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1967-05-18 第55回国会 参議院 農林水産委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十八日(木曜日)    午後二時開会     —————————————    委員異動  五月十八日     辞任         補欠選任      北村  暢君     矢山 有作君     —————————————  出席者は左のとおり。     委員長         野知 浩之君     理 事                 任田 新治君                 山崎  斉君                 川村 清一君                 森中 守義君     委 員                 岡村文四郎君                 小林 篤一君                 櫻井 志郎君                 園田 清充君                 田村 賢作君                 温水 三郎君                 森部 隆輔君                 八木 一郎君                 和田 鶴一君                 達田 龍彦君                 中村 波男君                 村田 秀三君                 渡辺 勘吉君                 北條 雋八君    国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君    政府委員        農林政務次官   久保 勘一君        農林大臣官房長  桧垣徳太郎君        農林省農政局長  森本  修君        農林省農地局長  和田 正明君        林野庁長官    若林 正武君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君    説明員                農林省農政局参        事官       加賀山国雄君        農林省農地局管        理部長      中野 和仁君        農林省畜産局衛        生課長      高村  礼君        農林省園芸局経        済課長      小笠原正男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査  (昭和四十二年度農林省関係施策及び予算に  関する件)     —————————————
  2. 野知浩之

    委員長野知浩之君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  本日、北村暢君が委員を辞任され、その補欠として矢山有作君が選任されました。     —————————————
  3. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 昭和四十二年度農林省関係施策及び予算に関する件を議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 北條雋八

    北條雋八君 基本法農政の最も重要な柱であります構造政策につきましては、昨年度は政府農地管理事業団法案を提案しまして、そうして一応はその推進に乗り出したのでありますけれども、本年は非常に後退してしまいまして、調査費がわずかに二千五百万円という予算を組んでおります。政府は、構造政策を今後どう進める方針であるか、また、わずか二千五百万円の調査費だけで何を本年調査しようとしているのか、その点をまず伺いたいと思います。
  5. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 経営規模の拡大をいたしましたり、農業基本法で定めておりますような農政推進してまいるためには、土地の問題について種々考案をいたしまして、その結果、農地関係につきましてただいまお話しのような農地管理事業団法案を国会に提出いたしたのでありますが、二回とも審議未了になりました。それで、こういうことにつきましては、私どもといたしましてはあの構想に欠陥があるとは別に思っておりませんけれども、やはり二回も審議未了になりましたということにつきましては、政治的にもやはり一応の反省をしなければなるまい、こういうことで、さらに一そうこの際にこの考え方を取り入れて、構造政策全般について再検討をする必要があるではないか、この機会にひとつやろうということで、ただいま、昨年末から、農林省の中に次官を議長にいたしまして、省をあげて全般的な構造政策についていろいろ再検討いたしておる最中でございますが、その中には、農地関係についてもいろいろな角度から再検討をいたしており、なるべく早くこの結論を得たいと存じまして、みんながたいへん張り切って勉強を続けておってくれるわけでありますから、大体七月か八月にはわれわれの構想をまとめまして、これをぜひ来年度予算には組み入れると同時に、政府農林政策としてまたいろいろ皆さん方にも御相談をいたし、御協力を得たい、こういうふうに考えておるのでございます。
  6. 北條雋八

    北條雋八君 昨日も本会議で私は質問をいたしましたのでありますが、農地管理事業団法案に対しましては、その趣旨につきましては私のほうの公明党も実は賛成であったのでございますが、そのやり方として、土地を拡大する比較的まあ恵まれた者は非常によくなる法案でありまして、一方、離農する零細な農民は何ら恩恵も浴さない、零細農切り捨て的の政策であるということと、もう一つは、事業団というものをつくらないでもいい、役に立たない事業団をつくることは反対だという意味反対をしたわけであまりす。その趣旨をどこまでも即刻に生かさなければならないこの際に、全然本年はこの予算が計上されていないということは、私は非常に間違っているというふうに思います。それにかわる法案をいま伺いますと鋭意考えておられるようでありますが、具体的にはっきりしたことがわからないならば、大体の御構想をこの際伺っておきたいと思います。昨日伺いましたけれども、そのお答えは本会議ではありませんでございましたから、重ねてこの際伺いたいと思います。
  7. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ただいま申し上げましたように、まだ結論は出してございませんので、何とも申し上げかねるわけでありますが、その推進会議の中でいろいろあらわれております意見の方向といたしましては、御承知のように、五年前に制定されました農業基本法、あの基本法を制定いたしました当時には、私ども賛成した一人でありますけれども、あれを考えました当時の客観的情勢というものが五年後にこういうふうに日本の産業構造に著しい変化が生ずるであろうということはおそらくあまり予測されなかったのではないか。なるほど、経済成長はするにしても、御承知のような急速な伸びであります。したがって、わが国産業構造全体から見ますというと、いわば跛行的な成長でございまして、低生産性部門といわれております中小企業並びに農業生産性は、やはり鉱工業生産伸びに比較いたしますと落ちております。そこで、したがって、基本法で想定いたしました時代よりも他産業が著しい勢いで発展いたしました結果によって、それに必要な労働力農村に求められてきました。そのために、農村労働力が逐次流出をいたしておる。そういうことに対しては、われわれは、労働力で補うというよりも、むしろ省力をして、そうして機械化近代化を行なうことによってかえって生産を上げるということを考えなければならない。北條さん御承知のように、ヨーロッパの国の中には、農業従業者が逓減しているのにもかかわらず、高度の生産性を維持して、そうして一つ農業経営単位のその一つ単位経営体としては逐次経営規模が拡大されて、そうして、労働力つまり従業者が少なくなっていくにもかかわらず、生産性は維持あるいは上昇していく。私どもといたしましても、地力や地形は若干それらの国に比して相違はあるといたしましても、わが国もやはり鋭意こういう省力化のために機械力を用い、近代化すること、同時に、人間の頭をしぼって地力培養というようなことによって多収穫、高能率を上げていくようにつとめるということが大事ではないか。  そういう方向でありますけれども、基本的にはやはりどうしても経営規模を広げてまいる必要がある。そのためには、現在の農地法というようなものを現在の時点でながめてみますというと、今日の時代にわれわれの考えておる方向を実現してまいるためには、若干の修正を必要とするんではないだろうか。あるいは移譲をしやすくするとか、そういうことについても、税法その他でも勘案しなければならない点がございますから、そういったようなことについて非常に掘り下げて勉強いたしております。  同時にまた、ただいま御指摘のように、離農問題等につきましても、たとえば農民年金制度というようなことを政府は申しておりますが、これは一般にも非常に御賛成をいただいておる向きも多いのでございますが、ただいま政府部内でそういうことについてそれぞれ集まって検討中でありますから、何とも申し上げかねるのでありますけれども、私ども考え方としては、ヨーロッパ諸国にございますように、小農貧農切り捨てとかなんとかいうそういう考え方ではございませんし、現在もまた昔と違いまして、農業に従事していてくださいと申すよりは、農業から離れて他産業に従事するほうが賃金所得が多いという現状においては、まるで昔の離農とは違う傾向があることも認識しなきゃなりませんが、そういうことを勘案いたしまして、私はやはり土地というものの流動性を強化するという考えの一方においては、先祖代々の土地を放して他産業に転換してそして一方において農業経営を拡大していくという国の方針賛成をしていただく方々には、離農しやすくしてあげるために、年金制というようなものを考えておるヨーロッパ諸国考え方というものは大いに参考にすべきではないかと、こういうような意味も含めまして、もう一つは、普通に考えられる農業後継者に安心して農業を継承していただくためにという純農業政策的立場から年金制度というものを考えておる、そういうようなことを総合してどのような構造政策に参るべきであるかというようなことについて鋭意勉強を続けておる最中でございます。
  8. 北條雋八

    北條雋八君 大体の御趣旨はわかりました。貧農切り捨てというのは、なるほどお説のとおり、農業から転出してしまうことが切り捨てではなくて、そういう人が他産業に転職したことによってなお一そう農業に従事している以上に生活も楽になるし、結局幸福になれば、切り捨てにはならないと思うのであります。こういう趣旨でいまのお話は一応はうなずけますが、それには農林省だけでは徹底しないと思うので、これは各官庁協力してそういう貧農切り捨てにならないように努力していただきたいと思います。  次に伺いたいのは、構造政策の重要な一環としております農業構造改善事業につきまして伺いたいと思うのですが、御承知のように、この事業は、指定された市町村が三千百市町村であります。これが全域事業を行なうのではありませんで、その区域の中の二、三の部落について集中的に事業を行なうこととするというものでございますが、本事業は、四十三年ころには、全部指定された地域の新事業が終わることになっております。四十五年ころになれば、全部それが完了するという見込みであります。そうなった場合に、その後政府としてはどうするお考えであるか、もうすでにいまごろからあとの措置考えておく必要がある時期に到達しておると思うのです。これは、農業団体ですら、これが完成したところで、点と線のほんの一部分のものであって、全域にわたっての構造改善と言うことはできない。四十五年に全部完了したって、全部構造改善ができたその後、政府としてはどういうふうに措置されるか、そのお考えを伺いたいと思います。
  9. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 構造改善事業につきましては、部分的には批評のあるところもございますけれども、私どもが大体調べましたところによりますというと、最近ことに構造改善事業がたいへんに多くの地方農民からその評価をされまして、最近における構造改善事業に対する要望は非常に多くなってまいっております。私ども最近も二、三実地に見て参ったのでありますが、そこに従事いたしております農村の人々はたいへんな喜び方でございます。こういう事業につきましては、ただいま、お話しのように一町村の一部分ないし広いところで二カ所くらいで、これは、私どもといたしましては、地方からの要望も非常に多い次第でありますから、本来ならばなるべくもっと多くやるべきであると思いますが、当初の制約された計画に対する予算のことなどもございまして思うにまかせなかったわけでございますが、四十六年に一応計画は完了するということでございますけれども、これがいまのような情勢でさらに多くの希望があり、成果をあげてまいっておるのでありますから、さらにこういう事業をどのようにして効果をあらしめるべく展開するかというようなことも、先ほど申し上げました構造政策推進会議の中であらためて検討いたして将来に資しようと、こういうふうに考えております。
  10. 北條雋八

    北條雋八君 それにまあ関連しませんけれども、この際伺っておきたいのは、広域農業経済圏整備事業というのが昨年二カ所で始められたわけでございますが、さらに今年は八カ所ふやしましてやられるように承知しております。本年の新規着工の個所ですね、それはどこでありますか。また、いままでの事業経過とその事業を今後どう発展させる政府方針であるか、その功罪をどう見ておられるかについて伺いたいと思います。
  11. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 広域経済考え方につきましては、昭和四十二年度予算の編成にあたりまして各議員さんの中からたいへんに何と申しますか要望がたくさん集まっておりますが、私どももその期待に沿うようにいたしたいと思っておるのでありますが、私の手元にただいま資料を持っておりませんので、政府委員のほうからお答えいたします。
  12. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 御質問いただきました全部についてお答えいたしかねるかと思うのでございますが、農業経済圏整備事業と申しますのは、従来の農業構造改善事業が、御案内のとおりに市町村地域単位ということでございまして、それを越えます地域についての流通出荷加工等の施設などにつきましてもっと広い範囲の利用を可能にする規模のものを整備する必要がある、そのことについて実験的に十カ所の地域についての調査をいたすわけでございますが、そのうち四十一年度に二カ所を事業化いたし、本年度は残り八ケ所を事業化するということで予算措置を講じたわけでございます。その事業成果等につきましては、まだ始めたばかりでございますので、しかとしたお答え担当局もいたしかねると思うのでございますが、この事業実施いたしましてその成果等考えました上で、将来やはり生産なり流通なり出荷なりというものが規模大型化が行なわれてまいるわけでございますので、その点に即応するような、御質問にございましたような次期対策という中で取り上げてまいりたいというふうに思っておるのでございます。  本年新規実施をいたします八カ所と申しますのは、秋田県の雄物川地区、山形県の置賜地区、静岡県の小笠地区、新潟県の上越地区、愛知県の東三河地区、鳥取県の中部地区、愛媛県の南予地区、熊本県の天草地区、この八カ所でございます。なお、昨年来引き続いて継続いたしております地域は、茨城県の石岡地区、宮崎県の霧島地区でございます。
  13. 北條雋八

    北條雋八君 そうすると、まだ始めたばかりで、その功罪というものは見通しがつかないというお話のように伺いました。そうすると、今後これをどういうふうにやるか、いまのところは答えられないというふうに承知してよろしゅうございますか。
  14. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) ただいま申し上げましたように、農業地域的な構造改善について一つの試みとして十カ所をやってみようということでございますので、引き続きどういうふうにやるかという問題は、一般構造改善推進事業次期対策というものをどう考えるかという際にあわせて検討したいというつもりで事務当局としてはおるわけでございます。
  15. 北條雋八

    北條雋八君 そういたしますと、一応この十カ所を指定してこれをやってみて、それ以上は当分はふやさないと承知してよろしゅうございますね。
  16. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) ふやさないというふうに断言するつもりはございませんけれども、まずこの十カ所の事業実施とその成果検討いたしましてどうするかということをきめたい。現段階におきましては、少なくとも昭和四十三年度には、調査——まあ事業実施をやる事前の調査ではございませんが、調査をやるというような意図は持っておりません。
  17. 北條雋八

    北條雋八君 政府として、しかし、これをやり出してまだ実績が上がらないにしても、これはやって非常に効果がありそうだとか、あまり大した効果がなかったというような見通しというものは、どういうふうに考えていらっしゃいますか、その点は。
  18. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) ただいま申し上げましたとおり、事業実施に着手をしたばかりでございまして、この段階成果を判定するわけにはまいりません。また、見通しとしてどういうことになるだろうかということもなかなか言いがたい段階でございますが、一種の助成的な投資をいたしましても、それに即応する生産なりあるいは出荷の態勢というものを整備する必要があるわけでございまして、今後の行政上の指導と相まって成果が出るか出ないかということがきまってくるのだろうと私ども思っておるのでございます。でございますので、私どもとしては、いやしくもこの事業をやるわけでございますから、所期の成果が出るように指導をいたしてまいたりい、また、その上に立って今後農業構造改善事業全体に対処するような施策として取り上げてまいりまたいというふうに思っておるわけでございます。
  19. 北條雋八

    北條雋八君 それでは、次に移りますが、構造政策をごく大ざっぱな観点から言いますと、何よりも問題は土地と水の条件をよくするということに尽きると思うのです。すなわち、基盤整備がきわめて重要であるのでございます。この事業土地改良長期計画に基づいて行なわれておるわけでございますけれども、何ぶん事業量が膨大であるために、昨日これは本会議でもお尋ねいたしましたことでありますが、即効的な効果を期待するということは困難だと思うのであります。また、農業情勢変化はまことに目まぐるしい。しかも、耕種農業にははっきりとあらわれておりますように、わが国農業は停滞ないし衰退の徴候があらわれておることは、白書でもはっきりしております。私どもはこのような情勢を見ましていつも思うことは、最近の風潮といたしましては、あまりにも経済合理主義に走るといいますか、これを言いかえるならば経済観念論争にとらわれてしまっているのじゃないか。技術面をどうもおろそかにしているように思うのです。もともと、農林省技術官庁であるのでありますから、その点、私は何か弊害があるのじゃないかというふうに思うのです。たとえて言うならば、生産性を重視して機械の導入を急ぎ過ぎる、また、土地改良機械化に適合した品種の育成が非常におくれているというようなことも言えるんじゃないかと思いますが、また、無機質の肥料の多投構造を繰り返しまして、土壌酸性化や、あるいは微量要素の欠乏を招いて、土地生産力を非常に減退させているという事態などがそのあらわれだと思います。このような技術軽視風潮が最近強いと思うんですが、大臣は、これに対してどういうふうに認識されておりますか、また、どう対処されようとしておられるか、その点をお伺いいたします。
  20. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 自分のことを申しまして申しわけがありませんが、わかりやすく申すためにお許しを願いたいんですが、私は、農林省に入りまして、いつもあることのようですが、それぞれの担当部局大臣事務報告をいたします。それを聞いておりまして一番興味を覚えましたのは、技術会議事務局長報告統計調査部報告でございまして、なぜ私がかようなことを申し上げるかと申しますと、私は長い間化学工業で働いておりまして、大体、いま、宇宙開発にいたしましても、あらゆる面の近代科学の競争の時代に入ってきております。そういう意味農林省というものをながめましたときに、ただいま御指摘のありましたように、技術について非常に大事な役所であります。そういう意味で、技術会議案内によりまして最近数カ所の試験場を視察いたしました。そういうことから受けた素人的印象で相済みませんが、私は、農林省内部において、むしろ技術研究のほうに非常な進歩があって、それを活用する行政部門に立ちおくれがあるんではないかと判断をいたした次第であります。多くの事務官僚のおるところでさようなことを申すべきかどうかわかりませんけれども、率直に申し上げますと、私はそういう印象を受けたのであります。私どものほうの研究所には、御承知のように、たくさんのそれぞれの専門研究所を持っておりますが、まだ全部を見たわけではございませんけれども技術的研究については非常な研究を続けて、アジア諸国においてもわが国試験場研究所にみな勉強に参るような次第でございまして、これをどのようにして行政の上に生かすかということがこれからの農業政策の重要な部分だと思っております。幸いにして、先ほど御報告いたしました構造政策推進会議等におきましても、やはりこういうことに着目をいたしまして、私どもの必要なる農業技術、たとえば地力培養であるとかそういうための土壌改良にはいままでのところの研究をどのように生かすべきであるか、あるいはまた、畜産にいたしましても、幾多の牧草がございますが、わが国の各地に適した牧草はどういうものをどのようにしていったらいいか、かなり研究が進んでおります。そういうことを行政面に生かしてまいるのが私ども全体の責任であると思っておりますので、お気づきの点はなお教えていただきたいこともたくさんございますが、農林省におきましては、私がただいま申しましたように、技術改良、そういう面に特段の力を入れてまいりたいと思っております。
  21. 北條雋八

    北條雋八君 いまあげました問題について、なお事務当局から伺いたいのでありますが、この土壌改良の問題は、わりあい少ない経費できわめて即効的にその効果が期待できると思います。労働生産性は上昇しても、土地生産性すなわち反当収量が低下するという最近の憂うべき傾向を是正するためにも、組織的な土壌調査によって土壌改良をこの際重点的に進めるべきであるということは昨日も私は伺ったのでありますが、そういう土壌改良については、耕土培養法というりっぱな法律が現在ありますし、農業改良資金によって無利子の融資が行なわれておりますが、土壌改良についてどういうようにその資金を運用し、また、現在どのようなことを政府でやっておられるか、大体の経過、また、今後の見込みを教えていただきたいと思います。
  22. 加賀山国雄

    説明員加賀山国雄君) たいへん技術的にわたりますので、私からお答え申し上げます。  ただいま御指摘のとおり、戦後の米の生産力考えてみましても、三十年以後かなり上昇カーブでございましたが、最近、三十七年を頂点といたしまして、若干横ばい、スローダウンというかっこうになっておりますが、これは、もちろん気象条件等関係もあったわけでございますが、ただいま御指摘のとおり、地力の問題がかなりその根底にあるというふうにわれわれ技術者考えておりまして、それに対して適切な対処方針を立ててこれまでやってきたわけでございますが、過去の経過を少し申し上げますと、戦後の食糧不足時代に、昭和二十二年でございましたけれども低位生産地調査という調査を開始いたしまして、要するに、全国で約百九十万町歩ほどの生産力の低い土壌調査をいたしました。それは、昭和三十年過ぎましたころに一応終止符を打ちまして、昭和三十四年から調査の方法を変えまして、基本調査という調査を開始いたしております。これは、全体の畑と水田の約八割、四百八十万町歩を対象にいたしまして、昭和四十八年までに終了の予定でございます。そのようなことで、その内容は、全国に約三百人の職員を配置いたしまして、非常にこまかい土壌の基本的な調査をいたしております。非常に技術的にわたりますが、こまかい調査をいたしまして、それに対する対策というものを考えているわけでございます。現在、二百九十万町歩ほど終了いたしまして、今後なおこれを引き続き早い進度で進めてまいりたい、そのように考えております。  その調査の結果出ましたいろいろの土壌生産力の阻害要因に対しては、先ほど御指摘のように、当初は補助金をもって行ないましたけれども、最近は、農業改良資金の中で土壌改良のためのいろいろな対策資材を投入する、そのような対策を現在続けているわけでございます。  なお、それだけでは十分ではないとわれわれ考えておりまして、昭和四十一年度の予算から、土壌診断施設というものを全国約二百カ所に五カ年計画で設立いたしたい、そのように考えておりまして、こういう土壌診断施設というのは、農業改良普及所というのがございますが、そこに簡単な土壌の診断のための器具を設置いたしまして、農業改良普及員が農家の方が持ってこられた土壌をそこでいろいろテストいたしまして、どのような欠陥があるかということを明らかにいたしまして、それに必要な対策を農家の方と一緒に考えながらやっていくと、そういうふうな仕事を五カ年計画で始めまして、昭和四十二年度予算はその二年度目ということでございます。特にその中で微量要素という問題がございまして、これはたいへん検定その他がむずかしい、非常に少ないものでございまして、これは特に各県の農業試験場微量要素の検定施設を補助いたしまして、昨年昭和四十一年度に十五カ所、四十二年度十五カ所、そういうふうにだんだんと微量要素の検定というものを進めまして、要するに、土壌中における微量要素の必要度なり、どのような微量要素をどのくらい加えたらそこの土壌では生産力があがるかということをはっきりいたしましてその対策を考えたい、そういうのが現在のわれわれのやっております仕事でございます。今後もこれは年次的な計画をいたしまして推進をしてまいりたいと、このように考えております。
  23. 北條雋八

    北條雋八君 そうしますと、土壌調査ということにつきましては毎年やっておられると。そして、それに対する肥料その他の欠乏を補うために役所としてもそれぞれ指導をしておられるということでありますから、これは毎年土壌調査というものはどのくらいの経費をもってやっておられるのか、それはわかりましょうか。
  24. 加賀山国雄

    説明員加賀山国雄君) 最近の土壌調査の面積の年度別のペースでございますが、先ほど申し上げましたように、できるだけ早く土壌調査を終わって、この土壌調査の結果、土壌図というのをつくるようになっております。この土壌図ができますと、どこの地点におきましてもその土壌図を見ますとどのような土壌的な欠陥があるかというのがわかるようになっておりまして、これは諸外国等でもこういうようなことが早くから始められておりますが、そういうことでございますが、いろいろ予算的な問題もございまして、現在は毎年十六万八千町歩というペースで進めております。でございますから、昭和四十二年に行なわれます土壌調査の面積は、十六万八千町歩でございます。そのために計上しております予算が、約四千四百万円の予算を計上いたしておるわけでございます。
  25. 北條雋八

    北條雋八君 私は、その点について、できるだけこの際力を入れべきであるということを申し上げたいのでありますが、役所でつくっております「肥料要覧」という、これは年報になっておりますが、これで見ますと、ほとんどプリントが毎年おんなじなんです。ちっとも数字が変わっていないんです。これは一九六六年、一九六三年のを持っているわけで、それと照らし合わしてみると、土壌と肥料というところでもほとんどそっくりで、何ら調査していないんじゃないかというふうに思ったので伺ったわけでございますが、その点は私は非常に疑問に思うのです。これはごらんになればわかります。
  26. 加賀山国雄

    説明員加賀山国雄君) ただいまの点につきましてお答え申し上げますが、北條先生の御指摘のとおり、「肥料要覧」でございますか、これは毎年発行するようになっておりますが、そこに計上されております不良土壌の面積というのは、昭和三十年、三十一年、三十二年に、先ほど申し上げましたとおり、低位生産地調査の一環としていたしました調査でございまして、その後、先ほど申し上げましたように、昭和三十四年から調査の方法を基本的に変えております。そのために、集計のしかたによりまして新しい数字が出るわけでございますけれども、阻害要因が徴量要素なりそういうものだけではございませんで、たとえば十三の項目につきましていろいろ土壌の性格というものを調べてまいっております。そういうことで、三十四年以降は、基本的に調査のしかたが違ったということで、それと同じような表でもって掲載ができないということでございまして、その点は確かに私どものほうもそのような時点の表であるということを明示しないということについてはお叱りを受けなければならないと思いますけれども、そういうものでございます。しかし、それとは別に、先ほど申し上げましたように、年々そのような、もっと広い新しい構想土壌調査を進めておりまして、ここにはっきりした数字を持ち合わせないのでございますけれども、もし御必要ならば、最近の要するに微量要素欠乏土壌というのはどのくらいの面積になっておるかということは、その調査の結果を集計いたしますと出てくるわけでございますが、非常に膨大な調査でございますので、たいへん申しわけございませんけれども、なかなか集計が間に合わない。どうしても地図をつくるということに中心が移っております。そういうようなことでございます。
  27. 北條雋八

    北條雋八君 それに関連してついでに伺いますけれども、このやはり「肥料要覧」の土壌の分類がありますけれども、その中でいろいろ土壌の種類を分けてありますが、酸性土壌の項目の中に不良火山性土壌が包含されるべきものだと思います。また、酸性土壌のほとんどはマグネシウム欠乏土壌であると思うのです。こういうのがみんな別々に書いてありまして、これは酸性土壌にひっくるめて書かるべきものだと思うのです。ですから、結局、酸性土壌の面積というものは、マグネシウム欠乏土壌、それから不良火山性土壌、これをみんな寄せたものが面積に出なければならない。そういうものが酸性土壌とまた別にあって、意味がない分類だと思っておりますが、これらの点をひとつ精細に今度調査の方法を練り直していただきたいというふうに思います。
  28. 加賀山国雄

    説明員加賀山国雄君) 確かに、御指摘のとおり、そういうような分類になっておりますけれども、これは最も主要な因子を取り上げまして、それによる分類ということでございますので、たとえば火山灰土壌が必ずしも全部酸性かというと、そういうことには相ならないのではないかと思っております。また、酸性不良火山灰土壌が全部マグネシウム欠ということにはならないと思います。一番そこで強くあらわれた状態というものを吟味して分類してあるわけでございますが、いま先生のおっしゃいますように、土壌の分類のしかたというのは、基準の取り方によりましていろいろな数字が出てまいりますが、一番最近の新しい方法でやっております基本調査の資料等を整理いたしまして、できるだけ早い機会にこのような分類方法を確立したいと、このように思う次第でございます。
  29. 北條雋八

    北條雋八君 それに関連しまして、微量要素のことでございますが、これは昨年「読売新聞」にちょっと出ておりましたのですが、佐賀県で、微量要素をやって、そうしてやらないところと比較して、これは民間の試験でありますが、その成績を新聞に発表しているのを見ますと、非常に反収が増加しております。一番多いのは、反収が日本一の秋田県の五石七斗五升よりももっと多くて五石九斗幾らと出ております。しかも、その民間でやったのはみんな農家の圃場でやったのですが、全体で二十カ所で三十町歩についてやっておるのですから、そう小さな試験じゃないと思うのです。平均を見ますと、二十カ所の平均面積が約一町五反歩について試験をしたわけです。この平均が五石九斗反収になっておるのです。このことにつきましては、かつてこれが出た当時、農林省に行って、一度これはほんとうかどうか役所としても調査される必要があるのじゃないか、もしこれが事実とすれば非常に参考になるのじゃないかということでこの調査を御依頼したことがありますけれども、その後これに対してどう調査されたか、その結果を伺いたいと思います。
  30. 加賀山国雄

    説明員加賀山国雄君) ただいま先生の御指摘ございました問題につきましては、私直接お伺いいたしましたわけでもございませんでしたけれども、そういうことがあったということは存じております。かつ、昨年五月に、たしかこれは「読売新聞」の九州版だと思いますが、それにただいま御指摘のような記事が載ったことも最近確かめたわけでございますが、そういう事実もあったわけでございます。  佐賀県は、御承知のように、昨年全県平均五百四十二キロという非常に高い反収をあげまして、全国一位であったわけでございますが、その原因が何であったかということにつきましては、技術的にいろいろ検討をいたしました。かつ、ただいま御指摘のような地点においてそのくらいの面積でいろいろと試験をなさっておるということも県を通じましていろいろと情報を集めておったわけでございますけれども、はっきり申し上げまして、いま御指摘の件につきましては、御指摘のような必ずしもいい結果が全部出ているというふうな情報は現在のところ得ていないわけでございまして、これはわれわれが直接現地に行きまして調査をいたしたわけでもございませんけれども、われわれは特に農業改良普及員というそういった補助職員を設置いたしておりますので、農業改良普及員がその地点でたしか坪刈りを行なっていると思いますが、かような結果等を情報としては得ておりますが、なお今後研究する余地があるというそういうふうな現在の段階の判断でございます。それくらいの情報を得ているわけでございます。
  31. 北條雋八

    北條雋八君 実際にまだ調査されていないようでございますから、とやこうここでは言えないかもしれないのですけれども、しかし、これは、坪刈りでも何でもない、三十町歩にわたる二十カ所の圃場の稲を全部刈り取ってやったんだと、こう言っておるわけなんです。日本一のやり方とは全然違うのです。日本一のやり方は、わずかな一反歩だけで多収穫を競うので、金が幾らかかろうと、とにかくたくさんとれればいいといわれたのですが、これは実際農家がやったその実績ですから、もしこれが事実とすれば非常に参考になると思うのです。新聞に出ておりますとおり、肥料の三要素のほかに、モリブデンとかマンガン、それから酵素、珪酸、銅、そんなものを混ぜたものをやったといっておりますが、なおこの点はひとつ精細に県に依頼するなりこちらから出張して調査をして、その結果を御報告願いたいと思います。この佐賀県は、一帯に収穫が非常に多くて、昨年も一等賞になったわけですが、あれは、御承知のとおり、クリークが非常に多いので、クリークの泥をあげまして土壌をつまり改良して、それがおもな原因だと思いますけれども、やっぱり土壌をよくするということは非常にこの際必要だと思うので、くどく申し上げる次第でございます。
  32. 加賀山国雄

    説明員加賀山国雄君) われわれのほうも十分に調査等いたしておるわけではございませんので、今後十分に検討いたしまして御報告申し上げたいと思っております。
  33. 北條雋八

    北條雋八君 次に、自立農家と協業の問題をちょっと伺いたいと思います。  本年の白書でも述べておりますように、自立農家の定義は、三十五年度は四十八万円、それから三十九年度が七十四万円、四十年度は八十三万円以上の農業所得をあげている者が自立農家ということになっておりまして、自立農家は年々底上げされております。他産業従事者の所得が年々上昇していきますから、自立農家もそれに従って底上げされるわけでありますけれども、物価問題がやかましくなりまして、また、いままでのように農業所得が上がりましても農業所得の上昇分の相当部分が農産物の価格が上がるので埋め合わせるといいますか、逆に言うならば、いままでのように農業所得上昇分の相当部分を農産物価格の上昇によっておんぶしているといった安易なやり方がいつまでも続くとは考えられない。この矛盾を突破いたしますには、現在安定していると考えられております二町歩、三町歩の階層でもまだまだ不十分であるという時期がまた早晩くるのじゃないか。だんだんに面積をふやしていかなければ、自立農家という資格が得られなくなるということになると思うのであります。ですから、もっと大きい経営規模をいまから見通して、そうして育成しなければならないと思うのでありまして、その点は、八郎潟などの実験をやって、まあ一つの試みだと思います。そういうようにだんだん規模を大きくしなければならぬということはわかっておりますし、大型機械の導入も前提にしますと、経営体としては最小限度どのくらいの面積を目安と考えられておるのか、政府として。現時点でなしに、やはり将来を見通して最小限度どの程度を目標にしておられるのか、その点を伺いたいと思います。
  34. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 御指摘のとおり、現段階といいますか、昭和四十年度のいわゆる他産業の勤労者世帯における一人当たり所得というものと均衡する所得を得るための農家所得水準というものが八十三万円程度である、それをもってまず自立農家という定義に用いておるということで御報告を申し上げておるわけでございますが、これが経済成長に伴いまして勤労者世帯の所得も上がってくるいうことになってまいりますと、自立経営農家の所得規模も大きくならざるを得ないわけでございます。これを農産物価格の上昇のみで吸収するということはとうてい不可能であると私どもは思っておるのでございます。たとえば今後十年後の自立農家の経営規模というものはどの程度であるべきであろうかということにつきましては、大臣がこの席でもお話を申し上げました省内の構造政策推進会議の中でいろいろ議論をいたしておる段階でございます。  自立経営農家の規模につきましては、耕種中心の農家、耕種の中でも、野菜、果樹、米作、そういうもので違ってまいります。また、畜産農家、畜産農家の中でも、酪農、養鶏、養豚というものはおのずからまた違ったものに相なってまいりますので、単に耕地規模のみで一律に申し上げるわけにまいらないのでございますが、私がいままで試算をいたしてみましたところでは、少なくとも米作中心の経営ということになりますと、十年後の予想せられる均衡所得を得るための経営規模は三・五ヘクタールをこえる経営でなければむずかしそうであるということが、中間の検討ではそういう数字が出たことがあるのでございますが、なお現在検討中でございますので、ただいま明確に幾らと言うわけにはまいらないのでございますが、一応そういうような検討をしたことがございます。
  35. 北條雋八

    北條雋八君 三・五ヘクタールというのはいつごろの時点で押えたのかちょっとわかりませんが、従来からの推測で言えば、こんな程度ではとうてい将来自立農家経営ということはできないというふうに思います。  それはいずれにいたしましても、規模をふやす上に、現在では、なかなか地価も高いし、流動化も緩慢であるし、容易なことではありませんので、どうしても今後は経営規模をふやすには協業というものが大きな比重を持ってこなければならないと思うのであります。そうなりますと、基本法の自立農家中心の規定に非常に疑問がわいてくるわけでございますけれども、この協業については、これは農業白書にも報告されておりますように、最近一年間で設立された協業体が三百十二あります。そうして、解散した協業体が四百八十一ということで、解散したもののほうがはるかに多くなっておるのであります。全体の協業体の総数は五千五百七十となっておりますから、約一割にも近いものが一年間の間に事業に失敗して解散しているという驚くべき事実があるのでございます。政府は、補助金や融資で協業体設立を推進しておりますけれども、せっかく設立された協業体がこのように多数解散する原因は一体いかなる理由なのか、また、今後この協業体を育成するについてどんな指導なり助成をしていこうとしておられるのか、また、協業のあり方についてどう考え、今後どう指導助成する方針であるか、その点を伺いたいと思います。
  36. 森本修

    政府委員(森本修君) ただいま御指摘になりました数字は、協業体の中でいわゆる協業経営と称するタイプのものについての御指摘のようでございますが、年次報告にも記載いたしておりますようなことで、解散及び新設の協業体の数につきましては、ただいま御指摘のような傾向に、なっております。ただ、最近の趨勢を見てまいりますと、ここ数年来協業経営の数は漸次増加をしてきて、四十一年度にさかのぼる一年間の傾向としましては、いま御指摘のように、若干解散の数のほうが新設よりも上回るというふうなことで、総体として減少してきておりますが、最近の数年間を通観いたしました傾向としては、やはり協業体の数としては増加しているというふうに判断するのが適当ではなかろうかというふうに思っております。  また、解散をいたしましたものも、いわゆる協業体として失敗をしたというふうなもののみではございませんで、私どものほうで解散の理由を調べましたところでは、たとえば、個別経営が有利と判断をした、あるいは個別経営と協業体との労力の配分上の問題というふうなことが解散理由の相当大きなウェートを占めております。もちろん、中には、若干資金繰りがつかないといったような点もございますけれども、総体として見ますれば、そういった個別経営で行くか協業体で行くか、どちらが有利かといったようなことを判断して、個別経営のほうに専念するといったケースが多いものと思うわけでございます。  御承知のように、協業経営が成立いたしましたいろいろな動機、要因等を考えますと、新しい作物を導入するというようなときにむしろ協業体でもってまず始めるというふうなケースが多いわけであります。個々の農家では技術経営が不足しておるから、他の技術経営の経験が積んでおる農家と一緒になって新しい経営をやっていくというようなケースが多いわけでありますから、そういった目的が達成をされて解散をしたというふうにも見える解散理由が多いわけでございます。そういうふうに最近の傾向としては判断されるのが適当かと思います。  なお、協業体の育成につきましては、御承知のように、各種の機械その他施設の補助、こういったようなものも農業協同組合あるいはいわゆる営農集団というものに補助をしておる例が多いのでございまして、農林省としてもそういう補助助成あるいは制度金融を通じて協業体の育成には力を尽くしております。今後とも力を尽くしていきたいと思います。
  37. 北條雋八

    北條雋八君 いまのお話でありますけれども、解散の理由の一つに、協業をやって目的を達したからまたもとへ戻して解散して個別的にやることになったものもあるというお話でありますけれども、私はそれが納得できないのでございます。解散する以上は、やってみて、採算上もあるいはまたその他の点において個別のほうがいいということで、やっぱり失敗が大きな原因じゃないかと思うのです。もちろん、その中には、収益の配分上のことから解散したのも相当あったと思うのですが、その点、一度やってみて、一応目的を達したから解散するというのは、どういう場合でしょうか。
  38. 森本修

    政府委員(森本修君) 私が申し上げましたのは、協業経営が解散をいたしましたのは全部が全部経営に失敗して解散をしたと見られない事例があるという一例として申し上げたわけであります。  なお、敷衍をいたしますと、御承知のように、協業経営が増加をいたしましたのは、畜産部門でありますとか、あるいは果樹園芸部門でありますとか、いわゆるそういった選択的拡大が進んでまいりました時期とほぼ照応して経営体の数が増加をいたしておるわけであります。そういう点から見ますならば、新しい選択的な作物を導入するという一つの形態として協業体で出発をするというものがかなり多いのではなかろうかというふうに推定をされるわけであります。なぜそういった協業体としてまず選択的なものを取り入れるときに出発したかということになりますと、先ほど言いましたように、もちろん経営上の問題もありましょうが、組織、経験、あるいはリスクといったような観点から、個別的な企業経営で始めるよりは、協業体で始めて、そこで知識経験を積んで、しかるべき時期にはその経験を個別経営に生かすというようなケースもかなり含まれておるのではないか。これは計数的にどういう割合がどうであるかということはちょっと想定はしかねますけれども、そういうようなケースがかなり含まれておるのではないかというふうに推測をいたします。  そういう点からいたしますと、先ほどの解散理由とも照らし合わせますならば、そういう当初の目的がほぼ達成をされて解散をしたというものもあるのではなかろうかというふうに申し上げた次第でございます。
  39. 北條雋八

    北條雋八君 私は、その作業を共同でやるということは、これは非常にけっこうだと思うのでありますが、協業で経営をするということは、やはり収益の配分で必ず長続きはしないのではないかというふうに思います。現在、協業体の大部分をそういう経営そのものを共同でやっているというのはどのくらいありましょうか。
  40. 森本修

    政府委員(森本修君) 四十一年度で申し上げますならば、五千百五十七ということになっております。もちろん、その中には、すべての作物を全面的に協業体で経営をしているというものもございますし、あるいは、作物の一部をいわゆる部門協業経営ということで協業体でやっておるものもございます。数としては、部門協業経営というのが圧倒的に多いという実情でございます。
  41. 北條雋八

    北條雋八君 私の伺っているのは、そういう意味でなしに、全面協業というのですか、そういう協業をやっているのがあるのでしょう。
  42. 森本修

    政府委員(森本修君) 御質問趣旨がちょっとよくわかりかねるわけですが、協業の中にも二色ございまして、個別の経営をやりつつ、機械の共同利用でありますとか、あるいは施設の共同設置というふうなことで、いわゆる作業の共同といったような、ことばで申しますと協業組織と言っておりますが、そういうものもございます。それからある作物についていわゆる経理もその経営体に帰属をしてやっておるものもございます。ただ、私がいま申し上げました全面といいますのは、その集まっておりますところの農家の全部の作物をそういう協業体の共同の計算のもとでやっておる、それから一部の作物について経理計算はその協業体でやりますけれども、作物は個別にやっておるというふうな分類を申し上げたわけであります。そういう意味では、作物の全部か一部かは問いませんけれども、協業体ですべて経理計算を共同でやっているものが五千幾らあるということでございます。
  43. 北條雋八

    北條雋八君 私の伺うところとはちょっとお答えが違うのでありますけれども、協業をやっているところに行っていろいろ見てみますと、農業の全体を共同でやっているところは、しっかりした指導者がそこにいる間は何とかやっていけますけれども、その指導者がいなくなった場合には、必ず、賃金上の問題、あるいは労力関係、あるいは収穫の分配について不公平を言いまして、そして長続きがしないで解散してしまうのが非常に多いというふうに私は聞いておるのです。ですから、いわゆる全面でなしに、まあ果樹なら果樹だけについて作業を共同でやるというような協業が非常にいいのではないか。安全だし、こういう協業なら大いにすすめてやるべきではないか。全面協業は、ややもするとこういうごたごたができて長続きがしないということを私は見ておりますので、その点を伺ったわけです。
  44. 森本修

    政府委員(森本修君) 御指摘のような事例がかなり多いだろうというふうに思います。ことに協業経営のやり方でも、組合員のすべての人が出資もする、それから労力も全戸出役といったようなことで出役をする。また、あるいは土地等も全部持ち寄るというような形で当初は出発をいたしますけれども、おのずから協業経営をやってまいります過程において、内部で組合員の各自の機能分化というようなことが漸次進んでまいりますと、それぞれ労働力を提供する人、土地を提供する人、それから経営管理に専念する人といったように分かれてまいりますと、それぞれのその協業体に対する出資なり労力なりというものの寄与度が違ってくるというようなことになってまいります。そういう場合に、それぞれの働きに対していかなる報酬を払うかという点でなかなかやっかいなことが出てくる。おのずから利益配分の点で利害が衝突するというふうな例もかなりあるというふうに伺っております。したがいまして、いかなるケースでも協業経営でやっていくというふうな指導方針はもちろんとれないわけであります。ただ、まれには、事務的な関係からいい、また、指導者よろしきを得て、協業経営もりっぱに育っておるというふうな例もあるわけでございます。そういったようないろいろな地域の実情あるいは組合員の関係というようなものをよく見きわめて適切な指導を加えるべきであるというふうに考えております。
  45. 北條雋八

    北條雋八君 協業問題につきまては大体以上にしておきまして、次に、飼料の問題、えさの問題でちょっと伺いたいのでありますが、飼料が畜産特に酪農に対して非常に必要で、特に輸入がどんどんふえているこの際には、少しも早く自給飼料を増産していかなければならないということは、申し上げるまでもありません。それにつきましては、牧草研究というのはずいぶん古くからやっておられるようでありますけれども、これが実際に応用されるといいますか、あまり昔と変わった牧草がないように思うのです。それで、そういう意味で、いままで牧草研究で一番日本に適しているという新しい牧草はどういうものがあるのか、その点をちょっと伺ってみたいと思います。  なお、それに関連しまして、近年、コンフリーという、牧草にもむろんなる植物ですが、これがあちこちで植えられている。そして、これは人間も食べられるものであります。タバコの葉っぱみたいなものでありますが、これはたん白質が多いし、また、カルシウムも多いし、ビタミンB12が入っている。これは、コーカサスが原産であって、そうして薬用植物で、イギリスでも古くから使われている。それが豪州に行って、豪州から七、八年前に日本に入ってきたということを聞いておりますが、その点についてお調べになったことがあれば、伺ってみたいと思います。非常に反収も多くてこれは聞きますと、一反歩当たり、一年目は——宿根性ですから、一年目は二十トンぐらい、それから二年目が三十トンぐらい、それから三年目ぐらいになると三十五トンぐらいとれるというようなことを聞きましたが、それが事実とすれば、これは濃厚飼料にもなりますし、耳寄りな話だと思うのですが、その点についてもしお調べになったのなら、伺いたいと思います。
  46. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 専門家が参っておりませんので、十分の御説明ができるかどうかと思いますが、飼料作物の研究は、わが国におきましては、畜産試験場それから各地の地域試験場等で研究をいたしてまいったのでございます。ただ、従来の飼料作物あるいは牧草研究は、北欧型の牧草研究を中心にしてまいったのでございますが、御案内のように、日本の国土の事情が南北に長く伸びておりまして、かつまた、平地から相当高度の高いところまで牧草の栽培を要するということでございまして、単に北欧系の牧草のみでの研究ではとうてい間に合わないという事情がございます。また、日照、雨量等においても、主として北欧で育ちました作物などには限らないわけでございます。そういうことで、最近になりまして、農林省におきましても、北海道の農事試験場に草地部を設けまして、新しい北海道に適した牧草の栽培利用等に関する研究をやる。それから関東におきましては、長野県に鴻巣の農事試験場の山地部を設けまして、山地牧草に関する研究を始めることにいたしておるのでございます。大体、相当の高度のところの東北以北の地域につきましては、北欧糸のラデノクローバーでございますとかあるいはオーチャードとかいうものが日本には十分に利用できる、かつまた、反収の多い牧草であるということは明らかになっておりますが、関東以西になりますと、欧州のものではむしろ平地についてはイタリアンライグラス等が栽培も容易であるし、利用度も高いというふうに、だんだん研究成果が明らかになってきております。なお、さらに暖地へ参りますと、これらの牧草は必ずしも適当でないという面もありますので、暖地系の牧草研究をいたしておるのでございまして、九州地方においてソルゴーでございますとか、あるいは中間帯におけるバヒアグラスの利用等が有用であるということが明らかになってまいっておるのでございます。それからそのほかいろいろございますが、とにかく日本は特殊の研究を要するということだけは確実でございます。  それからコンフリーのお話が出ましたが、コンフリーは、お話しのように、もともとコーカサス原産の牧草でございますが、日本に入りまして、といいましても、実は薬草としては明治の初年に入ったことがあるのでございますが、とだえておったものでございます。近年になってまた入ってまいりまして、これが牧草、飼料作物として利用できないかということが一つの課題になりまして、農林省でも長野の種畜場におきまして栽培試験並びに系統選抜の仕事を数年前からやっております。そのほか、地域の農事試験場及び畜産試験場においても栽培並びに利用の研究を試験をいたしておるのでございます。また、民間におきましても、コンフリーの栽培利用等についての試験をしておるところがございます。現段階におきましては、まだ一般的に普及すべき段階までは至っていないのでございまして、試作研究段階というふうに申し上げることが適当かと思うのでございます。と申しますことは、播種方法による増殖ではございませんし、根分けもしくは根分けによる特殊な繁殖方法をとらなければいけない。それから乾燥貯蔵等の問題がまだ研究が進んでいない。それから畜種によりましては家畜の嗜好にまだ問題が残っているというようなことでございますので、これらの問題の試験研究を詰めました上で、日本に適した飼料作物であるということが明確になりましたならば、これを普及に移してまいりたいということでございます。
  47. 北條雋八

    北條雋八君 いまお話を伺いましたが、まあ試験をすでにされておるということでございます。ほんとうにこれが話のとおりなら、これは飼料対策上耳寄りな話でありますし、私も実は昨年一株もらいまして家でいま植えてございますけれども、これはもう芽をかくと次から次に出てきまして、反当が三十五トンということが初めはうそだと思ったのですけれども、これは人間が食うのですが、しょっちゅうホウレンソウの葉っぱみたいにつんでは食べておりますが、これはもうたん白質が非常に多いし、ビタミンがあるし、それからカルシウムも多いし、長生きの薬だといってもらったわけなんですが、これはほんとうに真剣に調べる必要があると思うのです。これはぜひもうちょっと力を入れて大々的に栽培してみていただきたいと思います。  なお、時間がなくなりましたから、飼料の問題はその程度にいたしまして、林業につきまして最後に伺いたいと思います。  まず、林業について伺いたいことの第一点は、戦後から最近まで過伐だ過伐だというふうにいわれておりまして、最近では国内生産はほとんど停滞してしまいまして、需要のすべては外材に依存するというような状態であります。また、人工造林も、労働力の不足と、また不採算のために、年々造林面積が減少してきまして、御承知のとおり輸入材がどんどんふえてきております。その原因については別に伺うといたしまして、ここで伺いたいのは、資源の存在量が根本でありますから、その点につきまして、現在の森林資源の状況、それからまた過伐であるのかないのかということを伺いたいと思うのです。これは、申し上げるまでもなく、普通、過伐ということは、生長量以上に伐採することでありますが、一体、日本の森林の生長量というものはどのくらいであるのか、年々どのような推移をたどっているのか、その点を伺いたいと思います。
  48. 若林正武

    政府委員(若林正武君) 国有林、民有林を通じましての生長量は、統一的に行なっておりまする全国森林資源調査の結果に基づきまして把握をいたしておるのでございます。したがいまして、年度別に幾らという生長量の把握はいたしておりません点を御了承いただきたいと思います。そこで、昭和三十六年度のわが国森林の生長量を申し上げますると、五千九百万立方メートルでございます。それから次に把握いたしましたのは昭和四十年度でございまして、生長量は七千六百万立方メートルというふうにふえています。生長量につきましては、昭和四十年度で、ただいま申し上げましたように、国有林、民有林を合わせまして約七千六百万立方メートルと相なっておりますが、伐採量につきましては、この生長量よりも少のうございまして、七千二百万立方メートルでございます。このように、昭和四十年度におきまして、生長量が伐採量を上回っておるという現状につきましては、御承知のように、主といたしまして戦後急速に増加いたしました人工林によってもたらされたものでございます。日本の森林資源を林齢別に見てみますると、四十一年生未満について申し上げますると、面積におきまして約三分の二でございます。日本の森林資源は非常に若い山が多いわけでございます。したがいまして、必ずしも過伐ということにはなっておるというふうには言えないのでございまするが、日本の森林資源というものがその機能というものを高度に発揮しておるかどうかということになりますれば、まだまだ不十分で、私どもといたしましては、昨年策定をいたしました森林資源に関しまする基本計画に基づきまして今後森林資源の造成というものにつとめてまいる所存でございます。
  49. 北條雋八

    北條雋八君 林業白書で見ますと、「講じた施策」のほうを見ますと、林産物の需要の長期見通しと、森林資源に関する基本計画が示されておりますが、それによると、拡大造林を進めることによって、さしあたりは木材の自給率は現在よりだんだん下がっていって、昭和五十年に七一%になる。それからそれ以後は年々次第に自給率が上がっていって、昭和九十年には九〇%になるというふうに書いてありますけれども、これは一口に言って、だんだん若い伐採する林が多くなる。生長量もふえてくるし、また、いまの拡大増林が、生長量の悪い木を切って、いい木に置きかえる。それでだんだん取り返していくという意味でありましょうが、七十一年までは減るというのは、これはどういうわけですか。
  50. 若林正武

    政府委員(若林正武君) ただいまも申し上げましたように、森林資源の林齢構成から見ますると、若い山のほうが多い。したがいまして、そういう若い山が供給に参画するのにまだ十五年ないし二十年今後かかる。かようなことからそういうふうなことになっておる次第であります。
  51. 北條雋八

    北條雋八君 元来、統計というものはいろいろあるので、林業の統計も、一応数字はありますけれども、ほんとうにあてにならないと思うのです。たとえば森林蓄積は、いま伺うと、四十年は過伐になってないと言いますけれども、だんだん森林の蓄積が減ってくるんだというようなことを言われておりますけれども、実際は基本計画ではいつも明るい見通しを立てておるのです。で、いまお話を聞けば、だんだん拡大造林がふえてくれば、生長の悪い木をいい木に置きかえるので、だんだん取り返してくるなどと言われますけれども、現に、先ほどもお話ししたとおり、だんだん造林する意欲がなくなって、むしろ昨年よりも減ってきておるというような状態であるのですが、将来を見通して、林業の現実というものは、人工林の減少、また、農山村労力の流出と高齢化、また、賃金がどんどん上がっていくばかりで非常に悪い条件が山積されていくんじゃないかということを考えますると、政府は、前の基本計画に基づいて、はたしてそのとおりになる自信がおありなのかどうか。これはまあ自信があると言われるだろうと思いますけれども、数字的に納得いくように御説明願えればひとつ説明していただきたいと思うのです。人工造林化を進める自信があるか、また、森林資源の現状をどう考えておられるのか、この点を安心するように説明願いたいと思います。
  52. 若林正武

    政府委員(若林正武君) ただいま先生から御指摘のありましたように、造林というものが、停滞、むしろ逐年最近減少いたしてまいっております。拡大造林等について見ましても、この五年間くらいで一割くらい減少いたしておるのであります。その他、いろいろ御指摘のございましたように、林業をめぐりますいろいろな条件というものが非常に厳しい状態に相なっております。  そこで、私どもといたしましては、計画的に造林事業というものを進めてまいりたいということを考えておるのでございまするが、その対策といたしましては、従来の助成対策というものにつきましてもさらにこれを強化をいたしたいという考えでございます。そのために、造林の補助事業につきましては、今年度相当の単価の引き上げ等もいたしておるのでございます。さらにまた、造林の労働力の不足というふうな問題等につきましては、これは造林ばかりではございませんが、森林組合等の労務班、こういった組織化に現在はつとめておる次第でございます。現在、森林組合の労務班と申しますのは、全国で約四千組ほどございまして、労務者の数は、実人員で約四万四千名というところまで現在結成を見ておりますが、今後さらにこういったものも促進をいたしてまいりたいというふうに考えておるのでございます。  それから造林の停滞傾向の著しいのは、御承知のように低開発広葉樹の地帯でございまして、こういった地帯の拡大造林ということにつきましては、昭和四十二年度から新しく団地造林事業という制度を設けまして、こういったおくれた地帯の拡大造林を積極的に進めてまいりたいというふうに考えます。四十二年度におきましては大体私どもが予定いたしております造林量は確保できるというまあ自信を持っております。
  53. 北條雋八

    北條雋八君 労力がだんだんなくなることは、これはもう事実でありましょうし、それには、これまた協業といいますか、団地造林ですか、それを今年初めてやられるわけでありましょうが、本年はどのくらいの面積をやられるのですか。また、どのくらいの予算をとっておられるのですか。  その点と、それからもう一つ、これはついでに伺いますが、省力機械化でするということは、林業の場合なかなか農業と違ってできない場合が多いと思うのです。そして、せいぜい植林するときの穴をあけるかといったような、機械化といってもごく程度が低い機械化しかできないと思うのです。これは、こういうように労働力がだんだん減ってきますと、人間が一々植えるといった集約的な形がだんだん変わってくるんじゃないか。そうしますと、昔やりました天然更新、こういうものにたよらなければならないというようなことが将来出てくるんじゃないかと思うのです。アカマツなんぞの天然更新というのは、これは現在でもやっておられると思いますが、その見通し、それから植えないで播種造林といいますか、そういうようなものも将来ふえてくるというふうに思いまます。これらの点について林野庁としてはどういう御方針を持っておられるか、ついでに伺っておきます。
  54. 若林正武

    政府委員(若林正武君) 第一点の団地造林事業でございますが、これは、全体計画といたしましては、約百万ヘクタールほど予定をいたしております。その中で四十二年度におきましては、制度改正の当初でもございますし、一応三万ヘクタール、国費にいたしまして約十一億円の予算の計上をいたしておるのでございます。  それから第二点の、労働力の不足等に伴って天然更新等の省力対策はどうかという問題でございますが、四十一年度から、松林地帯に対しまして、天然下種更新を中心といたしまして、これに若干の植栽というものを併用するいわゆる誘導造林方式というものを推進をいたすことにいたしておるのでございます。また、エゾマツ、トドマツの地帯におきましては、地表物除去、地表のかき起こし等を併用いたしまする天然下種補整方式をこれまた積極的に推進をいたしたいというふうに考えておるのでございます。
  55. 北條雋八

    北條雋八君 いまお答えを伺いましたけれども、造林ということに対しては、よほどいまから省力について研究をする必要があると思うのです。わが国では天然更新の技術があまり発達しておりませんでありますから、これまたいまのうちからそういうような研究をしておかれて、そうして、必ず労力は減ってくるということを前提にいまから計画を立てられることを望みます。  次に伺いたいのは、いまと若干見方を変えますと、林道の開設は進められるわけでありまするけれども、林木の育成には、農作物と違いまして、長年月を要し、資本をそれだけ寝かしておくために、民間に造林をまかせるということがなかなかできない。まかせておいたのでは、いつまでも雑木林であったり、あるいは原野のままであるという部分がふえてくると思います。現に、県の公社造林、あるいは各地で進められております公団造林が順調のようでありますけれども、今後このような形の造林にだんだん依存しなきゃならないというふうに思います。労力その他の諸条件の先行きを考えますと、これからの作業はなるべくそういったものに向かわせていくように力を入れなきゃならないと思うのです。その点について大臣はどういうふうに考えておりますか、大臣からお答えいただき、さらに局長からお答えいただきたいと思います。
  56. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 来年度予算等にも、林野関係予算方向を示しておりますように、公社造林その他造林の計画には、あとう限りの力を入れてまいりたい、こういう方針をとっているわけであります。
  57. 若林正武

    政府委員(若林正武君) ただいま先生から御指摘のございましたように、自営造林の困難性ということにかんがみまして、各県で、ただいま、二十五の県でございまするが、二十六の造林公社あるいは林業公社というものが現在設立されておりまして、この造林公社によりまする造林事業というものは、当初は百ヘクタールぐらいで発足いたしたのでございますが、その後年年増大いたしまして、昭和四十年度におきましては約三千四百ヘクタールというのが実施されているのでございます。また、森林開発公団によりまする水源林の造林事業でございまするが、これは、保安林整備事業との関連におきまして、昭和三十六年度に約五千ヘクタールという造林が行なわれております。このように、公団造林あるいは公社造林というものを、設立のときから今日までずっとその推移を見てみますると、公社造林におきましては六百八十倍、公団造林におきましては四百十倍というふうな非常なテンポで事業そのものが伸びているわけであります。私どもといたしましては、今後におきましても、こういった一つの分収造林方式というものをさらに促進をしてまいりたいというふうに考えております。
  58. 北條雋八

    北條雋八君 私は、次に、現在の林政につきまして見ますと、林業に意欲的な階層を保護育成するという姿が欠けていると思います。造林した者に補助金を出す、また、林道は物的な開発効果を基準にして採算するといった、そういうような目先のことにとらわれてものを見ます、その点が少しもの足りなく感ずるのであります。拡大造林をいくら叫んでも、造林意欲がありかつその意欲を十分実現できる経済技術的な基礎を備えた人がいなければ、いくら造林しろと言っても、これは決してその造林は進捗しないと思います。もっとも、林業の場合には、大中の山林地主の単なる所有にすぎないという人が非常に多いのでありますから、所有規模だけでもって判断するということはできませんけれども、少なくともほぼ毎年林業収入があり、その収入と他の収入と合わせまして、他産業並みの安定した生活が確保できるというものでなければならないと思うのです。自立林家とかあるいは自立農林家というような考えは、こういうところから起こってこなければならないと思います。私は、林業に意欲を持ち、また、これを実現できる能力と経済的基盤を備えた層を育成することが非常に大事だと思うのでありますが、この点につきまして大臣の御所見を伺います。
  59. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) お説、全く同感でございます。
  60. 北條雋八

    北條雋八君 その点、意欲を持った者でないと、とうてい政府が望んでいるような拡大造林みたいなものの進捗はできないというふうに深く感じます。ですから、私は、林業というものはどうしてもそういうような意欲のある者にやらせる以外は、むしろ国営にしたほうがいいということすら考えておるわけでございます。  次に、国有林の経営について伺いたいと思いますが、中央森林審議会の答申を見まするに、企業性を確立し、その線で公社化を検討せよということでありますが、最近、まあ木材価格の思わざる上昇によって、国有林経営も一息ついたようでありますけれども、賃金上昇は今後の趨勢としては続くわけでありますから、事業の各分野にわたって経営分析を行ない、経営を合理化して、ベースアップを吸収できる態勢をとる準備を進める必要があると存じますが、そういう点につきまして林野庁長官としてどういうふうな構想を持っておられるか、その点を伺います。
  61. 若林正武

    政府委員(若林正武君) 国有林の経営をやりますのに、どういう組織、機構が一番いいのかということで、私ども現在いろいろ検討をいたしておるのでございます。答申の中に盛られておりますように、経営の自主性を付与し、あるいはまた、経営責任というものを明確にしろと、そのためにはたとえば独立した公企業体のようなものにしたらどうだというような趣旨の答申が出されておるわけでございまするが、その答申に基づきまして、現在、私どもといたしましては、いわゆる分権管理方式を採用いたしまして、予算等につきましても、一括営林署まで配付をする、営林署長はそれに基づきまして自主的な経営をやってまいるというふうな態勢に現在切りかえて、各署長の創意工夫によりまして、積極的に国有林の経営改善に努力をさせておるつもりでございます。  ただ、お話のございました組織、機構をどうするかというふうな問題につきましては、私どもは、ただ単にこれが機構いじりに終わるということでは困るのでございまして、そういった面から慎重に現在検討をいたしておる段階でございます。
  62. 北條雋八

    北條雋八君 私は、国有林につきましては、これは先ほどもちょっと申し上げましたけれども、民間にやらせる、民間につまりゆだねるということは、将来荒廃の原因をつくるのじゃないかと非常に危惧するわけであります。まあそれでなくても国がやるのと比べて低い利用しか行なわれないというふうに考えます。国有林の開放論というものも先年から出ておりますけれども、その開放論者も、治山とか治水に必要な部分はむろん開放はしないと言っております。しかし、森林の実態はそういうものではないと思います。りっぱに経営されているかゆえにこそ、保安林でもなく、また、治山治水上心配ないように見えるのが大部分の森林であるのだと私は思うのです。でありますから、国有林を開放するということは非常に森林の荒廃を招くもとになるので、所有はどこまでも国が持っていて、そうしてそれを利用するなら、その土地の上の利用をできるだけさせるということが一番大事だと思うのです。ですから、開放論に対しては農林大臣としては慎重に扱い、悔いを千歳に残さないような措置を当然とっていただかなきゃならないと思うのでありますが、開放のための法律案も出るようでありますが、そういうような点に対して、国有林の将来の経営に対して、大臣はどう考えておられるか、その点を伺いまして、時間も参りましたから、私の質問を打ち切りたいと思います。
  63. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 御質疑の御趣旨については、私どももきわめて共感を覚える次第でございます。先年、自治体の合併と町村合併とを勧奨いたしましたときに、その自治体の合併について財源を国が援助してあげようというような趣旨で国有林を払い下げたこともございますけれども、私どもはその経過から見まして、森林としてあとあとやはりりっぱに育成していてくださる地域もありますけれども、中にはあとの始末が遺憾に存ずるようなものもありますことは、御承知のとおりであります。狭いわが国のような国土で、必要な、あらゆる意味において非常に大事にしなければならない森林資源、国有地、そういうものにつきましては、私どもといたしましてはやはりどこまでもその持っておる使命を十分に発揮するように保護維持していくことが必要であると考えております。ただ、最近のいろいろな構造の変化に伴いまして、たとえば里地に非常に近い地域などで、むしろこれは牧草地帯などにすることによって畜産の奨励にもなるというふうな高度の利用をすることについては、これはいいことだと思います。そういう意味におきまして、国の持っております大事な財産を処分いたしますにつきましては、林野庁におきましても先般そういうことの方針を確立いたしまして、地方の局長にも指示いたしておるような次第でございますので、これからいろいろな御希望に対しましては、ただいま申し上げましたような趣旨で、いやしくも開放されますことがありますとすれば、そういうものについてはその利用について十分にあとのことについて慎重に取り扱ってまいるようにいたすべきである、このように考えております。
  64. 川村清一

    ○川村清一君 農林省予算課で出していただきました「昭和四十二年度農林予算の説明」の一六ページ、「家畜衛生の強化」という欄の一番下のほうに、「家畜畜産物の輸入機会の増大に対処し動物検疫の整備強化を図る。」ということがうたわれておるのでございます。そして、予算の数字を見ますというと、動物検疫所の予算が前年度の一億三千八百万円に対しまして一億六千八百万円と三千万円ほど伸びておるわけでございますが、「整備強化を図る。」ということをうたっておりますが、具体的な点は掲げておりませんので、どういうような具体策をもって整備強化をはからんとしておるのか、三千万円の予算で何をやろうとなさっておるのか、それをまず御説明願いたい。
  65. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 政府委員から一応お答えいたします。
  66. 高村礼

    説明員(高村礼君) 御説明申し上げます。  ただいま申されました四十二年度予算要求の中で特に増額され強化されておりますものは、一つは、家畜防疫官の増員でございまして、二名の増員を要求しております。これに伴う諸経費がそれぞれ増額されております。  その次には、最近特に著しい輸入増大を見ております初生びなの増加のために、この検疫は検疫所だけでは足りませんので、国内の各地にそれぞれ農林大臣の指定検疫場所を設けております。その検疫場所に出向きまして検疫を行なうための検疫旅費の増額をはかっております。  第三点は、やはり検疫業務の内容を充実するために検疫設備の増加のための各種獣医器材の購入費を増加さしております。  第四点は、そういうもののほかに、家畜防疫官が十分な検疫技術を習得するための検疫技術の改善費を要求いたしております。これは特に今年度におきまして初めて一つの項をあげたわけでございます。  最後には、各地各港で検疫をやることが必要でございますが、特に検疫施設が老朽でありかつひんぱんであります横浜検疫所の本所の厩舎の改造費、それから神戸の支所におきまして検疫室の新築費、さらに全く新しいものといたしまして福岡港におきます出張所の新設に要します施設費、こういうものがおもな増額でございます。
  67. 川村清一

    ○川村清一君 私は、ただいまの問題に関連して御質問申し上げたいと思うのでありますが、実は、私は北海道の日高の出身でございまして、日高というところは、日本一の競走馬の生産地でございます。御存じの有名なシンザンなんていう競馬馬は私の町から生産されておりますし、また、黒い霧で有名なあの田中元代議士の田中牧場というのも私の出身地の日高にあるわけでありまして、私自身は競馬にはあまり興味はないわけでございますけれども、しかし、地域産業としてはきわめて重大でございまして、日高の農業の中核をなしておる、農民が多く依存をしておるという、そういう特別の地域でございますので、この検疫の問題に関連しまして重大な問題が発生しておりますので、それをお尋ねしたいと思うわけであります。  実は、十二月二十七日に、アメリカから五頭の馬が輸入されまして、横浜の検疫所に入検したわけであります。ところが、五頭のうち一頭は、輸送中船の中で十二月二十六日に流産をしております。この流産した馬を含めて五頭が横浜検疫所の第一厩舎に入検をしたわけでございます。そうして、一月の六日にこれが開放されまして、この五頭の馬全馬が二車両で日高に輸送されまして、それでその輸送中に他の一頭がまた貨車の中で流産をしておるわけであります。ところが、それから三日後の一月の九日に、ヨーロッパから二十二頭の馬が、これは飛行機で輸送されてまいりまして、横浜の検疫所に入検しております。第一厩舎に十二頭が入り、第二厩舎に六頭が入って、放厩舎に四頭が入った。ところが、検疫中に第一厩舎において一頭が発熱をしておりますが、全馬二十二頭が一月の十八日に開放されております。その二十二頭のうち、四頭は千葉県に残りまして、他の十八頭は一月二十三日は日高に到着したわけであります。その後、一月二十四日に、先に到着いたしましたアメリカからの輸入馬が一頭流産をしております。翌二十五日には、一月の二十三日にヨーロッパから到着いたしました十八頭のうち一頭が流産をしたわけであります。そうして、翌二十六日から連続的に、その二十二頭一組になって入ってまいりました組のもののみに流産が発生いたしまして、二月八日までに輸入馬だけが十三頭流産したわけでございます。その後は、この牧場の中にある在来馬にもこれが波及いたしまして、三月十四日までに実に八十二頭が流産をいたしております。その損害総額は約三億円と推定されておるわけであります。これは、日高の軽種馬産業にとりましては、重大な損害を与えたわけでございます。そこで、この間に何のためにこれが流産しているのかわかりませんので、行政検定のため農林省家畜衛生試験所北海道支場に流産胎児を持ち込みまして検定の結果、鼻腔鼻肺炎ウイルスによる流産と確認された、こういうことであります。そのために、日高の軽種馬農業協同組合は、緊急対策として集会の禁止並びに消毒の厳重実施をするとともに、町並びに関係団体の協力によって予防対策を立て、蔓延防止に全力を尽くしておるわけでございまして、ちょうどこの間地方選挙等もございまして、私自身も日高の各地をトラックで走ったわけでございますが、どの牧場の前に参りましても、牧場の入口に縄を張りめぐらしまして、立入禁止という立て札を立てて、だれも一歩も中へ入れない。厳重な措置をとって病気の蔓延防止に努力した。これがこの事件の経緯であり、また実態でございます。  そこで、この原因なんですが、もちろん私は全くのしろうとでございますから、何であるかはわかりません。しかし、被害者の言い分はこういうことでございます。横浜動物検疫所の措置がまことに遺憾であった。これが原因である。すなわち、アメリカからの輸入馬中、船中で流産いたしましたその流産馬を完全に隔離検疫をしなかった。そして、船中で流産した馬を横浜の検疫所では第一厩舎にほかの馬と一緒に入れておる。そして、厩舎の完全消毒がなされておらなかった。これが原因である。船の中で流産いたしました胎児もどういうふうにしたのか、胎児の処置も不明である。かって昭和三十八年にはヨーロッパでの流産馬がありましたが、このときには、流産馬を別棟に隔離したり、入検中よく注意などをして、非常に厳重な注意をしたということでございます。今回はこれがなかった。つまり、横浜動検の取り扱いに不備があった。したがって、今回の事件の発生は明らかに動物検疫所の責任であり、生産者の受けた損害は補償さるべきであると、こういうふうに主張しておるのであります。  そこで、これは私が損害を受けた馬の生産者からいろいろお話を聞いた経過でございますけれども、これらの生産者が言っておる経過並びに業者の主張に対しまして、農林当局といたしましても当然いろいろ御調査になったことと思いますので、その調査に基づく御見解をまずお聞かせいただきたいと、かように思うわけでございます。
  68. 高村礼

    説明員(高村礼君) ただいまのお話経過は私ども承知しておるわけでございますが、検疫所におきましての検疫あるいは取り扱いがその主要な原因であるかどうかということにつきましては、はなはだ種々の点から判定が困難でございますので、目下そういうものの判定になる調査研究から検討いたしたいと思っておるわけでございます。ただ、一般的な検疫のやり方から申しますと、従来から流産がありました場合には検査を行なっておりますが、これは主として法定家畜伝染病であります馬パラチフスについて行なっておるわけであります。そういうことの検査はじみちにやっておりますが、あとは肉眼的検査によりまして特に異常を認めなかったということから、法定伝染病による流産ではないということで検査を終了しておるわけであります。そのアメリカ馬と英国馬の間に若干の日にちを置いて、その間に、開放時の消毒及び次の馬の輸入時の消毒、これは常に行なう常法でございますので、その常法に従いましてやっておるということで、厩舎は同じでも、前の馬とあとの馬につきましては常法に従っておるという点では別々の取り扱いが行なわれた、こういうふうに一応理解できるわけでございますが、そういう取り扱いの間に、非常に微細なまたいろいろな性質を持ちますウイルスが万が一残っていたかどうかということにつきましては、はなはだむずかしい問題でございますので、今後、入りましたウイルスの性状その他そういうものが明らかになりました上でまた検討いたさなければならぬと思っておるわけでございます。
  69. 川村清一

    ○川村清一君 問題は、アメリカから輸入した馬が持ってきたウイルスによる流産であるか、それとも、イギリスから輸入した馬が持ってきたウイルスであるかということによって、一体動検に責任があるかないかというきめ手になると思うわけであります。イギリス型のウイルスならば、これは二十二頭イギリスから持ってきたその馬が持ってきたウイルスでありますから、結局これは検疫所には責任がないわけであります。ところが、業者が言っているところによりますと、ヨーロッパからの輸送は、イギリスにおきましては、馬のせり市が終わったあと、日本の購買馬は四カ所の牧場に預託されまして、そうしてそのうち分べん時期の早い馬の順に順次輸送されてくる。そうして、一月の九日、すなわちヨーロッパから入ってきた馬が横浜の動検に入検したその日以前の馬、それからその以後の馬にはそういう流産馬は一頭もなかった。もしもイギリスで買った馬にそのウイルスがあったとするならば、イギリスでは市が終わってから全部ロンドンの四カ所の牧場に預託してあるのだから、したがって、分べん時の早い馬から順次送ってよこしておりますけれども、しかし、当然菌はあるわけですから、そうすると、その後に入ってきた馬にも当然流産が発生しなければならないはずだ。それが一頭もないところを見れば、これは明らかにアメリカからの輸入馬によるその馬の第二次感染であると、こういうふうに主張しておるわけであります。ですから、その主張は間違いなんだと、それはイギリスから持ってきた菌なんだ、アメリカの菌ではないんだということが科学的に立証されない限り、この生産者を納得させるきめ手にはならないわけであります。  そこで、私がお尋ねしたいことは、いまの衛生課長専門家のお話でございますけれども、今後いろいろ試験研究されまして、イギリス型の菌であったか、アメリカ型の菌であったかということが今後の試験によって立証させることができるのですかどうですか。これができなければ、聞いている話の筋だけでは、やはりいまの業者の言っているほうが正しいと、こう判断せざるを得ないのですが、しかし、そうじゃないんだ、この日高の流産馬の菌はイギリス型の菌である、アメリカ型の菌ではない、科学的にこういうふうに立証されたんだということであれば、生産者の言っていることは、それは間違いだと、こう言うことができますけれども、それができない限りはどうも納得させることはできないと思うのですが、これはいかがでございますか。
  70. 高村礼

    説明員(高村礼君) 科学的な、また、学者のすべてが納得できる立証というものは、はなはだ困難であろうと私は思っております。と申しますのは、まあ細菌でもそうでございますが、ウイルスというものは非常に変異しやすいものでございまして、同族はたくさんあるけれども、ときどき姿を変えるという性質を持っております。したがいまして、今後とれましたウイルスがアメリカ型に近いものであるというようないろいろな検討は、あるいはできる、あるいは英国型に近いものであるという検討はできると思いますが、それが必ずしもまっすぐ来たものであるかどうかということをいわゆる科学的にそのものずばりで言うことは、おそらく学者は言い切れないのではなかろうか。きわめて似たものであるということは出るかもしれませんけれども、そうであると言うことは非常にむずかしい問題だと私は考えております。
  71. 川村清一

    ○川村清一君 そうしますと、そこのところがはっきりしなければ、アメリカから輸送して来た馬、これは明らかに、船中でもって流産しておる。胎児もかかえてきております。そうして、その流産した馬を全く別の棟に隔離しておいたというふうな話ならわかるのですが、それを発病しない馬と同じ厩舎に入れておいた。この措置は、これはしろうとの私ども考えても、どうも正しい行き届いた措置であったとは考えられないわけです。これが一点。  それから今度は、一月の六日に開放いたしまして、一月の九日に二十二頭がイギリスから来て入っておるわけであります。その間、三日間もあります。それを入れるときに、衛生課長は、十分にそれは消毒しておると。もちろん、私も、消毒はちゃんとしたものだと思います。消毒はしたものと思いますけれども、しかし、もう菌が全然なかったと断定ができますか。なかったということを。これはもう顕微鏡か何かで調べて、絶対なかったんだ、だからそこに入ったのはその馬から菌はうつったのではないんだということが一体断定できますかどうか。できないとすれば、業者の言っているようなことに対して、これはおまえたちの言っていることは絶対間違いだと、こう否定する根拠は私はなかなかむずかしいのではないかと思いますが、この点はいかがですか。
  72. 高村礼

    説明員(高村礼君) 検疫施設は、人の病院でたとえますれば、避病院と同じようなところでございます。避病院におきましても、やはり、前の患者、あとの患者というものにつきましては、それぞれいま申されますような消毒というものを経て同じ病棟、病室を使っておるわけでございます。そういう取り扱いは、日ごろ、動物検疫所におきましても、あらゆるものにつきましてやっておるわけでございます。それで、特に配慮する場合には、牛のあとに馬、そういうような形でやって、慎重を期するわけでございます。馬から馬へという場合にも消毒をやるということで一応現在やってきておるものでございますから、そういうことで、従来の経験からはそれでいいというふうに言えるわけでございますが、申されますように、絶対にそういう問題がないか、ウイルスがどこの壁の底にひそんでおったかということをいまさらどっちだと言うことは、なかなかむずかしい問題であろうと思います。しかし、一般にやっております従来の方法からいえば、なかったというふうに、それで入れてよろしいという判断をした二とにつきましては、その当時の防疫官の処置といたしましてはわれわれは妥当であるというふうに考えております。
  73. 川村清一

    ○川村清一君 その当時の防疫官の処置が妥当であったというふうに断定されますと、その後流産いたしましたのが、この病名がむずかしくてこれを見ないとわからないのですが、鼻腔鼻肺炎ウイルスによる流産、こういう病菌によって病気にかかったということは、明らかにイギリスから菌を持って来たんだということになっちゃうわけでございまして、そういうことになりますね。したがって、責任は一切検疫所にはない。それで、八十何頭の流産をやった、三億円に及ぶ損害を受けた、これもいたし方のないところであって、これはあきらめるよりほかにしかたがないということになると思うのありまするけれども、そういうことでございますか、農林当局のお考えとしては。
  74. 高村礼

    説明員(高村礼君) 私の衛生課長の判断といたしましては、そういういろいろの不審な点が解明されない限り、いたし方ない問題であるいうとふうに考えております。
  75. 川村清一

    ○川村清一君 これはまた衛生課長は御存じかどうかわかりませんけれども、北海道におきまして、まあ小林先生なんかは北海道ですから御存じだと思うんですが、自衛隊の飛行機の演習によって、音速をもってするときに、物すごい音を立てるんですね。日高の上空でもって自衛隊の演習をやって、その衝撃によって牧場の馬がびっくりして、気違いのように走り回り飛び回りまして、そのことによって妊娠中絶や流産なんかをやりまして、ずいぶん問題が起きました。それが長い間農民のほうから防衛庁に対する損害賠償なんかのいろいろな運動が起きてまいりまして、そうして、北海道大学の教授などにもいろいろ協力していただきまして、あるいは農林省畜産局あたりにも協力していただいたのでないかと思うんですがね。その結果、防衛庁が補償することになったわけですが、これは明らかに妊娠中絶あるいは流産は防衛庁の自衛隊の飛行機の演習の衝撃によるものであるというようなこういう判断を下されて、結局そういうことになったわけであります。  この場合は、そのきめ手は、何といったって、アメリカ型のウイルスか、イギリス型のウイルスか、どっちかというのがわからないときめ手にならないわけですが、衛生課長、絶対わからないのですか、どっちのウイルスであるかということは、いまの科学技術では。先ほども、農林大臣のことばでは、農林省の科学技術は非常に進歩しているということでございますが、これはわからないんですか。  一体、これがわからないで、ただ三億円損して——笑っていらっしゃいますが、これは業者としてはたいへんなんです。大臣は、田中さんなんかと違って、競馬などにあまり興味を持っておられないようですが、私も持っておらないのですが、分べんすることになっている子がみんな流産してしまったわけですから、その子が産まれまして二歳馬になりますと、みな三百万だ、五百万だと売れていく馬ですから、これは生産者にすればたいへんなことなんですわ。みなそれは金があってやっているのじゃなくて——いまはもう本州の大資本家がどんどん入ってきて、たとえばオンワード牧場なんというのは、樫山さんが何億という資金を投じて、ものすごいりっぱな牧場を持ってやっています。田中元代議士の田中牧場なんというのは、もう行けども行けども田中牧場で、一つの町をほとんど田中さんが買ってしまいまして、そうして九十頭くらいサラブレットを持って、八千万、九千万くらいの種馬を十五頭も十六頭も持ってやっている。そういうような大資本の攻勢を受けまして、地元の軽種馬生産者なんというものは、全く火の車なんです。借金をしてようやくやっているわけなんで、ことし生まれるはずのやつが、ひどいところになりますと二十頭もやられているんですね。こういう陳情書が来ていると思うんですが、ある牧場では二十頭も流産しているわけです。そうしたら、ことし生まれるのが絶えるのですから、たいへんなことなんですわ。それは農林省の知ったことでないというそういう態度で、これは補償もめんどうだと思うけれども、何らかそういうことは考えてやれないものなんですか。おまえらのやったことはしょうがないということで投げておくわけですか。
  76. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ただいまの例にあげておられます特定の事柄につきましては、ただいま動物検疫所における措置は抜かりなくやっておるという衛生課長の御報告もございますが、一般論といたしまして、これからますます家畜の貿易が盛んになるに従いまして、私の見るところではやはり家畜衛生についてもっと力を入れる必要があるのではないかということを部内においても寄り寄り話しをいたしている最中であります。いままでも動物検疫の強化または国内家畜衛生態勢の整備について努力をいたしてまいっておりますが、いま申しましたように、こういう点についても、貿易量がふえてまいりますに従って、やはりそれに対応するだけの態勢を整備しなければならぬ。それには予算のこともあり、人員のこともありますから、いずれ予算等においてはお願いをいたしたいと思っておりますが、家畜衛生につきましては、だんだんと万全を期するようにいたしてまいりたい、こういう考え方で取り組んでいるわけでございます。
  77. 川村清一

    ○川村清一君 その生産者の言っている補償の問題ですね、これはいまはっきり補償を出すとか出さないとかいうようなことは言えないと思います。といいますのは、はたして検疫所のほうに責任があったのかなかったのかというきめ手になるものがはっきりいたしませんわけですから。私が一つ要望したいのは、私に言わせれば、横浜検疫所の措置は万全であったとは言えない。もうすでに船中でそういう病気を持って流産した馬を、隔離するんなら別ですよ。法定伝染病でないからということで一般の馬と同じ厩舎に入れておいたというこのこと、これは私はりっぱな措置であったとは言えないと思う。しかし、これだけで責めていってもきめ手にならないわけでありまして、その後発生した病菌が、生産者の言うようなアメリカ型のウイルスによるものか。アメリカ型のウイルスによるものであるとすれば、これは検疫所の責任である。これは追及されてもやむを得ないと思う。しかしながら、イギリス型のウイルスであるということであれば、イギリスから持って来たのでありますから、これは検疫所の責任ではないわけであります。これがはっきりされないとすれば、これはどうもしようがないわけでありますが、しかし、これが衛生試験場あたりでわからないということも妙な話で、ぜひそれを検討していただきたい。そうして、補償の道を講ずるか、補償の道を講ぜられないとするならば、先ほど言いましたような業者の経営の実態なのでありますから、何らかのやはり措置を講じてやらなければかわいそうでないかと私は思うわけであります。  私はあえて馬のことを取り上げましたのは、私の出身地の問題でありますからまあ取り上げたのでありますが、それ以上に将来に向かって非常に大事な問題だと思ってこれは取り上げたのであります。これは、ただサラブレットという競争馬だけの問題であるから、単に北海道の日高というようなあの地域のある産業に従事している業者の問題で済むわけであります。しかしながら、これが牛であったらどうしますか、牛であったならば。この予算の説明書にも明らかに書いてありますように、こういうようなことを勘案されてことしはこういう政策をとられたと思うのであります、「家畜畜産物の輸入機会の増大に対処し」云々と。  そこで、これは農林省からいただいた資料でございますが、たとえば牛の輸入状況などを見ます。馬の輸入状況などを見ます。それから鶏、特は初生ひなですね、これなんかを見ますというと、ばく大な数のものが外国から輸入されてくるわけです。畜産が盛んになればなるほど、よい品種が外国から入ってくるでしょう。サラブレットは、うんと走る馬をつくるためには、常に種を入れて更新していかなければいい馬はできませんから、それでもう何千万という金をかけて種を外国から輸入する、また牝馬も入れると、こういうようなことをやっておるわけでありまして、牛なんかも、もしもいま言ったようにウイルスなんというものがイギリスのウイルスとアメリカのウイルスと違うと。その牛が、今度アルゼンチンからも来る。それからニュージーランドからも来る。あっちからもこっちからも来る。その国によってみなウイルスが違うなんというようなことになってきまして日本が処女地だなんということになってきましたら、よほど防疫をしっかりやってもらわなければ、これはたいへんなことになると思うのであります。先年、わが北海道におきまして小児麻痺が猛烈にはやったことがあります。これは夕張炭鉱において初めて蔓延したんですが、全くの処女地であった。処女地にそういう小児麻痺が入り込んでくるというと、猛烈な勢いで蔓延してくるんです。それと同じように、全然免疫のないところへそういう菌が入ってきたら、たいへんなことになるんです。もしも牛に入ってきまして、それが蔓延しまして、農家の大事な牛がみんなこの病気にかかって死ぬとか病気になるなんといったら、これはたいへんなことなんですよ。そういうことを心配するものですから、私はあえてこのことを言って、そうして「予算の説明」における内容もお尋ねしたわけであります。  そこで、お尋ねしますけれども、このいただいた資料の中で「動物検疫所家畜防疫官配置状況」というのがあるわけでございます。これを見ますというと、まあ数はだんだんふえております。しかし、昭和四十一年は、予算定員が五十六人いるに対して、実員は四十九名しかいないのですね。四十年も、予算は五十二名に対して、実員は四十八名でございます。三十九年は、予算が五十名に対して、実員は四十六名で、予算だけの定員がいないわけですね。こういうことではあまりうまくないではないか。横浜本所を見ますというと、ここは、予算十一人に対して、実員が十三名おります。予算よりも実員のほうがむしろ多いわけであります。しかしながら、いま申し上げましたように、三日、四日おきに出ていくと、すぐ次にどんどん入れかわり立ちかわり新しく馬が入ってくるわけですから、また牛なんかも入ってくるわけですから、そうすると、防疫の仕事に追われてしまう。したがって、徹底したそういう防疫ができないのではないかと、こういうことが心配されます。  それから牛でございますが、これはどういうわけでこういうことになるのか、これは聞かないとわかりませんが、牛の輸入が、昭和四十年、四十一年と鹿児島が非常に多いですね。昭和三十九年で五百七十六頭。四十年は千三百四十九頭も入っていますね。四十一年には九百四頭と、鹿児島にこれだけ輸入されておりますね。そこで、鹿児島の検疫所の人員を見ますというと、二人ですね。二人の防疫官で、こんなに牛が輸入されてくる、この牛の防疫をしなければならないということになれば、ずいぶんな労働過重にもなるでありましょうし、それからまあ衛生課長は手抜かりがあったとはあなたの責任で言えるわけではないのでありますが、手抜かりがかりに生じた場合において、その波及する影響というものは甚大なものがあるわけですね。こういう点はどうお考えになりますか。
  78. 高村礼

    説明員(高村礼君) 御指摘の鹿児島の点につきまして申し上げますが、鹿児島はやや特殊事情がございまして、沖繩から参るものでございますので、必ずしも全然全くの国内扱いではございませんが、準国内の取り扱いをいたしておりますので、多少頭数と防疫官に対する比率が増加いたしておりますることは、防疫上の点からは現在心配はないと思っておりますが、御指摘のように、全般につきまして非常に手が足りない状態であることは、定員がありましてもそれだけ実員がないということから当然でございます。われわれといたしましても、少なくとも定員までの充足をはかっておるわけでございますが、なかなか信頼をおける専門的な獣医である防疫官というもので補充していくことにはあたまかずだけの問題ではございませんので、非常に困難を感じておるわけでございます。
  79. 川村清一

    ○川村清一君 いずれにいたしましても、先ほど大臣のおっしゃいましたように、今後動物の輸入というものが非常にふえてまいるわけでありますから、したがって、よその国からわからない病原菌を持った家畜も入ってまいりますので、そういう病原菌が日本の国に入らないように十分な防疫態勢を整えていただくために検疫所の整備強化ということをうたっているのですから、わずかたった三千万くらいの予算をふやして整備強化をはかるというのでなしに、整備強化をはかるというなら、もう少し予算をふやして、そうして、先ほど説明の中にもあったでしょう、横浜の厩舎は古くなったから改築をするということを衛生課長は言われたでしょう、内容の中で。その腐朽して改築しなければならないような厩舎に馬を入れて、その馬が病気になったんですから、よく考えてみてください。それで責任がないとは言えないでしょう、あなた。ですから、今後の問題として十分気をつけていただくことを、繰り返して言いますが、これは一地方の一種類の馬で済んだからいいようなものの、これが普通の牛なんかに行ったらたいへんなことになりますから、そういうことのないように十分気をつけていただくことと、それからいまの日高の馬ですね、これは、衛生課長は、どうしますとかこうしますとかあなたの立場では言えないと思う。そこで、私が申し上げましたように、業者の主張しておることが、間違いなら間違いだ、こうこうこういう理由によってあなた方の言うことが間違いだとはっきり証明できるならいいですよ。だけれども、あなたの話を聞いても、間違いだというふうに断定もできないでしょう。断定もできないとすれば、彼らの主張も一理ある。彼らは補償してくれと言っている。その補償してくれという主張が間違いだということを否定する根拠がなくして補償はできないということも、これもおかしな話でしょう。ですから、その問題につきましては、さらに十分御検討いただきたいと私は思うのです。補償ができないとするならば、何らかほかの方法によって三億円の損害ということについて、ことし生まれるはずの子がみんな死んでしまったわけですから、たいへんなことなんですから、これを経済的に何とか援助してやる道が行政的にやれるものかどうか。やれるものならひとつ考えていただきたいということを申し上げたいのですが、これはひとつ責任のある方から何とか御返事をいただけませんか。局長でもよろしゅうございますから。
  80. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 今回の鼻腔鼻肺炎ウイルスによるといいますか、それに関係ある競走馬の胎児の流産の問題につきましては、いままで衛生課長から御説明申し上げましたとおり、実情を調査中でございます。なお、今後さらに調査を進めまして、その原因等が究明できれば、その原因に従って措置をいたしたい。いずれにしましても、競走馬生産界にとっては相当ショッキングな出来事でございましたので、農林省といたしましても今後の調査の結果をまって所要の措置をとるように検討いたしたいと思っております。
  81. 任田新治

    任田新治君 大臣の所信表明、また予算説明、それから農林省の出しておられる農林予算の説明書、これらを拝見いたしまして、また、拝聴いたしまして思うことは、大体農林行政の重点はどこだということでありますけれども農業基本法制定以来、もう六年、七年とたっておるわけでありますが、この間、重点項目の中におきまして逐次その時勢に応じたアクセントの違いが出てきております。これも十分わかるわけでありますが、特にきょうはこの重点項目の中で私自身考えることを幾らか述べまして、農林当局のお答えを願いたいと思う次第であります。  まず、農林省のいろいろな計画がございます。施策としての計画がありますが、あるものは非常に長期にわたる振興計画と申しますか、そういうものがあるわけでありますが、これらの長期計画がいろいろ並んでおりますが、役所の機構といたしまして、それぞれ縦割りになっておる、しかもそれを横につなぐのが官房長である、あるいは企画室長であるというような形であるがために、そこの相互の連絡というものがはたしてうまくいっているかどうかという感じがいたします。  一例を申し上げますと、農林政策の中で一番膨大なものであり、しかも開議決定であり、また法律によってきまっているものといたしまして、土地改良の長期計画があるわけでありますが、これとまた並行いたしまして、畜産関係といたしまして草地の造成なり、また、林野におきましての造林計画——造林計画となりますと、何十年の長きにわたりますから、現在この国内の中でその場所がどこだどこだということははっきりなかなかいたさない。それは十分わかりますが、こういうものの土地の利用というものに対して相互の関連が当然あるわけでありますけれども、こういう点について一体どうなっておるのかということがございます。また、草地の造成の問題ももちろんありますが、同じく畜産施策として草地造成等、飼料作物の奨励ということがありますが、この相互の関係というものは一体どういうふうに考えておられるか。  また、もう一つ例をあげますと、いま盛んに進められておりますところの農業構造改善事業がありまして、あわせてまた林業の構造改善事業があります。農業と林業というものは末端にいきますと結びついております。こういうものについて、一体どういうふうにお考えになるかということであります。しかし、この問題は、非常に大きな問題でありますが、せんじ詰めて末端へ参りますと、私自身思うことは、それぞれの市町村におきましてこれは必ずしも農業を中心というわけにもまいらぬかもしれませんけれども、とにかく市町村におきましていわゆる土地の利用計画というものが強力に進められて、それが一つ一つ積み上がって、その地域の利用計画になり、また国内全体の利用計画になる、こういうふうに思うわけでありますが、この点について大臣なり官房長なりお答えをひとつお願いいたしたいと思います。
  82. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私の農林省としての所信の表明についていろいろお尋ねでございますが、これは所信の表明にも申し上げておりますし、それから現状につきましての分析報告は、先般国会で行ないましたいわゆる白書でございますが、わが国は、いま御指摘のように、農業基本法をすでに六年経過いたしておりますが、農業基本法を制定いたしまして基本的な農業政策を打ち立てました時代から振り返ってみますというと、御承知のようにわが国経済全体は跛行的に伸びております。つまり、低生産性部門であるといわれております農業中小企業等の伸び率が、鉱工業生産等に比較して落ちている。おそらく私ども国会で制定当時の農業基本法時代においては、今日のような結果が来るということを想定しておった者は、そうたくさんはなかったのではないか。そこで、その結果の御報告をいたして、そのまま御報告いたしているのがいわゆる農業白書でございますが、さりとて、私どもは、若干のおくれがあるとは申しながら、農業についてあきらめるわけにいきませんし、また、農業について少しも希望を失っているわけではございません。すなわち、水産、それから林野行政を含めてでございますが。  そこで、いまお話のございましたように、まずもって、農業基本法が示しておりますように、やはり生産対策、これに力を入れるということをなされば、いまお話しのように、土地改良の長期計画、これはもう基盤になることでありますから、何よりも優先的になすべきである。同時に、並行して、いまの産業構造変化に伴って流動する労働力を補てんいたすためには、同じような人力をもってこれにかえるということではなくて、どのようにして省力をするか。すなわち、経営を近代化すると同時に、これに機械力を用いるようなことに努力をしなければならない。同時に、経営規模を広げていくことが必要である。同時にまた、それぞれの地域に適した構造の改善をして、そうして他産業に比較して劣らないような農業所得を獲得せしめて、そうして農業を維持していく、まあ主たる傾向はそういうことに取り組んでおるというのが四十二年度予算にも盛り込んでおります私ども考え方でございますが、それと並行いたしまして、いまお話しのように、林野行政は、先ほど北條先生との間にいろいろ御応答がございまして、私ども考え方といたしましては、林野は林野としての貴重なる使命はあるわけでありますけれども、これもやはりその使命を貫徹しながら時代に即応したようにこれを利用していくことが必要ではないかということで、林業の構造改善考えますと同時に、さらに国有林野を森林を含めて国全体の期待いたしてある用途に支障のない限りこれを拡大してまいって、そうしてともに生産を上げ、そして農業も林業もともにその姿で従事者が相当なる生活を維持していくようにしなければならない、こういう方向でございます。  そこで、先ほどお話のございましたおことばの中に、農林省としてはそれぞれの部局があって、それを総合するのが官房であるというお話がございましたが、ただいまは、しばしば私から申し上げておりますように、各部局各庁におきましても同じ方向に向かって行政は進めておるのでありますが、御指摘のようにもう少し総合的な農林行政というものをつくり上げる必要がこの際にあるのではないかということで、省をあげて構造政策に取り組んでおる、こういうことでございます。具体的に御説明を申し上げるために、補足して官房長のほうからも申し上げたいと思います。
  83. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 農林省内に各種の長期計画が策定されておりまして、それらの関連について農林省全体として調整をすべきであるが、それはどういうことになっておるかという御質問であると思うのでございますが、事例におあげいただきました未利用地との関係で、土地改良計画と草地の造成の計画並びに造林の計画のごときはどういうふうにやっているかということでございますが、土地改良長期計画で新しく開田、開畑、いわゆる耕地の造成をいたします面積は、たしか三十五万ヘクタールということに相なっております。草地の造成は、昭和四十年から以後十年間に四十万ヘクタールというものを造成するということになっておりまして、このそれぞれの計画の関連については官房において調整をいたしたのでございまして、それぞれの計画を達成したといたしましても、未利用地資源というものの利用という点では矛盾はないように策定されておるのでございます。  それから草地造成の年次計画と飼料作物の増産対策、それと構造改善事業との関連は考えているのかということでございましたが、草地の造成を十年間に四十万ヘクタールというのと、既耕地における飼料作物の作付面積百十二万ヘクタールというのは、十年後におきます草食性動物の飼養頭数を想定をいたしまして、これを自給計画上からの想定をいたしたものでございますが、その想定上必要な優良粗飼料資源というものの計算上、この草地造成及び既耕地における飼料作物の生産ということで充足をするという計画にいたしておるのでございます。そのうち、構造改善事業との調整におきましては、過去の実績から見まして、草地の造成ないし既耕地における裏作は全体のほぼ一〇%程度が構造改善関係事業で進められるというふうに想定をいたしまして計画をいたしておるのでございます。そういう意味で、私どもとしても、結果においては多少の狂いがないとは言い切れないと思いますけれども計画上は調整をしておるつもりでございます。
  84. 任田新治

    任田新治君 大臣の御趣旨、よくわかりました。官房長に重ねてお尋ねしますけれども、私、実は申し上げておるほんとうは、個々の市町村単位でもよろしいのですが、土地利用計画というものの必要性があると思うのですが、それに対するお答えを願いたいということなんです。というのは、いま全体としまして草地が何万町歩、あるいは飼料作物が何万町歩というような話はありますけれども、大体、草の造成にしても、また、飼料の関係にいたしましても、その場所その場所が実際にあるかどうかということをお聞きしたがったわけなんです。そういうことで積み上げていきませんと、国全体として描いただけで、それがほんとうに結びついていくかどうか。需要量からいいましてこれだけの場所が必要だということになるわけでありますけれども、その場所がはたして将来に出てくるのかどうかというようなことがあろうかと思うのです。そういう意味でお尋ねしておったわけです。
  85. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 根本的にこの問題を突き詰めてまいりますと、単に農林関係のみならず、わが国土地資源の利用をどうするかということ、それを計画化すべきではないかということになるかとも思うのでございます。その点につきましては、農林大臣が他の委員会等でも、自分の考えはこうだということをおっしゃっておられるのでございますが、土地の利用計画を明確にする、土地の利用区分を明確にして計画的な事業実施をやるということでなければ、土地の配置の合理化あるいは農業生産力の維持というようなこともむずかしくなるということであるので、自分としてはそういうことを関係各省と協力をして検討を進めたいということをおっしゃっておられまして、実は、私どもにも、各省官房長と連絡をして具体案について検討せよという御指示があるわけでございます。たいへんむずかしいことでございますが、私どもも多少勉強に入っておる段階でございます。  お話のうち、草地につきましては、草地造成の適地調査をいたしましたものが約八十万町歩ばかり、県から出てまいったもののうち約半分の面積に当たります四十万ヘクタールを十年間に造成改良いたしたいということで、全体としてはそれほど無理な面積ではないと思っておるのでございますけれどもお話のように、これにはいろいろ問題がありまして、現実にそういう現状変更ができるのかどうか、あるいは家畜との結びつきがあるのかどうかというような問題がございますので、この点は市町村地域から積み上げる必要があると思っておるのでございます。酪農近代化計画におきまして、市町村計画では、それぞれ具体的な草地の造成なり飼料作物の生産についての長期の計画を立てて知事の認定を受けさせるようにいたしております。なお、肉牛の生産増強対策としてそれぞれ三つの地域区分を指定をいたしておるのでございますが、これについても粗飼料の給源に対する長期計画というものを立てて都道府県に提出をさせるというようなことを試みておりますが、根本的にはただいま申し上げました大臣の御指示による国全体の土地資源の利用という問題に帰着するのではないか。私どももその方向で努力をいたしたいと思っております。
  86. 任田新治

    任田新治君 いまの話はよくわかりましたが、次は、同じ農林省施策の中で、いま私が質問したああいうような長期計画の何本の柱も並んでおりますけれども、また一方におきまして、この長期計画と対照的に、何というか、モデル・テストのような施策がずいぶんこまかくなされておるわけでございます。たとえて申しますと、稲作総合改善集約事業であるとか、高度集団栽培促進事業であるとか、それから米麦生産流通合理化モデルプラントとか、カウントリー・エレベーター、それから壮蚕飼育施設、また桑園の管理用機械、あるいは乳牛の集団育成事業であるとか、肉牛の繁殖育成センター、あるいはまた、最近、先ほど北條先生から質問がございましたが、農業経済圏整備事業、こういうようなのがたくさん出ておりますが、地元というか、それぞれの地域においての農家から見ますと、はたしてこの仕事というものが本気になって政府がやってくれるのかどうだろうか。というのは、自分たちがいいと思って飛びついてやったものがりっぱにでき上がったのだが、さて、それを見習ってわが村でもひとつやろうかいなと思う場合があるわけです。その場合に、案外それが去年は三カ所だったが、ことしも三カ所だったというような場合があるわけです。これで、地元の農家としては、ある意味では迷惑をする。また、飛びつくこともちゅうちょするというようなこともあるわけなんです。いま申し上げたような項目のものはまだほかにもたくさんありますけれども、いま申し上げたものについて見た場合に、これで将来大いに普及させるとか、あるいはこれはこの程度で収束させたいとかいうようなものがありますかどうか、この辺をちょっと伺っておきます。
  87. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 御指摘のように、農林省の助成事業等の中には、テスト的な性格のもの、あるいはパイロット的な性格のものがかなりあるわけでございます。御指摘いただきました事業以外にもあるかと思うのでございますが、これはそれぞれ多少ニュアンスの違った目的を持っておるのでございますけれども一般的に申し上げまして、現段階において組み立て得る最新の技術あるいは施設というようなものを今後普及奨励をしていくための誘導の端緒を得ようという目的でやられておるというふうに総括できるかと思うのでございます。実験事業あるいはパイロット事業というようなものの設置運営の実績を見ました上で、これが当初目的といたしました成果を得るという確信を得ますれば、一般事業化していくということを考えてまいりたいと思っておるものでございます。ただ、中には、やはりわが国農村の事情あるいはその他の社会事情というものと調和をしないというようなことで、テストに終わるようなものもございます。一例をあげますと、私の経験では、牛乳小売り店の共同荷受け所というものの——これは一種の冷蔵庫になるわけでございますが、そういうものの助成をしてみましたが、わが国の飲用乳流通の実態に合いませんで、実効を上げることは不可能であるということで取りやめた例もございます。中にはそういうものもあるかと思いますが、御指摘の中にあらわれましたような事業については、少なくとも失敗をさせるというようなことのないように十分行政指導を加え、われわれの今後の一般事業家のための必要な指標を求めていくということにいたしたいと思っております。
  88. 任田新治

    任田新治君 これは、冒頭に大臣にもお尋ねし、官房長からも御回答をいただいたことでもありますが、各地域の振興計画というか、それが各局各局においてなされておる。その姿の一つ、末端にあらわれておることとして、たとえば果樹振興ですが、今度果樹振興法ができて、そうして各府県でそれぞれ計画を立てていくと、まあそれが補助の対象にもなっていくということになっておりますが、これでどんどん進められておる。しかし、うたい文句になっておるのを見ますと、とにかく需要に見合った程度でひとつ生産を増強していくんだというようなふうに見られる。まさにそのとおりでなけりゃならないことなんですが、私どもから見ますと、たとえばここに委員長もおられるけれども、静岡県のまん中で水田があって、それをつぶしてミカン畠にしていくなんというような姿がどんどん行なわれておるわけなんです。しかも、それが構造改善である。なるほど、その地域であれば、むしろ稲をつくるよりはミカンをつくるほうがもうかるということでやっておられるだろうと思いますけれども、私のように裏日本に生まれた者から見ますと、水田がほしくてほしくてたまらない者が一ぱいおるのにかかわらず、片方でつぶしていくというようなことがあるわけです。こういうことに対しては、何らかの調整というようなものというか、全国的に、しかもその地域地域としての考え方で、何か一つ横の調整というものが必要じゃないかというふうに思いますが、御意見を伺いたい。
  89. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 御指摘のとおり、各耕種あるいは畜産等の部門について、それぞれのものの考え方の中だけで、あるいは短期的な考え方の中だけで生産の増強等をやりますと、最後にはつじつまの合わないことになるという危険性はあるわけでございます。ことに、どうも表現は適当でないかと思いますが、日本のような零細な数多い農家によって農業がささえられております場合には、ややそのときどきのムードに押されがちである。端的に申し上げまして、初期の構造改善事業などでは、養鶏を作物にするところが非常に多くて、私ども非常に心配をいたし、また、抑制的な指導をとったのでございますが、そういうことがあり得るわけでございます。で、引例をされました果樹につきましては、一部、将来現状のままいけば過剰生産のおそれもなきにしもあらずということで、先ほど、農林省としまして果樹の長期の需給見通しをいたしました上で、今後の新値の面積はどの程度が適当であるかという全国計画を立てて公表いたしたのでございます。これをどう地域へブレークダウンするか、非常にむずかしい問題でございますが、やはりそういう全体の見通しというものに従いまして、各地域、あるいは各県において過度の増産に偏しないようにしていくということが非常に必要であろうと思うのでございます。果樹に関しまして、特にこまかく御説明する必要がございますれば、園芸局の園芸課長が参っておりますので、その点は譲らしていただきたいと思います。
  90. 任田新治

    任田新治君 園芸局の方おられますか。——統計調査部関係もあるわけですけれども、生鮮食料品の生産出荷の問題、それからまた、一方、その消費地の需要の問題、こういうことの調査が三年前くらいから始まっておるはずなんですが、もちろんこれは流通対策の手段にしようということでやっておられると思います。その数字がだんだん固まってきて、そうしてどういう品目がどこへどういうふうに、時期別にどのような銘柄のものが流れていくかということが次第につかめていっておると思いますが、それからそういうものを基礎にしての流通対策というものがいまの段階考えられておりますかどうですか、また、それに基づいて、指定の生産地なりそういうものの指定が行なわれておるのかどうか、いまの段階がどのようになっておるか、ひとつお聞きしたいと思います。
  91. 小笠原正男

    説明員小笠原正男君) 御説明いたします。  生鮮食料品の中でも、青果物、特に野菜品の価格変動が非常に大きいわけでございます。これらの価格の安定をはかりますためには、当然、需要に見合いました安定的な生産、供給をはかるということが基本でございまして、そこで昨年制定をされました野菜生産出荷安定法に基づきまして、野菜の中でも特に流通量の多い、指定野菜と申しておりますが、この六品目、現在は、キャベツ、白菜、大根、玉ネギ、トマト、キュウリでございますが、これを四十二年度に近くさらにニンジンとネギを追加する予定でおりますが、これらの重要な品目につきまして、四大消費地域別、それからシーズン別に需要の見通しを立てております。こういう需要の見通しなどからわかります需要の動向に即しまして、大消費地域へ野菜を安定的に供給いたします野菜指定産地の育成対策を進めておるわけでございます。  なお、さらに予算措置によりまして、各野菜指定産地の指導員あるいは情報連絡員を産地に置きまして、計画的な生産出荷指導する、あるいは、各産地段階、あるいは県の段階地域段階、全国の段階、この各段階におきまして需要に見合った出荷計画をつくっていただく、その出荷計画を着実に実施をしていくというような協議会を開催するなどのことによりまして、需要に見合った生産、供給ができるように指導をしておる次第でございます。
  92. 任田新治

    任田新治君 大体、私が当時聞いておりましたことが進められて、その調査の作業が、基礎になって次第に具体的に固まっておるようでありますが、私にしてみますと、それで逐次固まっていったものを強力にひとつ進めていただきたいという気がします。私の田舎のほうで、裏日本ではありますが、能登の一番奥のほうに、ビニールハウスをつくって、そうして野菜をどんどん生産する、その生産地ができ上がった。ところが、それによって、同じくその近隣の都市でありますが、七尾市というのがありますが、その七尾市の野菜の市場を独占するほどに進んできた。それじゃ、従来の七尾市の市場へは品物はどこから来ているかというと、岐阜県からやってきておるというようなことがあります。したがいまして、この流通機構の中では、その流通過程だけが大きく幅を広げておってのさばっておる、そういうような感じがする。そういう面が非常に多いわけですが、生産地そのものが国の助成によって強力にやっていくようになれば、その辺がおのずから流通機構も相当簡素化されていくというふうに思います。また、一方、魚の関係になりますと、七尾にとれた魚が九州に行ってみたり、九州の魚が金沢に来てみたりしている実例がきわめて多い。流通のその品目品目がどういう流通の過程を通ってどこへ流れていくかということは十分つかんでいただいて、そうしてその上で強力な施策を遂行していただきたい、このように思うんですが、官房長、いかがですか。
  93. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 魚につきましても、生鮮食料品の中で重要な位置を占める物資でございますので、現在の産地冷蔵庫あるいは消費地冷蔵庫の設置の助成等、あるいは冷凍魚の流通等について助成をし、流通の改善をはかっておるわけでございますが、今後とも全国的な視野で魚の消費地と生産地を結びます流通の改善について努力をしてまいりたいというふうに農林省としては考えておるのでございます。
  94. 任田新治

    任田新治君 次は、後継者の育成の問題ですが、いま農政の中で後継者の育成ということが非常に強く叫ばれておるし、また、それだけのことをやらなきゃならない段階ですが、基本的にはそれだけの求める後継者が後継するに値するだけの条件が整っていないというような面が多々あるのです。それだからといって、根本的に考えた場合には、農地法の改正の問題もありましょうし、また、税金の問題もありましょうし、いろいろのものがある。これに対しまして、先ほど北條先生からの質問もありましたが、例の離農の年金の問題、ああいうものもあるわけです。どれから始めていくというようなものではなくて、いろいろ現在やれるところからやっていっている感じもいたします。そういう点で思いつくのは、とにかく若手の後継者の候補を、いろいろな形で、たとえば畜産経営の技術訓練をやるとか、また、中央でいろいろの会合を持って討論会をするとか研修するとかいうようなことが盛んに行なわれておるわけなんです。これも確かにいいことですが、この連中が研修を終えて田舎へ帰ってまいりましても、自分が身につけたものを発揮する場がない。いま構造政策がやかましくなっておりますが、その構造政策実施の波に乗って、わが家をどういうふうにしようと思ってみても、そうは簡単に参らない。  たとえて申しますと、新しい技術を身につけて、それで自分のおやじが反対しておっても、それを押し切ってでもものをやろうとする場合に、すぐ金の問題が出てくる。その金の問題を自分の力で克服することができないというようなことをよく若い連中から聞かされるのであります。どうしても国あるいは国以外のオーソライズされた訓練研修機関が、そこの卒業証書というか、そういうものを与えた者に対しては、少なくとも金融関係については何か優先的な待遇を与えてやる、そういうことが必要である。そうすることによって、本人の励みにもなりますし、どうしても私としてはそこに結びつけてでも幾らかでも前進さしてやりたいような気がするわけです。そういう点についてお考えがありますれば、ひとつ……。
  95. 加賀山国雄

    説明員加賀山国雄君) ただいま御指摘のございました後継者問題でございますが、たしか三十八年、三十九年ごろでございますが、後継者の問題がいろいろ盛んに議論されるようになりまして、当時の農村から外へ出る若い労働力の流れが激しくなった次第でございますが、後継者問題に直接当たっておりますのは農政局の普及部でございますけれども、当時、私、普及協会長をいたしておりましたので、当時を想定して思い起こしておるわけでございますが、ただいま御指摘のような青少年に対する活動促進を進めるためにいろいろと研修事業その他を考えまして、いろいろの高い技術勉強等をやるような機会を設けたわけでございますが、あるいは都道府県に経営伝習農場等がございまして、そこで将来の後継者となるべき若い青少年の教育をやるということも努力をいたしまして、また、文部省と協力いたしまして、ただいま文部省では自営者農業高校と言っておりますが、全国に自営者のための農業高校を建てるということも当時の文部省の首脳部と相談いたしまして、現在予算をつけまして実行中でございますが、ただいま御指摘のございました金融関係、要するにそういうふうに研修を受けた者に対して特別の金融的な処置をとったらどうだ、そういう御指摘がございましたが、昭和三十九年に、当時ございました——現在でもございますが、農業改良資金制度という制度がございまして、それの中で特に後継者問題に対する特別の有利な金融ということで何か考えるべきだというそういうことで、農業後継者育成資金というものを農業改良資金の中で考えたわけでございます。と同時に、生活改善資金というものも考えましたわけでございます。というのは、やはり農村における住居の問題がございまして、若い夫婦等が両親とわかれて、同じ敷地内でございますが、若干の改良をして夫婦だけで住めるような部屋をつくる、そういうためにやはり何らかの金融的な措置農林省はやるべきだということもございまして、経営改善資金というそういうものもあわして予算化をいたしまして、法律改正をいたしまして、改良資金の中で無利子の貸し付けをするという、そういう制度を開始いたしたわけでございます。  これは農業後継者育成資金のほうはたいへん有利な条件になっておりまして、上限五十万円まで無利子で借りられるようになっております。そのために、若干ほかの金融機関等で非常に有利だということでいろいろの問題があるようにも伺っておりますけれども、先ほど御指摘のように、そのような若い連中を農村に残すためには、やはりそのような非常に有利な金融の措置をする必要があるということで制度化されたものでございまして、各方面からのその資金ワクについての要望が強うございまして、四十二年度の予算におきましては、それを前年度の倍額ぐらいな増額をいたして予算化をいたしました。なおこれで不十分だという声もございます。非常にその資金需要が多いわけでございますが、これらの措置を現在農林省としてとっておりますので、これによって、父親からある一部分の経営をまかされてそれを自分の経営としてやっていこう、まあそういうふうな芽が方々に出始めておりまして、今後これはますます推進いたしたいと、そのように考えておるわけでございます。
  96. 任田新治

    任田新治君 私、実は、その内容は十分知っておるわけなんです。これは十分承知しておるので、そういう改良資金のワクであろうが、何であろうが、新しくあのわずかの金の中から後継者を選考する場合に、いまの訓練なんかを受けた人を優先して考えてやる配慮はないかと、こういう質問なんです。
  97. 加賀山国雄

    説明員加賀山国雄君) これにつきましては、当時から私たちもいろいろずいぶん議論をいたしまして、そういうような制度と申しますか、そういうふうな国の研修なりあるいは都道府県の行ないます研修を受けた者に、特別のたとえば農業修士なり何なりそういう名前でもつけまして、特別の措置をしたらどうかということを検討してまいっておりますけれども、全体といたしましてそういったものをはっきりいたすような時期にはまだ時間がかかるというようなわれわれの判断でございまして、なお現在でもそういう議論はわれわれの内部では行なわれております。また、諸外国におきましてもそういうようなことがあるようなふうにも聞いておりますので、今後ともそういう二とにつきましてもさらに検討いたしたいと、そういうふうに考えております。
  98. 任田新治

    任田新治君 いまの問題、十分ひとつお考え願いたいと思います。  それから時間があまりありませんので、はしょりまして、開拓の関係ですが、長い間のいわゆる旧制度による開拓もだんだん終局に近づいてきておるような感じがするわけなんですが、ものの本によりますと、開墾建設工事が内地が昭和四十二年度に終わる、北海道が四十三年度に終わる。それから新振興対策の計画は、計画樹立は四十二年度に終わって、そうしてそれによる貸し付けがなされるわけでありましょうが、そういう段階と見てよろしゅうございますか。
  99. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) いま任田先生が御指摘になりました旧制度開拓についての大筋は、そのとおりであろうと思います。
  100. 任田新治

    任田新治君 あれだけの入植者が離農だ残留だということでわいわいやっておりました結果からいきますと、最後の締めくくりをするのに非常に関係当局としても骨を折っておられると思います。ただ、建設工事にしましても、それから新振興対策による貸し付けにいたしましても、何らかのそこにある程度の余裕というか、幅が必要なように思いますけれども、かりに一応これで済んだというようなことになりましても、あとのアフターケアというようなものをお考えになっておるかどうか、それをお伺いしたい。
  101. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) 振興対策五カ年計画でやってまいりましたものにつきましては、認定は四十二年度で終わります。ただ、その場合にも、五カ年の間でありますから、たとえばちょうど計画を立てます組合におきまして、たまたま病気であるとか何とかということでできない場合がある。そういう農家につきましては、この際全部洗い直して、もう一ぺん計画も立てて融資をしていこう、こういうような手直しも実は昨年暮れにきめまして、本年それを実施するということにいたしております。  それからなお、大部分の農家につきましては、これでだんだん既存農家の生活水準程度になるのではないかというふうに考えておりますけれども、もう一つ問題は、何と申しましても入植しまして日が浅く、負債が多い点もございます。そういう問題、それからあるいは開拓農協が非常に弱い、事務員もいない組合が大部分であるというような問題、あるいは転貸資金離農者のために焦げついている、離農者の転貸資金が残っていて組合が払えないという問題もある、こういういろいろな問題がありますので、こういう問題についてこれからどうしていくかということで、昨年来、関係団体等を集めまして、月に一回あるいは二回ということでいま協議を重ねている最中でございます。
  102. 任田新治

    任田新治君 いま関係団体というお話も出ましたが、関係団体のほうで開拓負債整理法なんというものを考えているのですが、あの処理をどういうふうにされますか。
  103. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) ただいま申し上げましたように、いまそういうようにして相談しておりますので、私からいますぐそれじゃ負債整理法の出方がいいのではないかということまで申し上げる段階には至っておりませんが、たとえば昨年からことしにかけましてもずっと開拓農協の特別検査をいたしまして、それで具体的にどの程度どういうふうに焦げついているかということを開拓農協側からは調べておりますし、それからそのほかの一般の、一般といいますか、開拓農家個人の負債についても政府資金についてはこういうふうにしていったらよいのではないかというようないろいろな案をいま考えておりまして、その辺を含めましてそういうことで統一をしてやったほうがいいかどうか、そこまでも研究をいたしました上で農林省といたしましては判断をしたほうがいいのじゃないかというふうに考えております。
  104. 任田新治

    任田新治君 それからこれに関連してちょっとお尋ねしておきますが、営農指導員、保健婦、それから開拓医ですね、お医者さん、こういう方々は長い間開拓営農の指導に当たっておられたわけですが、今後一体どういうふうに方向づけていかれるか、その点を伺っておきたい。
  105. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) 振興計画の認定はことしで大体終了するということでございますが、その認定を受けた農家に貸し付け金を与えその負債のめんどうを見るという期間がまだ数年あるわけであります。むしろその辺の指導が非常に大事だと思いますので、いますぐ営農指導員なり保健婦なりをどうという段階ではあるいはないかと思いますが、ただ、抽象的には、いろいろ措置を講じつつ一般農政に円滑に移行するというふうに考えてまいりますと、営農指導員につきましては普及員、あるいは開拓の保健婦につきましては一般の保健婦というふうになってこようかと思います。現に、開拓営農指導員につきましても、いま七百十九名おりますが、一般の普及員の資格を持っておる者が六百一名ということになっておりますし、県によりましては両方共通しまして人事管理をやっておるという県も数県出てまいっております。ということもございますし、それからあるいは開拓パイロット制度を中心としまして今後の開拓を進めていく場合に、そこに開拓営農指導員が使えないかという問題もあると思います。そういうことも含めまして、いま私が申し上げましたように、いますぐという段階には至っておりませんが、開拓制度全体をどういうふうに持っていくかという段階の中で円滑にうまく移行ができるように考えていきたいというふうに考えております。
  106. 森中守義

    ○森中守義君 園芸局それから林野庁にちょっと資料をお願いしておきたいと思います。  園芸局については、昨年の野菜生産出荷安定法制定の際に、五百カ所の地域指定をする、こう説明がありました。この一年間における予定された五百の指定状況。それからいま一つは、一年間における生産者価格並びに消費者価格への寄与率を、できるならば六品目ごとに出していただきたい。  それから林野庁は、白書に大体出ていますが、もうちょっとこまかな内容がほしいのです。それは、木材工業の部門の中の製材、これを、ちょっとめんどうなことだと思うのですが、地域別それから規模別にこれの経営の動向、その中に倒産がどのくらいあるか、それを実は見たい。したがって、倒産を含めて、いま申し上げるように、地域別、規模別の経営の動向。それからいま一つは、輸入材の場合における丸太並びに製材の区別、これをできるならば輸入国別に出していただきたい。それと、国次第ではかなり国内法で規制をしておるところもあるようですが、そういうものがわかれば、製材でなければならぬ、こういう規制をしておる国は、そういうものを一緒に出していただきたい。  以上であります。
  107. 若林正武

    政府委員(若林正武君) 資料の点につきましては、提出をいたしたいと思います。
  108. 小笠原正男

    説明員小笠原正男君) 資料を整えて提出したいと思います。
  109. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 本件についての質疑は、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十一分散会