運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-05-30 第55回国会 参議院 農林水産委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月三十日(火曜日)    午前十時四十三分開会     —————————————    委員の異動  五月二十六日     辞任         補欠選任      北村  暢君     矢山 有作君  五月二十七日     辞任         補欠選任      森中 守義君     光村 甚助君  五月二十九日     辞任         補欠選任      光村 甚助君     鶴園 哲夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         野知 浩之君     理 事                 任田 新治君                 山崎  斉君                 中村 波男君                 宮崎 正義君    委 員                 小林 篤一君                 櫻井 志郎君                 園田 清充君                 田村 賢作君                 高橋雄之助君                 堀本 宜実君                 八木 一郎君                 武内 五郎君                 村田 秀三君                 北條 雋八君    国務大臣        農 林 大 臣  倉石 忠雄君    政府委員        農林政務次官   久保 勘一君        農林大臣官房長  檜垣徳太郎君        農林省農政局長  森本  修君        農林省畜産局長  岡田 覚夫君        農林省園芸局長  八塚 陽介君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君    説明員        農林大臣官房参        事官       太田 康二君        農林大臣官房調        査官       渡辺 文雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○農林水産政策に関する調査  (昭和四十二年度農林省関係施策及び予算に  関する件)     —————————————
  2. 野知浩之

    委員長野知浩之君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  理事補欠互選を行ないます。  去る二十七日の森中守義君の委員辞任に伴い、理事に一名欠員を生じておりますので、これよりその補欠互選を行ないます。  互選は、投票の方法によらないで、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事中村波男君を指名いたします。     —————————————
  4. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 昭和四十二年度農林省関係施策及び予算に関する件を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 村田秀三

    村田秀三君 ただいまから、農林省が四十二年度に講じようとする一般農業の問題で質問をいたしたいと存じますが、ただいま委員長の話もありましたように、大臣が午前中お見えにならないと、こういうことでありますから、大臣答弁を必要とする部分は午後に延べまして、特に大臣答弁を必要としない問題、事務局段階で処理のできる問題、これに限ってひとつ質問をいたしたいと思います。  まず、野菜の問題でありますが、昨年、野菜生産出荷安定法制定をされました。その法律目的というのは、いまさら私が申し上げるまでもなく、野菜価格を安定し、消費者の生活を安定せしめるということは、野菜生産の安定をつくり上げることである、こういうことがその法律目的であろうと思います。そこで、その目的法制定後どのように効果をあらわしておるのかおらないのか、こういう点についてただしてみたいと思うわけでありますが、この法制定後における園芸局の措置あるいは計画進捗状況、こういうことについてまずお伺いをいたしたいと思います。
  6. 八塚陽介

    政府委員八塚陽介君) ただいまお話にありましたとおり、昨年の七月一日でございますか制定されました野菜生産出荷安定法に基づきまして、その後、法にうたわれております施策を順次実施してまいったわけでございます。  お話がありましたとおり、生産出荷安定法目的は、まず、産地生産出荷を近代化する、そうしてそのことと表裏一体をなす仕事として価格の変動に対応して協会をつくってその機能を果たさしめるという二つのことでございます。  昨年四十一年度は、まず第一の野菜指定産地指定につきましては、三百十の産地指定いたしたのであります。そのうち、数として最も大きいのはキュウリ九十二、それ以外に、白菜タマネギがそれぞれ五十、トマトが六十、キャベツが四十四、大根が十四というようなことで、三百十の産地を昨年の八月に指定をいたしました。その後、それに基づきまして計画を樹立し、中には事業実施最初の年に入った産地もあるわけでございます。ただ、その点につきましてどのような効果があがったかということでございますが、御承知農業生産の問題でございますから、指定をしてすぐその生産面効果があらわれるということは、なかなか期待できないのでありますが、こういう産地指定いたしまして、そうして大消費地域に対する出荷調整ということのためには、それぞれその時期別の、種別消費地におけるさしあたっての需要の見通し、それに対して各県がどういうふうに出荷を対応さしていくかというようなことについては、さっそくにも何回か行なったのであります。それから産地指定に関連いたしまして、四十二年度は、指定野菜の数もさらにニンジンとネギを増加し、かつ、産地指定も、それをも含めてさらにふやすという予定になっておるわけであります。予算上は百三十ということを予定いたしておりますが、現在の段階では、県等と御相談をして、さしあたり第一次的には百程度に指定を近くいたしたいというふうに考えておるのであります。前後いたしますが、生産出荷近代化計画を樹立する産地の数は、四十一年度では百十六、今年度は、さらに指定をいたしますところを含めまして百二十、つまり前年からの引き続きと今年度指定をいたしますところを含めましてそのうち百三十樹立をいたさせたい。なお、事業を実施いたします産地は、四十一年度は六十六であったわけでございます。それを初年度やりまして、二年度六十六——これは、三年計画になっておりますから、当然進めるわけでございますが、さらに今年度新しく事業に着手するというところを、まだ内訳はわかっておりませんが、百六程度考えておるのであります。予算額にいたしますと、近代化事業につきましては、四十一年度は約一億四千万、四十二年度は継続を含めまして三億九千万、約四億というふうに予定をいたしておるのであります。  それから第二の、生産出荷安定法にあります事業といたしまして、野菜生産出荷安定資金協会というものを昨年の十月一日に設立をいたしたのであります。御承知のように、すでに昭和三十八年、九年から、タマネギあるいはキャベツについて、民法法人によりますこのような事業をやっておったのでありますが、それを包摂いたしまして十月一日にこの法律に基づいて発足をさせたのであります。これにつきましては、事務的には体制が一応整いまして、すでに昭和四十二年度は事業年度としては第二年度に入っております。この資金協会仕組みは、御承知のように、価格低落をした場合、異常な年を除いた過去五ヵ年平均中央卸売市場における価格の三分の二以下に低落した場合に、積み立てた金を交付金として交付するというシステムになっておるわけでございますが、幸いにしてと申しますか、生産者にとっては幸いにして昨年四十一年度のこの事業発足以来の野菜価格は、比較的高位に推移をいたしましたために、昨年においては、十月一日に発足いたしまして四十二年の三月三十一日までにおいては、この交付金を支払うということはなかったのであります。なお、昨年のこの資金協会発足いたしましたときの事業規模と申しますか、支払い能力は、十二億であったわけでございます。四十二年度は、なお支払い能力をふやして、約十四億と考えております。中身は、先ほど申し上げましたように、キャベツそれからタマネギについて産地数が若干ふえるということと、秋冬白菜につきましては、昨年は京浜地区に出しておった部分のみを対象にいたしておったのでありますが、予定といたしましては、その他の三大指定消費地域に対して出荷する分も事業にしたいということで、事業規模もふやし、さらにその他の配慮をも加えまして、支払い能力といたしまして十四億というふうに規模を拡大する予定でございます。  以上申し上げましたように、安定法発足いたしまして、たとえば直ちに指定産地出荷量がこのようにふえた、あるいは指定産地生産合理化がこのようになったと言うには、残念ながら時間がまだ経過をいたしておりませんので、計数的に申し上げる段階ではございませんし、かつまた、資金協会からの交付もまだ現実には行なわれていない状況でございますが、しかし、そういう体制をとりまして一歩一歩野菜価格安定あるいは生産合理化を進めてまいっておる状況でございます。
  7. 村田秀三

    村田秀三君 概要をたいへん詳しく御説明をいただいたわけでありますが、私も、発足まだ一年を経ていないわけでありますから、完全に整備をされておるとは考えておりません。しかし、この一年間になさんとするところのいろいろな問題をお見受けをいたしますると、その方向によって法の目的が達成できるかどうか、そういうことに不安を感ずるわけでございまして、そういう点について意見を述べながら、どういうことを今後おやりになれば法の効果があらわれるだろうか、こういう立場に立って質問をひとつ進めてみたいと思います。  そこで、まず、昨年、資金協会業務方法書をお見せをいただきまして、私がこれを見まして疑問に思いましたのは、ただいまもいわゆる保証価格基準について、過去五年間の東京中央卸売市場平均価格だ、こういうことを言っておりますが、この業務方法書の中に保証基準額最低基準額とございますね、これが過去五年間の平均値であったということになるのですか。
  8. 八塚陽介

    政府委員八塚陽介君) 保証基準価格は、異常年を除きました過去五ヵ年間の中央卸売市場におきます平均価格、これの三分の二、これがたとえば京浜地域春キャベツにつきましては、キログラム当たり十六円五十銭、これが三分の二になっておるわけでございます。
  9. 村田秀三

    村田秀三君 そうしますと、基準価格は過去五年間の平均値ということでありますから、これは発足当時の価格ですね。そうすると、ことしはこれが変わるかもしれないということがあり得るのかどうか。
  10. 八塚陽介

    政府委員八塚陽介君) 御承知のように、これは、五ヵ年くらいの間に一度相当な価格低落があるだろうということで考えられておるわけでございます。かつ、仕組みといたしましては、まずそういう五年間の間にこれくらい落ちることがある、その場合に補給をするんだということでございますから、その際 ことばは適切でないかもわかりませんが、そこで一種の契約が結ばれるわけでございます。大体、原則的には、そういうふうにこの資金協会対象数量を申し込むときのいわば約束になるわけでございますから、年々変えるというふうな仕組みにはなっておりません。ただ、さりとていまのような価格状況でございますから、五年間そのまま据え置きというふうにも考えておりませんので、あまり毎年変えるというシステムにはなっておりませんが、三年目ぐらいにはひとつあらためて見直してみるということは考えておるのであります。
  11. 村田秀三

    村田秀三君 私が疑問に思ったのは、そのことが一つ、それから過去五年間の実績と言いますが、最近の傾向としては、物価上昇率がきわめて高いわけです。そうしますと、五年前の実数は、物価指数によって当年度換算をされて策定されてもよいのではないかと考えるわけです。その点はどうですか。これはぜひともそうしないと、このやり方そのものに私は相当な疑問を持っております。意見はありますが同じ考え方に立っても、せめてそのことだけはやらなければならないのではないかと思うのですが、どうですか。
  12. 八塚陽介

    政府委員八塚陽介君) 過去五ヵ年を平均するに際しましては、たとえば、昨年きめました際は過去五ヵ年でありますから、三十八年ないし九年ごろのものも当然入っておるわけであります。お話のように物価の差がございますから、これは計算上は一応デフレートをして計算いたしておるのであります。
  13. 村田秀三

    村田秀三君 そうすると、それは換算をされておるということですね。ああ、そうですか。いままで私が知り得た範囲では、そのようなことにはなっておらないと、こう思いましたので、本来この基準価格というのは、いわゆる過去五年間といえども、五年前の実数価格換算をして、当年度に引き直して決定をする。  しかも、もう少し厳密に言うならば、毎年この基準額というのは変更があるはずである、当然そうすべきではないか、こう実は考えておったものですから、いままで質問をしたわけでありますが、三年目ごと検討するということでございますけれども、それは期間が短ければ短いほどよろしいということになります。毎年がほんとうは望ましいことになりますが、そういう点についてどうですか。
  14. 八塚陽介

    政府委員八塚陽介君) 一つは技術的な問題がございまして、年々保証価格水準を高めますと、保証価格水準を出しましてそうして結局それに基づいてその差を交付金として出すわけでありますが、その水準が上がりますと、したがいまして、掛け金を変えなければならないのでございます。ところが、そういたしますと、年々掛け金単価を変える、ないしは、最初の年に全部払った人と、それから二ヵ年間ないし三年で分割して払った人とどうするか、年々掛け金が変わってきたり、そういう技術的な問題が一つあるわけであります。ただ、もう一つ、先ほど申し上げましたが、念を入れて申し上げますと、問題は、デフレートをいたしておりますけれども、一年の農村物価指数以上に野菜価格というものないし農村の労賃は上がっておる。そこで、デフレートしたという理屈上だけでは、現実野菜をつくっておられる人、あるいは現実野菜を販売してどういう値段が実現しているかということを考える方にとっては、どうもぴったりこないのじゃないかという点があろうかと思います。特に野菜につきましては、現状では当然の理由があると考えられるわけでありますが、年々上昇傾向にございますから、過去の実績を基礎にした保証基準価格というのはどうも低きに失するのではないかという感じがあることは、私どももこれまた感じておるのでありますが、ただ、発足の当時——大体同じシステムで三十八年、三十九年に発足をいたしたのでありますが、そのときは、そういう過去の平均的な数字よりもなおかつ著しく暴落したという経験が実は三十八年、三十九年にあるわけであります。したがいまして、過去の実績をやめて、最近年の上昇傾向を見て保証基準価格を少し先を見通してある程度きめてしまうというには、いささかまだ経験がない、ないしは苦い経験があるということで、現在そういうふうにはなかなか考えられないのでありますが、しかし、いま申し上げましたように、一般的に野菜価格上昇傾向にある、保証基準価格がどうも低い、したがって、現実に金を納めたけれども交付金を受ける幸と言っていいか不幸と言っていいか、そういうチャンスがなかなかないという問題がございますので、私どももその点はなお検討をいたさなければならないというふうに考えております。
  15. 村田秀三

    村田秀三君 それでは、その点は検討をひとつお願いしたいと思います。  その次に、関連いたしまして、私よくわからないのですが、補償する単位といいますか、これは一地域対象としているのですね。それから一ブロックを対象としているわけです。たとえば、出荷団体をとらえますと、福島県ならば、福島県は一つ出荷団体である。そうすると、同じキュウリであっても、福島県全体が対象になる、こういうことに理解するのですが、それでいいわけですか。
  16. 八塚陽介

    政府委員八塚陽介君) 野菜生産出荷安定法施行令でそういう点について出ておるわけでございますが、つまり、大別しますと、たとえば、現在でございますと、春のキャベツとそれから初夏のキャベツは、これはそもそもつくり方も違いますし、期待している価格も違うわけでございますから、まずそれは別にいたすわけでございます。それからまた、出荷いたします先の指定消費地域、これは大体は全国的にそれほど価格傾向は違わないわけでございますけれども、やはり野菜でございまして、大きな消費地ごとに多少態様は違いますので、指定消費地域ごとに分けるわけでございます。そういうグループの中でやるものでございますから、たとえば春キャベツに例をとって申し上げますと、京浜春キャベツを出すグループといたしましては、その会員というのは、千葉神奈川愛知のそれぞれ県段階団体を一丸としてやるわけでございます。したがいまして、千葉県では、千葉県の販購連というものが会員になっておりますが、春キャベツ指定産地としては銚子という産地がございます。それから神奈川で言えば三浦、横須賀という産地がございます。愛知県であれば豊川という産地がございます。そういうものを含めまして、東京へ四月から五月の間に出荷してくる。その価格平均でもって考えていく。したがって、問題は、たとえば、四月の初めは案外値段がよかったが、五月の半ばは値段が非常に下がった。必ずしも四月の初めに出荷した産地と五月の半ばに値段が下がったときに出荷した産地とは同じでない場合があるわけでございます。したがって、たとえば下がったという産地は、確かに下がったことによる影響を受けるわけでございますが、しかし、計算といたしましては、そういうグループの中で平均して三分の二以下になったかどうかというふうにまあ見ている。これは確かに問題があるわけでございますが、しかし、私どもといたしましては、そういうふうに春キャベツ京浜地区に四月から五月に出すという場合には、そういう関係指定産地にお集まりいただきまして、出荷の時期であるとか、あるいは出荷数量であるとか、そういうことをお打ち合わせをして、そういう形の一定期間一定種別についてあまりその期間にでこぼこのないようにという調整をいたしておるのであります。  大体、そういう仕組みになっております。
  17. 村田秀三

    村田秀三君 質問のしかたがちょっと理解できなかったのではないかと思うのですが、私が申し上げたいのは、補償範囲といいますか、これは一会員対象とするわけですね。そうしますと、一会員というのは、福島県の場合はこれは一団体ですね。その一団体の中には、いわゆる同じ福島県でも中通りも浜通りもあるわけですから、その広範囲地域が包含される。そうした場合に、その全部を対象にするということは、まあ市場価格の問題で補償しようとする制度ですから、やむを得ない面がありますけれども、しかし、地域広範囲になっておりますと、福島のほうは雨が降ったけれども相馬のほうは雨が降らなかった、同じ野菜でもできふできがある、豊凶がその範囲の一会員の中で起こり得るわけですから、そうしますと、一会員の中に豊作のところと凶作のところがあるのだけれども、結果的には同列に扱われるということになるわけですか。そういう意味では生産者に大きな影響を与えることがないという、そういう考え方質問しているわけです。わかりますか。
  18. 八塚陽介

    政府委員八塚陽介君) あるいは、私、御質問の趣旨を依然としてとり違えているかもわかりませんけれども、たとえば長野県で夏秋キャベツというものを長野県の経済連会員になってやります。ところが、その経済連の傘下には、指定産地として、北佐久であるとか、南佐久であるとか、四つばかりそれぞれまたグループがあるわけであります。その指定産地は、場合によっては二つないし三つの単位農協一つグループである。しかも、その単位農協組合員が全部そのものをつくっているわけではございませんで、そのうちのたとえば何人かは単位農協の中で夏秋キャベツをつくっているという流れになるわけであります。  そこで、価格低落した。ところが、南のほうでは、低落はしたけれども作柄が比較的よくて大量に出した。北のほうは、低落をしてかつその作柄が悪かったということもあり得るわけでございます。その場合に、私どもといたしましては、一人当たり幾らずつの単価をお配り願いたいということになっておるのではなくて、その長野の中で、単価かける量によって非常にたくさん行く、あるいは単価かける量によれば少なくしか交付金が行かないというような場合には、その会員が、会員といいますのは県の段階の各産地を集めたいわば経済連でございますが、それがまあ調整をいたしましてやることは、命令はいたしておりませんけれども、そういうふうにやっていただきたいという、あるいはおやりになってけっこうですという指導をいたしておるわけでございます。  依然として御質問には答えていないかと思いますが、そういうシステムでございます。
  19. 村田秀三

    村田秀三君 まあそれでよろしいわけです。  私の言いたいのは、結論を先に申し上げた傾向があったわけでありますが、それであるから、いわゆる市場価格は過去五年間の保証基準に達しないで補償対象にはならないけれども、しかし結果的には当然補償を受けなくちゃならないような生産農家があるんだということは、いまの長野県の例をとってもおわかりのことと存じます。したがって、この補償制度というのは生産農家のために事実上ならないのではないか、私はこう言いたいのです。この制度であってもなお幾らかの効果を期待するならば、一会員ということではなくて、一指定産地、少なくともここまで限界をおろさない限りは、この制度効果というものは発揮できない。私の予想では、まあことしは白菜がたいへん安くて暴落したというような新聞も見ましたけれども、しかし、この白菜の暴落の中で、はたして一期間の中で補償するような状態になるのかどうかということになると、私ははなはだ疑問だと思う。そうしますと、資金協会はできましたけれども、将来にわたって補償実績というのが出てこないじゃないか、こういうことも予想できるわけなんですから、その辺のところをひとつ聞いておきたい。
  20. 八塚陽介

    政府委員八塚陽介君) たとえば、一つ産地の中でもいろいろな産地の型があるわけでございます。かりにある作物が十日間にわたってその産地から出荷される。ところが、その十日のうちにも実は騰落があるわけでございまして、最初の一日目に出した人は相当高い値段に売れた、最後の十日目に出した方は非常に安い値段で売れた、ところが、それを平均いたしますと、全体としてわりに高い値段に売れたために、たまたま最後に非常に安い値段で売った方はこの対象にならないという問題があるわけでございます。その場合に、その安い値段で売った方にとってはこのシステムというのは役に立たないのではないかという御質問ではないかと思います。それからまた、産地が三つあります場合に、一ヵ月にわたってこの作物出荷する。A産地は上旬に出す、B産地は中旬、C産地は下旬というふうにかりに分かれた場合に、やはりいま一つ産地の中で個々生産者をとって申し上げたようなことがあり得るわけでございます。  私どもは、そういうことが全然ないというふうには決して申し上げるつもりはないのでありますが、しかし、野菜安定資金協会を中心としたシステムで、個々人たちのそういう個々出荷によるもの全部を何とかしようということはなかなかできないのではないか。むしろ、そういう一つ作物の、あるいは一定産地のある時期のものはなるべく共同歩調をとって、たとえば十日間にわたって出すにしても、そのうちの特定の人だけが、おれはどうもあとのほうが値段が高くなりそうだからあとにする、あるいは、初めは高そうだからおれは全部出すというようなことで初めのほうへみんな片寄る、そういうようなことがある程度ないようにということを調整をしていきながらやっていくことをむしろ前提にいたしておるのであります。実際はそういうふうにやることがなかなかむずかしい問題であるということは、特に野菜の場合は、従来、個人出荷——現在でもそうでございますが、個人出荷が依然として五〇%という状況でございますから、なかなか共同出荷をするということはむずかしいことではあると思いますけれども、そういうことがある程度補われなければ、どうもやはり成り立たないのではないか。そういう意味で、私どものほうも、予算的には、各県にそれぞれそういう関係の指導員の設置の補助をし、かつ各単位農協ごとに季節——大体三ヵ月ぐらいでございますけれども、情報連絡員というようなものを置いて、できるだけそういう個別の動きによる思わざる、何といいますか、全体のシステムの中で救われないことのないような歩調をとっていくように指導をいたしてまいるというふうに考えておるのであります。
  21. 村田秀三

    村田秀三君 いろんなことを言われたわけでありますが、私が言わんとすることはおわかりいただいたと思うんです。つまり、一会員対象、その一会員が一県というような場合もあるわけだから、その一県の中における地域別の作柄を見ると、これは相当にアンバラがあるわけです。しかし、そういうものはこれに影響してこないわけですね。東京市場価格を決定するときには、全体の中で決定をされていることですから。だから、このことも確かに生産農家との関係というものは非常に薄いわけだけれども、これは生産農家のためにはならないんじゃないかということに極端な言い方でなるわけでありますけれども、この効果というものはきわめて薄い。したがって、一会員対象にして補償するというのではなくて、一産地、これは非常に技術的にむずかしいかもしれませんけれども、その産地対象にして補償するようなそういうシステムに是正できないかどうかということを端的にひとつお答え願いたい。
  22. 八塚陽介

    政府委員八塚陽介君) 法律上は、産地ごとの加入も可能になっております。ただ、これはもう御承知のように、野菜価格は非常にはっきりと需要と供給の関係できまっておるわけでございますが、その需要と供給の関係で非常に大きくフレながらきまる価格体系を何らかの形で是正をしていきたいということが最もわれわれの念願といたしておるところでありますが、そういたしますと、私どもといたしましては、市場に対する生産者のいわば支配力と申しますか、そういうものをなるべく強化していく。つまり、無数におります生産者が、それぞれ自由競争で市場出荷したり、あるいは市場価格を見て差し控えたりということのないように、むしろなるべく大量に多くの意思をそろえて市場に対応していくということが価格の動揺を少なくするゆえんである。そういうことが一面にあるとともに、個別の方の個別の販売によるどれだけの所得を実現したかということを極端に細分するということは、これは事実上技術的にむずかしい。しからば、産地程度にまとまればいいじゃないかというお話も当然あろうかと思います。また、まさにその点を御指摘になったのだと思いますけれども、私どものねらいといたしますのは、つまりそんなに極端に春のキャベツとそれから夏の高原のキャベツと一緒にということを考えているのではなくて、むしろ春のキャベツなら春のキャベツ産地が幾つかあれば、それが協調をしていただきたい。県をまたがって協調ができることが望ましいし、そのためにいろいろ協議会をやっておりますが、県内で二つ三つ産地があれば、やはりそこが協調して市場に対応していくということのほうがむしろ望ましいのではないかというふうに私ども考えて、法律上はできますし、それを拒否いたしているわけではございませんが、会員単位でこれに加入していくというふうに考えているのであります。しかし、各地域によってはいろいろな事情もあろうと思いますし、何ぶんこの資金協会自体が会員の総意でつくり上げられるというシステムになっておりますから、また各会員等の意見も聞きましてなお検討はいたしたいと思っております。
  23. 村田秀三

    村田秀三君 その問題は後ほど関連して触れてみたいと思いますが、十月一日に業務を開始いたしましてまだ補償実績がないわけでありますが、結果的に補償金の支払いをしなかったという場合に、いわゆる無事戻し、これをしようというような考えがあるかないか。いまのところはないわけですね。
  24. 八塚陽介

    政府委員八塚陽介君) 昨年の十月一日から発足いたしたわけでございますけれども法律でもそういうふうになっておりますが、すでに過去においてタマネギキャベツについてはそれぞれ団体がありましてやっておったのを承継してやってまいったわけでございますから、必ずしも実績として十月からだけを議論する必要はなく、むしろ前身団体のスタートから考えるべきであるということもあり得るわけでございます。そういたしますと、私ども計算をいたしております大体五年に一ぺんぐらいというか、五年に一ぺんというその五年間もある程度経過をいたしております。その前にそれぞれ暴落して、すっかり身上をはたいたという経験があるわけでございますが、立ち直りまして、そうして以来三年ないしその程度の実績があるわけでございますが、その間も払っていない。したがって、五年に一度といいますと、これは近い将来あり得るのじゃないかということもあるわけでございますが、ただ、先ほども申し上げましたし、先生も御指摘になりましたように、一般的には上昇傾向にありますから、いままで積み立てたものはどうもむだになりそうである、したがって、無事戻しをそろそろ考えるべきではないかという御要望が実は会員の中からもあるわけでございます。私どもも、あまり会員の、あるいは会員の下におられるそれぞれの農協あるいは生産者の方の考え方を無視いたしますと、これはせっかく理論的にはいいものであるといってつくっておきながら、どうもかえってよそよそしく無用のものであるというふうに見られて、必ずしも得策でないということは考えるわけでございますけれども、ただ、いま申し上げましたように、必ずしも近い将来に暴落がないとも限らない。と申ましすのは、作付面積の増であるとか生産の増はそれほど著しく現在伸びておりませんから、その点からは別といたしまして、それにいたしましても、野菜はちょっと天候がいいと、とたんに三割、四割ふえるというようなことで、そういう意味でなお無事戻しをするに足るほど危険がないとはちょっとまだ言えないのではないか。やや冷たい言い方でございますが、幸いにしてそういうことで一期間かりに払わないままに経過いたしますならば、むしろこの次のお出し願う分をそれで充当していく、つまり繰り延べしていくということのほうがいいのではないかというふうに現在は考えておるわけでございます。  ただ、いまるる申し上げましたように、それではどうも東京にそういうものがあるけれども、出しっぱなしで、はなはだ身近ではないという御意見もこれはあるわけでございますから、そういう点も考慮いたしまして、なお将来検討はいたしたいと思っております。
  25. 村田秀三

    村田秀三君 産地の方々はこの点についてたいへん関心を持っておるわけでありますから、ひとつ検討をして、なるべくならばいま局長がおっしゃられたような方法をとっていただくとするならば、たいへんよろしいのではないかと、こう思います。とにかく、五年間、の一応の区切りですね。そして、資金が枯渇するならばその事業計画を三年に短縮する、こういうようなことを一方的にきめておきながら、とるものは幾らでもとろう、この考え方が非常に問題だと、実はそう思うものですから、もしも補償実績がないとするならば、当然、掛け金は、全部とは言わないけれども、相当程度戻してやるという措置をとるべきじゃないかと、実はこう考えた次第であります。  次に、指定消費地指定作物の総需要量の把握、これは当然やらなくてはならないことになっておるわけですね。非常にむずかしいことだろう、そしてまた、発足一年であるから諸般の準備はできかねる、こういうような言い方を先ほどお伺いしましたが、四十二年度はどうなるんですか、この総需要量は。
  26. 八塚陽介

    政府委員八塚陽介君) ちょっといまのお答えをする前に申し上げておきますが、あるいは私先ほどの答弁でことばが不十分で申し上げそこなったのかもしれませんが、無事戻しをやるというふうに申し上げたのではなくて、無事戻しについても検討はいたしたいというふうに申し上げたのでございます。発足は昨年の十月一日からでございますが、先ほども申し上げましたように、事実はもっと前からで、三年ぐらい経過いたしておるわけでございますが、まだ残り二年ほどございまして、その間の見通しは、なかなか無事戻しをしていいかどうかというのはちょっと私どもまだ勇気がない。むしろ、今年度の予算では、今年ないし来年あたりに、五年に一ぺんということでございますから、五年のうちの三年が無事にきたので、むしろ下がる場合もある、そういう急場のことも考えて、二億ばかり国が積んで置こうじゃないかというような態勢をとっておる段階でもございます。まあそういう意味で、ちょっとその点はなお検討させていただきたいと存ずる次第であります。それから国のほうも、それなりに、とるだけではなくて、まあ半分は国が持とうというふうに決心をいたして予算を要求いたしておったわけでございますので、そういう意味で、会員の方あるいは会員を通じて産地生産者の方の御要望をもちろん先生いま御指摘になったわけでございますから、さらにそれに加えて産地の要望等も聞きまして検討いたしたいと思います。  それからただいまお話しになりました需要の問題でございますが、法律にございますとおり、生産産地指定していく場合には、そういう需要を十分に見ながら指定をしていかなければいけないというふうになっておるのでございます。これは、御承知のように、野菜の需要を、たとえば、来年は何万トンふえるであろう、来年は何万トンふえるであろうというふうに一年ごとにすぐ先の需要を見通すということは、なかなか種類も多く、かつ消費者の需要の動向というのも多岐でございますので、あまり近い期間ではなかなか確実に言えない。したがって、五年程度の先の需要を見通していく。その程度の精度しか期待できないであろう。一方、指定消費地域におきましては、やはり人口もふえますし、それから嗜好もある程度変わるというようなこともございます。そういう意味におきまして、四十一年度におきましては、四十一年の三月三十一日に法律の定めるところによりまして農林大臣が公表をいたしたのであります。これは、都道府県の知事の御意見も聞き、かつ学識経験者の意見、あるいはむしろ実際に市場に関与されておる卸売りの方のいわば一種の商売上の勘というようなものをも総合いたしまして、四十一年の三月三十一日に、四十六年度における指定消費地域ごとの、時期別、種類別の指定野菜ごとの需要見通しというものを定めまして公表いたしたわけでございます。たとえば京浜について申し上げますと、キャベツは五割ぐらいの需要が五年先にあるであろう、あるいは大根は従来とも非常に多量に消費をされておりますが、伸び率としては三割程度にとどまるのではないか、トマト、キュウリはそれぞれ相当ふえるのではないだろうかというようなことで公表をいたしたわけでございます。これに対応いたしまして、生産のための産地指定でございますが、残念ながら、現在の段階は、全体の野菜——全体といいましても二十二の野菜のうちの指定野菜というのが約六割程度の量になっております。その六割程度のうちのさらに五割程度が従来指定をいたしました指定産地の過去における出荷実績でございます。したがいまして、全体の野菜のうちでは、この法律に基づきます指定産地から出荷されますのは六割かける五割の約三割ということに相なっておるわけでございます。野菜が、先ほど申し上げましたように、いろいろな種類がございますし、しかも時期によってそれぞれ違います。そういうことで、米麦のようなコントロールということは技術的に困難でございます。私どもとしましては、そういう技術的な困難の範囲でできるだけ生産者計画的に出荷されやすいように、あるいは市場のほうで計画的に出荷が要請できやすいようにということでこういう指定野菜制度ができたわけでございます。それは三割程度でございますので、今後とも指定野菜産地をふやしましても、まだ十分ではない。せめて、そういう意味におきましては、先ほど申し上げました指定産地分が指定野菜について五割程度になっておりますが、それをまあ七割ぐらいにウエートを上げたいというふうに考えておるわけでございます。現在の野菜産地指定は、そういう需要見通しのかなり内数と申しますか、内のまだかなり余裕のあるところで指定をいたしておる段階でございます。
  27. 村田秀三

    村田秀三君 そうしますと、四十二年度の消費の見通しはもう全然無関係にしていわゆる生産計画を立てておられるということでありますか。
  28. 八塚陽介

    政府委員八塚陽介君) ただいまも申し上げましたように、五年先にかりに東京といいますか京浜で五割ということになりますと、年率で言えばこれは一割ということに相なるわけでございます。ただ、ただいまも申し上げましたように、傾向値として五年たてば五割くらいはふえるということは、即その次の年は一割と規則正しく一割ずつふえるということにはなかなか性質上いかないわけでございます。そういう見当は少なくともつくのではないだろうか。それから一方、生産の態勢でございますが、来年一割ふやそうというふうに考えましても、天候等によりましてなかなか一割程度のものでうまく押えるということは困難でございます。つまり、作付が一割ふえたからといって、必ずしも収量が一割増にならない。そういうものでございますので、あまりデリケートには——それができればもちろんよろしいわけでございますが、なかなかできないのではないか。  ただ、もう少し短い期間で、たとえば秋冬白菜なら秋冬白菜については、その前にその分についてその関係の県あるいは生産者団体あるいは市場の方にお集まりいただいて、どうもことしは天候のかげんで収量はよさそうだ、しかし、皆さんの希望を聞いてみると、みんな東京京浜をねらっておられるようだが、これはそういうならむしろ名古屋のほうに少しお回しになったらどうかというようなことで、短期的な調整はむしろそういうことでやっておるわけでございます。ほんとうは、生産からすっかりコントロールできれば、これはもちろん理想でございますが、そういうふうになかなかまいらない。したがって、次善の策としてそういう調整をやっておるというふうなことでございます。
  29. 村田秀三

    村田秀三君 昨年の実績を見まして、これじゃいけないんだというようなものの言い方を私はするつもりはないんです。非常にむずかしいむずかしいと、こう言いますけれども、しかし、先ほど、価格というものは需要と供給の関係であると。供給は、生産が安定して平均的に出荷をされなければならない、これは申し上げるまでもないことでありますが、これが原則であるとするならば、それに対応する努力というものが、不可能を可能にする努力というものが必要でなければならない、こう実は思いますので、いわゆる消費見通しに対応する生産計画、その生産計画に基づいての産地指定等がなされておるかどうか、こういうことを聞きたいのです。
  30. 八塚陽介

    政府委員八塚陽介君) いまおしかりを受けたわけでございますが、またむずかしい話をいろいろすることになって恐縮かと存じますが、私どものほうの産地指定目的は、いま先生のお話しになりましたとおり、つまり、安定的に生産する産地を多くつくって、安定的に供給し得る産地市場支配力を漸次高めていくことによって、需要の見通しなり、いわば計画的にマッチし得る供給態勢がとれるのではないか、とるべきであるということを考えておるわけでございますから、先生の御指摘の方向へはあるいは行っておるのではなかろうかと存ずるのでありますが、ただ、現実野菜生産状況から申し上げますと、大消費地といえども野菜の供給源としては、三割ないし三割五分、場合によっては四割程度がまだきわめて近郊の産地に依存をいたしておるのであります。近郊の産地は、これは旧来からの野菜産地であり、非常に技術もすぐれておるわけでございますが、近郊であることによって農地等の移動も多い。あるいは労働力等の移動もやはり多い。そういう意味におきまして、依存率は非常に高いのでございますが、長期的にはあまり依存のできない産地であります。これがなかなかまだウエートが大きくて、国のほうから指定産地というようなことで指定をいたしましてそうして価格も安定協会で安定をしていくというようなことをあまり好まない。むしろ、自分の才覚で、高いときは高い、安いときは安いで商売をしていこうという気分の高いところでもございますから、なかなかそういうところをつかまえにくい。そういうこともございますし、一般的に、野菜は、逆に言いますと、ほとんどの農家が何がしか野菜をつくっている。ですから、五百万の農家が、平均いたしますと七畝程度の野菜は必ず——必ずといいますか、自家用を含めてつくっている。余ったら出荷しよう、こういう態勢があるわけでございます。  つまり、現在の野菜の供給というのは、零細の生産農家がその余剰を出荷していくという点が一つと、それから比較的農業生産についてむずかしい条件にある近郊に依存しているという点が一つございまして、そういう状況では今後とも安定的な形でできないということで指定産地をしているわけでございますから、現在の五割程度をさらに七割、でき得べくんばもちろん一〇〇%がいいわけでございますが、現在の段階ではあまりドラスティックな進め方ができないのであります。  それにいたしましても、ただいま申し上げますように、市場価格を安定させる、これが生産者にとっても消費者にとってもいいことである。そのためには、指定産地というような制度をつくって、そうしてたとえば干ばつの場合もかん水の施設がある、あるいは出荷の場合もばらばらでなくて共同で出荷していく、そういう形で、政府なり県なりの意思もまたそういうところへは通りやすいという産地がふえていくことがこれはもう当然いいことであろうというふうに考えておりますので、さらにその点は進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  31. 中村波男

    中村波男君 関連してお尋ねしたいと思うのでありますが、さっき村田委員の御質問に答えられた中で、局長みずからが、保証基準価格が低きに失する、こういうことをお認めになりまして、しかしながら、五年に一回くらい野菜等については大暴落がある、その周期がある、したがって、苦い経験があるという答弁をなされたのでありますが、その苦い経験があるということばの内容でありますが、出すほうから見る苦い経験と農民の生産する者の側から見る苦い経験とでは違いがあるのでありまして、利害が反対でありまして、その苦い経験とは何をさして言われたのか、まずそこから伺っていきたいと思います。
  32. 八塚陽介

    政府委員八塚陽介君) 私、保証基準価格が低きに失するというふうに申し上げたことになったわけでございますが、失するということで生産者の方が御不満であるという事実は、これは確かでございます。仕組みとして低きに失するというふうに断定したわけではなかったわけでございます。ただ、苦い経験と申し上げましたことは、三十九年でございましたか、たとえばタマネギ等につきまして、それから三十八年にキャベツでございますが、それぞれ発足して間もなく非常に暴落をいたしたのであります。  そこで、苦いのは、両方実は苦い味をなめたのでありますが、つまり、一つは、生産者のほうが、非常に暴落をいたしましたわけでございますが、まだ十分に金が積んでない。したがって、何年か平均して積み上げておればもう少し交付金が多かった。多かりべかりしものすらもなかなか手に入らなかったという事態があり、かつ、一般的に、このシステムが、今度の場合でもそうでございますが、三分の二以下に下がった場合にその差額の七割を補給するということでございますから、この金が行くこと自体で全部が補償されるということにはなっていない。全体として、こういう制度は、本来発動されない状態のほうが幸せなわけでございます。そういう意味で、生産者のほうにとって、著しく価格が下がるということは、やはりお気の毒なことである。ただ、こういう制度があれば、全部が補償されないにしても、ひとつ再生産でもう一回やってみようというだけのつまりファンドができる、そういうことでございますから、そういう意味で生産者のほうにお気の毒であった事態があったわけでございます。  一面、野菜安定資金協会の前身でありますそういう団体は、発足いたしまして間もなく、全部の金をはたいてしまった。そこで、あらためて積み直すということになったわけでございますが、そういうふうに積み直していきます過程で、従来の国が三分の一、生産者のほうが三分の一、県が三分の一というようなことで積み上げていくのでは現在の野菜生産が重要視されておる段階で非常に手ぬるいじゃないかというようなこともあり、こういう法律ができて、四分の一、四分の一、二分の一というような負担割合に変えていくということで、つまり、そういう経験があったために、一応——十分とは必ずしも申し上げません、今後改善すべき点が多いと思いますが、そういう制度をつくらざるを得なかった過去の苦い経験システムとしてやはりあったわけでございます。私はそういうことで申し上げたわけでございます。
  33. 中村波男

    中村波男君 前は、農民生産者の防衛的な立場で資金協会というものができておったのですが、もっとそれよりは一歩前進したと思いますが、大きい立場で高い次元でこの問題を考えますときに、暴落をし、全く生産費にもなんにも当たらないような価格というものでは農民は気の毒だ、こういう立場でいま局長はものを言われましたが、しかし、野菜が暴騰してきて、農民はなるほど幾ばくかの利益を得ているでありましょうが、国民の消費者から見れば、これはたいへん困ったことだということになるわけです。したがって、安定的生産と安定的供給をするためには、一定価格水準を保つようなことが根本的に考えられなければ、法のほんとうの目的にはならないのではないかというふうに私は思うわけです。  そこで、保証基準価格は、最低と最高を抜いて五ヵ年の平均価格をもってその基準を出しておりますが、これは関連質問でもありますから、基本的な政策論争をいたそうとは思いませんけれども、少なくともそういう生産者生産を確保し安定させるという考え方基準価格をつくり出す場合には、生産費所得補償方式というものの上に立って価格をきめなければならないのではないか、私はそういうふうにいま考えるのであります。  それからもう一つ、さっきの質問の中でさらに突っ込んでお聞きしたいと思いますことは、無事戻し制度をひとつ検討してみたい、これは実に答弁としては模範的なお答えであると思うのでありますが、農業共済制度に見られるような方法を直ちにとれというのは無理なことかもしれませんけれども検討してみるというなら、過去五年の周期があったのでありますから、五年を周期にして、そこで一応被害が——被害といいますか、補償金がほとんど使われないような場合には無事戻しをするんだ、こういうようなことをはっきりと方針として政策として打ち出すことが、掛け金をする者に安心感を与えて、さらに信頼度を高める。問題は、野菜生産が停滞いたしますのも、やはり生産が不安定だというところにあると思うのです。したがって、そういう点を、これは幸いきょうは次官もおいでになっておりますから、ただ検討するというおざなりの答弁ではなしに、そういう方向でひとつ検討される意思があるかないかもあわせ承っておきたいと思います。
  34. 八塚陽介

    政府委員八塚陽介君) 最初の点、あるいはこれはお答えする必要がなかったことでありましたか、ちょっとはっきりいたしませんが、こういう保証基準価格等をきめる場合には、結局は生産者の安定ということとの関連がなければならないので、市場の卸売り価格平均というようなことじゃなくて、むしろ生産費所得補償方式でございますか、そういう観点から、野菜価格は幾らであるべきである、それがどういうふうに下がったというふうな考え方でなくてはならないのではないだろうかというお話があったわけですが、生産費所得補償方式云々は、これは非常に広範な問題を含んでおると思いますが、ただ、それも、現実の問題といたしまして野菜生産費を一般的に妥当とするものとして調査することは、非常に困難なことではないかと思います。各地域あるいは各つくり方がまちまちであり、しかも品目が非常に多いわけでございます。米であるとか牛乳であるとかというような形で生産費をきめていくということは非常に困難ではないだろうかという点が頭に浮かぶわけであります。なお、価格生産費との関係でございますが、実はこれは決して喜ばしいことではございませんけれども、たまたまあります生産費調査等と比べて価格がどういう動きをするかというのを見ましても、かなりかけ離れたといいますか、つまり年々の価格の変動が非常に多いわけでございますから、これはそういう意味においても現在の段階では客観的な指標としてあらわれた市場価格というものを使わざるを得ないのではないか。理念として所得補償方式云々という問題は別といたしまして、制度としていまの段階では生産費所得補償方式というものを使うだけのデータは残念ながら得にくいのではないかというふうに考えておるものであります。  それから第二の無事戻しにつきましては、これは先ほども申し上げましたけれども、とにかく何となしに掛け捨てになっておって、はなはだ不満であるという空気があることは、私どもよく承知をいたしておるのであります。ただ、たとえば五年なら五年過ぎまして、そうしてその次にまた金を積んでいくわけでございます。ですから、この事業が長期的に恒久的な制度として運営されていくとすれば、また五年たったときに再び積んでいかなければならない。したがいまして、一たん返してもまた積むというようなことになるのではないだろうかと思います。もっとも、あるいは御指摘の点は全部返すのではなくて、ある程度こういうふうに無事であったからということで一部を戻せばいいじゃないかというようなお話であるかとも存じますが、そういう点等につきましても、これば政務次官にあるいはお聞きであったかと思いますが、私の考えを申し上げますならば、なお検討したい。これを検討する場合に、無事であることは当然幸いなことでありますが、たとえば先ほどお話が出ました三分の二というのをかりに上げれば、むしろ支払うケースが多く出てくるわけであります。その他いろいろなものと関連して考えなければいけないというふうに考えておりますので、いわゆる国会答弁でない検討をいたすつもりでございます。
  35. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 ちょっと。私はこういうふうに思うんですが、私の考え違いかもしれないのですが、国と県とそれから生産者、それが協会の基金というものを積んで、最後出荷が多く値が下がってきて非常に出血が多いということならそれで救済をしよう、こういうことなんですね。ところが、私はこの三、四年前にもここで発言したことがあったんですが、これはむずかしいことだから採用されないだろうと思うんですけれども、何となしにこのシステムを考えてみると、生産者価格というか、生産者というものを主体に考えたことなんです。最近いいことは、指定消費地の需要というものの数量をまあ何年先かくくってきめなければならぬということになった。これはもとはなかったんですよ。消費地は幾ら使おうがどうしようが、生産者と県や国が面倒をみればいいんだというような言い方をしておった。今度は、消費地にどれくらい要るであろうかということをあらかじめ検討して公表をしなければならぬ、こういうことなんです。これは一歩進んだのでありますが、この基金に積みまする場合にも、消費地の都道府県あるいはその他がやはり生産者と同じように基金を積むべきであると思うんですよ。国や県はいずれにしてもその行政の中核になっておるのでありますが、消費地も積んでいますか。積んでいませんね。そういうような片手落ちな、生産者だけが積んで、おまえらだけが商売をせいと言うけれども、これは生産者がきわめて純朴な農民だからこれでやっているのでありますが、消費地にどれだけのものが消費されるかというようなことも腰だめで十分にわからない。もしこれがわかったとしても五年先で、その年々の区切りがどういう消費の傾向をたどるかということもわからない。そして、消費地というものと生産者というものとの数量関係がないと私は見る。両方の数量を出してきておるけれども、関連がない。これは、タマネギならタマネギ、あるいはキャベツならキャベツはどれだけどの地区で生産をするんだというものが、おおむねのものはあっても、それが消費地との関連がない。私は、これは底抜けの袋みたいなもので、つまりけじめのつかぬことであると思うんですよ。一ところくくっておることだし、確かなように見えるけれども価格といえば非常に安い価格でしょう。いまから五年先たってみなければわかりませんなんて言ったって、これがプールで計算するのだから、一地域経済連なら経済連というところでやるのだから、中には非常にみじめなところも出てきておると思う。しかし、たまたまプールで計算するから、その恩典にあずからぬ。私は、きょう、どこをどうしてくれというわけではないが、少なくとも消費地の者が、持ってくれば買ってやるんだというような高びしゃに出ておる姿自体が私には気に入らぬ。少なくとも消費地の都道府県だって、たとえば東京都、大阪府でも、これの基金については協力すべきものであると私は思う。まずこれが一つ。  それから消費地におけるいわゆる消費額というものの計算をするのならば、生産数量というものとも関連のあるような数字でなければ、単に数字を羅列したにすぎない、何も役に立たない数字である、こう申し上げなければならぬと思うのであります。これはお答えは要りませんが、こういうつまらぬ話にお答えをいただいて、いろいろ理屈と膏薬はどこへでもつくので、ああじゃない、こうじゃないと言うて理屈を聞いてみてもしょうがないが、しかし、もし私の指摘するところに何か政策上考えなければならないところがあれば、ひとつ御裁量をいただきたい、こういうことを申し上げておきたいと思います。
  36. 村田秀三

    村田秀三君 たいへんけっこうな関連応援質問をいただいたのでありまして、いま与党である立場の方から御発言をいただきました内容、これは私が考えている考えと方向は全く同じであると、こう思いまして、意を強うして発言をするわけですが、私も生産費の問題は後ほど触れたいと思っておりました。現地の実際の資料は持っておりますから、生産費の問題は後ほど触れますけれども、先ほど私が触れておりましたのはこの需給関係です。局長も、価格を安定させるということは、需給関係を常に安定をさせておくということなわけですね。その前提に立つならば、これは発足一年であるからまだ不完全であるとは言いながら、何か発言の中にはこれは困難であるからなかなか思うようにばいかないということで、何かしら放置をしておるような印象を受けざるを得ないわけです。というのは、確かに総需要量は五年先のものは公示をしなければならないということになっておるわけでありますから、少なくとも去年の実績と比較してことしはどの程度のものである、こういうことについては概数は予想できると思うんです。そうすると、その概数に従って生産計画を立てて、そして出荷計画をこれまた樹立をいたしまして、平均的にその作業が流れていかなければならない、こう実は思うわけです。その論議には異存はないと思うんですが、どうですか。
  37. 八塚陽介

    政府委員八塚陽介君) これはあるいは先ほども申し上げたことと重複になるかと存じますが、要するに、生産がどれだけあがるかという計画をする場合には、全部の生産地を押え、全部の生産者に意思が通れば、これは全体の需要と生産数量の一致を指導していくということになるわけでございますが、先ほども申し上げましたように、産地はきわめて多い。生産者もきわめて零細多数である。しかも、野菜生産者は、どちらかというと、いままでの態様からいって、政府の関与を必ずしも好まない。むしろ自分がうまく売りたいのだという方もあるわけでございますから、したがって、全体じゃなくて、われわれば指定産地をつかむというかっこうになるわけでございます。その指定産地は必ずしも全部カバーできないので、全体の需要に対して全体の計画をマッチさせるように行政的にやっていくというのはなかなか困難であります。ただ、来年はどういうふうになるであろう、たとえばアウトルックで来年はタマネギはどういうふうになるであろうという見通しは、ガイドポストとして与えていく。そして、それと対応して全体が生産をされていく。そのうちでも、私どもとしては市場の五割を占める指定産地については特に濃密な指導をして、そしてまた緊密な御協力をいただいてやっていくというシステムになっておるわけでございます。
  38. 村田秀三

    村田秀三君 いろいろとつけ足しを言われますので、ぼけてしまうわけですが、私が先ほど申し上げましたこと、その考え方に立っていろいろな作業がなされるんだと、私はこのことがなければ法律目的というのは失われると思うんです。しかも、とにかく生産計画を立てて産地指定するにしても、野菜生産農家は企業的に考えて人が損するときにうんともうけてやろうというような気持ちがあるから抵抗があるということであるならば、法律に基づいて産地指定して計画的に生産をしようとするそのことは全く無意味なものになるし、法律目的と背反しておるということになると思うんですよ。だから、局長は、生産農民のそういう抵抗があるからようやれないというようなことではなくて、これは積極的に需要に対応するところの生産計画というものを立てるべきである。であるけれども、ことしは第一年度であるので、なかなかそこまで計画がいかない。その全体の計画の一部をことしはやりますと。ことしになりましてから新しく指定をいたしました百三十ですか、そういうような考え方へ立つのならわかるんです。  それからまた、付随しておきますけれども、私が歩いて生産農家の方々と話をした限りでは、おれはもうけたいから政府はよけいなことをやるなというような考え方を持っている人はおりませんよ。むしろ、産地指定を受けて、そして安くてもいいから可能な限り安定して出荷をしたいと考えておるほうが多い。私は、全部歩いて聞いてきておるわけです。だから、この法律をつくる前提があるにもかかわらず、いま日本の経済社会は自由主義資本経済であるから、この思想と抵触するようなことはいくらかずつ除いていこうという考え方園芸局の中にあるのじゃないですか。
  39. 八塚陽介

    政府委員八塚陽介君) 私、少し、何といいますか、リザーブが多過ぎて、あるいは的確に気持ちを申し上げていない結果になっておるかと思いますが、私どもとしても、一番理想は、需要に対応して生産計画的にやっていくことが消費者にとっても生産者にとっても安定という面で一番いいことであるし、ねらいであるという考え方は、一向に迷ってはいないつもりでございます。それから野菜指定産地はそういうための手段である、あるいはそういうために指定していくのであるということも、これはもう全く私ども確信をいたしておるのであります。ただ、野菜指定産地だけでは全部の需給というのはいまの段階ではいっていない。そうして、野菜指定産地で全部の野菜産地をカバーしてしまうということは、現在の野菜生産状況から見るとなかなかそう早急には望めないということを強調するものですから、あるいはそのあれだと思いましたけれども……。
  40. 村田秀三

    村田秀三君 だから私は、冒頭申し上げましたように、別に法律をつくっておきながら計画がずさんでないかというようなものの言い方は最初からしないんだと。法の目的効果を上げさせるためには、いま問題になっておる問題をどう処理したらいいのか、これをひとつ話し合おうじゃないか、こういうつもりで質問をいたしますということを断わってあるわけです。虚心たんかいにひとつやってもらいたいと思います。  そこでそういう意味で昨年は——昨年の実績をもってこれじゃいかぬじゃないかというような言い方をするつもりはありませんが、去年これはいただきました。私も七月のこの委員会で資料要求をいたしまして、皆さん方からおつくりをいただきました。毎日の出荷とそれから卸売り価格と消費価格を調べてくれなどというような言い方は、たいへんむずかしい問題でありますから、そういう意味では御苦労なさったことと思いますし、そうしてまた、この資料がすべてを物語るものではない、こうは思います。思いますけれどもこの状況を見てみますと、トマト、キュウリ——私はよそのものを実際には調べてきておりませんから、トマト、キュウリ対象にしてものを申しますけれども、これはずうっと出荷量というものは相当な差があるわけですよ、毎日ですね。百トン入ったかと思うと、六十トンぐらいで終わってみたりですね。非常に動きが激しいわけです。そうして、価格は需給の関係によってきまる、こういうことを言われておりますけれども、入荷量が多くても、卸売価格は比較的高い場合もある。卸売り価格が安くても、小売り価格が高い場合もある。こういう実際の数値なんですね。いろいろあるわけであろうと思いますけれども、この理由はどう想定されるのかということについてお伺いをしてみたいと思います。
  41. 八塚陽介

    政府委員八塚陽介君) 確かに、ただいま御指摘になりましたように、日々のデータをとりますと、卸売り価格、入荷量、小売り価格というものが、きれいに平行した関係に出ていないわけでございます。場合によっては常識と反することがままあるわけでございまして、これは、端的に申しますと、私どももなおこの点については勉強をしなければいけないのじゃないかということで、今年度特にそういう市場のいわば動きについてどう分析していったらいいかということをあらためて学識経験者等の知恵をかりて検討いたしたいという段階でございますから、なかなか申し上げかねるわけでございますが、ただ、一つ言いわけがましくなりますが、やや長期的に見ますと、その月あるいは年でとりますと、これはかなりきれいな平行関係にあるわけでございまして、御承知のように、入荷量か——入荷量といいますか、生産量が、三十五年一〇〇にいたしますと、四十年で一二五%、年率五%ぐらいずつふえておりまして、それに対して価格は年率一〇%ぐらいふえておる。これは、先ほどのようにタマネギが下がった、キャベツが下がったという個々の品物の動きは消去をいたしますと、やはり平行的に出ております。それから小売り価格と卸売り価格にいたしましても、やはりやや長期にとれば常識的な経済の見方と合うわけでございますが、短期的には合わない。  そこで、通常私どもいろいろ検討いたしておりますときに言っておりますことは、たとえば、これはほんとうかうそかなかなかわからないのでありますけれども、少し寒いとその日は入荷量が多くても売れ足がいいとか、あるいは逆に暖かいために入荷量が少なくてもけっこう値段が下がってしまう。その日の天候であるとか、あるいは、前日に仲買い、小売りが相当手当てをしてしまったために、その次の日は少量であっても案外値段がつかない。それからまた、小売店の売り方としましては、結局、平均して自分たちの生活費をどれくらいということを考えて、したがって、それから逆算して大体どれくらいで売っていこうというめどはどうしてもやらざるを得ないというようなことから、その日の卸売り値段が安かったものを特にそのまま必ずしもどの店も平均しておろすということがないようでございます。これは、零細な小売り店の経営からすると、その月を通じてどれくらいの商いをして、それに対してどのくらいの収益を得なければ困るというようなことから、それで売れればそういう値段をつけていくというようなこともあるようでございます。  したがいまして、冒頭申し上げましたように、必ずしも的確に全部分析をいたしておりませんが、きわめて個々別々な原因によって、必ずしも平行をしていないというのが現状でございます。
  42. 村田秀三

    村田秀三君 その問題は、もう少しいろいろと検討してみたいと思いましたが、時間もありませんから、それに、いま、局長はいわゆる流通経過ですか、追跡調査をしてみたいと。いろいろ検討してみたいということは追跡調査をするということではないかと思いますので、追跡調査ということばを私ば使ったわけですが、それをやってみるということでありますから、きわめて早い機会にそれはひとつやっていただきたいと思います。  こういうことで次の質問に移りたいと思います。というのは、小売り価格の中で生産農家の手取り分がいろいろ価格分析をいたしますとあるわけでございますが、その分析がなされたものがあるとすれば、ひとつお示しをいただきたいと思います。私が知り得た範囲では、農家の手取り分というのは、わずかに二七、八%、実に低いわけです。したがって、あとはどうなんだろうというような実は疑問がありますし、しかも、市場というその制度自体、私が疑問に思いましたことを、一日、一日この資料を見ますと、需要と供給が公正な価格を決定するとばかりは言い得ない面がある。何かこれは操作がされておるのではないかというような疑問を持っております。しかし、その疑問は疑問にとどまっているわけでございますから、具体的にこれがこうだからこうではないかということではない。したがって、それを含めてやはりこれは徹底的に調べていただきたいと、こう思うのです。これはいかがですか。
  43. 太田康二

    説明員(太田康二君) 先生の、追跡調査の結果、一体生産者の手取りがどうであるかというお尋ねでございますが、私のほうがかつて昭和三十六年に農林省でいたした幾つかの事例がございます。それよりもより新しい時点でつかまえた調査といたしまして、東京都の経済局が昭和四十年にいたした調査がございますので、これで二、三の例について申し上げますと、千葉県産の大根が東京市場に入りました、これは昭和四十年十一月と十二月にわたっての調査でございますが、この結果によりますと、生産者の手取り額は、比率で申し上げますと四三・九%、それから茨城県産の白菜が、やはりこれも東京中央卸売市場でございますが、神田市場に入荷されましたときの生産者の手取り額が三八・四%、それから高知産のキュウリが同様で六四・八%、こういった手取り額に相なっております。
  44. 村田秀三

    村田秀三君 それはずいぶん間違っているのじゃないかと思うのですが、これは衆議院の農水で論議をされた際の内容ですが、中部管区行政監察局の追跡調査、これを見てみますと、私は先ほど二八%と言いましたけれども生産者の取り分は二二・六%である。これは四分の一にも達していない、こういうことであります。小売りマージンなどというものはそのときによりまして幅はあろうと思いますけれども、これまた相当に高くなる。したがって、ただいま発言がありました数値はどうもやはり疑問がある、こう思いますので、これは責任をもって調査をすると同時に、まあ三十六年の資料だと言うが、農林省自体としてはそういうことではいけないと思いますので、最も新しいところを追跡調査をするということでお願いいたしておきたいと思います。  それから次に、コールドチェーンですか、これは昨年正月早々にだいぶ宣伝をされた一つの新しいシステムでありますけれども、この事業は実験的でありかつ試行的であるということ、これも私は承知しております。したがいまして、そういう前提に立ってこれまたこれからものを申し上げるわけですが、園芸局はこれをどういうふうに評価をしているか、と言うとちょっと悪いですが、その実績についてどういうふうに分析、評価をしているか、こういうことについてひとつ……。
  45. 太田康二

    説明員(太田康二君) 実は、いま先生もお話しなされましたように、現在、科学技術庁で実験中の段階でございます。しかも、これも事例的にやっておられるわけでございまして、全体の評価ということになりますとなかなかむずかしいということをまず最初に申し上げなければならないかというふうに存じ上げるわけでございますが、一般的にわれわれが考えますことは、たとえば水産物について申し上げますと、産地処理による頭、内臓等を肥飼料へ加工利用する、あるいは、青果物について申し上げますと、輸送中の減耗等が低減する、あるいは品質鮮度の保持が非常によろしい、こういったいわゆる資源の有効利用の面からのプラスということが考えられます。それから、たとえば豚肉なんかが一番いい例でございますが、産地処理によって可食部分のみを輸送する、枝肉輸送というようなことによりまする輸送コストの低減等に代表されます輸送流通の合理化というようなメリットもあるわけでございます。それから水産物等につきましては、やはり冷凍による出荷調整ということが可能になりますので、それを通ずる価格安定効果というようなメリットがあるというふうに考えるわけでございます。  一方、これまた当然手をかけるわけでございますので考えられますことは、常温の流通の場合に比較いたしまして低温流通の場合には、出荷段階、あるいは輸送の段階、あるいは販売の各段階におきまして、処理あるいは包装あるいは温度管理というようなことのために経費がかかるということが当然考えられるわけでございまして、常温流通の場合に比較いたしますと流通コストは増大する、こういったデメリットがあるわけでございます。  そこで、こういったコストの増大分というものを上回る流通全般の合理化メリットというものが成立するようなものにつきましての低温流通機構というものは十分経済的な合理性をもって導入され得るというふうに考えるわけでございますが、御承知のとおり、現在の段階におきましては、品目により当然いろいろな差があるわけでございまして、同じ生鮮食料品の中でも牛乳等につきましては、これはもう全く大部分低温流通で行なわれておる。それから水産物あるいは食肉等につきましてはかなりの部分がやはり低温流通機構に乗って行なわれておる。これに対しまして、生鮮食料品の中ではくだものにつきましては一部行なわれておりますが、野菜等につきましては、その頻度が先ほど申し上げたような品目に比べますとまだ劣っておる、こういった状況にあるわけでございまして、私のほうがいろいろ流通改善等の施策を講じます場合にも、いま申し上げたような観点に立ちまして、実際にそれぞれ各品目の特性に従いまして施策を進めておる、こういった実情にあるわけでございます。
  46. 村田秀三

    村田秀三君 ことしもまた継続してやることになっておるようでありますが、ただいま、まあおおよそよいところだけを話をされました。悪い点もまた話をされたようでありますけれども、生産地では、確かに、いまのお話の中にありましたように、これはもう経費が相当かさむ。そうして、結果的には大きな赤字が出て、昨年はその赤字を補てんをしていただいたということでありますけれども、ことしもまたその補てんの措置、いわゆる一切産地には迷惑をかけないんだということでおやりになるわけですね。
  47. 太田康二

    説明員(太田康二君) 先生のおっしゃるとおり、かかります経費等については一切国費で見るということで、昨年と同様でございます。
  48. 村田秀三

    村田秀三君 そこで、まあ実験的にやりまして、将来これを大きく活用したいという気持ちがあればこそ実験をするんだと、こう思いますけれども、その中で一つ疑問が出てまいりますのは、私は、福島県の須賀川市、岩瀬郡、これはキュウリで知られておりますが、これをもとにしていろいろ申上げてみたいと思うわけでありますけれども、現在の施設は、キュウリが一反歩三百ケースですか、そうして、その予冷倉庫が約六百万ぐらいかかっておるということでありますね。これは実験でこういう調査ですね。で、須賀川の場合は一日大体三万ケース。常温で出荷するものももちろんありましょうし、出荷調整するということで予冷倉庫に滞留する期間、これはまあ最低十日間ぐらい見なくてはならないのではないか。そうしてみますと、かりに一日生産高の三万ケース、この三分の一の一万ケースといたしましても、その予冷倉庫というのが相当大きなものをつくらなければならない。そうしますと、この施設をつくるために、これはとてもじゃないが生産農民の負担には負えない、こういう話も出ておるわけでありますが、将来これを活用していくということを前提として考えた場合、どのようにこれは考えていいのかという問題です。
  49. 太田康二

    説明員(太田康二君) 実は、四十一年、四十二年は、科学技術庁が主催いたしましての実験段階でございます。御承知のとおり、これが結果をまちまして、実は四十三年度からまさに先生のおっしゃったような実用化の段階に入りますと、予算的な措置といたしましても、当然実施官庁のほうで予算的な措置も講じなければならない。ただいまお話しの予冷のための施設等についてかなりなコストがかかるので、そういったものに対する考えはどうかというお話でございますが、われわれやがて明年度予算の編成の準備に入るわけでありまして、実は当然コストの上昇要因といたしましていま仰せられました資本費負担という問題が出てまいるわけでありまして、この辺の措置につきましては、現在、たとえば水産物のような場合には、水産物の製造施設に対する助成をいたしております。それから牛乳の場合でございますと、指定生乳生産者団体に設置いたしますクーラー・ステイションに対する助成もいたしております。そういう形で来年度農林省予算要求をいたします場合に、これを何らかの形で具体化というものをいたさなければならぬわけでありまして、目下、部門で検討中、こういった段階でございますので、なお実験結果等も数字的に当たりまして、できる限り地元負担の少ないような方向で考えてまいりたいと、かように考えております。
  50. 村田秀三

    村田秀三君 かりに国が助成をする、こういう方策がとられたといたしましても、これは相当にコストが高くなることだけは間違いない。そこで、コールドチェーンのうまみといいますか、やはり消費地に直送をいたしまして、そして販売店に直送する、ここにまた一つの妙味があるのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  51. 太田康二

    説明員(太田康二君) 確かに、先生のおっしゃるような問題はあると思います。むしろほんとうに発達した段階でのコールドチェーンの行き方としては、集配センター的のものを設けまして、そこから大口需要者なり消費者に直送するという問題が今後普遍化し一般化した場合に、当然起こってくる問題であろうと思います。その際、最も大きい問題は、御承知のとおり、一方では流通の大きな部分をになっておりますところの中央卸売市場を通ずる流通機構というものがあるわけであります。これとの調整という問題も当然出てくる問題であります。しかし、考えますと、中央卸売市場を通します場合にも、たとえばいまお話に出ましたコールドチェーン物等につきましては、従来のせり取引にかわるものとして、たとえば見本取引を実験的に実施をしていく、あるいは相対取引を実施するというような形で、取引方法等につきましては従来のせり取引にかわる取引方法というものにふさわしい商品ではないかというようなことも考えておりまして、これも将来の検討課題でございますが、そういう前向きの方向で検討してまいりたい、かように考えております。
  52. 村田秀三

    村田秀三君 私もまだそこまで調べてみないのですが、この辺はどう技術庁と園芸局との間で話がありましたか存じませんが、実験段階にあるにせよ、生産者側、出荷団体から小売り店に直送して、市場上場手数料ですか、これをとられたというような話があるわけですが、これはどういうことですか。
  53. 太田康二

    説明員(太田康二君) この実験事業を実施する際に、いま先生のおっしゃったように、市場を通さないで大口需要者に直接直送するというような構想も当然あったのでございますが、従来の市場を通ずる生鮮食料品の取引というのが基本でございましたが、いま先生の御指摘のように、市場の手数料というものを、実際には市場を通さなかったものにつきましても、その数量に見合った分を定められているところの手数料部分だけを国の実験事業費の中から支出した、そういうことでございます。
  54. 村田秀三

    村田秀三君 そうしますと、市場はやはり手数料はとったということですね。
  55. 渡辺文雄

    説明員(渡辺文雄君) 私、昨年、技術庁と農林省と相談したときに、事務的にタッチしたものでございますから、その間の事情を申し上げてみたいと思います。  先生御指摘のように、大体一車分を各産地から毎日送るということで、たしか、福島県のキュウリにつきましても、十日間か二十日間くらい、そういう形で送ったのだろうと思います。で、ミトン入ってくれば、そのうちの一トン分を小売り店に直送し、二トン分を市場のほうに上場するという形で、流通関係業者にもコールドチェーンというものについての認識を深めていただき、それから小売り店のほうにショーケースを置きまして、直送したものにつきまして消費者の認識も深めていただくという、両方の点につきましての主として技術的な問題を中心にした実験をやろうということで話があったわけでございます。先ほど参事官が申し上げましたように、青果物の流通は、大体中央卸売市場の卸売り関係業者がめんどうを見てきたわけでございます。今回この実験をやるにいたしましても、実際そういう新しい商品を流すにつきましては、小売り業者のほうも非常に不安でございますし、卸売り業者あるいは中央卸売市場の仲買い人、買参人等も未経験でございまして、そこらについての話し合いを、卸売り会社のほうに音頭をとっていただきまして、私どもも入りまして御相談して、意思の疎通をはかったわけでございます。それで、小売り店等に配送するにつきましても、配送費等、全部かかりましたものにつきましては技術庁のほうの実験経費から出ましたが、荷の扱い、その世話、あっせん等につきましては卸売り会社にかなりのめんどうを見ていただいたということで、従来の卸売市場を通ずるものの流れと同様に、つきました卸売り値段から所定の卸売り手数料というものを卸売り会社のほうに支払うという形をとったわけでございます。
  56. 村田秀三

    村田秀三君 それじゃ、再度お伺いしますが、ミトンのうち、二トンは上場した、一トンは販売店に直送したとすると、手数料八・五%を卸売り会社に支払ったというのは、一トンの分ということですね。
  57. 渡辺文雄

    説明員(渡辺文雄君) ミトン全部につきましてでございます。二トンは卸売市場で上場いたしましてせりをやったわけでございますが、全部につきましてそれと同じ扱いにいたしたわけでございます。
  58. 村田秀三

    村田秀三君 その扱いは、どうなんでしょうかね、実際に上場しておらないものまで手数料を支払わなければならないということ自体、どうお考えになっておるのですか。
  59. 渡辺文雄

    説明員(渡辺文雄君) 将来の問題は別といたしまして、ことしは技術的な意味での実験でございますし、先ほど申しましたように、卸売り業者、あるいは仲買い人、買参人、あるいは小売り店等、いずれも全くその商品について未知と申しますと言い過ぎでございますが、新しい経験をするわけで、小売り店等もその荷につきまして最初のころは積極的に協力するというような態勢でもある意味ではなかったわけでございます。そうした関係で、実験をうまくやるためには、流通関係の業者にこちらからお願いをする、こういう特殊な商品だけれども扱ってもらえないか、円滑に扱ってもらうためにはそのほうの方の協力を得なければならぬ、そういう意味で、従来から青果物につきまして卸関係を通じてやっておるわけでございますけれども、実験で動く荷の全部につきまして卸売り関係業者に流通量のかなりのめんどうを見ていただくという趣旨で、せりに上場されました二トンは従来の上場物と全く同じでございます。実験店に配送されました一トンにつきましても、同じような扱いをしていただくという形で関係者の御協力をいただいたのでございます。
  60. 村田秀三

    村田秀三君 どうも別にこの法律的な解釈論を私はここでやるつもりはないのですが、これは生産者が小売り業者に直接やってはいけないという法律はないでしょう。ないとすれば、それはまあ販売価格をきめるためには市場価格を標準にせざるを得ないというようなかりに事情があったとしても、その手数料をとること自体、これはまさに非常識と言わざるを得ないわけであります。協力を得られないとかなんとかいう問題がありましたが、もしも協力が得られないとすれば、将来ともにいわゆる生産者団体が小売り店に——まあいまは実験小売り店だから、これは相対の話の中でするわけでありますからけっこうでございますけれども、これがもっといわゆる実用段階に入ったとすれば、ここは政府指定の実験小売り店ですというわけにはまいらないと思うのです。そういうときに、いわゆる市場上場手数料というのがとられることになるのか。
  61. 太田康二

    説明員(太田康二君) 先ほども私申し上げましたように、まだ四十一、四十二年度は実験の段階でございまして、数量的にも全般の流通量に比べればわずかな数量であったわけでございますので、いま申し上げたような措置でまあ問題の解決をはかったということでございまして、私先ほど政府のほうから金を出したと申し上げましたが、それは間違いでございまして、結局、一トン分につきましては生産者が負担をしたと、こういうことになったわけでございますが、将来の方向として、こういった新しい商品が流通する場合に、これをどう一体いままでの既存の施設を利用して流通に乗せるのか、それとも、別個の形態として、たとえば集配センターというようなものを設けて、それから大口需要者なり消費者に直接売るのかというような問題は、これまた現在の流通機構ばかりを前提に置いて考えた場合にはなかなか問題の処理がむずかしい問題かと考えます。しかし、いずれにしても、新しい商品につきましての流通の問題としてできる限り既存の施設との調和をはかりつつ前向きの方向で解決することで検討をしてまいりたい、かように考えております。
  62. 村田秀三

    村田秀三君 時間もありませんから、あまり論議いたしませんが、少なくとも、新しいシステムをとって、労力も施設費もかかる、コストが高い。なるほど、上場のものよりも確かに新鮮なものを食ぜんにのぼせることができるというそれはあるにせよ、やはり安くやるというのが目的である。だから、直送という方式を将来も検討をせざるを得ないということになると思うのです。その場合に、よけいなものを、全然無関係なものを八・五%もぼこっとつけられるなんということは、これはいかに自由主義社会においても了解のできる話ではないんです。去年はそういう措置をとった。今年はどうなのか、これはそういうあやまちを是正するというふうに言い切れるかどうか、その点についてお伺いすると同時に、またそうしてもらわなければならないと私は思うのですが、その点はどうですか。
  63. 渡辺文雄

    説明員(渡辺文雄君) 先ほど申しましたように、関係者の御協力をいただくために話し合いの過程でそういう形で話し合いをいたしたわけでございます。今年もおそらく同じような形で行なわれると思うのでございます。  先ほど、もう一つ申し落としましたが、ミトン分送られてきまして、二トン分は卸売市場にとられる、一トン分はとられないということになりますと、産地のほうに二トン分と一トン分と違った金が送金されるということになります。それからまた、送られたコールドチェーン物につきまして、どういう値段で売ったらよろしいかということにつきましてのいろいろ問題がございまして、中央卸売市場できめられた値段と同じ、それに標準小売り店並みの三割の小売りマージンをかけたもので実験店で売らせるという指導をいたしますために、中央卸売市場できまった値段に三割をかけたものにつきましての一トン分の値段になるわけでございます。二トン分は、せりできまった値段でせり落としていった小売り商がその小売り商の独自の判断で三割前後のマージンをかけて売るということで、二トン分の売れ方と一トン分の実験店での売れ方は必ずしもぴたっと一致しないわけですが、産地における金額というものは両方とも一致させるという必要があったわけでございます。
  64. 村田秀三

    村田秀三君 どうもやはりおかしいですよ。一トンと二トンの価格が違うから産地で困るだろう、そういうような理屈づけなんというのは、理屈じゃありませんよ。そうではなくて、やはり私は法律的にも多少問題があるのじゃないかと思います。市場法との関係の中でも常識的に言ってもこれはおかしいのですから、おかしいことはすみやかに改めるようにする、こういうことでひとつお願いをしたいと思います。お願いというよりも、これはやらなければならないということです。  それから販売店の価格をどうきめたらよいかというような問題でありますが、ここらあたりから実は生産費の問題が出てくるのじゃないかと思います。時間もありませんから、私はここではそうこの問題を追及をいたしませんけれども園芸局でとりました生産費調査、これは去年いただきました資料の中にもありましたが、三十六年においてとってあるんですね。これは一昔前の生産費調査です。これは、野菜法ができるということについて当時は想定がなされないために、そういう生産費調査などというものをしていなかったということになるのであろうから、これは別に私は何も言いません。言いませんが、生産費調査はむずかしいといいながら、やってできないことはないわけです。先ほど園芸局長も言っておりました、いわゆる天候に左右されて、豊凶に非常に幅があるということでありますけれども、いまは相当に技術が進んでおりますから、多少の干害は、もう井戸水をかけるほうのかんがいの施設というものは助成までしてつくろうという世の中ですから、相当大きな台風でも来ない限りは、そんなに失敗はないわけですよ。こう考えてきますと、生産農家を個別的に見れば、圃場そのもの生産力であるとかそういうものが影響しますけれども、そんなに大きな開きというものはないわけですよ。だから、生産費調査はできます。昨年須賀川でやりました生産調査、計画どおりにほぼ行ったということでありますけれども、一反歩三百ケースを標準生産量といたしまして、十アール十七万一千三百八十一円、これにいわゆる出荷経費がプラスされるわけであります。その出荷経費はキログラム当たり二十六円、それから生産費は五十七円でありますから、一キログラム八十三円に売らないと、これは生産費を償うことにはならないということです。昨年はどうかといいますると、多少生産量は上がったようであります。三百五十あたりまで行っていると思いますから、実数はもっとこれよりも下がると思いますけれども、大体昨年の相場の平均は、須賀川の分だけを申し上げますと幾らになっておりますかといいますと、四十八円八十銭ですか、一キログラム。これが一ケース七百五十円にならないと生産費を補償するわけにはいかないということです。それで、私がちょうど回って来ましたときには最盛期でございまして、確かに産地指定は受けたけれども価格が安くてこれじゃどうにもならぬ、市場はどうなんだろうという話があったわけでありますけれども、ある農家の方は、かまうことはないから、農林省の玄関の前にキュウリの箱を山積みにしろ、こういう極端なものの言い方をする人も出てきております。したがって、もともと、生産費を償う価格でない限りは生産は安定しない、生産が安定をしなければ出荷の安定はあり得ない、出荷の安定がなければ消費価格の安定はあり得ないということになるわけでありますから、この法律制定されましたところの第一番の目的は、やはり何といっても、需要と供給の関係の中で供給を安定させる、生産を安定させるというところに第一義的な目的を置かなくてはならないのではないか、こう私は思うわけです。答弁は要りませんけれども、そういうわけでありますから、生産費調査を責任をもって園芸局はやっていただきまして、それは需要と供給のバランスがとれまして一定価格生産費が補償される限界の中で市場価格が決定されていくならば問題がありませんけれども、しかし、究極、生産費を補償するような最低価格をどこかでいっかは考えてみなければこの法律の完全な効果というものは出てこない、こういうことを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  65. 野知浩之

    委員長野知浩之君) これにて暫時休憩いたします。午後二時に再開いたします。    午後一時三分休憩      —————・—————    午後二時二十一分開会
  66. 野知浩之

    委員長野知浩之君) これより委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  67. 村田秀三

    村田秀三君 午前中は野菜の問題を質問したわけでありますが、その中で大臣質問したい部分、これも多少これから質問いたします事項とあわせて関連をさせて質問をしたいと思います。  そこで、大臣にお伺いをいたしたいのでありますが、倉石農林大臣は昨年就任をいたしましてすでに半歳近くになるのでありますが、参議院では、本会議で質問がございました。しかし、当委員会では所信に対する質問というのは初めてではないかと思うのでありまして、そこで、大臣の所信に対する質問を若干続けてみたいと思うわけでありますが、かつては前坂田農相、元赤城農相、この時代には、坂田農政であるとか赤城農政であるとかいうようなことばで、世間で端的に言いましてそういうものの言い方をしたわけでありますが、倉石農相になりましてから、倉石農政というようなことばはまだ実は聞かれておらないのです。したがいまして、倉石さんが大臣に就任いたしまして、おれはこれを核としてひとつ農政を進めてみたい、そういう問題がございましたら、端的に御表明をいただきたい、こう思います。
  68. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 私は、農政については全くしろうとでございまして、農林省には白紙で臨んでいるわけでありますが、村田さんも御承知のように、大体、政治というのは、私は常識が解決していくと思うのであります。大ぜいの人がこれは非常識だと思うようなことは、政治的に成功するはずはないと思うのであります。私は、日本全体の産業構造の中で農業というものの置かれている立場をよく見詰めて、そしてこの農業というものを生かしていかなければならない。六年前に農業基本法が定められました当時は、おそらく多くの方々は、今日のような日本の産業構造になるとは予測しておらなかったであろうと思うのです。過去数年間の間に、いわゆる高度経済成長政策で——もちろん、高度経済成長政策を考えた当時の総理大臣は、高度の経済成長をやるためには農業もそれに伴っていくべきだとお考えになったかもしれませんけれども、今日の経過から見ますというと、やはりわが国の産業構造というものは非常に跋行的になっていると思います。とかく中小企業や農業は低生産部門と言われておりますけれども実績が示すとおり、他産業、ことに鉱工業生産の伸びなどに比べて、わが農業については、その低生産性を否定することは不可能であります。  そこで、しからば一部の人が考えておりますように、農業生産というようなものにあまり力を入れないで、農産物の大部分ば輸入にまつという考え方、こればコマーシャルベースで一、二の品物を取り上げてみればそういう議論も成り立つかと思いますけれども、国家としてはそのようなことではいけないというのがただいまの政府の考え方であります。したがって、特段な努力を農業の拡大生産のために力を入れなければならないという考え方でありますから、農業基本法にその方向を示しておりますように、まず生産対策、それからまた、同時に、農業就業者の生活向上をすることを考える。同時に、流通対策、そういうものに力を入れて、調和のとれた産業構造の中で生産者及び消費者が納得のできるような方向をとりながら農業というものは守っていかなければならない、こういうのが一応われわれの考えておる考え方でありますが、村田さんも御承知のように、農作物全体から見ますというと、その自給度はやや落ちております。国民の主食である米についてはある程度の自給度ば維持しておりますが、われわれとしてはこれ以下にこれを落としてはならないということで、この点に対する増産対策に特段の力を入れなければいけないと思っております。  御承知のように、近来、ことにこの数年来、経済成長の影響も受け、また、もう一つはテレビジョンその他の影響もあるでありましょうが、一般地方民の生活がきわめて都会化してきておる関係で、食糧に対する需要も都会化してきております。そのために、畜産、酪農、果樹、野菜、そういうものに対する需要度はふえていく一方であります。しかし、果樹、野菜等についてはある程度めどをつけておりますけれども、畜産と酪農につきましてはなかなか計画どおりに進めてまいるということについては多くの難関がございますが、これを突破して、そうして国民の必要とする食糧自給に間に合うようにいたしたい。同時にまた、それと並行して、農業生産のほかに、農家の所得をふやしていくことが必要でありますから、地方におきましては花などをつくって相当に収穫をあげておる農家もございますが、そういうようなものも農家経済全体から考えて、大いに奨励ができるところは奨励をして農家の所得をふやしてまいりたい。  一般的にはそのように考えておるわけでありますが、そのためには、何と申しましても、政府も申し上げておりますように、土地改良が必要でありますから、長期の土地改良計画を樹立いたしまして、それに基づいて構造改善事業というものについては最近の地方における要望も非常にふえておりますので、こういうものにも力を入れる。そのためにネックになっております農地法その他のことについては、時代に即応したものに再検討いたしていかなければならないのではないかと思っております。  大体、そのような考え方で農業政策と取り組んでまいりたいと思っております。
  69. 村田秀三

    村田秀三君 端的に御表明をいただきたいと、こう質問いたしたのでありますが、だいぶ花に至るまでこまかい御答弁をいただいたわけでありますが、この答弁の中で、大臣は、農業の今日置かれておる立場を見きわめて対処する、こういうことを言われております。また、農業基本法制定の当時と経済社会の動態というものが大きく変貌してきて敢行的に発展をしておる、したがって、農業にも問題がある、こういうことに尽きると思います。そこで、そういうような状態の中で、しからばいま一番初めに何をなすべきか、こういう問題について、これまたそう長い御答弁は要らないわけでありますが、端的にひとつお考えのほどをお出し願いたいと思います。
  70. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) さしあたり何を力を入れてやるか。いま申し上げましたように、食糧自給度を確保するという目的に到達するためには、増産対策をやらなければなりません。そのためには、土地改良、同時に構造政策を推進してまいって、そして生産を上げていくことがまず第一に必要だ。そのためには、やはり一般の経済という立場から消費者を忘れるわけにはいきませんので、流通機構の改善に力を入れてまいりたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  71. 村田秀三

    村田秀三君 大臣の所信表明、これを読んでみますと、「解決を要する幾つかの重要な問題が生じてきております。」と。そして、その中では、第一の「農産物需給の問題」は、「農家労働力の流失、兼業農家の増加」によって需給のバランスがくずされておるんだ、こういうことを言っておるわけであります。それから第二の問題は、「農産物価格の問題であります。」ということを言いまして、「最近の農産物需給の引き締まり傾向のほか、労賃の上昇、資本の多投等に伴うコストの上昇要因、あるいは流通機構の立ちおくれ」があるんだ、これを解決しなくてはならない。それから第三に「農業構造の問題」で、「想定を上回る経済成長により農家労働力の流出には激しいものがありますが、それが必ずしも経営規模の拡大に円滑に結びつかず、」したがって、構造改善のテンポが所期の計画のようには進んでおらないところに問題がある、こういうことを言っておられるわけであります。  いま大臣答弁をされておる内容を、私が大臣の所信表明演説の中から申し上げたような形にはなりましたけれども、この中で私がかなりちょっと気になりますのは、農業基本法を制定したときの経済動態とは変わっておるんだということであります。そうしますと、農業基本法の中に盛られておる政策を推進しなければならないんだということがどうも了解に苦しむわけでございます。その辺のところをひとつもう少し明瞭に御答弁をいただきたいと思います。
  72. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 農業基本法は、六年前に制定されたわけでありますが、あれ以来、ちょうどそのころから、高度経済成長政策というものが行なわれるようになりまして、いろいろ農業にその影響もありますが、所信の表明でも申し上げておりますように、高度の経済成長が行なわれて、他産業が著しい勢いで成長するに伴って、それに要する労働力というものの供給源を農村に求めたことは御承知のとおりであります。私が、農業基本法制定当時にこういうことをあまり計算に入れておらなかったのではないだろうかと申しましたその一つは、そういうところであります。  しかしながら、国全体として考えてみますのに、経済が発展していくに従って、多少でもゆとりがあると思われておる地域、あるいはまた、ゆとりがあってもなくても、所得の少ないところから所得の多いところに労働力が移動することは自然の傾向でありますし、また、そういう移動がなければ他産業の発展もできなかったわけでありますから、一年に新学卒者が百三十万人も出てきましてそれが新たな職場を与えられて数年間続けてこられたのは高度経済成長政策の結果だと思っておるのでありますから、そのこと自体は何も日本人として少しも悲しむべきことではありませんが、しかし、必要なる労働力を他に持っていかれるということの結果、その労働力が流出していく地方、引き抜かれていく地方の生産が落ちるようでは困るのでありますから、私どもとしてはそれに対してどのようにして省力をするか。これは、御承知のように、日本だけの傾向ではございませんで、どこの国でもやはりそういうような傾向があります。そこで、私どもは、まず、どのようにして農業の生産を上げるか、どのようにして省力をするかというために、近代化をはかり、機械力を用いるようにして、そうして生産を落とさないように——ところではない、さらに増強するように計画を立てていかなければならない、こういうのが農業政策の中に与えられた近代における新しい任務であると、こういうことを申し上げたわけであります。
  73. 村田秀三

    村田秀三君 先ほど、大臣は、農業生産の停滞、これが農産物価格の問題として国民生活に大きな影響を与えている、こういうような言い方だと私は思うのでありますが、その原因は、農業労働力が予想以上に流出をしておる、兼業農家が増加をしたことによって農業生産が停滞をしておる、こういうことになるわけでありますから、農業基本法制定目的が農業労働力を他に排出させるために制定をされた、こういうような意味のことを言われたわけでありますが、そうしますと、農業基本法というものが農業のためにあるのではなくて、その法の目的は他にあったということになるわけではないかと思います。その辺はどうですか。
  74. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 私のことばの言い回しがへたで誤解を招いたようでありますが、農業基本法は、法律に書いてありますように、これは生産を増強してまいる、そのためにこのようなこと、このようなことをすべきであるという方向を示しているのでございますから、いまおっしゃいましたように、農業基本法は経済発展に伴って労働力を他に排除してやるのであるというわけではないのであります。農業基本法を制定いたしました当時に予測いたしておりましたよりもはるかに急激な勢いで労働力が他産業のほうに流出をいたしたその結果、われわれとしては計画よりもさらに農業の近代化とか省力とかということに力を入れなければならなくなったんだと、こういうことを申し上げたわけであります。国全体としては、比較的ゆとりのあると思われる地域から労働力が他産業に吸収される傾向は世界的な傾向で、これは必ずしも悲しむべきことではないのであって、それにもかかわらず農業生産は増大するように努めるのがわれわれの義務である、私どもはこのように思っているわけであります。  農業基本法の方向というものは、今日なお変える必要はないのであって、基本法の指し示すような方向で、経営規模を拡大し、構造の改善をいたして、そして他産業に比較して劣らないような農業所得を上げるようにいたしたい。それには、まあ機械化も必要でございますが、だんだん労働力が不足するに従って耕作の方法などでももっと工夫をこらして、先般この委員会でもお話のありましたように、地力を培養するような新しい技術的研究もさらに必要である、増産に伴って品質の改良もやっていかなければなるまいと、こういうような考えで農林省は努力していこうとしているわけであります。
  75. 中村波男

    中村波男君 関連して簡単にお尋ねしたいと思いますが、さっきから大臣お話を聞いておりますと、高度経済成長政策の結果として、鉱工業は非常な大きな成長をしたが、中小企業、農業、特に農業が停滞をいたしておりまして、政府の予期したような実績を上げておらない。そういう点では見込み違いがあったんじゃないか、その見込み違いの大きな一つとしてあげられたのが農業労働力の他産業への流出だと、こういうふうに私はお聞きをしたわけであります。そこで、私は、大きな矛盾があるのではないかと思いますのは、政府自民党の高度経済成長政策の中心が鉱工業にあったことは、これは否定ができないと思うわけです。したがって、鉱工業の高度経済成長を行ないますためには、金や機械だけでは生産が上がらないのでありますから、おのずから労働力がそちらへ動かなければ鉱工業の高度成長はできない、そういう発想から農業基本法というものが出てきたのではないか。したがって、農業基本法の具体的な内容としては、いわゆる自営農家をつくるというところに中心があったのではないか。自営農家、具体的に言うならば二町五反以上の農家を百万戸つくる。しかし、現実に六年たった今日、労働力ば農村から他産業へ流出したけれども、これが経営規模の拡大につながっておらぬところが、今日の食糧自給度を低下させ、農家経済を不安定にいたしておる根本的な現象ではないかと思うのです。したがって、その点をはっきり政府としては認めて、したがって、いままでのやり方をどう是正するかという対策というものがこの辺で倉石農政として出てこなければならぬ。農業基本法は間違っておらぬのだと。その精神あるいは計画は間違っておらないかもしれませんけれども、それによって今日までとられた農政の中から幾つかの矛盾が出てきておるのでありますから、その矛盾をどう解消するか。さらに高度経済成長政策を続けていくというならば、これ以上農村の人口の流動がなくてもいいんだという前提があるならば別だと思いますが、まだまだ農村の人口の流動がなければ経済成長は続けられないでありましょう。また、農村の経営規模の拡大は、人口が減らなければ出てこないのではないかと思うわけです。したがって、今日の農業基本法の指向するような方向で二つがうまくマッチするというような具体的な政策があるのかどうか、その点を村田君も聞いておるし、私も重ねてお聞きをいたしたい、こう思うわけであります。
  76. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 倉石農政というようなことばがたびたび出ますけれども、私は、かりに何年やっておっても、そういうものは出てこないと思います。私の基本的な考え方は、農村政策でも、まあほかの民間の産業でも、政府が押しつけるということはだめだと思うのです。そういう考えがよろしくないと私は思っているのであります。大体、行政というのは工場の油さしみたようなものだと思うのです。国民が自由な発意で自由な構想のもとに経営をしていくのに、潤滑油の役目を果たすのが行政の責任だと思うのです。こういう方針であるのだから、おまえらはこれについてこいというような、そんな大それた考えをもって政治をやろうとすることは、私どもの理念から申しますと好ましくないことであります。ただ、国家でありますから、一定計画性をもって、そうして農業全体、鉱工業全体についておよその考え方は、政府はこういう考えでありますと、国民はこういうような要望が多いと、そういうことを取り入れて一応の計画は立てますけれども、政府というものがすべての計画を立ててそれを押しつけるなんということは、私は大いに成長していく国家としては考えたものだと思います。  いま農業基本法の話がありました。これは、農業というのはわが国の全体の産業構造の中で置かれておる立場はどういう立場であろうか、したがって、農業というものについては政府はこういう考えでやっていきたいという方向を示しているわけでありますから、今日に至っても私はあの考え方でいいのではないか。先ほど来お話のありました高度経済成長政策の中で、もちろん高度経済成長政策ということを考える以上は、労働力がそれに伴って必要であるということはわかり切っていることだとただいまお話がありました。私は当時政府にはおりませんでしたけれども、いろいろ政府側が計画的なものを進めるときに、これに要する労働力をどうするかということが非常に大きな問題になりました。私は、そういうときに、私は党の機関でも申したのでありますが、現状の段階で人間の頭脳というものはこれ以上進歩しないという前提に立てば、それだけの労働力は必要だろう。しかし、今日は、宇宙開発をすらやるような時代になってきております。いわんや、御存じのように、もう弱電関係なんかではほとんど人間がおらない大きな一つの工場がございます。全部がオートメーションであります。私は、日本全体を見たときに、日本という国では労働力を非常にむだに使っているところが多いのではないかと思います。なるほど、一部の山村のほうで所得が少ないところの青年たちがもっと所得の多いところに流れていく傾向は私は否定いたしませんけれども、そういうところに安直に労働力を求めておったのでは、国際的経済競争においてわが国は勝っていけないと思います。鉱工業のほうでも、どのようにして省力をするか、どのように経済的に運営をしていくかということが先に考えられなければならないことである。いまお説のように、これから一年に七%なり八%なり経済が伸びていくに従って、ある程度の労働力というものは必要ではございましょう。しかし、一面においては、そういうものの半面において、労働力をどんどん省力していく発明工夫も鉱工業のほうでは行なわれておるのでありますし、アメリカなんかに行って見れば、いわば管理者部門なんというものはこのごろはほとんど人間が要らなくなりました。ですからして、私は、経済の発展に従って労働力が若干ずつ必要であることは否定いたしませんけれども、いままでのような傾向で労働力はその比率に従って需要がふえていくんだというようなことは、そんなことをしておったらわが国は立ちおくれてしまうと思うのであります。  そういう議論をいまいたすつもりはございませんが、さて、そこで、農業のほうでつい最近の統計を見ますというと、農家の跡取りが、あの煙だらけの裏長屋みたいなところで四畳半に二人も三人も寝せられて、ちっとは百姓をやっているよりは収入は多いかもしれぬけれども、そんなところにおるよりはというので、逐次農村に帰ってくる傾向も出てきております。私は、農家というものの生活水準をある程度他産業に比較して劣らないようにしてやるということ、そういうことをすると同時に、生活環境を、いまの青年たち、若者たちが欲するような生活環境をつくり上げることに努力をしてやることができましたならば、後継者育成資金などとともに、農業に純粋な意欲を持った、農業を守っていこうとする若者たちが農村に土着してくれることも必ずしもむずかしいことではないと思います。また、それに力を入れなければならぬ。所信表明でも申し上げておりますように、私たちは農家の人たちの生活環境を整備することに力を入れ、後継者育成資金もさらにワクをふやし、そうしてまた、老後を安心してもらえるというような農民年金のような制度を確立することによって、やっぱり日本農業を守るべき限界はぜひ守っていかなければならない、そういう努力を続けてまいりたいとこういうことを申し上げておるわけであります。
  77. 中村波男

    中村波男君 自民党の大政治家倉石さんのお話としては聞ける話でありますが、いまここで議論しておりますのは、具体的な農業政策、農業行政として先ほどから申し上げておるのでありまして、いまおっしゃるように、最近、わずかではありますが、一たん農村を離れた農家の子弟が戻りつつある。そのことが直ちに生産の増強なりあるいは農家経営の近代化に結びつくかといいますと、帰って来るけれども、結局は通勤着なり日かせぎとして働くというそういうことであるならば、これは政府の期待しておるような農家像というものが生まれてこぬのではないか。農業白書を見ましても、農業の停滞という原因、理由の中に農家労働力の流出というところに重きを置いておるところに私の言いたいところがあるのでありまして、本来ならば、もう少し農業の近代化をやろう、あるいは経営規模を拡大しようとするならば、農業人口の中で労働力というものが他産業に動かなければ、自民党の指向しておるような姿というものが農村に求められないのではないか。それが現実には計画のように動いていかないところに問題があるのではないか。いま、大臣は、政治の面から押しつけるものではないとおっしゃいました。しかし、世界のいろいろな農業の関係を見てみましても、どこの国も農業というのは後進性が強くて、したがって、それを近代化するために相当な保護政策がとられ、あるいは政治的に行政的に財政的に強力な援助をして近代化への道を歩んでおることは、御承知のとおりであります。したがって、そういう面から政治が必要でありまして、ただ政府は青写真をつくればいいんだ、プランさえ立てて創意工夫を農業がいたせばいいんだと、そういうふうに私はいま受け取ったのでありますが、そうだとするならば、私は大臣の発言というものは重大な発言だというふうに思うわけです。  さっきからいろいろお聞きしておりますが、なるほど抽象的にはおっしゃいますけれども、具体的にしからば今後近代的な農業をやる、あるいは食糧の自給度を高める、生産性を他産業に比較して劣らないように進めるためにどうするかということになるならば、今日の政策というものはばらばらではないかと思いますし、一応農基法に基づく農政六年間を振り返ってみて再点検をする段階にきておるのではないか、こういう立場で質問を申し上げたのでありまして、また、これからいろいろな場で具体的にお尋ねをして農林大臣の意図されるところを明らかにしていただきたいし、されるであろうと思いますが、今日は以上で質問を終わりたいと思います。
  78. 村田秀三

    村田秀三君 ただいま中村委員の関連質問とこれまた関連して私も続けていきたいと思うのですが、大臣のおっしゃっておることは、宇宙時代の話なんか出てきまして、雲をつかむような話であるわけですね。しかし、私どもがいろいろと聞いてみたいと思うことは、大臣がこれからこれはなさねばならないという項目の中に、農家の労働力の流出、兼業農家が多くなったから農業生産が停滞をしているんだ、こういうふうに言っておりますから、それで、農業労働力がこのように予想以上に流出をしてしまったということは、農業基本法体制に何か欠陥があったのではないかということについて端的にお伺いをしておったわけです。だから、そういうことはないんだというならば、そういう答弁もよろしいでしょうが、そこのところを聞きたいわけです。
  79. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 農基法を定めましてわが国農業の方向を差し示しておるわけでありますが、その後において、ただいまお話のありましたような労働力の流出等がひんばんと行なわれて、予定どおりの進捗を見るに至らなかった、こういうことを所信の表明でも、白書でも申しておるわけであります。でありますから、それを補うためには、農業の近代化あるいは機械化等を行なうことによって農基法の目ざしているような基本的な課題を推進してまいることが必要であるということで、私どもは、足りなくなってきている部門を他の機械力等で補って、所期の目的を達成し、生産を上げてまいるようにいたしたい、その生産を上げてまいるために支障になっておるようなことについては再検討をしていかなければなるまい、こういうことを申しておるわけであります。
  80. 村田秀三

    村田秀三君 そうすると、労働力の流出というのは、農業生産にとって困ったことだということはないわけですね。むしろ望ましい状態なんだ、こういう意味ですか。
  81. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 先ほどもちょっと申しましたけれども、農業において必要なる労働力がそのまま充足されるということはけっこうなことでございます。しかしながら、先ほど来お話しのように、他産業が著しい勢いで伸びて、どこかにそれに必要なる労働力を求めた。その労働力があったればこそ、日本は国際水準並みに鉱工業生産を上げるようになったんだと。ですから、そのこと自体は私どもとしてはがまんをいたさざるを得ないだろう。しかし、そのために農業の生産力を落とすようなことのないように努力しなければならない。それが、近代化を心がけたり機械化を心がけたりするゆえんでございますと、こういうわけであります。
  82. 村田秀三

    村田秀三君 日本経済全体のことを農政が考えなければならない、それはわかります。わかりますが、少なくとも農林行政というのは、需要に見合うところの生産をしてそして消費生活を安定する、ここに問題があるわけでしょう。これは十年先、二十年先のことを言っているわけではないのでありまして、当面農業生産が低滞をして、そして価格が不安定というよりもむしろ増高傾向が他の商品と比較して高い、そのために消費生活が非常に圧迫を受けている、だから重大だ、こういうことを言っているのじゃないかと思うのです。そうすると、農業生産を安定させるに必要な労働力以外に他動的な原因によって流動化が激しくなった、だから何とかしなければならぬということは、だからひとつ急速に機械力をもって農業生産を上げましょうというそのことといわゆる流動化というものをある程度コントロールして、そして農業生産というものを計画的に高めていこう、こういうことにならなければ、これは農政と言うわけにはまいらぬと思うのです。これは十年、二十年先のことじゃありません。とにかく農業基本法ができまして六年たちまして、その基本法の目的あるいは志と異なって今日のような状態になってしまったのだから、これを何とかしなければならぬという、その二つの面を当然心しなければならないと思うのですが、どうですか。
  83. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) あなたのおっしゃることはよくわかりました。きわめて高い次元に立って日本の経済全体のことをお考えになっての御質問でありまして、たいへん重要なことだと思います。私どもも、農業政策というのは、単に農業部面だけ考えておればいいというわけでは現代はいきませんで、全体の日本の産業構造の中で農業のあるべき姿というものをやはり割り出さなければなりません。そういう意味では、先ほど来お話しになっております労働力の流出ということは、私どもとしてはそれ自体農業関係からいえば好ましい傾向ではないわけでありますが、勢いそういう結果にならざるを得ない。そこで、省力を考えなければならない、同時に近代化を考えて、そうしてある程度の適正な価格で農産物が産出されて消費者に供給できるような、そういう合理的なコストで生産ができるようにするためには何をすべきであるか、こういうことだと思います。したがって、私どもといたしましては、白書でも真相を国民一般に披露いたしておりますが、私が農林大臣としての所信の表明で申し上げておりますとおり、こういう環境の中においてなおかつわれわれはどのようにして農業生産を維持し、自給度を高めていくかということを率直に現状を述べ、同時に、それに対する対策を一応御披露申し上げているわけでありますが、傾向としては、労働力が流出していくことに対処する、同時にまた、労働力が流出するということがそれ自体人口が減るということであっても、単位当たりの経営規模がすなわちふえるということでないと、そこの所信表明にも申し上げておりますが、私どもはやはりどこまでも経営規模を広げることによって農業所得をふやしていくということがまず第一でなければならない。そのためには、やはり経営規模を広げる。その経営規模を広げてまいる前提としては、長期の土地改良をいたさなければならない。こういうことで、条を負ってひとつやってまいりたい、そうして計画をいたしておりますような方向に農業生産を推し進めてまいりたいと、こう思っているわけでございます。
  84. 村田秀三

    村田秀三君 いまの大臣が言われていることですね、十年間のものを一言に言えばそういうことになりますね。しかし、これは政治ですから、現実の問題を考えてみなくてはならないと、こう私は思います。その場合に、今日、農政の問題で大きな問題は、予想以上に農家の労働力の流出があり、かつ兼業農家になったので、生産性が上がらないんだということを言い切っているわけです。だから、これの対策として省力栽培を奨励いたしまして、そうして労働力の流出の状態と生産の状態がバランスがついているということであれば問題にならない。もしもそういう状態であるならば、所信表明の中にこういう文句は出てこないと思うんですね。だから、ここに私は問題があると思う。——日本経済ばかりではありませんよ。所得の補償をするんだというような言い方をしております。その辺についても後ほど質問したいと思いますけれども、確かに、農家の所得、なかんずく農業所得が低いために、これが年々比率的には低下していることは、白書の示すとおりであります。そのためにこれは流動化せざるを得ない、させられている、それが農業生産関係なく流動化しているところに問題がある、こういう言い方をしております。その点ばおわかりになりませんか。
  85. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 農業生産が低下しているというお話でありましたけれども、全体としてはなるほど他産業の伸びに比べればその差はありますけれども、二・三%ぐらいは年率で上昇しているわけであります。これはやっぱり機械力その他いわゆる農業の近代化ということで生産は、そういうふうにものによってはやや微減いたしておるものもありますが、ものによっては増強されておるものもある。そこで、農業の生産というものを他産業と同じレベルで生産の増強のパーセンテージを同じようにするということはなかなか困難であろうと思いますけれども、私は、第一に申し上げておりますように、食糧についてはあとう限りの自給度を高めてまいりたいと、こういうことがねらいでありますけれども、大体において今日は、畜産あるいは酪農について若干の問題はありますけれども、いま御存じのようにその他の問題については自給度をほぼ維持しておる。この先一体どういうふうにしていくか、これはまあ経済社会発展計画などでもいろいろなことを言っておりますけれども、私どもといたしましては、これからやはり第一には国民の主食に力を入れ、その自給度を少しずつ向上していくことにまず力を入れたい。その他は、それ相応にやはり計画性をもってそれらが増強されてまいるようにいろいろな意味で援助をしてまいりたいと、こう思っておるわけであります。
  86. 村田秀三

    村田秀三君 それでは聞きますが、経済社会発展計画のことに触れておりますから、私もそれに触れて質問いたしますが、この中における農業労働力は、四十六年には八百六十万ですか、こう見ておるわけですね。そうしますと、今日の農業基幹労働力ですね、これを見ますると、四十一年度のものができておればお伺いをしたいと思いますが、四十年度で見ますと、四十年の二月一日ですか、千五百四十四万三千三百四十五人と、こうなっておるんです。四十六年を指向して八百六十万人に見込まれるということになりますと、大体六百八十四万人流動するということになるわけです。そうしますと、それでなくとも予想以上の経済の成長によって流動化が進んでいる農業生産が、それは総生産としては多少の伸びは私も認めますけれども、需要に対応する生産ということにこれは御理解願いたいと思いますが、これは足りないことは間違いないわけですね。あるいは充足されておるものもある。しかし、不足するものが多いために、農業生産物の停滞ということになっておるのではないかと思います。一体、いま千五百四十四万もおる基幹労働力の中でさえも生産が停滞していると言われながら、四十六年の八百六十万で、はてどうなるだろうかということが私の疑問なんです。そういう関係がありますから先ほど来この農業労働力の問題を言っておるわけでありますが、その点はどうですか。
  87. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 経済社会発展計画は、いま御指摘のように、四十六年には八百六十万ぐらいになるだろうと。しかし、それだけに農業就業人口が減るからして、そのために生産が非常に落ちるようなことであっては問題にならないのでありまして、私どもの一番大事なことは、そういうときになおかつ生産を維持していくことができるようにやらなければならないというこれが至上命令であります。御存じのように、たとえばイギリスなんかでは、全就業人口のうち農業人口というものは四%未満のようであります。だんだんそういうふうに就業人口が落ちてきておるのに、生産力は微増——ややふえております。わが国は、昨年はたしか二六%ぐらいが全就業人口の中に占める農業人口だと思いますが、最近総理府で出したものによりますと、二二・六%ぐらいに減っているんじゃないかと思います。私どもば、やっぱりそこで経営規模を広げてそして単位当たりの農業所得を増強するというふうなこと、それからまた、増産対策は、量だけではなくして、地力の培養に努めて品質と増産を並行してやっていくようにすること、そういうようなことで並行してやっぱり努力を続けなきゃならない。そのために、ただいま、長期計画の土地改良を企てたり、それから経営規模を広げるためにば農地制度であるとかあるいは小作の統制令等についても再検討をしなければならないとかということで、ひとつ単位当たりの農業所得をどのようにして増強していくかということは、非常に難問題ではありますが、私どもがそういう方向に向かって努力を続けておると、こういうことであります。
  88. 村田秀三

    村田秀三君 四十六年に八百六十万になるだろうということでありますが、これは、したい、計画的にそこへ持っていきたい、こういうことでありますか。一応まあ経済社会発展計画と銘は打ってはありますが。
  89. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) これは題目は経済社会発展計画でありますが、農業就業人口がそこまでなることを希望すると言っておるのではないのでありまして、いまの傾向のように他産業が成長していくということと労働力の流出をそれに伴って計算をしてみればそうなるということであります。
  90. 村田秀三

    村田秀三君 一応そう理解しておきたいと思いますが、いずれにしろ、予想であるにせよ、希望であるにせよ、とにかく他産業の労働力の需給が相当に足りないんだと、だからひとつどこから労働力を持ってこようか、この期待感というものはあることだけは間違いないんでしょう、この計画の中に。これはどうですか。
  91. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 先ほど申し上げましたように、他産業が経済成長して経営規模が拡大してまいるに従って、それに伴って若干ずつ労働力は必要となるでありましょう。そういうことの供給源にやはり農業の従業者もねらわれておるであろうということは想定がつくのではないかと思う。しかし、私は、ここで言っている労働力というものは農業面だけから労働力を吸収するようなことを考えているかどうかということについては、よく存じておりません。
  92. 村田秀三

    村田秀三君 労働力の需給関係の中では、確かに低生産部門よりの労働力の流出、こういう言い方をしておるんですね。だから、この低生産部門というのは、農業ばかりではないと思います。しかし、その大部分は農業であろうと私は思うのでありますが、いま申し上げておることは、計算をしてみると、今後農村から六百八十四万人、これは他産業に振り向けられなければならないということ、これは農業の問題です。で、計画的ではなくて、自然にそうなることを希望する、ないしは期待感を持っておる、そうあってほしい。その場合に、労働力が流動する、まあ押しつけではなくて、自然に流動化するという条件というものは、どういう条件ですか。
  93. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) ちょっとよくわかりませんでしたけれども……。
  94. 村田秀三

    村田秀三君 たとえばですね、低生産部門の労働力が流動する客観条件、それはどういうことでしょうかと、こう言うんです。
  95. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 私は、これは個々別々に具体的にどういうところがどういうふうに減ってくるかという計算を立ったわけではないと思います。その基礎を聞いてはおりませんけれども、いまの傾向で全体の産業の伸びに比較いたしまして労働力というものばどのようにさらに必要になるであろうという、そういうことの結果、安直にいままでどおりの方式で労働力の供給源を求めれば、こういういわゆる低生産部門から持ってくることになるだろうという計算ではないかと思っておりますが、まだその点をよく調べておりません。
  96. 村田秀三

    村田秀三君 これだけのものを持ってくるという計画計算ではない。しかし、まあなるであろう、期待する、これは否定しない。で、農業の基幹労働力が六百八十万も流動化するというための客観条件という言い方をしましたけれども、それじゃ、いままでなぜ流動したかということをひとつ考えてもらいたいと思います。
  97. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) いろいろ理由があると思います。それは、いま農業に従事しておるおらないは別としても、御存じのように、たとえば新規学校卒業生などは、鉱工業の方面においてはすでに卒業前に入社試験のようなものをやってそういう方面に持っていくことに努力をしておる。高等学校などでは、土地に土着して農業をやる子供たちもかなりおりますけれども。そういうことと、もう一つは、やはり、いまの農業が、一家をあげてそれに没頭する必要がなくて、いろいろ機械力なんかを用いられるようになったものでありますから、たとえばおとうさんとおかあさんだけでいままでの畑の程度は子供が手伝わなくてもやれるということで、やはりそういう若者が他産業に転換していく。そういう傾向が私は農業労働力が自然に流出してまいった原因ではないかと、こういうふうに思っております。
  98. 村田秀三

    村田秀三君 そればかりじゃないんじゃないですか。大臣は何か仮定的に答弁なさろうとしておるんじゃないか、こう思いますが、端的に言って、農業所得が低いために他に職を求めなければならない。あるいは、もちろんいま大臣が言ったところの機械力を使うために労働時間が相当短縮される、だからひとつ余剰労働力を他に活用したいと、こういう者もあろうとは思いますけれども、いわゆる流動化の内容というものは、これは聞いてみなければわかりませんけれども、単に夏農作業に従事して冬出かけていくという者を流動化と言ったのではないと私は理解しているわけです。というのは、三十五年から四十年までの間に基幹労働力二百二十一万、これが出ているわけでございます。この中には出かせぎというやつは入っていないと思う。機械力を使って労働時間が短縮されたから、あとはひとつひまな時期に働きに出ましょうというのは、これは出かせぎです、一言に言って。そうではなくて、農業労働力の流出は基幹労働力の完全な移動だと私は理解するわけでございますが、これが二百二十一万である。そうしますと、その原因というのは、端的に言って、農業所得が比率において他産業よりも相当に低下している。したがって、生活水準を維持することができない。そこに大きな原因があると思うのですが、そうでございませんか。
  99. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 私が申し上げましたのは、たとえば一家三人、両親と若い者がおる。いままでは、その若い者もまじえて三人の労働力が必要であったが、いろいろ耕法が変わってきたことによって、おとっつあん、おっかさんだけでよろしい。ひとつおれは他産業に行って現金所得を得ようというふうなこと、そういうことが流動の一つの原因だと申したのでありますが、もう一つは、もちろんただいまお話しのように、ことに山がかった地方におきましては、農業所得では十分な生活ができない。そこで、ある者は両親は残して自分だけ他産業に転換をする者もあるのでございましょうし、ある者は一家をあげて他産業に転換した者もあるでしょうが、やはりいろいろその理由はありましょうけれども、いずれにしても、ほかに職を求めるということによってその家の所得をふやそうという、いままでの純然たる農業だけでなくて、農家所得全体としては他産業に職を求めて、そうして兼業農家になるほうがいいという考えで家族の一員、二員が他産業に流動する、こういう傾向は確かにかなりあるだろうと思っております。
  100. 村田秀三

    村田秀三君 これは、私も、機械力で労働力がいままでの作業よりもかからなくなってきた、この点についてば認めます。しかし、いままで大臣がおっしゃられましたように、やはり農業所得、これが一番大きく作用しているのではないかと見られることは、これは白書にも出ております。これは明らかに出ているわけです。農家の生活水準は、周辺都市の他産業の従事者の生活水準の八〇%程度、あるいは、農業所得のその生活費に占める割合、これは三〇%から五〇%という層が全農家戸数の相当数にわたっているということ、これは白書にも出ているわけでありますから、そうしますと、これは農業所得が低いから農業労働力が他に流出するんだ、こう理解せざるを得ないのであります。そう考えていきますと、先ほど来、経済社会発展計画の中の四十六年度には農業労働力は八百六十万になることを期待するというような期待感は、しかも自然にそういう状態を現出するためになさんとするならば、これはたいへんな問題になるのではないか、こういうところが私の最も心配しているところなんです。農業生産にも影響を与えるし、それから農村の方々の生活にも大きな脅威を与える計画であり、農政の方向である、実はこういう大きな不安を持っていま質問しているわけでありますが、その点はどうお考えになりますか。
  101. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) これは、経済社会発展計画の中で、農業という見出しのところで、人口はこうなっていくだろうというふうに書いてありますから、あるいは農業政策のほうでもそういうふうに減ることを期待している、こういうふうにとられる向きもあるかもしれませんが、われわれはそんなことを期待しているわけではないのでありまして、いまのような全体の産業構造がこういうふうになっていけば、いままでの傾向でいけばこのくらいにはなるかもしらん。しかし、そのために、あそこにも書いてありますように、それがゆえに生産力を落とすようなことがないためにはこのようなことをしてまいるんだというふうに言っております。私は、究極において、農業労働力が、つまりたいへん大ぜいの家族をかかえておるところで、たとえば一町歩しか持っていない家庭で六人の暮し、あるいは同じ一町歩で三人であるというならば、その農家の所得の一人当たりは、人数の少ないほうが多いわけでありますから、農業人口というものが自然の傾向である程度流出いたしていくことはやむを得ないという前提に立っても、農業生産というものを維持していくためには労働力の流出に備えてどのようにしなければならないかと言っているのが、農林省が考えておりますいろいろなそれに対応する施策でございます。ですからして、労働力が流出していく傾向というものそれ自体を、ただ困ったことだと言っておるのでは、これは農業政策としては成り立たないのであります。そういうことのために、その前提に立っていろいろな施策を講じて収穫をあげることをしなければならない。こういうことの努力をするのがわれわれの任務だと理解しておるわけであります。
  102. 村田秀三

    村田秀三君 そうすると、これは明らかに政府の決定だ。農林省はこの計画策定に関与しない、関知しない、こういうことをおっしゃられるわけですか。
  103. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 関与しないと言っているわけではございませんで、いまの昭和四十六年には農業就業人口が八百六十万になるだろうと、そういうことをわれわれは期待してわざわざそうなければならぬということを言っておるのじゃないのであります。つまり、日本のいまの人口の動態と、他産業がたとえば年率七%ないし八%で成長が伸びていくとすれば、従来のような傾向で行くと、この程度ほかのほうから労働力を求めなければ、それを伸ばしていくことができない、他産業が。そういうことになると、比較的低生産部門であるというところがねらわれてくるだろう。したがって、そういうことを想定してみれば、純農業就業人口というものは四十六年には八百六十万くらいになるかもしれぬ。そこで、農業としてはそれに対応してどういうふうにやっていかなければならないかということを努力して補うべきである、こういうことを申しているわけであります。
  104. 村田秀三

    村田秀三君 どうもなかなか完全に理解するまでには至らないわけでありますけれども、これは経企庁の計画であって、農林省はあまり重要視していないんだという意味で理解をいたしますが、いいですか。
  105. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) なるほど、それは表向きは経企庁と書いてありますけれども、経済審議会に経企庁が出しまして、経済審議会から政府に答申が——答申と申しますか、こういう傾向になっていくだろうし、こう措置していかなきゃならぬということについて報告がありまして、われわれも一応それを了承しているわけでありますからして、経企庁の看板が出ているから農林省は知らないんだというのではないのでありまして、そこに農業という部門が指摘しておりますようなことについては、われわれもそういう考え方でひとつ将来進めていこう、こう思っているわけであります。
  106. 村田秀三

    村田秀三君 どうも、大臣は総理大臣クラスの大臣なんで、なかなか……。  そこで、じゃ、こう私は理解しますから、それでよろしいんだと、こう言ってもらいたいのですが、いまの話はそれでいいですね。まあ日本の経済全体の動きからするならば、そういう方向性はたどらせなければならぬ。だからといって、民が農業生産に従事できないほどの生活にはさせておかない。これは農林省の仕事であり、かつ生産をあげるための対策を立てていく、こういうことと理解していいですか。
  107. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 大体そういうことでございますが、先行きわれわれは悲観をせずに大いにがんばってもらいたいと農村の人に期待し、その期待に沿うように努めていくのがわれわれの義務であり、またそう必ずなると、こういうふうに考えております。
  108. 村田秀三

    村田秀三君 いろいろ問題もありますけれども、またの機会にいたしたいと思いますが、これは何と言いましても想定ではなく事実をもとにして論議をしないと、こういう問題は解決しないと思います。私は事実をもととして申し上げておりますから、ある程度の食い違いはあります。これは平行線であろうと思いますし、さらにそのときどきにおいてまたいろいろと申し上げてみたいと思いますが、農村の方々が他産業の方々と同じような生活を維持するためには農業所得が補償されねばならないということ、これは補償のしかたはさまざまでありますけれども、その方向としては大臣も了承できると思います。そこで、ことしの春闘も大体終結の方向にあるようでありますけれども、この中では、相当大幅なといいますか、労働者の側から言われますと、まだまだとても足りないんだという言い方でありますけれども、新聞論調からするならば、いまだかってなく金額の面では引き上がった、こう言われておるわけでありますが、このベース改定というものは農家の所得にどのように影響するかということについてお伺いをいたしてみたいと思います。事務担当の方でもこれはよろしいと思いますが……。
  109. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 数字のことをあるいは事務当局が調べていろいろ研究しているかもしれませんが、一般論といたしましては、もちろんいろいろな農作物についての価格を政府が指導しておる面もございます。たとえば乳製品みたいなものですが、そういうところで計算をいたしますときに、やっぱり近隣の他産業の労働賃金が上がってくるということは、そういう計算の基礎にも影響がございますから、若干の影響はそういうところにも出てくると思いますし、それからまた、世間一般からは、労働組合の平均ベースが上がってまいりますというと、どうしてもそれのいろいろな影響は出てくることはやむを得ないことだと思いますが、そのこと自体すぐに農家の所得にどのように影響するかということにつきましては、たとえば兼業農家の者がよその産業に勤務をいたして賃金が上がってくれば、それだけ、農業所得ではありませんけれども、その家庭としての農家所得はふえるわけでありますから、そういう面において影響するということは当然だと思いますが、農業の方面に向かって春闘の賃上げというものがどういう影響を持ってくるかということは、数字的にはなかなかいま研究することはむずかしいのではないかと思いますが、ちょっと政府委員から……。
  110. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) いまの御質問に対するお答えの骨子は、大臣がお答えしたことで尽きておるわけでございますが、御参考までに計数について申し上げますと、昭和四十年度における農家所得の全国平均は七十六万一千円、勤労者世帯の全国平均——これは暦年でございますが、暦年の所得総額は七十四万八千円ということでございます。なお、人口五万以上の都市の平均では七十九万七千円ということで、世帯単位で言いますと、農家所得と勤労者世帯の所得はほぼ接近をした数字に相なっているわけでございます。  そこで、四十年の場合の春闘の結果としての労賃の賃金の上がりを労働省の資料で推算をいたしますと、一〇・三%、四十一年は一〇・四%、それから本年度いままで妥結しましたものをもとにして非常に大まかな推算をいたしますと、一一ないし一二%程度ということに相なっておりまして、従来の農家所得の増高傾向は、過去の賃金のアップが農家の農外所得収入の増ということで寄与し、農産物の価格関係及び生産性の増大向上という問題が相互に響きまして、農家所得の上昇率のほうがむしろ従来は高かったのでございます。でございますので、おそらく、本年度の春闘の結果が、農家所得単位での数字への影響は、それほど農家に悪いという形で響くものではなかろうというふうに見ておるのでございます。
  111. 村田秀三

    村田秀三君 私がお聞きしているのは、農家所得のうち、農業所得にどういう影響を与えるか、こういう言い方をしておる。
  112. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 農業所得に対します影響といいますのは、生産性の関係におきましてはこれは春闘の相場の推移というものが影響なしと見て差しつかえないと思うのでございますが、いろいろな複数の農産物を生産して商品化して販売しておる農家にとりましては、賃金の上昇が購買力の増大となってあらわれるという意味では、農業所得にも、非常に抽象的でございますが、好影響としてあらわれるはずであるということしか言い切れないと思うのでございます。
  113. 村田秀三

    村田秀三君 確かに、計算もなかなかむずかしいと思うんです。しかし、影響することだけは間違いないですね。大臣もそう御理解いただいていいですか。——これは速記録にちょっとうなずいたと響いておいてください。(笑声)  そこで、その逆のことを私は考えるのです。もしも農産物価格にベースアップの分が何らの影響も与えないと考えるならば、農業所得というものは対比的にはどんどん低下をして、そうして農業所得というものと農外所得の開きというものはどんどん大きくなっていく。そうして、しかも、いわゆる兼業化が進んで、農業生産が上がらないなどというふうにくどくようになるわけですね。まあそれはともかくといたしまして、これは何らかの影響を与えるということになりますと、さしあたって私がお聞きしたいことは、そろそろ生産者米価を決定しなければならない時期にきておるわけでありますけれども、農林大臣としては、労働者の賃金改定等の生活向上と関連をさせながら農家の生活をこれとバランスするためにはどうしても生産者米価に触れなければならないと私は考えるのでありますけれども大臣はどうお考えですか。
  114. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 生産者米価のことにつきましては、ただいまきわめてデリケートでありまして、うかつにものを言わないほうがいいかもしれませんが、村田さん御承知のように、ただいま、農林省食糧庁とそれから生産者団体との間で、毎日のように、十数項目ございます、労働賃金をどう計算するとか、地代はどういうふうに見るとかいうことを、生産者もやっておりますし、農林省の事務当局もそういうことで生産者と毎日毎日意見の交換をやっているわけでありますから、そういう中に賃金というものをどのように見るかというようなことの話も当然出てきておるはずでありますから、そういう限りにおいてば、やはりいろいろな議論が出てきておると思います。まあいわゆる春闘による賃金のベースアップというものがどのように米価等にも響いてくるかということは、これは米価をきめる段階における一般的常識論ではないか、そのように見ております。
  115. 村田秀三

    村田秀三君 そうすると、私はここで生産者米価をきめようなどとは思っておらないわけなんですが、方向としては上げざるを得ない、こう考えられますが、その点はどうですか。
  116. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 毎年毎年上がっているんですから、やっぱり上げろという話は出てくると思いますが、それについて突き合わせている。私どもとしては、明日の生産意欲を増強してもらいたいのでありますから、農林大臣としての立場から考えますと、なるべく生産意欲を持ってもらうような米の価格をきめてもらいたい。税金も上がっております、いろいろ上がっておるわけでありますから、その積算の基礎にはやっぱり上がっているものが出てくることでありますから、まあまあいまあなたの御指摘になったような傾向傾向ではないだろうか、こう思っておるわけであります。
  117. 中村波男

    中村波男君 関連して。大臣お話を聞いておりますと、政治米価的な観点からおっしゃっておりますが、農民が喜んで米を出す、いわゆる再生産の意欲を盛り上げる、これが農林大臣としての職制上の気持ちだというようなお話でありましたが、出すほうからいえば高いほど喜ぶのでありまして、そういうことではきめられるものでもありませんし、きめるべきでもないのでありますから、そこで、大臣として、米価をきめる基準は何に求めたら一番合理的か。社会党は常に生産費所得補償方式できめるべきだということを主張しておりますが、その主張が従来米価算定の中に大きく取り上げられてきておりますが、それがここ一、二年前から後退をしてきていることはいなめない事実だと思うわけであります。したがって、米価をおきめになる最高の責任者としての農林大臣ば、米価というのは何を基準にしてきめたらいいかということをお考えになっておるかどうか、この際はっきりお聞きしておきたいと思うわけであります。
  118. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 私のことばで誤解を生じたら御訂正を願いたいのですが、私は政治米価というふうなそういうことは考えておりませんし、ことしはもう断じてそういうことはいたすべきでない。これはまあ天下の世論のようであります。いまお話しのように、もちろん、政府は、食管法に申しておりますように、生産者の所得を補償する考え方で米価をきめるわけでありますが、この米価をきめてまいりますのは、当てずっぽうではなしに、御存じのように十数項目にわたるいろいろな項目を拾い出しまして、そうしてその項目を積み重ねたものの集計で幾らになるかというのを事務的に出すわけでありますから、どっち見ようと、いわゆる指数化方式と申しましても、生産費所得補償方式と言っても、結局はそういうファクターを積み重ねたものの集積でありますからして、実は、昨日も、学者先生方の会合で、一体、所得補償方式というのと指数化方式というのはどう違うんだとこちらで質問いたしましたけれども、その専門家の学者方もどうも納得のいくような説明のしようがないと言っておりました。  私どもといたしましては、食管法に差し示しておりますように、生産者の所得を補償するというたてまえで米価審議会にはかった上で妥当なところでひとつきめてまいりたいと、こう思っておるわけでございます。
  119. 中村波男

    中村波男君 まあ関連でありますから、その問題はその程度にしておきまして、この機会についででありますから承っておきたいと思いますのは、新聞その他の報道、ニュースを見ますと、特に農林省が米審から国会議員を締め出す腹である、強い決意を持っておる、こういうことが伝わっておるのでありますが、農林大臣としては、国会議員を米審委員に選任することについてのお考えはいかがでありますか。
  120. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 御存じのように、米審の委員ば学識経験者二十五名以内をもって構成すると、こうなっておりまして、国会議員を何名というようなことを言っていないのでありまして、国会議員の方々も、学識経験のあられるりっぱな方をいままでお願いしておったわけであります。ところが、まだ来月七日まで任期中ですから、人の任期のある間に次のやつをきめるとかなんとかいうのは無礼千万だと、こう思うのでありまして、新聞というものは何にもしゃべらなければ都合のいいように書く場合もあるかもしれません。で、農林省が国会議員をわずらわさない方針だなんということを、ここにまあ官房長もおりますけれども、私は一ぺんも聞いたことはありません。農林省の役人がきめるんじゃないのでありますから、これは私のほうできめるべきものでありますからして、新聞にどういうふうに書いてあるか知りませんが、そんな人さんの任期中にそんなことをとやこう申すべきものではないと、こういうので、まあ来月になったらぼつぼつ考えるかと、こういうようなわけであります。
  121. 中村波男

    中村波男君 さすがは大臣らしい政治的答弁であります。任期はもう近く切れるのでありますから、次のこともお考えになってしかるべき段階でありまして、また、与野党この問題については重大な関心を示しておるのでありますから、したがって、この場でこれ以上答弁を引き出そうというのは無理かもしれませんが、もちろん国会議員だから入れるんではない、学識経験者として国会議員を入れるんだと。それはどちらでもけっこうでありますが、大臣としては、次の選任をいたします場合に学識経験者の中から国会議員を省くという考えが今日固まっておるのではないと言い切れますかどうですか。
  122. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 先ほど私が申しましたように、現在の委員さんに失礼であるという点においてはいま何か言うことは同じく失礼でありますので、まあまあ任期中はさような失礼なことを申し上げることは御容赦願いたいと、こういうことであります。
  123. 村田秀三

    村田秀三君 いまの中村委員質問に対する答弁の中で、生産者米価を上げるべきでないというような一般世論だ、こういうことでありますが、しかし、私どもがそんたくする限りでは、一番強い発言はこれは経済界がやっております。そうしますと、生産者米価を引き上げて農業所得をある程度引き上げていくということは農業労働力が他の産業に思うように流出しないから、むしろ上げてはならないような考えを経済界は持っておるのではないか、こう実は考えるわけなんでありますけれども大臣としては、そういう点についてどうお考えになりますか。
  124. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 経済界と申しましても、いろいろあると思いますが、経済界の人々の考え方の中に基本的にありますのは、米というのは国民の主食でございますので、米価がかりに上げられたということになれば、それは賃金の上昇にすぐはね返ってくる。現在はいろいろな社会で日本の物価のことを論議する者がありますけれども、日本の国内で物価を論議する場合に、賃金を離れて物価を論じようとするのはむしろこっけいに類することだと思うのです。そういう意味では、産業界に従事しておられる人々は、まず物価の安定ということを考えますときに、米価のことについて関心を持つのは、私はあの人たちの立場としては当然だと思います。  しかしながら、私どもの立場から見ますというと、理屈は別にしても、やはり前年の春闘において労働賃金は上がっているのであります。労働賃金が上がったということを口実にして日常生活品が若干ずつ高騰を生じておることもいなめない事実であります。米をつくるお百姓が地下たびを買っても、あるいはほかのものを買っても、少しずつ物価が上がっているのでありますから、米価の生産費を調べていく間に、昨年度に比べて日常生活品その他が値上がりいたしておる事実はいなめないのであります、理屈は別にしても。そういう積み重ねの上に算定していく米価でありますからして、私は経済界の人がどのように御期待なさろうとも、米価というものについてそういう基礎になるデータが数字的に上がっておる場合に、これを否定して計算することは困難ではないか、こういうように理解いたしておるわけであります。
  125. 村田秀三

    村田秀三君 その額はともかくとして、大臣のお気持ちはわかりました。  そこで、また、経済界を代表するわけではありませんけれども、ある程度農家の農業所得の補償、そして農家の生活が引き上がる。だとすれば、農業労働力の流動というものは逆に少なくなっていくというのが今日までの経過の中で理論的に考えられることではないかと思うんですね。最近は、東京へ出てきたけれども、四畳半に四、五人寝せられておる、空気も十円出して吸わなくてばならないような世の中である、むしろ田舎のほうで暮らしたほうがよろしいというようなことで田舎に帰っておる方々がふえておるという大臣のおことばもありましたけれども、そういうことになりますと、農業労働力はその流出の速度を停滞させると同時に、兼業農家がふえていく。兼業農家がふえていくと、農業生産がこれまた停滞をする。白書は、兼業農家の生産性というものは、労働生産性、土地生産性、どのことを言っているかは私にはわかりませんけれども、少なくとも白書の中では、専業農家と比較して二割落ち込みがある、こういうことを言っているわけであります。これまた今日の日本の農政が行き詰まっている問題に行き着くと思うのですが、その点はどうですか。
  126. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 御指摘のように、兼業農家は、全農家の七割余りが兼業ではないかと思いますが、そのうちのいわゆる第二種兼業農家に属する人々は田畑を持っておって、それをあまり効率的に生産をおあげにならないが、ごくわずかやっておって、多くの所得は他産業から得てくる所得でやっている。こういう方々がなぜそういうお考えを持たれるのであろうかということについて、農林省としてはいろいろ調査研究をいたしておるわけでありますが、まずやはり大きな問題は地価問題だと思います。あまり耕やさないでおいても、都市近郊の農家のごときは、ほっておいても財産価値が土地というものによって非常に上がってくる。こういう傾向を放置しておったのではたいへん困ると思いますし、もう一つは、やはり先ほど来お話の間に出ましたように、経営規模を拡大して効率的な生産をあげてもらうためにその障害になっている一つは、ただいまの農地法ではないかと思います。それからさらに長い間改定されておりません小作料の統制令みたようなものも、まことに時代離れいたしたものでありまして、そういうようなことを改善することによって経営規模を広げてまいるということが絶対に必要ではないかと、私どもはそのように思いますが、ただ、第一種に属する兼業農家というようなものは、世界的に見ましても珍しい特徴だと思います。そういう人の生産は、やはりある時限までは農業生産を能率的にやってもらうことをある期間つとめて努力をしていかなければならないのではないかと思っておりますが、そういうようなことを含めて、ただいまは農林省の中で構造政策推進会議というものを持ちまして、鋭意研究いたしまして、でき得べくんば来年の予算編成までにはわれわれの方針を出して、そうして皆さん方にもまた御援助願いたいと思いますが、ともあれ、結論としては、まず経営規模を広げていって農業を効率的に生産拡大をいたすようにいたしたいと、そういう方向にピントを合わせて、農政をすべてそこに持ってまいりたい、こう思っているわけであります。
  127. 村田秀三

    村田秀三君 農地法を再検討する、あるいは、小作統制令ですか、そういうものも検討する、こういうのですけれども、しからば、先ほど来私が申し上げましたが、とにかく、農業労働力が流出する、兼業農家が増加しておるので、農業生産性が上がらない。農業生産性を上げようとするならば、経済界が望むところの農業労働力の流出の問題、これは思うようにならない。これを解決するために、いわゆる構造政策を進めようといたしましても、これがなかなか思うようにならないという矛盾が幾つか積み重なっておるのが今日の状態であるような気がするんです。農地法の改正と小作統制令の再検討、こういう問題が、その矛盾を断ち切るためにどれほどの作用をするのか、そうしてまた、どのように改正しようとしているのか、お聞かせを願いたいと思います。
  128. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) そういう方向については、いま鋭意検討中でございますので、まだ結論を出しておりませんが、先ほどお話し申し上げました第二種兼業農家というようなところで、地価の上がるのを楽しみにしてあまり効率を上げないで畑を持っておられるようなことをいつまでも継続されておったのでは、やはり規模を拡大して生産効率をあげようとすることに逆行するわけでありますから、どのようにしたならばこの農地の流動性を促進することができるかということが一つの研究課題であります。  それには、農地の移動については税法の面でめんどう見てあげるとか、あるいはまた、これは外国でもやっておることのようでございますが、農民年金という制度の中で一つの効用を感じておりますのは、先祖代々の畑を手放していただいて経営規模を広げる人にそれを譲り渡していただくためには、五年間なら五年間離農年金というような形でそれを促進する意味で年金をあげたらどうだろうというようなことも、農民年金といういわゆる社会保障的な考え方のほかにも研究課題があるわけでありまして、そういったようないろいろなことを考慮しながら、まずねらっておるのは、経営規模を広げて、農家の経営効率をあげて、そして他産業に従事しておる者に劣らないような農業所得を確保するように努めてまいりたい。そのために、先ほど来御指摘のありましたような、他産業の伸びることによって労働力が流出していくのを補うためには、機械化あるいはその他の近代化をはかることによって労働力を節約することに努めてまいらなければならない。  なるほど、御指摘のように、困難は非常にございます。困難はございますけれども、一方においては、御承知のように、農業というのは、恵まれた環境でだれの支配も受けないで、みずからの創意工夫と資本において経営のできる特殊なものが農業でありますから、こういうことに誇りを持ってそして農家の跡継ぎをしていこうとする人には特段なる助成策を講じていくことがわが国全体としてはむしろ利益になることではないか、こういうような考え方で、ひとつそういう方向で新しい考え方を打ち出してまいるために鋭意研究を重ねておるという段階でございます。
  129. 村田秀三

    村田秀三君 大臣に対しましてはこの辺でやめたいと思いますが、まあこうしたいということはもう何年も聞かされておるわけですね。しかしながら、実際はもう悪化の一途をたどっておる、こう言い切れるんじゃないかと思うのです。このあいだ、テレビに、「現代の映像」ですか、高知県の山村が一村あげて南米に移住する、村長が辞職願いを書いているところが出ておりました。これは、よしひとつ南米に行って大いに働いてやろうか、新しい天地を開拓するのだというようなものではないと思うのです。もう日本にあきれた、うらぶれた気持ちで、政治不信の念を持ちながら日本から脱出するような印象さえ私は受けたわけであります。こういう状態がいま今日の農村にあるのだと私ば言い切っていいと思うのです。したがいまして、こうしたい、ああしたいということを抽象的ではありますけれどもお伺いいたしましたが、そのこうしたい、ああしたいというのが実際四十二年度の施策の中であるいは方向としてとられるかということについては、これからひとつ具体的に質問を申し上げてみたいと思いますけれども、これはさっぱりだめであると。今日の現状から判断をすれば、国民に責任を持ったところの、あるいは農民に責任を持ったところの農政ではなかったと。まあ努力はしている、その努力についてはわかりますけれども、結果的にそれが目的の方向に行かない、むしろ逆行しているということであるならば、やはり善意は善意としても、その責めは責められるべきである、私は実はこう思っております。したがいまして、農林大臣が、こうしたい、ああしたいということ、そのことを着実に——これは予算も必要でしょう。ことしの予算は通過をいたしましたから、とやこう予算の問題には触れませんけれども、補正もありますし、さらには来年度以降の問題もあるわけでありますから、とにかく着実に実行する、このことが倉石農政の取り柄だと、別に特徴的なことはないけれども、これをやったということをあとで評価されるようなひとつ方向をとってもらいたいものだと私は考えるわけでありますが、最後大臣の所信を聞きまして、ひとまず区切りをつけたいと思います。
  130. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) きょうは、いろいろじみちなお話で、最後にまた御激励をいただいて、実は感激いたしておるのでありますが、お説のように、私もこのあいだテレビを見ました。ちょうどテレビを見ましたときに、高知県のある村の村長が一家をあげてブラジルに移住する、あとに残る人々、それでも歯を食いしばってこのやせ地を守り抜こうという人も一生懸命で耕作している場面も出てきまして、私は農林大臣であるだけに、何か私におしかりや激励を受けているというような気持ちで感激しながらながめておったのでありますが、村田さんも御承知のように、四十二年度予算で、総予算の一割余りの予算を農林予算は獲得しておりますし、その中で土地改良のような公共部門の投資は、ほかの役所においてはきわめてきびしく切られたにもかかわらず、農業関係は二割ぐらい昨年度に比べて増強されております。わが国はヨーロッパの諸国やアメリカのように平たんな土地ではありませんからして、農林省が非常に苦労を続けてまいりましたけれども、若干成績のあがっていないところもあることは否定できませんけれども、たとえば構造改善事業なんというものは、あと三年で打ち切られるということでありますが、最近に至ってえらい勢いで全国各地から御要望が殺到してきております。これらのことにつきましても、私は予算委員会などでいまやっておる構造改善は点ばかりだというような酷評も承りましたけれども、この点がやがて大きくなってまいりまして全部落が行なわれている地方も、たとえば静岡県のようなところにはございます。かなりの成果をあげておる。これは私は構造改善事業に対する一般の農業従事者の新しい認識と期待だと思っておるわけでありますが、したがって、そういうことについてはうんと力をさらに入れてまいりたいと思っております。ことしの予算でも八ヵ所採用になりました農業経済圏のごときは、昨年の二ヵ所と合わせて十ヵ所、これはまあテストケースでありますけれども、点だといわれておる構造改善地域が道路やあるいは水路によって結ばれることによってかなりの成績をあげ得るのではないかと思っております。  それからまた、開拓パイロットのごときは、これは与野党を問わず、議員さんたちが、私のところへ、自分のほうの地域に持ってきてくれということでだいぶ御注文があるところを見れば、農業政策はいままで農林省でやってきたことは全部だめだというわけにもいかないんじゃないか。私は、かなりの成績をあげておるものもあるので、こういうものと、それから思うように成果をあげていないところをひっくるめて、先ほど申しました構造政策推進会議では鋭意検討を続け、ひとつりっぱなものをやりたいと思いますのでどうかひとつ日本全体の農業を育成するという意味で今後も御激励を賜わりたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
  131. 村田秀三

    村田秀三君 これは農政局になると思いますが、構造改善についてお伺いしたい。  当初計画と実施状況、これを、ただ単に何ヵ所などというようなことではなくて、事業種目別にお答えをお願いいたしたい。
  132. 森本修

    政府委員(森本修君) 構造改善事業の最近の状況のお尋ねでございますが、三十七年以来実際の事業をやっておりますが、現在まで計画を作成いたしました地区は、四十一年度までで二千四百六十二地域、それから四十二年度の予算で五百地域をやる予定になっておりますので、それを含めますと二千九百六十二地域計画地域として指定をされることになります。  それから実施をいたしました地域は、もちろん全部完了はいたしておりませんが、ともかくも事業に着手をいたしておりますのは、四十一年度まで千六百二十六地域でございます。四十二年度の予算上の予定は五百五十地域ということになっておりますので、これを含めますと二千百七十六地域ということになるわけでございます。  それが大体個所数でございますが、お尋ねがございました作物別にどういうふうな状況になっておるかということでございますが、現在まで着手をいたしました地域について選定をした作物を見てまいりますと、畜産を選定をいたしました地域は全体の地域の四九%にのぼっております。それから果樹を選択いたしましたのが四七%、それから米を選択いたしましたのが四〇%、繭、野菜等はそれぞれ一八%ということになっております。念のためにお断わりをいたしておきますが、基幹作物は、必ずしも一地域について一つというごとにはなっておりません。あるいは二つの基幹作物として選んでおる、あるいはたまには三つを選ぶというふうなところもございます。そういうことでございますので、先ほど申し上げましたパーセントは必ずしも足しまして一〇〇%ということにはなりませんので、ダブっておりますので、その点を付け加えて御説明をいたしておきます。
  133. 村田秀三

    村田秀三君 当初計画は三千百地域ですか、それが、いまいろいろお伺いしたわけでありますが、予定どおりに進捗をすると、計画の最終年度には当初計画のとおりに実施できると、こういうことに理解していいわけですか。
  134. 森本修

    政府委員(森本修君) 三十六年度にこの構造改善事業を始めますときに、閣議決定をいたしました。そのときには、およそ三千百ぐらいをめどに事業としては着手をするのだということに、御説のようになっております。ところが、その後、御承知のように、数年を経過いたしまして、意外に都市化が進行した地域もございます。それからまた、山村等につきましては、御案内のように、その後特に山村振興法が制定されまして、あるいは山村振興の特別開発事業、まあ一種の農業の構造改善事業によく似たような新しい特別の事業が始められるということで、山村等ではむしろそれのほうが実情に適するといった市町村も出てきております。そういうことからいきまして、必ずしも三千百市町村がそのまま実施をされなければならないというふうには私どもは思ってはおりません。ただ、何ぶんにも地方の市町村から希望がございますものについて補助をするというたてまえでございますので、そういった希望に即して事業を実施していったらどうか、こういうふうに思っているわけであります。
  135. 村田秀三

    村田秀三君 聞くところによりますと、当初は、土地基盤整備は四五%、そうして経営近代化施設は五五%であった。ところが、土地が六〇%、それから経営関係が四〇%に落ちておる、これが逆になっておる、こういうことを聞くわけでありますが、それはそのとおりですか。
  136. 森本修

    政府委員(森本修君) 事業を開始いたしました三十七年度の事業実績によりますと、御指摘のありました土地基盤整備事業といわゆる経営近代化施設との事業費の割合は、土地基盤整備事業が全体の四五%、それから経営近代化施設のほうは五五%ということでございました。四十一年度の状況を見てまいりますと、同じく割合は土地基盤整備事業が五九%、それから経営近代化施設は四一%ということで、土地基盤整備事業事業費に対する割合は漸次増加をしてきておる、こういう傾向でございます。
  137. 村田秀三

    村田秀三君 経営近代化の中で落ちん込でいる一番落ち込みの強い種目、これは何ですか。
  138. 森本修

    政府委員(森本修君) 経営近代化施設ば各種の施設がございますが、作物別に経営近代化施設を分けた表が手元にございますが、それによりますと、たとえば水田の経営近代化施設、これの全体に対する事業費の割合は、三十七年度は二%、それ以降の年次もほぼそれに近い割合を示しておりまして、四十一年度は一二%という程度になっております。おもなものを拾いますと、園芸が一五%程度。それから畜産のほうは最近やや落ちてきておるようでございまして、これを年次によって多少のフレはございますが、三十七年度は一九%、それが四十一年は六%というふうな形でございます。なお、養蚕その他については、全体に対する割合はほぼ同じ、そういうかっこうであります。
  139. 村田秀三

    村田秀三君 畜産関係が進まないというのは、どういう理由ですか。
  140. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 構造改善の中で畜産関係が比較的進まないということでございますけれども、協業的にやるというふうな形が比較的少ないわけでございまして、そういう意味から進展しないのではなかろうかというふうに考えておるわけであります。
  141. 村田秀三

    村田秀三君 協業関係がうまく進まない、このうまく進まない原因は何ですか。
  142. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 当初、豚、鶏が多かったようでございますが、そういうものが一巡いたしましたことが減少してまいった原因と思われるわけでございます。それから乳牛等につきましては、協業的にやるという形が比較的少ないというふうな点もございまして、比較的少ないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  143. 村田秀三

    村田秀三君 どうもわからないんですがね。結局、この構造改善事業ですか、それを進めるときには、畜産はどの程度やりたいという計画があって始まったと思うんですね。その計画どおりにいま行っていないということでしょう。だから、行っていない原因は何かと言いますと、いわゆる協業関係がうまく進まないと。だから、進まない原因は何かと、こういうんです。
  144. 森本修

    政府委員(森本修君) 構造改善事業を始めます際に、作物別にどういう地域の数にしたい、あるいは数になる見込みだということは、必ずしも明確にはしておらなかったわけであります。事業の性質からいきまして、基幹作物を選定いたしますのは、各市町村における自主的な判断にまつというふうな仕組みになっておりますので、それぞれの地域でいかなる作物を選定をして構造改善事業を始めるかは、役所としては必ずしも数的な目標ないしは予測をつけておらなかったということでございます。先ほど私が申し上げましたのは、三十七年度以来の現実に地元のほうで選定をいたしました各作物についての近代化施設の全体に対する割合の数字を申し上げたわけであります。当初の計画に対して達成をしておるかしていないかということは、必ずしも言い得ないというふうな関係になっておるわけであります。
  145. 村田秀三

    村田秀三君 まあそういう言い方もあるのかなと思っているわけですがね。結局、構造改善事業は、三年区切りで大体十年の間に一つ事業をやっていくということですが、そうすると、これは当然農業基本法に基づいて立てられた計画でありますから、その中には選択的拡大ということで、いわゆる国民の生活の変化に対応する生産基盤をつくらなければならないんだということが趣旨であったわけでしょう。ただ土地に金を投げ込もう、そういうことではないはずですね。計画はなかったんだ、ただ実際やった実数がこうなったんだということはおかしいのじゃないですか。計画を進めるにあたって、土地基盤整備は四五%、近代化施設は五五%というその五五%の中で、畜産はそんなに力を入れてやらなくてもよろしいんだということはなかったでしょう。私が聞きたかったのは、要するに、畜産の問題というものはいま非常に大きな問題ですね。これと関係があるのじゃないかということで私は聞いておるんです。
  146. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 補足的に経過について御説明申し上げますと、三十七年に構造改善事業発足いたしました当時は、いわゆる選択的拡大の事業というのが農村においても相当盛り上がってきつつあるときでございます。その際に、畜産というものは当然表に出てくるわけでございますが、いわゆる土地制約の少ない畜産という意味で、中小家畜、いわゆる鶏、豚の生産拡大のための施設が近代化施設として非常に多く上がってきたのでございます。これは、三十七年、三十八年ごろの数字にあらわれておるわけでございますが、三十九年には、御承知のように、御記憶にあると思いますが、鶏卵の過剰生産の気味が出まして、卵価が非常に低落をいたしたのであります。そういう傾向が見受けられましたので、三十九年当時、農林省としては、鶏卵を基幹作物にするのについては、従来から養鶏についての相当の経験なり技術なりというようなものがあるところで、しかも近代的な経営設計のできる者に限ることにして、みだりに養鶏の拡大をはかることは、抑圧——抑圧ということは適当でありませんが、慎重に扱うべきであるという指導をいたしたのでございます。  なお、養豚についてもややその当時すでに生産過剰の見通しが得られましたので、これに準じたような指導をいたしたというようなことが畜産の近代化施設投資額というものについて漸減をしてきたという大きな理由である、その点では需給関係から来るものがあるということが言えると思うのでございます。  なお、酪農、肉牛等については、いずれも土地の制約、土地の条件というものを必要とするものでございますから、初めから大きな近代化の施設の投資はなかったのでございまして、その後もこれについては農林省として拡大の方向の指導はいたしておりますが、養鶏やあるいは養豚のごとく意のままになかなか進みにくいという事情がこの数字の中にあらわれておるわけでございます。
  147. 村田秀三

    村田秀三君 一番最後の酪農、肉畜、ここが私は問題だと思うのですが、それが進まなかったという理由は何ですか。
  148. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 御承知のように、乳用牛につきましては、毎年頭数は増加をいたしておるわけでございます。しかし、戸数は昭和三十九年を境といたしまして減少の傾向にあるわけでございます。戸数は減少いたしますが、頭数はふえておるわけでございまして、そういう意味では多頭化が進展をしておるということが言えると思うわけでございますが、何といたしましても、酪農の場合におきましては、土地条件の制約が一方にありますことと、それから非常に技術的な点もございます。一方、農家労働力が減少するというふうなこともございまして、増加はいたしておりますものの、必ずしも高い増加率を示しておるというようにはなっておらないわけでございます。  それから肉牛につきましては、御承知のように、わが国におきましては農業の労働手段として農家に飼育されておったわけでございますが、農業の機械化が進展をするにつれまして、労働手段としての肉牛が必要がなくなってまいりました。そういう形から、昭和三十一年ごろが最高であったわけでございますが、逐次、頭数も減少いたしてまいりますし、農家の飼育戸数も減少いたしておるわけでございますが、一方で所得の増大につれまして肉の需要が非常に強くなってまいっておるわけでございます。そういう意味から、最近、需要と供給のバランスから、価格がかなり強目になってまいっております関係から、農家の生産意欲が増大いたしまして、最近におきましては、肉用牛の生産がふえる、少なくとも減少の傾向が停滞をいたしてきておるというふうに考えるわけでございまして、今後は、政策と相まちまして増勢に向かうものというふうに考えておるわけでございます。
  149. 村田秀三

    村田秀三君 よけいなことまで答弁いただいておるようなんですが、酪農とか肉牛、そういうものが構造改善事業に乗りにくいという条件というのは何なんだ、こう私は聞いておるわけです。
  150. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 先ほど申し上げましたように、土地条件の制約が一つはございますことと、それから技術的な問題、経営上の問題もございまして、協業という形でなかなか進みにくいと、こういうふうな点もございまして、構造改善の仕事として進んでおるということではないというふうに考えておるわけでございます。
  151. 村田秀三

    村田秀三君 そうすると、これはまあ畜産局が積極的に酪農であるとかあるいは肉牛というものは構造改善に乗せるのには非常にむずかしいから、したがって、事業が起きなかったのだということなのか、農家が乗らなかったのかという点についてひとつ聞いてみたい。
  152. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 畜産局といたしましては、最近の生産物の需要から考えまして、また、農家所得の確保という点から考えまして、酪農それから肉畜の生産というものは選択的拡大の部門の一つとして生産の増大をはかるということで種々の面において努力をいたしておるわけでございます。ただ、土地条件の制約もございまして、構造改善地域におきまして必ずしも適しておるという条件がない場合があるわけでございますから、そういう点において乗りにくいという面もあるわけでございますが、しかし、構造改善であろうとあるまいとを問わず、積極的に生産の拡大ということに関しては努力をいたしているつもりでございます。
  153. 村田秀三

    村田秀三君 まあ畜産局は大いにこれをひとつやろうとしたけれども、実際にはできないということは、これは農家が希望しなかったということに端的に言えるわけですよね。
  154. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 先ほど申し上げましたように、地域的な条件の制約がございますので、農家の意欲がございましても、地域的な条件から、一定地域を選びます場合に、その地域の中に条件として整わないということでございますれば、これを進めるというわけにまいらないというふうなことでございまして、しかし、構造改善に乗らないからといって、畜産局の政策の対象といたしましては、積極的に推進するという態勢でいろいろな助成その他の措置は講じてまいっておるわけでございます。
  155. 村田秀三

    村田秀三君 端的に言いまして、これは農家の方々が希望しない、これは技術的に非常にむずかしいというようなこともありますけれども、したがって、畜産局がやろうとする計画の中でその地方が対応しないという問題があるにせよ、農家の方々が積極的でなかった。最初は、いずれにいたしましても、先ほどいろいろと聞きますと、三十七年度におきましては十九、経営近代化の中でも非常に大きい部分を占めておったわけでありますが、これがだんだん低下したということは、積極的に農家の方々が計画に乗ってこなかったと、こう見ても差しつかえないと私は思うのです。その農家の方々が希望しなかった原因というのは、これは確かに協業が非常にやりにくい、こういうこともあるにせよ、やって失敗したというのが実際に出てきておるからではありませんか、これは。
  156. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 協業経営でやります場合に、特に酪農の場合には、非常に技術的な問題があるわけでございます。したがいまして、協業経営という形でやりましても、必ずしも十分成功しなかった例というものもあるわけでございます。そういう点から、酪農につきましては、協業という形は必ずしもそういう形では伸びておらないわけでございまして、個別経営という形で経営が拡大するという方向が中心になってしまっておると思うわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、土地条件の制約もあるわけでございますが、また、協業という形ではなかなかむずかしい点もございます。そういうふうな点から、必ずしも十分伸びなかったのが多いのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  157. 村田秀三

    村田秀三君 私もよくわからないので、ほんとうに一、二の例だけでものごとを即断しておるとすれば非常に申しわけないと思うわけでありますが、私が聞いておりますのは、経営近代化ということでいろいろと助成もされ融資も受けて事業が始まったけれども、しかし、畜舎は建ちましたが、牛はなかなか入りません。そうしてまた、いわゆる共同で始ったところが、利益の問題、そういうことで自然にこの協業が分散をする。こういう傾向の中でとてもこれはやれたものではない、こういうことで失敗をいたしました、そういう話を聞いておるわけです。  そうしまして、ここには二つの問題が私はあると思うのです。一つは、鶏、豚、これらはきわめて回転率が早い。しかし、酪農であるとかそれから役肉牛の場合は、豚や鶏と比較すると相当長い年月を要する。回転率もおそい。そういうことでとても息が続かない。施設はつくったけれども、子牛を買ってそれを育てて乳をしぼるのには相当な期間を必要とする。成牛を得たいと思うと、その資金がない。その関係と、それから、何といいましても、生産されたものが、その生産費を補償するような価格で取引をされておらないという問題、つまり損益計算をすれば損をする。この二つの問題でこの計画が失敗をする、事業をやめてしまう、こういう傾向というものがあるのではないか、そういう理解を私はしておるわけでありますけれども、そういう状態であるからこそ、それが他に不況が影響いたしまして、そうして畜産というのが全体的に伸びないのじゃないか、こう考えておるわけなんで、その点についてひとつどうお考えになっておるかということです。
  158. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 協業経営が必ずしも伸びないのは、お話のように、一つは協業といたしましても、土地条件の問題と、それから協業する人々の間に技術的な差が非常に多いと、そういうふうな問題がございます、それからまた、収益の配分というふうな点についてもやはり問題もございます。そういうふうな点から、協業という形が必ずしも十分伸びないという問題はあるようにわれわれも考えるわけなんです。もちろん、協業という形で進めておるところもあるわけでございます。すべてがうまくいかないということではないわけでございますけれども、そういうふうな点がかなり協業が伸びない点においてはあろうかというふうに考えておるわけでございます。  個別経営につきましては、先ほど申し上げましたように、戸数は、全体としましては三十九年を境にして減少傾向に向かっておりますけれども、頭数は伸びておりまして、二戸当たりの頭数規模というものはふえておる。多頭化農家というものがかなりふえてまいっておるわけでございます。これは、酪農自体が、必ずしも従来乳価が生産者の手取りが一日当たりの労働報酬にしましても非常に高いというものではなかったわけでございます。そういう点で問題があったわけでございますけれども、最近生産者に支払われる乳価も高くなってまいっておりますし、かなり収益性は増大をしてまいっておるというふうに考えておるわけでございます。御承知のように、三頭ないし四頭飼育までというのが非常に苦しいわけでございますが、五頭以上の頭数になりますと規模の利益というものが出てまいりまして、かなり収益性は高くなってまいっておるわけでございます。したがいまして、われわれといたしましては、できるだけ五頭以上の飼育農家を育成するというふうなことで努力をいたしておるわけでございます。そういうふうな飼育農家になれば、相当程度の収益が上がりまして、したがいましてそういうふうな農家が今後逐次増大しつつあるというふうに考えておるわけでございます。
  159. 村田秀三

    村田秀三君 そうすると、事畜産に関しては、構造改善事業には乗らなかった、失敗を認めざるを得ない。であるから、まあこれは個別経営に切りかえていく、こういうことに理解していいわけですか。
  160. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 当初からどういうふうな計画で構造改善を進めるというふうな計画があったわけではないわけでございます。したがいまして、計画から見ましてこれが失敗であったとか成功であったとかという議論ではなくて、現実に構造改善が行なわれました地域につきましては、先ほどお話がございましたように、当初は鶏だとか豚だとかということが主として多く計画をされたわけでございますけれども、その後の情勢に応じまして今度計画が少なくなってまいっておるわけでございます。それから乳牛だとか肉牛につきましては、土地条件の制約の問題なり協業の問題等もございまして、そういう計画が多く必ずしも出てこなかったと、こういうことでございますので、必ずしもこれが失敗であったというふうに考えるのはいかがであろうかというふうに考えておるわけでございます。
  161. 村田秀三

    村田秀三君 それはまあ私の理解が不十分であるかもしれませんから、その点はとどめておきまして、次に、土地基盤整備の問題でありますが、特に水田ですね。セット方式、これは水田ばかりではないと思うのですけれども、たとえば水田の場合セット方式がとられておったと思います。いまでもそういう状態でありますか。
  162. 森本修

    政府委員(森本修君) 俗にセット主義とか方式とか言っておりますが、考え方としましては、水田などにつきましては、御案内のように、あるいは圃場を整備する、また、機械が入るような農道を整備するといったような、いわゆる土地条件を整備いたしまして、その上に経営的な装備といいますか機械を入れる、あるいはライスセンターといったようなものを設置するといったようなことを基盤整備とあわせて、いわゆる経営近代化施設を設置していただくというふうなことでほぼ計画をつくるような指導はいたしております。
  163. 村田秀三

    村田秀三君 そこで、これまた私が聞いた話を申し上げるわけでありますが、ライスセンターの採算性といいますか、土地基盤整備をしてそしてコンバインを入れた、そしてライスセンターの設立をした、この採算状態というものを知っておるかどうかですね。
  164. 森本修

    政府委員(森本修君) 当然、ああいった高度の施設でありますから、その施設をつくってどの程度ライスセンターであれば乾燥調製をするかというふうなことが、機械の採算といいますか、能率に響いてくるわけであります。当初の計画といたしましては、各地域においても、ほぼそういうふうな計画をいたしました規模数量が調製をされるものだということで立案をし設置をしておるようでありますが、あるいは現実状況を把握をされて御指摘をされておるかとも思うのですが、特定の地区におきましては必ずしも初年度からそういった機械の設置に見合った取り扱い数量があるとは限らないというふうな地区もございます。しかし、何ぶんにも構造改善事業は単年度の効果をねらっておるというわけではございませんで、土地基盤整備あるいは機械化、そういったことを通じてある程度長期にわたる効果ないしは能率を考えて設置をいたしておるようでありますので、漸次時間が経過をいたしますと、当初の設計に近づいていくものというふうに私どもは考えておるのであります。  また、経営管理等につきましては、それに要する費用等も国から助成をいたしまして、機械なりあるいは事業をやりましたあとの経営管理について適切な指導をするということで現在能率の向上に努めている、今後も努めていきたい、こういうふうに思っております。
  165. 村田秀三

    村田秀三君 ところが、いい話を聞くわけでありますけれども、しかし、実際にやっている地域の話を聞いてみますると、まあ全部ライスセンターを利用するということにはならないというんですね。たとえば、自分のところに自家乾燥機を備えつけているところがあるわけなんです。これはまあ自家乾燥をやったほうが使用料をとられる必要がないから、自家乾燥をする。よしんば収穫全量をライスセンターを利用してもらったといたしましても、その稼働率というのがきわめて短期なんですね。したがって、どうしても採算はとれないと、こういう話を聞いておるわけです。まあ言ってみれば減価償却もできないんじゃないかというような言い方もされておるわけでございまして、これはどこで責任を負うかという問題ですね。
  166. 森本修

    政府委員(森本修君) 先ほど申し上げましたように、計画の樹立をいたします町村においても、一応計画上ではそういった施設に見合う稼働があるものということで計画を立案をされております。また、私どもがこの計画を審査といいますか見ます場合にも、そういう点については相当精査をして見ておるつもりでございます。しかし、それぞれの地域におきましては、あるいは御指摘のように全体の農家がその乾燥機を共同で使用するものというふうに想定をいたしましても、初年度あるいは当初の段階におきましてはそれぞれ個々の農家にもやははり事情がございましょうから、自分の乾燥機がまだある、あるいはその農家の労力の関係からいってさしあたりは個別の自分の乾燥機でやりたいといったような農家も実情としては出てくることもございましょう。しかし、長期的に見ますならば、そういった乾燥の施設を共同で使っていくということが、労働力の減少といったような点からいきましてもあるいは全体の品質を統一するというふうな点からいきましても有利であるという判断で市町村においても立案をされておるわけでありますから、そういった時間の経過並びにしかるべき管理指導についての体制を整備してよくアフターケアをしていくというふうなことに努めまするならば、当初現地で計画をいたしました能率が漸次発揮されてくると、こういうふうに思っておるわけでございます。
  167. 村田秀三

    村田秀三君 どうも、話を聞いてみますと、全部問題がないように聞かれるわけであります。実際は問題があるところもあるんじゃないですか。あるいはそうかもしれません。したがって、いまここでは私は求めませんけれども、その実態をひとつあとでもってお知らせをいただきたい。と同時に、まあ実際問題として土地を改良するのはいいけれども、セット方式は迷惑だということを言っているわけですよ、迷惑だと。一言で言うならば、農林省は機械室と組んでいるんじゃないかというような言い方をされているんですよ、実際は。だから、このセット方式というものは、いわゆる補助の前提ということではなくて、その計画地域の農家の方々の自主性によって入れたほうがいいんだということが考えられ、かつ将来にわたって計算がつくならば入れる場合もあるだろうけれども、そうでない場合合はセットというそれはまあ考慮してもよろしいんだというふうになるのかならないのか。
  168. 森本修

    政府委員(森本修君) それぞれ地域の実情によりまして、あるいは基盤整備事業をやりたい、あるいは基盤整備よりは機械を単独で入れたいというふうな地域もあろうと思います。したがいまして、農林省の手だてとしましては、単に構造改善事業ということだけではございませんで、基盤整備事業を単独でやろうとすればその事業の実施もいたしておるわけであります。また、あるいは、基盤が整備された上に今回は機械を入れたいというふうな地域に対しては、米でありますれば高度集団栽培事業といったようなものもございまして、それぞれ利用し得るような予算なり事業も組んでおるわけでございます。で、構造改善事業は、当初御説明いたしましたように、一応事業の性格としましては、そういった基盤整備事業と、それに見合った機械あるいは近代化施設を組み合わすということで出発をいたしております。したがいまして、たてまえとしてはそういう考え方計画を立案していただくというふうにお願いをいたしておるわけであります。ただ、それをあまり画一的といいますか、形式的に流れても、実情に合わないというふうなこともございまするので、漸次そういったやり方について弾力的に配慮するというふうなことでやってきております。たとえば、共同の施設なりあるいは機械を入れるということが当初の三年間の事業期間の中でやることが著しく投資としては先走るというふうな地域に対しては、その事業期間を越えてといいますか、その事業期間以後においても設置を認めるというふうなこと、逆にまた、先行投資といったようなことで先にやってもいいというふうなことで、漸次いま言いましたようなことの画一性をやめて、できるだけ現地の実情に即した弾力的な扱いをするということに努めつつあるということでございます。
  169. 村田秀三

    村田秀三君 そうすると、セット方式はやめないけれども、その方式を長期にわたって地元の意向を確かめながらやってもよろしい、端的に言ってこういうことですね。まあそれだけであって、いわゆるセット方式というものはやめない、答としてはこういうことですね。  端的にお答えをいただいて、時間もありませんから、先に進みますが、これはまあ米の生産者価格とも関係をしてくるわけでありますが、確かに補助はしていただきますけれども、しかし、自己負担を当然要求されるわけです。しかも、これは計画といたしましては三割ということになっておるけれども、事実は、工事設計のズレであるとか、あるいは実際に工事をしてみたところが地盤の関係で予想以上に工事費が増高した、とかということで実際は三割ではないんだと、それ以上、多いところは四割も実質的には負担をしておるんだという地域があるわけでありますけれども、これは工事実施以降完成のときの価額計算で補助率をきめるということにはならないのかどうか。
  170. 森本修

    政府委員(森本修君) たてまえとしましては、土地基盤整備については末端では三割の負担ということでございます。ただ、御指摘がございましたように、一応計算上はそうなっておっても、事業に着手をしてやっていく間に、労賃が上がるとか、いろいろな関係事業費が変わってくる。したがって、地元の負担が当初よりも若干増加するというふうな関係があろうかと思います。私どもとしましても、補助のやり方には、何といいますか、一定のルールといいますか、約束がございますから、無制限にというわけにはまいりませんけれども、それぞれの年度の事業費の予算につきまして予備の費用等もとっておりまして、いま言いましたような関係のものにつきましてもでき得る限り調整措置はとるというふうなことで、当初きめたものは一切動かさないというふうなことでは必ずしもないわけであります。もちろん、全体の予算を各地区に配分をしてやってまいるわけでありますから、無制限にということはできませんけれども一定範囲内であれば、そういった関係で若干のめんどうを見るというふうなことで従来からも運営をいたしておるわけであります。
  171. 村田秀三

    村田秀三君 それは、若干のめんどうということではなくて、工事着工の計画時の経費でなくて、完成後のいわゆる経費の負担率、こういうことにひとつ御検討願いたいと思います。  それからこれは三割の負担とはいいながら、農家の今日の状況からするならば、非常に多額の経費をむしろ国の政策によって負担させられておるという状態が出ておると思います。言ってみれば、自分の田を工事するんだから、三割くらいやむを得ないじゃないか、こういうような言い方をされる向きもあるかもしれませんけれども、しかし、全農家が賛成をしてこれを実施しておるということにはなかなかならないわけです。反対をいたしましても、今日のやり方といたしましてはやらざるを得ないという面もあるわけでありますから、私どもはそういう面は非常に大きな問題だとは存じておりますが、いずれにいたしましても、生産基盤の整備のために国から資本投下を強要されるわけでありますから、その資本投下の減価償却、これが生産されたものの中から計算をいたしました場合に、今日の生産者米価の決定の基準の中には、構造改善をしたからここのところだけはひとつ高く買いましょうということにはならないわけであります。非常に問題だと思いますけれども、これは何年かかれば減価償却できるわけですか。工事費にいろいろ差があるでございましょうが、最近の傾向といたしましては、十アール四十何万ですかかかっておるということを聞いておりますが。
  172. 森本修

    政府委員(森本修君) 減価償却が何年であるかというお話でございますが、きわめてお答えにならないかとも思いますけれども、土地基盤整備にもいろいろ事業の種目がございますので、それぞれについて耐用年数その他が違ってくるわけであります。したがいまして、端的にいま何年というふうには申しかねると思うのでありますが、一応公庫資金等の融資の際に過去の実績に基づきまして計算をいたしました例では、二十五年ないし三十年といったようなことで金融の際の償還期間はきめておるというふうなことが一つの参考になろうかと思います。  なお、地元負担についてきわめて多くのものが農家にかかっておって負担が過重ではないかというお話がございました。私どもとしましても、できる限り地元負担がかからないということが一つの理想ではございますけれども、やはり農家の圃場の整備といったようなことでございますので、ある程度地元負担はいたし方ないというふうな感じを持っております。しかし、過去におきましても、たとえば当初出発いたしましたときは、地元負担が五割というふうなことでございました。事業実施の過程で三割になるというふうなことにもいたしておりますし、また、地元負担分については、公庫からの制度的な融資というようなこともございます。融資の金利につきましても漸次引き下げをはかってきておるというふうなことで、今後とも農家負担の軽減等につきましては、農家の現状あるいは地域の実態等をよく見まして、できる限り努力をしていきたい、そういう方針でございます。
  173. 村田秀三

    村田秀三君 土地基盤整備、構造改善事業関係をした農家の数ですね、これはどれぐらいありますか。
  174. 森本修

    政府委員(森本修君) 構造改善事業に参加をした農家数でございますが、累計で申し上げますと、現在まで事業に参加をいたしました農家の数は約二十五万戸ということになっております。
  175. 村田秀三

    村田秀三君 それは、全農家の何%になりますか。
  176. 森本修

    政府委員(森本修君) 全国おしなべて申し上げますと、農家数が約五百五十万戸ということでございますので、約五%程度に当たるのであります。
  177. 村田秀三

    村田秀三君 構造改善事業ですね、これは土地改良事業も含めてよろしいのではないかとこの際は思いますが、これはいつまで継続するという計画、そして国が助成をして土地基盤整備をする、これはどこまで続けるんだという計画ですね、こういうものはありますか。
  178. 森本修

    政府委員(森本修君) 先ほど申し上げましたように、当初三十七年に開始をいたしましたときは、ほぼ事業期間としましては十年間というふうなことを想定をいたして、そういう期間も漸次過半の期間が過ぎてまいって、先ほど申し上げましたような進捗状況、地区数でございます。私どもの現在の感じといたしましては、構造改善事業が当初そういった構想で出発をいたしましたので、現在のところは一応当初の構想でやったらどうかというふうには思っておりますけれども、先ほど来のお話もございまして、地元におけるこの事業に対する要望の状況その他を考慮をいたしまして今後どういうふうにするか最終的にはきめていったらどうか、こういう感じであります。
  179. 村田秀三

    村田秀三君 私が聞いておりますのは、新たに耕地を造成する。したがって、全耕地が将来どこまで伸びていくかというようなことについては、私自身もそこまではわかりません。しかしながら、わずか農家戸数で五%ですか、今日の日本の耕地全体の比率からすればこれまたどの程度になるか、すぐに計算すれば出るわけでありますが、それのみに国が助成をして土地改良なり土地基盤整備をいたすということについて、賛成ではないとは言いませんけれども、もっと範囲を拡大する必要がある、こう実は考えるものですからいまお伺いをしたわけでありますが、とにかく、日本の全耕地の、不可能な地域はとにかくといたしましても、少なくともここまではひとつ何年計画でやりたい、土地改良あるいは土地基盤整備を、こういう答えを端的に私はいただきたい。そういう計画がなければないでいいですよ。
  180. 森本修

    政府委員(森本修君) 先ほど来御説明をした中にあったかと思いますが、基盤整備に限って申し上げますならば、基盤整備を事業としてやっております手段としては、もちろん構造改善事業もございますし、農地局がいろいろ努力をしておりますところの各種の土地改良事業がまた別途の事業としてあるわけであります。したがいまして、私どもの感じとしては、必ずしも構造改善事業のみで全国の基盤整備を仕上げなきゃいかんというふうには思わないわけであります。もちろん、現在の状況でいいかどうかは、御指摘がございますように、十分実情を検討しなければならぬと思いますけれども、一方に土地基盤整備事業という本来の整備事業がございますわけでありますから、そちらのほうでも構造改善事業事業量よりはもっと大きい事業量が現在別の事業で実施されているという状況でございます。かつまた、土地改良につきましては、しばしば御説明を申し上げたかと思うのでありますが、土地改良の長期計画といったようなものを作成いたしまして、やや長期にわたって計画的に実行していきたいというふうな態勢も整えておるわけであります。そういう点を十分考慮して今後構造改善事業のあり方について検討をしていきたいと思っております。
  181. 村田秀三

    村田秀三君 どうも、なかなか期待するような答弁が得られないわけでありますが、確かに、構造改善の中で、土地基盤整備事業、それから土地改良十ヵ年計画ですか、これは進められておるようであります。しかし、それ以外に、最近は一言で「農業山に登る」ということが言われておりますが、山村を歩いてみますと、非常に開田が進んでいるようであります。聞いてみますと、自己資本でやっている。それはもちろん融資を受けるということもありましょうけれども、ほとんどが自己調達でやっているという状態がいまあらわれておるわけでありますから、時間があれば私は土地改良十ヵ年計画とも合わせながらそれらのことをもう少し詳しく質問してみたかったわけでありますが、まあ急ぎますが、そういう自力で開田をなさっておる方、これに対して何らの措置もないのは変ではないか、こう実は考えておるわけでございますのでお伺いをしておるわけです。したがって、土地改良十ヵ年計画は、十ヵ年で打ち切るのではなくて、それ以降も継続するんだ、構造改善土地基盤整備事業は、十ヵ年でとどめるのではなくて、さらに継続をする、そして耕地の何十%まではこれでいく、こういうことを知りたいわけです。そういうことは言えないわけですか、端的に。
  182. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) いろいろ御質問があったわけでございますが、自力による開田等につきましては、御指摘の中でも出ましたように、農林漁業金融公庫による低利資金の貸し付けということをいたしておるわけでございます。  なお、山村については、農地局長がおりませんので、さだかでございませんから、数字を申し上げにくいのでございますが、一般地域と違いまして団体土地改良の採択基準を低めて採択ができるということにいたしておるのも、山村に対する特殊な配慮でございます。  土地改良農業基盤整備事業全体は、先ほど農政局長からも話がありましたように、たとえば四十二年度の予算で申し上げましても、構造改善関係で約百二十四億円程度の基盤整備費に充当されるものが見込まれるということを御説明申し上げておるのでございますが、別に千三百六億近くの一般土地改良費、農業基盤整備費が計上されておるわけでございます。長期計画では、総事業費二兆六千億円ということで十ヵ年計画を立てておるのでございますが、その中で現在進行中の構造改善事業の中で行なわれるであろう事業費が含まれておるのでございますけれども、将来、現在の構造改善推進事業というものを十ヵ年終了後どういうふうに持っていくかということについては、農林省といたしましても、端的に申し上げまして、はっきりとした次期対策を打ち出すだけの準備がないのでございます。ただ、先ほど農林大臣お話しになりましたように、将来の構造政策推進の施策を講ずるにあたりまして、このような地域的な農業の振興策というようなことについても、何らかの形で新しい情勢に合うような施策を展開すべきであるという考え方は私ども持っておるわけでございます。そういう次期構造改善推進事業といいましょうか、構造政策に関する地域施策というものができますれば、長期政策との関連においてどういう見込み方をするかということはあらためて検討いたしたいというふうに考えておるのでございます。
  183. 村田秀三

    村田秀三君 それはなかなか答えはむずかしいのではないかと思うわけですが、まあ私もそういう何かいまの時期に合わないような質問をいたしました真意というものをひとつ話してみたいと思うわけです。もちろん、食糧の生産は、これは急務であります。そして、国際的に見ましても、食糧の問題というものは今日きわめて大きな問題になっている。わが国の状態を見ますと、自給率はたいへん高いようなことを先ほど大臣は言いましたが、これは米についてはある程度そういうふうなことが言えるでありましょうけれども、全食糧品、それからまた、摂取カロリー高を計算いたしますと、七〇%台だという数字が出ておりますね。そういうことを考えてみると、もはやこの食糧の問題は、単に経済効率だけを見て輸入すればそれで需給が事足りるという時期ではなくなってくるのではないか。したがって、日本で必要とするところの食糧は、大臣は先ほど自給率を高めると言いましたが、それはどの程度高めるかという計画も聞きたいところであったのでありますけれども、少なくとも一〇〇%に近いところの食糧が生産されるように計画をしなくてはならないのであります。そうしますと、食糧の問題というのは非常に大きな問題であるし、しかも、食糧の生産というのは、今日の状態では、農家の負担によってなされておる、農民の負担によってなされておる、そういう感じがしてしかたがないわけです。したがって、この段階では、もはや農業生産の問題は単に経済効果あるいは農業の問題、農民の問題ということではなくて、いわゆる国の問題として対処しなくてはならない。とすれば、先ほど、構造改善では三割自己負担七割補助、あるいは土地改良計画ではそれよりも効率の悪い補助率、事業の種目によっていろいろ分類がされておりますけれども、実際なぜそういう分類がされているのか私どもにはわかりませんけれども、いずれにいたしましても、生産基盤を国が補助をするという思想というものは、もはや農業資本というものが単に農民が負担をすればよろしいんだということではなくて、社会資本としてとらえて、そうして大幅に国が資本投下をしなくては解決のつかない状態になってきているのではないか、こういう考えを持っているものですから、先ほど来いろいろ申し上げたわけでありますが、私といたしましては、もちろん今日の構造改善の進め方については多くの疑問を持っております。これは何とかして解決をしなくちゃならないという反面、一部の農家だけが助成をされるという、そのことについて不合理を感じておる。これはもう部分的な生産基盤の整備ではなくて、一定の食糧の需給計画、そうして生産計画というもの、これはまさに豆腐をほうちょうで切ったようなわけにはまいらぬかもわかりませんけれども、少なくともそのような方向での計画を総合的に立てて、そうして国が積極的に取り組む姿勢がなければ解決をしないのじゃないかというような考えを持っておりましたために、先ほどの質問になったわけでありますが、その考え方を本来ならばこれは大臣に聞いてみたいと思うのでありますが、大臣の先ほどの答弁からしますならば、積極的にそれをやらんとするのだというように理解するわけでありますが、農政当局としてどのように今日理解をしながら進めているか、こういう点についてお伺いしたいと思います。
  184. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) ただいまの御質問はきわめて高度の農業政策の基本にわたる御質問でございますので、私からお答えするのにはいささか資格に欠けるところが大きいと思うのございますが、御指摘のように、現在、世界の食糧事情、あるいは将来の事情を見通しましても、およそ、先進国といいますか、経済的に安定している国は、いずれも食糧の自給度の向上に懸命の努力を続けていると見受けられるのでございます。でございますので、わが国のように非常な経済発展が予想される国につきましては、またそれらの国々に見ならって食糧の自給度の維持なり向上ということに私どもとしては国家的な課題として取り組む必要があるというふうに思うのでございます。  ただ、すべての農産物を国内の生産にまつということは、私は端的に言ってとうてい考え得られない。非常に狭小な国土でございますから、そうはまいらぬと思いますが、日本の食糧構成の中で、また、日本の与えられた資源の中で、重点的に育成伸長を期すべき部門につきましては、徹底した生産対策なりあるいは諸種の環境の整備に関する政策をとるべきではなかろうかというふうに思うのであります。国際的にもいろいろな問題がある中で、日本がいかなる農産物自給の政策を持つか、私ば、端的に言って、事務的計算の問題ではなく、政策、政治の問題ではなかろうかというふうに僣越でございますが思っておるのでございます。  そういうことと関連いたしまして、農業生産基盤の整備等について、社会投資的な感覚で投資をすることが妥当ではないかという御意見でございましたが、現在の農業生産基盤の整備の中には、総体的に社会投資的性格を持つものも私どもあると認識をいたしております。ただ、すべて国家財政の負担にすべきかどうかは、少なくとも現在の日本の農地所有の形態が私有制をとっております限り、私有財産の改良に関しまして受益者が全く負担しないということは、私ども事務当局としてはなかなか考えにくい。ただ、今後、ただいままで申し上げましたような農政の課題を達成するためには、農家の負担軽減をはかっていくべきであるという点については、先生の御指摘と私どもの見解は相違はございませんわけでございます。この点につきましては、いろいろな行政上の条件のもとで私どももできる限り努力をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  185. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 本件につきましては、この程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十三分散会      —————・—————