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1967-05-25 第55回国会 参議院 農林水産委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月二十五日(木曜日)    午後一時四十六分開会     —————————————    委員異動  五月二十三日     辞任         補欠選任      北條 雋八君     白木義一郎君      宮崎 正義君     矢追 秀彦君  五月二十五日     辞任         補欠選任      矢山 有作君     北村  暢君      矢追 秀彦君     宮崎 正義君      白木義一郎君     北條 雋八君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         野知 浩之君     理 事                 任田 新治君                 山崎  斉君                 川村 清一君                 森中 守義君     委 員                 青田源太郎君                 小林 篤一君                 櫻井 志郎君                 園田 清充君                 田村 賢作君                 高橋雄之助君                 温水 三郎君                 堀本 宜実君                 森部 隆輔君                 八木 一郎君                 和田 鶴一君                 北村  暢君                 武内 五郎君                 達田 龍彦君                 村田 秀三君                 渡辺 勘吉君                 北條 雋八君    政府委員        農林政務次官   久保 勘一君        農林省農地局長  和田 正明君        林野庁長官    若林 正武君        水産庁長官    久宗  高君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君    説明員        水産庁漁政部長  池田 俊也君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○農林水産政策に関する調査  (昭和四十二年度農林省関係施策及び予算に  関する件)     —————————————
  2. 野知浩之

    委員長野知浩之君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  本日、矢山有作君が委員辞任され、その補欠として北村暢君が選任されました。     —————————————
  3. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 理事補欠互選についておはかりいたします。  去る二十三日、宮崎正義君が委員辞任され、本日再び選任されましたが、本委員異動に伴い、理事に一名欠員を生じておりますので、これより補欠互選を行ないます。  互選は、投票の方法によらないで、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事宮崎正義君を指名いたします。     —————————————
  5. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 昭和四十二年度農林省関係施策及び予算に関する件を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。質疑のおありの方は順次御発言願います。
  6. 達田龍彦

    達田龍彦君 私は、本日、水産行政、とりわけ沿岸漁業の問題を中心にしてお尋ねをしたいと思うのであります。  いま、水産行政の中でも重点的に政策あるいは行政として進められておるのは、資源をどうふやしていくかというような対策、それから漁場の開拓の問題、さらにまた魚介藻類をどう効率的に捕獲をしていくかというような問題で、これは不十分ではありますけれどもある程度改善あるいは改良の政策が進められ、ある意味では成果を生んでおると考えておるのであります。しかし、日本漁業政策の中でもとりわけ沿岸漁業というものはたいへんに取り残されており、しかも経営形態そのものもたいへんおくれておる状態の中でさらに問題なのは、そういう資源をどう保護していくかというこれらの保護行政については、沿岸漁業の中でも非常に立ちおくれておる現状にあるのではないか、国のこれに対する助成というものが他に比較して軽視をされておるのではないか、こういう感じを私は深く持つのであります。  しかし、内容的に検討してまいりますと、沿岸漁業の大きな柱としては、沿岸資源をどう保護していくかということが沿岸漁業の中では大きな政策重点として取り上げなければならないほど重要な内容を持っておると思っておるのであります。たとえば、今日、資源保護の問題で問題になってまいりますのは、公害によるところの水質汚濁によって資源が大きく被害をこうむっておる。さらにはまた、漁業資源を食い荒らす食害によって魚介藻類がこれまた大きく被害を受けておるという状況もあるのであります。あるいは、海水変化によって、これまた大きな被害あるいは公害を受けておるという状況もあるのであります。さらにまた、干拓によって沿岸漁業が減少していくという状態もあるのであります。  私は、こういう一連の、沿岸漁業の中でとりわけ資源保護する資源保護政策、こういう行政というものについて、まず根本的に沿岸漁業の立て直しの一環として問題をとらえ、きめのこまかい政策を進めなければならぬと考えておるのであります。こういう意味において、こういう沿岸資源保護についてどういうふうに今日まで水産庁として対策を具体的に進められておるのか、その対策方針をまずお伺いしておきたいと思うのであります。
  7. 久宗高

    政府委員久宗高君) 漁業政策におきましては、御指摘のとおり、限られた資源でございますので、資源保護と同時に、その最も効率的な利用ということをたてまえにいたしまして一連の法制がしかれているわけでございます。御承知のとおり、沿岸部面におきましては、個別には漁業権制度を設けておりますし、また、それより沖合いの地帯におきましては、資源との関連におきまして、一般的には禁止いたしまして、それを許可制度によって運用しているわけでございます。御指摘のような資源保護に現在の制度で事足りるかと申しますと、いまの漁業権なり許可制度ないしは漁業禁止区域の問題、そのようなものだけではなかなか対処し切れない問題が続々と出ておるわけでございます。  特に、御指摘のございましたような水質汚濁関係が、一般産業発展関連いたしまして非常に広範囲に及んできておりますので、御承知のとおりに、政府におきましても、今回公害基本法の立案を考えまして根本的な対処をいたそうとしておるわけでございます。今日までのところ、私どもといたしましても、そのような漁業法体系の権利なり許可運用におきましても当然資源保護を頭に置いて考えておったわけでございますが、御指摘のような水質汚濁関係につきましては、御承知のように、水質保全法及び工場排水規制法に基づきまして、経済企画庁を中心といたしまして、主要水域につきましては水質調査をいたしまして、同時に、その水質基準設定が行なわれておるわけでございます。これらの基本調査計画ができました水域につきまして、すでに水質基準設定済みのものが十九水域に及んでおるわけでございます。しかしながら、この進行過程におきましては、私ども水産担当者といたしましてはどうもこのテンポが非常にのろいのでございまして、もっと基準設定個所数も進めたいし、また、その基準中身につきましてもどうも隔靴掻痒の感がございまして、結果におきましてはこの二法の運用程度では処理できないほどの公害問題が現実の問題となって出てきておるわけでございます。したがいまして、政府といたしまして公害問題をはっきり取り上げようとする段階におきまして、水産関係者といたしましての要望もできるだけその中に盛り込んで調整のできるような態勢に移ってまいりたいと考えておるわけでございます。
  8. 達田龍彦

    達田龍彦君 いまの説明は、私は、沿岸漁業資源保護の総合的な政策としては説明が非常に不十分だと思います。そこで、私がいま取り上げました保護を対象とする四つの問題の中で、一つずつ問題点を提起をして、その具体的な対策なりあるいは行政指導なりを解明をしていきたいと思うのであります。  その一つは、先ほど私が申し述べましたように、海水変化によるところの被害の問題でありますけれども、例年でありますけれども、最近特に顕著にあらわれておりますのは、例の赤潮対策であります。この赤潮被害というのは、単に日本沿岸の一部分ではなくて、三陸沖から九州の端まで赤潮被害が非常に大きく出てまいっておるのであります。聞くところによりますと、水産庁では、これのための調査研究を将来ある程度やりたいという計画をお持ちのようでありますけれども、今日、この赤潮のためにどれだけの魚介藻類被害があっておるのか、その実情を地域別それから種類別にできれば金額も含めて御説明お願いしたいと思うのであります。
  9. 池田俊也

    説明員池田俊也君) ただいまお尋ね赤潮でございますが、これは、御承知のように、プランクトン異常発生をいたしまして、それが貝類あるいは魚に非常な被害を与えるというものでございますが、最近私どもが聞いておりますのでは、徳山湾、それから大村湾東京湾というようなところが主たる発生の場所であるようでございます。この原因につきましては、ただいま御質問にもございましたように、私どもといたしましては、まずその原因究明をするのが先決であるということで、実は、昨年度九州大学研究室お願いをいたしましてその原因究明を始めたわけでございます。それからさらに本年度は、水産庁内海水産研究所におきまして、かなり大規模に相当な金額をかけまして、そういう赤潮発生いたしました場合に漁業にどういうような影響を与えるかといういわばそういうメカニズムみたいなものの研究調査をやる、こういう予定にいたしておるわけでございます。  ただいまお尋ねのどの程度被害額があったかということは、実はただいま手元数字がございませんので、はっきりしたことは申し上げかねるわけでございますが、かなりの被害があったように承知いたしております。
  10. 達田龍彦

    達田龍彦君 これは、実際に、被害状況地域、それから魚介藻類種類金額、そういうものの具体的な実態調査資料はありますか。あれば、ひとつ早急にまとめてお出しをいただきたいと思います。
  11. 池田俊也

    説明員池田俊也君) ただいま御要求がございましたような的確な資料は、実は手元にはございません。もし必要でございますれば、若干の時間をかしていただきまして、できるだけの数字をとりまとめまして提出さしていただきたいと思いますが、現在はまだ具体的な数字は持っておりません。
  12. 達田龍彦

    達田龍彦君 たいへん私はけしからぬ話だと思うのであります。というのは、まだ赤潮原因究明が実はなされていない。したがって、専門研究調査機関でもって調査をしようと、こういうことでございますね。そうすると、近いうちに予算をつけ、実際に調査をする計画をつくらなければならぬわけです。予算つけ調査研究をしようというならば、実際にどれだけ被害があってどういう結果が出ているのかということを知らないで、何で調査するのかということになるのでありますが、そういう点はきわめてけしからぬ話だと思うのでありますが、長官、どうですか。
  13. 久宗高

    政府委員久宗高君) 数字がございませんと申しましたのは、水産庁でいままとめてすぐお出しするような形のものはないという意味だと思います。御承知のように、赤潮発生いたしました場合には、当該府県試験研究機関が当然それに多少ともタッチしておりますし、それから私どものほうから調査に行った場合もございますし、また、現在まで赤潮原因が非常に複合的でございますので、しかとこれだというふうに的確に申し上げられないのでございますけれども、今日までの原因究明には、部分的ではございますけれども研究者が携わっておりますので、さようなものを調整いたしますれば、完ぺきな資料とは申し上げかねるわけでございますけれども、いま手元にはございませんけれども資料としてできるだけのものを調製いたしましてお届けいたしたいと思います。
  14. 達田龍彦

    達田龍彦君 これは、私は、早急にその実態を把握をして、その上に立ってきめのこまかい行政指導なりあるいは水産行政をしていかなければならぬと思いますから、そういう意味でも早急に資料をつくっていただくことをお願いいたしたいと思うのです。  それで、この赤潮原因研究調査ですね。これに対する計画をお持ちだと思うのでありますけれども、その構想、計画の具体的な方法をお示しいただきたいと思います。
  15. 池田俊也

    説明員池田俊也君) 私、実は技術面にあまり明るくございませんので、いまの御質問に対しまして的確なお答えはできないのでございますが、先ほど申し上げましたように、現在やっております考え方は、昨年度から九州大学研究室のほうにお願いしておりますのは、赤潮というものがどういうメカニズム発生するのか。どうも、従来私どもが伺っております限りでは、工業地帯と申しますか、そういうような地帯に近いようなところに比較的多く発生をしておるというようなことも実はございます。まあその関係がどう赤潮と結びつくか、これはまだよくわかりませんので、的確なことは申し上げかねるのでございますが、どうもその海面に流入してくる川等にも影響があるかもしれないわけでございます。  いずれにいたしましても、プランクトン異常発生する、こういうことが、そこに流入する水の関係でございますとか、あるいは海面の温度でございますとか、そういうものと関係いたしまして異常発生をするのじゃないかといわれているようでございますが、そこいらがはっきりいたしませんので、まずそのメカニズムを明らかにするということを九州大学お願いをいたしまして調査をしていただいているわけでございます。その原因が明らかになりますれば、おのずから対策に結びつくわけでございますので、まずそこらのところを第一に明らかにしたい、こういうことでございます。
  16. 達田龍彦

    達田龍彦君 どうも、私が聞こうとしていることと御回答いただいている内容がかみ合わないのでありますが、これは「毎日新聞」の一週間か十日前の記事ですけれども水産庁の三ヵ年計画で初の大調査を行なうというのが出ているのです。これに基づきますと、水産庁とそれから海上保安庁が、ことしの夏の調査開始を目途に、大蔵省と予算折衝に入っておる。そうして、地域だとか目的だとか内容を具体的にきめて、いままで個々にやっておった調査を全国的系統的に行なうという計画がすでに新聞には出ている。こういう計画が一体どうなるのかということを私は聞いているんです。プランクトンがどうだこうだと、そういう専門的なことではないのであります。こういうことがいま新聞に出ておるのに、こういう計画を何でここで説明できないのですか。そういう説明をちゃんとしてもらいたいと思うのです。
  17. 池田俊也

    説明員池田俊也君) 実は、説明が非常に不十分でございまして、いま御指摘になったことでございますが、先ほど申し上げましたように、いま九州大学お願いしてやっておりますのは、実は、赤潮発生メカニズムというようなことは、昨年からやっておるわけでございます。三ヵ年計画くらいで原因究明したい、こういうことでございます。  いま先生が御指摘になりましたのは、実は私ちょっと説明を落としまして恐縮でございますが、本年度から水産庁内海区の水産研究所中心になりまして、関係機関団体等連絡をとりながら、そういう赤潮が起きました場合にどういうような形で漁業被害を起こすか、こういうような点について実地にいろいろな調査を行なう、こういうことで計画をしているわけでございます。現在、その調査内容は、検討中でございまして、まだ非常にはっきりしたかっこうではまとまっておりませんが、そういう状況でございます。これからその内容固めるということでございます。
  18. 達田龍彦

    達田龍彦君 でありますと、まだ海のものとも山のものとも部内では方針がきまっていない、こういう理解でいいんですか。
  19. 池田俊也

    説明員池田俊也君) まだ全然きまっておらないということではございませんので、現在関係研究所あるいは関係機関の間におきましてどういう具体的な調査研究計画を立てるかというようなことについて詰めている段階でございます。
  20. 達田龍彦

    達田龍彦君 どうもはっきりしないのですが、予算折衝をするとか、あるいは海上保安庁連絡をとるという場合には、もう部内方針はきまっているはずですよ。その部内のきちんとしたやるならやるという方針の上に立って具体的にはどうしていくかということは水産庁できめるべき問題ですよ。予算をどうするとか、海上保安庁に対して関係の者にどう協力を求めるかということは、他の省との問題であって、水産庁そのものはすでに方針がなければならぬはずであります。やらないというのなら別でありますけれども、やる必要があるということをお固めになっておるなら、そのお固めになっておる具体的な方針をここで出してもらいたい、こういうんです。
  21. 久宗高

    政府委員久宗高君) 御説明が前後いたしましたのですが、部長が申し上げましたのは、本年度予算を実施いたします場合に、研究機関では、大体この一月ごろから漸次積み上げ作業をやるわけであります。関連しました試験研究機関のどの研究室を動員するかといったような問題がございますが、予算を出しております以上は、私どもはこういう調査をしようということは考えておりますが、その具体的な内容をこの一月ごろから各試験所でまず固め、ブロックで固め、実は明日から最終的な所長会議におきましてその細目を固めまして、それでいよいよ打ち出していくわけであります。  そこで、新聞に出ましたのは、この種の問題に興味を持っておられます記者の方が担当のおそらく内海水産研究所にでも行かれまして、大体どういう工合のものであるかということをお聞きになった際に、担当研究者から、研究所としてはこの程度のことを考えているということをPRのつもりで申し上げたのだと思うのであります。正式には、いま申し上げましたように、私どもといたしましては、所長会議で決定いたしまして、それから表に出していくというかっこうになりますので、詳しいお話を申し上げかねたわけであります。内容といたしましてはそうむずかしい問題ではございませんが、ただ技術的に最終段階での所長会談が済んでおりませんので、外向けにはまだ話していないという状況でございます。
  22. 達田龍彦

    達田龍彦君 それで、これは、水産庁として本格的に大規模研究調査をするということを方針としてお持ちかどうか、まずそれをきちんと御回答願いたい。そして、その上に立って、具体的にどうしていく、こういうこともこの際御説明を願いたい。
  23. 久宗高

    政府委員久宗高君) この赤潮の問題は実に古い問題でございまして、古くはたとえば英虞(あご)湾におきます真珠関係では始終起こりました問題でございますので、その種の調査は相当の蓄積があるわけでございます。先ほどちょっと部長が申し上げましたように、最近起こっております赤潮発生地域が、従来私どもがなじんでおりましたような赤潮とは違いまして、どうも少し発生メカニズムが違うのではないか。あるいは、憶測かもしれませんが、一種の工業発展との関連におきます全く新しい形の赤潮ではないかという懸念があるわけでございまして、そういうことになりますと、御指摘のように、やはり被害実態そのものをまず正確にとらえる必要がございますし、また、その解明方法といたしましても、若干違った方法論も必要ではないかということで、急に研究者の関心も高まってきたわけでございます。さような点から、昨年から、委託調査をはじめといたしまして、本年度におきましては相当広範囲な共同調査と申しますか、同じような形で発生したものをできるだけ体系的にとらえるということで、いまの共同調査を進めようというふうに方針をきめておるわけでございまして、本格的な取り組みをしたいと考えておるわけでございます。
  24. 達田龍彦

    達田龍彦君 そうしますと、水産庁独自で調査研究する機関というのはないんですか。
  25. 久宗高

    政府委員久宗高君) これは別途設置法のほうでもお願いしてあるわけでございますが、八海区の研究所がございまして、それぞれ業種別担当の色の濃いものもございますし、また、地域の様相の濃いものもあるわけでございますが、それらの諸機関が横に連絡をとりまして国の試験研究体制をとっているわけでございます。また、同時に、御承知のように、各県にも試験場がございますので、研究テーマをきめます場合には、国の試験場のみならず、県の試験場も全部横の連絡をとって、全体としてのたとえばことしの試験重点をどうしようという御相談をやっておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、当面一番中心になって動いておりますのは、内海区の研究所でございます。もちろん、各県の関連試験場とも御連絡し、かつ、大学等とも横の連絡をとりまして、それらの調査に当たりたいと考えているわけでございます。
  26. 達田龍彦

    達田龍彦君 そうすると、予算をつけて、それから海上保安庁等にも協力を求めて、本格的に調査が始められる時期、その見通しはどうですか。
  27. 久宗高

    政府委員久宗高君) これは、実は、科学技術庁も加わっておられまして、費用のたしか一部だったと思いますけれども、私のほうで計画は立てますけれども科学技術庁のほうでとっていただいたものを私どものほうに移しかえて実施するという問題もあるわけでございます。したがいまして、まず中身所長会議でほぼ固まると思うわけでございますが、その予算の実施につきましては、こちらで予算が通ればできるだけ早い時期にとりかかりたいと考えて、並行して作業を進めているわけでございます。
  28. 達田龍彦

    達田龍彦君 これは、沿岸漁業漁業者にとっては、まあ地域的な問題もありますけれども、たいへん被害を受けているわけでありますから、ひとつ本腰を入れて早急なる調査体制をつくっていただいて、そして万全の対策を講じていただきたい、このように強く要望いたしておきます。  さらにまた、原因調査研究をいまからやられるわけでありますけれども現実には、私が持っておる資料でも、全国的には相当大きな被害を受けているわけであります。私の県の長崎県でも、大村湾や有明海に毎年発生をいたしておる状態であるのでありまして、沿岸漁民あるいは沿岸町村長からも、この被害に対する打開策というものを強く陳情してまいっておるのであります。それで、当面の措置として、研究調査はいま申し上げたように十分やってもらわなきゃなりませんけれども、当面この被害者に対する救済措置というものを国の行政として考えなければならぬと思うのであります。そういう意味において、この被害者に対する救済措置を一体どうお考えになっておるのか、承っておきたいと思います。
  29. 久保勘一

    政府委員久保勘一君) 先ほど来政府委員より御説明申し上げておりますように、まず赤潮の有効な対策を立てますには、どうしてもその原因を明確に究明する必要がありますので、御説明申し上げましたように、関係機関等協力をいたしまして、その原因究明に鋭意努力中でございます。御説のように、その原因が明らかになりまする前に国としても何らかの漁民に対する施策をすべきではないかという御意見でありますが、従来、この赤潮被害を受けた漁民の間で、これに対して自分たちのいろいろな工夫によりましてそれぞれ小規模ながら対策を立てておるような向きもあるようでございまして、また、被害を受けておりまする県の水産当局においても、こういう方法をすればいいじゃないかというような具体的な案もあるように承っておりますので、原因が明らかになります前におきましても、それらの漁民の経験、あるいは県の段階におきまする具体的な案というものがありますれば、そういうものを承りまして、水産庁としても前向きに事前にこの問題に取り組んでいかなければならないと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  30. 達田龍彦

    達田龍彦君 いま次官が言われたように、根本的な対策は早急に立てていただくといたしまして、当面の被害に対する措置につきましても、国が、予算の多い少ないはあろうかと思いますけれども被害に対して救済をするという予算の裏づけを早急に立ててもらうなり、あるいはそういう方針を県市町村にもお示しをいただいて、国で十分でなければ県市町村がこれに対して補助をしていくというような制度的な体制というものが必要ではないかと思います。   〔委員長退席、理事任田新治君着席〕 でございますから、当面の措置としてそういう制度の確立をひとつお願いをしたいと思うのでありますけれども、その点はどうですか。
  31. 久宗高

    政府委員久宗高君) これは、制度といたしましては、御承知のとおり、今回も改正をお願いしております漁業災害補償制度があるわけでございまして、これによりまして、この共済に入っておられますれば、被害を受けました場合に、その補てんが必ずしも十分ではございませんけれども当然つくわけでございます。そこで、それが第一次的な対応のしかたと考えておるわけでございまして、被害の態様から見まして、いわゆる天災融資法の体系には入りにくい性質のものだと思うわけでございます。漁業関係から申しますと、もちろん根本的な原因の除去は別でございますけれども現実に起こりました被害に対しましての手当てとしては、共済制度運用してまいりますのが本筋だと考えておるわけでございます。
  32. 達田龍彦

    達田龍彦君 いままで、こういうふうに全国的に被害が起こっておりますね、それは共済制度によって具体的に救済をされたわけですね。その金額内容、そういうものを資料がありましたら提出をいただきたいと思います。
  33. 久宗高

    政府委員久宗高君) 赤潮被害関係が幾らかという仕分けがどの程度つきますか、ちょっとむずかしいように思うのでございますけれども、できるだけ調べてみます。ただ、共済制度におきましては、まだ普及がアンバランスがございまして、必ずしも全国の漁民がみな入っておるという形ではございませんので、たまたま被害が起こったところで共済にお入りになっていないために補償が受けられなかったというケースもあるいはあるかと思いますが、お尋ねのございました九州地方におきますケースにつきましては、至急調べまして、もし仕分けがつきましたら、資料としてお示しいたしたいと思います。
  34. 達田龍彦

    達田龍彦君 本来、共済的な方法でやることも一つでありまするけれども、根本的には全体の被害に対して国が責任をもって解決をしていくという立場がこういう場合にはとられなければならぬと私は考えています。でありますから、そういう意味での前向きの救済措置、助成措置、こういうものをとるべきではないかと思いますが、その点はどうですか。
  35. 久宗高

    政府委員久宗高君) 国ももちろん援助をいたさなきゃならぬわけでございますが、現在の共済制度は、御承知のとおり、漁業者がみずから共済をいたしまして、その足らないところを国がさらに見ようということで、今回の改正によりまして、国が特別会計を設けまして保険をしてその補てんが十分になるようにしようということを考えておるわけでございますけれども、国だけがという形でない形のほうがこの種のものといたしましては対応のしかたとして妥当なのではないだろうかと考えるわけでございます。  もちろん、共済制度におきます国の力の入れ方がどの程度であるべきかという問題はあると思うのでございますけれども漁業者と国と組み合いましてそしてこのような自然の災害に対しまして対応していくという一番典型的な制度は共済制度でございますので、国の援助をふやしましてこの制度を充実することによりまして、御希望に沿えるような形に持ってまいりたいと思っております。
  36. 達田龍彦

    達田龍彦君 いま御回答がありましたような内容については、ひとつ誠意をもって極力積極的に実現のために努力をいただきたいと思います。  さらに質問をいたしますけれども漁業資源の、何と言うんですか、食害ですね。いろいろあると思うんです、沿岸で。どういう種類のものから被害を受けているのか、水産庁でお調べになったことがありますか。
  37. 久宗高

    政府委員久宗高君) 食害と申しますと、いろいろとあるわけでございまして、ある種の魚をある種の魚が食うという問題も、実は魚種類間では相当問題になることがございます。おそらく、お尋ねの食害と申しますのは、たとえば海獣が魚を食うとか、そういったような問題かと思うわけでございますけれども、イルカのお話が何か御質問中に出るように私ども聞いておりましたので、大急ぎで実は調べてみたわけでございますが、イルカにつきましては、三陸の沖合いと北海道の沖合いにおきましては、この食害がございました場合にたとえば鉄砲で撃っていなくさすというようなことをいたします場合に、他の海獣との関連があってこれは禁止されておるわけでございますけれども、その他の地域では、さような制限がないわけでございますので、食害の防止について特別に銃砲を禁止しているというようなことではないというふうに担当者のほうから聞いております。
  38. 達田龍彦

    達田龍彦君 これはたとえば北海道のほうには、ぼくは見たことがないんだけれども、トドというのがいますな。それから私が壱岐・対馬に行きましたときには、目の前に確かにイルカがたくさんいるわけですよね。それで、私は資料を集めてみましたけれども、この被害というものはきわめて大きいわけですよ。水産庁としても、これは、資源の確保のためにも保護のためにも、見のがしがたい大きな被害を今日出しておるわけでありますから、この調査についてどの程度具体的に調査をされ、日本近海にどれだけ生息して、そして沿岸漁業資源にどれだけ被害を具体的に及ぼしておるのか、さらにイルカについてどういう問題点を持っておるのかですね、そういう点の具体的な調査をおやりになったことがありますか。
  39. 久宗高

    政府委員久宗高君) 日米加委員会で、モウカザメとオットセイの食害が問題になったことがございまして、これの関係の一応の調査はあるように聞いております。しかし、先生のお尋ねのイルカにつきまして、特に日本沿岸で統一的に食害というかっこうで調べたものは私ども聞いたこともないのでございますけれども、ただ、そのほうの特別な興味を持った研究者もおりますので、一応聞いてはみるつもりでございますけれども資料として食害関係というかっこうで統一的にまとめたものはおそらくないと思います。
  40. 達田龍彦

    達田龍彦君 きわめて私は遺憾だと思うのであります。私は、イルカにかかわる資料というのを、特に長崎県は水産県でございますし、たいへんな被害を受けておりますので、現地にも行き、それから漁民の訴えも聞きました。それで、長崎県は、漁業組合と一緒になりまして、対馬・壱岐沿岸のイルカの生息状況、それから被害状況というものを、大学の先生も呼びまして調査をいたしております。こういうことを各県でやっておるにもかかわらず、国が何らこれに対して対策調査もしていないというのは、まことにもって怠慢であり、けしからぬと思うのでありますけれども、一例をあげますと、これは専門家でございますけれども、この学者が言っているのは、対馬・壱岐だけでも三十万頭は生息をしているだろうと言われております。しかも、御承知だと思うのでありますけれども、大きなやつになりますと五メーター、小さいやつでも二・五メーターから三メーター、体重にしますと二百キロから二百五十キロという大きなものなんです。しかも、これが非常に大食漢でして、一日に自分の体重の大体十分の一の食物をとらないとからだがもたないという動物です。大学の教授がいろいろ検討してみましたところが、かりに対島・壱岐に三十万頭おるとすれば、イカだとかブリだとかたいへんに被害があるわけですけれども、こういうお魚を一年間に二百十万トン食っているというのであります。長崎県の長崎市の魚市場に一年間に水揚げされる魚の漁獲量は十万トンですが、この前ここの中で森中委員が将来の水産資源の確保の問題についていろいろ水産庁長官に尋ねたときに、いま需要供給のバランスがくずれておって、四十六年には七百七十万トンのとにかく生産高をあげなきゃならぬと。とりわけそれは遠洋漁業中心として五百五万トンですか、沿岸の場合には二百四十七万トンですか、そういうものにしなきゃならぬと、こうおっしゃっておりますけれども、イルカの被害が、対馬・壱岐だけで三十万頭おって、しかもそれが体重の十分の一の食事をとって、ざっと計算しただけでも壱岐・対馬だけでも二百十万トンの食害があるという、こういうきわめて大きな被害があるのであります。この学者先生の話によりますと、日本沿岸全体には百万頭前後のイルカがいるだろうと言われている。これを完全に捕獲をして絶滅をしたならば、沿岸漁業の生産高はきわめて大きく発展するのじゃないかと私は思うのであります。こういうものを今日まで調査研究もしないで、対策を立てないのは、きわめて怠慢だと思うのでありますけれども、こういう点について十分本腰を入れた調査をしてもらわないといけないのじゃないかと思うのでありますけれども、どうですか、水産庁として。
  41. 久宗高

    政府委員久宗高君) 私は専門家じゃございませんので、どうもしかとのみ込めないのでございますけれども、確かに個別に計算してみますと、体重から見て相当大きく魚が食われているのじゃないかということだと思うわけであります。ただ、何しろある一定の海域におきます生物の組成でございますので、イルカ自体をとらえてみれば、それがどれだけの魚を食っているという問題があろうかと思うわけでございますけれども、そのバランスをはたしてどの程度に破っていいかというような問題もあるいはあるのではないかと思われます。もちろん、これは個々の漁村におきまして、それの防衛のために、たとえばイルカをとりたいという問題があるわけでございます。制度といたしましては、さっきもちょっと申し上げましたように、三陸沖、北海道におきましては、イルカをとります場合に、他の海獣の国際条約との関連もございまして、鉄砲を使ってはいけないという規制をしておりますが、その他の地域につきましては、イルカはいわば自由漁業でございますので、必要があればもちろん漁業者がそれをとってよろしいわけであります。それをさらに国がやるかという問題になりますと、私もちょっといま実態をつまびらかにいたしておりませんので、それだけ取り上げて、食害がありますので国がとる、そういうような行政までやるかどうか。漁業者のほうでおやりになったほうがあるいはいいのかもしれませんし、その辺の事情をつまびらかにいたしておりませんので、いま直ちにここでお答えできないわけであります。  ただ、御指摘のように、食害の量が非常に大きいといたしますと、一度私ども部内の研究をさせてみまして、どういう評価になりますか、はたしてこれは国のある政策がどうしても要るものかどうかという点、内部からは必ずしもいままでそのような具体案が出てきておりませんが、そういう御指摘がありましたので、あらためて研究者の注意を喚起いたしまして意見を取りまとめたいと思っております。
  42. 達田龍彦

    達田龍彦君 非常に心細い御回答でございまして、これはすでに被害の大きい漁協とか県ではたいへん調査が進んでおりますよ。   〔理事任田新治君退席、委員長着席〕 それで、先ほど私が指摘をしましたように、実は私は壱岐・対馬に今回回ったんです。そうしたところが、たとえば壱岐の勝本という漁協がありますけれども、ここは、年間、ブリが平均十万尾くらいとれるのです。ところが、ことしは十分の一くらいの漁獲高しかない。ほとんどイルカの被害だというんです。それから対馬におけるイカですね、これはことしの被害はこれまた重大です。イルカが来たあとにはイカがほとんどいない、こういう状態が今日続いておるのであります。これを漁協やあるいは一人の漁業者にまかして捕獲できるかということになりますと、できないですよ。いま申し上げましたように、鯨に似たような大きな魚でしょう。海獣ですよ。でありますから、捕獲の方法というのもこれは容易にはできないのです。金もかかります。しかも、これをとっても食えないじゃありませんか。いま市場で売買されているのは、一頭とって千円前後だというんですよ。これでは商品価値はないから、漁民はとらないですよ。だから、この対策というものは、専門家はいろいろ対策を持っておりますけれども、この大学の先生が言っているのは、銃殺する以外に手はないだろうと言っているんです。幸い、これは繁殖率がはなはだ低いのです。二年に一頭ぐらいの割合で繁殖すればいいという程度ですから、その意味では、これの、何というのですか、なくしてしまう方法というのは、ほんとうに対策を考えるならば、できるのであります。だけれども、それを個人や県や町村だけにまかせておったのでは、いま申し上げたような状況ですから、できません。いま、沿岸漁業の中で、あなたらが、沿岸漁業の改造をやってみたり、あるいは資金を貸して船をつくってみたり、近代化してみて漁獲高を上げることよりも、むしろこういう被害を食いとめる方法をとったほうが、沿岸漁民の生産高を上げることにもなるし、沿岸漁業の振興に通ずることだけは間違いないんです。でありますから、そういう意味でのほんとうに本腰を入れた対策をしないと、たいへん大きな問題を持った内容であろうと思うのであります。  でありますから、こういう問題について、いまみたいな回答では沿岸漁民は浮かばれません。生活ができない、経営が成り立たない、こういう状態じゃありませんか。でありますから、いまみたいに専門家でひとつこの機会に相談をして何らかの方法をとりましょうということじゃなしに、具体的に調査をしてみる、そうしてそれによって対策を立てる、こういう具体的な決意をこの際明確に出してもらいたいと思います。
  43. 久保勘一

    政府委員久保勘一君) イルカの被害につきましては、私も郷里が長崎でございますので、よく存じているわけでありまして、特に食害というばかりでなくて、これは私も専門家でありませんのでよくわからないのですが、単に食害というだけでなくて、近海に浮遊してくるブリとかイカとかイワシというような、群をなしてくる魚を追い散らすという被害が非常に大きいということも聞くわけであります。一方、お説のように、とりましても採算がとれませんので、漁民は従来もこれをとろうという意欲はないわけでありまして、被害のあることはわかっておりますけれども、なかなか捕獲も困難な作業でありますし、漁民自体の対策としては、採算が立たないために、実行は不可能であろう、こういうふうに私も考えます。  そこで、先ほど来長官からも申し上げておりますように、これはぜひひとつ公の機関対策を具体的に検討しなければならん、かように私も考えますので、十分部内でこの問題につきましては検討いたしまして具体的に対策を立てたい、かように存ずるわけであります。
  44. 北村暢

    北村暢君 ちょっと関連して。この問題は、実はこの委員会でずいぶん古く論議がやられている問題なんです。いま岩手県知事をやっております千田さんが非常に熱心にやった問題で、当時は、質疑応答を聞いておりますと、イルカというのは、漁業資源保護意味からいけば、魚を食い荒らしているのだから、なぜこれをとることがいかんかということで——これは三陸沿岸ではイルカをとる業者がいるわけですね。それになぜ許可を与えないかというのでだいぶもめていた。それは、いまおっしゃるように、海獣保護の国際条約の関係からいってだめなんだというのでだいぶ問題になっておったわけなんです。これは、水産庁でも、いま答弁を聞いておりますというと、何かこうわかってないような、対策を何も講じないような話でありますが、とにかくこれは前から問題になっておったんですよね。しかも、聞くところによるというと、三陸沿岸は捕獲のための銃を使っていけないと言うけれども、ほかの地域はいいんだということでありますから、そうであるならば、いま長崎で問題になっているようなことば、どうも私ども魚族の資源保護意味からいっても、水産庁対策というのは生ぬるいのじゃないかと思うのです。これは前からそういうことでずいぶん問題になっておったのですから、いま対策ができておらないというのは、ちょっと怠慢ではないかと思うんですね。ですから、いま政務次官から御答弁がありましたが、いま始まった問題でないということと、そういう点でいろいろな資源問題についての研究をやっておるんですから、食害による被害というものについてもう当然すみやかに新しい予算を組んででも、また、漁民がこれを採算がとれないというのでとらないんだといえば、何かやはり国の施策で考えなきゃならぬ。ひとつ、方法がないということではなしに、積極的に取り組んでもらいたいということを私からも要望しておきたいと思います。
  45. 川村清一

    ○川村清一君 関連して私もちょっとお尋ねしたいのですが、いまのイルカの話でなくて、私はトドの話になってくるわけです。イルカもトドもオットセイも、あわせてこれは食害の話になってまいりますが、これは笑い話でなくて、大事なことなんですが、日ソ漁業委員会で毎年サケ・マスの漁獲量を決定する交渉をする場合において、資源の問題についていろいろ議論するわけですね。資源が減ってきていることは、これは事実ですわね。そこで、なぜ資源が減ってきているかというその原因のことになってくるわけですが、ソ連のほうは、日本の乱獲によると。特に、御承知のように、日本の漁獲方法というのは、北洋の沖合いにおいて漁獲するわけなんです。ソ連のほうは、沖どりでなくて、川にのぼってくるのをとるわけですから、漁獲の方式が全然違うわけです。そこで、日本のとり方は沖どりをやるから非常にとり過ぎると言う。その一つの証拠には、これは日本の技術者もカムチャッカなどへ行って川を共同の調査で確認しているわけでありますが、ソ連のカムチャッカの川にのぼってくるサケ・マスの中には、網がかり、いわゆる網から抜けたもの、あるいははえなわで釣って針から抜けたもの、そういったようなものも入ってきておるというようなことをいろいろデータを出されるわけです。しかし、日本のほうの主張としましては、決して沖どりによって資源が減少しておるのではない、やはり海況の変化であるとか、あるいは食害による資源の減少、オットセイであるとかトドであるとか、こういったものに食われて資源が減少しておるんだといったようなことを主張して、なかなか結論が出ないということになっている。こういうような点から考えてみましても、資源調査というものにつきましてはもっともっと金もかけ、そうして徹底的にやらなければならないのではないかというふうにわれわれは考えておるわけでありますし、昨年の本委員会においてもそれに関連して時の前水産庁長官質問をいたしましたが、長官説明によるというと、日本資源研究といいますか、絶対にソ連には負けておらぬと。私は、ソ連ほうの研究が進んでおる、したがって、科学小委員会でもってお互いの専門家が議論するときに、ソ連から出されるデータを日本が一々反論して、日本の出すデータによってソ連を納得させることができない、こういうようなことを聞いているが、どうなんだということを質問いたしましたが、日本の研究のほうがもっとずっと進んでいるんだ、絶対ソ連に負けないんだということを長官が言われておったわけであります。しかしながら、実際問題として食害があることは、これは確かなんです。ただし、その食害につきまして、それではイルカの食害によってどれだけの資源が食われておるか、それを調査した結果によってデータを出しなさいと、こう言われても、ありませんと、これから九州大学に頼んで調べてもらうんですと、こういうような御答弁でございます。  たまたま、先ほど、水産庁長官は、北海道、三陸におけるトドの話を、こちらから聞いたのでなくて、そういうトドということばを使われたので、私はあえてトドということを聞きたいということで立ち上がったわけでありますが、そこで、トドについてはどのような調査をされたか、北海道においてあるいは沿岸においてトドによってどれだけの資源が食い荒らされて損害を与えておるかということをひとつここで明らかにしていただきたい。そして、それに対処してどういう施策をいままでおとりになったことがあるか、これもあわせて明らかにしていただきたい、かように考えます。
  46. 久宗高

    政府委員久宗高君) 五年ほど前でございますか、たまたま日ソの委員会でこの問題が出まして、だいぶん論争した経緯があるようでございます。ただ、その際におきまして、食害を計数的にはっきり証明することが非常にテクニカルに困難な問題でございましたために、その論議を重ねましても必ずしも委員会におきます話し合いの実効が期し得ないという判断で、現在のところはトドについての調査はいたしておりません。
  47. 川村清一

    ○川村清一君 長官、私は、トドの話に入る前に、食害というものは非常に重大な問題である、日ソ漁業委員会において問題になっておるからということで話したのであって、その中においてトドと限定して申し上げたのではございません。日ソ漁業委員会において、食害で資源被害を受けておるということにつきましては、トドもあるでありましょうし、オットセイもあるでありましょうし、その他のものもあると思うのです。したがって、トドについてどういう調査が出ておるかということを、出ておったら聞きたいんですけれども、なければそれでけっこうですけれども、先ほど長官は北海道及び三陸においてトドということを言われたので、しからば、日ソ漁業委員会において議論された海域というものは、御承知のように条約海域というものは北緯四十五度以北でございますから、四十五度以南は日ソ漁業委員会の規制海域ではございませんから、したがって、四十五度以南における北海道あるいは三陸の太平洋岸、北海道で言うと、胆振支庁管内——管内と言うとおかしいんですが、胆振支庁の地先海面、あるいは日高支庁の地先海面、十勝、釧路支庁管内の地先海面、あるいは青森、岩手等の地先海面、これは日本の領海内であるから、あるいは漁業協同組合の共同漁業権海域なんでございますから、そういうところで害がありますとさっき、私が聞く前にあなたがおっしゃったんですから、当然、水産庁では、こういう調査があって、トドによってこういう被害があるんだ、それでトドは現在どの程度、しかも推定何頭ぐらい海面にいるんだ、年々どのくらいずつトドはふえていっているんだと、こういったようなものがなければならぬ。しかしながら、先ほど、北海道に行けばトドがおりますということを言っただけで、水産庁は、積極的に、トドによってどれだけの被害があったのか、あるいはトドが一体どのくらいるのか、どの辺の海域にいるのか、であるからトドに対してどういう処置をしなければならないかというようなことは一向に考えていなかったんだと、こういうことでございますか。この点を明らかにしていただきたい。
  48. 久宗高

    政府委員久宗高君) 先ほどもお話しいたしましたように、日ソの交渉のある段階で、トドも含めました食害の問題が相当議論になりました。先ほどお話をいたしませんでしたけれども、たしかモウカザメにつきましては、調査船を出しまして採捕に努力いたしましたわけでございますが、これは失敗いたしまして、実態を計数的につかんでさらにそれを資料にして委員会の爼上で問題に提供するという形ができなかった経緯があるわけでございます。そこで、トドの問題につきましても、もちろんこれは漁業者が見かける問題でございますので、体験的に被害のあることはわかっておりますけれども、それを計数的に把握することはいまやっていないということでございます。  これは、おそらく、調査といたしましては、非常に困難な調査だろうと思うのでございます。もちろん、私どもも、ただいま食害の問題につきましてあらためて注意を御喚起いただきましたので、それぞれの研究者にもう一度はっきり当たってみたいと考えますが、一応私どものいまの装備その他から考えまして、食害の調査というのは、おそらく最もやりにくい、そして最も何と申しますか経費もかかりまして、それで効果についてなかなか期待のしにくいものではないかという懸念がございます。
  49. 川村清一

    ○川村清一君 それなら、最初、長官は、私が何も質問もしないのに、北海道や三陸では食害ではトドの被害がありましてなんて、そんなことを何もおっしゃる必要なかったんです。あなたがそうおっしゃったから私が聞いたのであって、私は何もそういうことを言ったのでないんですよ。それで、聞いてみたところが、何もないということなんです。  それじゃ、私がお話ししますから、こういうことを知っていられるかどうか。これは、北海道では、笑い話ではなくて、ほんとうに困っているわけです。それで、渡島支庁の海面であるとか、胆振支庁の海面、噴火湾等におきましては、漁師が鉄砲を撃ってこれを退治するわけです。それに対しまして道は補助を出しております。その補助の予算は、道議会で議決しております。  それから私の郷里の日高の新冠という町のすぐ目の先に、トド岩という岩があります。トドが非常に集まってくるのでそれをトド岩と言う。あの樺太の——私、樺太出身ですが、本斗の向かいに海馬島という島があります。いまはその島を何と言うかわかりませんが。それはアザラシが非常に集まる島ですから海馬島と昔言っておったんですが、日高のやつはこれはトド岩と言う。特に二月、三月、四月、ちょうどサケ・マスの小型流し網が始まるころにこれが出て非常な害を及ぼすわけであります。網を切るわけなんです。刺し網をみんな切ってしまいます。定置あたりももうみな切ります。そうして、定置の中に入っているマスを食べるのですが、これはりこうな魚でございまして、どこを食べるかというと、魚の一番うまいところだけ食べる。頭とはらわただけ食べるわけです。そうしますと、頭とはらわたを食われてしまったマスを持ってきても、これは売れないわけですね。こういうような大被害を与えるわけですが、そこで、トドをどうして退治するかということをいろいろ考えて、いろいろなことをやったんだが、これはだめなんですよ。そこで、四、五年前からやっている方法はどういうことかといいますと、自衛隊に頼みまして自衛隊の演習をやってもらうんですよ。自衛隊の演習でもってそのトド岩に一斉に機関銃ですか、あれを撃ってもらって、そうして退治してもらう。ところが、一回ドーンと撃ちますと、何十頭もいますから、海の中に飛び込んだり沈んだりしますわね。そうすると、りこうですから、もう二度と上がってこない。一回退治したらもう何ヵ月と来ないわけです。  こういうようなことで、実際のところ、トドの被害を受けて実際に困っているわけです。水産庁長官は、あなたの役所の農林省の七階をエレベーターをおりると、あそこのすぐそばにでかいトドがいるでありませんか。毎日ごらんになっている、トドを。あれがたくさんおって、ああいうでかいやつが泳いで歩いている。それで、網を切ったり、魚を食って、大被害を与えている。それを御存じだからあなたはそういうこと言われて、言われた以上は何か手を打っていらっしゃるのかと思って聞いてみたら、何も調査していない。それじゃ、少し、何といいますか、けしからぬですね。まことにけしからぬですね。ですから、あと質問はしませんけれども、はなはだ遺憾でございますから、私がよく説明したのですから、きょうお帰りになったらばトドをもう一回よくごらんください。(笑声)水産庁にああいうでかいやつがおるんですから。あれは決して水族館だけにいるわけじゃないんですよ。海の中にいるわけですから、よくごらんになって、北海道の沿岸漁民はこんなにも大被害を受けておるんだということをひとつ御理解いただいて——北海道庁の役人もけしからぬと思う。いつも来てそのことを一つも話して行かないのはけしからぬと思います。ひとつ北海道の水産部の役人からよく聞いてください。そして、何らか対策をイルカとともに打っていただくことを希望して、私は終わります。
  50. 達田龍彦

    達田龍彦君 資源保護の立場からきわめて重大な被害を与えているこれらの問題について、水産庁の今日までの取り組み方はお粗末であり、私もたいへんけしからぬ話だと思っているのです。それて、いまから本腰を入れて本格的に調査を——次官も決意のほどをある意味では表明されたわけでありますけれども、まあ生息の状況だとか、あるいは被害状況、動物の習性、そういうものを調査をいただくのではないかと思うのでありますけれども、私の資料によりますと、イルカというのは、動物の中でも知能指数がきわめて高くりこうな動物だそうでありまして、釣りにもそれから網にもかからないんだそうであります。でありますから、これを捕獲をして退治をするということは、なかなか対策上困難なようであります。学者の話ですけれども、先ほど私が触れましたように、そういう優秀な動物であるがゆえに、射殺する以外に手がないだろうということを言っている。だけれども、その被害はきわめて大きいことだけはこれは間違いがないようであります。でありますから、まず当面の措置として、いま申し上げたように、生息の状況、あるいは被害状況、あるいは動物の習性等、いろいろ学問的に調査研究はされるでありましょうけれども被害を受けている当面の問題に対する対策は、私はまず行政指導として立てなければならぬと思うのであります。  そこで、この当面の対策としてどうしていくかということについては、早急にひとつ専門家等の知恵を集めて、対策の樹立にいま申し上げたような実情ですからかかってもらいたいと、こう思うのです。さらに、その検討の中で、これも当面の問題ですけれども、いま申し上げたように、捕獲をしてみても、商品価値がないんですね。値打ちがないんです、いまの状況では。先ほど述べましたように、特にこの研究が進んでおるのは、静岡県の焼津の漁協あたりは、相当進んだ調査がなされ、捕獲方法、それから少なくともとったものに対して少しでも商品価値を認めるようなものにしていきたいと。たとえば、加工して何らかの方法でこれを売りさばいていくとか、飼料に使うとか、その価値を高める方法一つ方法だろうと思うのであります。そうなってまいりますると、漁民の皆さんはこれを捕獲をする技術あるいは努力をすると思うのであります。でありますから、そういう面も含めて十分本腰で対策を立ててもらいたいと思いますが、それに対する決意といいますか、そういうものをひとつこの機会に表明をいただいておきたいと思います。
  51. 久保勘一

    政府委員久保勘一君) 先ほども御答弁申し上げましたように、この被害につきましては、十分認識をいたしておるつもりでございます。お説にもございますように、これは、漁民だけの、何といいますか、自主的な対策ではとうてい万全を期することはできぬことも明白であります。したがいまして、公にこれはやはり対処すべき課題だと思いまするから、いろいろ地元といいますか、大学あるいは県の水産試験場あるいは漁協等にそれぞれデータ等もあることと思いますので、それらの機関の意見をよく徴しまして、具体的に誠意をもって対策を立ててまいるということを重ねて申し上げる次第でございます。
  52. 達田龍彦

    達田龍彦君 それで、これは、こういう海獣の捕獲等に対するいままでの関係法令というものは、一体どういうものがあるんですか。たとえば、水産資源保護法というのがありますね。これによりますと、五条ですか、(漁法の制限)というのがあって、「爆発物を使用して水産動植物を採捕してはならない。但し、海獣捕獲のためにする場合は、この限りでない。」と、こういうのがあるのでありますが、こういう関係法令というのは一体どういうたてまえになっておるんですか。あるいは、ほかには、いるか猟獲取締規則というのが三十四年二月に農林省令第四号で出ているようでありますね。これも非常に古いものなんでして、そういう関係法令等についても、たてまえはどういうふうになっておるのか、御説明願いたいと思います。
  53. 久宗高

    政府委員久宗高君) いま御披露いただいたようなものだと思います。と申しますのは、積極的な問題よりも、むしろ消極的と申しますか、たとえば爆発物を使用する場合に、一般的にはこういうことは禁止いたしますけれども、こういう場合にはよろしいと。あるいは、逆に、さっきのイルカの例で申しますと、一般にイルカをとってはいいんだけれども、ある海域ではたまたまほかの海獣の国際条約との関係があるために、そこではほんとうは銃砲を使えば非常に有効なんだけれども、結果がまぎらわしいためにやむを得ず規制をするといった程度のことでございまして、むしろ消極的な規定であろうと思います。
  54. 達田龍彦

    達田龍彦君 さらに、私は、沿岸漁業資源保護の立場から、公害による水質汚濁被害、こういうものについて質問をしたいと思うのであります。  いま私が申し上げたように、海獣によるところの水産資源の食害、それから海水変化による、赤潮等によるところの被害、さらにいま沿岸漁業の中で漁業資源確保のために手を入れなければならないのは、これまた見のがすことのできない問題として公害によるところの水質汚濁の問題があると思うんです。今回公害基本法が提案をされるという段階であるようでありますけれども水産庁として、公害水質汚濁によって、漁業資源が具体的にはどの程度被害があるとお考えになっておるのか、具体的にこまかく御説明を願いたいと思うのであります。
  55. 池田俊也

    説明員池田俊也君) 水質汚濁によります農林水産業の被害でございますけれども、私ども調査しております数字を申し上げますと、第一は、工場とか事業場の排水等による被害でございますけれども、これは、そういうグループを一括いたしますと、金額で申し上げますと、約七十四億円ぐらいでございます。四十年の数字でございます。  それからそのほかに、船舶の廃油によります被害がございます。これは都道府県の報告の数字でございますが、同じく四十年の数字でございますが、約四億七千万円ぐらいでございます。ただ、これは直接の船舶の廃油による被害でございまして、油が流れましてその結果たとえば魚がくさくなって食えないというようなものを含んでおりませんので、そういうのを別に拾ってみますと、これは一部推定がございますけれども、大体四十八億円ぐらいではなかろうかというふうに考えております。  それからその他農薬による被害がございますが、これが約二十億円程度、こういうことでございまして、全部合わせますと、ごく大まかな数字でございますが、年間百五十億円ぐらいになるのではなかろうか、大体そういう状況でございます。
  56. 森中守義

    ○森中守義君 昨年も同じような質問を私はしたんです。そのときに、たしか六十億という被害の統計を前の長官が発表された。それで、だんだん内容を吟味していけば、各県の水産試験場で把握をしている数字の累積がこの数字である、こういうお答えなんです。そこで、私は、まことにその数字それ自体は適当でない。というのは、例の水質汚濁対策協会か何かありますね、あの機関で実際漁業者から把握した数字というものとは相当開きがある。たしか四百数十億ぐらいの膨大なる数字が出ておる。そこで、一体、どちらの数字を踏まえて、汚濁のために水産資源が失われているのか、その辺がもっと正確なものでなければまずいのじゃないか、こういう折り返しの質問をして、できるだけ水産庁としては正確な数字を把握いたします、こういう答えを去年もらっているんですよ。ただし、漁政部長説明によれば、たとえば農薬関係被害であるとか、その他幾つもの内容というものが出ておりますから、昨年よりもやや前進した数字のとらえ方だとは思うのですけれども、やはり七十数億の基礎になっておるのは、各県の水産試験場から集めたものかどうか。要するに、協会のほうで把握している数字水産庁数字は、本年依然として符合しないのじゃないか、こう思うんです。その点、もう少し具体的に説明をしてほしいし、昨年そういう問題が提起をされながら、さらに正確なものへという条件がついておったはずですから、この一年間にどういう努力をされたのか、水産庁の統計はどういう進展を見せたのか、その辺をもう少し責任ある説明をしてほしいと思います。
  57. 池田俊也

    説明員池田俊也君) そういう森中先生の御指摘が実はございましたので、私どもといたしましては実はかなり努力をしたつもりでございますけれども、いま申し上げました数字は、県から報告を求めた数字を私どもが集めた数字でございます。団体のほうで出しております数字がそれよりかなり上回っているということも実は私ども承知いたしておるのでございますが、この数字のつかまえ方というものは、実は、先生御承知でございますけれども、非常にむずかしいのでございます。工場、事業場等による被害等でございますと、まだわりあいに、非常にむずかしい中でも数字を把握する方法がございますけれども、特に船舶の廃油による漁場価値の喪失ということになりますると、これは推定が入りますので、おそらく身近にそういう問題に当面している漁業者等から見れば、かなり大きな数字が出てくるのじゃなかろうかと思います。ただ、そういうことがあろうかと思いますけれども、私どもが県を督励いたしまして集めた限りでは、この程度数字になりましたわけでございます。
  58. 森中守義

    ○森中守義君 いま、御承知のように、基本法がこれから重大な問題になるのです。いいですか。したがって、常々この委員会で魚族資源をもっと愛護せにゃならぬ、ひいては生産性の向上をはからねばならぬという一つの問題にぶつかっている。ですから、いま漁政部長が言われるような被害のとらえ方では、これはやっぱり基本法を議論する内容になりませんよ。少なくとも全国の漁民諸君に対して、国家はその熱願にこたえる使命を持っていますからね。それで、行政庁が出されるその数字というのは、いま漁政部長からも答弁があったように、また、昨年の丹羽長官説明をしておるように、権威ある被害の額としては受け取れない。  一例を申し上げるならば、こういうことなんです。実数を把握していない証拠には、熊本県の南端に水俣というところがあります。ここで、御承知であろうけれども、先年来奇病が発生した。これこそ、たとえば、シャコであるとか、あるいは海藻であるとか、あるいは貝類であるとか、こういう資源の多いところとされております。しかるに、沈でんをしておる泥土を魚貝等が食べれば、直ちに中枢神経をおかされて病気になる。こういうわけで、当時の水産庁の指導によって、いわゆる漁業操業の規制は加えないが、自発的に魚をとらないようにせよ、こういう指導が行なわれた。それから相当年月がたっておりますよ、いまなおサンドポンプで泥土をさらえ、こういうような問題が実は解決していない。海底にいる魚は、あるいは魚貝類等は、なるほど商品価値が少ないから、いま直ちに金額としてどの程度被害があるかというその点のことは私はとらえていないけれども、すでに六年、七年という経過した今日、そこの魚が全然とられておりませんよ。簡単な言い方をすれば、死んでおる。こういう被害もあるでしょう。あるいは、最近、第二の水俣奇病と言われている新潟の阿賀野川のあれはどうですか。これもおそらくそういう統計にあがっているかどうかわからない。  私は、昨年、企画庁あるいは通産省あたりに一緒にこの委員会に来てもらって、基本法制定の前段として、一体どのくらい水産の被害があるかということを具体的に検討してほしい、こういう注文をしておいたはずですよ。それなのに、昨年より多少前進をしたような内容のように見受けるけれども関係団体と水産庁が握った数字があまりにも開いておるということは、どう考えても得心できない。いわんや、これより公害基本法の本格的な論戦に入ろうというときに、その程度資料を根拠にして、水産資源水質汚濁のためにどういいう被害を受けておるかという議論の中心にならぬじゃありませんか。なるほど、一年間で、にわかに調査統計ないしは研究機構を強化整備するといっても、物理的にできなかったかわからない。しかし、問題は、この国会に出ている基本法ですよ。この議論の中心は、私ども農林水産の関係から言うならば、何といっても水産資源の問題です。これは重要な柱の一つですよ。こういうように考えていけば、いま達田委員に対する答弁としては、はなはだ十分でない、こういうように思うんです。ですから、いま、ないものを出せと言ってもしかたがないのだけれども、最善を尽くして相当権威ある数字をできるだけ早い機会に出してもらいたい。これは、ひとつ政務次官なりあるいは長官から、権威ある数字を集めるにはかくかくの方法がある、あるいは、漁政部長が答弁した以外に目下のところつかめない、こういう答弁なり、あるいは推定としてでもいいですから、おおむねどの程度のものであろうという、こういうぐらいのことは答弁してほしいですね。そうしなければ、公害基本法と水産関係の議論に入ってまいりません。もちろん、私は公害委員だから、またそのほうでもこの問題は問う機会もありますけれども、いまは水産の問題ということで、特にその問題を、昨年度の延長でもありまするから、重ねてのお尋ねをしておきたいと思います。
  59. 久宗高

    政府委員久宗高君) 御質問の趣旨もよくわかります。また、その重要性も特別わかるのでございますが、率直に申しまして、私どもといたしまして、公害を本格的に政府として取り上げますには、できるだけ権威のある数字を集めたいと思って努力したわけでございます。他の災害が起こりました場合の幾つかの経験から申しましても、私どもが一応役所のルートを通じまして県その他の吟味を経ましたものと、実際被害を受けられた方の実感を込めた数字との間には、どうしてもギャップが出るわけでございます。これは現在の段階ではどうもやむを得ないことのように思うわけでございますので、現在私どもで集計いたしております数字につきまして、新たに調査をいたしまして何らかの別の数字をつかむということは、客観的に私はむずかしいと考えるわけでございます。ただ、公害問題についての漁民大衆の非常な関心を頭に置き、また、それらの方々が実感として持っております被害の感じというものは、私ども政府部内でもって折衝いたしました際にも常に念頭に置いて対処いたしたつもりでございます。ただ、数字そのものにつきましてあらためて調査いたしましても、これと非常に違った数字になるとは考えられないのでございます。つまり、私どもの頼りますのはやはり現場におりませんので、それぞれの県を通じ、あるいは県に常置する試験場を通じまして有権的に得られる資料を集計するのが精一ぱいでございまして、しかし漏れておる項目はないかという点につきましては十分な吟味をいたしたつもりでございますが、数字の基礎そのものが、やっぱり被害を受ける方とそれに措置する側とのギャップがございますために、残念ながら相当の開きがあるのが実情でございます。
  60. 森中守義

    ○森中守義君 関連ですから、あまり長い時間をもらえませんが、長官、千円、二千円も単価が違わないようなそういう数字を言っているんじゃないですよ。いいですか。むしろ私はこういうことを申し上げておきたいと思う。国際漁業では、沖合いであれ、沿岸であれ、とるほうにはかなり積極的な姿勢を向けている。しかし、資源をどういうように防衛をしていくのか、それへの損害をどういうように防いでいくかというその姿勢がないということですよ。これは私は真剣に考えてもらいたい。先ほどのイルカの問題にしても、トドの問題にしても、そのとおり。さらに、先年来の台風等による漁船の損粍、人命の損失、一体こういうものをどう考えてきましたか。私は、北鮮に船長が連行された問題があるので、達田委員のあとにお尋ねしたいと思っておりますが、そういうように、少なくとも自然あるいは人為的いずれであるにしろ、失われている資源の防衛ということを全く水産庁は考えていない。したがって、それらの統計というものは、みんな借り物の統計でしょう。みんなと言っては多少言い過ぎかもわかりませんけれども、少なくともいま私どもお尋ねをしている水質汚濁等に伴う被害の統計等は、水産庁持ち前の統計ではない。よろしいですか。だから、失われていく資源をどう防衛していくか、ここにももっと積極的な目を向けてもらわねば困ると思うのです。何も、構造改善事業であるとか、あるいは新規に開発することだけが水産行政じゃなかろう、こう思うんです。だから、前回も実はその辺の問題をお尋ねいたしましたね。こういうこともあわせながら一連の防衛対策をとらなければ、ただ前へ進め進めだけではだめですよ。さっきの食害等による損害、これまた、金額を合わせれば、はかり知れないものがありますね。そういう意味で、水産庁自体の統計の機構、ひいては正確な数字の把握、こういう踏まえるべき基調がなければ、先に進まぬじゃないですか。こういう意味で、私は、長官がお答えになったように、ないものをいま出せというわけにはいかない。しかし、昨年より本日に至る約一年の中に、昨年の質問の焦点であったその辺のことは、この一年間の水産行政の中には考慮されていない、少なくともそのような分野における防衛態勢は全くとられていないということを、あらためて認識をしておきたいと思う。
  61. 達田龍彦

    達田龍彦君 私も、いま森中委員指摘した漁業資源保護のための水産行政というものが、軽視をされており、また取り残されているということを、実は最終的には結論として提起をして、そして本腰を入れた実のある対策を早急に立ててもらいたいということを強く主張したいのが、この質問の本旨であるのであります。  そこで、いま御説明がありました資料の提出ですね、これは直ちに提出いただけますか。
  62. 久宗高

    政府委員久宗高君) お約束いたしました資料につきましては、できるだけ急ぎまして御提出いたしたいと思います。
  63. 達田龍彦

    達田龍彦君 それで、公害基本法は、まあ大体政府案というものがまとまったようでありますけれども水産庁として、漁業資源保護のために、今回の政府案でこと足れりとするのかどうか、その点はどうお考えになっておりますか。
  64. 久宗高

    政府委員久宗高君) 公害問題が問題にされましてから、非常に長い経過を経ているわけでございますが、政府におきましても、今回はいよいよ放置できないということで、本格的に取り組む姿勢を示しておるわけでございます。私どもは、むしろ、立場から申しますと、被害を受ける側でございますし、また、公害によりまして、ここ数年、特に急速な発展過程におきまして、現実にいろいろな被害が出ておりますので、この機会にできるだけわれわれの考え方を盛り込みたいということで、政府間交渉におきましても、累次にわたりまして、われわれの意見を強く主張したわけでございます。相当提案が長引きましたにつきましても、水産庁ががんばっておりましたために立案過程に相当の時間がかかったというような経過もあるわけでございまして、私どもといたしましては、当初、人の被害に限定するような考え方が本筋だといったような動きがございましたので、これに対しましては根本的に賛成できませんので、生物の生育環境の問題もぜひこの中に織り込んでもらいたいということで主張し続けまして、これはとにもかくにも法案の中に頭を出したわけでございます。  私どもといたしましては、すでに資源保護関係で幾つかの法案をつくっていただきましてその実施に当たっておりますけれども、何と申しましても、その実施過程におきます仕組みを考えますと、はなはだ不十分でございまして、政府といたしまして基本的にこのような公害に対する考え方をきめる場合に、公害のまあ位置づけと申しますか、そういうものをぜひはっきりしてもらいたいということで、さような意味におきましては、今回の公害基本法の中にさような位置づけが相当はっきり出ておりますので、所期の目的の一部が達成されたものと考えております。もちろん、政府部内におきます折衝におきまして、私どもの主張の全部が通ったとは考えておりませんが、まずまずスタートを切ります場合に、一番基本的な大事な線は確保し得たというふうに一応考えております。
  65. 達田龍彦

    達田龍彦君 では、法案全体に対する水産庁としての受け取り方は、十分ではないけれども、ある一定の成果を得た、こういうふうに大体考えておると、こういうふうに理解していいですか。
  66. 久宗高

    政府委員久宗高君) 一応そのように考えております。それで、問題は、前の法案の場合でも同様でございますけれども、私ども、守る立場といたしましては、実施過程につきましては非常な問題があるだろうというふうにいまから覚悟をきめておるわけでございます。
  67. 達田龍彦

    達田龍彦君 それでは、十分ではないということでありますけれども、具体的に法案の一つ一つ内容の御説明をいただかなくてもけっこうでございますけれども、十分でないものをそのまま成立をさせてそのままでやっていくということば、保護を完全にすることにならないのでありますから、基本法でなし得なかったものを、あるいは他の法令で補っていくのか、あるいは省令なり行政指導で具体的に補っていくのか、その十分でなかった問題点と、それに対する対策をどう水産庁としてはお考えになっておるのか、説明をいただきたい。
  68. 久宗高

    政府委員久宗高君) 二つの立場がございまして、私どもも、政府部内の人間でございますので、公害に対しまして政府の各部門がどういうところで意見の一致を見て実施するかというこれが非常に大事だと思いますので、この段階におきます基本法の内容に、私どもといたしましては、現段階ではこれがまずぎりぎりのところということで賛成しているわけでございます。しかし、欲を申しますと、やはり守る立場でございますので、基本法と申しましても、大筋のことがそこに書かれておりますので、この種のものは実施過程におきます問題が実は非常に問題なわけでございます。過去におきまして、水産資源保護法でございますとかいろいろなものをつくっていただきまして、これを実施してみますと、実施面でまだ不十分であるというにがい経験がございますので、現在のところでは、私どもは、実施過程におきます主張をどのように具体的に出していくか、また、それをどういうふうにどういう組織でやるかといったような問題につきまして、ただ法案が出たということではなくて、少し先走ってもその辺の検討を進めてもらいたいというぐらいの気持ちで対処しているわけでございます。
  69. 達田龍彦

    達田龍彦君 これは私どもたいへん心配をいたしております。また、被害者の立場にある水産庁関係は、この委員会の立法機関の立場としても、問題点水産庁あたりできちんと整理をしてもらいまして、そうしてこれを委員会に資料として出してもらいたいと思うのです。そうしますと、それらの問題を農林水産委員会で論議をしまして、そして公害基本法の審議にあたって農林水産委員会としての意見をまとめてこの法案の内容の充実のために十分論議を尽くしていきたいと、こう思っておるのであります。そういう意味で、私は、いま水産庁が基本的に考えておるところの公害基本法に対する考え方とか、今日の政府案等における問題点を、水産庁独自でけっこうでございますから、この委員会にきちんとまとめて出してもらいたいと思いますが、どうですか。
  70. 久宗高

    政府委員久宗高君) 先ほど申しましたように、政府部内におきましては、相当時間をかけまして、各部門が相当検討をいたしまして、やっとここでまとまったわけでございます。したがいまして、現在の法案自体につきまして、私どもはこれは反対であるということではないのであります。これは賛成なんでございます。個々の条項はそれぞれ非常に抽象的でございますので、それが現実に法案として成立しまして実施していきます過程におきましては、かつて出ました幾つかの資源に関する法案の実施過程から見て、若干の心配があるということでございます。したがいまして、法案に対する意見と申しますよりは、過去にまだ公害問題がこのように政府で統一的に取り上げられない以前において、いわば資源保護法と銘打って立法措置をしていただいたものがどういうふうにうまくいかなかったかという、そういう関連実態につきましての御意見であれば、お出しできると思います。
  71. 達田龍彦

    達田龍彦君 長官の回答として、確かに政府部内の一機関長官の立場にございますから、政府決定がすでにあるわけでありますから、その意味では、意見を出すことは差し控えなければならぬ微妙な立場であるということはよくわかります。したがって、当初、満足ではない、不十分だけれども、ある主張が頭を出しておるので、その意味では成果があったと。それと、いまの回答というのは、最終的には賛成をしておると。私は矛盾のある答弁になっておると思うのでありますけれども、いずれにいたしましても、被害を受ける水産庁としては、公害基本法に対する態度というものは、もう少し強腰で部内に主張をし、そうして法令の中に位置づけるものはきちんと位置づけるという姿勢をとるべきであったと思うのであります。でありますから、そういう意味において今後問題が起こるであろう問題点等について水産庁としてお考えの向きがあれば、その問題については早急にまとめて資料として委員会に提出をいただきたい、こう思います。
  72. 久宗高

    政府委員久宗高君) 資料としておまとめする形がよろしいか、私どもの考え方を整理いたしましたものを適当な機会にお話をさせていただきますか、できれば私のほうは後者のほうを選ばしていただきたいと存じます。
  73. 達田龍彦

    達田龍彦君 いまちょっと聞き漏らしたのですが、いまのは資料をいただけるんでしょうか。
  74. 久宗高

    政府委員久宗高君) 資料として差し上げますには若干差しさわりがあるかと思いますし、私どもの端的な御意見はかえって申し上げかねる場合もあり得ると思いますので、適当な機会に、現在までの資源保護の背景におきましてどのような点が特にわれわれ漁民関係において問題であったかという点を端的に整理したものをお話をいたす機会を与えていただければけっこうだと思います。
  75. 達田龍彦

    達田龍彦君 では、将来そういう機会を設けまして、十分そういう意見を聞いていきたい、かように考えます。  次に、私は、これもいま申し上げたように沿岸漁業資源確保の意味で、そういう観点からこの問題を提起し、解明をしていきたいと思うのであります。それは、いま農林省が中心になって取り上げられておるところの干拓行政でございます。この干拓行政によって沿岸漁場が埋め立てられ、漁場が狭められ失われておるという結果をつくっておるようであります。その意味において、これまた漁業の立場から言うならば大きな問題点のある行政なのであります。確かに、農林省全体から考えてまいりますと、今日の農産物の需給事情から考えて、干拓を行なって農地を造成していくということは、国策としても当然必要な措置であろうと考えるし、必要な政策であろうと考えるのです。しかし、そのために、逆に、漁業者は漁場を失い、水産生産額は少なくなっておるという結果をつくるのであります。でありますから、農業政策としては前向きであるかもしれませんけれども漁業政策としてはうしろ向きの政策になり、この干拓事業というものは二面性を持っておると思うのであります。そこで、全国的に、干拓農政というもの、干拓における水産行政というものについて、今日までたいへんな問題を提起いたしておるのであります。私どももいろいろ見聞はいたしておりますけれども、この干拓行政を今後さらに国の方針として基本的にお続けになるのかどうか、その点をまずお伺いをいたしておきたいと思うのであります。
  76. 久保勘一

    政府委員久保勘一君) 干拓によりまして農地の造成をはかるという基本的な方針は、変わっておりません。
  77. 達田龍彦

    達田龍彦君 農地局長は……。では、まだ農地局長がおいでではないので、水産庁関係する面から質問を続けたいと思います。  そこで、干拓によって国が農業政策を行なっていくということは、原則的に私も賛成であります。ただ、そのためにきわめて深刻な重大な問題を漁業行政の中に提起をいたすのであります。干拓の中でもいろいろございますけれども、御承知のとおり、多くの干拓の中には、今日まで沿岸漁業漁民漁業投資を行ない、漁場の拡大改良を行なって、所得の拡大、ひいては経営の安定をはかっておる漁場があるにもかかわらず、干拓によってその漁場を手放さなければならぬということが出てまいります。そこで、問題になるのはなぜかと申しまするというと、漁業関係者は一様に漁業補償の問題あるいは転換漁業の問題について問題を提起されるのであります。しかしながら、この二つの問題点は、今日の国の施策の中では必ずしも満足のいくような政策がとられていないと私は判断をいたしておるのであります。補償の問題にいたしましても満足でございませんし、転換をしてみても、その転換した漁業ないしは農業でもってそれらの生計が立て得るかとなると、これも必ずしも立て得ないという現状にあるのであります。また、干拓をしてみたけれども、その結果思ったように生産があがらない、経済効果があがらないという面もあることを私どもは知っておるのであります。そういう意味で、転換することに対して漁民は不安を持っている、危惧を持っているというのが今日の干拓における転換に関する問題点だろうと私は思うのであります。  そこで、お尋ねをいたしておきますけれども、まず、今日、干拓によって漁業権が取り上げられるわけでありまして、それに伴って漁場を放棄する漁民の補償ですね、この補償はいま国でどういうふうに行なわれておるのか、これは具体的に御説明をいただきたいと思うのであります。
  78. 久保勘一

    政府委員久保勘一君) 私、詳しいことは存じませんのですか、一応補償につきましては閣議決定がなされておりまして、その閣議決定に基づきまして実は昭和三十八年に農地局長名をもちまして通達を出してございますが、その内容を申し上げますと、第一点は、漁業権の消滅にあたりましては、評価前三ヵ年ないし五ヵ年間の平均の純収益を資本還元した額——これは年利率八分に計算をいたします——を基準とし、水産資源の将来性、現地の特殊性を考慮して算定する。第二点は、漁業権の消滅に伴って漁業の継続が不能となりますので、転業に通常必要とする期間、向こう四ヵ年にわたる従前の所得相当額、その漁業権によりまして生ずるであろう所得、いわゆる漁獲高から経費を引きました所得を計算する。第三点は、漁具等を処分することになると思いますので、その売却に対する損失、その他資本損失額を計上いたしまして、それらの総合、合わさったものによって補償をきめていく。こういう要綱が定められておるようでございます。
  79. 達田龍彦

    達田龍彦君 いまの基準ですね、大まかな基準でありますけれども、その基準よりも実情においては私の聞く範囲では非常に高額な、しかも内容が充実したものがあるように承っておりますけれども、そういう実例はございませんか。
  80. 久保勘一

    政府委員久保勘一君) 過去の補償の実態につきましては、私ここで数字的に存じでおりませんので、お答えいたしかねますので、御了承を願います。
  81. 達田龍彦

    達田龍彦君 では、政務次官にこれは責任をもって提出していただきたいのは、過去三年の間における、全国で干拓をやられた数ですね。これはこまかな内容を含めて資料があると思いますから。それから補償の状況ですね。それからそれに伴って起こった問題点。そういうものをひとつこまかく分析して、資料としてまとめて提出をいただきたいと思いますが、どうですか。
  82. 久宗高

    政府委員久宗高君) 御要請の資料につきましては、提出をいたします。
  83. 達田龍彦

    達田龍彦君 では、農地局長がおいでになるまで、専門的な問題はあとに譲りまして、長官お尋ねをしておきたいと思いますけれども、いままでの干拓の中で、漁業者がいわゆる漁業権を放棄する、あるいは漁場を奪われるために干拓に反対をするという状態がたくさん出てまいっておりますけれども、その場合に、補償金で解決する場合については、解決も困難ではありますけれども、解決できる見通しは私は立つと思うのであります。ところが、補償じゃないんだ、とにかく漁場を放棄することは基本的に反対なんだ、漁業以外に生活を立てる方法を知らないんだという漁業者がたくさんいるんです。とりわけ専業漁業者はそういう主張が非常に強い。特に沿岸の浅海漁業中心にするノリ、こういう養殖漁業は、そういう意味では、沿岸の所得の拡大という実績もあって、漁場に執着が強いのであります。こういう人たちの干拓に伴うところの漁場の確保、あるいは漁業の転換、こういうものに対して、基本的に、農業じゃなくて、漁業の中で漁場を与え、仕事を与え、生活をさしていくという方法がない限り、これらの人々の干拓に伴う干拓反対の立場は変わらない結果をつくってしまうのではないか、これがたいへん問題だと私は思うのであります。そういう意味で、水産庁として、こういう状態の場合における干拓行政に対する基本的な方針といいますか、立場といいますか、御説明いただきたいと思います。
  84. 久宗高

    政府委員久宗高君) 個々のケースによって事情が違うと思いますので、一般的にお答えするのはなるべく差し控えたいと思うのであります。私どもも一番この問題では苦慮をいたしておるわけでございまして、関係者が何らかの形で補償金でお話がついた場合はいいわけでございます。たいていの場合に、大部分の方が賛成いたしましても、一部どうしてもその漁業に依存せざるを得ない、また、転換についてのふん切りがおつきにならぬ、また、それも無理がないというような事情の場合に、処置がないことになるわけであります。大部分のケースにつきましては、長い年月の過程を経まして、客観的な事情も変わって、最終的には片づいたという問題もございますけれども、その間におきます漁業者の苦労を考えますと、結果はまとまったといたしましても、その間のロスその他を考えますと、漁業担当しておる者としてはまことに遺憾の多い問題が多いわけでございます。  私どもといたしましては、基本的な態度といたしまして、ただいま政務次官からも申されましたように、今日なお干拓の必要がありますから、それに対してもちろん反対ではないわけでございますが、干拓の計画を立てます場合に、なるべく早い時期に御相談を受けたいというのがまず基本的な考え方でございます。たてまえはそうなっておりますけれども、実際問題としては干拓のお話のある過程でたまたま漁業のほうにお話が来るといったケースが過去の経験によりますと相当多うございまして、そのことが紛争を非常にむずかしくいたしましたケースもございますので、干拓にあたりまして、それの効果なり、先ほど御指摘のございましたよう、農業との比較も考えて、十分私どもが意見を申し上げられるようなタイミングで御相談があってほしいというのがまず基本的な考え方でございます。  それからそれをやるかやらぬかという問題につきましては、もちろんこれは地元におきます総合的な御判断になろうかと思います。農業か漁業かという問題だけではなしに、さらにその地域におきます全体の経済の発展との関連におきましてある方策が選ばれるということでございますので、基本的には現地におきます関係者並びにそこにおきます第一次的な御関係のあります地方自治体におきます御判断、こういったものを頭に置いて、さらに国としての必要性というものがそれに加わって、そのような計画がそれぞれの段階を経て最終的に確定いたしますわけでございますので、確定いたしました以上は、それに対して御協力を申し上げるとともに、直接の漁民に対する責任官庁といたしましては、漁業者に対する補償なり転換の措置ができるだけうまくいきますように、もちろんこれは地元の県の行政が先行するわけでございますが、水産庁といたしまして今日までできるだけのことをいたしたつもりでございます。ただ、何ぶんにも現地と離れておりますので、刻々の事情にうといため、十分な的確な指導ができないうらみはあるわけでございます。懸案の幾つかの漁場については、私どもも十分注意をいたしまして調整に当たりたいと考えております。
  85. 達田龍彦

    達田龍彦君 長官に私は一点だけ申し上げておきますけれども、たとえば干拓をしたいという構想が地方と首長から出てまいります。その構想が住民に選挙等を通じて訴えられ、それから実際にそれに対して住民の反応あるいはそれに対する反響等をとらえて、そして経済効果その他をとらえ、それから問題が役所に移ってまいると思うのであります。それで、実際に干拓が国策として国の事業として行なわれるまでには、構想が固められてから六年ないしは七年という経過がほとんどかかるんです。しかも、今度は国策として仕事をするようになってからでも、ほとんどの場合、大きな工事でありますから、二年ないし三年かかるのであります。ところが、そこの漁業権を持っておる漁民が、その間といえども漁業投資をやるのであります。漁業の構造改善をやるのであります。そうして、生産額を拡大するようにつとめるのであります。そうなってまいりますと、だんだん技術がよくなっていく、投資が拡大をすると、生産高が高まってまいりますから、愛着が出て手放すわけにはまいらぬという状態になるのであります。当初は干拓に対して賛成だという漁民であっても、そういう結果、漁業の生産のほうが農業生産よりもよろしい、転換しても直ちにそれだけの収益をあげ得ないということになると、結局、結果としては反対に回らざるを得ないという結果をつくるのであります。こういうところに一つは干拓に伴うところの漁業権を持っておる漁民問題点が残っておると思います。これは、たとえば、今日、土地収用法の改正案が出ておるようでありますけれども、工場を決定したときの値段でもって収用法を適用するというように、ある意味では先行的なやり方をやらない限り、ずっと引き延ばしてそういう形をもっていく限り、この問題の解決にはならぬのです。こういう点、ひとつ将来の問題も含めて、私は、水産庁としても、農林省全体としても、十分御検討をいただいておきたいと考えているのであります。  それからいままでの実績の中で、転換漁業をといった場合に、代替漁場をつくってそうして漁業権を転換漁民に与えて漁業をやっているところがありますか、現実に。
  86. 久宗高

    政府委員久宗高君) 干拓をいたしました場合に、新しい干拓地の地先にさらに水面ができまして、そこに競合する漁業権がない場合に、一部あくまでここでやっておりました漁業をやりたい方がその地先でやっている例は若干あると思います。具体的にどこでどうというところの数字は、必ずしもいま私の手元にはございません。しかも、それがさらに続いているかどうか、その辺のところも実はしかとつかんでおりません。
  87. 達田龍彦

    達田龍彦君 そうしますと、これも私は問題だと思うのでありますけれども、干拓をして転換漁場の開発をすることは、これは当然やらにゃいけませんよ。それだけ漁場が狭められていって沿岸漁業の生産高が落ちるわけですから、それにかわる開発をすべきなんです。だから、今日、干拓をされたところには、本来それに等しい、ないしはそれ以上の漁場の開発をすることが前向きの水産行政なんですよ。そういうことがないから、干拓によって漁場は減り、生産高が減る結果をつくってしまう。でありますから、私は、そういう意味でも、転換漁場の造成あるいは開発ということは、ぜひ今回の問題も含めて基本的にお考えをいただいて、そうして本腰を入れた漁場の開発あるいは転換漁場をつくっていく、こういうことをやってもらいたいと思いますが、どうですか。
  88. 久宗高

    政府委員久宗高君) 先ほどのお答えは一般的に申しましたので、干拓をいたしました場合にさらにその地先にちょうど浅海漁場に適する新漁場ができるような形の干拓の場合には、問題なくそこに人が入り得るわけであります。ただ、先生も御指摘のように、相当この干拓には時間的な経過が出ますので、当初はそういう計画であったけれども、そこの事情が社会経済的な事情が変わりまして、当初はそういう漁場を予定してあったけれども、入る人がいなくなったというようなケースがございます。あるいは、逆に、当初はそういう計画がなかったけれども、その後たとえばノリが非常にいいので、干拓の地先に若干残って、さらにたまたまそこが漁場として利用できるようなところは利用するといったようなケースもあるようでございます。したがって、一律には申せないわけでございますが、これからの計画をいたす場合に、さような漁場の造成ができるような干拓方式、あるいはその干拓方式のできるような水面でございますれば、私どもといたしましては、わずかな水面でも利用したいわけでございますので、よく農地当局とも御相談いたしまして、漁場の造成、同時に新漁場造成につきましても努力をいたしたいと考えております。  ただ、おそらく他の漁業種類との混淆が起こる問題がございまするので、漁業権の調整上は相当やっかいな問題が残ると思います。
  89. 達田龍彦

    達田龍彦君 この補償の問題で出てくるのは、確かに、お金で換算してもらう立場の人と、それからそこに転換をして農民になって入植して農業をやると同時に、できれば、転換したために漁業権だけはある、一面また兼業として持ちたいという条件者もかなりたくさんいる。こういう者もやはり条件として出てくるわけですね。でありますから、兼業の農家、あるいは漁業と兼業という形が要求の中にたくさん織り込まれてまいるのです。ですから、そういう意味でも、代替漁場の国費によるところの造成だとか、あるいは新規漁場の開発だとか、そういうことについては、こういう干拓の問題と含めて十分御検討をいただき、対策を講じてもらいたい。そのための努力をひとつお願いをしておきたいと考えるのであります。  それから、農地局長がお見えになりましたけれども、今日まで干拓が行なわれまして、私はまだ実態をよくとらえておりませんけれども、農地はつくったけれども当初のような成果をあげ得ないような干拓農地があることをよく聞くのであります。それで、干拓して農地に転換をして、その結果、どういう成果あるいは欠陥、問題点が出ているのか、特徴的な点を二、三とらえて御説明をいただきたいと思います。
  90. 和田正明

    政府委員和田正明君) 終戦後、御承知のように、外地からの引揚者その他が就業の機会が少のうございましたことが一つと、それから御承知のような食料難の時代でございましたことが一つと、その二つの理由で、終戦直後に閣議決定で緊急開拓事業というものを進めまして、一般にいわゆる山林等の未墾地につきましても相当多数の開拓を実施いたしてまいりました。また、同じ趣旨で、早急に農地を造成して、就業の機会を与えるとともに、少しでも国内の食糧の需給に資しますために干拓の工事もやってまいったわけでございます。  そこで、昭和二十一年以後着工をいたしまして四十一年度までに完了をいたしました干拓地の総面積は一万二千六百三十二ヘクタールでございます。これは、現在、すべて——すべてと申しますとちょっと言い過ぎでございますが、約四百ヘクタールほどは、工事は完了いたしましたがまだ地元負担なりあるいは入植者への配分が手続中のものを含んでおりまするが、その部分を除きますれば、一万二千六百三十二ヘクタールは現在も農耕用地として水田が大部分でございますが利用されまして、当初の目的である先ほど申しました二つの点、また、最近の経済事情の変化に対応いたしましての農業経営規模の拡大等に利用をされております。  それから、同じように着工をいたしまして、今日までに、先ほど来お話がございましたように、工事の完了までに非常に時間がかかりますし、特に終戦直後以来の事業としては非常に幅広く着工いたしましたために完工がおくれる等の状況の中で、御承知のように、日本の経済事情の大きな変動がございまして、それに伴いまして、当時ほどの緊急度が減りましたり、あるいは新たな市街地化なり工業立地などの問題が起こりまして、農林省で造成をいたしました干拓地のうち、本日までに千三百七ヘクタールを他用途に転用をいたしました。いま申しました数字は、一万二千六百三十二という干拓地として造成し農用地として利用しておりますものは別口の数字でございます。これは、完成をいたしました以上は、農用地の造成ということで同じ国の経費ではございますが、農林省の予算で支弁をいたしました関係もございますので、投下をいたしました国費部分を回収するという方向で、他用途転用のための価格になるように売り払いをいたしまして、この千三百ヘクタールで今日まで土地改良の特別会計の国庫に納入されました売渡価格は、約五十六億円でございます。  もう少し申し上げますと、実は、古い時代には、農家に売り渡しをいたしまして以後そういう他用途転用の問題が起こりまして、投下をいたしました国費の回収ができませんような状態にございましたので、数年前に土地改良法の改正をいたしまして、工事完了後一定期間内に農業用の目的以外のところに転用いたしますような場合には、その土地を他目的に使用いたします企業者から、そこへ投下をいたしました国費部分を必ず回収するというふうに制度を改正をいたしまして、先ほど申しましたように、五十六億余円の収入をあげておるわけでございます。  なお、今後の計画でございますが、昭和四十年を初年度として昭和四十九年を一応の目標年度といたします十ヵ年間にわたります長期の土地改良計画を定めておるのでございますが、最近におきます他産業の発展に伴っての工場用地、あるいは社会投資を進めます意味での道路の敷地ないしは住宅用地等に、御承知のように年々ある程度の農地の面積がつぶされていく。年によって違いますが、四万町歩ぐらい一年間につぶされております。今後の国内におきます食糧の需給度、あるいは産業としての農業の発展を考えまして、ただいま申しました期間で約三十五万町歩の農地が他用途に転用されるという推計をいたしまして、ちょうどそれに見合います数字を干拓及び開拓で造成をして、十年後におきましても日本国内の農用地の面積が現状より少なくとも減らないように、そのほかに約四十万町歩の草地の造成をいたしまして、農用地としての面積が拡大されるような計画で土地改良長期計画を組んでおるのでございますが、その造成をいたします予定の三十五万ヘクタールのうちに、干拓で造成をいたそうと考えております土地面積は三万二千三百五十三ヘクタールでございます。現在、それらにつきましては、すでに着工をいたしましたものが特別会計の地区で三十七、一般会計の地区で四十四ございまして、現在の工事の進行状況から考えまするならば、土地改良長期計画計画をいたしました三万二千余ヘクタールの干拓地の造成は大体できるのではないかという見当で進めておるわけでございます。  農地局の立場での干拓の持っております意味、ないしは過去におきます実績は、大体以上のようでございます。
  91. 達田龍彦

    達田龍彦君 非常にこまかい御説明をいただいたわけでありまして、そこでもう一点質問をいたしておきますけれども、干拓ないしは開拓された土地の中で、未開墾地ですね、未墾地といいますか、そういう遊休の土地は現在どのくらいありますか。
  92. 和田正明

    政府委員和田正明君) 最初に干拓について申し上げますと、四十一年末までに戦後開拓をいたしました一万二千六百三十二ヘクタールのうち、現在まだ地元の農家に配分を終了いたしません面積が四百七十三ヘクタールございます。これは現在地元の方々から希望者等を募っておりまして、逐次増反用として配分をいたすわけでありますので、まだ利用をされていないということでございますれば、干拓に関しては一万二千六百三十二ヘクタールのうち、四百七十三ヘクタールがまだ現在農家に配分が終わっておらないということになります。  次に、開拓の関係でございますが、これは若干資料が古くて恐縮でございますが、昭和四十年度までに売り渡しをいたしました開拓地は百十二万六千九百二十七ヘクタールでございます。現在、この売渡面積の中には、薪炭林あるいは宅地等に利用される部分も若干含まれておるわけでございますが、別に調査をいたしました面積としては、およそ六十万ヘクタールほどのものが現在作付をされております。  それから冒頭申し上げましたように……
  93. 野知浩之

    委員長野知浩之君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  94. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 速記を起こして。
  95. 達田龍彦

    達田龍彦君 資料があれば、ひとつ資料をあとで……。  それで、いまの遊体地ですね、この利用の目途あるいは見通し、こういうものは、これは計画はされておると思いますが、お持ちですか。
  96. 和田正明

    政府委員和田正明君) 干拓地につきましては、先ほど申しました四百七十三ヘクタールも、近く農家への配分を終わりまして、農耕用地として利用できると思います。  それから開拓でございますが、これは農地法で傾斜度が十五度あれば無理に国が買収するという形で買収いたしましたものが相当ございますが、農業をやるということになりますれば、付近の環境とかその他社会的な条件が入ってまいりますので、それらのものから考えますと、当時物理的に買いましたものがそのまま使えるというわけにはまいりませんので、農地法の八十条の規定で開拓不要地として処分をいたさなければなりませんものが、買収をいたしました総面積百四十八万ヘクタールのうち十万ヘクタールくらいはやむを得ないのではないかというふうに思っております。達田龍彦君 これも、その前の資料と一緒にできればお願いをいたしたいんですけれども、他の用途に使った土地でございますね、これはどういう理由で他の用途に使ったか、その種類別があれば、それも資料にして提出をいただきたいと思うのですが、どうですか。
  97. 和田正明

    政府委員和田正明君) 提出いたします。
  98. 達田龍彦

    達田龍彦君 私は以上で質問を終わりますけれども、要するに、私が本日取り上げた沿岸漁業漁業資源保護の問題については、私はいろいろな観点から指摘をし、また、解明もしてまいったのでありましたけれども、全体として資源を守るという立場の施策はきわめて不十分であるし、しかも、水産行政漁業政策の中では軽視をされているきらいがきわめて強いという感じを深くいたすのであります。とりわけ、食害の問題、あるいは海水変化によるところの被害の問題等、何ら対策あるいは実態すら把握できないという貧弱な施策状態であります。まことにもって水産行政に対して漁民の気持ちというのは心細い。沿岸漁業をああいう形でやっていかれたんでは、一体われわれの生活はどうなるんだという気持ちが非常に強く出るような内容であったような気がしてなりません。そして、いま、水産生産物の需給のバランスというのはとれていないわけでありますし、さらにまた、この前の委員会の中で水産庁長官が御説明になっておりますけれども、その中でも沿岸漁業で将来生産をあげる数量というのは二百四十七万幾らという御説明でありましたけれども、これをさらに拡大することは、とりもなおさず沿岸資源をどう保護し、それをどう生かすかということに相当大きなウエイトを持っていいんではないかと考えるのでありますが、国際漁業の中では、たいへん締めつけられ、漁業が非常にやりにくくなっておる、漁業生産高をあげることは非常に困難だという条件もきびしくあるわけでありまして、とりわけ、そういう意味でも、沿岸漁業をどう発展をさせ伸長をさせていくか、沿岸漁民の生活をどう安定させていくか、生産性をどう高めていくかということは、日本漁業政策の中でも一番取り残され、一番軽視されておる状態であるわけでありますから、そういう面、今後の漁業政策の中では十分に沿岸漁業の問題を柱に置いて、じっくりした対策施策政策というものをおとりいただくことを最後に強く要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  99. 久保勘一

    政府委員久保勘一君) 御答弁申し上げます。  先ほど来御指摘のとおり、魚族を保護し、その資源を確保してまいりますることは、水産業を安定的に維持してまいりまする上に根本的な課題であると存じます。従来もこの問題につきましては努力をいたしておりまするが、今後一そう御指摘のございましたような食害あるいは公害等の問題を中心に一そう努力をしてまいりますることを申し上げておきます。
  100. 北村暢

    北村暢君 時間の関係で、まことに恐縮でございます。水産関係ですから、予算の分科会でやろうと思いましたが、時間が制約されてできませんでしたから、この機会にあらかじめ水産庁調査をしてもらうようにお願いしておったことについてお伺いいたします。  函館市付近の沿岸漁業構造改善事業とそれから漁場改良造成事業、並み型魚礁の問題について調査をしてもらうようにお願いしておったのですが、これについて、並み型魚礁のほうは、水産庁の指導からいくというと、直径六十センチ、高さ六十センチの並み型コンクリートですね、コンクリートブロックを入れて、そして魚礁を造成していく、こういう指導になっているんですが、これをやりますと、ここはコンブの養殖地帯でどうも漁業実態に合わないということでしばしば漁民はコンクリートブロックでなしに天然石を入れたほうが漁獲に都合がいいと言っているんですが、どうしてもそれをやらせてくれない。それをやるというと補助金の対象にならぬから事業を縮小するということで、漁民の要望がいれられない。それで、魚礁のために補助金を捨てているようなかっこうになっている。この問題がどういうふうな状況になっているか、事務当局を通じて調査お願いしておいたのでありますが、この点について、端的に言えば、天然石を入れても補助金というものを削減するというようなことなしに継続的にやっていただけるかどうかということをお伺いいたします。  それからもう一つは、沿岸漁業構造改善事業が非常に形式的であって、函館付近の簡易冷凍施設でありますが、どうしてもそれをつくらなければ構造改善事業としてやらせないというのでつくったはいいんですけれども、一回も冷凍する魚が入らないというんですね。入らないところに無理やり冷凍施設をつくっている。したがって、漁民は、こういう施設をつくってもらってもしようがないから、これを転用して漁民の休憩所にしてもらったほうがいいんじゃないかという要求すら出ているそういう形式的なプランでもって構造改善事業をやっているという、非常に悪い例だと思うんですが、これがまあ全部だったらたいへんなことなんですが、たまたまこういうところにこういうものができたのかもしれませんけれども、そういう点において、役人の計画地域のせっかくの沿岸漁業振興のための構造改善事業というものが生きてきていないむだな投資をしている、まあこういう結果が出ておるようでございますが、これについても調査してもらいたいということを言っておきましたが、調査した結果、どのようになって、今後どのように対策を立てられるのか、この点についてお伺いしておきたいと思います。
  101. 久宗高

    政府委員久宗高君) 具体的な御質問がありまして、至急取り調べたわけでございます。現地で直接漁民からお聞きになっておられるので、おそらくそういう言い方を漁民の方はなすったんだろうと思うのであります。最も注意すべき問題でございまして、私どもも、こういうことははなはだいやでございますので、やかましく実際どうやったのかといって聞いてみたわけなんでございます。たてまえといたしましては、先生も御存じのとおり、漁場改良造成事業の中で二つございまして、投石事業としては自然石または円箇型のコンクリートブロックの投入、それからもう一つは並み型の魚礁設置事業として円筒型のコンクリートブロックの投入、この二つがあるわけでございます。これはどちらを選ぶかは地元の要望を尊重して実施するというたてまえになっておるわけでございます。そこで、しばしば、構造改善問題につきましては、地元のそういう御要望があっても上から押しつけるといったような事例の御指摘がございます。そういう事例として御指摘を受けているので、どうだったのかといってやかましく聞いてみたわけでございます。これは、必ずしも、いま先生のお話の出ましたような、どうしてもこちらががんこにそういうことをしないという事実は、あまりはっきりしないのでございます。そうではないようなんでございます。そこで、実際問題といたしましては、ここは組合が統合したわけでございますね。そんな関係もございまして若干その過程で意思の疎通に欠けたのではないかという心配があるわけでございますが、四十二年度におきましては、統合いたしました五つの漁協のうち、三漁協の関係が依然としてコンクリートブロックを選んでおります。それから二漁協は自然石のほうを設置したいという希望が出ておりますので、地元でもしそういうような御要望があれば、そういう形で処理ができると考えております。  なお、御指摘のような問題は一応私どもはなかったと思いますけれども、構造改善事業におきましては、あくまで地方の方の御意向を尊重してまいりたいと思いますので、以後注意するようにいたしたいと思っております。  なお、御指摘の冷蔵庫でございますけれども、これもすでに地元で詳しく事情をお聞きと思うのでございますけれども、漁協が五つに分かれておりまして、それがまあ一緒になりまして、その時期に、あすこにはそのような施設がございませんでしたので、集出荷の一元化をねらいまして地元には強い御要望があって、三十八年度にやったわけでございます。ところが、三十九年以降、御存じのとおり、あの地域におきましては、主幹漁業でございましたイカ漁の漁獲高がごそっと減ってしまいました。そういうことが相当大きく原因したことと、さらに、従来出荷しておりました函館の業者とのつながりの整備と申しますか調整が不十分だったというようなこともからんでおるようでございまして、利用状況がはなはだ低位にとどまったということのようでございます。しかしながら、これはまあイカの回游とも関連して考えなきゃならぬわけでございますが、規模としては非常に小さいものでございますので、いまのような流通過程の未調整の問題を整理いたしますれば、必ずしもあの地域にこのようなものが不必要とは考えられませんので、まあ御指摘もございましたので、特に地元には注意をいたしまして指導いたすつもりでございますが、大体経過はそのようなことでございます。
  102. 北村暢

    北村暢君 それでけっこうですがね。ただ、実際こうやって取り上げられるというと、北海道庁のほうもそういうふうに話がわかりやすくなるけれども、それ前は、やっぱり指導のとおりやらないと補助金を減らすとかなんとかというので、やっぱり実際はあったようですね。まあこれは私せんさくいたしません。いま答弁がありましたように、漁民の要望がいれられてスムーズにいけば、それでけっこうでございます。そのように努力をいただきましたことについて感謝いたしまして、質問を終わります。
  103. 森中守義

    ○森中守義君 水産庁長官に、資料でもいいのですが、ちょっとこの機会にお尋ねしておきたい。  最近、陸上の交通事故のゼロ運動とか、あるいは航空機の事故防止のための再編成、ずいぶん人命尊重が叫ばれておりますが、海上におけるこの種問題は、しばしば新聞等でどこそこの水域において漁船が沈没をして乗組員が行方不明になったと、こういったようなことがよく言われております。そこで、私もなかなか勉強ができずにはなはだ恐縮ですが、少なくとも現行法の中ではこの種問題を保護する条項があまりないのです。たとえば、漁業法、あるいは漁災法、漁損法、天災融資法、さらに運輸省関係における船舶法、船舶安全法、こういったようなものがあります。しかし、いずれもがなかなか海難防止に対するきちんとした法令がございません。で、先ほどのトドあるいはイルカの問題、まあこういうものと意味合いとしては同じだということをさっき申し上げたのですが、たまたまきのうですね、北朝鮮の漁船にわが国の漁船の船長が網を破ったとい理由のもとに連行された。しかも、新聞によれば、すでに過去において北鮮関係においてだけでも隻数において十数隻、しかも船員においては相当数の者がいわば海上の犠牲になっておるようです。のみならず、北鮮との正規な外交交渉ができない。したがって、韓国の赤十字、こういうものを一つの経路とする交渉しかないのじゃないか。まあこういったようなことで、なかなか海上における天災による海難、あるいは外国関係における不幸な事件等は、一向にあとを断っておりません。  それで、先ほどの話じゃございませんが、ただ魚をとる、生産の向上をはかるということだけに目を向けていいのかどうか。むしろ、私は、人命の尊重、そうしてまた漁撈に従事をする皆さん方の生命の保全というものが何をおいても重要な問題として考慮されなければならぬと、こう思うのですが、この辺のことに対して、在来どういうお考えで、しかも具体的にどういう措置をおとりになってきたのか、あまり時間がありませんから、簡略にお答えを願っておきたいと思います。
  104. 久宗高

    政府委員久宗高君) 船舶の安全につきましては、私どもといたしましても、これはやはり基本でございますので、不十分という御批判を受けるかもしれませんが、気持ちといたしましては相当まじめに取り組んでおるつもりでございます。ただ、何ぶんにも非常に隻数が多うございますのと、危険な海域に出漁しておりますので、海難事故が次々に起こりまして、心を痛めておるわけでございますが、海難以外の拿捕問題は別といたしまして、船舶そのものの安全につきましては、企業の側から見ましても、労働条件が相当よくございませんとあのような海上労働に就職する方が限定されてまいりますから、相当まじめにこの問題とは取り組んでおるわけでございます。そこで、今回の一斉更新におきましても、今後の船舶の安全を具体的に基準の中に織り込みまして、たとえば安全マークといったようなものを考えまして、要するに積み過ぎまして事故が起こるのを防止するという意味でございますが、そういうような客観的な表示をいたしまして船舶の安全を守るという措置を具体的に漁業制度の中へ取り込んで対処いたそうとしておるわけでございます。しかしながら、これは設備だけの問題でございませんで、今回も御提案してお願いしております中小漁業の範疇で申しますと、経営が相当苦しいために無理をして出漁なさる場合があるわけでございます。それからまた、災害補償制度が十分でございませんために、もしこれが完備しておれば、あぶないときは出なくてもそれの補償があるわけでございますけれども、無理をして出漁して事故を起こすといったような問題がございまして、単なる設備だけの問題ではない、経済問題が背後にあるというふうに考えますので、両々相まちまちして、一番事故の多いのは中小の段階で多いように思いますので、これと取り組みたいと考えておるわけでございます。  なお、御指摘のございました北鮮での事故は、非常に珍しいケースでございまして、昨年もあそこで競合がございまして、今回の場合には、網を切って、交渉しております過程で先方が接舷をしてまいりまして、それで大体話し合いがついたので帰ろうといたしますと、ことばが通じなかったのでございますか、発砲した。そこで、危険を感じましてとどまりまして、船長はさらに先方の船に——これは向こうの漁船でございますが、乗り組みまして、清津のほうに一緒に行こうということで行っておりますうちに、霧で後続して参りました船が向こうの船を見失いまして帰ってまいりまして、船長だけが向こうへ参ったというかっこうになっておるわけでございますが、御指摘のように、国交がございませんので、日赤を通じましてしかるべく申し入れを外務省を通じていまいたしておるところでございます。
  105. 森中守義

    ○森中守義君 これはいろいろ承っておりますと時間がありませんから、できるだけ早い機会にもう一回これらの内容についてお尋ねするといたししまして、資料をひとつそのために御用意いただきたいと思います。三十九年でも、あるいは四十年でも、四十一年でもけっこうです。一番とりよい年次でやってください。単年でけっこうです。単年における、台風等のために沈没をした隻数、事故発生の場所、それとこれらのトン数、失われた人命。それと、天災融資法の発動はこういう関係でなかったと思うのですが、こういう船主あるいは乗組員等にどういう事後の処理がとられたか。それからいま一つは、先ほどの北鮮はもちろん、韓国あるいはソ連等に拿捕された隻数、召致されていった乗組員の数、送還をされた日時、しかも事件の内容、専管水域を犯したのか、領海を侵犯したのか、あるいは、特殊なケースである相手さんの船ないし漁具等に損傷を負わせたとか、こういう事件の内容、こういうものをひとつできるだけ早い機会に御提出をいただいて、その上でこのことについてはいろいろお尋ねをしたいと思います。
  106. 久宗高

    政府委員久宗高君) できるだけ早く調製いたしましてお届けいたします。
  107. 森中守義

    ○森中守義君 林野庁長官、お見えになっていますね。だいぶおそくなっておりますので、ごぐ簡単にお尋ねいたします。  せんだって来お尋ねしてまいりました例の職員に対する処遇改善の一つとしての賃金の問題、すでに御案内のように調停が不調に終わりまして、目下裁定に移行しておる。したがって、これに関係をする林野庁の月給制職員の分は別といたしまして、残りの最大の問題である日給制賃金の問題については、労使双方のおそらく自主交渉が展開されていると思う。その経過をお聞かせいただきたい。
  108. 若林正武

    政府委員(若林正武君) 労働組合から要求書が提出されましてから以来、現在まで十七回団体交渉を行なっております。私どもといたしましては、当事者間で自主的に解決をいたしたいということで現在努力中でございます。
  109. 森中守義

    ○森中守義君 ここ一週間ぐらいの間に、私は熊本の出身でごいますが、熊本県内の林野庁職員はもちろん、広く全国の関係者から、連日膨大なる電報が届いています。あるいは、手元に代表的なものを少し持ってまいりましたが、はがきが参りました。これらいずれの内容を見ましても、今日の低賃金ではいかんともしがたい。二万三千円の賃金で一家五人が生活しておる。そろそろ子供が高校へ大学へ、しかも全部小中学校に入っているというこの現状において、まさに生活条件というものは言語に絶するような状態である。しかし、そういう逆境にあるにかかわらず、大事な国営事業としての林野庁職員としての職務を全うしておる。願わくば、この国会において、この辺の問題をいま少し細密に調査検討を加えて、当局との間に何ぶんの結論を出してほしい、こういう趣旨に一貫をしております。したがって、私は、前回多少の時間をお借りしてこの問題をお尋ねしたのでございますが、当日の質問の要点は、こういう状態の中にさらに劣悪な賃金状態を続けていくならば、四十三年、四年、五年、六年というように将来における林野庁の前線労働者の確保というものは非常に困難じゃないか、その見通しいかん、こういう状態で末長く事業の経営の可能性ありや否や、実はこういう質問をいたしました。もちろん、統計が不十分であったり、その他のこと等もありまして、長官のほうから正確に、だいじょうぶ間違いない、この賃金で労働力の確保ができるという将来の展望、見通しについての答弁はなかったのであります。したがいまして、私は、あらためてお尋ねするようでございますが、日給九百七十円、月に換算して先ほど申し上げるような賃金で、はたして今日から将来にかける前線における林野労働力の確保の保障がここで断言できるや否や、もう一回、たいへんくどいようですが、まず最初にお尋ねをしておきたいと思います。
  110. 若林正武

    政府委員(若林正武君) 現在の賃金で労働力を確保できるというふうに、私どもも考えておらないのでございます。
  111. 森中守義

    ○森中守義君 長官、何も遠慮は要りませんから、語尾をもう少し正確に。私、ちょっとこのごろ年をとり過ぎたのか、あまり耳がよくないんですよ。もうちょっと最後のくだりをきちっとおっしゃってください。
  112. 若林正武

    政府委員(若林正武君) 現在の賃金で労働力を将来とも確保できるというふうには考えておらないのでございます。
  113. 森中守義

    ○森中守義君 さて、そこまで思い詰めていただければ、問題の解決というものは、先般来お答えがありましたように、比較的前向きの状態で交渉の成立を見ることができるであろう、こういうような観測を私はするんです。しかし、問題は、精神的な前向きだけでは解決になりません。やはり、こういう問題になりますと、中身であり、しかも物理的にどういう内容のものであるかということが、現状維持であるのか、あるいは停滞であるのか、前進であるのか、こういうことになるでありましょうから、いま当事者間の話し合いというお話のようですから、あまり細部にわたる質問はかえって遠慮すべきかわかりませんけれども、もしここでお述べいただいて差しつかえないという判断があるならば、表現上の前向きは具体的な内容としてどういう内容を持っているのか、ひとつお答えできる限度でけっこうですから、答えておいていただきたいと思います。
  114. 若林正武

    政府委員(若林正武君) ただいま先生からお話のございましたように、現在まだ団体交渉継続中でございますので、具体的なことは申し上げかねまするが、私ども、少なくとも日給制職員の賃金につきましては、月給制職員の賃金あるいは一般産業労働者の賃金、こういうものも総合勘案をいたしまして改善をはかってまいりたいというふうに考えておるのでございます。  なお、前回、先生からも御指摘のございました、たとえば生活保護基準よりも低いような低額職種等につきましても、今後積極的に改善措置をとってまいりたいというふうに考えております。
  115. 森中守義

    ○森中守義君 すこぶる表現が前向きのようですから、多少安心はいたしますが、もう少し具体的にこういうお尋ねをしてみましょう。すでに調停が不調に終わったといいながら、公労委の兼子委員長は、あの不調の最終段階において公益側委員が提示した六・五%並びに三百円というところの定率・定額、大体三百円は〇・八%に勘定すればなりますから、締めて七・三%は、仲裁に移行したにしても、これは最低の線であって、これを下回ることはないであろう、こういう言い方をしております。これはすべての報道機関によっても明らかにされておるし、使用者側ないしは労働者側委員も、あるいは五現業三公社の組合の諸君も、同様に了解をいたしております。したがって、仲裁の作業がこれからどういう進行状態をたどっていくのか、にわかに予断はできませんが、六・五%・三百円、これはやはり最低だという理解を私はしておる。したがって、仲裁の結果のいかんにかかわらず、最低これは保障される。であるとするならば、ひとり月給制のみならず、日給制についても、当然、国家公務員であり公労法適用職員であれば、仲裁の裁定額同様のものが適用されるであろうと、こう思うのですが、そのとおりでしょうか。
  116. 若林正武

    政府委員(若林正武君) 月給制職員の賃金につきまして仲裁がどういう形で出るかわかりませんが、少なくとも、日給制の職員の賃金につきましても、それと同程度のものは考えてまいりたいというふうに考えます。
  117. 森中守義

    ○森中守義君 もう一回念を押しますけれども、かりに、不調に終わった例の調停案ですね、あれと同様なもの、つまり、六・五%・三百円、締めて七・三%が出た場合には、月給制と同じように日給制についても積み上げると、こういうことですね。
  118. 若林正武

    政府委員(若林正武君) そのとおりでございます。
  119. 森中守義

    ○森中守義君 そこで、実は、春闘相場がいろいろ言われております。一一・一%と言われたり二二・一%と言われたり、内容でだいぶ違う。ただし、金額において四千五百円ということでおおむね一致しておる。それは、御承知のように対比のしかたにもよる。公労委の事務局においても、あるいは公益委員も使用者も労働者側委員も、関係の当事者である三公社五現業、あるいはその相対する組合にしても、金額においては四千五百円、こうなる。それで、日給制度も同じですが、二二・一%というものを率で求めるのか額で求めるか、私はかなり問題があると思う。なぜかというならば、何といっても、林野庁の場合に、月給制度の職員は、先ほどの調停額、もちろんこれは仮定のものですよ、裁定がこのとおり出るかどうかわからぬけれども、それを一応の基準にとってみた場合には、四千三百二十四円、一一・六%、こういうことになるんですね。しかし、これは四千五百円には多少切れます。それから日給制の場合には基本ベースそれ自体が非常に低額だから、足並みをそろえて行くには、率よりも額で行くべきじゃないか。この辺に林野庁労使の一番大きな賃金上の論争があり、あるいは問題点があると思う。それで、先ほどのように、将来の要員確保を目ざして、少なくとも生活保護の適用を受けなければならぬような育苗手があってみたり、あるいは炊事手があるという事実を踏まえるならば、率よりも額によって当然是正をし、上積みをすべきではないかと、こう思うのです。ですから、こまかな金額までここでは申し上げませんが、率よりも金額、そのことが処遇改善への一歩前進であるというように私は思うんです。ですから、ここで、率じゃなくて額で行こうというお答えがいただけるかどうか。私は、そのことによって、おおむね将来の林野庁の賃金形態の答えは出るんじゃないかと、こういうように思うんですが、いかがなものでしょうか。
  120. 若林正武

    政府委員(若林正武君) 率がたてまえでございまするが、先生のただいまの御指摘のように、額につきましても十分配慮してまいるつもりでございます。
  121. 森中守義

    ○森中守義君 ちょっといまのお答え、よく私のみ込めなかったのですが、額で行くということですね。率じゃなくて、額で行くと、そういうことですね。
  122. 若林正武

    政府委員(若林正武君) 率がたてまえでございまして、先生の御指摘の額ということにつきましても十分配慮をいたしてまいるつもりでございます。
  123. 森中守義

    ○森中守義君 それだと、まただいぶ話が違う。いままでのやり方が率で来たので、月給制と日給制の間にはなはだしい格差を生じておる。だから、長官がしばしばここで言明されたように、前向きで行きましょうというその精神は、やはりこの際は率から額に変えるんだと、こういうふうに私は実は理解していたんですよ。だいぶ私の理解が違ったんですね。この際前向きで行こうというならば、在来のたてまえは率であったが、今回は額で行きましょうというふうに正確に言いかえておくほうが将来のためになるんじゃないですか。
  124. 若林正武

    政府委員(若林正武君) 先生も御承知のように、何ぶんにも団体交渉中の事案でございますし、ひとつその点は——十分先生の御承知のとおりでございます。その辺はよろしく御配慮をお願いいたします。   (「どうも歯切れが悪いな」と呼ぶ者あり)
  125. 北村暢

    北村暢君 それは、団体交渉中の問題ですから、ここで額を言えとかなんとかいうむちゃなことは言いませんけれども、この前もいろいろ論議して、いろいろの質問が行なわれて、この国会の論議の過程を十分尊重をして今後の団体交渉ではやっていただくということを大臣もやや了解したと思うんですね。あの段階では、まだ調停不調という段階ではございませんでしたから、額はわかっていなかったわけですが、今回は調停不調には終わりましたけれども、公益委員が六・五%プラス三百円ということで、これは、三百円が〇・八だから、七・三%、こういうことで、定期昇給の四・三%ですか、これを入れると一一・六%になる、パーセントでいけば。そういうことで、従来は、定期昇給分を含めたパーセントですら行かなかったわけですね。大体一〇%から一一%であったと思うのですが、一昨年が六・何%、あるいは昨年が八・三二%ですか、ということで、春闘相場であるパーセントまで達していなかった。したがって、日給制で一昨年は五十円、昨年が七十五円。これではとても問題にならないということなんです。パーセントでいっても低かったわけですね。したがって、今回は昨年並みということで第一次的に答弁されたようですが、ここで公益委員が六・五%プラス三百円という形で出して、不調には終わりましたけれども、これを国鉄で換算すれば五千円ちょっと突破する、電通で四千円ちょっとである、こういうことですね。ところが、日給制の場合、このパーセントで行くというと、二千四百円まで行くか行かないかじゃないですか。三公社五現業のうちで、この率で行って一番低い電通が四千円ちょっと出る。ところが、日給制は、このパーセートで行くと、額にするというと二千四百円何がしかしか上がらない。これすらあなた方はいま考えているかいないか実はあやしい。したがって、このパーセントで行くと、もともとの賃金が安いのですから、平均二万四千円ということで、生活保護世帯より若干いいかそこら辺でしょう。そういう賃金なんですから、パーセントで上げたならば、いま言ったような状況であります。これでは、他産業に近づけていくということにはならない。差はどんどん開いていくわけですね。国鉄は五千円上がる、最低の電通ですら四千円上がるのに、日給制は二千四百円しか上がらない。これじゃ差は開いていくですよ。追いついてはいかない。そういうことで、食うや食わずの生活保護世帯にいまなり下がろうとしている実態なんだから、また、こういう状態では作業員を確保できないということを林野庁当局も認めておるのでありますから、したがって、公益委員がすでにこういうものを出した段階において、仲裁へ行ってもこれより下がることは絶対ないわけですよ。この額というものははっきりしているのでありますから、そこに目安を置いて民間へいかに近づけていくかということになるというと、率ではいかないという森中さんの主張というものは十分御理解がいただけるのじゃないか。そうしてまた、従来答弁をしている、民間との均衡をとって春闘相場というものも十分考慮しながらやっていくという答弁からするならば、従来がとんでもない低い形で五年も六年も押えられてきたのですから、今回はこの考え方を改めていくということになれば、森中委員がいま主張している平均四千三百円くらいになるのじゃないでしょうか。そういうものに向かって近づけていくという努力がされない限り、自主交渉をやってもなかなか問題の解決にならないのではないか、私はこのように思っているんです。したがって、額を幾らか出せとかなんとかということは私はここで申し上げませんけれども、今日まで置かれてきているこの問題が、私から言わせるならば不当に五年も六年も押えつけてきたのですから、それでもう従業員もおりたくたって国有林におれない。将来に見切りをつけてやめていかなければならない、こういう実態でしょう。そういう実態というものを踏まえて、この段階において、林野庁は、誠意ある姿勢というものをここで出していただくということぐらいの考え方というものはやはり出していただいていいのじゃないか。  従来の質問なりきょうの御答弁を聞いておりましても、いまの賃金では作業員を確保できないとおっしゃっておるのですから、そういう非常にせっぱ詰まった国有林の経営の実態の中からも、上げることがかえって国有林の経営というものを健全な方向に持っていく。ただむやみやたらに賃金を安く押えれば健全にいくというものではない。前にもお話ししましたように、あまり安い賃金で押えるというと、満足な仕事ができない。結果的にはインチキなごまかし仕事しかできないという結果になる。これはもう国有林のために今日許されないことだと思うんですね。しただって、国民の信頼にこたえる国有林の健全な経営をする上においても、この賃上げというものは絶対に必要である。そういう信念に立てば、大蔵当局なり予算当局なりを必ず説得できるのじゃないか。そしてまた、昨年の調停委員会において林野当局が説明をいたしましたが、私から言わせれば、昨年に比べて倍上がるかもしれない。倍上がるなんてことはあり得ないことでしょう、賃金からいえば。にもかかわらず、倍上げてみたところで、七十五円ですから、百五十円でしょう。百五十円に二十三をかけてごらんなさい。三千円かそこらにしかならない。それでも四千円の最低までに行かないことはわかっているんですよ。ですから、思い切ってやはり林野庁のいままでの姿勢を変えた形において、調停委員会においても、かりに今後仲裁委員会に行くにしても、その姿勢ができるならば、昨年から比べれば非常識な賃金の値上げになりますけれども、それは非常識ではないんで五年間の押えられたものを挽回するという意味においては正しいのじゃないか。それがまた国有林野事業の今後の運営のためにプラスになる、こういうふうに思っておりますので、ひとつこの点について所信のほどを政務次官からお伺いしておきたいと思います。これはほんとうに基本的な問題ですから。
  126. 久保勘一

    政府委員久保勘一君) お答えいたします。  国有林の作業員の賃金の改善につきましては、できるだけ前向きで努力をいたしておりますことは、御了承のとおりでございます。ただいま林野庁長官が直接この問題につきまして交渉いたしておるわけでございますが、お聞き取りのとおり、長官としても誠意をもってこの問題に取り組んでおると存じます。したがいまして、交渉中でもございますし、上げる内容等につきましては、先ほどの長官の御説明、答弁で御了承をいただきたいと存ずるわけであります。
  127. 森中守義

    ○森中守義君 政務次官の大臣にかわる答弁はちょっと早過ぎた。まだありますよ。といいますのは、ここ数日来私どもが異常な関心を持って林野庁にこのお尋ねをするのは、もとより他意はございません。ただあるのは、先般私がお尋ねをした林野庁日給制職員の中に三十六世帯の生活保護の適用世帯があるというこの事実ですよ。この事実がいやしくも国家事業に従事をする諸君の中に存在するということを見のがすわけにはいかない。同時に、三公社五現業はもちろん、一般公務員の例等を見ても、七百五十円の保護法適用の基準に満たないようなところはない。たまたま符節を同じようにして憲法二十五条による朝日訴訟が最終の判決の時期を迎えた。あれで国が勝訴をした。しかし、裁判が承継されるものじゃない、こういう法理論のたてまえよりも、実態としてどうなのかという問題だと私は思う。したがって、国が勝訴したから、いやしくも生活保護者に対してもこれでいい、こういうことにはならぬのですね。いわんや、林野庁は、生産部門ですよ。生産部門に従事する職員諸君がかりにも生活保護法の適用を受けておるということは、これは何としても私ども会議員としては見のがすわけにはまいりません。実は、そういう基本的なものの考え方に立って、きょうもあすもかと言われるように実はしつこくこの問題をとらえているわけです。少なくとも私どもは改善改革の方向に行きたい。むしろ今日までこういう問題が不問に付されたということ自体が、私は国会に議席を置く者の一人として残念でたまりません。同時に、林野庁首脳部の現在に至るまでのものの考え方がわからない。まさに歴代長官の責任ですよ。いまの若林長官お一人の責任ではないが、過去数代にさかのぼる長官諸君の責任です。  そこで、私は、こういう機会に改善しなくてはならない、こう思うんです。これは少し想像がたくましゅう過ぎるかわかりませんが、田舎のことだ、山の中のことだ、幾ら低賃金に置いておいても、雇ってくれと頭を下げて頼みに来るだろう、だから低賃金で置いてよろしいということをもし歴代の長官が考えておったとするならば、先回私がきつい表現で申し上げましたように、まさに林野庁は、閉鎖的です、反社会的ですよ。そういうものの考え方で今日の事業経営ができますか。近代産業の一つの部門と言えますか。それが問題ですよ。たいへん説教がましい質問で恐縮ですが、非常にしつこくこの問題に取り組んでいるのは、そういう反社会的な閉鎖的な国家事業というものをわれわれは見のがすわけにはいかぬというのが、国政をあずかる者としての使命であり課題だと私は心得ておる。これはどうぞ今日この問題に直面をしておる現長官の胸に刻み込んでもらいたい。  さて、具体的解決をどうするかということはさして困難なことじゃございません。たとえば、予算総則を見ても、相当規模予算の移用あるいは流用が当然認められてしかるべきであろう、こう思う。のみならず、せんだって二、三の例を指摘したように、俗にいわれる公共林道、こういうものを一本つぶしてごらんなさい。私の試算によれば、今回額において四千五百円ずばり適用しても、四十億そこそこですよ。公共林道のために幾ら金を使っていますか。せんだって、長官から、監査報告は監査官個人の意見だというお話があったので、実は林野六法をわざわざ見てましたが、監査規程というのがあって、この規程に照らして監査官が監査を行なった答えとして、公共林道については、林野庁がやるべきものではないのにそれをやったんだと、こう書いてある。私の試算でいけば、四千五百円を積み上げても、四十億そこそこです。他面、公共林道等のためにやらなくていい金を林野庁が出している金は年間五十数億に及んでおるようです。やるべきことをやらないで、やらぬでいいことをやる。こんなむちゃな話はないじゃありませんか。問題はその辺にあると思う。  私は、先回、二、三の例を指摘いたしましたが、そのほかにもまだあります。二、三の実例を知っている。しかし、いまはそのことを暴露的に申し上げることが私の本旨ではない。しかし、その事実があるということを十二分に認知をするがゆえに、理屈に合わぬことはやめようじゃないか。それよりも、国有林野事業において一番大事なものは何か。それは、長官をはじめ首脳部の頭脳であると同時に、その頭脳を受けて伐採にあるいは搬送に従事をしている現場の諸君だと思う。それならば、七百五十円に満たないそういう安い賃金でこき使おうというものの考え方は、まさにこれは反社会的と言わざるを得ない。くどいようですけれども、いや、いくら安い賃金であったにしても、どうぞ営林局へ使ってくださいといって人が来るから、賃金は安くてもいい、もしそういう考え方があるとするならば、これは国家企業の近代産業の中における経営者のとるべきことじゃない、私はそう思う。いわゆる特別会計、独立採算というものは、そういう精神を踏まえておりますよ。採算を上げよう、同時に上げられた利潤というものは適切に開発のために投資をする、かたがた働いている労働者諸君に配分しようというのが独立採算の本旨であると私は考えている。ですから、自主交渉で話がまとまるものであるのか、あるいは調停に移行するか、その辺は当事者間でよく話をしていただきたいと思う。しかし、でき得べくんば自主交渉でまとめてください。万が一調停に移行する場合には、何としても公労委も財政当局も固有の意見を持っているでしょう。だから、ある程度双方において話を詰めて、いわゆる前向きの状態の中にかなり高額なものを積み上げて調停に移行するなら移行する、そういう方法をとるべきだと私は思うのです。いま私が試算した結果四十億になるかどうかということは、日給制において二百円、これを月額に直して四千五百円と言っているわけです。これは、林野庁の今日の歳入、歳出の状態からいけば、右にも左にもどうにもならないという財政の状態ではない、こういうように私は思っている。したがって、問題は、歴代連綿として続いてまいった反社会的な閉鎖的な林野庁に開放の時を迎えるかどうか、近代産業として出発するかどうかはまさに若林長官の双肩にかかっている。せんだって、農林大臣も、前向きの姿勢で検討するという答弁がありました。いままた、政務次官からも、同様趣旨のお答えがありました。ですから、先ほど来申し上げるように、在来は率をたてまえとしてまいったのでありましょうが、この際は額で是正すべきである。こういうことが八万数千余の林野事業を背負っている前線諸君の期待であり、そうして希望にこたえるゆえんではないか、こういうように思うのですが、たいへんどうも深刻なお話までしましたけれども、でき得べくんば長官の所見をひとつこの際明らかにしてもらいたいと思います。
  128. 若林正武

    政府委員(若林正武君) 先生の御注意もございましたが、労使双方でさらに話を詰めまして、積極的に労働条件の改善ということをはかってまいるつもりでございます。
  129. 森中守義

    ○森中守義君 政務次官、お聞きのとおりです。先ほど北村君に対する御答弁と同様ですから、これ以上のことは申し上げません。しかし、数回の委員会でこの問題を異常に取り組んでまいりましたのは、先ほど私が申し上げたとおりです。いやしくも国家行政機構の中に、そうしてわが農林省林野庁の中に存在するこういう問題を、極力こういう機会に除去できるように、大臣ともよく協議の上に、林野当局と積極的にしかも具体的に問題の解決ができるように御尽力願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  130. 久保勘一

    政府委員久保勘一君) 先ほどもお答えいたしましたように、当局であります林野庁長官においても誠意をもって最善の努力を傾けておられることは、御理解をいただいたと思うのであります。このことは、従来の林野庁長官におきましてもやはり同様の趣旨において今日まで御努力いただいていると思うのでございます。さらに、御意見もございますので、大臣にもお伝えいたしまして、十分努力をいたしますことをお誓いを申し上げます。
  131. 森中守義

    ○森中守義君 そういう御趣旨でたいへんけっこうでございますが、最後までどういう結末をみるのか、私どもは先ほど申し上げたような趣旨のもとに重大な関心をもって見守っているということを付言をいたしまして、今日の質問を終わります。
  132. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 本件につきましては、本日はこの程度にとどめます。  これにて散会いたします。    午後五時十八分散会