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1967-05-12 第55回国会 参議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十二日(金曜日)    午後一時二十一分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         野知 浩之君     理 事                 任田 新治君                 山崎  斉君                 川村 清一君                 森中 守義君                 宮崎 正義君     委 員                 青田源太郎君                 岡村文四郎君                 小林 篤一君                 櫻井 志郎君                 温水 三郎君                 森部 隆輔君                 八木 一郎君                 和田 鶴一君                 武内 五郎君                 達田 龍彦君                 中村 波男君                 村田 秀三君                 渡辺 勘吉君                 北條 雋八君    国務大臣        農 林 大 臣  倉石 忠雄君    政府委員        経済企画庁水資        源局長      松本  茂君        厚生省環境衛生        局長       舘林 宣夫君        農林政務次官   久保 勘一君        農林省農林経済        局長       大和田啓気君        農林省畜産局長  岡田 覚夫君        水産庁長官    久宗  高君        運輸省船員局長  河毛 一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君    説明員        外務省条約局外        務参事官     高島 益郎君        通商産業省企業        局産業立地部長  馬場 一也君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査  (昭和四十二年度農林省関係施策及び予算に  関する件)     —————————————
  2. 野知浩之

    委員長野知浩之君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  昭和四十二年度農林省関係施策及び予算に関する件を議題といたします。質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 森中守義

    森中守義君 大臣畜産局長それから経済局長にそれぞれお尋ねしたいと思います。  三十八年七月の閣議決定による生鮮食料品流通改善対策要綱、並びに昨年改正いたしました畜安法等によりまして、比較的に流通体制も軌道に乗ったのじゃないか、こういうように判断をいたしております。そこで、いま、特に豚の場合に、買い出動をやっておるところはどことどことどこであるか、また、その必要があるにもかかわらず買い出動をやっていないところはどこであるか、これをひとつ最初にお示しいただきたいと思います。
  4. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 政府委員からお答えいたします。
  5. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) お尋ねの豚を買っておりますのは、中央卸売市場から買うことができるということになって、現在認可を受けております中央卸売市場について買い入れをいたしておるわけでございます。ただ、神戸卸売市場につきましては、いろいろのいきさつもございましてまだ買い入れをいたしておりません。
  6. 森中守義

    森中守義君 おそらくこの資料は省のほうから出たのだと思いますが、いま畜産局長の言われた神戸の場合に、ずっと開設以来現在に至るまでいわゆる下位価格を割っていますね。四月一ぱいだと、二百八十円から二百七十円と、こういうまさに買い出動にふさわしい状態である。なぜこれが買い出動をやっていないのか。いま、局長は、いろいろな事情があるということのようですが、どういう事情ですか。
  7. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 神戸食肉中央卸売市場は、先生御承知のように、昨年十二月開場されたわけでございますが、開場までにいろいろいきさつもありまして、現在のところまだその取引秩序が十分に確立されておらないわけでございます。で、買参人も一応百三人が登録されておるわけでございますが、実際の取引に参加しておる者は十人内外であるというふうな事情にあります。また、卸売り会社事務体制も必ずしも十分でない点が多いようであります。こういう点から、現在、事業団買い入れをいたしていないわけでございます。
  8. 森中守義

    森中守義君 農林省許可を与えたのはいつですか。
  9. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 昨年の十一月三十日に開場認可卸売り人許可を与えました。
  10. 森中守義

    森中守義君 許可を与えて、それから開設をして、現在まで大体半年ぐらい経過しているわけですね。どうなんですか、一般的に見て、許可を与える前には前段の準備行為というものが当然ある、それが一つと、いよいよ許可を与え、開設をして、理想的な業務形態というかあるいは事業形態になるのは開設の日をもって期待するのですか、それとも、準備段階で完全なものができなかった、したがって、開設以降半年とかあるいは一年とか二年とか、そういう若干の余裕期間を置きながら理想的なものを期待するのか、その点、行政指導としてはどういうようにいままでやってきたのですか。
  11. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私ども市場開設あるいは卸売り人認可をいたしますときは、もちろん事前に市当局あるいは県当局等の相談もございまして、卸売り人の数を大体どのぐらいにするかということも関係いたしますけれども、そこにおいて事業が円滑に運営されるように大体の話し合いを済ませて市場許可あるいは卸売り人認可をするのが一般でございます。この神戸食肉市場につきましても、同様な事情がございまして、これは、実は、神戸市におきまして、農林省からも補助金をもらい、三十六年度から三十八年度にわたりまして市場の施設の整備を行ないまして、食肉市場開設、それから卸売り人認可の申請があったわけでございます。ところが、神戸市の中に実は有力な食肉業者がグループが二つございまして、それぞれ神戸枝肉荷受株式会社あるいは神戸食肉荷受株式会社というものを三十七年ごろでございましたがっくりまして、それぞれ市場内における卸売り人として許可を受けることを望んだわけでございます。その後、いろいろ経過がございまして、私ども神戸食肉市場のような規模におきましては大体一つ卸売り人であることが適当であろうという立場から、神戸市とも相談し、また、神戸市も、その立場に立って両者和解にずいぶんつとめたわけでございますけれども、それがなかなかうまくいきません過程で、神戸市がみずから出資をいたしまして神戸中央畜産荷受株式会社というものをつくりまして、この三社が農林省に対して卸売り人許可競願をいたしてまいったわけでございます。私ども、実は、多少役所立場からいいますと行き過ぎという御批判があるいはあろうかと思われるほどこの調停あっせんにつとめまして、畜産局の課長も現地に行って調停案をめぐって折衝をした経過がございますけれども、なかなか調停和解が実現いたしませんでした。しかし、神戸市といたしましても、相当長い間の懸案でございますし、神戸市がみずから出資をして会社をつくり、そしてその会社卸売り人として許可を受けることが適当だという神戸市の副申もございますし、まあ食肉流通改善の見地から、できるだけ早い機会食肉市場開設することが得策であるという判断をいたしまして、実は、昨年の十一月三十日に許可をいたします前に、経済局長及び畜産局長で、関係者に東京に来てもらいまして、最後のあっせんにつとめたわけでございます。その時点におきましては不幸にしてあっせんは成立いたしませんでしたけれども神戸市長、あるいは新しく許可の対象になります会社社長から、今後においても農林省調停あっせんに当たる趣旨を了解して円満妥結をはかるように努力するという一札が出まして、私どもなお若干調停あっせんについてもう少し時間があればさらによかったという感じもいたしましたけれども、とにかく長い間いわば引っぱってきた経過もございますし、神戸市の事情もできるだけ早い機会開場したいという切なる要請がありましたものですから、昨年の十一月三十日に許可及び認可をして、十二月の十二日に開場いたしたわけでございます。  その後も、私ども、決してこの両派調停あっせんについて熱意を失ったわけでございませんで、神戸市を指導督励して話し合いを進めさしておりますけれども、なにしろなかなか沿革のあるむずかしい話でございますので、ただいままでのところ、まだ両者の完全なる協調が実現いたしませんで、卸売り人卸売り人商売をしてそう業績が伸びない、卸売り人として指定を受けませんでした神戸枝肉会社は、場内のわずかな一部とそれから場外とでいままでと同様の商売をしているということで、市場行政としては決していい形ではございませんけれども、私ども調停あっせんにあたってその熱意はいささかも衰えておりませんけれども現状においてはなお両者の言い分に多少の開きがあって一本化ができないという状態でございます。
  12. 森中守義

    森中守義君 大和田局長の勇み足で、聞かないところまでだいぶ説明がありましたが、そこまで聞いていないんです。要するに、許可をおろすときに、一切の条件整備されているのがこれはあたりまえであろう、常識的に考えた場合。ところが、そういうものが整備されないで許可を与えた場合に、大体、半年とかあるいは一年とか、多少の余裕期間をおいて条件整備というものを期待するのかどうなのか、こういう聞き方をしている。
  13. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) たいへんよけいなことをおしゃべりいたしまして恐縮でございますが、食肉市場というのはなかなか事業運営がむずかしいものでございますから、私ども開場をしてすぐ業務がうまくいくというふうには必ずしも一〇〇%考えておりません。多少の時間を置いて事業運営整備されればそれでいいのではないかというふうに考えております。
  14. 森中守義

    森中守義君 まあさっきのお答えで知らないことまで教えてもらったわけですが、私はまあしろうとだから、それなりに聞いてほしいし、答えてほしいんですが、農林省許可を与える場合には、やはり与えるにふさわしい許可条件というものが具備されておってしかるべきだ、こういうように思うんですよ。しかるに、そうい条件整備されないで許可を与えたというのは、相当古い話であり、しかも、市条例決定等もあって、どうしても急がにゃなるまいということでやったと、こういうことなんですね、簡単に言えば。そこで、結果的には、親切というのか、あるいは時の方針として行なったことが、やはり紛争処理ができていないままに許可を与えたということが今日大きな一つの問題じゃなかろうか、こういうように思うのです。なるほど、調整に入り、あるいは調停案等も示したと、こういうお話ですが、生鮮食料品の今日の状態からすればその配慮もよくわかりますけれども、その点についてはどういったようにいま考えておりますか。つまり、簡略に言えば、許可条件というものが完全に備わって、あとに、その地域における経済的な背景、あるいは社会的な背景沿革、そういうものが将来に尾を引いて問題を残さないような許可の与え方というのが国の機関としては適当なやり方じゃないか、こう思うんですけれども、その点はどういうように考えますか。
  15. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) お話しのとおり、許可を与える前に全部問題が解決されていれば一番けっこうなわけでございますけれども許可を与える前までに相当問題を詰めまして両者調停あっせんに当たり、しかも、許可を非常に急ぐような事情地方にございまして、その上、開設者でございますたとえば神戸市長から、「神戸市は、業界協調と団結を推進し、食肉取引公正明朗化をはかるため神戸中央畜産荷受株式会社及び神戸枝肉荷受株式会社関係業者に対し、農林省最終あっせん案趣旨にそい、今後も引続きその円満な解決努力いたします。」という趣旨念書が入り、しかも、卸売り人として許可される会社社長からも、ほぼ同様な念書が入っておるわけでございますから、それでもなお両者の歩み寄りが完全につかなければ許可をいたさないと言いますと、かえって地方行政を実は混乱をさせることにもなりますので、私ども、ある程度ある意味で見切り発車をして、ここで許可を与え、開場をして、その後の両者和解につとめるほうがむしろ食肉行政のためにもいいのではないかというふうに判断をしたわけでございます。
  16. 森中守義

    森中守義君 そこで、大体、紛争という表現が妥当であるかどうかわかりませんが、要するにうまくいっていない、これだけは、私は、言い方がどうであろうと、事実であろうと思う。したがって、これから先考えなくちゃならぬのは、一日も早くこういう問題の完全なる消滅、あるいは、現代流に言う前向きの姿勢でなければ、せっかくの許可あるいは関係諸法趣旨というものは生きてこない。いわんや、生産者並び消費者がそういうことのために相当大きな犠牲を結果的にこうむるということになる。しかも、さっき申し上げたように、すでに下位安定価格を割っている。こういう現状は、もうとっくの昔に買い出動に入るべきであるにかかわらず、そのことがちゅうちょされている。こういう現実を見て、一体何がその最大原因であるのか。まあ人と人との関係ですから、なかなか物理的に右左という簡単な整理のしかたもできないと思うんですけれども、どうなんですか、いままで調整ないしはお示しになった調停案というものが、皆さんの側から見ればこれが理想である、しかし、関係当事者にすれば、Aなる者は苛酷であると言い、Bなる者は歓迎をする、こういったように、いずれかに偏向したような調整であり、あるいは調停案であったんじゃないかという、そういう想像も多少意地悪い見方ですけれどもするんですが、その辺に自信がありましたか。
  17. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私どもも決して完全無欠でございませんから、それが一〇〇%完全だというふうに申し上げることもできませんけれども、私ども、決して一方的な立場に立っているわけじゃございません。両方の立場もよく勘案してつくったきわめて公平な案だと思っております。ただ、両派が相対立しているというふうに申し上げましたけれども、なかなか根が深く、また、人的な関係もございまして、ただいまのところその調停案が受け入れられていないという状態でございますが、先ほども申し上げましたように、決して私どもこれでもう投げているわけじゃございませんから、今後も一そう両者調停努力をいたしたいというふうに考えております。
  18. 森中守義

    森中守義君 いま許可を与えている中央畜産ですね、これも、創設以来ようやくにして半年たつかたたないかという状態ですから、農林省が期待をされるように完全無欠形態になり、しかも、その内容が長年の実績を持つようなそういうものであるかどうか、これは私も何とも言えません。しかし、新らしいものであればあるほど、それに対応する行政指導、こういうものも必要じゃないかと思うんですね。そういうものが完璧でないから買い出動に出ないんだというこの理屈も私は少々冒険のような気がするんですよ。しかも、買い出動というものは相当責任のある措置でなければなりませんから、当局のいま少しそういう面からの適切な指導、こういうものも行ないながら、すみやかに紛争処理方向に向かっていく。何も投げたんじゃない、こういうお話ですから、安心はいたしましたが、どうなんです。私は率直に申し上げて、A、Bいずれの側も絶対のめないような条件役所のほうがお出しになるとも思えない。そうなると、ある程度内容を吟味した、双方とも応諾できるようなものをこの際何か考えてみる必要があるのではないか。少なくともこういう状態でこの年を越すということは、その地域における消費者なりあるいは集荷をしてくる生産者にとってとてもじゃないが気の毒だと思う。まあおおむねいつの時点でどういう内容であるということまではここで軽々に言うべきでないかもわかりませんが、そういう意思があるかないか、もう一回重ねてお尋ねをしておきたい。
  19. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私ども、実は開場を昨年の十二月にいたしましてからも、この神戸食肉業界の一本化について努力してまいりましたが、不幸にしてそれがまだ実現はしておらないわけであります。しかし、また、私どもが考えております調停案がどちらかに不公平であって、そのために調停がむずかしいというふうにも実は現在のところ考えておりませんけれども、しかし、神戸市にとりましても、また、私たちにとりましても、こういう形で紛争があるということは、決して望ましいことではございませんから、なお今後におきましてもできるだけ努力をしてその調停に当たってまいりたいというふうに考えます。
  20. 森中守義

    森中守義君 大臣にこのことでちょっとお伺いしておきます。  詳細な内容については局長よりお話をお聞きであろうと思います。そこで、どうなんでしょう、トップ・クラスというのか、両局長なりあるいは神戸市場責任者市長ですし、しかも、条例執行責任者神戸市長さんですから、こういう市長ですとか、あるいは市会議長ですとか、そういう人たちにさっそく協議をされて、具体的な処理に入っていくような指示をなさいませんか。  それが一つと、いま一つは、この中央畜産で非常に困っているのは、要するに、業務規程等によれば、三・五%の手数料をとるべきであるにかかわらず、諸般事情で一・五%しかとっていない。そういうことがかなり市場経営の財政を圧迫しているという、こういう話も私は聞いている。しかも、そういったようないろいろな状態安定価格を割っている、下位価格を割っている。こうなれば、せっかく認可を与え許可を与えて流通改善をはかる趣旨であったにかかわらず、むしろだんだん逆な方向にいくのじゃないか。ということを考えれば、また、幸い事業団もつくったことですし、しかも、さっき畜産局長お話を聞くと、全国的に相当数買い入れ量になっておる、こういう実績等に照らして、すみやかに神戸においても買い出動をやるべきじゃないか、こういうように思うのです。さっき局長の話だと、買い出動に出たい、しかし、問題が片づかない、そういう条件が整っていないから手控えているんだという、こういう趣旨のようですが、それとこれとごっちゃにしてやったのでは、これはなおまずいのじゃないか、こう思うんです。ですから、紛争処理は、いま申し上げるように、おのおのの責任者にもう一回農林省が中心になって協議を行ない、調停案というのか調整案というのかわかりませんが、そういう具体的な内容を明示しながら処理を進める。かたがた、その経過の中で、ここで何回も申し上げるように、すでに下位価格を割っているわけですから、当然これは買い出動をやる、こういう両建て解決の方法が一番望ましい。これが関係諸法趣旨にも沿い、ひいてはこの地域における諸般の問題に寄与するのじゃないか、こう思うのですが、大臣、どうです。
  21. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 農林省といたしましては、今後も市当局と緊密な連絡をいたしまして、神戸市場が円満に業務を進められるように最善の努力をいたしたいと思っております。  後段のほうのお話につきましては、政府委員からお答えさせます。
  22. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 豚の買い出動の問題でございますが、これは、一応、市場の機能が十分発揮されまして、公正な価格形成ができるということでございませんと、買い出動というものはなかなかむずかしいわけでございます。したがいまして、会社改善指導につきましてわれわれも努力をいたしまして、その結果を確認した上で買い入れをするようにいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  23. 森中守義

    森中守義君 畜産局長、決して意地悪くあげ足をとるわけではないが、そういう確認をすべき段階はもうとっくにあっているんですよ。要するに、下位価格を割っているという事実は、御承知なんでしょう、一月、二月からずっと続いているわけだから。そこで、すべきものをするような体制、すなわち確認をいままでもしていないということは、これはやっぱりちょっと問題ですよ。ですから、そういう条件整備あるいは成熟ということは、皆さん指導ですよ、それは。その辺が私はやっぱり多少割り切れないようなところもある。だから、たいへんくどいようだけれども経済局長と私の取り合いも、紛争処理紛争処理、同時に買い出動買い出動、こういう両建てでやっていいんじゃないか。しかも、もし発動するに適当でない条件等があるならば、これは速刻適切な指導を与えれば、これはやっぱり役所関係指導を受ければ、中央畜産といえども一も二もなくそういう処理ができるのではないか、こう思うんですよ。だから、確認ができないからそれまで待てということでは、これはなかなか大きな問題です。だから、両建てでやっていったらどうなんですか。
  24. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 先ほど申し上げましたように、もう買参人が百三人登録をされており、現実には十人くらいしか売買に参加をしていない、こういうふうな事情でございますと、なかなか公正な価格形成されないわけでございます。そういうふうなことから、実は、正常な合理的な価格形成が行なわれ、秩序が確立いたしませんと、その買い出動ということがなかなかむずかしいというふうに判断しているわけであります。そこで、できるだけ改善指導をいたしまして、それでそういうふうな公正な価格形成ができるという秩序ができるところで買いに出動してまいりたいというふうに実は考えているわけであります。
  25. 森中守義

    森中守義君 それは、なるほどその買参人が多いにこしたことはありませんよ。しかし、それは、どうなんですか、何人でなければならぬとか、何人を割っちゃいけないんだ、そういう何か基準的なものを持っているのですか。神戸買参人の場合には、相当数いるんじゃないですか。しかし、その辺のいろいろな特殊な商行為等もあろうし、皆さん方が期待される買参人の数は何人でなければならぬ、あるいは法定基準は何名でなければならぬという、そういうものはないわけでしょう。
  26. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) お話のように、何人でなければならぬということはございません。しかし、非常にわずかな人が買うというようなことでございますと、やはりそこに公正な競争によりまして妥当な価格形成されるということがむずかしい点もあると思っているわけでございます。したがいまして、そういうふうな点で、やはり市場秩序として妥当な秩序形成をされるということが望ましいわけでございますから、そういうふうなことになるように指導いたしましてひとつ買い上げもやるということにいたしたいと考えているわけでございます。
  27. 森中守義

    森中守義君 私は、さっきから申し上げるように、神戸における市場壊滅状態にあるという、そういう見方はしていないんですよ。しかしながら、さっき申し上げるように、業務規程等では三・五%、本来はとるべきものを一・五%に下げざるを得ない、こういう状態があってみたり、市場内におけるいわゆる整理状態というものが二つばかりに分かれているという、そういう問題等紛争最大原因をつくっているわけです。だから、せっかく許可を与えた——許可を与えたということは、買い出動すべきだという一つ背景を持っているわけですからね。ですから、私は、やっぱり直接畜産局あたりが指導に乗り出して、買参人状態がどうであるか、実際の商行為はどうである、そういうものをかなり精細に調査をすれば、一つの答えは出ると思うんです。だから、確認ができないから買い上げないんだというそういう言い方は、私は正しい指導やり方ではないと、こう思うのですがね。
  28. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) われわれのほうも、できるだけ早く調査もいたしまして、それでその改善指導をいたしまして、まあ買い入れをするということにいたしたいというふうに考えているわけでございます。
  29. 森中守義

    森中守義君 要するに、話の要点というものはおおむねわかりました。また、私がお尋ねした趣旨というものもおわかりいただいたと思うのです。それで、大臣からお話がありましたように、できるだけすみやかにこの紛争処理をしてもらう、そういう措置をとっていただくことと、それと重ねて買い上げの問題については、市場の安定と正常化のために極力すみやかに特段の配慮をされたい、こういうことをお願いを申し上げておきたいと思います。
  30. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ただいま森中さんといろいろ質疑がございましたその経過事情はきわめて明瞭でございます。私どもも、なるべく早く和解ができまして円満に神戸市場が動いてまいりますように、そのためには支障になっておりますような問題について調査をいたしまして、これが円満に運営できるように努力をいたしてまいりたいと思っております。
  31. 森中守義

    森中守義君 少し水産関係についてお尋ねをしたいと思います。  まず、最初に、水産庁長官お尋ねしたいのは、先般水産庁から発表された資料によりますと、昭和四十年でわが国の全生産量が六百八十万九千トン、こういう数字を示しております。しかも、三十六年後、別にこれは基準年次になるとは思いませんが、これから減ったりふえたりという状態で、ほとんど六百万台を足踏みしている状態であります。しかも四十年に至りましては、ペルーがわが国をこえた、こういう状態でありますが、将来の展望として、いつだか長官が一千万トン台にこぎつけたい、こういうお話でしたけれども、大体一千万トンというそういう大台にのせる自信がありますか。
  32. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 水産物の需給の今後の見通しでございますが、いま一千万トンというお話がございましたけれども、さような数字は申し上げたことがないように思います。いま私どもで計画として持っておりますのは、先般発表いたされました経済社会発展計画との関連におきまして試算したものでございまして、需要のほうの測定といたしましては、四十六年度におきまして約九百万トンを予想しているわけでございます。これに対しまして、供給の分野では、一応七百七十万トンという予想を立てておるわけでございます。したがいまして、依然として国内生産が需要を下回らざるを得ないという傾向は続かざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。しかしながら、いま申し上げました数字は一応の見通しでございまして、今後の生産につきまして、近海漁場におきます未開発漁場が減少しておりますし、また、いま御指摘のございましたような多獲性魚類につきましても、生産の比重が相当高いにかかわらず、変動要因が非常に大きいものでございますので、さらに国際的な規制の強化の問題等も考えますと、なかなか需要に追いつくのは非常に困難ではないかというふうに思っております。三十一年から三十七年までに伸びましたような飛躍的な増加は必ずしも期待できないのではないかというように思っておるわけでございます。  しかしながら、このようなギャップを埋めます問題といたしましては、もちろん水産物の供給の増大をはかる必要があるわけでございますが、一応対策として考えておりますのは、新漁場の開発、ないしは沿岸漁場の改良造成、繁殖水面の保護、水質汚濁の防止といったような一連の水産資源の維持増大の措置をとりまして処理をしてまいりたいというように考えておるわけでございます。
  33. 森中守義

    森中守義君 さっき申し上げた三十六年以降の生産の推移を見ると、大体、のぼりつ上がりつという状態ですね。それで、なるほど四十六年の供給は七百七十万トン、需要が九百万トンこういうことですが、これはどうなんですか、別なあれで行きますと、去年あるいはおととしあたりから日ソ間の交渉で問題になっているいわゆるサケ・マス、これはもう明らかに資源の問題も関連をして、少なくとも十五万トンを将来オーバーするようなそういう見通しがありますか。むしろ低下の方向に行っているんじゃないですか。だから、特段の措置を講じなければ、七百七十万トン、現在より七、八十万トンふえるということですね、そういう期待が持てますか、このままの状態で。
  34. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 今日まで三十七年以来若干停滞しておりました中身を見ますと、やはり海況による影響を非常に受けるわけでございます。多獲性魚類、たとえばサンマがとれなかったりいたします、多獲性魚のフレが実は大きく支配をしているように思うのです。したがって、多獲性魚の規制に相当影響を受けざるを得ない。一応私どもの見通しといたしましては、いま申し上げた数字程度はぜひやらなければいけないし、非常に困難だとは考えておらないわけでございます。ただ、何ぶんにも魚獲の相当大きな部分を回遊魚が占めております。その回遊によりまして年々の幅が相当開きますので、必ずしも的確に申し上げられないと思うわけでございます。
  35. 森中守義

    森中守義君 ちょっと資料がございませんのでお尋ねいたしますが、四十六年のいま言われた七百七十万トンの、沿岸、沖合い、これに対する遠洋、その比率はどういうふうになっておりますか。
  36. 久宗高

    政府委員(久宗高君) いま比率を申し上げますが、その前に、先ほど申しましたギャップでございますが、四十六年におきまして約百三十万トンのギャップが出るわけでございますが、それの埋め方といたしましては、三十万トン程度のものは水産物利用の高度化——相当むだもございますので、そういうことによってかなり補われるのじゃないかと思っておるのであります。それからもう一つ、あとの百万トンは、これは輸入等によって補うこととなりますが、その大部分は飼餌料の問題になるであろうと思います。これは計算上でございますが。したがいまして、百万トンと申しておりますのは、これは原点に換算したものでございますので、飼餌料で換算いたしますとその五分の一くらいと考えていいと思います。  なお、いま申し上げました七百七十万トンの内訳でございますが、沿岸漁業で二百五十一万七千トン、それから沖合い、遠洋漁業で五百三万六千トン、内水面漁業で十四万七千トン、このくらいの数字を考えているわけでございます。
  37. 森中守義

    森中守義君 遠洋並びに沖合いの五百三万トンというのは、大体責任があるものとして受け取っていいのですか。いまのように規制が非常に強くなっていけば、この数字に相当狂いが出てこないですか。  さらに、いま一つは、いままで水産庁でこういう資料をずっとつくってこられた場合に、おおむね計画どおり進んできておりますか。
  38. 久宗高

    政府委員(久宗高君) お答えいたします前に、ただいま申し上げた数字をちょっと訂正させていただきたいのであります。まるめて七百七十万トンと申し上げましたが、もう一度申し上げますと、総計といたしましては七百六十八万五千トン、それで、沿岸では二百四十七万一千トン、それから遠洋、沖合いを含めまして五百五万四千トン、内水面では十六万トン、こういう数字でございます。御訂正をいただきたいと思います。  なお、今日までいろいろな諸計画の中でそういうものが達成できたかどうかというお尋ねでございまするが、今回までに立てました計画の中では、必ずしも計画したものが十分に実現できていない、少なくとも経過的にですね、問題もあるのでございますが、ただ、それにつきましては、何か漁業の運用上まずい点があってそうしてその生産が伸びなかったと申しますよりは、数量的に申しますと、ここ数年の多獲性魚の動きの変動が非常に多うございまして、そのために達成できなかったのではないかというふうに見ているわけでございます。また、今後の問題におきましても、そういう変動は非常に大きいと思うのでありますが、私どもといたしましては、その変動はもちろん前提にしなければなりませんけれども、漁場の改良でありますとかあるいは新漁場の開発ということで少なくとも平均的に見ればそういう水準に持っていきたいというふうにいま考えておる次第でございます。  なお、数年来、ペルーとの関係におきまして世界一、二といった問題がよく論議されるわけでありますが、ペルーの場合におきましては、御承知のように、あれはカタクチイワシが集中的にとれる結果、非常に片寄った漁獲でございますが、漁獲量としては世界一ということになったわけでありますが、全体といたしましては、日本近海のみならず、その他の地域におきましても、相当大きな漁況の変化がこの近年相当顕著に動いているように思いますので、まあ正直に申しますと、そのとおりかと言われますと、お答えしにくいのでございますが、少なくともそういう漁獲の変動を頭に置いた上で一応着実な漁場開発の努力をしていけば、いま申し上げたような水準までは持っていけるだろう。しかし、そのときにおいても、なおかつどうも需要のほうの伸びは非常に強うございますので、それを完全にはちょっとカバーできないという感じを持っております。
  39. 森中守義

    森中守義君 私が心配しますのは、なるほど目標というものが達成できるかどうかというのは、努力と英知に待たなくちゃいかぬ。それで、さっきちょっと長官の答えがはっきりしなかったのは、いままで立てた目標がオーバーしておるのじゃないだろうか、少なくとも落差を生じているのじゃないか、そういったような御趣旨であったと思う。そこで、今日のように、戦後ことに漁類たん白質というものが世界各国とも非常に重視をされている戦後における沿岸諸国の漁業との取り組みというのは、かなり変わったものがあるという見方をせざるを得ない。それが一つと、そのために、それぞれの領海問題あるいは専管水域の問題、こういったようなことでかなりきびしく規制が加えられてくる。そこで、いま訂正された五百五万四千トンというのが、はたして何割の歩どまりにいくのかということにもっと慎重な政策上の配慮、こういうものが必要になってきたのじゃないか、こう思うんです。まあ多少抽象的な言い方ですが、まずその辺から入っていきたいと思う。それで、いま水産庁のほうでおとりになっている、戦後に沿岸諸国が力点を入れた状況というものを一ぺんひとつ御説明いただきたいと思います。
  40. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 一番最後のお尋ねがちょっと意味がのみ込めなかったのでございますが、もう一度おっしゃっていただけませんか、一番最後の……。
  41. 森中守義

    森中守義君 こういうことですよ。戦前は大して沿岸国でありながら漁業に力を入れなかった国がたくさんあります。ところが、戦後、これらの国が重要な国策として漁業に乗り出してきた。これはもう私の手元にもそういうものをあらわしたものがあるのですけれども、その辺に水産庁ではどういう見方をしているか。しかも、大別的に、アメリカ、カナダ、あるいはヨーロッパ、アジア、ソ連、こういったように一応漁業に力を入れている分布状態というものを明らかにしてほしい、こう言っているわけです。
  42. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 戦後になりまして諸外国におきまして漁獲努力が急速に伸びていることは、御指摘のとおりだと思います。特に、それも、戦後の後半の時期、三十年代以降になりまして急速に伸びているように思うのでございます。  そこで、地域を分けて申し上げますと、ソ連におきましても、御指摘のとおり、長期計画の中で、おそらく農業の挫折を補う意味におきまして、水産に非常なウエートがかかっておるように私どもは受け取っておるわけでございます。特に最近におきましては、極東におきます漁獲にまあ聞くところによれば三分の一ぐらいのウエートがかかっておるというふうに聞いておるわけでございます。これはもちろんサケ・マスだけではございませんで、他の多獲性魚につきましても、相当な力が入っているようでございまして、そのために、漁獲努力、特に漁船の増加が非常に目立っておるように思っておるわけであります。それのはね返りを受けまして、実は、アメリカにおきます十二海里法案の問題あたりも、その辺に問題が胚胎しておったように聞いております。いずれにいたしましても、ソ連におきます漁獲が計画経済の中に大きく組め入れられて、その中の極東部面が相当大きなウエートを持っておるということが一つの特徴的な点であろうと思うのであります。  それから漁獲で非常に大きなウエートを占めておりまして実は正確につかめませんのは、中共の関係でございまして、これも、東海、黄海その他におきます漁獲が相当の伸びを示していることは事実のようでございます。  その二つを除きまして、あとの国々で申し上げますと、非常に急速に伸びたというところは必ずしもない。ただ、ペルーにつきましては、先ほど申しましたようなカタクチイワシの回遊との関連におきまして膨大な漁獲が特に近年になりまして伸びているように聞いておるわけでございます。  そこで、御指摘の、一般の沿岸国におきまして、特に発展途上の国々におきます漁獲努力が、わが方の漁場にどのくらい影響するかという問題でございます。先般のFAOの会議におきましてもさような問題が出ておりましたけれども、いずれにいたしましても、食糧の不足を補います場合に、手っとり早くいけば水産資源にたよったほうがいいということで、それぞれ沿岸国におきまして漁業について強い関心を持っておられることは事実でございます。一応いま私どもの感じておりますあれでは、漁獲努力をしたい気持ちはございましても、それを実現する手段方法に欠けておるように思うのでございます。したがいまして、沿岸国におきますさような動きがございましても、それが直接わが国の漁獲に大きな影響をいま直ちに及ぼしてくるとは思っておらないわけでございます。現在海外に出ております地域で、たとえば十二海里法案でございますとかその他の関係で問題が起こりまして、漁業ができなくなるといったような問題が予想される場合に、それが絶対量といたしまして現在の魚の需給関係を根底からくつがえすほどの大きな問題にいま直ちになるとは考えておらないわけでございます。ただ、傾向といたしましては、御指摘のような問題がございまして、私どもといたしましては、もちろん十二海里法案の一連の問題を現実的に解決いたしますと同時に、こちらから申せば遠洋漁業でございますけれども、先方から申しますと沿岸の目の前をひく漁業になりますので、経済協力との関連におきましてさような問題を単なる水域上の争いではなくて解決していくとすれば、そう急にそれぞれの専管水域が引かれて締め出しを食って大きく漁獲が下がるというふうには見ておらないわけでございます。ただ、傾向としましては、そういう問題がだんだん強くなりますので、私どもといたしましては、漁業協力の問題とこれとからまして漁場の確保につとめますと同時に、また、新漁場の開発という問題につきまして格段の努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  43. 森中守義

    森中守義君 いまの長官のようなそういう判断であれば、これはけっこうですよ。しかしながら、たとえばソ連を例にとった場合、昭和三十五年の三百二十五万トンが、わずかの間に四百九十七万トンになっている。これは見方によると脅威的な伸びですよ。それからノルウェーの場合が、百五十二万トンが二百三十万トン近くなっている。これも相当なものじゃないですか。それからアジアめ場合には、ベトナムあたりも、やはりこのわずか五年の間に二十五万トンから三十七万トンになっている。こういったように個々に見ていけば、相当な力の入れぐあいというのが数字によってあらわれてくる。特にいま私どもが問題に供さねばならぬのは、韓国の動向だろうと思う。  ですから、こういったように、一応三十五年、三十六年から昭和四十年までの五年間の統計を見ても、おのおのの国が相当力を入れ出した。ですから、いま長官が言われるように、わが国の遠洋漁業、これが致命的な打撃を受けることにはならぬだろうという見方は、少々甘いのじゃないか。しかも、そのことは、各国の政策としてあらわれていると思います。さっき申し上げたように、すでに領海三海里から六海里になってみたり、あるいは十二海里になって、専管水域がどんどんできている。他面、新漁場の開発というけれども、なかなかこれは簡単にいかぬのじゃないですか。ことしお出しになっている予算の中でも、国際的な新漁場の開発は一カ所でしょう。はたしてそれは見込みがありますか。だから、国際漁場の開発というものもある限界にきておるだろうし、まだまだ各国が力点を入れて水産政策に力を入れていくならば、いま言われるような見方では心していいかどうか。私は、その点は議論の分かれるところですけれども、よほど慎重に水産庁としてはもう一回見直す必要があるのじゃないか、こういうように思うのですが、どうですか。
  44. 久宗高

    政府委員(久宗高君) ことばが不十分で誤解をお与えしたかと思っておるわけでございます。私ども、もちろん楽観していないのでございます。私は特にあまり心配はないと申しましたのは、全体の漁獲量につきましてそう心配はないと申し上げたわけでございまして、個々の地域につきましては、いろいろ問題がございます。  それから御指摘のような各沿岸国で、低開発国はもちろんのこと、あるいはもう先進国におきましても、あらためて水産にたん白資源を求めて急速にやり出すという国もございますので、漁場におきます競合は相当激しくなるものと予想せざるを得ません。特に御指摘のように、ソ連の場合におきましては、日本に追いつけ、追い越せという考え方で、どういう場面におきましても日本とパーの要求をいろんな部面で出してこられておりまして、その数量も非常な飛躍的な伸びで伸びてきておりますので、非常に問題があると思うのでございます。  ただ、私が申し上げましたのは、いまの低開発国も含めました沿岸での動きが、まだまだ沿岸の資源をほんとうに利用できるような形でそこまでの熟し方をしていないと申しますか、その点をちょっと申し上げたかったわけでございます。したがいまして、それが取り尽くしてしまって、こちらが行ってももうないというようなことよりも、やはり、将来とる、ここに入ってくれるなという御要求が強いのじゃないかと思います、低開発国についていえば。そういうようなことを考えますと、確かにいまの遠洋でのとり方では、こちらから出かけてまいりまして、それももう沿岸国の地先の水面で相当の漁をするというようなことだけをやっておりますと、確かに反撥を食いますし、もっと遠洋漁業のやり方にいたしましても、その国に経営を与えるような形でその沖も一しょにとらしてもらう。そういうような形が当然とられなければいけないのじゃないか。この点が、私どもといたしましては、経済協力のほうが少しおくれておりますので、ただ船だけ持っていってとるといったようなことが先行しておったのはまずかったというふうに考えております。したがいまして、今後の十二海里その他の交渉におきましても、ただ水面の利用区分だけの問題だけでなしに、相手方によりましては経済協力問題と関連をいたしまして処理をしなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  45. 森中守義

    森中守義君 多少意見になりますが、さっきの長官の御説明は、私は決して誤解したつもりじゃございません。ただ、見方が、もっときびしい見方をしたほうがいいんではないか、こう言ったわけなんですが、残念なことは、すでに廃止になりました長期経済計画、あるいは中計、今回の新計画、いずれも漁業の問題については重要な経済政策としてどこまで考えているか、その辺に私は多少疑問を持っておるんです。同時に、今日あるいは将来のわが国の水産業、漁業というものが、はたして成長産業たり得るかどうか、安定産業たり得るかどうか、この辺にはかなりむずかしい問題があまりにも多過ぎる、こういうように思うんです。逆に言うならば、成長産業たり得ない、安定産業たり得ない、他面、需要は相当拡大しているということににれば、そのギャップというものはいずれ大きな問題になる。そういうことを多少概念的に予見できるならば、いまもっと具体的な対策が樹立されて当然じゃないか、こういうように思うんです。中でも問題なのは、やはり遠洋漁業ですよ。はたして、さっき言われるように、沖合いまで出た五百五万四千トンというものが、そのとおりいくものかどうか、はなはだ疑わしい。相当落差を生ずるのじゃないか、こういう見方をしている。といいますのは、わが国が出かけていってとってくるのよりも、へたすると、よそから来て日本のものがとられるほうが多いのじゃないですか。その辺の見方はどういう見方をしますか。
  46. 久宗高

    政府委員(久宗高君) たいへんお答えしにくいのでありますが、いまの漁船勢力だけ考えますと、それぞれふえておりますので、私どもの領海におきましてもそれを非常に不安がる向きがございます。しかし、実際問題といたしましては、日本の遠洋漁業を考えました場合に、遠洋漁業だけがピラミッドの頂点のようにぽつんとあるのじゃなくて、これのすそ野のほうに、沖合いなり、沿岸なり、あるいは関連いたしました一連の産業があるわけでございます。かりに漁場で競合いたしました場合におきましても、これが直ちにそういうすそ野なしに遠洋漁業のある船を持って、それでもって漁獲ができて、それが継続していけるとは、必ずしも考えておらないわけでございます。もちろん、新興国家におきまして、特に遠洋に相当途中はしょりまして出てきておる向きがございますし、ある種の漁場におきましては、競合を来たしておる面もございますが、私はもう少し長い目で見ました場合に、それがそのままの形で続き得るものとは必ずしも考えていないのでございます。あるいは甘いという御指摘を受けるかもしれませんが、一応そう考えております。  ただ、そうかといって、現在の日本の遠洋漁業を考えました場合に、先ほどちょっと申し上げましたように、こちらからいえばまさに遠洋漁業でございまして、相当長期の航海に耐えてやっておるわけでございますが、とっておりますのは実はよその国の沿岸でとっておるわけでございます。もう少し長い目でものを考えろとおっしゃれば、いまの水準が非常に高いといいながら、それはいままでの漁業でございまして、たびたび本委員会でも御指摘がございましたが、もう少し深いところの資源でございますとか、あるいは、新漁場と申しましても、従来の概念での新漁場というものでない、そういう分野を開拓しなければならぬだろう。これを個々の企業にたよってできるのか、あるいは国がみずからやるべきかといったような問題が残ろうかと思うのでございます。この辺が今後の私どもの課題だろうと思います。
  47. 森中守義

    森中守義君 お話は一通りわかりはします。しかし、だいぶ意見は違う。といいますのは、先ほどはしなくも長官が言われたように、ソ連の場合には、日本の漁業に追いつけ、追い越せという合いことばをとっている。まだ、わが国の今日の水産界においても、すでに攻勢から守勢に立った、まさに守る一方だ、こういったようなことがよく言われる。私はそれだと思うんですよ。ですから、具体的に多少お尋ねしたいと思うんですが、すでにアメリカにおいてはバートレット法の制定で専管水域をつくった。依然として昔から問題になっている百七十五度の問題は解決しない。日ソの漁業交渉においては、資源の問題を理由にだんだん漁獲量の制限が行なわれている。かてて加えて沿岸にはソ連の船が威風堂々と隊伍を組んで根室沖に入っている。韓国は、御承知のように、日韓漁業条約等をむちゃな締結をしたものだから、これまた大ぴらにやっておる。最近は北洋にまで出る。こういったような状態を考えてみれば、長い目で見よう、決してそうそう心配なことはない、こうおっしゃるけれども、やはり事態は攻めるよりも守らにやならんというこの事実をどう見るか。私はいま少し長官のほうでもシビアなものの見方をしたほうが適当であろうし、そういう立場から水産政策を進めていくことが当を得ていることじゃないか、こう思うのです。そこで、すでに領海の問題、専管水域の問題になってきておりますね。これはどうなんです。すでに、国内の一部におきましては、専管水域を設定したらどうか。しかも、三海里というものは、古典的なものであって、根拠になるべきものでない。昔、陸地から大砲を撃ち込んで、その着弾距離が三海里だった、こういうまさにおとぎ話のような話が今日の三海里説になっている。したがって、守らねばならんというこういう状態の中で、やはり専管水域の問題、あるいは領海の問題は、このあたりで一ぺん真剣に検討する段階にきたんじゃないか、こう思うんですが、どうですか。
  48. 久宗高

    政府委員(久宗高君) これはいろいろ御意見のあるところだと思うのでありますが、一応私どもの考えを申さしていただきますと、いまの領海ないしは専管水域の問題でございますが、御承知のとおり、例のジュネーブにおきます海洋法関係の会議を契機といたしまして一連の動きがあるわけでございます。私どもは、一貫いたしまして、国際法上少なくとも現段階におきまして確立された慣行といたしましては、三海里というものではないだろうかというふうに考えておるわけであります。しかしながら、専管水域の設定が徐々に行なわれておるわけでございます。これは、ある特定の国と私どもが合意してきめる分にはかまわないと思うのでございますが、どこかの国が一方的にそれを宣言いたしましても、それが第三者を拘束するものではないという立場を堅持して処理に当たっておるものでございます。  なお、この間誤解を避けておきたいと思いますのは、三海里と申しますのは、御指摘のございましたように、はなはだ古典的な感じがするものでございます。私どもは、十二海里ないしは専管水域そのものが現在の国際漁業におきまして次第に熟しておるという傾向は無視してないのでございます。なぜこれに私どもが固執しているかと申しますと、専管水域を引かれました場合に、その中において行なわれておりました歴史的な漁業をどう取り扱うかということは、なんにも確立してないのでございます。あるグループにおきましては、年度をきめまして、その中におきます継続した実績で認めようというようなことで数国間が話をきめておるところもございますし、全然認めないという立場にあるところもあります。あるいは、先般アメリカとやりましたような現実的な交渉におきましては、十二海里法案をつくったけれども、その中で歴史的な実績は考えよう。その考えるのをどう考えるのかという中身はきまってないわけでございますので、したがいまして、十二海里そのものをのんでしまうということになりますと、全くまだ内容のきまってないものをのんでしまうということになりますが、少なくとも諸国におきます専管水域と言えるものの中で相当の歴史的な実績を持っておりますわが国といたしましては、この段階におきましては十二海里法案をそのまま容認することができないわけでございます。われわれの歴史的な実績を、それぞれの法的な立場を一応たな上げにいたしまして、具体的な話し合いにおいてその現実的な漁業の調整をはかって、そういうものが次第に熟してまいりますれば、十二海里法案といった場合に、その中身はこういうもので、その中では歴史的な実績はこういうふうに認められるのだということがいろいろな実績でほぼ国際的にも明らかになった段階におきましては、必ずしも固執をするものではない。しかし、現在の段階ではさような踏み切りはできないということでございまして、決してその古典的な三海里だけ守っておればよろしいという考え方ではないわけでございます。この点は誤解のないようにしていただきたいと思うわけでございます。  なお、わが国の水産業界におきましても、地域によりましては、たとえば北方の関係におきましては、沿岸に他国の船がいろいろ出てまいっておりますので、専管水域を引いてはどうかというような御意見も一部にはございます。しかし、たとえば北海道を頭に置いて考えました場合でも、一応まあ十二海里という問題を頭に置きました場合に、十二海里で専管水域を引いたらばそれで事足りるだろうかということを考えますと、私はむしろそれよりももっと沖合いまで含めた何らかの取りきめが必要なような事態が徐々に醸成されておるように思うのであります、特に多獲性魚につきまして。そう考えますと、専管水域をかりに十二海里と引きましても、必ずしもそこにおきます沿岸漁業の実質的な権益が十分に守れるとは必ずしも思えない。もっとドラスティックな措置が場合によれば必要なんじゃないか、こう思うわけであります。それからまた、現在の段階で出入りがございますけれども、外の国に行っております関係を考えますと、やはり、たてまえといたしましては、十二海里をそのままのんでそして相手方が何を言うのかわからない状態で交渉するんではなくて、別途に、そういうような立場を離れまして、実際の漁業調整はどうするのかという話をしたほうが得策である、この段階では、と考えておるわけでございます。
  49. 森中守義

    森中守義君 あの問題は、いま長官のほうから、そういう成熟した段階ではない、こういうお話ですけれども、必ずしもそうじゃない。FAOが提唱して、すでに五八年と六〇年と二回にわたってジュネーブでやっておりますよ。その中で、当時の日本の首席代表の奥村さん、これはたしか、六〇年だったと思うのですが、この際に、領海並びに専管水域についていろいろ意見が出ている。しかも、わが国は、首席代表の奥村さんが演説をした中に、アメリカ並びにカナダの提案する六海里に賛成をする、ただしそれは全会一致制にすることが条件である、こういう提案をして、すでに三海里説は放棄している、一回は。しかし、それが成立をみなかったからもとの三海里に戻ったと、こういうことのようですけれども、もうすでにその成熟段階にきているということは、わが国が公式に国際舞台でそれを言っておる。これ一つとってみても、検討の段階にきているということが言えると思う。おそらく、奥村首席代表が単独で個人の発言じゃなかったと思う。少なくとも本国の訓令を受けての発言だと思うのです。したがって、いま言われるように、なるほど国際法上の三海里だ、こう言われるけれども、実際いま申し上げる海洋法会議できめようというのが今日の国際間の問題であって、ヘーグで二、三回その問題をやっていますけれども、三海里というのは、国際法上明記されていないのじゃないですか。むしろ国際慣習法を受けてそういう既定事実化されたという、こういう認識を私は持っている。いわんや、日本の場合に、三海里宣言をしたのはどこにありますか。少なくとも、現在においては、そういうものはありませんよ。いろいろ調べてみれば、三海里宣言らしいものは、明治三年太政官布告四百九十二号、これがわが国が国内ないしは海外に対する三海里宣言ですよ。それ以外ないと思う。だから、国際法を受けてどうだこうだと。しかも、それは、いままで日本が漁業交渉等で絶えず主張してきた公海の原則、その一点ばりなんですね。しかるに、現状の国際漁業というものはそれでいいのかどうなのか。カビのはえたものを持ち出して、依然として公海の原則だと書ってみても、なるほど、御指摘のように、専管水域を設定しても、過去の実績をみるんだ、だから何ら変わりない、こうおっしゃるけれども、それならば、昨年のパートレット法はどうです。過去の実績というものを一〇〇%認められておりますか。かなり後退をし、かなり低下をしておりますよ。おそらく、どこの場合だってそうだ。そういうような今日の趨勢を考えるならば、一たびわが国も国際舞台において三海里説を六海里説に変えた時代もあるし、しかも、現状は、どうしても専管海域をつくろう、領海三海里説にこだわるべきじゃないだろう、こういう意見が台頭している現状ですから、むしろ私はそういうことがいわゆる水産政策の一つの幕末にならなくちゃならない、こういった見方を持つのです。そういうものがきちんと片づいていなきゃだめじゃないですか。特に国際漁業の問題になれば、これに規制を加えるということ、あるいは保障するということ、あるいは規律を保っているのは、国内法にはないでしょう。沿昂漁業振興法だけじゃないですか。他に国際問題を規制しているのは何もない。そういう国内法の不備もありますよ。ですから、ただ長年の実績である、長年の伝統である、だから国際漁業は将来の展望としては心配要らぬという見方は、少々甘過ぎる、私はこういうふうに考える。したがって、領海あるいは専管海域の問題になると、長官は長官の御意見がありましょうが、これは何としても政府全体の問題でしょう。非常に重要な問題であります。それで、農林大臣のほうからこのことの所見を一ぺん聞かしてもらいたい。
  50. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 水産庁長官が申し上げておりまするのは、わが国が他国の宣言いたしておる宣言をそのままに受け入れるという必要はないんだと。それは、つまり、わが国が他国の専管水域内ですでに漁獲をいたしておる既得権を認められておる国もあるので、もちろん時々刻々変わってまいる社会でありますからして、専管水域等についてもそれぞれ政府部内においても検討は続けておりますけれども、たとえばこの間の日米漁業交渉に際しましても、御承知のように、専管水域というものを、一方においてアメリカとロシアとの間には話が成立いたしておるにもかかわらず、わがほうとの話し合いにおいてはその中で漁獲をすることを承認いたしておるような次第でございます。そういう段階でございますから、もちろん御指摘のような傾向については続けて検討はいたしていくわけでありますが、また、現に続けてもおりますけれども、いまにわかにあなたのお話のような割り切ったことにすることがはたして有利であるかどうかということについてはまだ結論を出しておらない、こういうことでございます。
  51. 森中守義

    森中守義君 もちろん、これは、政府一体の問題であり、農林大臣として正確な言明は困難であろう。私もよくわかります。ただ、趨勢はそう向かっている。  それと、いま一つ、話はちぐはぐになりますが、日ソ間の問題ですね。これはいまどういうことを大臣お話しになったのかよくわかりませんが、私の理解するところでは、ソ連政府とわが国の大日本水産会ですか、ここのコンブ協定の際に、実は歯舞、色丹の問題で特別に恩恵的なものをソ連は認めているということであって、政府間の協定もしくは交渉によってソ連の十二海里というものの中で実績を持っているからやってもいいということじゃないのでしょう。その辺をちょっと明らかにしておいてください。
  52. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) いま私が申し上げましたお答えの中でロシアのことばを出しましたのは、アメリカとロシアとのことでございまして、わが国とのことではないわけでございます。アメリカとロシアとは専管十二海里をお互いに承認し合っておるにもかかわらず、特に日本とアメリカとの間にはそのことについて触れないで、そして漁獲については従来の実績はそのまま認める場所もあると、こういうふうな関係がありますので、まあまあいまあんまりはっきりやらないほうが得ではないかという意味のことが先ほどの水産庁長官のお答えの中にあるわけであります。  それから歯舞、色丹のことにつきましては、歴史的のことでございまして、よく御存じように、われわれは、歯舞、色丹というものは北海道付属の島嶼でありまして、日本国の固有の領土であるという見解に立っておるわけでありますから、いわゆるあそこの安全操業なるものについて政府が当事者となって話し合いを進めるときには、当然やはりわが国はわが国としての正しい主張をまずせなければならないだろうと思います。したがって、便宜的に、事実問題はすでにああいう事実で占領されておるわけでありますから、それにもかかわらず、そこで生業を営んでおる漁民の安全のためにはかりたいということで御承知のように大日本水産会等が表面に出てやっておると、こういう事態だと理解いたしております。
  53. 森中守義

    森中守義君 またそのことはあとで承りますので、あと回しにしますが、長官、どうなんです。専管水域を設定している国と交渉をやったその結果として過去の実績というものは認められている、だから何ら損失をこうむらないということは、逆にわが国が専管水域をつくっても実績を認めざるを得ない。これはまた、私どもも、領海を六にするか、九にするか、あるいは専管水域を六にするか三にするかという、こういう問題はいろいろありますよ。しかし、やはり実績は認めなければならぬというこういう踏まえ方はしている。しかし、実際問題として、専管水域が設定をされた場合に、全く従来どおり一〇〇%の実績が保障されているかどうか、具体的な例があったらひとつ教えてください。特に昨年のアメリカのバートレット法の関係でかなり後退をしておる。これは私は事実が証明しておると思う。要するに、専管水域が設定されればなかなか従来どおりにはいかない、これはおおむね傾向だと思う。そういうところがあったら教えてください。どこの国とやった場合にそれが保障されているか。
  54. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 専管水域と関連いたしましてお答えいたします前に、先ほどちょっとお話の出ましたジュネーブ会議の段階ですでに三海里は放棄している云々というお話がございましたが、それは必ずしもそうではございませんで、ジュネーブ会議におきましては例の四つの条約が統一して問題になったわけであります。したがいまして、専管水域ももちろん議題に出ましたけれども、その際には当然その専管水域の中で既存の漁業をどう扱うべきかということも論じられたわけであります。結局、そこがうまく固まりませんために、その問題だけは抜きにいたしまして、領海なり、公海なり、あるいは漁業、大陸だな、この四つの条約が成立したわけであります。したがいまして、全くそういう伝統的な漁業の扱いとは無関係に領海なり専管水域の問題でわがほうが提案したのではないわけでございまして、この点は誤解のないようにしていただきたいと思います。  それから専管水域をきめた国と現実的な交渉をした場合に実績が一〇〇%確保できるかどうかという問題でございますが、先般アメリカと話し合いをいたしました場合の例で申し上げますと、専管水域をつくりました場合でも、そこはべったり入ってはいけないという規定ではないわけであります。そこにおきます伝統的な漁業につきましては考慮を払おう。もちろん、アメリカにおきましても、たとえばアラスカで例を申し上げますと、カニをかごでとる漁業がございます。これが底びきと非常に競合するわけであります。これは、十二海里云々と申しますよりは、漁具紛争という一つの国際漁業におきます紛争のカテゴリーに属する問題でございまして、先ほど大臣が申しました米ソの間にも話し合いがあったと申し上げましたのは、そういう漁具紛争との関連におきまして、十年近くになると思いますけれども、ある種の操業の協定ができておるわけであります。したがいまして、私どもも専管水域問題を交渉いたしました場合に、そうそう私どもは向こうの法律的立場は認めていないわけでございますので、法律問題はたな上げにいたしまして、具体的に底びきではどういうとり方にしようと。それから向こうのカニ漁業が集中しているところでは、あえて私ども紛争を惹起するのが目的ではございませんので、そういうところではある期間遠慮しよう、しかしこちらのほうはちゃんととらしてくれといった非常にこまかい具体的な受りきめをいたしたわけでございます。サケ・マスにつきましては、そういう取りきめをいたしますについて日米加の条約問題もございますので、これは建前論が両方からまつ正面にぶつかってしまったわけであります。日米加の条約につきましても、現在問題を両方で提起しておりますので、その間にお互いでもみ合った意見というものを尊重しながらやっていこうというきわめて抽象的な話し合いによりまして現実的には私ども実績を確保するという形をとったわけでございます。したがいまして、一隻でも入っていたところの実績、その一隻なら一隻について一つずつ認めるというような形ではございませんけれども、私どもといたしましては伝統的な漁業の実体は十分に確保できたと、こう考えておるわけであります。  なお、これが一つのこの段階におきます具体的なモデルになりまして、これから先いろいろな国と私ども交渉しなければならないわけでございますので、その際にも十分に援用できる実体であるというふうに確信を持っておるわけであります。
  55. 森中守義

    森中守義君 いまの御説明でいきますと、バートレット法ができない以前は、そういうややこしい交渉も何もやらなかった。つまり、日本側としてはどんどん入っていったわけです。そういうのができたから、わざわざ海域ごとにいろいろ交渉して、どのくらいとるのとらんのと、こういう問題が起きている。それ自体がもう規制を受けているということですよ。実績が保障されておるといいながら、一〇〇%ではない。個別的に交渉せざるを得ない。また、専管水域十二海里をアメリカが設定する趣旨というのも、その辺にあったと思う。いままでどうりやっていいというのなら、何も水域の設定は必要はない、その国としては。それが一つの問題。したがって、全体的に、わが国が出かけて行った国々で専管水域がつくられて、一〇〇%保障している国はないということが一つの答えだと思う。  それからいま一つ、どうも話があちこち行きますが、さっき私が申し上げた国際海洋法会議、この中の、いまだいぶ違うんだというお話でしたが、私の言っているのはそうじゃなかったんですよ。それは、日本が提案したのじゃない。アメリカとカナダが共同でやっている。それを委員会では賛成をしておる。ということは、本会議で全会一致決定できるならば、三海里説は捨てて、六海里にしてよろしいと。しかし、その見通しがなかったから、それを放棄してもとの三海里に戻ったとこういうことですから。そこで、それじゃ一体次はいつごろ第三回の会議が開かれるか、それは予想できません。しかし、一回国際機関でそういう意見を述べているのだから、すでに国際的な趨勢がそうである限り、変えていいのじゃないかということと同時に、そこできちんと第三回目できまるならば、やはり日本政府として態度を決定せざるを得ない。その際どういうものを持っていくのか。さっき私そこまで詰めておりませんでしたが、外務省もおいでになっていると思うので、それぞれから、第三回の海洋法会議でおそらくこの問題は論議の中心になるでしょう、その際日本政府としてはどうするのか、もし答えられるならば、この際お答えいただきたいと思います。
  56. 久宗高

    政府委員(久宗高君) まださような会議が現実の問題になっておりませんので、政府の意見として申し上げるのは時期尚早かとか思うのであります。先ほどの御議論と関連いたしまして水産庁の一貫した考え方を申し上げますれば、前回におきます議論におきましても、繰り返し申しますように、それは単に専管水域なり領海が幾らという取りきめだけではなくて、当然にその中におきます伝統的な漁業をどう扱うか、問題が関連しておるわけでございます。それが関連がつけかねてあのときには御破算になってしまったわけでありますが、私どもも、先ほども申しましたように、専管水域の海里数そのものにこだわっているのではなくて、少なくとも現在まで確立がされております三海里以遠の地域に専管水域ができます場合に、その中で伝統的な漁業がどう扱われるかという問題がもう少し内容が熟してくる必要があるというふうに考えているわけであります。それをただばく然と待つのではなくて、私どもがいまやっております努力が、具体的な国とそういう地域におきましてどういうふうに伝統的な漁業を認めさせるかという努力に集中しているわけでございます。これがだんだん幾つかの例が出てまいりますれば、おそらくそれが一つの国際的な取りきめをいたします場合の基礎になるのじゃないだろうかというふうに考えているわけでございます。したがいまして、会議がもっと先であると思いますけれども、私どもはすでにその準備に入っているというふうにお考えいただいていいというふうに思うわけでございます。
  57. 森中守義

    森中守義君 外務省は……。——それじゃいまのは、外務省が間もなく来るそうですから、それまでちょっと外務省の意見はあとにしまして、先ほどから何回も話題に供しておる専管水域を設定している国々の実績の保障状態、それは、さっき、長官は、ほとんどしょうとしまいと実績には変わりないと、こういうことでしたが、私はそうじゃないと言っているんです。あるならば、そういう国をあげてください。
  58. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 一番典型的なもので申しますと、先般お話し合いのつきました日米が一つの例でございますが、もう一つ当面控えておりますのは、ニュー・ジーランドとのお話し合いがこれから始まろうとしているわけでございます。これは、御承知のとおり、ニュー.ジーランドにおきます専管水域の取り扱いは、例外規定が法文上人っておりませんでしたために話し合いができないという事態になりまして、私どもといたしましては、それは納得できないので、国際的な司法裁判所に訴えようかという提案までいたしたわけでございます。それは待ってくれというお話経過しておりますうちに、先般、一応法律的な建前はたな上げにして話し合いをしましょうという御連絡があったわけでございます。これは、日米の話し合いがつく前後にさような御連絡がございましたので、日本と米国との間におきまして双方の法律的な立場をそれぞれたな上げにしながら現実的な話し合いがついたというのが一つのきっかけになったものと考えられるわけでございます。したがいまして、私どもは、そのような考え方でニュー・ジーランドとも、それぞれの法律的な立場は一応たな上げにしまして、現実的なあの海域におきます漁業の調整についてのお話し合いを実はこれから始めようとしているわけでございます。  さようなものがだんだん逐次幾つか拠点が固まってまいりますと、かりにもう少し広範囲な国際的な会議が開かれる場合におきましても、私どもが主張しております伝統的な漁業の取り扱いについて幾つかの具体的な例が出てまいりますので、私どもといたしましてはなるべく早くさような実例を幾つかの国との間で固めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  59. 森中守義

    森中守義君 これは、いろいろ議論をしていきますと、やはり専管水域をつくっていた時代とつくっていなかった時代とは大きな差異があることは事実ですから、これは何といってもそのとおりだと思う。専管水域をつくろうというのは、規制しようということですから。それは否定できませんよ。その事実は率直に認めたほうがいいのじゃないですか。  それからこれも外務省がいないのでちょっと困るのですけれども、例の海洋法四条約、これの批准が各国とも相当ピッチを上げて行なわれているのです。私の手元にある資料は多少古いのですが、一九六六年三月十六日現在で、すでに三十六カ国でいまの領海及び専管水域に関する条約は批准が行なわれておる。これは、さっき申し上げた海洋法会議がいつあるかわからぬ、こういうものではなくして、事実上条約が発効している以上、わが国としては何らかの対策を講ぜざるを得ないと思うのです。これに対してどういう措置をとりますか。
  60. 久宗高

    政府委員(久宗高君) これは外務省からお答えいただくのが本筋かと思いますが、御質問がございますので関連してお答えいたしますと、先ほど申しましたように、五八年のジュネーブにおきます国連海洋法国際会議におきまして四つの条約が採択されました。それについてそれぞれ批准した国が幾つか出てきておるわけでございます。この中で、領海及び接続水域に関する条約と公海に関する条約につきましては、これは主として国際慣習、国際法及び国家間の慣行を成文化したものでございまして、その加入には特別の支障がないので、いま私どもも外務省と一緒に作業をしておりまして、これにつきましては加入について検討してよろしいだろうという考え方を一応この段階ではとっておるわけであります。これは、もちろん先ほど申しましたように、領海の幅員に関する規定はこの中から除かれておりますので、従来領海の中ではどういうことが国際慣習上きまっておるかということを成文化したものでございますので、この二つは支障がないというふうに思うわけであります。  ただ、あとの二つでございますが、漁業及び公海の生物資源の保存に関する条約、これにつきましては、沿岸国の一方的な権限と申しますか、沿岸国の主張というものが非常に強く貫かれておりまして、このままでは相当の支障があるのではないかという懸念を持っております。それからもう一つの大陸棚に関する条約につきましては、これも、たとえば一番問題になりますのは甲殻類でございますカニといったようなものを大陸だな資源として見るべきであるかどうかといったような問題がございまして、これはそれぞれの国の漁業に重大な影響のある問題であるわけでございまして、少なくとも私どもとしては納得のできない幾つかの問題がございますので、これにつきましてはまだまだ相当問題があるのではないかということで慎重な検討が要るのではないかというふうに考えております。
  61. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、水産庁では、領海及び接続水域に関する条約、これは批准してよろしい。それから公海に関する条約もよろしい。あとの大陸棚と資源の問題は困る、こういうように理解していいですね。
  62. 久宗高

    政府委員(久宗高君) そのとおりでございます。
  63. 森中守義

    森中守義君 私は外務省が見えてからもう少しこのことを聞きますが、もう一つ話のついでといっては悪いけれども聞いておきたいのですが、これは直接農林省関係ないかわかりませんが、昨年の五十回ILO総会での、例の百二十六号漁船内の設備に関する条約、これについてはどう思っておりますか。それから運輸省は見えておりますか。運輸省の場合には九十二号条約、これはだいぶ古いですよ。一九四六年採択、それから四九年に修正をされた修正案が採択をされています。ILOの船内設備に関する条約、これも十数年の間ほったらかされておる。したがって、いま申し上げる百二十六号つまり漁船関係、これに対しての御所見と、それから九十二号商船関係に関する御所見、しかも、商船関係については、もっと早く検討を加えられて批准の手続が行なわれるべきであったにもかかわらず放棄されておる、その理由は何であるか、まずお聞きいたしておきます。
  64. 河毛一郎

    政府委員(河毛一郎君) お答え申し上げます。  ただいま御質問のございましたように、ILO関係といたしましては、七十五号で商船に関する船内船員設備のことを取りきめており……
  65. 森中守義

    森中守義君 九十二号じゃないですか。
  66. 河毛一郎

    政府委員(河毛一郎君) 失礼いたしました。元来が七十五号でございまして、それが内容が改正になって九十二号になったわけであります。  それからもう一つ、漁船に関しましては、ただいまお話がございましたように、昨年百二十六号で、いずれも条約が採択されております。そこでこういったILO関係の設備に関します私どもの態度でございますが、一般的に、ILOにつきましては、国内法を整備いたしまして、それをまって批准をするという根本的な考え方を前提にしていろいろな仕事を進めております。したがいまして、ただいまの具体的な船内の船員設備の問題につきましても、国内法といたしましては船員法がこれの問題になるわけでございます。昭和三十七年に船員法を改正いたしまして、こういった船内の船員設備に関しまして一つの根拠規定を整備いたしました。それから次に、こういった整備とまちまして、昭和三十九年に、船員法に関する労働基準に関する諮問機関といたしまして船員中央労働委員会がございまして、この船員中央労働委員会に船員設備の基準に関する省令の制定につきまして諮問を行なっております。以後、船中労委におきましては、ILOの条約を参考にいたしまして船内設備に関する審議が今日なお続けられております。  そこで、まず、先ほど御指摘のように、商船関係の船内設備の条約が先にできております。順序といたしまして商船関係から始めまして、商船のうちでも五千総トン以上の外航船、つまり大型船でございます、これにつきましては、四十年の二月に、船員法に基づく省令の内容となるべきものの中間報告をいただいております。それから次に、その後、五百トン以上五千トン未満のいわゆる近海あるいは内航の大型船につきましては、昨年の七月に同様中間報告をいただいております。そこで、現在この委員会において審議中のものは、五百トン未満のきわめて小さい商船につきまして、船内設備をどうするかということを現在審議中でございまして、私どもの見通しといたしましては、大体夏ごろまでにこれに関する中間報告をいただけるのではなかろうか。これがいただけますと、商船に関しましては、委員会の報告は全部終わるわけでございます。そこで、次に、昨年の百二十六号というものをやはりしんしゃくいたしまして、漁船に関する船内設備基準につきまして引き続きこの委員会で御審議を願うと、こういうことにいたしております。したがいまして、漁船はできるだけ早く夏以降審議をしていただくように私どももお願いいたしたいと思っておりますが、商船につきましては、実は、従来まだ中間報告の形をとっておりますので、形式的な省令化は全部を待ちまして行なうということでございますけれども、いずれにいたしましても、おのおのの船型につきましてすでに具体的に中間報告をいただいておりますので、すでに中間報告をいただいてます船舶につきましてはその中間報告に基づく基準を船舶設計に取り入れるように行政指導を行なっております。したがいまして、最近の新造船におきましては、この行政指導に基づきましてそういった船内設備の点で非常に改善が行なわれているという状況でございます。
  67. 久宗高

    政府委員(久宗高君) ただいま政府委員のほうからお話のございましたような経過でございます。私どもの伺っておりますのでは、百二十六号関係も含めまして、まず国会の御報告の段階があって、それから具体的な問題になるのじゃないかというふうに考えております。そこで、いまの船員設備に関します一連の問題につきましては、前々から運輸省のほうともいろいろ御相談しながら事を進めておりますが、具体的にさらに船員中央労働委員会のほうで御検討いただきます際に私どもの考え方なりを吟味していただきたいと思っております。
  68. 森中守義

    森中守義君 船員局長、伺っておきますが、改正された七十五号は、四十九年の改正でしょう。四十九年ですね。そうしますと、すでに十七、八年経過している。なるほど、いま御説明を聞いていると、決してほったらかしておったのじゃないんだと、こういうことですけれども、わが国の商船の設備というものがいまのままでいいなんということはない。もちろん、相当資本を伴うことだから、政府としても非常にむずかしい問題でありましょうけれども、こんなに長期に放棄されていた条約というのはないのでありますが、私はこれは何といっても相当大きな責任問題がある、そう思うのです。それで、お答えを聞いていると、いまにわかにという感じでもございませんけれども、こういうむずかしい問題は表に出ない限りじっとしておけと、そういうつもりであったのか、あるいは慎重に検討を重ねながらなおかつそれができていないということであるのか、その辺はどうですか。もちろん、百二十六号になれば、去年のことですから、これはなるほど国会に対する報告の手続段階だ、それももちろんよくわかります。これはこれなりにあとで聞きますが、とりあえず七十五号の扱いがあまりにも長期にわたり過ぎる、怠慢である、こういうように私は思う。その経過をいま少しく詳しく御説明いただきたい。
  69. 河毛一郎

    政府委員(河毛一郎君) ただいま、七十五号及び九十二号につきまして、今日まで条約が採択されてから非常に長期になっているという御指摘がございました。確かに、相当年月をけみしております。その点は御指摘のとおりでございます。ただ、私どもといたしましても、先ほど申し上げましたように、これに対応する国内法体制整備する。それからもう一つは、船内の船員設備は、技術的にいいまして相当いろいろむずかしい問題がございまして、また、この規格を一つの基準として統一してまいります場合には、検討を要する事項も非常に多いわけでございます。そこで、このような観点からまず船員法を直しましたこと、それからそれに基づく技術的な内容あるいは基準を統一するについてどのような考えをとるべきかということにつきまして慎重に検討をいたしました結果、ただいま御指摘のございましたようなある程度の年月をけみしたわけでございます。  そこで、先ほど申し上げましたように、商船に関しましてこの夏までにはごく小さな船も含めまして全部の船内設備基準というものが労働委員会の手で報告されることになります。また、漁船に関しましては、条約自身は昨年の問題でございます。商船の経験を生かし、また、漁船に関する特殊な事情、ただいま水産庁からもお話がございまして、水産庁とよく御相談をいただきまして、なるべく早く報告をいただくということにいたしております。今後すみやかに御趣旨に沿えるように努力してまいりたい、こう考えておりますので、御了承いただきたいと思います。
  70. 森中守義

    森中守義君 これはきょうの本題ではありませんから、いいでしょう。それから何代も局長かわっておられるわけだから、あなたにとかく苦情を言ってもしようがないんだけれども、ちょうど昭和三十三年か四年に、例の船舶職員法の改正、例のオート・アラーム、そういう機会もあったんです。したがって、国内法を何とか手直しをしたいという機会はこの期間に何回もありましたよ。しかし、一回だってこの七五号については聞いたことがない。いま、国内法を手直しをしなくてはならぬと。これは条約についてはいずれの場合も大同小異あることですから、それがやはり批准するかしないかの大きな問題でもある。しかし、何としても、今回の百二十六号にしろ、あるいは七十五号にしろ、商船といい、漁船といい、ぎりぎり最低これこれの船内における乗組員の生活の保障あるいは居住環境の保障ということを言っているわけですから、この点にかなり大きな問題が残されている。もっと早く七十五号の処理が行なわれておったならば、いま少し商船乗り組みの諸君の処遇の改善等が行なわれていたんじゃないか、こういうふうにも思うのです。それと、さっきある程度の期間と言われたけれども、ある程度どころじゃありません。十六、七年たなざらしにしておったわけだ。おそらく、こういう条約関係で十数年の長きにわたって手がつけられていなかったという条約はないんじゃないですか。ですから、これはまた機会を改めてお尋ねしたいと思うのですけれども、とにかく急いでほしい。  それから水産庁長官、さっきのお答えで、現状は確かにそのとおりだと。しかし、業界の新聞等の報道によれば、すでに水産庁においては百二十六号を一応検討を加えている。その検討の結果、おおむねぎりぎり最低の線の船内の設備を百二十六号に合わせようとするならば、三十トンないし四十トンくらいのスペースをふやさざるを得ないであろう。そのために、トン数制度のいわゆる国内法の整備等も起こってきましょうけれども、ものの考え方としてはどう思いますか。どういう手続をするか、いつ批准するかということは別として、この百二十六号に対する意見はどうですか。
  71. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 百二十六号そのものについての御意見と申しますよりは、こういう船員設備につきましての基本的な考え方を申し上げたほうがよろしいかと思います。私どもといたしましては、三十七年に、前に漁船船員設備基準を設定いたしました。この際には、それを実施いたしますために、普通許可をいたします場合にいろいろトン数を補充する必要があるわけでございます。いわゆるボーナス・トン数というのを出しまして、それによりまして、ある種の設備基準に達するような努力をいたした経過がございます。それから今回の大臣許可漁業の一斉更新にあたりましては、いまの船員設備基準を法令上の措置に格上げいたしまして、これから許可を受けますものにつきましては強制適用するという措置を実はとっておるわけでございます。したがいまして、なかなか基準までまいりますのに紆余曲折がございますが、考え方といたしましては、船員そのものを優秀な船員を確保する意味におきましても、設備基準その他につきましては極力前向きで、しかも実質的な改善をはかってまいりたいという気持ちでございます。
  72. 森中守義

    森中守義君 これは、大臣、お聞きのように、今日の漁船の乗組員の処遇の改善、ひいては労働力の確保、さらにそのことを拡大していけば、わが国の水産界の非常に大きな問題だ。御承知のように、最近は、だんだん小型、中型船の乗組員が減少しております。昨年の十月ですか、「朝日新聞」の報道によれば、すでに漁期がきて出ていかなくちゃならぬ、しかし船員の確保ができないために出港できなかったという例がある。あるいは、以西底びきにしても同様な現象が出ている。そういう現状を見れば、やはり乗組員の待遇、総称しましてね。これは、賃金体系もありましょう。あるいは、船内における労働環境の問題もありましょう。あるいは、生活環境の問題もあるでしょう。そういうものがだんだん劣悪な状態に追い込まれる。しかも、陸地のそれに比べると問題にならない。こういうところに漁業労働者の確保というものがいま水産界の大きな問題だと思う。そこで、今回の百二十六号条約というのが出てまいりました。非常に新しい条約ではあります。だからといって、さっきの商船のように十五年も十六年もほおったらかされたのじゃたいへんですから、できるだけすみやかにこれは批准の必要がある、国内法の整備の必要があると思うんです。その点、どうですか、これは一定の手続等が終了したならば直ちに国内法の整備にかかる、そうして許可基準等の改正を行なう必要があると思うんですが、その御意思がありますか。これは何回も申し上げるようだけれども、将来の漁業政策の非常に大きな問題です。
  73. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 漁業の労働力確保ということにつきましては、ただいま水産庁長官が申し上げたとおりでございまして、労働力を確保するためにはいろいろ将来やはり待遇を改善し、生活の安定をはかってあげるということが一番大事だと思っております。したがって、そういうことについて農林省といたしましてもできるだけ業界を督励してそういうふうに進めて、労働力確保のできますようにいたしたいと思っております。
  74. 森中守義

    森中守義君 そういたしますと、極力すみやかに国内法の整備ないしは批准の手続を行なう、こういうように受け取ってよろしゅうございますね。
  75. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ILO条約は、御承知のように、世界で百十何カ国かで、条約も百十五ほどございますけれども、アメリカのような国は七つぐらいしか批准しておりません。半分以上批准している国というのはほとんどないわけであります。たまさか、私は国務大臣ですから、外国の名前を申すことは遠慮いたしますけれども、さらに申すと、批准はしたけれども一向尊重いたしていない国もあるわけであります。私どもの国では、潔癖でございますからして、いやしくも条約を批准するということを考えた以上は、法律に少しでも欠陥があってはならないということをシビアに考える国民性を持っているものでございますから、理想から申しますと、たいへんやりたいと思っているにもかかわらず、持っている法律の一部分がやや抵触する気味だというと、それに対してたいへん警戒心を持つというような、そういうことで批准せない条約もあるのだと思います。ただいま問題になっております事柄について、条約に日本の法律のどこが抵触しているか、実は私はあまりよく存じません。しかし、きょうお話がございましたから、さっそく調べて研究したいと思いますが、批准するしないは担当省が違いますけれども、原則として水産庁長官が申し上げましたように、素質のいい漁業の労働力というものを保持するということは、実は私どもは頭を痛めておるところでありますので、関係省とも相談をいたしまして、そういうことに万全を期してまいりたいと、こういうふうに思っております。
  76. 森中守義

    森中守義君 私も日本の国籍を持っておりますので、その点は誤解がないように……。  そこで、いまのお答えで大体尽きておりますが、この件は、さっきから申し上げますように、単に労働者を大事にする、それにとどまらないで、これからの漁業生産にどういう役割りをそれが果たすかというのがやはり与えられる答えだろうと思う。そういう見方からいくと、せいぜい早急に御検討いただきたい。  それと、外務省、お見えになりましたね。何か御用でしたか。
  77. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) たいへんおくれまして申しわけございません。実は連絡が不十分でございまして、たいへんおくれました。
  78. 森中守義

    森中守義君 外務省がおいでにならない間に、例の領海、専管水域のことでお尋ね申し上げ、お答えをいただいたのです。それで、まあ農林省の御意見はほぼ明らかになりましたが、例の五八年の奥村首席代表が海洋法会議で、三海里にこだわらない一まあそういう表現は使っていませんが、事実上アメリカ、カナダの共同提案には賛成であると。しかし、これは実際は流れましたので、いま政府のおとりになっている見解というものはいわゆる三海里説のようですが、御承知のように、だんだん状況が変わってきている。それで、次の機会におそらく第三回の海洋法会議が開かれると思いますが、そういう際に、日本政府としては、一回は六海里に賛成したんだ、それが流れたから三海里に戻ったという経緯を踏まえて考えるならば、何も三海里説にこだわる必要はない。したがって、このことに対してどうかということと、それと、国際間の漁業関係が非常に問題になって、漸次各国の状態というものが規制の方向に向かっておる、つまり専管水域をつくっておる、こういう現状なんです。したがって、わが国もそういう方向に行ったほうがいいのかどうなのかというのが今日的な課題だと思っておる。したがって、外務当局としてはいかようにこの辺の問題をお考えになっておるか、お聞かせいただきたい。
  79. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) ただいま御質問の第一番目の領海の幅員の問題であります。先生も御指摘のとおり、この前の海洋法会議におきましては、領海六海里、接続水域六海里というふうな提案がございまして、日本も一度これに賛成した経緯がございます。しかし、結局、多数の票が得られませんで、結論はその六海里という説は敗れまして、何らの領海の幅員に関する決定がなされませんでした。したがいまして、現在、海洋法の一つでございます領海及び接続水域に関する条約におきましては、領海の幅員が定められておらない次第でございます。現在、世界で、古くからの国際慣習法として三海里を守っております国が全部で十八ございまして、その他四海里、五海里、六海里、九海里、十海里、十二海里までの国が一番多いわけでございますけれども、将来第三回の海洋法会議が開かれるという——いまのところそういう動きは全然ございませんですけれども、もし将来そういう海洋法会議が開かれた際には、新しい観点から日本の立場を検討し直してこの会議に臨みたい、臨まなければならないというふうに考えております。現在、そういう会議が開かれた際にどういう態度をとるかということにつきましては、私の口からまだ責任をもって申し上げられないわけでございます。  第二番目の先生の御質問の漁業水域の問題についてでございますけれども、最近、アメリカ、ニュージーランド及びスペイン等におきましてそういう一方的な漁業水域の設定がございまして、わが国の漁業が非常に影響を受けております。現在のところ、この影響をできるだけ排除するための交渉をいたしております。アメリカにつきましては、最近交渉が妥結いたしまして、暫定的な措置でございますけれども妥結いたしました。近くニュージーランドとの交渉を始めることにしております。スペインにつきましても、せっかくわがほうの利益を確保するために交渉を始めたいと思っておりますけれども、先生の御指摘のとおり、確かに、世界の趨勢は、沿岸国がその漁業水域なるものを新しく一方的に設定して、そうして漁業の実績のある国をだんだんと排除していく傾向にあることは、われわれも非常に苦慮しておるところでございます。今後情勢を長期的な観点からできるだけわがほうの漁業利益を確保する方向へ向かって矯正していきたいというのが現在のわれわれの努力の中心点でございます。
  80. 森中守義

    森中守義君 それでは、次に進みたいと思いますが、先般来、韓国がしきりに北洋に進出をしたい、こういうわけで、ずいぶん大きな問題がある。いまのところ出るとも出ないともわからぬという状態のようですが、先だって、呉さんですか、韓国の水産庁長官が、アメリカに行って帰り道に久宗さんお会いになりましたね。そのとき、何と言っていたんですか。行くときには、ずいぶん勇ましく、すぐにでも出るんだと、こう言っている。帰るときには、五分五分だという非常に微妙な言い方をして帰ったと、こういうことなんですが、その後韓国の動きをどういうように把握していますか。
  81. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 韓国の水産庁長が、アメリカにおいでになるときに一応私のところに寄られる御予定だったのでありますが、時間の都合がつきませんので、アメリカとのいろいろな御折衝がありました後に、帰りがけにお寄りになったのであります。そのときには、貿易交渉の問題がございますので、特にノリその他につきまして昨年相当ごたごたいたしましたので、貿易交渉に先立って招待するから、ぜひその実情を見てくれというお話だけが出まして、その際におきましては、北洋の出漁問題につきましては、先方からもお話がございませんでしたし、私のほうもあえてお聞きしなかったわけでございます。まあこれは、アメリカとのいろいろな御折衝がありまして韓国に帰られる途中でございますので、東京におきまして憶測記事が出るのを避けたいという気持ちがございましたのでお話をしなかったわけでございます。向こうへ帰られましてから約一週間、相当内部で御検討があったようでございます。その後の正式な発表を伺ってみますと、今年度は試験その他の準備も不十分だったので一応あきらめるというふうな公式な声明がなされたということを聞いております。
  82. 森中守義

    森中守義君 その最後のは、公式に出ないという声明を出したということですか。
  83. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 記者会見におきまして、本年度は試験その他が十分でないので、北洋に対するサケ・マスについては出漁をしないという声明が出たように聞いております。
  84. 森中守義

    森中守義君 そこで、ちょっと気になるのは外務省ですがね。先だって、水産界の代表が、アジア局を中心に各局をお回りになったそうですね。そこで、アジア局のほうでは、白来日韓の友好関係があるので、このことについては援助を与えるというのが両政府の立場であると。同時に、ソウルにいる木村大使からも、これに援助を与えてほしい、こういう話があったように何かで私読んだことがあります。ただし、外務省全体の空気としてはこれは規制を加えるべきであるということで、いま特段に水産庁あたりと意見が食い違っているように聞いておりませんけれども、出先の大使とアジア局では、必ずしもそうではない、多少協力態勢にある、こういったように聞いているのですが、その辺の事情はおわかりですか。
  85. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) 私、実は条約局の参事官でございまして、先生のいまの御指摘の問題につきましては詳しくは存じませんけれども、私の了解しておりますところでは、外務省と水産庁との間におきまして、対韓国の漁業の問題につきまして意見の相違があるようには聞いておりません。
  86. 森中守義

    森中守義君 それは、じかに私が聞いたわけじゃございません。刷りものによって見たわけですから、一体どういう背景があったかよくわかりませんけれども、一応新聞に出る以上は、何かの根拠はある、こういう見方を私はするんです。そこで、木村大使なりあるいはアジア局あたりにもしかりにそういう動きがあれば、これはかなり慎重を要する問題ですが、よほど外務省としても入念な処理こそが必要ではないか、このように思っております。  それで、水産庁長官、今回関係法案をお出しになっていますね。この問題の規制が一つと、それから省令をお出しになった。例の指導員というのか、韓国の船に日本人が乗ってはならぬと。大体、この二つぐらいで、規制という表現かどうかわかりませんが、一応とめられる自信がありますか。
  87. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 韓国との関係におきましては、日韓の条約によりまして、私どもといたしましては韓国の漁業につきましてできるだけの御協力をしたいという気持ちは一貫しておるわけでございます。その際の段階からはっきりいたしておりましたのは、北洋のサケ・マスにつきましては、私どもは日ソの間においてあるいは日米加の間におきまして具体的な条約の規制を受けておりますので、かりにもその条約の実行との関連におきまして問題を起こしたくないし、また、そのような立場をとれることでございませんので、この関係におきましては御協力はできないという点ははっきり申し上げておるわけであります。また、現にいろいろ経済援助をいたします場合におきましても、多少ともそういう誤解を受けたような船型その他につきましてはお話し合いの上で計画から落としていただくという具体的な措置まで講じております。そこで、いまの韓国のサケ・マスについての進出につきましては、先ほど申し上げましたような一応の段階でございますが、私どもは、先方に迷惑のかからない段階におきましてお会いしたときには、そのつど、くどいようでございますが、いまの北洋問題については私どもはこういう立場にあるということを累次にわたって申し入れておるわけであります。  そこで、それはそれといたしまして、今国会におきましても、外国人漁業の規制に関する法律案ということで、寄港問題につきましての一連の措置を御提案をいたそうとしておるわけでございます。これは、その際に詳しく申し上げることになると思いますけれども、要点は、私どもといたしましては、従来、外ばかり出ておりましたが、日本近海におきまして外国漁船と競合し、あるいは日本の漁港が基地として使われてピストン的な操業が行なわれるということは、考えてもみなかったわけでございます。事実そういうおそれが出て意いりましたので、あらためまして世界各国の例を調べまして、少なくとも沿岸国といたしまして漁港の問題をどう取り扱っていくか、これら一連の問題を考えまして、瀞港についての制限をいたします一連の法案を考えたい。これはもちろん日本の漁港が漁港基地として反復利用されることを防止するのが建前の法律でございますので、これによりまして相当の規制は、これは韓国に限りませんで、どこの国に対しても同様に適用されるわけでございます。まあこれは最小限度必要な措置と考えておるわけでございます。  それから御指摘のございました漁業法に基づきます省令で、日本人が外国の漁船に乗り組んでサケ・マスの採捕に従事することを禁止します省令を設定いたしたわけであります。これも、やはり、先ほど申しました日米加条約なり日ソとの関連におきまして具体的な漁獲量の規制その他を受けておりますので、日本人が乗り込んで漁獲に当たるということ自体が条約上の問題を生じますので、私としてはこれはなるべく出したくない省令であったわけでありますが、どうしてもやはり法的な措置を講ぜざるを得ない段階にまでまいりましたので、省令によりましてそれを規制したわけでございます。これはもちろん最小限度の処置でございます。今回の御提案しております外国人漁業の規制に関する法律、主として寄港問題を扱いましたものでございますが、これは一応最小限度のものでございますので、さらにもっと突っ込んでまいりますれば、ある種の漁業につきまして、日本の沿岸あるいは沖合いにおきまする漁業の操業について、二国間で何らかの取りきめもしなければならぬような事態が次第に濃くなってくるんじゃないかというふうに考えております。
  88. 森中守義

    森中守義君 おおむね水産庁長官お話で一応わかりました。しかしながら、先般の日韓条約の締結に至る相当長期にわたる交渉の経緯、こういうものを考えますと、なかなか本気になればそう簡単にいかぬのじゃないか。そういうことも一応考慮しておっていいんじゃないかと私は思うのです。  それで、これもまた直接聞いたわけじゃございませんけれども、一応、韓国の計画としては、根室あたりに基地を設定したい。そこで、独航船や何かでどんどん持ってきて、日本で魚を売りさばく、こういう計画だったそうです。しかも、有償無償の例の借款による金でこれに向くような船をつくる、日本人を乗せる、それで日本で商売したいということのように聞いております。それで、いまのところ、政令が出て指導員という立場での日本人が乗らない。韓国のこの種の漁法というものはなかなかいまだ完全でないという理由で、しかもアメリカの関係もあって、一応ことしは見送ったということのようですけれども、よほどこの辺については慎重な配慮が必要だろうと思う。いままで、日韓の漁業会議は何回おやりになりました。そういう際に、その話題が出たかどうか。また、将来開催し得るこの種会議の中で、日本側の意向を伝えることができるかどうか。それと最終的にどうしても話し合いがつかないという場合に、有償無償の中のある部分については打ち切るというそういうきつい態度で対する意思があるかどうか。その辺をひとつお聞かせいただきたい。
  89. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 先ほど申しましたように、日韓の取りきめによりまして、韓国の漁業に対する援助につきましては、私どもといたしましては誠心誠意実行したいと思っておるわけでございます。ただ、それの実行過程でたまたま北洋問題が出てまいりまして、そのことが日本漁業界におきましても大問題になりますし、また、米国、ソ連その他におきましても非常な関心を示されたわけでございます。さようなことで、お話しする機会がありますたびに、これはわがほうとしても非常に困るし、また、あるいはよけいなことかもしれませんけれども、客観的に見た場合に、韓国の漁業の発展のためにも必ずしも適当であるかは非常に疑問だということを相当腹を割って実は申し上げておるわけでございます。昨年の一連の動きにつきましては、特に日本の漁夫の雇い入れの問題が起こりましたときに、私どもとしては、これは非常に困るじゃないかというお話をいたしましたのでございますが、これは政府としては関知しないというお話がございまして、それはそうかということで終わってしまったのでありますが、韓国の業界におきましてその種の試みが依然としてあきらめ切れずに続いている実情にあるように思うわけであります。したがいまして、私どもといたしましては、オフィシャルにお会いします場合にももちろんのことでございますし、また、非公式にいろんな会合におきまして、この問題について私どもが御協力できない立場というものを繰り返し繰り返し説得し、理解していただこうと考えておったわけでございます。  なお、それと関連いたしまして、有償無償の実行過程におきまして、多少まぎらわしいものも出てまいりました。そこで、私どもとしては、少なくともわがほうからお出しするものにつきましてそういうものが入りました場合、第三国から、日本は韓国と組んで北方における漁業秩序を乱すのではないかといった誤解を受けるおそれがございますので、これははっきりお断わりをいたしまして、その種のものは計画の中から落としていただいている実情でございます。  なお、この問題につきましては、これからいろいろ紆余曲折があると思うのでありますが、私どもといたしましては、繰り返しいま申しましたような態度で説得すること、これに万全を期したいと考えておるわけであります。
  90. 森中守義

    森中守義君 けっこうですがね。ただ、どうなんでしょう、これで日本の、少数でしょうけれども商社関係あるいは漁業の資材メーカー、こういう部分で、いいじゃないかと、こういう動きはないですか。それが一つ。  それと、いまお話になるように、政府間の問題としてはあり得ないだろうけれども、韓国は、政府は表に出ないで、民間でやる。しかも、日本政府が皆さんがいままで言ってこられたように、公海の原則を踏まえてどこに無をとりにいこうととかく干渉がましいことを言うなという、こういう態度で韓国の民間が動き出した場合に、規制の方法がありますか。それが一つ。  それからいま一つは、先般日ソ漁業交渉でイシコフさんが見えたときに、このことは話題に出なかったのですか。これも新聞等の報道によれば、もし韓国が北洋に出てくるときには、日本と韓国はぐるになっているんだ、したがって、今後の日ソ漁業交渉の際に、韓国がとった分だけは日本から差し引く、そしてまた、条約締約国としての責任をそれで日本が果たせるかというかなり強硬な意見の表明があったやに聞いておりますが、そういうことについて御存じでしょうか。
  91. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 韓国の民間の動きでございますけれども、私どもといたしましては、昨年経済閣僚が九月に参りまして円卓会議をいたしましたときに、ちょうど北洋問題が出ておりました。私のほうも、その当時閣議決定で寄港制限に対する一応の考え方を示した直後に向こうへ参りましたので、ずいぶん話題が出たわけでございます。そのとき以後の動きを見ますと、少なくとも韓国の政府当局におかれましては、私ども趣旨を相当に理解していただいたと考えております。しかし、韓国の民間でどのような動きがあるかにつきましては、先ほども申しましたように、その後もこちらで船員の募集なんかがありましたので、相当根強い動きがあるように見ておるわけであります。累次のお話し合いによりまして、少なくとも韓国政府当局におかれても、かりにそれが政府が関知しない場合におきましても、日韓との関連で相当これが問題になるようなことにつきましては相当な重要な考慮を払われるものというふうに一応考えております。  それから日本側の問題でございますけれども、少なくとも業界におきましては、この問題はそれこそ日本の漁業の根幹をゆさぶるものといたしまして、ほとんど全部一致いたしましてこれは何とかして阻止しなければいかぬという動きで動いたのでございます。一部の、漁業資材でございますとか、そういうものの関係におきましては、単なる貿易の問題ではないかといった御理解もあったようでございますけれども、私ははなはだ遺憾に存じますし、特に先般の漁夫の募集にあたりまして若干の商社がそのような動きをいたしましたわけでございまして、直接会いまして、その漁業問題が単なる貿易問題じゃないんだと、非常に条約上の立場もまことに苦しくするし、そしてまた、日韓の全般的な国交関係にも影響のある問題でございますので、慎重に行動してもらいたいということを直接申し入れをいたしました。また、一応先ほどのような漁夫の乗り組みその他につきましての法的の措置をとりましたので、よほど非常識な動きでない限り、一応現在のところは阻止できるというふうに考えておるわけでございますが、ただ、これはいろんな個々の措置をとりますよりは、やはりこの種の問題の全体に影響する意味合いというものを関係者の方に広くわかっていただくことが必要であろうと思いますので、そのような努力を続けたいと考えておるわけでございます。  それから韓国の問題につきましてソ連側から何らかの話があったかということでございますが、昨年の暮れでございましたか、ソ連の新聞にこの韓国の北洋問題が若干扱われたことがございます。しかし、正式に私どもこれについてはお話をなんにも聞いておりません。それから先般イシコフ漁業相がおいでになったときも、具体的にはこの韓国問題についてお話が出なかったように聞いております。それから先般日ソで非常に長い期間交渉いたしたわけでございますが、その間一言もこの問題については言及されなかったというのが事実でございます。
  92. 森中守義

    森中守義君 さっきのその新聞声明によってということで一通り本年度はそれを回避できたかもわかりません。しかし、これは将来の問題としてすこぶる日本漁業にとっては重大な問題だと思う。しばしばお話もありましたし、私も申し上げたように、一つには、今日条約を締結している日ソの関係、これは何としても国際信義上の問題です。かたがた、日米加、この三国の条約というものがこれまたこれに関係してくると思うんです。いま以東に入っている、それが対等互恵の条約でないかという、こういう議論が沸騰している最中ですから、さっきの専管水域じゃございませんが、資源の開発にも保護にも何の協力もない、あるいはまた実績も持っていない国が、ただ公海の原則だけ踏まえて出るということは、相当大きな問題を惹起する可能性があると思う。私は、そういうことで、将来の日ソ条約の問題なりあるいは日米加等の条約に影響したり、いわんや日本の漁業生産に重大な脅威を与えるようなこういうことについてはよほど慎重な対策が必要である。のみならず、最初に申し上げましたように、もし強行するならば日韓条約による一切の経済援助は打ち切る、こういう強い姿勢が当然とられていいんじゃないか、こういうように思うのです。そういう重大な決意をこの問題でお持ちになっているかどうか、これはひとつ大臣のほうに御所見を承っておきます。
  93. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 腹がまえは、ただいま水産庁長官から申し上げましたようなことでございまして、そういう決意を政府は持っております。
  94. 森中守義

    森中守義君 その決意が最後のきめ手となるでしょうから、ひとつ何年でも農林大臣をやっていただいて、事の処理に当たっていただきたいと思います。
  95. 川村清一

    ○川村清一君 関連して一つお聞きしたいのですが、ただいまの森中委員に対する大臣の御答弁は、それは、韓国の北洋進出にいたしましても、サケ・マス漁業の問題だと、私はその解釈するわけです。これは日ソ漁業条約の問題でございますが、そこで、サケ・マス漁業は、大臣の非常な決意のほどは承知し、その点につきましては敬意を表するにやぶさかでないわけでございますが、水産庁長官お尋ねしておきたいことは、サケ・マス以外の漁業、すなわち底びき漁業、これに対してはどういう御見解を持たれますか。底びき漁業につきましては日ソ漁業条約によって何ら規制されないわけでございます。しかも、日本の国内法におきましては、底びきを相当規制しておるわけであります。底びきのいわゆる操業水域というものを規制しておるわけであります。ところが、外国船に対しましては、領海三海里以外は公海自由という原則がありますから、したがって、公海において底びき漁業をすることにつきましては何ら規制されないわけでございます。そこで、三海里といいますと、御承知のとおり、五千四百メートルです。距岸五千四百メートル沖合いになりますとこれは自由である。御承知のように、北海道沿岸あたりにおきましては、いわゆる漁業協同組合が管理しておる共同漁業権におきましては、二十五海里、したがって四万五千メートルー四十五キロぐらい共同漁業権を持っておる、そういうところもあるわけであります。したがって、五千四百メートル離れるというと公海でございますから、自由に底びきはできる。日本の底びきは国内法で規制されておる、韓国の底びきは何ら規制されない、これは一体どういうことになりますか。ただ、いま提出されている法案によって外国船が立ち寄ることができなくなりますので、とった魚を日本の港に陸揚げできないということによってそういうふうに規制はされます。確かに規制はされますけれども、しかしながら、大きな仲積み船をもってするか、あるいは母船式でもって、沖で底びきの魚を船に積んで韓国に持っていけば、これは何ら規制できないわけであります。そうしますと、沿岸を守るために日本の底びき漁船の操業を国内法で規制しておきながら、韓国の底びきに対しては野放しである、それで沿岸漁民を非常に苦しめる、こういう結果が出てくるわけでございますが、サケ・マス漁業のほうについてはわかりましたが、底びきの漁業のほうにつきましては一体どういう規制措置をとられるお考えか、その点をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  96. 久宗高

    政府委員(久宗高君) サケ・マスにおきましては、さっき申し上げたようなことでございます。底びきにつきましては、現在のところ直接条約上の制約を受けていないわけであります。したがって、若干扱いが違ってくるわけでございますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、専管水域を設置しろというお話との関連で申し上げたわけであります。おそらく専管水域というようなことよりそれより越えた措置が要るのではないかと申し上げましたのは、ちょっと御質問の問題と関連するわけでございます。すなわち、かりに底びきその他につきまして相当日本の漁業に影響のあるような事態が生じました場合には、その当事国と何らかのお話し合いが要るわけでございます。私どもといたしましても、底びき問題がどんなような展開をするかによりまして必要に応じて二国間でいろいろな取りきめをしなければならないというふうに考えております。
  97. 川村清一

    ○川村清一君 これはいずれ外国船寄港を規制する法律案が問題になりましたときにこの問題につきましてはさらに御質問申し上げますので、いまするつもりはなかったのでございますけれども、いま話が出たので私は聞いたわけでございますが、そこで、いまの時点においてはっきりしておきたいことは、要すれば、韓国の北洋の進出、いわゆるサケ・マス漁業の規制につきましては、日ソ漁業条約あるいは日米加三国漁業条約、こういう国際条約の建前からいって、日本政府は韓国政府に対して相当強く勧告なり意見を述べることができると思うけれども、しかしながら、いまの時点においては、韓国の底びきが北海道とかあるいは三陸沖合いにかりに進出してきた場合において、これは規制することができないと思う、現行法では規制できない、こういうふうに私は考えておるんですが、規制ができないでしょう。
  98. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 現行法では、もちろん規制できません。しかし、そうかといってそれを放置するわけにはまいりませんので、さような事態が生じました場合には、二国間で話し合いをする以外に方法がないのでございます。
  99. 川村清一

    ○川村清一君 したがって、外国船の寄港を制限しただけでは、これは規制はできないでしょう。話し合いというのはどういう話し合いかわかりませんが、いま御用意されている外国船の寄港を制限する法律案だけでは規制はできないでしょう。これを明らかにしていただきたい。
  100. 久宗高

    政府委員(久宗高君) おっしゃるとおりでございまして、寄港の問題は、先ほど申し上げましたように、これは最小限度必要な寄港制限の問題でございます。それによって全部事が解決するわけではございません。したがいまして、これは最小限度必要な措置であって、沖合いにおきましてかりに漁業が競合する問題が起こりました場合には、その事態の推移によりまして二国間でお話し合いが必要になるのではないかというふうに考えられます。
  101. 森中守義

    森中守義君 それから例の北洋の安全操業の問題ですが、これはどうなんですか。大体積み上げ方式で極力コンブ協定のときのように沿岸十二海里というのにこだわらないで特殊協定でいこう、別途ラインをつくろうということで今日まできておるわけですね。それを、いま、一ぺんに日本政府のほうでは、何も歯舞、色丹に限らないで、国後、択捉まで、樺太全部十二海里をはずしてほしいという交渉があるやに聞いておりますが、なるほどこれは望ましい、もちろん領土問題に関係いたしますけれども、一度にそこまで飛躍して交渉が成立するのか、ちょっとその間の経緯を御説明いただきたい。
  102. 久宗高

    政府委員(久宗高君) いまのような御提案は私は関知しておりません。
  103. 森中守義

    森中守義君 外務省は……。
  104. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) 外務省といたしましても、そういう非常に広範囲の提案はしたことがございません。
  105. 森中守義

    森中守義君 あれでしょう、赤城試案というものが出て、とかくその全域については三海里にしてほしい、日本並みにということで、話が折り合わないで、いろいろ拿捕船が出たりしたのじゃないですか。その結果、コンブ協定といういわゆる民間ベースの協定をつくって特殊ラインをつくった。それで話がほぐれたから、もっと前に進もうというそういう交渉の経過をたどっているんじゃないですか。私はそういうふうに理解していたんですがね。
  106. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 安全操業の問題につきましてはいろいろな経緯がございますが、それらの経緯の頂点の問題といたしまして、赤城試案という形で、少なくともこの程度のものであればのめないはずはないではないかという交渉を始めた。それについての交渉過程におきまして先般来寄港問題というのが出まして、それのからみ合いにおきましてまだ問題がそのままに継続しておるわけでございます。いまお話しの民間協定の問題は、さらにまたそれの一部でございまして、コンブという問題と、それに関連のある零細漁民の問題を何とかそういう領土問題と一応切り離して現実的な処理をしようじゃないかということで、民間でも非常な御努力がありまして、そこでああいうものが民間協定として成立した。したがいまして、一応いまの赤城試案とも切り離された別の範疇の問題になると思います。
  107. 森中守義

    森中守義君 そうすると、ことしの漁業交渉の際にもこういう問題には全然言及しなかったんですか、わがほうは。ことに、イシコフという人は、現場を見ようということで北海道まで行ったんでしょう。かなり新聞にも騒がれたし、そういう期待が強かったと思うんですよ。したがって、ことしの漁業交渉にそれがのせられていたかどうか、その辺がはっきりすれば、もっと明快になりますがね。
  108. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 日ソの漁業交渉は、御存じのように、条約に基づきます委員会が年々の漁獲をきめるための集まりであるわけであります。たまたま、今回は、昨年末に一応の条約期間を経まして、あと双方から廃棄をかりに通告するような時期になりましたので、あとをどうするかという問題もからんだ交渉になったわけでございます。いわば政府間交渉ではないのであります。日ソ条約に基づきます委員会におきます討議であったわけであります。したがいまして、いまの安全操業の問題を直接その席上で御相談はいたさなかったわけでございます。
  109. 森中守義

    森中守義君 それから外務省がおいでになっていますから、事のついでと言っちゃ悪いけれども、例の米軍のリマ水域における演習問題、これで鹿児島県、宮崎県の漁民が非常に困っている。何かこれは合同委員会だとかそういう適切な機関で協議されたことがありますか。実は、私のほうで、社会党で正式に政府に申し入れをして、こういうむちゃなことをやっちゃいかぬということで問題を提起したことが三、四カ月前にあったんですが、その後のことがさっぱりわかりませんので、もしおわかりだったら、お尋ねしておきます。
  110. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) たいへん残念なんですが、私存じませんので後刻取り調べの上申し上げます。
  111. 森中守義

    森中守義君 これはおわかりになっていなければしかたがありませんが、要するに、社会党では、大会の決定としてすみやかに政府に申し入れを行なう、したがって、段取りとしては日米合同委員会等の公式な機関において問題の処理に当たってもらう、こういうことだったと記憶する。その後合同委員会が開かれたかどうかわかりませんけれども、特にまた機会があればこのことはお尋ねしますが、ひとつ御記憶願っておきたい。  それから水産庁にお聞きしておきたいと思いますが、例の鹿児島県の宇宙ロケットの問題でずいぶん地元の漁民が騒いでいることは御存じでしょう。したがって、これも、いまのリマ水域の問題と同じように、一度問題を提起しているんですが、何か具体的な措置をおとりになったかどうか、経過を御説明いただきたいと思います。
  112. 久宗高

    政府委員(久宗高君) これは科学技術庁からお答えするのが筋かと思うのでございますけれども、私どもも御相談を受けておりますので御相談を受けた範囲内でお答えいたしたいと思います。  この問題は、非常にこじれまして、鹿児島県のほうのお話はついたのでございまするが、宮崎県のほうにむしろ被害が多いわけでございまするにかかわらず、最初のお話がどうも逆なルートで参りましたものですからこじれてしまったわけでございますが、一方、科学技術庁とされましては、ロケットの計画もございますので、三月中にぜひ打ち上げたいというお話で実は御相談がございました。政府部内におきましても、私どもと文部省その他もお集まりいたしまして、政府側としての態度をはっきりしようじゃないかというお話がございました。そこで、水産庁といたしましては、どうもいろいろな経緯を聞いてみますと、事柄よりも、お話がどういうルートで行ったかといったようなことがこじれた原因にもなっておりますので、それをそのまま強行されました場合には非常に困難な問題となると考えまして、一応、三月末にお話のつかないまま強行されることにつきましては、はっきり反対の立場を申し上げました。科学技術庁におかれましても、それを了とされて計画を延ばされたわけでございますが、あらためて関係者と突っ込んだお話をして、また政府としてどれだけのことができるかということを明らかにして処理に当たろうということで、新しい段階を迎えているように聞いております。
  113. 森中守義

    森中守義君 これは、もともとの考え方が少しやはり整理しておく必要があると思うんですよ。農業関係も一緒です。といいますのは、たとえば農業関係で空港をつくる。ところが、運輸省は、全く農林省と農地をとるのだがというそういう合議がない。いわんや、この問題でも、私は、水産庁に、技術庁なりあるいは文部省から合議が行なわれたかどうかわからない。よるべき法律があるないという法律上の問題ではなくして、やはりこれは政府一体の責任においてこういう問題が進められていくのが今日の国家行政組織法の建前ですから。で、そういうことを考えると、当然これは漁民に関係をする、漁業に関係することであれば、計画の段階において少なくとも実施に入る前に水産庁に合議があってしかるべきだ、こういうふうに思うのです。はたして、これは久宗長官の時代ではないでしょうけれども、在来の慣例あるいは慣行として、どうなっておりますか。
  114. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 御指摘のような問題が多くて、実は、困っておるわけでございます。いろいろ紛争事が出ました経緯を見ますと、最初のころに御相談を受けて——受け方もあるわけでございますが、非常に詳しい御相談があってどういうふうに問題を展開しようかといったようなところまで突っ込んだお話がほとんどございませんのです。計画が一方で進行しておって、ある程度熟してまいりましたときに合議を受ける。ところが、現地では、そのような方針を前提といたしました一連の事前の動きがあって、それが非常に問題を紛糾さしたという例がほとんど大多数なんでございます。私どもといたしましては、漁民に関連のある問題でもございますし、どうせこれは紛争事になる問題でございますので、まず最初に詳しい御相談を受けまして、それについての私どもの見解も十分くんでいただいて事に当たっていただきたいということにつきまして、まあたまたま最近では科学技術庁と問題が多うございますので、この点は科学技術庁のほうも最近では非常によく御連絡をいただいております。いまの鹿児島、宮崎のケースは、残念ながらそのような御相談が必ずしも十分でない過程で問題が進行してしまって、結局めぐりめぐって私どものほうへ問題が返ってきたという経緯でございます。そこで、ある程度問題を白紙に返すと申しますか、出直しまして、本格的にやはりちゃんと国の態度をきめて、そうして漁民の納得を得てやるようにしようじゃないかということで、一応役所のほうの体制は整ったように思います。
  115. 森中守義

    森中守義君 これは、官房長官あたりにお越しいただいて注文をつけていくほうが筋としては一番いいと思う。いまそういうわけにいきませんけれどもね。それで、御案内のように、この問題はこれはもう何としても零細な漁民の生活権がかかっておる、しかも千ばいに近い船がおる。ひいては漁業生産がぐっと低下するし、漁民の生活は奪われる、漁場は荒らされる、こういうことになると、やはりこれは水産政策上相当重大な問題だと思う。私ども、こういうことで紛争が生ずる、あるいは補償問題が発生するというようなことで、絶えず全国的に大小無数の問題があることを知っております。その辺が、やっぱり行政官庁相互間の連携ということがうまくいっていないということではないかと思う。ですから、できるだけ早い機会に閣議なり、あるいは次官会議なり、こういうところでこの辺の調整をどうするか。少なくとも今日よるべき根拠法というものがあるなしにかかわらず、各省庁間の合議というものはより完全なもので、完全な合議に達するような、そういう措置というものができないものでしょうか。そうしないと、だんだんこういう問題は多くなっていきますよ。たいへんな問題だと思う。この場でこんなに簡単に私は言っていますけれども、現地の実際の若悩というものは見るにたえかねるような問題だ。これは何もこういうものに限らないで、コンビナートをつくろうとすると、いったいノリ生産者はどうなる、補償はどうか、こういうことがしょっちゅう繰り返されていて、たいへんなこれは政治への国民の不信というものは高まっていくのではないか、こういうふうに思います。どうでしょうか、できるだけ一体の責任においてコントロールができるような体制をおつくりになりませんか。
  116. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 政府では、いまの内之浦の打ち上げの問題につきましては、ただいま水産庁長官が申し上げましたように、こちらのほうに連絡がありまして、われわれのほうとしては一番骨を折って漁民の諸君と接触をいたしておるわけでありますが、その他のことにつきまして私はお説のとおり同感でございまして、したがって、そういうことについては調整機関で、たとえば公害の問題、これは、こういうようなおそれのある問題については経済企画庁において中心になって、関係と思われる各省と協議をいたしましていろいろな施策を講じていくように、あるいはまた、問題によっては総理府総務長官が中心になって事前に御相談をするというようなやり方にしようではないかということで、たとえばいま宅地の審議会の答申が出まして、ああいうものになりますというと、影響するところ農林関係もきわめて大きいし、いろいろ各省に関係がありますので、したがって、そういうようなことを実践してまいるためには事前に各省で協議をしてそういうことについて万全の策を講じていこうではないか、一例を申せばそういうことであります。いまのお話のように、事の性格によって調整官庁を中心にしてやってまいるように最近はいたしておるわけであります。
  117. 森中守義

    森中守義君 運輸省もおいでになりますので、そのほうをちょっと先に聞いておきたいと思うのですが、水産庁それから運輸省おのおののほうで、要するに、漁業法違反、あるいは航行安全法といいますか、そういうものの違反の状態は、どうでしょうか、かなり膨大な数に及んでおるというように聞いておりますが、おわかりになっているだけお示しをいただきたい。
  118. 河毛一郎

    政府委員(河毛一郎君) 私ども関係は、漁船の主として船員法関係についての違反でございますが、過去五年間におきまして船員法関係の違反件数は三千七百六十二件でございます。
  119. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 水産庁関係でございますが、漁業法に基づきます違反は、三十八年二十五件、三十九年四十九件、四十年二十九件、四十一年四件、この四年間で百七件ということになっております。
  120. 森中守義

    森中守義君 船員局長、これは保安庁の分もあなたのほうに入っているのですか。
  121. 河毛一郎

    政府委員(河毛一郎君) 保安官の行ないましたものをも含めております。
  122. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、結局、これは、運輸省一本のものとして三千七百六十二件の違反がある、こういうふうに理解していいですね、保安庁の分も入って……。
  123. 河毛一郎

    政府委員(河毛一郎君) そのとおりでございます。
  124. 森中守義

    森中守義君 これは、七月か八月の免許許可更新の際にぜひ参考にしてもらいたい、あるいは、水産庁がどういう処分をするかという注目をしながら、運輸省では水産庁に一件書類を送られた、こういう話ですが、そのとおりですか。
  125. 河毛一郎

    政府委員(河毛一郎君) ただいま申し上げました船員法関係の違反案件につきましては、水産庁のほうに御通知してございます。
  126. 森中守義

    森中守義君 それがいま言われる三千七百六十二件ですか。
  127. 河毛一郎

    政府委員(河毛一郎君) そのとおりでございます。
  128. 森中守義

    森中守義君 そこで、水産庁では、あまりにも膨大なこの違反件数、水産庁独自のものが百七件、したがって、今回の許認可の際に、これはどういうような扱いをするつもりですか。
  129. 久宗高

    政府委員(久宗高君) ただいま運輸省のほうからお話がございましたけれども、私のほうで今回の許可の一斉更新にあたりましてこの種の問題をどう取り扱うかということで伺った数字といたしましては、労働法令関係の問題といたしましては、報告を受けました件数が、船員局関係で千二百九十五件、海上保安庁関係で五百四十件、そのうち、送致件数か、船員局関係二十六、海上保安庁関係四百五十二でございます。そのうち、有罪の確定いたしましたものが、船員局関係のものが、五、それから海上保安庁関係が六十四ということになっております。  それから漁業法関係で海上保安庁のほうから御連絡をいただきましたのは、三十八年が三十八件、三十九年が五十件、四十年が六十一件、四十一年が三十一件ということで、百八十件でございます。これが先ほど申し上げました水産庁関係で申します百七件というのにほぼ対応するものでございます。  そこで、私どもといたしましては、今回の許可の一斉更新にあたりまして、適格性の判断その他にこの問題をどう処理するかということでいろいろ検討してまいったわけでございます。中央漁業調整審議会のほうでもいろいろ御検討いただきまして、最終的には、違反の中身に相当形式的なものがございますので、それから今後の措置についてどうするかという問題がございましたので、相当件数の多いものにつきましては解除条件付で許可の一斉更新をするという方針をとったわけであります。これは一見非常になまぬるいようでございますが、相当きつい措置でございまして、違反件数がたとえば何件になっておるといったような者につきましては、新しい許可が与えられましたあとさらに一件を加えればたちまち許可が取り消される、こういうような事態になるわけであります。今日まで、私どものほうといたしましても、個々の違反の際に必ずしも的確にその処置がついておりませんので、許可の一斉更新にあたりましてそれをただ急に違反の件数にかけるということよりは、むしろ今後の自粛をいわば相当強く法制的に裏打ちをするという意味におきまして、解除条件をつけまして一斉更新をするという方針をとった。これにつきましては、中央審議会におきましてもずいぶん賛否の分かれたところでございます。最終的には、今日の段階におきまして解除条件を付して一斉更新をするのがむしろ今後の違反を戒める意味においては有効であろうと御判定を受けまして、さような措置をとろうとしておるわけであります。
  130. 森中守義

    森中守義君 問題はそこなんですが、私もこまかな条文をちょっと目を通しておりませんが、漁業法の中でいう指定漁業、これ以下の各条章がこのことを規定していると思うのです。そこで、一斉の更新に際しまして、過去の実績として最高の行政処分はどういうものですか。たとえば、停泊処分が最高であるとか、あるいは始未書がどうだというようにいろいろあると思うのですがね。私の聞いているのでは、最高は停泊処分である。さて、その停泊処分というのが、はたして海上における秩序を維持することができるかどうか、漁業法の精神にかなうものかどうか、おそらく運輸省が今回注目されておるのはその辺だろうと思う。   〔委員長退席、理事任田新治君着席〕 過去の行政処分の実績をひとつわかっているだけお示し願いたい。
  131. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 停泊処分は、実にこれは件数が多うございます。停泊処分も日にちがいろいろございまして、これが実際問題としては営業に一番影響がございますので、相当有効な罰ということになるわけでございます。今度の一斉更新にあたりまして私どもで一番ウエートを置きましたのはやはり無許可操業ということで、それをいろいろ洗ってみますと、結局その主体がすでになくなっているというのが姿でございまして、幾つか今度の処分で許可を与えないという措置をとろうとしたけれども、詳細に調べてみますと、その主体そのものがすでにそういうことはあるべしということで漁業をやめてしまっておりまして、具体的に、今回、ある経営者は今度の許可では与えませんよという形をとるものが、対象そのものがなくなってしまったわけでございます。そういうことで、あとに残りましたのは、漁業法令違反と労働法令違反それぞれにつきまして数犯を重ねておる者があるわけでございます。そこで、先ほど申しましたように、ある線を引きまして、それらの者につきましては、今後——つまり今回の一斉更新でそれが帳消しになるのではなくて、さらに犯を重ねれば残念ながら許可を取り消さざるを得ない、そういう解除条件付で許可の更新をしようという措置をとったわけであります。
  132. 森中守義

    森中守義君 いま言われるような軽微なものもありましょうけれども、もっと質の悪いのがありはしませんか。たとえば、機関員であるとか、あるいは甲板員であるとか、こういうように正当に資格保持を必要とする者を乗船させなければならぬにかかわらず、無資格者を乗せておる、こういうものはありはしませんか。
  133. 久宗高

    政府委員(久宗高君) いまの御指摘の問題は、船舶職員法に関する問題かと思います。私どもで今度のような一斉更新で処置をしてみようと思いまして、一、二年来実は非常に突っ込んでこれは研究したわけでございます。ある客観的な尺度ではからなければならないわけでございます。違反の件数としてあがってきたものにつきましてやや詳細に伺ってみますと、いわば形式犯的なものと、実質的には相当悪質であるにかかわらず、それが実はこの物差にかかってこないというものになったわけでございます。したがいまして、それを全部目をつぶってある尺度でやってしまったらどうかという御意見がございました、こういう五年に一度のことでございますので。しかし、いかにも内容を見てみますと、実質的に公平を欠くなという感じが払拭できませんでしたので、先ほど申しましたような措置をとりまして、今後の解除条件付の許可という形で処理をしたわけでございます。私どもといたしましては、過去の法令違反につきましてそれじゃどういう段階でどういうふうに掌握しておくかということにつきまして、今度このような思い切った一斉更新の際に処置を何かしてみようということになりますと、もう少し常時どういう形で違反を掌握しておくか、この点に若干欠けるところがあったなという感じを免れないわけであります。さような意味で、もしそれがきちんとできておりますれば、ある尺度で処置ができたと思うのでございますが、今回は必ずしもそれが適当ではないと判断いたしまして、先ほど申しましたような処置にとどまったわけでございます。
  134. 川村清一

    ○川村清一君 今度の許可方針というのは重大な問題でございまして、われわれも非常に関心を持っておりますし、漁民が非常にもう注目しておる問題である、こう思うわけであります。それで、私も二、三関連してお尋ねしたいのですが、具体的にお尋ねします。  第一は、農林大臣許可されたその許可を受けた者が、経営の実体はすでに他に移っておるんだと。もっと具体的に例を言いますと、許可を受けた、本人は私川村清一であった、しかしながらその漁業経営は私でなくして他の者に移って、これはもう名義だけであって、実際の漁業権は他の者がすでにこれを経営しておると、これらのはっきりしておるものに対して、これはどういう処置をとられますか。
  135. 久宗高

    政府委員(久宗高君) ただいまの御質問は、たいへんお答えしにくい御質問なんでございますが、許可許可制度に伴いまして限定いたしますので、これに現在のような金融のやり方と関連いたして考えますと、これが一種の価値を持ってしまうのであります。事のよしあしを抜きにしまして、経済的な価値を持ってくるわけでありまして、特に船と関連した許可になっておりますために、許可の実質的な売買と申しますか、さようなものがこの制度にまつわりつかざるを得ない現状でございます。そこで、私どもといたしましては、しかもそれが現実の融資でございますとかそういうものと関連してまいりますので、許可制度のほうを合理化しようといたしましても、必ずしも許可がある価値を持ってきてしまうという事実は払拭できないのであります。  そこで、具体的な処理といたしましては、許可の実体がさようなことになっておりますので、これを役所の側から吟味してまいりましてもこれは検察的な取り扱いができませんので、十分ほんとうの意味の実体がつかみにくいわけでございます。そこで、それぞれの業界の団体の中におきまして実質的な許可とそうでないものとの混淆を調整していただくように、これが精一ぱいではないだろうかといまのところ考えておるのであります。したがいまして、そのような問題との関連におきまして一斉更新におきます措置はとっておらないのでございます。
  136. 川村清一

    ○川村清一君 沿岸漁民は、こういうような問題に非常に関心を持っているわけですね。御承知のように、北洋漁業において一番採算性の高い漁業は、やっぱり母船式の鮭鱒漁業ですね。したがって、あとでいろいろ資料をいただきますけれども、現在、北洋の母船式鮭鱒というのは何船団あって、独航船が何隻あって、その独航船はすべて農林大臣許可しておると思いますが、その何百隻の独航船の経営の実権は一体どこにあるか。川村清一に許可しているが、これを実際に経営しているのはマルは大洋であり、日魯であり、日水であるというような、そういうようなのが一体何隻あるか、そういうのをはっきり一体つかまえていらっしゃるかどうか。こういうものに沿岸の漁民は非常な関心を持っておる。これはどういうような許可になるのか。  それから漁業協同組合の合併法案なんか出ておりますが、これはいろいろ政府が勧奨して合併させようとすることも、要すれば漁業協同組合の経営が困難だから、それを何とか経営が成り立つようにということでやられると思うのでありますが、しかしながら、北海道等におきまして協同組合が北洋の独航船を一隻持って自営をやっておるものは、過去においては知事から二度も三度も勧告されたものが、ようやく立ち上がりまして、これは毎年五百万なり六百万の黒字がはっきり出ているわけです。したがって、そういう自営船を持っている組合はもう非常に財政が豊かになってきているわけです。そうしますと、沿岸漁業組合の財政を豊かにするためには、何とかしてその企業採算性の一番高い北洋の独航船なんかを組合に一隻持たせて組合にやらせたいと、こういう考えを持っているのですが、いまのような情勢ではとてもそれができないわけです。大企業がみな経営権を持っている、こういう点をどう把握されて今度の更新をどうされるかということに非常な関心を持っておるわけでございます。いまの長官の答えでは、これは何にもならないということになります。  次に、もう一点お伺いします。四八(ヨンパチ)の鮭鱒流し網、四十八度以南、こういう船の違反船、これは保安庁に相当つかまっておるものもありますが、こういう違反船に対しては一体どう処置をするのか。四八の鮭鱒流し網船、これは非常に企業採算性が高い。もうかっている船なんですが、こういうものも組合などに持たしたらどうかというような考え方を持ちますが、こういうことをこの機会に考えられないかどうか。  次に、もう一点。先ほど底びきの話を聞きましたが、沿岸の漁民の怨嗟の的は何といったって底びきなんです。この底びき、海のギャングといわれておる底びき、これがずいぶん保安庁につかまっております。これが全部確かに運輸省のほうから水産庁のほうにあがっていると思うのでありますが、こういう底びきの違反船に対してこの許可更新の場合にどういう処置をするのか、そういうのをまた許可するのかどうか。先ほどのお話じゃ、それはまあまた許可して、今度やったら今度は許可を取り消す、今度だけは許してやるというような非常に甘いお考えのようですが、私どもとしては、これは過去に何回も重ねているわけですから、こういう違法操業をして沿岸漁民を泣かせておるような底びきはもう大いに征伐すべき段階である、こういうふうに考えているわけですが、こういうことをぜひ許可更新の段階でやっていただきたいと思うのですが、それを断行する決意がないのかどうか、それをひとつはっきり聞かしていただきたい。
  137. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 最初の御質問の独航船の問題でございますが、一応の御答弁はもちろんできますけれども、おっしゃっております、意味は母船とも含めました、その価格交渉も含めました一連の経営の中でそういう問題をどう考えるかというもっと突っ込んだ御質問のように思うわけであります。私どもといたしましては、これは長い経過がある問題でございまして、母船と独航船との間での価格交渉を通じましてだんだんに形成されてきた一連の問題でございますので、御指摘のような経営の実体はだれがにぎっておるのかという問題はございましょうと思いますけれども、それがいま直ちに許可の更新と関連して統制的に処理できるような性質のものではないだろう。あるいはもっと別途の措置が、もし御指摘のような問題がありとすれば必要なのではないかというふうに考えております。  それから組合合併の問題は、自営の問題との御関連かと思いますので、どうお答えしていいのかよくわかりませんが、いずれにいたしましても、お話は、鮭鱒が相当収益がいいので、そういう関係で違反船の処置はどうなっておるかという御質問だと思います。鮭鱒につきましては、これは日ソの問題もございますので、私どもといたしましては、比較的少ない取り締まり関係を相当無理して振り向けまして、そして外国からの誤解も受けたくないと考えておりますので、現在の取り締まり関係では相当力を入れてやっておるわけでございますが、何ぶんにも非常に数が多うございますので、多少行き届かない点があるかと存じます。  それからまた、いまの鮭鱒が現段階では経営が非常によろしいということでございますけれども、これも、何と申しますか、現在の全体の経済情勢の一環としてとらえなければならぬように考えるわけでありまして、それ自体の企業のほんとうの蓄積ということが、かりに実質的な分析をしましたら、表面に出ましたほどの収益があるのかどうか、これは若干疑問に思っておるわけであります。しかしながら、現在の漁業種類の中で一応総体的に相当有利な漁業ということになっておりますので、これらの許可につきましては特別な注意を払って慎重な措置が必要であろうと考えております。  それから底びきでございますが、やはり、御指摘のように、件数も多うございます。先ほど百七件と申しました中で沖合い底びき関係は四十八件で、件数といたしましては漁業種類の中でやはりトップになっておるわけであります。ただ、これは、御承知のとおり、非常にこまかい規制をしておりまして、海の上に線を引いてみますと海が見えないくらい一このくらいな紙に書きますと、よくもこんなにこまかく漁場規制をしているなというようなことになっておりますので、実際の操業におきましては、操業区域を逸脱したり、そういったようなケースが非常に多いもののように考えております。経営自体としてはやはり相当な苦しさを持っております経営でございますので、   〔理事任田新治君退席、委員長着席〕 私どもといたしましては、今回の一斉更新にあたりましては、少なくともいま以上の資源に対する過重がかからないようにということを一応頭に置いて許可をしたわけでございます。ほんとうに資源的に考えました場合には、まだまだ若干の間引きが要るのではないかと実は考えております。しかしながら、いまのところ、それを全般的に取り上げまして、資源との関係で何隻でなければならぬというところがはっきり言い切るまでの十分な自信がございません。大体現在の統数をほぼ踏襲せざるを得なかったというのが実情でございます。
  138. 川村清一

    ○川村清一君 これで終わるのですが、長官ね、沿岸漁業を振興するためには、まあ魚礁の築設もけっこうですし、いろいろけっこうですけれども、私は、やっぱり、いまの免許許可制度ですね、これを抜本的に改正して、それでこの許可を沿岸漁民に与えると、こういうようなかっこうから沿岸の漁業協同組合をもっと財政的に豊かにし、漁民の経営を楽にしていくと、こういうようなことを考えなければ、根本的には立ち直らないと思うんです。それは魚礁の築設もけっこうですよ。ですけれども、専門家にこんなことを言うのはおかしいのですけれども、何ぼ魚礁を築設したところで、結局、コンブをとったり、ワカメをとったり、カレイをとったり、タコをとったり、そんなものをとっているだけの話であって、そんなものに若い漁村の青年は楽しみを持たぬですよ。やはり、優秀な青年は、資本を蓄積したら沖合いから遠洋へと発展していくんだと、そういうふうに希望を持てば漁村にも落ちついているわけですよ。しかしながら、若いうちからじいさんになるまで、コンブとりをやったり、ワカメとりをやったり、そんなことで漁村に落ちつけといったって、いるわけはないですよ。そうでしょう。だから、許可制度、免許制度というものを抜本的にもっと変えて、そして漁民にそれを与えるというかっこうにしなければだめですよ。そういうことは、こういういまのような許可更新の機会にだんだん漸進的にそういう行政をやっていかなければできないでしょう。ところが、いま長官の話を聞いていると、なんにも変わらないじゃないですか。だからして、水産庁というのは大資本漁業の奉仕者だ、大資本漁業の奉仕ばかりやってるんだ、水産長官はマルは大洋の番頭さんだと、日魯会社の手代だと、こう言われている。言われたってしかたがないでしょう。いま長官の話を聞いてみれば、私がこうすべきではないかと言うと、いや、そんなことできないと、こう言うんだから、そうなれば、いつまでたってもマルは大洋の番頭さんにすぎないでしょう。そうすれば、漁村には青年なんか一人もいなくなっちゃって、もうほんとうに死んでしまいます。北海道へ行って漁村を歩いてみなさい。部落に残っているのは、もうほんとうにじいさんとばあさんと、それから子供だけですよ。通りにいるのは子供ばかり。あと、若い者はみんな出かせぎですよ。農村は三ちゃん農業で、じいちゃん、ばあちゃん、かあちゃんというけれども、漁村はもうほんとうにじいちゃんとばあちゃんと、かあちゃんもいるかいないか、こんなような状態です。だから、水産庁なんか何をやっているのか、ぼくらに言わせたらわからぬですね。許可更新のこういう機会に少しずつでもやってもらわなければ、これはもう何にもならないということを思うわけです。まあ、あとは意見になるから、やめておきます。
  139. 森中守義

    森中守義君 実は、だんだん時間がたってきまして、あとお伺いしたいこともありますので、たいへん恐縮ですが、あと少しいまの問題で……。  さっき、海員免許を持っていない者を乗せているじゃないかと。なるほど、これは船舶職員法関係になるかもわからない。しかしながら、実態としては、そういう悪質な違反がだいぶある。ですから、結局、免許をどうするかという際に、許可をどうするかという際に、こういう問題がきちんと整備されないとたいへんじゃないか、こう思うんですよ。それで、さっき、過去の行政処分の最高のものは何だ、こういうお尋ねをしたが、はっきり答えが出ないんですね。これは、私は、別に聞かなくても、大体長年の慣行として、停泊処分が最高である、あとは始末書、まあこの程度で終わっていると聞いている。これでは、私は、洋上における人命の保全、あるいはまた、大事な水産資源を責任を持ってやろうという体制にはならぬと思うんです。中には、長官の言われるように、形式的なものもありましょう。かなり質の悪いものもいる。だけれども、そういうものを込みにして、大いに水産界を保護育成しよう。助長しよう、そういう角度から処分をおそれたのでは、私は悔いを千載に残すと思う。長年の慣例というものはそういうことじゃないんですか。だから、保護するということと制裁というものは別個ですよ、これは。私は、制裁を加えるということが直ちに沿岸漁業を低落させるということにはつながらないと思う。むしろ、逆な言い方をするならば、洋上の秩序を保って、あくまでも法律は法律できちんと守らせる、そういう整然とした中に、はじめてわが国の水産資源の確保もできようし、漁業生産の向上もできるんじゃないか、こう思うんです。ですから、あとまたお尋ねいたしますが、大体、ものの考え方として、どうでしょう、そういうきびしい処置をとる、いや、それじゃまずい、やっぱり保護するという意味で制裁はあまりしちゃならぬ、せいぜい行政処分としては停泊程度が妥当であろうと、こういう御意見であるかどうか。少なくとも、制裁というものは、違反を犯した者にある種の反省を促して、再びそういうことを繰り返させぬというのが私は制裁の条件でなければならぬと思う。あまりいいかげんなことをやって、なれ合いみたいにやっておると、同じことを何回も繰り返しますよ。そういうものは、最初は形式犯であったにしても、繰り返しているうちに、何をやっても許されるという、そういう実は思い違い等も出てくるんじゃないでしょうか。そういうことから、洋上における法律違反に対してはどういう措置をおとりになるのか。またあと具体的なことを聞きますが、まず、ものの考え方を一ぺんこのあたりで明らかにしてもらいたい。大体、運輸省では、審判庁あたりがあるんですね。そういう公式な制裁機関を持っていますよ。水産庁にはないです。それだけに、よほど慎重でなければならぬ、こう思うんですが、どうですか。
  140. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 御指摘の考え方は、私は全く同感でございます。漁業の秩序を保っていきます上におきましても、保護は保護といたしまして、違反についてはやっぱりきびしい態度で臨むべきだという点は、全く同感でございます。ただ、今回の五年目に参りました一斉更新と関連して、今日までいろんな実績をつぶさに調べてみますと、どうも私どもの取り締まりにも必ずしも十分でなかった点がございますので、今日まで処置すべきもので処置していない問題もございまして、それを卒然とやることによりましてむしろ実質的な公平感から見ていかがなものかという問題が相当はっきりいたしましたので、あえてそのことを形式的な件数だけで処理することをやめまして、ただ、これはやっぱり累犯になっている者がございますので、今後におきましてもそれを戒めていただくという意味におきまして解除条件をつけたわけでございます。これはもちろん今回の切りかえに伴う問題でございまして、私どもといたしましては、この一年間、一斉更新というものをめぐりまして、適格性をどう判断するかということで、それぞれの業界におきまして、また、水産庁の中におきましても、相当突っ込んで過去五年の問題をひっくり返して検討したわけでございます。さような意味から、ある程度それが一つの、まあたいへんおくれて申しわけないのでありますが、教育期間と申しますか、ということであったように思います。したがいまして、今度の解除条件許可というのは、実は、相当問題のある重い処分のように思うわけでございます。業界でも、それはよかろう、それでいこうじゃないかというところまでずっと機運が出てまいりましたので、そういう機運を助長してまいりたいと思いますのと、これを機会に、今後の処置に対しましては、やはりこれでもって大体実態がわかりましたので、違反については漁業関係者のむしろ希望でもございますので、悪質な違反につきましては相当手きびしい措置をとらざるを得ないし、また、とるべきだと考えております。
  141. 森中守義

    森中守義君 所信の表明があって、大体了といたしますが、ただ、ここで申し上げておきたいのは、近来のように労働力が不足しておる、したがって、ある意味では逆に質の低下を来たす、そのために省力化を促進する、そういううらはらの関係にやはり違反というものもある程度結びついてきているんじゃないか、こういう見方も私はいたします。したがって、その辺に、沿岸漁業ないしは沖合いの大きな基本政策にもよほどの留意が必要じゃないか。また、そのことを無視してこの違反問題を議論されないような気もするんですよ。したがって、そういう観点から、じゃ現在の漁業法というのはどうであるか、こう考えますと、実は、二十四年に占領中に制定をされ、三十八年だかの改正を見ているようですけれども、罰則条項がないのですね。規制条項がありませんよ。おそらく、そういう条項を受けて、それじゃ違反処分の基準をつくっていこうという基準もない。だから、何によって違反の処置をするかというのは、単なる思いつきの行政処分じゃまずいのじゃないか、こう思います。ですから、よほど運輸省あたりとも協議をされ、やはり改正すべき点があれば法律の改正も勇敢にやるべきだし、また、でき得べくんば政令ないしは省令等で違反の適用基準をつくる、そういったような措置を講じなければ、結局、海上における違反というものは減少しないのじゃないですか。そういうように思うのですが、いま申し上げる法律の再検討、あるいは政省令等による罰則基準の制定、こういうことをお考えになりませんか。
  142. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 現在でも、もちろん、罰則並びに行政処分をいたしますときの基準なり内規なりというものをつくってやっております。御指摘の問題は、もう一皮むいてもっと突っ込んだ方法はないかという御質問のように思います。いろいろな事犯を見まして、特に今回の一斉更新を通じて感じております問題は、経営の問題と労働問題が非常にむずかしい問題になってまいりまして、労働力の確保という点からも、単に労働問題ということだけじゃなくて、経営の側におきましても、漁業者の確保という意味におきまして、労働法令の順守その他におきましてもだいぶ考え方が変わってきているように思います。それで、これはそれとからんだ問題になりますので、つまり、経営者だけが違反するのじゃなくて、同時に乗組員も、特に小さな経営におきましては両方合意の上で非常に危険な海域にしかも十分な装備でなしに出て行くというような問題も経営とからんであるようでございます。したがいまして、ただ罰則だけを整備しただけでは済まない、罰則以前の問題があるように思いますので、さような意味で、非常に不十分でございますけれども、中小漁業の振興法もつくりましてその辺のバックをしてまいりたいと考えておるわけであります。  今日までの取り締まりその他についても相当遺憾な点がございますので、内規その他につきましても中央の審議会におきましてもそういう問題はだいぶん出た問題でございますので、いろいろ委員会もつくって御検討をいただきまして、まあ遅々としておりますけれども、一歩でも二歩でも具体的に進めてまいりたいと考えております。業界におきましても最近そのような問題を積極的に取り上げまして、船員の確保あるいは待遇問題につきまして研究を始めているようで、たいへんいい傾向だと思いますので、そういうようなものも助長してまいりたいと考えております。
  143. 森中守義

    森中守義君 いまちょっと法改正の問題に触れましたので、もう一つ進んでお聞きしておきたいと思いますのは、先ほどから問題を提起してまいりました国際漁業の問題ですね。これは別にきちっとしたものがない。極端に言うならば、今日の沿岸漁業振興法というものがいわば漁業の基本法のような性格を持っている。これではやっぱりまずいのじゃないかと思うわけです。それで、いろいろ質問の展開をしながら、まあだいぶ意見の違うところもありましたけれども、少なくとも、今日の趨勢というものは、国際漁業に対し、また、沖合い、沿岸ともに総合的な検討の段階に来ている、こういうように思うのです。ですから、一つには基本法の制定、同時にまた、国際漁業に対しては一つの見解も持てるように、さっき申し上げる領海の問題も、専管水域の問題も、もう少し割り切ったいわゆる改策上の法改正というものも必要じゃないでしょうか。こういう意味で、基本法をお出しになるとか、あるいはまた、沿岸漁業振興法をもう少し変えていくとか、そういったことはお考えになりませんか。
  144. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 御指摘のような問題の検討に入るべき段階だと考えております。ただ、旧漁業法の施行過程におきましても、あるいは沿岸漁業振興法が出ました過程におきましても、非常に特異な時代をけみしてまいったのでございます、過去五カ年に。そこで、法律の体系としてもそれでいいのかどうかという問題がございます上に、漁業を取り巻きますいろいろな条件を考えてみますと、むしろ一般経済の分野から実際は相当影響を受けているそれに対しましてどう対応していくかというものが、漁業の中だけでは片づかぬ問題が非常に多いように思うわけでございます。特に労働問題あたりがその一番典型的なものでございますが、そういう点から考えますと、いまの国際漁業も含めまして何らかの意味の法律の手直しが要る時期と申しますのは、もう少し先になるのではないかという感じがいたします。つまり、漁業を取り巻く条件なり国民経済の中での位置づけをいたしますのにもうしばらく条件を見きわめたい問題がございますので、いま直ちに法改正は考えておりません。しかし、そういう問題を意識して現在の沿岸漁業振興法なりそういうものを運用してまいる必要があることは、これは全く同感であるわけでございまして、今回の中小漁業の問題を取り上げましたのも、沿岸漁業振興法を基礎にしまして、そのうちのあの部分につきましてさらに特別補助をしていこうということを考えているわけでございます。今回御提案申し上げております四つないし五つの法案も、この段階におきまして最小限度必要なものでございますので、そのあとに御指摘のような国際漁業も含めました相当大きな制度改正があるいは必要ではないか、それの準備にそろそろかかるべき段階だと考えております。
  145. 森中守義

    森中守義君 この段階でこれ以上の質問は無理かと思いますが、今回お出しになっている四本の改正案、これもはたして今日のいわゆる漁業政策の根幹に触れるものであるかどうか、中身を見ておりませんから、何ともここでは言えませんけれども、少なくとも法律上国際漁業等を規定することが目下のところあり得ないとするならば、さっきから申し上げているように、非常に問題は重要ですよ。のみならず、川村委員からもちょっと指摘がありましたように、たとえば専管水域を沖合い、沿岸についてはぜひつくるべきである、こういう意見がある。しかも、根室等に大型のしかも百数十隻の外船が来れば、びっくりするのはあたりまえだ。そういったような状態がいろいろ累積してくれば、専管水域をつくらないのは大企業がよそに行くからだ、それを守るためにつくってはならぬという、こういう実は極論も出てくると思う。しかし、そういう見方あるいは世論というものは、水産行政のために適当でありませんよ。そういうものを正常な状態に置きかえるためにはどうしたらいいか。私は、やはり各界の代表等を集めるいわゆる審議会等を国際漁業問題ではすみやかにつくるべきだと思う。その中で各界の衆知を集めてきちんとしたものをいっぺん整理していく、それが一つの政策という形に発展できるような措置をとるべきじゃないか。せめて、法改正あるいは新法の制定が困難であるとするならば、その程度のことはやるべきじゃないですか、ここまで守勢に立っているわが国の漁業ということを考えるならば。審議会等の設置はどうなんですか。
  146. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 確かに、その種の問題を総合的に検討すべき時期に来ていることはあると思います。また、現在のそれぞれお願いしておりまする沿岸関係あるいは中央審議会関係でその種の問題が扱えないかどうかという問題もございますが、会合を開きますたびに、それぞれの審議会におきまして、御指摘のような問題がだんだん話題の大部分を占めているような形になってきているわけでございまして、そういう問題を検討すべき時期が熟してきているなという感じは、先ほど申し上げたとおりでございます。漁業を取り巻く諸条件がもう少し熟する時期があるのじゃないかと考えますし、また、特に制度問題に手を触れます場合には、相当にやはり準備と見通しが必要でございます。まだそのうち二、三の重要なものにつきましていま軽々に判断できないような問題もございますので、若干の時間が必要であろうと考えるわけでございます。ただ、それは、その時期を待っているのではございませんで、この段階から私どもといたしましてはさような準備を個別に実は進めたいと考えているわけでございます。
  147. 森中守義

    森中守義君 それは、いまここで確答してくれというそういうせっかちな気持ちはありませんよ。しかしながら、在来、えてしていろいろなことが先送りになってしまって、なにもかにも後手後手ということがあまりにも多過ぎるということです。一例を申し上げるならば資源の問題です。はなはだ言いにくいことですがね。一体、それじゃ、国内、沿岸あるいは沖合い等における資源調査がどうなっているか、この議論もずいぶん早くから巻き起こっておりますよ。ところが、こういうものを正確に把握をするそういう段階にいまは到達していないじゃないですか。これじゃ、一体、漁業政策も需給計画も立つものじゃありませんよ。  私もきのうあたりからちょっといろいろ読んでみますと、こういう例もある。これはもう長官もお読めになったと思うんですがね。去年の読み物なんですけれども、大西洋鮪漁業協同組合長の桝富進さんという人が述べていることですよ。マグロ資源がだんだんだんだん減少してきた、だから資源の開発と保存に全力を傾注すべき段階に来た、こういう状態でありながら、一体、資源保存あるいは開発が何ほど行なわれているかと、こういう言い方をしております。そうして、具体的に言いますと、全国の都道府県で四十数はいの練習船あるいは指導船が、ほとんどが、これらの目的は資源の開発であり調査である、しかし、実際は、そんなことはやらないで、魚をとっている、とった魚で商売している、こういうわけです。いまの桝富さんあたりのところに、どこで魚がとれるんだということを聞きに来るわけですね。もちろん、これは一、二の特例はありましょう。そうでなくて、実際に開発あるいは調査に専念している者もありましょうけれども、おおむねこういう傾向である。  これは、水産庁の所管じゃないでしょうけれども、昨年、公害の問題で、一体、水質汚濁のためにどの程度水産物に影響を与えたか、データをくれ、こう言ったことがあります。そのときに、前の長官は、六十億と言った。そのようなところでは、とんでもない、六十億や百億で済むものか、すでに四百億から四百億五十の被害を水質汚濁のためにこうむっていると、こういう意見が出てくる。それで、一体六十億の根拠になっている数字は何だと聞いたところが、各県の水産試験場からデータを集めて、その集計したものが六十億でございますと、こういうことなんですね。  こういったような特殊な例でもわかるように、なにもかも次から次に先に送られていって、長期にわたる水産政策というものがはたしてそういうことでいいものかどうか。確かに追い込まれているのじゃないですか。そういうことを考えると、あまり気長なことを言わないで、必要と認めるものは断行する。おそらく、金も伴いましょう。予算も伴いましょう。しかし、これはまた十七日にお尋ねしますが、予算書を引っぱり出してみれば、昨年の二割増しとか一割五分増しばかりですよ。前年比が中心になって予算額が組まれている。一体、水産政策の重点がどこに置かれているか、わかりません。全くわからない。ただ前年に対して幾ら伸びたということでほとんど予算構成が行なわれている現状でしょう。むろんこれは財政当局も一緒に来てもらった議論でなければ、あながち水産庁だけを責めるわけにはいかぬかもわかりませんが、大体平板ですね、やり方が。まずいじゃないですか、そういうことでは。——ちょっと声が大きくなりましたけれども、やはり審議会が必要であればどんどんつくって、そういったようにして水産政策の基本になるようなものをぜひこの際つくる必要がある、こういうように思うんです。特別に反論があれば言ってもらいたいのですが、どういうことでしょう。いまそういう時期に来ている、私はそう思う。
  148. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 御指摘のとおりでございまして、反論できないのが残念でございますが、ただ、確かに私昨年水産庁に参りまして感じましたことは、やはり日韓関係で相当のむずかしい問題と取り組んでおりましたために、若干一連の措置がおくれたように思うわけでございます。ただ、その当時、前長官は、その中で幾つか当面当然この段階でやっておかなければならぬものを予見いたしまして布石しておきましたものが、今回法案として四つ五つまとめて出ることになっておるわけであります。私どもといたしましては、当面の段階といたしましてまず少し繰り延べになっておりますのをまとめに立ちまして先の仕事にかかりたいと思っておるわけでございますが、現在の段階での問題をまず処理いたしまして長期的な問題に取り組みたいと考えておるわけでございます。特に御指摘のございました試験研究関係は非常におくれておりまして、ここには非常ないい研究がやや熟しておりますが、必ずしもそれがまた現実行政の中で反映していないという問題もございますので、この段階でも当面の措置を早く踏み切りますとともに、御指摘のような先の問題に突っ込んでまいりたいと考えておるわけでございます。
  149. 森中守義

    森中守義君 とにかく、申し上げておきたいことは、皆さんが発表された新経済計画、あの中に水産関係というものは全く顧みられておりませんよ。不足すれば買えばいいじゃないか、こういうものの考え方になっているようです。しかし、いやしくもわが国の漁業政策が、世界の水産王国といわれた日本が、国の経済の柱の中の一つにも入っておらぬというようなことでは、これはもう適当でない。だから、経済構成の中の主柱になる日が来るようにひとつ大いに努力してもらいたい。こういうことを特に付言して、この関係を終わりたいと思います。  あと、公害の関係を少しお尋ねしたいのですが、厚生省はお見えになっておりますか。——まず水産庁にお尋ねしたいのですが、この公害関係では昨年だいぶやかましくこの委員会で議論がありまして、ぜひひとつ水産資源の確保、こういう立場から、公害基本法制定の際には水産庁の意見を網羅する、こういう意思の表明をいたしております。もちろん当然のようなことではございましょうが、そういう傾向の中から何かまとめたものを総理府に提出されたように聞いております。その内容と、それが基本法の中にどの程度採用されているのか、まずそれを承りましょう。
  150. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 御承知のとおり、政府部内におきまして、現在、公害基本法の検討が進んでおるわけでございます。各省が集まりましてそれぞれ議論を重ねておるわけでございますが、資料といたしましては、先ほど御指摘のございましたような、私どもといたしましては県の報告を基礎にしたものを基礎にいたしまして御相談をしておるわけでございます。
  151. 森中守義

    森中守義君 いや、時期がいつかわかりせんまが、水産庁は何か書面を出したのじゃないですか。これとこれとこれについてはぜひ採用してくれるようにという、その内容を聞かしてくれと言っているんですよ。
  152. 久宗高

    政府委員(久宗高君) それは水産庁だけでございませんで、農林省といたしまして、各省でお集まりしまして公害基本法を立案していく過程におきまして、いろいろな意見を出しておるわけでございます。水産庁独自で別個に出したものではございません。
  153. 森中守義

    森中守義君 それならば、私の勘違いであるかもわかりません。しかし、いずれにしろ、農林省がまとめたものを出したといえば、これは農薬関係もありましょうし、いろいろあるでしょう。そういう中で水産関係ももちろん網羅されているはずですから、まとまったものが出されているというように聞いておりますので、それを公にしてもらえばいいんです。
  154. 久宗高

    政府委員(久宗高君) おそらく、御質問は、この審議のプロセスで出しました被害の額の御質問かと思います。工場、事業場等による被害といたしましては、四十年度の被害を都道府県の調査報告によってまとめたものでございますが、七十四億五千三百万円という数字を公には出しておるわけであります。
  155. 森中守義

    森中守義君 いや、長官、私の質問のし方が悪いのかわかりませんが、そういうものでなくて、公害の中から水産を守らにやならぬ、こういうわけでまとめた条項が出ている。たとえば、基本法の中に、こういうものを対象にしてほしいとか、被害が発生した場合にはこういう措置をとってほしいとか、こういうのが出ていると思うんですよ。私のほうで申し上げましょうか……。
  156. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 最終的にまだ政府案がまとまっておりませんので、詳しく申し上げかねると思うのでございます。立案の過程で特に私ども問題にいたしましたのは、公害基本法の中で動植物つまり水産資源そのものをどう扱ってもらえるかという問題であったと思います。これにつきましては、現在の段階では、生活環境の保全という問題の中で、動植物及びその生育環境につきまして、これはやはり法案の対象にしようということでまとまりかけておる段階でございます。
  157. 森中守義

    森中守義君 これの公害基本法の主管は、通産省ですね。厚生省ですか。それで、きょうの新聞によれば、十六日に閣議決定するときのう次官会議できめた、こういうことのようですが、いまからでも若干の手直しをするつもりですか。きょう、実は本院の公害委員会をやっております。ここでもこれからいろいろ申し上げたい。したがって、閣議決定の前でしょうから、言うならば国会へは提出の前ですね。若干の修正はできますか、その辺を最初にお聞かせ願いたい。
  158. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 今回の公害基本法の法律制定のもとになります要綱につきましては、すでに関係各省が寄りまして公害対策推進連絡会議におきまして種々検討の結果、一応要綱がきまりまして、先般閣議においてこれをもとに法案をつくるということになったわけでありまして、厚生省といたしましては、その要綱をもとに法文の作成に取りかかっておるわけでございます。ただいまはおおむねその最終段階でございまして、最も最近の閣議に提出いたしまして決定を見るという段階にさしかかっておるわけでございまして、ここに至りますまでには種々検討が加えられた結果でございますので、なお未決定ではございますけれども、かなり大詰めの段階に来ておる、こういうことを申し上げておきます。
  159. 森中守義

    森中守義君 そこで、今回の基本法の内容ですが、まあある程度表に出ております。そういうもの等もあれこれ総合すれば、在来強く国民の中で言われたり、あるいは国会の中で注文づけられたことなどが、あまり生かされていない。つまり、あくまでも企業優先の原則がくずれておらぬ。在来と同じように産業調和というこういう表現で、広く公害の被害者の立場に立っておらぬ、こういうことがかなり強く言われておるようですが、相当長期にわたる協議の結果という舘林局長の御説明ですけれども、はたして今回の基本法で事足れり、いわんや水産関係は希望にこたえておる、そういう内容のものになっておりますか。
  160. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) いずれ法案を決定いたしまして国会に提出いたしまする運びにおきましては、御審議をいただくこととなるわけでございますが、すでにその法案のもとになります要綱は、先般閣議におきまして各閣僚の了承を得て、基本線が定められたわけであります。その基本線の定められた内容によりますれば、厚生省といたしましては、先般公害審議会におきまして審議し、その答申を得まして、厚生省が厚生省としての試案をつくりまして、総理府に提出いたしましたたたき台となりました基本の考え方、すなわち、国民の健康並びに生活環境を守るという基本線は貫かれておる、かように思っております。
  161. 森中守義

    森中守義君 通産省にお尋ねいたしますが、昨年この委員会で、おたくであったか、企画庁であったかわかりませんけれども、大体、公害ということをまじめに考えていくならば、企業優先の原則はあり得ないことだ、ある工場で問題が発生したならば、直ちに操業停止をする、こういったようなかなり強い規制措置をとらなければいかぬじゃないか、こういうように言ったことがあります。そういうような状態の中で、いま厚生省主管としてのお話を聞きましたが、一体今回の基本法にその点はどうなっておりますか。
  162. 馬場一也

    説明員(馬場一也君) 公害対策基本法——ただいま大詰めにきておる基本法におきましては、各省調整の結果、まとまりつつあるわけでございます。ただいま先生のおっしゃいましたいわゆる企業優先と申しますか、人の健康なりあるいは生活環境というものよりは、企業の利益を優先して考えるというような考え方は、全体を通じましてとられておるというふうには私は存じておりません。
  163. 森中守義

    森中守義君 そうすると、これからその法案の審議でその辺も明らかになりましょうが、いまの御趣旨からいくならば、公害によって特定の水域が汚染をした、あるいは被害が発生した、そういう場合には、慎重に調査の結果、原因をつくった工場等に対しては制裁を加える。すなわち操業停止等をやらせるということになりますか。
  164. 馬場一也

    説明員(馬場一也君) 現在、公害対策基本法のできます以前におきまして、ある種の公害、具体的に申しますれば、煤煙による大気の汚染、あるいは工場等の、これは工場だけでもございませんが、そういういわゆる発生源からの汚水による水質の汚濁というものにつきましては、すでに御承知のように実定法としての規制法があるわけであります。この規制法には、それぞれ煤煙なりあるいは水質の汚濁につきまして、一定のそういう汚水あるいは煤煙を出します工場、事業場に対する一定の規制基準、排出基準と申しますか、そういうものが定められておりまして、これが確保されますように、もしこれをおかしました工場に対しましては、しかるべきその法による規制措置というものがすでに盛られておるわけでございます。今後この基本法ができました後におきまして、さらにこれら現存の法律がその後の状況によりまして一部修正されることも当然あり得ると思いますし、また、現在規制されておりません工場につきましても、十分検討いたしました上で規制の行なわれるものもあろうと思いますけれども、そういうものができました際には、原理は同じでございます。
  165. 森中守義

    森中守義君 水産庁長官、つい三、四日前に全国の漁民大会が開かれて、今回の基本法に問題を提起しようと、少なくとも全国漁民の意思がかくかくの内容のもとに採用さるべきであるという決議が行なわれたことは御存じでしょう。おそらく、大臣ないしは長官、あるいは関係各省にもこの代表が陳情に参ったと思うのです。いかがでございましょうか。
  166. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 大会のあと関係者がおいでになりまして、詳しくお話を聞きました。
  167. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 水産庁長官、もう一回やってください。
  168. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 大会のあと関係者がおいでになりまして、決議の趣旨その他につきまして詳しくお話を承りました。
  169. 森中守義

    森中守義君 各省はどうですか、厚生省、通産省……。
  170. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 私どもといたしましては、汚水対策全国漁民大会の決議をちょうだいいたしております。
  171. 馬場一也

    説明員(馬場一也君) この漁民大会が行なわれ、決議がなされましたことは承知いたしておりますが、私どもの省には大会の前後におきまして直接お見えいただいたいということはございません。
  172. 松本茂

    政府委員(松本茂君) 経済企画庁に対しましてこの大会後代表がお見えになりまして、決議につきまして詳細お話をお伺いいたしております。
  173. 森中守義

    森中守義君 水産関係を中心にした公害基本法に対する意向というものは、ほとんどこの決議の各項目に尽きていると思う。したがって、この大会における各代表の意見等を拝聴しておりますと、まさに深刻の一語に尽きます。いやしくも今回の基本法の中に最低これだけのものが織り込まれなければ、沿岸漁民としては承服できない——というよりも、生活権が著しくそこなわれる、ひいてはわが国の沿岸漁業それ自体が崩壊に瀕するという、かなり論調の高い表現が使われておりました。私は、関係の各省が非常に多いので、どなたにというわけにまいりませんから、はなはだ申しわけないんですけれども、ひとつ各所管ごとにこの決議に対してどういう御所見をお持ちであるか、つまり、当然であろうとか、いや、そんなもの水産界のことだから基本法じゃ困るとか、そういう御所見があれば、おのおのひとつ一回お聞かせをいただいておきたいと思います。
  174. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 私の関係は主として被害者の立場でございますので、従来の一連の経緯から見て、漁民の皆さんがこういう機会にこういうことをしてくれという気持ちは、そっくりわかるわけでございます。また、同時に、政府といたしまして公害問題を本式に取り上げてその基本的な態度を示そうという段階でございますので、私ども水産庁といたしましては、少なくとも漁民のこの希望というものの実質的な実現がはかれますように法案の成立の過程におきましても努力いたすつもりでございますし、また、このような基本的な法案がきまりましたことを契機といたしまして、従来とかく遺憾のございました実施過程の問題につきましても、それに対応できるような体制を整えてまいりたいと考えておるわけでございます。
  175. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) この決議文の中にございます公害基本法に盛るべき御希望の諸点は、公害基本法の種々検討の際にいろいろ問題点として検討が行なわれました主要な点の一つでございます。これらの点を十分検討の中に加えまして、今回、公害基本法が制定される方向にあると、かように思っております。もちろん個々の具体的な字句の点等においては問題のあるものもございますし、また、無過失責任等の法制化というものは、法技術上非常にむずかしい問題がありまして、法文の中には入っておりませんけれども、このような問題をどのようにして処理し盛り込むかというような検討は十分いたした上で法制定を行なう段取りになってきておるわけでございます。  なお、基本法に引き続きまして、基本法のみでは公害防止の実効が得られるわけではなくて、それに伴う各法の整備を行ない、あるいは未規制公害の新たな規制のための法律をつくるなどする必要がございまして、二、三具体的な御要望が出ておりますので、これらの諸点も検討の対象でございまして、当然に今後政府といたしましても検討していく種類のものであると、かように私どもとしては考え、また、検討を加えているところでございます。
  176. 松本茂

    政府委員(松本茂君) 経済企画庁で担当いたしております分野は、公共用水域の水質保全に関する法律、略しまして水質保全法と申しておりますが、この水質保全法によりまして水質基準を設定していく、その分野の仕事を分担いたしております。公害基本法は、公害に関する国の基本的な姿勢を統一的に示すものでございます。水質保全法は、それに対しまして、公害の中の一分野であります水質汚濁の問題を現実に取り扱います、その実施法という関係になるものと考えております。したがいまして、公害基本法が内容が固まりました場合には、その公害基本法の考え方、また規制の内容、水質保全法もそれに即したものでなければならない、こういうふうに考えておりますので、内容が固まりました場合には、現行の水質保全法もよく検討いたしまして、必要な点があれば所要の改正を加えていく、こういうふうにいたさなければならない、こういうふうに考えております。  大会が済みましてからおいでになりましていただきましたこの決議の第三項のところに、それに関連いたします点が出ておるわけでございますが、ここに具体的に書かれました諸事項につきましては、さらによく検討いたしまして、先ほどの水質保全法を改正いたします場合に十分参考にして取り扱っていきたい、こういうふうに思っております。
  177. 馬場一也

    説明員(馬場一也君) 公害対策基本法は基本法でございますので、各種の公害についての基本法でございますし、また、通産省が関与しております行政の分野から申しますと、たとえば水質汚濁について申しますと、先ほど水産庁のほうからお述べになりましたことは、通産省の関与しております行政立場とちょうど反対の立場で、いわゆる反対の立場にある産業を所管しておる、こういう立場であろうかと思います。基本法ができまして、このむずかしい公害問題についての国の基本的な姿勢というものがきまりますれば、われわれは、そちらの側のほうからやはりこの示されました基本法の精神にのっとりまして、産業として果たすべき役割りにつきまして産業界を十分指導し、その線に沿って産業の健全な発展もはかり、同時に、公害基本法に示されました公害の防止といいますか、排除といいますか、そういうことに御協力をしていきたい、かように考えております。
  178. 森中守義

    森中守義君 お聞きしておりますと、やっぱり在来のあれとたいしてあまり変わりありませんね、端的な言い方をすれば。企画庁並びに通産省の側はいわば加害者の立場にある。水産庁だけは被害者の立場にあるわけでございますが、それでいかにしてこういう問題を排除し、除去していくかということの問題ですが、一項、二項、三項、ことに第一項の場合には、お手元にあるかどうかわかりませんが、かなり具体的に言っています。もちろん、二項以降は、御説のように、たとえば条約の批准も必要でしょうし、あるいは水質二法の取り扱い方も検討になるでしょう。一番問題なのは一項の四つじゃないでしょうかね。この辺のところは、ある程度きちんとしておかないと、全国の三百万人になんなんとする漁民の期待と信頼にこたえることにならぬのじゃないか、こう思うのです。これは、たいへんお待たせして恐縮でしたが、長々と水産問題についてお尋ねしてお答えされたのをお聞きであったと思うのですが、非常に大きな問題です。しかし、残念ながらどなたからも——こういう意向は承りました。いずれもが重要な問題であって、法案制定で少なくとも法制局に回す段階においてはだいぶん詰めていく、こういうお話でありましたが、どなたからも、漁民の期待にこたえるようなものになっているとはお話がございません。ですから、私は、最初申し上げたように、ようやく次官会議にかかる、あるいは近く閣議決定だと、こういうことなんで、まだまだ手直しの時期があるんじゃないか、少なくともこういう全国漁民の要望というものをいれる余裕がありはしないかと、こう聞いたんです。いかがでしょうか。非常にこれは大事な問題であり、しかも、関係各省としては、ここまで進んできたのに、わざわざこのためにもう一回法案の練り直しをするということはむずかしい、こういう御意見もあろうかと思いますが、しかし、こういう機会を除いてはなかなかこの問題を具体的に処理する時期はありません。基本法は、一たんでき上がってしまえば、ひとり歩きをするわけですからね。また改正をするには数年かかる。その間に一体漁民はどうなるか。むろん、私は、こういうものが多く基本法の中に採用されていないという前提に立っている。また、けさの各新聞等の報道なり、私どもが聞いている新提案としての基本法の内容というものは、多かれ少なかれそういう性質のものであるというように聞いておりますから、そういう前提に立ってものを言っているわけですが、いかがでございます、ひとつ、それをもう一回練り直すというお考えはございませんか。
  179. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) ただいま御説明申し上げましたように、この一項の内容全部が、今回公害基本法の基本的な要綱をつくります場合に、非常に重要な論議の問題となった諸点でございまして、これらの点を十分慎重に各省が集まりまして審議の上で法案をつくるという運びに至っているわけでございます。
  180. 森中守義

    森中守義君 いまの局長の答弁は、こういうように理解していいのですか。むろん、法案を見ておりませんから、いまとかく論評の段階でないかわからぬけれども、いまの御趣旨からいくならば、大体入っていると、希望にこたえるものであるという、そういう法案であるというように受け取っていいのですか。
  181. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 公害基本法制定にあたりましては、関係省が十二省ございまして、それぞれ各省に関係のある重要問題が提起され、それぞれの省の立場において意見が述べられ、それらを十分調整の上で基本法がまとまるわけでございまして、それらの段階において、諸種提出されて、各省の担当している分野の制定にあたって盛るべき事項というものを十分検討いたしまして、総合的に基本法をつくるという作業をいたしたわけでございまして、その意味合いにおいては、これが盛り込まれておると申してもいいかもしれませんが、これに対してはまた別個の意見もございまして、それらのものの調整をはかった上で今回の基本法ができると、かような経緯でございます。
  182. 森中守義

    森中守義君 なかなか微妙な言い回しで、どれが本意かよくわかりませんよ。聞きようによると、いや、心配は要らぬと、みな入っているぞというようにも聞き取れるし、いや、そういうつもりであったけれども、各省の意見があって除かれたというふうにもとれる。ずばり言ってください。まあ私はあんまり回転がよくないから、それはこうだああだというように言ってもらうほうがかえっていい。入っているかいないかをおっしゃってください。
  183. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 考慮の中には十分入れて法案を作成いたしております。
  184. 森中守義

    森中守義君 どうも、あんまり頭のいい人が言うことはよくわからない。考慮の中に入りながら法案ができたということになれば、じゃ私は私なりに解釈しますよ。三百力漁民の期待と信頼にこたえるような法案になっておる、漁民大会の決議というのは全部入っているということを舘林局長は言明したというように受け取っていいですね。そういたしますよ。いいんですか。
  185. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 例をあげて申し上げますと、この一の(2)の後段にございます「無過失責任を明記すること。」という御要望がございます。これにつきましては、相当長時間にわたりまして各省間の検討が行なわれたわけでございまして、その結果、法文化として無過失賠償責任というようなものを書くことは非常にむずかしいということで、結論的には書かないことにきまっております。そのようなことで、それぞれ各項目ごとに慎重に検討いたし、また、書こうという努力もいたしたということでございますけれども、法案の最終的なものにつきましては、必ずしも端的には入っておりませんけれども、このような気持ちは十分盛り込む努力はいたされております。
  186. 森中守義

    森中守義君 まあ大体そういうものでしょうね、想像したとおり。そこで、さっき申し上げましたように、まだ閣議決定に至っていないんだから、いわんや国会に出されておりませんから、水産庁長官が、さっき、私は被害者の側に立っているというお話、まさに適切な表現だと思う。ですから、幸い各省おいでになりますから——これは何も大会の決議だからというわけじゃない。長年の懸案ですよ。衆議院でも、参議院でも、公害の問題を討議する際に、特別委員会でも農水でも同じようなことがしばしば言われておる。したがって、国民の意思及び国会の意思を尊重する御意思であるならば、即刻、多少閣議決定を延長してでも、もう一回練り直してもらいたい。そのことを、水産庁長官も、皆さん協議をして御要望にこたえなさいよ。一たん基本法ができ上がってしまって、あれで救済する、これで救済するといってみても、もうそのときはおそい。やるならいまですよ。その意味で、私は、本来ならば公害委員会でやってもいい問題だけれども、この農林水産委員会で特に実はお尋ねしているわけです。ひとつ協議の上練り直す。練り直すといっても、全部やり直せというわけじゃないですよ。再検討を加えてもらいたい。この程度のことは、三百万漁民諸君に誠意ある態度としてできるんじゃないですか、どうですか検討を加えるということで。
  187. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 先ほど来申し上げておりますように、ここに掲げられておる各項目は、ただいま先生からお話がございましたように、従来から言われ、最も重視せられておる諸点でございまして、政府といたしましても十分慎重に検討の結果法案を作成するという経緯をたどってきております。
  188. 森中守義

    森中守義君 まあ、政府側の御意見、また、私の言わんとするのも、大体おわかりだろうと思う。ただ、やはり現実的にはすれ違っている。それで、政務次官おられますね。これは所管違いの政務次官じゃしょうがないが、ひとつどうですか、政務次官、せっかくの機会だから、この場でなんて言いませんから、もう一回ひとつ検討するくらいのことは言っておいてください。そうしなければ、全国の漁民諸君に申しわけない。はいっていない。はいっていないから、漁民大会を開いて入れてくれと言っているわけです。検討するくらいのことは速記録に残しておいてください。そうしなければ、これは大ごとになりますよ。
  189. 久保勘一

    政府委員(久保勘一君) 先ほどから水産庁長官より意見を申し上げておりますように、それらの点につきましては、従来も水産庁として考えておったことでございますし、法案をつくります過程におまきして十分に主張いたし、それらのことが法案の審議の中において調整されている、かように私どもは理解をしているわけであります。もちろん、こまかな点につきまして法案の最終的なものを存じておりませんので、ここでそれがどの程度、一〇〇%入れられているものであるかということについてはつまびらかでありませんが、しかし、御承知のとおりに、今回のは基本法でございますので、この基本法の中で具体的にすべての問題がそのものぴしゃりの解決ができるようになっているかどうかということについては、多少問題が残ると思うのでありますけれども、法案成立後の運用におきまして、十分漁民各位の要求されておりまする諸点については水産庁として責任をもって対処してまいりたいと、かように存ずるわけであります。
  190. 森中守義

    森中守義君 ことばを返すようですが、政務次官、たいへんなことですよ、そんなことおっしゃっちゃ。公害の憲章ですから、あとで水産庁が責任もってどうするこうすると言ったって、それは、あなたできますか、そんなことが。いまのは、あとで速記録をよくお読みになって取り消しておくほうがいいですよ。できませんよ、そんなこと。それから舘林局長、日本弁護士連合会から意見書が出ているでしょう。これはごらんになったですか。
  191. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 日本弁護士連合会その他各方面から公害基本法制定に際しまして御意見か出ておりまして、それらの点は参考にいたしまして私どもの作業に当たったわけでございます。
  192. 森中守義

    森中守義君 なお、公害の問題は、これからがいよいよ基本法審議の時期になるでしょうから、またその節いろいろ承る機会もございましょうし、まあきょうはこれでおいておきますが、ただし、くどいようですけれども関係の各省におかれては、水産関係、漁業問題については特段の考慮を払うべきであるという在来からの国会での意思の表明もしばしば行なわれていることですから、特段のひとつ御配慮をお願いしておきたい。  それからもうそろそろ終わりますが、特に長官に一つ伺っておきますが、昨年改正した例の漁船損害補償法、あの中央会に渡した余剰金の中で十二億を海難対策に使えという条件付でしたね。あれはどうしましたか。中央会から計画書は出てきましたか。
  193. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 計画書は出ておりまして、遭難対策その他に使っているわけでございます。
  194. 森中守義

    森中守義君 それじゃ、この次にひとつ資料として出してください。  たいへんどうも長い時間かけましたが、一通りこの辺できょうは……。
  195. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 本件についての質疑は、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十七分散会      —————・—————