大蔵省と話ししますときに、集配センターを東京と大阪、二カ所という話で出発いたしましたことは御承知のとおりでございます。その後、大阪において食肉関係者を中心として相当な反対がありましたことも事実でございます。ただ私ども、反対があったから大阪をやめたということではございませんで、むしろ、集配センターというのは日本で初めてのことでございますし、中央卸売り市場あるいは大口消費者との結びつきということも実はなかなかむずかしいことでございまして、全販連がこれを始めまするにあたりましても、私は相当な覚悟と、あるいは経理的な負担も用意いたさなければなりませんから、いきなり東西二カ所というのは無理である、まず東京において始めて、その成果を待って、他に及ぼす必要があればまた別途考えるということが、私は行政庁の立場として正しいのではないかということで判断をいたしたわけでございます。
  127. 田代富士男

    田代富士男君 そうすると、積極的にこれは進めたいわけなんですか。
  128. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 集配センターはあくまで実験的でございますから、その実験の成果を待って、これが流通改善にどの程度役立つかということを見きわめてからの処置でございます。いきなりこれを、全国相当部分にわたって集配センターの網をすぐさまかぶせるというつもりではございません。
  129. 田代富士男

    田代富士男君 これは大阪の話ですけれども、大阪市におきましては、この集配センターに対しては全部反対なんです、経済局長はじめ。大阪市の経済局長が反対しているならば、こういうことが推進されるわけはないと私は思うのです。また、大臣が変わるたびにこういうことが変わってきたのでは……。実験的だとおっしゃればそれに全部含まれてしまいますけれども、実情はそういう実情です。大阪の経済局長自身が反対です。そういう実情であるということを一応知っておいていただきたいと思います。  それと同時に、農林省は、卸売り業者は一市場一業者という指導方針を、三十二年に和歌山、小倉、仙台、札幌の市長に対して通達で示されたわけなんです。その後、芝浦食肉市場あるいは神戸市場についても、その指導がなされて、現在も実行されておりますが、この行政指導は今後もそのとおりでいかれるのかどうか。この点、ひとつお願いしたいと思います。
  130. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 卸売り市場の単複論は、実は戦前からございまして、なかなか行政的にも、また実際問題としても、むずかしい問題でございます。私ども、三十二年に幾つかの市場を対象にして、単数であることが望ましいという指導をいたしたことは事実でございます。現在でも、私ども、とにかく卸売り会社の経営が健全であり、十分信用がございませんと、出荷者に迷惑がかかるばかりではなくて、荷物が十分集まらないという事情がございますから、卸売り人の経営の安定あるいは集荷力の確保をはかるということは、これは流通改善という問題にも直接つながることでございますから、中都市等においては単数であることが、できるならば望ましいという立場を依然として捨てておりません。ただ、市場の問題は、いわば具体的な商売の問題にもつながるわけでございますから、何でもかんでも農林省としては単数でなければ許可をしないというかたい態度ではございません。できるならば単数であることが望ましいけれども、しかし、その土地土地の事情がございますから、どうしても複数で、二つであることが地場としてはやりよい、それでまた経営が十分成り立つ、ということでございますれば、私ども一社にこだわってはおりません。これは、最近に開場いたしました高松等の実例をごらんいただければおわかりになるであろうと思います。
  131. 田代富士男

    田代富士男君 そこで、いま話が出ましたが、この一市場一業者という実態は、数社が話し合って新しい一つの会社をつくって、この市場というものが独占される、これによって市場の根本機能であるところの自由競争というものが停止するのではなかろうか、そのように心配されるわけなんですが、経企庁長官及び公取委員長は、これについてどのようなお考えであるか、お聞きしたいと思います。
  132. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、結局、一つ経済圏、地方都市なら都市といたしまして、そこに市場一つしがなくて、しかもその市場に卸売り荷受け業者が一軒であるといったような場合が考えられると思います。それからまた別のところでは、その経済圏に幾つか市場があって、そうしてその一つ一つ市場が一業者であるということも考えられるでありましょうし、また、その両方の場合にわたって、市場一つであり、あるいは市場が多数であって、しかも、そのおのおのの市場に荷受け業者がたくさんいる一いろいろな場合があるだろうと思うのでございます。要は、価格が自由に公正に、かつ能率的に形成されて、ただいま農林省の政府委員が言われましたように、荷物が信用を受けて十分に集まる、こういう条件が具備されることが必要なんでございましょうから、抽象的には、私はそういう尺度で判断をしていけばいいであろう、詳しいことは存じませんが、そういうふうに考えます。
  133. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 独占禁止法は、御案内のように、自由競争の維持を目的とするものでございますので、この中央卸売り市場においても、単数と複数とどちらが望ましいかといえば、原則としては複数のほうが望ましい、こういうふうに考えておるわけでございます。ただし、一中央卸売り市場において一つの卸売り業者となったからといって、直ちにそれが独占禁止法違反になるというものでもございません。その点は、経済企画庁長官がただいまお話しになったように、新しく中央卸売り市場をつくった場合に、既存の業者を統合して、たとえ一つにして入れましても、その同じ経済圏内に類似市場があり、そして有効な競争がなお行なわれるならば、これはあえて独占禁止法違反ということにはならないわけであります。ただし、もしそれが当該経済圏においてすべての卸売り業務を独占的に処理するということになりますれば、これは、独占禁止法に触れると言わざるを得ないわけでありまして、この点は、はなはだ残念ではございましたが、昨年金沢市における中央卸売り市場の設立の場合に、青果物についてたしか七社を統合して一社になさいました。それから水産物について十社を統合して一社にした。すべてそれに入ったわけでございますが、この営業譲り受けは、これは金沢市におけるところの青果物なり水産物の卸売り業務の競争実質的制限をすることになるというわけで、独占禁止法違反といたしまして審判手続に付したわけでございます。ただし、先ほど農林省の政府委員がおっしゃいましたように、その後農林省におかれましても、地方都市の中央卸売り市場の設立にあたりまして独占禁止法との関係も非常に慎重に御配慮になられているようでありまして、ただいま例にあげられました高松の中央卸売り市場におきましても、公正取引委員会の一たまたま一致したのでございましょうが、方針をテイクアップしていただきまして、複数の業者で入られたということになっているわけでございます。
  134. 田代富士男

    田代富士男君 いま経企庁長官も簡単にお答えはいただいたわけなんですが、長官は、衆議院選挙のときには、たぶん私新聞で見ましたのですが、生鮮食料品流通問題はまかしてくれ、こういうようなことを話していらっしゃるのをちょっと見たんですけれども、いま話が出ました、自由な集荷競争と自由な販売競争基本的な原則とすることが自由経済における物価問題の主眼点であるということは、長官も御異議はないと思うんですが、いま農林省の方がいろいろ申されましたけれども、一方の見方からするならば、農林省の方針が市場の独占化ないし寡占化を目ざす方向にいっている、そういう場合には、長官としてはどういうお考えか。独占化、寡占化を目ざしているという場合には、長官としてどうお考えか、伺いたい。
  135. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 数年前に、やはり生鮮食料品流通機構の問題、価格の問題がございまして、そのときに、東京でございますが、卸売り市場の荷受けの手数料を何とか下げてもらえないだろうか、そうすればそれだけ消費者が便益を受けるという問題がございました。当時私、いまと同じような仕事をしておりまして、閣僚の会議でそのことが問題になりました。そのときに、手数料引き下げの余地というものが経営の実態からいってあるのかないのかというようなことを、当然私どもの役所でも、農林省の御協力を得て調べたことがございます。そのときに知りましたことは、いかにもこの業界というものは近代以前でありまして、経営の内容もそうでございますが、せりの実態であるとか、価格の形成であるとか、はなはだ近代より前の状態であるということを、たまたま手数料引き下げの際に知ったわけでございます。私、そんたくをいたしますと、農林省が従来からそういう方針を掲げてこられましたのは、むろん独占価格を形成させようというお考えではありませんで、そういう前近代的な企業を、いかにして公共に奉仕する——これは特に免許事業でもございますので、新しい企業形態にするか、そういう御苦心が継続しておありなんであろうと思うのでございます。そういう意味で、私は、農林省が従来そういう方針をとってこられましたことについて、基本的には私にはわかるような気がいたしました。当時そういう経験がございましたので。ただ、それが公正取引委員長の言われますように、結果として独占価格を形成するようになるということであれば、これはまたその観点からお考えをいただかなければならないのだと思いますが、いかにも流通機構としては、まことに整備がおくれておる社会であるという感じは、今日はございませんが、当時持った記憶がございます。
  136. 田代富士男

    田代富士男君 いまと同じようなあれでございますが、もし集荷競争あるいは販売競争が独占化によって独占されるようなことがあったならば、公正取引委員会とすれば、これはどうされますか。
  137. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 新しい中央卸売り市場を設立するにあたりまして、既存の業者を統合して一緒になって入るということになりますと、合併なり営業の譲り受けということになりまして、事前に公正取引委員会に届け出を要することになっております。その場合におきまして、はたしてそれが「一定の取引分野における競争実質的に制限することとなる場合」という独禁法十五条の規定に当てはまるということになりますと、残念ながら独占禁止法違反ということで、これは排除しなければならぬということになる。ただ、この場合におきまして、中央卸売市場法には一つの特例がございまして、「第十五条ノ二」という規定でございますが、この中央卸売市場法を読みますと、これは元来複数の卸売り人があることを前提としておるもののごとくでありますが、たまたまその複数の卸売人の中に過度の競争が行なわれて、そしてそれがために卸売り業務の適正かつ健全な運営を阻害するという場合は、あらかじめ農林大臣の認可を得てするところの合併なり営業の譲り受けについては、これは独占禁止法の適用を除外するという規定がございます。したがいまして、もし中央卸売り市場内におきまして過度な競争が行なわれて、そのために、ただいま申し上げたような卸売り業務の適正な運営を阻害するということになりますと、農林大臣の認可によって、たとえば市場支配になるような合併でも認められるということがあるわけでございます。もちろん、この場合におきましては、厳重な法律の制限もございまして、なお公正取引委員会に御協議いただくことに相なっておるわけであります。
  138. 田代富士男

    田代富士男君 いまもいろいろお話が出ておりますが、数社が合併して一つの新しい会社をつくる、たとえば神戸、島原などでございますけれども、こういう場合、競争すべき業者が合併した。競争を避けようとする。これを考えていきますと、業者の利益代弁者のような感じがしてならないのですけれども、この考え方はどうでしょう。
  139. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) この中央卸売り市場に一業者が入るということは、決して業者の代弁として自治団体がやられておるわけじゃないと思います。農林省は、もちろんそういう趣旨で指導されているわけじゃございません。ただいま農林省のお話がありましたように、公共的性質にかんがみて、やはりこれは単数がいいという昔からの考え方がある。もちろん、単複論というのは非常にむずかしい問題で、独占禁止法のない昔から争われておった問題でありますが、たまたま三十二年、神田の青果市場におきまして、ある卸売り会社が倒産いたしました。それをきっかけといたしまして、やはり単数のほうがいいのだというお考えに農林省がなられたようであります。それで、単数で指導されておるわけであります。これはもちろん、外部から見ておりますが、決して業者のためになさっておるとは私は考えておらないわけであります。ただし、その結果、当該経済圏における卸売り業務を、実質的に競争を制限するようなことになる場合は、これは独占禁止法に違反するのではないか。ただし、一中央卸売り市場一卸売り人と申しましても、たとえば東京都内におけるがごとく、たくさんの市場がございます東京都の圏内において、たとえばある一市場において、かりに独占的なものができましても、その一つの中央卸売り市場内の独占状態を言うのではなくて、私ども、一経済圏におけるところの競争実質的制限ということを考えますので、少し見方が広くなる。その点は誤解のないように御了解願いたいと思います。
  140. 田代富士男

    田代富士男君 いまさっき委員長が、原則として複数が望ましい、そうして単数であった場合でも同じ類似市場があった場合には独禁法には触れないというような意味のお話をされたわけですけれども、もし、一市場単位で競争はストップしてもそのような姿勢でよろしい、卸売り業者はそのような性格のものであるというならば、これは市場法ではっきりと一市場一卸売り業者として、独禁法の適用除外を法定すべきである、指導でやれというのは違法ではなかろうか、このように思うのですが、この点はいかがですか。
  141. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) それは、行政指導はいろいろございまして、ただいままでの農林省の一卸売り市場一卸売り業者というようなのは、直ちに私は法律違反とは言えないのではないかと思います。独占禁止法的見地から言えば、先ほど申しましたように、ただ類似市場があるからということではなくて、類似市場との間に有効な競争が行なわれるということになれば、一市場において一卸売り業者となっても、これは独占禁止法違反でないということだけを申し上げたわけであります。ただし、独占禁止法は、先ほども申しましたように、自由競争のほうがいいということでございますから、卸売り業務ということの意味は私どももよくわかりますけれども、やはり、たとえばせりによって適正な価格が形成されるという前提をとりましても、それは私どもだいぶ疑問もあるわけでございます。といたしましても、単にそれは価格だけの競争の問題ではなくて、数量もあれば、品質の競争もあれば、サービスの競争もあるわけです。そういうもの全体についてやはり考えなければいかぬのじゃないか。  これは私個人の見解で恐縮ですが、まあ、見ておりますと、いままで健全に卸売り業を営んでおった方々が、たまたま中央卸売り市場ができたからといって、一国一城のあるじだった方々が全部やめてサラリーマンになるという政策がいいかどうかということは、私自身去年ずいぶん悩みましたし、そういう感を深くしたことがございます。これは私個人の見解でございます。
  142. 田代富士男

    田代富士男君 そこで、いまさっきもお話が出ておりましたが、金沢市場は一市場一業者にして、公正取引法によって現在審判されておるわけなんです。もしこれが結論が出た場合には、一市場一卸売り業者というこの指導方針は撤回されるでしょうか。この点はどうですか。
  143. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) いま金沢の問題が審判にかかって、私どもの関係者も証人等で審判に参加をいたしておるわけでございますが、先ほども申し上げましたように、私ども、何が何でも一社でなければいかぬ、そういう指導をいたしておるわけではございません。地方の実情に応じて、卸売り会社の経営を堅実にして、そうして荷物が多く集まるように、したがって、その卸売り会社の設立あるいは中央卸売り市場の開設が流通改善につながるように、という趣旨でございます。しかし、この金沢につきましては、実はこれは不幸にして、公正取引委員会相当長い間協議を申し上げたのでございますけれども、両者の意見が合いませんで、地元の空気といたしましては、すでに相当準備期間を置いての仕事でございますから、できるだけ早期に開設したいということでもありますし、また、地元の大勢が一本化でまとまっておりました経過がありましたので、私どもこれを認可いたしたわけでございます。まあ、審判でかりに一社が違法であるというふうに審決がおりましても、他に訴訟の道があるわけでございますから、私ども、金沢の具体的な問題について、一社制が悪かったというふうには、まだ考えないということになるかもわかりません。これは今後の審判の進みぐあい、あるいは私どもと公取との話の向きによって、だんだんと問題がほぐれてくるわけでございます。必ずしも、この審判の結果によって一社制が悪かったというふうに私ども考えるわけではございません。これは、現在でも、卸売り人の問題につきましては、公取と実はよく協議をいたしておるわけでございますし、私どもの申し上げていることも絶えず公取によく連絡いたしておることでございますので、この審判の結果によって直ちに私どもの態度を変えるというふうには考えておりません。
  144. 田代富士男

    田代富士男君 金沢の問題もそこまで審判の結論が出ていない状態なんです。じゃ、どちらがどうということは結論が出てなかったならば、こういう問題に対しては慎重を期していくという、そういう姿勢というものが必要じゃないかと思うわけなんです。ところが、東京の中心とも言うべき神田市場におきましては、御承知のとおり、東印と丸一との合併問題が出ておるわけなんです。こういう問題が金沢の場合もあります。金沢と東京というのは、消費量においても、あるいは集荷量においても、違うと思うわけなんですけれども、しかし、私は同じようなことじゃないかと思うわけなんです。こういうことが推進されていくということは、いろいろ問題点はあると思うんですけれども、これもあわして慎重にやっていくべきじゃないかと思うのです。このような二業者の合併につきましては、どのような見解を持っていらっしゃるか。あるいは農林省、あるいは公取、それぞれ御見解を聞きまして、私の最後の質問にしたいと思います。
  145. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 先ほど申し上げましたように、金沢の問題のあとで、実は高松の卸売り市場の開設がございましたが、金沢におきましては、先ほど公取の委員長からお話がありましたように、私どもも一社制に別にこだわらないで、青果、水産物ともども二社制として出発したわけでございます。したがいまして、何が何でもというとおかしい話でございますが、一社制に農林省としては絶対的にこだわっているわけではございません。この点ひとつ御了承いただきたいと思います。  それから、ただいま御指摘の、東京の神田卸売り市場におきます東印と丸一青果の合併の問題でございますが、これは別に行政庁が指導したり、あるいは慫慂したりして話が始まったものではございません。これは全く、東印あるいは丸一の関係者の自主的な話し合いでございます。神田の市場は、これは御承知のように、東京のどまん中でございまして、交通の便が非常に悪いために、伝統的な市場でございますけれども、取り扱い量その他は他の市場に比べますと、決して伸びておるわけではございませんで、神田市場自体として何とか打開をしたいという問題は、卸売り、仲買い、小売りを通じてあるようでございます。さらに、東京に七市場、十三分場ございますし、京葉地帯あるいは京浜地帯等におきまして激烈な競争を卸売り会社がやっておるので、東印あるいは丸一というのは全国でも一、二を争う大きな卸売り会社でございますけれども、その取り扱っておりますもののシェアは、現在の東京都で扱っておりますものの二割をわずかこえている程度でございます。したがいまして、神田は現在卸売り会社が四つございますけれども、そのうちの大手の二社が合併するという話になりましても、東京全体の問題、あるいはさらに拡大いたしまして、京葉地帯あるいは京浜地帯を含めますと、私は、この合併によって非常に独占が強化されるとか、あるいは独占の弊害が出るというふうには考えないわけでございます。  もとよりこの問題は、最初に申し上げましたように、別に農林省が指導したり、あるいは慫慂してどうこうという問題じゃございませんから、特別に私のほうから行政の問題としてお答えすることもないかと思いますけれども、私ども、この問題が起こりましたとき、関係生産者あるいは小売り、仲買い等々の見解を聞きましたけれども、先ほど申しましたように、神田市場自体が、全体の取り扱い数量の割合があまり伸びていないということもあって、伝統のある神田市場を守るという意欲が、卸し、仲買い、小売りを通じてあるということもございますし、また、生産者の団体としましても、だんだんに指定産地等が伸びるに従いまして、出荷が大口になって、生産者立場からいいましても、卸売り業者が強くなることは望ましいことで、もしそこでかりに横暴があったといたしますと、別の卸売り市場に出荷することができるわけでございますから、生産者のほうも特別に反対はないわけでございます。これは私どもの行政の問題ばかりでなしに、独占禁止の問題でございますので、公正取引委員会の御判断も待っているような次第でございます。
  146. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 東印と東京丸一青果の合併の問題につきましては、これはまだ公正取引委員会に事前の届け出が出ておりません。手続きといたしましては、合併する前に、事前に公正取引委員会に届け出るということになっておりますが、ただいまの段階では、事務的にアプローチがございまして、事務局で下調べをいたしております。正式に届け出がございますと、そこで本格的な調査をいたしまして委員会の合議にかける、こういうことでございますが、その場合の判断といたしましては、神田の青果市場におけるシェアだけを見るのではない。これはもちろんそう考えていただかなければならぬことは、先ほどからの私の説明でおわかりいただけると思いますが、この経済圏において、中央卸売り市場におけるところの二つの会社の合併が競争上どういう意味を持ってくるかということを考えるわけでございます。その上で判断がくだるということになるわけでございます。
  147. 田代富士男

    田代富士男君 最後に、これは関係はないと思いますけれども、今回の東印と丸一の合併の新会社に、宮澤長官の元秘書をやっていらした川田さんが専務で入っていらっしゃる。まだ正式に発足したわけじゃありませんし、長官とも関係がないと思うわけなんですけれども、やはり長官の、親の光七光りで、元秘書でありましても、そういうところへ、またお仕事がお仕事がであります。経企庁長官という立場でありますし、たいへんありがた迷惑であるかわかりませんけれども、さようなことの結果というものが出ているわけなんですけれども、この点長官——これはどうしようかと私恩っておりましたが、最後に一言聞いて終わりたいと思います。
  148. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この人はもともとそのほうの専門の人でございますが、十年ほど前に、二、三年正規の秘書として手伝ってもらいまして、今日も親しくおつき合いをいたしておりますけれども、もちろん、公私混同いたすようなことはいたしません。
  149. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) これは、公正取引委員会といたしましては、どういう方が入っておろうと、独占禁止法の規定に照らして、適正に、公平に判断するわけでございます。金沢の場合におきましても、時の農林大臣は金沢市から選出された方でございます。その方ではございましたが、まことにどうもはなはだ残念でございますが、独占禁止法違反ということで審判にかけたのでございますので、かりに、どなたのかかわりがございましても、独占禁止法違反であれば間違いはないわけでございます。人によって法の適用を異にするわけじゃございませんから、どうぞ御心配なく。
  150. 櫻井志郎

    委員長櫻井志郎君) 本日はこれをもって散会いたします。    午後五時十八分散会      —————・—————