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1967-07-13 第55回国会 参議院 農林水産委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十三日(木曜日)    午前十一時十一分開会     —————————————    委員の異動  七月十二日     辞任         補欠選任      中上川アキ君     高橋雄之助君      北條 雋八君     山田 徹一君  七月十三日     辞任         補欠選任      山田 徹一君     北条 雋八君     —————————————   出席者は左のとおり。   委員長           野知 浩之君   理 事                 任田 新治君                 川村 清一君                 中村 波男君   委 員                 青田源太郎君                 岡村文四郎君                 櫻井 志郎君                 田村 賢作君                 高橋雄之助君                 温水 三郎君                 堀本 宜実君                 森部 隆輔君                 八木 一郎君                 和田 鶴一君                 村田 秀三君                 矢山 有作君                 北條 雋八君    国務大臣        農 林 大 臣  倉石 忠雄君    政府委員        農林政務次官   久保 勘一君        農林省畜産局長  岡田 覚夫君        水産庁長官    久宗  高君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君     説明員        水産庁漁政部長  池田 俊也君        水産庁漁政部協        同組合課長    関根 秋男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○漁業協同組合合併助成法案内閣提出衆議院  送付) ○漁業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を  改正する法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 野知浩之

    委員長野知浩之君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  漁業協同組合合併助成法案及び漁業災害補償法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  両案について質疑のおありの方は、御発言願います。
  3. 川村清一

    川村清一君 質問の前に、資料提出方についてお願いをいたします。  漁業災害補償法の一部を改正する法律案審議資料として、「漁業災害補償制度農業災害補償制度との対比」に関する資料の御提出を願います。
  4. 久宗高

    政府委員久宗高君) 先般御要求がございまして調製いたしましたので、直ちに配付いたします。
  5. 野知浩之

    委員長野知浩之君) それでは、政府側から直ちに御配付願います。
  6. 川村清一

    川村清一君 漁業災害補償法改正案について御質問申し上げますが、まず、最初に、昭和三十九年本法が制定せられたときにあたりまして、本委員会附帯決議としてなされました国の保険事業をおそくも一両年中に実施すべきことの決議が今回実現されようとしていることにつきましては、今日までの農林当局の御努力に対し敬意を表するものであります。しかしながら、今回提案されました本法案をしさいに検討いたしますと、なおいまだ足らざるものが多くあります。必ずしも全国の漁民、特に中小漁民要望にこたえているものとは言い得ないと思うのであります。むしろ、幾多の不満をかかえていることを率直に申し上げなければなりません。そこで、私は、ようやく漁業災害補償法骨組みができまして、何とか整った態様のもとに新しく出発せんとする本法発足にあたりまして、漁民の総意、要望を代表して、今後さらによりよい法律として発展させたいという願望をもって、若干の質問をいたしたいと思います。  まず、最初にお尋ねいたしますことは、先日の委員会においても質問に立たれました三人の委員全部から質疑のありました、現在連合会がかかえている赤字の問題であります。この問題につきましては、御承知のように、本法制定の際の本院附帯決議の中にも、政府保険事業実施するまでの間において赤字が生じたときは、政府の財源でこれを処理することと明確に規定しているのであります。政府が、この決議実施について各項目にわたって実現に努力されましたことは、結果的に認めることにやぶさかではございません。しかし、この項目についてだけは至って冷淡な態度であります。国会決議を軽視しているものと言われてもしかたがないのではないかと、かようにさえ私は考えるものであります。  先日の委員会における質問に対しまして、いろいろ御答弁がありましたが、その御答弁をお聞きしても、私は納得がいかないのであります。がいろいろ御答弁されましたことを要約いたしますと、この赤字処理の問題につきましては、第一には、現段階処理することは理論的にも問題がある、こう言われておるのであります。第二番目には、本制度運営推移の中で問題を検討したい、かように言われているのでありますが、私にはその点が理解ができないのであります。的に問題のあるということは、一体どのような問題があるのか。本制度運営推移の中で検討するということは、具体的にいえばどういうことなのか。長期的な運営の中で自力赤字処理できるような保険設計になっているのかどうか、こういう点をもっと具体的にわかりやすく御説明を願いたいと思うわけであります。
  7. 久宗高

    政府委員久宗高君) この赤字問題につきましては、いろいろな角度から御説明をしたわけでございますが、ただいま御指摘のございましたように、私が理論的にも現段階で決定的なことは申し上げかねるということで、御審議の中で申し上げております基本的な考え方を申し上げますと、御承知のとおり、共済保険事業は、一般に過去の損害発生実績等に基づきまして、それぞれの時点で、ただいま申し上げましたこの時点におきまして長期的に均衡するたてまえに立って一応設計されておるわけでございます。したがいまして、現在までのところ、制度発足いたしまして当初の時期に相当の赤字が出ているわけでございますけれども、ごく形式的に理論的に申し上げれば、それは見通される長期展望の中で赤の部分が先に出たということでもあろうかと思います。したがいまして、一応この段階で考えますれば、かりに政府保険事業をそれに加えない場合におきましても、やかましく言えば、長期展望最終期まで行ってみなければ、現在持っています赤字が最終的に赤字で残るのかどうかということには疑問がある、こういうたてまえになると思うのでございます。  しかし、実際問題といたしましては、御承知のとおり、本制度発足いたしますについては相当の試験実施期間がございまして、それによりまして一応実施に踏み切りましたけれども、何と申しましても、最初に本制度実施したわけでございますので、当初の料率考え方ほんとうに正しいかどうか、これはやはり実際やってみました試行錯誤の中で直していかざるを得ないことで、かような意味におきまして、私どもも当初の料率が完ぺきであったかどうかという当然な反省が必要と考えますし、また、御承知のとおり、現在かかえております赤字につきましては、四十年度のノリの超異常的な災害がございましたので、さようなものまで含めて、はたして過去の実績の中でそのような非常な大災害ほんとうに組み入れられるような設計になっておったかどうか、この点も吟味を要する問題であろうと思うわけでございます。  さような覧点から申し上げますと、理論的にと申し上げましたのは、少なくともこの三年の実績が出てきておりますけれども、これが将来この制度の中で最終的に現在のような責任区分なり負担の区分によりまして処理できるのかどうかということを、要因分析する必要があると思うのでございます。つまり、この赤字がどういう制度のもとで、どういう段階で、なぜ出たか、これを計数的に処理をいたしまして、今度は保険制度も加えていただこうとしているわけでございますが、これもやはり試行錯誤一つ過程でございまして、料率改定と同時に保険制度まで加えましてこの制度運用していくにあたって、今後の保険制度も含めました制度の中でこの赤字がどのように解消されるか、これはやはり長期的に見ざるを得ない、こう思うのでございます。したがいまして、この段階で直ちに現在まで出ました赤字処理してしまうということはやはりおかしいように思われるわけでございまして、やはり長期的な展望を実際実施いたしまして、その中で現在かかえておりました制度のもとに生じました赤字が今後の制度の中でも解消できる部分とできない部分があるいは出てくると思います。その仕分けをいたしますのにもう少し吟味が要るのではないかということを申し上げたわけでございます。  それから運営推移の中でと申し上げましたのは、御質問の中にも御指摘がございましたように、新しい制度においてやっと保険制度が加わった、その前には政府保険がなかったではないか、こういったような問願もあるわけでございますので、今後運営をいたしました場合に、連合会段階赤字につきまして、ある組合では黒が出てくる、ある組合ではさらに赤が出てくるといったような問題が生じてくると思います。また、同時に、御承知のように、金額につきましても、この制度は、御要望によりまして価格の変化に伴いましてウェートを置きまして、価格が逐次変わっていくわけでございますので、かりに前に出ました赤字と今度出ます赤字ないしは黒字というものには若干性質上の違いがあるわけでございます。つまり共済金額ウェートが違っておりますので、過去にたとえば赤字が出ました場合におきましても、あるいは過去に黒字がございましても、今後の年度におきまして赤字が出ました場合には、保険設計上は前の黒字でそれがつぶせるはずのものが、金額的にはもっと被害は少ないにかかわらず、金額で大きな赤字が出るといったような問額もございますので、さような問題も含めまして、全体としての共済保険運営ができるかどうか、こういうことが最終的に問題になる、こういう意味でございます。  したがいまして、私どもが申し上げておりますのは、要約いたしますと、現在出ております赤字は、まだ制度発足長期展望のうちの前段階で出たものでございますので、それをこの段階で全部解消してしまうということは理論的におかしかろう。そこで、新しい制度にお港まして保険制度も加えて料率も改定いたしまして、試行錯誤過程を経て新しい制度を生み出すにつきまして、新制度の中で連合会が当然負ってしかるべきものをその赤字の中から分析してみる必要がある。それにはいろいろな要因がございますので、これを実施しながらその要因分析いたしまして、最終的にこれが新制度のもとにおきます連合会経理の中でまかなえればけっこうでございますけれども、まかなえない場合におきまして、保険運営上それが非常に支障になるということもございますので、その段階におきましては、過去の赤字のうちのこの部分は新制度のもとにおきます保険設計の中で共済団体が負えるはずのものと負えないものが出てまいりますれば、それを仕分けるという作業が必要でございます。その作業をいたしますのは、現段階ではできないわけでございます。もう少し先に参りませんとその分析ができませんので、その時期までお待ちいただかざるを得ない、こういうことでございます。  しかし、その間におきましての共済金支払いにこと欠いてはいけませんので、その間は基金でその支払い支障のないような運営をいたすわけでございますが、これはあくまでも基金共済金支払いの便のためでございまして、保険設計上、赤がどうなる、黒がどうなるという問題ではございません。その間におきまして、金利問題も含めまして、もう少し先まで行きました段階で過去の赤字要因分析できて、しかも、新しい制度の中からそのどの部分を新しい制度の中に組み入れたらいいかどうかという判断ができるまで時期を見ていかざるを得ない、こういうことでございます。したがいまして、何らかの措置政府がしないと申し上げているわけではないのでございます。いまどういうふうに具体的にするということは申し上げかねますので、さような御答弁をいたしているわけでございます。
  8. 川村清一

    川村清一君 どうも十分理解できないのでありますが、私の意見から申し上げますと、過去の実績を十分に分析検討してみますと、現在、五億一千万ですか、これだけの赤字がある。この赤字が何でできたものかということを十分検討してみるということは、これはもちろん大事なことだろうと思うわけです。これに反対する理由は何もございません。しかし、現在五億一千万の赤字があるということは、これは事実の問題でございます。そうして、この赤字を背負ったまま新しい制度発足しようとしていることも現実の問題であります。そこで、過去三カ年やってまいりましたと同じ形のまま移っていくのであれば、なぜ赤字が出たかということを検討し、さらにこの赤字をどうして埋めることができるか、こういう試行錯誤経過を経ていろいろ改正していくということ、これはわかるのであります。ところが、いま全く新しい制度になりまして、文字どおり漁業災害補償法という法律にふさわしい態様がいまできたわけです。骨組みができたわけです。そうして、新しい第一歩を踏み出そうとしているときなんです。したがって、中身も相当変わってきているわけですね。たとえば、保険限度額につきましても、あるいは掛け金料率にいたしましても、変わったわけでありますね。そういうものが新しい料率制度ができるという。何を根拠にして限度額なり料率を新しいものにしたか、これはあとから聞いてまいりますけれども、それはやはり過去の実績から出てきたものではないかと思うのであります。そうすると、新しい制度を組み立てるときに、過去の七カ年の試験委託時代、さらに共済制度として発足した三年の経過期間、この期間のいわゆる実績を検討されてこういうものが組み立てられているというのが理論的に正しいのじゃないか、当然そうなされているものではないかと思うわけであります。  そこで、これから赤字が出ていった場合においては、いま長官の言われたそういうことは正しいと思う。しかし、現在ある五億一千万の赤字というものは、過去のそういう仕組みの中でできたものなんです。そうして、いま新しい制度発足するわけです。そのときには、いままでの赤字というものを整理して、負っておる傷というものを取って、無傷の形において出発させるのが当然の処置でなければならない、私はかように考えるんです。なぜこういう赤字が出たのか、これを検討し、そうしてさらに長期運営推移の中で是正していく、試行錯誤経過を経ていろいろと改めていく、その段階を受けて、自力で解消できないものについては何らかの処置をしたいと、結論的にそうお考えですが、私はそうではなくして、現在新しく出発するこの段階において過去のものを一切整理して、無傷の姿において発足させるべきではないか、これが理論的にも正しいんではないか、こう思うわけであります。  それから、長官は、五億一千万円の赤字があるけれども、これは連合会運営には支障がないと、こういうことを言われておるわけです。もし支払いなどに差しつかえがあれば、もちろん基本からは借り入れ金もできますから、そういう点においてはないかもしれません。しかしながら、五億に及ぶ借金をしょって、そうして支障がないとは、これは常識的に考えられないことであります。それは、金回りやなんかは運転できるでしょう。資料を検討してみますというと、これだけの赤字をかかえておる連合会が、基金からの借り入れ金予想外に少ないのであります。基金からの借り入れ金が少ないということは、要すれば、掛け金を運転している、回しているんです。自転車操業をやっているわけです。ですから、何とかこれを運営してきているわけです。しかしながら、膨大な掛け金の中から赤字の分の金利を払っているということは、これは間違いないことでしょう。これが連合会経営支障がないなんということは、どうして言えますか。借金をかかえていて、支障がない、そんな会社なんかないでしょう。常識的に考えてみたって、多くの借金をかかえて、運営支障がないということは、私はどうも理解ができない。この点をもう一度御答弁願いたい。
  9. 久宗高

    政府委員久宗高君) 御指摘の二点は、私どもおっしゃっている意味内容もよくわかるつもりでございます。また、私どもといたしましても、その点をこの切りかえにあたりまして一番吟味いたしたわけでございますが、御承知と思いますが、同様の問題が農業災害補償制度についてもございまして、この場合におきましては、私のほうの制度と違いますのは、末端が当然加入という形になっておりますので、制度を改正いたしまして、政府なり連合会なり単位組合責任分担関係を変えました場合におきましても、ある意味では、理論的には、制度を変えました場合にどうであるのかということは、いわば若干計算はできるわけでございます。その場合におきましても、なおかつ、実際問題としていたしましたのが、制度を改正いたしまして、その際に持っておりました赤字内容をその後の運営と関連いたしまして分析いたしまして、たしかあの当時は二十億程度赤字であったと思うのでございますが、同時に、一部の組合には黒字がございましたけれども赤字の分だけをとりますと二十億程度でございまして、この処理に非常に時間がかかりましたので、ただいま御指摘のございましたような基金から借りました金利部分がやはり相当大きな金額になっておったわけでございます。そこで、切りかえをいたしまして若干の期間を経ましてからこの赤字処理をいたしませんと、基金運営そのものにも問題がございますし、先ほど御指摘のございましたような金は借りて支払いにこと欠かぬといたしましても、やはり赤字組合黒字組合運営の間に非常なへんぱが出るといったようなことから、保険制度全体の運営の上に支障があるということで何らかの措置が必要になるということでございまして、そこで、ネットの赤字部分につきまして、新制度になりました状況と見合いまして、どのぐらいの期間がかかれば、連合会自身努力によって、つまり新制度保険設計の中で解消し得るものはどのぐらいの金額であるというものを経験的に割り出しまして、その部分だけを新しい制度赤字に残しまして、つまり経営の中に残しまして、あと部分はたな上げにする。たしか金利部分も含めましてそれをたな上げにするという措置をとったわけでございます。  そこで、私どもはさような経験がございますので、今回の場合におきましても御指摘のように制度といたしましては保険制度が新たに加わったわけでございますし、その前の段階におきましては保険制度がございませんので、さような計算ができないものかどうかということもずいぶん吟味したのでございますが、何ぶんにも私ども制度といたしましては当然加入という形をとっておりませんので、現在までのところでそれが非常に支障となっておりますと同時に、今後の制度におきまして加入を促進してまいりますにつきましても、全体の設計がどういう形になるのかということをあらかじめ数年度にわたって吟味いたすということが、実はテクニカルにできないわけでございます。さような意味におきまして、考え方といたしましては、衆議院附帯決議に対してお答えをいたしましたように、この段階では切り離した処置ができないけどれも、今後の運営を見まして、このような赤字が今後の赤、黒の出方によって保険全体の運営支障があるというようなことにならぬように、何らかの措置をするのだということにつきまして、政府としてもそういう考え方を持っておりますということを申し上げたわけであります。  そこで、御理解いただきたいと思いますのは、何と申しましても、赤字要因分析いたしまして、それを計数的に今後の新しい設計の中で新しい意味連合会つまり新しい責任分野を持ちました連合会経理の中でどれだけが持てるものか、どれだけが持てないものかということを分析する必要があるわけでございます。それの仕分けができますと同時に、それについての処置を、たとえばたな上げにするとか、いろいろこれは方法があると思のでありますが、そういう措置をその内容に従って考えたい。その考え方といたしましては、過去の制度と異なるものによって、持ちました赤字のうちでどの部分を持てば新しい保険設計制度の中で処理できるかどうかという、計数的な割り出しを実は計数的にする必要がある。その場合に、御承知のとおり、年々共済金額も変わってまいりますし、また、制度改正によりまして限度率も変わってまいっておりますので、実は異質なものをつなぐことになるわけでございますが、保険といたしましては、大きな目で見ますれば、今度の保険を加えたということ、料率改定をいたしましたのも、あるいは保険限度額を変えましたのも、やはりこれは試行錯誤一つ過程でございますので、純粋にこの段階でこれまでまいりました赤の内容をどの部分を切り離すかという計算ができないという一点に尽きるわけでございます。  同時に、これは、逆に申しますと、黒字が出た場合にも同様でございまして、黒字があるからそのままするっと打ち切っていいかどうかという問題は別問題でございまして、たまたま四十年度が大量作であって非常な黒が出た、これなら安心だというかっこうでは実は進めないわけでございます。むしろ、前期に黒が出たということは、国の長期の見通しの後半においては赤が予想されるということでもあろうかと思うわけでございます。  さような意味におきまして、私どもの方策としましては、テクニカルにもしこれができれば、おっしゃるようにこの段階制度の質もちょっと変わったわけでございますので、その部分を切り離した何らかの措置ができれば一番すっきりするわけでございますけれども、これは保険経理のたてまえと運用から見まして、実はテクニカルにできませんので、非常に煮え切らない御返事になるわけでございます。  ただ、私どもが申し上げたいと思いますのは、この赤字をそのまま新制度に持ち込んでまいりますについて、これによって連合会経理も含めまして保険全体が支障のあるようなことにはしない。また、政府といたしましても、今度この事業に直接当事者といたしまして参加いたしますので、政府のほうの経理がよくても、連合会赤字が大きくて、全体としての保険運用支障があるというようなことは、これは当事者としても許せないわけでございますので、当事者の一人としても重大な関心がございますし、また、この制度を打ち出します政府責任といたしましても、決してほうっておけるものではないわけでございまして、もしテクニカルにできる方法があれば、一番この段階ですっきりさしたいわけでございますが、さようなことでテクニカルにできませんので、もう少し長期運用の中でその問題を見さしていただきまして、かつ、要因分析をして、計数的にも、これは政府で何らかの措置で見るべきだ、これは連合会経理の中にそのまま残していこう、あるいは料率その他もけっこうまかなえる性質のものだ、こういう仕分けのできる適当な時期まで検討を続けさしていただきたいと思うわけでございます。  過去におきます農災の例、あるいは木船保険の場合もそういうような例がございましたので、大体政府としてもこの種の問題のやり方はきまっております。ただ、私どもといたしましては、農災経験から見ましても、あまりこれを長引かせました場合には、事実上いろいろな支障ができますので、なるべく早い機会に計数的なはじき出しによって仕分けができるような努力をぜひいたしたいと考えておるわけでございます。
  10. 川村清一

    川村清一君 長官答弁は非常に懇切丁寧過ぎまして、かえって、頭があまりよくないものですから、初めのうちはわかったのですが、長い間聞いているうちにこんがらかってしまってわからなくなってしまいますので、ひとつ簡明に直載に御答弁願いたいと思うのです。  何とかしなければならない、将来はするんだと、そのお気持ちは私も理解できました。しかし、理解できない点は、新しい保険設計をするにあたって、何だか自信がない、どうなるのだかわからない。確かにこれは試行錯誤過程を通っていくものですから、そのままずばりと一定不変の形でいくとは思いませんけれども、しかし、どうなるかわからないというようなそういう保険というものも私はないと思う。でありますから、七年間の試験委託の期間を経て、三年間のいわゆる組合連合会の共済の期間を経て、十年の経過を経て今日新しい制度発足しようとしているのですから、したがって、相当実績があるわけですから、その実績を検討されまして、分析されまして、そしてまた、この制度をつくるにつきましては、それぞれ専門家、学者の方々のいろいろ貴重な経験、いわゆる科学を取り入れまして、そして科学的に合理的に組み立てられたものと私は思うのであります。したがって、ある程度そういう問題は解決されるというめどを持った設計でなければ保険と言えない。私は、民間の生命保険のようなそういう保険会社の保険設計ならば、これは現在五億の借金があっても、五億の借金というものは将来においては、将来といっても遠い将来までかからなくても、それは補てんできると思うのであります。しかし、漁民組合連合会、さらに政府保険でございますから、利潤を追求する、そういう保険ではございませんので、したがって、現在あるところの五億の赤字というものをこの保険そのものの中から補てんするということは容易なことではないと私は常識的にまず考えるわけであります。  そこで、いろいろ長官が言われましたので、角度を変えて私はお尋ねしたいと思うのでありますが、掛け金に対する掛け金をかけるのは加入者でございますが、この加入者がかける掛け金、これが共済組合連合会、それから政府手持ち分の関係は一体どういうことになっておるのか、これを御説明願いたいと思うのであります。さらに、もう一点、組合連合会政府共済保険責任部分、すなわち事故に対する責任の負担分の関係はどのような率になっているのか、これを御説明願いたいと思います。
  11. 久宗高

    政府委員久宗高君) 最初にちょっとお断わりしておきたいのでございますが、先がどうなるかわからないというふうに申し上げて、誤解があるかと思うのでございますが、さようなことではございません。一応、保険といたしましては、先を当てずっぽうに考えるということはできませんので、過去の実績ができたものをできるだけ多く将来に向かってはね返していく、こういう仕組みで、かつ、それをその後出ました実績と調整しながら試行錯誤をしまして、長期均衡の過程におきましても、料率改定をいたしながらなるべく現実に近いかっこうに持っていこうという努力をいたすわけであります。したがいまして、一応今度の制度に切りかえました場合には、今日利用できます過去の実績をそのまま将来にはね返していく、そして全体の被害率のめどを立てて、しかも、過去の経験によりまして、この部分の中で団体に負わせるものはこの程度でなければ無理であるかなという計算をいたしまして、そこで、今度は、その部分保険で見ましょうということにいたしておるわけでございます。したがいまして、設計といたしましては、いま申しましたようなことでやっておりますので、これ以外に方法がございませんので、やってまいるわけでございます。  ただ、どうなるかわからぬと申しますのは、そのようなかっこうで対処いたしましても、実際災害がそのような計算どおりに起こってくるかどうかというようなことについては、これは予測ができないのでございます。一応の制度としては、過去の実績をはね返して、将来もおそらくそういう形が出るであろうというものの中で、実績がございますので、よるべき数字としてはこれ以外にないという意味で使ってまいる。そこで、そのような赤字が、今度、そういう設計をやりましたので、現実にたとえば四十三年度におきましては非常な赤字が出たとか、あるいは非常に黒字が出たという具体的な数字が出てまいりまして、それをさらに調整してまいるという意味でございまして、全然先にめどなしに制度をつくっておるという意味ではございません。なお、第二以下の問題につきましては、担当者のほうから御説明させます。
  12. 池田俊也

    説明員(池田俊也君) 四十二年度の加入の見込みに基づきまして計算をした資料がございます。  掛け金のほうから申し上げますと、これは全体を一〇〇にいたしました場合のそれぞれの取り分でございますけれども組合が八%、連合会が六三%、政府が二九%でございます。  それからそれに見合います責任でございますが、これは最高限度まで払いました場合の割合になるわけでございますけれども組合が二%、それから連合会が五%、政府が九三%でございます。
  13. 川村清一

    川村清一君 そうしますと、掛け金のほうの手持ち分でございますが、八%、六三%、二九%ですから、これを四捨五入いたしまして、全体を一〇としてわかりやすく言うと、組合が一、連合会が六、政府が三、こういうかっこうになりますね。そこで、お尋ねするわけですが、掛け金の十分の六の割合を手持ち金額として、責任分担の連合会五というのは、これはどういうことでございますか。二と五と……これは掛け金に対して……どういうことですか。これは、全体の責任が二、五、九三という分け方でなくて、組合が一、連合会が六、政府が三とすれば、その掛け金に対して責任部分は幾らになるか、こういうことをひとつ説明していただきたい。
  14. 池田俊也

    説明員(池田俊也君) いま、割合で申し上げましたので、非常におわかりにくいかと思いますが、具体的に金額で申し上げます。これも、先ほどの四十二年度の加入見込みに基づいた試算でございますけれども金額で申し上げますと、組合の手持ちの掛け金が一億一千七百万、それから連合会が九億三千百万それから政府が四億五千五百万でございます。これに対しまして、最高限度の支払いをいたしました場合にどういう共済の支払いになるかということでございますが、組合の場合は四億五千四百万、それから連合会の場合は十二億一千百万、政府の場合は二百四十七億三千七百万、こういうことになるわけでございます。こういうことになりますのは、御承知のように、政府保険事業が超過損害保険の方式をとっておりますためでございまして、具体的に連合会のほうから取り上げてみますと、連合会は手持ちになります掛け金が九億三千万でございますけれども、非常に大きな災害が起きました場合に十二億一千万の支払いをするということで、非常災害の場合には三億程度赤字が出る。これが、災害程度が低くて、まあかりに通常災害で七億程度であれば、二億程度黒字が出るということでございます。
  15. 久宗高

    政府委員久宗高君) 御質問が、赤字処理との関連におきまして、新しい制度におきます手持ちと責任の関係はどうかということに発展しておるわけでございますが、私の答弁が不十分なために誤解があってはいけないと思いますので、要点だけ申し上げますが、繰り返しますと、先生のおっしゃるように、保険制度がなかった時期に赤字が出ているので、新しい保険制度ができて、国が、今後の問題としてはいいとしても、連合会の手持ちは、逆に申しますと、責任が小さくなると同時に手持ちも少なくなるから、そのままの形では過去の赤字が負い切れなくなるのではないか、こういう御趣旨の御質問であろうかと思うのであります。まさにそういう問題があるわけでありまして、私どもが申し上げておりますのは、そういうような新しい仕組みにいたしましたのも、保険全体の安全性を見ましてそういう制度に組みかえまして、さらに、過去の経験から見まして、団体にはこれ以上のものは負わせ切れないのだという点で新しい保険事業を加えたわけでございます。要は、現在かかえております旧制度下に起きました赤字のうちで、どの部分が新しい制度におきまして連合会の負担として経理の中に残してしかるべきや否やということを計数的にはじく必要があるかけでございます。そのような作業は、過去の他の制度においても行なわれましたし、私どもも当然これは行なわれなければならぬと思っております。  その場合に一番問題になりますのは、一つは、発足当時の料率がどの程度妥当なものであったかどうかという吟味で、これは実は年数間ではわからないわけでございまして、極端に申し上げますと、いま赤字がございますが、かりに保険制度を加えなくてもこの長期計画の末端まで行きました場合にあるいは解消するかもしれない、こういうことも言えないことはないわけでございます。ただ、実感といたしましてはどうもそうではないらしいということで制度の改正に踏み切ったわけでございますので、その意味長期の見通しと吟味が要るわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、この赤字要因分析いたします場合に、料率が妥当であったかどうかという問題も含め、また、保険制度がなかったままで行なったらどうであったかというようなことも含め、また、さらには、四十年度の赤字につきましては、御承知のとおり、これが非常な天災融資法まで出ましたような大災害でございましたので、さようなものが当初の料率の中でその当時使いました実績の中で見込まれ得たであろうかどうかであろうか、こういったような吟味も当然入ってまいると思うわけでございまして、さような吟味も含めまして、また、同時に、料率設計はよかったけれども加入の見込みが設計上の頭で考えましたことと実際が非常に食い違っておる。これも実は当然問題になる事項であろうかと思うわけでございます。さようなことで、現在あります何がしかの金額の中身をさような観点から幾つかに整理をいたしまして、最終的にはそのうちのどの部分が新制度の全体の仕組みの中で連合会が負ってしかるべきものがどの程度しかないということを割り出した場合に、はじめてその残りを具体的にどう処理するかという具体的な措置ができるわけでございますので、それをやらないと言っているわけではないのであります。  そこで、御指摘のように、制度の改正がございましたので、手持ちも変わっておりますし、さようなことも全部頭に置きまして、さようなことを全部集約いたしまして、どなたから見ても新制度下において旧赤字のこの部分が無理かどうかということが実証できる段階におきまして措置をとる。また、その間に生じました一連の問題につきましては、先ほど御指摘のございましたように、赤字を持っておれば共同運営も容易でないということももちろん御指摘のとおりでございますが、支払いそのものにつきましては基金処理をいたしますことにいたしまして、そうして、そういう問題も含めまして、適当な段階におきまして、連合会単位組合政府保険、全体を通じまして合理的な負担関係にし、かつ、そのような三つの組み合わせによります保険が円滑に運営できるような措置を当然とるわけでございますので、その間、若干の時間がテクニカルにどうしても必要でございますので、その間の御了承をぜひ得たいと思うわけでございます。
  16. 川村清一

    川村清一君 長官のおっしゃることもだんだんわかってまいりました。そういうことに結論的にはなるだろうと思います。しかしながら、まだ若干疑義がございますので、これを続けさしていただきますが、いまお尋ねしまして、漁政部長から御答弁していただきました数字を検討いたしてみますと、掛け金の十分の六の割合を連合会が手持ち金額にして持つわけですが、そうして連合会が今度は責任を分担する分は、これは金額で言うと九億三千百万に対して十二億一千百万、約一・三倍、それがすなわち一三〇%ということの数字になるのだろうと思うのでありますが、そこで、約一・三倍の責任を分担する連合会が、現在かかえておる五億何がしの赤字を補てんする剰余金を生み出すことができるかどうか、ここが私はむしろ絶対できないとまあ考えざるを得ないわけです。長官は、それは全部はできないかもしれないけれども、できる部分もあるんだと。そこで、自分では幾らできるか、できない部分については何とか処置してやらなければならないし、できる部分については自力でもってこれを補てんしてもらわなければならないと、こういうお考えだろうと思うわけであります。もちろん、毎年毎年異常災害が発生したら、これはたいへんでございますから、そんなことは考えられません。もちろん、年度によっては剰余金の出る年もあるでありましょう。出なければ、保険制度が成り立ってまいりませんから。しかし、一・三倍、一三〇%の責任を分担するという責任を持つ連合会は、その剰余金は、当然、次の異常災害に備えて、いわゆる支払い超過の年度に備えまして準備金として積み立てておかなければならないものと私は考えるのであります。だとすれば、現在かかえておる赤字に対してどうしてこの剰余金を補てんすることができますか。私はこれはできないと思う。もし赤字を補てんする財源をこれ以外に生み出す方法が何かあるならば、これをひとつお示しいただきたい。これ以外に財源があるならば、五億の現在持っておる赤字を補てんすることのできる財源が他にあるならば、ひとつ私に教えていただきたい。
  17. 久宗高

    政府委員久宗高君) 二つの問題がございまして、たとえば生命保険のように事故の内容が全く保険的に処理できる形のものでまいります場合と、このように自然災害を対象にいたしまして保険の仕組みを当てはめまして処理いたします場合と、私は根本的に違うのだろうと思います。と申しますのは、何と申しましても、自然災害を相手にいたしますので、料率をはじきます事故の内容にいたしましても一般の生命保険のように一般的なものではないわけでありまして、したがいまして、本来からいえば、保険に理論的にも完全に乗るものであれば、料率設計さえよろしければ、当初相当大きな赤字が出てもびっくりすることはないのでありまして、それは将来何らかの時期に黒字が出て調整さるべきものだといってほったらかしてもいいんじゃないかと思っております。ところが、そうじゃございませんで、実際には自然災害によりまして年々の処置を最も合理的に財政なり漁民負担を含めて処理しようという仕組みでございますので、そのようにほったらかしておいたのではいけませんで、料率改定を相当ひんぱんにやりまして、できるだけ長期展望の中で、偶然ではあってもそれに近い形のものに、それに対応できる形に形を直していくという試行錯誤を繰り返しているわけでございます。さような意味におきまして、今回も料率改定をいたしましたし、また、同時に、いままでの若干の経験ではございますが、どうもこの種の災害の出方から見ると、保険制度の裏づけをしなければ団体だけでは無理であろうということで、今度保険を組み入れたわけでございます。したがいまして、先生のおっしゃいますように、現在の仕組みが過去のデータによりますけれども、新しい負担区分によりまして、連合会で申せば一三〇までのところを処理できる体系に組みかえたわけでございます。  そこで、繰り返して申しますように、それで少しやってみる間に、過去に出ました赤字のうちのどの部分ほんとうにそれじゃ新しい設計の中の財源で、それから支払いの予想の中で処理できるかというものを計数的にはじき出すわけでございますが、過去の赤字の中には、ただ制度の上で保険がなかったからというだけの赤字ではない要素が含まれておるわけでございます。たとえば、加入が十分でなかった、個々の組合運営の問題も入ってまいりましょうし、また、赤字の出ております業種におきます保険の組み立て、たとえばここで申しますればノリといったような特定のものにつきましても、制度の組み立てがよろしかったかどうか、こういう問題も全部含んでまいりますと、単純な金額だけで、この部分連合会が負えないものというものも単純にははじき出せないわけでございます。さような意味におきまして、財源的に、ごく理論的に申し上げれば、先生のおっしゃるように、新しい設計の中では、過去の一三〇をこえた部分はおそらく背負い切れないというのはおそらく正論だろうと思いますが、今度は具体的に仕分けます場合には、必ずしもそれだけの問題では処理できませんので、共済金額の変化もございますし、加入状況の変化もございますので、そういうものも全部組み立て直しまして処理をいたすということを申し上げておるわけでございます。具体的に申し上げれば、そのような過程でやってまいりました場合に、連合会に依然として赤がどんどん累積されてくる、つまり今度の新しい一三〇の中の責任においても、たまたま災害が二、三年続きましたために膨大な赤字がそこにまた出てしまった、しかも、過去の赤字を背負っておる、こういったような問題がありました場合に、おそらくその責任区分が必ずしも妥当でなかったのだろうということで直さなければならぬということになると思うのであります。  したがいまして、単位組合連合会、それから政府保険が、たとえば政府が非常にもうかってしまって団体が赤字になるという場合におきましては、どうも政府責任分担が非常に軽過ぎたんだ、もっと一三〇を下げなければいかぬという問題にもなりましょうし、逆に、政府のほうに非常な赤字が出て、連合会がたちまち過去の赤字も含めて解消してしまった、こういうことになりますれば、それはやはり一三〇の内容がおかしかったんだろうということで直すという過程を経まして、全体としては新制度によって単位組合にも連合会にも政府にも極端な赤字が集中しないような形で負担区分を直し、かつ、料率を直しながらやっていく。そういう過程におきまして、結果におきまして連合会としては負い切れなかったものを何らかの意味処置するという事態が生じるのだろう、こう思うわけでございます。したがいまして、おっしゃる意味は確かに私どもわかるわけでございます。それを今日ただいまの段階で計数的に調べて、この発足段階で切り離すわけにもまいらないということを申し上げておるわけであります。
  18. 川村清一

    川村清一君 どうも、わかりかけてきたら、また議論が前のほうに返ってしまって、こんがらがってしまったんですがね。過去と現在と将来とごちゃごちゃになってしまって、現在五億何がしかの借金がある、これは現実の問題としてあるわけであります。これは借金ができた原因があるわけです。これは、原因は、過去の制度の中で出てきたんだ。特に昭和四十年度のノリの異常災害が大きな原因になって出てきたわけです。そうして、その借金があるわけです。そこで、その借金はどうするかという問題なんです、問題は。これは簡単なんですよ。この借金を、私の議論は、また本委員会で先般の委員の方々が質問されたことは、現在もしできないとするなら、可及的すみやかにこれを処理すべきである、そうして全く傷を負わない無傷の形で新しい制度に切りかえて新しく発足させるべきだと、こう申し上げているわけです。こういう考え方昭和三十九年の衆議院附帯決議であり、参議院の附帯決議でもあったわけであります。ですから、私どもの言うのは、この理由があって借金ができたんだ、これはわかります。この借金を、それではこの制度発足していってこれが返せますかどうかということを聞いておるのです。返せる自信がありますかどうかということを聞いているのです。ですから、いまの制度では先ほど言うように、掛け金のうちの十分の六を連合会が持ち、そうしてその一・三倍の損害を責任をもって補てんする、分担をすると、こういうような中では、掛け金の剰余金は残らぬでしょうということを申し上げているのです。たまたま残っても、これはこの次の災害に残しておかなければならないでしょう。そうしたならば、現在の借金を埋め合わせるところの財源はこの中から出てこないのではないですかと、簡単に申し上げておるのです。もしあるならば教えてくださいということを言っているのです。私は絶対ないだろうと思っている。そうすれば、借金が五億もあって、運営支障がないとかなんとか言っているけれども支障がないわけはないのであって、必ず支障がある。だから、この借金をできるだけ早く整理していって、そうして新しい制度で走らせたらいいではないですかということを申し上げている。  しかし、私がいまの長官の御答弁を聞いておりますと、何かそのようにも受け取れるわけです。料率というものは常に変わっていくのだ、したがって、いまの料率はこういうことであるけれども、もしこれがうまくないとすれば、また料率を変える。結局、掛け金料率上げて、それからその借金を埋め合わせる財源を得ようとしておるのではないかというふうにも勘ぐれば受け取れる節があったんですが、私の聞いておるのは非常に簡単なんですよ。ですから、どうもあまり長く言われますとこんがらがってきますので、これはこうなんだと、こういうふうに簡単でいいですから、はっきりひとつお答え願いたいと思います。
  19. 久宗高

    政府委員久宗高君) 試験設計をいたしまして本実施に入りましたときは、これははっきり制度として違いますので、そこで切りまして、過去の赤字処理するわけであります。今回の改正は、本格的な実施が三十九年になされまして、その経験に基づきまして内容の手直しをしたわけでございますので、実は気分といたしましては、新発足でありますけれども保険経理なり計数のはじき方から申し上げますれば、これは継続しているわけでございます。したがいまして、おっしゃるように、保険制度が新たに加わりましたものでありますから、いまの連合会の新しい設計の中では、過去のその飛び出した部分は、自動的には負えないはずではないかと、おっしゃる意味もわかるのでありますが、繰り返して申し上げますように、かりに料率だけではございませんで、加入の状況も非常に異常なかっこうをとっております上に、共済金額も年々スライドをしておりますので、変わってまいるわけであります。そこで、そのようなものを整理いたしますのに若干の時間がかかって、そうして新制度におきます連合会として負えるかどうかという吟味は、これは最終的にはいまの連合会の手持ちとの関係も頭に置いて当然きめられるべきものと思いますが、それは現在の段階では仕分けられないだけでございまして、その部分は無理な形で連合会に負わせてしまうといったような考え方は、政府としては当然しておらないわけでございまして、単位組合なり連合会なり政府が過去の赤字を頭に置いて、そうして今後の運営上どういうふうに責任の分担を明らかにすれば全体としてバランスがとれるかということを追求していきますその追求する過程である数字が仕分けられて、最終的に連合会に残りますものは、新設計によります連合会が当然その保険の見通しの中で負えるものに限定していく作業を積み重ねていくということに尽きるわけでございます。御質問の御趣旨と私どものやり方は、大体技術的な違いだけでございまして、趣旨はそのとおりにお考えいただいてよろしいと思います。  なお、料率改定なり負担区分の問題も、連合会赤字だけを考えるのではなくて 赤字を持った連合会を頭に置き、その末端に単位組合があり、かつ、その上に保険が乗っかっているということの認識に基づきまして、全体として非常に黒字が出てしまうようであれば、これは料率が高過ぎるわけでありますので料率の引き下げをはかるべきだし、どこかの部分に非常に赤が出たりするようであれば、それは負担区分がおかしいのではないかということで手直しをしていく、こういうことでありまして、営業保険でございませんので、国だけがもうけるとか、連合会赤字を背負うという形を長くそのままにほうっていく性質のものじゃございませんので、それが今後の料率というものの手直しなり保険の組み直しなりといったようなことで調整されていって、その過程で御質問のような過去の制度によって起きた赤字が、連合会運営はもちろんのこと、保険全体の運営支障を及ばすようなことには絶対に性質上なるものではございませんので、さようなことを吟味してまいりたいこう申し上げておるわけでございます。
  20. 川村清一

    川村清一君 趣旨はわかりました。長官が何をなさろうとしておるのか、お考えの点につきましては予解ができました。そこで、できるだけ精力的に短い期間にいろいろな角度から検討をいただきまして、そして私どもの述べておる趣旨が生かされる方向にぜひ進めてもらいたい、こういうふうに考えておるわけであります。この点につきましては、非常に大事な問題ですから、三十九年の国会の審議の中で附帯決議をつけられた事項でございますので、後ほど大臣の責任ある御答弁をいただきたい、こう考えております。  そこで、最後にこの問題についてお尋ねいたしますが、これはもしという仮定の問題でございますが、三十九年の法律制定がありましたが、もし三十二年以来今日まで全水共に委託試験実施をやらせてきたあの仕事が継続してまいりまして、そうして今回政府の再保険をもって本法に一ぺんに切りかわったとした場合において、政府の負担分は相当にふえたはずではないか、こう思うわけであります。と申しますのは、三十二年から三十八年までの試験委託分につきましては、これは政府責任で全部の補てんをしておるわけですから、その継続として今日まで来たならば、政府の負担が相当ふえたのではないか。これは一応試算されたものと思いますが、一体どのくらいになるか、ちょっとお知らせいただきたいことと、もう一点は、三十九年の法律制定の場合に、当時、漁民から強い要望があって、そういう立場から国会の意思として国会で附帯決議をいたしましたあの国の再保険の問題です。これは三十九年にもし実現して、現在のような形が三十九年にできて、そうして今日までずっと来たとした場合には、この三年間、政府はどのくらいの負担をしなければならないか、この点を試算されているのではないかと思いますので、もし試算されておりましたならば、この金額について知らせていただきたいと思います。
  21. 久宗高

    政府委員久宗高君) お尋ねの意味はよくわかります。要因分析いたします場合に、さような計算を当然してみるべきだと思います。ただ、前段で御質問もございました、三十二年以来試験実施をしておったものをそのまま引き継いだらという点につきましては、私どもも、こういう保険制度でございますので、実際に移してやらないと資料がとれませんので、ああいう形で試験実施をいたしたわけであります。これは、やはりあくまで試験実施でありますので、本格的な実施をする場合にこの部分を調べたいといったようなウエートを置いて、相当無理な設計でございましても、ある結論を得たいためにやってみるといったようなことも入っております。普通に制度として実施されたものとしてお考えいただくのには、やはり若干問題があるのではないかと思うわけであります。そこで、さような試算をいたしましても、あまり実は意味がないのではないかと思うわけでございます。  ただ後段の御質問にございます、三十九年に実施いたしましたときに初めからもし保険が加わってやっておったらどうだったか。これは十分吟味に値する問題だと思いますし、さようなことも計算してみる必要があろうかと思うわけでございます。同時に、これは、赤の出方、黒の出方両方まあ含まれるわけですが、さような計算はもちろんいたしてみるわけでございますが、私どもといたしまして、さようなものをつくりまして、かりに財政当局その他と交渉いたします場合のかりに難点といたしましては、何と申しましても、発足いたしました場合の料率計算と、現実に移しました場合の実際の加入状況でございます。これが実は危険分散と非常に関連のある事柄でございましていかにも加入状況に難点がございますために料率の妥当性を云々する前に、実は、加入、危険分散の度合いでございますね、これが設計で考えましたのと実際との大きな食い違いがございますので、その辺のところに相当問題があろうかと思うわけでございます。現在、試算したものは、たしかそこまでの試算が、たいへんな計算が実は要るわけでございますので、してないと思うわけでございますけれども、今後、要因分析と関連いたしまして、後段の問題につきましては、私どもは、いろいろなこれは仮定を置かないとできないだろうと考えるわけでございますが、やってみたいと思うわけであります。
  22. 池田俊也

    説明員(池田俊也君) ちょっと先生の御質問の趣旨を十分にのみ込めなかったのでございますけれども長官からもちょっと一部お答え申し上げましたが、過去の試験実施、あるいは三十九年以降の本格実施の場合に、現在御提案申し上げております方式、政府保険をするという方式をとればどういう収支になったかという計算は、実は、いま長官からも申し上げたわけでございますが、これは個別に個々のの契約まで下がりまして計算をしないと出てまいりませんので現在申し上げる数字を持っておらないわけでございます。  それからこれはあるいは御質問の趣旨とは違ったのかという気もいたしますが、試験実施の際と、それからその後の三十九年、四十年、四十一年の本格実施の場合のやつを両方合わせましてどういうような収支であったかと。これはちょっと御質問の趣旨と違うかと思いますが、御参考までに申し上げますと、試験実施の場合は、赤字が全体といたしまして約九億でございます。したがいまして、両方合わせました赤字は十四億七千万程度になるわけでございます。
  23. 川村清一

    川村清一君 数字についていろいろ議論をしておっても、まあいろいろ言い分があるでありましょうし、私のほうには確たるそれを裏づける資料もないわけでありますから、常識論になってしまいますので、この程度でやめまして、これに関するあと質問は大臣が来たときにお尋ねすることにいたしまして、問題を次に移したいと思います。  第二番目の問題は、漁業災害補償法の目的を効果的に達成するためには、原則としては何としても共済事業の種類をできるだけ多くすること、理想的には中小漁業の全業種が共済の対象になる、次には、加入者が一人でも多い、これもでき得れば漁業者全員が加入して、そして危険を分担する、こういう形になったときに、はじめて理想的なものになると私は考えるのであります。こういう原則から考えてみたときに、これも先般問題になったわけでありますが、従来実施してまいりました漁具共済を政府保険から除外したことは納得できませんし、これは明らかに後退である、私はそう判断しておるわけであります。漁業と同様第一次産業である農業共済においては、もっとも、農業共済のほうは、漁業災害補償法の先輩でありまして、基盤も確立しておりますので、これはまあ比較にならないかとも思いますけれども農業のほうは共済がどんどんふえていっておる。御承知のように、今国会にも果樹共済が新しい法案として提案されておるこういうような状態でございます。現在、農業のほうは、農作物共済、あるいは蚕繭共済、家畜共済、さらに、任意共済、こういつたようなものまで実施されておるわけであります。ところが、漁災のほうでは、国の再保険実施されたとたんに、実績のある漁具共済が除外される。これでは、漁業は農業に比べてあまりにもお粗末ではないか。これは十分検討されまして、すみやかに漁具共済についても、保険事業実施すべきである。かように私は考えるわけであります。もっとも、先日の委員会におけり答弁におきましては、調査費をつけまして十分これを調査して、早急に漁具共済を実施するというお考えは述べられておりますけれども、除外されたということは明らかにこれは後退であります。ぜひ一日も早くこれが実施されるように一段の努力を願いたいと思うわけでありますが、これに対する水産行政の責任者である長官の御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  24. 久宗高

    政府委員久宗高君) 先日もお答えいたしましたように、漁具共済につきましては、若干設計上の問題がございまして、現実には非常な逆選択の要素も深まっておりますので、このままの形で直ちに保険につながることは非常に難点もございますので、調査をいたしまして、至急設計上の問題を解決いたしまして、当然これは保険につながるような努力をしたいと考えております。
  25. 川村清一

    川村清一君 次に、加入率についてでございます。地域的に業種ごとに差異がございます。しかしながら、平均的にいって加入率は非常に低い。特に二十トン未満階層の最も共済を必要とする階層の加入率が低いということについては、これも各委員から指摘されましていろいろ問題点について質疑がなされたのでありますが、加入率を上げるために、この際思い切って農業共済のように当然加入入することが、いろいろ問題もありましょうが、この事業最大の難点を解決する早道になるんではないかと、私はこう思いますので、ひとつ当然加入、義務加入、こういう方向へこれを断行する御意思がないかどうか、これをお聞かせ願いたい。
  26. 久宗高

    政府委員久宗高君) 漁業の共済制度の中でのある種の漁業の種類につきましては、義務加入制といったようなことを考慮したほうがそれにマッチするものもあろうかと思うわけでございますが、御承知のとおり、本制度につきましては、一番問題のございました価格関係を入れるかどうかという問題がございましてさような設計に踏み切りましたので、価格関係を実は有権的にとらなければこの制度の組み立てができないということで、本制度におきましては加入者におきましては、漁獲物の販売先でございますとか、販売金額でございますとか、相当いろいろな内容につきましては、これはもちろん契約で御承知を得た方から資料をいただいておるわけであります。さようなことを考えますと、仕組みといたしまして義務加入制ないしは当然加入制をとりますれば、もちろん保険としては安定するわけでございますけれども、同時に、加入者につきましては、別の観点から申しますと、相当経営の中身に突っ込みました資料をいただくということもございますので、これを一律に強制してしかるべきであるかどうかという問題が一つ残ると思うわけでございます。  それから、もう一つの問題といたしましては、農災のほうにおきましては、たとえば米といったような決定的な商品でございますので、また全体として組み立てなければ、あのような形の個別農家に対します補償を完成できません。当然加入によりまして規模に明らかにいたしまして全体の仕組みを立てているわけでございます。漁業関係におきましては、これは個別に保険需要がございますので、その保険需要を個別に御納得の上で掘り起こしていくという体制で持っていくことのほうが、いわば漁業の実態に即しているのではないかという考え方もあるわけでございます。  それからもう一つ大きな問題といたしましては、義務加入制をとりますれば、確かに保険経営といたしましては設計上非常に安定するわけでございますけれども、必ずしも個々の方の御納得を十分得にくい形のまま全体として組み入れてしまいますと、どうしても制度にたよった運営にならざるを得ないという心配がございます。農災におきましても実はその辺が非常に問題であったように思うわけでございますので、漁業のように、個々の方が経営的な観点に立てば当然保険需要はあるべきだ、しかも、制度としてもそれにこたえるだけの実体を持っているということになりますれば、相当手間がかかるようでございますけれども、一人一人御説得申し上げてこれに加入していただくという形におきまして、いわば組織だけにたよる、あるいは日の丸といったような感覚でなく、保険経理を貫きながら、全体の仕組のモラルを確立していくということのほうが、この制度を長い目で見ますとよろしいのではないかという判断を一応持っておるわけであります。ただ、実際にやってみますと非常に加入率に問題がございますので、もちろんこれには今回のような法改正をいただいておりませんために、迫力がないために御納得がいかなかったかと思うわけでございますが、保険制度までつけていただきまして、内容もこのように充実さしていただければ、もう一段と自主的に努力をさしてみていただいてさらに考えてまいりたい、こう思っているわけでございます。
  27. 川村清一

    川村清一君 長官のおっしゃることもわかるわけでありますが、冒頭申し上げましたように、せっかくできましたこの法律制度を、ほんとうに効果的に目的を達成させるためには、何といっても加入率が上がらなければ問題にならないわけです。こういう点において私は問題がある。  そこで、ただいまの長官のお話の中にもございましたけれども加入方式の実態を見ますというと、漁獲共済につきましては、一号漁業の採貝・採藻は集団加入ですね。加入区内において中小漁業者の全員を構成員とする団体が加入する、こういうことになっているわけであります。二号漁業の十トン未満は、これは小型連合加入、こういう方式になっておりまして、加入区内に住所を有するものの二分の一以上の者が申し込む、漁業協同組合、自営は単独で加入もできる、こういうようなかっこうになっております。それから三号漁業の十トン以上の漁船漁業につきましては、大型連合加入ということで、加入区内に住所を有するものの二分の一以上の者が申し込む、こういうような仕組みになっております。それから養殖漁業を見ますというと、一定の水域内で養殖業を営む者の全員を構成員とする団体が申し込む、漁協、自営の場合は単独加入、こういう形になっている。そこで、集団加入、小型連合加入、大型連合加入、また、養殖の団体加入、そういう加入方式を検討をしてみますというと、長官は、当然加入という方式をとらないんだと、一人一人の説得の上に立って個人加入の方式をとるんだということをおっしゃっておりますけれども、しかしながら、形の上ではこういう形になっておる。とすれば、この形を生み出した思想というものは、これは義務加入、こういう思想を取り入れた形をつくっておるのではないか、こういうように私は解釈をするわけですが、この点はいかがですか。
  28. 久宗高

    政府委員久宗高君) おっしゃるとおりでございまして、先ほど申しましたように、漁業の中でも義務加入的な要素があってもしかるべき漁業もございます。それにつきましても、漁業の種類によりましていまのように多少きめこまかく集団的な加入態様を変えておるわけであります。考え方といたしましては、おっしゃるとおりでございます。ただ、義務加入制という形にたよって、無理な形で、ただ組織だけ固めてしまうという考え方になるべくお互いに立たぬようにしよう。それはもちろん結果においてそうなることはけっこうでございますけれども、何か義務加入制でもって下を固めてしまって組織さえできれば何とかなるという考え方では漁業共済というようなむずかしものはできないという考え方をお互いに持ってやろうではないかということで、関係者もそういう気持ちでやっております。それを申し上げたわけでございます。
  29. 川村清一

    川村清一君 私はその考え方はわからないわけでもないのですが、効果という点から考えれば、私はこれは一利一害があるんじゃないかと思うのです。それは一人一人が個人で入るのでなくて、団体で加入するわけですから、要すれば団体に加入してもらうために一人一人説得しなければならないわけですね。これは本人の承諾を得ないで団体に加入させるわけにはいかぬと思う。そうすると、団体に加入させるために個人個人を説得し、団体組織をつくり、そうして団体が組合加入するそうすると、個人は二段がまえでもってその共済に加入するというかっこうをとっておるわけです。もし、もうあくまでも義務だとか当然加入というのはうまくないんだと、個人の自由意思、説得して入れさせるんだということであれば、私は、一号漁業、二号漁業、三号漁業で取り扱っておるこういう加入方式はむしろやめるべきであると考える。なぜならば、まず団体構成、加入、その手続あるいは共済金支払いの複雑性、こういうものがみんな含まれてくるわけですね。まず団体をつくり、組織をつくるために努力をしなければならぬ。その組織に入ってもらうために今度個人個人を説得をしなければならないわけです。そうしてそれに加入するわけです。そういう繁雑な手続があるわけでございます。それから災害が起きたら支払い金を受ける。その支払い金を、今度は、団体が受けて、団体が個人個人にそれを分配しなければならない。こういう複雑な手続がむしろ出てくるのではございませんか。だから、が言われるように、あくまでも個人加入を主体とするんだ、説得してやるんだ、こういうお考えならば、それはその考え方は正しいのですよ。民主的な行き方ですから、それは正しいのです。だとするならば、徹底して一人一人を啓蒙宣伝し、説得してもらわなければならない。   〔委員長退席、理事任田新治君着席〕 むしろ一号、二号、三号のやっているこういう加入方式をやめるべきである、私はそう考えるわけですが、これに対してどういう御見解をお持ちになりますか。
  30. 久宗高

    政府委員久宗高君) この前の御質問のときに、基本的には義務加入制を頭に置いてやっているのだという御質問でございました。御答弁申し上げたわけでございますが、考え方はおっしゃっておりますることと大体同じことを私は申し上げていたと思うのであります。最初に申し上げましたように、漁業の中でいろいろ漁業の種類が異なりますので、義務加入制的な考え方でやっても一向おかしくないし、また、そのほうが処理も都合がよろしいというものがわるわけでございますので、さようなものはできるだけ私ども取り入れているわけでございますが、ただ、義務加入制を一般的に議論されます場合に、どちらかと申しますと、諸制度の現実から申し上げますと、個別の説得を若干抜きにいたしまして、義務加入制であるということに安易に依存するおそれがございますので、それを戒めているだけでございまして、現実の現在の私ども制度の中でも、義務加入制という呼び方はしておりませんけれども、なるべく集団的に入っていただいたほうが都合のいいものは、それに適する漁業につきましては、どんどん組み入れているわけでございますので、根本的に義務加入制に反対というわけではないのでございます。この点を御質問されたのではないかと思いますので、誤解のないようにしていただきたいと思います。
  31. 川村清一

    川村清一君 考え方は原則的に一致したようでございますから、そこで、私は一つ御提案申し上げるわけでございます。今後の問題として御検討いただきたい。  私は全部の種類について義務加入をせよということも申し上げておりませんし、それは非常にむずかしいものだと思います。   〔理事任田新治君退席、委員長着席〕 少なくとも、漁業共済における一号、二号、三号漁業、養殖漁業等については当然加入にすべきではないか。そこで、一号漁業の集団加入というのは、これはもう明らかに形は義務加入でございます。それから二号漁業については、二分の一というのを三分の二とされたらいかがですか。三号漁業の二分の一というところも三分の二とされたらいかがでございますか。養殖漁業は全員を構成員とする団体でございますから、これはもう義務加入でございます。そうしますと、これは漁業災害補償法で明らかなように、漁業災害補償法におきましては、同一地域内において三分の二以上の者が加入した場合におきましては、その地域内における全漁船が加入したことになるわけです。たしか、そういうふうになっていると思います。こういう形で、結局三分の二以上ということでもって全員を入れる、そういう方向に向かって御検討いただいたらどうかと思うわけであります。  この点もはっきり申し上げておきたいことは、長官の言われる個人個人の説得によって全員賛成させるということは、これはほんとうにとうといことであり、まことにこれはりっぱなことです。そうありたいものであります。しかしながら、同一地域内において全員が同一のものに賛成するなんということは、これは容易なことではないのです。たとえば共同漁業権の行使規制をつくるについても、三分の二以上の同意が要ります。それから同時に御提案になっておりますところの組合合併法につきましても、組合が合併することを決議する総会における賛成は三分の二以上の賛成と、こういうことになっておるでありましょう。国の基本法である憲法でさえ、国会において三分の二以上の賛成があれば改正の発議権があるわけであります。法律は過半数の賛成によって判定せられるのであります。一人残らず全部賛成するなんということは、これはいかにむずかしいか。民主主義が発達すれば発達するほどこれはむずかしいことです。ですから、この法律の精神をほんとうに生かして、そうして効果的ならしめるためには、とにかく一人でも多く加入者を得ること、全員加入が一番望ましい姿であります。であるとすれば、これは加入することが漁民の不利益になるならいたし方ありませんが、加入することにいって漁民が利益になることなんだから、当然その方向に向かって検討すべきであると、私はかように考えて御提案するわけでありますが、長官はいかがでございますか。それをひとつ検討してみる、その御意思がございますかどうか。
  32. 池田俊也

    説明員(池田俊也君) 義務加入制度についての基本的な考え方は、先ほど長官から申し上げたとおりでございまして、私どもも具体的な一つの目標といたしまして検討するつもりでございますが、ただいま先生から御指摘ありましたように、他のいろいろな保険制度におきまして推移加入制度をとっておるものがかなりあるわけでございますが、その場合のやり方といたしましては、組合等で三分の二の議決をした場合に一応全員が加入をする、こういう方式をとっておるわけでございます。私どもの感じといたしましても、将来義務加入制度をとるということになりました場合には、やはり同じような方式になるのではなかろうかという感じは持っておりますが、具体的にはさらに検討さしていただきたいと存じます。
  33. 川村清一

    川村清一君 大臣が非常にお忙しい時間をおさきいただきまして本委員会に御出席になられました。わずかの時間しかおいでになられませんので、この際非常に大事な問題について二点ほど大臣にお尋ね申し上げたいと思います。  大臣、ただいま漁業災害補償法改正案について審議をしておるわけでございまして、この法案審議は、先般の委員会と本日の委員会と二日間にわたって審議が続けられております。そして、どの委員からも一番強い大きな問題として取り上げられて論議されましたことは、御承知のように、漁業災害補償法が、今田の法改正によって、政府の再保険がつけられまして、名実ともに災害補償法という態様ができたわけでございまして、今度は本格的に発足することになったわけであります。そこで、この新発足にあたりまして、昭和三十九年から四十一年までの三年間、共済組合連合会が共済事業を行なってまいりましたが、この共済事業の中において生じた赤字は約五億一千万ほどあるわけでありますが、この赤字を国の力によって、財政措置によって解消してもらいたい、そうして新制度無傷の姿において発足させる、そうして組合連合会もそれぞれ今後新しい責任分野を担当して努力してもらいたい、そうして本法の発展のためにぜひひとつ努力を願う、こういう立場から質問をされたわけであります。いろいろ水産庁長官との間に議論がかわされまして、考え方もわかりました。まあ趣旨は了承されたわけでありますが、きわめて大事な問題でございますので、この問題は、農林行政の最高責任者である大臣から明確に御答弁をいただきたい、かように考えておる次第でございます。  そこで、この問題について端的にお尋ねするわけでありますが、昭和三十九年六月二十六日、参議院の農林水産委員会におきまして現行の漁業災害補償法がいろいろ審議をされましたときに、わが党の渡辺委員がこのような質問をしておるのであります。この部分だけちょっと朗読いたしてみますというと、こういうことであります。「その完全なる、災害補償が機能化するまでの間、漁業共済団体共済金支払いとか、あるいは漁業共済基金の貸し付け金に、異常災害等が起これば、当然現在のファンドでは、これは不足を生ずることは明らかであります。……後顧の憂いなきために、私はお尋ねをいたすのでありますが、そういう現行制度の中で不足が出る、共済金支払いや、貸し付け金に不足が出るというような場合には、これは全額政府の財政負担によって補てんすべきものと思うのでありますが、保険事業実施するまでの間におけるそれらの措置は、大臣としてはいかようにお考えになっておられましょうか。」との質問に対し、赤城農林大臣は、「そういう場合が生じた場合には、その状況を検討の上、国の財政援助等の措置を講じまして、漁業共済事業の円滑な運営支障を生じないように配慮いたしたい、こう思います。」と答えておるのであります。  さらに、すでに御承知のように、災害補償法案に対する附帯決議でも、三十九年六月二十六日の委員会は、「政府保険事業実施するまでの間において、漁業共済団体共済金及び再共済金の支払及び漁業共済基金の貸付金に不足を生じたときは、政府の財源でこれを処理すること。」、こういうふうに決議しておるのでありますが、それが、今回の法改正にあたりましては、いろいろ問題がありまして、これらの問題の解決はいずれも今後の措置に残されまして、措置されないままにきておるわけであります。そこで、いままでの過去の共済事業実績等を十分分析、検討されまして、そうして一日も早く現在連合会が持っている五億何がしの赤字というものを処理されまして、そうして連合会事業運営に何も支障を来たさないように、本法律が十分に本来の目標を達成する方向に進められるようなそういう措置を願いたい、かように考えておるわけでございます。これに対しまして、大臣の責任ある御答弁をいただきたいと思います。
  34. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 御指摘のように、漁業災害補償制度の本格実施漁業——共済事業、それから漁業再共済事業の収支は、かなりの支払い超過になっております。そのことにつきましは、ここで水産庁長官もいろいろお答えいたしたと思いますが、共済なり保険事業の収支が償うかどうかということは、本来長期的に考えるべきものでございますから、本格実施後の赤字額の取り扱いにつきましては、今後の共済保険事業実施推移を見ながら、運営支障を来たさないようにつとめるべく検討いたしてまいりたいと思っております。
  35. 川村清一

    川村清一君 ぜひその点はそのようにお願いを申し上げますとともに、もう一点、まだ時間が五分ほどありますから。  これは一般論ですが、漁業全般に通ずる問題として大臣のお考えをお聞きしたいと思うんですが、私、最近、いろいろ漁業法規——漁業法から、あるいは沿岸漁業等振興法、あるいはその他漁業に関するいろいろな法律を検討してみますというと、漁業法規には非常に政令にゆだねられた事項が多い。漁業の最も基本をなす漁業法の中にはきわめてこの点が多い。このことは、私は非常に大事だと思うわけであります。すなわち、立法府におきましては、その根幹になる法律はきめておりますけれども、その法律を実際に運用する部面は、これは政省令にゆだねられておる点がきわめて多い。そのことは、つまり農林省の役人の仕事に多くの点がまかせられておる。この面は、私はたいへん問題があると思うのであります。たとえば、これは一例を底びき漁業等にとってみますというと、底びき漁業等につきましては、各地の沿岸においていろいろと問題を起こしております。沿岸漁民との間に紛争等も生じております。そして、そういう点からいろいろ国会議員等に陳情等もなされておりますし、あるいは、地方議会等に対しましてもいろいろ沿岸の漁民等から陳情がなされます。ところが、それらの問題を処理することが、国会の場において、法案審議の場において行なわれないのであります。これは、すべて、農林省告示であるとか、その他政省令でこれを処理されている、こういう点が多々ある。この問題は、私は底びきに例をとったわけでありますが、まだたくさんあるわけであります。時間がありませんので多くの例をあげませんが、こういう形でありますので、水産行政を進める中におきましては、第一次産業である農業などと比べて、こういう面が非常にたくさんあるということを御理解賜わりまして、これはゆだねられておる役人のほうもたいへんだと思うわけでありますが、こういう行政運営が間違いない方向にいかれますことを私は心から念願して大臣にお尋ねするわけであります。  特に、漁業の場合は、いろいろな免許とか許可、われわれはこれを一面利権とも言いますが、こういうものにもからんでまいります。たとえば、北海道等の海域において、サバのまき網がいいということになれば、サバのまき網の漁業権をとるためにいろいろ暗躍を始めます。しかし、まき網は全部大臣許可になっております。そうすると、この許可権を得るためにいろいろな政治力がま水産庁に働きかけてくる。働きかけられる役人さんもきわめて迷惑だろうと思うわけでありますが、そういう姿の中からいろいろ誤解を生んだし、行政がゆがめられているようなことになりますれば、これはたいへんでございますので、水産の実感はそういう実感にあるということを私は最近つくづく考えておりますので、その責任者である大臣は、そういうことが間違いなく進められますように、特段の御配慮をいただきたい。  これは、なぜいまこういうことを申し上げますかというと、本日をもって大体水産の法案審議が終わることになっておりますので、いまの法案と何も関係ないようですが、大臣もお帰りになりますので、このことを最後に私はお願いを込めて質問の形で申し上げましたので、大臣のお考えをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  36. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 御趣旨はよくわかりました。御存じのように、漁業というものは、きわめて流動的な仕事でありますし、また、常に進展してやまない事業でございますので、法律で決定いたしましても、それを運営いたしてまいるためにはいろいろ変化、また、運営の妙をきわめてまいりますには、やはりこまかな心づかいをいたす必要もあります。そういう面で政令にゆだねておるものが多いというわけでありますから、運営にあたりましては、もちろんいまお話しのような趣旨は農林省においても十分承知いたしておりますので、そういう点の運営につきましては大方の御期待に沿うように慎重にやってまいります。
  37. 野知浩之

    委員長野知浩之君) これにて暫時休憩いたします。  午後三時に再開いたします。   午後一時三分休憩      —————・—————   午後二時十六分開会
  38. 野知浩之

    委員長野知浩之君) ただいまから委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行ないます。両案について質疑のある方は、順次御発言願います。
  39. 川村清一

    川村清一君 午前中に漁災法につきましては大体の質疑は終わったわけでございますが、なお、二、三小さな問題でございますので、それについて御質問を申し上げて、漁災法の質問は終わりたいと思う次第であります。  それで、お尋ねいたしますことは、共済掛け金率についてお尋ねしたいと思います。言うまでもなく、漁民の経済負担力はきわめて弱いものでございます。したがって、漁民が負担する掛け金というものは低いほどよいことは、言うまでもないことです。しかし、今回は共済限度額も上がったことでありますし、国の再保険もついたことでございますので、掛け金率が多少上がることはやむを得ないだろうとは思います。しかしながら、国の再保険はついた、共済限度額は上がった、国の補助率は上がった、しかし、掛け金のほうも二倍になった、二倍半になったということでは、漁民のほうもあまりありがたくないのでございます。漁民の経済の実態から言うならば、いろいろ国のありがたい処置がなされて、それに対して漁民の負担は低いというところでこの法律に対する国のありがたみというものがしみじみと感じられてまいります。  そこで、今度の法改正にあたって、掛け金料率の変更というのがどういうような姿に平均してなってきているのか、実態をまず御説明願いたいと思います。
  40. 池田俊也

    説明員(池田俊也君) これは、今度の制度改正に伴いまして、新制度のもとでどういう掛け金率になるかという試算を実はしているわけでございますけれども、その試算の一応結果を申し上げますと、これは、四十年度の加入のいろいろ実績がございますので、その実績を一応基礎にいたしまして計算したものでございますが、漁獲共済でございますが、これにつきましては、全部の平均の掛け金率が三・六%でございます。これに対しまして、今回の新しい制度を織り込みました改定案では、五・八%になるわけでございます。比率で見てまいりますと約一・六でございますから約六割の上昇と、こういうことになるわけでございます。ただ、これは全般的な数字でございますので、個々の内容、漁業の種類に入りますと、これ以上に上がっておるものも一部ございますし、また、逆に下がっておるものもあるわけでございます。  なお、これは関連いたしまするのであわせて申し上げておきますが、掛金率の改定と関係いたしますが、掛金に対する国庫の助成について、四十二年度予算におきましてその助成の程度を高くすると、こういうふうに予定いたしておりますので、先ほど一・六倍に上がると申し上げましたが、その点を勘案いたしますと、それほどまでは上がらないわけでございます。これは加入の状況等をどう見込むかということにも関係いたしますので、一がいには申し上げられないのでございますけれども、従来の状態から想定をいたしますと一・四倍程度になる、こういう状況でございます。
  41. 川村清一

    川村清一君 平均して、漁獲共済の場合は、三・六%が五・八%に上がり、一・六倍になる、しかし、国の補助率も上がるので、実質的には一・四倍程度であるというような御説明でございます。平均でございますので、あるいはその程度はやむを得ないかもしれませんけれども、しかし、でき得る限りもっと低率にしてもらいたいというのが漁民の願いでもありましょうし、私どももぜひそう願いたいものと考えております。そのためには、やはり加入率が上がってこなければなかなかいかないわけでございますので、加入率を上げるためには特段の努力を願わなければならない、かように考えるわけでございます。ただ、「掛金率の新旧比較」というのをいただいておるわけでございますが、これをずっと見ますというと、若干理解しがたい点がございますので、なおお聞きしたいのでございますが、変動類型でございますが、安定、一般、変動、上昇と、こういうふうになっております。言うまでもなく、漁業形態からいって一番危険率の少ないのは、上昇型であり、安定型であり、その次が一般型であり、一番危険度の商いのが変動型だろう、こう思うわけであります。ところが、見ますというと、たとえば漁業区分の第一種漁業の採貝、採藻のところを見ますというと、現行の掛け金率は上昇が二・二%安定が二・二%、一般が三・三%、変動が五・七%と、こうなっております。それが改定による掛け金率は、上昇が七・一、安定が六・四、一般が六・四、変動は七・一と、こうなって、倍率は、上昇が三・二倍、安定が二・九倍、一般が一・九倍、変動が一・二倍。それに対して国の補助がありまして、補助率は、先ほど部長からお話がございましたように上がっておりますので、倍率が下がってまいりますが、結論的に言いますというと、上昇は二・三倍になり、安定は二・〇倍になり、一般が一・三倍で、変動が〇・九倍、こういうような数字になっております。一番安定している上昇型の料金の倍率が二・三倍と一番高い。次の安定度の高い安定型が二倍、こうなっていくのがちょっと理解できないわけであります。  たとえば、そのほか、漁船漁業でも、二十トンから九十九トンまでの資料を見ますというと、上昇型は二・四倍、安定型は、二・一倍、一般が丁四倍、変動が〇・九倍。それから百トンクラスになるというと、上昇型はもっと高くなる。安定型ももっと高くなる。定置漁業等においても、上昇型は二・八倍、安定が二・五倍、一般が一・七倍、そうして変動が一・〇倍。危険度が高い、いわゆる危険発生頻度の一番高いものは、これは保険料金も高いはずでありますし、また、料金が変わった場合においては、そこが一番変動が大きくて、倍率も大きくなるのは常識でないかと私は考えるわけであります。ところが、安定度の高いもの、いわゆる上昇型、安定型が二倍あるいは二・五倍になるということは、これはどういうことなのか、ちょっと了解できないんですが、この点をひとつ御説明願いたいと思います。
  42. 池田俊也

    説明員(池田俊也君) これはいろいろ原因があるのではないかと思いますが、直接的に申し上げますと、変動類型と掛け金率というものはそのまま画につながるものではございません。変動類型というものは、過去の一定の漁獲金額の状況を見まして、それの一つの類型分けでございます。それに対しまして、掛け金率というものは、やはり過去の被害の状況等に応じまして算定をするものでございますので、直接には関係しないわけでございます。  ただ、いま御指摘をいただきましたことのあるいは若干の原因に当たろうかということをちょっと考えてみますと、たとえば今度限度額率につきましては改定を加えることにいたしておるわけでございます。その改定の限度額率の変更の度合いは、全部の変動類型を通じまして一様ではございませんで、たとえば変動型でございますと、従来は百分の六十五でございましたものを百分の七十に、百分の五引き上げるわけでございます。それから上昇型でございますと、従来百分の八十でありましたものを百分の九十に、百分の十引き上げるわけでございます。さようなことで、引き上げの幅が違います。ということは、裏返して申しますと、給付の内容に変化がある、給付の内容の変化の度合いが違うわけでございまして、上昇型におきましては、従来支払いの対象になっていなかったものが、限度額率の引き上げに伴いまして、給付の対象になる度合いが変動型に比べて大きいと、こういうような事情が一つはあるわけでございます。それから従来の現行の掛け金率は過去の実績に基づきまして算出をしておったわけでございますけれども、これが必ずしも実情にマッチしていなかったというようなことで、新しい実績を織り込みまして計算をすると、だいぶ変化が出てくる。いろいろなそういうような理由があるのではないかと思うわけでございます。
  43. 川村清一

    川村清一君 まあこれは金額で申し上げたのではもちろんございません。率ですから、必ずしも高い低いという、そういう比較にならないかと思います。しかしながら、上昇型の掛け金の改定による倍率が一番高いということは、これは事実でございますね。その次に高いのは安定型で、その次が一般型であり、変動型というのは一番倍率が低い。それから危険の度合いからいって、危険の一番度合の少ないものは上昇型でございますね、そういうことではないんですか。変動類型というのは、これは何ですか。
  44. 池田俊也

    説明員(池田俊也君) これは過去のそれぞれの経営におきます漁獲金額が共済の対象になるわけでございますけれども、その場合に、過去の一定期間の漁獲金額の状況を見まして、それが年ごとに非常に変動をしているようなものは一定の基準を置いているわけでございますけれども、非常に変動するようなものは変動型、傾向として一般的に上がっていくようなものは上昇型、中間のものが安定型なり一般型になると、こういうような性格のものでございます。
  45. 川村清一

    川村清一君 いただいた資料によりますと、過去の漁獲金額のいわゆるフレの程度ですね、それが変動係数〇・二五以上のものは変動型である、〇・一二以上〇・二五未満のものは一般型である、〇・十二未満は安定型である。それから上昇の線を進んでおるものが上昇型であるということは、これは漁獲共済でございますから、いわゆる漁獲金額の変動が非常にあるということは、いわゆる共済保険の対象になる事故の多い少ない、そのことによって漁獲金額、のフレが大きいか少ないかということになるんではないですか。そういうものとは関係ないんですか。
  46. 池田俊也

    説明員(池田俊也君) 全く関係ないわけではございません。相当程度関係があると思います。ただ、その変動のフレの状況というものは、たとえば過去の一定期間の状況を押えましていろんな変動数型をきめているわけでございますけれども、そのものと、それから、一方、料率の算定の基礎になっておりますその実績の取り方とは、必ずしも一致していないわけでございまして、傾向としては、確かに先生の御指摘になりましたような一般的な傾向はあると思いますけれども、そのままそれが必ずしも同じ数字になってあらわれるというわけではないわけでございます。
  47. 川村清一

    川村清一君 どうも、必ずしもそういう数字になってあらわれることではないのでございますという御答弁です。ないのであったならば、どういうことがあるのかわからないから聞いているのでありまして、そこで、もう少しこれは担当の課長さんでけっこうでございます、非常に事務的な問題ですから。私のわからないのは、これはどんな保険でも、危険度の高いものほど料金が高いんです。いわゆる火炭発生頻度の高い地域にある家屋の火災保険掛け金は高いんです。それから漁船保険だって、北海道あたりの非常に荒海の、海難事故の発生率の高い地帯の漁船の保険掛け金率のほうが高いんです。生命保険だって、若い者より年とった人の率は高くなっているんです。ですから、上昇型が倍率が高くなって、そうして一番変動率の高い変動型のほうの倍率が低いというのが、どういうわけだということを聞いているんですから、ここのところをもう少しこうこうこういうわけだということを説明していただきたい。
  48. 関根秋男

    説明員(関根秋男君) 掛け金率の基礎になりました資料は、昭和三十二年から三十八年の試験実施実績と、昭和三十九年から四十年度の本格実施実績でございます。その実績を見てまいりますと、上昇型と変動型につきましては被害率が高く出ておるわけでございます。なぜこれが高く出るかということでございますが、先生御承知のとおり、今度の改正におきまして限度額率というものを引き上げておるわけでございます。限度額率というものを引き上げますと、事故の起こるチャンスというものか、従来の限度額率と比べまして、上昇型で申しますれば、従来八〇%でありましたものが九〇%に高まるわけでございます。そういうふうに高まりますと、支払いのチャンスはそれだけ多くなるわけでございます。したがいまして、支払いのチャンスが多くなり、支払い金額がふえてくるということになりますと、それに応じて掛け金もたくさんいただかなければならない、こういうことになるわけでございます。変動型につきましては、従来限度額率が六五%でありましたものが、今度の改正では七〇%ということで、五%だけ上がっておるわけでございます。そういった意味では、上昇型のものが受ける支払いのチャンスと変動型のものが受ける支払いのチャンスというものについては、上昇型のほうが前に比べますとチャンスが多くなっておる。こういうことの反映といたしまして、過去の先ほど申し上げました実績に基づいて計算をいたしますと、いま申し上げたような、お手元にあるような数字になるということでございます。
  49. 川村清一

    川村清一君 そういう意味ならわかりました。  そこで、その御答弁に関連して、さらに私は意見をまぜて申し上げなければならないんですが、上昇型というのは、これは危険度合いが低いわけです。低いけれども、たまたま災害にあうと、それを補てんしていただくところの限度額が高いわけでございます。したがって、損害率は高くなる。そういう意味において料金の料率が高くなってくると、こう言うんだけれども、そういう点はある程度わかるわけですが、しかし、上昇型、安定型というのは、変動係数が少ないですから、フレが少ないわけですから、やはりコンスタントに毎年の額がいくんですから、これはわりあいに被害がないわけです。その立場の人が非常に高い料金を払う。もちろん、損害を受けた場合には、そのかわり、補てんを高いところまで補てんしていただけますからいいわけでありますけれども、しかし、そうかといって、二倍半も料率が上がるということはどうかと思うわけです。それから、一方、変動型のほう、これは非常にフレが大きいわけです。山と谷のあれが多いわけですね。ですから、共済あるいは保険の恩恵を非常に受けなければならない、そういう回数が多いわけです。ですから、ある意味においては料金をもっと高くしてもいいんじゃないか。しかし、わりとこういう点の——これはあまり漁業経営と直接関係はないかもしれませんけれども、とにかく金額がコンスタントでないということは、経営が不安定ですから、まあ料金が安いほどいいんです。いいけれども、その割りに今度損害の補てんがまた少ない。受ける損害が大きいというと、傷が大きいわけですね。その傷を浅くする、小さくするためには、やはり料率の点をもっと今度研究していただいて、われわれしろうとが考えても妥当だと思われるような点、そうして、冒頭申し上げましたように、できるだけ掛け金は低くする。せっかく国の保険はついた、限度額は上がった、国の掛け金の補助も上がった、しかし、掛け金のほうは二倍半になった、三倍になったということでは、ありがたいと思った気持ちがみんな消えてしまうわけですね。ですから、そういう点も勘案されて、できるだけ掛け金を低くする。特に加入率が低い。これにまた逆の言い方をすれば、加入率が高くなれば料金が低くなるわけですが、しかし、またこれは矛盾した話かもしれませんが、料金が高いとまたはいれないんですね。特に貧困な沿岸漁民なんかは、料金が高いとはいれない。そのことは加入率を低くする。加入率を低くすると掛け金は高くなるという悪循環を繰り返す。こういう点を総合的に勘案されまして、そうしてほんとう漁民の方々がありがたく思うような掛け金の率にできるだけ改定していくような方向に検討していってもらいたいと、こう思うわけでありますが、長官、いかがですか。
  50. 久宗高

    政府委員久宗高君) さような考慮をいたして今回の料率改定をいたしたつもりでございます。また、今後も合理化につとめてまいりたいと思います。それからあとの御質問の中で、結果として比較されておりますもので、常識的に考えました安定型なり上昇型のものの倍率が高く出ております原因につきまして一部を申い上げましたけれでも、最初に三十九年スタートのときに使いました料率が、上昇、安定の場合につきまして若干資料が少なかったというような点で、結果から見ますと、最初少し低過ぎたという問題もあるんじゃないかと思うのです。そこで、その後の経験を積みまして、今度料率を改定してみますと、前との比較で、実は掛け金の上がった率が結果として大きく出てしまっておるという点もあるかと思います。最初の土台のほうが必ずしも的確でなかったために、今回の数字と比較いたしますと倍率が高く出ているので、若干奇異な感じをお持ちになるかと思いますが、そういう問題も入っておりますのと、また、金額のウエートの問題で、最近の金額にウエートがかかって新しいものを算定いたしました。そういうような問題も加わりまして、見た目の比較が変動類型と何か逆の感じを与えているかと思います。
  51. 川村清一

    川村清一君 次に、国の純共済掛け金に対する助成の問題でございますが現行の二分の一補助が採貝・採藻では百分の六十五、十トン未満では百分の六十、二十トン未満では百分の五十五、それから定置漁業の小型定置については百分の五十と、こういうふうに上がりましたことは喜ばしいことだと思います。しかし、このことも、これで満足するものではなくして、できるだけ漁民の負担を軽くしていく、こういうようなあたたかい気持ちをもって今後ともひとつ補助率アップのために御努力を願いたいと私は考えて、そういう意味から申し上げておるわけであります。  特に御指摘申し上げたいのは、改正案で採貝・採藻業百分の六十五のうち、百分の五というのは暫定的措置である、同じように十トン未満についても百分の五は暫定的措置である、二十トン未満についても百分の五は暫定的措置である、小型定置についても百分の五は暫定的措置である、こういうふうになっておるのですが、暫定措置でありますから、いつまでの措置かわかりませんが、これは暫定ということになれば、来年も暫定、再来年も暫定でありますから、一体政府は何年間を暫定として考えておられるのか。私は、下げるなんということは、概定であろうと何であろうと了解できないのであって、現在よりも少しでも安くしてくれということを申し上げておるのでありまして、これよりも高くなるということには絶対に賛成できない、承服できないわけです。そこで、暫定というのは、一体何年間を考えて暫定措置として出されておるのかを御説明願いたい。
  52. 久宗高

    政府委員久宗高君) これは、補助率と関連いたしまして、政府部内におきましても最後までもめた問題でございまして、最終的には、今回の制度改正に伴います掛け金の負担額、これも含めまして最終のねらいは加入の促進をぜひ全面的に押し出したいということで話しまして、加入の促進という意味合いも含めまして暫定的にこのような料率の負担関係をきめたわけでございます。まあ当分の間という形になっておるわけでございますが、御承知のとおり、各種の法律におきまして当分の間という措置をとっておりますので、読んで字のごとしでございます。
  53. 川村清一

    川村清一君 そんなことではとても承知できない。各種のものは当分の間としてあって、それで読んで字のごとし、こんな答弁では、はいそうですかと言うわけにいかぬ。これは、あんた、冗談に質問しているんじゃありませんよ。冒頭に申し上げましたように、この新しい制度発足するにあたって、全国の漁民が喜ぶと同時に、まだ今後、あれもしてもらいたい、これもしてもらいたいという願望を持っているその漁民の声を代弁して私は質問するんだということを申し上げ質問に立ち上がっておるのでありまして、真剣に申し上げているのでありますから、読んで字のごとしなんというそんな答弁ではだめです。
  54. 久宗高

    政府委員久宗高君) 御質問しておられるお気持ちと同じ意味でお答えしておりますので、それ以上申しかねまして当分の間と申し上げたのであります。
  55. 川村清一

    川村清一君 私の質問しておりますことは、もう百分の五を下げるということに対しては絶対に賛成できない。今後とも、百分の六十五をさらに高めていく、百分の六十をさらに高めていく、百分の五十五をさらに高めていく、要すれば国の補助率を少しでも高めていくことによって漁民の負担を軽くし、全漁民が一人残らずこの保険加入する、そうして漁民の営むあらゆる漁業業種が全部保険加入する、こういう形をとりたい、こういう立場から申し上げておるのでありますから、私の考えていることと一緒だというのであれば、こういう意味に受け取っていただきまして、これは暫定はいつまでも暫定でありまして、そうしてこれがさらに補助率が高くなっていくように今後とも十分御努力を願いたいということを要望申し上げておきます。時間もありませんので、次にお尋ね申し上げますことは、これは水産庁からいただいた資料のほうにありませんので、漁済連の資料を使わせていただくわけでございますが、集団、連合小型、連合大型、それから単独と、こうありますが、その単独というのをほかのに比べてみるというと、件数におきましても、共済金額におきましても、純共済掛け金におきましても、相当の数字を占めているわけであります。ところが、これに対しまして国の補助が全然ないということは、これは少し不合理でないかと思うわけであります。なぜ私はこういうことを申し上げるかと申しますと、私は、午前中の質問で、義務加入、当然加入、こういう方向に向かって道を開くべきである、勇気をもって断行すべきであるということを申し上げましたが、しかしながら、長官は、その考えには賛成しながらも、やはり個々の説得によって自主的に加入を進めていくんだ、こういうお話でございます。そうであるとするならば、もちろん漁業形態は違うことは承知しておりますよ。承知しておりますけれども、単独がこれだけの件数を持ち、共済に入り、掛け金を掛けているのに、国庫から一文も補助がないということは、他のものとのバランスの上に立ってうまくないと思うわけです。不合理だと思うわけであります。これはやはり単独契約に対しても国の補助をすべきである、私はそう考えるのでありますが、これに対していかがでございますか。
  56. 池田俊也

    説明員(池田俊也君) 単独加入というのが、いわゆる三号漁業の場合に比較的大型の漁船あるいは定置の場合でございますが、御指摘のように、現在、掛け金に対する助成はないわけでございます。これは、考え方といたしましては、実は三号漁業の加入方式といたしましては、単独加入という方式と、それからある一定数の者が集まりましていわゆる連合加入というかっこうで入る場合と、二つあるわけでございます。それで、保険事業のまあ保険事業経営といいますか、要するに多数の加入者に入っていただいて事業経営を安定的にやる、こういう趣旨から言いますと、何といいますか、多数の方が一ぺんに集まって入る方式のほうが実は望ましいわけであります。これは損害評価その他の面でもプラスの面がございますので、そういう方式が望ましいわけでございますが、そういう三号漁業の場合も連合して入ります者につきましては掛け金に対する助成をいたしておるわけであります。でございますので、私どもの期待といたしましては、なるべくそういうかっこうで入っていただきたいということであるわけでございます。しかしながら、一面から見ますと、そういう連合加入ではいれないような方に対しては単独加入ということになりますので、それに対しても助成をすべきではないかという御意見が当然あるわけでございます。私どもといたしましては、方向といたしましては、そういう連合加入はございますけれども、単独加入についてもやはり先生のおっしゃったような方向で努力をしたいということで、従来も実はやってきておったわけでございますが、まだ必ずしも実現しておらなかったものでございます。今後ともその点は努力いたしたいと考えております。
  57. 川村清一

    川村清一君 ぜひひとつその方向に向かって努力していただきたいと思います。  次に、時間がありませんので、先を急ぎますが、無事故継続加入者に対する掛け金割引についてお尋ねしたいと思うのでありますが、この措置は全然この法律にはございません。もちろん、いま発足したばかりであり、これからこれを運営していかなければどういうことになるのかまだわからない。まあ試行錯誤過程を経るわけでありますから、すぐということはなかなかめんどうだと思います。しかしながら、そういう考えのもとに検討をしてしかるべきではないかと私は思うわけであります。申すまでもなく、この法律とは今度は兄弟分の法律になります漁船災害補償法に例をとりますと、これは昨年の通常国会において法律改正をいたしましたが、その際、この特別会計は三十二億の剰余金を持っておりまして、二十億をこの保険の準備金に積み立てまして、十二億を中央会を通じて漁民に還付しておる。こういうことを漁船災害補償法はとっておる。したがって、漁業災害補償法におきましても、今後の運営の中におきまして、こういう考えのもとに、その他の保険の例、農業共済なんかの例を見ましても、当然していいのじゃないかと思いますので、そういう方向に努力をしてもらいたいと私は思うのでありますが、そういうお考えがあるかないか、その点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  58. 池田俊也

    説明員(池田俊也君) 無事故の場合の割り戻しと申しますか、加入者のそういう方は経営自体でもいろいろ努力しているというようなこともあると思いますので、それに対する何がしかのプラスを与えるということは、いろいろな制度で行なわれておるわけでございます。ただ、私ども、その場合に、二つの方式を実は分けて考えておるのでございますが、一つは、無事戻しでございます。事故がなかった場合に剰余金の一部を何らかのかっこうで割り戻すという方式でございます。もう一つは、そういう割り戻しはいたしませんが、次の掛け金をいただくときに若干の割引をする、こういう方式がございます。これは割引でございます。  この二つがあるわけでございますが、前のほうの方式は、たとえば農作物共済等で当然加入というようなかっこうでやっております場合に、その間事故がほとんどないというような方々のいろいろな不満等を緩和するというようなことで、無事戻し等が行なわれておるわけでございますけれども、漁済の場合は、御承知のように相当額の赤字をかかえておるわけでございまして、いまの段階で無事戻しをするというだけのまだ基盤が確立されていないのじゃなかろうか、こういう感じをわれわれは持つわけでございます。  それから掛け金の割引でございますが、これは実は養殖共済におきましては若干実施をいたしております。たとえば、三年間引き続き無事故の場合は、一割から二割程度でございますが、掛け金の割引をするということをやっているわけでございます。漁獲共済の場合はなぜやらないのかということでございますが、実はこれはかなり保険技術的な問題がございまして、漁獲共済は、御承知のように、過去の漁獲金額、これが次の年にはまたその基準漁獲金額というものになって、その中に何といいますか反映されるわけでございます。だから、ある年、たとえばことし事故がなかったということになりますと、当然漁獲金額は相当大きいわけでございます。それは翌年の漁獲共済の基礎になるわけでございまして、そういう意味で、翌年においては、毎年の共済限度額というものは変わっていくというような技術的な問題がございますので、割引制度実施するというのがやや技術的に実は問題があるわけでございます。  ただ、確かに、御趣旨のような、無事故の方に対する何がしかの奨励制度というものは、非常に意味があるるものでございますので、私どもといたしましては、なおもう少し研究をしてみたいと、こういう気持ちでございます。
  59. 川村清一

    川村清一君 先ほど申し上げました上昇型の類型にある業種等につきましては、これは危険度が少ない、しかしながら、業種の改定によって倍率が高くなったから、相当掛け金が高くなった。それから単独加入のようなものは、業種とすれば相当大きい、したがって、わりと危険度が少ないというようなこともあるかもしれない、しかし、掛け金が多いからそういう損害が起きない限りにおいては相当な負担をしておるということであります。また、その他安全率のわりと高いものほど掛け金を多く納めているわけでございます。したがって、その分が、何らかの形で、そういう安全度の高いものにやっぱり返ってくる。これは形はどういう形になるかわかりませんが、今後検討していただかなければなりませんが、いずれにいたしましても、何らかの形で解決する、こういうことがあってしかるべきだと私は思うのでありまして、これはすべての保険がそういうふうになっているのであります。しかしながら、現在もう多くの赤字をかかえている連合会等では、とてもできるものではありません。したがって、現在すぐやれということではございませんけれども、今後のこの点の推移の中で当然そういうことも検討していっていいのではないかとこういう立場で私お話をしておるわけでございます。十分ひとつ検討していただきたい、こう思うわけであります。次に、任意共済についてお尋ねいたしますが、この任意共済を本法に取り入れて事業として結集すべきであるということは、これは三十九年の国会審議附帯決議の中にも衆議院では言っておるわけであります。今回の審議にあたりましても、いろいろ衆議院の記録なんかを見ますというとこういうふうなことが出ておりますが、農業の共済等におきましては任意共済が入っております。そうして、漁業共済におきましても漁民は任意共済をぜひ可及的すみやかにこの保険事業の中に入れてもらいたいという要望があるわけでありますが、これに対してどういうようなお考えを持たれておるかどうか、そういう考え方に立って検討を進められておるかどうか、この点をひとつお尋ねしたいと思います。
  60. 久宗高

    政府委員久宗高君) 制度論といたしましては、自然災害を対象にいたしましたものと、厚生なりその他つまり任意共済で扱っているものと、はたして一緒にやるべきかどうか、議論のあるところだと思うのであります。実際にやっております保険経理から申しまして、私どもといたしましては、これは適当な時期に一緒にするのがいろいろな意味で妥当ではないかと考えておるわけでございます。今回の改正におきましては、御承知のとおり、本体と申しますか、本体のほうの体制がいかにも十分でございませんので、かような制度改正を御了承いただきますとすれば、それを機会にもう一回やり直すというくらいの気持ちで、まず根をしっかり張ってという気持ちがございますので、今回は取り上げていないわけでございます。しかるべき時期にそれぞれの団体の自主的な意向を十分取り入れまして善処したらよろしかろう、こう思っておるわけでございます。
  61. 川村清一

    川村清一君 次に、先ほどから何回も申し上げたのでありますが、とにもかくにも、この法律をりっぱに運営していくためには、加入の拡大をはかることであろうと私は思うわけであります。したがって、共済組合連合会も、漁業共済団体加入者をふやすために今後一そうの努力を払わなければならないことは、申すまでもないことであります。これは義務加入ではございませんので、長官の言われるように、浜を回って一人一人の漁民を説得する、その努力の積み重ねによって加入者がふえて、そうしてその事業がりっぱに発展していくと思うのであります。したがって、その説得行為、それによって漁民の協力を求めていく、そのためには、どうしてもその仕事をする人が必要でございます。また、宣伝啓蒙をするその費用も必要でございましょう。要すれば、こういう共済団体の事務費、人件費、こういうものが非常に必要になってまいります。これがなければ、加入者がふえませんし、加入率が低ければ、いかにりっぱな設計保険をつくったところで、効果があがらない、目的の達成ができないわけです。そこで、この事務費、人件費宣伝啓蒙費、こういうようなものに対する国の助成措置というものが重要な意義を持つのではないかと私は思うわけであります。衆議院委員会におきましては、共済団体に対して一そう機動力を持たせるべきである、したがって、こういう組合にはオートバイなんかを持たして、どんどんそういう職員をして車を飛ばして漁民を説得する活動をしなければならぬなどということも言われております。そういうことは必要だと私は思います。それには、やはり、人件費が必要であり、そういう費用が必要なんであります。しかしながら、組合は力が弱いのでありますから、なかなかそれだけの金を捻出することが困難だろうと私は思うわけであります。そこで、政府は、組合に対してあたたかい手を差し伸べ、この法律ほんとうに目的が達成されるようはりっぱな運営ができるような、そういう活動力を組合に与えなければならないと思います。そこで、現在もいろいろ努力されておると思いますが、今後一そう努力されまして、こういう面に対する助成をふやしていただかなければならないと思うわけでありますが、これに対する長官のお考えをお伺いしておきたいと思います。
  62. 久宗高

    政府委員久宗高君) 全く同感でございまして、非常に困難な仕事でございます。さような意味から申しますと、今日までの助成はまことにじくじたるものがあるわけでございますが、今回の改正を機会に従来よりは若干充実したものとしたつもりではございますが、御指摘のように、今これの活動いかんにかかっている点もございますので、今後さらに充実してまいりますように努力をいたしたいと思います。
  63. 川村清一

    川村清一君 最後にもう一点お尋ねしますが、これの会計でございます。もうこれは前の委員質問にもあったのでありますが、この会計は独立した特別会計ではなくして、漁船災害補償法と漁業災害補償法の特別会計と合わさった、そういうかっこうになっているのであります。ただ、管理はもちろん別ございます。しかし、現段階においてはこれはしかたがないことだろうと私は思いますけれども、私は、本来的に考えるならば、漁船災害補償法も漁民のためにあるものであり、漁業災害補償法漁民のためにあるものであり、漁民の経済生活というものは、やはり漁民の生産活動の中から生まれてくるものであって、漁民の生産手段の一番大事なものは漁船であり漁具でございます。その生産手段である漁船、漁具というものは、これはおもに漁船災害補償法でもって補償される。それから生産による漁獲ですね、生産荷、そういうものは漁業災害補償法によって補償される。二つの補償法が一体となって漁民の経済生産が守られる。漁具等におきましては、これは常に漁船に塔載されておる漁具については漁船災害補償法がこれを対象として補償しているが、しかし、操業中の漁具については漁業災害補償法がこれを対象として補償しているというようなかっこうで、結局、これは別なものでなくて、両々相まって漁民の経済生活を守っていくというものでございますから、本来的に言うならば、これは一本であるものだろうと私は思うのであります。しかしながら、現在の段階においては、漁船災害補償法のほうはずっと兄貴分でありまして、昨年で三十二億の剰余金を持っておった。今度生まれる漁業災害補償法は、剰余金どころか、連合会では五億の赤字を持っておるというような状態である。もちろん、保険の仕組みが違いますから、一がいには言えないと思うのでありますけれども、したがって、いまの段階で一本になることは困難でありましょうし、また、いまの段階で一本にするといったら、漁船のほうからは断固として反対するでしょう。うちのほうでせっかく貯えた金を漁業のほうで使うんだというわけで断固反対するでありましょう。だから、いまの段階ではできないでしょう。しかしながら、本来的に言うならばこれは一本であるという基本的な考え方に進むならば、将来、こちらの制度運営よろしきを得て、こちらもりっぱにひとり歩きができる、こういう事態を迎えたならば、そこで両方が一本になる、こうなっていいのではないか、また、そうさせるべきではないか、私はそう考えるわけですが、これに対する長官の基本的なお考えをお聞かせいただきたい。
  64. 久宗高

    政府委員久宗高君) まことに同感でございます、と申し上げたいのでありますが、経緯が、ちょうど御説明の中にもございましたように、現状におきましてはまだそこまで両団体と関係者の間にも熟しておりませんし、その前に理論的にはかくあるべきじゃないかといったようなことで多少ごたごたがあった経緯もございますので、私どもといたしましては、この段階では、やはりまず共済関係が体をなすことに専心いたしまして、しかし、将来、それぞれの団体におきまして漁業の実態なり制度の展開なりをお考えになりまして、さらに統合された大きな発展を希望されるような段階が来ることもあるべし、また、そういう段階におきましては、新たな考え方でこれに臨んでよろしいんじゃないかというように考えております。しかし、現在の段階では、ただいま申しましたような経緯もございますので、特別会計は便宜上あのような形にいたしましたけれども経理区分を明らかにいたしまして、少なくともこの段階におきまして両団体の間にいさかいのないような掘置を行政的にはとるべきだと考えております。
  65. 川村清一

    川村清一君 以上で、相当長時間にわたって質問いたしましたが、漁業災害補償法に対する質問は終わりたいと思います。いろいろこまごましたところまで御質問したわけでありますが、いずれにいたしましても、漁民にとりましては大事な問題でございますので、今後ひとつ十分御努力くださいまして、ほんとうによい法律としてますます発展させるとともに、その運用よろしきを得られるように切にお願いを申し上げたいと思います。特に、けさほど来執拗にお尋ねいたしました、連合会赤字解消の問題であるとか、あるいは加入率を上げる問題であるとか、こういうような問題につきましては、一そうのひとつ御努力を心から御要望申し上げる次第であります。  次に、漁業協同組合合併助成法案について、これは簡単に質問をして終わりたいと思います。  昭和三十五年四月施行の漁業協同組合整備促進法は、漁業協同組合整備基金の設置等の施策を伴って、不振組合の整備につとめてまいったわけであります。その目的とするところは、自主的な努力によって組合赤字を解消すべく、そういうことを、ねらいとしたものであります。その目的達成の併用手段として組合の合併を進めてまいってこられたわけであります。その実績は、昭和四十年で、合併件数で百五十八件、関係組合数四百九十、こういう資料が出ているわけでありますが、この実績の上に立って私は質問を申し上げるわけであります。  第一の質問は、昭和三十五年以来整促法を実施してまいりまして、不振組合の解消、つまり組合が持つところの欠損金、赤字、この解消のために努力したわけであります。しかしながら、資料によりますと、昭和四十年三月三十一日現在で、なお、繰り越し欠損金が三十億千六十三万五千円、組合平均にいたしますと一組合百十八万四千円存在する、こういうことになっているわけであります。今日まで赤字解消のために努力をされてきたにもかかわらず、なおかつこれだけの欠損金が存在しているというのはどういう理由か、この点を御説明願いたいと思います。
  66. 関根秋男

    説明員(関根秋男君) 協同組合整備促進法によりまして不振組合の整備を三十五年以来やってまいったわけでございますが、不振組合は若干は残されているわけであります。その中には、たとえば北海道のニシンの不漁とかそういった関係で大きな欠損金をかかえている組合もあるわけであります。そういうものの反映といたしまして、繰り越し欠損金といたしましては、先生いまお話しのような数字が出ているわけでありますが、御提出しております資料をごらんになってもわかりますように、当期の利益と当期の欠損を比べてみますと、利益のほうが多いということで、徐々に回復はされているのであります。しかし、全体として見ますと、なお欠損金の多い組合もあるということでございまして、そういうものに対しまして、今度の漁業協同組合合併助成法によりまして、そういった不振の原因となっておる、まあいろいろな原因があるわけでございますけれども、基盤の整備ということに力を注いで、基本的にそういった原因を除去するような方向での対策を講じたい、こういう考え方でございます。
  67. 川村清一

    川村清一君 未処理の欠損組合は、三十五年には八百一組合、二八・九%、これが三十九年には六百九組合、二三・九%、三十五年から三十九年までの間で約五%は減っております。この整促法による整備計画の樹立の期限は本年の三月三十一日でありますけれども、この計画が完全に実施されるまでにはまだ期間が五年あるわけです。とすれば、完全に実施された時点においては、推定どのようなぐらいになるか、これはわかりませんか。
  68. 関根秋男

    説明員(関根秋男君) 整備促進法は昭和四十六年まで続いていくわけでございますが、現在の段階におきまして、協同組合の執行体制というようなものが整った大きな不振組合はすべてわれわれのほうとしては取り上げたというような考え方でございますが、整備計画の達成年度であります昭和四十六年でございますか、それまでには、われわれのほうの取り上げました整備組合につきましては、おおむね整備を達成する、こういうことを期待しておるわけでございます。  なお、そういうものと、その後存在するであろう不振組合の欠損金の額を足したものについては、ただいま資料を持っておりませんです。
  69. 川村清一

    川村清一君 今度の法律実施によっそ目標とされておるものは、現在約二千五百組合ある。このうち千三百組合くらいを対象としまして、三組合を一組合ぐらいに合併していきたい。そうすると、大体四百組合ぐらいになる。そうすると、現在の組合と合わせて結果的には千六百組合ぐらいにしたい、これが合併の目標のようでございます。  そこで、お尋ねするわけでありますが、整促計画の終了時点で、なおこういう未処理の欠損金を持った組合が相当あります。まあ計画では不振組合がなくなったかしれませんが、四十六年までありますが、その点の資料をここに持ってきておりませんのではっきりいたしません。しかしながら、事実問題としては、なおかつ相当不振組合が存在するのではないかと私はこれは想定しているわけでございます。そこで、現在まで、整促の中で赤字を解消するということを目的にしてずいぶん努力してきた。そして、それが直接の目的でないけれども、併用手段として組合を四百組合合併してきた。それで、現在その合併されたものが終わって残った組合ですね、これをさらに千三百組合を四百組合ぐらいに合併するということは容易なことではないのではないかと私は考えるのであります。と申しますのは、私は漁業者ではございけせんけれども、まあ北海道におってこういうことを見ておりましたので大体想像がつくんですが、容易なことではないと思う。そこで、千三百ぐらいを三組合を一組合に合併して四百組合ぐらいにしたいという目的を持たれることは自由ですが、しかし、その目的が実現性も何もないような目的であっては、法律審議にあたっての目的とは言えないと思う。私ども少なくとも、まじめに法案審議をしておるんですから、こういう法案を出されて、いま千三百くらいの組合を四百くらいに縮めるという目的をもってこの法案を出しているんだ、審議してくださいというのですから、だとすれば、そういう行政指導なり措置をなされるあなた方のほうでは、相当の見識を持ち、やり得る自信がなければ出し得ないと思うのですが、ほんとうにその自信を持って出しておるのか。私はこれは容易なことではないと思う。
  70. 池田俊也

    説明員(池田俊也君) 先ほどの川村先生の御質問にちょっと触れさせていただきたいのでございますが、従来二百四十五組合を不振組合対策の対象として取り上げました。まあ過去三十五年からやってまいったわけでございますが、どうも全体から見ると必ずしも損失金が減っていない、むしろふえておるというような点で少しおかしいんじゃないかという御印象を持たれておるようでございますが、これは結果としては確かにそういう点はございます。ただ、従来の整促法の扱いといたしまして、二百数十というような特に不振の組合を取り上げまして、それを立ち直らせるということで事業を集中した、こういう経緯でございまして、漁協全般といたしますと、二千五百ある中でございますから、ほんの一部でございます。これは前々から申し上げておるわけでございますが、漁協全体は、御承知のように、地区が狭小でございまして、組合の経済事業の基盤が弱い、こういうことでございますので、やはり必ずしも経営のよくない組合が多いわけでございまして、その中でごく悪いものを取り上げたわけでございます。まあそういう関係で、全体としまして、必ずしも収支の状態が大局的に見ますと顕著に改善されていないということになるわけでございます。そこに、今回、もう少し範囲を広げまして、合併を中心にいたしまして、経営基盤の強化をはかりたい、こういうことで法案を御提案申し上げて御審議を願っておるわけでございます。  ただいまの先生の御質問でございますが、私どもといたしましては、実は、この数字は確かに抽象的な数字でございまして、前々から御説明申し上げておりますように、従来の沿海地区の漁協の一つの平均的な姿を見まして、それ以下にあるようなものをこの際引き上げたい、こういうようなことから出たわけでございます。まあ抽象的なものではございますが、従来県の直接指導をやっております県の担当者の方々の御意見あるいは団体の方々の御意見を十分いろいろ拝聴いたしまして、この程度は何とか努力をすればいくんじゃなかろうか。もちろん、それには、法律という裏づけが必要でございますし、あるいは助成という措置も必要でございます。それがあれば何とかいくんじゃないだろうが、こういうような印象を持ったわけでございまして、ただ全く目当てなしにこういうようなことを御説明申し上げているわけではないわけでございます。なお、従来までの合併の実績を見てまいりますと、最近特に合併の意欲が高まっているのじゃないかという印象を私ども受けるわけでございます。たとえば昭和四十年であったかと思いますが、二百程度組合が合併をいたしております。今回私どもが考えておりますより若干数は少ないわけでございますけれども法律の制定ができ、それに対するいろいろな措置がとられるならば、それに若干プラスした程度でございますので、実現は決して不可能ではないと、かように考えておるわけでございます。
  71. 川村清一

    川村清一君 こういう法律を出されるのでございますから、相当自信を持って出されておることは当然だと思うわけでありますけれども、いま部長の御答弁の中にもありましたが、相当機運が盛り上がってきておる、ただ、合併を促進していく裏づけとして法律が必要なんだ、助成が必要なんだと。このことは、私は非常に重要な発言だと思うわけでございます。法律が必要だということは、法律をつくって、法律できまっているのだから合併せいというふうに上から押えつけていく、押しつけていく合併なんです。先ほど、私は、漁災法につきましては義務加入をすべきじゃないかと。三分の二まで入ったら一これは全部が一人残らず入るなんということはとても困難なことなんですから、憲法でさえ三分の二の賛成があれば改正できるんだと、こういう例にもならない例をもって申し上げました。しかし、長官は、こういう方法をとらないんだ、あくまでも個々説得、理解協力これを求めて加入させていくんだと。まことに民主主義に徹したおことばであるとして私も感激いたしたわけであります。ところが、いまは、合併は法律の裏づけが必要だということは、ある一面においては法律をつくって法律で押えつけていくという思想がそこにあるとしたら——それは部長さんにあるという意味じゃございませんよ。長官にあるという意味でもございませんよ。みんなに聞いてみたら合併の機運はあるんだ、しかし、合併を促進するためには法律が必要なんだと言うけれども、その地方にいる漁村の指導者のものの考え方の中にこういうものが残っているんでないかということなんです。それは非常に危険である。それは、上からきめつけて押えつけて合併をさせようとするんではないかということをおそれて私は申し上げているわけであります。  一面、しかし、私は、いただいた資料もしさいに見てみまして、一人も職員がいない、全く職員が一人もいない協同組合があるということ、しかも、その組合が二百七十四組、一〇・六%もあるということを知って驚いたわけです。まあ私は北海道しか知らないのですが、どうも私は寡聞にしてそんな組合は見たことがない。やはり日本の国は広いなと思って驚いたわけですが、そういう事実の上に立って考えてみるときに、適正な事業経営ができる組合を育成するために合併を進めていくことはぜひ必要なことであります。これはやっていかなければならないと思います。そうしていかなかったら、組合経営ができないと思う。組合経営ができなければ、もろもろの漁民のためにつくった法律運営ができないわけですね。ですから、合併は必要である。しかしながら、合併が必要だからといって、性急なあまりに上から押えつけることは絶対いけないと思うのであります。  そこで、お尋ねしますが、整促の制度期間中にも、整促法というのは合併を直接目的にした法律でございませんから、行政的な指導は水産庁のほうではすぐなされないかもしれませんけれども、各県の水産裸あたりでは知事あるいは小さな地方自治団体の町村長あたりの中では、相当合併を勧告し、あるいは進めるようなそういう指導はしたのであります。したけれども、遅々として進まないで、現在このような状態になってきておるのであります。この事実を私は事実として見なければならないと思うのであります。そこで、大事なことであるにもかかわらず、合併が進まない。その合併を困難にしているおもなる理由は何かという、その理由をまず分析してみなければならない。これは何が理由で、絶対いいことであるにもかかわらず、合併が進まないのか。どういうふうに水産庁はこれを把握されておるか。
  72. 池田俊也

    説明員(池田俊也君) 私の先ほどの御説明の中でことばを非常に簡単にいたしましたので、多少十分な御理解を得られなかったように思うのでございますが、法律が必要であると申しましたのは、実は、直接法律という旗じるしを立てまして行政庁等が強圧的な指導をする、こういう意味で申し上げたのではないわけでございます。と申しますのは、漁協の場合には、これはいまの御質問にも直接つながる問題でございますが、一面では、漁業権の管理団体としての性格を持っているわけでございます。ところが、漁民の感情といたしまして、従来、漁業権について関与しておりまして、漁業権を利用して漁業をやっている人たちから見ますと、幾つかの漁協が合併いたします場合に、自分たちの権利がなくなるのではないか、あるいは非常に薄められるのではないかと、こういうような懸念を持つわけでございます。そういうような点から漁業制度といいますか、それから見てどうかという問題ではなしに、一つの妥協という見方もあるかと思いますが、従来の権利者の権利を尊重する、そういうことによってむしろ合併を円滑にするということも現実的な問題として考える必要があるんじゃなかろうか。こういうことで今回の法案では特例措置を設けておるわけでございます。それからやはり合併をいたしました場合に不必要な経費の支出があるということになりますと合併が円滑にいきませんので、税法等で特例措置を設ける、こういうようなことを今回の法案では規定をしておるわけでございます。私が先ほど法律が要ると申し上げましたのは、そういうようなことを意味しておるのでございまして、そういうような合併の障害となるような事項について、なるべく円滑な合併ができるように、制度的な処置をとりたい、こういうことで、そういうような方法をとっておるわけでございまして、そういうふうにひとつ御理解をいただきたいと思います。  それからただいまの合併の場合の一つの障害となるような事項でございますが、これは漁業権の問題が大きな一つの問題でございます。それからさらに、それぞれの地域の漁民の感情と申しますか、意味では地域的なセクショナリズムといいますか、そういうものがかなりございます。たとえば、一緒になった場合に、組合長をよその部落にとられるのではないか、事務所か自分のところに置かれないのじゃないか、そういったようなある意味では不安がございまして、これが合併のかなり大きな障害になっているようでございます。  それからいい組合と悪い組合とがかりに合わさるということになりますと、従来の組合員の持ち分がございますが、それがいい組合は何か非常に損をするのではないだろうかということで、そういう財務のある意味の不均衡というものがかなり大きな障害になっておるようでございます。  その他いろいろ理由があるかと存じますが、おもだったものを拾ってみますと、そのよううことではなかろうかと思います。
  73. 川村清一

    川村清一君 私も、ただいま部長さんが指摘されたような問題が合併を困難にしているおもなる理由であろうと考えております。特に、漁業権の管理の問題などは、大きな問題ではないかと思います。特に貧困な北海道あたりで言うならば、コンブ漁業に大方を依存しておる小さな部落の組合など、合併が困難な大きなウェートを占めておるというふうに確かに思います。地域の感情が入ってまいります。しかし、地域の感情というのは、部落感情でございますが、これは確かに悪い面もあるわけであります。しかしながら、全部が悪い面でなくて、よい面もあるわけです。いわゆるよい意味の地域感情というものも存在するわけでありまして、その点はやはり尊重してやらなければならない。そういう感情を無視してしゃにむに合併を進めさしていくということは、これは決してプラスにはならないと私は考えるのであります。  一つの例をとってみますというと、現在合併しない、職員の一人もいないようなそういう協同組合というものの存在する地域いうものは、小さな部落だと思うのです。部落と言うのは、北海道で部落と言うんで、本州のほうでは何と言うかわかりませんが、小さな僻村であります。そういう小さな僻地の僻村に参りますと、部落の文化生活のセンターとして学校があるわけです。それから経済生活のセンターとしては漁業協業組合があるんじゃないかと思うのです。それで、学校の統合なんということは、これは非常にむずかしい問題です。やはり愛着があるわけですね。これと同じように、部落の経済生活のセンターである組合に対して、あるいは組合の建物に対して、部落民はやはり非常な愛着を持っているわけです。これは、私は、いい意味の地域感情、住民感情だろうと思うのです。これをも無視するということはいけない。しかしながら、組合が合併するというと組合の役員の職を失うとか、あるいは、小さな漁業権の縄張り争いとか、あるいはまた、ちっぽけな地域感情にとらわれて、そうしてそれが合併を阻止しておるということであれば、これは悪い意味の感情でございますから、それを払拭するために努力していかなければならないと思うわけであります。  いずれにしても、いま部長が指摘されたようなそういう阻害要因があるわけでありますから、そういう阻害要因をどうやって解消しようとするのか。法律をつくって、そしていろいろな助成措置を考えて、こういう助成をする、ああいう助成をするといって、その助成だけでもってごちそうを並べて合併しなさい、こういうことだけではなかなかうまくいかないんじゃないか。やはり、そういう部落民の組合に対する愛着心、こういうような精神的なもの、こういうものも含めてもっと総合的な具体的な方策を打ち立てていかなければ円満な合併はできないんではないか、かように考えるわけでありますけれども、具体的な方策というものをお持ち合わせになっておられるかどうか、それをひとつお尋ねしておきたいと思います。
  74. 池田俊也

    説明員(池田俊也君) これは、ただいま先生の御指摘になりましたように、いろいろな地域的な問題がございます。その中には、ある意味で利己的なものの感じ方もございますし、あるいはそうじゃなくて部落のそれぞれのいろいろな尊重しなければならない一つ考え方もあると思います。要するに、そういうものをいかに調和するか、それを経済的な観点から見た漁協合併の一つの目標といかに調和させるかというのがむずかしい一つの課題であるわけでございますが、私どもは、この問題は、県の当局において、それぞれの団体あるいは町村等の御意見を十分に聞いて、その他のもろもろの漁業上のいろいろな条件を考えまして結論を出していただくのが必要なんではなかろうかということで、まず端的に考えられます方法といたしましては、各県においてそういうような関係の方々にお集まりをいただいて、何といいますか、協議会みたいなものを組織をしていただいて、それぞれの県の将来のあるべき漁業の姿、あるいはそれに関連した合併の姿というものを描いていただいて具体的な検討をしていただきたい、こういうような考え方を持っているわけでございまして、いずれ法律が制定されました暁には、そういうような線で指導をいたしたいと考えておるわけでございます。
  75. 川村清一

    川村清一君 漁業法が制定せられましてから、今日で、約二十年近くたつわけであります。漁業法の目的は、漁業の発展はもちろんでありますが、あわせて漁業の民主化をはかることということを法律に明らかにうたっておるわけであります。漁業法が漁業制度の根幹であることは、申すまでもございません。この漁村の民主化をうたって制定せられたところの漁業法が施行せられてすでに二十年近くもなんなんとしているのに、はたして漁村の姿というものは民主化がどの程度進んでおるかどうか。これを都市に比べてどうか、あるいは農村に比べてどうかと比較検討してみるときに、あるいはこういうことを言えば漁村の方々にしかられるかもしれませんが、私の目から見るときに、漁村の民主化というものは他の地域に比べては近々として進んでおらないのではいか、かように考えております。そういう面のあらわれがどういうところにそれでは端的にあらわれておるかと、こう聞かれますと、私は、たとえば自分たちにとって一番、大事な経済生活の中心をなす組合の役職員の選挙に対して組合員はどのような考えを持ち、どのような熱意をもって選挙権を行使しておるかどうかというようなことを検討してみたり、あるいは、海区調整委員会委員の選挙等がどういうような姿で行なわれておるかというようなことを検討してみるときに、たとえば、農業委員の選挙などと比べてみて、まだまだこれはおくれておるのではないか。こういう一つの具体的な姿の中から、漁村の民主化というものはおくれておるのではないか、かように私は判断しておるのであります。これが、よいことにきまっておる組合の合併——組合を合併することによって漁村はよくなるわけであります、自分たちの生活はよくなるわけであります、組合がどんどん経済事業をやるわけですから。それがなかなかできない、こういうものにつながってくるのではないかと思うわけであります。したがって、これは行政庁である役人の皆さん方の直接の仕事ではないかもしれませんけれども、しかし、組合指導という大きな任務を持っているわけでありますから、こういう任務の中でこういう点はぜひ推進されるべきではないか、指導されるべきではないかと私は考えるのでありますが、この点はいかがでございましょうか。
  76. 久宗高

    政府委員久宗高君) 御指摘のとおりの問題があると思います。御質問の中にもございましたように、旧漁業法を改正いたしました場合に、漁業権を開放いたしまして新しい制度に組みかえたわけでございますが、たまたま当時まだ占領下でもございましたし、漁業権の所有をいかにするかという問題につきまして相当やっかいな問題がございまして、結果におきまして漁業権の帰属を現在の制度のような形にしたわけでございますが、当時、新しい漁業調整委員会というものを設けまして、これでほぼ権利の運用につきましても調整がつくのではないかというふうに考えたわけでございますが、結果におきましては、どうも旧漁業権の切りかえと関連いたしまして、逆に、部落対立と申しますか、部落感情を激成した結果になったように思うわけであります。それが今日まで続いておりまして、漁業権の新しい帰属はきまったけれども、結局、その場合に、その受け手といたしましての漁民組織というものが部落単位にほぼつくられまして、現在、資料で差し上げておりまするように、他の経済活動とは隔絶したかっこうにおきまして、旧町村以下の、しかも部落単位の漁協が相当多数あるという結果を実は招来しておるわけでございます。これはまさに部落対立と漁業権との関連がそのままのかっこうで残ったというふうに思われるわけでございまして、その結果、もっと進んでしかるべき民主化も、それによってむしろ阻害されたという反省があるわけでございます。  そこで、今回の協同組合の合併におきましては、まあそれぞれの各種の組織が今日までいろいろな意味で経済発展に即しまして合併をしておるわけでございます。町村合併なり、他の組合の合併なりの経験の中でほぼ共通した問題が、それぞれの団体がそれぞれ卒業しておられる問題でございますが、漁協の特殊な問題といたしましては、御指摘のございましたような漁業権の管理という問題が、まさに特別な問題といたしまして合併を困難にする漁民の意識の中に深い根をおろしておるように思うわけでございます。  ただ、前回も申し上げましたように、そのようなことで漁民組織の活動を限定いたしております場合に個々の漁民として失うべき経済問題の大きさが実は非常に大きな比重であるということを必ずしも十分関係者に認識さしていないように思うわけでございますので、ここまで他の経済が発展してまいりましたことを考えまと、漁業権の管理問題につきましては今回のような特例がはっきり打ち出されておりますので、その問題については一応心配しないで、そのために失ったものはどのくらい大きいか、つまり組合の規模を拡大しないために失ってきたものがいかに大きいかということを具体的な形で漁民の方々にわかるような素材を提供いたしますことによりまして漁業権のほうの問題の心配は除きまして、それでは新しい経済的な規模に合体していこうとうい機運を促進してまいる必要があるというふうに思うわけでございます。さような意味におきして、先ほども御注意がございましたように、この種の制度運用でしばしば問題になります画一的な運用はもちろん避けますし、上からの押しつけは絶対的に避ける必要があると思うわけでございますが、しかしながら、別の意味におきまして、合併によります利益がどのような形であるかというものを具体的に示す活動におきましては、非常に積極的にやるべきじゃないか。そういう意味におきまして、中央にもさようでございますが、この法案が通りました場合に、県の担当者にお話しいたします場合におきましもて、ただ上からの指導というようなことでの御批判をおそれて運用を消極的にしてはいけない。むしろ素材は十分に活用し、指導も徹底してやるべきだし、熱意をもってやるべきだということを申し上げて御期待に沿いたいと思っておるわけでございます。
  77. 川村清一

    川村清一君 漁業権の問題が組合の合併を阻害しておる大きな要因であるということは私もわかるわけです。それを無理してやりますというと、もう血で血を洗うような大騒動が起きるわけであります。現実の姿を私は見ております。しかし、その漁業権の問題は、今度の法律の特例によって解決するわけですからいいと思うのです。  それから今度は、合併する場合に、一つ組合が大きな赤字を持っておる。その赤字を持っておる組合赤字でない組合が合併していく。それは吸収合併になるのか均等合併になるのかわかりませんが、合併していく。そうすると、結局、赤字のない組合が、合併することによって赤字の負担をしなければなりませんというようなことで、それに対して反対もあります。そういう場合には、この赤字の解消をまずやってやらなければならないと思うわけです。そこで、赤字の問題ですが、これはまた漁村の民主化とも非常に大きなつながりがあるわけであります、先ほどから何回も言っておりますが、私は北海道の姿しか知らないわけでございますけれども、本州のほうにも同じような事例があるのじゃないかと思います。たとえば、ある組合が一千万なら一千万の固定負債をしょっておる。このために、組合員が金を借りるにしても、組合がいろいろな事業をするにしても、それが大きな阻害要因になってにっちもさっちもいかないと、こういうようなことになる。しからば、その一千万の借金と金というものはだれがしたのかということをさらに検討してみると、一体その組合に属する組合員全部の責任かどうかということを検討してみると、そうではない。その組合員のかっては指導者であった何人かのごくわずかの人の借金である。それは、たとえば、定置漁業をやるとかあるいは大型の漁礁を経営するとか、そういうようなことで多額の借金をしておった。たまたま事業が不振になり、倒産してしまった。そういうようなことから借金の返済も何もできなくなった。その借金が固定してしまった。おまけに、借金をしてしまった人はどっかに姿を消してしまった、あるいは死んでしまったと、こういうようなものがあってその借金というものが組合にすっかり焦げついておるわけですね。そのために組合員がたいへんな迷惑を受けておると、こういう組合もある。そういう借金を整するために、北海道の道ざや、あるいは北海道の連合会、信連あたりは、非常に苦労されまして努力されてそういうものの解消につとめられてまいってきておるわけであります。そういう事例が幾つもあるわけです。ですから、借金借金と言ったって、その借金分析してみると、いろんな借金があるわけですよ。そういうことで組合員が役員に対する不信感を持ったり、部落の対立感情を高めたりして、そういうような感情的なものが組合の合併をまた阻害しておる、こういうようなことにもなります。  そこで、これはいろいろ施策が必要でございますが、まずその施策の前に、何といいましてもその組合の指導者に人を得るということが最も大事なことではないかと私は思うのであります。そうでなくても、現在の漁村は、もう若手の労働者がどんどん流出してしまって、そうして漁村に残るのは年寄りばかりである。そういうようなことで、次代を背負ってその組合運営し、部落を指導していく人がいなくなってくる、こういう情勢にあるときに、どうやってその次代を背負ってその組合運営し、部落を指導していく、そういう人物をつくるかということがきわめて大事なことだと思う。要するに、漁村に、その組合運営する責任ある立場に、ほんとうに協同組合精神に徹し、協同組合運動に徹した人を得るならば、その組合はりっぱに育成されていくと思うのです。そういう組合を持った漁村はりっぱに繁栄していくと私は考えておる。これはもう北海道にきちっとあるんですよ。北海道の協同組合連合会あたりは、非常な大きな負債をしょって再建整備の団体になりましたけれども、りっぱな指導者を得まして、北海道の全漁民の信頼を得、あるいは道庁方面の非常な協力を得て、りっぱに再建をされておる、こういう実例もあるわけです。人を得る。そうして、人を得るということは、その部落が民主化されることです。そのためにもつと努力してもらわなければならない。そういう土台があって、その土台の上にいろんな今度は行政的な処置がなされなければならないと思うんです。漁民の社会的な経済的な地位を向上するためのいろんな施策がなされ、あるいは組合施設の拡充、組合への援助措置というものが行政的になされていく、そこではじめてりっぱな組合が育成される。法律をつくって、ただ法律によって合併せい合併せいといって合併をすすめたところで、こんなものは何もならないと私は思う。合併したって、りっぱな組合にならぬですよ、それは。私はそう考えるんですが、そういう方向にひとつ御努力を願いたいと思うわけですが、これに対する御所見を伺いたいと思います。
  78. 久宗高

    政府委員久宗高君) 全く同感でございまして、たしかこの委員会最初のころ御説明いたしましたころに申し上げたのでありますが、今回の合併の法案は、題目はまあ合併という形ではございますけれども、実質は、ごらんいただきますように、現在の組合が九割以上旧町村のままでまあとぼんとしておったということを考えますと、組合の根本的な立て直しと申しますか、それに成功いたしました漁民の意識をもう一回現在の段階で経済問題をも含めましてもう少し大きな視野に振り向けるということであろうかと思うわけでございます。むしろそれを曇らしておりますものといたしまして、漁業権と組合の関係というものが、いわば、何と申しますか、占有権的な形で、そのようなものに目を向けない要素になっておったかと思いますので、それがそのようなものではないんだということを明らかにいたしますと同時に、根本的な漁村の立て直しの一環といたしまして取り組もうといたしておるわけでございます。私どもといたしましても、ただ合併の事務の促進を計画的に進めるというだけではございませんで、根本的な立て直しを実は考えておるわけでございまして、また、さような気組みがない限りにおきましては、現在の進みました経済に即応していけないという感じを持っておりますので、さような気組みで取り組みたいと思っております。
  79. 川村清一

    川村清一君 それじゃ、時間も四時を過ぎましたので、あとこれ一問で終わりたいと思います。  私が申し上げました、まず、漁村の精神的な基盤といいますか、それをつくるために御努力を願う。これはまあ水産庁の直接の仕事でもございませんけれども、そういう方向にも指導の目を向けられると同時に、その基盤の上に、今度は、合併することによってこのようによくなるんだということを啓蒙されると同時に、合併した暁にどんどんとそういう事業を進められる。すなわち、組合の施設を拡充していき、組合の援助措置を進めていく。現在、沿岸構造改善事業というようなものが行なわれておりますが、これは予算が少ないのであります。効果があがっておりません。これは前に申し上げたとおりであります。  次に、漁村の生産をあげるための大事な基盤である漁港の整備、これなどもとんとして実績があがらない。先日も指摘されておりましたが、これなどはこの数字を見ますというと、驚くべきほど少ない。第一次漁港整備計画は、昭和二十六年から二十九年まで、それの進捗率はたったわずか二二・三%。第二次の漁港整備計画は、これは昭和三十年から三十七年年まで行なわれまして、この進捗率は七一%であります。それから、第三次の整備計画は、昭和三十八年から四十五年度まででございます。これは四十一年度推定三五・四%、四十二年度推定四九%、こういう率で進んでおりますが、最終の四十五年度で一体何%になるか。これを道路整備などの進捗率と比べてみると、全然問題にならないわけです。こういう点にはもっともっと努力していかなければどうにもならないと思うわけです。  それから合併のいま問題になっておるようなそういう漁村は、第一種、第二種、第三種、第四種というような漁港よりももっと小さな補修改良と、こういう程度のものだと思うのです。まあこれだっていまなかなか進度がおそい。ですから、こういう漁港の整備と同時に、最小限度船揚げ場のようなものはどんどんこれはつくってもらわなければならないと思うわけです。  それから道路でございますが、これも前の委員会でもお話がございましたが、私はこういう実例を一つ知っております。これは、終戦後、樺太引揚者が、北海道のある海域に開拓漁村をつくったわけであります。そうして漁業をやった。相当水揚げがあるわけであります。その水揚げされた魚を運ぶことができないのであります、道路がないから。トラックが入ることができない。そこで、せっかく漁獲した、そういう魚がちっとも商品価値が出てこない、こういうことになる。ついにその部落はみんないなくなってしまった、こういう例を知っております。あるいはまた、これはそういう開拓地でございません。もうそこに漁村ができてから百年近くもそういう歴史を持っておる地帯でありまして、魚の種類は相当あるわけです。あったところで、とった魚をどこにも運ぶことができないのです、道路がないから、したがって、その辺では、しょうがないから、イカだけをとっておる。イカに依存する漁業。ほかにまだ魚がある、とったらよさそうなものだけれども、とったところでしょうがない、こういうようなところもあるわけです。したがって、道路をつけるとか、道路がなければそれらの魚が冷凍船でもつて運ばれるとか、こういう処置がされれば、その辺では経済的に非常にためになるわけです。そのような処置もぜひ考えていただかなければなりません。  いずれにいたしましても、私は声を大にして申し上げたいのは、これは私一人の意見ではない。いろいろな人に聞いているのです。みんなが言うのですから、おそらくみながそう思っていると思うのですから、水産庁長官、ひとつ聞いていただきたい。役所の中で大蔵省に一番弱い役所は水産庁だと、これはうそですかね。みんなそう言っていますよ。これではたいへん困るのです。私は漁民の声を代弁してきょうはいろいろ長持間にわたって御質問申し上げておりますが、皆さんが、全国の漁民の利益代表という立場で、漁民の生活を守るんだと、こういう立場から大蔵省にどんどん折衝して、強く当たって、予算を獲得してもらわなければいけないと思うのです。漁港の予算の進歩率が四〇%や五〇%ではしょうがないじゃないですか。構造改善事業は相当やっているんですよ。やっておったって、それが数字的に効果が一つも出てきていないのです。これは白書にちゃんと出ております。出ておらないというのはどういうことかというと、予算が少ないから、効果があがるような仕事にまで進んでおらないということなんです。それをもっと大きな予算でどんどん事業を拡大していくならば、必ず構造改善事業は効果をあげてくるはずなんですよ。  それから資源がない、資源がないと言うのだが、ほんとうにないのか。あれほどとれたサンマなんかちっともとれなくなったのは、一体どこへ行ったのか。まさかソ連の船がやってきて全部とっているわけでもないでしょう。白書の上では、何おは不漁であった、しかし漁価が高くなったので漁民の生産高は上がったなんということを平面的に書かれておりますが、なぜ一体そういう資源がいなくなったのかということは一つ分析されておらない。これは皆さんの責任じゃないのですがやはりこれは資源調査ですよ。もっと資源調査の予算をどんどんとって、そうして沿岸にはもう資源がないのか、また、ふやす資源があるのかどうか。あるいは、底びきなどの問題がありますが、底びきは沿岸をひけば沿岸のじゃまになるから、もっと深海をひいて沿岸のじゃまにならないように底びきができないかどうか、深海に資源がないのかあるのか、こういったようなことをもっともっと調査してもらわなければならないと思うわけです。そうして、そういうようなものが遠洋へあるいは沖合いへどんどん出ていってしまうというと、沿岸のほうがあきますから、そうすると、沿岸漁民のいろいろな生産をあげることができて経済生活が楽になってくる、組合運営も楽になる、こういうようなことになるのじゃないかと思うわけでございます。  要約して申し上げますと、世間では水産庁という役所は大蔵省に対して一番弱い役所だと、こう言っておりますが、決してそういうのではないんだ、水産庁は大蔵省に対しては一番強い役所なんだと、こう漁民に言われるような役所になっていただきたい。きょうは大臣がいませんから、久保政務次官から、あなたは責任者でございますから、これに対して御見解をいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  80. 久保勘一

    政府委員(久保勘一君) ただいま特に沿岸漁業の振興を中心とする御熱意のある御意見を拝聴いたしたのでございます。御意見の中にもございますように、特に沿岸漁業の振興という問題は、水産行政の中でやはり一番ウエートを高くして私どもが考えていかなければならぬ部面であると存ずるわけでございます。それは、単に、漁獲高が全体の漁獲の三割以上を占めておる、それにかかわらず非常に多数の漁民がそれに従事しているといったような実態からばかりでなく、従来、率直に申し上げまして、沿岸漁業の振興に対しましては、熱意はありましたものの、予算その他の部面で十分でなかったことは、私どもも率直に認めざるを得ないと思うわけでございます。  具体的な問題としてお取り上げになりました漁港の整備にいたしましても、何回も本委員会で御指摘のございますとおり、整備計画を何回か練り直しながら、なおかつ現在の段階におきましては計画の半ばにも達していないという実態でございます。それに加えまして漁民からのこの問題に対する要請は非常に熱烈でありまして、私どもが沿岸漁業の問題について陳情を受けまする問題の大半は漁港の整備の問題でございます。したがいまして、これは沿岸漁業の基盤でございまするので、従来もそうでありましたが、さらに私どもは熱意を持ちましてこの予算獲得には努力をいたしてまいりたいと存ずるわけであります。  次に、構造改善の問題でございますが、この点につきましては従来水産庁としましても努力をいたしておりまして、その一部につきましてはそれぞれ効果があがりまして、これまた各地の沿岸漁民からぜひ自分の地先に構造改善事業実施してもらいたい、漁渠の数をふやしてもらいたいという要望は根強いのであります。したがいまして、構造改善についても今後一段の努力を予算的にもいたさなければならぬと思うわけでございます。  特に御指摘のありました沿岸漁業に対する沖合い等からの競合の問題でございますが、この点についても、従来、水産庁としましては、県当局特に漁業調整委員会等を指導しまして、競合をいたさないように、沖合いから沿岸を圧迫することのないようにという点については、いろいろと法・政令その他をもちまして規制をしてまいっておりますけれども、これまた率直に申しまして、沖合いからの競合が依然としてあとを断たない状態であるように思います。たとえば、網の問題にしましても、漁船のたきます燭光にいたしましても、それぞれ政令あるいは県の条例等をもって規制はいたしておりますけれども、これらの点は沖でやる仕事でありまする関係から、なかなか監督その他も不十分でありまして、十分徹底をいたしておりません。そういうために、どうしても沿岸に対する沖合いからの何と申しますか、侵入といいますか。資源の保存上いろいろと隘路、問題があることは事実であります。したがいまして、今後さらに沿岸漁業を守りますために、沖合い漁業との漁業調整の問題については特は重点施策として考えてまいりたいと存ずるわけであります。  とにかく、総体的に申しまして、御指摘のありますとおり、私どもは、今後、零細な漁民でありまする沿岸漁業を、特に今日無動力船がまだ多数あるというような実態からながめましても、一段と努力をして沿岸漁業の振興に尽くしたいと決意を申し上げる次第でございます。
  81. 野知浩之

    委員長野知浩之君) ちょっと速記をとめて   〔速記中止〕
  82. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 速記を起こして。  両案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  83. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 次に、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  提案理由の説明及び補足説明を聴取いたします。久保政務次官。
  84. 久保勘一

    政府委員(久保勘一君) 加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明いたします。  わが国酪農は、近年、目ざましい発展を遂げてきたのでありますが、昭和三十九年ころを境に、生乳生産量の伸び率は漸次低下傾向を見せ始め、特に昭和四十一年下期からは、その伸び率が急速に鈍化するに至っております。  一方、牛乳乳製品の需要は、きわめて旺盛でありまして、特に飲用牛乳の消費の拡大は顕著なものがあり、飲用牛乳、乳製品ともに、今後とも国民食生活の高度化等に伴いまして、その需要は着実に増大するものと見込まれるのであります。  このような需給の動向に対処しまして、昭和四十一年度から施行されました加工原料乳生産者補給金等暫定措置法に基づく加工原料乳についての生産者補給金の交付、畜産振興事業団の主要乳製品についての価格安定操作をはじめ、各種の酪農振興施策を講じてきたのでありますが、これらの施策の効果は、いまだ十分あらわれず、四十一年度の年間を通じて、牛乳乳製品の需給の逼迫傾向が持続し、畜産振興事業団の乳製品の輸入はこれまでにない量にのぼり、その輸入売り渡しにより生じました売買差益も、本制度創設当時には予想しなかったほどの額に達するに至ったのであります。  最近における生乳生産の動向がこのまま推移する場合には、わが国農業の基幹たるべき酪農は停滞の度合いを強め、今後ますます国民食生活において重要な地位を占めてまいります牛乳乳製品の安定的供給にも支障を来たすおそれさえありますので、政府としましては、この際、各般にわたる酪農振興施策の積極的展開をはかり、かかる事態に対処しなければならないと考えている次第であります。その一環といたしまして、今後家畜導入事業の飛躍的拡大、草地改良事業の拡充、加工原料乳生産者補給金制度の推進等の措置を講ずることとしているのでありますが、さらに、これらを補完し、生乳生産の停滞に対処し酪農の発展を軌道に乗せるための措置として、畜産振興事業団の乳製品の輸入売り渡しに伴って生じます売買差益を、酪農振興対策に積極的に活用することとし、このたび加工原料乳生産補給金暫定措置法につき所要の改正を加えることとした次第であります。  畜理振興事業団は、それぞれの業務にかかわる経理を業務の性格に応じ区分して経理処理することとなっており、加工原料乳生産者補給金の交付業務と乳製品の輸入売り渡し業務とは補給金等勘定という一つの勘定において経理処理することとなっておりまして、現行法においては、乳製品の輸入売り渡しに伴って生じます売買差益を助成業務等の他業務へ活用することはできないこととなっているのであります。  今回の改正法案におきましては、この点を改め、補給金等勘定において剰余を生じました場合は、その一部を畜産振興のための助成業務を経理処理しております助成勘定に繰り入れる道を開き、その繰り入れられた資金を、酪農振興に必要な助成のための財源として活用することとしているのであります。  以上が、この法律案を提案する理由及びその主要な内容であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますよう、お願い申し上げます。
  85. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 岡田君。
  86. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案提案理由の補足説明を申し上げます。  この法律案提出する理由につきましては、すでに提案理由説明におきまして申し述べましたので、以下この法律案の主要な内容を御説明申し上げます。  まず、改正法案の主要点は、畜産振興事業団の補給金等勘定において剰余を生じた場合は、その一部を酪農の振興等に資するための事業についての助成の業務に必要な経費の財源に充てるため、助成勘定に繰り入れる道を開くこととしている点でありまして、繰り入れにあたりましては、農林大臣の承認を受けて、補給金等勘定の決算上生じた残余の額に政令で定める割合を乗じて得た額をこえない額を助成勘定に繰り入れることができることとしております。なお、この場合の政令で定める割合としては、現在のところ、八割と定めることを予定しております。  次に、畜産振興事業団の助成勘定におきましては、国内産生乳による学校給食に対する助成と畜産の振興に資するための指定助成対象事業に対する助成とを行なっておりますが、今回の法律改正により繰り入れられる資金については、指定助成対象事業に必要な経費の財源に充てるための資金として管理しなければならない旨規定しているのであります。なお、この場合の指定助成対象事業につきましては、農林省令で定めることとなっておりますが、その具体的内容につきましては、生乳生産の回復をはかるため当面緊急と目されます有効適切な事業を定めることを趣旨として検討しております。  最後に、附則におきましては、昭和四十一年度に生じました乳製品の輸入差益の取り扱いについて規定しております。  すなわち、この改正法案は、公布の日から施行することを予定しているのでありますが、畜産振興事業団の昭和四十一事業年度は去る三月三十一日に終了し、五月三十一日までに決算を完結しており、昭和四十一年度の補給金等勘定の剰余金はすでに積み立て金として整理されておりますので、附則をもって、すでに積み立てられた積み立て金を、その額に政令で定める割合を乗じて得た額まで減額し、その残余を助成勘定に繰り入れ、本則の規定により繰り入れる資金と同様の取り扱いをすることとしているのであります。なお、この場合の政令で定める割合としては、二割と定める予定でありまして、昭和四十一年度の決算においては、約四十二億円が補給金等勘定の積み立て金となっておりますから、約三十四億円が助成勘定に繰り入れられることとなります。  以上をもちましれ、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明といたします。
  87. 野知浩之

    委員長野知浩之君) それでは、本案に対し質疑のある方は、順次御発言願います。
  88. 高橋雄之助

    高橋雄之助君 ただいま提案理由の説明があったわけでございますが、この改正については賛意を表するものでございますけれども、将来のこと等についていろいろ重要な点もございますでので、若干御質問を申し上げたいと思うわけでございます。昭和四十一年度の予算編成のおりに、農林省からいろいろ説明があったわけでございますが、乳製品の輸入の差益金についておおむね三億ないし五億の差益金が出るだろう、したがって、この補給金の予算については、四十億円余りを見れば、その差益金を入れても四十五億というふうになるので、その予算を見れば当面おおむね支障がないだろう、こういうふうな説明がございました。私どももずいぶん農林省と折衝を重ねたことがあるわけでございます。しかるに、三億ないし五億というのが、いろいろな理由もあるようでございますが、しかもその十倍に相当する差益金が出たということでございますが、三月ごろからわずか四カ月ないし五カ月の間に十倍にも相当する差益金が出たというそのおもなる理由はどこにあったのでございましょうか、その点をお伺いいたしたい。
  89. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 御承知のように、国民生活の向上に伴いまして、牛乳、乳製品の需要というものが著しく増大をいたしておるわけでございます。これに対しまして、牛乳の生産は、三十九年ごろを境といたしまして伸び率が停滞をしておるわけでございますが、特に昨年八月ごろを境にいたしまして急速に伸び率が低下をいたしたわけでございまして、対前年同月比二%程度にすぎないという状態にありたわけでございます。こういうふうな事情を反映いたしまして、当初、お話しのように、乳製品の輸入はきわめてわすかでありまして、その差益も三億ないし六億程度というふうに考えておったわけでございますが、先ほども申し上げましたような事情がございまして、急速に国内の生産の伸びが停滞をいたしました関係から、必要な乳製品を輸入せざるを得ないというふうなことになったわけでございまして、その結果といたしまして、先ほども申し上げましたように、相当な差益の発生を見るというふうな事態になったわけでございます。
  90. 高橋雄之助

    高橋雄之助君 いま、急速に伸び率が停滞鈍化してきたということでございますが、農林省は、すでに、畜産振興の関係については、農業本法に基づいて、いわゆる将来の展望ということでいろいろ見通しの関係について策定しておるものも実はあるわけでございます。しかもまた、こういうような画期的な制度が設けられて、いよいよ原料乳に対してはそういう補給金が交付される、こういうようなときにあたって、急に鈍化してきたということは、われわれもその点が非常に重要な問題でないかと思うわけございます。法律をつくるにあたっても、国といたしましても、また、国会といたしましても、非常に論議いたしましてこういう画期的な法律がつくられたわけでございまして、そういう中で特にまたこれが八月以来鈍化してきた。ただ、需要が伸びた、生産が減ったということばかりでなくて、その内容について特にお考えになっておると思いますが、その点をもう一度お伺いいたしたいと思います。
  91. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 三十九年以来の酪農の状態を考えてみますと、それまでは酪農の乳牛飼育農家というものはふえてまいったわけでございます。それにつれまして乳牛の頭数もふておりまして、酪農というものは概念的な拡大をいたしておったわけでございますが、三十九年ごろを境といたしまして酪農の農家戸数が減少いたしますという事情が生じたわけでございます。一方で、頭数につきましては、依然として増加を続けておりまして、いわゆる多頭化飼育農家というのが増加をいたしてまいってきたのでございます。しかし、少数飼育農家の減少の割合には必ずしも多頭飼育農家の増加というものが増大をしないというふうな関係もございまして、乳牛頭数の伸びというものはやや減少の傾向をたどってまいったわけでございます。  これに伴いまして、生乳の生産というものも、伸び率が減少ないし停滞をしてまいったわけでございますが、四十年まではしかしそれにしましても生乳の生産は八%程度の伸びを示しておったわけでございます。四十一年に入りまして、当初は七、八%程度の生産の伸びを示しておったわけでございますけれども、八月から急速に減少いたすということになったわけでございますが、この理由といたしましては、先ほど申し上げましたように、一つは、多頭飼育農家の増大に対しまして少数飼育農家の減少のほうが多かったということが一つでございます。それからもう一つは、国内の牛肉の資源が減少いたしましたために、牛肉の価格が騰貴いたしまして、そのために乳牛を肉資源として屠殺するというふうな傾向が出てまいったわけでございます。そういうふうな二つの理由から乳牛の頭数の伸びが停滞をし、したがいまして、また、牛乳の生産の伸びが停滞したというふうに考えておるわけでございます。
  92. 高橋雄之助

    高橋雄之助君 いま、そういうような鈍化いたしました理由について、二、三をあげてお話があったわけでございますが、私は、もちろん多頭化飼育の方向に進んでおりますことはお説のとおりでございますし、また、少数飼育の農家が減ったということも大きな原因でございますが、さらに、三点としてあげられました、牛肉の価格が高騰して牛肉の資源が払底してきた、かなりの輸入もしておりますけれども、それではとても消費に及ばないというようなことの結果が大きな原因ではないか、かように考えるわけでございます。  そのことは、多頭化飼育にいたしましても、少数飼育にいたしましても、酪農を経営するということについては、農地をはじめとし、いわゆる施設、それに牛、こういうなことから申しましても、ばく大な資本が実はかかるわけでございます。したがって、そういう理想経営を行なうためには、相当の借り入れ金をしなければ行ない得ないというのが現状だと、かように考えるわけでございまして、そういうような将来に目的を持ちながら酪農経営を進めておりますが、この借金のためになかなか容易でない苦悩を酪農家の方々が悩んでいるようなわけでございまして、したがって、牛肉が非常に高くなった、まあ一頭売れば普通の牛でも二十万以上、あるいは肉牛にしても三十万以上の価格で売れる、こういうような状態になりますれば、やはり借金の重圧に悩んでおりまする農家でございまするから、勢い牛を手放して少しでも借金を済まそうというような気持ちになるのは当然でございまして、そういう点から相当の牛を手放した、こういうことに一番大きい原因があるのではないか。  さらにまた、今日、酪農経営は、まあいまから十年ほど前からは、五頭か六頭あれば大体ペイするんだということで進んでまいりましたが、今日の経済事情、さらにまた、飼料の高騰その他のいろいろな高騰によりまして、なかなか五頭や六頭の牛では酪農が安定した経営にならないというような事柄から、少数の飼育者はやめざるを得ないというようなことになっていることも事実だと思う次第でございます。  私は、非常に残念に思いますのは、国が相当今後の酪農を成長財として大いにこれを進めていこうという態度を持ちながら進めているわけでございますけれども、一面にそういうような将来まだ相当使える牛が肉に淘汰されていくという問題でございます。牛は、申し上げるまでもなく、乳をしぼるまでの間の期間というものは、十八カ月以上にならなければ受胎させることができ得ないわけでございまして、体内に約三百日いるわけでございますから、二十八カ月余りになりませんと乳をしぼるような状態にならないわけでございます。ところが、肉牛が非常に高くなったということで、そういうような貴重な牛がどんどん肉に落とされていくということに大きな問題があろうと思うわけでございまして、この点は私は非常に残念に思っているわけでございます。しかしながら、いまの経済事情、また、日本の制度の中で、これを禁止して、あくまでもその牛の寿命を伸ばすというようなことは、なかなか容易でないと思うわけでございます。しかしながら、これは、受胎不可能の牛とか、あるいは特別障害のある牛、老齢の牛、こういう牛は淘汰することはよろしいわけでございますが、何と申しましても、相当使える牛を肉に落とすということはこれは非常に問題があるわけでございまして、こういう点については農林省は何らかのこれに対する防止対策をお考えになっているかどうか、その点、お考えがありますれば、お伺いいたしたいと思います。
  93. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 乳牛が肉資源として屠殺されますということにつきましては、一方で肉牛と乳牛との相対的な価格関係が必ずしも乳牛にとって有利でないという条件があることが一つでございます。で、肉牛が高いということは、一つは、需要に対しまして供給が必ずしも十分でないというふうな事情があるわけでございます。したがいまして、一方で肉牛の増産ということに対しましてできるだけの努力をいたすということにいたしまして、予算その他の措置をもちましてこの生産振興のために努力をいたしておるわけでございます。一方、乳牛につきましては、御承知のように、昨年から不足払い制度が始まりまして、その不足払い制度の効果が逐次出てまいるというふうに期待しておるわでございますが、価格条件の不利につきましても補正をいたしまして、乳牛が増大する、酪農農家が安定するというようなことをはかってまいっておるわけでございますが、今後これらの点につきましても十分意を用いてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  94. 高橋雄之助

    高橋雄之助君 まあこれは単にそういう点ばかりでなく、いろいろなもろもろの条件が、備わってこないとこの問題の解決はなかなか容易でないと思うわけでございますが、さらに、こういうような差益金が相当出たから、これをもって生産対策のほうに回す、こういうことは、もちろんその点はよろしいのでございますが、やはり根本的に酪農を大いに進めるということでありますれば、もとより四十二年度の予算の中にもそれぞれ見込まれておるわけでございますけれども、これが不十分な点がずいぶんあるわけでございます。したがって、単にこういう問題の前に、酪農振興のためにはさらに一そうの対策を強化することをお考え願わなければならない、かように実は考えるわけでございます。  特に、また、昨年の例もさることながら、今年の予算編成にあたりましても、当初、補給金の関係は一般予算については十五億と、こういうことでございましたが、最後に二十億ということで、あとの二十億は、こういう差益金が相当出るから、その点でその資金に回していこう、こういうことでございますが、この点、この法律のできた当初においての考え方はそうではなく、あくまでもやはり国の一般予算において不足払い制度に伴う予算というものは計上するんだ、こういうことを私ども承知しておったわけでございますが、予算の編成に当たりますると、結局、そういう財源があればその財源依存して、昨年が三十何億であったわけでございますけれども、本年は二十億と、こういうことになっているわけでございまして、酪農振興に対しては予算の面においてもそういうようなものの考え方に立っておるということは、私はまことに遺憾だと考えるわけでございますが、これはまあ昭和四十三年度においてもこういうようなことになる点が多いかと思うわけでございますが、やはりもともとの基本線においてあくまでも一般会計から補給金の予算を見るというたてまえが正しいものかと考えるわけでございますがこの点はいかがでございますか。
  95. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 政府の酪農政策は、牛乳及び乳製品の国内自給を目途とする酪農近代化基本方針に基づくものでありまして、この酪農政策の一環として講ぜられております不足払い制度は、本来、乳製品の輸入差益に大きく依存することを期待するものではないわけでございます。換言いたしますならば、不足払い制度の財源としては輸入差益は補完的なものとして考えられているわけでございます。ただ、現実の需給関係から輸入が必要となりまして輸入に差益が生じました場合に、これをいかに使用するかが問題となるわけでございますすが、現行法のままでは不足払いにのみ充当するということになっているわけでございます。しかし、最近の乳製品の需給事情から見まして、輪人差益金を不足払いにのみ充当することは妥当でないという考えから、これを酪農振興対策にも活用し得る道を開くために、今回法律改正の提案をいたしました次第であります。したがいまして、現下の情勢にかんがみまして、酪農振興対策に必要な財源を確保し得るよう十分配慮してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  96. 高橋雄之助

    高橋雄之助君 私、なぜそういうことを特に申し上げるかと言いますれば、今度のこの問題は、こういう一つ制度によって差益金の使途等についても法改正によって行なわれるわけですからよろしゅうございますが、たとえば農産物全体についても、自由化に伴いましていろいろ保護対策を強力に進めながら農産物の価格を維持し生産の増強をはかるというようなことで、たとえば大豆あるいは麦その他においてもそうでございますが、当初の法律をつくり、改正する場合においては、そのことを非常に力説するわけでございます。ところが、いよいよそれが実施段階に入ってまいりますると、その当初の目的が全く顧みられないような状態になりつつあるのが今日の特態でございます。これも、そういう法律の改正あるいはまた法律を制定する場合においては、将来の農業生産の上に大きく裨益するために、あるいはまた、貿易自由化になった場合においても必ず保護されるんだというようなことの中で行なわれておりまするが、すべてそれが全くそのとおりに実施されていないというところに私は非常に不安を感じ、現実にその点については非常に不満を持っておるものでございますので、この問題等についてても、いまお話がありましたとおり 本質的には一般会計で見るんだ、しかしながら、乳製品の不足から相当の輸入差益が出たのだから、それを有効に使うために生産対策に使う、このことについてはけっこうなことでございますが、しまいにはそれが出たからもう一般会計からこの中に入れる必要はないんだということを、大蔵省は常にそういうことを強く言われるわけでございます。その場合に、農林省が大蔵省の強い意見に従いまして、ついに法律の本質を失って、そういう差益金にたよって生産対策をやる。これは日本の酪農を振興する大きな基本的な面から考えてみても大きな誤りでありまして、そういう点については、あくまでもこの法律の精神に基づいて大蔵当局とも常に折衝して、そういう差益が出た場合には、いま申したような、また、この法律の改正の精神に基づいて、その辺に大きくこれが適切なしかも有効な形の中で使われていって、酪農がほんとうに前進して、安心した経営ができると、こういうことにならなければなりませんので、特にそのことを申し上げるわけでございますが、昭和四十三年にもこういうことが起きてくるわけでございますが、そのときにおけるところの農林省の態度、このことをもう一度お聞かせ願いたいと思います。
  97. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) ただいま申し上げましたような基本的な態度で今後も進んでまいりたいというふうに考えております。
  98. 高橋雄之助

    高橋雄之助君 いま、肉資源の関係についてお話もあったのでございますし、私も申し上げたわけでございますが、豚肉あるいは鶏卵等については非常に生産が上がり、さらにまた、政府の手持ちが非常に多くなって、その処置に困難を来たしておるということでございますが、国民の食生活の中における肉をとる場合においては、何と申しましても、牛肉ということが大きく要求されておるのでございます。したがいまして、酪農をさらに伸ばして、計画どおり将来の見通しによって進めていくということになれば、こういう大きな問題の処理をしながら牛の頭数をふやしていく、こういうことにならなければならないと思うのでございます。これについては、今年の予算の中にも、それぞれ肉牛の飼育についての特別の処理等についてもあらわれておるわけでございますが、そのことだけでなく、現に乳牛の生産の中に、一年間において牡犢が生産の半数以上を占めておるのでございます。外国から、資源の足りないために、輸入をしてきて、それをふやすなり、また、直ちに肉に使用するなりということをはかってみても、なかなか需要に追いつかない現況であるわけでございます。したがって国内における乳牛の生産の中に占める牡犢、これが半数以上もあるわけでございますので、これを活用して肉資源に充てるということが最もこの資源を確保するためにも手近な問題でないか、かように考えるわけでございます。ただ、酪農家に対しましてそのことをすすめてみましても、牡牛を飼育して肉に育てて売却するということについては、六カ月なりあるいは八カ月の間、どうしても脱脂乳その他の飼料を与えなければなかなか育たないのでございますので、その点でやはり経済的にペイしないということで、生後直ちにもう処分してしまう、こういうことでございますので、これをできるだけ活用して、酪農家にもそれを飼育させる。いろいろな方法によって飼育するわけでございますが、具体的にそういう点を行政指導あるいはまたいろいろな要望にこたえて進めていく。その場合における、脱脂乳を与える時期における特別な一つの助成措置、こういうものをしますれば、かなり肉資源を確保できるわけでございますので、そういう中においてやはり肉資源の自給度を高めていく、そうして将来ある乳牛を肉に落とさないということを積極的にはかっていくことが肝要ではないか、かように考えるわけでございますが、農林省では、この点についてお考えになっているかもしれませんが、何か具体的な方法をお考えになっているかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  99. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) お話のように、今後牛肉に対する需要が増大いたすわけでございますが、これに対しまして、国内の肉牛の生産のみをもってしてはこれに十分対応しし得ないだろうというふうな見通しがあるわけでございます。したがいまして、国内でこの不足分について牛肉を供給するためには、どうしても乳牛の牡犢に依存せざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。御承知のように、従来、乳牛の牡犢だと、生まれますと直ちに屠殺されましてハム等の加工原料として使われておったわけでございますが、肉牛資源が減少いたしましたことに伴いまして、牡犢の育成の価値が認められてまいりまして、最近牡犢の育成が盛んに行なわれるようになってまいりつつあるわけでございます。牡犢の育成といたしましては、一つは三カ月くらい育成をいたしましてこれを屠殺するという一つの形態がございますが、十二カ月ないしは十八カ月くらい育成をいたしまして、四百五十キロくらいの体重にいたしましてこれを屠殺して肉として使うというふうな形があるわけでございます。そこで、私たちといたしましては、先ほど申し上げましたように、牡犢の占める地位がだんだん大きくなってまいるというふうに考えますので、牡犢の育成につきましては積極的に振興をはかっていくというふうな考え方をいたしておりままて、このために現に競馬益金等を使用いたしましてこれが振興のための助成をいたしておりますし、今後もさらに積極的に助成をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  100. 高橋雄之助

    高橋雄之助君 その点については、いまお説があったわけでございまして、一そうこの点に重点を置いて対策を進めていただきたい、かように考えるわけでございますし、また、差益金の中においても、十分この点に対するところの資金の使用等についてもお考えを願いたいと特にお願いを申し上げておく次第でございます。  さらに、先ほども申し上げましたが、今日の酪農家の経営については、ばく大な資金を要し、その大半が借り入れ金によって資金をまかなっておるということでございますが、その借り入れ金も、現状では、最も低利の長期のものではないのであります。酪農家が、真に酪農を安定し、所得を向上していくということになりますれば、土地条件から始まっていろいろな施設等も必要とするわけでございますので、今日いろいろ借り入れ金でまかなってやっておりますが、非常に苦しい状態にあるわけでございます。この点に対して、いわゆる資金に対する金利の助成、こういう点を特に考えていただきたい。これは一つ制度の中で借り入れ金を行なっておるわけでございますが、その金利ではなかなか容易でない現況にあるわけでございますので、きのうも実は北海道開発審議会の中で北大の矢島先生がいろいろ発言しておりましたが、その中で、今日の農業を営む場合においては、金利コストというものは三分以上ではとうていやっていけない、金利コストというものは、これからの農業については少なくも三分以下でなければ経営は十分軌道に乗らないんだということをはっきり言っておられました。私どもも全くそのとおりだと、こう思うわけでございますが今日、三分の金利というのは、現状ではないような状態でございます、三分五厘以上のものはございますけれども。そういうことでございますから、この場合、この資金を活用し、そういう点にもてこ入れをして経営が軌道に乗るように考えてやる必要があるのじゃないか、かように考えているわけでございますが、この点についてもお考えになっておるかとも思いますが、この点をどういうふうにお考えになっておるか、お伺いいたしたいと思います。
  101. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 酪農が非常に投資を要するということは、先生のお話しのとおりでございまして、したがいまして、酪農に対する資金の融通ということにつきましては、特段の配慮を払う必要があるというふうに考えております。現に、近代化資金あるいは酪農経営拡大資金等で特に配慮をいたしておるわけでございますけれども、最近の酪農事情にかんがみまして、今回の差益を使用いたします場合には、そのような点につきまして特に配慮をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  102. 高橋雄之助

    高橋雄之助君 さらに、酪農を進める場合においては、何といってもえさの問題でございますし、まず第一条件としてより以上りっぱな草をつくるということが、これはもうだれしも認めておる大きな要素でございます。したがって草地造成等についても、大規模の草地造成、あるいはまた、それぞれ県営とかあるいは公団営の草地造成が行なわれておるわけでございまして、かなり従来よりも前進した形で草の育成に非常な力を入れておることは、私ども承知しておるわけでございます。しかしながら、まだまだその点が不十分な関係から、外国から相当の多くの飼料を入れてこなければならない。牛のほうは比較的少ないようでございますが、他の鶏とかあるいは豚とか、そういう家畜については、ばく大な飼料を外国から購入しておるというところに大きな問題があるわけでございまして外国の下請けをしておるというような今日の畜産事情ではないが、こういうふうに考えるわけでございます。大規模の草地造成等についても進めておおりますが、大規模の草地造成は共同育成ということに活用されておるわでございまして、草地を造成しましてもなかなかその地帯全体の草地として活用はできない。その村なり一部の者しか活用でき得ない現況にあるわけでございまして、今後とも草地の造成については一そうの国の施策を強力に推し進めてもらうことにわれわれも強く要望してまいらなければならないと思いますが、それより先に、やはりお互いが——府県の場合はなかなかそういう用地を持っていないかもしれませんが、生産基地といわれる北海道等においては、百万ヘクタールの草地可能地というものが実はあるわけでございまして、今後とも相当の草地を造成していかなければならない場所、そうして生産地の大いに実をあげていかなければならないと思うわけでございます。しかしそれはそれとして、個々の農家が一町なり一町五反なりの草地になり得る土地を持っておるのでございます。やはり、自分の手近なところにおいて草地を造成し、草をより以上、生産するということが、酪農に結びつく大きな要素であろうと思います。ですから、大きい草地の造成についてはいま申しましたとおりでございますけれども、ここにおいて多少十ヘクタールでも十五ヘクタールでもそれを草地として大いに草の生産を上げるというようなことに対しては、いろいろと機械を入れて伐根し、あるいはまた、いろいろな改良をしてそうして草をつくるわけでございますから、やはり相当な資金を必要とするのでございます。なかなかそういうことを考えながらも草地をつくり得ないという悩みを持っているわけでございますが、そういう点についても、この場合、こういう資金をもってこれらが完全に草地ができるような助成措置をお考え願いたい、かように考えるわけでございますが、この点はどういうふうにお考えになりますか、お伺いしたいと思います。
  103. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 差益の使用の問題でのお話でございますので、とりまとめて差益の使い方についての考え方を申し上げたいと思います。  申し上げるまでもなく、差益というのは臨時なものでございまして、本来、差益が出ないことが最も望ましいわけであります。したがいまして、われわれといたしましてはそういうふうな差益が出ないような酪農の発展をはかる必要があると思うわけでありますが、たまたま現在差益が発生をいたしておりまして、現在の情勢から見ますと、ここしばらくは差益が発生するだろうというふうに考えているわけであります。  そこで、差益につきましては、将来差益を発生しないような形のものにするための酪農振興のために使用したいというふうに考えているわけでありますが、事の性質上、臨時的なものでございますので、恒久的な目的のためにこれを使用するということは必ずしも妥当ではございませんので、継続的な事業でないものに使用したいという考え方をとっております。  それから第二の点としては、これはあくまでも助成でございますので、助成の一般的な原則に従いまして、個人施設とか、少額補助とか、あるいは運転資金というものに使うのは必ずし適当ではないというふうに考えているわけであります。第三の点といたしましては、一般会計の補助と競合するものについて使用するというてとは、一般会計との間に混乱も生じますので、そこでは仕分けをいたしまして、一般会計から補助のないものに使用をいたしたいというふうに考えているわけでありますが、使用のいたし方といたしましては、一応ワクを都道府県に配分いたしまして、そのワクの範囲内で、融資事業に対する利子補給であるとか、あるいは一定の事業に対する補助というようなことで、それぞれの県におきまして急速に酪農振興をさせますために最も必要なものにつきましてのメニューの提示を受けまして、その提示されましたメニューを検討いたしまして、適当なものについて使用を認めるということにいたしたいというふうに考えているわけでございます。  そこでそれぞれの都道府県においてほんとうに必要なものに使うというふうなたてまえにいたしますことから、中央におきましてこれこれの事業をやるべきであるというふうな指定はいたさないつもりでいるわけでございますが、従来の各都道府県からの要請を参酌して考えてみますと、先ほど先生からのお話がございましたように、たとえば低利の融資というふうなものの要請がございます。したがいまして、考えられるものとしてあげれは、三分五厘——三分程度の酪農を振興するための施設に必要な資金を系統から借りました場合に、それに対して利子補給をするというふうなことが考えられます。また、ただいまお話がでございましたように、国が助成の対象にいたしておりません小規模の草地改良というものが一定の規模で市町村内でまとまって共同で行なわれるという場合には、これを助成の対象にしていいのじゃないだろうかというふうに実は考えている次第でございます。
  104. 高橋雄之助

    高橋雄之助君 いま、差益金の使い方についての考え方等についてお話があったのでございますが、いまお話しになったように、都道府県のほうからぜひともこういうようなことについては——個人という問題は、いまお話がありましたから、これは別でございます。こういうようなことを行ないますれば酪農振興のために益するものである、ぜひともこれは有効であり、この地帯には適切な方策であるということについては、農林省はいろいろな考えもあるけれども、その都道府県の強い要請であり、また、それが適格確であるということになれば、それに対しては都道府県にそれを交付し、その使い方についてはそういう方途でやってよろしい、こういうことのようにお話があったようでございますが、そういうことでございますか。
  105. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) ただいま申し上げましたように、都道府県別にワクを配分いたしまして、そのワクの範囲内で各都道府県で必要なもののメニューの提示を受けまして、その提示されましたメニューにつきまして、先ほどの原則に当てはまらないと申しますか、先ほど申し上げました条件は要するにネガティブな条件でございますので、ネガティブな条件に該当しないものにつきましては、できる限り地方の考え方をいれまして助成をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございますが、ただ、資金の配分につきましては、各都道府県の指定生産者団体に配分をいたしまして、指定生産者団体を中心にいたしまして、都道府県なりその他の学識経験者なりの協議のもとに、合理的に使用されるというふうなことが行なわれますことを期待をいたしておるわけでございます。
  106. 高橋雄之助

    高橋雄之助君 指定生産者団体に交付することは、これは当然のことと思いますが、その使い方についていまちょっとお話がありましたが、都道府県とそういう団体と学識経験者とで何かそういう一つの協議会かあるいは審議会か、そういうものをつくらして、そこで適確にこの使い方に間違いのないように進める、こういう何か仕組みでございますか。
  107. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 一応交付は指定生産者団体を対象にして行ないますというふうに考えておるわけでございますが、それが使用されるにあたりましては、指定生産者団体の中にそういうふうな審議会と申しますか、協議会と申しますか、委員会のようなものをつくっていただきまして、広く周知を集めて、ほんとうの合理的なものに使用されるようなことになりますことを考えておるわけでございます。
  108. 高橋雄之助

    高橋雄之助君 先ほどお話がありましたとおり、この法律は暫定措置法でございますから、永久なものでないことは当然なことでございます。また、差益金も、必ずしも毎年毎年四十億ないし五十億というものがあるかどうかということは、これはまた予測されないものでございましようが、そのためには、一日も早く国内の酪農が振興されて、いわゆる自給度を高めて、乳製品の輸入ということはもうごく少量で済むというふうな体制をつくることこそ望ましいことでございまして、そういうことを一日も早く実現するために、こういう点からも金を出そうという目的でございましようから、それはそれで当然のことであろうと思います。ただ、これは、いまのような状態でもう少し積極的に、単にこの金ばかりでなく、一般予算の中でもより以上の手厚い方法を考えていく。そういう両方の面から進めていってこそ、はじめてそういうような状態になるわけでございますが、私は、今日の場合、なかなかこれだけの問題ではそういう状態にならない、こう思います。  したがって、まあこれは三月でもって四十一年度のこの差益金の締め切りができまして、決算の結果、四十二億何がしというものになったと思いますが、今日もうすでに七月も十何日になったわけでございますが、四、五、六の輸入の状況はおおむねどんな状態でございますか。
  109. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 四十二年度におきます輸入乳製品の買い入れは、バターにつきましては四千四百四十八トンでございますが、その売り渡し量は八百十二トンでございます。脱脂粉乳につきましては、買い入れは一万四千三百トンでございますが、売り渡りたものは八千三百七十八トンでございます。それから全粉乳については、買い入れましたものは千五百十トンでございますが、これに対して売り渡したものは千三百六十八トンでございます。ホェイパウダーにつきましては、買い入れましたものは千九百七トンでございまして、売り渡しをいたしたものが千三百六十七トンということになっておるわけでございます。
  110. 高橋雄之助

    高橋雄之助君 そうしますと、昨年の同時点における輸入との関係は、どういうような経過になっておりますか。
  111. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 御承知のように、昨年は、年度の初めにおきましては生乳の生産はかなり多かったわけでございます。したがいまして、輸入量というものはきわめてわずかであったわけでございますが、八月以降生乳の生産が停滞をいたしましたことに伴いまして、急激に輸入が増大をしておるわけでございます。したがいまして、昨年同期と比較という点から言いますと、本年度はかなり多くなっておるわけでございますが、全体といたしまして、本年度の考え方といたしましては、御承知のように、安定指標価格というのがございますので、安定指標価格水準に乳製品の国内価格を安定することを目標といたしまして輸入をいたし、また、売り渡しをいたすというふうな考えでおるわけでございます。
  112. 高橋雄之助

    高橋雄之助君 いま昨年は、八月以降の輸入が非常に伸びていたったということでございまして、昨年は、織トン数にして二十四万九千トンですか、約二十五万トンですか、と私は聞いておるわけでございますが、その差益金の問題は、いまおっしゃったとおり、必ずしも、それと同じような額にならないと思いますけれども、おおむね、今年の予測見通し、こういうものも、やはりそれをこえるというような状況でなかろうかと思いますが、どういうことでございますか。
  113. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 本年度の需給につきましては、当初、不足分が四十三万九千トン程度ではなかろうかというふうな予測をいたしておったわけでございます。ただ、最近生乳の生産が当初予想しておりましたものよりも若干伸びつつあるというふな事態もございますので、当初予想いたしました四十三万九千トンであるかどうか、その点につきましては問題があるというふうに思っておりますけれども、当初予想いたしましたものは四十三万九千トンということでございます。
  114. 高橋雄之助

    高橋雄之助君 先ほどからいろいろお話があったわけでございますが、私どもは、やはり国内の自給度をより以上高めるということが大きな眼目でなければならないと思うわけでございまして、昨年のトン数に比べてもまたさらに今年度は多少のびるというような状況では、これはあまりかんばしいことではないことでありまして、あくまでも国内の生産を高めて、ことに今日の農業のあり方の中に大きな比重を占めておる酪農でございますので何と申しましても、酪農振興については、単に差益金の問題でなく、全体の国の予算の中で農林大臣の所信表明の中にもありますし、また、お互いがその点については非常な関心を持っておるわけでございますので、今年も七月までの間にはそれぞれ来年の予算についてのいろいろな概算要求のための作業が始められるわけでございまして、八月末にはおそらく例年のように概算要求をするというようなことになると存じておるわけでございますが、そういう点についても、思い切って一つ処置をするということを基本にしていろいろな作業に入っていただきたい。そうして、一日も早く日本の酪農がほんとうに軌道に乗り、酪農民が経営の軌道に乗って安定した経営ができるような姿にしてもらいたい。さらにまた、国民の食生活の面から申しましても、今日、畜産面の食生活というのが旺盛になってきておるわけでございますので、その点と相あわせて十分お考えを願いたい。単にこういう差益が出たからそれで事足れりとすのものの考え方ではこれは大いにあやまちでございますので、これはこれとして大いに有効適切に活用していく、さらに国の一般予算の中でもより以上高めていく体制を整える、こういうことに特段のお骨折りをいただきたい、かようにお願いを申し上げるわけでございます。  時間が来ておりますので、いろいろこまかいことがありますけれども、以上をもって私の質問を終わりたいと思います。
  115. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) お話のように、差益は臨時的なものでございまして、したがって、臨時必要な目的をもちまして使用いたしたいというふうに考えておるわけでございまして、基本的には一般会計の予算において酪農振興を進めていくべきものだというふうに考えておりますので、そういう趣旨に基づきまして今後ともできるだけ努力をいたしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  116. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 本案についての質疑は、本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。     午後五時三十三分散会